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歯周病の進行が動脈硬化と相関か

 歯周病は40歳以上の成人における歯の喪失の主な原因と考えられているが、2000年代の初頭からは他の全身疾患との関連性も報告されるようになった。今回、アテローム性動脈硬化と歯周病の進行が相関しているとする研究結果が報告された。研究は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野の玉木直文氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に4月18日掲載された。 アテローム性動脈硬化は血管疾患の主な原因の一つであり、複数のメタ解析により歯周病との関連が報告されている。長崎大学は2014年に、離島における集団ベースの前向きオープンコホート研究である長崎諸島研究(Nagasaki Islands Study;NaIS)を開始した。このコホート研究でも以前、動脈硬化が歯周病の進行に影響を与えるという仮説を立て、横断研究によりその関連性を調査していた。しかし、両者の経時的な関連性を明らかにする縦断研究はこれまで実施されていなかった。そこで著者らは、追跡調査を行い、動脈硬化と歯周病の関連性を検討する3年間のコホート研究を実施した。 本研究は長崎県五島市で実施されたフィールド調査で口腔内検査を受けた40歳以上の成人597人のうち、ベースライン時の健康診断と3年後に実施された追跡健康診断の両方のデータ(潜在性動脈硬化症、潜在的交絡因子、口腔内検査)がそろっている222人を最終的な解析対象とした。潜在的なアテローム性動脈硬化の指標として、頸動脈内膜中膜厚(cIMT)が1mm以上、足関節上腕血圧比(ABI)が1.0未満、心臓足首血管指数(CAVI)が8以上の者を、高リスク者と定義した。歯周病の進行は、歯肉辺縁から歯周ポケット底部までのプロービング ポケット デプス(PPD)と、セメントエナメル境から歯周ポケット底部までのクリニカル アタッチメント レベル(CAL)を測定することで評価した。 ベースライン時における参加者の平均年齢は64.5±10.3歳であり、歯周病が進行した対象者58人(26.1%)が含まれた(進行群)。歯周病進行群と非進行群のベースライン時点での比較では、性別が男性であること、年齢が高いこと、現存歯数が少ないこと、PPDとCALが深いこと、喫煙者、高血圧、cIMTの厚さ、cIMTが1mm以上の者の割合、およびCAVIの値に有意な差が認められた。 3年間の追跡調査におけるアテローム性動脈硬化指標(cIMT、ABI、CAVI)の変化を調べたところ、CAVIの値は歯周病進行群(P<0.001)、非進行群(P=0.007)でともに有意に増加していたが、CAVIが8以上の者の割合は進行群でのみ62.1%から81.0%へ有意に増加していた(P=0.024)。 次に、年齢と性別を調整した上で、多重ロジスティック回帰分析を実施し、アテローム性動脈硬化(前述の通りcIMT、ABI、CAVIによって定義)に対する歯周病進行のオッズ比(OR)を算出した。その結果、cIMTが1mm以上であった群は歯周病進行のORが有意に高かった(OR2.35、95%信頼区間〔CI〕:1.18, 4.70、P<0.05)。この有意傾向は、喫煙状況や高血圧などの追加の共変量を調整した後も維持された。 また、多重線形回帰分析により、ベースラインにおけるアテローム性動脈硬化指標(cIMT、ABI、CAVI)とPPDおよびCALの変化との相関を検証した。年齢および性別で調整した結果、CAVIはCALの変化と正の相関(β=0.046、95%CI:0.008, 0.083、P=0.017)を示し、ABIはPPDの変化と負の相関(β=-0.667、95%CI:-1.237, -0.097、P=0.022)を示した。この有意傾向は、すべての共変量を調整した後も維持された。 本研究の結果について著者らは、「本研究より、日本の地域在住の中高齢者において、歯周病の進行とアテローム性動脈硬化が有意に関連していることが示唆された。従って、潜在性のアテローム性動脈硬化を予防することで、歯周病の状態を改善できる可能性がある。」と述べている。

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陰茎が3本あった男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第284回

陰茎が3本あった男性三重陰茎症(トリファリア、トリプルペニス)は、3つの明確な陰茎体が存在する、きわめてまれな先天異常です。実は文献上、今回の症例を含めると、これまでにわずか2例しか報告がありません1)。Buchanan J, et al. Triphallia: the first cadaveric description of internal penile triplication: a case report. J Med Case Rep. 2024;18:490.この論文は、献体解剖中に偶然発見された78歳男性の三重陰茎症例について、その解剖学的特徴と臨床的意義について解説しています。症例は78歳の白人男性の献体です。外見上は正常な外性器でしたが、解剖の結果、主要陰茎の背側深部に2つの過剰陰茎が配列しているという解剖学的アノマリーが発見されました。各陰茎体はそれぞれ独自の陰茎海綿体と亀頭を有していました。主要陰茎と第二の陰茎は単一の尿道を共有しており、この尿道は特徴的な蛇行経路を示し、第二陰茎を貫通した後に主要陰茎へと合流していました。合流するんだ…。最も小さな第三の過剰陰茎には尿道様構造は認められませんでした。陰茎の大きさは以下の通りでした:主要陰茎:長さ77mm、幅24mm第二陰茎:長さ38mm、幅13mm第三陰茎:長さ37mm、幅12mm重要な点として、この献体には腎臓、尿管、膀胱、消化管、陰嚢など他の臓器の解剖学的異常は一切認められなかった点です。正常な男性生殖器の発生は、胚発生第4週から始まります。総排泄腔膜周囲の間葉細胞増殖により性器結節が形成され、Y染色体上のSRY遺伝子発現によるテストステロン産生が男性外性器の発達を誘導します。テストステロンは5α-リダクターゼによってジヒドロテストステロンに変換され、これが性器結節と尿生殖洞のアンドロゲン受容体に作用して陰茎の発達を促進します。本症例では、性器結節の三重化があった可能性が考えられます。尿道はもともと第二陰茎で発生したものの、その後発達パターンが変化し、蛇行経路をとって主要陰茎まで伸長したと推測されます。第三陰茎は、三重化した性器結節の遺残と考えられ、尿道形成は不完全なまま終了したと思われます。本症例の特筆すべき点は、患者が78歳まで無症状で過ごし、この解剖学的アノマリーが生前にまったく発見されなかったことです。これは過剰陰茎が陰嚢内に隠れていたためです。ゆえに、実は多陰茎症の実際の有病率は現在理解されているよりも高い可能性があります。これを読んでいる男性読者の中にもおられるかもしれません。生前に尿道カテーテル挿入が必要であった場合、このような症例では手技が困難であった可能性があります。また、過剰な勃起により性交疼痛を経験していた可能性があるかもしれません。1)Jabali SS, Mohammed AA. Triphallia (triple penis), the first reported case in human. Int J Surg Case Rep. 2020;77:198-200.

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第267回 ワクチン懐疑派が集結、どうなる?米国のワクチン政策

やはり、トランプ氏より危険だった嫌な予感が的中してしまった。3回前の本連載で米国・トランプ政権の保健福祉省長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(以下、ケネディ氏)について言及したが、「ついにやっちまった」という感じだ。前述の連載公開10日後の6月9日、ケネディ氏は米国・保健福祉省と米国疾病予防管理センター(CDC)に対してワクチン政策の助言・提案を行う外部専門家機関・ACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の委員全員を解任すると発表したからだ。アメリカでは政権交代が起こると官公庁の幹部まで完全に入れ替わる(日本と違い、非プロパーが突如、官公庁幹部に投入される)のが常だが、1964年に創設されたACIP委員が任期途中(任期4年)で解任された事例は調べる限りない模様である。一斉に解任された委員に代わって、ケネディ氏は新委員8人を任命した。このメンツが何とも香ばしい。ある意味、粒ぞろいの人選まず、ほぼ各方面から懸念を表明されているのが、国立ワクチン情報センター(National Vaccine Information Center:NVIC)ディレクターで看護師のヴィッキー・ペブスワース氏と医師で生化学者のロバート・W・マーロン氏の2人である。ペブスワース氏については、所属が「国立」となっているので公的機関のような印象を受けるが、完全な民間団体で従来からワクチン接種が自閉症児を増やすという、化石のような誤情報を声高に主張している。同センターによると、ペブスワース氏自身がワクチン接種で健康被害を受けた息子の母親であるという。マーロン氏は1980年代後半にmRNAの研究を行っていたとされ、今回の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するmRNAワクチンの発明者だと自称している。その後は大学で教鞭をとったり、ベンチャー系製薬企業の幹部に就任したりしている。mRNAワクチンの発明者を自称しながら、今回のファイザーやモデルナのワクチンには否定的で、「最新のデータによると、新型コロナワクチン接種者は未接種者に比べて感染、発症、さらには死亡する可能性が高くなることが示されている。そしてこうしたデータによると、このワクチンはあなただけでなく、あなたのお子さんの心臓、脳、生殖組織、肺に損傷を与える可能性があります」などと主張している人物である。どこにそんなデータがあるのか見せてもらいたいが。これ以外でも、mRNAワクチンは若年者で死亡を含む深刻な害悪があると主張するマサチューセッツ工科大学教授のレツェフ・レヴィ氏、コロナ禍中の2020年10月に全米経済研究所が若年者などは行動制限せずに集団免疫獲得を目指すべきと政策提言した「グレートバリントン宣言」の起草者に名を連ねた生物統計学者のマーティン・クルドルフ氏とダートマス大学ガイゼル医学部小児科教授のコーディ・マイスナー氏も含まれている。意味不明な選出もこれだけワクチンを含む新型コロナ対策における亜流・異端のような人物たちが過半数を占め、驚くべき状況である。ACIPはケネディ氏の“趣味”仲間の井戸端会議になり果ててしまったと言ってよいだろう。残るのは元米国立衛生研究所(NIH)の所員で精神科医のジョセフ・R・ヒッベルン氏、元救急医のジェームズ・パガーノ氏、慢性疾患患者向けの治療薬投与システムを開発するベンチャー企業の最高医療責任者(CMO)で産婦人科医のマイケル・A・ロス氏だが、ケネディ氏の志向と合致する前述の5氏と比べれば、この3氏はなぜ選出されたのかも意味不明である。ただ、もともと感染症学や予防医学や公衆衛生学などの専門家に加え、消費者代表を加えてバランスを取っていた以前のACIPとはまったく異なる組織になったことだけは確かである。これから考えれば、昨今国会でキャスティングボードを握り始めた某野党の参議院選比例代表候補者にワクチン懐疑派の候補者が1人含まれているなどという日本の状況は、まだましなのかもしれない(もちろん私自身はそれを許容するつもりはないが)。

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高ストレス者面談の実務ポイントと留意点【実践!産業医のしごと】

50人以上の企業には、労働安全衛生法に基づいて年に1回「ストレスチェック」を行うことが義務付けられています。質問票によるこのチェックで、「高ストレス」と判断された従業員は希望によって産業医等の面接指導を受けることになります。この面談は産業医の評価を決める、重要な仕事の1つです。高ストレス者の面談には、いろいろな人が来ます。医師との面談を希望していることは共通ですが、そのニーズや本心はさまざまです。本当に体調を崩して支援が必要な人、会社への不満をひたすら語りたいだけの人、中には「産業医に言えば、異動させてもらえるのでは?」と期待を込めて来る人までいます。それぞれの方が大なり小なり困っていることは事実ですが、産業医の権限だけでは解決できない問題も多く含まれます。今回は、こうした高ストレス者の面談における産業医としての実務のポイントを紹介しましょう。1. 安心できる、プライバシーが守られる場所で面談には多様な相談が持ち込まれますが、大切なのは、安心できる雰囲気の中で、従業員の話を丁寧に傾聴することです。場所は、プライバシーが守られる場所を選びます。冒頭に面談の目的や流れを簡潔に説明し、ストレスチェックの結果を振り返りながら話を始めます。また、「面談は受けたいが、会社には知られたくない」という人もいます。このような場合は、企業と一緒に対応を検討するための高ストレス者の面談ではなく、通常の産業医面談に切り替えるとよいでしょう。面談の流れ画像を拡大する2. 情報開示と同意の“落とし穴”ストレスチェックにおいては、「高ストレス者」と判断され、産業医との面談を申し出た時点で「会社への情報開示」に同意が必要です。ただし、実際には「面談を申し込んだ=情報開示に同意した」と認識していない労働者も珍しくありません。そのため、産業医側が「面談内容は会社に伝わる前提」で面談を進めてしまうと、「そんなつもりではなかった」という従業員と後からトラブルになるケースがあります。とくに上司との関係がストレス要因などの場合、内容が職場に伝わると状況が悪化するリスクもあるため、人事には口頭で概要を伝え、文書には詳細を記載しないなどの配慮が必要です。◎実務で留意するポイント面談時に「どの範囲の情報が、誰に、どんな目的で開示されるか」を説明する情報開示範囲は曖昧なまま進めず、明確に確認する高ストレス者面談の報告書は、あえて明言を避ける配慮も必要である3. 本人同意がなくても情報提供が必要なケースも産業医には、本人の同意が得られない場合でも、安全配慮義務や健康・安全確保の観点から、やむを得ず必要な情報を会社に伝えることが必要となる場面があります。労働者本人が情報開示を拒否している場合でも、以下のような状況では本人に理由を丁寧に説明したうえで、同意が取れていなくても、医師の責任として企業側に情報提供を行わなければなりません。◎実務で判断するポイント生命に関わる緊急性がある場合:自殺企図や重篤な身体症状が疑われる状況本人や周囲への安全リスクがある場合:業務遂行能力の著しい低下や危険作業への従事就業継続が困難な健康状態が明確な場合:疾患の急性期で仕事による悪化が予見される状況4. 面談における実務上の配慮事項ストレスチェック制度は2015年にスタートし、今年10年になります。しかし、その理念とは裏腹に、いまでも「高ストレス者として面談を受けることで、会社からストレスに弱いと思われるのではないか」といった懸念を持つ従業員が少なくありません。こうしたことへの対策としては、オンライン面談など気軽に申し出られる体制づくりや、面談を受けることが不利益にならない旨の明確な周知などが有効です。高ストレス者が面談を希望しない場合でも、保健師によるカウンセリング面談や外部EAP(Employee Assistance Program、従業員支援プログラム)の案内、セルフケア資料の提供、定期的な健康状況の確認など、できることは多々あります。安心できる環境を提供し、より多くの方が申し出をしやすい風土をつくることも、産業医・企業が担うべき、重要な1次予防策なのです。5. まとめ高ストレス者面談の実務ポイントと留意点について解説しました。第一に、労働者が安心して相談できる場を提供すること。第二に、情報開示については本人同意を基本としつつ、産業医の安全配慮義務に基づき判断すること。第三に、面談を受けやすい組織風土を醸成することです。これらのポイントを基に、高ストレス者面談を実効性の高い取り組みとしていきましょう。

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肺炎へのセフトリアキソン、1g/日vs.2g/日~日本の約47万例の解析

 肺炎患者へのセフトリアキソン(CTRX)の投与量は1~2g/日とされているが、最適な用量は明らかになっていない。市中肺炎患者では1g/日と2g/日の有効性は同等とする報告もあるが、ICU入室を要する重症例では2g/日が有効であることを示唆する報告もある。そこで、谷口 順平氏(東京大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、DPCデータを用いた解析により、肺炎で入院した患者におけるCTRX 1g/日と2g/日の有効性および安全性を比較した。その結果、30日院内死亡率について、全体集団ではCTRX 1g/日群と2g/日群の間に有意差はみられなかったが、機械的換気を要する重症例では2g/日群のほうが有意に低かった。本研究結果は、Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。 研究グループは2010〜22年のDPCデータを用いて、入院後2日以内にCTRXによる治療を開始した肺炎患者47万1,694例を抽出した(1g/日群17万3,079例、2g/日群29万8,615例)。主要評価項目は30日院内死亡率、副次評価項目は有害事象(胆道合併症、Clostridioides difficile感染[CDI]、アレルギー反応およびこれらの複合)とした。有効性および安全性の解析について、両群間の背景因子を調整するため、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後の30日院内死亡率は1g/日群4.6%、2g/日群4.5%であり、両群間に有意差はみられなかった(リスク差[RD]:−0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.3~0.1)。・副次評価項目の有害事象(胆道合併症、CDI、アレルギー反応の複合)の発現割合は1g/日群1.8%、2g/日群1.9%であり、わずかながら2g/日群が有意に高かった(RD:0.1%、95%CI:0.0~0.2、p=0.007)。CDIの発現割合もわずかながら2g/日群が有意に高かった(1.1%vs.1.2%、RD:0.1%、95%CI:0.0~0.2、p=0.014)。・機械的換気を要する重症例を対象としたサブグループ解析において、30日院内死亡率は1g/日群20.4%、2g/日群17.2%であり、2g/日群が有意に低かった(RD:-3.2%、95%CI:-5.6~-0.9、p=0.006)。・寝たきりの患者を対象としたサブグループ解析において、CDIの発現割合は1g/日群2.2%、2g/日群2.7%であり、2g/日群が有意に高かった(RD:0.4%、95%CI:0.2~0.7、p=0.006)。 本研究結果について、著者らは「通常の肺炎治療では1g/日を超えるCTRXは不要な可能性があるが、機械的換気を要する重症例では2g/日を選択肢として検討すべきである」とまとめた。

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アリピプラゾールLAIへの切り替え、前治療薬による有用性の違いは?

 アリピプラゾールの持続性注射剤(LAI)は、統合失調症の治療において安全性および有効性が実証されている。しかし、アリピプラゾールに対する臨床反応には個人差があり、切り替え前に服用していた抗精神病薬によるD2パーシャルアゴニストおよびD2アップレギュレーションが関連している可能性が示唆されている。韓国・ソウル大学のEuitae Kim氏らは、臨床的に安定した統合失調症患者における経口抗精神病薬からアリピプラゾールLAI月1回(AOM)投与への切り替えについて、前治療の抗精神病薬を考慮し、症状悪化または有害事象の有無を評価した。Schizophrenia Research誌2025年7月号の報告。 本試験は、20週間のプロスペクティブ非盲検多施設共同研究として実施した。臨床的に安定した統合失調症患者を、前治療の経口抗精神病薬に基づいて経口アリピプラゾール群(I群)または他のD2アンタゴニスト群(II群)に分類し、4週間ごとのAOM投与への切り替えを行った。主要エンドポイントは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とした。治療中に発生した有害事象(TEAE)のモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・I群100例、II群101例が試験を完了した。・AOMへの切り替え後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化は、I群で-9.43±9.79(p<0.0001)、II群で-4.04±8.72(p=0.0102)であった。・II群はI群と比較し、AOM開始後に睡眠障害(p=0.0243)および精神症状(p=0.0042)のTEAEがより多く発生したが、いずれも試験期間中に消失した。・精神症状のTEAEは、前治療における経口抗精神病薬の漸減の速さと関連が認められた(p=0.0269)。・AOM投与開始による症状の悪化は認められなかった。・前治療における経口抗精神病薬の種類にかかわらず、AOMは有意な副作用なく精神症状を軽減した。・D2アンタゴニストによる治療歴を有する患者では、一過性の精神症状のTEAEがみられる可能性があるが、長期のクロスタイトレーションで最小限に抑制できることが示唆された。

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米国で承認された薬の約半数が日本で未承認

 米国と日本における医薬品の承認格差を調査した結果、2005~22年に米国で承認された医薬品のうち44%が日本では未承認であり、近年に承認された医薬品ほど未承認に留まる傾向が強かったことを、慶應義塾大学の笠原 真吾氏らがJAMA Network Open誌2025年6月10日号のリサーチレターで報告した。 近年、米国で承認された医薬品が他国では未承認のままとなる傾向が強まっており、患者の医薬品アクセスに制限が生じる可能性がある。そこで研究グループは、米国で承認された医薬品のうち、日本では承認されていない医薬品の特徴を明らかにすることを目的として横断的解析を実施した。 対象となった医薬品は、2005~22年に米国または日本で初めて承認された新規分子化合物および生物学的製剤であった。2年の猶予期間を設定して、2024年12月31日時点の日本における承認状況を評価した。米国で承認されたものの、日本では未承認であった医薬品の傾向をロジスティック回帰分析で検討した。 主な結果は以下のとおり。・2005~22年に米国または日本で711品目の医薬品が承認された。・711品目のうち633品目は米国で承認されており、そのうち280品目(44.2%)は日本では承認されていなかった。・日本で承認された431品目のうち78品目(18.1%)は米国で承認されていなかった。78品目のうち63品目(80.8%)は欧州医薬品庁(EMA)でも承認されていなかったため、これらの医薬品はローカル薬とみなして回帰分析から除外した。・近年(2014年以降)に米国で承認された医薬品ほど日本では未承認である傾向が強かった。・抗腫瘍薬・免疫調節薬(β係数:−0.93)および血液・造血器系薬(−0.90)は日本でも承認される傾向が強かった一方で、消化器・代謝系薬(−0.43)、神経系薬(−0.51)、全身用感染症薬(−0.52)はやや承認されにくい傾向がみられた。・生物学的製剤、日本の製薬会社またはグローバルな大手製薬会社が開発した医薬品は日本でも承認される傾向が強かった。・FDAによる迅速審査指定の有無は日本での承認に影響しなかった。 研究グループは「本研究の結果は、小規模企業や外国企業への承認経路を最適化することで承認格差を是正し、日本における医薬品アクセスが向上する可能性があることを示唆している」とまとめた。

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軽度・短期間のAKIでも腎機能が長期的に悪化

 急性腎障害(AKI)後の長期的な腎機能悪化リスクを調査したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、AKIが軽度で持続期間が短い患者であっても慢性腎臓病(CKD)の発症および進行リスクは有意に高く、糖尿病や高血圧の既往、急性透析の必要があった場合などではさらにリスクが増大していたことを、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのDenise M. J. Veltkamp氏らが明らかにした。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2025年5月27日号掲載の報告。 AKIは、CKDや腎不全、主要腎有害事象(死亡、透析依存など)と関連するが、どのような患者においてリスクが増大するかは依然として不明である。そこで研究グループは、AKIのステージや持続期間、患者特性などが腎予後に与える影響を明らかにするためにシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。 PubMedおよびEmbaseを用いて、AKI患者と非AKI患者を少なくとも1つの重要なアウトカムで比較検討し、最低1年間の追跡調査を行った研究を系統的に検索した。ハザード比(HR)とオッズ比(OR)はランダム効果モデルを用いて統合し、患者背景の異質性はサブグループ分析およびメタ回帰分析を用いて検証した。 主な結果は以下のとおり。・70件の研究の183万8,668例(うちAKI患者は16万5,715例)を解析対象とした。すべての研究の質は中~高であった。・AKI患者では、非AKI患者よりも、CKD発症および進行リスク、腎不全リスク、主要腎有害事象リスクが高かった。 -CKD発症 AKI群25.8%vs.非AKI群8.7%、HR:2.36(95%信頼区間[CI]:1.77~2.94) -CKD進行 AKI群43.1%vs.非AKI群35.6%、HR:1.83(95%CI:1.26~2.40) -腎不全 AKI群2.9%vs.非AKI群0.5%、HR:2.64(95%CI:2.03~3.25) -主要腎有害事象 AKI群59.0%vs.非AKI群32.7%、OR:2.77(95%CI:2.01~3.53)・3日未満の短期間のAKIでもCKD発症リスクが高かった(OR:2.37[95%CI:1.68~3.07])。・ステージ1の軽度のAKIでもCKD発症リスクが高かった(HR:1.49[95%CI:1.44~1.55])。・糖尿病や高血圧、冠動脈疾患の既往、心血管手術を受けた患者、急性透析を必要とした患者では、CKD発症または進行リスクが高かった。 研究グループは「これらの結果は、AKI後の腎機能低下を速やかに認識し、腎保護のための介入を開始するための個別化されたフォローアップ戦略を開発する必要性を強調している」とまとめた。

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高リスク皮膚扁平上皮がんの術後補助療法、セミプリマブがDFS延長/NEJM

 術後放射線療法後の高リスク皮膚扁平上皮がん(cSCC)患者において、セミプリマブによる術後補助療法はプラセボと比較して無病生存期間(DFS)を有意に延長した。オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのDanny Rischin氏らC-POST Trial Investigatorsが、16ヵ国107施設で実施した第III相無作為化プラセボ対照試験「C-POST試験」の、二重盲検期の解析結果を報告した。高リスクのcSCC患者は、根治的局所療法後に再発するリスクが高いが、全身療法による術後補助療法の有用性は臨床試験で十分に確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2025年5月31日号掲載の報告。対プラセボでDFSを比較 研究グループは、18歳以上の外科的切除および術後放射線療法を完了した限局性または局所性のcSCC患者のうち、高リスクの結節性または非結節性病変を有する患者を、セミプリマブ群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 高リスクの結節性病変は最大径20mm以上で節外浸潤を伴うまたは節外浸潤の有無にかかわらず3つ以上、高リスクの非結節性病変はin-transit転移、指定された神経の神経周囲浸潤、骨浸潤を伴うT4原発腫瘍、または局所再発で少なくとも1つの予後不良因子を有する(N2b以上、腫瘍径4.0cm超のT3以上病変、腫瘍径2cm以上で低分化がんの組織学的特徴を有する)、と定義された。 セミプリマブまたはプラセボは、当初350mgを3週ごとに12週間静脈内投与した後、700mgを6週ごとに変更され、36週間(計48週間)投与された。いずれも、最長48週間、または再発、許容できない毒性の発現、同意撤回まで投与した。 主要評価項目はDFS、副次評価項目は無局所再発生存期間、無遠隔再発期間、全生存期間、および安全性などであった。セミプリマブ群で再発または死亡リスクが68%低下、24ヵ月DFS率は87% 2019年6月~2024年8月に526例がスクリーニングされ、415例がセミプリマブ群(209例)とプラセボ群(206例)に無作為化された。 追跡期間中央値24ヵ月において、セミプリマブ群はプラセボ群と比較しDFSが有意に改善した。主要評価項目のイベントはそれぞれ24例、65例に発現し、再発または死亡のハザード比(HR)は0.32(95%信頼区間[CI]:0.20~0.51、p<0.001)、24ヵ月DFS率はそれぞれ87.1%(95%CI:80.3~91.6)、64.1%(95%CI:55.9~71.1)であった。 セミプリマブ群ではプラセボ群と比較して、局所再発(イベント数はそれぞれ9例vs.40例、HR:0.20[95%CI:0.09~0.40])および遠隔再発(10例vs.26例、0.35[0.17~0.72])のリスクも低下した。 Grade3以上の有害事象は、セミプリマブ群で23.9%、プラセボ群で14.2%に発現し、投与中止に至った有害事象はそれぞれ9.8%および1.5%であった。

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重症患者の経腸栄養、タンパク質を増量しても予後は改善せず/JAMA

 集中治療室(ICU)入室中の重症患者にタンパク質含有量の高い経腸栄養剤(100g/L)を用いても、通常(63g/L)と比較して90日時点の生存期間などは改善されなかった。オーストラリア・アデレード大学のMatthew J. Summers氏らが、同国およびニュージーランドの8施設のICUにて実施したクラスター無作為化非盲検クロスオーバー試験の結果を報告した。ガイドラインでは、重症患者におけるタンパク質含有量の高い経腸栄養が推奨されているが、患者のアウトカムに及ぼす影響は不明であった。JAMA誌オンライン版2025年6月11日号掲載の報告。タンパク質含有量100g/L vs.63g/Lを比較 研究グループは、経腸栄養におけるタンパク質強化が、生存日数と入院回避期間の延長に結び付くかを検証する目的で、4施設が2022年5月23日より、4施設が2023年8月23日よりそれぞれ12ヵ月間患者を募集し、2023年11月21日に最終追跡調査を行った。 対象患者は16歳以上で、ICUに入室し経腸栄養剤を処方された患者、または入院中にICUに入室し初めて経腸栄養剤を処方された患者とした。 各ICUは、12ヵ月間にわたり3ヵ月ごとに、タンパク質含有量の高い経腸栄養剤(タンパク質100g/L)(タンパク質強化群)→通常の経腸栄養剤(タンパク質63g/L)(通常群)を交互に、またはその逆の順で交互に治療を提供するよう、無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、90日時点の対象病院への非入院生存期間、副次アウトカムは90日時点の生存者における対象病院への非入院日数、90日時点での生存率、侵襲的人工呼吸を受けた患者における侵襲的人工呼吸期間、ICU入室期間および入院期間(生存退院までの期間)、気管切開・挿管および新規腎代替療法の実施率、ならびに退院先であった。主要評価項目に差はなし 計3,397例が登録された。年齢中央値は61歳(四分位範囲[IQR]:48~71)、男性が2,157例(64%)であった。 90日時点の対象病院への非入院生存期間中央値(IQR)は、タンパク質強化群で62日(0~77)、通常群で64日(0~77)であり、補正後の群間差の中央値は-1.97日(95%信頼区間[CI]:-7.24~3.30)であった(p=0.46)。 90日時点で、タンパク質強化群では1,681例中1,221例(72.6%)が生存し、通常群では1,716例中1,269例(74.0%)が生存していた(リスク比:0.99、95%CI:0.95~1.03)。 副次アウトカムに関する群間差は、生存者における非入院日数中央値の差が0.01日(95%CI:-1.94~1.96)、平均侵襲的人工呼吸期間の差が6.8時間(95%CI:-3.0~16.5)であった。また、ICU生存退室までの期間のハザード比は0.93(95%CI:0.88~1.00)、生存退院までの期間については0.96(0.90~1.02)、気管切開術のリスク比は1.15(0.66~2.01)、新規腎代替療法のリスク比は0.97(95%CI:0.81~1.16)であり、退院先は両群で類似していた。

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心臓発作から回復後にしてはいけないこと

 心臓発作から回復した後に、座位行動の時間が長いほど発作再発や死亡リスクが高く、座位行動を運動または睡眠に置き換えることでそのリスクが抑制される可能性のあることが明らかになった。米コロンビア大学医療センターのKeith Diaz氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に5月19日掲載された。 この研究は、2016~2020年に急性冠症候群(心筋梗塞や不安定狭心症)の症状のために同センター救急外来で治療を受けた成人患者を対象に実施された。退院後30日間にわたり、手首装着型の加速度計を用いて、座位行動や身体活動、および睡眠の時間を測定。また退院1年後に、電話調査や医療記録、死亡記録によって転帰が確認された。解析対象者数は609人(平均年齢62歳〔範囲21~96〕、男性52%)で、1日の座位時間は平均13.6±1.8時間だった。 1年間の追跡で8.2%の患者に何らかのイベント(急性冠症候群の再発または新たな心血管疾患の発症および死亡)の発生が確認された。対象者全体を座位行動時間の三分位に基づき3群に分け、第1三分位群(座位行動時間が短い下位3分の1)を基準にイベント発生リスクを比較すると、第3三分位群(座位行動時間が長い上位3分の1)の人は約2.6倍リスクが高かった。詳しくは、第2三分位群がハザード比(HR)0.95(95%信頼区間0.37~2.40)、第3三分位群がHR2.58(同1.11~6.03)であって、座位行動時間が長いほどハイリスクとなる傾向が示された(傾向性P値=0.011)。 統計学的手法を駆使した検討により、30分間の座位行動をやめて中~高強度の身体活動をしたとすると、イベントリスクが61%低下することが分かった(HR0.39〔0.16~0.96〕)。また、軽度の身体活動に置き換えた場合にも、リスクが51%低下(HR0.49〔0.32~0.75〕)すると計算された。さらに、睡眠に置き換えた場合にも、14%のリスク低下(HR0.86〔0.78~0.95〕)が予測された。 Diaz氏はこの研究の背景として、「現在の治療ガイドラインは、心臓発作後の患者に対して、運動を奨励することに重点を置いている。それに対してわれわれは、座位時間の長さそのものが、心血管リスクを押し上げる可能性があるのではないかと考えた」と語っている。そして得られた結果を基に、「心臓発作を経験した後になにもマラソンを始めることはなく、座る時間を減らし体を動かしたり睡眠を少し増やしたりするだけで大きな違いが生まれるようだ」と総括。「この結果を基に、医療専門家が、より柔軟で個別化されたアプローチを採用するように変化していくのではないか」と付け加えている。 同氏はまた、座位行動を睡眠に置き換えることでもリスクが低下する可能性が示されたことについて、「この結果には驚いた。睡眠は心身の回復に欠かせず、心臓発作のような深刻な健康問題の後には特に重要となるのではないか」と推察している。

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多くの高齢者が白内障手術に恐怖心を抱いている

 白内障の手術は最も安全性の高い手術の一つであり、成功率は95%に達する。それにもかかわらず、多くの高齢者は失明を恐れて手術を受けていないことが、米シンシナティ大学医学部のLisa Kelly氏らによる研究で明らかにされた。この研究の詳細は、「The Journal of Clinical Ophthalmology」に3月28日掲載された。 白内障は、目のレンズの役割を担う水晶体が白く濁り、視界がぼやけたり暗くなったりする病態を指す。原因は、主に加齢に伴い水晶体を構成するタンパク質が酸化して白く濁ることにある。米クリーブランド・クリニックによると、90代の約半数では、どこかの時点で濁った水晶体を透明な人工水晶体に置換する手術を受ける必要があるという。手術に要する時間は非常に短い上に、痛みはほとんどない。米国では毎年300万件以上の白内障手術が行われている。 今回の研究でKelly氏らは、シンシナティ大学医療センターのHoxworth眼科クリニックで募集した50歳以上の白内障患者42人(平均年齢66.2歳、男性17人)を対象に、白内障手術および失明に対する恐怖心と健康リテラシーとの関係を評価した。全ての対象者が、白内障の病理や治療に関する理解や態度を評価する質問票に回答した。また、Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicine-Short Form(REALM-SF〔成人の医療リテラシー簡易評価法〕)による健康リテラシーの評価も受けた。 その結果、REALM-SFのスコアと白内障手術に対する恐怖心は関連しておらず、健康リテラシーが白内障手術に対する恐怖心に影響しないことが示唆された。実際、約36%の患者が白内障手術に対する恐怖心を報告し、そのうちの53%は「失明に対する不安」を恐怖心の理由として挙げていた。解析からは、白内障手術に対する恐怖心と「手術により視力が改善する可能性がある」との考えの間に、統計学的に有意な関連が見られ、手術効果に対する患者の考えが手術に対する恐怖心に影響することが示唆された。一方、失明に対する恐怖心と「手術によって視力が改善する可能性がある」との考えとの間に有意な関連は見られなかった。研究グループは、「つまり、失明に対する恐怖心は知識不足に基づくものではなく、より本能的な何かに基づくということだ」との考えを示している。 論文の筆頭著者であるシンシナティ大学医学部のSamantha Hu氏は、「患者に大量の情報を提供しても、必ずしも不安が軽減されるわけではない」と同大学のニュースリリースの中で話す。Kelly氏は、「この研究結果はむしろ、オープンなコミュニケーションによる医師と患者の良好な関係の重要性を指摘している。患者教育は確かに重要だが、それだけでは不十分なこともある。患者が恐怖心を克服できるよう、人間関係と信頼関係を築くことも同様に重要だ。これは医師にとって重要な教訓だ」と述べている。 さらにKelly氏は、「この研究は、患者が恐怖心を抱えていることを改めて認識させてくれる。われわれの役割は、健康管理のパートナーとして患者と協力しながら医療に取り組むことだ」と述べている。

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MASH代償性肝硬変に対するefruxiferminの有用性(解説:相澤良夫氏)

 臨床肝臓病学の関心は、HCVを含む慢性ウイルス肝炎からMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)の治療に移りつつある。慢性C型肝炎/肝硬変は、抗ウイルス薬の進歩により激減しHCVの根絶も視野に入っているが、わが国に相当数存在するMASHに対し直接的に作用する治療薬は、今のところ保険収載されていない。しかし、中等度以上の線維化を伴うMASHは進行性の病態であり、MASH治療薬の登場が待ち望まれている。 このアンメットニーズに対して、米国FDAは肝硬変以外の中等度から高度の肝線維化を伴うMASH に対し、食事療法や運動療法と共に使用する肝臓指向性THR-βアゴニストのresmetirom(1日1回経口投与)を承認し、MASHの成因に根差した新たな治療戦略が確立されつつある。 efruxiferminを含むFGF(線維芽細胞増殖因子)21アナログはホルモン様の作用があり、さまざまな臓器に作用して糖・脂質代謝を改善する薬剤で、resmetiromと同様にMASHに対する治療効果が期待されている。今回のMASH代償性肝硬変を対象とした36週間の臨床試験(週1回の皮下注射)では線維化改善効果は認めなかったが、より長期(96週間)に治療された症例では有害事象の増加なしに疾患活動性が制御され、線維化が改善する可能性が強く示された。今後は、エンドポイントを96週あるいはさらに長期に設定した治療研究が期待される。 C型代償性肝硬変では、HCVが排除されてから長期間(5年程度)経過すれば肝硬変の線維化が改善することが示されている。今回の試験では、同様の事象がMASH肝硬変でも生じる可能性が示され、従来は非可逆的な病変とされていた肝硬変も可逆的な病変で、病因が長期にわたって制御されれば改善しうる可逆性の病変であるという、パラダイムシフトが起こりつつあることが実感された。 なお、この研究には燃え残り(肝臓の線維化が進んで脂肪沈着が減少、消失した状態)のMASH肝硬変も20%未満含まれ、治療効果は典型的なMASHと差がなかった。この結果は、多様な薬理作用を有するefruxiferminの汎用性を示唆するものと考えられ、efruxiferminを含むFGF21アナログ製剤やTHR-βアゴニストがわが国の臨床現場でも早急に使用できるようになることが期待される。

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猛暑と受験【Dr. 中島の 新・徒然草】(585)

五百八十五の段 猛暑と受験梅雨が始まったと思ったら、なぜか真夏みたいな暑さ!ついに今年初めて自宅のクーラーをつけました。ちょっとした罪悪感はあるものの、やはり涼しいと原稿執筆も捗ります。さて、外来をやっていると患者さんからいろいろな相談を受けます。恋愛関係の悩みはまだいいほうです。この前は豊胸手術を受けたほうがいいのか、真剣に尋ねられました。そんなことを私に聞かれても困ります。とりあえずそのままでいいんじゃないか、と適当に答えたら「何てこと言うんですか!」と怒られてしまいました。かくいう私も、以前は患者さんの悩みに対して真面目にアドバイスしていたのです。が、徐々に答え方が変わってきました。というのも、何か相談する人は、すでに心の中に答えを持っているからです。だから会話の流れの中で相手の求めている答えを探り出し、それとなく賛成しておけば安心してもらえるわけですね。先日あった相談は子供の受験に関すること。相談してきたのは30代の女性患者さんです。患者「子供に国立の附属小学校を受けさせようと思うんですけど」中島「教育大附属ですか。確か3校舎あったと思うけど、どこが近いんですかね」患者「附属天王寺です」中島「ぜひとも受けましょう!」確か、大阪教育大学附属小・中・高にはそれぞれ池田、天王寺、平野の3校舎があったと思います。いずれ劣らぬ進学校で、読者の中にも卒業生が沢山いるはず。患者「幼稚園のママ友に言ったら『地元の小学校で十分よ』と、誰も賛成してくれないんですよ」中島「へえ、そうなんですか」患者「主人も私も学歴は無いんですけど、子供にしてやれることはやっぱり教育だと思うんです」中島「そりゃそうでしょう」患者「附属を受けるって……無謀なことないですよね」中島「ないない。挑戦あるのみ!」ここは、大阪在住のメリットを最大限に生かすべし。中島「国公私立すべてで進学校が沢山あるのは、大阪の強みですよ」患者「確かにそうかも」中島「しかも小中高のどの段階でも、進学校に潜り込むチャンスがあるわけですから」ママ友なんかに染まったら駄目でしょ。患者「中島先生に相談して良かったです」ようやく賛同者が現れたせいか、このお母さんは少し涙ぐんでいました。中島「結果がどうあれ、一生懸命に取り組んだという経験は必ず子供の財産になりますよ」患者「そうですね。頑張ります!」どうやら患者さんの心の中にあった答え以上に、熱く語ってしまったみたいです。確かに恋愛相談や豊胸手術に比べれば、今回ははるかに感情移入できました。同僚の医師の間でも、子供の受験は常に話題の中心です。それだけ親子含めて皆の共通体験だということですね。この患者さんに対しても、プレッシャーにならない程度に励まし続けたいと思います。最後に1句猛暑来て 受験勉強 本格化

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