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外傷の処置(1)鶏眼(うおのめ)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q79

外傷の処置(1)鶏眼(うおのめ)Q79夜間外来もある当直バイト中、糖尿病性腎症によるCKD既往の80代男性が右母趾先端の鶏眼(うおのめ)の処置希望で受診してきた。鶏眼処置なんて研修医ぶりだと思いながら、鶏眼の大きさに合わせてスピール膏®(サリチル酸)を貼付し、同外用薬を1シート処方した。適宜貼り替えて1週間後に日中外来を受診するよう指示し、鶏眼の処置は雑菌が入るため、自分では処置をしないことを念押しした。上記対応の誤りは?

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事例029 新医薬品エパデールEMの査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では脂質異常症に対して同月内2回の来院それぞれに処方を行ったイコサペント酸エチル(商品名:エパデールEM、以下同)カプセル2gが査定となりました。査定事由は、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)でした。投与日数も当月内28日であり、病名なども添付文書に沿っています。査定の原因をつかむために調べてみました。カルテには、同月1回目の再診時に7日分処方、同月2回目の再診時に21日分処方の合計28日分が入力されていました。調べている途中で、エパデールEMは発売後1年経っていない新医薬品であり、2023年8月末までは、1回の処方に14日分限度の制限がかかっていることに気付きました。医師に尋ねると14日処方限度の新医薬品であることをご存知でした。1回目再診時に7日分を処方したのち、2回目に次回来院までに薬が不足しないよう、同月内1回処方当たりの投与日数内であれば認められるであろうと処方をされていました。現在のレセプトは、投与薬剤にも日付を紐付けて電子請求されます。そのデータを基にコンピュータ審査が行われます。表面上は算定要件を保っているようでも、日付ごとの審査が行われるために、事例のような査定が発生します。医師にはその仕組みを説明し、処方入力システムに処方制限が表示されるよう改修して査定対策としました。なお、年末年始などの長期休診の場合は、その日数を限度として1回当たりの処方日数を増やすことが可能です。ただし、総投与日数が30日を超えると認められないようですのでご留意ください。

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国内コロナ入院患者の精神症状の実態―不眠やせん妄は重症度と相関

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院患者では、ほかの呼吸器疾患患者よりも精神症状発現率が高く、また一部の症状はCOVID-19重症度と相関することが明らかになった。九州大学大学院医学研究院精神病態医学の中尾智博氏らの研究によるもので、詳細は「Brain, Behavior, & Immunity - Health」5月号に掲載された。 COVID-19の後遺症、いわゆるlong COVIDでは倦怠感などの身体症状に加えて、抑うつや不安などの精神症状が高頻度に現れることが知られている。一方、COVID-19急性期の精神症状については大規模研究の報告が限られている。これを背景として中尾氏らは、福岡県内の9病院のDPC(診療報酬包括評価)データおよび精神科カルテデータを用いた解析から、COVID-19入院患者に発生する精神症状の実態の把握を試みた。 2020年1月~2021年9月に、4件の大学病院、3件の国立病院機構病院、および公立病院、民間病院各1件に入院したCOVID-19患者数は2,743人(平均年齢53.7±22.7歳、女性44.3%)だった。なお、COVID-19以外の呼吸器感染症が併存している患者は除外されている。 36.1%に対して入院中に睡眠薬、11.2%に抗うつ薬、5.8%に抗不安薬が処方され、27.6%には抗うつ薬や抗不安薬およびその他の向精神薬が併用されていた。睡眠薬の処方に関連する因子を多変量解析で検討すると、年齢〔オッズ比(OR)1.03〕、糖尿病(OR1.53)、慢性腎臓病(OR1.59)が独立した因子として抽出された。また、向精神薬の処方に関連する因子の多変量解析からは、年齢(OR1.04)、糖尿病(OR1.29)、認知症(OR1.88)が有意な正の関連因子、BMIが18~25であることは有意な負の関連因子(BMI18未満と比較してOR0.56)として抽出された。 次に、入院中に精神科の介入を要した患者221人(8.1%)に着目し、この患者群をCOVID-19の重症度で分類(厚生労働省の診療の手引き第6版に基づく分類)すると、不眠やせん妄は重症度が高いほど出現頻度が高いという有意な関連が認められた。一方、不安の出現頻度はCOVID-19重症度との関連が見られなかった。 続いて、インフルエンザ入院の患者データを用いて、傾向スコアマッチングにより年齢や性別の分布、併存疾患有病率が一致する各群211人から成るデータセットを作成。両群の薬剤処方状況を比較すると、睡眠薬の処方率はインフルエンザ群が25.1%、COVID-19群が41.7%であり、後者に対して有意に多く処方されていた(P<0.001)。抗不安薬については同順に3.3%、7.6%でやはり後者で高かったが、群間差はわずかに非有意だった(P=0.054)。抗うつ薬は7.1%、10.9%だった(P=0.174)。 同様に、インフルエンザ以外の急性気道感染症と診断されていた患者データを用いて、性別の分布、併存疾患有病率が一致する各群1,656人から成るデータセットを作成(年齢はCOVID-19群の方が若年で有意差あり)。両群を比較すると、睡眠薬の処方率は急性気道感染症群37.0%、COVID-19群40.5%でやはり後者の方が有意に高く(P=0.039)、抗うつ薬についても同順に9.6%、12.9%で後者の方が高かった(P=0.003)。一方、抗不安薬は7.7%、5.9%であり、前者の方が高かった(P=0.039)。 これらの結果から論文の結論は、「COVID-19入院患者は不眠や抑うつ、不安が発症しやすく、他の呼吸器感染症より向精神薬の処方率が高かった。一部の精神症状はCOVID-19の重症度と相関していた。COVID-19は既存の感染症より精神機能へ与える影響が大きいと考えられる」とまとめられている。また考察として、「COVID-19の急性期に発症する精神症状とlong COVIDの精神症状が連続したものである可能性もある」と述べ、この点についての今後の検討の必要性を指摘している。

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糖尿病予備群は食後高血糖是正により心血管転帰が改善

 食後高血糖への介入が転帰改善につながる可能性を示唆するデータが報告された。国内で実施された多施設共同研究「DIANA研究」終了後の追跡観察調査が行われ、国立循環器病研究センター心臓血管内科部門冠疾患科の片岡有氏らによる論文が、「Journal of Diabetes and its Complications」5月号に掲載された。 糖尿病では食後のみでなく食前の血糖値も高くなるが、糖尿病予備群と言われる75gブドウ糖負荷試験にて診断可能な耐糖能異常(impaired glucose tolerance;IGT)や初期の糖尿病は、食前の血糖値は正常だが食後の高血糖を伴う。食後の高血糖は心血管疾患発症のリスク因子であることを示唆する多くの疫学研究結果が報告されている。しかしながら、食後高血糖への治療介入により、心血管疾患発症リスクが抑制されるかという点については、いまだ十分に明らかになっていない。 大阪府済生会富田林病院の宮崎俊一氏は、冠動脈疾患(CAD)を合併したIGTあるいは初期糖尿病患者を対象として、食後高血糖を改善させる薬剤による冠動脈硬化の進展抑制効果を食事・運動療法と比較する前向き無作為化試験「DIANA研究」を実施した。その研究では、食事・運動療法と比較して1年間の食後高血糖に対する薬物治療の冠動脈硬化進展抑制効果は認められなかった。しかしながら、薬物あるいは食事・運動療法いずれの治療下においても、治療開始から1年後に食後高血糖が改善していた症例は、冠動脈硬化進展が有意に抑制されていた。今回の報告は、DIANA研究終了後に実施された追跡観察調査の結果であり、1年間の食後高血糖への治療介入が、その後の約10年間の心血管疾患発症に及ぼす効果について検討された。 DIANA研究では302人の患者を、α-グルコシダーゼ阻害薬(ボグリボース)群、グリニド薬(ナテグリニド)群、あるいは食事・運動療法群の3群に無作為に割り付け、1年間の介入終了後は主治医の裁量による治療が継続されていた。このうち、243人が追跡調査の解析対象とされ、その平均年齢は64.6±9.3歳、女性が13.6%であり、IGTが58.9%、初期の2型糖尿病は41.1%であった。主要評価項目は、観察期間中の全死亡、非致死性心筋梗塞、緊急冠動脈血行再建術を含めた主要心血管イベント(MACE)の発生率と定義された。 中央値9.8年(範囲7.1~12.8)の観察期間におけるMACE発生件数は91件であった。DIANA研究において食後血糖改善を目指した薬物治療群のMACE発生率は、食事・運動療法群と有意差を認めなかった〔ボグリボース群はハザード比(HR)1.07(95%信頼区間0.69~1.66)、ナテグリニド群はHR0.99(同0.64~1.55)〕。MACEを構成する全死亡、非致死性心筋梗塞、血行再建術それぞれの発生率についても、薬物治療群と食事・運動療法群の間に有意差は見られなかった。IGT、初期糖尿病それぞれにおいても、薬物治療群のMACE発生率は食事・運動療法群と同等であった。 本研究では、薬物あるいは食事・運動療法いずれの治療下においても、治療開始から1年後における糖代謝改善の有無(IGTから正常耐糖能への変化、糖尿病からIGTあるいは正常耐糖能への変化)により対象症例を2群に分類しMACEの発生率が比較された。対象症例の55.9%は糖代謝改善を認めたが、MACE発生率は非改善群と有意差を認めなかった〔HR0.78(0.51~1.18)〕。 対象症例を、IGT、初期糖尿病に層別化して検討を行った。IGTの症例においては、IGTから正常耐糖能へ改善していた群は、非改善群に比して観察期間中のMACE発生率が有意に低率であった〔HR0.55(0.31~0.97)〕。年齢、性別、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、血圧、スタチンやβ遮断薬使用を調整後も、結果は同様であった〔HR0.44(0.23~0.86)〕。一方、初期糖尿病症例では、IGTあるいは正常耐糖能へ改善していた群のMACE発生率は、非改善群と比較して有意差を認めなかった〔HR1.49(0.70~3.19)〕。 著者らは本研究の限界点として、post-hocの事後解析であること、無作為化割り付けによる介入期間が1年間と比較的短いこと、観察期間中の糖代謝の変化のデータは収集していないことなどを挙げている。α-グルコシダーゼ阻害薬のアカルボースによる心血管イベント発生率の減少を報告した先行研究「STOP-NIDDM」は介入期間が長く、IGTのみを対象としており、CADを有する症例は4.8%のみであった。一方、本研究はCADをすでに有しているIGTあるいは初期糖尿病症例を対象としていることから、著者らは、α-グルコシダーゼ阻害薬の心血管疾患発症に対する効果が異なった可能性を述べている。これらの考察の上で論文の結論は、「CADのあるIGT患者の長期予後改善においては、正常耐糖能への改善を目指した介入治療が必要と考えられる」と記されている。

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8月10日 手(ハンド)の日【今日は何の日?】

【8月10日 手(ハンド)の日】〔由来〕手の英語読み「ハンド」から「ハ(8)ンド(10)」の語呂合わせから、健康な手を持っていることへの感謝、手の不自由な人々に対する社会的な関心、手の怪我・病気・しびれなどの改善に従事している手外科の存在の啓発に日本手外科学会が制定。関連コンテンツ釣り針が刺さった【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】トリガーポイント注射の査定【斬らレセプト】関節腔内注射の査定【斬らレセプト】リウマチ体操の紹介【患者説明用スライド】1型2型ともに糖尿病はばね指のリスクと関連

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2050年の世界の糖尿病患者数は13億人に達する可能性

 現時点で世界の糖尿病患者数は5億人以上に上り、今後30年以内に13億人を突破する可能性があるとする研究結果が、「The Lancet」に6月22日掲載された。米ワシントン大学保健指標評価研究所のKanyin Liane Ong氏らが、世界の疾病負担研究(GBD)のデータを利用して推計したもの。 Ong氏は、「世界的な糖尿病患者数の急速な増加は、それ自体が憂慮すべきことであるだけでなく、この病気が虚血性心疾患や脳卒中のリスクを増大させることを考えると、世界中の全ての医療制度の維持が困難になる可能性もある」と語っている。また、「多くの人は、2型糖尿病は単に肥満や運動不足、不適切な食習慣に関連して発症すると信じているかもしれないが、実際には遺伝や社会経済的要因も関連がある。特に低・中所得国においては経済的要因の影響が大きい」と解説する。 Ong氏らの研究では、世界204カ国・地域の性別・年齢層別の糖尿病有病率と障害調整生存年数〔DALY(疾患により失われる健康寿命)〕を調査し、今後の推移を予測した。その結果、2021年時点で世界の糖尿病の年齢標準化有病率は6.1%〔95%不確定区間5.8~6.5〕で患者数は5億2900万人(同5億~5億6400万)となった。その96.0%(95.1~96.8)は2型糖尿病だった。2型糖尿病のDALYは7920万(6780万~9250万)であり、疾患別でトップ10にランク入りした。2型糖尿病のDALYの52.2%(25.5~71.8)はBMIの高さに起因するものと計算され、DALYに対するBMI高値の寄与の割合は1990年から2021年にかけて24.3%(18.5~30.4)増加していた。 2型糖尿病のDALYに寄与する肥満以外の因子としては、不適切な食習慣〔25.7%(8.6~40.7)〕、環境や職業に関連すること〔19.6%(12.7~26.5)〕、喫煙〔12.1%(4.5~20.9)〕、運動不足〔7.4%(3.0~11.2)〕、飲酒〔1.8%(0.3~3.9)〕が続いた。論文の共著者の1人である同研究所のLauryn Stafford氏は、「2型糖尿病の増加を少数の因子のみで説明しようとする人がいるかもしれないが、そのような考え方は、世界中で発生している格差の影響を考慮していない。社会経済的な不平等は、検査や治療へのアクセスの差を生み、それが糖尿病の増加につながっていることを忘れてはならない。2型糖尿病の増加という問題を、全体像としてより詳細に把握する努力が必要だろう」と語っている。 今回の研究からは、どの国でも高齢者層において糖尿病有病率が高いことも分かった。65歳以上の糖尿病有病率は20%以上であり、特に75~79歳で最も高く24.4%に達していた。 また、2050年の糖尿病患者数は13.1億人(12.2~13.9)となり、204の国や地域のうち89カ国・地域(43.6%)で年齢標準化有病率が10%を超えると予測された。地域別では、北アフリカ・中東〔16.8%(16.1~17.6)〕、ラテンアメリカ・カリブ海諸国〔11.3%(10.8~11.9)〕において、2050年時点での糖尿病の年齢標準化有病率が特に高値となると見込まれた。 著者らは、「糖尿病は依然として世界の重大な公衆衛生上の課題である。糖尿病の大部分を占める2型糖尿病は、その大半が予防可能であり、発症後の早い段階で治療介入すれば寛解に至ることもある」と述べ、複雑に絡み合ったリスク因子を効果的にコントロールし得る戦略の確立が急がれるとしている。

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バイアスドリガンドorforglipronは2型糖尿病・肥満症治療のgame changerになり得るか?(解説:住谷哲氏)

 GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者に対する血糖降下作用、体重減少作用および臓器保護作用が明らかにされている。さらに肥満症治療薬としてセマグルチド(ウゴービ)が製造承認されて現在薬価収載待ちの状況である。GLP-1受容体作動薬は有用な薬剤であるが注射薬のバリアはなかなか手ごわく、必要な患者に導入できないことが少なくない。そこで登場したのが経口セマグルチド(リベルサス)であったが、早朝空腹時に120mL以下の水で服用してその後30分は飲食不可、となっているので注射薬ほどではないが服薬アドヒアランスを維持するのが難しい。orforglipronは1日1回服用の非ペプチド性GLP-1受容体作動薬であり、本試験は糖尿病を合併しない肥満患者に対するorforglipronの体重減少作用を主要評価項目とした第II相臨床試験である。orforglipronの2型糖尿病患者に対する血糖降下作用を主要評価項目とした第II相臨床試験の結果は、ほぼ同時にLancetに掲載された1)。両試験の結果をみると、orforglipronの体重減少作用および血糖降下作用はきわめて有効であった。 本論文をみたときに経口セマグルチドと同様の薬剤かと思っていたが、筆者の勉強不足であった。医薬品は大きく分けると低分子医薬品(分子量<500)、高分子医薬品(分子量>10,000~15,000)と、その中間の中分子医薬品とになる。orforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833(分子量883)が、2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた歴史がある。中分子医薬品は、タンパク質間相互作用(protein-protein interaction)を修飾することによる細胞内シグナル伝達調節作用が期待されており、世界中の製薬企業が開発に注力している。 GLP-1受容体はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)に分類される(ちなみにGIPおよびグルカゴン受容体もGPCRに分類される)。GLP-1はGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。orforglipronはGLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが報告されている2)。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子をバイアスドリガンド(biased ligand)という3)。つまりorforglipronは、これまでのGLP-1受容体作動薬とは異なるまったく新しい作用機序を有する薬剤であり、2型糖尿病・肥満症治療における画期的な新薬となる可能性がある。 すでにEli Lillyは第III相臨床開発プログラムであるACHIEVE(対象は2型糖尿病)およびATTAIN(対象は肥満症)を開始することを発表しており、数年後には2型糖尿病・肥満症治療に新たな展開が期待される。

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CVDの1次予防、6ヵ月の菜食は薬物治療に引けを取らない

 一般集団において、肉類を摂取しない菜食生活は心血管代謝リスクを改善することが報告されているが、心血管疾患(CVD)リスクが高い人における効果は結論が出ていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のTian Wang氏らが、CVD高リスク者やCVD患者を対象に菜食生活と主要な心血管代謝リスク因子との関連についてメタ解析を実施した結果、6ヵ月間の菜食生活は、CVD高リスク者では有意なLDL-コレステロール(LDL-C)やHbA1c、体重の改善と関連していたことを発表した。JAMA Network Open誌2023年7月25日号の報告。 研究グループは、Embase、MEDLINE、CINAHL、CENTRALを用いて、菜食生活を行ったCVD患者または2つ以上のCVDリスク因子を有する高リスクの成人において、LDL-CやHbA1c、収縮期血圧などを測定したランダム化比較試験を検索した。なお、菜食には、乳卵菜食(肉類は食べないが、卵や乳製品は許容)、乳菜食(肉類や卵は食べないが、乳製品は許容)、ヴィーガン(動物由来の食品はすべて食べない)が含まれていた。 主要アウトカムはLDL-C、HbA1c、収縮期血圧の変化(介入前と介入後)の群間差の平均で、副次的アウトカムは体重とエネルギー摂取量の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・1,878例を含む20件の試験が解析に組み込まれた。平均介入期間は25.4週間(範囲:2~24ヵ月)であった。CVD患者を対象とした試験は4件、糖尿病患者を対象とした試験は7件、2つ以上のCVDリスク因子を有する高リスク者を対象とした試験は9件であった。・菜食生活を平均6ヵ月間行うことで、LDL-Cが6.6mg/dL(95%信頼区間[CI]:-10.1~-3.1)、HbA1cが0.24%(95%CI:-0.40~-0.07)、体重が3.4kg(95%CI:-4.9~-2.0)減少した。・菜食と収縮期血圧との関連は有意ではなかった(-0.1mmHg、95%CI:-2.8~2.6)。・GRADE評価によるエビデンスの質は、LDL-CとHbA1cの減少については「中」であった。 これらの結果より、研究グループは「菜食生活は、CVDのリスクが高い人において、標準治療を上回るLDL-C、HbA1c、体重の有意な改善と関連していた。CVD患者における健康的な菜食生活の効果を明らかにするためには、さらなる質の高い試験が必要である」とまとめた。

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暑い季節になりやすい腎臓結石のリスクを下げる方法

 夏の暑い時期には、腎臓結石による耐え難い痛みが発症しやすい。ただし幸いなことに、水分摂取量を増やしたり、食生活を少し変えたりすることで、結石をできにくくすることが可能だ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのMegan Bollner氏は同大学発のリリースの中で、それらのヒントを紹介している。同氏は、「一度結石ができてしまうと10年以内に再発する確率が最大50%程度に上る。とはいえ、再発する腎臓結石の危険因子の多くは、自分自身でコントロールできるものだ。特に食習慣を変えることが、大きな違いを生む可能性がある」と話している。 腎臓結石は、尿の色が透明でなく、濃い色になっている状態で起こりやすい。結石は、シュウ酸カルシウムなどのミネラルの結晶が元になって形成される。最初のうちは砂粒ほどの小さなものだが、大きく成長すると尿の流れを妨げたりする。症状は、強い腰痛、吐き気、嘔吐、発熱、悪寒、血尿などだ。約10人に1人が生涯のうちに一度は腎臓結石を発症し、男性は女性よりそのリスクがやや高い。米国腎臓財団によると、同国では毎年50万人以上が腎臓結石のために緊急治療を受けているという。ただし、症状の現れない人もいる。 再発の原因として、家族歴、食習慣、肥満、糖尿病、慢性的な脱水状態、炎症性腸疾患などが挙げられる。では、再発を防ぐにはどうすればよいのだろうか。Bollner氏は次のような推奨を掲げている。・水分を積極的に取って、尿を薄める。腎臓結石を患ったことがある人なら、1日にコップ8~12杯飲むとよい。・暑くて汗をかいた場合は、さらに多く水を飲む。・水にレモンまたはライムを加える。それらに含まれているクエン酸は、シュウ酸とカルシウムが結合して結石ができるのを抑えるように働く。・塩分摂取量を減らす。塩分の取り過ぎで尿中のカルシウムの量が増加するため。また減塩は血圧を低下させ、血圧の管理は腎臓にメリットをもたらす。 もう一つのヒントは、カルシウムが豊富な食品を食べることだ。カルシウムは腎臓結石の形成に関係しているため、このヒントは直感的に予防戦略に反するように思えるかもしれない。しかしカルシウムは腸内でシュウ酸と結合して、シュウ酸を尿ではなく便の中へ排泄するように働く。カルシウムが豊富な食品として、乳製品、大豆、豆類、緑色の野菜(ケールやブロッコリー)などが挙げられる。また、果物や野菜を多く取ることも、尿中のクエン酸を増やして腎臓結石の予防に役立つ。 一方、動物性タンパク質を過剰に摂取すると、腎臓結石の発生リスクが高まる。摂取量を控え目にした方がよい動物性タンパク源としては、赤身肉だけでなく、鶏肉、豚肉、魚、卵も含まれる。 また、一般に健康的とされることの多い食品もシュウ酸を含んでいて、腎臓結石の形成に寄与する可能性がある。例えば、ほうれん草、ビート、ナッツ、小麦胚芽などだ。これらの食品のシュウ酸のみであればリスクになる可能性は低いものの、ほかの食品と合わせたシュウ酸摂取量の合計が大きくなるようなケースでは、過剰摂取にならないように量を考えながら取るべきだ。そして、シュウ酸を多く含む食事をした時は、その後の食生活に気を付けたり、乳製品を付け足したりするとよい。

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英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?【1分★医療英語】第92回

第92回 英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?Is there any possibility that you may be pregnant now?(現在、妊娠している可能性はありますか?)No, I’m not pregnant.(いいえ、妊娠していません)《例文1》Have you ever been pregnant before?(これまでに妊娠したことはありますか?)《例文2》She is expecting.(彼女は妊娠しています)《解説》女性の患者さんに画像検査や処方を行う際、妊娠の可能性について聞く必要がありますが、英語ではどのように聞けばよいでしょうか。こういったときは、“pregnant”(妊娠している)という形容詞を使うと便利です。最もシンプルな表現としては、“Are you pregnant now?”(現在、妊娠していますか?)と聞くことができます。とはいえ、本人に妊娠の自覚がない場合でも妊娠している可能性があるため、“Is there any possibility that you may be pregnant now?”(現在、妊娠している可能性はありますか?)といった丁寧な表現で聞くことが望ましいでしょう。また、妊娠を表す他の単語としては、“expect”(期待する、予期する)という動詞を使って“She is expecting.”という表現を使うこともあります。これは“She is expecting a baby.”を略したもので、「子供を期待している」、つまりは「妊娠している」「出産を控えている」という意味になるのです。講師紹介

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日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。 研究デザインは、8年間のフォローアップによるコホート研究。参加者は、40~74歳の地域在住の日本人1万3,802人。2011~13年に自己記入式アンケートを含むベースライン調査を実施した。アウトカムは、介護保険データベースから収集した認知症発症、予測因子は、アルコール摂取量および喫煙とした。共変量は、人口統計、ライフスタイル要因、BMI、一般的な健康状態、脳卒中歴、糖尿病歴、うつ病歴とした。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳。・1週間当たりのエタノール量が1~149g、150~299g、300~449gの群は、対照群と比較し、調整ハザード比(HR)が有意に低く、有意な線形関連性は認められなかった。・飲酒歴、健康状態が不良、病歴を有する人を除外した場合、HRは1に向かい増加が認められた(各々、HR:0.80、0.66、0.82)。・喫煙レベルが高いほど、用量依存的にHRが高く(調整p for trend=0.0105)、1日当たり20本以上の喫煙群では、調整HRが有意に高かった(HR:1.80)。・多量飲酒者(1週間当たりのエタノール量:449g以上)において、喫煙習慣のある人は認知症リスクが高かったが(p for interaction=0.0046)、喫煙習慣のない人では影響が認められなかった。

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糖尿病腎症の病期が網膜症と黄斑浮腫の発症・重症度に関連

 糖尿病腎症の病期が、糖尿病網膜症・黄斑浮腫の発症リスクおよび重症度と、独立した関連のある可能性を示すデータが報告された。JCHO三島総合病院の鈴木幸久氏、自由が丘清澤眼科(東京)の清澤源弘氏の研究によるもので、詳細は「Biomedicines」に5月22日掲載された。 かつて長年にわたって成人の失明原因のトップであった糖尿病網膜症(DR)は、近年の治療の進歩により失明を回避できることが多くなった。とはいえ、緑内障や加齢黄斑変性と並び、いまだ失明の主要原因の一角を占めている。また糖尿病ではDRが軽症であっても黄斑浮腫(DME)を生じることがある。黄斑は眼底の中央に位置し視力にとって重要な網膜であるため、ここに浮腫(むくみ)が生じるDMEでは視力が大きく低下する。DMEの治療も進歩しているが、効果が不十分な症例が存在すること、高額な薬剤の継続使用が必要なケースのあることなどが臨床上の問題になっている。 一方、DRと同じく糖尿病による細小血管合併症に位置付けられている糖尿病腎症(DN)では、血圧上昇や浮腫が生じやすい。DRやDNはいずれも高血糖が主要なリスク因子だが、DNはそれに伴う高血圧や浮腫という高血糖とは異なる機序によっても、DRやDMEのリスクを押し上げている可能性がある。清澤氏らはこれらの点を、以下のケースシリーズ研究によって検討した。 研究対象は、三島総合病院の眼科を受診した2型糖尿病患者261人(平均年齢70.1±10.1歳、男性54.8%)。このうち127人(48.7%)にDR、64人(24.5%)にDMEが認められた。DMEが認められた患者は全てDRを有していた。 DR群と非DR群を比較すると、年齢、性別、BMI、血清脂質値、および高血圧や虚血性心疾患の有病率には有意差がなかった。一方、DR群の方が糖尿病罹病期間が長く、過去のHbA1cの平均値および最高値が高いという有意差があった。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が低く(56.2±26.4対67.1±17.0mL/分/1.73m2)、DNの病期が進行していた(1~5期の病期分類で2.4±1.2対1.4±0.6)。 次に、DRの発症・重症度、およびDMEの発症・重症度という4項目それぞれを目的変数とし、性別、糖尿病罹病期間、BMI、過去のHbA1cの平均値・最高値、血清脂質値、高血圧や虚血性心疾患の既往、およびRAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方を説明変数とする多重回帰分析を施行。その結果、糖尿病の罹病期間が長いことや平均HbA1cとともに、DNの病期がDRおよびDMEの発症と重症度の全てに、それぞれ独立して関連していることが明らかになった。 例えば、DME発症に対して、糖尿病罹病期間はオッズ比(OR)1.33(95%信頼区間1.01~1.75)、平均HbA1cはOR5.52(同1.27~24.1)、DNの病期はOR2.80(同1.37~5.72)だった。性別やBMI、血清脂質値、高血圧や虚血性心疾患の既往、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方は、DRおよびDMEの発症や重症度と独立した関連が示されなかった。HbA1c最高値はDRの発症についてのみ、有意な説明因子として抽出された。 このほか、単変量解析からは、eGFRはDRおよびDMEの発症や重症度と有意な負の相関があり、アルブミン尿は有意な正の相関があることが示された。RAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方は、いずれに対しても有意な関連が見られなかった。 以上を基に著者らは、「糖尿病腎症が糖尿病による網膜疾患の発症と進展に関与している可能性が考えられ、腎症の病期は糖尿病網膜疾患の予測因子となり得る」と結論付けている。

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8月4日 栄養の日【今日は何の日?】

【8月4日 栄養の日】〔由来〕「えい(8)よう(4)」(栄養)と読む語呂合わせから、栄養を学び、体感することをコンセプトに、食生活を考える日とすることを目的に日本栄養士会が制定。同会では、この日を中心に「栄養週間」として、全国の管理栄養士・栄養士とともに「栄養をたのしむ」生活を応援している。関連コンテンツすぐに使える!糖尿病の食事指導スライド食べ出すと止まらないスナック菓子への対処法【患者指導画集 Part2】野菜不足の患者さんにひと言【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】亜鉛欠乏はCKD進行のリスク因子か食物繊維の摂取とうつ病・不安との関係~メタ解析

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アフターコロナの今、「MR不要論」を考える

 COVID‐19の拡大後、MR数は減少傾向にあり、製薬企業の営業拠点の見直し等も急速に進んだ。アフターコロナにおいて、製薬企業担当者は本当に必要なのだろうか? この疑問について、医師・製薬企業・メディカルスタッフ、それぞれの立場から率直に語り合う機会が設けられた。2023年7月22日(土)、第10回日本糖尿病協会年次学術集会のEXPERT社員シンポジウムで語られた内容を抜粋して紹介する。MRの情報提供は医師に求められていないのか? 医療用医薬品の情報提供には、厳格な法規制があることはよく知られる。具体的に、競合品との比較データや症例紹介が不可となる場合が存在する。反面、臨床現場からは、同効薬の使い分けや効果を発揮しやすい症例像への情報ニーズは高い。そのため、医薬情報担当者であるMRは、自分たちの提供する情報と医療者が求める情報に「乖離がある」と認識しているようだ。2023年6月実施のMR1,407名を対象としたアンケート調査の結果では、「求めたい情報提供に乖離はありますか?」の回答結果は「乖離がある」(17%)、「やや乖離がある」(67%)と乖離を感じるMRが大半であり、「乖離はない」と回答したMRは17%だった。また「情報提供の障壁となっているものは何ですか?(複数回答)」という質問では「面会できない」(74%)が最多で、次いで「販売情報提供ガイドライン」(54%)が挙げられた。 では、実際に医療者側はどう思っているのだろうか? 実は、まったく同じ調査が医師626名を対象に行われている。結果、「情報提供の乖離」に関しては「乖離はない」(51%)が最多で、「情報提供の障壁」に関しても「障壁はない」(57%)が最も多かった。つまり、MRが思うほど、医師にとってMRとの面会価値は低くはないことになる。医療者側の考えるMRの価値とは シンポジウムに登壇した医師からは、コロナ禍で受動的な医局説明会や文献提供がなくなり、現在は能動的なWeb経由での情報収集やWeb講演会の聴講等にシフトしたが、依然「MRによる情報提供も必要」との意見があがった。 具体的に「企業担当者がいて助かったこと」について、医師およびメディカルスタッフのエピソードが紹介された。 医師が助かった例として、臨床現場で疑問が生じた際の迅速なメール対応や地域医療連携および会合のサポート、患者差別や疾患への偏見を減らすための疾患啓発活動が挙げられた。同様に、メディカルスタッフからは添付文書のニュアンスの確認や薬物相互作用に関する論文紹介、食事・運動療法に関する患者向けの資材提供や研修会の案内が役立ったとの声があがった。その一方で、「不快なMR」として、薬の販売に躍起になって情報提供がおろそかになっている場合やレスポンスが遅いケース、周辺知識の不足等が指摘された。MRはどう振る舞うべきか 製薬企業側の代表者も登壇し、今後目指す形として、アフターコロナは、リアル面会とオンライン面会を併用し、ITツールを活用しての情報提供を行うことや、医療従事者に寄り添った活動を心掛けること、とくに自己研鑽を行い、信頼をしてもらうように務めるべき、と発言した。糖尿病協会で行っているEXPERT社員認定制度やe-ラーニング、積極的な学会参加を通じて、医療従事者のニーズを把握し、デジタルを活用しながら、ありとあらゆる形で医療者との関係構築を目指すという。 アフターコロナもMRは忙しい医療従事者の情報ニーズを埋める役割を担うと期待されているようだ。 質問すると、さっと返事が返ってきて助かるという声がある一方、添付文書改訂を知らせにしか来ないとの声もある。MRが医療者に適切な情報を提供するには、疾患への深い知識が必須となる。「患者さんの声」を企業に伝えるためにMRが必要だという意見もあり、いずれにせよ薬剤の情報を熟知し説明できる能力こそが今後の評価軸となる。 アフターコロナのMRの在り方は、EXPERT社員認定などの形で底上げを図り、医療従事者の一員であると自覚し、何より自信を失わないことが重要であるようだ。

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手術前はオゼンピックやウゴービの使用を控えるべし

 米国麻酔科学会(ASA)が6月29日、話題の肥満症治療薬であるオゼンピックやウゴービ(いずれも一般名はセマグルチド)の使用者で、全身麻酔を伴う手術を受ける予定のある人は、手術前日、または手術当日にこれらの薬剤の使用を控えるべきだとする指針を提示した。 糖尿病治療薬として知られるオゼンピックやウゴービを含むGLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を促すとともに食欲抑制効果を有することから、肥満症治療薬としても注目を浴びている。GLP-1受容体作動薬には、胃の消化運動を抑制して摂取した食べ物をより長く胃の中にとどめておく作用がある。そのため、この薬剤を使用すると、食べる量が減り、それが減量につながる。 しかし、全身麻酔や深鎮静に際しては、胃の中に残存している食べ物は患者の嘔吐リスクを増大させる。ASA会長のMichael Champeau氏は、「胃の中に食べ物が残っていないはずなのに、手術の直前に患者が嘔吐したことが報告されている。そのような事例報告や症例報告を耳にしてすぐに、われわれは、GLP-1受容体作動薬の作用や効果に思い当たった」と話す。 ASAは、GLP-1受容体作動薬を使用している人には、手術前に使用を中止するよう勧めている。例えば、同薬剤を1日1回使用している場合には、手術当日の朝に1日分の使用を、週に1回使用している場合には、手術が終わるまで使用を控えるべきだという。「GLP-1受容体作動薬を毎週日曜日に使用している人が水曜日に手術を受けるのなら、手術前の日曜日には使用してはならない。週1回の使用なら、少なくとも手術の前の週から中止しなければならない」とChampeau氏は補足している。 患者が手術前日に夕食を控えるよう指示されるのには理由があるという。Champeau氏は、「麻酔薬が最初に発見された1840年代には、エーテルで眠らせた患者が嘔吐し、肺に吸い込まれた吐瀉物がひどい肺炎を起こしたり、患者が死んでしまうことが何度も起きた。当時、胃の中に食べ物が残っていると、このようなことが起こり得ることを、誰も知らなかったからだ。これは、全身麻酔の主要な合併症であり、その発生を最小限にとどめるための方法を見つけ出さなければならないことが、非常に早い段階で明らかになった」と説明する。 以上のような理由から、麻酔科医は手術前の絶食時間にこだわる。Champeau氏は、「われわれ麻酔科医は、常に人々をいら立たせているといっても過言ではない。患者が与えられた指導に従わず、手術当日の朝、サンドイッチやトースト、卵などを食べてから手術に臨むと、患者と外科医の双方をいら立たせることになる。なぜなら、基本的にはそうした患者には手術を開始せず、決められた時間、待たせることにしているからだ」と話す。 Champeau氏は、糖尿病をコントロールするためにGLP-1受容体作動薬を使用している患者について、「同薬剤の使用を所定の期間を超えて控える場合には、別の糖尿病治療薬に変更して糖尿病をコントロールしなければならないため、糖尿病を管理している医師のところに行く必要があるだろう」と説明している。 なお、米ジョンズ・ホプキンス大学によれば、GLP-1受容体作動薬にはオゼンピックやウゴービの他に、デュラグルチド(商品名トルリシティ)、エキセナチド(商品名バイエッタ)、リラグルチド(商品名ビクトーザ)、リキシセナチド(アドリキシン、日本での販売名はリキスミア)などがある。

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1回の内視鏡治療で2型糖尿病患者のインスリン治療が不要になる可能性

 1時間ほどの内視鏡治療で、2型糖尿病患者のインスリン治療が不要となる可能性を示唆する研究結果が、米国消化器病週間(DDW2023、5月6~9日、米国・シカゴ)で報告された。アムステルダム大学(オランダ)のJacques Bergman氏らの研究によるもの。同氏はDDW2023に合わせて開催されたメディア対象ブリーフィングにおいて、「1回の介入で少なくとも1年間は治療効果が維持された。この治療法は2型糖尿病の管理を大きく変えるかもしれない」と語った。 検討された新たな治療法は、電気パルスを用いて十二指腸の粘膜の表層を切除する内視鏡手術で、「Recellularization via electroporation therapy(ReCET)」と名付けられている。この治療法が奏効するメカニズムはまだ完全には理解されていない。ただし研究者らは、十二指腸のシグナル伝達の異常のためにインスリン抵抗性が生じている状態で、組織構造を維持したまま、シグナル伝達が劣化した細胞のアポトーシスと再生を誘導することが、インスリン感受性の回復につながると考えている。また、熱などを用いるアブレーションと異なり、組織へのダメージが少ないため、治療に伴う合併症のリスクが低いことも、この手法のメリットとして挙げられるという。 今回発表された研究は、この治療法に必要な技術を所有している米国のEndogenex社の資金提供により実施された。基礎インスリンにより血糖管理されている28~75歳の14人の2型糖尿病患者を対象とするパイロット研究であり、全員に対してこの治療を施行。手技は約1時間で終了し、全員が当日に帰宅した。その後、2週間にわたりエネルギー量が管理された流動食を摂取。2週間後からはGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドの投与を開始し、1mg/週まで増量した。内視鏡治療に伴う重篤な有害事象は発生しなかった。 12カ月後の追跡調査で、86%(14人中12人)は、インスリンを使用することなく血糖コントロールを維持していた。空腹時血糖値は、158mg/dLから119mg/dLに、HbA1cは7.2%から6.6%へと有意に改善し、また肝臓内の脂肪量が50%以上低下していた。研究者によると、セマグルチドによる治療のみでもインスリン療法が不要になることがあるが、その割合は通常、投与された患者の20%程度にとどまるとしている。Bergman氏は、「今後3カ月以内に大規模な研究が開始される予定で、それが成功すれば3~5年後には、この手技が2型糖尿病患者の新たな治療選択肢になるのではないか」と話している。 この報告について、米SSMヘルス・セント・アンソニー病院のPooja Singhal氏は、「この処置には多くの可能性がある。血糖値をコントロールする治療ではなく疾患を修飾する治療であって、画期的な方法と成り得る」と述べている。ただし、「この処置が2型糖尿病の改善においてどのような役割を果たすかについて確かな結論を出すには、より多くの研究が必要である」とも話している。 また、今回の研究では肝臓内の脂肪蓄積に対しても顕著な好ましい影響が認められたことに関してSinghal氏は、「肝疾患の治療という点でも非常に興味深い結果だ」と指摘。同氏によると、「非アルコール性脂肪性肝疾患は、今後数年で重度の肝線維化や肝硬変の最大の原因となるだろう」とのことだ。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。また、Bergman氏はEndogenex社の顧問を務めている。

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睡眠リズムの乱れで若年者の血圧上昇に対する内臓脂肪の影響が増大する

 若年者では、血圧上昇に対する内臓脂肪組織(VAT)の影響は、睡眠リズムが乱れると増大するという研究結果が「Hypertension」に3月6日掲載された。 VATは心血管代謝系の健康状態に影響し、また両者は同時に睡眠リズムの影響を受けることが知られている。米ペンシルベニア州立大学医学部のNatasha Morales-Ghinaglia氏らが行った今回の後ろ向きコホート研究では、VAT(肥満)が心血管代謝系の健康状態(血圧)に影響を及ぼす際における調整変数(moderator)としての睡眠リズムの役割について検討した。 対象はPenn State Child Cohortに参加した若年者303人(平均年齢16.2±2.2歳、女性47.5%)。アクチグラフを用いて7晩にわたり、総睡眠時間および標準偏差、睡眠中央時刻(就寝時刻から起床時刻までの中央の時刻)および標準偏差を、通学日・非通学日、平日・週末別に算出した。睡眠中央時刻および標準偏差(睡眠の不規則性)が、VATと収縮期血圧(SBP)/拡張期血圧(DBP)との関連に対する調整変数となるか否かを、多変量線形回帰モデルにより人口統計学的因子、総睡眠時間および標準偏差を調整して解析した。VATは二重エネルギーX線吸収スキャンにより測定し、血圧は座位で測定した。 その結果、全体としてのSBPおよびDBPについて、VATと睡眠の不規則性との間に有意な交互作用が認められた(P値はそれぞれ0.007、0.022)。ただし、睡眠中央時刻は有意でなかった。また、平日の通学日のSBPおよびDBPについて、VATと睡眠中央時刻との間に有意な交互作用が認められた(P値はそれぞれ0.026、0.043)。さらに、平日の非通学日のSBPについて、VATと睡眠の不規則性との間に有意な交互作用が認められた(P=0.034)。 著者らは、「今回の結果から、睡眠・覚醒相が不規則であることは、睡眠時無呼吸症候群や睡眠不足とは無関係に、中心性肥満に伴う心血管疾患の発症を助長する可能性がある」と結論。その上で、「われわれの研究は、若年者の睡眠と心血管疾患の問題に対する、行動面からの、また薬物による介入の重要性を示すものであり、トランスレーショナルな観点からも、公衆衛生学的な予防と臨床的ケアの両面で極めて意義深い」と付言している。

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動脈硬化疾患の1次予防に積極的な脂質管理の幅が広がった(解説:平山篤志氏)

 脂質低下療法にスタチンが広く用いられるが、筋肉痛などの副作用を訴える場合があり、スタチン不耐性と呼ばれ使用できない患者がいて、脂質への介入がなされていない場合がある。心血管疾患の既往のある患者の2次予防では、エゼチミブあるいはPCSK9阻害薬を使用してでも脂質低下が行われる。しかし、1次予防の動脈硬化疾患発症リスクの高い対象、たとえば糖尿病患者では脂質低下療法が行われていないことが多く、さらにスタチン不耐性では放置されていることが多い。 本論文は副作用でスタチンを服用できないスタチン不耐性患者を対象に、ベムペド酸(bempedoic acid)を投与したアウトカム試験、CLEAR試験のサブ解析である。CLEAR試験は心血管疾患の既往のある2次予防患者と既往のないハイリスクの1次予防患者を対象としており、ベムペド酸投与によりプラセボと比較してLDL-コレステロールと高感度CRPを有意に低下させ、4ポイントMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、血行再建術)を有意に減少させることを示した。あらかじめ規定されていたサブ解析でも、2次予防だけでなく1次予防でもベムペド酸の有効性が示されていたが、今回は1次予防患者の詳細な結果が報告されている。 CLEAR試験にエントリーされたうちの心血管イベントの既往のない患者4,206例で、計算されたリスクスコアが高い、冠動脈の石灰化が著明、糖尿病がある、などの動脈硬化疾患のリスクが高い対象である。平均LDL-Cが142.2mg/dLで、糖尿病患者が3分の2近く含まれていた。LDL-Cと高感度CRPの低下とともに、心血管イベントの有意な抑制がベムペド酸投与により示された。また、その低下効果も本試験より大であった。この対象群ではNNTが42~44と十分な有効性があった。 実臨床で、どうしても1次予防になると患者教育も難しく、また、副作用の懸念があると脂質低下に逡巡するが、この結果はハイリスク症例、とくに糖尿病患者に積極的な介入が必要であることを痛感させる。ただ、残念ながら、わが国では動脈硬化疾患の発生リスクが低いこと、エビデンスがないことから、どうしても脂質低下療法に消極的になる傾向がある。健康寿命の重要性が叫ばれる今日、目の前にいる患者が10年、20年先に健康でいられるようにするには、今から積極的な介入が必要なのかもしれない。ベムペド酸はそのための1つの武器となりえるかもしれない。

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