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心血管疾患を持つCOVID-19患者、院内死亡リスク高い/NEJM

※本論文は6月4日に撤回されました。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心血管疾患を有する集団で過度に大きな影響を及ぼす可能性が示唆され、この臨床状況におけるACE阻害薬やARBによる潜在的な有害作用の懸念が高まっている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らは、国際的なレジストリに登録された入院患者8,910例(日本の1施設24例を含む)のデータを解析し、基礎疾患として心血管疾患を有するCOVID-19患者は院内死亡のリスクが高いことを示した。また、院内死亡へのACE阻害薬およびARBの有害な影響は確認できなかったとしている。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。11ヵ国169病院のデータを用いた観察研究 研究グループは、Surgical Outcomes Collaborative(Surgisphere)に登録されたアジア、欧州、北米の11ヵ国169病院のデータを用いた観察研究を行った(ブリガム&ウィメンズ病院の助成による)。 対象は、2019年12月20日~2020年3月15日の期間に、COVID-19で入院し、2020年3月28日の時点で院内で死亡または生存退院した患者であった。 解析時に退院状況が確認できたCOVID-19患者8,910例(北米1,536例、欧州5,755例、アジア1,619例)のうち、515例(5.8%)が院内で死亡し、8,395例は生存退院した。ベースライン時に有意差がみられた背景因子 院内死亡例は生存例に比べ、高齢(平均年齢55.8±15.1歳vs.48.7±16.6歳、群間差:-7.1、95%信頼区間[CI]:-8.4~-5.7)で、白人(68.2% vs.63.2%、-5.0、-9.1~-0.8)および男性(女性34.8% vs.40.4%、5.6、1.3~10.0)が多く、糖尿病(18.8% vs.14.0%、-4.8、-8.3~-1.3)、脂質異常症(35.0% vs.30.2%、-4.8、-9.0~-0.5)、冠動脈疾患(20.0% vs.10.8%、-9.2、-12.8~-5.7)、心不全(5.6% vs.1.9%、-3.7、-5.8~-1.8)、心臓不整脈(6.8% vs.3.2%、-3.6、-5.8~-1.4)の有病率が高く、COPD(6.2% vs.2.3%、-3.9、-6.1~-1.8)や現喫煙者(8.9% vs.5.3%、-3.6、-6.2~-1.1)の割合が高かった。 入院時の薬物療法は、院内死亡例に比べ生存例でACE阻害薬(3.1% vs.9.0%、5.9、4.3~7.5)とスタチン(7.0% vs.9.8%、2.8、0.5~5.1)の使用が多かった。独立のリスク因子は高齢、冠動脈疾患、心不全、喫煙など 院内死亡リスクの増加と独立の関連が認められた因子は以下のとおり。 年齢65歳超(院内死亡率:65歳超10.0% vs.65歳以下4.9%、オッズ比[OR]:1.93、95%CI:1.60~2.41)、冠動脈疾患(10.2% vs.冠動脈疾患のない患者5.2%、2.70、2.08~3.51)、心不全(15.3% vs.心不全のない患者5.6%、2.48、1.62~3.79)、心臓不整脈(11.5% vs.心臓不整脈のない患者5.6%、1.95、1.33~2.86)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(14.2% vs.COPDのない患者5.6%、2.96、2.00~4.40)、現喫煙者(9.4% vs.元喫煙/非喫煙者5.6%、1.79、1.29~2.47)。 院内死亡の増加には、ACE阻害薬(院内死亡率:2.1% vs.ACE阻害薬非投与例6.1%、OR:0.33、95%CI:0.20~0.54)およびARB(6.8% vs.ARB非投与例5.7%、1.23、0.87~1.74)の使用との関連はみられなかった。スタチンの使用(4.2% vs.スタチン非投与例6.0%、0.35、0.24~0.52)は、ACE阻害薬と同様に、院内死亡のリスクが低かった。 また、女性は男性に比べ、院内死亡リスクが低かった(5.0% vs.6.3%、OR:0.79、95%CI:0.65~0.95)。 著者は、「これらの知見は、COVID-19で入院した患者では、基礎疾患としての心血管疾患は院内死亡リスクの増加と独立の関連を示したとする既報の観察研究の結果を裏付けるものである」としている。

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糖尿病治療ガイド2020-2021が完成/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、『糖尿病治療ガイド2020-2021』を発行した。本書は、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までをわかりやすくまとめたガイドで専門医はもとより、非専門の医師、他の医療スタッフなどにも広く活用されている。糖尿病治療ガイド2020-2021は食事療法を大幅に改訂 今回の糖尿病治療ガイド2020-2021の改訂では、11章に「病態やライフステージに基づいた治療の実例」を新設し、全面的に内容をアップデートした。 糖尿病治療ガイド2020-2021で改訂された主な項目は次のとおり。・4章「食事療法」の記載内容を、『糖尿病診療ガイドライン2019』に合わせ大幅に改訂。・初版以来、基本変更がされていなかった「糖尿病治療の目標」と「インスリン非依存状態の治療」の図を大幅に改訂。・6章「薬物療法」と付録「血糖降下薬一覧表」を2020年4月現在の薬剤情報にアップデート。・具体的な治療薬の選択基準を示すべく、11章「病態やライフステージに基づいた治療の実例」を新設。 本書の序文では、「日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と診療での活用に期待を寄せている。■糖尿病治療ガイド2020-2021主な目次項目 1.糖尿病 疾患の考え方 2.診断 3.治療 4.食事療法 5.運動療法 6.薬物療法 7.糖尿病合併症とその対策 8.低血糖およびシックデイ 9.ライフステージごとの糖尿病 10.専門医に依頼すべきポイント 11.病態やライフステージに基づいた治療の実例 付録/索引

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COVID-19、ICU入室患者の臨床的特徴/JAMA

 集中治療を要する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染患者の臨床的特徴の情報は限られている。イタリア・Fondazione IRCCS Ca' Granda Ospedale Maggiore PoliclinicoのGiacomo Grasselli氏らCOVID-19 Lombardy ICU Networkの研究グループは、同国ロンバルディア州の集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の調査を行った。その結果、ICU入室患者の多くは高齢男性で、機械的換気を要する患者が9割近くに及び、呼気終末陽圧(PEEP)値が高く、ICU内死亡率は26%に達したことがわかった。研究の詳細は、JAMA誌2020年4月28日号で報告された。ICUベッドの利用や集中治療の提供の状況は国によって異なるが、ICU治療を要する重篤なCOVID-19患者のベースラインの特徴やアウトカムに関する情報は、地域の集団発生に対処するための取り組みの計画に従事する保健当局や政府関係者にとってきわめて重要である。確定例の9%が入室、年齢中央値63歳、82%が男性 本研究は、2020年2月20日~3月18日の期間に、ロンバルディア州の72のICUに入室したCOVID-19確定例を後ろ向きに評価した症例集積研究である(イタリアFondazione IRCCS Ca’ Granda Ospedale Maggiore Policlinicoの助成による)。最終フォローアップ日は2020年3月25日であった。 この期間に、鼻咽頭拭い液を検体とし、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)で確定されたSARS-CoV-2感染患者は1万7,713例で、1,593例(9%)がICUに入室した。データが得られなかった2例を除く1,591例が解析に含まれ、人口統計学データと臨床データが収集された。 1,591例の年齢中央値は63歳(四分位範囲[IQR]:56~70、範囲:14~91)で、1,304例(82%)が男性であった。また、363例(23%)が71歳以上、203例(13%)は51歳未満だった。高血圧が多くCOPDは少ない、88%で機械的換気 データが得られた1,043例中、709例(68%)で1つ以上の併存疾患が認められた。最も多かったのは高血圧で、509例(49%)にみられ、次いで心血管疾患が223例(21%)、脂質異常症が188例(18%)、2型糖尿病が180例(17%)の順であり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は42例(4%)と少なかった。80歳以上は全例が、60歳以上は76%が、何らかの併存疾患を有していた。 呼吸補助のデータが得られた1,300例中、1,287例(99%)がICUで呼吸補助を必要とし、このうち1,150例(88%)は気管内挿管と機械的換気を、137例(11%)は非侵襲的換気を要した。また、データが得られた1,017例のPEEP中央値は14cmH2O(IQR:12~16)で、999例中887例(89%)で吸入気酸素濃度(FIO2)が50%以上であった。781例の動脈血酸素分圧(PaO2)/FIO2比中央値は160(IQR:114~220)だった。 年齢中央値(63歳)で2群に分けると、PEEP中央値は63歳以下(503例)が14cmH2O(IQR:12~15)、64歳以上(514例)も14cmH2O(12~16)であり、両群間に差は認められなかった(群間差:0、95%信頼区間[CI]:0~0)。また、FIO2中央値は63歳以下が60%(IQR:50~80)、64歳以上は70%(50~80)(群間差:-10%、95%CI:-14~-6)で、PaO2/FIO2比中央値は63歳以下が163.5(IQR:120~230)、64歳以上は156(110~205)であった(7、-8~22)。入室時27%で腹臥位換気、1%でECMO、高血圧患者は高齢 入室時に、875例中240例(27%)が腹臥位換気による治療を受け、498例中5例(1%、51~60歳が2例、61~70歳が3例)が体外式膜型人工肺(ECMO)による治療を要した。 高血圧患者(509例)は、非高血圧患者(526例)に比べ高齢であった(年齢中央値[IQR]:66歳[60~72]vs.62歳[54~68]、群間差:4、95%CI:2~6、p<0.001)。また、高血圧患者は、PaO2/FIO2比が低かった(中央値[IQR]:146[105~214]vs.173[120~222]、中央値の群間差:-27、95%CI:-42~-12、p=0.005)。64歳以上のICU内死亡率は36%、全体の入室期間中央値は9日 2020年3月25日の時点で、データが得られた1,581例のうち920例(58%)がICU入室中で、256例(16%)がICUから退室しており、405例(26%)はICU内で死亡した。また、ICU内死亡率は高齢患者で高かった(21~40歳:4/56例[7%]、41~50歳:16/142例[11%]、51~60歳:63/423例[15%]、61~70歳:174/596例[29%]、71~80歳:136/340例[40%]、81~90歳:11/21例[52%]、91~100歳:1/1例[100%])。高齢患者(64歳以上、786例)は、若年患者(63歳以下、795例)に比べICU内死亡率が高かった(36% vs.15%、群間差:21%、95%CI:17~26、p<0.001)。ICU退室患者の割合は、若年患者のほうが高かった(11% vs.21%、-9%、-13~-6、p<0.001)。 2020年3月25日の時点で、ICU入室期間中央値は9日(IQR:6~13)であった(1,591例)。内訳は、ICU入室中の患者(920例)が10日(8~14)、退室患者(256例)が8日(5~12)、ICU内死亡例(405例)は7日(5~11)だった。また、高血圧の有病率は、ICU内死亡患者が退室患者よりも高かった(63% vs.40%、群間差:23%、95%CI:15~32、p<0.001)。 著者は、「患者の多くは、呼吸補助を要する急性低酸素性呼吸不全のためICUへ入室となった。機械的換気の割合(88%)は、最近の中国や米国からの報告(30~71%)よりも高かった」としている。

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ダパグリフロジン、FDAがHFrEFに承認/AstraZeneca

 米国食品医薬品局(FDA)は2020年5月5日、SGLT2阻害薬のダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)について、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、左室駆出率が低下(NYHA心機能分類:II~IV)した心不全(HFrEF)の成人患者の心血管死および心不全入院のリスク低下に対する適応を承認した。英国・AstraZeneca社が発表した。HFrEFに対してFDAが承認した初のSGLT2阻害薬となる。 本承認は、第III相DAPA-HF試験の良好な結果に基づいている。本試験では、ダパグリフロジンを標準治療への追加治療として用い、HFrEF患者において、主要複合評価項目である心血管死または心不全悪化の発現率をプラセボと比較し26%低下させた(絶対リスク減少率[ARR]=5%[100患者・年当たりのイベント率換算で、それぞれ11.6例vs.15.6例]、p<0.0001)。試験期間中、ダパグリフロジン投与群では、21患者当たり1件の心血管死または心不全による入院/緊急受診を回避した。 なお、わが国における適応症は「2型糖尿病」および「1型糖尿病」であり、心血管死および心不全による入院リスク低下に対する適応は取得していない。

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統合失調症に対するドパミンD2/D3受容体パーシャルアゴニストの忍容性の比較

 アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineは、ほかの第2世代抗精神病薬と異なり、ドパミンD2/D3受容体に対するパーシャルアゴニスト作用を有している。オーストラリア・モナッシュ大学のNicholas Keks氏らは、3剤のドパミンD2/D3受容体パーシャルアゴニストについて比較を行った。CNS Drugs誌オンライン版2020年4月3日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールとは対照的に、ブレクスピプラゾールは、ドパミンD2活性が低く、セロトニン5-HT1Aおよび5-HT2A受容体親和性が高い。一方、cariprazineは、ドパミンD3受容体親和性が最も高く、半減期も最も長い。・ドパミン受容体パーシャルアゴニスト(DRPA)の主な副作用は、軽度~中等度のアカシジアであり、多くは治療開始数週間のうちにごく一部の患者で認められる。・DRPA間の違いについて、決定的な結論に至るには直接比較研究が必要ではあるが、入手可能なエビデンスによる比較では、アカシジアはブレクスピプラゾールが最も発生率が低く、cariprazineが最も高いと考えられる。・体重増加リスクは、アリピプラゾールとcariprazineは低く、ブレクスピプラゾールは中程度である。・DRPAは、過鎮静、不眠症、悪心のリスクが低かった。・DRPAは、高プロラクチン血症リスクが低く、おそらく性機能障害リスクも低いと考えられる。・一部の患者では、プロラクチン濃度の低下が認められ、とくにDRPA治療開始前にプロラクチンレベルが上昇している患者で認められた。・DRPAは、有害事象による治療中止率は低く、忍容性は良好であった。・アリピプラゾールは、おそらくDRPA活性による病的賭博やほかの衝動制御行動と関連している可能性がある(ブレクスピプラゾールおよびcariprazineでの報告は認められなかった)。・DRPAによる糖尿病および遅発性ジスキネジアリスクは明らかではなかったが、低リスクであると考えられる。 著者らは「DRPAの忍容性は良好であることから、とくに統合失調症の治療初期における第1選択治療として検討すべきである」としている。

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「家だと飲み過ぎてしまう」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第32回

■外来NGワード「外で飲むのをやめなさい」(すでにやめている)「お酒の量を減らしなさい」(あいまいな節酒指導)「お酒をやめなさい!」(無理な禁酒指導)■解説 徒然草には、「百薬の長とはいへど、万(よろづ)の病は酒よりこそ起れ」(酒は百薬の長というが、さまざまな病気は酒から起こる)という一節があります。まったくお酒を飲まない人に比べて、“節度ある適度な飲酒”(1日平均純アルコール:20g程度)をする人のほうが死亡率が低いとの報告もありますが、飲み過ぎはさまざまな病気を引き起こすことが昔から知られています。では、なぜ人は飲み過ぎてしまうのでしょうか。原因の一つに「ストレス」が挙げられます。お酒を飲むことでストレスが緩和されるため、ストレスがあるとお酒を飲みたくなる。つまり、ストレスが多いと、アルコール多飲の悪循環に陥りやすくなるのです。そのメカニズムとして、不快感をつかさどる神経ペプチドの関与などが次第に明らかとなってきています。抗ストレス作用のある神経ペプチドY(NPY)の働きに対し、ストレスによる不快感を増大させるコルチコトロピン放出因子(CRF)の働きが上回ることで、アルコール摂取が促進されると考えられています。新型コロナ感染拡大防止の観点から、「3密」を避けるために、居酒屋やバーなどで飲む機会が減り、一人暮らしの人は孤立しやすい状況です。テレビで朝から晩まで新型コロナ情報を見ていると、ストレスが溜まり、その結果として飲酒量が増えている人がいるかもしれません。外に比べて家で飲むお酒の量が増える人の特徴として、ストレス解消の手段として飲酒をしている、安いお酒を買い込む癖がある、昼夜問わず酒を飲んでいるなどが挙げられます。この機会に飲酒習慣を見直して、楽しく節酒できるといいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近、お酒は飲んでいますか?患者はい。外で飲めないので、家で飲んでいます。医師飲む量は、外で飲んでいたときと比べてどうですか?患者うーん、どちらかというと増えたかもしれません。医師えっ、家で飲むのに、どうしてですか?患者家だと、かなり酔っぱらうまで飲んでしまって…。医師なるほど。外で酔っぱらうと、家まで帰るのが大変ですからね。患者あとは最近、発泡酒が安かったので箱買いしてしまったんです。医師安いと、ついつい飲み過ぎてしまいますよね。患者そうなんです。血糖値も上がってきているし、何とかしないと。医師それなら、いい方法がありますよ!患者ほう、どんな方法ですか?(興味津々)医師家でも、外で飲んでいる雰囲気にするんです。健康的なおつまみを手作りしたり、水をおしゃれな容器に入れてチェイサーを準備したり。患者なるほど。医師あと、お酒は少し贅沢をして高価な物がいいですね。患者確かに、それだと勢いよくは飲めないですね。医師そして大事なのは、飲み終わる時間を決めること。もちろん、外食だと行かない日もあるので、休肝日もお願いしますね。患者ハハハ。家でも、いろいろ工夫すれば楽しくなりますね。やってみます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「お酒を飲む量は、外で飲んでいたときと比べてどうですか?」「家でも外で飲むときのように、いろいろ工夫してみてはいかがですか?」1)Pleil KE, et al. Nat Neurosci. 2015 Apr;18:545-52. [Epub 2015 Mar 9].2)Clay JM, et al. Lancet Public Health. 2020 Apr 8. [Epub ahead of print]

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メトホルミン製剤の一部ロット自主回収

 2020年4月27日、大日本住友製薬株式会社のメトグルコ錠250mgおよび錠500mgの一部ロットおよび日本ジェネリック株式会社のメトホルミン塩酸塩錠500mgMT「JG」の一部ロットが自主回収(クラスI)されることとなった。厚生労働省がメトホルミン製剤の分析を全15社に指示 昨年、シンガポール保険科学庁より、メトホルミン塩酸塩含有製剤から発がん性物質であるN-ニトロジメチルアミン(NDMA)が検出されたことに伴い、シンガポールの一部事業者が自主回収に着手した旨が発表された。これを受け、厚生労働省は2019年12月9日付け事務連絡「メトホルミン塩酸塩における発がん性物質に関する分析について(依頼)」において、メトホルミン製剤におけるNDMAの分析を全15社に対して依頼した。 なお、NDMAに関しては、メトホルミン製剤のみではなく、アンジオテンシンII受容体拮抗薬や一部のH2受容体拮抗薬に対しても分析が依頼されている。 大日本住友製薬株式会社は、「分析の結果PTP包装品の複数のロットから管理指標(メトホルミン塩酸塩として1日2,250mgを70年間服用し続けた場合に10万人に1人に発がんするリスクが増える量)を超えるNDMAが検出されたため、管理指標を超えたロットおよび超えている可能性のあるロットのPTP包装品について、自主回収することとしました。原因は明確ではありませんが、PTPアルミ箔の錠剤接着面の印刷インクに含まれるニトロセルロース系樹脂由来の物質が、錠剤中の原薬に僅かに残留していた原料であるジエチルアミンと反応してNDMAが生成された可能性があると考えています」としている。学会は医療者に対し、回収への協力と患者への治療継続の必要性の説明を依頼 日本糖尿病学会は、学会ホームページにおいて、「これまでに本製品によるNDMAに関連した重篤な健康被害等の報告はありません。メトグルコなどメトホルミン製剤を服用中の患者の皆様は、本件について心配な点があれば独断で服用を中止せず、主治医に相談してください。また、医療従事者の皆様におかれましては、当該ロットの回収へのご協力と、患者さんから相談を受けた場合には糖尿病に対する治療継続の必要性のご説明をお願いいたします」として声明を発表している。

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NYのCOVID-19入院患者、高血圧57%、糖尿病34%/JAMA

 米国ニューヨーク州の12病院に入院した、新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)患者5,700例について症例研究(case series)を行ったところ、年齢中央値は63歳、約57%が高血圧症を、また約34%が糖尿病を有していたことなどが明らかにされた。米国・Northwell HealthのSafiya Richardson氏らが報告した。試験期間中(2020年3月1日~4月4日)に退院・死亡した患者は、約半数近くの2,634例で、うち死亡は21%だった。また、侵襲的機械的人工換気を要した患者は320例で、その死亡率は88.1%だったという。米国におけるCOVID-19入院患者の特徴とアウトカムの情報は限定的であったが、著者は、「今回の症例研究により、ニューヨーク市周辺におけるCOVID-19入院患者の特徴と早期アウトカムが明らかになった」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年4月22日号掲載の報告。3月1日~4月4日の入院患者の臨床アウトカムや併存疾患を調査 研究グループは、ニューヨーク市、ロングアイランド、ウェストチェスター郡のNorthwell Healthが運営する12病院で、2020年3月1日~4月4日に入院したCOVID-19の連続症例5,700例について症例研究を行った。被験者は、鼻咽頭検体によるPCR検査でSARS-CoV-2の感染が確認されていた。 入院中の臨床アウトカム(侵襲的機械的人工換気、腎代替療法、死亡など)、患者の人口統計学的情報、ベースラインでの併存疾患、バイタルサイン、検査結果なども収集して評価した。女性患者は39.7%、トリアージ時の発熱患者は30.7% 被験者5,700例の年齢中央値は63歳(四分位範囲[IQR]:52~75、範囲:0~107)で、女性は39.7%だった。最も多くみられた併存疾患は、高血圧症(56.6%、3,026例)、肥満(41.7%、1,737例)、糖尿病(33.8%、1,808例)だった。トリアージ時点で発熱が認められた患者は30.7%、呼吸数24回/分超だった患者は17.3%、酸素補充療法を要した患者は27.8%だった。呼吸器ウイルス重複感染率は2.1%だった。 試験期間中に退院または死亡した患者2,634例のうち、ICUでの治療を受けた患者は373例(14.2%)で、年齢中央値は68歳、女性は33.5%だった。侵襲的機械的人工換気を受けたのは320例(12.2%)、腎代替療法を受けたのは81例(3.2%)で、死亡は553例(21%)だった。機械的換気を必要とした患者の死亡率は88.1%だった。 退院後のフォローアップ中央値は4.4日(IQR:2.2~9.3)で、試験期間中の再入院率は2.2%(45例)。再入院までの日数中央値は3日(IQR:1.0~4.5)だった。 フォローアップ最終日時点での入院者は3,066例(年齢中央値65歳[IQR:54~75])で、観察打ち切りまでのフォローアップ期間中央値は4.5日(IQR:2.4~8.1)だった。

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COVID-19流行下で不安募らせるがん患者、医師は受け身から能動へ?

 がん患者の自分が感染したら致命的なのではないか、治療を延期しても大丈夫なのか、この発熱は副作用かそれとも感染か―。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、がん患者の不安は大きくなってしまっている。エビデンスが十分とはいえない中、また医師自身にも感染リスクがある中で、治療においてどのような判断をし、コミュニケーションを図っていけばよいのか。4月21日、「新型コロナ感染症の拡大を受け、がん患者・家族が知りたいこと」(主催:一般社団法人CancerX)と題したオンラインセッションが開催され、腫瘍科や感染症科など各科の専門医らが、患者および患者家族からの質問に答える形で議論を行った。がんの既往があると重症化リスクが高いのか?と聞かれたら 大須賀 覚氏(アラバマ大学バーミンハム校脳神経外科)は、現状のデータだけでは十分とは言えないとしたうえで、「すべてのがん患者さんが同じように重症化リスクが高いとはかぎらない」と説明。英国・NHSによるClinical guideから、とくに脆弱とされる状況を挙げた:• 化学療法を現在受けている• 肺がんで、放射線治療を受けている• 血液または骨髄のがん(白血病、リンパ腫、骨髄腫)に罹患している• がんに対する免疫療法または他の継続的な抗体治療を受けている• その他、免疫系に影響するタンパク質キナーゼ阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的療法を受けている• 6ヵ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた人、または現在、免疫抑制剤の投与を受けている• 60歳以上の高齢• がん以外の持病がある(心・血管系疾患、糖尿病、高血圧、呼吸器疾患など) 市中に感染が蔓延している状況下では、病院へ行く頻度が高い人はやはり感染リスクが高くなるとして、治療によるベネフィットを考慮したうえで、受診の機会をどうコントロールしていくかが重要になると話した。感染のリスクと治療のベネフィットを、どう考えるか 大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院国際感染症センター)は今後の流行の状況について、「いま来ている波が落ち着いたとしても、また次の波に警戒しなければならない」とし、ある程度長い期間、寄せては返しを繰り返すのではないかと話した。先がみえない状況の中で、治療延期の判断、延期期間をどう考えていけばよいのか。 勝俣 範之氏(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)は、「がん治療の延期・中止は非常に慎重に行うべき」として、病状が安定していて、半年に一度などのフォローアップの患者さんで、たとえば1ヵ月後に延期する、といったところから始めていると話した。 大須賀氏は、医療資源が確保できず安全な治療自体が行えない場合、いま治療を実施することによって感染リスクが高まると判断される場合は延期・治療法の変更が検討されるとし、治療自体の緊急性や効果といった個別の状況のほか、地域での感染状況などから総合的に判断されるというのが現状の世界での基本的見解だろうと話した。 そして、もし治療の延期や変更を決めた場合には、「なぜ延期/変更されたのかを患者さんが理解しないといけないし、医師は理解できるように説明できないといけない」と上野 直人氏(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍内科)。会場の参加医師からは、貴重な受診機会を効率的なものにするために、平時以上に、患者さんに事前に質問事項をメモして来院するよう伝えるべきではという声も聞かれた。続く緊張と感染への不安で食事がとれなくなっている患者も 秋山 正子氏(認定NPO法人マギーズ東京)は、感染を心配しすぎて過敏になり、食事や水分をまともにとれていないような状況もある、と指摘。電話相談などを受けていると、家にずっと閉じこもる状況下で緊張状態になり、身体をうまく休めることができなくなっている人もいるという。 天野 慎介氏(一般社団法人 全国がん患者連合会)は、「まず自分がストレスを感じていることを認めて受け入れる」ことが重要と話した。そのうえで、日本心理学会によるアウトブレイク下での精神的ストレスを軽減させるための考え方(もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために)について、その一部を紹介した:• 信頼できる情報を獲得する• 日々のルーティンを作り,それを守る• 他者とのヴァーチャルなつながりをもつ• 健康的なライフスタイルを維持するつながらない代表電話、医師ができる積極的アプローチとは がん治療中に発熱した場合、それが化学療法による副作用なのか、あるいは感染の疑いがあるのか、患者自身が判断するのは不可能で、味覚障害や下痢なども、鑑別が難しい。佐々木 治一郎氏(北里大学病院 集学的がん診療センター)は、「がん治療中の患者さんに関しては、発熱などの何らかの症状があった場合、保健所ではなく、まず主治医に連絡してもらうようにしている」と話した。 しかし現在、多くの病院で代表電話は非常につながりにくい状況になっている。会場からは、各病院でもがん相談支援センターの直通電話は比較的かかりやすいといった情報が提供された。佐々木氏は、「自粛して1人あるいは家族だけと自宅にいる患者さんに、何らかの支援を提供できるよう動いていくときなのではないか」とし、医師は普段は受け身で相談を受けているが、今はこちらから電話をするなど、積極的なアプローチが必要なのではないかと話した。正しい情報にアクセスし、適切なサポートにたどり着いてもらうために 「10秒息を止められれば大丈夫」「水を飲めば予防できる」など、驚くようなデマが拡散し、そして思った以上に患者さんたちはそういった情報に翻弄されてしまっていると勝俣氏。信頼できる情報にアクセスできるように、医療者がサポートしていく必要性を呼び掛けた。また秋山氏は、「直接ではなくても、電話やネットなどのツールを活用し、誰かとつながって話すことで、かなり不安が軽減する」とし、電話相談の窓口などを活用してほしいと話した。本セッション中に登壇者や参加者から提供された情報源や相談窓口について、下記に紹介する。■新型コロナウイルスに関する情報臨床腫瘍学会「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」チームオンコロジー「新型コロナウイルス(COVID-19)関連リンク集」日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT)「新型コロナウイルス情報リンク集」大須賀 覚先生のnote■相談窓口などマギーズ東京「メールやお電話などのご案内」日本臨床心理士会「新型コロナこころの健康相談電話のご案内」厚生労働省「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」

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「外出自粛で太ってしまった」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第31回

■外来NGワード「抵抗力をつけるためにしっかり食べなさい!」(食べ過ぎてしまう)「体重が増えないようにしなさい!」(あいまいな減量指導)「お菓子を食べないようにしなさい!」(あいまいな食事指導)■解説 不要不急の外出自粛が呼び掛けられる中、家にいる時間が長くなり、「普段はそんなに食べないのに、家にいるとついお菓子などに手が伸びてしまう」と言う患者さんがいます。中には、「抵抗力をつけるためには食べたほうがよい」と誤解している人もいるようです。緊急事態宣言を受け、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言」を出しました。「生体の免疫力は栄養状態によって支えられている」として、栄養評価や低栄養患者の栄養状態改善などの指針が示されています。とくに、高齢者では微量栄養素(各種ビタミンや微量元素)の欠乏を予防することが大切です。最近の知見では、微量栄養素の欠乏が感染症の発症や重症化に関わっているとの報告もあり、食事の量だけでなく内容にも配慮する必要があります。しかし、肥満を伴う糖尿病患者さんは、体重の変動が血糖変動と深く関連しているので、食べ過ぎには注意が必要です。“やめようと思っているのにやめられない”タイプの患者さんには、「刺激統制法(先行刺激を変えることで行動の頻度を調整する方法)」を用いてみましょう。この新型コロナ対策をきっかけに、患者さんの栄養状態に合わせた“作戦”を一緒に立てることができるとよいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近はどうお過ごしですか?患者ずっと家にいるので、体重が増えています…。医師そうですか。体重が増えた原因は何だと思いますか?患者運動できていないせいもありますが、家にいるとついつい食べちゃうんです。医師動いていないからエネルギーは余っているのに、3食きちんと食べて、おやつもついついね…。わかります。(患者の行動パターンを振り返る)患者そうなんですよ。テレビで「抵抗力をつけるために食べなさい」と言っていたので、気にせずに食べていたら、案の定です。何とかしないといけないとは思っているのですが…。医師それなら、いい方法がありますよ!患者えっ、何ですか?(興味津々)医師「余分なものを食べない作戦」を考えればいいんです。患者余分なものを食べない作戦?医師そうです。目の前にあると食べたくなるので、美味しそうなものは隠しておくことです。患者確かに、なければ食べませんものね。でも、隠した場所は覚えていますよね?医師そうなんです。だから、隠し方も大切ですね。「非常用」や「来客用」と貼っておいて、取りにくい場所に置いたりするのも一案ですよ。患者なるほど。隠し方を工夫すればいいんですね。やってみます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「この機会に、余分なものを食べない“作戦”を立ててみませんか?」

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ルムジェブ:より速やかなインスリン作用発現を実現

血糖変動を意識した糖尿病治療近年、糖尿病治療ではHbA1cに加えて日々の血糖変動、いわゆる血糖トレンドが重要視されるようになっている。2019年には新たな国際コンセンサスレポートも公表され、1日のうち70%以上の時間で、血糖変動を70~180mg/dLの範囲内に収めることが推奨された1)。血糖変動を目標の範囲内に収めるためには、食後の急激な血糖上昇を抑えることも重要だ。その治療法としては、速効型、超速効型のインスリン製剤が主流であり、投与タイミングは食事開始15~30分前となっている。しかし、実際には食事開始前2分以内に投与する人も多いという報告があり2)、そういったケースでは食後の血糖上昇の抑制が遅れる可能性があった。速やかなインスリン作用発現が実現こうした背景から、食後のより速やかなインスリン作用発現を実現すべく、超速効型インスリンアナログ製剤ルムジェブ注(一般名:インスリン リスプロ[遺伝子組み換え])が開発された。ルムジェブ注は、既存の超速効型インスリンアナログ製剤ヒューマログ注(一般名:インスリン リスプロ[遺伝子組み換え])の有効成分に添加剤を加えることで、皮下からの吸収をより速めた薬剤で、2020年3月に製造販売承認を取得した。実際に日本人1型糖尿病患者を対象とした試験では、ヒューマログ注と比較して最高血中濃度到達までの時間が約13分、曝露持続時間が88分短縮したことが報告されている3)。食後血糖上昇の抑制について優越性を確認ルムジェブ注の有効性は、1型糖尿病患者を対象としたPRONTO-T1D試験、および2型糖尿病患者を対象としたPRONTO-T2D試験で検討された4), 5)。本試験では、基礎インスリンを併用する糖尿病患者(1型1,222例、2型673例)に対して、ルムジェブ注またはヒューマログ注を盲検下で1日3回食直前(食事開始0~2分前)に皮下投与した。主要評価項目である投与26週時におけるHbA1cのベースラインからの変化量の差は、T1D、T2D試験それぞれ-0.08%(95%CI[-0.16、0.00])、0.06%(95%CI[-0.05、0.16])であり、ヒューマログ注に対するルムジェブ注の非劣性が認められた(非劣性マージン0.4%)。また同試験では、食後の血糖上昇の低減作用も検討された。投与26週時における食後血糖のベースラインからの変化量の差は、食後1時間でT1D、T2D試験それぞれ-27.9 mg/dL(95%CI[-35.3、-20.6])、-11.8 mg/dL(95%CI[-18.1、-5.5])だった。また食後2時間でそれぞれ-31.2 mg/dL(95%CI[-41.1、-21.2])、-17.4 mg/dL(95%CI[-25.3、-9.5])であり、食後1時間、2時間ともにヒューマログ注に対するルムジェブ注の優越性が認められた。なおT1D試験では、ルムジェブ注を非盲検下で食後(食事開始後20分)に投与した群と、ヒューマログ注を食事前に投与した群についても、投与26週時におけるHbA1cのベースラインからの変化量の差が検討された。その結果は0.13%(95%CI[0.04、0.22])であり、食事後の投与においてもヒューマログ注に対するルムジェブ注の非劣性が認められた。ルムジェブ注への期待上記臨床試験などの結果から、ルムジェブ注は食直前の投与でよりメリットが大きいと考えられるため、食時開始後(食事開始から20分以内)の投与も可能だが、通常は食事開始時(食事開始前 2 分以内)の投与が推奨されている。ルムジェブ注の効果を最大限発揮するためには、こうした投与タイミングについて患者にきちんと指導することも重要だ。速やかなインスリン作用発現が得られるルムジェブ注により、食後の血糖上昇を抑え、血糖変動を目標範囲内に収めることを目指せると期待したい。1)Battelino T, et al. Diabetes Care. 2019;42:1593-1603.2)Ishii H et al. Diabetes Res Clin Pract. 2020;162:108076.3)Shiramoto M, et al. J Diabetes Investig. 2019 Dec 9. [Epub ahead of print]4)Klaff LJ, et al. ADA 2019.5)Blevins T, et al. ADA 2019.

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眼底写真の深層学習、視神経乳頭異常を鑑別/NEJM

 眼底写真を用いて構築した深層学習システムは、乳頭浮腫のある視神経乳頭と、正常乳頭または乳頭浮腫以外の異常を伴う乳頭を鑑別可能であることが、シンガポール・国立眼科センターのDan Milea氏らBONSAIコンソーシアムの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年4月14日号に掲載された。乳頭浮腫(頭蓋内圧亢進による視神経浮腫)の検出や、視神経乳頭が正常と判定する能力は、頭痛や他の神経学的症状を呈する患者の評価に有益で、眼底検査所見は診断戦略や治療選択肢に影響を及ぼし、乳頭浮腫の検出の失敗は視力喪失や神経学的合併症をもたらす可能性があるという。一方、眼底写真を用いたAIおよび深層学習は、すでに糖尿病性網膜症や緑内障性視神経症を自動検出するシステムとして開発されている。訓練と検証に1万4,341画像、外部テストに1,505画像を使用 研究グループは、眼底写真を用い、視神経乳頭に関して正常、乳頭浮腫、他の異常を鑑別するAIベースの深層学習システムを開発するための検討を行った(シンガポール国立医学研究会議[NMRC]などの助成による)。 市販のさまざまな眼底カメラを使用し、薬剤で散瞳させて撮影したデジタルカラー眼底写真1万5,846画像を、後ろ向きに収集した。これらの写真のうち、11ヵ国19施設の1万4,341画像は訓練と検証に使用し、次いで、他の5ヵ国5施設の1,505画像を用いて外部テストを実施した。 視神経乳頭の外観を分類する能力は、受信者動作特性曲線下面積(AUC)、感度、特異度、正確度を、神経眼科医による臨床診断を参照基準として比較することで評価した。 眼底写真1万5,846画像は7,532例のもので、71.0%が両眼、17.6%が片眼、11.4%がフォローアップの受診時に再撮影したものであった。患者の平均年齢は48.6歳(範囲:3~98)、43.4%が男性だった。外部テストの乳頭浮腫有病率9.5%、PPV 39.8%、NPV 99.6% 訓練と検証用のデータセット1万4,341画像(6,779例)のうち、9,156画像が正常視神経乳頭、2,148画像が頭蓋内圧亢進による視神経乳頭浮腫、3,037画像は他の異常を伴う視神経乳頭であった。テスト用の1,505画像では、613画像が正常乳頭、360画像が乳頭浮腫、532画像は他の異常だった。 検証データセットでは、システムが視神経乳頭浮腫と他の視神経乳頭(正常+他の異常)を鑑別するAUCは0.99(95%信頼区間[CI]:0.98~0.99)であった。感度は93.2%(91.8~94.5)、特異度は95.1%(94.7~95.6)、正確度は94.8(94.4~95.3)だった。 また、正常視神経乳頭と異常な視神経乳頭(乳頭浮腫+他の異常)の鑑別のAUCは0.99(95%CI:0.99~0.99)であり、感度は93.5%(92.9~94.1)、特異度は96.2%(95.5~96.9)、正確度は94.5%(94.0~94.9)であった。 一方、外部テストのデータセットでは、システムが視神経乳頭浮腫と他の視神経乳頭(正常+他の異常)を鑑別するAUCは0.96(95%CI:0.95~0.97)、感度は96.4%(93.9~98.3)、特異度は84.7%(82.3~87.1)、正確度は87.5%(85.5~89.3)であった。 また、正常視神経乳頭と異常な視神経乳頭(乳頭浮腫+他の異常)の鑑別のAUCは0.98(95%CI:0.97~0.98)、感度は86.6%(83.8~89.3)、特異度は95.3%(93.8~96.8)、正確度は91.8%(90.3~93.3)だった。 外部テストのデータセットにおける乳頭浮腫の平均推定有病率は9.5%であり、このシステムの陽性適中率は39.8%(95%CI:36.6~43.2)、陰性適中率は99.6%(99.2~99.7)であった。 著者は、「本研究とは視神経乳頭異常の有病率が異なる可能性があるさまざまな設定において、深層学習システムが使用可能かを前向きに検証するために、さらなる検討を要する」としている。

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新型タバコにも含まれるニコチンによる免疫機能の低下【新型タバコの基礎知識】第18回

第18回 新型タバコにも含まれるニコチンによる免疫機能の低下Key Pointsニコチンは免疫機能の低下をもたらす加熱式タバコに替えても、ニコチンによる免疫機能の低下は防げない新型コロナウイルス対策の1つとして禁煙を推進してほしい今回の記事は予定を変更して、新型コロナ問題にも関連する「ニコチンによる免疫機能の低下」について解説します。アイコスなどの加熱式タバコにも、紙巻タバコと同様に多くのニコチンが含まれています(第3回記事参照)。ここでは、タバコ研究データの決定版、US Surgeon General Report 2014年号(図)から、喫煙と免疫システムの関連についてお伝えしたいと思います1)。画像を拡大する(出典)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK179276/pdf/Bookshelf_NBK179276.pdf喫煙と免疫システムの関係は?まず簡単に、喫煙と免疫の関係について述べます。免疫システムは、感染や病気から体を守るためのもの、風邪やインフルエンザなどのウイルスからがんなどの疾患に至るまで、あらゆる異物と戦っています。喫煙は免疫機能を低下させ、病気との戦いをうまくいかなくさせていきます。喫煙者は非喫煙者よりも呼吸器感染症に罹りやすくなるのです。これは、タバコに含まれる化学物質が、呼吸器感染症の原因となるウイルスや細菌を正常に攻撃するための、免疫システムの機能を低下させていることが理由の1つです。実際に、喫煙者は非喫煙者に比べて肺炎になりやすく、より重症化しやすくなります。ここまでの話だけなら、ある意味単純で簡単な話(ニコチンだけでなく、タバコが免疫機能を低下させ、感染症への罹患を増やし、肺炎などの重症化リスクを上げること)として理解されるものと思います。しかし、免疫に対するタバコの煙の悪影響があまり理解されていない理由は、免疫系の研究が複雑でややこしく、次のような研究の状況にあるからなのかもしれません。ニコチンは免疫系を抑制し、一方で刺激する?ニコチンは、免疫系を刺激する機序と抑制する機序の両方に作用すると考えられています。尿中マーカーから推測されるニコチンのレベル(すなわち通常の喫煙者と同等のニコチン量)で十分に、リウマチなどの自己免疫系疾患や感染症、がんといった免疫学的に誘導される疾患と関連していると考えられています2)。ニコチンは、ニコチンレセプターを介してその効果を発揮します3)。ニコチンは細胞に直接作用することができる一方、生体内ではそれ自体が強力な免疫調整機能を持つ交感神経系へも直接的に作用します。ニコチンを含んではいるが燃焼・不完全燃焼しきった紙巻タバコの煙由来成分は、まだ燃焼しきっていない紙巻タバコの煙由来成分(酸化作用を多く持つ)と比較して、免疫系への作用がかなり小さいとされています4,5)。禁煙補助薬として使用されるニコチンパッチまたはニコチン部分拮抗薬(たとえば、バレニクリン)は、ヒトでは免疫系への作用が少なく6)、またスヌース(スウェーデンでのみ広く使用されているニコチンを含む低ニトロサミンの無煙タバコ製品)ではニコチンを含むにもかかわらず、紙巻タバコと同等の免疫系への影響はみられません。このような結果の解釈として、紙巻タバコによる免疫への影響は、ニコチンによる影響だけでなく酸化作用等と関連しているものと考えられます7)。こうしたある意味で矛盾した、免疫抑制と免疫促進の両方向への影響がタバコにはあるようです。ニコチンが樹状細胞を抑制するのではなく、樹状細胞を刺激することで免疫系応答によりアテローム性動脈硬化へとつながるとされています8)。一方では、ニコチンは神経細胞のニコチンレセプターを介して作用し、in vivoおよびin vitroの両方で細胞性免疫を抑制するとされています。ニコチンはB細胞における抗体産生を抑制し、T細胞を減らし、T細胞受容体を介したシグナル伝達が減衰したアレルギー様状態を誘導します9,10)。動物実験で、ニコチンによる免疫系への作用により、動物は細菌およびウイルスに感染しやすくなると分かっているのです。前述したとおり、ニコチンは、免疫系を刺激する機序と抑制する機序の両方に作用するため話が理解されにくいようです。免疫促進と抑制のどちらの方向であっても行き過ぎると免疫機能は異常を来すと言えるでしょう。喫煙により、関節リウマチのような自己免疫疾患も、免疫機能の低下により誘導されやすくなるがんも増えると分かっているのです。そのため、「喫煙により免疫異常が引き起こされる」とまとめて書かれるわけです。ただし、今回の新型コロナ問題のように感染症に関して喫煙やニコチンの害を考える場合には、単純に「ニコチンにより免疫機能が低下する」と受け止めると分かりやすいでしょう。新型コロナ時代の禁煙のすゝめ新型コロナウイルスの感染および感染後の重症化を防ぐためにできることの一つとして禁煙があります。タバコ会社は「自宅では加熱式タバコを吸ってください」などとマーケティング活動に熱心だが、それにダマされてはなりません。加熱式タバコに替えてもニコチンは含まれますから、免疫機能の低下は防げないのです。しかし、すべてのタバコを止めれば、ニコチンによる免疫機能の低下から回復できます。その禁煙の効果は数日で得られ、何歳でも禁煙の効用が得られるものと考えられます。日本における新型コロナウイルスの蔓延はまだ始まったばかりであり、これから先に多くの人が新型コロナウイルスに感染する可能性があります。数ヵ月先かもしれないし、1年先かもしれません。日本に2千万人程度存在するすべての喫煙者が禁煙することにより、新型コロナウイルスの流行を収束させる一助としていただきたいと思います。第19回は、「禁煙をし続けるために本当に必要なこと(2)」です。1)US Surgeon General Report 2014.2)Cloez-Tayarani I1, Changeux JP. J Leukoc Biol. 2007 Mar;81:599-606.3)US Surgeon General Report 2010.4)Laan M,et al. J Immunol. 2004 Sep 15;173:4164-70.5)Bauer CM,et al. J Interferon Cytokine Res. 2008 Mar;28:167-79.6)Cahill K,et al. Cochrane Database Syst Rev. 2008 Jul 16:CD006103.7)McMaster SK,et al. Br J Pharmacol. 2008 Feb;153:536-43.8)Aicher A,et al. Circulation. 2003 Feb 4;107:604-11.9)Geng Y,et al. Toxicol Appl Pharmacol. 1995 Dec;135:268-78.10)Geng Y,et al. J Immunol. 1996 Apr 1;156:2384-90.

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バクスミー:重症低血糖治療薬に初の点鼻粉末剤が登場

重症低血糖治療の現状日本では、年間約2万件の重症低血糖が発生していると推計されている1)。重症低血糖では、急激に血糖値が低下し自己対処が間に合わないケースや、自覚症状なく意識消失に至るケースがあり、回復には家族など看護者の援助が必要となる。重症低血糖を来した際の緊急処置は、これまでグルカゴン注射が主流だった。しかしグルカゴン注射は、消毒、グルカゴンの溶解、溶解液の注入、と注射に至るまでに煩雑な処置を要することから、より簡便に使用できるグルカゴン製剤が求められていた。迅速な投与が可能なグルカゴン点鼻粉末剤2020年3月、グルカゴンの点鼻粉末剤であるバクスミー(一般名:グルカゴン)が製造販売承認を取得した。注射剤以外の重症低血糖治療薬としては初の選択肢となる。重症低血糖の患者に対し、家族などの看護者が薬剤を鼻腔内に噴射して使用する。薬剤は点鼻容器に充填されており、調整作業が不要なため迅速な投与が可能だ。マネキンを用いた薬剤の摸擬投与試験によると、投与完了までの平均時間はグルカゴン注射剤で約207秒に対し、バクスミーで約24秒との報告もある2)。また、バクスミーは室温(1~30℃)で持ち運びができることも特徴の一つだ。グルカゴン筋注に対する非劣性と忍容性を確認 バクスミーの有効性および安全性は、1型糖尿病患者33例、2型糖尿病患者39例を対象とした国内第III相臨床試験で検討された。主要評価項目はインスリン誘導による低血糖からの回復率であり、バクスミー3mgの鼻腔投与群とグルカゴン注射剤1mgの筋肉内投与群が比較された。その結果、いずれの群においても30分以内の低血糖回復率が100%であり、バクスミーのグルカゴン注射剤に対する非劣性が確認された(非劣性マージン10%)。なお回復までの時間の平均値はそれぞれ12.0分、11.0分だった。 また本試験の副作用発現率は、バクスミー投与、グルカゴン注射剤投与でそれぞれ16.9%、12.9%であり、忍容性も確認された。もしもの場合に備えを重症低血糖に陥った場合、痙攣や脳障害などの重篤な症状、また死亡リスクにもつながる可能性がある。そのため低血糖リスクを減らすことはもとより、低血糖を来した際、適切に処置できるよう備えておくことが重要だ。重症低血糖治療薬にバクスミーが加わったことにより、重症低血糖のリスクやその対処法について、より患者を指導しやすくなる可能性を秘めている。その結果、重症低血糖の軽減、さらには早期のインスリン導入の促進につながることが期待できる。1)日本糖尿病学会-糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会-. 糖尿病. 2017;60:826-842.2)Aranishi T, et al. Diabetes Ther. 2020;11:197-211.

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「外出自粛で運動ができない」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第30回

■外来NGワード「不要不急の外出は控えなさい」(すでに控えている)「3密を避けなさい」(具体性に欠ける指導)「家で何か運動しなさい!」(あいまいな運動指導)■解説 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化には、糖尿病と喫煙が関係しているとの報告があります。一般的に、血糖コントロールが不良であるとウイルスに対する抵抗力が低下し、インフルエンザなどの感染症リスクが高まることが知られていますので、COVID-19も例外ではないのでしょう。患者クラスター発生のリスクとして掲げられた「3密」という言葉は、もともとは仏教用語の「三密」です。それが、今では「換気の悪い密閉空間」(むんむん)、「多数が集まる密集場所」(ぎゅうぎゅう)、「間近で会話が発生する密接場面」(がやがや)の3つの“密”がそろった意味での「3密」として用いられています。この3密を徹底的に避けるため、不要不急の外出自粛で仕事は在宅体制になり、出掛けることもできず、運動不足になりがちです。家にいるとついつい何かをつまんでしまい、気付けば体重が増えている…なんてことにもなりかねません。そうやって患者さんの自己管理がおろそかになる前に、「もし(if)」を使った質問をしてみましょう。患者さんの運動嗜好を知ることができるかもしれません。新型コロナウイルス感染対策をきっかけに、家での運動習慣を付けられるといいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ患者新型コロナウイルスの影響で、運動ができなくて…。医師皆さん、そう言っておられますね。家ではどのように過ごされていますか?患者テレビばかり見ています。以前はジムで運動していたのですが。医師そうでしたか。今はどのくらい運動していますか?患者買い物で少し歩くぐらいです。ほかはほとんど運動していません。医師なるほど。3密を避けて運動場所を確保するのは、なかなか難しいですよね。もし、家で運動するとしたら、どんな運動がいいと思いますか?患者そうですね、ラジオ体操なんかはどうでしょう?医師いいですね。テレビでは、1日に2~3回体操を放送していますから、まずは時間になったらチャンネルを変える習慣付けから始めたいですね。患者えっ、そうなんですか。知らなかったです。まずは見ることからですね。医師はい。これを機に、1番だけでなく、2番までやると、食後血糖値が改善するかもしれませんよ。家でも歩数計を着けておくと、だいたいの運動量を把握することができます。この機会に、家の大掃除をしている患者さんもいますよ。患者確かに、工夫すればいろいろできそうです。頑張ってやってみます。■医師へのお勧めの言葉「もし、家で運動するとしたら、どんな運動がいいと思いますか?」「せっかくの機会ですから、家の中を掃除してみませんか?」

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RCTの事前登録順守率、インパクトファクターと相関/BMJ

 世界保健機関(WHO)は2008年にヘルシンキ宣言を改訂し、その後2015年に臨床試験登録国際プラットフォームを設置して、臨床試験の事前登録を勧告している。カナダ・トロント総合病院のMustafa Al-Durra氏らによる検討の結果、勧告にのっとり事前登録した試験の割合は、全登録試験の約42%と低いことが明らかになった。無作為化試験(RCT)の事前登録は、試験結果の選択的な報告を減らすものと見なされている。これまで行われた研究では、RCTの事前登録の順守率は低いものでは4%、高いものでは77%と報告されていた。BMJ誌2020年4月14日号掲載の報告。PubMed、17の臨床試験レジストリなどへの登録を調査 研究グループは、公表されたRCTの事前登録とレジストリの登録番号(TRN:trial registration number)の対応状況を評価し、また論理的根拠を解析し、選択的登録バイアス、遡及的な試験登録を検出する検討を行った。 PubMed、WHOの臨床試験登録国際プラットフォームに含まれる17の臨床試験レジストリ、トロント大学図書館、国際医学編集者会議(ICMJE)の会員雑誌、文献間の引用・被引用関係を分析したInCites Journal Citation Reportsを対象に調査を行った。 WHO臨床試験レジストリに登録されたRCTと、2018年までにPubMedに登録された雑誌に公表された試験について断面解析を行った。レジストリへの事前・事後登録率と、ICMJE会員雑誌での発表との関連などを検証した。ICMJE会員雑誌で発表の試験、TRN記載は約5.8倍に 医学雑誌2,105誌で研究結果が発表された、1万500試験について分析を行った。 全体では、TRNが報告されていたのは71.2%(7,473/1万500試験)だった。また、レジストリへの登録日や被験者の参加日などが確認できた7,218試験のうち、事前登録を行っていたのは41.7%(3,013/7,218試験)だった。 単変量・多変量解析の結果、TRNの報告とインパクトファクターおよびICMJE会員雑誌の間には有意な関連が認められた(p<0.05)。試験結果へのTRNの記載は、ICMJE会員雑誌の場合、非会員雑誌に比べ5.8倍多かった(オッズ比[OR]:5.8、95%信頼区間[CI]:4.0~8.2)。また、公表試験のレジストリへの事前登録率は、ICMJE会員雑誌で発表されていた試験が非会員雑誌に比べ1.8倍多かった(1.8、1.5~2.2)。 また、レジストリ登録日と試験結果の雑誌への投稿までの期間が1年未満だった試験のうち85.2%(616/723試験)が雑誌投稿後に事後登録しており、選択的登録バイアスという新たなバイアスが存在する実態も判明したという。事後登録は、被験者登録開始後3~8週間で行われている割合が高かった。 事後登録され、ICMJE会員雑誌に公表された286試験(RCT)のうち、著者が登録の遅れを正当化するステートメントを表明していたのは2.8%(8/286試験)だった。理由としては、認識不足、作為のない誤り、予想より登録プロセスに時間を要した、などであった。

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糖尿病予防、最も効果的な介入ターゲットが明らかに

 わが国の糖尿病患者は約1,000万人、さらに予備群も約1,000万人とされ、超高齢社会において、糖尿病予防は喫緊の課題のひとつである。しかし、人的・経済的な資源には限りがある。糖尿病を効果的に予防する介入ターゲットは、どのように絞り込めばよいのだろうか。 今回、坂根 直樹氏(京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室)は、「糖尿病予防のための戦略研究J-DOIT1」(研究リーダー:葛谷 英嗣氏)のデータを用いて、肥満、メタボリックシンドローム、肝臓の状態別に、生活習慣支援の糖尿病予防効果について解析を行った。Journal of Occupational Health誌2020年1月21日号に掲載。 本研究で対象となったのは、20~65歳の空腹時血糖異常(100~125mg/dL)を伴う2,607例で、支援群(n=1,240)と対照群(n=1,367)にランダムに割り付けられた。支援群には、電話によるサポートが1年間提供された。追跡期間中央値は4.9年。肥満の判定はBMI=25以上とし、メタボックシンドローム(MetS)の判定はNCEP/ATP IIIの基準を用いた。肝臓の状態の判定はDallas Heart Studyの基準で非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、アルコール性脂肪肝(AFLD)、正常の3つに分類した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の年齢の中央値は49歳で、83.4%が男性。BMIの範囲は18.5未満から30超までおり、中央値は24.3kg/m2だった。・それぞれの有病率は、肥満が37.5%、MetSが38.1%、NAFLDが7.1%、AFLDが13.8%だった。・肥満の者はそうでない者に比べて、2型糖尿病の発症リスクが2.2倍であり、生活習慣の支援により糖尿病発症リスクは低下したが、有意ではなかった(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.54~1.29、p=0.422)。・メタボリックシンドロームの者はそうでない者に比べて、2型糖尿病の発症リスクが2.0倍であり、生活習慣の支援による糖尿病発症リスクに差は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.72~1.51、p=0.840)。・肝臓の状態による2型糖尿病の発症リスクは、肝臓が正常な者に比べて、NAFLDでは約2.9倍、AFLDでは約2.4倍だった。生活習慣の支援による糖尿病発症リスクは、正常な肝臓状態(HR:1.25、95%CI:0.90~1.72、p=0.180)とAFLD(HR:0.71、95%CI:0.40~1.25、p=0.240)では差を認めなかったのに対し、NAFLDでは著明な糖尿病リスクの低減効果が認められた(HR:0.42、95%CI:0.18~0.98、p=0.045)。 坂根氏は、「人的資源や予算が限られている場合、NAFLDをターゲットにすることで、費用対効果の高い糖尿病の予防的介入の実現が期待できる。一方、AFLDで同等の効果がみられなかった理由のひとつとして、節酒指導が難しいことが考えられる。今後は、効果的な節酒指導プログラムの開発が必要であろう」とこれからの展望を述べた。

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色素性乾皮症〔XP:xeroderma pigmentosum〕

1 疾患概要■ 概念・定義色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)は、紫外線(ultraviolet:UV)により生じるDNA損傷の修復能が先天的に欠損することにより発症する重篤な光線過敏症である。常染色体劣性形式で遺伝し、UVによる皮膚がん誘発リスクがきわめて高くなる。皮膚症状に加え、原因不進行性の神経変性症状を合併することがあるため、わが国では指定難病、小児慢性特定疾病の1つとして国から認定されている。■ 疫学XPの頻度はわが国では約2.2万人に1人とまれであるが、欧米(2.7/100万人)に比べれば15倍以上と高頻度である。■ 病因紫外線のDNAへの直接曝露で誘発されるシクロブタン型ピリミジン2量体、6-4光産物を除去するヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair:NER)、あるいはNERのバックアップ的な修復系である複製後修復(損傷乗り越え複製、translesion synthesis:TLS)の機能が単一遺伝子異常により欠損する。■ 症状典型例では乳幼児期から外出のたびに激しい日焼け様反応を繰り返したあと、顔面など露光部皮膚が乾燥し、雀卵斑様の小色素斑が出現する。この色素異常は徐々に進行し、厳重な遮光を怠れば若年齢で基底細胞がん、日光角化症、扁平上皮がん、悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍が多発し、その発生のリスクは健常人に比べて数千倍とされる。また、わが国の患者では約半数で精神運動発達遅滞、難聴、歩行障害などの神経症状がみられ、これらの症状は徐々に進行する。■ 分類XPは遺伝学的に異なる8つのグループ(群)が存在し、NERに異常のあるA〜G群、NERに異常はないがTLS機能が損なわれるXPバリアント型(XP-V)に分類される。XP症状の進行度、重症度や予後は各群で異なる。わが国では皮膚症状、神経症状いずれも最重症型であるXPA群が過半数を占め、次いで皮膚症状のみを呈するXP-Vが25%、XPD群が8%、XPF群が7%、XPE群、XPG群はまれ、XPB群の日本人報告例はまだない。また、XPは臨床的には皮膚症状のみを呈する皮膚型XP(XPC群、XPE群、XPF群、XP-V)、皮膚症状に加え神経症状を伴う神経型XP(XPA群)、XPの皮膚所見に他の遺伝性光線過敏症であるコケイン症候群(Cockayne syndrome:CS)様の臨床像(著明な発育低下、老人様顔貌など)を合併するXP/CS complexに分類される。欧米例とは違い、本邦症例ではXPD群のほとんどが皮膚型XPである。■ 予後神経型XPの代表であるXPA群の典型例では、むせや嚥下困難が15歳前後から生じ、20歳頃には気管切開となる。その後は誤嚥、感染症、糖尿病の悪化などにより30歳前後で死亡するケースが多い。皮膚型XP患者では皮膚がん予防が徹底されていれば予後は良好である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)XPの確定診断は主として患者皮膚由来の培養線維芽細胞を用いた(1)紫外線照射後の不定期DNA合成能(unscheduled DNA synthesis:UDS)測定、(2)紫外線感受性試験、(3)宿主細胞回復能を指標にした相補性群試験、(4)遺伝子解析(血液でも可能)によりなされる。 UDSはNERの指標であり、XPではXP-Vを除いて低下する。XP細胞はXP-V細胞を除いて紫外線に高感受性であり、カフェイン添加により紫外線感受性が増強するという所見が得られればXP-Vの可能性が示唆される。わが国で過半数を占めるXPA群患者ではXPA遺伝子のイントロン3,3`側のスプライシング受容部位のGからCへのホモ変異(89%)、ヘテロ変異(9%)がPCR-RFLP法により簡易迅速に検出できる(創始者変異)。他群のXP患者に対しては紫外線照射レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ発現ベクターなど)の宿主細胞回復能あるいはEdUを用いたUDSを指標にした相補性試験、遺伝子解析にて診断確定する。XPの鑑別疾患としては、通常の雀卵斑、遺伝性ポルフィリン症があげられる。前者では皮疹は学童期に出現し、思春期がピークで以後消退傾向を示し、色素斑の大きさは小さく比較的均一であり、皮膚の乾燥・萎縮を伴わない点がXPとは異なる。後者では、光線曝露後に生じる疼痛感が特徴であり、血中・尿中の各種ポルフィリン検査を実施すれば鑑別可能である。3 治療XPは遺伝性疾患であるため根治的な治療法はない。したがって患者への対応は、患児の親や担当教員の協力の下での厳重な紫外線防御、対症療法、合併症対策が中心となる。日焼け様皮疹が生じた場合には、局所の冷却、ステロイド外用療法を行う。皮膚悪性腫瘍が発生した場合、可能な限り腫瘍切除術を施行する。皮膚腫瘍が多発して切除が困難な場合には適宜イミキモド(商品名:ベセルナ)、5FU、ブレオマイシン(同:ブレオ)などを用いた外用療法を実施する。XP患者では生涯、UVB(+UVA)曝露からの回避を厳重に行う必要がある。そのため物理的遮光(長袖、長ズボンの衣服、帽子、UVカットフィルムなど)、化学的遮光(サンスクリーン使用)いずれもが適切に行えるよう指導する。重症例では不要な屋外活動を制限し、外出の際はUV防護服の着用を指示する。4 今後の展望 (治験中・研究中の診断法、治療薬剤など) iPS細胞を用いた創薬研究が始まったばかりであり、現時点ではまだ治療薬候補は明らかではなく、臨床応用の段階には至っていない。5 主たる診療科 (紹介すべき診療科)皮膚科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 色素性乾皮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国色素性乾皮症(XP)連絡会(患者とその家族および支援者の会)1)森脇真一ほか. 日皮会誌. 2015;125:2013-2022.公開履歴初回2020年04月21日

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エピジェネティック制御薬は心血管疾患の残余リスクを低下させない(解説:佐田政隆氏)-1217

 冠動脈疾患に対する薬物療法の進歩には目を見張るものがあり、患者の長期予後を大きく改善させた。その中でも高用量のストロングスタチンは心血管イベントを3割から4割低下させるという数々のエビデンスが積み重ねられて、現在、標準的治療となっている。しかし、逆にいうと6割から7割の人が至適な薬物療法を行っても心血管イベントを起こしてしまうことになる。これが残余リスクとして非常に問題になっている。 LDLコレステロールを積極的に低下させた後の残余リスクとしては、2型糖尿病、低HDLコレステロール血症、高感度CRPの上昇などが注目されている。高感度CRPが上昇している心筋梗塞患者にインターロイキン-1βの中和抗体が有効であったという衝撃的な報告は記憶に新しい。また、急性心筋梗塞患者に、抗炎症効果のあるコルヒチンの少量投与が有効であったという報告が昨年された。しかし、どちらも現在一般的に使用される治療法とはなっていない。 さて、本研究では、エピジェネティックスに関する薬剤の効果が検討された。細胞の種類や状態によって、どの遺伝子が、どの細胞で、いつ、どのくらい発現するかを制御するシステムがエピジェネティックスである。DNAのメチル化やヒストンのアセチル化、メチル化が、どの遺伝子の転写を促すのか、抑制するのかを制御する。ブロモドメインタンパク質は、“読み取りタンパク質”として転写を活性化して、がんや炎症疾患と関連することが知られている。apabetaloneはブロモドメインタンパク質の選択的な阻害薬であり、動物モデルなどで抗動脈硬化作用が報告されている。本研究では、急性冠症候群で、2型糖尿病、低HDLコレステロール血症を合併した、いわゆる残余リスクが高いと考えられる患者にapabetaloneもしくは偽薬が標準治療に追加投与された。残念ながら、apabetaloneは主要有害心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞または脳卒中)を有意に低下させることができなかった。残余リスクを低下させるために、スタチン導入以来の革新的新薬の開発が期待される。

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新型コロナで7都府県の健診中断へ/日本人間ドック学会

 2020年4月10日、日本人間ドック学会(理事長 篠原 幸人氏)は健診現場での感染拡大を防ぐため、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る緊急事態宣言を踏まえた人間ドック健診等における対応について」を通知した。 7都府県を対象とした「緊急事態宣言」が4月7日~5月6日まで発出されたことにより、国の定める法定健診(特定健康診査・特定保健指導、労働安全衛生法に基づく一般健康診断、学校保健安全法に基づく児童生徒等及び職員の健康診断)は、4月中の実施が見送られる。通知には以下の協力事項が記載されている。<人間ドック・健診施設へのご協力のお願い事項> 1)緊急事態宣言の対象地域内にある人間ドック・健診施設 人間ドック・健診等を受診される皆様に受診の延期をお願いし、少なくとも緊急事態宣言の期間中は、特定健康診査等は実施しないこと。2)緊急事態宣言の対象地域以外の人間ドック・健診施設 人間ドック・健診等を受診される皆様に対しては、受診の延期をお願いするか、もしくは新型コロナウイルスの感染拡大の防止策を徹底し、受診者(保険者)のご理解を得、充分な安全策を確認した上で実施されること。 *なお、緊急事態宣言の対象地域、対象地域外に関係なく、公的保険者以外が行う人間ドック・健診等は自粛対象事業には含まれておりませんが、自粛は当然必要とされております。また、対面形式や集合形式では行わない事が強調されております。従って受診者数、時間帯その他を十分考慮して戴き、呼吸機能検査などは後日施行して戴く、さらに結果説明や生活指導は工夫する事が成されれば実施は可能かもしれません。しかし、これは受診者・健診施設双方の自己責任で行われる場合に限ります。結論として当学会としては公的保険者以外が行う人間ドック・健診等に関しては一律の中止要請はしない事とします。3)本宣言が5月はじめに終了するとは限りません。当学会といたしましても今後を見据え、学会内に対策委員会を至急設置する予定です。

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