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天然痘の治療薬登場か/NEJM

 1980年、天然痘の撲滅が宣言されたが、天然痘ウイルス(VARV)は依然として存在する。米国・SIGA Technologies社のDouglas W. Grosenbach氏らは、天然痘の治療薬として経口tecovirimatの検討を行い、2つの動物モデルにおける有効性と、ヒトでの安全性を確認したことを、NEJM誌2018年7月5日号で報告した。天然痘に対する有効な治療はないため、tecovirimatの開発が進められている。天然痘が自然に発症する状況での臨床試験は実施できないことから、有効性と安全性を評価する他の開発法が必要とされていた。非ヒト霊長類、ウサギ、ヒトで有用性を評価 研究グループは、非ヒト霊長類(サル痘)およびウサギ(ウサギ痘)モデルにおけるtecovirimatの有効性を検討し、ヒトにおける同薬の臨床試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 本研究は、専門家諮問委員会が天然痘の治療用に解釈した、米国食品医薬品局(FDA)の動物における有効性の評価規則に従い行われた。また、成人ボランティア449例において、プラセボを対照とした薬物動態と安全性の試験を実施した。天然痘に有効な抗ウイルス薬となる可能性 サル痘モデルで90%以上の生存を達成するのに要するtecovirimatの最低用量は、10mg/kg体重の14日間投与であった。ウサギ痘モデルで同程度の効果を得るのに要する用量は、40mg/kgの14日間投与であった。 体重1kg当たりの有効用量の値はウサギのほうが高かったが、曝露量は低かった。定常状態の最高濃度(Cmax)、最低濃度(Cmin)、平均濃度(Cavg)の平均値は、ウサギではそれぞれ374ng/mL、25ng/mL、138ng/mL、非ヒト霊長類では1,444ng/mL、169ng/mL、598ng/mLであった。また、24時間の濃度-時間曲線下面積(AUC0-24hr)は、ウサギが3,318ng×時間/mL、非ヒト霊長類は14,352ng×時間/mLだった。 これらの知見から、ヒトで必要な薬物曝露量を推定するには、非ヒト霊長類のほうが、より保守的なモデルであることが示唆された。 ヒトでの試験(年齢中央値:39.0歳[範囲:18~80]、男性:41%)には、600mgの1日2回、14日間投与が選択され、非ヒト霊長類を上回る曝露量がもたらされた(定常状態のCmax:2,209ng/mL、Cmin:690ng/mL、Cavg:1,270ng/mL、AUC0-24hr:30,632ng×時間/mL)。 試験期間中に、tecovirimat群の134例(37.3%)に318件の重篤でない有害事象が発現し、このうち71例(19.8%)、176件が試験薬関連であった。試験薬とは関連しない肺塞栓症で1例が死亡した。問題となる有害事象のパターンは認められなかった。 著者は、「これら動物およびヒトに関する試験結果は、全体として、天然痘の抗ウイルス薬としてのtecovirimatの有用性を支持するものである」としている。

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潰瘍性大腸炎にはチーム医療で対抗する

 2018年7月2日、ファイザー株式会社は、同社が販売するJAK阻害剤トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)が、新たに指定難病の潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)への適応症追加の承認を5月25日に得たのを期し、「潰瘍性大腸炎の治療法の現在と今後の展望について」と題するプレスカンファレンスを行った。カンファレンスでは、UC診療の概要、同社が全世界で実施したUC患者の実態調査「UC ナラティブ(Narrative)」の結果などが報告された。※トファシチニブは、2013年に関節リウマチの治療薬として発売されている治療薬は特定標的を対象にした免疫抑制のステージへ はじめに「もはや“難病”ではない炎症性腸疾患の治療法の進歩とチーム医療の役割」をテーマに日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療[IBD]センター長)が、UC診療の概要とチーム医療の重要性を説明した。 患者実数では20万人を超えるとも言われているUCは、若年発症が多く、炎症が慢性に持続するため患者のQOLを著しく低下させる。また、UCは現在も根治する治療法がなく、患者の多くは再燃と寛解を繰り返しつつ、再燃の不安を持ち日常生活を送っている。 UCの病因は現在も不明で遺伝、腸内細菌、環境因子などの要因が指摘されている。発症すると粘血便、下痢、腹痛が主症状として見られる。 治療では、従来5-ASA製剤、副腎皮質ステロイドなどを使用して寛解導入が行われ、同じく5-ASA製剤、6MP/AZA製剤などを使用して寛解維持が行われてきた。現在も5-ASA製剤が第1選択薬であることには変わりないが、近年では疾患の免疫抑制を主体とした抗TNFα抗体、抗IL12/23抗体、抗α4β7抗体、JAK阻害剤などの新しい治療薬も登場している。とくに炎症を起こすサイトカインを標的する抗TNFα抗体やJAK阻害剤などの新しい治療薬は、「初めて特定標的に対する治療となり、治療にパラダイムシフトをもたらす」と同氏は期待を寄せる。 また、治療に際しては、「速やかな寛解導入と長期間の安全な寛解維持のためにチーム医療が重要だ」と同氏は提案する。患者を中心に医師、看護師、薬剤師による治療の提供はもちろん、家族、友人、患者の社会関係者(会社や学校など)などもチームに取り込み、疾患への理解とサポートを行う必要があるという。実際にチーム医療の成果として、当院では「医療職種の特性を生かした分担と連携によるきめ細かな治療のため、難治性UCやクローン病は激減した」と同氏は自身の体験を語る。 今後、治療薬として「サイトカインを標的にしたもの」「免疫細胞の接着・浸潤を抑制するもの」「腸内微生物を調節するもの」「再生・組織修復をするもの」などの研究開発が求められるとした上で、「こうした治療薬が、患者の寛解導入・維持をより容易にし、患者が普通の日常生活を送ることができるようになる。そのためにも患者個々に合わせた手厚いチーム医療が必要で、結果としてUCが難病ではなくなる日が来る」と同氏は展望を語り、レクチャーを終えた。UC患者は医療者に遠慮している 続いて、渡辺 憲治氏(兵庫医科大学 腸管病態解析学 特任准教授)が、「潰瘍性大腸炎実態調査『UCナラティブ』の結果について」をテーマに、結果の概要を解説した。 「UCナラティブ」とは、UC患者とUCの診療をしている医師を対象に、UCに罹患している人々がどのような影響を疾患から受けているかを調査する活動。今回、全世界10ヵ国より患者2,100例、医師1,454例にオンライン調査を実施し、その結果を報告した(調査期間:患者は2017年11月21日~2018年1月9日、医師は2017年11月29日~12月20日)。 患者は、UCと確定診断され、過去12ヵ月以内に医師の診察を受け、UCの治療薬として2種類以上を服用している患者が選ばれたほか、医師では消化器専門の内科医・外科医で、毎月5人以上のUC患者を診察(同時に10%の患者に生物学的製剤を投与)している医師が対象とされた。 アンケート結果について、患者に「UCを患っていなければもっと成功したか」と聞いたところ、68%が「そう思う」と回答。医師に「UCを発症していなければ担当患者は人間関係のアプローチが違ったか」と聞いたところ63%が「そう思う」と回答し、同様に「別の仕事や進学を選んでいたか」を聞いたところ51%が「別の仕事や進学の選択をした」と回答し、UCは患者の人生などに影を落とす疾患であると認識していることがわかった。 患者から医師に理解して欲しいUCの経験については「生活の質への影響」(35%)「日常の疲労感」(33%)「精神衛生面への影響」(30%)の順で多く、医師が患者と話し合うトピックスについては「治療オプションの利益とリスク」(75%)「副作用への懸念」(75%)「患者のアドヒアランス」(69%)の順で多く、両者の間にギャップがあることが明らかになった(いずれも複数回答)。また、患者から医師に「気兼ねなく心配や不安を話すことができるか」との質問では、81%が「できる」と回答しているものの、その内の44%の患者は「医師に多くの質問をすると、扱いにくい患者と見られて、治療の質に悪影響を及ぼすのではないかと心配」とも回答している。 最後に同氏は、「今回のアンケート結果を踏まえ、患者と医師の視点、意識の違いを知ることで、今後の日常臨床に活かしていきたい。UCは、患者に身体的・精神的影響を及ぼし、社会に機会損失をもたらす。患者には、周囲のサポートと理解が必要である。また、医師との間では、十分なコミュニケーションが大切であり、患者を中心にしたチーム医療を推進することで、患者の人生を満足させるべく、患者と医師が同じ目標に向かう協力者となってもらいたい」と思いを語った。トファシチニブの概要 トファシチニブは、炎症性サイトカインのシグナル伝達を阻害し、炎症を抑える薬剤。効果として第III相国際共同試験(1094試験)では、プラセボ群とトファシチニブ群(10mg1日2回)の比較で、寛解率がプラセボ群8.2%に対し、トファシチニブ群は18.5%と優越性が示された。安全性では、重篤な副作用、感染症などの発現はないものの、アジア人には帯状疱疹の発現がやや高い傾向があった。なお、本剤に起因する死亡例はなかった。注意すべき副作用としてリンパ球数減少、好中球数減少、貧血などが示されている。【効能・効果】 中等症から重症のUCの寛解導入および維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)【用法・容量】・導入維持療法では、通常、成人に1回10mgを1日2回8週間にわたり経口投与。 効果不十分な場合はさらに8週間投与。・寛解維持療法では、通常、成人に1回5mgを1日2回経口投与。効果減弱など患者の状態により1回10mgを1日2回投与にすることもできる。【その他】 適応症追加後3年間、全例調査を実施■参考ニュースリリース ファイザー株式会社ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎の適応症を追加潰瘍性大腸炎患者さんの生活実態調査■関連記事希少疾病ライブラリ 潰瘍性大腸炎

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素因遺伝子パネルと膵がんリスクの関連(解説:上村直実氏)-886

 わが国の死因順位をみると悪性新生物による割合が増加し続けているが、最近、肝炎ウイルスやピロリ菌による感染を基盤に発症することが判明した肝臓がんや胃がんによる死亡者数が激減しており、さらに、増加し続けてきた肺がんと大腸がんによる死亡者数もついに低下してきた。このような状況の中、毎年のように死亡者数が増加しているのが膵がんである。 膵がんは、発見された際に手術可能な症例が約30%であり、5年生存率も10%以下で予後の悪いがんの代表とされており、早期に発見できる方法が世界中で模索されている。今回、血液で測定可能ながん素因遺伝子パネルを用いて膵がんリスクを検討した研究結果がJAMA誌に掲載された。 3,030例の膵がん症例と対照5万3,105症例を対象として、素因遺伝子の生殖細胞系列変異の頻度を比較した結果、対照と比較して膵がんと関連すると考えられる6つの素因遺伝子変異(Smad4、p53、ATM、BRCA1、BRCA2、MLH1)が同定され、この変異が全膵がん患者の5.5%にみられたことから膵がんの中には遺伝的な素因を有する患者が少なくないことが示唆される。また、がんの既往歴や乳がんの家族歴がこれらの遺伝子変異と関連性を認めていることも、臨床現場で留意すべき点である。 一方、アンジェリーナ・ジョリーの乳房切除で注目された遺伝性乳がんの原因であるBRCA変異が陽性の場合はプラチナ製剤やPARP阻害薬が奏効する可能性が高く、今後、治療法の選択にも遺伝子変異のチェックをしたほうがよい時代となることが予感された。 近い将来、実際の臨床現場において血液検査で種々の素因遺伝子パネルを用いたリスク分類による膵がんの早期発見が可能となることが期待されるが、膵がんの発症は遺伝的要因と環境要因の相互作用に基づく症例が大部分である。したがって、膵がんに関しては動物実験や腫瘍組織の検討から局所における遺伝子異常の解析が進んでいること、腹部超音波や内視鏡検査の精度も向上していることから、今後、素因遺伝子パネルとともに新たな早期発見方法が期待される。

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第8回 訪問診療同行時に医師に尋ねられたこと【はらこしなみの在宅訪問日誌】

こんにちは。在宅訪問専任の薬剤師・はらこしなみです。地域連携の会に参加したら知り合いばかり!先日、地域の認知症連携懇話会に参加したとき、100名の参加者のほとんどが関わりのある人達ばかりで驚きました。たくさんのケアマネさんや先生、訪問看護師さんが、色々な所で繋がっています。医師からはこんなことを尋ねられます医師の訪問診療に同行したときに医師から尋ねられたことを紹介します。アサコールの簡易懸濁は?Dr.:アサコールを簡易懸濁したい。溶解は?はらこし:腸溶錠なので、胃ろうからの注入はだめですが、腸ろうならばオッケーです。 取り出し後の湿気に注意する必要があります。フィルムは溶けません。pH7以上で放出、pH6.4では溶けません。カテーテルの太さはいくつですか?8Fr、14Frだと△です。詰まるかもしれませんし、フィルムが溶けないので取り除く必要があります。サラゾピリンの素錠であれば、8Frで○です。ペンタサは腸溶部分が溶けないため、カテーテルの入り口に詰まるとメーカーから聞いています。外用剤は何が一番効く?Dr.:外用剤は何が一番効く?湿布、抗真菌薬、抗炎症薬、それぞれ教えて。はらこし:それは難しいです...。外用剤は特に適正使用(方法、量)が重要だと思いますので、療養者の環境やADLを考慮して選んだり、質感の心地よいもの(クリームが好きな人、サラサラローションが良い人)などで継続しやすいものを、と考えて提案しています。麻薬処方箋には何を記載?Dr.:麻薬処方箋には何を記載するんだっけ?はらこし:患者住所と先生の免許番号です!こんな感じで、いろいろと医師とやりとりしています。専門が異なる他の医師の処方意図や薬剤の用法用量をお伝えすることもあります。医師同士の情報交換が頻繁にできない先生には参考になるようです。

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こどもとおとなのワクチンサイトが完成

 2018年6月17日に乳児から高齢者まで、全年齢向けのワクチン・予防接種の総合情報サイト「こどもとおとなのワクチンサイト」(http://vaccine4all.jp/)が公開された。このサイトは、日本プライマリ・ケア連合学会の内部組織であるワクチンプロジェクトチーム(リーダー:中山 久仁子氏[マイファミリークニック蒲郡 理事長・院長 ]、担当理事:岡田 唯男氏[亀田ファミリークリニック館山 院長])に所属するワクチン・予防接種に関心が深い家庭医・総合診療家庭医が中心となり、執筆・編集したもの。 同サイトの設置・公開については、6月16日より開催されていた同学会の第9回学術大会(三重県津市)内で正式に発表された。不足する全世代に渡るワクチン情報を網羅 ワクチンプロジェクトチーム(以下「PT」と略す)は、家庭医・総合診療医で構成され、ワクチンで予防できる病気(ワクチン予防可能疾患:vaccine preventable disease[VPD])を減らすことを目的に、ワクチンと予防接種の普及啓発を行っている。 今回、サイト設置の背景には、先進国並みに近付いたわが国のワクチンの認可数、定期接種数の増加に伴い、臨床現場の医療従事者のみならず保護者や一般市民にとっても深く広いワクチンの知識が求められる時代となったことを指摘。また、定期接種化される前の世代への追加予防接種(キャッチアップ)の必要性、海外渡航前のワクチン接種の重要性など定期接種以外の知識や技能も欠かせないと説明する。 こうした環境の中、全世代のワクチン・予防接種について包括的に網羅した情報源はいまだ乏しいとされ、PT活動の一環として同サイトが設置・公開された。小児のみならず成人のワクチンスケジュール情報も記載 同サイトは、「ワクチンと病気について」「ワクチンのおはなし」「こども、おとな、全年齢での接種スケジュール」「最近のトピックス」で構成され、たとえば「ワクチンと病気について」では、B型肝炎、ロタウイルスをはじめ24種が現在紹介されているほか、詳細なワクチン情報として医療従事者、妊娠可能女性・妊婦、渡航者、特別な状況(HIV感染者など)、年齢で見る・不足しているワクチンの5つに分類して記載されている。 また、同サイトは、次の方針で運営される。・一般市民と医療従事者の双方をターゲットユーザとする・乳児期から高齢世代まで、海外渡航前や妊娠・授乳中など、あらゆる世代や人口集団を対象とした、包括的なワクチン・予防接種の情報源となる・ワクチン・予防接種に関する良質な医学的エビデンスに基づき、科学的に妥当な情報発信を行う・一般市民と医療従事者の、ワクチン・予防接種についての心配や疑問などを軽減ないし解消すべく、ワクチンコミュニケーションに関する情報提供や普及啓発も行う PTでは、このサイトを通じて「一般市民と医療従事者の双方に、全世代向けワクチン・予防接種の的確な情報を幅広く伝え、VPDがさらに減少することを目指し、適切なサイト運営と情報発信を続けていく」とコメントしている。■参考「こどもとおとなのワクチンサイト」

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オゼノキサシン1%クリーム、膿痂疹に有効

 オゼノキサシンは、グラム陽性菌への強い殺菌的な抗菌作用を示す新規局所抗菌薬で、接触感染で広まる皮膚の細菌感染症である膿痂疹に対する治療薬として、1%クリーム剤が開発された。米国・ベイラー医科大学のTheodore Rosen氏らは、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、オゼノキサシン1%クリームが生後2ヵ月以上の膿痂疹患者に有効で、安全性と忍容性も良好であることを報告した。著者は、「オゼノキサシンクリームによる治療は、膿痂疹の新しい治療の選択肢となる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。 研究グループは、膿痂疹におけるオゼノキサシン1%クリームの有効性、安全性および忍容性を評価する目的で、2014年6月2日~2015年5月30日に6ヵ国で登録された患者に対し無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。この結果は、2015年7月9日~22日に解析された。 対象は、膿痂疹に感染した生後2ヵ月以上の乳幼児を含む小児および成人患者411例(男性210例[51.1%]、平均年齢18.6[SD 18.3]歳)で、オゼノキサシン群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、1日2回5日間塗布した。有効性、安全性および忍容性は、Skin Infection Rating Scaleと微生物培養を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・5日後の臨床的な治療成功率は、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(206例中112例[54.4%]vs.206例中78例[37.9%]、p=0.001)。・2日後の微生物学的な治療成功率もまた、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(125例中109例[87.2%]vs.119例中76例[63.9%]、p=0.002)。・オゼノキサシン群は忍容性が高く、206例中8例で有害事象が報告されたが、オゼノキサシンによる治療と関連があったのは1例のみで、重篤な有害事象はみられなかった。

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新たな点眼薬、アデノウイルス結膜炎に効果

 急性アデノウイルス結膜炎に対する、ポビドンヨード(PVP-I)0.6%/デキサメタゾン0.1%懸濁性点眼液の有効性および安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(第II相臨床試験)が行われ、米国・セントルイス・ワシントン大学のJay S. Pepose氏らが結果を報告した。PVP-I/デキサメタゾンは安全性および忍容性が良好で、プラセボと比較し臨床的寛解率およびアデノウイルス除去率を有意に改善することが認められたという。American Journal of Ophthalmology誌2018年オンライン版5月19日号掲載の報告。 研究グループは、Rapid Pathogen Screening Adeno-Detector Plus testで急性アデノウイルス結膜炎に陽性の成人患者を、PVP-I 0.6%/デキサメタゾン0.1%群、PVP-I 0.6%群または溶媒(プラセボ)群に、1対1対1の割合で無作為に割り付け、両眼に1日4回、5日間投与し、3日目、6日目および12日目に評価した(+1-day window)。 有効性の評価項目は、臨床的寛解(試験眼の結膜炎による水溶性眼脂と眼球結膜充血がそれぞれ消失)およびアデノウイルス除去の複合エンドポイントであった。 主な結果は以下のとおり。・有効性解析の対象症例は144例であった(PVP-I/デキサメタゾン群48例、PVP-I群50例、プラセボ群46例)。・LOCF解析に基づく6日目の臨床的寛解率は、PVP-I/デキサメタゾン群31.3%、PVP-I群18.0%(有意差なし)、プラセボ群10.9%(p=0.0158)で、PVP-I/デキサメタゾン群がプラセボ群より有意に高かった。・アデノウイルス除去率(LOCF法にて、試験眼の培養細胞が免疫蛍光法で陰性となる患者の割合を解析)は、PVP-I/デキサメタゾン群がプラセボ群より、3日目(35.4% vs.8.7%、p=0.0019)および6日目(79.2% vs.56.5%、p=0.0186)ともに有意に高かった。・PVP-I群のアデノウイルス除去率は、3日目32.0%、6日目62.0%で、いずれもPVP-I/デキサメタゾン群と有意差はなかった。・治療下で発現した有害事象(AE)は、PVP-I/デキサメタゾン群で53.4%、PVP-I群で62.7%、プラセボ群で69.0%にみられた。・AEによる中止は37例(PVP-I/デキサメタゾン群9例、PVP-I群12例、プラセボ群16例)であった。

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ProACT試験-プロカルシトニン値を指標とした抗菌薬使用(解説:小金丸博氏)-877

 抗菌薬の過剰な使用は、医療費の増加や薬剤耐性菌の出現に関連する公衆衛生上の問題である。プロカルシトニンは、ウイルス感染よりも細菌感染で上昇しやすいペプチドであり、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善とともに経時的に低下する。いくつかの欧州の試験において、抗菌薬を投与するかどうかをプロカルシトニンの結果に基づいて決定することで抗菌薬の使用を抑制できることが示されており、2017年、米国食品医薬品局(FDA)は下気道感染症が疑われる場合に抗菌薬の開始または中止の指標としてプロカルシトニンを測定することを承認した。しかしながら、プロカルシトニン値を日常臨床へ適用できるかは明らかでなかった。 本研究は、プロカルシトニン値に基づく抗菌薬処方ガイドラインを用いて抗菌薬の投与を決定することで、抗菌薬の使用を減らすことができるかどうかを検討したランダム化比較試験である。下気道感染症疑いで受診し、抗菌薬を投与すべきかどうかはっきりしない患者を対象とし、プロカルシトニン使用群と通常治療群に無作為に割り付けた。プロカルシトニン使用群の診療医には、プロカルシトニンの測定値に応じた推奨治療が記載された抗菌薬使用ガイドラインが提供された。その結果、intention-to-treat(ITT)解析では、30日までの平均抗菌薬投与日数はプロカルシトニン使用群が4.2日、通常治療群が4.3日であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-0.05日、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.5、p=0.87)。また、ITT解析による有害なアウトカムを発症した患者の割合は11.7%と13.1%であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-1.5ポイント、95%CI:-4.6~1.7、非劣性:p<0.001)。 本試験の結果は過去の研究と異なり、下気道感染症疑いの患者に対してプロカルシトニン値を指標として抗菌薬投与の適応を決定しても、指標としない群と比較して抗菌薬の使用を抑制できなかった。その理由として、通常治療群の臨床医はプロカルシトニン値の結果を知らないにもかかわらず、プロカルシトニン高値例に比べ、低値例での抗菌薬処方が少なかった点が挙げられている。プロカルシトニン値が低い患者では感染症の臨床症状を呈することが少なく、通常の臨床判断で十分抗菌薬の適応を決定できたと考えられる。 プロカルシトニンは抗菌薬を投与すべきかどうか判断するのに有用な指標となりうるが、プロカルシトニンの値だけで治療方針を決定できるわけではない。まずは注意深い問診と診察から正しく臨床情報を整理することが重要であり、そのうえでプロカルシトニン値を用いることが適切な抗菌薬使用につながると考える。

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JAK1阻害薬upadacitinibが難治性リウマチに有効/Lancet

 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)で効果不十分の中等度~重度活動性関節リウマチ患者において、JAK1阻害薬upadacitinibの15mgまたは30mgの併用投与により、12週時の臨床的改善が認められた。ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のGerd R. Burmester氏らが、35ヵ国150施設で実施された無作為化二重盲検第III相臨床試験「SELECT-NEXT試験」の結果を報告した。upadacitinibは、中等度~重度関節リウマチ患者を対象とした第II相臨床試験において、即放性製剤1日2回投与の有効性が確認され、第III相試験のために1日1回投与の徐放性製剤が開発された。Lancet誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。upadacitinib 15mgおよび30mgの有効性および安全性をプラセボと比較 SELECT-NEXT試験の対象は、csDMARDを3ヵ月以上投与され(試験登録前4週間以上は継続投与)、1種類以上のcsDMARD(メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド)で十分な効果が得られなかった18歳以上の活動性関節リウマチ患者。双方向自動応答技術(interactive response technology:IRT)を用い、upadacitinib 15mg群、30mg群または各プラセボ群に2対2対1対1の割合で無作為に割り付けし、csDMARDと併用して1日1回12週間投与した。患者、研究者、資金提供者は割り付けに関して盲検化された。プラセボ群には、12週以降は事前に定義された割り付けに従いupadacitinib 15mgまたは30mgを投与した。 主要評価項目は、12週時における米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を達成した患者の割合、ならびに、C反応性蛋白値に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)が3.2以下の患者の割合である。有効性解析対象は、無作為化され少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた全患者(full analysis set)とし、主要評価項目についてはnon-responder imputation法(評価が得られなかった症例はノンレスポンダーとして補完)を用いた。upadacitinibは両用量群で主要評価項目を達成 2015年12月17日~2016年12月22日に、1,083例が適格性を評価され、そのうち661例が、upadacitinib 15mg群(221例)、upadacitinib 30mg群(219例)、プラセボ群(221例)に無作為に割り付けられた。全例が1回以上治験薬の投与を受け、618例(93%)が12週間の治療を完遂した。 12週時にACR20を達成した患者は、upadacitinib 15mg群(141例、64%、95%信頼区間[CI]:58~70%)および30mg群(145例、66%、95%CI:60~73%)が、プラセボ群(79例、36%、95%CI:29~42%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。DAS28-CRP 3.2以下の患者も同様に、upadacitinib 15mg群(107例、48%、95%CI:42~55%)および30mg群(105例、48%、95%CI:41~55%)が、プラセボ群(38例、17%、95%CI:12~22%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。 有害事象の発現率は、15mg群57%、30mg群54%、プラセボ群49%で、主な有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は、悪心(15mg群7%、30mg群1%、プラセボ群3%)、鼻咽頭炎(それぞれ5%、6%、4%)、上気道感染(5%、5%、4%)、頭痛(4%、3%、5%)であった。 感染症の発現率は、upadacitinib群がプラセボ群より高かった(15mg群29%、30mg群32%、プラセボ群21%)。帯状疱疹が3例(各群1例)、水痘帯状疱疹ウイルス初感染による肺炎1例(30mg群)、悪性腫瘍2例(ともに30mg群)、主要心血管イベント1例(30mg群)、重症感染症5例(15mg群1例、30mg群3例、プラセボ群1例)が報告された。試験期間中に死亡例の報告はなかった。

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デング熱ワクチンの有効性・リスクが明らかに/NEJM

 四価デング熱ワクチン(CYD-TDV)の有効性について、ワクチン接種前のウイルス曝露者には5年の間、重症型デング熱の発症(virologically confirmed dengue:VCD)やデング熱での入院に対する保護効果が認められたが、非曝露者では、反対に重症型VCDやデング熱による入院のリスクをより高めるとのエビデンスが確認されたという。フランス・サノフィ社サノフィパスツール(ワクチン部門)のSaranya Sridhar氏らが、有効性に関する3試験のデータを再解析し報告した。CYD-TDVの有効性試験では、ワクチン接種を受けた2~5歳児においてデング熱による過剰な入院が観察されていた。NEJM誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。有効性に関する3試験のデータを再解析 研究グループは有効性に関する3試験のデータを用いて、ケースコホート研究を行った。ベースラインで収集した検体数に限りがあり、デング熱の血清状態を確認して正確なリスクを推定することができなかったため、デング熱NS1抗原IgG抗体ELISAを開発するとともに、月齢13ヵ月児の血清状態を確認した検体を用いて安全性と有効性の事後解析を行った。 主要解析では、50%プラーク減少中和検査(PRNT50)によるベースライン測定値(入手できた場合)と、13ヵ月齢の抗NS1アッセイの結果など共変量を用いて補完した力価(入手不可の場合)に基づき確認した、ベースライン血清状態を用いた。 加重Cox回帰法および標的最小損失ベースの推定による、VCD入院、重症型VCD、デング熱抗体有無別の症候性VCDのリスクを推算した。ウイルス血清陽性者には有効、陰性者にはリスク デング熱血清反応陰性であった2~16歳児において、VCD入院の5年累積発生率は、ワクチン接種群3.06%、非接種(対照)群1.87%で、データカットオフ時のハザード比(HR)は1.75(95%信頼区間[CI]:1.14~2.70)であった。血清反応陰性の9~16歳児において同発生率は、ワクチン接種群1.57%、対照群1.09%で、HRは1.41(95%CI:0.74~2.68)であった。また、重症型VCDについても同様に、血清反応陰性者では、ワクチン接種群のほうが対照群よりもハイリスクの傾向がみられた。 一方、血清反応陽性の2~16歳児においては、VCD入院の5年累積発生率は、ワクチン接種群0.75%、対照群2.47%で、HRは0.32(95%CI:0.23~0.45)であった。9~16歳児においても各群の同発生率は0.38%、1.88%で、HRは0.21(95%CI:0.14~0.31)であった。重症型VCDについても同様に、血清反応陽性者では、ワクチン接種群のほうが対照群よりも低率であった。

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RSV感染症はインフルエンザよりも怖い?

 2018年6月7日、アッヴィ合同会社は、RSウイルス(RSV)感染症メディアセミナーを都内で開催した。RSV感染症は、2歳までにほぼ100%が初感染を経験するといわれており、乳幼児における呼吸器疾患の主な原因(肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%)として報告されている。セミナーでは、「乳幼児の保護者は何を知らなければいけないか? 変動するRSウイルスの流行期とその課題と対策」をテーマに講演が行われた。 セミナーの後半には、愛児がRSV感染症に罹患した経験を持つ福田 萌氏(タレント)が、トークセッションに参加した。 2018年6月7日、アッヴィ合同会社は、RSウイルス(RSV)感染症メディアセミナーを都内で開催した。RSV感染症は、2歳までにほぼ100%が初感染を経験するといわれており、乳幼児における呼吸器疾患の主な原因(肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%)として報告されている。セミナーでは、「乳幼児の保護者は何を知らなければいけないか? 変動するRSウイルスの流行期とその課題と対策」をテーマに講演が行われた。 セミナーの後半には、愛児がRSV感染症に罹患した経験を持つ福田 萌氏(タレント)が、トークセッションに参加した。RSV感染症の死亡リスクは麻疹の次に高い はじめに、木村 博一氏(群馬パース大学大学院 保健科学研究科 教授)が、「RSウイルス感染症の流行に関する最新の知見」について紹介を行った。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRobin A. Weiss氏らの研究結果1)によると、RSV感染症の死亡リスクは麻疹の次に高く、インフルエンザよりも上に位置するという。RSV感染症は、乳幼児・高齢者には気管支炎や肺炎を起こすが、青年期や成人期には鼻風邪程度の症状が多いため、知らぬ間に高齢者施設などにウイルスを運び込み、集団感染につながる恐れがある。「高齢者の命の灯を消す病気」ともいわれ、乳幼児だけでなく、高齢者のリスクも考える必要がある。 また、RSV感染症の動向について、数年前から流行時期が早まっており、夏~秋にかけて患者数が増加する傾向が見られるが、地域によってかなり異なるという。以前の調査で、平均気温が26~28℃、湿度が79%以上でRSV感染患者が増加するという結果2)が得られたこともあり、今後の研究によって、流行の早期探知や予測が可能になるかもしれない。ハイリスク群には抗RSV抗体が保険適用になる 次に、山岸 敬幸氏(慶應義塾大学医学部 小児科 教授)が、「RSウイルス流行期変動による実臨床での影響」について、同社が行ったアンケート結果を交えて説明した。2歳未満の子供を持つ親1,800名に対するアンケートで、RSV感染症を「知っている」と答えた割合は50%にも満たなかった。また、RSV感染症を「知っている」「名前は聞いたことがある」と回答した親(1,518名)のうち、近年流行期が早まっていること、流行のタイミングには地域差があることに関して「知っている」と答えた親は、約30%にとどまった。 早産、先天性心疾患、ダウン症候群など、RSV感染症ハイリスク群に指定されている場合、抗RSV抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)が保険適用となり、RSV流行期を通して月1回の筋肉内注射を打つことで、感染を予防することができる。流行期が早まっているRSV感染症の対応について、山岸氏は「RSV感染症に対する意識・認知度の向上と、感染予防策の徹底、そしてパリビズマブによる予防が重要である」と語った。RSV感染症への対応はインフルエンザと同じ 後半では、両演者と福田 萌氏によるトークセッションが行われた。 福田氏の第1子は、35週の早産だった。「医師からリスクの説明を受け、初めてRSV感染症の存在を知った」と語り、毎月パリビズマブの定期接種に通い、気を付けていたおかげで、RSV感染症にかからずに成長したと当時の苦労を振り返った。その後、第2子は正産期に生まれたため、とくに注意を受けなかったが、生後9ヵ月(昨年の10月)のときに高熱で病院にいったところ、RSV感染症と診断された。そのときの気持ちを聞かれた同氏は「意外だった。第1子のときは気を付けていたのに、(記憶から)抜けてしまっていた」と答えた。 RSV感染症は、リスクの高い低いに限らず、初期症状を見逃すと重症化する恐れがある。「感染症の流行を把握することは、医師が診断を行ううえで非常に重要である。医療者と保護者の双方で、情報を伝え合うことが早期診断につながる」と山岸氏は語った。最後に、木村氏は「2018年は、昨年と同様に夏季~秋季に流行すると予測されている。RSV感染症の予防や流行への対応は、家庭では手洗い、医療機関では標準予防策の徹底が第一だ」と強調した。RSV感染症の死亡リスクは麻疹の次に高い はじめに、木村 博一氏(群馬パース大学大学院 保健科学研究科 教授)が、「RSウイルス感染症の流行に関する最新の知見」について紹介を行った。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRobin A. Weiss氏らの研究結果1)によると、RSV感染症の死亡リスクは麻疹の次に高く、インフルエンザよりも上に位置するという。RSV感染症は、乳幼児・高齢者には気管支炎や肺炎を起こすが、青年期や成人期には鼻風邪程度の症状が多いため、知らぬ間に高齢者施設などにウイルスを運び込み、集団感染につながる恐れがある。「高齢者の命の灯を消す病気」ともいわれ、乳幼児だけでなく、高齢者のリスクも考える必要がある。 また、RSV感染症の動向について、数年前から流行時期が早まっており、夏~秋にかけて患者数が増加する傾向が見られるが、地域によってかなり異なるという。以前の調査で、平均気温が26~28℃、湿度が79%以上でRSV感染患者が増加するという結果2)が得られたこともあり、今後の研究によって、流行の早期探知や予測が可能になるかもしれない。ハイリスク群には抗RSV抗体が保険適用になる 次に、山岸 敬幸氏(慶應義塾大学医学部 小児科 教授)が、「RSウイルス流行期変動による実臨床での影響」について、同社が行ったアンケート結果を交えて説明した。2歳未満の子供を持つ親1,800名に対するアンケートで、RSV感染症を「知っている」と答えた割合は50%にも満たなかった。また、RSV感染症を「知っている」「名前は聞いたことがある」と回答した親(1,518名)のうち、近年流行期が早まっていること、流行のタイミングには地域差があることに関して「知っている」と答えた親は、約30%にとどまった。 早産、先天性心疾患、ダウン症候群など、RSV感染症ハイリスク群に指定されている場合、抗RSV抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)が保険適用となり、RSV流行期を通して月1回の筋肉内注射を打つことで、感染を予防することができる。流行期が早まっているRSV感染症の対応について、山岸氏は「RSV感染症に対する意識・認知度の向上と、感染予防策の徹底、そしてパリビズマブによる予防が重要である」と語った。RSV感染症への対応はインフルエンザと同じ 後半では、両演者と福田 萌氏によるトークセッションが行われた。 福田氏の第1子は、35週の早産だった。「医師からリスクの説明を受け、初めてRSV感染症の存在を知った」と語り、毎月パリビズマブの定期接種に通い、気を付けていたおかげで、RSV感染症にかからずに成長したと当時の苦労を振り返った。その後、第2子は正産期に生まれたため、とくに注意を受けなかったが、生後9ヵ月(昨年の10月)のときに高熱で病院にいったところ、RSV感染症と診断された。そのときの気持ちを聞かれた同氏は「意外だった。第1子のときは気を付けていたのに、(記憶から)抜けてしまっていた」と答えた。 RSV感染症は、リスクの高い低いに限らず、初期症状を見逃すと重症化する恐れがある。「感染症の流行を把握することは、医師が診断を行ううえで非常に重要である。医療者と保護者の双方で、情報を伝え合うことが早期診断につながる」と山岸氏は語った。最後に、木村氏は「2018年は、昨年と同様に夏季~秋季に流行すると予測されている。RSV感染症の予防や流行への対応は、家庭では手洗い、医療機関では標準予防策の徹底が第一だ」と強調した。■参考アッヴィ合同会社 RSウイルスから赤ちゃんを守ろう■関連記事入院をためらう親を納得させるセリフ~RSウイルス感染症

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プロカルシトニン値は抗菌薬使用の指標となるか/NEJM

 下気道感染症が疑われる患者への、プロカルシトニン値を指標とする抗菌薬の開始/中止の決定は、抗菌薬曝露量を削減しないことが、米国・ピッツバーグ大学のDavid T. Huang氏らが行った「ProACT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月20日号に掲載された。プロカルシトニンは、ウイルスに比べ細菌感染によって上昇するペプチドで、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善に伴って経時的に低下する。欧州の試験では、プロカルシトニンに基づくガイダンスは、明確な有害性を呈することなく抗菌薬の使用を抑制することが報告されている。米国食品医薬品局(FDA)は、これらの試験を含むメタ解析の結果に基づき、2017年2月、下気道感染症疑い例における抗菌薬使用の指標としてプロカルシトニン測定を承認したが、日常診療への適用の可能性は不明だという。米国の14施設の救急診療部受診患者1,656例を登録 本研究は、プロカルシトニン値に基づく抗菌薬処方ガイドラインは、有害事象を増加させずに抗菌薬曝露量を削減するかを検証する無作為化試験である(米国国立一般医科学研究所[NIGMS]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、下気道感染症の疑いで救急診療部を受診し、抗菌薬治療の適応の可否が不明な患者であった。被験者は、プロカルシトニン群と通常治療群に無作為に割り付けられた。 プロカルシトニン群の治療医には、プロカルシトニンの測定値と、測定値を4段階に分け、それぞれの推奨治療が記載された抗菌薬使用のガイドラインが提供された。通常治療群にもプロカルシトニンの測定が行われたが、臨床には使用されなかった。 登録後30日以内に、プロカルシトニン群は通常治療群に比べ、抗菌薬の総投与日数が削減され、有害なアウトカムを発症する患者の割合の差が4.5ポイント(非劣性マージン)を超えないとの仮説を立て、検証を行った。 2014年11月~2017年5月の期間に、米国の14施設1,656例が登録され、プロカルシトニン群に826例(平均年齢:52.9±18.4歳、男性:43.2%)、通常治療群には830例(53.2±18.7歳、42.7%)が割り付けられた。1,430例(86.4%)がフォローアップを完遂した。有害アウトカム率:プロカルシトニン群11.7% vs. 通常治療群13.1% 最終診断のデータが得られた1,645例のうち、646例(39.3%)が喘息の増悪、524例(31.9%)が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、398例(24.2%)が急性気管支炎、328例(19.9%)が市中肺炎であった。782例(47.2%)が入院し、984例(59.4%)が30日以内に抗菌薬の投与を受けた。 プロカルシトニン群の治療医は、826例中792例(95.9%)のプロカルシトニン測定結果を受け取り、通常治療群の治療医も、830例中18例(2.2%)の測定結果を得た。プロカルシトニン群の血液サンプル採取から測定結果の取得までの時間の中央値は77分だった。両群とも、プロカルシトニン値が高いほど、救急診療部での抗菌薬処方の決定が多かった。 intention-to-treat(ITT)解析では、30日までの平均抗菌薬投与日数は、プロカルシトニン群が4.2±5.8日、通常治療群は4.3±5.6日と、両群間に有意な差はなかった(差:-0.05日、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.5、p=0.87)。per-protocol解析、per-guideline解析、complete-case解析、missing-not-at-random解析でも、結果はほぼ同様だった。 ITT解析による有害なアウトカムを発症した患者の割合は、それぞれ11.7%(96例)、13.1%(109例)であり、プロカルシトニン群の通常治療群に対する非劣性が示された(差:-1.5ポイント、95%CI:-4.6~1.7、非劣性:p<0.001)。他の解析法による結果もほぼ同様だった。 30日までに抗菌薬投与を受けた患者の割合や、最終診断名別の平均抗菌薬投与日数にも、両群間に差はなかった。 著者は、「抗菌薬曝露量が削減されなかった原因として、通常治療群の医師は測定値を知らないにもかかわらず、高値例に比べ低値例への抗菌薬の処方が少なかった点などが挙げられる」とし、「以前の試験と対照的な結果であった理由としては、case mix、デザイン、セッティングなどの違いが考えられる」と指摘している。

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急性単純性膀胱炎に対するガイドライン推奨治療の比較試験(解説:小金丸博氏)-860

 膀胱炎に代表される尿路感染症はとてもありふれた感染症であり、とくに女性では一生涯で半数以上が経験すると言われている。膀胱炎に対して世界中で多くの抗菌薬が処方されることが薬剤耐性菌出現の一因になっていると考えられており、2010年に米国感染症学会(IDSA)と欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)は「女性の急性単純性膀胱炎および腎盂腎炎の治療ガイドライン」を改訂した。このガイドラインでは、急性単純性膀胱炎に対する第1選択薬としてnitrofurantoin monohydrateやfosfomycin trometamolなどを推奨しており、これらの薬剤の使用量が増加してきているが、治療効果を比較したランダム化試験はほとんど存在しなかった。 本試験は、妊娠をしていない18歳以上の女性を対象に、急性単純性膀胱炎に対するnitrofurantoinとfosfomycinの治療効果を検討したオープンラベルのランダム化比較試験である。少なくとも1つの急性下部尿路感染症状(排尿障害、尿意切迫、頻尿、恥骨上圧痛)を有し、尿亜硝酸塩あるいは白血球エステラーゼ反応陽性を示すものを対象とした。その結果、プライマリアウトカムである28日目の臨床的改善率はnitrofurantoin群70%、fosfomycin群58%であり、nitrofurantoin群で有意に高率だった(群間差:12%、95%信頼区間:4~21%、p=0.004)。また、セカンダリアウトカムの1つである28日目の微生物学的改善率もnitrofurantoin群で有意に高率だった(74% vs.63%、群間差:11%、95%信頼区間:1~20%、p=0.04)。 本試験で検討された治療薬の用法は、それぞれnitrofurantoin100mgを1日3回・5日間経口投与とfosfomycin3gを単回経口投与であった。ガイドラインではnitrofurantoin100mgを1日2回・5日間経口投与が推奨されており、nitrofurantoinの至適投与方法は今後検討の余地がある。fosfomycinの単回投与は患者のコンプライアンスを考えると魅力的なレジメンであるが、臨床的改善率と微生物学的改善率の両方が有意に低率だったことは、今後の治療薬の選択に影響を与える結果であると考える。 本試験の治療成功率は、過去の報告と比較して低率だった。その理由の1つとして、大腸菌以外の細菌(Klebsiella sppやProteus sppなど)の割合が高かったことが挙げられており、尿路感染症の原因菌として大腸菌が多い地域であれば、もう少し治療成功率が高かった可能性はある。また、過去の試験より治療成功の定義が厳格であったことも影響したと考えられる。 実は、本試験で検討された2つの抗生物質はどちらも日本では発売されていない。日本で発売されているホスホマイシン経口薬はホスホマイシンカルシウムであり、fosfomycin trometamolとは異なる薬剤である。本邦における膀胱炎治療は、ST合剤、βラクタム薬、フロオロキノロンなどの中から選択することが多いと思われるが、地域での薬剤感受性情報や副作用を勘案し、総合的に判断することが求められる。

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抗微生物薬適正使用の手引き改正へ向けて

 2018年5月14日、第4回の抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(座長:大曲 貴夫氏[国立国際医療研究センター病院国際感染症センター長])が、厚生労働省で開催され、「抗微生物薬適正使用の手引き」の改正の方向性の確認、改正内容の検討が行われた。今後、数度の部会での検討を経たうえで、薬剤耐性(AMR)に関する小委員会および厚生科学審議会感染症部会で審議、発表される。なお、発表時期は未定。「抗微生物薬適正使用の手引き」改正では学童期以下の小児に焦点 「抗微生物薬適正使用の手引き 第1版」は、抗微生物薬の適正使用を推進するために学童期以降の急性気道感染症と急性下痢症を対象に、2017年6月に発表・発行された。発行後、さらなる抗微生物薬の適正使用推進のため、扱うべき領域拡大の必要性が求められ、学童期未満の小児を対象とした「抗微生物薬適正使用の手引き」の改正が行われている。 今回示された改正案では、「1.小児における急性気道感染症の特徴と注意点」「2.小児の急性気道感染症各論」「3.小児の急性下痢症」の3点が示され、個別の検討が行われた。急性気道感染症と急性下痢症を詳細に記載 「抗微生物薬適正使用の手引き」改正案の「1.小児における急性気道感染症の特徴と注意点」では、小児の急性気道感染症で多くを占める感冒、咽頭炎、クループ、気管支炎などを取り上げるとともに、A群連鎖球菌による咽頭炎、細菌性副鼻腔炎などとの鑑別の重要性、リスクを加味した年齢ごとの診療の必要性、治療薬の小児特有の副作用について記載されている。 とくに小児特有の副作用については、10種類ほど治療薬が列挙され、たとえばST合剤では新生児に核黄疸のリスクがあること、マクロライド系抗菌薬では肥厚性幽門狭窄症のリスクが上がることなどが述べられている。 「2.小児の急性気道感染症各論」では、感冒・急性鼻副鼻腔炎、急性咽頭炎、クループ症候群、急性気管支炎、急性細気管支炎を取り上げ、個々の病態、疫学、診断と鑑別、抗菌薬治療、患児および保護者への説明などが記載されている。 「3.小児の急性下痢症」では、2.と同様に下痢症の病態、疫学、診断と鑑別、抗菌薬治療、患児および保護者への説明を述べるとともに、そのほとんどがウイルスが原因であるとし、とくに小児では原因診断よりも緊急度の判断が重要とされ、脱水への対応についても多く記述されている。 部会では「抗微生物薬適正使用の手引き」改正案に対し、「ワクチンの有効性の記載」「治療薬の商品名の記載」「中耳炎の追加」「記載方法の定式化」「非専門医ができる診療法の記載」「具体性のある表記」などの意見や提案がなされ、今後これらを踏まえて修正、議論を行っていく。

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オセルタミビル10代への使用制限解除へ

 2018年5月16日、厚生労働省は「抗インフルエンザウイルス薬の安全対策」を議題に、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催した。主な論点は、抗インフルエンザ薬と異常行動に関する安全対策措置について、2007年からオセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)のみに適用されている、10代への原則使用差し控え措置についてなど。※写真=中外製薬ホームページより 本会は、今回集まった報告で、オセルタミビルと異常行動との因果関係について明確な結論が出ていないこと、また、抗インフルエンザ薬服用の有無や種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現する可能性があることなどを踏まえ、オセルタミビルの警告措置を撤回し、ほかの抗インフルエンザ薬と記載方法を揃える方向で意見が一致した。2007~18年春まで続いていた、使用差し控え措置 オセルタミビルは、A/B型インフルエンザウイルス感染症の適応を有する経口薬である。2007年、本剤を服用した中学生が、自宅療養中にマンションから転落死した報道を受け、ハイリスクを除いた10代の患者には原則使用を控えるよう添付文書に追記され、緊急安全性情報が配布された。  2009年、オセルタミビル服用と異常行動の関係について、報告書がとりまとめられたが、明確な結論を出すことは困難とされ、現行の安全対策措置の継続が適当と判断された。 服薬が原因で異常行動が発現するとは言い切れない 2009年以降、新たな調査が行われたが、ラットなどにおける非臨床試験、厚生労働省のデータにおける疫学研究では、異常行動との因果関係について明確な結論は出なかった。 岡部班が、2009/2010年シーズン~2016年3月までの報告について行った疫学調査の結果、抗インフルエンザ薬の服用有無、種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現する可能性があり、服用なし群で約90%、抗インフルエンザ薬服用群の約70%が2日目までに発現していた。また、発現するタイミングは、睡眠から覚醒した直後が多いといった傾向が認められた。 さらに、福島 若葉氏(大阪市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学 教授)らが廣田班疫学調査のデータを使用して行った解析1)では、オセルタミビルの初回服用後、異常行動が発現しやすい傾向が示されたが、この期間は高熱が出るインフルエンザの初期と重なることなどから、インフルエンザ自体による異常行動を否定できないと結論している。今後の対応について 以上の結論などから、現在オセルタミビルのみに適用されている、10代への原則使用差し控え措置について適当でないと判断され、ほかの抗インフルエンザ薬に共通の注意喚起と同様に、重要な基本的注意欄への記載に変更する方針だ。 その他の具体的な記載方法、今後の対応などは次回の調査会であらためて議論するという。 ■参考文献1)Fukushima W, et al. Vaccine. 2017;35:4817-4824.■参考厚生労働省 ホームページ(インフルエンザ)

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単純性尿路感染症、nitrofurantoin vs.ホスホマイシン/JAMA

 単純性下部尿路感染症(UTI)の女性患者において、nitrofurantoin5日間投与はホスホマイシン単回投与と比較して、治療終了後28日時の臨床的および微生物学的改善が有意に大きいことが示された。スイス・ジュネーブ大学医学部のAngela Huttner氏らが、多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。nitrofurantoinとホスホマイシンは、米国およびヨーロッパの臨床微生物感染症学会による2010年のガイドライン改訂で、下部UTIの第一選択薬として推奨されるようになってから、その使用が増加してきたが、これまで両者を比較した無作為化試験はほとんどなかった。JAMA誌2018年4月22日号掲載の報告。下部UTI女性患者約500例で、nitrofurantoinとホスホマイシンの有効性を比較 研究グループは、2013年10月〜2017年4月に、スイスのジュネーブ、ポーランドのウッジおよびイスラエルのペタチクバの病院において、非盲検/解析者盲検の無作為化試験を実施した。対象は、妊娠をしていない18歳以上の女性で、急性下部UTIの症状(排尿痛・尿意切迫感・頻尿・恥骨上圧痛のいずれか1つ以上)を有し、尿亜硝酸塩または尿白血球エステラーゼを検出する尿試験紙検査が陽性かつ治験薬に耐性を示す尿路病原菌の感染既往または定着を認めない513例であった。nitrofurantoin群(100mgを1日3回、5日間経口投与)、またはホスホマイシン群(3gを単回経口投与)に1対1の割合で無作為に割り付け、治療終了後14日および28日に臨床評価ならびに尿培養を行った。 主要評価項目は、治療終了後28日時の臨床効果で、臨床的改善(症状およびUTI徴候の消失)、治療失敗(抗菌薬の追加/変更または無効による中止)、判定不能(客観的な感染所見のない症状の持続)と定義した。副次評価項目は、細菌学的効果と有害事象などであった。28日臨床的改善率、nitrofurantoin群70% vs.ホスホマイシン群58%で有意差あり 無作為化された513例(平均年齢44歳、四分位範囲:31~64歳)のうち、475例(93%)が試験を完遂し、377例(73%)でベースラインにおいて尿培養陽性が確認された。 28日時の臨床的改善率は、nitrofurantoin群70%(171/244例)、ホスホマイシン群58%(139/241例)であった(群間差:12%、95%信頼区間[CI]:4~21%、p=0.004)。また、微生物学的改善率はそれぞれ、74%(129/175例)および63%(103/163)であった(群間差:11%、95%CI:1~20%、p=0.04)。 有害事象はわずかであった。主なものは悪心および下痢で、発現率はそれぞれ、nitrofurantoin群で3%(7/248例)および1%(3/248例)、ホスホマイシン群で2%(5/247例)および1%(5/247例)であった。 なお著者は、非盲検試験であり、臨床検査が中央化されておらず検査方法が異なる可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」通知へ:厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 5月7日の会合で、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」について大筋で了承した。本指針では65歳以上の高齢者、とくに平均的な服薬薬剤数が増加する75歳以上に重点をおいて、処方見直しの基本的な考え方や評価・減薬までの流れ、よく使われる薬剤の高齢者における留意点などをまとめている。 早ければ5月中旬を目途に、関連団体や都道府県宛に通知が発出される見通し。また、同検討会では引き続き、主に急性期での対応をまとめた本指針の追補として、外来・在宅などの療養環境別の特徴を踏まえた「高齢者の医薬品適正使用の指針(詳細編)」の作成を開始し、2018年度中のとりまとめを目指す。 本指針は多剤服用やポリファーマシーといった言葉の概念から、処方見直し時のポイントや進め方のフローチャート、減薬する際の注意点などをまとめた本文と、薬効群ごとの薬剤処方における留意点、慎重な投与を要する薬物リストなどの別表から構成される。別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、A~Lの12の薬効群ごと(下記参照)に薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。A.催眠鎮静薬・抗不安薬B.抗うつ薬(スルピリド含む)C.BPSD 治療薬D.高血圧治療薬E.糖尿病治療薬F.脂質異常症治療薬G.抗凝固薬H.消化性潰瘍治療薬 I.消炎鎮痛剤J.抗微生物薬(抗菌薬・抗ウイルス薬)K.緩下薬L.抗コリン系薬剤 なお、詳細編では認知症や骨粗鬆症、COPDなどについても取り上げることが検討されている。■参考厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」

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2020までに万全な髄膜炎菌感染症対策を

 2018年4月18日、サノフィ株式会社は、4月25日の「世界髄膜炎デー」に先立って、髄膜炎菌感染症診療に関するメディアセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「日本に潜む10代の髄膜炎菌感染症 アウトブレイクのリスク~海外・国内の感染事例と関連学会による対策変更~」をテーマに、髄膜炎菌感染症のオーストラリアでの疫学的状況と公衆衛生当局による対応、日本の置かれた現状と今後求められる備えなどが語られた。IMD発症後、20時間以内の診断が予後の分かれ目 髄膜炎は、細菌性と無菌性(ウイルス性が主)に大別される。なかでも細菌性髄膜炎は、症状が重篤なことで知られている。今回クローズアップした髄膜炎菌は、2018年現在、わが国での発症率は低いが、ワクチンの定期接種が行われているインフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌などと比較して感染力が強く、また症状が急激に悪化するので、対応の遅れが致命的な結果を招く恐れがある。 髄膜炎菌は、飛沫感染により鼻や喉、気管の粘膜などに感染し、感染者は無症状の「保菌」状態となる。日本人の保菌率は0.4%ほどだが、世界では3%とも言われており、19歳前後の青年期がピークとなる1)。保菌者の免疫低下など、さまざまな要因で髄膜炎菌が血液や髄液中に侵入して起こるのが、侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)である。 IMDは、感染して2~10日(平均4日)後、突発的に発症する。初期症状は風邪症状と類似し、発症後13~20時間ごろに皮下出血、傾眠、呼吸困難など(プライマリ診療では、これらの症状が高度医療機関へ転送の目安となる)が見られ、それ以降、意識障害、痙攣発作など急速に進行する。IMDでは、発症から24~48時間以内に患者の5~10%が死亡するという報告があり2)、回復した場合でも約10~20%の割合で難聴、神経障害、四肢切断など重篤な後遺症が残るという報告もある3)。海外での事例を参考に、先取りしたIMD対策を 本セミナーでは、はじめにロドニー・ピアース氏(MEDICAL HQ Family Clinic)が、オーストラリアにおけるIMDの状況などについて説明した。オーストラリアでは過去に壊滅的なIMDの流行があり、2003年にワクチンが導入され、2013年までは減少傾向が続いていた。しかし、近年、致命率の高い血清型に変化した可能性があり、2014年から再び発症報告が増加している。新しい型(W型)の集団感染は、イギリスを経由してオーストラリアにやってきたと考えられている。イギリスでは2015年8月に、青少年を対象に4価ワクチンの単回接種が導入され、1年目の結果、接種率が36.6%と低かったにもかかわらず、W型の感染例が69%減少したとの報告がある4)。 「IMD予防のためには、適切なワクチンを正しい時期に接種する必要がある」とピアース氏は語る。オーストラリアでは、州ごとに集団感染予防の対応を行っていたが、昨年から国での対応が開始され、2018年7月からは、全国プログラムが導入される予定である。同氏は、「IMDは命を脅かす疾患だが、ワクチンで防ぐことができる。日本でも、関連学会の推奨に基づき、10代はワクチン接種を行う必要がある」と締めくくった。オリンピック前に、IMDの流行対策が必要 次に、川上 一恵氏(かずえキッズクリニック 院長、東京都医師会 理事)が、IMDへの備えを語った。わが国では、IMDは感染症法により5類感染症に指定されているが、学生寮などで集団生活を送る10代の感染リスクについては、注意喚起に留まっている。現在の発症状況は年間30人前後と落ち着いているが、戦後1945年頃は年間患者数が4,000人を超えていた時期もあり、2014年に国内で流行したデング熱のように、再来する可能性も否めないと川上氏は指摘する。 IMDの迅速検査は現在未開発で、インフルエンザ検査後、血液検査でCRPの上昇を見て鑑別される方法が行われている。早期に気付き治療を施せば、抗菌薬は効果があると同氏は語る。しかし、特効薬はなく、耐性菌の出現により抗菌薬は使いづらいのが現状だ。このため、世界的にワクチン頼りの対策となっている。 医療従事者を含めて、IMDの重篤性、ワクチン接種に対する認知度が低く、発症リスク(年齢、密集した集団生活、海外の流行地域など)は十分に知られていない。また、適切に対応できる医師が少ない問題点が指摘された。同氏は、「2020年に迎える東京オリンピックを機にIMDが流行する恐れがある」と警告し、「疾患の啓発を進め、感染リスクが高い環境にある者はワクチンを接種すべき」と締めくくった。同氏のクリニックでは、髄膜炎菌に暴露する危険性を考慮し、スタッフ全員がワクチン接種を済ませているという。 4価髄膜炎菌ワクチン(商品名:メナクトラ筋注)は、日本では2015年に発売され、任意接種が可能である。在庫確保の都合上、希望者は、事前に医療機関にその旨を伝えるよう併せて説明が必要となる。■参考1)Christensen H, et al. Lancet Infect Dis. 2010;12:853-861.2)World Health Organization. Meningococcal meningitis Fact sheet No.141. 2012.3)Nancy E. Rosenstein, et al. N Engl J Med. 2001;344:1378-1388.4)Campbell H, et al. Emerg Infect Dis. 2017;23:1184-1187.

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ジカウイルス、症候性男性精液の3割から検出/NEJM

 蚊媒介性のジカウイルス(ZIKV)は、症候性の男性約3割の精液中に、また約4%の尿中に存在していたことが明らかにされた。6ヵ月以上残存する男性もいたという。一方で、感染性ZIKVが検出されたのはごくわずかで、そのすべてが発症後30日以内に検体が採取された男性だった。米国疾病管理予防センター(CDC)のPaul S. Mead氏らが、185例の男性患者を対象に行った前向き試験の結果で、NEJM誌2018年4月12日号で発表した。ZIKVは蚊媒介性の新出現フラビウイルスで、有害な出生アウトカムとの関連が報告されている。症候性ZIKV感染の男性185例の精液と尿を検査 研究グループは、症候性ZIKV感染の男性185例を対象に試験を行い、ZIKVの精液や尿への排出頻度とその期間について検証した。排出期間の長期化についても、そのリスク因子を特定する検討を行った。 発症後6ヵ月間に検体を月2回採取し、ZIKV RNAについてはRT-PCR法で、感染性ZIKVについてはベロ細胞培養とプラークアッセイで検出した。感染性ZIKVは発症後30日以内でのみ検出 発症後14~304日の間に、精液は184例から1,327検体、尿は183例から1,038検体、それぞれ採取された。そのうちZIKV RNAが検出されたのは、精液検体では60例(33%)、尿検体では7例(4%)で、発症後30日以内に精液採取を行った人のうちZIKV RNAが検出されたのは、36例中22例(61%)だった。 精液中へのZIKV RNA排出は、発症後3ヵ月間に大幅に減少したが、1例(1%)では281日後に検出された。 ZIKV RNA排出長期化に関する独立リスク因子は、高年齢、射精回数の低頻度、発症時での特定の症状だった。 また、感染性ZIKVが分離されたのは、ZIKV RNAが検出された精液78検体のうち3検体と少なく、そのすべてが発症後30日以内に採取されたもので、精液中ZIKV RNA量は7.0 log10コピー/mL以上だった。

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ラッサ熱に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。ラッサ熱を疑ったら、次の対応は?前回は私のリハビリも兼ねてラッサ熱の疫学、臨床症状などについて、いつにも増してまったりとご紹介させていただきました。今回は国内における診断、治療、そして日本での報告、さらには現在のナイジェリアでのアウトブレイクについてご紹介いたします。まず、国内での診断についてです。前回も触れましたように、ラッサ熱は一類感染症に指定されていますので、ラッサ熱が疑われる事例では日本全国約50施設ある特定感染症指定医療機関または第一種感染症指定医療機関で診療することになっております。だいたい各都道府県に1施設はあります。東京なんか、わが国立国際医療研究センター以外にも、都立墨東病院、都立駒込病院、荏原病院、自衛隊病院と5つもの施設がひしめく激戦区です(まあ別に戦ってないんですが)。ではどのような場合に、こうした病院に搬送することになるのでしょうか。名著といわれている『輸入感染症A to Z』に記載のあるとおり、輸入感染症の診断の基本は「渡航地・潜伏期・曝露歴」の3つが重要です。渡航地:ラッサ熱の流行地域(リベリア、ギニア、シエラレオネ、ナイジェリア    など)に渡航後潜伏期:渡航後3週間以内に発症した曝露歴:マストミスとの接触歴のある症例このような症例を診た場合に、ただちに管轄の保健所に連絡して指示を仰いでください。このうち必ずしもすべてが該当しない場合も、疑わしければ保健所に相談するのが無難です。さて、これらの感染症指定医療機関で行われる診療についてです。診断は血清を用いたPCRまたは抗体検査です。検査自体は普通ですね。しかし、これらは当然ながら普通に院内の検査室ではできませんので、国立感染症研究所(村山庁舎)などで検査を行うことになります。ラッサ熱の治療薬リバビリン一般的にウイルス性出血熱の治療として有効な薬剤はほぼなく、対症療法を行うというのが原則なのですが、ラッサ熱に関してはリバビリン(商品名:レベトール、コペガス)の有効性が証明されています。リバビリンですよ、リバビリン。C型肝炎の治療薬で一世を風靡した(かどうかは知りませんが)あのリバビリンです。眉唾かと思われるかもしれませんが、実際にラッサ熱にリバビリンが有効であるとする報告は数十年前から存在します。抗RNA ウイルス薬の1つであるリバビリンは、in vitroでラッサウイルスの増殖を抑制し、発症早期に投与されれば治療効果が期待できるとされます。絶対に覚えなくてもいいと思いますが、一応書いておきますとリバビリンの静注投与は、初めに32mg/kg/doseで投与し、次いで16mg/kg/doseを6時間毎に4日間、さらに8mg/kg/doseを8時間毎に6日間投与します。ラッサ熱なんて診ることはないから、知らなくてもいいだろうと思われる読者諸氏も多いことと思います。実際そのとおりかもしれませんが、他のウイルス性出血熱に比べるとラッサ熱を診る可能性の方は少し高いかもしれません。ラッサ熱の輸入例(流行地域で感染し非流行地域で診断された事例)は約30例もあり、これはウイルス性出血熱の中では圧倒的に多い症例数です。大半がヨーロッパでの報告ですが、アメリカでも報告があります。そして…なんと日本でも報告例があるのですッ!! いや、マジで。冗談ではなく。国内例、あるんですよ、ラッサ熱。意外と知られていない事実ですが、過去に日本はウイルス性出血熱を実は経験しているのですッ!31年前に日本でラッサ熱!?そう、あれは1987年のこと…(といっても僕が小学生の頃ですのでまったく知りませんが)。シエラレオネに水道関係の仕事で訪れていた40代の男性が、帰国後に発熱、筋肉痛、頭痛などの症状で東京大学医科学研究所附属病院を受診しました。来院時の血液検査では、白血球・血小板の減少と肝機能異常がみられ、マラリアが疑われましたが末梢血ギムザ染色は陰性。しばらく様子が見られていましたが、激しい下痢などの症状を経て、入院1ヵ月後に自然軽快したとのことです。原因がわからずいろんな検査が行われた結果、最終的にラッサ熱の抗体が陽性となり本症と診断された、とのことです。この事例から約30年が経っていますが、ウイルス性出血熱はけっして対岸の火事ではないということがわかる教訓的な一例です、はい。詳しく知りたい方は、倉田 毅先生(元 国立感染症研究所所長)の興味深いお話が過去の『週刊 医学界新聞』に掲載されておりますのでご参照ください。 ナイジェリアの現在の様子最後にアウトブレイク情報ですが、前回も触れたように現在ナイジェリアでは、ラッサ熱が大流行しています。ちょっと最近なかったレベルの大流行です。2018年1月から現在までに1,000例を超える疑い例と、90例を超える死亡者が報告されています。図1がナイジェリア国内での流行状況ですが、とくにEdo州、 Ondo州、 Ebonyi州といった地域で症例が多く報告されています。画像を拡大するまた、図2はラッサ熱の流行曲線ですが、2018年2月下旬~3月上旬くらいが症例数のピークとなっています。一見すると流行は終息に向かっているようにも見えますが、まだまだダラダラ報告が続いており予断を許さない状況です。ナイジェリア帰国後の発熱では頭の片隅にラッサ熱を置いておきましょう!画像を拡大するというわけで、前回から2回にわたってラッサ熱についてご紹介いたしました。ウイルス性出血熱の中では、日本に入ってくる可能性が比較的高い感染症ですので、概要は知っておいてもよろしいかと思います。さて、次回こそはようやくホントに「バベシア症」についてご紹介したいと思いますッ!1)国際感染症センター 国際感染症対策室 Resource内「ウイルス性出血熱診療の手引き2017」2)Nigeria CDC. An update of Lassa fever outbreak in Nigeria.

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