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昇降式仕事机を活用した介入で、1日の座位時間が短縮/BMJ

 内勤職員の健康増進を目的とする座位時間の短縮のための介入において、SMART Work and Life(SWAL)と呼ばれる方法を導入すると、この介入を行わない通常の仕事の形態と比較して1日の座位時間が有意に短くなり、さらにSWALに高さの調節が可能な仕事机を加えると、SWAL単独よりも短縮効果が約3倍に増大することが、英国・レスター大学のCharlotte L. Edwardson氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年8月17日号で報告された。英国の3群クラスター無作為化対照比較試験 研究グループは、SWALが日常的な座位時間に及ぼす効果を評価し、昇降式仕事机の有無で座位時間の短縮効果に差があるかの検証を目的に、3群クラスター無作為化対照比較試験を行った(英国レスター大学の助成を受けた)。 SWALは、先行研究で12ヵ月間にわたり就業時間中の座位時間の短縮に成功したStand More AT Work(SMArT Work)と呼ばれる介入法に基づいて開発された。SWALは、社会的認知理論、組織開発理論、習慣理論、自己規制理論、再発防止理論に基づく介入法で、多面的な戦略(組織、環境、個人、集団)を含み、行動変容ホイール(behaviour change wheel)の原理と、これに関連するCOM-B(能力、機会、動機付け、行動)法が活用されている。 対象は、英国レスター市の2つの地方議会、リバプール市の1つの地方議会、グレーター・マンチェスターの3つの地方議会の事務所や部局などに所属する内勤職員756人から成る78の職場クラスターであった。 これらのクラスターが、SWAL介入、SWAL+昇降式仕事机による介入、介入なしの通常の仕事の形態(対照)という3つの群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、加速度計で測定された12ヵ月の時点での1日座位時間(起きている時間のうちの座っている時間)とされた。副次アウトカムには、3ヵ月時の座位時間のほか、長時間座位(30分以上)や立位、歩行の時間などが含まれた。昇降式仕事机を加えると、座位時間が約42分短縮 SWAL群に27クラスター(249人)、SWAL+昇降式仕事机群に25クラスター(240人)、対照群に26クラスター(267人)が割り付けられた。参加者全体の平均年齢は44.7歳、547人(72.4%)が女性、566人(74.9%)が白人で、平均BMIは26.5だった。 ベースラインの平均1日座位時間は、SWAL群が601.7分、SWAL+昇降式仕事机群が610.4分、対照群は596.5分であった。ベースラインから12ヵ月時までの1日座位時間の平均変化量は、SWAL群が-9.4分、SWAL+昇降式仕事机群は-53.7分と、いずれも短縮したのに対し、対照群では15.6分延長していた。また、就業日の平均1日座位時間の平均変化量は、SWAL群が-12.8分、SWAL+昇降式仕事机群は-56.4分であり、いずれも短縮したが、対照群は2.2分延長した。 12ヵ月時の平均1日座位時間は、2つの介入群が対照群に比べ有意に短く、SWAL群で22.2分/日(95%信頼区間[CI]:-38.8~-5.7、p=0.003)、SWAL+昇降式仕事机群では63.7分/日(95%CI:-80.1~-47.4、p<0.001)短縮した。また、SWAL+昇降式仕事机群は、SWAL群よりも平均1日座位時間が41.7分/日(95%CI:-56.3~-27.0)短く、有意な差が認められ(p<0.001)、昇降式仕事机の導入の有効性が示された。 さらに、SWAL群は対照群に比べ、3ヵ月時の1日座位時間の変化量が良好で、3ヵ月と12ヵ月時の1日長時間座位時間、3ヵ月と12ヵ月時の就業日の1日座位時間と1日長時間座位時間、3ヵ月時の就業日の1日歩行時間も優れた。 また、SWAL+昇降式仕事机群は対照群に比し、3ヵ月時の1日座位時間の変化量が優れ、3ヵ月と12ヵ月時の1日長時間座位時間と1日長時間立位時間、3ヵ月と12ヵ月時の就業時間中および就業日の座位時間、長時間座位時間、立位時間が良好であった。介入群では、12ヵ月時の就業時間中の歩行時間も良好だった。非就業日のアウトカムの変数はいずれも、介入群と対照群で差はなかった。 加えて、介入群では、ストレス、ウェルビーイング、ワーク・エンゲイジメントの下位尺度の「活力」がわずかに改善したが臨床的な意義はなく、仕事関連のアウトカムや筋骨格系の問題への悪い影響もなかった。また、SWAL+昇降式仕事机群では、下肢の疼痛や、就業中の座位・立位に関する社会規範(「机で仕事中に立ち上がっても同僚は気にしないだろう」)、支援(座位時間を減らし、より頻繁に動くために、組織、上司、同僚、家族から受けた)が改善された。 著者は、「SWAL+昇降式仕事机群のベースラインの1日座位時間は約10時間で、12ヵ月時には、対照群に比べ1日60分以上の座位時間の短縮が認められた。これは、臨床的に意義のある変化であり、健康アウトカムを改善する可能性があることが、観察研究のエビデンスで示唆されている」と指摘し、「今後は、動く時間を増やすだけでなく、仕事以外での変化をいかに支援するのがよいかを探るなどの研究が求められる」としている。

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第114回 感染者の全数把握見直し、全国一律で/首相官邸

<先週の動き>1.感染者の全数把握見直し、全国一律で/首相官邸2.高齢化で膨らみ続ける社会保障費、概算要求1.9%増/厚労省3.次の医療計画に病院薬剤師、看護師の確保と育成を求める/厚労省4.地域医療を担う医師を、文部科学省と厚生労働省に知事らが提言5.資格ない臨床工学技士が10針縫合、医師や技士に処分/千葉県6.治験促進センター廃止へ/日本医師会1.感染者の全数把握見直し、全国一律で/首相官邸8月27日、岸田文雄総理はオンライン記者会見で、新型コロナウイルス感染者の全数把握の見直しについて、今後は、全国一律の措置に移行し、報告対象外となる自宅療養者への支援体制などを整えた上で、移行時期を決定すると示した。現時点で、各自治体の判断で、報告対象を限定することについては、柔軟に対応することは可能とした。また、新型コロナ対策で実施している水際対策についても緩和を8月24日の記者会見で、ワクチンを3回の接種を条件に、日本に入国・帰国時に求めてきた海外での帰国前の検査については9月7日から免除すると発表した。(参考)岸田首相 新型コロナ 感染者の全数把握見直し 今後全国一律で(NHK)岸田首相、コロナ全数把握の見直しは「全国一律導入が基本」…ウィズコロナに向けた「新たな段階」(読売新聞)入国前の現地検査免除、9月7日から 全数把握は見直し 岸田首相が表明(日経新聞)2.高齢化で膨らみ続ける社会保障費、概算要求1.9%増/厚労省厚生労働省は、来年度の予算案の概算要求で、今年度予算に比べ6,300億円増の33兆2,644億円を財務省に要求した。高齢化の進展により社会保障費が31兆2,694億円と増加したため。今後も団塊の世代が後期高齢者となっていくため、医療費を含め社会保障費の抑制策について国としては取り組みを強化するとみられる。(参考)社会保障費増続く 厚労省の概算要求33.2兆円、実質過去最大(朝日新聞)厚労省概算要求1.9%増の33.2兆円 高齢化で増加続く(日経新聞)2023年度概算要求、社会保障費に約31.3兆円 自然増5,376億円、厚労省(CB news)3.次の医療計画に病院薬剤師、看護師の確保を求める/厚労省厚生労働省は8月25日に「第8次医療計画等に関する検討会」を開催し、不足しているとされる病院薬剤師や訪問看護師の確保に関する記載を都道府県に求めることとした。これまでの医療計画では薬剤師については資質向上を求めていたが、今後は調剤だけでなく、病棟薬剤業務やチーム医療、在宅医療への参加など、役割の充実が求められている。また、看護職員については、都心部では2025年に看護職員不足が見込まれる一方で、一部の都道府県においては、供給数より2025年の看護職員需要数が少ないなど、地域の実情を踏まえつつ、都道府県ナースセンターによる復職支援や、医療機関の勤務環境改善による離職防止などの取組を推進していくことを求めている。(参考)医師以外の医療従事者の確保について病院薬剤師や訪問看護師、特定行為研修修了看護師、医療計画に「ニーズ踏まえた確保策」規定へ-第8次医療計画検討会(Gem Med)薬剤師の確保策を医療計画に記載へ、厚労省方針 計画の作成指針に反映(CB news)4.地域医療を担う医師を、文部科学省と厚生労働省に知事らが提言「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」は、2022年8月21日、厚生労働省や文部科学省に対して、諸問題を解消するための提言書を提出した。提言は、大学医学部の定員上限の緩和や、すべての病院の管理者の要件に医師少数区域での勤務経験の義務付けを求める内容となっている。同会は2020年、医師の都市部偏在により地域で医師不足が課題となっている、人口当たりの医師数が少ない、青森、岩手、福島、新潟、長野、静岡の県知事らが発起し、現在12県が参加し、定期的にシンポジウムなどを開催している。(参考)地方病院の医師不足解消へ 12県の知事 厚労省と文科省に提言(NHK)令和4年度「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」提言決議地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会5.資格ない臨床工学技士が10針縫合、医師と技士が処分に/千葉県千葉市立海浜病院で、ペースメーカの交換術で、医師資格のない臨床工学技士に縫合をさせていた問題で、病院側による再調査の結果、技師の縫合は10針以上であり、技師が虚偽証言をしていたことが明らかとなった。病院側は臨床工学技士と執刀医にそれぞれ10分の1(1ヵ月)の減給、院長を訓告の懲戒処分とした。(参考)無資格縫合は、1針ではなく10針も 千葉市立病院の不正手術問題(朝日新聞)千葉 無資格の技士が胸の縫合手術 調査にも虚偽説明で減給処分(NHK)6.治験促進センター廃止へ/日本医師会日本医師会は、治験や臨床研究の基盤整備の推進を目的に、平成15年に設立した治験促進センターを、日本医師会理事会において廃止することを決定した。これまでは、活動の基盤整備などに厚生労働科学研究費を用いていたが、平成27年度から日本医療研究開発機構(AMED)委託研究費に変わり、厚生労働省・AMEDと連携してきた。今後については、臨床試験のための eTrainingCenterや臨床試験登録システム(CTR)は2023年1月31日に廃止など行い、令和5年度以降、治験に関する業務は、医療技術課の所管となる見込み。(参考)治験センター廃止に伴う業務整理について(日本医師会)治験促進センター廃止に伴う業務整理について(治験促進センター)

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当直明け勤務を改善させた「振り返り」【今日から始める「医師の働き方改革」】第13回

第13回 当直明け勤務を改善させた「振り返り」働き方改革において、「これだけやればうまくいく!」という特効薬は、残念ながらありません。ほとんどの課題は対策を講じ、効果を確認し、軌道修正を繰り返しながら少しずつ解決に向かいます。一見同じに見える問題でも、発生した要因が違えば解決策も変わりますし、やっているうちに状況が変わることもあります。変化の少ない時代であれば、綿密に調査して計画を立てて実行、その後時間をかけて検証、というサイクルでよかったですが、今のような変化の大きな時代には、早く何らかのアクションを起こし、動きながら改善を繰り返すほうが適しています。今回はPDCAサイクルに必要不可欠な施策をブラッシュアップする「振り返り」をテーマに、長崎大学病院小児科の佐々木 理代先生にお話を伺いました。長崎大学医学部小児科学教室・佐々木 理代氏(写真左)―働き方改革に取り組む初期から「当直明け勤務を改善したい」という声がありましたね。医局ではじめて働き方改革をテーマにした話し合いをしたときから、当直明け勤務の改善はテーマでした。小児科の場合、当直は午前11時から翌朝まで緊急入院や救急車の対応に追われ、そして翌日も夕方まで日勤が続くというのが基本の勤務スタイルです。24時間の急患対応後に日勤が続くため、精神的・身体的な負荷が高い状況でした。最初に取り組んだのは「当直明けの午後をフリータイムする」というものです。勤務時間、勤務体系はそのままですが、当直明けの医師は外来対応などの担当から外れ、自分の勉強などに自由に使える時間にしたのです。1ヵ月間挑戦してみましたが、検査や処置に人手が必要という小児科の特性から、フリータイムを予定してもほぼ実行できず、この試みは頓挫してしまいました。1ヵ月後に働き方改革チームで振り返りを行い、上記の問題点が見えてきました。軌道修正を図ろうと、当直明けでなく、当直帯前の負担に注目しました。次は、午後の急患対応を当番制にし、当直予定の医師は午前11時から夕方までの急患対応から外れるようにしました。日中の急患対応や緊急の呼び出しがなくなることで精神的負荷が減るとともに、検査の予定なども入れやすくなりました。午後の急患対応の当番は若手医師を中心に回しています。若手は経験を積みたい一方で、一人では不安な部分もあります。日中であればすぐ先輩医師に相談できるので、安心して対応できる、という声が上がっています。当直する中堅・ベテラン医師の負荷も減り、よい業務バランスができてきました。―振り返りで次の手を打ったことが奏功したのですね。そうですね。最初に取り組んだ「当直後フリータイム」は市中病院ではうまく回っているところもあると聞きますが、大学病院は専門性の高い患者が集まっており、すぐに当直明け医師の代わりを務める状況をつくることが難しかったのです。でも、「できなかったから」と諦めるのではなく、問題点を見つけて次の手を打つ、というサイクルをつくれたことがよかったです。かつて、主に女性医師は、出産などのタイミングで離職せざると得ないケースが多くありました。でも、もうそんな時代ではありません。組織は男性も含めた全員が、プライベートが多忙な時期も働き続けられるよう、いろいろな働き方を用意しなくてはなりません。これからも働き方改革を続けたいと思います。〈解説〉実際に取り組んではじめて施策の優先度や修正点がはっきりすることはよくあります。とくに働き方改革は、組織の複数の問題が複雑に絡み合っていることが多く、最初の取り組みだけで変化を起こせることは稀でしょう。大切なのは、うまくいかなくても諦めず、振り返りをしながら別のやり方を試み続けることです。振り返りをうまく機能させるポイントは3つあります。1)タイミングを決めておく施策を計画するときには、実施期間とともに振り返りのタイミングを決めておきます。振り返りは施策が終わってからではなく、実施中からはじめます。お勧めのタイミングは開始から2週間後です。施策の実施回数が少ないと振り返りができないので、頻度や内容によって調整します。2)うまくいったこと・いかなかったことをバランスよく振り返りでは、「うまくいかなかったこと=反省点」ばかり上がることがあります。もちろんそれは次の一手の成功確率を高める重要な情報ですが、あわせて「うまくいったこと」もまとめましょう。チームのモチベーションアップや次につながります。思い出せないことがないよう、日ごろから気付いたことをメモするようにしましょう。3)解決したい問題を定義する働き方改革は長期に渡るプロジェクトです。現場でよく聞くのが、「これは、もともと何を解決したくて始めた施策なんだっけ?」という声です。チーム外の人や新しいメンバーにもすぐに理解してもらえるよう、「解決したい問題」を言語化して共有することが大切です。

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がん患者の「食事」と「症状」の関係を探る【Oncologyインタビュー】第40回

出演NTT東日本関東病院 腫瘍内科 水上 拓郎氏NTT東日本関東病院 栄養部 上島 順子氏大妻女子大学 家政学部 川口 美喜子氏がんの症状や治療の合併症で、がん患者の40%~80%は体重減少や栄養状態が悪化する。さらに進行性の機能障害を引き起こすがん悪液質は、がん患者の死因の20%を占めるとも報告されている。体重減少や低栄養を防ぐためにも食事を摂ることが肝要であるが、がん患者の食事と症状の関係を明らかにした報告は数少ない。そのような中、化学療法を受けるがん患者の「食事」と「症状」を、スマートフォンアプリとAIで収集・調査し、がん患者の食事と症状の関係を明らかにする「WASHOKU」プロジェクトが計画されている。参考「WASHOKU」プロジェクトクラウドファンディング

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その3【「実践的」臨床研究入門】第23回

MEDLINE(PubMed)のような1次情報源を活用した文献検索においては、できる限り多くの関連研究を収集できるように、網羅的かつ客観的で再現可能な検索式の構築が必要となります。そのために有用なツールであるMeSH(Medical Subject Headings)や(連載第21回参照)、検索式構成のための基本的なポイント(連載第22回参照)について説明しました。今回からは、実践的な検索式構築について解説していきます。MeSHとテキストワードの両方を使い、タグを活用して検索これまで、検索式構築におけるMeSHの有用性について強調してきましたが、MeSHにも弱点があります。MeSHでは、新しい概念や略語、薬剤の製剤名などはカバーされていないことが多いです。また、とくに新しい論文ほど個々の文献へのMeSHの付与(連載第21回参照)が漏れていることもあるようです(近年は自動化が進んでいるようですが)。そのため、実際の検索式では、MeSHだけでなくテキストワードも用いることが一般的です。テキストワードでは、MeSHで拾えない同義語・関連語、(アメリカ英語とイギリス英語で)異なるスペル、略語や(薬剤の)固有名詞など、を指定します。たとえば、前回PICOの例として取り上げた、われわれのコクラン・システマティックレビュー(SR: systematic review)論文1)のP(対象)の構成要素の概念である「透析」"dialysis"のMeSHは"Renal Dialysis"でした(連載第22回参照)。"MeSH Database"で"Renal Dialysis"を調べると、リンク(および下記)のように"Renal Dialysis"の説明がなされています(連載第21回参照)。"Therapy for the insufficient cleansing of the blood by the kidneys based on dialysis and including hemodialysis, peritoneal dialysis, and hemodiafiltration."「(自己の)腎臓による血液浄化が不充分な場合の、血液透析、腹膜透析、血液濾過透析を含む透析(という技術)に基づく治療法(筆者による意訳)。」"hemodialysis"や"hemodiafiltration"はイギリス英語のスペルではそれぞれ、"haemodialysis"、"haemodialysis"となります。"peritoneal dialysis"は"CAPD"などの略語で示されることもあります。また、この論文1)のI(介入)の構成概念である"aldosterone receptor antagonist"のMeSHは"Mineralocorticoid Receptor Antagonists"でしたが、具体的な個別の薬剤の固有名詞はカバーできないおそれがあります。そこで、検索式に"spironolactone"や"eplerenone"などの製剤名をテキストワードで加えて対応します。「タグ」を活用した検索項目の指定方法についても説明します。検索ワードの末尾に「タグ」を付けることにより、検索項目を限定することが出来ます。「タグ」で指定できる検索項目の一覧は、PubMedトップページの左下のリンク、FAQs & User Guideのページを下にスクロールすると"Search Field descriptions and tags"という小見出しの後に列記されていますので、ご参照ください。ここでは、検索式で良く使うタグを紹介します。実践的には、MeSHとテキストワードを併用し、タグを活用して検索式を組み立てるのです。1)Hasegawa T,et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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ブースター接種率、職業や年収によって明確な差

 COVID-19ワクチンのプライマリ接種完了者(以下、ワクチン接種完了者)であっても、ブースター接種を受けるかどうかに関しては、地理的・職業的・社会人口学的な差異があることを、米・NYC Test and Trace CorpsのIsrael T. Agaku氏らが報告した。ブースター接種の必要性と接種意欲に関する調査は実施されているが、同氏らの認識ではブースター接種率とその背景因子を評価した大規模な調査は行われていないため、本調査を実施して社会人口学的要因を明らかにすることにした。JAMA Network Open誌2022年8月19日号掲載の報告。 この横断的研究は、米国国勢調査局の2021年12月1日~2022年1月10日の家計実態調査を基に行われた。メールやSMSで参加者を募り、オンラインで回答を得た。参加者には、新型コロナワクチンの接種の有無、接種回数と初回に接種したワクチンのメーカー名、自己申告によるCOVID-19感染の有無を尋ねた。また、社会人口学的要因として、COVID-19の感染の有無が不明な人との接触機会を探るため、過去7日間で最もよくいた場所、婚姻状況、子供の人数、居住地域、人種・民族、性別、年齢、最終学歴などを調査した。 解析対象者は、ワクチン接種を完了している成人13万5,821人(18~44歳は41.5%[平均年齢48.07±17.18歳]、女性51.0%)であった。ブースター接種の定義は、初回に接種したワクチンがジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンの場合は2回以上の接種、ファイザー製ワクチンまたはモデルナ製ワクチンの場合は3回以上の接種とした。調整接種率(APRs)はポアソン回帰法を用いて測定し、ワクチン接種完了者のうちブースター接種を受けた人の背景を調査した。 主な結果は以下のとおり。・米国全体のワクチン接種完了者は83.0%で、そのうちブースター接種を受けたのは48.5%であった。ブースター接種の割合が低かった州はミシシッピ州(39.1%)、高かった州はバーモント州(66.5%)であった。・ブースター接種率が高かったのは、65歳以上の人(71.4%)、メディケア登録者(70.9%)、世帯年収20万ドル以上(参考:2,700万円超)の人(69.3%)、博士号・修士号・専門職の人(68.1%)、既婚で家に子供がいない人(61.2%)、病院勤務者(60.5%)、非ヒスパニック系アジア人(54.1%)であった。・一方、ブースター接種率が低かったのは、18~24歳の人(24.0%)、独身で家に子供のいる人(24.7%)、経済的困窮者(32.0%)、COVID-19の既感染者(32.5%)、学歴が高等教育以下の人(34.0%)、メディケイド加入者(35.2%)、飲食店・郵便局・更生施設・薬局勤務者であった。・家の外で働いていない人と比べてブースター接種率が高かったのは、病院勤務者(APR:1.23、95%信頼区間[CI]:1.17~1.30)、医師・歯科医師などの外来医療機関勤務者(同:1.16、同:1.09~1.24)、社会福祉事業従事者(同:1.08、同:1.01~1.15)であった。・一方、家の外で働いていない人と比べてブースター接種率が低かったのは、農業・林業・漁業・狩猟産業従事者(同:0.83、同:0.72~0.97)、郵便局勤務者、(同:0.84、同:0.60~1.16)、食品以外の製造業従事者(同:0.84、同:0.75~0.94)、飲食店勤務者(同:0.85、同:0.74~0.96)であった。・ブースター接種を受ける割合は年齢が高くなるとともに高くなり、最終学歴が低いほど低くなった。・COVID-19と診断されたことがない人に比べて、診断されたことがある人ではブースター接種率が30%低下した(同:0.70、同:0.68~0.73)。・男性と比べて、女性ではブースター接種率が低かった (同:0.96、同:0.94~0.98)。 著者は、「本調査から、米国の成人におけるブースター接種率には格差がある。ブースター接種率を改善するには、接種率の低い集団を対象とした取り組みが必要となる可能性がある」とまとめた。

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オシメルチニブのEGFR変異陽性肺がん術後補助療法が国内承認/AZ

 アストラゼネカは、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)について、2022年8月24日、「EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺における術後補助療法」の適応症について、厚生労働省の承認を取得したと発表。 肺がんは罹患率が高く、死亡率の高いがん種である。日本を含むアジアにおいては、非小細胞肺がん(NSCLC)の約30〜40%がEGFR遺伝子変異陽性と診断されており、欧米と比較してその割合が高いことが知られている。また、NSCLC患者全体の最大30%が、切除可能な早期NSCLCと診断されるが、依然として再発することが課題であり、これまでに、IB期と診断された患者の半数近く、IIIA期と診断された患者の4分の3以上が、5年以内に再発を経験していると報告されている。 今回の承認は、オシメルチニブの病理病期II期およびIIIA期のEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法における無病生存期間(DFS)を主要評価項目とした第III相ADAURA試験のデータに基づいている。同試験でオシメルチニブはDFSのハザードリスクを83%減少させている(ハザード比[HR]:0.17、99.06%CI:0.11~0.26、p<0.001)。 ADAURA試験のデータ解析は2022年の予定であったが、オシメルチニブが顕著な有効性を示したことから、独立データモニタリング委員会の勧告に従って早期(2020年)に試験結果が報告された。

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急性期脳梗塞、遠隔虚血コンディショニングで機能予後改善/JAMA

 中等症の急性期脳梗塞成人患者において、症状発現後48時間以内に両側上肢を電子自動制御カフで圧迫・解除を繰り返す遠隔虚血コンディショニング(remote ischemic conditioning:RIC)治療を加えることで、通常の治療のみと比較し90日後の神経学的機能良好の可能性が有意に増加することを、中国・人民解放軍北部戦区総医院のHui-Sheng Chen氏らが、中国の55施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Remote Ischemic Conditioning for Acute Moderate Ischemic Stroke Study:RICAMIS試験」の結果、報告した。これまで、前臨床試験でRICが脳梗塞を抑制し神経学的アウトカムを改善することが示され、いくつかの臨床試験においてRICの安全性が報告されていたが、急性期脳梗塞患者におけるRICの有効性に関して明らかなエビデンスは得られていなかった。なお著者は、「RICの有効性を結論付ける前に、今回の結果を別の試験で再現する必要がある」とまとめている。JAMA誌2022年8月16日号掲載の報告。症状発現後48時間以内の中等症の脳梗塞患者約1,800例で検討 研究グループは、2018年12月26日~2021年1月19日の期間に、18歳以上で症状発現後48時間以内の中等症の急性期虚血性脳卒中患者(NIHSSスコアが6~16[スコア範囲:0~42、スコアが高いほど重度])1,893例を、RIC群(922例)または対照群(971例)に1対1の割合で無作為に割り付けた(最終追跡調査日2021年4月19日)。 RIC群では、ガイドラインで推奨されている治療(抗血小板薬、抗凝固薬、スタチンなど)に加え、RIC(両側上肢に電子自動制御のカフを装着し、200mmHgで5分間の圧迫と5分間の解除を1サイクルとして、5サイクル、計50分間繰り返す)を1日2回、10~14日間実施した。 対照群では、ガイドラインで推奨されている治療のみを行った。 主要評価項目は、90日時点の良好な機能アウトカム(mRSスコア:0~1)の患者割合とし、盲検下で評価された。90日後のmRS 0~1の割合は、RIC群67.4%、対照群62.0% 無作為化された1,893例(平均[±SD]年齢65±10.3歳、女性606例[34.1%])のうち、適格基準を満たさず臨床的判断により中止あるいは同意撤回などにより117例が除外され、1,776例(93.8%)が解析対象となった。 90日時点の機能予後良好の患者割合は、RIC群67.4%(582/863例)、対照群62.0%(566/913例)であり、群間リスク差は5.4%(95%信頼区間[CI]:1.0~9.9)、オッズ比は1.27(95%CI:1.05~1.54)と、両群間に有意差が認められた(p=0.02)。 有害事象の発現率は、RIC群6.8%(59/863例)、対照群5.6%(51/913例)であった。

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妊娠中のコロナワクチン接種、早産等のリスク増大なし/BMJ

 妊娠中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種しても、非接種と比較して早産、在胎不当過小(SGA)児の出生、死産のリスクは増加しないことが、カナダ・オタワ大学のDeshayne B. Fell氏らの後ろ向きコホート研究で示された。妊娠中のCOVID-19ワクチン接種による妊娠アウトカムについては、大規模比較研究のエビデンスが限られていた。著者らは「今回の結果は、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種のリスクとベネフィットに関してエビデンスに基づく意思決定に役立つものである」とまとめている。BMJ誌2022年8月17日号掲載の報告。カナダ8万5,162例の出産について解析、約半数が妊娠中にワクチン接種 研究グループは、カナダ・オンタリオ州の出生登録(Better Outcomes Registry and Network[BORN Ontario])とCOVID-19ワクチン接種データベース(COVaxON)を連携させ、2021年5月1日~12月31日のデータを用い、研究期間終了(2021年12月31日)の42週以上前の妊娠による出産で、在胎週数20週以上または出生時体重500g以上のすべての生児および死産児、ならびに受精したと思われる日から出生前日までの間に受けたワクチン接種について特定し解析した。 主要評価項目は、早産(妊娠37週未満)、超早産(妊娠32週未満)、SGA児(在胎期間に対して出生時体重が10パーセンタイル未満)の出生、および死産の発生で、COVID-19ワクチン接種の影響についてCox回帰法を用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。COVID-19ワクチン接種はリスク期間において曝露状況が経時的に変化する因子として扱い、HRは傾向スコアによる重み付けを用いて潜在的交絡因子に関するHRを補正した。 調査期間中の出産児(生児および死産児)は8万5,162例で、このうち母親が妊娠中に1回以上COVID-19ワクチンを接種していた児は4万3,099例(50.6%)で、うち4万2,979例(99.7%)はmRNAワクチンであった。早産、超早産、死産、SGA児出生のリスク増加は認められず 妊娠中にワクチン接種を受けた4万3,099例のうち、1回接種は1万3,416例(31.1%)、2回接種は2万9,650例(68.8%)、3回接種は33例(0.1%)であった。また、1回目接種が妊娠初期(第1期)であったのは5,213例(12.1%)、妊娠中期(第2期)が2万715例(48.1%)、妊娠後期(第3期)が1万7,171例(39.8%)であった。 妊娠中のワクチン接種は、すべての早産(ワクチン接種群6.5% vs.非接種群6.9%、補正後HR:1.02[95%CI:0.96~1.08])、自然早産(3.7% vs.4.4%、0.96[0.90~1.03])、および超早産(0.59% vs.0.89%、0.80[0.67~0.95])のリスク増加とは関連がなかった。また、SGA児の出生(9.1% vs.9.2%、0.98[0.93~1.03])、および死産(0.25% vs.0.44%、0.65[0.51~0.84])のリスク増加も認められなかった。 これらの結果は、ワクチンを接種した妊娠の時期、mRNAワクチンの種類、妊娠中のワクチン接種回数にかかわらず、同様であった。

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日本人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールと他の非定型抗精神病薬による治療中止率の比較

 統合失調症の再発予防には、治療継続が不可欠である。横浜市立大学の菱本 明豊氏らは、日本の実臨床現場における統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール治療(BRX群)と他の抗精神病薬治療(OAA群)による治療中止までの期間を比較するため、健康保険レセプトデータを用いて検討を行った。その結果、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが低いことが示唆されたことから、統合失調症患者の治療継続にブレクスピプラゾールが有用である可能性を報告した。Advances in Therapy誌オンライン版2022年7月29日号の報告。 2017年4月~2020年5月の日本のレセプトデータベースより抽出した75歳未満の就業中の統合失調症患者およびその扶養家族の匿名化されたデータを評価した。ベースライン時の患者変数で調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて、主要アウトカムであるBRX群とOAA群における180日間の治療中止までの期間を比較し、ハザード比(HR)を95%信頼区間(CI)で推定した。180日間の累積治療継続率も合わせて推定した。主要アウトカムについては、感度分析およびサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、BRX群978例、OAA群4,898例を含めた。・BRX群は、OAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(HR:0.86、95%CI:0.78~0.95、p=0.0024)。・累積治療継続率は、BRX群(45.9%、95%CI:42.5~49.2)のほうがOAA群(39.5%、95%CI:38.1~41.0)よりも高かった(log-rank検定:p<0.0001)。・傾向スコアが一致した患者による分析においても、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(log-rank検定:p=0.0466)。・感度分析およびサブグループ解析においても、同様の結果が得られた。

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オラパリブ、BRCA変異陽性HER2-乳がん術後療法に適応拡大/AZ

 アストラゼネカは2022年8月25日、PARP阻害薬オラパリブ(商品名:リムパーザ)について、「BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳における術後薬物療法」の適応症を対象に、8月24日付で厚生労働省より承認を取得したことを発表した。オラパリブの乳がん術後薬物療法の適応承認と第III相OlympiA試験 今回の乳がん術後薬物療法の適応症を対象とした承認は第III相OlympiA試験の結果に基づくもので、オラパリブはプラセボと比較して主要評価項目である浸潤性疾患のない生存期間(iDFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示した。具体的には、オラパリブは浸潤性乳がんの再発、二次がん、または死亡リスクを42%低下させた(ハザード比[HR]:0.58、99.5%信頼区間[CI]:0.41~0.82、p<0.0001)。 副次評価項目においては、2回目の全生存期間(OS)中間解析において、オラパリブはプラセボと比較してOSの統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示し、死亡リスクを32%低下させた(HR:0.68、98.5%CI:0.47~0.97、p=0.009)。なお、同試験におけるオラパリブの安全性および忍容性プロファイルは、過去の臨床試験のプロファイルと一貫していた。 <製品概要>・販売名:リムパーザ錠 100mg、リムパーザ錠 150mg・一般名:オラパリブ・効能・効果:BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法・用法・用量:通常、成人にはオラパリブとして1回300mgを1日2回、経口投与する。ただし、術後薬物療法の場合、投与期間は1年間までとする。なお、患者の状態により適宜減量する。 ・製造販売承認日:2022年8月24日

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スペインにおけるサル痘の臨床症状とウイルス学的評価:前向き観察コホート研究(解説:寺田教彦氏)

 サル痘は1970年にヒトの感染が報告され、近年はナイジェリアやコンゴ共和国などの地域で増加傾向となり、主に中央アフリカから西アフリカで流行する感染症と考えられていた。しかし、2022年5月以降に欧米などのこれまでサル痘の流行が認められていなかった複数の国で、渡航歴がなく疫学的リンクの確認できない患者が確認された。流行は拡大し、7月23日にはWHO事務局長から、緊急委員会の見解等を踏まえ、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言されている(厚生労働省検疫所 FORTH.「複数国におけるサル痘の発生に関しての国際保健規則[IHR2005]第2回緊急委員会会合の報告」)。この2022年以降の流行について、英国からは54例の症例報告がされ(Girometti N, et al. Lancet Infect Dis. 2022;S1473-3099(22)00411-X.)、過去のアウトブレイクといくつか様相が異なる点が指摘された。臨床症状としては、過去の報告と比較して患者の疲労感や、無気力感の有病率、発熱や悪寒の報告は減少していた。病変部位の特徴は、以前の報告では顔面や頸部の有病率が高かったが、本流行では性器あるいは肛門周囲の皮膚病変が頻繁に認められたことが指摘されている(Patel A, et al. BMJ. 2022;378:e072410.)。 先の報告は、英国からのみの報告であり、今回の特徴が世界的に流行しているサル痘の特徴と合致するかの追加報告を期待していたが、今回の論文からも、同様の傾向を読み取ることができた。本邦でも、今後サル痘患者が散発的に発生する懸念もあるため、今回の流行に基づいた臨床症状、経過を把握して、診断のポイントなどを理解することが臨床医には求められるだろう。今回のサル痘の流行については、英国からの報告後、7月21日にNEJM誌より16ヵ国で診断された528例のサル痘患者に関する報告がされており(Thornhill JP, et al. N Engl J Med. 2022 Jul 21. [Epub ahead of print])、本論文が8月8日にLancet誌より報告されている。 本論文は、マドリードとバルセロナ、スペインの性に関する健康クリニックで実施された多施設、前向き、観察コホート研究であり、2022年5月11日から6月29日までの検査でサル痘の確定診断をされた患者を連続して登録している。 この論文では、181例が登録されたが、166例(92%)がゲイあるいはバイセクシャル、MSM(Men who have Sex with Men)で、15例(8%)が異性愛男性や異性愛女性だった。72例(40%)がHIV陽性で、31例(17%)が他の性感染症(STI)も診断されている。70例(39%)で治療を要する合併症があり、45例(25%)が直腸炎、19例(10%)が扁桃炎、15例(8%)に陰茎浮腫、6例(3%)に膿瘍性病変があり、3例(2%)が入院を要した。病変部位は、性的曝露部位の分布に近く、性行為における密接な接触が感染の原因と考えられた。 以上のように、本論文により、英国から発表されていた2022年に流行しているサル痘の特徴と同様の臨床的な特徴を有していることを確認でき、また英国の報告時点ではすべての患者がMSMだったが、本論文では異性愛男性や異性愛女性でも患者が発生していることが確認できた。また、サル痘に限った話ではないが、STIでは、複数の感染症に同時に感染しうるので、サル痘以外のSTIを診療したときにサル痘のリスクもあると考えられた場合にはサル痘のスクリーニングを検討するとともに、サル痘を診療時は、その他のSTIのスクリーニングも実施することが好ましいことが読み取れる。 さて、ここからは、本邦に目を向けてみる。 本稿執筆時点では、2022年において日本ではサル痘は4例が診断されている。現在までの症例は、海外渡航歴があるか、海外から日本を短期訪問中の者との接触歴がある症例のみである。本邦では、まだサル痘を疑うときにサル痘が報告されている国への滞在歴や滞在国での活動歴、本邦でサル痘が報告されている国からの短期訪問者との接触歴を参考にできるだろう。 しかし、海外のようにサル痘患者が増加し、本邦でも蔓延するようになると、サル痘が増加している国への滞在歴や、同国に滞在していた者との接触でリスク判定をすることが難しくなる。本邦では、疫学的リンクを追えない症例が散見されるようになった場合には、STIとして、サル痘を鑑別に想起するとともに、STIの検査を実施したが他の原因が指摘できない症例や、臨床経過からあるいは検査結果から、性器ヘルペスや梅毒などの治療を開始するも、改善しない場合には、サル痘を疑いにいく姿勢が必要になるだろう。 本邦において、疫学リンクが追えなくなる事態が発生するケースとしては、昨今のニュースを参考にすると、(1)性風俗業界へのサル痘の持ち込み、(2)複数人での性行為が行われる集会への持ち込み、(3)複数のコミュニティの属する性活動が活発な患者への感染、などが考えられる。ほかには、現時点ではそれほど懸念してはいないが、ヒトからイヌへの感染報告もあるので(Seang S, et al. Lancet. 2022 Aug 10. [Epub ahead of print])、(4)ヒトから動物を介して感染が起こる可能性も否定はしきれない。 サル痘と同様に、特定の集団で初期に感染症が拡大した疾患としてHIV感染症がある。HIVの教訓から学ぶべきこととして、特定の感染症患者が偏見を持たれる機会が減るように努めることが望ましい。HIV感染症も、性行為で感染し、MSMなどの集団で感染が拡大していたため、HIV患者に特定のイメージができてしまった。しかし、必ずしも同性愛者や性活動が活発な患者のみが感染するわけではなく、当時のHIV感染症のように、サル痘患者にネガティブなイメージができてしまうと、かえって診断されることを嫌い、病院を受診しない患者も生じうる。もちろん、今後感染症に罹患する可能性が高くなりうるMSMのグループなどにサル痘に関する情報提供などを行うことはするべきではあるが、一般の方々への情報の提供の仕方は注意をする必要があるだろう。 本論文や英国からの報告を取り上げたが、NEJM誌の報告からも同様の傾向は読み取ることができる。和文では、「サル痘(Monkeypox)の診療指針 ver.1.0(2022年7月8日作成). 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター」が公開されており、診療の参考になるだろう。

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第29回 患者を帰す前の一工夫:病状や処方の説明を十分しよう【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)病状説明は、患者さんが陥りがちな点を踏まえた上で、具体的に、わかりやすく行おう!【症例】71歳男性。高血圧以外の特記既往なく、ADLは自立している。来院前日から喉の痛みを自覚した。来院当日起床時から倦怠感、発熱を認めた。別棟に住む孫が2日前に近医小児科で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性診断を受けており、濃厚接触はしていないものの心配になり受診。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧148/91mmHg脈拍90回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温38.1℃所見全身状態は良好で、流行状況も考慮しCOVID-19迅速抗原検査を施行したところ陽性。飲食も可能であり、解熱薬のみの処方で帰宅の判断となった。〔初診外来での会話〕医師「コロナ陽性だったので、薬を出しておきますので、それで対応してください。保健所から連絡があると思うので、あとはその指示に従ってくださいね。お大事に」患者「あ、はい…」翌日、喉の痛みは改善傾向にあるものの、発熱が持続しているため再度受診したが…。COVID-19禍での外来診療みなさん、体調を崩してはいないでしょうか? 私が勤務する救急外来にも連日多くの患者さんが来院し、「コロナ疑いの患者さんもたぁくさん」という、そんな毎日です。なるべくなら自宅で経過をみることが可能な方への受診は控えてもらいたいと思いながらも、その判断って私たちが思っているほど簡単ではありません。まして子を持つ親であれば、子どもの体調には自分以上に心配になりますし、家族内感染の場合には自宅内隔離を実践しようとするも現実は難しく、日毎に症状を認める家族の対応に悩むことが多いでしょう。日本感染症学会、日本救急医学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本臨床救急医学会の4学会から「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」が8月2日に提出され、国民一人一人がこの内容を理解することも大切ですが、受診した患者さんに対しても意識させる必要があります1)。再受診患者を防ぐことはできないか救急外来で帰宅可能と判断した患者さんが数日内に再度受診することは、避けたいところですが珍しくありません。現在、ベッド事情が厳しい病院も多いことから、本来入院で経過をみることが望ましい患者さんを外来でフォローすることも増えているかもしれません。このようなケースは致し方ない部分もあるとは思いますが、なかには再度受診したものの、帰宅可能の判断となる患者さんもいます。その多くがちょっとしたことで防ぐことができるものであり、今回の事例ではその辺りを取り上げたいと思います。ちなみに、状態の悪化によって数日内に救急外来を再受診する患者さんは、そうでない患者さんと比較し、初診時に呼吸数が上昇していることが多く、呼吸数は臨床的悪化の独立した危険因子です2)。帰宅可能と最終判断する前に、呼吸数に着目することをお勧めします。バイタルサインは普段の状況で評価を最近は、呼吸困難を主訴に来院する患者さんが多いように感じます。その際、安静時のバイタルサインのみで帰宅の判断をしていないでしょうか。以前にもこの点は取り上げましたが(第12回 呼吸困難)、バイタルサインは「普段の状況」でも確認することを忘れないようにしましょう。普段歩行可能な方であれば、歩行してもらい、それでも症状の再燃が認められないかを確認しましょう。安静時、SpO2が問題ないから帰宅可能、それではダメですよ。歩いてもらったら、呼吸困難の訴えあり、呼吸数上昇、SpO2低下、そんな場合には再度精査が必要かもしれませんし、入院が必要かもしれませんから。帰宅の判断、その前に高齢者が多い救急外来では、特に表の内容を意識しましょう3)。肺炎や圧迫骨折、診断が正しく安静時に状態は落ち着いていたとしても、自宅では管理が難しいことはいくらでもあります。病気の重症度のみで帰宅or入院の判断ができないことを忘れてはいけません。表 帰宅の判断、その前に-高齢者がERから帰る前に必ず確認すべき8つのこと-画像を拡大するまた、救急外来で診断、治療介入し、その後の治療、経過観察をかかりつけの病院や診療所でフォローしていただくことも少なくありません。その場合も、このように対応する理由を患者さん、家族に理解してもらい、治療方針(ケアプラン)をかかりつけ医と共有する必要があります。紹介状は必須とは思いませんが、患者さんや家族が伝えることが難しい状態であれば、一筆でも簡潔に記載し、その助けとしてもらうのが望ましいでしょう。これを面倒くさいなどと思ってはいけません。薬の説明、ちゃんとしていますか?肺炎に対する抗菌薬や解熱薬、なんらかの痛みに対する鎮痛薬など、救急外来や一般の外来で処方することは日常茶飯事です。その際、薬の説明をどの程度行っているでしょうか?医療者に対して処方する場合には、薬の名前のみ伝えればよいかもしれませんが、一般の患者さんへ処方する際には、当然ながら十分な説明が必要です。みなさんが処方している薬を、患者さんは十分理解しないまま内服していることは少なくないのです。救急外来では、抗血栓薬や利尿薬を内服している患者さんに多く出会いますが、内服理由を確認すると「わからない」と返答されることもしばしばです(みなさんもそんな経験ありますよね?)。表にも「(5)新しい処方箋があれば、薬の相互作用について再確認して理解できているか?」という項目がありますが、救急外来では特に処方に関しては注意が必要です。初診の患者さんも多く、定期内服薬の詳細が把握できないこともあるかもしれません。また、アレルギーの確認を怠ってしまうかもしれません。しかし、それでは困ります。当たり前のことではありますが、きちんと把握する努力を怠らないようにしましょう。解熱鎮痛薬処方の際のポイントは?COVID-19の診断を受けた患者さんや家族から頻繁に相談されるのが、「熱が下がらない」、「喉の痛みが辛い」、「薬が効かない」といった内容です。外来診療中にも電話がかかってくることも多いです。そのような場合に、よくよく話を聞いてみると、病状の悪化というよりも薬の内服方法が不適切なことが少なくありません。薬が効かない? 本当は効いているんじゃない?患者さんが訴える「薬が効かない」、これはまったく効果がないというわけでは必ずしもなく、飲めば熱は下がるけれどもまた上がってきてしまう、その意味合いで使用していることもあるのです。これは薬が効いていないのではなく、薬効が切れただけですよね。つまり、薬の具体的な効果を説明していない、もしくは患者さんが理解していないが故に生じた訴えといえます。薬が効かない? 飲むタイミングの問題では?また、こんなこともあります。頭痛や喉の痛みを訴える患者さんが「薬が効かない」と訴えるものの、よくよく聞いてみると、「薬はあまり飲まない方がよいと思って、なるべく使用しないようにしていた。どうしても痛みが辛いから使用したがあまり効かない」と訴えるものです。なんでもかんでも薬を飲むのはお勧めできませんが、痛みに関してはピークに達してから内服するよりも、痛くなりかけている際に内服した方がピークを抑えることができ、症状はコントロールしやすいでしょう。片頭痛に対する鎮痛薬の内服のタイミングなど有名ですよね。さいごに今回の症例のように、COVID-19で予期される症状に関しては、具体的にいつどのように解熱鎮痛薬を使用するのかをわかりやすく説明する必要があります。「頓服」、この言葉も意外と伝わっていないので要注意です。薬剤師さんが丁寧に教えてくれる場合には問題ないかもしれませんが、市販薬や院内処方の場合には十分な説明がなされないこともありますよね。私は、解熱鎮痛薬を処方する際は、まずは毎食後に定期内服してもらい、症状が改善したら頓服へ切り替えていただくようにお話することが多いです。「今日、明日あたりは食後にこの薬を飲みましょう。朝起きて痛みがない、熱が下がって楽、そのような場合には、朝食後には飲まず、症状が出てきたら飲むようにしましょう」とこんな感じで説明しています。COVID-19の診断は、急性腹症や骨折診療に比べればすぐにつきます。診断に時間がかからないぶん、説明には十分時間をかけ、可能な限り患者さんの不安を取り除きつつ、不要な再受診を防ぐ努力をしていきましょう。1)「国民の皆さまへ 限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」2)Mochizuki K, et al. Acute Med Surg. 2016;4:172-178.3)Southerland LT, et al. Emerg Med Australas. 2019;31:266-270.

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第123回 マジか…コーヒー店で遭遇したコロナ様症状有する“抗原検査で陰性”の人

先日、私はあるコーヒーチェーンの店舗にノートパソコンを持ち込んで仕事をしていた。電源のある席は窓際に位置する横一列のカウンター席。隣の席との間がアクリル板ならぬ、卵パック程度の薄さのプラスチックシートで区切られていた。私の隣には女性が座っていたが、その彼女がマスクを外した状態で時折軽い咳をする。私は気にしないふりをして実は気にしていた。「気にしないふり」を敢えてしていたのは、人によっては呼吸器感染症ではなくとも咳が出てしまう人もいるからだ。昨年、私がお世話になっている編集者が咳喘息と診断され、外出先でマスク越しに咳をしても周囲から白眼視されるのがつらいという話を聞いていた。そして私もごくまれにどうしても咳が出てしまうこともある。咳一つであまり神経質にはなりたくない。やせ我慢と言われようとも人にはそれぞれ事情があるのだからと、こうしたシーンでは努めて平静を装っている。仕事を始めて1時間半ぐらい経った時も隣にはその女性がいた。しかも数分おきに咳をしている。その彼女が突然スマートフォンを片手に話し始めた。「ああ、○○(人の名前)!うん、夕べさ38℃を超える熱が出てさ、すぐあの抗原検査キットっていうの? で検査したけど陰性だった。今朝はまだ37℃台だったけどお昼には37℃切ったんで、たぶん何でもない。もう平気。今日の夜は行けるよ」これを聞いた瞬間、私は凍り付いた。この状況下を考えれば、抗原検査とはまさに新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)で使う抗原定性検査(以下、抗原検査)に他ならない。もやはここで書くのは釈迦に説法だが、抗原検査の感度は発売当初よりも改善されたとはいえ、PCR検査よりは劣る。しかも、現時点でインターネット上では国による性能確認が行われていない研究用のものが購入できる。念のため記述しておくと、発売当初は陽性判定をそのまま確定診断として用いることができたが、陰性の場合はPCR検査による確定診断が必要だった。その後、発症2~9日以内の有症状者では、抗原検査キットとPCR検査の結果の一致率が高いことが確認されたため、該当する人で鼻咽頭拭い液による抗原検査の陰性でも確定診断が行えるようになっている。私が遭遇したこの女性がもし新型コロナだったと仮定したら検査をしたのは発症当日。この段階の陰性という結果は信頼性が担保されているとは言えない。この女性には悪いが私はすぐさま荷物を持って席を立ち、そこからかなり離れた電源のない席に慌てて移動した。この後、3日間、私は仕事場とするアパートにほぼこもりきりになり、自宅に戻った際もマスクを着用したまま過ごすことになった。この日から既に2週間弱が過ぎているが、私も家族もとくに異常はない。現在の第7波の感染拡大と発熱外来のひっ迫を受け、国はインターネットで医療用の認可を受けた抗原検査の販売を解禁する方針を明らかにしている。販売に当たっては薬剤師がメールなどで正しい使用法や陽性時の対応を説明することにはなっている。しかし、こうしたものはかなり薬剤師が徹底して説明したとしても、消費者は自分に都合の良い情報しか記憶に残さないものだ。そしてこの抗原検査も唾液ではなく鼻咽頭ぬぐい液の場合、消費者が自分で正確に検体を採取することができるかはかなり疑問である。少なくとも自分はできる自信があまりない。また、有症状者ならばまだしも、そうした人と濃厚接触者あるいはその疑いのある無症状者が抗原検査で陰性と判定された場合、人との接触を一時的に控え目にするなどの対策を取るだろうか? むしろ前述の女性のように安易に「セーフ」判定と思い込むのではないだろうか?「発熱外来の逼迫を避けるため」という目的で解禁される医療用抗原検査キットが逆に感染拡大傾向に拍車をかけてしまうのではないかと老婆心ながら危惧している。また、私はこのほかにも危惧していることがある。この第7波の影響で医療用の解熱鎮痛薬アセトアミノフェンが供給不安定な状態にあることは医療従事者ならご存じのはず。そして約2週間前にはこの余波でアセトアミノフェンの代替にもなる医療用のロキソニン、呼吸器症状の緩和に使うカルボシステインやトラネキサム酸も出荷調整中となった。さて、万が一の時に備えて、あるいは何らかの症状を感じてインターネットで抗原検査キットを購入する人は併せて解熱鎮痛薬も購入するだろうか? 私には彼らの多くは抗原検査キットのみを購入し、万が一陽性となった時に慌てふためくだけの姿が思い浮かぶ。販売時に説明を行った薬剤師が適切に相談に応じ、OTC医薬品のアセトアミノフェンやそのほかの解熱鎮痛薬の購入を勧める、あるいは直接配達するなどの対応が取れれば良いかもしれないが、平時から多忙な薬局に単価の安いOTC医薬品の配達などをお願いするというのは酷である。結局のところ、有症状者・無症状者を含め陽性となった人は医療機関に向かうだけではないだろうか? その結果、発熱外来などは逼迫し、アセトアミノフェンなどもさらに供給不安に陥ってしまうかもしれない。アセトアミノフェンと言えば、一般人も昨今の感染拡大や新型コロナワクチン接種後の発熱の緩和のために使用するようになり医療用の製品名「カロナール」として知っている人も増えてきた。しかし、こうした一般人はアセトアミノフェンを発熱患者だけでなく、がん性疼痛や高齢者では珍しくない変形性膝関節症や腰痛などの整形外科領域の症状でも使うメジャーな薬であるとはほとんど知らないだろう。先日、都内のある保険薬局の薬剤師と話していて、「すでに供給不安は現実になっていて、オピオイドと併用している患者では医師と相談しながら恐る恐るアセトアミノフェンを減量している」と聞かされ、私もその深刻度を改めて思い知った。この薬剤師によると、もし錠剤の供給が今以上に不足すれば、最悪は原末で提供しなければならなくなるという。がん性疼痛で使われるアセトアミノフェンの1日量は最大4,000mg。原末でこれだけの量を服用することになったら患者はどんなにつらいことだろうと思う。正直なところ、今回の国が決めた医療用抗原検査のインターネット販売解禁は、単に目先の患者の流れを変えるためだけに場当たりで行っているようにしか思われない。その司令塔、過去の本連載(第120回)で私が「延焼を続ける山火事の消火を部下の消防士に適当に指示して、自らは外出先で火遊びをする消防署長」と評した岸田 文雄首相は8月21日に新型コロナを発症し、現在はリモートで業務に当たっている。ちなみに首相とその周辺は1週間に2回ほど抗原検査を行い、頻繁に行っていた夜の会食時には出席者に事前に抗原検査の陰性確認を求めていたという。やらないよりはましだが、今風に言えば「もにょる」*対応である。*「もにょもにょする」というほかに形容しがたい感覚、感情、感触などを表現する言い回し。こそばゆい感じ、違和感やわだかまりを覚える感じ、すっきりしない印象、などを形容する場合に用いられることが多く、その意味では「むずむず」「もやもや」のニュアンスに近い。口ごもる様子をもにょると表現する例もある(実用日本語表現辞典より)その岸田首相を筆頭とする国へより緻密な対応を求めるのは「木に縁りて魚を求む」なのか?

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統合失調症入院患者の口腔衛生状態とそれに関連する要因

 愛知学院大学の黒川 誉志哉氏らは、統合失調症入院患者における口腔衛生の状態と不良となる因子を明らかにするため、調査を行った。その結果、統合失調症患者は、口腔衛生状態が不良である傾向があり、バーゼル指数[BI]、男性、ADLの低さが口腔衛生不良と関連している可能性が示唆された。また、高齢になるほど虫歯リスクが高くなることも報告された。International Journal of Dental Hygiene誌オンライン版2022年8月3日号の報告。 対象は、統合失調症入院患者249例。口腔衛生状態(歯石指数[CI]、歯垢指数[DI])、虫歯歴を有する歯の平均数(平均DMFT)、関連因子(入院、クロルプロマジン換算量、年齢、バーゼル指数、歯磨きの頻度、口腔セルフケア能力)を含む改訂版の口腔評価ガイド(ROAG)について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・口腔衛生状態の結果は、以下のとおりであった(中央値[範囲])。 ●CI:0.5(0~6.0) ●DI:1.7(0~6.0) ●ROAG:10.0(7.0~15.0)・平均DMFTは21.7±7.3であった。・クロルプロマジン換算平均量は524.4±353.6mg、BIは76.4±30.7であった。・BIとDIとの間に負の相関があり(r=-0.34)、年齢と平均DMFTとの間に正の相関が確認された(r=0.57)。・男性患者は、女性患者よりも口腔状態(ROAG)が不良な傾向が認められた。・最小二乗重回帰分析では、口腔健康状態に関連する因子として以下が確認された。 ●DIに対するBI ●平均DMFTに対する年齢 ●ROAGに対する性別 ●CI、DI、平均DMFTに対する口腔セルフケア能力

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乳がんリスク、初経から妊娠までの身体活動量との関連

 初経から最初の妊娠までの期間が長いほど乳がんリスクは高くなるが、その期間に予防因子である身体活動量が多いとリスクを相殺できるのだろうか。今回、米国・ペンシルバニア州立大学のDan Lin氏らの研究で、初経から最初の妊娠までの期間の身体活動量と乳がんリスクの低下に関連があることが示された。サブタイプ別ではトリプルネガティブタイプでは関連がみられたが、Luminal AおよびLuminal Bタイプではみられなかった。Cancer Causes & Control誌オンライン版2022年8月20日号に掲載。 Lin氏らは、California Teachers Study(n=78,940)において、初経から最初の妊娠までの期間における身体活動と乳がんリスクとの関連性を調査した。いくつかの時点におけるレクリエーションの身体活動を登録時に想起してもらい、週当たりの身体活動量(MET・時/週)を計算した。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・21.6年間の追跡調査で浸潤性乳がんが5,157例にみられた。・初経から最初の妊娠までの期間が長いほど、乳がんリスクが高かった(20年以上vs.15年未満、HR:1.23、95% CI:1.13~1.34)。・初経から最初の妊娠までの期間に身体活動量(MET・時/週)が多い女性は、浸潤性乳がんのリスクが低かった(40以上vs.9未満、HR:0.89、95%CI:0.83~0.97)。また、トリプルネガティブタイプのリスクが低かった (同40以上vs.9未満、HR:0.53、95%CI:0.32~0.87)が、Luminal AおよびLuminal Bタイプでは関連がなかった。・初経から最初の妊娠までの期間が15~19年の女性では、身体活動量が多いほど乳がんリスクが低かった(40以上vs.9未満、HR:0.80、95%CI:0.69~0.92)が、15年未満および20年以上の女性では関連がなかった。

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テポチニブのMET exon14スキッピングNSCLCへの効果、再現性持って示される(VISION)/WCLC2022

 テポチニブのMET exon14スキッピング非小細胞肺がん(NSCLC)におけるVISION試験の検証(confirmative)コホートC の解析からテポチニブの再現性ある有効性が示された。 テポチニブのMET exon14スキッピングNSCLCに対する有用性は、同試験のprimaryコホートAで示され、各国で承認されている。世界肺学会(WCLC2022)では、confirmativeコホートCの初回解析の結果が、ドイツ・ハイデルベルグ大学のMihael Thomas氏から発表された。・対象:Stage IIIB/IVのMET exon14スキッピングNSCLC患者・介入:テポチニブ 500mg/日・評価項目:[主要評価項目]独立判定委員会評価(IRC)による全奏効率(ORR)[副次評価項目]治験担当医によるORR、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性、健康関連QOL 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は29ヵ月(データカットオフ2022年2月20日) であった。・コホートC全体のORRは54.7%、DCRは80.1%、DoR中央値は20.8ヵ月、PFS中央値は13.8ヵ月、OS中央値は18.8ヵ月であった。 ・1次治療集団におけるORRは60.0%、DoR中央値は未到達、PFS中央値は15.9ヵ月、OS中央値は21.1ヵ月であった。・2次治療集団ではそれぞれ51.0%、12.6ヵ月、13.8ヵ月、18.8ヵ月で、1次治療では2次治療以上の成績であった。・テポチニブのGrade3以上の有害事象(AE)発現は34.2%で、そのうち、末梢神経障害は10.9%に発現した。・減量を必要としたAEは33.5%、中断を必要としたAEは42.5%、永久中止が必要なAEは14.7%であった。・コホートAとCを合わせた脳転移例(43例)の探索的研究では、69.8%が放射線治療を受けていたにもかかわらず、頭蓋内DCRは88.4%で、頭蓋内PFS中央値は20.9ヵ月を示した。 コホートCにおいて、テポチニブのMET exon14スキッピングNSCLCに対する有効性と効果の持続性が再現され、とくに効果は未治療例で顕著であった。脳転移例への有益性は探索的研究で示された。忍容性は良好で、治療の完全中断例は少なかった。

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サル痘に対する経口抗ウイルス薬tecovirimat、忍容性は良好/JAMA

 サル痘の世界的な流行で、2022年8月18日時点で3万9千人以上の患者が報告されており、患者の13%が入院を必要としているという。2018年に、天然痘に対する抗ウイルス薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認されたtecovirimat(商品名:TPOXX、SIGA Technologies製)が、サル痘にも有効とされている。tecovirimatの有効性は、in vitroで天然痘とサル痘の両方に対する活性が示されており、健康成人での試験で良好な臨床安全性プロファイルが確認されている。米国・カリフォルニア大学Davis Medical CenterのAngel N. Desai氏らは、コンパッショネート・ユースに基づいてtecovirimatの治療を受けたサル痘患者の非対照コホート研究を行い、有害事象と全身症状および病変の臨床的改善を評価した。その結果、副作用もほとんどなく、高い忍容性が認められたという。JAMA誌オンライン版2022年8月22日号リサーチレターに掲載。tecovirimat投与7日目に40%で病変が完全に消失 2022年6月3日~8月13日の期間に、サクラメント郡公衆衛生局を通じて同院に紹介され、播種性疾患もしくは顔や性器等に病変を有する患者で、皮膚病変からオルトポックスウイルス感染が確認された25例に対して、tecovirimatによる治療を実施。患者は、年齢中央値40.7歳(範囲:26~76歳)、すべて男性で、9例がHIVに感染しており、1例が25年以上前に天然痘ワクチンを接種済み、4例が症状発現後に天然痘/サル痘ワクチン(商品名:JYNNEOS)の接種を1回受けていた。患者の体重により、食後30分以内に8時間または12時間ごとにtecovirimatを経口投与した。治療期間は14日間で、患者の臨床状態に応じて延長することとした。 サル痘に対する抗ウイルス薬tecovirimatを評価した主な結果は以下のとおり。・全身症状、病変、またはその両方が平均12日間持続して認められた(範囲:6~24日)。全身症状として、発熱19例(76%)、頭痛8例(32%)、疲労7例(28%)、咽頭痛5例(20%)、悪寒5例(20%)、腰痛3例(12%)、筋肉痛2例(8%)、悪心1例(4%)、下痢1例(4%)などが見られた。・23例(92%)に性器/肛門周囲の病変があり、13例(52%)には全身に10個未満の病変があった。全例に病変に伴う疼痛があった。・治療期間は24例が14日間、1例のみ21日間だった。・tecovirimatによる治療開始7日目に10例(40%)で病変が完全に消失し、21日目までに23例(92%)で病変と疼痛が消失したと報告された。・途中で治療を中止した患者はおらず、おおむね良好な忍容性を示した。Tecovirimat投与7日目に最も多く報告された有害事象は、疲労7例(28%)、頭痛5例(20%)、悪心4例(16%)、痒み2例(8%)、下痢2例(8%)だった。 著者は本結果について、tecovirimatは被験者全員に対して副作用を最小限に抑えながら、良好な忍容性を示した一方で、副作用はサル痘感染による症状と必ずしも区別できなかったとし、本研究は対照群が存在しないため、サル痘の症状の持続期間や重症度に関する抗ウイルス効果の評価は限定的だとしている。サル痘発症までの潜伏期間は患者間でばらつきがあり、抗ウイルス薬の使用と疾患の自然経過に関しては慎重に結論付けられるべきで、tecovirimatの効果、投与量、有害事象を明らかにするため、さらなる大規模研究が必要だと述べている。なおtecovirimatは、日本では現時点で未承認となっている。

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FGFR1融合遺伝子陽性の血液がんに福音

 「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍(8p11骨髄増殖症候群)」という血液がんをご存じだろうか? 本疾患の患者数はきわめて少なく、本邦における新規患者数は年間数例程度で、予後が悪いため、全患者数もきわめて少ない。本疾患に対し、8月8日、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパンは、選択的線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬ペミガチニブの適応拡大申請を行ったと発表した。この発表を受け、同社の黒山 祥志氏(プロダクト&コマーシャルストラテジー エグゼクティブ・ディレクター)、鈴川 和己氏(臨床開発 シニアメディカルディレクター)を取材した。FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍にペミガチニブが高い効果 「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍」はヒトの8番染色体の短腕11領域(8p11)に位置するFGFR1遺伝子が切断され、他の染色体に含まれる別の遺伝子が融合して新たな遺伝子を形成することによって引き起こされる。発熱、体重減少、寝汗などの全身症状が認められることがあり、患者の多くで、末梢血または骨髄に好酸球の増加が認められる1)。 「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍」の標準治療は確立しておらず、治癒あるいは長期寛解を期待できる治療選択肢は、現在、同種造血幹細胞移植のみである。臨床的な特徴から、慢性期と急性期に大別されるが、診断から12ヵ月で約半数の患者が急性期に移行し、急性期に移行する前に同種造血幹細胞移植を実施できた患者では長期的な寛解が得られるが、慢性期で同種造血幹細胞移植を実施しない場合の全生存期間(中央値)は9ヵ月、急性期の1年生存率は約30%と予後は不良である2)。 このように「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍」は、血液がんの中でも予後不良の疾患であるが、明るい話題も出てきた。昨年12月に開催された米国血液学会(ASH2021)において、本疾患に対し、ペミガチニブが高い抗腫瘍効果を示すことが発表された。この多施設共同第II相試験であるFIGHT-203試験では、前治療で増悪した患者85%、同種造血幹細胞移植歴のある患者9%を含む集団に対し、ペミガチニブの投与によって完全奏効率が64.5%に達し、主要評価項目を達成した3)。長期予後については今後の解析結果を待つことになる。主な有害事象として、高リン酸血症、脱毛、下痢が認められた。 この国際共同治験には近畿大学病院、NTT東日本関東病院も参加しており、日本人の症例も数例が含まれている。本試験結果等に基づいて、8月8日、ペミガチニブがFGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍に対し、適応拡大が申請されたことが発表された。 このような画期的な治療薬ではあるが、患者がこの治療にアクセスするには課題がある。血液内科医においても「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍」の認知度は低い。患者も少なく、これまでは治療する術が限られていたが、FGFR阻害薬という同種造血幹細胞移植以外の治療選択肢の登場によって本疾患への関心が高まり、恩恵を受ける患者が増えるものと期待される。

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