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ブースター接種後もコロナ重症化リスクが高い人は? /Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの2回接種のみと比較して、初回ブースター接種により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院/死亡(重症COVID-19)のリスクは低下するが、高齢者、複数の疾患あるいは特定の基礎疾患を有する人は、初回ブースター接種完了後でも、重症COVID-19のリスクは高いという。英国・セント・アンドルーズ大学のUtkarsh Agrawal氏らが、前向きコホート研究の結果を報告した。著者は、「重症化リスクが高い人々には、新規最適化されたワクチンによる2回目のブースター接種を優先的に行うとともに、COVID-19治療薬を用いるべきである」としている。Lancet誌2022年10月15日号掲載の報告。英国の約3千万人のデータを解析 研究グループは、イングランド、北アイルランド、スコットランドおよびウェールズでそれぞれTrusted Research Environment(TRE)に保存されている医療データセットを用い、前向きコホート研究を実施した。これらのデータセットには、個人の臨床的・人口統計学的特性、ワクチン接種の有無と種類、RT-PCR検査によるSARS-CoV-2感染歴、重症COVID-19に関する情報が含まれている。コホートは、2020年12月8日~2022年2月28日の間に、BNT162b2(ファイザー製)またはChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ製)ワクチンのみの2回接種を完了、あるいはその後BNT162b2またはmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンのブースター接種を受けた、18歳以上の成人で構成された。 主要評価項目は、2回目接種またはブースター接種14日以上経過後の重症COVID-19(COVID-19関連入院またはCOVID-19関連死)とした。年齢、性別、社会経済的貧困状態、居住地、BMI、SARS-CoV-2感染歴等で調整されたポアソン回帰モデルを用い、人口統計学的および臨床的因子と重症COVID-19との関連について、ワクチン接種後の時間に関して調整した率比(aRR)および95%信頼区間(CI)を算出。4つの各TREで解析を行った後、固定効果メタ解析を用いて推定値をプールし評価した。 2020年12月8日~2022年2月28日の間に、1,620万8,600人が2回接種を完了し、さらに1,383万6,390人がブースター接種を受けた。これらのうち、SARS-CoV-2オミクロン株(B.1.1.529)が優勢であった2021年12月20日~2022年2月28日の期間に発生した重症COVID-19に限定して解析した。ブースター接種後も高齢者、併存疾患5つ以上、免疫抑制状態、慢性腎臓病は高リスク 重症COVID-19は2回接種群で5万9,510例(0.4%、1,000人年当たり8.8件)、ブースター接種群で2万6,100例(0.2%、7.6件)に認められ、ブースター接種により重症COVID-19のリスクは減少した。 高齢者(80歳以上vs.18~49歳のaRR:3.60[95%CI:3.45~3.75])、併存疾患数が多い人(併存疾患5つ以上vs.なしのaRR:9.51[95%CI:9.07~9.97])、男性(男性vs.女性のaRR:1.23[95%CI:1.20~1.26])で重症COVID-19のリスクが増加した。また、特定の基礎疾患を有する人も重症COVID-19のリスクが高く、とくに免疫抑制剤の投与を受けている人(ありvs.なしのaRR:5.80[95%CI:5.53~6.09])、慢性腎臓病(ステージ5 vs.なしのaRR:3.71[95%CI:2.90~4.74])で高リスクであった。 一方、SARS-CoV-2感染歴は重症COVID-19のリスク低下と関連していた(ブースター接種の9ヵ月以上前の感染vs.感染歴なしのaRR:0.41[95%CI:0.29~0.58])。

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妊娠高血圧症候群、出生児は全死因死亡リスクが26%高い/BMJ

 妊娠高血圧症候群(HDP)、とくに子癇および重症妊娠高血圧腎症の母親から生まれた児は、最長41年間(中央値19.4年)の追跡期間における全死亡、ならびに消化器疾患、周産期に起因する疾患、内分泌・栄養・代謝疾患および心血管疾患による原因別死亡のリスクが高いことが、中国・復旦大学のChen Huang氏らによるデンマークの国民健康登録を用いたコホート研究の結果、示された。HDPは、母体および胎児の発病や死亡の主な原因の1つであるが、母親のHDPが児の出生から青年期以降の長期にわたる死亡に及ぼす影響については明らかになっていなかった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。1978~2018年の出生児を対象に解析 研究グループは、デンマークの出生登録(Danish Medical Birth Register)、患者登録(Danish National Patient Register)、死亡登録(Danish Register of Causes of Death)のデータを用い、コホート研究を実施した。 対象は1978~2018年にデンマークで出生した児で、出生日から死亡日、移住日、または2018年12月31日のいずれか早い日まで追跡した。 主要評価項目は死亡登録で確認された全死因死亡、副次評価項目は特定の死因による死亡である。Cox回帰分析を用い、児の性別、単胎出産、経産回数、児の誕生年、母親の年齢、妊娠中の喫煙、居住地、出身国、妊娠前の教育、出産時の所得、妊娠前のBMI、糖尿病歴(有、無)、児の出生前の親の心血管疾患歴などの共変量で調整し、母親のHDPへの曝露と死亡との関連について解析するとともに、その関連が妊娠高血圧腎症の診断時期や重症度、母親の糖尿病歴、母親の教育によって異なるかどうかについても検討した。HDPの母親から生まれた児は全死因死亡リスクが26%高い 解析対象児は243万7,718例で、このうち母親がHDPであったのは10万2,095例(4.2%)で、内訳は6万7,683例が妊娠高血圧腎症、679例が子癇、3万3,733例が高血圧であった。 最長41年間(中央値19.4年、四分位範囲:9.7~28.7)の追跡期間において、母親が妊娠高血圧腎症であった児781例(10万人年当たり58.94)、子癇であった児17例(133.73)、高血圧であった児223例(44.38)、HDPではなかった児1万9,119例(41.99)が死亡した。 全死因死亡の累積発生率は、母親がHDPであった児(2.06%、95%信頼区間[CI]:1.82~2.34)がHDPではなかった児(1.69%、1.65~1.73)より高く、群間差は0.37%(95%CI:0.11~0.64)で、母親のHDPの人口寄与割合は1.09%(95%CI:0.77~1.41)と推定された。全死因死亡リスクは母親がHDPであった児で26%高く(ハザード比[HR]:1.26、95%CI:1.18~1.34)、母親が妊娠高血圧腎症、子癇、高血圧でHRはそれぞれ1.29(95%CI:1.20~1.38)、2.88(1.79~4.63)、および1.12(0.98~1.28)であった。 母親がHDPであった児の原因別死亡のリスクは、消化器疾患(HR:2.09、95%CI:1.27~3.43)および周産期に起因する疾患(2.04、1.81~2.30)で2倍以上に達し、次いで内分泌・栄養・代謝疾患(1.56、1.08~2.27)、心疾患(1.52、1.08~2.13)でそれぞれ56%、52%増加した。 また、全死因死亡のリスク増加は、早期発症かつ重症の妊娠高血圧腎症(HR:6.06、95%CI:5.35~6.86)、HDPと糖尿病歴(1.57、1.16~2.14)、HDPと教育レベルの低さ(1.49、1.34~1.66)を有する母親の児でより顕著であった。

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論文検索で困惑…医療略語が複数存在する疾患【知って得する!?医療略語】第22回

第22回 論文検索で困惑…医療略語が複数存在する疾患ITPの和訳がよく分かりません。教えてください。ITPには現在「特発性血小板減少性紫斑病」「免疫性血小板減少性紫斑病」「免疫性血小板減少症」の3つの和訳が存在するようです。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】    ITP【日本語/英字】特発性血小板減少性紫斑病/idiopathic thrombocytopenic purpura免疫性血小板減少性紫斑病/immune thrombocytopenic purpura免疫性血小板減少症/immune thrombocytopenia【分野】    血液【診療科】   血液内科・小児科【関連】    ―実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。筆者が学生の頃、血小板減少疾患であるITPは、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)と覚えました。しかし、近年ITPが「免疫性血小板減少性紫斑病:immune thrombocytopenic purpura」と訳されているのを見かけるようになりました。医師国家試験関連の参考書を参照しても、ITPは「免疫性血小板減少性紫斑病」で記載されています。ITPの和訳は変更されたのでしょうか。調べてみると、成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019改訂版1)が存在します。また難病情報センターの登録難病の病名2)も特発性血小板減少性紫斑病となっています。一方、小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022年版というものも存在し、小児慢性特定疾病情報センターのサイトを見ると、免疫性血小板減少性紫斑病が告示病名3)となっています。また同サイトによれば、ITPは血小板減少があっても必ずしも紫斑を伴わないため「紫斑病」は除き、免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia: ITP)と表記するとの記載があります。しかし、それぞれの資料で疾患概要を調べてみると、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症は、同一の疾患です。ちなみに厚生労働省保険局が運営する傷病名マスター4)には、「特発性血小板減少性紫斑病」は存在しますが、「免疫性血小板減少性紫斑病」は登録されていません。ITPと同じように、同一疾患(病態)に複数の病名が存在して困惑するのが血球貪食症候群(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HPS)、血球貪食性リンパ組織球症 (hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)です5)。医学的知見の集積で、より適切な病名に変更されていくことに異義はありません。しかし、同一の疾患や病態に複数の病名が併存することは、少なからず混乱を生じます。まず、それぞれの病名で一見すると別疾患のように誤解を生じます。また、学会発表や論文作成をする時にどちらの用語を用いれば良いか迷いますし、症例集積などの臨床研究や文献検索においても支障を来すと考えられます。昨今注目される医療データ活用の観点でも、同一疾患に複数の病名が存在することは、医療データの活用を阻害しかねません。この問題は日本に医療用語の整備、統一病名変更を告知する組織がないことが原因だと思います。学会の垣根を越えて、用語の統一が図られることを切に願います。1)成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド 2019改訂版2)難病情報センター:特発性血小板減少性紫斑病(指定難病63)3)小児慢性特定疾病情報センター:免疫性血小板減少性紫斑病4)厚生労働省保険局:診療報酬情報提供サービス5)熊倉 俊一. 血栓止血誌. 2008;19:210-215.

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紹介状、多くの医師が最もイライラしている事は…【紹介状の傾向と対策】第2回

<あるある傾向>手書きで読めない紹介状英字略語が多くて読めない紹介状<対策>紹介状はできるだけパソコンで作成略語の多用は避ける多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担が大きい業務の1つです。しかし、紹介状に不備があると、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者の不利益やトラブルにつながりかねません。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。紹介状は依頼先の施設の種類や紹介目的によって記載内容に若干の違いがありますが、どの紹介状にも同じように留意したい点もあります。以下に紹介状全般に共通する留意点を列挙します。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ今回は上記のうち(1)の「相手の読みやすさが基本」について解説します。開業医の3割は手書きしている!?ケアネットが2021年12月に実施した紹介状についてのアンケートでは、勤務医の不満の第1位は「手書きで読めない紹介状」でした。電子カルテの普及に伴い、手書きの紹介状は減少傾向にありますが、現状は今でも手書きの紹介状に遭遇する機会は多々あります。手書きで記載された紹介状はどうしても文字に個人の癖が出てしまい、その文字を第三者が読めないこともあります。結果、手書きの紹介状で病名や処方情報など重要度の高い情報が読めない時に、読み手は強烈なストレスを感じます。この文字の意味は何だろうと類推しているだけで時間をロスします。また、紹介状を記載する立場でも、パソコンで記載したほうが手書きの紹介状作成より修正が容易です。施設によっては電子カルテが未導入であるために対応が難しいかもしれませんが、パソコンで記載された紹介状が互いのストレス軽減につながることを考えると、パソコンやワープロで代用することが望まれます。さらに、読みやすさの観点でもう1つ留意したいのは、英字略語や英語表記の多用です。自身が当たり前に使用している略語も、紹介先では馴染みのない略語の場合もあります。普及率の高い略語以外は使用せず、日本語表記とするのが親切です。また、紹介状を読むのは医師だけではなく、看護師などの医療者や病診連携室をはじめとする事務系職員のこともあります。自身が記載した紹介状が多職種に読まれる可能性があることも踏まえ、普及率の低い英字略語は避けたほうがいいでしょう。紹介状は正確な情報を伝えることが出来てはじめて、その役割を果たします。その観点からも、常に相手を思いやり、読み手がストレスなく情報収集できるよう配慮して、より「読みやすい紹介状」の作成を目指しましょう。

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10月26日 弾性ストッキングの日【今日は何の日?】

【10月26日 弾性ストッキングの日】〔由来〕1848年10月26日にウィリアム・ブラウン氏が「弾性ストッキング」の特許をイギリスで取得したことにちなみ、「日本静脈学会 弾性ストッキング・コンダクター養成委員会」が弾性ストッキングを広く一般にPRするために制定。関連コンテンツ浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】「災害としてのCOVID-19と血栓症Webセミナー」ホームページで公開中/日本静脈学会浮腫による蜂窩織炎の再発予防、圧迫療法は有効か/NEJM新・夜間頻尿診療ガイドラインで何が変わるか/日本排尿機能学会静脈瘤治療、5年後のQOLと費用対効果を比較/NEJM

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第132回 健康保険証のマイナンバーカードへの一体化が正式決定、「懸念」発言続く日医は「医療情報プラットフォーム」が怖い?

現行の健康保険証を2024年秋に廃止こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末の土曜日、日本シリーズの第1戦を神宮球場で観戦してきました。今年は投手層が厚いオリックス・バッファローズが優位だろうと踏んでいたのですが、初戦は東京ヤクルトスワローズの老練、小川 泰弘投手がオリックスの山本 由伸投手に投げ勝つ展開。終盤では村上 宗隆選手のホームランも飛び出して、ヤクルトの強さを印象付ける試合となりました。第2戦も、オリックス優位の展開で進むも、土壇場でヤクルトが追い付き結局12回引き分けに。今年の日本シリーズも最後までもつれそうな予感がします。それにしても連日4〜5時間もかかっている試合時間は、観る側も疲弊します。野球ファンを減らさないためにも、試合時間はいろいろな意味で要検討項目だと感じました。さて、今回は再びマイナンバーカード保険証について書いてみたいと思います。政府は10月13日、現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」に切り替える方針を正式に発表しました。ほぼほぼ既定路線だったスケジュールとカード取得の“義務化”が正式決定したわけですが、その直後から、カードの手続きができない高齢者はどうする、情報漏えいは大丈夫か、保険証読み取り装置(カードリーダー)が間に合わない……、など医療界のみならず各方面から“反対”や“懸念”の声が沸き起こっています。日頃DX、DXと喧伝するマスコミですら、マイナ保険証に否定的な報道をするところも出てくる始末です。マイナカード申請枚数は全国民の56.2%岸田 文雄総理大臣は13日、河野 太郎デジタル大臣や加藤 勝信厚生労働大臣、寺田 稔総務大臣とマイナンバーカードについて協議。その後、河野デジタル大臣が記者会見を開き「デジタル社会を新しく作っていくための、マイナンバーカードはいわばパスポートのような役割を果たす」と述べ、2024年の秋に現在使われている健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化した形に切り替えると発表しました。廃止の時期が来てもマイナンバーカードを取得していない人などに対しては、取得の働きかけを進めていくと同時に、何らかの対応を検討するとしました。マイナンバーカードについて政府は、来年3月末までにほぼすべての国民に行き渡ることを目標としています。ただ、10月11日時点の申請枚数は、全国民の56.2%に留まっており、普及率を一層高めていく方針とのことです。河野デジタル大臣の記者会見の後、加藤厚労大臣も会見を開き、「システム改修などの対応に必要な予算は経済対策に盛り込んでいく。岸田総理大臣からは国民や医療関係者から理解が得られるよう丁寧に取り組んでいく必要があると指示があった。医療関係者や関係省庁などと連携して取り組みを進めていきたい」と述べました。切り替えまでにマイナンバーカードを取得できなかった人への対応については、「保険料を納めている方々は保険診療を受ける当然の権利を持っている。いろいろな事情で手元にカードを持っていない人が必要な保険診療を受ける際に、どういう手続きをしていくのか、今後しっかりと検討していく」と述べたとのことです。医療関係団体が全面協力する姿勢を示していたことは“とても不思議”マイナンバーカード保険証については、本連載でも、「第124回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(前編)未対応は最悪保険医取り消しも」と、「第125回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?」で詳しく書きました。連載では、厚生労働省と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)が合同で開催した「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明会」の内容を紹介し、マイナ保険証のシステムは将来的に、レセプト・特定健診等情報の共有に加えて、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテ等の医療情報についても共有・交換できるようになり、「全国医療情報プラットフォーム」の構築につながる、と書きました。このプラットフォームが稼働すれば、患者の受療行動や、医療機関で提供された治療や投薬の情報が丸裸になります。そうなると、それらのデータを基に、究極的に効率化された(ムダを省いた)医療提供の仕組みが国によってデザインされ、医療機関にも求められるようになるでしょう。さらには、重複受診、重複投与、ムダな薬剤投与、的外れの治療などが他医にもバレてしまいます。そう考えると、日本医師会など、医療関係団体が概ね協力する姿勢を示していることが“とても不思議”であると書きました。日本医師会はこれまで、かかりつけ医制度やリフィル処方など、効率的な医療提供体制構築や医療費削減に資するような政策には頑なに反対してきたからです。というわけで、125回では、「かかりつけ医制度の議論などを目くらましにして、医療DXの推進を一気に進めようとしているとしたら、岸田首相や財務省もなかなかの策士と言える」、「加藤厚労相は、親日医の姿勢を見せつつ、マイナ保険証を突破口として医療DXを強力に推進するために岸田首相から医療界に送り込まれた“刺客”という見方もできるかもしれない」と、少々うがった見方をしたのですが、流石に日本医師会もここに来て、「これはまずいかも」と気がついたのか、10月13日前後から、マイナ保険証を牽制するような発言が目立って来ました。日本医師会の松本吉郎会長が「懸念」発言各紙報道等によれば、日本医師会の松本 吉郎会長は、「保険証廃止、マイナ保険証に一本化」が正式決定する前日、10月12日に開かれた定例会見で、「健康保険証の廃止を決定するのであれば、まずは国民に理解をしていただく、その時点(2024年秋)で、マイナンバーカードを取得していない人がいるのであれば、その対応が、非常に大きな問題だ。医療現場でも、負荷がかかったり、混乱が生じたりする可能性もある。それを含めて、しっかりと手当てをして頂きたい」などと発言しました。さらに1週間後の10月19日の定例記者会見で松本会長は、「反対はしていないが、カードがまだあまり普及していない状況を考えると、2年後の原則廃止は可能かどうか、非常に懸念をしている。保険証の廃止によって、医療機関に適切な時期に適切な状態で受診できないことがもし起こるとすると、国民は非常に困る。医療現場の混乱も招く」と話し、政府による国民への説明や、関係者との議論の必要性を訴えたとのことです。また、オンライン資格確認が療養担当規則で2023年度から原則義務化されることについても、各地域の医療機関や医師会から様々な懸念が寄せられているとして、「原則義務化の例外対象の再検討を厚労省に求めている」とも話しました。「全国医療情報プラットフォーム」の“恐ろしさ”8月に開かれた厚労省と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)が合同で開催した「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明会」説明会では、三師会の担当理事たちは「早く導入しましょう。役立ちます」と訴えていました。なのにこの腰砕け振りはなんでしょう。国が構築しようとしている「全国医療情報プラットフォーム」の“恐ろしさ”が今になってやっとわかってきたということでしょうか。ちなみに、「マイナ保険証に一本化」が正式決定する前日の12日、政府は首相官邸で医療分野のデジタル化の推進をめざす「医療DX推進本部」(本部長・岸田首相)の初会合を開いています。「全国医療情報プラットフォーム」の創設、電子カルテの表記を統一して正確な情報共有につなげる「電子カルテ情報の標準化」、診療報酬の算定にかかる計算様式を共通化する「診療報酬改定DX」の3つを重点項目と定め、これらを省庁横断で進めるよう岸田首相は関係閣僚に指示したとのことです。2023年春にも具体的な工程表がまとまる予定です。ここで一気に進めないと医療・介護の効率化は永遠に進まない世の中こぞってDX、DXと言う割に、まったく進んでいない日本のDX。そんな中で行政面ではマイナンバーカードの普及の遅れが、DX推進を妨げていると指摘されてきました。カードを義務化し、保険証をマイナ保険証に一本化する背景には、マイナンバーカードをとにかく普及させたいという国の思惑があります。実は、今年6月に示した経済財政運営の指針「骨太の方針」には、「保険証の原則廃止を目指す」と書かれていました。例年「骨太の方針」には大胆な改革案が書かれるのが常ですが、そこに書かれていた「原則」の文字を敢えてなくし、期限を2024年秋と明示、事実上のカード義務化を決定した点に政府の本気度が見て取れます。医療界も含め、反対派は多いですが、流石にここで一気に進めないと、日本のDX、そして医療・介護の本当の効率化は永遠に進まない予感もします。マイナ保険証のカードリーダーなどインフラ整備の問題や、現行の保険証の取り扱い、高齢者にどうマイナンバーカードを取得させマイナ保険証に移行させるか、高齢医師の医療機関がマイナ保険証に対応できるか、など課題は多いと思いますが、新しい制度には、課題があるのが当たり前です。岸田首相がまたまた世の中の声を聞き過ぎて、マイナ保険証の普及・定着が腰砕けにならないことを願うばかりです。

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毎日の抗原検査vs.自主隔離、感染を広げないのは?

 迅速抗原検査キットを使用した毎日の陰性確認は、新型コロナウイルス感染症拡大を最小限に抑えるため、自主隔離の代替手段となりうるのか? 英国・健康安全保障局のNicola K. Love氏らは、COVID-19接触者追跡システムで特定された成人接触者を対象とした無作為化非劣性比較試験を実施。Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年10月10日号に結果を報告した。 英国では本試験期間中(2021年4~7月)、COVID-19感染者と接触した人には10日間の自主隔離が求められていた。接触者追跡システムで特定された成人接触者のうち同意が得られた参加者は、自主隔離群(1日目のPCR検査、10日間の隔離)または毎日の抗原検査(DCT)群(1日目および最終日のPCR検査、7日間連続のラテラルフローデバイス[LFD]による抗原検査、LFDで陰性の場合は24時間隔離免除)に無作為に割り付けられた。 参加者は前向きに追跡調査され、試験期間中にPCR検査で陽性となった参加者と、彼らとの接触から生じた3次感染者(つまり2次接触者の中の感染者)について、定期的に収集したNHS Test and Traceの接触追跡データから各介入による効果を検証した。 主要評価項目は、各グループにおいて2次接触者が3次感染者となる割合である発病率とされた。発病率はHuber-White標準誤差を使用し、ベルヌーイ回帰モデルにより算出され、家庭での曝露、ワクチン接種、および在宅勤務の状況によって調整された。 主な結果は以下のとおり。・2021年4月29日~7月28日に、5万4,923人の適格者が登録され、最終的な解析には自主隔離群2万3,500人(47.4%)、DCT群2万6,123人(52.6%)が含まれた。・全体で4,694人の参加者がPCR検査でSARS-CoV-2陽性であり(2次感染者)、自主隔離群で2,364人(10.1%)、DCT群で2,330人(8.9%)だった。・2次接触者における調整後発病率(3次感染者)は、自主隔離群7.5%、DCT群6.3%(差は-1.2%[95%信頼区間:-2.3~-0.2])で、あらかじめ設定された非劣性マージンの1.9%より有意に低かった。 著者らは、抗原検査を7日間毎日実施し陰性の場合は24時間隔離を免除するこの方法は、10日間の自主隔離に劣っていないと考えられるとし、自主隔離による悪影響を最小限に抑えながら、感染拡大のリスクを軽減できることが示されたとまとめている。

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円板状エリテマトーデスから重症SLE進行へのリスク因子は?

 フランス・ソルボンヌ大学のLisa Fredeau氏らは、円板状エリテマトーデス(DLE)が重症の全身性エリテマトーデス(SLE)へと進行するリスク因子を特定する、初となる検討を行った。164例を対象としたレジストリベースの後ろ向きコホート研究の結果、円板状エリテマトーデス診断時年齢が25歳未満、phototype V-VI、抗核抗体(ANA)抗体価≧1:320が、重症SLE発症のリスク因子であることを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2022年9月22日号掲載の報告。円板状エリテマトーデス患者で重症SLE発症30例と非発症134例について解析 研究グループは、孤立性円板状エリテマトーデスを有する患者または軽度の生物学的異常を有するSLE関連患者について、重症SLE(入院と特定の治療が必要と定義)への進行のリスク因子を特定し、予測スコアを生成するため、レジストリベースのコホート研究を行った。 文献から特定、および関連変数を特定するために後退的選択法によって選出されたリスク因子を用いて多変量解析を実施。ポイント数はオッズ比に比例して重み付けがされた。 円板状エリテマトーデスが重症の全身性エリテマトーデスへと進行するリスク因子を検討した主な結果は以下のとおり。・解析には、重症SLEを発症した円板状エリテマトーデス患者30例と、非発症患者134例を包含した。・多変量解析では、12の選択変数のうち、円板状エリテマトーデス診断時年齢が25歳未満(オッズ比[OR]:2.8、95%信頼区間[CI]1.1~7.0、1ポイント)、phototype V-VI(OR:2.7、95%CI:1.1~7.0、1ポイント)、ANA抗体価≧1:320(OR:15、95%CI:3.3~67.3、5ポイント)が、スコア生成変数として選択された。・ベースラインでスコア0であった円板状エリテマトーデス患者54例のうち、SLEへ進行した患者はいなかったが、スコア6以上の患者は約40%の重症リスク因子と関連していた。

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統合失調症や双極性障害患者における強迫症状の有症率

 強迫症状(OCS)は、精神疾患患者において高頻度でみられる症状であるにもかかわらず、認識および治療が不十分である。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDeborah Ahn Robins氏らは、統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害の患者におけるOCSおよび強迫症(OCD)の有病率を推定し、OCSの要因となる臨床的特徴を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、OCSおよびOCDは、精神疾患患者で頻繁に認められており、より重篤な精神医学的な臨床的特徴と関連している可能性が示唆された。また、著者らは、自動化された情報抽出ツールを用いることで、精神疾患に合併するOCS/OCDの認識や治療を改善できる可能性があることを報告した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月28日号の報告。 データは、South London and Maudsley NHS Foundation Trust Biomedical Research Centreのレジストリデータより収集した。対象は、2007~15年に統合失調症(ICD F20.x)、統合失調感情障害(ICD F25.x)、双極性障害(ICD F31.x)と診断された患者。OCSおよびOCDは、構造化データおよびフリーテキストより自然言語処理ソフトウェアを用いて特定した。臨床的特徴は、Health of the Nation Outcome Scalesを用いて収集した。臨床的特徴とOCS/OCDとの関連の分析には、交絡因子を考慮したロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、2万2,551例。・OCSが認められた患者は5,179例(24.0%)であり、OCDを合併していた患者は2,574例(11.9%)であった。・OCS/OCDは、以下の症状増加との関連が認められた。 ●攻撃性(OR:1.18、95%CI:1.10~1.26) ●認知機能障害(OR:1.21、95%CI:1.13~1.30) ●幻覚・妄想(OR:1.11、95%CI:1.04~1.20) ●身体的問題(OR:1.17、95%CI:1.09~1.26)

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内視鏡での大腸がん検診、がんリスクを減らせるか/NEJM

 大腸がんのスクリーニングとして大腸内視鏡検査を勧められた集団は、スクリーニングを受けなかった集団と比較して、10年後の大腸がんによる死亡リスクには大きな差はなかったが、大腸がんの発症リスクが18%低下したことが、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが実施した「NordICC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年10月9日号で報告された。4ヵ国の実践的な無作為化試験 NordICC試験は、大腸内視鏡によるスクリーニング検査が大腸がんのリスクを改善するかの検証を目的とする実践的な多施設共同無作為化試験であり、2009年6月~2014年6月の期間に、4ヵ国(ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダ)で参加者が募集された(ノルウェー研究評議会[RCN]などの助成を受けた)。この報告では、オランダを除く3ヵ国のデータの解析結果が示された。 対象は、4ヵ国の1つに居住する年齢55~64歳の健康な男女で、過去に大腸がんの診断およびスクリーニング検査を受けたことがない集団であった。被験者は、大腸内視鏡によるスクリーニング検査の勧奨を受ける群(勧奨群)、または勧奨およびスクリーニングを受けない群(通常治療群)に、1対2の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは大腸がんおよび大腸がんによる死亡のリスクとされ、副次エンドポイントは全死因死亡であった。1人の大腸がん予防の勧奨必要数は455人 8万4,585人(年齢中央値59歳、男性50.1%)が解析に含まれた。勧奨群に2万8,220人、通常治療群に5万6,365人が割り付けられた。勧奨群のうち実際にスクリーニングを受けたのは1万1,843人(42.0%)であった。追跡期間中央値は10.0年。 ポリープ切除後の大出血が15例(0.13%)で発現した。大腸内視鏡後30日以内に、腸管穿孔およびスクリーニング関連死はみられなかった。 大腸がんと診断されたのは、勧奨群が259人、通常治療群は622人であった。intention-to-screen解析では、10年の時点での大腸がんのリスクは、勧奨群が0.98%、通常治療群は1.20%であり、勧奨群で18%のリスク低下が認められた(率比:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.93)。 また、1人の大腸がんの予防に要するスクリーニングの勧奨必要数(number needed to invite)は455人(95%CI:270~1,429)だった。 10年時までの大腸がんによる死亡リスクは、勧奨群が0.28%(72人)、通常治療群は0.31%(157人)であった(リスク比:0.90、95%CI:0.64~1.16)。全死因死亡のリスクは、それぞれ11.03%および11.04%だった(リスク比:0.99、95%CI:0.96~1.04)。 著者は、「今回の結果は、大腸がんの予防のための大腸内視鏡によるスクリーニングの有効性を定量的に示すものであり、これにより、意思決定を行う者はがんのスクリーニングや保健サービスのための医療資源の優先順位を適切に決めることが可能になると考えられる」とし、「大腸内視鏡によるスクリーニングの効果を完全に把握するには、より長期の追跡調査が必要だろう」と指摘している。

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HER2低発現乳がんに対するNACの効果/日本治療学会

 乳がんのHER2発現は免疫染色法で0~3+に分類され、0、1+、2+で遺伝子増幅がない場合はHER2陰性として治療方針が決定されるが、近年、HER2低発現例は術前化学療法(NAC)の有効性からHER2非発現例とは異なるグループであることが示唆されている。甲南医療センター乳腺外科(前兵庫県立がんセンター)の高尾 信太郎氏は、HER2低発現乳がんとHER2非発現乳がんにおけるNAC施行後の有効性と予後の違いを比較検討し、第60回日本治療学会学術集会(10月20~22日)で発表した。 高尾氏らは、2002年7月~2021年7月に、兵庫県立がんセンターでNAC施行後に手術を受けた乳がん患者530例を、免疫染色法およびFISH法で、HER2非発現群(IHC0)、HER2低発現群(IHC1+またはIHC2+でFISH-)、HER2陽性群(IHC3+または2でFISH+)の3群に分け、そのうちHER2非発現群とHER2低発現群の特徴、NACの有効性、5-FU系経口抗がん剤による術後化学療法の有効性を後方視的に検討した。 主な結果は以下のとおり。・530例中、HER2非発現群が114例(21.5%)、HER2低発現群が228例(43.0%)であった。・ホルモン受容体陽性(HR+)は、HER2非発現群で61例(53.5%)、HER2低発現群で167例(73.2%)であった(p=0.000418)。・腫瘍径、リンパ節転移、組織系分布、手術方法は両群で差はみられなかった。・NACの有効性: -全奏効率(ORR):HER2非発現群85.1%、HER2低発現群84.2%、p=0.958 -臨床的完全奏効(cCR)率:HER2非発現群24.6%、HER2低発現群14.0%、p=0.0237 -病理学的完全奏効(pCR)率:HER2非発現群23.7%、HER2低発現群10.1%(p<0.01) -HR+/-にかかわらず、ORRは両群で同等であったが、cCRおよびpCRはHER2非発現群よりもHER2低発現群で低い傾向にあった。・ログランク検定の結果、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)は両群で有意差はみられなかった(それぞれp=0.593、p=0.168)。HR+/-にかかわらず同様の結果であった。・pCRを達成した群では、non-pCR群に比べてDFS、OSが良好であった。HER2非発現群、HER2低発現群の両群で同様の結果であった。・non-pCRであった292例中62例(HER2非発現群16例、HER2低発現群46例)が5-FU系経口抗がん剤による術後化学療法を施行したが、両群ともに有意なDFSおよびOSの改善はみられなかった(それぞれp=0.723、p=0.938)。・NAC後non-pCR症例のうち、同一症例でNAC前後にHER2発現を調べた146例において、HER2発現の不一致率は26.0%であった。NAC前はHER2非発現でNAC後にHER2低発現に変化したのは40.0%、NAC前後でHER2低発現を維持したのは80.2%であった。この傾向はHR+で顕著であった。・NAC前はHER2非発現でNAC後にHER2低発現に変化した群、およびNAC前後でHER2低発現を維持した群ではDFSが良好な傾向を示した(それぞれp=0.125、p=0.205)。・NAC前後のDFSおよびOSは、NAC前においてはHER2非発現群とHER2低発現群に差はみられなかったが(それぞれp=0.1469、p=0.260)、NAC後においてはHER2非発現群よりもHER2低発現群のほうが有意に良好であった(それぞれp=0.0114、p=0.00344)。 高尾氏は、「NAC前ではHER2非発現群とHER2低発現群で予後に差はなかったが、NAC後non-pCR症例にHER2発現を再検討した結果、両群に明らかな予後の差がみられた。これはNAC後のnon-pCR症例の治療方針を考えるうえで非常に重要な所見であり、さらに詳しい解析を行いたい」と述べた。

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超加工食品の利便性と有害性はもろ刃の剣であり、摂取過剰は男性の遠位大腸がん発生の危険性を高めるため超加工食品の摂取には注意!―(解説:島田俊夫氏)

 大腸がんの発生は国により多少の差はあるが世界中で日増しに大きな問題となっており、その原因として超加工食品を大きく取り上げている。 超加工食品の分類には、ブラジル・サンパウロ大学の公衆衛生メンバーが提唱したNOVA分類(1~4)が通常用いられている。食品加工に伴う加熱処理、保存性の向上のための塩、砂糖やその他食品添加物、加工処理に伴う有害生成物、自然食品に含まれる抗酸化物質等の喪失等が発がん機序に深く関与していると推測されているが、十分に解明されているとはいえない。 それでも、加工食品の普及につれてその利便性とは逆に有害性の側面がクローズアップされている。2018年にフランス国立衛生医学研究所(INSERM)の研究者が、加工食品の摂取過剰が閉経後女性の乳がん発生増加につながったと報告した1)。その後、超加工食品による発がんへの関心が急速に高まっている。 大腸がんの発生に密接に関係する超加工食品に対する前向き大規模コホート研究が、タイムリーに米国の医療従事者を対象とした3つのコホート研究の成果として、2022年8月31日号のBMJ誌にタフト大学のWang氏らによって報告された。 男女別の3つの医療従事者コホート(男性コホート:Health Professionals Follow-up Study、女性コホート:Nurses’ Health Study I and II)を対象とした5年間にわたる前向きコホート追跡研究から、食事摂取量の記録があり、ベースライン時点でがんフリーの参加者を対象として、超加工食品摂取と大腸がんリスクとの関連を調査した研究成果を発表した。参加者数も多く、観察期間も長く、信頼性の高いデータに基づく論文として紹介する。 男性では超加工食品の摂取量と大腸がんリスクの間に正相関を見いだしたが、この関連は遠位大腸がんに限られていた。サブグループの男性では超加工食品(レトルト肉、家禽、海産物/砂糖添加飲料)と正の関連が観察された。一方で、女性では明らかな関連はなかったが、ヨーグルト、乳製品ベースのデザートが遠位大腸がんを抑制することが観察された。 本研究は、男性で超加工食品摂取と遠位大腸がんリスクの間に正の関連を初めて見いだした研究であった。確立された大腸がんの危険因子である肥満が、超加工食品と遠位大腸がんのがん化に関連性がなかったことから、超加工食品の追加属性が遠位大腸がんのがん化に深く関与する可能性を示すと理解された。 大腸がんの発生が性差で異なる理由は目下不明であるが、事実をまず受け止め、超加工食品の利便性と有害性を理解することで、現代社会を健康的かつ安全に生き抜くために食の在り方を見直す必要がある。本論文は、超加工食品の利便性優先に警鐘を鳴らす意味からも大きな意義がある。 超加工食品の利便性の魅力に惑わされることなく、超加工食品の問題点を正しく認識のうえで賢く利用することを考えるべきではないか。

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事実上義務化のマイナ保険証、患者・医療者のメリットは? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第99回

政府は、現在の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表しました。さまざまなデジタル化が薬局業務にも押し寄せつつありますが、オンライン資格確認システムの導入や情報の管理・活用など大きな変化になりそうです。河野太郎デジタル相は13日午前に記者会見を開き、2024年秋に現在の健康保険証の廃止をめざすと発表した。すでに保険証利用が始まっているマイナンバーカードに一本化する。ただ、カードの交付率は9月末時点で49%にとどまり、普及には課題が残っている。(中略)また、現在は25年3月末までに予定している運転免許証との一体化も「前倒しできないか検討を進める」ことを明らかにした。(2022年10月13日付 朝日新聞デジタル)マイナンバーカードは2015年に通知カードの交付が開始され、2016年に運用が開始となりました。普及率は10月18日までに50%に達しましたが、普及促進のためマイナポイントをばらまいていたのにようやく50%とはちょっとびっくりです。私の周りでは、自身や子供のマイナンバーカードを取得し、きっちりマイナポイントをもらったという話をよく耳にしますので、高齢者の普及率が著しく低いのでは?と思いましたが、意外や意外、60~74歳でも50.1%が交付済みでした。マイナポイントも一定の成果を上げているのかもしれません。健康保険証とマイナンバーカードが一本化されると、保険医療を受けるためにはマイナンバーカードを作るしかなく、普及率が上がることは明確です。ただ、マイナ保険証の普及に賛成したくなるようなデータヘルス改革の具体的な姿が見えないため、ただ手間が増えるだけのような印象を持っている医療関係者は私だけではないはずです。患者の同意があれば診療・投薬情報が共有可能マイナ保険証の患者さん側のメリットとしては、従来の保険証は会社員が転職をしたり自営業者が引っ越しをしたりすると改めて発行してもらう必要がありましたが、マイナ保険証になるとその手間はなくなります。また、マイナポータルというポータルサイトで診療・薬剤・医療費・検診情報が確認でき、医療費控除の手続きでマイナポータルを通じて医療費通知情報の自動入力ができます。個人的には、そろそろ病名を教えてもらえないかと思っていますが、それは明らかになっていません。医療機関・薬局側のメリットとしては、これまで手入力していた保険情報が自動で入力され、患者さんの同意があれば他の医療機関での診療情報や薬剤情報がリアルタイムで確認できるようになります。より広い患者情報を入手して医療に生かし、重複投薬も防ぐことができるようになります。また、2022年度の報酬改定により、オンライン資格確認システムを通じて患者さんの情報を取得した場合に、月1回に限り3点が加算できるようになりました。なお、マイナンバーカードを読み取るためのカードリーダーは無償提供され、それ以外の費用には補助が出る場合もあります。2023年4月以降は全国の保険医療機関や薬局にオンライン資格確認システムへの対応を原則として義務付ける方針ですが、現在導入している医療機関はまだ30%程度にとどまっています。現在の健康保険証が廃止になる2024年秋まであと2年。廃止の期限が延期になるんじゃないかなぁと思ってしまう自分がいますが、今後問題になりそうな高齢者支援についてのフォローも期待したいと思います。

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サル痘ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第14回

新型コロナに次いで緊急事態が宣言されたサル痘周知の通り、サル痘感染が世界的に拡大している。アフリカ熱帯地方に限局した風土病であったサル痘が、ナイジェリアからの輸入例として英国から世界保健機関(以下、WHO)に報告されたのは2022年5月7日であった(発端症例はナイジェリア滞在中の同年4月29日に発症、5月4日に英国に到着)1)。以後、非常在国への輸入例およびそれらを発端とした国内感染例が続々と発見・報告されてきた。急激な世界的拡大を踏まえ、WHO事務局長は2022年7月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC[フェイク]と発音)」を宣言した2)。PHEICとは、「緊急かつ世界的な健康問題に対して、WHO加盟各国が集中的に資源投下して早期の封じ込めまたは安定化を目指すよう」にとWHO事務局長が発する宣言である。2020年の新型コロナウイルスパンデミックへの宣言に続いて、史上7件目のPHEICとなった。PHEIC宣言後も加盟各国での発見が相次ぎ、2022年9月21現在では105ヵ国から累計6万1,753例の確定患者と23例の死亡がWHOに報告されている3)。わが国でも同9月21日までに、計5例の確定患者が厚生労働省に報告されている4)。うち3例は直近の海外渡航歴があったが、残る2例に渡航歴はない。渡航歴のない2例とも発症直前に海外渡航者との接触があり、輸入例を発端とした国内感染と推定される。ただし、諸外国のように輸入発端例を追跡できないような国内感染拡大には現時点で至っていない。サル痘とはサル痘は人獣共通感染症である。1958年にデンマークの研究所が実験用にアジアから輸入したサルが発疹性疾患を発症し、病変からサル痘ウイルスが分離発見された。これがサル痘 monkeypox の命名由来であるが、後の研究により本来の自然宿主はアフリカ熱帯地域のリス、その他の齧歯類と推定された。実験的感染も含めると、サル痘ウイルスはヒトをはじめとする40種以上の動物種に感染することがわかっている5)。アフリカ熱帯地域の野生動物間で循環しているサル痘ウイルスが、感染動物と接触したヒトにも感染する例が、1970年以降コンゴ盆地(アフリカ中央部)および西アフリカの諸国で散発的に報告されてきた。ヒト発端例から数100例に拡大したアウトブレイクも同地域で何度か発生している。サル痘ウイルスは天然痘(痘瘡)ウイルスと同じオルソポックスウイルス属に属し、クレードI(旧称:コンゴ盆地型)とクレードII(旧称:西アフリカ型)の2系統に分類される6)。クレードIによる致死率は10%前後だが、クレードIIのそれは1~数%と比較的軽症である。現在世界で拡大しているサル痘ウイルスは主としてクレードIIとされており7)、確定症例中の死亡数が少ないのはそのためと考えられる。サル痘ウイルスは主として接触感染する。ごく近距離かつ長時間の対面による飛沫感染もありうるが、大半は皮膚と皮膚、またはウイルスの付着した衣類などと皮膚の濃厚接触による感染とされる。性的接触後の感染も多く報告されているが、性的接触に伴う皮膚同士の濃厚接触が感染経路と考えられ、一般的な性行為感染とは異なる。現時点では圧倒的に男性の報告が多く、女性や小児の報告は一部である。サル痘の症状は、根絶された天然痘(痘瘡)のそれにかなり似通っている。ウイルス感染後1~2週間(最大21日間)の潜伏期を経て、発熱、リンパ節腫脹等の非特異的な前駆症状で発症する。前駆症状の1~3日後に全身に発疹が出現するが、天然痘と同じくすべての発疹が同期して丘疹→水疱→膿胞→痂皮へと進行する。類似の水疱性疾患である水痘の発疹が互いに同期せずバラバラに進行するのとは異なるが、多数のサル痘報告の中には発疹が同期しないケースも散見されるため、鑑別に注意を要する。発疹は痂皮が脱落するまでの2~4週間は感染性を保ち、その間の濃厚接触によって感染が拡がる。ほとんどが自然治癒するが、まれに発疹部への細菌2次感染、肺炎、脳炎、角膜炎などの合併症を生ずる。妊婦や小児が特に合併症を生じやすいとされる。診断は発疹病変検体からのウイルス遺伝子検出(PCR法)が有用であり、厚生労働省による届出基準でも採用されている8)。特異的治療薬として、欧州では tecovirimat が承認されている。わが国には承認済みの特異的治療薬はないが、「tecovirimat のサル痘への効果と安全性を検証する特定臨床研究」が国立国際医療研究センターにて進行中である。サル痘のより詳しい臨床情報については、他の総説記事などをご参照いただきたい。 日本の法令上の扱いサル痘はわが国では感染症法で4類感染症に指定されており、全数届出疾患である。1・2類感染症とは異なりまん延防止のための公費入院制度がないため、入院および治療の費用は患者負担となる(前述の tecovirimat の特定臨床研究の対象となれば研究費が適用される)。検疫法にはサル痘の指定がないため、海外から到着した疑い症例を検疫所が発見しても検疫法に基づく行政検査ができない。近隣自治体に知らせて感染症法に基づく検査につなげる(自治体が指定する医療機関へ移送を検討する)必要があり、患者自身のためにもまん延防止のためにも検疫所と自治体との連携が重要である。オルソポックスウイルス属と天然痘ワクチン(種痘)本稿の本題はサル痘に対するワクチンであるが、サル痘ワクチンを知るにはまず天然痘とそのワクチンを知らねばならない。1)天然痘ワクチンサル痘ウイルスは天然痘ウイルスと同じオルソポックスウイルス属に属する。天然痘は数千年にわたり人類を脅かしてきたウイルス性発疹性疾患である。WHO主導の世界的な天然痘ワクチン接種(種痘)キャンペーンにより、1980年についに世界からの根絶が宣言された。有効なワクチンがあった以外に、動物宿主がなくヒトにしか感染しない、持続感染例がないなどの好条件が重なり、人類初の根絶病原体となった。サル痘の臨床症状は天然痘と似通っている。天然痘という病名は英語で smallpox だが、病原体である天然痘ウイルスは variola virus と呼ばれる。天然痘ウイルスには variola major および variola minor の2種があった。Variola major は19世紀末まで猛威を奮い、致死率は30%前後に及んだ。Variola minor は19世紀末に登場し、majorに取って代わって世界に拡大した。Variola minor の致死率は1%前後とmajorよりは軽症であったが、それでも1%の致死率は重大であり根絶の努力がなされた。死亡は感染の1~2週後に生じたが、死に至る詳細な病態生理はわかっていない。重度のウイルス血症やそれに伴うサイトカインストームが主因だったのではと推測されている9)。2)天然痘ワクチンの歴史とワクシニア vaccinia ウイルスオルソポックスウイルス属には牛痘ウイルスも含まれる。牛痘ウイルスはその名の通り牛に感染して水疱性疾患を生ずる病原体だが、牛を扱う農夫など濃厚接触するヒトにも感染することが古くから知られていた。ヒトに限局される天然痘とは異なり、牛痘は人獣共通感染症である。そして、牛痘感染歴のある者は天然痘に感染しないことも経験的に知られており、西暦1000年ごろにはすでにインドや中国で天然痘予防目的にヒトに牛痘を感染させる手法が行われていたとされる。これを世界で初めて科学的に確立し19世紀初頭に論文として世に報告したのが、英国のエドワード・ジェンナーであった10)。ラテン語で牛を意味する vacca を語源として、接種に用いる牛痘製剤を vaccine、牛痘接種(種痘)を vaccination とジェンナーが名付けたことは広く知られている。後に種痘に限らず、病原体予防薬全般について vaccine/vaccination の語が使われるようになった。そして、ジェンナーによる論文出版後の19世紀に種痘は世界へ急速に拡大した。種痘製剤を量産するために、牛の皮膚に人為的に牛痘ウイルスを植え付けて感染させ、病変から次の原料を採取するという手法が広く行われた。驚くことに、牛以外にも羊、水牛、兎、馬なども利用され、時には牛痘ではなく馬痘ウイルスすら使われた。20世紀に近代的なワクチン製法が確立される過程で、種痘製剤に含まれるウイルスはワクシニア vaccinia と名付けられた。その時点でワクシニアウイルスは、自然界の牛痘ウイルスからは遺伝的に大きく異なっていた。ジェンナー当時の牛痘ウイルスが100年以上にわたり生体動物を用いて継代培養される過程で、変異を繰り返した上に、他のオルソポックスウイルス属との交雑も起きたと推測されている。したがって現代の種痘製剤(天然痘ワクチン)の原料は、自然界の牛痘ウイルスではなく、実験室にのみ存在するワクシニアウイルスである。3)天然痘ワクチンの世代と種類これまで実用化されてきた天然痘ワクチンは表1のように3世代に分類される。表1 天然痘ワクチンの世代と特徴画像を拡大する天然痘の根絶に向けて接種キャンペーンが実施されていた当時の天然痘ワクチンを第1世代と呼ぶ。19世紀のままの生体動物による製法で生産され、無菌処理を施して凍結乾燥されていた。この間に免疫原性が高い優良株がいくつか確立された。しかし、キャンペーン進行による自然罹患者の減少と引き換えに、ワクチンの重篤な副反応が目立つようになった。種痘性湿疹 eczema vaccinatum、進行性ワクシニア progressive vaccinia、全身性ワクシニア generalized vaccinia といった致死性の極めて高い重篤皮膚病変や、高い致死率と神経学的後遺症に至る種痘後脳炎・脳症などが報告された。いずれも数10万接種~100万接種に1件程度と低頻度ではあったが、わが国を含む各国で問題視された11)。やがて1980年に根絶が宣言されると種痘は中止され、生産済みの第1世代ワクチンは凍結保存された。その後の1987年旧ソ連崩壊に伴う天然痘ウイルス拡散懸念や、2001年の米国同時多発テロ後の炭疽菌テロなどがきっかけで、天然痘ウイルスを利用した生物テロを想定してワクチンを常備する気運が米国を中心に高まった。この時期に生産された製剤を第2世代と呼ぶ。第2世代は、第1世代で確立されたワクチン株を生体動物ではなく細胞培養やニワトリ胚培養など現代的製法で生産したものである。天然痘はすでに根絶されていたため、ワクチンの効果は被験者の免疫応答(すなわち代理エンドポイント)を第1世代ワクチン当時と比較する形で測定された。しかし、第1世代と同じウイルス株を使っていたため、安全性の懸念は払拭されなかった。米国軍人などに第2世代製剤を接種した際の複数の2000年代の研究で、接種後心筋炎が背景リスクよりも有意に高いことが示されている12-15)。第1世代で問題視された安全性問題をクリアするために、免疫原性を保ったまま副反応を減らすよう、弱毒化ワクシニアウイルス株も順次開発された(第2世代までは非弱毒株)。弱毒化ワクシニアウイルス株由来の製剤を、第3世代と呼んでいる。遡ること1950~60年代にはアンカラ株(modified vaccinia Ankara:MVA)と呼ばれる弱毒株が開発されている。トルコのアンカラで数100世代継代培養されて遺伝子の15%が変異したこの株は、既存製剤よりも免疫原性は劣るが副反応も避けられるため、根絶前のキャンペーンでは既存製剤接種に先立つ接種に用いられた。また、1970年代には、わが国の橋爪 壮氏がヒト体内での増殖能を不活性化した LC16m8株を開発している16)。現在わが国でテロ対策に備蓄されている天然痘ワクチン(痘そうワクチン LC16「KMB」)は LC16m8株由来であり、自衛隊での小規模な研究であるが免疫原性と安全性は確認されている17)。一方、欧米ではMVA由来の新たな製剤が2010年代に開発されて同じく備蓄されている(Bavarian Nordic社による開発で通称 MVA-BN、商品名は国・地域ごとに異なる)18)。ワクシニアウイルスによるワクチンとオルソポックスウイルス属の交叉抗原性上記の歴史からわかる通り、天然痘ワクチンは天然痘ウイルス自体が原料ではなく、同じオルソポックスウイルス属である牛痘ウイルス(誕生当時)またはワクシニアウイルス(現代)が原料である。同じウイルス属とはいえ異なる種のウイルスを用いたにもかかわらず、このワクチンは天然痘ウイルスを根絶するほどの効果を示した。他のワクチン予防可能疾患において、異なる種の病原体を原料としたワクチンが充分な効果を示した例はない。すなわち、オルソポックスウイルス属は種同士の交叉抗原性が非常に強いと言える。属内での交叉抗原性の強さから、天然痘ワクチンを同じくオルソポックスウイルス属であるサル痘ウイルスの予防にも応用する発想につながる。サル痘予防としての天然痘ワクチン今回の世界的流行以前にも、サル痘はアフリカでアウトブレイクを繰り返し、時に非常在国での小規模アウトブレイクも起こしてきた19)。繰り返すが、サル痘ウイルスは天然痘ウイルスや牛痘ウイルス/ワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルス属である。属内の交叉抗原性が強いことの証左として、アフリカでのサル痘アウトブレイクで天然痘ワクチン(種痘)が結果的に奏効した実績がある。1980年代の古い観察研究ではあるが、当時のザイール(現コンゴ民主共和国)でのサル痘アウトブレイク時に、濃厚接触者の種痘歴の有無と発症の関連を調査したものがある。これによると、種痘歴がある場合の濃厚接触後発症は、種痘歴なしでの濃厚接触後発症に比べて、相対リスク減少が85.9~87.1%であった(※データから著者算出)20)。すなわち、種痘歴があることでサル痘発症リスクが80%以上低減された可能性がある。こうした知見からサル痘コントロール目的に天然痘ワクチンの接種が検討され、各国でのアウトブレイク時には適応外使用として接触者に曝露後接種されることもあった19)。しかし、天然痘ワクチンによるサル痘ヒト感染の予防効果を直接検証した質の高い介入研究はいまだ発表されてない。また、天然痘根絶後の天然痘ワクチンに関する研究のほとんどは、接種後(種痘後)の中和抗体上昇などの免疫学的指標および安全性評価に留まる。根絶前のかなり限定的な観察から、中和抗体価と天然痘の感染阻止にはある程度の相関があることが示唆されてはいるが21)、絶対的な感染阻止指標と証明されたわけではない。ましてや、種痘後の中和抗体価がサル痘の感染阻止とどの程度関連するかも不明である。天然痘ワクチンのサル痘予防効果は、真のエンドポイントでの評価がなされていない点に留意が必要である。こうした状況ではあるが、急激な世界的拡大を踏まえてWHOをはじめ世界の各機関は複数の間接的研究結果を根拠に天然痘ワクチンをサル痘予防に用いるよう承認し、推奨接種対象者を公表している。WHOは2022年8月発表の暫定ガイダンスにおいて、第2世代および第3世代ワクチン双方を表2の対象者に、十分な意思決定の共有(shared decision-making)の下に接種するよう推奨している22)。安全性の観点では第3世代が有利といえるが、第3世代はいまだ生産量および備蓄量が少ないため、世界全体のバランスを重視するWHOの立場としては第2世代も同程度に推奨していると考えられる。表2  WHOによる天然痘ワクチンのサル痘予防使用の推奨対象者画像を拡大する米国は天然痘予防に承認済みの第2世代 ACAM2000 および第3世代 MVA-BN(商品名:JYNNEOS)の計2種をサル痘予防に緊急承認し、欧州も同じく第3世代 MVA-BN(同:IMVANEX)をサル痘予防に承認し、それぞれにWHOと類似の対象者向けに接種を推奨している23)。なお米国では第2世代 ACAM2000 は第3世代 MVA-BN(JYNNEOS)の代替品substituteの位置付けである。わが国でも2022年8月に、天然痘に承認済みの第3世代 LC16m8株「痘そうワクチンLC16『KMB』」の適応にサル痘予防が追加された24)。接種対象者の選定について同9月現在で厚生労働省からは公式な発表はないが、厚生科学審議会で議論が行われている。また、治療薬 tecovirimat の特定臨床研究と並んで、国立国際医療研究センターにおいて同ワクチンの曝露前接種および曝露後接種が共に特定臨床研究として実施されている(同ワクチンの適応追加前に計画されたため、通常の臨床研究ではなく特定臨床研究が選択された)。わが国もサル痘侵入に対して迅速に対応していると言えよう。おわりに2022年9月時点ではわが国へのサル痘侵入例は数えるほどであり、諸外国のような国内感染拡大には至っていない。一般医療機関でサル痘患者に対応したり、天然痘ワクチンを接種する状況からは、現時点では程遠い。よって現状ではワクチンの接種手技や副反応などに通暁する必要は乏しく、本稿では天然痘ワクチンの歴史とサル痘流行における現状を整理するに留めた。しかし、新型コロナウイルス同様、国内感染例がある閾値を超えれば急速に拡大する可能性が常にある。読者には最新情報を収集していただくと共に、天然痘ワクチン接種が広範囲の医療機関で実施される状況が訪れるならば筆者も情報更新に努めたい。参考となるサイト厚生労働省 サル痘について1)WHO Disease Outbreak News. Monkeypox-United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland.; 2022.(2022年8月8日閲覧)2)WHO. Second Meeting of the International Health Regulations (2005) (IHR) Emergency Committee Regarding the Multi-Country Outbreak of Monkeypox.; 2022.(2022年8月8日閲覧)3)WHO. Multi-Country Outbreak of Monkeypox --- External Situation Report 6, Published 21 September 2022.2022.(2022年9月22日閲覧)4)厚生労働省. サル痘について. Published 2022.(2022年9月21日閲覧)5)Parker S, et al. Future Virol. 2013;8:129-157.6)WHO. Monkeypox: Experts Give Virus Variants New Names.2022.(2022年8月21日閲覧)7)Benites-Zapata VA, et l. Ann Clin Microbiol Antimicrob. 2022;21:36.8)厚生労働省. サル痘 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について.(2022年9月9日閲覧)9)Martin DB. Mil Med. 2002;167:546-551.10)Jenner E. An Inquiry into the Causes and Effects of the Variolae Vaccinae.; 1802.(2022年9月9日閲覧)11)平山宗宏. 小児感染免疫. 2008;20:65-71.12)Arness MK, et al. Am J Epidemiol. 2004;160:642-651.13)Eckart RE, et al. J Am Coll Cardiol. 2004;44:201-205. 14)Lin AH, et al. Mil Med. 2013;178:18-20.15)Engler RJM, et al. PLoS One. 2015;10:e0118283.16)橋爪 壮. 小児感染免疫. 2011;23:181-186.17)Saito T, et al. JAMA. 2009;301:1025-1033.18)Volz A, et al. Adv Virus Res. 2017;97:187-243.19)Simpson K, et al. Vaccine. 2020;38:5077-5081.20)Jezek Z, et al. Bull World Health Organ. 1988;66:465-470.21)Sarkar JK, et al. Bull World Heal Organ. 1975;52:307-311.22)WHO. Vaccines and Immunization for Monkeypox - Interim Guidance 24 August 2022.2022.(2022年9月9日閲覧)23)UKHSA. Recommendations for the Use of Pre-and Post-Exposure Vaccination during a Monkeypox Incident - Updated 26 August 2022.2022.(2022年8月26日閲覧)24)医薬・生活衛生局医薬品審査管理課. 審議結果報告書 乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」.2022.(2022年10月6日閲覧)講師紹介

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化学療法中に心室期外収縮頻発!対応は?【見落とさない!がんの心毒性】第15回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別50代・女性主訴動悸、労作時息切れ現病歴約10年前に健診で不整脈を指摘されていた。2ヵ月前に労作時息切れが出現し、慢性心不全と診断された。カルベジロールを開始すると心不全症状の改善を認めた。1ヵ月前に汎血球減少が出現し精査が行われ、急性前骨髄性白血病(APL)と診断された。化学療法前の心エコーでは左室拡張末期径64mm、左室駆出率53%、軽度僧帽弁閉鎖不全症を認めた。イダルビシン(48mg/m2)、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)投与による寛解導入療法が施行され、治療開始後6週目に寛解となった。続いて、ダウノルビシン(100mg/m2)、ATRA投与による地固め療法が1コース施行された後、動悸、労作時息切れが出現し、心電図で心室期外収縮(PVC:premature ventricular contraction)頻発、心エコーで左室収縮能低下を認め、精査加療のため入院となった。現症血圧 90/52mmHg、脈拍数 70bpm 不整、SpO2 98%(酸素投与なし)、結膜貧血なし、頚静脈怒張なし、心音I音減弱、III音あり、心雑音なし、呼吸音清、下腿浮腫なし採血BNP 570.7pg/mL胸部X線CTR 57%、肺うっ血なし、胸水なし心電図洞調律、II・III・aVF・V4-6誘導でST低下・平坦〜陰性T波、PVC頻発(左脚ブロック型・正常軸、右脚ブロック型・右軸偏位の2種類)(図1上)心エコーびまん性左室壁運動低下 (左室拡張末期径/収縮末期径 66/56 mm、左室駆出率 28%)、中等度僧帽弁閉鎖不全症、肺高血圧症疑い (三尖弁圧較差 39 mmHg、下大静脈径 13 mm、呼吸性変動良好)ホルター心電図総心拍数12万6,988拍/日、心室期外収縮(PVC)4万8,780拍/日 (総心拍数の38%、うち最多波形20%、2番目に多い波形18%、最長12連発)、上室期外収縮22拍/日 (総心拍数の0.1%未満)(図1下)(図1)画像を拡大する画像を拡大する上)12誘導心電図における2種類のPVC。赤枠:左脚ブロック型・正常軸、青枠:右脚ブロック型・右軸偏位下)ホルター心電図におけるPVCのパターン。赤枠と青枠はそれぞれ12誘導心電図におけるPVCに一致する。【問題】今後の治療に関する下記の選択肢について、正しいものはどれか?a. β遮断薬を減量する。b. ATRAを中止する。c. アントラサイクリンを減量し継続する。d. 血清K+4.0mEq/L以下を目標に調整する。e. PVCに対しカテーテルアブレーションを施行する。1)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022 Aug 26.[Epub ahead of print]2)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン:2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン3)Fonarow GC, et al. J Am Coll Cardiol. 2008;52:190-199.4)Buza V, et al. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2017;10:e005443.5)Montesinos P, et al. Blood. 2009;113:775-783.6)Dubois C, et al. Blood. 1994;83:3264-3270.7)Lacasse Y, et al. Can J Cardiol. 1992;8:53-56.8)Kishi S, et al. Int J Hematol. 2000;71:172-179.9)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン:2018年改訂版 不整脈非薬物治療ガイドライン講師紹介

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英語で「代わりに診てくれませんか?」は?【1分★医療英語】第51回

第51回 英語で「代わりに診てくれませんか?」は?Could you please cover my patients this weekend?(今週末、私の患者さんを代わりに診てくれませんか?)Sure, I can deal with it.(もちろん、引き受けますよ)《例文1》I’m going to explain the test result on behalf of Dr. Green.(グリーン先生の代わりに検査結果を説明します)《例文2》You can take paracetamol instead of ibuprofen.(イブプロフェンの代わりにパラセタモールを内服しても構いません)《解説》日本語の「代わりに~する」に当たる表現は英語では複数あり、それぞれ少しずつニュアンスが異なります。日本語でも仕事などを「カバーする」という言い方はよく使われますが、英語でも同様に、“cover”は「代わりに」引き受けるといった意味があります。「何かの代わりに」もしくは「自分の代わりに」という意味をより強めたい場合には、“instead of〜”または“on behalf of”や“on one’s behalf”といった表現が使われます。また、“instead of〜”では、痛み止めとしてのパラセタモールかイブプロフェンかといった「代わったものも同等である」という印象をもたらすのに対し、“on behalf of”または“on one’s behalf”では、「元の何かに代わって“代表して”対応する」といったニュアンスが加わります。たとえば、“I cannot attend the conference, so my colleague will give a presentation on my behalf”(私は学会に参加できないので、私の同僚が代わりにプレゼンを行います)といった使い方をします。講師紹介

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第135回 long COVIDに依存症薬naltrexone低用量が有望

依存症治療薬ナルトレキソン(naltrexone)低用量(LDN)を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(Post COVID-19 Syndrome;PCS)患者52人に試しに2ヵ月分処方したところ調べた7項目のうち6つの改善が認められました1,2)。naltrexoneは50 mg投与でオピオイド(アヘン)遮断作用を担いますが、その10分の1未満の1~4.5 mgの低用量投与は独特の免疫調節活性をどうやら有し、low dose naltrexoneにちなんでLDNと呼ばれ、いつもの用量のnaltrexoneとは区別されています。LDNに特有の作用はオピオイド成長因子受容体(OGF)遮断、Toll様受容体4炎症経路阻害、マクロファージ/マイクログリアの調節、T/B細胞の阻害などによるらしく、数々の病気への効果が小規模試験や症例報告で示唆されています。たとえばいつもの治療が不十分な炎症性腸疾患(IBD)患者47人への投与で寛解を促す効果3)、今では筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれる慢性疲労症候群(CFS)の患者3人への投与でその治療効果4)が示唆されています。また、関節リウマチ(RA)、線維筋痛症、多発性硬化症、疼痛症候群患者へのLDN投与では抗炎症薬が少なくて済むようになりました。アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD)の感染症専門家John Lambert氏はライム病と関連する痛みや疲労の治療にLDNを使っていたことから、COVID-19罹患後症状へのLDNの使用を同僚に勧めました。するとすこぶる評判が良く、それではということで彼はCOVID-19罹患後症状、俗称long COVIDへのLDNのまずは安全性、さらには効果も調べる試験を計画しました2)。試験には52人が参加し、それらのうち38人がLDN服用を始めました。2人は有害事象を生じてLDNを中止し、36人が2ヵ月のLDN服用期間後の問い合わせに回答し、症状や体調の指標7つの変化が検討されました。結果は有望で、それら7つ中6つ(COVID-19症状、体の不自由さ、活力、痛み、集中、睡眠障害)の改善が認められました。気分は改善傾向を示したものの有意レベルではありませんでした。Lambert氏のライム病患者への使用目的と符合し、LDNは痛みに最も有効でした。今回に限らずLDNの慢性痛緩和効果はこれまでのいくつかの試験でも認められています。先立つ試験でも示唆されているとおりLDNはどうやら安全で、LDN服用中止に至る有害事象を生じたのは2人のみで、被験者のほとんど95%(36/38人)は無事にLDNを服用できたようです。今回の試験は対照群がないなどの不備があり、示唆された効果が全部LDNの手柄と判断することはできません。Lambert氏はLDNの効果の確かさを調べる大規模試験を計画しています。Lambert氏の他にもCOVID-19罹患後症状へのLDN の試験があります。米国ミシガン州のサプリメント企業AgelessRx社はCOVID-19罹患後症状患者の疲労の軽減や生活の質の改善を目当てとするLDNとNAD+併用の下調べ試験(pilot study)を実施しています5,6)。医薬品以外のCOVID-19罹患後症状治療の開発も進んでいます。その1つが嗅覚消失を脳刺激装置で治療する取り組みです7,8)。いわずもがな嗅覚消失はCOVID-19の主症状の1つであり、日にち薬で回復することも多いとはいえ一向に回復しないことも少なくありません。嗅覚や味覚の突然の変化を被ったCOVID-19患者およそ千人を調べた試験の最近の結果報告によると、COVID-19診断から少なくとも2年経つ267人のうち嗅覚消失が完全に解消していたのは5人に2人ほど(38%)で、半数超(54%)は部分解消にとどまっており、13人に1人ほど(7.5%)は全く回復していませんでした9)。そういった嗅覚消失患者の嗅覚の回復を目指して開発されている人工嗅覚装置は難聴を治療する人工内耳が脳で処理できる電気信号に音を変えるように匂いの信号を脳に移植された信号受信電極に送ります。それが匂い成分ごとに異なるパターンで脳の嗅球を刺激して匂いを把握できるようになることを目指します。販売に向けた協力体制も発足しており、そう遠くない未来、向こう5~10年に製品の発売が実現するかもしれません8)。参考1)O'Kelly B, et al. Brain Behav Immun Health. 2022;24:100485.2)Addiction drug shows promise lifting long COVID brain fog, fatigue / Reuters3)Lie MRKL, et al. J Transl Med. 2018;16:55.4)Bolton MJ, et al. BMJ Case Rep. 2020;13:e232502.5)AgelessRx Launches Pilot Post-COVID Clinical Trial / AgelessRx6)Pilot Study Into LDN and NAD+ for Treatment of Patients With Post-COVID-19 Syndrome(Clinical Trials.gov)7)Bionic nose could help people smell again / Nature8)WITH THIS BIONIC NOSE, COVID SURVIVORS MAY SMELL THE ROSES AGAIN / IEEE Spectrum9)McWilliams MP, et al. Am J Otolaryngol. 2022;43:103607.

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コロナ治療薬モルヌピラビル、早期投与で回復までの期間短縮に期待/MSD

 MSDは10月19日、一般流通を9月16日に開始した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)について、承認後の最新情報として特定使用成績調査の中間報告などをメディアセミナーにて発表した。調査の結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかったことや、外来患者に使用した際の転帰として死亡はなく、人工呼吸器の使用も低く抑えることができたとして、本剤の有効性が提示された。 同社代表取締役社長のKyle Tattle氏によると、本剤は国内にて2021年12月24日に特例承認を取得し、これまでに60万人以上に使用されたという。本剤は、承認当初は供給量が限られていたため、厚生労働省が所有したうえで、重症化リスクのある患者に、決められた流通網を通して医療機関や薬局に配分が行われていたが、供給量が増加したことで、2022年8月18日に薬価基準収載となり、9月16日には一般流通を開始した。 白沢 博満氏(同社代表取締役上級副社長兼グローバル研究開発本部長)は、リアルワールドデータを中心に、承認後の最新情報について解説した。2021年12月24日~2022年6月23日に、同剤の販売開始から6ヵ月間行った市販直後調査では、約20万1,710例に本剤が使用され、症例から安全性情報を収集した結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかった。また、調査予定症例数を3,000例として、より詳細な安全性と有効性を評価する特定使用成績調査(2021年12月27日~2024年12月末日予定)において、2022年6月15日までの中間解析結果も公開された。 主な結果は以下のとおり。・安全性解析対象となった1,061例は、年齢中央値68歳、投与開始時点で外来患者696例(65.60%)、入院患者317例(29.88%)、その他(介護保健施設など)4.52%。本剤投与開始前のCOVID-19重症度では、軽症が931例(87.75%)、中等症Iは104例(9.80%)、中等症IIは23例(2.17%)であった。・主な重症化リスク因子は、65歳以上の高齢者が603例(56.83%)で最も多く、次いで高血圧が459例(43.26%)、喫煙が262例(24.69%)であった。・新型コロナワクチンの接種歴がある人は883例(83.22%)で、2回接種は668例(62.96%)であった。・安全性集計の結果、副作用が発現したのは72例(6.79%)であり、4例以上発現した副作用として、下痢(26例)、発疹(6例)、浮動性めまい(5例)、軟便(4例)が報告された。重篤な副作用の発現は4例で、発疹、肝機能異常、COVID-19増悪、間質性肺炎増悪であった。・有効性解析対象となった1,021例は、外来患者658例(うち最終アウトカム不明29例)、入院患者315例、その他(介護保健施設など)48例。・外来患者における本剤投与開始日から29日までの入院(隔離入院・検査入院などの投与前から予定していた入院を除く)は17例(2.70%)、死亡は0例であった。・入院患者における本剤投与開始日から29日までの死亡は2/254例(0.79%)、酸素投与開始あり13/247例(5.26%)、酸素投与または機械的人工換気(ECMO含む)開始あり13/247例(5.26%)であった。複合エンドポイントでは発現率は5.49%であった。 本結果に加え、白沢氏はモルヌピラビルについて海外で実施された臨床試験についても言及した。査読前論文ではあるが、英国・オックスフォード大学で実施されたPANORMIC試験の結果によると、約2万6,000例(平均年齢56.6歳、ワクチン接種済約99%)において、最初の完全回復までの期間(中央値)が、モヌルピラビル群は9日間、非モヌルピラビル群が15日となり、本剤投与によって6日間短縮されたことが認められた。 続いて登壇した相良 博典氏(昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授)は、COVID-19の治療の現状と経口治療薬への期待について講演した。昭和大学病院における新型コロナ治療薬の使用状況について、モルヌピラビルは、軽症患者75例に対して重症化予防のために使用された結果、人工呼吸器の使用症例が0%となり、本剤は効果のある薬剤として位置付けていると述べた。また、新型コロナ感染による後遺症についても、今後はより早期に治療介入することで後遺症の症状も抑えられる可能性があるという。本剤の一般流通開始への期待として、発症早期(5日以内など)に使用できるようになるため重症化防止を促進することや、入院リスクの高い高齢者へ早期に使用することで、負担する医療費や、入院による合併症、ADLの低下といった入院に伴うリスクを低減できることを挙げた。若年者でもサイトカインストームで重症肺炎の死亡率が高くなるため、抗インフルエンザウイルス薬のように軽症者から早期に使える薬剤としても期待できると述べた。

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認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬使用

 抗コリン薬は、コリン作動性を遮断することで主要な治療効果や二次的な作用を発現する薬剤である。認知症患者に対する抗コリン薬の使用は、中枢作用に対しとくに敏感である可能性が示唆されている。また、抗コリン薬は、認知症治療で主に用いられるコリンエステラーゼ阻害薬の作用にも拮抗するため、注意が必要である。英国・カーディフ大学のAnnabelle Hook氏らは、英国の急性期病院における認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬の使用状況を調査するため、横断的多施設共同研究を実施した。その結果、コリンエステラーゼ阻害薬治療を行っている場合でも、認知症患者に抗コリン薬が使用されており、入院時よりも退院時において抗コリン薬負荷が有意に高いことが明らかとなった。BMC Geriatrics誌2022年10月6日号の報告。 対象は、2019年に英国の急性期病院17施設を受診した認知症患者352例。すべての患者が、外科病棟、内科病棟、高齢者介護病棟のいずれかの入院患者であった。各患者の薬物療法に関する情報は、標準化されたフォームを用いて収集した。抗コリン薬負荷は、エビデンスベースのオンライン計算機により算出した。入院時および退院時の抗コリン薬使用との関連を調査するため、ウィルコクソンの順位検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・入院時、抗コリン薬負荷スコア1以上の患者は37.8%、3以上の患者は5.68%であった。・退院時、抗コリン薬負荷スコア1以上の患者は43.2%、3以上の患者は9.1%であった。・入院時から退院時にかけてのスコアの増加は、統計学的に有意であった(p=0.001)。・向精神薬は、退院時に使用される抗コリン薬の中で最も多かった。・コリンエステラーゼ阻害薬使用患者の44.9%に対し、抗コリン薬が使用されていた。

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