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事例38 爪甲除去術の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説「K089 爪甲除去術」に麻酔の使用がないことを理由に「J001-7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)」に査定となりました。査定事由にはB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用されていました。爪甲除去術の留意事項には、「爪甲白せん又は爪床間に「とげ」等が刺さった場合の爪甲除去で、麻酔を要しない程度のものは区分番号J001-7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)により算定する(令6保医発0305-4)」とあります。「K000 創傷処理」の留意事項にも麻酔を要しないものは「J000 創傷処置」にて算定するとありますので、「麻酔を使用しない軽微な処理は処置にて算定する」という基本ルールがあることがわかります。事例を見ると病名に「両下肢麻痺」が表示されています。医師に確認すると、「下半身の痛覚が失われていることを確認して、麻酔をかけずに爪除去と処理を行った」とありました。このことを理由にカルテの写しを添えて再審査請求を行ったところ復活しました。「両下肢麻痺」の状態にあっても、事例のように基本ルールが優先される場合があります。「爪甲除去術」や「創傷処理」などの通常では麻酔下で行われる行為に麻酔薬の算定がない場合、「麻酔をなぜ使用しなかったか」「使用したがごく少量であった」などのコメントをレセプトにあらかじめ記載することにして査定対策としています。

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英語で「蕁麻疹」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第43回

医学用語紹介:蕁麻疹 urticaria「蕁麻疹」を患者さんに説明する際、専門用語であるurticariaでは通じないことが多いと思います。それでは、蕁麻疹と伝えたいとき、どのような一般用語で言い換えればよいでしょうか?講師紹介

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乳房温存術時1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性乳がん、SNLB単独はcALNDに非劣性示せず(INSEMA)/SABCS2025

 乳房温存術時に1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性の浸潤性乳がん患者において、センチネルリンパ節生検(SNLB)のみの施行は、完全腋窩リンパ節郭清(cALND)の施行と比較し無浸潤疾患生存期間(iDFS)に関して非劣性を示さなかった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏が、ドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」における、2次無作為化後の副次評価項目の解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 本研究では、18歳以上で乳房温存術と術後放射線治療を受ける予定の浸潤性乳がん患者(腫瘍サイズ≦5cmのcT1またはcT2、かつcN0)を対象として、SNLB省略群とSNLB単独群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、SNLB単独群で1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、SNLB単独群とcALND群に1対1の割合で無作為に割り付けた(2次無作為化)。 今回発表された重要な副次評価項目は、SNLB単独群とcALND群における(2次無作為化)乳房温存術後のiDFSであった(追跡期間中央値:74.2ヵ月)。 主な結果は以下のとおり。・初回無作為化でSNLB単独群に割り付けられた4,184例のうち、センチネルリンパ節転移陽性と診断されたのは1,050例であった。2次無作為化を受けたのは485例で(ITT解析集団)、うち386例がper-protocol解析集団に含まれた。・per-protocol解析集団におけるベースライン特性は両群でおおむねバランスが取れており、65歳未満はSNLB単独群64.5%vs.cALND群65.7%、術前の腫瘍サイズ≦2cmは80.2%vs.82.2%、ERおよび/またはPgR陽性は97.7%vs.82.2%、HER2陰性は94.9%vs.85.9%であった。Ki-67≦20%は84.6%vs.76.6%、化学療法歴ありは33.6%vs.39.6%、領域リンパ節照射ありは20.6%vs.36.6%であった。・per-protocol解析集団における5年iDFS率は、SNLB単独群86.6%vs.cALND群93.8%(ハザード比[HR]:1.69、95%信頼区間[CI]:0.96~2.94)となり、非劣性は示されなかった(事前に規定された非劣性マージン:1.271)。・iDFSイベントについて、遠隔転移(6.9%vs.4.1%)と二次がん(4.1%vs.2.1%)はSNLB単独群で多く発生したが、腋窩再発については1例(0.5%)vs.0例であった。・iDFSについてのサブグループ解析の結果、術後の腫瘍サイズ>2cmの患者およびマクロ転移個数の多い患者においては、cALNDによるベネフィットが少ない傾向がみられた。一方、Ki-67>20%の患者においてはcALNDにより大きなベネフィットが得られる可能性が示唆された。・ITT解析集団における5年iDFS率は、SNLB単独群86.0%vs.cALND群89.3%(HR:1.26、95%CI:0.80~1.99)となり、非劣性は示されなかった。・イベント数は少ないものの、per-protocol解析集団における5年OS率は、SNLB単独群94.9%vs.cALND群96.2%(HR:1.19、95%CI:0.55~2.56)であった。・術後放射線療法については、通常分割照射(75.1%vs.87.0%)および追加照射(80.6%vs.88.8%)の実施率はcALND群で有意に高かったが、腋窩放射線治療の線量に治療群による差はなかった。 Reimer氏は、同患者におけるcALNDの省略が5年iDFS率に影響を与える可能性が初めて示唆されたとし、この結果は放射線治療の内容、化学療法の実施有無、およびKi-67高値の影響により部分的に説明できる可能性があるとまとめている。同試験のフォローアップは継続中で、10年時データは2029年に得られる予定。

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全身型重症筋無力症と多発根神経炎患者の自己注射が容易に/アルジェニクス

 アルジェニクスジャパンは、2025年12月15日、全身型重症筋無力症(gMG)と慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)を適応疾患とする抗FcRn抗体フラグメント・ヒアルロン酸分解酵素配合製剤「ヒフデュラ配合皮下注シリンジ」を発売した。本製剤は、エフガルチギモド アルファ[遺伝子組換え]・ボルヒアルロニダーゼ アルファ[遺伝子組換え](商品名:ヒフデュラ)を含有したプレフィルドシリンジ製剤。 gMGは、IgG自己抗体が神経と筋肉の間の伝達を妨害することで、消耗性で生命を脅かす可能性のある筋力低下を引き起こすまれな慢性自己免疫疾患。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、とくに眼瞼下垂、複視などの眼の症状を起こしやすい。重症化すると呼吸筋の麻痺を来し、呼吸困難になることもある。 CIDPは、四肢筋力低下と感覚障害を主な特徴とする免疫介在性脱髄性末梢神経障害。発症・病態機序は、まだ十分解明されていない。長期間にわたり再発と寛解を繰り返し、患者の運動機能や日常生活動作に支障を来し、QOLの低下や就業への影響などさまざまな負担をもたらす。 本剤では薬液があらかじめシリンジに充填されていることで、患者の利便性の向上や医療従事者および介護者の負担が軽減されることが期待されている。<製品概要>一般名:エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)製品名:ヒフデュラ配合皮下注シリンジ効能または効果:・全身型重症筋無力症(ステロイド剤またはステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎用法および用量:〔全身型重症筋無力症〕 通常、成人には本剤1回5.0mL(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,000mgおよびボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として10,000単位)を1週間間隔で4回皮下投与する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。〔慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〕 通常、成人には本剤1回5.0mL(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,000mgおよびボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として10,000単位)を週1回皮下投与する。製造販売承認取得日:2025年9月19日薬価収載日:2025年11月12日発売日:2025年12月15日薬価:66万5,026円(5.0mL 1筒)製造販売元:アルジェニクスジャパン株式会社

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認知症リスク低下と関連しているワクチン接種は?

 高齢者で多くみられる認知症は、公衆衛生上の優先事項である。しかし、認知症に対するワクチン接種の有用性については、十分に解明されていない。イタリア・National Research CouncilのStefania Maggi氏らは、一般的な成人向けのワクチン接種が認知症リスク低減と関連しているかを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Age and Ageing誌2025年10月30日号の報告。 2025年1月1日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。対象研究は、50歳以上の成人において、ワクチン接種を受けた人と受けていない人の間で認知症および軽度認知障害(MCI)の発症率を比較した観察研究とした。4人の独立したレビュアーがデータを抽出し、ニューカッスル・オタワ尺度を用いて研究の質を評価した。リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)の算出には、ランダム効果モデルを用いた。主要アウトカムは、認知症(そのサブタイプを含む)の発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・分析対象研究は21件(参加者:1億403万1,186例)。・帯状疱疹ワクチン接種は、すべての認知症(RR:0.76、95%CI:0.69~0.83)およびアルツハイマー病(RR:0.53、95%CI:0.44~0.64)のリスク低下と関連していた。・インフルエンザワクチン接種は、認知症リスクの低下と関連しており(RR:0.87、95%CI:0.77~0.99)、肺炎球菌ワクチン接種もアルツハイマー病リスクの低下と関連していた(RR:0.64、95%CI:0.47~0.87)。・破傷風、ジフテリア、百日咳の三種混合ワクチン接種も、認知症発症リスクの有意な低下と関連していた(RR:0.67、95%CI:0.54~0.83)。 著者らは「成人に対するワクチン接種、とくに帯状疱疹、インフルエンザ、肺炎球菌、三種混合のワクチン接種は、認知症リスクの低下と関連している。認知症予防のための公衆衛生施策に、ワクチン接種戦略を組み込むべきである」と結論付けている。

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Stage I~III膵管腺がんの術前療法、PAXG vs.mFOLFIRINOX(CASSANDRA)/Lancet

 切除可能または切除可能境界膵管腺がん(PDAC)において、PAXG療法(シスプラチン+nab-パクリタキセル+カペシタビン+ゲムシタビン)はmFOLFIRINOX療法(フルオロウラシル+ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチン)と比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善したことが、イタリア・IRCCS San Raffaele Scientific InstituteのMichele Reni氏らが行った第III相の無作為化非盲検2×2要因試験「PACT-21 CASSANDRA試験」の結果で示された。周術期化学療法は、切除可能または切除可能境界PDAC患者における標準治療の1つである。結果を踏まえて著者は、「PAXGは、術前療法の標準治療となりうることが示された。今後の試験では、術前PAXGを比較対照群として検討すべきであろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年11月20日号掲載の報告。切除可能または切除可能境界PDACを対象 PACT-21 CASSANDRA試験は、切除可能または切除可能境界PDAC患者においてPAXGのmFOLFIRINOXに対する優越性の評価を目的に、イタリアの大学病院17施設で行われた。適格患者は、18~75歳の病理学的に切除可能または切除可能境界PDACと診断された患者。 無作為化は、Rコードリストとコンピュータアルゴリズムを用いた中央ウェブベースシステムにより行われた。割合は1対1で、施設およびCA19-9血清レベルでブロック層別化を行った。 被験者は、最初にPAXG(カペシタビン総量1日1,250mg/m2[625mg/m2を1日2回]投与、および14日ごとにシスプラチン30mg/m2、nab-パクリタキセル150mg/m2、ゲムシタビン800mg/m2を静脈内投与)またはmFOLFIRINOX(14日ごとにフルオロウラシル2,400mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、イリノテカン150mg/m2、オキサリプラチン85mg/m2を静脈内投与)のいずれかに無作為化され4ヵ月間治療を受け、その後、2ヵ月間の追加化学療法について、術前または術後のいずれかに2回目の無作為化が行われた。 主要評価項目は、ITT集団におけるEFS。安全性は、割り付けられた治療法を少なくとも1サイクル受けた患者を対象に評価した。EFS中央値、PAXG群16.0ヵ月、mFOLFIRINOX群10.2ヵ月 本論では、最初の無作為化の結果が報告されている。 2020年11月3日~2024年4月24日に、適格患者260例が無作為化された。PAXG群(132例)は年齢中央値65歳(四分位範囲:60~70)、女性が68例(52%)、男性が64例(48%)。mFOLFIRINOX群(128例)はそれぞれ63歳(57~69)、62例(48%)と66例(52%)であった。260例全例が、割り付けられた治療法を少なくとも1サイクル受けた。 PAXG群はmFOLFIRINOX群と比較して、EFS中央値を統計学的有意に延長した(16.0ヵ月[95%信頼区間[CI]:12.4~19.8]vs.10.2ヵ月[8.6~13.5]、ハザード比:0.63[95%CI:0.47~0.84]、p=0.0018)。 少なくとも1件のGrade3以上の有害事象が報告されたのは、PAXG群87/132例(66%)、mFOLFIRINOX群78/128例(61%)であった。mFOLFIRINOX群では敗血症による治療関連死が1件報告された。

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シャーガス心筋症の心不全、サクビトリル・バルサルタンvs.エナラプリル/JAMA

 シャーガス心筋症により左室駆出率が低下した心不全(HF)患者において、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリル・バルサルタンは、エナラプリルとの比較において臨床的アウトカムに関する有意差は認められなかったが、サクビトリル・バルサルタン投与患者では、12週時点でNT-proBNPの顕著な低下が認められた。米国・Duke Clinical Research InstituteのRenato D. Lopes氏らPrevention and Reduction of Adverse Outcomes in Chagasic Heart Failure Trial Evaluation(PARACHUTE-HF)Investigatorsが非盲検多施設共同無作為化試験の結果を報告した。HFに対してガイドラインで推奨される治療の有効性と安全性は、シャーガス心筋症患者におけるHFについては明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年12月3日号掲載の報告。win ratioアプローチで階層的複合アウトカムを評価 研究グループは、2019年12月10日~2023年9月13日に、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコの83施設で、シャーガス心筋症と診断され左室駆出率が低下したHF患者を対象に、サクビトリル・バルサルタンの有効性と安全性を評価した。 適格患者は、シャーガス心筋症と診断、左室駆出率が40%未満に低下、NT-proBNP値600pg/mL超(またはBNP値150pg/mL以上)、直近12ヵ月間にHFにより入院していた場合はNT-proBNP値400pg/mL超(またはBNP値100pg/mL以上)とした。 被験者は、標準治療に加えてサクビトリル・バルサルタン(目標投与量200mg 1日2回)またはエナラプリル(目標投与量10mg 1日2回)の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、心血管死、HFによる入院、またはベースラインから12週時点のNT-proBNP値の相対的変化量の階層的複合アウトカムであった。 主要解析は、win ratio(勝利比)アプローチを用いて行われた(統計学的解析は2025年5~7月に実施)。サクビトリル・バルサルタン群の層別化勝利比は1.52 全体で922例が、サクビトリル・バルサルタン群(462例)またはエナラプリル群(460例)に無作為化された(平均年齢64.2歳[SD 10.8]、女性387例[42.0%])。 追跡期間中央値25.2ヵ月(四分位範囲[IQR]:18.4~33.2)において、心血管死はサクビトリル・バルサルタン群110例(23.8%[階層的比較の勝率18.3%])、エナラプリル群117例(25.4%[勝率17.5%])であった。 初回のHFによる入院は、サクビトリル・バルサルタン群102例(22.1%[勝率7.7%])、エナラプリル群111例(24.1%[勝率6.9%])であった。 ベースラインから12週時点でNT-proBNP値中央値は、サクビトリル・バルサルタン群で-30.6%(IQR:-54.3~-0.9)低下(勝率22.5%)、エナラプリル群では-5.5%(-31.9~37.5)低下(勝率7.2%)した。 結果的に、エナラプリル群と比較したサクビトリル・バルサルタン群の層別化勝利比は1.52(95%信頼区間:1.28~1.82、p<0.001)であった。

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Long COVIDの経過は8つのタイプに分かれる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆるlong COVIDは、一般に、新型コロナウイルスへの感染後に、疲労感やブレインフォグ、めまい、動悸などのさまざまな症状が3カ月以上持続する慢性疾患とされている。このほど新たな研究で、long COVIDの経過は、症状の重症度、持続期間、経過(改善傾向か悪化傾向か)により8つのタイプに分類されることが示唆された。米ハーバード大学医学大学院のTanayott Thaweethai氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月17日掲載された。 Thaweethai氏らはこの研究で、RECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)イニシアチブへの参加成人3,659人(女性69%、99.6%は2021年12月以降のオミクロン株流行期に感染)を対象に、感染の3〜15カ月後に評価したlong COVIDの症状スコアに基づき、患者の縦断的経過パターンを解析した。対象者のうち、3,280人は最初の新型コロナウイルス感染から30日以内に試験に登録した急性期患者、残る379人は登録時には未感染であったがその後に感染したクロスオーバー群であった。 感染から3カ月時点で10.3%(374/3,644人)がlong COVIDの基準を満たしており、そのうち約81%が1年後も症状を有していた。解析の結果、long COVIDの経過として、以下の8つの異なるパターンが特定された。1)症状負担が持続的に重度(195人、5%):対象期間を通してlong COVIDの閾値を満たす。2)症状負担が断続的に重度(443人、12%):long COVIDの症状スコアが断続的に閾値を超える。3)改善傾向、症状負担が中等度(379人、10%):long COVIDの症状スコアが経時的に低下。4)改善傾向、症状負担は軽度(334人、9%):感染後3カ月時点の症状スコアが3)よりも低く、6カ月時点ではほぼ0。5)悪化傾向、症状負担は中等度(309人、8%):症状スコアが経時的に上昇。6)症状が遅れて悪化(217人、6%):感染後3〜12カ月の間の症状スコアは低いが、15カ月時点で増加。増加の一因は労作後の不調。7)一貫して症状負担が軽度(481人、13%):全体的に症状の負担は軽度だが、3〜15カ月の間に症状スコアが断続的に上昇する。ただし、いずれも閾値未満。8)一貫して症状負担は最小か無症状(1,301人、36%):一貫して症状スコアの閾値未満。 Thaweethai氏は、「われわれが特定したlong COVIDの経過の違いは、今後の研究において、患者ごとに回復期間が異なる理由の説明となり得るリスク因子やバイオマーカーの評価を可能にするとともに、潜在的な治療ターゲットの特定にも役立つだろう」とニュースリリースの中で述べている。 論文の上席著者である米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のBruce Levy氏は、「この研究は、COVID-19の長期的経過の多様なパターンを定義するという緊急の必要性に応えるものだ。得られた結果は、long COVID罹患者に対する臨床的および公衆衛生的サポートに必要なリソースを判断するのに役立つとともに、long COVIDの生物学的根拠を探る研究にも役立つだろう」と述べている。 なお、米疾病対策センター(CDC)によると、long COVIDの症状として200種類以上が確認されているという。

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看護師増員や臨床ケア環境の改善が医師のバーンアウトを減らす

 米国とヨーロッパの病院を対象にした研究で、看護師を数人増やすだけで、医療スタッフの燃え尽き症候群(バーンアウト)を大幅に減らし、士気を高められる可能性のあることが明らかにされた。米ペンシルベニア大学看護学部健康成果・政策研究センターのLinda Aiken氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月17日掲載された。 Aiken氏は、「医師のバーンアウトは世界的な危機だが、実行可能な解決策はほとんど見つかっていない。われわれの研究は、看護師への投資が『一石二鳥』の解決策、つまり看護師と医師双方のウェルビーイングの改善と患者ケアの強化につながることのエビデンスとなるものだ」と述べている。 この研究では、ヨーロッパ6カ国の医師1,149人(平均年齢41.3歳、女性46.5%)と看護師3,044人、および米国の医師5,334人(平均年齢44.5歳、女性34.9%)と看護師1万1,869人の調査データを用いて、看護師配置の適切さ(人員の充足度)、臨床ケア環境、医師と看護師のチームワークが医師のウェルビーイングや職業アウトカム(バーンアウト、仕事に対する不満、離職意向、自分の病院を他者へ推薦する意向)に与える影響を検討した。 その結果、全体的に医師のウェルビーイングの低下が広く認められ、例えば、1年以内の離職意向を示した医師は、ヨーロッパで29.9%(324/1,083人)、米国では23.8%(1,178/4,959人)、強いバーンアウトを感じていることを報告した医師は、それぞれ30.5%と34.1%に上った。 一方、米国の病院では、臨床ケア環境のスコアを1標準偏差(1SD)改善するだけで、以下のような効果を得られることが示された。・離職意向を示す医師が22%減少。・勤務先として自分の病院を他者に推薦しない医師が25%減少。・医師の仕事に対する不満が19%減少。・強いバーンアウトを感じる医師が10%減少。 また、ヨーロッパの病院では、看護師の人員を10%増加した場合に米国と同様の結果が示された。具体的には、離職意向を示す医師が20%減少し、自分の病院を他者に推薦しない医師が27%減少し、仕事への不満が15%低下し、強いバーンアウトを感じる医師が12%減少した。 共著者の1人であるペンシルベニア大学看護学部の看護・健康政策学科長Karen Lasater氏は、「これらの調査結果は、病院のリーダーたちが、すぐにでも行動に移せる今後の道筋を明らかにしている。看護師の人員配置を改善し、支援的な職場環境を整えることは、実現可能でエビデンスに基づいた組織改革であり、看護師と医師の両方の定着率を高める」とニュースリリースの中で話している。

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メチシリン感性黄色ブドウ球菌菌血症に対するクロキサシリンとセファゾリンの比較(CloCeBa試験)(解説:寺田教彦氏)

 メチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症は、感染性心内膜炎などの多彩な合併症を伴うことがあり、死亡率も高い重篤な疾患である。 日本では、中枢神経系合併症を除けば、MSSA菌血症の治療にはセファゾリンが第1選択薬として推奨されている。一方、欧米では長年の臨床経験を背景に、nafcillin、oxacillin、クロキサシリンなどの抗ブドウ球菌ペニシリン(antistaphylococcal penicillins:ASPs)が標準治療薬とされてきた。本邦でASPsが普及しなかった背景には、静注製剤が承認されていないこと、代替として安全性の高いセファゾリンが広く使用されてきたことなどがある。 近年、欧米ではセファゾリンをMSSA感染症の治療に使用する施設も増えており、観察研究においてASPsと同等の治療効果を示す報告が蓄積している(Lee S, et al. Comparative outcomes of cefazolin versus nafcillin for methicillin-susceptible Staphylococcus aureus bacteraemia: a prospective multicentre cohort study in Korea. Clin Microbiol Infect. 2018;24:152-158.)。しかし、これまでセファゾリンとASPsを直接比較した無作為化試験は存在しなかった。今回のCloCeBa試験は、MSSA菌血症に対するセファゾリンvs.クロキサシリンの有効性・安全性を初めてランダム化比較で評価した点に意義がある。 本試験の主要評価項目では、セファゾリンはクロキサシリンに対して非劣性を示し、さらに重篤な有害事象はクロキサシリンで有意に多かった。この結果は、既報の観察研究で示唆されていた「セファゾリンはASPsと同等の有効性を有し、忍容性では優れる」に一致しており、MSSA菌血症におけるセファゾリンの有用性を示した(ジャーナル四天王「MSSA菌血症、セファゾリンvs.クロキサシリン/Lancet」)。 私が、主要評価項目以外に本試験で注目した点として、事前規定のないサブグループ解析のblaZ type A株に対する治療効果(inoculum effect)がある。inoculum effectとは、β-ラクタマーゼ産生菌において菌量が多い条件でセファゾリンのMICが上昇し、活性が低下して見えるin vitro現象である。過去の研究でもblaZ type Aに加えてblaZ type Cを保有する株でこの現象が生じやすいことが指摘されてきた(Miller WR, et al. The Cefazolin Inoculum Effect Is Associated With Increased Mortality in Methicillin-Susceptible Staphylococcus aureus Bacteremia. Open Forum Infect Dis. 2018;5:ofy123.)。 CloCeBa試験では、blaZ type Aを持たない株ではすべての評価項目で非劣性が達成されたのに対し、blaZ type A保有株では菌血症再発以外の項目において非劣性が示されなかった。ただしこれはサブグループ解析であり、症例数も限られているため、本結果のみで「セファゾリンが劣る」と断定できるものではない。Day 3/5の細菌学的失敗率も数値上はセファゾリンで高かったものの、有意差には至っていない。 現時点では、blaZ type Aの有無によって抗菌薬選択を変更すべきと結論付ける根拠は不十分であるが、本研究からも、inoculum effectが影響しうる株でセファゾリンの効果が低下する可能性は否定できず、さらなる検証が必要である。 総合すると、今回のCloCeBa試験の結果は、日本におけるMSSA菌血症の第1選択薬としてセファゾリンを継続する妥当性を支持する内容である。ただし、blaZ type Aをはじめとした菌側因子が治療効果に及ぼす影響については、今後もデータの蓄積が期待される。

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夫の尿道にネギを入れた妻【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第296回

夫の尿道にネギを入れた妻ネギを尿道に入れた論文は、以前この連載でも紹介しました。珍しい症例ですが、あれは自己導尿としてのネギ挿入でした。今回紹介するのは、妻が夫の尿道にネギを挿入したという論文です。Lai T, et al. Spring onion as a foreign body in the urethra. Urol Case Rep. 2020 Feb 24;31:101144.症例の主人公は89歳の男性です。ある日、尿道の出口あたりに「かゆみ」や違和感があり、それを心配した妻が、民間療法のつもりだったのか、オリーブオイルを塗った生の長ネギを尿道から挿入してしまったと説明されています。正直、「かゆいからといって本当にそこまでするのか?」と、読者としては首をかしげたくなる場面ですが、論文上はこのような経緯として記載されています。医師たちは腹部のCT検査を行い、ようやく尿道の途中から膀胱内に連続して伸びる管状構造として、長ネギ様の異物を描出することに成功しました。局所麻酔下に膀胱鏡を用いて内視鏡的にアプローチしています。内視鏡で尿道内部を進んでいくと、球部尿道にネギの先端が見え、それを生検鉗子でつまんで、少しずつ慎重に引き抜いていきました。最終的に、長さ約30cm、幅0.6cmという長ネギが丸ごと一塊のまま抜き取られ、膀胱内に残存物がないことも確認されています。論文には写真が掲載されていますが、わりと細めのネギで、九条ネギをイメージしていただくとよいかもしれません。患者さんは1週間後に外来フォローを受けていますが、排尿時痛や血尿などの訴えはなく、問題なく経過しています。この症例報告では、尿道内異物に対応する際のポイントがまとめられています。まず大切なのは、恥ずかしさから本当のことを言いたがらない患者さんも多いため、時間をかけて丁寧に病歴を聞き出すことです。次に、異物の材質や大きさ、位置に応じて適切な画像検査を選ぶ必要があります。金属なら単純X線で十分ですが、今回のような野菜やプラスチックのようにX線で見えないものの場合には、CTなど別のモダリティが役に立ちます。そして、可能な限り低侵襲な方法、つまり内視鏡的な摘出を第一に検討し、開腹や切開などの侵襲的な手術は最後の手段とすることが推奨されています。最後に、精神科的評価を行い、再挿入のリスクや自傷行為などがないかを確認することが重要だとされています。

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第293回 クマ外傷、その種類や標準化された治療法とは

INDEXクマが狙うのは、ほぼ顔外傷の種類や特異性創傷部位の評価と必要な処置創部感染の原因菌と予防対策具体的な外科治療の実際薬物療法に漢方が標準化さて、前回は昨今話題のクマ外傷被害についてCiNii検索で抽出した2000年以降の16論文と秋田大学医学部救急・集中治療医学講座教授の中永 士師明(なかえ はじめ)氏の編著『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(以下、クマージェンシー)をもとに疫学についてまとめた。今回もこれらの出典から、クマ外傷の病態と治療についてまとめてみた。クマが狙うのは、ほぼ顔岩手医科大学(50例)、秋田大学(13例)、新潟大学(10例)、山梨県立中央病院(9例)の主な臨床報告では、クマによる外傷の部位はいずれも顔面が90%以上(秋田大学の報告は「頭頸部を含む顔面」)で、次いで上肢が多い(38~77%)。この外傷部位の特徴は、ツキノワグマが攻撃時に後足で立ち上がり、発達した前足の鋭い爪でヒトを殴打する攻撃スタイルに起因すると考えられている。ツキノワグマの体長(頭胴長)は120~145cm、前足、後足とも約15cm。ほぼ完全に後足で立ち上がって前足を上げれば、全長150~175cmとなり、前足がちょうどヒトの顔面付近に位置する格好になるため、顔面の受傷の多さは理解しやすいだろう。一方、顔面に次いで上肢が多いのは、ヒトがとっさに顔や頭を守ろうとする防御行動によるものと報告されている。ちなみにクマージェンシーで紹介されている2023年に秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された20例では、受傷部位はやはり顔面が90%、上肢が70%、頭部が60%と前出の報告とほぼ同様だが、下肢が40%と記述されている。下肢の受傷理由についての記述はないが、おそらくは第1撃で顔面や上肢を受傷し、逃げようとしたところを追いすがられた結果と考えるのが自然だろう。外傷の種類や特異性クマ外傷は鋭い爪による軟部組織損傷(鋭的外傷)とパワーの強い打撃による骨折(鈍的外傷)に大別される。ツキノワグマの爪は、木登りに適した鋭く内側に曲がったかぎ状(フック状)となっており、長さは通常3〜5cmほど。クマージェンシーでは「一見、小さな外傷に見えても内部構造を破壊させることで大きな障害を残すことがある」と記述している。軟部組織のどこを受傷したかは、クマの爪が当たった場所に依存するが、各論文などでは眼球破裂・脱出、涙小管断裂、顔面神経損傷、耳下腺管断裂などが報告されている。また、鋭い爪の影響でごく一部では上口唇動脈、腋窩動脈、上腕動脈に達する損傷が認められることがあるという。さらに爪による攻撃は、皮膚に平行な強い力が加わることで、皮膚が広範囲に剥がされる「剥脱創」となることがあり、この場合は重度の出血を伴い、致命的となりうることを参照論文では指摘している。一方、ツキノワグマは体重60〜100kgで、動作が秒速10~15mとも言われるため、ここから算出される一打の打撃エネルギー量は、約400〜1,300ジュール(J) と言われている。これに対する比較対照を並べると、プロボクサーのパンチ一打が 約300〜500J、日本の警察の9mm口径の拳銃弾命中時が約500Jと推定されるため、その強大さは桁違いである。骨を破壊するエネルギー量がおおむね1,000Jと言われるので、当然ながら受傷者の一部では骨折が生じる。実際、参照論文を見ると、顔面への受傷例のおおむね半数以上で顔面での骨折が認められ、とくに眼窩、頬骨、鼻骨、鼻篩骨といった顔面中央部(中顔面)に多発。これ以外では頭蓋骨、下顎骨、歯槽骨などの骨折、さらに防御行動による四肢・体幹での尺骨や肋骨、肘関節などの骨折も報告されている。新潟大学の報告では、クマ外傷による骨折には特有のパターンがあることが指摘されている。これは通常の顔面骨の骨折では、顔表面から内側、すなわち頭蓋骨内部方向に陥没する骨折がほとんどなのに対し、クマ外傷では顔面骨が外側に引き出されるようなベクトルで骨折が生じることがあるとしている。これはおそらくクマによる打撃の際にめり込んだ前出のかぎ状の爪を引き抜く際に生じたものだろう。クマ外傷はこのように多発外傷であるため、全身に影響を及ぼし、動脈損傷では大量出血による出血性ショック、口腔内の持続的な出血や粉砕された顔面骨などによる気道閉塞、硬膜下血腫といった頭蓋内損傷など重篤な合併症を引き起こす危険性がある。参照論文中でも出血性ショックは10~23%で報告され、秋田大学の報告13例のうち7例で気道閉塞の危険性があるとして気道確保のため気管切開が行われている。創傷部位の評価と必要な処置前出のような受傷状況を踏まえ、参照論文のうち複数論文では、クマ外傷では交通事故や高所からの墜落のような高エネルギー外傷に準じた初期対応、具体的にはクマ外傷の患者の搬送がわかった段階で、気道確保、止血と大量輸血・輸液の準備が必要と強調している。そのうえで搬送後は、頭頸部や四肢・体幹の受傷や組織損傷の状況を注意深く評価することを求めている。とくに前出のようにクマ外傷では見た目の傷が小さくとも深部組織を破壊していることがあるため、参照論文の中ではこの点の評価を怠らないよう注意喚起しているものが少なくない。また、クマ外傷では創部感染のリスクが高いため、創部の十分な洗浄とデブリードマンが推奨されている。参照論文を見ると、洗浄で使う生理食塩水の量は症例によっては5,000~10,000mLとかなり大量である。また、クマージェンシーでは、表面上の傷が小さいものの深部まで達している四肢の外傷では、傷口からの注水だけでは洗浄が不十分として、目視で深部まで確認できる皮膚の追加切開を推奨している。創部感染の原因菌と予防対策実際の創部感染発生率は、今回の参照論文で確認した範囲では20~33.3%。クマージェンシーに記述されている13例では21.1%で、おおむねクマ外傷被害者の3~5人に1人の発生率である。ちなみにこの数字は搬送時に予防的抗菌薬投与などをほぼ全例で行ったうえの数字であり、個人的には驚きを禁じ得ない。創部感染の原因菌については、クマージェンシーでは4分の1の症例で同定され、主にセラチア菌(グラム陰性桿菌)と腸球菌(通性嫌気性グラム陽性菌)だったと報告している。参照論文で原因菌が特定されたケースでもこの2種類が散見されるが、そのほかにもグラム陽性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やA群レンサ球菌が検出された報告もある。こうしたこともあり、予防的抗菌薬投与では、嫌気性菌種を広くカバーするβラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬(ピペラシリン・タゾバクタムやアンピシリン・スルバクタム)が使われていることが多いようだ。もっともクマージェンシーではβラクタマーゼ阻害薬を含む場合と含まない場合の抗菌薬投与を比較し、創部感染発生率に差はないと報告している。また、岩手県の50例でも同様の検討を行い、βラクタマーゼ阻害薬の有無で創部感染発生率に有意差(p=0.08)はなかったものの、βラクタマーゼ阻害薬を含む群での感染発生率が9.1%に対し、含まない群では28.5%で、βラクタマーゼ阻害薬を投与したほうが感染発生率は低い傾向があると記述している。また、クマの爪や創部が土壌などで汚染されることを考慮し、ほぼすべての症例で破傷風トキソイドと抗破傷風人免疫グロブリンの投与が行われており、少なくとも参照論文とクマージェンシーでは破傷風発症事例はない。破傷風トキソイドを含む三種混合(DTP)ワクチンの日本での定期接種化が1968年であり、前回紹介したように受傷者はそれより以前に生まれた高齢者が多いことなどを考えれば、必要な措置なのだろう。具体的な外科治療の実際実際の治療は外科的なものがほとんどだが、損傷が多岐にわたるため、複数の専門診療科による連携手術が必要となるのは必定である。ここでは主な外科的治療の概略を紹介する。顔面骨骨折では、前出のような特有の外側に転位した骨片の有無を考慮し、観血的整復固定術が行われる。次に、動脈損傷、顔面神経損傷、涙小管断裂は即時再建が原則である。クマージェンシーでは鼻周辺の組織が噛みちぎられた事例として、路上に残されていた被害者の組織が持ち込まれ、再接合が行われた様子が写真とともに紹介されている。このため、同書では救急隊員が取るべき対応として、汚染の有無にかかわらず回収できる軟部組織はできるだけ回収して病院に持参するよう勧めている。素人には背筋が凍り付くような話である。ただ、完全な組織の欠損で機能回復や審美性を考慮した再建術が行われたケースでは、参照論文を見る限り、複数回の手術が長いものでは受傷から1年半後くらいまで行われている。歯や広範な歯槽骨欠損では、骨移植を併用した歯科インプラント治療が行われた事例も報告されている。このケースでは受傷6ヵ月後に骨移植術が実施され、さらにその6ヵ月後にインプラント埋入術が施行されている。薬物療法に漢方が標準化一方、抗菌薬の予防投与を除くと、治療で薬物を処方したケースは少ない。新潟県でのドクターヘリ搬送例で出血を抑えることを目的としたトラネキサム酸、山形県の症例で喉頭浮腫予防を目的としたデキサメタゾン、岐阜県の症例で後頭部や上腕の縫合を行わなかった創部に感染予防目的で処方されたゲンタマイシン(外用薬)ぐらいしか見当たらない。ただ、クマージェンシーでは秋田大学による漢方薬処方という興味深い事例を紹介している。具体的には鎮痛目的で打撲の痛みなどに使われる「治打撲一方」や感染防止目的での抗菌薬と「排膿散及湯」の併用である。治打撲一方の使用では1日で痛みが取れた著効例もあったという。また、排膿散及湯の併用は2024年から標準化している模様だ。しかしながら、このような難治療を経ても、視力障害、顔面神経麻痺、唾液や涙が止まらない、口腔機能低下などの後遺症に悩まされるケースは少なくないという。結局のところ、何よりもクマに遭遇しない予防措置が重要ということだろう。

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避難所の感染対策、集団生活の場をどうマネジメントするか【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第12回

避難所の感染対策、集団生活の場をどうマネジメントするか大地震から1週間が経過しましたが、いまだ多数の住民が避難所生活を余儀なくされています。避難所には高齢者が多く、発熱や下痢を訴える避難者が出ており、地域の医師会を通じて避難所の衛生管理や感染対策を指導するように頼まれました。避難所での感染症対策は、集団生活による「密集・密接」と、限られた栄養状態、衛生環境が大きなリスクになります。高齢者が多い環境では、感染症の頻度は通常よりも高くなることが予想されます。とくに、発熱や嘔吐・下痢の症状を呈する避難者が出た場合は、感染性胃腸炎、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などを想定した早期対応が重要です。避難所を管理する医師にとって、感染対策は単に「患者を診る」だけでなく、集団生活の場全体をどう守るかという視点が重要になります。医師が中心となって組織的に対応することで、感染拡大を未然に防ぐことができます。ここでは、現場で意識したいポイントを具体的に解説します。指揮と啓発:医師が空気を作る避難所管理医師は「診療医」と同時に「感染管理責任者」の2つの役割を担います。まずは医師が中心となり、看護師、保健師、避難所スタッフ、ボランティアなどと連携して「感染対策担当班」を設置します。これが感染拡大を未然に防ぐためのチームとなります。手洗い・マスク着用・トイレ使用法・発熱時の行動などを「避難所ルール」として明文化し、掲示や放送で繰り返すことが大切です。避難者は「感染への恐怖」に敏感です。不安がパニックや風評被害につながらないよう、私たち感染対策チームが率先して手洗いやマスクを実践し、避難者に「感染対策の意味」を伝えていく姿勢が求められます。また、現場では物品管理も重要です。薬剤・消毒薬・マスクなどの在庫を確認し、不足が見込まれるときは早めに行政へ要請するのも、感染対策チームの役割です。予防の徹底:環境と食を守る災害時には、しばしば断水になり、手洗いがおろそかになります。水道・石鹸が不足する場合は、アルコール消毒液を要所に配置しましょう。段ボールベッドや仕切りを活用し、避難者同士の距離を可能な限り確保するように心掛けます。可能な場合は、定期的(午前と午後に1回など)に窓やドアを開けて換気を行うことも忘れないようにしたいです。避難所で出される食品の管理にも注意が必要です。調理が必要なものは十分に加熱し、調理者、盛り付けや配膳をする人はできるだけ少人数に限定して、手指衛生と使い捨て手袋の着用を徹底してもらいます。食器類の共用は避け、使い捨てにするのが理想です。また、給水車の水を汲み置きして飲用したり、食材や食器、調理器具の洗浄に使用する場合は、あらかじめ煮沸します。乳児の哺乳瓶は、次亜塩素酸ナトリウム(商品名:ミルトン、ミルクポンなど)もしくは熱湯を用いて消毒し、衛生的な環境で調乳するように指導しましょう。発症者への対応:早期発見と拡大防止発熱・下痢・嘔吐などの症状のある人は、発見次第、速やかに別室や専用区画に移動してもらいます。可能であれば専用トイレも用意しましょう。発症者の症状、接触者、発症時刻を記録し、集団感染が疑われる場合はすぐに保健所へ報告します。同居家族や近くにいた人は、2~3日間の体調観察が必要です。現場で最も注意が必要なのが、嘔吐物・下痢便の処理です。必ずマニュアルを作成し、徹底してもらいます。ケアや清掃に当たる人は、マスク・手袋・ガウンやエプロンなどを着用し、嘔吐物・便は使い捨てペーパーで覆ったうえで、0.1~0.2%次亜塩素酸ナトリウムを用いて処理します。廃棄物は密閉袋に入れて廃棄することが鉄則です。また、鼻水、咳、咽頭痛など比較的限局した上気道症状だけであれば、感染症だけでなく、アレルギーの存在も念頭に置いて診療に当たります。段ボールベッド自体がアレルゲンになる可能性は低いですが、付着していたカビなどが原因となる場合もあります。避難所全体の健康管理日々の管理としては、健康観察シートを活用し、毎日、避難者全員に体温や症状を記録してもらいます。とくに高齢者、乳幼児、基礎疾患がある避難者など、ハイリスク群を重点的にモニタリングしましょう。保健所や医療機関と定期的に連絡を取り、検査や医療搬送も必要なときに速やかに行えるよう準備しておきます。基本的な清潔を保つために、定期的に居住区域やトイレの清掃を行うことは大変重要です。トイレ清掃を行った際は、その都度マスクと手袋は廃棄し、流水と石鹸を用いて手を洗い、その後アルコール消毒剤を使います。最後に、心に留めておきたいことがあります。過去に、飲み水や寝るスペースの確保に難渋している避難所で、隔離や手洗いのことばかりを厳しく指導し、周囲と軋轢を生んでしまった医師がいました。感染対策はときに家族を引き離したり、地域のコミュニティを分断したりする側面もあります。時期や状況によっては、その対策がメンタルを含めた別の健康被害を助長する可能性もあります。頭の片隅に置きながら、「感染対策」と「避難所生活」のバランスを考えることも、医師として大切な姿勢です。まとめ避難所管理医師は「診療医」+「感染管理責任者」の2つの役割を担います。現場では以下の4本柱を軸に行動することが重要です。スタッフや避難者への啓発衛生ルールの徹底発症者の早期隔離健康観察体制の構築これらを守ることで、感染症の芽を早期に摘み、避難所全体の安全を確保することができます。

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副作用対策、用量調節で悩ましいこと 【高齢者がん治療 虎の巻】第5回

講師紹介<今回のPoint>「プロの勘」ではなく、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)で根拠を可視化しチームで共有することが信頼される医療の土台に治療方針決定にGAを活用すれば、単なる点数評価で終わらず、個別化した薬剤調整が可能にGAは多職種との連携に使ってこそ意味がある<症例>(第1回、第2回、第4回と同じ患者)88歳、女性。進行肺がんと診断され、本人は『できることがあるなら治療したい』と希望。既往に高血圧、糖尿病、軽度の認知機能低下があり、PSは1〜2。診察には娘が同席し、『年齢的にも無理はさせたくない。でも本人が治療を望んでいるなら…』と戸惑いを見せる。遺伝子変異検査ではドライバー変異なし、PD-L1発現25%。G8:10.5点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限など)/HDS-R 20点(認知症の可能性あり)多職種カンファレンスで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の単剤投与を提案。薬剤師には併用薬の整理を、MSWには家庭環境の支援を依頼し、チームで治療準備を整えた。副作用なく3サイクル投与できたが病勢は進行。ベストサポーティブケア(BSC)への移行を提案したが、本人は次治療を希望。TTF-1陰性でありカルボプラチン(CBDCA)+ナブパクリタキセル(nab-PTX)療法が検討された1)が、標準量か減量すべきかが議論された 。その道のプロにGAは不要!?GA普及の初期、しばしば耳にしたのが、 「患者が診察室に入ってくる足音で脆弱性の有無がわかる」「結局、全例抗がん剤減量するからGAは不要」 といった声です。つまり“プロの勘があるのでGAは必要ない”という意見です。おそらく、臨床経験豊富な先生は頭の中で独自のGAを実施されているものと思います。ですが、そのプロの勘を見える化し、チームで共有することができているでしょうか。GAの本質は、「コンセンサスのあるツールで構造化された評価を行い、結果を共有して意思決定の質を高め、必要な介入へとつなげる」点にあります。多職種とつなげて点から線へ流れを作り、評価するだけのGAではなく、使いこなしてこそ価値が出るものと考えます。それこそが「プロの勘」をチーム医療の武器に変える力と言えるでしょう。GAのSDMへの貢献:再治療をどうするか冒頭の症例は、ICIによる副作用を認めなかったことで、本人・家族とも「次もいけるかも」という安心感がありました。ここで、改めて高齢者機能評価を実施してみましょう。生活機能基本的日常生活動作(BADL)…自立手段的日常生活動作(IADL)…買い物、食事の支度、交通手段に関して介助が必要G89点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限、体重減少など)CARGスコア2)(失点項目:移動の制限、転倒歴など)*CARGの詳細は本文後半のコラム参照<図1より算出したCARGスコア>多剤併用標準量13点、高リスク多剤併用減量11点、高リスク単剤標準量11点、高リスク単剤減量9点、中リスク(図1)CARGスコア[参考]画像を拡大するG8は初回治療前と比較し、若干の体重減少のため点数が下がっていました。また、転倒歴が判明し、栄養指導や自宅環境の整備を再度実施することにしました。カンファレンスではこの結果をもとに「単剤減量+支持療法強化」が提案されると判断しました。本人と家族には、「細胞傷害性抗がん薬の投与は高リスクであること」「前回のように必ずうまくいくとは限らないこと」を丁寧に説明した結果、十分な支持療法を実施しながらnab-PTX単剤を減量して開始する方針になりました。GAによる「見える根拠」を示した説明で、本人・家族の納得度を高め、信頼関係の構築にもつながった症例です。(図2)高齢者機能評価は誰のため?GAにより治療選択とその対策を見える化する画像を拡大する適切な投与量調節とはGAで脆弱性を認める→減量すべき、は一見自然な流れですが「どのくらい減らすか」には明確な指針がありません。米国・ロチェスター大学教授Supriya G. Mohile氏のラボでは、GAで脆弱性がある場合、細胞傷害性抗がん薬は一律80%の減量を行っていました。非常に明快な指針ですが、日本では減量にもエビデンスが必要と考える文化が根強く、考え方をそのまま導入するのは困難だと思います。そこで、以下の視点から減量を検討することを提案いたします。一律の減量ではなく、エビデンスに基づいた減量レジメンの選択臨床試験で用いられた減量基準に従った投与量調整GAを活用し、医師自身が理論的に納得したうえで減量を提案たとえ結果的に減量という同じ結論に至っても、そのプロセスが納得に裏付けられたものであるかどうかがSDMの質を左右すると考えます。このように、高齢者に抗がん剤治療を行う場合は最終的に減量を推奨することも多いと思いますが、GAを用いて理論的に担当医自身も納得したうえで患者や家族に提案すること、点数だけで治療を決めず、介入や十分な支持療法を検討することも重要だと思います。Chemo-Toxicity Calculator、CARG scoreとは何か?2,3)CARGスコアは、米国のArti Hurria氏らが高齢がん患者における化学療法の毒性リスクを予測するために開発したツールで、Cancer and Aging Research Group(CARG)によって報告されました。65歳以上の多がん種患者を対象に、化学療法前に包括的高齢者機能評価(CGA)を実施し、治療中に生じたCTCAE Grade3以上の有害事象との関連からリスク因子を抽出しています。評価項目には、年齢・性別・身長/体重・がん種・レジメンの強度・Hb・Cr値に加え、難聴、転倒歴、100m歩行の制限、人付き合いの制限など、身体的・社会的な要素が含まれています。G8だけでは算出できない項目が多く、CARGスコアの計算はより包括的な高齢者評価を行う良い契機になります。リスクスコアは低(0~5点)、中(6~9点)、高リスク(10点以上)に分類され、視覚的に有害事象リスクを把握しやすいのが利点です。ただし、細胞傷害性抗がん薬を対象としたツールであり、ICIや分子標的薬には適用できず、日本では前向き研究による妥当性検証がされていない点には注意が必要です。1)Kogure Y, et al. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e791-e800.2)Hurria A, et al. J Clin Oncol. 2011;29:3457-3465. 3)Cancer and Aging Research Group:Chemo-Toxicity Calculator

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危険なOTCが国内流通か、海外での規制や死亡例は

 現在、政府が『骨太の方針2025』で言及した「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しの在り方」についての議論が活発化している。この議論は今に始まったことではなく、OTC医薬品の自己判断による服用が医療アクセス機会の喪失を招き、受診抑制による重症化・救急搬送の増加といった長期的な医療問題に発展する可能性をはらんでいるため、30年以上前からくすぶり続けている問題である。 さらに、日本社会薬学会第43年会で報告された国内の疫学研究「頭痛専門外来患者における市販薬の鎮痛薬服用状況:問診票を用いた記述疫学研究」からは、OTC類似薬の利用率増加が依存性成分の摂取促進に繋がりかねないことが明らかされた(参照:解熱鎮痛薬による頭痛誘発、その原因成分とは)。つまり、OTC医薬品の使用促進が依存性成分摂取者の増加を招く恐れもあることから、今回、上述の研究の共同研究者で市販薬の情報基盤を構築する平 憲二氏(プラメドプラス/京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康情報学分野)にOTC医薬品を取り巻く現状や世界的情勢などについて話を聞いた。OTC医薬品が拠り所、頭痛患者の実情 日本神経学会が問題視するOTC医薬品の不適正使用による「薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache:MOH)」増加の背景を踏まえて行われた上述の研究から、重症頭痛患者にとってOTC医薬品が心身の拠り所となっている実態が明らかにされた。同時に、解熱鎮痛薬に含まれる依存性成分とされる以下3成分のいずれかを対象患者の約9割が摂取していたことも示された。<3つの依存性成分>・アリルイソプロピルアセチル尿素(ア尿素、鎮静催眠成分)・ブロモバレリル尿素(ブ尿素、鎮静催眠成分)・カフェイン 平氏は「とくにア尿素は教科書に載っていない危険な成分で、一部の国では違法薬物とみなされる。2023年5月にオーストラリア薬品・医薬品行政局(TGA)がア尿素を全面規制1)し、日本からのイブの輸入規制をかけている。また、2025年4月には韓国でもア尿素が麻薬類成分リストに記載された。なお、米国では血小板減少性紫斑病の発症を契機に1939年にすでに規制がなされている状況2)」と説明した。それに対し日本の場合、「濫用等のおそれのある医薬品の取扱い」に対する規制を課しているものの、本リストに記載されているのは、依存性成分のうち「ブ尿素のみ」であるため、医療者にもア尿素のリスクが認知されていない点を同氏は指摘した3)。ア尿素配合製剤による国内死亡例 なお、日本では規制が弱く認知度の低いア尿素であるが、その配合製剤による中毒死例が2014年に報告されている4)。<剖検例>――――――――――――――年齢・性別:20代・女性自宅アパートのトイレで、死亡しているところを発見された。死者は、老人施設で介護ヘルパーとして働いていたが、約2ヵ月前に辞職し、単身で犬・猫とともに生活していた。また、片頭痛を有しており、市販の解熱鎮痛薬を常用していた。部屋から市販の解熱鎮痛薬(イブプロフェン+ア尿素+無水カフェインの合剤)約450錠分の空き箱・空きシートが発見された。いずれの成分も検出された。※長期にわたってア尿素配合製剤の服用を継続し、最終的にカフェイン中毒で亡くなった。――――――――――――――――――― 同氏は「ア尿素やブ尿素はモノウレイド系催眠鎮静薬に区分されるが、いずれも抗不安作用があるため、頭痛頻度の多い使用者においては連用しないよう慎重な対応が必要となる。飲んですぐに眠くなるわけではない*ため、“眠くなるのが薬のせいかわからない”と話す患者もいる」とコメントした。それならば、製品パッケージをチェックしてア尿素などの依存性成分の摂取回避に努めたい。しかし、同氏はイブA錠を例示しながら、「販売製品のパッケージ(裏)に小さい文字で“イブプロフェンの鎮痛作用を高める鎮静成分”として記載されているものの、添付文書にはア尿素が催眠鎮静薬である旨の明確な記載はなされておらず、“隠し成分“のような状況」であることを示し、「パッケージ(表)や添付文書での明記」や「臨床医や薬剤師によるア尿素・ブ尿素の認知と催眠鎮静成分であることの周知」により、MOHなどの薬剤性疾患の予防につなげる必要があることを強調した。*<参考:各成分の半減期>ア尿素14.28±5.81時間(参考値)、ブ尿素2.5時間(ただし臭素の半減期は12日)市販薬の最新情報をパッケージ写真付きでチェック このように、ア尿素やブ尿素、そしてカフェイン含有製剤が海外では時代遅れな製品として「不適切製品」として扱われる一方で、日本は「不適正使用」としての注意喚起にとどまる。そこで同氏はクスリ早見帖プロジェクトを始動し、現場で実用性を高められるよう市販薬情報を詰め込んだ『クスリ早見帖ブック 市販薬1000』などを制作している。これについて、「製品画像で確認してもらい、すぐに成分のわかる本がほしかった。診断精度の向上とカルテへの正しい記載を目指して制作している」と解説した。 本プロジェクトでは、OTC医薬品の製薬企業の協力のもと、年4回発行されるクスリ早見帖季刊誌やクスリ早見帖WEBの制作も行っており、将来的には医療用医薬品のデータを含めた医薬品に関する「痒い所に手が届く」医療現場向けの情報源を作ることを目指している。市販薬の名称や画像の一覧を「早見」することで、目的の市販薬を素早く見つけることが可能であるため、患者とのコミュニケーションを円滑にするために有用なツールである。 医療者が患者の服用する真のOTC医薬品を把握できるようこのツールを現場へ普及させたい同氏は、今後の研究課題として「ア尿素配合製剤由来の薬剤の使用過多による頭痛の推計患者数や薬剤疫学研究(リスクと予後)を推進していきたい。また、薬効薬理/薬物動態などのデータがないため追加研究が必要」と語った。 

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スタチン使用は本当にうつ病リスクを低下させるのか?

 これまで、スタチンのうつ病に対する潜在的な影響については調査が行われているものの、そのエビデンスは依然として一貫していない。台北医学大学のPei-Yun Tsai氏らは、スタチン使用とうつ病の関連性を明らかにするため、最新のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌2025年11〜12月号の報告。 2025年9月11日までに公表された研究をPubMed、the Cochrane Library、EMBASEより、言語制限なしでシステマティックに検索した。また、対象論文のリファレンスリストの検討を行った。プールされたオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、ランダム効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした15研究(10ヵ国、540万3,692例)をメタ解析に含めた。・スタチン使用は、スタチン非使用と比較し、うつ病リスクが有意に低かった(統合OR:0.84、95%CI:0.74〜0.96、p=0.009)。しかし、研究間の異質性が大きかった(I2=85%)。・感度分析では、結果のロバスト性が確認された。・サブグループ解析では、コホート研究(OR:0.86、95%CI:0.76〜0.98、p=0.02)、検証済みの質問票/尺度を用いた研究(OR:0.71、95%CI:0.54〜0.94、p=0.02)、併存疾患を有する患者(OR:0.74、95%CI:0.55〜0.98、p=0.04)、抗炎症薬または抗うつ薬を併用している患者(OR:0.82、95%CI:0.71〜0.95、p=0.009)において有意な関連が認められた。・北米集団(OR:0.63、95%CI:0.51〜0.78、p<0.001)および西洋型の食生活(OR:0.61、95%CI:0.45〜0.81、p<0.001)、アジア型の食生活(OR:0.75、95%CI:0.64〜0.89、p=0.001)を順守する人において、スタチンのうつ病予防効果が認められた。 著者らは「とくに特定の集団および特定の臨床的または生活習慣条件において、スタチン使用はうつ病リスクの低下と関連していると考えられる。この因果関係を明らかにし、影響を及ぼす関連因子を特定するには、さらなる研究が求められる」とまとめている。

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肺がん治療における経済的視点/治療医に求められる役割

 がん治療の経済的毒性が注目される中、日本肺学会が開催する肺がん医療向上委員会において、近畿大学の高濱 隆幸氏が講演した。高濱氏は肺がん診療の現場において、治療医が患者とのShared Decision Making(SDM)に、経済的視点を組み込む重要性を訴えた。治療の進歩と経済的負担の長期化 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新薬の登場により、肺がん患者の生存期間中央値は2年を超え、予後は著しく改善している。これらの新薬は高額であり、生存期間の長期化の見返りとして治療費や通院費などの副次的費用が増加する。また、離職による収入減で経済的負担を長期にわたって強いられる患者もいる。日本肺がん患者連絡会の調査では、肺がん患者の88%が高額療養費制度を利用しているにもかかわらず、63%が何らかの経済的負担を感じているという。診察室での経済的負担への対応 現状、診察室で医療費に関する議論を行うことは時間的制約などから難しく、患者も医師も金銭的な話題を避けがちである。この結果、患者は治療選択に必要な重要な経済情報を得る機会を逸している可能性が高い。 治療医は、治療の説明を行うだけでなく、患者にとって「最初の窓口」としての役割を再認識し、金銭的な問題を持つ患者を院内の適切な専門職へ迅速につなぐことが求められる。医師がすべての経済的負担を抱え込むのではなく、専門家との連携を強化することが、患者にとって最善のサポートを提供するカギとなる、と高濱氏は述べる。SDMにおける経済的背景の考慮 SDMにおいては、エビデンスに加え、患者の価値観、ライフスタイル、さらに経済的背景を把握する姿勢が不可欠である。肺診療ガイドライン2025年版に、初めて薬剤費の目安が記載されたことは、その必要性の高まりを示すものである。処方医は、自身が選択するレジメンのコストを最低限の基礎知識として身に付けておくべき時代、ともいえる。 国際的には、ASCOのValue FrameworkやESMOのMagnitude of Clinical Benefit Scaleなど、コスト効率を評価するツールが存在する。今後は、日本国内でも実用的なツール開発が今後検討されるべきであろう。 治療医は、最善の治療を届けたいという気持ちを忘れずに、どのようにしたら日本の医療制度が残せるのかを考えていくべきであり、学会は客観的なデータに基づいた議論を主導していくことが、最善の治療を患者に届けるための基盤となる、と高濱氏は結んだ。

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ER+低リスクDCIS、手術せず内分泌療法単独での有用性を検証(LORETTA)/SABCS2025

 エストロゲン受容体陽性(ER+)の低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対して、手術せず内分泌療法のみ実施する治療が選択肢となる可能性がLORETTA試験(JCOG1505)で示唆された。本試験の主要評価項目である5年累積同側乳房内浸潤がん(IPIC)発生割合は事前に設定した閾値を達成しなかったものの、9.8%と低く、また乳がんによる死亡はなかったことを、名古屋市立大学の岩田 広治氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 LORETTA試験(JCOG1505)は、JCOG乳がんグループによるER+の低リスクDCISに対して、手術と放射線照射なしで内分泌療法のみを実施する低侵襲治療の有効性と安全性の検証を目的とした単群検証的試験である。・対象:40歳以上のER+/HER2-の低リスクDCIS(Comedo壊死がなく、核グレード1または2)で、画像検査(マンモグラフィ、超音波、MRI)で浸潤がんの所見がみられず、最大腫瘍径が2.5cm以下の女性・方法:外科的切除なしで、タモキシフェン20mg/日を5年間連日投与・評価項目:[主要評価項目]5年累積IPIC発生割合[副次評価項目]同側乳房内浸潤がん無発生生存期間、対側乳房無病生存期間、全生存期間(OS)、手術割合、無手術生存期間、安全性など・統計解析:5年累積IPIC発生割合の閾値を7%、期待値を2.5%と仮定し、片側α=2.5%、検出力95%とした。5年時点でIPIC発生が14例以下であれば帰無仮説は棄却される。 主な結果は以下のとおり。・2017年7月~2024年1月に344例が登録され、341例が解析対象となった。5年時点で18例にIPICが発生したため、2025年6月に効果・安全性評価委員会より早期中止が勧告された。データカットオフは2024年12月で、追跡期間中央値は36ヵ月(範囲:0~80.4ヵ月)であった。年齢中央値は53歳(範囲:40~85歳)、68%が核グレード1、プロゲステロン受容体(PgR)はほぼ陽性、腫瘍径はマンモグラフィと超音波検査では2cm以上が約7%だったが、MRIでは22%であった。・主要評価項目の5年累積IPIC発生割合は9.8%(95%信頼区間[CI]:5.2~16.1)で、事前設定の閾値を達成しなかった。サブグループ解析では、マンモグラフィ(p=0.0278)、超音波(p=0.0433)、MRI(p=0.0530)における腫瘍径(2cm以上)が浸潤がん発生と関連していたが、核グレード、HER2、PgR、マンモグラフィ上の石灰化との有意な関連は認められなかった。・5年OS率は98.8%(死亡2例、どちらも乳がんとの関連なし)、5年対側乳房無病生存率は97.5%(イベントは4例のみ、浸潤性2例・非浸潤性2例)、5年同側乳房内浸潤がん無発生生存率は89.7%、5年無手術生存率は82.0%であった。・有害事象は、タモキシフェンの既知の有害事象のみ認められ、新たな安全性シグナルはなかった。AST/ALT上昇が全Gradeでは約20%に発生し、Grade3以上は約2%であった。 岩田氏は、「5年累積IPIC発生割合を主要評価項目とした本試験の結果はネガティブだったが、小さな非浸潤がんなどの患者を慎重に選択すれば、手術をしないタモキシフェン単独療法はER+/HER2-の低リスクDCISにおける実行可能な選択肢となるかもしれない」と可能性を指摘した。ディスカッサントのEric P. Winer氏は、「本試験は、DCISに対する非外科的アプローチにおける浸潤性乳がんリスクの新たな推定値を提供する。『watchful waiting』が生存率に影響があるかは明らかではないが、もし影響があるとしても非常に小さなものだろう。最終的には患者の希望が意思決定の中心となるべきである」とまとめている。

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『肝細胞診療ガイドライン』改訂――エビデンス重視の作成方針、コーヒー・飲酒やMASLD予防のスタチン投与に関する推奨も

 2025年10月、『肝細胞診療ガイドライン 2025年版』(日本肝臓学会編、金原出版)が刊行された。2005年の初版以降、ほぼ4年ごとに改訂され、今回で第6版となる。肝内胆管がんに独自ガイドラインが発刊されたことを受け、『肝診療ガイドライン』から名称が変更された。改訂委員会委員長を務めた東京大学の長谷川 潔氏に改訂のポイントを聞いた。Good Practice StatementとFRQで「わかっていること・いないこと」を明示 今版の構成上の変更点としては、「診療上の重要度の高い医療行為について、新たにシステマティックレビューを行わなくとも、明確な理論的根拠や大きな正味の益があると診療ガイドライン作成グループが判断した医療行為を提示するもの」については、Good Practice Statement(GPS)として扱うことにした。これにより既存のCQ(Clinical Question)の一部をGPSに移行した。 また、「今後の研究が推奨される臨床疑問」はFuture Research Question(FRQ)として扱うことにした。FRQは「まだデータが不十分であり、CQとしての議論はできないが、今後CQとして議論すべき内容」を想定している。これらによって、50を超える臨床疑問を取り上げることが可能になり、それらに対し、「何がエビデンスとして確立しており、何がまだわかっていないのか」を見分けやすくなった。診療アルゴリズム、3位以下の選択肢や並列記載で科学的公平性を保つ ガイドラインの中で最も注目されるのは「治療アルゴリズム」だろう。治療選択肢が拡大したことを受け、前版までは推奨治療に優先順位を付けて2位までを記載していたが、今版からはエビデンスがあれば3位以下も「オプション治療」として掲載する方針とした。たとえば、腫瘍が1~3個・腫瘍径3cm以内の場合であれば、推奨治療は「切除/アブレーション」だが、オプション治療として「TACE/放射線/移植」も選択肢として掲載している。これにより、専門施設以外でも自施設で可能な治療範囲を判断したり、患者への説明に活用したりしやすくなっている。 また、治療やレジメンの優先順位もエビデンスを基に厳格に判断した。たとえば、切除不能例の1次治療のレジメンでは、実臨床ではアテゾリズマブ+ベバシズマブ療法が副作用管理などの面で使用頻度が高い傾向にあるが、ガイドライン上ではほかの2つのレジメン(トレメリムマブ+デュルバルマブ、ニボルマブ+イピリムマブ)と差を付けず、3つの治療法を並列に記載している。実臨床での使いやすさや感覚的な優劣があったとしても、それらを直接比較した試験結果がない以上、推奨度には差を付けるべきではないと判断した。 結果として、多くの場面で治療選択肢が増え、実臨床におけるガイドラインとしては使い勝手が落ちた面があるかもしれないが、あくまで客観的なデータを重視し、科学的な公平性を保つ方針を貫いた。判断の根拠となるデータ・論文はすべて記載しているので、判断に迷った場合は原典にあたって都度検討いただければと考えている。予防ではコーヒー・飲酒の生活習慣に関するCQを設定 近年ではB/C型肝炎ウイルス由来の肝細胞がんは減少している一方、非ウイルス性肝細胞がんは原因特定が困難で、予防法も確立されていない。多くの研究が行われている分野ではあるので、「肝発予防に有効な生活習慣は何か?」というCQを設定し、エビデンスが出てきた「コーヒー摂取」と「飲酒」について検討した。結果として「コーヒー摂取は、肝発リスクを減少させる可能性がある」(弱い推奨、エビデンスの強さC)、「肝発予防に禁酒(非飲酒)を推奨する」(弱い推奨、エビデンスの強さC)との記載となった。いずれもエビデンスレベルが低く、そのまま実臨床に落とし込むことは難しい状況であり、今後のエビデンスの蓄積が待たれる。MASLD患者の予防にスタチン・メトホルミンを検討 世界的に増加している代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD) では、とくに肝線維化進行例で肝がんリスクが高い。今版では新設CQとしてこの集団における肝発がん抑制について検討した。介入としては世界で標準的に使用されており論文数の多い薬剤としてスタチンとメトホルミンを選択した。ガイドラインの記載は「肝発予防を目的として、スタチンまたはメトホルミンの投与を弱く推奨する(エビデンスの強さC)」となった。ただ、予防目的で、高脂血症を合併していない患者へのスタチン投与、糖尿病を合併していない患者へのメトホルミン投与を行った研究はないため、これらは対象から外している。MASLD患者に対してはGLP-1受容体作動薬などが広く投与されるようになり、肝脂肪化および肝線維化の改善効果が報告されている。今後症例の蓄積とともにこれら薬剤の肝発がん抑制効果の検討も進むことが期待される。放射線治療・肝移植の適応拡大 その他の治療法に関しては、診断/治療の枠組みは大きく変わらないものの、2022年4月から保険収載となった粒子線(陽子線・重粒子線)治療の記載が増え、アルゴリズム内での位置付けが大きくなった。また、肝移植については、保険適用がChild-Pugh分類Bにも拡大されたことを受け、適応の選択肢が増加している。経済的だけでなく学術的COIも厳格に適用 改訂内容と直接は関係ないものの、今回の改訂作業において大きく変更したのがCOI(利益相反)の扱いだ。日本肝臓学会のCOI基準に従い、経済的COIだけでなく学術的COIについても厳密に適用した。具体的には、推奨の強さを決定する投票において、経済的なCOIがある者はもちろん、該当する臨床試験の論文に名前が掲載されている委員もその項目の投票を棄権するルールを徹底した。Minds診療ガイドライン作成の手法に厳格に沿った形であり、ほかのガイドラインに先駆けた客観性重視の取り組みといえる。投票結果もすべて掲載しており、委員会内で意見が分かれたところと一致したところも確認できる。今後の課題は「患者向けガイドライン」と「医療経済」 今後の課題としては、作成作業が追いついていない「患者・市民向けガイドライン」の整備が挙げられる。また、今版では医療経済の問題を「薬物療法の費用対効果の総説」としてまとめたが、治療選択における明確な指針の合意形成までには至らなかった。今後、限られた医療資源を最適に配分するために、医療経済の視点におけるガイドラインの継続的なアップデートも欠かせないと考えている。

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血友病Bに対する遺伝子治療、第III相試験の最終解析/NEJM

 高活性の第IX因子Padua変異体を導入したアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)ベクターを用いた遺伝子治療薬etranacogene dezaparvovecは、血友病B成人患者において、5年間にわたり持続的な第IX因子の発現と年間出血率の低下をもたらすことが確認された。米国・ミシガン大学のSteven W. Pipe氏らHOPE-B Study Group Investigatorsが、第III相の非盲検試験「HOPE-B試験」の最終解析結果を報告した。血友病Bの治療では、出血予防のため生涯にわたる定期的な第IX因子の補充が必要となる。遺伝子治療は、単回投与で持続的な第IX因子の発現と疾患コントロールが得られる可能性があり開発が期待されている。NEJM誌オンライン版2025年12月7日号掲載の報告。etranacogene dezaparvovecの単回投与後、5年間追跡 研究グループは、血友病B(第IX因子活性≦正常値2%)の男性患者54例に、第IX因子定期補充療法の導入期間(≧6ヵ月)後に、第IX因子Padua変異を発現するAAV5ベクターであるetranacogene dezaparvovec(2×1013ゲノムコピー/kg体重)を、AAV5中和抗体の有無にかかわらず単回投与した。 事前に規定された5年解析では、補正後年間出血率(etranacogene dezaparvovec投与後7~60ヵ月の出血率と導入期間の出血率の差)、第IX因子発現、および安全性について評価した。 本試験は2018年6月27日に開始され、最終解析のデータベースロックは2025年4月30日であった。54例中、53例がetranacogene dezaparvovecの全用量を投与され、1例は輸注関連過敏反応のため約10%用量の投与となった。50例(93%)が5年間の追跡調査を完了した。年間出血率は、投与後7~60ヵ月で導入期間(第IX因子定期補充療法)の63%減少 最大の解析対象集団54例において、全出血イベントの補正後年間出血率は、導入期間中の4.16に対し、遺伝子治療後7~60ヵ月は1.52で、63%(95%信頼区間:24~82)減少した。 5年間の追跡期間を通して第IX因子の発現は安定しており、5年時の第IX因子活性の平均(±標準偏差)は36.1±15.7 IU/dLであった。また、定期的予防投与および出血イベントの治療のための第IX因子濃縮製剤の平均使用量は、導入期間中の年間25万7,339 IUから遺伝子治療後7~60ヵ月では年間1万924 IUへと96%減少した。 有効性は、ベースラインでAAV5中和抗体を有する患者と有さない患者の間で大きな差は認められなかった。 治療との関連の可能性がある有害事象は、6ヵ月後以降はまれであった。 なお、etranacogene dezaparvovecの長期的な有効性および安全性、ならびに不確実な遺伝毒性リスクに関するさらなるデータを得るため、HOPE-B試験に参加し同意した患者は遺伝子治療後15年間、IX-TEND 3003試験において追跡調査される予定である。

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