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オンライン診療入門~導入の手引き~第1版を公表/日医

 日本医師会・長島 公之常任理事が、『オンライン診療入門~導入の手引き~』作成について定例記者会見で報告した。本手引きは、かかりつけ患者に情報通信機器を用いたオンライン診療の実施を検討している医師を対象に必要な情報をとりまとめたもので、今後現場の意見などを踏まえ、適宜更新される予定。関連情報は日本医師会ホームページにまとめられている。小規模でもオンライン診療を導入したい医師向け 長島氏は、「オンライン診療は、地域で患者さんに寄り添うかかりつけ医が、必要に応じて対面診療と適切に組み合わせて行うことで、患者さんの安全性と利便性を向上させることができる」と日医としての考えを述べた。 オンライン診療を始めるに当たっては、厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を確認した上で、研修(無料)の受講が必須である(※「電話再診」のみなら不要)。研修プログラムは、5科目で計150分ほどの講義と各科目につき10題の演習問題を解くe-learning形式で、厚労省のホームページから申し込むことができる。なお、「医籍登録番号」とその登録日付が必須項目となっている。 その他、オンライン診療で作成が必要となる同意書・治療計画のサンプルや、セキュリティやプライバシーに関する注意点、通話アプリを利用する手順などがまとめられ、あらかじめ確認・準備すべきことが具体的に示されている。 同氏は「本手引きの提供などの活動を通じて、かかりつけ医が必要な時に適切にオンライン診療を実施できるよう、日本医師会としてしっかりとサポートしていきたい」とまとめた。

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最新の薬剤情報追加の糖尿病治療ガイド2022-23/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、『糖尿病治療ガイド2022-2023』を発行した。本ガイドは、日本糖尿病学会が総力を挙げて編集・執筆したガイドブックで、コンパクトな1冊ながら、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までがわかりやすくまとめれている。内科医はもとより、他の診療科の医師、コメディカルスタッフなどにも好評で、現在広く活用されている。 今回の改訂では、イメグリミンや経口GLP-1受容体作動薬の追加など、2022年3月現在の最新の内容がアップデートされた。 制作した「糖尿病治療ガイド」編集委員会は、「本ガイドが、日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と期待を寄せている。主な改訂点・イメグリミンや経口GLP-1受容体作動薬の追加など、2022年3月現在の最新の薬剤情報にアップデート・かかりつけ医から糖尿病や腎臓の専門医・専門医療機関への紹介基準を、図を用いて明確に解説・上記だけでなく、低血糖時におけるグルカゴン点鼻粉末剤(バクスミー)の使用、糖尿病医療支援チーム(DiaMAT)設立の動きなど、内容全体をアップデート・「2型糖尿病の血糖降下薬の特徴」など図のアップデート・コラムなどを追加・改訂主な目次1.糖尿病:疾患の考え方2.診断3.治療4.食事療法5.運動療法6.薬物療法7.糖尿病合併症とその対策8.低血糖およびシックデイ9.ライフステージごとの糖尿病10.専門医に依頼すべきポイント11.病態やライフステージに基づいた治療の実例(31症例)付録・索引

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日本人精神疾患患者における第2世代抗精神病薬治療後のHbA1cの閾値下変化

 第2世代抗精神病薬(SGA)の種類により糖尿病発症リスクが異なることは、いくつかの研究で報告されている。しかし、HbA1cの閾値下の変化に焦点を当てた研究は、ほとんどない。北海道大学の澤頭 亮氏らは、6種類のSGAのうち、いずれかを使用している日本人患者を対象に、HbA1cの閾値下およびBMIの変化について調査を行った。その結果、糖尿病リスクの高い患者に対しては、ブロナンセリン治療が最も有用な治療法である可能性が示唆された。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年3月30日号の報告。 本研究は、統合失調症患者に対し、日本の血糖モニタリングガイドラインに基づいてフォローアップ調査を実施したプロスペクティブコホート研究である。2013年4月~2015年3月の期間に、ベースライン時およびSGA治療開始3ヵ月後の時点で、患者の人口統計学的データ、薬歴、血液検査値、体重測定値を収集した。対象は、ICD-10に基づく統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害の患者378例。抗精神病薬による治療開始から3ヵ月後のHbA1cの閾値下およびBMIの変化を比較するため、多変量回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ブロナンセリン開始3ヵ月後のHbA1cの閾値下の変化は、オランザピンと比較し、有意に低かった(B=-0.17、95%CI:-0.31~-0.04)。・ブロナンセリン(B=-0.93、95%CI:-1.74~-0.12)およびアリピプラゾール(B=-0.71、95%CI:-1.30~-0.12)開始3ヵ月後のBMIの変化は、オランザピンと比較し、それぞれ有意に低かった。

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長生きをしたい人、とりわけ認知症がない状態で長生きをしたい人へ(解説:岡村毅氏)

 老若男女が知りたいことにはっきりと答えてくれる優等生的な論文である。遺伝子は変えようがないが生活習慣は変えられる。どう変えると、認知症がない状態で長生きができるかを調べ、驚きの結果を報告している。 変えうる生活習慣とは、(1)食べ物、(2)知的活動、(3)身体活動、(4)喫煙、(5)飲酒である。単純化して見てみよう。 食べ物は当然マインド食である。MIND(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)食とは、この論文のラストオーサーのラッシュ大学の博士らがシカゴで開発した有名な食事法であるからここでも使われている。野菜や果実や豆腐が推奨される。上位40%が○(丸)となる。 知的活動は読書、美術館、カードゲーム、ボードゲーム、クロスワード、パズル等のことである。こちらも上位40%が○となる。 身体活動はウォーキング、ガーデニング、体操、自転車、水泳である。週150分以上で○となる。1日30分弱でよいのである。 喫煙については、今吸っていなければ○だ。 飲酒は、1日当たり男性は30g以下、女性は15g以下が○だ。缶ビールなら2本あるいは1本である。 男性の場合、65歳の時に○が4個以上つくと、1個以下の人よりも5.7年長生きできる。さらにアルツハイマー型認知症を持っている期間は、○が4個以上だと1.4年、1個以下だと2.1年というわけだ。 女性の場合、65歳の時に○が4個以上つくと、1個以下の人よりも3.1年長生きできる。さらにアルツハイマー型認知症を持っている期間は、○が4個以上だと2.6年、1個以下だと4.1年である。 野菜を食べ、頭を適度に使い、運動を適度にし、酒は控え、タバコは吸わないと、なんと5年前後長生きできるのである。またアルツハイマー型認知症を持たずに1~2年くらい過ごせる。 どうであろうか? 驚いた人はいましたか? まず「そんなこと知ってるよ」「もうやってるよ」という反応が多そうだが、こういう当たり前のことを科学的に検証する論文は、良い論文である。私たちは思い込みや先入観に支配されているのだから、エビデンスをきちんと出すことは理性的になるための第一歩だ。 次にこの論文においても、長生きによって結局認知症になっていることにも注目しよう。人間は(身体疾患で死なずに)長生きすればいつか必ず認知症になる。それはわれわれがいつか死ぬことと同じくらい自明である。認知症になっても失敗だとか思わないこと。認知症の専門家として言わせてもらうと、なることを推奨しているわけでもないし、なったら絶望する必要もない。人生は続く、それだけだ。 マルチステージライフなどといわれて久しい。職業も20年ごとに変わる時代が来るのかもしれない。であれば、生活習慣も変えてもいいのかもしれない。別にいつ変えてもよいのだろうが、保守的にみると20歳ごろに社会人になるとすると、40歳ごろ、そして60~65歳ごろはひとつの区切りかもしれない。これを読んでいる40歳以上の皆さんの多くは、20歳ごろに確立した生活習慣をおそらく続けているのだと思うが、そろそろ変えてはいかがか(もちろん○を増やす方向で)。40歳未満の皆さんは、40歳ごろに変えることを今から計画してはどうだろうか? 人々がそんなふうに考えることができたら、この論文のもくろみは十分に果たされている。

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熱中症で発症するかも?特発性後天性無汗症AIGAとは【知って得する!?医療略語】第10回

第10回 熱中症で発症するかも?特発性後天性無汗症AIGAとは汗をかかない病気があるって本当ですか?そうなんです。『無汗症』という疾患があります。実臨床では「不明熱の原因」「熱中症の隠れたリスクの可能性」として指摘されています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】AIGA【日本語】特発性後天性全身性無汗症【英字】acquired idiopathic generalized anhidrosis【分野】脳神経【診療科】皮膚科【関連】特発性分節性無汗症・特発性純粋発汗不全症(IPSF)・自己免疫性自律神経障害薬剤性無汗症・二次性無汗症・乏汗症・神経障害性無汗症実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。不明熱の鑑別疾患リストに無汗症が報告されています。原因不明の微熱で病院を転々とする方で、全身状態は良好、炎症マーカーはすべて陰性、感染徴候はなく膠原病や悪性疾患を疑う所見にも乏しいとき、無汗症は想起されるべき疾患の1つかもしれません。無汗症には先天性と後天性がありますが、『特発性後天性全身性無汗症(AIGA)』は近年、難病指定されています(指定難病163)。無汗症では、気温が高くても汗をかかないため、熱の放散が障害され、体温調節ができずに容易に熱中症の症状を来たすとされています。新型コロナのためマスクをすることが当たり前の今日、マスクで呼気による体温調整が阻害されています。そのため、マスク装着時の体温調整は、非装着時と比較して、より発汗による体温調整に依存している可能性があり、全身性の無汗症の方は、例年以上に体温調節が難しく容易に熱中症を来たす可能性があります。無汗症の中でも、AIGAはステロイドパルスが有効だったとする論文報告が散見され、適切に診断すれば、患者さんのQOLを改善できる可能性があります。無汗症を見逃さないことがより重要になってくるかもしれません。筆者自身の診療シーンを振り返ると、救急外来に熱中症疑いで繰り返し搬送される患者さんの中に、脱水がないのにまったく汗をかいておらず、皮膚が乾燥している方を時々見かけていました。ご本人に聞いても、発汗することなく、急に熱中症の症状を来たしたと訴えていました。そのような患者さんの中に無汗症の方が混在していたのかもしれません。気温が急速に上昇してくるこれからの季節に注意したい疾患です。1)坂野翔子ほか. 日内会誌. 2018;107:p564-570.2)難病医学研究財団/難病情報センター:特発性後天性全身性無汗症 診断・治療指針3)柳下武士. 日皮膚会誌. 2021;131:p35-41.4)中根俊成. 臨床神経. 2019;59:p783-790.

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カロリー制限ダイエット、摂食時間制限ありvs.なし/NEJM

 肥満患者において、摂食時間を午前8時~午後4時の8時間に制限する時間制限食をカロリー制限に追加しても、1日の摂取カロリー制限と比較し、1年間の体重、体脂肪および代謝リスク因子の減少に関して効果は認められないことが示された。中国・南方医科大学のDeying Liu氏らが無作為化臨床試験の結果を報告した。これまで、体重減少における時間制限食の長期的な有効性および安全性は明らかにされていなかった。NEJM誌2022年4月21日号掲載の報告。摂取カロリー約75%+摂食時間午前8時~午後4時に制限 研究グループは、肥満患者139例を、1日の摂取カロリー制限に加えて摂食時間を午前8時~午後4時の間のみに制限する群(時間制限併用群)と、1日の摂取カロリー制限のみを行う群(カロリー制限群)に、無作為に割り付け、12ヵ月間観察した。 摂取カロリーは、参加者全員、男性で1日1,500~1,800kcal、女性で1日1,200~1,500kcalに制限した。いずれも摂取カロリーの40~55%が炭水化物、15~20%がタンパク質、20~30%が脂質とし、この食事療法はベースラインの参加者の1日摂取カロリーの約75%に相当した。 主要評価項目は、体重のベースラインからの変化における群間差、副次評価項目はウエスト、BMI、体脂肪および代謝リスク因子(血漿グルコース濃度、インスリン感受性、血清脂質、および血圧)等の測定値の変化とした。1年後の体重減少に差はなし 無作為化された139例中118例(84.9%)が12ヵ月間の介入を完遂した。 12ヵ月時の体重のベースラインからの平均変化量は、時間制限併用群で-8.0kg(95%信頼区間[CI]:-9.6~-6.4)、カロリー制限群で-6.3kg(-7.8~-4.7)であり、体重の変化量に両群で有意差はなかった(群間差:-1.8kg、95%CI:-4.0~0.4、p=0.11)。 ウエスト、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧および代謝リスク因子の解析結果も、主要評価項目の結果と一致した。 主な有害事象は、疲労、めまい、頭痛、食欲減退、上腹部痛などで、発現頻度は両群で同程度であった。

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抗精神病薬の治療歴とその後の代謝関連副作用との関係

 抗精神病薬治療によるさまざまな有害事象が報告されているが、重篤な副作用が頻繁に認められるわけではない。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYe Yang氏らは、抗精神病薬の治療歴が現在の抗精神病薬誘発性代謝関連副作用と関連しているかを確認するため、検討を行った。BMC Psychiatry誌2022年3月21日号の報告。 抗精神病薬未治療患者115例、代謝関連副作用リスクの低い抗精神病薬による治療歴を有する患者65例、同リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者88例を対象に、ケースコントロール研究を実施した。すべての患者に対し、オランザピン治療を実施した。体重、BMI、血糖値、脂質パラメータ、ベースラインより7%以上の体重増加が認められた患者の割合、脂質異常症の割合を評価した。すべての評価は、ベースライン時、治療開始4週目および6週目に実施した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン治療により、抗精神病薬未治療患者は他の2群と比較し、体重とBMIの有意な増加が観察された(それぞれp<0.05)。・代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、脂質レベルが有意に高かった(それぞれp<0.05)。・抗精神病薬の治療歴と体重増加との間に有意な関連は認められなかった(すべてのp>0.05)。・抗精神病薬による治療歴を有さない患者と比較し、同治療歴を有する患者では、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値が観察された(aOR:1.75、95%CI:1.07~3.52)。・とくに、代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値リスクが高かった(aOR:2.18、95%CI:1.03~3.32)。 著者らは「抗精神病薬治療歴、とくに代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、現在使用している抗精神病薬により誘発される代謝関連副作用との関連が示唆された」としている。

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健康的な生活習慣で平均余命延長、認知症期間も増えず/BMJ

 健康的な生活習慣は男女とも平均余命の延長と関連しており、65歳以降の人生でアルツハイマー型認知症のない期間の割合が高いことが、米国・ラッシュ大学医療センターのKlodian Dhana氏らによる住民を対象としたコホート研究の結果、示された。健康的な生活習慣がアルツハイマー型認知症のリスク低下ならびに平均余命の延長に関連していることはこれまでも知られていたが、平均余命が延びればそれだけ高齢者が増加し、加齢とともに認知症のリスクは高まるため、むしろ全体の認知症は増加する可能性がある。そのため、生活習慣の改善による平均余命の延長が、アルツハイマー型認知症を有する期間に与える影響について理解する必要があった。著者は、「今回の解析による平均余命の推定は、医療専門家、政策立案者、その他ステークホルダーが将来の医療サービス等を計画するのに役立つだろう」とまとめている。BMJ誌2022年4月13日号掲載の報告。食事、認知活動、身体活動、禁煙、飲酒について健康度を評価 研究グループは、一般住民を対象としたアルツハイマー型認知症のリスク因子を検討する前向きコホート研究「Chicago Health and Aging Project:CHAP」(1993~2012年)のデータを用いて解析した。CHAP研究では、6期にわたり65歳以上の男女計1万802例が登録され、質問票を用いた生活習慣等に関する調査と神経認知機能検査が実施された。 本解析は、詳細な臨床評価を行うため、1万802例から年齢、性別、人種、認知機能カテゴリーを層別因子として無作為抽出した男女2,449例(ベースラインにおいてアルツハイマー型認知症有病者は339例、非有病者は2,110例)を解析対象とした。 主要評価項目は、女性および男性におけるアルツハイマー型認知症を有する場合と有していない場合の平均余命で、次の5つの生活習慣に基づいた健康因子スコア別に解析した。(1)脳の健康のための食事(Mediterranean-DASH Diet Intervention for Neurodegenerative Delay[MIND]食事スコア)、(2)後期の認知活動(読書、博物館・美術館訪問、カードゲーム、クロスワード、パズルなど)、(3)中~強度の身体活動(150分/週以上)、(4)禁煙、(5)中程度以下の飲酒(女性1~15g/日、男性1~30g/日)。 各因子について、基準を満たした場合は1、満たさない場合は0として合計した(範囲0~5、スコアが高いほど健康的な生活習慣であることを示す)。健康因子スコアが高いほど、平均余命延長、アルツハイマー型認知症リスク低下 65歳女性の平均余命は、健康因子スコアが4~5で24.2年(95%信頼区間[CI]:22.8~25.5)、健康因子スコアが0~1で21.1年(19.5~22.4)であり、前者で3.1年延長した。65歳時での平均余命のうちアルツハイマー型認知症を有する期間の割合は、健康因子4~5の女性で10.8%(2.6年、95%CI:2.0~3.3)、健康因子0~1の女性で19.3%(4.1年、95%CI:3.2~5.1)であった。また、65歳時点でアルツハイマー型認知症を有しておらず、健康因子4~5の女性の平均余命は21.5年(20.0~22.7)、健康因子0~1の女性の平均余命は17.0年(15.5~18.3)であった。 65歳男性の平均余命は、健康因子4~5で23.1年(95%CI:21.4~25.6)、健康因子0~1で17.4年(15.8~20.1)であり、前者で5.7年延長した。65歳時での平均余命のうちアルツハイマー型認知症を有する期間の割合は、健康因子4~5の男性で6.1%(1.4年、95%CI:0.3~2.0)、健康要因0~1の男性で12.0%(2.1年、95%CI:0.2~3.0)であった。65歳時点でアルツハイマー型認知症を有しておらず、健康因子が4~5の男性の平均余命は21.7年(19.7~24.9)、健康因子が0~1の男性の平均余命は15.3年(13.4~19.1)であった。

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COVID-19に対する中和抗体薬「ソトロビマブ」の有効性(解説:小金丸博氏)

 ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ点滴静注液)はSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を発揮することが期待されている中和抗体薬である。Fc領域にLS改変と呼ばれる修飾が入ることで長い半減期を達成する。今回、重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症のCOVID-19患者に対するソトロビマブの有効性と安全性を検討した第III相多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験の最終結果がJAMA誌オンライン版に報告された。被験者1,057例を対象とした解析では、無作為化後29日目までに入院または死亡した患者の割合は、プラセボ投与群(529例)が6%(30例)だったのに対し、ソトロビマブ投与群(528例)では1%(6例)であった(相対リスク減少率:79%)。副次評価項目である救急外来受診の割合や致死的な呼吸状態悪化の割合などでもソトロビマブ投与群で有意に減少しており、軽症~中等症のCOVID-19に対して重症化予防効果を示した。 本試験の重要なLimitationとして、変異株に対する有効性が検討されていないことが挙げられる。2020年8月~2021年3月に割り付けが行われた試験であり、その後世界的に流行したオミクロン変異株は含まれていない可能性が高い。オミクロン変異株に対するソトロビマブの中和活性は若干の減弱にとどまり、有効性が期待できると考えられているが、BA.2系統に対してはBA.1系統に対してよりも中和活性が低下する可能性が指摘されている。今後、ソトロビマブの中和活性が低い変異株が出現する可能性は考えられるため、SARS-CoV-2の最新の流行株の情報に注視し、適応を検討する必要がある。 主な有害事象としてソトロビマブ投与群では下痢を2%に認めたものの、ソトロビマブに関連した重篤な有害事象は認めなかった。ただし、まれな有害事象を検出するには症例数が不十分であり、さらなる知見の集積が必要である。 本試験の中間解析の結果を参考に、本邦においても2021年9月27日に特例承認された。COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行う。本臨床試験の組み入れ基準等を参考に、重症化リスク因子としては、薬物治療を要する糖尿病、肥満(BMI 30kg/m2以上)、慢性腎障害(eGFR 60mL/分/1.73m2未満)、うっ血性心不全(NYHA心機能分類クラスII以上)、慢性閉塞性肺疾患などが想定される。発症早期に投与することが望ましく、症状出現から7日以内が投与の目安となる。

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サブスぺ領域、新たに3領域が追加の見通し/日本専門医機構

 4月18日開催の日本専門医機構定例記者会見で、サブスペシャルティ領域の新規機構認定の進捗状況について寺本 民生理事長が報告し、「放射線カテーテル治療」「集中治療科」「脊椎脊髄外科」の3領域が新たに追加される見通しであることが示された。日本専門医機構認定のサブスペシャリティ領域として今夏を目途に3領域 各基本領域のサブスぺシャリティ連絡協議会から提案のあった13領域のうち、サブスペシャルティ領域検討委員会での議論の結果推薦がなされた6領域について、同機構理事会で議論された。理事会での議論を経て、主として専門医像がはっきりしていること、社会的使命等の総合的な判断から今回は3領域が認定された。3領域の基本領域については、「放射線カテーテル治療」が放射線科、「集中治療科」が救急科、「脊椎脊髄外科」が整形外科となる。今後はプログラム整備基準等について審議され、今夏を目途に正式な日本専門医機構認定のサブスペシャリティ領域を目指すという。 日本専門医機構認定のサブスペシャリティ領域としては、すでに認定されている下記の23領域一覧に今回の3領域を加えて、26領域となる見通し。今回、サブスペシャリティ認定とならなかったサブスペシャリティ領域について、寺本氏は再審議の可能性はあるとしたうえで、今後サブスペシャリティをどのように認定していくかには課題がいくつかあるとし、現在ワーキンググループを設置して議論をしており、現理事会の会期中には何らかの結論を出す予定とした。既認定のサブスペシャリティ領域一覧[内科領域]消化器病、肝臓、消化器内視鏡、循環器、呼吸器、血液、内分泌代謝、糖尿病、神経内科、腎臓、リウマチ、アレルギー、感染症、老年病、がん薬物療法[外科領域]消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、乳腺、内分泌外科[放射線科領域]放射線診断、放射線治療

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女性の頻尿、どう尋ねるべき?【Dr.山中の攻める!問診3step】第13回

第13回 女性の頻尿、どう尋ねるべき?―Key Point―1日3L以上の排尿と強い口渇があるかを確認する2回以上の夜間頻尿があると生活に支障をきたす医師が質問をしないと女性は尿失禁を訴えないことが多い症例:76歳 女性主訴)頻尿現病歴)2週間前から頻尿と排尿時痛がある。近くの診療所で抗菌薬の処方を受けたが、症状の改善はない。尿の排出時、下腹部に痛みを生じる。3日前からトイレに間に合わず尿を漏らすことが増えてきたため紙パンツを使用するようになった。夜間の排尿回数は5回。熟眠できない。既往歴)変形性関節症薬剤歴)なし生活歴)機会飲酒、喫煙:5本/日(20歳~)身体所見)体温36.8℃、血圧132/80mmHg、心拍数86回/分、呼吸回数18回/分意識:清明腹部:軟。膨隆なし。下腹部に軽度の圧痛あり経過)尿意切迫感と頻尿、切迫性尿失禁の症状から過活動膀胱を疑い牛車腎気丸を処方した。尿意切迫感は改善を認めた。その後、ナースに「最近、子宮脱が気になっている」との訴えがあった。子宮脱も夜間多尿の原因となっていた可能性がある。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!年をとると過活動膀胱に罹患する割合が増加する(70代で20%、80歳以上で35%)1)カルシウム拮抗薬は夜間頻尿を起こす成人女性の25%に尿失禁がある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】多尿(>3L/日)か確認する2)問診:口渇の程度、飲水量、塩分摂取量、利尿薬、アルコールやカフェイン摂取心因性多飲症では1日3~5Lの飲水により低ナトリウム血症を起こすスポット尿のナトリウム濃度(mmol/L)を17で割ると、尿1LあたりのNaCl量(g)が推定できる。この数値に尿量(L)をかければ1日あたりの推定食塩摂取量となる多尿があれば、尿浸透圧を測定する。250mOsm/kg以下ならば水利尿、300mOsm/kg以上ならば浸透圧利尿である水利尿の原因:尿崩症(中枢性、腎性)、心因性多尿浸透圧利尿の原因:糖尿病、薬剤(マンニトール)、ナトリウム負荷、利尿薬、腎不全【STEP3-1】夜間は何度トイレに起きるか就寝後に2回以上、排尿のため起きなければならない症状を夜間頻尿と呼ぶ健常者では抗利尿ホルモン(バソプレシン)は夜間に多く分泌されるため、夜間尿は少なくなる。<夜間頻尿の原因>夜間のみ尿量が多くなる夜間多尿、膀胱容量の減少(過活動性膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎、骨盤臓器脱)、睡眠障害<夜間多尿の原因>高血圧、心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群、寝る前の水分過剰摂取【STEP3-2】尿失禁はあるか2)3)4)◆新たに出現した尿失禁の鑑別診断(DIAPERS)Drug(薬剤)Atrophic vaginitis(萎縮性膣炎)Endocrine(高血糖、高カルシウム血症)Stool impaction(宿便)Infection(感染症:とくに尿路感染症)Psychological(うつ、認知症、せん妄)Restricted mobility(運動制限)(表)尿失禁のタイプ画像を拡大する<参考文献・資料>1)日本泌尿器科学会:頻尿(ひんにょう)とは2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 2018. p294-295,p3432-3436.3)MKSAP19 General Internal Medicine1. 2021. p95-98.4)山中克郎ほか. UCSFに学ぶ できる内科医への近道. 改訂4版. 2012. p343.

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高圧処理後のブレンド玄米による認知症や2型糖尿病予防の可能性

 2型糖尿病は、アルツハイマー病のリスクを増加させることが報告されている。新潟薬科大学の中村 澄子氏らは、高圧処理米飯を用いた2型糖尿病および認知症の予防効果について、調査を行った。Foods (Basel, Switzerland) 誌2022年3月12日号の報告。玄米群は認知機能評価で言語記憶の有意な改善が認められた 参加者24人を対象に12週間のランダム化並行群間比較試験を行った。糖尿病予防に超硬質米、認知症予防にワックスフリーの黒米玄米を取り入れ、これらに通常の玄米を4:4:2の割合でブレンドし、超高圧処理後に嗜好性の改善のためワックス状黒米ぬか2.5%と米ぬか油0.3%を加えた。主要アウトカムである認知機能の評価には、コグニトラックス(Cognitrax)を用いた。副次的アウトカムとして、介入試験完了時点の食後血糖値とインスリン分泌を評価するため、単回投与テストを実施した。 主な結果は以下のとおり。・本ブレンド玄米には、食物繊維、アントシアニン、フェルラ酸、β-セクレターゼ阻害活性が豊富に含まれていた。・12週間後、ブレンド玄米介入群は、白米を食した対照群と比較し、認知機能評価バッテリーによる言語記憶の有意な改善が認められた(p<0.05)。・ブレンド玄米介入群は、対照群と比較し、インスリン分泌レベルが低かった(p<0.05)。

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腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性(解説:冨山博史氏)

概要 既報のSPYRAL HTN-ON MED試験は、試験開始前の少なくとも6週間、安定した用量で1~3種類の降圧薬を服用しても診察室収縮期血圧が150~180mmHgであり、かつ24時間平均収縮期血圧が140~170mmHgの範疇の症例を対象に、無作為、単盲検、Shamコントロール試験として実施された1)。同試験では、術後6ヵ月の腎交感神経除神経術の有意な降圧効果を報告している1)。今回の試験(ON-MED長期試験)は、その後の追跡研究であり、SPYRAL HTN-ON MED試験対象例の試験開始時、術後24ヵ月、36ヵ月の診察室血圧、24時間平均血圧を評価し、腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性を検証した。 今回のON-MED長期試験では、腎交感神経除神経術実施群では、36ヵ月後に実施された24時間血圧評価では、Shamコントロール群と比較して、午前平均収縮期血圧は11.0mmHg、夜間平均収縮期血圧は11.8mmHgと有意に低値を示した。両群間の降圧薬処方数は平均3であり、有意差は認めなかった。臨床的意義 1.基礎研究では、腎交感神経除神経術後の腎交感神経再生が示されている。この再生は腎交感神経除神経術後長期の降圧作用を減弱させることが懸念されていた。しかし、本ON-MED長期試験では36ヵ月後も腎交感神経除神経術が有意な降圧効果を示すことが示された。また、腎交感神経除神経術後の腎動脈狭窄も確認されなかった。 2.これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、Shamコントロール群と比較して、術後6ヵ月に収縮期血圧4~8mmHg前後の降圧効果を示した。一方、降圧薬による降圧効果は一般に収縮期血圧10~15mmHgであり、腎交感神経除神経術の降圧効果の有効性の限界が指摘されていた。しかし、本ON-MED長期試験の降圧度は収縮期血圧11mmHgであり、腎交感神経除神経術の長期降圧効果は降圧薬治療に近い有効性を有する可能性が示唆された。試験の限界 1.症例数が80例と比較的少ない。 2.本試験のプロトコールでは、試験期間中の降圧治療の目標は、診察室収縮期血圧で140mmHg未満であった。しかし、ON-MED長期試験における36ヵ月後の診察室収縮期血圧は除神経群で143mmHg、Shamコントロール群で151mmHgであった(論文、表1、図2より推察)。また、両群間の降圧薬処方数は平均3であった。ゆえに、両群とも十分な降圧薬処方が実施されなかった可能性がある。 3.SPYRAL試験では、対照群が降圧薬を服用するON-MED試験1)と、服用しないOFF-MED試験2)が実施されている。今回のON-MED長期試験は、このON-MED試験において腎交感神経除神経術後の長期(36ヵ月)降圧効果が、Shamコントロール群に比して24時間平均収縮期血圧で10mmHg大きいことを示した。しかし、ON-MED試験の術後6ヵ月の降圧はShamコントロール群に比し7.4mmHg低値を示し1)、OFF-MED試験の術後6ヵ月の降圧度の両群の差5mmHgより大きかった2)。上述のごとく、これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、術後6ヵ月にShamコントロール群と比較して、24時間平均収縮期血圧で5mmHg前後の降圧効果を示し、本ON-MED長期試験の術後6ヵ月の降圧効果より小さい。ゆえに、ON-MED長期試験の結果のみでは、腎交感神経除神経術の長期降圧効果が降圧薬に近い有効性を有するかは結論できない。

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腎デナベーションは有効・安全か:SPYRAL HTN-ON MED試験の3年成績/Lancet

 高周波腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し降圧薬の併用を問わず、3年間、臨床的に意味のある持続的な降圧をもたらし、安全性の懸念もなかった。ドイツ・ザールラント大学のFelix Mahfoud氏らが、無作為化シャム対照単盲検概念実証試験「SPYRAL HTN-ON MED試験」の長期追跡結果を報告した。腎デナベーションは、降圧薬服用中の患者において血圧を低下することが示されているが、無作為化試験での長期安全性および有効性に関するデータは不足していた。著者は、「高周波腎デナベーションは、高血圧患者の管理において補助的な治療手段となり得るものである」とまとめている。Lancet誌2022年4月9日号掲載の報告。降圧薬でコントロール不良の高血圧患者、腎デナベーションvs.シャム 研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を登録した。適格基準を、1~3種の降圧薬を6週間以上服用している状況下で、診察室収縮期血圧(SBP)150mmHg以上180mmHg未満、診察室拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)によるSBP平均値が140mmHg以上170mmHg未満の患者とし、腎血管造影後、高周波腎デナベーション群またはシャム群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 患者および血圧評価者は、無作為化12ヵ月後まで盲検下に置かれ、シャム群は12ヵ月後の追跡調査来院後にクロスオーバー可とした。 主要評価項目は、術後6ヵ月時におけるABPMによる24時間平均SBPのベースライン(第2スクリーニング来院)からの変化量の治療群間差で、intention-to-treat解析を行った。長期有効性は、36ヵ月のABPMおよび診察室での血圧測定を使用して評価し、降圧薬の使用についても調査した。また、安全性は36ヵ月後まで評価した。3年後に腎デナベーションで有意に降圧、ベースラインからの変化量の群間差10mmHg 2015年6月22日~2017年6月14日の期間に、登録患者467例のうち適格基準を満たした最初の80例が、腎デナベーション群(38例)またはシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。 ABPMによる平均SBPおよびDBPは、腎デナベーション群でベースライン時から有意に低下し、降圧薬の治療強度が同等であるにもかかわらず、24ヵ月および36ヵ月時の血圧の低下はシャム群と比較して有意に大きかった。降圧薬のクラスと用量を考慮した薬剤負荷は、36ヵ月時で腎デナベーション群2.13剤(SD 1.15)、シャム群2.55剤(SD 2.19)であり(p=0.26)、腎デナベーション群で77%(24/31例)、シャム群で93%(25/27例)が36ヵ月時に服薬を継続していた。 36ヵ月時のABPMによる24時間平均SBPのベースラインからの変化量(±SD)は、腎デナベーション群(30例)で-18.7±12.4mmHg、シャム群(32例)で-8.6±14.6mmHgであった(補正後群間差:-10.0mmHg、95%信頼区間[CI]:-16.6~-3.3、p=0.0039)。 また、36ヵ月時の腎デナベーション群とシャム群の群間差は、ABPMによるDBPSで-5.9mmHg(95%CI:-10.1~-1.8、p=0.0055)、朝のSBPで-11.0mmHg(-19.8~-2.1、p=0.016)、夜間のSBPで-11.8mmHg(-19.0~-4.7、p=0.0017)であった。 腎デナベーションに関連した短期または長期的な安全性の問題は確認されなかった。

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第107回 自宅療養COVID-19患者へのまめな自動通知でパルスオキシメーターいらず?

ペンシルベニア大学が実施した無作為化試験の結果によると、自宅療養する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にまめに通知して病状を把握して必要に応じて看護師等が事に当たる遠隔医療体制が整っていればパルスオキシメーターのような新手の装置の導入なしで入院や死亡を十分に防ぐことができるようです1,2)。2020年3月に同大学医学部(Penn Medicine)は自宅療養COVID-19患者を遠隔通信で見守る仕組みを開始しました。COVID Watchという名称のその取り組みでは呼吸困難の有無と体調はどうかを尋ねる文章通知が2週間のあいだ1日に2回自動配信されます。もし患者の呼吸がより困難になっているようであれば24時間対応チームの担当者から連絡があり3)、救急科(ED)に患者をすぐさま届けるか、遠隔での急診を手配するか、自宅での引き続きの様子見が指示されます。そのようにして入院が必要な悪化患者を容易に見つけ出し、あとは家で安全に過ごしてもらうCOVID Watchには開始以来のべ2万8,500人超の患者が参加しており、その効果は死亡率の低下となって現れています。COVID Watchで世話した患者3,448人とそうでない4,337人を比較したところ、30日間の死亡者数は前者ではわずか3人、後者では12人であり、COVID Watchは死亡率の実に68%低下と関連しました4,5)。COVID Watchでは悪化の兆しを患者の呼吸困難の自覚を頼りに読み取りますが、COVID-19患者が知らぬ間に被る低酸素状態をパルスオキシメーターで測定した酸素飽和度を頼りに把握して悪化を察知するのはさらに良さそうと考える向きもあります1)。COVID-19患者は呼吸困難などの発症に先立って血中酸素レベル低下を呈するとの報告があり、パルスオキシメーターでその低酸素を感知すれば入院が必要な患者をより早期に発見して急を要する治療をより素早く施して患者転帰を更に改善できるかもしれません。一見理にかなうパルスオキシメーターの使用はどうも抗いがたい説得力があるらしく、自宅療養COVID-19患者の遠隔体調把握の取り組みの多くでその使用が取り入れられています。しかしパルスオキシメーターの効果のほどの裏付けは乏しく、無作為化試験での検討はこれまでありませんでした。そこでペンシルバニア大学の研究者は2020年11月29日から去年2021年2月5日に募ったCOVID-19患者2,000人超をいつも通りのCOVID Watch手順のみの群かそれに加えてパルスオキシメーターも使ってもらう群に割り振って入院や死亡の予防効果を比較する無作為化試験を実施しました。その結果、余分な支出をしてパルスオキシメーターを使うひと手間の価値は残念ながら認められませんでした。試験参加から30日間を入院なしで生きながらえた日数平均の比較が試験の主な目的で、パルスオキシメーター使用群でのその日数はいつも通りのCOVID Watch手順群の29.5日とほぼ同じ29.4日であり、有意差はありませんでした。不安の程度も有意差はなく、パルスオキシメーターのおかげで患者はより安心して過ごせたというわけでもありませんでした。試験は体調の遠隔把握の取り組みに上乗せしてパルスオキシメーターを使った場合を検討したものであるという点を踏まえてその結果を解釈する必要があります。COVID Watchのような遠隔での世話を患者が受けられないのであれば自宅でのパルスオキシメーター使用は妥当な手段の一つとなり得るかもしれません。試験主導医師の一人Krisda Chaiyachati氏は次のように言っています2)。「自動配信の通知を利用する原始的な手段で遠隔対応すれば値が張る装置をあえて使わずとも十分に事足りるようです。自動通知を利用すればより少ない看護師の手配で多数のCOVID-19患者の世話が可能であり、そのような仕組みはCOVID-19に限らず他の病気の患者にも役立てられそうです」。他の病気にはたとえば高血圧、糖尿病、心不全などの慢性疾患が含まれます3)。参考1)Lee KC,et al. N Engl J Med. 2022 Apr 6. [Epub ahead of print]2)Pulse oximeters did not change outcomes for patients in COVID-19 monitoring program / Eurekalert3)Remote Monitoring of Patients with Covid-19: Design, implementation, and outcomes of the first 3,000 patients in COVID Watch. NEJM Catalyst. July 21, 20204)Delgado MK, et al.. Ann Intern Med. 2022 Feb;175:179-190. 5)Automated texting system saved lives weekly during first COVID surge / Eurekalert

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リブレ(血糖測定器)の保険適用拡大で糖尿病学会が見解/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2017年に発表した「間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM):FreeStyle リブレ(以下「リブレ」と略す)に関する見解」の内容を改訂し、4月1日に第4版を公表した。 今回の改訂は、「2022年4月より、リブレの使用に関する保険請求上の「C150-7」の対象者が『入院中の患者以外の患者であって、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っているもの』に拡大されたことを踏まえ、現在の医療環境に合わせた」と趣旨を示している。同時に「リブレは、糖尿病の日常の自己管理に有用であるが、必要時には血糖自己測定(SMBG)を行って血糖値を確認する必要がある。本品が有効かつ安全に用いられるよう、適正な使用方法について示す」としている。リブレ(血糖測定器)保険適用拡大の主な内容や改訂点【1.リブレを使用することが考慮される患者像】〔継続使用が考慮される患者像〕(1)インスリン療法でも血糖変動が大きい患者(2)生活が不規則で血糖が不安定な患者(3)スポーツや肉体作業など活動量が多く血糖が動揺しやすい患者(4)低血糖対策の必要度が高い患者、など〔短期的または間歇的に使用する患者像〕(1)インスリンを新規に開始する患者(2)治療内容の変更(薬剤の追加・変更、薬剤用量の増減など)を行う患者(3)食事や運動などが血糖変動に及ぼす影響を理解させて生活習慣改善に向けて教育的指導を行いたい患者(4)手術や歯科処置などで短期間に血糖を改善すべき患者(5)シックデイの場合、など【2.SMBGとの併用】 SMBGとの併用について、「リブレは糖尿病の日常の自己管理に用いることができる機器であるが、必要に応じてSMBGを行って血糖値を確認しなければならない」としている。 また、SMBGを行う場合として、添付文書に記載されている通り、(1)グルコース値が急速(1分間に2mg/dL以上)に変化している場合(2)センサーにより得られた低血糖または低血糖の可能性について確認する場合(3)リブレの測定結果と一致しない症状がある場合、または測定値の正確性に疑問がある場合 などが挙げられている。【3.保険適用】 2022年4月より、「C150-7」の対象者が「入院中の患者以外の患者であって、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っているもの」に拡大されたことで、インスリン注射を行っているすべての患者に適用される。【4.安全性と有効性の担保】 実際の使用では、「機器自体の特性、データ乖離などの解釈、SMBGが必要な状況の指導、食事・運動療法・薬物治療へのフィードバック、など糖尿病治療の専門的な知識が必要である」と明記。また、「リブレはSMBGと相補的に使用することにより糖尿病患者の血糖管理を向上させる有用なツールであり、日本糖尿病学会はリブレの安全かつ有効な利用を今後も推進する」としている。【5.結果の評価方法について】 結果の評価方法について、とくに「 time in range(TIR)の目標値が、国外のCGMデータに基づいて設定されており、日本人糖尿病患者における適切な目標値とは異なっている可能性がある。今後、日本人におけるCGMデータを用いて、適切な目標値を検証していくことが重要」としている。

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会員医師の昨年度の最多年収帯は?/1,000人アンケート

 ケアネットでは、3月10日(木)に会員医師1,000人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その結果、82%の医師が昨年度の年収額を1,000万円以上と回答し、その中で最も多い年収帯は2,000~2,500万円であった(全体の15%)。また、全体の58%の医師が1,000~2,000万円の年収帯に分布し、2,000~3,000万円は20%、3,000万円以上は4%であった。46~65歳では6割以上が1,600万円以上と回答 最多年収帯を年代別にみると、35歳以下が1,000~1,200万円(21%)、36~45歳が1,200~1,400万円(17%)、46~55歳が1,600~1,800万円および2,000~2,500万円(ともに19%)、56~65歳および66歳以上が2,000~2,500万円(22%、14%)だった。 年収1,000万円以上が占める割合は、35歳以下が64%、36~45歳が87%、46~55歳が91%、56~65歳が92%と年齢が上がるごとに増加したが、66歳以上では76%と減少した。また、46~65歳では6割以上が1,600万円以上と回答した。診療科別の傾向は? 診療科別に昨年度の年収が1,600万円以上と回答した医師の割合をみると、内科系と比較して外科系で多い傾向がみられた(以下は30人以上の回答が得られた診療科から抜粋):内科系循環器内科(54%)精神科(54%)内科(48%)消化器内科(45%)神経内科(38%)小児科(37%)呼吸器内科(36%)糖尿病・代謝・内分泌内科(30%)外科系消化器外科(67%)外科(60%)脳神経外科(50%)整形外科(47%)耳鼻咽喉科(40%) その他の診療科、男女別、病床数別、勤務先別の医師の年収分布についても、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2022【第1回】昨年度の年収

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新型コロナへのイベルメクチン、RCTの結果が明らかに/NEJM

 早期に診断された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、イベルメクチンで治療してもCOVID-19進行による入院の発生率や救急外来での観察期間延長は低下しないことが、ブラジル・Pontifical Catholic University of Minas GeraisのGilmar Reis氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験「TOGETHER試験」の結果、示された。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の急性症状を呈するCOVID-19外来患者に対するイベルメクチンの有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2022年3月30日号掲載の報告。入院/救急外来受診患者でイベルメクチンvs.プラセボ 研究グループは、ブラジルの公衆衛生クリニック12施設において、COVID-19の症状発現後7日以内の18歳以上の外来患者のうち、糖尿病、降圧療法を要する高血圧、心血管疾患、肺疾患、50歳以上などのリスク因子のうち少なくとも1つを有する患者を、イベルメクチン(400μg/kgを1日1回3日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院またはCOVID-19悪化による救急外来受診(救急外来での>6時間の経過観察と定義)の複合アウトカムとした。主要評価項目のイベント発現率は14.7% vs.16.3%、有意差なし 2021年3月23日~8月6日の間に、イベルメクチン群(679例)またはプラセボ群(679例)に割り付けられた1,358例が解析に含まれた。 主要評価項目のイベントは、イベルメクチン群で100例(14.7%)、プラセボ群で111例(16.3%)確認され、相対リスクは0.90(95%ベイズ信用区間[CrI]:0.70~1.16)であった。主要評価のイベント計211例のうち、171例(81.0%)が入院であった。 少なくとも1回のイベルメクチンまたはプラセボの投与を受けた患者のみを解析対象とした修正intention-to-treat解析(相対リスク:0.89、95%ベイズCrI:0.69~1.15)、ならびに割り付けられた治療のアドヒアランスが100%の患者のみを解析対象としたper-protocol解析(0.94、0.67~1.35)でも、主解析と同様の結果が得られた。 イベルメクチン投与による副次評価項目または有害事象への有意な影響は観察されなかった。

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糖尿病患者の非HDL-C値低下に有効なスタチンは?/BMJ

 英国・マンチェスター大学のAlexander Hodkinson氏らはネットワークメタ解析の結果、中用量および高用量のロスバスタチン、ならびに高用量のシンバスタチンとアトルバスタチンが、糖尿病患者の非HDLコレステロール(非HDL-C)値を中等度低下させるのに最も有効であることを示した。糖尿病患者における心血管疾患の1次予防および2次予防の基本はLDL-C値の低下であるが、非HDL-C値に対するスタチンの有効性を比較したエビデンスは不足していた。著者は、「主要ターゲットとして非HDL-C値の低下を用いると心血管疾患の予測精度が向上する可能性があることから、今回の結果は、糖尿病患者において非HDL-C値の低下に最も有効なスタチンの種類と強度に関する指針に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年3月24日号掲載の報告。無作為化比較試験42件のベイジアンネットワークメタ解析 研究グループは、Medline、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびEmbaseを用いて2021年12月1日までに公表された研究を検索し、1型または2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボを含むさまざまな種類と用量のスタチンを比較した無作為化試験を適格研究としてシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 主要評価項目は、非HDL-C値の変化とし、総コレステロール値とHDL-C値から算出した。副次評価項目は、LDL-C値および総コレステロール値の変化、主要心血管イベント(非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、心血管疾患死)、有害事象による中止などである。 ランダム効果モデルを用いたベイジアンネットワークメタ解析により、非HDL-Cに対するスタチン(低用量、中用量、高用量)の治療効果を平均差および95%信用区間(CrI)で評価した。また、サブグループ解析では、主要心血管イベントリスクが高い患者を低リスクまたは中等度リスクの患者と比較した。エビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価した。 成人患者計2万193例が参加した無作為化比較試験42件から、1万1,698例がメタ解析に組み込まれた。中・高用量ロスバスタチン、高用量のシンバスタチンとアトルバスタチンが有効 プラセボと比較して非HDL-C値の低下が大きかったのは、ロスバスタチンの高用量(平均差:-2.31mmol/L、95%CrI:-3.39~-1.21)と中用量(-2.27、-3.00~-1.49)、高用量シンバスタチン(-2.26、-2.99~-1.51)、高用量アトルバスタチン(-2.20、-2.69~-1.70)であった。アトルバスタチンとシンバスタチンはいずれの用量においても、また、低用量のプラバスタチンも、同様に非HDL-C値の低下に有効であった。 主要心血管イベントの高リスク患者4,670例においては、高用量アトルバスタチンにより非HDL-C値が最も低下した(-1.98、95%CrI:-4.16~0.26、累積順位曲線下面積64%)。高用量シンバスタチン(-1.93、-2.63~-1.21)ならびに高用量ロスバスタチン(-1.76、-2.37~-1.15)は、LDL-C値の低下に最も有効な治療選択肢であった。 プラセボと比較して、中用量アトルバスタチンで非致死的心筋梗塞の有意な減少が確認された(相対リスク:0.57、95%信頼区間:0.43~0.76、試験数4件)。中止、非致死的脳卒中および心血管死については、有意差は認められなかった。

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末梢動脈疾患ガイドライン、7年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会と日本血管外科学会の合同ガイドライン『末梢動脈疾患ガイドライン(2022年改訂版)』が、7年ぶりの改訂となった。2度目の改訂となる今回は、末梢動脈疾患の疾病構造の変化と、それに伴う疾患概念の変遷、新たな診断アルゴリズムや分類法の登場、治療デバイスの進歩、患者背景にある生活習慣病管理やその治療薬の進歩などを踏まえた大幅な改訂となっている。第86回日本循環器学会学術集会(3月11~13日)で、末梢動脈疾患ガイドライン作成の合同研究班班長である東 信良氏(旭川医科大学外科学講座血管外科学分野)が、ガイドライン改訂のポイント、とくに第4章「慢性下肢動脈閉塞(下肢閉塞性動脈硬化症)」について重点的に解説した。末梢動脈疾患ガイドラインでは下肢閉塞性動脈疾患をLEADと区別 末梢動脈疾患ガイドラインで扱う末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)は、冠動脈以外の末梢動脈である四肢動脈、頸動脈、腹部内臓動脈、腎動脈、および大動脈の閉塞性疾患を指す。同じくPADと称されている上下肢閉塞性動脈疾患(Peripheral Artery Disease:PAD)との混同を避けるため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、下肢閉塞性動脈疾患についてはLEAD、上肢閉塞性動脈疾患についてはUEADと称し、区別している。 末梢動脈疾患ガイドラインは全20章で構成されており、各章・各節の冒頭で、診療の基本となるエッセンスや最も伝えたい概念を「ステートメント」として紹介している。また、Practical Question:PQとして、12個の臨床的話題を取り上げ、実臨床でいまだ明確な方針が示されていない臨床的課題について解説している。 PADの中で最も多くかつ重要な疾患がLEADである。LEADのリスクファクターや背景疾患の管理については、心血管イベントのリスクが高く、動脈硬化の4大因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙の管理が基本となる。末梢動脈疾患ガイドラインでは、とくに脂質異常症について厳しい管理を推奨している。本邦では、腎不全・透析もLEAD発症の独立した危険因子として非常に頻度が高いため、今回の末梢動脈疾患ガイドラインより新たに追加された。LEADの抗血栓療法については、前回のガイドラインに記載されていた抗血小板療法に加え、DOACの登場によって抗凝固療法の項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインではLEADの症候別アプローチを記載 LEADは、症状や虚血の程度により治療方針が大きく変化する。そのため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、無症候性LEAD、間歇性跛行、包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb-Threatening Ischemia:CLTI)の3つに分類し、診断・治療の症候別アプローチを記載している。【無症候性LEAD】・無症候性LEADは、総じて下肢の予後が良好であるが、潜在的重症下肢虚血が一部含まれるため注意が必要である。下肢動脈病変の予防的血行再建術を行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【間歇性跛行】・間歇性跛行を訴える患者には、鑑別診断も兼ねた詳細な問診と身体診察を行う。下肢虚血の程度や間歇性跛行の機序を総合的に判断することが重要になる。病変評価には足関節上腕血圧比(ABI)の測定を行い、安静時のABIに異常を認めない場合は運動後のABI測定も推奨されている。・間歇性跛行の治療について、血行再建の要否は、日常生活で歩行機能の改善を見込めるか、運動を制限する合併疾患(狭心症、心不全、慢性呼吸器障害、筋骨格系の制限や神経障害など)の有無を評価したうえで決定する。保存的治療が優先され、末梢動脈疾患ガイドラインではとくに、運動療法の推奨が詳細に記載されている。・動脈硬化リスクファクターの是正、薬物療法、運動療法の検討を実施していない間歇性跛行患者には血行再建術は推奨されない。しかし、必要であれば次のとおり血行再建術を施行する。大動脈腸骨動脈領域はEVTを第1選択とする。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除を第1選択とする。大腿膝窩動脈病変領域は、25cm未満の短~中区域病変はEVT、長区域病変は外科的血行再建を第1選択とする。膝下動脈病変領域では、EVTは推奨されない(推奨クラスIII No benefit)、同様に、人工血管による大腿-下腿動脈バイパスも行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【CLTI】・包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)は、下肢虚血、組織欠損、神経障害、感染などの肢切断リスクがあり、治療介入が必要な下肢を総称する概念だ。これまでは、「重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia:CLI)」という用語が使われていたが、背景にある生活習慣病、とくに糖尿病や腎不全の増加といった疾病構造の変化から、高度虚血だけでなく、感染等が原因で肢切断になることもありうるため、近年の実臨床を反映したCLTIという用語が使われている。・CLTIの治療方針を決定する際は、全身のリスク評価、WIfI分類での局所評価、解剖学的評価の3点について、PLANコンセプトに基づくアルゴリズムで総合的に検討する。CLTIへの血行再建を施行する際は、全身リスクと創傷範囲の評価が重要だ。血行再建の推奨は次のとおり。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除術を第1選択とする。下腿足部動脈病変は、2年以上の生命予後が期待され、使用可能な自家静脈がある場合は、自家静脈バイパスを行うとしている。・末梢動脈疾患ガイドラインの今回の改訂で、創傷治癒、リハビリテーション、大切断、血行再建術後の薬物療法、血行再建術後の予後と二次予防といった項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインに動脈硬化症以外のさまざまな疾患 末梢動脈疾患ガイドラインの第6~19章には、動脈硬化症以外の原因によるPADについて、診断や治療に関する解説がなされている。東氏は「欧米のガイドラインではあまり記載されていないものも多く含んでおり、PADには動脈硬化症以外のさまざまな病因・疾患が潜んでいることを今一度振り返っていただき、治療法を誤らないためにも、ぜひ参考にしていただきたい」と、末梢動脈疾患ガイドラインの第4章以外の章の重要性についても強調。 PADは、冠動脈疾患や脳血管疾患に比べてはるかに国民の認知度が低く、予防や早期発見が遅れている。そのため、一般市民への啓発を目的として、末梢動脈疾患ガイドラインには第20章「市民・患者への情報提供」が、今回の改訂で新たに設けられた。本章では、とくに生活習慣病に伴うLEADを中心に概説している。 東氏は、今回の末梢動脈疾患ガイドライン改訂の要点として「主軸は欧米のガイドラインと呼応するように改訂したが、本邦のエビデンスをより多く取り入れ、実情に合う治療方針を目指した。本ガイドラインの英語版も作成中で、とくに民族性や文化が似ているアジア諸国の診断に役立つことを期待している」と発表を締めくくった。

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