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A群髄膜炎の新ワクチン、集団接種で罹患率94%低下/Lancet

 A群髄膜炎菌-破傷風トキソイド結合型ワクチン(PsA-TT)の集団接種は、A群髄膜炎の罹患率を9割以上減少させ非常に有効であることが、チャド・Centre de Support en Sante InternationalのD. M. Daugla氏らにより報告された。PsA-TTは、サハラ砂漠以南のワクチン開発プロジェクトにより開発された。2009年にインドで承認され2010年にはWHOによる安全性と免疫原性の事前承認を得て、現在“アフリカ髄膜炎ベルト地帯”で、本研究にも資金を提供しているビル&メリンダ・ゲイツ財団などの支援の下、接種キャンペーンが展開されているという。Lancet誌オンライン版2013年9月12日号掲載の報告より。PsA-TT接種キャンペーン実施地域で髄膜炎罹患率94%減少 Daugla氏らは、2009年1月~2012年6月のチャドの全国データから、PsA-TT接種キャンペーンの前後におけるA群髄膜炎の罹患率について調べ、同接種の効果について分析した。ワクチン接種キャンペーンを実施した地域では、より綿密な調査を行った。髄膜炎菌は脳脊髄液または中咽頭スワブから採取し、通常微生物・分子法で検査を行った。 2011年12月に10日間にわたって行われたPsA-TT接種キャンペーン中に同接種を受けた人は、チャドの首都N’Djamena周辺の3地域で約180万人(1~29歳)に上った。 分析の結果、2012年の髄膜炎流行期間の髄膜炎罹患率は、大規模なPsA-TT接種プログラムを実施しなかった地域では、10万人当たり43.8(人口870万人中3,809人)だったのに対し、同接種キャンペーンを行った3地域では、10万人当たり2.48(人口230万人中57人)と、粗罹患率で94%の減少(p<0.0001)、罹患率比は0.096(95%信頼区間[CI]:0.046~0.198)と、大幅な減少が認められた。接種都市ではA群血清型髄膜炎の報告例なし、周辺農村地域でも有意に減少 また同3地域ではA群血清型髄膜炎の報告例はなく、さらに首都に近い農村地域では、A群血清型髄膜炎が、ワクチン接種2~4ヵ月前には4,278人中32人(0.75%)に認められたが、ワクチン接種4~6ヵ月後には5,001人中わずか1人だった(補正後オッズ比:0.019、95%CI:0.002~0.138、p<0.0001)。 同研究グループは、「PsA-TTはA群血清型の侵襲性髄膜炎に対し非常に高い効果が認められた」と結論したうえで、「効果の持続期間についてさらなる研究が必要だ」とまとめている。

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真菌症にアルバコナゾールが奏効

 新たなトリアゾール系経口抗真菌薬アルバコナゾール(国内未承認)について、足親指の遠位爪甲下型爪真菌症に対する高い有効性と安全性が確認されたことが報告された。アイスランド大学のBarour Sigurgeirsson氏らによる4つの用量レジメンについて検討した第2相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の結果、示された。爪真菌症に対する有効な治療としては、テルビナフィン(商品名:ラミシールほか)、イトラコナゾール(同:イトリゾールほか)があるが、頻繁な反復投与を必要とする頻度が高く、肝・心臓の有害事象を引き起こす可能性がある。今回の試験ではアルバコナゾールの4レジメンともに肝・心臓の重大有害事象はみられなかったという。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年9月号(オンライン版2013年5月22日号)の掲載報告。 研究グループは、足親指の遠位爪甲下型爪真菌症に対するアルバコナゾール週1回投与の有効性と安全性について検討した。試験は、584例の患者を、アルバコナゾール100~400mg、またはプラセボをそれぞれ週1回投与する二つの群に割り付け行われた。治療期間は24週間または36週間であった。 有効性の指標は、52週時点での菌学的治癒および爪が透明またはほぼ透明であることとした。 主な結果は以下のとおり。・52週時点の有効率は、4つの用量レジメンすべての治療群(21~54%)がすべてプラセボ(1%)よりも有意に高かった(すべての群のp<0.001)。・ほとんどの群で患者の5%以上が、治療奏効を24週時点で達成していた。・有害事象の大部分は軽度~中程度であった。・治療関連の有害事象は3%以内であった。また、治療関連の肝・心臓の重大有害事象はみられなかった。・今回の試験は、追跡調査期間が短く有効性の最大値を評価することができなかったこと(治癒率が試験終了時点で増大していた)、アルバコナゾールの有効性と忍容性についてほかの治療薬との比較は行われなかったこと、目標病変の足指の爪の変化は主観的評価であったという点について限界があった。・以上を踏まえて著者は、「アルバコナゾールは爪真菌症に対して、いずれの用量でも忍容性は良好で高い治癒率を示した」と結論している。

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RSウイルス増加の兆しか

 「RSウイルス・オンライン・サーベイ +hMPV(運営管理・開発責任者 西藤なるを氏 西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニック 滋賀県守山市)」の報告によると、ここ数週間RSウイルスが増加している傾向がみられるという。 先週(第38週:2013年9月16日~9月22日)の同メーリングリストへのRSウイルスの報告は42件。その前週である第37週は50件、第36週も40件以上の報告があり、ここ数週間にわたり多数の報告が続いているという。運営責任者の西藤氏は、「乳幼児で、顕著な咳嗽や喘鳴のお子さんはRSウイルスの感染も疑ってほしい」と同サイトのメールマガジンで述べている。 「RSウイルス・オンライン・サーベイ +hMPV」は、日本全国の有志医師からの自主的な報告を集計している。集計報告の地域分布や定量性については、実際の流行と乖離している可能性があるものの、同システムを用いている「MLインフルエンザ流行前線情報DB(ML-flu)」は国立感染症研究所のデータとの相関性が認められている。http://rsv.children.jp/rsdata/index.php

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泣かないと決めた日(続)【パワーハラスメント(差別)】

「あんたなんか辞めればいいのに」みなさんは、職場で「あんたなんか辞めればいいのに」と言われたり、そうした状況を見かけたことはありませんか?そして、そう言う人が、相手にしないわけにはいかない立場の人だったことはありませんか?このように、人間関係で優位な立場を使って行う嫌がらせやいじめは、パワーハラスメントと呼ばれます。これは、学校のいじめよりも力関係がはっきりしており、教育・指示・命令の名を利用している点で、その線引きが難しいことがあります。今回は、このパワーハラスメントをテーマに、7月号の続編として、2010年に放映されたテレビドラマ「泣かないと決めた日」を取り上げます。主人公の美樹は、新入社員として夢と希望と期待を胸いっぱいに抱えて、憧れの大企業に入社します。ところが、その職場で彼女を待ち構えていたのは、理不尽なパワーハラスメントでした。可哀想なシーンが続き、見ている私たちまでもつらくなります。彼女はくじけそうになりますが、持ち前の強さで這い上がります。そして、彼女が職場の雰囲気を変えていくのです。このドラマでは、様々な人の心の動きが描かれています。7月号では、助け合い、裏切り、噂好き、自尊心などの心のメカニズムを、新しい科学の分野である進化心理学の視点から明らかにしました。今回はさらに掘り下げて、パワーハラスメントの根源でもある心理―「なぜ人は優位に立ちたいのか?」(自己愛)、「なぜ人は誰かを悪者にするのか?」(カテゴリー化)、そして「なぜ人は調子を合わせるのか?」(同調)などの心のメカニズム―の解明に迫っていきたいと思います。そして、私たちができる具体的な取り組みについて考えていきたいと思います。パワーハラスメント―力関係により身体的または精神的な苦痛を負わせる美樹は、新人として職場に来て早々に、ぴりぴりとした空気を感じ取ります。全く歓迎されていません。そんな中、美樹の教育係となった1つ上の先輩の同僚がミスを起こします。社外秘の書類を誤って取り引き先へファックスしてしまったのです。それを美樹が見てしまいます。しばらくして発覚すると、その同僚は、みんなの前で、「コピー機(ファックス兼用)の使い方、分からなかったのよね?」と美樹に言い、すかさずそのミスを美樹になすりつけたのです。完全な濡れ衣です。しかも、他の同僚たちもその同僚に加勢します。さらには、職場のリーダーは、美樹に有無を言わさず謝罪を迫るのです。そして、けっきょく、謝罪を無理矢理させられた美樹の心は、深く傷付くのでした。この状況は、パワーハラスメントです。パワーハラスメントとは、職場などでの力関係によって身体的または精神的な苦痛を負わせることです。美樹は、その後も数々のパワーハラスメントを受け続けます(表1)。このパワーハラスメントは、以前から指摘されてきたセクシャルハラスメントも含みます。そして、このパワーハラスメントを大きな括りとして、現在では状況や加害者との関係性によって、「アカハラ(アカデミックハラスメント)」「アルハラ(アルコールハラスメント)」「ドクハラ(ドクターハラスメント)」「マタハラ(マタニティハラスメント)」など様々なネーミングが生まれています。もともとこのパワーハラスメントという言葉は、2000年に入って生まれた和製英語です。パワーハラスメントに当たる言葉として、欧米ではモラルハラスメントが一般的です。日本のモラルハラスメントは、権力や利害の関係がないはずの夫婦や家族の間のDV(家庭内暴力)などに限定されて使われることが多く、ニュアンスに違いがあります。また、児童虐待や患者虐待などの虐待は、圧倒的な力の差がある場合に起こるパワーハラスメントとも言えます。さらに広げて言えば、人種差別や男女差別などの差別は、差異によって不当な分け隔てをするパワーハラスメントともいえます。今回は、これらの全てのハラスメントを含めた広い意味として、パワーハラスメントを考えていきましょう。表1 パワーハラスメントのタイプタイプ美樹の場合能力の否定「辞めればいいのに」と嫌味を言われるリーダーから「考える頭もないわけ?」と大声で怒鳴られる企画書をくしゃくしゃに丸めて投げられる無視行事などの日程を知らされない仕事が与えられない不要な仕事を押し付けられる脅迫男性の同僚に肩をつかまれ怒鳴られる椅子を蹴られる商品の豆をぶつけられる権利の否認仕事の仕方を教えてもらえないミスを押し付けられる仕事が知らない間に変更されている個の侵害同僚のプライベートの使い走り(ただし、美樹の場合は自ら申し出ている)パワーハラスメントの3つの心理実は、美樹が入社する前にいた新人も、同じような目に遭い、心の傷を負って辞めていました。この職場では、同じことが繰り返されているのでした。もっと広げて言えば、パワーハラスメントは、職場だけでなく、学校、地域社会、そして国家でも起っています。集団という社会ができる場所では、世界中のどこの場所でも、そして人間の歴史のいつの時代にも、変わらず起こってきました。それでは、なぜパワーハラスメントが私たちに起こるのでしょうか?進化心理学的に考えれば、普遍的に存在することには、必ずそこに理由があります(究極要因)。この究極的な理由を探るため、その源となった原始の時代の私たちの心まで遡り、パワーハラスメントの根源となるとなる3つの心理―自己愛、カテゴリー化、同調をそれぞれ考えてみましょう。(1)自己愛―競争の動機付け1. 優位に立ちたい心理同僚たちは、美樹に対して無愛想で高圧的です。特に、教育係となった1つ上の先輩の同僚の当たりは、とてもきついです。美樹に不要な仕事を押し付け、遅い時間まで残業させます。指導するどころか、ミスをなすり付け、そして手柄を横取りします。また、リーダーも、美樹を追い込んでいます。部下たちの前で、美樹を一方的に厳しく叱り付けたり、部下たち全員に謝らせたり、あえて仕事を与えません。こうして、「私が上だ」「私を舐めるな」というパワー(力関係)の見せつけが露骨に起きています(威嚇、ディスプレイ)。なぜ同僚たちやリーダーは美樹をここまでして追い込むのでしょうか?それは、このように「優位に立ちたい」と思ってしまうのは、人間の闘争本能の心理だからです。これは、自己愛の心理と言えます。同僚たちにとっては、実力や経験年数が近いほど、その葛藤が強くなります。また、リーダーにとっては、罰の見せしめとして、他の部下たちへの引き締めになります。よって、美樹が惨めな思いをすればするほど、つまり美樹の自尊心が傷付けられれば傷付けられるほど、同僚たちやリーダーは自分のパワーを実感できて(万能感)、安心できるのです。さらには、ドラマの中で、同僚たちもリーダーもそれぞれ「思い通り」にならない悩みを抱えていることが明かされます。つまり欲求不満の状態です。そこから沸き起こるエネルギーが、いら立ちとして表れます。この欲求不満(ストレス)のエネルギーの発散のはけ口(置き換え)として美樹をしつこく責めることで、「思い通り」にしたいという自分のパワー(支配力)を代わりに実感しようともしているのです。表2 自己愛の二面性困った面良い面「私が上だ」「私を舐めるな」→パワー(力関係)の見せつけ(威嚇、ディスプレイ)→攻撃性「自分を大切にする」「優位に立ちたい」(闘争本能)2. 自己愛の起源それでは、そもそも私たちはなぜ人間関係の中で「優位に立ちたい」と本能的に思ってしまうのでしょうか?その答えは、原始の時代から、相手と自分は「どちらが強いか」「どちらが優れているか」という相手との力関係を意識し振る舞う種ほど生き残り、その遺伝子が現在の私たちに引き継がれているからです。逆に言えば、「優位に立ちたい」と思う遺伝子を持たない種は、生存競争の中で生き残り、子孫を残すことは難しいでしょう。つまり、優越感と劣等感の狭間で生きてしまうのは、人間の本質なのです。動物行動学的には、群れで飼われる鶏はお互いつつき合うことで、それぞれの強さ(序列)を確かめて、群れの秩序を保っています(つつき順位)。また、サル山のサルたちは、うなり声や攻撃のポーズをとったり、「どけ」と攻撃を仕掛けるなどして威嚇することで、相手との力関係を探り合います。また、ケンカをしている2匹のサルを見て、群れの他のサルたちは、おのおの自分との力関係を推し量ります。こうして、群れの序列ができていきます。そして、ボスザルが決まれば、歯向かうサルはいなくなり、群れの秩序は保たれます。こうして、ボスザルは自分の子孫をより多く残していき、ますます優位に立とうとする遺伝子が広がっていくのです。私たち人間は、他の動物よりも高度な社会を築く中で、この「優位に立ちたい」(自己愛)という心理と「助け合う」「分け合う」(公平性)という心理のバランスを取りながら進化してきました。人は、平等を唱える一方で、自分は特別扱いされたいという矛盾した心の働きを持っているとも言えます。実際に、平等な集団ほど力関係の葛藤が生まれています。例えば、学校に存在する生徒の間のスクールカースト、公園に集まるママ友の間に勃発するお受験戦争、そして慈善団体の職員の間に見られる手柄の奪い合いなどです。(2)カテゴリー化―競争か協力かの区別の動機付け1. 誰かを悪者(敵)にする心理美樹は、出勤の初日に、だめなメンバーのレッテルを貼られました(ラベリング)。そして、その後も、トラブルが起きるたびに、「またあなたなの!?」とその原因は理不尽にも全て美樹のせいだとみんなに決め付けられます(ステレオタイプ化)。さらに、ある同僚は、美樹の後ろでみんなに聞こえるように「辞めちゃえばいいのに」と独り言を言い、美樹は職場の厄介者として蔑(さげす)まれています(排斥、オストラシズム)。なぜ美樹はここまで悪者扱いされなければならないのでしょうか?それでは、なぜターゲットは美樹だったのでしょうか?その後にリストラで辞めていく同僚が本音を漏らします。「誰でもいいのよ、会社に慣れてなくて、どこかに付け込むスキがあれば」「みんなの嫌がらせのターゲットになって」と。つまり、その理由は、美樹が「付け込むスキ」がある新人だからです。新人(新参者)は、集団に受け入れられるどうかの葛藤があり、自己主張がしづらく、立場が弱いため、付け込まれやすいのです。このような立場が弱く無抵抗な人―外国人(新参者)、障害者、貧困者、少数派(マイノリティ)などは、昔から偏見(差別)の格好の餌食にされてきた歴史があります。表3 カテゴリー化の二面性困った面良い面決め付け(ステレオタイプ化)レッテル貼り(ラベリング)烙印(スティグマ)極端化→偏見、差別、排斥思い込み(暗示、妄想)概念化因果関係に気付く傾向分析予測ひいき想像力2. カテゴリー化の起源それでは、そもそも私たちはなぜ人間関係の中で「誰かが悪者である」と本能的に思ってしまう、つまり悪者を仕立て上げてしまうのでしょうか?その答えは、原始の時代から、「誰が味方で誰が敵か」と鋭敏に感じ取る種ほど生き残り、その遺伝子が現在の私たちに引き継がれているからであると考えられます。当時から、人は、助け合う心理(協力)と「優位に立つ」ための騙す心理(非協力、裏切り)を使い分けながら、限られた資源を取り合う生存競争の中で子孫を残してきました。その中でも、騙してくる相手つまり裏切り者を未然に見つけ出し、区別する心理(カテゴリー化)に長けている人は、騙されずに済んで、生存確率が高まります。もっと言えば、多少の誤作動があっても、裏切りの脅威に対して敏感な方が鈍感な方よりも生き残ります。こうして、人間は、カテゴリー化によって、相手やものごとの共通点と相違点を見いだし(概念化)、社会生活をより円滑にして、知能を進化させてきたのでした(社会脳)。そして、発見された因果関係の積み重ねによって、傾向分析や予測が可能になり、科学を進歩させてきました。つまり、人間の心の進化の負の産物として、誰かを選んで助ける心理(ひいき)と同じように、誰かを選んで助けない、敵意を向ける心理(偏見)は人間の本質的なものなのです。しかし、現在、かつてないほど平和で豊かな時代にようやくなりました。誰かに裏切られても殺されたり飢え死にしたりすることはありません。つまり、悪者(裏切り)の脅威センサーはそれほど働かなくてもよくなったのです。しかし、脅威が減ったことに合わせて、脅威センサーの感度が下がるように心が進化するには時間があまりにも短すぎます。つまり、脅威が減っても、それを感じ取る私たちの脅威センサーはほぼ原始時代仕様の敏感なままということです。すると、何が起きるでしょうか?もともと脅威ではないものを脅威として感じやすくなります。つまり、悪者(裏切り)の脅威センサーの誤作動です。本来裏切っていない、つまり敵ではない相手を、見た目や振る舞いの些細な違いから「得体が知れない」と不気味に思い、敵意を抱いてしまうことです。3. 原始時代仕様の心と体原始時代仕様であるのは、脅威センサーだけでなく、心もですし、体もです。例えば、現代は、原始の時代とは違い、文明によって、運動をほとんどしなくてもよくなりました。だからと言って、人は運動をしなくなったでしょうか?人は、運動をしなければ、体調や気分がすぐれなくなり不健康になることを実感しています。だから、逆にあえて運動をするために、私たちは散歩したりスポーツジムに通うなどして体と心の健康を維持しています。さらには、現代は、科学や法律によって、得体が知れないものへの恐怖や身の危険を感じることが少なくなってきました。しかし、人はそれでそのままハッピーなのでしょうか?では、なぜ人はジェットコースターに乗るのでしょうか?なぜお化け屋敷に行くのでしょうか?なぜアクション映画やホラー映画を見るのでしょうか?その答えはこうです。原始の時代から人は、得体が知れない恐怖や身の危険を感じることが当たり前の環境で生きてきました。そして、当たり前だと思う遺伝子が現代の私たちに引き継がれてきました。だから、現代になって、いきなりそれらの刺激(ストレス)がなくなると、逆に物足りないということです。人は、ある程度のハラハラドキドキの擬似体験が必要なのです。体のアレルギー反応になぞらえてみましょう。花粉症や喘息などの体のアレルギー反応では、自分の免疫の抗体が自分の体を間違って攻撃します。その原因の1つは、現代の生活環境があまりにも清潔になってしまい、本来攻撃していた細菌があまりにもいなくなってしまったからなのです。これと同じように、心のアレルギー反応、つまり脅威へのアレルギー反応によって、脅威が全くなくても脅威を抱く矛先がどこかに向けられてしまいます。その時にたまたま選ばれた誰かが、生け贄(身代わり)としてターゲットとなるのです(スケープゴート現象)。そして、悲しいことに、私たちは、脅威のターゲットがその誰かに特定されていることで、心のバランスが保たれ、安心が得られるのです。たとえそのターゲットが全く見当違いだとしてもです。4. 黒い羊効果私たちは、この心理を感覚的に知っており、逆に利用してさえいます。例えば、美樹の1つ先輩の同僚は、ターゲットが美樹でなくなったら、次は自分になるという危機感を募らせています。誰かが犠牲になれば、自分は安全だという心理です。だからこそ、この同僚は、「必死」に美樹に強く当たっているのです。また、リーダーは、部下たちが自分の陰口を言っているのを立ち聞きしてしまい、その不満をかわそうとしていました。実際に、かつて国の支配者が、民衆の不満を逸らすため、国家的に「悪者」を作り出し、不満のはけ口としてその「悪者」を攻撃させるという偏見(差別)の心理を利用してきた悲しい歴史もあります。ヨーロッパでは、昔から日常用語として、「悪者」になった人を「黒い羊」と呼ぶことがあります。羊はたいてい白く、もともと従順で群れに馴染みやすいイメージがあります。その白い羊毛が様々な色に染められるのに対して、黒い羊毛は黒色にしかならない、つまり他の色に染められないことから、黒い羊は、否定的な「悪者」のイメージが付いてしまいました。英語のことわざに「どんな群れにも1頭の黒い羊がいる(There is a black sheep in every flock.)」があります。これは、人間の世界に当てはめると、群れという社会には、黒い羊、つまり裏切り者、ならず者、厄介者、異端者、逸脱者という「悪者」が必ずいるという意味になります。ただ、カテゴリー化の中の偏見(差別)の心理を踏まえると、正確には、「1頭の黒い羊がいる」のではなく、「1頭が黒い羊に見える」ということになります。他の羊が全て真っ白だと、たまたまある羊がちょっと黒いだけでも、とても黒く見えてしまうのです。つまり、他の人たちが全員同じ方向を向いていればいるほど、ある1人の人が少しでもずれた方向を見ると、全員がその人へより大きな敵意を感じてしまうということです(黒い羊効果)。かつて「歩きタバコ」は当たり前に行われていました。しかし、最近は「歩きタバコ」が規制されることで、ほとんど見かけることはなくなりました。すると、逆に「歩きタバコ」をしている人をたまに見かけると、規制の地域以外であっても、不快に思い、その人に敵意を抱いてしまいます。これと同じように、きっと近い将来、「歩きスマホ」が規制されれば、「歩きスマホ」をする人に敵意を私たちは抱くでしょう。よく冗談で言われる「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言い回しがあります。その逆の「みんなが渡らない青信号を渡る」傾向のある人―例えば、「新卒」ではない就職活動者(フリーター)―は、就職面接などでは採用されにくいという現実もあります。(3)同調―協力の動機付け1. 周りに合わせる心理美樹以外のチームの同僚6人は、とても結束が強いです。特に4人の女性の同僚たちは、美樹の悪口でいつも盛り上がっています。そして、同僚たちだけでなくリーダーも、美樹が受け続けるパワーハラスメントを当たり前のように見ています。こうして、周りが傍観者として黙認することで、事態の容認が生まれています。つまり、傍観者であることは、パワーハラスメントに手を貸しているとも言えます(傍観者効果)。なぜ同僚たちは、これほどまでに温度差なく揃って美樹に敵意を抱いてしまうのでしょうか?それは、周りに調子を合わせることは人間の本能的な心理だからです。この心理は、同調と呼ばれています。さきほど、大御所芸能人が弱ったスキャンダル芸能人を吊り仕上げることで、自分の地位を固めようとする自己愛の心理を紹介しました。実は、それを見ている私たちの多くもそうなることを望んでいます。また、国家が民衆の不満をかわすために「悪者」のターゲットを作り出すという偏見(差別)の心理をさきほどに紹介しましたが、これも同じです。さらにこの心理は、国内だけでなく国際的な問題としてもよく見られます。その国の国内の政治に国民の不満が高まった時、「悪者」として特定の他国の脅威やかつての復讐心を煽ることで、不満がすり替わるだけでなく、いとも簡単に国家としての一体感(愛国心)が高まります。これは、政治の常套手段でもあります。表4 同調の二面性困った面良い面馴れ合い、横並び意識甘え、しがらみイエスマンカリスマ崇拝(極端化)仲間外し(「村八分」)仲良し思いやり、助け合い分け合い(公平性)信頼感一致団結、一体感2. 同調の起源それでは、そもそも私たちはなぜ人間関係の中で、周りに調子を合わせようと本能的にしてしまう、つまり同調するのでしょうか?その答えは、原始の時代から、「周りに調子を合わせよう」と心が動く種ほど生き残り、その遺伝子が現在の私たちに引き継がれているからです。当時、人は猛獣の襲撃や飢餓の脅威を目の前にして、助け合う(協力)ために、周り(集団)に調子を合わせる、つまり多数派の考え(集団規範)に従い、集団のメンバーたちと心を1つにして協力しました。そうするのが心地良いと同調の心理が動機付けられる種ほど生存確率が高まったのでした。実際に、ある心理実験では、人の印象において、相手が少数派であるというだけでその相手への評価が否定的になるという結果が得られています(印象形成のバイアス)。「寄らば大樹の陰」ということわざは、これを端的に表しています。また、「差別は普通ではないことである」「差別する人は普通の人ではない」「私は普通の人だから差別をするはずがない」と言う人がいます。しかし、普通(多数派)であるという意識を高めるほど同調の心理が強まり、結果的に少数派を否定的に見てしまうという差別の心理が生まれています。つまり、逆説的にも「普通の人」ほど差別をしてしまうということです。原始の時代の心を引き継ぐ私たちは、共通の脅威がある時ほど同調(協力)し、一体感の心地良さを味わうことが分かりました。逆に言えば、その心地良さを味わうには、共通の敵(脅威)が必要です。つまり、脅威を同じもの(共通)にしようとする心理こそが、同調の源なのです。しかも、共通の脅威が集団の外にない場合は、集団の中に見いだします。こうして、集団の共通の脅威となったターゲット(スケープゴート)は、集団のメンバーから敵意を向けられるわけです。集団内において、人は、仲良し(協力関係)になるために、仲間外れ(脅威の身代わり)を作らなければならないという矛盾した心理を持っているのです。表5 パワーハラスメントの心理と動機付け心理自己愛カテゴリー化同調「私が上よ」「(悪者は)あの人に決まってる」「ですよねえ」動機付け競争競争か協力かの区別協力敵意を抱いて優位に立つ悪者(裏切り)の脅威センサーの誤作動に乗っかり安心を得る悪者(裏切り者など)の脅威を共有し、協力する組織としての具体的な取り組み美樹を見守る唯一の味方のキャラクターとして登場するマネージャーが言います。「生き残りたいなら強くなれ」「このまま黙って静かに消えたら、お前の思いもやってきたことも何もなかったことになるんじゃないか」「どんなに辛くても、逃げずに立ち向かえば絶対に誰かの心に残る」と。生き残って這い上がって来いという力強い励ましメッセージが込められています。このマネージャーのお陰で、美樹は成長し強くなりました。このドラマの展開から学ぶことは、パワーハラスメントは個人のひたむきさやコミュニケーションの能力、そして支えてくれる味方によって乗り越えられる場合があることです。と同時に、以前にいた新人が心の傷を負ったように、必ずしも全ての人が乗り越えていけるほど生易しいものでもないことです。これまで、パワーハラスメントの根源となるとなる3つの心理―自己愛、カテゴリー化、同調―を解明してきました。そして、パワーハラスメントは、進化の産物としての集団の心理であることも分かってきました。つまり、パワーハラスメントは、特別な集団の特別な人たちがするのではなく、ごく普通の集団でごく普通の人たちがしてしまうということです。しかも、武器や権力などのパワーを持てば持つほど、潜んでいたその遺伝子が目を覚ましてしまうということです。これから、パワーハラスメントは、人間の本質を美化して「起きない」ことを前提にするのではなく、人間の本質を直視して「起きる」ことを前提にする必要があります。私たちがつくる集団(社会)に理想郷は存在しないことを自覚することが出発点です。この前提に立てば、個人だけではなく、集団としての組織の具体的な取り組みが見えてきます。それでは、みなさんのそれぞれの組織の中で具体的に何ができるか、ドラマのエピソードに触れながら、3つのポイントを整理してみましょう。表6 組織としての具体的な取り組み具体例客観化トラブルが起きたらオープンにするメンバー同士がチェックできる部下もリーダーを評価する外部の相談窓口の設置定期的な研修注意喚起のための張り紙構造化メンバーが具体的なビジョン(目標)を共有する役割をはっきりさせる限界設定個人として自分の限界を示し、泣き寝入りしないICレコーダーや携帯電話の録音機能により、証拠を押さえる労働組合や弁護士に相談する(1)客観化美樹が冷凍室に閉じ込められた事件では、美樹のせいにされました。そして、原因は美樹の「不注意」という始末書が作成されます。詳しく調査をすれば、原因は美樹の不注意ではなく、別の同僚のせいであることに辿りつくのは明らかなのにです。そのわけは、リーダーは、美樹の不注意と決め付けて、詳しく調べなかったのでした。一方、美樹は、冷凍室事件では、その前にミスをしていた引け目もあり、自分の言い分を言うことができません。ここから学ぶ1つ目の取り組みは、パワーハラスメントによるトラブルが起きたらオープンにすることです(客観化)。私たち日本人は、自分の言い分を言うことは目立ったり迷惑になったりして恥ずかしいと思いがちです。しかし、パワーハラスメントは起きるものであることが分かりました。大事なのは、これを集団の共通認識とすることです。逆に、うやむやにしたり隠すこと(隠ぺい体質)は、憶測から思わぬ犯人探しの心理(偏見)を生み出します。また、ドラマでは、咎められなかったことを良いことにその同僚の仕業はエスカレートしていきました。オープンにする組織の文化が次の被害者を出さないためにも大事です。また、逆に、パワーハラスメントという言葉が、センセーショナルな響きから独り歩きし、悪用されることもあります。いわゆる「逆パワハラ」です。部下が傷付いたと騒ぎ、上司を訴えるパターンです。この状況も、オープンにしていることで、予防ができます。大事なのは、集団のメンバーに公正な判断材料が十分にあり、お互いが客観的にチェックできることです。例えば、組織内でのメールは公開し、それぞれの指示などもメンバーがチェックできるようにすることです。また、人事の評価は、リーダーからだけでなく、部下たちからも行うことです(360度査定)。さらには、外部の相談窓口の設置、定期的な研修、「言葉の暴力も懲戒の対象になります」との具体例を示すなどの貼り紙を義務付けることで、パワーハラスメントを語ること自体が開かれていることも大切です。(2)構造化美樹が、チームの同僚たちに受け入れられるようになったきっかけとして、美樹のひたむきさや前向きさに加えて、いっしょに協力しなければ成功しないというプロジェクトが始まったことです。それまでは仕事の奪い合いで、チームのメンバーたちは競争の関係にありました。しかし、プロジェクトの成功という報酬が目の前にあることで、協力の関係が動機付けられます。つまり、同僚たちの敵(脅威)は、それまでは美樹でしたが、その後はプロジェクトの失敗という未来に差し替えられたのでした。ここから学ぶ2つ目の取り組みは、メンバーが具体的なビジョン(目標)を共有する枠組みを作ることです(構造化)。協力の本質は、共通の脅威を乗り越えることでした。協力するための脅威は、肯定的な「脅威」、つまり目標に置き換えることができるということです。不適切な例は、「とにかくリーダーである私の言うことを聞きなさい」という関係です。これは、共有すべきビジョンも部下の役割も、曖昧です。よって、適切な例は、上司が具体的なビジョン(目標)のための取り決めを前もってはっきりさせることです。そして、「あなたには何ができる?」「私に何を求める?」と確認し合うことです。すると、メンバーは、言われたままにやるのではなく、自分の行動に責任を持つようになり、役割がはっきりしてきます。部下だけでなく上司も、目標に向かって取り決めを守り、役割を果たしているという姿勢を見せることです。もはや、リーダーも部下も人としては対等で、職場においての決められた役割が違うだけになります(フラット化)。これは、ちょうどジグゾーパズルのピースのように、集団のメンバー1人1人の役割が対等に果たされることで1つの仕事が達成されれば、メンバーのそれぞれが相手に敵意を抱かなくなる仕組みです(ジグゾー法)。これは仕事においてだけでなく、スポーツ観戦においても見られます。ひいきのスポーツチームを応援するために、ファンやサポーターがスタジアムに集まり共に熱狂することで、ファン同士が仲良くなることです。敵チームを疑似脅威と見立てることで、集団の一体感を高める効果が期待できます。(3)限界設定ドラマでは、皮肉にも、ある同僚の隠し撮りの映像が美樹の窮地を救いました。ここから学ぶ3つ目の取り組みは、証拠を確保し、自分の限界を示し、泣き寝入りしないことです(限界設定)。これは、1つ目と2つ目の集団での取り組みでもパワーハラスメントが改善されない場合の個人の取り組みです。例えば、パワーハラスメントが日常的に起きている場合は、ICレコーダーや携帯電話の録音機能を使い、証拠をまず押さえることです。証拠を持って、労働組合や弁護士に相談することです。いくら組織が変わらないからと言って、泣き寝入りをしないことがより良い組織作りにおいて必要です。逆に言えば、管理者は職場においても録音されている可能性があるという発想を持つ必要があります。パワーハラスメントの裁判において、録音などの証拠があって初めて、パワーハラスメントが認定されます。例えば、管理者が、パワーハラスメントが起きている状況を知りながら放置している場合は、従業員の安全に配慮する義務(安全配慮義務)や従業員の心身の健康を保つ義務(就業環境調整保持義務)に違反していることになります。より良い職場(社会)のために心を「進化」させる心の働きは、進化心理学という理論的なフィルターを通して見ると、すっきりしてきます。ただし、パワーハラスメントの心理が進化の産物であるからと言って、私たちは遺伝子の操り人形ではありません。そのような本能的で感情的な「野生の心」を俯瞰(ふかん)して見ることができる、理性的な「文明の心」も私たちは持ち合わせています。より良い職場(社会)のために、この「文明の心」をフルに活用させ、人間関係における様々な心理をよく理解することで、私たちの心はより理性的により賢く「進化」していくことができるのではないでしょうか。1)岡田康子・稲尾和泉:パワーハラスメント、日経文庫、2011年2)それ、パワハラです:笹山尚人、光文社新書、2012年3)大渕憲一:新版 人を傷つける心、サイエンス社、2011年4)本間美智子:集団行動の心理学、サイエンス社、2011年5)石川幹人:人は感情によって進化した、ディスカヴァー携書、2011年

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第18回 手技よりも術後管理のミスに力点をおく裁判所

■今回のテーマのポイント1.消化器疾患の訴訟では、大腸がんが2番目に多い疾患であり、縫合不全の事例が最も多く争われている2.裁判所は、縫合不全について手技上の過失を認めることには、慎重である3.その一方で、術後管理の不備については、厳しく判断しようとしているので注意が必要である事件の概要患者X(49歳)は、平成14年11月、健康診断にて大腸ポリープを指摘されたことから、近医を受診したところ、大腸腫瘍(S状結腸)および胆嚢結石と診断されました。Xは、平成15年5月9日、腹腔鏡下胆嚢摘出術および大腸腫瘍摘出術目的にてY病院に入院しました。同月12日、まず腹腔鏡下で胆嚢を摘出し、ペンローズドレーンを留置し、創縫合を行った後、左下腹部を切開し、S状結腸を摘出して、Gambee縫合にて結腸の吻合を行い、ペンローズドレーンを留置しました。術後3日間は順調に経過しましたが、術後4日目の16日に食事を開始したところ、夜より発熱(39.1度)を認め、翌日の採血では白血球数、CRP値の上昇が認められました。しかし、ドレーンからの排液は漿液性であり、腹痛も吻合部とは逆の右腹部であったことから、絶食の上、抗菌薬投与にて保存的に経過を追うこととなりました。ところが、23日になってもXの発熱、白血球増多、CRP値の上昇は改善せず、腹部CT上、腹腔内膿瘍が疑われたことから、縫合不全を考え再手術が行われることとなりました。開腹した結果、結腸の吻合分前壁に2ヵ所の小穴が認められたことから、縫合不全による腹膜炎と診断されました。Xは、人工肛門を設置され、10月7日にY病院を退院し、その後、同年11月20日に人工肛門閉鎖・再建術のため入院加療することとなりました。これに対し、Xは、不適切な手技により縫合不全となったこと、および、術後の管理に不備があったことを理由に、Y病院に対し、約2億2100万円の損害賠償を請求しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者X(49歳)は、平成14年11月、健康診断にて大腸ポリープを指摘されたことから、近医を受診したところ、大腸腫瘍(S状結腸)および胆嚢結石と診断されました。Xは、平成15年5月9日、腹腔鏡下胆嚢摘出術および大腸腫瘍摘出術目的にてY病院に入院しました。なお、Xは1日40本の喫煙をしており、本件手術前に医師より禁煙を指示されましたが、それに従わず喫煙を続けていました。同月12日、A、B、C、D4名の医師により手術が行われました。まず、最もベテランのA医師が腹腔鏡下で胆嚢を摘出し、ペンローズドレーンを留置し、創縫合を行った後、最も若いC医師が左下腹部を切開し、S状結腸を摘出して、Gambee縫合にて結腸の吻合を行い、ペンローズドレーンを留置しました。本件手術に要した時間は、3時間13分でした。術後3日間は順調に経過しましたが、術後4日目の16日に食事を開始したところ、夜より発熱(39.1度)を認め、翌日の採血では白血球数、CRP値の上昇が認められました。しかし、ドレーンからの排液は漿液性であり、腹痛も吻合部とは逆の右腹部であったこと、16日午後3時頃、Xが陰部の疼痛、排尿時痛、および排尿困難を訴えたことからバルーンカテーテルによる尿道損傷、前立腺炎の可能性も考えられたため、絶食の上、抗菌薬投与にて保存的に経過を追うこととなりました。18日には、ドレーン抜去部のガーゼに膿が付着していたことから、腹部CT検査を行ったところ、「直腸膀胱窩から右傍結腸溝にかけて被包化された滲出液を認め、辺縁は淡く濃染し、内部に一部空胞陰影を認めます。腹腔内膿瘍が疑われます。周囲脂肪織の炎症性変化は目立ちません。腹壁下に空胞陰影と内部に滲出液がみられ、術後変化と思われます。腹水、有意なリンパ節腫大は指摘できません」との所見が得られました。縫合不全の可能性は否定できないものの、滲出液が吻合部の左腹部ではなく右腹部にあること、腹痛も左腹部ではなく右腹部であったことから、急性虫垂炎をはじめとする炎症性腸疾患をも疑って治療をするのが相当であると判断し、抗菌薬を変更の上、なお保存的治療が選択されました。ところが、23日になってもXの発熱、白血球増多、CRP値の上昇は改善せず、腹部CT上、腹腔内膿瘍が疑われたことから、縫合不全を考え再手術が行われることとなりました。開腹した結果、結腸の吻合分前壁に2ヵ所の小穴が認められたことから、縫合不全による腹膜炎と診断されました。Xは、人工肛門を設置され、10月7日にY病院を退院し、その後、同年11月20日に人工肛門閉鎖・再建術のため入院加療することとなりました。事件の判決上記認定事実によれば、本件手術におけるS状結腸摘出後の吻合部位において縫合不全が発生したことが認められる。もっとも、上記認定のとおり、吻合手技は縫合不全の発生原因となりうるが、それ以外にも縫合不全の発生原因となるものがあるから、縫合不全が起こったことをもって、直ちに吻合手技に過失があったということはできない。そして、上記認定のとおり、縫合不全を防ぐためには、縫合に際し、適式な術式を選択し、縫合が細かすぎたり結紮が強すぎたりして血行を悪くしないこと、吻合部に緊張をかけないことが必要であるとされていることを考慮すると、債務不履行に該当する吻合手技上の過誤があるというためには、選択した術式が誤りであるとか、縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたと認められる場合に限られると解するのが相当である。・・・・・・・(中略)・・・・・・・原告らは、C医師は経験の浅い医師であったから縫合不全は縫合手技に起因すると考えられると主張する。B医師のGambee縫合の経験数は不明であるが、上記認定のとおり、本件手術にはD医師が助手として立ち会っているところ、B医師はC医師の先輩であり、被告病院において年間200例程度行われる大腸の手術に関与しているのであるから、C医師の吻合手技に、縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたといった問題があったにもかかわらず、B医師がそのまま手術を終了させるとは考え難い。また、上記認定のとおり、手術後3日以内に発生した縫合不全については縫合の不備が疑われて再手術が検討されるところ、上記前提事実のとおり、本件手術後3日目である平成15年5月15日までの間に特に異常は窺えなかったところである。これらを考慮すると、原告ら主張の事情をもって吻合技術に問題があったと推認することはできないというべきである。以上のとおり、本件手術は、縫合不全が発生しやすい大腸(S状結腸)を対象とするものであったこと、原告は喫煙者であり、縫合不全の危険因子がないとはいえず、縫合手技以外の原因により縫合不全が発生した可能性が十分あること、C医師による吻合の方法が不適切であったことを裏付ける具体的な事情や証拠はないことを考慮すると、原告に生じた縫合不全がC医師の不適切な吻合操作によるものであると認めることはできないというべきである。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(名古屋地判平成20年2月21日)ポイント解説今回は、各論の2回目として、消化器疾患を紹介します。消化器疾患で最も訴訟が多い疾患は、第15回で紹介した肝細胞がんです。そして、2番目に多いのが、今回紹介する大腸がんです。大腸がんの訴訟において、最も多く争われるのが縫合不全(表)です。ご存じのとおり、縫合不全は、代表的な手術合併症であり、手術を行う限り一定の確率で不可避的に発生します。しかし、非医療者からみると、医療行為によって生じていることは明らかであり、かつ、縫合という素人目には簡単に思える行為であることから訴訟となりやすい類型となっています。しかし、最近の裁判所は、合併症に対する理解が進んできており、本判決のように、単に縫合不全があったことのみをもって過失があるとするような判断はせず、「縫合が細かすぎた、あるいは結紮が強すぎた、もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えた」などの具体的な縫合手技に著しく問題があった場合にのみ、手技上の過失があるとしています(表に示した判例においても、手技上の過失を認めた判例は一つもありません)。したがって、現在、手術ビデオなどで手技上の欠陥が一見して明白であるような場合を除き、訴訟において縫合不全が手技ミスによって生じたとする主張が争点となることは少なくなってきています。その代わりといってはなんですが、術後の管理については、厳しく争われる傾向にあります。本事案でも、17日に発熱、白血球増多、CRP値が上昇した際、および18日に腹部CTをとった際に速やかに縫合不全と診断して、ドレーン排液の細菌培養および外科的ドレナージを行うべきであったとして争われました(本件においては術後管理の過失は認められませんでしたが、〔表〕の原告勝訴事例のすべてで術後管理の不備が認められています)。医療行為は行為として不完全性を有します。そして、医療は日々進歩していきます。医学・医療の進歩は、医療者が個々に経験した症例を学会・論文などを介して集約化、情報共有し、それを再検討することで生まれます。しかし、医療行為によって生じた不利益な結果が過失として訴訟の対象(日本では刑事訴追の対象にもなるため萎縮効果が特に強い)となると、医師は恐ろしくて発表することができなくなります。実際に、1999年以降、わが国における合併症に関する症例報告は急速に減少しました。目の前の患者の救済は十分に考えられるべきですが、その過失判断を厳格にすることで達成することは、医学・医療の進歩を阻害し、その結果、多数の国民・患者の適切な治療機会を奪うこととなります。司法と医療の相互理解を深め、典型的な合併症については裁判による責任追及ではなく、医学・医療の進歩にゆだねることが望ましいと考えます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。名古屋地判平成20年2月21日

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真菌症治癒の再定義を

 米国・University Hospitals Case Medical CenterのM. Ghannoum氏らは、爪真菌症治癒の定義について、菌類学的アウトカムと臨床試験期間の解釈を再検証した。その結果、現状の臨床試験期間は見直す必要があり、爪真菌症治癒の定義は、十分なウォッシュアウト後の臨床所見が、KOH直接鏡検法が陰性か否かにかかわらず、培養検査が陰性であることでみなすべきであると報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年8月19日号の掲載報告。 研究グループは、「現在の爪真菌症外用薬の当局による承認は、完全治癒には、罹患した爪の除去と菌類学的な治癒を含むというあまりにも厳しい定義のため、ネガティブな影響をもたらしている可能性がある」として本検討を行った。 7件の国際共同研究での爪真菌症試験のデータをレビューした。試験には、スクリーニング時にKOH陽性、培養検査陽性で、その後48週間の治療を受けた被験者が登録されていた。さらに研究グループは、94例のKOH陽性/培養検査陰性で52週間追跡を受けた検体について形態学的な菌糸損傷について調べた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ52週時点で集められた3,054例の検体のうち、2,360例が培養検査陰性であった。・しかしながら、そのうち1,857例(78.7%)がKOHは陽性のままであった。・形態学的変化について調べたサブセット検体からは、56例(60%)の塗抹鏡検検体に、菌糸の生育不能を示すと思われる菌糸の破損やねじれを認めた。・以上から、著者は「爪真菌症治癒定義の再評価が必要である。外用薬の臨床試験について、治療期間を再考すべきである」と結論している。また、培養検査が陰性でも塗抹鏡検検体の陽性率が高率であったことや、形態学的な菌糸損傷の所見は偽陽性を示す可能性があることなどに触れ、「十分なウォッシュアウト後の臨床症状の消失は培養検査陰性と結びつけて考え、鏡検が陰性か否かにかかわらず爪真菌症治癒の定義とみなすべきである」とまとめている。

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エキスパートに聞く!「プライマリケア医が診るがん」

プライマリケア医として、どういった基準(タイミング)で専門医へ紹介するべきでしょうか?がんの既往があるか、ないかで分ける必要があります。がんの既往がない患者さんの場合は、諸検査を行い、がんの疑いがある時に、紹介してくださると思います。時々、腫瘍マーカー高値で紹介してくださることがあります。腫瘍マーカーというのは、がんのスクリーニングには推奨されておりませんが、一般検診などで取入れられている場合があります。その場合は、偽陽性であることがありますが、まずは、専門医に紹介してくださってかまいません。がんの既往がある患者さんの場合には、治療後の場合と、治療中の場合に分けられます。手術などの治療後、つまり経過観察している場合には、再発の有無を見極める必要があります。患者さんは、ちょっとした症状で「再発ではないか?」と不安になることが多いのですが、実際患者さんの自覚症状・特に痛みなどの症状から再発が発見されるケースは稀です。がんの再発の多くは無症状のことが多いです。表在リンパ節腫大で発見されることもありますので、身体所見を取っていただきたいです。実際のところ、2~3日で軽快する症状であれば、がんの再発の症状とは考えにくいです。がんの再発を疑う自覚症状としては、持続する症状、徐々に悪化する症状かという2点だと思います。現在がんの治療中の場合:放射線治療を行っている患者さんは、放射線肺臓炎などの放射線有害事象、薬物治療を行っている方では抗がん剤有害事象に注意する必要があります。抗がん剤有害事象では、発熱性好中球減少症が最も注意すべき副作用です。発熱性好中球減少症は、エマージェンシーとなります。また、抗がん剤の最も頻度が高い副作用は、悪心・嘔吐ですが、まずは、一般的な吐き気止めで対処していただければよいと思います。嘔吐が強く脱水が懸念される場合などが紹介のタイミングといえるかも知れません。肺がんの低線量CTを検診に用いると発見率が上がるとの報告を聞きますが、エビデンスはあるでしょうか?ドラフトの段階ではあるもののUS Preventive Task Force(USPSTF:米国予防医学専門委員会)で、Grade Bのrecommendation を出しており、おそらく日本でも推奨グレードは上がってくると思われます。しかしながら、低線量CTが、全ての人に推奨されるのではありません。低線量CTを推奨するきっかけとなった、ランダム化比較試験の対象は、年齢が、55~74歳、喫煙歴が30 pack-year以上(1日喫煙本数x 喫煙年数 ÷20)、または、15年以内に止めているが、それまで喫煙歴があるような、ハイリスクの方に対してのみに有効であったということは覚えておいていただきたいと思います。スパイラルCTのデメリットは偽陽性が出やすいことです。偽陽性が出てしまうとさらなる無駄な検査のみしてしまうことになるという訳です。今後もこの点については検討が必要だと思います。遺伝子検査はなぜ普及しないのでしょうか? 最近話題の乳がんのBRCA1/2遺伝子など一部の遺伝性がんの検査について、欧米諸国では保険適応となっています。この点は、日本は欧米諸国に比べ遅れている点と思います。この背景には認可の問題もあると思いますが、がん遺伝子カウンセラーの育成など体制が整っていないこともあげられるでしょう。在宅医療におけるネットワーク構築について、有効な手段とは?急性期病院と在宅ケアとで密な連携をはかっていくことは、今後のがん診療で最も重要なことと思います。がん緩和ケアの領域では、海外では、ホスピスや緩和ケア病棟は、急性期の症状緩和を担当する緩和ケアのICUのような役割を果たし、症状緩和が得られた時点で、地域の在宅ホスピスと連携をとっています。日本では、在宅で最期を迎える確率は10%、ホスピスが7%ですが、欧米先進諸国での、70~80%(在宅+ホスピスで死亡する割合)と比べると圧倒的に低い数字です。日本では、まだまだ急性期病院で終末期を迎える患者さんが多いことを意味しています。今後、急性期病院と在宅ケア、ホスピスとのさらなるネットワーク作りが必要になってくると思われます。最近の流れとしては、余命告知は行う方向へ向かっているのでしょうか。がんの診断を伝えることに関しては、我が国でもかなりの割合で、診断を伝えるようになってきたと思います。余命告知とは、がんの診断の告知とは大きく異なるものということを認識しなければなりません。余命告知で大きな問題は、多くの医者が、median survival(生存期間中央値)の値を余命と勘違いし、あなたの余命は○ヵ月ですと言っている場合が多いように思います。この数値については大いに注意するべきです。中央値とはご存知の通り、データを小さい順に並べたとき中央に位置する値であり、100人患者さんがいたら、50番目に亡くなった方の生存期間です。がんの生存期間は、患者さんによって非常にバラつきが大きく、正規分布をなさないために平均値ではなく、中央値を使っているだけです。裏を返せば、ある患者集団の生存期間中央値が6ヵ月であった場合、数ヵ月で亡くなる患者さんもいれば、ある患者さんは数年経過しても生きておられるということです。従って、生存期間中央値を患者さん個人の“余命”として当てはめることは、医学的にも間違っているのです。それだけでなく、患者には相当な誤解を与えます。余命6ヵ月と言われれば、患者さんは6ヵ月で自分は死んでしまうと考えます。ある患者さんは、自分は、死亡宣告をされたと、死亡推定日まで、自分の余命はあと、○日と指折り数えていました。中央値ではなく、最悪値としての余命を言う臨床医もいますが、やはり数字を言うことは、患者さんはかなり数字にとらわれてしまいがちですし、誤解も生じやすいため、数字を言うことは慎重にすべきです。可能性・確率を言わない断定的な余命告知することは患者さんを傷つけるだけだと思います。残念ながら、未だがん専門施設でも断定的な余命告知をしている現状があります。大切なことは余命告知ではありません。海外では、余命告知ということはあまり議論にはなっていません。余命というものが、不正確であり、予測不可能なことが多いからです。余命を患者さんに告げることよりも、end of life discussionと言って、どのように最後を迎えるか、どのように生きるかということについて、医療者と患者が話し合いをすることを、ASCO(米国臨床腫瘍学会)でも勧めています。日本でも、このことが必要だと思います。参考:腫瘍内科医 勝俣範之のブログ がん患者さんの食事について。生ものを避けるようにいわれますが、実際にはどのようにアドバイスしたらよいでしょうか?生ものについてのエビデンスなどはあるのでしょうか?生ものを摂取して感染症の発症率が上昇するというエビデンスはありません。ASCOでも、抗がん剤の最中に生ものを避ける必要はないと述べています。血液腫瘍など抗がん剤による強力な免疫抑制が懸念されるのでない限り、生ものでもなんでも好きなものを食べてください、と患者さんへアドバイスすべきでしょう。生ものを避けるより、口腔内に発生する細菌を考慮した口腔ケアの方が重要だと思います。なお、マスクの着用に関しても実はエビデンスはありません。自分の病原菌を周囲に散布しないようにすることはできますが、他人からの感染を予防できるというエビデンスはないのです。

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喫煙が死亡に及ぼす影響は、人種差でこんなにも違う/Lancet

 南アフリカにおける喫煙死亡リスクは、白人・黒人の混血“カラード”において最も高く、非喫煙者・元喫煙者との比較でおよそ5割増に上ることが明らかにされた。最もリスクが低いのは黒人で、同2割弱増であった。オーストラリア・Cancer Council NSWのFreddy Sitas氏らが、南アフリカの中高年50万人弱について行ったケースコントロール研究の結果、報告した。Lancet誌2013年8月24日号掲載の報告より。35~74歳で死亡した48万1,640人についてケースコントロール研究 研究グループは、南アフリカで1999~2007年の間に、35~74歳で死亡が確認された48万1,640人について、ケースコントロール研究を行い、カラード、白人、黒人それぞれの喫煙関連死亡率を調べた。被験者の性別、教育レベル、5年前の喫煙の有無、基礎疾患などについて情報を得て分析を行い、喫煙関連の疾患による死亡と、それ以外の原因による死亡を比較した。なお、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症や肝硬変、外的要因、精神障害が原因の死亡は除外した。喫煙関連死亡率はカラード男性27%、同女性17% その結果、カラードにおける喫煙率は男女共に高く、カラード喫煙者の全死亡率は、非喫煙者・元喫煙者との比較において、男女共に約50%高いことが認められた(男性の相対リスク:1.55、95%信頼区間:1.43~1.67、女性の相対リスク:1.49、同:1.38~1.60)。白人も、男性のリスクはカラードを下回ったが同様の傾向が認められた(男性の相対リスク:1.37、同:1.29~1.46、女性の相対リスク:1.51、同:1.40~1.62)。一方、黒人では、喫煙者の死亡リスクの増大は20%未満だった(男性の相対リスク:1.17、同:1.15~1.19、女性の相対リスク:1.16、同:1.13~1.20)。 喫煙関連死亡率は、男性では、カラード27%(2万767人中5,608人)、白人14%(2万8,951人中3,913人)、黒人8%(26万4,011人中2万398人)、女性では、カラード17%(1万5,593人中2,728人)、白人12%(1万7,899人中2,084人)、黒人2%(20万5,623人中4,038人)だった。 アフリカでは数十年前から喫煙者の存在が認められているが、現状の喫煙パターンがもたらす最大かつ最終的な影響については不明である。今回の検討において、南アフリカ中高年の喫煙パターンと死亡との関連、およびそのリスクの大きさが明らかになったことから、著者は、同様のリスクがアフリカ全体の若い喫煙者にもたらされることが暗示されると結論している。

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ビタミンDはアトピー性皮膚炎に有用

 ビタミンDの補給は、アトピー性皮膚炎の臨床症状改善に有用である可能性が示された。安全性、忍容性とも良好だという。ポーランド・ワルシャワ医科大学のZbigniew Samochocki氏らによる検討の結果、報告された。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年8月号(オンライン版2013年5月2日号)の掲載報告。ビタミンD補給後にアトピー性皮膚炎の重症度が優位に低下 ビタミンDには免疫調整作用がある。免疫機構はアトピー性皮膚炎(AD)の病因となっていることから、ビタミンDがADの病態に影響を及ぼす可能性があった。そこで研究グループは、AD患者におけるビタミンD濃度と臨床的・免疫学的・体質的・環境的因子との関連を調べること、またビタミンDの補給がADの臨床症状に影響を及ぼすかどうかについて検討することを目的とした。 具体的には、AD患者と対照被験者について、臨床値および検査値を測定し検討した。ADの重症度は、SCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)indexにて評価した。 ビタミンDがアトピー性皮膚炎の病態に影響を及ぼすかどうかを検討した主な結果は以下のとおり。・検討したのは、AD患者95例、対照被験者58例であった。・AD患者と対照被験者の血中25‐ヒドロキシビタミンD3[25(OH)D3]平均値に、統計的な差はみられなかった。・細菌性皮膚感染症の頻度は、25(OH)D3値が低値のAD患者において高かった。・ビタミンD値とその他の検査および臨床パラメーターとの間に、統計的な関連性はみつからなかった。・ビタミンD補給後、平均objective SCORADおよびSCORAD indexは、有意に低下した(p<0.05)。・本検討は、全被験者が白人であり、ビタミンD投与量が1種類のみであること、および治療期間の評価は1回のみであった点で限界があった。・以上から、本研究において、ビタミンDの補給はアトピー性皮膚炎の臨床症状を改善するのに役立つ可能性があり、安全性・忍容性とも良好である可能性が示唆された。

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慢性C型肝炎、経口薬のみの併用療法に現実味/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)の慢性感染に対し、インターフェロンを用いない経口薬だけの併用療法の有効性に関する報告がNEJM誌2013年8月15日号に発表された。ドイツ・ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学メディカルセンターのStefan Zeuzem氏らが行った、新規開発中の2剤のC型肝炎治療薬、ファルダプレビル(プロテアーゼ阻害薬)とデレオブビル(非ヌクレオシド系ポリメラーゼ阻害薬)に関する第2b相無作為化非盲検試験の結果で、治療終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効(SVR)の達成は39~69%であったという。検討では2剤併用のほか、インターフェロンとの併用にも用いられる抗肝炎ウイルス薬リバビリン(商品名:コペガスほか)を組み合わせたレジメンの検討も行われ、3剤併用療法のほうがSVR達成が高率だったことも示された。経口薬のみの併用療法5群について検討 試験は、ヨーロッパとオーストラリア、ニュージーランドの48施設から被験者を登録して行われた。被験者は、HCV遺伝子1型に感染する未治療の患者で、肝硬変(Metavir分類ステージF4)を有する患者も対象に含まれた。 469例がスクリーニングを受け、362例が次の5群に無作為に割り付けられた。(1)ファルダプレビル120mg 1日1回+デレオブビル600mg1日3回+リバビリンの併用を16週(TID 16W群)、(2)同28週(TID 28W群)、(3)同40週(TID 40週群)、(4)ファルダプレビル120mg 1日1回+デレオブビル600mg1日2回+リバビリンの併用を28週(BID 28W群)、そして(5)ファルダプレビル120mg 1日1回+デレオブビル600mg1日3回でリバビリン併用なしの28週(TID 28W-NR群)であった。 主要エンドポイントは、各群の治療終了後12週時点のSVRだった。3剤併用28週投与のSVRが最も高く69%を達成 結果、TID 16W群59%、TID 28W群59%、TID 40週群52%、BID 28W群69%の達成率を示した。リバビリンを併用しなかったTID 28W-NR群は39%であった。 リバビリンを併用した治療群については、投与量の違いや治療期間の違いによる、治療後12週時点のSVRの達成に有意差はなかった(例:TID 16W群vs. TID 28W群のp=0.86、BID 28W群vs. TID 28W群のp=0.15)。 一方で、TID 28W群のSVRは、リバビリンを併用しなかったTID 28W-NR群よりも有意に高率だった(p=0.03)。 遺伝子型の違いでみると、1b型感染患者56~84%だったのに対して1a型感染患者11~47%であり、IL28B CCを有する患者58~84%に対しCCを有さない患者は33~64%だった。 なお有害事象は、発疹、光線過敏症、悪心、嘔吐、下痢の頻度が高かった。 これら結果を踏まえて著者は、HCV遺伝子1型への経口薬のみの併用療法は有効であり、「リバビリンが経口薬のみの治療に必要であることが判明した。今回の検討では、BID28Wレジメン(ファルダプレビル+デレオブビル+リバビリンを28週)がそのほかのレジメンよりも有効性、安全性プロファイルが良好であった」とまとめている。

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コクサッキーウイルスと天疱瘡は関連しているのか

 天疱瘡は自己免疫性水疱症であり、原因とされるウイルスは複数あるとされている。トルコ・パムッカレ大学のNida Kacar氏らは、コクサッキーウイルス(CV)が天疱瘡患者において認められるかを調べた。CVは、手足口病の原因ウイルスの一つであり、自己免疫疾患と強い関連がある。著者らは、CV感染とセファロスポリンによる治療後に天疱瘡の発症が報告されたことを受けて本検討を行った。International Journal of Dermatology誌オンライン版2013年7月24日号の掲載報告。 研究グループは、患者の皮膚検体を用いて、CV RNAシーケンスについてリアルタイムPCR(RT-PCR)法にて解析を行い、また、CVとアデノウイルス受容体発現について免疫組織化学染色を行った。また、CVの抗体IgMとIgGの血清レベルについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・患者32例と対照40例について調べた。・CVとアデノウイルス受容体発現、CV RNAシーケンスのいずれも、患者の皮膚検体について確認されなかった。・CV-IgG陽性率は、対照よりも患者において高率であった(5%対12.5%、p>0.05)。・今回の予備的な検討においては、CVのウイルス遺伝子は、皮膚において持続的に認められないことが示された。・さらなる大規模症例における検討にて、天疱瘡の原因となるCVの存在場所を明らかにする必要がある。

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H7N9型鳥インフル、初のヒト間感染の可能性/BMJ

 新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの初めてのヒト間感染と考えられる事例を、中国・江蘇省疾病管理予防センターのXian Qi氏らが確認し、BMJ誌オンライン版(2013年8月6日)で報告した。H7N9型ウイルス感染のほとんどは散発的に発生している。動物実験では、H7N9型ウイルスは飛沫を介して伝染する可能性が示唆されているが、これまでヒト間感染を示す明確なエビデンスはなかった。2番目の感染者に家禽との接触なし 2013年3月、江蘇省無錫市でH7N9型感染の家族内小集積(父親とその娘)が確認された。研究グループは、H7N9型ウイルスのヒト間感染の可能性とその影響を評価するために疫学調査を開始した。 2人の患者および家禽を含む生活環境から試料を採取し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法、ウイルス培養、赤血球凝集抑制試験を実施した。ほかの家族や医療従事者など、発症前の患者と接触のあった者の調査も行った。 最初の感染例である60歳の男性は、家禽との接触から5~6日目に体調を崩した。2例目となったのは32歳の彼の娘で、病院で感染予防をせずに父親の看病をしており、家禽との接触は確認されなかった。彼女は父親との最後の接触から6日後に症状を発現した。パンデミックな流行の可能性も考慮すべき 父親には10年以上にわたる高血圧の既往歴があった。2013年3月8日、発熱、咳嗽、息切れを発症し、同11日、左肺上葉の炎症で入院した。進行性の呼吸窮迫、持続性の高体温症、低酸素血症がみられたため、同15日、ウイルス性肺炎および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の診断でICUへ入室した。同18日、症状増悪のため別の3次病院のICUへ移送され、オセルタミビル(商品名:タミフル)治療が開始された。この間、下痢は認めなかった。5月4日、播種性血管内凝固症候群(DIC)および多臓器不全のため死亡。 娘は父親が3次病院ICUへ移送されるまで看病をしていた。3月21日、39.6℃の発熱と咳嗽を発症、同24日、左肺上葉の肺炎の診断で父親が転送された病院の呼吸器科に入院、白血球減少、リンパ球減少、軽度の低酸素症がみられた。同28日、持続性高体温症、呼吸不全、ARDSのためICU入室となり、人工呼吸、広域抗菌薬治療、オセルタミビル、免疫学的治療、蘇生輸液が行われたが、4月24日、多臓器不全および心停止にて死亡した。 2人の患者から分離されたウイルス株のゲノム解析では、8つの遺伝子はすべて遺伝学的にほぼ同一であった(類似性:99.6~99.9%)。また、系統樹解析では、2人の患者の分離株の8つの遺伝子はすべて同じ単系統群に属していた。 2人の患者と接触した43人のうち1人が軽度の症状を呈したが、rRT-PCRでH7N9型ウイルスは陰性であった。H7N9型ウイルスに特異的な血球凝集抑制抗体の検査では、43人のすべてが陰性だった。 著者は、「最初に感染した父親から娘へのヒト間感染の可能性が強く示唆され、伝染性は限定的で、非持続的であった」とし、「本研究は、H7N9型ウイルスのヒト間感染の可能性を示した初めての報告であり、パンデミックな流行の可能性も示唆される」と指摘している。

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足白癬患者の靴下、洗濯水は何℃が望ましいか

 真菌が付着した靴下を洗浄する場合、低温での洗濯では真菌病原体が十分に死滅しないため、高温で洗濯することが望ましいことが、イスラエル・テルアビブ大学のBoaz Amichai氏らによって報告された。 真菌が付着した衣類からは再感染の可能性があるが、これまで十分に検証されていなかった。 The International Society of Dermatology誌オンライン版2013年7月24日掲載報告。 Amichai氏らは、異なる水温での家庭洗濯によって、靴下に付着した真菌をどのくらい排除できるか、その効果を評価した。靴下は足白癬患者から81足集められた。 主な結果は以下のとおり。・調査に使用した靴下は、足白癬患者が着用した後、40℃または60℃の洗濯水で洗浄され、室温で乾燥された。・真菌培養検査に用いたサンプルは、つま先部分とかかと部分の2ヵ所からそれぞれ採取された。・40℃の洗濯水で洗浄されたサンプルのうち、29足(36%)の真菌培養が陽性であった。なお、14足はつま先部分で、15足はかかと部分であった。・そのうち、紅色白癬菌は4検体、アスペルギルス属は20検体で検出された。・同様の条件の靴下を60℃の洗濯水で洗浄した場合、5足(6%)の真菌培養が陽性であった。なお、3足はつま先部分で、2足はかかと部分であった。・60℃の洗濯水で洗浄した靴下では、アスペルギルス属のみ検出された。・酵母は40℃の洗濯で死滅した。・以上の結果より、真菌を死滅させるためには低温の洗濯水は効果的ではないことから、省エネや環境保護といった流れに反するものの、真菌が付着した靴下は高い水温(60℃)での洗濯が必要であることが示唆された。

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小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年度改訂版トピックス-肺炎球菌迅速検査キット導入の意義-

■2013年度改訂の背景小児急性中耳炎診療ガイドラインはエビデンスに基づいた推奨治療法の作成を目的とし、中耳炎患者の診断・治療に有益となることを目標としており、Minds(医療情報サービス)へも掲載されている。前回(2009年)の改訂以降、肺炎球菌ワクチンの国内導入、またテビペネムピボキシル(TBPM-PI)、トスフロキサシン(TFLX)などの新薬が認可されるとともに、2011年11月には肺炎球菌迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS」が保険収載され、診療ガイドラインにおけるこれらの位置づけを明確に提示することとなった。■主な改訂ポイント2013年版 小児急性中耳炎診療ガイドラインの主な改訂ポイントとして、以下の点が挙げられる。1)重症度スコアリング項目から「光錐」を削除し、スコア5点以下を軽症、6〜11点を中等症、12点以上を重症と再定義した。2)中等症、重症において抗菌薬投与後3日目に病態を確認する。3)治療薬として、新たに経口抗菌薬2剤(TFLX、TBPM-PI)を追加した。4)7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV-7)項目を追加した。5)迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」を導入した。以下、今回の改訂の特徴の1つである肺炎球菌迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」の位置づけや使用法について概説する。■肺炎球菌迅速検査キットの意義急性中耳炎においても原因微生物の同定は重要なステップである。従来からの起炎菌検査法であるグラム染色法は多忙な日常臨床のなかで実施することは難しく、また細菌培養法は結果まで数日を要するため、治療開始時点では起炎菌が不明な場合が多い。このような背景からも迅速検査キットの活用により治療前に原因微生物を推定することは有用である。「ラピラン®肺炎球菌HS」は、中耳炎および副鼻腔炎における肺炎球菌抗原診断として、国内で初めて保険収載された迅速診断薬(保険点数210点、判断料(月1回に限る)144点)で、早期の起炎菌検索に有用である。臨床性能試験における本キットの成績は培養検査と良好な一致率を示した(図1)。図1 迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS」の臨床性能試験成績画像を拡大するこれらの成績により、本キットは中耳炎や鼻副鼻腔炎の肺炎球菌感染診断に有用と考えられた1)。また中耳炎・副鼻腔炎合併症例を対象とした検討で、中耳貯留液の肺炎球菌培養検査を基準としたときに、鼻咽腔ぬぐいの培養検査と本キットの検査結果がほぼ同等の成績であったため、中耳貯留液の採取が難しい場合には、鼻咽腔の検体を代用できることが示唆された。 留意点として死菌検出、偽陰性(抗原量少ない場合)、鼻咽腔ぬぐい液では鼻咽腔定着細菌の検出などが挙げられる。本キットの診断意義としては、陽性:肺炎球菌が起炎菌、また死菌残存(中耳貯留液)、常在菌(上咽頭ぬぐい)もあり得る。陰性:インフルエンザ菌やMoraxella catarrhalisが起炎菌、非細菌性またはウイルス性、また肺炎球菌量が少ない(偽陰性)場合がある。■本キットの結果に基づく抗菌薬選択について本キットが陽性であれば、AMPC高用量、クラブラン酸・アモキシシリン合剤(CVA/AMPC)、テビペネムピボキシル(TBPM-PI)など、肺炎球菌をターゲットとした治療が考えられる。また、本キットは薬剤耐性菌やその他の起炎菌の情報は得られないが、2歳未満、集団保育、1ヵ月以内の抗菌薬前治療などの薬剤耐性菌リスク因子を考慮したうえで迅速キットを使用すれば早期の治療選択に役立てることができる。画像を拡大する■迅速検査キット使用のタイミング小児急性中耳炎診療において、次のような場合に肺炎球菌迅速検査キットの結果が参考になる(アルゴリズム中の*印)。1)軽症(スコア≦5点):(図2-A)   3日間の経過観察で改善せず、アモキシシリン(AMPC)を3日間投与しても改善が認められない症例の抗菌薬選択(3回目診察、4回目診察)。2)中等症(スコア6-11点):(図2-B)   AMPC高用量3日間による初回治療後に改善がみられない症例の抗菌薬選択(2回目診察、3回目診察)。3)重症(スコア12点以上):(図2-C)   初診時あるいは初回治療後に改善がみられない症例の抗菌薬選択。■図2 重症度別の治療アルゴリズムA. 軽症(スコア≦5点)画像を拡大するB. 中等症(スコア6~11点)画像を拡大するC. 重症(スコア≧12点)画像を拡大する■肺炎球菌迅速検査キットの使用法キットの使用法を図3に示す。抽出操作は約5分、反応時間は15分で、測定開始から15分が経過していなくても判定部に2本の赤い線が確認できた時点で陽性と判定可能である。図3 「ラピラン®肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」の操作法および判定法画像を拡大する■まとめ治療開始の時点では起炎菌が不明なことが多い小児急性中耳炎診療の現場では、迅速検査キットの導入によって、早期の適切な治療アプローチが可能となり、治癒の達成、患児のQOLの改善とともに耐性菌や医療費の抑制にもつながると期待される。1)Hotomi M, et al. PLoS One. 2012; 7(3) :e33620.関連ニュース4年ぶりの改訂『小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版』発売【問い合わせ先】 大塚製薬株式会社 医薬情報センター〒108-8242 東京都港区港南2-16-4 品川グランドセントラルタワー電話:0120-189-840

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重症薬疹

薬剤性とウイルス性の発疹症の鑑別法について教えてください。これは難しい質問です。薬剤によって出来る発疹とウイルスによって出来る発疹はメカニズムが似ています。薬剤もウイルスもMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を介してT細胞に抗原認識されるという点では同じであり、実際の鑑別も簡単ではありません。ただ、ウイルスには流行がありますし、麻疹や風疹などウイルスでは抗体価が上がります。鑑別では、これらの情報を有効活用すべきだと思います。重症薬疹の、ごく初期の場合の見分け方を教えてください。初期段階での重症化予測については盛んに研究を行っているものの、まだ結論にはたどり着かない状態です。“軽く見える薬疹が2日後に非常に重症になる”といった症例を臨床の場でも経験することがあります。実際、初期であればあるほど見分けは難しく、大きな問題です。しいてコツをあげれば、思い込みを捨てて経過を良く観察する事でしょう。経過を良く見ていると、問題の発疹の原因や悪化要因となっている病気の本態やその赴く方向・勢いが顕になり、おかしいと点に気づくようになります。そこが非常に大事な点だと思います。重症化する薬疹の診断基準や早期診断の項目で、とくに重要な項目はありますか?粘膜疹と高熱の発現は重要です。とくに熱については、高熱がなければウイルス関与の薬疹ではない事が多いといえます。いずれにせよ、この2項目が出た場合は、注意しなければいけないと思います。また一般検査では、白血球増多と白血球減少のどちらも要注意で、血液像で核左方移動を伴う好中球増多がるのなのか、異形リンパ球の出現とその増加があるのか、また特殊検査になりますがTh2の活性化を示唆する血清TARC値の上昇が見られるのかも、薬疹の病型・重症度・病勢を推定・判定する上で重要です。マイコプラズマ感染症に続発する皮疹と薬疹を鑑別する方法はありますか?この2つはきわめて似ています。しかしながら、マイコプラズマに続発する場合は、気道が障害される傾向がありますし、胸部所見からの情報も得られます。また子供よりも大人の方が鑑別難しい症例が多いといえます。これも一番のコツは経過をじっと観察し、通常の定型的薬疹と違うことに気づくことだと思います。同じ薬剤でも薬疹の臨床型には個人差があるが、その要因を知りたい。難しい質問ですが、その患者さんの持っている免疫応答性とそれに影響を及ぼす遺伝的・非遺伝的な各種要因に関係した患者さんの持っている特性などが影響するのでしょう。SJSからTENへの移行とありますが、病理組織学的に両者は別疾患と聞いたことがあります。疾患連続性について御教授ください。これにはいろいろな意見があります。SJSは、通常SJSの発疹の拡大と病勢の伸展・進行によりTENに移行します。しかし、TENの場合、SJSを経ないで現れるものもあります。そのため、現時点ではSJSからTENに移行するものは一群として考えているといってよいと思います。免疫グロブリンは、軽症でも粘膜疹があれば早期投与した方が良いのでしょうか?免疫グロブリンを用いるのは、通常の治療で治らない場合と明らかにウイルス感染があるなど免疫グロブリンの明らかな適応がある場合などに限ります。このような症例を除いては、早期に使わないのが原則だと考えます。また、高価であり保険の問題もありますので、当然ながら安易な処方は避けるべきでしょう。AGEPにおける、ステロイド投与適応の指標は?AGEPには原因薬を中止して治る例とそうでない例があります。ステロイド適応は原因薬をやめて治らない場合ですね。なお、AGEPの場合は、TENやSJSとは異なり比較的低用量のステロイドでも治る症例があることに留意すべきものと思われます。初期に判断が難しい際には、全身ステロイドは控えるべきですか?判断が困難な場合は、第一の選択肢は、まず専門医に紹介するべきでしょう。中途半端な治療の後、悪化してわれわれの施設に来られる患者さんも少なくありません。こういった医療が最も良くないといえるでしょう。そういう意味で、病気に寄り添い、責任を持ってとことん病気を見切ることが重要です。その経過中に無理だと判断したら専門の医師に紹介した方が良いといえます。重症薬疹の原因薬剤として意外なもの(あまり認識されていないもの)はありますか?抗痙攣薬、消炎鎮痛解熱薬(NSAIDs)、抗菌薬、痛風治療薬などが原因薬としてよく取り上げられますが、どんな薬剤でも起こり得ると思った方が良いと思います。被疑薬の特定が困難である場合、治療のために全て薬剤を中止することが多いですが、どのように因果関係を証明したらよいでしょうか?とくに多剤内服中の方について病気の程度によりますが、軽くて余裕があれば、怪しい薬剤から抜いていって、良くなったらその薬剤が原因である可能性が高いわけです。一方、薬疹の進行が激しく一刻の猶予もない場合は、すべて中止したほうが良いと考えます。そして、その症状が治るか収まるかして、ステロイドなどの治療薬を中止できるか、ある程度まで減量できた時に、推定される原因薬剤を用いて、患者さんの末梢血に由来するリンパ球の刺激培養(in vitroリンパ球刺激試験)を実施し、出来れば、in vivoのパッチテストも行い、原因薬を診断・推定することは今後の予防という視点からも重要です。

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Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND

第5回「尿路感染を舐めていないか?」第6回「解剖学(アナトミー)で考えるSSTI、骨・関節の感染症」第7回「スピードで勝負する髄膜炎」第8回「実は難しくない院内感染症」第9回「僕たちはそこで何ができるのか?被災地での感染症対策」 第5回「尿路感染を舐めていないか?」尿路感染は「難しくない」と思っている先生方はとても多いのですが、実はそこに落とし穴があります。尿路感染だと思って治療していたら実は○○だった…、という例には枚挙にいとまがありません。特にベテランの先生ほど、このピットフォールには陥りがちなのです。また、尿路感染=ニューキノロンという考え方も誤りです。実際、岩田先生のプラクティスで尿路感染にニューキノロンが使われることはほとんどありません。では、どうしたらいいのでしょうか?この回を見てしっかり学んでください。第6回「解剖学(アナトミー)で考えるSSTI、骨・関節の感染症」日常診療でもしばしば遭遇する、皮膚や軟部組織の感染症SSTI(Skin and Soft Tissue Infection)、骨、関節の感染症。実は、内科系のドクターはこれらが苦手な方が多いといいます。それは、感染した部位を外科的な視点で解剖学的に見ることが必要だから。単に、「腕」「足」の関節ではなく、その詳しい場所と、組織を特定しなければいけません。また、SSTIによく使われる第三世代セファロスポリンは明らかな誤用です。診断と治療の正しいアプローチを詳しく解説します。第7回「スピードで勝負する髄膜炎」頻度は高くないが、細菌性であれば命に関わる髄膜炎。全ての医師が少なくとも診断のプロセスを理解しておきたい疾患です。スクリーニング、腰椎穿刺、CT、抗菌薬の選択・投与、ステロイド使用の流れを覚えましょう。原因微生物も典型的なものだけでなく例外的な微生物に注意を払う必要があります。スピードを要求される対応のノウハウを身に付けましょう。第8回「実は難しくない院内感染症」入院中の患者さんが熱発した!担当医にとってこれほど気分の悪いことはありません。分からない原因、悩む抗菌薬の選択、耐性菌の不安。しかし岩田先生は、「外来の発熱患者さんに比べれば何百倍も簡単」と一刀両断。なぜなら、実は、感染症以外の鑑別を含めても、考えられる原因は数えるほどしかなく、それらを「ひとつずつ丁寧に精査していけば良い」だけのことだからです。院内感染症に使われる、カルバペネム、バンコマイシン、ピペラシリンといった広域抗菌薬についての誤用、誤解も明快に解説します。耐性菌に対する考え方もしっかり身に付けましょう。第9回「僕たちはそこで何ができるのか?被災地での感染症対策」2011年3月11日以来、岩田先生の医療に対する考え方は大きく変わったといいます。未曾有の大災害に対し、医師一人がいかに無力であるかを思い知り、しかし、それでもなお、何か出来ることがあるはずと、模索する日々。今回は、被災地での岩田先生自らの経験を踏まえて、避難所での感染症対策を解説します。非常時に感染症医として、医師として何が出来るか。それは、決して災害が起ってからだけの問題ではなく、常日頃のあなたの診療においても、考え、実践すべきことなのです。

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細菌性のCOPD急性増悪では好中球中の活性酸素が増加

 細菌性のCOPDの急性増悪では、非細菌性の急性増悪に比べ、好中球中の活性酸素が著しく増加することが、リトアニア大学病院呼吸器・免疫学科のMindaugas Vaitkus氏らにより報告された。さらに、これらは局所炎症が強く引き起こされたことによる炎症反応とみられ、細菌性のコロナイゼーションが原因である可能性にも言及している。Inflammation誌オンライン版2013年7月20日号の掲載報告。 慢性的な気道炎症は、好中球中の活性酸素が増えることで引き起こされる可能性がある。しかしながら、COPDの増悪発症に細菌がどう関わっているのかについては、これまでしばしば議論の的となってきた。  本研究の目的はCOPDの急性増悪について細菌性および非細菌性、それぞれの増悪における、末梢血と喀痰中の好中球の活性酸素を調べることにある。対象は急性増悪を起こしたCOPD患者40例、健康な非喫煙者10例、非COPDの喫煙者10例であった。 末梢血と喀痰のサンプルは増悪中と回復後に採取した。好中球の分離は高密度勾配遠心分離と磁気分離により行った。好中球中の活性酸素はフローサイトメトリーを用いて平均蛍光強度を測定し、血清中と誘発喀痰中のインターロイキン-8(IL-8)の値はELISA法により測定した。 主な結果は以下のとおり。・細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者の好中球中の自発的活性酸素は、非細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者や安定期COPD患者と比べて、有意に高かった(p<0.05)。・ホルボールミリステートアセテート(PMA)や黄色ブドウ球菌により刺激を加えた際の、好中球中の活性酸素についても同様の傾向が認められた(p<0.05)。・細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者の血清中、誘発喀痰中のインターロイキン-8(IL-8)は、非細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者、安定期COPD患者、健康な喫煙者・非喫煙者のいずれと比べても高いことが示された(p<0.05)。とくに、誘発喀痰中のインターロイキン-8(IL-8)は、すべての群と比較して細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者で高かった(p<0.05)。・また、急性増悪を起こしたCOPD患者群では、ほかのすべての群と比較して、CRPも高かった(p<0.05)。

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MERSはSARSに比べ伝播力は弱く、パンデミックの可能性は低い/Lancet

新しいコロナウイルスである中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と比べると、ヒトからヒトへの伝播力は弱く、パンデミックとなる可能性は低いことが報告された。フランス・パスツール研究所のRomulus Breban氏らが、世界保健機関(WHO)の報告書などを基に調べ明らかにしたもので、Lancet誌2013年7月5日号で発表した。MERS-CoV感染症は、臨床的にも疫学的にも、またウイルス学的にも、SARS-CoV感染症との類似点が多い。研究グループは、既報のSARS-CoVパンデミック報告を入手し、両者を比較し、MERS-CoV感染症の伝播力と流行の可能性を調べた。ベイジアン解析で基本再生産数を割り出す 研究グループは、2013年6月21日までに報告されたMERS-CoV感染症確定者のうち、55例について、WHOの報告書などを基に、ヒト-ヒト間の伝播力を調べた。 ベイジアン解析により、基本再生産数(R0)を求め、SARS-CoV感染症の場合と比較した。MERS-CoVクラスターサイズについて解釈を変えることで、悲観的・楽観的の2通りのシナリオ予測値を算出した。悲観的シナリオでもMERS-CoVのR0値は0.69 その結果、最も悲観的なシナリオの場合、MERS-CoVのR0予測値は0.69(95%信頼区間:0.50~0.92)だった。最も楽観的なシナリオでは、MERS-CoVのR0予測値は0.60(同:0.42~0.80)だった。 一方、SARS-CoVのR0値は0.80(同:0.54~1.13)で、それに比べ、MERS-CoVは悲観的シナリオの場合でも、パンデミックとなる可能性は低いことが示された。 解析の結果を受けて著者は、「今回の解析結果は、MERS-CoVはまだパンデミックとなる可能性は低いことを示すものでる。同時に、サーベイランスの強化、および感染源である動物宿主およびヒトへの感染ルートの探索を活発化することを推奨すべきことを確認するものとなった」と結論している。

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ICUでのMRSA感染症を防ぐために有効な方法とは?(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(117)より-

MRSAは、医療関連感染(Healthcare Associated Infections)の中で最も重要な微生物といっても過言ではなく、とくにICUでは問題になることが非常に多い。米国ではスクリーニングとして、ICU入室時に鼻腔のMRSAを調べ、接触感染予防策を徹底するよう義務づけている州がある。鼻腔にMRSAを保菌しているキャリアーからの伝播を防ぐ方法として、(1)抗菌薬であるムピロシンの鼻腔内塗布や、(2)消毒薬のクロルヘキシジンをしみ込ませた布での患者清拭を行って、除菌decolonizationできるかどうか検討され、それぞれ有効性が示されてきたが、誰にいつの時点で行えばよいかは不明であった。 そこで米国43病院、74箇所のICUを対象として、以下の3群に割りつけた。●グループ1:入室時に鼻腔のMRSAスクリーニングを行い、陽性者や過去にMRSA感染症の既往があった者は接触感染予防策を行う。●グループ2:グループ1と同様のスクリーニングを行うが、保菌・感染が判明した患者はムピロシンと2%クロルヘキシジンによる除菌と接触感染予防策を行う。●グループ3:スクリーニングは行わないで、入室者全例に除菌と接触感染予防策を行う。 この3群において、MRSA検出率と血流感染発生率を比較した。 全く対策を行わなかった時期と比べると、MRSA検出率はグループ1で8%、グループ2で25%、グループ3で36%減少し、血流感染率はグループ1で1%、グループ2で22%、グループ3で44%減少し、全例除菌の効果が最も著しかった。なお、血流感染では、MRSAによるものとその他の微生物によるものの両方が減少し、減少幅はグループ3で最も大きかった。 ムピロシンにより鼻腔の保菌が少なくなったこと、クロルヘキシジン清拭により皮膚の細菌数が少なくなったこと、さらに入室時から対策を開始できたことがグループ3での効果に結びついたと考えられる。対象を絞った対策よりも、ユニバーサルな除菌が効果的であったというのは、培養でとらえきれない(培養感度以下である)MRSAの存在や、多くの人が接し、患者・スタッフ間で伝播が生じやすいICUの環境を考えると理にかなっているといえよう。 日本ではかつてクロルヘキシジンによるアレルギー例が報告され、それ以来その使用に対して慎重であり、用いられている濃度も低い。今回の検討では、クロルヘキシジンの使用後に7例で局所の掻痒や発疹が出現したが、いずれも中止により改善したという。 本邦で通常行われている、対象を絞った方法では限りがあることも示されたわけであるが、今回の検討では、その後にMRSAの検出率が増加しなかったかも気になるところである。これまで、ユニバーサルなムピロシン使用は1年以内の短期的な抑制効果にとどまっていた例が報告されている。感染予防に対する職員個人の意識が持続できなければ、除菌を行っても早期に破綻してしまう。その意識をどのように維持させていくかが、最も重要かつ工夫しなければならない課題である。

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SGLT2阻害薬追加、血糖管理不良な2型糖尿病に有用/Lancet

 ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬カナグリフロジン(canagliflozin)は、メトホルミン単独では血糖管理が十分でない2型糖尿病患者に対する追加治療として良好な血糖改善効果を発揮し、忍容性も良好なことが、米国・ペニントン生物医学研究所のWilliam T Cefalu氏らが行ったCANTATA-SU試験で示された。メトホルミンへの上乗せが可能な既存薬の多くは体重増加や低血糖の懸念があるが、SGLT2の阻害という作用機序はこれらの問題を回避し、また尿糖排泄の促進作用により総カロリーの消費が進むため体重が減少する可能性もあるという。一方、本薬剤には軽度の浸透圧利尿がみられるため、頻尿や多尿の懸念があるという。Lancet誌オンライン版2013年7月12日号掲載の報告。標準治療に対する非劣性を無作為化試験で検証 CANTATA-SU試験は、メトホルミン単独では血糖値の管理が十分でない2型糖尿病患者において、カナグリフロジンの上乗せ効果の、グリメピリド(商品名:アマリールほか)に対する非劣性を検証する二重盲検無作為化第III相試験。対象は、年齢18~80歳、HbA1c 7.0~9.5%、10週以上のメトホルミン投与を受けている2型糖尿病患者であった。 これらの患者が、カナグリフロジン 100mgまたは300mg、あるいはグリメピリド(6から8mgへ漸増)を1日1回経口投与する群に無作為化に割り付けられた。主要評価項目はベースラインから治療52週までのHbA1cの変化で、非劣性マージンは0.3%とした。100mg群の非劣性、300mg群の優位性を確認 2009年8月28日~2011年12月21日までに19ヵ国157施設から1,450例が登録され、グリメピリド群に482例、カナグリフロジン 100mg群に483例、300mg群には485例が割り付けられた。 全体の平均年齢は56.2歳(9.2 SD)、男性52%、白人67%、アジア人20%、平均HbA1c 7.8%、平均空腹時血糖9.2mmol/L(≒165.6mg/dL)、平均体重86.6kg、平均BMI 31.0、平均罹病期間6.6年(中央値5.0年)であった。 治療52週時のHbA1cは3群ともにベースラインよりも低下し、最小二乗平均値の変化率はグリメピリド群が-0.81、カナグリフロジン 100mg群は-0.82%、300mg群は-0.93%であった。 カナグリフロジン 100mg群とグリメピリド群の最小二乗平均値の差は-0.01%(95%信頼区間[CI]:-0.11~0.09)であり、カナグリフロジン 100 mg群はグリメピリド群に対し非劣性であった。また、300mg群とグリメピリド群の最小二乗平均値の差は-0.12%(-0.22~-0.02)であり、300mg群のグリメピリド群に対する優位性が示された。 体重は、グリメピリド群がわずかに増加したのに対し、2つのカナグリフロジン群は有意に低下した[最小二乗平均値の変化率:0.7%、-3.7%、-4.0%、100mg群、300mg群とグリメピリド群の差:-4.4(-4.8~-3.9)、-4.7(-5.2~-4.3)]。良好な安全性プロフィール、浸透圧利尿関連イベントは多い傾向 重篤な有害事象は、カナグリフロジン 100 mg群が24例(5%)、300mg群が26例(5%)、グリメピリド群は39例(8%)に認められた。 カナグリフロジン群で多い有害事象として性器真菌感染症が挙げられ、女性では100mg群が26例(11%)、300mg群が34例(14%)で、グリメピリド群は5例(2%)であり、男性では100mg群が17例(7%)、300mg群が20例(8%)で、グリメピリド群は3例(1%)だった。 尿路感染症も100mg群が31例(6%)、300mg群が31例(6%)で、グリメピリド群の22例(5%)より多い傾向がみられた。浸透圧利尿関連イベントもカナグリフロジン群で多い傾向にあり、頻尿が100mg群、300mg群ともに12例(3%)ずつ、グリメピリド群は1例(<1%)にみられ、多尿はカナグリフロジン群が4例(<1%)ずつ、グリメピリド群は2例(<1%)に認められた。 著者は、「これらの結果は、メトホルミンで血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、カナグリフロジンは実行可能な治療選択肢であることを示すもの」と指摘している。■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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