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治療抵抗性高血圧に対する超音波腎デナベーションの効果(解説:石川讓治氏)

 腎デナベーションによる降圧効果を評価する臨床試験が行われてきた。ラジオ波(radiofrequency)を用いた焼灼法を用いた過去の研究においては、外来血圧を用いて評価されていたため、血圧低下度が過大評価されていたことが問題であったとされ、治療抵抗性高血圧患者を対象にラジオ波を用いた腎デナベーション群とShamコントロール群とを比較した大規模臨床試験(SYMPLICITY HTN-3)1)では、外来血圧や自由行動下血圧に有意な血圧低下は認められなかった。その原因として、降圧薬の服薬アドヒアランス、降圧薬の投与方法、手技の精度、エンドポイントの確認法などの問題点が指摘されていた。 RADIANCE-HTN SOLO研究では2)、軽度~中等度の高血圧患者を対象とし、以前の問題点であった服薬アドヒアランス、超音波腎デナベーションによる手技の精度、血圧測定方法(より正確な血圧である自由行動下血圧をエンドポイントにする)などの改善を行い、腎デナベーション群においてShamコントロール群と比較して2ヵ月後に6.3mmHg大きく自由行動下血圧の低下が認められたことが報告された。その効果は6ヵ月後、12ヵ月後にも持続していた。 本研究(RADIANCE-HTN TRIO研究)3)においては、3剤合剤(アムロジピン、バルサルタンまたはオルメサルタン、サイアザイド系利尿薬)を使用下でも自由行動下血圧135/85mmHg以上であった治療抵抗性高血圧患者においても、超音波腎デナベーション群で2ヵ月後の自由行動下血圧が、Shamコントロール群と比較して、収縮期血圧で8.0mmHg、拡張期血圧で3.0mmHg大きく低下していたことを報告した。服薬アドヒアランスに関しても、尿中の降圧薬濃度を分析して2群間に差がなかったことを確認している。2ヵ月の追跡期間における有害事象に関しても大きな差は認められなかったが、数が少なかったため、長期的な降圧効果と安全性に関しては今後の研究結果の報告を待つ必要がある。 一度は有効性が疑われた腎デナベーションではあるが、手技やデバイスを改善し、患者条件を群間で一致させ、評価方法を改善することにより、超音波腎デナベーションが将来的に降圧治療の1つの選択肢となる可能性が残された。しかし、侵襲的治療であるがゆえに対象患者は限られてくる可能性がある。最初は、降圧薬が副作用などで内服困難、若年女性で降圧薬の内服に制限がある、治療抵抗性高血圧などの患者が対象になるかもしれない。現在のところ手技における降圧度の調整も困難である。今後、超音波腎デナベーションがより有効である患者の特徴を明らかにする必要もある。腎障害、肥満、高齢者、糖尿病、2次性高血圧などの患者における降圧効果は不明である。降圧効果の持続期間の検討、長期的に腎動脈に与える影響、費用対効果の問題、高血圧性臓器障害や心血管イベントの抑制効果に対する検討も必要に思われる。

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必ず読めるようになる医学英語論文 究極の検索術×読解術

英語論文検索・読解のノウハウを徹底解説。読まなければ、何も始まらない医学英語論文を読む目的は何か? その一つは、EBMの考え方に基づいてクリニカル・クエスチョンに答え、日常診療に役立てるためであり、もう一つは自ら研究を実践し、学会発表や論文執筆に備えるためである。本書ではPubMedを使った論文の検索方法とともに、斜め読みではなく論文全体を「精読」するために必要となる“予測読み”などの実践的な読解方法を詳細に解説。これから論文を読むすべての臨床家必読の書。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    必ず読めるようになる医学英語論文定価3,520円(税込)判型A5判頁数160頁発行2021年4月著者康永 秀生電子版でご購入の場合はこちら

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週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第77回

週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」今回は、長時間作用型ヒト成長ホルモンアナログ製剤「ソマプシタン(遺伝子組換え)(商品名:ソグルーヤ皮下注5mg/10mg、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、重症の成人成長ホルモン分泌不全症患者に週1回投与することで、体脂肪量の減少と筋肉・骨組織の成長を促し、体組成のバランスを改善します。<効能・効果>本剤は、成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)の適応で、2021年1月22日に承認されました。診断および重症の基準は、最新の「成人成長ホルモン分泌不全症の診断と治療の手引き」の病型分類を参照することとされています。<用法・用量>通常、ソマプシタン(遺伝子組換え)として1.5mgを開始用量とし、週1回、同一曜日に皮下注射します。開始用量は年齢、性別、合併症などに応じて適宜増減します。60歳超の患者では1.0mg、経口エストロゲン服用中の女性患者では2.0mgが目安となっています。その後の投与量は、患者の臨床症状および血清インスリン様成長因子-I(IGF-I)濃度などの検査所見に応じて、最高用量8.0mgを超えない範囲で調整します。なお、投与量の調整は投与開始後2~4週間に1回を目安に行い、増量する場合は1回当たり0.5~1.5mgを目安とします。副作用の発現や血清IGF-I濃度が基準範囲上限を超えた場合は、投与量の減量や一時的な投与中止など適切な処置を行います。<安全性>第III相試験の併合結果333例中85例(25.5%)で副作用が確認され、主な副作用として、頭痛11例(3.3%)、関節痛、疲労各9例(2.7%)、末梢性浮腫7例(2.1%)、浮動性めまい、感覚鈍麻、体重増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加各4例(1.2%)などが報告されています。重大な副作用として、甲状腺機能亢進症および糖尿病(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.週1回投与する持続性の成長ホルモン製剤です。肝臓に働き掛け、体脂肪量を減少させ、筋肉や骨組織の成長を促し、体組成のバランスを改善します。2.大腿部、腹部などに皮下注射してください。注射箇所は毎回変更し、同一部位に短期間に繰り返し注射しないでください。3.浮腫、関節痛、視覚異常、頭痛、悪心または嘔吐、頻尿などの症状が見られたらご連絡ください。4.投与を忘れた場合は、あらかじめ定められた投与日から3日以内であれば、気付いた時点でただちに投与し、その後は元の曜日に投与してください。投与日から3日を超えていた場合は1回分スキップして、次の投与日に投与します。なお、曜日を変更する必要がある場合は、前回の投与から少なくとも4日間以上の間隔を空けてください。5.使用開始前後にかかわらず冷蔵庫で保管し、開封したものは6週間以内に使用してください。冷蔵庫がない環境での保管は、遮光・室温(30℃以下)で通算3日間(72時間)までとしてください。<Shimo's eyes>成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)とは、成人において成長ホルモン(GH)の分泌が損なわれることで、易疲労感やスタミナ低下、体脂肪の増加、筋肉・骨塩量の低下、血中脂質高値などさまざまな自覚症状や代謝異常を来す慢性疾患です。通常、GH補充療法が行われますが、GH分泌不全は生涯続くことが多いため、長期または生涯にわたる治療が必要です。従来のソマトロピン製剤(商品名:ノルディトロピン注、ジェノトロピン注、ヒューマトロープ注、グロウジェクト注、ソマトロピンBS注)は、主に1日1回の皮下投与製剤であることから、毎日の治療に負担を感じる患者も少なくないことが課題となっています。本剤は週1回投与の長時間作用型ヒト成長ホルモン誘導体であり、内分泌専門医の管理指導の下、自己注射が可能な製剤です。1.5mLカートリッジに入った溶解操作が不要なリキッドタイプで、複数回投与可能な使い捨てプレフィルドペン型注入器に装填されています。1回の投与量は、5mg剤が0.025~2mgまで0.025mg刻み、10mg剤が0.05~4mgまで0.05mg刻みで設定可能です。ソマプシタンの構造としては、101位のロイシン残基をシステイン残基に置換したアミノ酸骨格に、アルブミン側鎖が接合しており、内因性アルブミンとの可逆的な非共有結合により、本剤の消失が遅延することで作用持続時間が延長されます。注意すべきポイントとして、GHはインスリン感受性と耐糖能を低下させるため、血糖値とHbA1cなどのモニタリングが必要な点が挙げられます。また、甲状腺機能の低下や良性頭蓋内圧の亢進、血清コルチゾール値の低下、中枢性副腎皮質機能低下症が顕在化する可能性があるので注意が必要です。GHの体液貯留作用により、本剤による治療開始時に手足の浮腫、手根管症候群、関節痛、筋肉痛などが見られる場合がありますが、治療継続中に消失することも多いため、軽度であれば経過観察となることもあります。自己注射は、基本的にはインスリン注射と同様の手順で行います。使用済みの注射器・針の廃棄方法は、かかりつけ医や主治医、薬剤師に相談するよう伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ソグルーヤ皮下注5mg/ソグルーヤ皮下注10mg

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デジタル手術イラストの描き方(着色~仕上げ編)【誰も教えてくれない手術記録 】第4回

第4回 デジタル手術イラストの描き方(着色~仕上げ編)こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。今回は前回の続きで、手術イラストの着色~仕上げまでをお伝えします。前回は、下書き~線画を軸に、デジタルイラストの特徴である「レイヤー機能」について、少し掘り下げて紹介しました。今回もレイヤー機能の活用を中心に、イラスト完成までの流れを説明しますので、「レイヤーって何のこと?」と思われた方は、前回のコラムを先にご一読いただけると理解が深まるかと思います!(3)着色:色や構造ごとにレイヤーを分けるのがポイント!線画だけで着色をしなくても、手術イラストとしては成り立ちますが、やはり色が付いていたほうがより見やすくて伝わるイラストになります。私は、色塗りに「ソフトエアーブラシ」を愛用していますが、着色にもさまざまな質感のブラシが使えるので、いろいろと試してみてください。まず、線画レイヤーの下に、新規レイヤーを作成します。カラーパレットから塗りたい色を選択し、多少のはみ出しは気にせず大まかに塗っていきます。そして大体塗り終えたら、消しゴムツールを用いて線画からはみ出した部分を消していきましょう。広い面から塗って、不要な部分を後から消すほうが、早く簡単できれいに塗れると思います。大まかな着色⇒消しゴムで丁寧に消した図また、色が変わる隣り合った部分や構造でレイヤーを分けると、後から細かな修正がしやすくなるのでおすすめです。慣れるまでは、レイヤーに名前を付けて整理するといいですよ。各レイヤーに名前を付けた図色を塗った後は、影(黒、灰色)やハイライト(白)を重ねると、よりそれらしいイラストになると思います。これもレイヤーを分けて描くようにしましょう。レイヤーごとに透明度を調節できるので、影やハイライトが濃くなり過ぎてしまった場合は、透明度を下げると自然に仕上がりますよ。ポイントとしては、着色が終わったタイミングで線画と色のレイヤーをすべてグループ化しておきましょう(ソフトによってはフォルダに入れることでグループ化できるものもあります)。詳しいことは後で説明しますが、イラストの配置を調整するときなどに役立ちます。見本:着色後の完成図(4)仕上げ:手術の流れやポイントがわかるような矢印やテキストを書き込むさて、ついに最後のステップです。余白に矢印やテキストを書き込むことで、手術イラストから手術記録に仕上げていきます。付記する内容としては、病名、施行した術式解剖構造の名称術中所見(病変の様子、腫瘍であれば転移の有無、血管走行、癒着の程度など)手術操作の内容(郭清、剥離、血管/腸管切離など)手術に使用した道具(糸の種類・太さ、エネルギーデバイス、血管用クリップ、メッシュなど)などが一般的ですね。自分は手書き文字が好みですが、お絵描きソフトのテキストツールや、パワーポイントなどを使って仕上げる方法もよく用いられているようです。手書きの際は、グリッドなどの描画ガイドを用いると、字の大きさや傾きが整うのでおすすめです。また、文字を書く余白が足りない、何となく配置バランスが悪いなどと感じたら、各イラストの位置や大きさの調整をしましょう。ここで、先に説明したレイヤーのグループ化機能を活用します。グループ化した全レイヤーを選択した状態で、なげなわ(選択)ツールを用いて動かしたい範囲を指定すると、選択範囲の位置調整や拡大・縮小が可能です。なげなわツールで範囲指定⇒拡大・縮小した図最後に各工程の細かな調整を行って完成です! お疲れさまでした!見本:完成図(お絵かきソフトのテキストツールで文字入れ後)まとめここまで2回に分けて、手術イラストの下書きから完成までの過程を説明しましたが、いかがでしたか? 皆さんがデジタル手術イラストに挑戦するきっかけになればうれしいです。次回以降も、手術記録に関するいろいろな情報をお届けできたらと思っています。ではまた!

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ASCO2021レポート 乳がん

レポーター紹介2021年6月4日から8日まで5日間にわたり、2021 ASCO Annual Meetingが昨年と同じく完全バーチャルで実施された。昨年はプレナリーセッションのQAのみがライブ配信され、他の演題は口演を含め開会と同時にオンデマンドで見ることができたが、今年は口演の録画+リアルタイムQAが実施された。参加された方は実感されていると思うが、米国の日中はほぼ日本の深夜〜明け方である。日本からリアルタイムで参加するのに骨が折れるのは言うまでもない。2021年のテーマは“Equity: Every Patient. Every Day. Everywhere.”であった。COVID-19は世界中の日常を変えてしまったが、図らずも人種や地域によって受けられる治療に差があることを明らかにしてしまった。がん領域においても公平な治療は非常に重要な概念である(公平でないからこそテーマとなっている、ともいえる)。さて、乳がん領域ではプレナリーで日常臨床を変える結果が発表され、Local/Regional/Adjuvantで重要な演題が多く発表された。その一方で、Metastaticでは目玉となる発表は少なかったように思う。乳がんの演題について、プレナリーセッションの1題、Local/Adjuvantから3演題、Metastaticから1演題を紹介する。生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性のHER2陰性再発高リスク早期乳がんに対する周術期化学療法後の術後オラパリブ療法の二重盲検化比較第III相試験(OlympiA試験, LBA1)生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性(gBRCAmt)のHER2陰性転移乳がんに対しては、OlympiAD試験でオラパリブの主治医選択治療(化学療法)に対する無増悪生存期間(PFS)における優越性が示され、現在実臨床でも使用されている(Robson M, et al. N Engl J Med. 2017;377:523-533.)。オラパリブはPARP阻害薬であり、gBRCAmtの乳がん患者では合成致死と呼ばれる機序でがん細胞の細胞死を誘導する。OlympiA試験ではgBRCAmtを持つHER2陰性再発高リスク乳がん(術前化学療法を受けた患者では、トリプルネガティブ乳がん[TNBC]でnon-pCR、HR+でnon-pCRかつCPS-EG≧3、術後化学療法を受けた患者では、TNBCでpT2以上またはpN1以上、HR+でN≧4個)を、オラパリブ300mg 2回/日 内服1年間とプラセボに割り付けた。1,836例が登録され、オラパリブ921例、プラセボ915例に割り付けられた。遺伝子変異はBRCA1が70%強であり、ホルモン受容体は陽性が20%弱であった。主要評価項目の無浸潤疾患生存(iDFS)において、3年で85.9% vs.77.1%(ハザード比[HR]:0.58、95%CI:0.41~0.82、p<0.0001)と10%近い差をつけてオラパリブ群で良好であった。副次評価項目の遠隔無病生存(DDFS)においても、3年で87.5% vs.80.4%(HR:0.57、95%CI:0.39~0.83、p<0.0001)であり、iDFSと同様の傾向であった(DDFSとOSの評価ではαが再利用されている)。3年全生存(OS)では92.0% vs.88.3%(HR:0.68、95%CI:0.44~1.05、p=0.024)(有意水準はp<0.01)と統計学的有意差こそ示されなかったものの、オラパリブ群で良好な傾向であった。患者がリスク低減手術を受けたかどうかにもよるが、オラパリブがHBOC関連の他がんの発症を抑えていることが、OSで良好な傾向を認めた理由かもしれない。毒性については悪心、倦怠感、貧血が主なものであり、Grade3の貧血には注意が必要なものの、これまでに示されている有害事象と同様で、いずれも管理可能なものである。PARP阻害薬を早期がんに使用する際の懸念点としてMDS/AMLならびに2次がんの発症があるが、発表時点ではオラパリブでそれぞれ0.2%、2.2%、プラセボで0.3%、3.5%であり、とくにオラパリブ群での増加は認めなかった。ただし、こちらについてはより長期のフォローを経たデータを見て再度検討が必要であろう。またEORTC QLQ-C30を用いたQOL評価が実施されており、オラパリブ群とプラセボ群でQOLのスコアの差は認められなかった。本試験は今年のASCOの発表の中で間違いなく日常臨床を変える結果の1つであった。承認されるとBRCA1/2の遺伝学的検査の頻度が今以上に増えることが予想される。患者本人に対するリスク低減手術はもちろん、治療適応の判断を目的とした検査の結果として、未発症保因者が増えてくると考えられる。未発症保因者に対するサーベイランスや化学予防、リスク低減手術の体制や保険の整備がより重要となってくるであろう。gBRCAmt HER2陰性乳がんを対象としたtalazoparib術前薬物療法のphase II試験(NEOTALA試験)HBOC関連の話題をもうひとつ取り上げる。talazoparibはgBRCAmt転移乳がんに対して有効性の示されているもうひとつのPARP阻害薬である(本邦未承認)。NEOTALA試験はgBRCAmt HER2陰性早期乳がんを対象として、talazoparib 1mg/日を24週間術前薬物として内服する単アームのphase II試験である。病理学的完全奏効(pCR)率を主要評価項目とし、pCRは浸潤がんの遺残がないものと定義された。当初112例を予定症例数としていたが、進捗が悪かったため60例に修正された。最終的に61例が解析対象となり、78.7%がBRCA1を、21.3%がBRCA2を有していた。talazoparibを80%以上内服し、手術を受けてpCRの評価が可能であった症例がevaluable populationとされ、48例(78.7%)が該当した。evaluable populationにおけるpCR率は45.8%であり、通常の術前化学療法に匹敵するpCRが得られた。90%以上が20週以上talazoparibを内服できていた。有害事象は倦怠感、悪心、脱毛、貧血、頭痛が主なものであるが、Grade3の貧血を39.3%で認めており注意が必要である。あくまでphase IIの結果が得られた段階であるが、今後はgBRCAmtにおいてはPARP阻害薬による術前薬物療法の開発が期待される。70遺伝子シグネチャで超ローリスクであった症例の予後(MINDACT試験)早期乳がんでは術後薬物療法の適応が問題となる。とくにホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんではホルモン療法感受性の高い集団と化学療法感受性の高い集団が存在し、化学療法の適応を検討する試験が多数行われている。早期乳がんにおいてmRNAを測定し遺伝子シグネチャによる予後予測ならびに治療効果予測が研究されている。MINDACT試験もその1つであり、臨床的なリスク層別と腫瘍の70遺伝子によるgenomic riskによる層別化を実施し、臨床的あるいはgenomicのどちらかでハイリスクとなった症例を術後化学療法あり・なしにランダム化し、化学療法の上乗せを検証する臨床試験である。この発表では70遺伝子シグネチャでハイリスク、ローリスク、超ローリスクと分類された症例の予後を比較した。8.7年の観察期間中央値で、8年生存率はハイリスクで89.2%、ローリスクで94.5%、超ローリスクで97.0%であった。超ローリスクとローリスクの比較ではHR 0.65(95%CI:0.45~0.94)と、ローリスクと比較しても超ローリスクは非常に良い予後を有していた。8年乳がん特異的生存は超ローリスクで99.6%(ローリスクでは98.2%)であり、きわめて良好であった。超ローリスクであった症例の特徴として、50歳以上、リンパ節転移陰性、腫瘍径2cm以下、グレード1 or 2、ホルモン受容体陽性HER2陰性のサブタイプなどが挙げられた。16%は一切の術後治療を受けていなかった。遺伝子シグネチャで超ローリスクであった場合に臨床的リスクがどのように影響するかについても検討され、遠隔転移については2.6%程度、乳がん特異的生存には差を認めなかった。超ローリスクで術後無治療の場合の8年無遠隔転移生存は97.8%、ホルモン療法のみでも97.4%であった。文字通り、超ローリスクは非常に良好な予後を持っており、再発のリスクはきわめて低いといえる。超ローリスクでは術後ホルモン療法すら不要である可能性があり、less toxicな治療開発(というよりも治療省略)が進む領域といえよう。術前化学療法でpCRが得られなかったトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術後プラチナ製剤とカペシタビンの比較第III相試験(EA1101試験)近年、術前化学療法の治療効果(pCRかnon-pCRか)によって術後治療を変更するレスポンスガイド治療が広く実施されるようになっている。HER2陰性乳がんではCREATE-X試験で、non-pCRの場合にカペシタビン1,250mg/m2 2週投与1週休薬6~8コースが、無治療と比較してDFS、OSを改善し、とくにTNBCにおいて良好な傾向であったことが示されており(Masuda N, et al. N Engl J Med. 2017;376:2147-2159.)、HER2陽性においてもnon-pCRの場合に術後治療をT-DM1に変更することが、DFS、OSを改善することが示されている(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)。本試験はTNBCで有望とされているプラチナ製剤のnon-pCRにおける有効性を検証した試験である。PAM50を用いたTNBCのサブタイピング(basalとnon-basal)も実施されている。プラチナ製剤(CBDCA AUC 6またはCDDP 75mg/m2)4サイクルと、カペシタビン1,000mg/m2 2週投与1週休薬(米国で通常使用されている用量)6サイクルに1:1に割り付けられた。当初は無治療群が設定されていたが、CREATE-Xの結果を受けて2群比較とされた。主要評価項目はiDFSで、プラチナ製剤のカペシタビンに対する非劣性が証明された場合に優越性を検証するハイブリッドデザインが(なぜか)採用された。5回目の中間解析でプラチナ製剤とカペシタビンのHRは1.09であり、非劣性が示されないと判断され、効果安全性委員会に中止が勧告され試験中止となった。中止時点で308例が登録され、78%がbasalタイプであった。主要評価項目の3年iDFSにおいて、プラチナ群の42%に対しカペシタビン群は49%(HR:1.06、95%CI:0.62~1.81)であり、プラチナ群のカペシタビン群に対する非劣性は示されなかった。basalとnon-basalの比較では3年iDFSは45.8% vs.55.5%(HR:1.71、95%CI:1.10~.67)であり、non-basal群で有意に良好であった。また、non-basal群では、よりカペシタビンで良好な傾向を認めた。無再発生存やOSは両群間での差を認めなかった。有害事象はプラチナ群で貧血や白血球減少が多く、カペシタビンで下痢や手足症候群が多かったが、Grade3以上の有害事象の頻度は低かった。プラチナ製剤はTNBCにおいてpCR率を改善するなど、有効性が期待される薬剤であっただけに、本試験の結果は残念であった。今後もnon-pCRのTNBCに対してはカペシタビンの術後薬物療法が標準である。一方この領域では術前化学療法に免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されるなど、さまざまな薬剤の開発が活発に進んでいる。non-pCRの術後薬物療法についてもアンメットニーズが増加している。ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するパルボシクリブ+フルベストラント療法のOSアップデート(PALOMA-3)ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんでは、ホルモン療法とCDK4/6阻害薬の併用が標準治療となっている。PALOMA-3試験は術後内分泌療法、あるいは転移乳がんに対する内分泌療法中に増悪を認めた症例を対象に、パルボシクリブ+フルベストラントの優越性を検証した二重盲検化比較第III相試験である。主要評価項目のPFSで優越性を示し、すでに本邦でも承認され日常臨床で使用されている。また、OSにおいては統計学的有意差を示せなかったものの、パルボシクリブ群で良好な傾向であった(Turner NC, et al. N Engl J Med. 2018;379:1926-1936.)。今回の発表はそのOSデータのアップデートである。44.8ヵ月の観察期間中央値で、全生存期間中央値(MST)は34.9ヵ月vs.28.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.64~1.03、p=0.0429)であり有意差を認めなかったが、観察期間中央値73.3ヵ月では34.8ヵ月vs.28.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.65~0.99、p=0.0221)であった。5年生存率はパルボシクリブ群で23.3%に対し、プラセボ群では16.8%であった。サブグループ解析では、前治療のホルモン療法に感受性がある、化学療法を受けたことがない、内臓転移がない、閉経後、無病期間24ヵ月以上などが挙げられた。これを基に、進行乳がんに対する化学療法のあり・なしでの追加解析が実施され、化学療法歴のない症例ではパルボシクリブ群でMST 39.3ヵ月に対しプラセボ群で29.7ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.55~0.92、p=0.008)とパルボシクリブ群で良好であったが、化学療法歴がある場合は24.6ヵ月vs. 24.3ヵ月と両群間の差を認めなかった。また、この発表ではctDNAを用いたESR1、PIK3CA、TP53の変異の有無による探索的な解析が実施された。ESR1、PIK3CA、TP53変異はそれ自体が予後因子であるが、パルボシクリブはこれらの遺伝子変異の有無にかかわらずOSを改善させる傾向を認めた。今回の結果はこれまでの報告と同様であり、パルボシクリブ+フルベストラント療法は、変わらずホルモン療法2次治療の標準治療の1つであり続けるであろう。

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第67回 がん患者にmRNAワクチン有効/米国のCOVID-19死亡例の接種状況/ワクチン開発に役立つ発見

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの効果を裏付ける2つの報告と次世代のCOVID-19ワクチン開発で参考になりそうな研究成果を紹介します。がん患者の94%がCOVID-19のmRNAワクチンに応答Pfizer/BioNTech社やModerna社のmRNAワクチン・BNT162b2やmRNA-1273が投与されたがん患者のほとんどが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体を幸いにも発現しました1)。2回目の接種を済ませたがん患者123人中116人(94%)にSARS-CoV-2への抗体が認められました。ただし、先立つ6ヵ月間に抗CD20抗体リツキシマブ治療経験がある4人にはSARS-CoV-2への抗体が認められませんでした。また、骨髄腫やホジキンリンパ腫などの血液がん患者の抗体発現率は77%であり、固形がん患者の98%に比べて低めでした。血液がん患者は抗体活性も低めでした。今後の課題として、そのような不安要素がある患者へのがん治療後の3回目の接種の検討などが必要です2)。米国では今やワクチン接種済みのCOVID-19死亡例は1%に満たないAP通信社が米国疾病予防管理センター(CDC)の5月のデータを独自に調べた結果によると同国のCOVID-19死亡のほぼすべてはワクチン接種が済んでいない人でした3)。5月のおよそ11万のCOVID-19入院患者にワクチン接種が済んだ人はほとんどおらず僅か約1.1%の1,200人足らずでした。また、5月にCOVID-19で死亡した1万8,000人超にもワクチン接種が済んでいる人はほとんどおらず1%にも満たない(およそ0.8%)約150人のみでした。好中球の投網でCOVID-19を一網打尽?Pfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種でも発現4)しうることが知られるIgA抗体は粘膜表面に豊富でウイルス病原体の防御で重要な役割を担います。IgA抗体はウイルスに直接取り付いて細胞感染を阻止することに加え、免疫細胞表面にあるFc受容体と協力して抗菌活性を促しうることが知られています。Fc受容体を介したIgA抗体のウイルス感染への作用はこれまでよく分かっていませんでしたが、PNAS誌に掲載された新たな研究の結果5)、IgA抗体-ウイルス複合体は好中球のFc受容体に結びついてクモの巣状の仕掛け・NET(好中球細胞外トラップ)を投網の如く好中球に分泌させると分かりました。好中球が破裂(NETosis)して放たれるNETはウイルスを捉えて不活性化することも確認され、その抗ウイルス機能が裏付けられました。他の免疫活性がそうであるようにNETは有益である一方で行き過ぎると害をもたらします。IgA抗体が感染前に豊富に備わっていればNETは感染防御を担うでしょう。しかし感染でIgA抗体がたくさん作られてしまうとNETは炎症を引き起こしてむしろ病状を悪化させてしまう恐れがあります6)。SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスなどに対抗するIgA抗体をあらかじめ備えておくための次世代のワクチン開発に今回の成果は参考になるでしょう。参考1)Addeo A, et al.Cancer Cell. 2021 Jun 18:S1535-6108,00330-5.2)94% of patients with cancer respond well to COVID-19 vaccines / Eurekalert3)Nearly all COVID deaths in US are now among unvaccinated / AP4)Turner JS, et al.Nature. 2021 Jun 28. [Epub ahead of print]5)Stacey HD, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jul 6;118.6)Researchers discover unique 'spider web' mechanism that traps, kills viruses / Eurekalert

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日本のトラック運転手の不眠症に関連する因子

 トラック運転手の不眠症は、交通事故リスクの増加につながる重大な問題である。秋田大学の宮地 貴士氏らは、日本のトラック運転手における不眠症の有病率を調査し、不眠症に関連する因子を特定するため、検討を行った。Nature and Science of Sleep誌2021年5月18日号の報告。 対象は、65歳未満の男性トラック運転手2,927人。自己記入式質問票を用いて、不眠症状、状態-特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)、飲酒・喫煙習慣、BMI、カフェイン摂取量、毎日の運転時間、連続して自宅から離れた日数、走行距離に関する情報を収集した。不眠症状には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒を含め、これらいずれかの症状が毎日観察された場合を不眠症と定義した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症有病率は、13.3%(356例)であった。不眠症のタイプ別の割合は、中途覚醒が最も多く78%、次いで早朝覚醒26.4%、入眠障害13.5%であった。・共変量で調整した後、不眠症と有意かつ直線的な関連が認められた因子は、飲酒習慣、毎日の運転時間、STAIスコアであった。 【飲酒習慣】非飲酒者と比較した調整オッズ比(aOR):1.74、95%信頼区間(CI):1.23~2.47、trend p<0.001 【毎日の運転時間】1日8時間未満と比較した12時間以上のaOR:1.87、95%CI:1.00~3.49、trend p<0.001 【STAIスコア】最低四分位と比較した最高四分位のaOR:5.30、95%CI:3.66~7.67、trend p<0.001 著者らは「日本のトラック運転手では、不眠症が蔓延している。そのリスク因子として、飲酒習慣、毎日の運転時間、不安症状が関連していることが示唆された」としている。

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新型コロナ家庭内感染におけるワクチンの効果/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種は、家庭内感染を減少させるのだろうか。英国の全国データを分析した結果、検査陽性となる21日以上前にワクチンを接種していた感染者では未接種の感染者に比べ、家庭内感染のオッズ比が0.52~0.54と低かった。また、14日以上前に接種していた場合に家庭内感染の予防効果が認められた。英国・Public Health EnglandのRoss J. Harris氏らが、NEJM誌オンライン版2021年6月23日号のCORRESPONDENCEに報告した。 本調査では、Household Transmission Evaluation Dataset(HOSTED)のデータを用いた。HOSTEDは、英国において検査で確認されたすべてのCovid-19症例に関する情報があり、住所が同じ人々のデータがリンクされている。これらのデータを、英国でのすべてのCovid-19ワクチン接種に関する個人レベルのデータにリンクさせた。 SARS-CoV-2検査陽性となる21日以上前にアストラゼネカ製ワクチン(ChAdOx1nCoV-19)またはファイザー製ワクチン(BNT162b2)を少なくとも1回受けたSARS-CoV-2感染者からワクチン未接種の家庭内接触者への2次感染(発端患者の検査陽性後2〜14日に検査陽性と定義)のリスクについて、ワクチン未接種の感染者からワクチン未接種の家庭内接触者への2次感染リスクと比較した。Covid-19の発端患者の年齢と性別、家庭内の接触、地域、発端感染の暦週、剥奪指標(社会経済および他の因子の複合スコア)、世帯の種類や規模を調整し、ロジスティック回帰モデルを実施した。 主な結果は以下のとおり。・2021年1月4日~2月28日における、ワクチン未接種だった発端患者の家庭内接触者は96万765人のうち、9万6,898人(10.1%)が家庭内で2次感染した。・ワクチン未接種だった発端患者の家庭内を基準とした、検査陽性の21日以上前にワクチン接種を受けた発端患者の家庭内での2次感染の調整オッズ比(95%信頼区間)は、接種ワクチンがアストラゼネカ製の場合で0.52(0.43~0.62)、ファイザー製ワクチンの場合で0.54(0.47~0.62)だった。・今回のデータセットにおいて、ワクチン接種を受けた発端患者の93%が、接種が1回のみだった。・発端患者のワクチン接種時期による家庭内接触者間の感染リスクの評価では、ワクチン接種が検査陽性の14日以上前だった場合に感染予防効果が示された。

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無症状直腸クラミジア、ドキシサイクリン vs.アジスロマイシン/NEJM

 男性間性交渉者における無症状の直腸クラミジア感染症の治療では、ドキシサイクリンの7日間投与はアジスロマイシンの単回投与と比較して、微生物学的治癒の達成割合が高く、有害事象の発現頻度は低いことが、オーストラリア・メルボルン大学のAndrew Lau氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌2021年6月24日号で報告された。オーストラリア5施設の無作為化対照比較試験  本研究は、オーストラリア3州の5つのsexual healthクリニックが参加した二重盲検無作為化対照比較試験であり、2016年8月~2019年8月の期間に実施された(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成による)。 対象は、年齢16歳以上、過去12ヵ月以内に男性との性交渉歴があり、核酸増幅検査(NAAT)で直腸クラミジアが確認された男性であった。直腸クラミジア感染症の男性の85%以上が無症状であり、オーストラリアの診療ガイドラインは有症状の感染症にはより長期の治療を推奨しているため、本試験の対象は無症状の直腸クラミジアの男性に限定された。 被験者は、ドキシサイクリン(100mg、1日2回、7日間)を投与する群またはアジスロマイシン(1g、単回)を投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、4週の時点におけるNAATで直腸クラミジア陰性(微生物学的治癒)とされた。微生物学的治癒:96.9% vs.76.4%、下痢が少ない 625例が登録され、ドキシサイクリン群に314例、アジスロマイシン群に311例が割り付けられた。全体の平均年齢は32.4歳であった。主要アウトカムのデータは、ドキシサイクリン群が290例(92.4%)、アジスロマイシン群は297例(95.5%)で得られた。 修正intention-to-treat集団における微生物学的治癒は、ドキシサイクリン群が290例中281例(96.9%、95%信頼区間[CI]:94.9~98.9)、アジスロマイシン群は297例中227例(76.4%、73.8~79.1)で達成され、補正後リスク差は19.9ポイントであった(14.6~25.3、p<0.001)。 有害事象(悪心、下痢、嘔吐)は、ドキシサイクリン群が98例(33.8%)、アジスロマイシン群は134例(45.1%)で報告された(リスク差:-11.3ポイント、95%CI:-19.5~-3.2、p=0.006)。このうち嘔吐(1.0% vs.1.0%)と悪心(21.7% vs.20.5%)の頻度は両群で同程度であったが、下痢(25.5% vs.39.7%、リスク差:-14.2ポイント、95%CI:-20.7~-7.8、p<0.001)がドキシサイクリン群で少なかった。 著者は、「この結果は、2015年に発表された8つの観察研究のメタ解析(微生物学的治癒率:ドキシサイクリン群99.6% vs.アジスロマイシン群82.9%)と一致していた」としている。

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第61回 医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志

<先週の動き>1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志感染症専門医・忽那 賢志氏がYahoo!ニュースに寄稿した内容が話題となっている。わが国においての新型コロナワクチン接種は、あくまでも希望制として進められているが、「医療従事者であってもワクチンを接種しない権利は守られるべきか、医療従事者は原則としてワクチンを接種すべきか」は、簡単に答えが出せない問題である。忽那氏は、国内におけるワクチン接種をしなかった医療従事者を含む医療機関でのクラスター発生事例を紹介し、「個人の『接種しない権利』は守られるべき」としながらも、「しかし医療従事者の場合は、ワクチン接種をしないことが直接患者さんへの被害につながることがあり、一般の方とは少し分けて考えるべきなのではないかと思います」と意見を綴った。同氏は、自身のTwitterアカウントで「こういう意見もあるよという程度のものですので議論のきっかけになれば幸いです」とコメントしている。(参考)医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか(Yahoo!ニュース)忽那賢志氏 Twitter(@kutsunasatoshi)2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?河野規制改革担当相は、各自治体への新型コロナウイルスワクチン供給が、7月下旬以降、希望している量の3分の1程度になるとの見通しを明らかにした。これは、6月末までに1億回分が供給されたファイザー製ワクチンの供給量が今後減少するため。ワクチンの供給不足を理由に、新規予約を停止する自治体もあり、その影響で予約患者のキャンセル手続きに入った医療機関も出ている。当初伸び悩んでいたワクチン接種件数だが、「オリンピック開催の7月までに65歳以上の接種を完了させる」という目標達成のため、1日100万件接種の実施を推進してきた。各自治体は、国からの供給量が減少する中、接種計画の見直しを迫られる。(参考)ブレーキかかるワクチン接種 募る不満「政府も手探り」(朝日新聞)ワクチン供給に不安が94% 都道府県庁市区、共同通信調査(共同通信)ワクチン供給 “減少の見通し” 自治体の接種に影響も(NHK)3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省25日、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」と「規制改革実施計画」が閣議決定された。規制改革実施計画には、「デジタル時代に向けた規制の見直し」としてオンライン診療・服薬指導の特例措置の恒久化が含まれており、今秋までに対象となる症状などを定める見込み。なお、オンライン診療での初診はかかりつけ医を原則としているが、カルテで患者状態が把握できる場合や、事前に基礎疾患などを確認して、オンライン診療が可能と医師と患者が判断した場合は、初診からのオンライン診療を認める方針。(参考)初診からオンライン診療 恒久化へ秋にも指針改定 厚労省(NHK)オンライン初診、秋にも対象症状を線引き 厚労省(日経新聞)資料 令和3年「規制改革実施計画」(内閣府)4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革厚労省は、1日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で、医療機関における医師労働時間短縮計画の作成ガイドライン案を修正し、2023年度末までは努力目標とすることを発表した。今年2月に成立した改正医療法により、2024年4月から診療に従事する勤務医に対して時間外労働の上限規制が適用される。このため、2021年からすべての医療機関に対して、医師の労働時間の調査を行い、各都道府県に設けられた医療機関勤務環境評価センターへの報告が求められる。また、現状で時間外労働が960時間を超える医師がいる病院で、2024年以降も特例のB・C水準の取得を希望する場合は、医師労働時間短縮の作成と医療機関勤務環境評価センターによる評価の受審が必須となる。(参考)23年度末までの医師時短計画は努力義務に 厚労省、作成ガイドライン案修正(CBnewsマネジメント)医師の労働時間把握へ、全病院に調査 21年度、厚労省(同)医師時短計画作成は努力義務だが「B水準等指定の前提」な点に変化なし、急ぎの作成・提出を―医師働き方改革推進検討会(1)(GemMed)第12回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(厚労省)5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省財務省は29日に、国の事業に無駄がないか調べる予算執行調査について公表した。これまで、後発医薬品については、保険薬局を対象に「後発医薬品調剤体制加算」を設けて使用促進を図っており、2023年度末までに後発品の使用割合を、すべての都道府県で80%以上とする目標を設定している。現状では、保険薬局の7割超が加算を取得し、減算制度の適用はわずか0.3%。残りの薬局が目標を達成すると200億円の抑制効果がある一方、加算は年1,200億円に上るため、費用対効果が極めて薄いと財務省は主張している。来年の予算編成に向け、厚労省に見直しを求める。(参考)後発薬の診療報酬加算、廃止求める 財務省が調査(日経新聞)後発医薬品調剤体制加算、廃止を含めた見直し要請 財務省・調査「費用対効果も見合っていない」(CBnewsマネジメント)資料 令和3年度 予算執行調査の調査結果の概要(6月公表分)(財務省)6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄沖縄県は30日に、重点医療機関である沖縄県立中部病院において新型コロナウイルスのクラスターが発生したことを発表した。クラスターは5月24日~6月17日にかけて発生。7月1日時点で患者36人(うち死亡は17人)と職員15人の計51人の感染が報告された。このうち、ワクチン接種を希望しなかった看護師12人が感染したことが明らかになった。同院では6月17日を最後に新たな感染者は確認されていない。(参考)ワクチン非接種の看護師12人が感染 沖縄の県立病院(産経新聞)沖縄県立中部病院でクラスター 患者ら50人感染(毎日新聞)

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患者さん向け耳鳴診療Q&A

専門家が心を込めて解説。あなたの耳鳴りの悩みを解消します!耳鳴り診療のエキスパートたちによる患者さん向けの解説書が誕生しました。耳鳴り患者さんの抱く疑問などを、80のQ&Aにまとめました。耳鳴りのしくみ、検査・診断・治療、生活上の注意など、患者さんが持つあらゆる悩みに向き合います。効果の期待できる治療方法など、エビデンス(効果を示す証拠)をもとに丁寧に解説します。あなたの耳鳴りの悩みを解消するために、多くの専門家が力と知恵を寄せ合った渾身の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者さん向け耳鳴診療Q&A定価2,200円(税込)判型B5判頁数180頁発行2021年5月編集日本聴覚医学会電子版でご購入の場合はこちら

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事例029 ベシケアOD錠の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説神経因性膀胱にて当診療所に通院する患者に、抗コリン剤のベシケアOD錠(一般名:コハク酸ソリフェナシン)を処方したところ、主に病名不足を理由とされるA事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。査定理由を調べるためにカルテを参照したところ、神経因性膀胱に伴う頻尿に対し、初診翌月に薬剤の処方変更を実施されたことが記載されていました。抗コリン剤は「神経因性膀胱に伴う頻尿に適応があるはず」と添付文書を確認してみました。効能または効果には「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿および切迫性尿失禁」と記載されています。しかし、「神経因性膀胱」の文字はありませんでした。神経因性膀胱に伴う症状としての過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿および切迫性尿失禁に対して適用となることが読み取れます。したがって、神経因性膀胱のみでは、薬剤投与の説明に不十分と判断されてA事由にて査定となったことが推測できます。この診療所では、過去に「余分な病名を付けてレセプト請求はしない」との指導があったために、「神経因性膀胱」のみの病名でレセプト提出をしていました。症状を補記して再審査をしましたが原審通りとなりました。限定された症状に対する薬剤を投与する場合には、添付文書に記載された適応となる症状が説明できる病名や症状詳記が必要とされたようです。医療安全を考え、医師に対しては、投薬後のチェックではなく同剤処方時に留意されるようにご理解をいただき、処方時に適用とされる症状にそった病名が入力されていない場合にはアラートが表示されるように薬剤処方システムに登録し、レセプトチェックシステムにも同様の注意が表示されるように改修して査定対策としました。

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誕生日会のCOVID-19リスクは?

 COVID-19の蔓延阻止のための政策の多くは、職場や食事の場などの集いに対応しているが、身内の集いが感染の場として重要かもしれない。米国・ランド研究所のChristopher M. Whaley氏らは、家族の誕生日後にCOVID-19が増加するかどうか調査することにより、パーティーと新型コロナウイルス感染との関連を調べた。その結果、COVID-19有病率の高い郡(county)の世帯において、誕生日がCOVID-19診断の増加と関連していることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2021年6月21日号に掲載。 本研究は、米国で民間保険に入っている290万世帯について、2020年1月1日~11月8日の全国的データを使用した横断的研究で、過去2週間に誕生日があった世帯とない世帯の新型コロナウイルス感染を比較した。その週における郡レベルのCOVID-19有病率によって層別化し、世帯の大きさ、週および郡による違いを調整した。本研究では、誕生日に関連した世帯レベルの感染率が、誕生日の種類(例:子供の誕生日/大人の誕生日、50歳の誕生日などの節目の誕生日)、毎週土曜日の郡レベルの降水量(パーティーを屋内にする可能性を考慮)、郡における政治的傾向、州における自宅待機の方針でどう異なるかについても比較した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象の290万世帯のうち、COVID-19有病率が最も高い十分位数だった群において、過去2週間以内に誕生日があった世帯はなかった世帯に比べ、COVID-19診断が1万人当たり8.6人(95%CI:6.6~10.7)多く、郡レベルの有病率(1万人当たり27.8人)に対して31%増加していた。一方、COVID-19有病率が第5十分位数だった群では、誕生日があった世帯はなかった世帯に比べ、COVID-19診断が1万人当たり0.9人(95%CI:0.6~1.3)多かった(相互作用のp<0.001)。・COVID-19有病率が最も高い十分位数の世帯におけるCOVID-19の診断の増加は、子供の誕生日の後では1万人当たり15.8人(95%CI:11.7〜19.9)だったのに対し、大人の誕生日の後は1万人当たり5.8人(95%CI:3.7~7.9)だった(相互作用のp<0.001)。・節目の誕生日、郡の政治的傾向、降水量、自宅待機の方針による違いは認められなかった。

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東洋人のうつ病関連因子~日本での調査

 地域コミュニティにおけるうつ病に対する効果的な対策を検討するうえで、国や文化圏において、うつ病に関連する個人的および社会経済的要因を包括的に特定する必要がある。しかし、日本および東洋諸国の中年住民を対象とした研究は、十分ではない。慶應義塾大学の吹田 晋氏らは、東洋の日本における中年住民のうつ病に関連する要因を特定するため、横断研究を行った。Medicine誌2021年5月14日号の報告。 西日本の地方自治体で生活する40~59歳のすべての地域住民を対象に、アンケート調査を実施した。アンケートには、人口統計学的特徴、心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因に関する項目を含めた。まず、うつ病と各因子との関連を分析するため、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定を行った。次に、うつ病と関連因子の包括的な関連を特定するため、ロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象者数は362人であった(平均年齢:51.5歳、男性:148人)。・カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定では、多くの心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因がうつ病と有意に関連していることが示唆された。・ロジスティック回帰分析により、うつ病と有意な関連が認められた因子は以下のとおりであった。 ●男性 ●首尾一貫感覚(sense of coherence)の低さ ●認知ストレスレベルの高さ ●援助要請行動(help-seeking behavior)の少なさ ●睡眠の質の悪さ ●趣味の欠如・Nagelkerke R2は、51%であった。 著者らは「多変量解析により、日本における中年期のうつ病は、主に個人の行動的および心理的要因と関連していることが明らかとなった。この結果は、西洋諸国での調査結果と一致している」とし「本結果は、個人の行動的および心理的要因に焦点を当てた東洋文化におけるうつ病予防対策の促進や評価に貢献できるであろう」としている。

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AZ製ワクチン接種後の血栓症の診療の手引き・第2版/日本脳卒中学会・日本血栓止血学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まり、全国で一般市民に対しても接種が急速に進んでいる。その一方で、2021年3月以降、アストラゼネカ社アデノウイルスベクターワクチン(商品名:バキスゼブリア)接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症を来すことが報道され、4月に欧州医薬品庁(EMA)は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態とした。また、ドイツとノルウェー、イギリスなどからもバキスゼブリア接種後に生じた血栓症のケースシリーズが相次いで報告され、ワクチン接種後の副反応として血小板減少を伴う血栓症が問題となった。この血栓症は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似した病態と捉えられ、VITTやVIPITという名称が用いられた(本手引きでは血小板減少症を伴う血栓症[TTS]を用いる)が、本症の医学的に適切な名称についてはいまだ議論があるところである。 海外では、国際血栓止血学会、米国血液学会などからTTSに関する診断や治療の手引きが公開されており、WHOからも暫定ガイドラインが発表された。海外と医療事情が異なるわが国には、これまで本疾患に対する診療の手引きは存在しなかったため、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会は、COVID-19ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめ、日常診療で遭遇した場合の対応方法を提言するために2021年6月に「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版」(2021年6月)を作成、公開した。まれだが発症すると致死的なTTS TTSの特徴は1)ワクチン接種後4~28日に発症する、2)血栓症(脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に生じる)、3)血小板減少(中等度〜重度)、4)凝固線溶系マーカー異常(D-ダイマー著増など)、5)抗血小板第4因子抗体(ELISA法)が陽性となる、が挙げられる。TTSの頻度は1万人~10万人に1人以下と極めて低いが、これまでに報告されたTTSの症例は、出血や著明な脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症が多く、致死率も高い。また、脳静脈血栓症以外の血栓症も報告されているので、極めてまれな副反応であるが、臨床医はTTSによる血栓症を熟知しておく必要がある。目次はじめに1 TTSの診断と治療の手引きサマリー 1)診断から治療までのフローチャート 2)候補となる治療法2 TTSの概要 1)TTSとは 2)ワクチン接種後TTSの発症時期と血栓症の発症部位3 TTSとHITとの関連4 TTSの診断 1)TTSを疑う臨床所見  2)検査 3)診断手順 4)鑑別すべき疾患と見分けるポイント5 TTSの治療 1)免疫グロブリン静注療法 2)ヘパリン類 3)ヘパリン以外の抗凝固薬 4)ステロイド 5)抗血小板薬 6)血小板輸血 7)新鮮凍結血漿 8)血漿交換 9)慢性期の治療おわりに 付1)血栓症の診断 付2)脳静脈血栓症の治療 血栓溶解療法(局所および全身投与)/血栓回収療法/開頭減圧術/抗痙攣薬 付3)COVID-19ワクチンとは 文献 同手引きでは「おわりに」で「TTSは新しい概念の病態であり、確定診断のための抗体検査(ELISA法)の導入、治療の候補薬の保険収載、さらにはワクチンとの因果関係の解明など、多くの課題が残されている。今後、新たな知見が加わる度に、本手引きは改訂していく予定」と今後の方針を記している。

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世界の喫煙率減少も、人口増で喫煙者数は増加:GBD 2019/Lancet

 世界的な15歳以上の喫煙率は、1990年以降、男女とも大幅に減少したが、国によって減少の程度やタバコ対策への取り組みにかなりの違いがあり、喫煙者の総数は人口の増加に伴って1990年以降大きく上昇したことが、米国・ワシントン大学のEmmanuela Gakidou氏らGBD 2019 Tobacco Collaboratorsの調査で明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌2021年6月19日号で報告された。1990~2019年の204の国・地域における喫煙率と疾病負担を評価 研究グループは、世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study[GBD])の一環として、1990~2019年の期間に204の国と地域で、年齢別、性別の喫煙率と喫煙に起因する疾病負担について検討を行った(Bloomberg PhilanthropiesとBill & Melinda Gates財団の助成を受けた)。 本研究では、3,625件の全国的な調査から得られた喫煙関連指標がモデル化された。また、因果関係のある36の健康アウトカムについて系統的レビューとベイズ流メタ解析が行われ、現喫煙者と元喫煙者の非線形用量反応リスク曲線の推定が実施された。 さらに、この研究では、直接的な推定法を用いて寄与負担を評価することで、喫煙の健康への影響について、以前のGBDよりも包括的な推定値が得られた。2019年の男性の死因の約2割が喫煙 2019年の世界の喫煙者数は11億4,000万人(95%不確実性区間[UI]:11億3,000万~11億6,000万)で、15歳以上の年齢標準化喫煙率は男性が32.7%(32.3~33.0)、女性は6.62%(6.43~6.83)であった。また、同年の紙巻きタバコ換算のタバコ類の消費量は7兆4,100億本だった。 15歳以上の喫煙率は、1990年以降、男性で27.5%(95%UI:26.5~28.5)、女性で37.7%(35.4~39.9)減少したが、喫煙者数は人口の増加によって1990年の9億9,000万人から顕著に増加した。 2019年の世界における喫煙による死亡数は769万人(95%UI:716万~820万)で、障害調整生命年(DALY)は2億年であり、男性の死亡の最も重大なリスク因子(20.2%、19.3~21.1)であった。769万人の喫煙に起因する死亡者のうち、668万人(86.9%)が現喫煙者だった。 なお、2019年の日本における15歳以上の喫煙率は、男性が33.4%(95%UI:31.4~35.5)、女性は10.2%(8.71~11.9)と、いずれも世界平均を上回っていた。また、1990~2019年の喫煙率の減少幅は、男性では41.7%(38.0~45.3)と世界平均よりも大きかったが、女性では23.6%(9.65~35.2)と世界平均に比べ小さかった。 著者は、「介入がなければ、喫煙に起因する死亡数769万人とDALY 2億年は、今後、数十年にわたって増加するだろう。すべての地域、すべての発展段階の国で、喫煙率の低減において実質的な進展が認められたものの、タバコ規制の推進には大きな隔たりがみられた」とまとめ、「喫煙率の減少を加速させ、国民の健康に多大な恩恵をもたらすために、各国は、エビデンスに基づく強力な施策を承認する明確で緊急性の高い機会を手にしている」と指摘している。

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KRASG12C変異がんのKRAS阻害薬への耐性機序が明らかに/NEJM

 KRAS阻害薬adagrasibおよびsotorasibの臨床試験では、KRASの12番目のコドンにグリシンからシステインへのアミノ酸置換(KRASG12C)が発現しているがんに対する有望な抗腫瘍活性が確認されている。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のMark M. Awad氏らは、これらのKRAS阻害薬に対する耐性獲得の機序について検討し、多様なゲノム機序および組織学的機序によって耐性がもたらされており、この薬剤耐性の発現の遅延や克服には、新たな治療戦略を要することを示した。NEJM誌2021年6月24日号掲載の報告。adagrasib投与KRASG12C変異陽性がん患者38例を解析 研究グループは、KRYSTAL-1試験に参加しadagrasib単剤療法を受けたKRASG12C変異陽性がん患者から治療前と耐性発現後に採取した検体を用い、adagrasib耐性の機序を解明する目的で、組織学的解析およびゲノム解析を行った(米国・Mirati Therapeuticsなどの助成による)。 また、KRASG12C阻害薬への耐性を付与する可能性のある第2変異(second-site mutation)を系統的に明らかにするために、KRASG12Cミスセンス変異のライブラリを用い、網羅的突然変異スキャニング法(deep mutational scanning)によるスクリーニングを実施した。 38例が解析に含まれた。このうち27例が非小細胞肺がん、10例が大腸がん、1例が虫垂がんであった。7例で、複数の耐性機序が同時に存在 adagrasibに対する推定上の耐性機序は17例(コホートの45%)で検出され、このうち7例(同18%)に複数の機序が同時に存在した。獲得されたKRAS変異は、G12D/R/V/W、G13D、Q61H、R68S、H95D/Q/R、Y96C、およびKRASG12C対立遺伝子の高度な増幅などであった。 また、獲得されたバイパス経路による耐性機序は、MET増幅、NRAS・BRAF・MAP2K1・RETの活性化変異、ALK・RET・BRAF・RAF1・FGFR3のがん遺伝子融合、NF1およびPTENの機能喪失型変異などであった。 ペア検体が得られた肺腺がん患者の組織生検では、9例中2例で扁平上皮がんへの組織学的な形質転換がみられたが、これ以外の耐性機序は同定されなかった。さらに、in vitroの網羅的突然変異スキャニング法によるスクリーニングでは、KRASG12C阻害薬に耐性を示すKRAS変異の状況が明らかとなり、耐性変異の明確な機序のクラスと、薬剤特異的な耐性パターンが確認された。 著者は、「この研究で得られたデータは、オンターゲットおよびオフターゲットの多様な機序が、KRASG12C阻害薬への耐性をもたらす可能性があることを示しており、別の結合様式や異なる対立遺伝子特異性を有する新たなKRAS阻害薬を開発する必要があると考えられる。また、adagrasibやsotorasibによる治療中に発現する耐性機序に十分に対抗するには、効果的な併用療法レジメンの開発が求められる」としている。

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