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降圧薬で正常血圧者も心血管イベントリスク低下?/Lancet

 降圧薬により収縮期血圧を5mmHg低下させることで、心血管疾患の既往歴の有無を問わず、また血圧が正常値や正常高値であっても、主要心血管イベントのリスクが約10%低下することが、英国・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(BPLTTC)の検討で示された。著者は、「これらの知見により、薬剤による一定程度の降圧治療は、その時点で治療の対象とされない血圧値であっても、主要心血管疾患の1次および2次予防において、治療対象の血圧値の場合と同様に有効であることが示唆される。これは、降圧治療が、主に血圧が平均値よりも高い場合に限定されている実臨床に変革を求めるものであり、降圧薬は、血圧値や心血管疾患の既往歴を問わず、心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるほうがよいことを示唆する」とし、「患者に降圧治療の適応を伝える際は、血圧の低下そのものに焦点を当てるのではなく、心血管リスクの低減の重要性を強調すべきである」と指摘している。Lancet誌2021年5月1日号掲載の報告。48件の無作為化試験のメタ解析 研究グループは、無作為化試験の個々の参加者のデータを用いて、ベースラインの収縮期血圧別に、降圧治療が主要心血管イベントのリスクに及ぼす影響を評価する目的で、メタ解析を行った(英国心臓財団などの助成による)。 対象は、薬剤による降圧治療を、プラセボまたは他の薬剤クラスの降圧薬と比較、またはより強力な治療レジメンと強力でない治療レジメンを比較した無作為化試験で、追跡期間が1,000人年以上の試験であった。心不全患者に限定された試験や、急性心筋梗塞などの急性期の患者を対象とした短期的な介入の試験は除外された。 1972~2013年の期間に公表された51件の試験のデータが収集された。データは統合され、ベースラインの心血管疾患(無作為化前での、脳卒中、心筋梗塞、虚血性心疾患の報告)の有無、収縮期血圧の全体および7段階の分類別(<120~≧170mmHg)に、降圧治療の効果について層別解析が行われた。 51件の試験のうち48件(34万4,716例)の無作為化臨床試験が解析に含まれた。無作為化前の平均収縮期/拡張期血圧は、心血管疾患の既往のある参加者(15万7,728例、平均年齢65.7[SD 8.9]歳、女性32.9%)が146/84mmHg、既往のない参加者(18万6,988例、65.3[9.6]歳、48.7%)は157/89mmHgであった。降圧治療の相対的効果は、収縮期血圧の低下の程度と比例していた。降圧薬は心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるべき 追跡期間中央値4.15年(四分位範囲:2.97~4.96)の時点で、4万2,324例(12.3%)において1つ以上の主要心血管イベント(主要評価項目)(致死的または非致死的脳卒中、致死的または非致死的心筋梗塞・虚血性心疾患、致死的または入院を要する心不全の複合)が発生した。 intention to treat解析では、ベースラインの心血管疾患既往なし例における主要心血管イベントの発生率は、1,000人年当たり、比較対照群が31.9(95%信頼区間[CI]:31.3~32.5)、介入群は25.9(25.4~26.4)であった。また、心血管疾患既往あり例では、1,000人年当たり、それぞれ39.7(39.0~40.5)および36.0(35.3~36.7)だった。 収縮期血圧の5mmHgの低下による主要心血管イベントのハザード比(HR)は、心血管疾患既往なし例が0.91(95%CI:0.89~0.94)、心血管疾患既往あり例は0.89(0.86~0.92)であり、全体で主要心血管イベントのリスクが10%低減した(HR:0.90、0.88~0.92)。 ベースラインの7段階収縮期血圧分類別の主要心血管イベント解析では、心血管疾患既往歴の有無にかかわらず、降圧治療による収縮期血圧の5mmHgの低下によって、正常値、正常高値を含むいずれの段階の血圧でも、主要心血管イベントの発生が改善される傾向が認められた。 層別解析では、ベースラインの心血管疾患既往歴の有無や収縮期血圧分類の違いで、主要心血管イベントに対する治療効果の異質性に関して、信頼性の高いエビデンスは認められなかった。

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低・中リスクのHER2+早期乳がん、術後トラスツズマブは9週投与も検討可か/ESMO BREAST 2021

 低および中リスクのHER2陽性早期乳がん患者において、術後トラスツズマブの投与期間を9週間に短縮した場合の、良好な長期結果が示された。1年間の投与が標準であることには変わりないものの、トラスツズマブへのアクセスが制限される状況やLVEF低下などで投与継続が難しい場合には、より短期間の投与が選択肢となる可能性がある。イタリア・パドヴァ大学のPierfranco Conte氏が、short-HER試験の長期解析結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。 short-HER試験は、HER2 陽性早期乳がん患者をトラスツマブと化学療法による術後補助療法1年投与群と9週間投与群に無作為に割り付けて比較した非劣性試験。非劣性マージンは無病生存期間(DFS)のハザード比(HR)<1.29と設定された。主要解析では、DFSのHRは1.13(90%信頼区間[CI]:0.89~1.42)であったため、非劣性は示されなかった1)。しかし、Grade2以上の心血管有害事象は9週間投与群で有意に少なかった(HR:0.32、95%CI:0.21~0.50、p<0.0001)。 今回、主要評価項目の1つである全生存期間(OS)ならびに、3つのリスクカテゴリーごとのDFSのアップデートデータが発表された。[3つのリスクカテゴリー]低リスク:pT<2cm および pN0中間リスク: pT<2cmおよびpN1-3またはpT>2cmおよびpN0-3高リスク: pN4+ 主な結果は以下のとおり。・1年投与群に627例、9週投与群に626例が割り付けられた。・追跡期間中央値8.7年で、DFSイベントの発生は237件。1年投与群116件 vs. 9週投与群121件であった(HR:1.09、90%CI:0.88~1.35)。・OSイベントの発生は109件。1年投与群51件 vs. 9週投与群58件であった(HR:1.18、90%CI:0.86~1.62)。・リスクカテゴリーごとの5年DFS率は、低リスクカテゴリー(37.5%)で1年投与群91% vs. 9週投与群91%(HR:0.91、90%CI:0.60~1.38)、中間リスクカテゴリー(47.1%)で88% vs. 89%(HR 0.88、90%CI:0.63~1.21)、高リスクカテゴリー(15.4%)で82% vs. 64%(HR 2.06、90%CI:1.36~3.13)であった。・リスクカテゴリーごとの5年OS率は、低リスクカテゴリーで1年投与群97% vs. 9週投与群99%(HR:0.57、90%CI:0.27~1.13)、中間リスクカテゴリーで96% vs.95%(HR: 1.14、90%CI:0.68~1.89)、高リスクカテゴリーで95% vs. 91%(HR:1.09、90%CI:0.75~1.359)であった。

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

 筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。 本論文ではデンマークとノルウェーにてChAdOx1-Sワクチン接種を受けた28万1,264例を対象とした。北欧諸国は医療データベースの確立された国である。2021年2月9日~3月11日に接種を受けた18~65歳の症例の動脈・静脈血栓イベントの発現率を、デンマークの2016~18年、ノルウェーの2018~19年のワクチン接種を受けていない18~65歳と比較した。ワクチン接種後28日以内のイベントに着目した。心筋梗塞などの動脈血栓イベントについてはChAdOx1-S接種後でも増加を認めなかった。静脈血栓イベントはコントロールの人口10万人当たり30人に比較して、ChAdOx1-S接種後は59人と多かった。標準化罹患率比は1.97(95%CI:1.50~2.54)であった。ワクチン接種の全体に比較すれば静脈血栓イベントを発症した絶対数は多くはない。しかし、18~65歳の健常人では少数の副作用でも許せないというヒトもいるだろう。新型コロナウイルス感染の血栓症の特徴を示しているのか、一般にはほとんど発症しない脳静脈洞血栓が7例に発症している。 本研究では血栓イベントのみでなく凝固異常、出血イベントにも注目している。血小板減少が起こる症例は17例とコントロールの6人よりも多い。原因が解明されない場合が多い。気道出血もワクチン後は35例、コントロールは16例とワクチン後に多かった。新型コロナウイルス感染による血栓形成、凝固異常の原因には不明の部分がある。本研究はChAdOx1-Sワクチン接種後、静脈血栓、脳静脈洞血栓が少数ながら北欧の2つの国の歴史的対照群よりは多いことを示唆した。ワクチン接種により地域の感染拡大速度低減、医療崩壊リスクを低減できると期待できる。圧倒的少数例ではあるが、静脈血栓、静脈洞血栓などが増えることを示唆した本論文を読んで、各国の規制当局、個人はどう考えるだろうか? 個人にとっての正解は常に不明である。科学は客観的数値を与えてくれるが、常に限界が伴う。結果を公表し、公表された結果からみんなが考え、今の時点での最適解を個人なり、国なりに考えざるを得ない。 読者の皆さん、この結果を読んで自分はChAdOx1-Sを受けたいと思うかどうか? 自分が厚生労働省の専門官として政府として、このワクチンを日本国にて承認して使用するかどうか? 自分がワクチンを選択できる自治体の長であったら、自らの自治体にて本ワクチンを接種するか否か? 各々どのような論理にて周囲を説得するか? この機会に自分なりの考えをまとめてみるとよい。

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片頭痛発作を抑制する初の抗体製剤「エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ」【下平博士のDIノート】第74回

片頭痛発作を抑制する初の抗体製剤「エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ」今回は、ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤「ガルカネズマブ(遺伝子組み換え)注射液(商品名:エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、従来の片頭痛治療で効果が不十分、または副作用などにより使用できない患者の片頭痛発作を抑制し、QOLが改善することが期待されています。<効能・効果>本剤は、片頭痛発作の発症抑制の適応で、2021年1月22日に承認され、4月26日に発売されました。投与対象となる患者は、厚生労働省の最適使用推進ガイドラインに記載されている下記の患者選択基準(1)~(4)すべてを満たす必要があります。(1)国際頭痛分類(ICHD第3版)を参考に十分な診療を実施し、前兆のあるまたは前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、または慢性片頭痛であることが確認されている。(2)投与開始前3ヵ月以上にわたり、1ヵ月当たりのMHD(頭痛日数:migraine headache days)が平均4日以上である。(3)睡眠・食生活の指導、適正体重の維持、ストレスマネジメントなどの非薬物療法および片頭痛発作の急性期治療などをすでに実施していて、それらの治療を適切に行っても日常生活に支障を来している。(4)わが国で既承認の片頭痛発作の発症抑制薬のいずれかが、下記1~3のうちの1つ以上の理由によって使用または継続できない。1.効果が十分に得られない。2.忍容性が低い。3.禁忌または副作用などの観点から安全性への強い懸念がある。<用法・用量>通常、成人にはガルカネズマブ(遺伝子組み換え)として初回に240mgを皮下投与し、以降は1ヵ月間隔で120mgを皮下投与します。本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、本剤投与開始後3ヵ月を目安に治療上の有益性を評価して、症状の改善が認められない場合は本剤の投与中止を考慮します。その後も定期的に投与継続の要否について検討し、頭痛発作発現の消失・軽減などにより日常生活に支障を来さなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮する必要があります。なお、日本人を対象とした臨床試験において、18ヵ月を超える本剤の使用経験はありません。<安全性>反復性および慢性片頭痛患者を対象とした日本人および外国人の臨床試験を併合したところ、評価対象2,582例中780例(30.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、注射部位疼痛260例(10.1%)をはじめとする注射部位反応(紅斑、そう痒感、内出血、腫脹、硬結など)、悪心30例(1.2%)、疲労27例(1.1%)でした。重大な副作用として、重篤な過敏症反応であるアナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹など(いずれも頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、片頭痛を引き起こす神経ペプチドを抑え、片頭痛発作が起きないようにする薬です。初回は2本、2回目以降は1ヵ月に1回1本を皮下投与します。2.頭痛発作時は医師の指示に従って、頭痛発作治療薬や痛み止めを使用してください。3.注射部位に現れる痛み、発赤、かゆみ、内出血、腫れなどは、通常数日以内に消失します。症状が長引いたり、悪化したりする場合は早めにご相談ください。4.注射後、発熱、蕁麻疹、口唇周囲の腫れ、息苦しさなどが起きたら、すぐに医療機関にご連絡ください。<Shimo's eyes>片頭痛発作を抑制する初の抗体製剤が登場しました。本剤は、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に特異的に結合するヒト化抗CGRPモノクローナル抗体です。CGRPは三叉神経節や硬膜上の三叉神経末梢に存在する神経ペプチドで、過剰に発現すると血管拡張や神経原性炎症を引き起こして、片頭痛発作を発症させると考えられています。本剤は1回使い切りの注射製剤であり、オートインジェクターは、デュラグルチド(商品名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス)と同様のデバイスです。2020年7月現在、片頭痛の予防の適応で40ヵ国以上において承認されており、反復性群発頭痛の適応についても米国、アラブ首長国連邦などで承認されています。片頭痛の薬物療法として、急性期の治療には、トリプタン製剤、アセトアミノフェン、NSAIDsなどが推奨されています。急性期治療のみでは片頭痛発作を抑制できず、頻回の発作により生活に支障が出る場合には、予防治療が選択されます。片頭痛の予防薬として適応を有するものには、プロプラノロール(同:インデラル)、ロメリジン塩酸塩(同:ミグシス)、バルプロ酸ナトリウム(同:デパケン)などがあります。これらの予防薬は連日の服用が必要ですが、本剤は月1回の皮下注射で効果が期待できるため、患者の利便性・QOLの向上が期待できます。なお、本剤は、片頭痛の治療に関する十分な知識および経験を有する医師のもとで使用することとされ、投与対象となる患者・施設ともに『最適使用推進ガイドライン』に定められる厳格な要件を満たす場合に限られています。本剤は2022年5月より在宅自己注射が可能となりました。病院で本剤による治療を受けていると聴取した場合は薬歴に記載し、効果や副作用を確認したうえで、ほかの片頭痛治療薬が正しく使えているかも確認しましょう。※2022年5月、添付文書改訂により一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/エムガルティ皮下注120mgシリンジ

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無症状の原発巣は切除?大腸がんの世界的CQに結論:JCOG1007(iPACS)試験【消化器がんインタビュー】第11回

転移巣切除不能の大腸がん、無症状の原発巣は切除すべきか。この長年にわたる国内外の臨床疑問に初めて結論を出したJCOG1007(iPACS)試験の結果が発表された。研究代表者である国立がん研究センター中央病院 大腸外科 金光 幸秀氏に聞いた。―試験実施の背景について教えていただけますか。画像を拡大する私が外科医になったころ、Stage IVの大腸がんで転移巣切除不能も含め治癒的切除ができない場合は、原発巣切除(primary tumor resection、以下 PTR)を行うのが自明のことでした。その理由は、原発巣を取ることで腸閉塞などのがんの合併症(これは化学療法中にも起こりえますが)を予防できること、そして何よりも抗がん剤の効果が低かったということでした。抗がん剤の効果が低いという先入観は、何十年もの間、医師の中にありました。しかし、2000年代になり、抗がん剤の効果が非常に高くなり、すべての症例で原発巣を切除すべきか、その意義を改めて検証すべきだという機運が外科医の中で大きくなってきました。そのような背景の中、2年ほどの検討期間を経て、2010年に試験実施が承認され、今回その結果が発表されました。―試験対象は、大腸がんの中でも限定された患者さんということですね。はい。誤解される方がおられますが、大腸がん全体というわけではありません。転移巣は切除不能だが原発巣は切除可能かつ原発巣由来の症状がない方です。たとえば、肝転移で数多くの転移があって手術で取りきれないような方で、大腸がんの症状がない患者さんです。大腸がんの中でもかなり限られた集団といえます。1割おられないかもしれません。―試験デザインについて教えていただけますか。この試験は、最初に原発巣切除を行い次に化学療法を行う治療法が、化学療法単独に対して優越性を示すかを検証する第III相の非盲検無作為化試験です。JCOG1007(iPACS)試験概要対象:切除不能のStage IVで原発巣に起因する症状はないが3つ以下の切除不能の転移(肝臓、肺、遠隔リンパ節、腹膜)がある大腸がん患者(適格対象20~74歳)試験治療群:PTR(primary tumor resection)+化学療法群(化学療法は手術後8~56日の間に実施)対照群:化学療法単独化学療法は、mFOLFOX6+ベバシズマブまたはCapeOX+ベバシズマブ(治験担当医が試験登録前に決定)評価項目:[主要評価項目]ITT集団の全生存(OS)、[副次評価項目]PFS、安全性、R0手術実施割合、姑息手術実施割合主な結果2012年6月~2019年9月に、国内38の施設から165例の患者が登録され、化学療法単独群(84例)、PTR+化学療法群(81例)に無作為に割り付けられた。最も頻度の高い切除不能の転移は肝臓(73%)であった。追跡期間中央値22.0ヵ月におけるOS中央値は、PTR+化学療法群25.9ヵ月、化学療法単独群26.7ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.76~1.59、片側p=0.69)。PTR+化学療法群では術後死亡が3例報告された。同試験は、事前に設定した試験中止基準(「PTR+化学療法群が化学療法単独群の生存期間を 下回る[HR>1.0]」など)により、データ安全モニタリング委員会から早期終了を推奨された。―化学療法単剤が対照群なのですね。米国NCCNのガイドラインでも抗がん剤単独が推奨されていますし、日本でも抗がん剤治療を先に行ったほうが良いのではないかという機運が高まったこともあり、抗がん剤を標準治療と考え、化学療法単独群をコントロールとしました。試験群は切除を行ってから化学療法を実施する(PTR+化学療法)群です。―試験結果はどのようなものでしたか?画像を拡大する全生存期間は両群ともほぼ同等(約2年)の結果でした。試験治療群は事前に設定した優越性基準(化学療法単独群24ヵ月に対し、PTR+化学療法群32ヵ月)に至らなかったため、化学療法単独群が標準療法という結果となりました。―治療によって転移巣の手術が可能になる、つまり、コンバージョン手術の確率についてはいかがでしたか。原発巣を切除してから抗がん剤を投与すると、転移巣の縮小や転移数が減りコンバージョン手術の確率が上がる、という仮説がかねてからありました。しかし、今回の試験でコンバージョン手術が可能となった割合は、化学療法単独群で5%、PTR+化学療法群では3%で、両群間に差は認められませんでした。画像を拡大するまた、薬物療法によるコンバージョン手術の確率の増加についても海外での良好な研究報告がありましたが、前向き研究で検証すると、実際はこの程度の数値であるということが明らかになりました。―この結果はどのように臨床に活用できるでしょうか。NCCNのガイドラインなどでも、この患者集団には抗がん剤単独が推奨されていますが、実際には世界的にも7割で原発巣が切除されています。実臨床では、切除するかしないか、迷いながら治療方針が決定されているのが現状です。この試験結果から、「症状がなければ原発巣は取らずに抗がん剤治療で開始していく」ことの優越性が示されました。これは、数十年にわたる臨床疑問に、明確な指針を示した大きな結果だと考えています。また、世界的に議論の残るテーマであったこともあり、海外からもお礼のメッセージをいただくこともあります。―視聴者へのメッセージ臨床試験は結果を出すまでに時間がかかります。試験に関わる研究者や患者さんの労力も大変なものです。しかし、試験で出た1つの結果から新たなスタンダードが生まれます。臨床試験は臨床疑問に解答を出すために、これからも作られ実施されていくでしょう。該当する患者さんがいれば、ご紹介いただければと思います。参考1)Kanemitsu Y, et al. Primary Tumor Resection Plus Chemotherapy Versus Chemotherapy Alone for Colorectal Cancer Patients With Asymptomatic, Synchronous Unresectable Metastases (JCOG1007;iPACS): A Randomized Clinical Trial. J Clin Oncol. 2021;39:1098-1107.2)JCOG1007; iPACS試験(UMIN)3)国立がん研究センター プレスリリース「ステージ4大腸がんの新たな標準治療を検証」

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その胸やけ症状、本当に胸焼け?【Dr.山中の攻める!問診3step】第2回

第2回 その胸やけ症状、本当に胸焼け?―Key Point―悪性腫瘍を疑う症状や所見(red flag sign)がないか確認機能性ディスペプシアの診断基準を満たすか検討ピロリ検査が陽性なら除菌。陰性ならプロトンポンプ阻害薬を処方する同僚医師から30代前半の女性の診察を頼まれました。食後の胃もたれと軽い嘔気が1年以上続いているようです。胃カメラでは異常がなく、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症もありません。プロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方しましたが、あまり効果がありません。「機能性ディスペプシア」と思われました。原因がわからないまま症状が続くことが、とても辛かったようです。2週間に一度、外来に来ていただき訴えに共感しながら傾聴するよう心がけました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。◆今回おさえておくべき症状はコチラ!【悪性腫瘍を疑うred flag sign】予期せぬ体重減少、嚥下障害、吐気/嘔吐、黒色便、貧血、血小板増多、胃がんの家族歴、治療に反応しないディスペプシア。日本では胃がんの発生が多いので、症状がなくても1~2年に1度の胃カメラが薦められている。【STEP1】患者の症状に関する勘違いを修正しよう!患者が症状を勘違いしていること、よくありますよね。【STEP2】ディスペプシアを起こす原因を探る1)逆流性食道炎消化性潰瘍ヘリコバクター・ピロリ菌感染症胃がん胃不全麻痺セリアック病クローン病膵炎膵がん胆石心筋梗塞糖尿病副腎不全など原因がわからないものを機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)と呼ぶ薬剤内服歴を確認することが重要。とくにNSAIDs、アスピリン、鉄剤、抗菌薬、レボドパ、ピル、ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こす胃カメラで見つかる疾患の頻度1)>70%は異常なし → 機能性ディスペプシア<10%は消化性潰瘍<1%が上部消化管悪性腫瘍【機能性ディスペプシア の診断基準 RomeIV】下記のいずれかの症状が6ヵ月以上前からあり、最近3ヵ月持続しているつらいと感じる食後のもたれ感つらいと感じる摂食早期の飽満感つらいと感じる心窩部痛つらいと感じる心窩部灼熱感かつ、症状を説明しうる器質的疾患はない。食後愁訴症候群(PDS:postprandial distress syndrome)と心窩部痛症候群 (EPS:epigastric pain syndrome)に分類される機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群はよく合併する2)【STEP3】治療とその注意点をおさえる2)red flag signがなければ、胃カメラは行わずピロリ菌検査を行う。陽性だったら除菌する。陰性だったらPPI(プロトンポンプ阻害薬)を4~8週間投与する。無効なら少量の三環系抗うつ薬を考慮する日本人の60歳以上では、50%以上はヘリコバクター・ピロリに感染しているピロリ菌感染症は消化性潰瘍、胃がん、胃リンパ腫と関係がある。PPIの機能性ディスペプシアに対するNNT(number needed to treat、治療必要数)は133)であるPPIの副作用4)で最も多いのは下痢と頭痛。 PPIの種類を変えると下痢は良くなることがある。このほか、市中肺炎、急性の腸管感染症、Clostridium difficile感染症、急性間質性腎炎、顕微鏡的大腸炎、骨粗鬆症、ビタミンB12欠乏症を増加させるので注意。ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こすばかりか、食道潰瘍や胃潰瘍も起こすので要注意。もし、ビスフォスフォネート製剤を飲んでいるならば中止する禁煙やアルコールの減量を薦める消化管運動機能改善薬であるアコチアミドも臨床試験で有効性が示されている漢方では六君子湯や半夏厚朴湯が効果ありと言われている<参考文献・資料>1)Talley NL, et al. N Engl J Med.2015;373:1853-1863.2)Goldman L, et al. Goldman-Cecil Medicine. 2020;856-8573)Pinto-Sanchez MI, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 21;11:CD011194.4)上田剛士著. 日常診療に潜む クスリのリスク.医学書院.p93-99. 2017.日本消化器学会編.機能性消化管疾患診療ガイドライン.2014―機能性ディスペプシア(FD)

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第60回 昔なじみの抗うつ薬が抗がん免疫を助ける/持参のCOVID-19抗原検査で楽々帰国

昔なじみの抗うつ薬と抗PD-1薬の併用でいっそうの抗腫瘍効果抗うつ薬として昔なじみのモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)が免疫細胞によるがん駆除を助ける働きを担い、PD-1阻害薬と併用すればそれら単独投与以上の腫瘍抑制効果を発揮することがマウス実験で示されました1,2)。ペムブロリズマブやニボルマブ等のPD-1阻害薬は腫瘍細胞が免疫攻撃から逃れるために利用するT細胞表面分子を阻止します。PD-1阻害薬はうまくいけば何年も腫瘍を食い止めますが誰にでも効くというわけではなく、その効果を補う薬の標的探しが続けられています。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のがん免疫学者Lili Yang氏のチームもその一つで、抗腫瘍免疫との関わりがこれまで知られていなかったモノアミン酸化酵素(MAO)の一つ・MAO-A遺伝子が腫瘍のT細胞で意外にも発現していることを突き止め、どうやらPD-1阻害薬の併用薬の標的として有望なことを見出しました。MAO-Aはドパミンやセロトニンなどの気分向上神経伝達物質を分解します。MAO-A活性が低い男性と攻撃的な振る舞いの関連が示されていることからMAO-A遺伝子は戦士の遺伝子として知られます3)。Yang氏等の新たな研究によるとMAO-AはT細胞の戦士化にもどうやら寄与しているらしく、マウスのMAO-A遺伝子を封じたところT細胞の抗腫瘍免疫が強力となり、腫瘍増殖が抑制されました。MAO-A阻害薬フェネルジン(phenelzine)も同様の効果があり、マウスの腫瘍を増殖し難くしました。また、MAO阻害薬とPD-1阻害薬の併用はいっそうの抗腫瘍効果をもたらしました。T細胞はセロトニンを作って抗腫瘍免疫を底上げし、MAO-Aはそのセロトニンを分解することで腫瘍のT細胞回避を助けてしまうようです。その回避路を断つMOA阻害薬とPD-1阻害薬の併用が試験で検討されることをYang氏は望んでいます。安上がりでどこでも手に入るMAO阻害薬はあわよくばがん患者の抑うつもついでに取り去ってくれるかもしれません。そのような併用試験をするなら前立腺がんは候補の一つになりそうです。というのもMAO-A は前立腺がんで過剰発現し、がん細胞や腫瘍開始細胞(がん幹細胞)の増殖を促して前立腺がんの発生を促すことが示唆されているからです4)。ただしMAO-A は必ずがんに味方するというわけではなさそうで、肝細胞がん、胆管がん、褐色細胞腫、神経芽腫、腎細胞がん、肺腺がんなどでは逆にがんと敵対する腫瘍抑制因子として働くと示唆されています5)。MAO阻害薬の試験ではMAO-Aに備わるせっかくの腫瘍抑制効果を意図せず妨げることがないように注意する必要があるでしょう。ユナイテッド航空がアボット社のCOVID-19抗原検査で楽々帰国できるようにするユナイテッド航空がAbbott(アボット)社と手を組み、海外旅行者の米国帰還の際に必要な新型コロナウイルス感染(COVID-19)陰性証明をよりすんなり取得できる仕組みを提供します6)。ユナイテッド航空の乗客はアボット社の抗原検査BinaxNOW Home Testを携えて出国し、海外滞在中にわざわざ検査センターに赴かずともそれを使って検査することで米国に帰還可能かどうかを判断できるようになります。遠隔医療が使える環境で旅行者がBinaxNOW Home Testのような抗原検査を自ら実施し、海外から米国への飛行機に搭乗するのに必要な陰性証明にその検査結果を使うことを同国は最近許可しています。BinaxNOW Home Testは手帳ほどの大きさで軽量であり、バッグに場所を取らず収めることができます。どっちつかずの検査結果となってしまった場合に備えて1つきりではなく幾つか持っていった方が良いようです。参考1)Wang X, et al. Sci Immunol. 2021 May 14; 6:eabh2383.[Epub ahead of print]2)An old antidepressant helps the immune system fight tumors in mice / Science3)Mentis AA, et al.Transl Psychiatry. 2021 Feb 18;11:130.4)Liao CP, et al. Oncogene.2018 Sep;37:5175-5190.5)Huang Y, et al. Front Oncol. 2021 Mar 8;11:645821.6)United and Abbott Partner to Make Return to U.S. Worry Free for International Travelers with Home-Testing Kits / PRNewswire

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片頭痛予防に対する抗CGRPモノクローナル抗体の付加価値

 35年間のトランスレーショナルリサーチにより、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の伝達を阻害することによる片頭痛治療への新しい道が開かれた。短時間作用型のgepant系CGRP受容体スモールアンタゴニストの後に開発された、CGRPまたはCGRP受容体をブロックするモノクローナル抗体(CGRP/rec mAbs)は、片頭痛治療のパラダイムシフトを起こした。トリプタンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のような一過性の効果を有する古典的な急性期治療薬とは異なり、CGRP/rec mAbsは、三叉神経血管系の末梢部分でのみ長期間作用するため、持続性のある治療を行うことができる。これは、主に片頭痛の病態生理における上流で作用する古典的な予防薬とは異なる。CGRP/rec mAbsであるeptinezumab、erenumab、fremanezumab、ガルカネズマブのランダム化比較試験(RCT)では、数千人の患者を対象としており、最も広く研究されている片頭痛予防薬となっている。これらの結果によると、CGRP/rec mAbsは、プラセボよりも有意に優れていることが認められており、Dodick氏により包括的なレビューが行われている。ベルギー・リエージュ大学のJ. Schoenen氏らは、これらのRCTよりプラセボ減算アウトカムおよび治療必要数(NNT)について要約し、エフェクトサイズ、効果発現、持続性、患者サブグループにおける治療反応、安全性、忍容性、費用対効果に焦点を当て、その後公表された新たな事後研究について分析を行った。また、CGRP/rec mAbsの1つを用いた限定的な実臨床経験について要約した。Revue Neurologique誌2020年12月号の報告。 主な結果は以下のとおり。・方法論的違いや直接比較試験が欠如しているため、比較における信頼性は低いものの、4剤のCGRP/rec mAbsは、全体として有効性および忍容性プロファイルの違いは少ないと考えられる。・片頭痛の軽減に対するプラセボ減算50%治療反応率の平均値は、反復性片頭痛(NNT:4~5)で21.4%、慢性片頭痛(NNT:4~8)で17.4%であった。・改善率が50%超の患者はまれであり、持続的な頭痛を伴う慢性片頭痛患者では治療反応患者が少なく、片頭痛の予兆の改善は認められなかった。・効果発現は、投与後1週間以内に認められ、1ヵ月でほぼ最大となった。・その効果は、長期間持続し、治療終了後数ヵ月間継続する場合もあった。・CGRP/rec mAbsは、過去に予防的治療で奏効しなかった患者や薬物乱用患者に対しても有効であったが、そのエフェクトサイズは小さい可能性が示唆された。・CGRP/rec mAbsは、片頭痛による問題や医療資源の利用を有意に減少させる。・CGRP/rec mAbsの副作用プロファイルは、いくつかのまれな例外を除き、プラセボの副作用プロファイルと同様であり、虚血におけるCGRPの保護的作用に関連するにもかかわらず、現在までに治療に関連する血管系の有害事象は報告されていない。・利用可能な片頭痛の予防的治療の観点からみると、CGRP/rec mAbsの主な利点は、優れた有効性よりも、有害事象の少なさであると考えられる。・費用対効果に関しては、erenumabの予備的な薬理経済分析において、未治療またはonabotulinumtoxinAによる治療と比較し、慢性頭痛に対する費用効果の高さが認められている。しかし、発作の頻度が少ない反復性片頭痛では、費用効果が低い可能性がある。

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COVID-19予防効果のある薬剤は?RCT11件のメタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染およびCOVID-19に対する薬剤の予防効果について、カナダ・マックマスター大学のJessica J Bartoszko氏ら研究グループが、WHOのCOVID-19関連データベースを基に、新たなエビデンスを継続的に組み込むリビングシステマティックレビュー(LSR)とネットワークメタ解析により検討したところ、ヒドロキシクロロキンについては、入院および死亡率にほとんど影響がない上、有害事象のリスクを増大する可能性が示された。イベルメクチン単独およびイベルメクチン・イオタカラギナン併用は、バイアスリスクが大きい上、不正確性も極めて高く、確かな根拠が得られなかった。本研究は、BMJ誌2021年4月26日号に掲載された。 本研究には、2021年3月25日までのWHOのCOVID-19データベースと、2021年2月20日までの中国のデータベース6件が用いられた。このうち解析対象としたのは、9件のランダム化試験。6件がヒドロキシクロロキン(6,059例)、2試験がイベルメクチン単独(540例)、1試験がイベルメクチン・イオタカラギナン併用(234例)を検討したもので、いずれもCOVID-19予防効果について標準治療またはプラセボと比較する試験デザインだった。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロキシクロロキンは、COVID-19による入院(リスク差:1,000例当たり-1例、95%信用区間[CI]:-3~4、高度の確実性)や死亡(1,000例当たり-1例、95%CI:-2~3、高度の確実性)にほとんど効果がないか、あってもごくわずかだった。・ヒドロキシクロロキンは、検査で確定したSARS-CoV-2感染リスクの低下に対する効果がなく(1,000例当たり+2例、95%CI:-18~28、中等度の確実性)、有害事象による投与中止が増える可能性があり(1,000例当たり+19例、95%CI:-1~70、中等度の確実性)、SARS-CoV-2感染(疑い、可能性、検査確定)に対しても効果がないか、あってもごくわずかだった(1,000例当たり-15例、95%CI:-64~41、低度の確実性)。・イベルメクチン・イオタカラギナン併用による検査確定COVID-19への影響(1,000例当たり-52例、95%CI:-58~-37)、イベルメクチン単独による検査確定感染(1,000例当たり-50例、95%CI:-59~-16)、疑い、可能性、検査確定(1,000例当たり-159例、95%CI:-165~-144)への影響は、バイアスリスクが大きく不正確性も極めて高いため、根拠の確実性が非常に低かった。

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FDA、HER2陽性胃がんペンブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法の1次治療迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2021年5月5日、局所進行または転移を有する切除不能HER2陽性胃・胃食道接合部(GEJ)腺がん患者の1次治療に、トラスツズマブ、化学療法(フルオロピリミジン+プラチナ)およびペンブロリズマブの併用を迅速承認した。 この承認は、上記患者の多施設無作為二重盲検プラセボ対照KEYNOTE-811試験の中間解析に基づいたもの。  この試験での主要有効性評価項目である、盲検化独立したレビュー委員会評価の全奏効率は、ペンブロリズマブ群74%、プラセボ群52%と、統計的に有意な差を示した(片側p<0.0001)。奏効期間中央値は、ペムブロリズマブ群10.6ヵ月、プラセボ群9.5か月であった。

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高齢の早期乳がん患者への化学療法の効果は?

 高リスクの早期乳がんでは化学療法によりアウトカムが改善されるが、高齢者にはほとんど投与されない。今回、英国・The Royal Marsden Hospital NHS Foundation TrustのAlistair Ring氏らは、高齢の高リスク早期乳がん患者の化学療法による効果を検討したところ、転移を有する再発のリスクは化学療法で低下したが、生存期間延長が示されたのはエストロゲン受容体(ER)陰性乳がんのみであった。また、QOLへの影響は大きかったが一時的だった。British Journal of Cancer誌オンライン版2021年5月10日号に掲載。 本研究は、70歳以上の手術可能な原発性浸潤性乳がん(T1-3および一部のT4b、N0-1、M0)患者を対象とした多施設前向き観察研究で、化学療法(±トラスツズマブ)の使用と生存期間・QOLについて調査した。ベースライン時の年齢・健康状態(fit/vulnerable/frail)・病期の相違について傾向スコアマッチングで調整した。 主な結果は以下のとおり。・英国の56センターで2013~18年に3,416例が登録され、手術を受けた2,811例のうち1,520例(54%)が高リスクの早期乳がんで、2,059例(73%)で健康状態がfitだった。・高リスクの早期乳がんでfitだった1,100例中306例(27.8%)が化学療法を受けた。・年齢・病期・健康状態をマッチさせていない高リスク例(1,498例、調整後ハザード比[HR]:0.36、95%CI:0.19~0.68)およびマッチさせた高リスク例(541例、調整後HR:0.43、95%CI:0.20~0.92)において、化学療法により転移を有する再発のリスクが減少した。しかし、どちらも全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)の改善はみられなかった。・ER陰性乳がん患者では、化学療法により生存率が改善した(OSのHR:0.20、95%CI:0.08~0.49、BCSSのHR:0.12、95%CI:0.03~0.44)。・QOLに一時的な負の影響がみられた。

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脳梗塞後の上肢運動機能障害、リハ+迷走神経刺激で改善/Lancet

 虚血性脳卒中後の長期にわたる中等度~重度の上肢運動機能障害の治療において、リハビリテーション療法との組み合わせによる迷走神経刺激療法(VNS)は偽(sham)刺激と比較して、Fugl-Meyer Assessment上肢運動項目(FMA-UE)で評価した上肢運動機能障害の改善効果が優れ、新たな治療選択肢となる可能性があることが、英国・グラスゴー大学のJesse Dawson氏らが実施した「VNS-REHAB試験」で示された。Lancet誌2021年4月24日号掲載の報告。9ヵ月以上経過した患者の三重盲検sham対照比較試験 本研究は、英国と米国の19の脳卒中リハビリテーション施設が参加した三重盲検擬似的処置(sham)対照比較試験であり、2017年10月~2019年9月の期間に参加者の無作為化が行われた(米国MicroTransponderの助成による)。 対象は、年齢22~80歳、登録前の9ヵ月~10年の間に片側のテント上虚血性脳卒中を発症し、中等度~重度(FMA-UEの総スコアが20~50点)の上肢運動機能障害を有する患者であった。 参加者は、リハビリテーション療法とVNSを受ける群またはリハビリテーション療法と偽刺激を受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。全例に、全身麻酔下に迷走神経刺激装置が植え込まれた。VNS群は0.8mA(不快感がある場合は低くする)、100μs、30Hzの刺激パルスを0.5秒間、対照群は0mAのパルスを受けた。 また、参加者は、院内で6週間(3回/週、合計18回)のリハビリテーション療法を受けた後、自宅で運動療法を行った。VNS/偽刺激は、院内と自宅を通じて行われた。参加者、アウトカムの評価者、療法士には、治療割り付け情報がマスクされた。90日目の臨床的に意義のあるスコア変化の達成割合が約2倍に 108例(intention-to-treat集団)が登録され、VNS群に53例(平均年齢59.1[SD 10.2]歳、女性36%)、対照群に55例(61.1[9.2]歳、35%)が割り付けられた。106例が試験を完了した(両群1例ずつが完了できなかった)。 ベースラインから院内治療終了後1日目までのFMA-UEスコアの変化(主要評価項目)は、VNS群で5.0(SD 4.4)点上昇し、対照群の2.4(3.8)点の上昇に比べ有意に良好であった(群間差:2.6点、95%信頼区間[CI]:1.0~4.2、p=0.0014)。 院内治療終了後90日目の臨床的に意義のあるFMA-UEスコアの変化(6点以上の改善)の達成割合は、VNS群が47%(23/53例)と、対照群の24%(13/55例)に比し有意に優れた(群間差:24%、95%CI:6~41、p=0.0098)。 少なくとも1件の有害事象を発現した患者は、VNS群が81%(43/53例)、対照群は76%(42/55例)であった。死亡例はなかった。重度の有害事象は、VNS群の2例に3件(尿路感染症、低ナトリウム血症、不眠症)、対照群は2例(頭痛、失神)にみられた。対照群の1例で、手術関連の重篤な有害事象として声帯まひ(5週後に解消)が発生した。 著者は、「今後は、このアプローチの実臨床への導入方法や、より重度の上肢運動機能障害を含め、他の機能障害にVNSが使用可能かを検討する必要がある」としている。

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東京五輪での医師ボランティア募集、8割が否定的/会員アンケート結果

 コロナ禍で医療崩壊が叫ばれ東京オリンピック・パラリンピックの開催自体が危ぶまれる中、同競技大会組織委員会が日本スポーツ協会公認のスポーツドクターからボランティア約200人を募集していたことが明らかとなった(募集は5月14日で締切、応募総数は393人)。この募集に対して、当事者となる医師たちはどのような心境だろうかー。スポーツドクターの資格有無を問わず、8割超が「応募しない」と回答 本アンケートは、スポーツドクターの有資格者が多い診療科(整形外科、救急科、リハビリテーション科)かつ競技会場となる9都道県(北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県)在住のケアネット会員医師を対象に実施[5月7日(金)~12日(水)]。ボランティアへの応募意向をはじめ、参加時に心配な点や募集に対して感じたことなどを伺った。 本ボランティアの活動期間は3日間程度でも可能、1回当たりの活動時間は約9時間(休憩含む)であるが、応募希望について、Q2で『東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、日本スポーツ協会公認のスポーツドクターを対象に医師200人程度をボランティアとして募集していますが、応募を考えていますか?』と質問したところ、スポーツドクターの資格有無を問わず、全回答者の86%(215人)が「応募しない」と回答。主な理由を以下に抜粋した。 「現在の社会情勢を考慮していないと考える(30代、200床以上)」 「明らかにコロナ対応を意味しているのに、スポーツドクター募集に違和感。開催の是非で未だに揉めている大会に参加したくない(40代、100~199床)」 「ワクチン接種の医師が足りないと言っていながら、医師募集とは矛盾している気がする(50代、200床以上)」 「付け焼き刃的。非現実的(60代、100~199床)」 また、今回のように専門職をボランティア募集しておきながら大会組織委員には日当が出ることに疑問を感じている医師も一定数いた。 このほか、スポーツドクターの資格を持ち、実際に応募したという医師からも、今回のオリンピック開催については、「コロナにリソースを傾けるべき時に、逆のことをしていると思う(30代、200床以上)」などの否定的な声もみられた。一番の不安要素は「自身の出勤制限」だが、日当があれば参加する? Q3『もしボランティアに参加した場合、心配な点はありますか?』では、「自身の出勤制限」「施設内の医師不足」「給与/売上」の順で回答が多かった。また、Q4『Q2で「応募しない」と回答した方に伺います。どのような条件なら応募しますか?』では、多数が「日当があれば」と回答、多くが「10万円以上」を希望していた。国内のスポーツドクター数は約6,400名 日本スポーツ協会の定めるスポーツドクターの受講条件は、「受講開始年度の4月1日時点で日本国の医師免許取得後4年を経過(受講開始年度の4年前の4月1日以前に取得)し、当協会または当協会加盟(準加盟)団体から推薦され、当協会が認めた者」で、現在のスポーツドクター登録数は6,420名(令和2年10月1日現在)である。登録者の専門診療科は整形外科をはじめ、救急科、リハビリテーション科、形成外科、リウマチ科などで、今回応募した約390名はこの登録者の6.1%にあたる。また、スポーツ医に該当する資格はこのほかにも、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定の健康スポーツ医などがある。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『東京五輪の医師ボランティア募集、どう考える?』

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自閉スペクトラム症に対する小児精神薬理学~システマティックレビュー

 自閉スペクトラム症(ASD)は、一生涯にわたる重度の神経発達障害であり、社会的費用が高く、患者やその家族のQOLに大きな負荷を及ぼす疾患である。ASDの有病率は高く、米国においては小児の54人に1人、成人の45人に1人が罹患しているといわれているが、社会的およびコミュニケーションの欠陥、反復行動、限定的な関心、感覚処理の異常を含むASDの中核症状に対する薬理学的治療は十分ではない。イタリア・メッシーナ大学のAntonio M. Persico氏らは、ASDに対するベストプラクティスの促進、今後の研究のための新たな治療戦略を整理するため、小児および青年期のASDに対し、現在利用可能な最先端の精神薬理学的治療についてレビューを行った。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・多動性、衝動性、興奮、気質性立腹、自己または他者への攻撃性に対する介入では、リスペリドンやアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬が第1選択薬として用いられている。・三環系抗うつ薬は、有効性が不確実であり、重大な有害事象が懸念されるため、使用が減少している。・SSRI、とくにfluoxetineとセルトラリンは、反復行動(不安症状や強迫症状)や過敏性/興奮の治療に有効である可能性があり、ミルタザピンは睡眠に問題を抱える患者に役立つ可能性がある。・低用量のbuspironeと行動介入との併用は、限定的かつ反復的な行動に対し、ある程度の有効性が示唆されている。・精神刺激薬(程度は低いがアトモキセチン)は、ASDとADHDが合併した症例においても多動性、不注意、衝動性の軽減に効果的であるが、特発性ADHDと比較すると、有効性はやや劣り、副作用発現率は増加する。・クロニジンとグアンファシンは、多動性や情動行動に対し、ある程度の有効性が期待できる。・他の薬剤については、症例報告や非盲検試験で有効性が報告されており、ランダム化比較試験は実施されていない。 著者らは「ASDの小児精神薬理学の研究は、依然として少なく、2つの大きなハードルがあると考えられる。1つはASD患者では、臨床反応と副作用の感受性に個人差が大きい点があり、この低レベルの予測には、薬剤選択をサポートするうえで、症状固有の治療アルゴリズムやバイオマーカーが寄与する可能性がある。もう1つは、ASDの中核症状を直接的に改善する向精神薬はなく、併存症状の軽減や間接的な改善がいくつかの薬剤で報告されているにとどまっている点である」としている。

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第54回 予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用

<先週の動き>1.予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用2.高齢者ワクチンの7月終了見込みは全国で85.6%、首都圏に遅れ3.検査キットを病院・介護施設に800万回分無償配布/厚労省4.介護保険料が20年で倍加、全国平均が月額6,000円台に5.ドラッグラグ再燃に懸念、薬価引き下げ制度の見直しを/中医協6.オリンピックの開催中止を求める声明/全国医師ユニオン1.予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用河野 太郎規制改革担当相は、13日の参議院内閣委員会において、厚労省で現在審査中の米・モデルナ並びに英・アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンについて、5月下旬には承認される見通しを明らかにした。さらに、東京都と大阪府に開設された大規模接種会場では、モデルナのワクチンを使用すると説明。モデルナワクチンも2回接種が必要で、接種間隔は4週間。予防効果はファイザー製95%に対して、ほぼ同等の94%とされる。なお、イギリスのオックスフォード大学の研究者らによって、ファイザー製ワクチンとアストラゼネカ製のワクチンを併用すると有害な副反応が増えることが発表されており、今後、接種に際しては注意が必要だ。(参考)モデルナ製ワクチンの有効性、ファイザーと遜色なく 大規模接種で使用(日本経済新聞)ワクチン併用で副反応増加、重症化はせず 英国治験の暫定結果(産経新聞)2.高齢者ワクチンの7月終了見込みは全国で85.6%、首都圏に遅れ総務省と厚労省は、12日に各市区町村における高齢者ワクチン接種の終了見込みを発表した。政府が目標とする7月末までに終了する見込みだと回答した自治体は85.6%で、全国の高齢者人口に占める割合は84.5%。この中で、岩手・新潟・富山・石川・福井・岐阜・京都・兵庫・奈良・和歌山・鳥取・島根・山口・徳島・愛媛・長崎・大分の17府県では、7月末までにすべての市町村で接種が終了する見込み。一方、東京都67.7%、埼玉県73%、千葉県66.7%、神奈川県84.8%と首都圏で遅れが目立ち、最も低かったのは秋田県で56%に留まった。これに対して、菅総理は「1日も早く接種できるように取り組みたい」として、7月末までの接種完了に向けた自治体への支援を強化することを明らかにした。ワクチン接種をめぐっては、当初は供給量が問題とされたが、現時点では人員不足が課題となっており、厚労省は医療人材向けの求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」で人材募集を支援するなど取り組みを強化している。(参考)高齢者コロナワクチン接種、7月末終了見込みは85.6% 総務省・厚労省が取りまとめ公表(CBnewsマネジメント)資料 高齢者に対する新型コロナワクチン接種について(厚労省)医師・看護師・医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」(同)3.検査キットを病院・介護施設に800万回分無償配布/厚労省政府は、14日に開催された新型コロナウイルス感染症対策本部において、感染が急速に拡大している地域で、医療提供体制のひっ迫も見られることなどから、N501Y変異株スクリーニング検査の実施や、変異株などの全国的な監視体制を継続することを明らかにした。また、厚労省は同日に「新型コロナウイルス感染症の検査体制整備に関する計画」を発表した。PCR・抗原検査を1日最大77.2万件程度まで充実させるため、コロナウイルス抗原キットを病院や介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどに800万回分を配布し、検査体制の拡充を図る。(参考)PCR・抗原検査、緊急時は1日77万件の分析可能に(読売新聞)厚労省、抗原検査キット配布を「可能な限り早く進める」 介護施設など対象(JOINT)資料 新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針 5月14日変更(新型コロナウイルス感染症対策本部)4.介護保険料が20年で倍加、全国平均が月額6,000円台に厚労省は14日、介護保険料が今年度より改定され、全国平均が月額6,000円を超えたことを公表した。高齢化とともに介護保険料は年々上昇しており、介護保険制度が発足した2000年度の平均支払額2,911円と比べると2倍以上になっている。現在、65歳以上で介護や支援が必要と認定された人は667万人で、65歳以上の保険者に対する割合は18.7%だが、今後2025年には20.5%、2040年には22.8%と介護費用の増大が推測される。政府は、全世代型社会保障改革について討議を進めており、介護については、保険者の努力支援制度の強化と介護インセンティブ交付金の強化を行うなど、持続可能性の高い介護提供体制の構築を目指している。(参考)介護保険料2.5%上昇 65歳以上で初の6000円超え(日経新聞)資料 第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について(厚労省)5.ドラッグラグ再燃に懸念、薬価引き下げ制度の見直しを/中医協厚労省は、12日に中央社会保険医療協議会薬価専門部会と総会を開催し、2022年度の薬価制度改革に向け製薬団体から意見を聴取した。日本製薬団体連合会からは、新薬の特許期間に市場実勢価格に応じた薬価引き下げが行われており、研究開発投資の削減と競争力低下、日本市場の魅力低下によりドラッグラグが再燃する懸念を挙げ、特許期間中の新薬について薬価を維持する新薬創出等加算の見直しや、薬価引き下げに用いられる市場拡大再算定ルールの見直しを求めた。総会では、年間販売額が350億円を超え、承認時に予測していた基準年間販売額2倍超の要件を満たしたテセントリク、ビンダケルなど医薬品10品目に対し市場拡大再算定を行い、8月1日からの薬価引き下げを了承した。(参考)特許期間中の薬価維持を‐製薬協など新薬加算見直し要望(薬事日報)中医協総会 テセントリク、ビンダケルなど5成分 市場拡大再算定適用で薬価引下げへ(ミクスonline)6.オリンピックの開催中止を求める声明/全国医師ユニオン13日、勤務医らで作る労働組合が東京オリンピック・パラリンピックの中止を訴え、国に要請書を提出した。新型コロナウイルス感染拡大が十分にコントロールされていない中開催することで、新たな変異株の脅威に晒されるなどの懸念を表明した。全国医師ユニオン代表の植山 直人医師は会見で「選手にはつらい話だが、大会中止は誰かが言い出さなければならない。医療従事者は声を上げることが求められていると思うので、あえて要請を行った」と語った。(参考)「東京五輪・パラ中止を」勤務医の組合が国に要請書(NHK)医師ユニオンが五輪中止を要請「新たな変異株生む恐れ」(朝日新聞)要請書 危険な変異株ウイルスを拡散し新たな変異株を生みだす危険性が高い東京オリンピックの開催中止を強く求める(全国医師ユニオン)

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか?:Ad26.COV2.S(Janssen)の場合(解説:後藤信哉氏)-1390

 新型コロナウイルス禍の克服の鍵の1つがワクチンである。人類は科学技術の英知を結集して驚くべき速さにて新型コロナウイルスに対するワクチンを複数開発した。予後の悪い疾病に対する治療と異なり、健常人に接種するワクチンには高い安全性が要求される。有効かつ安全なワクチンの開発には一般に長い年月がかかる。複雑精妙な人体の調節系は完全に理解されていない。薬剤であれ、ワクチンであれ、投与後の反応を個別予測する演繹的方法は確立されていない。拡大する新型コロナウイルス感染、感染すれば致死率は2%に至るとされる。人類全体として見ればワクチンによる免疫の獲得は感染の拡大速度を減少させ、医療崩壊を防ぐ効果を期待できる。現在も感染の第4波が拡大し、地域によっては医療崩壊にひんしている日本では感染拡大速度を減少させるワクチンを急速に拡大させたい。集団としての視点から日本国内のワクチン接種に反対するヒトは少ないと思う。しかし、予防介入、治療介入には副作用がある。安全性の高いワクチンであっても、ワクチン接種直後に心筋梗塞、脳梗塞などを偶然発症する場合もある。副作用なのか、偶発症なのか、個別のイベントにおける判断は難しい。 今回JAMA誌に掲載されたのはAd26.COV2.Sワクチン接種後、6~15日にて60歳以下の症例に発症した12例の脳静脈洞血栓症の報告である。脳静脈洞血栓とは聞き慣れない名前である。もともと中年女性に多いとされるが、ワクチン接種の6~15日に起こればワクチン接種と関係がありそうである。ワクチン接種と無関係の偶発症と、ワクチンによる副作用の弁別は困難である。本論文に報告された症例は12例と多くはないが、ワクチン接種との関係性が示唆される。まず、一般社会における静脈洞血栓が少ない。さらに、この12例のうち11例に免疫的血栓症であるヘパリン惹起血小板減少・血栓症の抗体が陽性と報告されている。ヘパリン惹起血小板減少・血栓症も治療困難な疾患である。実際、60歳以下の症例であっても3例が死亡、3例にICU入院が必要となった。 本論文では個別の症例の情報を多く記載している。ワクチンがよいとか悪いとかの結論でもない。ワクチン接種と関連しそうな特殊な血栓症があるので、本質を追求しようと結論している。 繰り返すが人体は複雑精妙な調節系である。筆者はワクチン接種により新型コロナウイルス感染拡大速度の低減に期待している。しかし、人体への介入に対する結果の予測は困難である。個別にはワクチン接種により不可逆的疾病が惹起される個人がいるかもしれない。ワクチン接種による人類全体の長期的反応も未知である。一見不都合に見える結果も公表し、少数ではなく、多数の意見にてベストを見いだそうとする米国の姿勢は筆者には好ましく思える。皆さんはどう思うだろうか?

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事例026 いぼ等冷凍凝固法(4箇所以上)の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説「伝染性軟属腫」の患者に、冷凍凝固法にて軟属腫の除去を行いました。除去した軟属腫は10数ヵ所を数えたと診療録に図示されていました。行われた治療法の冷凍凝固法をキーワードに診療報酬を探し、留意事項に何も記載されていないことを確認、軟属腫も「いぼ等」に該当するものとして「J056 いぼ等冷凍凝固法」の4ヵ所以上を算定しました。ところが、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。点数表をよくみると、次の項目に「J057 軟属腫摘除」があり、留意事項に「伝染性軟属腫の内容除去は、軟属腫摘除として算定する」とあります。伝染性軟属腫の単なる除去の場合に算定するものと解していましたが、除去法の種類にかかわらずこちらを適用するとされ、かつ「いぼ等」には、伝染性軟属腫は含まれないと判断されているようです。したがって本事例では、いぼ等冷凍凝固術に対する病名不足として査定になったものと考えられます。軟属腫摘除の点数分は認めていただいても良かったかなと思いましたが、コンピュータ審査ではバッサリと対応されるようです。医師にはその旨を伝え、了承の上、コンピュータチェックシステムにエラー表示をさせるよう設定し、今後の査定対策としました。

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アントラサイクリン心筋症 見つかる時代から見つける時代へ【見落とさない!がんの心毒性】第2回

連載の第1回では、循環器医ががん医療に参画し始めた背景について向井先生が解説しました。第2回ではアントラサイクリン心筋症・心不全にも新たなアプローチが求められていることについて、大倉が解説します。重篤な心不全で見つかる時代から、そうなる前に見つける時代になったことを感じていただければ幸いです。アントラサイクリンによる心不全は3回予防できるドキソルビシンが1975年にわが国で使われ始めて、もうすぐ半世紀が経とうとしています。よく効くので、今尚がん医療の現場で広く使われています。心毒性があるため心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌です。とはいえ心臓病でもアントラサイクリンを使わざるを得ない状況は患者の高齢化とともに増加傾向にあります。献身的ながん医療の成果が10年生存率の改善(58.3%)という形で表れています。一方、一部のアントラサイクリン使用患者では、心毒性により化学療法を中断したり、QOL(生活の質)が損なわれたりしています。心不全で亡くなることもあります。循環器医は“アントラサイクリンによる心不全は早期発見で3回予防できる”と考えています。(1)心機能の低下予防 (2)心不全の発症予防 (3)慢性心不全の増悪予防の3回です(図)。実際のところ、がん医療の現場でこの考え方はあまり共有されていません。そのため1回も予防されずに重症化した心不全がん患者を診ることもあります。(図)心不全の進展ステージとアントラサイクリン心筋症の予防機会画像を拡大する2021年3月、“脳卒中と循環器病対策基本法”の行動計画の核心である脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画が公表されました1)。心不全は重要3疾患の1つに掲げられ、悪性腫瘍に合併する心不全の管理も重点項目として指定されました。“心不全は予防と早期発見”という考えが国民に向けて発信されることで、がん医療にも徐々に馴染んでゆくものと思われます。発生率と危険因子アントラサイクリンによる心機能障害は用量依存性に発生します。ドキソルビシン換算で累積投与量が 400 mg/m2で3~5%、550 mg/m2で7~26%、700 mg/m2で18~48%に起こります2)。累積投与量以外にも、65歳以上の高齢者、小児、胸部・縦隔への放射線照射、トラスツズマブなど心毒性を有する他の薬剤の使用、基礎心疾患の既往や合併、心血管リスク(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)の合併などで、起こりやすくなるため注意が必要です。この段階で併存心疾患や心血管リスクを治療し心機能低下を予防します3)(図:1回目の予防)。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)により、拡張型心筋症の原因となる遺伝子変異の一つで、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子の切断型変異(Titin-truncating variants)があると、アントラサイクリンの心毒性に対して脆弱になることが報告されました4)。5ヵ年計画にはファーマコゲノミクス(PGx)の推進が盛り込まれており、抗がん薬の心毒性に関与する遺伝子を5年間に2個同定しようとしています。Onco-cardiologyの分野でもゲノム医療が始まろうとしています1)。心毒性の機序アントラサイクリンは一部の患者に不可逆的な心筋障害を起こします。失われた心筋細胞が復活することはありません。ミトコンドリアの鉄の蓄積と活性酸素の過剰な産生を惹起し、ミトコンドリアや細胞内小器官が障害されます。DNAの修復に欠かせないトポイソメラーゼIIβを阻害し、DNA二重鎖切断とアポトーシスを誘導します。心筋細胞の恒常性に欠かせない周囲の血管内皮細胞も障害され、後々の心筋細胞の適応性や生存性の低下に繋がります。心筋の線維芽細胞や前駆細胞も複雑に関与しています4)5)。経過・治療古典的には心毒性は急性、慢性早期、慢性晩期に分類されていました(表1)。(表1)アントラサイクリンによる心毒性の古典的な臨床分類画像を拡大する現在では、詳細な経過観察により、心筋細胞レベルの障害が最初に起きて、それが潜在進行性の心機能低下を惹起し、代償機転が破綻して心不全に至るという連続性が確認されています。心不全を起こす患者では、アントラサイクリン投与後に、血清トロポニンが一過性に上昇し、左室駆出率(LVEF)が低下します。心保護薬で治療すると、ほとんどの患者でLVEFは不完全ながら回復傾向を示しますが、一部の患者はLVEFが悪化して、心不全を発症します。Cardinaleらによれば、アントラサイクリン投与後に9%の患者に心毒性(LVEF50%未満への低下)が認められました。心毒性の98%は化学療法終了後1年以内(中央値3.5ヵ月)に現れました。エナラプリルとカルベジロールで治療をすると82%に回復傾向を認めました6)。無症候性心機能低下(図:ステージB)のうちに発見し、心保護薬で予防をすることで悪化を食い止め、心不全(図:ステージC)を予防できます(図:2回目の予防)。そのため、ここでの介入が最も効果的と考えられています。しかし、この予防機会を失えば、心不全を発症します。こうなると、非可逆的な心筋障害であるため、治療に難渋し、ステージDへの進行を防げない可能性があります。潜在患者の早期発見に有用な検査定期的に全員に心エコーをすれば早期発見は可能ですが、医療資源は限られているため、ハイリスク群を優先することが欧米の腫瘍学会でコンセンサスを得ています(表2)。(表2)最新ガイドラインに見るアントラサイクリン使用に関連した強い推奨[A、B]画像を拡大するリスクの層別化には、アントラサイクリン治療後のトロポニン測定に期待が寄せられています。上昇しない患者はその後の心不全が起きにくいことが分かっており、心エコーの頻度を減らすことができます7)。一方、上昇し、その後も上昇が持続する患者では、心不全が起きやすいため、心保護薬を開始したり、心エコーの頻度を増やしたりします。わが国の保険制度ではそのようなトロポニンの使われ方は認められておりません。採血のタイミングやカットオフ値の標準化については今なお研究段階です。アントラサイクリン治療を終えて数ヵ月以上経過している患者の心不全の早期発見は、危険因子による層別化や、BNPやNT-proBNPによる補助診断に頼ることになります。フラミンガムの一般住民を対象にした疫学調査によると、BNP はLVEF40%以下の心機能低下に対する感度は良好でしたが、LVEF50%前後に対してはよくありませんでした8)。ステージBの中でもCに近い患者の検出には使えそうです。BNP検査によるアントラサイクリン心筋症の早期発見については、小児やAYA世代のがんサバイバーでの有用性については否定的な報告があります9)。それでも特性を理解すれば、たいへん便利な検査ですので、BNP検査については正書や学会ホームページをご覧ください10)11)。心エコーでは、無症候性心機能低下(ステージB)の中で、更に早い段階の異常を捉えようとしています。スペックルトラッキング法を用いたGlobal longitudinal strain (GLS)は、薬剤性心筋障害をLVEFよりも早期に感度良く検出できるようです。欧米の腫瘍学会ガイドラインでも測定を推奨していますが、人間の感覚を超えた領域なので慣れるのに時間がかかりそうです12)。心機能低下はがん治療終了後1年以内に始まるので、半年後と1年後の心エコーを推奨していますが、異常を見落としたり、その後に異常が明らかになることもあるため、その後のフォローも欠かせないでしょう。フォローの内容や間隔については、危険因子が多いほど綿密にします。なぜ重症化してから見つかるのか?「患者や医師が、息切れ、むくみ、疲れ易さを、がんのせいと勘違いする」「医師や薬剤師が累積使用量の上限を超えなければ心不全は起きないだろうと油断もしくは勘違いする」「がん治療が済んで患者がフォローアップされなくなる」「フォローされてもクリニックの先生方と心不全への懸念が共有されない」などが原因で、発見が遅れ重症化の引き金になると考えられます。慢性晩期のアントラサイクリン心筋症には、認識不足や連携の脆弱さといった医療システムの問題が少なからず関係しています。心不全全般に言えることですが、脳卒中や心筋梗塞や糖尿病と比べ、心不全についての認知度が低いことは、かなり前から指摘されており世界共通の課題でした13)。アントラサイクリンで治療した患者に、心不全のセルフチェックを促すには、心不全についての知識の普及が肝要です。心不全発症に早めに気づいて治療することで重症化が予防できます(図:3回目の予防)。今、試されるチーム力最新のESMOガイドライン2020では“がんサバイバーから目を離すな”とうたっています。アントラサイクリンで治療した乳がん患者で薬剤性心筋障害を起こすのは、3~6%程度ですが、軽んずることなく解決への道を開けば、将来の患者の利益になります。院内ではがん診療科と多職種の連携が解決への糸口となり14)、晩期障害の早期発見にはクリニックの先生方の協力が不可欠です。地域医療への知識の普及には、大学や医師会の役割りが大きいです。システムの問題が心不全に関与しているのならば、システムを修正すれば良いのです。心不全についての知識は一般の方には伝わりにくいことが世界共通の課題ですが、“脳卒中と循環器病対策基本法”の下、行政による後押しで国民への啓蒙が始まろうとしています。高齢化に伴い、がん患者の心臓病が増加しています15)。がんと心不全の古くからの関係は新しい時代を迎えました。1)日本脳卒中学会・日本循環器学会編. 脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画 ストップCVD(脳心血管病)健康長寿を達成するために. 20212)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p10-11.(赤澤 宏 心機能障害/心不全 アントラサイクリン系薬剤)4)Garcia-Pavia P, et al. Circulation. 2019;140:31-41.5)Kadowaki H, et al. Circ J. 2020;84:1446-1453.6)Cardinale D, et al. Circulation. 2015;131:1981-1988.7)Cardinale D, et al. 2004;109:2749-2754.8)Vasan RS, et al. JAMA. 2002; 288:1252-1259.9)Michel L, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:423-433.10)猪又孝元ほか The Manual心不全のセット検査. メジカルビュー社;2019.11)日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について12)日本心エコー図学会編.抗がん剤治療関連心筋障害の診療における心エコー図検査の手引13)Okura Y, et al. J Clin Epidemiol. 2004;57:1096-1103.14)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p.176-178.(大倉 裕二、吉野 真樹 腫瘍循環器診療における連携のコツと工夫 多職種連携)15)Okura Y, et al. Int J Clin Oncol. 2019;24:983-994.講師紹介

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オシメルチニブのEGFR陽性肺がん術後アジュバント、欧州で承認勧告/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、欧州連合(EU)において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が、腫瘍完全切除後の早期(IB期、II期およびIIIA期)EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法の治療薬として、製造販売承認が勧告されたと発表。 今回の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)の肯定的見解は、第III相ADAURA試験の結果に基づくものである。同試験において、オシメルチニブは主要評価項目であるII期およびIIIA期のEGFR変異陽性NSCLC患者における無病生存期間(DFS)、ならびに全対象症例におけるDFSにおいても、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示した。 NSCLC患者のおよそ30%は、治癒切除可能な早期ステージに診断されるが、早期ステージと診断された患者においても術後再発率は依然として高いままである。これまでに、IB期と診断された患者の半数近く、IIIA期では4分の3以上もの患者が5年以内に再発を経験している。

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