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統合失調症患者のコミュニケーション感度

 統合失調症の特徴の1つとして、他人の言語コミュニケーション意図を正しく推察することが非常に困難であることが挙げられる。いくつかの研究において、統合失調症患者の言語パフォーマンスを調査しているが、さまざまなコミュニケーションを理解する際の誤認に関して調査した研究は、これまでほとんどなかった。イタリア・トリノ大学のParola Alberto氏らは、統合失調症患者と健康対照者におけるエラーパターンを調査し、さまざまなコミュニケーション(誠実さ、欺瞞、皮肉など)の理解と統合失調症の臨床的特徴との関係を評価した。NPJ Schizophrenia誌2021年2月26日号の報告。 他人のコミュニケーション意図を正しく認識する能力(感度)と誤認する傾向(反応バイアス)を定量化するため、シグナル検出分析を用いた。感度と反応バイアスの関係、症状重症度、薬物療法などの臨床的特徴、個人的および社会的機能について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、健康対照者と比較し、誠実さ、欺瞞、皮肉のコミュニケーションに対する感度が低く、他人のコミュニケーション意図を推察する能力が損なわれていることが示唆された。・皮肉に対する感度は、解体症状(まとまりがなく、感情が平板化した状態)と関連していことが示唆された。・統合失調症患者は、健康対照者と比較し、欺瞞的なコミュニケーションに対して強い反応バイアスが示された。 著者らは「統合失調症患者では、誠実さや皮肉よりも欺瞞を誤認する傾向が認められた。この傾向は、疾患を特徴付ける帰属バイアスに関連している可能性がある」としている。

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pirtobrutinib(LOXO-305)、既治療のB細胞性悪性腫瘍に有望/Lancet

 共有結合型ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬などによる前治療歴のあるB細胞性悪性腫瘍(慢性リンパ性白血病[CLL]/小リンパ球性リンパ腫[SLL]など)の治療において、非共有結合型BTK阻害薬pirtobrutinib(LOXO-305)は、良好な安全性と耐用性を示し、全奏効率も優れることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAnthony R. Mato氏らが実施した「BRUIN試験」で確認された。研究の成果は、Lancet誌2021年3月6日号で報告された。共有結合型BTK阻害薬は、B細胞性悪性腫瘍に有効だが、抵抗性や不耐性のため患者は治療を継続できない。pirtobrutinib(LOXO-305)は、この問題の解決を目標に開発が進められており、経口投与が可能で、高選択性の可逆的BTK阻害薬である。pirtobrutinib(LOXO-305)の非盲検第I/II相試験 本研究は、6ヵ国(オーストラリア、フランス、イタリア、ポーランド、英国、米国)の27施設が参加したヒトで最初の(first-in-human)非盲検第I/II相試験であり、2019年3月~2020年9月の期間に患者登録が行われた(Loxo Oncologyの助成による)。 対象は既治療のB細胞性悪性腫瘍の患者であった。第I相試験では、pirtobrutinib(LOXO-305)の7段階(25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg)の用量が、28日を1サイクルとして1日1回経口投与された。投与は、病勢進行、許容できない毒性、患者の希望で中止となるまで継続された。引き続き、第I相試験の推奨用量を用いて第II相試験が実施された。 主要評価項目は、第I相試験が最大耐用量、第II相試験は全奏効割合(ORR)とした。pirtobrutinib(LOXO-305)最大耐用量に到達せず、ORRは63% 第I相試験203例、第II相試験120例の合計323例(年齢中央値68歳[IQR:62~74])が登録された。CLL/SLLが170例、マントル細胞リンパ腫(MCL)が61例、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)が26例、その他のB細胞性リンパ腫が66例であった。 第I相試験では、pirtobrutinib(LOXO-305)の25~300mgの全用量範囲を通じて線形の用量比例性(最大血漿中濃度、曲線下面積)が認められ、個体間変動は小さかった。用量制限毒性はみられず、最大耐用量には到達しなかった。第II相試験のpirtobrutinib(LOXO-305)推奨用量は200mg/日に設定された。 323例の10%以上で発現した有害事象は、疲労(65例[20%])、下痢(55例[17%])、挫傷(42例[13%])であった。最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球減少(32例[10%])だった。pirtobrutinib(LOXO-305)の曝露量とGrade3以上の治療関連有害事象には関連がなかった。 Grade3の心房細動および粗動は観察されず、Grade3の出血が1例(自転車事故時のくも膜下出血、pirtobrutinibとの関連はないと判定)で認められた。5例(1%)が、治療関連有害事象のため治療を中止した。 CLL/SLL患者(前治療ライン数中央値:3)におけるpirtobrutinib(LOXO-305)のORRは63%(88/139例)(95%信頼区間[CI]:55~71)であった。また、共有結合型BTK阻害薬による前治療歴のあるCLL/SLL患者(前治療ライン数中央値:4)のORRは62%(75/121例)(95%CI:53~71)だった。 CLL/SLL患者のORRは、共有結合型BTK阻害薬抵抗性(67%[53/79例])、同不耐性(52%[22/42例])、BTK C481変異陽性(71%[17/24例])、BTK野生型(66%[43/65例])でほぼ同様であった。また、共有結合型BTK阻害薬による前治療歴のあるMCL患者のORRは52%(27/52例)(95%CI:38~66)だった。 解析の時点で、奏効が得られたCLL、SLL、MCL患者117例のうち8例を除くすべてが、無増悪生存を維持していた。 著者は、「pirtobrutinib(LOXO-305)に固有の特性によるBTK阻害効果は、共有結合型と非共有結合型のBTK阻害薬を逐次的に使用することで、B細胞性悪性腫瘍患者における臨床的有益性をさらに高める可能性がある」としている。

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HER2陽性早期乳がんへの術後トラスツズマブ、半年 vs.1年~メタ解析

 HER2陽性早期乳がん患者における術後トラスツズマブ投与が生存転帰を改善することが示されているが、標準とされる12ヵ月の投与と比較し6ヵ月の投与が非劣性であるかについては議論がある。中国・華中科技大学同済医学院のBi-Cheng Wang氏らは術後トラスツズマブの投与期間についてメタ解析を実施。Medicine誌オンライン版2021年3月12日号にその結果が掲載された。 2020年1月14日まで、PubMed、Cochrane Library、Web of Science、およびEMBASEで関連研究が検索された。無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)について、プールされたハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)のメタ解析が行われた。 主要評価項目はDFS(非劣性マージン:1.2)、副次評価項目はOS(同:1.43)であった。 主な結果は以下のとおり。・3つの無作為化臨床研究が選択基準を満たし、6ヵ月投与群3,974例、12ヵ月投与群3,976例が対象とされた。・DFSのHRは1.18(95%CI:0.97~1.44、p=0.09)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.25)を上回った。・OSのHRは1.14(95%CI:0.98~1.32、p=0.08)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.43)を下回った。 著者らは、今回の分析ではDFSの改善において6ヵ月投与の非劣性を示すことができなかったとし、OSの改善については非劣性が示されたが、乳がん患者では疾患の進行または再発がみられた場合に追加の全身療法を受ける必要があることを考慮すると、12ヵ月投与を標準的治療として提案するとまとめている。

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ハイリスク非責任病変の識別に、NIRS-IVUSが有望/Lancet

 近赤外分光法血管内超音波検査(NIRS-IVUS)で検出した高脂質性で大きなプラークを伴う非閉塞性病変は、将来的な有害心イベントリスク増大を検出することが示された。スウェーデン・ルンド大学のDavid Erlinge氏らが、直近の心筋梗塞患者898例を対象に行った多施設共同前向き自然経過試験「PROSPECT II」の結果を報告した。NIRS-IVUSは、冠動脈関連イベントを引き起こす可能性がある非閉塞性プラークの特定に有望とされる画像診断法である。研究グループは、その検出力が将来的な主要心血管イベント(MACE)のリスクを有する患者を特定しうるのか検討した。Lancet誌2021年3月13日号掲載の報告。発症4週間以内の心筋梗塞患者を対象に試験 PROSPECT IIは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの14大学病院と2コミュニティー病院で、年齢を問わず直近(4週間以内)に心筋梗塞を発症した患者を集めて行われた。血流制限を認めるすべての冠動脈病変を治療後、3枝冠動脈に対しNIRS-IVUSを行った。IVUSで未治療病変(非責任病変)を識別し、NIRSで脂質量を評価した。 主要アウトカムは、未治療非責任病変に起因する共変量補正後のMACE(心臓死、心筋梗塞、不安定狭心症、進行性狭心症のいずれか)発生率とした。 脂質量の多いプラーク、大プラーク部位、血管内腔が狭い部位と、各部位のイベント発生との関連を検証した。高脂質病変は被験者の59%で検出 2014年6月10日~2017年12月20日に、被験者898例(年齢中央値63歳[IQR:55~70]、女性17%)を対象に試験を開始した。検出した未治療非責任病変は計3,629病変、追跡期間中央値は3.7年(IQR:3.0~4.4)だった。 4年間で被験者898例のうち112例(13.2%、95%信頼区間[CI]:11.0~15.6)にMACEが発生し、66例(8.0%)は検出された78の未治療非責任病変に起因したMACEだった。 高脂質病変(患者520/884例[59%]で851/3,500病変[24%])は、患者レベルの非責任病変関連MACE(補正後オッズ比[OR]:2.27、95%CI:1.25~4.13)、および非責任病変特異的MACE(7.83、4.12~14.89)の独立予測因子だった。大プラーク(患者530/898例[59%]で787/3,629病変[22%])も、非責任病変関連MACEの独立予測因子だった。 IVUSで大プラークを検出し、NIRSで大脂質リッチコアを認めた病変の4年間非責任病変関連MACE発生率は、7.0%(95%CI:4.0~10.0)だった。こうした病変が1つ以上認められた患者では、4年間非責任病変関連MACE発生率は、13.2%(9.4~17.6)だった。

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AZ製ワクチン、南アフリカ変異株への有効性みられず/NEJM

 2回投与の新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」(アストラゼネカ製ChAdOx1)は、南アフリカ共和国で最初に見つかったB.1.351変異型による、軽度~中等度の症候性COVID-19発症に対する有効性は認められないことが示された。同国・ウィットウォーターズランド大学のShabir A. Madhi氏らによる、約2,000例のHIV非感染者を対象に行った試験の結果で、NEJM誌オンライン版2021年3月16日号で発表された。HIV非感染の18~65歳を対象に試験 研究グループは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンの安全性と有効性の評価は、さまざまな集団を対象に行うことが必要であり、南アフリカ共和国で最初に同定されたB.1.351変異型をはじめとする新たな変異型に対するワクチンの有効性についても、同様に調査が必要だとして本検討を行った。 同国在住でHIV非感染の18~65歳を対象に、多施設共同無作為化二重盲検試験を行い、「AZD1222」の安全性と有効性を検証。被験者を無作為に1対1の割合で2群に割り付け、一方にはワクチン(含有ウイルス粒子量5×1010)を、もう一方にはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム溶液)を、21~35日間隔でそれぞれ2回投与した。 被験者25例から2回投与後に血清サンプルを採取し、擬似ウイルスと生ウイルス中和試験を実施。変異前のD614G型ウイルスとB.1.351変異型に対する中和活性を測定した。 主要エンドポイントは、2回投与後14日超における、検査で確定した症候性COVID-19に対するワクチンの安全性と有効性とした。中和試験では変異株への抵抗性示す 2020年6月24日~11月9日に、HIV非感染成人2,026例(年齢中央値30歳)が登録され、1回以上のプラセボまたはワクチン投与を、それぞれ1,010例、1,011例が受けた。 血清サンプル評価では、擬似ウイルス、生ウイルス中和試験ともに、B.1.351変異型に対する抵抗性は、プラセボ群に比べワクチン群でより大きかった。 軽度~中等度の症候性COVID-19の発生例は、プラセボ群23/717例(3.2%)、ワクチン群19/750例(2.5%)で、有効性は21.9%(95%信頼区間[CI]:-49.9~59.8)だった。 症候性COVID-19を呈した42例のうち、B.1.351変異型は39例(92.9%)で、変異型に対するワクチンの有効性は10.4%(95%CI:-76.8~54.8)だった。 重篤な有害事象の発生は、両群間で均衡がとれていた。

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ChAdOx1 nCoV-19(AZ社)における1回接種の有効性と血栓形成を含む新たな展開 (解説:山口佳寿博氏)-1364

 AstraZeneca社のChAdOx1 nCoV-19(別名:AZD1222)は、チンパンジーアデノウイルス(Ad)をベクターとして用いた非自己増殖性の同種Adワクチンである(priming時とbooster時に同種のAdを使用)。ChAdOx1に関する第I~III相試験は、英国、ブラジル、南アフリカの3ヵ国で4つの試験が施行された(COV001:英国での第I/II相試験、COV002:英国での第II/III相試験、COV003:ブラジルでの第III相試験、COV005:南アフリカでの第I/II相試験)。それら4つの試験に関する総合的評価は中間解析(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:99-111.)と最終解析(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)の2つに分けて報告された。 ChAdOx1に関する治験には種々の問題点が存在し、中間報告時から多くの疑問が投げ掛けられていた。最大の問題点は、最も重要な英国でのCOV002試験において37%の対象者に対して、ワクチン初回接種時に正式プロトコールで定められたAdウイルスの標準量(SD:5×1010 viral particles)ではなく、その半量(LD:2.2×1010 viral particles)が接種されていたことである。これは、Adウイルス量の調整間違いの結果と報告されたが、治験の信頼性を著しく損なうものであった。2番目の問題点は、ワクチンの1回目接種と2回目接種の間隔が正式プロトコールでは28日と定められていたにもかかわらず、多くの症例で28日間隔が順守されていなかったことである。たとえば英国のCOV002試験において、SD/SD群(初回接種:SD量、2回目接種:SD量)では中央値69日間隔、LD/SD群(初回接種:LD量、2回目接種:SD量)では中央値84日間隔の接種であり、SD/SD群における53%の症例で12週以上の間隔を空けて2回目のワクチンが接種されていた。ワクチン接種の間隔が一定でなかったことから、発症予防効果がワクチン接種の間隔に依存するという興味深い副産物的知見が得られたが、臨床試験の面からは許容されるべき内容ではない。3番目の問題点は、LD/SD群の発症予防効果(90%)が正式プロトコールのSD/SD群の発症予防効果(62%)を明確に凌駕していたことである(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:99-111.)。この現象を科学的に説明することは困難である。ただ、ChAdOx1の治験にあっては、他のワクチンで採用された有症状感染を評価指標とした発症予防効果に加え、無症候性感染を含めた感染全体に対する予防効果も評価されたことは特記に値する。 ChAdOx1の正式プロトコールであるSD/SD群における最終解析から得られた重要な知見(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)は、(1)2回のワクチン接種間隔が12週以上の場合のS蛋白に対する中和抗体価(幾何学的平均)は、ワクチン接種間隔が6週以下の場合に比べ2倍以上高い。ただし、この現象は、55歳以下の若年/中年者において認められたもので56歳以上の高齢者では認められなかった。(2)その結果として、ワクチン接種間隔が12週以上の場合の発症予防効果(2回目ワクチン接種後14日以上経過した時点での判定)は、ワクチン接種間隔が6週以内の場合に比べ明らかに優っていた(12週以上で81.3% vs.6週以内で55.1%)。(3)無症候性感染に対する感染予防効果は、ワクチン接種間隔が6週以内の場合で-11.8%、12週以上の場合で22.8%であり共に有意な予防効果ではなかった。以上の結果より、ChAdOx1ワクチンの発症予防に関する最大の効果を得るためには、SD量のワクチンを12週間以上空けて接種すべきだと結論された。 ChAdOx1の治験では、LD/SD群、SD/SD群のすべてを対象として1回目のワクチン接種後22日目から90日目までの発症予防効果、無症候性感染予防効果が検討された(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)。1回目ワクチン接種の発症予防効果は76.0%(有効)、無症候性感染予防効果は-17.2%(非有効)であった。一方、LD/SD群、SD/SD群のすべてを対象とした2回接種の発症予防効果は66.7%(有効)、無症候性感染予防効果は22.2%(非有効)であった。すなわち、ChAdOx1の1回接種は2回接種の発症予防効果に比べ優勢であっても劣勢であることはなく、ChAdOx1の2回接種の必要性に対して本質的疑問を投げ掛けるものであった(山口. ジャ-ナル四天王-1352「遺伝子ワクチンの単回接種は新型コロナ・パンデミックの克服に有効か?」、山口. 日本医事新報(J-CLEAR通信124). 2021;5053:32-38.)。3月18日現在、ChAdOx1は2回接種の同種AdワクチンとしてEU医薬品庁(EMA)の製造承認、WHOの使用に関する正当性(Validation)承認を得ているが、米国FDAの製造承認は得られていない。米国FDA、EU-EMAならびにWHOの全機関の承認を得ている単回接種の同種AdワクチンとしてJohnson & Johnson社のAd26.COV2.S(ベクター:ヒトAd26型Ad)が存在するが、その発症予防効果は米国、中南米、南アフリカにおける治験の平均で66%と報告された(山口. 日本医事新報(J-CLEAR通信124).2021;5053:32-38.)。すなわち、ChAdOx1の1回接種の発症予防効果はAd26.COV2.Sよりも優れており、パンデミックという緊急事態を考慮した場合、ChAdOx1を2回接種ではなく単回接種ワクチンとして発展させることを考慮すべきではないだろうか? 2021年2月7日、南アフリカはChAdOx1の導入計画を中止した。これはChAdOx1の南アフリカ変異株に対する予防効果が低いためであった(Fontanet A, et al. Lancet. 2021;397:952-954.)。3月に入りChAdOx1の使用を一時中断する国が増加している。2021年3月11日以降、デンマーク、アイスランド、ノルウェー、アイルランド、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダなど、欧州各国が相次いでChAdOx1の接種を一時中断すると発表した(The New York Times. March 18, 2021)。この原因は、ChAdOx1接種後に脳静脈血栓を含む全身の静脈血栓症が相次いで報告されたためである。2021年3月10日までにChAdOx1を接種した500万人にあって脳静脈血栓症による死亡者1人を含む30人に血栓症の発生が確認された。すなわち、ChAdOx1接種後の血栓症全体の発症頻度は6人/100万人、脳静脈血栓症の発症頻度は0.2人/100万人と推定された。重篤な脳静脈血栓症の一般人口における発症頻度は0.63人/100万人(ドイツ国立ワクチン研究機関ポール・エーリッヒ研究所)とされており、ChAdOx1接種後に観察された現時点での脳静脈血栓症の発症頻度は、一般人口における発症頻度を超過するものではなかった。このようなことから、2021年3月18日現在、EU-EMAはChAdOx1と血栓症との因果関係を否定し、欧州各国にChAdOx1の接種再開を呼びかけた。その提言を受け、ドイツ、フランス、イタリア、スペインはChAdOx1の接種を再開したが、ノルウェー、スウェーデンなど北欧諸国は一時中断を継続すると発表した。WHO、EU-EMAが示唆しているように、ChAdOx1接種後の静脈血栓の発症率は一般人口における血栓発症率を超過するものではない。しかしながら、米国CDCの副反応報告では、Pfizer社BNT162b2、Moderna社mRNA-1273の接種後(1,379万4,904回)に全身の静脈血栓発生を認めず(Gee J, et al. MMWR. 2021;70:283-288.)、ChAdOx1接種後のみに、頻度が低いものの血栓症が発生している事実は看過できない問題だと論評者は考えている。

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不確実さは不安を招き安心感は猫を招く、コロナワクチンからの考察【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第34回

第34回 不確実さは不安を招き安心感は猫を招く、コロナワクチンからの考察インドの昔話です。ある男が超能力を獲得しました。その能力とは、人を念じながら観察すると、その人が1年後に生きているか、死んでいるかがわかるのです。その男のもとには、病に悩む患者や、痩せ細った赤子を抱いた母親、年老いた母親を背負った息子などが、次々と訪れるようになりました。1年後に生きていると言われれば小躍りして帰っていきます。1年後に死んでいると言われれば納得して帰ります。その男は名医と呼ばれ、患者が絶えることがなかったと言います。かつての記憶を頼って紹介した昔話なので、インドではなくヒマラヤかもしれず、ストーリーも正確ではないかもしれません。小学生のころに学校図書館にあった本で読んだのでしょうか。妙に、心に残っている話です。皆さまは、この昔話をいかが思いますか。違和感を覚える人も、なるほど名医だと納得する人もいることでしょう。この男は本当に名医でしょうか。この男は、一切の医療行為をしていません。ただただ、1年後の生死を正確に伝えているだけです。しかし、予言をさずかった者は、その男を名医と崇めます。なぜでしょうか。不安がなくなるからではないでしょうか。不確実さは不安をまねきます。1年後の確実な情報が安堵を与えます。患者の立場からは、安心を与えてくれる人は名医なのです。医学が進歩した現在においても、人はやがて死ぬことが運命づけられています。哲学者ハイデッガーは彼の主著「存在と時間」の中で、人間は「死への存在」であるといっています。古来より、不老不死の秘薬を求めた権力者は多くいますが、現在まで生命を保っているものは、誰一人としていません。東京渋谷の横断歩道を渡る人々の100年、いや150年後を考えてみましょう。その時までには、全員が死んでいる可能性が高いです。これを自分が予言しても名医の称号は与えられません。なぜなら、それほど将来には皆が死んでいることへの不確実性は低いからです。不確実さが介入する余地のある、明日の命、1年後の命には不安が伴います。医学研究における統計学は不確実さを確率論で数値化しますが、不確実さを払拭するわけでありません。新型コロナウイルスは、その感染症としての怖さはもちろんですが、情報不足や経験のない状況への不安が問題を複雑にします。さらに、不安をあおることは人を惹きつけます。新型コロナ感染症にまつわる不安を掻き立てる報道は視聴率を稼ぎます。正しいコロナウイルスへの対応策や知識を伝えることは、危機感や恐怖を叫ぶマスコミに負けてしまいます。科学的な情報を理性的に解釈するには素養とエネルギーを必要とします。不安に身をゆだね、その矛先を他人への批判に転嫁することは容易です。この状況を打破するには安心を付与することが一番です。ワクチン接種により不安が少しでも解消することを期待します。ワクチンそのものが有効であるべきことは当然ですが、ワクチン接種が進むことで不安が払拭され社会が落ち着きを回復することを願うばかりです。安心感を与えることは人を惹きつけるのですから、猫も惹きつけることは間違いありません。猫に安心感を与えるコツがあります。猫は警戒心がとても強く、過度にかまわれるのがストレスとなります。適度な距離を保つことが懐かれる秘訣です。視線を外し、なるべく低い姿勢で静かに近づき、少し高めの声で話しかけると良いです。「お前なんかには興味はないのさ」という態度で接することが、猫を手なずけるポイントです。猫と遊んでいると幸せな安心感が湧いてきます。もしかすると日本中の人が猫を飼うと、コロナ騒動が収束に向かうかもしれません。猫バカも、ほどほどにして、これでおしまいにします。

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診察日記で綴る あたしの外来診療

医師という職能の果てにある「明察」と「decadence」治らない患者、納得しない患者。もしかしたら、病気がないかもしれない患者…。そんな患者たちが訪れる場末の診療所には「あたし」という1人の女性医師がいた。再診、再診、再診の繰り返し。その日記に綴られた吐露には….。鬼才・國松 淳和医師が目論む「日記ノベル」。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    診察日記で綴る あたしの外来診療定価2,640円(税込)判型四六版頁数242頁発行2021年3月著者國松 淳和

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「エフィエント」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第44回

第44回 「エフィエント」の名称の由来は?販売名エフィエント®錠 2.5mg エフィエント®錠 3.75mg エフィエント®錠 5mg エフィエント®錠 20mg エフィエント® OD錠 20mg一般名(和名[命名法])プラスグレル塩酸塩(JAN)効能又は効果経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患○急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)○安定狭心症、陳旧性心筋梗塞用法及び用量通常、成人には、投与開始日にプラスグレルとして20mgを1日1回経口投与し、その後、維持用量として1日1回3.75mgを経口投与する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.出血している患者(血友病、頭蓋内出血、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[出血を助長するおそれがある。] 2.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年3月24日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年3月改定(第13版)医薬品インタビューフォーム「エフィエント®錠2.5mg・エフィエント®錠3.75mg・エフィエント®錠5mg・エフィエント®錠20mg /エフィエント® OD錠20mg」2)第一三共MedicaL Library:製品一覧

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第50回 全国組織で動いたのは老健施設のみ。全老健、コロナ回復患者受け入れ表明の意味

緊急事態宣言解除、新味のない「5つの柱」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。首都圏1都3県の緊急事態宣言が3月21日をもって解除されました。飲食店については営業が21時まで伸びたことで、外食が多い私も少々ほっとしています。ただ、心配もあります。解除決定が正式報道される前日の17日夕刻、所用があって東京・上野に出かけたのですが、ガード下の飲み屋街は17時でほぼ満席でした。東京の飲み屋街の中でも、上野は昭和の雰囲気を残した居酒屋が特に集中するエリアです。店先にテーブルを置いた、いわゆるオープンカフェ的な居酒屋も多く、それはそれで安全そうですが、「平日17時でこの混みようか!」と正直驚きました。ちなみに、20時でほとんどのお店は閉店していましたが、「20時以降営業中」の一画もあって、入店を待つ長い行列(ほとんど若者)ができていました。これからお花見も始まります。「外で飲みたい!」という人々のパワーを鎮めるのは、実際問題として難しそうです。さて、緊急事態宣言解除に当たって、3月18日に菅 義偉総理大臣が記者会見を行いました。今後の対策として、安全で迅速なワクチン接種などの「5つの柱」が示されたのですが、残念ながらどれも新味がないものでした。本連載でも度々書いてきた「医療提供体制」については、「今回は、急速な感染拡大に十分に対応できず、各地でコロナ病床や医療スタッフが不足する事態となった。各都道府県において、今回のような感染の急拡大に対応できるように準備を進めている。コロナ病床、回復者を受け入れる病床、軽症用のホテル、自宅療養が役割を分担して、感染者を効果的に療養できる体制をつくる」と述べ、 5月中までに病床・宿泊療養施設確保計画を見直す方針を示したのみでした。同じ日、田村 憲久厚生労働大臣も「4月中にも再び感染拡大の可能性があるので都道府県と調整してほしいと指示している」と述べたに留まりました。1、2月にバタバタして、もう4月です。それなのにまだ、「進めている」「体制をつくる」「指示している」「5月中まで」とはいったいどういうことでしょう。第4波に対応できる医療提供体制になっているか?もっとも、厚生労働省は医療提供体制確保のための下準備は着々と進めてきてはいます。今年1月には、重症患者向けの病床を新たに確保した病院に対し1床あたり1,950万円、中等症以下の病床は900万円を補助する施策を講じました。続く2月には、コロナ患者の受け入れについて、高度な医療を提供できる大学病院や地域の基幹病院が重症患者を、都道府県から指定を受けた「重点医療機関」は中等症患者を受け入れるなど、病院の役割分担を進めるよう都道府県等に要請(第46回 第4波を見据えてか!? 厚労省が「大学病院に重症患者を受け入れさせよ」と都道府県に事務連絡)しました。同じ2月には、新型コロナウイルス感染症の退院基準の見直しも行い、発症からの感染可能期間などのエビデンスも提示しています(第47回 「発症10日したらもう他人に感染させない」エビデンス明示で、回復患者受け入れは進むか?)。つまり、重症患者の病床を確保し、軽快・回復した患者の退院先の整備には取り組んでいるのです。それでも「もう大丈夫」と言えないのは、重症病床の退院以降、患者が流れていく道筋をしっかり確保できていないからでしょう。日本医師会が中心となり、病院団体が集まって組織された「新型コロナウイルス感染症患者病床確保対策会議」については、「コロナ病床を拡充し退院基準の周知に努め、コロナから回復した方の受入病床の拡充も行った。新型コロナウイルス感染症と通常医療の両方を守る活動を着実に進めている」(3月18日の中川 俊男会長の定例会見での発言)とのことですが、実際に第4波が来たときに十分対応できる体制になっているかどうかは不明です。医療提供体制について一貫して手厳しい日本経済新聞は3月19日の朝刊で「コロナ病床増 進まず」という記事を掲載、「首都圏のコロナ対応病床は一般の病床全体のうち4.6%どまりだ。全国の病床数も宣言直前に比べれば7%増えたものの、第1波のさなかだった昨年5月に見込んだ数にも届いていない」として、「医療提供体制の抜本的立て直しが求められる」と書いています。全老健、会員施設の45.2%が受け入れ表明そんな中、全国レベルで実効性がありそうな動きがありました。全国老人保健施設協会(全老健)は3月12日に記者会見を開き、全国の老人保健施設の半数近くにあたる1,600余りの施設がコロナから回復した高齢の入院患者を受け入れる意向があると表明したのです。会見で同協会の平川 博之副会長(東京都老人保健施設協会 会長)は、病床逼迫が続いていた都内において、老健施設では新型コロナウイルス感染患者がスムーズに受け入れられない状況が起こっており、病院側から、「患者を受け入れても回復後の行き先がない」との訴えがあったと説明、「全老健としてこうした状況を打開すべく、会員施設に対して退院基準を満たした要介護高齢者の積極的な受け入れを要請した」と話しました。会見時の11日時点で会員施設の45.2%に当たる1,625施設が協力を表明しており、そのうち129施設ではすでにこうした患者を受け入れ、270人の高齢者が入所している、とのことです。「中間施設」の機能を発揮できる機会コロナ患者の“上流”から“下流”の流れの中で、“下流”の受け入れ先として全老健が手を挙げた意味はとても大きいと思います。もちろん、退院基準を満たした患者を介護保険施設で受け入れた場合に「退所前連携加算」(1日500単位、最大30日間)の算定が認められる、など経済的な理由もあるでしょう。しかし一方で、今こそまさに老健施設の本来の役割である「在宅復帰の機能」を発揮できる機会であると、全老健が純粋に判断したとも考えられます。約30年前の創設前後、老健施設は「中間施設」とも呼ばれていたように、病院と自宅の中間にあって高齢者の在宅復帰を目的とする施設です。医師が常駐し、リハビリ機能も充実しています。コロナでは、長期入院によって身体機能や認知機能が低下する患者は多く、回復患者にリハビリ機能は必須だと言えます。最近では介護医療院の制度化もあって、老健施設は高齢者施設としてのアイデンティティを模索していたとも言われます。ただ、看取り機能が重視される介護医療院では病床の回転は鈍く、コロナ受け入れは難しいと考えられます。そうした意味でも、老健施設はコロナ回復患者の受け入れ先としては最適の施設と言えるでしょう。高齢者施設はクラスター発生の危険性も高いと言われていますが、感染対策をしっかり行った上で、老健施設がコロナ回復患者の主要受け入れ先として機能していけば、軽症・中等度の患者を受け入れる一般病院も増えてくるのではないでしょうか。

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妊婦における境界性パーソナリティ障害の有病率や特徴

 周産期リエゾン精神科サービスに紹介された妊婦における境界性パーソナリティ障害(BPD)の有病率や特徴について、オーストラリア・Child and Adolescent Mental Health ServicesのKatharina Nagel氏らは、調査を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年2月26日号の報告。 周産期リエゾン精神科サービスに紹介された女性318人を対象に、人口統計学的および臨床的データ、DSM-V基準による診断データを18ヵ月間記録した。データ分析には、記述統計およびロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・最も多かった診断は、うつ病(25.5%)であり、次いで不安症(15.1%)であった。・BPDと診断された女性は10.1%で、そのうち5人に1人は2つ以上のBPD特性を有していた(19.5%)。・BPD女性は、他の診断を受けた患者と比較し、以下の割合が高かった。 ●予定外妊娠 ●パートナーの不在 ●妊娠中の物質使用障害 ●現在または過去の子供に対する児童保護サービスの関与・BPD女性の40%超は、現在の妊娠中に児童保護サービスとの関与が認められた。・BPD診断により、子供の児童保護サービスへの関与リスクは約6倍に増加した(オッズ比:5.5、95%CI:1.50~20.17)。 著者らは「BPD女性は、サポートが必要なハイリスク群であり、BPDに関連するサービスへの投資は、優先度が高いと考えられる」としている。

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キノコ摂取量とがんリスク~メタ解析

 キノコは生理活性化合物が豊富で、健康上のメリットについての研究が増えている。そこで、米国・ペンシルベニア州立大学医学部のDjibril M. Ba氏らは、系統的レビューおよびメタ解析により、キノコ摂取量と各種がん発生リスクとの関連を評価した。その結果、がん全体、とくに乳がんにおいて、キノコ摂取量が多いほどがんリスクが低いことが示された。Advances in Nutrition誌オンライン2021年3月16日号に掲載。 著者らは、MEDLINE、Web of Science、Cochrane Libraryを検索し、1966年1月1日~2020年10月31日に発表されたキノコ摂取とがんに関する研究を特定した。2カテゴリー以上のキノコ摂取量に対するがんリスクについて、リスク比(RR)/ハザード比(HR)/オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)が示されている17件の観察研究を適格とし、ランダム効果メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・キノコ摂取量が多いほどがん全体のリスクが低かった(摂取量最大グループの最少グループに対するプールRR:0.66、95%CI:0.55~0.78、17研究)。・キノコ消費量が多いほど乳がん(同RR:0.65、95%CI:0.52~0.81、10研究)および乳がん以外(同RR:0.80、95%CI:0.66~0.97、13研究)のリスクも低かった。・がんの部位別にみると、キノコ摂取量との有意な関連がみられたのは乳がんのみだったが、これは他のがんにおける研究が少ないことが原因である可能性がある。・キノコ摂取量とがん全体のリスクの間に有意な非線形の用量反応関係がみられた(非線形性のp=0.001、7研究)。 著者らは本研究の限界の1つとして、ケースコントロールデザインでの想起バイアスと選択バイアスの可能性を挙げている。このメタ解析における17研究のうち11研究がケースコントロール研究で、各研究の最終モデルで使用された調整因子の違いが大きかったとしている。

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新型コロナワクチン、安全な筋注部位を新たに追加/日本プライマリ・ケア連合学会

 プライマリ・ケア連合学会と予防医療・健康増進委員会ワクチンチームが制作・監修を行った『新型コロナワクチンより安全な新しい筋注の方法 2021年3月版』が3月15日に公開された。本解説は、2月22日にYoutubeに公開され多くの反響を得た『新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ』(動画)に安全な接種部位を加筆修正したもの。 より安全と考えられる新たな接種部位として、「肩峰から下ろした垂線と前腋窩線の頂点・後腋窩線の頂点を結ぶ線の2つの線が交わる点」が推奨されている。ただし、従来からの接種部位(肩峰から3横指下)も選択肢として残されている。 筋肉注射の場合、手技が原因で末梢神経損傷およびSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration)が生じる可能性もある。今回の新型コロナワクチン接種は日本人にあまり馴染みのなかった筋肉注射であったことから、このような事例に注意が必要である。この問題について、仲西 康顕氏(奈良県立医科大学整形外科・臨床研修センター)が指摘、指導のもと「安全な接種部位」に関する情報がアップデートされた。仲西氏が作成した筋肉注射手技マニュアルを参考に実際の注射時の様子がレクチャーされている。

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慢性リンパ性白血病のBTK阻害薬アカラブルチニブ、国内承認/AZ

 アストラゼネカは、慢性リンパ性白血病(CLL)に対する選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)の国内承認を受け、3月11日にプレス向けのセミナーを行った。この承認は、再発または難治性CLL患者を対象に、標準化学療法とアカラブルチニブを比較した国際共同第III相試験(ASCEND)において、アカラブルチニブの有効性と安全性が認められたことを受けたものとなる。 CLLは白血病の中で、リンパ系幹細胞が比較的時間をかけてがん化するものを指す。CLLや地域による発症頻度の差が大きく、米国では10万人あたり3.5人だがアジア諸国では少なくなり、日本においては10万人あたり0.2人(いずれも2008年調査)と比較的稀な疾患だ。CLLはB細胞性悪性腫瘍で、アカラブルチニブはB細胞に多く発現するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を標的とし、腫瘍細胞の生存と増殖を阻害する。 セミナーの中で、公益財団法人がん研究会有明病院 血液腫瘍科の丸山 大氏がCLLの病態と現在の治療法について講演を行った。CLLの治療は、患者の年齢や予後不良因子である染色体欠失や遺伝子変異の有無によって、FCR(フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ)療法・BR(ベンダムスチン+リツキシマブ)療法等の化学療法と、BCL2阻害薬やBTK阻害薬を使い分ける。近年の治療法の進化や新規薬剤の導入によって、初回・2次治療以降共に標準治療が明確には定まっていない状況だ。 丸山氏は「CLLは長期にわたる治療となることが多く、有効性と共に高い安全性が求められる。臨床現場では、新規薬剤となるアカラブルチニブをはじめ、各薬剤の特性や有害事象を見極めながら、使い分けや切り替えを行う必要があるだろう」と述べた。

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ROS1陽性肺がんに対するエヌトレクチニブ、統合解析の結果/JCO

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)におけるROS1‐TKIエヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)の3つの第I、II相臨床試験(ALKA-372-001、STARTRK-1、STARTRK-2)の統合分析の結果がJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。 有効性評価集団は、局所進行または転移のあるROS1陽性NSCLCの成人患者で、CNS転移の有無にかかわらず600mg/日以上のエヌトレクチニブを投与された。複合主要評価項目は盲検化独立中央委員会評価の客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DoR)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、頭蓋内ORR、頭蓋内DoR、頭蓋内PFS、安全性などであった。 主な結果は以下のとおり。・6ヵ月以上の追跡を行った161例が評価対象となった。・治療期間中央値は10.7ヵ月であった。・ORRは67.1%であった。・DoR中央値は15.7ヵ月、12ヵ月DoR率63%であった。・PFS中央値は15.7ヵ月、12ヵ月PFS率は55%であった。・OS中央値は未達、12ヵ月OS率は81%であった。・CNS転移を有する患者(24例)の盲検化独立中央委員会による頭蓋内ORRは79.2%であった。・頭蓋内PFS中央値は12.0ヵ月、頭蓋内DoR中央値は12.9ヵ月、12ヵ月DoR割合は55%であった。・初回解析と同様、新たな安全性シグナルは見つからなかった。

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起立性頻脈症候群(POTS)に対するイバブラジンの効果【Dr.河田pick up】

 若い女性に多く見られる起立性頻脈症候群(Postural orthostatic tachycardia syndrome:POTS)は、複雑で多面的な要素を含み、患者の生活に影響を与えると共にQOLを低下させる。しかしながら、薬物療法の種類は限られている。本研究は、Jonathan C Hsu氏らカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、イバブラジン(洞房結節内のHCNチャネルを選択的に阻害)が、高アドレナリン作動性POTS患者(血漿ノルエピネフリンレベル>600pg/mL、Tilt table試験陽性と定義)の心拍数およびQOL、血漿ノルエピネフリンレベルに与える効果を検証したものである。Journal of the American College of Cardiology誌2021年2月23日号掲載。高アドレナリン作動性POST患者22例、イバブラジン群で心拍数低下・QOL改善 本研究では、高アドレナリン作動性POTS患者22例について、イバブラジンによる無作為二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を実施。参加者は、イバブラジンかプラセボに無作為に割り付けられ、1ヵ月間投与を受けた後、逆の治療を次の1ヵ月間受けた。心拍数、QOLそして血漿ノルエピネフリンレベルについて、試験開始時とそれぞれの投薬期間終了時に調べられた。参加者の平均年齢は33.9±11.7歳、95.5%(n=21)は女性で、86.4%(n=23)は白人であった。 プラセボ群と比べ、イバブラジン群では有意に心拍数が低下した(p<0.001)。また、RAND36項目健康調査1.0で評価したQOLは、イバブラジン群において肉体的活動(p=0.008)および社会的活動(p=0.021)共に有意な改善が認められた。また、起立時の血漿ノルエピネフリンは強い低下傾向を示した(p=0.0056)。徐脈や低血圧など、有意な副作用は認められなかった。高アドレナリン作動性POTS患者において、イバブラジンは安全であり、心拍数の低下とQOLの改善に有効であった。メリットが多いイバブラジン、一方で高額な負担がネックに 米国において、われわれの不整脈外来にもPOTSの若い女性患者が頻繁に紹介されてくる。多くの患者は、プライマリケア医や循環器医が病態の説明、生活指導に加え、β遮断薬、ミドドリン、フルドロコルチゾン、を試したものの、低血圧や倦怠感などで継続できず、治療法がなくお手上げであるという状態で紹介される。その場合、イバブラジンを試すことになる。それで改善が認められる患者もある程度いるが、別の問題にぶち当たる。というのも、米国ではイバブラジンは非常に高価なのである。保険会社にもよるが、患者負担が月に数百ドル以上となることが多く、学生などを含めた若い患者には大変な負担である。その結果、コストを理由に治療を断念したことも何度かある。日本では米国ほど薬価が問題にならないだろうから、POTSに対する適応が認められれば、一部の患者では有効な治療法となると考えられる。(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)

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英国・EU規制当局がAZ製ワクチンのレビューを発表、ベネフィットがリスクを上回る

 接種後に血栓などの報告があり、一部の国で接種が中止されていたアストラゼネカ製COVID-19ワクチン(AZD1222、日本では承認申請中)について、2021年3月18日、英国医薬品・医療製品規制庁(The Medicines and Healthcare products Regulatory Agency:MHRA)および欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)は、ベネフィットがリスクを上回ることを再確認した。同日、英国アストラゼネカ社が発表した。 MHRA・EMAの報告によると、ワクチン接種後の静脈血栓の発症率は、ワクチン接種を受けていない場合に想定される発症率を上回るという根拠はなく、接種のベネフィットがリスクを上回るとした。一方で、稀な血栓症である血小板の減少を伴う脳静脈洞血栓症(CVST)に関する5件の症例と関連する可能性は残され、ワクチンとの因果関係は確立されていないものの、さらなる分析に値する、としている。 世界保健機構(WHO)も、WHOワクチン安全性諮問委員会(GACVS)による安全性レビューを行い、ワクチンの投与後の深部静脈血栓症や肺塞栓症などの凝固状態の増加はなく、接種後に報告された血栓塞栓性イベントの発生率は自然発生の予想数と一致している、とした。また、CVSTなど血小板減少症と組み合わせた稀な血栓塞栓性イベントも報告されているものの、それらとワクチン接種の関係は不明だとした。 アストラゼネカのワクチンは英国では約1,100万回接種し、5例のCVSTが報告され、欧州全体では計2,000万回以上接種し、18例のCVSTが報告されていた。

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過体重・肥満におけるGLP-1受容体作動薬注射製剤の体重減少効果(解説:小川大輔氏)-1365

 肥満症の治療において食事療法と運動療法は重要であるが、実際には適切なカロリー摂取と適度な運動を実践し継続することは難しい。現在、肥満症の薬物療法として日本で認められている薬剤としてはマジンドールがあるが、BMI 35以上の高度肥満症に対象が限られており、投与期間も3ヵ月までと制限があるため実際にはほとんど使用されていない。また胃バイパス術という選択肢もあるが、外科療法ということもありハードルが高い。 過体重または肥満の成人に対し、食事療法と強化行動療法を行ったうえでGLP-1受容体作動薬セマグルチド2.4mgの週1回皮下投与により、プラセボと比較し有意な体重減少効果が示された(セマグルチド群-16.0%、プラセボ群-5.7%、p<0.001)1)。また有害事象としては消化器症状が最も多く認められた(セマグルチド群82.8%、プラセボ群63.2%)。本試験のポイントは、対象が肥満(BMIが30以上)、あるいは過体重(BMIが27以上)かつ体重関連の併存疾患(脂質異常症、高血圧症、SASなど)が1つ以上ある方となっており、糖尿病がないという点である。セマグルチドの臨床試験(STEP試験)は5つの試験で構成されており2)、本試験はその1つ(STEP 3)である。ちなみにSTEP 2で過体重・肥満の2型糖尿病成人患者を対象とした試験が行われている3)。 今回の試験により、ようやく過体重・肥満の有望な治療薬が出現したと思いたいところであるが、以下に述べる2つの理由によりこの結果をリアルワールドに当てはめることができない。 1つ目は、セマグルチド投与に加えて、栄養士による低カロリーの食事療法や厳格な行動療法のカウンセリングを68週間の投与期間中30回も併用することにより、16%の体重減少効果を認めたという点である。本試験のように、およそ毎月2回栄養士によるカウンセリングを継続して実施することは通常の診療では難しい。実臨床ではよくある食事・運動療法が不十分の状況で、セマグルチド投与によりどの程度の体重減少を認めるかは不明である。 2つ目は、日本ではセマグルチド2.4mgの注射製剤はまだないからである。2020年から2型糖尿病の治療薬としてセマグルチド1.0mgは使用できるようになってはいるが、保険適用はあくまでも2型糖尿病であり、本試験の対象のような非糖尿病の肥満者は適応外となる。もし日本人を対象としたセマグルチドの試験で安全性や有効性が認められれば、非糖尿病の過体重・肥満の治療の選択肢となる可能性があるだろう。

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骨髄増殖性腫瘍の治療戦略に新展開【Oncologyインタビュー】第31回

ドライバー遺伝子の解明などと共に、長年停滞していた骨髄増殖性腫瘍の治療が変わりつつある。当該領域の第一人者である順天堂大学医学部 血液学講座の小松 則夫氏に、最新情報を解説していただいた。予後が長い故にQOLの低下が問題―骨髄増殖性腫瘍とは、どのような疾患なのでしょうか?骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、造血幹細胞の異常で、白血球や赤血球、血小板など、1系統以上の骨髄系成熟細胞の過剰生産を来す疾患群です。代表的なものとして、慢性骨髄性白血病(CML)、真性赤血球増加症(真性多血症)(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)があります。BCR-ABL遺伝子の解明からチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が登場し、CMLの予後は劇的に改善しました。ここでは、CMLを除いたフィラデルフィア染色体陰性MPNの3疾患についてお話ししたいと思います。―MPNの予後について教えていただけますか。MPNの予後ですが、生存期間の中央値はETが約20年、PVが約14年と比較的予後良好ですが、PMFは4年と予後不良です。PV、ETでは長期の経過の中で、一部は急性白血病や骨髄線維症に移行することで予後が悪化しますが、これらの疾患の予後を規定する主な因子は、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞といった血栓症で、時に致命的となります。一方、血小板が一定数(150万/μL)を超えると逆に出血しやすい状態となります。予後が長い反面、一旦血栓症や出血が起こると、患者さんは長期間その症状に向き合っていくことになり、QOLは著しく低下します。MPN特異的ドライバー遺伝子の発見が治療に結び付く―MPNに共通の遺伝子変異が発見されたとのことですが。画像を拡大するMPNに共通のJAK2 V617Fの他に、CALRやMPLの遺伝子変異が発見されています。JAK2 V617Fは、2005年にET、PV、PMFに共通の遺伝子変異として報告されました。PVの97%、ETおよびPMFの5~6割に発現しています。JAK2はサイトカインシグナル伝達の中心的役割を担うチロシンキナーゼです。JAK2 V617F変異によりJAK2は活性化され、恒常的にシグナルが伝達され腫瘍化が促されます。MPLは、造血因子サイトカインで、トロンボポエチンの受容体です。MPL変異によりMPLは常に活性化し、トロンボポエチンとの結合なしにJAK2シグナルが細胞内へと伝達され、血液細胞の腫瘍化が促進されます。画像を拡大するCALR遺伝子変異はETおよびPMFの2~3割に発現します。CALR(calreticulin)は、タンパク質を折りたたむ分子シャペロンの一種です。われわれの研究で、変異CALR遺伝子により作られる変異型CALRタンパク質はホモ多量体を形成し、あたかもトロンボポエチンのようにMPL(トロンボポエチン受容体)と強く結合し、JAK2シグナルを介して血液細胞の腫瘍化を促進することが明らかになりました。1)2)これら3つの変異は相互排他的に発現しますが、いずれもJAK2シグナルの活性化につながっています。―遺伝子変異の解明と共に治療も変化しているのでしょうか。ごく最近、インターフェロン(以下、IFN)についての研究結果が発表されました。IFNαは1970年代からMPNの治療に用いられていましたが、副作用が強く頻回投与が必要であること、大規模試験でのMPNへの有効性が証明されていないことから使用は限定されていました。しかし、改良したロペグIFNα2bが開発されたことでIFNは大きく見直され始めました。画像を拡大するロペグIFNα2bは単一異性体の長時間作用型ペグ化インターフェロンで、安全性が高い設計となっています。昨年(2020年)、ロペグIFNα2bを標準療法であるヒドロキシカルバミド(以下、HU)と直接比較した、第III相のPROUD-PV試験とその延長試験であるCONTINUATION-PV試験が発表されました3)。この試験は36ヵ月(PROUD-PV:12ヵ月まで、CONTINUATION-PV:36ヵ月まで)追跡されています。主要評価項目の血液学的完全奏効は治療経過と共にIFNα2bがHUを上回り、18ヵ月以降優越性を保っていました。安全性もHUに対して優れていました。さらに重要なことは、JAK2変異量も有意に減少させたことです(36ヵ月JAK2 V617F変異量:ロペグIFNα2b -22.9対HU -3.5、p<0.0001)。従来の薬剤ではここまでJAK2変異量を減らすというデータはありません。ロペグIFNα2bの大きな特徴と言えます。―JAK2変異量が減少するメカニズムは? また、それがどういうことにつながるのでしょうか。理由は明らかになっていませんが、ロペグIFNα2bは、正常細胞はそのままで、JAK2変異細胞を選択的に攻撃している可能性があります。つまり、疾患そのものを治す、治癒まで持っていくことができるかもしれないということです。したがって、これまでの治療は血栓症や出血の予防に主眼を置いてきましたが、今後は治癒を目指すことになると思います。すなわち治療アルゴリズムが大きく変わる可能性があり、将来的にはIFNが治療の中心となることを期待させます。―CALRを標的とした治療法も開発されているとお聞きしますが。CALR遺伝子変異により作られた変異型CALRタンパク質は、細胞内で未熟なMPLと結合した後、細胞表面に移行し活性化することが、われわれの研究で示されました4)。そこで、未成熟なMPLとの結合の阻害、細胞表面におけるMPLの活性化の阻害、あるいは細胞表面の変異型CALRタンパク質を標的として攻撃することで、MPNは治療可能だと考えられます。変異型CALRが細胞外に移行する際、ある酵素で切られますが、われわれは切断部位を特異的に認識して結合する抗体作成に成功しました。この抗体は非常に特異性が高くCALR変異陽性の細胞だけを標的にするため、今後抗体薬として開発されることが期待されます。正確かつ容易なバイオマーカーの開発―診断についても新たな進化がみられているそうですね。われわれの研究で、CREB3L1という遺伝子がMPNのバイオマーカーの役割を果たすことが示されました。CREB3L1は転写因子として機能し、タイプIコラーゲンを標的とするため、骨形成に関与しますが、乳がんの浸潤にも関係していると報告されています。ところで、血小板増加症として受診する患者の9割は反応性、つまり他の原因による血小板増加症です。しかし、この反応性とETなどの腫瘍性の血小板増加症を臨床的に鑑別することは難しいことが多く、治療法が全く異なるため、正確かつ容易な鑑別方法の確立が求められます。われわれはそこで、採取が簡単な血小板に着目し、血小板が腫瘍性に増加するETでバイオマーカーの検索を行いました。具体的にはETと反応性血小板増加症の患者末梢血から血小板を収集し、RNAの発現パターンを解析しました。その結果、ET症例は反応性血球増加症に比べ、CREB3L1が有意に高く発現することを発見しました(p=0.001770)5)。さらに追加解析で、フィラデルフィア染色体陰性MPN、反応性血球増加症のCREB3L1レベルを調査しました。その結果、CREB3L1はETだけでなく、PVやPMFを含めたMPN全般に高レベルに発現していました(p<0.0001)。興味深いことに、CMLでは反応性や健常人と同く陰性でした。このバイオマーカーは感度、特異度ともに100%です。フィラデルフィア染色体陰性MPN全般の画期的な診断バイオマーカーとして、きわめて優れていることがわかりました。―MPN特異的な遺伝子変異のないケースでは本当に腫瘍性なのか鑑別することが難しいと思いますが、このバイオマーカーの効果は?MPN特異的な遺伝子発現がないトリプルネガティブ症例(JAK2 V617F、CALR、MPL変異すべて陰性)においては、腫瘍性か反応性かの鑑別は悩ましいものです。前述の研究では、病理学的に確認されたトリプルネガティブET(20例)においてもCREB3L1を測定しました。その結果、この集団にもCREB3L1陽性例(12例)と陰性例(8例)が存在すること、そして血小板数と白血球数は陽性例で有意に多いことが判明しました。また、大変興味深いことに、陰性例8例のうち2例は、経過と共に血小板数が減少し、骨髄検査で最終的に正常化が確認されました。ここから言えることは、トリプルネガティブETと診断されても、CREB3L1陰性の場合は自然治癒する可能性があるということ、そして、その場合は不用意に抗がん剤を投与せず、経過観察という選択肢もありえるということです。診断と治療の進化で治療アルゴリズムが大きく変わる!?―こういった新たな診断や治療薬の開発で、MPNの治療はどう変わっていくでしょうか。現在のMPNの治療では、高リスク(60歳以上、または血栓症/出血の既往)になり、初めて抗がん剤が開始されます。患者さんからは「せっかく診断がついたのに60歳まで治療を待つのか、血栓症が起きるまでどうして治療できないのか」といった声を聞きます。IFNは、根本的な治療の実現が期待できますが、長期経過と共に他の遺伝子変異が加わって疾患が修飾されると、効果が低下するとの報告もあります。IFNを有効に使用するためにも、診断後すぐにIFN治療を開始することで、かなりの効果が期待できると、個人的には考えています。CREB3L1という新規バイオマーカーによる正確な診断とINFα2bのような新規薬剤の登場で、MPNの治療が大きく変化する可能性がある。ロペグINFα2bの国内臨床試験も行われているという。近い将来、長期間疾患と付き合わなければならないMPNの患者に朗報が届くことを期待したい。1)Araki M, et al. Activation of the thrombopoietin receptor by mutant calreticulin in CALR-mutant myeloproliferative neoplasms. Blood.2016;127:1307-1316.2)Araki M, et al. Homomultimerization of mutant calreticulin is a prerequisite for MPL binding and activation. Leukemia.2019;33:122-131.3)Gisslinger H, et al. Ropeginterferon alfa-2b versus standard therapy for polycythaemia vera (PROUD-PV and CONTINUATION-PV): a randomised, non-inferiority, phase 3 trial and its extension study. Lancet Haematol.2020;7:e196-e208. 4)Masubuchi N, et al. Mutant calreticulin interacts with MPL in the secretion pathway for activation on the cell surface. Leukemia.2020;34:499-509.5)Morishita S, et al.CREB3L1 overexpression as a potential diagnostic marker of Philadelphia chromosome-negative myeloproliferative neoplasms. Cancer Sci.2021;112:884-892

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インサイド・ヘッド【なんで悲しみは「ある」の?どうすれば?(感情心理学)】Part 1

今回のキーワード喜び(幸福)怖れ(恐怖)怒り(威嚇)ムカつき(嫌悪)悲しみ(うつ)驚き(注意喚起)カタルシス受容皆さんは、悲しくなったとき、悲しみが早くなくなればいいと思ったことはありませんか? いつでも笑っていたいのに、そもそもなぜ悲しみが「ある」のか考えたことはありませんか? さらに、悲しみだけでなく、喜び、怖れ、怒り、ムカつき、驚きなどの感情は、なぜ「ある」のか考えたことはありませんか?これらの答えを探るために、今回は、子どもだけでなく大人も楽しめるディズニーアニメ「インサイド・ヘッド」を取り上げます。この作品を通して、悲しみをはじめとする感情を、感情心理学として掘り下げます。そして、より良い悲しみのあり方を一緒に考えてみましょう。6つの基本感情とは?舞台は、ホッケー好きな11歳の女の子、ライリーの頭の中。そこには、ヨロコビ、ビビリ、イカリ、ムカムカ、そしてカナシミの5つの感情の小人たちが感情操縦デスクの前でせめぎ合っています。ある日、ライリーは、父親の仕事の都合で、住み慣れたミネソタの田舎からサンフランシスコの大都会に引っ越します。そして、見知らぬ街で友達もいない中、ライリーの頭の中の小人たちに事件が起こります。それでは、まず感情の小人たちの特徴を通して、私たちの6つの感情(エクマンによる基本感情)をまとめてみましょう。(1)ヨロコビ-幸福ヨロコビのイメージカラーは黄色。彼女は、小人たちのリーダーとして、いつも明るく前向きです。彼女だけ体表からおぼろげな明るい微粒子が出ており、毎日「今日もまた完璧な1日だったわ」と言います。引っ越しトラックが到着していないことでライリーのパパとママが言い合いをしているのを見て、ヨロコビは奥の棚から「考えの電球」を感情操縦デスクにはめ込みます。すると、ライリーがいきなりホッケーごっこを始め、パパとママも楽しそうに参加するのです。ライリーは、パパとママに気を遣ったのでした。ヨロコビの役割は、ライリーを楽しい気持ちにさせることです。感情心理学的に言えば、これは、食欲や愛情欲求などの欲を追い求める感情である喜び(幸福)です。生きていくための感情そのもと言えます。一方、ヨロコビには欠点もあります。たとえば、引っ越して初めて学校に行く日の朝、パパから「楽しんできてね、おサルさん」と言われて、ライリーはヨロコビによって「ウホッウホッ!」とサルまねの冗談を返します。しかし、教室で自己紹介をしている最中に、感情が爆発してしまうのです。そのわけは、実は緊張しているのに、空元気で無理におふざけをしたからでした。このように、ヨロコビの欠点は、ほかの感情を抑え込んで、刹那的になってしまうことです。実際に、ヨロコビの体表の微粒子は、自分のエネルギーを自制できずに暴走してしまうことがビジュアル的に描かれています。つまり、ヨロコビは、お気楽でムードメーカーの要素がありますが、その反面、押しつけがましく、浅はかなお調子者の要素もあります。ヨロコビの表情は、目尻が下がり、口角が上がっています。この表情(笑顔)の起源は、太古の昔に霊長類が仲間同士で緊張緩和(宥和)を伝えるために、口角を引き上げて高い鳴き声を出していたコミュニケーションまで遡ります。なお、笑いの起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。 (2)ビビリ-恐怖ビビリのイメージカラーは紫。彼は、いつもビクビクしており、何かにつけて「危ない!気を付けて!そこに行っちゃだめ!」と言いながら、細身の体をクネクネして縮こまらせます。幼いライリーが家の中を走り回るとき、彼は、電気のコードを目の前に見つけると、「ゆっくり!ゆっくり!」とおびえながらライリーに注意を促しています。ビビリの役割は、ライリーを警戒させることです。感情心理学的に言えば、これは、危険を予期して回避する感情である怖れ(恐怖)です。ビビリは、ヨロコビの暴走を止めるストッパーとして、絶対に必要な感情です。この点で、実は彼はサブリーダーです。一方、ビビリの欠点は、不安になりすぎると、何もできなくなってしまうことです。ビビリの表情は、眉がつり上がり、目を見開き、口がへの字になっています。この表情(おびえ顔)の起源は、太古の昔に霊長類が仲間同士で群れの序列が下であること(ひれ伏し)を伝えるために行っていたコミュニケーションまで遡ります。眉をつり上げ目を見開くわけは、恐怖の相手をよく見るためです。口をへの字にするのは、萎縮しているためです。なお、恐怖(不安)の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。 (3)イカリ-威嚇イカリのイメージカラーは赤。彼は、ノシノシと歩き回り、思い通りにならなかったり、理不尽な思いをした時に、頭から火を噴きます。赤ちゃんのライリーのお腹が空いていたりオムツを替えてほしいとき、イカリは感情操縦デスクのレバーを押します。すると、ライリーは大泣きします。イカリの役割は、ライリーをいら立たせることです。感情心理学的に言えば、これは、自己主張をする感情である怒り(威嚇)です。権利が侵害されないために、やはり必要な感情です。一方、イカリの欠点は、怒り狂って、セルフコントロールができなくなることです。たとえば、ライリーが新しいアイスホッケーチームの入団テストで失敗したときも、イカリは感情操縦デスクのレバーを押してしまいます。すると、ライリーは「最悪、やってらんない!」と怒鳴り、ホッケースティックを投げ出していました。イカリの表情は、目をやや細めて、歯を食いしばっています。この表情(怒り顔)の起源は、太古の昔に霊長類が仲間同士で縄張り(権利)を主張したり、群れの序列が上であること(権力)を主張するために行っていたコミュニケーションまで遡ります。目を細めるわけは、相手の動きを見据えつつ、自分の視線の先から次の行動を相手に読まれないようにするためです。歯を食いしばるのは、相手の攻撃により口の中を切らないようにするためです。なお、怒りの起源の詳細については、関連記事3をご覧ください。 次のページへ >>

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