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妊娠糖尿病に対する早期のメトホルミン投与の効果(解説:小川大輔氏)

 日本においてメトホルミンは「妊婦または妊娠している可能性のある女性」への投与は禁忌となっている。一方、海外ではメトホルミンは妊娠糖尿病に使用可能である。今回、妊娠糖尿病患者を対象に、妊娠早期からメトホルミン治療を開始する試験の結果がJAMA誌に発表された1)。 この試験はアイルランドの2ヵ所の医療機関で、妊娠28週以前に妊娠糖尿病と診断された被験者を登録して実施された二重盲検無作為化試験である。被験者510人(妊娠535件)を対象として、メトホルミンを投与する群(メトホルミン群)と、プラセボを投与する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要アウトカムは妊娠32週または38週時点での空腹時血糖高値(5.1mmol/L以上)、またはインスリン療法の開始であった。 主要複合アウトカムはメトホルミン群で56.8%、プラセボ群で63.7%と有意差を認めなかった(相対リスク:0.89、95%信頼区間[CI]:0.78~1.02、p=0.13)。母体に関する副次アウトカムのうち、インスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加はメトホルミン群で有意に良好であった。新生児に関する副次アウトカムでは、出生時体重がメトホルミン群で有意に低値であった。 妊娠早期からのメトホルミン投与により、主要複合アウトカムは有意差がなかったが、インスリン療法の開始についてはメトホルミン群で38.4%、プラセボ群で51.1%と有意差を認めた(相対リスク:0.75、95%CI:0.62~0.91、p=0.004)。また、副次アウトカムでも妊娠中の血糖コントロールや母体の体重管理は、メトホルミン早期導入により改善することが示された。そのため今回の試験結果だけで、妊娠糖尿病に早期からメトホルミンを導入するべきではないと結論付けることは難しい。著者らが考察しているように、より規模の大きな臨床試験を行う必要があるだろう。 また、すべての妊娠糖尿病患者に早期からメトホルミンを投与する必要はないのかもしれない。インスリン分泌が低下しているのであれば早期からインスリン導入を検討するべきであるし、肥満を伴っていれば早期からメトホルミン投与を考慮してもよいだろう。今後試験デザインを再考し、対象となる症例を増やして妊娠糖尿病に対するメトホルミン早期導入の意義を検討する臨床試験が行われることを期待したい。 メトホルミンは妊娠中の血糖管理だけでなく、妊婦の体重増加や妊娠高血圧腎症などに有効かつ安全であることが報告されている2)。実臨床で血糖コントロールのために大量のインスリンを必要とし、体重管理に苦慮する妊娠糖尿病の症例をしばしば経験するので、日本でも妊娠糖尿病でメトホルミンが投与できるようになることを願う。

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コーヒーの砂糖とミルク、肥満に関連するのは?

 コーヒー摂取と体重増減、疾患リスクとの関連を調査した研究は多いが、新たにカフェイン摂取量に加え、砂糖・ミルクの添加が体重増減と関連するかを調べた研究結果がThe American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2023年10月1日号に掲載された。 研究者らは、米国の3つの大規模前向きコホートNurses' Health Study(1986~2010年)、Nurses' Health Study II(1991~2015年)、Health Professional Follow-up Study(1991~2014年)を用いた。砂糖、クリーム、非乳製品コーヒークリームの添加を考慮したうえで、コーヒー消費量、カフェイン摂取量と体重変化との関連を調べた。また、コーヒー以外の飲料や食品に砂糖を加えることと体重変化との関連、それがカフェインやコーヒー摂取量と関連しているかについても検討した。 主な結果は以下のとおり。・無糖カフェイン入りコーヒーの摂取が1日1杯増加するごとに、4年間の体重は-0.12kg(95%信頼区間[CI]:-0.18~-0.05)、無糖カフェインレスコーヒーでは-0.12kg(95%CI:-0.16~-0.08)となった。・クリームや非乳製品コーヒークリームを加える習慣は、体重変化と有意な関連はなかった。・ティースプーン1杯の砂糖を加えることは、0.09kg(95%CI:0.07~0.12)の体重増加と関連していた。・層別解析では、年齢が若いほど、またベースラインのBMIが高いほど、観察された関連性の大きさがより強くなることが示唆された。・コーヒーおよびカフェイン摂取量は、いずれもほかの飲料または食品の砂糖添加と体重変化との関係に影響しなかった。 研究者らは「無糖のカフェイン入り、カフェインレスコーヒーの摂取量の増加は、体重減少と相関していたが、砂糖を加えることで体重管理に対するコーヒーの有益性を打ち消し、さらなる体重増加を招いた」とした。

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HER2陽性転移のある乳がんの1次治療、pyrotinib併用でPFS改善/BMJ

 未治療のHER2陽性転移のある乳がんの治療において、pyrotinib(不可逆汎HERチロシンキナーゼ阻害薬)+トラスツズマブ+ドセタキセルは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、毒性は管理可能であることが、中国医学科学院北京協和医学院癌研究所のFei Ma氏らが実施した「PHILA試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年10月31日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 PHILA試験は、中国の40施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年5月~2022年1月に患者のスクリーニングを行った(中国・Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 年齢18~75歳、HER2陽性の再発または転移のある乳がんで、全身療法を受けていない女性患者を、トラスツズマブ+ドセタキセル(21日を1サイクルとして1日目に静脈内投与)に加え、pyrotinibまたはプラセボを1日1回経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、担当医判定によるPFS(無作為化から、画像上での最初の病勢進行または全死因死亡のうち先に発生したイベントまでの期間)とした。 590例を登録し、pyrotinib群に297例(年齢中央値52歳[四分位範囲[IQR]:46~58])、プラセボ群に293例(52歳[46~57])を割り付けた。今回の中間解析のデータカットオフ日(2022年5月25日)の時点で、追跡期間中央値は15.5ヵ月だった。二重のHER2阻害の有効性を示唆 担当医判定によるPFS中央値は、プラセボ群が10.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.3~12.3)であったのに対し、pyrotinib群は24.3ヵ月(19.1~33.0)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.32~0.53、片側p<0.001)。 12ヵ月の時点での推定無増悪生存率は、pyrotinib群が74.3%(95%CI:68.1~79.5)、プラセボ群が44.0%(37.5~50.3)、24ヵ月時はそれぞれ50.3%(41.9~58.1)、16.6%(10.7~23.7)であった。 また、独立審査委員会判定によるPFS中央値は、プラセボ群の10.4ヵ月(95%CI:10.2~12.2)に比べ、pyrotinib群は33.0ヵ月(19.4~未到達)と有意に優れた(HR:0.35、95%CI:0.27~0.46、片側p<0.001)。 客観的奏効は、プラセボ群では207例(71%、95%CI:65~76)で得られたのに対し、pyrotinib群では246例(83%、78~87)で達成され、有意差を認めた(群間差:12.2%、95%CI:5.4~18.9、層別片側p<0.001)。完全奏効は、pyrotinib群19例(6%)、プラセボ群8例(3%)であった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、pyrotinib群で267例(90%)、プラセボ群で224例(76%)に発現し、好中球数の減少(pyrotinib群63%、プラセボ群65%)、白血球数の減少(53%、51%)、下痢(46%、3%)の頻度が高かった。治療関連死は、pyrotinib群では発生しなかったが、プラセボ群で1例(<1%、糖尿病性高浸透圧性昏睡)に認めた。 著者は、「これらの知見は、モノクローナル抗体と低分子チロシンキナーゼ阻害薬による二重のHER2阻害が、HER2陽性転移のある乳がんの1次治療の選択肢となる可能性を支持するものである」としている。

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脂質低下療法の効果にストロングスタチン間の違いはあるのか?(解説:平山篤志氏)

 動脈硬化性疾患の2次予防にLDL-コレステロール(LCL-C)低下の重要性が明らかにされているが、ガイドラインにより、LDL-Cの管理目標値を達成するアプローチ(Treat to Target)と目標値を設定せず病態に応じたスタチンを投与するアプローチ(Fire and Forget)がある。韓国で行われたLODESTAR試験は、この2種のアプローチでOutcomeが異なるかを検討した試験で、すでに報告されたように管理目標値を達成できれば両者に優劣はなかった。本試験ではさらに、エントリーされた患者はTreat to Target群とFire and Forget群に分けられると同時に、2種のストロングスタチン、すなわちロスバスタチン群とアトルバスタチン群に割り付けられ、今回はスタチンの相違についての検討が報告された。 結果は、ロスバスタチン群でアトルバスタチン群に比し、0.1mmol(3.85mg/dL)の有意なLDL-Cの低下は認められたが、心血管イベントには両者で差がない結果であった。また、数多くの2次エンドポイントが設けられていたが、ロスバスタチン群で新規糖尿病と白内障の発症がアトルバスタチン群に比して有意に多いと報告されていた。スタチン使用と新規糖尿病の発症については2012年にFDAが警告を発して以来、投与に関しては注意が必要とされている。スタチンがグルコーストランスポーターのGULT4のダウンレギュレーションを来すことが一因とされており、これまでスタチンの強度、脂溶性・水溶性などの解析が行われてきたが、相違については結論が出されていない。今回の検討でも、全参加者の解析では新規糖尿病の発症や糖尿病治療薬の使用開始では確かにロスバスタチン群で有意に高いが、糖尿病の既往のない患者群では新規発症には有意差が示されなかった。したがって、この結果だけをもってロスバスタチンのほうが糖尿病を来すリスクが高いとはいえない。 これまでに報告されているように、スタチンによる糖尿病発症や悪化のリスクはあっても、心血管イベント抑制効果が上回ることから、スタチン使用に躊躇すべきではない。この論文のメッセージとしては、いずれのスタチンを用いても有効性と安全性には差がないというものである。論文のメッセージとしてのインパクトは大きくないが、韓国でこれほどの大規模試験が行われ結果を報告しているのに、なぜか日本ではRegistry研究は盛んだがRCT研究が少なくなっているように思われる。今後、わが国でRCTを行いやすくできる環境整備が必要なのであろう。

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11月14日 世界糖尿病デー【今日は何の日?】

【11月14日 世界糖尿病デー】〔由来〕糖尿病の治療に欠かせない「インスリン」を発見したカナダの医師フレデリック・バンティングの誕生日にちなみ、2006年に国際連合は11月14日を「世界糖尿病デー」に認定。世界各地で糖尿病の予防、治療、療養について啓発活動を行っている。わが国でも全国で糖尿病啓発などに関するイベントが開催されるほか、東京タワーや大阪城などの有名建築物が糖尿病のシンボルカラーのブルーでライトアップされている。関連コンテンツ高齢者糖尿病診療のコツDr.坂根の糖尿病外来NGワードDr.坂根のすぐ使える患者指導画集 Part2日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大チルゼパチド追加の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」改訂版/日本糖尿病学会

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第170回 外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協

<先週の動き>1.外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協2.地域医療構想で進む病床再編、急性期病床が減少、回復期は増加/厚労省3.日本の公的医療支出が高水準、病床数と在院日数で2位/OECD4.GLP-1受容体作動薬の供給不足、卸に対して美容目的の出荷抑制を指示/厚労省5.美容目的のエクソソーム使用に規制を、死亡事例の報告も/再生医療学会6.介護職員の待遇改善へ、来年2月から月6,000円の賃上げ決定/政府1.外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協厚生労働省は、中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を11月10日に開催。2024年度の診療報酬改定に向けて議論が行われた。とくに外来医療に関する「外来管理加算(52点)」については、支払い側が廃止を求め、激しい議論となった。外来管理加算は、2008年の診療報酬改定で再診患者に対する計画的な医学管理を評価するため導入された。当初は「おおむね5分を超える診察」の要件(いわゆる「5分ルール」)が含まれていたが、医療現場の強い反発で、このルールは2年後に廃止された代わりに、「簡単な症状の確認」だけで処方を行った場合は加算を算定できないことが明確化されていた。支払側委員の松本 真人氏(健康保険組合連合会理事)は、外来管理加算の算定要件があいまいで、その評価の妥当性に疑問を提起した。さらに、外来管理加算と「特定疾患療養管理料」、「生活習慣病管理料」、「地域包括診療加算」の併せて算定が許される現状についても、患者や保険者にとって理解しづらいと指摘し、廃止を主張した。これに対して、診療側の委員たちは強く反発。長島 公之委員(日本医師会常任理事)は、松本委員の意見を「暴論」と断じ、まったく容認できないと強調した。池端 幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、廃止の主張に全面的に反対する意向を示した。参考1)中医協資料 外来(その3)について(厚労省)2)外来管理加算の廃止を主張、支払側の松本委員 長島委員は「暴論、容認できない」(CB news)3)「外来管理加算の廃止」の支払側提案に、診療側委員は猛反発、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価をどう考えるか-中医協総会(1)(Gem Med)2.地域医療構想で進む病床再編、急性期病床が減少、回復期は増加/厚労省厚生労働省は、11月9日に「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を開催し、地域医療構想の進捗について報告した。厚労省が最新の病床機能報告を基に行った集計によれば、2025年までに急性期病床が約7.1万床減少する一方、回復期病床は約7.9万床増加する見込み。政府は、高齢化や人口減少に対応するため、2025年までに各地域の医療体制を効率化することを目的として地域医療構想の実現を目指し、病床再編を行っている。病床再編により、一部の地域では医療機関の存続が危ぶまれ、とくにコロナ禍での病床削減への疑問符が生じている。たとえば、岐阜県東濃地方では、公営病院の病床数削減や民間への譲渡が進められているが、地域全体での病床利用率は高くなく、病床削減による共倒れの懸念が指摘されている。新型コロナウイルスのパンデミックは、病床削減の方針に再考を迫っており、急性期病床の役割の重要性が再認識されているが、今後は、コロナ禍の経験や在宅医療の需要も考慮に入れた新たな医療再編の議論が求められている。参考1)地域医療構想の進捗等について(厚生労働省)2)急性期7.1万床減少見込み、15-25年に 回復期は7.9万床増、全国ベースで(CB News)3)目標の2025年迫る「地域医療構想」 病床再編 議論が“再燃” 地域医療の崩壊に危機感(東京新聞)3.日本の公的医療支出が高水準、病床数と在院日数で2位/OECD経済協力開発機構(OECD)の最新報告によれば、わが国の公的医療支出はGDPの11.5%であり、政府支出の22%を占めることが判明した。これは、加盟38ヵ国中最高の割合であることが明らかになった。わが国の人口当たり病床数(12.6)は韓国に次いで2位で、平均在院日数も16.0日と、OECDの平均の約2倍である。人口1,000人当たりの医師数は2.6人で、OECDの平均3.7人に及ばない。また、わが国は、65歳以上の高齢者割合が29%と最も高く、1人当たりの受診回数も11回で2番目に多い。OECDは、これらの現状をもとにわが国の医療資源の効率的な活用を促している。人口10万人当たりの薬剤師数は199人でトップに立つ一方で、ノルウェーやスウェーデンの65歳以上の人口100人当たり介護従事者の数は約12人に対して、わが国は6.8人である。そのほか、開業医の電子カルテ利用率は平均93%に対し、日本は42%と低くOECDの武内 良樹事務次長は、わが国の医療提供の効率化と介護の費用対効果の向上を求めている。さらにわが国の病院依存型の医療制度が非効率であると指摘し、遠隔医療の利用拡大やかかりつけ医の医療質向上のほか、スキルの高い介護人材の確保と労働条件の改善も必要とも述べている。参考1)図表でみる医療 2023:日本(OECD)2)公的医療支出の割合、日本がトップ OECD、病床数・在院日数は2位(MEDIFAX)4.GLP-1受容体作動薬の供給不足、卸に対して美容目的の出荷抑制を指示/厚労省厚生労働省は、2型糖尿病治療に使用されるGLP-1受容体作動薬の在庫が逼迫していることを受け、7月下旬に医療機関と薬局に対して、GLP-1受容体作動薬の買い込みを控え、必要量のみの購入を行うよう求め、薬剤の適正使用を依頼した。GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者以外への使用(主に美容・痩身目的)については有害事象の報告もあり、懸念が広がる一方、海外承認のニュースにより急速に処方が増えている。厚労省は、2型糖尿病患者に対して適切に供給されるように、医薬品卸売販売業者に対して、注文を受けた際に治療目的を確認し、糖尿病治療以外の目的での使用が明らかな注文に対しては、納入を控えるよう11月9日付けで通知を発出した。参考1)GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(その2)(厚労省)2)GLP-1、糖尿病治療以外は納入しないよう卸に要請 厚労省(日刊薬業)5.美容目的のエクソソーム使用に規制を、死亡事例の報告も/再生医療学会厚生労働省が、11月10日に開催した厚生科学審議会の再生医療等評価部会で、日本再生医療学会は、細胞から分泌される微粒子「エクソソーム」が含まれる幹細胞培養上清液が、美容目的やアンチエイジング目的で自由診療の医療機関で使用されているとして、「何らかの規制下に置かれることが望ましい」とする提言書を国に提出した。エクソソームは組織再生を促す物質を含んでいるが、現行の再生医療の安全に関する法律の対象外のため、管理が不十分な場合には重大な事故を引き起こす可能性があると指摘されている。すでに、幹細胞培養上清液を使用した治療による患者の死亡事例も報告されており、研究者らはエクソソームの体内での効果や安全性に関する科学的根拠が不足しており、一部のクリニックが効果を誇張して宣伝されていることを問題視しており、大阪大学の曽宮 正晴助教は、このような未確立の治療法には倫理的、科学的な問題があると指摘している。これに対して、実施しているクリニックが所属している日本再生医療抗加齢学会側は、現在の状況を改善するためのガイドライン作成や問題点の精査を急務としている。参考1)エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言(日本再生医療学会)2)幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について(再生医療抗加齢学会)3)エクソソーム 美容目的などに利用 “将来的に規制を”学会提言(NHK)4)エクソソーム治療「規制下が望ましい」学会が提言 死亡例の報告も(朝日新聞)5)幹細胞培養上清液で死亡例 研究者「エクソソームの投与で何かを治したと人で実証された例はない」「身体にリスクも」“若返りや美容効果”うたうクリニックに警鐘(ABEMA TIMES)6.介護職員の待遇改善へ、来年2月から月6,000円の賃上げ決定/政府政府は、介護職員と看護補助者の賃金を2023年2月から月額6,000円引き上げることを含む補正予算を閣議決定した。この措置は、介護分野と他の産業との間で開いた待遇格差を埋め、介護職員の離職を防ぐための措置で、賃上げには関連経費が2023年度補正予算案に盛り込まれ、都道府県を通じて事業所や医療機関に補助される。今回の賃上げは、介護報酬の3年ごと、診療報酬の2年ごとの見直しに先立つ「つなぎ」としての措置であり、来年度の報酬改定で恒久的な賃上げを目指している。厚生労働省によれば、2022年の介護職員の給与平均は29.3万円、看護補助者は25.5万円で、全産業平均(36.1万円)と比べて低く、介護分野では低賃金のために他産業への人材流出が続いており、離職者数が増加している。全国老人保健施設協会の調査では、介護職員の2023年度の賃上げ率は1.42%で、春闘の平均賃上げ率3.58%を大きく下回っている。岸田 文雄首相は、医療介護における賃上げや人材確保を重要な課題として挙げ、「必要な処遇改善の検討を行わなければならない」と述べている。参考1)介護職、月6000円賃上げ 人材流出抑制で-厚労省・補正予算(時事通信)2)介護職員の賃金、来年2月から月6000円引き上げ…離職の歯止め措置で補正予算案に盛り込む(読売新聞)3)コロナ交付金に6,143億円、補正予算案決定 月6千円相当の看護職賃上げへ(CB news

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厚生労働省に糖尿病治療薬の安定供給を要望/糖尿病関係三団体

 糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬の適用外処方が社会問題となり、その供給不足が報道されている。また、後発医薬品メーカーの不祥事や原料の不足などで糖尿病患者への必要な既存の治療薬の供給にも不安が生じている。 こうした現在の状況に鑑み、2023年11月7日に日本糖尿病協会(理事長:清野 裕氏、患者代表理事:中園 徳斗士氏)、日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)、日本くすりと糖尿病学会(理事長:朝倉 俊成氏)の三団体は連名で厚生労働省に対し「糖尿病治療薬の安定供給に関する要望書」を提出した。厚生労働省に患者代表も参加させ、患者視点の対策を要望 要望書の要旨は、以下のとおり。・厚生労働省で「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を設置し、現状把握と対策を検討していること、また、先発品だけでなく、後発品にも不安定供給が発生しているが、それらの薬価見直しについて検討していることへの謝意を表明。・しかしながら、状況はいまだ改善しているとは言い難く、現在も糖尿病医療の現場では、医療者、患者双方から、不安な思いが寄せられていることを報告。この状況の早期解消への一層の注力を要望。・また、問題解決には、医薬品を用いた治療を受ける患者の視点が重要であるため、今後の検討を進める際は、日本糖尿病協会の患者代表理事を加えて、当事者の意見を聴くことを要望。

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妊婦の過度の体重増加、50年以上先の死亡リスクにも影響/Lancet

 妊娠中の体重増加が2009年の全米医学アカデミー(2009 NAM)の勧告の推奨値を上回った妊婦は、この推奨値の範囲内であった妊婦と比較して、妊娠前の体重が標準体重および過体重の女性では50年後の全死因死亡のリスクが有意に上昇し、妊娠前は低体重の女性でも死亡リスクが上昇したものの統計学的に有意な差はなかったことが、米国・ペンシルベニア大学のStefanie N. Hinkle氏らの調査で明らかとなった。心血管死のリスクは妊娠前に低体重および標準体重の女性で、また糖尿病関連死のリスクは過体重の女性で上昇したという。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年10月19日号に掲載された。米国の前向きコホート研究 研究グループは、妊娠中の過度の体重増加が、50年以上経過した後の死亡率と関連するのかを評価する目的で、Collaborative Perinatal Project(CPP)のデータを用いて前向きコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 CPPでは、1959~65年に米国の12の臨床センターを受診した妊婦4万8,197人を登録した。CPP Mortality Linkage Studyにおいて、CPPの参加者を国民死亡記録(National Death Index:NDI)およびSocial Security Death Master File(SSDMF)と関連付けることで、2016年12月31日の時点での生死状況を調査した。 2009 NAMの勧告に準拠した妊娠中の体重の増加・減少と、妊娠前のBMI別の死亡率との関連を、補正ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出することで推定した。妊娠前体重はBMIに基づき、低体重(BMI<18.5)、標準体重(18.5~24.9)、過体重(25.0~29.9)、肥満(≧30.0)に分類した。 主要エンドポイントは、全死因死亡とした。副次エンドポイントは、心血管系および糖尿病を基盤とする死亡であった。勧告より低い妊婦では、標準体重者のみ糖尿病関連死が低下 参加者のうち関連情報が得られなかった女性などを除く4万6,042人(黒人45.3%、白人46.2%)を解析に含めた。追跡期間中央値は52年(四分位範囲[IQR]:45~54)で、この間に1万7,901人(38.9%)が死亡した。 妊娠前に低体重であった女性(9.4%)では、2009 NAM勧告より過度の体重増加は、心血管死(HR:1.84、95%CI:1.08~3.12)のリスク上昇と関連したが、全死因死亡(1.14、0.86~1.51)や糖尿病関連死(0.90、0.13~6.35)とは関連がなかった。 妊娠前体重が標準であった女性(68.6%)では、2009 NAM勧告より過度の体重増加は、全死因死亡(HR:1.09、95%CI:1.01~1.18)および心血管死(1.20、1.04~1.37)のリスク上昇をもたらしたが、糖尿病関連死(0.95、0.61~1.47)には影響がなかった。 妊娠前に過体重であった女性(15.4%)では、2009 NAM勧告を超える体重増加により、全死因死亡(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24)および糖尿病関連死(1.77、1.23~2.54)のリスクが上昇したが、心血管死(1.12、0.94~1.33)には影響しなかった。 また、妊娠前に肥満であった女性(6.7%)では、妊娠中の体重変化と死亡率との関連は、いずれの評価項目でもHRのCIの範囲が広く、意味のある関連性を認めなかった。 一方、妊娠中の体重の変化が2009 NAM勧告より低かった参加者では、妊娠前体重が標準の女性でのみ、糖尿病関連死(HR:0.62、95%CI:0.48~0.79)のリスクが低下していた。 著者は、「これらのデータは、妊娠中の過度の体重増加が、とくに心代謝性疾患による早期死亡のリスク上昇に寄与する可能性を示唆する」とし、「本研究の新たな知見は、妊娠期間中に2009 NAM勧告の範囲内で健康的な体重増加を達成することの重要性を支持するものであり、その意味するところは、妊娠期間を超えて、心血管系および糖尿病関連の死亡率を含む長期的な健康状態にまで及ぶ可能性があることを示す」と指摘している。

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糖尿病スティグマ」に興味を持った患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第42回

■外来NGワード「合併症にならないように、もっと食事に気を付けないと」(患者の気持ちに寄り添わず、食事制限を指示)「職場で回ってきたおやつは食べないように!」(職場環境を無視)■解説最近、「スティグマ」(社会的偏見による差別)という言葉をよく耳にします。「スティグマ」(stigma)の語源は、ギリシャ語の奴隷や犯罪者などに付けていた肉体上の「印」のことです。現在では、差別や偏見などネガティブな意味での烙印の意味で用いられています。社会における糖尿病に対する知識不足や誤ったイメージから、糖尿病を持つ人はさまざまなスティグマにさらされています。たとえば、糖尿病では生命保険の加入や就職の際に社会的スティグマを経験することがあります。糖尿病の人は「甘いものを食べてはいけない」と勘違いされ、人前では食べない人もいます。糖尿病であることを受け止められずに、重荷に感じ、職場や友人に糖尿病であることを打ち明けられずにいることもあります。そうすると、職場で回ってくるおやつを食べたり、逆に、会食や交流を避け、他人から距離をとるようになるという自己スティグマ状態に陥り、自尊心がだんだん低下してくる人もいます。そのまま、スティグマを放置していると、社会生活の中で不利益を被るだけでなく、前向きに治療に向かうことができなくなります。日本では2002年に日本精神神経学会が、差別的な意味合いが包含されているとして「精神分裂病」という病名を「統合失調症」という病名に変更しました 。現在、日本糖尿病学会や日本糖尿病協会では「糖尿病」という名称を変えることが検討されています。■患者さんとの会話でロールプレイ医師血糖値がなかなか落ち着きませんね…。患者はい。実は…自分が糖尿病であることが職場で言えなくて…。医師なるほど。言えないと、いろいろな不便がありますよね…。患者そうなんです。職場でおやつが回ってきて、断ることができなくて、つい食べてしまったり…。医師確かに、断りにくいですよね。(共感)患者そうなんです。会食なんかも億劫で…、何か理由を付けて断ったり…。医師なるほど。それは困りましたね。患者そうなんです。なかなか、自分から言えなくて…。医師確かに。今では糖尿病の人の平均余命は日本人の平均余命とほぼ同じですし、糖尿病治療によって心筋梗塞や脳梗塞などの合併症は減っていますからね。患者えっ、そうなんですか。糖尿病は早死にする病気かと思っていました。医師いえ、そうではありませんよ。ただ、糖尿病であろうがなかろうが、健康的な食事にした方がいいですよね。「一病息災」ではないですが、血糖が高いと言われたことをきっかけに、健康的な食事にされる方も多いですからね。「糖尿病だからではなくて、健康のために…」と言って、食べたくないおやつを断ったりされてはいかがでしょう。それに、我慢だけでなく、たまには羽目を外されるのもいいと思いますよ。患者そう言われると、少し心が軽くなってきました。ありがとうございます。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「糖尿病があろうがなかろうが、健康的な食事にした方がいいですよね」 1)Kato A, et al. PEC Innov.2)Hamano S, et al. J Diabetes Investig. 2023;14:479-485.

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ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 3

なんでピカソの絵はすごいの?絵を含むアートの起源は、きれいに石器をつくる、ものにイメージを重ね合わせる、集団で共有することであることがわかりました。つまり、発達(個体発生)と進化(系統発生)の両方の視点からも、絵を描くために必要な能力(機能)は、協調運動、概念化、社会性であると言えます。それでは、最初の質問に戻ります。なぜピカソの絵はすごいのでしょうか? 神経美学の視点から、2つの要素を挙げてみましょう。(1)美しい要素がある「泣く女」の絵は、正面顔と横顔、顔のしわとハンカチのしわなどが連続的に組み合わされているなど、実は配置のバランスが驚異的にうまいと指摘されています5)。また、赤と緑、青とオレンジ、黄色と紫などお互いの色を強烈に引き立てる補色を効果的に使っており、色使いもうまいと指摘されています5)。1つ目は、美しい要素があることです。美しさは、見た目、聴き心地、道徳的行い、数理方程式などさまざまあります。これらの美の体験に共通して反応を見せる唯一の部位は、脳の眼窩前頭皮質であることがわかっています6)。絵画の美と道徳の美が、同じ脳の部位の反応であることからも、やはり絵画にはそもそも社会性があることがわかります。(2)めちゃくちゃな要素がある「泣く女」の絵は、「何これ!?」と思わせるような、普通にはありえない描線や構図です。さらに、描かれたモデルの気持ちについ思いを馳せて「ピカソは常軌を逸している!」などと私たちを思わせます2つ目は、めちゃくちゃな要素があることです。めちゃくちゃさは、間違いや無秩序などです。このように、合理的で理性的な思考に揺さぶりをかけられた時、脳の背外側前頭前皮質が反応することがわかっています6)。先ほどにご紹介した実験で、目のない顔に違和感を待つことも、まさにこの部位の反応です。つまり、ピカソの絵がすごいわけは、美しさとめちゃくちゃさの絶妙なバランスによって私たちの心を動かすからです。これは、特定の決まりごと(コンテキスト)を守りつつ、あえてそれにフィットする新しい何かを生み出しています。まさに、創造性です。当時に誕生した美術館は、このピカソの感性に目を付け、価値づけしたのでした。ちなみに、即興演奏をしている時のジャズミュージシャンの脳活動は、先ほどの背外側前頭前皮質が抑制されていることが確認されています。つまり、創造性を発揮するためには、あえてその脳の部位が抑制される必要があるわけです。そして、その創造性を理解するためには、その脳の部位が逆に刺激される必要があるというわけです。アートセラピーの効果とは?ピカソの絵のすごさの答えから、アートとは、必ずしも美しくなければならないわけではなく、私たちの心を動かす何かがあるということです。それは、一言で言えば、おもしろさであり、そのおもしろさを見出す、見る側の感性でもあるでしょう。この点で、アートセラピーとは、ただ何かを描いたりつくったりする自己満足でなく、そのできた何かに周りの人がおもしろみを見いだし相互作用する社会性が必要であることがわかります。ピカソの絵であろうと、子供の絵であろうと、そして患者さんの絵であろうと、その作品に何らかのメッセージ性を感じ取り意味づけして共有することが、つくった人の自己治癒となり、さらには見た人の自己成長となると言えるのではないでしょうか?1)「ヒトはなぜ絵を描くのか」P17、P28、P34、P59、P67:齋藤亜矢、岩波書店、20142)「チンパンジーの絵から 芸術の起源を考える」:斎藤亜矢、日本心理学会、20183)「病の起源2 読字障害/糖尿病/アレルギー」P26、NHK出版、20094)「脳は美をどう感じるか」P105、P124:川畑英明、ちくま新書、20125)「ピカソは本当に偉いのか?」P55、P162:西岡文彦、新潮新書、20126)「神経美学」P25、P130、P143:石津智大、共立出版、2019<< 前のページへ■関連記事ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 1NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 1

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チルゼパチド追加の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」改訂版/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)は、11月2日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム 改訂版」を公開した。このアルゴリズムは、2022年9月に2型糖尿病治療の適正化を目的に初版が公開された。今回の改訂版では、チルゼパチドが追加された。主な改訂点は次のとおり。・Fig.2のStep1:病態に応じた薬剤選択における肥満[インスリン抵抗性を想定]の最後にチルゼパチドを追記。・「インスリン分泌不全、抵抗性は、糖尿病治療ガイドにある各指標を参考に評価し得る」の文言は改訂前より記載していたが、より病態を正確にとらえるための情報として「インスリン抵抗性はBMI、腹囲での肥満・内臓脂肪蓄積から類推するが、HOMA-IRなどの指標の評価が望ましい」を追記。・Step2:安全性への配慮、における「例2)腎機能障害合併者には、グリニド薬を避ける」と記載されていた箇所に「腎排泄型の」と追記。・Step2:安全性への配慮、における「例3)心不全合併者にはビグアナイド薬、チアゾリジン薬を避ける(禁忌)」と記載されていた順番を、「チアゾリジン薬、ビグアナイド薬」に入れ替え。・Fig.2の最下段に「目標HbA1cを達成できなかった場合は、Step1に立ち返り」と記載されていたのを「冒頭に立ち返り、インスリン適応の再評価も含めて」に改訂。・別表においては、チルゼパチドを追記したのに加え、考慮すべき項目に「特徴的な副作用」と「効果の持続性」の2つを追記。・本文でもチルゼパチドや特徴的な副作用など、図、別表の改訂に関する追記に加えて、アルゴリズムの図には記載されていないが、考慮すべき併存疾患として本改訂から非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を取り上げた。・インスリンの絶対的適応と相対的適応、血糖コントロール目標における熊本宣言2013や高齢者糖尿病の血糖コントロール目標などについても詳細を追記。

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英語で「指先で血糖を測る」は?【1分★医療英語】第104回

第104回 英語で「指先で血糖を測る」は?《例文1》We will check your fingerstick glucose before meals.(食前に血糖を測りますね)《例文2》What was his fingerstick?(彼の簡易血糖測定はいくつでしたか?)《解説》入院中の患者さんには、指先で簡易血糖測定をすることがありますが、英語では指先での血糖測定のことを“fingerstick glucose”といいます。“finger”(指)と“stick”(刺す)という単語を組み合わせた単語で、文字通り「指先を刺して血液検査をする」ことを表します。成人では、指先採血で検査を行うのはほぼ簡易血糖のみであるため、臨床現場では“fingerstick”という単語のみで血糖測定を表し、“What was his fingerstick?”(彼の簡易血糖測定はいくつでしたか?)というように使います。食前は“before meals”、食後は“after meals”と表現することも併せて覚えておきましょう。講師紹介

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認知症入院患者におけるせん妄の発生率とリスク因子

 入院中の認知症高齢者におけるせん妄の発生率および関連するリスク因子を特定するため、中国・中日友好病院のQifan Xiao氏らは本調査を実施した。その結果、入院中の認知症高齢者におけるせん妄の独立したリスク因子として、糖尿病、脳血管疾患、ビジュアルアナログスケール(VAS)スコア4以上、鎮静薬の使用、血中スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)レベル129U/mL未満が特定された。American Journal of Alzheimer's Disease and Other Dementias誌2023年1~12月号の報告。 対象は、2019年10月~2023年2月に総合病棟に入院した65歳以上の認知症患者157例。臨床データをレトロスペクティブに分析した。対象患者を、入院中のせん妄発症の有無により、せん妄群と非せん妄群に割り付けた。患者に関連する一般的な情報、VASスコア、血中CRPレベル、血中SODレベルを収集した。せん妄の潜在的なリスク因子の特定には単変量解析を用い、統計学的に有意な因子には多変量ロジスティック回帰分析を用いた。ソフトウェアR 4.03を用いて認知症高齢者におけるせん妄発症の予測グラフを構築し、モデルの検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・認知症高齢者157例中、せん妄を経験した患者は42例であった。・多変量ロジスティック回帰分析では、入院中の認知症高齢者におけるせん妄の独立したリスク因子として、糖尿病、脳血管疾患、VASスコア4以上、鎮静薬の使用、血中SODレベル129U/mL未満が特定された。・5つのリスク因子に基づく予測ノモグラムをプロットしたROC曲線分析では、AUCが0.875(95%信頼区間:0.816~0.934)であった。・予測モデルはブートストラップ法で内部検証し、予測結果と実臨床結果はおおむね一致していることが確認された。・Hosmer-Lemeshow検定により、予測モデルの適合性と予測能力の高さが実証された。 著者らは「本予測モデルは、入院中の認知症高齢者におけるせん妄を高精度で予測可能であり、臨床応用する価値がある」と述べている。

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低体重のままの人や体重が減った人、死亡リスク高い~日本人集団

 成人後の体重変化が、高い死亡リスクと関連することが最近の研究でわかっている。今回、日本の前向きコホート研究であるJPHC前向き研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)のデータで20歳以降のBMIの変化と死亡リスクとの関連を調べたところ、低体重のままの人と体重が減少した人では、正常体重の範囲内で体重が増加した人よりも死亡リスクが高いことがわかった。International Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年10月25日号に掲載。低体重のままの人の死亡リスクが正常範囲内で体重増の人と比べaHR:1.27と高い 本研究では、40~69歳の参加者を20年追跡したJPHC前向き研究から6万5,520人のデータを分析した。BMIの変化により参加者を、低体重のまま(第1群)、正常低BMI→正常高BMI(第2群)、正常高BMI→正常低BMI(第3群)、正常BMI→過体重(第4群)、過体重→正常BMI(第5群)、正常BMI→肥満(第6群)の6つの群に分類した。 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、第2群(正常低BMI→正常高BMI)を基準とすると、BMIが減少した第3群(調整後ハザード比[aHR]:1.10、95%信頼区間[CI]:1.05~1.16)と第5群(aHR:1.16、95%CI:1.08~1.26)、低体重のままの第1群(aHR:1.27、95%CI:1.21~1.33)と正常BMI→肥満の第6群(aHR:1.22、95%CI:1.13~1.33)で死亡率が高かった。 本研究の結果、日本人集団では成人後に低体重のままの人や体重が減少した人では死亡リスクが高いという独特な結果だった。著者らは「死亡リスクの判断には、BMIを長期にわたってモニタリングすることがより重要であるかもしれない」としている。

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STEMI-PCIへの長期的有効性、BP-SES vs. DP-EES/Lancet

 初回経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(BP-SES)は耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(DP-EES)と比較して、5年の時点での標的病変不全の発生が少なく、この差の要因は虚血による標的病変の再血行再建のリスクがBP-SESで数値上は低いためであったことが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが実施した「BIOSTEMI ES試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2023年10月25日号で報告された。スイスの無作為化試験の延長試験 BIOSTEMI ES試験は、STEMI患者に対するプライマリPCIにおけるBP-SES(Orsiro、Biotronik製)とDP-EES(Xience Prime/Xpedition、Abbott Vascular製)の有用性を比較した前向き単盲検無作為化優越性試験「BIOSTEMI試験」の、医師主導型延長試験である(Biotronikの助成を受けた)。BIOSTEMI試験では、2016年4月~2018年3月にスイスの10施設で患者の無作為化を行った。 BIOSTEMI試験の参加者のうちBIOSTEMI ES試験への参加の同意を得た患者を対象とした。 主要エンドポイントは、5年時点での標的病変不全(心臓死、標的血管の心筋梗塞再発、臨床所見に基づく標的病変の再血行再建の複合)であった。率比(RR)が1未満となるベイズ事後確率(BPP)が0.975より大きい場合に、DP-EES(対照)に対してBP-SESは優越性があると判定した。解析はITT集団で行った。全死因死亡やステント血栓症には差がない 1,300例(1,622病変)を登録し、BP-SES群に649例(816病変)、対照群に651例(806病変)を割り付けた。平均年齢は、BP-SES群が62.2(SD 11.8)歳、対照群が63.2(SD 11.8)歳で、それぞれ136例(21%)および174例(27%)が女性であり、73例(11%)および82例(13%)が糖尿病を有していた。 5年時点で、標的病変不全の発生は対照群が72例(11%)であったのに対し、BP-SES群は50例(8%)と少なく、優越性を認めた(群間差:-3%、RR:0.70、95%ベイズ信用区間[BCI]:0.51~0.95、BPP:0.988)。 5年時の標的病変不全の3つの項目の発生については、心臓死がBP-SES群5%、対照群6%(RR:0.81、95%BCI:0.54~1.23、BPP:0.839)、標的血管の心筋梗塞再発がそれぞれ2%および3%(0.76、0.41~1.34、0.833)、臨床所見に基づく標的病変の再血行再建が3%および5%(0.68、0.40~1.06、0.956)であり、5年時の主要エンドポイントの差は標的病変の再血行再建のリスクがBP-SES群で数値上低かったためであった。 また、5年時の標的血管不全(心臓死、標的血管の心筋梗塞再発、臨床所見に基づく標的血管の再血行再建)の発生は、対照群に比べBP-SES群で有意に低く(10% vs.13%、RR:0.74、95%BCI:0.55~0.97、BPP:0.984)、この差は臨床所見に基づく標的血管の再血行再建(4% vs.6%、0.59、0.34~0.98、0.979)のリスクがBP-SES群で有意に低かったことによるものであった。 5年時の全死因死亡(BPP:0.456)、ステント血栓症(definite)(0.933)、ステント血栓症(definiteまたはprobable)(0.887)、出血イベント(BARC type3~5)(0.477)の発生は、いずれも両群で同程度だった。 著者は、「新世代の生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、STEMI患者へのプライマリPCIにおいて、早期だけでなく長期的な臨床アウトカムの改善をもたらすことが明らかとなった」とまとめ、「本試験の結果は、BP-SESにはSTEMI患者におけるlate catch-up現象がないことを示している」としている。

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糖尿病の名前の由来」に興味を持った患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第41回

■外来NGワード「そんなことは自分で調べなさい」(患者さんの質問に真摯に答えない)「尿に糖がでる病気だから、『糖尿病』なんです!」(誤解を招く説明)■解説国立国語研究所の「病院の言葉」をわかりやすくする提案の中で、「『糖尿病』という病名の認知率は高いが、その字面から「糖が尿にでる病気」として誤解されることが多い」と指摘しています。また、「糖」を「砂糖」のことだと単純に考え、「甘いものの摂り過ぎで起こる病気」と勘違いしている人も半数近くいたそうです。さて、この「糖尿病」という名前の病気、いつ頃から名付けられたのでしょう。紀元前1500年のエジプトのパピルスに「尿があまりにもたくさんでる病気」との記載があります。2世紀頃のカッパドキアのアイタイウスが「肉や手足が尿中に溶けてしまう病気で患者は一時も尿を作ることを止めず、尿は水道の蛇口が開いたように絶え間なく流れ出す」と記載しており、ギリシャ語のサイフォン(高い所から低い所へと水が流れる)を意味する“Diabetes”がこの病気の名前として用いられるようになってきました。その後、17世紀に入ると英国人医師のトーマス・ウイルスが糖尿病患者の尿が蜂蜜のように甘いことに気付き、“Mellitus”(ラテン語の「蜂蜜」)と名付け、“Diabetes Mellitus”となりました。これらの用語が日本に伝わり、「蜜尿とう」、「蜜尿病」、「糖尿病」(のちに蜜が糖であることが判明したため)などさまざまな病名で呼ばれていましたが、1907年の第4回 日本内科学会で「糖尿病」という病名に統一され、今日に至っています。ちなみに、下垂体後葉の病気で多尿を呈する「尿崩症」は“Diabetes Insipidus”と言い、病名の“Insipidus”とは「無味」の意味で尿が甘くないことを意味しています。■患者さんとの会話でロールプレイ患者コロナのワクチン接種の際に病名を記載するのに、私の病名は「糖尿病」「高血圧」「高脂血症」でいいですか?医師はい。「糖尿病」、「高血圧」、「高脂血症」あるいは「脂質異常症」でいいですよ。患者ありがとうございます。けど、糖尿病ってあまり印象の良くない名前ですね。医師確かに。「糖が尿にでる病気」と誤解している人も多いですよね。患者そうじゃないんですか?医師正しくは、血液中の糖、血糖値が高くなる病気です。その結果、尿に糖がでるわけで、高くなくても尿に糖がでる人もいます。患者へぇ~、そうなんですか。じゃあ、どうして「糖尿病」って名前になったんですか?「高血糖症」でもよさそうなのに。医師確かに。けれど、糖尿病という名前にしようとした頃、つまり100年以上も前は血糖を測定するのは今ほど簡単じゃなかったからですね。患者なるほど。それで「尿」の名前が付いているんですね。医師そうですね。参考となる症状も多尿でしたし、トイレが水洗でなく汲み取り式だった時代には汲み取り業者が甘い臭いから「この家には糖尿病の人がいる」と言っていたという話もありましたからね。患者へぇ~。尿でそんなことがわかるんですね。医師そうなんです。他にも尿でわかることがありますよ!患者それは何ですか? 是非、教えてください(興味深々)■医師へのお勧めの言葉「昔は尿に糖がでるということで『糖尿病』という名前が使われていましたが、正しくは血液中の糖分、血糖値が上がる病気ですね」 1)Lakhtakia R. Sultan Qaboos Univ Med J. 2013;13:368-370.

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破傷風の予防【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第8回

今回は、破傷風の予防についてです。外傷患者さんを診たとき、「傷が汚いから破傷風トキソイドを打とう」という発言をよく聞くことがありますが、「“汚い”とは何をもって“汚い”と言うのか?」と聞かれるとすぐに答えるのは難しいのではないでしょうか。前回紹介した毎日犬にかまれているおじいさんの症例をベースに、破傷風予防の必要性を考えていきましょう。<症例>72歳男性主訴飼い犬にかまれた高血圧、糖尿病で定期通院中。受診2時間前に飼い犬のマルチーズに手をかまれた。自宅にあった消毒液で消毒し、包帯を巻いた状態で定期受診。診察が終わったときに自分から「今日手をかまれて血が出て大変だったんだよ」と言い、犬咬傷が判明。既往歴糖尿病、高血圧アレルギー歴なしバイタル特記事項なし右前腕2ヵ所に1cm程度の創あり。発赤なし。破傷風の予防接種の有無を聞くと、「そのようなものは知らない」と答える。さて、この患者さんは破傷風トキソイドを打つ必要があると考えますか? 私は迷うことなく「Yes」だと思います。しかし、もし犬にかまれたのではなく、「自宅内で転倒して額に1cmの挫創を負った」「屋外で転倒して肘に擦過創ができた」であればYes/Noが分かれるかもしれません。もしくはこの患者さんが14歳だったとしたらどうでしょうか? 今回は日本の国立感染症研究所とアメリカのCenters for disease Control and Preventionの情報を基に解説します1,2)。治療に入る前に破傷風に関して復習しましょう。破傷風は、Clostridium tetani(破傷風菌)が産生する神経毒素による神経疾患です。破傷風菌は偏性嫌気性グラム陽性有芽胞桿菌で土壌などの環境に広く分布しており、ある程度どのような場所でも傷を負えば感染のリスクがあります。日本では年間100例程度が発症しており、そのうち9例程度が死亡する非常に重篤な疾患です2)。私も数例診ましたが、痙攣のコントロールに難渋するなど非常に治療が難しく、たとえ助かったとしても重篤な合併症を残してしまう危険な疾患と考えています。しかし、ワクチン接種により基礎免疫を獲得することで、ほぼゼロに近い確率まで破傷風の発症を防ぐことできます。ガイドラインでは「基本的には破傷風に対する基礎免疫を持っている状態」が望ましいとされ、「傷がきれいであったとしても、基礎免疫がないもしくはブースターが必要な場合は破傷風トキソイドの投与が推奨」されています。では症例に戻って系統立ててみていきましょう。(1)基礎免疫はあるかまず破傷風に対する基礎免疫があるかを確認しましょう。初回投与から決められた期間に2回破傷風トキソイドを投与することにより基礎免疫を獲得し、最終接種から10年ごとに再投与することで基礎免疫が維持されます。日本では1968年から百日せき・ジフテリア・破傷風の3種混合ワクチン(DPT)の定期接種が始まりましたが、全国一律で開始されたわけではないようです。国立感染症研究所の情報によると、1973年以前の出生の人では抗体保有率が低いものの、1973年より後の出生の人では基礎免疫を獲得していると考えられます。今回の患者さんは定期接種がなかった時代に出生しているため、基礎免疫がないと判断します。次いで患者さんが、破傷風トキソイドを打ったことがあるかどうかを確認しましょう。外傷を契機に破傷風トキソイドを打ったことがある人がいますが、「受傷したときに1回しか打っていない」「記憶があやふや」という人も多く、その場合も基礎免疫がないと考えます。この患者さんにトキソイドについて尋ねたところ「何それ?」と回答されたので基礎免疫はないと判断しました。(2)傷の「きれい」「汚い」破傷風を起こす可能性が高い創=汚い、破傷風を起こす可能性が低い創=きれい、と表現されることが多く、これをもって破傷風トキソイドを打つかどうか判断している医師もいると思います。しかしながら、表1のとおりガイドライン上は「汚い」「きれい」で変わるのは基礎免疫がない患者で抗破傷風免疫グロブリンを打つかどうかです。ここを注意してください。表1 破傷風トキソイド・抗破傷風免疫グロブリン(TIG)の投与基準画像を拡大するでは、きれい/汚いはどう区別するのでしょうか? これは私もかなり探してみたのですが、書籍や文献によってまちまちです。CDCでは「汚い」に関しては「土壌、汚物、糞便、または唾液(動物や人間のかみ傷など)で汚染された傷を“汚い”と判断する必要がある。また、刺し傷または貫通傷を汚染されたものとみなし、破傷風のリスクが高い傷と判断する。壊死組織(壊死性、壊疽性の傷)、凍傷、挫傷、脱臼骨折、火傷を含む傷は、破傷風菌の増殖に適しておりリスクが高い」とされています。Colombet氏らは自身の論文で「明確に破傷風リスクが低い/高い傷を定義するのは困難」と述べていて、傷の状態や性状だけで判断は難しいと思います3)。よって基礎免疫がない外傷患者に対して破傷風トキソイドの投与は必須として、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかは医師の判断になります。症例に戻りましょう。破傷風トキソイドは投与して、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかの判断が必要になります。この傷はガイドラインに沿えば、きれいな傷とはならないので抗破傷風免疫グロブリンの適応となります。私はこの傷であれば、手元に抗破傷風免疫グロブリンがあれば投与を検討しますが、すぐ投与するためにあえて高次機能病院に受診させることはありません。私が必ず抗破傷風免疫グロブリンを投与するのは、開放骨折やデグロービング損傷など重症度が高い傷で破傷風のリスクが高いと判断したときです。この患者さんは、破傷風トキソイドを投与し、基礎免疫を獲得するために1ヵ月後と半年後に予防接種を受けてもらうことにしました。今回は、破傷風の予防に関してお話ししました。救急外来では破傷風トキソイドが適切に投与されていないとの報告もあり、実際に私も「傷がきれい」という理由で破傷風トキソイドを打たれなかった症例を経験することがあります4)。そのようなこともあり破傷風の予防には思い入れがありますので、参考になれば幸いです。破傷風の豆知識(1)破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンは受傷後いつまでに打てばよい?UpToDateの「Wound management and tetanus prophylaxis」を参考にすると5)、「なるべく早く」が答えです。ただし、その場で投与できなかったとしても破傷風の発症は受傷から3~21日後ですので、可能であれば3日以内、最長で21日まで破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンを破傷風感染予防目的に投与することは推奨されると記載されています。ただし、破傷風トキソイドに関しては基礎免疫を獲得していることが望ましいので、21日を過ぎて、もともと基礎免疫がない患者、もしくは基礎免疫があっても最終接種からの年数と傷の状態からブースト接種が必要な場合は破傷風トキソイドの投与を勧めるべきと考えます。つまり気が付いたときにはいつでも破傷風トキソイド投与を勧める必要があります。何らかの傷を負ったときの破傷風トキソイドは傷からの破傷風予防として保険適用です。(2)基礎免疫があれば破傷風のリスクが高い傷に抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてもよい?表1を見てもらいたいのですが、基礎免疫がある人は抗破傷風免疫グロブリンの適応になりません。では1973年より後に生まれた人はたとえ破傷風のリスクが高い傷でも抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてよいのでしょうか? 私は必要と考えています。なぜなら本当に基礎免疫があるかどうか確認できないことが多いからです。赤ちゃんのときのワクチン接種に関しては母子手帳に記載がありますが、患者は持ち歩いておらず、本人に聞いてもわからないことがほとんどです。そのため、私は基礎免疫があると確証が持てない場合で破傷風のリスクが高い傷の場合は抗破傷風免疫グロブリンを投与しています。将来的に、ワクチン接種歴がマイナンバーで管理されてすぐに接種歴がわかるようになれば、ほとんどの症例で抗破傷風免疫グロブリンの投与はしなくなるのかなと思います。1)CDC:Tetanus2)国立感染症研究所:破傷風とは3)Colombet I, et al. Clin Diagn Lab Immunol. 2005;12:1057-1062. 4)Liu Y, et al. Hum Vaccin Immunother. 2020;16:349-357.5)UpToDate:Wound management and tetanus prophylaxis

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日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大

 横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学教室の塚本 俊一郎氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、新規GLP-1RAであるセマグルチドやGLP-1/GIPデュアルアゴニストであるチルゼパチドについて、従来の薬剤との比較や用量毎の治療効果の違いをネットワークメタ解析手法で解析した。その結果、チルゼパチドは比較した薬剤の中で最も体重減少とHbA1cの低下効果が高く、目標HbA1c(7%未満)の達成はチルゼパチドとセマグルチドで同等だった。Diabetes, Obesity and Metabolism誌2023年10月12日号の報告。日本人2型糖尿病患者3,875例を解析 研究方法として2023年7月までのPubMed、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Libraryを系統的に検索。日本人の2型糖尿病患者においてGLP-1RAまたはGIP/GLP-1RAを比較した無作為化対照試験(RCT)を選択した。HbA1c値および体重減少における有効性に焦点を当て、間接的に治療法を比較するためにネットワークメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・合計18のRCT、3,875例の日本人2型糖尿病患者が解析対象となった。・チルゼパチド15mgは、セマグルチド1.0mg皮下投与およびセマグルチド14mg経口投与と比較して、HbA1c値および体重を最も有意に減少させた。 HbA1c:平均差(95%信頼区間[CI])-0.52(-0.96~-0.08)および-1.23(-1.64~-0.81) 体重:平均差(95%CI)-5.07(-8.28~-1.86)および-6.84(-8.97~-4.71)・セマグルチド皮下投与は、経口投与と比較してHbA1cの優れた低下を示した。・皮下セマグルチド、経口セマグルチドともにデュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチドなどの従来のGLP-1RAよりも有効だった。

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