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9種類の第2世代抗精神病薬に関連する血清プロラクチン上昇パターン

 抗精神病薬に伴うプロラクチン上昇は、統合失調症患者の服薬アドヒアランスおよび長期治療アウトカムに重大な影響を及ぼす。現在入手可能なデータでは、抗精神病薬を服用している患者におけるプロラクチン上昇のモニタリングとマネジメントを実践するには、不十分である。中国・上海交通大学のLei Zhang氏らは、実臨床における9種類の第2世代抗精神病薬(SGA)に関連するプロラクチン上昇パターンを調査し、プロラクチン上昇リスクを比較するため、本研究を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月19日号の報告。 2007〜19年の中国の大規模メンタルヘルスセンターの入院患者における電子カルテのデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、統合失調症と診断され(ICD-10基準)、SGA治療を行い、血清プロラクチン値を測定した患者。9種類のSGA(amisulpride、リスペリドン、パリペリドン、ziprasidone、オランザピン、ペロスピロン、クエチアピン、クロザピン、アリピプラゾール)の多剤併用療法および単剤療法を含む投与量を収集した。主要アウトカムは、入院患者におけるプロラクチン上昇の発現率とした。9種類のSGAにおけるプロラクチン上昇のハザード比(HR)を比較するために、調整層別Cox比例ハザード回帰分析を用いた。さらに、これらのSGAについて、規定1日用量(DDD)法を用いて用量反応解析を実施した。用量区分は、0.6DDD/日未満(低用量)、0.6~1.1DDD/日未満(中用量)、1.1DDD/日以上(高用量)とした。 主な結果は以下のとおり。・分析対象者数は、統合失調症患者6,489例(平均年齢:35.1±14.2歳、男性患者数:3,396例[52.3%])。・非曝露群と比較し、プロラクチン上昇リスクと最も高い関連性が認められたSDAは、amisulpride(HR:2.76、95%信頼区間[CI]:2.12〜3.59)、リスペリドン(HR:2.70、95%CI:2.30〜3.16)、パリペリドン(HR:1.84、95%CI:1.37〜2.46)、ziprasidone(HR:1.36、95%CI:1.06〜1.76)であった。・対照的に、クエチアピン(HR:0.73、95%CI:0.61〜0.87)、クロザピン(HR:0.59、95%CI:0.46〜0.76)、アリピプラゾール(HR:0.30、95%CI:0.23〜0.37)は、リスクが低かった。・男性患者ではamisulprideが最もリスクが高く、女性患者ではリスペリドンが最もリスクが高かった。・7種類のSGAにおいて、異なるタイプの用量反応関係が検出された。 著者らは「入院患者を対象とした本コホート研究により、SGAに関連するプロラクチン上昇の異なるリスクと、それぞれの用量反応曲線が明らかになった。SGA治療を行なっている統合失調症患者におけるプロラクチン上昇の分析においては、性別と年齢を考慮する必要がある」とまとめている。

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肥満者の約半数は肥満の相談を医療機関にしたくないと回答/ノボ

 ノボノルディスクファーマは、2021年度より実施している日本人9,400人(20~75歳)を対象とした、「肥満」と「肥満症」に関する意識実態調査の2025年度版を発表した。その結果、肥満症の認知率は13.0%と大きく進展した一方で、自身の肥満について「(医療機関へ)相談したくない」と回答した人は50.5%と、医療機関への相談意向は高くないことが判明した。医療機関に「肥満」を相談した人は1割に満たず【調査概要】調査期間:2025年6月23~26日調査対象:日本全国のBMI25以上の20~75歳の男女調査人数:9,400人調査方法:インターネット調査集計方法:47都道府県男女100ss(サンプルサイズ)となるようにウェイトバック集計を実施【調査結果の主なポイント】・肥満症の認知率は、前年比で4.3ポイント増の13.0%と、今までの推移(2024年度8.7%、23年度8.3%)の中で最も大きく進展した。「肥満症疑いあり」層における認知率は2025年度で13.5%、2024年度で10.8%、2023年度で10.2%と比較的認知率が高い層だったが、本年度は「肥満症疑いなし」層で前年度比5.4ポイント増の12.6%の認知率を獲得したことが全体の認知率を高めた要因と考えられる。・肥満症の「認知」には至らないものの、肥満と肥満症の違いを「聞いたことがある」と回答した人は33.7%と、過去調査(24年度25.6%、23年度25.4%)の中で最も高いスコアと伸び率を記録。・自身の肥満について「医療機関で相談したい」と回答した人は15.2%、「相談したくない」と回答した人は50.5%と、自身の肥満に関して医療機関への相談意向は高くなかった。肥満度別の医療機関への相談意向では、肥満度が1~3度へ高まるほど「かなり相談したい」と回答した人の率が高くなる一方、肥満4度(BMI40以上)では「まったく相談したくない」が31.3%となり、肥満区分の中で最も高いことが判明した。肥満4度の人の傾向として、肥満1~3度の人よりも肥満症の認知率が低く、医療機関に相談をしたくない理由として、肥満1~3度の人と比較して「相談しても無駄だと思ったから」「医療機関に行くとお金がかかるから」を挙げた人が多くみられた。・医療機関への相談意向が高くない原因として、自己責任感や病状の軽視などの心理面に加え、情報不足が相談のバリアになっていると考えられる。医療機関へ自身の肥満に関して相談した経験がない理由として高いスコアを獲得した項目は、「肥満は自己責任だと思うから」が29.1%と最も多く、次いで「医療機関へ行くとお金がかかるから」が23.1%、「相談するほどの肥満だと思っていないから」が20.3%だった。・全体の中で「自身の肥満の悩みを医療機関へ相談したことがある」と回答した人は9.0%で、病院受診・医師への相談のきっかけになったことを聞いたところ、「健康診断で勧められたから」が最も多く45.8%、次いで「肥満に伴う健康障害が心配だったから」が39.3%、次に「専門家の意見を聞きたかったから」が23.5%だった。また、「肥満症を認知している」層に、肥満症治療について調べる際に信頼する情報源を聞いたところ、「かかりつけ医・主治医」が36.4%、「専門家や医療機関のウェブサイト」が22.1%、「身近で肥満症を治療した経験がある人」が11.4%と、治療に関しては医療機関や専門家、または経験者からのアドバイスが重視されていることが判明した。 同社では、今回の調査結果を受けて「肥満症の疾患としての認知をさらに高めるとともに、調査でも明らかになったように、『相談フェーズ』における支援を強化することが求められる。今後も肥満症に取り組む企業として、患者さんが孤立することなく、医療機関とつながりながら適切な支援を受けられる環境の整備を目指していきたい」と語っている。

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世界のがん発症や死亡、2050年に6~7割増/Lancet

 がんは世界の疾病負担の大きな要因であり、2050年まで症例数と死亡数の増加が続くことが予測され、とくに資源の乏しい国との負担格差が大きくなることが見込まれること、また、がんの年齢標準化死亡率は低下するものの、国連による2030年の持続可能な開発目標(SDG)の達成には不十分であることが、米国・ワシントン大学のLisa M. Force氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Cancer Collaboratorsの解析で示された。がんは世界的に主要な死因の1つで、政策立案には正確ながん負担情報が欠かせないが、多くの国では最新のがんサーベイランスデータがない。著者は、「世界的ながん負担に効果的かつ持続的に対処するには、予防、診断、治療の全過程にわたるがん対策戦略の策定と実施において、各国の医療システムや開発状況を考慮した包括的な国内外の取り組みが必要である」と提言している。Lancet誌オンライン版2025年9月24日号掲載の報告。1990~2023年の204の国と地域のデータを解析、2050年のがん負担を予測 研究グループは、GBD 2023の枠組みを用い、204の国と地域別および年齢別、性別による、「1990~2023年における47種またはグループのがん負担」「1990~2023年における特定の危険因子に起因するがん負担」、ならびに「2050年までのがん負担予測」を推計した。 GBD 2023におけるがん負担の推計には、がん登録、出生登録、口頭による死因調査のデータを使用した。がん死亡率はCause of Death Ensembleモデルを用いて推定し、罹患率は死亡率推定値と死亡率/罹患率比(MIR)に基づいて算出した。有病率は生存率モデルから推定し、障害加重を乗じて障害生存年数(YLD)を推定し、年齢別がん死亡数に死亡年齢時のGBD標準余命を乗じて損失生存年数(YLL)を推定した。障害調整生存年数(DALYs)は、YLLsとYLDsの合計として計算された。 また、GBD 2023比較リスク評価フレームワークを用い、44の行動、環境、職業および代謝リスク因子に起因するがん負担を推定するとともに、GBD 2023予測フレームワークを用いて2024年から2050年までのがん負担を予測した。この予測フレームワークには、関連リスク因子曝露の予測が含まれており、社会人口統計指数を共変量として、これらのリスク因子の影響を受けない各がんの割合を予測した。 国連のSDG3.4に掲げられた「非感染性疾患による死亡を2015年から2030年の間に3分の1減少させる」という目標に向けた進捗状況について、がん関連の進捗を推定した。2050年には新規発症やがん死亡が増加、低所得国~中所得国でとくに顕著 2023年は、非黒色腫皮膚がんを除き、世界全体で1,850万人(95%不確実性区間[UI]:1,640万~2,070万)のがん新規症例と、1,040万人(95%UI:965万~1,090万)の死亡が発生し、DALYは2億7,100万(95%UI:2億5,500万~2億8,500万)であった。このうち、世界銀行の所得分類に基づくと、新規症例の57.9%(95%UI:56.1~59.8)およびがん死亡の65.8%(95%UI:64.3~67.6)が低所得国~上位中所得国における発生であった。 2023年において、がんは心血管疾患に次いで世界第2位の死因であった。また、2023年には、世界全体で433万人(95%UI:385万~478万)のリスク因子に起因するがん死亡があり、これは全がん死亡の41.7%(95%UI:37.8~45.4)を占めた。リスク因子起因がん死亡は1990年から2023年にかけて72.3%(95%UI:57.1~86.8)増加し、世界全体のがん死亡は同期間に74.3%(95%UI:62.2~86.2)増加した。 最も可能性の高い基準予測では、2050年には世界全体でがん新規発症例が3,050万人(95%UI:2,290万~3,890万)、がん死亡が1,860万人(95%UI:1,560万~2,150万)と推定され、これは2024年と比較し、それぞれ60.7%(95%UI:41.9~80.6)および74.5%(95%UI:50.1~104.2)の増加であった。 このうち死亡数増加の予測は、高所得国(42.8%、95%UI:28.3~58.6)より、低所得国および中所得国(90.6%、95%UI:61.0~127.0)で大きかった。これらの増加のほとんどは人口動態の変化に起因するものと考えられ、年齢標準化死亡率は2024年から2050年の間に世界全体で-5.6%(95%UI:-12.8~4.6)減少すると予測された。また、2015年から2030年の間に、30~70歳の年齢層におけるがんによる死亡確率は、相対的に6.5%(95%UI:3.2~10.3)減少すると予測された。

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診断1年未満の中~高リスク肺高血圧症、ソタテルセプト追加が有効/NEJM

 肺動脈性肺高血圧症(PAH)の診断から1年未満の成人において、基礎療法へのソタテルセプト追加により、プラセボと比較し臨床的悪化のリスクが低下した。米国・University of Michigan Medical SchoolのVallerie V. McLaughlin氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験「HYPERION試験」の結果を報告した。アクチビンシグナル伝達阻害薬ソタテルセプトは、長期にわたりPAHの悪化および死亡率を低下させることが示唆されているが、診断後1年未満のPAH患者における有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年9月30日号掲載の報告。診断後1年未満の中~高リスクPAH患者が対象、主要エンドポイントは臨床的悪化 研究グループは、WHO機能分類クラスIIまたはIIIのPAH患者で、診断後1年未満、死亡リスクが中~高リスク(REVEAL Lite 2リスクスコア≧6またはCOMPERA 2.0スコア≧2)で、90日以上安定した2剤または3剤併用療法を受けている18歳以上の患者を、ソタテルセプト群(初回0.3mg/kg、2回目以降0.7mg/kgまで増量、21日ごとに皮下投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け上乗せ投与した。 主要エンドポイントは臨床的悪化(全死因死亡、PAHの悪化による24時間以上の予定外の入院、心房中隔欠損作成術、肺移植、またはPAHに起因する運動負荷試験成績悪化の複合)で、初回イベント発生までの時間を評価した。 なお、本試験は2022年4月8日より登録が開始されたが、先行するZENITH試験で有意な有効性が確認されたことから2025年1月30日に早期終了となり、その後233例が非盲検継続投与試験「SOTERIA試験」に移行した(最終移行日2025年4月3日)。ソタテルセプトの上乗せで、プラセボと比較して臨床的悪化のリスクが76%低下 321例が無作為化され、うち1例は無作為化後に同意撤回し治験薬の投与を受けなかったことから、320例が解析対象集団となった(ソタテルセプト群160例、プラセボ群160例)。 追跡期間中央値13.2ヵ月において、主要エンドポイントのイベントが少なくとも1回発生した患者は、ソタテルセプト群17例(10.6%)、プラセボ群59例(36.9%)であった(ハザード比:0.24、95%信頼区間:0.14~0.41、p<0.001)。 PAHによる運動負荷試験成績悪化はソタテルセプト群8例(5.0%)、プラセボ群46例(28.8%)、PAH悪化による予定外の入院はそれぞれ3例(1.9%)および14例(8.8%)、全死因死亡はそれぞれ7例(4.4%)および6例(3.8%)が報告された。心房中隔欠損作成術ならびに肺移植が行われた患者はいなかった。 ソタテルセプト群の主な有害事象は、鼻出血(31.9%)および毛細血管拡張症(26.2%)であった。

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実験段階のデバイスが筋肉のパフォーマンスをリアルタイムでフィードバック

 実験段階にあるワイヤレスデバイスが、アスリートの筋肉の断裂や捻挫、筋損傷からの回復の一助となる可能性があることを示唆する新たな研究の結果が明らかになった。米デューク大学機械工学・材料科学分野のXiaoyue Ni氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」9月3日号に掲載された。 このデバイスは体表面に音波を送り、それによって生じた振動を検出することで、組織の硬さを測定できるという。Ni氏らは、「ちょうど、絵を壁に掛けるときに、間柱を探そうとして壁をたたくのと同じだ。間柱のない所をたたくと低い音がするが、間柱のある所をたたくとより高い音がする」と話す。同氏らによると、組織の硬さは医師にとって重要な情報であり、がんの診断や蘇生、筋肉損傷など、さまざまな問題の把握に役立つという。しかし現状では、組織の硬さを測定するには大型で高価な超音波装置が必要である。 試作段階のデバイスは、重さ4.9gのMAW〔Mechano-Acoustic Wave〕センサーと直径26.5mm、重さ10gで円盤型の振動アクチュエーターで構成されており、皮膚の上なら体のどこにでも貼り付けることができる。デバイスはバッテリーで作動し、Bluetoothデバイスとワイヤレスで通信可能である。このデバイスは、50Hz(雷鳴のような低音)から800Hz(救急車のサイレンのような高音)までの周波数を走査して組織の硬さを測定し、皮膚とその下の組織を識別することが可能である。 このデバイスをスポーツウェアに組み込めば、筋肉のパフォーマンスについてリアルタイムでフィードバックを得られる可能性があると研究グループは説明している。それによってアスリートはトレーニングセッションを最適化し、疲労への対策を講じ、負傷からの回復に向けてうまく調整できるかもしれない。Ni氏は、「将来的には、この技術をスポーツギア、医療用の包帯、日常着、あるいは支援用ロボットに組み込み、身体の内部の状態を持続的に把握できる『ヘルス・ダッシュボード』を作るというビジョンを描いている」と今後の展望について話している。さらに同氏は、「それはスマートウォッチのように簡単に身に着けられ、しかもはるかにパワーを持ったものになるだろう」とニュースリリースの中で付け加えている。 論文の筆頭著者でNi氏の研究室の博士課程の学生であるChenhang Li氏は、「この自動化された二層モデルによる解析を構築し、それをシステム全体の設計に組み込むことが、このプロジェクトで最も困難な部分だった。信号処理をリアルタイムで行う方法を見つけ、数多くの検証テストを完了する必要があった。ここまで来るのは長い道のりだった」とデューク大学のニュースリリースの中で述べている。 このデバイスの概念が実証された今、研究グループはその最も有望な用途について調べる計画を立てている。Ni氏は、「私は最近、初めての出産を経験したが、自分の母乳の供給量をリアルタイムで把握するのにこのデバイスを使えることが分かった。これまで、このような組織の硬さを測定するモニターは作られたことがなかった。したがって、その応用の可能性は無限に広がっている」と述べている。

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将来的には点眼薬で老眼を改善できるかも?

 1日に2~3回使用する点眼薬が、将来的には老眼鏡に取って代わる老眼対策の手段となる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。点眼薬を使用した人のほとんどが、視力検査で使用されるジャガーチャート(以下、視力検査表)を2、3行以上余分に読めるようになっただけでなく、このような視力の改善効果が2年間持続したことが確認されたという。老眼先端研究センター(アルゼンチン)センター長であるGiovanna Benozzi氏らによるこの研究結果は、欧州白内障屈折矯正手術学会(ESCRS 2025、9月12~16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。 この点眼薬には、瞳孔を収縮させ、近見の焦点を調節する筋肉を収縮させるピロカルピンと、ピロカルピン使用に伴う炎症や不快感を軽減するNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)のジクロフェナクという2種類の有効成分が含まれている。研究グループは、766人(平均年齢55歳、男性393人、女性373人)を対象に、異なるピロカルビン濃度(1%、2%、3%)の点眼薬を投与する3つのグループに分けて、その有効性を調べた。対象者は、最初に点眼薬を投与されてから1時間後に老眼鏡なしで視力検査表をどの程度読めるかをテストし、その後2年間にわたって追跡調査を受けた。 その結果、ピロカルピン1%群(148人)の99%が最適な近見視力に達し、視力検査表で読むことができる行数が2行以上増えたことが示された。また、ピロカルピン2%群では69%、ピロカルピン3%群では84%が3行以上多く読むことができた。点眼薬によるこのような視力の改善効果は、最長で2年間、中央値で434日、持続した。副作用は概ね軽度であり、患者の32%が一時的な視界の暗さやぼやけを経験し、3.7%が点眼時の刺激感、3.8%が頭痛を報告したが、使用を中止した患者はおらず、眼圧の上昇や網膜剥離などの深刻な目の問題は見られなかった。 Benozzi氏は、「これらの結果は、老眼の重症度に応じて異なる濃度の点眼薬を処方できる可能性があることを示唆している。老眼が軽度の患者は1%の濃度で最もよく反応したが、老眼がより進んだ患者では、視力の大幅な改善を達成するために2%または3%のより高い濃度が必要だった」と述べている。 この研究結果をレビューしたボーフム大学(ドイツ)眼科病院の眼科部長Burkhard Dick氏は、「この研究結果は、老眼手術を受けられない人にとっては特に重要な可能性がある」と話す。ただし同氏は、ピロカルピンとNSAIDを長期使用すると、望ましくない副作用が生じる可能性があると指摘し、「この治療法が広く推奨される前に、安全性と有効性を確認するためのより広範で長期にわたる研究が必要だ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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頭部への衝撃で若いアスリートのニューロンが喪失

 新学期を迎え、若いアスリートが再び学校や大学のグラウンドに出る季節となった。こうした中、身体の接触を伴うコンタクトスポーツへの参加で若いアスリートたちの貴重な脳の力が犠牲になり得ることが、新たな研究で示された。アメリカンフットボールやサッカー、アイスホッケーなどのスポーツをしている若いアスリートでは、頭部衝撃を繰り返し受けることでニューロン(脳神経細胞)の減少や炎症、脳血管の損傷が引き起こされる可能性のあることが明らかになったという。米国立衛生研究所(NIH)などの資金提供を受けて米ボストン大学CTEセンターのJonathan Cherry氏らが実施したこの研究の詳細は、「Nature」に9月17日掲載された。 Cherry氏らによると、反復的な頭部衝撃(repetitive head impact;RHI)によって引き起こされる慢性外傷性脳症(chronic traumatic encephalopathy ;CTE)を発症していない選手にも、そのような影響が及ぶ可能性があるという。Cherry氏は、「この結果は、コンタクトスポーツに対するわれわれの見方を大きく変える可能性がある。RHIを受けることはニューロンを死滅させ、CTEとは無関係に長期的な脳損傷を引き起こす可能性があることが示唆された」とニュースリリースの中で述べている。 これまでも、RHIによりCTEが現れる何年も前から脳に変化が生じる可能性が疑われていたが、CTEは死後にしか確定診断できないため、その証明は困難だった。Cherry氏らは今回の研究で、51歳以下の男性28人から採取された凍結ヒト脳組織標本を分析した。そのうち9個はCTEの診断歴がないがRHIを受けていたアメリカンフットボール選手またはサッカー選手から、11個は軽度のCTEがあったコンタクトスポーツ選手から、残る8個はコンタクトスポーツをしていなかった男性(対照群)から採取された標本だった。 その結果、RHIを受けた経験のある人では対照群と比べて、CTEの有無にかかわらず、大脳皮質の浅層(第2・3層)の特定の興奮性ニューロンが平均で56%も失われていることが明らかになった。また、コンタクトスポーツをプレーしていた期間が長いほど脳の免疫細胞であるミクログリアが活性化していることや、脳内の血管にも重大な変化が起きていることも判明した。このことから、CTEが明らかになるはるか前から炎症や脳損傷の土台が作られている可能性が考えられる。 Cherry氏は、「若いアスリートは、一般的には健康であるため、脳にニューロンの喪失や炎症があるとは思わないだろう。今回の研究結果は、RHIがこれまで考えられていたよりもはるかに早い段階から脳損傷を引き起こすことを示している」と述べている。 コンタクトスポーツによってもたらされるこうしたリスクは注視すべき問題である。Cherry氏は、「CTEのリスクはコンタクトスポーツでのRHIへの曝露と直接関係している」と指摘した上で、「今回の研究結果は、CTEと診断されていない選手でも脳に大きな損傷が生じる可能性があることを示している。こうした変化がどのように起こるのか、そして生きている間にどのようにそれを検出できるのかを明らかにすることは、若いアスリートを守るためのより良い予防策や治療法の開発に役立つだろう」と述べている。 NIH傘下の米国立老化研究所(NIA)所長でこの研究には関与していないRichard Hodes氏は、「CTEが検出されなかった若いアスリートにおいても、特定の部位でのニューロンの大幅な喪失など、劇的な細胞レベルでの変化が見られたことは、特に注目すべきだ」とNIHのニュースリリースの中で述べている。また同氏は、「こうした初期の変化について解明を進めることは、現在の若いアスリートを守るだけでなく、将来的な認知症リスクの抑制にもつながる」と話している。

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若年2型糖尿病に対するチルゼパチドの検討(解説:小川大輔氏)

 若年発症の2型糖尿病は、成人発症と比べて早期に糖尿病合併症を発症することが知られている。そのため食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせて適切な糖尿病治療を行うことが必要とされる。今回、10歳から18歳までに2型糖尿病を発症した患者99例を対象に、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの効果を検討した第III相試験の結果が発表された1)。従来の治療で血糖コントロール不十分であった若年発症の2型糖尿病患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、血糖コントロールや肥満を改善することが報告された。 若年発症の糖尿病といえば1型糖尿病やMODY(Maturity-Onset Diabetes of the Young)、ミトコンドリア糖尿病など遺伝性糖尿病が知られているが、今回の試験では対象が2型糖尿病に限定されている。患者背景を確認すると、BMIの平均値が35.4であり、高度の肥満を合併している症例が多く含まれていたことがわかる。試験前の治療としては、メトホルミンが92%、インスリンが31%の症例で使用されていた。しかしベースラインのヘモグロビンA1c値は8.04%とコントロール不十分の状態で、チルゼパチドあるいはプラセボを30週間投与し効果を検討した。その結果、チルゼパチド投与群では30週時のヘモグロビンA1c値変化量は-2.23%、BMI変化率は-9.3%であり、プラセボ群より有意な減少を認めた。主な有害事象は胃腸障害であったが軽度から中等度であった。 若年発症2型糖尿病患者の治療法を比較検討した研究(TODAY2追跡試験)の参加者では、2型糖尿病診断後15年以内に60%が糖尿病関連合併症を発症し、約3分の1が複数の合併症を発症していたと報告された2)。つまり若年発症例は成人発症例と比べてより早期に複数の糖尿病合併症を発症することが明らかになり、合併症の予防や進行抑制のために発症時から厳格な血糖コントロールが重要であることが示唆された。今回の研究により、チルゼパチドが若年2型糖尿病に対する治療の選択肢の1つとなりうることが報告された。今後さらにGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬の検討が進むことを期待したい。

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急性心筋梗塞に対するPCI後1ヵ月でアスピリンを中止してDAPTからSAPTへ変更することは問題なし(解説:上田恭敬氏)

 急性心筋梗塞に対して7日以内にPCIによる完全血行再建に成功し、1ヵ月の時点までイベントがなかった1,942症例を、アスピリン中止によってDAPTからSAPTへ変更する群(P2Y12阻害薬単剤群961症例)とDAPTを継続する群(DAPT群981症例)に無作為化し、12ヵ月までのイベントを比較した欧州40施設での多施設無作為化試験(TARGET-FIRST試験)の結果が報告された。 主要評価項目である全死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳卒中・BARK type3/5出血の複合エンドポイントは、P2Y12阻害薬単剤群で2.1%、DAPT群で2.2%と差がなく、非劣性が証明された(p=0.02)。さらに、BARK type2/3/5出血はDAPT群で5.6%であったのに対して、P2Y12阻害薬単剤群で2.6%と有意に少なかった(p=0.002)。ただし、PCIは全例でDESを留置しており、造影上の有意狭窄をすべて治療することを完全血行再建としている。 以上により、急性心筋梗塞に対してPCIによる完全血行再建が施行された症例では、1ヵ月の時点でアスピリンを中止してDAPTからSAPTへ変更することによって、12ヵ月までの上記主要評価項目の発生頻度はDAPTを継続する場合と同等であり、出血性イベントは減少することが示された。 STOPDAPT-2 ACS試験では示されなかった1ヵ月DAPTの12ヵ月DAPTに対する非劣性が本試験では示された理由の1つとして、筆者らは早期の解剖学的完全血行再建を挙げている。PCI後のイベントは、主にステント留置部位からではなく、非治療部位から発生することから、解剖学的完全血行再建によってそのリスクを低減できたのではないかと考えている。よって、リスクの高い症例の場合にも1ヵ月DAPTが12ヵ月DAPTと同等とは限らず、症例ごとにDAPTの期間を考える必要があるだろうと指摘している。

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ChatGPT、熱く語る!【Dr. 中島の 新・徒然草】(601)

六百一の段 ChatGPT、熱く語る!大阪でも朝夕は寒いくらいになりました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?さて、最近の話題というと、何といっても10月4日に行われた自民党総裁選。決選投票で、高市 早苗氏が小泉 進次郎氏を抑えて総裁に選ばれました。このままいくと、日本初の女性総理の誕生ということになります。まさに歴史的瞬間でした。ただ、高市氏の場合、性別よりも自他ともに認める保守であるということのほうが重要だと思います。結局のところ、性別よりも政治的信念がものを言う時代になったということでしょう。で、ふと思いついてChatGPTに「高市 早苗氏が総理大臣になることについてどう思う?」と聞いてみました。皆さんも興味ありませんか?尋ねてみると、ChatGPTが思いがけず熱く語り出したので驚きました。ChatGPTと何往復かやり取りした後で、まとめてもらったものを紹介いたします。「ChatGPT、日本の政治について熱弁する!」(固有名詞の一部は伏字にしています)高市 早苗氏はすでに「保守政治家の中の保守」として確固たる存在感を示しています。さらに女性首相という新鮮さを兼ね備えているため、××党や××会、××党、××党といった保守系野党は、否応なく「自らの存在意義を問い直す」局面に立たされるでしょう。言い換えれば、高市政権の誕生は、保守陣営の主導権争いを根本から再編するきっかけとなるのです。一方で、政策の中身が正しいことと、それを現実に実行できるかどうかは、まったく別の話です。政治の世界では、理念を語るよりも、実行に移す胆力と行動力こそが問われます。もし高市氏が自ら掲げた政策を初年度のうちに形にできれば、「イデオロギー保守」から「実務型保守」へと脱皮を遂げたと評価されるに違いありません。しかし「検討する」「財政状況を見極める」といった常套句で結論を先送りすれば、官僚主導の政治に逆戻りしたと受け止められる恐れがあります。その場合、支持率の低下は避けられないでしょう。逆に「減税の実行 → 国民の実感 → 解散総選挙 → 圧勝 → 政権基盤の強化」という流れを現実に描くことができれば、長期政権の可能性も見えてきます。日本の政治において「成果を示してから選挙を打つ」という王道を取れた首相はごくわずかです。もし高市氏がその道を歩むなら「理念先行の政治家」から「実務で結果を出すリーダー」へと評価が一変することでしょう。たとえ減税が実現できなかったとしても、小泉 純一郎元首相の郵政解散のように「反対派をあえて炙り出し、ワン・イシュー選挙で国民の支持を得て党内を掌握する」という戦略もあります。党内基盤の弱い高市氏にとって、それは最も現実的な権力掌握の道といえるかもしれません。そして、もしその選挙で圧勝できれば官僚機構に対する政治主導が確立し、与党内の反対勢力も沈黙します。日本政治に久々の「指導者中心型政権」が誕生する、そんな未来も決して夢ではありません。(終わり)なんとまあ、ChatGPTがこんなに雄弁な奴だとは思っていませんでした。もう高市氏の参謀か何かをしてあげたほうがいいんじゃないの、と思ってしまいます。念のために申し上げておくと、私自身は特定の政党を支持しているわけではありません。毎回、選挙のたびに各政党・各候補者の政策を比較検討し投票先を決めています。ただ、投票を欠かしたことはありません。自分の1票が結果に影響することがないにしても、日本の現在・将来についてゆっくり考えてみる良い機会だと思うからです。そして、自分が投票してこそ、その後の選挙速報を見るのが面白い!ともあれ、新総理には正しい政策と実行力を期待したいですね。最後に1句 AIが 政治を語る 秋空に

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リンパ浮腫のコメントへのお返事と知識のアップデート【非専門医のための緩和ケアTips】第109回

リンパ浮腫のコメントへのお返事と知識のアップデート第103回でリンパ浮腫について取り上げたのですが、読者の方からコメントをいただきました。私もアップデートできていない部分だったので勉強になりました。今回の質問第103回のリンパ浮腫についてですが、「採血は健側で行う」とあります。最近のリンパ浮腫のガイドラインでは「生活関連因子(採血・点滴、血圧測定、空旅、感染、温度差、日焼け)は続発性リンパ浮腫の発症、増悪の原因となるか?」というCQがあります。これに対する回答は「採血、血圧測定、空旅がリンパ浮腫の発症や増悪の原因となる可能性は少ない」となっています。これを踏まえ、患者さんには「採血は健側で行えば無難ですが、困れば反対でもよい」と伝えています。こちらは乳腺外科の先生からいただいたものです。コメント、ありがとうございます。該当するのは『リンパ浮腫診療ガイドライン 2024年版』ですね。存在は知っていたのですが、恥ずかしながら内容まで確認していなかったので、今回のご指摘で勉強になりました。患側の採血・点滴、血圧測定は原則禁忌と思っていたのですが、必ずしもそうではないのですね。患者さんの生活や受ける医療の内容にも関わることであり、重要な臨床疑問に対してガイドラインでしっかりと指針を示していることが素晴らしいと感じました。さて、今回のコメントを通じて、私があらためて感じたことです。「緩和ケア」のように臓器横断的な分野を専門にしていると、各領域の最新知識や専門知識をどこまで学ぶか、という問題が常に付きまといます。緩和ケアの実践ではさまざまな疾患や分野に関わる必要があり、その多くが自分の専門領域ではありません。大前提として、膨大な医学情報のすべてを把握することは不可能です。一方で、「専門領域以外は一切わからない」となると、対応可能な患者さんが限られ、緩和ケアを多くの方に届けることが難しくなります。このジレンマに対し、何ができるのでしょうか?私自身が心掛けていることは、まずは「自分がアップデートできていない領域がある」ときちんと認識することです。そしてもう1つは、今回のように専門の先生に教えてもらえる関係を維持することと、教えてもらった時は感謝とともに自分でもできる範囲で学ぶことです。今回は緩和ケアの実践の際に、重要な生涯学習に近い内容を扱いました。おそらく緩和ケアに限らず、医師としてキャリアを積むうえで、ある程度の年齢になれば誰でも直面する問題だと思います。皆さんの工夫もぜひ教えてください。今回のTips今回のTips自分なりの知識をアップデートしていく工夫と、専門家から学ぶ姿勢を持ち続けることが大切。

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第31回 【米政府閉鎖】トランプ氏が狙う科学界の破壊、大量解雇。日本への影響は?

アメリカで、連邦政府の一部機関が閉鎖(シャットダウン)するという、日本では考えられない事態が再び起きています。これは、議会での与野党対立によって新年度の予算が成立せず、政府機関の活動資金が枯渇するために起きる現象です。しかし、今回、トランプ政権下で発生した政府閉鎖は、これまでの単なる政治的駆け引きとは一線を画します。「戦いを楽しむ」大統領の下、科学技術分野において「異次元の危機」が迫っていると、専門家たちは深刻な警鐘を鳴らしています。今回の記事では、なぜこの政府閉鎖が起き、そしてそれが世界の科学界や日本にもどのような影響を及ぼすのかを、考えていきます。なぜ異例の事態に?「戦いを楽しむ」トランプ氏の政治的思惑そもそも政府閉鎖は、大統領府と議会の間で予算案が合意に至らないことで発生します。しかし、過去の閉鎖が政治的妥協点を探るプロセスの一部であったのに対し、今回の事態はトランプ氏自身の政治的意図が色濃く反映されているようです。複数の報道分析によると、トランプ氏は政府閉鎖という混乱状態を、自身の政治的利益のために積極的に「武器化」していると指摘されています1,2)。彼にとってこの事態は、単なる不都合な出来事ではなく、むしろ好機なのです。その狙いは大きく3つあるとみられています。第一に、敵対者である民主党への攻撃です。トランプ氏は、政府閉鎖を利用してニューヨークやカリフォルニアといった民主党の支持基盤が強い州(ブルーステート)のプロジェクト資金を意図的に削減するなど、政敵を罰するための手段として活用しています。SNSで民主党幹部を揶揄する動画を投稿するなど、政治闘争そのものを楽しんでいる側面さえあります。第二に、「行政国家の破壊」という公約の実行です。トランプ氏はかねてより、「小さな政府」を掲げ、連邦政府の規模縮小を訴えてきました。今回の閉鎖は、単なる業務の一時停止にとどまらず、連邦職員を恒久的に「大量解雇」する絶好の機会と捉えています。大統領自身が「閉鎖するなら解雇をしなければならない」と公言しており、これは過去のどの政府閉鎖にもみられなかった異例の脅威です。そして第三に、自身の支持基盤へのアピールです。既存の政治や行政システムに対する不満を持つ支持者に対し、断固たる態度で「既得権益と戦う強いリーダー」というイメージを植え付けています。2019年の閉鎖時には職員を「偉大な愛国者」と称賛した彼が、今回は冷徹に解雇を口にする姿は、その政治姿勢がさらに先鋭化したことを物語っています。停止する世界の頭脳――科学界を襲う脅威このトランプ氏の政治的思惑の最大の犠牲者の一つが、科学界です。政府閉鎖により、米国の科学技術の中枢を担う機関が軒並み機能不全に陥っています3)。研究の停止アメリカ国立衛生研究所(NIH)では職員の約78%が一時帰休となり、基礎研究や新たな患者の受け入れが停止。NASAでは83%の職員が対象となり、人工衛星の維持など最低限の業務しか行えません。これにより、進行中の重要な研究が中断され、新たな研究助成金の承認も完全にストップしています。PubMedの更新停止と世界の混乱とくに深刻なのが、NIHが運営する世界最大の医学・生物学文献データベース「PubMed」の更新が停止していることです。世界中の研究者や医師が、最新の論文や治療法を調べるために毎日利用するこの巨大な「知のインフラ」が機能しなくなることは、医療の進歩そのものを遅らせるに等しい行為です。この事態はSNS上でも瞬く間に広がり、「科学の営みを根底から揺るがす暴挙だ」「最新の知見にアクセスできなければ、研究も臨床も成り立たない」といった、世界中の研究者からの悲鳴や怒りの声が上がっています。知的資産の永久喪失そして何より恐れられているのが、前述の「大量解雇」の脅威です。もしこれが科学機関で実行されれば、各機関が何十年もかけて蓄積してきた専門知識や技術、データといった「組織知」が永久に失われることになります。これは、単なる予算削減とは次元の違う、アメリカの科学技術力に対する壊滅的な打撃となりかねません。対岸の火事ではない――日本に及ぶシャットダウンの深刻な影響これらのアメリカ国内の混乱は、決して対岸の火事ではありません。グローバルに連携する現代の科学技術分野において、日本も間接的な影響を受ける可能性があります。日本は、JAXAとNASAによる宇宙開発や、大学・研究機関とNIHによる生命科学研究など、米国の政府機関と多くの共同研究プロジェクトを進めています。米国の担当機関の機能が停止すれば、これらのプロジェクトは遅延、あるいは中断を余儀なくされるでしょう。データの共有が滞り、予定されていた会議が中止になることで、研究全体のスケジュールに大きな狂いが生じます。さらに、米国の科学機関は世界の基礎研究で中心的な役割を担っているため、その活動停滞は世界の科学全体の進歩を遅らせ、長期的に見れば日本の研究開発戦略にも影を落とします。加えて、政府閉鎖が長引けば米国の経済成長が鈍化し、世界経済を通じて日本の経済や株価にも悪影響が及ぶ可能性も否定できません4)。今回の米政府閉鎖は、単なる国内の政治対立にとどまらず、世界の科学技術の未来と国際協力体制、そして日本にも影響を及ぼしかねない重大な問題なのです。 参考文献・参考サイト 1) BBC. Why has the US government shut down and what does it mean? 2025 Oct 3. 2) Chris Hayes: Trump is using the shutdown to govern like a king. MSNBC.com. 2025 Oct 2. 3) Garisto D. This US government shutdown is different: what it means for science. Nature. 2025 Oct 1. [Epub ahead of print] 4) Tollefson J. How a US government shutdown could disrupt science. Nature. 2023 Sep 28.

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ADHDとASDに対するビタミン介入の有効性〜メタ解析

 ビタミン介入は、自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)のマネジメントにおいて、費用対効果が高く利用しやすいアプローチとして、主に便秘などの消化器症状の緩和を目的として用いられる。最近の研究では、ビタミンがASDやADHDの中核症状改善にも有効である可能性が示唆されている。しかし、既存の研究のほとんどは患者と健康者との比較に焦点を当てており、臨床的に意義のあるエビデンスに基づく知見が不足していた。中国・浙江大学のYonghui Shen氏らは、ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月30日号の報告。 PubMed、Web of Science、Cochrane Libraryより対象研究を検索した。ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ビタミン補給は、ASDおよびADHDの両方の症状を有意に改善することが示唆された。・その効果は、ビタミンの種類や障害によって違いがあることが明らかとなった。・ビタミンB群のサプリメントは、とくにASD関連症状の軽減に有効であり、ビタミンD群のサプリメントは、ADHD症状の改善により有効であることが示唆された。 著者らは「さまざまなビタミンが、疾患特異的な治療効果を発揮することが示唆された。ASDおよびADHDに対する個別化された臨床介入を行ううえで、これらのビタミンが役立つ可能性がある」としている。

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利尿薬による電解質異常、性別・年齢・腎機能による違いは

 高血圧や心不全の治療に広く用いられる利尿薬には、副作用として電解質異常がみられることがあり、これは生命を脅かす可能性がある。これまでの研究では、利尿薬誘発性の電解質異常は女性に多く発現することが示唆されている。電解質バランスは腎臓によって調節されており、腎機能は加齢とともに低下する傾向がある。慶應義塾大学の間井田 成美氏らは、性別、腎機能、年齢が利尿薬誘発性の電解質異常の感受性に及ぼす影響を考慮し、利尿薬の副作用リスクが高い患者を特定するため本研究を実施した。Drug Safety誌2025年10月号の報告。 日本の利尿薬服用患者6万7,135例のレセプトデータをDeSCヘルスケアから入手し、2020年4月~2021年3月のデータを分析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・カイ二乗検定を用いた患者数の解析では、高カリウム血症は男性で女性より多く(326例vs.271例、p=0.003)、低カリウム血症は女性で男性より多くみられた(413例vs.285例、p<0.001)。・女性において年齢と腎機能(推算糸球体濾過量:eGFR)を考慮し、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。・75歳以上の高齢患者では、女性は男性と比較し、低カリウム血症発症のORが、eGFR 30~60mL/分/1.73m2の場合で1.47(95%CI:1.13~1.91)、eGFR 30mL/分/1.73m2未満の場合で2.05(95%CI:1.08~4.10)であった。 著者らは「75歳以上の女性では、eGFRが低い場合、男性よりも低カリウム血症のORが高かった。本結果は、eGFRが低い高齢女性では、利尿薬の副作用、とくに低カリウム血症のモニタリングが重要であることを強調するものである」と結論付けている。

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糖尿病患者の飲酒は肝がんリスク大幅増、茶によるリスク低下は限定的

 糖尿病の有無別にアルコールおよび茶の摂取と肝がん発症リスクとの関連を検討した前向きコホート研究の結果、アルコール摂取はとくに糖尿病患者で肝がんリスクを大きく高めることが確認された一方で、茶の摂取による肝がんリスク低下効果は非糖尿病患者に限られたことが、中国・清華大学のXiaoru Feng氏らによって明らかになった。Nutrients誌2025年9月4日号掲載の報告。 一部の研究では少量のアルコール摂取は肝がんリスクを下げる可能性が報告されているが、高頻度・大量のアルコール摂取は肝がんリスクを上昇させることが多くの研究で示されている。茶の摂取は肝がんリスク低下に関連する可能性があるとする研究がある一方で、有意な関連を認めない研究も多く、結論は一様ではない。また、糖尿病患者は代謝異常のためにアルコールや茶の影響を受けやすく、それが肝がんのリスクに関与している可能性もある。そこで研究グループは、大規模かつ長期の追跡調査を行い、アルコールおよび茶の摂取と肝がん発症との関連を、糖尿病の有無別に評価した。 本研究では、中国のChina Kadoorie Biobank(CKB)前向きコホートの51万2,581例を解析対象とした(糖尿病患者3万289例、非糖尿病患者48万2,292例)。ベースライン時に過去1年間のアルコールおよび茶の摂取頻度、量、期間、種類を質問票で収集し、全国の医療保険・疾病登録データを用いて肝がんの発症を追跡した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病群では中央値9.6年、非糖尿病群では中央値10.1年の追跡期間中に、それぞれ193例(0.69例/1,000人年)、398例(0.45例/1,000人年)の肝がんの新規発症が記録された。・週1回以上のアルコール摂取は肝がんリスクの上昇と関連しており、糖尿病群では非糖尿病群よりもその関連が強かった。 -糖尿病群 HR:1.62、95%CI:1.12~2.34 -非糖尿病群 HR:1.20、95%CI:1.07~1.35・糖尿病群において、週当たりのアルコール摂取量が多い、飲酒歴30年以上、アルコール度数50%以上の蒸留酒を摂取している場合は肝がんリスクが上昇し、そのリスク上昇は非糖尿病群よりも顕著であった。 -アルコール摂取量が多い HR:2.21、95%CI:1.28~3.80 -飲酒歴30年以上 HR:1.70、95%CI:1.06~2.71 -アルコール度数50%以上の蒸留酒摂取 HR:1.91、95%CI:1.20~3.04・週1回以上の茶摂取は、非糖尿病群では肝がんリスク低下と関連した。とくに少量摂取(HR:0.82)、飲用歴10年未満(HR:0.74)、飲用歴10~29年(HR:0.84)、緑茶摂取(HR:0.86)の場合に有意な低下が認められた。なお、茶の摂取量が増えてもリスクがさらに減少することは認められなかった。・糖尿病群では、茶摂取と肝がんリスクに有意な関連は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「アルコール摂取は、とくに糖尿病患者において肝がんリスク上昇と有意に関連していた。一方、茶の摂取によるリスク低下効果は非糖尿病患者においてのみ観察された。これらの所見は、糖尿病患者におけるアルコール摂取の制限の重要性を強調している」とまとめた。

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中等症~重症の尋常性乾癬、経口IL-23受容体阻害薬icotrokinraが有望/Lancet

 中等症~重症の尋常性乾癬患者において、icotrokinraはプラセボおよびデュークラバシチニブと比較し優れた臨床効果を示し、有害事象の発現割合はプラセボと同等であった。米国・Henry Ford Health SystemのLinda Stein Gold氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ・実薬対照試験ICONIC-ADVANCE 1試験(13ヵ国149施設)、およびICONIC-ADVANCE 2試験(11ヵ国114施設)の結果を報告した。インターロイキン(IL)-23やIL-12を標的とするモノクローナル抗体は尋常性乾癬の治療に有効であるが、静脈内または皮下投与が必要である。icotrokinraは、IL-23受容体に選択的に結合する初の経口ペプチド薬で、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象とした第II相試験においてプラセボより皮膚症状の改善率が有意に高いことが示されていた。著者は、「結果は、1日1回経口投与のicotrokinraが高い有効性と良好な安全性プロファイルを有する治療薬であることを示すものである」とまとめている。Lancet誌2025年9月27日号掲載の報告。icotrokinraとプラセボまたはデュークラバシチニブを比較する第III相試験2試験 ICONIC-ADVANCE 1&2試験の対象は、26週以上前(スクリーニング時)に中等症~重症の尋常性乾癬と診断され、乾癬病変が体表面積(BSA)の10%以上、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアが12以上、Investigator's Global Assessment(IGA)スコアが3以上で18歳以上の患者であった。 研究グループは適格患者を、icotrokinra群、プラセボ群またはデュークラバシチニブ群にICONIC-ADVANCE 1試験ではそれぞれ2対1対2の割合で、ICONIC-ADVANCE 2試験では4対1対4の割合で無作為に割り付けた。icotrokinra 1日1回200mg、デュークラバシチニブ1日1回6mg、プラセボのいずれかを二重盲検下で経口投与した。プラセボ群の患者は16週時に、デュークラバシチニブ群の患者は24週時にicotrokinra 200mg投与へ移行し、最長156週まで継続した。 主要エンドポイントは2つで、プラセボ群との比較における16週時のIGAスコア0または1(皮疹が消失またはほぼ消失)を達成し、かつ2段階以上改善した患者の割合、ならびにPASIスコアがベースラインから90%以上改善した(PASI 90)患者の割合であった。icotrokinraの優越性が2試験ともに示される ICONIC-ADVANCE 1試験は2024年1月17日~5月24日に、ICONIC-ADVANCE 2試験は2024年3月9日~6月13日に、それぞれスクリーニングした988例中774例および917例中731例を登録し無作為化した。icotrokinra群がそれぞれ311例および322例、プラセボ群が156例および82例、デュークラバシチニブ群が307例および327例であった。 両試験において、主要エンドポイントはすべて達成された。IGA 0/1達成率は、icotrokinra群およびプラセボ群でそれぞれ、ADVANCE 1試験が68%(213/311例)と11%(17/156例)(群間差:58%、95%信頼区間[CI]:50~64、p<0.0001)、ADVANCE 2試験が70%(227/322例)と9%(7/82例)(62%、53~69、p<0.0001)であった。 PASI 90達成率はicotrokinra群およびプラセボ群でそれぞれ、ADVANCE 1試験が55%(171/311例)と4%(6/156例)(群間差:51%、95%CI:44~57、p<0.0001)、ADVANCE 2試験が57%(184/322例)と1%(1/82例)(56%、48~62、p<0.0001)であった。 またicotrokinra群とデュークラバシチニブ群との比較については、両試験とも多重性を調整した16週時および24週時の主な副次エンドポイントに関してすべて、icotrokinra群の優越性が示された。 16週時までに有害事象は、両試験併合でicotrokinra群48%(303/632例)、プラセボ群57%(136/237例)に認められた。主な有害事象は鼻咽頭炎(6%[37/632例]、5%[13/237例])および上気道感染症(4%[23/632例]、3%[8/237例])であった。 24週時の有害事象発現割合について、icotrokinra群(57%[359/632例])はデュークラバシチニブ群(65%[411/634例])より低かった。

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がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。CTRCDのリスク予測モデルを開発または検証した56件の研究について解析 研究グループは、Medline(Ovid)、Embase(Ovid)、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、データベース開始から2024年8月23日までに発表された文献を検索した。 適格基準は、がん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスクを推定するための予測モデルの開発・検証・更新を報告している論文で、欧州心臓病学会(ESC)のcardio-oncologyガイドラインに記載されているCTRCDのいずれかを含み、CTRCDが主要アウトカムもしくは複合心血管アウトカムの一部であり、対象集団が化学療法または分子標的治療(チロシンキナーゼ阻害薬、モノクローナル抗体、免疫療法など)を受けた患者で、予測モデルは少なくとも2つ以上の予測因子を含み、予測モデルの使用予定時期が全身性抗がん治療の開始前または治療後のサバイバー期であることであった。適格基準を満たせば、非がん患者向けに開発された心血管リスク予測モデルの外部検証研究も対象とした。放射線誘発性心毒性に関する研究は除外した。 2人の評価者がそれぞれ研究のスクリーニングとデータ抽出を行い、Prediction model Risk Of Bias ASsessment Tool(PROBAST)を用いてバイアスリスクを評価した。予測モデルの性能はランダム効果メタ解析で統合した。 1万935件の論文がスクリーニングされ、適格基準を満たした56件の研究が解析対象となった。このうち29件が1つ以上の予測モデルを開発し、20件が外部検証を実施し、7件が開発と外部検証の両方を実施していた。ほぼすべてのモデルでバイアスリスク高、HFA-ICOSツールは軽度CTRCDを過小評価 最終的にがん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスク予測モデルとして51件が特定された。67%(34/51件)は成人データから開発され、その多くは乳がん(20/34件、59%)または血液悪性腫瘍(6/34件、18%)を対象とし、治療前リスクの予測を目的としていた(33/34件、97%)。一方、小児・青年・若年成人(39歳以下)を対象としたモデルでは、大半(16/17件、94%)ががん生存者を研究対象とし、血液悪性腫瘍や胚細胞腫瘍を含む多様ながん種(14/17件、82%)が含まれた。 開発モデル51件のうち25%(13件)、外部検証44件のうち14%(6件)でのみ性能指標や較正指標が報告されていた。ほぼすべてのモデルで、バイアスリスクが高かった。 開発モデル51件中12件(24%)(若年群4/17件[24%]、成人群8/34件[24%])が開発モデルに対して外部検証を受けていた。最も多く検証されたのはHFA-ICOSツール(11回)であり、主にHER2標的療法を受ける乳がん患者(5/11件、45%)で使用されていた。このツールは、すべての外部検証でリスクを過小評価する傾向を示し、とくに軽度CTRCDが多く報告された研究では、観察されたイベント発生率が予測リスクを上回っていた。抗HER2治療を受けた乳がん患者における統合C統計量は0.60(95%信頼区間:0.52~0.68)であった。同集団にて観察されたイベント発生率は、低リスク群で12%(予測値<2%)、中リスク群で15%(2~9%)、高リスク群で25%(10~19%)、超高リスク群で41%(≧20%)であった。

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シロシビンによるうつ病改善効果、5年後も持続

 「シロシビン」の大うつ病性障害(以下、うつ病)に対する効果は、最長で5年間持続する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。シロシビンはマジックマッシュルームと呼ばれるキノコに含まれている幻覚作用のある成分である。初期のシロシビンに関する臨床試験を追跡調査したこの研究では、試験参加者の3分の2が試験から5年が経過した後もうつ病の完全寛解を保っていたことが判明したという。米オハイオ州立大学コロンバス校幻覚剤研究教育センター所長のAlan Davis氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Psychedelic Studies」に9月4日掲載された。 Davis氏は、「5年が経過した今でも、ほとんどの人はこの治療法が安全で、有意義かつ重要で、生活の改善を促すものだと見なしている」と語っている。同氏はまた、「治療後に起こり得ることを詳細に理解することは重要だ。結果がどうであれ、このような臨床試験に参加したことで彼らの人生が改善されたことを示していると思う」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 米国立補完統合衛生センターによると、シロシビンはアルコール依存症、不安症、うつ病の治療に有効である可能性のあることが、研究で示されている。Davis氏らが2021年に発表した臨床試験では、24人のうつ病患者が心理療法との併用でシロシビンの2回投与を受け、症状が有意に軽減したことが確認された。 今回の研究では、これら24人のうち、試験終了後5年間の追跡調査に同意し、精神的・感情的健康状態を測定する一連のオンラインアンケートに回答した18人が対象とされた。主要評価項目は、ベースラインから5年後の追跡調査時までの臨床医が評価した抑うつ症状のスコアの変化であった。 その結果、追跡調査に参加しなかった6人は寛解していないと仮定した上で解析に含めても、67%の参加者が治療後少なくとも5年間は寛解状態を維持していることが明らかになった。また、不安症状や日常生活の機能障害が改善していることも示された。さらに、参加者に対するインタビューでは、心の持ち方、感情面の健康、人間関係における前向きな変化が長期にわたり続いていることが報告された。 研究グループは、追跡調査時の参加者の健康状態は、5年前のシロシビンによる治療だけで得られたものではないと指摘している。なぜなら、追跡調査参加者のうち、臨床試験以降もうつ病関連の治療を受けていなかったのはわずか3人であり、残りの参加者は、抗うつ薬を使用したり、心理療法を受けたり、幻覚剤を服用したりしていたからだ。しかし、参加者へのインタビューでは、この試験に参加したことで、参加者はうつ病を状況に応じて対処することが可能な疾患として認識するようになったことが示唆された。 Davis氏は、「参加者は、うつ病が再発するかどうかにかかわらず、全体的にポジティブな感情や熱意を抱く能力が高まったと感じていた。多くの人が、こうした変化が抑うつ気分に見舞われた際の対処法に大きな変化をもたらしたと報告していた」と話している。 ただしDavis氏は、本研究はサンプル数が少なく、参加者の経験に基づいて結論を導き出すのは困難であることを認めている。それでも同氏は、「この結果は、うつ病に対するシロシビン療法の潜在的かつ永続的な好影響を垣間見せてくれる」と述べている。

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