サイト内検索|page:205

検索結果 合計:4273件 表示位置:4081 - 4100

4081.

侵襲性細菌感染症の遺伝子感受性

世界で年間死者500万人に達する結核やマラリアなどの侵襲性細菌感染症で、疾患感受性の個体差が一部で有意にみられることについては、栄養失調やHIV罹患など環境要因によると考えられているものの、実態としては謎のままである。そこで、シンガポール遺伝子研究所感染症疾患部門のChiea C. Khor氏らは、感染症病原体に対するヒト免疫応答に注目した。免疫応答の際には炎症性サイトカインが産生される。その反応が過剰となると(サイトカインシグナル伝達により)、マラリアなどの重症化を招くのではないか。一方でヒト免疫応答には、炎症反応をコントロールするサイトカインシグナル伝達抑制蛋白質CISHが存在し関与することも知られる。Khor氏らは、CISHが疾患感受性と関連しているのではないかと仮定し、検討を行った。NEJM誌2010年6月3日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載より。8,402例の血液検体を用いて、CISH遺伝子多型と主要感染症感受性との関連を調査Khor氏らが注目したのは、病原体免疫応答にプリンシパルな炎症誘発性のサイトカインであるインターロイキン(IL)2と、そのIL-2において特にシグナル伝達をコントロールするCISH[Cytokine-inducible SRC homology 2(SH2)domain protein]。ガンビア、香港、ケニア、マラウイ、ベトナムで行われた感染症の症例対照研究(計7件)の対象者8,402例の血液検体を用いて、CISH遺伝子多型と主要感染症(菌血症、結核、重症マラリア)感受性との関連を調べた。なお研究グループは、これまでにこの対象者で20の免疫関連遺伝子の検討を行っている。CISH変異体と感染症感受性との関連を確認結果、複数のCISH遺伝子多型の変異アレルが、感染症の感受性増大と関連していることが認められた。またCISH関連遺伝子座で特定した一塩基多型遺伝子(SNP)5つ(-639、-292、-163、+1320、+3415)を、一つの多重SNPとみなした場合、CISH遺伝子変異体と主要感染症(菌血症、結核、重症マラリア)感受性との間の関連性が確認された[すべての比較P=3.8×10(-11)]。特に-292変異体は、関連するシグナル伝達のほとんどに関与していた[P=4.58×10(-7)]。また、-292変異体を有する成人被験者から採取した末梢血分子細胞は、野生型細胞と比べて、IL-2産生刺激に対する反応が弱く、CISH発現が25~40%少ないことも明らかになった。Khor氏は、「CISH変異体が、多様な感染症病原体に起因する疾患感受性と関連しており、サイトカインシグナル伝達抑制因子は種々の感染症に対する免疫に関与していることが示唆された。またCISH変異アレルを有するヒトでは、主要感染症のうちの一つの全リスクが18%以上増加した」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

4082.

教授 白井厚治先生の答え

最近のゼロカロリージュースについて0キロカロリーのコーラなどが最近は多く売られてますが、代謝内分泌学的には糖尿病の方に自信を持って勧められているのでしょうか?あくまで噂に過ぎないのですが、ああいうゼロカロリー飲料そのものには確かにカロリーがなくても、一緒に他の食事を摂った時に他の糖質の吸収を促進する作用があると聞きました。。。。PS:そもそも、人工甘味料のアスパルテームが身体に良いかどうかわかりませんし、炭酸飲料は身体に悪いのかもしれませんが。。。実際に、カロリーゼロ表示の飲料物を飲んでもらい、30分から120分まで、採血したところ、血糖の増加はほとんど見られないものもありましたが、なかにはあがるものもあり、原因は、カロリーゼロ表示は、糖質0.5%以下で使っているとのことでした。ですから、成分表示で、糖分ゼロと明記しているものは大丈夫でしょうが、それ以外のものは、大量飲めば、血糖は上がる可能性があります。アスパルテームについては、アミノ酸摂取として評価してよいと思われます。極端に、多用しなければ問題ないと思います。高感度CRPについて高感度CRPは動脈硬化の一つのいい指標でしょうが、上気道炎、歯肉炎などの炎症にても上昇すると理解しています。そうすると、風邪の流行している季節などでは動脈硬化の判定ができずらくなるということはないでしょうか?その通りで、CRPは体内でほかに目立った炎症がない場合にのみ、動脈硬化(炎症性反応としての)の指標として意味がありますが、特異性は、高感度CRPを用いてもありません。大規模スタデイで、ある治療の効果などをみるにはよいでしょう。しかし、日常診療で、個々の例に当てはめ、それのみで、あなたは動脈硬化があります、ありませんとの判定に用いるのは、困難と思います。逆に、動脈硬化のためと決め込んで、ほかの炎症、癌などの初期を見逃す可能性もあります。個人には参考にする程度でよいのではないでしょうか。破壊性甲状腺炎の診断動悸、全身倦怠、微熱、軽い咽頭痛の症状で他院受診。FT3 10.4,FT4 4.6 TSH感度以下、 抗体陰性(TPO、TG、TRAb,TSAb)でCRP 1前後、血沈正常からやや亢進、甲状腺エコーでまだら様low echo部位のある患者さんが当院紹介となりました。ヨードuptake 1%以下で破壊性甲状腺炎と診断しましたが、一貫して頸部痛はありません。頸部痛のない亜急性甲状腺炎と判断するのか、咽頭炎併発の無痛性甲状腺炎と迷いました。これでTPO抗体やTG抗体が陽性であればさらに橋本病の急性増悪とも迷うところです。頸部痛のない亜急性甲状腺炎という病態はあると考えて宜しいのでしょうか。また今回のケースではありませんが橋本病の抗体が陽性の場合、無痛性甲状腺炎と橋本病の急性増悪との鑑別についてもご教授いただければ幸いです。甲状腺機能亢進でTSAb、TRAb陰性、さらにヨードuptakeの低下という所見は破壊性甲状腺炎に矛盾しません。破壊性甲状腺炎には、亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎があります。亜急性甲状腺炎は炎症反応があり、low echo部位を認めるととも頸部痛はほぼ必発です。本例では頸部痛なしなので、亜急性甲状腺炎とは言えないでしょう。従って、無痛性甲状腺炎の可能性が強くなります。無痛性甲状腺炎は、多くは橋本病を基盤とした疾患とされており、本例がTPO、TGの抗体が陰性であることから、合致しません。まだ特定されていませんが何らかのウィルスによる甲状腺炎かもしれません。実際、本症例をどうするかですが、私なら経過観察が重要と考えます。ホルモン値を追跡し、下がればそれでよく、もし、炎症反応が強くなったり、頸部痛が出現してきたりすれば、亜急性甲状腺炎と考えて、ステロイド投与も考慮していくべきでしょう (当面はNSAIDでも十分)。甲状腺機能亢進症が長引くようであれば、甲状腺中毒症状に応じて、メルカゾールを適量処方、経過観察します。術前術後の糖尿病コントロール経口糖尿病薬は手術前後は禁忌となっています。手術前後とはどれくらいの期間をいうのでしょうか。その間はインシュリンでコントロールすることになりますが基本的なやりかたをご教示ください。手術の種類、術後の食事摂取の状況からも、ことなり、一律にはいえないと思います。一般に消化管手術は、吸収が不安定なこともあり、最低前1日、後7日間くらいは、血糖測定下でのインスリン治療が望まれます。SU剤を中止してのインスリン量の決定は、個々異なり、試行錯誤ですが、グリペングラマイド(2.5mg)3T/日では、およそ、インスリン必要量は、8-12単位くらいではないでしょうか。当院では、毎食前血糖測定後、血糖(mg/dl)100-120、  120-150、150-200、200-250、250-300 それぞれ、インスリン(レギュラー)2-4、4-6、6-8、8-10、10-12単位打つことを目安にしています。大学病院に足りないもの先生が大学病院の経営のみならず、臨床の現場でもご活躍されている様子、記事で拝見しました。大学病院の上から下までご存知の先生にお聞きしたいことがあります。「今、大学病院に足りないもの」を一つ挙げるとしたら、なんでしょうか?今や大学病院も収入につながる診療に振り回され、臨床研究の機会がどんどん減っているような感があります。周りの若手を見ても、診療に疲れて、「大学病院でバリバリ研究するぞ!」という気概を感じることができません。魅力ある大学病院を作るために何が必要なのか?何が足りないのか、日々悩んでいる状況です。ご教授頂けると幸いです。こんな時代の今こそなぜ、大学病院にいるのか、どのような姿勢をとるのか、原点が問われていると思います。それというのも、いろいろ言われていますが、医療の原点である患者さんの満足度(医療レベルもふくめ)を中心に、医師をきちんと配備し、グループ、科の壁を乗り越え、互いに手を出し合ってゆけば、大学病院は採算的にやってゆけるというのが実感でした。ただそこには、多くの若い医師たちがいるということ、即ち、採算的にみると、薄給でがんばってくれている若手医師がいるからこと成り立つことを忘れてはなりません。それに対して、彼らが大学病院にいる存在意義を見出すには、スタッフが魅力的な医療技能を提示でき、全身全霊をかけて患者さんを診ているすばらしい姿をみせること。若手医師は今の医療を学ぶのみでなく、医療を開拓していくメンバーの1人として、テーマを持ち未解決なものを解決する術を身につけることの充実感とそれによる自信が必要と思います。従って、大学スタッフの責任は重大で(それだけやりがいがあるという意味です)、面白い研究テーマを見つけ、その解決を目指してあらゆる手段を用い(基礎、臨床研究)、しかもそれを楽しみながらやっている姿勢を見せ続けることです。そして、病院の業務に追われ疲れているように見えた時こそ、それらを吹き飛ばす面白い研究テーマを突きつけるべきです。マンネリと疲労から脱出させる最良の方法となります。先生のようなやる気のある上級医師は、遠慮せず、怖がらず若手医師に語りかける続けることでしょう。今の医学教育は研究の面白さ楽しさを感じ取るレセプターを育成していませんから、苦労しますが、でも、わかってくれる日が必ず来ると思います。CAVIの開発についてCAVIにはいつもお世話になっています。お恥ずかしい話、先生が開発に携わっていたこと、知りませんでした。このような新しい技術や検査機械の開発はどのように始まり、進行していくものなのでしょうか?また、このように周りを上手く巻き込んでいく時のポイント、秘訣などありましたらご教授頂きたいです。宜しくお願いします。CAVIは、今次々と新しい事実が見出されています。大切なことは、若い先生方に興味を持ってもらえ、いったん途絶えていた血管機能学が代謝学と連携して再度面白くなり始めたことです。CAVIと巡り合ったいきさつですが、たまたま、開発初期に相談をうけたわけで、私が発想し持ち込んだわけではありません。ただ、血管機能については興味をもち30年前から大動脈脈波速度(長谷川法=血圧補正法)を毎年透析患者さんで10数年にわたり測定していました。そこでPWVの限界と可能性を私なりに理解していたつもりです。今回CAVIの初期のデータとりをする中で、計算式決定まで多少紆余曲折がありましたが、バイオメカニクスの科学と臨床成績から現在の式が最終決定され、以後広い臨床評価が始まりました。そこには、長年血管機能解析に興味を持ち続け誠実にデータを蓄積分析してくれていた施設と人がいたこと、会社も、科学性と臨床データ両面を尊重し互いに納得のいくまで検討できたこと、また脈波感知と分析に高度の技術を発揮した優秀なスタッフがいたことが幸運だったと思います。加えて、全国の大御所というよりは若手研究者の方がCAVIに素直に興味をもってくれ、いわゆる大学の研究室よりは、一般病院で、素養のある先生方が先行して出された研究が多く、現場で開拓心旺盛な医師の存在が大きく浮かび上がりました。新しい世界を開くのは情熱ある若手医師とつくづく思いました。無理に誰かを巻き込もうとしたこともなく、CAVIそのものの原理と測定の安定性が最大の牽引力であったと思います。でもまだまだ、これから多くを検証する必要があります。佐倉病院でないとできないこととある病院で研修医やっている者です。先生の記事を興味深く読ませて頂きました。文末にある「佐倉病院でないとできないことに向けて頑張っていく」という言葉が印象的です。記事を読んでいると、佐倉病院さんはとてもチームワークが良く、ドクターもコメディカルも同じ目標に向かって猛進しているような印象を受けました。(先生のところだけかもしれませんが...。)「佐倉病院にしかできないこと」というのは、そのように「チームワークが良い病院でしかできないこと」なのでしょうか?それともまた何か他とは違う特徴が佐倉病院さんにはあるのでしょうか?基礎も臨床もしっかり行い、しかも全て患者さんのためになっている様子に感銘を受けました。ご回答宜しくお願いします。どこの場にいても、そこを、地球上で一番すばらしいところにしてやろうという気持ちが大切です。恵まれてすべてが整っているところほど、これからの人にとってつまらない場所はないと思います。とにかく、その場での問題点を探し、皆が一番困っているところを見つけ出し、その解決に向けて、できるとところを一歩一歩解決してゆく姿勢を評価、支援しあえる環境が佐倉病院にはあるということです。内科も、外科医に負けないような患者さんに感謝される治療学を確立しようと、研究テーマの根幹は、酸化、再生、免疫制御、栄養の4本柱で、おのおの磨いているところです。たとえば、呼吸器は抗酸化療法で間質性肺炎に挑戦、代謝は、肥満治療を分子から栄養、こころの問題と多面的に捉える治療、特に肥満外科治療が開始されましたがその術前術後のフォロー、フォーミュラー食(低エネルギー低糖質、高たんぱく食)の応用と基礎、糖尿病腎症に対するプロブコールを用いた抗酸化療法で透析療法移行抑制試験、循環器は、インターベンションに加えて、これから、難治性心不全に対する鹿児島大鄭教授の開発した和温療法実施と評価、睡眠時無呼吸と不安定狭心症の関係をみつけその治療システムの確立、消化器は、炎症性腸疾患のメッカとして、顆粒球除去療法、レミケード療法、神経内科は、排尿障害を中心に、パーキンソン病の深部脳刺激治療のバックアップ、再生医療も狙っています。研究は、各グループ専門を超えて互いに連携しています。原則として、できれば自然の法則性を体感するため、医師は基礎研究もする機会を経験してもらいたいものです。研究開発部の協力のもとに細胞培養、酵素学、遺伝子実験をできる体制を敷いています。要するに、病気を多面的にいくつかの独自の視点をもって診、医療を開拓してゆける人の育成がもっとも大切と考え、それには、チーム医療、他コメヂィカルとも力を合わせ、初めてできることと考えています。理想の地域連携とは先生がお考えになる「理想の地域連携」の姿とはどんなものでしょうか?また、その理想の姿になれない、理想の姿になるのを阻んでいる障害はなんでしょうか?(実現されていたら申し訳ないです。)現在、私も地域連携について勉強はしているものの、なかなか思うような形にできません。障害が多すぎて、「理想的」どころが「現実的」な連携フローにもなっていません。宜しくお願いします。地域となるとさまざまな価値観の人がおり、同じ言葉でも受け取り方が違ったり、利益配分に問題が出たりで、そう簡単に理想的な地域連携ができるわけではありません。しかし、今の医療は、個々の医療人が隔離状態で医療行為を行えるほど甘くなく、互いに、助け合って連携せざるをえないと思います。でも問題は、ただ患者さんを送りあえば医療連携になるかといえばそうでもなく、問題は患者さんも含めて、互いにわかりあい納得できることが大切で、それには情報の整理集約が必須です。私どもは、生活習慣病を中心としたヘルスケアファイルと呼ばれるノートを患者さん全員にお渡ししています。そこには、動脈硬化リスク因子、標準体重、BMI、臓器障害の有無、程度、さらに主要な検査値はグラフで提示するシステムを用いています。これで、関わる医師は無論、クラークさん、看護師さんも経過が一目瞭然。するとアドバイスも適切。また家族もわかり、応援しやすくなります。これを地域に広げたいというのが私どもの夢です。ただこのファイルは、血圧、糖尿、脂質、尿酸、体重、一般検査を含んでおり、全部網羅していると思います。わがままかもしれませんが、これ一冊にしていただきたいのです。一般には、00手帳が3つも5つももっておられる方もいますね。でもなんだかわからないというのが実情です。大人版、母子手帳を作るべきだと思います。チームワーク先生、チームをまとめ上げるために必要なものはなんでしょうか?チームワークというと「みんな仲良く」というイメージがありますが、決してそうではないと思います。きっと先生は、今までのご苦労の中から「これが大事!」というもの発見されていると思います。それを教えてください。宜しくお願いします。リーダーは、今自分らの分野で何が問題で、それを解決するために、どう力を互いに出し解決するかを提言し続けること。 即ち、小さなグループミーチングでも、プロジェクトを提示し、その成果がささやかでも出たら皆で確認し、面白がること。プロジェクトは、参加者全員が順に一つずつ持つように絶えず心がけていると、みんなに参加意識と存在感さらい自信が生まれます。すると、とたんに楽しく動き始めます。低糖質食私も低糖質食でメタボを脱却したものですが、抵糖質食の心血管病変に対してrisk reductionあるのでしょうか?食事の内容によっても大きく変化するのでしょうか?低糖質、高蛋白食が減量に効果があるとともに、血圧、血糖、脂質異常などの冠動脈リスク因子を減らすことは、海外のスタデイでも、ほぼ一致して報告されています。インスリン抵抗性解除作用と思います。ただし長期(1年)になると元に戻るとの報告もあり、それを鵜呑みに意味がないという人もいます。しかしその食事調査結果をみると、実際の摂取成分がもとに戻っており、実はそう長くは自己調整を続けられなかたというのが実態で、低糖質、高蛋白食は長期になると効果がなくなるというものではないわけです。御質問の「では実際、心血管イベントを減らせたか」はもっとも重要な点ですが、上述のごとく、通常食で成分調整を長年にわたり継続すること自体がほとんど不可能なため、年余にわたる低糖質、高蛋白食の冠動脈疾患の発生を抑えるかどうかの研究自体ができないのです。本当は、このような基本となる栄養組成の研究こそ、国が、コンプライアンスを保障できる食事の宅配便制度などを利用し、長期にわたる調査を企画運営すべきです。そこにこそ研究費をつぎ込むべきです。薬物のようにメーカー主導のエビデンスベーストメデイシンは、この分野では行われることはないでしょう。現在、ある程度コンプライアンスをよくして低糖質、高蛋白食の効果を見る方法とすれば、フォーミュラ食を一日一回用いるなどの方法が考えられます。また、長期のイベントの発生調査を、より短期に予測しうる方法があれば、即ち、動脈硬化のよいサロゲートマーカーがあれば早期に結論が出せるかもしれません。それには、新しい動脈硬化指標CAVIが使えるかもしれないとの淡い期待を、持っています。教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

4083.

エボラウイルスに対する実験的治療、マウスに次いでサルでも有効性確認

ボストン大学全米新興感染症研究所のThomas W Geisbert氏らは、致死性のザイールエボラウイルス(ZEBOV)に感染したアカゲサル(マカク属)のモデルを使った実験的治療で、RNA干渉を引き起こすsiRNA(small interfering RNAs)治療が有効であったことを報告した。Lancet誌2010年5月29日号掲載より。同治療の有効性は、マウスを使った実験的治療で確認されていた。siRNA治療は、安定核酸脂質分子(SNALPs)に調製したsiRNAを、ZEBOVのRNAポリメラーゼLたんぱく質をターゲットに投与するというもの。3つの蛋白質をターゲットにした混合siRNAを4回もしくは7回投与Geisbert氏らは、マウスで有効だった本治療について、ヒト以外の霊長類での有効性を評価することを目的に実験的治療を行った。投与されたのは、ZEBOVのRNAポリメラーゼL(EK-1 mod)、およびウイルスタンパク質(VP)24(VP24-1160 mod)、VP35(VP35-855 mod)をターゲットしSNALPs化された混合siRNA。第1試験のサル群(3例)に本剤を1回2mg/kgボーラス静注で、ZEBOV曝露後、30分、1、3、5日後にそれぞれ投与した。第2試験のサル群(4例)には、同剤を、曝露後、30分、1、2、3、4、5、6日後に投与した。曝露直後の7回投与が治療戦略として有効か4回投与の第1群は、プロテクトされたのは3例のうち2例(66%)だった。一方、7回投与の第2群は、全例プロテクトに成功した。第2群は、ウイルス感染に関連する肝酵素の値の変化も軽度で、治療としての忍容性が高いことも確認された。Geisbert氏は、「今回の結果、本治療戦略がヒトにおいても有効である可能性が示された。また、他の新生ウイルス感染の治療戦略としての可能性も示唆されたと言える」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

4084.

超多剤耐性結核患者の予後に、HIV感染は影響するか?

超多剤耐性(XDR)結核患者は、HIV感染の有無にかかわらず予後不良であるが、HIV感染者の予後は以前に比べ改善していることが、南アフリカCape Town大学のKeertan Dheda氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。Kwazulu Natal(南アフリカ)のデータによれば、XDR結核に感染している患者のほとんどがHIV感染者であり、致死的な転帰をとることが示唆される。しかし、HIV感染率が高い状況におけるXDR結核の治療効果を評価したデータはほとんどないという。Lancet誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載の報告。XDR結核とHIV感染の関連を評価する後ろ向きコホート試験研究グループは、疾患対策に向けた勧告を策定するために、XDR結核とHIV感染の関連についてレトロスペクティブなコホート試験を行った。2002年8月~2008年2月までに、南アフリカの4つの地域の指定治療施設において、診断時の培養検査でXDR結核が確認された16歳以上の患者記録を解析した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて予後に関連するリスク因子の評価を行った。HIV感染XDR結核患者の死亡率は41%、HIV非感染XDR結核患者は30%XDR結核患者227例が登録され195例が解析の対象となった。そのうち21例は治療開始前に死亡し、治療を受けたのは174例(HIV感染者は82例)であった。62例(36%)がフォローアップ期間中に死亡した。HIVに感染したXDR結核患者の死亡率は41%(34/82例)、HIV非感染XDR結核患者の死亡率は30%(28/92例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(p=0.13)。死亡の予測因子の解析では、モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)を使用すると死亡率が89%低下し(ハザード比:0.11、p=0.03)、培養検査で多剤耐性結核の検出歴があると死亡率が5倍以上になり(同:5.21、p=0.001)、使用薬剤数が多いと死亡率が41%低下した(同:0.59、p<0.0001)。高活性抗レトロウイルス療法(HAART)を受けたHIV感染XDR結核患者は、受けていない患者に比べ死亡数が少なかった(ハザード比:0.38、p=0.01)。174例中33例(19%)で培養陰性化が示され、そのうち23例(70%)は治療開始から6カ月以内に陰性化した。著者は、「南アフリカでは、XDR結核患者の予後は、HIVに感染していなくても不良であった。しかし、HIV感染者の生存率は以前の報告に比べ改善している」と結論し、「優先度はXDR結核感染の予防の方が高く、治療プログラムや検査能力を強化することで多剤耐性およびXDR結核を早期に検出して治療を行うべきである」としている。(菅野守:医学ライター)

4085.

救急外来の医師は小児の発熱を過小評価するも抗菌薬を処方

小児の救急外来受診で最も多い発熱について、5~10%で見逃されている重症細菌性感染症の診断を的確に行うための臨床モデルの開発が試みられた。オーストラリア・シドニー大学公衆衛生校のJonathan C Craig氏ら研究グループが、約16,000症例を前向きコホート研究により検討。BMJ誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月20日号)で発表している。救急外来の5歳未満15,781例の発熱症例を検証Craig氏らは、現状の診断プロセスで、どの程度、発熱を呈する小児に対し重症細菌性感染症疑いの診断をつけ治療が行われているのかを評価するとともに、経験値によるものではなく、重症細菌性感染症と非細菌性感染症とを見分ける臨床モデルの開発・検証を行った。オーストラリア・Westmeadの小児病院の救急外来での、2004年7月1日~2006年6月30日の2年にわたる前向きコホート研究による。被験者は、5歳未満の小児15,781例だった。医師がどのような診断をつけたかは、病院の電子カルテにセットされている40の臨床像を参考とした。また、重症細菌性感染症だったか否かは、標準的なX線検査、微生物学的検査、経過観察によって確定診断がされたか除外されたものとした。主要評価項目は、主要な重症細菌性感染症(尿路感染、肺炎、菌血症)のうちの1つの診断をつけたかどうか、また臨床診断モデル(臨床評価と確定診断のデータベースから多項ロジスティック回帰法を用いて提示)および臨床医の判断による両者の診断精度についても検討された。臨床診断モデルを感度の高いものに改善する必要がある追跡調査で入手できたデータは15,781例の93%だった。3つの主要な重症細菌性感染症の有病率は、合わせて7.2%(1,120/15,781例、95%信頼区間:6.7%~7.5%)だった。尿路感染の診断がつけられたのは543例(3.4%、95%信頼区間:3.2%~3.7%)、肺炎は533例(3.4%、同:3.1%~3.7%)、菌血症は64例(0.4%、同:0.3%~0.5%)だった。重症細菌性感染症を有した小児のほとんど(94%超)が、適切な検査(尿培養、胸部X線、血液培養)を受けていた。また抗菌薬が速やかに処方されたのは、尿路感染66%(359/543例)、肺炎69%(366/533例)、菌血症81%(52/64例)だった。しかし一方で、細菌性感染症ではない小児の20%(2,686/13,557例)にも抗菌薬の処方がされていた。診断精度は、医師の診断の感度は10~50%と低く、特異度は90~100%と高かった。一方、臨床診断モデルは、幅広い閾値の感度、特異度を呈した。Craig氏は、「救急外来の医師は、小児の重症細菌性感染症に対して過小評価するも抗菌薬を処方するという傾向があった。臨床診断モデルは、医師の意思決定を改善し、そのことによって早期処置が施されるように、細菌性感染症検出の感度を高めるものにしなければならない」と結論している。

4086.

妊娠中の新型H1N1インフルエンザ発症、死亡率5%と高率

妊娠中に2009年流行の新型インフルエンザ(H1N1)に感染し発症した場合、死亡率は5%と高率であることがわかった。また、発症後2日以内に抗インフルエンザウイルス薬の服用を開始することで、入院リスクや死亡リスクは大幅に減少することも明らかになった。米国疾病対策センター(CDC)のAlicia M. Siston氏らが、妊娠中に新型インフルエンザを発症した800人弱について追跡し、明らかにしたもので、JAMA誌2010年4月21日号で発表した。入院した妊婦の22.6%がICU治療同研究グループは、2009年4~8月にかけて、新型インフルを発症した妊婦788人について、追跡調査を行った。そのうち、死亡したのは30人(5%)だった。また、病院に入院した509人中、集中治療室(ICU)での治療を受けたのは115人(入院患者の22.6%)だった。発症5日以降の抗インフルエンザ薬開始は、同2日以内に比べICU入室リスクが6倍新型インフル発症後、5日目以降に抗インフルエンザウイルス薬の服用を始めた人のICU入室率は56.9%と、同2日以内に始めた人の同9.4%に比べ、約6倍に上った(相対リスク:6.0、95%信頼区間:3.5~10.6)。発症後2日以内に同治療薬の服用を始めた219人のうち、死亡は1人にとどまった。CDCのH1N1インフルエンザ・サーベイを基に、2009年12月までに発症した妊婦、合わせて280人について調べたところ、うち死亡したのは56人だった。そのうち、妊娠第一期の死亡は4人(7.1%)、妊娠第二期は15人(26.8%)、妊娠第三期は36人(64.3%)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4087.

ワクチンは知っていても、そのワクチンで防げる病気は知らない? ―細菌性髄膜炎に対する意識調査より

ワイス株式会社は、去る4月24日の「世界髄膜炎デ―」に向けて、全国の5歳未満子どもを持つ母親を対象に細菌性髄膜炎に対する意識調査を行っていた。この調査は、細菌性髄膜炎や2つのワクチンの認知度などについて、5歳未満の子どもを持つ20代~40代の女性1,000人にインターネットでアンケートを実施したもの。調査時期は2010年4月。その結果、「細菌性髄膜炎という病気をご存知ですか?」という質問には、57%が“名前は聞いたことがある”と答えたという。「症状まで知っている」と答えた人は9%にとどまり、母親たちの間では、細菌性髄膜炎は聞いたことがあるがどのような病気かまではまだよく知られていない、という実態が浮かび上がった。また、細菌性髄膜炎を予防する2つのワクチン、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの認知について、「2つのワクチンとも知っている」あるいは「どちらかのワクチンを知っている」と答えた割合は約75%であった。年齢別でみると、子どもの年齢が2歳以下の母親では83%であるのに対し、3歳以上の子どもの母親では62%に留まり、年齢の低い子どもを持つ母親ほど、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンを知っている現状がわかった。同社は今回の調査から、4人に3人の母親はヒブワクチンあるいは小児用肺炎球菌ワクチンの名前は聞いたことがある一方で、「細菌性髄膜炎」という病名は聞いたことがあるものの、原因菌までは多くの母親が知らないという結果もあわせて考えると、ワクチンの名前を知っていても細菌性髄膜炎の予防という意識まで結びついていないのでは、と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.wyeth.jp/news/2010/0423.asp

4088.

ワクチンで予防できる唯一のがん?

2010年4月22日、星陵会館(東京都千代田区)において自民党ワクチン政策に関する議員連盟主催の「子宮頸がんを撲滅するためのワクチン普及に向けたシンポジウム」が開催された。自治医科大学附属さいたま医療センター産科婦人科教授の今野良氏は基調講演に登壇し、子宮頸がんの病態、ワクチンによる予防とその普及における問題点について語った。今野氏はまず、わが国における子宮頸がんを取り巻く状況を話題とした。子宮頸がんは検診などで早期に発見できれば、前がん病変である異形成の段階(0期)で円錐切除術を行って妊孕性を保つことや、子宮全摘術、場合によっては円錐切除術により根治が可能である。子宮頸がんのリスクファクターには免疫低下状態や喫煙などがあるが、検診を受けないことも問題である。30年前、日本は子宮頸がん検診の先進国であったが、現在の受診率は欧米と比較すると極めて低い。検診受診率が常に低い国では子宮頸がん発生率が年齢とともに増加する傾向があるが、現在のわが国の発生ピークはおよそ35歳であり、30年前の受診率の高さが40代以上の女性における発生率の低さに寄与しているのだろうとのことである。また、20~30代の発生率上昇に伴い、死亡率も上昇傾向にある。一方、子宮頸がんの自然史はかなり解明されており、発生原因の多くはヒトパピローマウイルス(HPV)感染によることがすでに明らかとなっている。HPVは性交渉で感染し、女性の8割に感染歴があるとされるがほとんどは一過性であり、持続感染した場合に子宮頸がん発生のリスクとなる。タバコは肺がん発生のリスクを10倍高めるとされているが、ハイリスクのHPVである18型は子宮頸がんのリスクを500倍以上高めるという報告があり、がんの中でも抜きん出て相関が強いといえる。これらを踏まえ、初のがん特異的予防ワクチンとして、HPVワクチンが開発された。HPVのタイプは多様であり、現在のワクチンは子宮頸がんの原因として最も高頻度に発見されている16型と前述の18型の感染を予防するものである。このワクチンを性活動前の女性に接種したところ、約70%の子宮頸がん予防効果がみられた。加えて今野氏は、検診受診率の高い国では子宮頸がん発生率が低いというデータを示しながら、ワクチンによる一次予防(対象は11~14歳女児)と、二次予防としての定期的な検診で子宮頸がんはほぼ撲滅できると述べた。2009年4月のWHO Position Paperにおいては、「HPV関連疾患が公衆衛生上重要である」ことと「国家的なHPVワクチン組み込みを推奨する」ことが明記されている。また、わが国の12歳女児全員にワクチンを3回接種した場合の試算では、ワクチンの総費用は約210億円となる。対して、治療費は約170億円が節減でき、約230億円の労働損失額を加えると約400億円を抑えられ、全体では約190億円の費用削減となるため、医療経済的には便益がコストを上回るとのことである。今野氏は、国を上げて国民の意識を高めている事例として、イギリスでテレビ放送されている子宮頚がんワクチンの啓発コマーシャルを紹介し、本講演を終えた。(ケアネット 板坂 倫子)

4089.

コ・トリモキサゾール予防投与、ARTを開始したHIV感染者の死亡率を低減

3剤併用抗レトロウイルス療法(ART)を開始したHIV感染者に対し、コ・トリモキサゾール[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]を予防的に投与すると、死亡率が有意に低下することが、イギリス医学研究評議会(MRC)臨床試験ユニットのA S Walker氏らの検討で明らかとなった。コ・トリモキサゾールは、医療資源が不足する環境で市中肺炎の予防および治療に使用される安価な抗生物質である。本薬剤を予防投与すると、未治療のアフリカ人HIV感染者の死亡率が低減することが示されているが、このベネフィットは併用ARTと同時に投与しても維持されるかについては不明であったという。Lancet誌2010年4月10日号(オンライン版2010年3月29日号)掲載の報告。コ・トリモキサゾール投与と非投与を比較する観察研究研究グループは、アフリカ人の重症HIV感染者に対するART開始後のコ・トリモキサゾールの予防投与の有用性を評価する観察研究を実施した。対象は、2003年1月~2004年10月までにDART(Development of Anti-Retroviral Therapy in Africa)試験に登録されたCD4細胞数<200個/μLで、3剤併用ARTを開始した未治療の症候性HIV感染者(18歳以上)であった。コ・トリモキサゾール(トリメトプリム160mg+スルファメトキサゾール800mg)の予防投与(1日1回)はルーチンには行わず、無作為割り付けも実施せずに、担当医が個々に処方した。時間依存性の交絡を補正するために周辺構造モデルを用い、コ・トリモキサゾールの投与が臨床予後、CD4細胞数、BMIに及ぼす影響について検討した。死亡率が12週までは大幅に低下、効果は72週まで持続3,179例(コ・トリモキサゾール投与群1,959例、非投与群:1,220例)が登録された。全体の観察期間の総計は14,214年であり、そのうちコ・トリモキサゾール投与群は8,128人年(57%)であった。コ・トリモキサゾール使用の時間依存性の予測因子は、直近のCD4細胞数、ヘモグロビン値、BMI、ART開始後の当初の症状(WHO stage 3/4)であった。死亡率は、コ・トリモキサゾール投与群が非投与群に比べ有意に低下した(オッズ比:0.65、95%信頼区間:0.50~0.85、p=0.001)。コ・トリモキサゾール投与によって死亡リスクは12週までは大幅に低下し(同:0.41、同:0.27~0.65)、12~72週まではこれが維持された(同:0.56、同:0.37~0.86)が、72週以降は有意な差はなくなった(同:0.96、同:0.63~1.45、不均一性:p=0.02)。このような死亡率低下の変動は、コ・トリモキサゾールの投与期間や直近のCD4細胞数とは関連しなかった。コ・トリモキサゾールの予防投与によりマラリア感染の頻度が有意に低下し(オッズ比:0.74、95%信頼区間:0.63~0.88、p=0.0005)、その効果は投与期間と相関した。しかし、WHO stage 4の症状(同:0.86同:0.69~1.07、p=0.17)、CD4細胞数(非投与群との差:-3個/μL、p=0.50)、BMI(非投与群との差:-0.04kg/m2、p=0.68)には有意な効果を及ぼさなかった。著者は、「これらの結果はWHOガイドラインを補強するものである。3剤併用ARTを開始したアフリカ人HIV感染者には、少なくとも72週のコ・トリモキサゾールの予防投与を併用するという治療戦略の強い動機づけとなるだろう」と結論している。(菅野守:医学ライター)

4090.

新型インフルの最初の感染流行期、子どもの感染率は予想の10倍以上だった

イギリスにおける最初の2009パンデミックインフルエンザA H1N1ウイルスの感染流行期に、発病率が高い地域では子どもの約3人に1人がH1N1ウイルスに感染しており、これは当初の予想の10倍以上に相当することが、イギリス健康保護局(HPA)感染症センターのElizabeth Miller氏らによる調査で明らかとなった。2009年6月11日、WHOがブタを起源とするインフルエンザA H1N1の世界的な感染爆発を宣言したのを受け、イギリスでは感染の伝搬をリアルタイムで把握するモデルの構築を中心とする対策が進められた。H1N1ウイルスによる将来的な疾病負担やワクチンなどによる介入の効果をモデル化するには、年齢別の免疫獲得の状況や感染率を知ることが重要だという。Lancet誌2010年3月27日号(オンライン版2010年1月21日号)掲載の報告。年齢別の抗体価32倍以上の検体率を感染流行期の前後で比較研究グループは、イギリスにおけるH1N1ウイルスの感染状況を調査する横断的血清学研究を実施した。イギリス健康保護局による血清疫学プログラムの年次検体採取の一部として、2008年(H1N1ウイルス感染流行第1波の前)に1,403の血清検体を採取し、2009年8~9月(感染流行第1波の後)には1,954検体を集めた。抗体価は赤血球凝集抑制試験およびマイクロ中和試験で測定した。年齢別に2008年のH1N1ウイルスに対する抗体の保有率を算出し、赤血球凝集抑制抗体価が感染防御反応とされる32倍(1:32)以上に達した検体の割合を第1波の前後で比較した。子どもはワクチン接種の主要ターゲット感染流行第1波前の血清検体では、赤血球凝集抑制試験およびマイクロ中和試験による抗体価は加齢とともに有意に増加した(F検定:p<0.0001)。赤血球凝集抑制試験による抗体価が32倍以上の検体率は、0~4歳児の1.8%(3/171検体)から80歳以上の高齢者の31.3%(52/166検体)の範囲にわたった。ロンドンおよびウェストミッドランドでは、感染流行第1波前に対する第1波後の、赤血球凝集抑制抗体価32倍以上の検体率の増加分は、5歳未満の子どもが21.3%、5~14歳が42.0%、15~24歳が20.6%であり、25歳以上の年齢では差を認めなかった。他の地域では、第1波前に比べ第1波後に有意な増加(6.3%)を示したのは15歳未満の子どもだけであった。著者は、「H1N1ウイルスの最初の感染流行期に、インフルエンザによる発病率が高い地域では、子どもの約3人に1人がH1N1ウイルスに感染しており、これは当初の予想の10倍以上に相当する。すでに抗体を保有している高齢者は感染率が低かった」と結論し、「子どもはインフルエンザの伝搬において中心的な役割を担うため、自身のみならず他者への感染予防の観点から、集団免疫によるワクチン接種の重要なターゲットとなる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4091.

注射薬物使用者におけるHIV対策の普及率は世界的に極めて低い

注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの世界的な普及率は極めて低いことが、オーストラリアNew South Wales大学薬物・アルコール研究センターのBradley M Mathers氏らによる系統的なレビューで明らかとなった。2007年現在の全世界の注射薬物使用者数は1,100~2,120万人にのぼり、そのうち80~660万人がHIVに感染したと推定される。これまで、注射薬物使用者におけるHIV対策の実態調査は行われていたが、普及状況の量的な検討はなされていなかったという。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月1日号)掲載の報告。注射薬物使用者におけるNSPs、OST、ARTの普及率を算出研究グループは、注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの普及状況について系統的なレビューを実施した。2004年以降に発行された審査論文(Medline、BioMed Central)、インターネット、灰色文献(grey-literature)のデータベースを系統的に検索した。国連機関や各国の専門家に当たってデータの提供依頼や照合を行った。各国のデータは、注射薬物使用者に対する主要な介入[注射針および注射器プログラム(NSPs)、オピオイド補充療法(OST)、その他の薬物治療、HIV検査と診察、抗レトロウイルス療法(ART)、コンドームプログラム]の規定の範囲内で取得した。注射薬物使用者集団の規模の予測値に基づいて、NSPs、OST、ARTの普及率を算出した。普及率には地域、国レベルで大きな差、世界的には極めて低い2009年までに、NSPsが82ヵ国で、OSTが70ヵ国で実施され、両方の介入が導入されたのは66ヵ国であった。地域および国レベルの普及率には実質的な差が認められた。注射針と注射器の配布は、オーストラリアが注射薬物使用者1人当たり年間に202と圧倒的に高かったのに対し、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国は0.3、中東および北アフリカは0.5と低く、最低はサハラ以南のアフリカの0.1であった。注射薬物使用者100人当たりのOSTの施行数は、中央アジア、ラテンアメリカ、サハラ以南のアフリカの1以下から、西ヨーロッパの61までの差が認められた。HIV陽性の注射薬物使用者100人当たりのART施行数は、チリ、ケニア、パキスタン、ロシア、ウズベキスタンが1以下であり、6つのヨーロッパ諸国は100以上であった。世界全体では、注射薬物使用者1人当たりの月間の注射針と注射器の配布数は2(範囲1~4)、100人当たりのOSTは8(範囲6~12)であり、HIV陽性者100人当たりのART施行数は4(2~18)であった。著者は、「注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの世界的な普及率は極めて低い」とし、「この高リスクの集団に対し、早急にこれらのサービスの拡充を図る必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4092.

「ラクトフェリン」による内臓脂肪細胞の脂肪分解促進効果を確認

ライオン株式会社研究開発本部は23日、京都府立医科大学・西野輔翼教授、京都市立病院・吉田俊秀教授、名古屋市立大学大学院・飯郷正明客員教授、東京大学・加藤久典教授、北海道大学大学院・宮下和夫教授、細川雅史准教授と共同で、牛乳・母乳などに含まれる多機能性タンパク質「ラクトフェリン」が、成熟した内臓脂肪細胞に対して、脂肪滴の分解阻害タンパクであるペリリピン量を低下させることで、脂肪分解促進作用に関与することを世界で初めて見出したと発表した。また、東京大学大学院・清水誠教授、戸塚護准教授らと共同で、ラクトフェリン」に「ラブレ菌」を配合した腸溶錠が、腸内環境改善効果を示すことをヒト試験にて確認したという。「ラクトフェリン」は多くの哺乳動物の乳に含まれており、ヒトの母乳、特に出産後数日の間に多く分泌される「初乳」に最も多く含まれているタンパク質の一種。外部から進入する細菌ウイルスからの攻撃を防ぐ防御因子の一つと考えられている。整腸作用(腸内の悪玉菌を減らし、善玉菌の増殖を助ける)、免疫賦活、大腸がん予防などの多様な生理活性をもつ物質として注目されている。この研究成果は『日本農芸化学会2010年度大会(2010年3月27日~30日 東京大学駒場キャンパス)』、および『第64回日本栄養・食糧学会大会(2010年5月21日~23日 アスティとくしま)』において発表される予定とのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.lion.co.jp/ja/company/press/2010/pdf/2010033.pdf

4093.

HIV感染者への結核診断アルゴリズム

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者に対しては、結核スクリーニングが、早期診断と抗レトロウイルス療法とイソニアジド予防投与を安全に開始するために推奨されている。しかし、慢性的な咳についてのスクリーニングは一般的に行われているものの、その最適方法について、エビデンスに基づく国際的に認められたガイドラインは今のところない。米疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らの研究グループは、その開発に取り組んだ。NEJM誌2010年2月25日号より。慢性的な咳による結核の検出感度は低い研究グループは、カンボジア、タイ、ベトナムの、計8つの外来診療所からHIV感染者を継続的に登録した。各々の患者から喀痰3検体と、尿、便、血液、リンパ節吸引液(リンパ節腫脹がある場合)を各1検体採取し、マイコバクテリア培養検査を行った。そのうえで、結核のスクリーニングと診断アルゴリズムを導き出すため、培養検査で陽性だった検体が1つ以上あり結核と診断されたHIV感染者と、結核と診断されなかった患者の特性を比較した。試験の結果、HIV感染者1,748例[CD4+Tリンパ球数の中央値242/mm(3)、四分位範囲:82~396)のうち、267例(15%)が結核と診断された。慢性的な咳(過去4週間で2~3週間以上続いた)を指標とした場合の結核の検出感度は、22~33%だった。継続しない咳、発熱、長く続く寝汗も問診すべき一方、過去4週間で、「継続期間を問わない咳」と「発熱」、さらに「3週間以上続く寝汗」の3つの症状がみられた場合の結核の検出力は、感度は93%、特異度は36%だった。これら症状のいずれかを伴う1,199例の患者において検討した結果、結核陽性の診断除外には、「喀痰スミア:2検体陰性」「胸部X線:正常」「CD4+細胞数:350/mm(3)以上」が有用だった。「喀痰スミア:1検体以上陽性」で結核陽性と診断された患者は113例(9%)に過ぎず、大半の患者はマイコバクテリア培養検査を要した。これらから研究グループは、HIV感染者における結核スクリーニングは、慢性的な咳の症状の有無だけでなく、複合的な症状についても問診しなければならないと述べている。そして、3つの症状(咳、発熱、寝汗)が陰性の患者は、抗レトロウイルス療法とイソニアジドの予防投与は問題なく開始できるとしつつも、大半のHIV患者の結核診断にはマイコバクテリア培養検査が必要だろうと結論づけた。(医療ライター:朝田哲明)

4094.

小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」2月24日発売

ワイス株式会社は、昨年10月16日に製造販売承認を受けた7価肺炎球菌結合型ワクチン「プレベナー」(製品名:プレベナー水性懸濁皮下注)を2月24日から発売したと発表した。プレベナーは、肺炎球菌による細菌性髄膜炎、菌血症などの侵襲性感染症を予防する国内初の小児用肺炎球菌結合型ワクチン。接種対象は、生後2カ月齢から9歳以下の小児。現在101の国・地域で承認されている。●詳細はプレスリリースへhttp://www.wyeth.jp/news/2010/0223.asp

4095.

病態安定HIV感染患者、ラルテグラビル切り替え効果の非劣性示せず:SWITCHMRK 1、2試験

ロピナビル-リトナビル(商品名:カレトラ)ベースのレジメンでヒト免疫不全ウイルス(HIV)が抑制され病態が安定しているHIV感染患者において、同薬剤による脂質異常などの有害事象の回避を目的にラルテグラビル(同:アイセントレス)へ切り替える治療法は、ロピナビル-リトナビルを継続した場合に比べウイルス抑制効果が劣るため許容されないことが、2つの多施設共同試験(SWITCHMRK 1、2試験)で示された。HIV-1インテグラーゼ阻害薬という新たなクラスの経口抗HIV薬であるラルテグラビルは、プロテアーゼ阻害薬であるロピナビル-リトナビルにみられる脂質異常などの有害事象がなく、未治療例、既治療例ともに有効性が確認されている。病態が安定したHIV感染患者には、ウイルス抑制効果が同等であれば、より簡便で有害事象の少ない治療法が望ましい。アメリカ・ノースカロライナ大学のJoseph J Eron氏が、Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月13日号)で報告した。切り替え群と継続群で脂質の変化率、ウイルス抑制効果、安全性を評価SWITCHMRK試験の研究グループは、ロピナビル-リトナビルをベースとする併用レジメンでウイルスが抑制され病態が安定しているHIV感染患者において、ラルテグラビルへの切り替えとロピナビル-リトナビル継続の安全性と有効性を比較する二重盲検ダブルダミー無作為化第III相試験を実施した。対象は、ロピナビル-リトナビルをベースとするレジメンにより血漿ウイルスRNA濃度がPCR法で50コピー/mL未満あるいは分岐DNA法で75コピー/mL未満の状態が3ヵ月以上持続している18歳以上のHIV感染患者。2007年6月~2008年5月までに、2つの試験に5ヵ国81施設から848例が登録され、707例が適格基準を満たした。ロピナビル-リトナビルからラルテグラビル(400mg×2回/日)への切り替え群に353例が、ロピナビル-リトナビル(200mg/50mg×2錠×2回/日)継続群には354例が無作為に割り付けられた。いずれの群も、2つ以上のヌクレオシド系あるいはヌクレオチド系逆転写酵素阻害薬を併用することとした。主要評価項目は、試験開始から12週までの血清脂質値の平均変化率、24週におけるウイルスRNA濃度<50コピー/mLの患者の割合、24週までの有害事象の頻度とした。切り替え群は血清脂質値が低下したが、ウイルス抑制効果が予想以上に低い2つの試験を合わせ、少なくとも1回の治療を受けた702例が有効性および安全性の評価の対象となった(切り替え群:350例、継続群:352例)。血清脂質の変化率は、2試験ともに切り替え群が継続群に比べて有意に大きく(p<0.0001)、両試験を合わせた総コレステロール値の変化率は切り替え群が-12.6%、継続群が1.0%、非HDLコレステロール値はそれぞれ-15.0%、2.6%、トリグリセライド値は-42.2%、6.2%であり、いずれも切り替え群が良好であった。24週の時点でウイルスRNA濃度<50コピー/mLの患者の割合は、切り替え群の84.4%(293/347例)に対し継続群は90.6%(319/352例)であり、切り替え群が6.2%低かった。臨床的な有害事象および検査値異常の頻度は両群で同等であった。重篤な薬剤関連有害事象や治療関連死は認めなかった。中等度~重度の有害事象のうち1%を超えたのは継続群の下痢(3%)のみであった。切り替え群のウイルス抑制効果が継続群に比べ予想以上に低かったため、両試験は24週の時点で中止された。著者は、「血清脂質値は、ラルテグラビルへの切り替え群がロピナビル-リトナビル継続群に比べ低下したが、切り替え群の継続群に対するウイルス抑制効果の非劣性は示されなかった」と結論している。さらに、「事後解析では、切り替え群のうち特に本試験登録前の抗HIV治療が無効であった症例でウイルス抑制効果が低かったのに対し、前治療無効歴のない症例では両群のウイルス抑制効果は同等であった。無作為割り付け前に前治療無効歴の有無で層別化しなかったことが、データの解釈を混乱させた可能性がある」と指摘し、「日常診療においてレジメン変更のリスクとベネフィットを考慮する際は、過去の薬剤耐性検査や治療結果などの背景情報を可能な限り収集すべきである」としている。(菅野守:医学ライター)

4096.

ロタウイルスワクチンの接種効果:アフリカからの報告

ロタウイルスは、世界的に乳幼児における重症胃腸炎の最も頻度が高い原因として知られる。世界保健機構(WHO)によれば、ロタウイルス感染による年間の小児死亡例は推定52万7,000例で、そのうち23万例以上は、サハラ以南のアフリカで起きているという。南アフリカのWitwatersrand大学疾病ワクチン予防研究部門のShabir A. Madhi氏らは、アフリカの1歳未満児におけるロタウイルスワクチンの有効性に関する臨床試験を実施。その結果、1歳未満での重症ロタウイルス胃腸炎発生の有意な低下が確認できたと報告した。同地域は貧困が深刻で医療資源が限られており、ワクチン接種による重症化予防が期待されている。NEJM誌2010年1月28日号より。乳児約5,000例を、3回or2回接種群、プラセボ群に無作為化し追跡Madhi氏らは、南アフリカ共和国とマラウイ共和国両国の複数施設から健康な乳児を登録し、重症ロタウイルス胃腸炎予防に関する、経口ロタウイルス生ワクチンの有効性を評価する無作為化プラセボ対照試験を行った。試験に登録された乳児は、南アフリカから3,166児(全体の64.1%)、マラウイから1,773児(同:35.9%)の計4,939児で、1:1:1の比率で無作為に、ワクチン2回投与群(プラセボ投与1回を含む3回投与群も含む、1,647例)、ワクチン3回投与群(1,651例)、プラセボ3回投与群(1,641例)に割り付けられ追跡された。ワクチン接種は、生後6週目、10週目、14週間目に行われた。積極的な追跡サーベイランスで、1歳未満に起きた野生型ロタウイルスによる胃腸炎症状エピソードの評価を行い、Vesikariスケールで類型化した。重症ロタウイルス胃腸炎に対するワクチン有効性は61.2%有効性解析に含まれたのは4,417児。そのうち重症ロタウイルス胃腸炎の発生は、プラセボ群で4.9%、ワクチン接種群は1.9%で、ワクチンの有効性は61.2%(95%信頼区間:44.0~73.2)だった。ワクチン有効性は、マラウイ(49.4%)の方が、南アフリカ(76.9%)より低かった。しかし重症ロタウイルス胃腸炎が予防された症例数は、マラウイ(6.7例/ワクチン接種100児年)の方が、南アフリカ(4.2例/ワクチン接種100児・年)より多かった。原因を問わない重症胃腸炎に対するワクチン有効性は、30.2%だった。一つ以上の重篤な有害事象は、ワクチン接種群は9.7%、プラセボ群では11.5%報告された。(医療ライター:朝田哲明)

4097.

ロタウイルスワクチンの接種効果:メキシコからの報告

メキシコでは2006年2月から2007年5月にかけて、小児に対する一価ロタウイルスワクチン接種が段階的に導入された。その有効性を評価するため、メキシコ保健省青少年保健センター(CENSIA)のVesta Richardson氏らは2008年と20009年に、メキシコ小児の下痢関連死について調査を行った。結果、有意な低下が確認され、ロタウイルスワクチン接種の有効性が示唆されたと報告した。NEJM誌2010年1月28日号より。5歳未満児のワクチン接種の有効性を、死亡データを用いて評価Richardson氏らは、2003年1月~2009年5月のメキシコ5歳未満児の下痢による死亡のデータを入手し、ロタウイルスワクチン導入前(2003~2006年)をベースラインとし、2008年および2008~2009年のロタウイルス流行期との、下痢関連死亡率に関する比較を行った。ワクチンの1回接種率は、行政データから、2007年12月までに生後11ヵ月以下の乳児で、約74%に上ると推計された。ワクチン接種導入後は下痢関連死亡率が5歳未満児35%、0歳児41%減少解析の結果、2008年の5歳未満児の下痢関連死亡は1,118例で、2003~2006年(ベースライン)死亡例の年間中央値1,793例より、675例減少していた。下痢関連死亡率でみると、ベースラインで10万児当たり18.1例だったものが、2008年には同11.8例に減少しており、減少率は35%(95%信頼区間:29~39、P

4098.

ロタウイルスワクチンの接種効果:米国SCID乳児でウイルス感染例が報告

米国で、経口5価ロタウイルス生ワクチン(RV5)の接種を受けた、重症複合型免疫不全症(SCID)の乳児3児が、同ウイルスに感染したことが報告された。いずれの乳児も、同ワクチンの初回または2回目の接種後1ヵ月以内に、脱水症状や下痢を起こし、その後、SCIDであることが判明したケースだという。米国Baylor大学のNiraj C. Patel氏らの症例報告によるもので、NEJM誌2010年1月28日号で発表された。米国では2006年にRV5が承認を受け、その後、乳児へのルーチン摂取が行われるようになっている。脱水や重度下痢、成長障害など引き起こすPatel氏らの報告によると、1児は、生後2ヵ月と4ヵ月に、RV5の接種を受けたケース。その後、生後5ヵ月の時、脱水、重度の下痢、代謝性アシドーシス、成長障害、肺炎で入院した。2児目は、生後2ヵ月と4ヵ月でRV5を接種し、2回目を受けた6日後、ショック症状、脱水、水溶状の下痢を起こしたケース。3児目は、生後2ヵ月でRV5を接種後、重度の下痢、成長障害、呼吸促迫を起こしたケースだった。なおいずれの乳児も、集団保育は受けていなかった。RV5投与前にSCID検査の実施が望ましい3児の便について、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)定量法と遺伝子配列分析を行った結果、RV5ワクチンに含まれるウシロタウイルス(WC3)が検出された。RV5は親株となるWC3と4種のヒトロタウイルスを合わせ、弱毒化したもの。これまでに、WC3様のウシロタウイルスの、ヒトへの感染例は報告されていなかった。この結果を受け、Patel氏らは、SCIDの家族歴がない乳児に対し、SCIDの有無を事前に見極めずにRV5ワクチンを接種することは「あり得るかもしれない」とした上で、新生児に対して行う血液検査の中で、SCIDの有無を見極めることで、医師による乳児に対するワクチン投与の、より効果的な選択を可能にし、ワクチン投与に伴う病気の発症予防にもつながると述べている。米国では、新生児に対し、より頻度の高い遺伝性疾患に関する血液検査を行っており、その際、SCIDの有無を検査している州もあるという。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4099.

C. difficile感染再発を抑制する新たな治療法

 Clostridium difficile(C. difficile)感染の再発に対して、抗C. difficileモノクローナル抗体(CDA1+CDB1)が有効であることが報告された。米国Medarex社のIsrael Lowy氏ら研究グループが行った第II相無作為化試験の結果、抗菌薬投与中の患者への追加投与で再発の有意な減少が確認されたという。C. difficileは通常は病原性を有さないが、抗菌薬投与による腸内細菌叢の乱れによってトキシンの産生が誘発され、下痢症や大腸炎の病原菌となる。ここ10年ほど欧米では、広域スペクトラム抗菌薬使用の広がりがC. difficile疫学を変えたと言われるほど、毒性が強いC. difficile(BI/NAP1/027株)の出現、治療失敗や感染症再発の増大、および顕著な死亡率増加がみられるようになり問題になっている。NEJM誌2010年1月21日号掲載より。抗菌薬に完全ヒトモノクローナル抗体を追加投与第II相試験は無作為化二重盲検プラセボ対照で行われた。症候性のC. difficile感染でメトロニダゾール(商品名:フラジール)かバンコマイシンを投与されていた患者に対し、抗C. difficileモノクローナル抗体(CDA1+CDB1)かプラセボを、10mg/kg体重、単回静注した。2006年7月から2008年4月の間に、米国およびカナダの30施設で、18歳以上の患者200例が登録。モノクローナル抗体投与群は101例、プラセボ投与群は99例だった。主要転帰は、モノクローナル抗体かプラセボを投与後84日以内に、検査で確認された感染再発とした。再発率は、抗体群7%、プラセボ群25%C. difficile感染再発率は、抗体群7%、プラセボ群25%で、モノクローナル抗体投与群の方が低かった(P

4100.

DNAマイクロアレイを用いた新たな敗血症アッセイの有効性を確認

新たに開発されたDNAマイクロアレイによる敗血症アッセイは、従来のgold standardである血液培養法に比べ、細菌の同定における感受性、特異度が優れるうえに、より迅速に結果が得られることが、フィンランド・ヘルシンキ大学病院検査部のPaivi Tissari氏らが行った観察試験で明らかとなった。細菌性敗血症は生命を脅かす疾患であり、世界的に罹患率、死亡率がともに高く、有効な抗生物質が利用可能な先進国でさえも重要な課題となっている。罹患率や死亡率増大の原因として、原因菌の種類を同定せずに不適切な広域スペクトラムの抗菌薬を使用したり、適切な治療の遅れが挙げられるという。Lancet誌2010年1月16日号(オンライン版2009年12月10日号)掲載の報告。培養陽性の2,107検体を、従来法と新規のアッセイで検査研究グループは、DNAマイクロアレイをプラットフォームとして新たに開発された敗血症アッセイ「Prove-it Sepsis」の感受性、特異度、所要時間の検討を行った。臨床的に敗血症が疑われる患者の3,318の血液検体のうち、血液培養で陽性を示した2,107の検体について、従来の培養法と新規の敗血症アッセイにより細菌の種類の同定を行った。アッセイに用いられた新たなPCR/マイクロアレイ法は、50種類のバクテリアのgyrB、parE、mecA遺伝子を増幅して検出するもの。検査アッセイを取り扱う検査員には培養結果は知らされなかった。臨床・検査標準協会(CLSI)の勧告に基づいて、感受性、特異度、所要時間が算出された。感受性94.7%、特異度98.8%、所要時間は従来法より18時間短縮培養陽性の2,107検体のうち1,807検体(86%)から、アッセイが検出対象とする病原菌が検出された。アッセイの感受性は94.7%、特異度は98.8%であり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感受性と特異度はともに100%であった。検出までの所要時間は、従来の培養法が実働日数で1~2日を要するのに対し、アッセイはこれより平均18時間早かった。3,284検体のうち34検体(1.0%)が、技術的な問題や検査員の誤操作のために除外された。著者は、「PCR/マイクロアレイを用いた敗血症アッセイは、細菌種の最終的な同定において高い感受性と特異度を示し、従来法よりも迅速な検査が可能である」と結論し、「本アッセイはプライマリ・ケアの日常診療に容易に導入できる。現在、先進国、開発途上国の双方で、このアッセイが患者の予後やマネジメント、さらに種々の病原菌のルーチンな迅速診断の実行にどの程度貢献するかについて、プロスペクティブな調査を行っている」としている。(菅野守:医学ライター)

検索結果 合計:4273件 表示位置:4081 - 4100