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全身型重症筋無力症の治療薬ニポカリマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2025年11月12日に全身型重症筋無力症の治療薬として、ヒトFcRn阻害モノクローナル抗体ニポカリマブ(商品名:アイマービー)を発売した。 重症筋無力症(MG)は、免疫系が誤って各種の抗体(抗アセチルコリン受容体抗体、抗筋特異的キナーゼ抗体など)を産生する自己抗体疾患。神経筋接合部のタンパク質を標的として、正常な神経筋シグナル伝達を遮断または障害することで、筋収縮を障害もしくは妨げる。MGは全世界で70万人の患者がいると推定され性差、年齢、人種差を問わず発症するが、若い女性と高齢の男性に最も多くみられる。初発症状は眼症状であることが多く、MG患者の85%は、その後、全身型重症筋無力症(gMG)に進行する。gMGの主な症状は、重度の骨格筋の筋力低下、発話困難、嚥下困難であり、わが国には約2万3,000人のgMG患者がいると推定されている。 今回発売されるニポカリマブは、モノクローナル抗体であり、FcRnを阻害し、gMGを引き起こす循環免疫グロブリンG(IgG)抗体の濃度を下げつつ、他の適応免疫系および自然免疫系にほとんど影響を与えないよう設計されている。 承認の基になったVivacity-MG3試験では、日常生活動作(Myasthenia Gravis-Activities of Daily Living:MG-ADL)総スコアのベースラインからの平均変化量において、ニポカリマブと標準治療の併用群では、プラセボと標準治療の併用群と比較し、24週間の二重盲検期間において有意な改善が認められた。これは咀嚼、嚥下、発話、呼吸などの基本的な機能が改善したことを意味する。また、現在進行中の非盲検継続試験において、ニポカリマブ+標準治療群は、追跡期間48週まで症状の改善を示し、ニポカリマブは、初回投与から24週間のモニタリング期間を通して、IgG抗体濃度を迅速かつ持続的に最大75%低下させた。<製品概要>一般名:ニポカリマブ(遺伝子組換え)商品名:アイマービー点滴静注1,200mg/300mg効能または効果:全身型重症筋無力症(ステロイド剤またはステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)用法および用量:通常、成人および12歳以上の小児には、ニポカリマブとして初回に30mg/kgを点滴静注し、以降は1回15mg/kgを2週間隔で点滴静注する。薬価(いずれも1瓶):アイマービー点滴静注 1,200mg 6.5mL:196万7,291円 同 300mg 1.62mL:49万1,823円製造販売承認日:2025年9月19日薬価基準収載日:2025年11月12日発売日:2025年11月12日(アイマービー点滴静注1,200mgのみ発売、同300mgの発売日は未定)製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社

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肥満とがん死亡率、関連する血液腫瘍は

 肥満は血液腫瘍を含む各種がんによる死亡率の上昇と関連しているが、アジア人集団、とくに日本人成人におけるこの関連のエビデンスは限られている。今回、北海道大学の若狭 はな氏らが、わが国の多施設共同コホート研究(JACC Study)で肥満と血液腫瘍による死亡の関連を検討した結果、日本人成人において肥満が多発性骨髄腫および白血病(とくに骨髄性白血病)による死亡率の上昇と有意に関連していることが示された。PLoS One誌2025年10月30日号に掲載。 本研究では、わが国の多施設共同コホート研究であるJACC Studyの参加者9万7,073人を対象に、平均17年間追跡調査した。自己申告の身長および体重からBMI(kg/m2)を算出し、低体重(18.5未満)、正常体重(18.5~24.9)、過体重(25.0~29.9)、肥満(30.0以上)の4群に分けた。血液腫瘍による死亡データは死亡診断書から取得した。人口統計学的要因、生活習慣、社会経済的要因を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、原因疾患別のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に479例が血液腫瘍により死亡し、うちリンパ腫が200例、多発性骨髄腫が107例、白血病が166例(骨髄性白血病106例を含む)であった。・死亡リスクが正常体重群より肥満群で有意に高かったのは、血液腫瘍全体(HR:1.78、95%CI:1.02~3.11)、多発性骨髄腫(HR:2.75、95%CI:1.09~6.94)、白血病(HR:2.47、95%CI:1.07~5.69)、とくに骨髄性白血病(HR:3.89、95%CI:1.66~9.11)であった。・BMIとリンパ腫による死亡率との間には有意な関連は認められなかった。 今回の結果は、この集団において肥満が特定の血液腫瘍における修正可能なリスク因子であることを強調している。

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既治療のEGFR陽性NSCLC、sac-TMTがOS改善(OptiTROP-Lung04)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療後に病勢が進行したEGFR遺伝子変異陽性の進行・転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)において、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)はペメトレキセド+白金製剤ベースの化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)とともに全生存期間(OS)をも改善し、新たな安全性シグナルの発現は認められなかった。中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのWenfeng Fang氏らが、第III相試験「OptiTROP-Lung04試験」の結果で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年10月19日号に掲載された。中国の無作為化試験 OptiTROP-Lung04試験は、中国の66施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2023年7月~2024年4月に参加者のスクリーニングが行われた(Sichuan Kelun-Biotech Biopharmaceuticalの助成を受けた)。 年齢18~75歳、局所進行(StageIIIBまたはIIIC)または転移のある(StageIV)の非扁平上皮NSCLCと診断され、治癒切除術または根治的化学放射線療法が非適応で、EGFR変異(exon19delまたはexon21 L858R置換)陽性であり、1次または2次治療においてEGFR-TKI(第1・2世代はT790M変異陰性例、第3世代はT790M変異の有無を問わない)の投与を受けたのち病勢が進行した患者376例(年齢中央値60歳[範囲:31~75]、男性39.6%)を対象とした。  参加者を、sac-TMT群(188例)またはペメトレキセド+白金製剤ベースの化学療法群(188例)に無作為に割り付けた。sac-TMT群は、28日を1サイクルとして1および15日目に5mg/kg体重を静脈内投与した。化学療法群は、21日を1サイクルとして1日目にペメトレキセド(500mg/m2体表面積)+担当医の選択によりカルボプラチン(AUC 5mg/mL/分)またはシスプラチン(75mg/m2)の投与を最大で4サイクル行い、その後ペメトレキセドによる維持療法を施行した。客観的奏効割合、奏効期間も優れる 登録時に、74.5%が非喫煙者で、97.6%がStageIVであった。全身状態の指標(ECOG PSスコア)は、0が20.7%、1が79.3%で、94.7%が前治療で第3世代EGFR-TKIの投与(62.5%は1次治療として)を受けていた。  追跡期間中央値18.9ヵ月の時点における、独立審査委員会が盲検下に評価したPFS中央値(主要エンドポイント)は、化学療法群よりもsac-TMT群で延長した(8.3ヵ月vs.4.3ヵ月、病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.39~0.62)。12ヵ月時のPFS率は、sac-TMT群が32.3%、化学療法群は7.9%だった。  また、OS中央値(主な副次エンドポイント)は、化学療法群が17.4ヵ月であったのに対し、sac-TMT群は推定不能(95%CI:21.5~推定不能)であり有意に優れた(死亡のHR:0.60、95%CI:0.44~0.82、両側p=0.001)。18ヵ月時のOS率は、sac-TMT群が65.8%、化学療法群は48.0%だった。  独立審査委員会が盲検下に評価した客観的奏効(完全奏効+部分奏効)の割合は、sac-TMT群が60.6%、化学療法群は43.1%であった(群間差:17.0%ポイント、95%CI:7.0~27.1)。奏効期間中央値はそれぞれ8.3ヵ月および4.2ヵ月であり、奏効期間中央値が1年以上の患者の割合は36.3%および8.1%だった。口内炎が高頻度に sac-TMT関連の新たな安全性シグナルは認めなかった。Grade3以上の治療関連有害事象は、sac-TMT群で58.0%、化学療法群で53.8%に発現し、最も頻度が高かったのは好中球数の減少(39.9%、33.0%)であった。Grade3以上の貧血(11.2%vs.14.3%)、血小板減少(2.1%vs.16.5%)はsac-TMT群で少なく、重篤な治療関連有害事象の頻度もsac-TMT群で低かった(9.0%vs.17.6%)。また、sac-TMT群では、治療関連有害事象による投与中止の報告はなかった。  とくに注目すべき薬剤関連有害事象については、sac-TMT群で口内炎(64.4%vs.4.9%)の頻度が高かった。sac-TMT群の口内炎の内訳は、Grade1が42例(22.3%)、同2が70例(37.2%)、同3が9例(4.8%)で、Grade4/5は認めなかった。19例(10.1%)が口内炎のため減量したが、投与中止例はなく、Grade3の9例はいずれも適切な介入と減量により診断から中央値で10日以内にGrade2以下に改善した。  著者は、「近年の治療の進歩は主に、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬、抗血管新生薬、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体、HER3を標的とする抗体薬物複合体を組み合わせた多剤併用療法が中心となっているが、主要な臨床試験ではOSの有益性に関して有意差は達成されていないことから、本試験においてsac-TMTが単剤でOSを有意に改善したことは注目に値する」「EGFR-TKI抵抗性のNSCLCでは、ペメトレキセド+白金製剤ベースの化学療法の前に、sac-TMTが考慮すべき好ましい治療選択肢となる可能性がある」としている。

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どんな量でも飲酒は血圧を高める可能性あり

 量に関係なく、飲酒は血圧を上昇させる可能性があるようだ。新たな研究で、たとえわずかであっても飲酒量の増加は血圧の上昇と関連していることが明らかになった。この研究結果を報告した聖路加国際病院の鈴木隆宏氏らは、「飲酒をやめる、または飲酒量を減らすことで血圧が下がり、脳卒中や心疾患のリスクが低下する可能性がある」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に10月22日掲載された。 これまで、少しの飲酒なら血圧に大きな影響はないと考えられていたが、この研究結果はそうした考えに疑問を投げかけるものだ。鈴木氏は、「血圧に関しては、飲酒量が少なければ少ないほど良好な状態になることが、われわれの研究で示された。そして、飲酒量が多いと血圧は高くなる」と指摘。「これまでは、少量のアルコールであれば問題はないだろうと考えられてきた。しかし、われわれの研究結果は、アルコールは全く摂取しないのがベストであることを示している。つまり、たとえ少量の飲酒であっても、禁酒することが男女を問わず心臓の健康に有益な可能性がある」と米国心臓病学会(ACC)のニュースリリースの中で述べている。 鈴木氏らは今回の研究で、2012年10月から2024年3月までの間に聖路加国際病院で実施された35万9,717件の定期健康診断(以下、健診)のデータを分析した。受診者は健診の中で自身の飲酒量について報告していた。鈴木氏らはその回答に基づき受診者を、初回の健診の時点で飲酒の習慣がある群とない群の2群に分け、飲酒者が禁酒した場合と非飲酒者が飲酒を始めた場合のそれぞれが血圧に与える影響を調べた。鈴木氏は、「われわれの研究は、飲酒習慣のある人が禁酒することは血圧の改善に関連するのか、また飲酒習慣のない人が飲酒を始めた場合に血圧に影響があるのかを明らかにすることを目的としていた」と説明している。 その結果、飲酒量を減らすと血圧が低下することが示された。1日1~2ドリンク(1ドリンク=純アルコール10g)の飲酒をやめた女性では、収縮期血圧が−0.78mmHg、拡張期血圧が−1.14mmHg低下することが示された。また、同量の飲酒をやめた男性では、収縮期血圧が−1.03mmHg、拡張期血圧が−1.62mmHg低下していた。一方、新たに1ドリンクの飲酒を始めた人では血圧の上昇が見られ(収縮期血圧は0.78mmHg増加、拡張期血圧は0.53mmHg増加)、こうした傾向は男女いずれにおいても確認された。飲酒に伴う血圧の上昇は、ビール、ワイン、蒸留酒などアルコール飲料の種類にかかわらず認められ、重要なのは摂取量であることも示された。 今回の研究には関与していない米イェール大学医学部教授のHarlan Krumholz氏は、「この結果は、少量であったとしても飲酒をやめることで高血圧の予防や治療につながる可能性があることを示している」とニュースリリースの中で述べている。同氏はさらに、「このことは血圧の治療目標値が以前よりも低く設定されている現在において特に重要である」と付け加えている。

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スタチンでケモブレインを防げる?

 最も一般的なコレステロール治療薬であるスタチン系薬剤(以下、スタチン)が、がん患者を「ケモブレイン」から守るのに役立つかもしれない。新たな研究で、スタチンは乳がんやリンパ腫の患者の認知機能を最大2年間保護する可能性のあることが示された。米バージニア・コモンウェルス大学パウリー心臓センターのPamela Jill Grizzard氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月21日掲載された。 Grizzard氏は、「がん治療は患者を衰弱させる可能性があり、化学療法による認知機能の低下は治療終了後も長期間続くことがある」と話す。その上で、「この研究結果は、スタチン投与群に割り付けられたがん患者において、治療開始から2年間にわたり認知機能に予想外の改善傾向が認められたことを示している。がん治療中に知性を守ることは、心臓を守るのと同じくらい重要だ」と述べている。 化学療法を受ける患者の多くは、記憶力、問題解決能力、自制心、計画力の低下など、頭がぼんやりするブレインフォグや思考力の低下を訴える。これらの副作用は一般に「ケモブレイン」と呼ばれている。研究グループによると、ケモブレインの原因は医師にもはっきりと分かっておらず、化学療法薬が脳細胞に直接作用している可能性や、化学療法の副作用として知られている疲労感や貧血が原因となっている可能性が示唆されているという。 今回、Grizzard氏らは、スタチンが化学療法による心毒性から心臓を保護できるのかどうかを調べた過去の臨床試験のデータの2次解析を行った。対象者である、ドキソルビシンによる治療中でステージI~IVのリンパ腫、またはステージI~IIIの乳がんの患者238人(平均年齢49歳、女性91.2%)は、ドキソルビシン治療開始前から最長で24カ月間にわたり、アトルバスタチン(40mg/日)を投与する群(118人)とプラセボを投与する群(120人)に割り付けられていた。今回の研究では、対象者の注意機能(Trail Making Test Part A〔TMT-A〕で評価)、実行機能(TMT-Bで評価)、言語流暢性(Controlled Oral Word Association Testで評価)が評価された。 その結果、治療前と比べて治療開始から24カ月時点の実行機能は、アトルバスタチン投与群では平均10.2秒有意に改善したのに対し、プラセボ群では平均0.2秒の改善にとどまり、統計学的に有意ではなかった。ただし、時間の経過による変化の仕方に両群間で有意な差はなかった。注意力と言語流暢性の改善度についても、両群で同程度であった。 研究グループは、「このような認知スキルは、治療の選択と日常生活のさまざまな課題を両立させようと努力しているがんサバイバーにとって不可欠である」と述べている。Grizzard氏は、「今後の研究で有益な効果が確認されれば、スタチンはがんサバイバーが治療中も認知機能と生活の質(QOL)を維持する上で貴重なツールとなる可能性がある」と結論付けている。

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妊娠に関連した心血管疾患が米国で増加

 米国では妊婦の心血管疾患(CVD)リスク因子およびCVDの有病率が上昇してきており、妊娠中や出産後にCVDの合併症を起こす女性も増加している実態が報告された。米マサチューセッツ総合病院のEmily Lau氏らの研究の結果であり、詳細は「Circulation」10月14日号に掲載された。 研究者らは背景説明の中で、妊産婦死亡の3分の1以上をCVDが占めており、CVDは妊娠を契機に発症する主要な疾患であるとしている。そしてLau氏は、「われわれの研究結果は、リアルワールドにおいて妊娠関連のCVDが増加しているという憂慮すべき傾向を示しており、妊娠前から産後にかけての期間が、妊婦に対してCVD一次予防を実施する重要な機会であることを強調している」と述べている。 この研究では、2001〜2019年にわたるプライマリケアの電子カルテデータを用いて、妊婦の妊娠時点でのCVDリスク因子とCVDの有病率、および産後1年目までの妊娠関連CVD合併症(妊娠高血圧症候群、主要心血管イベント、死亡の複合アウトカム)の発生率の推移を解析した。解析対象女性は3万8,996人(妊娠時の年齢32±5歳)で、5万6,833件の妊娠が記録されていた。 妊婦のCVDリスク因子のうち、肥満有病率は2001年の2%から2019年に16%へと増加し、高血圧は3%から12%、脂質異常症は3%から10%、糖尿病は1%から3%へと、全て有意に増加していた。また、CVDの有病率は前記期間全体では4%であり(年齢で調整すると8%)、やはり経年的に有意に増加していた。 同様に、妊娠関連CVD合併症の発生率も期間全体で8,290件(15%)であり(年齢調整後17%)、経年的に有意に増加していた。妊娠関連CVD合併症は産後よりも妊娠中に多く発生しており(8,290件中7,000件)、妊娠高血圧症候群が多数を占めていた(6,539件)。妊娠関連CVD合併症は、妊娠時点でCVDリスク因子やCVDを有している女性で多く発生していた。具体的に発生率を比較すると、高血圧の有無では23%対5%、脂質異常症の有無では13%対10%、糖尿病の有無では6%対3%、CVDの有無では10%対3%であった。 ボランティアとして米国心臓協会(AHA)会長を務めるStacey Rosen氏はこの研究報告に関連して、「CVD合併症のリスク因子の大半は、生活習慣の改善や薬の服用によって対処可能だ。しかし、多くの女性が、自分がそれらの疾患を抱えていることを知らずにいる」と指摘している。また、「妊娠前から出産後までは、心臓の健康に良い行動を起こす貴重な機会であり、その行動が将来にわたってCVDの予防と長期的な健康維持に役立つ」と付け加えている。なお、同氏は本研究に関与していない。

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術中血圧管理の個別化は可能か?―IMPROVE-multi試験と今後の展望(解説:三浦伸一郎氏)

 術中低血圧は、術後に急性腎障害や心筋傷害などの臓器不全発症のリスクを高める研究が多く報告されてきた1)。したがって、術中・周術期の血圧管理には、臓器保護の面から見るときわめて重要なテーマであり、各々の患者の術前血圧などから目標を定めるという個別化医療が検討されている。しかし、血圧の最適化によって低血圧は減少するが、術後合併症も減少したという報告は限られている2)。術中の血圧管理は可能であるが、どの程度、臨床的改善に直結するかは不明であった。 最近報告されたIMPROVE-multi試験では、高リスク腹部手術患者を対象に、術前夜間の平均動脈圧に基づいた個別目標と従来のMAP65mmHg以上管理を比較したが、主要複合アウトカムに有意差を認めなかった3)。この結果は、臨床的に、個別の術中目標血圧を設定することが必ずしも正しくはないことを示唆していた。一方、今後、術中低血圧リスクの高い患者を特定し、それらの患者に対してのみ選択的に血圧維持管理を導入する戦略は検討すべき事項である。また、今後の研究では血圧値のみでなく、低血圧の持続時間や血管反応性など複数パラメータを統合した指標を用いた臨床研究が必要となる。さらに、近年ではAIによる術中低血圧のリアルタイム予測モデルの活用も進んでおり、低血圧が発生する前に介入できる予測管理の実現が期待されている4)。 以上より、術中血圧管理は、依然として重要な課題である。エビデンスの構築には、どのような患者に対して、どの血圧目標を設定し、どのように介入すべきかという戦略を明確に設定する。したがって、個別の血圧管理には、その効果的なサブグループを明確にし、そのうえで実装できるプロトコルを構築することが臨床応用へ重要である。

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第269回 2026年度改定の主戦場は外来診療 かかりつけ医機能報告制度が“新たな物差し”に/財務省

<先週の動き> 1.2026年度改定の主戦場は外来診療 かかりつけ医機能報告制度が“新たな物差し”に/財務省 2.インフルエンザ12週連続増加 5県で警報レベル、過去2番目の早さで流行拡大/厚労省 3.医師少数区域を再定義、へき地尺度の導入で支援対象を拡大/厚労省 4.大学病院の医師処遇改善へ、給与体系見直しと研究時間確保に向け取りまとめ/政府 5.12月2日からマイナ保険証へ全面移行 期限切れ保険証は3月末まで有効に/厚労省 6.高齢者3割負担拡大も議論加速へ、金融所得の保険料反映が本格化/政府 1.2026年度改定の主戦場は外来診療 かかりつけ医機能報告制度が“新たな物差し”に/財務省2026年度の診療報酬改定に向け、財務省が「診療所・調剤薬局の適正化」を強く打ち出し、開業医を巡る環境が一段と厳しくなりつつある。焦点は、今年度スタートした「かかりつけ医機能報告制度」を土台に、機能を十分に果たしていない診療所の報酬を減算し、機能を発揮する診療所に評価を集中させる方向性だ。具体的には、報告制度上の「1号機能」を持たない医療機関の初診・再診料を減算し、【機能強化加算】【外来管理加算】は廃止、【地域包括診療料・加算】は認知症地域包括診療料などと統合し、発展的改組という案が財政制度等審議会で示されている。かかりつけ医機能報告制度では、研修修了や総合診療専門医の有無、17診療領域・40疾患の1次診療対応、患者からの相談対応などを「1号機能」として毎年報告し、時間外診療・在宅・介護連携などを「2号機能」として申告する。かかりつけ医機能報告制度は今年度始まったばかりで、初回報告が2026(令和8)年1月頃に予定されている。その結果が今後の加算要件・減算判定の「物差し」となる可能性が高い。これにより、機能強化加算と地域包括診療料などの加算要件が報告制度と整合的に整理される可能性がある。財務省は、診療所は過去に「高い利益率を維持してきた」とし、物価・賃上げ対応は病院に重点配分すべきと主張する一方、無床診療所などの経常利益率は中央値2.5%、最頻値0~1%と低水準であり、インフレ下で悪化しているとの日本医師会のデータも示されている。日本医師会の松本 吉郎会長は、開業医の高収入イメージを強調する財務省資料は「恣意的」と強く批判し、補助金終了後の厳しい経営実態を踏まえた「真水」の財源確保と十分な改定率を求めている。開業医にとって当面の実務ポイントは、「報告制度への対応」ならびに「収益構造の見直し」となる。まず、報告制度は、自院がどの診療領域・疾患まで1次診療を担うか、相談窓口としてどこまで責任を負うか、時間外・在宅・介護連携をどう位置付けるかを棚卸しするツールと捉えたい。1号機能の対応領域が限定的であれば、今後の診療報酬上の評価が縮小しかねない。研修修了者の配置や、地域包括診療料・生活習慣病管理料・在宅医療の組み合わせも含め、自院の「かかりつけ医像」を描き直す必要がある。同時に、機能強化加算・外来管理加算への依存度が高いクリニックは要注意となる。これらが縮小・廃止された場合に備え、地域包括診療料・加算への移行、逆紹介の受け皿としての役割強化、連携強化診療情報提供料や在宅関連の評価、オンライン診療(D to P with Nなど)の活用など、収益を強化する戦略が求められる。今年度始まったばかりの「かかりつけ医機能報告制度」、どのように対応するかが、次期改定以降の経営戦略の出発点になりそうだ。 参考 1) かかりつけ医機能報告制度にかかる研修(日本医師会) 2) かかりつけ医「未対応なら報酬減」 財務省、登録制にらみ改革提起(日経新聞) 3) 日医・松本会長 財政審を批判「医療界の分断を招く」開業医の高給与水準は「恣意的にイメージ先行」(ミクスオンライン) 4) 機能強化加算と地域包括診療料・加算を「かかりつけ医機能報告制度」と対応させ整理か(日経メディカル) 2.インフルエンザ12週連続増加 5県で警報レベル、過去2番目の早さで流行拡大/厚労省インフルエンザの感染拡大が全国で続いており、厚生労働省が発表した最新データでは、11月3~9日の1週間の患者数が1医療機関当たり21.82人と、前週の約1.5倍で12週連続の増加となった。注意報レベル(10人)を大きく上回り、宮城県(47.11人)、埼玉県(45.78人)など5県で警報レベル(30人)超。東京都も都独自基準で警報を発表した。全国で3,584校が休校・学級閉鎖となり、前週比1.5倍以上の増加と、教育現場での感染も拡大している。今年の流行は例年より1ヵ月以上早く、過去20年で2番目の早さ。近畿地方・徳島県でも注意報レベルに達する地域が急増し、地域差を超えて全国的に拡大している。クリニックでもワクチン接種希望者が急増しており、現場からは「1~2ヵ月早い流行」との声が上がる。流行の背景には、近年のインバウンドの増加に加え、各地で開催されるイベントや大阪万国博覧会など国際的な催事により、海外からのウイルス流入が増えた可能性が指摘されている。一方、新型コロナウイルスは全国で1医療機関当たり1.95人と前週比14%減で減少傾向にあるが、感染症専門家は「別系統のインフルエンザ流行やコロナ再増加もあり得る」とし、 来年2月までの警戒を継続すべきと警鐘を鳴らしている。厚労省でも引き続き、「手洗い・マスク・換気」など基本的感染対策の徹底を呼びかけている。 参考 1) 2025年 11月14日 インフルエンザの発生状況について(厚労省) 2) インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移(同) 3) インフルエンザ感染者が前週の1.46倍、感染拡大続く…新型コロナは減少(読売新聞) 4) インフルエンザ患者数は8.4万人に 万全な感染予防を(ウェザーニュース) 5) インフルエンザ流行警報、全国6自治体が発令…首都圏・東北で拡大(リセマム) 3.医師少数区域を再定義、へき地尺度の導入で支援対象を拡大/厚労省厚生労働省は、11月14日に開かれた「地域医療構想・医療計画等に関する検討会」で、次期医師確保計画(2025年度以降)で用いる医師偏在指標の見直し案を提示した。現行指標が抱える「地理的条件を十分に反映できない」という課題を踏まえ、人口密度、最寄り2次救急医療機関までの距離、離島・豪雪地帯といった条件を数値化し「へき地尺度(Rurality Index for Japan:RIJ)」を併用し、医師少数区域を再定義する方針。具体的には、現行の医師偏在指標で下位3分の1に該当する区域に加え、中位3分の1のうちへき地尺度が上位10%の区域を「医師少数区域」に追加する案が示された。RIJは(1)人口密度、(2)2次救急病院への距離、(3)離島、(4)特別豪雪地帯の4要素により構成され、へき地度の高い地域では、医師が対応すべき診療範囲が広がる傾向が明確になっている。構成員からは、地理的要素を反映できる点についておおむね評価が示され、一方で「算定式が複雑で現場への説明が難しい」との懸念も上がった。また、全国の医師数自体は増加しているため、偏在指標の下位3分の1基準を固定的に運用すると、多くの都道府県が基準外となる可能性も指摘された。厚労省は、次期計画では医師偏在指標とへき地尺度の双方を踏まえ、都道府県が「重点医師偏在対策支援区域」を設定し、医師確保に向けた重点支援を行う仕組みを強化する方針である。支援対象医療機関の選定においても、へき地医療・救急医療・在宅医療など地域の医療提供体制上の役割を考慮し、地域医療対策協議会および保険者協議会の合意を前提とする。医師偏在は、都市部と地方の医療格差を生み、地域住民のライフラインに影響するため政策課題である。今回の指標見直しは、「人数ベースの偏在」から「地理的ハンディキャップを加味した偏在」へと視点を転換する試みといえ、へき地を抱える地域にとっては実態に即した区域指定につながる可能性が高い。今後は、新指標の丁寧な説明と自治体の運用力が問われる局面となる。 参考 1) 医師確保計画の見直しについて(厚労省) 2) 医師偏在指標に「へき地尺度」併用へ 地域医療構想・医療計画検討会(CB news) 4.大学病院の医師処遇改善へ、給与体系見直しと研究時間確保に向け取りまとめ/政府高市 早苗総理大臣は11月10日の衆院予算委員会で、大学病院勤務医の給与水準や研究時間の不足が深刻な問題となっている現状を受け、「年度内に大学病院教員の処遇改善と適切な給与体系の方針をまとめる」と表明した。自民・維新の連立合意書に基づくもので、教育・研究・診療を担う大学病院の機能強化を社会保障改革の重要項目として位置付ける。質疑では、日本維新の会の梅村 聡議員が、53歳国立大学外科教授の手取りが33万円という給与明細を示し「収入確保のため土日や平日昼にアルバイトせざるを得ず、研究・教育に時間を割けない」と窮状を訴えた。医局員12人中常勤4人、非常勤8人で外来・手術を回す実態も示され、高市首相は「このままでは人材流出につながる」と強い危機感を示した。松本 洋平文部科学大臣は、国公私立81大学病院の2024年度の経常赤字が508億円に達し、診療偏重で教育・研究が圧迫されている現状を説明。大学病院の本来的な機能が損なわれているとの認識を共有した。大学の研究力低下も指摘され、自然科学系上位10%論文数が20年前の世界4位から13位へ後退したこと、医療関連貿易赤字が1990年の約2,800億円から2023年には4兆9,664億円に拡大したとのデータも示された。高市総理はこれらを受け、「大学に対する基盤的経費は必要な財源を確保する」とし、研究開発と人材育成は国の成長戦略そのものであると強調した。さらに、社会保障改革の議論の中で、高齢者層が多く負担する税(例:相続税)を含む財源の再設計についても「1つの提案として受け止める」と前向きな姿勢を見せた。今回の議論は、大学病院の経営改善だけでなく、診療・教育・研究の三位一体機能を再建し、医師の働き方・キャリア形成、ひいてはわが国の医学研究力の立て直しに直結する政策課題として位置付けられつつある。 参考 1) 高市首相、大学病院教員の処遇改善「年度内に方針」人材流出の懸念も表明(CB news) 2) 高市首相 「大学病院勤務医の適切な給与体系の構築含む機能強化」に意欲 経営状況厳しく(ミクスオンライン) 5.12月2日からマイナ保険証へ全面移行 期限切れ保険証は3月末まで有効に/厚労省12月2日から従来の健康保険証が廃止され「マイナ保険証」へ完全移行する中、厚生労働省は移行期の混乱回避を目的に、2026年3月末まで期限切れ保険証の使用を認める特例措置を全国の医療機関に通知した。昨年12月に保険証の新規発行が停止され、最長1年の経過措置が終了するため、12月1日をもって協会けんぽ・健保組合加入者約7,700万人の従来の保険証は形式上すべて期限切れとなるが、資格確認さえできれば10割負担を求めない。すでに7月に期限切れとなった後期高齢者医療制度・国保加入者に続き、今回の通知で全加入者が特例の対象となった。厚労省は医療機関に対し、期限切れ保険証を提示した患者がいた場合、保険資格の確認後、通常の負担割合でレセプト請求するよう要請。一方で、特例は公式な一般向け周知は行わず、原則は「マイナ保険証」または自動送付される「資格確認書」で受診する体制へ移行する方針は変わらない。資格確認書は保険証の代替として使用可能だが、「資格情報のお知らせ」とは異なり、後者では受診できない点を現場で説明する必要がある。背景には、周知不足による混乱リスクがある。国保で期限切れ直後の8月、18.5%の医療機関が「期限切れ保険証の持参が増えた」と回答しており、12月以降は同様の事例が増加することが確実視されている。さらに、マイナ保険証の利用率は10月時点で37.1%にとどまり、若年層や働き盛り世代では周知が届いていない。「期限を知らない」「カードを持ち歩かない」「登録方法を把握していない」といった声も多く、受診機会の確保には医療機関による実務的な対応が不可欠となる。マイナ保険証は、診療・薬剤情報の参照、限度額適用の自動反映、救急現場での活用など医療的メリットが期待される一方、制度への不信も根強く利用が伸びない。完全移行の初動は、現場負担の増加が避けられないが、厚労省は年度末までの特例運用を「移行期の安全策」と位置付けている。医療機関は、資格確認の確実な運用、窓口の説明強化、患者への資格確認書の案内など、年末から春にかけての実務準備が求められる。 参考 1) マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行について(厚労省) 2) 「マイナ保険証」完全移行へ、26年3月末までは従来保険証でも使える特例措置…厚労省が周知(読売新聞) 3) 従来の健康保険証、期限切れでも10割負担にならず 26年3月まで(毎日新聞) 4) 12月1日で使えなく…ならない「紙の保険証」 政府が「特例」認めて来年3月末まで使用OK 周知不足で混乱必至(東京新聞) 6.高齢者3割負担拡大も議論加速へ、金融所得の保険料反映が本格化/政府政府・与党内で社会保障制度改革の議論が一気に加速している。最大の論点は、医療・介護保険料の算定に「金融所得」を反映させる新たな仕組みの導入である。現行制度では、上場株式の配当や利子収入などの金融所得は、確定申告を行った場合のみ保険料に反映される。一方、申告を行わない場合は算定から完全に外れ、金額ベースで約9割が把握されない状況だ。厚生労働省や各自治体は確定申告されていない金融所得を把握する手段がなく、「同じ所得でも申告の有無で負担が変わるのは不公平」との指摘が続いていた。これを受け、厚労省は証券会社などが国税庁へ提出する税務調書を活用し、市町村が参照できる「法定調書データベース(仮称)」を創設する案を提示。自民党および日本維新の会も協議で導入の方向性に一致しており、年末までに一定の結論をまとめる見通しだ。上野 賢一郎厚生労働大臣も「前向きに取り組む」と明言しており、制度化に向けた動きが本格化している。同時に議論が進むのが高齢者の医療費自己負担(現役並み所得の3割負担)の拡大である。現行では、単身年収383万円以上などの比較的高所得層が対象だが、高齢者の所得増や受診日数減少を踏まえ、基準の見直しを求める意見が厚労省部会で相次いだ。一方で「高齢者への過度な負担増」への懸念も根強く、慎重な検討が必要との声も大きい。加えて、自民・維新協議では「OTC類似薬」の保険適用見直しも初期の重要論点となっている。湿布薬や風邪薬など市販薬と効果が重複する医薬品を保険給付外とする案だが、利用者負担の増加や日本医師会などの反対もあり調整は難航が予想される。超高齢社会において、医療・介護費の伸びを抑え現役世代の負担をどう軽減するかは避けて通れない課題である。金融所得の把握強化と高齢者負担の見直しという2つの柱は、今後の社会保障制度改革の中核テーマとなり、年末に向けて政策の具体像が示される見込みだ。 参考 1) 社会保障(2)(財務省) 2) 社会保障制度改革 “新たな仕組み導入へ検討進める” 厚労相(NHK) 3) 金融所得、保険料に反映 厚労省検討 税務調書を活用(日経新聞) 4) 社会保障改革めぐる自民・維新の協議 どのテーマでぶつかる? OTC類似薬、高齢者の負担増、保険料引き下げ(東京新聞)

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第91回 カイ2乗検定のイエーツの補正とは?【統計のそこが知りたい!】

第91回 カイ2乗検定のイエーツの補正とは?カイ2乗検定は、2つのカテゴリーデータ変数間の関連性を調べる際に頻繁に用いられます。観察されたデータと期待されるデータの差異を測定することにより、異なるグループ間での比率の差が偶然によるものかどうかを判断します。しかし、カイ2乗検定を行う際には、データの特性に応じて「イエーツの補正」と呼ばれる調整を加える必要があるケースもあります。そこで、今回はこのイエーツの補正について解説します。■イエーツの補正とは何か?「イエーツの補正(Yates' correction)」は、主に2×2の分割表(2行2列の表)において使用される補正方法です。この補正は、フランク・イエーツによって提案され、小さなサンプルサイズでのカイ2乗検定の結果が過剰に有意になる(Type I errorを起こしやすい)問題を軽減するために使用されます。■どのような場合に必要か?具体的には、各セルの期待値が5未満の場合、カイ2乗検定の結果が不正確になる可能性があります。とくに、総サンプル数が小さいと、この問題は顕著になります。イエーツの補正を施すことで、この問題を避けることができます。補正後の統計値は、実際の統計値に比べて少し保守的な結果となりますが、より信頼性の高い解釈が可能になります。■補正の方法具体的には、カイ2乗検定の計算において、観察値と期待値の差から0.5を引いた値の2乗を期待値で割ることにより補正されます。この補正により、小さいサンプルサイズでの統計的な偶然の影響を緩和し、より正確な判断を下すことが可能になります。たとえば、ある薬が副作用を引き起こすかどうかを調べる研究で、副作用があったと報告されたのは10人中2人、副作用がなかったと報告されたのは90人中5人だったとします。この場合、カイ2乗検定を直接適用すると、副作用の有無に差があるようにみえるかもしれませんが、イエーツの補正を適用すると、その差は統計的に有意ではないと結論付けることができるかもしれません。■具体例抗がん剤Yを投与したとき、効果がある患者と効果がない患者がいることがわかりました。さらに、それには遺伝子のある部分が特殊な型であるかどうかが疑われています。そこで、抗がん剤Yの効果あり・なしとその患者の遺伝子が特殊型であるかどうかを調べました。抗がん剤Yの効果あり・なしに遺伝子特殊型が影響しているかを有意水準5%で確かめました。表1は表側項目に遺伝子のある部分が特殊型か普通型を配置し、表頭項目に効果ありなしを配置した2×2の分割表(2行2列の表)の実測度数と期待度数です。表1 事例の実測度数と期待度数イエーツの補正を施さずにカイ2乗検定(独立性の検定)を適用した場合、p値<0.05より、抗がん剤Yの効果あり・なしに遺伝子特殊型が影響しているという結果になります。しかしながら、期待度数に5以下があるので、イエーツの補正を適用します(表2)。表2 事例の独立性検定とイエーツの補正イエーツの補正を適用した結果、「p値>0.05より、抗がん剤Yの効果あり・なしに遺伝子特殊型が影響しているとはいえない」という結果になりました。カイ2乗検定はよく用いられる統計的検定手法ですが、サンプルサイズが小さい場合はイエーツの補正を適切に行うことで、その精度を向上させることが可能です。臨床試験の結果を解釈する際には、このような統計的考慮が必要であるという理解が大切です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第21回 カイ2乗検定とは? その1第22回 カイ2乗検定とは? その2第70回 カイ二乗分布とは「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決!一問一答 質問24 カイ2乗検定とは?

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英語で「足の指」を数えるには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第39回

医学用語紹介:足の指 digits過去に「手の指」の英語について解説しました。今回は「足の指」です。「足の指」は、正式には手の指と同じdigitという用語で表現します。親指から順に1st digit(第1趾)~5th digit(第5趾)と数えるところも同様です。しかし、この呼び方は患者さんにとってはなじみがありません。では、どう言い換えればよいでしょうか?講師紹介

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大規模災害時の心理的支援、非精神科医ができること【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第10回

大規模災害時の心理的支援、非精神科医ができること地震の後の津波で自宅が流され、ご家族を亡くされた避難者が、食事も取らず憔悴しきっています。「私も一緒に死にたかった。誰とも話したくない」と訴えている時、避難所を管理する医師として、何ができるでしょうか?大規模災害時の医療支援では、身体的な疾患への治療が優先されがちですが、被災者が抱える精神的な苦痛も決して見過ごすことはできません。避難所には「死」の情報があふれ、家族や住居を失った人々は、急性ストレス反応、不眠、抑うつなど多彩な心理的症状を呈します。精神科専門医が診察できれば理想的ですが、急性期には非精神科医が心理的ケアを担わざるを得ない場面が少なくありません。本稿では岡山大学病院精神科神経科の協力を得て、「専門家でなくともできるアプローチ」を概説します。特殊な技法より「寄り添う姿勢」災害直後の被災者は強い不安と混乱の中にあり、見知らぬ医療者に心を開くことは容易ではありません。落ち着いた声掛け、丁寧な自己紹介、プライバシーの尊重といった基本的な配慮は大前提です。そのうえで、医師としては「診断」よりも「寄り添い」を重視します。すぐに励ましたり「頑張って」と声を掛けるのではなく、まずは話を聴く姿勢が重要です。「大切な方を亡くされて本当につらいですね」「そのお気持ちは自然なことです」と、感情を否定せず受け止める言葉を心掛けましょう。災害後の心理的反応は時間とともに変化し、約75%は自然回復が期待できます1)。傾聴と共感は非精神科医でも実践可能であり、感情を言語化して受け止めるだけでも、被災者の気持ちは整理されやすいとされています。安全の確保「死にたい」という発言は軽視せず、真剣に受け止める必要があります。一人で抱え込まず、看護師・ボランティア・行政職員などチームで対応し、記録を残して支援を引き継ぎましょう。まず優先すべきは、ご本人の安全と安心の確保です。被災者を一人にせず、落ち着くまで信頼できる人が付き添い、孤立を防ぎます。また、刃物や紐など危険物が周囲にないか確認することも忘れないようにしましょう。身体と精神の休息環境の整備生活リズムの安定は、心理的な安定に直結します。食事・睡眠・休息の確保は心身の回復に不可欠です2)。とくに睡眠障害への対応は重要であり、静かな環境、カフェイン制限、朝の光を浴びることなどの生活指導が有効です。さらに、社会的つながりを整えることも大切です。避難所での役割を持つことや住民同士の交流は、自己肯定感を回復させます。これらは集団精神療法的な効果を持ち、PFA(Psychological First Aid)の「見る」「聞く」「つなぐ」の考え方にも通じます3)。限界を意識し、医療従事者のメンタルヘルスも確保非精神科医の役割は「初期対応」と「つなぎ」です。専門的介入が必要と判断した場合は、速やかに地域の精神保健福祉センターや保健所に連絡しましょう。災害派遣精神医療チーム(DPAT)が活動していれば、専門的な支援や処置を行ってくれます。支援に当たる医療従事者自身も、同僚の喪失や過重労働、燃え尽き、自責感といった心理的問題を抱えることがあります。「自分は大丈夫」と考える人は多いですが、セルフケアには限界があるため、チームでのケアが不可欠です4)。業務ローテーションの導入、役割分担の明確化、ストレスチェックや相談体制の整備、被災現場でのシミュレーション、業務の意義付けなど、組織として体制を整えることが重要です。避難所では、突然の喪失や過酷な環境により、強い悲嘆や自殺念慮を訴える人が現れることがあります。非精神科医による対応には限界がありますが、専門医がすぐに介入できない状況でも、避難所を管理する医師にできることは多くあります。基本的な心理的ケアを理解し、寄り添い、安全を確保し、生活リズムを整えること。それだけでも被災者の重症化を防ぎ、自然回復を促進する大きな支えとなります。被災者に対して意識すべきポイント安全確保・安心感の提供声掛け、自己紹介、プライバシーの確保など傾聴と共感感情の言語化、共感の声掛けなど社会的つながりの整備他者との交流、役割の付与などその他食事、睡眠、休息の確保、リラクゼーションの紹介など 1) Norris FH, et al. Looking for resilience: understanding the longitudinal trajectories of responses to stress. Soc Sci Med. 2009;68:2190- 2198. 2) Liang L, et al. Everyday life experiences for evaluating post-traumatic stress disorder symptoms. Eur J Psychotraumatol. 2023;14:2238584. 3) 世界保健機関、戦争トラウマ財団、ワールド・ビジョン・インターナショナル. 心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)フィールド・ガイド. (2011)世界保健機関:ジュネーブ. (訳:国立精神・神経医療研究センター、ケア・宮城、公益財団法人プラン・ジャパン, 2012). 4) Brooks SK, et al. Social and occupational factors associated with psychological distress and disorder among disaster responders: a systematic review. BMC Psychol. 2016;4:18.

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症候からわかる irAE逆引きマニュアル

症状(+検査)→診断(病名)→治療でirAEを適切に処置!本書は、近年注目を集めている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に伴って起こる副作用「免疫関連有害事象(irAE)」への実践的な対応法をまとめた医療従事者向けの実用書です。ICIの登場によってがん治療は大きく進歩しましたが、その一方で、副作用であるirAEへの理解と適切な対応が求められるようになっています。本書で取り上げている「irAE逆引きマニュアル」は、著者が独自に作成したものです。前半では、症状からirAEの可能性を推定できる構成後半では、主なirAEごとに症状・検査・重症度別の治療や経過観察のポイントを原則1ページに整理しています。症状から疑われる疾患をすぐに確認でき、診断から検査・治療までの流れをひと目で把握できる実用的なツールです。現場での判断力と対応力を支える1冊として、幅広い医療職の方におすすめしたい書籍です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する症候からわかる irAE逆引きマニュアル定価4,950円(税込)判型A5判頁数183頁発行2025年11月著者野口 哲男(市立長浜病院呼吸器内科/呼吸器ドクターN)ご購入はこちらご購入はこちら

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高市早苗内閣が発足、社会保障政策の行方は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第160回

自民党の高市 早苗氏が10月の臨時国会で第104代首相に指名されました。女性初の総理大臣誕生ということで、物価高やら円安やらの暗い日常に少し新しい時代の光が差し込んだかなという気がします。普段あまり政治に興味がなくても、決選投票や所信表明演説などを見た人は多いのではないでしょうか。自民党が与党であることに変わりはありませんが、公明党が連立から離脱し、自民党と日本維新の会による新しい連立政権が誕生し、その合意文書が発表されました。その中に、社会保障に関連するワードがいくつかあったりするなど、じわじわと医療にも変化の足音が聞こえています。合意文書の中の、社会保障政策の項に記載されたのは以下の文書です。「OTC類似薬」を含む薬剤自己負担の見直し、金融所得の反映などの応能負担の徹底など、25年通常国会で締結したいわゆる「医療法に関する3党合意書」および「骨太方針に関する3党合意書」に記載されている医療制度改革の具体的な制度設計を25年度中に実現しつつ、社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す。社会保障関係費の急激な増加に対する危機感と、現役世代を中心とした過度な負担上昇に対する問題意識を共有し、この現状を打破するための抜本的な改革を目指して、25年通常国会より実施されている社会保障改革に関する合意を引き継ぎ、社会保障改革に関する両党の協議体を定期開催するものとする。OTC類似薬の保険給付見直しについては、維新との合意も踏まえ、「骨太方針2025」で年末の予算編成に向けた議論を行うことが確定済みと言われています。自民・維新の連立協議の中でも、2025年度中に「骨太方針2025」を軸にした「具体的な制度設計」を実現するように動いていきそうです。維新が「現役世代の負担軽減を目的とした社会保障改革」を連立交渉で強く主張したと報じられており、OTC類似薬の保険給付見直しはその柱と言われています。維新は、市販薬とほぼ同様の効果の湿布薬や花粉症薬などの処方薬を保険給付から外すことで、医療費を年間数千億~1兆円規模で削減できるとしています。確かに、非常にわかりやすいですよね。OTC類似薬見直しは確実に進んでいくと思われます。また、「赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなし」として、報酬改定の時期とは関係なく、これらの施設に補助金を支給する方針を示しました。しかしながら、一般的な話として、医療費増額につながる施策(医療機関や介護施設への補助など)と削減する施策(OTC類似薬の保険給付見直しなど)をどう両立させるのでしょうか。また、OTC類似薬の保険給付見直しの反対勢力である日本医師会は選挙で自民党を長年支えてきた組織です。この相反する事象をどうさばいていくのか、今後の政権運営に目が離せません。

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がん患者のメンタル問題、うつ病と不安障害で発症期に差

 がん患者におけるうつ病と不安障害の発症率と時間的傾向を明らかにした研究結果が、International Journal of Cancer誌オンライン版2025年8月29日号に発表された。九州大学の川口 健悟氏らは日本の14の自治体から収集された診療報酬請求データを用いて、がん診断後、最大24ヵ月間の追跡期間中にうつ病と不安障害を発症した例について調査した。 2018年4月~2021年3月に新たにがんと診断された2万2,863例を対象とした。粗発症率を算出し、ポアソン回帰分析を用いて月別発症率と時間的傾向を可視化した。全患者を対象とした分析と、性別、年齢、治療法、がんの種類別の分析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病の全体的な粗発症率は1,000人月当たり3.36、不安障害は同3.11であることが明らかになった。・うつ病と不安障害ではピークを迎える時期が異なっていた。うつ病の発症はがん診断後2ヵ月頃にピークを迎え、不安障害は診断された月にピークを迎えた。・女性や化学療法を受けている患者では、うつ病と不安障害の両方で発症率が高いことが示された。がんの種類別では、膵臓がん患者が両疾患において最も高い発症率を示した。 研究者らは「うつ病と不安障害はがん治療への遵守率、生活の質、生存率などに悪影響を及ぼすことが知られているが、これらの発症時期を特定することで、より効果的な介入時期を計画できる可能性がある。とくに、不安障害は診断直後に、うつ病は診断から2ヵ月後頃に注意が必要であることが示された。また、女性患者、化学療法を受ける患者、膵臓がん患者などのハイリスク群に対しては、より積極的なメンタルヘルスのスクリーニングとサポートが必要かもしれない。今後は、これらの知見に基づいたハイリスク期間における的を絞った介入プログラムの開発と評価が期待される」とした。

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週末まとめて歩くvs.日々歩く、メタボ予防効果が高いのは?

 わが国では健康増進のために1日8,000歩以上歩くことが推奨されているが、1日平均歩数が同じ場合、週末にまとめて歩く人と日々歩く人で効果は同等なのだろうか。今回、愛媛大学の山本 直史氏らは、中高年の日本人において連続した7日間の歩数を調査し、メタボリックシンドロームとの関連を検討した結果、8,000歩以上の日数の割合より、7日間の総歩数がメタボリックシンドロームとの関連が強い一方、1日平均歩数が8,000~10,000歩の人では、8,000歩以上達成した日数の割合が高いほどメタボリックシンドロームのリスクが低いことが示唆された。Obesity Research & Clinical Practice誌オンライン版2025年11月2日号に掲載。 本研究は、愛媛県東温市で進行中の前向きコホート研究である東温スタディの一環として実施された横断的解析(1,723例)と5年間の前向き解析(977例)である。まず、ベースライン時に連続7日間の歩数を歩数計で測定し、1日平均歩数について6,000歩未満、6,000~7,999歩、8,000~10,000歩、10,000歩超に分類した。さらに各カテゴリーを8,000歩/日以上だった日数の割合によって高頻度群と低頻度群に分けた。潜在的交絡因子を調整したロジスティック回帰分析により、メタボリックシンドロームの有病率および5年発症率との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・横断的および5年間の縦断的解析のいずれも、1日平均歩数が多い(すなわち7日間の総歩数が多い)カテゴリーほどメタボリックシンドローム発症のオッズが低いという一貫した関連が認められた(傾向のp<0.05)。・8,000歩以上の日の頻度が高いこともメタボリックシンドロームリスクが低いことと関連していたが、1日平均歩数で調整後に減弱した。・横断的・縦断的解析のいずれも、8,000~10,000歩/日のカテゴリーにおいて、高頻度群は低頻度群より一貫してメタボリックシンドローム発症のオッズが低かった。 著者らは「これらの結果は、総歩数の重要性を示すとともに、8,000~10,000歩/日という特定の範囲において活動頻度がさらなる役割を果たす可能性を示唆する」と考察している。

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日本人EGFR陽性NSCLC、アファチニブvs.オシメルチニブ(Heat on Beat)/日本肺学会

 オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の標準治療として用いられている。ただし日本人では、オシメルチニブの有用性をゲフィチニブまたはエルロチニブと比較検証した「FLAURA試験」1,2)において、有効性が対照群と拮抗していたことも報告されている。そこで、1次治療にアファチニブを用いた際のシークエンス治療の有用性について、1次治療でオシメルチニブを用いる治療法と比較する国内第II相試験「Heat on Beat試験」が実施された。第66回日本肺学会学術集会において、本試験の結果を森川 慶氏(聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科)が報告した。なお、本試験の結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)でも報告されている(PI:帝京大学腫瘍内科 関 順彦氏)。・試験デザイン:国内第II相無作為化比較試験・対象:未治療のStageIIIB/IIIC/IVのEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者100例・試験群(アファチニブ群):アファチニブ→病勢進行時の再生検でEGFR T790M変異が認められた場合にオシメルチニブ 50例(解析対象:47例)・対照群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ 50例(解析対象:48例)・評価項目:[共主要評価項目]3年全生存(OS)率、免疫学的バイオマーカー探索[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、OSなど 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者の年齢中央値は、アファチニブ群70歳(範囲:43~87)、オシメルチニブ群72歳(48~88)、非喫煙者の割合はそれぞれ46.8%、45.8%であった。EGFR exon21 L858R変異がそれぞれ48.9%、47.9%であった。・ORRはアファチニブ群63.8%(CR:1例)、オシメルチニブ群62.5%(CR:3例)であった。・3年OS率はアファチニブ群54.7%、オシメルチニブ群57.5%であり、主要評価項目は達成されなかった(p=0.64)。・OS中央値はアファチニブ群38.8ヵ月、オシメルチニブ群未到達であった(ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:0.64~2.05)。・PFS中央値はアファチニブ群16.7ヵ月、オシメルチニブ群14.5ヵ月であった(HR:1.17、95%CI:0.72~1.90)。・EGFR遺伝子変異の種類別にみたPFS中央値、OS中央値は以下のとおりであった(アファチニブ群vs.オシメルチニブ群[HR、95%CI]を示す)。【exon19欠失変異】 PFS中央値:18.3ヵ月vs.33.6ヵ月(HR:1.62、95%CI:0.75~3.48) OS中央値:未到達vs.未到達(HR:1.16、95%CI:0.42~3.20)【exon21 L858R変異】 PFS中央値:13.9ヵ月vs.10.6ヵ月(HR:0.88、95%CI:0.43~1.79) OS中央値:35.9ヵ月vs.未到達(HR:1.21、95%CI:0.54~2.70)・有害事象は、アファチニブ群では下痢、ざ瘡様皮膚が多かった。下痢の発現割合(全Grade/Grade3以上)はアファチニブ群91.5%/29.8%、オシメルチニブ群31.3%/6.3%であり、ざ瘡様皮膚はそれぞれ68.1%/10.6%、43.8%/2.1%であった。一方、オシメルチニブ群では肺臓炎が多く、発現割合はそれぞれ10.6%/2.1%、20.8%/6.3%(オシメルチニブ群のGrade3以上はいずれもGrade5)であった。・有害事象で1次治療が治療中止に至った患者のうち、2次治療に移行した患者の割合はアファチニブ群70.0%(7/10例)、オシメルチニブ群35.7%(5/14例)であった。・2次治療を受けた患者の割合は、アファチニブ群74.5%、オシメルチニブ群54.2%であった。2次治療の内訳は以下のとおりであった。【アファチニブ群】 化学療法20.0% 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)±化学療法42.9% オシメルチニブ±化学療法31.4% オシメルチニブ以外のEGFR-TKI±化学療法5.7%【オシメルチニブ群】 化学療法23.1% ICI±化学療法53.8% オシメルチニブ±化学療法3.8% オシメルチニブ以外のEGFR-TKI±化学療法19.3%・アファチニブ群の病勢進行時の再生検検体でEGFR T790M変異が認められた割合は、組織検体19.2%(5/26件)、リキッドバイオプシー検体20%(4/20件)であった。・末梢血中の種々の免疫細胞を評価し、Th7RおよびTh2フラクションのみがPFSおよびOSとの相関を認めた。オシメルチニブ群では、Th7R高値、Th2低値で予後が良好な傾向にあったが、この傾向はアファチニブ群では認められなかった。バイオマーカー別のオシメルチニブ群のPFS中央値、OS中央値は以下のとおり。【免疫バイオマーカー:Th7R高値vs.低値】 PFS中央値:33.1ヵ月vs.6.7ヵ月(p<0.01) OS中央値:未到達vs.40.5ヵ月(p=0.29)【免疫バイオマーカー:Th2高値vs.低値】 PFS中央値:6.0ヵ月vs.30.6ヵ月(p=0.02) OS中央値:30.2ヵ月vs.未到達(p<0.01) 本結果について、森川氏は「主要評価項目の3年OS率は達成されなかった。その要因の1つとして、EGFR T790M変異の検出が低く、かつT790M変異陽性症例でのオシメルチニブ投与期間も想定より短かったため、シークエンス治療(アファチニブ→オシメルチニブ)が有効であった症例が少なかったことが考えられる」と考察した。また「オシメルチニブはホストの免疫状態によって治療効果が大きく影響を受ける可能性があり、Th7Rなどの免疫バイオマーカーがオシメルチニブの治療効果予測に関与する可能性がある」と述べた。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションを軽減する修正可能な要因は

 アルツハイマー病患者の興奮症状に影響を与える介護者、環境、個々の因子を包括的に評価し、修正可能な因子を特定するため、中国・上海交通大学のXinyi Qian氏らは、本研究を実施した。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2025年9月22日号の報告。 対象は、2022年10月〜2023年6月に上海精神衛生センターより募集した、参加者220例(アルツハイマー病患者110例とその介護者)。対象患者から、人口統計学的情報、生活習慣、病歴、ミニメンタルステート検査(MMSE)や老年期うつ病評価尺度(GDS)などの神経心理学的検査のデータを収集した。介護者から、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)、環境要因に関する質問票、ハミルトンうつ病評価尺度およびハミルトン不安評価尺度などの感情状態の評価に関するデータを収集した。アジテーション症状の重症度評価には、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)を用いた。グループ間の差および潜在的な要因と興奮症状との関連性についても分析した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者110例のうち、アジテーション症状を示した患者は56.36%であった。・アジテーション症状を有する患者は、男性患者が多い(p=0.012)、女性介護者が多い(p=0.003)、中庭や庭園が見える部屋へのアクセスが少ない(p=0.007)、MMSEスコアが低い(p=0.005)、GDSスコアが低い(p=0.012)といった特徴が認められた。・変数調整後、アジテーション症状に対する保護因子として、中庭や庭園が見える部屋へのアクセス(オッズ比[OR]=0.256、p=0.042)、男性介護者(OR=0.246、p=0.005)、MMSEスコアが高い(OR=0.194、p=0.007)であることが示唆された。・男性介護者の存在は、アジテーション症状の発生率の低下との関連が認められた。 著者らは「生活環境の改善、男性介護者の増加、介護者支援の強化、早期認知機能介入は、アルツハイマー病に伴うアジテーションを軽減する可能性がある」と結論付けている。

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1型糖尿病妊婦、クローズドループ療法は有効/JAMA

 1型糖尿病の妊婦において、クローズドループ型インスリン注入システムの利用(クローズドループ療法)は標準治療と比較して、妊娠中の目標血糖値(63~140mg/dL)達成時間の割合(TIR)を有意に改善させたことが、カナダ・カルガリー大学のLois E. Donovan氏らCIRCUIT Collaborative Groupが行った非盲検無作為化試験「CIRCUIT試験」の結果で示された。高血糖に関連した妊娠合併症は、1型糖尿病妊婦では発生が半数に上る。クローズドループ療法による血糖コントロールの改善は妊娠中以外では確認されているが、妊娠中の試験は限られていた。著者は、「今回の結果は、1型糖尿病妊婦へのクローズドループ療法の実施を支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年10月24日号掲載の報告。妊娠16~34週における妊娠特異的TIRを評価 CIRCUIT試験は、妊娠中のクローズドループ療法の有効性の評価を目的とし、2021年6月~2024年7月に、カナダとオーストラリアにある妊娠糖尿病専門クリニック14施設で1型糖尿病妊婦を登録して行われた(追跡調査は2025年3月に完了)。 被験者は、クローズドループ療法群または標準治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 クローズドループ療法群には、Control-IQインスリンポンプ(Tandem製)が提供され、妊娠中の使用の推奨事項(1日24時間の最低目標血糖値[112.5~120mg/dL:睡眠時]の使用、運動時のより高値のオプション値の使用など)が提示された。妊娠20週後は、それより1~2週間前の平均的な自動基礎インスリン投与量よりも約20%高い基礎インスリン投与量をプログラムすることが推奨された。 標準治療群には、持続血糖モニタリングに関する教育と機器が提供され、無作為化前のインスリン投与法(従来インスリンポンプ[Medtronic製MiniMed、Tandem製Basal-IQ]やインスリン頻回注射療法)が継続された。 両群の被験者は全員、妊娠糖尿病ケアチームからインスリン投与量に関するサポートを、試験地の標準治療に従って受けた。 主要アウトカムは、妊娠16~34週に持続血糖モニタリングで計測された妊娠特異的TIR(目標血糖値は63~140mg/dL)とした。クローズドループ療法群65.4%、標準治療群50.3%で有意差 94例が登録され、無作為化前に妊娠喪失を経験した3例を除く91例が無作為化された。主要解析には、クローズドループ療法に割り付けられた2例(妊娠20週未満で流産)と標準治療群に割り付けられた1例(無作為化後に試験離脱・データ提出拒否)を除く88例(平均年齢31.7[SD 5.2]歳、妊娠初期のHbA1c値7.4%[SD 1.0])が包含された。 妊娠16~34週における妊娠特異的TIR(平均値)は、クローズドループ療法群65.4%、標準治療群50.3%であった(補正後平均群間差:12.5%ポイント、95%信頼区間:9.5~15.6、p<0.001)。 妊娠中の重症低血糖エピソードはクローズドループ療法群1例で報告された。糖尿病性ケトアシドーシスはクローズドループ療法群で2例、標準治療群で1例が報告された。

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開発中の経口パラチフスA菌ワクチン、有効性・安全性を確認/NEJM

 パラチフスA菌(Salmonella enterica serovar Paratyphi A[S. Paratyphi A])は年間200万例を超える腸チフスの原因となっている。現在承認されたワクチンはなく、いくつかのワクチンが開発中である。その1つ、経口投与型の弱毒生パラチフスA菌ワクチン(CVD 1902)について、英国・オックスフォードワクチングループのNaina McCann氏らVASP Study Teamは、同国の健康ボランティア成人を集めて、制御されたヒト感染モデル(controlled human infection model)を用いた第II相の二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行い、CVD 1902の2回投与により、安全性への懸念を伴うことなくパラチフスA菌に対する防御能獲得に結び付いたことを報告した。NEJM誌2025年10月29日号掲載の報告。CVD 1902を14日間隔で2回投与、チャレンジ試験で有効性、安全性などを評価 試験は英国内6ヵ所(オックスフォード、バーミンガム、サウサンプトン、ブリストル、シェフィールド、リバプール)の研究センターで、腸チフスの既往がない18~55歳の健康ボランティアを集めて行われた。ボランティアにはオンライン質問票への回答が求められ、電話インタビューで受診歴が確認された後、対面調査で詳細な参加資格の評価が行われた。参加者の募集と追跡調査は各センターで行われ、パラチフスA菌の経口チャレンジ試験はオックスフォードで行われた。 被験者は、CVD 1902を14日間隔で2回投与を受ける群またはプラセボの投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。2回目の投与から28日後に、パラチフスA菌の経口チャレンジ試験が行われた。 主要エンドポイントは、チャレンジ試験後14日以内のパラチフスA菌感染症の診断とされた。副次エンドポイントは、安全性および免疫原性などであった。O抗原に対する血清IgG、IgA反応を誘導、ワクチンの有効率は69% 2022年4月~2023年11月に健康ボランティア1,589例が適格性について評価された。うち171例が対面調査でスクリーニングを受け、72例が無作為化された(CVD 1902群35例、プラセボ群37例)。被験者の年齢中央値は32歳(範囲:20~54)、46%が女性であった。チャレンジ試験は、CVD 1902群34例、プラセボ群36例が受けた(各群1例が初回投与後に試験を離脱)。 有害事象の発現数は両群で類似しており、ワクチン関連の重篤な有害事象は確認されなかった。 CVD 1902は、パラチフスA菌のO抗原に対する血清IgG反応および血清IgA反応を誘導したことが認められた。プラセボ群では、血清IgGおよびIgAの力価上昇は認められなかった。 ITT集団(70例)において、チャレンジ試験後14日以内のパラチフスA菌感染症の診断率は、CVD 1902群21%、プラセボ群75%であり(p<0.001)、ワクチンの有効率は73%(95%信頼区間[CI]:46~86)であった。per-protocol解析(プラセボ群に割り付けられたがワクチン2回投与を受けた1例をCVD 1902群に組み込み解析)では、ワクチンの有効率は69%(95%CI:42~84)であった。

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筋力が強ければ肥満による健康への悪影響を抑制できる可能性

 肥満による健康への悪影響を、筋力を鍛えることで抑制できる可能性を示唆するデータが報告された。米ペニントン・バイオメディカル研究センターのYun Shen氏らの研究の結果であり、詳細は「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月15日掲載された。 この研究からは、肥満関連の健康障害の発生リスクだけでなく早期死亡リスクも、握力が高いほど低いことが示された。Shen氏は、「握力は測定が容易であり、リスクのある介入すべき対象者を早期に低コストで見いだすことができる。そしてわれわれの研究の結果は、握力に基づき評価した筋力の低下が、肥満関連健康障害の鋭敏な指標であることを示している」と語っている。 Shen氏らの研究は、英国の一般住民対象大規模疫学研究であるUKバイオバンクのデータを用いて行われた。UKバイオバンク参加者のうち、BMI30以上(アジア人は28以上)であり、かつウエスト周囲長や体脂肪率などのBMI以外の肥満関連指標に異常がありながら、肥満関連健康障害は生じていない人を「前臨床的肥満」と定義。これに該当する9万3,275人を握力の三分位数に基づき3群に分類したうえで、平均13.4年間追跡して、肥満関連健康障害の発症や死亡のリスクを比較した。解析に際しては、交絡因子(年齢、性別、人種、血清脂質、血圧、HbA1c、eGFR、CRP、喫煙・飲酒・食事・運動・睡眠習慣、教育歴、雇用状況、高血圧・高血糖・脂質異常症治療薬、糖尿病家族歴など)の影響を統計学的に調整した。 握力の最も弱い第1三分位群を基準とする解析の結果、握力が高い群は肥満関連健康障害や死亡リスクが有意に低いことが示された。例えば、追跡期間中の最初の肥満関連健康障害の発症リスクは、握力の最も高い第3三分位群は調整ハザード比(aHR)0.80(95%信頼区間0.79~0.82)、握力が中程度の第2三分位群もaHR0.88(同0.87~0.90)であり、それぞれ20%、12%のリスク低下が認められた。また、追跡期間中に二つ目の肥満関連健康障害が発症するリスク、その後に死亡するリスクなどについても、握力が高いほど有意に低かった。 さらに、握力の1標準偏差(SD)の差とそれらのリスクとの関連を検討した結果、やはり握力が高いことによるリスク低下が認められた。例えば、肥満関連健康障害の発症を経ずに死亡するリスクは、1SD高いごとに9%有意に低下していた(aHR0.91〔0.85~0.97〕)。 これらを性別や喫煙状況、人種で層別化した解析の結果、握力が高いことによるリスク低下は、女性、非喫煙者、黒人でより顕著に認められた。 研究者らは、「過剰な脂肪蓄積に伴う慢性炎症の影響が、筋肉量が多いことによって抑制される可能性がある。われわれの研究結果は、前臨床的肥満において筋肉量と筋力を向上することの重要性を強調するものと言える」と述べている。ただし本研究は関連性のみを示すものであり、因果関係の存在を示すものでないことから、「この知見の検証のため、さらなる研究が必要」と付け加えている。

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