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lecanemabが早期アルツハイマー病の症状悪化を抑制、今年度中の申請目指す/エーザイ・バイオジェン

 エーザイ株式会社とバイオジェン・インクは2022年9月18日付のプレスリリースで、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD(これらを総称して早期ADと定義)を対象とした第III相Clarity AD試験において、主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成したと発表した。 Clarity AD試験は、早期AD患者1,795例を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第III相検証試験。被験者は、lecanemab 10mg/kg bi-weekly投与群またはプラセボ投与群に1:1で割り付けられた。ベースライン時における被験者特性は両群で類似しており、バランスがとれていた。被験者登録基準においては、幅広い合併症あるいは併用治療(高血圧症、糖尿病、心臓病、肥満、腎臓病、抗凝固薬併用など)を許容している。試験実施地域は日本、米国、欧州、中国。 主要評価項目はベースラインから投与18ヵ月時点でのCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の変化。主な副次評価項目はベースラインから投与18カ月時点での、アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale 14)、ADCOMS(Alzheimer’s Disease Composite Score)およびADCS MCI-ADL(Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment)。 lecanemab:可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体で、ADを惹起させる因子の1つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されている。 今回発表されたClarity AD試験の主な結果は以下のとおり。・intent-to-treat(ITT)集団における解析の結果、投与18ヵ月時点での全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBスコアの平均変化量は、lecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して-0.45となり27%の悪化抑制を示し(p=0.00005)、主要評価項目を達成した。・また、CDR-SBは投与6ヵ月以降すべての評価ポイントにおいてlecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して統計学的に高度に有意な悪化抑制を示した(全評価ポイントでp<0.01)。・副次評価項目であるアミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14、ADCOMSおよびADCS MCI-ADLの投与18ヵ月時点での変化についても、すべての項目においてプラセボと比較して統計学的に高度に有意な結果を示した(p<0.01)。・抗アミロイド抗体に関連する有害事象であるアミロイド関連画像異常(ARIA)について、ARIA-E(浮腫/浸出)の発現率は、lecanemab投与群で12.5%、プラセボ投与群で1.7%だった。そのうち症候性のARIA-Eの発現率は、lecanemab投与群で2.8%、プラセボ投与群で0.0%だった。・ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、大出血、脳表ヘモジデリン沈着)の発現率は、lecanemab投与群で17.0%、プラセボ投与群で8.7%だった。症候性ARIA-Hの発現率は、lecanemab投与群で0.7%、プラセボ投与群で0.2%だった。ARIA-Hのみ(ARIA-Eを発現していない被験者でのARIA-H)はlecanemab投与群(8.8%)とプラセボ投与群(7.6%)で差はみられなかった。・ARIA(ARIA-Eおよび/またはARIA-H)の発現率はlecanemab投与群で21.3%、プラセボ投与群で9.3%であり、総じてlecanemabのARIA発現プロファイルは想定内であった。 本試験結果については、2022年11月29日にアルツハイマー病臨床試験会議で発表し、査読付き医学誌で公表する予定となっているほか、同社では本試験結果をもとに2022年度中の米国フル承認申請、および日本、欧州での承認申請を目指している。

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妊娠糖尿病診断の明確なカットオフ値perfect lineはあるのか?(解説:住谷哲氏)

 現在の妊娠糖尿病(GDM)の診断は HAPO(Hyperglycemia and adverse pregnancy outcomes)研究の結果を受けてIADPSG(International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups)が2010年に発表した診断基準に基づいている1)。わが国においても、当初は日本糖尿病学会、日本産科婦人科学会および日本糖尿病・妊娠学会で見解の相違があったが2015年に統一された。GDMの診断基準は「75gOGTTにおいて、(1)空腹時血糖値92mg/dL以上、(2)1時間値180mg/dL以上、(3)2時間値153mg/dL以上のいずれか1点を満たした場合」とされている(ただし妊娠中の明らかな糖尿病[overt diabetes in pregnancy]は除く)。 注意する必要があるのは、HAPO研究においてLGA(large for gestational age)の発症と血糖値との間には直線的関係があり、閾値が認められなかった点である2)。つまり血糖値が低ければ低いほどLGAの発症は減少する。したがって現在のGDMの診断基準はexpert consensusであり、LGAを含む主要評価項目のオッズ比(OR)が、HAPO研究でのコントロール群(全例を7群に分けた際に最も血糖値の低いカテゴリー)と比較して1.75倍になる血糖値(92-180-153)がカットオフ値として採用された。したがって、海外ではこのIADPSGの診断基準を採用していない国もあり、本試験が実施されたニュージーランドもその一つである。ニュージーランドでは2014年に公表された妊娠糖尿病の診断基準が用いられており、それが今回の試験の高基準値(99-xx-162)に相当する3)。 結果は、主要評価項目であるLGAの発症率は低基準値群と高基準値群との間に有意差はなかった。さらに母児の健康状態に関連するその他の副次評価項目にも両群にほとんど差はなかった。当然であるが、低基準値群で妊娠糖尿病の診断率が高く、医療介入も増加し、医療費も増大している。この結果だけから見ると、高基準値を採用するのに問題はないように思われるが、問題は低基準値と高基準値の間に分類された妊婦のアウトカムがどうであったかにある。この群は、低基準値を採用すれば妊娠糖尿病と診断されて介入対象となったが、高基準値を採用すると妊娠糖尿病と診断されず介入されなかったことになる(milder degree of GDM、以下milder GDM)。この群に対するサブグループ解析は事前に設定されており、その結果も記載されている。低基準値で妊娠糖尿病と診断された310人のうち、195人(63%)がmilder GDMであり、高基準群では178人がmilder GDMに分類された。両群におけるLGAの発症は、低基準値群12人(6.2%)、高基準値群32人(18.0%)であり、LGA発症の調整後相対リスク比は0.33(95%信頼区間[CI]:0.18~0.62)、NNTは4(95%CI:2~17)であった。したがって、milder GDMにおいては低基準値による診断が母児に健康上のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。 本試験の結果より、高基準値による妊娠糖尿病の診断は母児に対して健康上のリスクとならないことが明らかとなった。医療経済的には高基準値の採用がより正当化されるだろう。しかし事前に設定されたサブグループ解析の結果をどのように解釈するか? ニュージーランド当局が本試験の結果を踏まえて、妊娠糖尿病の診断基準に対してどのような判断を下すかを注視したい。

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男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。35~70歳の約15万6,000例で、各種リスク因子と主要心血管イベントの関連を解析 研究グループは、現在進行中のPURE研究における、高所得国(11%)および低・中所得国(89%)を含む21ヵ国のデータを用いて解析した。 解析対象は、2005年1日5日~2021年9月13日に登録され、ベースラインで35~70歳の心血管疾患既往がなく、少なくとも1回の追跡調査(3年時)を受けた参加者15万5,724例であった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)とした。代謝リスク因子(収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト対ヒップ率、非HDLコレステロール)、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール/HDLコレステロール比、ApoA1、ApoB、ApoB/ApoA1比)、行動的リスク因子(喫煙、飲酒、身体活動、食事[PURE食事スコア])および心理社会的リスク因子(うつ症状、教育)と主要心血管イベントとの関連を男女別に解析し、ハザード比(HR)ならびに人口寄与割合(PAF)を算出した。脂質マーカーとうつ症状は、女性より男性で心血管リスク上昇 解析対象15万5,724例の内訳は、女性9万934例(58.4%)、男性6万4,790例(41.6%)、ベースラインの平均(±SD)年齢はそれぞれ49.8±9.7歳、男性50.8±9.8歳で、追跡期間中央値は10.1年(四分位範囲[IQR]:8.5~12.0)であった。 データカットオフ(2021年9月13日)時点で、主要心血管イベントは女性で4,280件(年齢調整罹患率は1,000人年当たり5.0件[95%信頼区間[CI]:4.9~5.2])、男性で4,911件(8.2件[8.0~8.4])発生した。男性と比較して、女性はとくに若年で心血管リスクプロファイルがより良好であった。 代謝リスク因子と主要心血管イベントとの関連は、非HDLコレステロールを除き、女性と男性で同様であった。非HDLコレステロール高値のHRは、女性で1.11(95%CI:1.01~1.21)、男性で1.28(1.19~1.39)であった。また、他の脂質マーカーも女性よりも男性のほうが一貫してHR値が高かった。 うつ症状と主要心血管イベントとの関連を示すHRは、女性で1.09(95%CI:0.98~1.21)、男性で1.42(1.25~1.60)であった。一方、PUREスコア(スコア範囲:0~8)が4以下の食事の摂取は、男性(HR:1.07[95%CI:0.99~1.15])よりも女性(1.17[1.08~1.26])で主要心血管イベントと関連していた。 主要心血管イベントに対する行動的および心理社会的リスク因子(合計)のPAFは、女性(8.4%)よりも男性(15.7%)で大きく、これは主に現在喫煙のPAFが男性で大きいためであった(女性1.3%[95%CI:0.5~2.1]、男性10.7%[95%CI:8.8~12.6])。

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人工甘味料の種類別、心血管疾患リスクとの関連は/BMJ

 人工甘味料の摂取量の増加に伴って心血管疾患のリスクが上昇し、なかでもアスパルテームは脳血管疾患、アセスルファムカリウムとスクラロースは冠動脈性心疾患のリスクと関連することが、フランス・ソルボンヌ パリ北大学のCharlotte Debras氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年9月7日号に掲載された。NutriNet-Sante研究のデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、あらゆる食事(飲料、卓上甘味料、乳製品など)由来の人工甘味料(全体、種類別[アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース])と、心血管疾患(全体、脳血管疾患、冠動脈性心疾患)の関連の評価を目的に、住民ベースの前向きコホート研究を行った。 解析には、ウェブベースのNutriNet-Sante研究(2009~21年)の参加者(10万3,388人、平均[±SD]年42.2±14.4歳、女性79.8%、追跡期間中央値9.0年[90万4,206人年])のデータが用いられた(NutriNet-Sante研究はフランス保健省などの支援を受けた)。 人工甘味料の消費量で、非消費(6万5,028人[62.90%])、低消費量(1万9,221人[18.59%])、高消費量(1万9,139人[18.51%])の3つの群に分けられた。低消費量と高消費量は、男女別の中央値(男性16.44mg/日、女性18.46mg/日)を基準に分類された。 主要アウトカムは、人工甘味料と心血管疾患リスクの関連とされ、多変量補正後Coxハザードモデルを用いて評価が行われた。砂糖に代わる健康的で安全な物質とはいえない 人工甘味料の総摂取量の増加に伴い、心血管疾患のリスクが有意に上昇した(イベント数1,502件、ハザード比[HR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.01~1.18、p=0.03)。心血管疾患の絶対罹患率は、10万人年当たり高消費量群が346件、非消費群は314件だった。 また、とくに人工甘味料の総摂取量は脳血管疾患リスクと強い関連を示した(イベント数777件、HR:1.18、95%CI:1.06~1.31、p=0.002)。脳血管疾患の罹患率は、10万人年当たり高消費量群が195件、非消費群は150件だった。 人工甘味料の種類別では、アスパルテームの摂取が脳血管疾患リスクの増加と関連し(HR:1.17、95%CI:1.03~1.33、p=0.02)、罹患率は10万人年当たり高消費量群が186件、非消費群は151件であった。 また、アセスルファムカリウム(HR:1.40、95%CI:1.06~1.84、p=0.02)とスクラロース(1.31、1.00~1.71、p=0.05)は冠動脈性心疾患(イベント数730件)のリスクの増加をもたらし、アセスルファムカリウムの罹患率は10万人年当たり高消費量群が167件、非消費群は164件で、スクラロースはそれぞれ271件および161件だった。 著者は、「これらの結果は、人工甘味料が心血管疾患の予防のための修正可能なリスク因子である可能性を示唆する。多くの食品や飲料に含まれ、多くの人びとが毎日消費しているこれらの食品添加物は、砂糖に代わる健康的で安全な物質と考えるべきではなく、これはいくつかの保健機関の現時点での見解と合致する」としている。

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オープンソースの自動インスリン伝達システム、1型DM血糖コントロールを改善/NEJM

 7~70歳の1型糖尿病患者において、オープンソースの自動インスリン伝達(AID)システムはセンサー付きインスリンポンプと比較して、24週時に血糖値が目標範囲にある時間の割合が有意に高く、1日のうち血糖値が目標範囲内である時間は3時間21分延長したとの研究結果が、ニュージーランド・オタゴ大学のMercedes J. Burnside氏らが実施した「CREATE試験」で示された。研究結果は、NEJM誌2022年9月8日号で報告された。ニュージーランドの無作為化対照比較試験 CREATE試験は、1型糖尿病患者におけるオープンソースAIDシステムの有効性と安全性のデータの収集を目的とする非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年9月~2021年5月の期間に、ニュージーランドの4施設で参加者の登録が行われた(ニュージーランド保健研究会議[HRC]の支援を受けた)。 対象は、年齢7~70歳、1型糖尿病の診断を受けてから1年以上が経過し、インスリンポンプ療法を6ヵ月以上受け、糖化ヘモグロビンの平均値<10.5%(91mmol/mol)の患者であった。 被験者は、オープンソースAIDシステムまたはセンサー付きインスリンポンプ(対照)を使用する群に無作為に割り付けられた。また、年齢7~15歳が小児、16~70歳は成人と定義された。 AIDシステムは、AndroidAPS 2.8(標準的なOpenAPS 0.7.0アルゴリズムを使用)の修正版で、試作段階のDANA-iインスリンポンプとDexcom G6持続血糖モニター(CGM)を組み合わせて用いた。ユーザーインターフェースは、Androidスマートフォンアプリケーション(AnyDANA-Loop)だった。 主要アウトカムは、155~168日目(試験の最後の2週間[23~24週])に、血糖値が目標範囲(70~180mg/dL[3.9~10.0mmol/L])にある時間の割合とされた。年齢による治療効果に差はない 97例が登録され、AID群に44例(小児21例[年齢中央値14.0歳、女児11例]、成人23例[40.0歳、15例])、対照群に53例(27例[11.0歳、13例]、26例[38.0歳、15例])が割り付けられた。ベースラインの平均糖化ヘモグロビン値は小児が7.5%、成人は7.7%だった。 血糖値が目標範囲にある時間の割合の平均値(±SD)は、AID群がベースラインの61.2±12.3%から24週時には71.2±12.1%へ上昇し、これに対し対照群は57.7±14.3%から54.5±16.0%へと低下しており、有意な差が認められた(補正後平均群間差:14.0ポイント、95%信頼区間[CI]:9.2~18.8、p<0.001)。また、AID群は、1日のうち血糖値が目標範囲内である時間が、対照群よりも3時間21分長かった。 血糖値が目標範囲にある時間の割合が70%以上で、かつ範囲外(<70mg/dL)にある時間の割合が4%未満の患者は、AID群が52.0%であったのに対し、対照群は11.0%であった(補正後平均群間差:36.9ポイント、95%CI:25.9~48.5)。また、年齢による治療効果の差はみられなかった(p=0.56)。 小児では、AID開始から2週間以内には介入効果が認められ、24週の試験期間中も維持された。また、AID群は、夜間(午前0時~午前6時)の血糖値が目標範囲にある時間の割合が76.8±15.8%と、日中(午前6時~午後12時)の64.3±11.7%に比べて高かった。対照群は、それぞれ57.2±21.4%および50.9±17.4%であった。成人のAID群も小児と同様に、夜間が85.2±12.7%と高かったのに対し日中は70.9±12.7%であった。対照群は、それぞれ53.5±20.1%および57.5±14.4%であり、夜間と日中で同程度だった。 重度の低血糖および糖尿病性ケトアシドーシスは両群とも発現せず、インスリン投与のアルゴリズムおよび自動制御に関連した有害事象もみられなかった。また、重篤な有害事象は、AID群で2件(輸液セットの不具合に起因する高血糖による入院と、糖尿病とは無関係の入院)、対照群で5件(インスリンポンプの不具合による高血糖が1件、糖尿病とは無関係のイベントが4件)認められた(いずれも小児)。 著者は、「この試験の参加者は、多くの実臨床研究に比べ、より典型的な1型糖尿病であり、オープンソースAIDの使用経験がなかったことから、さまざまな1型糖尿病患者が、このシステムから利益を得る可能性があることが示唆される」としている。

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SGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬の処方率、人種・民族間で格差/JAMA

 2019~20年の米国における2型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の処方率は低く、白人や非ヒスパニック/ラテン系と比較して、とくに他の人種やヒスパニック/ラテン系の患者で処方のオッズ比が有意に低いことを、米国・カリフォルニア大学のJulio A. Lamprea-Montealegre氏らが、米国退役軍人保健局(VHA)の大規模コホートデータ「Corporate Data Warehouse:CDW」を用いた横断研究の結果、報告した。2型糖尿病に対する新しい治療薬は、心血管疾患や慢性腎臓病の進行リスクを低減することができるが、これらの薬剤が人種・民族にかかわらず公平に処方されているかどうかは、十分な評価がなされていなかった。著者は、「これらの処方率の差の背景にある要因や、臨床転帰の差との関連性を明らかにするために、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2022年9月6日号掲載の報告。2型DM患者約120万例について2019~20年の処方率を人種・民族別に検討 研究グループは、成人2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の処方における人種・民族による差異を調査する目的で、CDWのデータを用い、2019年1月1日~2020年12月31日の期間にプライマリケア診療所を2回以上受診した2型糖尿病成人患者を対象に解析した。 医療給付申請時またはVHA施設の受診時に質問票で確認した、自己申請に基づく人種・民族別に、研究期間中のSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の処方(あらゆる有効処方箋)率を評価した。なお、SGLT2阻害薬はertugliflozin、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、GLP-1受容体作動薬はセマグルチド、リラグルチド、albiglutide、デュラグルチドを評価対象とした。 解析対象は、119万7,914例(平均年齢68歳、男性96%、アメリカ先住民/アラスカ先住民1%、アジア人/ハワイ先住民/他の太平洋諸島民2%、黒人/アフリカ系アメリカ人20%、白人71%、ヒスパニック/ラテン系7%)であった。処方率は全体で8~10%、白人以外の人種、とりわけヒスパニック/ラテン系で低い 全対象における処方率は、SGLT2阻害薬10.7%、GLP-1受容体作動薬7.7%。人種・民族別ではそれぞれ、アメリカ先住民/アラスカ先住民で11%、8.4%、アジア人/ハワイ先住民/他の太平洋諸島民11.8%、8.0%、黒人/アフリカ系アメリカ人8.8%、6.1%、白人11.3%、8.2%であった。また、ヒスパニック/ラテン系では11%、7.1%、非ヒスパニック/ラテン系では10.7%、7.8%であった。 患者およびシステムレベルの因子を調整後のSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の処方率は、白人と比較して、他のすべての人種で有意に低かった。白人との比較で処方オッズが最も低かったのは黒人であった(SGLT2阻害薬の補正後オッズ比[OR]:0.72[95%信頼区間[CI]:0.71~0.74]、GLP-1受容体作動薬の補正後OR:0.64[95%CI:0.63~0.66])。 また、ヒスパニック/ラテン系の患者は、非ヒスパニック/ラテン系の患者と比較して、処方オッズが有意に低かった(SGLT2阻害薬の補正後OR:0.90[95%CI:0.88~0.93]、GLP-1受容体作動薬の補正後OR:0.88[95%CI:0.85~0.91])。

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1型DMのC-ペプチド分泌能、クローズドループ療法vs.標準療法/NEJM

 新規発症の若年1型糖尿病患者において、診断後24ヵ月間、ハイブリッドクローズドループ(HCL)療法により持続的に血糖コントロールを行っても、標準的なインスリン療法と比較して、残存C-ペプチド分泌能の低下を抑制することはできなかった。英国・ケンブリッジ大学のCharlotte K. Boughton氏らが、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験「Closed Loop from Onset in Type 1 Diabetes trial:CLOuD試験」の結果を報告した。新規発症の1型糖尿病患者において、HCL療法による血糖コントロールの改善が標準的なインスリン療法と比較しC-ペプチド分泌能を維持できるかどうかは不明であった。NEJM誌2022年9月8日号掲載の報告。10歳以上17歳未満の新規発症1型糖尿病患者97例を対象に無作為化 研究グループは、2017年2月6日~2019年7月18日の間に、10歳以上17歳未満で1型糖尿病と診断されてから21日以内の若年者を、HCL療法群(HCL群)または標準的なインスリン療法群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付け(10~13歳、14~16歳で層別化)、24ヵ月間治療した。 主要評価項目は、診断後12ヵ月時点での血漿C-ペプチド濃度(混合食負荷試験後)の曲線下面積(AUC)で、intention-to-treat解析を行った。 計97例(平均年齢[±SD]12±2歳)が、HCL群51例、対照群46例に割り付けられた。12ヵ月、24ヵ月時点でのC-ペプチド分泌能に両群で有意差なし 診断後12ヵ月時点の血漿C-ペプチド濃度のAUC(幾何平均値)は、HCL群で0.35pmoL/mL(四分位範囲[IQR]:0.16~0.49)、対照群で0.46pmoL/mL(0.22~0.69)であり、両群間に有意差は確認されなかった(平均補正後群間差:-0.06pmoL/mL、95%信頼区間[CI]:-0.14~0.03)。 24ヵ月時点の血漿C-ペプチド濃度のAUCも両群で有意差はなかった(HCL群0.18pmoL/mL[IQR:0.06~0.22]、対照群0.24pmoL/mL[0.05~0.30]、平均補正後群間差:-0.04pmoL/mL[95%CI:-0.14~0.06])。糖化ヘモグロビン値(算術平均値)は、HCL群のほうが対照群と比較して12ヵ月時点で4mmoL/mole(0.4ポイント、95%CI:0~8mmoL/mole[0.0~0.7ポイント])、24ヵ月時点で11mmoL/mole(1.0ポイント、95%CI:7~15mmoL/mole[0.5~1.5ポイント])低値であった。 重症低血糖はHCL群で5件(患者3例)、対照群で1例発現し、糖尿病性ケトアシドーシスがHCL群で1例認められた。

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日本人の脂質値の推移とコントロールの重要性(解説:三浦 伸一郎 氏)

 2022年8月23・30日号のJAMA誌に米国成人の脂質値の推移の研究が報告された。総コレステロール値は年齢調整後、2018年までの10年間で有意に改善していたが、注目されることはアジア人では改善を認めなかったことである。 日本人の脂質値の推移は、「健康日本21(第二次)」の計画の途中経過を見ると、2019年で血清総コレステロール値が240mg/dL以上の割合は男性12.9%、女性22.4%であった(「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省)。この10年間でみると、その割合は、男性で有意な変化はなかったが、女性では有意に増加していた。「健康日本21(第二次)」の脂質異常症(40~79歳)の減少目標は、総コレステロール240mg/dL以上の割合が男性10%、女性17%であり、かなり乖離があるのが現状である。 現在、脳心血管疾患の二次予防では、スタチンを中心とした脂質異常症治療薬による積極的脂質低下療法が実施されるようになってきたが、一次予防に対してはまだ議論の余地がある。JAMA誌の報告のもうひとつの要点は、スタチン服用者のコレステロールのコントロール率は10年間で有意な変化をもたらしていなかったことである。 日本では、2022年7月に日本動脈硬化学会より『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』が発表され、久山町スコアによる予測される10年間の動脈硬化性疾患発症予測モデルが新たに作成されている。一次予防患者では、単にコレステロール値のみでなく、この予測モデルを利用し、個々人に合わせた脂質管理目標値を設定する必要がある。さらに、生活習慣の修正と共に、必要があれば、一次予防でも治療薬による積極的脂質低下療法を考慮すべきと考える。さらに、脂質値を考える場合、総コレステロール値やLDLコレステロール値のみでなく、トリグリセライド値やHDLコレステロール値も考慮に入れた脂質管理が必要である。

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収縮機能の良しあしにかかわらず心不全へのSGLT2阻害薬の有効性を確認、しかし副作用に対する注意は不可欠(解説:桑島巌氏)

 糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬がいまや心不全治療薬として大ブレークしている。心不全でも収縮機能が低下しているHFrEF(heart failure with reduced EF)に対する有効性は多くの大規模臨床試験で証明されていたが、収縮機能が良好な心不全(HFpEF)に対する有用性は明らかではなかった。 しかしDELIVER試験(2021年)とEMPEROR-Preserved試験(2022年)という2つの大規模臨床試験によってHFpEFに対する有効性も確認され、心不全治療薬としての適応範囲は大きく広がる可能性が示された。 本論文は、この2つのtrialに加えて、DAPA-HFとEMPEROR-ReducedというHFrEFに関するtrial、さらに全ての心不全に対する有用性を検証したSOLOIST-WHFの合計5試験、2万1,947例の被験者を対象としてメタ解析したものである。主要エンドポイントは、ランダム化時点から、心血管死または心不全による入院までの期間である。 その結果、HFpEFに対する有用性が2トライアルのメタ解析で明らかになったのみならず、収縮機能が低下した心不全を加えた5つの臨床試験でも、心不全死、および入院に対する予後改善効果が明らかになった。 これにより、SGLT2阻害薬は、糖尿病の有無や収縮機能のいかんにかかわらず心不全全般に有効であるという根拠が示されたことになり、心不全ガイドラインにも大きく影響するであろう。 しかしいずれの試験でも高度の腎障害例が対象例から除外されていることや対象例のeGFR平均値がSOLOIST-WHFの49.7mL/min/1.73m2以外の試験ではいずれも60以上であることは留意しておく必要がある。 本試験はあくまでも心不全の予後に関するメタ解析であり、臨床現場では、尿路感染症、脱水などの個々の有害事象には十分注意すべきである。

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英語で「問題ありません」は?【1分★医療英語】第46回

第46回 英語で「問題ありません」は?How was the test result?(検査の結果はどうでしたか?)Your diabetes is under control.(あなたの糖尿病は問題ありません)《例文1》Don’t worry. Everything is under control.(心配ありません、すべて順調です)《例文2》His drinking problem is not under control.(彼の飲酒癖は手に負えない状態です)《解説》“under control”の直訳は「支配下にある、コントロール下に置かれている」となりますが、「適切に管理されている」ということから派生して、日常会話では「うまくいっている、問題ない」という意味で使われます。医療現場では、糖尿病や脂質異常症などの慢性疾患が順調に管理されていることを“under control”と表すことができます。また、“get”を使うことで“I would like to get you diabetes under control.”(あなたの糖尿病をコントロールしたいのです)といった表現もできます。“under”は「下に」を表す前置詞ですが、“under construction”(建設中)、“under repair”(修理中)といったように、「~している最中である」という意味合いでも使われることも覚えておきましょう。講師紹介

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TILsを有するTN乳がんへの術前ニボルマブ±イピリムマブ、高い免疫活性示す(BELLINI)/ESMO2022

 術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の追加による、早期トリプルネガティブ(TN)乳がん患者の転帰改善が報告されているが、どのような患者にICIが有効なのか、そしてどのような患者で術前化学療法のde-escalationが可能なのかは分かっていない。また早期TN乳がんでは、抗PD-1抗体への抗CTLA-4抗体の追加は検討されていない。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏らは、ニボルマブ±低用量イピリムマブの投与が、TILsを有するTN乳がんにおいて免疫応答を誘発するという仮説の検証を目的として、第II相非無作為化バスケット試験(BELLINI試験)を実施。その最初の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:T1c~T3、TILs≧5%のTN乳がん患者 31例・試験群:ニボルマブ群(NIVO群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル 16例ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル+イピリムマブ(1mg/kg)×1サイクル 15例※両群ともにTIL5~10%:5例、TIL11~49%:5例、TIL≧50%:5例※両群ともに4週間後患者は術前化学療法あるいは手術を受ける・評価項目:[主要評価項目]4週間後のCD8+T細胞および/またはIFN-γ発現の2倍変化で定義される免疫活性化[副次評価項目]安全性、放射線学的反応(RECIST1.1)、トランスレーショナル解析※Simonの2段階デザインにより、30%の患者で免疫活性が確認された場合、コホートの拡大が可能となる。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点の年齢中央値はNIVO群48歳、NIVO+IPI群50歳。grade3腫瘍が93.8%、73.3%。BRCA1/2変異有が18.8%、20.0%だった。無作為化されていないため、NIVO群ではN0が81.3%と最も多かったのに対し、NIVO+IPI群ではN1が60.0%と最も多かった。・4週間後の放射線学的部分奏効(PR)は7/31例(23%)で認められ、うちNIVO群3例(19%)、NIVO+IPI群4例(27%)であった。また、7例のうち3例はTIL≧50%、4例はTIL11~49%だった。・主要評価項目である4週間後の免疫活性化はNIVO群8例(53.3%)、NIVO+IPI群9例(60.0%)でみられ、コホート拡大基準(30%)を満たした。・PRを示した患者ではベースライン時点のIFN-γ発現量が多かった(p=0.014)。・ベースライン時点のCD8+T細胞レベルは奏効と相関しなかったが、空間解析により、CD8+T細胞が腫瘍細胞により隣接していることが奏効と強く関連していることが明らかになった(p=0.0014)。・ベースライン時点では全体の83%の患者でctDNA陽性が確認されたが、4週間後のctDNAクリアランスは24%の患者で確認された。・安全性については、Grade3以上の有害事象はNIVO群1例(6%、甲状腺機能亢進症)、NIVO+IPI群1例(7%、糖尿病)のみであった。 Kok氏らは、TILsを有するTN乳がん患者の多くが、わずか4週間のICI投与で免疫活性の上昇を示し、臨床効果が得られたことから、TN乳がん患者に対する術前化学療法なしのICI投与の可能性が示唆されたと結論付けている。そのうえで同氏は今後の展望として、NIVO群vs. NIVO+IPI群のシングルセル解析や、TIL>50%・N0の患者群における6週間のニボルマブ+イピリムマブ投与後手術を行った場合のpCR率の評価が必要とした。

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心血管疾患2次予防、ポリピルvs.通常ケア/NEJM

 心筋梗塞後6ヵ月以内の、アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療は通常ケアと比べて、主要有害心血管イベント(MACE)リスクの有意な低下に結び付いたことが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares(CNIC)のJose M. Castellano氏らによる第III相無作為化試験「SECURE試験」で示された。転帰を改善する主要な薬剤(アスピリン、ACE阻害薬およびスタチン)を含むポリピルは、心筋梗塞後の2次予防(心血管死や合併症の予防)のための、簡易な手法として提案されている。結果を踏まえて著者は、「ポリピルは、治療を簡素化し入手可能性を改善するもので、治療のアクセシビリティとアドヒアランスを改善するために広く適用可能な戦略であり、結果として心血管疾患の再発および死亡リスクを低下するものである」とまとめている。NEJM誌2022年9月15日号掲載の報告。アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療について検討 SECURE試験は、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、ポーランド、チェコ、ハンガリーの113施設で行われ、直近6ヵ月以内に心筋梗塞を有した75歳以上(リスク因子を1つ以上有する65歳以上)の患者を、ポリピルベースの治療戦略群または通常ケア群に無作為に割り付け追跡評価した。 ポリピル治療は、アスピリン(100mg)、ramipril(2.5mg、5mgまたは10mg)、アトルバスタチン(20mgまたは40mg)で構成された。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中、血行再建術施行の複合。主な副次エンドポイントは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中の複合であった。追跡期間中央値36ヵ月のMACE発生ハザード比は0.76で有意差 2016年8月~2019年12月に、計4,003例がスクリーニングを受け、適格患者と認められた2,499例が無作為化を受けた。指標となる心筋梗塞から無作為化までの期間中央値は8日(IQR:3~37)であった。ポリピル群21例、通常ケア群12例のフォローアップデータが得られず、intention-to-treat(ITT)集団は2,466例(ポリピル群1,237例、通常ケア群1,229例)で構成された。平均年齢は76.0±6.6歳、女性の割合は31.0%、77.9%が高血圧症を、57.4%が糖尿病を有し、51.3%に喫煙歴があった。平均収縮期血圧は129.1±17.7mmHg、平均LDLコレステロール値は89.2±37.2mg/dLであった。 追跡期間中央値36ヵ月時点で、主要アウトカムのイベント発生は、ポリピル群118/1,237例(9.5%)、通常ケア群156/1,229例(12.7%)が報告された(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.60~0.96、p=0.02)。 主な副次アウトカムの発生は、ポリピル群101例(8.2%)、通常ケア群144例(11.7%)が報告された(HR:0.70、95%CI:0.54~0.90、p=0.005)。 これらの結果は、事前規定のサブグループで一貫していた。 患者の自己報告による服薬アドヒアランスは、通常ケア群よりもポリピル群で高かった。有害事象の発現頻度は両群で同程度であった。

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ハイリスク患者のPCI後のフォローアップ、定期心機能検査vs.標準ケア/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた高リスク患者において、PCI後1年時点で定期心機能検査を行うフォローアップ戦略は、標準ケアのみの場合と比較して、2年時点の臨床アウトカム改善に結び付かなかったことが、韓国・ソウルアサン病院のDuk-Woo Park氏らが1,706例を対象に行った無作為化試験の結果、示された。冠血行再建後のフォローアップ方法を特定するための無作為化試験のデータは限定的であり、今回検討したフォローアップ戦略については、明らかになっていなかった。NEJM誌2022年9月8日号掲載の報告。1,706例を対象に無作為化試験 研究グループは、PCIが成功した19歳以上で、虚血性または血栓性イベントのリスク増大と関連する、高リスクの冠動脈の解剖学的特性または臨床特性を1つ以上有する患者を適格とし試験を行った。 被験者を無作為に2群に割り付け、一方にはPCI後1年時に心機能検査(負荷核医学検査、運動負荷ECG、負荷心エコー)を行い、もう一方には標準ケアのみを行った。 主要アウトカムは、2年時点の全死因死亡、心筋梗塞または不安定狭心症による入院の複合であった。主な副次アウトカムには、侵襲的冠動脈造影および再血行再建術が含まれた。 2017年11月15日~2019年9月11日に、韓国11地点で合計2,153例が適格評価を受け1,706例が無作為化を受けた(定期心機能検査群849例、標準ケア群857例)。2年時点の主要複合アウトカム発生に有意差なし 両群のベースライン患者特性は均衡がとれ類似していた。被験者の平均年齢(±SD)は64.7±10.3歳、男性が79.5%を占め、21.0%が左主幹部病変を、43.5%が分岐部病変を、69.8%が多枝病変を、70.1%が病変長が長いびまん性病変(病変長30mm超またはステント長32mm超となる病変)を有し、38.7%が糖尿病を併存し、96.4%が薬剤溶出ステント治療を受けていた。 2年時点で、主要アウトカムの発生は、定期心機能検査群46/849例(Kaplan-Meier推定値5.5%)、標準ケア群51/857例(同6.0%)であった(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.61~1.35、p=0.62)。主要アウトカムを項目別にみても両群間で差は認められなかった。 2年時点で、侵襲的冠動脈造影を受けていた被験者の割合は定期心機能検査群12.3%、標準ケア群9.3%(群間差:2.99ポイント、95%CI:-0.01~5.99)、また再血行再建術を受けていた被験者の割合はそれぞれ8.1%、5.8%だった(2.23ポイント、-0.22~4.68)。

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低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。. 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。 本研究では、週3日以上朝食を食べていない者を「朝食抜き」と定義。そのほか、対象者には喫煙、アルコール多飲、運動不足、睡眠不足、間食の有無、深夜/夕食時の生活行動、既往歴(高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・高尿酸血症・冠動脈疾患)についてアンケートを行った。また、朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連性はBMI(kg/m2)を3つのサブグループ(男性:

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認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。・肥満とうつ病は、糖尿病と密接に関連している。・認知症の発症は、ライフスタイルの改善、植物性食品ベースの食事(地中海式食事など)への変更、身体活動の増加により予防可能である。・予防のために利用可能ないくつかの外科的および薬理学的介入がある。・新たな治療法には、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストsetmelanotideやPdia4阻害薬が含まれる。・これらの各分野における現在および今後の研究は保証されており、新たな治療選択肢やそれぞれの病因に関する理解を深めることが重要である。

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小児のコロナ後遺症は成人と異なる特徴~約66万人の解析

 小児における新型コロナウイルス感染症の罹患後症状には、成人とは異なる特徴があることを、米国・コロラド大学医学部/コロラド小児病院のSuchitra Rao氏らが明らかにした。同氏らは、新型コロナウイルスの感染から1~6ヵ月時点の症状・全身病態・投与された薬剤を調べ、罹患後症状の発生率を明らかにするとともに、リスク因子の特定を目的に、抗原検査またはPCR検査を受けた約66万人の小児を抽出して後ろ向きコホート研究を行った。これまでに成人における罹患後症状のデータは蓄積されつつあるが、小児では多系統炎症性症候群(MIS-C)を除くとデータは限られていた。JAMA pediatrics誌オンライン版2022年8月22日号掲載の報告。 解析対象となったのは、米国の小児病院9施設の電子カルテに登録があり、2020年3月1日~2021年10月31日の間に新型コロナウイルスの抗原検査またはPCR検査を受けた21歳未満の小児で、かつ過去3年間に1回以上受診(電話、遠隔診療を含む)したことのある65万9,286例。男性が52.8%で、平均年齢は8.1歳(±5.7歳)であった。 初回の抗原検査またはPCR検査の日から28~179日時点の、罹患後症状に関連する121項目の症状や全身病態、30項目の投与薬の計151項目を調べた。症状には発熱、咳、疲労、息切れ、胸痛、動悸、胸の圧迫感、頭痛、味覚・嗅覚の変化などが含まれており、全身病態には多系統炎症性症候群、心筋炎、糖尿病、その他の自己免疫疾患などが含まれていた。施設、年齢、性別、検査場所、人種・民族、調査への参加時期を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、検査陰性群に対する陽性群の調整ハザード比(aHR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・新型コロナウイルスの陽性者は5万9,893例(9.1%)で、陰性者は59万9,393例(90.9%)であった。 ・1つ以上の症状や全身病態、投薬があったのは、陽性群で41.9%(95%信頼区間[CI]:41.4~42.4)、陰性群で38.2%(95%CI:38.1~38.4)で、差は3.7%(3.2~4.2)、調整後の標準化罹患率比は1.15(1.14~1.17)であった。・陰性群と比べて陽性群で多かった症状は、味覚・嗅覚の変化(aHR:1.96、95%CI:1.16~3.32)、味覚消失(1.85、1.20~2.86)、脱毛(1.58、1.24~2.01)、胸痛 (1.52、1.38~1.68)、肝酵素値異常(1.50、1.27~1.77)、発疹(1.29、1.17~1.43)、疲労・倦怠感(1.24、1.13~1.35)、発熱・悪寒(1.22、1.16~1.28)、心肺疾患の徴候・症状(1.20、1.15~1.26)、下痢(1.18、1.09~1.29)、筋炎(2.59、1.37~4.89)であった。・全身の病態は、心筋炎(aHR:3.10、95%CI:1.94~4.96)、急性呼吸促迫症候群(2.96、1.54~5.67)、歯・歯肉障害(1.48、1.36~1.60)、原因不明の心臓病(1.47、1.17~1.84)、電解質異常(1.45、1.32~1.58)であった。精神的な関連としては、精神疾患の治療(aHR:1.62、aHR:1.46~1.80) 、不安症状(1.29、1.08~1.55)があった。・多く用いられていた治療薬は、鎮咳薬・感冒薬のほか、全身投与の鼻粘膜充血除去薬、ステロイドと消毒薬の併用、オピオイド、充血除去薬であった。・多系統炎症性症候群以外で罹患後症状と強く関連していたのは、5歳未満、急性期のICU利用、複数または進行性の慢性疾患の罹患であった。 著者らは、「小児の新型コロナウイルス感染症の罹患後症状の発症率は少なかったが、急性期の重症、低年齢、慢性疾患の合併は罹患後症状リスクを高める」とともに「小児の罹患後症状では、成人でよく報告されている味覚・嗅覚の変化、胸痛、疲労・倦怠感、心肺の徴候や症状、発熱・悪寒など以外にも、肝酵素値異常、脱毛、発疹、下痢などが多いことに注意が必要である。とくに心筋炎は新型コロナウイルス感染症と最も強く関連する症状であり、小児では重要な合併症である」とまとめている。

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スタチンによる筋肉痛・筋肉障害は本当?(解説:後藤信哉氏)

 循環器医として、しばしばスタチンを処方している。心筋梗塞発症予防効果は臨床エビデンスから明確だが頭蓋内出血などの重篤な出血イベントが起こることも事実であるアスピリンと比較して、スタチンは心筋梗塞予防効果が確実でありながら、薬効と直結する重篤な副作用は明確ではない。すなわち、心筋梗塞の再発予防にも、多分初発予防にもスタチンは有用と思われる(筆者もLDLは高くないが時々飲んでいる)。 スタチンの使用を始めたころ、「横紋筋融解症」のリスクが徹底教育された。幸いにして長年循環器医をしてスタチンを多用している筆者は、本物の「横紋筋融解症」を経験したことはない。スタチン開始直後に筋肉痛の症状を訴える症例に出合うことはまれではない。副作用の説明が重視される時代に、「筋痛があればすぐ受診してください」と教育されるために筋痛が多いのか、本当に薬の副作用として筋痛が多いのか、本当のところはわからなかった。 オックスフォード大学のグループは超大規模仮説検証研究を重視する。また、ランダム化比較試験のメタ解析も積極的に行っている。アスピリンの有効性と出血リスクの按分にもオックスフォードが施行したAntithrombotic Trialists’ Collaborationの価値が大であった。今回はオックスフォードによるCholesterol Treatment Trialists’ Collaborationの個別患者レベルのメタ解析の結果である。筆者は脂質が専門というわけではないが、ひょんなことからCholesterol Treatment Trialists’ Collaborationに加わることになった。 筋痛がスタチンによるか否か、スタチンの用量依存か否かを大規模二重盲検臨床試験の徹底的メタ解析にて検証した。非スタチン群(6万1,912例)と比較するとスタチン群(6万2,028例)のほうが、筋痛・脱力が1.03(95%CI:1.01~1.06)倍多かった。ランダム化二重盲検試験の結果である。スタチン群では本当に筋痛・脱力が多いのであろう。スタチン群を強いスタチンと弱いスタチンに分けると、強いスタチンでの筋痛・脱力のリスクは1.05(1.01~1.09)倍であった。筋痛・脱力の発症時期は服薬開始後3ヵ月以内に集中している。臨床的実感にもマッチしている。 筋痛の重症度の指標として筋痛の症例の6.2%にてCKが計測されている。重症例にて計測される可能性が高いと想定されるが、CKの上昇度は正常値の0.02倍分にすぎなかった。 ランダム化二重盲検試験の個別症例レベルのメタ解析の結果である。事実として信じざるを得ない。スタチン服用例では服用初期に筋痛・脱力がプラセボより多く、スタチンの中では強力なスタチンで症状が多い。しかし、スタチンによる筋痛・脱力は一過性で軽い。これらの所見は信じざるを得ない。私のオックスフォードの友人たちは、ランダム化比較試験のサイズを大きくすると「虫眼鏡で拡大するように」薬効の差を拡大できると言っていた。本研究結果をみると彼らの意見に同意せざるを得ない。オックスフォードと共同研究すると、著者はCholesterol Treatment Trialists’ Collaborationのようなgroupになる。臨床研究は1人ではできない。多数の共同研究なのでgroupでauthorになるのがreasonableかもしれない。日本は米国追従でやってきたが、英国のオックスフォードから学ぶことは多い。

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英語で「足がしびれています」は?【1分★医療英語】第45回

第45回 英語で「足がしびれています」は?What brought you to see us today?(今日はどうされましたか?) I’ve got pins and needles in my feet.(足がしびれています)《例文1》I felt pins and needles in my arm when I woke up this morning.(今朝、目が覚めると腕がしびれていました)《例文2》I have a tingling sensation in my feet.(足がしびれています)《解説》日本語の「しびれる」という表現、英語ではニュアンスによって複数の言い方がありますが、“pins and needles”は、糖尿病の末梢神経症による感覚障害や神経痛などのピリピリしたような、まさに「針で突かれるようなしびれ」を表現するときに使われます。また、正座した後のようなビリビリした感覚にも“pins and needles”を使うことができます。似た表現としては、“tingling sensation”や“numbness”がありますが、“tingling sensation”は「チクチクする感覚」を表現することが多い一方で、“numbness”は「感覚が麻痺している状態」を示します。たとえば“my arm became numb.”(腕の感覚がなくなった)という具合です。処置の際に用いる局所麻酔のジェルは正式には“anaesthetic gel”ですが、患者さん向けにわかりやすく“numbing jelly”と呼ぶこともあります。講師紹介

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ケレンディア、2型糖尿病を合併するCKD患者に関する最新データ発表/バイエル

 バイエル薬品の2022年8月30日付のプレスリリースによると、欧州心臓病学会(ESC)学術集会2022において、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者(CKD)の死亡率にケレンディア(一般名:フィネレノン)が及ぼす影響を示した最新データが発表された。ケレンディアで2型糖尿病を合併するCKD患者の全死因死亡の発現率減少 2型糖尿病を合併するCKD患者を対象としたフィネレノン第III相臨床試験プログラムは、FIDELIO-DKDとFIGARO-DKDの2つの試験で構成されている。この2つの試験を含むFIDELITYは2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000名以上を対象に、心腎アウトカムを検討した最大規模の第III相臨床試験プログラムである。FIDELITYの全体集団では、全死因死亡および心血管死に対するフィネレノンの効果は統計学的有意差にわずかに至らなかったものの、FIDELITYの事前規定した探索的on-treatment解析から得られた最新データによると、本集団ではフィネレノン群がプラセボ群と比べ、全死因死亡の発現率(ハザード比[HR]:0.82[95%信頼区間[CI]:0.70~0.96]、p=0.014)および心血管死の発現率(HR:0.82[95%CI:0.67~0.99]、p=0.040)を有意に減少させることが示された。追跡期間4年時点での心血管死までの時間に関するイベント確率解析では、ベースライン時点の推算糸球体濾過率(eGFR)および尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に関係なくフィネレノンの有用性は一貫しており、eGFRが60mL/min/1.73m2以上の場合、プラセボと比べフィネレノンのより顕著な効果が示された。 Bayer(ドイツ)医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者であるクリスチャン・ロンメル氏は、「最適な血糖値や血圧に管理しているにもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKD患者さんの多くは腎不全に移行し、心血管死のリスクが著しく高くなっている。本日発表された探索的解析は、このような脆弱な患者さんの死亡リスクを低下させ、より長く健康な状態を維持するフィネレノンの可能性を示している」と述べた。 ケレンディアは2021年7月に米国食品医薬品局(FDA)、2022年2月に欧州委員会(EC)、2022年6月に中国国家薬品監督管理局(NMPA)よりそれぞれ販売承認を取得している。また、日本では2022年3月に厚生労働省より承認取得した。さらに他複数の国で審査当局の承認が得られたほか、現在販売認可の承認申請中である。

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