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ペットが糖尿病なら、飼い主も危ない?/BMJ

 飼い犬が糖尿病の飼い主は、飼い犬が糖尿病ではない飼い主と比べて、2型糖尿病の発症リスクが有意に高い(約1.3倍)ことがデータで明らかにされた。逆に飼い主が2型糖尿病の際の飼い犬の糖尿病発症リスクの増大については、有意な関連性は認められず、また、飼い猫と飼い主には、そのような関連性は認められなかったという。スウェーデン・ウプサラ大学のRachel Ann Delicano氏らが、飼い犬と飼い主のペア約21万組、飼い猫と飼い主のペア約12万組について行った縦断研究の結果を報告した。飼い犬と飼い主は、身体活動量など特定の健康行動を共有する場合がある。以前に行われた横断研究で、飼い犬と飼い主における肥満について関連性があることが示されていたが、飼い犬と飼い主および飼い猫と飼い主で糖尿病リスクを共有するのか調べた研究はこれまでなかった。BMJ誌2020年12月10日号クリスマス特集号の「THE CITADEL」より。ペット保険の情報、患者レジストリなどを基に調査 研究グループは、スウェーデンで暮らす犬の40%、猫の23%をカバーするペット保険の情報と、保健福祉庁などのレジストリを基に、2004~06年の飼い犬と飼い主のペア20万8,980組、飼い猫と飼い主のペア12万3,566組を対象に登録ベースの縦断研究を行った。 飼い主の2型糖尿病の有無については、全国患者レジストリやスウェーデン処方薬レジストリなどを、また、犬・猫についてはペット保険データを基に、2007~12年まで追跡した。 多状態モデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出評価。個人や社会経済的状況など考えられる共有リスク因子で補正を行った。飼い“猫”と飼い主では、関係性はみられず 追跡期間中の2型糖尿病罹患率は、犬の飼い主が7.7/1,000人年だったのに対し、猫の飼い主では7.9/1,000人年だった。ペットの糖尿病罹患率は、犬が1.3/1,000匹年、猫が2.2/1,000匹年だった。 飼い犬が糖尿病ではない飼い主と比較した、飼い犬が糖尿病の飼い主の2型糖尿病発症に関する補正前HRは、1.38(95%CI:1.10~1.74)、多変量補整後HRは、1.32(1.04~1.68)だった。 反対に、飼い主が2型糖尿病ではない飼い犬と比較した、飼い主が2型糖尿病の飼い犬の糖尿病発症に関する補整前HRは、1.28(95%CI:1.01~1.63)だった。しかしながら同HRは、飼い主の年齢で補整後は減弱(CI値はnull値を交叉)した(補整後HR:1.11、95%CI:0.87~1.42)。 なお、猫の飼い主の2型糖尿病と飼い猫の糖尿病については、有意な関連は認められなかった。 結果を踏まえて著者は、「糖尿病の犬は、糖尿病を引き起こす健康行動や環境曝露を共有するための番犬(sentinel)としての務めを果たす可能性がある」とまとめている。

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「セイブル」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第31回

第31回 「セイブル」の名称の由来は?販売名セイブル®錠25mg、セイブル®錠50mg、セイブル®錠75mgセイブル®OD錠25mg、セイブル®OD錠50mg、セイブル®OD錠75mg一般名(和名[命名法])ミグリトール(JAN)効能又は効果糖尿病の食後過血糖の改善(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤、ビグアナイド系薬剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)用法及び用量通常、成人にはミグリトールとして1回50mgを1日3回毎食直前に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を75mgまで増量することができる。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]2.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]3.本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者4.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2020年12月23日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年8月改訂(第18版)医薬品インタビューフォーム「セイブル®錠25mg・50mg・75mg/セイブル®OD錠25mg・50mg・75mg」2)三和化学研究所:医薬品一覧

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「リウマチを悪友」と呼ぶ患者さん/日本イーライリリー

 高血圧、糖尿病などとともに慢性疾患の代表格と言われる「関節リウマチ」。わが国の関節リウマチ患者数は70~80万人と推定され、仕事や家庭を築くライフステージの重要期にある40代の女性が診断されることも多い疾患と言われている。近年では、治療薬の進歩もあり、患者さんのQOLの改善は大きく進展している。その一方で、目に見えない「痛み」、「倦怠感」、「朝のこわばり」という症状は、周囲の理解を得ることが難しく、また、伝えることも容易でないため、社会生活において悩みを抱える患者さんも多いという。 日本イーライリリーと女性の暮らしを応援する「生活情報サイトハルメクWEB」は、関節リウマチ患者さんの周囲に理解されにくい症状・日常生活の困りごとを俳句で詠む「GoodDAY関節リウマチ俳句コンテスト」を共催し、受賞作品を発表した。 コンテストでは、関節リウマチ患者さんや周囲の方を対象に、患者さんが抱える日常生活の困りごとや、医療従事者やご家族の方とのコミュニケーションについて、俳句とその元になったエピソードを募集。当事者ならではの疾患に対するさまざまな想いや、自身の経験をリアルに綴った俳句とエピソードが828句が寄せられた。 選者は、テレビで活躍中の夏井いつき氏を審査員長に、関係する患者団体、医療者の代表が審査し、大賞1句、審査員特別賞3句、部門賞4句が決定した。 日本イーライリリーでは、「本コンテストが、関節リウマチ患者さんのより良い1日(GoodDAY)について、患者さんや患者さんを取り巻く皆様と共に考えるきっかけとなることを願っている」と期待を寄せている。■受賞作品【大賞】 リウマチを悪友と呼び花野ゆく(吉野智子さん/70代/神奈川県)【入賞】 つまめない箸も下着も枝豆も(浜崎真理さん/30代/神奈川県) 決断の空路9時間氷河踏む(鈴木みつよさん/70代/大分県) コオロギの愚痴も拾った聴診器(小松崎有美さん/60代/埼玉県) 木の芽時(このめどき)まずは頑張り誉める医師(瀬川令子さん/50代/三重県)【審査員特別賞】 こわばりや寒月にまた触れたらし(ぐさん/30代/神奈川県) さする手に重ねてさする秋始め(かあたさん/50代/岐阜県) リウマチと告げられし日や雛の日(田中ウカさん/60代/神奈川県)

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高用量インフルワクチン、高リスクCVDの死亡改善せず/JAMA

 高リスク心血管疾患患者では、高用量3価不活化インフルエンザワクチンは標準用量4価不活化インフルエンザワクチンと比較して、全死因死亡率や心肺疾患による入院率を低下させないことが、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが行ったINVESTED試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年12月4日号で報告された。インフルエンザは、ワクチン接種への免疫応答が強くない心血管疾患患者の心肺合併症や死亡の割合を一時的に高めるという。高用量のインフルエンザワクチンは、インフルエンザによる疾患のリスクを低減する可能性が示唆されている。北米157施設が参加した実践的な無作為化実薬対照比較試験 本研究は、米国とカナダの157施設が参加した実践的な二重盲検無作為化実薬対照比較試験であり、2016年9月21日~2019年1月31日の期間の3回のインフルエンザ流行期に実施された(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。 対象は、1つ以上のリスク因子(65歳以上、糖尿病、LVEF<40%、BMI≧30、CKDの既往、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患など)を有し、過去12ヵ月間に急性心筋梗塞による入院歴または過去24ヵ月間に心不全による入院歴のある患者であった。 被験者は、高用量3価または標準用量4価の不活化インフルエンザワクチンを接種する群に無作為に割り付けられ、最大3回の流行期に再接種が可能とされた。 主要アウトカムは、各流行期における全死因死亡および心肺疾患による入院の複合が発生するまでの期間とした。最終フォローアップ日は2019年7月31日だった。4つの副次アウトカムにも差はない 3回の流行期に5,260例(平均年齢:65.5[SD 12.6]歳、男性3,787例[72%]、心不全3,289例[63%]、心筋梗塞1,960例[37%])が無作為化の対象となり、高用量ワクチン群に2,630例、標準用量ワクチン群にも2,630例が割り付けられた。総ワクチン接種回数は7,154回で、5,226例(99.4%)が試験を完了した。 主要アウトカムは、高用量群では、3,577人流行期当たり884例に975件(心肺疾患が原因の入院883件、全死因死亡92件)発生した(イベント発生率:45件/100人年)。これに対し、標準用量群では、主要アウトカムが3,577人流行期当たり837例に924件(心肺疾患が原因の入院846件、全死因死亡78件)発生した(イベント発生率:42件/100人年)。イベント発生のハザード比(HR)は1.06(95%信頼区間[CI]:0.97~1.17)であり、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.21)。 個々の流行期(2016~17年:HR:1.08[95%CI:0.80~1.45、p=0.61]、2017~18年:1.12[0.98~1.29、p=0.10]、2018~19年:1.01[0.89~1.15、p=0.86])においても、両群間に有意差はみられなかった。また、4つの副次アウトカム(個々の流行期の心血管死および入院、全死因死亡、全流行期の心肺疾患による入院および全死因死亡、全流行期の心肺疾患による入院および全死因死亡の初回発生)にも有意な差はなかった。 ワクチン関連有害事象は、高用量群が1,449例(40.5%)、標準用量群は1,229例(34.4%)で発現した。最も頻度の高い有害事象は、注射部位の疼痛(高用量群26.1% vs.標準用量群19.1%)、筋肉痛(14.0% vs.11.8%)などであり、高用量群で高い傾向がみられた。重度の有害事象は、高用量群が55例(2.1%)、標準用量群は44例(1.7%)で、重篤な有害事象はそれぞれ2例および4例で認められた。 著者は、「この患者集団では、引き続きインフルエンザワクチン接種が強く推奨される」としている。

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世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠3mg/7mg/14mg」【下平博士のDIノート】第64回

世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠3mg/7mg/14mg」今回は、2型糖尿病治療薬「セマグルチド(商品名:リベルサス錠3mg/7mg/14mg、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬であり、注射剤に抵抗がある患者さんであってもQOLを損ねずに良好な血糖コントロールを得られることが期待できます。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2020年6月29日に承認、同年11月18日に薬価収載されています。<用法・用量>通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として1日1回3mgを開始用量として経口投与し、4週間以上投与した後に1日1回7mgの維持用量に増量します。1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgまで増量することができます。なお、本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、1日の最初の飲水・食事前にコップ半分の水(約120mL以下)とともに本剤を服用します。服用時および服用後少なくとも30分は、飲食およびほかの薬剤の経口摂取を避ける必要があります。分割や粉砕、かみ砕いて服用することはできません。<安全性>日本人が参加した第III相臨床試験(併合データ)において、安全性評価対象症例3,290例中1,166例(35.4%)に副作用が認められました。主な副作用は、悪心355例(10.8%)、下痢204例(6.2%)、食欲減退147例(4.5%)、便秘143例(4.3%)、嘔吐142例(4.3%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、急性膵炎(0.1%)、低血糖(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は膵臓に作用して、血糖値が高くなった際にインスリンの分泌を促すことで血糖値を下げます。2.1日の最初の飲食の前に、空腹の状態でコップ約半分の水とともに服用してください。その後の飲食や他剤の服用は、本剤の服用から少なくとも30分経ってからにしてください。3.本剤は吸湿性が強いため、服用直前にシートから取り出してください。また、割ったりかんだりしないでください。4.冷や汗が出る、血の気が引く、手足の震えなど、低血糖が考えられる症状が発現した場合は、速やかに砂糖かブドウ糖が含まれる飲食物を摂取してください。高所作業、自動車の運転などを行う際は十分に注意してください。5.胃の不快感、便秘、下痢などの消化器症状が起こることがあります。症状が長く続く場合や、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などが現れた場合は、すぐに病院か薬局に連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は初の経口GLP-1受容体作動薬であり、同成分の皮下注製剤(商品名:オゼンピック)は一足早く発売されています。GLP-1受容体作動薬は分子量が大きいため、胃からの吸収が難しく、消化酵素により分解されやすいこともあり、これまで注射剤しかありませんでした。本剤は、サルカプロザートナトリウム(SNAC)と呼ばれる吸収促進剤を添加することで、胃からの吸収が促進され、生物学的利用能が高まったことから経口投与が可能となりました。本剤の吸収は錠剤表面の周辺部に限定されることから、SNACの含有量の差異および物理的に2つの錠剤が胃内に存在すると本剤の吸収に影響を及ぼす可能性があるため、本剤14mgを投与する際に7mg錠を2錠で投与することはできません。また、本剤のシートをミシン目以外で切って保管すると、湿気などの影響を受ける恐れがあります。そのため、調剤の際はとくに注意が必要です。臨床効果については、2型糖尿病患者を対象とした2つの国内試験、国際共同試験、海外臨床試験などで、HbA1cの持続的な改善効果が示されました。また、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン、DPP-4阻害薬、さらにGLP-1受容体作動薬リラグルチド皮下注などとの比較試験においても、HbA1cや体重の低下量は同等かより良好な結果を示しています。本剤を含むGLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、いずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有しており、併用した場合の有効性および安全性は確認されていないため、両剤が処方されている場合は疑義照会が必要です。本剤の吸収は胃の内容物により低下するため、起床後に空腹の状態で服用し、その後の30分間は何も飲食してはいけないなど、特別な注意が必要です。患者さんの理解度を確かめながら指導とフォローアップをしっかり行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 リベルサス錠3mg/リベルサス錠7mg/リベルサス錠14mg

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finerenone、2型糖尿病合併CKD患者で心血管リスクを抑制/NEJM

 2型糖尿病を併発する慢性腎臓病(CKD)患者において、finerenoneの投与はプラセボに比べ、CKDの進行と心血管イベントのリスクを低減させることが、米国・シカゴ大学病院のGeorge L. Bakris氏らが行った「FIDELIO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年12月3日号に掲載された。2型糖尿病はCKDの主要な原因であり、2型糖尿病患者のCKD管理ガイドラインでは、高血圧や高血糖の管理とともにさまざまな薬物療法が推奨されているが、CKDの進行のリスクは解消されておらず、新たな治療が求められている。finerenoneは、非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、CKDと2型糖尿病を併発する患者を対象とする短期試験でアルブミン尿を減少させると報告されている。finerenoneがCKDの進行を抑制するとの仮説を検証 研究グループは、2型糖尿病を合併するCKD進行例において、finerenoneはCKDの進行を抑制し、心血管系の併存疾患や死亡を低下させるとの仮説を検証する目的で、二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(Bayerの助成による)。2015年9月~2018年6月の期間に、48ヵ国でスクリーニングと無作為化が行われた。 対象は、年齢18歳以上のCKDと2型糖尿病を有する患者であった。尿中アルブミン/クレアチニン比(アルブミンはmg、クレアチニンはg単位で測定)が≧30~<300、推算糸球体濾過量(eGFR)が≧25~<60mL/分/1.73m2体表面積で糖尿病性網膜症を有する患者、または尿中アルブミン/クレアチニン比が300~5,000でeGFRが≧25~<75mL/分/1.73m2の患者が適格例とされた。全例がレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)による治療を受け、無作為化の前に、投与量を製薬会社の添付文書に記載された忍容できない副作用を起こさない最大用量に調節された。 被験者は、finerenoneを経口投与する群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要複合アウトカムは、腎不全、eGFRのベースラインから40%以上の持続的な低下、腎臓死とし、time-to-event解析で評価された。主要な副次複合アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院であり、time-to-event解析で評価が行われた。finerenone群で主要複合アウトカムのイベントが有意に低下 5,674例が解析に含まれ、2,833例がfinerenone群(平均年齢[SD]65.4±8.9歳、男性68.9%)、2,841例がプラセボ群(65.7±9.2歳、71.5%)に割り付けられた。98.1%がACE阻害薬、98.8%がARBの忍容できない副作用を起こさない最大用量による治療を受けていた。フォローアップ期間中央値は2.6年だった。 主要アウトカムのイベントは、finerenone群が2,833例中504例(17.8%)、プラセボ群は2,841例中600例(21.1%)で発生し、finerenone群で有意に低下した(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.73~0.93、p=0.001)。各構成要素の発生は、eGFRのベースラインから40%以上の持続的な低下(0.81、0.72~0.92)と腎不全(0.87、0.72~1.05)はfinerenone群で低い傾向があり、腎臓死は両群とも2例ずつで認められた。 主要な副次アウトカムのイベントは、finerenone群が367例(13.0%)、プラセボ群は420例(14.8%)で発生し、finerenone群で有意に良好だった(HR:0.86、95%CI:0.75~0.99、p=0.03)。各構成要素の発生は、非致死的脳卒中(1.03、0.76~1.38)を除き、心血管死(0.86、0.68~1.08)、非致死的心筋梗塞(0.80、0.58~1.09)、心不全による入院(0.86、0.68~1.08)はいずれもfinerenone群で低い傾向がみられた。 試験期間中に発現した有害事象の頻度は両群で同程度であり(finerenone群87.3% vs.プラセボ群87.5%)、重篤な有害事象はそれぞれ31.9%および34.3%で発生した。高カリウム血症関連の有害事象の頻度は、finerenone群がプラセボ群の約2倍(18.3% vs.9.0%)で、試験レジメン中止の原因となった高カリウム血症の頻度もfinerenone群で高かった(2.3% vs.0.9%)。 著者は、「finerenoneの有益性は、部分的にナトリウム利尿作用の機序を介していることが示唆される」とし、「本試験の参加者は多くがCKD進行例で、アルブミン尿がみられない患者や2型糖尿病に起因しないCKDは除外しており、黒人の参加者は4.7%にすぎないことから、今回の知見の一般化可能性は限定的と考えられる」と指摘している。

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HFpEFに対するsGC刺激薬の効果―VITALITY-HFpEF試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1329

 VITALITY-HFpEF試験では、6ヵ月以内に心不全増悪の既往を有する左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)を対象にして、可溶型グアニリル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬であるvericiguat 10mg/日あるいは15mg/日を24週間投与した際の生活の質(QOL)ならびに運動耐容能に対する効果が、多施設共同第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験として検証された。結論としてvericiguatの有効性は示されず1)、HFpEFに対する臨床試験としては、またしてもネガティブな結果に終わった。 本研究に先立って行われたSOCRATES-PRESERVED試験では、HFpEFに対するvericiguatの12週間投与がN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値および左房容積に及ぼす効果について検証された。プライマリエンドポイントにvericiguat投与群とプラセボ群間で有意差を認めなかったが、探索項目として調査されたカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)によるQOL評価値が、vericiguat 10mg/日投与群においてプラセボ群に比べ有意に改善した2)。このことにより、より長期の24週間にわたって10~15mg/日の高用量を投与する本研究はQOLを改善させ、同時に運動耐容能を改善するのではないかと考えられた。しかしながら、今回の研究においてKCCQの身体制限に関するスコアや6分間歩行距離に有意な結果が得られなかっただけでなく、JAMA誌の同号に掲載されたCAPACITY HFpEF試験(Phase II)でも、sGC刺激薬であるpraliciguatは、HFpEFにおける最大酸素摂取量をはじめとした運動耐容能を改善するには至らなかった3)。 HFpEF患者の心筋生検標本を用いた検討においては、環状グアノシン3’,5’-1リン酸(cGMP)ならびにプロテインキナーゼG(PKG)活性の低下が報告されており4)、加齢や、糖尿病、高血圧、肥満などのHFpEFに多く認める併存症によって血管内皮機能が障害され、一酸化窒素(NO)の生物学的利用能が低下することが原因と考えられてきた5)。PKGの活性低下は左室の肥大・線維化を介して拡張機能障害をもたらすことから、NO-cGMP-PKG経路が治療標的として着目されるに至った。 しかしながら、HFpEFの左室における圧容積曲線の特性上、血管拡張作用を有する薬剤は、過降圧や一回拍出量低下などを来すことにより、むしろ血行動態を悪化させてしまう可能性が指摘されており6)、これまでの血管拡張作用を有する薬剤を用いた大規模臨床試験では、いずれも有意な結果が得られていない。本試験においても、症候性低血圧の出現頻度は、vericiguat 15mg/日、10mg/日、プラセボの各群で、6.4%、4.2%、3.4%とvericiguat高用量投与群において高率に発生している。血行動態にまで悪影響をもたらしたかどうかは不明であるが、QOL改善に至らなかった一因と考えられる。 NO-cGMP-PKG経路の障害は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の全身ならびに冠動脈における血管平滑筋細胞に生じており、前・後負荷増大とともに心筋虚血を悪化させている7-9)。cGMPを増加させるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)やsGC刺激薬はHFrEFの予後を改善することが報告されているが10,11)、冠動脈疾患の合併が比較的少なく、血管拡張薬によって血行動態の改善が得られにくいHFpEFでは、sGC刺激薬の効果が十分に得られなかった可能性が考えられる。また、sGC刺激薬以外にも、経口硝酸薬やホスホジエステラーゼ5阻害薬、ARNIを用いた研究が過去に行われているが、いずれも有意な結果が得られていない12-15)。PKG活性の低下から心筋肥大・線維化を呈し、すでに症候性となっている段階では、NO-cGMP-PKG障害が治療標的とはなり得なかった可能性もある。ただし、病態によっては有効な可能性も否定できず、多様な病態を持つHFpEFに対しては、ディープフェノタイピングに基づいた精密医療が今後は必要になるものと考えられる。引用文献1)Armstrong PW, et al. JAMA. 2020;324:1512-1521.2)Pieske B, et al. Eur Heart J. 2017;38:1119-1127.3)Udelson JE, et al. JAMA. 2020;324:1522-1531.4)Komajda M, et al. Eur Heart J. 2014;35:1022-1032.5)Emdin M, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76:1795-1807.6)Schwartzenberg S, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;59:442-451.7)Kubo SH, et al. Circulation. 1991;84:1589-1596.8)Ramsey MW, et al. Circulation. 1995;92:3212-3219.9)Katz SD, et al. Circulation. 2005;111:310-314.10)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020;382:1883-1893.11)McMurray JJ, et al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.12)Redfield MM, et al. N Engl J Med. 2015;373:2314-2324.13)Borlaug BA, et al. JAMA. 2018;320:1764-1773.14)Redfield MM, et al. JAMA. 2013;309:1268-1277.15)Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2019;381:1609-1620.

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第32回 推定の落とし穴とは?【統計のそこが知りたい!】

第32回 推定の落とし穴とは?母集団のことを調べるために、母集団の一部(サンプル)に臨床試験を行い、観測データの基本統計量から母集団の平均値などを推定することを「統計的推定」と言います。母集団から抽出されたサンプルは、全体(母集団)の中でも平均が小さいほうかもしれませんし、大きいほうかもしれません。このようにたまたま抽出されたサンプルの平均をもって、全体(母集団)の平均であると言い切ってしまうのは危険です。そこで得られた平均値に一定の幅を持たせます。つまりこのサンプルの平均は「○○○~○○○の間にある」という言い方で、母集団の平均値を推定するわけです。このようにサンプル平均に幅をもたせ、母集団の統計量を推定する方法を「区間推定法」と言います。しかし、ここでもサンプルサイズ(n数)を増やしていけば、この区間の幅をどんどん狭くしていくことができます。このような推定の落とし穴にはまらないためには、どこに注意すればいいのか解説します。■信頼区間(Confidence Interval:CI)「○○○~○○○の間にある」、すなわち「M1~M2」と言うとき、M1を「下限値」、M2を「上限値」と言います。そして、この2つに挟まれた区間を「信頼区間」と言います。信頼区間CI(Confidence Interval)は、母集団の真の値が含まれることが、かなり確信できる数値の範囲です。たとえば95%CIとは、この範囲に母集団の値が存在することが、95%確信できることを意味します。信頼区間の幅は、信頼区間の係数、標準誤差によって決まります。信頼区間の係数は、仮説検定における有意水準5%の概念によって求められる値です。係数は、母集団が正規分布に従っている場合は1.96、従っていない場合はt分布から導かれる値となります。95%CIとは別に99%CIを適用することもあります。■95%信頼区間の求め方95%信頼区間の求め方は次の公式です。下限値=平均値-1.96×標準誤差(SE)上限値=平均値+1.96×標準誤差(SE)さて、前回第31回でも登場しましたが、ここでも標準誤差(SE)が出てきました。ということは、前回の検定と同じように推定の落とし穴があるということです。サンプルサイズ(n数)を増やせば増やすほど、標準誤差(SE)は小さくなります。つまり、サンプルサイズ(n数)を増やして、標準誤差(SE)を小さくすれば、95%信頼区間の幅はどんどん狭くなっていきます。差の信頼区間なら「0をまたがない」、比の信頼区間なら「1をまたがない」可能性がどんどん高くなります。検定のときには、臨床試験の結果から「意味のある差であるかどうか」をしっかりと評価するべきと説明しましたが、推定の場合はどうでしょうか。検定での「臨床試験の結果」に対応するのは、幅を持たせる前の値、すなわち平均や比の点推定値となります。たとえばリスク比の信頼区間で、「点推定値が0.80、95%信頼区間が0.55から1.05」というデータがあったとき、サンプルサイズ(n数)を増やしていくと95%信頼区間はいくらでも狭くできます。その結果、図のようにサンプルサイズ(n数)を増やしていって、たとえば0.63から0.97になれば、「1をまたがないので統計学的に有意」と言えてしまうことになります。しかし、点推定値0.80は、サンプルサイズ(n数)を増やしても大きく変わることはありません。信頼区間が1をまたぐかどうかだけではなく、リスク比の点推定値0.80が意味のある値かどうかも、一緒に評価するべきということになります。統計解析の結果である幅を持たせる前の点推定値が、いくつであるかもきちんと評価することが重要となります。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション4 仮説検定の意味と検定手順セクション7 信頼区間とは?セクション8 信頼区間による仮説検定

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ゴリムマブ、1型糖尿病若年患者のインスリン産生能を改善/NEJM

 新たに顕性1型糖尿病と診断された小児および若年成人において、ゴリムマブの投与はプラセボに比べ、内因性インスリン産生能が優れ、外因性インスリンの使用量は少ないことが、米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校のTeresa Quattrin氏らが行った「T1GER試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年11月19日号に掲載された。1型糖尿病は、膵β細胞の進行性の低下で特徴付けられる自己免疫疾患である。ゴリムマブは、腫瘍壊死因子αに特異的なヒトIgG1-κモノクローナル抗体であり、欧米では成人の関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患、欧州などでは多関節型若年性特発性関節炎や小児の非X線的体軸性脊椎関節炎などの治療法として承認されている。ゴリムマブによる1型糖尿病若年患者の改善効果を評価 本研究は、新規の顕性1型糖尿病若年患者におけるゴリムマブによる膵β細胞機能の保持および糖尿病関連の臨床・代謝指標の改善効果の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、米国の27施設が参加した(Janssen Research and Developmentの助成による)。 対象は、年齢6~21歳、米国糖尿病学会(ADA)の判定基準で新たに顕性(ステージ3)1型糖尿病と診断され、4時間混合食負荷試験でC-ペプチド値が0.2pmol/mL以上の患者であった。被験者は、ゴリムマブを皮下投与する群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、52週間の投与を受けた。 主要エンドポイントは、52週の時点における内因性インスリン産生量とし、4時間混合食負荷試験で産生されたC-ペプチドの濃度-時間曲線下面積(4時間C-ペプチドAUC)で評価された。副次および追加エンドポイントは、インスリン使用量、糖化ヘモグロビン値、低血糖のイベント数、経時的空腹時プロインスリン/C-ペプチド比などであった。ゴリムマブによりβ細胞の健全性が改善されたと示唆される 顕性1型糖尿病若年患者84例が登録され、56例はゴリムマブ群(平均年齢[±SD]13.9±3.7歳、男性55%)、28例はプラセボ群(14.0±4.0歳、64%)に割り付けられた。52週の期間中の平均投与期間は、ゴリムマブ群が47.1週、プラセボ群は49.0週であり、この期間に可能であった27回の注射のうち、それぞれ平均24.2回および24.9回の注射が行われた。 52週の時点における4時間C-ペプチドAUCの平均値(±SD)は、ゴリムマブ群が0.64±0.42pmol/mLと、プラセボ群の0.43±0.39pmol/mLに比べ有意に高かった(p<0.001)。4時間C-ペプチドAUCのベースラインからの変化の平均値は、ゴリムマブ群が-0.13pmol/mL、プラセボ群は-0.49pmol/mLであり、平均低下率はそれぞれ12%および56%であった。 目標達成に向けた治療(treat-to-target)アプローチによって、両群とも良好な血糖コントロールが達成された。平均糖化ヘモグロビン値は、ベースラインがゴリムマブ群7.0±1.1%、プラセボ群7.1±1.2%で、52週時はそれぞれ7.3±1.5%および7.6±1.2%であった。ベースラインから52週までの変化の最小二乗平均値(±SD)には、両群間に有意な差は認められなかった(0.47±0.21% vs.0.56±0.29%、p=0.80)。 平均インスリン使用量は、ベースラインがゴリムマブ群0.42±0.26U/kg/日、プラセボ群0.44±0.20U/kg/日、52週時はそれぞれ0.51±0.28U/kg/日および0.69±0.26U/kg/日であり、ベースラインから52週までの変化の最小二乗平均値(±SD)はゴリムマブ群で有意に低かった(0.07±0.03U/kg/日 vs.0.24±0.04U/kg/日、p=0.001)。 52週時の低血糖イベント数の平均値は、ゴリムマブ群38.2±35.7件、プラセボ群42.9±4.0件であり、両群間に差はなかった(p=0.80)。部分寛解反応(インスリン量で調整した糖化ヘモグロビン値スコア[糖化ヘモグロビン値+4×インスリン量]≦9)は、ゴリムマブ群43%、プラセボ群7%で観察された(群間差36ポイント、95%信頼区間[CI]:22~55)。また、52週の期間中の空腹時プロインスリン/C-ペプチド比中央値は、ゴリムマブ群のほうが安定しており、両群間の差は0.124(95%CI:0.064~0.184)と、ゴリムマブ群で効果が高いことが示唆された。 有害事象は、ゴリムマブ群91%、プラセボ群82%で発現した。感染症はそれぞれ71%および61%で発症したが、重度および重篤な感染症はみられなかった。担当医の判定で有害事象として記録された低血糖イベントは、ゴリムマブ群13例(23%)、プラセボ群2例(7%)で報告された。また、ゴリムマブに対する抗体は30例(54%)で検出され、29例は抗体価が1:1,000未満であり、このうち12例が中和抗体陽性だった。 著者は、「膵β細胞機能障害の指標である空腹時プロインスリン/C-ペプチド比が、プラセボ群では試験期間中に経時的に増加したのに対し、ゴリムマブ群ではほとんど変化しなかったことから、ゴリムマブによりβ細胞の健全性が改善されたと示唆される」としている。

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医師が選ぶ「2020年の顔」TOP5!(医療人、政治家部門)【ケアネット医師会員アンケート結果発表】

新型コロナの国内発生と流行、緊急事態宣言、東京五輪延期…本当にいろいろあった2020年―。今年を振り返ってみて思い浮かぶのは誰の顔でしょうか。ケアネットでは医師会員にアンケートを実施。535人の先生方にご協力いただき、選ばれた「今年の顔」は?今回は、医療人部門と政治家部門のTOP5をご紹介します!新型コロナのコメンテーター部門 、文化・芸能人部門 はこちら!医療人部門第1位 尾身 茂氏ダントツの得票数で第1位となったのは、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議およびその後の分科会で、中心的役割を担っている尾身 茂先生。経験に裏付けされたリーダーシップはもちろん、記者会見などでは報道陣からの質問に根気強く答える姿も印象的でした。選んだ理由のコメント中には、「安定」や「信頼」という言葉が多く並びました。 「尾身 茂」氏を選んだ理由(コメント抜粋)指導者として信頼しています。(60代 産婦人科/大阪府)今年はこの人しかいないでしょう。(40代 内科/東京都)医療と政治の板挟みに苦悩しているところが印象に残った。(50代 精神科/神奈川県)第2位 忽那 賢志氏コメンテーター部門での1位に続き、医療人部門でも2位にランクイン。新型コロナの最前線で診療に当たる感染症専門医として、医師からの知名度と信頼度の高さが伺える結果となりました。国内での症例数があまり多くなかった段階から、エビデンスに自身の診療経験からの知見を織り交ぜ、わかりやすく解説されていた姿が印象に残った先生も多かったのではないでしょうか。 「忽那 賢志」氏を選んだ理由(コメント抜粋)臨床で活躍されており、経験、知識も豊富で、説明も論理的で分かりやすい。(40代 内科/埼玉県)最も信頼できるから。(40代 精神科/愛知県)さまざまなメディア、講演会などで見かける機会が多かったから。(20代 臨床研修医/滋賀県)第3位 岩田 健太郎氏ダイアモンドプリンセス号についてのYouTube動画の配信は、大きな反響を呼びました。選んだ理由についてのコメントでは、「世の中にインパクトを与えた」という声のほか、「良くも悪くも発信力があった」といった声も。現場の医療者が発信する情報として、その後も発信を継続的にチェックしていたという声もあがっています。 「岩田 健太郎」氏を選んだ理由(コメント抜粋)新型コロナウイルス感染症に関する行動および発言が際立っていた。(40代 精神科/北海道)現場の実態をわかっているから。(30代 糖尿病・代謝・内分泌内科/兵庫県)いい意味でも悪い意味でも印象に残ったから。(50代 神経内科/徳島県)第4位 西浦 博氏 「西浦 博」氏を選んだ理由(コメント抜粋)純粋に学問的見地からがんばっておられた。(40代 皮膚科/東京都)統計を介したモデルだが世間で議論するたたき台となった。(30代 膠原病・リウマチ科/北海道)コロナ対策で奮闘された。(20代 臨床研修医/東京都)第5位 山中 伸弥氏 「山中 伸弥」氏を選んだ理由(コメント抜粋)独自の視点で情報発信されているので。(50代 消化器内科/山口県)ツベルクリンの話に共感したから。(50代 産婦人科/愛媛県)政治家部門第1位 安倍 晋三氏憲政史上最長となる7年8ヵ月の長期政権を築き、今年9月に体調不良を理由に辞任した安倍 晋三前内閣総理大臣が第1位に。 アベノマスクや給付金支給などの施策を含め、先進諸国の中では結果的に感染者数を抑えたことを評価する声、体調を慮る声が多くみられました。持病とされる潰瘍性大腸炎に光を当てることにも貢献されたのではないでしょうか。 「安倍 晋三」氏を選んだ理由(コメント抜粋)日本で結果的に感染者を増やさなかったから。(30代 泌尿器科/福岡県 他多数)体調の悪い中リーダーとして可能なかぎりの仕事をされたと思います。(30代 耳鼻咽喉科/福岡県)在任時のさまざまな対策は今も続行されている。(50代 消化器外科/鹿児島県)第2位 吉村 洋文氏新型コロナウイルス感染拡大で各首長のリーダーシップが求められるなか、1975年生まれ45歳の大阪府知事はスピード感のある対応や発信力の高さで注目を集めました。ポピドンヨード入りのうがい薬を推奨した件では批判を浴びましたが、「何とか状況を改善しようと先頭に立って行動している」と評価する声が多く上がりました。 「吉村 洋文」氏を選んだ理由(コメント抜粋)誤った情報もあるが、責任ある立場でより良い方向を目指している姿勢が伝わるから。(30代 小児科/大阪府)第一波の時の対応の早さは今までの日本の政治家ではあまり見られなかったと思う。(40代 泌尿器科/兵庫県)フットワーク良く決断力がある。(40代 糖尿病・代謝・内分泌内科/京都府)第3位 菅 義偉氏第2次安倍政権が発足した2012年以降、長きにわたり官房長官を務めてきた菅氏が、安倍政権を引き継ぐ形で第99代内閣総理大臣に就任しました。突然の交代、そして新型コロナ感染症対応が求められる難しいタイミングでの就任となりましたが、官房長官としての第一波への対応経験に期待するコメントが多く寄せられました。 「菅 義偉」氏を選んだ理由(コメント抜粋)官房長官として初期対応から重責を担っていたから(20代 臨床研修医/滋賀県)安倍政権時代から比較的バランスのとれた政策、実行力が感じられた(40代 血液内科/宮城県)期待も込めて(40代 病理診断科/島根県)第4位 オードリー・タン(唐 鳳)氏 「オードリー・タン」氏を選んだ理由(コメント抜粋)封じ込めに成功した台湾のキーマンである。(40代 神経内科/茨城県)日本のITがいかに遅れているのかを気づかせてくれた。(30代 臨床研修医/福岡県)若くて頭も切れて素晴らしい。(40代 皮膚科/群馬県)第5位 蔡 英文氏 「蔡 英文」氏を選んだ理由(コメント抜粋)民主主義的な手法でコロナ収束に導いた。(30代 内科/広島県)初期のコロナ対策は見事。(30代 心療内科/東京都 他多数)★アンケート概要★アンケート名 :『2020年振り返り企画!さまざまな分野の「今年の人」を挙げてください』実施日    :2020年11月12日~19日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :535件

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SGLT1/2阻害薬sotagliflozin、心不全悪化の糖尿病患者に有効な可能性/NEJM

 心不全の悪化で入院した糖尿病患者において、退院前または退院直後にナトリウム・グルコース共輸送体1/2(SGLT1/2)阻害薬sotagliflozinによる治療を開始すると、心血管死と心不全による入院・緊急受診の総数が、プラセボに比べ有意に低下することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが行った「SOLOIST-WHF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月16日号に掲載された。SGLT2阻害薬は、安定心不全患者において、心不全による入院および心血管死のリスクを低減すると報告されている。一方、非代償性心不全のエピソード後に間もなく開始したSGLT2阻害薬投与の安全性と有効性は知られていないという。32ヵ国306施設が参加したプラセボ対照無作為化第III相試験 研究グループは、心不全の悪化により入院した糖尿病患者の治療におけるsotagliflozinの安全性と有効性を評価する目的で、二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した(SanofiとLexicon Pharmaceuticalsの助成による)。32ヵ国306施設が参加し、2018年6月~2020年3月の期間に患者登録が行われた。 対象は、年齢18~85歳、心不全の徴候および症状がみられたため入院し、利尿薬の静脈内投与を受け、初回入院前に2型糖尿病と診断されるか、初回入院中に検査で2型糖尿病の診断を支持する証拠が得られた患者であった。被験者は、退院前または退院後3日以内にsotagliflozinもしくはプラセボの投与を受ける群に無作為に割り付けられた。sotagliflozinは、副作用を考慮しつつ400mg(1日1回)まで増量してよいとされた。 本試験は、出資者からの資金提供を失ったため早期中止となった。主要エンドポイントは、試験の検出力を高めるために、心血管死、心不全による入院・緊急受診の総数に変更された。退院前・後の投与はいずれも良好、心血管死・全死因死亡には差がない 1,222例が登録され、sotagliflozin群に608例、プラセボ群には614例が割り付けられた。全体の年齢中央値は70歳、女性が33.7%、白人が93.2%であった。79.1%が左室駆出率50%未満で、推定糸球体濾過量中央値は49.7mL/分/1.73m2、糖化ヘモグロビン中央値は7.1%、NT-proBNP中央値は1,799.7pg/mLであった。48.8%が退院前に試験薬の初回投与を受け、51.2%は退院後に受けた(中央値で退院後2日[IQR:1~3])。追跡期間中央値は9.0ヵ月。 主要エンドポイントのイベントは600件(sotagliflozin群245件、プラセボ群355件)発生した。100人年当たりの発生割合は、sotagliflozin群がプラセボ群よりも低かった(51.0件vs.76.3件/100人年、ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.85、p<0.001)。事前に規定されたすべてのサブグループにおいて、主要エンドポイントはsotagliflozin群で良好な傾向が認められ、退院前(0.71、0.51~0.99)および退院後(0.64、0.45~0.90)の投与開始のいずれにおいても有意に優れた。 主要エンドポイントに、入院の原因となった心不全による緊急受診を重複して含めている懸念があったため、心不全による緊急受診を除外し、心血管死と心不全による入院の総数を検討したところ、主要エンドポイントと一致した結果(HR:0.68、95%CI:0.53~0.88)が得られた。 また、心不全による入院・緊急受診の発生割合(40.4% vs.63.9%、HR:0.64、95%CI:0.49~0.83、p<0.001)もsotagliflozin群で低く、主要エンドポイントの結果と一致していた。心血管死(10.6% vs.12.5%、0.84、0.58~1.22、p=0.36)および全死因死亡(13.5% vs.16.3%、0.82、0.59~1.14)には両群間に差はなかった。 変更前の主要エンドポイント(心血管死または心不全による入院)の結果(HR:0.71、95%CI:0.56~0.89)も、変更後の主要エンドポイントと一致していた。 投与中止の原因となった重篤な有害事象は、sotagliflozin群3.0%、プラセボ群2.8%で発現した。最も頻度の高い有害事象は、低血圧(sotagliflozin群6.0% vs.プラセボ群4.6%)、尿路感染症(4.8% vs.5.1%)、下痢(6.1% vs.3.4%)であった。急性腎障害はsotagliflozin群4.1%、プラセボ群4.4%で認められ、重篤な低血糖はsotagliflozin群で頻度が高かった(1.5% vs.0.3%)。 著者は、「本試験では、駆出率が保持された心不全患者におけるsotagliflozinの有益性の評価を行う予定であったが、試験の早期終了およびこのサブグループの患者数が少なかったことから、この点に関して確固たる結論を導き出すのは困難であった」としている。

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高用量オメガ3脂肪酸、高リスク患者のMACE発生を抑制せず/JAMA

 スタチン治療中の心血管高リスクの患者において、通常治療に加えてのEPAとDHAのカルボン酸製剤(オメガ-3CA)の摂取はコーン油摂取と比較して、主要有害心血管イベント(MACE)の複合アウトカムの発生に有意差はなかったことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のStephen J. Nicholls氏らが多施設共同二重盲検無作為化試験「STRENGTH試験」の結果を報告した。EPAとDHAのオメガ-3脂肪酸が心血管リスクを抑制するかは明らかになっていない。一方で、オメガ-3CAはアテローム性脂質異常症や心血管高リスクの患者の脂質および炎症マーカーに対して好ましい効果があることが文書化されていた。著者は、「今回の結果は、MACE抑制を目的とした高リスク患者でのオメガ-3CAの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2020年11月15日号掲載の報告。22ヵ国のスタチン治療中患者を対象に、コーン油と比較 オメガ-3CAまたはコーン油摂取について比較した試験は、北米、欧州、南米、アジア、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの22ヵ国・675の大学または地域病院で、スタチン治療中で心血管リスクが高く、高トリグリセライド血症およびHDLコレステロール(HDL-C)が低値の患者を対象に行われた。2014年10月30日~2017年6月14日に登録が行われ、試験は2020年1月8日に終了、最終患者の受診は2020年5月14日であった。 被験者は、スタチン等の通常の治療に加えて、4g/日のオメガ-3CAを摂取する群(6,539例)または不活性比較群として機能することを目的としたコーン油を摂取する群(6,539例)に、無作為に割り付けられた。 有効性の主要評価項目は、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・冠動脈血行再建術・入院を要した不安定狭心症の複合(MACE)であった。有益性の可能性が見込めず試験は早期に中止 1,384例の患者に主要エンドポイントのイベントが発生した時点(計画では1,600件)で行われた中間解析の結果、オメガ-3CAがコーン油よりも臨床的有益性を認める可能性は低いことが示され、試験は早期に中止となった。 治療中であった1万3,078例の患者(平均年齢62.5[SD 9.0]歳、女性35%、糖尿病70%、LDL-C中央値75.0mg/dL、トリグリセライド中央値240mg/dL、HDL-C中央値36mg/dL、高感度CRP中央値2.1mg/dL)において、1万2,633例(96.6%)が主要エンドポイント発生に関する試験を完了した。 主要エンドポイントの発生は、オメガ-3CA群785例(12.0%)、コーン油群795例(12.2%)であった(ハザード比[HR]:0.99[95%信頼区間[CI]:0.90~1.09]、p=0.84)。 消化器系の有害事象の発現が、オメガ-3CA群(24.7%)でコーン油群(14.7%)よりも高頻度に観察された。

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難治性高コレステロール血症、evinacumabでLDL-C半減/NEJM

 難治性高コレステロール血症患者の治療において、アンジオポエチン様蛋白3(ANGPTL3)の完全ヒト化モノクローナル抗体であるevinacumab(高用量)はプラセボに比べ、LDLコレステロール値を50%以上低下させることが、米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のRobert S. Rosenson氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月15日号に掲載された。ANGPTL3は、リポタンパク質リパーゼや血管内皮リパーゼを阻害することで、脂質代謝の調節において重要な役割を担っている。ANGPTL3の機能喪失型変異を有する患者は、LDLコレステロールやトリグリセライド、HDLコレステロールが大幅に低下した低脂血症の表現型を示し、冠動脈疾患のリスクが一般集団より41%低いと報告されている。evinacumabは、第II相概念実証研究の機能解析で、LDL受容体とは独立の機序でLDLコレステロールを低下させる作用が示唆されている。皮下投与で3用量、静脈内投与で2用量とプラセボを比較 本研究は、難治性高コレステロール血症患者におけるevinacumabの安全性と有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、20ヵ国85施設が参加した(Regeneron Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18~80歳、難治性高コレステロール血症を有するヘテロ接合性または非ヘテロ接合性の原発性家族性高コレステロール血症で、エゼチミブの有無を問わず、最大耐用量のPCSK9阻害薬またはスタチンに抵抗性の患者であった。難治性高コレステロール血症は、アテローム性動脈硬化による心血管疾患がある場合は70mg/dL以上、ない場合は100mg/dL以上と定義された。 被験者は、evinacumabまたはプラセボを皮下または静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。皮下投与では、450mg/週、300mg/週、300mg/2週、プラセボに1対1対1対1の割合で、静脈内投与では、15mg/kg/4週、5mg/kg/4週、プラセボに1対1対1の割合で割り付けられた。 主要エンドポイントは、ベースラインから16週のLDLコレステロールの変化率とした。HDLコレステロールも用量依存性に低下 272例が登録され、皮下投与例(163例、平均年齢54±13.2歳、女性62%、ヘテロ接合性72%)ではevinacumab 450mg群に40例、同300mg/週群に43例、同300mg/2週に39例、プラセボ群には41例が、静脈内投与例(109例、54.6±11.0歳、56%、81%)では、15mg/kg/4週群に39例、5mg/kg/4週群に36例、プラセボ群には34例が割り付けられた。全例がPCSK9阻害薬の投与を受けており、44%が最大耐用量のスタチン、30%がエゼチミブの投与を受けていた。 16週の時点で、皮下投与例におけるベースラインからのLDLコレステロール値の変化率の最小二乗平均値の差は、450mg群とプラセボ群が-56.0ポイント、300mg/週群とプラセボ群が-52.9ポイント、300mg/2週群とプラセボ群は-38.5ポイントであった(いずれもp<0.001)。また、静脈内投与例における変化率の最小二乗平均値の差は、15mg/kg/4週群とプラセボ群が-50.5ポイント(p<0.001)、5mg/kg/4週群とプラセボ群は-24.2ポイントの差であった。皮下投与例、静脈内投与例とも、2週後にはevinacumab治療への反応が認められ、16週まで維持された。 脂質値は、evinacumabの皮下投与および静脈内投与が、プラセボに比べて実質的に低下した。リポ蛋白(a)を除き、アテローム性リポ蛋白はevinacumabの用量依存性に低下した。 皮下投与例におけるHDLコレステロールの16週時のベースラインからの変化は、450mg群が-27.9%、300mg/週群が-30.3%、300mg/2週は-19.5%であり、プラセボ群は-1.7%であった。また、静脈内投与例では、15mg/kg/4週群が-31.4%、5mg/kg/4週群は-14.9%であり、プラセボ群は1.9%だった。 治療期間中の有害事象の発生率は各群54~84%の範囲であり、重篤な有害事象の発生率は3~16%の範囲であった。治療中止の原因となった有害事象は、3~6%で発生した。 著者は、「これらの結果は、ANGPTL3の阻害による、心血管疾患に対する潜在的な有益性を支持するものである」と結論し、「evinacumabで観察されたHDLコレステロール低下の重要性はまだ十分に解明されていないが、自然発生的な遺伝学的ANGPTL3欠損症の患者では、低HDLコレステロールは心血管疾患のリスク増大とは関連がなかったと報告されている」と指摘している。

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SGLT1/2阻害薬sotagliflozin、CKD併存の糖尿病に有効な可能性/NEJM

 2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)(アルブミン尿の有無は問わない)が併存する患者の治療において、ナトリウム・グルコース共輸送体1/2(SGLT1/2)阻害薬sotagliflozinはプラセボに比べ、心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診の複合リスクを低下させるが、とくに注目すべき有害事象の頻度は高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが行った「SCORED試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月16日号で報告された。糖尿病とCKDが併存すると、心不全や虚血性イベントのリスクがいっそう高まる。糖尿病の有無にかかわらず、CKD患者へのSGLT2阻害薬の使用を支持する無作為化試験のデータがあるが、これらの試験は患者選択基準で推定糸球体濾過量の低下に加え顕性アルブミン尿の発現を求めている。一方、CKDが併存する糖尿病患者の治療におけるsotagliflozinの有効性と安全性は十分に検討されていないという。44ヵ国750施設が参加したプラセボ対照無作為化第III相試験 本研究は、CKDが併存する糖尿病患者におけるsotagliflozinの有効性と安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、44ヵ国750施設が参加し、2017年12月~2020年1月の期間に患者登録が行われた(SanofiとLexicon Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、2型糖尿病(糖化ヘモグロビン値≧7%)で、CKD(推定糸球体濾過量25~60mL/分/1.73m2)を伴い、心血管疾患のリスクを有する患者であり、アルブミン尿の有無は問われなかった。被験者は、標準治療に加え、sotagliflozin(200mg、1日1回)またはプラセボの投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。sotagliflozinは、許容されない副作用の発現がなければ400mg(1日1回)まで増量可とされた。 本試験は、目標イベント数に達する前に、資金不足で早期中止となった。主要エンドポイントは、早期中止決定時に、心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診の複合に変更された。心血管死に差はない、変更前の複合主要エンドポイントは良好 1万584例が登録され、5,292例がsotagliflozin群(年齢中央値69歳[IQR:63~74]、女性44.3%)に、5,292例がプラセボ群(69歳[63~74]、45.5%)に割り付けられた。治療期間中央値は、それぞれ14.2ヵ月(IQR:10.3~18.9)および14.3ヵ月(10.3~18.9)で、追跡期間中央値は16ヵ月だった。 主要エンドポイントのイベント発生率は、sotagliflozin群が100人年当たり5.6件、プラセボ群は7.5件(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.63~0.88、p<0.001)であった。心不全による入院と心不全による緊急受診の複合の発生率は、sotagliflozin群が100人年当たり3.5件、プラセボ群は5.1件(0.67、0.55~0.82、p<0.001)であった。心血管死(2.2件vs.2.4件/100人年、0.90、0.73~1.12、p=0.35)には有意差が認められなかった。 変更前の複合主要エンドポイントである心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合(HR:0.84、95%CI:0.72~0.99)および心血管死、心不全による入院の複合(0.77、0.66~0.91)は、いずれもsotagliflozin群で良好だった。 有害事象や治療中止の原因となったイベントの発生割合は両群間に差はなく、重篤な有害事象の発生割合も同程度であった(sotagliflozin群23.4%、プラセボ群25.2%)。sotagliflozin群はプラセボ群に比べ、とくに注目すべき有害事象のうち、下痢(8.5% vs.6.0%、p<0.001)、糖尿病性ケトアシドーシス(0.6% vs.0.3%、p=0.02)、性器真菌感染症(2.4% vs.0.9%、p<0.001)、体液量減少(5.3% vs.4.0%、p=0.003)の頻度が高かった。 著者は、「sotagliflozinの有効性と安全性を評価するには、さらに長期の検討を要する」としている。

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第35回 メディアも市民も「新型コロナに有効」研究の餌食に過ぎない?

「またか」と思わずため息が出てしまった。お茶が新型コロナウイルスに有効という、この記事のことだ。まあ、読めばすぐわかるが、試験管内、in vitroの話である。一応、発表した奈良県立医科大学側のリリースによると、3種類のお茶とコントロールの生理食塩水を、一定のウイルス感染価を有する新型コロナウイルス溶液と1:1で混合して静置し、1分後、10分後、30分後にそれぞれの溶液を培養細胞に接種してウイルス感染価を測定したというもの。確かにリリースを見ると、うち1種類のお茶では1分後の時点でウイルス感染価を計算すると99.625%も低下している。これ自体は事実なのだろう。だが、今発信すべき情報なのかという点では大いに疑問がある。こう書くと、「それはメディアが不勉強だから」と言われるのは分かっている。だが、もしそれを前提にするならば、不勉強な相手への発表なのだから、発信する側もそのやり方次第で責任を問われるべきものなのではないかと従来から考えている。実際、日常的に一般紙ではこの手のin vitroの研究やマウス、ラットレベルのin vivoの研究結果を、言い方は悪いが「誇大広告」のごとくに報じているのをよく見かける。これがどのような経緯で生み出されているかの構造は、実はかなり単純である。端的に言えば、ネタが欲しくて仕方がない記者と世間に少しでも成果をアピールしたい研究者・大学の利害が一致した結果だ。ただ、大手紙と地方紙、大都市圏と地方都市などの環境によって利害状況はやや異なる。大手紙の科学部記者などはin vitro、in vivoの研究に無条件に飛びつくことは少ない。だが、専門性のない社会部記者などは科学部記者よりも「読者にインパクトを与える見出しが立つようなネタかどうか?」に、より軸足が置かれる。また、大手紙地方支局や地方紙の場合、大手紙の科学部レベルの専門性がある記者がいないことも多いうえに、日常的に地元大学の研究者や広報部門と面識があれば、半分お付き合いも兼ねて大学発表の記事化に前向きになりがちである。ちなみにこの手の記事は一般的に年度末が近くなると増える傾向がある。新たな予算獲得や既に獲得した予算の成果を大学や研究者も外部にアピールしたいからだ。今回の記事に前述のような事情があるかどうかは定かではない。だが、この記事が出てきた背景により考えを巡らせるなら、さらに2つのファクターが考えられる。まず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは既に1年近く社会機能をマヒさせ、決定打となる対処法は今のところない。ワクチンはようやくイギリスで緊急承認になったが、全世界に供給されるまでにはまだ時間を要する。感染時に使用できる承認薬は日本国内では抗ウイルス薬のレムデシビルと抗炎症薬のデキサメタゾンのみでいずれも「帯に短し、たすきに長し」である。結局のところAI実用化の現代なのに、今現在できる対策は3密回避、手洗い励行、屋内でのマスク着用という、まるでインテリジェントビルの中で暖を取るのに火打ち石で火を起こして焚火をしているかのごとくである(別に3密対策、手洗い励行、屋内でのマスク着用を馬鹿にしているわけではない)。記者とて医療者とて、この打つ手のなしの状況に何らかの光明を見いだしたい気持ちは同じだろう。そこに今回のお茶のニュースはピタッとはまってしまう。しかも、社会を混乱に陥れているCOVID-19に対抗する「武器」が誰もが身近で手にできるお茶なのだから、不特定多数に発信するメディアにとっても読者にとっても好都合である。やや余談になるが、がんの診療にかかわった経験がある医療従事者の方は、「がんに効く」とのキャッチフレーズにひかれて特定の食品や料理や健康食品にはまるがん患者に遭遇した経験があるだろう。実際、Amazonなどで一般向けのがんに関する書籍の売れ筋ランキングを見ると、上位にはかなりの頻度で「○○を食べたらがんが消えた」という類の本が登場する。特定の食品で発症したがんを治療できないことは医療従事者ならば誰もが承知のこと。しかし、がんに対する三大治療といわれる手術、放射線、抗がん剤はいずれも患者の手の届かないところにある。結局、今現状を何とかしたいと思うがん患者に手が届く対策が食事であり、そこに走ってしまうのはある意味やむを得ないこととも言える。つまり大学・研究者、メディア、一般人の鉄のトライアングルともいえる利害の一致が今回のお茶の記事を生み出していると言える。だが、この中で試験管内での現象がヒトの体内でどれだけ再現できるか、あるいはそれをヒトでより端的に効果を証明するための手法が何かを知っているのは誰だろう? それは間違いなく大学・研究者であるはずだ。だからこそまだまだヒトでの効果を期待するのは程遠い今回のファクトを発表した大学・研究者には疑問どころか軽い怒りさえ覚える。ちなみに9月に柿渋が新型コロナウイルスに有効という情報が一部メディアで流れたことがあるが、これも今回のお茶と同じ奈良県立医科大学で研究者も同じである。ちなみに大学のHPにはその後、柿渋に関して共同研究先を募集する告知が行われている。はっきり言うが、要はメディアもその読者も大学や研究者のアピール、共同研究先開拓の片棒を担がされたに過ぎない。しかも今回のケースでは特定の施設・研究者が繰り返し行っている。この手の一瞬は夢を与える耳障りのいいと情報を連発し、いつの間にか雲散霧消で実用化せずということを繰り返すことは、医学に対する不信感も醸成しかねないと敢えて言っておきたい。

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医師が選ぶ「2020年の顔」TOP5!(文化・芸能人、コメンテーター部門)【ケアネット医師会員アンケート結果発表】

新型コロナの国内発生と流行、緊急事態宣言、東京五輪延期…本当にいろいろあった2020年―。今年を振り返ってみて思い浮かぶのは誰の顔でしょうか。ケアネットでは医師会員にアンケートを実施。535人の先生方にご協力いただき、選ばれた「今年の顔」は?今回は、文化・芸能人部門とコメンテーター部門のTOP5をご紹介します!医療人部門、政治家部門はこちら!文化・芸能人部門(敬称略)第1位 志村 けん最も多くの人が挙げたのが、新型コロナウイルス感染症で今年3月に死去した志村けんさんでした。幅広い年齢層に親しまれた偉大なコメディアンの突然の訃報は、大きく深い悲しみをもたらしただけでなく、国民レベルで新型コロナへの向き合い方を改める契機になるほどのインパクトを与えました。  「志村 けん」を選んだ理由(コメント抜粋)突然のことでとても驚いた。コロナの恐ろしさを身近に感じた。(40代 腎臓内科/大分県 他多数)新型コロナウイルスの危険性が一般に認知されるきっかけとなった。(30代 内科/東京都 他多数)お笑いのレジェンド。いつまでもいる人だと思っていた。(40代 脳神経外科/兵庫県 他多数)第2位 三浦 春馬まさに今を生きていた現役俳優の急逝も、多くの方の記憶に残ったようです。芸能界ではこの後、三浦さんのほかにも自ら命を絶つ人が相次ぎました。さまざまな憶測がメディアで報じられましたが、本当のこと、真相は誰にもわかりません。ただただ、彼らが持ち合わせた才能や輝きが失われたことが惜しまれます。 「三浦 春馬」を選んだ理由(コメント抜粋)自殺対策をやっている身としては印象的だった。(30代 精神科/福岡県 他多数)コロナ禍で自殺する人が増え、衝撃的だった。(20代 麻酔科/三重県 他多数)同世代の有名俳優だったから。(30代 臨床研修医/東京都)第3位 フワちゃん今回、唯一明るさを感じられたのが「フワちゃん」のランクインでした。お笑いタレントでYouTuberの彼女は、突き抜けた破天荒キャラが受けて今年大ブレイク。動けばバラエティー番組に取り上げられ、喋ればネットニュースの記事になるようなフルスロットルの活躍ぶりでした。実は、帰国子女で英語が堪能だったり、文学部で中国哲学を学んでいたり、という意外な二面性も。 「フワちゃん」を選んだ理由(コメント抜粋)ブームで、テレビで見ない日はなかった。(20代 糖尿病・代謝内分泌科/青森県 他多数)どの番組にも出演している印象(40代 消化器内科/京都府 他多数)インパクトがすごい(30代 病理診断科/東京都)第4位 竹内 結子 「竹内 結子」を選んだ理由(コメント抜粋)人気女優で、よくドラマを観ていた(40代 内科/東京都 他多数)突然の訃報で、あまりに衝撃だった(30代 呼吸器内科/茨城県 他多数)青春の一幕だった(40代 消化器内科/愛知県)第5位 渡部 建 「渡部 建」を選んだ理由(コメント抜粋)良くも悪くもニュースでよく見かけた(30代 内科/千葉 他複数)「不倫」で真っ先に思い浮かんだ(40代 小児科/沖縄)コメンテーター部門(敬称略)第1位 忽那 賢志新型コロナの最前線で診療に当たる臨床家の忽那先生が、「コメンテーター」として最も評価されたのは意外な感もありますが、Yahoo!ニュースでの詳細かつ明快なコロナ解説記事や、メディアに対する丁寧な取材対応をご覧になった先生方には、納得の第1位なのでしょう。CareNet.comにも不定期ですが連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」掲載中ですので、この機会にぜひ! 「忽那 賢志」を選んだ理由(コメント抜粋)しっかりした科学的根拠に基づき、コメントに信頼性がある(50代 耳鼻咽喉科/三重県 他多数)臨床に従事しているので、コメントに偏りがない(40代 精神科/滋賀県 他多数)現場で得た知見を的確に提供してくれた印象(40代 糖尿病・代謝内分泌科/京都府 他複数)第2位 尾身 茂今年のメディア登場回数において、群を抜いた存在であることは間違いないでしょう。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長や分科会長として、医療者の知見や懸念を政府へ根気強く訴えると共に、国民に対してもわかりやすくかつ的確にメッセージを発信し続けてくださいました。 「尾身 茂」を選んだ理由(コメント抜粋)慎重ながら、必要時には信頼できるコメントが目立った(40代 血液内科/宮城県 他多数)コロナ対策に真摯に向き合っている姿勢(50代 産婦人科/大分県 他複数)コロナ関連で最もまともな発言、啓蒙をされていた(30代 整形外科/神奈川県)第3位 二木 芳人新型コロナを巡っては、多くの医療人がメディアでさまざまなコメントを述べてきましたが、ワイドショー番組などでも、出演者らの挑発(?)に乗ることなく、冷静に自身の見解を述べる姿に、医療人としての信頼性を感じた人も多かったのではないでしょうか。当たり前だけど大事なことをわかりやすく伝えられるコメントスキルも高評価だったようです。 「二木 芳人」を選んだ理由(コメント抜粋)コメントがとても受け入れやすくわかりやすい(30代 膠原病・リウマチ科/岡山県)落ち着いたトーンに好感(50代 消化器外科/茨城県)感染症対策にとどまらず、日本を俯瞰的に見ている(60代 循環器内科/佐賀県)第4位 岩田 健太郎 「岩田 健太郎」を選んだ理由(コメント抜粋)クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号を巡る対応とコメント(30代 救急科/北海道 他多数)コロナ関連で、データに基づいた解説をしてわかりやすかった(40代 病理診断科/島根県 他複数)第5位 岡田 晴恵 「岡田 晴恵」を選んだ理由(コメント抜粋)メディアでの露出がとても多かった印象(50代 内科/広島県 他多数)良くも悪くも発言がよく取り上げられていた(50代 耳鼻咽喉科/広島県)★アンケート概要★アンケート名 :『2020年振り返り企画!さまざまな分野の「今年の人」を挙げてください』実施日    :2020年11月12日~19日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :535件

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高LDL-C値の70歳以上、心筋梗塞・アテローム性心血管疾患リスク増大/Lancet

 非アテローム性心血管疾患・非糖尿病・スタチン非服用で、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが上昇した70~100歳集団は、心筋梗塞やアテローム性心血管疾患イベントの絶対リスクが最も高いことが、デンマーク・オーフス大学病院のMartin Bodtker Mortensen氏らが行った、同国一般住民を対象とした大規模コホート試験「Copenhagen General Population Study(CGPS)」で明らかにされた。一方で、同70~100歳集団は、同イベントの発症を5年間で1件予防するための必要治療数(NNT)が最も低いことも示された。著者は、「本試験のデータは、増え続ける70~100歳集団の心筋梗塞およびアテローム性心血管疾患の負荷を軽減するために必要な予防戦略にとって重要なものである」と述べている。先行研究では、70歳以上のLDLコレステロール値上昇は同イベント発症リスク増大と関連していないとされていた。Lancet誌2020年11月21日号掲載の報告。アテローム性心血管疾患・糖尿病、スタチン服用のない20~100歳を追跡 研究グループは先行研究の仮説を直近の70~100歳集団で検証するため、2003年11月25日~2015年2月17日に9万1,131例を対象に行われたCGPSの被験者データを解析した。被験者の年齢は20~100歳で、ベースラインでアテローム性心血管疾患や糖尿病がなく、スタチンを服用していない参加者を包含した。LDLコレステロール値は標準的な病院検査法を用いて測定された。 心筋梗塞およびアテローム性心血管疾患についてハザード比(HR)と絶対イベント率を算出し、5年間でイベント1件を予防するためのNNTを推算して評価した。LDL-Cが1.0mmol/L増でMIリスク1.3倍、70歳以上で増幅顕著 被験者9万1,131例は2018年12月7日まで、平均7.7(SD 3.2)年追跡を受けた。その間に1,515例が初回心筋梗塞を、また3,389例がアテローム性心血管疾患を発症した。 心筋梗塞リスクは、LDLコレステロール値が1.0mmol/L上昇するごとに増大することが、全年齢集団において認められた(HR:1.34、95%信頼区間[CI]:1.27~1.41)。同増大の関連は、いずれの年齢群においてもみられ(HRは20~49歳:1.68、50~59歳:1.28、60~69歳:1.29、70~79歳:1.25、80~100歳:1.28)、70~100歳でもリスクの増大はみられた。 アテローム性心血管疾患リスクも、LDLコレステロール値が1.0mmol/L上昇するごとに増大することが、全年齢集団において認められ(HR:1.16、95%CI:1.12~1.21)、70~100歳でもリスクの増大はみられた(HRは70~79歳:1.12、80~100歳:1.16)。 心筋梗塞リスクは、LDLコレステロール値5.0mmol/L以上上昇が3.00mmol/L未満上昇に比べ増大することも認められた。80~100歳のHRは2.99(95%CI:1.71~5.23)、70~79歳では同1.82(1.20~2.77)だった。 LDLコレステロール値の1.0mmol/L上昇ごとの心筋梗塞発症率(件/1,000人年)は、70~100歳群で最大で、年齢が下がるにつれて減少した。心筋梗塞を5年間で1件予防するためのNNTは、全集団が中程度のスタチン療法を受けた場合、70~100歳が最小で(NNTは70~79歳:145、80~100歳:80)、年齢が下がるにつれて増加した(同60~69歳:261、50~59歳:439、20~49歳:1,107)。

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SGLT2阻害薬フォシーガ、日本で慢性心不全の承認取得/AZ・小野

 選択的SGLT2阻害薬フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)について、標準治療を受けている慢性心不全に対する追加承認を、2020年11月27日に取得したことをアストラゼネカと小野薬品工業が発表した。慢性心不全治療薬として国内で最初に承認されたSGLT2阻害剤となる。本承認は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)を対象とした第III相DAPA-HF試験の結果に基づく。添付文書の「効能又は効果に関連する注意」には、左室駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、HFrEFに投与する旨、記載されている。フォシーガは心血管死および心不全悪化リスクを低下、HFpEF患者については検証中 フォシーガは、心血管死または心不全による入院を含む心不全の悪化による複合リスクを統計学的に有意に低下させた、初めてのSGLT2阻害薬である。第III相DAPA-HF試験において、標準治療との併用で主要複合評価項目をプラセボと比べて26%低下させた。また、主要複合評価項目の構成項目である心血管死および心不全の悪化の両方において、全体的にリスクを低下させた。試験期間中、フォシーガ投与群では患者21例ごとに1件の心血管死、心不全による入院、または静脈注射による心不全治療につながる緊急受診を回避した。また、本試験における安全性プロファイルは、これまでの安全性プロファイルと一致していた。 DAPA-HF試験は、フォシーガの心血管および腎に対する効果を評価する“DapaCare”という臨床プログラムの一部で、腎については第III相DAPA-CKD試験において慢性腎臓病患者の治療を検証している。さらに、第III相DELIVER試験においてHFpEF患者の治療についても検証中であり、2021年後半に結果が出ると見込んでいる。フォシーガ添付文書に追加記載された内容■効能又は効果慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。■効能又は効果に関連する注意左室駆出率が保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。

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高齢者でも積極的なコレステロール低下治療が有用だが個別的治療は常に念頭に置くべき(解説:桑島巌氏)-1323

 本論文は24の大規模臨床試験における75歳以上の高齢者2万1,492例について、コレステロール治療と心血管合併症リスク低下との関連をメタ解析した成績である。結果から言うと、75歳以上の高齢者でも若・中年者同様にコレステロール値は下げたほうが心筋梗塞、脳卒中などの心血管イベントリスクは有意に低下するという結果であった。 LDLコレステロール値を1mmol/L(38.67mg/dL)下げると心血管イベント低下率は26%で75歳未満の低下率15%と差がないという結果は、高齢者でもコレステロールの高い症例では心血管イベントは抑制できることを明瞭に示した。 このメタ解析は心血管リスクを有している高コレステロール例を下げることのメリットを実証したものであり、一般住民での追跡研究のメタ解析ではない。したがって、一般住民でのコレステロール値が低いほうが生命予後がよいか否かとの論争とは論点が異なる。 メタ解析の課題の1つである臨床試験の選択における恣意性に関しては、Cholesterol Treatment Trialist’s Collaboration(CTTC)の24試験も含んでおり問題がないと思われる。 メタ解析の避けられない短所として注意すべき点である患者背景の非均一性に関しては、多様性を特徴とする高齢者対象であるだけに、本研究の結果をそのまま臨床の場における高齢者の治療に当てはめるわけにはいかない。本メタ解析に含まれている臨床研究では、フレイルや認知機能障害、腎機能障害例の多くは除外されていることは念頭に置くべきである。また、有効性を検証するメタ解析では、有害事象や安全性に関する情報が希薄になりがちであることにも注意が必要である。 高齢者におけるリスクのある高コレステロール血症に対しても若・中年者同様に、厳格なコレステロール管理が重要であることを念頭に置きつつ、安全性を考慮しながら個別的な治療を心掛ける必要がある。

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