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急性期漢方の最新研究と今後の展望【急性期漢方アカデミア】第3回

急性期漢方を普及・研究するグループ「急性期漢方アカデミア(Acute phase Kampo Academia:AKA)」。急性期でこそ漢方の真価が発揮されるという信念のもと、6名の急性期漢方のエキスパートが集結して、その方法論の普及・啓発活動を2024年から始動した。第1回セミナーでは、急性期の“むくみ”に対する漢方を紹介した。今回は、それを踏まえて急性期に漢方を研究し、未来につなげていく取り組みと、今後の展望を紹介したい。さらなる高みへ急性期の“むくみ”に対する漢方を応用した診療をAKAでは研究にもつなげて、この分野を今後発展させたいと考えている。今回は、その一端を紹介したい。現代医学では、打撲や足関節捻挫などに対してRICE(Rest:安静、Icing:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)を早期に行うことで腫脹や痛みを軽減させるが、漢方治療では局所の熱感や腫脹を熱と水毒と捉えて、清熱利水薬による内服治療を行って治療可能である。局所の強い熱感と腫脹には麻黄と石膏が含まれる越婢加朮湯、やや遷延した熱感と腫脹には清熱作用のある小柴胡湯と利水剤である五苓散を組み合わせた柴苓湯が適応になる。50代女性が眼瞼の虫刺症で受診した。柴苓湯1回1包(3.0g)1日3回で治療したところ、翌日には腫脹が改善した(図1)。画像を拡大するまた離島の診療所に勤務する自治医科大学の後輩が、漢方を学び、超高齢者の浅達性II度熱傷に対して、ワセリンと創傷被覆剤による通常の治療に加えて、越婢加朮湯1回1包1日3回を併用することで早期の治癒が可能であった症例(図2)を報告している1)。熱傷のようなCommon Diseaseであっても、漢方薬による治療例はまだまだ報告が少なく、論文掲載のチャンスがあると考える。画像を拡大する蜂窩織炎に対する越婢加朮湯の有用性の検討最新の研究の一例として、蜂窩織炎に対する越婢加朮湯の有用性を検討した研究を紹介する2)。本研究では、蜂窩織炎に対する越婢加朮湯の有用性について、治療効果と安全性の観点から後方視的解析を行った。蜂窩織炎に対して越婢加朮湯を使用した103例(男性49例、女性54例)のうち、越婢加朮湯開始時からステロイドやNSAIDsを併用した4例を除外した99例(男性48例、女性51例)を対象とした。なお、壊死性筋膜炎症例はCTやMRIなどの画像検査や臨床症状から除外した。効果判定は越婢加朮湯により症状が改善した場合を有効とし、副作用や他剤に変更をするために越婢加朮湯の服用を中断した場合を無効とした。結果は有効94例、無効5例であった(有効率94.9%、図3)。有害事象は1例も認められなかった。抗菌薬は48.5%に使用されていたが、有効群と無効群の間に抗菌薬併用の差は認められなかった。画像を拡大する以上から、蜂窩織炎に対して越婢加朮湯は安全性が担保された有用な治療と考えられた。抗菌薬は48.5%に併用されていたが、抗菌薬の併用が必須であるか、NSAIDsの併用が有用であるかはさらなる検討が必要である。そして、これから3回にわたって、第1回AKAセミナーの内容を紹介した。次回の第2回は、急性期の気道感染症をテーマに2025年12月6日(土)17時よりOn Lineで開催する予定である(詳細はページ下部参照)。ゲスト講師には、ER型救急総合診療で著名な林 寛之先生(福井大学医学部附属病院 救急科総合診療部 教授)をお招きし、急性期の気道感染症のまとめと西洋医学的な治療の問題点を整理のうえ、急性期の気道感染症に応用できる漢方薬のAKAプロトコールを紹介したい。読者の皆さまのご参加を心よりお待ちしております。AKAメンバーである加島 雅之(熊本赤十字病院 総合内科部長)、中永 士師明(秋田大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学講座 教授)、鍋島 茂樹(福岡大学医学部 総合診療学 教授)、熊田 恵介(岐阜大学医学部附属病院医療安全管理室 室長・教授/高次救命治療センター)、入江 康仁(聖隷横浜病院救急科 部長)、吉永 亮(飯塚病院漢方診療科 診療部長)(敬称略)の6名は、急性期病院で急性期・救急診療に従事しながらそこに漢方を応用しており、いずれも日本最大の漢方系学会である日本東洋医学会の認定する漢方専門医である。AKAセミナーでは、明日から応用できる簡単な漢方薬の使用法を示しているが、実際に示されている方法を試していただけると、少しだけ使っても効果があることに気付かれるだろう。しかし、さらに漢方の概念を応用すると、もっと劇的な症例を経験することも多い。著者も利尿薬に反応しない心腎症候群に漢方薬の併用で緊急透析を回避できた経験もある。こうしたさらなる高みを知るためには、ぜひ学会へ参加し漢方とはどのようなものか、どのような研究がなされているかを知っていただきたい。

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ペニシリン系の全体像【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第4回

ペニシリン系の全体像前回までペニシリンGのスペクトラムを学びました。そこでは、ペニシリンGがブドウ球菌、大腸菌、横隔膜から下の嫌気性菌を苦手とすることが判明しました(図1)。このような細菌をカバーするために、ペニシリンは進化します。今回は、その足跡を追っていくことで、ペニシリン系の全体像を一緒に勉強していきましょう。図1 ペニシリンGのスペクトラム画像を拡大するアンピシリンペニシリン系進化の第1歩は、アンピシリンです。アンピシリン以外にもさまざまありますが、ここでは日本でよく使われる抗菌薬に着目して解説していきます。アンピシリンは、ペニシリンGにアミノ基(–NH2)をつけたものです。つまり、見た目はほとんど変わりません(図2)。図2 ペニシリンGとアンピシリンの構造式画像を拡大する「サザエさん」を見ていない人は、波平さんと海平さんを区別できないと思うのですが、本当にその程度の差です。では、構造式の似ているペニシリンGとアンピシリンで、スペクトラムはどのくらい違うのでしょうか?実は、スペクトラムは大きくは違いません。構造式がこれだけ似ていてスペクトラムが全然違っていたら、少し頭が混乱してしまいますよね。まとめると、アンピシリンはペニシリンGと同様に、肺炎球菌、連鎖球菌、腸球菌とリステリア、横隔膜から上の嫌気性菌をカバーすることができます。ただし、アンピシリンとペニシリンGのスペクトラムが完全に一致するわけでもありません。完全一致であれば、アンピシリンの存在意義がなくなってしまいますよね。実は、アンピシリンは大腸菌を少しだけカバーすることができます。手も足も出なかったグラム陰性桿菌に少しだけ対抗できるようになったわけです(図3)。図3 アンピシリンのスペクトラム画像を拡大するただし、アンピシリンになっても、ブドウ球菌や横隔膜から下の嫌気性菌はカバーできていません。大腸菌も半分くらいはカバーできても、残りの半分がカバーできていないという問題があります(図3)。では、どうしてカバーできないのでしょうか。これは細菌の薬剤耐性メカニズムを考える必要があります。この世には抗菌薬に対するさまざまな対抗手段があります。たとえば、(1)βラクタマーゼを出して、抗菌薬を変形して使い物にならなくしてしまう方法があります。ほかには、(2)抗菌薬が結合する部分(例:ペニシリン結合蛋白)を変形させる方法、(3)抗菌薬が菌体に侵入しないようブロックしたり(例:ポーリンの変化)、(4)侵入されたら抗菌薬を汲み出してしまったり(例:排出ポンプ)。さまざまな方法があるわけです。これらのなかでも多いのが、最初に挙げたβラクタマーゼです。そうすると、βラクタマーゼ阻害薬をアンピシリンに混ぜれば、ブドウ球菌も横隔膜から下の嫌気性菌もやっつけられるのではないか。そういう発想になるわけです。アンピシリン・スルバクタムそこで、アンピシリンにスルバクタムを混ぜる。スルバクタムはβラクタマーゼ阻害薬です。そうすると、アンピシリン・スルバクタムができあがって、ブドウ球菌も大腸菌も横隔膜から下の嫌気性菌もカバーできるということになるわけです。万能薬ですね。グラム陽性球菌もグラム陰性桿菌も、嫌気性菌も、すべてカバーできる(図4)。発熱したら、これを使えば良いのではないか。そういう話になってくるわけです。図4 過去のアンピシリン・スルバクタムのスペクトラム画像を拡大するその結果、何が起こったか考えてみましょう。まず、大腸菌が耐性化します(図5)。現在では、アンピシリン・スルバクタムの感受性率は50~60%くらいになってしまい、使い勝手がずいぶんと悪くなってしまいました。乱用すると耐性化が起こる。歴史は繰り返されるということです。このことを覚えておいてください。図5 現在のアンピシリン・スルバクタムのスペクトラム画像を拡大するさて、大腸菌が耐性化してしまったわけですが、ペニシリン系で大腸菌をやっつけるという夢も捨てきれません。そこで使うことのできる薬剤はまだ残っています。ピペラシリン・タゾバクタムまだ使うことのできる薬剤、それがピペラシリン・タゾバクタムです。大腸菌だけでなく、緑膿菌もカバーするため、昔のアンピシリン・スルバクタムよりもグラム陰性桿菌のカバーが広くなっています(図6)。図6 ピペラシリン・タゾバクタムのスペクトラム画像を拡大するピペラシリン・タゾバクタムはグラム陰性桿菌と嫌気性菌を同時にカバーできる貴重な抗菌薬で、腹腔内感染症に対する数少ない選択肢です。まれに、ピペラシリン・タゾバクタムに高度の耐性をとる腸内細菌目(大腸菌など)を見かけるため心配になることもありますが、この貴重な抗菌薬を潰さないようにしたいものです。まとめペニシリン系の歴史をざっくりと追いながら、スペクトラムを学んできました。いかがでしたでしょうか。最初のペニシリンGのスペクトラムを覚えるのが大変だったと思いますが、そこさえ乗り越えてしまえば、あとはストーリー形式であまり暗記することなく、ペニシリン系の全体像をつかむことができたのではないかと思います。次回以降は、セフェム系を学んでいきます。これまで学んだペニシリン系とセフェム系を比較することで、これまでの知識の解像度が上がること間違いなしです。お楽しみに!

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第290回 「会社の寿命は30年」、では病院の“寿命”は?(後編)地域包括ケアシステム誕生の地、広島・公立みつぎ総合病院が直営6施設の民間移譲を決定、かつての“山口王国”解体へ

故山口 昇氏が作り上げた地域包括ケアシステムの雛形、公立みつぎ総合病院こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、この時期毎年訪れている埼玉県・奥武蔵の伊豆ヶ岳を登ってきました。西武秩父線の吾野駅から子ノ権現、天目指峠を経て伊豆ヶ岳、正丸峠を経て正丸駅に下りるいつものコースです。伊豆ヶ岳周辺のカエデの紅葉を愛で、正丸峠にある奥村茶屋名物のジンギスカンを堪能してから下山したのですが、正丸駅に下りる道すがら、秋の風景が何やらいつもと違うのに気が付きました。落葉後の今頃、途中の集落のあちこちにぽつりぽつりとなっていて、風景に橙色のアクセントをつけていた柿の実がまったくないのです。地面に落ちている柿すら確認できませんでした。クマ対策だと思われます。クマが多発している秩父に隣接する地域だからでしょう。それにしても、相当数あった柿の実を、全部採取するのは大変な作業だったと想像されます。住民、そして自治体(埼玉県飯能市、合併前は名栗村)の徹底したクマ対策に感心して山を後にしました。さて今回は「『会社の寿命は30年』、では病院の“寿命”は?」の最終回として、広島県尾道市御調町の尾道市立総合医療センター・公立みつぎ総合病院を取り上げます。故山口 昇氏のリーダーシップの下、地域包括ケアシステムの雛形とも言える医療介護体制を作り上げ、“山口王国”と称されるほど有名だった同病院ですが、経営難から病院以外の直営6施設の民間への業務移譲が決まりました。直営6施設を2027年度に民間へ業務移譲9月9日付の大阪読売新聞の報道によれば、公立みつぎ総合病院は経営基盤を強化するため、介護老人保健施設など直営6施設を2027年度に民間へ業務移譲するなどスリム化する計画を明らかにしました。同病院の病床数も抑えて赤字体質を改善し、2030年度には黒字化を図りたいとしています。これを受けて、尾道市は公立みつぎ総合病院の病床を23床減らして217床とする条例改正案を9月定例市議会に提出、可決されたことで同病院は10月1日、直営の6施設の移譲先となる事業者の募集を公募型プロポーザル方式で開始し、10月末に締め切りました。募集に参加した事業者には運営方針などの企画提案書の提出を来年1月30日までに求め、有識者たちでつくる選定委員会での審査を経て、2027年4月の移譲を目指すとのことです。病院の経営を直営6施設が足を引っ張る構造同病院は1956年開設で現在、240床、19診療科を有しています。近年、直営施設などで職員の平均年齢が上がり、医業収益に対する給与比率は8割に近くとなり、2024年度は直営施設だけで約2億5,000万円の赤字を計上していました。病院全体では2億500万円の赤字でした。2020年度以降は6年連続で市の一般会計から基準外の繰り入れを受けており、2025年度までにその総額は18億円に上っていました。直営施設が経営の足を引っ張る構造であり、今後も人口減で利用者減が見込まれることなどから、病院から約1.5キロ離れた同一敷地内にある施設群を民間移譲する計画となったわけです。移譲対象は特別養護老人ホームふれあい(定員100人)。介護老人保健施設みつぎの苑(同150人)、ケアハウスさつき(同30人)、グループホームかえで(同18人)、デイサービスセンター(通所20人、休止中)、リハビリテーションセンター(定員19床、休止中)の6施設です。大阪読売新聞の報道によれば、みつぎ総合病院経営企画課の担当者は「デジタル技術の活用も進む民間への移譲で医療、介護の質は高まるはずだ。今後もみつぎ総合病院が地域包括ケアの中心を担うことに変わりはなく、しっかりとケアを継続する志のある移譲先を探したい」とコメントしています。2005年、御調町が尾道市と合併すると病院は市の管轄下となり存在感薄れるこの公立みつぎ総合病院の「解体報道」は全国の医療介護関係者に少なからぬ衝撃を与えました。それは、同病院が日本で初めて保健・医療・介護・福祉の連携体制づくりに実践的に取り組み、その概念とモデルを全国に先駆けて発信したことで「地域包括ケアシステム誕生の地」と呼ばれてきたためです。その中心的役割を担ったのが故山口 昇氏です。1966年に同病院(当時は御調国保病院長)に院長として着任した山口氏は、1970年代、「寝たきりゼロ作戦」と称して“出前医療”(現在の訪問診療、訪問看護)を開始。病院だけではなく住民の生活圏の中で医療・介護を総合的に提供する仕組みの構築に取り組みました。その後、行政の保健・福祉部門と病院の医療スタッフの協働体制を作り上げ、1984年には町(当時の御調町)役場の保健・福祉部門を病院に統合しました。さらに、介護施設(特養、老健、グループホームなど)を病院の近隣に併設することで、地域住民が安心して暮らせるケア体制を実現しました。その数々の取り組みは国の「高齢者保健福祉推進10カ年戦略(ゴールドプラン)」、「介護保険制度」、「地域包括ケアシステム」など、さまざまな医療介護政策に導入されました。そうした経緯から、山口氏は「地域包括ケアシステムの生みの親、名付け親、育ての親」と呼ばれています。山口氏は1996年に御調町保健医療福祉管理者、2003年に 公立みつぎ総合病院の事業管理者となり、地域の医療・介護・福祉を一手に担う責任者となり、まさに“山口王国”を築き上げました。私自身も1990年代から2000年代前半にかけて幾度か取材でお会いしていますが、その行動力、リーダーシップ、政治力に圧倒された記憶があります。しかし、2005年に御調町が尾道市と合併すると、病院は市の管轄下となり存在感も薄れ始め、山口氏の権勢も徐々に勢いを失っていきました。それでも山口氏は2022年に90歳で亡くなるまで、公立みつぎ総合病院名誉院長として、「地域包括ケアシステム」の全国への普及・定着に力を尽くしました。「地域包括ケアシステム」を全国に普及・定着させた功績は大きい尾道市の人口は現在約12万人、うち旧御調町の人口は約6,000人(2022年の段階で6,426人)です。山口氏が御調町に着任した頃の1965年で約9,800人、1980年段階で約8,500人でしたから、せっかく作り上げた“王国”の地域包括ケアシステムも、人口減少の波には抗えなかったということでしょう。それでも、「会社の寿命は30年」で言われる30年ではなく、50年近く存続し、「地域包括ケアシステム」という概念を全国に普及・定着させたのですから、山口氏と公立みつぎ総合病院の功績は大きく、その存在意義はあったといえるでしょう。とは言うものの、人口約6,000人でこれからも減り続ける御調町の介護施設群を「欲しい」と考える事業者はいるのでしょうか。民間移譲の今後のなりゆきに注目したいと思います。

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看護師はAIを受け入れるか?カギは、感情論より有用性の実感【論文から学ぶ看護の新常識】第39回

看護師はAIを受け入れるか?カギは、感情論より有用性の実感注目されている看護現場へのAI導入。最新の研究結果から、看護師の導入意図を左右するのは、AIに対する「不安」よりも、その有用性を理解する「信念」とシステムへの「信頼」である可能性が示された。Guy Pare氏らの研究で、JMIR Nursing誌2025年9月5日号に掲載された。看護師の業務へのAI導入意向:カナダにおける調査研究研究チームは、看護師が自身の業務にAIを取り入れようとする意図に影響を与える主要な要因を特定することを目的に、調査研究を行った。カナダ、ケベック州の看護職団体の会員3,000人を対象にオンライン調査を実施。307人の看護師が全質問票に回答した。データは記述統計と部分的最小二乗構造方程式モデルを用いて分析した。主な結果は以下の通り。看護師のAIの役割に関する信念(AIは有用であるという認知的評価)(パス係数[β]=0.47、p論文はこちらPare G, et al. JMIR Nurs. 2025;8:e76795.

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血液学における補体系の探求:生物学的洞察と新たな治療の展望/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月10日、植田 康敬氏(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)、小原 直氏(筑波大学 血液内科)を座長に、シンポジウム3「血液学における補体系の探求:生物学的洞察と新たな治療の展望」が行われた。登壇者は、井上 徳光氏(和歌山県立医科大学 分子遺伝学講座)、Dimitrios Mastellos氏(ギリシャ・Division of Biodiagnostic Sciences and Technologies, INRASTES National Center for Scientific Research "Demokritos")、Christoph Schmidt氏(ドイツ・University of Ulm Medical Center)、宮田 敏行氏(国立循環器病研究センター 脳血管内科)。さまざまな血液疾患における補体マーカーの可能性 最初の発表で、井上氏は「補体マーカーを開発することで、さまざまな血液疾患に対する補体阻害薬の適切な使用が可能になるのではないか」と述べた。 補体系は、病原体や宿主の老廃物の除去を担う重要な自然免疫系の1つであり、3つの経路(古典経路、レクチン経路、代替経路)により活性化されることが知られている。古典経路とレクチン経路は、それぞれ免疫複合体と異常な糖鎖構造を認識することで活性化される。一方、代替経路は、低い活性化レベルを維持し、古典経路とレクチン経路により活性化された作用を増幅する働きを有している。補体系の不適切な過剰活性化は、補体経路のさまざまな段階で、液相および膜結合型の調節タンパク質によって制御されており、これらの調節タンパク質の遺伝的または後天的な機能不全が制御不能な補体活性化につながり、組織損傷や炎症を引き起こす可能性があるといわれている。 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、寒冷凝集素症などの補体介在性血液疾患は、それぞれ異なる分子メカニズムにより溶血性貧血や血栓症を引き起こすことが知られている。aHUSは補体介在性血栓性微小血管症(TMA)であるが、他の二次性TMAとの鑑別が困難なケースもある。そのため、補体活性化の程度や経路を正確かつ迅速に判定できる補体マーカーの開発はきわめて重要であると考えられる。井上氏らは、二次性TMAの1つである移植関連TMAにおいて、補体活性マーカーBaが優れた予測マーカーである可能性を報告した。補体標的療法の拡大における今後の課題 これまで補体は、侵入病原体に対する宿主防御と、アポトーシス細胞の残骸除去による組織恒常性維持という2つのメカニズムを担う、自然免疫の重要な体液性エフェクターであると考えられてきた。しかし近年、補体には自然免疫で知られていた従来の役割を超える機能があることを示唆するエビデンスが増えている。 補体は、細胞内外のさまざまなパターン認識システムやシグナル伝達経路により制御され、これらが相互作用することで自然免疫や獲得免疫を調整している。しかし、このように厳密な恒常性維持制御が働いているにもかかわらず、補体の活性化が制御不全に陥ると、組織損傷や宿主炎症の一因となることがあり、注意が必要である。 近年、補体のエフェクター機能への関心が再び高まっている。補体エフェクターは、疾患や病態に広く影響を及ぼすことから、補体標的療法の臨床応用が進められてきた。その結果、補体特異的薬剤の承認件数はさまざまな適応症で増加しており、今後さらに拡大していくことが期待されている。 しかし、補体標的療法の拡大にはいくつかの課題が残されている。今後の課題として、Mastellos氏は「個別化医療へのアプローチ」「薬物投与経路の最適化」「治療アルゴリズムに反映できる、信頼性の高いPK/PDモニタリング」「介入期間」「中枢神経系疾患に対応したBBB透過性治療法」などを挙げ、講演を締めくくった。PNH治療における近位補体阻害薬への期待 補体標的療法は、2007年にC5阻害薬がPNH治療薬として承認されたことで幕を開けた。それ以来、11の疾患に対して12種類の補体阻害薬が承認されている。C5阻害薬は、PNHにおける血栓性合併症を抑制し、平均余命の改善を示した。しかし、aHUSとは異なり、PNH患者の中にはC5阻害薬による十分な治療を行っているにもかかわらずPNH症状が持続する場合がある。また、ブレイクスルー溶血や血管外溶血は、完全奏効が得られない要因の1つとなっており、依然としてPNH治療における重要な課題となっていた。 近年のメカニズム研究により、C5阻害薬での治療における予期せぬブレイクスルー溶血の要因となる補体経路が特定され、その対処方法も明らかになってきた。その結果、近位補体を標的とした薬剤開発が加速し、現在では、近位補体阻害薬であるペグセタコプランなどのC3阻害薬や補体B因子阻害薬、C5阻害薬と補体D因子阻害薬の併用療法によってブレイクスルー溶血の一部は改善可能となった。 最後にSchmidt氏は「これからのPNH治療の精度向上を目指すためにも、臨床医はPNH治療における補体の役割および新たな近位補体阻害薬についてより深く理解することが重要である」と述べた。補体活性化、4つ目の新たな活性化経路 補体系は自然免疫の重要な構成要素であり、主に3つの経路が知られている。最近、新たに報告された4つ目の補体活性化経路について、宮田氏が解説を行った。 主な活性化経路は次のとおりである。・グランザイムKがC4とC2を切断し、C3コンバターゼC4b2bを生成する。・このC3コンバターゼは、C3をC3bに切断し、C5コンバターゼを形成する。・最終的に、アナフィラトキシンC3aとC5a、オプソニンC3b/iC3b、膜侵襲複合体(MAC)C5b-9を生成する。 また、補体活性化が凝固に及ぼす影響の違いについても解説を行った。・C3aは、C3a受容体を介して血小板を活性化する。・C5aは、組織因子の発現と白血球上のホスファチジルセリンを誘導し、凝固を促進する。・MAC、C5b-9は、細胞内Ca2+を増加させる膜貫通孔を形成する。これにより、Ca2+が流入し、TMEM16リン脂質スクランブラーゼが活性化され、血小板および内皮細胞上の陰イオン性ホスファチジルセリンを細胞外に露出させる。ホスファチジルセリンの露出により、さらに凝固カスケードやフィブリン沈着を促進する。 これら補体活性化のさまざまな経路や凝固反応メカニズムの違いを理解することは、補体介在性血液疾患の治療や補体標的薬の選択に役立つと考えられる。

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第1/2世代EGFR-TKI後にCNS進行したNSCLCへのオシメルチニブ(WJOG12819L/KISEKI)/日本肺学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療の標準治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のオシメルチニブが用いられているが、第1/2世代のEGFR-TKIが用いられる場合もある。ただし、本邦では第1/2世代EGFR-TKIを用いた1次治療で進行が認められた場合、EGFR T790M変異が確認されないとオシメルチニブは適応とならない。そこで、第1/2世代EGFR-TKIを用いて治療を開始し、進行時にEGFR T790M変異が陰性(もしくは検出不能/検査困難)となったNSCLC患者に対するオシメルチニブの有用性を検討する医師主導の国内第II相試験「WJOG12819L/KISEKI試験」が実施された。第66回日本肺学会学術集会において、本試験の中枢神経系(CNS)単独の進行がみられた患者集団(コホート1)の結果を高濱 隆幸氏(近畿大学病院 腫瘍内科)が報告した。なお、第1/2世代EGFR-TKIおよびプラチナ製剤による治療後に進行を認めたEGFR T790M変異陰性集団(コホート2)の結果はすでに報告されている。コホート2における奏効割合(ORR)は29.1%、無増悪生存期間(PFS)中央値は4.07ヵ月であり、主要評価項目が達成された1)。・対象:以下の適格基準を満たすEGFR-TKI既治療のEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者17例<主な適格基準>(1)20歳以上(2)初回EGFR-TKI投与前にEGFR-TKI感受性変異を検出(3)ECOG PS0~2(4)第1/2世代EGFR-TKI治療開始後にCNS進行のみを確認(5)CNS進行後に採取した組織もしくは血漿サンプルでEGFR T790M変異陰性(もしくは検出不能/検査困難)・介入:オシメルチニブ80mg/日・評価項目:[主要評価項目]CNS ORR[副次評価項目]安全性[探索的評価項目]CNS PFSなど・解析計画:CNS ORRの95%信頼区間(CI)の下限が20%を上回った場合に、主要評価項目達成とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は69歳(範囲:47~84)、PS0/1の割合は47.1%/52.9%であった。1次治療開始前のEGFR遺伝子変異の内訳(exon19欠失変異/L858R変異)は、47.1%/52.9%であった。・CNS ORRは47.1%(95%CI:23.0~72.2)であり、95%CIの下限値が20%を上回ったことから、主要評価項目が達成された。・CNS PFS中央値は14.6ヵ月であった。 本結果について、高濱氏は「組織検体が得られていない患者では、EGFR T790M変異が陰性であることを証明することが難しいというリミテーションが存在する」としつつ、「EGFR T790M変異陰性もしくは不明の患者において、オシメルチニブはCNSへの一定の奏効を示した」と結論をまとめた。

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医師の約3割が肥満度1以上の肥満に該当/医師1,000人アンケート

 わが国にはBMIが25以上の「肥満」と定義される人は、約2,800万人と推計され、BMIが35以上の高度肥満者の増加も報告されている。従来、肥満症の治療では、食事療法、運動療法、認知行動療法、外科的療法が行われてきたが、近年、治療薬も登場したことで「肥満」・「肥満症」にスポットライトが当たっている。一方で、診療する側の医師も、診療や論文作成やカンファレンスなどで座位の時間が多く、運動不足となり、体型も気になるところである。CareNet.comでは、2025年10月15~21日にかけて、会員医師1,000人(うち糖尿病・代謝・内分泌科の医師100人を含む)に「医師の肥満度とその実態」について聞いた。肥満で困ることは服選びや購入場所が制限されること 質問1で「BMIはいくつか(肥満度は『肥満症診療ガイドライン2022』に準拠)」(単回答)」を聞いたところ、18.5以上25未満(普通体重)が61%、25以上30未満(肥満度1度)が25%、18.5未満(低体重)が6%の順で多く、肥満でない医師が約7割を占めた。 質問2で肥満度1以上の医師に「実施している肥満解消法や予防法」(複数回答)を聞いたところ、「食事や飲み物への配慮」が68%、「定期的な運動、意識的な運動」が64%、「何もしていない」が12%の順で多かった。診療科による比較では、糖尿病・代謝・内分泌科以外の医師で「市販薬の使用」が7%と肥満の予防法に差があった。 質問3で肥満度1以上の医師に「肥満の原因は何か」(複数回答)を聞いたところ、「食事や飲料の摂取カロリーが多すぎる」が75%、「運動不足」が66%、「ストレスなどの影響」が26%の順で多かった。なお、診療科による比較では、糖尿病・代謝・内分泌科の医師で「運動不足」を挙げる医師が一番多かった。 質問4で肥満度1以上の医師に「肥満、肥満体型で困ること」(複数回答)を聞いたところ、「衣服のデザインやサイズ、購入場所が限られる」が30%、「仕事や日常生活の動作に支障」が28%、同順位で「周囲の人からの視線」、「運動が困難」、「とくに困ることはない」が24%の順で多かった。また、診療科による比較では、糖尿病・代謝・内分泌科の医師で「運動が困難」、「周囲の人からの視線」の順で多かった。 質問5で「今後、肥満解消や肥満予防法で試してみたいもの」(複数回答)を聞いたところ、「運動療法」が57%、「食事療法」が48%、「とくにない」が23%の順で多かった。また、診療科による比較では、「食事療法」、「運動療法」、「薬物療法」で回答が分かれていた。 質問6で「肥満/肥満症」にまつわるエピソードについて聞いたところ以下のような回答があった。【ダイエット成功のエピソード】 ・カロリーのある飲料水、とくに果糖ブドウ糖の含まれているものは制限するようにしている(50代/呼吸器内科) ・運動を生活の中に取り入れて、実践することで自然に体型維持が今もできている(40代/消化器内科)【ダイエット失敗のエピソード】 ・過去に15kg程度の減量に成功したが、5~6年をかけて20kgリバウンドして太った(50代/麻酔科) ・適度な運動はかえって食事やビールを美味しくし、より太る(60代/耳鼻咽喉科)【肥満/肥満症での課題など】 ・ダイエットのアドバイスが奏功しても、患者さんが必ずリバウンドする。リバウンドをどうするかが、肥満症治療の最大のポイント(60代/病理診断科) ・「フルーツは体に良いので控える必要がない」と思っている患者さんが多い(60代/糖尿病・代謝・内分泌内科)【患者さんへの指導例】 ・ステロイド服薬中の患者さんには、炭水化物の摂取と体重の増加の関係についてよく説明している(60代/内科) ・少し痩せてからウォーキングなどの軽い運動から開始させる。突然激しい運動はさせない(60代/精神科)■参考医師の肥満度とその実態について

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プライマリ・ケア医が「意味」を感じる仕事は何か/筑波大・慶應大

 身近で医療を受診できるクリニックや診療所などでプライマリ・ケア医(PCP)の活躍のフィールドは広い。患者さんやその家族全般を知る家庭医としての役割も大きい。では、PCPは、どのような仕事に「意味」を感じることができているのだろうか。このテーマに関して筑波大学医学医療系地域総合診療医学講座の山本 由布氏らの研究グループは、慶應義塾大学と共同でPCPにアンケートを実施した。その結果、PCPは「多様な健康問題の管理」など6つの項目について「意味」を感じていることがわかった。この内容はBMC Primary Care誌2025年10月28日オンライン版に掲載された。プライマリ・ケア医が「意味」を感じる仕事には時間、地域も関係 研究グループは、2021年10月~2022年2月にかけてわが国の診療所や小規模病院に勤務する日本プライマリ・ケア連合会(JPCA)認定家庭医またはプライマリ・ケア専門医を対象に、「医師としての仕事において意味を感じた経験」について半構造化インタビューを実施した。面接は、対面またはビデオ通話で行い、得られたデータは逐語的に書き起こし、帰納的テーマ分析を用いてデータ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・14人の医師がインタビュー調査に参加した。・「意味」を感じると思う仕事は以下の6つだった。(1)多様な健康問題への対応(2)患者・家族・問題への包括的アプローチ(3)継続性によって築かれる患者との信頼関係(4)専門職間連携による複雑な問題を抱える患者の支援経験(5)医療従事者・医学生教育への貢献(6)地域社会・社会への貢献 研究グループは、この結果から「PCPは主に2つの経路を通じて仕事に意味を見いだしている。第一に、実践を通じ自身の臨床能力を向上させること、第二に、患者さんやより広い地域社会への貢献を通じて充実感を経験することである。仕事の意味に関連するPCPの具体的な経験を明らかにすることは、さまざまな環境で働くPCPを鼓舞する可能性がある」と結論付けている。

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小児インフルワクチン、初回2回接種の有効性は3歳未満で顕著/メタ解析

 世界保健機関(WHO)は、インフルエンザワクチン未接種の生後6ヵ月~9歳未満の小児に対し、少なくとも4週間の間隔を空けて2回接種し、その後は毎年1回接種することを推奨している。オーストラリア・メルボルン大学のJessie J. Goldsmith氏らは、既接種歴のない小児を対象に、1回と2回接種の効果の違いをメタ解析により検証した。JAMA Network Open誌2025年10月3日号掲載の報告。 研究者らは、MEDLINE、EMBASE、CINAHLで創刊から2025年3月24日までに発表された論文を対象に検索を行った。研究対象シーズン以前にインフルエンザワクチンを接種したことがない9歳未満の小児を対象に、1回接種と2回接種におけるワクチン有効性(VE)とその差を推定した。 主な結果は以下のとおり。・本メタ分析では51研究、41万5,050例の参加者が対象となった。・不活化インフルエンザワクチンにおいて、2回目接種による追加的VEは、9歳未満では15パーセントポイント(pp)(95%信頼区間[CI]:−2.8~33)であった一方、3歳未満では28pp(95%CI:4.7~51)であった。3歳未満の小児では、統計的に有意なワクチン有効性の向上が推定されたが、対象年齢を9歳未満の児童に拡大した場合、有意な増加は認められなかった。・生ワクチンの2回目接種に伴う追加的効果を評価するには、十分な推定値が得られなかった。 研究者らは「われわれの知見は、不活化インフルエンザワクチンの2回接種が、3歳未満のインフルエンザワクチン未接種児に対して追加的な保護効果をもたらすものの、その効果は年齢と共に減弱することを示唆している。2回接種が有益な年齢層を特定するためには、両ワクチンタイプにおける年齢別の2回接種の影響を評価する高品質の研究が追加で必要である」とまとめた。

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平均気温の変化により誘発される精神疾患は?

 気温変化や緯度勾配といった潜在的な環境要因が精神疾患に及ぼす影響は、これまで十分に研究されていなかった。キプロス大学のSofia Philippou氏らは、地理的緯度と気温が精神疾患の罹患率にどのように関連しているかを調査するため、本プロジェクトを実施した。Brain and Behavior誌2025年10月号の報告。 201ヵ国を対象に、年間平均気温と7つの主要な精神疾患(うつ病、気分変調症、双極症、不安症、摂食障害、自閉スペクトラム症、統合失調症)の年齢調整罹患率(有病率)を分析し、線形回帰分析を実施した。また、これらの相関データがすでに発表されている原著論文によって裏付けられているかどうかを検証するため、系統的レビューも実施した。 主な結果は以下のとおり。・線形回帰分析では、摂食障害、自閉スペクトラム症、統合失調症の3つの精神疾患において、年間平均気温と年齢調整罹患率の間に有意な相関関係が認められた(p<0.0001)。・系統的レビュー分析では、自閉スペクトラム症と統合失調症の罹患率は地理的要因および気候要因の影響を受ける可能性が示唆された。・しかし、摂食障害に関する今回の知見を裏付ける既発表データは確認されなかった。 著者らは「これらの知見は、精神疾患における環境要因、遺伝的要因、社会経済的要因間の複雑な相互作用を浮き彫りにしている。精神疾患の発症機序に関与するいまだに明らかとなっていない疫学的要因を解明するためには、気温と精神疾患の罹患率との関連性について、さらなる研究が必要とされる」とまとめている。

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ウォートンジェリー由来間葉系幹細胞、心筋梗塞後の心不全を予防か/BMJ

 急性心筋梗塞発症後の患者において、ウォートンジェリー由来の間葉系幹細胞(WJ-MSC)の冠動脈内注入により、心不全の発症および心不全による再入院のリスクが有意に低減し、心血管死と心不全/心筋梗塞による再入院の複合エンドポイントが有意に改善した。イラン・Shiraz University of Medical SciencesのArmin Attar氏らが行った第III相試験「PREVENT-TAHA8試験」の結果で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年10月29日号で報告された。なお、本論文はBMJ誌のウェブサイトに掲載後、いくつかの問題点(データの不整合、年齢基準を満たさない参加者の組み入れの懸念、未申告の利益相反の懸念など)が指摘され、これらの解決と掲載後の内容の変更に必要な措置の検討が進められている。イランの無作為化対照比較優越性試験 PREVENT-TAHA8試験は、イラン・シーラーズ市の3つの病院で実施した単盲検無作為化対照比較優越性試験であり、2021年9月~2022年11月に参加者を募集した(Office of the Vice-Chancellor for Research of Shiraz University of Medical Sciencesの助成を受けた)。 年齢18~65歳、試験登録日前の3~7日以内に初回のST上昇型急性前壁心筋梗塞を発症し、心エコー検査で左室駆出率<40%であり、プライマリPCIが成功した患者396例を対象とした。 これらの参加者を、1対2の割合で介入群(136例、平均年齢57.8[SD 10.7]歳、男性85%)または対照群(260例、59.2[10.9]歳、79%)に無作為に割り付けた。介入群では標準治療に加え、同種WJ-MSCを冠動脈内に注入した。対照群は標準治療のみを受けた。 主要エンドポイントは心不全の発症とした。副次エンドポイントは、心不全による再入院、全死因死亡、心血管死、心筋梗塞による再入院などであった。また、心筋梗塞発症から6ヵ月までの左室駆出率の変化を両群で比較した。心筋梗塞による再入院、全死因死亡、心血管死には差がない 追跡期間中央値33.2ヵ月の時点における心不全の発症率は、対照群が100人年当たり6.48であったのに対し、介入群は2.77と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.21~0.89、p=0.024)。 また、心不全による再入院(介入群0.92 vs.対照群4.20/100人年、HR:0.22、95%CI:0.06~0.74、p=0.015)、心血管死と心筋梗塞/心不全による再入院の複合エンドポイント(2.80 vs.7.16/100人年、0.39、0.19~0.82、p=0.012)は、いずれも介入群で有意に優れた。 一方、心筋梗塞による再入院(介入群1.23 vs.対照群3.06/100人年、HR:0.40、95%CI:0.14~1.19、p=0.10)、全死因死亡(1.81 vs.1.66/100人年、1.10、0.40~3.02、p=0.86)、心血管死(0.91 vs.1.33/100人年、0.68、0.18~2.57、p=0.57)については、両群間に有意差を認めなかった。左室駆出率の改善度も優れる 左室駆出率はベースラインから6ヵ月までに、介入群で14.28%(32.97%から47.14%へ)、対照群で8.16%(33.58%から41.66%へ)、それぞれ有意に上昇した。この左室駆出率の改善は、対照群に比べ介入群で有意に良好だった(β=5.88%、95%CI:4.00~7.76、p<0.001)。 入院期間中に、不整脈、過敏反応、再梗塞を含むあらゆる有害事象の監視を厳重に行い、腫瘍形成の監視を中心に長期の追跡調査を実施したが、有害事象の報告はなかった。 著者は、「本試験をこの分野の他の試験と明確に区別する特徴として、(1)左室駆出率などの代替マーカーではなく臨床エンドポイントに焦点を当てたこと、(2)骨髄由来単核細胞ではなくウォートンジェリー由来間葉系幹細胞を使用したことが挙げられる」「この技法は、心筋梗塞後の有用な補助的処置として、心筋梗塞誘発性の心不全の発症を予防し、将来の有害事象のリスク低減に寄与する可能性が示唆される」としている。

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小児のアトピー性皮膚炎、特発性慢性蕁麻疹の在宅治療に期待(デュピルマブ皮下注200mgペン発売)/サノフィ

 サノフィは、小児のアトピー性皮膚炎および特発性の慢性蕁麻疹の治療薬デュピルマブ(商品名:デュピクセント)の皮下注200mgペンを11月17日に発売した。 デュピルマブは、2型炎症において中心的な役割を果たすタンパク質であるIL-4およびIL-13の作用を阻害する、完全ヒト型モノクローナル抗体製剤。気管支喘息などのすでに承認された適応症に加え、原因不明の慢性そう痒症、慢性単純性苔癬などの開発も行っている。わが国では2025年2月に小児の気管支喘息、2025年4月に水疱性類天疱瘡に対して適応追加申請を行っている。 今回発売された「200mgペン」は、「デュピルマブ製剤」として在宅自己注射指導管理料の対象薬剤として指定されている。「あてる、押す」の2ステップによる簡便な操作で、200mgシリンジ製剤と同一組成の薬液を自動的に注入するペン型の注射剤。同社では、小児患者の在宅自己注射時の利便性向上が期待でき、新たな治療選択肢になると期待を寄せている。<製品概要>※今回の発売製品の情報のみ記載一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)商品名:デュピクセント皮下注200mgペン効能または効果:・既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患 アトピー性皮膚炎 特発性の慢性蕁麻疹※最適使用推進ガイドライン対象用法および用量:〔アトピー性皮膚炎〕通常、生後6ヵ月以上の小児にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として体重に応じて以下を皮下投与する。5kg以上15kg未満:1回200mgを4週間隔15kg以上30kg未満:1回300mgを4週間隔30kg以上60kg未満:初回に400mg、その後は1回200mgを2週間隔60kg以上:初回に600mg、その後は1回300mgを2週間隔〔特発性の慢性蕁麻疹〕通常、12歳以上の小児にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として体重に応じて以下を皮下投与する。30kg以上60kg未満:初回に400mg、その後は1回200mgを2週間隔60kg以上:初回に600mg、その後は1回300mgを2週間隔薬価:デュピクセント皮下注200mgペン:3万9,706円(キット)製造販売承認日:2023年9月25日薬価基準収載日:2025年11月12日発売日:2025年11月17日製造販売元:サノフィ株式会社

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抗胸腺細胞グロブリンは発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能低下を抑制する(解説:住谷哲氏)

 膵島関連自己抗体が陽性の1型糖尿病は正常耐糖能であるステージ1、耐糖能異常はあるが糖尿病を発症していないステージ2、そして糖尿病を発症してインスリン投与が必要となるステージ3に進行する1)。抗CD3抗体であるteplizumabはステージ2からステージ3への進行を抑制することから、8歳以上のステージ2の1型糖尿病患者への投与が2022年FDAで承認された。現在わが国でも承認のための臨床試験が進行中である。さらにステージ3に相当する発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能の低下もteplizumabの投与により抑制されることが報告された2)。 抗胸腺細胞グロブリンantithymocyte globulin(ATG)は、わが国でも、抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン製剤が商品名アトガム、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン製剤が商品名サイモグロブリンとして薬価収載されて使用可能である。アトガムの適応は中等症以上の再生不良貧血のみであるが、サイモグロブリンはそれに加えて種々の臓器移植後のGVHDに対して適応を有している。ATGは通常の投与量では免疫抑制作用 immunosuppressionを発揮するが、低用量では免疫調節作用immunomodulationを発揮し、発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能低下を抑制する可能性が示唆されている3)。 そこでATGの適切な投与量を決定するために第II相用量設定試験である本試験が実施された。本試験ではadaptive designが用いられたが、adaptive designは中間解析の結果に基づき、各群への被験者の割り付け割合の変更、特定の群の中止、目標症例数の見直しなど、進行中の臨床試験のデザインに変更を加える多段階試験の総称である4)。試験の結果、これまでの臨床試験に主として用いられてきた2.5mg/kgと比較して、低用量である0.5mg/kgは同様に有効であり有害事象の発生がより少ないことが明らかにされた。 今回の第II相の結果に基づいて第III相試験が遠からず実施されることになると思われる。ATGは異種抗体であり、頻回投与による効果の減弱や有害事象としての種々のアレルギー反応は避けられない。コストとベネフィット、およびリスクとベネフィットとのバランスの追求が今後の課題となるだろう。

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サンフランシスコのTCT2025で大きな収穫【臨床留学通信 from Boston】第17回

サンフランシスコのTCT2025で大きな収穫先日、TCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)2025に参加してきました。今年は例年と異なり土日も含むスケジュールだったためか、参加者が多い印象を受けました。TAVR vs.SAVRの7年データ1)を筆頭に、昨今のTCTはさまざまなLate breaking trialが発表されます。とくにコロナ禍以降、AHA(米国心臓協会学術集会)の開催に近づけて、より多くのLate breakingをTCTで発表させようという学会側の意図が感じられます。開催場所は、2年前と同様のサンフランシスコでした。今回は私たちのチーム内で5つの発表があり、そのうち1つはCirculation: Cardiovascular Intervention誌との同時発表ができたことは、大きな収穫でした2)。とはいえ、サンフランシスコを訪れるのもこれで3回目。正直なところ少々飽きてしまい、3時間の時差ぼけも体に結構応えます。また、これまたコロナ以降よく言われることですが、サンフランシスコの治安は悪化しており、ホームレスや薬物中毒者を多く見かけます。そのため、あまり夜遅くは出歩かないようにしていました。学会では、MGH(マサチューセッツ総合病院)でお世話になったKenneth Rosenfield先生(通称ケニー、もしくはケン)にもお会いしました。彼は多分70歳くらいなのですが、今も元気にカテーテルを施術されています。そんなケニーがTCTのMaster Operator Awardで表彰されている姿を見ると、素晴らしいと思うと同時に、自分も70~75歳くらいまでは頑張りたいなと改めて思いました。そのためには、少しは筋トレして、放射線防護服による腰痛を予防しないといけませんね。ColumnTCTの後、オレゴンの河田 宏先生の病院にお邪魔させていただきました。河田先生は、以前ケアネットで「米国臨床留学記」を連載されていました。これまで数年にわたり何かと相談に乗っていただいていたのですが、実はお会いするのは今回が初めて。共通の友人もいたため話に花が咲きました。美味しいステーキまでご馳走になってしまいました。画像を拡大する参考1)Leon MB, et al. Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Low-Risk Patients at 7 Years. N Engl J Med. 2025 Oct 27. [Epub ahead of print]2)Kiyohara Y, Kuno T, et al. Comparison of Limus and Paclitaxel Drug-Coated Balloons, Second-Generation or Newer Drug-Eluting Stents, and Balloon Angioplasty: A Network Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Circ Cardiovasc Interv. 2025 Oct 27. [Epub ahead of print]

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老いの心、寂しさと怒りの二人三脚【外来で役立つ!認知症Topics】第35回

認知症医療は「知」に偏っていないか?認知症のことを以前は「痴呆」といった。「痴」とは病ダレに「知」と書くことから、これは知性の病を意味している。しかし、この病気には感情や意志・意欲面の症状もみられる。それなのに認知症医療においては、この「知」ばかりが重視され過ぎているのではないかと、筆者は思うようになった。心理学や精神医学の領域では、人間の基本的な精神活動を意味する「知情意」という言葉が使われる。「知」とは「知性や知恵」を、「情」とは「喜怒哀楽などの感情」で、「意」は「意欲や意志」を指す。哲学者カントによれば、この3要素は相互に関係し合っており、それらのバランスを保ち調和させることが、人格形成や人間性の向上をもたらすとされる。この考え方が「知情意」にまとめられている。ところで認知症に関する情報媒体は、主に2つに分けられると思う。まずは本稿もその1つだが、症状や検査、治療法などを扱う医学的な記述である。これは知能とか記憶という「知」を主として扱うから、当事者や家族の「情」や「意」からみた認知症の記載は概して乏しい。もう1つは、『恍惚の人』(有吉 佐和子著)のような文学、『ケアニン』シリーズ、『毎日がアルツハイマー』(関口 祐加監督)のような映画という芸術媒体もある。こうした芸術は当事者や家族の「情」や「意」を描くが、そう多いものではないから、社会一般に浸透するのは難しい。「老い≒寂しさ」という本質筆者は、高齢者や認知症者の臨床活動において、心得るべき根本は「老≒寂しさ」ではないかと思う。この「寂しさ」とは、高齢者が経験する退職、死別、病、老いなどがもたらす活動範囲の狭まりや社会的孤立と捉えられがちだ。しかしその本質は、「相手が期待するほど自分のことを思ってくれていない」と感じることかもしれない。逆に、この寂しさを癒すポイントは、高齢者が「次世代から受け入れられたと感じること」、つまり承認欲求が満たされることだろう。高齢者の二面性:「老の知」と「不機嫌」敬老の日があるように、高齢者は敬うべき対象とされている。敬われる理由は、高齢者には実経験や「老の知」があるからだといわれてきた。たとえば40年前に活躍したジャーナリスト草柳 大蔵氏は、老人の価値を次のようにまとめている。「老人には老人の値打ちがある。成功と失敗の情報を実例として蓄積している。後輩の失敗を温かく見守り、才能を伸ばしてやり、対立や抗争のエネルギーを修復してもっと有効な対象に向けさせることができるのも老人であればこそである」ところが、その裏の面もある。要約すれば「寂しさ」と「怒り・不機嫌」だろう。医師の日野原 重明氏は、75歳頃に次のように述べている1)。「人は老いるにつれ、心の柔軟性がなくなって頑なになり、他との妥協を許さず、気も短くなって、怒りやすくなる。一方、何でもマイペースでしたくなる。人間が老いるまでに平素から自制心と協調心を十分に身につけていない限り、老人は社会や家庭から孤立する」筆者の穿った見方ながら、後期高齢の域に達した日野原氏が、自戒を込めて著された言葉かもしれない。また、宗教評論家のひろ さちや氏は、これに関して、「店で少しでも待たされると腹が立つ」というご自身の経験を踏まえて、次のように述べている2)。「年を取ると欲望(支配欲や性欲等)は小さくなる。しかしたとえば、『他人から大事にされたい』といった老人特有の小さな欲望が常に膨れ上がっている。だから逆に少しでもないがしろにされると、すぐにかっとなる」老人が不機嫌であったり怒りっぽかったりする理由はさまざまだろう。できないことが増える現実を受け入れたくない、ふがいない情けない自分に腹が立っている、などである。筆者自身は、とくに男性の場合、十把一絡げに扱われたと感じたときなど、「『この誇り高き俺』に対するリスペクトが足りない!」と反射的な怒りが炸裂しやすいと見てきた。寂しさと怒りの「悪循環」さて、本稿が注目するのは、「寂しさ」と「怒り」の関係だ。このポイントは、両者が互いに相乗効果を持つことである。逆説的かもしれないが、怒りは心の奥底にある寂しさを、自分にも他人にも隠す「仮面」のようだ。というのは、いつも寂しさを感じている人は、それを恥じたり、満たされない思いに沈んだり、さらに「自分は除け者にされている」と感じている。こうした負の感情を、「怒る」ことで隠すから仮面である。また怒りは、自分に束の間のパワーを感じさせ、征服感をもたらすこともある。そうなれば、刹那であっても、孤独感に伴う孤立無援の気持ちや無力感から救われる。その反面、怒りは、寂しい本人と周囲との間に「壁」を作り、寂しさを増強する。つまり人は寂しさを感じるとき、「自分は世間から軽蔑されていないか?」あるいは「自分は誤解されているのではないか?」と過敏になるものだ。その結果、イライラしやすく、憎まれ口を利き、喧嘩腰にもなる。こうなると他人との間の溝はさらに広がり、寂しい人はその孤独感をより深めてしまう。以上が、寂しさと怒りの相乗効果あるいは悪循環である。問題は、この寂しさや怒りの気持ちを抑えるために、本人はどうするか?そして、われわれはどう対応するか?である。紙面の関係で今回はここで終了とするが、次回につなぐ接点を挙げておく。俳優の山本 學氏は、対談の中で、ご自身の寂しさへの対応法として次のように語っている3)。「歳を重ねて一人暮らしをしていると、急に寂しくなるときがあります。そういう時にはね、思い切って泣く。声を上げておいおいと泣くんですよ。」参考文献1)日野原 重明. 老いの意味するもの 老いのパラダイム(老いの発見2). 岩波書店;1986.2)ひろ さちや. 諸行無常を生きる(角川oneテーマ21). 角川書店;2011.3)山本 學, 朝田 隆. 老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること. アスコム;2025.

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進行性家族性肝内胆汁うっ滞症のそう痒治療薬「ビルベイ顆粒200μg/600μg」【最新!DI情報】第51回

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症のそう痒治療薬「ビルベイ顆粒200μg/600μg」今回は、回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬「オデビキシバット水和物(商品名:ビルベイ顆粒200μg/600μg、製造販売元:IPSEN)」を紹介します。本剤は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒の治療薬であり、そう痒に苦しむ本症患者のQOL改善が期待されています。<効能・効果>進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。なお、ABCB11遺伝子変異を有する患者のうち、胆汁酸塩排出ポンプ蛋白質(BSEP)の機能を完全に喪失する変異を有する患者では本剤の効果は期待できません。<用法・用量>通常、オデビキシバットとして40μg/kgを1日1回朝食時に経口投与します。なお、効果不十分な場合には、120μg/kgを1日1回に増量することができますが、1日最高用量として7,200μgを超えないようにします。体重別の1日投与量は下表を参考にします(40μg/kg/日の場合)。<安全性>副作用として、血中ビリルビン増加、ALT増加、下痢、嘔吐、腹痛、ビタミンD欠乏(いずれも10%以上)、肝腫大、AST増加、ビタミンE欠乏(いずれも1%以上10%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬です。進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒を改善します。2.小腸に作用して、胆汁酸の再取り込みを減少させ、血液中の胆汁酸濃度を低下させます。3.朝食(1日の最初の食事)時に、飲食物とともに飲んでください。4.カプセルは容器なのでカプセルごと飲まず、飲む直前にカプセル型容器を開けて顆粒剤のみを服用してください。<ここがポイント!>進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、胆汁酸の分泌および輸送に関与する遺伝子の変異によって引き起こされる希少疾患であり、一般に乳児期および小児期初期に発症します。胆汁うっ滞により、ビリルビンや胆汁酸などの胆汁成分が肝臓内に蓄積すると、肝障害が進行し、肝硬変や肝不全、さらには肝細胞がんを発症することがあります。PFICと診断された小児では、黄疸に加えて重度のそう痒が認められることが多く、とくに重度のそう痒の緩和はQOL(生活の質)向上の観点からも重要な治療目標となります。PFICは、日本では厚生労働省の指定難病(#338)に指定されています。本剤の有効成分であるオデビキシバットは、腸管に存在する回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)に可逆的に結合し、門脈系への胆汁酸の再取り込みを減少させます。これにより、肝臓への胆汁酸負荷および血清中胆汁酸濃度が低下し、胆汁うっ滞に伴うそう痒の改善が期待されます。本剤はカプセル型容器に封入された顆粒剤です。カプセルは容器であることから、投与はカプセルごとではなく容器内の顆粒剤のみを全量投与します。PFIC-1およびPFIC-2の小児患者(生後6ヵ月以上18歳以下、体重5kg超)を対象としたプラセボ対照二重盲検海外第III相試験(A4250-005試験)において、主要評価項目である「24週時までに空腹時血清中胆汁酸濃度がベースラインから70%以上低下または24週時に70μmol/L以下に達した患者の割合」は、本剤群全体で33.3%であり、本剤40μg/kg/日群および120μg/kg/日群でそれぞれ43.5%および21.1%でした。片側検定によるプラセボ群との比較では、いずれの本剤群でも高く、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(本剤群全体:片側p=0.0015、40μg/kg/日群:片側調整p=0.0015、120μg/kg/日群:片側調整p=0.0174)。

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足底の潰瘍【日常診療アップグレード】第43回

足底の潰瘍問題73歳男性。3日前、右足底に10日前にはなかった潰瘍ができているのに気が付き受診した。外傷歴はない。3週間前、新しい靴を購入して使用し始めた。既往歴は2型糖尿病、糖尿病性神経障害、高血圧である。内服薬はメトホルミン、デュラグルチド、ガバペンチン、アトルバスタチン、リシノプリルである。発熱や悪寒はない。バイタルサインは正常で、身体診察では右足底の前中央部に直径約1cmの浅い潰瘍を認める。熱感や発赤、浸出液、腫脹、圧痛はない。両足底の痛覚は低下している。足の単純X線撮影をオーダーした。

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第293回 脳の超音波洗浄がマウスで有効

脳の超音波洗浄がマウスで有効スタンフォード大学の研究者らが開発したいわば脳の超音波洗浄法が脳出血マウスで効果を示し1)、近々臨床試験が始まる運びとなっています2,3)。脳脊髄液(CSF)循環の障害は種々の神経疾患の発生と関連します。CSFや細胞間の間質液に散らばったくずの除去が滞ることは神経を傷害し、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷性脳損傷、神経変性疾患などの神経病変や症状に寄与するようです。髄膜リンパ管を薬で後押しして神経毒のくずの除去を促す治療の効果がマウス実験で示されていますが、頭蓋内の水はけをよくする薬物治療はいまだ承認されていません。くも膜下出血(SAH)のCSF排出や脳内出血(ICH)の血腫除去の手術は有効ですが、対象は最も重症な患者に限られます。薬も外科処置も不要の集束超音波(FUS)が脳の神経炎症を抑制するなどの有益な効果をもたらしうることが知られています。たとえば低強度のFUS法がアルツハイマー病を模すマウスの記憶を改善しうること4)やCSF循環を促すことが示されています。それらの先立つ研究を踏まえると、低強度FUSが中枢神経系(CNS)の病原性成分を除去して病気を治す効果を担うかもしれません。そこでスタンフォード大学のRaag Airan氏らは神経を害するくず(neurotoxic debris)の除去を促すことに特化した非侵襲性の低強度FUS法を開発し、出血性脳卒中を模すマウスでその効果を確かめました。尾から採取した血液を脳の右側の線条体に注入することでマウス一揃いを出血性脳卒中のようにし、その後3日間にそれらの半数の頭蓋には開発した方法で超音波を照射し、残り半数は超音波なしの偽治療を受けました。超音波は毎日10分間照射されました。続いて四つ角の容器にそれらのマウスを入れて感覚運動の正常さが検査されました5)。正常なマウスは角で向きを変えるときに使う脚が左右でおよそ偏りがなく、左脚を使う割合が右脚を使う割合とほぼ同じ51%でした。一方、超音波照射なしの出血性脳卒中マウスが角で向きを変えるときに左脚を使った割合は正常なマウスに比べてほど遠い27%でした。しかし超音波が頭蓋に毎日照射された出血性脳卒中マウスのその割合は正常マウスにより近い39%であり、振る舞いの改善が見て取れました。超音波照射マウスは身体機能もより保っており、非照射マウスに比べて鉄棒をより強く握れました。さらには死を防ぐ効果もあるらしく、超音波なしのマウスは脳への血の注入から1週間におよそ半数が絶命したのに対して、超音波照射マウスの死は5分の1ほどで済みました。すなわち1日わずか10分ばかりの超音波照射3回で生存率が30%ほども改善しました。安楽死させたマウスの脳組織を解析したところ、超音波は脳の免疫担当細胞のマイクログリアの圧感知タンパク質を活性化し、場違いな赤血球がより貪食されて取り除かれていました。加えて、脳のCSF循環をよくし、首のリンパ節へと不要な細胞が捨てられるのを促しました。開発された低強度FUS法は脳出血以外の脳病変も治療できそうです。超音波がだいぶ大ぶりの赤血球を脳から除去するのを促すことが確かなら、パーキンソン病やアルツハイマー病などに関係するより小ぶりなタウなどの有毒タンパク質も脳から除去できそうだとAiran氏は述べています。話が早いことにAiran氏らの低強度FUS法は米国FDAの安全性要件を満たしており、臨床試験での検討に進むことが可能です。研究チームは人が被れるヘルメット型装置を作っており、一刻を争う出血性脳卒中ではなく、まずはアルツハイマー病患者を募って試験を実施する予定です5)。スタンフォード大学の先週11日のニュースには早くも向こう数ヵ月中に臨床試験が始まるとの見通しが記されています2)。 参考 1) Azadian MM, et al. Nat Biotechnol. 2025 Nov 10. [Epub ahead of print] 2) A new ultrasound technique could help aging and injured brains / Stanford University 3) Preclinical Research: Focused Ultrasound to Noninvasively Clear Debris from the Brain / Focused Ultrasound Foundation 4) Leinenga G, et al. Mol Psychiatry. 2024;29:2408-2423. 5) Ultrasound may boost survival after a stroke by clearing brain debris / NewScientist

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睡眠障害のタイプ別、推奨される不眠症治療薬

 不眠症治療には、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)、ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)、Z薬、メラトニン受容体作動薬などの薬剤が用いられるが、これらの薬剤の有効性と安全性に関する包括的な比較は、依然として十分に行われていない。中国・長春中医薬大学のHui Liu氏らは、不眠症治療薬の有効性と安全性のプロファイルを調査し、特定の交絡因子を調整して得られた「time window」に基づき、不眠症のタイプに応じた臨床アルゴリズムを確立するため、本研究を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2025年10月10日号の報告。 2025年4月15日までに公表された関連するランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Library、Web of Science、ClinicalTrials.govより検索した。中途覚醒時間(WASO)、持続睡眠潜時(LPS)、総睡眠時間(TST)、睡眠効率(SE)などの連続変量について、フォローアップ期間と年齢で調整したベイジアンネットワークメタ回帰(NMR)分析によるペアワイズ比較を行い、RStudio 4.4.2を用いて標準平均差(SMD)を算出した。ファーマコビジランス(PV)は米国食品医薬品局の有害事象報告システム(FAERS)データベースを活用して調査し、二値変数および順序変数についてペアワイズ比較を行い、STATA 18.0 MPを用いて、オッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には、10種類の治療法を評価した合計15件(2,408例)の研究を含めた。・WASOに関して、プラセボ群と比較して、有意に優れていた薬剤は次のとおりであった。【dimdazenil:2.5mg/日】SMD=-0.388、95%信頼区間(CI):-0.608~-0.166【レンボレキサント:10mg/日】SMD=-0.624、95%CI:-0.894~-0.355【レンボレキサント:5mg/日】SMD=-0.612、95%CI:-0.88~-0.342【ダリドレキサント:25mg/日】SMD=-0.957、95%CI:-1.436~-0.479【メラトニン:6mg/日】SMD=-0.741、95%CI:-1.423~-0.044【ゾルピデム:10mg/日】SMD=-0.348、95%CI:-0.61~-0.068【doxepin:3mg/日】SMD=-0.497、95%CI:-0.713~-0.282・これらの治療法の中で、レンボレキサント10mg/日、レンボレキサント5mg/日、ダリドレキサント25mg/日、メラトニン6mg/日、doxepin 3mg/日は同等の効果を示した。・しかし、dimdazenil 2.5mg/日(SMD=0.568、95%CI:0.046~1.096)およびゾルピデム10mg/日(SMD=0.608、95%CI:0.074~1.171)は、ダリドレキサント25mg/日よりも有意に劣っていた。・フォローアップ期間で調整後においても、メラトニン6mg/日(SMD=-0.727、95%CI:-1.48~0.01)のプラセボに対する有意な優位性が失われたことを除いて、未調整解析の結果と同様であった。・しかし、メラトニン6mg/日は、10~40週目にかけて対照群と比較し、有意な優位性を示す「time window」を示した。・年齢で調整後、dimdazenil 2.5mg/日(SMD=-0.355、95%CI:-0.652~-0.1)、レンボレキサント10mg/日(SMD=-0.508、95%CI:-0.9~-0.114)、ゾルピデム10mg/日(SMD=-0.526、95%CI:-0.84~-0.158)はプラセボに対して有意な優位性を示した。・安全性に関して、神経系障害は、スボレキサント(IC025=0.212、95%CI:1.214~1.334)、レンボレキサント(IC025=0.221、95%CI:1.236~1.567)、ダリドレキサント(IC025=0.205、95%CI:1.21~1.427)、doxepin(IC025=0.066、95%CI:1.091~1.411)で安全性のシグナルが検出された。・呼吸困難については、エスゾピクロン(OR:0.556~0.669)は、ダリドレキサント、メラトニン、ゾルピデムよりも有意に低かった。一方、メラトニン(OR=1.568、95%CI:1.192~2.061、p=0.001)およびゾルピデム(OR=1.302、95%CI:1.026~1.653、p=0.03)は、スボレキサントよりも有意に高かった。・ダリドレキサントによる重度の呼吸困難の患者の割合(OR=0.256、95%CI:0.096~0.678、p=0.006)は、スボレキサントおよびレンボレキサントよりも有意に低かった。・有害事象の転帰については、zaleplon(OR=9.888、95%CI:1.124~86.944、p=0.039)は、ダリドレキサントよりも重度の呼吸困難に対する影響が有意に高かった。 著者らは「不眠症の薬剤選択は、不眠症のタイプと薬剤の安全性に基づいて行うべきである」とし、「総合的に有効性のエフェクトサイズ、time window(フォローアップ期間、年齢、不眠症のタイプ)、PV値、重篤な有害事象の発生率などを考慮すると、中途覚醒および睡眠不足を特徴とする不眠症には、ダリドレキサント25mg/日、入眠障害には、レンボレキサント10mg/日またはゾルピデム10mg/日、全体的な睡眠効率の低下には、レンボレキサントの使用が推奨される」としている。これらの知見を検証するためには、さらなる直接比較臨床試験が必要とされるとまとめている。

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SMA治療薬ヌシネルセンの高用量剤形を発売/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬であるヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)について、2025年11月12日薬価収載と同時にわが国で販売を開始した。 高用量投与レジメンについては、2025年9月19日に新用量医薬品/剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)に係る医薬品として承認を取得していた。なお、高用量投与レジメンでの剤形追加は、承認、販売ともにわが国が世界で最初となる。高用量投与で筋力の維持や呼吸機能などの改善に効果 SMAは、主に乳児期から小児期に発症する進行性の神経筋疾患で、運動神経細胞の変性・消失により筋力低下や筋萎縮を引き起こす。SMAは遺伝性疾患であり、SMN1遺伝子の欠失や変異が主な原因とされている。わが国を含む世界各国で患者が報告され、重症度や発症年齢によりI~IV型に分類される。SMAは、近年、治療法の進歩により患者さんの予後は大きく改善しているが、依然として「筋力の改善」、「呼吸・嚥下機能の改善」など、満たされていない医療ニーズが存在する。 SMA治療薬のヌシネルセンは、体内で生成される完全長Survival Motor Neuron(SMN)タンパクの量を継続的に増やすことで、運動ニューロン喪失の根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)。SMAの発症部位に到達できるように運動ニューロンが存在する中枢神経系に直接投与される。ヌシネルセンは、最長10年間治療を受けた参加者データと他に類のないリアルワールドの経験に基づき、十分に確立された安全性プロファイルを有し、さまざまな年齢や異なるタイプのSMAに持続した有効性を示してきた。 今回発売されるヌシネルセンの高用量投与レジメンは、承認済みのヌシネルセン投与レジメンと比較し、より迅速な初期投与レジメン(50mgを14日間隔で2回投与)と、より高用量の維持投与レジメン(4ヵ月ごとに28mg投与)で構成されている。製剤は、既発売の12mg製剤に加え、28mgおよび50mgの高用量製剤を新たに加えたもので、より高い運動機能改善を期待するSMA患者さんに対する治療選択肢の拡充を目的としている。<製品概要>一般名:ヌシネルセン販売名:スピンラザ髄注 12mg/28mg/50mg効能または効果:脊髄性筋萎縮症用法および用量:・スピンラザ髄注 28mg/50mg通常、ヌシネルセンとして、初回および初回投与2週間後に50mgを投与し、以降4ヵ月の間隔で28mgの投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。・スピンラザ髄注 12mg(乳児型SMA、臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測されるSMA)通常、ヌシネルセンとして、1回につき下記の用量(省略)を投与する。初回投与後、2週、4週および9週に投与し、以降4ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。・スピンラザ髄注 12mg(乳児型以外のSMA)通常、ヌシネルセンとして、1回につき下表の用量(省略)を投与する。初回投与後、4週および12週に投与し、以降6ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。薬価(いずれも1瓶):スピンラザ髄注12mg:932万424円 同28mg:966万1,483円 同50mg:977万8,481円製造販売承認日:スピンラザ髄注12mg:2017年7月3日 同28mg/50mg:2025年9月19日販売開始日:スピンラザ髄注12mg:2017年8月30日 同28mg/50mg:2025年11月12日製造販売元:バイオジェン・ジャパン株式会社

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