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「トップガン マーヴェリック」【Dr. 中島の 新・徒然草】(429)

四百二十九の段 「トップガン マーヴェリック」「トップガン マーヴェリック」というタイトルにしましたが、私はこの映画をまだ観ていません。観たというのは外来の患者さんです。彼女は40歳頃の事故で高次脳機能障害になってしまい、もう何年も通院とリハビリをしています。短期記憶が苦手で、私の名前を尋ねてみても出てきたり出てこなかったり。患者「うーん、先生の名前は……中島さん? そんな気もするわ」で、そんな彼女が開口一番言ったのは、「この前、旦那と『トップガン マーヴェリック』を観てきた!」という事です。患者「私、すごく感動した!」中島「面白かったですか、やっぱり?」患者「旦那は中身に感動しとったけどな、私は自分が前のストーリーを憶えてたことに感動してん」前のストーリーというのは1986年の元祖「トップガン」の事で、当時小学生だった彼女は映画館ではなく、テレビやビデオなどで何度も観たのだそうです。トム・クルーズが米国海軍の戦闘機パイロットとして縦横無尽に活躍する「トップガン」は日本を含む全世界で大ヒットしました。そして長らく待たれていた続編が今回の「トップガン マーヴェリック」で、実に36年ぶりの第2作目です。主役はまたもトム・クルーズで、還暦近い年齢でありながら、相変わらずのイケメンぶりを発揮してくれました。また、このシリーズのもう1つの主役とも言える戦闘機の方は、前回がF-14 トムキャット、今回はF/A-18E/F スーパーホーネットです。患者「あの時に死んだ相棒がおったやろ?」中島「グースの事ですか」トム・クルーズの相棒役を演じたアンソニー・エドワーズは、むしろ「ER」のグリーン先生役として我々の業界では有名ですね。患者「そうそう。その息子がパイロットとして出てきとってん」トム・クルーズ扮するマーヴェリックとの浅からぬ因縁を持つ息子という役どころでしたか。この患者さん、何しろストーリーが頭に残らないので、普段は連続テレビドラマなんかを見るのが苦痛だということです。でも昔の映画については熱く語ってくれました。患者「お母ちゃんがトム・クルーズのファンでな、『ミッション:インポッシブル』とかのDVDを全部持ってるねん」中島「なるほど」患者「私は『007』のほうが好きやけどな」いつもはこんなに饒舌な人ではありませんが、映画の話になると熱が入ってきます。中島「でも、『007』のほうはジェームズ・ボンド役の俳優がどんどん入れ替わっているじゃないですか」患者「そうやなあ」中島「どの俳優が1番ですか?」俳優の名前を思い出すのは、いいリハビリになるかも。患者「それを訊かれると難しいねん」中島「確か初代は……あの、カツラ男。あかん、名前が出てこない」ショーン・コネリーですね。私ごときにカツラ男よばわりされて、申し訳ないです。中島「それで途中にティモシー・ダルトンがいましたかね」患者「そうそう!」中島「ん、でもほかの俳優の名前が出てこないぞ」私も年を取ったものです、名前がパッと出てきません。後で調べるとティモシー・ダルトンの前がロジャー・ムーア、後がピアース・ブロスナンでした。どうやら私にもリハビリが必要みたい。患者「私な、ロバート・デ・ニーロも大好きやねん」中島「そうすると『俺たちは天使じゃない』という映画は知ってますか」患者「先生こそ、なんでそんなマイナーな映画知ってるの?」中島「マイナーやけど名作でしょ、あれは」患者「あんな面白い映画もないよね」中島「確か相棒役の俳優が……出てこない!」患者「私も名前が出てけえへん。年齢のせいかな」こちらはショーン・ペンでしたね。ちなみに、私は家で「そっちじゃない!」と言いたい時に、この映画の有名なセリフをとって "another father Brown!" と叫んでおります。ということで、短期記憶に障害のある患者さんが、案外、昔の映画を憶えていたというお話です。こういった有名な映画で俳優の名前やストーリーを思い出そうとするのも、脳の活性化につながるかもしれませんね。思いがけず盛り上がった外来診察でした。最後に1句6月の 空を切り裂く ホーネット

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終末期やACPのこと、いつ・どこまで話し合う?【非専門医のための緩和ケアTips】第29回

第29回 終末期やACPのこと、いつ・どこまで話し合う?緩和ケアに関する幅広い話題について考える本シリーズですが、今回は緩和ケアと切り離せない「対話」の話題です。やってみると難しいものですが、一緒に考えてみましょう。今日の質問高齢者が多く通院するクリニックの外来と訪問診療を担当しています。早めに先々のことを話し合うことが大切と考え、積極的に提案しています。ただ、蘇生措置拒否(DNR)のことなどを話すとびっくりされてしまいます。本人のことですし、大切なことだと思うのですが。どこまで話をするべきなのでしょうか?アドバンス・ケア・プランニング(ACP)といわれる、将来に備えた医療やケアについての話し合いを実践されているのですね。それ自体、非常に重要な取り組みですね。でもやってみると、必ず突き当たる難しさがあります。その一つが、今回の質問にある「どこまで話し合うか」問題です。これはACPの本質に関わる、難しい質問です。患者さんからすると、急に「病状が進行したときのことを話し合いましょう」と言われても、びっくりしてしまいますよね。この問題に対応するには、コミュニケーションスキルが重要です。重要なのは「いきなり本題に入らない」こと。軽く前置きを入れ、相手の状況を把握することから始めましょう。話すことについて少し心構えを促す、といったイメージです。私がよく使うのは、「少しびっくりさせてしまうかもしれませんが、先々のことについて、私が心配していることを相談させていただけますか?」といった前置きです。患者さんを中心に置きつつも、あまり自分ごととして考えられていない場面も多いので、「医師である私が心配していることを話させてもらう」といったように伝えるのです。さらに、重要なのはここからです。患者さんの表情をよく観察しましょう。心配そうな場合は、「これまでこうした話し合いはしたことがありますか?」とつなげ、説明よりもまずは対話を優先します。こう説明すると、「それじゃあ、ACPは長年診療している患者さんにしかできないじゃないですか」と心配されます。もちろん、長いお付き合いの方がやりやすい部分は多いですが、前述したような対話の工夫をすることで、お付き合いの浅い患者さんでもスムーズに話を進められます。そして、ACPを実践する医療者の方に知っていただきたい言葉が、「二歩先を見て、一歩先を照らす」です。私たち医療者は医学知識を持ち、同じ疾患を持った患者・家族と多く話し合ってきたプロですから、その患者さんの何歩も先を予想できます。しかし、患者さんは自分の一歩先がどうなるかがわからず、多くの方が不安を抱えています。そのため、私たちがずっと先の話をすると、「そんなことは想像してなかった」とショックを受けるのです。医療者は「少なくとも二歩先」を見据えながらも、患者さんとは「一歩先」を話し合うことの心構えが大切で、これを「二歩先を見て、一歩先を照らす」と表現しています。一歩の歩幅は人それぞれです。今回の質問のように、「目の前の患者さんとどこまで話し合うのがいいのか」と迷った際は、「患者さんにとっての一歩先」を考えてみるとよいでしょう。今回のTips今回のTipsどこまで話すかは相手次第。切迫していない状況であれば、相手にとっての「一歩先」を探ってみよう。

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皮膚科医デルぽんのデルマ医は見た!!

連載でおなじみのデルぽん先生がまたまた放つ、笑撃的コミックエッセイ!!CareNet.comの「Dr.デルぽんの診察室観察日記」で連載が続く現役の皮膚科医、デルぽん先生。4コマ漫画という手法で皮膚科の日常を面白おかしく綴ったデビュー作『皮膚科医デルぽんのデルマな日常』から2年、待望の第2弾が発売されました!!『デルマな日常』が皮膚科の仕事内容を伝える〈基礎編〉だったのに比べ、本書では、もう少し込みいった内容の〈事件編〉といったところでしょうか。とはいえ皮膚科の特性で、命に関わるような大事件はめったに起こりません。ただ、老若男女が押しかける皮膚科ならではの小事件、小ネタは尽きることがありません。たとえば「カミソリでヒゲを剃ったら腫れてきて…」と訪れた患者さんのケースでは切開したところ、中に結構な大きさの小石が入っていたとか、「先週からアゴが腫れてきて…」と訴えた患者さんの様子を見て大きな病院を紹介したら「外歯瘻」という厄介な病気だったとか。私たちが皮膚科に抱くイメージは水虫やイボ、ウオノメといったところですが、こんな珍しい症例もあるのだと驚かされます。たわいない、命がどうのこうのという深刻な事件ではないけれど、日常に潜む危険はいろいろある。皮膚科のお医者さんはそんな現場を知っている唯一の存在、と改めて気付かせてくれる一冊です。著者・デルぽんより発刊のご挨拶前作から2年。新たに描き下ろした研修医時代の思い出エピソードも加えて、ブログやメディアに掲載していた漫画たちを続編として一冊の本にまとめました!前作同様、ゆるい医療あるある漫画や皮膚科あるある、皮膚科女医(一応)の日常と妄想をつめ込んでいます☆笑いあり、時にためになる実用ネタあり?!外来の待合室や医局に、はたまた当直室のお供に、一冊いかがでしょうか?画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    皮膚科医デルぽんのデルマ医は見た!!定価1,430円(税込)判型A5判頁数128頁発行2022年6月著者デルぽん

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第112回 日医会長選にも影響したリフィル処方箋、医療現場の反応は?

日本医師会の会長選は6月4日に立候補受け付けが締め切られ、松原 謙二副会長(65歳)と松本 吉郎常任理事(67歳)が届け出た。松原氏の出身母体である大阪府医師会が松本氏陣営の副会長候補を出していることから、松本氏の優位は揺るがないものと思われる。また、副会長選(定数3)には、松本氏陣営から現職の猪口 雄二氏(全日本病院協会会長)、茂松 茂人氏(大阪府医師会会長)、角田 徹氏(東京都医師会副会長)の3人のほか、現職の今村 聡氏も届け出た。会長選を含めた役員選挙は6月25日の代議員会で投開票される。会長選で中川 俊男会長が不出馬を表明した背景に、繰り返し使用できるリフィル処方箋の導入決定などに対する会員の批判が挙げられる。医療現場ではどう受け止めているのだろうか。大阪府保険医協会が5月、2022年度診療報酬改定で新設されたリフィル処方箋、外来感染対策向上加算、電子的保健医療情報活用加算に関して会員医療機関にアンケートを実施し、597件の回答を得た。リフィル処方箋、8割以上は「発行していない」リフィル処方箋については「発行している」はわずか3.7%で、「発行していない」は82.6%と圧倒的多数を占めた。「患者の求めがあれば発行を検討」は13.7%だった。また、患者からの希望や相談の有無については「あった」が17.3%と2割に満たず、「今のところはない」が79.9%だった。リフィル処方箋を希望した患者に対して長期処方した医療機関は2件、すでに長期処方している患者からの希望も2件あったという。自由意見欄には「リフィル処方は無診察投薬禁止の原則と矛盾している」「リフィル処方と3ヵ月処方との意義(違い)がよくわからない」「実質無診察投薬であり病態変化に対応できないなど、健康管理上問題がある」など批判的な声が寄せられた。外来感染対策向上加算は「算定しない」が65%外来診療における感染防止対策を評価する施設基準、外来感染対策向上加算についてのアンケート結果は以下のとおり。「算定しない」が65.1%とトップ。次いで「算定している」(23.5%)、「検討中」(6.5%)、「算定予定」(3.4%)が続く。「算定している」(140件)の連携先(複数回答)としては、「加算1取得の地元病院」(76件)、「医師会」(56件)、「地元以外の病院」(4件)が挙げられ、「未定」も6件あった。「算定している」の動機(複数回答)としては、「地域の感染対策への貢献」(70件)、「少しでも上乗せしたい」(68件)、「必要なことだから」(44件)だった。同加算新設に対する評価(複数回答)では、「要件が厳しい」が415件と7割を占めた。次いで「点数が不十分」が144件、「内容を評価」が31件と、「算定している」回答者も含めて評価は低い。施設基準が複雑でハードルも高いにもかかわらず、連携加算などすべて算定しても10点と点数が低いことを反映していると思われる。自由意見欄では「加算の手続きが手間であった。発熱診療機関であれば、無条件で付けるべき」「同加算は要件が複雑で一応出したが、後で返戻減点されないか心配」などの意見や不安が記されていた。電子的保健医療情報活用加算では「患者負担が増える」ことに疑問電子的保健医療情報活用加算は、診断および治療等の質の向上を図る観点から、オンライン資格確認システムを使って患者の薬剤情報や特定健診情報等を取得し、その情報を活用して診療などを実施することに対する評価。厚生労働省は2023年3月末までに、全保健医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入を目指しており、顔認証付きカードリーダーに関する補助金を提供している。これに対し、医療機関からは「補助金額が低く、医療機関の持ち出し分が大きい」などと批判が起きていた。このような状況下、アンケートでは、オンライン資格確認システムの導入について、回答者の約4割が「導入はしない」(38.2%)と回答。一方、「導入(設置)済」は14.9%で、「入手・申込済」は18.6%だった。また、同加算新設に対する評価については「評価する」はわずか8.2%。「評価しない」は31.6%で、「どちらとも言えない」が56.8%と最多だった。同システムを「導入(設置)済」の医療機関でも「評価する」は28.1%と3割に満たない結果となった。自由意見欄で一番多かったのは「患者負担が増える」ことへの疑問だ。「妊婦加算の時と同じように、患者側に負担させられているとネットなどで記事にされている」などの懸念があった。「中途半端なシステム」「事務量が増える」「点数が不十分」などの声も少なくなかった。また、同システムを活用した資格確認の1つにマイナンバーカードも使われるが、「マイナンバーカードに登録済みの方が少ない」という指摘も多かったという。2022年度診療報酬改定で新設された3項目は、あまり評判が良くないことが明らかになった。医療現場にとっての申請のしやすさや、患者に負担をかけない制度設計が望まれる。

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ヘルスケアベンチャー大賞への参加者募集【ご案内】

 日本抗加齢協会と日本抗加齢医学会は、今秋もヘルスケアベンチャー大賞を開催する。4回目を迎える同大賞は『アンチエイジングからイノベーションを!』をテーマに掲げ、アンチエイジングに資するヘルスケア分野のビジネスプランやアイデアを募集する。 新たなスタートアップを立ち上げることは並大抵のことではないが、近年、医師による起業や新規事業の立ち上げが増加しており、本大賞はそのような医師らの積極的な活動を応援するために2019年より始まった。起業準備中の個人や企業との連携を求める個人なども応募が可能で、1次書類審査にてファイナリスト8名(社)を選出し、10月の最終審査で受賞者が決定する。大賞・学会賞受賞者は賞金授与だけではなく、翌年6月に開催予定の第23回日本抗加齢医学会総会での発表機会や企業展示支援も与えられる。 開催概要は以下のとおり。[募集テーマ]アンチエイジングからイノベーションを!*アンチエイジングに資するヘルケア分野のビジネスプラン/アイデアを広く募集 生活習慣病の予防、老化による疾病予防、高齢者の自立、医療、介護、技術、 創薬、遺伝子治療、再生医療製品、食品、化粧品、AI、ヘルスケアIT、 ビッグデータ解析、ディープラーニング、ウェラブルデバイス、環境 など[募集期間] 2022年5月9日(月)~7月25日(月)[1次書類審査]2022年8月5日(金)~9月2日(金)[ファイナリスト発表]2022年9月5日(月)[最終審査会] 2022年10月21日(金)15:00〜17:00        開催形式:会場とWEBのハイブリッド[賞金]企業・団体応募 大賞:100万円 学会賞:30万円         ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞:20万円個人応募    最優秀アイデア賞:15万円 アイデア賞:10万円[副賞]ファイナリスト企業を「日本抗加齢協会認定スタートアップカンパニー」に認定/起業⽀援サービス/⼤学発新産業創出プログラム(START)への推薦 など実行委員会:日本抗加齢医学会イノベーション委員会

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急性膵炎の抗菌薬処方はもう古い!?最新治療とは―診療ガイドライン2021発刊

 専門医でも抗菌薬や蛋白分解酵素阻害薬の投与が慣例となっている急性膵炎の治療。ところが、昨年12月に発刊された『急性膵炎診療ガイドライン2021年版(第5版)』で、遂に治療法へのメスが入ったのである。診断よりも治療法に重きを置いて今回の改訂がなされた理由について、急性膵炎診療ガイドライン改訂出版責任者の高田 忠敬氏(帝京大学附属病院)にインタビューした。 今回6年ぶりに発刊された急性膵炎診療ガイドライン第5版では、「予防的抗菌薬の投与がほぼ全例で行われている」「発症48時間以内の早期の経腸栄養が開始されていない」点を専門医に向けて問題提起している。急性膵炎の治療において栄養摂取は時間勝負であり予後改善の分岐点ともなることから、いかに早期に食事を開始するか、その方法や意義などが盛り込まれた。急性膵炎診療ガイドラインの推奨「予防的抗菌薬は投与しない」 急性膵炎診療ガイドライン2021年版のクリニカルクエスション(CQ13:予防的抗菌薬は急性膵炎の予後改善に有用か?)を見ると、予防的抗菌薬の投与について、軽症例の場合は「行わないことを推奨する」(強い推奨、エビデンスの確実性が高い)とされ、重症例もしくは壊死性膵炎の場合は「生命予後や感染性膵合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない」(推奨なし)となった。ただし、胆石性膵炎で胆管炎を併発している場合のように予防的ではなく感染を伴った際には、治療薬として抗菌薬を使用する旨が記載されている。これについて高田氏は「現段階で重症例への予防投与も答えが出せない状況であるため、今後の研究が待たれる」と説明した。急性膵炎診療ガイドラインでは早期に経腸栄養を始めることが重要 続いて、軽症例の経腸栄養の早期開始について、同氏は「以前は腸を空にすることが善とされてきたが、近年では蠕動運動を保つという目的はもちろん、腸内環境を整えるためにも早期に経腸栄養を始めることが感染予防対策としても重要と報告されている」と述べた。また、急性膵炎診療ガイドライン2021年版のCQ16(重症急性膵炎に対する経腸栄養の至適開始時期はいつか?)が強い推奨、エビデンスの確実性高となっていることについて、「重症例の場合、通常の1.5倍ほどのカロリーが必要。それを補うためにも、腹痛や蠕動音が聴取できないなどの状態であっても禁忌条件に該当しない限りは静脈栄養に加えて経腸栄養を行うことが推奨される」とも説明した。*関連:CQ17 経腸栄養ではどこから何を投与するか?    CQ18 軽症膵炎ではどのように食事を再開するか? 重症例に対する、経腸栄養の禁忌条件や経腸栄養が可能な状態は以下のとおり。<経腸栄養の禁忌条件>1.高度の腸閉塞2.消化管閉塞3.消化管穿孔4.重篤な下痢5.難治性嘔吐6.活動性消化管出血7.汎発性腹膜炎8.膵性胸腹水<経腸栄養が可能な症状・所見>1.腹痛2.嘔気3.血清膵酵素上昇4.腸管蠕動音消失5.胃内容逆流(経鼻胃管からの排出)急性膵炎診療ガイドラインがスマホアプリとして初登場 一般的なガイドラインではクリニカルクエスチョンに対し解説が記載されていることが多いが、急性膵炎診療ガイドライン2021年版ではそれらを裏付けるための参考資料などはQRコードを利用して確認する仕様になっており、急性膵炎診療ガイドライン2021年版のp13などにもQRコードが掲載されている。それを読み取り、必要なページに瞬時にアクセスすることができるので、通常のガイドラインより必要な情報に集中することができる。また、急性膵炎診療ガイドライン2021年版Lはアプリにもなっているので、App storeにて書籍名を検索すれば誰でも無料で入手することができ、手軽に持ち歩くこともできる。 この機能に加え、患者がガイドラインを閲覧したり、医師がガイドラインを用いて説明したりする状況を鑑み「やさしい解説」が付記されている点も急性膵炎診療ガイドライン2021年版の大きなポイントで、患者に説明する際の使い勝手も良い仕様になっているので、まさに次世代ガイドラインとも言えるのではないだろうか。 最後に同氏は「抗菌薬投与も栄養管理も過去の経験則が代々引き継がれてきただけもので、エビデンスに基づく根拠がなかった。エビデンス重視の昨今において、ぜひ、本書もしくはアプリを活用いただき、最新の治療を理解いただくとともに悪しき慣習がなくなることを願う」と締めくくった。 なお、「日本消化器病学会誌」へ同氏の論文が、日本膵臓学会誌「膵臓」に『診療ガイドライン2021での巻頭言』が8月に掲載される予定だ。

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ビレーズトリとビベスピの120吸入製剤を発売/AZ

 アストラゼネカは、2022年6月6日、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療配合剤「ビレーズトリエアロスフィア120吸入」(一般名:ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物)と「ビベスピエアロスフィア120吸入」(一般名:グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物)の販売を同日より開始したと発表。 両製品における120吸入製剤のニーズは高く、それに応える形で追加発売となった。これにより、1つの吸入器で1ヵ月分の投薬が可能となる。 また、ビレーズトリエアロスフィア120吸入は、主に外観を変更した新しいデバイスを採用。ビレーズトリエアロスフィア56吸入も新デバイスに変更し、同日より販売を開始している。有効成分、臨床成績、1回噴霧量および投薬方法に変更はない。

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若年性双極性障害およびうつ病患者における自殺行動~メタ解析

 うつ病または双極性障害の小児および青年における自殺行動の割合や死亡率を評価するため、イタリア・IRCCS Bambino Gesu Pediatric HospitalのGiulia Serra氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、気分障害と診断された若者の死亡率(自殺企図当たりの死亡者数)は、一般的な若者よりも高いものの、成人よりは低いことを報告した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年5月16日号の報告。双極性障害の自殺企図の平均発生率はうつ病より高い 18歳以下の自殺行動に関する報告をシステマティックにレビューし、プールされたデータから自殺行動リスクや1年発生率を評価するため、ランダム効果メタ解析および多変量線形回帰モデルを用いた。 双極性障害またはうつ病の小児および青年における自殺行動の割合や死亡率を評価した主な結果は以下のとおり。・対象は、15ヵ国で検討された研究41件(1995~2020年)より抽出された10万4,801例(うつ病:10万2,519例、双極性障害:2,282例)。自殺行動リスクは0.80~12.5年であった。・メタ解析では、自殺企図の発生率は、双極性障害で7.44%/年(95%CI:5.63~9.25)、うつ病で6.27%/年(95%CI:5.13~7.41)であった。・うつ病および双極性障害の患者群を用いた研究5件のメタ解析では、双極性障害患者はうつ病患者と比較し、自殺企図リスクが有意に高かった(OR:1.59、95%CI:1.24~2.05、p<0.0001)。・6件の研究における若年性気分障害を伴う平均自殺率は、10万人当たり125人/年(56.9~236)であった。この値は成人と同様で、一般的な若者の30倍以上に当たり、年齢が上がるごとにリスクが高まった。・若年性気分障害患者の自殺企図/自殺の比率(A/S)は52.6であり、一般的な若者(A/S≧250)よりも死亡率が高かったが、成人で推定される死亡率(A/S:約30)よりも低かった。・若年性気分障害における自殺企図の平均発生率は10万人当たり6,580人/年であり、うつ病患者よりも双極性障害患者のほうが高く、観察期間が短いほど高かった。

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進行乳がん治療のパラダイムシフト、HER2低発現患者でT-DXdがPFSを大きく改善(DESTINY-Breast04)/ASCO2022

 HER2低発現で既治療の進行乳がん患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が治験医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。従来HER2陰性に分類されてきた転移を有する乳がん(mBC)患者の約55%がHER2低発現に該当すると報告されている1)。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏が第III相DESTINY-Breast04試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。なおDESTINY-Breast04試験の結果は6月5日、New England Journal of Medicine誌に掲載された2)。DESTINY-Breast04試験、全例のOSがT-Dxd群で有意に改善・対象:HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)、1~2ラインの化学療法歴のある切除不能および/または転移を有する乳がん患者(ホルモン受容体陽性[HR+]の場合は内分泌療法抵抗性) 557例 以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか) 184例・層別化因子:HER2発現状態(IHC 1+ vs.IHC 2+/ISH-)、化学療法歴、ホルモン受容体の状態、CDK4/6阻害薬による治療歴・評価項目:[主要評価項目]HR+患者における盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[主要副次評価項目]全例におけるBICRによるPFS、HR+患者および全例における全生存期間(OS)[その他の評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、HR-患者の探索的解析  DESTINY-Breast04試験の主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点での患者特性は、年齢中央値:T-DXd群58歳vs.TPC群56歳、アジアからの参加:39% vs.36%、IHC 1+:両群で58%、HR+:89% vs.90%、化学療法歴(1ライン):59% vs.54%、CDK4/6阻害薬による治療歴:64% vs.65%だった。・データカットオフ(2022年1月11日)時点での追跡期間中央値は18.4ヵ月。・HR+患者におけるPFS中央値は、T-Dxd群10.1ヵ月vs.TPC群5.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.51(95%信頼区間[CI]:0.40~0.64、p<0.0001)でT-Dxd群で有意に改善した。・全例におけるPFS中央値は、9.9ヵ月vs.5.1ヵ月、HR:0.50(95%CI:0.40~0.63、p<0.0001)でT-Dxd群で有意に改善した。・HR+患者におけるOS中央値は、23.9ヵ月vs.17.5ヵ月、HR:0.64(95%CI:0.48~0.86、p=0.0028)でT-Dxd群で有意に改善した。・全例におけるOS中央値は、23.4ヵ月vs.16.8ヵ月、HR:0.64(95%CI:0.49~0.84、p=0.0010)でT-Dxd群で有意に改善した。・探索的評価項目であるHR-患者におけるPFS中央値は8.5ヵ月vs.2.9ヵ月でHR:0.46(95%CI:0.24~0.89)、OS中央値は18.2ヵ月vs.8.3ヵ月でHR:0.48(95%CI:0.24~0.95)だった。・HER2発現状態、CDK4/6阻害薬治療歴の有無を含むすべてのサブグループで、T-Dxdによるベネフィットが観察された。・HR+患者におけるORRはT-Dxd群52.6% vs.TPC群16.3%、DORは10.7ヵ月vs.6.8ヵ月。HR-患者におけるORRは50.0% vs.16.7%、DORは8.6ヵ月vs.4.9ヵ月だった。・Grade3以上のTEAEはT-Dxd群53% vs.TPC群67%で発生した。・治療期間中央値はT-Dxd群8.2ヵ月vs.TPC群3.5ヵ月、治療中止と関連したTEAEで最も一般的だったのはT-Dxd群がILD/肺炎(8.2%)、TPC群が末梢感覚神経障害(2.3%)だった。・T-Dxd群におけるILD/肺炎はGrade1が3.5%、Grade2が6.5%、Grade3が1.3%、Grade5が0.8%だった。 Modi氏は、mBC患者全体の最大約50%がHER2低発現に該当すると考えられるとし、今回のDESTINY-Breast04試験の結果は新たな治療標的となる患者群を明らかにするとともに、T-DXdがその標準治療となることを示したと結論付けている。

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ワクチン3回目、異種・同種接種での有効性~メタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのあらゆるプライマリ接種におけるブースター接種にはmRNAワクチンが推奨されること、異種・同種ワクチンの接種を問わず3回接種レジメンが、種々の変異株のCOVID-19予防に比較的有効であることを、中国・香港大学のWing Ying Au氏らが、システマティック・レビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。ただし、3回接種レジメンのCOVID-19関連死への有効性については不明なままだったとしている。BMJ誌2022年5月31日号掲載の報告。ワクチン有効性、SUCRAスコアを比較 研究グループは、ブースター接種の有無を含む異種・同種COVID-19ワクチンレジメンのCOVID-19感染、入院および死亡に対する予防効果を評価するシステマティック・レビューとネットワークメタ解析を行った。 世界保健機関(WHO)の38のCOVID-19データベースについて、2022年3月から毎週検索を行う方法(Living systematic review)にて、COVID-19ワクチンの同種または異種レジメンの有効性について評価した試験を抽出した。ブースター接種の有無は問わなかった。 解析対象としたのは、ワクチン接種群と非接種群について、症候性や重症COVID-19、COVID-19関連の入院や死亡数を記録した試験だった。 主要評価項目は、ワクチンの有効性で、1-オッズ比で算出し評価。副次評価項目は、surface under the cumulative ranking curve(SUCRA)スコアとペアワイズ比較の相対的効果だった。 バイアスリスクについては、非無作為化介入試験バイアスリスク評価ツール「ROBINS-I」を、無作為化比較試験については、コクランバイアスリスク評価ツール「ROB-2」を用いて評価した。mRNAワクチン3回接種、免疫不全でも高い有効性 53試験を対象に、初回解析を行った。COVID-19ワクチンレジメンの24の比較のうち、mRNAワクチン3回接種が、非症候性・症候性COVID-19感染に対し最も有効だった(ワクチン有効性:96%、95%信頼区間[CI]:72~99)。 アデノウイルスベクターワクチン2回接種+mRNAワクチン1回接種の異種ブースター接種の非症候性・症候性COVID-19感染に対する有効性は88%(95%CI:59~97)と良好なワクチン効果が認められた。また、mRNAワクチン2回の同種接種の、重症COVID-19に対する有効性は99%(79~100)だった。 mRNAワクチン3回接種は、COVID-19関連入院においても最も有効だった(有効率:95%、95%CI:90~97)。mRNAワクチン3回接種者における死亡に対する有効性は、交絡因子により不明確だった。 サブグループ解析では、3回接種レジメンは、高齢者(65歳以上)を含むすべての年齢群で同程度の有効性が認められた。mRNAワクチンの3回接種レジメンは、免疫低下の有無にかかわらず比較的良好に機能することが認められた。 同種・異種のワクチン3回接種レジメンは、COVID-19変異株(アルファ、デルタ、オミクロン)のいずれに対しても、感染予防効果が認められた。

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骨髄異形成症候群へのメチル化阻害薬、がん遺伝子への影響は?/NEJM

 骨髄異形成症候群の患者へのメチル化阻害薬治療後に、がん遺伝子の脱メチル化とアップレギュレートが起こることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のYao-Chung Liu氏らによって確認された。2つのコホートの患者サンプルの分析と遺伝子座特異的脱メチル化技術「CRISPR-DNMT1-interacting RNA」(CRISPR-DiR)を組み合わせた検討で明らかになったという。メチル化阻害薬は現在、がん患者の治療に用いられているが、腫瘍遺伝子の再活性化およびアップレギュレートも可能かどうかは、十分に解明されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる検討の必要性があることが判明した」と述べている。NEJM誌2022年5月26日号掲載の報告。患者68例のメチル化阻害薬治療前後のサンプルを採取 研究グループは、2つの骨髄異形成症候群の患者コホートについて、メチル化阻害薬治療前後の骨髄サンプルを採取し、骨髄異形成症候群やその他がんで重要な役割を果たしている既知のがん遺伝子SALL4へのメチル化阻害薬の影響を検証した。 第1コホートとして新たに骨髄異形成症候群の診断を受けた37例について、骨髄サンプルを採取。うち25例について、5-アザシチジンの4サイクル投与前後の骨髄サンプルを採取した。第2コホートでは、骨髄異形成症候群の診断を受けた43例について、メチル化阻害薬の5サイクル投与前後の骨髄サンプルを採取した。また、対照群として、健康なドナー10例からCD34-骨髄単核細胞を、また同5例からCD34+骨髄単核細胞を採取した。 SALL4発現の変化、治療反応性、臨床アウトカムについて、メチル化阻害薬治療との関連を調べた。SALL4発現が低いか検出限界以下の白血病細胞株を用いて、SALL4メチル化と発現との関連を調べた。 SALL4発現にきわめて重要なCpGアイランドを同定するためCRISPR-DiRを用いた。SALL4アップレギュレートを30~40%で確認、不良なアウトカムと関連 メチル化阻害薬による治療後、SALL4のアップレギュレートが第1コホートの40%(25例中10例)と第2コホートの30%(43例中13例)で認められ、不良なアウトカムと関連していた。 CRISPR-DiRの結果、5'非翻訳領域のCpGアイランドの脱メチル化が、SALL4発現に非常に重要であることが判明した。細胞株や患者について、メチル化阻害薬による治療は、同じCpG領域の脱メチル化と、SALL4発現のアップレギュレートを引き起こしたことが確認された。

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大血管閉塞性脳卒中疑い患者の血栓回収可能センターへの直接輸送の効果(解説:中川原譲二氏)

 血栓回収可能センターへのアクセスが制限されている非都市部では、大血管閉塞性(LVO)脳卒中が疑われる患者における最適な病院前輸送戦略は不明である。本研究の目的は、都市部以外の地域で、血栓回収可能センターへの直接輸送が、最も近い1次脳卒中センターへの輸送と比較して有益であるかどうかを判断することであった。急性LVO脳卒中が疑われる1,401例の患者を対象 2017年3月から2020年6月までの間、スペインのカタルーニャ地方で、最も近い1次脳卒中センターが血栓回収を施行できない地域において、急性LVO脳卒中が疑われる1,401例の患者を対象として、多施設、人口ベース、クラスター無作為化試験が行われた。最終フォローアップは2020年9月であった。患者は、血栓回収可能センター(688例)または最も近い1次脳卒中センター(713例)へ輸送された。 主要転帰は、虚血性脳卒中患者の対象集団におけるmRSスコア(0[症状なし]から6[死亡])による90日後の機能障害とした。対象集団における静脈内t-PA投与および血栓回収の割合、ならびにすべての無作為化された患者の安全性評価集団における90日死亡率を含む、11の副次転帰を設定した。血栓回収可能センターへの直接輸送の効果は見られず 2回目の中間分析後に、無益のため登録が停止された。登録された1,401例の患者が安全性分析に含まれ、そのうち1,369例(98%)が参加に同意し、無作為化分析に含まれた(56%男性、年齢中央値75歳、NIHSSスコア17)949例(69%)は、主要分析に含まれる虚血性脳卒中対象集団を構成した。対象集団の主要転帰については、mRSスコアの中央値は3(IQR、2~5)対3(IQR、2~5)(オッズ比[OR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.82~1.29)。報告された11の副次転帰のうち、8つは有意差を示さなかった。1次脳卒中センターに最初に移送された患者と比較して、血栓回収可能センターに直接移送された患者は、静脈内t-PAを投与される確率が有意に低かった(対象集団では、229/482[47.5%]対282/467[60.4%]、OR:0.59、95%CI:0.45~0.76)、および血栓回収を受ける確率が有意に高かった(対象集団では、235/482[48.8%]vs.184/467[39.4%]、OR:1.46、95%CI:1.13~1.89)。安全集団における90日死亡率は、グループ間で有意差はなかった(188/688[27.3%]vs.194/713[27.2%]、補正後ハザード比:0.97、95%CI:0.79~1.18)。血栓回収可能センターへの直接輸送では、発症から治療開始までの時間が課題 スペイン、カタルーニャの非都市部で行われた本研究では、LVO脳卒中が疑われる患者の1次脳卒中センターと血栓回収可能センターへの輸送との間で、90日後の神経学的転帰に有意差が見られなかった。血栓回収可能センターに直接移送された患者では、静脈内t-PAを投与される確率が有意に低かったが、血栓回収を受ける確率が有意に高かったにもかかわらず、転帰の改善は得られなかった。患者背景を示した論文中の表1には、無作為化から病院到着までの時間(中央値)が、血栓回収可能センター群で61分、1次脳卒中センター群で21分とあり、血栓回収可能センター群では、発症から治療開始までの時間の延長が認められた。 LVO脳卒中に対する血栓回収療法の有効性については、これまでの臨床研究によって、すでに確立した感があり、1次脳卒中センターにおいて血栓回収が施行できない地域では、LVO脳卒中患者の血栓回収可能センターへの直接搬送が推奨されている。しかし、本研究においては、血栓回収治療の有効性が発症から治療開始までの時間に依存することが、あらためて示唆されており、血栓回収可能センターへの直接輸送では、発症から治療開始までの時間が常に課題になると考えられた。

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サル痘に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、2年ぶりに連載が再開した「気を付けろッ!」ですが、いつの間にか私の所属も大阪大学に変わってしまいました(まあ変わったのもすでに1年前なんですが…)。冨樫義博先生(漫画家)が『HUNTER×HUNTER』(週刊少年ジャンプ)の連載再開に向けて動き出しているということで、私も頑張らなあかんな~と思い、筆を取った次第です。この連載とは別に『ちょっくら症例報告を書いてみよう』という連載も開始しましたので、こちらの連載の方はCareNet.comの担当者からは「最後に1つ書いて終わってください」と言われていますが、「いやいや、くつ王、連載やめへんで! CareNet.comの連載2本持ちをしている文豪(&遅筆)としてこれからも邁進してまいります」ということで今回は「サル痘」についてです。サル痘はアフリカ由来サル痘は、1970年にコンゴ民主共和国で初めてヒトでの感染例が報告されたサル痘ウイルスによる動物由来感染症です。サル痘という名前ですが、サルも感染することがあるというだけで、もともとの宿主はネズミの仲間のげっ歯類ではないかと考えられています。天然痘ウイルスやワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルスに属するサル痘ウイルスによる感染症であり、アフリカの異なる地域にそれぞれ別の系統が分布しています。コンゴ民主共和国などの中央アフリカのサル痘ウイルスよりも、ナイジェリアなどの西アフリカのサル痘ウイルスの方が病原性が低いことがわかっています。これまでに報告されているサル痘患者の大半はアフリカからのものですが、同様に近年、アフリカでサル痘患者が増えているとナイジェリアやコンゴ民主共和国などから報告されております。その理由として、天然痘の根絶後、種痘の接種歴のある人が減っていることでサル痘患者が増加してきているのではないかと懸念されています。アフリカ以外でも、まれに旅行や動物の輸入に関連したサル痘患者がアメリカ、イギリス、シンガポール、イスラエルなど海外でも散発的に報告されていました。ほかの感染症との鑑別とサル痘の主症状そんな中、2022年5月からイギリスを発端としてアフリカ以外の地域でサル痘の患者が急増しています。2022年6月2日現在、600人を超えるサル痘患者が30ヵ国から報告されています。これまでにわかっている確定例は大半が男性患者であり、20代~40代の比較的若い世代に多いことも特徴です。また、今回の感染者のうち、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性、いわゆる男性同性間性的接触者(MSM)の間で発生したケースが多いことが指摘されています。表 サル痘、天然痘、水痘の特徴の違い画像を拡大する(文献5と6をもとに筆者が作成)サル痘は1980年に世界から根絶された「天然痘」に病態がとても良く似ており、症状だけでこれら2つの疾患を鑑別することは困難だと言われています。しかし、サル痘では人から人へ感染する頻度は天然痘よりも低く、また重症度も天然痘よりもかなり低いことが知られています。ヒトがサル痘ウイルスに感染すると約12日の潜伏期の後に発熱や発疹などの症状がみられます。アメリカにおける2003年のアウトブレイクの際にサル痘と診断された34人の患者では、以下の症状がみられました。●サル痘の主な症状発疹(97%)発熱(85%)悪寒(71%)リンパ節の腫脹(71%)頭痛(65%)筋肉痛(56%)この報告では発熱が発疹よりも2日ほど先行し、発熱は8日間、発疹は12日間続いたとのことです。通常、全身に発疹がみられますが、今回のアウトブレイクでは性器や肛門周辺にのみ発疹がみられた事例も報告されているようです。アフリカにおけるサル痘患者の致死率は約1〜10%とされていますが、先進国ではこれまでに死亡者は確認されていません。サル痘の皮疹は天然痘と非常に似ており、水疱がみられることが特徴です。同様に水疱がみられる水痘では、水疱の時期、痂皮になった時期などさまざまな時期の皮疹が混在しますが、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴です。天然痘と比べると、サル痘では首の後ろなどのリンパ節が腫れることが多いと言われています。診断は水疱内容物や痂皮などを検体として用いたPCR検査を行うことになります。サル痘が疑われた場合は、最寄りの保健所を経由して国立感染症研究所で検査が実施されます。サル痘の治療は治療は原則として対症療法となります。海外ではシドフォビル、Tecovirimat、Brincidofovirなど天然痘に対する治療薬が承認され、実際に投与も行われている国もありますが、わが国ではこれらの治療薬は現時点では未承認です。感染経路は、接触感染(サル痘ウイルスを持つ動物に噛まれる、引っかかれる、血液・体液・皮膚病変に接触する、サル痘に感染した人の体液・発疹部位)と飛沫感染(サル痘に感染した人の飛沫を浴びる)の2つと考えられています。今回のアウトブレイクでは、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性(MSM)の間で発生したケースが多いことから、性交渉の際の接触が感染の原因になっているのではないかと疑われています。種痘(天然痘ワクチン)はサル痘にも有効です。コンゴ民主共和国でのサル痘の調査では、天然痘ワクチンを接種していた人は、していなかった人よりもサル痘に感染するリスクが5.2倍低かったと報告されています。しかし、1976年以降日本では種痘は行われていませんので、昭和50年以降に生まれた方は接種していません。院内感染対策については、サル痘患者における科学的研究はほとんどなく、そのほとんどがアフリカで実施されたものです。サル痘ウイルスの人から人への感染は、天然痘と同じメカニズム、すなわち飛沫または接触によって起こると考えられていますので、天然痘と同様に考え、標準予防策、接触予防策、飛沫予防策を行うことになります。なお、アメリカの疾病対策予防センター(CDC)は、サル痘ウイルスが空気感染する理論的なリスクがあるということで、可能な限り陰圧個室隔離の上で空気感染予防策を適用することを推奨しています。1)Rimoin AW, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107:16262-16267.2)Traeger MW, et al. Lancet Infect Dis. 2022;S1473-3099.3)Sklenovská N,et al. Front Public Health. 2018;6:241.4)Huhn GD, et al. Clin Infect Dis. 2005;41:1742-1751.5)McCollum AM,et al. Clin Infect Dis. 2014;58:260-267.6)Frey SE, et al. N Engl J Med. 2004;350:324-327.

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薬歴確認が重要なリンパ増殖性疾患(LPD)【知って得する!?医療略語】第13回

第13回 薬歴確認が重要なリンパ増殖性疾患(LPD)最近、薬剤が原因のリンパ節腫脹が増えていると聞きました。そうなんです。近年、関節リウマチなどの自己免疫疾患に対する免疫抑制薬の使用に伴うリンパ増殖性疾患の報告が増えています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MTX-LPD【日本語】メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患【英字】Methotrexate-associated lymphoproliferative disorder【分野】膠原病・免疫・血液【診療科】耳鼻科・皮膚科【関連】リンパ増殖性疾患(LPD:lymphoproliferative disorder)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。内科の初診外来で鑑別に難渋しやすい症状の1つがリンパ節腫脹です。リンパ節腫脹は良性から悪性疾患まで、鑑別疾患が多く、診断に難渋することが多々あります。さらに患者本人は、悪性疾患のリンパ節転移を心配して来院することも少なくありません。そんなリンパ節腫脹の鑑別ですが、最近は薬剤によるリンパ節腫脹に留意しなけなければと感じています。その理由は、薬剤によるリンパ増殖性疾患(LPD)の存在です。関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の免疫抑制薬使用中に発生するリンパ増殖性疾患(LPD)は、WHO分類2017(第4版)において「他の医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患(OIIA-LPD:other iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders)」に分類されています。メトトレキサートによる免疫不全関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)もOIIA-LPDに属する病態ですが、近年はその症例報告が増えています。このため、リンパ節腫脹を訴える患者の診療では、使用薬剤の確認において、免疫抑制薬の使用有無に留意することがとても大切だと思います。この免疫抑制薬の治療に起因するリンパ増殖性疾患ですが、診療する医師が必ずしもその薬剤を処方した医師とは限りません。その理由は、医療機関の機能分化が進む中、患者が処方医とは別の医療機関を受診する可能性が多分にあるからです。また、免疫抑制薬を処方した医療機関を受診した際も、外来トリアージや総合案内で、患者を処方医の外来ではなく、初診外来等に回してしまうこともあります。さらに、リンパ増殖性疾患は、全身症状や口腔・咽頭症状、肺病変、皮膚病変を呈することが指摘されています。そのため、リンパ増殖性疾患を訴える患者が、内科だけではなくさまざまな診療科を受診する可能性があります。日常診療で免疫抑制薬を使用しない診療科の先生方も、薬剤によるリンパ増殖性疾患を認識しておくことは、とても意義があると考えます。1)得平 道英ほか. 臨床血液. 2019;60:p932-943.2)内田 雄大ほか. 臨床神経. 2018;58:p485-491.3)吉原 良祐ほか. 臨床リウマチ. 2017;29:p164-172.4)犬塚 絵里ほか. 口咽科. 2017;30:p51-59.5)西尾 綾子ほか. 耳鼻咽喉科臨床. 2011;104:p143-150.

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第112回 規制改革推進会議答申で気になったこと(前編)タスクシフトへの踏み込みが甘かった背景

「新型コロナは医療関連制度の不全を露呈させた」と答申こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週の過酷な皇海山登山の身体へのダメージがことのほか大きかったため、今週末は街で、映画を2本観て過ごしました。話題の2作、「シン・ウルトラマン」と「トップガン マーヴェリック」です。「シン・ウルトラマン」は庵野 秀明氏が企画・脚本・総監修ということで期待して観たのですが、今一つでした。「ウルトラマンの内面にまで迫った」と高く評価する映画評もありますが、個人的には少々理屈っぽく、かつ怪獣(禍威獣)も宇宙由来のものが主体で、これではウルトラマンではなくウルトラセブンではないか、と落胆した次第です。一方の「トップガン マーヴェリック」は、前作から36年ぶりの新作ですが、トム・クルーズの立ち位置(前回はやんちゃな戦闘機乗り、今回はやんちゃな若者を導く教官)や、前回エピソードの活かし方、圧倒的な空中戦のシーンなど、素晴らしい出来でした。時節柄、戦争や“敵国”の描き方への批判もあるようです。しかし、娯楽作としては群を抜いた映画だと感じました。映画評論家(で時代劇研究家)の春日 太一氏は、5月27日付の日本経済新聞夕刊の「シネマ万華鏡」で、「『トップガン』のファンなら誰もがそう夢想する何もかもを、本作は最高レベルで提示してくれる」と激賞しています。まったく同感です。個人的には、冒頭場面で主人公マーヴェリックが、36年前も乗っていたカワサキのオートバイ、GPZ900Rに今も乗っていることに、映画の作り手のこだわりを感じました。この映画はできるだけスクリーンが大きいIMAXシアターで観ることをお勧めします。さて、今回は政府の規制改革推進会議(議長:夏野 剛・近畿大学特別招聘教授/情報学研究所長)が5月27日に取りまとめた答申、「規制改革推進に関する答申~コロナ後に向けた成長の「起動」~」1)について書いてみたいと思います。同答申は、医療改革のためだけのものではありませんが、「新型コロナは医療デジタル化の遅れをはじめ医療関連制度の不全を露呈させた」と指摘、医療や介護に関する規制改革の項目が大きな柱となっています。医療DXの基盤整備に重点「医療・介護・感染症対策」については、表のような内容です。画像を拡大する表:規制改革推進会議答申に盛り込まれた「医療・介護・感染症対策」に関する項目「医療DXの基盤整備(在宅での医療や健康管理の充実)」のため、オンライン診療については、1)デジタルが不得意な高齢者らがデイサービス施設や公民館など、自宅以外でも受診できるようにする、2)患者の本人確認手続きを簡略化する…、ことなどを求めています。また、コロナ対応で特例的に認めている薬局での抗原検査キット販売の本格解禁も求めています。事前のオンライン注文を条件に、販売資格を持つ人がいないコンビニなどでも一般用医薬品を受け取れる制度の検討も要請しました。いずれも、コロナ禍で問題となった自宅での検査・療養態勢の充実のためです。政府は近く、この答申を反映した規制改革実施計画を閣議決定、同計画が今後の規制改革の指針となります。ワーキング・グループ委員は在宅医療寄り規制改革推進会議は、企業や医療現場などの生産性向上に向け、首相の諮問に応じて規制の緩和を議論する場です。内閣府に設置されており、行政改革推進会議などと併せてデジタル臨時行政調査会が統括しています。テーマごとにワーキング・グループを設けて関係省庁や有識者が参加して改革案をつくります。現在は「人への投資」「医療・介護・感染症対策」「デジタル基盤」など、5つの部会があります。医療・介護・感染症対策ワーキング・グループには5人の専門委員がおり、印南 一路・慶應義塾大学総合政策学部教授、大石 佳能子・株式会社メディヴァ代表取締役社長、佐々木 淳・医療法人社団悠翔会理事長・診療部長らが構成メンバーです。臨床の現場で働いているのは在宅医である佐々木氏のみです。大石氏は在宅医療も展開する用賀アーバンクリニックなどを運営する医療法人プラタナスの経営に関わるコンサルタント会社、メディヴァの社長ですが医師ではありません。ということで、専門委員は在宅医療の関係者に少々偏っている印象を受けます。タスクシェアは在宅現場の薬剤師の業務拡大のみそれはさておき、今回の答申で気になった点が2つあります。一つは、「医療人材不足を踏まえたタスクシフト/タスクシェアの推進」の項目です。タスクシフト/タスクシェアは、医師をはじめとする医療現場の働き方改革を進めていく中でとても重要な施策と考えられています。今回の規制改革推進会議の答申でも、人手不足が見込まれる介護施設で人員配置の基準緩和や、薬剤師などが看護の仕事の一部を担う「タスクシフト/タスクシェア」を求めてはいます。しかし、実際の医療現場の改革については、「在宅医療を受ける患者宅において必要となる点滴薬剤の充填・交換や患者の褥瘡への薬剤塗布といった行為を、薬剤師が実施すること」の検討を厚生労働省に求めたくらいで、特段踏み込んだ内容とはなっていません。「聖域になっていた医師の業務独占にもメスを入れるべきだ」と日経新聞医療関係職種のタスクシフト/タスクシェアについては、「第66回 医療法等改正、10月からの業務範囲拡大で救急救命士の争奪戦勃発か」でも詳しく書きました。2021年5月に成立した医療法等改正法によって、医師の負担軽減を目的に、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士の4職種の資格法が改正され、それぞれの職種の業務範囲が同年10月から拡大されました。昨年の規制改革推進会議の答申では、これらのタスクシフトの動きについて「規制改革実施計画通りの進捗を確認した。今後も引き続きフォローアップを行っていく」としていました。今回の答申についても、その先の大改革の提案を期待した向きもあったようですが、物足りない内容に終わっています。日本経済新聞の6月1日付の社説は「医療人材生かす幅広いタスクシェアを」というタイトルで、「医療従事者のタスクシェアはこれに限らず広く実現していくべきだ。例えば米国やカナダで、ワクチンを打つのは薬局の薬剤師の仕事だ。日本でも再教育を受けた薬剤師が打ち手になれば、感染症危機への対応力が高まる」、「聖域になっていた医師の業務独占にもメスを入れるべきだ。日本の看護師は医師の指示がないと湿布を貼ることすらできない。(中略)能力のある看護師は自らの裁量で一定の医行為を行えるよう法改正すべきだ」と、今回の答申の不十分さを厳しく指摘しています。診療看護師が医師の指示なしで診療行為ができるようになれば答申でタスクシフト/タスクシェアの項目が在宅における薬剤師の業務範囲拡大だけに留まったのは、夏の参議院選挙を前に日本医師会を刺激したくなかったから、との見方もあるようです。また、内容が在宅医療関係だけに絞られたのは、先述したようにワーキング・グループのメンバーに在宅医療の関係者が多かったことも関係しているかもしれません。私自身は、日医が“内紛”や会長選でバタバタしている今こそ、大胆なタスクシフト/タスクシェアの内容を盛り込むべきではなかったかと考えます。特に重要なのは、看護師業務の大胆な拡大でしょう。2017年4月に厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が報告書を取りまとめました。同報告書は医師と他の医療職間で行う「タスク・シフティング(業務の移管)、タスク・シェアリング(業務の共同化)」を提言、新たな診療看護師(NP)の養成や、薬剤師による調剤業務の効率化、フィジシャン・アシスタント(PA)の創設などを盛り込みました。しかし、日本における診療看護師の制度自体はそれから大きくは変わっていません。今でも、2015年に創設された「特定行為に係る看護師の研修制度」に基づき、あらかじめ作成した手順書に沿って、特定行為をはじめとする診療行為しか行うことはできません。医師の働き方改革が叫ばれる中、多忙な医師の業務を軽減するには、診療看護師に相当の業務をシフトし、米国などにならって医師の指示がなくても一部の診療行為や医薬品の処方までできるようにすることだと思いますが、皆さんどう思われますか。併せて、老健施設の施設長も看護師が担えるようにすれば、介護の現場も大きく変わると思うのですが……。今回の答申で気になったもう一つは、薬(処方薬の市販化、SaMD)に関してです。それについては次回で。(この項続く)参考1)規制改革推進に関する答申 ~コロナ後に向けた成長の「起動」~/規制改革推進会議

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小児の中等症~重症尋常性乾癬、イキセキズマブは長期で有効・安全

 世界中の小児・青少年の約1%が尋常性乾癬にさらされているというが、また1つ朗報がもたらされた。中等症~重症の尋常性乾癬を有する小児に対し、生物学的製剤イキセキズマブの投与について、108週の長期的な有効性と安全性が確認されたことを、米国・ノースウェスタン大学フェインバーグ校のAmy S Paller氏らが報告した。 患者報告に基づくアウトカム改善と客観的測定による完全な皮膚クリアランスが示され、得られた奏効率は試験期間中維持されていた。また安全性は、同一集団において以前に報告された所見と一致しており、イキセキズマブ治療の既知の安全性プロファイルと一致していたという。JAMA Dermatology誌2022年5月号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症の尋常性乾癬を有する小児におけるイキセキズマブの有効性と安全性を評価する多施設共同無作為化試験「IXORA-PEDS試験」を行った。 被験者は、6~18歳未満、中等症~重症の尋常性乾癬を有し、スクリーニング時およびベースラインにおいてPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア12以上、static Physician's Global Assessment(sPGA)スコア3以上、乾癬の影響を受ける体表面積(BSA)が10%以上で、光線療法または全身療法の対象患者であり、局所療法ではコントロール不良の乾癬を有している患者を適格とした。 被験者は、体重ベース用量のイキセキズマブを4週ごとに投与する群またはプラセボ投与群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。12週間のプラセボとの比較検討後に、患者は48週間の非盲検下でのイキセキズマブ維持療法を受けた(12~60週)。その後に最終的に108週まで試験は延長された。またサブ試験として、60週以降のイキセキズマブ無作為化中止試験の評価が行われた。 108週時点の有効性のアウトカムは、ベースラインからの75%(PASI 75)、90%(PASI 90)、100%(PASI 100)改善の達成患者の割合、sPGAスコア0~1または0達成患者の割合、およびItch Numeric Rating Scaleスコアがベースラインから4ポイント以上の改善であった(いずれも対レスポンダーで算出)。安全性アウトカムは、有害事象(AE)の評価(治療関連の緊急的AE、重篤AE、とくに注目すべきAEなどを含む)、および症状を認める身体領域のベースラインからの改善などであった(いずれも対レスポンダーで算出)。 カテゴリーアウトカムに関する紛失データは、修正nonresponder imputation(NRI)法を用いて補完が行われた。データ解析はintention-to-treatを原則とし、2021年5月~10月に行った。 主な結果は以下のとおり。・総計171例(平均年齢13.5歳[SD 3.04]、女児99例[57.9%])が、イキセキズマブ群(115例)またはプラセボ群(56例)に無作為に割り付けられた。・166例が維持療法期に組み込まれ、うち139例(83.7%)が108週の試験を完了した。・主要および副次エンドポイントは108週まで維持された。PASI 75を達成した患者割合は91.7%(86/94例)、PASI 90は79.0%(74/94例)、PASI 100は55.1%(52/94例)、sPGA0または1達成割合は78.3%(74/94例)およびsPGA0達成割合は52.4%(49/94例)であった。Itch Numeric Rating Scaleスコア4ポイント以上改善を報告した患者は55/70例(78.5%)であった。・108週時点で、爪乾癬の消失を報告した患者割合は68.1%(19/28例)、掌蹠乾癬の消失は90.0%(9/10例)、頭皮乾癬の消失は76.2%(63/83例)、性器乾癬の消失は87.5%(21/24例)であった。・試験期間の48週~108週の間に、炎症性腸疾患やカンジダ感染症の新規症例などは報告されず、新しい安全性に関する所見は認められなかった。

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コロナ罹患後症状、中年者に多い/厚労省アドバイザリーボード

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、6月1日に第86回の会議を開催し、その中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の遷延症状に関する研究2題が報告された。中等症以上の患者を対象とした研究では、退院後12ヵ月後でも13.6%の対象者に何らかの罹患後症状が存在していた。 また、もう一方の長期合併症の実態把握と病態生理解明の研究では、12ヵ月後でも疲労感、呼吸困難、筋力低下、集中力低下などの症状が続いていた。退院後、12ヵ月後でも13.6%に何らかの罹患後症状 「COVID-19後遺障害に関する実態調査(中等症以上対象)」(研究代表:横山 彰仁氏[日本呼吸器学会/高知大学 教授])は、わが国の中等症以上のCOVID-19の、特に呼吸器関連における他覚・自覚症状の遷延(いわゆる後遺症)の実態とバイオマーカーなどの予測因子を検討するとともに心疾患の影響(潜在性/顕性心筋炎)についても検討したもの。【研究概要】対象:2020年9月~2021年9月にCOVID-19で入院した中等症以上の患者(20歳以上で同意が得られた者)調査施設:全国55施設(n=1,003例)方法:退院後3ヵ月後に受診し、医師の問診(罹患後症状)、アンケート(睡眠、不安・抑鬱、QOL)、肺機能検査、胸部CTを施行。罹患後症状が残る場合はさらに3ヵ月後に受診し、最長12ヵ月間フォロー。【研究の結果】・肺CT画像所見 3ヵ月の時点で画像所見は遷延することが多かったが、12ヵ月の時点で6.3%まで低下していた。胸部CT異常(主治医判定)がある群は無い群と比べて、呼吸困難や筋力低下の割合が多く、肺拡散能も低下していた。・肺機能 肺機能低下の遷延程度は重症度に依存、肺拡散能が障害されやすかった。・自覚症状 筋力低下、呼吸困難、倦怠感の順に多く、時間経過に伴って頻度は低下した。罹患後症状のうち、筋力低下と息苦しさは明確に重症度に依存していた。・心臓への影響(対象31例) 退院3ヵ月後に心臓MRIで評価したところ、42%で心障害を認め、26%で心筋炎の基準を満たした。また、左室心筋の短軸方向の収縮が有意に低下していた。・リスク因子についての検討 3ヵ月後の呼吸器系罹患後症状について、多変量解析で検討したところ、重症度と既存の呼吸器疾患が独立した因子であった。肺機能検査異常に関しては年齢、重症度、バイオマーカーであるセレクチンリガンドを有するKL-6(SLAK)が寄与していた。まとめ 退院後12ヵ月の時点で、何らかの罹患後症状は13.6%、肺機能検査異常は7.1%、胸部CT検査異常は6.3%で残存していた。中年者(41~64歳)には罹患後症状が多い傾向が明らかに 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」(研究代表者:福永 興壱氏[慶應義塾大学呼吸器内科教授])では、わが国におけるCOVID-19の長期合併症の実態把握と病態生理の理解のために行われた。【研究概要】対象:2020年1月~2021年2月にCOVID-19 PCRもしくは抗原検査陽性で入院した18歳以上の患者調査施設:全国27施設(n=1,200)方法:関連する診療科の専門家の意見を統合した症状に対する問診項目を網羅的に作成し、研究対象から自覚症状について回答を得た。国際的に確立した各種質問票を用いた多面的かつ高精度の調査研究を実施。【研究の結果】・患者背景 男性679例、女性387例と男性が多く、年代は50代以上が多く、わが国のCOVID-19臨床を反映した背景となっていた。・重症度 軽症(無症状含む)が247例、中等症Iが412例、中等症IIが226例、重症が100例であり、軽症および中等症Iの患者を多く含んでいた。・遷延する症状の影響 1つ遷延症状が存在すると健康に関連したQOLは低下し、不安や抑うつ、COVID-19に対する恐怖、睡眠障害を自覚する傾向は強まった。・遷延症状の経時的経過 代表的な24症状(例:倦怠感、呼吸困難、筋力低下など)の多くは経時的に低下傾向を認めた。・遷延症状の12ヵ月後の経過 12ヵ月後に5%以上残存していた遷延症状は次の通り。疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下(8%)、集中力低下(8%)、睡眠障害(7%)、記憶障害(7%)、関節痛(6%)、筋肉痛(6%)、咳(5%)、痰(5%)、脱毛(5%)、頭痛(5%)、味覚障害(5%)、嗅覚障害(5%)。・年齢による特徴 中年者(41~64歳)は他の世代と比較して罹患後症状が多い傾向を認めた。個別の症状として、12ヵ月時点で咳、痰、関節痛、筋肉痛、筋力低下、眼科症状は高齢者に多く、感覚過敏、味覚障害、嗅覚障害、脱毛、頭痛は若年者に多く、罹患後症状の分布に世代間での差異を認めた。・性差による特徴 3ヵ月時点では女性で男性と比べて咳、倦怠感、脱毛、頭痛、集中力低下、睡眠障害、味覚障害、嗅覚障害などさまざまな症状が高頻度で認められた。一方、12ヵ月時点で咳、痰、関節痛、筋肉痛、皮疹、手足のしびれが男性で高頻度となり、全体の頻度としては性差が減少した。・重症度による特徴 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は酸素需要のなかった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。全体での罹患後症状の有症状率は酸素需要有りが45.7% (6ヵ月)、36.1% (12ヵ月) 、酸素需要無しが37.7% (6ヵ月)、31.8%(12ヵ月)であった。重症度による頻度の差は10%未満であった。まとめ 1,000例を超える日本最大規模の罹患後症状に関する研究を実施、臨床の実情を反映したものとして有用性の高い基盤データを構築した。※本研究では、非感染者との比較は行っておらず、結果の解釈には注意が必要である。

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モデルナアームが発現しやすい人は?/自衛隊中央病院

 モデルナ社の新型コロナワクチン(mRNA-1273ワクチン、商品名:スパイクバックス筋注)接種により一時期話題となった「モデルナアーム」。このモデルナアームの原因が遅発性大型局所反応(DLLR:delayed large local reaction)*と言われるも詳細は不明であった。しかし、今回、自衛隊中央病院皮膚科の東野 俊英氏らはDLLRがIV型アレルギーを原因として生じるアレルギー性接触皮膚炎に類似している可能性があること、女性は男性より5.3倍も発症しやすいことなどを突き止めた。このようにモデルナアームの原因や発症しやすい対象者が特定できれば、今後、この副反応を回避する対応ができそうだ。本研究はJAMA Dermatology誌オンライン版2022年6月1日号に掲載されたほか、自衛隊中央病院のホームページでも報告している。*ワクチン接種後、7日程度経過した後に接種部位周囲が赤くなったり、腫れたり、硬くなったりする副反応。痛みやかゆみ、灼熱感などを伴うこともある。モデルナアームの原因と言われるDLLR発生率は男性より女性で優位に高い 本研究は、モデルナ社ワクチンmRNA-1273(以下、ワクチン)接種後の性別と年齢およびDLLRの感受性との関連を調べるため、5人の経験豊富な皮膚科医が、2021年5月24日~11月30日に2回目接種のために新型コロナワクチン接種会場へ出向いた1,273例(4〜6週間前に初回投与接種)を対象にインタビューを実施し、ワクチン初回投与後にDLLRの症状を経験したかどうかを評価した。 モデルナアームの原因と言われるDLLRの感受性と性別や年齢との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・本横断研究の対象者5,893例のうち男性は3,318例(56.3%、年齢中央値55歳[IQR:38~68歳])、女性は2,575例(43.7%、年齢中央値50歳[IQR:34~67歳])だった。・インタビューによると、747例(12.7%)がワクチン初回投与後にDLLR症状を経験したが、症状は軽度であったため、ワクチン禁忌とはみなされなかった。・DLLRの発生率は、男性(5.1%[170例])よりも女性(22.4%[577例])で有意に高かった(OR:5.30、95%信頼区間[CI]:4.42~6.34)。・その発生率を年齢層別でみると、18〜29歳で9.0%(81例、参照値)、30〜39歳で14.3%(129例、OR:1.68、95%CI:1.25~2.26)、40〜49歳で15.8%(136例、 OR:1.89、95%CI:1.41~2.53)、50〜59歳で14.9%(104例、OR:1.76、95%CI:1.29~2.40)、60〜69歳で12.6%(182例、OR:1.45、95%CI:1.10~1.91)であり、30歳以上での発生率は30歳未満と比較して有意に高かった。一方で、70歳以上での発生率は10.5%(115例、OR:1.19、95%CI:0.88~1.56)と18~29歳の発生率と有意差が認められなかった。・年齢調整後の発症平均時間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に早かった(6.97 ±1.26日vs. 7.32±1.44日、β=0.345日、95%CI:0.105~0.586、p=0.005)。・一方で、発症時間と性別調整後の年齢との間に関連はなかった(β=0.003日、95%CI:-0.003〜0.009日、p=0.30)。・年齢調整後の症状の平均期間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に短かった(4.83±3.27日vs. 5.98±4.43日、β= 1.535日、95%CI:0.901〜2.169日、p

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若年性認知症の診断5年前からみられる症状

 若年性認知症には多くの根本的な病因があり、初期症状の不均一性が大きいといわれている。そのため、一般開業医が若年性認知症を発見することは困難である。オランダ・マーストリヒト大学のStevie Hendriks氏らは、若年性認知症の診断前段階でみられる一般的な初期症状の特定を試みた。その結果、若年性認知症患者では診断5年前より異なる症状が認められるが、各症状は他疾患においても認められるため、一般開業医が若年性認知症を鑑別診断することは容易ではないとしながらも、症状カテゴリーの組み合わせにより、若年性認知症を検知できる可能性が示唆されたことを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年5月13日号の報告。 プライマリケア・レジストリのコホート内ケースコントロール研究として実施した。対象は、若年性認知症患者89例とそれにマッチした若年性認知症でない対照群162例。診断5年前までの症状について、両群間で比較を行った。本研究に含まれた変数は、プライマリケア国際分類のコード、一般開業医のノートより抽出された症状、グループに分類された症状であった。症状の時間的軌跡を分析するため一般化方程式推定を用い、症状カテゴリー数の差を分析するためロジスティック回帰およびROC曲線分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・若年性認知症患者は、対照群と比較し、診断5年前より認知症状、診断4年前より情動症状、診断3年前より社会的症状、診断2年前より行動症状、診断1年前より日常機能障害の発現が多かった。・ROC曲線分析では、一般開業医で2つ以上の症状カテゴリーが報告された場合、若年性認知症の診断正答率が最も高く、感度(85%)、特異度(77%)において最良であることが示唆された。

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抗体薬物複合体SG、複数治療歴のあるHR+転移乳がんでもPFS改善(TROPiCS-02)/ASCO2022

 内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法による複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)が、医師選択治療(TPC)に比べ有意に無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、第III相TROPiCS-02試験で示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 欧米では、SGは2種類以上の前治療歴を有する転移のあるトリプルネガティブ乳がんに対して承認されている。HR+/HER2-進行乳がんに対しては、第I/II相IMMU-132-01試験において、客観的奏効率(ORR)31.5%、PFS中央値5.5ヵ月、全生存期間(OS)中央値12ヵ月、管理可能な安全性プロファイルが確認されている。今回、HR+/HER2-転移乳がんに対する第III相TROPiCS-02試験の結果が報告された。・対象:HR+/HER2-の転移または局所進行した切除不能の乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、ORR、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、患者報告アウトカム、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2022年1月3日)で、SG群272例、TPC群271例であった。内臓転移例は両群共に95%、転移後の6ヵ月以上の内分泌療法歴は両群共に86%、CDK4/6阻害薬治療歴は12ヵ月以下ではSG群59%、TPC群61%、12ヵ月超ではSG群39%、TPC群38%、化学療法歴の中央値は両群共に3ラインだった。・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月とSG群で改善し(HR:0.66、95%CI:0.53~0.83、p=0.0003)、6ヵ月PFS率は順に46.1%、30.3%、12ヵ月PFS率は21.3%、7.1%であった。サブグループ解析では、化学療法歴3ライン以上、内臓転移あり、65歳以上を含めて、SG群のPFSベネフィットが示された。・OSは、SG群13.9ヵ月、TPC群12.3ヵ月で有意差はなかったが(HR:0.84、95%CI:0.67~1.06、p=0.14)、今回は1回目の中間解析(全3回予定)であり、まだデータがmatureではなく現在フォローアップ中である。・ORRはSG群21%、TPC群14%(オッズ比:1.63、p=0.03)、CBRはSG群34%、TPC群22%(オッズ比:1.84、p=0.002)とどちらもSG群で高く、DOR中央値はSG群7.4ヵ月、TPC群5.6ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は全体でSG群74%、TPC群60%で、最も多かったのは好中球減少症(SG群51%、TPC群38%)と下痢(9%、1%)だった。SGの安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であった。間質性肺疾患はSG群ではみられず(TPC群1%)、心機能不全および左室機能不全は両群共にみられなかった。  今回の結果から、Rugo氏は「複数の治療歴があり治療選択肢が限られている乳がん患者において、SGは統計学的に有意で臨床的に意味のあるベネフィットを示し、可能な治療選択肢として考慮されるべき」と述べた。

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