サイト内検索|page:51

検索結果 合計:35100件 表示位置:1001 - 1020

1001.

体重を減らしたいなら超加工食品の摂取は控えめに

 体重を減らしたい人は、超加工食品の摂取を控えた方が良いようだ。新たな研究で、加工を最小限に抑えた食品(MPF)を中心とした食事を摂取した場合、超加工食品(UPF)を中心とした食事を摂取した場合と比べて、栄養価が同等であっても体重の減少幅は約2倍であったことが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のChris van Tulleken氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に8月4日掲載された。 Van Tulleken氏は、「現在の世界の食料システムは、特に安価で不健康な食品が広く入手できることが原因で、食生活に関連した健康状態の悪化と肥満を促進している。この研究は、脂肪、塩分、砂糖などの栄養素に加え、食品の高度な加工が健康に及ぼす影響の大きさを浮き彫りにしている」とUCLのニュースリリースで語っている。 UPFは、飽和脂肪酸、デンプン、添加糖など、主に自然食品から抽出された物質で作られている。また、味や見た目を良くし、保存性を高めるために、着色料、乳化剤、香料、安定剤など、さまざまな添加物を含んでいる。UPFの例は、パッケージに入った焼き菓子、砂糖添加のシリアル、冷凍ピザ、インスタントスープ、デリのコールドカットなどが挙げられる。 この研究でvan Tulleken氏らは、BMIが25以上40未満の成人55人を対象にクロスオーバー試験を実施し、UPFとMPFの健康への影響を検討した。対象者のうち28人は最初にMPF食を8週間、次いでUPF食を8週間摂取する群に、27人はそれとは逆の順序で同期間ずつUPF食とMPF食を摂取する群に割り付けられた。主要評価項目は、各人の体重変化の差(体重変化率)であった。MPF食は、オートミールや自家製のミートソーススパゲッティなど、加工が最小限に抑えられた食品で構成されていたのに対し、UPF食は朝食用のオーツバーやすぐに食べられる包装されたラザニアなどで構成されていた。ただし、食事量に制限はなく、また、どちらの食事も英国の健康的でバランスの取れた食事に関するガイドラインに沿って栄養的に調整されており、飽和脂肪酸、タンパク質、炭水化物、塩分、食物繊維、果物、野菜の推奨摂取量を満たすものだった。 その結果、それぞれの食事の摂取後の体重変化率は、MPF食で−2.06%であったのに対し、UPF食では−1.05%であり、MPF食の方が体重が有意に減ることが示された(P=0.024)。 論文の筆頭著者であるUCL肥満研究センターのSamuel Dicken氏は、「体重が2%減少してもたいしたことがないように思われるかもしれない。しかしこの減少は、わずか8週間で、しかも積極的に食事の量を減らすことなく達成されたのだ」と述べる。同氏はさらに、「これを1年間にまでスケールアップした場合の体重減少率は、MPF食では男性で13%、女性で9%が見込まれるのに対し、UPF食では男性で4%、女性で5%にとどまると予測される。長期的には、その差は非常に大きくなる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 さらに研究グループによると、MPF食の摂取中は、塩味の食品への欲求や特定の食品を我慢する難しさがUPF食摂取時に比べて有意に低下する一方で、食欲のコントロール感は有意に向上することも示されたという。 UCL肥満研究センターの名誉教授で上席著者のRachel Batterham氏は、「最良のアドバイスは、総エネルギー摂取量を適度に抑え、塩分、砂糖、飽和脂肪酸の摂取を制限する一方で果物、野菜、豆類、ナッツ類などの繊維質の豊富な食品を優先的に摂取し、栄養ガイドラインをできる限り守ることだ。極度に加工されたパッケージ食品や出来合いの食事ではなく、ホールフードや一から調理する料理など加工度の低い選択肢を選ぶことは、体重、体組成、全体的な健康状態にさらなるメリットをもたらす可能性が高い」と述べている。

1002.

起立時のめまいや動悸に心不全治療薬が有効かも

 立ち上がったときに動悸やめまい、ふらつきを感じたことはないだろうか。これは、体位性頻脈症候群(POTS)と呼ばれる症状で、上記の症状に加え、疲労感や運動障害、胸痛、ブレインフォグ、吐き気などを伴うこともある。新たなパイロット研究の結果によると、イバブラジンと呼ばれる心不全治療薬が、POTS患者の心拍数の増加を抑え、血圧には影響を与えずに他の症状を大幅に改善する可能性のあることが示された。米バージニア大学保健学部のAntonio Abbate氏らによるこの研究結果は、「Journal of Cardiovascular Pharmacology」7月号に掲載された。 Abbate氏は、「これらの結果は、不適切な心拍数の増加こそが不調の原因であり、血圧に影響しない薬により心拍数を減らすことで生活の質(QOL)に違いをもたらすことができることを示唆している」とバージニア大学のニュースリリースの中で述べている。 研究グループによると、POTSの有病率は一般人口の1%以下と極めて低いが、近年、TikTokやその他のソーシャルメディアでPOTSが話題になっているという。POTSの原因は明らかになっていないため、POTSと診断してもらうことの難しさを訴える患者は多い。「患者は、かかりつけ医がPOTSに関する詳しい知識を持ち合わせていなかったり、治療方法が分からなかったりするため、別の専門医の診察を受けに行く。ところが、心臓専門医は心臓の問題ではないと判断する。実際にその通りだ。また、神経科医は脳に問題はないと言うが、それも正しい。POTSは『ハードウェア』の問題というより、『ソフトウェア』の問題なのだ」と話す。 イバブラジンは、心臓にある過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネルを阻害することで心拍数の増加を抑える薬で、心不全の悪化予防のために使用される。POTSの主な特徴は心拍数の増加であることから、研究グループは、イバブラジンがPOTSの症状改善に効果を発揮する可能性があると考えた。 そこで研究グループは、POTS患者10人(平均年齢28歳、女性8人)にイバブラジンを投与した。その結果、起立時の1分当たりの心拍数の増加幅は、イバブラジン投与前は平均40回であったのが、投与後は平均15回に減少したことが示された。また、研究参加者は心拍数以外の症状が改善したことも報告した。なかでも改善度が高かったのは、失神感(69%減)と胸痛(66%減)であった。 Abbate氏らは、「この全体的な症状の改善は、心拍数の増加がPOTSの他の症状を引き起こすことを示唆している」と述べている。同氏は、「POTS患者では、起立時に心拍数を制御するメカニズムが機能不全に陥り、心拍数が過度に増加する。すると、脳がこれを危険信号と感知し、ストレスホルモンであるノルアドレナリンの放出を促す。その結果、不安やパニック発作に似た症状が引き起こされる。イバブラジンで心拍数をコントロールすることによりこのループが抑制され、患者の気分が改善するのではないか」との見方を示している。 ただし研究グループは、これらの研究結果を確認し、POTSの原因をより深く理解するためには、さらなる研究が必要だと述べている。Abbate氏は、「かつては低血圧に起因する代償メカニズムとしか考えられていなかった高い心拍数自体が症状の原因となっている可能性がある。心拍数がどのように調節され、症状にどのように影響するかをより深く理解することが、POTS患者に対するより良い治療法の開発につながる可能性がある」と話している。

1003.

脱毛に関する誤解と恐怖は化学療法の忌避につながる

 抗がん薬による治療(化学療法)で皮膚や髪、爪に生じ得る副作用について多くの人が誤解しており、そのような副作用に対する恐怖が治療の忌避や遅延につながり得ることが、新たな研究で示された。米ジョージ・ワシントン大学皮膚科分野のAdam Friedman氏らによるこの研究結果は、「Journal of Drugs in Dermatology(JDD)」8月号に掲載された。 この研究では、ワシントンD.C.の中で最も医療サービスが不足している南東部において開催された2つの健康フェアへの参加者を対象に調査が行われ、回答が得られた77人のデータが分析された。これらの参加者の大半(88.3%)は女性で、年齢は45〜54歳、黒人が71.5%を占めていた。 その結果、化学療法を受けると半分以上のケースで脱毛が起きると考えている人は、対象者全体では52%、がん治療歴のある人では31%に上ることが明らかになった。同様に、皮膚の乾燥/発疹については全体の47%とがん治療歴のある人の50%、爪の変化については41%と31%が、半分以上のケースで生じると考えていた。また、参加者が「治療をおそらく/絶対に受けない」理由とした副作用は、永続的な脱毛(全体:33%、がんの治療歴あり:13%)、一時的な眉毛/まつ毛の脱毛(27%、13%)、および永続的な爪の変色(24%、13%)であった。さらに、がんの治療歴を有していた参加者の半数は、治療中に皮膚科医の診察を受けていなかった。 Friedman氏は、「これらの研究結果は、恐怖と誤解がいかに大きな影響力を持つかを示している。患者が十分な情報に基づいた選択を行えるよう、より良い教育と支援が必要だ」と述べている。  研究グループによると、これまでの研究に基づくと、化学療法中に脱毛を経験するがん患者は、分子標的療法で14.7%、標準的な化学療法で52.1%であるという。しかし本研究から、脱毛に対する恐怖から、がんに罹患したことのない多くの人が治療に消極的であることが示された。 Friedman氏らは、「がんの治療歴を有する人も含めて最大3分の1の人が、さまざまな皮膚の副作用を理由に、仮に化学療法が必要になったとしてもそれを拒否すると回答していたことを考えると、この知識ギャップに対処することは極めて重要だ」と結論付けている。

1004.

ギャンブル依存の“やめられない”、複数の脳領域が連動か

 「なぜギャンブルをやめられないのか?」。最新の研究から、その背景には“脳の複数の領域”と“気分の落ち込み”が関わっていることがわかってきた。扁桃体と腹側線条体という脳の領域が連動すると、「ギャンブルをしたい」という強い欲求が生まれ、この関係にはうつ症状が関与しているという。研究は京都大学大学院医学研究科(当時)の石川柚木氏、同大学附属病院精神科神経科/デイ・ケア診療部の鶴身孝介氏らによるもので、詳細は「Addiction Biology」に7月17日掲載された ギャンブル障害(GD)は、持続的なギャンブル行動とその悪影響を特徴とする精神疾患であり、強い欲求(渇望)が中心的な役割を担う。ギャンブルへの渇望は多面的なプロセスであり、楽しいと認識する「期待(Anticipation)」、強い衝動を表す「欲求(Desire)」、ネガティブな気分からの逃避を意味する「解放(Relief)」の3側面から構成される。この構造はコカインやたばこの渇望とも類似している。報酬が存在する際の渇望は、報酬追求行動に関与する扁桃体と腹側線条体(VS)の機能的結合によって調整されると考えられるが、報酬が存在しない際の渇望と両者の安静時機能的結合(rs-FC)との関係は未解明である。さらに、うつ症状がこの関係を仲介する可能性も示唆されている。本研究では、GD患者において扁桃体-VSのrs-FCが渇望と関連するという仮説を立て、うつ症状がその媒介因子として機能するかを検討することを目的とした。 本研究には、日本人のギャンブル障害(GD)患者51名(うち男性48名)と健常者45名(うち男性41名)が参加した。全GD患者はDSM-5-TRのGD診断基準を満たしていた。ギャンブルへの渇望は、スコアが高いほど渇望が強いことを示すリッカート尺度であるギャンブル渇望尺度(GACS)を用いて評価した。GACSは「期待」「欲求」「解放」の3つの下位尺度に分ける尺度であり、それぞれ対応する項目の合計点を算出した。うつ症状はベック抑うつ評価尺度II(BDI-II)により評価した。扁桃体と腹側線条体のrs-FCは、安静時fMRIで取得した両領域のBOLD信号の時系列データ間の相関係数を計算することで評価した。 GD患者では、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCはGACSの「欲求」スコアと有意な負の相関を示した(相関係数ρ=−0.377、95%信頼区間〔CI〕〔−0.591~-0.113〕、P=0.006)。その他のrs-FC値はいずれのGACS下位尺度とも有意な相関を示さなかった。また、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCはBDI-IIスコアとも有意な負の相関を示した(ρ=−0.390、95%CI〔−0.616~−0.130〕、P=0.005)。 次に、GD患者を対象に、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCを独立変数、BDIを媒介変数、GACSサブスケール(欲求)を従属変数とする因果媒介分析を実施した。その結果、有意な全体効果(−0.341、95%CI〔−0.617~−0.069〕、P=0.017)と平均因果媒介効果(ACME)(−0.137、95%CI〔−0.306~−0.018〕、P=0.015)が認められた。 男性GD患者(48名)に限定した感度分析では、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCとGACS「欲求」スコアとの相関は依然として有意であった(ρ=−0.353、95%CI〔−0.634~−0.070〕、P=0.016)。一方で、ACMEは有意ではなかった(−0.110、95%CI〔−0.278~0.010〕、P=0.069)。 本研究について著者らは、「本研究では、扁桃体‐腹側線条体のrs-FCとギャンブルへの渇望との関連が示された。さらに、因果媒介分析により、うつ症状が渇望に対して媒介的な役割を果たす可能性が示唆された。これらの結果は、ギャンブル障害における渇望に関する重要な知見を提供し、その基盤となる神経メカニズムを標的とした効果的な介入法の開発に寄与すると考えられる」と述べている。(HealthDay News 2025年8月25日)

1005.

日本へ一時帰国も、波乱のビザ取得とアメリカ帰路【臨床留学通信 from Boston】第15回

日本へ一時帰国も、波乱のビザ取得とアメリカ帰路現在のボストンは8月下旬、最高気温は25度、最低気温は15度くらいで、とても過ごしやすい季節になりました。ボストンの緯度は北海道と同じくらいです。大陸性気候のため、夏の暑さや冬の寒さは厳しくなります。実は8月上旬に日本に一時帰国していたのですが、あちこちで41度を記録し、まさに「日本列島沸騰状態」で、ものすごく暑かったです。ボストンも7月は週に1日くらい35度になることもありますが、暑い時間は短く、最低気温は25度を下回りますし、湿度もそれほど高くないので、そこまでつらくはありません。日本で友人とテニスをしたのですが、蒸し暑すぎて、さらに時差ぼけもあり、思うようにプレーできなかったのは心残りでした。実は今回の日本への一時帰国は、かなり迷いました。5月下旬にトランプ政権が学生ビザ(Fビザ)と私の交流訪問者ビザ(Jビザ)の申請を一時停止したからです。名目上はテロ対策のためのSNSスクリーニング強化ということでした。ハーバード大学vs.トランプ政権の影響も受けるかと思いましたが、幸い、私は医師ということで大丈夫でした。ただし、研究者や公衆衛生学修士(MPH)の学生は影響を受けたそうです。航空券も払い戻し不可だったこともあり、子供たちの2ヵ月にわたる長い夏休みをアメリカだけで過ごしてもと思い、やや不確実でしたが帰国を決意しました。まず家族が6月下旬に先に帰国し、その数日後にビザ更新の申請が再開されるとのことで、ひとまず安堵しました。しかし、通常2週間以内で手続きが終わるはずが、3週間近くかかることになったため、私は日本に2週間滞在後、ビザが下りてアメリカへ帰れるのか、やや微妙なラインになりました。職場の上司に理解を得て、「えいや!」と帰ったところ、飛行機でアメリカへ戻る前日になんとかビザが届き、ようやく帰れることになりました。しかし、話はそう簡単にはいきません。今回はエアカナダの乗り継ぎ便だったのですが、運悪くストライキに遭遇。乗る予定の便は欠航となり、急いで翌日のANA/ユナイテッドの便に変更し、1日遅れで戻ることができました。入国審査も少しドキドキしましたが、無事に通過することができ、今に至ります。政権の方針によって、ここまで生活が影響されるとは、本当にヤキモキさせられます。Column一時帰国中に、万博も兼ねて関西を訪れました。眼科医である高校の同級生に姫路城を案内してもらいました。別名「白鷺城」と呼ばれ、古くは豊臣 秀吉のお城でもあったのですね。画像を拡大する

1006.

第258回 スマホ保険証は9月19日から開始、院内体制の整備と患者周知を/厚労省

<先週の動き> 1.スマホ保険証は9月19日から開始、院内体制の整備と患者周知を/厚労省 2.新型コロナ感染者、今年最多の3.3万人超 変異株「ニンバス」全国で拡大/厚労省 3.緊急避妊薬の市販化、対面販売義務と面前服用で数ヵ月後販売へ/厚労省 4.治療アプリで慢性疾患医療に変革、アルコール依存症でも/CureApp 5.医療費48兆円で過去最高更新 高齢化で入院費膨張、伸び率は鈍化/厚労省 6.再生医療で女性が死亡、都内クリニックに初の緊急停止命令/厚労省 1.スマホ保険証は9月19日から開始、院内体制の整備と患者周知を/厚労省厚生労働省は9月19日から、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の機能を搭載したスマートフォン(スマホ)による資格確認を全国の医療機関・薬局で順次開始する。専用リーダーを導入した施設で利用可能となり、対応機関にはステッカーが掲示される予定。患者は事前にマイナポータルを通じてスマホにマイナカードを追加登録しておく必要があり、窓口での初期設定は医療機関の負担になるため避けるよう求められている。スマホでの資格確認に失敗した場合には、マイナポータルにログインし資格情報を画面提示する代替手段も認められ、法令改正で新たに規定された。これにより従来のカード持参が不要となるが、初回利用時は真正性確認の観点からマイナカード併用を求める声も医療界からは出ている。実証事業では大きな支障はなかったが、利用率は1%未満と低調。スマホ設定が難しいという声が患者から寄せられる一方、カードを出す手間が省け受付が円滑になる利点も確認された。厚労省は導入支援として汎用カードリーダー購入費を補助し、病院は3台、診療所や薬局は1台まで半額(上限7,000円)を補填する。医師や医療機関にとっては、今後の診療報酬加算(医療DX推進体制整備加算)におけるマイナ保険証利用率基準引き上げを踏まえ、対応が経営上も不可避となる。中央社会保険医療協議会(中医協)では「導入を拙速に進めれば窓口混乱を招く」との懸念が示され、国民への周知徹底とマニュアル整備を要請。対応できる施設は当面限られるとみられ、現場には患者説明やトラブル対応の負担が予想される。医療従事者は制度改正を理解し、来院前準備の重要性を患者に伝えることが求められる。 参考 1) マイナ保険証の利用促進等について(厚労省) 2) 「スマホ保険証」9月19日から全国で順次開始、対応可能な施設にはステッカー掲示へ(読売新聞) 3) スマホを用いた資格確認が2025年9月から順次開始(日経メディカル) 4) スマホ保険証を9月19日から運用開始 汎用カードリーダーの専用ページ、8月29日に開設(CB news) 5) 2025年9月19日の「スマホマイナ保険証」利用開始に向け法令を整理、スマホマイナ保険証対応医療機関はステッカー等で明示-中医協・総会(Gem Med) 2.新型コロナ感染者、今年最多の3.3万人超 変異株「ニンバス」全国で拡大/厚労省新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大し、厚生労働省によると8月18~24日の新規感染者数は3万3,275人と前週比5割増で、今年最多を記録した。定点医療機関当たり8.73人で10週連続の増加となり、宮崎21.0人、鹿児島16.8人、長崎14.8人など九州を中心に高水準が続く。愛知2,045人、東京1,880人など大都市圏でも増加が顕著だった。国立健康危機管理研究機構は、国内で検出されたコロナ株の約8割がオミクロン株派生の「ニンバス(NB.1.8.1)」に置き換わったと報告。強烈なのどの痛みが特徴とされ、新学期に伴い10代以下への拡大が懸念される。各地でも警戒が強まっており、新潟では1医療機関当たり12.2人と前週比1.5倍に急増し、インフルエンザ注意報基準を上回った。宮城も10.0人と急増、静岡は7ヵ月ぶりに全県に注意報を発令し、東部がとくに多い。熊本は906人で全国平均を上回り、宮崎も589人と1.5倍に増加し、患者の4割が高齢者、3割が未成年だった。鹿児島でも患者数が1週間で958人に達し、強い咽頭痛を訴えるケースが目立っている。厚労省や自治体は「重症化リスクは従来株と大差ないが、感染拡大防止が重要」とし、手洗い・換気・マスクの着用徹底を呼びかけている。とくに新学期を迎える子ども世代や高齢者との接触には注意が必要で、感染症流行の二重負担を避けるためにも、医療機関には今後の外来・入院需要への対応力が問われる。 参考 1) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況(厚労省) 2) コロナ感染者数3万人上回る 前週から5割増加(CB news) 3) 新型コロナ感染者数、ことし最多…10週連続の増加 変異株「ニンバス」のどの強い痛みが特徴(日テレ) 3.緊急避妊薬の市販化、対面販売義務と面前服用で数か月後販売へ/厚労省厚生労働省の専門部会は8月29日、緊急避妊薬レボノルゲストレル(商品名:ノルレボ)の市販化を了承した。医師の処方箋なしで薬局・ドラッグストアで購入が可能となり、区分は要指導(特定要指導)医薬品となる予定。販売については、年齢制限なし・保護者の同意不要で、研修修了薬剤師による対面販売とその場での服用(面前服用)を原則義務付ける。性交後72時間以内の単回内服で妊娠阻止率は約80%、WHOは必須医薬品としてOTCを推奨している。国内では試験販売(2023年度145薬局→2024年度339薬局)を経て、承認審査が進み、正式承認・体制整備後の数ヵ月後から販売を開始する。価格は未定だが試験販売では7,000~9,000円となっていた。販売店舗は厚労省が一覧を公表する予定。面前服用は転売防止などが目的だが、プライバシー侵害やアクセス阻害の懸念もあり、一定期間後に見直しを検討するという。購入時は身分証確認、薬剤師説明→服用、3週間後の妊娠確認を推奨。性暴力が疑われる場合はワンストップ支援センターと連携する。市販化まで約9年を要した背景には、乱用懸念・性教育の遅れ・薬剤師体制などの議論があった。専門家は、緊急避妊薬は最終手段であり、低用量ピル活用やコンドーム併用(STI対策)など平時の避妊行動の対策も求めている。 参考 1) 緊急避妊薬のスイッチOTC化について[審査等](厚労省) 2) 緊急避妊薬の薬局販売承認へ 診察不要に、年齢制限なし(日経新聞) 3) 「緊急避妊薬」医師の処方箋なくても薬局などで販売へ(NHK) 4) 面前服用、販売する薬局数…緊急避妊薬のアクセス改善に課題(毎日新聞) 4.治療アプリで慢性疾患医療に変革、アルコール依存症でも/CureAppアルコール依存症治療の新たな選択肢として、沢井製薬は9月1日から国内初の「減酒」治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」の提供を開始する。開発は医療IT企業CureAppが担い、国から医療機器として承認を受け、公的医療保険の適用対象となる。患者は日々の飲酒量や体調をスマホに記録し、アプリから助言を受ける仕組みで、データは医師と共有され診察時の行動の振り返りや目標設定に活用される。医師の処方に基づき利用され、自己負担は3割で月額約2,400~3,000円、最大6ヵ月使用が可能。専門医でなくとも治療支援ができる点も特徴で、治験では飲酒量の多い日の減少効果が確認されている。背景には、依存症診療における診察時間の短さや治療継続の難しさがある。アプリは患者と医師のコミュニケーションを補完し、より早期の介入を後押しすると期待される。沢井製薬は、ジェネリック医薬品依存から脱却し、デジタル医療機器を新たな収益源とする戦略を強調している。一方、デジタル治療の普及は高血圧分野でも進展する。日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』を改訂し、血圧管理アプリによる介入を初めて推奨に盛り込んだ。推奨の強さは「2」、エビデンスの強さは「A」とし、降圧薬に匹敵する効果や費用対効果も確認されている。生活習慣改善や共同意思決定を重視する中で、治療アプリは患者と医師の信頼関係を深めるツールとして位置付けられている。アルコール依存症や高血圧といった慢性疾患領域で、治療アプリが相次ぎ制度化されることは、臨床現場にデジタル治療導入を促し、診療報酬体系や医療経済にも影響を与えるとみられる。 参考 1) アルコール依存症患者のための「減酒」アプリ、沢井製薬が9月提供開始…公的医療保険の適用対象に(読売新聞) 2) 国内初の減酒治療アプリ 沢井製薬が9月1日から販売 専門医でなくても依存症患者に対応(産経新聞) 3) アルコール依存症の治療支援アプリ 医療機器として国が初承認(NHK) 4) 高血圧管理・治療ガイドライン改訂 治療アプリを推奨「患者と医療者がしっかり話し合って共同で降圧」(ミクスオンライン) 5) 高血圧管理・治療ガイドライン2025(日本高血圧学会) 5.医療費48兆円で過去最高更新 高齢化で入院費膨張、伸び率は鈍化/厚労省厚生労働省は8月29日、2024年度の概算医療費(速報値)が48兆円に達し、前年度比1.5%増で過去最高を更新したと発表した。増加は4年連続だが、伸び率は前年の2.9%から鈍化し、コロナ禍前の水準に近付きつつある。概算医療費は労災や全額自費を除いた、公的保険・公費・患者負担を集計したもので、国民医療費の約98%を占める。診療種類別では、入院が2.7%増の19.2兆円と全体を押し上げ、入院外(外来・在宅)は0.9%減の16.3兆円と4年ぶりに減少した。歯科は3.4兆円で3%超の伸び、調剤は8.4兆円で1%強の増加となった。医療機関別では病院25.9兆円(2.0%増)、診療所9.6兆円(1.0%減)で、とくに大学病院は4.2%増と高度医療の影響が大きかった。一方、個人病院は22%減少した。国民1人当たりの医療費は38万8,000円(前年より8,000円増)。75歳以上は97万4,000円に達し、75歳未満(25万4,000円)との差は約4倍に拡大している。高齢化が医療費を押し上げる構造が鮮明となった。疾患別では、新型コロナ関連の医療費は2,400億円と前年度比4割以上減少。感染症流行が落ち着いたことが全体の伸び率鈍化につながった。後発医薬品の普及も進み、ジェネリックの数量シェアは90.6%と初めて9割を超えた。厚労省は「高齢化と医療の高度化の影響は続き、医療費は今後も増加傾向にある」と指摘。入院費膨張や人材確保など医療機関の経営への影響は避けられず、診療報酬や医療提供体制の在り方が改めて問われている。 参考 1) 「令和6年度 医療費の動向」~概算医療費の年度集計結果~(厚労省) 2) 医療費、過去最高の48兆円 4年連続で増加 厚労省(時事通信) 3) 厚労省 令和6年度の医療費の概算48兆円 4年連続で過去最高更新(NHK) 4) 24年度の医療費48兆円、4年連続過去最大 伸び率は鈍化(CB news) 6.再生医療で女性が死亡、都内クリニックに初の緊急停止命令/厚労省厚生労働省は8月29日、東京都中央区の「東京サイエンスクリニック」(旧ティーエスクリニック)で自由診療として再生医療を受けた外国籍の50代女性が死亡した事例を受け、同院に対して再生医療等安全性確保法に基づく緊急命令を出し、当該治療の一時停止を命じた。死亡例を契機とした同法に基づく緊急命令は初めてとなる。併せて、治療に用いた特定細胞加工物を製造した「コージンバイオ株式会社 埼玉細胞加工センター」に対しても製造停止を命じた。厚労省は原因究明を進める方針を示している。厚労省の発表によると、今月20日、同クリニックで慢性疼痛治療を目的に、患者本人の脂肪組織から取り出した間葉系幹細胞を増殖させ、点滴で静脈投与する自由診療が実施された。治療中に女性は急変し、急速に心停止に陥り、搬送先で死亡が確認された。27日、クリニックから法第18条に基づく「疾病等報告」が提出され、死因はアナフィラキシーショックの可能性と説明されたが、原因は未確定であり、さらなるリスク防止のため緊急命令が発出された。命令は、当該クリニックが提供する治療計画「慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞による治療」および類似の細胞加工を用いた再生医療の提供を全面的に停止するもの。加えて、埼玉細胞加工センターにも、同様の製造方法による特定細胞加工物の一時停止を命じた。厚労省は立ち入り検査や詳細な原因究明を進め、再発防止策を徹底するとしている。また、死亡事例後、医療機関および運営法人は名称変更を届け出ていた。22日に「ティーエスクリニック」から「東京サイエンスクリニック」に、25日には「一般社団法人TH」から「一般社団法人日本医療会」に変更されている。厚労省は経緯を精査し、透明性の確保に努める方針。今回の措置について厚労省は「患者が死亡し、その原因が未解明である以上、再生医療との関連が否定できず、さらなる疾病発生を防ぐ必要がある」と説明。再生医療の安全性確保を最優先課題として取り組む姿勢を強調した。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について(厚労省) 2) 再生医療を受けた患者、アナフィラキシーショックで死亡か…医療機関は一時停止の緊急命令受ける(読売新聞) 3) 自由診療の細胞投与で50代女性死亡 クリニックに治療停止命令(毎日新聞) 4) 再生医療で50代女性死亡 厚労省が都内のクリニックに治療停止命令(朝日新聞)

1007.

英語で「食欲不振」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第31回

医学用語紹介:食欲不振 Anorexia今回は「食欲不振」についてお話しします。医療現場では anorexiaという専門用語が使われますが、患者さんとの会話では、どのような一般用語を使って伝えたらよいでしょうか?講師紹介

1008.

来てもらう力 ――“受援力”の不足が命取りになることもある【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第5回

「支援を断ってしまった」現場のリアルとある災害発生から数日が経過し、ある中規模病院では断水と停電が続く中、自家発電で最低限の機能を維持していました。しかしスタッフは疲弊し、外来は停止、入院患者への対応も限界を迎えていました。物資の枯渇や搬送困難な重症患者の滞留など、課題は山積みでした。そんな状況下で、DMAT、日本赤十字、NGOなど複数の医療支援チームが到着し、「支援に入ります」と申し出ました。しかし現場責任者は、困惑しながら以下のように返答しました。「申し訳ありません。今は受け入れ調整の余裕がなく、対応できません…」支援が不要だったのではなく、支援チームを“受け止める”仕組みが整っていなかったため、自己紹介や物資配置、指揮命令系統の確認など受け入れ調整作業自体が大きな負担となり、断念せざるを得なかったのです。この事例は、「支援が来ても、それを受け入れる余力がなければ活用できない」という受援側の構造的課題を示しています。受援力とは何か──BCPへの組み込みと演習の重要性災害が起きたとき、医師や看護師の多くは「支援する側」としての役割を想定しがちです。しかし、この災害大国・日本では、病院勤務医も、開業医も、福祉施設の関係者も、「支援される側」になることが十分にありえます。支援チームを受け入れることは、単に「来た人に任せる」ことではありません。誰が案内し、どこに待機させ、どの業務を任せるのか。その想定ができていなければ、せっかくの支援も混乱の原因になりかねません。“受援力”とは、外部支援を的確に受け入れ、医療体制に組み込み、機能させる能力を指します。被災地ではサージキャパシティを超えた状況が常態化するため(表1, 2)、平時からBCP(事業継続計画)に「受援計画」を明確に盛り込み、定期的な訓練や教育を通じて体験的に習熟しておくことが必要です1)。(参考文献1より引用)信頼できる支援者を見極める視点もうひとつ見落とされがちなポイントとして、支援者の信頼性評価があります。支援チームの中にはDMATのようにトレーニングされた組織だけでなく、被災地での活動経験が浅い組織や、連携体制が不十分なチームも玉石混交で集まっています。支援チームが似たようなユニフォームや車両を用いて活動している場合、見た目だけでは識別が難しいです。だからこそ、災害救助法の改正により進められている「被災者援護協力団体の登録制度2)」や、EMT(Emergency Medical Team)国際ガイドライン3)に準じた認証制度のような、公的な裏付けを知ったうえで確認することも重要です。また、支援チーム同士が集約され、被災地の医療・福祉・行政との調整を図る保健医療福祉調整本部のような体制があれば、窓口として連携することで混乱を最小化できます4~6)。支援を受ける覚悟と責任「支援を受ける側の責任」という表現に抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、支援チームは無尽蔵ではなく、来ることが「当然」ではありません。とくに南海トラフや首都直下地震のような広域同時多発災害が想定される場合、支援リソースは限られ、先着順で枯渇する可能性があります。そのため、受援は準備と覚悟を要する「戦略的行動」です。支援を断るリスクは、医療の停滞だけでなく、スタッフの疲弊、患者への不利益、地域全体の対応力低下など、多方面に及びます。「来てもらう力」は、命をつなぐ力災害対応では、「助けてほしい」と言える勇気と、「助けを使いこなす」力が求められます。支援を受けるという行為は、無力さではなく、連携と合理性の象徴です。自分たちだけで乗り切ることが正義ではありません。限られた人員と資源のなかで、いかに外部の力を活かすか。これからの災害医療において、“受援力”こそが生死を分ける力となるのです。複数の支援団体が被災地で活動する 写真提供:筆者 1) 国立保健医療科学院・厚生労働省. 医療機関のための災害時受援計画作成の手引き. 2020年7月. 2) 内閣府 防災情報のページ. 被災者援護協力団体の登録制度 3) World Health Organization. Classification and minimum standards for emergency medical teams. Geneva: WHO; 2021. 4) 厚生労働省. 大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の強化について. 2025年3月31日. 5) 厚生労働省. 災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H). 6) 厚生労働省. 大規模災害時における「災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)」の活用について. 2025年3月25日.

1009.

空気清浄機と血圧の関係/JACC

 粒子状物質(PM)による大気汚染は、心血管疾患のリスク因子であり、血圧上昇にも関与している可能性が指摘されている。そこで、家庭用のHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルター付き空気清浄機が血圧を低下させるか検討することを目的として、米国の幹線道路の近隣に居住する成人を対象に、プラグマティック臨床試験が実施された。本研究結果は、Doug Brugge氏(米国・コネチカット大学)らにより、JACC誌2025年8月26日号で報告された。 本研究は、幹線道路の近隣(200m以内)に居住する成人を対象としたプラグマティック無作為化クロスオーバー試験である。降圧薬未使用の成人154人(108世帯)を組み入れ、HEPAフィルター付き空気清浄機を1ヵ月間使用する群、フィルターを除去した偽の空気清浄機を1ヵ月間使用する群に無作為に割り付けた。1ヵ月間のウォッシュアウト期間を設け、もう一方の介入を1ヵ月間行った。各介入期間の開始時と終了時に血圧測定を行い、HEPAフィルターとフィルター非装着(シャム)の血圧への影響を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象の平均年齢は41.1歳で、ベースライン時の平均収縮期血圧(SBP)/拡張期血圧(DBP)は118.8/76.5mmHgであった。・室内のPM2.5濃度(24時間平均値)は、HEPAフィルター使用時2.5μg/m3、シャム使用時5.2μg/m3、屋外3.9μg/m3であり、HEPAフィルター使用時が有意に低かった(p<0.001)。・全体集団において、SBP変化量(平均値)はHEPAフィルター使用後-1.1mmHg、シャム使用後-0.6mmHgであり、両者の差はみられなかった。・介入開始時のSBPが120mmHg以上の集団において、SBP変化量(平均値)はHEPAフィルター使用後-2.8mmHg、シャム使用後+0.2mmHgであり、HEPAフィルター使用後に有意な低下がみられた(p=0.03)。HEPAフィルター使用後とシャム使用後の差は3.0mmHgであり、両者に有意差がみられた(p=0.04)。・介入開始時のSBPが120mmHg未満の集団では、HEPAフィルターによるSBPへの有意なベネフィットは認められなかった。 ・DBPについては、いずれの集団においても有意な変化はみられなかった。 本研究結果について、著者らは「家庭用HEPAフィルター付き空気清浄機は、世界的にPM2.5濃度が比較的低い国の幹線道路の近隣の環境においても、とくにSBPが120mmHg以上の人に血圧低下効果をもたらす可能性が示唆された。安全性の懸念が認められなかったことを踏まえると、幹線道路から200m以内または交通量の多い道路から100m以内に居住する、血圧高値などの心血管疾患リスクを有する人に対して、空気清浄機の使用を推奨することは合理的であると考える」と述べた。

1010.

日本における手術部位感染の分離菌の薬剤感受性~全国サーベイランス

 手術部位感染(SSI)から分離された原因菌に対する各種抗菌薬の感受性について、日本化学療法学会・日本感染症学会・日本臨床微生物学会(2023年には日本環境感染学会も参画)による抗菌薬感受性サーベイランス委員会が、2021~23年に実施した第4回全国サーベイランス調査の結果を報告した。第1回(2010年)、第2回(2014~15年)、第3回(2018~19年)のデータと比較し、主に腸内細菌目細菌において抗菌薬感受性が低下した一方、MRSA発生率は減少したことが示された。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年9月号に掲載。 本調査の対象手術は、一般外科、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺内分泌外科の手術で、収集菌種は、バクテロイデス属、黄色ブドウ球菌(MRSA、MSSA)、Enterococcus faecalis、大腸菌、肺炎桿菌、Enterobacter cloacae、緑膿菌の7菌種である。 主な結果は以下のとおり。・腸内細菌目細菌のESBL(extended-spectrum β-lactamase)産生株の検出率は、2010年は4.4%、2014~15年は13.5%、2018~19年は6.6%であったが、2021~23年は11.2%に上昇した。2018~19年はタゾバクタム・ピペラシリンに対する感受性が高かったが、2021~23年は71.8%に低下した。タゾバクタム・セフトロザンの幾何平均MICは、2018~19年は0.397、2021~23年は0.778と上昇傾向を示した。・MRSA発生率は、2010年は72%であったが、2014~15年および2018~19年は53%、2021~23年は39%と低下した。・大腸菌および肺炎桿菌において、スルバクタム・アンピシリンおよびセファゾリンに対する感受性が低下した。・バクテロイデス属は、モキシフロキサシン(57%)、セフメタゾール(54%)、クリンダマイシン(44%)に対する感受性が低かった。

1011.

成人遅発型ポンペ病に2種類併用の治療薬を発売/アミカス

 アミカス・セラピューティクスは、成人遅発型ポンぺ病を対象とする新規併用療法の治療薬であるシパグルコシダーゼ アルファ(商品名:ポムビリティ)とミグルスタット(同:オプフォルダ)を8月27日に発売した。 ポンぺ病(糖原病II型)は、ライソゾーム内のグリコーゲンの分解に関与する酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)をエンコードする遺伝子の突然変異によって起こる希少疾病。この酵素の機能障害により、ライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、細胞機能の障害が進行し、筋力、運動および肺機能が低下する。患者は、全世界で5,000~1万人と推定され、わが国では約130人とされている。 今回発売されるシパグルコシダーゼ アルファは、点滴静注剤であり、遺伝子組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ製剤となる。マンノース-6-リン酸受容体への結合親和性が高い糖鎖を付加することで、細胞への酵素の取り込みの促進が期待される。また、ミグルスタットは経口剤であり、中性環境の血中で不活化されやすいシパグルコシダーゼ アルファを安定化させ、活性を維持させた状態で血中に長くとどまることを可能にする。これにより、シパグルコシダーゼ アルファ単剤と比較し、細胞への取り込み量を増加させることが期待される。 両剤の併用により、細胞内への酵素取り込み効率と標的組織への到達性の向上が見込まれ、とくに筋組織においてポンぺ病の主要な貯蔵物質であるグリコーゲンを減少させる作用が期待されている。【シパグルコシダーゼ アルファ製品概要】一般名:シパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)販売名:ポムビリティ点滴静注用105mg効能または効果:遅発型ポンペ病に対するミグルスタットとの併用療法用法および用量:ミグルスタットとの併用において、通常、体重40kg以上の成人にはシパグルコシダーゼ アルファとして、1回体重1kg当たり20mgを隔週点滴静脈内投与する。薬価:20万4,251円薬価収載日:2025年8月14日発売日:2025年8月27日製造販売元:アミカス・セラピューティクス【ミグルスタット製品概要】一般名:ミグルスタット販売名:オプフォルダカプセル65mg効能または効果:遅発型ポンペ病に対するシパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)との併用療法用法および用量:シパグルコシダーゼ アルファとの併用において、通常、成人にはミグルスタットとして体重40kg以上50kg未満の場合は1回195mg、体重50kg以上の場合は1回260mgを隔週経口投与する。なお、食事の前後2時間は投与を避けること。薬価:6,038.2円薬価収載日:2025年8月14日発売日:2025年8月27日製造販売元:アミカス・セラピューティクス

1012.

BPSDに対する非薬理学的介護者介入の比較〜ネットワークメタ解析

 認知症の行動・心理症状(BPSD)の軽減に非薬理学的な介護者介入は有用であるが、最も効果的な非薬理学的介入は、依然として明らかとなっていない。中国・杭州師範大学のXiangfei Meng氏らは、BPSDに対するさまざまな介護者介入とそれらの症状に対する介護者の反応を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。International Journal of Nursing Studies誌2025年10月号の報告。 2023年10月18日までに公表された研究を、PubMed、Embase、Cochrane Library、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL)、PsycINFOよりシステマティックに検索した。バイアスリスクの評価にはRoB2、エビデンスの信頼性の評価にはCINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)を用いた。頻度主義的枠組みを用いたランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。主要評価項目は、BPSD症状およびBPSDに関連する介護者の反応とした。 主な結果は以下のとおり。・8,336組のペアと12種類の介護者介入が含まれるランダム化比較試験71件を対象とした。・BPSDについては、多要素介入により介入後(SMD:−0.30、95%信頼区間[CI]:−0.47〜−0.12、p=0.001)およびフォローアップ調査時(SMD:−0.61、95%CI:−1.05〜−0.18、p=0.006)において症状の改善が認められた。・BPSDに関連する介護者の反応については、介入後の改善において、次の介入が有用であった。【多要素介入】SMD:−0.37、95%CI:−0.58〜−0.16、p=0.001【スキル構築】SMD:−0.26、95%CI:−0.42〜−0.10、p=0.001【認知行動療法】SMD:−0.22、95%CI:−0.41〜−0.03、p=0.023【教育】SMD:−0.20、95%CI:−0.35〜−0.04、p=0.017・SUCRA解析の結果、多要素介入は、BPSDの症状軽減(SUCRA:83.4%)、これらの症状に対する介護者の反応改善(SUCRA:90.9%)において、最も高い評価を得た介入であることが明らかとなった。・メタ回帰分析およびサブグループ解析の結果、共変数である「自立度」、「平均年齢」、「期間」が多要素介入のエフェクトサイズに影響を及ぼすことが示唆された。 著者らは「多要素介入は、BPSDの症状およびこれらの症状に対する介護者の反応軽減において最も優れた介入であり、持続的な効果を示すことが明らかとなった」としている。

1013.

鎮静下の低酸素血症予防、側臥位vs.仰臥位/BMJ

 低酸素血症は、鎮静中の患者の重篤かつ生命を脅かす可能性のある合併症で、救急診療部や内視鏡検査、入院・外来処置中などさまざまな場面で発生し、緩和医療でも問題となるため、より負担の少ない呼吸法とともに、予防戦略の最適化が不可欠とされる。中国・浙江大学のHui Ye氏らの研究チームは、鎮静中の低酸素血症を回避するための体位として、側臥位と仰臥位の効果を比較する目的で、同国の14施設で多施設共同無作為化対照比較試験を行い、鎮静下の成人患者の体位を側臥位とすることで、安全性を損なわずに低酸素血症の発生率と重症度が有意に軽減し、気道確保介入の必要性も低下したことを明らかにした。BMJ誌2025年8月19日号掲載の報告。低酸素血症が約10%減少 本試験では、2024年7~11月に、鎮静下にある成人(年齢18歳以上)患者2,143例を登録。1,073例を側臥位(介入群)、1,070例を従来の仰臥位(対照群)に無作為に割り付けた。全体の平均年齢は53.1(SD 14.9)歳、女性が1,150例(53.7%)であった。 主要アウトカムである体位変換から10分以内の低酸素血症(酸素飽和度[SpO2]≦90%)の発生率は、対照群が15.0%(161/1,070例)であったのに対し、介入群は5.4%(58/1,073例)と有意に低かった(補正後リスク比:0.36[95%信頼区間[CI]:0.27~0.49]、p<0.001)。1件の低酸素血症を予防するための側臥位への体位変換の必要数(NNT)は11(95%CI:9~16)だった。副次アウトカムも良好 4つの副次評価項目は、いずれも介入群で有意に良好であった。(1)気道確保介入(酸素流量の増量、下顎挙上法、マスク換気など)を要する患者の割合:介入群6.3%(68/1,073例)vs.対照群13.8%(148/1,070例)、補正後リスク比:0.46(95%CI:0.34~0.61)、p<0.001。1件の気道確保介入を回避するための側臥位への体位変換のNNTは15(95%CI:11~22)だった。(2)重症低酸素血症(SpO2≦85%)の発生率:同0.7%(8/1,073例)vs.4.8%(51/1,070例)、0.16(0.07~0.33)、p<0.001。(3)標準的な退院基準を満たすまでの麻酔後ケアユニット(PACU)の平均在室時間:同38.2分vs.40.5分、補正後絶対平均差:-2.22分(-3.63~-0.80)、p=0.002。(4)最低SpO2(10分間の連続測定の最低値)の平均値:同96.9%vs.95.7%、1.20%(0.87~1.54)、p<0.001。頻脈が有意に減少 安全性の評価項目のうち、頻脈(心拍数>100回/分)が介入群で有意に少なかった(6.7%vs.10.4%、率比:0.65[95%CI:0.48~0.87]、p=0.004)。 一方、徐脈(心拍数<50回/分)(介入群4.8%vs.対照群4.9%、0.98[0.67~1.45]、p=0.93)、低血圧(収縮期血圧<80mmHg)(1.0%vs.0.8%、1.26[0.52~3.04]、p=0.61)、新規不整脈(0.8%vs.0.7%、1.12[0.43~2.91]、p=0.81)、咳嗽(9.5%vs.10.1%、0.94[0.71~1.23]、p=0.64)、悪心/嘔吐(1.7%vs.2.1%、0.78[0.42~1.44]、p=0.42)の頻度は、両群間で差を認めなかった。 著者は、「簡便で費用も安価であることから、側臥位は遠隔地や医療資源が限られた臨床の現場に利点をもたらす可能性がある」と述べるとともに、「これらの知見の一般化可能性を高めるには、高齢者やBMIの高い患者を対象に再現性を確かめるための研究を要する」としている。

1014.

血液透析患者へのスピロノラクトン、心血管イベントを抑制するか/Lancet

 慢性血液透析を受けている腎不全患者は、一般集団と比較して心血管疾患による死亡リスクが10~20倍高いが、血液透析患者は通常、心血管アウトカムを評価する臨床試験から除外されるという。フランス・Association ALTIRのPatrick Rossignol氏らALCHEMIST study groupは、心血管イベントのリスクの高い血液透析患者において、ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬スピロノラクトンの有効性を評価する目的で、研究者主導の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照イベント主導型試験「ALCHEMIST試験」を実施。スピロノラクトンは主要心血管イベント(MACE)の発生を抑制しなかったことを示した。研究の詳細は、Lancet誌2025年8月16日号に掲載された。欧州3ヵ国の早期中止試験 本試験は、2013年6月~2020年11月に3ヵ国(フランス、ベルギー、モナコ)の64施設で参加者を登録し行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、腎不全で慢性血液透析(週3回以上)を受けており、少なくとも1つの心血管合併症またはリスク因子を有する患者644例であった。スピロノラクトン群(25mg/日まで漸増、経口投与)に320例、プラセボ群に324例を無作為に割り付け、主要エンドポイントであるMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、心不全による入院)の発生率を評価した。 試験は2022年11月(最後の参加者の追跡期間が2年の時点)に資金不足のため早期中止となった。MACE発生率は改善せず 全体の年齢中央値は70.8歳(四分位範囲[IQR]:63.5~78.1)、男性が444例(69%)で、血液透析期間中央値は1.7年(IQR:0.7~4.5)だった。追跡期間中央値は32.6ヵ月(17.3~48.4)であった。 MACEの発生率は、スピロノラクトン群で24%(78/320例、10.66/100人年[95%信頼区間[CI]:8.54~13.31])、プラセボ群で24%(79/324例、10.70/100人年[8.59~13.35])と、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.00[95%CI:0.73~1.36]、p=0.98)。 MACEの各項目では、心不全による入院(2%[7/320例]vs.5%[17/324例]、HR:0.41[95%CI:0.17~1.00])の発生率がスピロノラクトン群で低かったが、他の項目については両群間に差はなかった。忍容性は良好 副次エンドポイントについては、心停止からの蘇生を含む非致死的心血管イベント(12%[37/320例]vs.17%[56/324例]、HR:0.66[95%CI:0.43~0.99])の発生率はスピロノラクトン群で良好であった。一方、全死因死亡、心血管系以外の原因による死亡、高カリウム血症(血清カリウム値>6mmol/L)、低カリウム血症(同<4mmol/L)の発生率には両群間に差がなかった。 スピロノラクトン群の忍容性は良好であった。とくに注目すべき有害事象としての高カリウム血症の発生率の群間差は1.8%ポイント(イベント発生率はスピロノラクトン群11.7%vs.プラセボ群9.9%)、とくに注目すべき重篤な有害事象としての高カリウム血症の発生率の群間差は2.7%ポイント(28.3%vs.25.6%)と小さかった。5試験のメタ解析でもほぼ同様の結果 既報の4試験と本試験を対象にメタ解析を行った。その結果、プラセボと比較してミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、全死因死亡(オッズ比[OR]:0.71[95%CI:0.41~1.24]、p=0.23、I2=43%)、心血管死(0.72[0.33~1.58]、p=0.41、I2=57%)、非致死的心血管イベント(1.00[0.77~1.30]、p=0.99、I2=0%)の改善をもたらさなかった。 また、プラセボに比しミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、高カリウム血症イベント(OR:1.04[95%CI:0.90~1.20]、p=0.58、I2=0%)の発生率を上昇させなかった。 著者は、「本試験および本試験を含むメタ解析の結果は、スピロノラクトンが心血管リスクの高い血液透析を受けている腎不全患者に臨床的有益性をもたらさないことを示している」「これらの患者におけるミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の適応外使用が、心血管死や全死因死亡を有意に低下させたとする実臨床データがあるが、本試験の知見はこれを支持しない」としている。

1015.

科学分野において組織的な不正行為が急速に増加

 科学における不正行為が広がり、学術研究の健全性に深刻な脅威をもたらしていると、米ノースウェスタン大学工学・応用数学教授のLuis A.N. Amaral氏らのグループが警鐘を鳴らしている。Amaral氏らの報告によると、秘密裏に不正を働く人のネットワークが広がり、かつてないほど速いペースで科学分野において虚偽の成果が生み出されているという。詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に8月4日掲載された。 科学における不正行為に関するニュースは通常、論文の撤回、データの改ざんまたは盗用など、成功のために近道をしようとする個人による単発の事例について報じたものが多いとAmaral氏らは言う。しかし、同氏らが今回行った調査によって、世間の目に触れないところで虚偽の科学を量産している闇のネットワークの存在が明らかになった。 Amaral氏らは撤回された論文を分析し、質や倫理基準を満たさないとして主要なオンライン科学データベースから除外された学術誌に掲載された研究を調べた。その結果、質の低い原稿を量産し、新しい論文をすぐに発表したい学者に販売する「ペーパーミル(論文工場)」の組織的なネットワークの存在が明らかになった。これらのレディメイドの論文には、捏造されたデータや、加工または盗用された画像、盗作された内容が含まれている。また、意味不明な内容や物理的にあり得ない内容が含まれていることもある。 Amaral氏は、「論文工場に捕らわれる科学者は増え続けている。彼らは論文だけでなく、引用数まで買うことができる。こうした行為によって、ほとんど自分では研究していないにもかかわらず、あたかも評価の高い科学者であるかのように自分を見せかけることができるのだ」と言う。また、論文の筆頭著者であるノースウェスタン大学のReese Richardson氏は、「論文工場は、正当な評価を得た科学者であるかのように見せるための手段となり得るものなら、基本的には何でも売る。彼らはしばしば著者枠を数百ドルから数千ドルで販売している。筆頭著者のポジションにはより高価、第四著者など後ろのポジションにはより安価な金額が設定されていることもある。また、自分が書いた論文を、形だけの査読プロセスを通じて受理させるためにお金を払う人もいる」と話している。 さらに本研究では、不正行為を働くネットワークには論文を発表するための複数の戦略があることも明らかになった。具体的には、1)複数の研究グループが共謀して複数の学術誌に論文を発表し、その活動が発覚した場合にのみ論文を撤回する、2)ブローカーが虚偽の論文の大量出版を調整する仲介役として機能する、3)虚偽の報告であることが見抜かれたり阻止されたりする可能性が低い、特定の限られた研究分野に照準を絞る、といったものである。 Amaral氏は、「ブローカーは、舞台裏にいるあらゆる人々をつないでいる。論文の執筆者、著者として名前を載せるためにお金を払う人、そして、それらを掲載してくれる学術誌を見つける必要がある。さらに、論文を受理してくれる編集者も必要だ」と話す。研究グループによると、これらのグループは、評価の高い学術誌を回避する方法として廃刊になった学術誌を「乗っ取る」こともある。廃刊となった学術誌の名前やウェブサイトを引き継ぎ、その身元を密かに偽装して、あたかも正規の発行元から出ているように見せかけて不正論文を量産していくのだという。 さらに、人工知能(AI)の登場によって科学における不正行為がさらに広がる恐れがあるという。Richardson氏は、「既存の不正にも対処できていないのであれば、生成AIが科学文献に与える影響に対処できるはずがない。将来、どんな内容のものが論文として公表されるのか、何が科学的事実と見なされて将来のAIモデルの学習に使われるのか、われわれは全く分からない。そして、そのAIモデルがさらに論文を書くことになるのだ」と懸念を示している。 Amaral氏らは、編集プロセスの精査を強化し、捏造された研究の検出能を高め、不正を働くネットワークの調査を進め、科学におけるインセンティブのシステムを再構築することで、アカデミアがこの脅威に対抗する必要があると述べている。

1016.

第277回 コロナの今、感染・入院・死亡者数まとめ

INDEX定点報告数推移入院・重症化例死亡者数新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が感染症法の5類に移行したのが2023年5月8日。それから丸2年以上が経過した。現在、全国的に感染者が増加していると報道されているが、先日の本連載でも報告したように地域の基幹病院では、流行期に苦境を迫られているのが現実だ。もっとも世の中全体が新型コロナについて「喉元過ぎた熱さ」化した今、5類移行以後の新型コロナがどのような経過をたどってきたかについての認識は、医療者の中でも差があるだろう。私自身は医療者ではないが、隠さず言ってしまえば、まさに喉元過ぎた熱さ化しつつあるのが実際である。ということで、自省も込めてこの段階で、5類移行から現在に至るまでの新型コロナの状況について経過をたどってみることにした。今回は感染者数、入院者数、死亡者数についてまとめてみた。定点報告数推移まず、5類移行後の一番大きな変化としては感染者報告が定点報告1)となった点である。その最初となった2023年第19週(5月8~14日)は全国で2.63人。この後は第35週(8月28日~9月3日)の20.50人まで、途中で第31週(7月31日~8月6日)と第32週(8月7~13日)に前週比で若干減少したことを除けば、ひたすら感染者は増加し続けた。ただ、ここからは急速に減少し、わずか4週後の第39週(9月25日~10月1日)には8.83人まで減少。第44週(10月30日~11月5日)には第19週の水準を下回る2.44人となった。16週間かけてピークまで増加した感染者数が9週間で減少したことになる。最終的には第46週(11月13~16日)の1.95人で底を打った。もっともここからは再び増加に転じ、この年の最終週の第52週(12月25~31日)には5.79人と6週間で約3倍まで増加した。2024年第1週(1月1~7日)は6.96人で始まり、第5週(1月29日~2月4日)に16.15人。以後は第18週(4月29日~5月5日)の2.27人まで一貫して減少したが、第19週(5月6~12日)からは2.63人と反転し、第30週(7月22~28日)の14.58人まで増加を続けた。そしてこれ以降は再び減少し始め、第45週(11月4~10日)の1.47人がボトムとなり、最終週の第52週(12月23~29日)は7.01人。7週間で5倍弱に増加した。2025年は第1週(2024年12月30日~2025年1月5日)が5.32人と2024年最終週からは減少したものの、翌第2週(1月6~12日)は7.08人と跳ね上がり、これが冬のピーク。この後は緩やかに減少していき、第21週(5月19~25日)、第22週(5月26日~6月1日)ともに0.84人まで低下。そこから再び一貫した上昇に転じ、最新の第33週(8月11~17日)が6.30人である。このデータを概観すると、1月中が冬のピークで、その後は感染者が減少。5月中下旬から感染者が増加し、7~8月にピークを迎え、そこから11月中旬にかけてボトムとなり、再び増加に転じるという流れが見えてくる。現時点において、この夏まで4つの波が到来している形で、年々ピークの感染者数は低下している。もっとも、これは以前書いたようにウイルスの感染力が低下しているわけではなく、次第に多くの人がコロナ禍を忘れ、喉の痛みや鼻水が大量に出るなどの呼吸器感染症の症状が出ても受診・検査をしていないケースが増えているからだろう。また、注意が必要なのが定点報告医療機関数の変化である。2025年第14週(3月31日~4月6日)までは約5,000医療機関だったが、これが再編されて第15週以後は約3,000医療機関に変更されていることだ。その意味ではもはや定点報告数は大まかに流行を捉えるという位置付けにすぎないといえるだろう。そうした中でこの流行の波形を見ると実は特徴的な地域がある。沖縄県だ。同県の場合、ほかの都道府県に見られる冬期の波がほとんどない。これは同県が日本では唯一の亜熱帯に属する県であることが理由だろう。すなわち冬に暖房を使って屋内に籠ることがほとんどないということだ。つまるところ「暑さや寒さでエアコンを使い換気が悪くなる時期に各地で感染者が増加する」という従来からの定説を如実に裏付けているともいえる。実際、夏前の流行の立ち上がり時期を見ると、九州・沖縄地方は全国傾向と同じ毎年第19週前後だが、北海道や東北地方は第25週前後である。逆に冬期は北海道、東北地方は第42週前後に感染者が増加し始めるが、九州地方では第49週前後である。入院・重症化例最も医療機関にとって負荷がかかるのは新型コロナによる入院患者の増加であることはいうまでもない。厚生労働省では医療機関等情報支援システム(G-MIS)2)のデータから週報とともに重症化事例も公表している。当然ながら、定点報告の感染者数のピーク前後で入院事例が増えると考えられるため、各ピーク期に絞ってその状況を取り上げる。まず、2023年については、夏のピークだった第35週の直前である第34週(8月21~27日)の全国の新規入院患者数1万3,972人がピークである。この時の7日間平均でのICU入院中患者数が228人、ECMOまたは人工呼吸器管理中が140人である。ICU入院中の患者数は第33~36週までは200人超である。2024年の冬季の感染者数ピークは第5週だが、入院患者のピークはその前の第3週(1月15~21日)の3,494人である。夏に比べて一気に入院患者数が減少したようにもみえるが、これは2023年9月25日より、入院患者数をG-MISデータ(約3万8,000医療機関)から全国約500ヵ所の基幹定点医療機関からの届出数に変更したためである。その代わり、この時点から入院患者の年齢別などの詳細が報告されるようになっている。この2024年第3週の入院患者の年齢別内訳を見ると、60歳以上の高齢者(同データは65歳以上の区分なし)が83.1%を占めている。これ自体は驚くことではない。ただ、10歳刻みの年齢区分で見ると、60歳以降の3区分と50~59歳の区分に次いで多いのが1歳未満である。また、この時の入院時のICU入室者は117人、人工呼吸器利用者は57人である。さらに同年夏の入院患者数ピークは、感染者数ピークの第30週の翌週である第31週(7月29日~8月4日)の4,590人。この時も60歳以上の高齢者が84.4%を占め、第3週前後の時と同様に60歳以降の3区分と50~59歳の区分に次いで1歳未満の入院患者が多い。この週のICU入室者は187人、人工呼吸器の利用者は80人。2025年冬の入院患者数ピークは、感染者数ピークと同様の第2週で2,906人。60歳以上の高齢者割合は86.0%。年齢階層別の入院患者数で1歳未満が高齢者層に次ぐのは、この時も同じだ。この週のICU入室者は120人、人工呼吸器の利用者は54人だった。死亡者数人口動態統計3)の年次確定数で見ると、2023年の新型コロナによる死亡者数は3万8,086人。前年の2022年が4万7,638人である。ちなみに2023年のインフルエンザの死亡者数が1,383人である。2024年(概数)は3万5,865人、2025年については現在公表されている3月までの概数が1万1,207人である。ちなみに前年の1~3月は1万2,103人であり、やや減少している。ここでまたインフルエンザの死亡者数を挙げると、2024年が2,855人、2025年1~3月が5,216人である。今年に入りインフルエンザの死亡者は増加しているものの、新型コロナの死者は2023年でその27.5倍、2024年で12.6倍にも上る。この感染症の恐ろしさを改めて実感させられる。次回は流行株の変遷とワクチン、治療薬を巡る状況を取り上げようと思う。 参考 1) 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等) 2) 厚生労働省:医療機関等情報支援システム(G-MIS):Gathering Medical Information System 3) 厚生労働省:人口動態調査

1017.

東海大学医学部 乳腺・腫瘍科学【大学医局紹介~がん診療編】

新倉 直樹 氏(教授)寺尾 まやこ 氏(講師)清原 光 氏(助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴当科は乳腺の悪性疾患から良性疾患まで対応し、東海大学医学部付属病院(伊勢原・神奈川)では乳腺専門医5名を中心に乳がんの診療をし、2023年の当科の年間手術症例数は355件(全身麻酔での乳がん手術322例)でした。がん薬物療法専門医3名が所属しており、その他の悪性腫瘍の患者さんも積極的に受け入れ、薬物療法も行っています。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に対しては遺伝子診療科と連携し、BRCA検査、その他の家族性腫瘍に対する検査にも対応しています。乳房再建においては形成外科と連携し腹直筋、広背筋皮弁再建やインプラント再建も行っております。独自の取り組みとしては、乳腺・腫瘍科の中に外科専門医と内科専門医が混在しているチームとなり、外科医が薬物治療を行うのと同時に、内科出身であっても、診断・手術を行っています。医師の育成方針当科では外科系以外に、2008年より内科系の乳腺専門医を目指す医師を育成しており、今後も外科・内科問わずさまざまなバックグラウンドを持つ乳腺専門医を目指す医師を募集しています。乳腺・腫瘍科として診断から外科的手術、薬物療法まで行える医師の育成を行っております。さらには研究については、基礎研究、データベース研究、新規薬剤の開発治験、留学制度など本人のやりたいことをサポートできる環境を整えてあります。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力東海大学乳腺・腫瘍科学は、外科系・内科系を問わず乳がん診療全般に関わることができること、「がん薬物療法専門医」が複数名おりオンコロジストとして乳がん以外の悪性疾患の臨床や研究に携わることができるのが大きな魅力です。複雑な症例の相談や、原発不明がんの治療など自施設に限らず地域の医療機関の患者さんたちに適切な治療を提供することは、医師としてやりがいを感じられます。次世代オンコロジストの育成にも力を入れ、幅広く腫瘍学を学ぶことができる環境が整っており、基礎研究に関心のある方にも、多様なテーマに取り組める機会があります。復職・キャリア再開を考えている医師へのメッセージ当教室では、3年目専攻医でなくても、結婚・出産・家庭の事情などで一度離職された先生方や、過去に他の医療機関に在籍していた方の復職も可能です。東海大学医学部には「復職支援室」を設けており、復職支援、長期離職予防、キャリア支援などを積極的に行っています。復職にあたって不安をお持ちの方には、診療科を問わず個別相談や研修の提案なども可能です。まずは相談だけでも、ぜひお気軽にご連絡ください。これまでの経歴宮崎大学を卒業後、神奈川県内の市中病院で初期臨床研修を行いました。現在の医局に入局し、医師7年目になります。初期研修中に乳腺診療の魅力を知り、この分野を選びました。同医局を選んだ理由乳腺外科を選んだ理由は、1)診断から手術、周術期治療、再発転移の治療まで一貫して携わることができること、2)患者さんの多くが女性であり女性医師の需要が高いこと、3)ワークライフバランスも大切にできることの3点です。東海大学では、乳腺専門医取得に向けて外科系だけでなく内科系ローテーションを選択することができました。とくに薬物療法に興味があった私は、この点を魅力に感じ、東海大学に入局を決めました。現在学んでいること医師3~5年目は当院の内科系と乳腺外科で専攻医として勤務し、うち1年間は国立がん研究センター東病院で腫瘍内科を中心に研修させていただきました。その後内科専門医を取得し、現在は外来や手術を中心に乳腺診療全般を学んでいます。また、研究にも取り組み、学会発表や論文執筆を進めています。さらに、がん薬物療法の理解を深めるため、遺伝子パネル検査のエキスパートパネルにも参加し、他がん種についても学んでいます。東海大学医学部 乳腺・腫瘍科学住所〒259-1193 神奈川県伊勢原市下糟屋143問い合わせ先mamma@tokai.ac.jp医局ホームページ東海大学医学部 乳腺・腫瘍科学専門医取得実績のある学会日本外科学会日本内科学会日本乳学会日本臨床腫瘍学会日本治療学会日本遺伝性腫瘍学会研修プログラムの特徴(1)東海大学では、大学院に進学する場合、臨床助手・ハイブリッドコースを選択し、学位を取得することができます。また、臨床助手の7割の給与が支給されます。(2)男女を問わず、結婚・出産後の待遇について相談に応じます。産休・育休制度を活用し、最大産後1年間の休職が可能です。短時間勤務制度(20~28時間勤務/週、子供が9歳になるまで、最大3年間)を利用することもできます。この制度を利用し、復帰後も他医師と同様に臨床・研究・教育を継続することができる体制を整えております。本院(伊勢原)、八王子病院ともに院内保育所を併設しており、利用時間は7:00~22:00です。詳細はこちら

1018.

「苦しいのは仕方がない」という患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】第106回

「苦しいのは仕方がない」という患者さん私たち医療者は、臨床を通じ、さまざまな患者さんと関わります。今回は私がかつて経験し、対応に悩んだ状況を振り返ってみようと思います。今回の質問訪問診療で関わる多発性骨髄腫の患者さん。骨病変による痛みが強いのですが鎮痛薬の使用を拒否します。理由を尋ねると「苦しいのは自分に与えられた試練だから、薬でごまかすことはしたくない」と言います。そうした考えも認めつつ、やはり痛みは緩和したく、苦しく感じます。「苦痛を緩和する」ことの大切さを重視して緩和ケアを実践しているわれわれにとって、考えさせられる状況です。私がかつて担当した、このケースに似た患者さんの場合、診療拒否などはなく、感謝の言葉も口にするのですが、身体症状を和らげる提案に対しては「それは遠慮します」と反応をします。理由を尋ねると、「神に与えられたものだから」と宗教観に基づく返答がありました。私たちはこのような患者さんに対し、どのように対応すれば良いのでしょうか。私自身、今でも明確な答えは持ち合わせていませんが、基本的なスタンスをまとめてみたいと思います。まずは、「私たちも、基本的には患者さんの意向を尊重したい」との考えを明確に伝えます。医療者の推奨に同意しない患者さんに対応する際、大切なのは「対立構造にしない」ことです。推奨に従わない患者に対し、ネガティブな感情を抱く医療者もいるでしょう。患者は医療者のそうした感情を敏感に感じ取り、「自分の気持ちをわかってもらえない」と考えます。そのため、まずは「推奨に応じても応じなくても、あなたは大切な患者であり、あなたの意思を尊重する」と伝えるのです。一方で苦痛が強いというのは、見守る家族にはもちろん、医療者にもつらいことです。そのことも率直に伝え、「なんとか苦痛が和らぐ方法がないか、諦めずに考えていく」とお伝えします。具体的な言葉として、「苦痛との向き合い方は人それぞれだと思います。だから無理に鎮痛薬を飲まなくても大丈夫ですよ。ただ、すごくつらそうに見える時には、やはり薬の調整について、お声掛けさせてもらえませんか? 苦しそうな様子を見ているのは私自身もつらいので…」といったお声掛けをしました。ただ、私が経験した患者さんは、それでも「先生にそうして心配をかけるのも申し訳ないので、私のことでつらく感じないでください」と言い、最期まで鎮痛薬は使用しませんでした。今でも、「あの時どう対応すべきだったか」「この患者さんが本質的に大切にしていたことは何か」など、十分に理解できていないところがあります。緩和ケアの実践では、さまざまな価値観や想いに触れることがあります。自分なりに振り返り、時にはほかのスタッフとディスカッションして、できることに取り組みながら、関わることを諦めない態度を持ち続けることが大切なのだと思います。今回のTips今回のTips患者の意向を尊重しながら、関わることを諦めない態度が重要。

1019.

日本人の日常会話頻度と認知症リスク

 中高年を対象とした大規模集団コホートで、日常会話の頻度と認知症リスクとの関連を検討した結果、会話頻度が低いと認知症リスクが高く、会話が月1回未満の場合は認知症リスクが2倍を超えることが示唆された。国立がん研究センターの清水 容子氏らがArchives of Gerontology and Geriatrics誌オンライン版2025年8月5日号に報告。 本研究は、多目的コホート研究であるJPHC研究において2000~03年に日常会話頻度を報告した50~79歳の参加者について、認知症の発症を2006~16年の介護保険認定記録を用いて追跡した。生活習慣や既往歴などの因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。また、居住形態(独居もしくは同居)と性別によるサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・3万5,488人中3,334人が認知症と診断された。・会話が「ほぼ毎日」の場合と比較した完全調整HRは、「多くの人と毎日」で0.80(95%CI:0.69~0.93)、「数人と毎日」で0.88(同:0.80~0.97)、「週1~4回」で1.18(同:1.06~1.31)、「月1~3回」で1.17(同:0.97~1.42)、「月1回未満」で2.06(同:1.49~2.85)であった(傾向のp<0.001)。この関連は居住形態で変わらなかった。・独居男性では、会話頻度が高い(「ほぼ毎日」以上)場合のHRが1.71(同:1.26~2.32)、会話頻度が低い(「週1~4回」以下)場合が2.60(同:1.71~3.95)とどちらもリスクが増加したが、独居女性ではリスク増加はみられなかった。

1020.

高齢入院患者におけるベンゾジアゼピン中止パターンとそれを阻害する因子

 退院後のベンゾジアゼピン(BZD)長期使用は、高齢患者におけるBZD依存や重篤な薬物有害事象リスクを高める可能性がある。しかし、高齢者におけるBZD中止パターンとそれに関連する因子についての研究は限られている。米国・ハーバード大学のChun-Ting Yang氏らは、高齢者における入院後のBZD中止のパターンと関連因子を特定するため、後ろ向きコホート研究を実施した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年7月27日号の報告。 本コホート研究は、2004年1月〜2025年2月までのOptum CDMデータを用いて実施した。対象は、入院後30日以内に新たにBZD使用を開始した65歳以上の患者。不安症、精神疾患、アルコール乱用、てんかん発作、ホスピスケアを受けている患者は除外した。BZD中止は、BZD使用終了から15日を超える期間と定義した。主要解析では、カプランマイヤー法を用いて中止率を推定し、患者特性とBZD中止との関連はCox比例ハザードモデルを用いて解析した。死亡の競合リスクを補正するため、打ち切り確率の逆重み付け(IPW)を適用した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は3万3,449例(平均年齢:73.1±5.8歳、男性の割合:51.7%)。・IPW加重BZD中止率は、30日時点で53.3%(95%信頼区間[CI]:52.7〜53.8)、60日時点で86.7%(86.3〜87.1)、90日時点で92.6%(92.3〜93.0)であった。・30日時点でのBZD中止率は、2004年の31.7%(95%CI:29.5〜33.9)から2024年の71.1%(68.7〜73.5)へと増加が認められた。・研究期間中のBZD中止率は、年間4%の増加を示した。・BZD中止を阻害するリスク因子は、次のとおりであった。【不眠症】ハザード比(HR):0.66、95%CI:0.63〜0.69【中等〜重度のフレイル】HR:0.82、95%CI:0.75〜0.85【入院後/初回BZD使用前の抗うつ薬新規使用】HR:0.80、95%CI:0.76〜0.85【入院後/初回BZD使用前の非定型抗精神病薬新規使用】HR:0.90、95%CI:0.82〜0.99 著者らは「精神疾患の病歴のない高齢者における入院後のBZD中止率は、時間経過とともに上昇していた。しかし、とくに不眠症や中等〜重度のフレイルを有する高齢者においては、BZD中止に依然として課題が残存しており、今後の効果的な減量戦略策定のターゲットとなるであろう」とまとめている。

検索結果 合計:35100件 表示位置:1001 - 1020