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ニューキノロンの使用は、動脈瘤や動脈解離のリスクを高める(解説:佐田政隆氏)-839

 スウェーデンでは、nationwideの国民の医療に関するビッグデータが登録されており、薬の副作用など各種のコホート研究を行うことができる。本研究では、2006年7月から2013年12月に、ニューキノロンを服用した36万88人と、傾向スコアでマッチングしたアモキシシリンを服用した36万88人で、服用60日以内の大動脈瘤、大動脈解離の発症を比較検討した。結果として、ニューキノロン群がアモキシシリン群に比較して、大動脈瘤、大動脈解離の発症が、ハザード比1.66と多かったという。 ニューキノロンは以前からアキレス腱などの腱障害を増加させると報告されている。その機序としては、抗菌以外の薬理作用として、マトリックスメタロプロテアーゼを活性化してコラーゲンなどの細胞外基質の変性を促進するとか、コラーゲンの産生を抑制するとか、酸化ストレスを亢進させるためといわれている。今回、動脈瘤や大動脈解離の発生頻度を増やしたのも同様の機序が働いたものと思われる。 そうすると、動脈硬化プラークの被膜の菲薄化も促進して、急性冠症候群の発症を増加させるかもしれない。このnationwideのregistryの次の解析に興味が持たれる。ニューキノロンは、ほかにも、心電図のQT時間を延長させ、致死性不整脈を誘発することがよく知られている。ウイルス性の感冒などに、ニューキノロンが安易に処方されることをよく見かけるが、不要な抗生物質の処方は慎むべきであろう。

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迷ったら接種したい肺炎球菌ワクチン

 2018年4月3日、MSD株式会社は、肺炎予防に関するメディアセミナーを都内で開催した。セミナーでは、高齢者の肺炎の概要、ワクチン接種の動向などが語られた。肺炎死亡者の97.3%が65歳以上 セミナーでは、内藤 俊夫氏(順天堂大学医学部 総合診療科 教授)を講師に迎え、「超高齢社会における[まさか]に備えた肺炎予防~インフルエンザパンデミック、東日本大震災との関連から考察する~」をテーマに解説が行われた。 わが国の死因は、悪性新生物、心疾患に次いで、2010年頃より肺炎が第3位となり推移している。とくに肺炎による死亡者の97.3%が65歳以上ということから、今後もこの傾向は変わっていかないと予想されている(厚生労働省 人口動態統計[確定数]2016年より)。 肺炎は、主に細菌ウイルスが肺に侵入し起こる肺の炎症だが、高齢者や糖尿病などのリスクのある患者では、免疫力が弱いことから、重症化すれば死に至る疾患である。 肺炎を起こす主要な細菌は肺炎球菌で、「ウイルス細菌感染かの鑑別は、臨床医の腕の見せどころであり、丁寧に診療してほしい」と内藤氏は語る。また、肺炎予防では、一般的に「マスク着用、手洗い、うがい」が行われているが、「歯磨きや誤嚥の防止など、口腔ケアも高齢者には大事だ」と指摘。さらに、規則正しい生活や禁煙、基礎疾患の治療のほか、「肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンのダブル接種が、肺炎予防には重要」と提案する。その理由として、インフルエンザに罹患し抵抗力が落ちた肺に、肺炎球菌が侵入することで肺炎を起こしやすくなり、予後を悪化させる、と説明する。接種率は20%から65%へ上昇 65歳以上の高齢者での肺炎球菌ワクチン接種率は、以前は20%程度だった(米国では63.6%[2015年NHIS調査])。理由としては、ワクチンへの無関心や接種へのアクセスの悪さが指摘されていた。そこで、2014年10月から国の施策により、65歳以上の高齢者への肺炎球菌ワクチンの定期予防接種が始まった。「これら公費の助成とワクチン接種率には密接な関係があり、ワクチン接種の普及に公費助成は重要な役割を果たした」と、同氏は語る。公費助成導入後の23価肺炎球菌ワクチンの推定全国接種率は、2018年3月末時点で約65%に上昇し、接種率の向上は実現した1,2)(総務省統計局政府統計[2012年10月1日現在]およびMSD社社内データより推定)。 そして、本年度が、定期接種の経過措置(65歳、70歳、75歳…と5歳刻みの年齢が接種対象者)の最終年度となり、2019年4月からは、65歳のみが定期接種の対象となる予定である。現行の制度は対象者にわかりにくく、接種を受けていない高齢者も多い。また、最初の時期に接種を受けた人は、あと1年で5年が経とうとしている。23価肺炎球菌ワクチンの免疫原性の効果は5年経つと弱まるとされ、来年以降、再接種を受ける必要性も専門家の間で示唆されているという。外来での働きかけが再接種成功の秘訣 「肺炎球菌ワクチンは、65歳を過ぎたら(糖尿病などのリスクの高い患者も含め)接種歴の有無にかかわらず、なるべく受けることをお勧めする」と同氏は語る。そのため医療者側でも接種の有無を外来で必ず聞いたり、電子カルテに記録の項目を設置したりすることが重要だという。また、「(患者へは)1年を通じていつでも接種できることを伝え、(1)定期接種の案内が来た時、(2)初診時、(3)健康診断時、(4)退院時、(5)インフルエンザワクチン接種時など、5つのタイミングで医師などに相談するように指導することが必要」と提案する。 最後に同氏は、「肺炎球菌ワクチンは特別なものではなく、普段からの接種が大事。医療者には対象者を、早く接種するように促し、接種する気になるようにして指導してもらいたい」と要望を語り、レクチャーを終えた。■参考文献1)Naito T, et al. J Infect Chemother. 2014;20:450-453.2)Naito T, et al. J Infect Chemother. 2018 Feb 1. [Epub ahead of print]■参考厚生労働省 肺炎球菌感染症(高齢者):定期接種のお知らせ肺炎予防.JP

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全身性エリテマトーデス〔SLE:Systemic Lupus Erythematosus〕

1 疾患概要■ 概念・定義全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、自己免疫異常を基盤として発症し、多彩な自己抗体の産生により多臓器に障害を来す全身性炎症性疾患で、再燃と寛解を繰り返しながら病像が完成される。全身に多彩な病変を呈しうるが、個々人によって障害臓器やその程度が異なるため、それぞれに応じた管理と治療が必要となる。■ 疫学本疾患は指定難病に指定されており、令和元年(2019年)度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は6万1,835件であり、計算上の有病率は10万人中50人である。男女比は1対9で女性に多く、発症年齢は10~30代で大半を占める。■ 病因発症要因として、遺伝的背景要因に加えて、感染症や紫外線などの環境要因が引き金となり、発症することが考えられているが、不明点が多い。その病態は、抗dsDNA抗体を主体とする多彩な自己抗体の出現に加え、多岐にわたる免疫異常によって形成される。自然免疫と獲得免疫それぞれの段階で異常が指摘されており、樹状細胞・マクロファージを含めた貪食能を持つ抗原提示細胞、各種T細胞、B細胞、サイトカインなどの異常が病態に関与している。体内の細胞は常に破壊と産生を繰り返しているが、前述の引き金などを契機に体内の核酸物質が蓄積することで、異常な免疫反応が惹起され、自己抗体が産生され免疫複合体が形成される。そして、それらが各臓器に蓄積し、さらなる炎症・自己免疫を引き起こし、病態が形成されていく。■ 症状障害臓器に応じた症状が、同時もしくは経過中に異なる時期に出現しうる。初発症状として最も頻度が高いものは、発熱、関節症状、皮膚粘膜症状である。全身倦怠感やリンパ節腫脹を伴う。関節痛(関節炎)は通常骨破壊を伴わない。皮膚粘膜症状として、日光過敏症や露光部に一致した頬部紅斑のほかに、手指や四肢体幹部に多彩な皮疹を呈し、脱毛、口腔内潰瘍などを呈する。その他、レイノー現象、腎炎に関連した浮腫、肺病変や血管病変と関連した労作時呼吸困難、肺胞出血に伴う血痰、漿膜炎と関連した胸痛・腹痛、神経精神症状など、さまざまな症状を呈しうる。■ 分類SLEは障害臓器と重症度により治療内容が異なる。とくに重要臓器として、腎臓、中枢神経、肺を侵すものが挙げられ、生命および機能予後が著しく障害される可能性が高い障害である。ループス腎炎は組織学的に分類されており、International Society of Nephrology/Renal Pathology Society(ISN/RPS)分類が用いられている。神経精神ループス(Neuropsychiatric SLE:NPSLE)では大きく中枢神経病変と末梢神経病変に分類され、それぞれの中でさらに詳細な臨床分類がなされる。■ 予後生命予後は、1950年代は5年生存率がおよそ50%であったが、2007年のわが国の報告では10年生存率がおよそ90%、20年生存率はおよそ75%である1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査所見として、抗核抗体、抗(ds)DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、β2GPⅠ依存性抗カルジオリピン抗体など)が陽性となる。また、血清補体低値、免疫複合体高値、白血球減少(リンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血、直接クームス陽性を呈する。ループス腎炎合併の場合はeGFR低下、蛋白尿、赤血球尿、白血球尿、細胞性円柱が出現しうる。SLEの診断では1997年の米国リウマチ学会分類基準2)および2012年のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準3)を参考に、他疾患との鑑別を行い、総合的に判断する(表1、2)。2019年に欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で作成した新しい分類基準4)が提唱された。今後はわが国においても本基準の検証を元に診療に用いられることが考えられる。画像を拡大する表2 Systemic Lupus International Collaborating Clinics 2012分類基準画像を拡大するループス腎炎が疑われる場合は、積極的に腎生検を行い、ISN/RPS分類による病型分類を行う。50~60%のNPSLEはSLE診断時か1年以内に発症する。感染症、代謝性疾患、薬剤性を除外する必要がある。髄液細胞数、蛋白の増加、糖の低下、髄液IL-6濃度高値であることがある。MRI、脳血流シンチ、脳波で鑑別を進める。貧血の進行を伴う呼吸困難、両側肺びまん性浸潤影あるいは斑状陰影を認めた場合は肺胞出血を考慮する。全身症状、リンパ節腫脹、関節炎を呈する鑑別疾患は、パルボウイルス、EBV、HIVを含むウイルス感染症、結核、悪性リンパ腫、血管炎症候群、他の膠原病および類縁疾患が挙がるが、感染症を契機に発症や再燃をすることや、他の膠原病を合併することもしばしばある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SLEの基本的な治療薬はステロイド、免疫抑制薬、抗マラリア薬であるが、近年は生物学的製剤が承認され、複数の分子標的治療が世界的に試みられている。ステロイドおよび免疫抑制薬の選択と使用量については、障害臓器の種類と重症度(疾患活動性)、病型分類、合併症の有無によって異なる。治療の際には、(1)SLEのどの障害臓器を標的として治療をするのか、(2)何を治療指標として経過をみるのか、(3)出現しうる合併症は何かを明確にしながら進めていくことが重要である。SLEの治療選択については、『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』の記載にある通り、重要臓器障害があり、生命や機能的予後を脅かす場合は、ステロイド大量投与に加えて免疫抑制薬の併用が基本となる5)(図)。ステロイドは強力かつ有効な免疫抑制薬でありSLE治療の中心となっているが、免疫抑制薬と併用することで予後が改善される。ステロイドの使用量は治療標的臓器と重症度による。ステロイドパルス療法とは、メチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール)250~1,000mg/日を3日間点滴投与、大量ステロイドとはプレドニゾロン換算で30~100mg/日を点滴もしくは経口投与、中等量とは同じく7.5~30mg/日、少量とは7.5mg/日以下が目安となるが、体重により異なる6)(表3)。ステロイドの副作用はさまざまなものがあり、投与量と投与期間に依存して必発である。したがって、副作用予防と管理を適切に行う必要がある。また、大量のステロイドを長期に投与することは副作用の観点から行わず、再燃に注意しながら漸減する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する寛解導入療法として用いられる免疫抑制薬は、シクロホスファミド(同:エンドキサン)とミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)が主体となる(ループス腎炎の治療については別項参照)。治療抵抗性の場合、免疫抑制薬を変更するなど治療標的を変更しながら進めていく。病態や障害臓器の程度により、カルシニューリン阻害薬のシクロスポリン(同:サンディミュン、ネオーラル)、タクロリムス(同:プログラフ)やアザチオプリン(同:イムラン、アザニン)も用いられる。症例に応じてそれぞれの有効性と副作用の特徴を考慮しながら選択する(表4)。画像を拡大するリツキシマブは、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)および欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)/欧州腎臓学会-欧州透析移植学会(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association:ERA-EDTA)の推奨7,8)においては、既存の治療に抵抗性の場合に選択肢となりうるが、重症感染症や進行性多巣性白質脳症の注意は必要と考えられる。わが国ではネフローゼ症候群に対しては保険承認されているが、SLEそのものに対する保険適用はない。可溶型Bリンパ球刺激因子(B Lymphocyte Stimulator:BLyS)を中和する完全ヒト型モノクローナル抗体であるベリムマブ(同:ベンリスタ)は、既存治療で効果不十分のSLEに対する治療薬として、2017年にわが国で保険承認され、治療選択肢の1つとなっている9)。本稿執筆時点では、筋骨格系や皮膚病変にとくに有効であり、ステロイド減量効果、再燃抑制、障害蓄積の抑制に有効と考えられている。ループス腎炎に対しては一定の有効性を示す報告10)が出てきており、適切な症例選択が望まれる。NPSLEでの有効性はわかっていない。ヒドロキシクロロキン(同:プラケニル)は海外では古くから使用されていたが、わが国では2015年7月に適用承認された。全身症状、皮疹、関節炎などにとくに有効であり、SLEの予後改善、腎炎の再燃予防を示唆する報告がある。短期的には薬疹、長期的には網膜症などの副作用に注意を要し、治療開始前と開始後の定期的な眼科受診が必要である。アニフロルマブ(同:サフネロー)はSLE病態に関与しているI型インターフェロンα受容体のサブユニット1に対する抗体製剤であり、2021年9月にわが国でSLEの適応が承認された。臨床症状の改善、ステロイド減量効果が示された。一方で、アニフロルマブはウイルス感染制御に関与するインターフェロンシグナル伝達を阻害するため、感染症の発現リスクが増加する可能性が考えられている。執筆時点では全例市販後調査が行われており、日本リウマチ学会より適正使用の手引きが公開されている。実臨床での有効性と安全性が今後検証される。SLEの病態は複雑であり、臨床所見も多岐にわたるため、複数の診療科との連携を図りながら各々の臓器障害に対する治療および合併症に対して、妊娠や出産、授乳に対する配慮を含めて、個々に応じた管理が必要である。4 今後の展望本稿執筆時点では、世界でおよそ30種類もの新規治療薬の第II/III相臨床試験が進行中である。とくにB細胞、T細胞、共刺激経路、サイトカイン、細胞内シグナル伝達経路を標的とした分子標的治療薬が評価中である。また、異なる作用機序の薬剤を組み合わせる試みもなされている。SLEは集団としてヘテロであることから、適切な評価のためのアウトカムの設定方法や薬剤ごとのバイオマーカーの探索が同時に行われている。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、皮膚科、腎臓内科、その他、障害臓器や治療合併症に応じて多くの診療科との連携が必要となる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 全身性エリテマトーデス(公費対象)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病患者とその家族の会)1)Funauchi M, et al. Rheumatol Int. 2007;27:243-249.2)Hochberg MC, et al. Arthritis Rheum. 1997;40:1725.3)Petri M, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:2677-2686.4)Aringer M, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1151-1159.5)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班),日本リウマチ学会(編):全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019.南山堂,2019.6)Buttgereit F, et al. Ann Rheum Dis. 2002;61:718-722.7)Hahn BH, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64:797-808.8)Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1771-1782.9)Furie R, et al. Arthritis Rheum. 2011;63:3918-3930.10)Furie R, et al. N Engl J Med. 2020;383:1117-1128.公開履歴初回2018年04月10日更新2022年02月25日

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ラッサ熱に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。いやー、しかしまったりとし過ぎましたね…。もう前回から4ヵ月も経っちゃってるし。隔週連載とか言ってたのに年3回ペースですね。でも、ほら、なんつーか、スランプなんですよ。もう納得できる原稿が書けないっつーか。イチローだってさすがに打率が1割切ったら引退するでしょ? もうオレもケアネット引退しようかなって思ってたんですよ。引退する前に解雇されそうなんですけどね。そもそも連載は新興再興感染症の連載なんですけどね、皆さん、ぶっちゃけ新興再興感染症に興味ありますか? ないでしょ。どうせビットコインとか加計学園とかのほうが興味あるでしょ。そんなこんなでスランプにあえいでいたらさ…嫁が励ましてくれるんですよ。いいから書けって。面白くなくてもいいから書けって。いい嫁でしょ? とにかく書きなさいって言うんですよ。んで金を稼げって。住宅ローン組んだばっかりだろうがって、言うわけですよ。途中から「あ、これ励ましじゃないな」って気付いたんですけどね。まぁとにかく原稿を書いてローンを返済しろ、と。世知辛いですな。私が「スランプで原稿書けないんで、その代わり当直バイトするんで勘弁してください」って言ったら、「じゃあ当直中に原稿書け」って。天才かよって思いましたね。その手があったか!って、一挙両得じゃんって。そういうわけで、今まさに言われるまま、当直中に原稿を書いている私であります。エボラ出血熱とシンクロする流行地域そんなことで、今日は「ラッサ熱」の話でいいですか。前回、次はバベシアって言ったんですが、どうせ誰もバベシアとか興味ないし。だって今、ラッサ熱がナイジェリアでアウトブレイクしてるんですよ。2013~14年のエボラのような危機が訪れるのか、今まさにその瀬戸際にいるのですッ! そんな感じでムリヤリ自分のテンションを高めながらラッサ熱を紹介していきますッ!と思ったら、看護師さんに呼ばれたんでちょっといってきます。そのまま待っててください。…すいません、おまたせしました。すっかりテンション下がっちゃいましたね。まぁいいか。ラッサ熱について紹介していきますね。ラッサ熱って病気を聞かれたことはありますでしょうか。ラッサ熱はアレナウイルス科ラッサウイルスによる感染症で、エボラ出血熱などと同じ、いわゆるウイルス性出血熱の1つです。日本では一類感染症に指定されています。つまり、ラッサ熱が疑われる患者がいた場合、ただちに保健所に連絡して、日本に約50施設ある特定または第一種感染症指定医療機関に搬送する必要があります。皆さま自身の身を守るためには、不要な曝露は避け、保健所の指示を仰いでください。自然宿主はマストミス(Mastomys natalensis)という野ネズミです。マストミスのフリー素材がありませんでしたので、代わりに図1に「かわいいフリー素材集 いらすとや」の野ネズミのイラストを貼っておきますね(いらねーっつーの)。「マストミス」でググってみると写真がいっぱい出てきますので、参考にしてください。図1 野ネズミ(マストミスもだいたいこんな感じ)画像を拡大するヒトはこのラッサウイルスに感染したマストミスに咬まれたり、尿や便などに接触したり、エアロゾル化した排泄物を吸引したり、あるいは食べたりすることによってラッサ熱に感染します。ラッサ熱の発生地域は、このマストミス分布と一致しているといわれています。また、ラッサ熱はウイルス性出血熱ですので、エボラ出血熱と同様にヒト-ヒト感染が起こりえます。ラッサ熱患者の血液、吐しゃ物、便などに曝露することによって感染することがあります。したがって、われわれ医療従事者は、とくにハイリスクということになります。診療に当たっては適切な標準防護具を装着するようにしなければなりませんし、日本では特定または第一種感染症指定医療機関で診療することとなっております。図2はラッサ熱の流行地域ですが、いわゆる西アフリカと呼ばれる地域の中でも、とくに赤道に近い国々ということになります。注意すべきポイントとしては、2013~14年にエボラ出血熱が流行したギニア、リベリア、シエラレオネもこのラッサ熱の流行地域になっていることです。すなわちッ! これらの国から帰国後にウイルス性出血熱が疑われる場合には、ラッサ熱だけでなくエボラ出血熱も考慮すべしッ! ということです。実際にはマラリアが多い地域ですので、まずはマラリアの除外が重要です。図2 ラッサ熱の流行地域画像を拡大する青色:ラッサ熱の症例やアウトブレイクが報告されている地域緑色:ラッサ熱の症例報告や抗体陽性者が見つかっている地域灰色:ラッサ熱の流行状況が不明な地域(文献2より引用)8割の患者は自然軽快するけれど…さて、臨床症状についてですが、ラッサ熱というと超ヤバい感染症のように思われますが、まぁ実際超ヤバい感染症なんですけど、エボラ出血熱と比較するともう少しマイルドな感染症だと考えられています。潜伏期は1~3週くらいで発症しますが、およそ8割の感染者は微熱、頭痛、倦怠感くらいで自然に軽快すると考えられています。そして、残りの2割は下痢・嘔吐・腹痛などの消化器症状、咽頭痛や咳嗽などの呼吸器症状、鼻出血や吐血・下血などの出血症状を呈します。重症例では多臓器不全で死に至ります。ラッサ熱患者全体の死亡率は1%程度ですが、入院するような重症例では死亡率は15~30%にもなります。エボラ出血熱は発症者がほぼ全員重症化し、30~40%が死亡していますので対照的ですね。血液検査上は他のウイルス性出血熱と同様に、白血球減少、血小板減少、肝酵素上昇、凝固系異常、腎機能障害などがみられます。お~っと、危ない! もうそろそろドクターストップがかかりそうなんで、次回でいいですか。原稿は3,000字を超えるな、超える場合はコピペを多用しろって主治医に言われてますから。まぁ、主治医って私自身なんですけどね。まだスランプ中ですから、ゆっくりいきましょうよ。おかげさまでリハビリができましたので、次はさすがに4ヵ月は空けないと思います。次回は、日本国内での診断、治療として唯一報告されたウイルス性出血熱であるラッサ熱の輸入例について、また、ナイジェリアでの流行状況についてもご紹介したいと思います!1)Fisher-Hoch SP, et al. BMJ. 1995;311:857-859.2)Centers for Disease Control and Prevention . Lassa Fever Outbreak Distribution Map.

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TNF受容体関連周期性症候群〔TRAPS:Tumor necrosis factor receptor-associated periodic syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義TNF受容体関連周期性症候群(Tumor necrosis factor receptor-associated periodic syndrome:TRAPS)は、常染色体優性形式をとる家族性の周期性発熱・炎症疾患である。本疾患は1982年にWilliamsonらが再発性の発熱、皮疹、筋痛、腹痛を呈するアイルランド/スコットランドの1家系を見いだし、“familial Hibernian fever”として報告したことに始まる。1999年にMcDermottらが1型TNF受容体の遺伝子変異が本疾患の原因であることを報告し“TRAPS”と命名した1)。その論文において、自己炎症という新しい疾患概念が提唱された。TRAPSは自己炎症疾患(autoinflammatory disease)の代表的疾患であり、自己抗体や自己反応性T細胞によって生じる自己免疫疾患(autoimmune disease)とは異なり、自然免疫系の異常によって発症すると考えられている。本症は2015年1月1日より医療費助成対象疾患(指定難病、小児慢性特定疾病)となった。■ 疫学欧米人、アジア人、アフリカ系アメリカ人などさまざまな人種において、まれな疾患として報告されている。「TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)の病態の解明と診断基準作成に関する研究」研究班(研究代表者:堀内孝彦[九州大学] 平成22-24年度 厚生労働省)が行った全国調査では、わが国には少なくとも33家系51例の患者がいることが明らかになった2)。■ 病因1型TNF受容体遺伝子(TNFRSF1A)の変異で生じる。1型TNF受容体は455個のアミノ酸より構成され、細胞外ドメインの4つのCRD(cysteine-rich domain)と細胞膜貫通部、細胞内ドメインと細胞内のDD(death domain)という特徴的な構造を持っている。TRAPSで報告されている変異のほとんどはCRD1とCRD2をコードしているエクソン2-4の単一塩基ミスセンス変異である。なかでもタンパクの高次構造に重要な働きをしているジスルフィド(S-S)結合を形成するシステイン残基の変異が多い。これらの変異がTRAPSの病態形成にいかに関与するかは、いくつかの仮説が提唱されてきた。現時点では次のように考えられている。高次構造の異常によるmisfolding(タンパク質の折り畳みの不良)のため、変異1型TNF受容体は細胞表面へ輸送されずに小胞体内に停滞する。小胞体内の変異1型TNF受容体は、ミトコンドリアからのROS産生を介して細胞内のMAPキナーゼ脱リン酸化酵素を阻害することにより、定常状態でのMAPキナーゼを活性化状態にする。これだけでは炎症性サイトカイン産生の誘導は起こらないが、細菌感染などでToll様受容体からのシグナルが加わることにより、IL-1、IL-6、TNFなどの炎症性サイトカイン産生誘導が起こると考えられる。また、マクロファージなどのTNF産生細胞では、片方の対立遺伝子由来の正常なTNF受容体からのシグナルにより、炎症がパラクライン的に増幅されると考えられる3)。■ 症状TRAPSは常染色体優性の遺伝形式をとり、典型的な変異を示すものでは浸透率は85%以上と高い。発症年齢は同一家族内でも一定ではなく、乳児期から成人期に至るまで幅広い。症状の種類については2002年にHullらが提案したTRAPS診断指針を参照いただきたい(表1)4)。発作時には、38℃以上の発熱はほぼ必発であり、それに加えて腹痛、筋痛、皮疹、結膜炎、眼窩周囲浮腫、胸痛、関節痛などの随伴症状をともなう。わが国のTRAPS患者での個々の症状の頻度を表2に示す2)。表1 TRAPS診断指針1. 6ヵ月を超えて反復する炎症症状によるエピソードの存在(いくつかは同時にみられることが一般的)(1)発熱(2)腹痛(3)筋痛(移動性)(4)皮疹(筋痛を伴う紅斑様皮疹)(5)結膜炎・眼窩周囲浮腫(6)胸痛(7)関節痛、あるいは単関節滑膜炎2. エピソードの持続期間が(エピソードごとにさまざまだが)平均して5日を超える3. ステロイドに反応するがコルヒチンには反応しない4. 家族歴あり(いつも認められるとは限らない)5. どの人種、民族でも起こりうる画像を拡大する1)発熱最も特徴的でありTRAPSを疑うきっかけになる。1ヵ月~数ヵ月の間隔で不規則に繰り返す。発熱の期間は通常1~4週間であることが多く、平均21日程度である。2)腹痛日本人の頻度は欧米人に比べて少ない。腹膜炎や腸炎、腹壁の筋膜炎によって生じる。嘔気や便秘を伴うこともある。3)筋痛原因は筋炎というよりも筋膜炎と考えられている。症状は通常1ヵ所に起こり、発作期間中に寛解と増悪を繰り返す。4)皮疹(図1A)遠心性に移動性の紅斑であり筋痛の位置に一致することも多い。熱感と圧痛を有し、自然消退する。5)結膜炎・眼窩周囲浮腫(図1B)片側性または両側性の結膜炎、眼窩周囲浮腫、眼窩周囲痛が発作期間中に出現する。6)胸痛胸膜炎や胸壁の筋膜炎による症状である。7)関節痛非破壊性、非対称性で下肢の大関節に起きることが多い。画像を拡大する■ 予後TRAPSの長期予後については不明な点が多いが、経過とともに症状が増悪していく症例も、軽症化していく症例もみられる。長期的な経過では、ステロイド治療の副作用や、アミロイドーシスの合併が問題となる。欧米ではアミロイドーシスは10%の合併頻度であるが、わが国の全国調査ではアミロイドーシス合併例の報告はない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)2002年、Hullらは症状、家族歴などから構成される「TRAPS診断指針」を発表したが、これは診断基準ではなく、遺伝子検査の適応を判断するための指針であった(表1)。TRAPS診断のgold standardは遺伝子検査である。疾患関連性が明確なTNFRSF1A遺伝子異常は、CDR1、CDR2のシステインの変異、T50M変異などである。これらが認められれば診断は確定する。その一方で、病的意義の明らかではない多型も存在する。その代表は、欧米ではP46LとR92Qである。これらは欧米の健常人の数%に認められるため、病的意義について議論がある。P46LとR92QのTRAPSは浸透率が低く、軽症で予後が良い。わが国ではT61Iが最も多くのTRAPS患者から報告されているが、健常人にも約1%の対立遺伝子頻度で認めるため病的意義については議論がある6)。TNFRSF1A遺伝子異常のリストは、INFEVER websiteで参照できる。「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立」研究班(研究代表者:平家俊男[京都大学]平成24-26年度 厚生労働省)では、前述の厚生労働省堀内班の研究結果を踏まえてTRAPS診療フローチャートを作成した。この診断フローチャートは、指定難病、小児慢性特定疾病の診断基準として利用されている(図2)。6ヵ月以上の炎症兆候の反復を必須条件とし、家族歴などの補助項目を満たす場合に遺伝子検査を推奨している。最終的な診断は遺伝子検査による。遺伝子検査結果の解釈は専門家への相談が必要である。画像を拡大する2015年、ヨーロッパの小児リウマチ学会(Paediatric Rheumatology International Trials Organisation:PRINTO)は、ヨーロッパを中心とした自己炎症症候群患者のデータベース(Eurofever registry)のデータを元に、家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症、クリオピリン関連周期熱症候群、TRAPSの予備的臨床的診断基準を作成し発表した(表3)7)。作成にあたり遺伝子検査で診断が確定した患者がgold standardとされた。TRAPSのP46LとR92Qのような浸透率の低い遺伝子異常や疾患関連性が不明な遺伝子異常は除外された。陰性対照群としてPFAPA症候群を加えた5疾患の患者群の臨床所見について多変量解析が行われ、各疾患を区別する項目が抽出され、そして、各項目をスコア化して診断基準が作成された。診断基準の適用については、感染症や他のリウマチ性疾患などを除外していることが重要な前提条件である。この予備的臨床的診断基準は、遺伝子検査の適応の判断や、疾患関連性が不明な遺伝子異常を有する患者の診断において参考にできる。将来的には、検査値や遺伝子検査と組み合わせた診断基準の作成が期待される。画像を拡大する症状は典型的な有熱性エピソードに関連してなければならない(感染症などの併存疾患を除外する)。†:末梢側へ向かって移動する紅斑であり、最も典型的には筋痛の部位を覆い、通常四肢または体幹に生じる。‡:東地中海:トルコ人、アルメニア人、非アシュケナージ系ユダヤ人、アラブ人  北地中海:イタリア人、スペイン人、ギリシャ人略称FMF:家族性地中海熱 MKD:メバロン酸キナーゼ欠損症 CAPS:クリオピリン関連周期熱症候群 TRAPS:TNF受容体関連周期性症候群■ 検査本症に疾患特異的なバイオマーカーはない。発作時に血沈、CRP、フィブリノゲン、フェリチン、血清アミロイドA蛋白などの急性期反応物質の増加が認められる。好中球の増加、慢性炎症に伴う小球性低色素性貧血、血小板の増加なども認められる。これらの検査値は発作間欠期にも正常ではないことがある。筋症状があっても、CK、アルドラーゼの上昇は認められない。最も重篤な合併症であるアミロイドーシスでは腎病変の頻度が高く、蛋白尿が認められるため、早期発見のために定期的な尿検査が推奨される。血清中の可溶型1型TNF受容体濃度の低値が特徴的とされていたが、TRAPSに特異的な所見とはいえず診断的意義は乏しいと考えられる。■ 鑑別診断ほかの周期性発熱を呈する疾患が挙げられる。ただし、筋痛や腹痛などが前景に立ち高熱が認められない症例、炎症性エピソードが周期的(反復性)ではなく慢性的に持続する患者などでもTRAPSの可能性はある。具体的には、家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症、クリオピリン関連周期熱症候群などの自己炎症疾患や全身型若年性特発性関節炎、成人スティル病、ベーチェット病などが鑑別に挙がる。TRAPS様症状の家族歴は、遺伝子異常の存在を予測する最も重要な因子である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)前述したわが国のTRAPS診断フローチャートに、治療(TRAPS診療の推奨)についての記述がある(表4)。また、2015年にPRINTOからTRAPSを含む自己炎症疾患の診療に関するエビデンスに基づいたレコメンデーションが発表された(表5)。発作時の短期的なNSAIDsもしくはステロイド投与が基本治療である。発作が軽症で頻度も年1、2回などと少ない場合、NSAIDsによる症状緩和のみでも対応可能である。わが国の診断フローチャートにある、経口プレドニゾロン(PSL)1mg/kg/日で開始し7~10日で減量・中止する方法(表4)は、HullらがTRAPS診断指針を発表した論文で推奨した方法である。留意事項に記載されているとおり、必要なステロイドの投与量や期間は、症例毎に、また同一症例でも発作ごとに異なり、状況に応じて判断していく必要がある。ステロイドは、当初効果があった症例でも次第に効果が減弱し、増量や継続投与を強いられる場合がある。重度の発作が頻発する場合、追加治療としてTNF阻害薬のエタネルセプト(商品名:エンブレル)とIL-1阻害薬カナキヌマブ(同:イラリス)が推奨されている。エタネルセプトは受容体製剤であるが、同じTNF阻害薬でも抗体製剤であるインフリキシマブ(同:レミケード)とアダリムマブ(同:ヒュミラ)はTRAPSで著しい増悪を起こした報告があり使用が推奨されない。また、エタネルセプトもステロイドと同様に効果が減弱するとの報告がある。PRINTOのレコメンデーションは、IL-1阻害薬の推奨度をより高く設定し、欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)は、TRAPSに対するIL-1阻害薬のカナキヌマブの使用を認可している。わが国でも2016年12月にカナキヌマブがTRAPSに対して適応が追加された。画像を拡大する表5 TRAPS診療の推奨画像を拡大するL:エビデンスレベル1B(randomised controlled study)、2A(controlled study without randomisation)、2B(quasi-experimental study)、3(descriptive study)、4(expert opinion)S:推奨の強さA(based on level 1 evidence)、B(based on level 2 or extrapolated from level 1)、C(based on level 3 or extrapolated from level 1 or 2)、D(based on level 4 or extrapolated from level 3 or 4 evidence)略称TRAPS:TNF受容体関連周期性症候群 MKD:メバロン酸キナーゼ欠損症 CAPS:クリオピリン関連周期熱症候群4 今後の展望TRAPSは国内の推定患者数が数十例の極めてまれな疾患だが、不明熱の診療などで鑑別疾患に挙がることは少なくない。TRAPS様症状の家族歴があるときには遺伝子検査が診断に最も有用であるが、保険適用はなく施行できる施設も限られており、容易にできる検査とは言い難い。日本免疫不全・自己炎症学会では、TRAPSを含めた関連疾患の遺伝子検査の保険適用を将来的に目指した検討を進めている。5 主たる診療科小児科、膠原病内科、血液内科、感染症内科、総合診療科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療研究情報INFEVER website(医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人日本免疫不全・自己炎症学会(医療従事者向けのまとまった情報)1)McDermott MF, et al. Cell. 1999;97:133-144.2)Ueda N, et al. Arthritis Rheumatol. 2016;68:2760-2771.3)Simon A, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107:9801-9806.4)Hull KM, et al. Medicine (Baltimore). 2002;81:349-368.5)Lachmann HJ, et al. Ann Rheum Dis. 2014;73:2160-2167.6)Horiuchi T. Intern Med. 2015;54:1957-1958.7)Federici S et al. Ann Rheum Dis. 2015;74:799-805.公開履歴初回2018年03月27日

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新規抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」発売

 塩野義製薬株式会社は3月14日、抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ錠10mg・20mg」(一般名:バロキサビル マルボキシル)を新たに発売した。同日付で薬価収載され、薬価は、10mg1錠が1,507.50円、20mg1錠が2,394.50円。 ゾフルーザは、塩野義製薬が創製したキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬で、既存の薬剤とは異なる新しい作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制する。1回の錠剤服用で完結し、利便性が高く、良好なアドヒアランスが期待できる。 成人および12歳以上の小児には、20mg錠2錠を、体重80kg以上の患者には20mg錠4錠を単回経口投与する。12歳未満の小児の場合、体重40kg以上には20mg錠2錠を、20kg以上40kg未満には20mg錠1錠を、10kg以上20kg未満には10mg錠1錠を、いずれも単回経口投与する。 ゾフルーザは、2015年10月に厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、18年2月23日に製造販売承認を取得していた。■参考塩野義製薬株式会社ニュースリリース■関連記事新規抗インフルエンザ薬ゾフルーザ、承認取得

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複雑性尿路感染症に対するメロペネム/vaborbactamの効果(解説:吉田 敦 氏)-826

 多剤耐性グラム陰性桿菌、とくにカルバペネマーゼ産生腸内細菌細菌(CPE)の増加と蔓延は、抗菌薬療法の限界を示唆する耐性菌、いわゆる「悪魔の耐性菌」として今や人類の脅威となっている。現在使用できる抗菌薬が限られている中で、セリン型のクラスAおよびクラスC βラクタマーゼを阻害するボロン酸であるvaborbactamとカルバペネム(メロペネム)を配合したメロペネム/vaborbactam(以下MEPM/VBT)が登場し、体内動態に関する第I相試験が行われていたが、今回第III相試験の結果が発表された。 本試験は国際多施設参加ランダム化比較試験であり、18歳以上の複雑性尿路感染症あるいは腎盂腎炎の症例を無作為にMEPM/VBT投与群(2g/2gを3時間かけて投与、1日3回)とピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)投与群(4g/0.5gを30分で投与、1日3回)に割り付けた。15回以上投与した後、あらかじめ定めた臨床的な改善基準を満たした場合、経口のレボフロキサシンに変更可能とし、治療期間は計10日間とした。primary end pointにはFDA基準(臨床的改善・治癒と、静注薬終了時の尿細菌数が104 CFU/mL未満)とEMA(欧州医薬品庁)基準(治療終了後に治癒確認を目的に診察した際の尿細菌数が103 CFU/mL未満)を用いた。 最終的に17ヵ国550例を対象とすることができ、272例がMEPM/VBT投与群に、273例がPIPC/TAZ投与群に割り付けられた。このうち腎盂腎炎は59%、尿中菌数が105 CFU/mL以上であったのは69%であり、原因微生物のうち65%は大腸菌、15%はK. pneumoniaeであった。なお大腸菌のうちPIPC/TAZ耐性率は5%、MEPM耐性菌はなく、K. pneumoniaeのうちPIPC/TAZ耐性率は42%、MEPM耐性率は5%であった。Primary end pointを達成した成功率は、FDA基準ではMEPM/VBT群98.4%、PIPC/TAZ群94.0%であり、MEPM/VBTはPIPC/TAZに非劣性であるばかりか、それよりも優れていた。EMA基準では、MEPM/VBT群66.7%、PIPC/TAZ群55.7%であり、これでも非劣性が判明した。有害事象はMEPM/VBT群39.0%、PIPC/TAZ群35.5%で報告されたが、抗菌薬に関連したものはそれぞれ15.1%、12.8%であり、重度のものは2.6%、4.8%であった。MEPM/VBT群で多かったのは頭痛や下痢、ALT上昇などであったが、副作用のために投与を中止したのは2.6%とPIPC/TAZ群の5.1%より少なかった。 今回の報告は、βラクタマーゼ・カルバペネム配合剤のヒト感染症例でのランダム化比較試験としては、初めてのものである。この結果を受けて、FDAは2017年8月に成人の複雑性尿路感染症を対象に本剤を認可した(Vabomere)。ただし本試験にはいくつかの限界が存在する。SIRSの基準を満足している割合が1/3以下と高くないこと、原因微生物がメロペネム耐性菌である割合が低く(PIPC/TAZ耐性率は高い)、そもそもカルバペネム耐性菌を主対象とした研究でないことである。そしてこれまでの検討で、MEPM/VBTはCPEのうちKlebsiella pneumoniae Carbapenemase(KPC)には有効であるが、クラスBのメタロβラクタマーゼ産生菌(代表的なのはNDM)にはあまり有効でないことが指摘されている1)。カルバペネム耐性腸内細菌細菌による複数の感染症に対し、本剤の有効性を調べた続発試験(TANGO II)が行われたとも聞く。KPCが多い地域と、メタロβラクタマーゼ産生菌が多い本邦やアジアでは、本剤が適応となる状況は異なると思われる。メタロβラクタマーゼ産生菌に使用できる選択肢が増えることが、さらに望まれる状況にある。

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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腫瘍溶解ウイルス+ペムブロリズマブの固形がん医師主導治験開始/国がん

 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市)は2018年3月2日、進行性または転移性固形がん患者を対象とした、腫瘍溶解ウイルス製剤テロメライシン(OBP-301)と、抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法に関する医師主導治験(第I相試験)を開始したと発表。同試験では、併用した際の安全性及び有効性などの評価を行う。 テロメライシンは、風邪ウイルスの1つであるアデノウイルスに、多くのがん細胞で活性化しているテロメラーゼ酵素を遺伝子改変により組み込み、がん細胞内のみで特異的に増殖し、がん細胞を破壊するようにデザインされた腫瘍融解アデノウイルス製剤。正常細胞ではテロメラーゼ活性がないためウイルスは増殖しないが、がん細胞内ではテロメライシンが増殖して、がん細胞を破壊することで抗腫瘍効果を発揮する。この腫瘍溶解作用が、CTL活性(細胞傷害性T細胞活性)を誘導することで、腫瘍免疫増強効果が期待される。 今回、抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用することにより、抗腫瘍効果のさらなる向上が期待されている。■参考国立がん研究センタープレスリリース

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インフルエンザ感染後1週間以内は急性心筋梗塞が増える(解説:佐田政隆氏)-816

 特異度の高い検査でインフルエンザ感染が正確に確認された1万9,729人をフォローしたところ、感染1週間以内の急性心筋梗塞により入院する数が、それ以降の1年間に比較して、約6倍に増えるというカナダからの観察研究である。 動脈硬化プラークの進展と破綻の病態に、炎症が中心的な役割を担っていることが明らかになっている。インフルエンザ感染による急性炎症が、プラーク破裂とその後の血栓性閉塞の誘因になったと思われる。その原因としてはインフルエンザ感染とその後の強い炎症反応が、交感神経を活性化させ、凝固能を亢進させたり、内皮機能を低下させたり、血小板の活性化につながったのかもしれない。また、全身状態の悪化、飲水困難により、低酸素、脱水、低血圧などが冠動脈閉塞につながったのかもしれない。また、体調不良のため、スタチンやアスピリンを休薬してしまったことが発症につながった可能性もある。 しかし、ウイルスのサブタイプ別にみると、インフルエンザA型で5.17倍、インフルエンザB型で10.11倍、RSウイルスで3.51倍のリスク増加と違いがあり、ウイルス感染がプラーク破綻と閉塞の病態に何らかの生物学的影響をもたらしたことが考えられる。このような臨床データの科学的な根拠を明らかにするために、モデル動物を用いた基礎研究が望まれる。 いずれにせよ、インフルエンザ感染で自宅待機している時は、急性心筋梗塞の発症リスクが高いので、胸部症状などあったら、我慢せずに、救急車ですぐに医療機関を受診することが重要と思われる。

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ジカウイルスワクチン、初期結果は有望/Lancet

 ジカウイルス感染の予防では、安全かつ有効で、急速な感染拡大にも対応できるワクチンが求められている。米国・ウォルター・リード陸軍研究所(WRAIR)のKayvon Modjarrad氏らは、精製ホルマリン不活化ジカウイルスワクチン(ZPIV)候補の開発を進めており、今回、第I相試験の初期結果をLancet誌2018年2月10日号で報告した。健常成人で安全性を評価 研究グループは、ヒトを対象に、アジュバント(水酸化アルミニウム)添加ZPIVに関する二重盲検プラセボ対照第I相試験を3施設で実施し、統合解析を行った。本試験は米国陸軍省、国防総省、国立アレルギー・感染症研究所の助成を受け、これらの資金提供者は試験のデザインと運営、データの収集、解析、解釈および論文の執筆に関与した。 試験は、WRAIR、セントルイス大学(SLU)、ベス・イスラエル・ディコネス医療センター(BIDMC)で行われた。対象は18~49歳の健常成人で、ZPIV(5μg)またはプラセボ(生食)を投与する群に、WRAIRでは4対1、SLUとBIDMCでは5対1の割合でランダムに割り付けられ、試験1日目および29日目に接種(筋肉注射)された。 主要評価項目はZPIVの安全性および免疫原性とし、57日までに発現した有害事象およびジカウイルス・エンベロープのマイクロ中和抗体価を評価した。良好な忍容性と免疫原性を確認 2016年11月7日~2017年1月25日の期間に、3施設で68例が登録され、67例(ZPIV群:55例、対照群:12例)が実際に投与を受けた。年齢は平均31.5歳(SD 8.9)、中央値29歳(範囲:18~49)で、35例(52%)が男性であった。 ワクチン関連の有害事象のほとんどが軽度~中等度であった。とくに注目すべき神経学的または神経炎症性の有害事象や、ワクチン関連の重篤な有害事象、試験中止を誘導する他の有害事象は認めなかった。 56例(84%)で、1つ以上の有害事象が発現した。最も頻度の高い局所有害事象は接種部位の疼痛(40例、60%)および圧痛(32例、47%)であり、全身反応原性有害事象は疲労(29例、43%)、頭痛(26例、39%)、不快感(15例、22%)であった。 57日までに、ZPIV群の52例中48例(92%)で抗体価が陽転した(マイクロ中和抗体価≧1:10)。陽転の閾値をマイクロ中和抗体価≧1:100とすると、40例(77%)に陽転が認められた。幾何平均抗体価(GMT)のピーク値は43日目にみられた。 著者は、「ZPIVは、健常成人において良好な忍容性と免疫原性を示した」とまとめ、「これらの結果と既存の知見を合わせると、不活化というプラットフォームは、ワクチン開発の進展に寄与する候補であると示唆される」としている。

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新規抗インフルエンザ薬ゾフルーザ、承認取得

 塩野義製薬株式会社が創製した新規抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ錠10mg・20mg」(一般名:バロキサビル マルボキシル、開発コード:S-033188)が、2月23日付で「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」の適応で承認された。 ゾフルーザはキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬で、既存の薬剤とは異なる新しい作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制する。2015年10月に厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、2017年10月25日に製造販売承認を申請していた。薬価基準収載後早期に発売予定。 ゾフルーザによる治療は、1回の錠剤服用で完結するため、利便性が高く、良好なアドヒアランスが期待でき、インフルエンザ患者のQOL向上に貢献することが期待される。■参考塩野義製薬株式会社ニュースリリース

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リファキシミンの腸内細菌叢への調整作用で肝性脳症を抑える

 2018年1月31日、あすか製薬株式会社は、同社が販売する経口難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名:リフキシマ)の処方制限が昨年12月に解除され、長期投与が可能となったことを機に、都内において肝性脳症に関するプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、「『肝性脳症』診断・治療の最新動向 腸内細菌への働きかけによる生存率向上への兆し」をテーマに、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学 内科学第三講座 教授)を講師に迎え、レクチャーが行われた。原因不明の認知症10%に潜む肝性脳症 はじめに、認知症の概要が語られた。2025年には、認知症患者が推定730万人になると予想される。そして、認知症の原因ではアルツハイマー型が一番多く、次いで脳血管性型、レビー小体型と続き、そのほか原因不明も全体の1割(70万人以上)を占めるという。現在の『認知症疾患診療ガイドライン』では、認知症と鑑別が必要な疾患として、「ビタミン欠乏症」「甲状腺機能低下症」「神経梅毒」「肝性脳症」「特発性正常圧水頭症」の5つが規定されている。なかでも「肝性脳症」では、認知症やうつ病と同じように睡眠異常、指南力低下、異常行動、物忘れなど共通する症状がみられ、正確に診断されていない例もあると指摘した。 肝性脳症は、肝臓の線維化によりアンモニアの分解能が落ちることで、アンモニアが体内に蓄積され、さまざまな認知機能を障害する。その原因となる肝細胞障害、とくに肝硬変はC型肝炎ウイルスによるものが多く、そのウイルス保菌者数は年齢に比例して増加することから、肝性脳症が発症した場合、認知症と診断されている例もあると示唆した。服薬アドヒアランスを上げるリファキシミン 肝性脳症の症状は、人格・行動の微妙な変化から始まり、判断力の低下、睡眠の不規則、見当識障害、興奮・せん妄、昏睡状態へと進展する。典型的な患者の訴えでは、「頭がボーッとする」「足がつまずく」「手が震える」などが聞かれ、家族の訴えでは「目つきがおかしい」「おかしなことを言う」「食事を摂らない」などがある。 本症の診断では、身体所見など一般的な診断のほかに、認知症との鑑別のためナンバーコネクション、ブロックデザインテストなども行われ、「本症を疑った場合、アンモニア値の検査も重要」と吉治氏は述べる。 本症の治療では、これまで合成二糖類、カルニチン・亜鉛、BCAA製剤などの治療薬が使われてきたが、服用のしにくさや副作用などでアドヒアランスは決して良好とはいえなかった。 そこで、今回長期投与が可能になったリファキシミンは、こうした問題に対応し、他の治療薬の減量・削減の可能性、全身症状の改善、医療コストの削減などで期待されている。リファキシミンの作用機序は腸管内でのアンモニアの産生を防ぐことで、血中濃度が低下し、脳へのアンモニア移行を減少、肝性脳症を改善し、便と共に排泄される作用を持つ。リファキシミンは欧米では30年以上前より使用されてきたが、わが国では2016年に保険適用となった。 エビデンスでは、リファキシミンは使用群とプラセボ群との比較で、本症の再発を0.42ポイント有意に軽減したほか1)、5年間の長期投与でも肝硬変患者の生存率を改善したことが報告されている2)。リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能 次に、わが国で増えている肥満型の肝硬変患者に触れ、現在1,000万人と推定される非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者のうち、約200万人が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に移行すると考えられ、今後の肝硬変の患者数増加に警鐘を鳴らした。 さらに最近の話題として、腸内細菌叢について語った。この細菌叢のバランスの崩れから起こる疾患として、NAFLD、NASH、肝硬変、炎症性腸疾患などを挙げ、近年この腸内細菌叢の構成に注目が集まっているという。 肝硬変患者に、実際にリファキシミンを投与した前後で腸内細菌叢を調べた結果、細菌叢の多様性に変化はなかったものの、属レベルでは、肝硬変患者で増加するとされていた細菌が減少したと自験例を報告した3)。また、リファキシミンは、腸内細菌モジュレーターとして、肝硬変患者の予後を改善することが示唆されると期待を寄せた。 最後に吉治氏は、「今後、リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能も踏まえ、日本人の長期投与効果の研究を行い、日本発のエビデンスを出していきたい」と今後の展望を語り、セミナーを終了した。

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インフルやっと減少に…累積受診者は1,600万人超

定点当たり報告数は減少 2018年第6週(2018年2月12~18日)の定点当たり報告数は45.38(患者報告数223,928)となり、前週の定点当たり報告数54.33よりも減少した。都道府県別では高知県(67.67)、山口県(62.82)、大分県(60.28)、宮崎県(57.17)、鹿児島県(56.66)、北海道(55.39)、福岡県(53.22)、岩手県(52.09)、埼玉県(51.37)、沖縄県(50.81)、千葉県(50.30)の順となっている。8道県で前週の報告数よりも増加がみられ、39都府県で減少がみられた。全国の保健所地域で警報レベルを超えている保健所地域は521ヵ所(全47都道府県)、注意報レベルを超えている保健所地域は30ヵ所(1都1道2府17県)となった。受診者数減少も、今シーズンの累積受診者は1,632万人に 定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を第6週に受診した患者数を推計すると約239万人(95%CI:222~256万人)となり、第5週の推計値(約282万人)よりも減少した。年齢別では、0~4歳が約26万人、5~9歳が約50万人、10~14歳が約34万人、15~19歳が約16万人、20代が約14万人、30代が約19万人、40代が約26万人、50代が約19万人、60代が約17万人、70歳以上が約20万人となっている。また、2017年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約1,632万人となった。国内のインフルエンザウイルスの検出状況をみると、直近の5週間(2018年第2~第6週)ではB型が最も多く、次いでAH3型、AH1pdm09型の順であった。■参考厚生労働省2018年2月16日インフルエンザの発生状況について

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抗CCR4抗体モガムリズマブ、HTLV-1関連脊髄症に光/NEJM

 ヒト化抗CCR4モノクローナル抗体モガムリズマブは、ステロイド維持療法の効果不十分なヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連脊髄症(HAM)(正式な疾患名の表記は、HAM/TSP[HTLV-1-associated myelopathy/Tropical spastic paraparesis、HTLV-1関連脊髄症/熱帯性痙性対麻痺])患者において、末梢血中のHTLV-1感染細胞数と髄液炎症マーカーを減少させることが認められた。主な副作用は皮疹で、忍容性も良好であった。聖マリアンナ医科大学の佐藤 知雄氏らが、身体機能を著しく損なう神経炎症性疾患であるHAMに対する、モガムリズマブの安全性および有効性を検討した医師主導の第I/IIa相試験の結果を報告した。NEJM誌2018年2月8日号掲載の報告。医師主導第I/IIa相試験でモガムリズマブの安全性と有効性を評価 HTLV-1は、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)やHAMの原因となるウイルスで、HAM患者では、主にCCR4陽性のHTLV-1感染T細胞が異常細胞に変化し、脊髄内で慢性的な炎症を引き起こす。これまで、HAM患者から得た末梢血単核細胞を用いた前臨床試験で、モガムリズマブがHTLV-1感染細胞数と炎症性サイトカインの両方を減少することが示されていた。 研究グループは、2013年11月~2015年1月に、HAMに対するモガムリズマブの安全性、薬物動態および有効性を評価する目的で、第I/IIa相試験を実施した。 対象は、3ヵ月以上の経口プレドニゾロン投与が無効のHAM患者であった。第I相用量漸増試験(3+3デザイン)において、モガムリズマブの5用量(0.003mg/kg、0.01mg/kg、0.03mg/kg、0.1mg/kgまたは0.3mg/kg)を各3例に段階的に単回投与(点滴静注)し、85日間観察した。計21例が投与を受けた。第IIa相試験には、第I相試験を完遂した19例を組み込み、第I相試験と同じ用量を投与した。0.003mg/kg、0.01mg/kgまたは0.03mg/kg投与群には8週ごと、0.1mg/kgまたは0.3mg/kg投与群には12週ごとに投与し、24週間観察した。忍容性は良好、血中HTLV-1感染細胞数と髄液中炎症マーカーが減少 モガムリズマブは、最大投与量0.3mg/kgまでの忍容性が確認された。最も頻度が高かった副作用は、Grade1/2の皮疹(発現率48%)、リンパ球減少および白血球減少(いずれも33%)であった。 末梢血単核細胞中のHTLV-1感染細胞数の減少(15日目に64.9%減少、95%信頼区間[CI]:51.7~78.1)、ならびに脳脊髄液中の炎症マーカーの減少(29日目にCXCL10濃度が37.3%減少[95%CI:24.8~49.8]、ネオプテリン濃度が21.0%減少[95%CI:10.7~31.4])が認められた。その効果は用量依存的で、第IIa相試験においても反復投与により試験終了まで維持された。また、下肢の痙性は79%の患者で改善し、運動障害の改善も32%で確認されている。

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敗血症性ショックに対するグルココルチコイドの投与:長い議論の転機となるか(解説:吉田 敦 氏)-813

 敗血症性ショックにおいてグルココルチコイドの投与が有効であるかについては、長い間議論が続いてきた。グルココルチコイドの種類・量・投与法のみならず、何をもって有効とするかなど、介入と評価法についてもばらつきがあり、一方でこのような重症病態での副腎機能の評価について限界があったことも根底にある。今回大規模なランダム化比較試験が行われ、その結果が報告された。 オーストラリア、英国、ニュージーランド、サウジアラビア、デンマークのICUに敗血症性ショックで入室し、人工呼吸器管理を受けた18歳以上の患者3,800例を、無作為にヒドロコルチゾン(200mg/日)投与群とプラセボ投与群とに割り付けた。この際、SIRSの基準を2項目以上満たすこと、昇圧薬ないし変力作用のある薬剤を4時間以上投与されたことを条件とした。ヒドロコルチゾンは200mgを24時間以上かけて持続静注し、最長で7日間あるいはICU退室ないしは死亡までの投与とした。ランダム化から90日までの死亡をプライマリーアウトカム、さらに28日までの死亡、ショックの再発、ICU入室期間、入院期間、人工呼吸器管理の回数と期間、腎代替療法の回数と期間、新規の菌血症・真菌血症発症、ICUでの輸血をセカンダリーアウトカムとし、原疾患による死亡は除いた。 患者の平均年齢は約62歳、外科手術が行われた後に入室した患者は約31%、感染巣は肺(35%)、腹部(25%)、血液(7%)、皮膚軟部組織(7%)、尿路(7%)の順であり、介入前の基礎パラメーターや各検査値に2群間で差はなかった。なおショック発症からランダム化までは平均約20時間、ランダム化から薬剤投与開始までは0.8時間(中央値)であり、ヒドロコルチゾンの投与期間は5.1日(中央値)であった。 まずプライマリーアウトカムとしての90日死亡率は、ヒドロコルチゾン投与群では27.9%(1,832例中511例)、プラセボ投与群では28.8%(1,826例中526例)であり、有意差はなかった。次いでセカンダリーアウトカムでは、ショックから回復するまでの期間も、ICU退室までの期間も、さらに1回目の人工呼吸器管理の期間もヒドロコルチゾン投与群で有意に短かった(それぞれ3日と4日、p<0.001、10日と12日、p<0.001、6日と7日、p<0.001)。ただし再度人工呼吸器管理が必要な患者もおり、人工呼吸器を要しなかった期間としてみると差はなかった。輸血を要した割合も前者で少なかったが(37.0%と41.7%、p=0.004)、その他、28日死亡率やショックの再発率、退院までの日数、ICU退室後の生存期間、人工呼吸器管理の再導入率、腎代替療法の施行率・期間、菌血症・真菌血症発生率に差はなかった。 これまでの検討では、グルココルチコイドは高用量よりは低用量のほうが成績がよかったものの、二重盲検ランダム化比較試験では一致した結果が得られなかった1,2)。現行のガイドラインでも“十分な輸液と昇圧薬の投与でも血行動態の安定が得られない例”に対し、エビデンスが弱い推奨として記載されている3)。本検討は、上記のランダム化比較試験よりも症例数がかなり増えているのが特徴であり、2群で比較が可能であった項目も多い。したがって、グルココルチコイド投与の目的—改善を目指す指標—をより詳しく評価できたともいえる。一方で21例対6例と少数ではあるが、グルココルチコイド群で副作用が多く、中にはミオパチーなど重症例も存在した。グルココルチコイドとの相関の可能性を含んで、この結果は解釈したほうがよいであろう。本検討は、これまでの議論の転機となり、マネジメントや指針の再考につながるであろうか。これからの動向に注目したい。

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ARREST試験:黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用療法(解説:小金丸博氏)-811

 黄色ブドウ球菌菌血症は、市中でも院内でもみられるありふれた疾患である。他臓器への転移病巣形成や深部臓器感染の原因となり、死亡率は約20%と高率である。頻度や重症度が高い疾患であるにもかかわらず、いまだに最適な治療方法は定まっていない。 黄色ブドウ球菌感染症に対する併用薬の候補の1つにリファンピシンが挙げられる。リファンピシンは消化管からの吸収率が高く、細胞、組織、バイオフィルムによく浸透するため、βラクタム薬やグリコペプチド系薬と併用することで黄色ブドウ球菌感染症の予後を改善する可能性があると考えられてきた。主に感染性心内膜炎や人工物感染に対して世界中でリファンピシン併用が行われているが、高いエビデンスのある研究は存在しなかった。 本研究は、黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用投与の効果を検証した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対象比較試験である。標準的な抗菌薬治療開始から96時間以内の成人(18歳以上)を対象に、リファンピシン併用投与群とプラセボ併用投与群に分けて評価した。プライマリアウトカムは細菌学的治療失敗、再発、あらゆる原因による死亡までの時間とした。その結果、試験開始から12週までに、これらいずれかのアウトカムを経験した患者割合は、リファンピシン投与群17%、プラセボ投与群18%であり、両群間で有意差は認めなかった(絶対リスク差:-1.4%、95%信頼区間:-7.0~4.3、ハザード比:0.96、p=0.81)。アウトカムを個別にみてみると、リファンピシンを併用しても死亡率は減少しなかったものの、再発率は有意に減少した。細菌学的再発を1例防止するのに必要な治療数(number needed to treat:NNT)は29だった。 本試験では、黄色ブドウ球菌菌血症に対してリファンピシンを併用しても全体的なベネフィットは変わらないことが確認された。本試験は過去の試験よりサンプルサイズが大きいことが特徴の1つである。本試験の結果から、黄色ブドウ球菌菌血症と診断した全例に対してリファンピシンを併用する根拠は乏しいといえる。 黄色ブドウ球菌は、薬剤感受性パターンからMSSAとMRSAに分類される。本試験に組み込まれた患者の原因菌のうちMRSAは全体の6%しか占めておらず、MRSA菌血症に対するリファンピシンの併用効果を評価することは困難と考える。また、人工弁あるいは人工関節を有する患者は2%と少なく、本試験の結果のみでは人工物感染に対する併用効果を評価することも難しい。 MSSA感染症に対する世界標準薬は抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンである。英国、オーストラリアではFlucloxacillin、米国ではNafcillinやクロキサシリンが好んで利用され、本試験では82%でFlucloxacillinが選択されている。ところが、日本では純粋な抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンは認可されておらず、MSSA感染症に対しては第一世代セフェム系抗生物質であるセファゾリンが選択されることが多いため、本試験の結果を日常臨床にそのまま当てはめることはできない。本邦でも、世界標準薬が利用できる日がくることを希望する。

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国内のインフルエンザ増加続く。推計受診者数1,400万人に/本年第5週

定点当たり報告数は引き続き増加 2018年第5週(平成30年1月29日~2月4日)の定点当たりのインフルエンザ報告数は54.33(患者報告数268,811)となり、第4週(平成30年1月22~28日)の定点当たり報告数52.35よりも増加した。都道府県別では大分県(77.09)、福岡県(69.96)、埼玉県(68.29)、神奈川県(66.31)、高知県(66.19)、鹿児島県(64.61)、千葉県(63.98)、愛知県(62.52)、山口県(62.28)、佐賀県(59.51)、三重県(58.28)、福島県(57.43)、岩手県(56.98)、宮崎県(56.02)、新潟県(55.74)、熊本県(55.06)の順となっている。増加は31、減少は16都道府県 31道府県で第4週の報告数よりも増加がみられ、16都県で前週の報告数よりも減少がみられた。全国の保健所地域で警報レベルを超えている保健所地域は511ヵ所(全47都道府県)、注意報レベルを超えている保健所地域は40ヵ所(1都1道2府18県)となった。今シーズンの推計受診者数は約1,393万人、直近5週ではB型 定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約282万人(95%CI:262~302万人)となり、第4週の推計値(約274万人)よりも増加した。年齢別では、0~4歳が約29万人、5~9歳が約62万人、10~14 歳が約43万人、15~19歳が約19万人、20代が約16 万人、30代が約 22万人、40代が約29万人、50代が約22万人、60代が約19万人、70歳以上が約22万人となっている。また、2017年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約1,393万人となった。 基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数は2,018例であり、第4週(2,088例)から減少した。国内のウイルス検出状況をみると、直近の5週間(2018年第1~第5週)ではB型が最も多く、次いでAH3型、AH1pdm09型の順であった。 ■参考厚生労働省2018年2月9日インフルエンザの発生状況について

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B細胞性ALL、CAR-T療法で8割が全寛解/NEJM

 小児および若年成人における再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対して、抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞療法(CAR-T療法)であるtisagenlecleucelの単回投与は、長期にわたる持続的な寛解をもたらし、Grade3以上の有害事象は一過性であることが確認された。米国・ペンシルベニア大学のShannon L. Maude氏らが、11ヵ国の25施設で実施された国際共同第II相臨床試験の結果を報告した。単一施設で行われたtisagenlecleucelの第I・IIa相試験では、同患者における完全寛解率は93%と高く、毒性は重篤であったものの、ほとんどが可逆的であることが示されていた。NEJM誌2018年2月1日号掲載の報告。小児および若年成人患者75例でtisagenlecleucelの有効性を評価 試験は、小児(スクリーニング時3歳以上)および若年成人(診断時21歳未満)の再発・難治性CD19陽性B細胞性ALL患者を対象に、tisagenlecleucelを単回投与し評価した。tisagenlecleucelは、T細胞活性化シグナルを伝達するCD3ゼータ領域と共刺激シグナルを伝達する4-1BB(CD137)領域を含み、CD19に対するCARを発現するよう、レンチウイルスベクターで形質導入された自己T細胞を用いて作られた。 主要評価項目は、3ヵ月以内の全寛解率(完全寛解、または、血液学的回復が不完全な完全寛解の割合)。副次評価項目は、フローサイトメトリーで評価された検出できない微小残存病変を伴う完全寛解または血液学的回復が不完全な完全寛解、寛解持続期間、無イベント生存、全生存、安全性などとした。 2015年4月8日~2017年4月25日(データカットオフ日)に、事前に計画された解析に関して75例がtisagenlecleucelの投与を受け、有効性が評価された。全寛解率は81%、寛解は持続、Grade3以上の有害事象発現は73% 3ヵ月以内の全寛解率は81%で、治療に反応した全患者においてフローサイトメトリーで評価された微小残存病変は陰性であった。 6ヵ月時点の無イベント生存率は73%(95%CI:60~82%)、全生存率は90%(95%CI:81~95%)、12ヵ月時点はそれぞれ50%(95%CI:35~64%)、76%(95%CI:63~86%)であった。寛解持続期間は中央値に未到達であり、tisagenlecleucelは血液中に最長20ヵ月間残留していることが確認された。 tisagenlecleucelとの関連が疑われたGrade3/4の有害事象は、73%の患者に発現した。サイトカイン放出症候群の発現率は77%で、このうち48%の患者はトシリズマブで治療された。神経学的イベントは40%の患者に発現したが、支持療法で管理され、脳浮腫は報告されなかった。

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