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肝硬変患者の経過観察を十分に行わず肝細胞がんを発見できなかったケース

消化器最終判決判例タイムズ 783号180-190頁概要12年以上にわたって開業医のもとに通院し、糖尿病、肝硬変などの治療を受けていた55歳の男性。ここ1年近く、特段の訴えや所見もないために肝機能検査および腫瘍マーカーのチェックはしていなかった。ところが久しぶりに施行した肝機能検査・腫瘍マーカーが異常高値を示し、CT検査を受けたところ肝左葉全体を埋め尽くす肝細胞がんが発見された。急遽入院治療を受けたが、異常に気づいてから3ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報55歳男性経過1973年 糖尿病にて総合病院に45日間入院。9月3日当該診療所初診。診断は糖尿病、肝不全。1982年5月26日全身倦怠感、体重減少(61→51kg)を主訴に総合病院外来受診。6月1日精査治療目的で入院となり、肝シンチ、腹部エコー、上部消化管造影、血液検査、尿検査などの結果、糖尿病、胆石症、肝硬変、慢性膵炎と診断された。7月10日肝臓の腹腔鏡検査を予定したが、度々無断外出したり、窃盗容疑で逮捕されるなどの問題があり、強制退院となった。9月6日診療所の通院を月1~4回の割合で再開。その間ほぼ継続してキシリトール(商品名:キシリット)、肝庇護薬グリチルリチン・グリシン・システイン(同:ケベラS)、ビタミン複合剤(同:ネオラミン3B)、ビタミンB12などの点滴とフルスルチアミン(同:アリナミンF)、血糖降下薬ゴンダフォン®、ビタミンB12(同:メチコバール、バンコミン)などの投薬を続ける。食事指導(お酒飲んだら命ないで)や生活指導を実施。ただし、肝細胞がんと診断されるまでのカルテには、検査指示および処方の記載のみで、診察内容(腹水の有無、肝臓触知の結果など)の記載はほとんどなく、1982年9月6日から1986年2月19日までの3年5ヵ月にわたって腹部超音波、腹部CT、肝シンチなどの検査は1回も実施せず。1982年~1984年肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)、AFP測定を不定期に行う。1984年9月4日AFP(-):異常高値となるまでの最終検査。1985年 高血糖(379-473)、貧血(Hb 10.5)がみられたが、特段治療せず。1986年2月15日γ-GTP 414と高値を示したため、肝細胞がんをはじめて疑う。2月19日1年5ヵ月ぶりで行ったAFP測定にて638と異常高値のため、総合病院にCT撮影を依頼。腹水があり、肝左葉はほぼ全体が肝細胞がんに置き変わっていた。門脈左枝から本幹に腫瘍血栓があり、予後は非常に不良であるとの所見であった。2月21日家族に対し、「肝細胞がんに罹患しており、長くもっても7ヵ月、早ければ3ヵ月の余命である」ことを告知し、同日以降、抗がん剤であるリフリール®やウロキナーゼを点滴で投与した。2月25日当該診療所を離れ総合病院に入院し、肝細胞がんの治療を受けた。5月17日肝硬変症を原因とする肝細胞がんにより死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.早期発見義務違反1982年9月6日から肝硬変の診断のもとに通院を再開し、肝細胞がん併発の危険性が大きかったのに、1986年2月まで長期間検査をしなかった2.説明義務違反1986年に手遅れとなるまで、肝臓の障害について説明せず、適切な治療を受ける機会を喪失させた3.全身状態管理義務違反1985年中の出血を疑わせる兆候や高血糖状態があったのに、これらを看過したこのような義務違反がなければ、死亡することはなかったか、仮に死を免れなかったとしても少なくとも5年間の延命の可能性があった。病院側(被告)の主張過重な仕事と不規則な生活を続け、入院勧告にも応じなかったことが問題である。1985年中に肝細胞がんを発見できたとしても、もはや切除は不可能であったから、死亡は不可避であった。裁判所の判断説明義務違反医師は肝硬変に罹患していたことを説明し、安静を指示していたことが認められるため、その違反はないとした。全身状態管理違反血糖値の変化は生活の乱れによる可能性も高く、必ずしも投薬によって対処しなければならない状況にあったか否かは明らかではないし、出血の点についても、肝硬変の悪化にどのような影響を与えたのか不明であるため、その違反があるとは認められない。早期発見義務肝硬変があり肝細胞がんに移行する可能性の高い症例では、平均的開業医として6ヵ月に1回程度は肝機能検査、AFP検査、腹部超音波検査を実施するべきであったのに、これを怠った早期発見義務違反がある。しかし、肝細胞がんが半年早く発見され、その時点でとりうる治療手段が講じられたとしても、生存可能期間は1~2年程度であったため、医師が検査を怠ったことと死亡との間には因果関係はない。つまり、検査義務違反がなく早期に肝細胞がんに対する治療が実施されていれば、実際の死期よりもさらに相当期間、生命を保持し得たものと推認することができるため、延命利益が侵害されたと判断された。1,000万円の請求に対し、240万円の支払命令考察今回のケースでは、12年以上にわたってある開業医のところへ定期的に通院していた患者さんが、必要な検査が行われず肝細胞がんの発見が遅れたために、「延命利益を侵害された」と判断されました。今までの裁判では、医師の注意義務違反と患者との死亡との因果関係があるような場合に損害賠償(医療過誤)として支払いが命じられていましたが、最近になって、死亡に対して明確に因果関係がないと判断されても、医師の注意義務違反が原因で延命が侵害されたことを理由として、慰謝料という形で医師に支払いを命じるケースが増加しています。本件でも、「平均的開業医」として当然行うべき種々の検査を実施しなかったことによって、肝細胞がんの発見が遅れたことは認めたものの、肝細胞がんという病気の性質上、根治は難しいと判断され、たとえきちんと検査を実施していても死亡は避けられなかったと判断しています。つまり、適切な時期に適切な検査を定期的に実施し、患者の容態を把握しているかという点が問題視されました。肝細胞がんは年々増加してきており、臓器別死亡数でみると男性で第3位、女性で第4位となっています。なかでも肝細胞がんの約93%が肝炎ウイルス(HCV抗体陽性、HBs抗原陽性)を成因としています。また、原発性肝がんの剖検例611例中、84%が肝硬変症を合併していたという報告もあり、肝硬変患者を外来で経過観察する時には、肝細胞がんの発症を常に念頭におきながら、診察、検査を進めなくてはいけません。消化器

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C型肝炎に対するIFN療法著効後に肝細胞がんを発症する患者の特徴とは

 インターフェロン(IFN)療法によりSVR(持続性ウイルス学的著効)を達成したC型慢性肝炎患者において、血清アルブミン低値およびαフェトプロテイン(AFP)高値は、5年以内の肝細胞がん(HCC)発症の独立因子であることが、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院の佐藤 明氏らによる研究で明らかになった。著者らは「IFN療法後のHCC発症を早期に予防するために、これらの値について慎重な評価が必要である」としたうえで、「IFN治療後 10年以内のHCC発症は珍しいことではなく、リスク因子はいまだ不確定であるため、SVR達成後も長期的なフォローアップとHCCの検査を行うべきである」と述べている。Internal medicine誌2013年52巻24号の報告。 本研究の目的は、IFN療法によるSVR達成後に肝細胞がん(HCC)を発症したC型慢性肝炎患者の臨床的特徴を明らかにすることであった。 対象は、SVRを得た後に肝細胞がんを発症した、19施設の患者130例。その臨床的特徴をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・全130例のうち、男性は107例(82%)であった。・92例(71%)が60歳以上であった。・IFN療法後にHCCを発症するまでの年数は、76例が5年以内、38例が5~10年、16例が10~16.9年であった。・IFN療法施行前に、92例(71%)が肝硬変と低血小板数(15×104cells/μL以下)の両方、またはどちらかを認めた。・多変量解析の結果、血清アルブミン低値(3.9g/dL以下)およびAFP高値(10ng/mL以上)は、IFN療法後5年以内のHCC発症の独立因子であることが同定された。・SVRを達成した4,542例のうち、5.5年間の追跡期間中にHCCを発症したのは109例(2.4%)であり、性別でみると男性4.6%、女性0.6%であった。

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2013年11月にC型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂―新薬登場で

 2013年10月3日(木)、ヤンセンファーマ株式会社主催のC型慢性肝炎メディアセミナーが開催され、関西労災病院 病院長の林 紀夫氏より、C型慢性肝炎治療の変遷と最新治療について語られた。また、東京肝臓友の会 事務局長の米澤 敦子氏からは、患者が考えるC型肝炎治療の課題について語られた。 林氏は「11月に発売される新規DAAs(direct-acting antiviral agents:直接作用型抗ウイルス薬)シメプレビルの登場により、C型肝炎治療ガイドラインが大幅に改訂される。未治療例はもちろん、高齢者やインターフェロン(IFN)無効例、過去の治療で効果が十分に得られなかった例にも、有効性と安全性が高く、治療期間の短い新たな治療選択肢を提供できる」と述べた。 今後は、シメプレビルのほかにも現在開発中の新薬が続々と登場し、日本のC型肝炎治療に大きな変革がもたらされると考えられる。C型肝炎は肝がんの主な成因 日本における肝がんの死亡者数は、肺がん、胃がんに続いて3番目に多く、年間約3万人が肝がんにより死亡している(厚生労働省調べ)。C型肝炎ウイルスに感染すると、約70%の患者が、慢性肝炎から肝硬変、そして肝細胞がんへ至る。日本肝臓学会の肝がん白書(1999)によると、日本における肝硬変・肝がん患者の79%がC型肝炎ウイルス陽性であるという。つまり、C型肝炎のウイルス排除を進めれば、肝がん患者の減少につながるといえる。これまでのC型肝炎治療 C型肝炎の治療はIFN 単独、IFN+リバビリン(RBV)、ペグインターフェロン(PEG-IFN)+RBVと進化を遂げてきたが、日本人に最も多い遺伝子型1b型にはIFNが効きにくく、PEG-IFN+RBV併用療法を48週行っても、初回治療の著効率は約50%であった。また、米澤氏は「治療期間が長期にわたるため、IFNの副作用である発熱や倦怠感、RBVによる貧血などにも長く悩まされ、治療を続けるために仕事をリタイアせざるを得ないなど、患者の人生を大きく左右させてしまう」という問題点を挙げた。テラプレビル3剤併用療法の問題点 2011年9月に承認されたPEG-IFNα-2b+RBV+テラプレビル(TVR)の3剤併用療法により、ウイルス陰性化率(SVR)が飛躍的に向上し、治療期間も従来の48週から24週に大幅短縮された。しかし、TVRは高い頻度で皮疹や貧血などの副作用を伴うことから、肝臓専門医や皮膚科専門医との連携ができる医療機関に使用が限定された。とくに、副作用が出やすい高齢者には使いにくく、治療を中断せざるを得ないなどの問題点があった。シメプレビルの登場 第2世代のプロテアーゼ阻害剤シメプレビルは、優先審査を経て2013年9月に日本で承認された。C型肝炎治療薬としては初めて、欧米に先駆けて承認された期待の薬剤で、2013年11月にも発売される見込みである(製品名:ソブリアードカプセル)。未治療の遺伝子型1のC型慢性肝炎患者を対象に行われた国内第3相試験(CONCERTO試験)においては、シメプレビル+PEG-IFNα-2a+RBVの3剤併用療法(24週)の投与終了後12週までの持続的ウイルス陰性化率(SVR)が88.6%にのぼった。投与終了後24週までのSVRも再燃例で89.8%、無効例で50.9%と、高い有効性が認められた。また、安全性もPEG-IFN+RBVの2剤併用療法と同等であった(第49回日本肝臓学会総会にて発表)。2013年11月、C型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂 現在のC型肝炎治療ガイドラインにおいて、遺伝子型1における治療は原則として「TVR+PEG-IFN+RBV」または「PEG-IFN+RBV」とされているが、シメプレビルの登場により、2013年11月に改訂され、これらは「シメプレビル+PEG-IFN+RBV」に変更となる見込みである。1日1回の服用でTVRよりも有効性と安全性が高いシメプレビルが、今後のC型肝炎治療に大きな変革をもたらすと考えられる。今後も新薬が続々登場 現在、国内で開発されている新規DAAsとPEG-IFN+RBVの3剤併用療法は、シメプレビルのほかにもファルダプレビル、vaniprevir、daclatasvirがあり、いずれも遺伝子型1に対する有効性が80~90%と高く、副作用もTVRと比べて低いという。また、IFNフリー療法も開発されており、近い将来、IFNの副作用を懸念することなくさまざまな症例に使用することができるため、期待されている。現在開発中のレジメンは、asunaprevir+daclatasvir、deleobuvir+ファルダプレビル+RBV、sofosbuvir+RBV、ABT450+ABT267+リトナビルであり、いずれも第2、第3相試験中である。「ただし、IFNフリー療法は、IFNの抗ウイルス効果によって耐性株の増殖を抑制することができないため、裾野が広いからといってむやみに使うと耐性変異を起こす危険がある。将来の治療薬に対しての選択肢を奪うこともある」と林氏は注意を投げかけた。まとめ 今後、IFNを使わない新しい治療が登場するが、患者の高齢化と発がんリスクを鑑みると、将来の治療のために待機せず、まずは専門医が遺伝子検査などでしっかりと治療方針を決定したうえで「今ある最新かつベストな治療」を行うべきである。また、IFNフリー療法という選択肢が増えても、IFNはすでにDAAsへの耐性を持つ症例の治療効果も高めることができるため、重要な薬剤であることに変わりはないと考えられる。シメプレビル登場に始まるC型肝炎治療の進化により、肝がんで命を落とす患者が減ることが期待される。

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医療法学的視点から見た診療ガイドラインを考える

 9月14日(土)、東京大学医学部(本郷キャンパス)において第4回医療法学シンポジウムが開催され、全国より医師、医療従事者をはじめ約60名が参加した。 今回はテーマに「医療法学的視点から見た診療ガイドライン」を掲げ、診療ガイドラインの医事裁判での引用や使われ方、裁判官の判断に与える影響などについて識者からのレクチャーとパネルディスカッションが行われた。■診療ガイドラインの目的は「医療の均てん化と医療者の教育」 診療ガイドラインは、多種存在しているが、一般的には「医療者と患者が特定の臨床状況で適切な決断を下せるよう支援する目的で、体系的な方法に則って作成された文書」のことであり、その多くの目的は医療の均てん化と医療者の教育である。医師には、診療ガイドラインの内容に沿いつつも、診療では広範な裁量も尊重されており、患者の意向を考慮して個々の患者に最も妥当な治療法を選択することが望ましいとされていることは、医療者には周知の事実である。 しかしながら、ひとたび医療事故が起こり、裁判となった場合、診療ガイドラインがあたかも標準診療の基準のように取り扱われ、ガイドラインから外れた診療がなされた場合、医療者側の診療裁量権よりも、ガイドラインが尊重され、医療機関側に責任を負担させる、という不幸な事態が散見されている。 こうした現実が司法のどのような理論からきているのか、医療者がとり得るべき対応はないのかを今回のシンポジウムで明らかにすることを目的に開催された。■医療と司法の相互理解 最初に慶應義塾大学の古川 俊治氏(医師、弁護士)が、シンポジウムの目的を「医療と司法の相互理解を目指すこと」と述べ、5名の演者によるレクチャーが行われた。 富永愛法律事務所の富永 愛氏(医師、弁護士)は、「医療法学的視点からみた診療ガイドラインの在り方」と題し、がんの中でも特に訴訟が目立つ肝細胞がん、乳がんの裁判を例に「裁判では裁判官は必ずといっていいほど、判断の基準にガイドラインや薬の添付文書に目を通し、ケースによっては判決文で引用するほど訴訟での使用は日常化している。しかし、裁判官は、一律ガイドラインだけで判断しているわけではなくガイドラインを用いる際でも目的意識を持って作成されたものは、その目的趣旨までさかのぼって判断をしている。今後はガイドライン作成時にはその目的や使用対象者を意識して作成する必要がある」と説明した。 東京大学の山田 奈美恵氏(医師)は、医師の立場から「医療者から見た診療ガイドライン」として『肝癌診療ガイドライン』と『乳癌診療ガイドライン』を例に、これら診療ガイドラインの作成過程、臨床現場での使用の実際、その問題点を説明した。最近、医師の診療ガイドラインへの意識は、(訴訟を見据えて)変化しつつあること、診療ガイドラインが抱えるエビデンスレベルに差異があること、研修医などが個別の医学的考察の前に診療ガイドラインを過度に重視することもあることなどの問題点が医師の視点より報告された。 井上法律事務所の山崎 祥光氏(弁護士、医師)は、「ガイドラインの証拠としての扱い」と題し、医事裁判でのガイドラインの証拠能力について説明を行った。裁判官が診療ガイドラインを重視する理由として、医療水準の認定の難しさや、外からみると診療ガイドラインが何らかの「ルール」にみえることが挙げられ、この点につき医療者の考えは司法(裁判官)に十分理解されていないと説明された。今後も、診療ガイドラインが裁判などで使用されることが避けられない以上、診療ガイドラインに、その目的や対象、推奨の強さ、医師の裁量の幅などの前提部分を明確に記載することが重要であると述べた。 浜松医科大学の大磯 義一郎氏(医師、弁護士)は、「医療法学的視点から見た診療ガイドラインのあり方」と題して、(医療側に不利なケースが多い類型の)裁判での診療ガイドラインの使われ方とその判決の状況を説明した。これらを踏まえたうえで医療と司法の診療ガイドラインに対する相互理解を促進するために、司法に誤解され得る表記は避け、前文で医師の裁量権についての記載を行うことや例外事由の列挙を具体的にすること、適切なバージョンアップを行うことなど司法の側にも正しく理解できるようなガイドライン作りの提案を行った。 北浜法律事務所の小島 崇宏氏(医師、弁護士)は、「医療法学的視点から見たより良い診療ガイドラインの提示」として、自身の医事裁判の経験から裁判官は、自身の考える妥当な結論を念頭に、事実認定を試みるという思考パターンであること、そのため診療ガイドラインが時には医師の主張を覆すための証拠として用いられているのが現状であること、したがって、この点を踏まえた診療ガイドライン作りが求められることを説明した。また、医事裁判では、エビデンス不足や記載の曖昧さが裁判の結果を左右するとして、診療ガイドラインの内容について例えばグレードの低いものはその点をわかりやすく記載することや推奨度の高いものでも原則と例外を分けて記載することなど、丁寧な記載が必要と提案を行った。■シンポジウム 医事裁判で問題になる「説明と同意」 大磯義一郎氏の司会の下、再度演者が登壇し、医事裁判での診療ガイドラインの地位や診療ガイドライン以外の審理の際の判断の仕方(例えば鑑定として第三者の立場で医師が呼ばれて証言する)などの現状が伝えられた。また、最近では診療ガイドラインの普及の影響なのか和解で終結するケースの報告が多いことなどがレポートされるとともに、問題点として個々の医療ケースを考えない画一的な診療ガイドラインの当てはめ(例えば大都市の病院と離島の診療所も適用は同じだと考えている)など、裁判での問題も多いことが報告された。特に提案として、診療ガイドラインから外れる診療については、きちんと事前に患者、患者家族に説明し、同意を得ておくことや、診療録への記載が大切であり、紛争化を防ぐためにも十分に行ってもらいたいとアドバイスがなされた。 その他、医事裁判全体については、日常のカルテの記載不足、誤記載や管理不備も問題であり、特に注意が必要である。裁判に発展し、敗訴するケースではこうした点に不備がみられる場合が多いなども報告された。 今後も診療ガイドラインは、医療の発展のためにも必要であり作成されるべきであるが、裁判に使用されかつ重視されることも避けがたい事実であり、「司法にも正しく理解されるかたちに作成する」「医療者も司法の側に普段から説明を行う」などの相互理解が必要であるとシンポジウムを締めくくった。 最後に公益財団法人がん研究会の土屋了介氏(医師)が、閉会の挨拶を述べ、終了した。

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第18回 手技よりも術後管理のミスに力点をおく裁判所

■今回のテーマのポイント1.消化器疾患の訴訟では、大腸がんが2番目に多い疾患であり、縫合不全の事例が最も多く争われている2.裁判所は、縫合不全について手技上の過失を認めることには、慎重である3.その一方で、術後管理の不備については、厳しく判断しようとしているので注意が必要である事件の概要患者X(49歳)は、平成14年11月、健康診断にて大腸ポリープを指摘されたことから、近医を受診したところ、大腸腫瘍(S状結腸)および胆嚢結石と診断されました。Xは、平成15年5月9日、腹腔鏡下胆嚢摘出術および大腸腫瘍摘出術目的にてY病院に入院しました。同月12日、まず腹腔鏡下で胆嚢を摘出し、ペンローズドレーンを留置し、創縫合を行った後、左下腹部を切開し、S状結腸を摘出して、Gambee縫合にて結腸の吻合を行い、ペンローズドレーンを留置しました。術後3日間は順調に経過しましたが、術後4日目の16日に食事を開始したところ、夜より発熱(39.1度)を認め、翌日の採血では白血球数、CRP値の上昇が認められました。しかし、ドレーンからの排液は漿液性であり、腹痛も吻合部とは逆の右腹部であったことから、絶食の上、抗菌薬投与にて保存的に経過を追うこととなりました。ところが、23日になってもXの発熱、白血球増多、CRP値の上昇は改善せず、腹部CT上、腹腔内膿瘍が疑われたことから、縫合不全を考え再手術が行われることとなりました。開腹した結果、結腸の吻合分前壁に2ヵ所の小穴が認められたことから、縫合不全による腹膜炎と診断されました。Xは、人工肛門を設置され、10月7日にY病院を退院し、その後、同年11月20日に人工肛門閉鎖・再建術のため入院加療することとなりました。これに対し、Xは、不適切な手技により縫合不全となったこと、および、術後の管理に不備があったことを理由に、Y病院に対し、約2億2100万円の損害賠償を請求しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者X(49歳)は、平成14年11月、健康診断にて大腸ポリープを指摘されたことから、近医を受診したところ、大腸腫瘍(S状結腸)および胆嚢結石と診断されました。Xは、平成15年5月9日、腹腔鏡下胆嚢摘出術および大腸腫瘍摘出術目的にてY病院に入院しました。なお、Xは1日40本の喫煙をしており、本件手術前に医師より禁煙を指示されましたが、それに従わず喫煙を続けていました。同月12日、A、B、C、D4名の医師により手術が行われました。まず、最もベテランのA医師が腹腔鏡下で胆嚢を摘出し、ペンローズドレーンを留置し、創縫合を行った後、最も若いC医師が左下腹部を切開し、S状結腸を摘出して、Gambee縫合にて結腸の吻合を行い、ペンローズドレーンを留置しました。本件手術に要した時間は、3時間13分でした。術後3日間は順調に経過しましたが、術後4日目の16日に食事を開始したところ、夜より発熱(39.1度)を認め、翌日の採血では白血球数、CRP値の上昇が認められました。しかし、ドレーンからの排液は漿液性であり、腹痛も吻合部とは逆の右腹部であったこと、16日午後3時頃、Xが陰部の疼痛、排尿時痛、および排尿困難を訴えたことからバルーンカテーテルによる尿道損傷、前立腺炎の可能性も考えられたため、絶食の上、抗菌薬投与にて保存的に経過を追うこととなりました。18日には、ドレーン抜去部のガーゼに膿が付着していたことから、腹部CT検査を行ったところ、「直腸膀胱窩から右傍結腸溝にかけて被包化された滲出液を認め、辺縁は淡く濃染し、内部に一部空胞陰影を認めます。腹腔内膿瘍が疑われます。周囲脂肪織の炎症性変化は目立ちません。腹壁下に空胞陰影と内部に滲出液がみられ、術後変化と思われます。腹水、有意なリンパ節腫大は指摘できません」との所見が得られました。縫合不全の可能性は否定できないものの、滲出液が吻合部の左腹部ではなく右腹部にあること、腹痛も左腹部ではなく右腹部であったことから、急性虫垂炎をはじめとする炎症性腸疾患をも疑って治療をするのが相当であると判断し、抗菌薬を変更の上、なお保存的治療が選択されました。ところが、23日になってもXの発熱、白血球増多、CRP値の上昇は改善せず、腹部CT上、腹腔内膿瘍が疑われたことから、縫合不全を考え再手術が行われることとなりました。開腹した結果、結腸の吻合分前壁に2ヵ所の小穴が認められたことから、縫合不全による腹膜炎と診断されました。Xは、人工肛門を設置され、10月7日にY病院を退院し、その後、同年11月20日に人工肛門閉鎖・再建術のため入院加療することとなりました。事件の判決上記認定事実によれば、本件手術におけるS状結腸摘出後の吻合部位において縫合不全が発生したことが認められる。もっとも、上記認定のとおり、吻合手技は縫合不全の発生原因となりうるが、それ以外にも縫合不全の発生原因となるものがあるから、縫合不全が起こったことをもって、直ちに吻合手技に過失があったということはできない。そして、上記認定のとおり、縫合不全を防ぐためには、縫合に際し、適式な術式を選択し、縫合が細かすぎたり結紮が強すぎたりして血行を悪くしないこと、吻合部に緊張をかけないことが必要であるとされていることを考慮すると、債務不履行に該当する吻合手技上の過誤があるというためには、選択した術式が誤りであるとか、縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたと認められる場合に限られると解するのが相当である。・・・・・・・(中略)・・・・・・・原告らは、C医師は経験の浅い医師であったから縫合不全は縫合手技に起因すると考えられると主張する。B医師のGambee縫合の経験数は不明であるが、上記認定のとおり、本件手術にはD医師が助手として立ち会っているところ、B医師はC医師の先輩であり、被告病院において年間200例程度行われる大腸の手術に関与しているのであるから、C医師の吻合手技に、縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたといった問題があったにもかかわらず、B医師がそのまま手術を終了させるとは考え難い。また、上記認定のとおり、手術後3日以内に発生した縫合不全については縫合の不備が疑われて再手術が検討されるところ、上記前提事実のとおり、本件手術後3日目である平成15年5月15日までの間に特に異常は窺えなかったところである。これらを考慮すると、原告ら主張の事情をもって吻合技術に問題があったと推認することはできないというべきである。以上のとおり、本件手術は、縫合不全が発生しやすい大腸(S状結腸)を対象とするものであったこと、原告は喫煙者であり、縫合不全の危険因子がないとはいえず、縫合手技以外の原因により縫合不全が発生した可能性が十分あること、C医師による吻合の方法が不適切であったことを裏付ける具体的な事情や証拠はないことを考慮すると、原告に生じた縫合不全がC医師の不適切な吻合操作によるものであると認めることはできないというべきである。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(名古屋地判平成20年2月21日)ポイント解説今回は、各論の2回目として、消化器疾患を紹介します。消化器疾患で最も訴訟が多い疾患は、第15回で紹介した肝細胞がんです。そして、2番目に多いのが、今回紹介する大腸がんです。大腸がんの訴訟において、最も多く争われるのが縫合不全(表)です。ご存じのとおり、縫合不全は、代表的な手術合併症であり、手術を行う限り一定の確率で不可避的に発生します。しかし、非医療者からみると、医療行為によって生じていることは明らかであり、かつ、縫合という素人目には簡単に思える行為であることから訴訟となりやすい類型となっています。しかし、最近の裁判所は、合併症に対する理解が進んできており、本判決のように、単に縫合不全があったことのみをもって過失があるとするような判断はせず、「縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えた」などの具体的な縫合手技に著しく問題があった場合にのみ、手技上の過失があるとしています(表に示した判例においても、手技上の過失を認めた判例は一つもありません)。したがって、現在、手術ビデオなどで手技上の欠陥が一見して明白であるような場合を除き、訴訟において縫合不全が手技ミスによって生じたとする主張が争点となることは少なくなってきています。その代わりといってはなんですが、術後の管理については、厳しく争われる傾向にあります。本事案でも、17日に発熱、白血球増多、CRP値が上昇した際、および18日に腹部CTをとった際に速やかに縫合不全と診断して、ドレーン排液の細菌培養および外科的ドレナージを行うべきであったとして争われました(本件においては術後管理の過失は認められませんでしたが、〔表〕の原告勝訴事例のすべてで術後管理の不備が認められています)。医療行為は行為として不完全性を有します。そして、医療は日々進歩していきます。医学・医療の進歩は、医療者が個々に経験した症例を学会・論文などを介して集約化、情報共有し、それを再検討することで生まれます。しかし、医療行為によって生じた不利益な結果が過失として訴訟の対象(日本では刑事訴追の対象にもなるため萎縮効果が特に強い)となると、医師は恐ろしくて発表することができなくなります。実際に、1999年以降、わが国における合併症に関する症例報告は急速に減少しました。目の前の患者の救済は十分に考えられるべきですが、その過失判断を厳格にすることで達成することは、医学・医療の進歩を阻害し、その結果、多数の国民・患者の適切な治療機会を奪うこととなります。司法と医療の相互理解を深め、典型的な合併症については裁判による責任追及ではなく、医学・医療の進歩にゆだねることが望ましいと考えます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。名古屋地判平成20年2月21日

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第15回 診療ガイドライン その1:ガイドラインから外れた医療行為は違法か!?

■今回のテーマのポイント1.ガイドラインに反する診療は、紛争化のリスクを上げることから注意する必要がある2.裁判所はおおむねガイドラインに沿った判断をする3.ガイドラインに反する診療であっても、直ちに違法とはならないが、少なくとも「相応の医学的根拠」は必要である事件の概要患者X(死亡時79歳)は、昭和43年より糖尿病にてY病院糖尿病代謝科(主治医A医師)に外来通院していました。平成12年に上部内視鏡検査を行ったところ、食道静脈瘤が認められたことから精査した結果、HBV、HCV感染は認められないものの、初期の肝硬変と診断されました。その後、A医師は、外来で定期的に採血にて肝機能及び血小板数を測定していましたが、いずれも正常範囲内で推移しており、上部内視鏡検査上も食道静脈瘤に著変なく、経過観察をしていました。しかし、A医師は、その間、腫瘍マーカーの測定及び腹部超音波検査、CTなどの画像検査は行っていませんでした。Xは、平成18年8月7日21時頃、自宅トイレで倒れ、意識レベルが低下していたことからY病院に入院しました。その際、撮影した胸部CTにて肝臓に腫瘍性病変が認められたことから精査したところ、多発性肝細胞がんと診断され、同年10月23日に死亡しました。これに対し、Xの遺族は、肝硬変があったXに対し、肝細胞がん発見を目的とした検査を長期にわたり行わなかったとして、Y病院に対し、2,350万円の損害賠償を請求しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者X(死亡時79歳)は、糖尿病にてY病院糖尿病代謝科(主治医A医師)に外来通院していました。昭和61年12月に採血検査にて肝機能障害が認められたことから腹部超音波検査を行ったところ、慢性肝疾患及び脂肪肝の疑いと診断されました。平成12年7月に、糖尿病代謝科入院中に上部内視鏡検査を行ったところ、食道静脈瘤が認められたことから精査した結果、HBV、HCV感染は認められないものの、初期の肝硬変と診断されました。その後、A医師は、外来で定期的に採血にて肝機能及び血小板数を測定していましたが、いずれも正常範囲内で推移しており、上部内視鏡検査上も食道静脈瘤に著変なく経過観察をしていました。しかし、A医師は、その間、腫瘍マーカーの測定及び腹部超音波検査、CTなどの画像検査は行っていませんでした。Xは、平成18年8月7日21時頃、心不全のため自宅トイレで倒れ、意識レベルが低下していたことからY病院に入院しました。その際、撮影した胸部CTにて肝臓に腫瘍性病変が認められたことから精査したところ、AFP 30ng/mL、PIVKA-Ⅱ 7,000mAU/mL以上であり、多発性肝細胞がんと診断されました。Xは高齢であり、全身状態も悪かったため、積極的な治療は行われず、同年10月23日に死亡しました。事件の判決診療ガイドラインは、その時点における標準的な知見を集約したものであるから、それに沿うことによって当該治療方法が合理的であると評価される場合が多くなるのはもとより当然である。もっとも、診療ガイドラインはあらゆる症例に適応する絶対的なものとまではいえないから、個々の患者の具体的症状が診療ガイドラインにおいて前提とされる症状と必ずしも一致しないような場合や、患者固有の特殊事情がある場合において、相応の医学的根拠に基づいて個々の患者の状態に応じた治療方法を選択した場合には、それが診療ガイドラインと異なる治療方法であったとしても、直ちに医療機関に期待される合理的行動を逸脱したとは評価できない。そして、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいてサーベイランス(*肝細胞癌早期発見のための定期的な検査(筆者注))の至適間隔に関する明確なエビデンスはないとされており、推奨の強さはグレードC1(行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない)と位置づけられていることからすれば、サーベイランスの間隔については一義的に標準化されているとまでは認めがたいのであるから、上記間隔については医師の裁量が認められる余地は相対的に大きくなるものと解される。・・・・・・・(中略)・・・・・・・そこで、被告医師がどの程度の間隔でサーベイランスを行うべきであったかを検討するに、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいて非ウイルス性の肝硬変は肝細胞癌の高危険群とされ、6か月に一回の超音波検査及び腫瘍マーカーの測定が推奨されている。そして、上記認定説示したとおりXの肝硬変は発癌リスクが否定されるものではなかったことに加え、上記で認定のとおり肝硬変の前段階とされる慢性肝炎であっても発癌リスクが相当程度認められることからすれば、Xの肝硬変が初期のものであったとしても、被告A医師がXに対して肝硬変と診断してから一度も超音波検査等を実施しなかったことが相応の医学的根拠に基づくものとは評価しがたい。なお、後記で認定説示した本件での検査結果から、被告A医師においてXの肝硬変がさほど進行していなかったと判断すること自体は不合理であるとはいえない。したがって、これらの検査結果を根拠として、肝癌診療ガイドラインとは異なるサーベイランスを実施していたとしても、上記で説示したとおりサーベイランスの間隔について医師の裁量を認める余地があることを併せ考慮すれば、直ちに不合理であると断定することができないとの見方もあり得ないではない。しかしながら、本件においては、そもそもサーベイランスそれ自体が全く実施されていないことに加え、被告医師において肝癌診療ガイドラインとは異なるサーベイランスを実施することが相当であるとした場合には具体的なサーベイランスの間隔及び方法をどのようなものにするのが妥当であったかという点や、それを裏付ける医学的根拠はどのようなものかという点について何ら被告における主張立証がない。以上の検討によれば、上記で説示したように医療行為において医師の裁量を尊重する必要があること及び肝癌診療ガイドラインが絶対的な基準ではないことを考慮してもなお、被告は、Xに対し、肝癌発見を目的として6か月間隔で腫瘍マーカー及び超音波検査を実施し、腫瘍マーカーの上昇や結節性病変が疑われた場合には造影CT検査等を実施すべきであったというべきである。(* 判決文中、下線は筆者による加筆)(仙台地判平成22年6月30日)ポイント解説今回は、ガイドラインについて解説いたします。ガイドラインは、添付文書同様、裁判所が個別具体的な事例における「医療水準」を判断するにあたり用いられる文書であり、特に、作成当時の多数の専門家間における合意事項が文書化されていることから、訴訟においては重視される傾向があり、民事医療訴訟において重要な文書であるといえます。ただ、ガイドラインは法的に作成が義務付けられた文書ではないこともあり、第12回で紹介した添付文書のように、「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」(最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁)といった過失の推定効は認められていません。しかし、患者・家族が弁護士に相談した際に、弁護士が当該診療が適切か否か、すなわち事件を受任して裁判をするか否かを判断するにあたり、必ず参照する文書でもあることから、ガイドラインは紛争化するか否かを決定する上でも非常に重要な文書であるといえます。■ガイドラインに対する裁判所の傾向それでは、裁判所のガイドラインに対する姿勢はどのようなものかみてみましょう。本事例のような肝硬変の患者に対しては、肝細胞がんの早期発見のため定期的に腫瘍マーカーや腹部超音波検査等によるサーベイランスを行う必要があると考えられています。したがって、肝硬変の患者に対して、適切な検査を行わなかった結果、肝細胞がんの発見が遅れ、死亡してしまった場合には、医療過誤として訴えられることとなります。そして、このサーベイランスの方法や間隔については、平成11年に作成された「日本医師会生涯教育シリーズ 肝疾患診療マニュアル」と平成17年に第1版が作成された「肝癌診療ガイドライン」(平成21年改訂)の2つのガイドラインがあります。これらのガイドライン作成後に患者が死亡し、肝細胞がんに対するサーベイランスを争点として争われた判決は、民間判例データベースから検索すると6つあります(表1)。画像を拡大する表1をご覧いただけれるとわかるように、サーベイランスに関する判決では、ほとんどが原告勝訴となっています。一般に民事医療訴訟の原告勝訴率が20~40%であることを考えると、その差は明らかといえます。なお、唯一、原告が敗訴している(4)の事例は、患者の受診コンプライアンスが悪く、適切なフォローが困難であった事例であり、それでも、おおむね年2回程度は検査が行われていたことから、このような判断となっています。それではこれらの訴訟において、ガイドラインはどのように使われていたのでしょうか。表2にそれぞれの判決において、裁判所が示した適切なサーベイランス頻度を示します。画像を拡大するそして、平成11年に作成された「日本医師会生涯教育シリーズ 肝疾患診療マニュアル」においては、「肝硬変を超高危険群、ウイルス性の慢性肝炎及び非肝硬変のアルコール性肝障害を高危険群、その他の肝障害を危険群と設定し、これらの患者に対して、それぞれ定期的に諸検査を行うよう指針を定めています。同指針は、超高危険群患者に対しては、AFP検査を月に1回、腹部超音波検査を2、3か月に1回、腹部CT検査を6か月に1回、高危険群患者に対しては、AFP検査を2、3か月に1回、腹部超音波検査を4ないし6か月に1回、腹部CT検査を6か月ないし1年に1回並びに危険群に対しては、AFP検査を6か月に1回、腹部超音波検査及び腹部CT検査を1年に1回行う」と記載されています。また、平成17年に作成された「肝癌診療ガイドライン」においては、「一つの案として、超高危険群に対しては、3~4カ月に 1 回の超音波検査、高危険群に対しては、6カ月に 1回の超音波検査を行うことを提案する。腫瘍マーカー検査については、AFP およびPIVKA-Ⅱを超高危険群では 3~4カ月に 1回、高危険群では 6カ月に 1回の測定を推奨する」と記載されています。表2と比較していただければわかるように、(2)と原告敗訴となった(4)を除いた判決においては、裁判所は、判決文中にガイドラインを引用した上で、ガイドラインに沿った判断をしています。このようにしてみると、ガイドラインに違反した結果、患者に損害が生じた場合には、紛争化しやすいと同時に、裁判においても、ガイドラインに沿った判断がなされやすいということがいえます。■ガイドラインは「不磨の大典」ではないこのようなガイドラインに対する裁判所の傾向をみると、皆さんは違和感を覚えるでしょうし、批判もあるかと思います。ただ、添付文書の時にも説明しましたが、現在の裁判所は、添付文書やガイドラインを不磨の大典としてとらえているわけではありません。本判決においても、「もっとも、診療ガイドラインはあらゆる症例に適応する絶対的なものとまではいえないから、個々の患者の具体的症状が診療ガイドラインにおいて前提とされる症状と必ずしも一致しないような場合や、患者固有の特殊事情がある場合において、相応の医学的根拠に基づいて個々の患者の状態に応じた治療方法を選択した場合には、それが診療ガイドラインと異なる治療方法であったとしても、直ちに医療機関に期待される合理的行動を逸脱したとは評価できない。そして、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいてサーベイランスの至適間隔に関する明確なエビデンスはないとされており、推奨の強さはグレードC1(行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない)と位置づけられていることからすれば、サーベイランスの間隔については一義的に標準化されているとまでは認めがたいのであるから、上記間隔については医師の裁量が認められる余地は相対的に大きくなるものと解される」と判示されているように、杓子定規に判断するのではなく一定程度の裁量の幅(グレーゾーン)が認められていると考えられます。ただ、その場合においても、「相応の医学的根拠」は必要であり、肝細胞がんのサーベイランスにおいては、単に「気が付いたらずいぶん期間が開いてしまった」ということでは許されませんので、注意する必要があります。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)仙台地判平成22年6月30日最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁

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インターフェロン治療SVR達成の慢性C型肝炎患者は全死因死亡が有意に低下/JAMA

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症・進行性肝線維症患者の全死因死亡率について、インターフェロン治療により持続的ウイルス学的著効(SVR)がみられる人では有意な低下がみられたことが、オランダ・エラスムス大学のAdriaan J. van der Meer氏らによる評価の結果、明らかにされた。JAMA誌2012年12月26日号掲載より。530例を中央値8.4年追跡、全死因死亡率などを評価 研究グループは、慢性HCV・進行性肝線維症患者におけるSVRと全死因死亡率との関連を評価することを目的に、国際多施設長期フォローアップ研究を行った。 被験者は、ヨーロッパおよびカナダの5つの病院から登録された慢性HCV患者530例で、1990~2003年の間にインターフェロンをベースとした治療を開始し、肝線維症または肝硬変症の進行(Ishakスコア4~6)について組織学的検査に基づき追跡された。 フォローアップは、2010年1月~2011年10月にわたって行われ、全死因死亡率を主要評価項目に、また肝不全、肝細胞がん(HCC)、肝臓関連の死亡または肝移植を副次評価項目として評価が行われた。 530例の被験者の追跡期間中央値は8.4年(IQR:6.4~11.4)だった。ベースラインでの年齢中央値は48歳(同:42~56)で、369例(70%)が男性だった。 肝線維症のIshakスコアは、143例(27%)が4、101例(19%)が5、6は286例(54%)だった。SVR達成・非達成で、10年累積全死因死亡、肝細胞がん、移植などに有意な差 SVRを達成したのは192例(36%)だった。 死亡したのは、SVR患者13例、非SVR患者100例で、10年累積全死因死亡率はSVR患者8.9%[95%信頼区間(CI):3.3~14.5]、非SVR患者26.0%(同:20.2~28.4)で有意な差がみられた(p<0.001)。 時間依存的多変量Cox回帰分析の結果、SVRと全死因死亡低下との有意な関連が認められた[ハザード比(HR):0.26、95%CI:0.14~0.49、p<0.001]。また、肝関連死亡または肝移植の有意な低下(SVR患者3例、非SVR患者103例)も認められた(HR:0.06、95%CI:0.02~0.19、p<0.001)。10年累積肝関連死亡-肝移植発生率は、SVR患者1.9%(95%CI:0.0~4.1)、非SVR患者27.4%(同:22.0~32.8)だった(p<0.001)。 HCCを発症したのはSVR患者7例、非SVR患者76例だった。10年累積発生率はSVR患者5.1%(95%CI:1.3~8.9)、非SVR患者21.8%(同:16.6~27.0)で有意な差が認められた(p<0.001)。 肝不全の発症は、SVR患者4例、非SVR患者111例だった。10年累積発生率はSVR患者2.1%(95%CI:0.0~4.5)、非SVR患者29.9%(同:24.3~35.5)で有意な差が認められた(p<0.001)。

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HIVとHCV重複感染者、肝線維化進むほど肝細胞がんや死亡リスク増大

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の重複感染者では、肝線維化が進んでいるほど末期肝疾患・肝細胞がん・死亡の複合リスクが増大することが明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のBerkeley N. Limketkai氏らが、600人超の患者について行った、前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月25日号で発表した。638人を中央値5.8年追跡研究グループは、HIVとHCVの重複感染者で、ジョンズ・ホプキンスHIVクリニックで診察を受けている638人(黒人80%、男性66%)について、1993年7月~2011年8月まで、前向きに追跡した。追跡期間中央値は5.82年(四分位範囲:3.42~8.85)だった。肝線維化ステージについては、METAVIRスコアシステムで評価した。主要アウトカムは、末期肝疾患、肝細胞がんまたは死亡の複合アウトカム発生率だった。結果、試験開始時の肝線維化ステージが高いほど主要アウトカム発生率も増加することが示された。主要アウトカム発生率は1,000人・年当たり、肝線維化ステージF0の人は23.63、F1では36.33、F2は53.40、F3は56.14、F4は79.43だった(p

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肝細胞がん治療剤「ミリプラ」1月発売

大日本住友製薬株式会社は12月21日、肝細胞がん治療剤「ミリプラ動注用70mg」(一般名:ミリプラチン水和物)を、2010年1月20日付で発売すると発表した。同剤専用の懸濁用液として「ミリプラ用懸濁用液4mL」(一般名:ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル)も同時に発売するとのこと。「ミリプラ動注用70mg」は、「ミリプラ用懸濁用液4mL」に懸濁して肝動脈内に投与する。ミリプラは、ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルへの懸濁性に優れている。また、肝動脈内投与後は腫瘍局所に滞留し、長期間に渡って白金成分が徐放され、全身への曝露は少ないという。同社の臨床試験では、再発率の高い肝細胞癌において、初回治療だけでなく、肝切除等の他の治療後に再発した患者に対しても良好な抗腫瘍効果を示したとのこと。また、本治療法で知られている一般的な副作用が認められたが、本治療法に精通した施設においては忍容可能なものであったという。本剤投与による肝動脈の血管障害の報告もなかったとのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.ds-pharma.co.jp/news/pdf/ne20091215.pdf

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サーモドックス グローバル第III相臨床試験にて日本登録患者に投薬開始

株式会社ヤクルト本社は28日、セルシオンコーポレーション(以下セルシオン)および同社は、原発性肝がんで最も一般的な肝細胞がん(HCC)を対象にした、セルシオンのグローバル第III相臨床試験であるThermoDox(サーモドックス)のHEAT試験において、日本での最初の患者が登録され、投与が開始したと27日(米国時間)付けで発表したと報告した。ThermoDoxグローバル第III相HCC臨床試験は、高周波アブレーション(RFA)併用群とRFA単独群との比較で、ThermoDoxの安全性および有効性を評価することを目的としている。同試験では、日本、中国、マレーシア、タイ、フィリピン、香港、韓国、台湾、イタリア、米国およびカナダにおいて、最大600人の登録を予定している。セルシオンは、2009年末までに、60の臨床施設を始動させ、2010年の上半期中に患者登録を完了させる予定だという。詳細はプレスリリースへhttp://www.yakult.co.jp/cgi-bin/newsrel/prog/news.cgi?coview+00433

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肝がん患者、miRNA発現量低くてもインターフェロン治療には反応

肝細胞がんは一般に男性に多く見られる悪性のがんである。米国National Cancer InstituteのJunfang Ji氏ら研究グループは、肝細胞がんを有する男女の患者を対象に、遺伝子発現に関わり発がん過程との関連が注目されているmicroRNA(miRNA)の、男女別の発現パターン、および患者生存期間との関わり、インターフェロンαに対する反応を調べた。その結果、発現量は女性で高く、男性では低いこと、また発現量が低い患者ほど生存期間が短いこと、ただしインターフェロンαに対する反応は発現量が低くても良好であることが明らかになったと報告した。NEJM誌2009年10月8日号より。肝細胞がん患者455例のmiRNA発現量・パターンを調べるJi氏らは、1999~2003年の間に、上海および香港で腫瘍全摘術を受けた肝細胞がん患者455例について分析を行った。被験者は、独立した3つのコホート群から構成される。コホート1(241例)で、腫瘍関連のmiRNAを同定するため、またそのmiRNAと生存期間との関連を調べるため、男女それぞれについてのmiRNAプロファイリングが行われた。その所見を検証するため、コホート2、3(214例、いずれも前向き無作為化対照試験)を対象に、定量的RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)法で、miRNA発現量の測定、生存期間との関連、インターフェロンα治療に対する反応を検証した。miRNA発現パターンは、女性で高く、男性で低いmiRNAのプロファイリングの結果、対象患者の非腫瘍肝細胞において、miR-26a、miR-26bの発現量が、女性で高く、男性で低いことが確認された。腫瘍肝細胞におけるmiR-26発現量は、同一患者の非腫瘍肝細胞での発現量との比較において、低いことが確認された。Ji氏は「このことは、miR-26の発現量が肝細胞がんと関連していることを示す」と述べている。またmiR-26発現量が低い腫瘍では、特異のRNAパターンがあることが確認された。その上で遺伝子ネットワーク解析により、腫瘍形成には、核因子κBとインターロイキン(IL)-6との間のシグナル伝達経路の活性化が関与している可能性があることが認められたという。生存期間については、腫瘍細胞のmiR-26発現量が低い患者が、発現量が高い患者と比べて、全生存期間が短かった。しかしインターフェロンα治療に対する反応は、低い患者でも良好だった。これら結果を踏まえJi氏は、「miRNA発現パターンは、男女で異なった。また、miR-26発現状態は、生存期間、インターフェロンαアジュバンド療法に対する反応と関連している」ことが明らかになったとまとめている。(医療ライター:朝田哲明)

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エベロリムス、VEGF標的治療薬が無効となった進行性腎がんの治療薬としてEUで承認

スイス・ノバルティス社は6日(現地時間)、欧州委員会(EC)より、エベロリムス(欧州/米国での製品名「Afinitor」)が、血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とする分子標的薬による治療中あるいは治療後にがんが進行した進行性腎細胞がん(RCC)の患者に対する治療薬として承認されたと発表した。ECの承認の基となった第III相試験のデータでは、プラセボと比較して、エベロリムスにより、VEGF標的薬による前治療後にがんが進行した進行性腎がんの患者の無増悪生存期間の中央値が2倍以上延長(4.9ヵ月対1.9ヵ月)したことが明らかになったという。さらに、主要評価項目である無増悪生存期間において、エベロリムスが疾患の進行のリスクを67%減少させたことも示したとのこと(ハザード比=0.33、95%信頼区間0.25~0.43、P& lt;0.0001)。なお、同薬剤は、神経内分泌腫瘍、乳がん、胃がん、及び肝細胞がん(HCC)に加え、非ホジキンリンパ腫など複数のがん種における可能性を検討する第III相試験が進行中とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2009/pr20090810.html

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ネクサバールと化学療法剤との併用療法が、進行性乳がんの無増悪生存期間を延長する

米国のバイエル ヘルスケア社とオニキス・ファーマシューティカル社は、進行性転移性乳がんを対象とした医師主導の臨床試験グループによる無作為化第II相臨床試験において、主要評価項目である無増悪生存期間の延長が示されたと発表した。バイエル薬品株式会社が27日に報告した。この試験は、局所進行性または転移性の、HER-2陰性乳がん患者におけるネクサバール錠と経口化学療法剤カペシタビンの併用療法を評価したもの。試験結果より、ネクサバールとカペシタビンの併用療法を受けた患者群において、カペシタビンとプラセボを投与した患者群と比較して統計学的に有意に(p=0.0006)無増悪生存期間の中央値が延長されたという。この試験における併用療法の安全性と忍容性は同社が予測していた通りであり、未知あるいは予期せぬ毒性は発現しなかったとのこと。試験の最終解析結果は、今後、学会で発表される予定。ネクサバールは現在、肝細胞癌に対して70ヵ国以上、また進行性腎細胞癌に対して80ヵ国以上で承認されている。欧州では、肝細胞がんとインターフェロン・アルファあるいはインターロイキン2による治療が無効であるか、医師がこれらサイトカイン療法に不適当と認めた進行性腎細胞がんに対して承認されています。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2009%2Fnews2009-07-27.html

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ネクサバールに切除不能な肝細胞がんへの適応追加 日本でも承認

バイエル薬品株式会社は20日、根治切除不能又は転移性の腎細胞がん治療を目的として国内で販売中の「ネクサバール錠200mg」(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)について、厚生労働省より、新たに切除不能な肝細胞がんの効能・効果で承認を取得したと発表した。ネクサバールは、腫瘍細胞増殖抑制と血管新生阻害の2つの作用により、がんの成長を抑制する経口の分子標的薬。これまで、肝細胞がんに対して有意に生存期間の延長を示した全身療法はなかったが、今回、ネクサバールに新たな効能・効果が追加承認されたことにより、世界で初めて肝細胞がんに対して全生存期間の延長を示した全身治療薬の使用が、日本でも可能になる。ネクサバールは、欧米で実施された第III相臨床試験(SHARP)において、プラセボ(偽薬)と比較して全生存期間中央値を44%延長(HR=0.69、p=0.0006)したことを受けて、2007年10月に欧州で肝細胞がん、11月に米国で切除不能な肝細胞がんの適応で承認を取得し、現在世界60ヵ国以上で同疾病の治療薬として販売されている。日本では、2007年9月に肝細胞がんへの適応を申請、2008年1月に厚生労働省より優先審査指定を受けていた。ネクサバールの適応追加承認条件として、肝細胞がん患者を対象として全例調査を行うことが義務付けられており、同社では、この全例調査ならびに適正使用推進策の実施に際し、広く医療関係者・医療機関・関係団体に対し、協力要請をしていくという。また、ネクサバールによる肝細胞がん治療について正しく理解してもらうことを目的として、ネクサバール総合情報サイト(http://www.nexavar.jp/)において、適正使用や安全性に関する情報を提供していくとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2009%2Fnews2009-05-20.html

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