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ロタウイルスワクチン予防接種プログラム、導入初年度から明らかなインパクト

 フィンランド国立健康福祉研究所(THL)のTuija Leino氏らは、同国で2010年に導入されたロタウイルスワクチン予防接種プログラムの初年度の影響について推定評価を行った。その結果、重症度、病院での治療、ロタウイルス胃腸炎の型について明らかに管理コントロールできたことを報告した。Vaccine誌オンライン版2010年11月1日号の掲載報告。 研究グループは、ロタウイルスワクチン予防接種プログラム導入後初年度のフィンランドにおける、病院で治療された急性胃腸炎の負荷について、および重症ロタウイルス疾患の負荷について推定することを目的とした。また、接種したワクチンによって生じた免疫が非特異的な疾患負荷をも防御するという仮説を検討するというワクチン探索的研究の意図も目的に含んだ。 ロタウイルス関連のアウトカムは、ICD 10コードを用いてコーディングされた国立病院退院レジスターに登録されるデータに基づいた。 5歳未満児の急性胃腸炎またはロタウイルス胃腸炎による入院および外来症例の発生率を、プログラム導入前(1999~2005年)とプログラム開始後(2010年)とで比較した。 利用したICD 10コードは、A00~A09、R11、K52であった。 主な結果は以下のとおり。・プログラム導入前と比較した導入後の疾患負荷の減少率は、1歳未満児において、入院ロタウイルス胃腸炎患児においては80.3%(95%CI:74.5~84.7)であり、感染性胃腸炎の総入院患者負荷でみた場合は同一年齢グループで53.9%(同:49.8~57.7)であった。・同じく外来患者についても、それぞれ78.8%(同:48.4~91.3)、12.5%(同:7.1~17.7)の減少がみられた。・ロタウイルス胃腸炎に対する2010年ロタウイルスシーズン前のワクチン接種の全体的なインパクトは、97%(同:90.7~99.0)であった。・ロタウイルス胃腸炎と細菌未特定だがロタウイルス胃腸炎とみなされた症例について、ともに総発症数が減少した場合に獲得可能な総疾患負荷の住民ベース推計は、1歳未満児のロタウイルス胃腸炎入院で1,000人・年当たり10.5であった。一方で、診断特異的発生率はその半分以下の4.9であった。・総疾患負荷は、ワクチン導入後は診断症例よりもエンドポイントとして、より価値があるが、本研究は、ワクチン導入後のフォローアップが非常に短期であり限定的なものである。

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子宮頸がん治療後のフォローアップではHPV検査の実施が有効で費用対効果あり/BMJ

 子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)治療後に行うヒトパピローマウイルス(HPV)検査の費用対効果について、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのRosa Legood氏らによる経済解析の結果、フォローアップでの実施は有効であり、細胞診のみによるフォローアップと比べてコスト削減につながることを報告した。先行研究では見解が一致しておらず、研究グループは、国民保健サービス(NHS)のSentinel Sites Studyのデータを用いて解析を行った。BMJ誌2012年11月10日号(オンライン版2012年10月31日号)掲載より。細胞診のみでのフォローアップとHPV検査併用の費用対効果を比較 CIN治療後のHPV検査の費用対効果の評価は、Markovモデル手法を用いて、NHSのSentinel Sites Studyからの医療費コストと疫学データと、先行研究からの治療後再発率データを統合した、経済解析によって行った。 NHSの子宮頸がんスクリーニング・プログラムに基づき、マネジメント・ガイドラインに即したCIN処置後10年にわたって毎年行われる細胞診フォローアップと、HPV検査を用いた代替プロトコルとの、治療後サーベイランスにおける総額費用の低下について比較した。 主要評価項目は、10年間で予防できたグレード3以上(CIN3+)の基底細胞がん症例数と、治療を受けた女性1,000人当たりのコストとした。治療後フォローアップのHPV検査は費用対効果に優れる 解析の結果、細胞診のみフォローアップ群では10年間で29例のCIN3+の基底細胞がん再発症例が認められ、コストは治療女性1,000人当たり35万8,222ポンド(44万426ユーロ、57万4,910ドル)だった。 Sentinel Sitesプロトコルによる細胞診陰性女性を対象とした治療のためのHPV検査の実施は、8.4例のCIN3+症例の予防が追加され、治療女性1,000人当たりのコストは9,388ポンド減少した。 これらの分析結果から研究グループは、フォローアップのためのHPV検査は有効で、細胞診のみによる場合と比べて医療費の削減になるだろうと述べ、その上で、「NHS Cervical Screening ProgrammeでCIN治療後に行うフォローアップのHPV検査の実施を全面的に支持する」とまとめている。

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平本式 皮膚科虎の巻

第1回「まずは、皮膚科診療の流れ」第2回「ステロイド外用剤で“湿疹”成敗 !」第3回「湿疹に擬する曲者を見破る ! その1」第4回「湿疹に擬する曲者を見破る ! その2」 第1回「まずは、皮膚科診療の流れ」まずは、内科における皮膚科診療の流れを振り返ります。皮膚疾患の患者さんにまずどうやって対応するか? 放置観察か、紹介か、治療か ? …治療するならステロイドを使う ? まずは診療所でするべきこと、してはいけないことを確認してください。第2回「ステロイド外用剤で“湿疹”成敗 !」「よくわからないけど、たぶん湿疹だろう。とりあえずステロイドと抗生剤の合剤を出しておこう」… こんな診断・治療をした経験はありませんか? あるいは「なんとなくステロイドを処方することをためらってしまう」という先生も多いのでは?ステロイド外用剤によってかえって症状が悪くなる疾患もありますが、皮膚炎症の多くに対して有効な武器となるのがこの薬剤。「本当に処方してよかったのだろうか、どうも自信がない」、こんな不安は今日からなくなります。尚、ステロイド外用剤が禁忌となる疾患については第3、4回で詳しくご紹介します。第3回「湿疹に擬する曲者を見破る! その1」 第4回「湿疹に擬する曲者を見破る! その2」前回までのお話で、表皮の炎症である湿疹には、ステロイドの使い分けで、診療所でも十分に対応できることがお分かりいただけたと思います。しかし、皮膚疾患の中にはステロイドを塗ってしまっては症状を悪化させてしまう、湿疹と紛らわしい症例も沢山あります。そこで今回から2回に渡り、ステロイドを禁忌とする疾患の見分け方を詳しく解説していきます。第3回では「ウィルスと細菌による疾患の見分け方」、第4回では「ムシとカビ」について解説します。平本先生が数十年かけて培った、現場での臨床技術。ほかのどんな教科書にも載っていない秘伝の技術を是非ご覧下さい !

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ロタウイルスワクチン接種は、ローコストでハイリターン

 ロタウイルスワクチン接種は、わずかなコストにより、相当な疾患負担を減少することが、カナダ・トロント大学のDavid N Fisman氏らによる検討の結果、報告された。ロタウイルス胃腸炎は世界中の小児における罹患率と死亡率の要因となっており、カナダを含む高所得国では、高い罹患率とヘルスケア利用は大きな負担となっている。カナダでは現在、2種のロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス、ロタテック)が承認されているが、これまで経済効果については調査されていなかったという。Vaccine誌オンライン版2012年10月26日号の掲載報告。 研究グループは、2つのモデル(マルコフ連鎖モンテカルロ法シミュレーションと、ブリティッシュコロンビア州小児のロタウイルス胃腸炎に関する動的伝播モデルシミュレーション)による経済解析を行った。モデルは、疾患自然史、疫学情報、ワクチンの有効性およびコスト、医療費について入手可能な最善のデータに基づいて示され、ヘルスケア利用、ワクチン普及率は経験的推定値とすり合わせて調整した。それら予測値の検証について、決定論的・確率論的感度解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・小児のロタウイルス胃腸炎に対する予防接種は、小児への接種100人につき63~81人の感染を防御することが予測された。外来患者については、相当数を防御すると予測された。・2種のワクチンはともに、小児への接種100人につき1~2件の入院を防御すると予測された。・ワクチン接種は、ヘルスケアコストを増加すると予測された。・ロタリックスによる予防接種はおよそ1感染防御につき10ドルのコストを要し、2,400ドルQALYを獲得する可能性が示された。ロタテックは、コストが多いが効果は低く、優先的に選ばれない可能性が示された。・それらの可能性は、広範囲の感度解析でも揺るがなかった。

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HIV 感染症を難病指定に

神戸大学感染症内科岩田 健太郎2012年11月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。厚生労働省によると、これまで56しかなかった難病指定疾患を300以上に増やす予定だという。この難病にHIV感染症および後天性免疫不全症候群(エイズ)(以下、HIV感染症とまとめる)を含めるべきだ、というのが本論の主旨である。以下にその理由を示す。難病対策委員会によると、難病の選定基準は1. 患者数が人口の0.1%程度以下2. 病気が未解明3. 治療法がないか、治療法があっても症状が良くなったり悪くなったりする4. 生活への支障が生涯にわたる5. 診断基準か客観的な指標があるの全てを満たす場合に対象となるという(朝日新聞2012年10月31日朝刊より)。HIV感染症は現在482あるという難病研究事業の対象にはなっていないが、患者は現在分かっているだけで数万人規模であり(1)、条件1は満たす。条件2と3についてはどうだろうか。エイズはヒト免疫不全ウイルス(HIV)が原因の細胞性免疫不全である。病気のメカニズムはある程度分かっており、抗ウイルス療法も存在する。しかし、この疾患はいまだ治癒に至る方法は解明されていない。「解明」がどの程度を意味するものなのかは分からないが、難病指定されている筋萎縮性側索硬化症(ALS)などもスーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD1)の遺伝子異常など、病態生理はある程度「解明」されているので、HIV感染症を除外する根拠には乏しいと考える(2)。抗ウイルス療法を用いて患者の予後は劇的に改善したが、症状が悪くなる場合も少なくない。治療は生涯にわたり、生活への支障は続く(条件4)。診断基準は明確だ(HIVの各種検査を行う、条件5)。難病指定してはいけない、という根拠は乏しい。現在、HIV感染患者には診療費の公費助成がある。その主たるものは免疫不全の程度に応じて得られる身体障害者認定と自立支援医療である(3、4)。もともと、薬害エイズ事件など「薬害」の要素が大きかったこの感染症患者の救済の手段として身体障害者制度は活用された(5)。しかし、現実には多くの患者には「身体障害」は存在せず、そういう患者では日常生活を送ったり仕事をすることも可能であるから、この制度をアプライするには若干の無理がある。また、「症状の固定」まで4週間の経過を見なければ障害者認定は受けられないため、その分、治療が遅れたり余分な(そして高額な)治療費がかかる。近年のHIV感染治療は激変している。以前は免疫抑制がかなり進んでから抗ウイルス療法を開始していたが、治療薬の進歩と臨床試験データの蓄積から、治療はどんどん前倒しするようになった。日和見感染症があっても早期(2週間以内。ただし結核などを除く)に治療を始めたほうが予後が良いケースも多いことが分かっている。障害者認定にかかる「4週間の遅れ」は無視できない遅れなのである。今年発表された診療ガイドライン(International Antiviral Society-USA, IAS-USA)では、すべてのHIV感染者に抗ウイルス療法を提供するよう推奨されている(6)。しかし、免疫不全が進んでいない患者では低い等級の身体障害者認定しか得られないため、十分な診療支援はかなわない。感染早期に治療を始めれば、体内にあるウイルスの量を減らし、さらなる感染者発生防止にも役に立つ。日本は先進国でも新規発生患者が増加している稀有な国の一つである。HIV感染の診療費は生涯1億円程度かかると言われる(7)。患者の早期発見、早期治療、そして予防は医療費の有効活用という観点からも重要である。(免疫不全の程度にかかわらず)すべてのHIV感染者を速やかに難病指定し、適切な治療を提供できるようにする必要がある。患者救済という目的のもと、HIV患者の身体障害者認定は一定の成果を上げてきた。しかし、その成果は「歴史的成果」と称すべきで、現状維持を正当化する根拠にしてはならない。厚生労働省は現状を鑑み、HIV感染者を難病指定に切り替えるべきである。1. 日本のHIV感染者・AIDS患者の状況(平成23年12月26日~平成24年3月25日) IASR Vol. 33 P. 171-173 http://www.nih.go.jp/niid/ja/aids-m/aids-iasrd/2274-kj3888.html2. 筋萎縮性側索硬化症(公費対象) 難病情報センター http://www.nih.go.jp/niid/ja/aids-m/aids-iasrd/2274-kj3888.html3. HIV感染者の身体障害者認定について 厚生労働省 http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0912/h1216-1.html4. 自立支援医療(更生医療)の概要 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/kousei.html5. HIV感染者が免疫機能障害として、身体障害者認定を受けるまでの経緯をご存知ですか? はばたき福祉事業団 http://old.habatakifukushi.jp/hiv_medical_welfare/medical_treatment_welfare_system/hiv_55.html6. Lawn SD,Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection. IAS-USA. https://www.iasusa.org/content/antiretroviral-treatment-adult-hiv-infection-07. 世界は減少、日本は増加…1人に約1億円医療費必要なHIV感染症を知る 日経トレンディネット 2011年2月28日 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20110224/1034622/

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インフルエンザの乳児、細菌性髄膜炎と菌血症のリスクは非常に低い

 乳児のインフルエンザ罹患症状は重篤な細菌感染症と似通っており、腰椎穿刺のような侵襲的検査が行われる。しかし、インフルエンザが細菌性髄膜炎を併発するとのエビデンスは限られており、それでも腰椎穿刺が行われるのは、実施が考慮される時点でインフルエンザの診断が確立されていない場合がほとんどであるからとされる。オーストラリア・国立ワクチン予防接種疾患研究・サーベイセンターのGulam Khandaker氏らは、腰椎穿刺の実施およびその必要性を考慮するにあたって、インフルエンザを有した小児と、その他の呼吸器感染症を有した小児とを比較する後ろ向き研究を行った。 研究グループは、オーストラリア シドニーのウェストミード小児病院で、冬季1シーズン中に検査確認されたインフルエンザまたはその他の呼吸器ウイルス感染症(ORVIs、RSウイルスは除外)を有したすべての小児について、後ろ向きカルテレビューを行った。 侵襲的検査(主として腰椎穿刺、血液培養も対象とする)の実施例をインフルエンザ群と非インフルエンザ群で比較し、その必要性を検討した。 また、細菌性髄膜炎または菌血症の同時罹患率も調べた。 主な結果は以下のとおり。・対象患児294例中、51%が検査確認されたインフルエンザ患児であり、49%がORVIs(パラインフルエンザウイルス34%、アデノウイルス15%)患児であった。・インフルエンザ群のうち、18%が腰椎穿刺を、71%が血液培養を受けていた。一方、ORVIs群はそれぞれ6.3%、55.5%であった(いずれもp<0.01)。・インフルエンザ群のほうがORVIs群よりも、入院中に腰椎穿刺を受けている傾向が認められた。ORVIsと比較するとインフルエンザのケースでは、入院時に腰椎穿刺を行う可能性は3倍以上に上った。・多変量解析の結果、インフルエンザの診断は、腰椎穿刺(p=0.02)、血液培養(p=0.05)を実施に関してそれぞれ強力な因子であった。・インフルエンザを有した患児で、菌血症を伴ったのは1例(0.9%)であった。髄膜炎を有した患児はいなかった。・インフルエンザが入院時にベッドサイド検査で確認されている場合は、臨床医は安心感から腰椎穿刺を行わない傾向がある。一方で、もし髄膜炎が臨床的に疑われるようであれば、それに応じた対応をしなければならない。・しかし、インフルエンザやORVIsで入院した小児では、細菌性髄膜炎と菌血症のリスクは非常に低いことが認められた。本知見について、大規模な試験設定でのシステマティックレビューを行う必要がある。

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ロタウイルスワクチン、市販後の有効性モニタリングで大切なこと

 スペインでは2006年に、2種の経口弱毒生ロタウイルスワクチンが、6ヵ月未満児のために認可された。そのワクチン有効性について最近のデータで、ばらつきがある可能性が示されたという。スペイン・カステロン公衆衛生センターのJuan B Bellido-Blasco JB氏らは、このことはロタウイルスワクチンの有効性に関する市販後モニタリングに重大な局面をもたらすものだとして、症例対照研究を行った。Vaccine誌オンライン版2012年10月25日号の掲載報告。 2009年にカステロンにて生後2~35ヵ月児を対象に、ロタウイルスワクチンの有効性を評価した。可能な限りの選択バイアスと関連特異度を評価するため、二次的観察と反事実的観察として、ロタウイルス性下痢症状に対する肺炎球菌ワクチン接種の「有効性」を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ロタウイルス胃腸炎が確認された小児は71例で、ロタウイルス以外が原因であった対照群は261例であった。・各児の予防接種状況、投与量、投与日について地方予防接種レジストリにて評価した結果、ロタウイルス性下痢症状を呈した患児のワクチン接種率は低かった(2.8%)。・対照群のワクチン接種率は21.8%であった。・ロタウイルスワクチンを1回以上接種した場合の有効性は87.7%(45.5~99.7%)であった。・解析を非入院児に限定した場合の同有効性は、わずかに低くなり83.5%(25.4~96.3%)であった。・予想されたことではあるが、肺炎球菌ワクチンのロタウイルス感染症に対する保護効果は認められなかった。・ワクチン有効性の市販後モニタリングは、EDICSのような伝染性胃腸炎発生を住民ベースの研究と組み合わせた予防接種情報システムが適している。

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HAARTを受けているHIV患者、マルチビタミン高用量服用にメリットみられず

 多剤併用抗レトロウイルス療法(HAART)を受けているHIV患者で、マルチビタミンサプリメントを併用する場合の高用量と標準量とを比較した結果、高用量服用により疾患進行および死亡が抑制されることはなく、むしろアラニントランスアミナーゼ(ALT)が増加してしまう可能性が示された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のSheila Isanaka氏らが、タンザニアで行った約3,400例を対象とする無作為化二重盲検対照試験の結果、報告した。先行研究ではHAARTを受けていないHIV患者で、微量栄養素がCD4細胞数を増加し、疾患進行と死亡を抑制したことが報告されていたが、HAARTを受けている場合のサプリメント服用の安全性および有効性については検証されていなかった。JAMA誌2012年10月17日号掲載より。高用量群でALT上昇がみられ、試験は早期に終了 研究グループは、マルチビタミンサプリメントの高用量服用は、標準量服用と比べてHIV進行や死亡のリスクを低下し、免疫学的、ウイルス学的、栄養学的な指標を改善すると仮定して検証試験を行った。 試験は、タンザニアの7つのクリニックで2006年11月~2008年11月の24ヵ月間にわたって、HAARTを開始した3,418例を対象として行われた。 マルチビタミンサプリメントは、ビタミンB6、B12、C、Eなどを含む経口剤で、毎日服用した。 主要評価項目は、HIVのあらゆる要因での疾患進行または死亡とした。 試験は2009年3月に、高用量群でALT値増大のエビデンスにより早期に終了となった。高用量群と標準量群のリスク比、HIV進行および死亡については1.00 試験中止時点で3,418例が試験に登録(追跡期間中央値15ヵ月)しており、疾患死高イベントが認められたのは2,374例、死亡は453例観察された(複合イベント合計2,460件)。 標準用量群と比べて高用量群のHIV進行および死亡の抑制は認められなかった。 高用量群のHIV進行および死亡の絶対リスクは72%、標準群も72%だった[リスク比(RR):1.00、95%信頼区間(CI):0.96~1.04]。 高用量服用によるCD4細胞数や血漿中ウイルス量、BMI、ヘモグロビン濃度への効果はみられなかった。一方で、高用量群では標準量群に比べてALTの有意な上昇がみられた(>40 IU/L上昇のRR:1.44、95%CI:1.11~1.87、p=0.006)。

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【日本癌治療学会2012】わが国における泌尿器内視鏡の発展

 第50回日本癌治療学会学術集会(2012年10月25日~27日)のシンポジウム「泌尿器がん治療の過去と未来」にて、西松寛明氏(東京大学医学部泌尿器科)は、「わが国における泌尿器内視鏡の発展」と題して、日本における泌尿器内視鏡の進歩と今後の展望について講演を行った。●膀胱鏡の進歩 日本で最初に国産の膀胱鏡が開発されたのは1919年であり、1963年にはカラーモニターを備えた膀胱鏡が、1973年にはファイバースコープが導入された。その後、近年の膀胱鏡の開発の方向性は、ハイビジョンによる画像の向上のほか、Photodynamic Diagnosis(PDD)やNarrow Band Imaging(NBI)、STORZ Professional Image Enhancement System(SPIEs)などの診断精度の向上、そして膀胱鏡で観察している部位を明確にするため、磁気チップを用いたマッピングやナビゲーション・システムに焦点があてられている。 PDDとは、がんに親和性のある蛍光試薬を内服し、がん組織に選択的に蓄積させた後、特定波長の光を照射して発せられる蛍光色を観察して、がんの部位を特定する診断方法である。NBIは、血液の中に含まれるヘモグロビンに吸収されやすい2つの波長の光を照射することにより、腫瘍組織の新生血管や粘膜の微細模様を強調して表示する画像強調技術であるが、狭帯域光を用いるため画像が暗いという欠点があった。それに対し、SPIEsでは600nm以上の白色光を照射してコンピューターで解析するため、光量を落とさずに観察ができ、診断能の向上も期待される。 内視鏡手術を行う際のアクセス方法としては、経尿道的、経皮的、腹腔鏡手術のように腹式があり、最近では侵襲性の低い経管腔的内視鏡手術(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery: NOTES)が注目を集めている。●腹腔鏡手術の進歩 次いで、西松氏は腹腔鏡手術の進歩について概説した。1983年に虫垂炎の腹腔鏡手術が行われ、主に産婦人科領域で腹腔鏡手術は進歩してきた。1992年にバルーンが開発され、レトロアプローチによる腹腔鏡手術が安全に行えるようになった。日本では、1992年に腹腔鏡による精索静脈瘤切除術が行われ、1997年にはドナー腎摘術が腹腔鏡下で行われた。1998年に海外で前立腺全摘除術が腹腔鏡下で行われ、日本でも広く普及していった。 2001年には海外でda Vinciシステムが承認され、ロボット支援手術が注目を集めた。その後、内視鏡の性能の進歩と相まって、2007年には単孔式腹腔鏡手術(LESS)が行われ、ポート減数手術(RPS)などの低侵襲で整容性に優れた手技が開発されている。 日本でも、2012年にda Vinciシステムが保険承認され、今後、腹腔鏡下のロボット支援手術の普及が予想されるが、医療コストの高騰が懸念されることを西松氏は指摘した。 こうした泌尿器内視鏡学の普及と進歩を反映して、1987年に日本泌尿器内視鏡学会が設立された。●Engineering-based Medicine 最後に、西松氏は東京大学医学部における内視鏡手術の進歩を振り返り、もうひとつのEBMである「Engineering-based Medicine」の考え方を紹介した。 東京大学医学部では、1949年に日本で最初の胃カメラを開発し、また1971年に世界で最初に光ファイバーの腎盂尿管鏡について発表している。これらの成果は、医療機器メーカーの技術者との長年のパートナーシップに基づく技術の進歩によるものであり、こうした医療を西松氏は「Engineering-based Medicine」と称した。 現在もこのEngineering-based Medicineの一環として、東京大学医学部附属病院泌尿器科では、血管や尿管の薬剤溶出ステント(Drug-Eluting Stent: DES)の開発やヘルペスウイルスG47デルタの腫瘍内注入による前立腺がんの遺伝子治療などの研究が進んでいる。また西松氏は、da Vinciシステムを使わずとも腹腔鏡手術ができるよう、2重のベベルギア・ワイヤ機構で自由に動く持針器の開発なども行っていることを紹介した。「他の演題はこちら」

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高齢者施設のノロウイルス感染症発生、入居者の全入院・死亡率増大の要因に

 ノロウイルス感染症の発生は、高齢者施設入居者の全入院および死亡の増大と有意に関連していることが報告された。米国CDCのTarak K. Trivedi氏らが、2009~2010年の米国ナーシングホームからの発生報告を後ろ向きに検証し明らかにした。脆弱な高齢者が入居する米国の高齢者施設でもノロウイルス感染症は日常的な感染症となっているという。JAMA誌2012年10月24・30日号掲載より。発生期間中と非発生期間との入院、死亡状況を比較研究グループは、ノロウイルス感染症発生期間の全入院および死亡率が非発生期間と比較し増大したか、また増大因子を特定することを目的に後ろ向きコホート研究を行った。メディケア対象のオレゴン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州のナーシングホームで、2009年1月~2010年12月にCDCにノロウイルス感染症の発生あるいは疑い報告が1回以上あった施設を対象とした。それら施設入居者の死亡と入院をメディケアデータ(Minimum Data Set:MDS)で特定した。主要評価項目は、発生期間中の非発生期間と比較した全入院および死亡の割合。ランダム効果ポアソン回帰モデルを用いて、両期間のアウトカムを季節的背景を調整した上で算出した。日勤看護師が少ない施設では死亡が有意に増加CDCへの報告は308施設、407件の発生が寄せられた。試験対象の2年間で、これら施設では入院6万7,730例、死亡2万6,055例が発生していた。施設ごとの入院率は、発生期間中124.0(95%信頼区間:119.4~129.1)に対し、非発生期間中は109.5(同:108.6~110.3)で、季節的背景補正後の比率比(RR)は1.09(95%信頼区間:1.05~1.14)だった。死亡率も同様の傾向がみられ、それぞれ53.7(同:50.6~57.0)、41.9(同:41.4~42.4)、RRは1.11(同:1.05~1.18)だった。入院の増大は、発生直後の2週間(0週と第1週)に、死亡は最初の週(0週)に集中していた。日勤登録看護師(RN)が少ない施設(入居者当たり<0.75)は、ノロウイルス感染症発生期間中の死亡が非発生時と比べて増大した(RR:1.26、95%信頼区間:1.14~1.40)。一方、日勤RNが多い施設ではリスク増大はみられなかった(RR:1.03、0.96~1.12)(尤度比検定p=0.007)。入院に関しては、こうしたパターンはみられなかった。

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新規ワクチン導入は既存ワクチン接種に影響を及ぼさない

 国の予防接種プログラムへの新規ワクチン導入に際しては、その効果や保健医療制度への影響について異議を唱える声が聞かれる。とくに既存ワクチン接種への影響について疑念を持つ向きがある。カナダ・マックマスター大学のShearer JC氏らは、新規ワクチン導入の既存ワクチン接種への影響について187ヵ国の状況を調べた。Vaccine誌オンライン版2012年10月22日号の掲載報告。 予防接種システムの実行についてDTPワクチン接種を代替指標とし、新規ワクチンの導入が、乳児の既存予防接種プログラムであるDTPの3回接種の変化と関連するかを調べた。 DTPワクチン3回接種について、多変量国家間縦断混合効果モデルを利用して解析した。 主な結果は以下のとおり。・1999~2009年の187ヵ国のDTPワクチン3回接種について調査した。・DTPワクチン3回接種を制御する因子として、肝炎ウイルスワクチン、Hibワクチン、ロタウイルスワクチンとの間でごくわずかな関連が見つかった。・むしろ、接種頻度や接種率の変動は、国の発展や保健医療制度の変数(武力紛争、出産前ケアサービス範囲、乳児死亡率、個人負担の割合、1人当たりの総医療費用を含む)と関連していた。・新規導入ワクチンによるDTPワクチン3回接種への影響は認められなかった。新規ワクチンの導入や混合ワクチンの導入にあたっては、免疫獲得や保健医療制度への影響をモニタリングすべきである。

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ロタウイルス遺伝子型の頻出、G3P[8]型が約6割

 ロタウイルスは、世界的にみても乳幼児における重度の下痢の最も主要な原因であるが、2009~2011年にタイ国で最も猛威をふるったロタウイルスの遺伝子型はG3P[8]型であり、約6割を占めていたことが明らかになった。タイ・Chulalongkorn UniversityのMaiklang O氏らの報告による(Southeast Asian J Trop Med Public Health誌2012年7月号)。なお、関連報告(2007~2009年動向調査)によると、前2年間のG3P[8]型の出現頻度は0.6%であり、最も頻出していたロタウイルス遺伝子型はG1P[8]型で約5割だったことが報告されている。 2009年6月~2011年5月の間の、タイの小児におけるロタウイルスA群の出現率と季節分布について調査した。同期間中に、急性胃腸炎または下痢症状で入院した乳幼児からサンプルを収集した。 主な結果は以下のとおり。・収集した562サンプルのうち、ロタウイルスA群の検出率(RT-PCR法による)は250例(44.5%)であった。・最も出現率が高かった遺伝子型は、G3P[8](60.4%)であった。次いでG1P[8](39.2%)、G2P[4](0.4%)であった。・関連報告の2007年7月~2009年5月の動向では、A群の検出率(RT-PCR法による)は557サンプル中158例(28.4%)であった。遺伝子型の出現率は、G1P[8](49.4%)が最も高率であり、G9P[8](22.2%)、G2P[4](20.2%)、G3P[8](0.6%)と続いていた。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・新生児における牛乳アレルギーの臨床的特徴 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

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新生児における牛乳アレルギーの臨床的特徴

 牛乳アレルギー(CMA)を疑う食物関連症状の臨床的所見は、早産児であることや消化器外科手術のような根本的要因に影響を受けると報告された。昭和大学の宮沢氏らによる報告。 CMAは新生児における消化器症状の原因の一つである。これまで、早期乳児期におけるIgEを介したアレルギー反応とCMAとの関連は示唆されているものの、臨床的所見と発症機序は確立していなかった。Allergol Int誌オンライン版 2012年10月25日号掲載報告。 本試験は先行研究のフォローアップとして実施された。53施設の新生児集中治療室に第2弾のアンケートが送られ、患者背景、発症年齢、臨床的所見や臨床検査の結果が回収された。主な結果は以下のとおり。・出生体重中央値は2,614g、妊娠期間中央値は36.9週であった。・症例のうち、40%で生後6日以内に症状が生じ、90%で消化器症状が生じた。主な消化器症状は、嘔吐、血便、腹部膨満であった。・特異的IgE試験、リンパ球刺激試験、および糞便中好酸球検査は、それぞれ、88%、23%、55%で実施された。その結果、陽性率はそれぞれ30%、84%、75%であった。・食物経口負荷試験(OFC)は確定診断のために26%で実施された。・新生児でCMAを疑う食物関連症状の臨床所見は、一般的な即時型食物アレルギーとは異なり、早産児であることや消化器外科手術のような根本的要因に影響を受けた。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

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HPVワクチン接種を受けた少女、その後の性交渉に変化はみられるのか?

 HPVワクチン接種を受けた少女と受けなかった少女について、その後3年間の性交渉に関連した受診動向について後ろ向きに比較した結果、接種群の複合アウトカムリスク(妊娠/性感染症の検査または診断、避妊カウンセリング)の増大は、認められなかったことが報告された。米国のHMOカイザーパーマネント南東部ヘルスリサーチセンターのBednarczyk RA氏らによる報告で、これまでHPVワクチン接種後の性交渉の変化について自己申告に基づくサーベイ調査はあったが、臨床的指標を用いた調査はこれが初めてだという。Pediatrics誌オンライン版2012年10月15日号の掲載報告。 大規模なマネジドケア組織からの長期的電子データを用い、後ろ向きコホート研究の手法にて、思春期に接種が推奨されているワクチン接種後の性交渉関連臨床アウトカムを評価した。 2006年7月~2007年12月の間にマネジドケア組織に登録された11~12歳の少女を、思春期ワクチン(4価HPVワクチン)接種の有無で分類。2012年12月31日まで3年間追跡し、アウトカム(妊娠/性感染症の検査または診断、避妊カウンセリング)について評価した。受診行動や人口統計学的特性について補正後、多変量ポアソン回帰分析にて発生率比率を推定比較した。 主な結果は以下のとおり。・コホートには、1,398人の少女が組み込まれた(HPVワクチン接種者493人、非接種者905人)。・複合アウトカムリスク(すべての妊娠/性感染症の検査または診断、避妊カウンセリング)について、HPVワクチン接種群での有意な上昇はみられなかった。・補正後発生率比は1.29(95%CI:0.92~1.80)、発生率差は1.6/100人・年(95%CI:-0.03~3.24)であった。・クラミジア感染症に関する発生率差(0.06/100人・年、95%CI:-0.30~0.18)、妊娠診断に関する発生率差(0.07/100人・年、95%CI:-0.20~0.35)について、臨床的に意味ある絶対差はほとんど示されなかった。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

3955.

妊娠17週未満の胎児心エコーの評価は?

 アメリカのMoon-Grady氏らによって、胎児心エコー(FE)について、妊娠早期(17週未満)と妊娠中期(17~23週)の正確性について比較が実施された。妊娠17週未満の胎児心エコー図はカリフォルニア大学で入手し、5年以上にわたって後ろ向きに解析された。FEは解剖学的に細部が評価できるかどうか、カラーパルスドプラ評価が実証できるかどうかで検証された。J Am Soc Echocardiogr 誌オンライン版10月16日号掲載報告。 主な結果は以下のとおり。・試験期間中に17週未満の妊娠早期であった139例が対象となった(平均妊娠期間:14週、範囲:12週0日目~18週6日目)。追加の経膣超音波検査は139例中14例(10%)で実施された。・113名は妊娠早期と妊娠中期でFEを実施した。そのうち27例(24%)で妊娠早期に正確な胎児心エコー図が得られ(95%CI:17~33%)、76例(67%)が妊娠中期で得られた(同: 58~75%)・多くの妊娠早期のFEのうち、肺静脈のカラーパルスドプラ評価は成功しなかった。・肺静脈のカラードプラ評価が除外された場合、妊娠早期のFEでの検証は80例(71%)で実証され(95%CI:62~78%)、妊娠中期では97例(86%)で実証された(同:78~91%)。・妊娠早期のFEにおいて、20例で心臓病が懸念された。主要な先天性心疾患は見逃されなかったものの、4例において妊娠中期のFEおよび生後に心室中隔欠損症が発見された。・肺静脈の評価を除いて、妊娠早期のFEは多くの患者でほぼ正確であった。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

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5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

 5価ロタウイルスワクチン(RV5、商品名:ロタテック)について、3回接種を完了していなくても、ロタウイルス胃腸炎に対し有効性を示すことが報告された。米国・OptumInsight EpidemiologyのWang FT氏らが、3回接種を完了しなかった乳児を追跡した結果で、著者は「規定接種を完了しなかった場合のベネフィットを考えるうえで意義ある結果が得られた」と述べている。Pediatr Infect Dis J誌オンライン版2012年9月25日号の掲載報告。 大規模な国民健康保険金請求データベースを利用して、2コホートの乳児[RV5とジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン(DTaP)との同時接種を受けた乳児、DTapのみ接種の乳児]を、2007~2008年のロタウイルス・シーズン(1月1日~5月31日)間に追跡し、ロタウイルス胃腸炎またはあらゆる原因による胃腸炎で医療機関を受診した症例を特定した。 RV5の初回接種児、2回接種児のワクチンの有効性について、入院、救急外来受診、外来受診の減少を推定評価した。 主な結果は以下のとおり。・RV5初回接種児は4万2,306例、比較群のDTaP初回接種児は2万8,417例であった。RV5の2回接種児は4万3,704例、DTaPの2回接種児は3万1,810例であった。・RV5の1回接種による、ロタウイルス胃腸炎入院と救急外来受診に対する有効性は88%であった。全原因による胃腸炎入院と救急外来受診については44%であった。・RV5の2回接種による、ロタウイルス胃腸炎入院と救急外来受診に対する有効性は94%であった。全原因による胃腸炎入院と救急外来受診については40%であった。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・子どもの問題行動に対する行動予防モデルSWPBISの影響 ・学校でのワクチン接種プログラムに対し、多くの開業医が自院経営面への影響を懸念

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学校でのワクチン接種プログラムに対し、多くの開業医が自院経営面への影響を懸念

 米国・CDC公衆衛生予防サービス部門のMcCormick EV氏らは、学校で行われる青年期ワクチン(思春期ワクチン)およびインフルエンザワクチンの接種に対する医師の考え方について調査を行った。コロラド州の開業医1,337人を対象とした調査の結果、大半の医師が学校でのワクチン接種を支持する一方で、診療所経営への影響について懸念を抱いていることが明らかとなった。著者は、「医師の民間保険加入者への接種に対する支持が少なく、受診児の減少と収入への影響が障壁となっていることが示されたが、さらなる調査が必要である」とまとめている。Pediatrics誌オンライン版2012年10月1日号の掲載報告。 2010年7月~9月の間に、コロラド州で開業している家庭医と小児科医1,337人に対し、メールで20項目にわたる質問を行った。 標準統計方法にて、学校でのワクチン接種プログラムに対する医師の支持と因子との関連オッズ比を、補正前、補正後について算出した。 主な結果は以下のとおり。・全体で943例の医師が調査適格であった。回答は、584例(62%)で得られた。・半数以上の医師が、学校での青年期ワクチンおよびインフルエンザワクチンの接種を支持した。・青年期ワクチン接種を支持する医師は、インフルエンザワクチン接種を支持する医師と比べ少なかった。・公的保険加入者へのワクチン接種を支持する医師は多かったが、民間保険加入者へのワクチン接種を支持する医師は少なかった。・一部の家庭医(32%)と小児科医(39%)は、学校でのワクチン接種は定期健康診断受診児の減少につながると考えていた。また回答者の半分が、学校でのワクチン接種は診療所の経営にネガティブな影響を与えると考えていた。・多変量解析の結果、診療所の経営面への影響を懸念する医師は、学校でのワクチン接種プログラムを支持しない傾向がみられた。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・小児臨床試験の潮流、感染症/ワクチン試験が23%と最も多くを占める

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子どもの問題行動に対する行動予防モデルSWPBISの影響

 SWPBIS(School-Wide Positive Behavioral Interventions and Supports)は、学校全体の積極的な介入と支援により、子どもの問題行動を予防するモデルである。教員の応対の変化や子どもの行動のニーズを満たすシステムや支援の開発によって、問題行動を減らすことを目的としており、現在アメリカ全域の16,000校を超える学校で実施されている。Bradshaw CP氏らは、SWPBIS有効性試験に基づき、子どもの問題行動と適応に対する介入の影響について報告した。Pediatrics誌 オンライン版2012年10月15日掲載報告。試験は37校の小学校で無作為化群間比較試験として実施された。対象は12,344人の小学生で、そのうち52.9%が男児であった。また、45.1%はアフリカ系アメリカ人で、46.1%は白人であった。約49%が無料または割引価格の食事サービスを提供されており、12.9パーセントは試験開始時に特別支援教育を受けていた。マルチレベル分析は教師の評価によって行われ、評価項目は子どもの問題行動、集中力、社会的および感情的機能、向社会的行動、訓告処分、停学(4学年の間に5回)であった。主な結果は以下のとおり。・SWPBISにより、子どもの問題行動、集中力、社会的および感情的機能、向社会的行動について有意な効果があったことが示された。・SWPBISを行った学校の子どもは、行っていない学校と比較して、訓告処分を受ける割合が33%少なかった。・幼稚園のときに初めてSWPBISを受けた児童において、効果が最も高い傾向があった。・調査結果より、SWPBISのトレーニング後は問題行動が減少し、向社会的活動や感情調節において改善効果があるという仮説が得られた。・SWPBISの仕組みは、小学生における問題の軽減と適応促進につながる有望な手法である。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響

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睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響

 カナダのGruber氏らは、睡眠時間の延長と短縮が及ぼす学校での子どもの振る舞いへの影響について報告した。Pediatrics誌オンライン版 2012年10月15日掲載報告。本試験は二重盲検で行われ、実験的に睡眠時間を平日の一般的な睡眠時間より1時間延長する群と、1時間短縮する群に無作為に割り付けて比較した。対象は7歳から11歳までの睡眠障害がなく、行動、健康状態、学業的な問題がない34人。主要アウトカムの評価は、学校の教師がConners' Global Index Scaleを用いて行った。主な結果は以下のとおり・睡眠時間の延長は累計27.36分で、Conners' Global Index Scaleによる情緒不安定、落ち着きのなさの改善と、有意な日中の眠気の減少が示された。・睡眠時間の短縮は累計54.04分で、Conners' Global Index Scaleの悪化が示された。・適度な睡眠時間の延長は注意力と感情の調節の改善に有意に寄与する一方で、睡眠時間の短縮は逆の効果を示した。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・小児臨床試験の潮流、感染症/ワクチン試験が23%と最も多くを占める ・妊娠前の身体活動と母乳育児が、乳児の体重増加・肥満に及ぼす影響

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『ボストン便り』(第42回)「神奈川県不活化ポリオワクチン政策の顛末」

星槎大学共生科学部教授ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー細田 満和子(ほそだ みわこ)2012年10月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。(ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)*「ボストン便り」が本になりました。タイトルは『パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から』(明石書店)。再構成し、大幅に加筆修正しましたので、ぜひお読み頂ければと思います。●不活化ポリオワクチン接種のスタート2012年9月1日から、ポリオの予防接種は、それまでの生ポリオワクチンから、不活化ポリオワクチンに転換しました。今まで受けてきた、生/不活化ワクチンの数によって、今後受けなくてはならない不活化ワクチンの数は様々になります。さらに11月からは、不活化ポリオワクチンとDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風混合ワクチン)を合わせた4種混合が導入されます。また、現在は任意接種のインフルエンザ菌b型(ヒブ)や肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスなども定期接種にすべきという意見も強くあり、自費で接種を希望される保護者も少なくありません。このようにしてワクチン接種のスケジュールはますます複雑になってきますが、確実に予防接種が遂行されるようにと、各地の自治体は保護者に対する説明や広報の活動を行っています。行政職員達の忙しさは容易に想像されますが、ただし、いままでも地方自治体は、生ポリオワクチンに対する危惧からの接種拒否や接種控えがおこり、接種率が低下するという問題に直面し、職員は対応に苦慮していました。この背景は、いままでの「ボストン便り」で何度も触れたように、ポリオの会や一部の小児科医の働きかけによって、生ポリオワクチンにより100万人に3~4名程度(公式には1.4人)が実際にポリオに罹患してしまうこと、それを避けるためには不活化ワクチンを接種するという方法がとられることが、広く知られるようになってきたからです。こうして、安全性の高い不活化ポリオワクチンを子どもに受けさせたいと思う親御さんが増えたのです。一部の医療機関で個人輸入として使用されていた不活化ポリオワクチンは有料で、医療機関によっても異なりますが1回4,000円から6,000円で、3回受けると12,000円から18,000円になります。生ワクチンなら公費で無料なのにもかかわらず、多くの親御さんたちが有料の不活化ワクチンを選んできました。安全なワクチンを受けたいという当然の事を主張する保護者に対して、これまでほとんどの行政は、「生ワクチンを打ってください」とか、「もう少しで不活化になります」と苦し紛れで対応してきました。しかし、こうした事からやっと解放されると、忙しさの中で職員達はむしろ喜んでいるのではないかとも推察されます。しかし、このような対応をせずに、不活化を希望する親御さんに対しては、それを提供できる体制を整えてきた自治体があります。神奈川県です。神奈川県では黒岩祐治知事の決断で、2011年末から、不活化ポリオワクチン体制を独自に整えてきました。これは国が不活化ポリオワクチンに切り替えたために2012年8月31日をもって終了しましたが、ここではその動きを振り返ってみたいと思います。●神奈川県知事の決断神奈川県では従来、生ポリオワクチンの接種率は100%に近く、毎年約8万人が接種していました。ところが、2011年10月の時点で、1万7000人が無接種という事態に陥りました。黒岩氏はこの急激な接種率の低下を、生ポリオワクチンによってポリオに罹ることを恐れた親御さんたちの気持ちだと受けとめました。さらに黒岩氏は、かつて厚生労働省の予防接種部会の構成員を務めたこともあり、世界の感染症状況にも関心が高く、当時、中国の新疆ウイグル地区で野生株由来のポリオの集団感染が報告されたことにも危機感を持っていました。ポリオは、世界で99%は解消されましたが、あと1%の壁がなかなか破れず、いまだ撲滅されていない感染症なのです。万が一にでもポリオが発生したら大変なことになってしまいます。そこで黒岩氏は、当時国内未承認であった不活化ポリオワクチン接種を、県独自の判断として実施することを決断したのです。ところが、この黒岩氏の決断に対して、厚生労働大臣である小宮山洋子氏は、2011年10月18日の閣議後の記者会見において、「望ましいと思っていない」と批判しました。「国民の不安をあおって、生ワクチンの接種を控えて免疫を持たない人が増える恐れがある」と。こうして国と県とでワクチン政策に関する対立が起こった形になりました。確かに、中国で集団感染が報告されるように、ポリオは未だ終わっていない世界の大問題ですから、ワクチン未接種の子どもたちがいたら大変なことが起きる、という小宮山氏の発言は大いにうなずけるものがあります。しかし、ポリオを発症する危険性のある生ワクチンを接種すべきいうことは、どうしても理解できません。なぜなら、予防接種によってポリオに罹ることのない不活化ワクチンがあるからです。どうして接種控えをしているのかというと、親は、万にひとつでも、生ワクチンでポリオを発症するようなことがあったら子どもに申し訳ないと思うからです。この不活化ワクチンを望む親御さんたちの気持ちは、黒岩氏には届いていても、小宮山氏には届いていないようでした。●神奈川県職員の奔走神奈川県が独自に不活化ポリオワクチンの接種をすると決めても、県職員の足並みは必ずしも揃っていたわけではありませんでした。当時の状況を良く知る方の話によると、当初、県立病院に入院している重症の子どもだけを対象に接種するということでお茶を濁そうとしていた職員もいたといいます。しかし、実務の担当者は、知事の熱意と「お母さん達からの心の叫び」に応えるために、急ピッチで準備をしました。ここでは、こうした県職員の方々へのヒアリングを基に、神奈川県における不活化ポリオワクチン体制について、ワクチンの確保、医師の確保、そして場所の確保という観点からみてみます。まず、ワクチンの確保についてです。不活化ポリオワクチンは、当時は国の薬事承認や国家検定をまだ受けていない未承認薬でした。よって医師たちは「薬監証明」を取って、未承認薬の不活化ポリオワクチンを輸入し、子どもたちに接種していました。この「薬監証明」は、医師が個人でとることはできても、県がとって輸入するということは、制度上できないものです。そこで、県の担当者は、厚生労働省の担当者と交渉した結果、解決策を見出しました。それは、神奈川県で接種に携わる医師の名簿を作成し、その医師がワクチンを使うということで厚生労働省から「薬監証明」を出してもらうという仕組みです。このエピソードから、厚生労働省は、表向きの制度論上は不活化ポリオワクチンに渋い顔をしていたものの、運用上は生ワクチンからの切り替えを容認していたことがうかがえます。次に、医師の確保についてです。担当者は、神奈川県立こども医療センターと上足柄病院から、接種をしてくれる医師を出してもらい、県立病院機構に非常勤職員として所属してもらうことにしました。ただし県立子ども医療センターは、ここが最後の砦という感じの重症のお子さんがたくさんいらっしゃるので、なかなか医師を出してはくれませんでした。しかし、比較的高齢の医師達に非常勤で来てもらうということで、やっと最後には合意を取り付けることができました。この県立病院機構の非常勤の医師達が、不活化ポリオワクチンを輸入するということで「薬監証明」をとり、接種できる体制にしました。最後に場所の確保についてです。予防接種の場所として、県の4か所の保健福祉事務所が使われることになりました。その際は、具体的な手順の調整が大変だったといいます。どんな順路にするか、エレベーターや階段は十分に行き来できるスペースがあるか、きょうだいを連れてくる人もいるだろうから、その子たちが待っている場所はどうするかなど。あらゆる可能性を考えて、接種場所の準備をしたということでした。このようにして整備されてきた不活化ポリオワクチン接種体制ですが、接種価格についても議論になりました。その結果、安易に無料化しない、ということで1回6,000円になりました。それは、神奈川県内で独自に不活化ポリオワクチンの接種を行っている医師達に配慮するためです。医師達は補償などのことも含めて、自分でリスクを考えつつ、赤ちゃんのために不活化ワクチンを個人輸入してきました。そこに県が無料でポリオワクチンを接種する事にしたら、医師達は受診してくれる子どもたちを失うことになります。不活化ワクチンを有料で提供するのは、「県も独自にドロをかぶってやる」という県の姿勢を示すためにも必要だったのです。●不活化ポリオワクチンの開始不活化ポリオワクチンの予約は2011年12月15日から開始され、2012年3月31日で終了しました。この間に申し込みをした予防接種希望者は、5,647人でした。申し込みの取り消しも3,033人いましたので、実際に接種をした数は2,614人でした。この2,614人の接種希望者が、不活化ワクチンを1回ないしは2回接種したので、合計の接種実施回数は4,036回となりました。この4,036回の接種の裏には、さまざまなドラマがありました。不活化ポリオワクチンの接種は、2012年1月から始まりましたが、インフルエンザが大流行したので、1月と2月は1日に25人くらいしか接種できませんでした。その結果、4月の中旬の時点では、848人の接種しか終わっていませんでした。そこで4月中旬以降は、7か所に接種場所を増やして、1日60人くらいのペースで対応してきました。また、初めてのことなので接種前の問診は時間をかけてやったといいます。さらに接種した後も会場で30分は休んでもらうようにしました。もちろん小さな子が30分飽きずに待っていられるような遊び場も会場に設置しました。4月のある日、平塚市の不活化ポリオワクチンの接種会場を訪ねました。ゆったりとしたスペースで、保護者の方が安心した様子でワクチンを赤ちゃんに受けさせていました。半数以上の方がカップルで来ていて、子どもの健康に父親も母親も一緒に取り組んでいこうとしている様子がうかがえました。●独自体制の不活化ポリオワクチンを終えて神奈川県の不活化ポリオワクチン提供体制の整備は、市町村や医師達にもさまざまな影響を与えました。市町村は、国の意向に従って生ポリオワクチンを推進することになっていますから、神奈川県の独自の動きに対して戸惑いを隠せないことは明らかです。そこで神奈川県では、市町村に「迷惑がかからないように」気を付けてきたそうです。市町村の推奨する生ワクチンに不安のある方だけを対象に、その方々の受け皿として生ポリオワクチンを提供するという姿勢を貫き、市町村の保健行政を「邪魔しない」ことを示しました。また、神奈川県内では、県が不活化を始めた事でやりやすくなったと考えて、民間の病院や診療所でも不活化ポリオワクチンを輸入して提供するところが増えてきました。この影響は、県の不活化ワクチンの体制に影響を及ぼしました。わざわざ遠い県の施設に行くまでもなく、近くのクリニックで受けられるようになったからと、予約のキャンセルが相次いだのです。すべてがこの理由という訳ではありませんが、最終的には、3,033人が申し込みの取り消しをしました。価格がほぼ同じならば、県の施設でも近くのクリニックでも同じという事で、保護者は利便性を選んだのでしょう。県の当初のもくろみ通り、民間の医療機関への配慮が生きてきた訳です。一連の不活化ワクチン接種において、ワクチンの安全性が問題になったという報告や重篤な副反応の報告は1例もありませんでした。●ワクチン問題は終わらない今回、全国的に公費での不活化ワクチンが導入されることになりましたが、ワクチン問題はこれで終わったわけではありません。二つの点から指摘したいと思います。ひとつ目は、予防接種の受け手の側の問題です。お母さんたちは、赤ちゃんのリスクを減らそうとして生ワクチンを避けて不活化ワクチンを求めましたが、せっかく予約をとったからといって、赤ちゃんに38度の熱があっても予防接種を受けにくるお母さんもいたといいます。担当者がいろいろ説明すると、「いいから打てよ」「ごちゃごちゃ言ってないで、黙って打てよ」などと言われることもあったといいます。体調がよくないのにワクチンを打ったとしたら、赤ちゃんにとってのリスクが逆に高まってしまうことが、なかなか理解されないのでしょう。不活化ポリオワクチンが始まり、やがて4種混合が加わり、現在の任意接種も次々に法定接種化しそうな状況の中で、ワクチンや健康一般に対する保護者の持つ知識や情報は、限りなく重要なものになってきます。言われたことに従う、話題になっているから飛びつく、ということでは子どもの健康は守れません。親御さん達には、自分が守るのだという自覚を持って、ワクチンの効果もリスクも勘案した上で、判断できるようになる必要があると思います。これはヘルスリテラシーといわれるもので、今後、保護者の方がヘルスリテラシーの重要性に気づき、学んでゆくことが課題になると思われます。ふたつ目は、ワクチン行政の問題です。なぜ10年以上も前から、多くの感染症専門家が生ポリオワクチンから不活化ポリオワクチンへ移行すべきと表明していながらも、なかなか変わらなかったのか、ということを明らかにしなくてはなりません。その原因を放置していては、また同じことが起きるでしょう。また、国産の4種混合ワクチンが開発されたとのことですが、症例数が十分であったかなど、審査の経緯に対する疑問の声も上がっています。この点に関しては、機会を改めて検証してみたいと思います。●地域から変わることへの期待「行政や国の対応に、このやり方がベストというものはない」と、神奈川県の担当者はおっしゃっていました。また、「大変でしたけど、今となってはいい経験でした」とも。それは、これまで医療は国が音頭をとってすることが多いと思っていたけれど、地域でできる事も多い、ということが分かったからでした。地域の住民に応えるためには、地域行政は独自に動くべきなのだ、という意識を行政職員が持つことはとても貴重だと思います。この方は、インタビューの最後にこのようにおっしゃっていました。「これ(不活化ポリオワクチン:筆者挿入)は『誰も反対できない話』なんです。みんな、早く不活化にするように思っているんです。それはお母さんたちの心の叫びだからです。この叫びの声に応えたいんです。神奈川は、知事がいたからできたんです。黒岩さんでなければできなかったでしょうね。すごい知事が来たもんで、部下はきついですけどね。」住民と近い場所にいる地域の行政が、住民の気持ちに沿った政策をすべきと声をあげて、自ら動いてゆくことで、国を動かすような大きな力となってゆくことがあるでしょう。これからの地域の動きへの期待は高まり、目が離せません。謝辞:本稿の執筆に当たっては、神奈川県の職員の方々に貴重なお話をうかがい、資料提供をして頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。また、ナビタスクリニックの谷本哲也医師には、医学的な表記を監修して頂き、感謝いたします。略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)星槎大学教授。ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス市民が変える医療社会』(明石書店)。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

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