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インターネット配信によるアトピー性皮膚炎の認知行動療法

 インターネットを利用した認知行動療法(CBT)は、アトピー性皮膚炎の症状を改善する効果がみられ、治療者が費やす時間や手間などは少なくて済むことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のErik Hedman-Lagerlof氏らが行った無作為化試験の結果、明らかになった。アトピー性皮膚炎の皮膚症状は共通しており、激しいかゆみと慢性炎症による衰弱した皮膚の状態で特徴付けられ、アクセシビリティの高い行動療法が必要とされていた。結果を踏まえて著者は、「インターネットを利用したCBTは、共通した皮膚症状を有する患者に対して、効果的な補助行動療法へのアクセスを潜在的に増やすものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年5月19日号掲載の報告。 研究グループは、成人アトピー性皮膚炎患者に対するインターネットを利用した拡張性の高いCBTの有効性を調べるため、スウェーデンのストックホルムにある医科大学で無作為化試験を実施した。 スウェーデン全国から102例の成人アトピー性皮膚炎患者を集め、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方には12週間にわたる治療者ガイド下のインターネットCBTを提供し(51例)、もう一方には標準ケアについて示した説明書を与えた(対照群51例)。介入は2017年3月29日~2018年2月16日に行われた。最初の被験者がスクリーニングデータを提供したのは2016年11月27日、最後の1年フォローアップの評価が行われたのは2019年6月28日であった。 主要アウトカムは、Patient-Oriented Eczema Measureで測定したアトピー性皮膚炎の症状軽減の群間平均差で、12週の治療期間中のintention to treatをモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化を受けた102例は、平均年齢37(SD 11)歳、女性が83例(81%)であった。・主要解析の結果、インターネットCBTを受けた患者は対照群と比較して、Patient-Oriented Eczema Measureで測定したアトピー性皮膚炎症状の週当たりの軽減平均値が有意に大きく(B=0.32、95%信頼区間[CI]:0.14~0.49、p<0.001)、治療後の調整後効果量は中等量~大量であった(d=0.75、95%CI:0.32~1.16)。・副次解析において、インターネットCBTは、かゆみの激しさ、知覚ストレス、睡眠障害、うつ病も、有意に大幅に改善することが示唆された。・それらの恩恵は、フォローアップ12ヵ月時点でも維持されていた。・治療満足度は高く、また、治療者がインターネットCBT提供に要したのは、患者1人当たり平均39.7(SD 34.7)分であった。

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TN乳がんの術前化学療法、デュルバルマブ併用でOS改善(GeparNUEVO)/ASCO2021

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するデュルバルマブ+化学療法の術前治療の予後に関する有望な結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、ドイツ・German Breast Group(GBG)のSibylle Loibl氏から報告された。 本試験(GeparNUEVO試験)は、ドイツの臨床試験グループ(GBGとAGO-B)により実施された多施設共同のプラセボ対照第II相無作為化比較試験である。すでに2019年に、その主要評価項目である病理学的奏効率(pCR率)については報告されており、今回はその生存期間に関する追加報告である。・対象:腫瘍径2cm以上の未治療のTNBC(閉経状況、リンパ節転移状況は問わず)・試験群:デュルバルマブ1,500mg 4週ごと+nab-パクリタキセル125mg/m2/週 12週→針生検→デュルバルマブ1,500mg 4週ごと+エピルビシン・シクロホスファミド(EC)2週ごと8週→手術(Durva群:88例)・対照群:上記投与スケジュールと同様にデュルバルマブのプラセボを投与(化学療法は実薬投与)(Pla群:86例)・評価項目:[主要評価項目]pCR率(完全に残存腫瘍のないypT0 ypN0での割合)[副次評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、安全性、バイオマーカー検索など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値49.5歳、N+が約30%、核異型度3が約80%、デュルバルマブやプラセボの単剤投与歴ありが67%あった。・追跡期間中央値43.7ヵ月時点での3年iDFS率は、Durva群85.6%、Pla群77.2%、ハザード比(HR)は0.48(95%信頼区間[CI]:0.24~0.97)、p=0.0398、3年OS率は、Durva群95.2%、Pla群83.5%、HRは0.24(95%CI:0.08~0.72)、p=0.0108と、Durva群で有意に良好であった。・各群においてpCRが得られた症例と、得られなかった症例のOSを3年OS率でみると、Pla群ではnon-pCR例78.8%、pCR例88.9%、Durva群ではnon-pCR例92.0%、pCR例100%と、いずれの群でもpCR獲得症例で予後が良好であった(HR:0.27、p=0.012)。・これはiDFSでもDDFSでも同様の結果であった。 演者のLoibl氏は「TNBCへの術前化学療法へのデュルバルマブの併用は、DFS、OS共に有意に延長することが判明した。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(CPI)によるpCR獲得例と長期予後との関連性や、CPIを用いた術後療法についてはさらなる検討が必要である」と述べた。

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シスプラチン不適の尿路上皮がんに対するペムブロリズマブの長期追跡結果(KEYNOTE-052)/ASCO2021

 シスプラチン不適の進行性尿路上皮がん(mUC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブの単剤投与の長期追跡結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・シカゴ大学のP.H.O’Donnell氏から報告された。 本試験(KEYNOTE-052)は国際共同第II相試験である。主要評価項目である全奏効率(ORR)については2017年に報告されているが、今回は生存期間も含めた長期追跡の報告となる。・対象:シスプラチン投与に不適な未治療のmUC症例370例(PS0~2)・介入:ペムブロリズマブ200mg/回を3週間ごと投与・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員によるORR[副次評価項目]独立評価委員による無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は74歳、高PD-L1群は30%、PS2は42%、内臓転移あり85%であった。・2年間の薬剤治療を完遂した症例は11.9%であった(中止理由の59.5%は病勢進行)。・追跡期間中央値56.3ヵ月時点でのORRは28.9%(CR9.5%)であった。・PD-L1レベルによるORRは、高PD-L1群では47.3%(CR20.9%、PR26.4%)、低PD-L1群では20.7%(CR4.0%、PR16.7%)であった。・ITT集団でのOS中央値は11.3ヵ月、2年OS率は31.5%、4年OS率は10%であった。・OSをPD-L1レベルでみると、高PD-L1群の中央値は18.5ヵ月で、2年OS率46.9%、4年OS率31.9%であり、低PD-L1群ではそれぞれ、9.7ヵ月、2年24.3%、4年12.9%であった。・DoR中央値は33.4ヵ月であり、3年時点で奏効を保っている症例は44.8%であった。高PD-L1群の中央値は未到達、低PD-L1群では21.2ヵ月であった。・安全性プロファイルは、他の試験と同様であり新たな兆候はなかった。

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コロナワクチンで注目される有害事象、ワクチンなしでの発生率は?/BMJ

 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン関連の、とくに注目される15種の有害事象(AESI)のバックグラウンド発生率を8ヵ国のデータベースを基に調べたところ、年齢や性別によりばらつきがあることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らによる検討で明らかにされた。データベース間でも差が認められたという。ワクチン有害事象のバックグラウンド率は、ワクチン接種者の間で観察された割合のベースラインコンパレータとして機能することで、ワクチンの安全性を監視するうえで歴史的に重要な役割を果たしているが、研究結果を踏まえて著者は、「バックグラウンド率をサーベイランス目的で用いる場合は、同一のデータベースを使い比較する必要性が示唆された。事前に年齢や性別による差を考慮し、階層化や標準化が必要だ」と述べている。BMJ誌2021年6月14日号掲載の報告。脳卒中や心筋梗塞、肺塞栓症など15のAESI発生率を解析 研究グループは、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、オランダ、スペイン、英国、米国の8ヵ国の電子健康記録と医療費支払いデータを基に、COVID-19ワクチン関連の15のAESIに関するバックグラウンド発生率を定量化した。事前に規定した15のAESIは、非出血性・出血性脳卒中、急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、アナフィラキシー、ベル麻痺、心筋炎/心膜炎、ナルコレプシー、虫垂炎、免疫性血小板減少症、播種性血管内凝固症候群、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎だった。 AESI発生率は、年齢、性別、データベースにより層別化。発生率はランダム効果メタ解析を用いて別のデータベースとプール化し、国際医学団体協議会(Council for International Organizations of Medical Sciences:CIOMS)による頻度カテゴリーに従って分類した。データベースや年齢、性別によりAESI発生率に差 13のデータベースを基に、1億2,666万1,070人について2017年1月1日~2019年12月31日の間に365日以上の観察を行った(観察日は各年の1月1日)。 AESIバックグラウンド発生率は、データベースにより大きなばらつきがあった。たとえば、深部静脈血栓症の65~74歳女性の発生率は、英国CPRD GOLDデータベースでは387件(95%信頼区間[CI]:370~404)/10万人年だったが、米国IBM MarketScan Multi-State Medicaidデータでは1,443件(1,416~1,470)/10万人年だった。 AESI発生率は、年齢上昇に伴い増加するものもあった。具体的には、米国Optum電子健康記録データでは、男性の心筋梗塞発生率は、18~34歳では28件(95%CI:27~29)/10万人年だったが、85歳超では1,400件(1,374~1,427)/10万人年だった。 一方で、若年層に多くみられるAESIもあった。同健康記録データでは、男性のアナフィラキシー発生率は、6~17歳では78件(95%CI:75~80)/10万人年だったが、85歳超では8件(6~10)/10万人年だった。 メタ解析によるAESI発生率の推定値は、年齢および性別で分類された。

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中等~重症片頭痛へのeptinezumab、投与後4時間で症状消失/JAMA

 中等度~重度片頭痛の発症後1~6時間でのeptinezumab静脈投与は、プラセボと比較して頭痛消失までの時間を大幅に短縮したことが、米国・Palm Beach Headache CenterのPaul K. Winner氏らが、480例を対象に行った第III相無作為化試験の結果、示された。同消失までの時間中央値は、プラセボ群が9時間に対し、eptinezumab群ではその半分以下の4時間だった。吐き気や羞明など最も気になる症状の消失までの時間も、eptinezumab群で有意に短縮したという。eptinezumab静脈投与は、成人の片頭痛への予防投与が同国で承認されており、投与後1日目の予防効果が確立されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「発作中への投与の可能性および代替治療との比較が残された課題である」と述べている。JAMA誌2021年6月15日号掲載の報告。静脈投与開始2時間・4時間後の症状消失の割合をプラセボと比較 研究グループは片頭痛発生早期の段階におけるeptinezumab静脈投与の有効性と有害事象を評価する、第III相国際多施設共同並行群間二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施した。2019年11月4日~2020年7月8日にかけて、米国とジョージアの47の医療機関を通じて、片頭痛歴が1年超で、直近3ヵ月に片頭痛症状が4~15日/月認められた18~75歳を被験者として集めた。 被験者を2群に分け、一方にはeptinezumabを(100mg、238例)、もう一方にはプラセボを(242例)、中等度~重度片頭痛の発症後1~6時間に、それぞれ静脈内投与した。 有効性に関する主要エンドポイントは2つで、頭痛消失までの時間と、吐き気や羞明、雑音恐怖症といった最も気になる症状の消失までの時間だった。主な副次エンドポイントは、静脈投与開始2時間後の頭痛や最も気になる症状の消失、同4時間後の同症状の消失、24時間以内の救急的な治療薬の服用とした。最も気になる症状消失、プラセボ群3時間に対しeptinezumab群2時間 被験者480例(平均年齢44歳、女性84%)のうち、476例が試験を完了した。 頭痛消失までの経過時間中央値は、プラセボ群が9時間に対し、eptinezumab群は4時間と統計学的に有意に短縮した(ハザード比[HR]:1.54、p<0.001)。最も気になる症状の消失までの経過時間中央値も、それぞれ3時間と2時間で、eptinezumab群の統計学的に有意な短縮が認められた(HR:1.75、p<0.001)。 静脈投与開始2時間後に頭痛消失が認められたのは、プラセボ群12.0%、eptinezumab群23.5%(群間差:11.6%[95%信頼区間[CI]:4.78~18.31]、オッズ比[OR]:2.27[95%CI:1.39~3.72]、p<0.001)、最も気になる症状が消失したのは、それぞれ35.8%と55.5%(19.6%[10.87~28.39]、2.25[1.55~3.25]、p<0.001)で、いずれもeptinezumab群で有意に高率だった。これらの結果の有意差は、静脈投与開始4時間後でも継続して認められた。 24時間以内の救急的な治療薬の服用率も、プラセボ群59.9%に対し、eptinezumab群では31.5%と大幅に低かった(群間差:-28.4%[95%CI:-36.95~-19.86]、OR:0.31[95%CI:0.21~0.45]、p<0.001)。 治療関連有害事象は、プラセボ群10.3%、eptinezumab群10.9%で発生し、過敏症はそれぞれ0%、2.1%だった。救急治療を要した重篤な有害事象の発生はなかった。

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Ph陽性ALLへのポナチニブ・ブリナツモマブ併用療法は有望/ASCO2021

 新規診断または再発/難治性のフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対し、BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブ+二重特異性T細胞誘導抗体ブリナツモマブ併用の有効性と安全性を評価した第II相単群試験の結果を、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNicholas J. Short氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。忍容性は良好で、ほとんどの患者で化学療法および自家造血幹細胞移植(AHSCT)を必要とせず、とくに初発患者に有望な治療であることを報告した。 初発Ph陽性ALLにおいて標準療法とされる化学療法+第1・第2世代TKIの5年全生存率(OS)は30~50%であり、T315I変異例では最大75%で再発を認める。一方で、ポナチニブおよびブリナツモマブは、それぞれ高い奏効が報告されており、ポナチニブ+ブリナツモマブ併用の評価が行われた。・対象:18歳以上、新規診断または再発/難治性のPh陽性ALL患者、リンパ性移行期または急性転化期の慢性骨髄性白血病(CML-LBC)患者、PS≦2、35例・介入:[導入期:5サイクル]ブリナツモマブ(標準用量、4週投与2週休薬)+ポナチニブ(1サイクル目 30mgx1/1、2サイクル目以降はCMR達成後15mgに減量)[維持期]ポナチニブ15mgを少なくとも5年間、予防的髄腔内化学療法(メトトレキサート/シタラビン)12回・評価項目:[主要評価項目]初発患者:CMR、再発/難治性患者:ORR(完全奏効/不完全奏効[CR/CRp])[副次評価項目]無イベント生存率(EFS)、OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・治療を受けた35例(年齢中央値59歳、66%でBCR-ABL1転写産物p190確認)の内訳は、初発患者20例(62歳、77%)、再発/難治性患者10例(36歳、90%)、CML-LBC患者5例(70歳、0%)であった。・CR/CRp率は、全患者96%、初発患者100%、再発/難治性患者89%、CML-LBC患者100%であった。・CMRは、全患者79%、初発患者86%、再発/難治性患者88%、CML-LBC患者40%であった。・観察期間中央値12ヵ月における1年EFS率は、全患者で76%、初発患者93%、再発/難治性患者61%、CML-LBC患者60%であった。2年EFS率は、それぞれ70%、93%、41%、60%であった。・1年OS率は、93%、93%、80%、100%、2年OS率は80%、93%、53%、100%であった。・忍容性は良好で、ほとんどの有害事象はGrade1/2であった。Grade3の治療関連有害事象は、ポナチニブ関連ではリパーゼ上昇が2例(6%)、ALT情報、脳虚血、高血圧、膵炎、深部静脈血栓症がそれぞれ1例(3%)であり、ブリナツモマブ関連では脳症1例(3%)であった。 Short氏は、「Ph陽性ALLに対するポナチニブ+ブリナツモマブ併用療法の安全性、有効性が示された。化学療法やAHSCTを必要としないレジメンとして有望である」とまとめた。

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スクリーニング普及前後の2型糖尿病における心血管リスクの予測:リスクモデル作成(derivation study)と検証(validation study)による評価(解説:栗山哲氏)-1404

本論文は何が新しいか? 2型糖尿病の心血管リスクを、予知因子を用いてリスクモデルを作成(derivation study)し、さらにその検証(validation study)を行うことで評価した。ニュージーランド(NZ)からの本研究は、国のデータベースにリンクして大規模であること、データの適切性、対象者の95%がプライマリケアに参加していること、新・旧コホートの2者の検証を比較して後者での過大評価を明らかにしたこと、などの点で世界に先駆けた研究である。本研究のような最新の2型糖尿病スクリーニング普及は、低リスク患者のリスク評価にとっても重要である。リスクモデル作成研究(derivation study)と検証研究(validation study) 実地医家にはあまり聞き慣れない研究手法かもしれない。糖尿病や虚血性心疾患などにおいてリスク予測のためCox回帰モデルからリスク計算をし、それを検証する2段階の統計手法。症状や徴候、あるいは診断的検査を組み合わせてこれらを点数化し、イベント発症の可能性に応じ患者を層別化して予測する。作業プロセスは、モデル作成(derivation)と、モデル検証(validation)の2つから成る。モデル作成のコホートを検証に用いた場合、内的妥当性が高いことは自明である。したがって、作成されたモデルは他のコホート患者群に当てはめて外的妥当性が正しいか否かを客観的に検証する必要がある。心血管疾患リスクの推定は、複数の因子(例:治療法の変遷、危険因子にはリスクが高いもの[肥満]と低いもの[喫煙]があることなど)によって過大評価あるいは過小評価される可能性がある。結果の概要1)リスクモデルの作成(derivation study):2004~16年に行ったPREDICT試験を母体にしたPREDICT-1°糖尿病サブコホート試験(PREDICT-1°)において用いられたリスクの予測モデル因子は、年齢・性・人種・血圧・HbA1c・脂質・心血管疾患家族歴・心房細動の有無・ACR・eGFR・BMI・降圧薬や血糖降下薬使用、などである。これら糖尿病および腎機能関連の18の予測変数を有するCox回帰モデルから、5年心血管疾患リスクを推定した。2)リスクモデルの検証(validation study):2004~16年にかけて施行されたPREDICT-1°におけるリスク方程式を、2000~06年に行われたNZ糖尿病コホート研究(NZDCS)におけるリスク方程式にて外的妥当性を検証した。PREDICT-1°は追跡期間中央値5.2年(IQR:3.3~7.4)で、登録した46,625例の中で4,114件の新規心血管疾患イベントが発生した。心血管疾患リスクの中央値は、女性で4.0%(IQR:2.3~6.8)、男性で7.1%(4.5~11.2)であった。これに対して外的検証で用いたNZDCSにおいては心血管疾患リスクが女性では3倍以上(リスク中央値14.2%、IQR:9.7~20.0)、男性では2倍以上(17.1%、4.5~20.0)と過大評価されていることが示された。このことから、最近行われたPREDICT-1°は、過去に行われたNZDCSよりも優れたリスク識別性を有することが検証された。また、この新しいPREDICT-1°のリスク方程式によってリスク評価を行わない場合、糖尿病の低リスク患者を(新たに開発された)血糖降下薬などで過剰診療する可能性なども示唆された。糖尿病の心血管リスクスクリーニングの世界事情 先進国においては、強化糖尿病のスクリーニングを受ける成人が増加している。このため、これらの先進国では糖尿病患者の疾病リスク予測は、より早期と考えられる患者群(低年齢・軽度の高血圧や脂質異常症)に移行しており、より多くの患者が症候性になるより早期に糖尿病と診断されるようになってきた。ちなみにNZでは、スクリーニング検査の推奨項目として空腹時血糖値を非空腹時HbA1cに置き換えることにより、対象者の糖尿病スクリーニング受診率を向上させる新たな国家戦略を立ち上げ、2001年に15%、2012年に50%、2016年には対象者の90%で糖尿病スクリーニング受診という目標を達成してきた。一方、アフリカ、東南アジア、西太平洋ではスクリーニングによる診断よりは臨床診断が主体となるため、心血管疾患リスクスコアを過大評価している可能性がある。本論文から学ぶこと 最新のPREDICT-1°においては、HbA1cによるスクリーニングが普及し、心血管疾患のリスクが低い無症状の糖尿病患者が多数確認された。これにより2型糖尿病において早期発見・早期治療が可能になる。また、心血管疾患リスク評価式は、時代の変遷に応じて現代の集団に更新する必要がある。私見であるが、糖尿病への早期介入推奨の潮流は、たとえばKDIGO 2020年の糖尿病腎症治療ガイドラインなどにすでに反映されている。このガイドラインでは、腎保護戦略のACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬などの薬剤介入と平行して、自己血糖モニタリングや自己管理教育プログラムの重要性にも多くの紙面を割き言及している(Navaneethan SD, et al. Ann Intern Med. 2021;174:385-394. )。 翻って、本邦での糖尿病スクリーニングによる心血管リスク予測の課題として、国家レベルでの医療データベースの充実化、健診環境のさらなる改善、そして本研究におけるPREDICT-1°に準じた新たな解析法の導入などが考えられよう。

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時間の流れの不思議、時間軸を逆転し若返りは可能か!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第37回

第37回 時間の流れの不思議、時間軸を逆転し若返りは可能か!時間の流れの不思議については皆さんもご存じと思います。舌を出した顔写真でお馴染みの科学者アルベルト・アインシュタインが、運動や重力によって時間の進み方に違いが生じることを予言したのが「相対性理論」です。その理論によれば、「重力が小さい場所では、大きい場所より速く時間が進む」とされます。地上452メートルの東京スカイツリーの展望台では、地上よりも僅かに重力が小さくなります。その結果、1日あたり10億分の4秒の時間差があることが、超高精度時計である「光格子時計」を用いて実測されました。東京大学の香取 秀俊教授らのチームの研究成果で、英国の光学専門誌Nature Photonicsに掲載されています(Nat. Photonics 14, 411-415, 2020)。相対性理論は、宇宙規模で計測して初めて表現されるもので、実生活の時空間では無縁なものと感じがちですが、身近な観光名所の展望台でも時間が早く進むことが実証されたのです。この研究の意義は、正確に時間を刻む道具としてだけでなく、時空間のゆがみを計測する役割を時計に与えたことで、ノーベル賞級と評価されています。医学領域ではない英語の科学論文を読んでみるのも楽しいものです。相対性理論の理解は難しい私にとっても、やはり時間は不思議です。年齢が50歳を超えたころから、1日が、1年が、とても早く経過すると感じるようになりました。子供のころは時の流れがとても遅いものでした。春夏秋冬で季節は巡りますが、次の季節のイベントを待つことは不可能なほど時間の流れはゆっくりでした。今では、夏が来たかと思えば、秋などなかったように冬がやってきます。これを「ジャネーの法則」というそうです。フランスの哲学者であるポール・ジャネーが提唱した心理学用語で、時間の心理的長さは年齢に反比例する現象を指します。50歳では1年間は人生の50分の1ですが、5歳では5分の1です。1年という時間のスケールが、5歳の子どもに比べて50歳の大人は10分の1に感じるということです。多感な青春時代を過ごした高校生の3年間と、50歳からの3年間は同じ密度の時間とはまったく思えません。超高精度時計を持ち出すまでもなく、年齢によって時間の密度や価値は異なってくるのです。時間は人々にとって平等に流れますが、人の運命とは不思議なもので何時どんなことが起こるのかわかりません。自分にとっての転機は、3年ほど前から医学部の教官となり学生教育に関与するようになったことです。それ以前に市中病院に勤務していた時には、自分よりも高齢の患者さんと接する時間が大半を占めていました。若手の研修医の指導時間はありましたが限定的です。自分よりはるかに若い学生と毎日のように会話するようになり、時間の流れが変わった気がします。わずかにですが時間がゆっくりと過ぎるようになったのです。学生の時間軸に自分が同調してきたのかもしれません。幼稚園や小学校の先生は年より若く見えることが多いです。「子供たちに若さをもらってるのよ」と言う人もいますが納得です。自分は学生から若さを吸い取っているのかもしれません。「ジャネーの法則」を打ち砕いて、このまま若返っていくことを目指します。そのうち学生たちから若さだけでなく髪を奪い取ってやろうと目論んでいます。愚痴は言いませんが、医学部教授職は雑事に忙殺されます(明らかに愚痴です)。つらい仕事の毎日で、学生たちと議論したりする時間は、自分のとってはオアシスのように感じる楽しい時間なのです。

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「サビーン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第57回

第57回 「サビーン」の名称の由来は?販売名サビーン®点滴静注用500mg一般名(和名[命名法])デクスラゾキサン(JAN)効能又は効果アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の血管外漏出用法及び用量通常、成人には、デクスラゾキサンとして、1日1回、投与1日目及び2日目は1000mg/m2(体表面積)、3日目は500mg/m2を1〜2時間かけて3日間連続で静脈内投与する。なお、血管外漏出後6時間以内に可能な限り速やかに投与を開始し、投与2日目及び3日目は投与1日目と同時刻に投与を開始する。また、用量は、投与1日目及び2日目は各2000mg、3日目は1000mgを上限とする。 中等度及び高度の腎機能障害のある患者(クレアチニンクリアラン ス:40mL/min未満)では投与量を通常の半量とする。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人※本内容は2021年6月23日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年3月(改訂第4版)医薬品インタビューフォーム「サビーン®点滴静注用500mg」2)キッセイ薬品:SAVENE®injectable500mg

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第63回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(後編)

厚生労働省は年内にも承認の可否を判断こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。沖縄県を除く9都道県でやっと緊急事態宣言が解除されました。もっとも、店舗での酒類提供については若干緩められるものの、まだまだ厳しい制限が続きます。東京都の場合、「まん延防止等重点措置」に移行する21日以降は、1組2人以下や滞在90分以内などを条件に認められます。東京23区では午前11時~午後7時が提供可能時間ということです。居酒屋などの開店時間が早まり、「午後4時から飲み」が流行りそうですが、早晩、緊急事態宣言に逆戻りしそうな気もします…。さて、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手の、MLBオールスターゲームのホームランダービー出場が決定しました。オールスター戦前日、7月12日(現地時間)に行われるホームランダービーは賞金100万ドル、MLBのホームランバッターたちが真剣勝負で出場するイベントです。ただ、とてもハードな戦いで、かつてはこのダービーに出場して後半戦に調子を崩した選手もいるほどです。ケガだけには気をつけてほしいと思います。ところでこのホームランダービー、2年前は野球解説者の山下 大輔氏がレフトで解説中にホームランボールをキャッチし話題になりました。興味がある方はYouTubeで観てみてください。前回に引き続き、今回もアデュカヌマブについて、日本での承認の可能性と臨床現場への影響について考えてみたいと思います。前回も触れましたが、このアデュカヌマブ、日本国内でも2020年12月にバイオジェン・ジャパンが承認申請しています。申請した適応症は「アルツハイマー病」で、米国と同じです。厚生労働省は年内にも承認の可否を判断するとも報じられています。新聞やテレビの報道では、「早晩日本でも」という論調が多かった印象ですが、そうは簡単にはいかないと思われます。症状軽減に「効くか効かないかまだわからない」前回書いたように、アミロイドβの減少を根拠としたアデュカヌマブの「迅速承認」に対しては多くの疑義があり、かつ市販後の検証的試験(期限は2030年2月でまだ9年近くもあります)が求められています。第III相試験自体、認知機能低下抑制の効果に関するデータが統計的にもギリギリで、市販後の検証的試験において有用性を示すには対象患者のさらなる絞り込みが必要だろう、との専門家の指摘もあります。つまり、アミロイドβの減少効果はありそうだが、本丸である認知症の症状軽減については「効くか効かないかまだわからない」薬剤なのです。そんな薬剤を厚労省は果たして承認する(できる)のでしょうか。「条件付き早期承認」の対象は「重篤」な疾患日本にも米国の「迅速承認」と同じように「条件付き早期承認」の仕組みが医薬品医療機器等法で定められています。もっともこの条件付き承認には「患者数が少ないなどの理由で臨床第III相試験などの検証的臨床試験を行うことが難しい医薬品」で「適応疾患が重篤である」などの要件があります。「重篤」の意味としては、「生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患)」に加え、「病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾患」も入っています。ただ、アルツハイマー病は国内の患者数が数百万人規模と多く、疾患が「重篤」に当てはまるかどうかも微妙で、この仕組みを適用するかどうかはPMDAなど規制当局の判断次第です。適応をどうするかも大きな問題仮に承認されたとしても、課題は多く残されます。薬価(米国では年間約600万円)の設定もそうですが、それと関連して適応をどうするか、というのも大きな問題です。アデュカヌマブの臨床試験は軽度認知障害(MCI)と軽度認知症を対象に行われ、米国で承認された適応は「アルツハイマー病」です。「アルツハイマー型認知症」ではなく、アルツハイマー病となったということは、アルツハイマー病の診断基準(NINCDS-ADRDAの診断基準など/認知症の症状とアミロイドβなどのバイオマーカーの蓄積)をクリアすれば、症状がごく軽微の段階から重度まで広く治療の対象になり得る、ということです。仮に日本でも適応症が「アルツハイマー病」となった場合、いったいどの段階から薬剤の使用が認められるでしょうか。ちなみに日本の保険診療上、MCIは疾患ではなく、現状使用できる薬剤はありません(MCIはドネペジルも保険で使えません)。そうなると、MCIは除外して、アルツハイマー病ときちんと診断された人すべてに投与できるようにするのか、アルツハイマー病の中で適応範囲を(効くとされる軽症に)狭めるのか、気になるところです。おそらく、仮に承認されるにしても保険財政が逼迫している現状では、アルツハイマーと診断されたすべての人がアデュカヌマブを使用できるようにはしないでしょう。となると、脳内のアミロイドβの蓄積を測定してその値によって適応を決めるのが妥当な手法となりそうです。しかし、それでも実際には結構高いハードルがあります。現状、脳内のアミロイドβの蓄積の評価にはPET検査か髄液検査が必要とされていますが、高価であったり、あるいは侵襲性が高かったりするこれらの検査を「効くか効かないかまだわからない」薬剤を使用するために課すのでしょうか。そもそも数百万人規模にPET検査をしていては、それだけで保険財政が持ちません。ところで、シスメックスが血漿中のアミロイドβを測定する血液検査について、2021年度中の承認取得を目指しているとの報道もありました。シスメックスはエーザイと認知症領域に関する診断薬創出に向けた非独占的包括契約を結んでいます。ひょっとしたら、この新しい血液検査(PET検査よりも安価)とセットで、アデュカヌマブの承認が行われる可能性も考えられます。診断面ばかりに目が行き患者対応やケアは後回しの医師たちもう一つ危惧されるのは、現場の認知症診療やケアへの影響です。そもそも、日本の医師たちの多くは昔から認知症をきちんと診療しようとはしませんでした。1980年代、まだ老人性痴呆症と呼ばれていた頃、認知症は精神科領域の疾患であり、一般的な臨床医の関心外のことでした。その後、精神科病院への入院から、老人保健施設、グループホームなどの施設への入所が受け入れの中心となっていっても、最前線の現場では医師の介入はほとんど行われていませんでした。2004年、認知症と呼び名が変わり、患者対応やケアの仕方次第では問題行動が激減し、家族によるケアがスムーズになるケースが少なくないことがわかってきました。しかし、医師たちの多くはそうしたノウハウを学ぼうともせず、結果、家族に伝授することなく、漫然と認知症薬を投与、最終的にはグループホームなどを紹介し、お茶を濁してきました。アルツハイマー病の病態解明や薬剤開発が思うように進まなかったとはいえ、目の前の患者にできることをやってこなかった点は明らかに医師の怠慢と言えます。アデュカヌマブが承認されたとしても、医師たちは「どういう患者に使えるか」「アミロイドβの蓄積はどうか」といった診断面ばかりに目が行き、患者対応やケアはこれまで以上に後回しにされる危険性があります。「患者を診ず病気しか診ない」どころか、「患者を診ず検査値しか見ない」というわけです。6月9日、オンラインで行われたエーザイのメディア・投資家向け説明会で内藤 晴夫CEO(最高経営者)は認知症治療薬開発に対する思いを語りました。その中で、アルツハイマー病薬の価値について、「アルツハイマー病にかかる費用の特徴は、医療本体に関わるものより、介護による負担が大きい。これには、家族が介護をすることで就労の機会が減少することも含まれるし、介護には長期療養施設への入所なども含まれる。これらを複合的に評価することで、価値の全体像が見えてくる」と語ったそうです。アデュカヌマブは本当にそうした価値を創造できる薬剤なのでしょうか。逆に患者対応やケアをないがしろにする医師が増加し、グループホームなど認知症施設の需要がむしろ高まる可能性もあるのではと思いますが、どうでしょう。そう考えると、「承認はするが薬価基準を定めない」という究極の選択肢もあるかもしれません。薬価基準を定めないとは、つまり保険適用しない、ということです。現状、ED治療剤、男性型脱毛症治療剤など自由診療で用いられる薬剤がそれに当たります。そもそも認知症は疾患ではなく、脳の老化に過ぎないという立場に立てば、そうした対応もありかもしれません。ただ、日本の製薬メーカーも開発に当たった“世界初”の認知症治療薬に対して、日本政府がそうした“仕打ち”をするかどうか…。日本での承認の行方が気になります。

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オリゴ転移乳がん、サブタイプ別の予後良好因子(OLIGO-BC1サブセット解析)/ASCO2021

 日本、中国、韓国によるオリゴ転移乳がんに関する後ろ向きコホート研究(OLIGO-BC1)のサブセット解析として、乳がんサブタイプ別に各予後因子における全生存期間(OS)を検討した結果を、中国・Guangdong Provincial People's HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用およびECOG PS0が予後良好で、luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移が1個のみ、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していた。オリゴ転移乳がんの予後良好な因子を評価 本研究は、日本治療学会(JSCO)、中国臨床腫瘍学会(CSCO)、韓国臨床腫瘍学会(KSMO)によるFederation of Asian Clinical Oncology(FACO)が実施した国際的後ろ向きコホート研究で、ASCO2020では、局所および全身療法がオリゴ転移乳がん患者のOSを延長したこと、多変量解析からは、ある種の全身療法、若年、ECOG PS0、診断時Stage I、非トリプルネガティブタイプ、少ない転移個数、局所再発、長い無病生存期間においてOSが延長することを報告している。・対象:2005年1月~2012年12月に診断された、ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移乳がん(転移病変が少なく[5個以下、同一臓器に限らない]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患)で、全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)と局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法、経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)の併用、もしくは全身療法のみで治療された患者・評価項目:OS オリゴ転移乳がんをサブタイプ別に各予後因子におけるOSを検討した主な結果は以下のとおり。・オリゴ転移乳がん患者1,200例におけるオリゴ転移数は、578例(48%)で1個、289例(24%)で2個、154例(13%)で3個、102例(9%)で4個、77例(6%)で5個だった。・骨転移は301例(25%)、内臓転移は387例(32%)、局所再発は25例(2%)、多発性転移は404例(34%)で報告された。・luminalタイプは 526例(44%)、luminal-HER2タイプは189例(16%)、HER2タイプは154例(13%)、トリプルネガティブタイプは166例(14%)、その他は164例(13%)で報告された。・どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用、 ECOG PS0で生存ベネフィットが認められた。・luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移数1個、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していたが、トリプルネガティブタイプではこれら3因子による生存ベネフィットはなかった。・局所治療では、外科的切除と放射線療法の併用で生存ベネフィットがみられた。・リンパ節・肺・肝臓・骨転移において、転移数1個は2個以上に比べて5年OSが良好だった。 Wang氏は、「オリゴ転移乳がんは偶然にみつかるが、いくつかの症例は集学的治療で生存しうるようだ。予後良好な因子を評価し、局所療法を検討することは価値がある」と結論している。

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小児で新型コロナが重症化する3つの因子~日本含む観察研究

 日本、中国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、パキスタンのアジア7ヵ国における小児の新型コロナウイルス感染例の観察研究から、小児における重症化の危険因子として、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が特定された。シンガポール・KK Women's and Children's HospitalのJudith Ju Ming Wong氏らが報告した。The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene誌オンライン版2021年6月15日号に掲載。 7ヵ国の研究者グループは、小児のCOVID-19重症化の危険因子を特定するため、Pediatric Acute and Critical Care COVID-19 Registry of Asia(PACCOVRA)にデータ提供している病院の小児COVID-19の観察研究を実施した。主要アウトカムは、世界保健機関(WHO)の定義によるCOVID-19の重症度(軽症、中等症、重症、重篤)とした。単変量および多変量ロジスティック回帰モデルを使用し、重症/重篤なCOVID-19の危険因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・7ヵ国8病院から、検査で確認された小児の新型コロナウイルス感染例260例が登録された。・よくみられる臨床症状は類似していた(発熱64%、咳39%、鼻炎23%)。・約40%は無症候性だった。・全体の死亡率は2.3%で、すべてインドとパキスタンから報告された。・多変量解析によると、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が、重症/重篤なCOVID-19と関連していた。

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腎細胞がん1次治療のペムブロリズマブ+アキシチニブ、最終報告でも良好な生存改善(KEYNOTE-426)/ASCO2021

 進行再発の淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブ・アキシチニブ併用療法は、長期フォローアップの結果からもスニチニブより有用であるという発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのBrian I. Rini氏より発表された。 本試験KEYNOTE-426は、国際共同非盲検無作為化比較の第III相試験であり、過去のASCO(2019/2020)でもペムブロリズマブ・アキシチニブ併用療法(PemAx)の有意な生存延長が報告されている。今回は観察期間中央値42.8ヵ月時点(データカットオフ2021年1月)での最終結果報告である。・対象:淡明細胞型RCCで、腎摘除術後の再発例、または全身薬物治療の未実施例・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日を3週ごと最長35サイクル(2年間)投与+アキシチニブ(5mgx2/日)を投与(PemAx群:432例)・対照群:スニチニブ(50mgX1/日)を4週投与2週休薬(Suni群:429例)・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会によるITT集団の全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]ITT集団の全奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、PemAx群45.7ヵ月、Suni群40.1ヵ月、ハザード比(HR)は0.73(95%信頼区間[CI]:0.60~0.88)、p<0.001であった。すべてのペムブロリズマブの投与が終わった2年以降も、カプランマイヤー曲線は離れたままで、36ヵ月時OS率は63%対54%であった。・PFS中央値は、PemAx群が15.7ヵ月、Suni群11.1ヵ月、HRは0.68(95%CI:0.58~0.80)、p<0.0001であった。36ヵ月時PFS率は29%対15%であった。・ORRはPemAx群60.4%(CR:10%)、Suni群39.6%(CR:3.5%)、p<0.0001であった。DoR中央値は、PemAx群23.6ヵ月、Suni群15.3ヵ月であった。・IMDCリスク分類におけるFavorable Risk群でのOSのHRは1.17(95%CI:0.76~1.80)であり、42ヵ月OS率はPemAx群が72.3%、Suni群が73.0%であった。・Intermediate/Poor Risk群でのOSのHRは0.64(95%CI:0.52~0.80)、42ヵ月OS率はPemAx群が50.6%、Suni群が37.6%であった。・両群ともに安全性プロファイルは既報同様で、安全性に関する新たなシグナルはなかった。 発表者は「今回の最終解析報告もこれまでの報告と同様に、進行性RCCに対する一次治療として、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用療法が標準治療であることを支持している」と述べた。

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治療抵抗性/不耐容の慢性期CML、ポナチニブの最適レジメン(OPTIC)/ASCO2021

 BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブは、前治療に治療抵抗性または不耐容の慢性期(CP)の慢性骨髄性白血病(CML)に対し、1日45mgから投与を開始し、BCR-ABL1IS≦1%を達成した時点で15mgに減量する投与量調整レジメンが最適であることが、第II相「OPTIC試験」で示され、米国・オーガスタ大学ジョージアがんセンターのJorge Cortes氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 第II相OPTIC試験は、ポナチニブの有効性と安全性の最適化を目的として、3用量(45mg、30mg、15mg)から投与を開始し奏効に基づき投与量を調整するレジメンをプロスペクティブに評価する無作為化非盲検試験である。中間解析で、1日45mgから投与を開始する投与量調整レジメンの有効性と安全性が示され、すでに昨年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で報告されていた。また、中間解析結果に基づき、FDAは治療抵抗性または不耐容のCP-CML患者への本投与量調整レジメンを承認している。今回は、観察期間中央値32ヵ月(最低12.8ヵ月)の主要解析結果が報告された。・対象:2種類以上のTKIによる前治療に抵抗性または不耐容を示す、またはBCR-ABL1 T315I変異陽性のCP-CML成人患者283例・試験群: ポナチニブ 1日45mg→1日15mg投与(45mg→15mg群)94例 ポナチニブ 1日30mg→1日15mg投与(30mg→15mg群)94例 ポナチニブ 1日15mg投与(15mg群)94例BCR-ABL1IS≦1%を達成した時点で15mgに減量・評価項目:[主要評価項目]12ヵ月時点でのBCR-ABL1IS≦1%達成[副次評価項目]12ヵ月および24ヵ月時点での分子遺伝学的大奏効(MMR)、12ヵ月までの細胞遺伝学的大奏効(MCyR)、MMRの期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットカットオフ日(2020年5月31日、追跡期間中央値32ヵ月)の時点で、45mg→15mg群は50例(53%)、30mg→15mg群は41例(43%)、15mg群は43例(46%)が治療を継続していた。・12ヵ月時点でのBCR-ABL1IS≦1%達成率は、45mg→15mg群44.1%(41/93例)、30mg→15mg群29.0%(27/93例)、15mg群23.1%(21/91例)で、45mg→15mg群が主要評価項目を達成した(p<0.017)。・24ヵ月時点までではそれぞれ55.9%、37.6%、33.0%であった。・BCR-ABL1IS≦1%達成後に15mgに減量した患者において、45mg→15mg群では73.3%(33/45例)、30mg→15mg群では78.6%(22/28例)の患者が奏効を維持していた。・T315I変異の有無別でみると、45mg→15mg群においてT315I変異陽性例、T315I変異以外の変異陽性例、変異陰性例のいずれにおいても、12ヵ月までにBCR-ABL1IS≦1%を達成した患者の割合が高かった(それぞれ60%、56%、46%。30mg→15mg群ではそれぞれ25%、40%、38%)。・Grade3以上の主な治療下で発現した有害事象(TEAE)は、血小板減少症27%、好中球減少症17%、高血圧8%、貧血7%等であった。・Grade3以上のTEAEの発現率は、45mg→15mg群68.1%、30mg→15mg群61.7%、15mg群63.8%、TEAEにより投与量を減量した患者の割合はそれぞれ45.7%、35.1%、31.9%であった。・動脈閉塞イベント(AOE)の発現率は、45mg→15mg群9.6%、30mg→15mg群5.3%、15mg群3.2%であった。 Cortes氏は、「2種類以上のTKIに抵抗性または不耐容のCP-CML患者に対し、奏効に基づきポナチニブの投与量を調整することでリスクとベネフィットを最適化でき、良好な生存に寄与するだろう」とまとめた。

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フィルゴチニブ、潰瘍性大腸炎の寛解導入・維持に有効/Lancet

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者の治療において、JAK阻害薬フィルゴチニブ(200mg)は、忍容性が良好で、プラセボと比較して寛解導入療法および寛解維持療法における臨床的寛解の達成割合が高いことが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のBrian G. Feagan氏らが実施した「SELECTION試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年6月3日号で報告された。生物学的製剤治療歴の有無別の寛解導入療法と、維持療法を評価 研究グループは、潰瘍性大腸炎の治療におけるフィルゴチニブの有効性と安全性を評価する目的で、2つの寛解導入療法試験と1つの寛解維持療法試験から成る二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb/III相試験を行った(米国・Gilead Sciencesの助成による)。本試験には、日本を含む40ヵ国341施設が参加し、2016年11月~2020年3月の期間に患者登録が行われた。 対象は、年齢18~75歳で、試験登録時に中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎の発症から6ヵ月以上が経過していた患者であった。参加者は、腫瘍壊死因子(TNF)阻害療法およびベドリズマブによる治療歴の有無で、生物学的製剤治療を受けていない患者(導入試験A)と、同治療を受けている患者(同B)に分けられた。 被験者は、各導入試験でそれぞれフィルゴチニブ100mg、同200mgまたはプラセボを、1日1回、11週間経口投与する群に、2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。10週時に、いずれかの導入試験で臨床的寛解またはMayo Clinic Score(MCS)で奏効を達成した患者が、11週時に維持試験として導入療法と同じ用量またはプラセボ(各用量で個別にプラセボ群を設定)を58週まで継続投与する群に、2対1の割合で再無作為化された。 主要エンドポイントは、10週および58週の時点での臨床的寛解(Mayo内視鏡所見、直腸出血、排便回数のサブスコアで評価)とされた。導入試験と維持試験を通じてプラセボの投与を受けた患者は、維持試験の最大の解析対象集団(FAS)には含まれなかった。 導入試験Aには659例が登録され、フィルゴチニブ100mg群に277例(平均年齢42歳、女性43.3%)、同200mg群に245例(42歳、49.8%)、プラセボ群に137例(41歳、36.5%)が割り付けられた。また、導入試験Bには689例が登録され、それぞれの群に285例(43歳、34.7%)、262例(43歳、43.5%)および142例(44歳、39.4%)が割り付けられた。100mg群も、58週時には有意に良好 10週以内に、導入試験Aで34例、同Bで54例が試験薬の投与を中止した。10週時の有効性評価後に、664例(導入試験A:391例、同B:273例)が維持試験に登録された。93例が、導入試験でプラセボにより臨床的寛解を達成し、維持試験でもプラセボの投与を継続した。 導入試験の100mg群のうち270例が臨床的寛解またはMCS奏効を達成し、このうち維持試験の100mg群に179例、プラセボ群に91例が無作為化された。また、導入試験の200mg群の臨床的寛解またはMCS奏効達成例301例のうち、維持試験の200mg群に202例、プラセボ群に99例が無作為化された。263例が、維持試験期間中に投与を中止した。 10週時の臨床的寛解の達成率は、導入試験AおよびBのいずれにおいても、200mg群がプラセボ群よりも有意に良好であった(A:26.1% vs.15.3%[群間差:10.8%、95%信頼区間[CI]:2.1~19.5、p=0.0157]、B:11.5% vs.4.2%[7.2%、1.6~12.8、p=0.0103])。 維持試験における58週時の臨床的寛解の達成率は、200mg群が37.2%と、プラセボ群の11.2%に比べ有意に優れた(群間差:26.0%、95%CI:16.0~35.9、p<0.0001)。 一方、100mg群では、10週時の臨床的寛解の達成率にプラセボ群との差はなかった(19.1% vs.15.3%、群間差:3.8%、95%CI:-4.3~12.0、p=0.3379)が、58週時は有意に高率であった(23.8% vs.13.5%、10.4%、0.0~20.7、p=0.0420)。 重篤な有害事象および注目すべき有害事象の発現は、各群で同程度であった。重篤な有害事象は、導入試験では100mg群で5.0%(28/562例)、200mg群で4.3%(22/507例)、プラセボ群で4.7%(13/279例)に認められた。維持試験における重篤な有害事象は、100mg群で4.5%(8/179例)、100mg群に対応するプラセボ群で7.7%(7/91例)、200mg群で4.5%(9/202例)、200mg群対応プラセボ群で0%(0/99例)であった。また、2つの導入試験で死亡例の報告はなかった。維持試験中に2例が死亡したが、いずれも試験薬との関連はなかった。 著者は、「本薬は、生物学的製剤による治療歴の有無を問わず、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者の新たな治療選択肢となる可能性がある」としている。

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統合失調症患者における重度心血管疾患の有病率

 フランス・ロレーヌ大学のJ-C Marche氏らは、統合失調症患者における入院が必要な重度の心血管疾患の有病率について、調査を行った。L'Encephale誌オンライン版2021年5月20日号の報告。 2015年にフランスの精神科病院5施設に入院した統合失調症または精神疾患患者を対象とし、調査を行った。心血管疾患患者の定義は、精神科入院前の5年または入院後の3年に一般病院での入院対応歴(ICD-10コード)を有する患者とした。心血管疾患には、心筋梗塞、脳卒中、心不全、冠動脈疾患、末梢動脈疾患を含めた。高血圧、肥満、糖尿病などのリスク因子についてのデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、合計4,424例であった。・心血管疾患と診断された患者は、203例(4.6%)であった。内訳は、冠動脈疾患93例(2.1%)、心不全86例(1.9%)、脳卒中49例(1.1%)であった。・リスク因子の有病率は、高血圧11.3%、肥満9.7%、糖尿病7.8%であった。・心筋梗塞患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:49~70歳)、糖尿病患者の年齢中央値は56歳(四分位範囲:48~66歳)であった。 著者らは「統合失調症患者は、早期に入院が必要な重度の心血管疾患を発症するリスクが高い。これには、リスク因子の有病率の高さが関連していると考えられる。心血管疾患およびリスク因子の早期スクリーニングと治療は、統合失調症患者の生命予後やQOLを改善するために重要であろう」としている。

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「薬剤師の資質向上」の先にある薬学部の定員抑制とカリキュラム改革?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第70回

薬剤師に求められる役割や需要・供給が議論されているのをご存じでしょうか。厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」という会合で、2020年7月に第1回が開催され、2021年6月に早くも第9回と第10回が開催されました。ストレートな名前のとおり、この検討会は、かかりつけ薬剤師・薬局や改正薬機法によって薬剤師に求められる役割が変化している中で、今後の薬剤師の養成や資質向上などの課題を議論することを目的としています。第9回の検討会では、薬局および医療機関で働く薬剤師を対象として、薬剤師業務の実態や働き方、先進的な取り組みについて調査した「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果」に基づいて、取りまとめの論点整理が行われました。この調査結果で気になったものを一部抜粋して以下に示します。【調査結果(抜粋、一部改変)】薬局の常勤職員の人数は2人以下が62.4%であった。勤務形態が常勤である薬局薬剤師は73.1%、病院薬剤師は92.7%であった。薬局の処方箋1枚の受付から薬剤交付・記録までの処理時間は12分41秒であった(計数調剤で測定)。薬局における一般用医薬品の取り扱いは、50品目未満の薬局が50.6%であり、一般用医薬品を取り扱っていない薬局が10.9%であった。薬局において、2020年9月の退院時カンファレンス、地域ケア会議、サービス担当者会議への参加実績はすべて10%以下であった。薬局で電子薬歴システムを導入している割合は75.7%、電子版お薬手帳を導入している割合は57.5%であった。病院で電子カルテを導入している割合は55.9%、電子版お薬手帳を導入している割合は2.9%であった。意外と高い!低い!など、さまざまな感想を抱かれるかと思いますが、皆さんの薬局の実態と比較していかがでしょうか。私個人としては、病院の常勤率の高さと電子カルテ・電子版お薬手帳の導入率の低さが意外だなと思いました。電子処方箋に対応したお薬手帳の利用方法変更にも言及本調査の結果やこれまでの議論の論点を整理した「議論のまとめ(案)」というものが作成され、厚生労働省や文部科学省での対応・検討が必要なもの、本検討会で引き続き議論が必要なものが示されました。【薬局、病院(抜粋、一部改変】対人業務の充実と対物業務の効率化のためには、薬剤師しかできない業務に取り組むべきであり、薬剤師でもできる業務は機械の導入や薬剤師以外の者による対応にタスクシフトを行うべき。要指導医薬品や一般用医薬品の提供も前提に、処方箋に依存しない業務に取り組むべき。電子処方箋により処方薬の情報がリアルタイムで把握可能になると、服用薬を一元的・継続的に把握するため、お薬手帳の利用方法を変えていく必要がある。薬剤師の従事先には地域偏在があり、偏在を解消するための薬剤師確保の取り組みが必要である。とくに病院薬剤師の確保は課題。【薬学教育、国家試験(抜粋、一部改変)】今後の人口減少による影響や今回の需要推計を踏まえると、将来的に薬剤師が過剰になると予想される状況下では、入学定員数の抑制が必要か否かも含めて検討すべき。今後、薬学教育モデル・コアカリキュラムの見直しを文科省で検討する際には、「今後の薬剤師が目指す姿」を踏まえたカリキュラムとすべき。実務実習以外でも、多職種の学部との連携を含め、臨床現場の実態が学習できるようなカリキュラムとすべき。国家試験は、学術の進歩や医療の変化、薬剤師業務の変化に対応した出題とすべきであり、定期的に合格基準・出題基準の見直し要否の検討を医道審議会で行うべき。この検討会は「薬剤師の養成および資質向上」という耳当たりの良い言葉ですが、薬剤師にとっては厳しい変化の足音にも聞こえます。まとめ案に何度も出てくる「ICTの活用」「対物業務の効率化」「タスクシフト」「地域偏在」「医療現場と連携した薬学教育」などがキーワードになり、今後の方向性の取りまとめが行われるのではないかと想像します。今年度中に薬剤師の在り方のまとめを作成する予定とのことですので、今後もチェックしていきたいと思います。

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HER2阻害薬の心毒性、そのリスク因子や管理は? 【見落とさない!がんの心毒性】第3回

今回のおはなし連載の第2回は、大倉先生によるアントラサイクリン心筋症についての解説でした。今回のテーマはHER2阻害薬の心毒性です。なかでもトラスツズマブが有名ですが、それ以外にもHER2阻害薬はあるんですよ。今回はその心毒性が起こる機序や病態の特徴について、概要を説明します。HER2阻害薬では、日頃からの心血管リスク因子の適切な管理がとても大事になります。HER2ってそもそも何?HER2はヒト上皮成長因子受容体(EGFR:human epidermal growth factor receptor)に似た受容体型チロシンキナーゼで、ヒトEGFR関連物質2 (human EGFR-related protein 2)を略してHER2と命名されました。別名でErbB2とも表現され、こちらはヒト以外に齧歯類なども含めた対象となります。正常細胞においてHER2は細胞増殖や分化の調節に関わる重要なシグナル伝達分子として働いており、そのHER2遺伝子発現の増幅、遺伝子変異ががん化に関わります。HER2遺伝子は唾液腺がん、胃がん、乳がん、卵巣がんで発現が見られ、現在ではHER2陽性タイプの乳がん、胃がんに対してHER2阻害薬が臨床で使われています。一方、HER2は心臓や神経にも存在します。これらの臓器でもHER2は細胞分化や増殖に関わり、HER2阻害薬により心臓では心筋細胞障害が生じ心毒性を発症する事になります。心筋特異的にErbB2を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスでは、出生するものの拡張型心筋症様の病態を呈し、心筋細胞のアポトーシスが観察され、大動脈縮窄術による後負荷増大で容易に心不全に陥り、高率に死亡する事が報告されています。そして、このコンディショナルノックアウトマウス由来の心筋細胞はアントラサイクリンへの感受性が亢進していたことから、ErbB2が生体において病的ストレスからの心保護に必須な分子と考えられています1)。つまり、乳がん治療でのアントラサイクリンとトラスツズマブとの逐次治療において、アントラサイクリンによりダメージを受けた心筋細胞がトラスツズマブによりその修復が阻害されると言う仕組みが考えられています(図1)2)。(図1)アントラサイクリンおよびトラスツズマブの逐次療法における心筋障害のイメージ画像を拡大するHER2阻害薬の種類分子標的薬に属するHER2阻害薬は、HER2タンパクを持つがんに対して投与され、とくに乳がん治療でよく用いられていますが、胃がんなどでも使われています。中でも抗体薬のトラスツマブが有名ですが、それ以外にも抗体薬のペルツズマブ、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)かつ二標的キナーゼ阻害薬(EGFRおよびHER2)のラパチニブ、そしてトラスツズマブと殺細胞性抗がん剤との抗体薬物複合体(ADC)のトラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)やトラスツズマブ-デルクステカンも最近登場しています。T-DM1はトラスツズマブによるHER2シグナル伝達阻害作用だけでなく、化学療法薬であるエムタンシン(DM1)をがん細胞内部に直接送達させ、がん細胞を破壊する作用も併せ持ちます。これらADCである新規のHER2阻害薬は従来のものと比較して、心毒性の発生頻度が少ない事が報告されています3)。(表1)HER2陽性乳がんで使用できる分子標的薬画像を拡大するHER2阻害薬による心毒性の機序HER2阻害薬が心筋細胞上のHER2(ErbB2)受容体を選択的にブロックする事で、いわゆる“心筋細胞の栄養”とも言えるneureglin(NRG)のErbB4-ErbB2二量体を介した心筋細胞への結合を阻害します。その結果、心筋細胞の生存や保護に関わるシグナル伝達を阻害し細胞ダメージを来すと言われています。とくに、HER2受容体はアントラサイクリン投与後の心筋細胞に代償的にアップレギュレートして発現する事が報告されており、その発現はアントラサイクリン投与後の心筋細胞のダメージへの保護、生存に寄与すると言われています。それゆえ、とくにアントラサイクリン投与後の心筋細胞修復機構の障害が生じ、心筋傷害が助長されると言われています(図1、図2)4)。(図2)HER2阻害薬による心毒性の機序画像を拡大するHER2阻害薬関連心毒性のリスク因子は?HER2阻害薬関連心毒性のリスク因子を下の表に示しています(表2)5)。アントラサイクリンの併用または治療歴、心不全の既往、高血圧や虚血性心疾患の合併、胸部放射線治療の併用により心毒性発現のリスクが高まります。この表から、通常の心血管リスク因子がHER2阻害薬関連心毒性にも重大なリスク因子となる事が分かります。そのため、通常の心血管リスク管理が薬剤性心毒性管理においてものすごく重要です。(表2)HER2阻害薬のリスク因子HER2阻害薬による心毒性の特徴と病態管理HER2阻害薬による心不全の発生頻度について、初期の解析によるとアントラサイクリンやシクロホスファミドとトラスツズマブを同時投与すると27%と高率であると報告されました6)。そして、逐次療法では1~4.1%で心不全症状、4.4~18.6%で左室駆出率(LVEF)の低下を来すと言われています。報告によれば逐次療法でも8.7%でNYHAIII度からIV度の心不全が発症しており、およそ3ヵ月毎の定期的な心機能評価が推奨されます7)。HER2阻害薬による心毒性の特徴は、左室機能低下後のHER2阻害薬の休薬により約2~4ヵ月程度で左室機能の改善がみられる事が多く、LVEF回復後にはHER2阻害薬の再投与検討も可能と考えられています。ただし、ここで注意が必要です。トラスツズマブ投与後に心不全症状を認めた患者の71%で半年後も左室機能の回復が得られなかったと言う報告もあります8)。われわれ臨床家の間では、約20~30%の症例で心機能低下が遷延すると考えられています。HER2阻害薬の休薬で左室機能の回復が得られる可能性はあるものの、心毒性がみられた際にはACE阻害薬(エナラプリル)やβ遮断薬(アーチストなど)による心保護薬の投与を行うことが望ましいと考えます。しかし、心保護薬の長期的継続について、とくに心機能が回復した症例に対する長期的心保護治療継続の妥当性については明らかにはされていません。筆者の個人的な対策ではありますが、左室機能低下を来していた時のトロポニン上昇度や心エコーにおける低心機能の程度などの患者病態、そして心血管リスク因子の保有状況などを考慮し、患者に応じて長期的な心保護管理の継続を行っています。スクリーニングのタイミング最後に、ヨーロッパ臨床腫瘍学会(ESMO)から2020年に発表されたESMO consensus recommendationsを紹介します(図3)9)。がん治療前から心機能を確認し、高リスクであれば循環器医へ相談、がん治療開始後も3ヵ月毎に心機能をフォローし心配な所見があれば適宜循環器医に相談をすると良いと思います。がん治療中の心血管毒性の管理において、がん治療医と循環器医との良好な連携は欠かせません。(図3)CTRCD[がん治療関連心機能障害]の管理アルゴリズム―ESMO consensus recommendations 2020―画像を拡大する1)Crone SA, et al. Nat Med. 2002;8:459-465.2)Ewer MS, et al. Nat Rev Cardiol. 2015;12:547-558.3)Verma S, et al. New Engl J Med. 2012;367:1783-1791.4)Lenneman CG, et al. Circ Res. 2016;118:1008-1020.5)Lyon AR, et al. Eur J Heart fail. 2020;22:1945-1960.6)Nemeth BT, et al. Br J Pharmacol. 2017;174:3727-3748.7)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.8)Tan-Chiu E, et al. J Clin Oncol. 2005;23:7811-7819.9)Curigliano G, et al. Ann Oncol. 2020;31:171-190.講師紹介

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第65回 モーツァルトの音楽でてんかん治療

18世紀の天才作曲家モーツァルトの音楽はてんかん患者の発作と関連する脳波特徴・てんかん型放電を彼が尊敬した同時代の作曲家ハイドンの音楽とは違って男女問わず抑制しました1)。モーツァルトの音楽はてんかん発作を防ぐのに役立つかもしれません2)。その試験でのてんかん型放電の変化は手術に先立って脳に電極が設置された患者の脳活動を頼りに測定されました。その結果、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタK448(K448)」を聴いた患者のてんかん型放電は32%低下しました。一方、ハイドンの「交響曲第94番」では逆にてんかん型放電は45%上昇しました。ただし、ハイドンの「交響曲第94番」への反応は男女差があり、女性患者のてんかん型放電はモーツァルトの音楽を聴いたときと同様に減少し、男性では上昇しました。音楽を聴くとドパミンが放出されることから、モーツァルトのてんかんへの効果は音楽の情緒作用と関連すると考えられてきました。しかし心地よさを求める脳の報酬系からのドパミン放出で音楽のてんかんへの効果は説明できないようです。というのも今回の試験に参加した患者は取り立てて音楽通というわけではなく、聴いた2つの音楽への感じ方に違いはなく、ハイドンに比べてモーツァルトの音楽でより心地よくなったとは考えられないからです2)。音楽の脳への効果はまだまだ研究が必要ですが、その仕組みはどうあれモーツァルトの音楽を聴くことがてんかん患者の発作を減らすのに有望そうなことは20年も前から知られています。ちょうど1年ほど前に報告された少人数ながら待望の無作為化試験ではてんかん患者の発作がモーツァルトのまさにK448を聴くことで減りました3)。被験者の1人にはとくに効果的だったらしく、K448を毎日聴いた3ヵ月間発作を経験せずに済みました。K448を聴くことの効果はマウス実験でも示されています。その実験は側頭葉てんかん発作への抗てんかん薬とK448の組み合わせの効果を予測することを目当てに実施され、マウスにK448を聴かせるとより少ない用量の抗てんかん薬で発作の重症度が緩和することが示されました4)。てんかんは深刻な神経疾患であり、世界でおよそ5,000万人が患います5)。その多くが辛い発作を経験し、しばしば抗てんかん薬を必要とします。しかしおよそ3人に1人(30%)は服薬しても発作をうまく抑えることができず、てんかん患者が症状とうまく折り合いをつけてより調子よく暮らせる手段を絶えず探し続けねばなりません。モーツァルトを毎日聴くことはその手段の一つとなりうると上述の無作為化試験を率いたカナダの医師Marjan Rafiee氏は示唆しています5)。Rafiee氏等による無作為化試験の結果は有望ですが被験者数は13人と小規模であり、今後の課題としてより多くの患者を長期間追跡する大規模試験を実施する必要があります。参考1)Stillova K,et al.Eur J Neurol. 2021 May;28:1463-1469.2)The 'Mozart effect' shown to reduce epileptic brain activity, new research reveals / Eurekaler3)Rafiee M,et al.Epilepsia Open.2020 May 27;5:285-294.4)Xu CL,et al.CNS Neurosci Ther.2021 Feb 28. [Epub ahead of print]5)Mozart may reduce seizure frequency in people with epilepsy / Eurekalert

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新規CDK4/6阻害薬dalpiciclib+フルベストラント、進行乳がんのPFS改善(DAWNA-1)/ASCO2021

 内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんに、新規CDK4/6阻害薬dalpiciclibとフルベストラントの併用が、フルベストラント単独に比べ無増悪生存期間を大幅に改善し、安全性プロファイルも管理可能であったことが、第III相DAWNA-1試験の中間解析で示された。中国・National Cancer Center/Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。dalpiciclib+フルベストラントはHR+/HER2-進行乳がん患者の新たな治療選択肢 dalpiciclibは新たなCDK4/6阻害薬で、単剤で、複数の治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がんに対し単剤で忍容性および予備的な抗腫瘍活性を示すことが報告されている。DAWNA-1試験は、内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんを対象に、dalpiciclibとフルベストラントとの併用についてフルベストラント単独と比較した無作為化二重盲検第III相試験である。今回は、PFSイベント(病勢進行/死亡)が162件(予測の71.4%)発生した時点(2020年11月15日)で、事前に計画されていた中間解析の結果を報告した(追跡期間中央値10.5ヵ月)。・対象:内分泌療法で再発/進行した、局所進行もしくは転移を有するHR+/HER2-乳がん患者(進行がんに対する1ラインの化学療法は許容) 361例、試験群と対照群に2:1の割合で無作為に割り付け・試験群:dalpiciclib(150mg1日1回、1~21日目に経口投与、4週間ごと)+フルベストラント(500mg、1サイクル目は1、15日目、その後は1日目に筋注、4週間ごと)241例・対照群:プラセボ+フルベストラント 120例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師の評価によるPFS(有意性の閾値は片側p=0.0080とした)[副次評価項目]独立評価委員会(IRC)評価によるPFS、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率、奏効期間、次の化学療法までの期間、安全性 内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんを対象にdalpiciclibとフルベストラントとの併用についてフルベストラント単独と比較した主な結果は以下のとおり。・治験責任医師の評価によるPFSは、dalpiciclib+フルベストラント群の中央値15.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.1~NR)で、プラセボ+フルベストラント群の7.2ヵ月(95%CI:5.6~9.2)より有意に延長した(ハザード比[HR]:0.42、95%CI:0.31~0.58、p<0.0001)。・IRCの評価によるPFSも、dalpiciclib+フルベストラント群の中央値13.6ヵ月(95%CI:11.3~NR)で、プラセボ+フルベストラント群の7.7ヵ月(95%CI:5.6~10.9)より有意に延長した(HR:0.45、95%CI:0.32~0.64、p<0.0001)。・ORRは、dalpiciclib+フルベストラント群が27.0%(95%CI:21.5~33.0)、プラセボ+フルベストラント群で20.0%(95%CI:13.3~28.3)であった(p=0.0727)。・次の化学療法までの期間のHRは0.47(95%CI:0.32~0.69、p<0.0001)で、dalpiciclibによるベネフィットはdalpiciclibによる治療の終了後もみられた。・曝露期間中央値は、dalpiciclib+フルベストラン群ではdalpiciclib 9.4ヵ月(四分位範囲:4.3~11.4)、フルベストラント9.9ヵ月(同:4.7~11.9)、プラセボ+フルベストラント群ではフルベストラント6.1ヵ月(同:3.7~11.0)だった。・重篤な有害事象の発現率は、dalpiciclib+フルベストラント群、プラセボ+フルベストラント群の順に5.8%、6.7%、有害事象による治療中止率は2.5%、3.3%だった。発現率3%以上のGrade3/4の有害事象は、好中球減少症(84.2%、0%)と白血球減少症(62.1%、0%)だった。 Xu氏は、「本試験の結果は、内分泌療法で再発または進行したHR+/HER2-進行乳がん患者の新たな治療選択肢として、dalpiciclib+フルベストラントを支持している」と結論した。

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