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地震で多発するクラッシュ症候群、現場での初期対応は?【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第1回

地震で多発するクラッシュ症候群、現場での初期対応は?クリニックの近くで地震による家屋の倒壊が起き、「30代男性が下敷きになっているが、意識があるから来てほしい」という依頼がありました。すでに救助隊が到着しており、安全を確保したうえで傷病者に接触しました。やや多弁で軽度の興奮状態ですが、会話はでき、指示には従えます。右下肢が瓦礫に挟まれ動けないようですが、疼痛は軽度で、右上肢は動かすことができるため、バイタルサインを測定しました。血圧124/76mmHg、脈拍78bpm、体温35.4度、呼吸数18回/分。既往歴に特記すべきことはなし。救出にはまだ時間がかかる見込みで、20Gで静脈ルートを確保しました。どのような輸液を行えばよいでしょうか?クラッシュ症候群とは:「Smiling Death」のメカニズムクラッシュ症候群は、直前まで会話をしていたのに、救出後急に反応がなくなる患者がいることから、「Smiling Death」とも呼ばれます。ご存じのように、メカニズムは、圧迫が解除され圧座されていた部分に血液が流れることにより起きる広義の虚血再灌流障害です。挫滅した筋肉の細胞から大量のミオグロビン・カリウム・乳酸などが血流に乗って全身に流れると、高濃度のミオグロビンは腎臓の尿細管に障害を起こすことで、急性腎障害を引き起こします。高濃度のカリウムは心室細動などの致死性不整脈を引き起こします。虚血にさらされた部分では、血管内皮細胞が障害を受け、血管透過性が亢進することから、著明な浮腫が起こります1)。典型的な症状は、損傷した四肢のひどい腫れ、圧迫された四肢の運動・感覚神経障害、褐色尿(ポートワイン尿)ですが、血圧低下やショックを呈することもあります。阪神淡路大震災では、372例がクラッシュ症候群と診断され、そのうち約半数の傷病者が急性腎障害となり、多くが人工透析を必要としました。クラッシュ症候群の約13%に当たる50例が死亡しています。CPKの値が重症度と相関するようです。報告例も多く、広く認識された病態です2,3)。救出時の対応:輸液プロトコルクラッシュ症候群が疑われる場合には、現場でしっかり輸液を行うことが推奨されています4,5)。挫滅されてから少なくとも6時間以内に、尿を1時間に300mL出すことを目標に「クラッシュ症候群カクテル」が考案され、1,000mLの生理食塩水に40mEqの炭酸水素ナトリウム(8.4% 40mL)と20%マンニトールを50mL加え、これを急速輸液することが提唱されていました。しかし、最近はマンニトールは「乏尿」「循環血液量低下」のある症例ではむしろ害となりうるため、使用は尿量が十分に確保されてからに限定すべきとされています6)。炭酸水素ナトリウムは、血液をアルカリ性にする目的で使用します。血中の水素イオン(H+)が減少することでカリウムイオン(K+)が細胞内に取り込まれ、結果として血清カリウム濃度を低下させます。圧迫解除後に突如心停止に至ることがあるため、事前にAEDを準備しておくことで即座に電気的除細動を行えます。災害時マニュアルやDMAT(災害派遣医療チーム)などでも、クラッシュ症候群の圧迫解除前にAEDや除細動器を準備することが推奨されています。救出後は速やかに病院搬送を試みます。心電図を装着し、P波の消失またはQRS幅の増大が認められる場合は、高カリウム血症による心筋への影響に拮抗する10%グルコン酸カルシウム10~20mLを5~10分かけて静脈内投与します。ちなみに、この患者さんは8時間後に救出され、救護所に搬送されました。下肢に変形はなく、右大腿に発赤や水泡は認められず、軽度の腫脹はあるものの疼痛の訴えはありませんでしたが、患肢の運動麻痺と知覚鈍麻を認めたとのことでした。クラッシュ症候群の疑いがあるとのことで、その後速やかに広域搬送され、ICUで人工透析を受け、救命され社会復帰されたそうです。当科に来てくださっている稲葉 基高先生も、能登半島地震で高齢のクラッシュ症候群患者に対応していますが、この患者さんは不幸にも1ヵ月後に亡くなっています7)。能登半島地震でのクラッシュ症候群の患者さん救出の様子写真提供:稲葉 基高氏 1) Sever MS, et al. Management of crush-related injuries after disasters. N Engl J Med. 2006;354:1052-1063. 2) Oda J, et al. Analysis of 372 patients with Crush syndrome caused by the Hanshin-Awaji earthquake. J Trauma. 1997;42:470-475; discussion 475-476. 3) Genthon A, et al. Crush syndrome: a case report and review of the literature. J Emerg Med. 2014;46:313-319. 4) Usuda D, et al. Crush syndrome: a review for prehospital providers and emergency clinicians. J Transl Med. 2023;21:584. 5) Altintepe L, et al. Early and intensive fluid replacement prevents acute renal failure in the crush cases associated with spontaneous collapse of an apartment in Konya. Ren Fail. 2007;29:737-741. 6) Stanley M, et al. Rhabdomyolysis. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing;2025 Jan. 7) Inaba M, et al. Multidisciplinary approach to a 93-year-old survivor with crush syndrome: A 124-h rescue operation after the 2024 Noto Peninsula earthquake. Acute Med Surg. 2024;11:e967.

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だ~まにゅ Dermatology Manual

必要なとこだけ、ムダなく最短で診療へ「皮膚科の臨床」67巻6号(2025年5月臨時増刊号)“迷わず使える”皮膚科マニュアル『だ~まにゅ Dermatology Manual』登場! 新薬・治療法の最新情報をキャッチアップできる「治療薬・治療法一覧」、エキスパートによる治療の実践法がわかる「治療実践マニュアル」など、皮膚科診療に必要なエッセンスを疾患ごとにぎゅっと凝縮。治療法に迷ったときや最新情報を確認したいとき、手軽に参照できる診療の即戦力!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するだ~まにゅ Dermatology Manual定価8,800円(税込)判型B5判頁数224頁発行2025年6月編集「皮膚科の臨床」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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週に数パックの納豆で死亡リスクが40%減少か~前向き研究

 納豆など、個別の大豆発酵食品の摂取が死亡率に及ぼす影響を調べた疫学研究はほとんどない。今回、関西医科大学の藤田 裕規氏らが高齢男性を対象とした前向きコホートで調査したところ、納豆を習慣的に摂取している男性は全死亡リスクが低く、週に数パック摂取する男性では摂取しない男性より40%低いことが示された。Clinical Nutrition ESPEN誌オンライン版2025年6月12日号に掲載。 本研究は65歳以上の男性2,174人を対象とし、このうち2,012人がベースライン調査を完了した。5年後と10年後に追跡調査を実施、アウトカムは死亡率とした。ベースライン時および追跡調査時に納豆摂取に関するアンケートを行った。Cox比例ハザードモデルを用いて、納豆摂取と全死亡との関連についてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・最終解析集団は1,548人で、平均追跡期間12.0年(1万8,553.3人年)の間に430人の死亡が確認された。・「摂取なし」と比較したHRは、「週に数パック」で0.603(95%CI:0.441~0.825)、「1日1パック以上」で0.786(同:0.539~1.145)であった。・「ベースライン時および初回追跡時ともに摂取なし」のカテゴリーと比較すると、「ベースライン時および初回追跡時に週に数パックと1日1パックの組み合わせ、またはベースライン時および初回追跡時ともに週に数パック」のカテゴリーのHRは0.700(95%CI:0.507~0.966)であった。 本研究では、納豆の習慣的多量摂取、とくに長期にわたる摂取は、高齢男性における低い全死亡リスクと関連していた。

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高齢の進行古典的ホジキンリンパ腫、ニボルマブ+AVDがBV+AVDより有用(S1826サブ解析)/JCO

 進行古典的ホジキンリンパ腫に対する1次治療としてニボルマブ(N)+AVD(ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)とブレンツキシマブ ベドチン(BV)+AVDを比較した第III相S1826試験における高齢者(60歳以上)のサブセット解析で、N+AVDはBV+AVDより忍容性および有効性が高いことが示された。米国・Weill Cornell MedicineのSarah C. Rutherford氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月16日号で報告した。 第III相S1826試験は、StageIII~IVの古典的ホジキンリンパ腫と新たに診断された患者を対象に、N+AVD 6サイクルもしくはBV+AVD 6サイクルに無作為に割り付け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、無イベント生存期間(EFS)、安全性を比較した試験である。 今回のサブセット解析の結果は以下のとおり。・60歳以上の登録患者103例のうち、99例が適格だった。・追跡期間中央値2.1年で、N+AVD群(50例)の2年PFS率は89%、BV+AVD群(49例)の2年PFS率は64%であった(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.09~0.63、層別片側log-rank検定p=0.001)。・2年OS率はN+AVD群で96%、BV+AVD群で85%であった(HR:0.16、95%CI:0.03~0.75、層別化片側log-rank検定p=0.005)。・N+AVD群は69%、BV+AVD群は26%が減量することなく6サイクル投与され、14%がニボルマブを中止し、55%がBVを中止した。・非再発死亡率はBV+AVD群で16%、N+AVD群で6%であった。・好中球減少はN+AVD群で多かったが、発熱性好中球減少症、敗血症、感染症はBV+AVD群で多く、末梢神経障害もBV+AVD群で多かった。・主要有害事象の患者報告アウトカムでは、N+AVDがBV-AVDより毒性プロファイルが改善されていることが確認された。 著者らは、「N+AVDはBV+AVDよりも忍容性が高く効果的であったことから、アントラサイクリン系薬剤の併用療法が適応となる高齢の進行古典的ホジキンリンパ腫患者に対する新たな標準治療となる」としている。

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遺伝性・散発性の乳頭状腎細胞がん、ベバシズマブ+エルロチニブが有望/NEJM

 遺伝性平滑筋腫症腎細胞がん症候群(HLRCC)随伴性または散発性の乳頭状腎細胞がん患者において、ベバシズマブとエルロチニブの併用投与により抗腫瘍活性が得られ、毒性は併用レジメンで既知のものであったことを、米国国立がん研究所のRamaprasad Srinivasan氏らが、単施設で実施した第II相非盲検試験の結果で明らかにした。HLRCCは、フマル酸ヒドラターゼをコードする遺伝子の生殖細胞系列変異によって特徴付けられる遺伝性疾患で、乳頭状腎細胞がんのリスクが高い。進行HLRCC随伴性乳頭状腎細胞がん患者の多くは疾患進行により死に至るため、有効な治療法の確立が望まれていた。NEJM誌2025年6月19日号掲載の報告。主要評価項目は奏効率 研究グループは、進行HLRCC随伴性乳頭状腎細胞がんまたは散発性乳頭状腎細胞がんと診断され、RECIST 1.1に基づく測定可能病変を有するECOG PS 0~2の18歳以上の患者に、ベバシズマブ10mg/kgを2週ごとに静脈内投与するとともにエルロチニブ150mgを1日1回経口投与した。 主要評価項目は、治験責任医師評価による奏効率(ORR)、重要な副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)および奏効期間などであった。 2010年5月~2019年5月に、HLRCC随伴性乳頭状腎細胞がん患者43例(男性30例、女性13例、年齢中央値43歳[範囲19~74])および散発性乳頭状腎細胞がん患者40例(男性26例、女性14例、年齢中央値55.5歳[範囲24~74])が登録され、全例、ベバシズマブまたはエルロチニブを1回以上投与された。ORRは、HLRCC随伴性乳頭状腎細胞がん患者72%、散発性乳頭状腎細胞がん患者35% HLRCC随伴性乳頭状腎細胞がん患者では、追跡期間中央値71.9ヵ月、治療期間中央値18.6ヵ月において、奏効は31例(72%、95%信頼区間[CI]:57~83)で確認され、うち2例(5%)は完全奏効が得られた。奏効までの期間中央値は1.8ヵ月(範囲:1.7~18.3)、奏効期間中央値は19.3ヵ月(95%CI:12.9~35.9)であった。PFS中央値は21.1ヵ月(95%CI:15.6~26.6)、OS中央値は44.6ヵ月(95%CI:32.7~推定不能)であった。 散発性乳頭状腎細胞がん患者では、追跡期間中央値63.6ヵ月、治療期間中央値8ヵ月において、奏効は14例(35%、95%CI:22~51)で確認され、奏効までの期間中央値は1.8ヵ月(範囲1.7~7.3)、奏効期間中央値は18.4ヵ月(95%CI:13.8~49.7)であった。PFS中央値は8.9ヵ月(95%CI:5.5~18.3)、OS中央値は18.2ヵ月(95%CI:12.6~29.3)であった。 主な治療関連有害事象は、ざ瘡様皮疹(93%)、下痢(89%)、蛋白尿(78%)、主なGrade3以上の治療関連有害事象は高血圧(34%)、蛋白尿(17%)であった。

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減量・心代謝リスク因子に対し、最も効果的な断食戦略は?/BMJ

 米国・Harvard TH Chan School of Public HealthのZhila Semnani-Azad氏らは、無作為化比較試験99報についてネットワークメタ解析を行い、断続的断食および連続的エネルギー制限食は自由食と比較して体重を減少させ、断続的断食の中でも隔日断食は連続的エネルギー制限食と比較して体重減少に有益であることを報告した。体重減少は心代謝リスク因子を低下させ、結果として2型糖尿病や心血管疾患などの疾病負担を減らすことを可能とするが、減量戦略としてよく行われている断続的断食が、カロリー制限食や自由食と比較して健康にどのような効果があるかは明らかになっていなかった。BMJ誌2025年6月18日号掲載の報告。断続的断食、連続的エネルギー制限食、自由食に関する無作為化比較試験のメタ解析 研究グループは、Medline、EmbaseおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、2024年11月14日までに発表された、断続的断食(隔日断食、時間制限食、全日断食)、連続的エネルギー制限食および自由食を比較した無作為化臨床試験を検索し、頻度論的フレームワークに基づくネットワークメタ解析を実施した。 2人の研究者が独立して適格研究の特定を行い、5人の研究者が独立してデータを抽出し、さらに2人の研究者がチェックした。 主要アウトカムは体重、副次アウトカムは身体測定値(BMI値、体脂肪、腹囲)、糖代謝、血圧、脂質プロファイル、CRP、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)であった。 GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて、エビデンスの確実性を評価した。断続的断食、とくに隔日断食は体重減少および脂質低下に効果的 適格基準を満たした99報(断続的断食と連続的エネルギー制限食の比較52試験、断食と自由食の比較55試験、断続的断食のパターンの比較5試験)が解析に組み込まれた。対象者は合計6,582例で、健康成人720例、各種健康状態(肥満/過体重、糖尿病、メタボリックシンドローム、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患など)の成人5,862例であった。 すべての断続的断食および連続的エネルギー制限食の戦略は、自由食と比較して体重を減少させた。体重減少に関し、連続的エネルギー制限食と比較して有益性を示した断続的断食戦略は隔日断食のみであった(平均群間差:-1.29kg、95%信頼区間[CI]:-1.99~-0.59、エビデンスの確実性:中)。隔日断食では、時間制限食および全日断食のいずれと比較しても、体重がわずかに減少した(それぞれ平均群間差は-1.69kg[95%CI:-2.49~-0.88]、-1.05kg[95%CI:-1.90~-0.19]、いずれもエビデンスの確実性:中)。 追跡期間が24週未満の試験(76試験)でも同様の結果が得られたが、24週以上の中~長期の試験(17試験)では、自由食と比較した場合にのみ体重減少が示された。 さらに、断続的断食の方法間の比較では、隔日断食は時間制限食と比較して、総コレステロール、中性脂肪、非HDLコレステロールを低下させた。一方、時間制限食は全日断食と比較して、総コレステロール、LDLコレステロール、非HDLコレステロールがわずかに増加した。 HbA1cおよびHDLコレステロールについては、断続的断食、連続的エネルギー制限食および自由食との間に差は認められなかった。

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カフェインと頭痛の重症度との関係

 重度の頭痛や片頭痛は、日常生活に大きな影響を及ぼす非常に一般的な神経疾患である。毎日のカフェイン摂取と重度の頭痛や片頭痛との関係に関する議論は、いまだ続いている。中国・南昌大学のZhiqiang Liao氏らは、食事介入のためにも、カフェイン摂取と重度の頭痛または片頭痛との関連を調査した。Frontiers in Neurology誌2025年5月14日号の報告。 対象は、1999〜2004年に行われた米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータより抽出した20〜49歳の参加者5,234人。食事性カフェイン摂取量と重度の頭痛または片頭痛との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。潜在的な用量反応関係の調査には、制限付き3次スプライン(RCS)回帰モデルを用いた。smoothed two-pieceロジスティック回帰モデルにより、食事性カフェイン摂取量と重度の頭痛または片頭痛の閾値関連の特定を試みた。サブグループ解析により、重度の頭痛や片頭痛に対する食事性カフェイン摂取の影響にサブグループ間で違いがあるかを調査した。カフェインの摂取量に応じて、Q1(最も少ない)〜Q4(最も多い)の四分位に分類した。 主な結果は以下のとおり。・対象参加者のうち、重度の頭痛または片頭痛の罹患率は26.69%(5,234人中1,397人)。・カフェイン摂取量が最も少ない人(Q1:1.81mg/日以下)と比較し、多い人では重度の頭痛または片頭痛のオッズ比が高かった。【Q2:1.81〜45.48mg/日】オッズ比(OR):1.1487、95%信頼区間(CI):0.9532〜1.3845、p=0.1454【Q3:45.48〜125.95mg/日】OR:1.4370、95%CI:1.1921〜1.7335、p=0.001【Q4:125.95mg/日以上】OR:1.5642、95%CI:1.2842〜1.9067、p<0.001・米国成人における食事性カフェイン摂取と重度の頭痛または片頭痛の関係は、S字型パターンを示し、そのターニングポイントは約97.5mg/日であることが明らかとなった。 著者らは「食事性カフェイン摂取と重度の頭痛または片頭痛には、S字型の関連があることが示唆された。食事中のカフェイン摂取を日常的に行う人は、重度の頭痛や片頭痛リスクが高まる可能性があることに注意すべきである」と結論付けている。

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けいれんや痛み、麻痺の治療に新たな電極パッドが有用か

 背中に貼り付けたグリッド電極が近い将来、痛みやけいれん、麻痺の治療に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。この電極を通じて皮膚の上から低電圧の電気刺激を与えることで、脊髄内の神経の機能を短期間、変化させることができたという。米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センター物理療法学・リハビリテーション医学教授のYasin Dhaher氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Neural Engineering」に4月7日掲載された。 論文の上席著者であるDhaher氏は、体の外側に設置した電極を使って脊髄神経の興奮性を調整できるこの方法は、「侵襲的な脊髄刺激療法を受けられない患者や希望しない患者にとって、有望な代替手段になり得る」とUTのニュースリリースの中で述べている。 研究グループによると、これまでの研究では、体内に埋め込むタイプの電極が脊髄損傷患者の立つ能力や歩く能力の回復を促すなど、麻痺の治療で大きな可能性を持っていることが示されてきた。こうした埋め込み型デバイスは電気で脊髄神経を刺激することで作用するが、埋め込むにはリスクのある手術が必要となり、回復にも時間がかかるという。一方、皮膚に貼り付けた電極で電気刺激を与える試みも以前から行われてきたが、貼り付けた電極パッドが背中全体に電流を広く分散させてしまい、十分な刺激を脊髄に届けられなかったため、効果は限定的であったとDhaher氏らは述べている。 今回報告された新たなアプローチでは、電流を脊髄に対して直線または斜め方向に流せるような配置で4インチ(約10cm)四方の電極パッドを作った。脊髄神経はさまざまな方向に走っているため、このような配置にすることで電気パルスをさまざまな神経の走行パターンに合わせやすくなるとDhaher氏らは考えたのだ。 Dhaher氏らは、健康な17人を対象に胸郭下部の椎骨(T10-T11)の皮膚の上にこの電極パッドを配置して効果を調べた。この部分は、足首を引き上げるなどの足関節の動きに関与する筋肉である前脛骨筋を制御している。実験では、スマートフォンの懐中電灯を点灯させるのに必要な電力の約半分に相当する40mAの低電流を20分間流した。 その結果、この電圧は前脛骨筋を収縮させるほどの刺激にはならないものの、神経細胞の興奮性を変化させることは確認された。その後、最長で30分間、神経の興奮性が低下し、被験者はそれまでよりも足首を曲げるのが難しくなったと感じたという。また、電流を脊髄に対して斜めに流したときの方が、直線的に流したときよりも抑制作用が強くなったこともDhaher氏らは報告している。こうした抑制作用は、筋肉のけいれんの治療や痛みのシグナルの軽減に役立つ可能性があると同氏らは説明している。 一方で、この新たな電極パッドは神経の興奮性を高めるような電気パルスを送ることもできる可能性があり、それによって筋肉をより動かしやすくする効果も期待されている。例えば、足首を曲げる動きを改善するために同じ神経群を刺激することで、歩行時に足のつま先を引きずってしまう「下垂足」と呼ばれる症状の治療に役立つ可能性があるという。 Dhaher氏らはこの新たなデザインの電極パッドについて特許を出願済みであり、今後もその潜在的な使用法について研究を続けていく予定だとしている。

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歌いかけはぐずる乳児の気分を落ち着かせる

 乳児に歌いかけることは、乳児の気持ちを落ち着かせる簡単で安全、かつ費用もかからない方法であることが新たな臨床試験で明らかになった。新しい歌や歌を使った育児のアイディアを教えられた親は乳児に歌いかける頻度が高くなり、その結果、乳児の全般的な気分が改善することが示されたという。オークランド大学(ニュージーランド)心理学分野のSamuel Mehr氏らによるこの研究結果は、「Child Development」に5月28日掲載された。  論文の筆頭著者である米イェール大学児童研究センターのEun Cho氏は、「歌うことは誰にでもできるし、ほとんどの家庭ですでに実践されている。われわれは、このシンプルな習慣が乳児の健康に実際に効果のあることを証明した」と話している。また、研究グループは、乳児の気分の改善は、親と乳児双方の生活の質(QOL)の向上につながるため、結果的に家族全体の健康にも有益であると述べている。 この研究では、米国とニュージーランドの乳児の親110人を対象に10週間のランダム化比較試験を実施し、乳児期に親が子どもに歌いかけることの効果を検討した。対象者は、介入群(54人)と対照群(56人)にランダムに割り付けられた。1週目はテスト前期間、2〜5週目は介入群の介入期間、6週目はテスト後期間とし、その後、対照群にも同じ介入が4週間にわたって行われた。介入は、親による乳児への歌いかけの頻度を増やし、歌のレパートリーを広げることを目的としたもので、具体的には、親に新しい歌を教えるためのカラオケ風の歌の動画や乳児向けの音の出る歌の絵本の提供、週に1回のメールでのニュースレターの配信、定期的な連絡だった。全期間を通じて、スマートフォンで乳児と親の気分などを質問票を通して記録するEMA(エコロジカル・モーメント評価)が実施された。 その結果、介入により親が乳児に歌いかける頻度が高まることが明らかになった。論文の共著者であるアムステルダム大学(オランダ)心理学分野のLidya Yurdum氏は、「乳児にもっと歌いかけるよう促し、それをサポートするための基本的なツールを提供すれば、親は自然に乳児に歌いかけるようになる」と話す。 また親は、乳児に歌いかけることが増えただけでなく、ぐずる乳児を落ち着かせるための方法として歌を使うことも明らかになった。Mehr氏は、「われわれは親に、乳児がぐずっているときに歌いかけるようにと伝えてはいないが、親は実際にそのために歌を使ったのだ」と話す。そして、「親は、乳児を落ち着かせる上で歌がどれほど効果的なのかを介入を通してすぐに理解し、乳児の感情をコントロールするツールとして直感的に歌の力を借りたのだろう」との見方を示している。 さらにEMAからは、歌いかけの頻度が高まった親の乳児は、対照群の乳児と比較して、気分が全体的に大きく改善したことも示された。ただし、親自身の気分には有意な改善が見られなかった。 研究グループは、「これらの結果は、乳児への歌いかけを推奨する低コストプログラムが乳児を落ち着かせ、その結果、親のストレス軽減に役立つ可能性があることを示唆している」と述べている。またYurdum氏は、「同程度に効果的で導入の簡単な方法があるのだから、高価で複雑な介入にばかりに焦点を合わせる必要はない」と話している。

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過体重・肥満者の変形性膝関節症による痛みをメトホルミンが緩和

 経口血糖降下薬の一種であるメトホルミンが、変形性膝関節症による痛みを抑制するとする研究結果が、世界変形性関節症研究会議(OARSI2025、4月24~27日、韓国・仁川)で報告された。モナッシュ大学(オーストラリア)のFeng Pan氏らの研究によるもので、24日の発表に合わせて「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に論文が掲載された。 前臨床試験およびヒト対象の予備的な研究から、メトホルミンには炎症抑制や軟骨保護作用があり、変形性膝関節症患者の疼痛を改善する可能性が示唆されている。Pan氏らはこの効果を、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験によって検討した。 6カ月以上にわたり膝の痛みがあり、疼痛スコアが100mmビジュアルアナログスケール(VAS)で40mmを超え、BMIが25以上であることを適格条件として、2021年6月16日~2023年8月1日に、オーストラリア・ビクトリア州の地域広告やソーシャルメディアを通じて225人を募集した。適格性評価の結果、このうち107人(48%)がランダム化された。平均年齢は58.8±9.5歳、女性68%だった。 1群(54人)には経口メトホルミン2,000mg/日、他の1群(53人)にはプラセボを投与。88人(82%)が6カ月間の介入を完遂し、2024年2月8日に最終追跡調査が実施された。 主要評価項目である100mmVASの変化量は、メトホルミン群が-31.3mm、プラセボ群は-18.9mm、群間差-11.4mm(95%信頼区間-20.1~-2.6)であり、メトホルミン群の改善幅が有意に大きく(P=0.01)、効果量(標準化平均差)は0.43(同0.02~0.83)であった。頻度の高い有害事象として、下痢(メトホルミン群で8件〔15%〕、プラセボ群で4件〔8%〕)、腹部不快感(同順に7件〔13%〕、5件〔9%〕)が報告された。 著者らは、「得られた結果は、疼痛を有する過体重・肥満の変形性膝関節症患者に対して、メトホルミンを使用することを支持するものである。ただし研究参加者数が少ないため、より大規模な臨床試験による検証が求められる」と述べている。また論文の上席著者である同大学のFlavia Cicuttini氏は大学発のリリースの中で、「メトホルミンは一般臨床医に広く知られており、低コストで安全性の高い薬だ。同薬により膝の痛みが軽くなり、身体活動の負担が抑制されるなら、その結果、人工膝関節置換術の施行を延期できるケースもあるのではないか」と記している。

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手術不能胃がんに対する2次治療:抗HER2抗体薬物複合体vs.ラムシルマブ+パクリタキセル併用療法(解説:上村直実氏)

 日本における胃がんはピロリ菌感染率の低下および除菌治療の普及と共に、患者数および死亡者数が著明に低下しているが、世界的には依然として予後不良な疾患とされており、手術不能胃がんに対する薬物療法の開発が急務となっている。手術不能または転移を有する胃がんに対する化学療法に関しては、HER2遺伝子の有無により決定されている。全体の20%弱を占めるHER2陽性胃がんに対しては、従来の化学療法に抗HER2抗体のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を追加した3剤併用療法が標準的1次治療として推奨されている。1次治療が奏効しないもしくは効果不十分な症例に対する2次治療としては、現在、ヒト型抗VEGFR-2モノクローナル抗体ラムシルマブとパクリタキセルの併用療法が標準治療とされているが、最近、トポイソメラーゼI阻害薬を搭載した抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有用性を示す研究結果が相次いで報告されている。 今回、トラスツズマブ治療歴があり、再検査でHER2陽性が再確認された切除不能胃がんまたは食道胃接合部がん患者を対象として、上述のT-DXdとラムシルマブ+パクリタキセルを直接比較した国際共同第III相試験の結果が2025年5月のNEJM誌に掲載された。結果としては、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)ともに、T-DXd群(中央値:14.7ヵ月、6.7ヵ月)がラムシルマブ+パクリタキセル群(同:11.4ヵ月、5.6ヵ月)に比べて有意な延長を示した。なお、両群で多くの有害事象が認められたが、既知の重大なリスクであるT-DXd投与に伴う間質性肺疾患または肺臓炎は致命的になった症例はなかった。 著者らは、T-DXdはHER2陽性胃がんおよび食道胃接合部がんにおける2次治療として新たな標準治療となる可能性が示され、今後は1次治療への応用やバイオマーカーを活用した個別化医療の推進、さらには治療抵抗性克服を目指した新規治療戦略の開発が期待される、と総括している。しかしながら、患者にとってT-DXd群のOSが15ヵ月に満たない結果は満足できるものではなく、さらなる有用性を有するレジメンが必要であると思われた。 さらに、胃がんと食道胃接合部がんの両者には病態の違いがあるために、進行速度や薬剤に対する感受性が異なる可能性が指摘されているが、今回の研究においても両者のOSとPFSの比較に乖離を認めている。すなわち、サブ解析において食道胃接合部がん症例ではT-DXd群とラムシルマブ+パクリタキセル両群のOSやPFSに明らかな有意差を認めているが、胃がん症例では両治療群のOSやPFSに統計学的有意差を認めていない。今後、胃がんの多発国であり化学療法に関しても世界をリードする日本から、食道胃接合部がんと胃がんの化学療法に対する感受性の違いを加味した研究報告が期待される。

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第268回 国家予算規模の東京都、税収入の使い道は?~都議選を振り返る

都議選2025の結果6月22日に投開票が行われた東京都議会議員選挙は、改選前に30議席で第1党だった自民党が追加公認も含め21議席と過去最低の議席数となった。対して東京都知事の小池 百合子氏が創設し、現在は特別顧問を務める都民ファーストの会(以下、都民ファースト)は前回と同じ31議席を堅持し、第1党へと返り咲いた。もっとも東京都では都民ファーストに加え、自民党、公明党の国政与党が都政与党であるため、これらの合計71議席により議会過半数を確保した。いつもならば選挙前に公約比較を出すところだが、都道府県の場合、知事権限が強く、政策の実現可能性は圧倒的に都政与党の政策に傾く。ということで、勝敗が決した今、これら都政与党が医療・介護に関してどのような政策を掲げていたかを独断と偏見で検証してみたい。シニア支援に注力、都民ファーストまず、第1党の都民ファーストだが、今回発表された政策集の中で目に付くのは、「もっとシニアの安心と社会参画を支援」の項にある(1)単身シニアの配食見守りサービス創設や身元保証支援の強化、(2)都立認知症専門病院の設置で支援を拡充、(3)特定最賃*の創設で介護職の時給1,500円に、である。*東京都独自の介護職の特定最低賃金これらは2024年の東京都知事選で小池氏が掲げた公約とも一致し、政策集1)のタイトル「東京大改革3.0」も都知事選・都議選共通である。独断と偏見で言えば、どれも“バラマキ”の1種とも言えるのだが、東京都が特殊なのは、特別会計も含めた予算規模(2025年度)が約18兆円、都税収入だけで約8兆円という潤沢なカネがあることだ。都道府県別の予算規模で2位の大阪府の3倍弱であり、さらに国家予算規模の世界ランキングで見ると、スイスの約15兆円を超える。さて、この前提で(1)~(3)を考えると、まず病院経営の著しい環境悪化が伝えられる現在、(2)が可能かはかなり疑問符が付く。ただ、東京都の場合、傘下に地方独立行政法人・東京都健康長寿医療センターがあるため、新たなハコは設けずに同一地での組織的分離・再編などによる実現は可能である。(1)について、東京都内では関係する民間事業者には事欠かないだろうが、どれほどの予算規模を投入し、公費負担と利用者負担の割合をどのように設定するか、サービスの質をいかに担保するかが実現のポイントになるだろう。国政政党も含め昨今のトレンドの1つが(3)だが、実はこれこそ難易度がやや高い。基本的に最低賃金設定は最低賃金法に基づく国の権限。公約の介護職の時給1,500円は東京都の最低賃金よりも高いとはいえ、都道府県が厳密な意味で法的効力のある条例を設定はできない。もっとも自治体によっては、公契約条例で自治体発注業務に従事する労働者に対して法定最低賃金を超える独自の労務単価(最低報酬)を定めているケースはある。ただ、介護サービスそのものは地方自治体主体ですべて業務委託している構図ではないので、公契約条例を適用するのは不可能である。となると、これを実現するためにどのような制度作りをするのかは興味のあるところだ。アップアップな?自民党史上最低の議席に終わった自民党は、今回「7 Up! TOKYO プロジェクト 7つの上げるで東京から真の豊かさを取り戻す」と題した政策集2)を掲げた。この7つのアップの6番目に「健康寿命を引き上げる」と謳っている。その中身は(1)がん・認知症を早期発見、(2)女性特有の健康課題へ支援、(3)万全の感染症対策、の3本柱である。それぞれについてより平たく中身が書いてあるが、(1)では「がんや認知症の簡易検査キットを配布し、早期発見や受診につなげることで、働く世代も高齢者も、単身者を含めすべての都民の健康づくりをサポートします」(2)では「3兆円を超える経済損失とも試算される女性の健康課題に対応するため、月経や更年期障害など女性特有の悩みを軽減・解消する健康カタログギフトを配布します」(3)では「コロナによる死者、感染者を世界と比較しても極めて低水準に抑えた経験を活かし、10 年に1 度とも言われる感染症にも万全のまち・東京を構築します」と記している。まず、(3)はあいまい過ぎて何をしようとしているかがわからない。で、問題は(1)である。「がんや認知症の簡易検査キットを配布」とは、何ぞや? まず、認知症については信頼性の高い簡易検査キットそのものが存在しない。今年5月、米国食品医薬品局(FDA)が富士レビオのアルツハイマー病診断補助の血液検査を承認したが、これは簡易検査キットではなく、体外診断用医薬品である。そして、がんの簡易検査キットと称する、あんなものやこんなものもあるが信頼性が高くないことは医療者の多くがご存じだろう。簡易検査キットというより「安易検査キット」と言ってよいかもしれない。そんなものを都民に配ってどうする?(2)もいったい何だろうか? 怪しげな商品が次々に掲載されたカタログしか思い浮かばないのだが…。過去実績に縛られがちな公明党最後は公明党である。同党と言えば、1999年の小渕 恵三政権下で15歳以下の子どもがいる世帯主・満65歳以上かつ老齢福祉年金受給者(低所得または非課税高齢者)に1人2万円分ずつ「地域振興券」という商品券を配布した際、これを提唱した政党であり、その後も給付金支給などには極めて熱心な政党である。斜に構えた言い方をすれば、「元祖バラマキ政党」とも言えるが、それゆえに予防接種の補助・無償化にも積極的であるため、医療面では一定の功績があるのは事実だ。今回の都議選では新たな政策を訴えるよりも、とにかく過去の実績強調の活動が多く、目立った医療・介護政策といえば「不妊治療休暇の導入促進」くらいである。いわば一部民間企業が導入している制度の公的化とも言える。これを実現する場合にどのような制度の建付けにし、どの程度の予算規模となるかは不明だが、対象者は限定的と考えられるため、必ずしも実現不可能ではないだろう。ざっとこんな感じだが、いやはや都議会自民党の単なる思いつきでも並べたかのような政策には正直ぶったまげである。今回の都議会自民党の惨敗は、直接的には改選前に30人いた議員の半数以上に当たる16人が、ノルマを超えたパーティー券の収入を「中抜き」して裏金にしていた、都議会版裏金事件に起因すると言われる。しかし、それ以前に最低限の勉強と政策の立案能力にここまで欠けていた実態を見る限り、裏金以前の問題なのかもしれない。 参考 1) 都民ファーストの会:政策集2025 2) 自民党:7UP! TOKYO プロジェクト 3) 公明党:東京公明特設サイト2025

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映画「シンシン」(その2)【演じること危うさは?じゃあどう演じる?(サイコドラマ)】Part 1

今回のキーワード演技性パーソナリティ症自我障害ストックホルム症候群ダブルロールリバーサルエンプティチェア前回(その1)、演技の機能とは、感情を説き放つカタルシス、自分を俯瞰するメタ認知、助け合おうとする仲間意識であることがわかりました。それでは、逆に、演じることの危うさはないでしょうか? じゃあ、どう演じましょうか?今回は、引き続き、映画「シンシン」を通し、演技のリスクを掘り下げます。それを踏まえて、演技の技法を、サイコドラマという心理療法を通してご紹介しましょう。演じることの危うさは?-演技のリスク演劇グループに入る前のマクリンが他の収監者をいびっているシーン。彼は、「おまえがブツをなくしたせいで損したぞ」などと言いがかりをつけて、被害者を演じていました。ギャングの常とう手段です。彼は、虚勢(これも結局演技)をはじめ、このような小芝居を繰り返すことで、実は迫真(?)の演技力を自然と培ってきたのでした。また、ディヴァインGが仮釈放委員会に臨むシーン。委員長の女性から「あなたはずいぶんと演劇の更生プログラムに入れ込んでいますね」と聞かれ、彼はその必要性や効果を真摯に説明します。しかし、彼女から「これも演技なのでは?」と問われ、逆に誤解されてしまうのです。このように、演技のリスクとは、だましに悪用してしまうことです。そしてこれは、同時にだましていると疑われてしまうことでもあります。さらに、このように意識的に行われる場合だけでなく、さらに無意識に起こる病的な場合もあります。ここから、その演技のリスクを大きく3つ挙げてみましょう。(1)演技がかる―演技性パーソナリティ1つ目のリスクは、演技がかることです。これは、もっと自分を見てほしいと無意識に注意を引こうとして、普段から大げさでわざとらしくなってしまうことです。ある意味、感情を解き放ちすぎています。その分、発言に中身がなく、薄っぺらくなります。臨床心理学では、演技性パーソナリティ症と呼ばれています。この詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)役に飲まれる―自我障害2つ目は、自分の役に飲まれることです。これは、役に入り込むあまりに役が抜けなくなり、日常生活でもその役の振る舞い(憑依)をしてしまうことです。ある意味、もう一人の自分(役柄)の視点に圧倒されて、自分がなくなっています。臨床心理学では、自我障害と呼ばれています。この詳細については、関連記事2をご覧ください。(3)監督の言いなりになる―ストックホルム症候群ディヴァインGたちは、収監施設のある一室という同じ空間で、いつも一緒にいます。時には、まるで小学生の男子たちのように、じゃれ合って楽しそうにしているシーンもありました。その反面、その距離感のなさに危うさを感じます。もちろん、演出家(兼監督)のブレントは、とても実直な人柄で描かれていました。しかし、実際はそうではない場合があります。3つ目は、監督の言いなりになることです。これは、演者は決まった稽古場で演技において監督の指示通りに動くわけですが、その関係性が演技以外の日常生活やプライベートまで無意識に広がってしまうことです。ある意味、仲間意識がいきすぎています。これは、演者が監督の要望にNOと言えずに、演劇がモラルハラスメントやセクシャルハラスメントの温床になる危うさがあります。臨床心理学では、ストックホルム症候群と呼ばれています。この詳細については、関連記事3をご覧ください。次のページへ >>

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映画「シンシン」(その2)【演じること危うさは?じゃあどう演じる?(サイコドラマ)】Part 2

じゃあどう演じる?-サイコドラマ収監を終えて社会復帰した、ある元収監者が彼らを訪ねてきます。彼は、演劇更生プログラムの修了生でした。彼は、演劇グループのメンバーたちに釈放されてからの喜びと苦労の社会生活を生き生きと語るのでした。まだ収監中の彼らの良い先輩です。実は、この映画は、実話に基づくストーリーです。そして、なんとこの映画の出演者の85%が実際にシンシン刑務所の元収監者です。実際に、釈放後の再犯率は、全国平均60%であるのに対して、この演劇更生プログラムの修了生は年平均5%(現在3%)と驚異的です1)。彼らが、生き生きと演技している姿が、この再犯率の低さを物語っています。なお、そもそも演劇をやりたいと思う人やさらに演劇メンバーに選ばれる人はもともと言語能力やコミュニケーション能力が高いという選択バイアスがかかっていることも推定できますが、それでも、演じることは、更生を含め、セラピーの効果が確かにあります。その効果について、サイコドラマ(心理劇)という心理療法では、ウォーミングアップ、ドラマ、シェアリングを通して、愛他性、社交性、自己受容、自発性が高まることがわかっています2)。ちなみに、サイコドラマの創始者の精神科医モレノは、この映画の舞台であるシンシン刑務所に勤務して、集団精神療法(演劇更生プログラム)を導入することを提案した人物です3)。それでは、先ほどの演技のリスクを踏まえて、言語能力、コミュニケーション能力、そして自分(自我)を保つ力が高くない精神症の人たちは、どう演じることができるでしょうか?ここで、映画のそれぞれのシーンを通して、サイコドラマの技法3)を主に3つご紹介しましょう。(1)理解者役を配役する―ダブルディヴァインGには、同じ演劇メンバーであり、親友のマイク・マイクがいました。彼らは、収監施設内で隣り合わせの個室が割り当てられており、壁越しに声が通るため、彼らはそれぞれの個室にいる時に、しょっちゅう語り合ってきました。1つ目の技法は、ディヴァインGにとってのマイク・マイクのように、主役の重要な他者であり理解者・代弁者の役どころ、つまりもう1人の自分になるような存在を配役することです。たとえば、クライエントが母親と葛藤がある状況をサイコドラマにする場合、主役(クライエント)が気付いていない欲求や言い表せてない葛藤を、友人役がつぶやいたり、語ってもらいます。時には、あえて反対の気持ちを大げさに言い、主役の葛藤を揺さぶります。これは、ダブル(二重自我法)と呼ばれます。また、その友人役は、自分らしさ(自我)を補助する存在という意味で、補助自我と呼ばれます。この技法では、主役(クライエント)、友人役(補助自我)、母親役(葛藤相手)、監督(セラピスト)の少なくとも4人の構成メンバーが必要になります。なお、補助自我は、助演とは必ずしも一致しません。なぜなら、助演とは、主役の演技そのものを助ける役者のだからです。この映画ではマクリンに当たります。一方、補助自我は、主役だけでなく監督の意図も汲んで演じるため、助監督の役割はあります。(2)相手役も演じる―ロールリバーサル当初、マクリンはディヴァインGから助けられる側でした。その後、その立場が逆転して、マクリンはディヴァインGを助ける側になりました。このように、立場が入れ替わって、気付くことがあります。2つ目の技法は、ディヴァインGとマクリンの立場の交換だけでなく、さらに役者同士を交換して、自分役だけでなく相手役も演じてもらうことです。たとえば、先ほどと同じように、娘(クライエント)が母親と葛藤がある状況をサイコドラマにする場合、最初にクライエントが娘役を演じたあとに、今度は母親役を演じて、自分だけでなく、母親の葛藤も身をもって体験するのです。そして最後に、もう一度娘役を演じることで、最初とは違い、母親の視点で娘役を俯瞰して演じるようになります。これは、ロールリバーサル(役割交換)と呼ばれます。親子だけでなく、友人同士、上司と部下、被害者と加害者などさまざまな関係性に広く使えます。この技法では、主役(クライエント)、母親役(葛藤相手)、監督(セラピスト)の少なくとも3人の構成メンバーが必要になります。(3)一人芝居をする―エンプティチェアディヴァインGが逃げ出してグループにいなくなった時、メンバーたちが彼の空いた椅子を見るシーンがありました。一瞬でしたが、メンバーの一人ひとりが彼との会話を想像しているようにも見えます。3つ目の技法は、目の前に空いた椅子を用意して、そこに相手が座っていると見立てて、主役が相手役にもなり、一人芝居をすることです。たとえば、先ほどの母娘葛藤の場合、最初にクライエントが娘役として目の前の空いた椅子に語りかけたあと、今度はその椅子に座り直し、母親役として語り返します。そして、また元の椅子に戻って娘役を演じます。このように、2つの椅子の行き来を繰り返し、納得するまで会話を続けるのです。これは、エンプティチェア(空き椅子)と呼ばれています。空いた椅子に座る想定の相手は、先ほどのさまざまな関係性の相手だけでなく、過去の自分、未来の自分、さらには生物、物体、概念など幅広いです。この技法では、主役(クライエント)と監督(セラピスト)の2人の構成メンバーで十分です。ただ、この技法に限っては、実際の演者がクライエントのみで、他の演者との相互作用がない分、クライエントの言語能力や想像力が必要になります。そのため、これらの能力が十分ではない場合は、効果は期待できません。シンシンとは?シンシン刑務所の殺風景な部屋とは対照的に、その柵越しにはハドソン川の美しい水辺が見えます。そして、刑務所の生活はまるで数十年もの時間が止まって見えるくらい単調なのとは対照的に、刑務所の敷地内をニューヨークの地下鉄がせわしなく通り過ぎます。そんな抑圧された刑務所で生きるディヴァインGたちにとって、演劇更生プログラムは、まさに人生の潤いだったのでした。彼らと同じように、抑圧されがちな現代の社会で生きる私たちも、サイコドラマの技法を参考にして、まさに自分の人生を豊かに演じることで、その人生はより豊かになるのではないでしょうか?1)「シンシン プロダクションノート」:映画パンフレット、20252)「心理劇研究における体験過程と効果に関する臨床心理学的研究」p.236、榎本万里子、昭和女子大学出版会、20253)「心理劇入門」p.7、pp.67-73、pp.82-83、土屋明美ほか、慶應義塾大学出版会、2020<< 前のページへ■関連記事映画「二つの真実、三つの嘘」(前編)【なんで病気になりたがるの? 実はよくある訳は?(同情中毒)】Part 2インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 2美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】

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コンサルテーション―その2【脂肪肝のミカタ】第5回

コンサルテーション―その2Q. 消化器科における肝疾患ハイリスク症例の絞り込みはどうすべきか?脂肪性肝疾患(SLD)の診断は画像診断または組織診断によって脂肪化を診断することとされる1,2-4)。非侵襲的検査の時代の潮流から、消化器専門家においても画像診断に基づく診療が主体になっていくことが予測される。肝細胞脂肪化の所見は、腹部超音波(BモードやControlled attenuation parameter[CAP])、MRI Proton density fat fraction(PDFF)で診断と定量が可能である。肝臓の線維化進行度も、画像診断のエラストグラフィ(Vibration-controlled Transient Elastography[VCTE]、Shear Wave Elastography[SWE]、MR Elastography[MRE])や採血によるEnhanced Liver Fibrosis(ELF) test*で定量が可能である(図1、2)1,5)。*線維化の3つのマーカー(ヒアルロン酸、プロコラーゲンIII[P-III]ペプチド、TIMP-1)を血液検査で測定し、スコアを算出することで、肝線維化の程度を非侵襲的に評価する検査図1. MASLDの肝線維化診断における画像診断の有用性画像を拡大する図2. MASLD診療は非侵襲的診断の時代になる画像を拡大する一方、最近では肝がんの高危険群としてat-risk MASH(組織学的診断でNAFLD activity score≧4点かつ肝線維化≧2点のMASH)という概念が提唱されているが、こちらの診断は画像と採血の組み合わせだけで十分とはいえない。そもそもMASHの診断には風船様変性と小葉内炎症を確認するためにも組織学的診断が必要である1)。米国肝臓学会では、at-risk MASHの診断における肝生検の必要性も示している5)。肝臓の線維化と活動性の両方を加味した真の肝疾患ハイリスク症例の非侵襲的な拾い上げの面からは、課題が残されている(図2)。1) European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-1542.2)Rinela ME, et al. J Hepatol. 2023;79:1542-1556.3)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;78:1966-1986.4)Rinella ME, et al. Ann Hepatol. 2023;29:101133.5)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;77:1797-1835.

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自閉スペクトラム症に対する非定型抗精神病薬の有効性〜ネットワークメタ解析

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、社会的な交流や行動に関連する多様な症状を呈する。非定型抗精神病薬は、小児および成人ASD患者の易刺激性、攻撃性、強迫観念、反復行動などの苦痛を伴う症状の治療に広く用いられてきた。しかし、その効果と相対的な有効性は依然として明らかではなかった。チリ・Universidad de ValparaisoのNicolas Meza氏らは、ASDに対する非定型抗精神病薬の有効性を明らかにするため、ネットワークメタ解析を実施した。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2025年5月21日号の報告。 小児および成人ASD患者を対象とした短期フォローアップ調査において、易刺激性に対する非定型抗精神病薬の相対的ベネフィットを評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。さらに、短期、中期、長期フォローアップにおける、小児および成人ASD患者のさまざまな症状(攻撃性、強迫行動、不適切な発言など)と副作用(錐体外路症状、体重増加、代謝性副作用など)に対する非定型抗精神病薬のベネフィット/リスクについて、プラセボ群または他の非定型精神病薬との比較を行い、評価した。CENTRAL、MEDLINEおよびその他10のデータベース、2つのトライアルレジストリーを検索し、リファレンスの確認、引用文献の検索、研究著者への連絡を行い、対象研究を選定した(最終検索:2024年1月3日)。ASDと診断された小児および成人を対象に、非定型抗精神病薬とプラセボまたは他の非定型抗精神病薬と比較したランダム化比較試験(RCT)を対象に含めた。重要なアウトカムは、易刺激性、攻撃性、体重増加、錐体外路症状、強迫行動、不適切な発言とした。バイアスリスクの評価には、Cochrane RoB 2ツールを用いた。易刺激性の複合推定値には頻度主義ネットワークメタ解析、その他のアウトカムにはランダム効果モデルを用いて、対比較統計解析を実施した。エビデンスの確実性の評価には、GRADEを用いた。 主な結果は以下のとおり。・17研究、1,027例をネットワークメタ解析に含めた。成人対象は1研究(31例)、残りの16研究(996例)は小児対象であった。非定型抗精神病薬には、リスペリドン、アリピプラゾール、ルラシドン、オランザピンが含まれた。・易刺激性についてのネットワークメタ解析では、小児ASDに対してリスペリドンとアリピプラゾールは、プラセボ群と比較し、短期的に易刺激性の症状軽減に有効である可能性が示唆された。ルラシドンはプラセボと比較し、短期的な易刺激性に対する効果に、ほとんどまたはまったく差はないと考えられる。【リスペリドン】平均差(MD):-7.89、95%信頼区間(CI):-9.37〜-6.42、13研究、906例、エビデンスの確実性:低【アリピプラゾール】MD:-6.26、95%CI:-7.62〜-4.91、13研究、906例、エビデンスの確実性:低【ルラシドン】MD:-1.30、95%CI:-5.46〜2.86、13研究、906例、エビデンスの確実性:中・その他のアウトカムについては、小児ASDにおける短期フォローアップ調査において、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較し、攻撃性に及ぼす影響が、非常に不確実であることが示唆された(リスク比[RR]:1.06、95%CI:0.96〜1.17、1研究、66例、エビデンスの確実性:非常に低)。バイアスリスクと重大な不正確さの懸念から、エビデンスの確実性は非常に低いと考えられる。・小児ASDにおける短期フォローアップ調査において、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較し、体重増加の発生に及ぼす影響が、非常に不確実であることが示唆された(RR:2.40、95%CI:1.25〜4.60、7研究、434例、エビデンスの確実性:非常に低)。短期的な体重増加についても、非常に不確実であった(MD:1.22kg、95%CI:0.55〜1.88、3研究、297例、エビデンスの確実性:非常に低)。いずれの研究においても、バイアスリスクと重大な不正確さの懸念から、エビデンスの確実性は非常に低いと考えられる。・小児ASDにおける短期的な錐体外路症状の発生に対する非定型抗精神病薬の及ぼす影響は、プラセボと比較し、非常に不確実であった(RR:2.36、95%CI:1.22〜4.59、6研究、511例、エビデンスの確実性:非常に低)。バイアスリスクと重大な不正確さの懸念から、エビデンスの確実性は非常に低いと考えられる。・小児ASDにおいて、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較、短期的に強迫行動を改善する可能性が示唆された(MD:-1.36、95%CI:-2.45〜-0.27、5研究、467例、エビデンスの確実性:低)。バイアスリスクと異質性への懸念から、エビデンスの確実性は低い。・小児ASDにおいて、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較、短期的に不適切な発言を減少させる可能性が示唆された(MD:-1.44、95%CI:-2.11〜-0.77、8研究、676例、エビデンスの確実性:低)。バイアスリスクと異質性への懸念から、エビデンスの確実性は低い。・他の非定型抗精神病薬の効果は評価不能であった。・利用可能な研究が不足していたため、成人ASDに関する知見は得られなかった。 著者らは「リスペリドンおよびアリピプラゾールは、プラセボと比較し、短期的に小児ASDの易刺激性の症状を改善する可能性が示唆されたが、ルラシドンは、ほとんどまたはまったくないと考えられる。その他の有効性および潜在的な安全性に関しては、中〜非常に低い確実性のエビデンスとなっていた。現在利用可能なデータでは、包括的なサブグループ解析を行うことはできなかった。非定型抗精神病薬による介入の有効性および安全性を十分な確実性をもってバランスを取るためには、より大規模なサンプルによる新たなRCTが必要である。とくに成人ASDを対象とした研究が求められる。また、研究著者は、対象集団と介入の特性を透明化し、可能な場合には患者別、個別のデータを提供する必要があり、さらにデータの統合プロセスにおける問題を回避するためにも、各アウトカムについての一貫した測定方法を確立する必要がある」と結論付けている。

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溶連菌咽頭炎への抗菌薬、10日間から短縮可能?

 本邦では、『気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(改訂版)』1)において、A群溶血性レンサ球菌(GAS)が検出された急性咽頭・扁桃炎に対して、抗菌薬を投与する場合にはアモキシシリン内服10日間を検討することが推奨されている。ただし、海外では臨床的な治療成功については、短期治療(5~7日)が10日間の治療と同等であるいう報告もあり、短期治療の可能性が検討されている。 2022年にニュージーランドで実施された抗菌薬適正使用の取り組みの一環として、GAS咽頭炎に対する抗菌薬治療期間の短縮が、地域的に促進された。この介入により、抗菌薬の投与期間が10日間から5日間や7日間などへ短縮されるようになったが、治療成績に及ぼす影響は明らかになっていなかった。そこで、Max Bloomfield氏(Awanui Laboratories、Te Whatu Ora/Health New Zealand)らの研究グループは、後ろ向きコホート研究により治療期間の短縮の影響を検討した。その結果、治療期間を短縮しても治療成績に悪影響はみられなかった。本研究結果は、Open Forum Infectious Diseases誌2025年6月6日号に掲載された。 本研究では、ニュージーランド・ウェリントン地域の検査所において、咽頭ぬぐい液培養によりGAS陽性と報告された患者のうち、報告時点で抗菌薬が処方されていなかった患者を対象とした。対象患者を2022年の抗菌薬適正使用の取り組みの実施前と実施後で2群(介入前群851例、介入後群1,746例)に分類し、抗菌薬治療期間、GAS再陽性、再治療、予定外入院、感染に関連する入院、家庭内感染、急性リウマチ熱について解析した。 主な結果は以下のとおり。・抗菌薬10日間治療の割合は介入前群68.7%、介入後群41.0%であった。5日間治療はそれぞれ2.4%、21.2%であった。抗菌薬非投与はそれぞれ24.9%、28.0%であった。・主な抗菌薬の内訳は、penicillin Vが介入前群75.9%、介入後群80.9%であり、アモキシシリンがそれぞれ19.4%、11.1%、セファレキシンがそれぞれ0.9%、3.8%であった。・介入前後の治療成績は、いずれの評価項目も両群間に有意差はみられなかった。介入前後の治療成績は以下のとおり(介入前群vs.介入後群、調整オッズ比[aOR]、95%信頼区間[CI]、p値を示す)。 -GAS再陽性:3.5%vs.2.7%、0.78、0.48~1.25、p=0.30 -再治療(抗菌薬再処方):12.8%vs.12.9%、1.02、0.79~1.31、p=0.88 -予定外入院:0.1%vs.0.5%、3.98、0.50~31.84、p=0.19 -咽頭・頭頸部感染による入院:0.0%vs.0.2% -家庭内感染:6.3%vs.6.5%、0.96、0.69~1.36、p=0.86 -急性リウマチ熱:両群0例・治療期間別にみた再治療割合は、抗菌薬非投与の集団で高い傾向にあった。各治療期間の再治療割合は以下のとおり。 -10日間:11.4%(参照) -7日間:11.7%(aOR:1.01、95%CI:0.59~1.73、p=0.98) -5日間:12.7%(aOR:1.10、95%CI:0.75~1.64、p=0.63) -非投与:15.6%(aOR:1.80、95%CI:1.26~2.55、p<0.01)・治療期間別にみた家庭内感染割合は、5日間治療の集団で低い傾向にあった。各治療期間の家庭内感染割合は以下のとおり。 -10日間:7.0%(参照) -7日間:6.2%(aOR:0.81、95%CI:0.40~1.65、p=0.57) -5日間:4.0%(aOR:0.52、95%CI:0.28~0.97、p=0.04) -非投与:7.1%(aOR:1.04、95%CI:0.64~1.68、p=0.89)・GAS再陽性の割合は、治療期間による差はみられなかった。 本研究結果について、著者らは「本コホートでは、GAS咽頭炎に対する抗菌薬治療期間を短縮しても、治療成績に悪影響はみられなかった。また、他の研究では短期治療によりGASの除菌率が低下することが報告されているが、本研究では短期治療により家庭内感染は増加しなかった。これは新たな発見である」とまとめた。

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7月13日開催、講習会『イノベーション委員会プログラム』【ご案内】

 日本抗加齢医学会の新たな試みとなる講習会『イノベーション委員会プログラム』が、7月13日(日)に日本橋ライフサイエンスハブで開催される。「アンチエイジングからイノベーションを起こす」をテーマに、医療現場の第一線で活躍する医師・研究者でありながら、実際にビジネスを立ち上げた“起業家ドクター”が多数登壇する。彼らのリアルな体験と挑戦、そして事業化へのヒントが凝縮された、ここでしか聞けない貴重な講演が行われる。 終了後には、登壇講師や関係者と直接話せる懇親会を同会場にて開催。講師への相談や名刺交換など、貴重なネットワーキングの場として活用することができる。 主催の日本抗加齢医学会 イノベーション委員会は「日々の診療や研究から課題解決のアイデアを形にしたい方、起業や事業化に興味がある方、医療×経営・ビジネスに関心がある方、医師や起業家と直接交流し人脈を広げたい方は、ぜひ参加登録をお願いしたい」と呼び掛ける。 開催概要は以下のとおり。開催日時:7月13日(日)10:00~15:00 ※講習会終了後に懇親会を実施開催場所:日本橋ライフサイエンスハブ    〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-5-5 室町ちばぎん三井ビルディング8階開催形式:現地開催参加費 :3万3,000円(日本抗加齢医学会会員 2万2,000円)申込締切:7月4日(金)まで■参加登録はこちら【プログラム】オープニングリマークス:坪田 一男氏(イノベーション委員会)座長:新村 健氏 (イノベーション委員会) 10:00~10:50 「大学発スタートアップの意義と実例」 森下 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学 寄附講座)10:50~11:40 「未定」 坪田 一男氏(株式会社坪田ラボ)11:40~12:20 休憩 座長:坪田 一男氏(イノベーション委員会)12:20~13:10 「未定」 石見 陽(メドピア株式会社)座長:森下 竜一氏(イノベーション委員会)13:10~14:00 「究極のアンチエイジングとしての心筋再生医療は心不全治療に革命を起こせるか?」 福田 恵一氏(Heartseed株式会社)14:00~14:10 休憩14:10~15:00 「デジタル技術による持続可能な医療」 上野 太郎氏(サスメド株式会社)クロージングリマークス:森下 竜一(イノベーション委員会)15:00~ 懇親会(同会場内ホワイエにて)【主催】 日本抗加齢医学会 イノベーション委員会【お問い合わせ先】 日本抗加齢医学会事務局 TEL:03-5651-7500 E-mail:seminar@anti-aging.gr.jp 学会ホームページはこちら

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