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がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 2 がん医療における患者-医療者間のコミュニケーション ガイドライン 2022年版

がん医療の現場で役立つ、適切なコミュニケーションを行うための指針を刊行がん医療では、がんの診断や再発・進行、抗がん治療の中止など、患者にとって衝撃的な情報を伝えたうえで最善の意思決定を行うという、難しいコミュニケーションが必要となる。本書では、そのような「悪い知らせ」を伴う治療選択などの場面における、医療者と成人がん患者のコミュニケーションを対象とし、7件の臨床疑問を設けてエビデンスに基づく解説と推奨を提示した。コミュニケーションに関する基礎知識の解説や、各臨床疑問の補足資料なども多く盛り込まれた、がん医療に携わる医療者必携の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 2がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン 2022年版定価2,420円(税込)判型B5判頁数160頁・図数:19枚発行2022年7月編集日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会電子版でご購入の場合はこちら

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がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 3 遺族ケアガイドライン 2022年版

大切な人を失った遺族の診療とケアに関する、本邦初のガイドラインがんを含めた身体疾患によって、家族や恋人・パートナーなどの重要他者を亡くした遺族の診療とケアに関するガイドライン。死別に伴う悲嘆反応の多くは時間の経過とともに軽減するが、精神心理的苦痛の強い一部の遺族に対しては適切な介入や支援が必要となる。本書では、前半で悲嘆や家族・遺族ケアの基礎知識を総論として解説し、後半では治療的介入が必要な遺族の診断と治療法を解説するとともに、非薬物療法と薬物療法に関する2件の臨床疑問を設けて推奨を提示した。遺族ケアの幅広い知識を得られる、充実した1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 3遺族ケアガイドライン 2022年版定価2,420円(税込)判型B5判頁数144頁・図数:11枚発行2022年7月編集日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会電子版でご購入の場合はこちら

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AIがやって来た!【Dr. 中島の 新・徒然草】(438)

四百三十八の段 AIがやって来た!暑いですね。蝉もうるさいです。ところが、いつの間にか夜は秋の虫が鳴いています。虫の声を聞くと、少し物悲しい気にさせられるのはなぜでしょうか。大した成果もなく1年の半分以上が過ぎてしまった……。そんな後悔の念からくる寂しさかもしれません。さて、ウチの病院にもついにAI、いわゆる人工知能が導入されました。胸部レントゲンを読影してくれるのです。結節影、浸潤影、気胸を見つけては、赤黄緑青などのカラフルな色で表示してくれます。イメージとしては、ちょっと愛想のないSPECTみたいな感じです。これがルーチン的に画像上に表示されるのですが、結構、役に立つ気がします。救急外来での肺炎疑いの場合、「浸潤影かも?」と思うところに色が付いています。実は、私も胸部単純レントゲンの読影にはまったく自信がなかったので、これまでにいろいろな裏ワザを考案してきました。1つは、胸部CTで確認するもの。単純レントゲンで不明瞭でも、胸部CTならクッキリ見えることが多々あります。もう1つは、以前の画像と比較するもの。過去の胸部単純レントゲンがあれば、横に並べて立体視してみます。すると、新たに出現した浸潤影や結節影は浮かび上がって見えるので、この現象を活用してきました。ここにもう1つ加わった新たな裏ワザが、AIです。これで見落としの確率も格段に減るというもの。実際に何例か見たところでは……肺炎初期の浸潤影を指摘した。AIもあまり自信ないのか、緑~紫程度の表示でした。脱水があって不明瞭な段階の浸潤影を、うまく指摘していたと思います。20代の若い女性の結節影を指摘した。AIは自信満々で、赤で表示しました。拡大してみると、直径数ミリの丸いものがあります。年齢からして、肺がんの可能性はあまりないと思うのですが。後で放射線科の先生に確認してみたいと思います。でも、何もなさそう。現時点のAIには、全面的に頼ることはできません。が、徐々に信頼度が上がっていくのだと思います。我々医師も、正しい距離感でAIと付き合っていく必要がありますね。最後に1句暑くても ひたすら働く AIくん

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がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 1 がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版

がん診療の現場で役立つ、せん妄に関する指針を3年ぶりに改訂!せん妄はがん医療の現場において高頻度で認められる病態であり、超高齢社会を迎えた日本では今後さらに、せん妄の予防や対策が重要となる。今改訂では、終末期せん妄への対応や、せん妄に対する病院組織としての取り組み方についての解説を総論に加えたほか、「予防」などに関する臨床疑問が新たに追加された。また、薬物療法における薬剤選択や投与量などを解説した「臨床の手引き」の章も新設され、より臨床現場で役立つ1冊となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 1がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版定価2,640円(税込)判型B5判頁数200頁・図数:3枚・カラー図数:6枚発行2022年6月編集日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会電子版でご購入の場合はこちら

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英語で「…と診断されたことはありますか?」は?【1分★医療英語】第40回

第40回 英語で「…と診断されたことはありますか?」は?Have you ever been diagnosed with diabetes?(糖尿病と診断されたことはありますか?)No, but last year, I was told I had pre-diabetes.(いいえ、でも去年、糖尿病予備軍と言われました)《例文1》I was diagnosed with lung cancer 3 years ago.(私は3年前に肺がんと診断されました)《例文2》Have you ever been told that you have diabetes?(糖尿病と言われたことがありますか?)《解説》「診断」という名詞は“diagnosis”、「診断する」という動詞は“diagnose”です。「diagnose 人 with~」で、「人を~という病気と診断する」という意味になり、“Have you ever been diagnosed with~?”で「~と診断されたことはありますか?」と聞くことができます。特定の既往歴があるかどうかを聞く場合の他の表現として、“Have you ever been told that you have~?”(~と言われたことがありますか)や、さらにシンプルに“Do you have~?”(~がありますか)といった表現もあります。また、関連する用語として「鑑別診断」は“differential diagnosis”、「前糖尿病」や「糖尿病予備軍」は“prediabetes” “borderline diabetes”と表現することを覚えておくと役立ちます。講師紹介

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小型非小細胞肺がんへの術式 区域切除vs.肺葉切除:JCOG0802/WJOG4607L【肺がんインタビュー】 第82回

第82回 小型非小細胞肺がんへの術式 区域切除vs.肺葉切除:JCOG0802/WJOG4607L小型の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する標準外科療法は肺葉切除だが、2cm以下の末梢NSCLCにおいて区域切除と肺葉切除を比較した無作為化非劣性比較試験「JCOG0802/WJOG4607L」で区域切除の非劣性が示された。試験結果が報告されたLancet(2022年4月23日号)の共著者である国立がん研究センター東病院の坪井正博氏に試験結果を解説いただくと共に、同試験に対するケアネット会員の質問にお答えいただいた。

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2010年代の京都市の肺がん治療、医療費は増加し生存割合は改善/アストラゼネカ

 アストラゼネカと京都市は、京都市におけるがん検診受診率や肺がん患者の治療パターン、予後などに関する行政医療データを解析・調査するための共同研究の結果を発表した。この結果は2022年6月28日付けでValue in Health Regional Issues(電子版)に掲載されている。 2013〜18年度に京都市で肺がんと診断され、治療を受けた4,845名を対象に、肺がんの治療パターン、医療費、予後について解析・調査を行った。 6年の解析期間において、研究対象患者の年齢平均値は73歳から74歳へと推移した。初回治療として手術を受けた患者の割合は、2013年度は35.2%、2018年度は39.6%であった。薬物治療を受けた対象者の割合は2013年度の44.1%から、2018年度は37.6%と各年で上下しながら推移している。肺がん患者における、手術、薬物療法、放射線療法それぞれの年間医療費の合計は2014年度から2018年度で経年的に増加傾向だった。一方、2年以内に死亡する患者の割合は2013年度の42.7%から2016年度の36.8%まで毎年減少している。 同研究では、2010年代の肺がん治療の変化に加え、医療費の増加および生存割合の経年的な改善傾向が記述された。 同共同研究においては、すでに京都市との間で研究期間の延長が合意されており、同市における肺がん検診の受診率や治療パターン、予後など行政医療データをさらに詳しく解析・調査してその結果を発表していく予定である。

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緩和ケアに宗教観は“必須”なのか?【非専門医のための緩和ケアTips】第32回

第32回 緩和ケアに宗教観は“必須”なのか?緩和ケアの議論をしていると、宗教的な話題も出てきます。死と向かい合う人をケアするわけですから、ある意味当たり前のことでしょう。では、緩和ケアに宗教観は“必須”なのでしょうか? 一般化した正解があるわけではありませんが、緩和ケアに携わりながら私が感じてきたことをお伝えします。今日の質問緩和ケアでは宗教的なケアにも取り組みますよね? 私は無宗教なので、「死後の世界」などと言われてもピンときません。宗教観がなければ、緩和ケアを実践することは難しいのでしょうか?私自身も「特定の宗教に基づいたケア」は行っていません。日本人らしく、初詣もクリスマスも除夜の鐘もそれぞれ楽しむタイプです。緩和ケアのルーツをたどると、十字軍で傷ついた兵士をケアしたことが起源という説があります。また、中世から近代にかけ、世界中の宗教施設が福祉的な役割を担っており、宗教者が病気や困難を抱えた人に提供したケアもルーツの1つです。そうした意味では、緩和ケアと宗教は最初から接点があったのです。実際、日本でもキリスト教や仏教などを背景とした緩和ケアを提供している病院や施設があります。皆さんは「チャプレン」って聞いたことありますか? チャプレンとは「宗教施設以外で働く宗教家」のことです。病院やホスピスで緩和ケアを提供する多職種チームの一員として、専門性を活かした宗教的なケアを提供しています。日本では一部のキリスト教系病院などで活躍していますが、私が見学に行った米国の病院ではさらに一般的な存在でした。米国では、さまざまな人種や宗教の方が入院します。チャプレンは、患者や家族から宗教的な背景をアセスメントしたうえで、医療者にアドバイスをします。たとえば、「この患者さんが信仰している宗教では、死は輪廻転生の一環として捉えられており、来世についての質問があるかもしれません」といった感じです。では、チャプレンがいない日本の病院では、宗教的な緩和ケアは提供できないのでしょうか。もちろん、できることとできないことはあるでしょう。ただ、宗教的な価値観を大切にしている患者さんがいたら、そのことに気付くこと、気付くために傾聴することが大切です。それは、医療者自身の宗教観と関係なく、取り組めることではないでしょうか?その先として、宗教的な観点を学ぶのもよいでしょう。インターネットで「チャプレン」と検索すると、さまざまなコンテンツがあります。スキマ時間に学んでみてはいかがでしょうか。今回のTips今回のTips宗教的なケアを提供することよりも、まずは宗教的な価値観を大切にしている患者さんに気付くことが大切。

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新規抗体薬物複合体DS-7300、小細胞肺がんを対象とした第II相試験開始/第一三共

 第一三共は2022年7月21日、DS-7300(B7-H3を標的とした抗体薬物複合体[ADC])について、前治療歴のある進展型小細胞肺がん患者を対象とした第II相臨床試験の最初の患者への投与を開始したと発表。 同試験は、化学療法による前治療歴のある進展型小細胞肺がん患者を対象に、同剤の有効性と安全性を評価するグローバル第II相臨床試験である。 主要評価項目は客観的奏効率で、副次評価項目には無増悪生存期間、奏効期間、全生存期間、病勢コントロール率、薬物動態、安全性などで、アジア、欧州および北米で約80例の患者を登録する予定だという。  DS-7300は、第一三共独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼI阻害薬(DXd)を抗B7-H3 抗体に結合させた薬剤で、同社で臨床開発を進めている5つのDXd-ADCのうちの1つである。B7-H3は、小細胞肺がんを含むさまざまながん種において過剰発現しているタンパク質の一種で、がんの進行や予後の悪化に関係していると言われている。現在、がん治療を対象に承認されているB7-H3を標的とした治療薬はない。

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ICI耐性の非小細胞肺がんに対するラムシルマブ+ペムブロリズマブの2次治療(Lung-MAP S1800A)/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)耐性となった進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療が有望な成績を示した。 進行NSCLCにおけるICI耐性後の2次治療は化学療法だけであり、今もなお大きなアンメットニーズが残っている。一方、ICIとVEGF阻害薬の併用は、複数のがん種で有望な結果が得られている。ドライバー変異のないICI耐性NSCLCの2次治療に、ICIであるペムブロリズマブとVEGF阻害薬であるラムシルマブの併用を化学療法と比較したLung-MAP S1800Aが行われた。結果は米国臨床がん学会年次集会(ASCO2022)で発表され、同時にJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。・対象:1ライン以上のPD-1/L1治療+プラチナベース化学療法(後治療または併用)を受け病勢進行したバイオマーカーの適合がないStage IVまたは再発NSCLC(ICI開始後84日以上かつ最終治療から1年以内に進行した症例)・試験薬群:ラムシルマブ+ペムブロリズマブ(RP群)3週ごと35サイクルまで投与 69例・対照薬群:治験担当医が選択した標準化学治療(ドセタキセル±ラムシルマブ、ゲムシタビン、メトレキセド、SOC群)67例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間、治験医師評価の無増悪生存期間(PFS)、毒性など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はRP群で14.5か月、SOC群で11.6か月であり、RP群で有意に改善された(ハザード比[HR]0.69、80%信頼区間[CI]:0.51〜0.92、片側p=0.05)。・ほとんどのサブグループでRP群のOS改善が示された。・PFS中央値はRP群で4.5ヵ月、SOC群で5.2ヵ月であった(HR:0.86、80%CI:0.66〜1.14、片側p=0.25)・ORRはRP群で22%、SOC群で 28%であった(片側p=0.19)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、RP群の42%、SOC群の60%で発現した。 ICIと化学療法による治療で進行したNSCLC患者に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療は従来のSOCと比較して、OSの有意な改善が示され、安全性は両剤の既知の毒性と一致していた。

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ロルラチニブのALK肺がん1次治療、3年追跡PFSのHR0.27、脳転移進行のHR0.02(CROWN)/Cancer Res

 未治療のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)におけるロルラチニブの第III相CROWN試験の3年追跡の結果が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2022)で発表され、良好な生存ベネフィットとともに、脳転移例に対して強力な有効性を示した。 ALK陽性肺がんに適応を有するALK阻害薬は、現在わが国で5種類承認されており、いずれも良好な成績を示す。近年は各薬剤の1次治療の成績が発表されている。その中で最もALK阻害作用が強いロルラチニブの1次治療を評価するCROWN試験の結果が注目される。 主な結果は以下のとおり。・ロルラチニブの追跡期間中央値は36.7ヵ月(対照群のクリゾチニブは29.3ヵ月)であった。・主要評価項目である盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値は、ロルラチニブ群では未到達、クリゾチニブ群では9.3ヵ月であった([ハザード比]HR:0.27、95%CI:0.18〜0,.39)。・脳転移の無増悪期間(IC-TTP)のHRは、ベースライン時脳転移陰性例では0.02(95%CI:0.002〜0.14)、脳転移陽性例では0.10(95%CI:0.04〜0.27)であった。・確定奏効率(confirmed OR)はロルラチニブ群77%、クリゾチニブ群は59%であった。・脳転移のconfirmed ORはロルラチニブ群65%、クリゾチニブ群は18%であった。・奏効期間(DoR)中央値はロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は9.6ヵ月であった。・脳転移のDoR中央値はロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は9.4ヵ月であった。・Grade3/4の有害事象(AE)はロルラチニブ群の76%、クリゾチニブ群の57%で発現した。治療中止に至ったAE発現はロルラチニブ群7%、クリゾチニブ群は10%であった。 筆者は今回の3年追跡結果の結果について、未治療のALK陽性肺がんにおけるロルラチニブの使用を脳転移の有無を問わずに支持するものだと述べている。

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ASCO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介2022年のASCOは久しぶりの現地開催とWeb開催のハイブリッド形式で実施された。肺がん領域については昨年にも増して大きな話題に乏しく、Phase I試験のExpansion、Phase II試験、さらにはサブセット解析などが主体で、PivotalなPhase IIIの公表はあってもNegativeという状況であった。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。SKYSCRAPER-02試験ASCO2022の肺がん領域において、Positiveであれば肺がんだけでなく臓器横断的に大きなインパクトを残したであろう試験がSKYSCRAPER-02試験である。残念ながらProgression-free survival(PFS)、Overall survival(OS)ともにNegativeであったこの試験は、進展型小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブというIMpower133試験で確立された標準治療に、tiragolumab(抗TIGIT抗体)を上乗せすることの優越性を検証するために実施された。TIGIT(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)はT細胞やNK細胞に発現する免疫チェックポイント分子である。tiragolumabは非小細胞肺がんを対象に実施された無作為化Phase II試験であるCITYSCAPE試験の結果、PD-L1高発現の患者集団においてアテゾリズマブに対する上乗せが示され、大きな期待を集めていた。SKYSCRAPER-01試験では進行非小細胞肺がんPD-L1高発現群において、SKYSCRAPER-03試験では切除不能III期非小細胞肺がんの化学放射線療法後の地固め療法として、そして進展型小細胞肺がんにおいてはSKYSCRAPER-02試験が実施されている。その中で最も早く結果が公表されたSKYSCRAPER-02試験は、前述のとおりPFS、OSともにカルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブに対する上乗せを示すことができなかった。さらに、ASCO直前にSKYSCRAPER-01試験においても、PFSが統計学的にNegativeであり、OSの結果は追跡中というプレスリリースが発行され、大きな話題となった。SKYSCRAPER-01試験についても、PFSはNumerical improvementを示しているとされており、OSの結果は追跡中、さらにSKYSCRAPER-03試験は結果を待っている状態であり、今後の報告が待たれる。CITYSCAPE試験の成功以降、多数の薬剤が同時に開発される状況となった抗TIGIT抗体についても、今後、他の領域、他の薬剤の結果を含め注目したい。PD-L1高発現群に対するFDAのPooled analysis2021年前半にESMO virtual plenaryにおいて、Flatiron社の技術を用いた電子カルテデータの解析に基づき、免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO-only)と、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用療法(Chemo-IO)が、PD-L1高発現の集団において有効性に大きな違いがないことが報告され大きく注目された。今年のASCOにおいては、FDAがこれまでの臨床試験のデータのPooled analysis結果をまとめ、ASCO2022の進行肺がんOralセッションの1番目という栄誉を得た。Chemo-IOとしては、KEYNOTE-021試験、KEYNOTE-189試験、KEYNOTE-407試験、IMpower150試験、IMpower130試験、CheckMate9LA試験が、IO-onlyとしては、CheckMate026試験、KEYNOTE-024試験、KEYNOTE-042試験、IMpower110試験、CheckMate227試験、EMPOWER-Lung 1試験が対象となっている。これらの試験に登録された9,000例以上の患者から、PD-L1 50%以上のChemo-IO 455例、IO-only 1,298例が解析対象となっている。OSはIO-onlyで20.9ヵ月、Chemo-IOで25.0ヵ月、Hazard ratio(HR)は0.82(95%信頼区間[CI]:0.62~1.08)であり、わずかにChemo-IOで良いものの信頼区間は1をまたいでいるという結果であった。とくに、年齢別のサブセットで異なる傾向を認め、65歳以下ではChemo-IOが良好な傾向があるのに対して、75歳以上ではIO-onlyが良好であった。確かにPost-hocの解析であり、限界も多いものの、PD-L1高発現の集団において、IO-onlyの治療戦略の重要性が再度示される結果であった。ニボルマブ+イピリムマブに関連したフォローアップデータPoster発表ではあったものの、CheckMate227試験の5年アップデートの結果が公表された。抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法の、進行非小細胞肺がんにおけるベンチマークとなる報告である。今回の報告では、PD-L1 1%以上と、1%未満に大別した成績が報告されている。1%以上においては、5年OS割合が24%、5年PFS割合が12%であった。1%未満においては、5年OS割合が19%、5年PFS割合が10%であり、従来指摘されてきたように、PD-L1の発現によらず、ほぼ同等の成績が5年のデータとしても確認された。PD-L1 1%以上のKEYNOTE-042試験においては、5年OS割合が16.6%、5年PFS割合が6.9%とすでに報告されている。異なる試験の結果であり直接比較は難しいものの、ニボルマブ+イピリムマブの併用により長期生存にプラスに働く可能性があることが示唆される結果といえる。今回PD-L1高発現群でのサブセット解析の結果は示されていないため、KEYNOTE-024試験との比較や、KEYNOTE-598試験などで検証されているPD-L1高発現の部分については、新たな情報がなく、今後追加の発表が期待される。さらに、同じくPosterであるが、CheckMate9LA試験については3年のアップデート結果が報告された。PD-L1の発現によらない全体集団において、化学療法2サイクル+ニボルマブ+イピリムマブは、3年OS割合27%、3年PFS割合13%を示した。この傾向はPD-L1の発現によらず維持されており、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の特徴が表れている。CheckMate9LA試験についても今後5年のフォローアップデータなどが待たれるものの、おおむねCheckMate227試験を踏襲する傾向であった。ただ、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で実施されているJCOG2007(NIPPON)試験において、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ群の安全性の問題により登録が中断されており、実施に際しては免疫関連の有害事象を中心とした安全管理に留意が必要である(JCOG2007[NIPPON試験]における重篤な有害事象発生について)。周術期治療の話題切除可能非小細胞肺がんに対して、初めてニボルマブによる術前治療を実施した試験がNew England Journal of Medicine誌に掲載されたことを記憶されている方も多いと思われる。ASCO2022では、この試験の5年フォローアップデータがPosterセッションではあるものの報告されている。20例の対象患者全体において、5年のOS割合が80%、無再発生存割合が60%であり、ニボルマブによる術前治療によりMPR(Major pathologic response、切除検体でViable tumorが10%以下)を達成した9例の患者のうち、8例(89%)が5年無再発生存しているという良好な結果であった。確かに非常に限られた症例での報告ではあるものの、現在実施中、フォローアップ中のさまざまな周術期免疫チェックポイント阻害薬の試験の結果を先取りする内容として確認しておきたい。最近の試験としては、CheckMate816試験について、術前ニボルマブ+化学療法後の病理学的奏効に基づく、EFS(Event-free survival)のサブセット解析の結果が報告されている。本試験はすでにAACR2022において、EFSにおいて術前化学療法に対してニボルマブを上乗せする意義が証明されたとする報告が行われている。AACRでの発表においても、pCR(pathologic complete response)を達成した患者において、ニボルマブの有無にかかわらず明らかにEFSが良いという結果、すなわちpCRが術前治療後の患者にとって明確な予後因子であることが報告されている。今回の報告ではその点をさらに解析し、pCRやMPRだけでなく、70%以上、20%以上などのさまざまなカットオフで評価しており、おおむね病理学的奏効の深さとEFSの良さが相関することが示された。ESMOが主導する、ESMO Virtual plenaryシリーズは、通常開催の学会とは独立して、重要演題を速報的に公開する方法として徐々にその地位を固めつつある。今年のESMO Virtual plenaryにおける肺がん領域の話題は、完全切除後の非小細胞肺がんにおいて、術後補助療法としてペムブロリズマブの意義を検証する、Phase III試験であるEORTC-1416-LCG/ETOP 8-15(PEARLS/KEYNOTE-091)試験であった。本試験においては、何よりもPD-L1高発現の集団においてペムブロリズマブの優越性が示されなかった点が話題となり、今後さまざまな観点からの解析結果が待たれる状態である。ASCO2022においてはサブグループ解析が報告され、割付調整因子に含まれていた術後プラチナ併用療法の有無において実施群のほうで明らかにペムブロリズマブの追加が良い傾向を認め、探索的な結果ながらも術後プラチナ併用療法としてカルボプラチン+パクリタキセルを実施した場合にペムブロリズマブの追加の効果が乏しいことが示されている。本試験については今後もさまざまな追加解析が実施されると思われ、それらの結果からIMpower010試験のアテゾリズマブと合わせて、周術期免疫療法の理解が深まることを期待している。

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オシメルチニブのEGFR変異肺がん術後補助療法、ADAURA試験最新データでも高い有効性/AZ

 アストラゼネカは、2022年7月13日、第III相ADAURA試験において、オシメルチニブ(製品名:タグリッソ)が、プラセボとの比較で、腫瘍完全切除後の早期(IB期、II期、IIIA期)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法において、無病生存期間(DFS)の臨床的に意義のある改善を維持していることを発表。 第III相ADAURA試験の初期結果では、術後の早期EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおいて、オシメルチニブがDFSリスクを有意に低下させることを示した。2年経過し、さらに蓄積されたDFSデータにおいても、オシメルチニブの治療ベネフィットは持続している。 これらの最終的なDFSデータは、今後の学会で発表される予定である。同試験は引き続き、副次評価項目である全生存期間(OS)の評価を継続して行う。

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介護施設での看取りにどう対応するか【非専門医のための緩和ケアTips】第31回

第31回 介護施設での看取りにどう対応するか在宅医療に関わる方であれば、介護施設における訪問診療を担当される方も多いと思います。そうすると、たびたび直面するのが「施設での看取り」です。長く過ごした施設で最期まで過ごさせてあげたい…。そんな家族やスタッフの気持ちの反面、在宅での看取りとは別の難しさもあります。今日の質問訪問診療で担当している施設の患者さんが、そろそろお看取りが近そうです。施設のスタッフはお看取りの経験がありませんが、長く過ごされていた患者さんであり、「最期まで施設で過ごさせてあげたい」という気持ちが強いようです。こうしたケースで注意するべき点は何でしょうか?私も施設への訪問診療をしています。長く過ごした施設で、スタッフの方の暖かなケアを受けながら最期まで過ごされ、良いお看取りになったと感じる患者さんもいらっしゃいました。その一方で、さまざまな理由で、看取りに対応するのが難しい施設もあります。「最後は入院してもらわないと…。こちらでは対応できません」といったやりとりもしばしば経験します。施設と一言で言っても、その種類や抱える事情はさまざまです。その中でわれわれ医療者ができることは何でしょうか?それは、「施設スタッフもケアの対象」と捉え、対話することです。看護師が在籍する施設でも、休日夜間は介護スタッフを中心に対応している施設が大半です。介護スタッフは介護のスペシャリストです。寝たきりの患者さんが褥瘡もなく、肌も綺麗にしているのは彼らの提供する介護やケアの賜物です。しかし、看取りが近い方について介護スタッフの方と話すと、多かれ少なかれ不安を感じています。「今後どうなるかわからない」「心配する家族から何か聞かれたらどうしよう」など、医療のプロでない彼ら彼女らが不安になるのは当然でしょう。緩和ケアにおいては、「ケアを提供する方もケアの対象」です。皆さんが施設での看取りに関わることがあったら、ぜひ施設スタッフの方への声掛けをお願いします。そして、取り組んでいるケアについて言語化し、ねぎらいましょう。私がよくする声掛けとしては、「お肌がすごく綺麗でびっくりしました。いつもケアしてくださってるんですよね?」といった、具体的なケアで気付いたことや、「ご本人はすごく穏やかな表情ですね。皆さんを信頼されてるんでしょうね。今、ご心配なことはないですか?」といったものがあります。施設での看取りについては、ぜひ施設スタッフもケアの対象として、関わってみてください。今回のTips今回のTips施設での看取りは、施設スタッフもケアの対象として声掛けや対話をする。

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術前化学療法とデュルバルマブの併用がNSCLCのpCRを改善(AEGEAN)/AZ

 英国アストラゼネカは2022年6月30日、第III相AEGEAN試験の良好な解析結果概要を発表した。同試験の中間解析において、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と術前化学療法の併用療法は、術前化学療法単独と比較して、病理学的完全奏効(pCR)の統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。 さらに、主要な病理学的奏効(mPR)の統計学的に有意な改善も認められた。同試験は予定通り継続し、もうひとつの主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)を評価する。 術前化学療法にデュルバルマブを追加した場合の安全性および忍容性は、既知のプロファイルと一貫しており、化学療法単独との比較で、手術可能な患者数の減少は認められなかった。 世界のNSCLC患者の最大30%が、根治目的の切除可能な早期段階で診断されるにもかかわらず、ステージIIの患者の5年生存率は56〜65%、ステージIIIでは24〜41%である。 今回得られたpCRデータは各国の規制当局と共有され、EFSの試験結果が得られ次第、学会で発表される予定である。

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ASCO2022 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介ここ2年ほど、ASCOでは、「高齢者総合的機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が続けて発表され、老年腫瘍の領域を大いに盛り上げた。今年のASCOでは、老年腫瘍に関するpivotal studyは少なかったものの、その数および質は高まっているように思えた。その中から、老年腫瘍の観点から興味深い研究を抜粋して紹介する。PS:2または70歳以上の進行非小細胞肺がんに対するカルボプラチン併用療法とニボルマブ+イピリムマブのランダム化比較第III相試験(Energy-GFPC 06-2015: #90111))今回のASCOにて、CheckMate-227の長期フォローアップの結果が公表された2)。具体的には、PD-L1陽性の進行非小細胞肺がんに対してニボルマブ+イピリムマブを投与された集団は化学療法と比較して長期生存が認められた(5年OS:24%vs.14%)。しかし、CheckMate-227の対象集団はPS:0~1であり、75歳以上の高齢者は10%程度しか登録されていないため、いわゆる脆弱な集団において、ニボルマブ+イピリムマブが有用なのかはわかっていない。実は、セカンドライン以降のニボルマブにおいても同様のクリニカルクエスチョンがあり、欧州における承認条件として実施されたCheckMate-171という、PS:2および70歳以上の高齢者進行非小細胞肺がんを対象とした単群試験が行われており、2020年にEuropean Journal of Cancerにその結果が掲載されている(いずれの集団においてもニボルマブの忍容性が示された)3)。PS:2および70歳以上の高齢者のみを対象としているのは、いわゆる「脆弱な集団」でもニボルマブが有用か否か評価したかったようである。前置きが長くなってしまったが、今回のASCOにて、CheckMate-171のクリニカルクエスチョンと同様に、PS:2および70歳以上の高齢者を対象として、カルボプラチン併用療法とニボルマブ+イピリムマブの有効性を評価するランダム化比較試験の結果が発表された。主な適格規準は、IV期または術後再発の非小細胞肺がん、「70歳以上かつPS:0~1」または「年齢不問かつPS:2」、治療歴なし、driver mutationなしなど。登録した患者は、標準治療群(化学療法群)および試験治療群(ニボルマブ+イピリムマブ群)に1対1で割り付けられた。Primary endpointを全生存期間(overall survival:OS)として、化学療法群と比較して、ニボルマブ+イピリムマブ群が優越性を示すことができるかを検証するデザインであった。当初、予定登録患者数は242例であったが、PS:2の集団の予後が不良であったため、効果安全評価委員会の勧告にて登録が途中で中止されている。217例が登録され、不適格例1例を除く216例が解析対象となった。結果、化学療法群と比較して、ニボルマブ+イピリムマブ群の生存曲線は上回っていたものの、ハザード比[HR]は0.85(95%信頼区間[CI]:0.62~1.16、p=0.2978)と優越性を示すことはできなかった。サブグループ解析において、「年齢不問かつPS:2」では化学療法群が有効な傾向であり、「70歳以上かつPS:0~1」ではニボルマブ+イピリムマブ群の方が有効な傾向にあった。セカンドライン以降のニボルマブの有用性を評価したCheckMate-171でも、「年齢不問かつPS:2」と比較して「70歳以上かつPS:0~1」はOSが良好(MST:5.2ヵ月vs.10.0ヵ月)であり、「75歳以上かつPS:0~1」の集団にいたってはMSTが11.2ヵ月と最も良好であった。臨床試験に登録する高齢者は一般的な高齢者よりも元気である可能性はあるとはいえ、本試験においてもCheckMate-171と同様の傾向がみられたことから、やはり「PS:2」と「暦年齢で規定された高齢者」を1つの集団とするのは無理があるのかもしれない。日常診療と同じように、「脆弱な集団」は暦年齢以外で規定する必要がありそうである。70歳以上の乳がん患者に対する術後補助化学療法のランダム化比較試験(ASTER 70s trial: #5004))HER2陽性の高齢者乳がん患者に対する術後補助化学療法については、本邦で実施されたランダム化比較試験の結果が2020年のJCOに掲載されている(試験治療群であるトラスツズマブ+化学療法は、標準治療群であるトラスツズマブ単剤と比較して全生存期間において非劣性を示せなかった)5)。今回、フランスの臨床研究グループが、ER陽性、HER2陰性の高齢者乳がん患者に対する術後補助化学療法の有用性を評価するランダム化比較試験の結果を公表した。結果だけみるとnegative studyではあるが、本試験は高齢がん患者を対象とする臨床試験デザインとしてはモデルになりうると考えるため、ここで紹介する。主な適格規準は、70歳以上の乳がん術後患者、ER陽性、HER2陰性、術後補助化学療法を検討されているなど。遺伝子発現解析としてGenomic Grade Index(GGI)を用いられており、再発リスクが高いとされる集団(GGIがhighまたはequivocal)はランダム化比較試験に登録、再発リスクが低いとされる集団(GGIがlow)は前向き観察研究に登録された。ランダム化比較試験に登録した患者は、標準治療群(エストロゲン単独療法)と試験治療群(化学療法4コース後にエストロゲン単独療法)に1対1に割り付けられた。割付調整因子は、pN、施設、G8(高齢者における脆弱性のスクリーニングツール)。Primary endpointをOSとして、標準治療群と比較して、試験治療群の優越性を検証するデザインであった。Secondary endpointsは、乳がん特異的生存期間や無浸潤疾患生存期間などの一般的なものに加えて、健康関連QOL(QLQ C-30、ELD-14)、費用対効果などであった。前向き観察研究に登録した患者は、ET療法を5年以上実施することとしていた。1,089例の患者がランダム化比較試験に登録され、880例の患者が前向き観察研究に登録された(今回の発表では前向き観察研究の結果は示されなかった)。患者背景として、IADL(手段的日常生活動作)、Mini-Mental State Examination(認知機能)、Charlson Comorbidity Index(併存症)、Lee Index(推定余命)、G8などは両群で大きな差はなかった。結果、標準治療群に対して試験治療群はOSにおいて優越性を示すことができなかった(HR:0.79[95%CI:0.60~1.03、p=0.08])。Grade3以上の有害事象は試験治療群で明らかに多く、治療関連死亡は、標準治療群で1名、試験治療群で3名であった。本試験は、高齢がん患者を対象とする臨床試験のデザインとして興味深い。まず、割付調整因子にG8が含まれている。G8は8つの質問で患者自身の脆弱性を評価するツールであり、14点以下は脆弱の疑いがあると判断される。多くのがん種で、G8は高齢がん患者の予後因子であることが知られているが、G8を割付調整因子にしている高齢者試験は少ない。これは、他に有用な予後因子があるためG8を割付調整因子としていない場合もあるだろうが、G8を日常診療で使用していないため、これを割付調整因子とすることに抵抗がある場合もあるだろう。フランスは老年腫瘍学先進国であり、高齢者機能評価を日常的に行っているため、これを割付調整因子にすることに抵抗がなかった可能性がある。次に、背景因子として、G8、IADL(手段的日常生活動作)、Charlson Comorbidity Index(併存症)、居住状況、Lee Index(推定余命)、ポリファーマシーの有無、Mini-Mental State Examination(認知機能)などを評価している。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は前4者を高齢者研究では実施することを推奨しているが6)、本試験ではさらに項目を追加している。データを収集することの負担とメリットのバランスは重要だが、フランスでは高齢者機能評価が日常的に行われているため、これらを収集することが過大な負担にならなかった可能性がある。最後に、健康関連QOLとして、高齢がん患者に特異的なEORTC ELD-14を評価している。EORTC ELD-14自体は14の質問に回答するのみだが、EORTC C-30とともに回答する必要があるため、合計44の質問に回答しなくてはならない。これを3ヵ月ごとに回答するというのは患者にとって負担であり、回答割合が低くなる可能性がある。また、これら全てに回答できる集団が果たして一般の高齢者を代表できるのかという疑問もある。とはいえ、高齢がん患者にとってはOSだけでなく健康関連QOLも重要であるため、データの回収割合なども含めて、今後の結果公表が待たれる。PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬単剤と免疫チェックポイント阻害薬+化学療法の有効性に関するpooled analysis(#90007))進行非小細胞肺がんの1次治療において、化学療法(chemo群)、免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO単剤群)、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法(Chemo-IO群)を比較したランダム化比較試験のうち、PD-L1≧50%の集団のみを抜き出して解析したpooled analysisが公表された。ただし、FDAで承認されている薬剤に関する試験のみが対象である。PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がん患者3,189例が解析対象とされた(chemo群:1,436例、IO単剤群:455例、Chemo-IO群:1,298例)。今回の発表では、IO単剤群とChemo-IO群を比較した結果が示された。OSの中央値は、Chemo-IO群で25.0ヵ月、IO単剤群で20.9ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.62~1.08)、PFSの中央値は、9.6ヵ月vs.7.1ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.55~0.87)であった。サブグループ解析において、75歳以上の集団のOSおよびPFSはIO単剤群で良好な傾向であった。対象試験が限定されていること、また、あくまでpooled analysisなのでOSで統計学的な有意差が出なかったことから、この試験の結果をもってIO単剤が標準治療になることはないと考えている。それよりも、老年腫瘍学的には、75歳以上のデータが公表されたことに意義がある。多くの論文では、65歳以上/未満のサブグループ解析しか掲載されてないため、70歳以上や75歳以上の、日常診療で困っている集団に対するデータが乏しいのである。今回、75歳以上の集団でIO単剤群が良好な傾向であった。しかし、75歳以上の集団は185例で1割程度と少ないため、この結果の解釈は注意が必要である。とはいえ、少しでもChemo-IOに不安を覚えるような脆弱な高齢者にIO単剤を勧める根拠にはなりそうである。参考1)Randomized phase III study of nivolumab and ipilimumab versus carboplatin-based doublet in first-line treatment of PS 2 or elderly (≧70 years) patients with advanced non-small cell lung cancer (Energy-GFPC 06-2015 study).2)Five-year survival outcomes with nivolumab (NIVO) plus ipilimumab (IPI) versus chemotherapy (chemo) as first-line (1L) treatment for metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC): Results from CheckMate 227.3)Felip E, Ardizzoni A, Ciuleanu T, Cobo M, Laktionov K, Szilasi M, et al. CheckMate 171: A phase 2 trial of nivolumab in patients with previously treated advanced squamous non-small cell lung cancer, including ECOG PS 2 and elderly populations. European journal of cancer (Oxford, England : 1990). 2020;127:160-72.4)Final results from a phase III randomized clinical trial of adjuvant endocrine therapy ± chemotherapy in women ≧70 years old with ER+ HER2- breast cancer and a high genomic grade index: The Unicancer ASTER 70s trial.5)Sawaki M, Taira N, Uemura Y, Saito T, Baba S, Kobayashi K, et al. Randomized Controlled Trial of Trastuzumab With or Without Chemotherapy for HER2-Positive Early Breast Cancer in Older Patients. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2020:Jco20001846)JCOG高齢者研究委員会 推奨高齢者機能評価ツール7)Outcomes of anti–PD-(L)1 therapy with or without chemotherapy (chemo) for first-line (1L) treatment of advanced non–small cell lung cancer (NSCLC) with PD-L1 score ≥ 50%: FDA pooled analysis.

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がんの緩和ケア、放射線・神経ブロック治療普及のセミナー開催

 働くがん患者を企業と一緒に支援する厚生労働省の取り組み「がん対策推進 企業アクション」は、6月28日、「がん治療における緩和ケア」をテーマとしたメディア向けセミナーを開催した。これは、6月9日に厚生労働省が医療者への啓蒙と一般患者への説明用として、がんにおける緩和ケアを説明する資料1)を作成し、都道府県衛生主管部(局)、がん診療連携拠点病院等の病院長、日本医師会を通じて広報をはじめたことを受けたもの。資料は、心理的・精神的ケアを含めて診断時から緩和ケアが受けられること、痛みへの対応としてオピオイド等の使用だけでなく放射線治療や神経ブロック等の活用を促すこと、が主な内容となっている。 セミナーの冒頭では、がん対策推進 企業アクション議長の中川 恵一氏(東京大学 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)が「日本国内では年間100万人ががんに罹患し、38万人が命を落としている。その3分の1は働く世代であり、この年代にも緩和ケアは重要なテーマ。日本はこの分野において遅れが目立つ」と述べた。「これまで、日本では治すことが最優先され、癒すという観点が後手になりがちだった。緩和ケアも進行がんの終末期患者を中心に行われてきたが、2006年に制定されたがん対策基本法に基づき、あらゆる種類・進行状態のがん患者に提供するよう医療者への働きかけを進めており、今回の資料作成もその一環だ」と説明した。加えて、「がんの疼痛緩和の基本はオピオイド等の処方だが、それが効かない場合には放射線治療や神経ブロックが有効であり、その周知や実施を進めることが患者のQOLの維持・改善のために必要だ」とした。 その後、沖縄徳洲会病院の服部 政治氏(疼痛治療科統括 部長)が「がん疼痛治療の現状」と題した講演を行った。服部氏が積極的に行っている疼痛緩和目的の神経ブロックは、全国の実施回数が年間300回と非常に少ない水準に留まっている。服部氏は「がんの疼痛には鎮痛薬の内服や皮下注、手術・放射線治療、そして神経ブロック療法・脊髄鎮痛法がある。治療初期は鎮痛薬、それが効かなくなったら放射線、最後に神経ブロックと直線的に各手法が提供されているのが現状」と説明した。そして、「疼痛緩和のためモルヒネを大量投与されているケースにおいて神経ブロックを行うことで痛みを軽減させ、モルヒネの投与量を10分の1程度まで減らせることが複数のデータで示されている。神経ブロックを施術したことで終末期患者が在宅診療に切り替えられた例もあるが、オピオイドの投与量は一気には減らせないため、大量投与になる前の初期から、複数の緩和ケアの手法を組み合わせて提供することが有効だ」と説明した。そして、現状の課題として「20年ほど前まで一般的だった神経ブロック・脊髄鎮痛法が行われなくなった結果、施術できる医師、研修できる施設が減っている。鎮痛薬に偏った日本における緩和ケアの課題感を共有し、人材育成を進めることが重要だ」と強調した。

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ASCO2022オンデマンド配信中、特設サイトで注目演題レビューを配信

 6月3日~7日(現地時間)まで、世界最大の腫瘍学会であるASCO2022(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催された。会期終了後の現在も、プレナリーセッションを含むほぼすべての演題のスライドと動画がASCOサイトで公開されている。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」では、ASCO2022のスタートにあわせた特設サイトを公開。会期前にエキスパートから寄せられた「注目演題」を紹介するほか、会期終了後には各演題の結果を受けた追加コメントや、臓器別に結果をまとめたレビュー、ASCOでの発表と同時掲載された論文を紹介する記事などが集まっている。 現在までにアップされているエキスパート医師が解説する、臓器別の注目演題レビューはこちら(リンク先のDoctors’Picksは医師会員限定)。肺がん/国立がん研究センター中央病院・大熊 裕介氏肺がんエキスパート向け/埼玉医科大学国際医療センター・山口 央氏乳がん/国立がん研究センター中央病院・下井 辰徳氏下部消化管/高知大学・佐竹 悠良氏上部消化管/国立がん研究センター中央病院・加藤 健氏 ASCOは次回2023年6月も、シカゴとオンラインのハイブリッド開催が予定されている。

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ASCO2022 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介はじめに2022年6月3日~7日に、2022 ASCO Annual Meetingが開催された。世の中は徐々に渡航を緩和しつつあるが、残念ながら今年も日本からvirtualでの参加になってしまった。今年も消化管がん分野において標準治療を変える発表が複数報告されたが、その中でもとくに重要と考える発表をここで報告する。食道がん・胃がん昨年の2021 ASCO Annual Meetingでは、食道がん・胃がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性を検証する大規模臨床試験の結果が複数報告されたが、今年は大きな結果の報告は乏しかった。一方でClaudin18.2(CLDN18.2)に対するchimeric antigen receptor(CAR)T細胞の安全性・有効性の報告など、今後の治療開発につながる報告が行われており、これらを中心に報告を行う。CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy(CT041)Claudinは4つの膜貫通ドメインと2つの細胞外ループを持つ分子量23kDの小さな4回膜貫通タンパク質であり、隣り合う細胞の両側から細胞接着部位に集積し、タイトジャンクションの細胞膜密着構造と膜内のストランド構造を形成している。Claudin18.2は、胃腸腺がんの80%、膵臓がん、胆管がん、卵巣がん、肺がんでは60%と複数のがんで高発現しているとされている。抗Claudin18.2抗体薬であるzolbetuximab(IMAB362)が無作為化第II相試験(FAST試験)で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を認めており、現在国際共同第III相試験であるSPOTLITE試験が進行中である。CAR T細胞療法では、患者からT細胞を採取し、遺伝子医療の技術を用いてCAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なタンパク質を作り出すことができるようT細胞を改変する。そして厳重な品質管理の下で増幅し、リンパ球除去化学療法の後に患者に投与を行う。CT041(CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy)は免疫染色でCLDN18.2陽性(2+/3+を≧40%の腫瘍細胞で認める)の前治療歴のある進行胃がん症例に対して行われた第Ib/II相試験である。報告の時点で14例の症例が登録され、最も多いGrade3以上の有害事象はlymphodepletionに伴うリンパ球減少であったが、Dose limited toxicities(DLTs)となるものは存在しなかった。Cytokine release syndromeも認められたが、多くの症例はGrade1~2であり、許容されるものであった。有効性では奏効率(ORR)が57.1%、病勢制御率(DCR)が78.6%、PFS中央値が5.6ヵ月、全生存期間(OS)中央値が10.8ヵ月と、全例2つ以上の前治療を受けていることを考えると非常に有望な結果であり、現在第II相パートが進行中である。大腸がん今年のASCOにおける大腸がん分野の最大のトピックは、本邦から報告された切除不能・転移性大腸がんに対して、最適な1次治療を前向きに検証する第III相試験である、PARADIGM試験である。そのほか、StageII結腸がんの術後補助化学療法実施の要否を、血漿循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて前向きに検証する無作為化第II相試験であるDYNAMIC試験と、米国のMemorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)が行ったミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体の有効性の報告が、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。今回はこれらの結果を報告する。PARADIGM試験切除不能転移再発大腸がんに対する1次治療の標準はFOLFOX/FOLFIRI等の化学療法と、抗EGFR抗体もしくはVEGF抗体であるベバシズマブの併用であり、生存期間中央値がおおよそ30ヵ月と報告されている。過去に行われた6つの無作為化試験の統合解析では、RAS野生型かつ左側大腸がん(下行結腸・S状結腸・直腸)症例には抗EGFR抗体薬の併用が、RAS変異型もしくはRAS野生型かつ右側大腸がん(盲腸・上行結腸・横行結腸)症例にはベバシズマブの併用が有意に優れていることが示されていたが1)、前向きの検証試験の報告は行われていなかった。PARADIGM試験は、周術期のオキサリプラチン(フッ化ピリミジン単剤は許容)を含む前治療のない切除不能転移再発大腸がんを対象に、mFOLFOX6+パニツムマブ(Pmab群)とmFOLFOX6+ベバシズマブ(Bmab群)を1対1に無作為化割り付けした第III相試験である。主要評価項目は左側大腸がん症例における全生存期間(OS)であり、それが有意であれば全症例で全生存期間を解析する計画であった。合計802例(Pmab群400例、Bmab群402例)が有効性の解析対象であり、そのうち左側大腸がん症例が312例、292例であった。左側大腸がん症例における、OS中央値はPmab群で37.9ヵ月、Bmab群で34.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.82、p=0.03)と有意にPmab群が優れていたが、生存曲線は24ヵ月あたりまでほぼ重なっており、それ以降Pmab群が上回る結果であった。全症例におけるOS中央値はPmab群36.2ヵ月、Bmab群31.3ヵ月(HR:0.84、p=0.03)とPmab群が有意に優れた結果であった。また右側大腸がん症例の解析では、OS中央値がPmab群で20.2ヵ月、Bmab群で23.2ヵ月(HR:1.09)と治療成績に大きな差はないが、Pmab群のメリットが乏しく、過去の無作為化試験の統合解析と同様の結果であった。PFSは、左側大腸がん症例においてPmab群が中央値で13.7ヵ月、Bmab群が13.2ヵ月(HR:0.98)、全症例において中央値で12.9ヵ月、12.0ヵ月(1.01)と両群で差を認めない結果であった。一方、ORRは左側大腸がん症例においてPmab群が80.2%、Bmab群が68.6%、全症例において74.9%、67.3%であり、Depth of Response(DoR)もPmab群で優れていた。FIRE-3試験2)などと同様にORR、DoRの改善が結果的にOSの改善につながった可能性が考察できる。2次治療以降の化学療法実施割合も両群で差を認めなかった。これまでESMOガイドラインや本邦のガイドラインは、RAS野生型左側大腸がん症例は化学療法+抗EGFR抗体薬を推奨し、NCCNのガイドラインは前向き試験のデータがないことから化学療法+抗EGFR抗体薬、化学療法+ベバシズマブを併記していた。PARADIGM試験の結果でRAS野生型左側大腸がん症例には化学療法+抗EGFR抗体薬が第1選択であることが前向きに検証されたことで、切除不能転移再発大腸がんの1次治療における標準治療がようやく整理されたことになる。DYNAMIC試験StageII結腸がんは手術のみで80%治癒する対象であり、現在の臨床では臨床病理学的にhigh risk(T4、低分化がん、脈管侵襲など)とされる症例のみに術後補助化学療法が行われている。一方、治癒切除後のctDNA陽性症例はその後80%以上再発するとされており、この対象に対する術後補助化学療法の意義も臨床試験では証明されていない。DYNAMIC試験は治癒切除が行われたStageII症例を対象に、術後4週と7週にctDNAの検査を行い、ctDNA陽性であれば術後補助化学療法をctDNA陰性であれば経過観察を行う試験治療群と、臨床病理学的特徴によって術後補助化学療法の実施を決める標準治療群に2対1に無作為化割り付けを行う第II相試験である3)。主要評価項目は2年無再発生存(RFS)率である。合計455例が無作為化され、解析対象は試験治療群で294例、標準治療群で153例であった。両群ともにhigh riskの症例が40%であったが、実際に術後補助化学療法が行われた症例が試験治療群で15%、標準治療群で28%(p=0.0017)と試験治療群で有意に少なく、オキサリプラチンbasedの術後補助化学療法を行った症例の割合が試験治療群で62%、標準治療群で10%(p<0.0001)と試験治療群で有意に高い結果であった。これは、試験治療群で術後再発のリスクがより高い症例に、より強力な化学療法が実施されたことを意味している。最も再発リスクが高いとされるT4症例でも試験治療群で術後補助化学療法の実施が少なく、ctDNA陽性が従来の臨床病理学的な再発リスクとは独立している可能性が示唆された。主要評価項目である2年RFS率は、試験治療群で93.5%、標準治療群で92.4%と両群の差は+1.1%(95%CI:-4.1~6.2%)と信頼区間の下限が事前に設定した-8.5%を下回っており、試験治療群の非劣性が確認された。サブグループ解析では、T4症例における試験治療群の再発が少ない(HR:1.88)結果であった。試験治療群におけるctDNA陽性・陰性症例の比較では、2年RFS率がctDNA陽性群で86.4%、陰性群で94.7%(HR:1.83)と差が認められた一方で、ctDNAと臨床病理学的なhigh risk/low riskを組み合わせると、ctDNA陰性かつlow riskとctDNA陽性でHRが3.69、ctDNAとT stageを組み合わせると、ctDNA陰性かつT3とctDNA陽性でHRが2.62と、ctDNAと従来の臨床病理学的なriskを組み合わせることでさらに精度の高い再発予測が可能である可能性が示された。本試験により、StageII症例においてctDNA陽性・陰性によって術後補助化学療法の実施を決めることにより、術後補助化学療法の対象を減らしても治療成績が劣らないことが示された。一方でctDNA陽性症例に術後補助化学療法を行う意義、ctDNA陰性に術後補助化学療法を行わない意義はまだ検証されておらず、今後の前向き試験による検証結果が待たれる。ミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性切除不能転移再発のdMMR/MSI-H大腸がんに対して抗PD-1抗体薬のペムブロリズマブがすでに1次治療の第1選択として確立しており4)、いくつかの少数例の検討では切除可能なdMMR/MSI-H大腸がんにも抗PD-1抗体薬の有効性が報告されている5)。局所進行直腸がんに対する標準治療は化学療法、放射線療法、手術の併用であるが、術後の直腸機能の低下が大きな問題であり、化学療法、放射線療法で完全奏効(cCR)に至った症例には、手術を行わず経過を見ていくWatch and Wait(W&W)が普及しつつある。dMMR/MSI-H直腸がんは直腸がんの5~10%(本邦の報告では2%程度)に認められる、まれな対象であるが、今回MSKCCが行っているStageII/IIIのdMMR/MSI-H直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性を見る第II相試験の結果が、試験の途中で報告された。試験治療として抗PD-1抗体薬であるdostarlimabを6ヵ月行った後に、画像と内視鏡でcCRと判定された症例にはW&Wを行い、遺残が認められた症例には化学放射線療法を実施し、それでも遺残がある症例には救済手術を行う計画であった。目標症例数は30例であったが、14例まで登録が行われ、全例が6ヵ月のdostarlimabでcCRと判定された。観察期間中央値は6.8ヵ月と短いが、現時点で再増大を認める症例は認めなかった6)。長期的な観察を行わなければPD-1抗体薬のみで治癒に至るかの結論は出ないが、臓器横断的にdMMR/MSI-H固形がんに検討すべき画期的な結果であり、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。おわりに食道がん、胃がん、dMMR/MSI-H大腸がんの1次治療におけるICIの有効性が大規模臨床試験で検証され、標準治療としてすでに実臨床に組み込まれている。今後は、周術期治療における有効性の検証結果が報告されてくるものと思われ、またDYNAMIC試験のようなctDNAを用いた術後再発モニタリングは、大腸がんのみならず固形がん全般で主流になってくるものと考える。また、胃がんのような固形がんに対してCAR T細胞療法の有効性が示されるなど次の治療開発が進捗する兆しが認められ、今後の報告に期待したい。1)Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017;28:1713-1729.2)Heinemann V, et al. Lancet Oncol. 2014;15:1065-1075.3)Tie J, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 4. [Epub ahead of print]4)Andre T, et al. N Engl J Med. 2020;383:2207-2218.5)Chalabi M, et al. Nat Med. 2020;26:566-576.6)Cercek A, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 5. [Epub ahead of print]

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転移尿路上皮がんに対するカボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法は有用である可能性(COSMIC 021)/ASCO 2022

 転移のある手術不能の尿路上皮がん(mUC)に対するカボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法の有効性と安全性の初期データが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)において米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta Pal氏より報告された。 これは、前立腺がんや腎がん、肺がんなども対象にしたカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法の国際共同の第I相b試験COSMIC-021の結果で、今回はmUCの3つのコホートの解析結果である。・対象:未治療のmUCである下記の3つのコホート コホート3:シスプラチン不適応の症例(30例:C3) コホート4:シスプラチンに適応の症例(30例:C4) コホート5:免疫チェックポイント阻害剤既治療でチロシンキナーゼ阻害剤未治療の症例(31例:C5)・介入:カボザンチニブ40mg/日連日+アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと・評価項目: [主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR) [副次評価項目]安全性 [探索的評価項目]奏功期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2021年11月時点での追跡期間中央値は、C3で27.9ヵ月、C4、C5でそれぞれ19.1ヵ月と32.9ヵ月であった。・ORRはC3で20%(CR3%を含む)、C4で30%(CR7%)、C5で10%(CRなし)であった。・DoR中央値は、C3で7.1ヵ月、C4で未到達、C5で4.1ヵ月であった。・PFS中央値は、C3で5.6ヵ月、C4で7.8ヵ月、C5で3.0ヵ月であった。・OS中央値は、C3で14.3ヵ月、C4で13.5ヵ月、C5で8.2ヵ月であった。・有害事象によるカボザンチニブの減量はC3で43%に、C4で27%に、C5では35%に認められた。同様にアテゾリズマブの投与延期は、それぞれ63%、40%、52%に認められた。・治療関連の有害事象で両剤とも投与中止となったのは、C3で13%、C4で17%、C5で19%であった。・Grade3以上の有害事象は、C3で63%に、C4で43%に、C5で45%に発現した。Grade3以上の全身倦怠感はC3で3%、C4で3%、C5で6%、有症候性肝炎はそれぞれ0%、7%、3%、膵炎は13%、10%、6%であった。

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