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若年期のテレビ視聴時間が45歳時のメタボリックシンドロームと関連

 小児期から青年期にかけてテレビの平均視聴時間が長い人は、45歳時点でメタボリックシンドローム(MS)を有している確率が高まるという研究結果が、「Pediatrics」8月1日号に掲載された。 オタゴ大学ダニーデン校医学部(ニュージーランド)のNathan MacDonell氏とRobert J. Hancox氏は、1972年および1973年に、ニュージーランドのダニーデンで生まれた住民ベースの出生コホートデータを用い、小児期から青年期のテレビ視聴時間と45歳時点のMSとの関連を調べた。対象者が5歳、7歳、9歳、11歳、13歳、15歳および32歳になった時点で、対象者の親または対象者自身から平日のテレビ視聴時間を尋ねた。 45歳の時点で、MSの有無を調べ、また、心肺機能を評価するため、運動をさせて心拍数を計測し、VO2max(最大運動時の酸素消費量)を推定した。MSは、HbA1cが5.7%以上、腹囲が男性102cm以上、女性88cm以上、中性脂肪が200mg/dL以上、HDL-コレステロールが男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満、血圧が130/85mmHg以上または降圧薬を服用、のうち3つ以上を満たすものと定義した。生存していた参加者997人のうち870人(87%)からテレビ視聴時間とMSに関するデータを収集した。分析にはロジスティック回帰モデルとt検定を用いた。 5歳から15歳までの平均テレビ視聴時間と45歳時点でのMSの関連を調べるため、まず、対象者を視聴時間で0~1時間、1~2時間、2~3時間、3時間以上の4つの群に分けたところ、視聴時間が長いほど、男女ともMSの割合が増加した。また、平均テレビ視聴時間が1時間増加した場合のオッズ比(OR)は、性別のみを調整すると1.33(95%信頼区間1.11~1.58、P=0.002)と有意な関連が見られ、次に、性別と社会経済的地位、5歳時点のBMIで調整しても1.30(同1.08~1.58、P=0.006)と有意であり続けた。 さらに、32歳時点のテレビ視聴時間を調整因子に加えたところ、ORは1.26(同1.03~1.54、P=0.026)と有意であった上に、VO2maxの低下(係数-0.70、95%信頼区間-1.20~-0.19、P=0.007)とBMIの上昇(同0.59、0.11~1.06、P=0.016)のいずれとも有意に関連していた。 以上から著者らは、「今回の研究結果から、小児期から青年期のテレビ視聴時間が長いと、中年期のMSリスクが上昇する可能性が示唆され、若年期のテレビ視聴は健康に長期的な悪影響を与えるという仮説が裏付けられた」とし、「小児期から青年期のスクリーンタイムを減らすための介入は、健康に対して長期にわたり良い影響を与えるだろう」と述べている。

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新規アルドステロン合成酵素阻害薬、CKDでアルブミン尿を減少/Lancet

 過剰なアルドステロンは慢性腎臓病(CKD)の進行を加速するとされる。米国・ワシントン大学のKatherine R. Tuttle氏らASi in CKD groupは、基礎治療としてレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与を受けているCKD患者において、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンとの併用でアルドステロン合成酵素阻害薬BI 690517を使用すると、用量依存性にアルブミン尿を減少させ、予期せぬ安全性シグナルを発現せずにCKD治療に相加的な効果をもたらす可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年12月15日号で報告された。2回の無作為化を行う29ヵ国の第II相試験 本研究は、日本を含む29ヵ国で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2022年2月~12月に、run-in期を終了した参加者の無作為割り付けを行った(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、CKDの診断を受け、2型糖尿病の有無は問わず、推算糸球体濾過量(eGFR)が30~<90mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が200~5,000mg/g、血清カリウム値が4.8mmol/L以下で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与を受けている患者であった。 714例をrun-in期に登録し、エンパグリフロジン(10mg)群に356例、プラセボ群に358例を無作為に割り付け、8週間の経口投与を行った。引き続き、このうち586例(エンパグリフロジン群298例、プラセボ群288例)を、それぞれ3つの用量(3mg、10mg、20mg)のBI 690517またはプラセボを追加で経口投与(1日1回、14週間)する4つの群に無作為に割り付けた(全8群)。アルドステロン値も大きく低下 ベースライン(2回目の無作為化時)の全体の平均年齢は63.8(SD 11.3)歳、女性196例(33%)、非白人244例(42%)であり、平均eGFR値は51.9(SD 17.7)mL/分/1.73m2、UACR中央値は426mg/g(四分位範囲[IQR]:205~889)であった。 朝の起床時第一尿で測定した、UACRのベースラインから14週時の治療終了までの変化率(主要エンドポイント)は、プラセボ群が-3%(95%信頼区間[CI]:-19~17)であったのに対し、BI 690517単剤の3mg群は-22%(-36~-7)、同10mg群は-39%(-50~-26)、同20mg群は-37%(-49~-22)であった。 また、エンパグリフロジンにBI 690517を追加した場合のUACRの変化率も、BI 690517単剤と同程度の低下を示した(プラセボ群:-11%[95%CI:-23~4]、3mg群:-19%[-31~-5]、10mg群:-46%[-54~-36]、20mg群:-40%[-49~-30])。 血漿アルドステロン値(曲線下面積)は、14週時までにBI 690517の用量依存性に低下し、最大用量(20mg)では、プラセボ群と比較して単剤群で-62%(95%CI:-76~-41)、エンパグリフロジン併用群で-66%(-75~-53)となった。高カリウム血症の多くは介入を要さず BI 690517の安全性プロファイルは、エンパグリフロジン併用の有無にかかわらず許容できるものであった。投与期間中に4例が死亡したが、試験薬関連と判定されたものはなかった。また、重度の薬物性肝障害やケトアシドーシスは認めなかった。 高カリウム血症は、エンパグリフロジンの有無にかかわらず、プラセボ群では6%(9/147例)に発生したのに対し、BI 690517 3mg群で10%(14/146例)、同10mg群で15%(22/144例)、同20mg群では18%(26/146例)に認めた。また、高カリウム血症の多くは介入を要さず(86%[72/84例])、致死性のものはなかった。 とくに注目すべき有害事象としての副腎機能低下症は、BI 690517群で436例中7例(2%)、プラセボ群では147例中1例(1%)にみられた。 著者は、「アルドステロン合成酵素阻害薬とSGLT2阻害薬の併用により、臨床的に意義のあるアルブミン尿の改善が得られた。このアプローチは、今後、CKDの大規模な臨床試験で検討すべき有望な併用療法となる可能性がある」としている。

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糖尿病と喫煙の組み合わせは若者にとって致命的

 年齢中央値が30歳代という比較的若い集団においても、前糖尿病と喫煙習慣が組み合わさると、深刻な疾患のリスクが上昇し、特に脳卒中のリスク上昇が顕著であることを示唆するデータが報告された。米ネブラスカ大学医療センターのAdvait Vasavada氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)学術集会(AHA Scientific Sessions 2023、11月11~13日、フィラデルフィア)で発表された。Vasavada氏は、「若い喫煙者の脳卒中リスクを抑制するために、前糖尿病の早期スクリーニング体制と予防戦略を確立する必要があるのではないか」と述べている。 この研究には、米国の入院医療に関する大規模データベース(National Inpatient Sample)が用いられた。2019年の米国全土の入院患者のうち年齢が18~44歳で喫煙習慣があり、高血圧や2型糖尿病、高コレステロール血症、肥満などの心血管疾患危険因子のない101万7,540人が解析対象とされた。全員が、ニコチン依存状態または習慣的な喫煙者であって、禁煙が困難であることがカルテに記録されていた。 この集団の0.2%に当たる2,390人は前糖尿病だった。前糖尿病の入院患者は、年齢中央値36歳であり、前糖尿病でない(血糖値が正常範囲)の入院患者の31歳よりも高齢であり、また男性の割合が高かった。前糖尿病の患者は血糖値が正常範囲の患者に比べて、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の割合(19.2対11.7%)、心臓発作の既往(1.5対0.4%)、慢性腎臓病の割合(2.5対0.9%)が高く、また入院の目的が心臓発作や脳卒中または心不全の治療である割合(2.9対1.4%)が高かった。 特に脳卒中による入院の割合(1.9対0.5%)に顕著な差が認められた。年齢や性別、人種、世帯収入、飲酒習慣、薬物乱用歴、併発疾患などの影響を調整後にも、脳卒中による入院リスクが3.31倍高いことが分かった。 この結果に関連してVasavada氏はAHA発のリリースの中で、「たとえ代謝的に健康な若者であっても、喫煙者は喫煙本数を減らすことが賢明であり、できれば完全に禁煙することが理想的だ」とアドバイスしている。また、「タバコを吸わない人であっても前糖尿病に該当する場合、若いうちに脳卒中を発症するリスクが高まる可能性があることにも注意すべきだ」と付け加えている。 一方、AHAの薬物・アルコール・タバコ委員会の一員であるEsa Davis氏は、「この研究結果は、なぜタバコが若者にとっても危険であるのかを示している」と話す。加えて、「若い人は一般的に脳卒中のことを、自分たちの祖父母のような年齢の高齢者に起こる病気だという印象を持っている。しかし、そうではなく、今回の報告に見られるように、脳卒中はより若い年齢でも発生し得るということだ。さらにこの研究によって、前糖尿病に該当する場合、脳卒中や心臓病のリスクがはるかに高くなり、若いうちに発症する可能性があることが示され、できるだけ早い段階で禁煙することがより重要であることが分かった」と解説。Davis氏は、「心臓の健康を守り、そして脳卒中リスクを減らすためにできることの中で最も重要なことは、禁煙することだ」とも述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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臓器によって老化速度に差

 特定の臓器だけ他の臓器よりも老化速度が速い場合があり、そのような臓器があると病気や死亡のリスクが高まる可能性のあることが、米スタンフォード大学神経学教授のTony Wyss-Coray氏らの研究で示された。同氏らによると、50歳以上の健康な人の約5人に1人で、少なくとも一つの臓器の老化速度が速まっていることが明らかになったという。研究の詳細は、「Nature」に12月6日掲載された。 Wyss-Coray氏らは、「これは悪いことのように聞こえるが、健康増進のチャンスでもある」と主張する。なぜなら、簡単な血液検査で急速に老化している臓器を特定することで、医師は、症状が現れる前にその臓器に関連する潜在的な病気の治療を開始できる可能性があるからだ。 今回の研究でWyss-Coray氏らは、まず、5,676人分の血漿からSomaScan assayにより4,979種類のタンパク質の相対濃度を定量した。また、ヒト臓器のRNAシーケンシングデータを用いて、11種類の臓器(心臓、脂肪、肺、免疫系、腎臓、肝臓、筋肉、膵臓、脳、血管、腸)で発現している遺伝子のうち、発現量が他の臓器の4倍以上の遺伝子を臓器特異的遺伝子としてピックアップ。これらの遺伝子情報を4,979種類のタンパク質に注釈付けし、最終的に、臓器特異的なタンパク質として856種類(17.9%)を得た。次に、これらの情報を用いて機械学習モデルを構築し、11種類の臓器の一つ一つに焦点を当てて臓器特異的タンパク質のレベルを測定し、その人の年齢(暦年齢)とその臓器の生物学的年齢の差を導き出した。 その結果、研究の対象となった50歳以上の人のうち、平均よりも有意に老化速度の速い臓器が一つ以上ある人の割合は18.4%に上ることが明らかになった。老化速度の速い臓器が複数ある人の割合は60人中1人程度(1.7%)であった。また、11種類の臓器のうち腸を除いた10種類の臓器において、暦年齢と臓器の生物学的年齢の差はその後15年間の追跡期間の全死亡リスクと関連を示し、老化速度の速い臓器がある人では、臓器によって差はあるものの、その後15年間の全死亡リスクが15~50%高いことが示された。また、老化速度の速い臓器は、その臓器特異的な疾患との関連も示した。例えば、心臓の加齢が進んでいる人では心不全リスクが250%増加しており、また、脳と血管の加齢から、タウタンパク質とは無関係にアルツハイマー病の進行を予測できる可能性も示された。このほか、腎臓の急速な老化は高血圧と糖尿病のリスクに関連していたほか、心臓の極度の老化は心房細動や心筋梗塞のリスクに関連していることなども示された。 Wyss-Coray氏らは、より多くの人を対象とした大規模な研究を行い、今回の研究で得た結果の信頼性を高める予定だとしている。同氏は、「もし5万人、あるいは10万人を対象とした研究で今回の結果が再現されれば、一見、健康に見える人の個々の臓器の状態をモニタリングして体内で老化が急速に進んでいる臓器を見つけ出し、病気になる前に治療を開始できるようになる可能性がある」と語っている。

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糖尿病、肥満、膵臓がんの関連性が明らかに

 2型糖尿病の患者や肥満者では膵臓がんのリスクが高いことが知られているが、その原因の一端を明らかにした研究結果が報告された。インスリン値が高くなる「高インスリン血症」が、消化液を産生している膵外分泌細胞の炎症を引き起こし、そのことが前がん状態につながると考えられるという。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のJames Johnson氏らの研究によるもので、詳細が「Cell Metabolism」に10月31日掲載された。 糖尿病はインスリンの作用が低下するために高血糖になる病気。インスリンの作用が低下する原因として、膵臓の内分泌細胞の機能低下のためにインスリンの量が不足することと、インスリンに対する組織の感受性が低下すること(インスリン抵抗性)が挙げられる。2型糖尿病、特に肥満2型糖尿病では後者の影響が強い。インスリン抵抗性は血糖コントロールの悪化要因であるが、今回発表された研究によると、2型糖尿病や肥満者での膵臓がん発症リスク上昇にもかかわっているようだ。 膵臓にはインスリンなどのホルモンを産生する内分泌細胞と、消化液である膵液を産生する外分泌細胞がある。インスリン抵抗性が存在していると、代償的にインスリンの分泌量が増えて「高インスリン血症」となり、その状態が長引くと内分泌細胞の機能が低下してしまい、糖尿病が悪化することが既に知られている。しかしJohnson氏らの研究により、高インスリン血症の悪影響は内分泌細胞だけでなく、外分泌細胞である膵腺房細胞にも及ぶことが分かった。過剰なインスリンが膵腺房細胞を刺激して炎症を引き起こすのだという。 Johnson氏は、「肥満者数と2型糖尿病患者数の急速な増加に加えて近年は、膵臓がんの罹患率も驚くほど上昇してきている。われわれの発見は、それらの関連性の理解に役立ち、インスリンレベルを健康な範囲内に保つことの重要性を強調するものと言える。インスリンレベルの抑制には、食事や運動が有効であり、場合によっては薬物を用いるという介入も考えられる」と話す。同氏らは今回の研究で、膵管腺がんという最も一般的なタイプの膵臓がんに焦点を当てた。膵管腺がんは悪性度が高いことが多く、5年生存率は10%未満であり、2030年までにがん関連死の原因の第2位になるとの予測もある。 論文の筆頭著者である米スタンフォード大学のAnni Zhang氏によると、「本研究により、高インスリン血症が膵腺房細胞のインスリン受容体を介して、膵臓がんの発生に直接関与していることが明らかになった。そのメカニズムには膵液産生の増加も関与しており、それらが膵臓の炎症を悪化させている」と解説。このようなメカニズムの解明は、新たながん予防戦略、あるいは膵腺房細胞のインスリン受容体を標的とした治療法の開発につながる可能性もある。 一方、論文の上席著者であるブリティッシュコロンビア大学のJanel Kopp氏は、「この研究結果が実臨床に影響を与え、また一般集団の膵臓がんリスクを抑制するためのライフスタイル介入促進に役立つことを願っている」と話す。同氏らの研究チームは現在、膵管腺がん患者に対して内分泌専門医の介入により、血糖値とインスリンレベルをコントロールすることの影響を検証する、他施設との共同臨床試験を進めている。その研究の結果は、肥満や2型糖尿病に関連する膵臓がん以外のがん、例えば乳がんなどの臨床にも影響を与える可能性があると、著者らは述べている。

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米国の包括的プライマリケア+、手挙げ診療所は増収/JAMA

 包括的プライマリケアプラス(Comprehensive Primary Care Plus:CPC+)は、サービス利用率の低下および急性期入院医療費の減少と関連していたが、5年間の総支出額の減少とは関連していなかったことが、米国・MathematicaのPragya Singh氏らによる検討で示された。CPC+は米国の18地域で導入された最大の検証済みプライマリケア提供モデル。その健康アウトカムとの関連を明らかにすることは、将来の転換モデルを設計するうえで重要とされていた。JAMA誌オンライン版2023年12月15日号掲載の報告。CPC+介入5年間のアウトカムの変化をCPC+診療所と対照診療所で比較 研究グループは、差分の差分回帰モデルを用い、CPC+診療所(介入群)および対照診療所(対照群)の出来高払いメディケア受給者に関して、ベースライン(CPC+導入前年の2016年)とCPC+導入後各年(2017~21年の5年間)のアウトカムの変化を比較した。 介入群には、2017年にCPC+開始を申請し、最低限の医療提供およびその他の適格要件を満たした、track 1の1,373ヵ所(受給者154万9,585人)およびtrack 2の1,515ヵ所(受給者534万7,499人)の診療所が組み込まれた。2つのtrackには、他の支払機関よりも高額な報酬(さらにtrack 2のほうが高額)、出来高報酬の選択肢(track 2のみ)、医療提供要件(5つのCPC+機能[アクセスと継続性、ケアマネジメント、包括性と調整、患者・介護者とのエンゲージメント、計画的ケアと地域住民の健康])の設定(track 2は、さらに複雑なニーズを持つ患者を適切にサポートできるようtrack 1の基準に加えて高度な医療提供アプローチ提供の要件あり)、データのフィードバック、学習の機会提供、医療情報技術サポートといった介入が行われた。 対照群は、介入群と類似の出来高払いメディケア受給者、診療所およびサービスニーズの特性を持つよう傾向スコアのマッチングと再重み付けが行われ、CPC+導入地域の近接地域から、track 1に5,243ヵ所(受給者534万7,499人)、track 2に3,783ヵ所(受給者450万7,499人)の診療所が組み込まれた。 事前に規定された主要アウトカムは、年換算したメディケアパートAおよびBの受給者1人当たりの月額医療費(per beneficiary per month:PBPM)で、副次アウトカムは主な支出(入院、外来、医師など7項目)、利用指標(急性期入院、救急外来受診など8項目)、請求ベースでみた医療の質の指標(糖尿病に関する推奨サービス、乳がん検診、予定外の再入院など27項目)などであった。CPC+は、総支出額の変化や、医療の質の変化と関連せず CPC+の患者背景は、白人87%、黒人5%、ヒスパニック3%、その他の人種5%(アジア/その他の太平洋諸島およびアメリカ先住民を含む)であった。CPC+患者の85%は65歳以上で、58%が女性であった。 CPC+は、総支出額(PBPM)の目に見える変化とは関連していなかったが(track 1:1.1ドル[90%信頼区間[CI]:-4.3~6.6]、p=0.74/track 2:1.3ドル[-5~7.7]、p=0.73)、高額な報酬など支出の増加と関連していた(track 1:13ドル[7~18]、p<0.001/track 2:24ドル[18~31]、p<0.001)。 副次アウトカムでは、CPC+は導入1年目で救急外来受診の減少と関連し、2年目以降では急性期入院および急性期入院費の減少と関連していた。その関連性は、メディケア共同節減プログラム(Medicare Shared Savings Program)にも参加している診療所およびCPC+システムに依存はしていない診療所で、より好ましい関連性が認められた。また、CPC+は、請求に基づく医療の質の指標の有意な変化とは関連していなかった。 著者は、「CPC+と共同節減プログラムとの相乗効果は、コスト削減のインセンティブが専門分野全体で調整されていれば、転換モデルがより成功する可能性があることを示すものである」と述べ、「さらなるプライマリケアの転換モデルの適合および検証を行うとともに、モデルがよりよく機能するよう大きな視点で検討していく必要がある」とまとめている。

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喫煙+受動喫煙で身体的フレイルのリスクがより上昇

 タバコを吸うことで身体的フレイルのリスクが有意に上昇し、受動喫煙が加わるとさらにリスクが高くなることを示すデータが、国内の地域在住高齢者を対象とする縦断研究から示された。国立長寿医療研究センター研究所老年学・社会科学研究センター老化疫学研究部の西田裕紀子氏、台中栄民総医院(台湾)の朱為民氏らの共同研究によるもので、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に10月26日掲載された。 喫煙や受動喫煙が有害であることについては、膨大な研究によって強固なエビデンスが確立されており、近年ではフレイル(要介護予備群)との関連も報告されている。ただし受動喫煙とフレイルとの関連を示した研究の大半は横断研究であり因果関係は確認されておらず、また喫煙と受動喫煙が重なった場合にフレイルリスクがどのように変化するのかは明らかにされていない。西田氏らは、同研究所による「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用いてこれらの点を検討した。 NILS-LSAは、愛知県大府市などの40~79歳の日本人一般住民2,267人を対象とする前向きコホート研究で、1997~2022年に全9回の調査が実施されている。本研究では、喫煙状況とフレイルの関連の解析に必要な情報が収集されていた第3次調査(2002~2004年)から第7次調査(2010~2012年)のデータを利用した。フレイルという高齢者に多い状態のリスクを評価するという目的から、65歳未満は解析対象から除外。そのほかに、研究参加登録時点でフレイルと判定されていた人、追跡調査に参加していなかった人などを除外し、最終的に540人(平均年齢71.4±4.6歳、男性52.4%)を解析対象とした。 喫煙状況はアンケートの回答に基づき判定。喫煙歴がない人と禁煙後の人を「非喫煙者」、現在も吸っている人を「喫煙者」として全体を二分すると、後者が13.2%だった。また受動喫煙については、家庭内や職場環境などでの自分以外の喫煙者の有無と、その人に接する頻度を問い、それらの喫煙者との接触頻度が「なし」以外(毎日または時々のいずれか)の場合を「受動喫煙曝露者」と定義した。 フレイルについては、CHS基準という基準を用いて、身体的フレイルに該当するか否かを判定。平均6.6年間の追跡で、139人が新たに身体的フレイルと判定された。 解析ではまず、全体を非喫煙者と喫煙者に二分して、交絡因子(年齢、性別、教育歴、婚姻状況、雇用状況、余暇身体活動、うつ症状、慢性疾患、残存歯数など)の影響を調整後に比較すると、喫煙者は身体的フレイルのオッズ比が2.4倍高い可能性が示された〔オッズ比(OR)2.39(95%信頼区間1.21~4.74)〕。 次に、非喫煙/喫煙および受動喫煙の曝露なし/ありにより全体を4群に分け、非喫煙かつ受動喫煙曝露のない群を基準として比較。すると、喫煙者で受動喫煙曝露のある群は、身体的フレイル発症のオッズ比が3.5倍高かった〔OR3.47(同1.56~7.73)〕。自分の喫煙のみや受動喫煙のみの群は、有意なオッズ比上昇が観察されなかった。 続いて性別や年齢で層別化したサブグループ解析を施行。性別の解析からは、男性では全体解析と同様に、非喫煙者に比較して喫煙者は有意なオッズ比上昇が認められたが〔OR3.75(1.76~8.00)〕、女性は非有意だった。年齢層別の解析からは、75歳以上では全体解析と同様に、非喫煙者に比較して喫煙者は有意なオッズ比上昇が認められたが〔OR4.12(1.43~11.87)〕、75歳未満は非有意だった。 最後に、解析対象を喫煙者のみとし、喫煙者の受動喫煙曝露の有無でオッズ比を算出。すると、喫煙者ながらも受動喫煙曝露のない群に比べて、喫煙かつ受動喫煙曝露のある群でのフレイル発症オッズ比は9倍を上回ることが明らかになった〔OR9.03(2.42~33.77)〕。 著者らによると、本研究は日本人高齢者の喫煙および受動喫煙の状況と身体的フレイルのリスクとの関連を縦断的に検討した初の研究だという。結果の総括として、「累積喫煙量を評価していないことなどが限界点として挙げられるが、喫煙と受動喫煙はフレイルリスクを相加的に高めることが示唆された。それら両者に対する公衆衛生対策の強化が必要と考えられる」と述べられている。

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原発性胆汁性胆管炎(PBC)に対するelafibranorの有用性と安全性(解説:上村直実氏)

 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、自己免疫学的機序による肝内小葉間胆管の破壊を特徴とする慢性胆汁うっ滞性肝疾患であり、徐々に肝硬変から肝不全へ移行するとともに肝がんをも引き起こすことのある疾患で、わが国の難病に指定されている。最近の診断技術や治療の進歩により肝硬変まで進展する以前に胆管炎として診断されるケースが多くなり、2016年にそれまで使用されていた原発性胆汁性肝硬変から原発性胆汁性胆管炎と病名が変更されている。進行期の症状としては掻痒感や黄疸が特徴的であるが、その前には無症状であることが多く、日本における患者数は中年の女性を中心として約5~6万人に上ると推定され、稀な疾患というわけではない。 治療法としてはウルソデオキシコール酸(UDCA)が標準治療薬で、肝硬変が進み肝不全になった場合には肝移植が究極の救命法であったが、最近、病気の進行を抑制するために高脂血症の治療薬であるベサフィブラートとUDCA併用療法の有効性が報告され、厚生労働省研究班による『PBC診療ガイドライン2023』にも推奨されている。ただし、わが国でベサフィブラートは高脂血症にのみ保険適応があるため、高脂血症を合併しないPBCに対しては、臨床研究として投与することが適切となっている。 今回は、UDCAに不応性のPBCに対してペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、およびδのデュアルアゴニストであるelafibranorの有効性を検証した国際共同RCTの結果が、2023年10月のNEJM誌に報告された。プラセボと比較して投与52週目には、胆道系酵素やビリルビンなどの血清学的異常が有意に改善していた。長期投与により、さらなる改善が期待される結果である。ちなみにelafibranorはインシュリン抵抗性を改善して、糖尿病、高脂血症および非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に対する有用性が示されて、今後の臨床応用が期待されている薬剤である。 このようにUDCAのみでなく胆管炎から肝硬変への進展を抑制する薬剤が次々と開発され、PBCの予後が大幅に改善されることが切望される。最後に、ベサフィブラートやelafibranorは米国のFDAで承認されており、いまだにPBCに対して保険適用となっていない日本においても、迅速な承認が期待される。

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30秒サマリーで反復の回数を増やす【国試のトリセツ】第22回

§4 演習の工夫30秒サマリーで反復の回数を増やすQuestion〈110D23〉63歳の男性。前胸部痛を主訴に来院した。1カ月前から、1週間に1回程度の頻度で200m程度の歩行時に前胸部痛が出現するようになった。今朝から、軽労作で2分程度の発作をくり返すようになったため心配になって受診した。高血圧症と糖尿病の既往があり治療中であった。身長164cm、体重80kg。体温36.8℃。脈拍72/分、整。血圧166/92mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。血 液 所 見赤血球472万、Hb 13.2g/dL、Ht 40%、白血球7,800、血小板16万。血液生化学所見総蛋白6.9g/dL、AST 32IU/L、ALT 34IU/L、LD 210IU/L(基準176~353)、CK 122IU/L(基準30~140)、尿素窒素23mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、空腹時血糖130mg/dL、HbA1c 7.2%(基準4.6~6.2)、トリグリセリド190mg/dL、HDL コレステロール25mg/dL、LDL コレステロール148mg/dL、Na 136mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 100 mEq/L、トロポニンT 陰性。胸部X 線写真で異常を認めない。心電図を施行するため検査室に移動したところ、胸部症状が出現した。そのときの心電図を(A)に示す。直ちに硝酸薬の舌下投与を行い、2分程度で症状は改善した。改めて施行された心電図を(B)に示す。急性冠動脈症候群の診断で緊急入院となり、冠動脈造影を施行された。冠動脈造影像を(C)、(D)に示す。この患者への対応として適切なのはどれか。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する(a)冠動脈バイパス術(b)経皮的心肺補助(PCPS)(c)心臓リハビリテーション(d)運動負荷心筋シンチグラフィ(e)t-PA(tissue plasminogen activator)の投与

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抗ウイルス薬が1型糖尿病患児のインスリン分泌能低下を抑制する可能性

 1型糖尿病を発症してからあまり時間が経過しておらず、インスリン分泌がまだ残存している小児に対して抗ウイルス薬を投与すると、インスリンを産生する膵臓のβ細胞の保護につながる可能性のあることが報告された。オスロ大学病院(ノルウェー)のIda Maria Mynarek氏らの研究によるもので、第59回欧州糖尿病学会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表されるとともに、「Nature Medicine」に10月4日掲載された。 1型糖尿病は、インスリンを産生する膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンを分泌できなくなり、インスリン療法の絶対的適応となる病気。ウイルス感染を契機に異常な自己免疫反応が生じて、β細胞が破壊されることが発症の一因と考えられている。例えば、エンテロウイルスというウイルスの感染と1型糖尿病発症の関連などが報告されている。Mynarek氏らは、エンテロウイルス感染症の治療薬として開発されている抗ウイルス薬(pleconaril)と、ウイルス性肝炎の治療などに実用化されているリバビリンとの併用により、診断後間もない1型糖尿病患児のβ細胞機能を保護できるか否かを検討した。 研究参加者は、1型糖尿病と診断されてから3週間以内の患児96人。主な特徴は、年齢は範囲6~15歳で平均11.1±2.4歳、女子が41.7%、診断時のHbA1cが11.8±4.3%で、エンテロウイルスの感染が確認された患児はいなかった。無作為に抗ウイルス薬群47人とプラセボ群49人に分け、診断から17.8±3.2日後から6カ月間にわたって投与を継続した。ベースライン時点において、年齢や性別の分布、BMI、診断時HbA1c、1型糖尿病リスクに関連のある自己抗体の保有率、診断から投与開始までの期間などに有意差はなかった。 主要評価項目として設定していた12カ月経過時点における食事負荷2時間以内のC-ペプチド(インスリン分泌能の指標)上昇曲線下面積(AUC)は、プラセボ群よりも抗ウイルス薬群の方が37%有意に高かった(ベースラインレベルで調整後の群間差がP=0.04)。プラセボ群でのベースラインからのC-ペプチドAUC低下幅は24%だったが、抗ウイルス薬群では11%であり、また後者の群の86%は比較的容易なインスリン療法のレジメンで血糖コントロールが可能な状態に維持されていた。ただし、HbA1cやグリコアルブミン、インスリン投与量には有意差がなかった。なお、重症低血糖を含む有害事象の発生状況は有意差がなかった。 研究グループによると、「1型糖尿病発症のベースにあるメカニズムは悪性度の高くないウイルス感染の持続であって、新たなワクチンを開発することで1型糖尿病を予防できるという考え方はこれまでにもあった」といい、「われわれの研究の結果はそのような概念を裏付けるものだ」としている。また、「1型糖尿病の病態進行を引き起こすβ細胞破壊を、抗ウイルス治療によって遅らせることができるかどうかを詳細に評価するため、より早期の段階で介入するといった、さらなる研究を行うべきだ」と付け加えている。

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食後に椅子に座らなければエネルギー消費が1割増える

 食後に立っているだけで、座って過ごすよりもエネルギー消費が1割増えるというデータが報告された。ただし、糖尿病でない人を対象に行われたこの研究では、食後の血糖値には有意差が認められなかったことから、代謝性疾患の予防という点では単に立っているだけでなく、軽い運動を加えた方が良い可能性があるという。岐阜大学教育学部保健体育講座の河野寛也氏、上田真也氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月17日掲載された。 エネルギー収支がプラスの状態が続いていると、肥満やそれに伴う糖尿病、心血管疾患などのリスクが上昇する。最近の肥満や糖尿病の増加の一因として、人々の生活の中の座位行動が増えてエネルギー消費が減り、収支がプラスになりやすくなっていることとの関係が指摘されている。特に本研究で対象とした大学生は座学での講義が多いために、一般人口以上に座位行動が長いという報告がある。 一方、エネルギー消費を増やす方法として以前からスポーツや運動が推奨されているが、近年では座位行動を減らすだけでも健康上のメリットを得られることが分かってきた。ただし、食後の座位を立位に変えることの代謝への影響は、十分検討されていない。上田氏らは、食後に立位で過ごすことでエネルギー消費が増え、血糖上昇が抑制されるとの仮説の下、大学生を対象に以下の検討を行った。 研究参加者は15人の男子大学生(平均年齢21.6±1.1歳)で全て非喫煙者であり、代謝性疾患などの既往歴のある学生や何らかの薬剤が処方されている学生は除外されている。試験デザインはクロスオーバー法で、全員に対して食事摂取後に通常の椅子に座るか、身長に合わせて高さを調整したスタンディングデスクを使うという2条件を試行。試行順序は無作為化し、7日間のウォッシュアウト期間を設けて行った。 テスト前日からアルコールやカフェインの摂取と中強度以上の運動を禁止し、夕食は21時までに済ませて、それ以降は翌日の朝食以外、水以外の飲食を禁止した。テスト当日は8時までに、2条件共通の食事を取った上で、12時から300gの白米を食べてもらうという食事負荷テストを実施。食前から食後120分まで、間接熱量測定法に基づくエネルギー消費量、心拍数、血糖値、呼吸交換比(RER)、外因性グルコース代謝率などの推移を把握した。 その結果、食後30~120分のエネルギー消費量は、両条件ともに食前に比べて有意に増大し、食事誘発性熱産生が確認された。ただし、立位条件のエネルギー消費量の方がより高値で推移し、30分おきに測定した全てのポイントで有意差が認められた。条件間の差は1分当たり0.16±0.08kcalであり、立位条件では120分間でのエネルギー消費が10.7±4.6%多かった。 10分おきに測定された心拍数に関しては、食前は有意差がなかったものが、食後は10~120分の全てのポイントで立位の方が有意に高値だった。血糖値は30分おきに測定され、両条件ともに食後30分のみ食前より有意に高値となり、その他のポイントは食前値と有意差がなく、また全ポイントで条件間の有意差は見られなかった。 RERや外因性グルコース代謝率の推移にも、条件間の有意差は観察されなかった。なお、両条件ともに食後60~120分にかけて外因性グルコース代謝率が食前値より高値となり、糖質の酸化が同程度に亢進していたことが確認された。このことから、立位条件でのエネルギー消費の増大は、主として脂質酸化の亢進によるものと考えられた。 著者らは以上の総括として、「食後に立位で過ごすことで、糖代謝への影響は生じないが、エネルギー消費は有意に増大することが確認された」と結論付けている。なお、立位によりエネルギー消費が10.7±4.6%増えるという結果を基に、1日に4時間の座位を立位に置き換えた場合の影響を試算すると、エネルギー収支が38.4kcalマイナスになり、これを毎日続ければ1年間で体脂肪量1.6kg減という効果が予測されるという。 一方、血糖変動には有意差がなかったことに関連して、「食後の血糖上昇は非糖尿病者でも酸化ストレス亢進や血管内皮機能の低下などをもたらし得る。疾患予防のためには、例えば食後に座位と立位を繰り返すなどの運動を加えて糖質の酸化を刺激することが必要ではないか」との考察を付け加えている。

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軽度の肥満は健康の印、GLP-1作動薬の効果は高度肥満者で示されているにすぎない(解説:名郷 直樹 氏)-1766

肥満に厳しい世の中 世の中は肥満に厳しくやせに寛容だ。なぜそんなことになっているのか。肥満と死亡の関係について言えば、日本人のコホート研究のメタ分析の結果で、BMIで23から25のあたりで死亡率が最も低くなっていると報告されている1)。ちょっと太めのほうが健康なのである。それにもかかわらず、ちょっと腹が出ている程度の肥満をメタボと呼び、軽度の肥満をもむしろ不健康と捉えている情報が大部分だ。体重維持が可能な薬だが、体重は代用のアウトカムにすぎない やせの人を太らせる薬の臨床試験はないが、肥満のリスクばかりを強調する中、やせ薬として話題の薬、GLP-1作動薬の臨床試験が立て続けに報告されている2,3)。 1つは、BMIの平均が30程度の肥満者を対象に、36週間のGLP-1作動薬チルゼパチド投与の後、継続群と中止群にランダム化し、52週までフォローして88週までの体重変化を評価している。結果は継続群の体重変化が5.5%減少に対し、中止群では14%増加という結果である。体重変化の差とその95%信頼区間は、-19.4%(-21.2%~-17.7%)と、薬の継続は体重維持に有効である。 しかし、しょせん体重は代用のアウトカムである。高血圧についての血圧、糖尿病についての血糖、コレステロールについてのLDL、がんについての画像所見と同じである。テレビCMの緑茶のコマーシャルで「体脂肪の減少が認められるというエビデンスがあります」なんてやっているが、体脂肪の減少もまた代用のアウトカムにすぎない。体重減少の維持という代用のアウトカムで効果が示されたとしても、健康につながっているかどうか不明である。真のアウトカムでどうか そこへ、心血管疾患が予防できるかどうかという真のアウトカムで評価したランダム化比較試験が発表された3)。BMIの平均が33の肥満者を対象に、GLP-1作動薬セマグルチド投与群とプラセボ群を比較し、1次アウトカムとして心血管死亡、非致死性脳卒中、非致死性心筋梗塞の複合アウトカムで効果を検討している。結果はハザード比0.80、95%信頼区間0.72~0.90と、真のアウトカムでの有効性を示す結果である。GLP-1作動薬は体重を減らし、それを維持するだけでなく心血管疾患も予防するという結果である。 しかし、これらの研究の対象者はBMI 33、一例を挙げれば160㎝、85㎏という肥満者である。代用のアウトカムについての情報ばかりが先行して流され、対象者の肥満の程度が明らかにされず、軽度の肥満者に関する効果が不明な中、幅広く減量によって心血管疾患が予防できる、などという情報が流される状況は改善が必要である。 これらの論文から言えることを最後にまとめておこう。BMI 25という軽度の肥満者は長生きである。また、GLP-1作動薬はBMI 30という高度肥満者を対象に効果が示されているにすぎない。

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肥満症へのチルゼパチドの効果、36週で中止vs.投与継続/JAMA

 過体重または肥満の集団において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)共受容体作動薬であるチルゼパチドは、36週間の投与で20%以上の体重減少をもたらし、投与を中止すると体重が大幅に増加したが、投与継続により初期の体重減少を維持あるいはさらに増強することが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らが実施した「SURMOUNT-4試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年12月11日号に掲載された。36週の導入期間後に、投与継続とプラセボに無作為化 SURMOUNT-4試験は、4ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、台湾、米国)の70施設が参加した第III相投与中止臨床試験であり、2021年3月~2023年5月に実施された(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 本試験では、非盲検下にチルゼパチド(最大耐用量として10mgまたは15mg、週1回)を36週間皮下投与する導入期間の後、被験者を盲検下にチルゼパチドを継続する群またはプラセボに切り換える群に無作為に割り付け、52週間投与した。 対象は、BMI値が30以上、またはBMI値27以上で糖尿病を除く体重関連合併症(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患)を少なくとも1つ有する、年齢18歳以上の患者であった。 主要エンドポイントは、無作為化(36週目)から88週目までの52週間の体重の平均変化量とした。主な副次エンドポイントは、導入期間中の体重減少分の80%以上を88週目に維持していた患者の割合などであった。投与継続で体重がさらに5.5%減少 670例(平均年齢48歳、女性473例[70.6%]、白人80.1%、平均体重107.3kg、平均BMI値38.4、平均ウエスト周囲長115.2cm)が36週の導入期間を完了し、チルゼパチド継続群335例、プラセボ群335例に割り付けられた。チルゼパチド導入期間中に、体重は平均で20.9%減少した。 36週目から88週目までの体重の平均変化量は、プラセボ群が14.0%増加したのに対し、チルゼパチド継続群は5.5%減少し、有意な差を認めた(群間差:-19.4%、95%信頼区間[CI]:-21.2~-17.7、p<0.001)。 88週目に、導入期間中の体重減少分の少なくとも80%を維持していた患者の割合は、プラセボ群が16.6%(55例)であったのに対し、チルゼパチド継続群は89.5%(300例)と有意に優れた(p<0.001)。また、36週目から88週目までのウエスト周囲長の変化量は、プラセボ群が7.8cm増加したのに対し、チルゼパチド継続群は4.3cm減少し、有意に良好だった(p<0.001)。88週投与で体重25.3%減少、ウエスト22.4cm減少 0週目から88週目までに、体重(チルゼパチド継続群25.3%減少vs.プラセボ群9.9%減少、p<0.001)とウエスト周囲長(22.4cm減少vs.9.0cm減少、p<0.001)は、チルゼパチド継続群で有意に改善した。 36週目から88週目までに最も頻度の高かった有害事象は消化器イベントで、プラセボ群よりもチルゼパチド継続群で高頻度(下痢[10.7% vs.4.8%]、悪心[8.1% vs.2.7%]、嘔吐[5.7% vs.1.2%])であったが、多くが軽度~中等度だった。とくに注目すべき有害事象として、チルゼパチド継続群では悪性腫瘍(3例[0.9%]、プラセボ群も3例[0.9%])、主要有害心血管イベント(3例[0.9%])、重度または重篤な消化器イベント(6例[1.8%])、低血糖症(2例[0.6%])を認めた。 著者は、「これらの結果は、体重の再増加を予防し、体重減少の維持とこれに伴う心代謝系への有益性を保持するためには、チルゼパチドの投与を継続する必要があることを強調するものである」とし、「1年間プラセボに切り換えた後でも、体重が9.9%減少していた点は注目に値するが、心代謝系のリスク因子の最初の改善効果はほぼ消失しており、このような短期治療による長期の有益性とリスクを解明するために、さらなる研究を要する」と指摘している。

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痩身目的のオンライン診療でのトラブルが急増/国民生活センター

 痩身目的での糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬)の不適切処方が問題視され、厚生労働省などから適正使用への注意喚起がなされている。さらに最近では、痩身をうたうオンライン診療でトラブルが急増し、国民生活センターが警鐘を鳴らしている1)。 同センターへ寄せられた年度別相談件数では、2021年度は49件、2022年度は205件、2023年度は10月31日までで169件と多く、21年から22年では約4.2倍も急増していた。 痩身目的などのオンライン診療に関する相談では、処方薬、副作用の説明や基礎疾患の問診が十分でないまま、初診時に数ヵ月分が処方されるなど、不適切なケースがあると同センターは報告している。こうした不適切処方では、副作用などのフォローが十分ではないために、処方を受け、不調を訴えて一般の医療機関へ来院する患者も散見され、センターでは消費者に注意を喚起している。キャンセルできない、処方薬で副作用などの事例 同センターに寄せられた相談事例としては、「オンライン診療後のダイエット用の薬が糖尿病治療薬だった」「基礎疾患の問診も不十分なまま糖尿病治療薬を勧められた」「他剤との相互作用、副作用の説明がなく、キャンセルもできない」などの事例があった。また、「既往があるが問診がなされず、処方薬を1ヵ月服用したところ、頭痛・吐き気・めまいなどの副作用が現れたため、解約を申し出たが拒否された」などの実害が生じている事例も報告されている。相談事例からみる特徴や問題点【処方薬、副作用の説明や基礎疾患の問診が不十分】 自由診療では、医師は施術に伴う副作用や合併症のほか、施術費用および解約条件、効果の個人差などを丁寧に説明することが求められているが、多くの事例でこれらの説明が不十分。 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(厚生労働省作成)2)では、初診の場合には、基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方を行わないこととされているが、初診で基礎疾患などの確認が不十分なまま数ヵ月分の処方がなされているケースがある。さらに、2型糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬)を痩身目的で処方(不適正使用)しているケースがあり、同指針が遵守されているとは考えにくい。【特定商取引法に基づく取消しや解約が難しいケースがある】 痩身目的の治療で契約期間が数ヵ月間の継続コース(処方薬の定期購入)を勧められ、数十万円の契約をしているケースが多くある。オンライン診療の結果、医師の判断で薬の処方の当否や薬の種類、数量を決めて処方している場合、契約申し込みのケースによっては「特定申込み」に該当せず、定期購入と同様の仕組みであっても、特定商取引法に基づく取消しができない場合がある。【運営事業者と医師の責任の所在がわかりにくい】 運営事業者と医師の責任の所在がわかりにくいケースがあるため、診察や処方薬などにかかる説明は誰が行うのか、誰が処方薬の販売者なのか、トラブルが生じた際、誰がどういった責任を負い、どこに問い合わせればいいのかなどについて、消費者にとってわかりにくくなっている。消費者への4つのアドバイス【痩身目的などのオンライン診療を受診するときは、処方薬も含め医師からしっかり説明を受ける】 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる糖尿病治療薬の処方など、不適正使用が疑われるような場合に処方することは不適切とされている。痩身目的などのオンライン診療を受診するときは、治療内容や処方薬、副作用などのリスク、万が一のときの対応などに関し、医師からしっかり説明を受ける。持病があり、通院や服薬をしている人は、主治医に相談するなど、とくに慎重に検討することが大切。【糖尿病治療薬は痩身目的の使用に関し、安全性と有効性は確認されていない】 糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬)が痩身目的で使われていることがあるが、これらの薬は2型糖尿病の治療を目的として承認されている。これらの薬に関する美容・痩身・ダイエットなどを目的とする不適正使用については、安全性と有効性は確認されていない。【解約条件などを申し込み前によく確認】 痩身目的などのオンライン診療の受診後に処方薬を購入する場合、定期購入になっているケースが多くある。解約できる場合でも条件が付されていることが多く、申し込み前によく確認する必要がある。解約の申し入れ先や副作用が出た場合の連絡先などについてもよく確認する。【トラブルにあった場合は、消費生活センターなどに相談】 契約に不安を感じたり、解約時にトラブルになったりした場合には、1人で悩まず最寄りの消費生活センターや消費者ホットラインの188(いやや!)へ相談。もし、副作用などの症状が出た場合、速やかに最寄りの医療機関を直接受診。

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食塩摂取量はどこまで減らせばいいのだろうか?(解説:石川讓治氏)

 食塩摂取量がきわめて少ない民族においては高血圧の有病率が低いことが報告されてから、食塩摂取量の減少を試みる介入研究が幾つかされてきた。DASH研究において食塩6g/日以下にすることで有意に血圧低下が認められることが示され、現在の各国の高血圧治療ガイドラインにおいては食塩摂取量を1日6g以下にすることを推奨している。しかし、わが国の食塩摂取量は1日12~13g程度で、まだまだ目標レベルに程遠いのが現実である。本研究は、ナトリウム摂取量2,200mg(食塩として5.59g)/日の1週間継続、ナトリウム摂取量500mg(食塩として1.27g)/日の1週間継続をクロスオーバーデザインで行い、24時間平均自由行動下血圧の違いを評価した研究である。結果として、低ナトリウム食によって4mmHgの平均血圧低下が認められた。低ナトリウム食で73.4%の参加者で平均血圧が低下しており、食塩感受性が46%の参加者に認められている。低ナトリウム食の降圧効果は、対象者の年齢、性別、人種、高血圧の有無、ベースラインの血圧値、糖尿病、肥満度には影響を受けなかった。わずか1週間の減塩で血圧低下が起こることは非常に驚きであり、今後の患者指導で有用なデータであると考えられた。 本研究のナトリウム摂取量から換算した食塩摂取量は各群5.59g/日と1.27g/日である。日常臨床における高ナトリウム(食塩)摂取量ではなく、ガイドラインに沿った食塩摂取量と極端に少ない食塩摂取量の比較試験であることに注意が必要である。食塩摂取量の目標値6g/日以下も難しいわが国の現状で、この目標値を達成することは至難の業であると思われた。本研究の参加者の平均年齢は61歳であり、64%が黒人であった。本研究では両群に有害事象の有意差は認められなかったが、非高齢者を中心に行われた研究で、食塩感受性が高いとされる黒人を多く含む研究であったことにも注意が必要である。後期高齢者の動脈スティフネス亢進を背景とした高血圧患者において、1.27g/日の食塩摂取を安全に行うことができるのか今後の検討が必要であると思われた。

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妊娠糖尿病、インスリン+メトホルミン vs.インスリン単独/JAMA

 2型糖尿病を有するまたは妊娠初期に2型糖尿病と新規に診断された妊婦において、インスリン療法にメトホルミンを追加しても新生児の複合有害アウトカムは減少しなかった。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のKim A. Boggess氏らが、米国の17施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「MOMPOD試験」の結果を報告した。既往または妊娠初期に診断された2型糖尿病を有する妊婦には、インスリンの投与が推奨されるが、インスリンへのメトホルミンの追加により新生児の有害アウトカムが改善する可能性が示唆されていた。JAMA誌2023年12月12日号掲載の報告。妊娠22週までの2型糖尿病(新規診断を含む)を有する妊婦が対象 研究グループは2017年6月~2021年11月に、単胎妊娠10週0日~22週6日で2型糖尿病を有する、または23週より前にインスリンを必要とする糖尿病と診断された、18~45歳の成人女性を対象とした。施設、妊娠週数(18週未満、18週以上)、糖尿病診断時期(既往、妊娠初期)で層別化し、メトホルミン(1,000mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。全例がインスリンの投与を受け、それぞれ割り付けられた試験薬を出産まで1日2回経口投与した。 主要アウトカムは、周産期死亡(妊娠10~20週の胎児死亡、20週以上の死産、または出生後28日以内の新生児死亡)、妊娠37週以前の早産、新生児低血糖、出生時外傷(臍動脈pH<7.05、肩甲難産)、光線療法を必要とする高ビリルビン血症、在胎不当過大児、在胎不当過小児、2,500g未満の低出生体重児といった、新生児複合有害アウトカムであった。 事前に規定した副次アウトカムは、母体の低血糖と出生時の新生児脂肪量。また、主要アウトカムに関して、母体のBMIが30未満vs.30以上、2型糖尿病既往vs.妊娠初期の2型糖尿病診断、無作為化時の妊娠週数18週未満vs.18週以上23週未満で、サブグループ解析を行うことが事前に規定された。新生児複合有害アウトカムの発生率は71% vs.74% 2017年6月~2021年11月に、スクリーニングを受けた2,667例中831例が無作為化された。695例が出産し追跡調査を完了した後、データ安全性モニタリング委員会は無益性により試験の中止を勧告し、登録は同年11月に中止された。追跡調査は2022年5月に終了した。 無作為化された831例のうち、試験薬を少なくとも1回服用した794例が主要解析に組み入れられた(メトホルミン群397例、プラセボ群397例)。平均(SD)年齢は32.9(5.6)歳、234例(29%)が黒人、412例(52%)がヒスパニックであった。 主要アウトカムの発生は、メトホルミン群で280例(71%)、プラセボ群で292例(74%)に認められ、両群間に有意差はなかった(補正後オッズ比[OR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.63~1.19)。 両群において多く認められた主要アウトカムのイベントは、妊娠37週以前の早産(それぞれ34%、37%)、新生児低血糖(39%、42%)、および在胎不当過大児(26%、36%)であった。在胎不当過大児については、プラセボ群と比較したメトホルミン群でのイベントが少なかった(補正後OR:0.63、95%CI:0.46~0.86)。 事前に規定された副次アウトカム、ならびにサブグループ解析は、両群間で同等であった。 なお著者は、「インスリンへのメトホルミンの追加で観察された在胎不当過大児のオッズ比減少の効果については、さらなる検討が必要である」と述べている。

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2023年、読んでよかった!「この医学書」/会員医師アンケート

2023年も多くの医学書が刊行されました。CareNet.comでは、会員医師1,000人(内科、循環器科、呼吸器科、消化器科、精神科/心療内科・各200人)に、「今年読んでよかった医学書」についてアンケートを実施しました(今年刊行された本に限らず、今年読んだ本であればOK)。アンケートでは「ご自身の専門分野でよかった本」「専門分野以外でよかった本」を1冊ずつ、理由も添えて挙げてもらいました。本記事では、複数の医師から名前の挙がった書籍を、お薦めコメントと共に紹介します(アンケート実施日:12月5日)。ぜひ、年末年始の読書の参考にしてください。内科幅広いテーマの書籍が「専門分野」として挙げられた内科。『今日の治療薬』(南江堂)、『ハリソン内科学』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)、『当直医マニュアル』(医歯薬出版)といった「ド定番」のほか、糖尿病治療に関する書籍と「日本内科学会雑誌」を挙げる人が目立ちました。『ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版』(金城 光代ほか[編]、医学書院、2023年)内科外来のトップマニュアルが6年ぶりの改訂。内科医以外からも多くの推薦がありました。●推薦コメント「外来診療に役立った」「疾患別に緊急性や重症度などを考えさせるように導く内容となっていて面白い」『胃炎の京都分類 改訂第3版』(春間 賢[監修]、日本メディカルセンター、2023年)多くの画像で胃炎を解説する定番書の改訂第3版。●推薦コメント「慢性胃炎に対する内視鏡的・肉眼的考察により、これまでの慢性胃炎の概念を体系化した書物」「臨床に生かせる」『内科学 第12版』(矢崎 義雄・小室 一成[編]、朝倉書店、2022年)初版は1977年、病態生理を中心に内科的疾患の最新の知見を集大成した改訂12版。●推薦コメント「鉄板です」「ザ・定番と思われるため」循環器科内科医からも多くの推薦があった『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』のほか、個別テーマでは心電図、PCIを扱った書籍が多く挙げられました。『循環とは何か? 虜になる循環の生理学』(中村 謙介[著]、三輪書店、2020年)難解な循環の生理学を、深くかつわかりやすく解説。●推薦コメント「面白い」「知識の整理になった」『PCIで使い倒す IVUS徹底活用術 改訂第2版』(本江 純子[編]、メジカルビュー社、2020年)「もっとこうしたらIVUSをより有効に活用できる」という手順・方法などを、実例と共に解説。●推薦コメント「IVUSの基本的な読影やトラブルシューティングなど、理論的にわかりやすかった」「説明がわかりやすく、実践的」『心不全治療薬の考え方,使い方 改訂2版』(齋藤 秀輝ほか[編]、中外医学社、2023年)心不全治療薬の整理のほか、使い分けや未知の事柄も追記した実践的な書の改訂版。●推薦コメント「いつも参考にしています」「心不全治療薬の“革命”を経て…、U40新世代が作り上げるバイブル」呼吸器科「間質性肺炎」「肺がん」「喘息」「気管支鏡」「人工呼吸」「咳」など、「専門」とする書籍テーマのバリエーションが多様だった呼吸器科。回答者によってさまざまな疾患に対応していることが垣間見える結果となりました。『ポケット呼吸器診療2023』(倉原 優[著]、シーニュ、2023年)CareNet.comの連載でもおなじみの倉原氏による定番の一冊の最新版。●推薦コメント「毎年非常に詳しく書かれているから」「ガイドラインや最新の治療薬のアップデートを記憶するのに役立つ」「呼吸器診療のtipsがコンパクトにまとめられている」『誤嚥性肺炎の主治医力』(飛野 和則[監修]、吉松 由貴[著]、南山堂、2021年)飯塚病院 呼吸器内科の著者らによる誤嚥性肺炎診療の実践書。●推薦コメント「気を付けるポイントを再認識した」「読みやすく、わかりやすかった」『抗菌薬の考え方,使い方 ver.5』(岩田 健太郎[著]、中外医学社、2022年)未曽有のコロナ禍を経て、新たに刊行された改訂版。●推薦コメント「大学の授業で習うべき重要な内容」「基本的な抗菌薬の知識を臨床の面から解説してある」「普段何気なく使用している抗菌薬の使用方法を見直すきっかけになった」消化器科内科医からも多く挙げられた『胃炎の京都分類 改訂第3版』のほか、医学誌「胃と腸」や『胃と腸アトラス』を「基本知識、専門知識がよくわかる」「読影の参考になる」「症例問題集が面白く勉強になる」と推薦する声が目立ちました。『専門医のための消化器病学 第3版』(下瀬川 徹ほか[監修]、医学書院、2021年)消化器専門医が知っておきたい最新知見を各領域のエキスパートが解説。●推薦コメント「内容が新しくてよい」「専門医として知っておくべき内容がまとめてあり、わかりやすい」「網羅的に消化器病の知識が記されており、教科書兼辞書として重宝している」『カール先生の大腸内視鏡挿入術 第2版』(軽部 友明[著]、日本医事新報社、2020年)内視鏡手技をテーマとした書籍が多いなか、内視鏡挿入のテクニックを動画付きで解説した本書を挙げる人が目立ちました。●推薦コメント「図が豊富」「基本的な内容が理解できた」「わかりやすく、新しい発見があった」『患者背景とサイトカインプロファイルから導く IBD治療薬 処方の最適解』(杉本 健[著]、南江堂、2023年)炎症性腸疾患(IBD)の治療薬について、著者独自の観点から患者ごとの最適解の考え方を提供。●推薦コメント「目から鱗でした」「わかりやすく、的確な具体例もある」精神科/心療内科他科と比較して同じ本を選択した回答者が多く、刊行から時間が経過した本も多く選ばれる傾向がありました。『精神診療プラチナマニュアル 第2版』(松崎 朝樹[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2020年)精神診療に必要かつ不可欠な内容をハンディサイズに収載。●推薦コメント「ノイヘレン(新人)時代にこういった入門書があればよかった。今でも復習に役立つ」「内容がわかりやすくまとまっている」「最新の話題が記載されている」『[新版]精神科治療の覚書』(中井 久夫[著]、日本評論社、2014年)「医者ができる最大の処方は希望である」。精神科医のみならず、すべての臨床医に向けられた基本の書。●推薦コメント「読みやすい」「改めて読み直してみて、初心を思い出せた」『カプラン臨床精神医学テキスト 第3版』(井上 令一[著・監修]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2016年)DSM-5準拠、高評と信頼を得た最高峰のテキストの改訂版。●推薦コメント「精神科医が学ぶことがおおむね網羅されている」「DSM-5に準じ体系化されていて、たくさんの疾患が網羅されている」「精神科専門医試験もここから多く出ていた」専門も専門外も!「信頼のシリーズ」アンケートの設問では「事典やガイドライン、医学雑誌以外の本を推薦ください」と条件を付けたものの、医師にとって最も身近であるこれらの書籍や、医学生・研修医、非専門医、コメディカルを対象とした定番シリーズを挙げる方も多くいました。「極論で語る」シリーズ(丸善出版)●推薦コメント「循環器疾患についてメカニズムと対応方法をわかりやすく解説してくれる」(『極論で語る循環器内科』/循環器科)、「体液コントロールにおける腎臓の視点を取り入れることができる」(『極論で語る腎臓内科』/循環器科)「病気がみえる」シリーズ(メディックメディア)●推薦コメント「看護学校の講師をしていますが、初心に返ることができた」(循環器科)、「基礎の確認になった」(循環器科)「レジデントのための」シリーズ(日本医事新報社)●推薦コメント「内科診療の疑問をEBMの側面でまとめてくれている」(『レジデントのための 内科診断の道標』/精神科)、「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(『レジデントのための これだけ輸液』/呼吸器科)どの科も必須「このテーマ」新型コロナウイルス感染症が収まり切らないなか、「専門外」の良書としてどの科の医師からも名前が挙がった本には、感染症をテーマとするものが多数ありました。『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』(青木 眞[著]、医学書院、2020年)初版から20年。読み継がれてきた「感染症診療のバイブル」の最新版。●推薦コメント「抗菌薬の選択に参考となる」(呼吸器科)『感染症プラチナマニュアル Ver.8 2023-2024』(岡 秀昭[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2023年)2015年初版、ベストセラー「感染症診療マニュアル」の改訂第8版。●推薦コメント「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(呼吸器科)キラリと光る「新定番」絶対数としてはさほど多くないものの、最近刊行された注目の書籍が、複数の科の医師から「専門外の好著」として名前が挙がりました。『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』(松田 光弘[著]、医学書院、2022年)皮膚科疾患のロジックが身に付く、フローチャートを用いた解説が好評の一冊。●推薦コメント「皮膚科が苦手だったが、まさに目からウロコ」(内科)、「皮疹を診る際の皮膚科医の思考過程がよくわかる」(内科)、「他科の医師でも皮疹診療についての基本がわかる」(呼吸器科)『世界一わかりやすい 筋肉のつながり図鑑』(きまた りょう[著]、KADOKAWA、2023年)100点以上のオールカラーイラストで筋肉のつながり・仕組みを平易に解説した一般書のベストセラー。●推薦コメント「筋肉の解剖学的特徴がわかりやすい」(内科)、「イラストがよい、わかりやすい」(消化器科)『心電図ハンター 心電図×非循環器医』(増井 伸高[著]、中外医学社、2016年)非循環器医をターゲットに、即座に判断できない微妙な症例を集め、心電図判読のコツを紹介。●推薦コメント「実際の臨床の場面を想定した形での判断基準などがわかりやすい」(内科)、「知りたいことがコンパクトにまとめてある」(呼吸器科)こんな本も! 医師ならではの一冊医学書以外でも、医師ならではの視点から、熱のこもったコメントと共に寄せられた本がありました。『蘭学事始』(杉田 玄白[著]、緒方 富雄[校註]、岩波文庫、1959年)江戸後期、杉田 玄白が著した蘭学創始期の回想録。●推薦コメント「印象に残った」(呼吸器科)『医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者』(大竹 文雄・平井 啓[編著]、東洋経済新報社、2018年)●推薦コメント「インフォームドコンセントからSDMになり、なんとなく感じていた違和感が、行動経済学的な考え方によりすっきりした」(消化器科)『嫌われる勇気』(岸見 一郎・古賀 史健[著]、ダイヤモンド社、2013年)アドラー心理学を解説する、100万部突破のベストセラー。●推薦コメント「承認欲求に気付くことができた」(循環器科)『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』(中村 佑子[著]、医学書院、2023年)●推薦コメント「一体ヤングケアラーとは誰なのか。世界をどのように感受していて、具体的に何に困っているのか。取材はドキメンタリーを読むようだ」(消化器科)

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第195回 女性の涙で男性の攻撃性が鎮まる

女性の涙で男性の攻撃性が鎮まる「けんかをやめて~2人を止めて~わたし~のために~争わないで~」と歌ったところで果たしてそうしてくれるお人好しの誰かが現れるかは人徳によるでしょうが、女性が歌と一緒に涙を流せば確かに男性はけんかを止めてくれるかもしれません。イスラエルの世界屈指の研究所Weizmann Institute of ScienceのShani Agron氏が率いた研究で、マウスと同様にヒトの女性の涙も男性の攻撃性をなだめる成分を含むことが示されました1)。涙に攻撃性を鎮める役割があることは四半世紀ほど前に報告されたデバネズミの研究で初めて示されました。下っ端の雄のデバネズミが身繕いして涙を身に纏うことは優勢な雄からの攻撃を減らす作用があり1)、涙の揮発性成分がどうやらその役割を担っているようです2)。そして最近発表された報告ではマウスの雌の涙に脳の攻撃性回路の活性を調節することで雄同士の攻撃性を解消する成分を含むことが示されました3)。デバネズミやマウスの涙の作用は他者の振る舞いに影響を及ぼす成分を体が発する仕組み(social chemosignaling)の1つであり、ヒトではこれまでもっぱら汗がその研究の的となっていました。しかし数少ない研究でヒトの涙も他者に影響を及ぼしうることが示唆されています。たとえばヒトの女性の涙は嗅いだ男性のテストステロンを減らす匂わない化学成分を含みます。男性のテストステロンが減ることは攻撃性の低下と関連することが知られています。そこでAgron氏らはヒトの涙もげっ歯類と同様に攻撃性を阻止する成分を含むのかどうかを調べることにしました。Agron氏らは涙もろい女性を募り、悲しい映画を観てもらって出た涙を1.6mLほど集めました。一方、女性の頬を伝わらせた食塩水も同様に集め、攻撃性の度合いを調べることができるPSAPという試合(ゲーム)をする男性にそれらをあてがいました。PSAPゲームは金が不公平に奪われるという怒りのきっかけを含み、その仕返しとして見返りと引き換えなしに単に相手の金を失わせるという復讐をすることができます1)。ゲームは二重盲検環境で実施され、何を嗅いでいるかは男性の預り知るところではなく、涙と頬を伝わせた食塩水はどちらも匂わず、男性は違いを識別できませんでした。それにもかかわらず、復讐へと駆り立てる攻撃的振る舞いが女性の涙をそうとはしらず嗅いだ男性で40%強低下しました。MRIで脳の活動を何回か調べたところ、攻撃性と関連する脳領域(前頭前皮質と前頭皮質)が女性の涙を嗅いでいるときには試合中に怒っていたときほど活性化せずに済んでいました。それらの結果によると涙が攻撃性を封じる化学的遮断作用はどうやらどの哺乳類も備えているようです1)。上述のとおり涙は匂いませんが、それにもかかわらず嗅覚受容体を活性化することが今回の研究で判明しています。ためしに62のヒト嗅覚受容体を体外実験で調べたところ涙に反応する4つの嗅覚受容体(OR2J2、OR11H6、OR5A1、OR2AG2)が同定されました。ヒトの嗅覚受容体は350種ほどもあるので、涙に反応する嗅覚受容体は実際のところもっとあるかもしれません。怒りを鎮める涙の作用が涙に反応するそれら嗅覚受容体のおかげがどうかは今回の研究ではあいにく確認されていません。それらの嗅覚受容体を遮断する、あるいは省いてみるなどの今後の研究でそれら嗅覚受容体が怒りを鎮める作用に携わると判明すれば、攻撃性絡みの病気を治療するそれら受容体狙いの薬がやがては開発できるかもしれません。参考1)Agron S, et al. PLoS Biol. 2023;21:e3002442. 2)Shanas U, et al. Anim Behav. 1997;54:1255-1263.3)Cavaliere RM, et al. Sci Rep. 2020;10:2510.4)Sniffing women’s tears reduces aggressive behavior in men / Eurekalert

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