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英語で「その方針に賛成です」は?【1分★医療英語】第56回

第56回 英語で「その方針に賛成です」は?I will review the CT images today and let you know the treatment plan.(CT画像を確認してから、治療方針をお伝えしますね)Okay. That sounds like a plan.(わかりました。その方針に賛成です)《例文1》医師How about staying one more night and going home tomorrow?(もう一晩泊まって明日退院はどうでしょう?)患者That sounds like a plan!(いいですね!)《例文2》医師Let me check your incisions when you get here.(来院したときに、傷のチェックをしましょう)患者That sounds like a plan.(わかりました)《解説》この表現は、医療現場では主に患者さんが使うことが多いです。治療方針であったり、今後の流れを説明したりした際、患者さんが同意した場合に“That sounds like a plan”という答えが返ってきます。直訳すると「良い計画のように聞こえる」なのですが、ニュアンス的にはカジュアルな「その方針に賛成です」という意味になります。医療現場に限らず、友人と旅行の計画を立てているときなどにもまとめとして“That sounds like a plan!”といったように使うことができます。非常に便利な表現なので、ぜひ覚えて実際に使ってみてください。講師紹介

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第140回 long COVIDの偏見がまん延

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後に数週間や数ヵ月も続く不調・COVID-19罹患後症状(俗称:long COVID)の人のほとんどが社会からの偏見にも苛まれていることが英国での調査で浮き彫りになりました1,2)。英国の実に230万人がlong Covidを患っています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率は依然として高いことからその数は減っていません。long COVIDは治療がままならないこともその数の高止まりに加担しています。long COVID治療探しは一筋縄ではいかないようで、たとえば最近発表された試験結果ではプレドニゾロンのCOVID-19後嗅覚障害の改善効果は残念ながら認められませんでした3,4)。long COVIDの人はかなりの偏見に苛まれていると言われていますが、それがどれほどの負担になっているかはこれまで定かではありませんでした。そこで英国サウサンプトン大学等の研究者等は長引く不調でただでさえ生きづらくなっているlong COVIDの人がいわば泣きっ面に蜂の偏見でどれだけ難儀しているかを新たに開発された評価尺度を使って調べました。その試験はlong COVID患者団体(Long Covid Support)のからの意見も取り入れて設計されました。2年前の2020年のオンライン調査に参加した人にその1年後の2021年11月に案内を出し、以下の3種類の偏見に関する13の問いへの5択の回答をお願いしました。実際の偏見(enacted stigma):体調不良のせいで不当に扱われること内なる偏見(internalised stigma):自身の体調不良を恥じたり気にすること偏見の予感(anticipated stigma):体調不良で不利になると予想すること最終的に千人を超える1,166人から回答があり、そのほとんどを占める英国からの966人の情報が解析されました。解析の結果、ほぼ全員の95%が3種類の偏見のいずれか1つかそれ以上を少なくとも時々被っていました。また、8割近い76%の状況は深刻で、しばしばまたは常に偏見に直面していました。5人に3人(63%)は蔑ろにされたり付き合いを絶たれるなどの実際の偏見が少なくとも時々あり、91%はそういう実際の偏見の予感が少なくとも時々ありました。また、9割近い86%は体調不良を恥じたり、役立たずと感じたり、変わり者だと思い込むなどのlong COVID絡みの内なる偏見に少なくとも時々苛まれていました。そのような驚くばかりの偏見まん延2)はlong COVIDの人に肩身の狭い思いを強いているらしく、5人に3人(61%)はlong COVIDを打ち明けることに少なくとも時々は細心の注意を払っていました。また、3人に1人(34%)はlong COVIDを打ち明けたことを後悔したことが少なくとも時々ありました。今回の研究で使われた13の問い(“自身のlong COVIDのせいで相手が気まずそうだったことがある”等)への5択(ない、稀にある、時々ある、しばしばある、いつもそう)の回答結果に基づいてlong COVID患者が被る偏見のほどを表す検査が開発されています。long COVIDの人が被る偏見のほどの推移や、偏見を減らす取り組みの効果のほどを10分とかからず完了するその検査Long Covid Stigma Scale(LCSS)を使ってこれからは把握することができます。LCSSの開発を指揮した今回の試験の著者の1人Marija Pantelic 氏によると、long COVIDにつきまとう偏見はそれらの患者を害するのみならず社会や医療も損なわせもするようです。先立つ研究で喘息、うつ、HIVなどの他の長患いの偏見が社会をひどく不健全にすることがすでに示されています。偏見の恐れは人々を医療やその他の支援からおそらくより遠のかせ、その積み重ねが心身を蝕んでいきます。今回の試験では意外にもlong COVIDの診断を受けている人の方がそうではないlong COVIDの人に比べて偏見をより被っていました。その理由はわかりませんが、診断を受けた人ほど自身の体調を他の人により知らせているからなのかもしれません。その理由も含め、偏見がどこでどうやって発生するのか、どういう人が偏見を持ちやすいのか、どういうlong COVID患者が偏見を被りやすいのかを今後の試験で調べる必要があります2)。参考1)Pantelic M, et al. PLoS ONE . 2022;17:e0277317.2)Most people with long Covid face stigma and discrimination / Eurekalert3)Schepens EJA, et al.BMC Med. 2022;20:445.4)Prednisolone does not improve sense of smell after COVID-19 / Eurekalert

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TS-1、ER+HER2-乳がん術後療法に適応拡大/大鵬

 大鵬薬品工業は2022年11月24日、経口抗がん薬TS-1(一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、商品名:ティーエスワン配合カプセルT20・T25/ティーエスワン配合顆粒T20・T25/ティーエスワン配合OD錠T20・T25)について、新たな適応として「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳における術後薬物療法」の承認を、厚生労働省より取得したことを発表した。TS-1がエストロゲン受容体陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法としてiDFS延長 今回の承認は、医師主導臨床試験である「エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳に対するTS-1術後療法」(POTENT試験)の結果に基づく。同試験では、エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法において、標準的な治療法である内分泌療法(5年間)を対照群とし、この内分泌療法(5年間)と経口抗がん薬TS-1(1年間)を併用する治療法を試験群として、再発抑制効果が高まることを無作為化比較第III相試験により検証することが目的とされた。主な評価項目は、浸潤性疾患のない生存期間、全生存期間および安全性などで、2012年2月~2016年2月の症例登録期間中に全国の乳がん専門施設139施設から1,959例が登録された。 POTENT試験の結果より、TS-1と内分泌療法の併用は、再発中間リスク以上のエストロゲン受容体陽性かつHER2陰性の原発性乳がん患者に対し、臨床的に意義のある浸潤性疾患のない生存期間(Invasive Disease Free Survival:iDFS)の延長を認めた。また、安全性はこれまでにTS-1で報告されているプロファイルと同様であり、POTENT試験で新たな懸念は確認されなかった。<TS-1製品概要>・販売名:ティーエスワン配合カプセルT20・T25ティーエスワン配合顆粒T20・T25ティーエスワン配合OD錠T20・T25・一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム・効能・効果:胃、結腸・直腸、頭頸部、非小細胞肺、手術不能又は再発乳、膵、胆道、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳における術後薬物療法・用法・用量:<ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳における術後薬物療法>内分泌療法剤との併用において、通常、成人には次の投与量を朝食後および夕食後の1日2回、14日間連日経口投与し、その後7日間休薬する。これを1クールとして最長1年間、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜増減する。初回基準量を超える増量は行わないこと。体表面積1.25m2未満:40mg/回*体表面積1.25m2以上1.5m2未満:50mg/回体表面積1.5m2以上:60mg/回*初回基準量(テガフール相当量)・承認取得日:2022年11月24日■関連記事POTENT試験の探索的解析結果、monarchEの適格基準でも検討

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片頭痛に対する有酸素運動や筋トレの有効性~メタ解析

 いくつかの臨床試験において、片頭痛のマネジメントに対するさまざまな運動プロトコールを用いた介入の有効性が報告されている。しかし、それぞれの運動介入による有効性を直接比較した研究はほとんどない。米国・スタンフォード大学のYohannes W. Woldeamanuel氏らは、1ヵ月当たりの片頭痛回数の減少に対し運動介入の有効性を評価した臨床試験を含めた、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、筋力トレーニングは片頭痛の軽減に最も有効な運動介入であり、高強度の有酸素運動がそれに次ぐことが報告された。The Journal of Headache and Pain誌2022年10月13日号の報告。 2022年7月30日までに公表された文献をWeb of Science、PubMed、Scopusなどのデータベースより検索した。運動プロトコールには、有酸素運動と筋力/レジスタンストレーニングの両方を含めた。アウトカムの指標として、介入群と対照群におけるベースラインから介入終了までの1ヵ月当たりの片頭痛回数の平均差(MD)および95%信頼区間(CI)を用いた。直接的および間接的な比較による有効性のエビデンスは、ランダム効果モデルネットワークメタ解析により統合した。中強度の有酸素運動、高強度の有酸素運動、筋力/レジスタンストレーニングの3つの運動プロトコールについて、有効性の比較を行った。本研究には、片頭痛治療薬(トピラマート、アミトリプチリン)と運動介入の有効性を比較した研究も含めた。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias version 2(RoB2)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・21研究より、片頭痛患者1,195例(平均年齢:35歳、男女比:1:6.7)が抽出された。・ペアワイズ比較27回および間接比較8回を行った。・介入効果は、以下の順で認められた。 ●筋力トレーニング(MD:-3.55、95%CI:-6.15~-0.95) ●高強度の有酸素運動(MD:-3.13、95%CI:-5.28~-0.97) ●中強度の有酸素運動(MD:-2.18、95%CI:-3.25~-1.11) ●トピラマート(MD:-0.98、95%CI:-4.16~2.20) ●プラセボ ●アミトリプチリン(MD:3.82、95%CI:-1.03~8.68)・RoB2の評価では、対象研究の85%はバイアスリスクが低く、ITT解析のバイアスリスクが高かったのは15%であった。・バイアスリスクが高い要因として、ランダム化のプロセスおよびアウトカムデータ処理の欠落が含まれていた。

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コロナ感染、繰り返すほど重症化・後遺症リスク増

 新型コロナウイルスへの複数回の感染により、死亡と後遺症リスクは2倍超、入院リスクは3倍超になることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによるコホート研究で明らかになった。新型コロナウイルスの感染による死亡や後遺症のリスクは知られているが、1回感染後の再感染によってそれらのリスクが高くなるかどうかは不明であった。Nature Medicine誌2022年11月10日掲載の報告。コロナ2回目以上の複数回感染群では後遺症発現のHRが2.10 調査は、2020年3月1日~2022年4月6日の米国退役軍人省の医療データベースを利用し、コロナ1回目感染者44万3,588例、コロナ2回目以上の複数回感染者4万947例(コロナ2回目感染者3万7,997例[92.8%]、コロナ3回目感染者2,572例[6.3%]、コロナ4回以上感染者378例[0.9%])、対照群として1回も感染していない未感染者533万4,729例を抽出し、死亡率、入院率、後遺症発現率を解析した。 コロナ複数回感染による死亡や後遺症のリスクを解析した主な結果は以下のとおり。・コロナ1回目感染群と比較して、コロナ2回目以上の複数回感染群では、全死因死亡のハザード比(HR)は2.17(95%信頼区間[CI]:1.93~2.45)、入院のHRは3.32(95%CI:3.13~3.51)であった。・同じく1つ以上の後遺症発現のHRは2.10(95%CI:2.04~2.16)で、腎障害(HR:3.55、95%CI:3.18~3.97)、肺障害(3.54、3.29~3.82)、血液凝固異常(3.10、2.77~3.47)、心血管障害(3.02、2.80~3.26)、消化器障害(2.48、2.35~2.62)、倦怠感(2.33、2.14~2.53)、精神的な不調(2.14、2.04~2.24)糖尿病(1.70、1.41~2.05)、筋骨格系障害(1.64、1.49~1.80)、神経学的障害(1.60、1.51~1.69)であった。これらは主に急性期に認められたが、コロナ再感染から6ヵ月後でも認められた。・これらのリスクは、新型コロナウイルスワクチンの接種状況に関係なく認められた。・コロナ感染回数が増えるほど後遺症リスクは上昇した。未感染群と比較して、コロナ1回目感染群のHRは1.37(95%CI:1.36~1.38)、コロナ2回目感染群のHRは2.07(95%CI:2.03~2.11)、コロナ3回目以上感染群のHRは2.35(95%CI:2.12~2.62)であった。 これらの結果より、同氏らは「新型コロナウイルスへの複数回感染は、初回の感染よりも死亡、入院、後遺症リスクが高まることが明らかになった。すでに1回感染した人は、コロナ2回目の感染を予防することでさらなる健康問題を防ぐことができる」とまとめた。

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2型DM患者の高TG血症へのペマフィブラート、心血管イベント抑制効果は?/NEJM

 軽度~中等度の高トリグリセライド血症を伴い、HDLコレステロールとLDLコレステロールの値が低い2型糖尿病患者において、ペマフィブラート(選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体αモジュレーター)はプラセボと比較して、トリグリセライド、VLDLコレステロール、レムナントコレステロール、アポリポ蛋白C-IIIの値を低下させたが、心血管イベントの発生は抑制しなかったことが、米国ブリガム&ウィメンズ病院のAruna Das Pradhan氏らが実施した「PROMINENT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2022年11月24日号に掲載された。24ヵ国のイベント主導型試験 PROMINENT試験は、日本を含む24ヵ国876施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照イベント主導型試験であり、2017年3月~2020年9月の期間に患者の登録が行われた(Kowa Research Instituteの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病と診断され、軽度~中等度の高トリグリセライド血症(空腹時トリグリセライド値200~499mg/dL)を伴い、HDLコレステロール値が40mg/dL以下の患者であった。また、患者は、ガイドラインに基づく脂質低下療法を受けているか、有害事象なしでスタチン療法を受けることができず、LDLコレステロール値が100mg/dL以下の場合に適格とされた。 被験者は、ペマフィブラート(0.2mg錠、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、非致死的心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈血行再建術、心血管死の複合とされた。非アルコール性脂肪性肝疾患の頻度は低い 1万497例(年齢中央値64歳、女性27.5%)が登録され、ペマフィブラート群に5,240例、プラセボ群に5,257例が割り付けられた。1次予防の集団(年齢が男性50歳以上、女性55歳以上でアテローム動脈硬化性心血管疾患がない)が33.1%、2次予防の集団(年齢18歳以上で、アテローム動脈硬化性心血管疾患が確立されている)は66.9%であった。 ベースラインで95.7%がスタチンの投与を、80.1%がACE阻害薬またはARBの投与を、9.3%がGLP-1受容体作動薬を、16.8%がSGLT2阻害薬の投与を受けていた。空腹時トリグリセライド中央値は271mg/dL、HDLコレステロール中央値は33mg/dL、LDLコレステロール中央値は78mg/dLだった。追跡期間中央値は3.4年。 4ヵ月の時点におけるプラセボ群と比較した脂質値のベースラインからの変化率の差は、トリグリセライドが-26.2%(95%信頼区間[CI]:-28.4~-24.10)、VLDLコレステロールが-25.8%(-27.8~-23.9)、レムナントコレステロールが-25.6%(-27.3~-24.0)、アポリポ蛋白C-IIIが-27.6%(-29.1~-26.1)と、いずれもペマフィブラート群で低かった。一方、HDLコレステロールは5.1%(4.2~6.1)、LDLコレステロールは12.3%(10.7~14.0)、アポリポ蛋白Bは4.8%(3.8~5.8)であり、ペマフィブラート群で高かった。 有効性の主要エンドポイントは、ペマフィブラート群が572例(3.60/100人年)、プラセボ群は560例(3.51/100人年)で発生し(ハザード比[HR]:1.03、95%CI:0.91~1.15、p=0.67)、両群間に差はなく、事前に規定されたすべてのサブグループで明確な効果修飾(effect modification)は認められなかった。 重篤な有害事象の発生には両群間に有意な差はみられなかった(ペマフィブラート群 14.74/100人年vs.プラセボ群14.18/100人年、HR:1.04、95%CI:0.98~1.11、p=0.23)。一方、ペマフィブラート群では、腎臓の有害事象(10.67/100人年vs.9.55/100人年、HR:1.12、95%CI:1.04~1.20、p=0.004)、静脈血栓塞栓症(0.43/100人年vs.0.21/100人年、HR:2.05、95%CI:1.35~3.17、p<0.001)の発生率が高く、非アルコール性脂肪性肝疾患(0.95/100人年vs.1.22/100人年、HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.02)の発生率が低かった。 著者は、「ペマフィブラート群で観察されたアポリポ蛋白BとLDLコレステロール値の上昇が、トリグリセライド値やレムナントコレステロール値の低下による有益性を打ち消した可能性は否定できない」としている。

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第125回 新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省2.子育て支援充実に、時短勤務者へ新たな給付制度を検討へ/内閣府3.コロナ感染拡大で少子化さらに進行、出生数80万人以下に/厚労省4.かかりつけ医機能について医療機関が情報開示へ/全世代型社会保障構築会議5.初の国産、新型コロナワクチンの承認申請へ/塩野義6.認知症の新薬普及に向けた体制整備を関連6学会が提言1.新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省11月27日に民放番組に出演した加藤勝信厚労大臣は、厚生労働省において、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけの見直しに向け、本格的な検討に入っていることを認めた。現在、臨時国会で審議されている感染症法改正案には、新型コロナウイルス感染症の類型の見直しを「速やかに検討する」と附則が加えられており、来月上旬の成立を待って、厚生労働省は成立後の速やかな検討を開始するとしている。(参考)新型コロナ「5類」引き下げ、本格検討へ 特例措置見直しも 厚労省(毎日新聞)新型コロナ「5類」への引き下げ 加藤厚労相「規定に則って早期に検討(FNN)2.子育て支援充実に、時短勤務者へ新たな給付制度を検討へ/内閣府すべての世代で支え合う社会保障の制度の実現を目指すため、内閣府は第9回全世代型社会保障構築会議を11月24日に開催した。子育て支援のために、育児中に時短勤務を選んだときに新たな給付を行う仕組みや、育児休業を取った後の職場復帰を容易にするため、休業期間中でも保育所の枠を確保できるシステムを構築する方向性をまとめるように求めた。今後は、論点の整理として年内に報告書を取りまとめ、来年度の「骨太の方針」などに盛り込む方針となっている。一方、具体的な財源についてはこれからの検討となる見込み。(参考)第9回全世代型社会保障構築会議(内閣府)全世代型社会保障実現へ 育児で時短勤務に給付の仕組み創設へ(NHK)少子化は急ピッチで進むのに…停滞する子ども関連予算の財源議論(毎日新聞)3.コロナ感染拡大で少子化さらに進行、出生数80万人以下に/厚労省厚生労働省は、令和4年9月までの人口動態統計の速報値を発表した。これによると、今年9月までに国内で新たに生まれた子供の数は外国人も含めて速報値で59万9,636人と、前年度の同期間の63万569人と比較して3万933人少なかった。このペースのままであれば、わが国の出生数は80万人を切ることになる。その一方、死亡者数は今年9月までに12万7,040人と去年の9月までの11万5,706人より1.1万人多く、人口減少も加速していることが明らかとなっている。出産する可能性の高い15~49歳の女性は1990年より減少しており、晩婚化に加え、新型コロナウイルス感染症により、婚姻数の減少などが背景にあるとみられる。(参考)9月までの出生数59万9千人余 年間80万人下回る過去最少ペース(NHK)出生数、コロナで悲観シナリオに迫る(日経ビジネス)人口動態統計速報(令和4年9月分)4.かかりつけ医機能について医療機関が情報開示へ/全世代型社会保障構築会議11月24日に開催された全世代型社会保障構築会議で、「かかりつけ医機能」の制度について、年末までにまとめる報告書に盛り込む論点整理が行われた。今後、この報告書の内容を盛り込んだ関連する法律の改正案を来年の通常国会に提出する見込み。かかりつけ医機能が発揮される制度整備のため、早急な実現に向けて、以下の項目の整理を求めた。かかりつけ医機能の定義は、現行の「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」をベースに検討。日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握し、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行うこと。休日・夜間の対応、他の医療機関への紹介・逆紹介、在宅医療、介護施設との連携や複数の医療機関が緊密に連携して実施することを求める。かかりつけ医機能の活用は、医療機関、患者それぞれの手上げ方式とし、医療機関は自らが有するかかりつけ医機能について、住民に情報提供を行うとともに、自治体がその機能を把握できるようにする仕組み。高齢者については幅広い診療・相談に加え、在宅医療、介護との連携に対するニーズが高いことを踏まえ、これらの機能をあわせもつ医療機関を自治体が把握できるようにする。地域全体で必要な医療が提供できる体制が構築できるよう、地域の関係者が、その地域のかかりつけ医機能に対する改善点を協議する仕組みの導入。(参考)全世代型社会保障構築会議の論点整理(全世代型社会保障構築会議)かかりつけ医の役割を法律明記へ 厚労省 コロナで「曖昧」指摘(毎日新聞)「かかりつけ医」を法律で定義、医療機関が満たす項目を情報公開へ…厚労省が方針(読売新聞)「かかりつけ医機能」地域ごとに改善点協議 全世代型構築会議が論点整理(CB news)5.初の国産、新型コロナワクチンの承認申請へ/塩野義塩野義製薬株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチンを11月24日に「成人における初回免疫(1回目、2回目接種)および追加免疫(3回目接種)によるCOVID-19の予防」を適応として、日本国内における製造販売承認申請を行った。今回のワクチンは、現在、使われているmRNAワクチンとは異なり、遺伝子組換えタンパクワクチンであり、国内の製薬企業による初の国産ワクチンの開発であり、早期の承認を目指す。政府はこれまで、国内のワクチン開発の支援を行うため、ワクチン生産体制等緊急整備事業を通して早期供給を促す支援をしてきており、同社にも476億円を交付しており、その成果が実った。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の国内における製造販売承認申請について(塩野義)開発状況について(厚労省)塩野義製薬 新型コロナワクチンの国内製造販売承認申請 国産で初(ミクスオンライン)塩野義製薬 新型コロナワクチンの承認申請 国内開発で初(NHK)6.認知症の新薬普及に向けた体制整備を、関連6学会が提言日本老年精神医学会、日本認知症学会など認知症に関連する6学会は、エーザイ社の新薬「レカネマブ」などの認知症の新薬開発が進む中、こうした新薬が実用化された場合に、患者の早期診断の手段が限られることや治療費が高額になるため、普及に向けて医療整備体制が必要とする提言を共同で発表した。現時点では、早期診断に用いられるPET(陽電子放射断層撮影)検査は保険適用外であり、今後、新薬の承認とともに早期の診断体制の確立と、費用対策効果について検討を求めている。(参考)アルツハイマー新薬、実用化へ「高額医療費巡る議論を」…認知症関連6学会が提言(読売新聞)認知症新薬の実用化に備え、医療体制整備を 関連6学会が提言(毎日新聞)

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高齢者におけるアスピリンによる消化性潰瘍出血の1次予防に対するピロリ除菌の影響(解説:上村直実氏)

 心筋梗塞や脳梗塞の予防に用いられている抗血栓薬の中でも、使用頻度が最も高い低用量アスピリン(LDA)の最大の課題は有害事象である消化性潰瘍出血であり、LDAにより出血性潰瘍が増加することがよく知られている。予防に関しては、出血性潰瘍の既往歴を有する患者の再発性潰瘍出血がヘリコバクターピロリ(ピロリ)除菌により抑制されることもメタアナリシスで確かめられているが、出血の1次予防に対する除菌の影響に関しては一定の見解が得られていない。 今回、1次予防に対するピロリ除菌の効果に関する新たな知見が、2022年11月のLancet誌に発表された。一般医家でフォローされている60歳以上のLDA常用者のうち、尿素呼気試験で判定されたピロリ陽性者5,367例を対象として除菌群と非除菌群に分けた大規模な無作為化比較試験(RCT)の結果、除菌後の追跡期間が2.5年未満では潰瘍出血による入院を有意に抑制したが、その後、機序は不明であるが、その予防効果は次第に失せていったというものである。 今回の研究はプライマリケア医が中心となって施行した大規模なRCTであるが、除外基準や併用薬剤の禁止など、厳密に規定された研究デザインで行われる臨床薬理試験と異なり、主治医の判断によりLDAの休薬や非ステロイド消炎剤(NSAID)やPPIの使用も許されるといった、実際の日常診療に即したものである。試験のデザインが緩やかなものであっても、精度の低さを補う実臨床に役立つ臨床研究論文がトップジャーナルに掲載されうることを示すものといえる。 今回の研究結果と従来の厳密な研究デザインにより得られた薬理学的エビデンスを総合的に判断すると、高齢のアスピリン常用者に関しては、通常の場合、黒色便に注意することを患者に指導するとともに定期的に貧血の検査を行いつつ診療し、消化性潰瘍出血が致命的となりうる患者や潰瘍リスクの高い潰瘍既往歴を有する者やNSAID併用者に対しては、除菌治療に加えてPPIなどの酸分泌抑制薬を加えた管理が必要と考えられた。 最後に、高齢者におけるポリファーマシーに関して一般的な注意点として、NSAIDが消化性潰瘍自体を惹起し治癒を遷延化する作用を有するのに対して、LDAは潰瘍出血を促進・遷延することなど、使用薬剤の薬理作用に精通した診療が重要である。

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第24回 痛み診療のコツ まとめ【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第24回 痛み診療のコツ まとめ本連載では、痛みの原因やその内容について23回にわたって概説してまいりました。前回は治療編(2)として、社会復帰に向けた痛みのリハビリテーション療法ついてお話しました。今回は4年余りにわたってお話しました痛みについてのまとめとしてお話ししたいと思います。患者さんには「痛み」の理解を痛みを訴える患者さんにおきましては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は個々の患者さんによって実に多種多様です。そのために、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、光線療法、インターベンショナル療法など患者さんに合った有効な治療法を選択する必要があります。それと共に患者さんには、痛みについてのご理解を得ていただくことが大切です。「天気痛」とか「気象痛」とか言われております自然による脅威も存在します。昨今に感じるような気温、湿度、気圧などの激しい変化は、当然ながら、自律神経系の不安定性を増強して、痛みの感受性を増強し、より痛みを訴えられる患者さんが多くなっております。そのような場合には、自分でできる鎮痛法、たとえば鎮痛薬を許容範囲内で増やすとか受診の機会を多く持つとかなどをさまざまな対処法があることをご理解していただくことは、患者さんの不安感を取り除き、安心感や自律神経系の改善に繋がり、痛みの緩和のためにも良い方向に働きます。第5のバイタルサインは「痛みの有無とその程度」実臨床の場におきましては、体温、血圧、脈拍、呼吸の基本的な4つのバイタルサインと共に、第5番目のバイタルサインとして、「痛みの有無とその程度」に関心が持たれるようになってきました。しかも、近年、新しく慢性疼痛に対する適応が認められました強オピオイド製剤や新たなトラマドール製剤も使用されるようになってきたこともあり、ますます慢性疼痛への対策の必要性が注目されてきております。2021年10月2日には、わが国における痛み関連8学会(日本疼痛学会、日本ペインクリニック学会、日本慢性疼痛学会、日本腰痛学会、日本運動器疼痛学会、日本口腔顔面痛学会、日本ペインリハビリテーション学会、日本頭痛学会)によります日本痛み関連学会連合が発足し、より強い絆の下で連合として痛みに立ち向かう姿勢を広く世に示してきております。また、国際疼痛学会では、新たな痛みの定義を発表し、より理解しやすい痛みの概念が出来上がっています。それに加えて、新しい痛みの概念として、“nociceptive pain”が提唱され、やはり、日本痛み関連学会連合が「痛覚変調性疼痛」と和訳して、その解釈としては「侵害受容の変化によって生じる痛みであり、末梢侵害受容器の活性化を引き起こす組織損傷またはその恐れがある明確な証拠、あるいは痛みを引き起こす体性感覚系の疾患や障害の証拠が存在しないにもかかわらず生じる痛み」として定義されました。このシリーズの初めに記載した痛みの種類としての侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛に加えて痛覚変調性疼痛が登場しました。この痛覚変調性疼痛は単独もありうるかとも思いますが、他の疼痛たとえば侵害受容性疼痛と同時に訴えることもあります。この疼痛の位置付けとしては、中枢性感作などの脳機能の変化から発生する痛覚の変調による痛みと考えられております。高齢社会では痛みへの早期介入が重要痛みは、患者さん本人しかわからないし、患者さんの我慢に頼る時期は終わっています。特に長い人生を歩まなくてはならない高齢社会では、できるだけ早期に疼痛治療を開始することが痛みの軽減に連なり、その後の患者さんの人生にとっても良い結果を導くことと確信しております。本連載が、わが国において痛みを有されておられる患者さんの診断と治療へのさらなる発展に対して、多少なりともお役立てられれば望外の喜びです。今回がこの痛みシリーズの最終回となります。24回のご愛読、誠にありがとうございました。1)三木健司. ペインクリニック. 2022;43:1021-1022.

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事例012 アトピー性皮膚炎疑いでのTARC検査で査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、アトピー性皮膚炎疑いの患者に、「D015 血漿蛋白免疫学的検査の(19)TARC(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)検査」を施行したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。査定の理由には、「TARC検査は、アトピー性皮膚炎およびCOVID-19の確定病名以外では原則認められない」と付記されていました。査定内容を確認するために、医師に問い合わせたところ「炎症が著しかったためにアトピー性皮膚炎を強く疑い、確定診断検査に合わせて行った」と説明を頂きました。査定時の付記を確認するためにTARC検査の留意事項を参照したところ、「アトピー性皮膚炎の重症度評価の補助を目的として、血清中のTARC量を測定する場合に、月1回を限度として算定できる」とありました。アトピー性皮膚炎の確定診断後の検査であることが分かります。医師には、2022年度診療報酬改定時に新しく示された留意事項を示して、レセプトには確定診断を付与いただくようにお願いしました。レセプトシステムには、アトピー性皮膚炎およびCOVID-19に「疑」が付与されている場合には、確定診断が必要と表示されるように改修し査定対策としています。

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COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、ファイザー)は、経口投与の利便性と、入院または死亡に対する高い有効性のため、多くのハイリスク患者にとって好ましい治療薬とされている。しかし、本剤は併用禁忌の薬剤が多数あるため、使用できる患者は限られる。フランス・Assistance Publique-Hopitaux de ParisのNicolas Hoertel氏らの研究グループは、重症化リスクの高いCOVID-19患者において、ニルマトレルビル/リトナビルが禁忌である割合について調査した。本結果は、JAMA Network Open誌2022年11月15日号のリサーチレターに掲載された。 本剤の禁忌については、リトナビルはチトクロームP450 3A(CYP3A)酵素を阻害し、CYP3Aの薬物代謝に高度に依存する薬剤の濃度を上昇させることで、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。また、強力なCYP3A誘導薬との併用により、ニルマトレルビルの濃度が著しく低下し、抗ウイルス効果が失われる可能性がある。重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も本剤の禁忌とされた。これらの医学的禁忌は、重症化リスクが高いCOVID-19患者に広くみられる可能性がある。 本研究では、2020年1月24日~2021年11月30日の期間で、パリ大学の36の大規模病院におけるCOVID-19入院患者6万2,525例において、米国食品医薬品局(FDA)がニルマトレルビル/リトナビルを禁忌とした条件に当てはまる患者の割合が調査された。被験者は、性別、年齢(65歳以下vs.66歳以上)、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10)の主章に基づく併存疾患ごとに層別化された。本研究は、STROBEレポートガイドラインに準拠して実施された。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値52.8歳(四分位範囲[IQR]:33.8~70.5)、女性3万1,561例(50.5%)、男性3万964例(49.5%)、入院後28日以内に死亡した患者4,861例。・COVID-19入院患者6万2,525例のうち、9,136例(14.6%)がニルマトレルビル/リトナビルの医学的禁忌を有していた。・禁忌を有していた患者の割合は、男性18.0%(5,568例/3万964例)、女性11.3%(3,577例/3万1,561例)で、男性のほうが女性よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、66歳以上26.9%(5,398例/2万64例)、65歳以下8.8%(3,738例/4万2,461例)で、高齢者のほうが若年者よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、併存疾患のある患者のほとんどの疾患で37.0%以上、併存疾患のない患者で3.9%(1,475/3万7,748例)となり、併存疾患のある患者のほうが、ない患者よりも高かった。・死亡した4,861例のうち、2,463例(50.7%)が禁忌を有していた。・死亡した患者で禁忌を有していた者の割合は、男性、女性、高齢者、若年者ではそれぞれ50%前後であったが、併存疾患のある者ではほとんどの疾患で60~70%台で、腎尿路生殖器系の疾患では91.5%であった。・禁忌を有していた患者で最も多かった条件は、重度の腎機能障害(3,958例、6.33%)と、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤の使用(3,233例、5.15%)であった。 本研究の限界として、本剤が禁忌でない患者でも、症状発現から5日以上経過した場合や、供給量が限られる場合があるため、一部の患者に使用できない可能性があることや、ワクチン接種、人種・民族、体重に関する情報は得られていないことなどが挙げられている。著者は「本結果は、ニルマトレルビル/リトナビル以外の新型コロナ治療薬の供給を予測することや、治療の選択肢の研究を継続することの必要性を裏付けている」としている。

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脳のエイジングはブラックボックス、画像で認知症予防を実現『MVision』

 脳画像のAI分析によるデータ解析ソフトの開発や医療機関向けの導入・運用サービス提供を行う株式会社エム(以下、エム社)は、第4回ヘルスケアベンチャー大賞において、「脳MRI画像解析に基づく全脳の構造別体積・健康状態の可視化、認知症予防」と題し、それらを実現できる技術を紹介して、見事に大賞を受賞した。本大賞は今年、5つの企業・団体と個人1名が最終審査会まで勝ち抜き、接戦を繰り広げた。 今回、エム社の創業者である森 進氏(ジョンズ・ホプキンズ大学医学部放射線科教授)に、開発経緯から技術提供の将来展望について話を聞いた。画像解析から認知症医療をアップデート 2025年、日本は超高齢化社会を迎える。これは軽度認知障害(MCI)の発症者が約5人に1人(約700万人)と過去最大にまで増加することを意味し、国も認知症対策として新オレンジプランを掲げている。また、先日にはエーザイ・バイオジェンがMCIとアルツハイマー病を対象とした第III相CLARITY AD検証試験で主要評価項目を達成するなど、症状抑制に対する動きは活発である。 しかし、海外で研究活動を行っている森氏は、認知症が生活習慣病の一種として認識が変わりつつあるにもかかわらず、高血圧症や肥満症のように予防対策が講じられておらず、認知症の予防は疎漏である点、日本だけが実施している脳ドックの画像データ、いわば健常者のデータが検査後にお蔵入りして画像価値を最大限に利活用できていない点から着想を得て、認知症の一次予防のために「脳の健康状態を可視化」させることに注目した。これについて同氏は「脳の萎縮状況というのは健康診断でも観察されず、医療において可視化されてこなかった」と述べ、「予防のための管理指標を存在させるべき」と認知症の一次予防がアンメット・メディカル・ニーズであることを強調した。 そこで、同氏らが開発したのが脳画像の自動解析技術である『MVision』だ。彼らは“日本のみに存在する健常者の巨大データ”を活用し、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学の脳画像の自動解析技術を用いて、全脳をAI解析する世界初の認知症関連ソフトウェアの開発に成功した。このソフトウェアにより、画像分析を自動化させ、脳全体の構造物を505にセグメントすることで脳の体積や形状を数値化する。また、数値による客観評価により同年代との比較や経年評価できるため、患者の予防に対するやる気に繋がるという。現在、日本の5施設10万件以上の脳ドックから得られた健常者画像データを解析中で、年齢別の平均と分布から脳萎縮リスクの算出が可能だ。実際に若年層のデータを見ると、すでに萎縮が進行していた症例も見られたという。 また、同氏は今回の取材に対し、「認知症の解明には長期で良質のデータが必要。そして、それをいかに早く集め始めるかが大切。これらがスタートアップとして急速に事業を立ち上げた理由かもしれない」と開発および創業の経緯を吐露。導入した際に直面した問題点として、「実際の医療現場では、“脳の萎縮では認知症は診断できない”ことから、萎縮を見てもしょうがない、となってしまう。萎縮があれば認知症になるという個人レベルのエビデンスがないという意見は正しいが、これは目の前の患者に対し診断や治療を考えるときの概念」と、医療の壁を指摘した。その一方で、「萎縮は認知症患者に統計学的に非常に強く見られる特徴なのは確固たる事実であり、萎縮の強い人は認知症患者に多く見られるというのも統計学的事実である」とし「40~70歳の健康診断は、未病段階でのリスク検出と早期生活改善が主要な目的である。その観点から、自分の脳の萎縮を知るということは認知症の大切なリスクマネジメントと考える」と説明した。体重計で体重管理をするように、脳の管理を 将来のリスクの話より現在の病気が優先される時代がゆえに、せっかく脳MRIを撮っても既病の早期検出といった二次予防にしか使われていないことになる。「だが、健康管理のために体重計に乗り、体重を測っている。これと同じように考えたら、30代までに自分の“基礎値”を知り、脳の経時変化を追うこと、脳の健康管理をしないのは不条理なのではないだろうか。われわれが開発した『MVision』は1回だけ撮影するだけでも意味はあるが、脳萎縮は3年でも大きく変化が見られることから継続することで真価を発揮する。若いうちのベストの状態をログに残せるのは今のうちだけなので、若年層こそ一度は受けて欲しい」と強調した。そんな背景もあり、企業や病院施設だけではなく、若年層へのアプローチも大切にしていきたいと話した。その一方で、65歳を超える層にとっても、認知症発症の3~5年前から萎縮が急速に進む傾向が多くの研究で報告されていることから、1~2年に一度の測定を推奨している。 今後の展望として、主に医療機関に本システムを提供し、健診受診者のオプションを想定している。この一次予防のための撮影は通常の脳ドックに組み込まれているものを使用するため、受診者にも医療者にも負担が少ない。検査実績の目標受診者数は「23年5月までに月間3,000~4,000人、年間4万~5万人」を目指し、全国への普及のために「1~2年でまずは首都圏から地方中核都市を中心に全国で受診できる基盤づくりを達成したい」と同氏は意気込みを語った。

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T-DXd、HER2陽性乳がん2次治療に適応拡大/第一三共

 第一三共株式会社は2022年11月24日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳」の効能又は効果に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本適応は、HER2陽性の再発・転移乳がん患者への2次治療を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast03)の結果に基づくもので、2021年12月に国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行っていた。

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ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

 日本感染症学会は11月22日、「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」を発刊した。今回のCOVID-19に対する薬物治療の考え方の改訂ではエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ錠)の緊急承認を受け、薬物治療における注意点などが追加された。 日本感染症学会のCOVID-19に対する薬物治療の考え方におけるゾコーバ投与時の主な注意点は以下のとおり。・COVID-19の5つの症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])への効果が検討された臨床試験における成績等を踏まえ、高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討する・重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべきということに留意して使用する・重症化リスク因子のある軽症例に対して、重症化抑制効果を裏付けるデータは得られていない・SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから遅くとも72時間以内に初回投与する・(相互作用の観点から)服用中のすべての薬剤を確認する(添付文書には併用できない薬剤として、降圧薬や脂質異常症治療薬、抗凝固薬など36種類の薬剤を記載)・妊婦又は妊娠する可能性のある女性には投与しない・注意を要する主な副作用は、HDL減少、TG増加、頭痛、下痢、悪心など このほか、抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミングの項には、「重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対症療法で経過を見ることができることから、エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与可能な症状を軽減する効果のある抗ウイルス薬については、症状を考慮した上で投与を判断すべきである」と、COVID-19に対する薬物治療の考え方には記載されている。

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SGLT2阻害薬、DM有無問わずCKD進行と心血管死を抑制/Lancet

 SGLT2阻害薬は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者のみならず慢性腎臓病または心不全を有する患者においても、糖尿病の状態、原発性腎疾患または腎機能にかかわらず、腎臓病進行および急性腎障害のリスクを低下させることが、英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C)による解析の結果、報告された。Lancet誌2022年11月19日号掲載の報告。大規模二重盲検プラセボ対照試験15試験の約9万例についてメタ解析 研究グループは、MEDLINEおよびEmbaseを用い、2022年9月5日までに発表されたSGLT2阻害薬の臨床試験(SGLT1/2阻害薬の併用を含む、年齢18歳以上の成人を対象とした二重盲検プラセボ対照試験[クロスオーバー試験は除く]、各群500例以上、試験期間6ヵ月以上)を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 2人の研究者が独立して、各試験の要約データを査読付き論文から抽出するか、または結果が公表されていない試験については治験責任医師よりデータの提供を受け、コクランバイアスリスクツール(バージョン2)を用いてバイアスリスクを評価した。また、逆分散重み付けによるメタ解析を行い、治療効果を推定した。 主な有効性の評価項目は、腎臓病進行(無作為化時からの推定糸球体濾過量[eGFR]50%以上の持続的低下、持続的なeGFR低値、末期腎不全、または腎不全による死亡)、急性腎障害、ならびに心血管死または心不全による入院の複合であった。その他の評価項目は、心血管死および非心血管死、主な安全性評価項目はケトアシドーシスおよび下肢切断とした。 文献検索の結果、15試験が特定され、このうち追跡期間が6ヵ月未満の2試験(inTandem3、DARE-19)を除外した13試験(DECLARE-TIMI 58、CANVAS Program、VERTIS CV、EMPA-REG OUTCOME、DAPA-HF、EMPEROR- REDUCED、EMPEROR- PRESERVED、DELIVER、SOLOIST-WHF、CREDENCE、SCORED、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)が解析対象となった。無作為化を受けた患者は計9万413例で、このうち糖尿病の状態が不明であった4例を除く9万409例(糖尿病患者7万4,804例[82.7%]、非糖尿病患者1万5,605例[17.3%]、各試験のベースラインの平均eGFRの範囲37~85mL/min/1.73m2)が解析に組み込まれた。対プラセボで腎臓病進行リスクを37%低下、心血管死リスクを14%低下 SGLT2阻害薬はプラセボと比較して、腎臓病進行リスクを37%低下させた(相対リスク[RR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.58~0.69)。その低下の程度は、糖尿病患者(RR:0.62)と非糖尿病患者(0.69)でほぼ同じであった。慢性腎臓病を有する患者を対象とした4件の試験(CREDENCE、SCORED、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)では、原発性腎疾患の診断にかかわらず腎臓病進行リスクのRRは類似していた。 また、SGLT2阻害薬はプラセボと比較して、急性腎障害のリスクを23%(RR:0.77、95%CI:0.70~0.84)、心血管死または心不全による入院のリスクを23%(0.77、0.74~0.81)低下させ、いずれも糖尿病の有無にかかわらず同様の効果がみられた。 SGLT2阻害薬は、心血管死リスクも低下させたが(RR:0.86、95%CI:0.81~0.92)、非心血管死リスクの有意な低下は認められなかった(0.94、0.88~1.02)。これら死亡の評価項目に関するRRは、糖尿病患者と非糖尿病患者で類似していた。 すべての評価項目において、各試験のベースラインの平均eGFRに関係なく、結果はほぼ同様であった。絶対効果の推定に基づくと、SGLT2阻害薬の絶対利益は、ケトアシドーシスや切断の重篤な危険性を上回った。

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発作性AF、冷凍アブレーションが持続性への移行を有意に抑制/NEJM

 未治療の発作性心房細動に対するクライオ(冷凍)バルーンアブレーションによる初期治療は、抗不整脈薬と比較して、3年間の追跡期間における持続性心房細動の発生率および心房頻脈性不整脈の再発率が低いことが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJason G. Andrade氏らがカナダの18施設で実施した医師主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「EARLY-AF試験」の結果、示された。心房細動は慢性化する進行性の疾患で、心房細動の持続は血栓塞栓症や心不全のリスクを増加させる。初期治療としてのカテーテルアブレーションは、心房細動の発症機序に作用し持続性心房細動への移行を抑制する可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2022年11月7日号掲載の報告。全例に心臓モニタを植え込み、3年間追跡 研究グループは、症候性の発作性心房細動および、無作為化前24ヵ月以内に1回以上心電図で記録された心房細動のエピソードを有し、クラスIまたはクラスIII抗不整脈薬による治療歴のない18歳以上の患者を、冷凍バルーンアブレーション群(以下、アブレーション群)または抗不整脈薬群に無作為に割り付けた。患者は、登録時に全例が植込み型心臓モニタを植え込み、データの自動送信は毎日、手動送信は毎週行われるとともに、治療開始後7日目の電話連絡、3、6、12ヵ月時およびその後は6ヵ月ごとの来院で、少なくとも3年間追跡された。なお、アブレーション群では、経口抗凝固療法をアブレーション後3ヵ月以上実施した。 主要評価項目は、持続性心房細動(7日間以上持続する、または48時間~7日間持続し停止に除細動を要した心房頻脈性不整脈)の初発、ならびに心房頻脈性不整脈(30秒以上の心房細動、心房粗動、心房頻拍)の再発、副次評価項目は不整脈負荷(心房細動の時間の割合)、QOL、救急外来受診、入院、安全性などであった。 2017年1月17日~2018年12月21日に計303例が登録され、154例がアブレーション群、149例が抗不整脈薬群に無作為に割り付けられた。冷凍バルーンアブレーション群で持続性心房細動への移行率が低い 3年間の追跡期間において、主要評価項目の持続性心房細動はアブレーション群で1.9%(3/154例)、抗不整脈薬群では7.4%(11/149例)に発生し(ハザード比[HR]:0.25、95%信頼区間[CI]:0.09~0.70)、心房頻脈性不整脈の再発はそれぞれ56.5%(87/154例)、77.2%(115/149例)に認められた(HR:0.51、95%CI:0.38~0.67)。 心房細動の時間の割合(中央値)は、アブレーション群で0%(四分位範囲[IQR]:0.00~0.12)、抗不整脈薬群で0.24%(0.01~0.94)であった。また、3年時にアブレーション群で5.2%(8例)、抗不整脈薬群で16.8%(25例)が入院していた(相対リスク:0.31、95%CI:0.14~0.66)。重篤な有害事象は、アブレーション群で7例(4.5%)、抗不整脈薬群で15例(10.1%)に認められた。

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うつ病の急性期治療期間と再発との関係~STAR*D研究の再解析

 うつ病の維持療法を行っている際に、再発を予測することは難しい。慶應義塾大学の久保 馨彦氏らは、うつ病の急性期治療において寛解を達成するまでの期間がその後の再発率や再発までの期間に及ぼす影響を検討した。その結果、抗うつ薬治療に対し早期に治療反応が認められるうつ病患者では、長期的に寛解を維持する可能性が高まることが示唆された。このことから著者らは、「寛解までに比較的長い期間を要する患者においては、再発予防のために細心の注意を払う必要がある」としている。Journal of Affective Disorders誌2023年1月1日号の報告。 分析データの収集には、Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression(STAR*D研究)のデータセットを用いた。citalopramによる治療(最長14週)で寛解を達成した非精神病性うつ病外来患者1,296例を対象に、12ヵ月間の自然主義的フォローアップ調査を実施した。2、4、6、9、12、14週時点で寛解を達成した患者におけるフォローアップ期間中の再発率および再発までの期間を比較するため、一元配置分散分析とJonckheere-Terpstra傾向検定を用いた。寛解および再発の定義は、それぞれ自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR)スコア5以下および11以上とした。 主な結果は以下のとおり。・再発率は、寛解達成までの期間別に有意な違いが認められた(F(5,1087)=4.995、p<0.001)。・再発率は、4週目(25.7%)で寛解を達成した患者が最も低く、12週目(42.4%)で寛解を達成した患者が最も高く、それぞれ有意な差が認められた(p=0.006)。・寛解達成までの期間と再発までの期間との間にも、有意な傾向が認められた(z=-6.13、p<0.001)。

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Pharmacoequity―SGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬は公正に処方されているか?-(解説:住谷哲氏)

 筆者は本論文で初めてpharmacoequityという用語を知った。「処方の公正性」とでも訳せばよいのだろうか。平等equalityと公正equityとの違いもなかなか難しいが、この用語の生みの親であるDr. Utibe R. Essienは、Ensuring that all individuals, regardless of race, ethnicity, socioeconomic status, or availability of resources, have access to the highest quality medications required to manage their health is “pharmacoequity”. と述べている1)。その意味するところを簡単に言えば、エビデンスに基づいた治療薬を必要とするすべての患者に公正に処方することを担保するのがpharmacoequityである、となる。 Essienが最初に報告したのは、心房細動患者に対するDOACをはじめとする抗凝固薬の処方率が人種race/民族ethnicityで異なり、白人に比較してアジア人と黒人で有意に低かった、とするものである2)。この研究も本論文と同じく対象患者は退役軍人保健局(Veterans Health Administration)の加入者であり、これが両論文のポイントであるが、すべての加入者に薬剤が無料または低価格で提供されるため、薬価によるバイアスがほとんどない。本論文は同様のアプローチで、心房細動患者に対する抗凝固薬の代わりに、2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方率を検討した研究である。その結果は、抗凝固薬の場合と同様に、SGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方率は白人に比較して黒人で有意に低率であった。 人種/民族が、なぜ抗凝固薬またはSGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方率と関連していたのかは、両研究では明らかになっていない。しかし心房細動患者に対する抗凝固薬の処方だけではなく、本論文によって2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方にも人種/民族が影響していることが明らかとなった。したがって、他のエビデンスに基づいた治療薬の処方においても同様の状況にある可能性は十分にある。EBMの実践が人種/民族によって影響される状況は公正とは言えないだろう。多民族国家ではないわが国ではこのあたりの状況に敏感ではないが、医療における公正性equity in medicine をいま一度よく考える契機となる報告である。

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第136回 ゾコーバがついに緊急承認、本承認までに残された命題とは

こちらでも何度も取り上げていた塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)がついに11月22日、緊急承認された。今回審議が行われた第5回薬事分科会・第13回医薬品第二部会合同会議も公開で行われたが、緊急承認に対して否定的意見が多数派だった前回に比べれば、かなり大人しいものになった。今回の再審議に当たって新たに塩野義製薬から提出されたデータは同薬の第II/III相試験の第III相パートの速報値だが、その内容については過去の本連載で触れたので割愛したい。審議内で一つ明らかになったのは第III相パートの主要評価項目、有効性の検証対象の用量、有効性の主要な解析対象集団が試験中に変更されていたことだ。もともと、エンシトレルビルでの主要評価項目は新型コロナ関連12症状の改善だったが、前回の合同会議で示された第IIb相パートの結果やオミクロン株の特性に合わせて、最終的な主要評価項目はオミクロン株に特徴的な5症状に変更されたという。これについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)側は、新型コロナは流行株の変化で患者の臨床像なども変化することから、主要評価項目の適切さを試験開始前に設定するのは相当の困難これら変更が試験の盲検キーオープン前だったとの見解で許容している。少なくとも第IIb相のサブ解析結果の教訓を生かした形だ。そして、今回の審議でまず“噛みついた”のは前回審議で参考人の利益相反(COI)状況などを激しく責め立てた山梨大学学長の島田 眞路氏だった(参考:第118回)。その要点は以下の2点だ。緊急承認の条件には「代替手段がない」とあるが、すでに経口薬は2種類ある日本人集団だけ(治験は日本、韓国、ベトナムで実施)での解析では症状改善までの期間短縮はわずか6時間程度でとても有効とは言い切れないこれに対して事務方からの回答は以下のようなものだ。国産で安定供給ができ、適応が重症化リスクを問わないので代替手段がないに該当する日本人部分集団で群間差が小さい傾向が認められたことについて、評価・考察を行うための情報には限りがあり、今後改めて評価する必要がある島田氏の日本人集団に関する指摘に関しては、そもそも臨床試験自体が3ヵ国全体の参加者で無作為化されていることを考えれば、日本人集団のみのサブ解析結果は参考値程度に過ぎず、申し訳ないが揚げ足取りの感は否めない。もっとも島田氏がこの事務局説明に対して「(重症化)リスクのない人に使えるから良いんじゃないかって、リスクのない人はちょっと風邪症状があるなら、風邪薬でも飲んどきゃ良いんですよ」と反論したことは大筋で間違いではない。ただし、過去の新型コロナ患者の中には、表向きは基礎疾患がないにもかかわらず死亡した例があることも考えると、さすがに私個人はここまでは断言しにくい。一方、参加した委員から比較的質問・指摘が集中したのがウイルス量低下の意義に関するものだ。議決権はない国立病院機構名古屋医療センターの横幕 能行氏は「(今回の資料では)感染あるいは発症から72時間以内に投与しないと、機序も含めた解釈ではウイルス活性を絶ち切る、もしくはそれに近い効果を得ることはできない。そして72時間以降の投与ではウイルス量の低下もしくは感染性の低下については基本的にはまったく効果がないと読める。感染伝播の阻止、早期の職場復帰などを考えると、ウイルス量もしくは感染性の低下に関する効果のこの点を十分に認識していただいた上で市中に出す必要があるかと思う」と指摘した。これに関して事務方からは「ウイルス量低下の部分は、確かに数値の低下が認められているものの、これがどの程度の臨床的意義を持つかについてはなかなか評価が難しい」というすっきりしない反応だった。現段階でのデータではPMDAも何とも言えないのも実情だろう。最終的には島田氏以外の賛成多数により緊急承認が認められたが、臨床現場での意義はやはり依然として微妙だ。過去にも繰り返し書いているが、エンシトレルビルは、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)と同じCYP3A阻害作用を有する3CLプロテアーゼ阻害薬であるため、併用禁忌薬は36種類とかなり多い。中には降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬といった中高年に処方割合の多い薬剤も多く、この年齢層で投与対象は少ないとみられる。そもそもこの層はモルヌピラビルやニルマトレルビル/リトナビルとも競合するため、これまでの使用実績が多いこれら薬剤のほうが選択肢として優先されるはずだ。となると若年者だが、催奇形性の問題から妊孕性のある女性では使いにくいことはこれまでも繰り返し述べてきたとおりだ。今回の緊急承認を受けて日本感染症学会が公表した「COVID-19に対する薬物治療の考え方第 15版」では、妊孕性のある女性へのエンシトレルビルの投与に当たっては▽問診で直前の月経終了日以降に性交渉を行っていないことを確認する▽投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認することが望ましい、と注意喚起がされている。しかし、現実の臨床現場でこれが可能だろうか? 女性医師が女性患者に尋ねる場合でも、かなり高いハードルと言える。となると、ごく一部の若年男性が対象となるが、これまで国も都道府県も重症化リスクのない若年者へはむしろ受診を控えるよう呼びかけている。もしこうした若年男性がエンシトレルビルの処方を受けたいあまり発熱外来に殺到するならば、感染拡大期には逆に医療逼迫を加速させてしまい本末転倒である。では前述のような見かけ上では重症化リスクがないにもかかわらず突然死亡に至ってしまうような危険性がある症例を選び出して処方できるかと言えば、そうした危険性のある症例自体が現時点ではまだ十分に医学的プロファイリングができていない。そもそも、エンシトレルビルの第III相パートの結果で明らかになったのはオミクロン株特有の臨床症状の改善であって、重症化予防は今のところ未知数だ。となると、後は重症化リスクのない軽症・中等症の中で臨床症状が重めな「軽症の中の重症」のようなやや頭の中がこんがらがりそうな症例を選ばなければならない。強いて言うならば、たとえば酸素飽和度の基準で軽症と中等症を行ったり来たりするような不安定な症例だろうか? ただ、今までもこうした症例で抗ウイルス薬なしで対処できた例も少なくないだろう。そして国の一括買い上げのため価格は不明だが、抗ウイルス薬が安価なはずはなく、多くの臨床医が投与基準でかなり悩むことになるだろう。ならば専門医ほどいっそ端から使わないという選択肢、非専門医は悩んだ末にかなり幅広く処方するという二極分化が起こりうる可能性もある。この薬がこうも悩ましい状況を生み出してしまうのは、前回の合同会議の審議でも話題の中心だった「臨床症状改善効果の微妙さ」という点にかなり起因する。今回の第III相パートの結果では、オミクロン株に特徴的な5症状総合での改善ではプラセボ対照でようやく有意差は認められたものの、有意水準をどうにかクリアしたレベル(p=0.04)だ。ちなみに、もともとの主要評価項目だった12症状総合では今回も有意差は認められなかった。さらに言うと、緊急承認後に塩野義製薬が開催した記者会見後のぶら下がり質疑の中で同社の執行役員・医薬開発本部長の上原 健城氏は、今回の試験では解熱鎮痛薬の服用は除外基準に入っておらず、第III相パートでは両群とも被験者の2~3割はエンシトレルビルと解熱鎮痛薬の併用だったことを明らかにしている。もちろんリアルワールドを考えれば、解熱鎮痛薬を服用していない患者のみを集めるのは難しいだろう。「(解熱鎮痛薬服用が症状判定の)ノイズになってしまってはいけないので、服用直後数時間はデータを取らないようにした」(上原氏)とのこと。ただし、解熱鎮痛薬の抗炎症効果を考えれば、今回の主要評価項目に含まれていたオミクロン株に特徴的な症状のうち、「喉の痛み」の改善などには影響を及ぼす可能性はある。そうなるとエンシトレルビルの「真水」の薬効は、ますます微妙だと言わざるを得ない。もちろん今回の第III相パートはそもそも9割以上の被験者がワクチン接種済みで、さらに2~3割が解熱鎮痛薬の服用があった中でも有意差を認めたのだから、それらがない前提ならばもっと効果を発揮できた可能性もあるのでは? という推定も成り立つが、そう事は簡単な話ではない。緊急承認という枠組みで今後の追加データ次第では1年後に本承認となるか否かという大きな命題が残っていることもあるが、「統計学的有意差を認めたから、少なくとも現時点での緊急承認はこれで一件落着」と素直には言い難いと私個人は思っている。

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