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「DNAR」を説明できますか?高齢者救急について日本救急医学会が提言

 日本救急医学会では、高齢者救急に関連する学会・団体と共同で、高齢者が救急医療を必要としたときに適切で意に沿った医療を受けることができ、その後も納得できる暮らし方を選ぶことができるようにすることを目的として、「高齢者救急問題の現状とその対応策についての提言2024」を策定、2025年2月号の学会雑誌に掲載した。医療・福祉従事者のほか、市民、施設職員、救急隊員などそれぞれの立場に向けて提言を提示している。また、高齢者救急に関する用語が正しく使用されていない状況があることから、臨床現場で正しく使用されるようになることを目的として、「高齢者救急に関する用語の統一概念」が策定された。医療従事者にも誤用がみられる「DNAR」 「高齢者救急問題の現状とその対応策についての提言2024」では、“高齢者の医療・ケアに日常的に関係する医療・福祉スタッフの方々へ”、“急性期〜慢性期病院の方々へ”などの形でそれぞれの立場に対して提言が示され、急変時の対応手順の例やアドバンス・ケア・プランニング(ACP)での対話を意味あるものにするための注意点などが示されている。 DNAR(do not attempt resuscitation)については、「患者本人または患者の意思を推定できる者の意思決定に沿い、心停止の際に心肺蘇生法(CPR)を行わないこと」であるが、医療従事者の間でも「DNAR」の提示があれば積極的な医療を行わなくてよいと誤認するなど、臨床現場で誤って使用されていることも少なくないと指摘し、“「DNAR」はあくまでも心停止時の対応であり、心停止でない急変時に救命処置を行わなくてよいということではない“と注意喚起している。「予想しない急変」「予想された急変」など、用語の統一概念を提示 2017年に発足した日本救急医学会の高齢者救急委員会において、DNARやACPなどの高齢者救急に関連する用語の統一概念の検討・定義が行われ、「高齢者救急に関する用語の統一概念」として策定された。 「予想しない急変」「予想された急変」「延命医療・延命措置」など、大きく15の項目について定義が簡潔に示されており、国内だけでも学会や医師会などで複数の定義が示されているACPに関しては、それらを一覧できる形で示している。

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臨床意思決定支援システム、不適切な画像診断依頼を減らせず/JAMA

 臨床意思決定支援システム(CDSS)を導入しても、大学病院における医師による不適切な画像診断依頼の数は減少しなかった。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのStijntje W. Dijk氏らが、CDSSとしての欧州放射線学会(ESR)iGuideの導入が医師の画像検査発注行動の適切性に与える影響を評価する目的で実施したクラスター無作為化臨床試験「Medical Imaging Decision And Support trial:MIDAS試験」の結果を報告した。医療画像診断が広く使用されていることを考慮すると、適切性を向上させるための介入の有効性を評価することは、医療資源と患者のアウトカムの最適化において非常に重要とされる。JAMA誌オンライン版2025年2月10日号掲載の報告。ドイツの3大学病院26診療科によるクラスター無作為化試験 研究グループは、ドイツの大学病院3施設の26診療科を対象にクラスター無作為化臨床試験を実施した。2021年12月~2024年6月の2.5年間にわたり、参加診療科の医師によるすべての画像診断依頼を対象とした。 全診療科においてCDSS非使用で試験が開始され、構造化された臨床適応データの入力と画像診断依頼の追跡が求められた。その後、無作為化され、13の診療科(クラスター)がCDSS介入を受け(介入群)、13の診療科は介入を受けなかった(対照群)。 介入群では、画像診断依頼が「適切」「条件付きで適切」「不適切」かの情報が医師に提示され、さらにCDSSより代替の診断検査とその適切性スコアが提案され、それに基づき医師は画像診断依頼の修正を選択することができた。 主要アウトカムは、診療科別の不適切な画像診断依頼の割合とした。差分の差分法を用い、CDSSを導入している診療科と導入していない診療科での不適切な画像診断依頼の割合の変化を比較した。CDSS導入前後で、不適切な画像診断依頼は減少せず 計6万5,764件の画像診断依頼がCDSSによりスコア付けされた。画像診断依頼の50.1%は女性患者に関するもので、患者の平均年齢は64歳(標準偏差17.1歳)であった。 CDSS導入前において、対照群の画像診断依頼は2万1,625件で、そのうち1,367件(6.3%)が不適切と分類された。また、介入群の画像診断依頼は1万3,338件で、そのうち1,007件(7.6%)が不適切と分類された。 CDSS導入後、不適切に分類されたのは、対照群で画像診断依頼1万55件中518件(5.2%)、介入群で7,206件中461件(6.4%)であった。 不適切な画像診断依頼の減少は、介入群で平均差-0.5%(99%信頼区間[CI]:-2.4~0.4)であり、対照群の-1.8%(-4.3~-0.4)と変わらなかった。差分の差分析の結果、群間差は1.3%ポイント(99%CI:-2.0~1.8、p=0.69)であり、統計学的な有意差は認められなかった。

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血栓溶解療法なしの急性期脳梗塞、nerinetideの有用性は?/Lancet

 シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95)を阻害するエイコサペプチドであるnerinetideは、発症後12時間以内の急性期虚血性脳卒中患者において良好な機能的アウトカムの達成割合を改善しなかった。重篤な有害事象との関連はみられなかった。カナダ・カルガリー大学のMichael D. Hill氏らが、カナダ、米国、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スイス、オーストラリア、シンガポールの77施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ESCAPE-NEXT試験」の結果を報告した。先行のESCAPE-NA1試験で、nerinetideは静脈内血栓溶解療法の非併用集団において機能的アウトカムの改善と関連していたが、血栓溶解療法との併用における有益性は確認されていなかった。著者は、「さらなる研究により、投与の最適なタイミングや、現在の再灌流療法との併用で有益性を得られる可能性のあるサブグループ集団を特定する必要があるだろう」とまとめている。Lancet誌2025年2月15日号掲載の報告。プラスミノーゲン活性化因子を投与していない急性期脳梗塞患者が対象 研究グループは、発症後12時間以内の前方循環系主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中の患者を登録した。 適格基準は、18歳以上、無作為化時点で障害を伴う虚血性脳卒中を発症(ベースラインのNIHSSスコア>5)、脳卒中発症前は地域社会で自立して生活しており(Barthel Indexスコア>90)、ASPECTS>4、プラスミノーゲン活性化因子による治療を受けていない患者とした。 適格患者を、インターネットを用いたリアルタイムの動的・層別・最小化法を用い、nerinetide群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。nerinetide群では推定体重または実測体重(判明している場合)に基づきnerinetide 2.6mg/kgを最高用量270mgまで、プラセボ群では生理食塩水をそれぞれ単回静脈内投与した。全例に血管内血栓除去術を施行した。 主要アウトカムは、無作為化から90日後の良好な機能的アウトカムで、修正Rankinスケール(mRS)スコア0~2と定義した。ITT解析を実施し、脳卒中発症から無作為化までの時間(≦4.5時間/>4.5時間)、年齢、性別、ベースラインのNIHSSスコア、閉塞部位、適格な画像診断から無作為化までの時間、ベースラインのASPECTS、および地域で補正した。副次アウトカムは、死亡率、脳卒中の悪化、機能的自立の改善、および神経学的障害であった。良好な機能的アウトカムの達成割合は、nerinetide群45%、プラセボ群46% 2020年12月6日~2023年1月31日に、850例がnerinetide群(454例)またはプラセボ群(396例)に割り付けられた。 主要アウトカムである90日時点のmRSスコア0~2を達成した患者の割合は、nerinetide群45%(206/454例)、プラセボ群46%(181/396例)であった。オッズ比は0.97(95%信頼区間:0.72~1.30、p=0.82)で、両群間に有意差は認められなかった。 安全性については(解析対象集団は試験薬の投与を受けた844例)、重篤な有害事象の発現率はnerinetide群41%(183/451例)、プラセボ群34%(134/393例)であり同程度であった。

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高齢透析患者のHb値と死亡の関連、栄養状態で異なる可能性/奈良県立医科大

 血液透析を受けている患者における最適なヘモグロビン(Hb)値は依然として議論が続いている。今回、日本における高齢の透析患者では、Hb値と死亡の関連は栄養状態によって異なり、栄養リスクの低い群ではHb値が10.0g/dL未満および13.0g/dL以上の場合に死亡リスクが増大したが、栄養リスクの高い群ではHb値が死亡に与える影響は弱まったため、栄養不良の高齢患者では貧血管理よりも栄養管理を優先する必要があることを、奈良県立医科大学の孤杉 公啓氏らが明らかにした。Journal of Renal Nutrition誌オンライン版2025年1月24日号掲載の報告。 貧血は血液透析を受けている高齢患者の一般的な合併症で、予後不良と関連している。高齢患者は栄養失調や蛋白・エネルギー消耗状態(protein-energy wasting)、フレイルになりやすい傾向があり、これらが貧血の経過に影響を及ぼすこともある。そこで研究グループは、血液透析を受けている高齢患者の最適なHb値は栄養状態などの全身状態によって異なるという仮説を立て、栄養状態別のHb値と死亡との関連を調査するために、2019~21年の日本透析医学会統計調査(JRDR)のデータベースを用いて観察研究を実施した。 解析対象は、週3回の血液透析を受けている75歳以上の9万5,771例であった。栄養指標であるNRI-JHを算出し、低リスク(<8点)、中リスク(8~10点)、高リスク(≧11点)の3つのグループに分類した。Hb値は、基準を10.0~10.9g/dLとして6つのグループに分類した(<9.0、9.0~9.9、10.0~10.9、11.0~11.9、12.0~12.9、≧13.0g/dL)。主要評価項目は全死因死亡であった。Hb値と死亡の関連はCox回帰分析を用いて推定した。非線形関係は制限付き3次スプライン解析を用いて検証した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値24ヵ月で2万7,611例が死亡した。・全体集団において、Hb値10~10.9g/dLの場合と比較して、10.0g/dL未満および13.0g/dL以上で全死因死亡リスクが増大した(<9.0g/dLの調整ハザード比[aHR]:1.21[95%信頼区間[CI]:1.16~1.26]、9.0~9.9g/dLのaHR:1.06[1.02~1.10]、≧13g/dLのaHR:1.15[1.07~1.22])。・NRI-JHリスク別の解析では、低リスク群でもHb値10.0g/dL未満および13.0g/dL以上で全死因死亡リスクが増大した(<9.0g/dLのaHR:1.45[95%CI:1.32~1.59]、9.0~9.9g/dLのaHR:1.15[1.08~1.22]、≧13g/dLのaHR:1.18[1.07~1.29])。・NRI-JH高リスク群では、Hb値が<9.0g/dLの場合でのみリスクがわずかに増大した(aHR:1.07[95%CI:1.01~1.15])。 これらの結果より、研究グループは「高齢の透析患者のうち、高リスクの栄養状態にある患者ではHb値が死亡に与える影響は弱まった。維持すべきHb値の範囲は栄養状態によって異なる可能性があり、血液透析を受けている栄養不良の高齢患者では貧血管理よりも栄養管理を優先する必要がある」とまとめた。

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血液検査で大腸がんを正確に検出/ASCO-GI

 実験的な血液検査をベースにした大腸がんスクリーニング検査により、平均的な大腸がんリスクを有する45歳以上の成人において、大腸がんを効果的に検出できることが示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のAasma Shaukat氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025、1月23〜25日、米サンフランシスコ)で発表された。Shaukat氏は、「このような血液検査は、大腸がんのスクリーニング検査の受診率を高めるのに役立つ可能性がある」と述べている。 現状では、大腸がんのスクリーニング検査のゴールドスタンダードは大腸内視鏡検査であるが、この検査では事前に下剤服用や食事調整などの準備が必要な上に、検査時には麻酔や鎮静薬を使用する。便中の血液の有無を調べる便潜血検査も大腸がんのスクリーニングに用いられるが、現在のガイドラインでは毎年の検査実施が必要である。こうした現状を踏まえてShaukat氏は、「便利で安全、かつ実施も容易な新たな大腸がんスクリーニング検査の手段が求められている」と話す。 Shaukat氏らの研究(PREEMPT CRC)は、全米200カ所以上の施設で登録された、平均的な大腸がんリスクを有する45歳以上の成人を対象に、Freenome社の血液検査をベースにした大腸がんスクリーニング検査の有効性を検討している最大規模の研究である。2024年の報告では、この検査は、大腸がんに対する感度が79.2%、advanced colorectal neoplasia(ACN;直径10mm以上の腺腫と大腸がんを包括する概念)に対する特異度が91.5%、ACNの陰性的中率(NPV)は90.8%、陽性的中率(PPV)は15.5%、進行前がん病変(APL)に対する感度は12.5%であることが報告されていた。 今回の研究では、この検査が標準的な米国人口においてどのように機能するかを評価するために、米国の年齢層や性別の分布に基づく重み付けを行った上で解析を実施した。解析対象は、PREEMPT CRCに登録された3万2,731人のうち、評価可能な血液サンプルと大腸内視鏡検査のデータが完備した2万7,010人(年齢中央値57.0歳、女性55.8%)であった。 その結果、大腸がんに対する感度は81.1%、ACNを持たない人に対する特異度は90.4%、ACNを持たない人に対するNPVは90.5%、ACNのPPVは15.5%、APLに対する感度は13.7%であることが示された。 この研究には関与していない、米イェール大学医学部消化器腫瘍学主任のPamela Kunz氏は、「この血液検査は、大腸がんスクリーニングの検査法の選択肢に新たに加わるものだ」と述べている。同氏は、「これらの結果は、このような血液検査が、平均的なリスクを持つ米国人口の大腸がんスクリーニング検査において、便利で効果的な選択肢となる可能性があることを示している」と話す。 研究グループは、大腸がんのスクリーニングの検査法としてのこの血液検査の長期的な影響について研究を続ける予定であるとしている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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脊髄刺激療法が脊髄性筋萎縮症患者の筋力回復を促す

 脊髄の硬膜外腔に挿入した電極を通して電気刺激を与える脊髄刺激療法が、脊髄性筋萎縮症(SMA)患者の筋肉の機能回復を促し、運動機能の強化や歩行機能の改善につながる可能性のあることが、新たな研究で示された。SMAは徐々に筋力が低下する遺伝性疾患の一つだが、1カ月間の小規模な予備的研究で、3人のSMAの成人にデバイスを植え込んで微弱電流で脊髄を刺激したところ、予想外の改善が認められたという。米ピッツバーグ大学のMarco Capogrosso氏らによるこの研究は、「Nature Medicine」に2月5日掲載された。 SMAは、脊髄から筋肉に信号を送る神経細胞である運動ニューロンに影響を及ぼす。これらのニューロンが衰えると筋肉が弱まり、歩く、立ち上がる、さらには呼吸することさえ困難になる。 脊髄刺激療法で植え込むデバイスは、下部脊髄に電気パルスを送り、時間の経過とともに弱くなった筋肉の活性化を促す。Capogrosso氏らは、3人のSMAの成人を対象に、1日に2時間、4週間にわたって、運動タスクを行っている間に脊髄刺激療法を行い、デバイスの電源がオンのときとオフのときの筋力や疲労度、可動域、歩行能力の変化を測定した。 その結果、この治療は正常な動きを完全に回復させるものではなかったが、顕著な改善が見られた。具体的には、参加者全員が、6分間歩行試験でより遠くまで歩けるようになり、この試験の評価尺度であるストライド速度が13〜114%改善した。また、研究開始時には膝をついた姿勢から立ち上がることができなかったある参加者は、研究終了時には立ち上がれるようになった。別の参加者では歩幅が3倍になった。 参加者の1人である米ニュージャージー州フランクリンパーク在住のDoug McCulloughさん(57歳)は、AP通信の取材に対して、「進行性の疾患というのは、安定しているか悪化しているかのどちらかであり、良くなるということは決してない。それゆえ、何であれ改善するのであれば、それは、これまででは考えられない極めて素晴らしい効果だと言える」と話している。 しかも、このような効果は、デバイスの電源を切った後もすぐには消失しなかった。時間の経過とともに効果は薄れていったが、治療後もしばらくの間、筋力の強化を感じた参加者もいた。AP通信によると、McCulloughさんは、デバイスの電源が入っていないときも自分の足が「まるでエネルギーに満ちあふれている感じがした」と表現したという。 この結果から、脊髄刺激療法がSMAや他の筋消耗性疾患の治療における新たなツールになり得ることが示唆された。ただし、今回の研究は短期研究であったため、対象者からデバイスを摘出しなくてはならなかった。McCulloughさんがこの治療を通して得た効果は、6週間後の検査の時点では残っていたが、6カ月後には消失していたという。 米ルイビル大学で脊髄損傷に対する刺激療法の先駆的研究を主導し、現在は非営利団体のケスラー財団に所属している神経科学者のSusan Harkema氏は、「今回の研究結果は重要なものだ」との見解を示している。同氏は、「人間の脊髄回路は極めて精巧にできており、脳により制御される反射神経の単なる集まりではない。本研究は極めて信頼性が高く、今後の進歩に寄与する重要なものだ」とAP通信に語っている。

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食物アレルギーの原因、直近10年の変化

食物アレルギーの原因として“木の実類”が増加◆“木の実類”の内訳は…◆調査年ごとの上位5品目の症例数比率(%=各品目の症例数/解析対象症例数)(%=各品目の症例数/解析対象症例数)40%16%39.0%15.2%鶏卵34.7%14%33.4%35.0%30%くるみ12%牛乳21.8%22.3%木の実類26.7%24.6%22.0%18.6%20%12.5%10.6%10%落花生5.1%2.3%13.5%13.4%8.8%5.6%3.6%8.2%5.1%6%8.1%7.0%6.1%n=6,033人2.9%20202023 [年]1.7%1.6%1.1%0.6%2017カシューナッツ4.6%2% 1.4%0%20145.2%4%0%20117.6%8%小麦11.7%10%0.1% 0.2%0%0%20112014マカダミア1.1%0.7%0.4%0.8%0.6%0.1% 0.4%201720202023 [年]アーモンドピスタチオ消費者庁「第7回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議(2025年1月25日開催)」資料「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」から「上位品目の症例数比率の推移」・「木の実類の症例数比率の推移」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ケアネットが役に立った!【Dr. 中島の 新・徒然草】(569)

五百六十九の段 ケアネットが役に立った!2月も終わりが近づいてきました。少しずつ日が長くなり、春の気配を感じます。来月には、もう少し暖かくなることを期待したいですね。さて、今回は「ケアネットが役に立った!」という話をしたいと思います。もちろん、普段からケアネットの記事は有用ですが、今回はとくに「これは!」と思う内容でした。それは、論文/ニュースの欄で紹介されていた、「急性期脳梗塞、EVT+高気圧酸素治療vs.EVT単独/Lancet」という記事です。実は私は以前から、急性期脳梗塞では高濃度酸素吸入が有効ではないかと考えていました。というのも、片麻痺のある陳旧性脳梗塞の患者さんに、マスクで10L/分程度の100%酸素を吸入してもらうと、一時的に麻痺が改善することがあるからです。これは外来でも簡単に試せるので、興味のある方は一度やってみてもよいかもしれません。酸素を吸入すると、一時的とはいえ麻痺のある手足の動きが改善し、びっくりさせられます。「陳旧性の脳梗塞ですら効果があるのだから、急性期ならなおさら効果が期待できるのではなかろうか。高濃度酸素吸入で閉塞血管再開通までの時間を稼ぐことができれば、最終的な転帰も改善するかも?」と私は思っていました。そこで、同僚のストロークチームの先生に「患者さんの搬入時に酸素吸入しているの?」と尋ねてみたところ、返ってきたのは「いやあ、あまりやっていませんねえ」という答え。しかし、今回の論文(Lancet. 2025;405:486–497)を読んで驚きました。まさに私が考えていたことが実際に行われていたのです。この研究では、血栓回収療法(EVT:endovascular thrombectomy)の適応となる急性期脳梗塞の症例が、以下の2群にランダムに振り分けられています。高濃度酸素吸入群- 非再呼吸マスクを用い、10L/分の100%酸素吸入- 気管挿管されている場合は100%酸素での換気シャム治療群(対照群)- 1L/分の100%酸素(低流量)- 気管挿管されている場合は30%酸素での換気いずれも、酸素吸入は4時間行われました。結果はどうだったか。高濃度酸素吸入群は、シャム治療群に比べ、90日後のmRSの中央値が1ポイント良好だったと報告されています。mRS(modified Rankin Scale)は、無症状(0)から死亡(6)までの7段階で機能予後を評価する指標であり、1ポイントの違いはADLに大きな影響を与えます。つまり、この研究によれば、血栓回収療法に伴う高濃度酸素吸入で転帰が改善する可能性が示唆されたのです。まさに、以前から私が考えていたことがこの論文で裏付けられた形になりました。マスクでの高濃度酸素吸入は、特別な手間もかからず、副作用のリスクもごく低いものです。この方法が今後、脳卒中治療の現場で広がっていく可能性は十分にあるのではないでしょうか。今回は、ケアネットで非常に有益な記事を見つけた、というお話でした。最後に一句春寒に わが意を得たり ケアネット

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せん妄時にハロペリドール5mg投与は適切か?【こんなときどうする?高齢者診療】第10回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2025年1月に扱ったテーマ「せん妄と認知症のBPSD:5つのMを使って症状と原因に対応する」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。高齢者診療において、認知症、せん妄、抑うつの3つは頻繁にみられる精神・認知にまつわる症状です。これらはオーバーラップし、併発することも多く、正確に3つを見分けることは非常に難しいのが現実です。しかし、安易に「せん妄」とラベリングをして身体拘束、薬剤対応をするのではなく、原因を考える視点が不可欠です。今回は、ケースを通じて、適切な評価と対応について一緒に考えていきましょう。85歳女性 呼吸困難を生じ自宅で転倒。救急を受診し、心不全急性増悪と診断される。尿閉はないが、「尿量把握」のため導尿カテーテル挿入、フロセミド投与による利尿処置を行い、入院治療・観察開始。既往症高血圧、心不全、2型糖尿病、CKDIII、軽度認知機能障害、TIA(3年前)入院1日目21:30心臓モニター、酸素飽和度モニター、末梢点滴、導尿カテーテルなどを開始された状態で病棟に到着。転倒防止のためにベッドアラームも開始された。22:30「不安を訴えた」ため頓服オーダーされていたロラゼパム服用。また痒み症状緩和のためジフェンヒドラミンを経口投与された。3:00不安と痒み症状は軽快せず、体動が続き、ベッドアラーム音により興奮症状が悪化。ベッドから起きてモニターを外し、病院を出ようと試みる過活動性せん妄と判断され、ハロペリドール5mg静注。投与後、就寝し興奮・行動症状は軽快。看護師の報告には「薬剤投与による良好な効果」と記載されていた。入院2日目8:00起床せず、朝食摂取なし。10:30ベッド上におり、ほぼ目を覚まさない。薬剤で興奮がおさまったのは、本当に「良好な効果」だったのか?ベッドサイドで対応した看護師からすると、“興奮症状が出て、指示に従わず自己離床し、病院から出ようとした患者が、薬剤投与後に落ち着いて就寝した。その後、アラームが鳴らず、転倒やモニター外しなどの行動も見られなかった”という状況は、薬剤投与による「良好な効果」に見えてしまうかもしれません。しかし、この状況の正しい解釈は何だったのでしょうか。この状況の適切な解釈のひとつは「過活動性せん妄が過鎮静され、眠ってしまった」ということです。過鎮静を「治療効果」と誤認してしまうと食事摂取量の減少、身体活動量の低下、廃用症候群の進行、転倒、誤嚥リスクの上昇、そして抗精神病薬による死亡率の上昇といった負の影響を招きます1)。薬剤による身体拘束(薬剤拘束)は避けるべき。それでも薬を使うならば-ハロペリドール、クエチアピンやオランザピンのような抗精神病薬は半減期が長いものが多く、高齢者では10時間以上効果が持続する場合もあります。これらの背景を考慮して安全に使用するには、効果が期待できる最少量から始める慎重さが必要です。もちろんどの程度の用量で効果を期待できるかは、患者の身体的な状況や行動精神症状により異なりますので、少量から始め、薬剤それぞれの最高血中濃度到達時間を目安に症状を再評価、薬剤による効果を確認します。※例:静注・筋注のハロペリドールの最高血中濃度到達時間は10~20分症状が治まらなければ再度同量、または必要に応じて増量し再評価。これを繰り返して患者ごとの「効果が確認できる最少量=適量」を見つける手順を踏むのが賢明です。しかし、薬の投与方法を変更することは対処方法のひとつではあるものの、薬剤による鎮静や精神行動症状への対応も「身体拘束のひとつ」であるという認識を持っておくことが重要です。アメリカの長期療養施設や回復期病院では薬剤的か機械的(拘束帯、抑制ミトンなどの使用)かを問わず、身体拘束の実施は行政から厳しく監視されており、実施率の高い病院や施設にはさまざまなペナルティや罰則が課されるとともに、その情報も一般公開されています。日本の身体拘束の実施率は世界と比較して高く、国内でも問題視されはじめていることは近年の診療報酬改定からも明らかです。身体拘束を極力行わないという時代の流れからも、せん妄対策は予防が最も優先されるべきである2)という自覚を持ち、非薬物対応を優先して考え続けることがすべての医療者に求められています。5つのMを使ってせん妄のリスクを見つけ、予防するでは、どのようにせん妄を予防したらよいのでしょうか?ここでも5つのMが役立ちます。5つのMを使って事前にリスク要因を見つけ、環境調整によってせん妄を予防することを考えてみましょう。Matters Most    安心できる環境の欠如Medication     ベンゾジアゼピン系薬、抗コリン薬、不適切な麻薬鎮痛薬使用、中枢神経に影響を及ぼす薬剤Mind       認知症、抑うつ、不安、意思疎通の不具合Morbidity    身体行動の制限、低栄養・脱水、身体の痛み、感覚器官の不具合、照明、部屋の明るさや騒音などの環境Multi complexity急な環境の変化、社会的孤立、家族の訪問などいかがでしょうか?こうしたアセスメントから、環境の変化や痛みが身体・精神・認知に過剰なストレスを与えているかもしれない、腹痛や便秘などがあってもそれを自覚できないかもしれない、あるいは自覚があっても訴え出ることができないのではないかという仮説を立てることができ、身体症状の解消を図るなどの予防的介入を考えられるようになります。せん妄はコモンに起きていて、しかも見逃されている急性期病棟では3人に1人が発症しているといわれるほど、せん妄の頻度は高いものです3)。問題行動が目立つ過活動性せん妄は発見される一方で、その3倍以上の患者が一見症状が顕著でない低活動性せん妄を生じているという報告もあります4)。低活動性のせん妄は見過ごされやすいことに加え、せん妄が生じた後の死亡率が上昇することはあまり周知されていません5)。これらの事実と向かい合い、せん妄を予防し、非薬物療法を最大限に活用し、薬物療法を最小限にすることが、患者の予後とQOLに結び付いているかお判りいただけると思います。これを機に、せん妄の予防にぜひ一緒に取り組んでいきましょう! せん妄のより詳しい対応策はオンラインサロンでオンラインサロンメンバー限定の講義では、問診や日々の観察でせん妄に気付くためのコツ、せん妄に対応するときに使えるHELPプログラムを解説しています。また、酒井郁子氏(千葉大学大学院看護学研究院附属病院専門職連携教育研究センター長)を迎えた対談動画で、看護からみた身体拘束についての学びもご覧いただけます。参考1)Dae H Kim, et al. J Am Geriatr Soc. 2017: Jun;65:1229-1237.2)Chiba Y, et al. J Clin Nurs. 2012 May:21: 1314-1326.3)Inoue SK, et al. N Engl J Med.2006:354:1157-1165.4)Curyto KJ. Am J Geriatr Psychiatry. 2001:9:141-147.5)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 112. 2020. 丸善出版

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出血リスクを比較、NOACs vs.アスピリン~9試験のメタ解析

 新規経口抗凝固薬(NOAC)とアスピリンは広く用いられているが、出血リスクの比較に関するデータは限られている。そこで、カナダ・マクマスター大学のMichael Ke Wang氏らの研究グループは、NOACとアスピリンを比較した無作為化比較試験(RCT)について、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、出血リスクを評価した。その結果、アピキサバンとダビガトランはアスピリンと比較して出血リスクを上昇させなかったが、リバーロキサバンは上昇させる可能性が示唆された。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年2月11日号に掲載された。 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.govより、2024年6月までに登録された研究のうち、NOACとアスピリンを比較したRCTを検索した。その結果、9つのRCTが抽出された。これらの研究のメタ解析を行い、大出血、頭蓋内出血のリスクを比較した。 主な結果は以下のとおり。・抽出された9つのRCTの内訳は、アピキサバンとアスピリンの比較が5試験、ダビガトランとアスピリンの比較が2試験、リバーロキサバンとアスピリンの比較が2試験であった。・対象患者は2万6,224例で、平均年齢は67歳、男性は58%、平均追跡期間は20ヵ月であった。・アスピリンの用量は、8つのRCTで81~100mg/日であった(アピキサバンとアスピリンを比較した1つのRCTで81~324mg/日)。・大出血、頭蓋内出血について、いずれのNOACもアスピリンと比べて有意なリスク上昇はみられなかったが、リバーロキサバンではリスクが高い傾向にあった。各NOACのアスピリンに対するリスク差および95%信頼区間は以下のとおり。【大出血】 アピキサバン:0.0%ポイント、-1.3~2.6 ダビガトラン:0.5%ポイント、-2.1~19.6 リバーロキサバン:0.9%ポイント、-0.1~3.7【頭蓋内出血】 アピキサバン:-0.2%ポイント、-0.6~1.4 ダビガトラン:0.0%ポイント、-1.1~24.5 リバーロキサバン:0.3%ポイント、-0.1~79.7 本研究結果について著者らは、信頼区間の幅が広いという限界が存在することを指摘しつつ「今回のシステマティックレビューおよびメタ解析では、アピキサバンとダビガトランは大出血の発現率がアスピリンと同程度であったが、リバーロキサバンはアスピリンより高い傾向にあった」と結論を述べている。

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拡大中のコロナ変異株LP.8.1のウイルス学的特性/東大医科研

 2025年2月現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のJN.1の子孫株であるXEC株による感染拡大が主流となっており、さらに同じくJN.1系統のKP.3.1.1株の子孫株であるLP.8.1株が急速に流行を拡大している。東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤 佳氏が主宰する研究コンソーシアム「G2P-Japan(The Genotype to Phenotype Japan)」は、LP.8.1の流行動態や免疫抵抗性等のウイルス学的特性について調査結果を発表した。LP.8.1は世界各地で流行拡大しつつあり、2025年2月5日に世界保健機関(WHO)により「監視下の変異株(VUM:currently circulating variants under monitoring)」に分類された1)。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月10日号に掲載された。 本研究ではオミクロンLP.8.1の流行拡大リスクおよびウイルス学的特性を明らかにするため、まずウイルスゲノム疫学調査情報を基に、ヒト集団内におけるオミクロンLP.8.1の実効再生産数を推定し、次に、培養細胞におけるウイルスの感染性を評価した。また、日本人の血清を用いて、オミクロン系統の流行株(JN.1とKP.3.3)の既感染もしくはブレイクスルー感染およびJN.1対応1価ワクチン接種により誘導された中和抗体が、LP.8.1に対して感染中和活性を示すか検証した。 主な結果は以下のとおり。・米国ではLP.8.1の実効再生産数はXECより1.067倍高かったが、日本ではLP.8.1とXECの実効再生産数の差は比較的小さく、1.019倍にとどまった。・疑似ウイルス感染アッセイの結果、LP.8.1の感染力はJN.1よりも有意に低く(67%減少)、XECとJN.1の感染力は類似していた。・中和アッセイを以下の3種類のヒト血清を用いて実施した:JN.1感染後の回復者血清、KP.3.3感染後の回復者血清、JN.1対応ワクチン接種者の血清。すべての血清群において、KP.3.1.1、XEC、LP.8.1は、JN.1に対してよりも高い免疫逃避能を示した。しかし、KP.3.1.1、XEC、LP.8.1の間で中和回避能力に有意な差は認められなかった。 本結果により、LP.8.1がJN.1よりも感染力は低いが、より高い免疫逃避能を獲得し、現在主流のXECよりも高い伝播力(実効再生産数)を有することが明らかとなった。著者らによると、一部の国でLP.8.1がXECより優位になっている理由は、各国の免疫背景、SARS-CoV-2感染歴、ワクチン接種状況に依存している可能性があるという。LP.8.1は今後全世界に拡大し、主流株として台頭する恐れがある。

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乳がん発見のためのWGSを用いたctDNAアッセイ

 乳がんにおいて、全ゲノムシークエンス(WGS)を用いた循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイにより、ベースライン時および追跡調査時の検出が改善され、臨床的な再発診断までの期間(リードタイム)が長くなることが、英国・The Institute of Cancer ResearchのIsaac Garcia-Murillas氏らによる後ろ向き研究で示唆された。Annals of Oncology誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。 ctDNAに基づく分子的残存病変(MRD)の検出は、再発リスクの高い患者を特定するための戦略となる。今回、WGSに基づく超高感度のtumor-informed ctDNA プラットフォームを使用して早期乳がん患者のプロファイリングを実施した。本研究では、転移のない原発性乳がん78例(トリプルネガティブ乳がん23例、HER2+乳がん35例、HR+乳がん18例、不明2例)の血漿617検体(中央値:8、範囲:2~14)を分析。検体は、診断時(治療前)、術前化学療法の2サイクル目、術後(術前化学療法を受けた場合)、術後1年間は3ヵ月ごと、その後は6ヵ月ごとに採取された。血漿DNAはNeXT Personal MRDプラットフォームを用いて分析され、1例当たり1,451バリアント(中央値)を追跡する個別化ctDNAシークエンスパネルを作成した。MRD検出は臨床転帰と相関していた。  主な結果は以下のとおり。・ctDNAは2.19~204,900PPM(中央値:405)の範囲で検出され、検出されたctDNAの39%は100PPM未満の超低レベルであった。・診断時の検体があった50例中49例(98%)は、治療前にctDNAが検出されていた。・追跡期間中央値76ヵ月(範囲:5~118)において、ctDNAの検出は、再発高リスク(log-rank検定:p<0.0001)と全生存期間の短縮(p<0.0001)に関連し、ctDNA検出から臨床的な再発までのリードタイム中央値は15ヵ月(範囲:0.9~61.5)であった。・再発した11例すべてでMRDが同定され、MRD初回検出時のctDNA中央値は13.1PPMであった。・ctDNAが検出されなかった64例はすべて、追跡期間中に再発がみられなかった。・エクソームを用いたMRD検出アッセイより、感度とリードタイムが改善した。 本研究の結果、全ゲノムを利用したMRDアッセイでは乳がん再発までのリードタイムが長く、無再発生存と強く関連していた。また、診断時のctDNA検出率は、エクソームを利用したtumour-informedアッセイで報告された検出率より高かった。

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朝食の習慣や質と抑うつ症状との関連

 朝食は、1日で最も重要な食事とみなされることが多く、身体的および精神的健康に影響を与えると考えられる。多くの研究では、朝食を抜くことがうつ病に及ぼす影響に焦点が当てられているが、朝食の質や朝食時間について調査した研究はほとんどない。中国・西安交通大学のMengzi Sun氏らは、朝食習慣および朝食の質と抑うつ症状との関連性を調査した。Journal of Affective Disorders誌2025年4月15日号の報告。 対象は、2007〜18年の全国健康栄養調査(NHANES)の20歳以上の参加者2万3,839人。朝食習慣は、24時間食事回想法を2回実施して評価した。朝食摂取の有無とその時間を記録した。朝食の質を評価するため、朝食の質スコア(BQS)を算出した。抑うつ症状の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。関連性の評価には、バイナリロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・抑うつ症状のオッズ比(OR)は、朝食を想起しなかった人と比較し、1回想起した人で0.737(95%信頼区間[CI]:0.591〜0.919)、2回想起した人で0.766(95%CI:0.624〜0.939)であった。・朝食の質に対する抑うつ症状のORは、朝食の質が低い(BQS T1)群と比較し、朝食の質が中程度(BQS T2)群で0.895(95%CI:0.723〜1.108)、朝食の質が高い(BQS T3)群で0.716(95%CI:0.564〜0.908)であった(p for trend=0.013)。・朝食摂取時間に対する抑うつ症状のORは、午前8時より前に朝食を摂取した人と比較し、午前8〜9時に朝食を取った人で1.104(95%CI:0.888〜1.371)、午前9時以降に朝食を摂取した人で1.278(95%CI:1.030〜1.587)であった。 著者らは「朝食を抜くこと、朝食の質が低いこと、朝食摂取時間が遅いことは、抑うつ症状と独立して関連している」と結論付けている。

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抗CD3/CD20二重特異性抗体エプコリタマブ、再発難治性濾胞性リンパ腫に適応拡大の承認を取得/ジェンマブ

 ジェンマブは、2025年2月20日 、抗CD3/CD20二重特異性抗体エプコリタマブ(商品名:エプキンリ)について、2つ以上の前治療歴を有する再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1~3A)に対する用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省より取得した。 今回の承認はRR FLを含む成熟B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象に、エプコリタマブ単剤の安全性および有効性を評価した海外非盲検多施設共同第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-1/GCT3013-01試験)と国内第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-3/GCT3013-04試験)等の結果に基づいている。 海外第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-1/GCT3013-01試験、第II相パート インドレントB細胞性非ホジキンリンパ腫コホート)において、治療歴が2回以上のRR FL(Grade1~3A)患者128例を対象に行われ、全奏効率(ORR)は82.0%、完全奏効(CR)率は62.5%であった。同試験で別途設定されたFL最適化コホートでは、86例のFL(Grade1~3A)を対象に、サイトカイン放出症候群(CRS)を低減させるために推奨された3ステップ漸増について評価を行った。その結果、2ステップ漸減では66.4%であったCRS発現割合が48.8%となった。 国内第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-3/GCT3013-04試験、第II相パートFLコホート)は治療歴が2回以上のRR FL(Grade1~3A)を対象に行われ、ORRは95.2%、CR率は76.2%であった。両試験での主な副作用は、CRS、注射部位反応、発疹、好中球数減少等であった。追加された用法用量・再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫/高悪性度B細胞リンパ腫/原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade3B):2ステップ漸増・再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1~3A):3ステップ漸増

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米国、中絶禁止法施行の州で乳児死亡率が上昇/JAMA

 米国において中絶禁止法を導入した州では、施行後の乳児死亡率が、施行前の乳児死亡率に基づく予測値と比べて上昇したことが明らかにされた。乳児死亡の相対増加率は、先天異常による死亡で大きく、黒人や南部の州などベースラインの乳児死亡率が平均より高い集団でも大きかったという。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のAlison Gemmill氏らが報告した。最近の中絶禁止法の施行が乳児死亡率に及ぼす影響については十分に理解されておらず、また、中絶禁止法が乳幼児の健康における人種的・民族的格差とどのように相互作用するかについてはエビデンスが限られていた。JAMA誌オンライン版2025年2月13日号掲載の報告。2012~23年の全米データを解析 研究グループは、2012年1月~2023年12月までの全米50州およびコロンビア特別区(ワシントン)の出生および死亡証明書のデータから、生後28日未満の新生児および生後1年未満の乳児の死亡数、ならびに出生総数を半年ごとに集計した。 主要アウトカムは乳児死亡率(1,000出生当たり)で、全集団および人種/民族別、死亡時期別(新生児期vs.それ以外)、死因別(先天異常vs.それ以外)に算出した。 曝露要因は完全な中絶禁止または妊娠6週目以降の中絶禁止で、ベイズパネルモデルを用いて、それら中絶禁止を法的に導入した14州の乳児死亡率を、中絶禁止を法的に導入していない州の乳児死亡率ならびに当該14州の中絶禁止法施行前の乳児死亡率に基づく予測値と比較した。乳児死亡は中絶禁止法施行前より5.6%増加 中絶禁止法を導入した州では、施行後の乳児死亡率が予測値よりも高かったことが判明した(予測値5.93 vs.実測値6.26[/1,000出生]、絶対増加:0.33[95%信用区間[CrI]:0.14~0.51]、相対増加率:5.60%[95%CrI:2.43~8.73])。この結果、中絶禁止法が導入された14州において、中絶禁止が影響した期間の乳児の過剰死亡は478例と推定された。 非ヒスパニック系黒人集団では他の人種/民族集団と比較して乳児死亡率の上昇が大きく、乳児死亡数(/1,000出生)は予測値10.66に対して実測値11.81で、絶対増加は1.15(95%CrI:0.53~1.81)、相対増加率は10.98%(95%CrI:4.87~17.89)であった。 先天異常による乳児死亡(/1,000出生)は、予測値1.24に対して実測値1.37(絶対増加0.13[95%CrI:0.04~0.21]、相対増加率:10.87%[95%CrI:3.39~18.08])、先天異常以外の原因による乳児死亡(/1,000出生)は、予測値4.69に対して実測値4.89(絶対増加:0.20[95%CrI:0.02~0.38]、相対増加率:4.23%[95%CrI:0.49~8.23])であった。 テキサス州の動向が全体的な結果に大きな影響を及ぼしていることが認められ、南部の州のほうがそれ以外の州より大きな増加がみられた。

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世界初、遺伝子編集ブタ腎臓の異種移植は成功か/NEJM

 米国・マサチューセッツ総合病院の河合 達郎氏らは、遺伝子編集ブタ腎臓をヒトへ移植した世界初の症例について報告した。症例は、62歳男性で、2型糖尿病による末期腎不全のため69の遺伝子編集が施されたブタ腎臓が移植された。移植された腎臓は直ちに機能し、クレアチニン値は速やかに低下して透析は不要となった。しかし、腎機能は維持されていたものの、移植から52日目に、予期しない心臓突然死を来した。剖検では、重度の冠動脈疾患と心室の瘢痕化が認められたが、明らかな移植腎の拒絶反応は認められなかった。著者は、「今回の結果は、末期腎不全患者への移植アクセスを拡大するため、遺伝子編集ブタ腎臓異種移植の臨床応用を支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。69の遺伝子編集を組み込んだブタ腎臓を2型糖尿病による末期腎不全患者に移植 移植に用いたブタ(Yucatanミニブタ)は、3つの主要な糖鎖抗原を除去し、7つのヒト遺伝子(TNFAIP3、HMOX1、CD47、CD46、CD55、THBD、EPCR)を導入して過剰発現させ、ブタ内在性レトロウイルスを不活性化するなど、計69の遺伝子編集を組み込んだ。 レシピエントは、2型糖尿病による末期腎不全の62歳男性であった。心筋梗塞、副甲状腺摘出術が既往で、2018年に献腎移植を受けたが、2023年5月にBKウイルス感染および糖尿病性腎症の再発により移植腎が機能不全となり、血液透析中であった。 マサチューセッツ総合病院の集学的チームによる包括的評価と、独立した精神科医および倫理委員会による評価を経て、移植を実施した。 免疫抑制療法は、前臨床研究に基づき、抗胸腺細胞グロブリン(ウサギ)、リツキシマブ、Fc修飾抗CD154モノクローナル抗体(tegoprubart)および抗C5抗体(ラブリズマブ)、タクロリムス、ミコフェノール酸とprednisoneを併用した。移植腎は機能していたが、糖尿病性虚血性心筋症に伴う不整脈で心臓突然死 移植手術は、冷虚血時間4時間38分で終了した。移植したブタ腎臓は移植後5分以内に尿を産生し、最初の48時間で6L超に達した。その後、尿量は1日1.5~2Lで安定した。患者の血漿クレアチニン値は、術前の11.8mg/dLから術後6日目には2.2mg/dLに低下した。 術後8日目に血漿クレアチニンが2.9mg/dLに上昇し、発熱、圧痛、尿量の減少を認めたが、感染症の検査は陰性であった。抗体介在性拒絶反応が疑われたため、メチルプレドニゾロン、トシリズマブを投与した。投与前の腎生検で、急性T細胞介在性拒絶反応(Banffグレード2A)が確認された。 術後9日目および10日目にメチルプレドニゾロンおよび抗胸腺細胞グロブリンを投与し、タクロリムスとミコフェノール酸を増量し、さらに補体C3阻害薬のペグセタコプランを投与した。トシリズマブの追加投与は行わなかった。その後、患者の尿量は増加し、血漿クレアチニン値は低下した。 術後18日目、血漿クレアチニン値2.5mg/dLで退院した。34日目に再び上昇したが、水分補給により1.57mg/dLまで低下した。推算糸球体濾過量(eGFR)は40~50mL/分/1.73m2であった。 術後25日目に皮下創感染症が発生し、外科的に一部切開するとともに、抗菌薬(リネゾリド、メロペネム)の投与を開始し、排膿ドレナージを実施した。緑膿菌陽性の後腹膜貯留液が排出された。切開は37日目に閉鎖し、2週間培養陰性および腹部CTにより貯留液の消失が確認されことから、51日目にドレーンを抜去した。 術後51日目、患者は外来を受診した。水分摂取量が少なく血漿クレアチニン値が2.7mg/dLと比較的高値であったため、補液を実施した。それ以外は、うっ血性心不全の症状はなく、身体所見も腎臓超音波検査でも異常は認められなかった。血圧、心拍数、呼吸数もすべて正常であった。 しかし、夕方に突然、呼吸困難に陥り、蘇生に努めたが術後52日目に亡くなった。剖検の結果、重度のびまん性冠動脈疾患を伴う心臓肥大、びまん性左室線維化などが認められ、これらはすべて糖尿病性虚血性心筋症によるものと考えられた。急性心筋梗塞、肺塞栓症、肺炎、他の臓器の炎症または薬物毒性は認められなかったことから、重症虚血性心筋症に伴う不整脈による心臓突然死と結論付けられている。

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検査等の定型的な手技、過失責任は?【医療訴訟の争点】第9回

症例診療時の医療処置ではさまざまな手技が行われるが、患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に応じて手技内容が異なるものと、患者の病態により左右されることの少ない定型化された機械的所作の手技とがある。今回は、機械的所作と言いうる要素が比較的大きいマンモトーム生検における局所麻酔の手技の過失の有無等が争われた東京地裁平成28年5月25日判決を紹介する。<登場人物>患者43歳(被告病院初診時)・女性人間ドックにて左乳腺腫瘤疑いと指摘されて被告病院を受診。原告患者本人被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成23年(2011年)1月12日人間ドックを受診し、左乳腺腫瘤疑いを指摘された。1月19日被告病院を紹介受診。被告病院にて、超音波検査やマンモグラフィ検査、細胞診等を受けたが、積極的に悪性を疑わせる所見が認められなかったことから、約6ヵ月後に経過観察をする方針となった。<以後、数ヵ月ごとに被告病院を受診し、穿刺吸引細胞診、乳腺MRI検査等を受けた>平成24年(2012年)10月17日超音波検査及びマンモグラフィ検査を受けた。10月19日被告病院を受診し、主治医のA医師(乳腺外科15年目)より説明を受け、エコーガイド下マンモトーム生検を受けることとなった。なお、A医師は、「治療に関する説明・同意書」を用いて、同生検の目的や方法を説明したほか、生じ得る合併症として、発生頻度の比較的高い出血や皮下血腫などについては説明したが、「予想される不利益」として気胸についての記載はなく、A医師も気胸が発生する可能性については説明しなかった。10月30日エコーガイド下マンモトーム生検を実施するにあたり、B医師(研修医終了後3年目)が局所麻酔を行ったところ、手技中に咳き込み、マンモトーム生検は中止となった。室内気でSpO2 100%、血圧は150 mmHg台と高かったものの、その後、111/75mmHgに戻り、心拍数は86/分、呼吸音にラ音はなく、皮下気腫が生じた場合に生じる頸部皮膚の握雪感も認めなかった。気胸が生じた可能性を考慮し胸部X線検査を行ったが、異常所見は認められなかった。10月31日原告は胸痛が出現したため被告病院の救急外来を受診した。胸部X線検査で左気胸が認められたため、被告病院の呼吸器外科を受診し、胸腔ドレーン挿入などの治療を受けた。実際の裁判結果裁判所は、以下の点を指摘し、「原告に生じた左気胸は、マンモトーム生検の局所麻酔を行った際に胸腔内まで麻酔針が貫通し、肺を穿刺したことによって生じた医原性気胸である」と認定した。一般に、気胸の病因による分類の一つに、医療行為に伴う医原性気胸があること本件では、マンモトーム生検の局所麻酔を行っている最中に原告に咳嗽が生じ、気分不快等を訴えたことマンモトーム生検中止の直後から原告には胸痛や息苦しさが生じていたものと認められることマンモトーム生検を行った平成24年10月30日当日の胸部X線検査では、原告に明らかな異常所見は認められなかったものの、翌31日も、原告の胸痛等の症状が持続し、同日の胸部X線検査及び胸部単純CT検査において、左気胸と診断されたこと裁判所は、本件の局所麻酔について、以下の点を指摘した。エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺による合併症として気胸を指摘する文献は証拠上見当たらないこと(生検に伴う「合併症」として「乳房が小さい場合や病変が深部にあるとき、まれに局所麻酔の注射針で気胸を生じることがある」旨の文献の記載があるが、これは直接的には摘出生検に係る記載であり、エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺に関するものとは読めないこと)エコーガイド下マンモトーム生検の局所麻酔を行うに当たっては、筋層直上に位置しており胸腔やその内部にある肺と至近距離にある部位(レトロマンマリースペース)まで麻酔針を到達させることが重要とされていることレトロマンマリースペースの位置からすると、麻酔針が胸腔内まで貫通し、肺を穿刺する一般的な危険性を有することは否定できないこと術者はモニター画面上で針先を中心に継続的な確認を行いながら自ら針の刺入等の操作を行っており、針先が明確に確認できなくなれば、針を回転させる等の方法で針先位置を確認し直した上で穿刺を継続し、あるいは刺入し直す等の方法で対応していること針治療や肺・胸腔穿刺(胸膜穿刺)、胸膜生検、中心静脈栄養法のための鎖骨下静脈穿刺、気管支鏡による経気管支肺生検なども同様に胸腔近傍において針の穿刺を行う手技ではあるが、エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の胸腔内への貫通によって気胸を生じる例が極めてまれであることエコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺については、一定の抽象的な危険性や制約はあるものの、突発的な体動の発生や超音波による描出が特に困難な事情等特段の事情があれば別論、一般的には前記のような手段を講じ通常の注意義務を尽くすことによって胸腔内への貫通を防止し得ることが通常であることかかる事項を指摘した上で、裁判所は、以下のとおり判示し、手技上の過失(注意義務違反)があったものと推認されるとした。「本件マンモトーム生検の局所麻酔において、超音波画像で麻酔針の針先が確実に描出できていなかった可能性をもって、原告に生じた医原性気胸が不可避であったものと断ずることはできず、本件マンモトーム生検の局所麻酔において原告の胸腔内まで麻酔針を貫通させ、肺を穿刺したことについて、B医師には、針先の十分な確認を怠り、あるいは、超音波画像の評価を誤って麻酔針を進入させた手技上の注意義務違反ないし過失があったものと推認せざるを得ない」その上で、過失を覆す証拠がないとして、本件マンモトーム生検の局所麻酔の手技の過失を認めた。注意ポイント解説本件は、専ら施術における機械的所作の手技により、発症率が極めて低い合併症が生じたことにつき、手技上の過失が認められた事案である。裁判所が、エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺については、一定の抽象的な危険性や制約はあることを指摘し、これによる気胸の合併症報告が極めてまれであること等を指摘し、通常の注意義務を尽くすことによって胸腔内への貫通を防止し得るとした上で、発生した合併症(気胸)について、「針先の十分な確認を怠り、あるいは、超音波画像の評価を誤って麻酔針を進入させた手技上の注意義務違反ないし過失があったものと推認せざるを得ない」としたことが注目される。かかる裁判所の判断は、患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に応じて手技内容が左右されることの少ない機械的所作の手技については、同様に当てはまる可能性がある。このため、機械的所作の手技の結果、発生がまれな合併症が生じた場合には、医療者の過失(注意義務違反)が推認される可能性があることに留意する必要がある。この場合、処置時(手技実施時)において、通常のケースと異なる配慮が必要な状態であったことや予想外の事態が生じたことをカルテ記載等で示せない限り、責任を回避することは困難と考えられる。医療者の視点本事案の裁判所の判断は、機械的所作とされる手技においても、術者の適切な確認が求められることを示しています。たとえば、中心静脈穿刺では、エコーガイド下であっても患者の体動や解剖学的個体差により、血管穿刺が困難になり、誤って胸膜を穿刺するリスクがあります。このような状況では、針先の動きを慎重にモニタリングし、異常があれば即座に対応する判断力が重要です。また、術中に通常と異なる状況が生じた場合、それを記録し、客観的な説明ができるよう備えておくことが、後のリスク管理につながります。安全な医療の提供には、技術の習熟だけでなく、想定外の事態に対応する柔軟な判断力と、それを記録・説明する意識が不可欠です。Take home message患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に応じて手技内容が左右されることの少ない機械的所作の手技の結果、発生がまれな合併症が生じた場合には、医療者の過失(注意義務違反)が推認される可能性がある。処置時(手技実施時)に通常と異なる事態が生じていたのであれば、そのことを記録しておく必要がある。キーワード合併症と医療者の責任合併症の中には、医療行為により不可避的に生じるものと、医療者の過失(注意義務違反)により生じるものとがある。悪しき結果が生じた場合にそのすべてが医療者の責任とされるものではないが、医療者の過失(注意義務違反)により生じたものについては、医療者に責任が発生する。このため、医療事故をめぐる紛争においては、患者側に生じた悪しき結果が、患者側の主張する医療者の過失(注意義務違反)によって生じたものであるのか、不可避の合併症であるのかが争われることも多い。この場合、医学文献・論文を用いての立証に加え、協力医の意見書の提出がされることや、裁判所の選任する鑑定医による鑑定がなされることもある。

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ASCO-GI 2025会員レポート

レポーター紹介2025年1月23~25日に米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)が米国・サンフランシスコで開催された。東北大学・腫瘍内科の笠原 佑記氏(上部消化器がん担当)と大内 康太氏(下部消化器がん担当)が重要演題をピックアップし、結果を解説する。食道がんPhase II study of neoadjuvant chemotherapy with fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel for resectable esophageal squamous cell carcinoma.(abstract#418)切除可能な局所進行食道扁平上皮がんに対する、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル(FLOT療法)による術前化学療法の安全性と有効性を評価した、日本発の第II相多施設共同試験の結果が報告された。病理学的奏効率(pRR)は43.4%(95%信頼区間[CI]:29.8~57.7、p=0.00002)であり、主要評価項目を達成した。また、R0切除率は83.0%、病理学的完全奏効率(pCR)は13.2%と良好な結果が得られた。とくに注目すべき点として、DCF(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)療法で課題とされる発熱性好中球減少症の発生率が1.9%と相対的に低かったことが挙げられる。これにより、FLOT療法は効果と安全性のバランスに優れた新たな治療選択肢となりうる可能性が示された。胃がんNivolumab (NIVO) + chemotherapy (chemo) vs chemo as first-line (1L) treatment for advanced gastric cancer/gastroesophageal junction cancer/esophageal adenocarcinoma (GC/GEJC/EAC): 5-year (y) follow-up results from CheckMate 649.(abstract#398)ニボルマブ+化学療法の有効性と安全性について、CheckMate 649試験の5年フォローアップデータが報告された。PD-L1 CPS≧5の患者群における全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブ+化学療法群で14.4ヵ月(95%CI:13.1~16.2)、化学療法単独群で11.1ヵ月(95%CI:10.1~12.1)であり、ハザード比(HR)は0.71(95%CI:0.61~0.82)であった。60ヵ月時点の生存割合は、ニボルマブ+化学療法群で16%、化学療法単独群で6%であった。昨年のASCO-GI 2024で報告された48ヵ月時点での生存割合(それぞれ17%、8%)と比較すると、ニボルマブ併用により生存率の改善と長期奏効がもたらされていることが示唆される。本試験の結果は、CheckMate 649試験が胃がんの1次治療の標準を大きく変えた重要な試験であることをあらためて認識させるものであった。Final analysis of the randomized phase 2 part of the ASPEN-06 study: A phase 2/3 study of evorpacept (ALX148), a CD47 myeloid checkpoint inhibitor, in patients with HER2-overexpressing gastric/gastroesophageal cancer (GC).(abstract#332)HER2陽性胃・食道胃接合部がんの2次・3次治療における、抗CD47抗体evorpacept併用療法の有効性と安全性を評価した第II相無作為化比較試験(ASPEN-06)の結果が報告された。evorpaceptは、CD47に対する高い親和性を持ちつつ、不活性化されたFc領域を有することで、従来のCD47阻害による課題の1つであった赤血球減少を回避しながら、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を増強することが可能な薬剤である。本試験では、トラスツズマブ+ラムシルマブ+パクリタキセル(TRP群)と、これにevorpaceptを併用した群(Evo-TRP群)に患者を無作為に割り付けた。奏効率(ORR)は、Evo-TRP群で40.3%、TRP群で26.6%であり、主要評価項目であるヒストリカルコントロール(ラムシルマブ+パクリタキセル療法、想定奏効率30%)との比較では統計学的有意差を示すことはできなかった(p=0.095)。しかしながら、治療前の生検にてHER2陽性が確認された患者に限定すると、Evo-TRP群の奏効率は54.8%と高く、evorpaceptが抗HER2療法の効果を高める可能性が示唆された。evorpaceptは、その作用機序からトラスツズマブ以外の抗体薬との併用においても抗腫瘍効果の増強が期待できる薬剤であり、今後のさらなる臨床応用の発展が期待される。大腸がんASCO-GI 2025では、切除不能大腸がんにおけるTargeted TherapyとImmunotherapyの双方においてPractice changingな発表が行われた。本稿では3つの注目演題を中心に報告する。BREAKWATER: Analysis of first-line encorafenib + cetuximab + chemotherapy in BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer.(abstract#16)1つ目の注目演題は、BRAF V600E変異を有する未治療の切除不能大腸がん患者を対象に実施されたBREAKWATER試験である。 BRAF V600E変異陽性大腸がんに対しては、BEACON試験(Kopetz S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1632-1643.)の結果から、現在は2次治療あるいは3次治療でエンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)の2剤併用療法もしくはエンコラフェニブ+セツキシマブ+ビニメチニブの3剤併用療法が標準治療として用いられている。2剤併用療法と3剤併用療法の使い分けについては、BEETS試験(abstract#164)の結果から2剤併用療法の有用性が示されたが、3ヵ所以上の遠隔転移など予後不良因子を有する群においては3剤併用療法が有用である可能性が示唆された。今回報告されたBREAKWATER試験は、 BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんに対する1次治療として、EC±化学療法と標準治療を比較した非盲検多施設共同第III相試験である。本試験は当初、EC群、EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の3群に割り付けを行う試験デザインで開始されたが、その後EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の2群に1対1で割り付ける試験デザインに変更された。2022年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)では、Safety Lead-inパートにおける忍容性とPK(薬物動態)の解析結果に加え、少数例での予備的なデータではあるが有望な抗腫瘍効果が示され、注目を集めていた。ASCO-GI 2025では、主要評価項目の1つであるEC+mFOLFOX6併用療法群および標準治療群における盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率の主解析結果、OSの中間解析結果および安全性に関する報告が行われた。EC+mFOLFOX6併用療法群に236例が、標準治療群に243例が無作為に割り付けられ、原発巣占居部位を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点での確定奏効率は、EC+mFOLFOX6併用療法群が標準治療群に比べて有意に高い結果であった(60.9%vs. 40.0%、オッズ比:2.443[95%CI:1.403~4.253]、p=0.0008)。中間解析時点でのOSの中央値は、EC+mFOLFOX6併用療法群で未到達(95%CI:19.8~NE)、標準治療群で14.6ヵ月(95%CI:13.4~NE)であり、immatureではあるがHR:0.47(95%CI:0.318~0.691)という驚くべき数値をもってEC+mFOLFOX6併用療法群で有意に延長していた(p=0.0000454)。Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)発現割合は、EC+mFOLFOX6併用療法群で69.7%、標準治療群で53.9%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。以上の結果を受け、FDA(米国食品医薬品局)は2024年12月に BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんの1次治療としてエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6併用療法を迅速承認しており、本邦においても承認が待たれる。また、今後は BRAF阻害薬がfrontlineで投与される可能性が高いことから、 BRAF阻害薬を含む治療に耐性となった BRAF V600E変異陽性切除不能大腸がんに対する2次治療以降の治療戦略の開発にも注目していきたい。First results of nivolumab (NIVO) plus ipilimumab (IPI) vs NIVO monotherapy for microsatellite instability-high/mismatch repair-deficient (MSI-H/dMMR) metastatic colorectal cancer (mCRC) from CheckMate 8HW.(abstract#LBA 143)2つ目の注目演題は、CheckMate-8HW試験である。MSI-HまたはdMMRの切除不能大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)として、現行のガイドライン(『大腸治療ガイドライン医師用 2024年版』大腸研究会編)では、第III相試験(KEYNOTE-177試験)の結果から1次治療においてはペムブロリズマブ単剤療法が、第II相試験(KEYNOTE-164試験、CheckMate 142試験)の結果からICI未投与の既治療例においてはペムブロリズマブ単剤療法、ニボルマブ(Nivo)単剤療法もしくはイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi+Nivo)併用療法がそれぞれ強く推奨されている。しかし、Nivo単剤療法とIpi+Nivo併用療法とを直接比較した試験はこれまでに行われていなかった。CheckMate-8HW試験は、ICI未投与のMSI-H/dMMR切除不能大腸がんを対象として、Ipi+Nivo併用療法の有効性と安全性をNivo単剤療法または医師選択化学療法と比較検討した多施設共同非盲検第III相試験である。昨年開催されたASCO-GI 2024では、本試験の主要評価項目の1つである1次治療におけるIpi+Nivo併用群と医師選択化学療法群とを比較したBICRの評価による無増悪生存期間(PFS)の解析結果が報告され、HR:0.21(95%CI:0.13~0.35)と大きなインパクトを伴ってIpi+Nivo併用群で有意にPFSが延長していた。ASCO-GI 2025では、もう1つの主要評価項目である、全治療ラインにおけるIpi+Nivo併用群とNivo単剤群とを比較したBICRの評価によるPFSの解析結果、および安全性に関する報告が行われた。Ipi+Nivo併用群に354例が、Nivo単剤群に353例が無作為に割り付けられ、PD-L1発現状態や遺伝子異常を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点でのPFSの中央値は、Ipi+Nivo併用群で未到達(53.8~NE)、Nivo単剤群で39.3ヵ月(22.1~NE)であり、Ipi+Nivo併用群で有意に延長していた(HR:0.62、95%CI:0.48~0.81、p=0.0003)。BICRに基づく確定奏効率は、Ipi+Nivo併用群で71%(95%CI:65~76)、Nivo単剤群で58%(95%CI:52~64)であり、有意にIpi+Nivo併用群で高かった(p=0.0011)。Grade3/4のTRAE発現割合は、Ipi+Nivo併用群で22%、Nivo単剤群で14%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。CheckMate-8HW試験の結果から、主要評価項目であるPFSの比較において、ASCO-GI 2024では標準化学療法に対する優越性が、今回のASCO-GI 2025ではNivo単剤療法に対する優越性が検証されたことから、Ipi+Nivo併用療法はMSI-H/dMMRの切除不能大腸がんに対する標準治療として確立されていくものと予想される。今後の課題としては、2剤併用療法を用いることで想定される免疫関連有害事象のリスクマネジメントが挙げられ、また本試験ではニボルマブの最長投与期間が2年に設定されていたため、長期病勢制御が得られた場合の適切な治療期間についてはさらなる検討が必要と考えられる。Final analysis of modified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab versus bevacizumab for RAS wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer: The DEEPER trial (JACCRO CC-13). (abstract#17)3つ目の注目演題は、DEEPER試験である。本試験はRAS野生型切除不能大腸がんの1次治療において、3剤併用化学療法(mFOLFOXIRI)のパートナーとして、抗EGFR抗体薬(セツキシマブ)と抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ)のいずれがより適しているかを比較検討した無作為化第II相試験である(Shiozawa M, et al. Nat Commun. 2024;15:10217.)。主要評価項目は最大腫瘍縮小率(DpR)に設定され、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)では、セツキシマブ(CET)併用群ではベバシズマブ(BEV)併用群に比べて有意にDpRが高いことが報告された。ASCO-GI 2025では、副次評価項目である生存期間(PFSおよびOS)に関する最終解析の結果が報告された。本試験ではCET併用群に179例、BEV併用群に180例が無作為に割り付けられ、それぞれ159例、162例がper protocol setとして解析対象となった。データカットオフ時点での左側症例におけるPFSの中央値はCET併用群で13.9ヵ月(95%CI:12.2~17.5)、BEV併用群で12.1ヵ月(95%CI:10.9~14.1)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.81[95%CI:0.63~1.05]、p=0.11)。左側症例におけるOSの中央値はCET併用群で45.3ヵ月(95%CI:37.6~53.1)、BEV併用群で41.9ヵ月(95%CI:34.1~48.7)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.85[95%CI:0.64~1.12]、p=0.25)。一方で、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例(178例)に対象を限定して行われた探索的な解析では、PFSの中央値はCET併用群で14.8ヵ月(95%CI:12.6~19.4)、BEV併用群で11.9ヵ月(95%CI:10.8~14.6)であり、CET併用群で有意にPFSが延長していた(HR:0.71[95%CI:0.52~0.97]、p=0.029)。OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.9~56.0)、BEV併用群で40.2ヵ月(95%CI:33.5~48.8)であり、CET併用群では50ヵ月を超えるOS中央値が示されたものの、統計学的有意差は認めなかった(HR:0.74[95%CI:0.53~1.05]、p=0.091)。さらに、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例から肝限局転移症例を除外して行われた探索的な解析(125例)では、OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.6~60.1)、BEV併用群で38.6ヵ月(95%CI:30.5~45.2)であり、CET併用群で有意にOSが延長していた(HR:0.60[95%CI:0.40~0.90]、p=0.014)。これらの結果から、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例、なかでも非肝限局転移症例においてはmFOLFOXIRI+セツキシマブ併用療法が有望な治療オプションとなる可能性が示されたが、皮疹や下痢などの有害事象発現のリスクや、あくまで探索的な解析結果である点には十分留意してdecision makingに反映する必要がある。なお、未治療のRAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例を対象とした非盲検多施設共同第III相試験(TRIPLETE試験、Rossini D, et al. J Clin Oncol. 2022;40:2878-2888.)では、抗EGFR抗体薬(パニツムマブ)に併用する化学療法として3剤併用療法(mFOLFOXIRI)の2剤併用療法(mFOLFOX)に対する優越性が検討されたが、積極的に3剤併用療法を選択するエビデンスは示されなかった。したがって、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例に対する1次治療において、抗EGFR抗体薬に2剤併用療法を選択するのか、3剤併用療法を選択するのかという点についても引き続き議論が必要であるが、DEEPER試験で示された転移臓器との関連がキーポイントとなるかもしれない。今回紹介した注目演題で検討された試験治療は、いずれも有望な抗腫瘍効果を示した一方で、従来の標準治療に比べて相応の有害事象発現リスクの上昇を伴うものである。今後のトランスレーショナルリサーチ(TR)研究によって、真にベネフィットが期待される患者集団の絞り込みや、耐性克服につながる治療戦略が開発されることを期待したい。

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