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新型コロナ学級内クラスターの発生はわずか、スイス/BMJ

 2020年8月から再開されたスイスの初等~中等学校では、いくつかの予防措置が講じられたことで、地域社会の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の伝播が中等度~高度で全体的な血清有病率が上昇した時期にあっても、血清陽性の子供の小規模感染者集団が発生した学級はごくわずかであったことが、同国・チューリヒ大学のAgne Ulyte氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、BMJ誌2021年3月17日号に掲載された。SARS-CoV-2感染症の伝播における児童生徒の役割には議論の余地があるが、現に学校での感染爆発は起きており、子供の血清有病率は成人と同程度の可能性がある。児童生徒におけるSARS-CoV-2感染の伝播とその影響を理解することは、適切な緩和策の実施のために重要とされる。チューリヒ州の6~16歳の前向きコホート研究 研究グループは、2020年6月~11月の期間に、スイス・チューリヒ州において、SARS-CoV-2の血清有病率の長期的な変動を調査し、学級内で血清陽性となった子供たちにおける小規模感染者集団の発生状況を明らかにする目的で、前向きコホート研究を行った(Swiss School of Public Health[SSPH+]の調達資金などから助成を受けた)。 スイスは、2020年秋に欧州で発生した最大規模の第2波SARS-CoV-2パンデミックの一角を占めた。この時期に学校を再開したことで、中等度~高度な曝露環境となったため、SARS-CoV-2感染の調査が実施された。 地区ごとに無作為に選ばれた学校および学級の子供たちが、SARS-CoV-2の血清検査を受けるよう要請された。保護者は、社会人口統計学的な質問と健康に関する質問に答えた。検査では、SARS-CoV-2の4つの標的(受容体結合ドメイン、スパイクタンパク質S1とS2、ヌクレオカプシドタンパク質N)に対する免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA)を解析した。 要請を受けた156校のうち55校が調査に参加し、この中から275の学級(6~16歳)が無作為に選ばれた。参加者数は、2020年6月~7月(夏期)が2,603人、同年10月~11月(晩秋期)が2,552人であった。 主要アウトカムは、2020年6月~7月と10月~11月のSARS-CoV-2血清検査、学級内の小規模感染者集団、子供の症状とされた。血清有病率の解析にはベイズロジスティック回帰法が用いられた。陽性者の40%が陰性化、陽性者3人以上は7学級(5%)のみ 血清検査の陽性者は、夏期は検査を受けた2,496人中74人であったが、晩秋期には2,503人中173人に増加した。SARS-CoV-2の血清有病率は、夏期が2.4%(95%信用区間[CrI]:1.4~3.6)で、夏期に陽性でなかった子供における晩秋期の新規陽性率は4.5%(3.2~6.0)であり、血清陽性の子供の割合は7.8%(6.2~9.5)であった。 地区ごとの血清有病率にはばらつきがあり、晩秋期は1.7~15.0%の幅が認められた。低学年(6~9歳)、中学年(9~13歳)、高学年(12~16歳)で、夏期陽性者と晩秋期新規陽性者を併せた割合に差はなかった(それぞれ8.5%、8.0%、6.4%)。また、性別の違いで血清有病率に差はなかった。 夏期と晩秋期の両方で血清検査を受けた2,223人のうち、夏期に陽性の70人のうち28人(40%)が晩秋期には陰性化し、夏期に陰性の2,153人のうち109人(5%)が陽性化した。 症状は、血清陰性者の22%(420/1,923人)および夏期以降の新規陽性者の29%(29/101人)にみられた。血清陽性者で頻度の高い症状は、頭痛(13.9%)、鼻水/鼻詰まり(11.9%)、咽喉炎(11.9%)、疲労(8.9%)であった。また、SARS-CoV-2感染症の診断を受けた子供の血清陽性者に対する比は、2020年1月~11月の期間が1対13で、2020年7月~11月の期間は1対8だった。 少なくとも1人の子供が新規に血清陽性となったのは、55の学校中47校、275の学級中90学級であった。生徒の参加率が高かった130の学級のうち、血清陽性者が発生しなかったのは73学級(56%)、陽性者1~2人は50学級(38%)で、3人以上の陽性者が発生したのは7学級(5%)だった。 著者は、「SARS-CoV-2の新たな変異株や、地域社会での感染レベルの活発な変動が起きた場合に、これらの知見も変化するかに関しては、確実なことはいえない」としている。

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末梢性T細胞リンパ腫および皮膚T細胞性リンパ腫に、デニロイキン ジフチトクス国内承認/エーザイ

 エーザイは、2021年3月23日、デニロイキン ジフチトクス(商品名:レミトロ)について、「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」、「再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫」の効能効果で日本における製造販売承認を取得したと発表。 この承認申請は、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)および皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の患者を対象に国内で実施された多施設共同非盲検単群II相205試験などの結果に基づいて行われた。205試験の結果、PTCLおよびCTCL患者全体(36例)の奏効率(ORR)は、36.1%(95%CI: 20.8~53.8)であり、事前に設定した閾値奏効率を統計学的に有意に上回り、主要評価項目を達成した。PTCL(17例)およびCTCL(19例)のORRは、それぞれ41.2%、31.6%であった。本試験で認められた上位5つの主な治療発現有害事象は、AST増加(89.2%)、ALT増加(86.5%)、低アルブミン血症(70.3%)、リンパ球減少症(70.3%)、発熱(51.4%)であった。  デニロイキン ジフチトクスは、インターロイキン-2(IL-2)とジフテリア毒素の部分配列からなる融合タンパク質で、腫瘍細胞表面上のIL-2受容体と特異的に結合する。細胞内に移行したジフテリア毒素断片がタンパク質合成を阻害し、細胞死を誘導することで抗腫瘍効果を示すと考えられている。

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第48回 GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省

<先週の動き>1.GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省2.オンライン資格確認システム、全額補助申請は今月まで3.DPC病院、稼働率80%以上を維持も予定外の再入院率は変化なし4.12日から始まる高齢者ワクチン、一部自治体では同時に一般人への接種も5.看護師の離職率、職員11.5%新卒8.6%と昨年比0.8%上昇6.死因究明等推進のために「死因究明等推進計画」の策定へ1.GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省田村厚生労働大臣は、23日の記者会見で、緊急事態宣言の解除後も新型コロナウイルス感染の再拡大が危惧されており、病床確保など一般医療と両立しつつ、「緊急対応策」を講じる準備が必要との考えを示した。厚労省は、都道府県に対して、5月までに最大患者数が今冬の2倍程度になる事態も想定した新たな感染者受け入れ計画を策定するよう通知を発する予定。全国自治体病院協議会の小熊会長は、「都道府県などと連携して病床の確保に努めるが、一般医療機能の逼迫にもつながりかねない」と懸念を25日の定例記者会見で明らかにしている。(参考)コロナ病床の確保計画、都道府県に見直し求める 厚労省(朝日新聞)さらなるコロナ病床確保に努めるが「一般医療機能の逼迫」懸念、重点医療機関等は2020年度黒字の可能性も―全自病・小熊会長(Gem Med)田村大臣会見概要 2021年3月23日(厚労省)資料 緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルス感染症への対応(新型コロナウイルス感染症対策本部)2.オンライン資格確認システム、全額補助申請は今月まで厚生労働省は、26日に開催された社会保障審議会・医療保険部会において、健康保険証の代わりにマイナンバーカードを用いたオンライン資格確認システムの運用開始を、半年間先送りにすることを決定した。これまでの試験運用において、健康保険組合が管理する情報が一部で不正確だったため、3月末の予定を延期し、当面は試行運用を続け、今年10月の本格運用を目指す。なお、医療機関などが今月末までに申し込めば、カードリーダーなどのシステム改修費について国費で全額補助されるが、4月以降の補助は減額される。21日時点での申し込み数は、病院で約5,000(60.4%)、薬局で約4万(66.5%)と報告されている。(参考)保険証利用の本格運用先送り マイナカード、トラブルで―厚労省(時事ドットコム)厚労省 オンライン資格確認の本格導入を「遅くとも10月まで」に延期 プレ運用は継続(ミクスOnline)資料 オンライン資格確認等システムについて(厚労省)3.DPC病院、稼働率80%以上を維持も予定外の再入院率は変化なし中央社会保険医療協議会・総会が24日に開催され、2019年度DPC導入の影響評価に係る「退院患者調査」の結果が報告された。平均在院日数は、大学病院本院で12.21日、DPC特定病院群、DPC標準病院群ではそれぞれ34日、11.76日といずれも過去5年で最短となっている。一方、病床利用率は、大学病院本院群82.3%、DPC特定病院群85.9%、DPC標準病院群81.0%といずれも80%以上を維持したが、DPC準備病院や出来高病院ではそれぞれ78.7%、75.5%と低迷している状況がうかがえる。また、計画外の再入院率ではいずれの病院群でも、3~4%と過去5年間で大きな変動はなく、在院日数短縮による影響は認められていない。(参考)資料 2019年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告(厚労省)病床利用率80%超の高水準を継続、DPC病院 中医協、平均在院日数の短縮続き(CBnewsマネジメント)4.来月開始の高齢者ワクチン、一部自治体では同時に一般人への接種も河野 太郎ワクチン担当相は、26日の記者会見において、4月12日に始まる高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種について、欧州の承認が前提となるが、GW明けの5月中旬に約490万人分を配送することを明らかにし、5月9日までに配送する330万人分と合わせ、計820万人分が各自治体に届くため、高齢者向けの接種が大型連休後に拡大することを発表した。また、1バイアルで6回分が接種できる特殊な注射器が使用可能となるのは5月中と明らかにした。なお、人口1,000人以下の一部の自治体や離島では、高齢者と同時に一般の人にも接種が行われる見通しを示した。(参考)注射器を“切り替え” 高齢者もワクチン1瓶で6回接種へ(TBS NEWS)ワクチン接種 人口少ない自治体など 高齢者に合わせ一般の人も(NHK)資料 高齢者向け接種を実施するための新型コロナワクチン等の配分について(厚労省 事務連絡令和3年3月26日)5.看護師の離職率、職員11.5%新卒8.6%と昨年比0.8%上昇日本看護協会が行った「2020年病院看護実態調査」の結果、昨年度、全国の医療機関に勤める看護職員の離職率は11.5%、新卒採用された看護師の離職率は8.6%と、それぞれ前年度より0.8%上昇したことをプレスリリースで明らかにした。また、今回初めて採用の困難さが報告されている看護補助者の採用・離職の状況などについて調査したところ、「研修の充実」「意見を吸い上げ」など採用・定着のための取り組みを行っているにもかかわらず、離職率は29.9%と著しく高いことが明らかとなった。今年春以降のワクチン接種に向けて、自治体では医師のほか看護人材の採用難に直面していることが報道でも明らかとなっており、医療現場のみならず介護サービスでも看護スタッフの採用などに影響が出そうだ。(参考)ニュースリリース「2020年 病院看護実態調査」結果(日本看護協会)看護職員の離職率増加 新型コロナ感染拡大が影響か(NHK)ワクチン集団接種、7割の自治体はぶっつけ本番? 2割は看護師確保見通せず 厚労省全市区町村調査(東京新聞)6.人材育成・設備強化など「死因究明等推進計画」の策定へ厚労省の死因究明等推進本部は、24日に「死因究明等推進計画検討会報告書」を発表した。わが国の制度は諸外国に比較すると十分ではないことや、犯罪行為により死亡したものを病死と判断する事例から死因究明体制の強化が求められてきたことを踏まえ、2020年7月から議論を重ねてきた内容を取りまとめたもの。施策として、死因究明等に係る人材の育成、教育および研究拠点、専門的な機関の全国的な整備などを求めている。この報告書をもとに、死因究明等推進本部では「死因究明等推進計画案」を決定し、政府に「死因究明等推進計画」の策定を働きかけることとなった。なお、都道府県ごとの大学の法医学教室における人員数を見ると、常勤医師数は全国で152人だが、中には常勤医師数1人のみで大学院生もいない大学もあるなど、法医学等死因究明に係る教育や研究拠点の整備に今後も国による支援が必要と考えられる。(参考)死因究明等推進計画検討会報告書の公表について(厚労省)資料 「死因究明等推進計画検討会報告書」(同)資料 「死因究明等の推進に関する参考資料」(同)

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これまでの研究の盲点を突くかたちで投げ込まれた一石(解説:野間重孝氏)-1368

 虚血性心疾患を発症しやすくする要素を危険因子と呼ぶことは、現在では一般の方でもよく知るところではないかと思う。その中でも本論文に取り上げられている危険因子は、可変的危険因子と呼ばれるものに当たる。危険因子には年齢・性別・家族歴なども入るが、これらは治療や本人の努力によって変えることができないためである。 ところが、ここで危険因子に関する誤解がある。それが本論文の指摘の主旨でもあるのだが、危険因子というのは発生リスクの予想ができたり、それらをコントロールすることによって1次予防、2次予防に資することができる因子を指している。しかし、それら因子は一旦起こってしまった虚血性心疾患の予後を規定する因子ではない。この点について、多くの人たちが無意識的に誤解している。さらに、危険因子をまったく持っていなくても、虚血性心疾患を発症する人は常にある一定数いるという事実である。著者らは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に関しては全発症数の10~20%強に上ることを、経験および疫学調査から示している。 近年になって、危険因子(-)群のSTEMIの発症の割合が相対的に増加している。なぜなら危険因子に対する治療(いわゆる至適内科治療)が行われるようになれば、危険因子(+)群でのSTEMIの発症頻度が減るからである。それに対して危険因子(-)群では発症予防策が講じられることがない。というより、こうした虚血性心疾患の発症の予防法は知られていない。それどころか、一体どのような人が危険因子(-)にもかかわらずSTEMIを発症するかという疫学も知られていない。これが非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に至っては、ほとんど何もわかっていないのではないだろうか。 本論文は、STEMIの予後が危険因子(-)に起こった場合と危険因子(+)に起こった場合でどう異なるかを、大規模集団を対象として系統的に比較検討した、おそらく最初の研究ではないかと思われる。なお、本研究はretrospective studyであり、危険因子に対する把握が必ずしも正確ではないとの批判もあるだろうが、これだけの大きな集団を対象とした場合、傾向を見るという観点からは弱点にはならないと考える。実際、危険因子の影響を見るために治療法を変える医師は存在しない。結果、おそらく多くの読者が驚いたであろうように、急性期はほぼ予想どおりの結果であったが、長期予後ははっきり危険因子(-)群が悪く、しかもとくに女性で悪いというのである。女性で予後が悪いことは、STEMIの予後決定因子は発症の危険因子とは別物であることを強く示唆している。発症ということでいえば、女性であることは発症リスクの大きな軽減要因であるからだ。 この問題について著者らがどのような理由を考えているのかは、ぜひ知りたいところであるが、本論文のDiscussionは結果について淡々と検討しているのみで、彼らなりの仮説の提示は行われていない。まず危険因子(-)群がどのような特徴を有する群なのか、もっと徹底的な分析が行われてもよかったのではと考えた。というのも、Supplementによれば危険因子(-)女性は他群に比して高齢であり、primary PCIの施行率が低いからで、こういった点の補正も必要だったと考えられるからだ。また入院中は心臓死や脳卒中の発生率に差がないのに、全死亡が危険因子(-)群で高い。死亡原因は何だったのだろうか。梗塞のサイズは危険因子(-)群で大きかったが、しかしトロポニンや駆出率で補正してみても危険因子(-)群で予後はやはり悪い傾向があるようである。これはなぜなのか。長期予後の差は薬剤投与によりやや縮小したとはいうものの、解消されたわけではない。つまり、交感神経やレニン・アンギオテンシン系では説明のできない要素が絡んでいる可能性があるのである。 この分野は著者らが指摘しているように、あまり研究されてこなかった分野である。というより至適内科治療を確立する過程において、ある意味、意識的に無視されてきた分野だったのではないだろうか。今後の研究に大きな一石を投じた研究であるといえる。

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特発性門脈圧亢進症〔IPH:Idiopathic portal hypertension〕

1 疾患概要■ 概念・定義特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hypertension:IPH)とは、肝硬変、肝外門脈閉塞、肝静脈閉塞、およびその他の原因となるべき疾患を認めずに門脈圧亢進症を呈するもので、肝内末梢門脈枝の閉塞、狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群をいう。なお、門脈圧亢進症とは門脈系の血行動態の変化により、門脈圧(正常値100~150mmH2O)が常に200mmH2O(14.7mmHg)以上に上昇した状態である。■ 疫学IPHは比較的まれな疾患で、年間受療患者数(2004年)は640~1,070人と推定され、人口100万人当たり7.3人の有病率と推定されている(2005年全国疫学調査)。男女比は約1:2.7と女性に多く、発症のピークは40~50歳代で平均年齢は49歳である。欧米より日本にやや多い傾向があり、また都会より農村に多い傾向がある。■ 病因本症の病因はいまだ不明であるが、肝内末梢門脈血栓説、脾原説、自己免疫異常説などがある。中年女性に多発し、血清学的検査で自己免疫疾患と類似した特徴が認められ、自己免疫疾患を合併する頻度も高いことからその病因として自己免疫異常、特にT細胞の自己認識機構に問題があると考えられている。■ 症状重症度に応じ食道胃静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、腹水、肝性脳症、汎血球減少、脾腫、貧血、肝機能障害などの症候、つまり門脈圧亢進症の症状を呈す。通常、肝硬変に至ることはなく、肝細胞がんの母地にはならない。■ 予後IPH患者の予後は静脈瘤(出血)のコントロールによって規定され、コントロール良好ならば肝がんの発生や肝不全死はほとんどなく、5年および10年累積生存率は80~90%と極めて良好である。また、長期観察例での肝実質の変化は少なく、肝機能異常も軽度である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ IPH診断のガイドラインIPHの診断基準は、厚生労働省特定疾患:門脈血行異常症調査研究班の定めた「門脈血行異常症ガイドライン2018年改訂版」1)のIPH診断のガイドラインに則る。1)一般検査所見(1)血液検査 1つ以上の血球成分の減少を示し、特に血小板数減少は顕著である。(2)肝機能検査正常または軽度異常が多い。(3)内視鏡検査食道胃静脈瘤を認めることが多い。門脈圧亢進症性胃腸症や十二指腸、胆管周囲、下部消化管などにいわゆる異所性静脈瘤を認めることもある。2)画像検査所見(1)超音波、CT、MRI、腹腔鏡検査a)巨脾を認めることが多い。b)肝臓は病期の進行とともに、辺縁萎縮と代償性中心性腫大となる。c)肝臓の表面は平滑なことが多いが、全体に波打ち状(大きな隆起と陥凹)を呈するときもある。d)結節性再生性過形成や限局性結節性過形成などの肝内結節を認めることがある。e)脾動静脈は著明に拡張している。f)著しい門脈・脾静脈血流量の増加を認める。g)二次的に門脈に血栓を認めることがある。(2)上腸間膜動脈造影門脈相ないし経皮経肝門脈造影肝内末梢門脈枝の走行異常、分岐異常を認め、その造影能は不良で、時に門脈血栓を認めることがある。(3)肝静脈造影しばしば肝静脈枝相互間吻合と「しだれ柳様」所見を認める。閉塞肝静脈圧は正常または軽度上昇にとどまる。(4)Scintiphotosplenoportography (SSP)SSPは経皮的に脾臓より放射性物質を注入し、その動態で最も生理的に近い脾静 脈血行動態のdynamic imageが得られるだけではなく、そのデータ処理にてさまざまな情報が得られる検査法である。SSPにより門脈血に占める脾静脈血の割合を求めると、正常では18.6%、慢性肝炎では48.0%、肝硬変では47.8%、IPHでは73.8%であった2)。つまりIPHでは、脾静脈血流が著明に増加している。3)病理検査所見(1)肝臓の肉眼所見時に萎縮を認める。表面平滑な場合、波打ち状や凹凸不整を示す場合、変形を示す場合がある。割面は被膜下の実質の脱落をしばしば認める。門脈に二次性の血栓を認める例がある。また、過形成結節を認める症例がある。肝硬変の所見はない。(2)肝臓の組織所見肝内末梢門脈枝の潰れ・狭小化、肝内門脈枝の硬化症および側副血行路を呈する例が多い。門脈域の緻密な線維化を認め、しばしば円形の線維性拡大を呈する。肝細胞の過形成像がみられ結節状過形成を呈することがあるが、周囲に線維化はなく、肝硬変の再生結節とは異なる。(3)脾臓の肉眼所見著しい腫大を認める。(4)脾臓の組織所見赤脾髄における脾洞(静脈洞)の増生、細網線維や膠原線維の増加、脾柱におけるGamna-Gandy結節を認める。本症は症候群であり、また病期により病態が異なることから、一般検査所見、画像検査所見、病理検査所見によって総合的に診断されるべきである。確定診断は肝臓の病理組織学的所見の合致が望ましい。除外疾患は肝硬変症、肝外門脈閉塞症、バッド・キアリ症候群、血液疾患、寄生虫疾患、肉芽腫性肝疾患、先天性肝線維症、慢性ウイルス性肝炎、非硬変期の原発性胆汁性胆管炎などが挙げられる。■ 重症度分類「門脈血行異常症ガイドライン2018年改訂版」1)ではIPHの重症度分類も定められている。重症度I  診断可能だが、所見は認めない。重症度II 所見は認めるものの、治療を要しない。重症度III所見を認め、治療を要する。重症度IV身体活動が制限され、介護も含めた治療を要する。重症度V 肝不全ないし消化管出血を認め、集中治療を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療適応IPHの治療対象は、門脈圧亢進症に伴う食道胃静脈瘤、脾機能亢進に伴う汎血球滅少症、脾腫である。治療法としては、食道胃静脈瘤症例では内視鏡的治療、塞栓術、手術療法など、内科的治療が難しい脾腫・脾機能亢進症例では塞栓術または手術療法を施行する。■ 食道静脈瘤1)食道静脈瘤破裂では輸血、輸液などで循環動態を安定させながら、内視鏡的静脈瘤結紮術(または内視鏡的硬化療法)にて一時止血を行う。内視鏡的治療が施行できない場合や止血困難な場合はバルーンタンポナーデ法を施行し、それでも止血できない場合は緊急手術も考慮する。2)一時止血が得られた症例では、全身状態改善後、内視鏡的治療や待期手術を考慮する。3)未出血の症例(予防例)では、「門脈圧亢進症取扱い規約【第3版】」3)に従って静脈瘤所見を判定し、F2、3またはRC陽性の場合、内視鏡的治療や手術を考慮する。4)手術療法としては、選択的シャント手術として選択的遠位脾腎静脈吻合術(DSRS)や、直達手術として下部食道離断+脾摘+下部食道・胃上部血行郭清を加えた食道離断術または内視鏡的治療と併用して脾摘術+下部食道・胃上部の血行郭清(ハッサブ手術)を行う。■ 胃静脈瘤1)食道静脈瘤と連続して存在する噴門部静脈瘤に対しては食道静脈瘤の治療に準じて対処する。2)孤立性胃静脈瘤破裂例では輸血、輸液などで循環動態を安定させながら、内視鏡的硬化療法にて一時止血を行う。内視鏡的治療が施行できない場合や止血困難な場合はバルーンタンポナーデ法を施行し、それでも止血できない場合はバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:B-RTO)などの塞栓術や緊急手術も検討する。 3)一時止血が得られた症例では、全身状態改善後、内視鏡的治療追加やB-RTO などの塞栓術、待期手術(DSRSやハッサブ手術)を検討する。4)未出血症例(予防例)では、胃内視鏡所見を参考にして内視鏡的治療、塞栓術、手術(DSRSやハッサブ手術)を検討する。■ 脾腫、脾機能亢進症巨脾に合併する症状(疼痛、圧迫)が著しい場合および脾機能亢進症(汎血球減少)による高度の血球減少(血小板5×104以下、白血球3,000以下、赤血球300×104以下のいずれか1項目)で出血傾向を認める場合は部分的脾動脈塞栓術(PSE)または脾摘術を検討する。PSEは施行後に血小板数は12~24時間後に上昇し始め、ピークは1~2週間後である。2ヵ月後に安定し、長期的には前値の平均2倍を維持する。4 今後の展望IPHの原因はいまだ解明されていない。しかし、静脈瘤のコントロールが良好ならば、予後は良好であるため静脈瘤のコントロールが重要である。予後が良いため長期的に効果が持続する手術療法が施行されている。近年、低侵襲手術として腹腔鏡下手術が行われており、食道胃静脈瘤に対する手術も腹腔鏡下手術が中心となっていくであろう。5 主たる診療科消化器外科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病センター 特発性門脈亢進症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 門脈血行異常症ガイドライン 2018年改訂版. 2018.2)吉田寛. 日消誌. 1991;88:2763-2770.3)日本門脈圧亢進症学会. 門脈圧亢進症取扱い規約 第3版. 金原出版.2013.公開履歴初回2021年03月29日

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用 その3【「実践的」臨床研究入門】第6回

「観察研究」と「介入研究」CQ 慢性腎臓病(CKD) の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することは推奨されるか?推奨CKD の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することを推奨する。ただし、画一的な指導は不適切であり、個々の患者の病態やリスク、アドヒアランスなどを総合的に判断し、腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理の下で行うことが望ましい (推奨グレード B 1)。前回までに、設定したCQに類似する上記のCQの記載と回答(推奨)を、「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」で見つけ、本文の解説を読み込みました。解説文(筆者がまとめた概要)では、下記のように先行研究を引用して、CKD患者における食事療法(低たんぱく食)に関するエビデンスが述べられています。CKD患者におけるたんぱく質制限による腎保護効果は、これまで多くのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)1-11)や、それらを統合(メタ解析)した、いくつかのシステマティック・レビュー12-18)で検討されている。CKD患者(とくに糖尿病非合併例)に対するたんぱく質制限は、腎機能低下抑制に有効な可能性がある。RCTやシステマティック・レビューといった臨床疫学用語が出てきたので、ここでは臨床研究の「型」について簡単に解説してみたいと思います。臨床研究の「型」は「観察研究」と「介入研究」に大別されます。「観察研究」では研究目的を意識した介入(I)は加えずに、ある疾患やそれに対する診療の実態をありのままに観察します。一方、「介入研究」は、研究者が研究の対象(P)に対して意図した介入(I)を加えたうえでアウトカム(O)を追跡します。「介入研究」は介入(I)をP(対象)にランダム(無作為)に割り付けるか否かによって、RCTとnon-RCTに分類されます。「介入」の効果を科学的に検証するためには介入(I)群と対照(C)群の「比較の妥当性」をできる限り担保する必要があります。「ランダム割付」によって、介入(I)群と対照(C)群の間でアウトカムに影響する可能性のある背景因子を揃えることが期待でき、高い「比較の妥当性」を得ることができます(non-RCTはこの「ランダム割付」という「介入研究」の最大の「強み」を活かしていないので、「介入研究」≒RCTと捉えて良いのではないか、と筆者は考えています)。「内的妥当性」と「外的妥当性」また、前回まとめたように、「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、上記のCQに対する推奨(回答)が根拠とするこれまでのエビデンスのひとつの限界として、以下のように言及されています。これらのエビデンスはほとんどが適格基準が厳しいRCTで示されたものである。また、腎臓専門医ならびに管理栄養士の指導の遵守率が高い状態の研究結果でもあり、CKD診療一般にあてはめることは難しい可能性がある。われわれが行おうとしている研究は「観察研究」です(連載第1回冒頭のダイアローグ参照)。「ランダム割付」した「介入研究」、いわゆるRCTは、介入(I)群と対照(C)群を公平に比較できることが期待されます。したがって、前述したとおりRCTは「比較の妥当性」が高く(別の言い方で、「内的妥当性」が高い、とも言います)、エビデンスレベルも「観察研究」より高く位置づけられています。それでは、「観察研究」の価値はRCTと比べて著しく低いのでしょうか、そんなことはありません。「内的妥当性」に対して「外的妥当性」という臨床疫学用語があります。「外的妥当性」とは、ざっくり言うと、ある特定の臨床研究で得られた結果を、その臨床研究で対象としたサンプル(研究対象集団)以外の集団に対しても当てはめることができるか、ということです(別の言い方で、「一般化可能性」、とも言います)。確かにRCTは前述したとおり「内的妥当性」には優れています。しかしRCTの適格基準を満たし、かつRCTの参加に同意する患者集団は、現実の一般的な診療で対象としている患者集団とかけ離れているかもしれません。なぜなら、RCTでは高齢者や重篤な併存疾患があるようなリスクの高い患者さんは適格基準を満たさず除外されてしまうことが多いからです。また、RCTへの参加に同意する患者さんは、そうでない患者さんに比べて健康意識が高く、日常の診療でも治療遵守の程度も高いかもしれません。このようなことから、一般にRCTは「内的妥当性」は高いけれども「外的妥当性」が低いことが多い、と言われます。「内的妥当性」と「外的妥当性」のバランスの観点から、われわれが行う「観察研究」でも新たなエビデンスを積み上げる余地(ニッチ)がはあると判断して、研究デザインの検討を前に進めて行きます。もちろん「観察研究」はRCTと比較して「内的妥当性」が低いことは否めません。研究デザインや統計解析計画で「観察研究」の「内的妥当性」を高める工夫についても、おいおい、解説して行きたいと思います。1)Ihle BU et al. N Engl J Med 1989;321:1773-7.2)Brouhard BH et al. Am J Med 1990;89:427-31.3)Zeller K et al. N Engl J Med 1991;324:78-84.4)Williams PS et al. Q J Med 1991;81:837-55.5)Klahr S et al. N Engl J Med 1994;330:877-84.6)Hansen HP et al. Kidney Int 2002;62:220-8.7)Pijls LT et al. Eur J Clin Nutr 2002;56:1200-7.8)Meloni C et al. J Ren Nutr 2004;14:208-13.9)Koya D et al. Diabetologia 2009;52:2037-45.10)Cianciaruso B et al. Am J Kidney Dis 2009;54:1052-61.11)Garneata L et al. J Am Soc Nephrol 2016;27:2164-76.12)Kasiske BL et al. Am J Kidney Dis 1998;31:954-61.13)Pan Y et al. Am J Clin Nutr 2008;88:660-6.14)Fouque D et al. Cochrane Database Syst Rev 2009:CD001892.15)Robertson L et al. Cochrane Database Syst Rev 2007:CD00218116)Nezu U et al. BMJ Open 2013;3:e002934.17)Rughooputh MS et al. PLoS One 2015;10:e0145505.18)Jiang Z et al. Int Urol Nephrol 2016;48:409-18.1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.5)片岡 裕貴. 日常診療で臨床疑問に出会ったときに何をすべきかがわかる本 第1版.中外医学社;2019.

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医者にかかる10箇条に見る新たな医師と患者の関わり方

 インフォームド・コンセント(IC)の場において、医師の努力もさることながら患者にも自発性を促す必要がある。ではどのような方法が有力なのだろうかー。3月12日に開催された「カルテコいきいきPHRウェブセミナー」にて、山口 育子氏(NPO法人ささえあい医療人権センター[COML]理事長)が『新・医者にかかる10箇条』について解説し、病院受診する患者が持つべき心構えや責任について語った(主催:メディカル・データ・ビジョン[MDV])。医者にかかる10箇条で山口育子氏が挙げた項目 『新・医者にかかる10箇条』発刊の基盤は1998年に発表された小冊子『医者に聞こう10箇条』の作成にまで遡る。当時、厚生労働省はインフォームド・コンセントを普及させるため“患者から医師への質問内容・方法に関する研究”研究班を発足。医療者の立場、患者の立場の双方が集まり、本書にまとめ上げる予定だった。ところが、患者の状況や場面(初診か再診、薬のことか手術のことか など)によって患者の聞きたい内容はさまざまで、山口氏は「10個に絞り込むことに苦慮した」と当時を振り返った。そこで、研究班メンバーは患者の聞きたいことを想定するのではなく、“心構えであれば10にまとめることができるのでは”と着想を変え、作成されるに至った。 そしてリニューアルを迎えた『新・医者にかかる10箇条』は項目ごとにイラスト解説されており、巻末には実践編として、検査・治療・くすり・入院など具体的な質問内容33項目が収載されている。現在は同氏が理事長を務めるCOMLが『新・医者にかかる10箇条』発刊に関わり、厚生労働省経由で4万冊が無料配布された。あまりの人気ぶりに3ヵ月で在庫が底をついてしまったという。そこで、COLMが独自で『新・医者にかかる10箇条』の配布を開始し、現時点で延べ21万人が手にとっている。<新・医者にかかる10箇条> 1. 伝えたいことはメモして準備 2. 対話の始まりはあいさつから 3. よりよい関係づくりはあなたにも責任が 4. 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報 5. これからの見通しを聞きましょう 6. その後の変化も伝える努力を 7. 大事なことはメモをとって確認 8. 納得できないときは何度でも質問を 9. 医療にも不確実なことや限界がある 10. 治療方法を決めるのはあなたです 医者にかかる10箇条のなかでも同氏は4項目(3、4、9、10)を挙げ、「医療者や相談者も人間であるため、相談する際の責任は自分にもあることを理解してもらうことが大切。また、自覚症状は患者しか知り得ないこと。これを医師が当てたら占いの館のよう」と話し、「どんなことができるか、どこまで回復することができるのかと考えることが大切」と述べた。また、「“患者は病院を修理工場と間違えている”とお話しされた医師がいた。実際、病気になる前の状態より良くすることはできない。“私のこの病気は医療の力でどこまで回復することができますか”という視点が、冷静に医療を受けることに繋がる」と持論を述べた。 治療選択肢が増えた今も、医師からみて最適な治療法ばかりではない。甲乙つけ難い選択肢がある一方で、生活や仕事、考え方、その人の基準によって選択が変わってくる。患者も治療を選択できる時代としつつ、「ただし、一人で悩まない。かかりつけ医、相談できる機関や周囲の人を見つけておくことが重要」と締めくくった。 このほか、MDVがカルテコ利用者に対して実施した“パーソナルヘルスレコード(PHR)をどのように活用しているか”に関するアンケートの結果を紹介。このアンケートは1月27日~2月8日までの13日間、同社が開発したPHRのカルテコ利用者を対象にWebで実施、110人から回答を得た。その結果、血液検査などの結果の確認(25.5%)が最も多く、健康診断結果の確認(12.7%)、検査画像の確認(11.8%)と続いた。カルテコ利用者はPHRを自身の病気・健康管理に生かしていることに加え、診察を受けた後に医師の説明や治療内容への理解を深めたり、家族やほかの医師に情報共有したりするために活用しているという。

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既治療NSCLCへのニボルマブ、5年生存率の結果/JCO

 免疫療法は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に革命をもたらした。すでに、既治療の扁平上皮および非扁平上皮NSCLC患者を対象とした2つの第III相試験(CheckMate-017およびCheckMate-057)において、ニボルマブはドセタキセルと比較し、全生存(OS)期間の改善と良好な安全性を示している。米国・Fox Chase Cancer CenterのHossein Borghaei氏らは、両試験の5年間における有効性および安全性に関するプール解析を行い、ニボルマブはドセタキセルと比較して、OS延長効果が持続し、新たな安全性の懸念はなかったことを明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌2021年3月1日号掲載の報告。 研究グループは、プラチナ併用化学療法中または化学療法後に進行したECOG PS≦1のNSCLC患者(CheckMate-017:扁平上皮がん、CheckMate-057:非扁平上皮がん、合計854例)を、ニボルマブ群(3mg/kg、2週間ごと)またはドセタキセル群(75mg/m2、3週間ごと)に1対1の割合で無作為に割り付け、進行または許容できない毒性発現まで投与した。 両試験の主要評価項目はOSで、副次評価項目は無増悪生存(PFS)および安全性などであった。探索的ランドマーク解析による評価も行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate-017試験64.2ヵ月、CheckMate-057試験64.5ヵ月の最小追跡期間において、ニボルマブ群で50例、ドセタキセル群で9例が生存していた。・5年OS率はニボルマブ群13.4%、ドセタキセル群2.6%であり、5年PFS率はそれぞれ8.0%、0%であった。・ランドマーク解析において、2年時および3年時に病勢進行を認めなかったニボルマブ群の患者の5年生存率はそれぞれ82.0%および93.0%、5年無増悪率はそれぞれ59.6%および78.3%であった。・治療関連有害事象(TRAE)は、3~5年の追跡期間中にニボルマブ群で31例中8例(25.8%)に報告され、そのうち7例が新たな事象を経験した。Grade3のTRAEは1例(3.2%)認められた。Grade4のTRAEはなかった。

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血液検体による固形がんCGP「FoundationOne Liquid CDx」国内承認/中外

 中外製薬は、2021年03月23日、固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリング(CGP: comprehensive genomic profiling)を提供するリキッドバイオプシー(LB: liquid biopsy)検査として、「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」の承認を、3月22日に厚生労働省より取得したと発表。血液検体を用いた固形がんに対するCGPと、国内で承認された複数のコンパニオン診断機能を併せ持ったがん遺伝子パネル検査として国内初の承認となる。 FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイルは、進行固形がん患者を対象とし、血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA: circulating tumor DNA)を用いることで、324のがん関連遺伝子を解析する。がんゲノムプロファイリング機能と併せ、厚生労働省より承認されている複数の分子標的治療のコンパニオン診断機能も有しており、これらの結果を一つのレポートとして提供する。 販売名はFoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル。下の医薬品の適応判定の補助を目的とし、対応する遺伝子変異等を検出する。・EGFR遺伝子変異(非小細胞肺がん):アファチニブマレイン酸塩、エルロチニブ塩酸塩、ゲフィチニブ、オシメルチニブメシル酸塩・EGFRT790M変異(非小細胞肺がん):オシメルチニブメシル酸塩・ALK融合遺伝子(非小細胞肺がん):アレクチニブ塩酸塩、クリゾチニブ、セリチニブ・ROS1融合遺伝子(非小細胞肺がん):エヌトレクチニブ・NTRK1/2/3融合遺伝子(固形がん):エヌトレクチニブ

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高齢者のせん妄と認知症リスク~メタ解析

 せん妄と新規認知症発症との関連は、観察研究によって調査されているが、利用可能なエビデンスを定量的および定性的に評価したレビューは、最近行われていなかった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のJarett Vanz-Brian Pereira氏らは、せん妄と認知症に関連するエビデンスをシステマティックにレビュー、これを厳密に評価したうえで、せん妄発症後の新規認知症発症率を算出するため、検討を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年2月9日号の報告。 本システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMA(システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目)に従って実施した。65歳以上の高齢入院患者を対象に、せん妄の有無における認知症発症率を比較した英語のエビデンスをMEDLINE、EMBASE、PsycINFOより検索した。メタ解析には、変量効果モデルを用いた。全体のエフェクトサイズは、報告されたイベント数の生データを用いて算出した。バイアスリスクの評価には、Newcastle-Ottawa Quality Assessment scaleを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした観察研究は6件であり、フォローアップ期間は6ヵ月~5年の範囲であった。・対象患者別の内訳は、大腿骨近位部骨折の外科患者4件、心臓外科患者1件、老年科患者1件であった。・すべての研究において、すでに認知症を発症している患者は除外された。・プールしたメタ解析において、せん妄を発症した高齢入院患者では、せん妄を発症していない患者と比較し、その後の認知症発症率が約12倍に増加することが明らかとなった(OR:11.9、95%CI:7.29~19.6、p<0.001)。 著者らは「せん妄を発症した高齢入院患者は、その後の認知症発症リスクが高まることが明らかとなった。このことは、せん妄の予防およびその後の認知症モニタリングの重要性を示している。今回のメタ解析では、主に術後患者を対象としており、今後の研究では、内科系ICUを対象としたコホート研究が必要であろう。また、せん妄の期間、重症度、サブタイプが認知症発症リスクに及ぼす影響についての評価も求められる」としている。

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新型コロナ、4ヵ月後も7割に胸部CT異常/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による長期的な後遺症の詳細は知られていない。フランス・パリ・サクレー大学のLuc Morin氏らCOMEBAC試験の研究グループは、COVID-19で入院した患者の、退院4ヵ月後の健康状態を調査した。その結果、約半数が少なくとも1つの、COVID-19罹患前にはなかった新たな症状(疲労、認知症状、呼吸困難など)を訴え、勧奨を受けて外来を受診した患者の約6割に胸部CTで肺の異常所見(多くはわずかなすりガラス状陰影)が、約2割に線維化病変が認められるなどの実態が明らかとなった。JAMA誌オンライン版2021年3月17日号掲載の報告。フランスの単一施設の前向きコホート研究 本研究は、2020年3月1日~5月29日の期間にCOVID-19でパリ・サクレー大学病院(Bicetre病院)に入院し、その後退院した成人患者を対象とする前向きコホート研究である(フランスAssistance Publique-Hopitaux de Paris[AP-HP]の助成による)。 患者が退院後3~4ヵ月の時点(同年7月15日~9月18日)で、電話による診察が行われた。関連症状が持続している患者や、集中治療室(ICU)に入室していた患者は、外来を受診して追加の健康評価を受けるよう勧められた。 電話では、Q3PC認知スクリーニング質問票と症状チェックリストを用いて、呼吸器、認知機能、機能的症状などの評価が行われた。外来受診患者には、肺機能検査、肺CT検査、心理測定/認知検査(36-Item Short-Form Health Survey[SF-36]、20-item Multidimensional Fatigue Inventory[MFI-20]を含む)が施行され、元ICU入室患者や症状が持続している患者には心エコー図検査が実施された。元ICU入室患者の23%で不安、18%でうつ状態、7%で心的外傷後症状 478例(平均年齢61[SD 16]歳、女性201例[42%])が電話による診察を受け、このうち177例(37%、平均年齢56.9[13.2]歳、女性68例[38.4%])が外来を受診した。478例中142例が元ICU入室患者で、このうち外来を受診したのは97例だった。 電話診察では、244例(51%)が、COVID-19罹患前にはなくCOVID-19で入院中に新たに発症し、この電話診察時まで持続する症状が1つ以上あると申告した。症状は、疲労(31%)、呼吸困難(16%)、持続性の知覚障害(12%)、ベースラインから5%以上の体重減少(9%)などであった。また、21%に認知症状がみられ、Q3PC質問票による認知検査で18%が記憶障害と判定された。 MFI-20(145例)の意欲低下スコア(1[最良]~5[最悪]点)中央値は4.5点(IQR:3.0~5.0)、精神的疲労感スコア(1[最良]~5[最悪]点)中央値は3.7点(3.0~4.5)であった。また、SF-36(130例)の下位尺度である「身体的理由による活動の一部制限」のスコア(100[最良]~0[最悪]点)中央値は25点(25.0~75.0)だった。 外来受診では、肺CT検査で63%(108/171例)に異常が認められ、42%(72/170例)はわずかなすりガラス状陰影であった。線維化病変は19%(33/171例)にみられ、1例を除き、病変の範囲は肺実質の25%未満であった。急性呼吸促迫症候群(ARDS)と診断された49例のうち19例(39%)に線維化病変が認められた。 元ICU入室患者(94例)では、23%(22例)に不安、18%(17例)にうつ状態、7%(7例)に心的外傷後症状がみられた。元ICU入室患者(83例)の10%(8例)が、左室駆出率50%未満であった。また、新規慢性腎臓病が元ICU入室患者の2例で発生した。 血清検査では97%(172/177例)が抗SARS-CoV-2抗体陽性であった。この172例中3例は、RT-PCR法でSARS-CoV-2陽性となったことが一度もなかったが、臨床所見とCT所見によりCOVID-19と診断されていた。 著者は、「コホートに対照群はおらずCOVID-19罹患前の評価が行われていないことから、本調査で得られた知見は限定的なものとなる。より長期のアウトカムや、これらの知見が疾患との関連を反映しているかを解明するには、さらなる研究を要する」としている。

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donanemab、早期アルツハイマー病の認知機能/日常生活動作を改善/NEJM

 早期の症候性アルツハイマー病(AD)患者の治療において、donanemabはプラセボと比較して、76週時の認知機能と日常生活動作を組み合わせた複合評価尺度(iADRS)が有意に良好であることが、米国・Eli LillyのMark A. Mintun氏らが実施したTRAILBLAZER-ALZ試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年3月13日号に掲載された。donanemabは、N末端がピログルタミン酸化されたアミロイドベータ(Aβ)のエピトープを標的とするヒト化IgG1抗体。第Ib相試験では、アミロイド陽性の軽度認知障害または軽症~中等症のアルツハイマー型認知症患者において、1回の投与でアミロイドプラーク量を減少させることが確認されている。北米56施設のプラセボ対照無作為化第II相試験 本研究は、早期の症候性AD患者におけるdonanemabの安全性、有害事象、および有効性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、米国とカナダの56施設で患者登録が行われた(米国Eli Lillyの助成による)。 対象は、年齢60~85歳、PET検査で脳へのタウおよびアミロイドの沈着が認められ、認知症発症前の症候性AD(prodromal AD、明らかな軽度認知障害を認める)または認知症を伴う軽度AD(認知症とADの診断基準を満たし、症状の重症度が十分に高い)で、精神状態短時間検査(MMSE)スコア(0~30点、点数が高いほど認知機能が優れる)が20~28点の患者であった。 被験者は、donanemab(初めの3回は700mg、それ以降は1,400mg)を4週ごとに最長72週、静脈内投与する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、76週時の統合AD評価尺度(iADRS、0~144点、点数が低いほど、認知機能障害や日常生活動作の障害が大きい)のスコアのベースラインからの変化とした。副次アウトカムは、CDR-SB(Clinical Dementia Rating Scale-Sum of Boxes)、ADAS-Cog13(13-item cognitive subscale of the Alzheimer's Disease Assessment Scale)、ADCS-iADL(Alzheimer’s Disease Cooperative Study-Instrumental Activities of Daily Living Inventory)、MMSEのスコアの変化、およびPETで評価したアミロイドとタウの量の変化であった。ARIA-Eの頻度が高い、重篤な有害事象に差はない 257例が登録され、131例(平均年齢[±SD]75.0±5.6歳、女性51.9%、APOE ε4保因者72.5%)はdonanemab群、126例(75.4±5.4歳、51.6%、74.2%)はプラセボ群に割り付けられた。 ベースラインの平均iADRSスコアは、donanemab群が106.2点、プラセボ群は105.9点であった。ベースラインから76週までの平均スコアの変化は、donanemab群が-6.86点、プラセボ群は-10.06点であり、donanemab群のほうが減少幅が小さく、認知・身体機能の低下が少なかった(群間差:3.20点、95%信頼区間[CI]:0.12~6.27、p=0.04)。 副次アウトカムの、ベースラインから76週までの平均スコアの変化の群間差は、CDR-SBスコアが-0.36点(95%CI:-0.83~0.12)、ADAS-Cog13スコアが-1.86点(-3.63~-0.09)、ADCS-iADLスコアが1.21点(-0.77~3.20)、MMSEスコアは0.64点(-0.40~1.67)であった。 florbetapir PETで測定したアミロイドプラーク値は、76週時にdonanemab群がプラセボ群よりも85.06センチロイド低下していた(-84.13 vs.0.93センチロイド)。donanemab群のアミロイド陰性(アミロイドプラーク値<24.10センチロイドと定義)の割合は、24週時が40.0%、52週時が59.8%、76週時は67.8%だった。 また、flortaucipir PETで評価したタウ総量は、76週時にdonanemab群がプラセボ群よりも0.01低下しただけで、実質的な差はなかった。 死亡(donanemab群0.8% vs.プラセボ群1.6%)や重篤な有害事象(17.6% vs.17.6%)の発生について両群間に差はなかった。アミロイド関連画像異常(ARIA)のうち浮腫(ARIA-E)は、donanemab群で頻度が高かった(26.7% vs.0.8%)。 著者は、「ADにおけるdonanemabの有効性と安全性を評価するには、より長期で、より大規模な試験を要する。現在、本試験の参加者を対象に、follow-on試験(TRAILBLAZER-EXT試験)への患者登録を進めている」としている。

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AZ製コロナワクチン、米国第III相試験の主要解析で安全性・有効性を確認

 アストラゼネカ英国本社は3月25日発信のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンAZD1222の米国における第III相試験の主要解析において、安全性と有効性が確認されたと発表した。事前に規定された統計解析計画では、中間解析で少なくとも75例、主要解析で少なくとも150例の判定症例が必要であったが、両解析におけるワクチンの有効性は一致しており、結果に齟齬はなかった。 AZD1222を巡っては、日本を含む各国で臨床試験が進行中。このうち米国第III相試験(D8110C00001)は、健康な、もしくは医学的に安定した慢性疾患を有し、SARS-CoV-2やCOVID-19曝露のリスクが高い18歳以上の成人3万2,449 例の被験者を対象に、米国、ペルー、チリの88の治験施設で実施。本主要解析には、全被験者のうち190例の症候性COVID-19症例が含まれており、中間解析から49例増加していた。被験者はワクチン群とプラセボ群に2:1で無作為に割り付けられた。本試験の主要評価項目である症候性COVID-19 発症予防に対するワクチンの有効性は、4週間隔で2回接種後、15日以降において76%(信頼区間[CI]:68%~82%)だった。 また、すべての年齢集団における結果も同程度で、65歳以上におけるワクチンの有効性は85%(CI:8%~95%)だった。副次評価項目である重症・致死性な疾患、および入院予防に対する有効性は100%であった。本主要解析において、8例のCOVID-19重症化が見られたが、いずれもプラセボ群だった。ワクチンの忍容性は良好で、安全性上の懸念は特定されなかった。 アストラゼネカは、本主要解析を基に、今後数週間のうちに米国食品医薬品局(FDA)に対し、COVID-19 ワクチンとしての緊急使用許可申請を行う。

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レンバチニブ、子宮体がんに対する希少疾病用医薬品に指定/エーザイ

 エーザイは、2021年3月12日、マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)について、子宮体がんを予定される効能又は効果として、厚生労働省から希少疾病用医薬品に指定されたと発表。 プラチナ製剤による1レジメン以上の前治療歴のある進行子宮体がんを対象に、日本、米国、欧州などで実施している第III相KEYNOTE-775試験において、レンバチニブとペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用は、全生存期間と無増悪生存期間の2つの主要評価項目および奏効率の副次評価項目を達成。現在、日本を含む世界各国で、本試験のデータに基づく効能・効果追加申請の準備中である。

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BNT162b2(コミナティ筋注)のReal-World Settingにおける有効性と免疫回避変異ウイルスの発生など今後の課題(解説:山口佳寿博氏)-1367

 2021年3月20日現在、Pfizer社のBNT162b2ワクチンは米国FDA、欧州連合(EU)医薬品庁(EU-EMA)の製造承認に加えWHOによる使用正当性の承認(validation)を得ており、スイス、ニュージーランド、バーレーン、サウジアラビア、ブラジルの5ヵ国で完全使用が、英国、米国など37ヵ国(EUを含む)で緊急使用が承認されている(The New York Times 3/20, 2021)。本邦においても、2021年2月14日、厚生労働省は本ワクチンを特例承認し、2月中旬より医療従事者に対する接種が開始されている。BNT162b2の接種は人口923万人の小国イスラエルにおいて最も速く積極的に推し進められ、2020年12月20日から2021年2月6日までの間に60歳以上の高齢者の90%が1回目のワクチン接種を、80%が2回目のワクチン接種を終了した(Rossman H, et al. medRxiv. 2021;2021.02.08.21251325.)。本論評で取り上げた論文は、2020年12月20日から2021年2月1日までの間にワクチンを接種したイスラエルの成人596,681人と同数の非接種成人(対照)を対象としてワクチンの効果を検証したもので(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 24. [Epub ahead of print])、対象者数はイスラエル総人口の13%に相当する大規模解析である。この場合、知っておかなければならない事実として、当時のイスラエルに蔓延していたウイルスはD614G株から英国株に移行しつつあった時期であり、データ集積の最終時点では英国株が80%を占めるようになっていたことである。南アフリカ株、ブラジル株は検出されていなかった。すなわち、本研究はD614G株と英国株が混在する状況下でのBNT162b2の効果を検証したものと考えなければならない。 この1年間における新型コロナウイルスの変遷に関する詳細は他紙に譲るが(山口. 日本医事新報 5053:32-38, 2021)、2020年9月ごろまでは武漢原株から変異したD614G株が世界を席巻していた。9月以降、D614G株にさらなる変異が加わったN501Y株(英国株:B.1.1.7、南アフリカ株:B.1.351、ブラジル株:P.1)が世界の各地で検出されるようになった。とくに、12月以降はN501Y株の占める割合が上昇している。これら新たな3種類の変異株の中で南アフリカ株、ブラジル株は免疫回避変異を有し、武漢原株のS蛋白に関する遺伝子情報から作成された現行ワクチンの中和反応を著明に抑制する。一方、英国株は免疫回避変異を有さず、現行ワクチンの効果を有意に抑制することはない。世界各国で承認されつつある現行ワクチンの第III相試験は、2020年の夏から秋にかけて施行されたものであり、その時点で流布していた主たるウイルスはD614G株であった。すなわち、現行ワクチンの第III相試験はD614G株に対する効果を検証したものであることを忘れてはならない。 本研究にあっては、BNT162b2の第III相試験(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)の場合と異なり、発症予防効果(有症状で鼻咽頭液のPCR陽性者に対する予防効果)だけではなく感染予防効果(症状の有無にかかわらずPCR陽性者に対する予防効果)、重症化予防効果、入院予防効果、死亡予防効果を解析している。2回目のワクチンは95%の対象において1回目のワクチンより24日以内に接種された。ワクチン2回接種の効果は、第III相試験の場合と同様に2回目のワクチン接種後7日以上経過した時点で判定され、発症予防効率:94%、症状の有無にかかわらない全体的感染予防効率:92%、重症化予防効率:92%、入院予防効率:87%であった。発症予防効率を見る限り、第III相試験において得られた値(95%)と確実に一致、他の指標においても90%内外の予防効果を示しておりBNT162b2の高い臨床的有用性を示している。さらに、本研究の結果は、BNT162b2がD614G株だけではなく英国株に対しても有効な抑制作用を発揮することを示唆している。同様の結果は、アデノウイルス(Ad)をベクターするPfizer社のChAdOx1、Johnson & Johnson社のAd26.COV2.Sにおいても確認されている(Fontanet A, et al. Lancet. 2021; 397:952-954.)。これら2種類のAdワクチンは、D614G株、英国株に対しては有効な発症予防効果を示したが南アフリカ株に対する発症予防効果は明確に抑制されていた。 本研究にあって特記すべき事項は、BNT162b2の1回接種による効果が検証されていることである。1回接種の効果を1回目のワクチン接種後21~27日の期間で判定すると、発症予防効率:66%、症状の有無にかかわらない全体的感染予防効率:60%、重症化予防効率:80%、入院予防効率:78%、死亡予防効率:84%であった。発症予防効率を見る限り、単回接種のAdワクチンとして米国FDA、EU-EMA、WHOの承認を受けているJohnson & Johnson社のAd26.COV2.Sの発症予防効果(66%)と同等である。すなわち、RNAワクチンであるBNT162b2も2回接種ではなく単回接種でも十分なる臨床的有効性を発揮するものと思慮され、パンデミックのワクチン不足が深刻なときにはワクチン接種計画を練り直し単回のBNT162b2接種を推し進めることも間違いではないはずである。 BNT162b2を中心としたワクチン接種が世界レベルで推し進められた場合、D614G株に対するワクチン疑似感染による集団免疫を獲得する地域/国が増加する(おそらく英国株に対しても集団免疫が確立されるものと予測される)。あるウイルスに対する集団免疫はその集団に属する人の40%以上が自然あるいは疑似感染した場合に確立される(山口. 日本医事新報 5026:26-31, 2020)。D614G株、英国株に対する集団免疫が確立されると、南アフリカ株、ブラジル株と同等、あるいは、それ以上の集団免疫を無効にする強力な免疫回避変異が形成される可能性がある。これは、ウイルスの環境適応であり、強固な集団免疫形成下でも自らの生存を維持するためのウイルスの自然発生的進化である。以上の内容を、ブラジル株、南アフリカ株の発生をもとに考えてみよう。ブラジルの大都市マナウスでは昨年の5月に感染ピークを有するD614G株に起因する重篤な1次波を経験した。その結果、住民の70%以上がD614G株に感染し、この地域においてD614G株に対して完全な集団免疫が確立された。マナウスでは、夏から秋にかけて感染増大もなく新型コロナはD614G株に対する集団免疫の結果として終息したと考えられた。しかしながら、2020年12月より再発を含むコロナ感染/入院患者数が急増しD614G株ではない新たな株による感染が強く疑われた。遺伝子検査の結果、新規変異株であるブラジル株が蔓延していることが判明した。ブラジル株は外来のウイルスではなくブラジル国内で自然発生した変異株である。ブラジル株には、免疫回避変異を認め、D614G株の自然/疑似感染に対して強い抵抗性を示す複数の変異が同定された。南アフリカにおいてもD614G株による重篤な1次波を経験した地域(東ケープタウン州)で免疫回避変異を有する新規の南アフリカ株(外来ではなく南アフリカ国内で発生)が検出され、12月初旬には南アフリカ全土において南アフリカ株がウイルスのほぼ100%を占めるようになった。以上のブラジル、南アフリカでの免疫回避変異を有するウイルスと同等の新規変異株がワクチン疑似感染によるD614G株に対する集団免疫が確立されてから数ヵ月前後で本邦でも発生する可能性がある。それ故、現行のワクチン接種をコロナ感染症制御の最終段階と考えるのではなく、それ以降の免疫回避変異を有する変異ウイルスの推移を十分なる警戒心を持って見守る必要があることを強調したい。

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産科救急マニュアル―産科婦人科ベストセレクション

不意打ちのように遭遇する母体・胎児の急変に対応不意打ちのように遭遇する母体・胎児の急変に対し、3つの構成で解説。1)基本手技編:周産期救急にスポットを当てたバイタルサイン・検査・救急蘇生、2)症候編:産科臨床における前景疑問(起こり得る疑問)に対する回答・検査・初期対応・フローチャートによる診断までの流れを図解、3)疾患編:妊産婦の状態と施設の状況に応じた対応の要点について、エビデンスを基に紹介。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    産科救急マニュアル―産科婦人科ベストセレクション定価9,900 円(税込)判型B5判頁数256頁 写真・図・表:205点発行2021年3月監修藤井 知行(山王病院)編集永松 健(東京大学)

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第50回 宮城の新型コロナ急増と4つの原因

新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)の感染者急増に伴い、1都3県に対して発出されていた新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言が3月21日一杯で解除された。これにより2ヵ月半ぶりに日本国内に緊急事態宣言対象地域は無くなったことになる。しかし、すでに各地で感染は拡大傾向を示している。その中でも顕著なのが宮城県。3月24日時点で直近1週間の人口10万人あたりの感染者数は33.30人。以下順に沖縄県の23.19人、東京都の15.57人、山形県の12.80人、大阪府の12.21人、千葉県の11.46人、埼玉県の10.60人となり、以下は10人未満になる。ちなみに一桁台の筆頭は北海道の8.72人である。私は宮城県出身で中高時代は仙台市で過ごし、今も両親は現地に住んでいる。しかも、実は約2週間前は仙台市に滞在していた。これは10年の節目を迎えた東日本大震災の取材と今年2月13日に福島県沖を震源として発生したマグニチュード7.3の地震で、実家が震度6弱の揺れに襲われ、家財の一部などが破損したことなどから実家の様子を見に行ったからである。しかし、なぜ宮城県でこれほど感染者が増加したのかという思いもある。そもそも総人口約230万人、県庁所在地の仙台市が人口約110万人という宮城県では2020年中の1日当たりの最大感染者報告数は12月26日の56人。その直前の12月中は1日当たり40人台後半の感染者が報告されていたことが多く、宮城県と仙台市はすでに12月23日、東北最大の歓楽街と言われる仙台市青葉区国分町周辺の飲食店に対し、12月28日~今年1月11日までの15日間、午後10時までの営業時間短縮を要請した。この時短要請地域はほぼ正方形で450m×400mという極めて限定したものだったが、ここに約2400店舗の飲食店があると言われている。私はちょうど年末年始も仙台にいたが、この政策は国分町で営業する地元飲食店関係者にはすこぶる不評だった。というのも、この時短要請地域からわずか徒歩10分程度で、JR仙台駅周辺に行け、そこは時短要請対象外。しかも、仙台駅周辺は東京資本の飲食店などが多く、地元飲食店経営者からすれば「みすみすヨソ者に儲けさせている」との不満が出てきてしまうのだ。もっともこの時短要請は期限間近で地域限定のまま14日間延長され、さらに延長期限直前には市全域を対象として追加で14日間延長、2月8日で解除となった。解除直前の宮城県全体での1日当たりの平均感染者報告数は一桁となり、確かに一定程度の効果があったと考えられる。ところが月末の2月27日には1日の感染者報告数が19人となり、これ以降次第に右肩上がりで感染者が増加し始めた。月末から上がり始めたということは、その感染の機会はおおむねの潜伏期間5~7日を考えれば、2月14日(日曜日)の週からということになる。ところが単純に考えると、それでは辻褄が合わない。というのも、前述の福島沖での地震の結果、東北新幹線は栃木県の那須塩原駅から岩手県の盛岡駅の区間は2月13日~23日まで完全に運休してしまったからだ。もっとも首都圏から宮城県への抜け道はほかにもあった。太平洋沿岸を走る常磐線で運行していた特急ひたちと、この事態に応じて全日空と日本航空が臨時で運行した羽田-仙台便の空路、さらには仙台に向かう高速バスである。もっとも代替手段があるとはいえメインである「早い・安い」の東北新幹線が運休した影響は大きかったはずで、データはないもののこの期間に本来想定された人の移動は、一定程度減少したはずである。なのになぜ感染者が増えてしまったのか? 実はその一端はすでに報道されている。そしてこれについて取材に応えているのは、ほとんどが厚生労働省のクラスター班でも活躍する東北大学大学院歯学研究科の小坂 健(おさか けん)教授である。代表的な記事は地元紙河北新報の「宮城でコロナなぜ拡大? 専門家『多様な要因が複合的に作用』」だ。ここから抜粋すると、その原因は以下のようになる。(1)大学入試による受験者の移動(2)福島県沖地震の復旧や被害査定の関係者の県外からの来訪(3)飲食業支援策「Go To Eat」のプレミアム付き食事券の再販売(4)東日本大震災関連行事の参加者・取材者の流入ちなみにこの箇条書きは上から順に時系列となっている。(1)だが、宮城県は国公立大学より一足早く入試が始まる私立大学が12校あり、その入試は概ね2月上旬、合格発表が2月中旬である。実はこの点に着目すると、やや興味深い相関が見える。宮城県にある私立大学で最も学生数が多く、偏差値も高いのが東北学院大学である。ちなみにその学生数は1万1,000人弱で、東北を代表する旧帝国大学の総合大学、東北大学よりも学生数は若干多い。ちなみに同大学は宮城県出身が受験者・最終入学者の半数以上を占めるが、他の東北5県からの受験者・最終入学者も合計3割強となる。そして前述のような時短要請のため宮城県は2月上旬から中旬にかけて感染者数が減少していたが、実はデータを見るとこの時期、他の東北5県は感染者報告数が一時的に軽い山、すなわち増加傾向にあった。ここでは東北学院大学を代表例としたが、宮城県内の私立大学の受験者・最終入学者の出身県などは、おおむね他の大学も似たような傾向がある。その意味では現在の宮城県の第4波ともいえる感染者増加のベースにあったのは私立大学受験者の移動とも考えられる。そこにきて次なるインパクトとして(2)~(4)があり、さらに(3)~(4)の間に(1)のうち国公立大学入試が行われている。正直、これらの要因どれ一つとっても、その動きの背後に「悪意」はまったくない。今回の新型コロナパンデミックを機に頻用されるようになった「不要不急」という言葉を使うならば、それに該当する筆頭は(3)(4)、とりわけ(3)となるかもしれない。もっとも生き物としてのヒトの生業として食は必要であり、なによりヒトはコミュニケーションをする生き物であることを考えれば、私は(3)ですら「不要不急」という言葉を当てはめたくない。今回の宮城県のケースは、誰もほぼ悪意のない活動の結果、ヒトの移動と接触が一次的に増加・蓄積することで感染の急拡大を招くという、ヒトの急所を突くこのウイルスのいやらしさを改めて思い知らされる。そして今、次なる歓迎できない動きが見え始めている。それは宮城県と隣接する山形県での感染者急増である。もともと宮城県の県庁所在地である仙台は俗に「東北の首都」とも言われ(もっとも仙台人と言ってもよい私のような人間がこの言葉を使うと他の東北5県の人たちからは嫌な顔をされるのだが)、周辺各県との人の往来は多い。とりわけ山形市や福島市、岩手県南部の一関市などの住民は、仙台市まで電車・新幹線、あるいは車で最大所要時間1時間程度ということも手伝って、買いものなどで気軽に仙台を訪れる。つまり宮城県の感染者急増が山形市の感染者急増を招いていると言え、同じことは東北の他の地域でも十分起こり得る。こうした嫌な感染急増モデルは、名古屋市を中心とする東海地域、金沢市を中心とする北陸地域、福岡市を中心とする九州北部地域など、「地域首都」とそれを取り巻く経済圏という類似した構造を持つ地域にとっても対岸の火事ではない。まして感染者が下げ止まらず、やや「投げやり的」とも言える緊急事態宣言解除に至った首都圏は、最も感染再急増の危険にさらされている。このように宮城県の事例を眺めるにつけ、相当気を引き締めないと首都圏は休む間もなく第4波にのまれるのではないかとの懸念を改めて強くしている。

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サスティナブルな医療の一歩へ~新たな知識を何でものみこもう

『何でものみこむアンチエイジング』をテーマに掲げ、第21回日本抗加齢医学会総会が2021年6月25日(金)~27日(日)に国立京都国際会館で開催される。この一風変わったテーマの真意を大会長である内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)に聞くとともに、大会長一押しのシンポジウムについてインタビューした。何でも“のみこむ”ことがイノベーションの起爆剤今回の学会テーマを「何でものみこむ」にした理由は、飲食に限らず、多彩な学術情報を嫌わずに何でも受け入れ、その中から科学的基盤に基づいて新たなイノベーションを創造してほしいという意味を込めたからです。私自身の経験として、腸内細菌叢の研究をのみこんで消化してみようと思い立ったのは今から約5年前のこと。その当時、腸内細菌叢に関する遺伝子解析が可能になったり世間で腸内フローラに関する話題が沸騰したりと、“腸内細菌叢”が研究分野として脚光を浴びる大きなチャンスでした。また、消化器科専門医として食事で健康を維持することを大事にしていた私は、腸内環境と疾患の関連性にも惹きつけられていました。たとえば、多発性硬化症とクローン病は病態発症に縁もゆかりもないですが、それらの患者さんにおいて腸内細菌叢が類似していた症例に遭遇し、これは私に大きな影響を与えました。そして、この研究をさらに深く追求したその先に抗加齢医学があり、現在に至っているわけです。“身体にいい”は科学的にも良い?医学の枠を越えたシンポジウム今回、大会長を務めるにあたり、何でも嫌わず自身のものにするという観点で企画立てました。参加者に新たな知見を吸収・消化して各々の研究分野に役立ててほしいという思いを込め、抗加齢医学会に属していない方も演者にお招きしています。企画に注力した会長特別企画では、『機能性食品や機能性を有する農林水産物の今!(仮題)』と題し農業由来のアンチエイジング研究について発表していただきます。たとえば、「身体に良い」と言われる農林水産物は本当に身体に良いのかどうかを科学的に分析した例など、いわゆる“国プロ”(公的研究開発プロジェクト)を多数推進してきた農研機構の山本 万里氏らを招聘し“農林水産物をいかに社会実装していくか”というポイントでお話いただく予定です。抗加齢の意識がSDGsを導く手立てに抗加齢医学の根本は「何を食べるか」から始まり、持続性のある発展を目指すためには食物に関する研究が不可欠であると私は考えています。抗加齢医学は今、エピジェネティクスの影響を受け、人生100年時代を超え“人生120年続く時代”が囁かれているんですが、これは老化の時計を進めない、むしろ逆戻りさせるための老化メカニズム研究が目まぐるしく発展している成果とも言えます。しかし、医学が発展しているからといって「60歳になったから」とか「老化を感じるから」とその時だけ抗加齢を意識するのは見当違いなんです。人間は母体にいる時からさまざまな栄養や環境の変化を受け、生まれてきます。とくに腸内細菌叢は出産時の母体の体調が大きく影響しますし、そこを基盤に未来の食事摂取状態や環境変化にさらされていくのです。そのため、社会的な視点で注目されているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の概念は抗加齢医学にも非常に通じるところがあります。ぜひ、このような視点や感覚を本総会やこの会長特別企画で学んでもらいたいと考えています。このほかにも発がんリスク因子や免疫老化・細胞老化、コロナ関連、食物繊維に関する研究報告など多数の演題をご用意しています。新型コロナ感染対策に配慮し会場とWebを併用したハイブリッド形式で開催いたしますので、多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

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うつ病に対する作業療法の有用性~システマティックレビュー

 うつ病は一般的なメンタルヘルス障害であり、その症状により機能的な問題が生じ、日常活動を減少させる可能性のある疾患である。このような問題を抱える患者に対し作業療法は、日常的に提供されている治療法である。英国・サルフォード大学のLynn Christie氏らは、うつ病に対する作業療法介入の有用性を裏付けるエビデンスをシステマティックに評価するため、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年3月1日号の報告。 うつ病と診断された患者に対する作業療法の有効性を評価するため、システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目(PRISMA)を用いて、システマティックレビューを行った。作業療法に関連する用語とうつ病をキーワードとし、7つのデータベースより検索を行った。研究デザインとアウトカム測定方法の不均一性のため、メタ解析の代替としてベストエビデンスの統合を行った。 主な結果は以下のとおり。・抽出された1,962件中63件の研究を全文評価し、6件が選択基準を満たした。・研究実施国は、カナダ、ドイツ、オランダ、台湾、英国であった。・うつ病患者に対する作業療法のエビデンスとして、以下の有用性が認められた。 ●うつ症状を改善するための作業療法による職場復帰介入(強力なエビデンス) ●不安や自殺念慮を軽減するための作業療法によるライフスタイル介入(限られたエビデンス) ●仕事への復帰を改善(限られたエビデンス)・個々の患者を対象として作業療法を評価した研究はなく、研究のギャップが浮き彫りとなった。・本研究の限界として、研究内の不完全な報告および不均一性によりメタ解析が行えなかった点と英語による制限が挙げられる。 著者らは「うつ病に対する作業療法のエビデンスは限られているものの、作業療法が職場復帰の介入として有効であることを示す強力なエビデンスが見つかった。このことは、メンタルヘルスと休職コストとの関連を考慮すると非常に重要なポイントである。今後は、さらなる研究により、エビデンスを増やしていくことが望まれる」としている。

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