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乳腺密度とサブタイプ、予後の関連~日本人女性患者の検討から

 高濃度乳房は乳がんリスクが高いというコンセンサスは得られている一方で、乳腺密度と乳がんサブタイプの関連については相反する報告がある。聖路加国際病院の山田 大輔氏らは、日本人女性の乳腺密度ごとの乳がんサブタイプの傾向を調査し、生存率を解析。Clinical breast cancer誌2022年8月号に報告した。 2007~08年にかけて,聖路加国際病院でマンモグラフィ検査を受け,病理診断を受けた浸潤性乳がんの日本人患者1,258例が対象。乳腺密度(高濃度乳房、非高濃度乳房)を初回のマンモグラフィー所見に基づいて分類し、がんのサブタイプと比較した。高濃度乳房と非高濃度乳房の患者について、それぞれ5年および10年生存率に関する情報をカルテレビューにより収集した。統計解析は、乳腺密度とがんのサブタイプについてピアソンのカイ二乗検定を用いて行った。死亡に対する乳腺密度の影響については、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて検討され、調整ハザード比が算出された。 主な結果は以下のとおり。・乳がんのサブタイプと乳腺密度の間に有意差は認められなかった(p=0.08)。・5年生存率(log-rank検定のp=0.09)および10年生存率(log-rank検定のp=0.31)は、乳腺密度によって有意差はなかった。

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4つのステップで糖尿病治療薬を判断/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、9月5日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を発表した。 このアルゴリズムは2型糖尿病治療の適正化を目的に、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して作成されている。 具体的には、「Step 1」として病態に応じた薬剤選択、「Step 2」として安全性への配慮、「Step 3」としてAdditional benefitsを考慮するべき併存疾患をあげ、「Step 4」では考慮すべき患者背景をあげ、薬剤を選択するアルゴリズムになっている。 同アルゴリズムを作成した日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会では序文で「わが国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに、新しいエビデンスを加えながら、より良いものに進化し続けていくことを願っている」と今後の活用に期待をにじませている。体形、安全性、併存疾患、そして患者背景で判断 わが国の2型糖尿病の初回処方の実態は欧米とは大きく異なっている。高齢者へのビグアナイド薬(メトホルミン)やSGLT2阻害薬投与に関する注意喚起が広く浸透していること、それに伴い高齢者にはDPP4阻害薬が選択される傾向が認められている。 その一方で、初回処方にビグアナイド薬が一切使われない日本糖尿病学会非認定教育施設が38.2%も存在していたことも明らかになり、2型糖尿病治療の適正化の一助となる薬物療法のアルゴリズムが必要とされた。 そこで、作成のコンセプトとして、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して制作された。 最初にインスリンの適応(絶対的/相対的)を判断したうえで、目標HbA1cを決定(目標値は熊本宣言2013などを参照)し、下記のステップへ進むことになる。【Step 1 病態に応じた薬剤選択】・非肥満(インスリン分泌不全を想定)DPP-4阻害薬、ビグアナイト薬、α-グルコシダーゼ阻害薬など・肥満(インスリン抵抗性を想定)ビグアナイト薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など【Step 2 安全性への配慮】別表*に考慮すべき項目で赤に該当するものは避ける(例:低血糖リスクの高い高齢者にはSU薬、グリニド薬を避ける)【Step 3 Additional benefitsを考慮するべき併存疾患】・慢性腎臓病:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬・腎不全:SGLT2阻害薬・心血管疾患:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬【Step 4 考慮すべき患者背景】別表*の服薬継続率およびコストを参照に薬剤を選択(フォロー)・薬物療法開始後、およそ3ヵ月ごとに治療法の再評価と修正を検討する。・目標HbA1cを達成できなかった場合は、病態や合併症に沿った食事療法、運動療法、生活習慣改善を促すと同時に、Step1に立ち返り、薬剤の追加などを検討する。*別表 安全な血糖管理達成のための糖尿病治療薬の血糖降下作用・低血糖リスク・禁忌・服薬継続率・コストのまとめ―本邦における初回処方の頻度順の並びで比較―(本稿では省略)

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SGLT-2阻害薬、全心不全患者の心血管死・入院を抑制/Lancet

 心不全患者に対するSGLT-2阻害薬は、駆出率や治療施設の違いにかかわらず、心血管死または心不全による入院リスクを有意に低減することが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのMuthiah Vaduganathan氏らが、駆出率が軽度低下または駆出率が保持された心不全をそれぞれ対象にした大規模試験「DELIVER試験」「EMPEROR-Preserved試験」を含む計5試験、被験者総数2万1,947例を対象にメタ解析を行い明らかにした。SGLT-2阻害薬は、駆出率が低下した心不全患者の治療についてはガイドラインで強く推奨されている。しかし、駆出率が高い場合の臨床ベネフィットは確認されていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「SGLT-2阻害薬は、駆出率や治療施設の違いにかかわらず、すべて心不全患者の基礎的治療とみなすべきである」と述べている。Lancet誌2022年9月3日号掲載の報告。幅広い心不全患者を対象に調査 研究グループは、駆出率が低下または保持されている心不全患者を対象とした2つの大規模試験「DELIVER試験」「EMPEROR-Preserved試験」と、駆出率が低下した心不全患者を対象とした「DAPA-HF試験」「EMPEROR-Reduced試験」、駆出率を問わず心不全の悪化で入院した患者を対象とした「SOLOIST-WHF試験」について、事前規定のメタ解析を行い、心血管死および患者サブグループにおけるSGLT-2阻害薬の治療効果を調べた。 各試験データと共通エンドポイントを用い、固定効果メタ解析を行い、心不全の種々のエンドポイントに対するSGLT-2阻害薬の有効性を検証した。 今回のメタ解析の主要エンドポイントは、無作為化から心血管死または心不全による入院までの時間だった。また、注目されるサブグループで、主要エンドポイントの治療効果の不均一性を評価した。心血管死/心不全入院を20%低減 「DELIVER試験」と「EMPEROR-Preserved試験」の被験者総数1万2,251例において、SGLT-2阻害薬は心血管死または心不全による入院を低減し(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.73~0.87)、各イベントについても一貫して低減が認められた(心血管死のHR:0.88、95%CI:0.77~1.00、心不全による初回入院のHR:0.74、95%CI:0.67~0.83)。 より幅広い被験者を対象とした全5試験の被験者総数2万1,947例における解析でも、SGLT-2阻害薬は心血管死または心不全による入院リスクを低減し(HR:0.77、95%CI:0.72~0.82)、心血管死(0.87、0.79~0.95)、心不全による初回入院(0.72、0.67~0.78)、全死因死亡(0.92、0.86~0.99)のリスクも低減することが認められた。 これらの治療効果は、駆出率が軽度低下した心不全または保持された心不全を対象とした2試験において、また5試験すべてにおいても一貫して観察された。さらに、主要エンドポイントに関するSGLT-2阻害薬の治療効果は、評価した14のサブグループ(駆出率の違いなどを含む)でも概して一貫していた。

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リウマチ性心疾患AF、ビタミンK拮抗薬がリバーロキサバンより有効/NEJM

 リウマチ性心疾患のAF(心房細動)患者において、ビタミンK拮抗薬治療はリバーロキサバン治療よりも、心血管イベントまたは死亡の複合発生率が低く、出血の発生率は両群で有意差はないことが、カナダ・マックマスター大学のStuart J. Connolly氏らによる4,565例を対象とした非盲検無作為化試験の結果、示された。リウマチ性心疾患の心房細動患者における心血管イベントの予防について、第Xa因子阻害薬の試験は限られていた。NEJM誌オンライン版2022年8月28日号掲載の報告。リバーロキサバンのビタミンK拮抗薬に対する非劣性を検証 研究グループは、心エコーでリウマチ性心疾患が確認された心房細動で、CHA2DS2VAScスコアが2以上(スコア範囲0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高い)、僧帽弁口面積2cm2以下、左心房もやもやエコー、左房血栓のいずれかが認められた患者を登録し試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはリバーロキサバン標準量を、もう一方には用量調節にてビタミンK拮抗薬を投与した。 有効性に関する主要アウトカムは、脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血管疾患(心臓性、非心臓性)または原因不明による死亡の複合だった。安全性に関する主要アウトカムは、国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血。 研究グループは、リバーロキサバンがビタミンK拮抗薬に対し、非劣性であると仮説を立て検証した。死亡率もリバーロキサバン群がビタミンK拮抗薬群より高率 被験者は4,565例で、うち4,531例(リバーロキサバン群2,275例、ビタミンK拮抗薬群2,256例)を対象に最終解析を行った。被験者の平均年齢は50.5歳、72.3%が女性だった。 試験薬を完全に中止した割合は、すべての評価時点でリバーロキサバン群がビタミンK拮抗薬群より高率だった。 ITT解析では、主要複合アウトカムの発生は、リバーロキサバン群2,275例中560例、ビタミンK拮抗薬群2,256例中446例で認められた(比例ハザード比:1.25、95%信頼区間[CI]:1.10~1.41)。生存曲線は非比例であったため、境界内平均生存期間(RMST)分析を行った。主要複合アウトカムのRMSTは、ビタミンK拮抗薬群が1,675日に対し、リバーロキサバン群は1,599日で有意差が認められた(群間差:-76日、95%CI:-121~-31、p<0.001)。 死亡率は、リバーロキサバン群がビタミンK拮抗薬群より高かった(RMST:リバーロキサバン群1,608日vs.ビタミンK拮抗薬群1,680日、群間差:-72日、95%CI:-117~-28)。 大出血発生率は、両群で有意差は認められなかった。リバーロキサバン群40例、ビタミンK拮抗薬群56例で発生が認められ(比例ハザード比:0.76、95%CI:0.51~1.15)、RMSTはそれぞれ1,965日、1,954日だった(群間差:11、95%CI:-5~28、p=0.18)。

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無症状、小さな腎結石でも砕石する意義はある(解説:宮嶋哲氏)

 小さな腎結石の治療方針は、自然排石を期待して経過観察が推奨されている。しかしながら、これまでの報告からすると、大きな結石が除去された時点で残存する小腎結石の約半数が、術後5年以内に他の症候性イベントを引き起こしたと報告されている。 尿管または対側腎の結石を内視鏡的に砕石中に無症状の小腎結石を、38例で砕石施行し(治療群、平均結石長3mm)、35例では砕石施行しなかった(対照群、平均結石長4mm)。主要評価項目は、救急外来の受診、手術、2次結石の増大のいずれかにより評価しうる再発の有無とした。なお本研究は多施設共同無作為化比較試験である。 平均観察期間は4.2年で、再発までの期間は治療群の方が対照群より有意に長かった(P<0.001)。さらに制限付き平均再発期間は治療群の方が対照群よりも75%と有意に長かった(治療群:1,631.6±72.8日vs.対照群:934.2±121.8日)。統計学的な再発リスクは、対照群63%に対し、治療群16%でハザード比(HR)は0.18であった。無症状の小腎結石に治療を加えることで本来の治療に中央値で25.6分と手術時間が延長していた。手術後2週間以内に救急外来の受診頻度は治療群5例、対照群4例で有意差を認めなかった。また治療群では8例、対照群では10例が自然排石していた。 無症状の小さな腎結石に治療を施行した場合、治療を施行しなかった場合に比べて、その後の再発率は有意に低いものであった。ただし、手術に関連した救急受診数は同等であった。 3~4mmの無症候性腎結石に対して治療を行うべきか、については議論の余地がある。泌尿器科医としては教科書的には小結石であれば、自然排石が期待できるので、症候性の比較的大きな結石に注目しがちである。大変興味深い研究ではあるものの、実臨床においては、患側と対側の無症候性小結石に追加治療を行うことに伴う医療経済的な問題、合併症の問題なども検討すべきかもしれない。

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第125回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?

“新改良ワクチン”FDA承認、日本も早晩申請、承認か?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、「第122回 米国では使わない2価の“旧改良ワクチン”を日本は無理やり買わされる?国のコロナワクチン対策への素朴な疑問」で書いた“新改良ワクチン”に関して新しい動きがありました。米国食品医薬品局(FDA)は8月31日、米・モデルナ、米・ファイザーと独・ビオンテックがそれぞれ開発したオミクロン株のBA.4とBA.5に対応するワクチン、いわゆる“新改良ワクチン”ついて、追加接種に対する緊急使用の許可を出しました。モデルナのワクチンは18歳以上、ファイザー・ビオンテックのワクチンは12歳以上の、それぞれ追加接種に対する緊急使用の許可です。なお、初回接種としては使えず、追加接種に限定されるとのことです。また、今回の承認によって、従来型ワクチンは追加接種に利用できなくなるそうです。“新改良ワクチン”はいずれも、オミクロン株のBA.4とBA.5に対応する成分と、従来の新型コロナウイルスに対応する成分の2種類を含む2価ワクチンです。翌9月1日には、米疾病対策センター(CDC)がこの“新改良ワクチン”の接種を推奨すると発表しています。ちなみに日本において両社が申請中の2価ワクチンは、BA.1に対応する成分と、従来の新型コロナウイルスに対応する成分の2種類を含む“旧改良ワクチン”です。ただし、ファイザーは9月1日、日本国内でも “新改良ワクチン”の製造販売の承認を厚生労働省に近く申請すると発表しています。“旧改良ワクチン”は今月中旬に予定されている専門部会を経て承認されれば、当初予定の10月中旬からの接種開始を前倒しし、9月中にも始まる見通しです。しかし、もっと効くと予想される“新改良ワクチン”がその後すぐに投入されるとなると、現場の混乱も予想されます。そもそも、“新改良ワクチン”がもうすぐ出るのに、“旧改良ワクチン”を積極的に打とうという人が現れるでしょうか。また、“新改良ワクチン”を承認したら、国が契約して買ってしまった(と思われる)“旧改良ワクチン”は廃棄処分となるのでしょうか。今後の新型コロナワクチンの動きがとても気になります。マイナンバーと保険証情報の紐付けはすでに終了済みさて今回は、前回に続いてマイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」について書いてみたいと思います。せっかくなので、私も先週、スマホを使ってマイナポータルというアプリからマイナ保険証の申請をやってみました。マイナンバーカードはすでに持っており、マイナポータルも利用したことがあるので、申請手続きは躓くこともなくスムーズに行きました。実際に申請を行って驚いたことが一つあります。「申請」を行うと、特に保険者や保険証番号等の情報を入力しなくても瞬時にマイナンバーカードがマイナ保険証になったのです。どうやら、保険者(健保組合や国保を運営する市町村など)においては既に、マイナンバーと保険証情報の紐付けは終わっており、我々国民の「申請」とはその紐付けを「了承」するということのようなのです。皆さん、知っていましたか?インフラはすでに相当程度出来上がっているものの、「国民に納得してもらう」作業が莫大に残っているというのが、マイナンバーカードと言えそうです。カード自体の発行も含めて……。ただ、つくづく思うのはこうした各種申請作業は70代以降の高齢者にはかなりハードルが高いだろうということです。個人的には、スマホも持たずキャッシュレスサービスの利用もしない90代の父親に、どうやったらマイナポイントを取得させ、使わせるかに頭を悩ませています。医療関係団体のこぞって協力する姿勢がとても不思議前回は、厚生労働省と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)が合同で開催した「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明会」の内容を紹介し、マイナ保険証のシステムは将来的に、レセプト・特定健診等情報の共有に加えて、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテ等の医療情報についても共有・交換できるようになり、「全国医療情報プラットフォーム」の構築につながると書きました。このプラットフォームができれば、患者の受療行動や、医療機関で提供された治療や投薬の情報が丸裸になります。そうなると、当然それらのデータを基に、究極的に効率化された(ムダを省いた)医療提供の仕組みが国によってデザインされ、医療機関にも求められるようになるでしょう。さらには、重複受診、重複投与、ムダな薬剤投与、的外れの治療などが他医にもバレてしまいます。そう考えると、日本医師会をはじめ、医療関係団体がこぞって協力する姿勢を示していることがとても不思議です。日本医師会はこれまで、かかりつけ医制度やリフィル処方など、効率的な医療提供体制に資するような政策には頑なに反対してきました。一体、どうしたのでしょうか?ポイントは3度目となる厚生労働大臣に就いた加藤勝信氏考えられる一つのポイントは、8月に発足した新内閣において、3度目となる厚生労働大臣に就いた加藤 勝信氏ではないかと推察されます。今年6月、中川 俊男前会長から松本 吉郎新会長に替わった日本医師会は、悪化していたと言われる政権との関係の再構築を目指しています。そこに過去に厚労相を経験し、日医とも良好な関係にあった加藤氏の厚労相就任は、まさに朗報、渡りに船であったに違いありません。一方、とにかくDXを推進したい岸田 文雄首相は、特に何の実績も残せなかった牧島 かれん氏に替えて河野 太郎氏をデジタル大臣に据え、さらにDXを目に見える形で推進しやすい医療分野の牽引役として、加藤氏を厚労相に据えました。加藤氏なら日医をうまく説得しつつ、マイナ保険証、ひいては医療DXをうまく進めてくれると期待したのではないでしょうか。加藤厚労相が作った自民党「医療DX令和ビジョン2030」日本医師会は、「加藤氏なら日医にそんなにアコギなことはしないだろう。目一杯協力しよう」と考えたのかもしれません。ただ、ちょっとその見立ては甘いかもしれません。6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針2022)でオンライン資格確認(いわゆるマイナンバーカードの保険証利用)の2023年4月からの原則義務化と、現行の保険証の原則廃止の方向性が示されました。その3週間前の5月17日、自由民主党政務調査会の社会保障制度調査会・デジタル社会推進本部、健康・医療情報システム推進合同PTは「医療DX令和ビジョン2030」の提言を発表しました1)。骨太方針への記載を意識しての提言と思われますが、このビジョン取りまとめの中心人物の一人が加藤氏です。同ビジョンは、日本の医療分野の情報のあり方を根本から解決するため、1)「全国医療情報プラットフォーム」の創設、2)電子カルテ情報の標準化、3)「診療報酬改定DX」の取り組み、を並行して進めるよう提言。これにより、患者・国民には診療の質の向上、重複検査・投薬の回避、医療保険の制度運営にかかる国民負担の軽減などのメリットが、医療関係者には医療サービスの向上や電子カルテにかかる費用の低減などのメリットが、システムベンダには医療サービスの高度化に向けて競争するという構造改革の実現などのメリットが生じるとしています。「全国医療情報プラットフォーム」で全ての診療行為をガラス張りにそう考えると、加藤厚労相は、親日医の姿勢を見せつつ、マイナ保険証を突破口として医療DXを強力に推進するために岸田首相から医療界に送り込まれた“刺客”という見方もできるかもしれません。加藤厚労相も、今よりももっと“上”を目指すには、日医との関係構築よりも社会保障費や医療費の削減に注力することの方が重要だということはわかっているはずです。松本新会長になってから、かかりつけ医の議論も低調気味の印象です。ひょっとしたら、マイナ保険証に協力するからそこにはもうあまり触れないで欲しい、といった手打ちがあったのかもしれません。そもそも、医療費抑制のためには、かかりつけ医制度を面倒な議論をしてつくるより、「全国医療情報プラットフォーム」をつくってすべての診療行為をガラス張りにして、理詰めで制限をかけていくほうが、効率が良いに違いありません。かかりつけ医制度の議論などを目くらましにして、医療DXの推進を一気に進めようとしているとしたら、岸田首相や財務省もなかなかの策士と言えるでしょう。DX推進で『首相≒財務省≒厚労省』vs.『日本医師会』に変質か?デジタル庁では、財務省主計官、内閣官房内閣審議官などを歴任し、医療・社会保障に詳しい向井 治紀氏が参与として働いています。その向井氏は7月12日に開かれた日本医業経営コンサルタント協会主催のセミナーで講演し、「骨太方針2022」に盛り込まれた「診療報酬改定DX」などについて言及しました。ミクスOnlineなどの報道によれば、向井氏は「診療報酬改定DX」について、「医療保険業務全体のコストを削減し、将来的には保険料も公費も含めて全体のコスト削減になることを念頭に置いている」と述べ、保険証の原則廃止が骨太方針に盛り込まれたことについては、「今回の閣議決定は、政府として大胆な決定をしたとご理解いただきたい」と強調したとのことです。さらに医療DXの推進について、「デジタル庁も厚労省としっかりタッグを組まないといけない。重要なのは、どういう政府の推進体制であるか(中略)。縦割りでうまくいかなかった例が医療の世界でも社会保障の世界でも多数ある。そういうことがないような体制を作れるように大島厚生労働事務次官と話をしていきたい」と語ったそうです。マイナ保険証と医療DXが政策の前面に出てきたことで、「第80回 『首相≒財務省』vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」などで度々書いてきたこの対立構造は今後、「首相≒財務省≒厚労省」vs.「日本医師会」に徐々に変質していくのかもしれません。参考1)「医療DX令和ビジョン2030」の提言/自由民主党政務調査会 社会保障制度調査会・デジタル社会推進本部 健康・医療情報システム推進合同PT

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不安症やうつ病の心理的再発予防介入~メタ解析

 不安症またはうつ病から寛解した患者に対する介入として、抗うつ薬の継続または中止と組み合わせた、心理的再発予防介入の有効性を評価するため、オランダ・アムステルダム自由大学のEsther Krijnen-de Bruin氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、寛解期うつ病患者では、心理的再発予防介入により、再発/再燃リスクの有意な減少が確認された。PLOS ONE誌2022年8月12日号の報告。 心理的再発予防介入と通常ケアを比較したランダム化比較試験(RCT)において再発/再燃の割合や期間を臨床アウトカムとして評価した研究を、PubMed、PsycINFO、Embaseより検索した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、36件のRCTを含めた。・寛解期うつ病患者に対する心理的再発予防介入により、24ヵ月の再発/再燃リスクの有意な減少が認められた(RR:0.76、95%CI:0.68~0.86、p<0.001)。・この効果はフォローアップ期間が延長しても持続していたが、これらの結果はそれほど強くはなかった。・抗うつ薬の継続治療に心理的再発予防介入を併用することにより、24ヵ月間の再発リスクの有意な減少が認められたが(RR:0.76、95%CI:0.62~0.94、p=0.010)、フォローアップ期間が長くなると有意な差は消失した。・不安症の再発予防に焦点を当てた研究は2件のみであったため、メタ解析は実施できなかった。

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前十字靱帯損傷、リハビリより外科的再建術が有効/Lancet

 膝関節の不安定性による症状が持続している非急性期の前十字靱帯(ACL)損傷患者の管理法として、外科的再建術はリハビリテーションと比較して、臨床効果(KOOS4)が優れ費用対効果も良好であることが、英国・オックスフォード大学のDavid J. Beard氏らが実施した「ACL SNNAP試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月20日号で報告された。英国の実践的無作為化対照比較試験 ACL SNNAP試験は、膝関節の不安定性の症状が持続する非急性期のACL損傷患者において、再建手術と非外科的治療のどちらが最適な管理法であるかの検証を目的とする実践的な無作為化対照比較試験であり、2017年2月~2020年4月の期間に、英国の29ヵ所の国民保健サービス(NHS)セカンダリケア病院の整形外科で参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価計画の助成を受けた)。 対象は、ACL損傷による持続性の症状を伴う膝の問題(不安定性)を有する患者であった。緊急手術を示唆する特徴を持つ半月板の病変や、重度の変形性関節症(Kellgren-Lawrence分類のGrade3または4)を有する患者は除外された。 被験者は、手術(再建術)またはリハビリテーション(理学療法:治療後に不安定性が持続する場合は、再建術が可能とされた)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、無作為化の時点から18ヵ月後の膝関節損傷・変形性関節症アウトカムスコア-4領域版(KOOS4)(0~100点、点数が高いほど健康状態が良好)とされた。KOOS下位尺度もすべて良好 316例が登録され、外科的再建術群に156例、リハビリテーション群に160例(1例でデータを確認できなかった)が割り付けられた。全体の平均年齢は32.9(SD 9.8)歳で、外科的再建術群で男性の割合が高かった(71% vs.62%)。34%はACL損傷から4ヵ月以内、66%は4ヵ月以上であり、22%は1年以上が経過していた。ベースラインの平均KOOS4は、外科的再建術群が45.7(SD 19.6)点、リハビリテーション群は43.3(18.1)点だった。 また、外科的再建術群では、実際に手術を受けたのは72%(113/156例)で、28%(43例)はこれを受けなかった(26%[11例]は手術待機、40%[17例]はリハビリテーションを選択)。リハビリテーション群の41%(65/160例)は、症状が持続したため再建術を受けた。手術までの期間中央値は、外科的再建術群が113日、リハビリテーション群で再建術を受けた患者は237日であった。 主要アウトカム評価のintention to treat集団は248例で、外科的再建術群が128例、リハビリテーション群は120例であった。18ヵ月時の平均KOOS4は、外科的再建術群が73.0 (SD 18.3)点、リハビリテーション群は64.6(SD 21.6)点で、補正後平均群間差は7.9点(95%信頼区間[CI]:2.5~13.2)であり、外科的再建術群で有意に良好だった(p=0.0053)。 また、18ヵ月時のKOOSの下位尺度は、いずれも外科的再建術群で優れた(疼痛[p=0.020]、症状[p=0.0020]、日常生活動作[p=0.0022]、スポーツ/余暇活動[p=0.043]、膝関連の生活の質[p=0.0065])。 一方、外科的再建術がリハビリテーションよりも費用対効果が優れる確率について解析したところ、外科的再建術は1質調整生存年(QALY)を得るのに要する費用が3万ポンド(72%の確率)の場合に最も費用対効果が優れる選択肢であった。これは、1例当たりの医療費は外科的再建術のほうが高額(3,186 vs.2,169ポンド、群間差:1,017ポンド、95%CI:557~1,476、p<0.001)であるにもかかわらず、アウトカムが優れていたこと(1例当たり1.03 vs.0.98 QALY、p=0.17)の結果であった。 介入に関連する合併症は、外科的再建術群で1件、リハビリテーション群で2件認められ、臨床イベントはそれぞれ10例で11件および11例で12件発現し、両群間に差はなかった。 著者は、「より長期のACL損傷(もはや急性期ではない)の患者との共有意思決定では、ACLの外科的再建術は非手術的な方法よりも良好な結果をもたらす可能性があることを提示し、理由を問わず患者が手術を望まない場合は、非手術的な治療でも損傷は改善され、後日、外科的再建術を行う選択肢も残されていることを、再確認する必要がある」と指摘している。

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乳幼児の新型コロナ感染、約4割が無症状

 学校や保育所において小児の新型コロナの集団感染が多発しているが、小児は感染しても無症状であることが多く、感染防止には症状のスクリーニングでは不十分であることがわかったという。ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のRuth A Karron氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2022年8月31日号に掲載された。 この前向きコホート研究では、2020年11月24日~2021年10月15日に、0~4歳の子供が1人以上いるメリーランド州の175世帯の690人に対して調査を実施した。登録から8ヵ月間、参加者は毎週症状に関するアンケートに回答し、PCR検査によってSARS-CoV-2感染の有無を確認した。登録時および登録後約4ヵ月と8ヵ月後に採取した血清について、SARS-CoV-2スパイク抗体およびヌクレオカプシドタンパク質抗体を測定した。 登録時、0~4歳の125/256例(48.8%)が家庭外保育に、5~17歳の23/100例(23.0%)が学校に通っていた。成人の139/334例(41.6%)が家庭外で働いており、うち113例(81.3%)が職場で密接な他人との接触(約2m以内)を有していた。試験終了までに成人307/335例人(91.6%)、12~17歳の小児15/18例(83.3%)がCOVID-19ワクチンの完全接種を終えた。 主要評価項目は年齢層別のSARS-CoV-2感染の発生率、臨床的・ウイルス学的特徴、症状、および検出された最高ウイルス量と症状頻度で、検出された最大のウイルス量とSARS-CoV-2系統の相関関係を見た。 主な結果は以下のとおり。・登録された690例(女性355例[51.4%])のうち、0~4歳が256例(37.1%)、5~17歳が100例(14.5%)、18~74歳の成人が334例(48.4%)であった。・追跡期間中にSARS-CoV-2に感染したのは54例(7.8%)で、0~4歳児22/256例(8.6%)、5~17歳児11/100例(11.0%)、成人21/334人例(6.3%)であった。1000人週当たりの発生率は、0〜4歳児2.25(95%CI:1.28〜3.65)、5〜17歳児3.48(1.59〜6.61)、成人1.08(0.52〜1.98)であった。・0~17歳児は無症状感染者が成人よりも多く(11/30例[36.7%]vs.3/21[14.3%])、0~4歳児が無症状である率が最も高かった(7/19例[36.8%])。・検出されたウイルス量の最大値は、無症状者と有症状者、年齢群間で差がなかった。・症状の数は、成人ではウイルス量と有意な相関があったが(r=0.69、p<0.001)、小児では認められなかった(0~4歳:r=0.02、p=0.91、5~17歳:r=0.18、p=0.58)。 著者らは本研究の限界として、オミクロン株感染者が含まれていない点を挙げたうえで、「SARS-CoV-2感染は0~4歳児では無症状であることが多く、症状の有無や数はウイルス量と相関がなかった。これらの知見は、幼児を含む集団発生を予防するには、症状スクリーニングでは不十分である可能性を示唆している」としている。

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国内での3回接種によるBA.5への有効性など追加、コロナワクチンに関する提言(第5版)修正版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、8月30日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第5版を一部変更・加筆した第5版修正版を公開した。 今回の修正版では、わが国におけるBA.5に対する3回目接種の有効性や5~11歳へのワクチンの有効性の情報を追加したほか、現時点の知見を追加している。修正版の主な改訂点【1. わが国で承認されているCOVID-19ワクチン】・5~11歳への接種にも努力義務を課すことが決定され、臨時接種対象者すべてに努力義務が課されることになった。・COVID-19ワクチンは他のワクチンと13日以上の間隔をあけて接種することとされていたが、インフルエンザワクチンに関しては接種間隔に関する制約がなくなり、同時接種も可能となった。【2. mRNAワクチンの有効性】(d. 3回目接種の有効性) 実社会でのBA.5に対するワクチン効果は、国内の16歳以上1,547人を対象としてBA.5流行中の7月に行われた症例対照研究の暫定結果が国立感染症研究所から発表された。これによると、mRNAワクチンを主体とするCOVID-19ワクチンの発症を指標とした有効率は、未接種者と比べて3回接種14日~3ヵ月で65%、3回接種後3ヵ月以降で54%で、2回接種と比較した3回接種の相対的な有効率も、3回接種14日~3ヵ月で46%、3回接種後3ヵ月以降で30%と、BA.5に対しても3回接種による有意な発症予防効果がみられている。(e. 4回目接種の有効性) 2022年7月22日に4回目接種の対象が18~59歳の医療従事者と高齢者施設などの従事者にも拡大。イスラエルの3万人弱の医療従事者を対象としたコホート研究では一定の発症予防効果があることが報告されている。これによると、オミクロン株流行下のブレークスルー感染率が、3回接種群では20%だったが、4回接種群では7%に減少していた。調整後のハザード比(HR)は0.56(95%CI:0.50~0.63)となり、4回目接種で発症リスクが約半分になることから、院内感染防止のためにも医療従事者などへの4回目接種が勧められる。(f. 5~11歳への接種の有効性) 小児の年代でファイザーのワクチン2回接種の有効性が報告され、シンガポールからはPCRで確認した感染予防効果が65.3%、入院予防効果が82.7%、イスラエルからは2回接種7~21日後の発症予防効果が48%とある。また、イタリアにおける後方視的研究では、感染予防効果が29.4%、重症化予防効果が41.1%、感染予防効果は2回接種後0~14日後の38.7%から43~84日後には21.2%に低下することが報告されている。これらの報告、とくに小児のCOVID-19の重症化予防効果が示されたことを踏まえて、日本小児科学会は「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」で、健康な小児へのワクチン接種は「意義がある」から「推奨します」という表現に変更した。【4. 組換えタンパク質ワクチン ノババックスのヌバキソビッド(商品名)筋注】(b. 安全性) 心筋炎・心膜炎の有害事象は2022年7月10日時点で国内での報告はなし。一方、海外ではきわめてまれながら報告されているため、7月に添付文書の「重要な基本的注意」に心筋炎・心膜炎の報告があることが追加された。【6. COVID-19ワクチンの開発状況と今後の展望】・22年7月にファイザーから6ヵ月から5歳未満へのmRNAワクチンの承認申請が行われた。・武漢株とオミクロン株をもとにしたファイザーとモデルナの2価mRNAワクチンの臨床試験も開始され、2022年秋には実用化を目指して国内外で開発が進んでいる。わが国でも8月にファイザーが12歳以上、モデルナが18歳以上を対象とした2価ワクチン(武漢株とオミクロン株BA.1)の承認申請を行った。 

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フォシーガ、2022年欧州心臓病学会総会にて心不全に関する新たなエビデンスを発表/AZ

 アストラゼネカは2022年9月5日のプレスリリースで、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の第III相DAPA-HF試験および第III相DELIVER試験の事前に規定された併合解析で得られた結果と、第III相DELIVER試験の結果について発表した。共に2022年欧州心臓病学会総会で発表されたものである。 第III相DAPA-HF試験および第III相DELIVER試験の事前に規定された併合解析で、フォシーガは、心不全患者において左室駆出率にかかわらず、中央値22ヵ月のフォローアップ期間で心血管死リスクを14%(p=0.01、絶対リスク減少率[ARR]:1.5%)、原因を問わない死亡リスクを10%(p=0.03、ARR:1.5%)、心不全による(初回および再)入院のリスクを29%(p<0.001、ARR:6%)、心血管死、心筋梗塞、または脳卒中の複合リスクを10%(p=0.045、ARR:1.3%)低下させることが示された。結果に関しては、Nature Medicine誌にも掲載されている。 一方、第III相DELIVER試験では、フォシーガは、心血管死または心不全悪化の複合アウトカムを18%(中央値2.3年のフォローアップ期間においてダパグリフロジン群で16.4%、プラセボ群で19.5%)低下させ(p<0.001)、心血管死、心不全悪化それぞれが主要評価項目の優越性に寄与していることが分かった。この所見は、検討した主なサブグループで一貫しており、左室駆出率の状態にかかわらず幅広い心不全患者に対するフォシーガの効果の拡大が期待できる結果であった。こちらの結果に関しては、NEJM誌にも掲載されている。

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サル痘予防が追加された乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」【下平博士のDIノート】第105回

サル痘予防が追加された乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」今回は、「乾燥細胞培養痘そうワクチン(商品名:乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16[KMB]、製造販売元:KMバイオロジクス)」を紹介します。本剤は、世界で感染が拡大しているサル痘の発症予防に用いることができる国内唯一のワクチンです。<効能・効果>本剤は、2004年1月に「痘そうの予防」の適応で販売され、2022年8月に「サル痘の予防」が追加されました。<用法・用量>本剤は、添付の溶剤(20vol%グリセリン加注射用水)0.5mLで溶解し、通常、二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種します。回数は15回程度を目安とし、血がにじむ程度に圧刺します。なお、他の生ワクチンを接種した人には、通常27日以上の間隔を置いて本剤を接種します。他のワクチンとは、医師が必要と認めた場合は同時に接種することができます。<安全性>主な副反応は、接種部位圧痛、熱感、接種部位紅斑などの局所反応ですが、約10日後に全身反応として発熱、発疹、腋下リンパ節の腫脹を来すことがあります。また、アレルギー性皮膚炎、多形紅斑が報告されています。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)、けいれん(0.1%未満)が設定されています。<使用上の注意>本剤は-20℃~-35℃で保存します。ゴム栓の劣化や破損などの可能性があるため、-35℃以下では保存できません。添加物としてチメロサール(保存剤)を含有してないため、栓を取り外した瓶の残液は廃棄します。<患者さんへの指導例>1.本剤を接種することで、痘そうウイルスおよびサル痘ウイルスに対する免疫ができ、発症や重症化を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは接種を受けることができません。3.本剤はゼラチンを含むため、これまでにゼラチンを含む薬や食品によって蕁麻疹、息苦しさ、口唇周囲の腫れ、喉の詰まりなどの異常が生じたことがある方は申し出てください。4.BCG、麻疹、風疹ワクチンなどの生ワクチンの接種を受けた場合は、27日以上の間隔を空けてから本剤を接種します。5.接種を受けた日は入浴せず、飲酒や激しい運動は避けてください。6.接種翌日まで接種を受けた場所を触らないようにしてください。接種翌日以後に、水ぶくれやかさぶたが出る場合がありますが、手などで触れないようにして、必要に応じてガーゼなどを当ててください。7.(妊娠可能な女性に対して)本剤接種前の約1ヵ月間、および接種後の約2ヵ月間は避妊してください。<Shimo's eyes>サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症です。これまでは主にアフリカ中央部から西部にかけて発生してきました。2022年5月以降は欧米を中心に2万7千例以上の感染者が報告されていて、常在国(アフリカ大陸)から7例、非常在国からの4例の死亡例が報告されています(8月10日時点)。WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。国内では感染症法において4類感染症に指定されていて、届出義務の対象です。サルという名前が付いていますが、もともとアフリカに生息するリスなどのげっ歯類が自然宿主とされています。感染した人や動物の体液・血液や皮膚病変、飛沫を介して感染します。潜伏期間は通常7~14日(最大5~21日)で、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状に続いて発疹が出現します。ただし、常在国以外での感染例では、これまでのサル痘の症状とは異なる所見が報告されています。確定診断は水疱などの組織を用いたPCR検査で行います。通常は発症から2~4週間後に自然軽快することが多いものの、小児や免疫不全者、曝露量が多い場合は重症化することがあります。国内ではサル痘に対する治療方法は対症療法のみで、承認されている治療薬はありません。欧米では、天然痘やサル痘に対する経口抗ウイルス薬のtecovirimatが承認されています。日本でも同薬を用いた特定臨床研究が始まりました。乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」は、もともと痘そう予防のワクチンとして承認を受けていましたが、2022年8月にサル痘予防の効能が追加されました。本剤はWHOの「サル痘に係るワクチンおよび予防接種の暫定ガイダンス(2022年6月14日付)」において、安全性の高いワクチンであり、サル痘予防のために使用が考慮されるべき痘そうワクチンの1つに挙げられています。本剤は、サル痘や天然痘ウイルスと同じオルソポックスウイルス属の1つであるワクチニアウイルス(LC16m8株)の弱毒化生ワクチンです。ウイルスへの曝露後、4日以内の接種で感染予防効果が得られ、14日以内の接種で重症化予防効果が得られるとされています。接種後10~14日に検診を行い、接種部位の跡がはっきりと付いて免疫が獲得されたことを示す善感反応があるかどうかを確認します。他の生ワクチンと同様に、ワクチンウイルスの感染を増強させる可能性があるので、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリンなどの免疫抑制薬は併用禁忌となっています。

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英語で「それでお願いします」は?【1分★医療英語】第44回

第44回 英語で「それでお願いします」は?How about coming to see me again next week?(次に来るのは来週でいいですか?)Yes, that sounds good to me.(はい、それでお願いします)《例文1》医師I think everything looks good. Is it okay if we proceed to the surgery?(すべてが良い感じですね。手術に進んでもよいですか?)患者That sounds good to me. Please proceed.(はい、それでお願いします)《例文2》医師You can go home tomorrow. How does that sound?(明日自宅退院できますよ。いかがですか?)患者That sounds good to me!(それでお願いします!)《解説》これはもう「頻出中の頻出」といえる表現です。私自身も最低1日1回は使っています。“that”で直前の会話の内容を受けたうえで、“sounds good to me”で「私にとって、(その内容が)よく聞こえる」、つまりは「それでお願いします」という意味になります。日本の英語教育の中にはあまり出てこない表現ですが、医療現場に限らず日常でも非常によく使われる便利な言い回しです。場面、文脈、内容にほとんど制限されることなく使えるので、ぜひ皆さんも身に付けて会話に花を咲かせましょう。講師紹介

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第128回 承認済のホルモン薬でダウン症候群患者の認知機能が改善

新生児800人当たり1人に生じるダウン症候群は21番染色体が1つ余分になることを原因とします。ダウン症候群の不調はさまざまで、若くしてのアルツハイマー病様病態に起因する認知機能低下、性成熟前の嗅覚障害、生殖困難などをもたらします。高齢の女性ほどダウン症候群の子を出産することが多く、たとえば45歳の女性の30に1つの妊娠でダウン症候群が生じます。出生前診断を機会にダウン症候群の妊娠を断つことを選べますが、米国の多くの州では中絶の方針を最近変えており、もう間もなく何百万人もの女性がその選択が不可能になります。高齢出産も増えていることから、今後ダウン症候群で生まれてくる子が増えることは間違いないようです。より多くのダウン症候群患者が自立生活を営めるように学習や意思疎通を改善する治療薬の検討が試みられてきましたがまだ成功していません。マウスでは有望な結果が得られた薬は数多くあれども、臨床試験で認知機能を改善することが示されたことはこれまでありませんでした。しかしとうとう小規模ながらある薬が臨床試験で効果を発揮しました。それは不妊治療に広く使われているホルモン・ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)です。視床下部の神経から間欠的に放出されるGnRHは哺乳類の生殖制御の元締めの役割を担います。生涯に渡ってGnRHは下垂体に放出されて黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの放出を促し、それらが男性の精巣や女性の卵巣に作用します。下垂体ではなく学習や記憶に必要な海馬や大脳皮質に伸びるGnRH生成神経もあることが知られていますが、その生理的な役割はこれまでよくわかっていませんでした。臨床試験を実施した研究チームはまずはマウスの実験で海馬や大脳皮質に伸びるそれらGnRH生成神経の働きを調べました1)。その結果、ダウン症候群を模すマウスはGnRH発現に難があり、小さなポンプでGnRHを間欠的に投与するか海馬や皮質などの認知中枢に伸びるGnRH生成神経の機能を回復させたところ物体認識記憶や嗅覚が回復しました。アルツハイマー病もGnRH神経機能障害を特徴の一つとします。果たして間欠的なGnRH投与はアルツハイマー病を模すマウスの認知機能も改善しました。マウスに投与されたGnRHはヒトにすでに広く使われている薬剤Lutrelefです。日本では性腺機能低下症の治療薬(商品名:ヒポクライン)として販売されています。20~50歳の男性のダウン症候群患者7人を募って実施された下調べの臨床試験でもLutrelefが投与されました。マウス実験のときと同様に被験者には小さなポンプが皮下に植え込まれ2)、そのポンプから2時間ごとにLutrelefが投与されました。6ヵ月後、嗅覚は改善しなかったものの1人を除く6人の認知機能が改善し、作業記憶(ワーキングメモリー)、注意、言語の理解が向上しました。また、MRI造影で脳を調べたところ海馬や皮質などの認知に携わる脳領域の神経連結が増えていました。その下調べ試験結果を受けてLutrelefの開発はすでに次の段階に進んでおり、ダウン症候群の男女32人を募るプラセボ対照試験が進行中です3)。今回発表された試験での認知機能改善は僅かですが、親に様子を尋ねたところ変化が実感されています3)。たとえばある親は電話で息子と話しやすくなったと報告しています。街で目当ての場所を目指すなどの日常生活を助けうる物覚えや注意持続が改善したとの報告もありました。研究者が目指すのはダウン症候群患者が日々を暮らしやすくなるようになることです。GnRHの可能性は広く、アルツハイマー病などの神経変性疾患への効果を調べる臨床試験も必要と研究者は示唆しています4)。参考1)Manfredi-Lozano M,et al. Science. 2022 Sep 2;377:eabq4515.2)Boosting cognition with a hormone / Science3)Restoring a key hormone could help people with Down syndrome / Science4)A therapy found to improve cognitive function in patients with Down syndrome / Eurekalert

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HEPAフィルター空気清浄機により新型コロナウイルス除去に成功/東大

 東京大学医科学研究所と国立国際医療研究センターは、8月23日付のプレスリリースで、河岡 義裕氏らの研究により、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機を用いることで、エアロゾル中に存在する感染性の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を経時的に除去できることが実証されたことを発表した。なお本結果は、mSphere誌オンライン版8月10日号に掲載された。 本研究は、東京大学と進和テックの共同で行われた。本研究に用いられたHEPA(high-efficiency particulate air)フィルターは、米国環境科学技術研究所の規格(IEST-RP-CC001)で、0.3μmの試験粒子を99.97%以上捕集可能なフィルターとして定義されている。HEPAフィルターのろ過効果を検証するため、コンプレッサーネブライザーでSARS-CoV-2エアロゾルを試験チャンバー内に噴霧して満たした後、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を毎時12回換気の風量で5分間、10分間、35.5分間稼働させた。所定の稼働時間後、チャンバー内のSARS-CoV-2エアロゾルをエアサンプラーで採取し、プラークアッセイを用いて、サンプル中の感染性ウイルス力価を測定した。さらに、1価の銅化合物を主成分とし、活性酸素を発生させてフィルター面に付着したウイルスを不活性化することができる抗ウイルス剤のCufitec®を塗布したHEPAフィルターを用いた場合でも、同様の条件で感染性ウイルス力価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・HEPAフィルターによるウイルス除去率は、5分間、10分間、35.5分間の稼働時間で、それぞれ85.38%、96.03%、>99.97%だった。空気清浄機の稼働時間の経過とともに、ウイルス除去率が高くなることがわかった。・抗ウイルス剤Cufitec®を塗布したHEPAフィルターを用いた場合では、通常のHEPAフィルターとほぼ同等のウイルス除去率が認められた。 研究チームは本結果について、空間中のSARS-CoV-2を除去するためには、HEPAフィルター付き空気清浄機を室内の適切な場所に設置し、風量や風向きを適宜調整するなど適正に使用することが重要だとしている。また、HEPAフィルター付き空気清浄機を室内の換気と併用することで、より短時間で効率的に空間中のSARS-CoV-2を除去することが可能になり、さらに、抗ウイルス剤を塗布したHEPAフィルターを空気清浄機に取り付けることで、フィルターを交換する際の曝露リスクを減らせる可能性があると述べている。

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エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。全体の考え方について【2 使用にあたっての手続き】・チキサゲビマブ/シルガビマブとバリシチニブを追加【3 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」の注釈を改訂。・「2 主な重症化リスク因子」で65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、COPDなどの慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上)、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期など内容を改訂。・「3」で「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は推奨しない」と改訂。・「表1 軽症~中等症I」で治療薬の使用を優先させるべきリスク集団を追加。・「4 抗ウイルス薬等の選択」で知見より「高齢者、複数の重症化リスク因子がある患者、ワクチンの未接種者などでは症状が進行しやすいことを踏まえ、患者ごとの評価において、中等症への急速な病状の進行など、非典型的な臨床経過の症例や免疫抑制状態などの重症化リスクが特に高い症例などでは、併用投与または逐次投与の適応を考慮する」と表現を改訂。個々の治療薬について【抗ウイルス薬】・レムデシビル(商品名:ベクルリー)の「投与時の注意点」で「7)2022年1月21日の中央社会保険医療協議会(中医協)において、保険医の指示の下で看護師による在宅・療養施設等の患者へのレムデシビル投与が可能となった」を追加。・モルヌピラビル(同:ラゲブリオ)の「入手方法」で「2022年8月18日に薬価収載されたことから、今後、一般流通の開始およびそれに伴う国購入品と一般流通品の切替えが行われる見込みである」を追加。・ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック )の「国内外での臨床報告」で「10万9,254例の後方視コホート研究(65歳以上の高齢者ではニルマトレルビルの治療介入により入院の有意なリスク減少を認めた(HR:0.27、95%CI:0.15~0.49)。一方で40~64歳では、有意なリスク減少を認めなかった (HR:0.74、95%CI:0.35~1.58)を追加。また、投与時の注意点に「5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は薬剤開発のための臨床試験で除外されているが、市販後の評価では、高齢者での重症化予防などの有効性が示唆されている」を追加。そのほか、投与時の腎機能の評価の詳細についても追加。・ファビピラビルの項目は削除。【中和抗体薬】・「チキサゲビマブ/シルガビマブ(同:エバシェルド)」を新しく追加。〔国内外での臨床報告〕重症化リスク因子の有無を問わない、軽症~中等症IのCOVID-19外来患者822人を対象としたランダム化比較試験では、発症から7日以内のチキサゲビマブ/シルガビマブの単回筋肉内投与により、プラセボと比較して、COVID-19の重症化または全死亡が50.5%(4.4%対8.9%、p=0.010)有意に減少したなどを記載。〔投与方法〕・発症後通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射。・曝露前の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射する。なお、SARS-CoV-2変異株の流行状況などに応じて、それぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできる。〔投与時の注意点〕オミクロン株(BA.4系統及びBA.5系統) については、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することなど。〔発症後での投与時の注意点〕1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)COVID-19の症状が発現してから速やかに投与すること。4)重症化リスク因子については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」などにおいて例示されている重症化リスク因子が想定。〔発症抑制での投与時の注意点〕1)COVID-19の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者ではない者に投与すること。COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者における有効性は示されていない。3)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては、COVID-19に対するワクチン接種が推奨されない者または免疫機能低下などによりCOVID-19に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者とされているが、原発性免疫不全症、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者など免疫抑制状態にある者が中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。4)3)の投与対象者については、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた発症抑制を行うことが望ましいと考えらえる。〔入手方法〕本剤は、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、発症抑制としての投与について、対象となる免疫抑制状態にある者が希望した場合には、医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。・カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)とソトロビマブ(同:ゼビュディ)の「投与時の注意点」として「1)オミクロン株(B1.1.529系統/BA.2系統、BA.4系統およびBA.5系統) では本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討する」を追記。【免疫調整薬・免疫抑制薬】・シクレソニド(国内未承認薬)の項目を削除。【その他】・その他の抗体治療薬(回復者血漿、高度免疫グロブリン製剤)の項目を削除。・附表1と2の「重症化リスクを有する軽症~中等症IのCOVID-19患者への治療薬の特徴」の内容を更新。・参考文献を52本に整理。 なお、本手引きの詳細は、同学会のサイトなどで入手の上、確認いただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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統合失調症患者のメタボリックシンドロームリスクに対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬が統合失調症患者のメタボリックシンドローム(MetS)発症に影響していることが、多くの研究で示唆されている。セルビア・クラグイェバツ大学のAleksandra Koricanac氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者におけるMetSの発症リスクおよび発症しやすい患者像を明らかにするため、検討を行った。その結果、リスペリドン治療患者およびクロザピン治療患者は、アリピプラゾール治療患者よりも、MetS発症リスクが高い可能性が示唆された。また、リスペリドン治療患者は、健康対照群と比較し、TNF-αとTGF-βの値に統計学的に有意な差が認められた。Frontiers in Psychiatry誌2022年7月25日号の報告。 安定期統合失調症患者60例を対象に、単剤使用の各抗精神病薬に応じて3群(リスペリドン群、クロザピン群、アリピプラゾール群)に分類した。また、健康な被験者20例を対照群とした。最初に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価し、その後プロラクチン値、脂質状態、血糖値、インスリン値、サイトカイン値(IL-33、TGF-β、TNF-α)、C反応性タンパク質(CRP)を測定した。BMI、HOMA指数、ウエスト/ヒップ比(WHR)、血圧も併せて測定した。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドン群は、対照群およびアリピプラゾール群と比較し、プロラクチン値に有意な差が認められた。・クロザピン群は、対照群と比較し、HDLコレステロールおよびグルコースのレベルに有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、対照群と比較し、BMIの有意な差が認められた。・統計学的に有意な関連は、リスペリドン群ではTNF-αとグルコースおよびHOMA指数(IL-33とグルコース、TGF-βとグルコース)、クロザピン群ではTNF-αとBMI(IL-33とBMI、TGF-βとインスリンおよびHOMA指数)において認められた。・アリピプラゾール群のTGF-βとLDLコレステロールにおいて、統計学的に有意な負の関連が認められた。

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MTX維持療法中のolokizumab、関節リウマチの改善率は?/NEJM

 メトトレキサート(MTX)による維持療法を受けている関節リウマチ(RA)患者において、インターロイキン-6(IL-6)を直接の標的とするヒト化モノクローナル抗体であるolokizumabを併用すると、12週の時点における米国リウマチ学会基準の20%の改善(ACR20)の達成に関して、プラセボと比較して優越性を示し、ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体アダリムマブに対し非劣性であることが、オーストリア・ウィーン医科大学のJosef S. Smolen氏らが実施した「CREDO2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号に掲載された。世界209施設の無作為化プラセボ対照・実薬対照第III相試験 CREDO2試験は、RA治療におけるMTXへのolokizumab追加の有効性と安全性の評価を目的とする24週間の二重盲検無作為化プラセボ対照・実薬対照第III相試験であり、2016年5月~2019年11月の期間に、米国、欧州、英国、アジア(韓国、台湾)、中南米の209施設で参加者の登録が行われた(ロシアR-Pharmの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、活動性のRAで、ACR-EULAR分類基準(2010年改訂版)を満たし、12週間以上にわたりMTX(15~25mg/週、この用量で許容されない有害事象がみられる場合は≧10mg/週[韓国は≧7.5mg/週])の効果が不十分で、66関節中腫脹関節が6ヵ所以上、68関節中圧痛関節が6ヵ所以上、C反応性蛋白>6mg/Lの患者であった。 被験者は、24週にわたり、olokizumab(64mg)を2週ごと、同4週ごと、アダリムマブ(40mg)を2週ごと、プラセボを2週ごとに投与する群に、2対2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。全例でMTXの投与が継続された。 主要エンドポイントは、12週の時点におけるACR20(圧痛・腫脹関節数が20%以上減少、他の5つの項目のうち少なくとも3項目で20%以上の改善)の達成とされた。ACR20の達成について、olokizumab群のプラセボ群に対する優越性の評価とともに、olokizumab群のアダリムマブ群に対する非劣性の評価が行われた(非劣性マージンは、群間差の97.5%信頼区間[CI]下限値が-12ポイントとされた)。3割以上で感染症が発現 1,648例(intention-to-treat集団)が登録され、olokizumab 2週ごと投与群に464例、同4週ごと投与群に479例、アダリムマブ群に462例、プラセボ群に243例が割り付けられた。これら4つの群の平均年齢の幅は53.3~54.7歳で、女性の割合の幅は75.9~78.9%であった。1,479例(89.7%)が24週の投与を完遂した。 プラセボ群における12週時のACR20の達成割合は44.4%であった。これに対し、olokizumabの2週群のACR20達成割合は70.3%(プラセボ群との差:25.9ポイント、97.5%CI:17.1~34.1)、同4週群は71.4%(27.0ポイント、18.3~35.2)、アダリムマブ群は66.9%(22.5ポイント、95%CI:14.8~29.8)であり、2つの用量のolokizumab群はいずれも、プラセボ群に比べ有意に優れた(いずれもp<0.001)。 また、12週時のACR20の達成割合に関して、2つの用量のolokizumab群はいずれも、アダリムマブ群との差の97.5%CI下限値が-12ポイントを上回っておらず(olokizumabの2週群:3.4ポイント[97.5%CI:-3.5~10.2]、同4週群:4.5ポイント[-2.2~11.2])、2つのolokizumab群のアダリムマブ群に対する非劣性が示された。 一方、試験薬の1回目の投与以降に、初めて発現または重症度が悪化した有害事象が少なくとも1件認められた患者の割合は全体で68.0%であった(olokizumab 2週群 70.0%、同4週群70.9%、アダリムマブ群65.4%、プラセボ群 63.4%)。最も頻度の高い有害事象は、感染症(鼻咽頭炎、上気道感染症、尿路感染症など)だった(30.2%、34.0%、32.0%、34.6%)。また、試験薬の投与中止の原因となった有害事象は、それぞれ4.5%、6.3%、5.6%、3.7%で、重篤な有害事象は、4.8%、4.2%、5.6%、4.9%で認められた。 olokizumabに対する抗体は、2週群が3.8%、4週群は5.1%で検出された。 著者は、「RA患者におけるolokizumabの有効性と安全性を明らかにするには、より大規模で長期の試験が求められる」としている。

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第115回 感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府

<先週の動き>1.感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府2.オミクロン株対応の新ワクチン、今月中に接種開始へ/厚労省3.病院のかかりつけ医機能は中小病院が中心に/日本病院会4.日本ようやく「結核低まん延国」に/厚労省5.世界初の高血圧の治療アプリが保険適用に/厚労省6.介護保険の給付が10兆円越え、高齢化で過去最高に/厚労省1.感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府岸田内閣は、9月2日に新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた、次の感染症危機に備えるための具体策をまとめた。この中で、感染症法の改正を行い、感染症発生・まん延時に備えて、都道府県に対してあらかじめ、各医療機関と具体的な役割・対応について協定を締結しておくことを求める。さらに、公立・公的医療機関などや特定機能病院・地域医療支援病院に対しては、感染症発生時に担うべき医療の提供を義務付け、応じない場合は罰則を盛り込む方針を明らかにした。また、次の感染症危機に対して、政府の司令塔機能の強化するため、司令塔機能を担う組織として「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」を設置を盛り込んだ法案をこの秋の臨時国会に改正案を提出し、次年度の設立を目指す。(参考)第97回 新型コロナウイルス感染症対策本部(首相官邸)政府が新たな感染症対策 医療機関に罰則、23年度中に司令塔組織(毎日新聞)政府、病床確保拒否に罰則 5年度に司令塔組織創設(産経新聞)大病院の病床確保へ法改正 実効性に課題(日経新聞)2.オミクロン株対応の新ワクチン、今月中に接種開始へ/厚労省厚生労働省は9月2日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論で、オミクロン株対応ワクチン接種については、接種時期や接種対象者についての方針を取りまとめた。政府はすでにオミクロン株対応ワクチンの輸入を一部前倒しして開始しており、薬事承認を経て、9月中旬開催予定の分科会において、オミクロン株対応ワクチンの接種を特例臨時接種として諮問し、オミクロン株対応ワクチン接種を開始するとしている。各自治体に対しては、接種の準備を行い、開始時期は令和4年10月半ばを目途としているが、準備ができ次第開始する。また、現在、高齢者、重症化リスクの高い人や医療従事者など4回目接種の対象者に対して行なっている従来のワクチン接種について、2価のオミクロン株対応ワクチン(BA.1対応型)へ切り替えも早期に行うこととした。(参考)第36回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(厚労省)オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの接種体制確保について(その3)(事務連絡)新ワクチン、今月半ばにも オミクロン対応、高齢者などから(東京新聞)オミクロン株対応ワクチン、今月半ばに配送開始…高齢者ら優先で接種(読売新聞)改良ワクチン3,000万回分 オミクロン型対応 19日ごろから配送(日経新聞)3.病院のかかりつけ医機能は中小病院が中心に/日本病院会日本病院会の相澤孝夫会長は、8月29日の記者会見で「かかりつけ医機能」について、「医師個人の機能ではなく、医療機関としての機能であるとして、かかりつけ医機能を推進する病院として『地域を支えていく中小規模病院』の機能を充実・強化が必要である」と見解を述べた。具体的な機能としたのは、地域の医療機関などとの連携や在宅医療支援、介護などとの連携について示した。日本病院会では、病院のかかりつけ医機能の在り方にさらに議論を進め、厚生労働省の「第8次医療計画等に関する検討会」に見解を示す見込み。(参考)病院のかかりつけ医機能、「中小規模病院」を中心に 日病が方向性(MEDIFAX)「かかりつけ医機能」、急病対応や総合診療などが最重要要素で、中小病院で充実していくべき-日病・相澤会長(Gem Med)4.日本ようやく「結核低まん延国」に/厚労省厚生労働省は、8月30日に2021年の結核登録者情報調査年報集計結果を公表した。これによると、わが国の2021年の結核罹患率(人口10万対)について、前年と比較して0.9減少し、人口10万人あたりの活動性結核患者の発生数が10人未満の結核の低まん延国となったことが明らかとなった。わが国は過去に結核が蔓延した影響があり、結核患者の高齢化はますます進行し、新登録結核患者のうち70歳以上が占める割合は63.5%と高く、引き続き対策が求められる。(参考)2021年 結核登録者情報調査年報集計結果について(厚労省)2021(令和3)年結核年報速報(疫学情報センター)日本、結核「低まん延国」に…人口10万人あたりの患者数が初めて10人を下回る(読売新聞)国内結核患者 過去最少「結核低まん延国」に コロナ対策影響か(NHK)5.世界初の高血圧の治療アプリが保険適用に/厚労省CureApp社は、禁煙補助に続いて、世界初の高血圧治療補助アプリ「CureAppHT」を9月1日に「成人の本態性高血圧症の治療補助」で保険適用されたことを受け、即日発売した。高血圧患者の行動変容を促し、生活習慣の改善による降圧効果を図るとする医療機器として認められた。6ヵ月を限度に毎月830点(初月のみ計970点)を算定するためには200床未満の医療機関では、地域包括診療料、地域包括診療加算、高血圧症を主病とする生活習慣病管理料のいずれかの算定実績が要件とされている。一方、200床以上の医療機関では、日本高血圧学会の定める「高血圧認定研修施設」であり、かつ22年度診療報酬改定で新設された「紹介受診重点医療機関」であることが要件とされた。(参考)CureAppが高血圧の治療用アプリを承認申請、薬なしで12週後の降圧効果を確認(日経クロステック)CureApp 高血圧治療補助アプリが保険適用、即日発売 生活習慣修正をトータルサポート(ミクスオンライン)中医協総会 CureAppの高血圧治療補助アプリは「新規技術料」で評価 使用実態のフォローアップを(同)6.介護保険の給付が10兆円越え、高齢化で過去最高に/厚労省厚生労働省は、令和2年度の介護保険事業状況報告の年報を8月31日に公表した。これによると、令和2年度の保険給付関係の累計の総数は、件数1億6,303万件、費用総額10兆7,247億円と過去最高となったことが明らかになった。給付費の内訳は、居宅介護(介護予防)サービス4兆7,872億円、地域密着型介護(介護予防)サービス1兆6,459億円、施設介護サービス3兆1,629億円となっており、要介護・要支援認定者数は、令和2年度末現在で682万人と前年度より13万人増加している。介護保険の給付費は過去20年間で3倍以上の増加となっており、今後はさらに団塊の世代が75歳以上となることで、介護費の増加は加速するとみられる。(参考)令和2年度 介護保険事業状況報告(厚労省)介護給付、初めて10兆円超え 20年度、高齢化で過去最高(共同通信)介護給付費、初の10兆円超え 20年度 20年間で3倍超、厚労省(CB news)要介護・要支援認定は過去最多の682万人 厚労省が20年度の年報公表、前年度比13万人増(同)

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インフルエンザと新型コロナ:動脈血栓の視点ではどっちが怖い?(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染症の特徴として、深部静脈血栓症・肺塞栓症などの静脈血栓症リスクの増加が注目された。静脈血栓症リスクは、新型コロナウイルス以外の感染症でもICU入院例では高かった。インフルエンザなど他のウイルス感染と比較して、新型コロナウイルスにはACE-2受容体を介して血管内皮細胞に感染するとの特徴があった。血管内皮細胞は血管内の血栓予防にて死活的に重要な役割を演じている。新型コロナウイルス感染により血管内皮細胞の機能が障害されれば、微小循環の過程にて血小板、白血球が活性化し全身循環する血液の血栓性は亢進する。静脈血栓症以外に、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈血栓リスクも新型コロナウイルス感染後に増加すると想定された。また、新型コロナウイルス感染症例の心筋梗塞、脳梗塞リスクの増加を示唆する論文も多数出版されている。 本研究は米国の健康保険のデータベースの後ろ向き解析である。新型コロナウイルス感染症にて入院した症例の静脈血栓、動脈血栓リスクは高いが、われわれに十分な経験のあるインフルエンザの入院例との比較において動脈、静脈血栓リスクを評価したのが本研究の新規性である。また、新型コロナウイルスのワクチン接種のインパクトの評価も志向している。もっとも、本研究は重症の入院例に限局しているので、ワクチンの血栓イベントに及ぼす効果は評価できないことを理解する必要がある。 ワクチン普及後でも、新型コロナウイルス感染症による入院後90日以内の動脈血栓イベント発症率は16.3%(95%CI:16.0%~16.6%)と高い。新型コロナは恐ろしい。しかし、インフルエンザでも入院例では90日以内に14.4%(95%CI:13.6%~15.2%)が動脈血栓を発症している。新型コロナは恐ろしいが、インフルエンザも怖い。動脈血栓イベントリスクは年齢に依存している。高齢者であれば、新型コロナであろうとインフルエンザであろうと入院後の動脈血栓イベントには注意が必要である。本研究では血管内皮細胞への感染を特徴とする新型コロナウイルスの血栓性亢進は静脈血栓のみにて確認された。米国の保険医療データベースのラフな解析の結果である。英国などの精緻なデータが待たれる。 時に、現在まで日本は全数把握を行政が主導してきた。全数把握しながら、日本のデータベースから新型コロナウイルスに関する科学的情報の発表は乏しい。労力をかけて情報を収集するのであれば、科学的情報を発信できる情報にしなければならない。厚労省に論文出版課などができれば科学的情報解析に目が向くだろうか?

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