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アジア発、ロタウイルスワクチン定期接種化へのエビデンス

 台湾・国家衛生研究院のWan-Chi Chang氏らは、新生児への2種のロタウイルスワクチン(ロタリックス、ロタテック)接種の有効性について、定期接種導入検討のための情報提供を目的とした症例対照研究を行った。その結果、両ワクチンとも重症急性ロタウイルス胃腸炎に対してすぐれた予防効果を示し、3歳未満時の急性胃腸炎による入院コストを大幅に減らす可能性があることなどを報告した。著者は、「今回の報告は、台湾およびその他アジア諸国の政策立案者に知らせるべきものであり、ロタウイルスワクチン定期接種化に向けた意思決定に役立つものである」とまとめている。Pediatric Infectious Disease Journal誌2014年3月号の掲載報告。 台湾では現在、ロタウイルスワクチンは、ロタリックスとロタテックの2種類が上市されているが定期接種の推奨はされていない。研究グループは、定期接種導入の有益性について政策立案者に情報提供をすることを目的に、台湾新生児における同ワクチンの重症急性ロタウイルス胃腸炎に対する有効性を調べた。 2009年5月~2011年4月に、台湾国内3地点(北・中・南部)の病院サーベイランスに基づく症例対照研究を行った。ロタウイルス胃腸炎であることが検査確認された生後8~35ヵ月齢の入院患児を症例とし、年齢を一致させた対照と、ワクチン接種歴について予防接種カードまたは入院記録により確認し、ワクチンの有効性を算出((1-ワクチン接種オッズ比)×100%)した。 おもな結果は以下のとおり。・2年の間に急性胃腸炎で入院した8~35ヵ月齢児は1,280例であった。そのうち、ロタウイルス陽性であった児(症例群)は184例(14%)であった。残る1,096例のロタウイル陰性児群と、さらに1,183例の非急性胃腸炎患児群から、症例群と年齢を一致させた対照群(904例、909例)を特定し評価を行った。・ロタウイルス陽性群184例のうち、ロタウイルスワクチン接種児は3例(1.6%)で、いずれもロタリックス2回接種例であった。・また、ロタリックス2回接種例は、ロタウイルス陰性児群では14.9%、非急性胃腸炎患児群では18.9%であった。ロタウイルス胃腸炎による入院に対する両群におけるロタリックス2回接種の推定有効率は90.4%(95%CI:70.3~98.1%)、92.5%(同:77.1~98.5%)であった。・ロタテック3回接種例は、ロタウイルス陰性児群では10.6%、非急性胃腸炎患児群では12.0%であった。ロタウイルス胃腸炎による入院に対する両群におけるロタテック3回接種の推定有効率は96.8%(同:82.3~100.0%)、97.1%(同:84.0~100.0%)であった。

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中国で初めて報告された鳥インフルエンザA(H10N8)のヒト感染例―既報のトリ由来H10N8とは異なるタイプと判明―(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(185)より-

鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染し、重症となるケースがあとを絶たない。A型のH5N1やH7N9がその代表であり、H7N9は2014年1月27日までに既に中国で250例が報告され、うち70例が死亡している。 一方H10N8は、これまで北米、欧州、アジア、オーストラリアなど広い範囲で、主にカモから分離されていたものの、ヒトへの感染例はなかった。しかしながら2013年11月、中国江西省南昌市で最初の感染例が報告された。さらに、患者から分離されたH10N8は既報の鳥由来ウイルスとは異なる、新たな再集合体であることが判明した。 患者は73歳女性で、高血圧、冠動脈疾患、重症筋無力症の既往があり、11月27日(Day 0とする)から咳嗽および呼吸困難を訴え、30日(Day 3)に南昌市の病院に入院した。入院時は38.6℃の発熱を来たしており、翌31日に撮影したCTでは右下葉と左下葉にコンソリゼーションが認められた。細菌性肺炎に対する治療を行ったが、呼吸不全が進行し、12月2日にはICUに入室した。両側性の胸水とスリガラス状陰影の急速な悪化を来たし、オセルタミビル(12月3日開始)、グルココルチコイド、アルブミンの投与を行うも、重症肺炎と敗血症性ショックおよび多臓器不全を呈し、6日(Day 9)に死亡した。 検査所見上、白血球数は入院翌日(Day 4)で10,340/μLであり、好中球数は76.4%、リンパ球数は7.0%であった。リンパ球数はその後もずっと正常範囲以下であった。CRPはDay 4ですでに高値であり、またDay 4に正常範囲内にあったクレアチニン、BUN、AST、ALP、総蛋白、アルブミンはDay 7にはすべて異常値を示した。トランスサイレチンはDay 4以降すべての時点で低下していた。 本患者からDay 7とDay 9に採取した気管内吸引物からH10N8ウイルスが分離された。また痰・血液培養と吸引物のdeep sequencingの結果、細菌真菌の同時感染は示されず、気管内でH10N8が極めて優位であったことが判明した。さらに本ウイルスのHA蛋白に対する血清抗体を測定したところ、Day 5からDay 9で上昇したことも明らかになった。病理解剖の同意は得られなかったが、H10N8による肺炎と呼吸不全、死亡と判断された。 一方、ウイルス遺伝子はすべて鳥由来で、HA、NA以外の6つの内部遺伝子は中国の家禽で流行しているH9N2に最も近縁であった(注:中国でかつて分離されたH5N1ウイルスもH9N2由来の内部遺伝子を有していた)。さらに既報の鳥・環境由来のH10N8とも異なっており、新たな再集合体のH10N8が初めてヒトに感染したと結論付けられた。さらに本症例のH10N8はその塩基配列により、家禽への病原性は低いが、哺乳類の細胞に親和性を持っていること、経過中に哺乳類への病原性が高まる変異(PB2のGlu627Lys)を獲得したこと、ノイラミニダーゼ阻害薬に感受性を示すことも判明した。 また患者は発症4日前に家禽市場を訪れており、これが感染の契機になった可能性があるが、患者に接触した者の中で、発症者、ウイルス陽性者、抗体陽性者はいずれも見つかっていない。 さらに2014年1月26日、南昌市の55歳女性がH10N8に罹患し重体となったこと、また2月までに江西で1名が感染し、死亡したことも判明した。このため現時点(3月13日)で感染者は3名、うち死亡者が2名となっている。 著者らは、「1997年に香港で最初の死亡例が報告された鳥インフルエンザH5N1の感染では、その後6ヵ月間で17例の死亡を報告した。新規のH10N8ウイルスのパンデミックの可能性が過小評価されてはならない」とまとめている。ヒトへの病原性、伝播性、ウイルスの出現・再集合のメカニズムはもちろんのこと、ヒトの感染例が今後増加するのか、どの程度家禽で流行しているのかについてもまだ全く見通しが立たない1)。 H5N1による上記の報告から15年以上が経過した現在でも、科学的な根拠を持って本ウイルスの特徴を明らかにするには、今後長い時間が必要である。

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中国で見つかった鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症の疫学調査(続報)(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(184)より-

2013年3月、中国から鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスがヒトに感染した事例が初めて報告された。家禽市場の閉鎖措置後、一旦患者は減少傾向を示していたが、2013年10月以降再び患者が増加している。中国以外では、台湾、香港、マレーシアから感染例が報告されているが、全例中国本土で感染したと考えられている。本稿執筆時点では日本国内での感染例は報告されていないが、国内発生時に冷静に対応できるように準備しておく必要がある。  本論文は、2013年12月1日までに確定した鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症139例の臨床情報と、濃厚接触者の追跡調査をまとめた報告である。 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染は、リアルタイムRT-PCR法、ウイルス分離、血清学的検査のいずれかで確認した。確定診断された患者の平均年齢は61歳(範囲:2~91歳)で、42%が65歳以上であった。5歳未満は4例で、すべて軽い上気道症状を呈するのみだった。性別は男性が71%と多かった。情報が得られた108例のうち79例(73%)が何らかの基礎疾患を有していた。  確定例のうち9例が家禽を扱う労働者であった。情報が得られた131例のうち107例(82%)で動物との接触歴があり、そのうち88例に鶏との接触歴があった。 確定診断された139例のうち、137例は入院加療された。125例(90%)が肺炎あるいは呼吸不全を発症し、47例(34%)がARDSや多臓器不全で死亡した。発症から死亡までの期間の中央値は21日だった。情報が得られた109例のうち、79例でオセルタミビルが投与された。発症からオセルタミビル投与開始までの期間の中央値は6日だった。  感染患者との濃厚接触者2,675名を7日間追跡調査した。追跡期間中に呼吸器症状を呈した28名(研修医1名を含む)で咽頭スワブ検体を用いてリアルタイムRT-PCR法が行われたが、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは1例も検出されなかった。  同一家族内で複数の患者が発生した4事例の調査の結果では、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト-ヒト感染が否定できなかった。 本論文は同誌オンライン版2013年4月24日号に発表された報告の続報である。調査対象となった症例数は増加しているが、疾患の臨床情報に関して大きな変化はない。確定患者に重症例が多いことは鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症の1つの特徴である。通常の季節性インフルエンザと比較すれば死亡率は高そうだが、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルス感染症より死亡率は低いと推察する。 前回の報告同様、濃厚接触者間でヒト-ヒト感染が起こっているとの確認はできなかった。同一家族内での感染事例が複数存在し、限定的なヒト-ヒト感染が起こっている可能性は否定できないが、効率的なヒト-ヒト感染は確認されていない。ただし、本論文の最後にeditorがコメントしているとおり、2013年12月1日以降に65例以上の鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症が同定されており、今後パンデミックへ移行しないかどうか発生動向に注意を払わなければならない。

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リウマチの原因

【関節リウマチ】決定的な原因は、いまだ不明メモ関節リウマチの原因はいまだ明確になっていない。複数のリスク因子がからみ合って異常な免疫反応が起こり、発病にいたる。主なリスク因子は、遺伝、ウイルス感染、女性ホルモン、化学物質、ストレスなど。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 金子祐子氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第5回

第5回:頻度の多い中耳炎...いま一度おさらいを 急性中耳炎は、急性に発症した中耳の感染症で、耳痛・発熱・耳漏を伴うことがあります。小児に多い疾患ですが、時折、成人でも認めます。日本では、小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版1)が発表されています。このガイドラインは、臨床症状と鼓膜所見をスコア化し、重症度によって治療を選択します。臨床現場では、軽症や中等症の症例に対し、当初より広域の抗菌薬を使用されているケースが散見されます。耐性菌の増加、多剤耐性菌の出現を考えると、適切な抗菌薬治療が望ましいと思います。 以下、American Family Physician 2013年10月1日号2)より中耳炎1.概要急性中耳炎は、急性発症、中耳浸出液の存在、中耳の炎症所見、痛み、イライラ、発熱などの徴候によって診断され、通常、ウイルス性上気道感染に伴うエウスタキオ管機能不全の合併症である。2.症状・徴候中耳浸出液の存在、耳痛、イライラ、発熱 など3.診断アメリカ小児科学会によると、急性中耳炎の診断は、耳鏡所見に伴うクライテリアに基づいて行う。鼓膜の中等症~重症の腫脹と外耳道由来ではない急性発症の耳漏、48時間以内の発症の耳痛を伴う鼓膜のマイルドな腫脹や紅斑が、診断に必要である(Evidence rating C)。また、小児の場合、中耳の浸出液を認めない場合は、診断されるべきではない。4.急性中耳炎の治療方針1)初期症状に対して:診察所見や徴候に基づいて診断を行う。・痛み止め(アセトアミノフェン)を処方。・耳漏や重症なサインや徴候のある6ヵ月以上の小児は、抗菌薬治療10日間施行。・重症なサインや徴候のない、両側性の急性中耳炎ある6~23ヵ月の小児は、抗菌薬治療10日間施行。・重症なサインや徴候のない、片側性の急性中耳炎ある6~23ヵ月の小児は、経過観察もしくは、抗菌薬治療10日間施行。・重症なサインや徴候のない2歳以上の小児は、経過観察もしくは、抗菌薬治療5~7日間施行。2)持続的な症状がある場合 :・中耳炎のサインを繰り返し診察。・中耳炎が、まだあれば、抗菌薬治療を始めるか、抗菌薬を変更。・適切な抗菌薬治療を行っても、症状が持続する場合、セフトリアキソンの筋肉注射やクリンダマイシン、鼓膜切開を考慮。 3)抗菌薬の選択 : 初期治療として、アモキシシリン(80-90mg/kg/日)分2もしくは、アモキシシリン・クラブラン酸(90mg/kg/日のアモキシシリン、6.4mg/kg/日のクラブラン酸)分2を内服。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会、日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会編.小児急性中耳炎診療ガイドライン 2013年版.金原出版;2013. 2) Harmes KM, et al. Am Fam Physician. 2013;88:435-440.

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C型慢性肝炎は3ヵ月の経口内服薬で90%以上治癒する時代へ―副作用のないIFNフリー療法が目前に―(コメンテーター:溝上 雅史 氏、是永 匡紹 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(178)より-

C型慢性肝炎に対する最新治療は、週1回のペグインターフェロン(PegIFN)注射とPegIFNの有効性を高めるリバビリン(RBV)に、直接ウイルスに作用する抗ウイルス剤(シメプレビル:SMV)を内服する3剤併用療法である。治療期間は24週間、前治療でウイルスが感度未満にならない(Non-Viral Response:NVR)一部の難治例を除けば、ウイルス排除(Sustained Viral Response:SVR)率は90%を超える。しかし、わが国のC型慢性肝炎患者の多くは65歳以上の高齢者のため、副作用が多いIFN治療そのものが導入できない現状があり、「IFNフリー=副作用が少ない治療」が必要不可欠である。 IFNフリーの経口抗ウイルス剤は、単剤でも一過性にウイルスを減少させるが、すぐに薬剤に抵抗する耐性変異株が出現するため (1) SMVに代表されるNS3 プロテアーゼ阻害剤、(2) NS5A阻害剤、(3) NS5Bポリメラーゼ阻害剤(核酸型・非核酸型)を組み合わせて(多剤併用療法)開発試験が行われている。多剤併用療法であるが、C型肝炎ウイルスに対する治療は一定期間内服すればウイルス排除が可能で、一生内服する必要はない。 2013年11月のアメリカ肝臓学会ではNS3 プロテアーゼ阻害剤アスナプレビル(ASV)を1日2回、NS5A阻害剤ダカルタスビル(DCV)を1日1回24週間併用内服することで、85%のSVR率が得られると本邦から発表されたが、NS5Aに変異株が存在すると治療効果が低下するという問題点がある。一方で、NS5A阻害剤レディパスビル(LDV)と核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソフォスブビル(SOF)の合剤を1日1回、わずか12週間内服するだけで、副作用なく95%のSVR率を達成するという驚くべき報告がなされ、さらに、本治療により耐性株が出現した1例に再度、同合剤とRBVを併用し24週間投与したところSVRに至ったと紹介された。このことは、RBVが多剤併用治療における変異株を抑制できる可能性を示唆している。 本論文は米国における肝硬変を伴わない未治療(naive)またはNVR例に対するNS3プロテアーゼ阻害薬(ABT-450)+ABT-450の効果を高める作用リトナビル(r)をkey drugとして、±非核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤(ABT-333)±NS5A阻害薬(ABT-267)±RBVを組み合わせた第2b相非盲検無作為化試験である。ABT-450は投与量(100/150/200mg)、さらに投与期間(8/12/24週)の比較も行っており、14の異なった投与方法に20~79例(total:517例)がエントリーしている。  naive例における解析では、ABT-450/r+ABT-333投与でさえSVR率は83%とASV/DCV同様で、さらにABT-267、RBVをそれぞれ加えることでSVR率は89~96%まで上昇した。NS5A阻害剤、RBVの重要性が改めて確認され、ABT-450(150mg)/r+ABT-333+ABT-267+RBVの12週間投与が基本になる。またNVR例でも、本レジメンで93%のSVR率が確認され、副作用は、疲労、頭痛、悪心、不眠が主で、中止したのは8例(1%)と少ない。 本試験は、LDV/SOF合剤同様、副作用も少なく、NVR例でもSVR率は90%を超える結果となった。ABT-450(150mg)/r+ABT-267は合剤となるため、2剤とRBVを内服することになる(LDV/SOFは1剤±RBV)。最近、第3相試験も発表され、NVRでもSVR率は96%、中止3例(1%)と報告されたことも付け加えておく。 高齢者が多く、肝線維化進展例が多いわが国で、どれだけ副作用なく投与できるは今後の課題であるが、HCV排除が、IFNフリー療法で90~95%可能な時代がすぐそこまで来ている。RBV併用により有効率上昇も示唆されており、耐性株出現や再燃しやすい症例を、治療前から予測することも今後の課題である。

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イレウスに高圧浣腸・摘便を行ってS状結腸が穿孔し死亡したケース

消化器最終判決判例時報 1050号118-124頁概要便秘と尿閉を訴えて受診した57歳男性。触診により糞石の存在を認め、糞便性イレウスと診断し、即刻入院させて用指的摘出と高圧浣腸とにより糞石の除去・排便促進に当たったが、病状は改善されなかった。翌日になり腹部膨満・激痛などの症状が発するに及んで、転医の措置を取り、転医先で即日開腹手術を受けたが、糞塊によるS状結腸圧迫壊死および穿孔に原発する汎発性腹膜炎により死亡した。詳細な経過患者情報57歳男性経過1975年4月18日10:00便秘のためおなかが張るという主訴で近医受診。初診時、便秘と尿閉による怒責で体を揺すっていた。腹部を触れてみると下腹部の真ん中から左側の方に凹凸不整の固い腫瘤が認められ、腹が少し張っており、肛門から指を入れると糞石をたくさん触れることができた。血圧は120/80mmHg、脈拍も悪い状態ではなかった。問診によると吐いたことはなかったが、排便、排ガスがなく痛みがあったことがわかり、糞便性イレウスと診断した。約1kgの糞石を摘出し、500mLの高圧浣腸を行ったところ、自力で排便がなされガスも大量に出た。腹部を触るとなお糞石がたくさん存在したが、怒責もなくなり顔色も良くなった。11:00ブドウ糖、ビタミン剤の点滴を1,500mLにより怒責は止み、一般状態が著しく改善したため、帰宅を申し出たが、なお相当量の糞石、大便が残っていることが認められたので入院となった。14:00再び怒責様の訴えがあったので、約100gの糞石を摘出し、再度500mLの高圧浣腸を行ったところ、怒責は消失し、腹部の所見は良好となり自然排尿も認められ、翌朝6:00頃までに自然排便が3回あり、夕食では大量ではないがお粥を食べた。4月19日08:00診察を行ったが前日に比べとくに変化は認められず、朝食にお粥を少量摂取したが、吐き気そのほかの症状は認められなかった。糞石を6個摘出し、腸蠕動促進剤を投与し、高圧浣腸を500mL行ったがまだ疼痛が残っており腹はぺしゃんこにならなかった。しかし、患者からは格別の訴えはなく、食事もお粥を摂取し便通も5回あった。なお1,500mLの点滴を行った。4月20日08:30診察を行ったが特別の変化はなく、午前中点滴を1,500mL行い、この日も症状の悪化もなく食事も3回とり便通も2回あった。4月21日08:30前日同様に診察を行い肛門より指を入れて摘便を行おうとしたが指の届く範囲に便はなかった。腸蠕動促進剤を投与し、高圧浣腸、点滴を行った。12:40妻が病院からの連絡で駆けつけたところ、相当苦しがっており、胃液状のものを嘔吐した。14:30担当医師は急性胃拡張の疑いがあると考え、胃ゾンデを挿入し、胃の検査をしたが異常は認めなかった。さらに腹部が従来にもまして膨満してきた。15:30担当医師は知り合いの病院へ転院を勧めたが、妻は大学病院への転院を希望して担当医師の指示に従わなかった。16:15激痛を訴えたため、鎮痛薬を注射し、大学病院の病床が確保できたという連絡があった。17:00家族の希望通り大学病院に到着後、X線室で呼吸および心停止に陥り、気管内に挿管して蘇生した。19:30大学病院で開腹手術が行われた。術中所見では、横行結腸肝屈曲部、下行結腸、S状結腸に4cm四方角多面体の糞石がぎっしり詰まり、そのため結腸の血流が悪くなってS状結腸が壊死状態となって、直径2cm大および同1cm大の穿孔が2個ずつ発生し、そこから便、あるいはそれに含まれる大腸菌などの細菌類が腹腔内へ流出したために汎発性腹膜炎を併発。4月22日17:15死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張入院初日に肛門部の糞石約1kgを指で排出しているが、その後はほとんど排出していないのだから4月18日、19日の経過によってX線撮影をしたり、手術に移行する手筈を取るべきであったのにしなかった。S状結腸に壊死を起こした患者に高圧浣腸を多用すれば、穿孔を起こすことは十分予測され、容態が変化した場合、白血球数測定などの平易な検査によって容易に判明するのにこれを施行しなかったために腸管の穿孔から汎発性腹膜炎を発症し、死亡した。容態の急変後も胃拡張が原因ではないかと疑い胃の検査をしているが、穿孔の事実をまったく発見できず、それに対する処置および適切な時期に転院が遅れたため、手術が施行されるも手遅れであった。病院側(被告)の主張X線単純撮影によっても糞石が横行結腸まで詰まっていることを確実に知ることは不可能である。また、X線単純撮影はあくまで診断の補助手段にすぎず、糞便による充塞性イレウスとの診断を得ているのだから、X線単純撮影の必要性はとくに認められない。糞が腸に詰まったための充塞性イレウスの場合、治療法としてまず高圧浣腸をかけて排便を促すことが一般的であり、成果も上がっていたのだから高圧浣腸を続けることは当然であって回数からいっても特段の問題となるものではない。また、高圧浣腸による穿孔は非常にまれであり、男性Aの場合、その治療経過からして高圧浣腸が死亡の重要な原因をなしたものとは到底考えられない。容態の急変まではイレウスの手術の絶対的適応ではなかった。そして、担当医師は容態悪化後ただちに他院に転院して手術が行えるように手筈を整えたにもかかわらず、患者の家族がその指示に従わなかったため、大学病院での手術の結果が実を結ばなかったものであり、転院の遅れについては担当医師に責任がない。裁判所の判断1.イレウスにおけるX線単純撮影では、糞石そのものは写らないものの、腸管内のガスは写るものであり、そのガスを観察することにより糞石の詰まっている部位、程度を、触診、打診、聴診に比べて、相当はっきり診断することができるため、X線単純撮影は非常に有効で、かつ実行すべき手段である2.入院時には男性Aの苦痛を取り除くことが先決であってX線撮影をする暇がなかったとしても、その後、容態が急変するまでの間に撮影することは可能であったはずである。内科的治療によって確実に病態の改善がみられたとはいえないにもかかわらず、X線撮影を怠ったためにイレウスの評価を誤り、外科的治療に踏み切らなかった、あるいはそれが可能な病院に転院させなかったために死亡したので、担当医師の過失と死亡との間に相当因果関係がある3.S状結腸の穿孔の原因については、担当医師が腸管の壊死に気づかずに高圧浣腸を行ったために発生した可能性はあるが、それ以上に高圧浣腸が明らかに穿孔の原因となったとする証拠はない4.転院については、担当医師はまったくの素人である患者の家族に重篤な病勢を十分に説明し、できるだけ速やかに転院することを強く勧告するべきであったにもかかわらず、そうした事実が認められないから、家族が転院の指示に従わなかった事実があったとしても担当医師の過失が軽減されることはない原告側合計2,650万円の請求に対し、請求通りの判決考察日常診療において、腹痛を訴える患者にはしばしば遭遇します。こうした場合、詳細な問診と診察により、ある程度診断がつくことが多いと思いますが、中には緊急手術を要するケースもあり、診断および治療に当たっては慎重な対応が要求されることはいうまでもありません。とくに、投薬のみで帰宅させた後に容態が急変した場合などは、本件のように医療過誤に発展する可能性が十分にあります。本件でも問診、触診による診断そのものは誤りではありませんでしたが、その後の治療方針を決定し、経過観察をするうえで、必要な検査が施行されていなかったことが問題となっています。確かに、患者の症状を軽減することが医師としての勤めでありますが、症状が落ち着いた時点で、原疾患の検索のために必要な検査はぜひとも行うべきであり、イレウスで4日間の入院中に一度もX線撮影を行わなかったことはけっして受け容れられることではありません。患者の検査漬けが取り沙汰されている中では、確かに過剰な検査は迎合できるものではありませんが、本件の場合、X線撮影、血算、検尿、心電図、腹部超音波検査、腹部CTなどの実施が必要であったと思われます。これらすべての検査がどの施設でも緊急にできるとは限らないので、裁判でもそこまでは言及していません。だからといって検査をしなくてもよいということにはならず、必要であれば、それらが実施できるほかの病院へ早期に紹介することが求められています。他院への転送義務については、通常、適切な時期に適切な病院へ転院させたかということが裁判では問題になります。しかし、本件のように医師が転院を勧めたにもかかわらず、家族がその指示に従わなかった場合、まったくの素人である患者および患者家族に対して、医師の勧告の方法に問題があり、過失が減じられなかったことは、医師の立場からいえば少々厳しすぎる裁定ではないかと思います。本件の充塞性イレウスとは、糞石による単純性イレウスのことですが、イレウスの中でも比較的まれな症例です。ましてやその糞石が肛門から横行結腸に至るまで詰まっていたのですから、患者は重篤な状態であったことに疑いはありません。外来や病棟でイレウスの患者を治療するにあたって重要なことは、絞扼性イレウスの患者を放置あるいは誤診して、腸管壊死に陥り、汎発性腹膜炎になった場合には、今日の医療をもってしても患者を救うことができない可能性が高いということです。近年、輸液療法の進歩とともに非絞扼性イレウスの保存的療法が広く行われるようになりましたが、治療しているイレウスが絶対に絞扼性でないという確信が持てない場合には、一刻も早く開腹手術を決断すべきです。また、非絞扼性イレウスと診断され、保存的治療で病状の増悪が認められない場合には、イレウスの自然寛解を期待して手術を見合わせることはできますが、保存的治療の限度はせいぜい1週間程度で、それ以上待ってもイレウスが自然寛解する頻度は少なく、大抵の場合手術しないと治らない原因が潜んでいると考えた方がよいと思います。消化器

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C型慢性肝炎に対する治療法の開発は最終段階へ!―IFN freeの経口薬併用療法の報告―(コメンテーター:中村 郁夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(175)より-

C型慢性肝炎のうち、1型高ウイルス量の患者に対する現時点での標準治療はPEG-InterferonとRibavirin・Protease阻害薬(Telaprevir またはSimeprevir)の併用療法(24週)である。この治療法により、Sustained Virological Response(SVR:治療終了後6ヵ月の時点での血中HCV陰性化)を得られる頻度は、初回治療例、前治療無効例で約80~90%とされている。 さらなる治療効果の向上、患者の負担軽減のために、さまざまな取り組みが進められている。その1つが、IFN freeの経口薬のみの併用療法の開発である。有用な薬剤として、(1) NS3 Protease阻害薬、(2) NS5B Polymerase 阻害薬(核酸型・非核酸型)、(3) NS5A阻害薬などが挙げられる。 一方、経口薬の併用療法の問題点の1つとして、薬剤に対する耐性変異の出現がある。核酸型のNS5B Polymerase 阻害薬に属するSofosbuvir(GS-7977, PSI-7977)は、どのgenotypeのHCVに対しても耐性ウイルスの出現率が低いことが報告されている。 本論文は米国におけるC型慢性肝炎に対するDaclatasvir(NS5A阻害薬)、 Sofosbuvir併用療法のopen-label studyに関する報告である。対象は、genotype1型167例(ナイーブ例(未治療例)126例、前治療無効例 41例)、genotype2型26例(ナイーブ例)、genotype 3型18例(ナイーブ例)とし、Daclatasvir(60mg)、Sofosbuvir(400mg)の1日1回の経口(Ribavirinの有無は無作為に割り付け)を12週、ないし、24週の10投与群に割り付けた(うち、2群でSofosbuvirのlead-inあり)。 治療終了後12週時点のSVR(SVR12)は、genotype 1型では未治療例・前治療無効例とも98%と高率であった。また、IFN・Ribavirin併用療法による治療効果が低いとされるIL28BのSNPが非CCの例においても98%と、CC例(93%)と同等の効果が認められた。 本邦においても同様の治験が進められており、その結果が注目される。いよいよ、C型慢性肝炎の治療法の開発は最後のステップに入ったと考えらえる。

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HIV患者へのエファビレンツ、低用量でも/Lancet

 抗レトロウイルス未治療のHIV-1感染患者に対する、テノホビル+エムトリシタビン(商品名:ツルバダ)に加えたエファビレンツ(同:ストックリン)投与において、1日400mg(低用量)投与が600mg投与に対し非劣性であることが示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のRebekah L. Puls氏らENCORE1試験グループが、13ヵ国38ヵ所の医療機関を通じて行った二重盲無作為化比較試験の結果、報告した。エファビレンツに関連した有害事象の発生は標準用量のほうが頻度が高く、著者は「低用量エファビレンツがルーチン治療の一部として推奨されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年2月10日号掲載の報告より。48週のHIV-RNA量200コピー/mL未満の割合を比較 研究グループは、抗レトロウイルス療法歴のないHIV-1感染患者630例を無作為に2群に分け、テノホビルとエムトリシタビンに加え、エファビレンツ1日400mg(321例)または標準用量の600mg(309例)をそれぞれ投与し、その安全性および有効性を比較した。 主要エンドポイントは、治療開始48週時点でのHIV-RNA量が200コピー/mL未満の人の割合だった。 被験者のうち、32%が女性で、人種別ではアフリカ系が37%、アジア系が33%、白人が30%だった。ベースライン時のCD4細胞数は平均273細胞/μL(標準偏差:99)、血漿HIV-RNA量の中央値4.75 log10コピー/mL(四分位範囲:0.88)だった。エファビレンツ関連の有害事象発生率、600mgで約10ポイント高率 治療開始48週時点でHIV-RNA量が200コピー/mL未満の人の割合は、400mg群が94.1%に対し、600mg群は92.2%と、両群で有意差はなかった(群間差:1.85%、95%信頼区間[CI]:-2.1~5.79%)。テノホビル+エムトリシタビンに加えたエファビレンツ1日400mg投与の、同600mg投与に対する非劣性が示された。 48週時点でのCD4細胞数は、400mg群で600mg群に比べ有意に高かった(平均群間差:25細胞/μL、95%CI:6~44、p=0.01)。 なお、試験薬に関連した有害事象の発生率は、400mg群が89.1%、600mg群が88.4%と両群で同等だった(p=0.77)。一方、エファビレンツに関連する有害事象の発生率は、400mg群で37%だったのに対し、600mg群では47%と、標準用量群が約10ポイント有意に高率だった(群間差:-10.5%、95%CI:-18.2~-2.8%、p=0.01)。また、それにより治療が中止となった人は、400m群6例(2%)、600mg群18例(6%)と両群とも少数だったが有意差が示された(同:-3.96%、-6.96~-0.95、p=0.01)。

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中国の入院例から鳥インフルエンザAウイルスH10N8の新型検出/Lancet

 鳥インフルエンザA(H10N8)ウイルスについて、感染症例1例から既報のH10N8ウイルスとは異なる新規の再集合体H10N8ウイルスが分離されたことを、中国・南昌市疾病管理予防センター(CDC)のHaiYing Chen氏らが報告した。症例は73歳女性で、発症後9日目で死亡。新たなウイルスが、患者の死亡と関連している可能性についても言及している。なお、この新規ウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害薬に反応を示したという。Lancet誌オンライン版2014年2月5日号掲載の報告より。新たな再集合体H10N8ウイルスを検出 新型の鳥インフルエンザウイルス(H5N1、H9N2、H7N9など)のヒトへの感染は、世界的パンデミックの可能性に対する懸念を喚起したが、Chen氏らは今回、また新たな再集合体鳥インフルエンザA(H10N8)ウイルスの初となるヒトへの感染例が見つかったことを報告した。 調査は、2013年11月30日時点で南昌市において入院していた患者から入手した、臨床的、疫学的およびウイルス学的データを分析して行われた。気管吸引検体を用いて、インフルエンザウイルスまたは他の病原体を見つけるため、RT-PCR、ウイルス培養とシーケンス解析を行い、最尤推定法にて系統樹を作成し検討した。発症から9日目に死亡、ウイルスにより死亡の可能性 新規の再集合体H10N8ウイルスが分離されたのは、73歳女性、発熱(38.6℃)で2013年11月30日に入院した症例であった。肺CTスキャンで、右肺下葉の硬化がみられ、4日目には左肺下葉にも硬化が認められるようになった。胸部X線で、患者には6日目に両側性の胸水が認められ、8日目にスリガラス状陰影と硬化の急速な進行が認められた。 白血球数は5日目より、リンパ球が正常値範囲以下に低下、好中球は同範囲以上に上昇。C反応性蛋白(CRP)、クレアチニン値は高値で、AST、BUNは7日目以降やや上昇し肝臓、腎臓が機能不全に陥ることを示した。アルカリホスファターゼ、総蛋白、グロビン、アルブミンの血中濃度は、4日目には正常だったが、7、8日目では低下を示した。トランスサイレチンは、すべての検査時点で低下を示し、総IgG、C3は、8日目に低下が記録されている。 細菌感染症予防のための組み合わせ抗菌薬治療、機械的人工換気、糖質コルチコイド、アルブミン静注、抗ウイルス治療にもかかわらず、患者の状態は、次第に深刻になり、重篤な肺炎、敗血症性ショックおよび多臓器不全を呈し、9日目に死亡した。 新規のウイルスは、発症7日後の患者の気管吸引検体から分離されたものであった。 シーケンス解析により、ウイルス遺伝子はすべて鳥由来で、6つの内部遺伝子はH9N2ウイルス由来だった。なおこのウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害薬に反応を示した。 痰、血液培養およびより詳細な塩基配列決定解析の結果、細菌真菌の同時感染は示されなかった。 また疫学的調査により、患者が発症4日前に家禽市場を訪れていることが確認されている。 著者は「2014年1月26日現在、南昌市ではもう1例のH10N8感染例が報告されている。1997年に香港で最初の死亡例が報告された鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染では、その後6ヵ月間で17例の死亡を報告した。この新規のウイルスのパンデミックの可能性が過小評価されてはならない」とまとめている。

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H7N9型インフル、ヒト-ヒト感染の可能性依然残る/NEJM

 2013年に中国で発生した新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染例のほとんどでは疫学的な関連性が認められず、ヒト-ヒト間伝播の可能性は除外できないことが、中国・公衆衛生救急センターのQun Li氏らの調査で判明し、NEJM誌2014年2月6日号で報告された。2013年2~3月に、中国東部地域でH7N9ウイルスのヒトへの感染が初めて確認された。これまでに急速に進行する肺炎、呼吸不全、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、死亡の転帰などの特性が報告されているが、研究者はその後も詳細な実地調査などを進めている。2013年12月1日までの感染者の疫学的特性を実地調査データで検討 研究グループは、今回、2013年12月1日までに確認されたH7N9ウイルス感染例の疫学的特性を検討する目的で、実地調査で得られたデータの解析を行った。 H7N9ウイルスの感染は、リアルタイムPCR(RT-PCR)、ウイルス分離または血清学的検査で確定し、個々の確定例について実地調査を行った。人口統計学的特性、曝露歴、疾患の臨床経過に関する情報を収集した。 患者との濃厚接触者は7日間、経過を観察し、症状がみられた場合は咽頭スワブを採取してリアルタイムRT-PCRでH7N9ウイルスの検査を行った。82%が動物と接触、99%入院、90%下気道疾患、34%院内死亡、濃厚接触者すべて陰性 H7N9ウイルス感染が確定した139例が解析の対象となった。年齢中央値は61歳(2~91歳)、58例(42%)が65歳以上、4例(3%)は5歳未満であり、98例(71%)が男性、101例(73%)は都市部の住民であった。感染例は中国東部の12地域にみられ、9例(6%)が家禽業従事者であった。 データが得られた108例中79例(73%)に基礎疾患(高血圧32例、糖尿病14例、心疾患12例、慢性気管支炎7例など)が認められた。動物との接触は、データが得られた131例のうち107例(82%)に認められ、ニワトリが88例(82%)、アヒルが24例(22%)、ハトが13例(12%)、野鳥が7例(7%)などであった。これらの知見からは、疫学的な関連性はとくに認められなかった。 137例(99%)が入院し、125例(90%)に肺炎または呼吸不全がみられた。データが得られた103例中65例(63%)が集中治療室(ICU)に収容された。47例(34%)が院内で死亡し(罹患期間中央値21日)、88例(63%)は退院したが、重症の2例は入院を継続した。 4つの家族内集積例では、H7N9ウイルスのヒト-ヒト間伝播の可能性を否定できなかった。家族内の2次感染例を除く濃厚接触者2,675人が7日間の観察期間を終了した。このうち28例(1%)に呼吸器症状の発現がみられたが、全員がH7N9ウイルス陰性だった。 著者は、「H7N9ウイルス感染確定例のほとんどが重篤な下気道疾患を発現し、疫学的な関連性は認められず、家禽への直近の曝露歴を有していたが、4家族ではH7N9ウイルスの限定的で非持続的なヒト-ヒト間伝播の可能性が除外できなかった」としている。なお、最近、香港や台湾でも感染例が見つかっており、同誌のエディターは「2014年1月21日現在、確定例は200例を超え、2013年12月1日以降に発見された症例は65例以上にのぼり、アウトブレイクは進行中である」と補足している。

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水痘予防にはMMRV 2回接種を支持/Lancet

 チェコ共和国・フラデツ・クラーロヴェー大学病院のRoman Prymula氏らは、水痘の発症予防について、麻疹・ムンプス・風疹・水痘ワクチン(MMRV)2回接種と、単価水痘ワクチン1回接種の有効性を比較する無作為化対照試験を欧州10ヵ国の協力を得て行った。その結果、あらゆる型の水痘予防を確実なものとするためにもMMRVの2回接種を支持する結果が得られたことを報告した。今日、水痘発症率は、水痘ワクチンを“ルーチン”で行っている国では激減している。予防は単価ワクチンもしくはMMRVの接種にて可能であり、今回、研究グループは、どちらが有用かを比較検証した。Lancet誌オンライン版2014年1月29日号掲載の報告より。欧州10ヵ国でMMRV 2回、MMR+V、MMR 2回の有効性を比較 試験は、多施設共同無作為化かつ観察者盲検にて、水痘の風土病がみられるヨーロッパの10ヵ国(チェコ共和国、ギリシャ、イタリア、リトアニア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スウェーデン)にて行われた。 生後12~22ヵ月の健常児を無作為に3対3対1の割合で、42日間で(1)MMRV 2回接種(MMRV群)、(2)1回目にMMR接種、2回目に単価水痘ワクチン接種(MMR+V群)、(3)MMR 2回接種(MMR群:対照群)に割り付けて検討した。 被験児と保護者はすべてのアウトカムについて個別に評価を受け、またデータの評価や解析に関係するスポンサースタッフは治療割付について知らされなかった。 主要有効性エンドポイントは、2回接種後の42日目から第1フェーズの試験終了時点までに確認された水痘の発症(水痘帯状疱疹ウイルスDNAの検出または疫学的関連性で判定)であった。症例は重症度により分類し、有効性の解析はパープロトコル解析によって行われた。安全性の解析には1回以上接種を受けたすべての被験児を含めた。 2005年9月1日~2006年5月10日に、5,803例(平均年齢14.2ヵ月、SD 2.5)が、ワクチン接種を受けた。2回接種MMRVの有効性94.9%、中等度~重症例には99.5% 有効性解析コホートには5,285例が組み込まれた。平均追跡期間はMMRV群36ヵ月(SD 8.8)、MMR+V群36ヵ月(8.5)、MMR群は35ヵ月(8.9)であった。 水痘発症例は、MMRV群37例、MMR+V群243例、MMR群201例が確認された。2回発症例は、3例(全例MMR+V群)でみられた。 中等度~重症の水痘発症例は、MMRV群で2例であったが、MMR+V群では37例が報告された(1例は初回軽症例の2回発症例)。MMR群は117例であった。 すべての水痘に対する2回接種MMRVの有効性は、94.9%(97.5%信頼区間[CI]:92.4~96.6%)であり、中等度~重症の水痘に対しては99.5%(同:97.5~99.9%)であった。 一方、すべての水痘に対する1回接種単価水痘ワクチンの有効性は、65.4%(同:57.2~72.1%)で、事後解析にて評価した中等度~重症の水痘に対する有効性は90.7%(同:85.9~93.9%)であった。 全接種群で最も頻度が高かった有害イベントは、注射部位の発赤であった(被験者のうち最高25%で報告)。 また、1回接種後15日以内に38℃以上の発熱を報告したのは、MMRV群57.4%(95%CI:53.9~60.9%)、MMR+V群44.5%(同:41.0~48.1%)、MMR群39.8%(同:33.8~46.1%)だった。 ワクチン接種に関連していると思われる重大有害イベントは、8件報告された(MMRV群3例、MMR+V群4例、MMR群1例)。全例、試験期間内に治癒した。 以上から著者は、「試験の結果は、あらゆる水痘疾患からの保護を確実なものとするために、短期間の2回接種水痘ワクチンによる予防接種を支持するものである」と結論している。

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造血幹細胞移植後に真菌症を起こしやすくなる遺伝的欠損とは/NEJM

 ペントラキシン3(PTX3)の遺伝的欠損は好中球の抗真菌能に影響を及ぼし、造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者における侵襲性アスペルギルス症(Aspergillus fumigatus)のリスクに関与している可能性があることが、イタリア・ペルージャ大学のCristina Cunha氏らの検討で示された。液性パターン認識受容体は、長いタイプのPTX3として知られ、抗真菌免疫において代替不可能な役割を果たすとされる。一方、侵襲性アスペルギルス症の発現におけるPTX3の一塩基多型(SNP)の関与はこれまでに明らかにされていない。NEJM誌2014年1月30日号掲載の報告。PTX3 SNPをスクリーニングし、その機能的転帰を検討 研究グループは、HSCTを受けた患者268例(A. fumigatus群51例、非A. fumigatus群217例)とそのドナーのコホートにおいて、侵襲性アスペルギルス症のリスクに影響を及ぼすPTX3のSNPのスクリーニングを行った(discovery study)。 また、侵襲性アスペルギルス症患者107例およびこれらの患者とマッチさせた対照223例に関して、多施設共同研究を実施した(confirmation study)。in vitroとレシピエントの肺検体でPTX3 SNPの機能的転帰について検討した。ホモ接合型ハプロタイプおよび発現欠損ドナーからの移植で感染リスク上昇 PTX3がホモ接合型ハプロタイプ(h2/h2)のドナーから移植を受けたレシピエントは感染リスクが上昇することが、discovery study(累積発生率:37 vs. 15%、補正ハザード比[HR]:3.08、p=0.003)およびconfirmation study(補正オッズ比[OR]:2.78、p=0.03)の双方で確認された。PTX3の発現が欠損しているドナーからの移植の場合も同様の結果であった。 機能的には、メッセンジャーRNAの不安定性によると推察されるh2/h2好中球のPTX3欠損により、貪食能と真菌のクリアランスが障害されることが示された。 著者は、「PTX3の遺伝的欠損は好中球の抗真菌能に影響を及ぼし、この欠損はHSCTを受けた患者において侵襲性アスペルギルス症を起こしやすくしている可能性がある」とまとめ、「これらの知見は、A. fumigatusに対する宿主防御におけるPTX3の代替不可能な役割を支持するもの」と指摘している。

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インフルエンザ検出2倍以上に(厚生労働省)

 厚生労働省は1月31日、2014年第4週(2014年1月20日~1月26日)インフルエンザの発生状況を公表した。AH3亜型(A香港型)が最も多く検出されている。なお、昨シーズンは報告が少なかったAH1pdm09が次いで多く、とくに直近の5 週間(2013 年第52 週~2014 年第4 週)ではAH1pdm09 の検出割合が最も多いという。 発表内容は以下の通り。 2013/2014 年シーズンのインフルエンザの定点当たり報告数は2013 年第43 週以降増加が続いている。2014 年第4 週の定点当たり報告数は24.81(患者報告数122,618)となり、前週の報告数(定点当たり報告数11.78)よりも大きく増加した。都道府県別では沖縄県(54.12)、大分県(39.62)、宮崎県(37.86)、佐賀県(34.79)、埼玉県(33.69)、長崎県(32.47)、福岡県(32.19)、神奈川県(31.52)、滋賀県(31.32)、千葉県(30.08)の順となっており、第4 週も全47都道府県で増加がみられた。 全国の保健所地域で警報レベルを超えているのは146 箇所(33 都府県)、注意報レベルを超えている保健所地域は317箇所(46 都道府県)と共に増加した。定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1 週間に受診した患者数を推計すると約132万人(95%信頼区間:121~144 万人)となり、5~9 歳が約29 万人、0~4 歳が約18 万人、10~14 歳、30 代がそれぞれ約17 万人、40 代が約14 万人、20 代が約12 万人、50 代が約8 万人、15~19 歳が約7 万人、60 代が約6 万人、70歳以上が約4 万人の順となっている。また、2013 年第36 週以降これまでの累積の推計受診者数は約275 万人となった。 基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数は807 例であり、第3 週(519 例)より増加した。全47 都道府県から報告があり、年齢別では0 歳(75 例)、1~9 歳(232 例)、10 代(45 例)、20 代(17 例)、30 代(25 例)、40 代(22例)、50 代(37 例)、60 代(76 例)、70 代(118 例)、80 歳以上(160 例)であった。 2013 年第36 週以降これまでの国内のインフルエンザウイルスの検出状況をみると、AH3 亜型(A 香港型)の割合が最も多く、次いでAH1pdm09、B 型の順で検出されている一方で、直近の5 週間(2013 年第52 週~2014 年第4 週)ではAH1pdm09 の検出割合が最も多く、次いでB 型、AH3 亜型(A 香港型)の順となっている。

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脂漏性皮膚炎への経口抗真菌薬の使用実態が明らかに

 カナダ・トロント大学のA.K. Gupta氏らは、脂漏性皮膚炎に対する経口薬治療について発表された文献数とその質について系統的レビューを行った。脂漏性皮膚炎は通常、局所ステロイドまたは抗真菌薬による治療が行われ、重症例もしくは治療抵抗性の場合には経口薬治療が可能とされている。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌2014年1月号の掲載報告。 Gupta氏らによる系統的レビューは、MEDLINE、Embaseのデータベースおよび文献参照リストを探索して行われた。脂漏性皮膚炎の経口薬治療に関するあらゆる報告を対象とした。 文献の質について、Downs&Black修正27項目チェックリストを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索により、8つの経口薬治療(イトラコナゾール、テルビナフィン、フルコナゾール、ケトコナゾール、プラミコナゾール、プレドニゾン、イソトレチノイン(国内未承認)、ホメオパシー療法)をカバーした21本の報告(無作為化対照試験、非盲検試験、症例報告)が特定された。・大半の報告は、経口抗真菌薬について検討していたが、その質は概して低かった。・臨床的有効性アウトカムは、試験間でかなりのばらつきがあり、統計解析と治療間の直接比較は難しかった。・その中で、ケトコナゾール治療は、ほかの経口薬治療と比較して脂漏性皮膚炎再発との関連がより大きかった。・イトラコナゾールの投与量は通常、最初の1ヵ月の第一週は200mg/日、2~11ヵ月は、月初めの2日間に200mg/日が投与されていた。・テルビナフィンは、250mg/日を連続投与(4~6週)もしくは間欠投与(月に12日間を3ヵ月)で処方されていた。・フルコナゾールは、連日投与(50mg/日を2週間)もしくは毎週投与(200~300mg)を2~4週で設定されていた。・ケトコナゾールの投与レジメンは1日200mgを4週間であった。・プラミコナゾールは、200mg単回投与であった。・著者は、「今回のレビューにより、将来、試験をデザインする際に考慮すべきキー領域が明らかになった」とまとめている。

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慢性C型肝炎のIFNフリー療法―リバビリンレジメン/NEJM

 未治療またはペグインターフェロン(商品名:ペガシス)+リバビリン(RBV、商品名:コペガスほか)による前治療が無効であった遺伝子型1型感染患者に対し、経口投与のみの直接作用型抗ウイルス薬(2種または3種)+RBVレジメンが、いずれの患者にも有効であることが示された。米国・バージニア・メイソン・メディカル・センターのKris V. Kowdley氏らが、第2b相非盲検無作為化試験にて9レジメン(14サブ治療群)を設けて検討した結果、治療終了後24週時点のSVR(持続性ウイルス学的著効)は、83~100%であったことを報告した。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告より。571例を14の直接作用型抗ウイルス薬+RBVレジメンに割り付けて検討 試験は2011年10月~2012年4月に9ヵ国97施設で1,013例がスクリーニングを受け、肝硬変を伴わない未治療または前治療無効のHCV遺伝子型1型感染患者571例を無作為に14群に割り付けて行われた。 検討された経口抗ウイルス薬は、プロテアーゼ阻害薬ABT-450+リトナビル(同:ノービア)(ABT-450/r:ABT-450投与量100、150、200mg設定)、非ヌクレオシド系ポリメラーゼ阻害薬ABT-333、およびNS5A阻害薬ABT-267。前者の2種は、予備試験でインターフェロンを用いないRBV併用レジメンとして有効性が示されており、ABT-267は、とくに治療困難な患者において有効性が改善する可能性が示唆されていた。 571例を2種または3種複合の8週、12週、24週投与の14の治療群(9群1治療群を除きRBV併用)を設定し検討した。 主要エンドポイントは、治療終了後24週時点のSVRであった。SVRは83~100% 主要有効性解析では、未治療患者への3種複合[ABT-450/r(150mg)+ABT-333+ABT-267]+RBVの8週治療群と、同12週治療群を比較した。結果、治療終了後24週時点のSVRは、8週治療群88%、12週治療群95%であった(両群差:-7ポイント:95%信頼区間[CI]:-19~5、p=0.24)。 すべての治療群のSVRは、83%[未治療、ABT-450/r(150mg)+ABT-333+RBV]から100%にわたった。 最も頻度が高かった有害事象は、疲労、頭痛、悪心、不眠であった。有害事象により試験を中止したのは8例(1%)だった。

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慢性C型肝炎のIFNフリー療法/NEJM

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型、2型または3型の患者について、ダクラタスビル(承認申請中)+ソホスブビル(国内未承認)の1日1回経口併用療法が、高率のSVR(持続性ウイルス学的著効)を達成したことが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のMark S. Sulkowski氏らが行った、211例の患者(前治療無効例を含む)を対象としたオープンラベル試験の結果で、治療終了後12週時点のSVRは各遺伝子型患者群で89~98%であったという。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告より。1日1回経口ダクラタスビル(60mg)+ソホスブビル(400mg)投与について検討 試験は、慢性HCV遺伝子型1型で未治療(126例)または前治療[テラプレビル(商品名:テラビック)もしくはボセプレビル(国内未承認)]無効(41例)、および未治療の遺伝子型2型(26例)または3型(18例)の計211例の患者を非盲検下に無作為に10投与群に割り付けて行われた。 検討されたのはダクラタスビル(1日1回経口60mg、DCV)+ソホスブビル(1日1回経口400mg、SOF)の12週投与または24週投与であった。12週投与の検討は、未治療の遺伝子型1型患者82例を対象に、リバビリン(商品名:コペガスほか、RBV)の有無別に無作為化して行われた(2投与群)。残りの患者は、24週DCV+SOF(未治療・前治療無効患者対象、3投与群)、24週DCV+SOF+RBV(同、3投与群)、1週SOF投与後に23週DCV+SOF(未治療患者のみ、2投与群)に無作為に割り付けられ評価を受けた。 主要エンドポイントは、治療終了後12週時点でのSVR(HCV RNA値<25 IU/mLと定義)だった。治療終了後12週時点でいずれも高いSVR 試験薬治療後12週時点のSVRは、遺伝子型1型のうち未治療例98%、同前治療無効例98%、また遺伝子型2型の患者では92%、同3では89%であった。 なかでも、サブタイプ1a(98%)、1b(100%)、IL28B遺伝子型CC(93%)、同非CC(98%)で高いSVRが認められた。 RBV投与の有無別では、投与を受けた人(計90例)のSVRは94%、受けなかった人(計121例)は同98%だった。 有害イベントで最も頻度が高かったのは、疲労、頭痛、悪心だった。

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カミナリ喘息【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第11回

カミナリ喘息呼吸器内科医として、研修医の方々に「雷やストレスは気管支喘息を悪化させるリスク因子なんだよ」と薀蓄(うんちく)を酒の肴に語ることがあります。「本当なんですか?」と言われて、「あれ、どうだったっけ?」と思い、調べなおしてみました。結論としては、雷によってある程度の気管支喘息の悪化が観察されるようです。今回紹介する論文以外にも、過去にいくつか報告があります(J Epidemiol Commun Health. 1997;51:233-238)。Dales RE, et al.Dales RE, et al.The role of fungal spores in thunderstorm asthma.Chest. 2003;123:745-750.この研究は雷による気管支喘息、すなわち「カミナリ喘息」について入院した小児に基づいて報告されたものです。東オンタリオ小児病院のデータを用いて解析されました。雷雲が観察された日(151日)は、そうでなかった日(919日)と比較して、1日あたりの気管支喘息による受診が8.6人/日から10人/日と15%増加しました(p<0.05)。また、真菌の飛散胞子は雷雲が観察された日では約2倍に増えていたと報告されました(不完全菌類が1,512/m3から2,749/m3に増加)。真菌のほとんどがクラドスポリウムでした。また、担子菌類も雷雲が観察された日に有意に多かったそうです。過去の試験では、悪天候によって数倍から10倍という喘息発作の頻度の増加がみられたという報告もあるのですが、現時点ではこの東オンタリオ小児病院の15%程度の増加というのが現実的に妥当なデータだろうと考えられています。ただ、雷、雨、風のすべての因子を独立して検証することは気象学的に不可能ですので、雷単独が気管支喘息を悪化させるかどうかはわかりません。雨や雷といった悪天候の場合、花粉や真菌は雨とくっついて大気中から減るというイメージがあります。飛散量が確実に増えるのか減るのか、まだまだ議論の余地があります。しかし強い風によって飛散量が増えるため、悪化するのではないかという見解(Lancet. 1985; 2:199-204)があるだけでなく、悪天候の前の日が“晴れ”だった場合、舞い上がったアレルゲンが雨とともに落下してくるといわれています。そのため、雨であろうとアレルゲンが一時的に増えることがあります。とくに、小雨のときは上空から落下してくる雨粒が途中で蒸発してしまい、花粉や真菌だけが地表に落下してくると考えられています。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第4回

第4回:小児のいぼのnatural history-約半数が自然治癒する いぼ(wart, 疣贅)は年に何回かはお母さん方から質問/相談を受けます。経過観察でよいのか?皮膚科に紹介したほうがよいのか?それとも診療所でも冷凍凝固を導入して治療したほうがよいのか?対応が悩ましいことも多いですが、Annals of Family Medicine誌の2013年12月15日号にも総説があり、日常的に遭遇する問題ですのでご紹介いたします。 以下、Annals of Family Medicine 2013年12月15日号1)よりいぼ(疣贅)1.背景いぼは自然に軽快することが多く、仮に治療を行った場合でも失敗するケースがある。したがって、家庭医および患者は経過観察という方法も知っておいたほうがよい。この研究では、いぼの自然経過および、どのようなタイミングで治療が行われているかをプライマリ・ケアベースでのコホート研究によって調査した。2.方法オランダの3つの小学校に通う4~12歳の小児を対象に、手掌足底にいぼがないかをベースライン時に調べた。その後平均15ヵ月間追跡調査を行った。また、対象小児の親にいぼがあることによる不便さと治療の有無についてアンケート調査した。3.結果1,134人の小児のうち1,009人(97%)が参加した。そのうち366 (33%)にベースライン時、いぼがあった。いぼを有する小児のうち9%がフォローできなかった。親のアンケートに回答した割合は83%であった。完全に治癒するのは、100人年中52であった。年齢が若い、非コーカサス系の肌は治癒率が高かった。フォローアップの期間中38%がなんらかの治療を受け、そのうち18%が市販薬(over-the-counter)、15%が家庭医の治療、5%がいずれの治療も受けた。1cmを超えるいぼでは、とくに治療を受ける割合が高かった。また、いぼがあることによって不便さを感じている小児も治療を受ける割合が高かった。4.結語約半数のいぼが自然軽快をした。より若年、非コーカサス系の肌は治癒率が高かった。大きくて不便を感じるいぼでは、治療する傾向があった。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Bruggink SC, et al. Ann Fam Med. 2013;11:437-441.

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進行期パーキンソン病に対する新たな遺伝子治療/Lancet

 進行期パーキンソン病に対し、新たな遺伝子治療「ProSavin」の有効性と安全性、忍容性を検討した第1/2相試験の結果が発表された。フランス・パリ第12大学のStephane Palfi氏らが同患者15例を、低・中・高用量投与の3群で12ヵ月間検討した結果、いずれの投与群でも安全性と忍容性が認められ、また全患者について運動症状の改善がみられたことを報告した。パーキンソン病では経口ドパミン補充療法が行われているが、治療が長期にわたると、運動合併症や衝動制御障害が起きることから根治につながる治療が求められている。Lancet誌オンライン版2014年1月9日号掲載の報告より。レンチウイルス・ベクターベースの遺伝子治療ProSavin ProSavinは、レンチウイルス・ベクターベースの遺伝子治療で、進行期パーキンソン病患者のドパミン産生機能を回復させることを目的とする。レンチウイルス・ベクターは、ドパミン合成に必要な3つの酵素の遺伝子コードを含む生成ベクターで、ProSavinの治療原理は、この生成ベクターを線条体(被殻)の運動野に送達し線条体細胞を「ドパミン工場」に転化して、パーキンソン病で失われるドパミンの恒常的な供給源を置き換えていくというものだという。ベクター活用には挿入細胞に腫瘍形成を招くリスクも指摘されているが、レンチウイルス・ベクターではそのリスクが最小である可能性が示唆されているという。 研究グループは、英国とフランスの2地点で12ヵ月間追跡の第1/2相非盲検試験を行い、パーキンソン病患者の被殻に、両側性にProSavinを注射投与した後の安全性と有効性を評価した。患者は全員、引き続き長期安全性を評価する別個の非盲検追跡試験に組み込まれた。各群コホートは、3つの投与量(低用量:1.9×107TU、中用量:4.0×107TU、高用量:1×108TU)について評価を受けた。 被験者の試験適格基準は、年齢48~65歳、罹病期間5年以上、運動症状の日内変動あり、経口ドパミン薬による運動症状改善50%超とした。 第1/2相試験の主要エンドポイントはベクター注射投与後6ヵ月時点の、ProSavin関連有害イベントの発生件数と重症度、およびパーキンソン病統一スケール(UPDRS)パート3(off時)で評価した運動症状の改善だった。3用量群で検討した15例全例で6ヵ月後、運動症状が有意に改善 患者15例がProSavinを投与され追跡を受けた(低用量群3例、中用量群6例、高用量群6例)。 当初12ヵ月の追跡期間中、試験薬関連有害イベントは54例報告された(51例は軽度、3例が中程度)。最も頻度が高かったのは、on時ジスキネジア(20件、11例)、on-off現象(12件、9例)の増大だった。試験薬および手技に関連した重篤な有害イベントは報告されなかった。 UPDRSパート3の平均スコアは、6ヵ月時点、12ヵ月時点ともにベースライン時との比較で全患者に有意な改善がみられた。6ヵ月時点の平均スコアは、38[SD 9]vs. 26[8](p=0.0001)、12ヵ月時点は38vs. 27[8](p=0.0001)だった。

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