サイト内検索|page:130

検索結果 合計:4993件 表示位置:2581 - 2600

2581.

がん終末期は減薬を/Cancer

 がん終末期における予防薬の投与はいつまで行われているのか。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLucas Morin氏らは、高齢の進行がん患者における降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬の継続について調査を行い、これらは死亡前1年間においても処方され、しばしば最後の数週間まで続けられていたことを明らかにした。著者は、「終末期の患者において、予防薬が臨床的有用性を達成する可能性は低い。死期が近づいたころの臨床的有用性が限られた薬剤の負担を減らすため、適切な減薬(deprescribing)戦略が必要である」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年3月25日号掲載の報告。 研究グループは、スウェーデンのデータベースを用い、2007~13年に死亡した65歳以上の高齢固形がん患者について、患者が死亡する前1年間における予防薬の毎月の使用と費用を解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は15万1,201例(平均年齢81.3歳)で、死亡前1年間において、平均投与薬剤数は6.9剤から10.1剤に増加していた。・降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬は、しばしば死亡月まで継続されていた。・1人当たりの薬剤費(中央値)は、1,482ドル(四分位範囲[IQR]:700~2,896ドル)に達し、そのうち213ドル(IQR:77~490ドル)が予防薬であった。・予防薬の費用は、肺がんで死亡した高齢患者(1人当たりの薬剤費[中央値]:205ドル、IQR:61~523ドル)と比較して、膵がん患者(補正後群間差:13ドル、95%CI:5~22ドル)、婦人科系がん患者(補正後群間差:27ドル、95%CI:18~36ドル)で高かった。・死亡前1年間を通して、予防薬の費用に関して減少は認められなかった。

2582.

脳卒中リスクを有するAF患者へのアブレーションの有用性/JAMA

 心房細動(AF)患者におけるカテーテルアブレーション戦略は、薬物療法と比較して主要評価項目(死亡・後遺症を伴う脳卒中・大出血・心停止の複合エンドポイント)に有意差は認められなかった。米国・メイヨー・クリニックのDouglas L. Packer氏らが、10ヵ国126施設で実施した医師主導型の多施設共同非盲検無作為化試験「The Catheter Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy for Atrial Fibrillation trial:CABANA試験」の結果を報告した。ただし結果について著者は、「予想よりイベント発生率が低く治療のクロスオーバーが行われていることが、カテーテルアブレーションの治療効果に影響を与えている可能性があり、本試験結果の解釈には注意を要する」としている。カテーテルアブレーションは、AFを洞調律に戻すのに有効であるが、死亡や脳卒中のリスクに対する長期的な影響はわかっていなかった。JAMA誌2019年4月2日号掲載の報告。AF患者約2,000例で死亡・後遺症を伴う脳卒中・大出血・心停止等の予後を比較 研究グループは、2009年11月~2016年4月の期間に、65歳以上、または脳卒中の危険因子(高血圧、心不全、脳卒中の既往、糖尿病、他の心疾患)を1つ以上有する65歳未満のAF患者2,204例を登録し、カテーテルアブレーション群または薬物療法群に1対1の割合で無作為に割り付け、2017年12月31日まで追跡した。 カテーテルアブレーション群では、肺静脈隔離術を実施するとともに、医師の裁量で補助的なアブレーションが追加された。薬物療法群では、ガイドラインに従い標準的なリズム/レートコントロール薬が投与された。 主要評価項目は、死亡・後遺症を伴う脳卒中・大出血・心停止の複合エンドポイント(intention-to-treat解析)。副次評価項目は13項目あるが、今回は3項目(全死亡、全死亡または心血管入院、AF再発)について報告された。主要評価項目に有意差なし、AF再発はカテーテルアブレーション群で有意に抑制 2,204例の患者背景は、年齢中央値68歳、女性37.2%、発作性AF 42.9%、持続性AF 57.1%で、89.3%が試験を完遂した。カテーテルアブレーション群では90.8%(1,006/1,108例)が施術を受け、薬物療法群では27.5%(301/1,096例)がカテーテルアブレーションも受けた。 追跡期間中央値48.5ヵ月において、主要評価項目の複合エンドポイントの発生率は、アブレーション群8.0%(89例)、薬物療法群9.2%(101例)で、有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.65~1.15、p=0.30)。 副次評価項目については、アブレーション群vs.薬物療法群でそれぞれ、全死亡が5.2% vs.6.1%(HR:0.85、95%CI:0.60~1.21、p=0.38)、全死亡または心血管入院が51.7% vs.58.1%(HR:0.83、95%CI:0.74~0.93、p=0.001)、AF再発が49.9% vs.69.5%(HR:0.52、95%CI:0.45~0.60、p<0.001)であった。

2583.

特売卵のコレステロール量は?/日本動脈硬化学会

 卵1個のカロリーについては取り沙汰されることが多く、ご存じの方も多いだろう。先日、JAMAでも卵の摂取量と心血管疾患の発症や死亡率との相関を示す論文が発表され、話題を集めている。では、われわれが日頃食べている卵には、一体どのくらいのコレステロールが含まれるのだろうか? 2019年3月27日、日本動脈硬化学会が主催するプレスセミナーが開催され、「LDLコレステロールと動脈硬化」をテーマに上田 之彦氏(枚方公済病院診療部長、日本動脈硬化学会広報・啓発委員)が登壇した。卵のコレステロールについての論文に関する学会の見解とは? 卵をいくつ食べても良いとしていたこれまでの報告に、待ったをかける結果が報告された。上田氏によると、卵によるコレステロール摂取量・摂取頻度を研究した論文は豊富だが、その理由として「卵は患者へのコレステロール摂取の聞き取りに使いやすい」とし、「おおよそ、中くらいの卵1個には、200~250mgのコレステロールが含まれている」とコメントした。また、本セミナーに出席していた丸山 千寿子氏(日本女子大学家政学部食物学科教授)によると、「今回発表されたJAMAの論文*で記述されている卵は1個50gで、日本でいうSサイズ。しかし、流通量が多く、セール品として販売されているのは60gのLサイズ。卵のコレステロール摂取量に関する研究データでは、実際よりも過小評価されている可能性がある」とし、「患者には、食べている卵の数だけではなく、大きさの確認も必要かもしれない」と付け加えた。コレステロールの上限値がなくなった訳ではない 2015年2月、米国農務省(USDA)と保健福祉省は、『食事でのコレステロール摂取制限は必要ない』と発表。これは、アメリカ心臓病学会/アメリカ心臓協会(ACC/AHA)が、“コレステロール摂取量を減らして血中コレステロール値が低下するかどうか判定する証拠が数字として出せない”として、「コレステロールの摂取制限を設けない」と見解を出したためだという。時を同じくして、日本人の食事摂取基準(2015年版)では、健常者における食事中コレステロールからの摂取量と血中コレステロール値の相関を示すエビデンスが十分ではないことから、コレステロール制限値を設けなかった。「これらのことから、日本人はコレステロールをいくら摂取しても良いという錯覚に陥ってしまった」と、上田氏は当時の状況を振り返った。この混乱を受け、2015年5月1日、日本動脈硬化学会はコレステロール摂取量に関する声明を発表し、高LDLコレステロール血症患者に当てはまる訳ではないことを注意換気した。 来年は『食事摂取基準(2020年版)』の発表が予定されている。ここでも、“循環器疾患予防の観点から目標量(上限)を設けるのは難しい”とし、記載を避けている。しかし、脂質異常症を有する者やハイリスク者については、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」を参考に、コレステロールの摂取を200mg/日未満と記載される予定である。 最後に同氏は「動脈硬化症には、コレステロール摂取量もさることながら、喫煙が一番いけない。今後、禁煙についての話題を提供していく」と締めくくった。

2584.

日本人における糖尿病とがんリスクを検証~JPHC研究

 日本人集団における糖尿病とがんリスクについて、多目的コホート研究(JPHC研究)での前向きメンデルランダム化解析により、これらの関連を裏付ける強いエビデンスは見いだされなかったことを、国立がん研究センターの後藤 温氏らが報告した。従来の回帰モデルを用いたコホート研究では、2型糖尿病患者のがんリスク増加が一貫して示されていた。しかし、因果の逆転や糖尿病とがんに共通する危険因子による残余交絡が存在する可能性があり、糖尿病そのものががん発症に寄与しているかどうかは不明であった。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年3月30日号に掲載。 JPHC研究における40~69歳の適格な3万2,949人から、サブコホート1万536人および新規にがんと診断された3,541人を用いて症例コホート研究を実施した。すでに知られている29個の2型糖尿病感受性遺伝子多型を用いて、糖尿病とがん全体および部位ごとのがんリスクとの関連について、逆分散加重法を用いてハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病の確率が2倍になることによるがんのハザード比(HR)は、がん全体で1.03(95%信頼区間[CI]:0.92~1.15)、膵臓がんで1.08(同:0.73~1.59)、肝臓がんで0.80(0.57~1.14)、結腸がんで0.90(同:0.74~1.10)であった。・追加解析として、日本人における大腸がんの大規模ゲノムワイド関連解析の公開データを用いて分析したところ、HRは1.00(95%CI:0.93~1.07)であり、より精確な結果が得られた。

2585.

第11回 意識障害 その9 原因が1つとは限らない! それで本当におしまいですか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)確定診断するまで思考停止しないこと!2)検査は答え合わせ! 異常値だからといって、原因とは限らない!3)急性か慢性か、それが問題だ! 検査結果は必ず以前と比較!【症例】68歳男性。数日前から発熱、倦怠感を認め、食事量が減少していた。自宅にあった解熱鎮痛薬を内服し様子をみていたが、来院当日意識朦朧としているところを奥さんが発見し救急要請。救急隊の観察では、明らかな構音障害や麻痺は認めず、積極的に脳卒中を疑う所見は乏しい。●搬送時のバイタルサイン意識10/JCS、E3V4M6/GCS血圧142/88mmHg脈拍78回/分(整)呼吸20回/分SpO295%(RA)体温38.2℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧(50歳〜)、脂質異常症(44歳〜)内服薬アムロジピン、アトルバスタチン今回は意識障害の最終回です。今までいろいろと述べてきましたが、復習しながら鑑別を進めていきましょう。意識障害の原因は“AIUEOTIPS”に代表されるように多岐にわたります。難しいのは、何か1つ意識障害の原因となりうるものを見いだしたとしても、それのみが原因とは限らないことです。脳出血+痙攣、敗血症+低血糖、アルコール+急性硬膜下血腫、急性期疾患+薬剤の影響、などはしばしば経験します。目の前の患者さんの症状は、自身が考えている原因できちんと説明がつくのか、矛盾点は本当にないのか、最終的に診断をつける際には必ず自問自答しましょう。救急外来での実際のアプローチ今回も10’s rule(表1)をもとに考えていきましょう。画像を拡大する患者さんは数日前から発熱を認め、徐々に状態が悪化しているようです。血圧はやや高めですが、CPSS※(構音障害、顔面麻痺、上肢の麻痺)陰性で、頭痛の訴えもなく脳卒中を積極的に疑う所見は認めませんでした。糖尿病の既往もなく、低血糖の検査前確率は低いですが、感染症(とくに敗血症)に伴う副腎不全や薬剤などの影響で、誰もが低血糖になりうるため、10’s ruleにのっとり低血糖は否定し、頭部CT検査を施行する方針としました。CTでは、予想通り明らかな異常は認めませんでした。qSOFAは意識障害以外該当しないものの、発熱も認め感染症の関与も考え、fever work upを施行する方針としましたが…。※ Cincinnati Prehospital Stroke Scale急性か慢性か、それが問題だ!採血(もしくは血液ガス)の結果でNa値が126mEq/Lを認めました。担当した研修医は、「低ナトリウム血症による意識障害の可能性」を考えました。これはOKでしょうか?採血以外にも、救急外来では心電図やX線、エコー、CTなどの検査を施行することは多々あります。その際、検査に何らかの異常を認めた際には、必ず「その異常はいつからなのか?」という視点を持つ必要があります。以前と異なる変化であれば、今後介入の必要はあるかもしれませんが、少なくとも急性の変化と比較し、緊急性はぐっと下がります。以前の結果と比較(問い合わせをしてでも)することを心掛けましょう。忙しい場合には面倒に感じるかもしれませんが、急がば回れです。不適切な介入や解釈を行わないためにも、その手間を惜しんではいけません。低ナトリウム血症は高齢者でしばしば認めますが、急性の変化でない限り、そして著明な変化でない限り、通常無症候性です。救急外来では120mEq/L台の低ナトリウム血症では、最低限の介入(塩分負荷または飲水制限)は原因に応じて行いますが、それのみで意識障害、痙攣、食思不振などの直接的な原因とは考えないほうがよいでしょう。慢性的な変化、もしくは何らかの急性疾患に伴う変化と考え対応する癖を持ちましょう。大切なのはHi-Phy-Vi!Rule 2にもありますが、やはり大切なのは病歴、身体所見やバイタルサイン(Hi-Phy-Vi:History、Physical、Vital signs)です。この患者さんは、急性の経過で発熱を伴っています。そして、熱のわりには心拍数は上昇していません。このような経過の患者さんに低ナトリウム血症を認めたわけです。何かピンッとくる疾患はあるでしょうか?急性の経過、そしてSIRSやqSOFAは満たさないものの、発熱を認め、呼吸回数も高齢者にしては多いという点からは、感染症の関与が考えられます。菌血症を疑わせる悪寒戦慄は認めませんでしたが、いわゆる細菌感染症として頻度が高いfocusは鑑別の上位に挙がります(参考に第6回 意識障害 その5)。肺炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症、胆道系感染症などは意識して所見をとらなければ高齢者では容易に見逃してしまうものです。この患者さんは改めて聴診すると、右下葉で“coarse crackles”を聴取しました。同部位のX線所見も淡い浸潤影を認めました。しかし、喀痰のグラム染色では有意な菌は認められませんでした。もうおわかりですね?レジオネラ症(Legionella disease)意識障害などの肺外症状(表2)、グラム染色で優位な菌が認められないとなると、必ず鑑別に入れなければならない疾患が「レジオネラ症」です。レジオネラ肺炎は重症肺炎の際には必ず意識して対応しますが、本症例のように明らかな酸素化低下などの所見が認められない場合や肺外症状をメインに来院した場合には、意識しなければ、初診時に診断することは容易ではありません。しかし、レジオネラ肺炎(Legionella pneumophila)は、マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)やクラミドフィラ(Chlamydophila pneumoniae)など、そのほかの非定型肺炎とは異なり、初診時に疑い治療介入しなければ、予後の悪化に直結します。見逃してはいけないわけです。画像を拡大するレジオネラ症を疑う手掛かりとしては、私は表3を意識するようにしています2,3)。そのほか、検査結果では、電解質異常(低ナトリウム血症、低リン血症)、肝機能障害、CPK上昇を意識しておくとよいでしょう。絶対的なものではありませんが、レジオネラ症らしいか否かを判断するスコアもあるので一度確認しておきましょう4)。画像を拡大するさいごに意識障害の原因は多岐にわたります。自信を持って確定診断するまでは、常に「本当にこれが原因でよいのか?」と自問自答し、対応することが大切です。忙しいが故に検査結果などの異常値を見つけると、そこに飛びつきたくなりますが、そもそも何故その数値や画像の異常が出るのか、それは本当に新規異常なのか、症状は説明がつくのか、いちいち考える癖をつけましょう。その場での確定診断は難しくとも、イチロー選手のように「後悔などあろうはずがありません!」と断言できるよう、診断する際にはこれぐらいの覚悟で臨みましょう。1)Cunha BA. Infect Dis Clin North Am. 2010;24:73-105.2)坂本壮. 救急外来ただいま診断中!. 中外医学社;2015.p.280-303.3)坂本壮. 救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに. シーニュ;2017.p.65-67.4)Gupta SK,et al. Chest. 2001;120:1064-1071.

2586.

アルコール依存症患者の再入院とBMIや渇望との関連

 常習性の飲酒、渇望、過食は、共通の病理学的メカニズムを有している。ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクのChristian Weinland氏らは、BMIや渇望がアルコール依存症入院患者のアウトカムを予測するかどうかを調査した。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年3月2日号の報告。 早期に禁酒したアルコール依存症入院男性患者101例および女性患者72例を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。渇望は、Obsessive-Compulsive Drinking Scale(OCDS)スコアを用いて定量化した。24ヵ月以上のアルコール関連再入院を記録した。 主な結果は以下のとおり。・男性では、より高いBMIは、アルコール関連再入院と関連しており(中央値:26.1kg/m2 vs. 23.1kg/m2、p=0.007)、より高頻度(ρ=0.286、p=0.004)で、より早期(ρ=-0.256、p=0.010)の再入院との相関が認められた。・これらの関連性は、活発な喫煙者のサブグループ(79例)においてより強く認められた([アルコール関連再入院]中央値:25.9kg/m2 vs. 22.3kg/m2、p=0.005、[高頻度]ρ=0.350、p=0.002、[早期]ρ=-0.340、p=0.002)。・女性では、BMIは有意な予測因子ではなかった。・1回以上の再入院があった男性では、そうでない男性と比較し、OCDSスコアが高く(OCDS-total、OCDS-obsessive、OCDS-compulsive、p<0.040)、OCDSスコアは、再入院の高頻度(男性:OCDS-total、OCDS-obsessive、OCDS-compulsive、ρ>0.244、p<0.014、女性:OCDS-compulsive、ρ=0.341、p=0.003)と初回再入院までの期間短縮(男性:OCDS-total、OCDS-compulsive、ρ<-0.195、p<0.050、女性:OCDS-compulsive、ρ=-0.335、p=0.004)との相関が認められた。・OCDSスコアにより、男性におけるBMIとアウトカムとの関連は9~19%説明可能であった。 著者らは「BMIおよび渇望は、アルコール依存症入院患者における再入院の予測因子である。このことは、将来の再入院を予防するために使用できる可能性がある」としている。■関連記事アルコール関連での緊急入院後の自殺リスクに関するコホート研究飲酒運転の再発と交通事故、アルコール関連問題、衝動性のバイオマーカーとの関連アルコール依存症に対するナルメフェンの有効性・安全性~非盲検試験

2587.

学会でツイッター活用、日循の取り組みはどこまでバズったか?

 2019年3月29日から31日まで開催された第83回 日本循環器学会学術集会において、同学会は、日本国内の医学系学会では初めて、学術集会中の発表内容をツイッター上で公開した。 #19JCSのハッシュタグを付けて投稿されたツイート総数は、リツイートも含み、約8,000。公式アカウント@JCIRC_IPRのインプレッション数は期間中だけで77万を超え、フォロワーが約2,000人から4,000人強へ倍増した。 投稿内容は、一般演題を除くシンポジウムをはじめとした講演の全演者の9割・330名以上から事前に撮影の許諾を得た、スライド写真や文字によるサマリ、発表後のインタビュー動画。スライド写真のツイートを行ったのは、同学会情報広報部会および事前に承諾を得た公式サポーターの学会員約20名。公式サポーターは医師を筆頭とした循環器診療に関わる医療者だ。 今回の結果について、同情報広報部会は「予想よりもスムーズだった」と評している。演題の9割をカバーし、同部会と公式サポーターによる専門的見地からコメントを付けた投稿も中には含まれたことで、批判的吟味を含めた議論の土壌を作れたからだ。 また、学術集会初日に合わせて「日本循環器学会ツイッター利用指針」を国内医学系学会で初めて公開し、公式な学会活動としてコンプライアンス体制を整えてツイッターを活用したことも今後につながる成果だ。 一方、今後の課題は学会員へのツイッター活用の普及にある。専門家による適切な医療情報の提供、議論がより多くなされることでより質の高い情報発信が可能となるからだ。 公式アカウントのフォロワーが、学術集会中に2,000人以上増えた結果を踏まえ、今後もメリットが周知されればツイッターを活用する学会員の増加を期待できると同部会は考えている。 この取り組みはほかの診療科へも波及している。#19JCSでのツイートを見ると、救急や整形外科、精神科などの医師がこの活動に共感し、所属学会に問い合わせをしている様子が伺える。 膨大な数の演題が登録される学術集会において、興味があるテーマのすべてを聞くことは不可能だが、SNSは物理的制約を乗り越えて知見を広げる助けになる。またリアルタイムでの専門医・医療関連者同士のディスカッションがSNSを通じて活発になれば、研究・臨床・教育の質向上にも寄与する可能性も広がる。 海外では、欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓協会(AHA)のように活発にSNSを使用する学会もあれば、米国糖尿病学会(ADA)のように否定的な立場をとる学会もある。 SNSをどう使うかは学会によって異なる見解があると予想されるが、今回の日本循環器学会の取り組みが国内学術集会におけるSNS活用の在り方に影響を与えることは間違いなさそうだ。■リンク日本循環器学会情報広報部会@JCIRC_IPRハッシュタグ #19JCS■参考文献米国主要循環器系学会で2014年から2016年にかけて急速に進んだSNS活用の現状2018年欧州心臓病学会学術集会でのツイッター活用

2588.

コントロール不良2型DM、セマグルチドvs.シタグリプチン/JAMA

 メトホルミン(単剤またはSU薬併用)でコントロール不良の成人2型糖尿病患者に対し、セマグルチド7mg/日、14mg/日の投与は、シタグリプチン投与に比べ、26週の試験期間中の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値を、より大きく有意に抑制したことが示された。セマグルチド3mg/日では有意なベネフィットは示されなかったという。米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが、約1,900例を対象に行った第IIIa相ダブルダミー無作為化並行群間比較試験「PIONEER 3試験」の結果で、GLP-1受容体作動薬セマグルチドについて、他のクラスの血糖降下薬と直接比較した初となる第III相試験だという。結果を踏まえて著者は「臨床設定での有効性の評価について、さらなる検討を行う必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2019年3月23日号掲載の報告。セマグルチドを1日3mg、7mg、14mg投与 研究グループは、メトホルミン(SU薬併用も含む)を服用するもコントロール不良の2型糖尿病成人患者を対象に、1日1回の経口セマグルチドvs.シタグリプチン100mgのアドオン療法の有効性を比較し、長期有害イベントを評価した。試験は2016年2月~2018年3月にかけて、14ヵ国206ヵ所の医療機関を通じ、78週にわたって行われた。 2,463例がスクリーニングを受け、1,864例が無作為に4群に割り付けられ、セマグルチドを1日1回3mg(466例)、7mg(466例)、14mg(465例)またはシタグリプチン100mg(467例)をそれぞれ投与された。セマグルチドの投与量は当初3mg/日で開始し、4週後に7mg/日へ、さらに4週後に14mg/日へと増量した。 主要エンドポイントは、ベースラインから26週までのHbA1c値の変化だった。主な副次エンドポイントは、同期間の体重変化や、HbA1c値と体重の52週および78週時の変化だった。エンドポイントについて、HbA1c値減少の非劣性(非劣性マージン:0.3%)を検証したうえで、HbA1c値・体重減少の優越性を検証した。セマグルチド7mg/日群と14mg/日群は26週後にHbA1c値減少 被験者の平均年齢は58歳(SD 10)で、ベースラインの平均HbA1c値は8.3%(SD 0.9)、BMIは32.5(同6.4)、女性は47.2%(879例)だった。試験を完遂したのは1,758例(94.3%)で、298例が早期に試験を中止した(セマグルチド3mg/日群16.7%、7mg/日群15.0%、14mg/日群19.1%、シタグリプチン群13.1%)。 ベースラインから26週までのHbA1c値は、セマグルチド7mg/日群と14mg/日群は、シタグリプチン群に比べ有意な減少が認められた(それぞれ群間差:-0.3%[95%信頼区間[CI]:-0.4~-0.1]、-0.5%[-0.6~-0.4]、いずれもp<0.001)。また、体重についても有意に減少した(それぞれ群間差:-1.6kg[-2.0~-1.1]、-2.5kg[-3.0~-2.0]、いずれもp<0.001)。 一方で、セマグルチド3mg/日群については、HbA1c値に関してシタグリプチン群に対する非劣性は示されなかった。 ベースラインから78週後のHbA1c値、体重の変化は、セマグルチド14mg/日群でシタグリプチン群に比べ有意な減少が認められた。

2589.

第13回 コンビニで手軽に補給 タンパク質が摂れる飲料ランキング【実践型!食事指導スライド】

第13回 コンビニで手軽に補給 タンパク質が摂れる飲料ランキング医療者向けワンポイント解説前回はタンパク質をちょい足しできる食材をご紹介しましたが、今回はタンパク質が摂れる飲料についてご紹介します。食事摂取の中で、「飲料」は、本人が意識していないところで摂取している傾向があるため、問診や食事記録などの記載時に記入が漏れてしまい、気づかれにくいことが多々あります。 飲料は1日に5〜10杯程が摂取されていますが、飲料の嗜好が体重の増減、栄養素の摂取または吸収阻害などにも影響を与えます。また、飲料には糖分や脂質を多く含む物も多く、体重増加や血糖コントロール不良の原因が「飲料」と、後からわかる場合もあります。今回は、タンパク質が多く摂れる飲料をランキング形式にまとめました。1日のタンパク質摂取量は、日本人の食事摂取基準(2015年版・最新版)によると、18歳以上のタンパク質推奨量、男性:60g、女性:50gと明記されています。また、国際スポーツ栄養学会では、筋肥大を目的とするアスリートの場合、1日に1.4〜2.0g/kgが推奨されています。超高齢化社会を迎え、問題になっているサルコペニア、フレイル。この予防には、タンパク質の摂取やエネルギーの確保が必要とされています。また、筋肉増強を意識している若者世代にとっても、タンパク質を効率的に摂取できる飲料は重要です。対象者にあった飲料を選ぶひとつのヒントとなればと思います。◆コンビニで買えて、タンパク質を含む飲料ランキング1位プロテイン飲料(200ml)102kcal タンパク質15.0gプロテインがドリンク化されたことで注目されました。高タンパク質にも関わらず、カロリーは今回のランキング中で一番低い飲料です。筋肉をつけたいときや、食事量が多い場合などのタンパク質補給として有効です。2位飲むヨーグルト[加糖](220ml)225kcal タンパク質7.3gヨーグルトは高タンパク質なのでお薦めです。飲むヨーグルトもほぼ同量のタンパク質を含みますが、ドリンクタイプは「加糖タイプ」が多いのが難点です。食事量が落ちてきた場合のエネルギー確保にはなりますが、食事が摂れている場合には、高カロリーで糖質過剰摂取の原因になるので、「無糖タイプ」をお薦めします。3位調製豆乳(200ml)116kcal タンパク質7.0g牛乳よりも、タンパク質が多いという点が意外なところです。動物性脂質を含まないこともメリットです。しかし、筋肉増強を考えた場合は、大豆タンパク質よりも動物性タンパク質のほうが効率的であるという考えもあります。そのまま飲むことが苦手な方は、豆腐に豆乳とシロップをかけて加熱をすると、高タンパク質なデザートができ上がります。食欲のない高齢者などにお薦めの食べ方です。飲みやすく、手軽に購入できるのは調整豆乳ですが、実は「無調整豆乳」のほうが「低カロリー、高タンパク」です。無調整豆乳がある場合はそちらもオススメです。4位牛乳(200ml)137kcal タンパク質6.8g単体で飲むことも良いですが、コーヒーを飲む際にカフェオレに変更したり、料理に加えたりするなど、アレンジして使うことを意識すると、タンパク質摂取の向上に繋がります。ただし、市販のカフェオレドリンクなどには牛乳ではなく動物性脂質を加えている物や加糖タイプの物が多いので、別物と考えることが必要です。5位低脂肪乳(200ml)87kcal タンパク質6.7g脂肪分が気になる場合は、低脂肪乳にすることでタンパク質を上手に摂取することができます。カロリーは牛乳に比べ35%ほど低くなります。6位プロテイン入りゼリー飲料 ヨーグルト味(180g)90kcal タンパク質5.0gプロテインを摂取するための手軽なゼリー飲料として販売されています。粘性があるため水分摂取が苦手な方でも飲みやすいことが特徴です。7位豆乳飲料 バナナ味(200ml)134kcal タンパク質4.9g豆乳飲料は様々な種類が販売されています。調製豆乳や無調整豆乳が飲みづらい場合、フレーバー付きの豆乳も選択肢としてあります。ただし、タンパク質含有量は下がり、カロリーは上がるので、メリットとデメリットを考慮して選ぶことが必要です。8位甘酒(125ml)116kcal タンパク質1.2g万能だと思われていますが、甘酒のタンパク質量はあまり高くありません。市販の物には加糖タイプも多く、甘酒だけを過信して飲んでいる場合には、高カロリー、糖質過多などに気をつける必要があります。

2590.

体形とうつ病発症リスクとの関連

 肥満はうつ病と関連しているといわれている。肥満の一般的な指標としてBMIが用いられるが、BMIは身長と体重を組み合わせた指標である。そのため、体の寸法やサイズのどの部分が最も関連しているかはよくわかっていない。米国・トゥルーマン州立大学のJeffrey R. Vittengl氏は、体形とうつ病との関連について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2019年3月5日号の報告。 妊娠していない20歳以上の成人2万3,739例を対象に、2007~16年の国民健康栄養調査のデータより分析を行った。年齢、性別、民族性、社会経済的地位でコントロールしたうえで、抑うつ症状と体形変数との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・身長ではなく、体重とBMIが抑うつ症状の予測因子であった。・比較的高い体重またはBMIを有する成人(女性の上位約30~40%、男性の上位約10%)は、性別内において実質的に抑うつ症状(d≧0.20)の有症率が高かった。・女性(BMI≧30)および男性(BMI≧36)におけるうつ症状の増加を予測するBMIの範囲は、それぞれ標準的な過体重や肥満の定義よりも高かった。 著者らは「本研究は、横断的観察研究であり、体重とうつ病との潜在的な因果関係を明らかにするためには、今後縦断的および実験的な研究が必要である。また、他の体形変数もうつ病を予測する可能性がある」としながらも「抑うつ症状の予測因子である体重に関して、BMIのような身長により調整されていない体重に重点を置いた評価が、うつ病の予防や治療を改善するかどうかを確認する必要がある」としている。■関連記事抗うつ薬誘発性体重増加のレビュー、その結果はセロトニンの役割、摂食障害や肥満治療への期待肥満と認知症リスク

2591.

日本抗加齢医学会がウェブマガジン創刊

 一般社団法人 日本抗加齢医学会(理事長:堀江 重郎)は、「学術総会の発表内容」や「学会誌コンテンツ」、同学会の特徴である8つの専門領域分科会(日本抗加齢医学会の専門分科会:眼抗加齢医学研究会、抗加齢歯科医学研究会、見た目のアンチエイジング研究会、抗加齢ウィメンズヘルス研究会、抗加齢内分泌研究会、泌尿器抗加齢医学研究会、脳心血管抗加齢研究会、運動器抗加齢研究会)で話題となっているトピックスを広く発信することを目的に4月1日(月)にウェブマガジンを創刊した。 日本抗加齢医学会のウェブマガジン名は『ACTION!』(www.anti-aging.gr.jp/action)。 日本抗加齢医学会のウェブマガジンは、誰でも上記のページにアクセスすることで、閲覧することができる。主に日本抗加齢医学会の学会員のみで共有されていた情報を発信 日本抗加齢医学会は「人がハツラツと生きることで、進化し続けられる社会を作りたい。そのために、今、動き出そう」という思いを込め創刊に至ったとその動機を語る。医療従事者だけでなく、サイトに訪れたすべての方のお役に立てるよう、今後も情報を発信するとしている。 ウェブマガジンの特徴としては、次の内容などが公開されている。・日本抗加齢医学会の学術総会の発表内容や学会誌コンテンツなど、これまで主に学会員のみで共有されていた抗加齢医学に関する情報を発信・日本抗加齢医学会の学会認定医や指導士といった資格がもたらす、医療現場へのメリットを当該資格保持者の「声」として紹介・自らの人生でアンチエイジングを実践する日本抗加齢医学会の学会員のエピソードをコラム形式で紹介

2592.

卵の摂取量増加で、心血管疾患発症や死亡が増加?/JAMA

 米国成人において、食事性コレステロールまたは卵の摂取量増加は、用量反応的に心血管疾患(CVD)発症および全死因死亡リスクの上昇と有意に関連していることが確認された。米国・ノースウェスタン大学のVictor W. Zhong氏らが、Lifetime Risk Pooling Projectの6つのコホートデータを用いた解析結果を報告した。コレステロールは、ヒトの食事における一般的な栄養素で、卵は食事性コレステロールの重要な源であるが、食事性コレステロール/卵の摂取量がCVDおよび死亡と関連しているかどうかについては、なお議論が続いている。著者は今回の結果について、「食事ガイドラインの作成・改訂の際に考慮されるべきである」とまとめている。JAMA誌2019年3月19日号掲載の報告。食事性コレステロール/卵の摂取量とCVD発症/死亡リスクの関連を評価 研究グループは、1985年3月25日~2016年8月31日の期間に収集された、米国の6つの前向きコホート研究における参加者個々のデータを統合した。自己報告の食事摂取に関するデータは、標準的プロトコルを用いて調整し、食事性コレステロール(mg/日)または卵の摂取量(個/日)を算出した。 主要評価項目は、人口統計学的、社会経済的および行動的要因を調整した、CVD発症(致死的/非致死的冠動脈心疾患・脳卒中・心不全・他のCVD死亡の複合)と全死因死亡に関する全追跡調査期間にわたるハザード比(HR)および絶対リスク差(ARD)で、コホートで層別化した原因別ハザードモデルおよび標準比例ハザードモデルを用いて解析した。卵の摂取量が半分増加した場合でも有意な関連 本解析には合計2万9,615例が組み込まれ、平均[±SD]年齢はベースライン時51.6±13.5歳、1万3,299例(44.9%)が男性で、9,204例(31.1%)が黒人であった。 追跡期間中央値17.5年(四分位範囲:13.0~21.7、最大31.1)において、CVDイベント発症が5,400例、全死因死亡が6,132例認められた。 1日当たりの食事性コレステロール摂取量が300mg増加した場合、CVD発症(補正後HR:1.17[95%信頼区間[CI]:1.09~1.26]、補正後ARD:3.24%[95%CI:1.39~5.08])および全死因死亡(補正後HR:1.18[95%CI:1.10~1.26]、補正後ARD:4.43%[95%CI:2.51~6.36])のリスク上昇と有意な関連が認められた。 1日当たりの卵の摂取量が半分(2分の1個、卵1個を3~4回/週または3~4個/週)増加した場合でも、同様に有意な関連が認められた(CVD発症の補正後HR:1.06[95%CI:1.03~1.10]、補正後ARD:1.11%[95%CI:0.32~1.89]、全死因死亡の補正後HR:1.08[95%CI:1.04~1.11]、補正後ARD:1.93%[95%CI:1.10~2.76])。ただし、食事性コレステロール摂取量を補正後は、卵の摂取量とCVD発症(補正後HR:0.99[95%CI:0.93~1.05]、補正後ARD:-0.47%[95%CI:-1.83~0.88])および全死因死亡(補正後HR:1.03[95%CI:0.97~1.09]、補正後ARD:0.71%[95%CI:-0.85~2.28])との間に、有意な関連は確認されなかった。 著者は研究の限界として、食事摂取に関するデータが自己報告であること、全コホートが異なる食事評価法を使用していたこと、観察研究のため因果関係については立証できないことなどを挙げている。

2593.

日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

 2019年3月22日、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の報告書とりまとめを了承した。昨年4月より策定検討会にて議論が重ねられた今回の食事摂取基準は、2020年~2024年までの使用が予定されている。策定検討会の構成員には、日本糖尿病学会の理事を務める宇都宮 一典氏や日本腎臓学会理事長の柏原 直樹氏らが含まれている。日本人の食事摂取基準(2020年版)の主な改定ポイントは? 日本人の食事摂取基準(2020年版)の改定では、2015年版をベースとしつつ、『社会生活を営むために必要な機能の維持および向上』を策定方針とし、これまでの生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病)の重症化予防に加え、高齢者の低栄養・フレイル防止を視野に入れて検討がなされた。主な改定点として、・高齢者を65~74歳、75歳以上の2つに区分・生活習慣病における発症予防の観点からナトリウムの目標量引き下げ・重症化予防を目的としてナトリウム量やコレステロール量を新たに記載・フレイル予防の観点から高齢者のタンパク質の目標量を見直しなどが挙げられる。日本人の食事摂取基準(2020年版)、まずは総論を読むべし 報告書やガイドラインなどを活用する際には、まず、総論にしっかり目を通してから、各論や数値を理解することが求められる。しかし、メディアなどは総論を理解しないまま数値のみを抜粋して取り上げ、問題となることがしばしばあるという。これに対し、策定検討会のメンバーらは「各分野のポイントが総論だけに記載されていると、それが読まれずに数値のみが独り歩きし、歪んだ情報が流布されるのではないか」と懸念。これを受け、日本人の食事摂取基準(2020年版)の総論には、“同じ指標であっても、栄養素の間でその設定方法および活用方法が異なる場合があるので注意を要する”と記載し、総論以外にも各項目の目標量などがどのように概算されたのかがわかるように『各論』を設ける。メンバーらは「各指標の定義や注意点はすべて総論で述べられているため、これらを熟知したうえで各論を理解し、活用することが重要である」と、活用方法を強調した。 以下に日本人の食事摂取基準(2020年版)の各論で取り上げられる具体的な内容を抜粋する。タンパク質:高齢者におけるフレイルの発症予防を目的とした量を算定することは難しいため、少なくとも推奨量以上とし、高齢者については摂取実態とタンパク質の栄養素としての重要性を鑑みて、ほかの年齢区分よりも引き上げた。また、耐容上限量は、最も関連が深いと考えられる腎機能への影響を考慮すべきではあるが、基準を設定し得る明確な根拠となる報告が十分ではないことから、設定しなかった。脂質:コレステロールは、体内でも合成される。そのために目標量を設定することは難しいが、脂質異常症および循環器疾患予防の観点から過剰摂取とならないように算定が必要である。一方、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。炭水化物:炭水化物の目標量は、炭水化物(とくに糖質)がエネルギー源として重要な役割を担っていることから、アルコールを含む合計量として、タンパク質および脂質の残余として目標量(範囲)を設定した。ただし、食物繊維の摂取量が少なくならないように、炭水化物の質に留意が必要である。脂溶性ビタミン:ビタミンDは、多くの日本人で欠乏または不足している可能性があるが、摂取量の日間変動が非常に大きく、摂取量の約8割が魚介類に由来し、日照でも産生されるという点で、必要量を算出するのが難しい。このため、ビタミンDの必要量として、アメリカ・カナダの食事摂取基準で示されている推奨量から日照による産生量を差し引いた上で、摂取実態を踏まえた目安量を設定した。ビタミンDは日照により産生されるため、フレイル予防を図る者を含めて全年齢区分を通じて可能な範囲内での適度な日照を心がけるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である。日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には高齢化問題が深刻さを増す 日本では、2020年の栄養サミット(東京)開催を皮切りに、第22回国際栄養学会議(東京)や第8回アジア栄養士会議(横浜)などの国際的な栄養学会の開催が控えている。また、日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には団塊世代が75歳以上になるなど、高齢化問題が深刻さを増していく。 このような背景を踏まえながら1年間にも及ぶ検討を振り返り、佐々木 敏氏(ワーキンググループ長、東京大学大学院医学系研究科教授)は、「理解なくして活用なし。つまり、どう活用するかではなく、どう理解するかのための普及教育が大事。食事摂取基準ばかりがほかの食事のガイドラインよりエビデンスレベルが上がると、使いづらくなるのではないか。そうならないためにも、ほかのレベルを上げて食事摂取基準との繋がり・連携を強化するのが次のステージ」とコメントした。また、摂取基準の利用拡大を求めた意見もみられ、「もっと疾患を広げるべき。次回の改定では、心不全やCOPDも栄養が大事な要素なので入れていったほうがいい。今回の改定では悪性腫瘍が入っていないが、がんとともに長生きする時代なので、実際の現場に合わせると病気を抱えている方を栄養の面でサポートすることも重要(名古屋大学大学院医学系研究科教授 葛谷 雅文氏)」、「保健指導の対象となる高血糖の方と糖尿病患者の食事療法のギャップが、少し埋まるのではと期待している。若年女性のやせ、骨粗鬆症も栄養が非常に影響する疾患なので、次の版では目を向けていけるといい(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲氏)」、など、期待や2025年以降の改定に対して思いを寄せた。座長の伊藤 貞嘉氏(東北大学大学院医学系研究科教授)は、「構成員のアクティブな発言によって良い会・良いものができた」と、安堵の表情を浮かべた。 なお、厚労省による報告書(案)については3月末、パブリックコメントは2019年度早期に公表を予定している。

2594.

偽性副甲状腺機能低下症〔PHP:pseudohypoparathyroidism〕

1 疾患概要■ 概念・定義副甲状腺ホルモン(PTH)に対する不応性のために、低カルシウム血症、高リン血症などの副甲状腺機能低下症と同様な症状を呈する疾患である。血中PTH濃度は異常高値となる。ホルモン受容機構を構成するオルブライト遺伝性骨ジストロフィー(Albright’s hereditary osteodystrophy:AHO)と呼ばれる症候を合併する病型をIa型、合併しないものをIb型と呼ぶ。■ 疫学わが国における本症の患者数は約400人と推計されている。性差はない。■ 病因PTH受容体はG蛋白カップリング型受容体である。その細胞内シグナルはα、β、γのサブユニットから構成されるGsタンパク質を介して、アデニル酸シクラーゼの活性化によりサイクリックAMP(cAMP)を生成する系に伝えられる。偽性副甲状腺機能低下症のPTH不応性の原因はGsαタンパク質の機能低下である。Gsαタンパク質の発現は組織特異的インプリンティングを受けており、腎近位尿細管、下垂体、甲状腺、性腺などでは母由来アレル優位となっている。一方、骨、脂肪組織を含む他の大部分の組織では、父由来アレルと母由来アレルから同量のGsαタンパク質が産生される。Gsαタンパク質はGNAS遺伝子によってコードされている。組織特異的インプリンティングの維持にはGNAS遺伝子の転写調節領域のCpGメチル化状態が重要であり、アレルの親由来によってその状態が異なっていることが知られている。Ia型は、母由来のGNAS遺伝子アレルに変異が生じて正常なタンパク質が産生されない場合に起こる、常染色体顕性の母系遺伝である。すなわち、PTHの主たる標的組織である腎近位尿細管では、母由来の変異が主に発現するためにPTH不応となって低カルシウム血症、高リン血症を呈している。同様に、母由来アレル優位である甲状腺、下垂体、性腺においても甲状腺刺激ホルモン(TSH)不応による原発性甲状腺機能低下症、ゴナドトロピン不応による原発性性腺機能障害、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)不応による成長ホルモン分泌不全などが発症することがある。AHOは骨や脂肪組織などの非インプリンティング組織の異常であるが、正常Gsαタンパク質発現量の半減(ハプロ不全)によるものと考えられる。実際、父由来のGNAS遺伝子アレル変異の場合、血清カルシウム濃度は正常であるが、AHOを呈し、偽性偽性副甲状腺機能低下症と呼ばれている。Ib型では、組織特異的インプリンティングに重要なGNAS遺伝子の転写調節領域のメチル化状態における異常(エピジェネティック変異)が関連している。母由来アレルにこの異常が生じると、インプリンティング組織ではGsαタンパク質発現が減少するが、非インプリンティング組織ではこの影響を受けないので、AHOを合併しない。■ 症状1)低カルシウム血症に伴う症状口周囲や手足のしびれ、テタニー、痙攣、意識障害を呈することがある。これらの症状は、小児期以降から成人期に出現することが多く、Ib型の主訴として受診することが多い。2)AHOIa型では、低身長、円形顔貌、肥満、短指趾症、軟部組織の異所性骨化、歯牙低形成、知的障害を特徴とするAHOを認める症例が多く、診断のきっかけになる。3)他のホルモン異常TSH不応性は最も多く認められるホルモン異常で、Ia型の80~90%、Ib型の約40%にみられる。先天性甲状腺機能低下症として、偽性副甲状腺機能低下症より先に診断されることがある。ゴナドトロピン不応性による月経異常、不妊症、GHRH不応性による成長ホルモン分泌不全を呈することがある。以上のホルモン異常は、Ia型での報告が多いが、Ib型でも認められる。■ 予後基本的に低カルシウム血症の治療は、生涯、活性型ビタミンD製剤の服用を必要とする。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)本症は指定難病に認定されており、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究」班によって作成された診断基準と重症度分類(表)が使用されている。表 診断基準と重症度分類A.症状1.口周囲や手足などのしびれ、錯感覚2.テタニー3.全身痙攣B.検査所見1.低カルシウム血症、正または高リン血症2.eGFR 30mL/min/1.73m2以上3.Intact PTH 30pg/mL以上C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。ビタミンD欠乏症*血清25水酸化ビタミンD(25[OH]D)が15ng/mL以上であってもBの検査所見であること。25(OH)Dが15ng/mL未満の場合には、ビタミンDの補充などによりビタミンDを充足させた後に再検査を行う。D.遺伝学的検査1.GNAS遺伝子の変異2.GNAS遺伝子の転写調節領域のDNAメチル化異常<診断のカテゴリー>Definite:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外し、Dのいずれかを満たすもの。Probable:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。Possible:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たすもの。<重症度分類>下記を用いて重症を対象とする。重症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とすることに加え、異所性皮下骨化、短指趾症、知能障害により日常生活に制約があるもの。中等症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とするもの。軽症:とくに治療を必要としないもの。※診断基準および重症度分類の適応における留意事項1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見などに関して、診断基準上に特段の規定がない合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状などであって、確認可能なものに限る)。2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。3.なお、症状の程度が上記の重症度分類などで一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。原発性副甲状腺機能低下症との鑑別が必要な場合や、ビタミンD欠乏症との鑑別が困難な場合にはEllsworth-Howard試験を行う。同試験はPTHに対する腎の反応性(尿中リン酸増加反応とcAMP増加反応)を指標にするものである。尿中cAMP増加反応が正常にもかかわらず尿中リン酸増加反応の低下がある場合、Gタンパク質より下流のシグナル伝達障害に起因するII型偽性副甲状腺機能低下症とする考えがあるが、ビタミンD欠乏症、尿細管障害でも同様の所見がみられるため論議のあるところである。Ia型でAHOを欠いたり、Ib型でもAHOを認めたりする症例があるので、臨床像のみから分子遺伝的異常を断定することは困難である。遺伝学的検査は、指定難病の認定に必須ではないが、両者の分子生物学的診断にはきわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法低カルシウム血症に対しては、Ca補充と活性型ビタミンD製剤投与を行う。血清カルシウム正常化と高カルシウム尿症を来さないようにする。TSH不応性による甲状腺機能低下症を合併する場合には甲状腺ホルモン薬の補充療法、ゴナドトロピン不応症には性ホルモン補充療法、GHRH不応性による成長ホルモン分泌不全を合併する場合には成長ホルモン投与を行う。■ 手術療法異所性皮下骨化は運動制限、生活制限の原因となる場合、外科的切除の適応になることがあるが、同一部位に再発することもある。4 今後の展望臨床的にも分子遺伝学的にも大変興味深い疾患である。インプリンティングの組織特異性を規定する因子、機序は不明である。また、GNAS遺伝子メチル化異常を来す孤発例のエピジェネティック変異の大部分は原因が不明である。さらに、II型の実態は不明で概念的なものにとどまっている。以上の課題に関して、今後の研究の進展が期待される。5 主たる診療科小児科、内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 偽性副甲状腺機能低下症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)皆川真規. 最新医学. 2016;71:1930-1935.2)佐野伸一朗. 医学のあゆみ. 2017;263:307-312.公開履歴初回2019年3月26日

2595.

心血管イベント抑制を確認、ACLY遺伝子変異/NEJM

 ATPクエン酸塩リアーゼ阻害薬やHMGCR阻害薬(スタチン)と似たような作用を持つ遺伝子変異が確認された。同様の作用メカニズムで血漿LDLコレステロール値を下げると考えられ、心血管疾患のリスクに対しても同様の影響を示すという。英国・ケンブリッジ大学のBrian A. Ference氏らが、メンデルランダム化解析により明らかにした。ATPクエン酸塩リアーゼは、スタチンがターゲットとする3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMGCR)のコレステロール生合成経路の上流に存在する酵素であるが、ATPクエン酸塩リアーゼの遺伝子阻害が有害転帰と関係するのかは不明であった。また、LDLコレステロール値の1単位低下当たりの影響がHMGCRの遺伝子阻害と同様であるのかも明らかになっていなかった。NEJM誌2019年3月14日号掲載の報告。ACLYスコアとHMGCRスコアを作成し、心血管イベントやがんとの関連を評価 研究グループは、ATPクエン酸塩リアーゼ阻害薬とHMGCR阻害薬(スタチン)の作用を模倣する操作変数として、ATPクエン酸塩リアーゼをコードする遺伝子(ACLY)における遺伝子変異と、HMGCRにおける遺伝子変異からなる遺伝子スコアをそれぞれ作成した。 作成したACLYスコアおよびHMGCRスコアと、血漿脂質値、リポ蛋白値との関連を比較し、また、心血管イベントリスクやがんリスクとの関連についても比較した。心血管イベントリスクへの影響は同様 解析には、総計65万4,783例の被験者データが包含された。そのうち10万5,429例が主要心血管イベントを発症した被験者であった。 ACLYスコアとHMGCRスコアは、血漿脂質値およびリポ蛋白値の変化のパターンとの関連が同様であった。また、LDLコレステロール値の10mg/dL低下における心血管イベントリスクへの影響も同様であった。心血管イベントのオッズ比(OR)は、ACLYスコアが0.823(95%信頼区間[CI]:0.78~0.87、p=4.0×10-14)、HMGCRスコアは0.836(95%CI:0.81~0.87、p=3.9×10-19)であった。 ATPクエン酸塩リアーゼおよびHMGCRの生涯性遺伝子阻害はともに、がんリスク増大との関連はみられなかった。

2596.

診療科別、サービス残業の実情

 ケアネットでは2019年3月、会員医師約1,000人を対象に「医師の働き方改革」に関するアンケートを実施した。前編では、医師たちの時間外労働の現状と規制への賛成・反対意見について結果を報告している。今回は、支払いのない時間外勤務“サービス残業”の実態について、アンケート結果を発表する。内科系でも「長時間ある」という回答が多い診療科も “サービス残業”だと感じている時間数について尋ねたところ、“なし”と答えた医師は21.2%。50%以上の医師が毎週少なくとも6時間以上のサービス残業はあると感じており、19.5%は週20時間以上がサービス残業になっていると回答した。 また診療科別にこの結果をみたところ、それぞれ異なる分布がみられた。週20時間以上と答えた医師が最も多かったのは脳神経外科(33.3%)で、総合診療科(30.8%)、糖尿病・代謝・内分泌科(28.6%)と続いている。“なし”と答えた医師が最も多かったのは眼科(52.9%)。次いで、精神科(38.3%)、産婦人科(37.5%)という結果となった。産婦人科は一方で、週20時間以上と回答した医師も比較的多い(20.8%)。なぜ“サービス”になっているのか サービス残業になっている理由についてたずねたところ、最も多かったのは「慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため」という回答。また、自由記述では労働時間管理自体が機能していないと考えられる回答も散見された。長く続いてきた“当たり前”という雰囲気があることや、どんな時間外勤務に申告や支払いが必要かという取り決めが整理・周知されていないことなどが推察される。 年代別・病床数別の回答や、自由記述で挙げられた具体的な理由など、詳細なデータはCareNet.comに掲載中。■関連記事申告や支払いなしの残業ゼロへ、労務管理の徹底求める~働き方改革残業年960時間、特例2,000時間の中身とは~厚労省から水準案宿日直や自己研鑽はどう扱う?~医師の働き方改革「働き方改革」は医師を救う?勤務医1,000人のホンネと実情

2597.

サービス残業はどのくらい? 医師1,000人に聞きました

働き方改革が推進されることで、労働時間管理が行われるようになり、時間外割増賃金もきちんと支払われるようになる―。厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」では、改革による勤務医の働き方の変化の1つとして上記を提示しています。現状、先生方が「サービス残業だ」と感じている時間はどのくらいあるのでしょうか。ケアネットでは、CareNet.com会員医師約1,000人に、その実情をお聞きしました。時間外労働規制への意見についてまとめた結果は前編にて公開中です。結果概要約20%の医師が“サービス残業”週20時間以上と回答「週何時間程度が“サービス残業になっている”と感じているか」という問いに対し、最も多い20時間以上と回答したのは19.5%。1日の法定労働時間が8時間であることを考えると、週に2日分以上がサービス残業だと感じているという過酷な現状がうかがえる。画像を拡大するさらに、現在の時間外労働時間数別にその結果をみると、年1,860時間を超える医師の71.2%が、週20時間以上がサービス残業になっていると回答している。画像を拡大する年代、勤務先の病床数や診療科別にみると…?年代別にみると、やはり20~30代の若い世代でより長い傾向がみられ、20代では「サービス残業はない」と回答した医師は4.5%に留まっている。病床数別では、200床以上で長く、逆に「ない」と答えた割合は0床が最も多かった(43.2%)。しかしどの規模の病院でも、それぞれ一定数サービス残業が「ない」医師も、「長時間ある」医師もいる状況がうかがえる結果となった。画像を拡大する画像を拡大する診療科別では、サービス残業が「ない」と答えた医師は、眼科(52.9%)、精神科(38.3%)、産婦人科(37.5%)などで多かった。一方で、「週20時間以上」と答えた医師は、脳神経外科(33.3%)で最も多く、総合診療科(30.8%)、糖尿病・代謝・内分泌科(28.6%)と続いている。サービス残業になっている時間が週5時間以下(49.3%)と、6時間以上(50.7%)で区切ると、眼科、精神科、皮膚科などでサービス残業がない・あるいは少ないと答えた医師が多く、臨床研修医、血液内科、糖尿病・代謝・内分泌内科などでサービス残業が多いと答えた医師が多かった(図は週5時間以下/6時間以上で区切り、降順)。画像を拡大する最も多い理由は“慣例・雰囲気”「サービス残業となっている理由」については、50.8%が「慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため」と回答。27.5%は「裁量労働制、あるいは年棒制のため」と回答し、「申告したが、認められなかったため」と答えた医師も7.8%であった。「その他」の自由記述では、「管理職のため」という回答のほか、「大学病院のため勉強とみなされる」「研究・教育のため(臨床業務でないから)」といった自己研鑽との線引きの問題が散見された。また、そもそも「勤務時間が決められていない。時間外は手術以外支払いがない」「申告の仕方を聞いたことがなく、申告する制度があるかどうかもわからない」といった労働時間管理そのものが機能していないと考えられる回答や、「時間外勤務の申告に上限がある」「申告しても圧縮される」「研修医には時間外が付かない仕組みになっている」など、理不尽に申告を制限されてしまうような状況がうかがわれる回答もみられた。画像を拡大する設問詳細※Q1~Q5の結果については、前編に掲載中。Q1.勤務先の病院についてお教えください一次救急医療機関(軽症・帰宅可能患者対応、休日夜間急患センター)二次救急医療機関(中等症~重症・一般病棟入院患者対応、当番制)三次救急医療機関(重症~危篤・ICU入院患者対応、救命救急センター)それ以外Q2.時間外労働時間について、検討会で示されている下記枠組みのうち、先生はどちらにあてはまりますか※1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準として、当直を含む時間外労働時間の合計としてあてはまるものを選択ください月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)上記を超えるQ3.時間外上限規制について現状提案されている、原則「月45時間・年360時間」、臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」、特例として指定された医療機関(および一定期間集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」に、賛成ですか?反対ですか?賛成どちらかといえば賛成どちらかといえば反対反対Q4.Q3の回答について理由をお教えください(自由記述)Q5.上記には「アルバイトの勤務時間も含まれる」ことを知っていましたか?知っていた知らなかったQ6.現状、週何時間程度が“サービス残業になっている”と感じていますか?なし1~5時間6~10時間11~20時間20時間以上Q7.Q6でサービス残業となっている理由をお教えください申告したが、認められなかったため慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため裁量労働制、あるいは年棒制のためその他(自由記述)画像を拡大する

2598.

スタチン治療とうつ病リスク

 スタチン治療によるうつ病発症リスクへの影響は、よくわかっていない。デンマーク・オーフス大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、20年間のフォローアップを行ったコホート研究におけるスタチン治療とうつ病との関連を評価した。Journal of Affective Disorders誌2019年3月1日号の報告。 1920~83年に生まれたデンマーク人を対象に、1996~2013年のスタチン治療患者(スタチン群)を特定した。いくつかの潜在的な交絡因子を考慮し、年齢、性別、傾向スコアに基づきスタチン群に非スタチン群をマッチさせた。スタチン治療と抗うつ薬処方、他の薬剤処方、精神科病院でのうつ病診断、心血管死亡率、全死因死亡率との関連を調査するため、Cox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・スタチン群19万3,977例および非スタチン群19万3,977例を対象に、262万1,282人年フォローアップを行った。・スタチン使用と関連していた項目は以下のとおり。●抗うつ薬使用リスクの増加(ハザードレート比[HRR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.31~1.36)●他の薬剤使用リスクの増加(HRR:1.33、95%CI:1.31~1.35)●うつ病診断率の増加(HRR:1.22、95%CI:1.12~1.32)●抗うつ薬使用で調整していない場合におけるうつ病診断率の増加(HRR:1.07、95%CI:0.99~1.15)●心血管死亡率の減少(HRR:0.92、95%CI:0.87~0.97)●全死因死亡率の減少(HRR:0.90、95%CI:0.88~0.92) 著者らは「スタチン治療と抗うつ薬使用との関連性は非特異的であり、他の薬剤と同様であった。また、スタチン使用とうつ病診断との関連は、残余交絡、バイアスまたはスタチン治療による医師の診断頻度により影響を受けることが示唆された」としている。■関連記事うつ病や自殺と脂質レベルとの関連スタチンと認知症・軽度認知障害リスクに関するメタ解析非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か

2599.

スタチン長期投与患者でbempedoic acidが有益/NEJM

 TPクエン酸リアーゼ阻害薬bempedoic acid(ベンペド酸)の安全性/有効性を評価した、52週間の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「CLEAR Harmony試験」の結果が、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K. Ray氏らにより発表された。最大耐用量のスタチンへのベンペド酸の追加により、プラセボと比較して有害事象の発現が増加することなく、LDLコレステロール値が有意に低下したという。これまで短期試験では、ベンペド酸によりLDLコレステロール値が低下することが示唆されていたが、ガイドラインで推奨されるスタチン療法を長期にわたって受けている高コレステロール血症患者への、ベンペド酸投与の安全性と有効性に関するデータは限られていた。NEJM誌2019年3月14日号掲載の報告。スタチン療法中の患者にベンペド酸を追加、長期安全性/有効性を評価 CLEAR Harmony試験は、2016年1月18日~2018年2月21日に、5ヵ国114施設において実施された。 対象は、アテローム動脈硬化性心血管疾患またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症、あるいはその両方を有する患者で、最大耐用量のスタチン療法±脂質低下療法を受けているがLDLコレステロール値が70mg/dL以上の患者を適格とし、ベンペド酸群とプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けた。最大耐用量スタチン療法は、患者が継続できた最大強度のスタチンレジメンとし、担当医が判定した。 主要評価項目は安全性とし、主要副次評価項目(主要有効性評価項目)は、52週間試験における12週時のLDLコレステロール値の変化率とした。安全性の解析には記述統計を用い、有効性は共分散分析(ANCOVA)を用いて解析した。ベンペド酸の上乗せは有効で、安全性プロファイルも良好 2,230例が登録され、そのうち1,488例がベンペド酸群、742例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。ベースラインの平均(±SD)LDLコレステロール値は、103.2±29.4mg/dLであった。 介入期間中における有害事象発現率は、ベンペド酸群78.5%(1,167/1,487例)プラセボ群78.7%(584/742例)、重篤な有害事象発現率はそれぞれ14.5%、14.0%で、いずれも両群で大きな差はなかった。しかし、投与中止に至った有害事象の発現率は、ベンペド酸群がプラセボ群よりも高く(10.9% vs.7.1%)、痛風の発現率もベンペド酸群が高値であった(1.2% vs.0.3%)。 12週時点で、ベンペド酸群は、平均LDLコレステロール値が19.2mg/dL低下し、ベースラインからの変化率は-16.5%であった。プラセボ群のベースラインからの変化率との差は-18.1ポイント(95%信頼区間[CI]:-20.0~-16.1)で、有意差が認められた(p<0.001)。安全性および有効性のアウトカムは、併用していたスタチン療法の強度にかかわらず一貫していた。

検索結果 合計:4993件 表示位置:2581 - 2600