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COVID-19入院時の患者に糖尿病の診断をする重要性/国立国際医療研究センター

 糖尿病は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクの1つであること、また入院中の血糖コントロールの悪化が予後不良と関連することが知られている。しかし、わが国では入院時点で新たに糖尿病と診断される患者の臨床的な特徴については、明らかになっていなかった。 国立国際医療研究センター病院の内原 正樹氏、坊内 良太郎氏(糖尿病内分泌代謝科)らのグループは、糖尿病を合併したCOVID-19患者の臨床的な特徴を分析し、その結果を発表した。この研究は2021年4月~8月に同院にCOVID-19と診断され入院した糖尿病患者62名を対象に実施された。 その結果、入院時に新たに糖尿病と診断された患者は19名で、糖尿病を合併した患者の約3割で、そのうち60歳未満の男性が12名(63.2%)と高い割合を占めた。また、この19名の患者では、糖尿病の既往や治療歴がある患者に比べて、入院中に重症化する割合が高く、入院初期の血糖コントロールが難しいことがわかった。重症化リスクの糖尿病を事前診療で察知することが重要【研究対象・方法】・2021年4月1日~8月18日までにCOVID-19と診断され、国立国際医療研究センター病院に入院した糖尿病患者62名・患者背景、重症度、血糖値の推移などのデータを集計・分析【研究結果】・62名の糖尿病患者のうち、入院時に新たに糖尿病と診断された患者は19名(30.6%)で、糖尿病の既往がある患者は43名(69.4%)。・新たに糖尿病と診断された患者のうち、60歳未満の男性は12名(63.2%)。・新たに糖尿病と診断された患者は、糖尿病の既往がある患者に比べて、入院中に重症化する割合が高い結果だった(52.6% vs. 20.9%、p=0.018)。・新たに糖尿病と診断された患者は、糖尿病の既往がある患者に比べて、入院後3日間の血糖値の平均が高く、糖尿病の初期の治療に難渋した。 今回の研究により診療グループは、「COVID-19の流行が続く状況でも、健康診断や人間ドックなどの受診を定期的に行い、糖尿病の早期発見や治療介入に繋げることが重要」と見過ごされていた点を指摘した。また、「『基礎疾患なし』と自己申告する患者の中に、一定数未診断の糖尿病患者が含まれていることが想定され、重症化リスクの高い患者の特定のため、今後はCOVID-19診断の段階で、可能な限り血糖値やHbA1cを評価することが望ましいと考える」と新規入院患者への対応にも言及している。

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ブレークスルー感染、女性・30歳以上で起こりやすい?

 ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJing Sun氏らが新型コロナワクチン接種後のブレークスルー感染*の発生率と発生率比(IRR)を特定することを目的とし、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、患者の免疫状態に関係なく、完全ワクチン接種がブレークスルー感染のリスク低下と関連していることが示唆された。また、ブレークスルー感染が女性や30歳以上で起こりやすい可能性も明らかになった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2021年12月28日号掲載の報告。*本研究ではブレークスルー感染を、ワクチン接種の14日目以降に発症した新型コロナウイルス感染症と定義しており、2回目完了後の発症としていない。 本研究は、全米の新型コロナに関する臨床データを一元化しているNational COVID Cohort Collaborative(N3C)1)のデータに基づいて分析した。2020年12月10日~2021年9月16日の期間に新型コロナワクチンを1回以上接種した症例がサンプルに含まれた。また、ワクチン接種、新型コロナの診断、免疫機能障害の診断(HIV感染、多発性硬化症、関節リウマチ、固形臓器移植、骨髄移植)、そのほかの併存疾患、人口統計データを検証するにあたり、N3C Data Enclaveを介した。 この研究ではFDAが認可した3つの新型コロナワクチン(ファイザー製[BNT162b2]、モデルナ製[mRNA-1273]、J&J製[JNJ-784336725])と、そのほかのワクチン(アストラゼネカ製など)接種者が含まれた。また、完全ワクチン接種というのは、mRNAワクチンとそのほかのワクチン接種の場合は2回接種、J&J製の場合は1回接種と定義。部分ワクチン接種というのは、mRNAワクチンやそのほかのワクチンを1回のみ接種と定義付けた。2回接種または1回のみ接種後のリスクは、ポアソン回帰を使用して免疫機能障害の有無にかかわらず評価された。 主な結果は以下のとおり。・N3Cのサンプルには計66万4,722例が含まれていた。・患者の年齢中央値(IQR)は51歳(34~66)で、そのうち女性は37万8,307(56.9%)と半数以上を占めていた。・全体として、新型コロナのブレークスルー感染の発生率は、完全ワクチン接種者で1,000人月あたり5.0だった。しかし、デルタ変異株が主要株になった後は高かった(2021年6月20日以前と以降の1,000人月あたりの発生率は、2.2(95%信頼区間[CI]:2.2~2.2)vs. 7.3(95%CI:7.3~7.4)だった。・部分ワクチン接種者と比較し完全ワクチン接種者では、ブレークスルー感染のリスクが28%減少した(調整済みIRR [AIRR]:0.72、95%CI:0.68~0.76)。・完全ワクチン接種後にブレークスルー感染した人は、高齢者や女性が多かった。また、HIV感染者(AIRR:1.33、95%CI:1.18~1.49)、関節リウマチ(AIRR:1.20、95%CI:1.09~1.32)、および固形臓器移植を受けた者(AIRR:2.16、95%CI:1.96~2.38)では、ブレークスルー感染の発生率が高かった。・具体的には、ブレークスルー感染リスクは18〜29歳と比較して30歳以上で30〜40%増加した。・ブレークスルー感染リスクは併存疾患の数が増えるにつれて増加したが、このリスクは免疫機能障害の状態に関連しており、とりわけそれによってAIRRが弱められた。 免疫機能障害のある人は完全ワクチン接種しても、そのような状態ではない人よりもブレークスルー感染リスクはかなり高かったことを受け、研究者らは「免疫機能障害のある人は、ワクチン接種を完遂してもマスク着用やワクチンの代替となるような戦略(例:追加接種や免疫原性試験)が推奨される」としている。

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5年間のビタミンD補給により自己免疫疾患のリスク低減/BMJ

 5年間のビタミンD補給により、オメガ3脂肪酸の追加の有無を問わず、自己免疫疾患の発生が22%減少し、オメガ3脂肪酸の補給では、ビタミンD追加の有無にかかわらず、統計学的有意差はないものの同疾患が15%減少することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のJill Hahn氏らが行った「VITAL試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年1月26日号で報告された。米国のプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、ビタミンDと海産動物由来の長鎖オメガ3脂肪酸は自己免疫疾患のリスクを低減するかを検証する目的で、2×2ファクトリアルデザインを用いた二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 本試験には、2011年11月~2014年3月の期間に全米から2万5,871例(50歳以上の男性1万2,786例と55歳以上の女性1万3,085例)が登録され、2017年12月に5年間の介入が終了した。 参加者は、ビタミンD(コレカルシフェロール2,000 IU/日、1万2,927例)またはプラセボ(1万2,944例)、あるいはオメガ3脂肪酸(エイコサペンタエン酸460mgとドコサヘキサエン酸380mgを含む魚油カプセル1g/日、1万2,933例)またはプラセボ(1万2,938例)の補給を受ける群に無作為に割り付けられた。 追跡期間中央値は5.3年で、参加者はこの間に発生した新規の自己免疫疾患をすべて報告し、これらの疾患は医療記録の調査で確定された。 主要エンドポイントは、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、自己免疫性甲状腺疾患、乾癬を含むすべての自己免疫疾患の新規発生とされた。高度疑い例を加えると、オメガ3脂肪酸群でも有意にリスク低下 全体の平均年齢は67.1歳で、71%が非ヒスパニック系白人、20%が黒人で、9%はその他の人種/民族であった。4,555例(18%)が無作為化の前に1つ以上の自己免疫疾患を有していた。 ビタミンD群(ビタミンD+オメガ3脂肪酸とビタミンD単独)で123例、プラセボ群で155例が自己免疫疾患と確定され、ビタミンD群で自己免疫疾患のリスクが22%有意に低下した(補正後ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.61~0.99、p=0.05)。 また、オメガ3脂肪酸群(ビタミンD+オメガ3脂肪酸とオメガ3脂肪酸単独)で130例、プラセボ群で148例が自己免疫疾患と確定され、オメガ3脂肪酸群でリスクが15%低下したが、両群間に有意な差は認められなかった(補正後HR:0.85、95%CI:0.67~1.08、p=0.19)。 自己免疫疾患の確定例に高度疑い例を加えた解析では、自己免疫疾患の発生はビタミンD群で210例、プラセボ群で247例(補正後HR:0.85、95%CI:0.70~1.02、p=0.09)と有意差はなかったのに対し、オメガ3脂肪酸群は208例と、プラセボ群の249例(0.82、0.68~0.99、p=0.04)に比べリスクが有意に低下した。 参照群(ビタミンDのプラセボ+オメガ3脂肪酸のプラセボ)の自己免疫疾患確定88例と比較して、ビタミンD+オメガ3脂肪酸群では63例(補正後HR:0.69、95%CI:0.49~0.96、p=0.03)、ビタミンD単独群では60例(0.68、0.48~0.94、p=0.02)と、いずれもリスクが有意に低下したが、オメガ3脂肪酸単独群では67例(0.74、0.54~1.03、p=0.07)であり、わずかに有意差には達しなかった。 著者は、「ビタミンDとオメガ3脂肪酸は栄養補助食品として忍容性が高く、毒性もなく、ほかに自己免疫疾患の発生を抑制する効果的な治療法はないため、本試験の臨床的重要性は高いと考えられる」としている。

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トファシチニブ、心血管リスクの高いRA患者での安全性を検討/NEJM

 心血管リスクの高い関節リウマチ患者において、トファシチニブ5mgまたは10mgの1日2回投与は腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬と比較し、主要有害心血管イベント(MACE)および悪性腫瘍の発現率が高く、非劣性基準を満たさなかった。米国・メイヨー・クリニックのSteven R. Ytterberg氏らが30ヵ国323施設で実施した、無作為化非盲検非劣性第IIIb-IV相安全性評価試験「ORAL Surveillance試験」の結果、明らかとなった。日和見感染症、帯状疱疹および非黒色腫皮膚がんの発現率もトファシチニブ群が高率であることが示された。NEJM誌2022年1月27日号掲載の報告。トファシチニブ2用量の安全性をTNF阻害薬と比較 研究グループは、2014年3月~2020年7月に、メトトレキサート治療を受けているにもかかわらず活動性の関節リウマチであり、心血管リスク因子(現喫煙者、高血圧、HDLコレステロール値40mg/dL未満、糖尿病、早発性冠動脈疾患の家族歴、関節リウマチの関節外病変、冠動脈疾患の既往歴)を1つ以上有する50歳以上の患者を、トファシチニブ5mgの1日2回投与群、同10mgの1日2回投与群、TNF阻害薬投与群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。TNF阻害薬の投与は、米国、プエルトリコ、カナダを含む北米ではアダリムマブ40mgを2週間ごと、それ以外の地域ではエタネルセプト50mgを週1回とした。 主要評価項目は、外部委員会判定によるMACEおよび悪性腫瘍(非黒色腫皮膚がんを除く)。TNF阻害薬群と比較して、トファシチニブ2用量統合群のハザード比の両側95%信頼区間(CI)の上限が1.8未満の場合、トファシチニブの非劣性を示すものとした。MACE、悪性腫瘍のいずれもトファシチニブで発現リスクが高い 解析対象は、トファシチニブ5mg群1,455例、トファシチニブ10mg群1,456例、TNF阻害薬群1,451例であった。 追跡期間中央値4.0年において、MACEおよび悪性腫瘍の発現率は、トファシチニブ統合群でそれぞれ3.4%(98例)、4.2%(122例)、TNF阻害薬群で2.5%(37例)、2.9%(42例)であり、トファシチニブ統合群で高率だった。ハザード比は、MACEが1.33(95%CI:0.91~1.94)、悪性腫瘍が1.48(95%CI:1.04~2.09)で、いずれもトファシチニブの非劣性は示されなかった。 また、日和見感染症(帯状疱疹、結核を含む)、すべての帯状疱疹(非重篤および重篤)、および非黒色腫皮膚がんの発現率も、TNF阻害薬群よりトファシチニブ5mg群および10mg群で高かった。 有効性は3群で同等であり、2ヵ月目から認められた改善は試験終了まで持続した。

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糖尿病薬変更の意外すぎる理由【処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)糖尿病薬変更の意外すぎる理由講師:大橋 博樹氏 / 多摩ファミリークリニック院長動画解説ある糖尿病患者さんに、ガイドライン通りの治療を行っていた大橋先生。しかし、全然血糖コントロールができません。一体何が問題だったのでしょうか。そして、次の選択は? 患者さんの生活スタイルや背景に合わせた薬剤選択、目標血糖値を紹介します。

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インスリン注射日が不規則 これっていいの?【処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)インスリン注射日が不規則 これっていいの?講師:三澤 美和氏 / 大阪医科大学附属病院 総合診療科動画解説インスリンの投与日が不規則に設定された不思議な処方箋。そこには、現代社会が抱えるある問題が関係していました。今後、高齢者がインスリンを継続するために考えられる対策や、糖尿病治療の変化を紹介します。

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ACE阻害薬 副作用の説明に落とし穴【スーパー服薬指導(3)】

スーパー服薬指導(3)ACE阻害薬 副作用の説明に落とし穴講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説前回、ACE阻害薬が追加となった糖尿病の患者が再び薬局を訪れた。気になることがあるので相談したいと言われ、薬剤師は代表的な副作用を思い浮かべた後、話を聞き始めたが…

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「低血糖のほかに副作用はないのかい?」~薬理作用による副作用~【ダイナミック服薬指導(1)】

ダイナミック服薬指導(1)「低血糖のほかに副作用はないのかい?」~薬理作用による副作用~ 講師 佐藤 ユリ氏 / 株式会社プリスクリプション・エルムアンドパーム 企画統括部部長、特定非営利活動法人どんぐり未来塾代表理事麻生 敦子氏 / 株式会社オオノ薬局業務部教育課課長、特定非営利活動法人どんぐり未来塾副理事 動画解説新しい糖尿病の薬が追加になった患者さん。糖尿病薬には低血糖の副作用があることは理解しているが、ほかにどんな副作用があるのか知りたいという。副作用について説明するときには、どんぐり流の「副作用機序別分類」が役立ちます!

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新型コロナ、スーパースプレッダーとなりうる人の特徴/東京医科歯科大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、すべての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者がとくに感染を広げていくことが知られる。東京医科歯科大学の藤原 武男氏らによるRT-PCR検査によるウイルスコピー数を用いたCOVID-19入院患者の後ろ向き解析の結果、3つ以上の疾患の既往歴および、糖尿病、関節リウマチ、脳卒中の既往がスーパースプレッダーのリスク因子となることが示唆された。Journal of Infection誌オンライン版2021年12月30日号にレターとして掲載の報告より。 2020年3月~2021年6月に、中等症から重症のCOVID-19で東京医科歯科大学病院に入院し、少なくとも1回以上RT-PCR検査が行われた患者が解析対象とされた。入院患者の電子カルテの情報を基に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・がん・慢性腎不全・脳卒中・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーといった基礎疾患の有無とウイルスコピー数について関連が調査された。 主な結果は以下の通り。・計379例が適格となり、解析対象とされた。年齢中央値は59歳で、約33%が女性だった。・PCRテスト回数の中央値は2(1~26)回。複数回PCRテストを実施した患者の90%以上で、ウイルス量は1回目または2回目でその個人の最大値を示した。・約59%に基礎疾患があり、約21%に3つ以上の基礎疾患があった。・基礎疾患について詳細は、高血圧症が38.5%、糖尿病が21.6%、がんが18.7%、脂質異常症が18.5%、呼吸器疾患が10.8%、心疾患が9.0%、高尿酸血症が7.7%、慢性腎臓病が6.6%、脳卒中が5.0%、関節リウマチが2.1%だった。・1人を除きワクチンは未接種だった。・性別、年齢、喫煙状況について調整後の多変量回帰分析の結果、上記基礎疾患を3つ以上重複して有する患者では、基礎疾患のない患者と比較して、ウイルスコピー数が87.1倍(95%信頼区間[CI]:5.5~1380.1)高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・また、関節リウマチ患者では1659.6倍(95%CI:1.4~2041737.9)、脳卒中患者では234.4倍(95%CI:2.2~25704.0)倍、糖尿病患者では17.8倍(95%CI:1.4~ 223.9)ウイルスコピー数が高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・入院時の血液検査結果における血小板数とCRPレベルの低さも、ウイルスコピー数の多さと関連していた。 著者らは、軽症患者が解析に含まれていない点、変異株による影響が不明な点等の本研究の限界を挙げたうえで、基礎疾患の有無や検査値などの入院時に得られる情報に基づき、スーパースプレッダーとなる可能性の高い患者に対しては、とくに感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示されたとまとめている。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー  CONNECTED PAPERSの活用 その2【「実践的」臨床研究入門】第16回

見逃していたかもしれない関連研究を調べる前回は“CONNECTED PAPERS”の概要と使い方のはじめのステップについて解説しました。今回は、われわれのリサーチ・クエスチョンのトピックについて、見逃していたかもしれない関連研究を調べてみたいと思います。“CONNECTED PAPERS”を用いると「Key論文」1)を中心とした関連研究の関係性がリンクのように中央のウィンドウに図示されます。個々の論文のノード(連載第15回参照)にマウスオーバーすると、その論文のタイトルとAbstractがWebページの向かって右側のウィンドウに表示されます。そこにはその論文のDigital Object Identifier(DOI)(連載第15回参照)やPubMedへのリンクも貼られています。向かって左側のウィンドウには「Key論文」1)を筆頭に関連研究が列挙されています。こちらのウィンドウにある“Expand”というボタンをクリックすると、ウィンドウが拡大し、関連研究論文各々の「論文タイトル」、「著者」、「出版年」、「被引用数」、「引用論文数」、(「Key論文」1)からの)「類似性」という文献情報が列記されていることがわかります。デフォルトでは「類似性」順に並んでいますが、上記の文献情報項目毎にソート(並べ替え)することができます。ここでは、コクラン・フル・レビュー論文である「Key論文」1)以降の関連研究をまずは見てみたいので、「出版年」の降順でソートしてみましょう。すると、連載第16回執筆時点(2022年1月)では、「Key論文」1)が出版された2007年以降に以下の関連研究論文が出版されていることがわかります(臨床研究かつDOIが確認されたものに限定)。ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)1編2)システマティック・レビュー(SR: systematic review)8編3-10)総説1編11)なんと、RCTをメタ解析したSRが2008年以降に8編もヒットしました。そのうち連載第12回で取り上げた非糖尿病患者をP(対象)としたコクランSR1編4)、非糖尿病患者もPに組み入れている非コクランSR2編6,9)を除外し、Pを糖尿病性腎疾患患者にしぼった非コクランSR5編の一覧を下記の表にまとめました。「Key論文」1)でメタ解析されていた腎機能低下の指標である推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化(連載第14回参照)というO(アウトカム)について、点推定値と95%信頼区間(95% confidence interval:95%CI)を記述し整理してみました。表に示したとおり、非コクランSR3編3,7,8)ではコクランSRである「Key論文」1)の結果と同様、糖尿病性腎疾患に対する低たんぱく食の効果は認められなかった、と結論しています。一方、他の非コクランSR2編5,10)では、eGFR低下速度の変化の95%CIがゼロをまたいでおらず、低たんぱく食群は対照群と比較して統計学的有意に腎機能低下が緩やかであったことを示しています。1)Robertson L, et al. Cochrane Database Syst Rev.2007 Oct. 17:CD002181.DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub22)Koya D, et al. Diabetologia. 2009 Oct;52:2037-45.3)Pan Y, et al. Am J Clin Nutr. 2008 Sep;88:660-6.4)Fouque D, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jul 8; CD001892.5)Nezu U, et al. BMJ Open. 2013 May 28;3:e002934.6)Rughooputh MS, et al. PloS one. 2015;10:e0145505.7)Zhu HG, et al. Lipids Health Dis. 2018 Jun 19;17:141.8)Li XF, et al. Lipids Health Dis.2019 Apr 1;18:82.9)Yue H, et al. Clin Nutr.2020 Sep;39:2675-85.10)Li Q, et al. Diabetes Ther. 2021 Jan;12:21-36.11)Otoda T, et al. Curr Diab Rep. 2014;14:523.

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第93回 アムロジピンも足りない!?供給不足を「怪我の功名」にするには…

メディアにはいまもなお旧来的なヒエラルキーがある。まず、多くの人もご承知の通り、最近では「レガシー・メディア」とも揶揄される大手新聞社・NHK・民放キー局が頂点に位置し、その下に週刊誌・月刊誌、さらに最下層に現在では最もすそ野が広いインターネットメディアの3層構造となっている。私のようなフリーランスの主戦場は下の2層となる。そうした中でこれまでインターネットメディアは最下層ながらも速報性・拡散性でほかを圧倒してきたが、現在では上位2層もネットメディアを有するようになり、メディア業界は横並びの混戦となりつつある。とはいえレガシー・メディアが有する「伝統」と「信頼」はまだまだ牙城である。ここ最近、それを実感させられることに遭遇した。昨年来私が注目していた出来事がある。それはジェネリック医薬品企業の不祥事に端を発した「医薬品供給不足問題」である。当初、懸念をしつつも私自身が成り行きをやや甘く見ていたが、昨秋ある薬剤師と話をしていて「アムロジピンが手に入らないんですよ」とこぼされた際にはさすがに驚いた。表現はやや下衆だが、アムロジピンと言えば「馬に食わせても良い」ほどありふれた薬である。「冗談が過ぎるよ」と言い返した私は、この薬剤師に半ば逆上されてしまった。もちろんその後、良く調べて事実と分かり、この薬剤師に平謝りした。当然、私の職責としてはこれを捨ておくわけにはいかない。主戦場の雑誌やインターネットメディアの何社かに企画提案をしたが、反応は冷ややかだった。反応を大まかにまとめて言うと「もともとジェネリック医薬品なんかバッタもんでしょ。無くなっていいんじゃないですか?」というものだ。しかし、今や特許失効成分の流通量の約8割をジェネリック医薬品が占めている中で、「無くなっていい」はずもない。ある編集者は「ジェネリック医薬品を推進した厚生労働省を斬る方向なら考えても良いよ」とも返された。厚労省による診療報酬による政策誘導にはある種の嫌悪感はなくもないが、それも何かが違う。「お役人の代弁者」と皮肉られるかもしれないが、高齢化が進展する日本の社会保障制度を考えた場合にジェネリック医薬品の推進は不可欠とも考えるからだ。そんなこんなのうちにNHKが「医薬品不足取材班」なるものを立ち上げ、「薬がない!?」と題した特集を組み始めると、一気に風向きが変わった。以前冷淡な態度だった編集者が「先日話していた件ですけど…」と連絡を取ってきた。別に人が悪いわけでも何でもないが、私は「あいにく別のところでやることになって…」と返した。事実、そうだったからだ。ちなみにその「別のところ」の編集者に話した際も「なんか最近NHKでやってましたね」という反応だった。伝統ある大手メディアが取り上げると、読者がそれに注目するだろうと考えるわけである。「××がくしゃみをすると、○○が風邪をひく」の法則とも言える。実は私も最終的に「別のところ」に提案したのはNHKが取り上げたので「そろそろどこかが食いつく」と思ったからであり、さらに言えば以前提案した編集者に再提案するのも何かと面倒だからほかの編集者に持ち掛けたという次第だ(やっぱり人が悪いか…)。先ほどのヒエラルキーで言うと、さらに最下層あるいは完全に外側になるフリーランスの辛酸を20年以上味わってきた身の処世術でもある。さて前置きが長くなってしまったが、ここからが本論だ。今回の不祥事、ほとんどはジェネリック医薬品企業が製造手順や品質試験を悪く言えば「ごまかしていた」から起きたことで、決して許されるべきことではない。同時にこれまた悪く言えば、厚労省もジェネリック医薬品推進の旗印を掲げ、太鼓を打ち鳴らして現場を鼓舞してきたものの、後は企業に対して単なる性善説で臨んでいただけともいえる。ならばなぜ前述の厚労省批判の切り口で提案してきた編集者に組しなかったのかと問われれば、厚労省が「特定の悪者」ではないからだ。もっとも処方する医師、調剤する薬剤師は足りない医薬品を「打出の小槌」で出せるわけもないので少なくとも被害者であることは確かである。ただ、今回の件で薬剤師の中からは「どうしようもなくて医師に電話連絡して同種同効薬への変更をお願いしたら、『薬局に薬があるかどうかなんて知ったことじゃない。それは薬局の問題でしょ』と返答された」という話はよく耳にした。現在、出荷調整が続く医薬品の納入では、医薬品卸が各薬局の直近の納入実績に応じて事実上「配給」をしている状態。大規模病院の医師と話すと、中にはこの問題をあまり知らないこともあるが、それは納入実績や取引が元々巨額であるというビジネス上の理由から医薬品卸が大規模病院やその門前の調剤薬局チェーンを最優先しているだけで、市中の中小薬局に罪はない。そして医師と薬剤師でこうした些細な応酬(薬剤師側はそんなつもりはないだろうが)をしているのは不毛の極み。患者はいい迷惑である。この点についてはとくに医師と薬剤師の間ではノーサイドにしてもらいたい。とはいえ、「企業の問題だから医療現場は何もできない」も私からすると異論がある。数少ないながらも対応策はあると思うからだ。それはコロナ禍の影響のせいか、最近やや霞みつつある「多剤併用(ポリファーマシー)・残薬の解消」である。もっとも「またどっちつかずか」と言われそうだが、薬物療法の中で悪の権化のごとく語られるポリファーマシーについて、私は善意の結果だと思っている。医師側は患者の訴えに応じてそれを何とか解消しようと症状ごとに薬を処方する、症状が悪化したら患者が気の毒だから念のため併用療法をする。一方、患者は不安だからより多くの薬をもらおうとする。あるいは、患者自身は処方された薬を実際にはほとんど服用せず、症状改善しないと首をかしげる医師に怖くてそのことは言えないので、医師は何とかしようと作用機序の違う同効薬が重ねられるということもあるだろう。ポリファーマシーはこれらの総体というのが私見だ。ざっくり言えば誰も悪意がないゆえに、なかなか手を付けにくい。とはいえ残薬とポリファーマシー解消に向けて2016年の診療報酬改定で重複投薬・相互作用等防止加算の名称変更と算定要件の拡大が行われたことを契機に薬剤師が以前よりも積極的に取り組むようになってはいる。実際、日本薬剤師会学術大会では、この2016年の診療報酬改定直後から残薬調整などを通じた減薬の成果報告があふれていた。現在は当時ほどの盛り上がりはないが、これは徐々にこうした取り組みが定着しつつあるものと好意的に受け止めたい。もっとも問題そのものも依然として消えていないことは各所から耳にする。だからこそこの医薬品供給不足を機に今一度、「減薬」に一歩踏み込めないだろうか? 一部からは「薬が足りないから減薬をしろとは本末転倒」と言われるかもしれない。しかし、善意をベースに慣習的に続いているものを何のきっかけもなしに変化させることがいかに難しいかは、世の中のさまざまな事象でみられること。だからこそ医師にも薬剤師にも「災い転じて福となす」に向かってほしいと思うのは理想論だろうか?

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2型DM発症リスク、肥満でなくても腹囲が影響/BMJ

 体格指数(BMI)が高値ほど2型糖尿病を発症するリスクは高く、肥満であるか否かにかかわらず、腹囲の大きさと2型糖尿病リスクには強い正の線形の関連性が認められることが明らかにされた。イラン・Semnan University of Medical SciencesのAhmad Jayedi氏らが、200件超の試験を対象に行ったメタ解析の結果を報告した。BMJ誌2022年1月18日号掲載の報告。2型糖尿病患者230万例を対象にメタ解析 研究グループは、BMI、腹囲、肥満およびこれらの測定比の違いと2型糖尿病リスクとの関連を統合的レビューで明らかにするため、PubMed、Scopus、Web of Scienceを基に、2021年5月1日までに収載された試験を対象に、システマティックレビューと用量反応性メタ解析を行った。対象とした試験は、一般成人集団を対象に行われ、肥満・体脂肪含有量と2型糖尿病リスクに関して検討したコホート試験。 ランダム効果用量反応性メタ解析で関連の度合いを予測し、1段階重み付け混合効果メタ解析により、曲線関係モデルを構築し評価した。 検索により、216件のコホート試験(被験者総数2,600万人)に含まれる2型糖尿病患者230万例を特定した。中心性肥満の指数、肥満と独立したリスク因子 BMIの5単位増加による、2型糖尿病発症に関する相対リスクは1.72(95%信頼区間[CI]:1.65~1.81、182試験)だった。腹囲10cm増加による同相対リスクは1.61(1.52~1.70、78試験)、また、腹囲/臀囲比0.1単位増加による同相対リスクは1.63(1.50~1.78、34試験)、腹囲/身長比0.1単位増加による同相対リスクは1.73(1.51~1.98、25試験)だった。内臓肥満指数の1単位増加では、同相対リスクは1.42(1.27~1.58、9試験)、体脂肪率10%増加では、同相対リスクは2.05(1.41~2.98、6試験)、ボディシェイプ指数の0.005単位増加では、同相対リスクは1.09(1.05~1.13、5試験)、BAI(body adiposity index、臀囲を用いた肥満指数)の10%増加による同相対リスクは2.55(1.59~4.10、4試験)、臀囲10cm増加による同相対リスクは1.11(0.98~1.27、14試験)だった。 BMIと2型糖尿病リスクには、強い正の線形の相関が認められた。線形または単調な関連性は、特定のカットオフ値で顕著な逸脱を認めることなく、全地域・人種/民族を通じて認められた。 また、全般的な肥満とは独立して、中心性肥満の指数と2型糖尿病リスクには、正の線形または単調な関連性が認められた。総脂肪量・内臓脂肪量と同リスクについても正の線形または単調な関連性が認められたが、試験数は少なかった。

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コロナ疑似症患者の扱いは?感染状況に応じた外来診療の考え方/厚労省

 オミクロン株への急速な置き換わりが進み、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が急拡大する中、一部地域ではすでに発熱外来の電話がつながらない、予約が取れないといった状況が生じている。そのような状況を鑑み、厚生労働省では1月24日に事務連絡1)を発出。「診療・検査医療機関への受診に一定の時間を要する状況となっている等の場合」および「外来医療のひっ迫が想定される場合」に分けて、自治体(都道府県又は保健所設置市)の判断で行うことができる対応について示した。診療・検査医療機関への受診に一定の時間を要する状況となっている等の場合 上記に該当する場合には、自治体の判断で、以下(1)~(3)の対応を行うことが可能。(1)発熱等の症状がある場合でも、重症化リスクが低いと考えられる方(※1)については、医療機関の受診前に、抗原定性検査キット(※2)等で自ら検査していただいた上で受診することを呼びかけること。この場合に、医師の判断で、受診時に再度の検査を行うことなく、本人が提示する検査結果を用いて確定診断を行って差し支えない。 ただし、本人が希望する場合には検査前でも医療機関への受診は可能であることや、症状が重い場合や急変時等には速やかに医療機関を受診するよう、併せて呼びかけること。また、重症化リスクが高い方については、これまでどおり医療機関を受診していただき、適切な医療が受けられるようにすること。※1:たとえば、40歳未満で危険因子(基礎疾患・肥満等(注))を持たない、ワクチン2回接種済みの方を対象とすることが考えられる。臨床データ等を踏まえ、自治体において対象を変更することは差し支えない。(注)「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第6.1版」において、新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち重症化しやすいのは、基礎疾患等のある方として慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満のある方、喫煙、一部の妊娠後期の方があげられている。※2:抗原定性検査キットを用いる場合、検査結果が陰性であっても、症状が継続する場合等は医療機関を受診することや、検査結果が陽性の場合は、受診時に医師に提示できるよう、スマートフォン等を用いて画像として保存しておく等検査結果が分かるものを手元に残しておくことを併せて呼びかけるとともに、(2)の電話診療・オンライン診療をできるだけ活用すること。 抗原定性検査キットについては、有症状者が対象となりうることを踏まえ、下記を参考に自治体において対応をお願いする。なお、事業者等への委託を行う場合は、行政検査として、配布に当たって生じる委託料を感染症予防事業費負担金の対象とすることが可能である。・自治体等から有症状者に抗原定性検査キットを事前に配付する・医療機関で対象者に検査キットのみを配布する・事業者等に委託して「抗原定性検査キットセンター」等を設置して、当該センターで検査キットを配布する・自治体の庁舎等に検査キット配布窓口を設置して、検査キットを配布する この他、従前より、本人が薬局から購入し自宅に備え付けているものや自治体等から配布されたものがあれば、それを活用することが考えられるところ、地域の状況を踏まえた対応をしていただきたい。(2)地域の診療・検査医療機関以外の医療機関の協力も得て、電話診療・オンライン診療の遠隔診療を積極的に活用すること。 (3)同居家族などの感染者の濃厚接触者が有症状となった場合には、医師の判断により検査を行わなくとも、臨床症状で診断すること(※3)。 こうした場合でも、経口薬など治療薬の投与が必要となる場合等は、医師の判断で検査を行うことが可能であること。※3:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」)第12条第1項に基づく医師の届出に当たっては、疑似症患者として届け出ること。また、疑似症患者の場合には、入院を要すると認められる場合に限り当該届出を行うこととされているが、本対応を行う場合には、入院以外の場合であっても、届出をお願いすること。この場合、「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(令和3年11月30日付け(令和4年1月24日一部改正)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡2))Vの取扱いに従って届け出ること。外来医療のひっ迫が想定される場合 地域において外来医療のひっ迫が想定される場合には、自治体の判断で、以下の対応を行うことが可能。・症状が軽く重症化リスクが低いと考えられる方について、自らが検査した結果を、行政が設置し医師を配置する健康フォローアップセンターに連絡し、医療機関の受診を待つことなく健康観察(※)を受けること。※ITを活用した双方向による健康観察を行うことを想定(症状が悪化した場合、患者が入力した情報からその状況をシステム上で把握)。さらに、体調悪化時には必ず繋がる連絡先を伝えること。また、この場合、同センター等の医師が感染症法第12条第1項に基づく届出を行うこととなる。

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18歳未満の新型コロナ感染者、糖尿病発症率が増加/CDC

 米国・CDCの研究で、18歳未満のCOVID-19患者において、SARS-CoV-2感染後30日以降における糖尿病発症率が増加することが示唆された。CDCのCOVID-19 Emergency Response TeamのCatherine E. Barrett氏らが、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年1月14日号に報告した。 COVID-19は糖尿病患者において重症となるリスクが高い。また、欧州ではパンデミック中に小児における1型糖尿病診断の増加および糖尿病診断時の糖尿病ケトアシドーシスの頻度増加と重症度悪化が報告されている。さらに成人においては、SARS-CoV-2感染による長期的な影響として糖尿病が発症する可能性が示唆されている。 CDCでは、SARS-CoV-2感染後30日以降に糖尿病(1型、2型、その他)と新規に診断されるリスクを調べるため、2020年3月1日~2021年2月26日のIQVIAのヘルスケアデータを用いて構築した後ろ向きコホートから、18歳未満のCOVID-19患者の糖尿病発症率を推定し、パンデミック中にCOVID-19と診断されなかったかパンデミック前にCOVID-19以外の急性呼吸器感染症と診断された患者で年齢・性別が一致した患者の発症率と比較した。さらに、COVID-19に関連する可能性がある外来診察患者を含むデータソース(HealthVerity、2020年3月1日~2021年6月28日)で分析した。 その結果、糖尿病発症率は、COVID-19患者のほうがCOVID-19患者以外(IQVIAでのハザード比[HR]:2.66、95%信頼区間[CI]:1.98~3.56、HealthVerityでのHR:1.31、95%CI:1.20~1.44)およびパンデミック前にCOVID-19以外の急性呼吸器疾患と診断された患者(IQVIAでのHR:2.16、95%CI:1.64~2.86)より有意に高かった。

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急性ポルフィリン症〔acute porphyria〕

1 疾患概要■ 概念・定義ポルフィリン症とはヘム合成経路に関与する8つの酵素いずれかの先天異常が病因でヘム合成経路(すなわち、律速酵素である第1番目のデルタアミノレブリン酸(ALA)合成酵素(ALAS))が亢進し生じる疾患の総称。ポルフィリン代謝異常に基づく症候を呈し、ポルフィリンやその前駆物質が大量に生産され、体内に蓄積し、尿や糞便に多量に排泄される。ポルフィリン症は、病因論的には本経路の異常が生じる主たる臓器の違いにより肝型と骨髄型の2型に大別される(図1)。臨床的には急性腹症、神経症状、精神症状などの急性発作を起こす急性ポルフィリン症(ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症〔ADP〕、急性間欠性ポルフィリン症〔AIP〕、遺伝性コプロポルフィリン症〔HCP〕、多様性ポルフィリン症〔VP〕)および、光線過敏症を呈する皮膚ポルフィリン症(先天性骨髄性ポルフィリン症〔CEP〕、晩発性皮膚ポルフィリン症〔PCT〕、肝性骨髄性ポルフィリン症〔HEP〕、骨髄性プロトポルフィリン症〔EPP〕および、間欠期のHCPとVP)とに分けられる。AIP以外の急性ポルフィリン症は皮膚症状も呈し、皮膚ポルフィリン症でもある。また、EPPの症例で病因遺伝子がフェロキラターゼでは無く、ALAS2遺伝子の機能獲得型変異やALAS2の安定性を制御する蛋白ClpXの遺伝子異常が病因となった症例も近年報告されており、病因遺伝子異常は2種類増えた。図1 ヘム合成経路と異常症画像を拡大する■ 疫学報告は、本症の知見が高まった1966~1985年の間になされたものが大半であり、ここ10年間の報告はむしろ減少している。次第にありふれた疾患として認識されるようになり、報告が減ったと考えられ、実際はこれよりはるかに多い症例があるものと思われる。急性ポルフィリン症の半数以上がAIPで、ついでHCP、VPと続く。ADPはきわめてまれである。1980~1984年の全国調査ではポルフィリン症の有病率は、人口10万人対0.38人とされているが、その10倍との報告もある。厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班による2009年の調査では、1年間の受療者は35.5人と推定されているが、欧州の発症率(5.2人/100万人)と同等として計算すると648人となることにより、わが国では多くの未診断症例が埋もれている可能性が高いと思われる。■ 病因ヘムは、生体内においては、主に骨髄と肝臓で合成されている。約70~80%のヘムは、骨髄の赤血球系細胞で合成され、グロビンに供給されヘモグロビンを形成する。残りは主に肝臓で合成され、シトクロムP450などのヘム蛋白の配合族として利用されている。ヘム合成経路の律速酵素は、第1番目の酵素であるALASであり、本酵素活性の増減が細胞内ヘム蛋白量を調整している。ALAS酵素活性は、最終産物であるヘムにより、肝臓ではネガティブフィードバックを受けており、ヘムの量は一定に保たれる。ALASの酵素活性は、ヘム合成経路で最も低い(したがって律速酵素たりうる)。ポルフィリン症の病因は、それ以外のヘム合成系酵素の活性が遺伝子異常により低下し、ALAS活性より低くなることで、本経路の異常が生じることである。ウロポルフィリン(UP)、コプロポルフィリン(CP)、プロトポルフィリン(PP)などのポルフィリンの蓄積が光線過敏性皮膚炎の病因であることは確定しているが、後に述べる急性発作(神経系の機能異常が病因)を引き起こす機序は未確定である。上流の基質であるポルフォビリノーゲン(PBG)、およびALAの増加を病因とする神経毒性前駆物質説、ならびに、ヘム蛋白やヘム酵素の機能低下を病因とするヘム欠乏説があり、どちらが主であるかの決定的なデータはいまだみられない。なお、最終産物であるヘムの低下は、ネガティブフィードバック機序を介してALASの酵素活性を増加させ、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況をさらに助長させる。したがって、この酵素活性のバランスに影響を与える何らかの誘因(薬物など)により、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況がわずかに増強されただけで、悪循環の過程を経て、急性に病状の悪化(急性発作)を生じる。誘因としては、外傷、感染症、ストレス、甲状腺ホルモン、妊娠、あるいは飢餓など(狭義の誘因)、バルビタール、サルファ薬などの誘発薬剤、ヘム合成系酵素を直接障害し、ヘム合成能力をヘムの需要量以下に低下させる(発症剤)、セドルミッド、グリセオフルビンなどが挙げられる。薬剤については、下記のウェブサイトに記載されているので参照していただきたい。The American Porphyria Foundation(APF)European Porphyria Network(EPNET)■ 症状1)急性ポルフィリン発作腹部症状、精神症状、神経症状(三徴)。急性腹症を思わせる腹部症状が初期にみられ、後にヒステリーを思わせるような精神症状を呈し、最後には四肢麻痺、球麻痺などの神経症状を呈し、死に至ることもある急性発作がみられる。このときみられる腹部症状に対応する器質的な異常は認められず、機能的異常によるものと考えられている。このように、病状の進行に応じて多彩な症候を呈するので、種々の間違った診断の下に治療されるケースが多い。(1)腹部症状:腹痛、嘔気、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満など(2)精神症状:不眠、不安、ヒステリー、恐怖感、興奮、傾眠、昏睡など(3)神経症状:四肢脱力、知覚異常、言語障害、嚥下(飲み込み)障害、呼吸障害など2)光線過敏性皮膚炎HCPおよびVPでは、光線過敏性皮膚炎がみられることもある。3)非発作時(間欠期)無症状■ 予後いったん発症すれば、死亡率は20%を超え、予後不良と考えられていた。これは、診断がつかないまま、バルビタールなどの使用禁忌薬やほかの誘因が重なって、病状が悪化した症例が多いことも原因であり、診断がつき、適切な治療が行われた場合、大半は完全に回復する。繰り返し発症する症例では、発症に対する不安神経症を呈することもあり、発症早期から適切な治療をすることが望まれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ヘム合成経路の酵素活性の低下は、その酵素による反応部位より上流の基質の増加と最終産物であるヘムの低下を引き起こす。したがって、増加した基質(ALAおよびPBG)や基質の代謝産物であるUPおよびCPなどを測定することにより、酵素異常の部位がわかる。臨床症状、検査値などを含め総合的に診断することが必要だが、検査値で考えると下に示した図2のフローチャートに従って検査を進めることになる。本症では、病因となる遺伝子異常を持っているが、いまだ発症していない人(潜在者)が少なからずみられる。その発症前診断には、上記のような代謝産物の測定および酵素活性の測定では不十分なことがあり、遺伝子診断が必要となることが多い。図2 急性ポルフィリン症診断のフローチャート画像を拡大する■ 検査成績(ポルフィリン関連)血中および尿中のPBG、ALA、ポルフィリンなどの値は、各種ポルフィリン症の病型に応じて異なるが、急性ポルフィリン症に共通する(まれな病型であるADPを除く)所見として尿中PBGの増加がある(定性的に調べる検査であるWatson-Schwartz法で陽性)。また、尿中ポルフィリンも増加し、肉眼的には特有のぶどう酒色(ポルフィリン尿)を呈する(10~30%の症例でみられる)。しかし、ADPやAIPでは、尿中ポルフィリンはあまり増加せず褐色調に留まることが多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性発作の予防誘因を避けるように指導することが大切である。飢餓が誘因となるので、十分な摂食をさせる(ダイエットは禁)。また、医療機関での薬剤投与に注意が必要となる。患者には使用可能薬剤の一覧などの携帯を勧める。月経に伴い急性発作を起こす症例では、LH-RHアナログを用いて、月経を止めることも効果がある。■ 発症時の治療1)グルコースを中心とした補液詳細な機序は不明だが、ALASの酵素活性を抑制し、急性発作を改善させるといわれている。わが国で、最も一般的に行われている治療法。インスリンを併用するとさらに効果が増す。2)ヘム製剤本薬剤はヘム製剤で、細胞内ヘムの上昇を引き起こし、ALASの酵素活性を抑え(ネガティブフィードバックにて)、ヘム合成系の相対的亢進を緩和させる。ポルフィリン症の治療としては、病態に則した治療法であり、欧米では40年来使用されており第一選択療法と位置づけられている。わが国では、2013(平成25)年8月、ヘミン(商品名:ノーモサング)が発売され、使用できるようになった。3)シメチジン作用機序は不明だが、ALAおよびPBGを減少させる効果がある。4)対症療法ポルフィリン症にみられる各種症候に対しては、下記のような対症療法が行われる。ここで大切なことは、使用禁止薬剤(誘因となる薬剤)を絶対に使用しないことである。(1)疼痛、腹痛には、クロルプロマジンおよび麻薬(2)不安、神経症には、クロナゼパム、クロルプロマジン(3)高血圧、頻脈には、ベータ遮断薬(4)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)には、補液による電解質の補充■ 発作が頻回に起こるときの発作予防薬ギボシラン(商品名:ギブラーリ):ALAS1を標的としたsiRNA。ALAs1の発現を抑制し、急性発作の発症を予防することを目的とした薬剤。2019年に米国で承認され、わが国でも2021年に承認された。4 今後の展望ヘム製剤やギボシランが治療に使えることとなり、国際標準に追いついたと言える。また、これら治療薬は高額だが、難病指定もなされ医療費補助もあり、治療は円滑に行える。しかし、確定診断の補助となる遺伝子解析が保険収載されておらず、これが認められると診断の精度が高まるので、現在、保険収載を要望中である。5 主たる診療科内科では代謝内科、消化器内科、神経内科。皮膚症状に対しては皮膚科。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報ポルフィリン症相談(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国ポルフィリン代謝障害友の会「さくら友の会」(患者と患者家族の会)1)大門 真.ポルフィリン症.In:矢崎義雄編.内科学.第11版.朝倉書店;2017. p.1815-1820.2)大門 真. ポルフィリン症の診断と分類. In: 岡庭 豊ほか編. year note 内科・外科等編 2010年版. 第19版. メディックメディア; 2009. p.719-729.3)難病情報センター ポルフィリン症(2022年1月17日アクセス)公開履歴初回2013年09月05日更新2022年01月20日

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糖尿病肥満の体重変化率、セマグルチドvs.リラグルチド/JAMA

 非糖尿病の過体重または肥満の成人において食事および運動療法のカウンセリングを行ったうえで、週1回投与のセマグルチド皮下注は1日1回投与のリラグルチド皮下注よりも、68週時点の体重減少が有意に大きかったことが示された。米国・Washington Center for Weight Management and ResearchのDomenica M. Rubino氏らによる検討で、これまでGLP-1受容体作動薬のセマグルチドとリラグルチドを比較した第III相試験は行われていなかった。JAMA誌2022年1月11日号掲載の報告。BMI30以上、BMI27以上+体重関連併存疾患の338例を対象に試験 研究グループは、過体重または肥満者における、週1回投与のセマグルチド皮下注(2.4mg)と1日1回投与のリラグルチド皮下注(3.0mg)の有効性と有害事象プロファイルを比較する68週にわたる第IIIb相非盲検無作為化試験を実施した。 米国19地点で、2019年9月に登録を開始し(登録期間:9月11日~11月26日)、2021年5月まで追跡した(最終フォローアップ:5月11日)。被験者は、BMI値30以上または27以上で1つ以上の体重関連の併存疾患を有する、糖尿病は有していない成人338例とした。 被験者は3対1対3対1の割合で、週1回セマグルチド2.4mg皮下注投与群(16週間で漸増、126例)またはマッチングプラセボ群、1日1回リラグルチド3.0mg皮下注投与群(4週間で漸増、127例)またはマッチングプラセボ群に割り付けられ、それぞれ投与を受けた。加えて全員に食事療法と運動療法が行われた。また、セマグルチド2.4mg投与に不耐の場合は同1.7mgへの変更が認められた。リラグルチドに不耐の場合は、試験を中断するが、再開後に4週間の漸増が可能であった。解析では、プラセボ群は統合された(85例)。 主要エンドポイントは体重変化率で、確証的副次エンドポイントは、セマグルチド群vs.リラグルチド群について68週時点で評価した10%以上、15%以上、20%以上体重減少それぞれの達成割合とした。 セマグルチドvs.リラグルチドの比較は非盲検で行い、実薬治療群はプラセボ群について二重盲検化された。実薬治療群と統合プラセボ群の比較は、補完的副次エンドポイントとして評価が行われた。68週後の体重変化率、セマグルチド群-15.8% vs.リラグルチド群-6.4% 被験者338例の平均年齢は49(SD 13)歳、78.4%(265例)が女性、平均体重は104.5(SD 23.8)kg、平均BMI値は37.5(SD 6.8)だった。試験を完了したのは319例(94.4%)で、治療を完了したのは271例(80.2%)だった。 ベースラインからの平均体重変化率は、セマグルチド群-15.8%、リラグルチド群-6.4%だった(群間差:-9.4ポイント、95%信頼区間[CI]:-12.0~-6.8、p<0.001)。統合プラセボ群の平均体重変化率は、-1.9%だった。 10%以上、15%以上、20%以上の体重減少の達成割合は、いずれもセマグルチド群がリラグルチド群より大きく、それぞれ、70.9% vs.25.6%(オッズ比[OR]:6.3、95%CI:3.5~11.2)、55.6% vs.12.0%(7.9、4.1~15.4)、38.5% vs.6.0%(8.2、3.5~19.1)だった(いずれもp<0.001)。 なお、治療を中止した人の割合は、セマグルチド群が13.5%、リラグルチド群は27.6%だった。胃腸関連有害イベントは、それぞれ84.1%と82.7%で報告された。

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NNKよりPPK、理解不能の方はGGRKSでEOM【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第44回

第44回 NNKよりPPK、理解不能の方はGGRKSでEOM「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり」歴史ドラマなどで、織田信長が能を舞いながら謡う有名な一節を耳にしたことがあると思います。人の寿命は延び続け、50歳でも若造呼ばわりされる可能性があるのが日本です。今では人生100年に手が届こうとしています。一方で、健康寿命が平均寿命より男性は約9年、女性は約12年も短いことが分かっています。健康寿命は、日常生活に制限なく自立して過ごせる期間です。寿命が延びても、寝たきりではつまらない、元気で長生きしたいと望むことは当然です。診察室で出会う多くの高齢の方々は、亡くなる直前まで元気で過ごし、コロッと逝きたいと話します。これが「ピンピンコロリ:PPK」です。現実には、残念ながら寝たきりとなり終焉を迎える方もいます。これが「ネンネンコロリ:NNK」です。100歳近くの年齢で、ピンピンして健康な長寿の人はそんなに多くはありません。介護が必要となる主な原因としては、認知症・脳血管障害・高齢による衰弱・骨折・転倒などが挙げられます。その背景にあるのが、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病です。平素からの生活習慣の改善や、必要な治療をしっかり受けることは大切です。どんなに気を付けても加齢現象を回避できないことは事実です。PPKを具現化できることは非常に稀であり、宝くじに当選するようなことなのです。自分は、高齢者が自ら支援を忌避せざるを得ない雰囲気を日本の社会が醸成していることに問題があると考えます。認知症や障害を持っても、安心して生き、そして旅立つことができる社会の確立が必要なのでしょう。閑話休題お年寄りの聖地、おばあちゃんの原宿と呼ばれる巣鴨の地蔵通り商店街を歩く方々の、全員がPPKやNNKの意味を知っていると思います。それだけ人口に膾炙する略語です。略語は、長い語を簡潔に呼ぶためにつくるもので、「高等学校」を「高校」、「ストライキ」を「スト」などとする場合や、また、ローマ字の頭文字だけを並べたものもあります。「日本放送協会」を「NHK」などです。仲間内だけのことばとして、隠語として用いることもあります。医学・医療の世界で生きていく場面でも、略語はもはや必須です。とくにチャットやメールでは、長いスペルを短縮すべく、英語でも略語が盛んに利用されます。略語はカジュアルな場面だけでなく、英語のビジネスメールや、論文投稿や学会参加の文書にも頻繁に登場します。紹介してみましょう。TBA=to be announced=後日発表TBD=to be determined=未定TBS=to be scheduled=調整中FYI=for your information=参考までASAP=as soon as possible=できるだけ早くこれらは頻用される有名なものです。EOMはend of messageの略で、「メッセージの終わり」を意味します。メールの件名の最後に付けると、メールの本文はないことが伝わります。メールの件名に「本日の会議16時30分大会議室、EOM」とすれば件名だけで本文は空っぽで大丈夫です。自分は、少しヒョウキンな笑いを誘う略語を使ってしまいます。オヤジギャグ好きの悪い癖です。TGIFは、Thank God, It's Friday! の意味で、金曜日の夕方のメールの最後に相応しいです。花の金曜日を楽しみましょう! を意味します。土曜日にも仕事がある方には使用しないようにしましょう。GGRKSは、「ググれカス」の略で、少し調べればわかることを質問する人に対して、「それぐらいグーグルで検索しろ(ググれ)、カス」という意味で使われる下品な略語です。GGRKSは、数年前に「現代用語の基礎知識」に収録もされ流行しましたが、今では目にする機会は激減しています。では最後にクイズです。GN8, TNTわかりますか? GN8=good n eight=good night=おやすみなさい。TNT=till next time=また会いましょう。

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第92回 改定率で面目保つも「リフィル処方」導入で財務省に“負け”た日医・中川会長

2022年診療報酬改定の作業が大詰めへこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は、まん延防止等重点措置が適用される前に足慣らしをと、高尾山の裏側の山域、裏高尾に行って来ました。先々週、首都圏に降った雪が少しは残っているだろうと足回りは冬山装備で向かったのですが、雪は残念ながらほぼゼロ。首都圏が大雪のときは低気圧が関東南岸を通過するケースがほとんどですが、今回は通過が南過ぎたため高尾山や奥多摩まで十分な雪を降らせなかったようです。雪山が楽しめず落胆、下山は日和ってリフトを使ってしまいました。さて、診療報酬改定の作業が大詰めを迎えています。1月14日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、2022年度改定に向けた「議論の整理」が固められました。今後、パブリックコメントと公聴会を経て、具体的な改定内容である「個別改定項目」に基づく論議が行われ、2月上旬には新点数・新施設基準が決定し、答申となる予定です。ということで、今回は少々遅ればせながら、改定率決定の舞台裏と、注目の新設項目「リフィル処方」について考えてみたいと思います。政界とのパイプが細く、苦戦した日医・中川会長2021年末、2022年度の診療報酬改訂の改定率は、医師らの人件費などにあたる「本体」部分を0.43%引き上げるプラス改定とすることで決着しました。この0.43%という数字を巡っては、各紙がさまざまな分析記事を書いています。12月21日付の読売新聞は「日医vs財務省、診療報酬『痛み分け』」と題する記事で、日本医師会は「厚労族の加藤 勝信・元厚生労働相らとともに『プラス0.5%』を防衛ラインに設定していた」が、「0.3%台前半」という厳しい改定率を突きつけていた財務省に「切り込まれてしまった」と報じています。同紙はさらに、日医の中川 俊男会長が、前会長の横倉 義武氏と比べて政界とのパイプが細く、コロナ禍では政権批判とも取れる発言もあったとして、自民党の安倍 晋三元首相と麻生 太郎自民党副総裁は、「中川氏に配慮する必要はない」と横倉会長時代に行われた4回の改定率の平均である「0.42%を下回る水準にするべきだと主張した」とも書いています。「横倉平均」を0.1%上回る0.43%で決着こうした安倍、麻生両氏の意向や、本連載「第80回『首相≒財務省』vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」でも書いた政権内で増した財務省の存在感に日医と厚労族議員は相当焦っていた、と見られています。読売新聞によれば、日医は最終的に、引退した重鎮の伊吹 文明・元衆院議長や尾辻 秀久元厚労相らの重鎮に協力を求め、岸田 文雄首相に直談判する機会を設けてもらい、「横倉平均」をわずかに0.1%上回る0.43%が実現した、とのことです。なお、読売新聞は、横倉氏自身も「0.42%を基準にしないでほしい」と政府側に水面下で求めた、とも書いています。「横倉氏としても会長時代の『横倉平均』を基に医療費の抑制が行われる事態は避けたいとの思惑があったとみられる」とのことです。日医に大きく歩み寄ったかたちの岸田首相ですが、今夏に予定される参院選での日医の集票力を期待しての決断であるのは確かでしょう。参院選で勝てば、衆院を解散しない限り最長3年間は選挙のない時期を迎え、それは岸田政権の盤石化につながります。リフィル処方を差し出した見返りとしての改定率いずれにせよ、日医・中川会長は岸田首相に改定率で大きな借りをつくったことは間違いありません。「第85回 診療報酬改定シリーズ本格化、『躊躇なくマイナス改定すべき』と財務省、『躊躇なくプラス改定だ』と日医・中川会長」でも書いたように、日医会長の最大の仕事はプラス改定を勝ち取ることです。今回はプラス改定に加え、横倉前会長の改定率も上回ることができたわけで、中川会長は面目をどうにか保てたと言えそうです。ただし、その面目と引き換えに日医が受け入れたのが、これまで反対の立場を崩してこなかった「リフィル処方」です。12月21日付の日本経済新聞は、「本体部分について財務省幹部は『数字を見れば大敗だが、流れは変えられた』と語る。改定率を0.1%下げる要素として処方箋を反復利用できる『リフィル処方』の22年度からの導入にメドを付けた(中略)。日医は長年反対していたリフィル処方を差し出した見返りとして、プラス改定率を引き出したとの見方もある」と書いています。一つの処方箋を使い回し利用リフィル処方とは、一定期間内に一つの処方箋を繰り返し利用できる仕組みで、英語の「refil」(補給、詰め替え)が語源です。リフィル処方においては、例えば患者に90日分の投薬を指示する場合であれば、計3回利用(使い回し)ができる30日分の処方箋を発行します。医療機関への通院回数が減るため、医師に支払われる診療報酬(再診料など)も減ります。リフィル処方は米国、英国、フランスなど、諸外国ではすでに導入されている制度です。一方、日本では2016年度診療報酬改定で類似した「分割調剤」が導入されたものの、「手続きが煩雑」などの理由で算定回数は伸びていません。分割調剤とは、同じ処方箋を使い回すのではなく、「定められた処方期間を分割する」というもの。90日分の投薬なら、例えば30日分の処方箋を3枚発行します。1)長期保存が難しい薬剤、2)後発医薬品を初めて処方する場合、3)医師による指示がある場合などに用途が限られ、分割回数の上限も3回までとなっています。日本薬剤師会、薬剤師の役割拡大に期待リフィル処方については、細かな制度設計(対象患者、対象薬剤、回数など)や関連する診療報酬、調剤報酬は未定ですが、日本薬剤師会は大きな期待を抱いているようです。1月13日付のMEDIFAXは、日本薬剤師会の山本 信夫会長のリフィル処方導入に対するコメントを報じています。リフィル処方では2回目の調剤以降、 医師の診療が前提ではなくなることについて山本会長は、 「(調剤を)続けるには患者のさまざまな情報がなかったら(判断)できない」と薬剤師の責任が極めて重くなると指摘、「覚悟を持ってやらないといけない」と話したとのことです。もっとも、知人のある薬剤師は「一部の医師は積極的にリフィルを活用するかもしれないが、処方日数は処方医の判断で何とでもなるので、当面は医師にとっての影響はほとんどないのではないか。薬剤師の責任が今まで以上に重くなることは確かだが、服用後の患者の状況を検査もなしにどう把握しろというのか」と話していました。ボディブローのようなダメージを医療機関に与えるリフィル処方については、医療費適正化の観点から、随分前からその導入が求められてきました。5年前の「経済財政運営と改革の基本方針 (骨太方針) 2017」では「医師の指示に基づくリフィル処方の推進を検討する」と明記されましたが、日本医師会の反対等もあり制度化は先送りにされてきました。今回の診療報酬改定でのリフィル処方導入に向けても、財務省は財政制度審議会において言及を重ね、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2021」にも盛り込んでいます。今回やっと導入に至った背景には、「第80回『首相≒財務省』vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」でも書いた、政権内で増した財務省の存在感があったことは間違いないでしょう。リフィル処方導入は、最終的に昨年12月22日の鈴木 俊一財務相と後藤 茂之厚労相との大臣折衝で決着したとのことですが、1月14日のミクスOnlineは、鈴木財務相が同紙の取材に対し、「リフィル処方箋は譲れなかった」と話したと報じています。私自身は、このリフィル処方、将来的にはボディブローのようにじわりじわりとダメージを医療機関に与えるのではないかと考えています。最初の制度や点数の設定はおそらくマイルドかつ医療機関にもメリットがあるように組み立てられると思われます。ひょっとしたら、薬局や薬剤師のメリットは見えにくいかもしれません。しかし、それが診療報酬の面白いところです。かつて取材した中医協委員も務めたある医師は「新設される項目については点数の多寡は大きな問題ではない。その項目ができたこと自体が重要だ。そこを足がかりに、将来どうにでも仕組みを変えていけるのだから」と話していました。今回の診療報酬改定でのリフィル処方の影響は、改定率にして-0.1%と言われていますが、もし国民がその割安感と利便性に気づいたら、それ以上の影響が出てくるかもしれません。また、検査もできず、患者の状態を適切に判断できない薬剤師に患者が不安を感じるのだとしたら、その薬剤師に何らかの“判断”機能を持たせる動きが出てくる可能性もあります。そういった意味でも、今回の“診療報酬改定シリーズ”、数字にこだわるあまり、リフィル処方を飲んだ日医・中川会長は、財務省に“負け”たと言えるのではないでしょうか。

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