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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その1)【当たり前すぎて気づかなかった!?(学校教育の良さと危うさ)】Part 2

日本の学校教育の危うさとは?日本の学校教育の良さは、ルールを守る規律、周りに合わせる協調性、努力する忍耐力であることがわかりました。一方で、その危うさは何でしょうか?実際に撮影されたシーンを通して、大きく3つ挙げてみましょう。(1)周りと同じことをやらせすぎる―同調圧力この映画のなかで、たびたび生徒たちの靴箱のワンカットが映し出されます。上靴に履き替えるという海外の人にとっては珍しい文化をわかりやすく捉えています。あるシーンでは、その靴箱の前で高学年の生徒3人が、「〇〇さん花丸、△△さんは三角」と言って靴の揃え方をチェックしていました。靴のかかとの部分が靴箱のふちに揃っているか、向きが真っすぐかどうかで判定し、記入用紙に点数化しています。さらに、その靴箱の写真まで撮っていました。おそらく、あとでそれぞれの教室のモニターに映し出し、ダメ出しをするのでしょうか? それともクラス別のランキングでもするのでしょうか。別のワンシーンでは、生徒たちは、教室に入る時、いったんドアの手前で足を揃えて入っていました。これも、指導されているようです。また、ある1年生の男子が廊下をふざけて飛び跳ねるように歩いていると、通りがかった先生が「普通に歩いて!」と注意していました。確かに、規律を厳しくすることは規範意識を高めるためには良いことのように思われます。武道と同じように、靴をきれいに靴箱に入れること、教室の前でいった足を揃えること、廊下を姿勢良く歩くことなどの行動は、1つのルーチンとして癖にすることで心が落ち着きます。しかし、これらはどれもそれぞれの生徒にお勧めすべきことではありますが、生徒全員に強いることに合理的な理由がありません。なぜなら、そうしないと周りに迷惑をかける(権利を侵害する)わけではなく、そうすることが大人になって社会生活を送るうえで必要でもないからです。簡単に言えば、やりたい人だけが選んでやればいいだけの話です。それなのに、やりたいわけではない人を巻き込んでいます。さらに、授業中のワンシーンで、ある先生が生徒に「(できるからって)先に進んだりしたらいけないんだ」と言っていました。また、別の先生は、ある生徒に成績表を渡すのですが、すべての項目で高い評価だったので先取り学習をしていると察して、「(すでに答えがわかってても)一つひとつ丁寧にやってね」と先生は伝えています。つまり、勉強ができるからといって、授業中に先に進むことは禁止されているのです。いくら丁寧にやれと言われても、答えはもうわかってしまっているので、授業が退屈でしかありません。逆に、できない生徒は先生がある程度フォローしてくれますが、できたことにして授業は進みます。つまり、できない生徒にとってはわからないので、授業が苦痛でしかありません。つまり、どっちにしても、無理やり足並みを揃えさせられているのです。1つ目の危うさは、周りと同じことをやらせすぎる、同調圧力です。これによって、周りに合わせなければならない、みんなと同じでなければならないという意識が強くなり、自分はこうしたいという「自分らしさ」(アイデンティティ)が育まれにくくなります。そもそも自分らしさは、選ぶ自由があり、多様性があってこそ豊かになります。逆に、同調圧力のなかで選ぶ自由も多様性もなく、自分らしさは削がれていきます。皮肉にも、映画の中では、先生たちはたびたび「自分らしさ」という言葉を口にして、その大切さを強調していました。そのわりに彼らは「普通に(しろ)」という言葉を使って真逆のことを強いており、その矛盾に気付いていないのでした。先生たちの意味する「自分らしさ」とは、生徒が望んだ多様なものではなく、あくまで先生たちが望む限定されたものなのでした。それでは、どうすれば良かったのでしょうか? たとえば、靴箱の取り組みや教室の前で足を揃える取り組みは、あくまでお勧めとして個人的に褒めることにとどめて、全員に強要しないことです。先ほどの飛び跳ねるように歩く生徒は、確かにちょっと危なっかしいかもしれませんが、「普通に」という言葉は、「みんなと同じように」という意味合いになるので使わないようにして、代わりに「ぶつからないように気をつけて」と具体的に言うべきでしょう。むしろ、飛び跳ねるように歩くことは、ユーモアの素質があるという自分らしさと言えます。なお、同調圧力(同調性)の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その1)【当たり前すぎて気づかなかった!?(学校教育の良さと危うさ)】Part 3

(2)言いなりにさせるーモラルハラスメント避難訓練のシーン。生徒たちが教室からいっせいに校庭に出ていきます。そんななか、ある先生がいきなり「行動が遅い! なんでそんなにゆっくりしてんだよ!」と声を張り上げます。この声のトーンは、一般の社会で昨今あまり聞かれることのない、恫喝のレベルでした。おそらくその先生は、生徒たちの気を引き締めるために必要だと判断したからでしょう。しかし、訓練であるため、パニックにならないために慎重さも必要です。もしかしたら、毎回の訓練でタイムを計っており、前回よりも速い記録を出して、教師としての評価を上げたいという意図があり、最初から用意されたセリフかもしれません。また、引き締めの意図があるなら、逆に生徒が急いで転びそうになったら、今度は「あわてるな!」と声を張り上げることが予測されます。つまり、どっちにしても、何をしても、生徒たちは怒られるのです。心理学では、これをダブルバインド(板挟み)と呼んでいます。6年生の卒業式の練習シーン。卒業証書の授与で生徒が呼ばれた時の返事の仕方の見本を見せようと、ある先生が「はい!」と大声で返事をします。その声はびっくりするくらい大声であったため、一部の生徒たちから笑いが起こります。その瞬間、その先生は「なんで笑った!? おかしい!? 私は気持ちを込めていった。気持ちを込めて何が悪いんだ!」と言って、語気を強めます。確かに言っていることはわかるのですが、生徒によってはあえてのお笑いのボケだと受け取られるので、笑いが起こるのは避けられません。彼はただナメられたくなかったからなのか、最初からこの流れを予定して怒ったふりをしていたのか、どちらにしても強い口調で言うのは不適切です。一般社会の職場で、それをやったらモラルハラスメントに当たります。しかし、子供が相手なら、指導という建前でやっても良いと考えているのでしょう。生徒からして見れば、笑いが起きる状況で笑っていいのか笑ってはいけないのか混乱します。これも、ダブルバインドの心理です。この先生は、「終わっちゃうんだな、一緒にすごした時間も」とつい涙を流してもいました。そして、「なんで泣いちゃうかって、好きだからです。おれは君たちが好きです」と言い出します。このシーンだけを切り取ると、「感動シーン」のように見えるわけですが、よくよく考えると、「好きだから」「相手のためだから」と理由をつけることで、たとえハラスメントであっても自分は許されると正当化しようとしています。実はこれは、典型的なモラルハラスメントの加害者の心理です。ちなみに、このシーンを見て、自分の子育てに重なった親御さんもいるでしょう。「愛しているから」「子供のためだから」という決めゼリフを使って、つい独りよがりになって、子供を言いなりにさせてしまう可能性には、私たちも意識する必要があります。また、この先生が言った「気持ちが大事」のほかに、別のシーンで別の先生たちは「殻を破れ」「気持ちが乗ってない」「強い心」などと抽象的な言葉を多用していることに気付きます。これらは、かつての「根性が足りない」「精神力を鍛えろ」の新しい言い回しでもあります。これらの言葉かけは、一見生徒たちの注意を引くわけですが、具体的な改善点を先生が指摘しているわけではない(実は指摘できない)ので、結局ダブルバインドと同じように、生徒たちはどうしていいかわからないまま先生の顔色をうかがうばかりになります。2つ目の危うさは、教師の言いなりにさせる、モラルハラスメントです。これによって、上の立場の人(権威)が望む答えを探す意識が高まり、自分からこうしたいという「自主性」(勤勉性)は育まれにくくなります。そもそも自主性は、自分が自由に行動を選び、その行動を温かく受け入れる環境があってこそ高まります。逆に、先生たちによるモラルハラスメントが横行する学校のなかでは受け身になり、自主性が削がれていきます。皮肉にも、映画の中では、先生たちはたびたび「自主性を育む」という言葉を口にして、その大切さを強調していました。そのわりに彼らは受け身にさせることばかりしており、その矛盾に気付いていないのでした。先生たちの意味する「自主性」とは、生徒が望む自由な行動ではなく、あくまで先生たちが喜ぶ行動を「自主的」にやることなのでした。それでは、どうすれば良かったのでしょうか? たとえば、避難訓練で声かけするとしたら、せめて「急いで」と冷静に言うことです。また、卒業式の練習でびっくりするくらいの大声で返事をした先生は「ちょっとおかしかったかな? でも、これぐらい元気よく返事をすることをお勧めするよ」と答えることです。なお、モラルハラスメントの心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その1)【当たり前すぎて気づかなかった!?(学校教育の良さと危うさ)】Part 4

(3)吊し上げをする―スケープゴート1年生の生徒たちが音楽会の練習をするシーン。ある先生は生徒たちに「練習してる時に、心が揃い、音が揃うようになってきていると思います。練習に来ない人は、その心が揃うのを壊しています。台無しです」と練習の大切さを強調します。「台無し」という言葉に語気を強めており、何やら嫌な予感がします。すると、やはりです。先ほどにも登場した1年生の女子は、シンバル担当に選ばれていたのですが、なかなかうまくできていないようで、彼は心配します。彼からの「練習に来てね」という手紙が彼女の靴箱に添えてあるシーンが映し出されます。しかし、彼女は来ません。そして案の定、彼女はみんなで演奏の練習をするなかでミスを繰り返します。すると、彼は「タイミング違ったね」「そこ(のタイミング)あったっけ?」「あなた1人しか(シンバルは)いないんです。その責任があなたにあります」ときつい口調で問い詰めます。彼女は「楽譜忘れた…」と小声で答えるのですが、彼は「ちょっと待って、今楽譜ないとできないよって人いますか? 手を挙げてごらん」と他の生徒たちに聞きますが、誰も手を挙げません。そして彼は「なんでみんな楽譜なくてもできるんですか?」とあえて生徒たちにたずねます。すると、生徒たちが「練習しているから」といっせいに答えます。先生は「そうだよね。…一生懸命練習を続けてるんだよね。それをあなたはやってるんですか?」と言って迫ります。彼女が泣き出すと、いったん休憩させるかと思いきや、なんと彼は「オーディションに受かったらそれでおしまいなの? それがゴールなの?…泣いたら上手になるの?…どうしますか? 変わってもらいますか? どうしますか?」と畳みかけます。そして、この一連のやり取りをみんなが静かに見ています。そして、彼女は半ば無理やり練習の約束をさせられて、彼女がまだ泣いているのに、彼は非情にもそのまま演奏を再開するのです。もちろん、彼女は演奏どころではなく、他の生徒たちの楽器から奏でられる音の中に、彼女の泣き声が響いているのでした。彼女があまりにも気の毒で、私たちは胸が張り裂けそうな思いになります。と同時に、これは俳優たちが演技したフィクションではなく、実在する人物たちが実際にやり取りしたドキュメンタリーだったと我に返ると、この先生のやり方には疑問が沸いてきます。一般社会の職場で、上司が部下にこれをやったら明らかなモラルハラスメントで、一発アウトです。しかし、子供が相手なら、指導という建前でやっても良いと考えているのでしょう。さらに、巧妙なのは、その翌日くらいあと、再度のみんなでの練習の時、彼女は演奏するのですが、練習が終わった後、先生は彼女に駆け寄り、笑顔で「できたじゃん!あなたができるところはちゃんと音が鳴ってたよ」と今度は笑顔でベタ褒めするのです。彼女はその間に練習をしておらず、しかもこの時は楽譜を真横に置いていたのにです。彼の褒め叱りには、実は一貫性がないのでした。最初に叱ったのも、あとに褒めたのも最初から予定していたように見えてきます。予定していなかったとしたら、彼は単なる気分屋で、先ほどと同じくモラルハラスメントであり、それはそれで問題です。最も問題なのは、どっちにしても、結果的に彼女は見せしめのために利用されたということです。つまり、「練習しないとこうなるぞ」という他の生徒への裏メッセージです。また、別のワンシーンでは、1年生の教室で、先生がある生徒を教壇に立たせ、「姿勢係」の役割を与えていました。彼を教壇に立たせ、教室に座っている生徒を名指しで「姿勢がいいのは〇〇さんです」「姿勢がいいのは△△さんです」と無邪気な笑顔で言わせるのです。この取り組みは、姿勢を良くしようとする意識を高め、一見良いように思われます。しかし、今度は別のシーンで、同じく1年生の生徒たち数人が休み時間に教室から校庭で遊んでいる他の生徒たちを見下ろして、「あ、マスクしてない。」「よくないねー」「よくないねー」と言い合い、自主的に「マスク警察係」として審判を始めるのです。これは、生徒が生徒を監視する、相互監視です。仲間同士なのに監視役という権力を与える指導によって、仲間外れを見つける練習をさせてしまっていることがわかります。再び6年生の卒業式の練習のシーン。生徒たち全員が体育館のステージの階段状の足場に並ぶ時、混んでて身動きが取りづらく、きれいな整列にはなっていないようです。その時、ある先生が全員に向けて「きょろきょろしてる人、目立ちます」と注意します。これは、「保護者席から見て1人だけ違うとかっこ悪いよ」という否定的なニュアンスがあります。ここにも、先ほどの「普通に」と同じように「みんなと違う人=目立つ人=良くない」という仲間外れにする裏メッセージが読み取れます。先ほどの靴箱のシーンにしても、靴をきれいに入れていない生徒は、悪目立ちすることになります。つまり、これらの取り組みによって注意された生徒は、残りの生徒たちを引き締めて学校の規律を高めるための「生贄」と言えます。3つ目の危うさは、吊し上げをする、スケープゴートです。これによって、上の立場の人(権威)に従わない人や周り(主流秩序)と違うことをする人を差別する意識が高まり、見た目や考え方の違う人を排除しようとする「いじめ」(排他性)が育まれます。これまであれほど学校ではいじめ対策をしてきたのに、実は日本の教育文化そのものがいじめの温床であったという衝撃の事実です。皮肉にも、教員のための研修に招待された大学の教授が、「たとえば『ビー玉貯金』が有名です。クラス全員が忘れ物をしなかったら、大きなビー玉がもらえる。でも、もらえなかったら、『おまえのせいでこうなった』というふうになる。実はいじめの原因をつくるのは教員だった」「我々にも責任がある」と説明し、連帯責任の危うさを講義していました。確かに、集団として罰(正の弱化によるオペラント条件づけ)を与えるというあからさまな連帯責任はなくなりました。しかし、靴箱、演奏会の練習、「姿勢係」(相互監視)などのエピソードを見ると、集団としてご褒美(正の強化によるオペラント条件づけ)をもらえない可能性がある点で、これらは「ビー玉貯金」と同じように指示に従ってない人を悪目立ちさせ全員に対して責任を感じさせる新手の連帯責任と言えます。つまり先生たちは、すでに研修で危ういと指摘されている連帯責任を利用した取り組みを、相変わらずやり続けているという矛盾に気付いていないのでした。それでは、どうすれば良かったのでしょうか? たとえば、音楽会の先生は、いきなりみんなの前で叱責するのではなく、まずその女子を個別に呼んで気軽に話し合うことです。そして、楽譜を見れば間違えないなら、まずは楽譜を見て演奏するよう本人に合わせた指導をすることです。確かに、全員が楽譜を見ないで完璧な演奏をすることはすばらしいことです。しかし、いくらオーディションで選ばれた責任があるからといって、それをプロの大人ではない1年生の子供に強要するのは酷です。結果的には、彼女は褒められた気分の良さから、その後に自主的に練習をするようになり、演奏会の本番を見事まっとうして、「少女の成長物語」という美談になっていました。そして、この先生は優秀な教師と評価されるのでしょう。しかし、彼女のように頑張れる生徒、できる生徒ばかりではありません。もしも、もともと頑張れない生徒やもともとできない生徒にこんなやり方を繰り返していたら、どうなるでしょうか? 不登校のリスクが高まるのは明らかでしょう。また、「姿勢係」などの相互監視は即廃止です。靴箱のシーンでも触れたように、良い姿勢はお勧めすべきことではありますが、競わせるものでも取り締まられるものではないからです。この多様性の時代、インクルーシブ教育の時代、もしも脳性麻痺の生徒がいたらどうなるのでしょうか? 先生たちは明らかに時代遅れなことをやっています。卒業式の練習のシーンでは、せめて「真っすぐに向いているとすてきだよ」とポジティブに言うことです。ただ、スケープゴートのリスクを考えると、そもそも卒業式でステージの上に生徒全員を整列させることをはじめとして同調圧力を高める取り組み自体を止める時代に来ているでしょう。なお、スケープゴートの心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。ここで、再度誤解がないようにしたいのは、これまで取り上げた教師たちの指導方法には改善点が多々ありますが、教師個人は批判されるべきとは思われません。なぜなら、実は生徒たちだけでなく教師たちもまた、この日本の危うい教育文化から抜け出せない学校という職場環境に身を置いているからです。それは、いったいどういうことでしょうか?(次回に続く)<< 前のページへ■関連記事告白【いじめ(同調)】Part 1美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】泣かないと決めた日(続)【パワーハラスメント(差別)】

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アルツハイマー病リスクに影響する食べ物とは?

 食習慣とアルツハイマー病との因果関係を評価するため、中国・The First Affiliated Hospital of Ningbo UniversityのYi Huang氏らは、2サンプルのメンデルランダム化(MR)解析を用いて、本研究を実施した。Food & Function誌2025年2月17日号の報告。 ゲノムワイド関連研究(GWAS)データと並行し、2サンプルのメンデルランダム化解析を用いて、17食品の食習慣とアルツハイマー病リスクとの因果関係を包括的に評価した。結果のロバストを保証するため、単変量MR解析および多変量MR解析の両方を使用した。すべての分析には、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。感度分析には、最尤法、MR-RAPS法、MR-Egger法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・単変量MR解析では、アルツハイマー病リスク上昇と有意な関連が認められた食品は、加工肉、鶏肉、牛肉であった。 【加工肉】オッズ比(OR):1.26、95%信頼区間(CI):1.01〜1.59、p=0.044 【鶏肉】OR:2.06、95%CI:1.18〜3.59、p=0.011 【牛肉】OR:1.79、95%CI:1.25〜2.57、p=0.002・感度分析では、加工肉、鶏肉、牛肉の摂取との関連は、各方法において一貫しており、正の相関を示すことが明らかとなった。・多変量MR解析では、うつ病を調整した後、加工肉、鶏肉、牛肉の摂取量と正の相関(有意または傾向)が確認された。 【加工肉摂取量】OR:1.376、95%CI:1.015〜1.864、p=0.040 【鶏肉摂取量】OR:2.174、95%CI:1.205〜3.922、p=0.010 【牛肉摂取量】OR:1.428、95%CI:0.866〜2.355、p=0.163 著者らは「加工肉、鶏肉、牛肉の摂取は、アルツハイマー病リスクと相関していることが明らかとなった」と結論付けている。

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25年度の「骨太の方針」に要望する3つの事項/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例の記者会見を3月5日に開催した。会見では、先般衆議院を通過した令和7(2025)年度の予算案について内容に言及するとともに、5月31日の「世界禁煙デー」での取り組みなどが説明された。全産業との差が広がる医療業の賃金格差は問題 はじめに松本氏が、「令和7年度予算案の衆議院通過を受けて」をテーマに、今回の予算内容や医療全般、医師会とのかかわり、今後さらに要望していくべき事項などを説明した。 今回の予算案には、医療提供体制の整備・強化に必要な予算として、「入院時食事療養費の1食当たり20円引上げ」、「周産期・救急医療体制などの充実」、「地域医療構想・医師偏在対策・かかりつけ医機能などの推進のための支援」などが盛り込まれたと評価し、「かかりつけ医機能の推進」についても、これまで議論した方向に進んでいるとの認識を示した。 また、診療報酬改定にも触れ、今年度は非改定年であるが、「令和6年の診療報酬改定でベースアップ評価料が新設されたものの、他の産業の賃上げに、まったく追い付いていないこと」、「2012年を100とした場合、2024年の全産業と医療業の賃金の伸びには5%以上の開きがあり、時間を追うごとにその差は開いている」と指摘し、「まずは補助金での迅速な対応が必要だが、令和8年度診療報酬改定の前に、期中改定も視野に入れて対応していく必要がある」と主張した。 次に「高額療養費制度」について、「本制度は、高額治療を要する際に経済的な不安に対処するために非常に重要な制度であり、維持するためにも見直しが必要なことに理解を示しつつも、患者さんに過度な負担を強いることがないよう、一貫して丁寧な制度設計を求めてきた」と述べ、日本医師会が従来から患者の自己負担の軽減を主張し続けてきたこと、限度額の引き上げで受診控えなどを招来しないように、丁寧な議論を重ねることを求めてきたことを改めて強調した。 おわりに松本氏は、「骨太の方針2025」にも言及し、その取りまとめに向けては、(1)「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」社会保障予算の目安対応の廃止(財政フレームの見直しが必要など)、(2)診療報酬などについて、賃金・物価の上昇に応じて適切に対応する新たな仕組みの導入、(3)小児医療・周産期体制の強力な方策の検討という3つの対応が必要だと語った。すすめよう禁煙!コンテストで川柳募集中 続いて広報担当常任理事の黒瀨 巌氏(医療法人社団慶洋会グループ 理事長)が、5月31日の「世界禁煙デー」に開催されるイベントなどの説明を行った。 イベントの目的は、「毎年19万人が喫煙に関連する病気で亡くなっていると推定され、喫煙者本人だけでなく、周囲の人も副流煙で被害を受けている。とくに若年層では、電子たばこのような新型たばこについて、健康被害が少ないとの誤解から使用が増加傾向にある。そこで、新型たばこを含む喫煙による健康への影響や受動喫煙防止の必要性について啓発を行うもの」である。5月31日~6月6日を「禁煙週間」として、全国各地でライトアップや啓発活動が行われる。東京では、日本医師会と東京都医師会の主催で下記のイベントが開催される。【イベント概要】開催日:5月31日(土)「世界禁煙デー」場所:東京タワー メインデッキ1階(展望台)内容:「すすめよう禁煙!川柳コンテスト」の実施、中学生への新型たばこの害に関する勉強会、点灯式など開催。「すすめよう禁煙!川柳コンテスト」では、一般部門(高校生以上)とジュニア部門(中学生以下)に分かれ、入賞者には賞金や景品が贈呈される。募集締切は4月13日(日)まで。詳細は参考のリンクを参照のこと。

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再発高リスクのVTE患者、DOACは減量可能か?/Lancet

 再発リスクが高く長期の抗凝固療法が必要な静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の減量投与は全量投与に対して、非劣性基準を満たさなかった。しかしながら両投与群ともVTEの再発率は低く、減量投与群のほうが臨床的に重要な出血が大幅に減少し、減量投与は治療選択肢として支持可能なことが示されたという。フランス・Centre Hospitalier Universitaire BrestのFrancis Couturaud氏らRENOVE Investigatorsが、多施設共同無作為化非盲検エンドポイント盲検化非劣性試験「RENOVE試験」の結果を報告した。再発リスクが高くDOACの長期投与が適応のVTE患者において、その最適な投与量は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、抗凝固薬の減量投与をすべきではないサブグループを特定する必要があるだろう」と述べている。Lancet誌2025年3月1日号掲載の報告。減量投与群vs.全量投与群、症候性VTEの再発を評価 RENOVE試験は、フランスの47病院で行われた。急性症候性VTE(肺塞栓症または近位深部静脈血栓症)を呈し、長期の抗凝固薬療法が適応で連続6~24ヵ月の抗凝固薬全量投与を受けた18歳以上の外来患者を適格とした。適格患者は、初発の特発性VTE、再発VTE、持続性リスク因子の存在、その他の再発リスクが高いと考えられる臨床的状態のいずれかに分類された。 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いた中央無作為化法により、減量投与群(アピキサバン2.5mgを1日2回またはリバーロキサバン10mgを1日1回)または全量投与群(アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回)に、無作為に1対1の割合で割り付けられた。コンピュータ乱数生成ジェネレーターを用いたシーケンス生成法でブロックサイズの差異のバランスを取り、無作為化では試験施設、DOACの種類、抗血小板薬による層別化を行った。試験担当医師および被験者は治療割り付けを盲検化されなかった。VTEの再発、臨床的に重要な出血、全死因死亡は治療割り付けを盲検化された独立委員会によって判定された。 主要アウトカムは、治療期間中に判定された症候性VTEの再発(致死的または非致死的な肺塞栓症もしくは孤立性の近位深部静脈血栓症などを含む)であった(非劣性マージンは、ハザード比[HR]の95%信頼区間[CI]の上限が1.7、検出力90%に設定)。重要な副次アウトカムは、治療期間中に判定された重大な出血(国際血栓止血学会[ISTH]の基準に従い定義)または臨床的に重要な非重大出血、および治療期間中に判定されたVTEの再発、重大な出血または臨床的に重要な非重大出血の複合とした。主要アウトカムと最初の2つの副次アウトカムは、階層的に評価した。VTEの5年累積発生率は減量投与群2.2%、全量投与群1.8%で非劣性は認められず 2017年11月2日~2022年7月6日に2,768例が登録され、減量投与群(1,383例)または全量投与群(1,385例)に無作為化された。970例(35.0%)が女性、1,797例(65.0%)が男性で、1例(<0.1%)は性別が報告されていなかった。追跡期間中央値は37.1ヵ月(四分位範囲[IQR]:24.0~48.3)。 症候性VTEの再発は、減量投与群で19/1,383例(5年累積発生率2.2%[95%CI:1.1~3.3])、全量投与群で15/1,385例(1.8%[0.8~2.7])に報告された(補正後HR:1.32[95%CI:0.67~2.60]、絶対群間差:0.40%[95%CI:-1.05~1.85]、非劣性のp=0.23)。 重大または臨床的に重要な出血は、減量投与群で96/1,383例(5年累積発生率9.9%[95%CI:7.7~12.1])、全量投与群で154/1,385例(15.2%[12.8~17.6])に報告された(補正後HR:0.61[95%CI:0.48~0.79])。 有害事象の発現は、減量投与群で1,136/1,383例(82.1%)、全量投与群で1,150/1,385例(83.0%)に報告された。Grade3~5の重篤な有害事象の発現はそれぞれ374/1,383例(27.0%)、420/1,385例(30.3%)であった。試験期間中の死亡はそれぞれ35/1,383例(5年累積死亡率4.3%[95%CI:2.6~6.0])、54/1,385例(6.1%[4.3~8.0])であった。

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切迫早産、オキシトシン受容体拮抗薬vs.プラセボ/Lancet

 妊娠30週0日~33週6日の切迫早産の治療として、子宮収縮抑制薬atosibanは新生児のアウトカム改善に関して、プラセボに対する優越性を示さなかった。オランダ・アムステルダム大学のLarissa I van der Windt氏らAPOSTEL 8 Study Groupが、国際多施設共同無作為化比較試験「APOSTEL 8試験」の結果を報告した。オキシトシン受容体拮抗薬のatosibanは、切迫早産の特異的な治療薬として欧州などで承認済みの子宮収縮抑制薬である。子宮収縮抑制薬は、国際ガイドラインで切迫早産の治療薬として推奨されており、出産を遅延することが示されているが、新生児アウトカムへのベネフィットは明らかにされていなかった。著者は、「子宮収縮抑制薬の主目的は新生児のアウトカム改善でなければならない。今回の結果は、妊娠30週0日~33週6日の切迫早産の治療薬としてatosibanを標準使用することに対して疑問を投じるものであった」と述べ、「われわれの試験結果は、国ごとの実践のばらつきを減らし、切迫早産の患者に対するエビデンスベースの治療提供に寄与するものになるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年3月3日号掲載の報告。妊娠30週0日~33週6日の切迫早産に投与、新生児の周産期死亡と6疾患を評価 APOSTEL 8試験は、オランダ、イングランド、アイルランドの26病院で行われ、妊娠30週0日~33週6日の切迫早産における子宮収縮抑制薬atosibanの新生児疾患および死亡の改善に関して、プラセボに対する優越性を評価した。 妊娠30週0日~33週6日の切迫早産を有する18歳以上の単胎または双胎妊娠の女性(インフォームド・コンセントに署名済み)を、atosiban群またはプラセボ群に無作為に1対1の割合で割り付けた(施設ごとに層別化)。 主要アウトカムは、周産期死亡(死産および出産後28日までの死亡と定義)および6つの重篤な新生児疾患(気管支肺異形成症[BPD]、グレード1超の脳室周囲白質軟化症[PVL]、グレード2超の脳室内出血[IVH]、Bell’sステージ1超の壊死性腸炎[NEC]、グレード2超またはレーザー治療を要する未熟児網膜症[ROP]、培養検査で確認された敗血症)の複合とし、ITT解析にて評価した。治療効果は相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)で推算した。主要アウトカムの相対リスク0.90 2017年12月4日~2023年7月24日に、計755例が無作為化され、752例がITT解析に組み入れられた(atosiban群375例、プラセボ群377例)。ベースライン特性は両群で類似しており、母体年齢中央値はatosiban群30.0歳、プラセボ群31.0歳、妊娠時BMI中央値は両群とも23.4、白人が両群ともに80%であり、妊娠中の喫煙者は両群とも12%、未経産婦は63%と65%、単胎妊娠が80%と85%などで、無作為化時の妊娠期間中央値は両群とも31.6週であった。ITT集団の新生児数はatosiban群449例、プラセボ群435例であった。 主要アウトカムは、atosiban群の新生児で37/449例(8%)、プラセボ群で40/435例(9%)に報告された(RR:0.90[95%CI:0.58~1.40])。 周産期死亡は、atosiban群3/449例(0.7%)、プラセボ群4/435例(0.9%)であった(RR:0.73[95%CI:0.16~3.23])が、全死亡例で試験薬との関連はおそらくないと見なされた。母体有害事象は両群で差異はなく、また母体の死亡の報告はなかった。

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MSI-H/dMMR進行大腸がんにおけるニボルマブ+イピリムマブ、アジア人にも有用(CheckMate 8HW)/日本臨床腫瘍学会

 CheckMate 8HW試験は、全身療法歴のない高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の転移大腸がん患者に対して、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法と化学療法の有用性を検討した試験である。昨年末にはニボ+イピ群が化学療法群と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告されたが1)、2025年3月6~8日に行われた第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)では国立がん研究センター東病院の吉野 孝之氏が、本試験のアジア人サブグループにおける解析結果を発表した。・試験デザイン:多施設共同ランダム化非盲検第III相試験・対象:切除不能または転移大腸がん(mCRC)、MSI-H/dMMR・試験群:1)ニボルマブ(240mg)+イピリムマブ(1mg/kg):ニボ+イピ群2)ニボルマブ単独:ニボ群3)化学療法(医師選択による化学療法±標的療法):ケモ群 患者は2:2:1の割合で無作為に割り付けられ、治療は疾患進行または容認できない毒性が認められるまで(全群)、最長2年間(ニボ+イピ群)継続された。今回は発表されたのはニボ+イピ群対ケモ群の中間解析であり、ニボ群の解析は追って発表予定。[主要評価項目]1次治療におけるニボ+イピ群vs.ケモ群のPFS、全期間におけるニボ+イピ群対ニボ群のPFS[副次評価項目]安全性、PFS2、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2023年10月12日)時点において、全体集団の追跡期間中央値は31.5ヵ月、アジア人は20.2ヵ月だった。・全体集団ではニボ+イピ群に202例、ケモ群に101例が割り付けられた。うちアジア人サブグループはニボ+イピ群19例(うちMSI-H/dMMR:17例)、ケモ群11例(同:11例)含まれていた。・全体集団におけるPFS中央値は、ニボ+イピ群は未到達(95%信頼区間[CI]:38.4ヵ月~評価不能)、ケモ群は5.9ヵ月(95%CI:4.4~7.8)であった(HR:0.21)。アジア人におけるPFS中央値はニボ+イピ群は未到達(95%CI:評価不能)、ケモ群は7.4ヵ月(95%CI:1.5~評価不能)であった(HR:0.03)。・その後の全身療法を受けた患者は、全体集団ではニボ+イピ群15%、ケモ群69%であった。アジア人ではそれぞれ18%、73%だった。・全体集団におけるPFS2期間中央値は、ニボ+イピ群は未到達(95%CI:評価不能)、ケモ群は29.9ヵ月(95%CI:14.8~評価不能)であった(HR:0.27)。アジア人はいずれも未到達であった(HR:0.63)。・Grade3/4の治療関連有害事象は全体集団ではニボ+イピ群23%、ケモ群48%で発生した。アジア人はそれぞれ16%、71%だった。ニボ+イピ群で多かった有害事象は副腎機能不全(23%)、甲状腺機能低下症(21%)、食欲減退(16%)、ケモ群では悪心(57%)、下痢、好中球減少症、末梢神経障害(各43%)だった。 吉野氏は「ニボ+イピはアジア人サブグループにおいても全体集団同様に、化学療法と比較して臨床的有意なPFSの改善を示した。クロスオーバー率が高いにもかかわらず、アジア人におけるPFS2はニボ+イピが化学療法よりも優れており、治療後も臨床的ベネフィットを得られることを示唆している(24ヵ月後のPFS2率はニボ+イピ群93%対ケモ群74%)。安全性も既報と一致していた。サンプルサイズは小さいものの、本結果はアジア人においてもニボ+イピ療法がMSI-H/dMMR mCRC患者1次治療における標準治療となる可能性を支持するものだ」とした。

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慢性疾患を持つ労働者の多くが職場で病気を隠している

 糖尿病、心臓病、喘息などの慢性疾患を持つ米国の労働者の60%は、そのような健康上の問題を職場の管理者に伝えていないという実態が報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のGillian SteelFisher氏らが行った調査の結果であり、2月11日、同大学院のサイトにニュースリリースが掲載された。 調査の結果、慢性疾患を持つ労働者の3分の1以上が、過去1年間に、仕事の都合で必要な受診をしない日があったことも明らかになった。SteelFisher氏は、「慢性疾患を持つ労働者は、自分の健康状態のために差別を受けていると感じることが多く、そのために仕事と健康の双方に深刻な影響が及ぶこともある」と話している。 この調査は2024年10月2~16日にかけて、米国内の従業員数50人以上の企業に所属しているフルタイムおよびパートタイムの成人労働者1,010人を対象に実施された。このうち58%は、糖尿病、高血圧、心臓病、喘息などの慢性疾患を1種類以上有していた。この慢性疾患有病者のうち76%は、「勤務時間中に健康管理のための時間を割く必要がある」と回答していたが、60%は自分の病気について会社に伝えていなかった。また、36%は、過去1年以内に仕事を優先して受診の予約を入れなかったり予約を延期したりしていた。「健康管理のために休暇を取る必要があったのに、それができなかった」との回答も49%に上った。 このほかにも、慢性疾患を有する労働者の25%は、「健康上の理由で過去1年間に昇進を逃したことがある」と考え、21%は「健康状態のために自分の勤務に対する否定的な評価を受けたことがある」と答えていた。SteelFisher氏は、「これらの問題は全て、労働者だけでなく雇用者側にも負の影響を及ぼす可能性がある。従業員を引きとめるために雇用主は、従業員ともっとコミュニケーションを取り、双方にとってベストな方法を模索すべきではないか」と提案している。 一方、本調査では、本人が健康であっても、自宅に慢性疾患を持ちケアを要する同居者がいるというケースが少なくないことも分かった。回答者の3分の1がこのような状況にあり、そのほぼ半数(45%)は「勤務時間中にもしばしばケアにあたる必要がある」と回答した。それにもかかわらず、慢性疾患を患う家族がいる人の37%は「ケアのために休暇を取るのは困難」と答え、25%は「その状況に対処するために労働時間を減らし、収入減を受け入れざるを得ない」と答えた。 これらの結果について、調査に協力した米ド・ボーモン財団の会長兼CEOのBrian Castrucci氏は、「雇用主にとり、自分自身や家族の慢性疾患に悩む従業員を支援することは、重要な責務であると同時に大きなチャンスでもある。それを行うことで、従業員とその家族の健康が改善されるだけでなく、従業員の定着率が向上し欠勤も減るのではないか」と論評している。

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痛みを抑える目的でタバコを吸う人々の存在とその特徴/順天堂大

 喫煙者の一部は、身体の痛みを抑えることを目的にタバコを吸っている。そのような人々は若年者に多く、痛みをより強く感じているといった特徴があるようだ。これは、順天堂大学大学院医学研究科疼痛制御学の山田恵子氏らの研究によるもので、「Neuropsychopharmacology Reports」に1月2日、短報として掲載された。 タバコに含まれるニコチンには「ごく一時的な」鎮痛作用があるらしいことが過去に報告されている。ただし喫煙と痛み(疼痛)との関連は複雑で、長期にわたる喫煙は痛みを生じるリスク因子であることや、ニコチン離脱時(タバコを吸えない時や禁煙開始時)には、痛みがむしろ強まることも報告されている。タバコを吸うという行動と潜在的に関係する心理的な要因や生活環境も、痛みに影響を及ぼし得ると推測される。しかし、痛みを緩和する目的での喫煙の実態は、これまでほとんど調査されていない。山田氏らは本研究を「痛みの緩和を目的としてタバコを吸う人々の存在にスポットを当てた、国内初の研究」と位置付けている。 この調査は、2020年10~11月に、インターネット調査会社の登録者から、年齢が20~69歳で過去1カ月以内に体のどこかに痛みのあった人を、年齢、性別、居住地の分布を日本の人口構成に近くなるよう調整し、2,000人を抽出して実施した。回答者から、元喫煙者399人と喫煙歴のない人1,129人を除外し、現喫煙者472人(女性23.1%、慢性疼痛患者〔症状持続期間3カ月以上〕が57.6%)を解析対象とした。 主要な質問項目は二つで、「痛みを抑える目的でタバコを吸うか」と「タバコを吸うと痛みが和らぐか」を質問した。それぞれ「まったくそのとおりだ」、「そのとおりだ」、「どちらともいえない」、「そうではない」、「まったくそうではない」の五つから選択してもらい、いずれも前二者を同意(痛みを緩和する目的で喫煙している人、および、喫煙により痛みが緩和すると感じている人)と判定した。 痛みの緩和目的での喫煙者は、472人中31人(6.6%)だった(急性・亜急性疼痛患者〔症状持続期間3カ月未満〕の3.5%、慢性疼痛患者の8.8%)。また、痛みの緩和目的ではない喫煙者441人(93.4%)のうち、5.2%が喫煙による痛みの緩和を実感していると回答した。 このほかに、喫煙本数や鎮痛薬(市販薬/処方薬)の使用、痛みの強さ、不安・うつレベル、治療中の精神疾患、運動習慣、世帯収入なども調査し、前記二つの質問の回答との関連を解析した。なお、解析では、背景因子を検討するために合計26回の検定を行い、偽陽性のリスクを避ける目的で、有意水準を通常の0.05を26で割った値に近い0.002未満に設定した。 喫煙の目的が痛みの緩和の人とそうでない人を比較すると、前者の群は若年であり(平均38.1対46.5歳)、痛みに対する治療中(71.0対22.9%)、鎮痛薬使用中(市販薬は67.7対25.2%、処方薬は51.6対21.3%)、統合失調症治療中(9.7対0.7%)の割合が高いという有意差が認められた。また、痛みがより強く(NRSという10点満点のスコアが6.5対5.1点)、痛みの増強に関与する中枢感作が強く生じていると推測され(CSIという100点満点のスコアが41.0対27.5点)、運動習慣のある割合が高い(68.9対19.4%)という有意差も認められた。 貧困傾向やうつ病治療中の割合、3カ月以上続く慢性の痛み、痛みに対する悲観的な思考、不安レベルなどについては、喫煙の目的が痛みの緩和である群で高い傾向が認められた(P値が0.002~0.05の間)。P値は、結果が偶然である可能性を示す値であり、この範囲では一定の関連性が示唆される。一方、性別の分布、喫煙本数、教育歴、短時間睡眠者の割合などには有意差が見られなかった(P>0.05)。 山田氏らは、「痛みのある喫煙者の6.6%が痛みの緩和を期待してタバコを吸っており、その行動には心や生活環境など多面的な要因が関係していて、鎮痛薬などによる痛み治療が十分な効果を発揮していない可能性が示唆された」と結論付けている。そして、日本で慢性の痛みのある人が約2500万人という推計値と、慢性の痛みのある人の42~68%が喫煙者であるとする過去の調査報告、および本調査で得られたデータに基づき、痛みの緩和目的で喫煙している人が国内に90万~150万人いる可能性があると推算し、「今後の喫煙や慢性の痛み対策ではこのような人々の存在を考慮する必要があるのではないか」と付け加えている。 なお、山田氏らは現在、対象者の数を増やした上で、より詳細な質問内容を使ったデータ解析を進めていて、その解析でも本報と同様の傾向が観察されているという。

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第254回 またまた厚労省の見通しの甘さ露呈?高額療養費制度、8月予定の患者負担上限額の引き上げも見送り、政省令改正で済むため患者団体の声も聞かず拙速に進めてジ・エンド

高額療養費制度、今年8月の見直しも“見送り”に、異例の衆院通過後の予算修正へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は南岸低気圧が通過して関東平野部にも雪が降るという予報だったため、日曜は雪山詣でがてら奥多摩に行く計画を立てていたのですが、結局大した降雪はなく、山登りは諦めました。最近の天気予報、降雨については何時頃からどれくらい降るのか、相当正確に当たります。しかし、南岸低気圧がからむ関東地方の降雪については、どうもハズレが多い(予報よりも降らない)印象です。それだけ雨よりも雪のほうが予報が難しいのでしょう。というわけで、関東地方平野部・山間部の降雪量が今年は極端に少ないため、恒例の雪の六ツ石山には登らずじまいで終わりそうです。さて、今回も前回に引き続き、この1週間で異例の展開を辿った高額療養費制度の見直しについて書きます。前回は高額療養費制度の見直しが“見直し”されることが決まった、と書きましたが、なんと新年度予算案が衆院を通過した直後、決まっていた今年8月の見直しについても”見送り”となってしまいました。衆院通過後の予算修正となるのでしょうか。各紙報道によれば、予算案が参院審議の段階で修正されそれが成立すれば、現行の憲法下では初めてのことになるそうです。夏の参院選への影響を恐れる与党内の声に抗しきれず3月7日、石破茂首相は高額療養費制度の見直しについて、今年8月に予定していた患者負担上限額の引き上げを見送ると表明しました。新たな方針を今秋までに決める考えも示しました。1週間前の2月28日、石破首相は3段階での負担限度額の引き上げのうち、2026年8月以降の負担増を再検討するものの、25年8月については予定通り上げると表明、全面凍結を求める立憲民主党の主張をはねのけ、新年度予算案を衆院通過させていました。しかし、予算案が参院に送られてからも、がんや難病患者らの強い反発は続き、国会では立憲民主党が全面凍結を改めて要求、夏に参院選を控える参院自民党や公明党からも異論が出始めていました。そうした“内輪”からの要求などに屈した形で軌道修正です。3月8日付の朝日新聞は「首相の判断は二転三転した。最終的に判断を覆したのは、夏の参院選への影響を恐れる与党内の声に抗しきれなかったからだ」と書いています。背景に政府や厚労省の見通しと判断の甘さ昨年から方針が決まっていた高額療養費制度の見直しが、今年に入って反対運動が激化した背景には何があったのでしょうか。前回、この連載では高額療養費制度の「限度額引き上げは、1年以上前、2024年1月26日の社会保障審議会で示された『全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)』の中に、経済情勢に対応した患者負担などの見直しの一つとして明記されていました。昨年12月の社会保障審議会医療保険部会ではさまざまな意見を踏まえた見直し案が提示され、年末には高額療養費制度の負担限度額引き上げを含めた2025年度当初予算案を閣議決定しています。つまり、この1年余りのあいだ、負担限度額引き上げに対する大きな反対運動は起こっていなかったのです」と書きましたが、各紙報道や社会保障審議会・医療保険部会の資料などを読んでみると、背景には政府や厚労省の見通しと判断の甘さがあったことがわかってきます。負担限度額引き上げは法律の改正必要なく政令改正で行えるそもそも「改革工程」に高額療養費制度の負担限度額引き上げが検討項目として挙がったのは、当時の岸田 文雄首相が打ち出した「こども未来戦略」の財源のためでした。3.6兆円規模の対策を盛り込みましたが、「増税」によらず1.1兆円は社会保障費の歳出削減で捻出することになり、その削減候補の一つが高額療養費制度の負担限度額引き上げだったのです。しかも、負担限度額引き上げは法律の改正は必要なく、政令改正で行える(国会での審議マターになりにくい)という“手軽さ”も削減候補となった理由のようです。ならば、次年度予算編成に向けて昨年6月にまとめられた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に明記されてしかるべきだったと思われますが、当時の政府(岸田政権)の意向でそれは見送られています。3月8日付の朝日新聞はその理由について、「自民党総裁選を控え、衆院戦も取りざたされる中、『負担増』も議論を回避したい政権側の内諾を得られなかった」ためと書いています。「検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘を重く受け止めねばならない」と石破首相つまり、高額療養費制度の負担限度額引き上げはやるつもりだが、なるべく目立たずこそこそと事を進めようと考えていたわけです。ただ通り一遍の議論はしておかなければならないため、社会保障審議会・医療保険部会の議題には上がっていました。ただ、そこで議論が行われたのは2024年11月から4回のみで、患者団体のヒアリングも実施されませんでした。12月12日に開かれた4回目の議論の資料には委員たちの概ね「賛成」の意見とともに、見直しの方向性(案)が提示されていました。そして、議論は尽くされたということで、高額療養費制度の負担限度額引き上げを盛り込んだ2025年度予算案が年末に閣議決定されたわけです。石破首相は3月7日、記者団に対して「検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘を重く受け止めねばならない。患者の皆様に不安を与えたまま見直しを実施することは望ましいことではない」と語ったそうですが、“後の祭り”とはまさにこのことでしょう。政令改正だけで行える“手軽さ”もあって、政府も厚労省も見通しを大きく見誤ってしまったわけです。3月8日付の日本経済新聞も「政府内の見立てが甘かったとの指摘もある。『患者団体は引き上げの凍結を求めていない』。制度を所管する厚生労働省の幹部はこんな見方を首相官邸に報告していた。将来的な制度見直しに言及した2月末の首相答弁で、患者団体も納得するとみていた節がある」と書いています。本連載「第251回 “タカる”厚生労働省(前編)」 「第252回 同(後編)」で、厚労省のグダグダ振りについて書いたばかりですが、またまた大失態をやらかしたことになります(今度は保険局)。混迷の度合い増す医療費大削減に向けたロシアン・ルーレット高額療養費制度見直しの当初案では、最終的に年1,600億円規模の公費を削減できると見込んでいたそうです。高額療養費制度の負担限度額引き上げそのものが“新たな見直し”によって見送られることになれば、代わりの財源確保が必要になってきます。3月8日付の日本経済新聞は「政府の医療制度改革の一角が厳しい批判を浴びたことで、この先の制度改革のハードルは高くなる可能性がある」と書いています。とは言え、現役世代の社会保険料の負担軽減は喫緊の課題であり、そのための医療費大削減は避けて通れない道です。さらには、現在の医療保険制度を持続可能なものとするためにも、医療費のどこかは削らざるを得ません。今回の負担限度額引き上げの見送りで、医療費大削減に向けたロシアン・ルーレットはますます混迷の度合いを増したと言えるでしょう。

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PADISガイドライン改訂で「不安」が新たな焦点に【論文から学ぶ看護の新常識】第6回

PADISガイドライン改訂で「不安」が新たな焦点に米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine[SCCM])は2025年2月21日、『フォーカスアップデート版 集中治療室における成人患者の痛み、不安、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床診療ガイドライン』を公開した。本ガイドラインは、2018年に発表された『集中治療室における成人患者の痛み、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床ガイドライン』(通称PADISガイドライン)のフォーカスアップデート版であり、新たに「不安」が主要領域として追加された。フォーカスアップデート版 集中治療室における成人患者の痛み、不安、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床診療ガイドライン本ガイドラインは、2018年版『集中治療室における成人患者の痛み,不穏/鎮静,せん妄,不 動,睡眠障害の予防および管理のための臨床ガイドライン』を改訂、発展させることを目的として、成人ICU患者に関する5つの主要領域、不安(新規トピック)、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害に焦点を当てて作成された。主な改定点は下記の通り。2018年版 PADISガイドラインの内容は()内に記載。1.ICU入室中の成人患者の不安治療にベンゾジアゼピンを使用することに関して、推奨を行うのに十分なエビデンスが存在しない。(2018年版:この領域についての推奨なし)2.ICU入室中の人工呼吸器管理下の成人患者において、浅い鎮静および/またはせん妄の軽減が最優先される場合は、プロポフォールよりもデクスメデトミジンの使用を推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:中等度)。(2018年版:人工呼吸器管理下の成人患者の鎮静には、ベンゾジアゼピンよりもプロポフォールまたはデクスメデトミジンの使用を推奨する[条件付き推奨、エビデンスの質:低い])3.ICU入室中の成人患者のせん妄治療において、通常のケアよりも抗精神病薬を使用することの是非について推奨を行うことはできない(条件付き推奨、エビデンスの確実性:低い)。(2018年版:せん妄の治療にハロペリドールまたは非定型抗精神病薬を日常的に使用しないことを推奨する [条件付き推奨、エビデンスの質:低い])4.ICU入室中の成人患者に対しては、通常のモビライゼーション/リハビリテーションよりも強化されたモビライゼーション/リハビリテーションを行うことを推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:中等度)。(2018年版:重症の成人患者に対してリハビリテーションまたはモビライゼーションを実施することを推奨する[条件付き推奨、エビデンスの質:低い])5.ICU入室中の成人患者に対しては、メラトニンを投与することを推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:低い)。(2018年版:重症の成人患者の睡眠改善に対するメラトニンの使用については、推奨を行わない[推奨なし、エビデンスの質:非常に低い])PADISガイドラインは、痛み(Pain)、鎮静(Agitation/Sedation)、せん妄(Delirium, Immobility)、睡眠障害(Sleep)の頭文字をとった名称であり、これらの症状への推奨される治療やケアなどを包括的に示したガイドラインです。今回、2018年に発表されたPADISガイドラインのフォーカスアップデート版が発表されました。今回のアップデートでは、とくに、これまでせん妄と混同されがちだった「不安」を新たに焦点化した点が大きな変化といえます。海外ではICU入室中の不安を訴える患者にベンゾジアゼピンが一般的に使用されるケースがあるようですが、明確なエビデンスはなく推奨は行われていません。ただし、入室前から慢性的に不安症状がありベンゾジアゼピンを服用している患者に対しては、継続を検討する余地があると示されました。不安の評価には、痛みの評価で使われる「Face Scale」と同様の絵を用いた「Faces Anxiety Scale」などが推奨されています。患者自身が表情のイラストを見て不安度を評価できるため、日本の医療現場でもすぐに応用できるでしょう。薬物療法はまだ確立していない部分がありそうですが、音楽療法やバーチャルリアリティ(VR)など一部の非薬理学的アプローチは推奨されており、患者さんの好みに合った音楽を流すなどの工夫は有効かもしれません。また、睡眠管理ではメラトニン投与が条件付きで推奨され、生理的な睡眠リズムの補完が重要なテーマとなっています。さらにリハビリテーションでは、早期離床だけでなく、より強化されたリハビリプログラムの導入も提案されており、ICU退室後の身体機能回復やQOL向上に寄与すると期待されています。今後のスタンダードなケア・治療の一つになる可能性があるため、興味のある方はぜひ詳しい内容にも目を通してみることをおすすめします。論文はこちらLewis K, et al. Crit Care Med. 2025;53(3):e711-e727.

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小児ADHDの作業記憶に対して最も好ましい運動介入は〜ネットワークメタ解析

 注意欠如多動症(ADHD)は、小児によくみられる神経発達障害であり、作業記憶障害を伴うことが多い疾患である。最近、小児ADHDの認知機能改善に対する潜在的な戦略として、運動介入が注目されている。しかし、さまざまな運動介入が作業記憶に及ぼす影響は、明らかとなっていない。中国・北京師範大学のXiangqin Song氏らは、さまざまな運動介入が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychology誌2025年1月27日号の報告。 関連する研究を、各種データベース(PubMed、Cochrane、Embase、Web of Science)より包括的に検索した。包括基準および除外基準に従ってスクリーニングした後、17件の研究が分析対象に特定された。ネットワークメタ解析を実施してデータを統合し、認知有酸素運動、球技、心身運動、インタラクティブゲーム、一般的な有酸素運動が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・小児ADHDに対するさまざまな種類の運動介入効果には、有意な違いが認められた。・最も有意な効果を示した運動介入は、認知有酸素運動(標準化平均差[SMD]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.44〜1.00)、次いで球技(SMD:0.61、95%CI:−0.12〜1.35)であった。・心身運動とインタラクティブゲームは、中程度の効果を示したが、一般的な有酸素運動の効果は比較的小さかった。 【認知有酸素運動】SMD:0.72、95%CI:0.44〜1.00 【球技】SMD:0.61、95%CI:−0.12〜1.35 【心身運動】SMD:0.50 【インタラクティブゲーム】SMD:0.37 【一般的な有酸素運動】SMD:0.40、95%CI:0.19〜0.60・SUCRA分析では、作業記憶の改善に対し、認知有酸素運動が最も有用であることが確認された。・メタ回帰分析では、介入頻度および総介入期間は、認知有酸素運動の効果に有意な影響を及ぼすことが示唆された。他の変数の影響は認められなかった。 著者らは「認知有酸素運動は、小児ADHDの作業記憶改善に最も効果的である運動介入であることが示唆された。介入頻度を上げ、介入期間を長くするほど、その介入効果は高まる可能性がある。今後の研究において、これらの因子の影響を調査し、調整因子の役割を検証するためにも、より大きなサンプルサイズによる検討が必要とされる」と結論付けている。

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ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、日本人サブグループ解析(ALINA)/日本臨床腫瘍学会

 ALK阻害薬アレクチニブは、2024年8月28日に「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺における術後補助療法」に対する適応追加承認を取得している。本承認は、ALK融合遺伝子陽性完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に実施された国際共同第III相試験「ALINA試験」1)の結果に基づくものである。本試験の用量は、切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する承認用量(1回300mg、1日2回)の2倍量となる1回600mg、1日2回であり、日本人集団における安全性や薬物動態に関する解析が求められていた。そこで、ALINA試験の日本人集団の有効性、安全性、薬物動態について解析が行われ、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院)が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB〜IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回、2年間または再発まで) 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(3週ごと4サイクルまたは再発まで) 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS、全生存期間、安全性など[薬物動態解析]アレクチニブとその主要代謝物の血漿中薬物濃度 今回は日本人集団の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は全体集団と同様であったが、病期についてStageIBの患者は含まれなかった。StageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群0%/13%/87%(全体集団:11%/36%/53%)、化学療法群0%/35%/65%(同:9%/35%/55%)であった。・DFSイベントはアレクチニブ群27%(4例)、化学療法群35%(7例)に認められた(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.13~1.67[全体集団では、同:0.24、0.13~0.43])。・アレクチニブとその主要代謝物の薬物動態パラメータ(Tmax、Cmax、AUC0-8h)について、ALINA試験の日本人集団とALEX試験(切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象とした海外第III相試験)の非日本人集団を比較した結果、いずれも両集団に有意差はみられなかった。・アレクチニブとその主要代謝物のトラフ濃度について、ALINA試験の日本人集団と非日本人集団を比較した結果、両集団に有意差はみられなかった。・日本人集団の安全性の結果は、全体集団と同様であった。日本人集団の全例に少なくとも1件の有害事象が認められたが、その多くはGrade1~2であった。Grade3~4の有害事象はアレクチニブ群33%(5/15例)、化学療法群40%(8/20例)に認められた。・投与中止に至った有害事象は、化学療法群が10%(2/20例)に発現したが、アレクチニブ群は0例であった。ただし、日本人集団ではアレクチニブ群の有害事象による減量が53%(8/15例)と高率であり(全体集団は26%[33/128例])、用量強度(dose intensity)中央値は日本人集団では75%であった(全体集団は99%)。減量に至った有害事象の内訳はCPK増加(2例)、ALT増加、AST増加、血中ビリルビン増加、便秘、湿疹、倦怠感、筋骨格硬直、斑状丘疹状皮疹(各1例)であった。 本結果について、堀之内氏は「日本人患者に対してアレクチニブを1回600mg、1日2回投与した結果、薬物動態パラメータは非日本人集団と同様であった。DFSについて、全体集団と同様に日本人集団でもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。日本人患者に対するアレクチニブ1回600mg、1日2回投与は忍容性が良好であり、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。日本人集団の安全性のデータは、全体集団と同様であった」とまとめた。本試験の日本人集団でアレクチニブの減量が多かったことについて、「日本では1回300mg、1日2回の用量での使用に慣れていることから、有害事象が発現した際に減量に至りやすかったのではないかと考えている」と考察した。 本発表後に実施されたプレスリリースセッションでは、有害事象発現時の対応について、堀之内氏は「海外では減量ではなく中断して再開することで、有害事象の管理が可能である場合も存在することが知られており、本試験でも全体集団では減量の前にまず中断して経過をみられている事例が報告されている。有害事象発現時には、まずは中断し、それでも管理が難しい場合に減量とするのが良いのではないか」と考えを述べた。

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乳がんdose-dense PTX療法、Peg Gは安全に省略可能/日本臨床腫瘍学会

 乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法は好中球減少症を引き起こすリスクが高いため、予防的に持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(Peg G)が投与されることが多い。今回、Peg Gを省略したdose-denseパクリタキセル療法であってもスケジュールを遅延させることなく治療の完了が可能であり、安全性に問題はなく、薬剤費が削減できることを、東北労災病院の大竹 かおり氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 これまでの報告で、パクリタキセルを高用量で投与する場合であってもPeg Gを有効かつ安全に省略できることが示唆されている。Peg Gの有害事象や薬剤費というリスクを低減できる可能性があるが、東アジア人では化学療法による骨髄抑制が生じやすい傾向があるため、東アジア人におけるエビデンスが求められていた。そこで大竹氏らは、東北労災病院の乳がん患者のデータをレトロスペクティブに解析し、dose-denseパクリタキセル療法でPeg Gを省略した場合の有効性と安全性を評価した。 対象は、2019年2月~2024年3月にdose-dense EC療法を行い、dose-denseパクリタキセル療法を4サイクル完了した患者で、投与スケジュール、有害事象、相対用量強度(relative-dose-intensity)、薬剤費をPeg G投与群とPeg G非投与群で比較した。なお、Peg G非投与群で好中球減少症が発現した場合はPeg Gの投与が認められた。 主な結果は以下のとおり。・合計48例の患者が解析対象となり、Peg G投与群が15例、Peg G非投与群が33例であった。年齢中央値は49歳(範囲:31~66)、全例がアジア人で、ベースライン時の特性は両群でバランスがとれていた。・相対用量強度は両群ともに高く、投与群は0.961、非投与群は0.985で両群間に有意差は認められなかった(p=0.125)。・各サイクルの投与予定日に、非投与群で好中球減少症のためにPeg Gの投与が必要になったのは最大(3サイクル目)で12.1%であった。・各サイクルの1日目に好中球絶対数が1,000/µL超であった割合は、非投与群では4サイクル目に87.9%に低下したが、両群間に有意差は認められなかった(p=0.796)。・パクリタキセル投与を7週間以内に4サイクル完了した割合は、両群で同等であった(p=0.561)。・投与群および非投与群で発現した非血液毒性は、疼痛がそれぞれ87%(うちGrade3以上が7%)および91%(45%)、浮腫が47%(0%)および48%(3%)、神経障害が87%(7%)および91%(27%)であった。・4サイクルの平均薬剤費は、投与群が56万4,681円、非投与群が17万9,214円であり、両群間に有意差が認められた(p<0.001)。 これらの結果より大竹氏は、好中球などの血液検査の必要性を強調したうえで、「アジア人に対する乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法において、Peg Gの省略は有望な選択肢となる可能性がある」とまとめた。

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包括的高度慢性下肢虚血、最も有効な血行再建術とは/BMJ

 大腿膝窩動脈領域の血行再建術(±膝下血行再建術)を要する包括的高度慢性下肢虚血患者において、薬剤を塗布していないバルーン血管形成術±ベアメタルステント留置術(PBA±BMS)と比較し、薬剤塗布バルーン血管形成術±BMS(DCBA±BMS)および薬剤溶出性ステント留置術(DES)はいずれも有意な臨床的有益性をもたらさないことが、英国・バーミンガム大学のAndrew W. Bradbury氏らBASIL-3 Investigatorsが実施した「BASIL-3試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2025年2月24日号で報告された。英国の第III相非盲検無作為化優越性試験 BASIL-3試験は、大腿膝窩動脈領域の血行再建術を要する包括的高度慢性下肢虚血患者において、臨床的に最も有効な血行再建術を明らかにすることを目的とする実践的な第III相非盲検無作為化優越性試験であり、2016年1月~2021年8月に英国の35施設で患者を登録した(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。 外科的血行再建術よりも大腿膝窩動脈領域の血行再建術(±膝下血行再建術)を希望する包括的高度慢性下肢虚血の患者を、初回血行再建術として、大腿膝窩動脈領域のPBA±BMS、DCBA±BMS、DESのいずれかを受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは大切断回避生存とした。大切断回避生存は、対象肢の大切断(足首より上部の切断)または全死因死亡のうちいずれかが先に発生するまでの期間と定義し、生存時間分析を行った。全死因死亡、大切断にも差はない 481例(平均年齢71.8[SD 10.8]歳、女性167例[35%])を登録し、PBA±BMS群に160例、DCBA±BMS群に161例、DES群に160例(同意が得られなかった1例を除外した159例を解析に含めた)を割り付けた。全体の追跡期間中央値は2.1年だった。 ITT集団における大切断または死亡は、PBA±BMS群で160例中106例(66%)、DCBA±BMS群で161例中97例(60%)、DES群で159例中93例(58%)に発生した。補正ハザード比[HR]は、DCBA±BMS群とPBA±BMS群の比較で0.84(97.5%信頼区間[CI]:0.61~1.16、p=0.22)、DES群とPBA±BMS群の比較で0.83(0.60~1.15、p=0.20)と、いずれも有意な差を認めなかった。大切断回避生存期間中央値は、PBA±BMS群3.16年、DCBA±BMS群3.52年、DES群4.29年だった。 全死因死亡(PBA±BMS群60%、DCBA±BMS群56%、DES群50%)および大切断(14%、11%、16%)にも、PBA±BMS群との比較で有意な差はみられなかった(DCBA±BMS群vs.PBA±BMS群の死亡のHR:0.86[97.5%CI:0.62~1.20]、DES群vs.PBA±BMS群の死亡のHR:0.79[0.56~1.11])。重篤な有害事象の頻度は同程度 重篤な有害事象は、PBA±BMS群で16例(10%)、DCBA±BMS群で9例(6%)、DES群で17例(11%)に発現した。死因の多くは複数の因子によるもので、併存疾患に関連することが多かった。 著者は、「最近の系統的レビューとメタ解析により、BASIL-3試験は、包括的高度慢性下肢虚血患者に対する3種の血管内治療の臨床的有効性を比較した唯一の公的資金に基づく無作為化対照比較試験であることが確認されている」「これらの結果は、包括的高度慢性下肢虚血患者の管理では、大腿膝窩動脈領域の血管内血行再建術として、薬剤塗布バルーンおよび薬剤溶出性ステントの役割を支持しない」としている。

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長年にわたるヨーグルト摂取は大腸がんリスクを低下させる?

 長年にわたるヨーグルトの摂取は、特定のタイプの大腸がんの発症リスクを低下させる可能性のあることが、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院および米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の鵜飼知嵩氏らによる研究で明らかになった。長年にわたりヨーグルトを週に2回以上摂取している人では、腫瘍組織内にビフィズス菌が検出されるビフィズス菌陽性の大腸がんの発症リスクが20%低いことが示されたという。この研究結果は、「Gut Microbes」に2月12日掲載された。 人体のマイクロバイオーム(微生物叢)に焦点を当てた新たな研究では、ヨーグルトに含まれる生きた細菌の摂取が健康に有益な可能性のあることが示唆されている。鵜飼氏らは今回、ヨーグルトには一般的にビフィズス菌が含まれていることから、長期間のヨーグルト摂取が、組織中のビフィズス菌の量に応じて、腫瘍のタイプごとに大腸がんの発生と異なる関連を示す可能性があるとの仮説を立て、検討した。対象は、1976年に30〜55歳の女性看護師を登録して開始されたNurses’ Health Study(NHS)と1986年に40〜75歳の男性医療従事者を登録して開始されたHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)から抽出した13万2,056人であった。対象者は、2016年1月1日まで追跡された。 こうした研究背景について、論文の共同責任著者の1人であるハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院およびブリガム・アンド・ウイメンズ病院の荻野周史氏は、「われわれは、長期にわたる食生活やその他の要因が人体の組織に与える影響、例えば、特定の細菌種の有無により組織にもたらされる影響に違いがあるのかなどを調べている。このような探索的なアプローチにより、食事と健康アウトカムとの関連を示すエビデンスの信頼性を高めることができる」と述べている。 追跡期間中に3,079人が大腸がんを発症していた。このうち、腫瘍組織中のビフィズス菌量についての情報が完備したのは1,121人で、うち346人(31%)はビフィズス菌陽性、775人(69%)はビフィズス菌陰性だった。解析の結果、大腸がんのリスクとヨーグルトの摂取量との間に統計学的に有意な関連は認められなかったものの、週に2回以上ヨーグルトを摂取する人では、1カ月の摂取頻度が1回未満の人に比べてビフィズス菌陽性の大腸がんリスクが20%低下する可能性が示唆された(調整ハザード比0.80、95%信頼区間0.50〜1.28)。一方、ビフィズス菌陰性の大腸がんリスクについては、明確な低下は認められなかった(同1.09、0.81〜1.46)。このようながんのタイプによる関連の違いは、近位大腸がん(盲腸、上行結腸、横行結腸)においても確認された。過去の研究では、右側に発生する近位大腸がんでは、左側に発生するがんより予後が悪いことが示唆されている。 荻野氏は、「われわれの研究は、ヨーグルトが特定のがんに対して潜在的に有益な可能性を示す独自のエビデンスを提供している」と述べている。また、鵜飼氏は、「ヨーグルトやその他の発酵乳製品は、長い間、胃腸の健康に有益だと考えられてきた。本研究結果は、この予防効果がビフィズス菌陽性大腸がんに特有のものである可能性を示唆している」との見方を示している。

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真剣交際の準備はできている?友人の意見が重要

 誰かと真剣に交際する準備ができているかどうかは恋愛関係の始まりや維持に重要な役割を果たすが、新たな研究で、「真剣交際の準備ができているか(コミットメント・レディネス〔commitment readiness〕)」についての自己評価と友人の評価は高確率で一致することが明らかになった。米ミシガン州立大学(MSU)のWilliam Chopik氏らによるこの研究結果は、「Journal of Social and Personal Relationships」に2月1日掲載された。 この研究では、4人の友人グループ(合計193グループ、参加者772人)に自分自身と相手のコミットメント・レディネスと愛着スタイルについて評価してもらい、自己評価と友人による評価の一致度や、不安定な愛着スタイルを持つ人は「真剣交際の準備ができていない」と見なされるのかを検証した。研究グループの説明によると、愛着スタイルは安定型と不安定型に大別され、不安定型の愛着スタイルを持つ人は、通常、不安や回避のレベルが高いという。 分析の結果、コミットメント・レディネスに対する自己評価と友人による評価は高確率で一致することが明らかになった。また、友人から、愛着スタイルにおいて回避傾向や不安傾向が強いと評価された人は、「真剣交際の準備ができていない」と見なされることも示された。さらに、自分自身のコミットメント・レディネスに対する評価は、友人のコミットメント・レディネスに対する評価に影響することも示された。このように、仲の良い友人は自分と似たパーソナリティを持つと考える傾向を「想定された類似性」という。 Chopik氏は、「友情は、健康や幸福感から恋愛まで、生活の多くの部分に影響を与える。自分が誰とデートすべきか、すべきでないかを決める際にも友人が影響を及ぼす。友人はまた、恋愛関係を円滑に進める手助けをしてくれることもあれば、さりげなく、あるいはあからさまに邪魔することもある」と述べる。その上で同氏は、「友人のコミットメント・レディネスに対する評価が、友人が恋愛関係を築く手助けをしてくれたり妨げたりする理由を説明する要因となる可能性が高い」との見方を示している。 Chopik氏と、論文の共著者であるMSU心理学分野のHyewon Yang氏は、「この研究が、恋に悩む人に、友人の意見が自分の恋愛観にどのような影響を与えるのかをより良く理解する手助けとなることを期待している」と話している。Yang氏は、「友人は、相手の紹介からアドバイスまで、恋愛関係を築き、維持する上で重要な役割を果たす。しかし、友人が自分をどう見ているかを知る機会はほとんどない。この研究が、自分のコミットメント・レディネスについて、社会的ネットワークの観点から包括的に理解する助けとなり、また、恋愛関係を追求し、発展させ、維持する上で友人が果たす重要な役割を強調するものになることを願っている」と話している。

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歯周病治療で糖尿病患者における人工透析リスクが低下か

 歯周病を治療している糖尿病患者では、人工透析に移行するリスクが32~44%低いことが明らかになった。東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの草間太郎氏、同センターの竹内研時氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Periodontology」に1月5日掲載された。 慢性腎臓病は糖尿病の重大な合併症の一つであり、進行した場合、死亡リスクも高まり人工透析や腎移植といった高額な介入が必要となる。したがって、患者の疾病負荷と医療経済の両方の観点から、慢性腎臓病を進行させるリスク因子の同定が待たれている。 歯周病は糖尿病の合併症であるだけでなく、糖尿病自体の発症やその他の合併症の要因でもあることが示唆されている。また、歯周病と腎機能低下との関連を示唆する報告もされていることから、研究グループは糖尿病患者における定期的な歯周病ケアが腎機能低下のリスクを軽減または進行を遅らせる可能性を想定し、大規模な糖尿病患者のデータを追跡した。具体的には、歯周病治療を伴う歯科受診を曝露変数として、人工透析に移行するリスクを後ろ向きに検討した。 本研究では、40~74歳までの2型糖尿病患者9万9,273人の医療受診データ、特定健診データが用いられた。2016年1月1日~2022年2月28日までの期間に、2型糖尿病を主傷病としていた患者を登録した。 9万9,273人の参加者(平均年齢は54.4±7.8歳、男性71.9%)における人工透析の発生率は1,000人あたり1年間で0.92人だった。交絡因子については、年齢、性別、被保険者の種類、チャールソン併存疾患指数、糖尿病の治療状況(外来の頻度、経口糖尿病治療薬の種類、インスリン製剤使用の有無、治療期間)、健診結果(高血圧、高脂血症、蛋白尿、HbA1c)、喫煙・飲酒といった生活習慣などが共変量として調整された。 交絡因子を調整後、人工透析開始のハザード比(HR)を分析した結果、歯科受診をしていなかった患者と比較して、1年に1回以上歯周病治療を受けている患者で32%(HR 0.68〔95%信頼区間0.51~0.91〕、P<0.05)、半年に1回以上治療を受けている患者で44%(同0.56〔0.41~0.77〕、P<0.001)、人工透析開始のリスクが低いことが示された。 研究グループは本研究の結果について、「これらの結果は、糖尿病性の腎疾患の進行を緩和し、患者の転帰を改善するためには、糖尿病治療に日常的な歯周病治療を組み込むことが重要であることを示唆している。また糖尿病患者の管理における専門医と歯科の連携欠如は以前より報告されており、本研究でも患者の半数以上が歯周病ケアを受けていなかった。今後、糖尿病患者の健康を維持するためには、専門医と歯科のさらなる連携が必要と考える」と総括した。なお、本研究の限界について、登録データは企業が提供する雇用保険に加入する個人のみが含まれていたことから、研究の参加者は日本人全体の特徴を表していない点などを挙げている。

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「nanacoギフト」交換レート変更のお知らせ

このたび、ケアネットポイントの交換先である「nanacoギフト」につきまして、2025年4月1日(火)11:00より、交換レートを以下のとおり変更いたします。【変更前】 3月31日(月)13:59まで100pt=100円分【変更後】 4月1日(火)11:00より100pt=95円分※2025年3月31日(月)13:59までにお申し込みいただいた分は、現行のレート(100pt=100円分)で交換いたします。※2025年3月31日(月)14:00~4月1日(火)11:00 に、ポイント交換システムのメンテナンスを実施いたします。状況により、メンテナンスの時間帯は前後する場合がございます。ご利用中の皆さまにはご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。ケアネットポイントの交換はこちらよりお手続きください。https://point.carenet.com/exchange※ログインが必要です

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