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イレウスに高圧浣腸・摘便を行ってS状結腸が穿孔し死亡したケース

消化器最終判決判例時報 1050号118-124頁概要便秘と尿閉を訴えて受診した57歳男性。触診により糞石の存在を認め、糞便性イレウスと診断し、即刻入院させて用指的摘出と高圧浣腸とにより糞石の除去・排便促進に当たったが、病状は改善されなかった。翌日になり腹部膨満・激痛などの症状が発するに及んで、転医の措置を取り、転医先で即日開腹手術を受けたが、糞塊によるS状結腸圧迫壊死および穿孔に原発する汎発性腹膜炎により死亡した。詳細な経過患者情報57歳男性経過1975年4月18日10:00便秘のためおなかが張るという主訴で近医受診。初診時、便秘と尿閉による怒責で体を揺すっていた。腹部を触れてみると下腹部の真ん中から左側の方に凹凸不整の固い腫瘤が認められ、腹が少し張っており、肛門から指を入れると糞石をたくさん触れることができた。血圧は120/80mmHg、脈拍も悪い状態ではなかった。問診によると吐いたことはなかったが、排便、排ガスがなく痛みがあったことがわかり、糞便性イレウスと診断した。約1kgの糞石を摘出し、500mLの高圧浣腸を行ったところ、自力で排便がなされガスも大量に出た。腹部を触るとなお糞石がたくさん存在したが、怒責もなくなり顔色も良くなった。11:00ブドウ糖、ビタミン剤の点滴を1,500mLにより怒責は止み、一般状態が著しく改善したため、帰宅を申し出たが、なお相当量の糞石、大便が残っていることが認められたので入院となった。14:00再び怒責様の訴えがあったので、約100gの糞石を摘出し、再度500mLの高圧浣腸を行ったところ、怒責は消失し、腹部の所見は良好となり自然排尿も認められ、翌朝6:00頃までに自然排便が3回あり、夕食では大量ではないがお粥を食べた。4月19日08:00診察を行ったが前日に比べとくに変化は認められず、朝食にお粥を少量摂取したが、吐き気そのほかの症状は認められなかった。糞石を6個摘出し、腸蠕動促進剤を投与し、高圧浣腸を500mL行ったがまだ疼痛が残っており腹はぺしゃんこにならなかった。しかし、患者からは格別の訴えはなく、食事もお粥を摂取し便通も5回あった。なお1,500mLの点滴を行った。4月20日08:30診察を行ったが特別の変化はなく、午前中点滴を1,500mL行い、この日も症状の悪化もなく食事も3回とり便通も2回あった。4月21日08:30前日同様に診察を行い肛門より指を入れて摘便を行おうとしたが指の届く範囲に便はなかった。腸蠕動促進剤を投与し、高圧浣腸、点滴を行った。12:40妻が病院からの連絡で駆けつけたところ、相当苦しがっており、胃液状のものを嘔吐した。14:30担当医師は急性胃拡張の疑いがあると考え、胃ゾンデを挿入し、胃の検査をしたが異常は認めなかった。さらに腹部が従来にもまして膨満してきた。15:30担当医師は知り合いの病院へ転院を勧めたが、妻は大学病院への転院を希望して担当医師の指示に従わなかった。16:15激痛を訴えたため、鎮痛薬を注射し、大学病院の病床が確保できたという連絡があった。17:00家族の希望通り大学病院に到着後、X線室で呼吸および心停止に陥り、気管内に挿管して蘇生した。19:30大学病院で開腹手術が行われた。術中所見では、横行結腸肝屈曲部、下行結腸、S状結腸に4cm四方角多面体の糞石がぎっしり詰まり、そのため結腸の血流が悪くなってS状結腸が壊死状態となって、直径2cm大および同1cm大の穿孔が2個ずつ発生し、そこから便、あるいはそれに含まれる大腸菌などの細菌類が腹腔内へ流出したために汎発性腹膜炎を併発。4月22日17:15死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張入院初日に肛門部の糞石約1kgを指で排出しているが、その後はほとんど排出していないのだから4月18日、19日の経過によってX線撮影をしたり、手術に移行する手筈を取るべきであったのにしなかった。S状結腸に壊死を起こした患者に高圧浣腸を多用すれば、穿孔を起こすことは十分予測され、容態が変化した場合、白血球数測定などの平易な検査によって容易に判明するのにこれを施行しなかったために腸管の穿孔から汎発性腹膜炎を発症し、死亡した。容態の急変後も胃拡張が原因ではないかと疑い胃の検査をしているが、穿孔の事実をまったく発見できず、それに対する処置および適切な時期に転院が遅れたため、手術が施行されるも手遅れであった。病院側(被告)の主張X線単純撮影によっても糞石が横行結腸まで詰まっていることを確実に知ることは不可能である。また、X線単純撮影はあくまで診断の補助手段にすぎず、糞便による充塞性イレウスとの診断を得ているのだから、X線単純撮影の必要性はとくに認められない。糞が腸に詰まったための充塞性イレウスの場合、治療法としてまず高圧浣腸をかけて排便を促すことが一般的であり、成果も上がっていたのだから高圧浣腸を続けることは当然であって回数からいっても特段の問題となるものではない。また、高圧浣腸による穿孔は非常にまれであり、男性Aの場合、その治療経過からして高圧浣腸が死亡の重要な原因をなしたものとは到底考えられない。容態の急変まではイレウスの手術の絶対的適応ではなかった。そして、担当医師は容態悪化後ただちに他院に転院して手術が行えるように手筈を整えたにもかかわらず、患者の家族がその指示に従わなかったため、大学病院での手術の結果が実を結ばなかったものであり、転院の遅れについては担当医師に責任がない。裁判所の判断1.イレウスにおけるX線単純撮影では、糞石そのものは写らないものの、腸管内のガスは写るものであり、そのガスを観察することにより糞石の詰まっている部位、程度を、触診、打診、聴診に比べて、相当はっきり診断することができるため、X線単純撮影は非常に有効で、かつ実行すべき手段である2.入院時には男性Aの苦痛を取り除くことが先決であってX線撮影をする暇がなかったとしても、その後、容態が急変するまでの間に撮影することは可能であったはずである。内科的治療によって確実に病態の改善がみられたとはいえないにもかかわらず、X線撮影を怠ったためにイレウスの評価を誤り、外科的治療に踏み切らなかった、あるいはそれが可能な病院に転院させなかったために死亡したので、担当医師の過失と死亡との間に相当因果関係がある3.S状結腸の穿孔の原因については、担当医師が腸管の壊死に気づかずに高圧浣腸を行ったために発生した可能性はあるが、それ以上に高圧浣腸が明らかに穿孔の原因となったとする証拠はない4.転院については、担当医師はまったくの素人である患者の家族に重篤な病勢を十分に説明し、できるだけ速やかに転院することを強く勧告するべきであったにもかかわらず、そうした事実が認められないから、家族が転院の指示に従わなかった事実があったとしても担当医師の過失が軽減されることはない原告側合計2,650万円の請求に対し、請求通りの判決考察日常診療において、腹痛を訴える患者にはしばしば遭遇します。こうした場合、詳細な問診と診察により、ある程度診断がつくことが多いと思いますが、中には緊急手術を要するケースもあり、診断および治療に当たっては慎重な対応が要求されることはいうまでもありません。とくに、投薬のみで帰宅させた後に容態が急変した場合などは、本件のように医療過誤に発展する可能性が十分にあります。本件でも問診、触診による診断そのものは誤りではありませんでしたが、その後の治療方針を決定し、経過観察をするうえで、必要な検査が施行されていなかったことが問題となっています。確かに、患者の症状を軽減することが医師としての勤めでありますが、症状が落ち着いた時点で、原疾患の検索のために必要な検査はぜひとも行うべきであり、イレウスで4日間の入院中に一度もX線撮影を行わなかったことはけっして受け容れられることではありません。患者の検査漬けが取り沙汰されている中では、確かに過剰な検査は迎合できるものではありませんが、本件の場合、X線撮影、血算、検尿、心電図、腹部超音波検査、腹部CTなどの実施が必要であったと思われます。これらすべての検査がどの施設でも緊急にできるとは限らないので、裁判でもそこまでは言及していません。だからといって検査をしなくてもよいということにはならず、必要であれば、それらが実施できるほかの病院へ早期に紹介することが求められています。他院への転送義務については、通常、適切な時期に適切な病院へ転院させたかということが裁判では問題になります。しかし、本件のように医師が転院を勧めたにもかかわらず、家族がその指示に従わなかった場合、まったくの素人である患者および患者家族に対して、医師の勧告の方法に問題があり、過失が減じられなかったことは、医師の立場からいえば少々厳しすぎる裁定ではないかと思います。本件の充塞性イレウスとは、糞石による単純性イレウスのことですが、イレウスの中でも比較的まれな症例です。ましてやその糞石が肛門から横行結腸に至るまで詰まっていたのですから、患者は重篤な状態であったことに疑いはありません。外来や病棟でイレウスの患者を治療するにあたって重要なことは、絞扼性イレウスの患者を放置あるいは誤診して、腸管壊死に陥り、汎発性腹膜炎になった場合には、今日の医療をもってしても患者を救うことができない可能性が高いということです。近年、輸液療法の進歩とともに非絞扼性イレウスの保存的療法が広く行われるようになりましたが、治療しているイレウスが絶対に絞扼性でないという確信が持てない場合には、一刻も早く開腹手術を決断すべきです。また、非絞扼性イレウスと診断され、保存的治療で病状の増悪が認められない場合には、イレウスの自然寛解を期待して手術を見合わせることはできますが、保存的治療の限度はせいぜい1週間程度で、それ以上待ってもイレウスが自然寛解する頻度は少なく、大抵の場合手術しないと治らない原因が潜んでいると考えた方がよいと思います。消化器

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C型慢性肝炎に対する治療法の開発は最終段階へ!―IFN freeの経口薬併用療法の報告―(コメンテーター:中村 郁夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(175)より-

C型慢性肝炎のうち、1型高ウイルス量の患者に対する現時点での標準治療はPEG-InterferonとRibavirin・Protease阻害薬(Telaprevir またはSimeprevir)の併用療法(24週)である。この治療法により、Sustained Virological Response(SVR:治療終了後6ヵ月の時点での血中HCV陰性化)を得られる頻度は、初回治療例、前治療無効例で約80~90%とされている。 さらなる治療効果の向上、患者の負担軽減のために、さまざまな取り組みが進められている。その1つが、IFN freeの経口薬のみの併用療法の開発である。有用な薬剤として、(1) NS3 Protease阻害薬、(2) NS5B Polymerase 阻害薬(核酸型・非核酸型)、(3) NS5A阻害薬などが挙げられる。 一方、経口薬の併用療法の問題点の1つとして、薬剤に対する耐性変異の出現がある。核酸型のNS5B Polymerase 阻害薬に属するSofosbuvir(GS-7977, PSI-7977)は、どのgenotypeのHCVに対しても耐性ウイルスの出現率が低いことが報告されている。 本論文は米国におけるC型慢性肝炎に対するDaclatasvir(NS5A阻害薬)、 Sofosbuvir併用療法のopen-label studyに関する報告である。対象は、genotype1型167例(ナイーブ例(未治療例)126例、前治療無効例 41例)、genotype2型26例(ナイーブ例)、genotype 3型18例(ナイーブ例)とし、Daclatasvir(60mg)、Sofosbuvir(400mg)の1日1回の経口(Ribavirinの有無は無作為に割り付け)を12週、ないし、24週の10投与群に割り付けた(うち、2群でSofosbuvirのlead-inあり)。 治療終了後12週時点のSVR(SVR12)は、genotype 1型では未治療例・前治療無効例とも98%と高率であった。また、IFN・Ribavirin併用療法による治療効果が低いとされるIL28BのSNPが非CCの例においても98%と、CC例(93%)と同等の効果が認められた。 本邦においても同様の治験が進められており、その結果が注目される。いよいよ、C型慢性肝炎の治療法の開発は最後のステップに入ったと考えらえる。

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HIV患者へのエファビレンツ、低用量でも/Lancet

 抗レトロウイルス未治療のHIV-1感染患者に対する、テノホビル+エムトリシタビン(商品名:ツルバダ)に加えたエファビレンツ(同:ストックリン)投与において、1日400mg(低用量)投与が600mg投与に対し非劣性であることが示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のRebekah L. Puls氏らENCORE1試験グループが、13ヵ国38ヵ所の医療機関を通じて行った二重盲無作為化比較試験の結果、報告した。エファビレンツに関連した有害事象の発生は標準用量のほうが頻度が高く、著者は「低用量エファビレンツがルーチン治療の一部として推奨されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年2月10日号掲載の報告より。48週のHIV-RNA量200コピー/mL未満の割合を比較 研究グループは、抗レトロウイルス療法歴のないHIV-1感染患者630例を無作為に2群に分け、テノホビルとエムトリシタビンに加え、エファビレンツ1日400mg(321例)または標準用量の600mg(309例)をそれぞれ投与し、その安全性および有効性を比較した。 主要エンドポイントは、治療開始48週時点でのHIV-RNA量が200コピー/mL未満の人の割合だった。 被験者のうち、32%が女性で、人種別ではアフリカ系が37%、アジア系が33%、白人が30%だった。ベースライン時のCD4細胞数は平均273細胞/μL(標準偏差:99)、血漿HIV-RNA量の中央値4.75 log10コピー/mL(四分位範囲:0.88)だった。エファビレンツ関連の有害事象発生率、600mgで約10ポイント高率 治療開始48週時点でHIV-RNA量が200コピー/mL未満の人の割合は、400mg群が94.1%に対し、600mg群は92.2%と、両群で有意差はなかった(群間差:1.85%、95%信頼区間[CI]:-2.1~5.79%)。テノホビル+エムトリシタビンに加えたエファビレンツ1日400mg投与の、同600mg投与に対する非劣性が示された。 48週時点でのCD4細胞数は、400mg群で600mg群に比べ有意に高かった(平均群間差:25細胞/μL、95%CI:6~44、p=0.01)。 なお、試験薬に関連した有害事象の発生率は、400mg群が89.1%、600mg群が88.4%と両群で同等だった(p=0.77)。一方、エファビレンツに関連する有害事象の発生率は、400mg群で37%だったのに対し、600mg群では47%と、標準用量群が約10ポイント有意に高率だった(群間差:-10.5%、95%CI:-18.2~-2.8%、p=0.01)。また、それにより治療が中止となった人は、400m群6例(2%)、600mg群18例(6%)と両群とも少数だったが有意差が示された(同:-3.96%、-6.96~-0.95、p=0.01)。

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中国の入院例から鳥インフルエンザAウイルスH10N8の新型検出/Lancet

 鳥インフルエンザA(H10N8)ウイルスについて、感染症例1例から既報のH10N8ウイルスとは異なる新規の再集合体H10N8ウイルスが分離されたことを、中国・南昌市疾病管理予防センター(CDC)のHaiYing Chen氏らが報告した。症例は73歳女性で、発症後9日目で死亡。新たなウイルスが、患者の死亡と関連している可能性についても言及している。なお、この新規ウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害薬に反応を示したという。Lancet誌オンライン版2014年2月5日号掲載の報告より。新たな再集合体H10N8ウイルスを検出 新型の鳥インフルエンザウイルス(H5N1、H9N2、H7N9など)のヒトへの感染は、世界的パンデミックの可能性に対する懸念を喚起したが、Chen氏らは今回、また新たな再集合体鳥インフルエンザA(H10N8)ウイルスの初となるヒトへの感染例が見つかったことを報告した。 調査は、2013年11月30日時点で南昌市において入院していた患者から入手した、臨床的、疫学的およびウイルス学的データを分析して行われた。気管吸引検体を用いて、インフルエンザウイルスまたは他の病原体を見つけるため、RT-PCR、ウイルス培養とシーケンス解析を行い、最尤推定法にて系統樹を作成し検討した。発症から9日目に死亡、ウイルスにより死亡の可能性 新規の再集合体H10N8ウイルスが分離されたのは、73歳女性、発熱(38.6℃)で2013年11月30日に入院した症例であった。肺CTスキャンで、右肺下葉の硬化がみられ、4日目には左肺下葉にも硬化が認められるようになった。胸部X線で、患者には6日目に両側性の胸水が認められ、8日目にスリガラス状陰影と硬化の急速な進行が認められた。 白血球数は5日目より、リンパ球が正常値範囲以下に低下、好中球は同範囲以上に上昇。C反応性蛋白(CRP)、クレアチニン値は高値で、AST、BUNは7日目以降やや上昇し肝臓、腎臓が機能不全に陥ることを示した。アルカリホスファターゼ、総蛋白、グロビン、アルブミンの血中濃度は、4日目には正常だったが、7、8日目では低下を示した。トランスサイレチンは、すべての検査時点で低下を示し、総IgG、C3は、8日目に低下が記録されている。 細菌感染症予防のための組み合わせ抗菌薬治療、機械的人工換気、糖質コルチコイド、アルブミン静注、抗ウイルス治療にもかかわらず、患者の状態は、次第に深刻になり、重篤な肺炎、敗血症性ショックおよび多臓器不全を呈し、9日目に死亡した。 新規のウイルスは、発症7日後の患者の気管吸引検体から分離されたものであった。 シーケンス解析により、ウイルス遺伝子はすべて鳥由来で、6つの内部遺伝子はH9N2ウイルス由来だった。なおこのウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害薬に反応を示した。 痰、血液培養およびより詳細な塩基配列決定解析の結果、細菌真菌の同時感染は示されなかった。 また疫学的調査により、患者が発症4日前に家禽市場を訪れていることが確認されている。 著者は「2014年1月26日現在、南昌市ではもう1例のH10N8感染例が報告されている。1997年に香港で最初の死亡例が報告された鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染では、その後6ヵ月間で17例の死亡を報告した。この新規のウイルスのパンデミックの可能性が過小評価されてはならない」とまとめている。

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H7N9型インフル、ヒト-ヒト感染の可能性依然残る/NEJM

 2013年に中国で発生した新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染例のほとんどでは疫学的な関連性が認められず、ヒト-ヒト間伝播の可能性は除外できないことが、中国・公衆衛生救急センターのQun Li氏らの調査で判明し、NEJM誌2014年2月6日号で報告された。2013年2~3月に、中国東部地域でH7N9ウイルスのヒトへの感染が初めて確認された。これまでに急速に進行する肺炎、呼吸不全、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、死亡の転帰などの特性が報告されているが、研究者はその後も詳細な実地調査などを進めている。2013年12月1日までの感染者の疫学的特性を実地調査データで検討 研究グループは、今回、2013年12月1日までに確認されたH7N9ウイルス感染例の疫学的特性を検討する目的で、実地調査で得られたデータの解析を行った。 H7N9ウイルスの感染は、リアルタイムPCR(RT-PCR)、ウイルス分離または血清学的検査で確定し、個々の確定例について実地調査を行った。人口統計学的特性、曝露歴、疾患の臨床経過に関する情報を収集した。 患者との濃厚接触者は7日間、経過を観察し、症状がみられた場合は咽頭スワブを採取してリアルタイムRT-PCRでH7N9ウイルスの検査を行った。82%が動物と接触、99%入院、90%下気道疾患、34%院内死亡、濃厚接触者すべて陰性 H7N9ウイルス感染が確定した139例が解析の対象となった。年齢中央値は61歳(2~91歳)、58例(42%)が65歳以上、4例(3%)は5歳未満であり、98例(71%)が男性、101例(73%)は都市部の住民であった。感染例は中国東部の12地域にみられ、9例(6%)が家禽業従事者であった。 データが得られた108例中79例(73%)に基礎疾患(高血圧32例、糖尿病14例、心疾患12例、慢性気管支炎7例など)が認められた。動物との接触は、データが得られた131例のうち107例(82%)に認められ、ニワトリが88例(82%)、アヒルが24例(22%)、ハトが13例(12%)、野鳥が7例(7%)などであった。これらの知見からは、疫学的な関連性はとくに認められなかった。 137例(99%)が入院し、125例(90%)に肺炎または呼吸不全がみられた。データが得られた103例中65例(63%)が集中治療室(ICU)に収容された。47例(34%)が院内で死亡し(罹患期間中央値21日)、88例(63%)は退院したが、重症の2例は入院を継続した。 4つの家族内集積例では、H7N9ウイルスのヒト-ヒト間伝播の可能性を否定できなかった。家族内の2次感染例を除く濃厚接触者2,675人が7日間の観察期間を終了した。このうち28例(1%)に呼吸器症状の発現がみられたが、全員がH7N9ウイルス陰性だった。 著者は、「H7N9ウイルス感染確定例のほとんどが重篤な下気道疾患を発現し、疫学的な関連性は認められず、家禽への直近の曝露歴を有していたが、4家族ではH7N9ウイルスの限定的で非持続的なヒト-ヒト間伝播の可能性が除外できなかった」としている。なお、最近、香港や台湾でも感染例が見つかっており、同誌のエディターは「2014年1月21日現在、確定例は200例を超え、2013年12月1日以降に発見された症例は65例以上にのぼり、アウトブレイクは進行中である」と補足している。

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水痘予防にはMMRV 2回接種を支持/Lancet

 チェコ共和国・フラデツ・クラーロヴェー大学病院のRoman Prymula氏らは、水痘の発症予防について、麻疹・ムンプス・風疹・水痘ワクチン(MMRV)2回接種と、単価水痘ワクチン1回接種の有効性を比較する無作為化対照試験を欧州10ヵ国の協力を得て行った。その結果、あらゆる型の水痘予防を確実なものとするためにもMMRVの2回接種を支持する結果が得られたことを報告した。今日、水痘発症率は、水痘ワクチンを“ルーチン”で行っている国では激減している。予防は単価ワクチンもしくはMMRVの接種にて可能であり、今回、研究グループは、どちらが有用かを比較検証した。Lancet誌オンライン版2014年1月29日号掲載の報告より。欧州10ヵ国でMMRV 2回、MMR+V、MMR 2回の有効性を比較 試験は、多施設共同無作為化かつ観察者盲検にて、水痘の風土病がみられるヨーロッパの10ヵ国(チェコ共和国、ギリシャ、イタリア、リトアニア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スウェーデン)にて行われた。 生後12~22ヵ月の健常児を無作為に3対3対1の割合で、42日間で(1)MMRV 2回接種(MMRV群)、(2)1回目にMMR接種、2回目に単価水痘ワクチン接種(MMR+V群)、(3)MMR 2回接種(MMR群:対照群)に割り付けて検討した。 被験児と保護者はすべてのアウトカムについて個別に評価を受け、またデータの評価や解析に関係するスポンサースタッフは治療割付について知らされなかった。 主要有効性エンドポイントは、2回接種後の42日目から第1フェーズの試験終了時点までに確認された水痘の発症(水痘帯状疱疹ウイルスDNAの検出または疫学的関連性で判定)であった。症例は重症度により分類し、有効性の解析はパープロトコル解析によって行われた。安全性の解析には1回以上接種を受けたすべての被験児を含めた。 2005年9月1日~2006年5月10日に、5,803例(平均年齢14.2ヵ月、SD 2.5)が、ワクチン接種を受けた。2回接種MMRVの有効性94.9%、中等度~重症例には99.5% 有効性解析コホートには5,285例が組み込まれた。平均追跡期間はMMRV群36ヵ月(SD 8.8)、MMR+V群36ヵ月(8.5)、MMR群は35ヵ月(8.9)であった。 水痘発症例は、MMRV群37例、MMR+V群243例、MMR群201例が確認された。2回発症例は、3例(全例MMR+V群)でみられた。 中等度~重症の水痘発症例は、MMRV群で2例であったが、MMR+V群では37例が報告された(1例は初回軽症例の2回発症例)。MMR群は117例であった。 すべての水痘に対する2回接種MMRVの有効性は、94.9%(97.5%信頼区間[CI]:92.4~96.6%)であり、中等度~重症の水痘に対しては99.5%(同:97.5~99.9%)であった。 一方、すべての水痘に対する1回接種単価水痘ワクチンの有効性は、65.4%(同:57.2~72.1%)で、事後解析にて評価した中等度~重症の水痘に対する有効性は90.7%(同:85.9~93.9%)であった。 全接種群で最も頻度が高かった有害イベントは、注射部位の発赤であった(被験者のうち最高25%で報告)。 また、1回接種後15日以内に38℃以上の発熱を報告したのは、MMRV群57.4%(95%CI:53.9~60.9%)、MMR+V群44.5%(同:41.0~48.1%)、MMR群39.8%(同:33.8~46.1%)だった。 ワクチン接種に関連していると思われる重大有害イベントは、8件報告された(MMRV群3例、MMR+V群4例、MMR群1例)。全例、試験期間内に治癒した。 以上から著者は、「試験の結果は、あらゆる水痘疾患からの保護を確実なものとするために、短期間の2回接種水痘ワクチンによる予防接種を支持するものである」と結論している。

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造血幹細胞移植後に真菌症を起こしやすくなる遺伝的欠損とは/NEJM

 ペントラキシン3(PTX3)の遺伝的欠損は好中球の抗真菌能に影響を及ぼし、造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者における侵襲性アスペルギルス症(Aspergillus fumigatus)のリスクに関与している可能性があることが、イタリア・ペルージャ大学のCristina Cunha氏らの検討で示された。液性パターン認識受容体は、長いタイプのPTX3として知られ、抗真菌免疫において代替不可能な役割を果たすとされる。一方、侵襲性アスペルギルス症の発現におけるPTX3の一塩基多型(SNP)の関与はこれまでに明らかにされていない。NEJM誌2014年1月30日号掲載の報告。PTX3 SNPをスクリーニングし、その機能的転帰を検討 研究グループは、HSCTを受けた患者268例(A. fumigatus群51例、非A. fumigatus群217例)とそのドナーのコホートにおいて、侵襲性アスペルギルス症のリスクに影響を及ぼすPTX3のSNPのスクリーニングを行った(discovery study)。 また、侵襲性アスペルギルス症患者107例およびこれらの患者とマッチさせた対照223例に関して、多施設共同研究を実施した(confirmation study)。in vitroとレシピエントの肺検体でPTX3 SNPの機能的転帰について検討した。ホモ接合型ハプロタイプおよび発現欠損ドナーからの移植で感染リスク上昇 PTX3がホモ接合型ハプロタイプ(h2/h2)のドナーから移植を受けたレシピエントは感染リスクが上昇することが、discovery study(累積発生率:37 vs. 15%、補正ハザード比[HR]:3.08、p=0.003)およびconfirmation study(補正オッズ比[OR]:2.78、p=0.03)の双方で確認された。PTX3の発現が欠損しているドナーからの移植の場合も同様の結果であった。 機能的には、メッセンジャーRNAの不安定性によると推察されるh2/h2好中球のPTX3欠損により、貪食能と真菌のクリアランスが障害されることが示された。 著者は、「PTX3の遺伝的欠損は好中球の抗真菌能に影響を及ぼし、この欠損はHSCTを受けた患者において侵襲性アスペルギルス症を起こしやすくしている可能性がある」とまとめ、「これらの知見は、A. fumigatusに対する宿主防御におけるPTX3の代替不可能な役割を支持するもの」と指摘している。

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インフルエンザ検出2倍以上に(厚生労働省)

 厚生労働省は1月31日、2014年第4週(2014年1月20日~1月26日)インフルエンザの発生状況を公表した。AH3亜型(A香港型)が最も多く検出されている。なお、昨シーズンは報告が少なかったAH1pdm09が次いで多く、とくに直近の5 週間(2013 年第52 週~2014 年第4 週)ではAH1pdm09 の検出割合が最も多いという。 発表内容は以下の通り。 2013/2014 年シーズンのインフルエンザの定点当たり報告数は2013 年第43 週以降増加が続いている。2014 年第4 週の定点当たり報告数は24.81(患者報告数122,618)となり、前週の報告数(定点当たり報告数11.78)よりも大きく増加した。都道府県別では沖縄県(54.12)、大分県(39.62)、宮崎県(37.86)、佐賀県(34.79)、埼玉県(33.69)、長崎県(32.47)、福岡県(32.19)、神奈川県(31.52)、滋賀県(31.32)、千葉県(30.08)の順となっており、第4 週も全47都道府県で増加がみられた。 全国の保健所地域で警報レベルを超えているのは146 箇所(33 都府県)、注意報レベルを超えている保健所地域は317箇所(46 都道府県)と共に増加した。定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1 週間に受診した患者数を推計すると約132万人(95%信頼区間:121~144 万人)となり、5~9 歳が約29 万人、0~4 歳が約18 万人、10~14 歳、30 代がそれぞれ約17 万人、40 代が約14 万人、20 代が約12 万人、50 代が約8 万人、15~19 歳が約7 万人、60 代が約6 万人、70歳以上が約4 万人の順となっている。また、2013 年第36 週以降これまでの累積の推計受診者数は約275 万人となった。 基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数は807 例であり、第3 週(519 例)より増加した。全47 都道府県から報告があり、年齢別では0 歳(75 例)、1~9 歳(232 例)、10 代(45 例)、20 代(17 例)、30 代(25 例)、40 代(22例)、50 代(37 例)、60 代(76 例)、70 代(118 例)、80 歳以上(160 例)であった。 2013 年第36 週以降これまでの国内のインフルエンザウイルスの検出状況をみると、AH3 亜型(A 香港型)の割合が最も多く、次いでAH1pdm09、B 型の順で検出されている一方で、直近の5 週間(2013 年第52 週~2014 年第4 週)ではAH1pdm09 の検出割合が最も多く、次いでB 型、AH3 亜型(A 香港型)の順となっている。

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脂漏性皮膚炎への経口抗真菌薬の使用実態が明らかに

 カナダ・トロント大学のA.K. Gupta氏らは、脂漏性皮膚炎に対する経口薬治療について発表された文献数とその質について系統的レビューを行った。脂漏性皮膚炎は通常、局所ステロイドまたは抗真菌薬による治療が行われ、重症例もしくは治療抵抗性の場合には経口薬治療が可能とされている。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌2014年1月号の掲載報告。 Gupta氏らによる系統的レビューは、MEDLINE、Embaseのデータベースおよび文献参照リストを探索して行われた。脂漏性皮膚炎の経口薬治療に関するあらゆる報告を対象とした。 文献の質について、Downs&Black修正27項目チェックリストを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索により、8つの経口薬治療(イトラコナゾール、テルビナフィン、フルコナゾール、ケトコナゾール、プラミコナゾール、プレドニゾン、イソトレチノイン(国内未承認)、ホメオパシー療法)をカバーした21本の報告(無作為化対照試験、非盲検試験、症例報告)が特定された。・大半の報告は、経口抗真菌薬について検討していたが、その質は概して低かった。・臨床的有効性アウトカムは、試験間でかなりのばらつきがあり、統計解析と治療間の直接比較は難しかった。・その中で、ケトコナゾール治療は、ほかの経口薬治療と比較して脂漏性皮膚炎再発との関連がより大きかった。・イトラコナゾールの投与量は通常、最初の1ヵ月の第一週は200mg/日、2~11ヵ月は、月初めの2日間に200mg/日が投与されていた。・テルビナフィンは、250mg/日を連続投与(4~6週)もしくは間欠投与(月に12日間を3ヵ月)で処方されていた。・フルコナゾールは、連日投与(50mg/日を2週間)もしくは毎週投与(200~300mg)を2~4週で設定されていた。・ケトコナゾールの投与レジメンは1日200mgを4週間であった。・プラミコナゾールは、200mg単回投与であった。・著者は、「今回のレビューにより、将来、試験をデザインする際に考慮すべきキー領域が明らかになった」とまとめている。

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慢性C型肝炎のIFNフリー療法―リバビリンレジメン/NEJM

 未治療またはペグインターフェロン(商品名:ペガシス)+リバビリン(RBV、商品名:コペガスほか)による前治療が無効であった遺伝子型1型感染患者に対し、経口投与のみの直接作用型抗ウイルス薬(2種または3種)+RBVレジメンが、いずれの患者にも有効であることが示された。米国・バージニア・メイソン・メディカル・センターのKris V. Kowdley氏らが、第2b相非盲検無作為化試験にて9レジメン(14サブ治療群)を設けて検討した結果、治療終了後24週時点のSVR(持続性ウイルス学的著効)は、83~100%であったことを報告した。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告より。571例を14の直接作用型抗ウイルス薬+RBVレジメンに割り付けて検討 試験は2011年10月~2012年4月に9ヵ国97施設で1,013例がスクリーニングを受け、肝硬変を伴わない未治療または前治療無効のHCV遺伝子型1型感染患者571例を無作為に14群に割り付けて行われた。 検討された経口抗ウイルス薬は、プロテアーゼ阻害薬ABT-450+リトナビル(同:ノービア)(ABT-450/r:ABT-450投与量100、150、200mg設定)、非ヌクレオシド系ポリメラーゼ阻害薬ABT-333、およびNS5A阻害薬ABT-267。前者の2種は、予備試験でインターフェロンを用いないRBV併用レジメンとして有効性が示されており、ABT-267は、とくに治療困難な患者において有効性が改善する可能性が示唆されていた。 571例を2種または3種複合の8週、12週、24週投与の14の治療群(9群1治療群を除きRBV併用)を設定し検討した。 主要エンドポイントは、治療終了後24週時点のSVRであった。SVRは83~100% 主要有効性解析では、未治療患者への3種複合[ABT-450/r(150mg)+ABT-333+ABT-267]+RBVの8週治療群と、同12週治療群を比較した。結果、治療終了後24週時点のSVRは、8週治療群88%、12週治療群95%であった(両群差:-7ポイント:95%信頼区間[CI]:-19~5、p=0.24)。 すべての治療群のSVRは、83%[未治療、ABT-450/r(150mg)+ABT-333+RBV]から100%にわたった。 最も頻度が高かった有害事象は、疲労、頭痛、悪心、不眠であった。有害事象により試験を中止したのは8例(1%)だった。

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慢性C型肝炎のIFNフリー療法/NEJM

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型、2型または3型の患者について、ダクラタスビル(承認申請中)+ソホスブビル(国内未承認)の1日1回経口併用療法が、高率のSVR(持続性ウイルス学的著効)を達成したことが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のMark S. Sulkowski氏らが行った、211例の患者(前治療無効例を含む)を対象としたオープンラベル試験の結果で、治療終了後12週時点のSVRは各遺伝子型患者群で89~98%であったという。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告より。1日1回経口ダクラタスビル(60mg)+ソホスブビル(400mg)投与について検討 試験は、慢性HCV遺伝子型1型で未治療(126例)または前治療[テラプレビル(商品名:テラビック)もしくはボセプレビル(国内未承認)]無効(41例)、および未治療の遺伝子型2型(26例)または3型(18例)の計211例の患者を非盲検下に無作為に10投与群に割り付けて行われた。 検討されたのはダクラタスビル(1日1回経口60mg、DCV)+ソホスブビル(1日1回経口400mg、SOF)の12週投与または24週投与であった。12週投与の検討は、未治療の遺伝子型1型患者82例を対象に、リバビリン(商品名:コペガスほか、RBV)の有無別に無作為化して行われた(2投与群)。残りの患者は、24週DCV+SOF(未治療・前治療無効患者対象、3投与群)、24週DCV+SOF+RBV(同、3投与群)、1週SOF投与後に23週DCV+SOF(未治療患者のみ、2投与群)に無作為に割り付けられ評価を受けた。 主要エンドポイントは、治療終了後12週時点でのSVR(HCV RNA値<25 IU/mLと定義)だった。治療終了後12週時点でいずれも高いSVR 試験薬治療後12週時点のSVRは、遺伝子型1型のうち未治療例98%、同前治療無効例98%、また遺伝子型2型の患者では92%、同3では89%であった。 なかでも、サブタイプ1a(98%)、1b(100%)、IL28B遺伝子型CC(93%)、同非CC(98%)で高いSVRが認められた。 RBV投与の有無別では、投与を受けた人(計90例)のSVRは94%、受けなかった人(計121例)は同98%だった。 有害イベントで最も頻度が高かったのは、疲労、頭痛、悪心だった。

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カミナリ喘息【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第11回

カミナリ喘息呼吸器内科医として、研修医の方々に「雷やストレスは気管支喘息を悪化させるリスク因子なんだよ」と薀蓄(うんちく)を酒の肴に語ることがあります。「本当なんですか?」と言われて、「あれ、どうだったっけ?」と思い、調べなおしてみました。結論としては、雷によってある程度の気管支喘息の悪化が観察されるようです。今回紹介する論文以外にも、過去にいくつか報告があります(J Epidemiol Commun Health. 1997;51:233-238)。Dales RE, et al.Dales RE, et al.The role of fungal spores in thunderstorm asthma.Chest. 2003;123:745-750.この研究は雷による気管支喘息、すなわち「カミナリ喘息」について入院した小児に基づいて報告されたものです。東オンタリオ小児病院のデータを用いて解析されました。雷雲が観察された日(151日)は、そうでなかった日(919日)と比較して、1日あたりの気管支喘息による受診が8.6人/日から10人/日と15%増加しました(p<0.05)。また、真菌の飛散胞子は雷雲が観察された日では約2倍に増えていたと報告されました(不完全菌類が1,512/m3から2,749/m3に増加)。真菌のほとんどがクラドスポリウムでした。また、担子菌類も雷雲が観察された日に有意に多かったそうです。過去の試験では、悪天候によって数倍から10倍という喘息発作の頻度の増加がみられたという報告もあるのですが、現時点ではこの東オンタリオ小児病院の15%程度の増加というのが現実的に妥当なデータだろうと考えられています。ただ、雷、雨、風のすべての因子を独立して検証することは気象学的に不可能ですので、雷単独が気管支喘息を悪化させるかどうかはわかりません。雨や雷といった悪天候の場合、花粉や真菌は雨とくっついて大気中から減るというイメージがあります。飛散量が確実に増えるのか減るのか、まだまだ議論の余地があります。しかし強い風によって飛散量が増えるため、悪化するのではないかという見解(Lancet. 1985; 2:199-204)があるだけでなく、悪天候の前の日が“晴れ”だった場合、舞い上がったアレルゲンが雨とともに落下してくるといわれています。そのため、雨であろうとアレルゲンが一時的に増えることがあります。とくに、小雨のときは上空から落下してくる雨粒が途中で蒸発してしまい、花粉や真菌だけが地表に落下してくると考えられています。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第4回

第4回:小児のいぼのnatural history-約半数が自然治癒する いぼ(wart, 疣贅)は年に何回かはお母さん方から質問/相談を受けます。経過観察でよいのか?皮膚科に紹介したほうがよいのか?それとも診療所でも冷凍凝固を導入して治療したほうがよいのか?対応が悩ましいことも多いですが、Annals of Family Medicine誌の2013年12月15日号にも総説があり、日常的に遭遇する問題ですのでご紹介いたします。 以下、Annals of Family Medicine 2013年12月15日号1)よりいぼ(疣贅)1.背景いぼは自然に軽快することが多く、仮に治療を行った場合でも失敗するケースがある。したがって、家庭医および患者は経過観察という方法も知っておいたほうがよい。この研究では、いぼの自然経過および、どのようなタイミングで治療が行われているかをプライマリ・ケアベースでのコホート研究によって調査した。2.方法オランダの3つの小学校に通う4~12歳の小児を対象に、手掌足底にいぼがないかをベースライン時に調べた。その後平均15ヵ月間追跡調査を行った。また、対象小児の親にいぼがあることによる不便さと治療の有無についてアンケート調査した。3.結果1,134人の小児のうち1,009人(97%)が参加した。そのうち366 (33%)にベースライン時、いぼがあった。いぼを有する小児のうち9%がフォローできなかった。親のアンケートに回答した割合は83%であった。完全に治癒するのは、100人年中52であった。年齢が若い、非コーカサス系の肌は治癒率が高かった。フォローアップの期間中38%がなんらかの治療を受け、そのうち18%が市販薬(over-the-counter)、15%が家庭医の治療、5%がいずれの治療も受けた。1cmを超えるいぼでは、とくに治療を受ける割合が高かった。また、いぼがあることによって不便さを感じている小児も治療を受ける割合が高かった。4.結語約半数のいぼが自然軽快をした。より若年、非コーカサス系の肌は治癒率が高かった。大きくて不便を感じるいぼでは、治療する傾向があった。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Bruggink SC, et al. Ann Fam Med. 2013;11:437-441.

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進行期パーキンソン病に対する新たな遺伝子治療/Lancet

 進行期パーキンソン病に対し、新たな遺伝子治療「ProSavin」の有効性と安全性、忍容性を検討した第1/2相試験の結果が発表された。フランス・パリ第12大学のStephane Palfi氏らが同患者15例を、低・中・高用量投与の3群で12ヵ月間検討した結果、いずれの投与群でも安全性と忍容性が認められ、また全患者について運動症状の改善がみられたことを報告した。パーキンソン病では経口ドパミン補充療法が行われているが、治療が長期にわたると、運動合併症や衝動制御障害が起きることから根治につながる治療が求められている。Lancet誌オンライン版2014年1月9日号掲載の報告より。レンチウイルス・ベクターベースの遺伝子治療ProSavin ProSavinは、レンチウイルス・ベクターベースの遺伝子治療で、進行期パーキンソン病患者のドパミン産生機能を回復させることを目的とする。レンチウイルス・ベクターは、ドパミン合成に必要な3つの酵素の遺伝子コードを含む生成ベクターで、ProSavinの治療原理は、この生成ベクターを線条体(被殻)の運動野に送達し線条体細胞を「ドパミン工場」に転化して、パーキンソン病で失われるドパミンの恒常的な供給源を置き換えていくというものだという。ベクター活用には挿入細胞に腫瘍形成を招くリスクも指摘されているが、レンチウイルス・ベクターではそのリスクが最小である可能性が示唆されているという。 研究グループは、英国とフランスの2地点で12ヵ月間追跡の第1/2相非盲検試験を行い、パーキンソン病患者の被殻に、両側性にProSavinを注射投与した後の安全性と有効性を評価した。患者は全員、引き続き長期安全性を評価する別個の非盲検追跡試験に組み込まれた。各群コホートは、3つの投与量(低用量:1.9×107TU、中用量:4.0×107TU、高用量:1×108TU)について評価を受けた。 被験者の試験適格基準は、年齢48~65歳、罹病期間5年以上、運動症状の日内変動あり、経口ドパミン薬による運動症状改善50%超とした。 第1/2相試験の主要エンドポイントはベクター注射投与後6ヵ月時点の、ProSavin関連有害イベントの発生件数と重症度、およびパーキンソン病統一スケール(UPDRS)パート3(off時)で評価した運動症状の改善だった。3用量群で検討した15例全例で6ヵ月後、運動症状が有意に改善 患者15例がProSavinを投与され追跡を受けた(低用量群3例、中用量群6例、高用量群6例)。 当初12ヵ月の追跡期間中、試験薬関連有害イベントは54例報告された(51例は軽度、3例が中程度)。最も頻度が高かったのは、on時ジスキネジア(20件、11例)、on-off現象(12件、9例)の増大だった。試験薬および手技に関連した重篤な有害イベントは報告されなかった。 UPDRSパート3の平均スコアは、6ヵ月時点、12ヵ月時点ともにベースライン時との比較で全患者に有意な改善がみられた。6ヵ月時点の平均スコアは、38[SD 9]vs. 26[8](p=0.0001)、12ヵ月時点は38vs. 27[8](p=0.0001)だった。

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COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か

 1年間マクロライド系抗菌薬の長期療法を行うことでCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の増悪リスクは減少するが、聴力の低下やマクロライド系耐性菌が増えるリスクもあることが米国・テンプル大学病院のFrederick L. Ramos氏らによって報告された。Current Opinion in Pulmonary Medicine誌オンライン版2013年12月28日の掲載報告。 COPDの増悪は有害事象と関連しているため、その予防は重要である。最近の研究からマクロライドの長期療法はCOPDの増悪リスクを減少させることがわかっている。そこで、COPDの増悪抑制に対するマクロライド系抗菌薬の長期療法の効果を検討した研究のうち、より質の高いエビデンスを選定し、再評価を行った。この再評価では、マクロライド系抗菌薬の長期療法と健康関連QOL、喀痰細菌、耐性状況、炎症性マーカー、肺機能、費用便益分析の観点からも検討を加えた。 通常の治療に加え、エリスロマイシンまたはアジスロマイシンが1年間投与されていた患者を対象とした2つの質の高い無作為化プラセボ対照試験では、COPDが増悪するまでの期間は長く、頻度も低いことがわかった。その一方で、これらの患者では聴力の低下が多く認められ、マクロライド系耐性菌も多いことがわかった。

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薬剤投与後の肝機能障害を見逃し、過誤と判断されたケース

消化器最終判決判例時報 1645号82-90頁概要回転性の眩暈を主訴として神経内科外来を受診し、脳血管障害と診断された69歳男性。トラピジル(商品名:ロコルナール)、チクロピジン(同:パナルジン)を処方されたところ、約1ヵ月後に感冒気味となり、発熱、食欲低下、胃部不快感などが出現、血液検査でGOT 660、GPT 1,058と高値を示し、急性肝炎と診断され入院となった。入院後速やかに肝機能は回復したが、急性肝炎の原因が薬剤によるものかどうかをめぐって訴訟に発展した。詳細な経過患者情報69歳男性経過1995年4月16日朝歯磨きの最中に回転性眩暈を自覚し、A総合病院神経内科を受診した。明らかな神経学的異常所見や自覚症状はなかったが、頭部MRI、頸部MRAにてラクナ型梗塞が発見されたことから、脳血管障害と診断された(4月17日に行われた血液検査ではGOT 21、GPT 14と正常範囲内であり、肝臓に関する既往症はないが、かなりの大酒家であった)。6月7日トラピジル、チクロピジンを4週間分処方した。7月5日再診時に神経症状・自覚症状はなく、トラピジル、チクロピジンを4週間分再度処方した。7月7日頃~感冒気味で発熱し、食欲低下、胃部不快感、上腹部痛などを認めた。7月12日内科外来受診。念のために行った血液検査で、GOT 660、GPT 1,058と異常高値であることがわかり、急性肝炎と診断された。7月15日~9月1日入院、肝機能は正常化した。なお、入院中に施行した血液検査で、B型肝炎・C型肝炎ウイルスは陰性、IgE高値。薬剤リンパ球刺激検査(LST)では、トラピジルで陽性反応を示した。当事者の主張患者側(原告)の主張1.急性肝炎の原因本件薬剤以外に肝機能に異常をもたらすような薬は服用しておらず、そのような病歴もない。また、薬剤中止後速やかに肝機能は改善し、薬剤リンパ球刺激検査でトラピジルが陽性を示し、担当医らも薬剤が原因と考えざるを得ないとしている。したがって、急性肝炎の原因は、担当医師が処方したトラピジル、チクロピジン、またはそれらの複合によるものである2.投薬過誤ついて原告の症状は脳梗塞や脳血栓症ではなく、小さな脳血栓症の痕跡があったといっても、これは高齢者のほとんどにみられる現象で各別問題はなかったので、薬剤を処方する必要性はなかった3.経過観察義務違反について本件薬剤の医薬品取扱説明書には、副作用として「ときにGOT、GPTなどの上昇があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められる場合には投与を中止すること」と明記されているにもかかわらず、漫然と4週間分を処方し、その間の肝機能検査、血液検査などの経過観察を怠った病院側(被告)の主張1.急性肝炎の原因GOT、GPTの経時的変動をみてみると、本件薬剤の服用を続けていた時点ですでに回復期に入っていたこと、薬剤服用中に解熱していたこと、本件の肝炎は原因不明のウイルス性肝炎である可能性は否定できず、また、1日焼酎を1/2瓶飲むほどであったのでアルコール性肝障害の素質があったことも影響を与えている。以上から、本件急性肝炎が本件薬剤に起因するとはいえない2.投薬過誤ついて初診時の症状である回転性眩暈は、小梗塞によるものと考えられ、その治療としては再発の防止が最優先されるのだから、厚生省告示によって1回30日分処方可能な本件薬剤を処方したことは当然である。また、初診時の肝機能は正常であったので、その後の急性肝炎を予見することは不可能であった3.経過観察義務違反について処方した薬剤に副作用が起こるという危険があるからといって、何らの具体的な異常所見もないのに血液検査や肝機能検査を行うことはない裁判所の判断1. 急性肝炎の原因原告には本件薬剤以外に肝機能障害をもたらすような服薬や罹病はなく、そのような既往症もなかったこと、本件薬剤中止後まもなく肝機能が正常に戻ったこと、薬剤リンパ球刺激試験(LST)の結果トラピジルで陽性反応が出たこと、アレルギー性疾患で増加するIgEが高値であったことなどの理由から、トラピジルが単独で、またはトラピジルとチクロピジンが複合的に作用して急性肝炎を惹起したと推認するのが自然かつ合理的である。病院側は原因不明のウイルス性肝炎の可能性を主張するが、そもそもウイルス性肝炎自体を疑うに足る的確な証拠がまったくない。アルコール性肝障害についても、飲酒歴が急性肝炎の発症に何らかの影響を与えた可能性は必ずしも否定できないが、そのことのみをもって薬剤性肝炎を覆すことはできない。2. 投薬過誤ついて原告の症状は比較的軽症であったので、本件薬剤の投与が必要かつもっとも適切であったかどうかは若干の疑問が残るが、本件薬剤の投与が禁止されるべき特段の事情は認められなかったので、投薬上の過失はない。3. 経過観察義務違反について医師は少なくとも医薬品の能書に記載された使用上の注意事項を遵守するべき義務がある。本件薬剤の投与によって肝炎に罹患したこと自体はやむを得ないが、7月5日の2回目の投薬時に簡単な血液検査をしていれば、急性肝炎に罹患したこと、またはそのおそれのあることを早期(少なくとも1週間程度早期)に認識予見することができ、薬剤の投与が停止され、適切な治療によって急性肝炎をより軽い症状にとどめ、48日にも及ぶ入院を免れさせることができた。原告側合計102万円の請求に対し、20万円の判決考察この裁判では、判決の金額自体は20万円と低額でしたが、訴訟にまで至った経過がやや特殊でした。判決文には、「病院側は入院当時、「急性肝炎は薬剤が原因である」と認めていたにもかかわらず、裁判提起の少し前から「急性肝炎の発症原因としてはあらゆる可能性が想定でき、とくにウイルス性肝炎であることを否定できないから結局発症原因は不明だ」と強調し始めたものであり、そのような対応にもっとも強い不満を抱いて裁判を提起したものである」と記載されました。この病院側の主張は、けっして間違いとはいえませんが、本件の経過(薬剤を中止したら肝機能が正常化したこと、トラピジルのLSTが陽性でIgEが高値であったこと)などをみれば、ほとんどの先生方は薬剤性肝障害と診断されるのではないかと思います。にもかかわらず、「発症原因は不明」と強調されたのは不可解であるばかりか、患者さんが怒るのも無理はないという気がします。結局のところ、最初から「薬剤性でした」として変更しなければ、もしかすると裁判にまで発展しなかったのかも知れません。もう1点、この裁判では重要なポイントがあります。それは、新規の薬剤を投与した場合には、定期的に副作用のチェック(血液検査)を行わないと、医療過誤を問われるリスクがあるという、医学的というよりもむしろ社会的な問題です。本件では、トラピジル、チクロピジンを投与した1ヵ月後の時点で血液検査を行わなかったことが、医療過誤とされました。病院側の主張のように、「何らの具体的な異常所見もないのに(薬剤開始後定期的に)血液検査や肝機能検査を行うことはない」というのはむしろ常識的な考え方であり、これまでの外来では、「この薬を飲んだ後に何か症状が出現した場合にはすぐに受診しなさい」という説明で十分であったと思います。しかも、頻回に血液検査を行うと医療費の高騰につながるばかりか、保険審査で査定されてしまうことすら考えられますが、今回の判決によって、薬剤投与後何も症状がなくても定期的に血液検査を行う義務のあることが示されました。なお、抗血小板剤の中でもチクロピジンには、以前から重篤な副作用による死亡例が報告されていて、薬剤添付文書には、「投与開始後2ヵ月は原則として2週間に1回の血液検査をしなさい」となっていますので、とくに注意が必要です。以下に概要を提示します。チクロピジン(パナルジン®)の副作用Kupfer Y, et al. New Engl J Med.1997; 337: 1245.3週間前に冠動脈にステントを入れ、チクロピジンとアスピリンを服用していた47歳女性。48時間前からの意識障害、黄疸、嘔気を主訴に入院、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と診断された。入院後48時間で血小板数が87,000から2,000に激減し、輸血・血漿交換にもかかわらず死亡した。吉田道明、ほか.内科.1996; 77: 776.静脈血栓症と肺塞栓症のため、42日前からチクロピジンを服用していた83歳男性。42日目の血算で好中球が30/mm3と激減したため、ただちにチクロピジンを中止し、G-CSFなどを投与したが血小板も減少し、投与中止6日目に死亡した。チクロピジンの薬剤添付文書には、警告として「血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害などの重大な副作用が主に投与開始後2ヵ月以内に発現し、死亡に至る例も報告されている。投与開始後2ヵ月間は、とくに前記副作用の初期症状の発現に十分に留意し、原則として2週に1回、血球算定、肝機能検査を行い、副作用の発現が認められた場合にはただちに中止し、適切な処置を行う。投与中は定期的に血液検査を行い、副作用の発現に注意する」と明記されています。消化器

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C型肝炎に対するIFN療法著効後に肝細胞がんを発症する患者の特徴とは

 インターフェロン(IFN)療法によりSVR(持続性ウイルス学的著効)を達成したC型慢性肝炎患者において、血清アルブミン低値およびαフェトプロテイン(AFP)高値は、5年以内の肝細胞がん(HCC)発症の独立因子であることが、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院の佐藤 明氏らによる研究で明らかになった。著者らは「IFN療法後のHCC発症を早期に予防するために、これらの値について慎重な評価が必要である」としたうえで、「IFN治療後 10年以内のHCC発症は珍しいことではなく、リスク因子はいまだ不確定であるため、SVR達成後も長期的なフォローアップとHCCの検査を行うべきである」と述べている。Internal medicine誌2013年52巻24号の報告。 本研究の目的は、IFN療法によるSVR達成後に肝細胞がん(HCC)を発症したC型慢性肝炎患者の臨床的特徴を明らかにすることであった。 対象は、SVRを得た後に肝細胞がんを発症した、19施設の患者130例。その臨床的特徴をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・全130例のうち、男性は107例(82%)であった。・92例(71%)が60歳以上であった。・IFN療法後にHCCを発症するまでの年数は、76例が5年以内、38例が5~10年、16例が10~16.9年であった。・IFN療法施行前に、92例(71%)が肝硬変と低血小板数(15×104cells/μL以下)の両方、またはどちらかを認めた。・多変量解析の結果、血清アルブミン低値(3.9g/dL以下)およびAFP高値(10ng/mL以上)は、IFN療法後5年以内のHCC発症の独立因子であることが同定された。・SVRを達成した4,542例のうち、5.5年間の追跡期間中にHCCを発症したのは109例(2.4%)であり、性別でみると男性4.6%、女性0.6%であった。

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アトピー性皮膚炎重症度、黄色ブドウ球菌と多様なミクロフローラとの拮抗が関連?

 フランス・パリ第6大学のMuriel Bourrain氏らは、水治療中のアトピー性皮膚炎(AD)患者の生体内評価を行い、有益なミクロフローラと黄色ブドウ球菌コロニー形成とのバランスについて調べた。296検体を調べた結果、2つの異なる細菌群生と、多様なミクロフローラの存在を特定し、両者間でバランスを保とうとすることが、AD重症度と関連するキー要素であるように思われたことを報告した。European Journal of Dermatology誌オンライン版2013年11月26日号の掲載報告。 重症のAD病変において、黄色ブドウ球菌と共生細菌叢(フローラ)とのバランスが果たす役割は十分に解明されていない。本検討において研究グループは、AD患者の皮膚細菌群生の構造と、18日間の水治療コースの間におけるその変化を調べること、黄色ブドウ球菌と細菌コロニー形成、局所皮膚疾患、AD重症度との関連を評価することを目的とした。 中等度~重症のAD患者25例において、3つの皮膚部位(乾燥、炎症、健常)を特定し、治療前、治療開始直後(1日目)、10日後、18日後にサンプリングを行った。 検体の細菌群生の構造を、分子生物学アプローチである16S rRNA遺伝子プロファイリングを用いて評価し、外来受診時に毎回、AD重症度をSCORAD(SCORing Atopic Dermatitis)で測定した。 主な結果は以下のとおり。・296検体のクラスター解析の結果、2つの異なる細菌群生プロファイルが示された。1つは、黄色ブドウ球菌に対応する2つのピークを有するもので、もう1つは、多様なミクロフローラの存在を見分ける複数のピークを示すものであった。・ベースライン時に、乾燥部位は炎症部位よりも、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成が少ないように思われた。・水治療18日後、主に炎症部位と湿潤部位で、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成数(p<0.05)とSCORAD(p<0.00001)が有意に減少し、多様なミクロフローラの出現が促進されていた。・以上の結果を踏まえて著者は、「今回の検討において、2つの細菌群生プロファイルと多様なミクロフローラを特定した。両者間でバランスを保とうとすることが、AD病変の重症度と関連するキー要素であるように思われた」と結論している。

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4価ワクチンでインフルエンザの予防率をどれくらい向上できるか/NEJM

 B型の2株(ビクトリア系、山形系)を含めた不活化インフルエンザ4価ワクチン(quadrivalent influenza vaccine:QIV)の有効性に関する、3~8歳児5,000例超を対象とした第3相無作為化対照試験の結果が発表された。ワクチン有効率は全体で59.3%、中等症~重症例では74.2%であったことなどが示された。試験を実施・報告したレバノン・アメリカン大学ベイルート病院のVarsha K. Jain氏らは、「QIVはインフルエンザA型とB型を予防する際に有効であることが示された」と結論している。インフルエンザワクチンはWHOではA型2株とB型1株の3価製剤を推奨し、日本でも採用されている。しかし、B型について2株が混合流行する傾向が続いており、4価製剤が開発された。米国では今シーズンから4価が導入されているという(http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2257-related-articles/related-articles-405/4099-dj4053.html)。NEJM誌オンライン版2013年12月11日号掲載の報告より。3~8歳児5,168例を対象に無作為化試験 小児(3~8歳)のインフルエンザA型またはB型の予防に関するQIVの有効性を検討した無作為化試験は、多国間の15施設(バングラディシュ、ドミニカ共和国、ホンジュラス、レバノン、パナマ、フィリピン、タイ、トルコ)で行われた。各国で登録された被験児は、QIVを接種する群とコントロールとしてA型肝炎ワクチンを接種する群(以下、対照群)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、リアルタイムPCR(rt-PCR)法で確認されたインフルエンザA型またはB型で、副次エンドポイントは、rt-PCR確認の中等症~重症のインフルエンザと、rt-PCR陽性のインフルエンザウイルス培養株であった。 ワクチンの有効性と日常生活または医療サービス利用への影響に関する評価を、全ワクチン接種コホート群(計5,168例、各群2,584例)、パー・プロトコルコホート群(QIV群2,379例、対照群2,398例)について行った(平均年齢5.4歳、男女ほぼ同数)。全接種コホートでのQIV有効率59.3%、中等症~重症例では74.2% 被験児登録は2010年12月に開始され、インフルエンザ様疾患(37.8℃以上の発熱、咳・咽頭痛・鼻水・鼻閉のうち1つ以上の症状と定義)の発症に関するサーベイランスが6ヵ月以上、2011年10月まで行われた。疾患発症児は発症から14日間日記による記録が行われた。 結果、全ワクチン接種コホートにおけるインフルエンザ様疾患発生は、QIV群563例(422児)、対照群657例(507児)であった。rt-PCR確認インフルエンザの発生は、QIV群62例(2.40%)、対照群148例(5.73%)で、QIV有効率は59.3%(95%信頼区間[CI]:45.2~69.7)であることが示された。培養確認インフルエンザに対する効果は59.1%(97.5%CI:41.2~71.5)であった。 同コホートで中等症~重症であったrt-PCR確認インフルエンザ例についてみると、罹患率はQIV群16例(0.62%)、対照群61例(2.36%)で、QIV有効率は74.2%(97.5%CI:51.5~86.2)であった。 パー・プロトコル群では、QIV有効率は55.4%(95%CI:39.1~67.3)、培養確認インフルエンザに対する効果は55.9%(97.5%CI:35.4~69.9)であった。また、同コホートでの中等症~重症例の有効率は、73.1%(97.5%CI:47.1~86.3)だった。 QIVは対照と比較して、39℃超の発熱および下気道疾患のリスク抑制と関連していた。パー・プロトコル群における相対リスクはそれぞれ、0.29(95%CI:0.16~0.56)、0.20(同:0.04~0.92)だった。 QIVは、4株すべてについて免疫獲得を達成した(接種後6ヵ月時80~90%超)。 重篤な有害イベントの発生は、QIV群36例(1.4%)、対照群24例(0.9%)だった。

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感染性胃腸炎患者の嘔吐物や便の処理のための新キット登場

 キョーリン メディカルサプライ㈱(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 金井 覚)は、杏林製薬㈱(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 宮下三朝)と共同で、嘔吐物などの汚物処理に使用する新製品として、昨年7月に発売した環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」を応用した「ルビスタ嘔吐物処理キット」を2013年12月初旬に発売する。  感染性胃腸炎に罹患した患者の嘔吐物や便には、ノロウイルスやロタウイルスなどの原因ウイルスが非常に多く含まれており、それらが生活環境に撒き散らされた場合において、適切な処理(除去・除菌等)を迅速に行わなければ二次感染を引き起こし、感染が拡大する危険性がある。そのため、簡便かつ確実な嘔吐物・汚物の処理ができる汚物処理用のキット製品が望まれていた。  本製品は、環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」(海外販売名:デュポン社「DuPontTM RelyOn® Virkon®」)を感染性微生物の除菌・洗浄用に使用しており、 ・嘔吐物処理に必要な器材がすべてキットに梱包されている ・吸水ポリマーシートで嘔吐物を覆うことにより、汚染拡大を防止できる などの特徴を有している。詳しくはこちら

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