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DEVOTE 試験の臨床的意義

 2型糖尿病治療、とくにインスリン治療において低血糖管理は重要な問題だ。重症低血糖は心血管イベントリスク増加に関与し、患者さんの心理的負担も大きい。臨床でも、低血糖リスクの低いインスリン製剤を選択することが重要となる。これに関して今後の薬剤選択に影響を与えるデータが先日、ADAで発表された。心血管系リスクの高い2型糖尿病患者を対象にしたDEVOTE試験である。 DEVOTE試験の発表を受け、2017年7月4日都内にて、「インスリン治療の最新動向と今後の展望~第77回米国糖尿病学会の最新報告より~」と題するセミナーが開かれた(主催:ノボ ノルディスク ファーマ株式会社)。演者は、門脇 孝氏 (東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授)。 以下、セミナーの内容を記載する。二重盲検CVOT試験であるDEVOTE 試験 DEVOTE試験は、基礎インスリンのインスリン デグルデクとインスリン グラルギンU100の2製剤を比較した二重盲検CVOT(心血管アウトカム)試験である。インスリン注射の臨床試験はオープンラベルで行われるものが多いが、本試験はバイアルを用いた二重盲検試験だ。この点について、門脇氏は「グラルギンかデグルデクか医療者側もわからない、という点は試験結果を評価するうえでも重要な点だ」とコメントした。 試験対象は、心血管リスクが高い2型糖尿病の成人患者7,637例(デグルデク群3,818例、グラルギン群3,819例)で、1日1回夕食~就寝の間に、デグルデク群またはグラルギン群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。デグルデク群はグラルギン群に対して、MACEで非劣性を示した 主要評価項目として、3-point MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)が設定された。その結果、デグルデクのグラルギンに対する非劣性が検証され(ハザード比:0.91、95%信頼区間[CI]:0.78~1.06、非劣性のp<0.001)、デグルデクはグラルギンと比較して心血管リスクを増加させないことが示された。 24ヵ月時点での2群の平均HbA1c値に有意差はなく、平均空腹時血糖値は、デグルデク群がグラルギン群よりも有意に低下していた(128±56 vs.136±57mg/dL、p<0.001)。重大な低血糖発現では、デグルデク群が優越性を示した 副次評価項目である重大な低血糖の発現件数に関しては、デグルデク群が優越性を示した(率比:0.60、95%信頼区間[CI]:0.48~0.76、優越性のp<0.001)。さらに、デグルデク群は夜間の重大な低血糖の発現件数を53%有意に低下させた。その他の有害事象の発生については、両群で差はなかった。 今回のDEVOTE試験では、心血管系リスクの高い2型糖尿病患者においてデグルデクが対照薬よりも重大な低血糖リスクが低いことが示された。これはデグルデクの他の臨床試験(BEGIN、SWITCH2)とも一貫性のある結果であった。「低血糖の心配がなければ、もっと積極的に治療する」と考える医師は多い インスリン治療において低血糖管理は重要な問題である。インスリン療法に対する医師の考えを調査した結果によると、「低血糖の心配がなければもっと積極的に治療する」との回答が7割を占めるという。医学的アウトカムも重要だが、低血糖への懸念が払拭され、患者さんのQOLが保たれるという、心理的アウトカムも同時に達成されることは、インスリン治療では重要といえるだろう。 門脇氏は、この点を踏まえ「DEVOTE試験で、デグルデクのMACEに関する非劣性と重大な低血糖リスクの有意な減少が検証されたことは、今後の治療選択においても意義深い結果である」と述べ、講演を終えた。

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カナグリフロジンによる心血管・腎イベントの抑制と下肢切断、骨折の増加(解説:吉岡 成人 氏)-694

SGLT2阻害薬による心血管イベント抑制 SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが、心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者において心血管死、総死亡、さらに腎イベント(顕性腎症の発症、血清クレアチニン値の倍増、腎代替療法の導入、腎疾患による死亡)を抑制するとEMPA-REG OUTCOME試験およびそのサブ解析で示されて以降、カナダ糖尿病学会、米国糖尿病学会の提唱するガイドラインでは、心血管リスクの高い患者におけるSGLT2阻害薬の使用を推奨している。 心血管イベント、腎イベントの抑制の機序に関しては、SGLT2阻害薬の利尿作用、腎における腎尿細管糸球体フィードバック機構への影響のみならず、血中ケトン体が増加することによる心筋や腎におけるエネルギー代謝の変化、ヘマトクリットの増加による腎への酸素供給の増加などの、一般の臨床医が想像しなかったようなメカニズムが提唱されている。このような背景をもとに、エンパグリフロジン以外のSGLT2阻害薬でも同様な臨床効果が期待されるのかどうか、カナグリフロジンを用いたCANVAS(Canagliflozin Cardiovascular Assessment Study)プログラムの結果に大きな興味が持たれていた。CANVASプログラムとCANVAS試験、CANVAS-R試験 CANVASプログラムはカナグリフロジンの第III相試験として2009年に開始されたCANVAS試験と、米国でのカナグリフロジン発売後に開始されたCANVAS-R試験によって構成されている。CANVAS試験のみでは心血管安全性を評価するための追跡人・年が不足するためにCANVAS-Rが追加試験として2014年に開始され、アルブミン尿の進展抑制を主要評価項目とし、心血管安全性を副次評価項目としている。 今回の心血管安全性の評価では、CANVASとCANVAS-Rを統合して解析がなされている。対象は心血管疾患リスクが高い2型糖尿病10,142例。標準的な薬物療法にカナグリフロジンないしはプラセボを追加する無作為化二重盲検試験で、追跡期間は平均3.6年であった。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントの発生率であり、カナグリフロジン投与によりこれらの心血管リスクが有意に低下(カナグリフロジン群:26.9/1,000人年、プラセボ群:31.5/1,000人年、ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.75~0.97、p=0.02)しており、非劣性のみならず優越性が示された。さらに、カナグリフロジン群ではアルブミン尿の進展が27%抑制され、腎複合エンドポイント(eGFR低下、腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)において40%の抑制が認められた。下肢切断と骨折のリスク 心血管イベントや腎リスクの低下は確認されたものの、カナグリフロジン群で下肢切断のリスクが約2倍に増加していた(カナグリフロジン群:6.30/1,000人年、プラセボ群:3.37/1,000人年、ハザード比:1.97、95%信頼区間:1.41~2.75)。足趾、中足骨レベルでの切断のみならず、足関節、膝下、膝上のレベルでの切断の総計も2.03倍増加している(カナグリフロジン群:1.82/1,000人年、プラセボ群:0.93/1,000人年、ハザード比:2.03、95%信頼区間:1.08~3.82)。さらに、骨折についても転倒骨折の頻度がCANVAS試験単独で1.56倍(カナグリフロジン群:12.98/1,000人年、プラセボ群:8.31/1,000人年、ハザード比:1.56、95%信頼区間:1.18~2.06)増加しており、全骨折の頻度もCANVAS試験単独で1.55倍、CANVASプログラムとして1.26倍に増加している。 平均年齢63.3歳、女性比率35.5%という対象において、下肢切断の頻度、骨折の頻度は日本人よりもはるかに高い。足病変の進展については体内の水分量の減少に伴う下肢末梢における血圧や血液循環の低下、骨折については、Ca利尿の増加、血中リン濃度やPTHの上昇による骨塩量の減少などが原因として推定されるが結論は得られていない。米国保健局(FDA)からは、2015年9月、2016年5月にカナグリフロジンと骨折、下肢切断に関する安全性情報がすでに報告されており、今回さらにリスクが強調される結果となった。カナグリフロジンの投与量と国内における情報提供 CANVASプログラムはカナグリフロジン100mg、300mg、プラセボ群がそれぞれ1:1:1の割合で、CANVAS-Rでは、100mgから開始され300mgまで増量が可能な群とプラセボ群が1:1の割合で構成されている。日本国内におけるカナグリフロジンの投与量は100mgであり、国内で認められている用量を超えた試験であるため、CANVASプログラムについて製薬メーカーが国内でプロモーションを行うことが規制されている。「ディオバン事件」の影響かと思われるものの、事実を歪曲した広告は厳に慎むべきではあるが、過剰とも思われる規制もいかがなものであろうか。

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BMI正常でも低体重で生まれた女性の糖尿病に注意

 出生時体重は成人発症型糖尿病(DM)の胎児決定因子とみなされているが、BMIとの関連における公衆衛生上の重要性は不明である。今回、国立がん研究センターの片野田 耕太氏らが実施した女性看護師コホートでの研究で、出生時体重およびその在胎期間でのパーセンタイルスコアが成人発症型DMと関連すること、またBMIが正常低値の女性において出生時体重が2,500g未満だった人は成人発症型DMリスクが高いことが示唆された。Journal of epidemiology誌オンライン版2017年6月20日号に掲載。 本研究では、日本ナースヘルス研究(JNHS)コホートにおける2001~07年のベースライン調査として自記式調査を実施した。女性看護師のボランティア参加者4万9,927人のうち、年齢30歳未満もしくは不明、現在妊娠中、30歳以前のDM発症、コア変数が不明な参加者を除外し、30歳以上の2万6,949人のデータを用いた。DM診断歴と出生時体重との関連性についてロジスティック回帰を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、親のDM既往歴の調整後、出生時体重とDMの間に線形の逆相関が認められた。・出生時体重100g増加当たりのDM発症のオッズ比は0.93(95%CI:0.90~0.96)であった。・在胎期間により出生時体重をパーセンタイルスコアに変換しても、関連性は同様であった。・BMIの層別解析では、BMIが正常低値(18.5~20.9)である女性において、出生時体重2,500g未満群の3,000~3,499g群に対するDMのオッズ比は4.75(95%CI:1.22~18.44)であった。

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認知症予防の新たな標的、グルコースピーク

 平均血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)は、認知症および認知障害のリスクと関連している。しかし、この関連における血糖変動やグルコース変動の役割は不明である。米国・ジョンズホプキンス大学公衆衛生学大学院のAndreea M. Rawlings氏らは、1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)レベルの測定により、中年期におけるグルコースピークと認知症および20年の認知機能低下リスクとの関連を調査した。Diabetes care誌7月号の報告。 コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究の約1万3,000例を対象に調査を行った。認知症は、動向調査、神経心理学的テスト、対象者またはその代理人との電話、認知症による死亡より確認した。認知機能は、3回の神経心理学的テストを20年間にわたり3回実施し、zスコアで示した。Coxモデル、線形混合効果モデルを使用した。1,5-AGレベルの10μg/mLで二分し、HbA1cの臨床的カテゴリ内で調査した。 主な結果は以下のとおり。・21年間の中央期間において、認知症は1,105例で発症した。・糖尿病患者では、1,5-AGの5μg/mL減少ごとに、推定認知症リスクが16%増加した(ハザード比:1.16、p=0.032)。・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)未満の対象者の認知機能低下については、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、20年間で0.19のzスコア上昇を示した(p=0.162)。・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)以上の対象者の中で、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、0.38のzスコア上昇を示した(p<0.001)。・糖尿病のない患者では、有意な関連が認められなかった。 著者らは「糖尿病患者では、グルコースピークが認知機能低下や認知症の危険因子となることが示唆された。平均血糖に加え、グルコースピークを標的とすることは、予防のための重要な手段となりうる」としている。■関連記事1日1時間のウオーキングで認知症リスク低下:東北大認知症予防に柑橘類は効果的か:東北大認知症の糖尿病合併、どのような影響があるか

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インスリン デグルデク vs.グラルギン、心血管転帰は?/NEJM

 2つの基礎インスリン製剤デグルデク(商品名:トレシーバ)とグラルギン(同:ランタスほか)について、心血管イベントリスクが高い2型糖尿病患者を対象に有効性および安全性を比較検討した結果、デグルデクはグラルギンに対して、主要な心血管イベントの発生に関して非劣性であることが示された。米国・リサーチメディカルセンターのSteven P. Marso氏らが行った「DEVOTE」試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年6月12日号で発表された。デグルデクは1日1回投与の持効型インスリンで、小児~成人への使用が承認されている。先行研究では非盲検試験において、デグルデクはグラルギンよりも血糖降下の日内・日差変動が小さく低血糖の発生頻度も低いことが示されていたが、心血管安全性についてはデータが示されていなかった。20ヵ国438施設で7,637例について二重盲検無作為化試験 DEVOTE試験は20ヵ国438施設で、二重盲検無作為化、treat-to-target、心血管アウトカムevent-driven法にて行われた。対象は、心血管リスクが高い2型糖尿病の成人患者で、1日1回夕食~就寝の間に、インスリン デグルデクまたはインスリン グラルギン U100を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、主要な心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の初発の複合で、評価はtime-to-event解析にて行われた。事前に規定された非劣性マージンは1.3であった。また、副次評価項目として重大な低血糖(米国糖尿病学会の定義で判定)、その夜間発生の頻度、イベント発現頻度などについて評価した。 2013年11月~2014年11月の間に、7,637例の患者が無作為化を受けた(デグルデク群3,818例、グラルギン群3,819例)。このうち6,509例(85.2%)が、心血管疾患または慢性腎臓病(CKD)と診断されていた。被験者のベースライン時の平均年齢は65.0歳、糖尿病の平均罹病期間は16.4年、平均糖化ヘモグロビン値は8.4±SD 1.7%。また、83.9%(6,409例)がベースラインでインスリン投与を受けていた。主要心血管イベントの発生、デグルデクはグラルギンに対し非劣性 主要アウトカムの発生は、デグルデク群325例(8.5%)、グラルギン群356例(9.3%)であった(ハザード比:0.91、95%信頼区間[CI]:0.78~1.06、非劣性のp<0.001)。 24ヵ月時点で、平均糖化ヘモグロビン値は、各群で7.5±1.2%で有意差はなかった(事後解析において推定治療差0.01%、95%CI:-0.05~0.07、p=0.78)。一方で、平均空腹時血糖値は、デグルデク群がグラルギン群よりも有意に低下した(128±56 vs. 136±57mg/dL、p<0.001)。 事前規定の重症低血糖の発生頻度は、デグルデク群187例(4.9%)、グラルギン群252例(6.6%)、絶対差は1.7%であった(率比:0.60、優越性のp<0.001、オッズ比:0.73、優越性のp<0.001)。 有害事象の発生について、両群で差はなかった。

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昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 3

不倫はして良いの?これまで、なぜ不倫は「ある」のかという問いへの答えが分かってきました。それでは、不倫はして良いのでしょうか? バレなければ良いのでしょうか?その答えは、不倫は、価値観や生き方の違いであるため否定はしないですが、そのリスクやダメージを考えると推奨もしない、つまり、しない方が良いということです。ここで誤解がないようにしたいのは、一夫一妻の心理と同じように不倫の心理も進化の産物だからといって、不倫が肯定されるわけでは全くないです。例えば、私たちが甘いものをつい口にしてしまうのは原始の時代に生存のために進化した嗜好です。だからと言って、飽食の現代に甘いものを食べ過ぎて糖尿病になることを私たちは決して良しとはしないでしょう。同じように、原始の時代と違い、現代の社会構造が大きく違うため、不倫は適応的とはならないということです。その社会構造の違いを主に3つあげてみましょう。1)少子化1つ目は、少子化です。合計特殊出生率は、戦後しばらくまで4後半であったのが、2016年には1前半にまで下がり続けています。つまり、かつては子どもが4、5人いるのが当たり前だったのに、現代は1、2人でしかも一人っ子の方が多いという状況です。先ほどにも触れましたが、子どもが数人いる状況で不倫をして1人くらい婚外子がいても、許される傾向にありますが、子どもが少ない状況で不倫をすると、許されない傾向にあり、離婚のリスクが高まります。実際に、2人の子どもがいる利佳子の夫は離婚を回避しましたが、子どもがいない紗和の夫はけっきょく離婚を選択しています。よって、現代は、少子化によって、不倫による離婚リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。2)情報化2つ目は、情報化です。1990年代以降の情報革命により、お互いの行動が、良くも悪くも、透明化されるようになりました。かつては不倫してバレそうになってもうやむやで済んでいたのに、現代はSNSをチェックしたり、携帯電話の履歴を確認したり、GPSを駆使すれば、証拠が揃い、ほとんどバレてしまいます。実際に、利佳子の夫は、GPSを使って利佳子の不倫の現場を押さえています。さらに、子どもができた場合は、DNA鑑定により、夫の子なのか不倫相手の子なのかはっきりさせることもできます。よって、現代は、情報化によって、不倫の露見リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。3)パトロール化3つ目は、パトロール化です。不倫は、少子化や情報化によりバレやすく許されにくい状況から、個人だけでなく、社会の厳しい目にさらされるようになりました。有名人の不倫や隠し子(婚外子)にしても、かつては噂や週刊誌の報道があっても個人の問題として緩く扱われていたのに、現代は詳細な証拠がネット上に上がり、個々人のツイッターなどで意見が発信されることで社会の問題として議論され、厳しく取り締まられ、パトロールされるようになりました。実際に、紗和の不倫を知ったパート先の同僚たちは、紗和に冷たい態度を取ります。ちなみに、この世間のパトロール化は、不倫に限らず、いじめ、体罰、パワハラ、DV、虐待など様々なモラルの問題にも広がっています。よって、現代は、パトロール化によって、不倫への排斥リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。不倫をしないためにどうすれば良いの?先ほどの不倫はして良いのかという問いへの答えは、しない方が良いでした。さらに強調したいのは、原始の社会から環境が大きく変わってしまった現代の文明社会において、甘いものへの嗜好を知ることで糖尿病にならないようにするのと同じように、不倫の心理をよく知ることで不倫に陥らないようにすることができるのではないかということです。利佳子は、まだ不倫をしていない紗和との初対面の時、何となく万引きしてしまった紗和を見抜いて、「ご主人と温かい家庭を築いてらっしゃる?」と皮肉を言い、紗和の満たされない気持ちを言い当てています。つまり、不倫をするには、先ほど整理した不倫の危険因子が潜んでいる可能性があるということです。逆に言えば、不倫の危険因子をよく知り、その対策を練ることで、予防することができるのではないかということです。ここから、不倫をしないためにどうすれば良いかの問いへの答えを、3つにまとめてみましょう。1)ルールの共有1つ目は、ルールを夫婦で共有することです。利佳子は、夫が一方的に決めたルールに完全服従をしていたため、不満がたまっていました。紗和は、夫と表面的なかかわりしか持たず、満たされていません。このように結婚生活での相手への不満を、感情的にネガティブに押さえ込むのではなく、改善点としてポジティブに理性的に言い合い、夫婦のルール作りをすることです。また、家事や育児などで協力や連携をあえてすることです。これは、お互いの仕事にほとんど干渉しない完全分業制ではなく、仕事を時間で分担するシフト制にすることでもあります。もちろん、分担の比率は、共稼ぎであれば半々であったり、夫が正社員で妻がパートの場合は3対7になるなど夫婦の働き方の状況によっても様々でしょう。ポイントは、0対10にしないようにすることです。そうすることで、お互いのやっていることを評価し合うことができます。さらに、ルールを達成したことによるご褒美やルールに反したことによるペナルティを事前に相談して決めることです。ご褒美としては、趣味、スポーツ、旅行などいっしょに楽しむ時間を設けるのも良いでしょう。ペナルティとしては、肩もみなどの奉仕も良いでしょう。そうすることで、物理的であれ心理的であれ、その夫婦の距離を縮めることができます。2)セックスの共有2つ目は、セックスを夫婦で共有することです。セックスが一方的であったり、紗和の夫のようにセックスレスのままであるのではなく、どんなセックスを望むか夫婦でオープンにしていることです。その前段階として、普段からスキンシップやキスなどの愛情表現をまめにしていることも重要です。そして、お互いがセックスで満足するため、そのバリエーションやシチュエーションを変えるのも良いでしょう。場合によっては、妻の排卵期で、夫はより野性味を演出する必要があるかもしれません。そうすることで、夫婦の性的な距離を縮め、お互いの性処理の不足を満たすことができます。3)心の共有3つ目は、心を夫婦で共有することです。利佳子が「3年で冷蔵庫扱い」と表していたように、「愛は4年で終わる」と唱える学者もいます。これは、子どもが4歳になり身体的自立ができる年数であり、進化心理学的には、愛が4年続きさえすれば生殖の適応度を保てたのでしょう。しかし、現代の夫婦関係は、原始の時代のように性欲という「愛」だけでつながっているわけではありません。お互いがお互いを特別な相手として大事にし合い必要とし合う連帯意識でもつながっています。そのわけは、社会が高度に複雑化した現代だからこそ、子どもが心理的自立をする10代まで引き続き子育てを協力してできるように、家族機能を維持する必要があるからです。例えば、それは、いっしょに苦労をして、その苦労をねぎらい、相手の幸せを願うことです。つまり、夫婦関係は、愛情だけでなく「情」でもつながっているということです。そして、大事なことは、夫婦関係とは、性欲による単純なものではなく、「情」が愛情を強化し維持するという複合的なものであるということを理解することです。そうすることで、夫婦の愛情欲求と承認欲求を満たすことができます。「倫(みち)」とは?不倫に陥った紗和、利佳子、裕一朗のそれぞれの夫婦が、もしも先ほどのルールの共有、性の共有、心の共有を行っていたら?おそらく不倫に陥ることはなく、このドラマは成り立たないことになってしまうでしょう。彼らから私たちが学ぶことは、夫婦のより良い信頼関係を築くことです。さらには、親子の、家族の、地域の、そして社会のより良い信頼関係を築くことでもあります。そのためには、相手のことだけでなく、相手の家族、友人、ご近所、職場などより多くの見えない人たちにも思いを馳せることです。その大切さを理解した時、私たちは、決して「不倫」ではなく、より良い「倫(みち)」を、相手といっしょに突き進んでいくことができるのではないでしょうか?<< 前のページへ1)亀山早苗:人はなぜ不倫をするのか、SB新書、20162)ジャレド・ダイアモンド:人間の性はなぜ奇妙に進化したのか、草思社文庫、20133)榎本知郎:性器の進化論、化学同人、2010

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第37回

第37回:潜在性甲状腺機能亢進症はどのような時に治療すべきか?監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム TSH、Free T4を臨床の場や人間ドックで測定することはよくありますが、FreeT4が正常、TSHが基準値より低値を示す場合があり、稀に潜在性甲状腺機能亢進の状態を認める患者と遭遇することがあるかと思います。こういった場合にどのようなリスクを考え、どのような患者に対して治療や専門家への相談を行うべきでしょうか。今回の記事では、潜在性甲状腺機能亢進症に対する米国甲状腺学会の治療方針について紹介したいと思います。 以下、American Family Physician 2017年6月1日号より1) より<潜在性甲状腺機能亢進症とは>潜在性甲状腺機能亢進症はFreeT4とT3値が正常であるが、TSHが低値または検出されない状態と定義される。潜在性甲状腺機能亢進症はTSH値で2つのカテゴリーに分類される。1)TSH値が低値だが検出される(たいていは0.1~0.4mlU/L)2)TSH値が0.1mlU/L以下である潜在性甲状腺機能亢進症は、内因性に過剰に甲状腺ホルモンが作られたり、甲状腺がんを抑制するために甲状腺ホルモンの内服を行っていたり、甲状腺機能低下症の患者に対し過剰に甲状腺ホルモン補充療法を行った結果生じる。内因性の潜在性機能亢進症の最も頻度の高い原因としては、Graves(Basedow)病、中毒性甲状腺結節、中毒性多結節性甲状腺腫(プランマー病)が挙げられる。一時的な甲状腺TSHの抑制の原因としては、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、産後甲状腺炎が挙げられる。潜在性甲状腺機能亢進症の最も多い原因は、甲状腺ホルモン補充療法によるものである。低TSHが、潜在性甲状腺機能亢進症によるものか、その他の甲状腺の機能亢進と関係しない原因によるものかを病歴などから鑑別する必要があり、その他の原因としては、ドパミンやグルココルチコイドの使用、Sick Euthyroid Syndrome(低T3症候群)、TSH産生下垂体腺腫などが挙げられる。<どのような影響があるのか?>これまでの研究では、潜在性甲状腺機能亢進症と心血管系イベントや骨折のリスクについての関係性が示唆されている。最新の研究では、TSH値が0.1以下の潜在性甲状腺機能亢進症の患者で、とくに高齢者における心血管系イベントや骨折のリスクに対してのエビデンスが明らかとなってきている。<心血管系への影響>平均心拍数の増加、心房細動と心不全のリスク、心左室の腫瘤形成、拡張不全、心拍数の変動性を減少させる。とくに65歳以上の患者において、Euthyroidの患者と比較すると、潜在性甲状腺機能亢進症の患者は心血管系のイベントが多くなる。<骨・ミネラルの代謝への影響>すべての甲状腺機能亢進を来す病態において、骨代謝回転の増加や、骨密度(とくに皮質骨)の減少を認め、骨折のリスクとなることが明らかとなっている。<いつ治療を考慮するべきか?>米国甲状腺学会では、以下のような推奨を出している。治療を行うべき場合TSH値が持続的に0.1mlU/L未満の患者の中で、1)年齢が65歳以上の場合2)65歳未満においては、心疾患・骨粗鬆症の既往や、甲状腺機能亢進による症状を有する場合3)65歳未満、閉経後でエストロゲンやビスホスホネートの内服がない場合治療を考慮すべき場合TSH値が持続的に0.1mlU/L未満の患者の中で、1)TSH値が0.1~0.4mlU/Lである65歳以上の患者2)TSH値が0.1mlU/L未満で無症状の65歳未満の患者3)TSH値が0.1~0.4mlU/Lで無症状だが心疾患の既往がある、または甲状腺機能亢進による症状が存在する65歳未満の患者4)TSH値が0.1~0.4mlU/Lで無症状の閉経後女性で、エストロゲンやビスホスホネートの内服のない65歳未満の患者※本内容にはプライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、 詳細に関しては原著に当たることを推奨いたします。 1) DONANGELO I,et al. Am Fam Physician. 2017;95:710-716

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FFRジャーナルClub 第5回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第5回目の今回は、2017年にupdateされた安定型虚血性心疾患(SIHD:stable ischemic heart disease)の冠血行再建に関するAppropriate Use Criteria(AUC)のポイントを読んでいきたいと思います。第5回 AUC改訂のポイントAUCはさまざまな臨床シナリオを設定し、複数名の専門家がそれぞれの治療適応を判定したものであり、2009年に初めて報告された。2012年に初回のupdateが行われ、今回は2回目のupdateとなる。虚血の評価法としてFFRの重要性が大きく取り上げられた点で、興味深いものである。Patel MR, et al. ACC/AATS/AHA/ASE/ASNC/SCAI/SCCT/STS 2017 Appropriate Use Criteria for Coronary Revascularization in Patients With Stable Ischemic Heart Disease: A Report of the American College of Cardiology Appropriate Use Criteria Task Force, American Association for Thoracic Surgery, American Heart Association, American Society of Echocardiography, American Society of Nuclear Cardiology, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, Society of Cardiovascular Computed Tomography, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2017;69:2212-2241.Fihn SD, et al. 2014 ACC/AHA/AATS/PCNA/SCAI/STS focused update of the guideline for the diagnosis and management of patients with stable ischemic heart disease: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines, and the American Association for Thoracic Surgery, Preventive Cardiovascular Nurses Association, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2014;64:1929-1949.以前のAUCからの改訂点をまとめると。1.急性冠症候群(ACS)に対するものと、安定虚血性心疾患(SIHD)に対するものを別々にまとめることとなった。これはすでにACC/AHAの冠血行再建に対するガイドラインが、同様に分けて作成されているのでそれに従ったものである。2.臨床シナリオには、自覚症状、非侵襲検査によるリスクレベル、病変の広がり(病変枝数)に、冠血流予備量比(FFR)、糖尿病の有無、SYNTAXスコアが加えられた。3.AUCカテゴリー名称を変更した。Score 7 to 9:Appropriate careScore 4 to 6:May be appropriate careScore 1 to 3:Rarely appropriate care4.腎移植、TAVI前の冠血行再建に関するシナリオが追加・評価された。5.FFRの使用がより多くのシナリオに組み込まれた。AUCのスコアを決定するための因子は1.臨床徴候(虚血症状が惹起される運動レベルなど)2.抗狭心症薬の使用3.非侵襲的虚血検査の結果(虚血の存在および重症度)4.併存症・危険因子の存在(糖尿病など)5.解剖学的な病変の広がり(病変枝数、左主幹部病変の存在、LAD近位部病変の存在の有無)6.CABG既往の有無7.IVUSやFFRの所見(FFR≦0.80を心筋虚血の所見と定義されている)非侵襲的検査におけるリスク評価高リスク(死亡・心筋梗塞のリスク3%以上)1.安静時心エコー:低心機能(LVEF<35%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常≧10%(心筋梗塞の既往を除く)3.負荷心電図所見:低負荷にて2mm以上のST低下、または負荷時のST上昇、または負荷時のVT/VF4.負荷誘発性の心機能低下:最大負荷時のLVEF<45%、あるいは負荷時のLVEF低下が10%以上5.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が10%以上、あるいは負荷時のスコアが多枝病変を示唆するもの6.負荷SPECT:負荷時左室拡大7.負荷誘発性の壁運動異常が冠動脈走行の2枝以上の領域にわたるもの8.ドブタミン負荷心エコー図:ドブタミン低用量(≦10mg/kg/min)あるいは低心拍数(<120 beats/min)にて壁運動異常が出現するもの9.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)>40010.冠動脈CT:多枝病変(≧70%狭窄が複数枝にわたる)あるいは左主幹部病変(≧50%狭窄)中等度リスク(死亡・心筋梗塞のリスク1~3%)1.安静時心エコー:軽度/中等度心機能低下(LVEF 35~49%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常5~9.9%(心筋梗塞の既往を除く)3.労作性の症状出現時ECGにて1mm以上のST低下4.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が5~9.9%、あるいは負荷時のスコアが1枝病変を示唆し、負荷時左室拡大を伴わないもの5.負荷誘発性の壁運動異常が狭い範囲(冠動脈走行の1枝領域)に限定6.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)100~3997.冠動脈CT:高度狭窄(≧70%狭窄)を1枝に認める、あるいは中等度狭窄(50~69%狭窄)を2枝以上に認める低リスク(死亡・心筋梗塞のリスク<1%)1.Treadmill心電図:低リスクTreadmill score(≧5)、あるいは最大負荷量に達した時点でST変化・胸部症状の出現なし2.負荷・安静SPECT:安静時灌流異常がなく、負荷時灌流異常が<5%3.負荷心エコー図:負荷時壁運動異常の出現なし、あるいは増悪なし4.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)<1005.冠動脈CT:有意狭窄(>50%)を認めない冠動脈バイパス術(CABG)既往のないSIHD病変枝数(1~3枝)、左主幹部病変によって分けられる。それぞれの病変部位、リスク評価、虚血評価の状況によりシナリオが分けられている。さらに、無症候、有症候、抗狭心症薬投薬の有無、薬剤数(1種類あるいは2種類以上、薬剤としてはβ遮断薬が推奨されている)、治療戦略(PCIあるいはCABG)ごとにAppropriate Use Scoreが記載されている。1枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するAA:抗狭心症薬、BB:β遮断薬Left dominant LCX:RCAがhypoplastyであり、LCXの灌流範囲が2枝相当のもの。非侵襲的検査によりリスク評価を行う。非侵襲的検査が行われていないか、あるいはその結果が診断的でない場合はFFRを計測し、FFR≦0.80を虚血所見とする。LAD proximal、dominant LCXのproximal病変以外の場合は、低リスクであればRarely appropriate careにランクされる。2枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無が、とくに血行再建選択(PCI or CABG)において大きな要素となる。負荷試験が行われていない(あるいは結果が診断的でない)場合は、2枝病変の両病変においてFFRが陽性であることが記載されており、機能的2枝病変のみが含まれる。1枝においてFFR陰性であれば、1枝病変におけるシナリオにて判定される。3枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無とともに、病変の複雑性が血行再建選択(PCI or CABG)の大きな要素となる。その1つの指標としてSYNTAXスコアが用いられている。左主幹部病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大する孤立性で入口部あるいはLMT中間部のLMT病変において、有症候性の場合は、PCIがAppropriate careにランクされていることは特筆すべきである。解剖学的に複雑となる場合は、CABGがより推奨されるが、多枝病変であってもSYNTAX≦22で、内服下に有症候性であればPCIはMay be appropriate careにランクされる。LMT bifurcation lesionに、その他の部位のbifurcation lesion、diffuse lesionを合併し、SYNTAXスコア>22となるような複雑病変では、PCIはRarely appropriate careにランクされる。解説:今回は、血行再建に対するAUC update版の中で、SIHDに対するもの、その中でもCABG既往のない症例の臨床シナリオを紹介した。すべてのシナリオにおいて、非侵襲的検査によるリスク評価の結果、および抗狭心症薬内服下での虚血症状の有無がその判断に大きな位置を占めていることがわかる。あくまでも安定した狭心症、という前提であるが、術前にしっかりと患者全体像を把握したうえで血行再建の適応を考慮すべき、ということを示している。内服開始後に症状の消失を確認せずにPCIを考慮することも多々あると思われるが、1枝・2枝病変で、かつ低リスクの場合はRarely appropriate careにランクされる。このAUCをそのまま日本の臨床に当てはめることはできないが、非侵襲的なリスク評価が重要である、という点は再認識すべきである。日本の日常臨床を2012年版AUCに当てはめると、ACSでは約80%がappropriate、3%がinappropriateであったのに対し、SIHDではinappropriateが約30%に及んでいた(Inohara T, Kohsaka S, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2014;7:1000-1009.)。その1つの原因として、日本では冠動脈CTは広く普及している一方、負荷心筋シンチグラムや負荷心エコー図は行える施設が限定されている点が挙げられる。しかし最近のFFR guide PCIのエビデンスの蓄積により、本AUCではFFRによる虚血評価を基に、適切な治療方針を立てる戦略が組み込まれた。さらには、冠動脈CT後に引き続きFFR-CTを計測することの有用性についても言及されている。FFRの臨床的有用性が確立されたものと言え、FFR使用を強く後押しするものである。日本版のAUCは、現在CVITが“standardized PCI”として思案されているが、第三者から見て「とても外れたことでない」という標準がどこにあるのかを示し、各々が認識しておくことは重要と思われる。術者側の独り善がりの判断にならないよう、ある一定の基準作りが望まれている。本AUC策定により、米国ではPCI件数が大幅に減少したことが知られている。その背景には、AUCから大きく外れた医師・施設には保険会社から支払いがなされない、という事象が起きたことにもよる。そのような状況を受けてか、本文中にAUCの役割として、「日常臨床のパターンを評価するための基礎を提供するものであり、診療careの質の向上を目指すためのものである。個々の症例の支払いの判断に使われるべきではない」、ということが強調されている。“Appropriate care”にランクされたものは血行再建が必須というものではなく、また“Rarely appropriate care”にランクされたものも血行再建を行うことを完全に否定するものではない、という点が重要である。最終的には個々の症例の全体像を鑑みて、最終的な治療方針が決定されるべきである。

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米国内科専門医試験、出題内容と実臨床の一致率は約7割/JAMA

 米国で内科医の資格を得るには、米国内科試験委員会(American Board of Internal Medicine:ABIM)の認定資格維持(Maintenance of Certification:MOC)試験に合格することが必須である。その出題内容について、実際に内科医が遭遇する割合は、およそ7割であることが、米国・ABIMのBradley Gray氏らが行った検討で明らかにされた。結果について著者は、「現行の内科(IM)-MOC試験内容は、実際の診療内容を反映した妥当なものと言えるが、31%の設問が実態と合致しておらず、この点については改善の余地がある」とまとめている。JAMA誌2017年6月13日号掲載の報告。全米外来診療調査と全米退院調査を基に、実際の診療内容を調査 研究グループは、2010~13年のIM-MOC試験の内容について、出題された設問のうち、糖尿病、虚血性心疾患、肝臓病といった186カテゴリーの病状に関するものが、実際の外来・入院患者の診療において内科医が遭遇する状況と、どの程度合致するのかを検証した。 全米の状況を反映する一般内科の診療内容については、2010~13年の全米外来診療調査(National Ambulatory Medical Care Surveys)の1万3,832件の主診断と、2010年の全米退院調査(National Hospital Discharge Survey)の10万8,472件の主診断を活用した。 IM-MOC試験に出題された病状のうち、一般内科医が実際に遭遇した病状との一致率を算出した。外来診療のみでは約6割、入院診療のみでは約4割の一致 2010~13年のIM-MOC試験で出題された問題数は合計3,600題だった。そのうち、186の病状カテゴリーに関連した設問は3,461題(96.1%)だった。症状カテゴリー当たりの平均設問数は18.6題。 出題された3,461題のうち、実際の外来・入院患者の診療内容と一致したのは2,389題(158病状カテゴリー)だった(69.0%、95%信頼区間[CI]:67.5~70.6)。 個別にみると、外来診療のみでは、実際の診療内容と一致したのは2,010題(145病状カテゴリー)で一致率は58.08%(95%CI:56.43~59.72)。入院診療のみでは1,456題(122病状カテゴリー)で一致率は42.07%(同:40.42~43.71)だった。

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肥満高齢者に対するダイエット+(有酸素運動+筋トレ)併用療法はフレイル防止に有効 ?(解説:島田 俊夫 氏)-689

 肥満治療をダイエットのみで行えば高齢者では筋肉、骨量の減少を加速し、サルコペニア、オステオペニアが生じやすい。肥満は一般集団では多数の疾患の危険因子となる1)一方で、高齢者では肥満パラドックス2)が注目を浴びている。それゆえ過度な減量を避け、食事・運動療法を適宜組み合わせ、体力・筋力温存維持に努めることが健康寿命の延長につながる。本研究はDennis T. Villareal氏らによるNEJM誌2017年5月18日号に掲載された、高齢者肥満治療の重要ポイントを指摘した興味深い論文である。方法:160人の肥満高齢者を対象とした臨床試験で、体重減量により生じるフレイルや筋肉・骨量の減少を防ぐために複数の運動モデルの効果が試された。参加者は4群からなり、体重調整プログラム3群([1]有酸素運動プログラム、[2]筋肉トレーニング・プログラム、[3]両者の併用プログラム)と、コントロール群(ダイエット、運動療法なし)に無作為に割り付けた。 主要評価項目はベースラインから6ヵ月間の身体機能検査スコアの変化(スコア範囲:0~36、高スコアはより良好な機能を示す)、副次評価項目は他のフレイル尺度、身体成分、骨密度、身体機能の変化とした。結果:全体で141人(88%)が研究を完遂した。身体スコアは、有酸素運動群(29.3から33.2点に)、筋トレ単独群(28.8から32.7点に)ともに14%増加した。併用群は21%(27.9から33.4点に)と大幅に増加した(いずれもボンフェローニ補正後、p=0.01およびp=0.02)。同スコアは運動実施群すべてで対照群よりも大幅に増加した(いずれの群間比較においてp<0.001)。最大酸素消費量(mL/kg/分)は併用群17%(17.2から20.3に)、有酸素運動群18%(17.6から20.9に)で、筋トレ群8%(17.0から18.3に)に比べ大幅に増加した(両方ともp<0.001)。筋力は有酸素運動単独群で4%(265から270kgに)と小幅な増加にとどまったが、併用療法群18%(272から320kgに)、筋トレ群19%(288から337kgに)はともに大幅に増加した(両方の比較に対してp<0.001)。体重はすべての運動実施群で9%減少したが、対照群では有意な体重変化はなかった。股関節骨密度(g/cm2)も同様に、併用療法群1%(1.010から0.996に)、筋トレ群0.5%(1.047から1.041に)と両群で減少するも、有酸素運動群の3%(1.018から0.991に)と比較し減少の程度は軽かった。また、除脂肪体重も併用療法群3%(56.5から54.8kgに)、筋トレ群2%(58.1から57.1kgに)と両群で減少したが、有酸素運動群5%(55.0から52.3kgに)の減少と比べ、わずかな減少にとどまった(すべての比較に対してp<0.05)。 運動に関連した有害事象は筋・骨格障害などが報告された。コメント:本論文でダイエット+(有酸素運動+筋トレ)併用運動療法群が高齢肥満者のダイエット単独治療の問題点であるサルコペニアやオステオペニアを防止しながら適切な肥満是正可能な治療法だと報告した。著者の結論に賛同したいが症例数が少なく、症例の偏りもあり結論を一般化するには症例の蓄積が必要と考える。また、高齢者では潜在的心疾患患者が含まれる可能性も高く、運動療法中の事故を回避するため治療前リスク評価は必要不可欠である。日常生活に今回の結論をうまく取り入れれば高齢者を脅かす認知障害、フレイルを含む生活習慣病対策になるかもしれない。 ■参考1)Calle EE, et al. N Engl J Med. 1999;341:1097-1105.2)Oreopoulos A, et al. Clin Geriatr Med. 2009;25:643-659.

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DASHダイエットは、痛風・高尿酸血症にも有効な「長生きダイエット」!(解説:石上 友章 氏)-688

 高血圧は、生活習慣病の代表的な疾患であり、重要な心血管リスクである。本邦では4,000万人が罹患している、国民病といっていい疾患である。生活習慣病というくらいなので、実のところ適切な生活習慣を守れば、血圧を上げることもなく、医師や降圧薬の厄介になる必要もなくなる可能性がある。医療費が増え続けるといっても、その源が、日々の乱れた食生活にあるのであれば、国をあげて節制すれば、医療費も節約できるはずだ。 こうした考えで、米国保健福祉省の国立衛生研究所に属する国立心肺血液研究所(NHLBI)が、高血圧を予防し治療するために推奨している食事療法が、DASHダイエットである。DASHダイエットのDASHは、Dietary Approaches to Stop Hypertensionの頭文字からとられているように、「高血圧」対策のための食事療法である。DASH食の中身は、果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く摂取し、塩分、砂糖などで甘くした飲料、赤身や加工肉の摂取を抑えた食事で、とくにレシピの指定はなく、食材を選択することが勧められている1)。 米国・マサチューセッツ総合病院のSharan K. Rai氏らは、2017年5月9日号のBMJ誌に掲載した論文で、DASHダイエットが、高血圧のみならず、痛風・高尿酸血症の抑制にも効果があることを報告している。健康な生活を送る秘訣は、食生活にあった。この当たり前のようにもみえる研究は、実に26年間もの長期にわたる観察研究の成果である。26年間、1年おきに律儀にアンケート調査に答えた44,444人の参加者(男性の医療関係者)に、深甚なる敬意を表したい。 稲作や、牧畜が人類にもたらした恩恵は、計り知れない。定住と、食の供給を安定させることで、今日の人類の繁栄の礎となったのは、間違いない。しかし、より健康に、より長く生きて過ごしたいのであれば、穀類の精製をやめ、狩猟採集民の食生活に合わせることが必要らしい。直近のBMJ誌で、高尿酸血症が、腎結石と痛風以外に確実なヘルスケアアウトカムには影響を与えなかったと報告されている2)。両論文を合わせてご覧になると、理解が深まるかもしれません。

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「夏場に太りやすい」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第6回

■外来NGワード「夏場は少しくらい痩せるものですよ」「普通、冬に体重は増えるものですよ」「冷たいものばかり、飲んでいるからじゃないですか!」「家の中で何か運動しなさい!」■解説 一昔前は「冬になると太るが、夏になると痩せる」と言われていましたが、最近では「夏場に太る」という患者さんも出てきました。その原因として、暑さのためにビールなどのアルコール飲料やジュース類の摂取が増えること、運動不足になることが、容易に想像できます。そのほかの原因としては、食生活の変化が考えられます。そうめん、冷ややっこ、スイカなど、あっさりとしているようで意外と高カロリーな食品の摂り過ぎです。以前は夏バテしている人も多かったのですが、元気な人は夏になっても食欲が落ちません。まずは、「夏に強い」ことを褒めてあげたいものですね。また、最高気温が27℃以上になるとアイスクリームがよく売れると言われていますが、寝る前にアイスクリームを食べる習慣の患者さんがいます。内臓脂肪の蓄積には、アイスクリームやジュースの多食多飲が関係しているとの報告もあります。患者さんの夏場の食生活を確認した後で、夏場の体重増加予防対策を、患者さんと一緒に立てることができるようになるといいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師検査結果が少し悪くなってきたようですね患者やっぱり…夏になると体重が増えてきて…。医師なるほど。この暑さで夏バテする人も多いですが、暑くても何でも食べることができるのは元気な証拠ですね(ポジティブに対応)。患者ハハハ。けど、この体重を何とかしないと…。医師そうですね。夏場に太りやすい人には特徴があるんですよ(前置きをする)。患者それはどんな特徴ですか?(興味津々)医師普段と比べて、食べるものが変わります。それも特徴的なものがあるんです。患者とくに変わっていないと思うんですけど…(気付いていない発言)。医師なるほど。暑くなると、食べたくなるものはありませんか?患者そうですね。暑いのであっさりしたものが欲しくなりますね。そうめんとか。医師そうめんは、のどごしも良いので食べ過ぎてしまいますね。患者家族にも人気ですし、簡単に作れるので、昼に2~3束食べることがあります。医師そうめんは4/5束でごはん1杯くらいのカロリーがあります(ご飯に換算)。そうすると、ご飯2~3杯くらいになるかもしれませんね。患者えっ、そんなにあるんですか(驚きの声)。食べ過ぎですね(気付きの言葉)。ほかにも気を付けたほうがいいものはありますか?医師あっさりしているのに、意外とカロリーが高いものは要注意です!患者それは何ですか?医師たとえば、冷ややっこやスイカ、それに入浴後につい食べたくなるアイスにも要注意ですね。患者あと、ビールですね。いつもより1缶増えています。夏に太る原因がよくわかりました。これからは気を付けます(うれしそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「夏場に太りやすい人には特徴があるんですよ」

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緑内障手術、線維柱帯切除術 vs.低侵襲ステント留置

 近年、緑内障手術ではステント状のデバイスを埋め込む低侵襲の手術が注目され、海外ではさまざまなデバイスが開発されている。カナダ・トロント大学のMatthew B. Schlenker氏らは、ab interno(眼の内側からの)ゼラチンマイクロステント留置の有効性および安全性について、線維柱帯切除術と比較する国際多施設後ろ向き介入コホート研究を行い、両者の間で失敗のリスクや安全性プロファイルに大きな差はないことを明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2017年6月7日号掲載の報告。 研究グループは、2011年1月1日~2015年7月31日の間に、カナダ・トロント、ドイツ・フランクフルト、オーストリア・ザルツブルグ、ベルギー・ルーヴェンの4つの大学病院において、マイトマイシンC併用ab internoゼラチンマイクロステント留置、またはマイトマイシンC併用線維柱帯切除術を受けた、過去に切開手術の既往歴のないコントロール不良の緑内障患者連続症例354眼293例(マイクロステント185例、線維柱帯切除術169例)について、解析した。 主要評価項目は、失敗のハザード比(HR:失敗は、2回の連続した測定で眼圧低下<6mmHg、視力障害を伴う、と定義)、またはクリニックでの穿刺を含む介入にもかかわらず、手術後1ヵ月以上の時点で薬物療法を行うことなく眼圧>17mmHg(完全成功)の割合であった。副次評価項目は、眼圧閾値が6~14mmHg、6~21mmHgまたは薬物療法を受けた場合と同じ値(条件付き成功)の割合、介入、合併症、そして再手術率とした。 主な結果は以下のとおり。・マイクロステント群で、男性が多く(56% vs.43%)、年齢が若く(平均年齢-3歳)、術前視力が良好で(0.4logMAR以下の割合が22% vs.32%)、線維柱帯形成術の割合が多かった(52% vs.30%)が、ベースラインにおけるそれ以外の患者背景は類似していた。・マイクロステント失敗の線維柱帯切除術に対する補正HRは、完全成功に関して1.2(95%信頼区間[CI]:0.7~2.0)、条件付き成功に関して1.3(95%CI:0.6~2.8)、その他の評価項目に関しては類似していた。・25%失敗までの時間は、完全な成功に関してマイクロステントで11.2ヵ月(95%CI:6.9~16.1)、線維柱帯切除術で10.6ヵ月(95%CI:6.8~16.2ヵ月)、条件付き成功に関して、それぞれ30.3ヵ月(95%CI:19.0~未到達)と33.3ヵ月(95%CI:25.7~46.2ヵ月)であった。・概して、白人には失敗のリスク減少との関連があり(補正HR:0.49、95%CI:0.25~0.96)、糖尿病は失敗のリスク増加と関連していた(補正HR:4.21、95%CI:2.10~8.45)。・マイクロステントと線維柱帯切除術で、介入がそれぞれ114件および162件、穿刺施行が43%および31%あり、線維柱帯切除術眼の50%はレーザー縫合糸切離を受けた。・合併症は、それぞれ22件および30件認められたが、ほとんどは一過性であった。・再手術率は、それぞれ10%および5%であった(p=0.11)。

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CANVAS Program が示した1つの回答

 2017年6月23日、都内にて「Diabetes Update Seminar~糖尿病治療における脳・心血管イベントに関する最新研究~」と題するセミナーが開かれた(主催:田辺三菱製薬株式会社)。 演者である稲垣 暢也氏(京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 教授)は、ADAにて発表されたCANVAS Programの結果を受け、「SGLT2阻害薬の脳・心血管イベントに対する有効性が、クラスエフェクトである可能性が高まった」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。EMPA-REG OUTCOMEが残した臨床的疑問 糖尿病患者の脳・心血管イベント発症リスクは、高いことが知られている。Steno-2研究により血糖値だけではなく、血圧、脂質といった包括的なリスクを管理する重要性が示されているが、3つの検査値すべてが目標値まで管理されている患者は20.8%1)との報告もあり、リスク管理は困難なのが実情だ。糖尿病治療におけるイベント抑制は、継続的課題であった。 そんな中、EMPA-REG OUTCOMEが発表され、SGLT2阻害薬による脳・心血管イベント抑制作用に大きな注目が集まった。一方で、「EMPA-REG OUTCOMEでのイベント抑制作用がエンパグリフロジン独自の作用なのか、それともSGLT2阻害薬によるクラスエフェクトなのか」といった臨床的疑問は残されたままであった。CANVAS Program による1つの回答 CANVAS Programは、この疑問に1つの回答を出した。 6月12日、ADAでCANVAS Programの結果が発表され、SGLT2阻害薬カナグリフロジンが脳・心血管イベント発症リスクを低減させる2)ことが示された。CANVAS Programは、30ヵ国、心血管疾患リスクが高い2型糖尿病の患者1万142例を対象にした、2つのプラセボ対照無作為化比較試験「CANVAS」「CANVAS-R」の統合解析プログラムである。 基本とする患者背景はEMPA-REG OUTCOMEと同様だが、大きな違いとして、CANVAS Programには脳・心血管疾患の既往のない患者が3分の1ほど含まれている。 CANVAS Programは被験者を無作為に2群に割り付け、カナグリフロジン(100~300mg/日)またはプラセボをそれぞれ投与し、平均188.2週間追跡した。主要評価項目は、MACE(脳・心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)の発症リスクであった。 この結果、SGLT2阻害薬カナグリフロジンの投与は、主要評価項目の心血管リスクを約14%と有意に低減した。演者の稲垣氏は、EMPA-REG OUTCOMEでCANVAS Programと同様の試験結果が示されていることを受け、「脳・心血管イベントに対する有効性は、SGLT2阻害薬によるクラスエフェクトである可能性が高まった」と述べた。安全性に関する継続的な検証が必要 安全性についてCANVAS Programでは、カナグリフロジン投与により、性器感染症などの既知のSGLT2阻害薬による有害事象の増加が認められたほか、下肢切断リスクを2倍程度増加させることが明らかにされた。重回帰分析の結果、下肢切断リスクは、下肢切断既往、末梢循環疾患既往、男性、神経障害、HbA1c>8%といった因子で高まることから、リスクが高い患者では予防的フットケアなどが求められる。なお、下肢切断リスク増加のメカニズムは不明で、これがクラスエフェクトかドラッグエフェクトかは現時点では判断できない。日本国内における糖尿病足潰瘍の年間切断率は0.05%であり、欧米とアジア人との発生率の違いも含め、今後さらなる解析が待たれる。腎保護作用とSGLT2阻害薬 興味深いことに、CANVAS ProgramとEMPA-REG OUTCOMEの脳・心血管複合イベントリスクの低下率は14%と同じ数値が示されている。SGLT2阻害薬は、尿糖やナトリウムの排泄を促すことで腎保護作用を高める。腎保護作用は脳・心血管イベント抑制にも好影響をもたらすと期待されることから、SGLT2阻害薬による腎保護作用の可能性については、さらなる検証が必要といえるだろう。 カナグリフロジンでは、糖尿病性腎症の進行抑制を期待した国際共同試験「CREDENCE試験」も開始されている。演者の稲垣氏は、「透析患者は増え続けている。進行中のCREDENCE試験の結果にも期待したい」と述べ、講演を終えた。

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全9問消化器は、最近ガイドライン改訂が続いているため、新たなガイドラインはチェックしておきたい。また潰瘍性大腸炎とクローン病については毎年出題されているので、両疾患の相違点を確認しておくことも重要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)胃食道逆流症(GERD)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)コレシストキニンは下部食道括約筋(LES)収縮作用を持つ(b)シェーグレン症候群の合併症に胃食道逆流症(GERD)がある(c)食道粘膜障害の内視鏡的重症度は、自覚症状の程度と相関する(d)非びらん性胃食道逆流症はびらん性胃食道逆流症と違い、肥満者に多いという特徴を持つ(e)除菌治療によるピロリ菌感染率低下により、今後、患者数は減少すると予想されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全8問肝臓については、各々の肝炎ウイルスの特徴と肝細胞がんの新たな治療アルゴリズムを確認しておきたい。膵臓については、膵炎の新たなガイドラインについて出題される可能性があるので、一読の必要がある。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)肝炎について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性肝炎でAST(GOT)>ALT(GPT)は、極期を過ぎて回復期に入ったことを示している(b)de novo B型肝炎は、HBV既往感染者(HBs抗原陰性・HBc抗体陽性・HBs抗体陽性)にステロイドや免疫抑制薬を使用した際にHBV再活性化により肝炎を発症した状態であり、通常のB型肝炎に比べて劇症化や死亡率は低い(c)HBVゲノタイプC感染に伴うB型急性肝炎では、肝炎が遷延もしくは慢性化する可能性がほかのゲノタイプよりも高い(d)B型急性肝炎とキャリアからの急性発症との鑑別にIgM-HBc抗体価が使用される(e)HBs抗原陽性血液に曝露した場合の対応として、 被曝露者がHBs抗原陰性かつHBs抗体陰性であれば十分な水洗いと曝露時のワクチン接種ならびに72時間以内のB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)が推奨されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域については、何といっても白血病が設問の中心である。認定内科医試験では、治療よりも染色の特徴、検査データ、予防因子についてよく出題される傾向がある。このほか、貧血に関する出題も多いので、しっかりと押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性白血病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性骨髄性白血病(AML)MO・M5b・M7では、MPO染色陰性であるため、注意する必要がある(b)急性前骨髄球性白血病(APL)では、白血病細胞中のアズール顆粒内の組織因子やアネキシンIIにより、播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併する(c)AMLのFAB分類M5では、特異的エステラーゼ染色・非特異的エステラーゼ染色とも陽性を示す(d)AMLの予後不良因子は、染色体核型がt(15:17)・t(8:21)・inv(16)である(e)ATRAを用いた治療中にレチノイン酸症候群または分化症候群を発症した場合、治療中断による白血病増悪を考え、ステロイド併用などを行いつつ治療を継続すべきである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 循環器】 全9問循環器領域については、弁膜症や心筋梗塞など主要疾患の診断確定に必要な身体所見と検査所見をしっかり押さえることが重要である。高血圧や感染性心内膜炎の問題は毎年出題されているので、フォローしておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)弁膜症について正しいものはどれか?1つ選べ(a)僧帽弁狭窄症(MS)は、本邦では高齢化に伴い近年増加傾向である(b)僧帽弁狭窄症(MS)では、拡張期ランブルを聴診器ベル型で聴取する(c)僧帽弁狭窄症(MS)では、心音図でQ-I時間が短いほど、II-OS時間が長いほど重症と判定する(d)僧帽弁狭窄症(MS)の心臓超音波検査では、僧帽弁前尖の拡張期後退速度(DDR)の上昇を認める(e)僧帽弁逸脱症(MVP)は肥満体型の男性に多く認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 神経】 全8問神経領域については、今年度も「脳卒中治療ガイドライン2015」と血栓溶解療法の適応に関する出題が予想される。各神経疾患における画像所見、とりわけスペクトとMIBGシンチグラフィは毎年出題されている。アトラス等でしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)脳梗塞について正しいものはどれか?1つ選べ(a)心原性脳塞栓症は、階段状増悪の経過をとることが多い(b)一過性脳虚血発作(TIA)で一過性黒内障の症状を認めた場合、椎骨脳底動脈系の閉塞を疑う(c)TIAを疑う場合のABCD2スコアは、A:Age(年齢)、B:BP(血圧)、C:Consciousness level(意識障害の程度)、D:duration(持続時間)とdiabetes(糖尿病の病歴)の5項目をスコアリングし、合計したものである(d)CHADS2スコア1点の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中発症予防には、ワルファリンによる抗凝固療法が勧められている(e)血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)は、血小板8万/mm3では適応外である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全5問総合内科/救急では、「心肺蘇生ガイドライン2015」や、JCS・GCSスコアリング、確率計算の出題が予想される。2016年12月に「日本版敗血症診療ガイドライン2016」が発表されたので、内容を押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)事前確率25%で感度60%・特異度80%の検査が陽性であった場合の正しい事後確率はどれか?1つ選べ(a)15%(b)20%(c)50%(d)60%(e)80%例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第7回:(b)、第8回:(d)、第9回:(b)、第10回:(b)、第11回:(e)、第12回:(c)【第1回】~【第6回】は こちら

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インクレチン薬で死亡リスク上昇せず、189件のRCTメタ解析/BMJ

 中国・West China HospitalのJiali Liu氏らは、インクレチン関連薬の無作為化試験についてシステマティックレビューとメタ解析を行い、2型糖尿病患者に対するインクレチン関連薬による治療が死亡リスクを上昇させるというエビデンスは得られなかったと報告した。大規模無作為化試験(SAVOR-TIMI 53)において、サキサグリプチンはプラセボと比較して死亡率が高い(5.1% vs.4.6%)傾向が示され、インクレチン関連薬による治療と死亡リスク増加との関連が懸念されていた。BMJ誌2017年6月8日号掲載の報告。インクレチン関連薬の無作為化比較試験189件をメタ解析 研究グループは、GLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬と、プラセボまたは糖尿病治療薬(実薬)を比較した、2型糖尿病患者対象の無作為化試験について、Medline、Embase、the Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、ClinicalTrials.gov.を用いて検索した。収集と解析として、2人の研究者が独立して、引用文献のスクリーニング、バイアスリスクの評価、データ抽出を行った。189件の無作為化試験(合計15万5,145例)が解析に組み込まれた。 統合効果推定値はPeto法を用いて算出し、感度解析には他の統計法を使用した。また、事前に設定された6つの項目(ベースライン時の心血管疾患、インクレチン関連薬の種類、追跡期間の長さ、対照薬の種類、治療の形態、使用したインクレチン関連薬)について、メタ回帰分析にて探索的に異質性を検証した。エビデンスの質の評価にはGRADE法を使用した。インクレチン関連薬の死亡リスクは対照薬と同程度 189件の無作為化試験すべてにおいてバイアスリスクは低~中程度で、そのうち77件では死亡の報告がなく、112件(計15万1,614例)において3,888例の死亡が報告された。 189件をメタ解析した結果、インクレチン関連薬と対照薬の間で全死因死亡に差は認められなかった(1,925/8万4,136例 vs.1,963/6万7,478例、オッズ比:0.96、95%信頼区間[CI]:0.90~1.02、I2=0%、5年間のリスク差:-3イベント/1,000例[95%CI:-7~1]、エビデンスの質:中程度)。 サブグループ解析において、DPP-4阻害薬ではなくGLP-1作動薬で死亡リスクが低下する可能性が示唆されたが、信頼性は低かった。感度解析で効果推定値に重要な差は示されなかった。 著者は、「GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の間に効果の違いがあるかどうか、今後の検証が必要である」とまとめている。

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ここが知りたい!高齢者糖尿病診療ハンドブック

高齢者糖尿病患者を診療するために必要な経験的知識を詰め込みました全患者の約半数を高齢者が占める糖尿病。認知・身体機能が低下した患者に適切な治療を行うには、医師・医療者が高齢者の特徴を踏まえた知識とノウハウを身につける必要があります。学会からEvidenceに基づくガイドラインが公表されるのと軌を一にして、Experienceに根差す実践的な考え方を提示したのが本書です。『ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック』の姉妹書の登場です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ここが知りたい!高齢者糖尿病診療ハンドブック定価3,200円 + 税判型A5判頁数190頁発行2017年5月監修横手 幸太郎編著栗林 伸一/岩岡 秀明Amazonでご購入の場合はこちら

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第3回 脈拍数を活用した糖尿病の運動療法【できる!糖尿病の運動療法】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/)」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、脈拍数を利用した糖尿病の運動療法をお届けします。運動を行う前に2つの注意事項があります。1つは、不整脈などがある場合、脈拍数や心拍数が目安に適さないこと。2つ目は、運動療法の前に、必ず医師の診察を受け、運動について指示通り行うことです。以上を守りながら、運動を行いますが、運動の効果はどのようにしてはかるのでしょうか? そして、効果的な運動を行う際に注意することは?詳しくは、上の画像をクリックして、3分間動画でご確認ください。そのまま患者さんへの指導に使える内容です。

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太っていないNAFLD患者で心血管リスク高い

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は心血管疾患(CVD)発症のリスク因子として知られている。NAFLDの約20%は非肥満者に発症するが、過体重でないNAFLD患者とCVD発症リスクとの関連はまだ解明されていない。今回、京都府立医科大学の橋本 善隆氏らが、わが国のコホート研究の事後解析で調査したところ、過体重でないNAFLD患者でCVD発症リスクが高いことが示された。著者らは、さらなるCVDイベントを防ぐために、過体重でなくともNAFLDに注意を払うべきとしている。Medicine誌2017年5月号に掲載。 本研究は、日本人1,647人の前向きコホート研究の事後解析である。腹部超音波検査を用いてNAFLDを診断した。過体重はBMI≧23と定義し、参加者をNAFLDおよび過体重がどうかによって4つの表現型に分類した。これらの表現型におけるCVD発症のハザードリスクを、ベースライン時の年齢、性別、喫煙状況、運動、高血圧、高血糖、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロールについて調整後、Cox比例ハザードモデルにて算出した。 主な結果は以下のとおり。・CVD発症率は、NAFLDでも過体重でもない人で0.6%、NAFLDだが過体重ではない人で8.8%、NAFLDではないが過体重の人で1.8%、NAFLDかつ過体重の人で3.3%であった。・NAFLDでも過体重でもない人と比較したCVD発症の調整ハザード比は、NAFLDだが過体重ではない人で10.4(95%信頼区間:2.61~44.0、p=0.001)、NAFLDではないが過体重の人で1.96(同:0.54~7.88、p=0.31)、NAFLDかつ過体重の人で3.14(同:0.84~13.2、p=0.09)であった。

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