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コロナ診断1週目のリスク、心筋梗塞17倍・脳梗塞23倍/Circulation

 英国・国民保健サービス(National Health Service:NHS)のデータに基づき、ブリストル大学のRochelle Knight氏ら多施設共同による、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の動脈血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症、およびその他の血管イベントの長期的な発生リスクについて大規模な後ろ向きコホート研究が実施された。その結果、COVID-19の既往がある人は既往がない人と比較して、COVID-19診断から1週目の動脈血栓塞栓症の発症リスクは21.7倍、静脈血栓塞栓症の発症リスクは33.2倍と非常に高く、27〜49週目でも、それぞれ1.34倍、1.80倍のリスクがあることが判明した。とくに患者数の多かった急性心筋梗塞と虚血性脳卒中では、COVID-19診断後1週目に、それぞれ17.2倍、23.0倍リスクが増加していた。Circulation誌2022年9月20日号掲載の報告。 本研究では、英国のイングランドおよびウェールズにて、全住民の電子カルテ情報を基に、2020年1月1日~12月7日(新型コロナワクチン導入以前)におけるCOVID-19診断後の血管疾患について検討された。COVID-19診断後の動脈血栓塞栓症イベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中など)、静脈血栓塞栓症イベント(肺血栓塞栓症、下肢深部静脈血栓症、門脈血栓症、脳静脈血栓症など)、その他の血管イベント(心不全、狭心症、くも膜下出血など)の発生率を、COVID-19の診断を受けていない人との発生率を比較し、Cox回帰分析にて調整ハザード比(aHR)が推計された。 主な結果は以下のとおり。・イングランドおよびウェールズの成人約4,800万人のうち、COVID-19の診断から28日以内に入院したのは12万5,985人、入院しなかったのは131万9,789人であった。・イングランドでは、4,160万人年の追跡期間中に、26万279件の初回動脈血栓塞栓症と5万9,421件の初回静脈血栓塞栓症が発生した。・初回動脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:21.7(95%信頼区間[CI]:21.0〜22.4)、27〜49週目aHR:1.34(95%CI:1.21〜1.48)。・初回静脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:31.3~35.2)、27〜49週目aHR:1.80(95%CI:1.50~2.17)。・動脈血栓塞栓症の多くは、急性心筋梗塞(12万9,799件)、もしくは虚血性脳卒中(12万8,539件)であった。・急性心筋梗塞は、COVID-19診断後1週目aHR:17.2(95%CI:16.3~18.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.21(95%CI:1.03~1.41)となっている。・虚血性脳卒中は、COVID-19診断後1週目aHR:23.0(95%CI:22.0~24.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.62(95%CI:1.42~1.86)となっている。・静脈血栓塞栓症の多くは、肺血栓塞栓症(3万1,814件)、もしくは深部静脈血栓症(2万5,267件)であった。・肺血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:30.7~35.9)と非常に高く、2週目aHR:9.97まで低下するも、3~4週目aHR:10.5に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.61 (95%CI:1.23~2.12)となっている。・深部静脈血栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:10.8(95%CI:9.32~12.5)と非常に高く、2週目aHR:4.00まで低下するも、3~4週目aHR:4.80に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.99(95%CI:1.49~2.65)となっている。 さらに本研究では、COVID-19の重症度、人口統計学的特性、既往歴によるサブグループ解析も行われ、白人よりも黒人やアジア系のほうがハザード比が高く、過去に血栓塞栓症の既往がある人よりも既往がない人のほうが高いということが認められた。COVID-19診断後49週目における全人口の動脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.5%(7,200人相当)、静脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.25%(3,500人相当)だという。

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妊娠糖尿病歴あり、心血管・脳血管疾患リスクが45%増/BMJ

 妊娠糖尿病歴は、心血管・脳血管疾患全体および個々の疾患のリスク増加と関連しており、その関連は従来の心血管リスク因子やその後の糖尿病発症に起因しないことが、中国・北京大学第一医院のWenhui Xie氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。妊娠糖尿病歴がある女性では、心血管疾患全体のリスクが高いことが認識されてきているが、特定の心血管・脳血管疾患や静脈血栓塞栓症に対する妊娠糖尿病の影響は不明な点が多かった。BMJ誌2022年9月21日号掲載の報告。15件の観察研究、合計約900万例について解析 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane Libraryを用い、2021年11月1日までに発表された妊娠糖尿病と心血管・脳血管疾患発症との関連を報告した観察研究について検索した(2022年5月26日に更新)。 2人の研究者が独立してデータを抽出し、試験のバイアスについてはROBINS-I(Risk of Bias in Nonrandomised Studies of Interventions)を、エビデンスの質(確実性)についてはGRADEを用いて評価した。 主要評価項目は、妊娠糖尿病と、心血管・脳血管疾患全体および各種心血管・脳血管疾患との関連、副次評価項目は各種心血管・脳血管疾患および静脈血栓塞栓症との関連とした。ランダム効果モデルによりデータを統合し、リスク比とその95%信頼区間(CI)を算出し評価した。 適格基準を満たし解析に組み込まれた研究は15件であった。このうち7件はバイアスリスクが「中」、8件は「深刻」であった。妊娠糖尿病歴ありで、心血管・脳血管疾患全体のリスクが45%増加 妊娠糖尿病歴のある女性51万3,324例のうち、9,507例で心血管・脳血管疾患が確認された。一方、妊娠糖尿病歴のない女性800万人以上の対照のうち、7万8,895例に心血管・脳血管疾患が確認された。 対照と比較して妊娠糖尿病歴のある女性では、心血管・脳血管疾患全体のリスクが45%(リスク比:1.45、95%CI:1.36~1.53)、心血管疾患リスクが72%(1.72、1.40~2.11)、脳血管疾患リスクが40%(1.40、1.29~1.51)上昇した。 同様に妊娠糖尿病歴のある女性は、冠動脈疾患(1.40、1.18~1.65)、心筋梗塞(1.74、1.37~2.20)、心不全(1.62、1.29~2.05)、狭心症(2.27、1.79~2.87)、心血管手術(1.87、1.34~2.62)、脳卒中(1.45、1.29~1.63)、および虚血性脳卒中(1.49、1.29~1.71)の発症リスクが上昇した。また、静脈血栓塞栓症リスクも、妊娠糖尿病歴のある女性で28%増加することが観察された(1.28、1.13~1.46)。 心血管・脳血管疾患の転帰に関して、研究の特性および補正因子の有無で層別化したサブグループ解析では、地域(北米vs.欧州vs.アジア)(p=0.078)、試験デザイン(後ろ向きvs.前向き)(p=0.02)、データ源(全国vs.地方データベース)(p=0.005)、ROBINS-I(中vs.深刻)(p=0.04)、喫煙(p=0.03)、BMI(p=0.01)、社会経済的状態(p=0.006)、併存疾患(p=0.05)で有意差が示された。 その後糖尿病を発症しなかった女性に限ると、心血管・脳血管疾患リスクは低下したものの依然として有意なままであった(妊娠糖尿病歴のある女性全体のRR:1.45[95%CI:1.33~1.59]、その後糖尿病を発症しなかった女性のRR:1.09[1.06~1.13])。 なお、エビデンスの確実性は、「低い」または「非常に低い」と判定された。 著者は今回の結果について、「妊娠糖尿病のリスクが高い女性に対する早期介入と、妊娠糖尿病女性に対する継続的なモニタリングの必要性を強調するものである」とまとめている。

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皮膚扁平上皮がんの術前cemiplimab、病理学的完全奏効は5割以上/NEJM

 切除可能な皮膚扁平上皮がん患者の術前補助療法において、抗プログラム細胞死1(PD-1)モノクローナル抗体cemiplimabは、約半数の患者で病理学的完全奏効を達成し、安全性の新たなシグナルは特定されなかったことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNeil D. Gross氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年9月12日号で報告された。3ヵ国の非無作為化単群第II相試験 本研究は、皮膚扁平上皮がん患者の術前補助療法におけるcemiplimabの有効性と安全性の評価を目的とする検証的非無作為化単群第II相試験であり、2020年3月~2021年7月の期間に、オーストラリア、ドイツ、米国の施設で参加者の登録が行われた(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、切除可能なStageII、III、IV(M0)の皮膚扁平上皮がんで、実臨床で手術が推奨されている患者であった。被験者は、治癒目的の手術を受ける前に、12週間でcemiplimab(350mg)を3週ごとに4回(1、22、43、64日目)、静脈内に投与された。 主要評価項目は、独立審査委員会の中央判定による病理学的完全奏効(手術検体に生存腫瘍細胞が存在しないことと定義)とされ、主な副次評価項目には、独立審査委員会の中央判定による病理学的著効(手術検体に残存する生存腫瘍細胞が≦10%と定義)、各施設の担当医判定による病理学的完全奏効と病理学的著効、画像検査での客観的奏効(完全奏効、部分奏効)、有害事象などであった。画像検査での客観的奏効割合は68% 79例が登録された。年齢中央値は73歳(範囲:24~93歳)で、67例(85%)が男性だった。腫瘍部位は72例(91%)が頭頸部、全身状態の指標であるECOG PSはスコア0が60例(76%)で、ステージはIIが5例(6%)、IIIが38例(48%)、IV(M0)が36例(46%)であり、47例(60%)はリンパ節転移を有していた。 術前cemiplimab療法により、病理学的完全奏効が40例(51%、95%信頼区間[CI]:39~62)で、病理学的著効は10例(13%、6~22)で得られた。担当医の評価による病理学的完全奏効は42例(53%、42~65)で、病理学的著効は10例(13%、6~22)で達成され、独立審査委員会の判定結果と一致していた。また、画像検査での客観的奏効は54例(68%、57~78)で得られ、このうち完全奏効が5例(6%)、部分奏効は49例(62%)だった。 手術を受けた70例のうち、画像検査で5例が完全奏効、44例が部分奏効、16例は安定であった。画像検査で完全奏効の5例はすべて病理学的完全奏効で、部分奏効の44例では30例(68%)が病理学的完全奏効、8例(18%)は病理学的著効だった。 試験期間中に発現した全Gradeの有害事象は69例(87%)で認められた。最も頻度の高い有害事象は疲労(24例[30%])で、次いで下痢、悪心、斑状丘疹状皮疹が11例(14%)ずつで発現した。試験期間中に、Grade3以上の有害事象は14例(18%)でみられ、このうちGrade3が8例(10%)、4が2例(3%)、5は4例(5%)だった。 死亡した4例のうち、1例が治療関連の有害事象による死亡(うっ血性心不全の悪化[93歳の女性])と判定され、3例は治療とは関連しない有害事象による死亡であった。また、免疫関連有害事象は12例(15%)で発現した。 著者は、「機能温存手術の可能性と、高い病理学的完全奏効の割合を考慮すると、この患者集団におけるcemiplimabによる術前補助療法の使用は支持される」と結論している。

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ファイザーのBA.4/5対応2価ワクチン、6ヵ月~4歳用1価ワクチン承認/厚生労働省

 厚生労働省は10月5日、ファイザーのオミクロン株BA.4/5に対応した追加接種用の新型コロナウイルス2価ワクチンについて承認事項の一部変更の特例承認をしたこと、および同社の生後6ヵ月~4歳用の新型コロナウイルス1価ワクチンを特例承認したことを発表した。コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) 接種対象者が12歳以上であるオミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンの販売名は「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」となる。一部変更承認の概要として、起源株およびオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む2価ワクチンが追加され、有効成分のトジナメランはSARS-CoV-2の起源株を、リルトジナメランはオミクロン株BA.1を、ファムトジナメランはオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAだとしている。9月12日に承認された「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」の有効成分はトジナメランおよびリルトジナメラン、今回承認された「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の有効成分はトジナメランおよびファムトジナメランとなっている。 本剤の用法・用量は、追加免疫として、1回0.3mLを筋肉内に接種する。なお、接種間隔については、通常、前回の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種を行うことができるとしているが、接種間隔の短縮について現在検討が成されており、10月下旬までに結論を得るという。 本剤の添付文書によると、変異株に対する中和抗体生産能として、マウスに1価(起源株)製剤を21日間隔で2回投与し、その1ヵ月後に1価(起源株)製剤、2価(起源株・オミクロン株BA.1)製剤または2価(起源株・オミクロン株BA.4/5)製剤を1回投与したところ、3回目投与から1ヵ月後、いずれの群でも起源株、デルタ株およびオミクロン株(BA.1、BA.2、BA.2.12.1およびBA.4/5)に対する中和抗体産生が認められ、オミクロン株BA.4/5に対する中和抗体価は、1価(起源株)製剤群および2価(起源株・オミクロン株BA.1)製剤群よりも2価(起源株・オミクロン株BA.4/5)製剤群で高値を示したとしている。コミナティ筋注6ヵ月~4歳用 生後6ヵ月~4歳用1価ワクチンの一般名は「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(有効成分名:トジナメラン)」、販売名は「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用」となる。用法・用量は、本剤を日局生理食塩液2.2mLにて希釈し、1回0.2mLを合計3回、筋肉内に接種する。2回目は通常、3週間の間隔で、3回目は2回目の接種から少なくとも8週間経過した後に接種するとしている。 本剤の添付文書によると、6ヵ月~4歳の小児(6~23ヵ月群:82例、2~4歳群:143例)を対象としたC4591007試験第II/III相パートにおいて、本剤3μgを3回目接種後1ヵ月のSARS-CoV-2血清中和抗体価を評価した結果、6~23ヵ月群の幾何平均抗体価(GMT):1,406.5(両側95%信頼区間[CI]:1,211.3~1,633.1)、2~4歳群のGMT:1,535.2(95%CI:1,388.2~1,697.8)となり、本剤30μgを2回接種した16~25歳群に対して免疫ブリッジングの成功基準を満たしたとしている。また、6~23ヵ月群1,776例、2~4歳群2,750例が参加した安全性の評価では、治験薬接種後7日間の主な副反応の発現状況として、6~23ヵ月群では注射部位圧痛、食欲減退、傾眠、易刺激性、発熱(38.0℃以上)、2~4歳群では注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱(38.0℃以上)が報告されている。 なお、オミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンについては、10月5日に、モデルナ・ジャパンも同社の「mRNA-1273.222」を、18歳以上を対象とした追加接種用ワクチンとして、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことをプレスリリースにて発表した。

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糖尿病性末梢神経障害性疼痛治療に新たなエビデンスが報告された(解説:住谷哲氏)

 糖尿病性末梢神経障害DPN(diabetic peripheral neuropathy)は無症状のことが多く、さらに網膜症に対する眼底撮影、腎症に対する尿アルブミンのような客観的診断検査がないため見逃されていることが少なくない。しかしDPNの中でも糖尿病性末梢神経障害性疼痛DPNP(diabetic peripheral neuropathic pain)は疼痛という自覚症状があるため診断は比較的容易である。不眠などにより患者のQOLを著しく低下させる場合もあるので治療が必要となるが、疼痛コントロールに難渋することが少なくない。多くのガイドラインでは三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(以下A)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬SNRIであるデュロキセチン(以下D)、電位依存性カルシウムチャネルα2δリガンドのガバペンチノイドに分類されるプレガバリン(以下P)およびガバペンチン(以下G)の4剤が有効性のある薬剤として推奨されている。疼痛をコントロールするためには十分量の薬剤を投与する必要があるが、実際にはそれぞれの薬剤の持つ特有の副作用で増量が困難となり、中断や他の薬剤の併用を必要とすることが多い。ちなみにわが国での神経障害性疼痛に対する最大投与量は、A 150mg、D 60mg、P 600mgとなっている。GはPと同様の作用機序であるが、添付文書上は抗てんかん薬としての適応のみであり神経障害性疼痛に対する保険適応はない。しかし社会保険診療報酬支払基金では最大投与量2,400mgまで認めているという不思議な状況である1)。 上記のそれぞれの薬剤のDPNPに対する有効性は明らかにされているが、どの薬剤が最も有効なのかを比較検討したhead to headのRCTはない。さらに併用療法についての有効性を検討したRCTにはPとDとの併用療法を検討した小規模のCOMBO-DN試験があるのみである2)。そこで各薬剤の有効性をhead to headで比較すること、および併用療法の有効性を検討することを目的に実施されたのが本試験であり、DPNP治療に新たなエビデンスをもたらした試験であると評価できる。 試験デザインは疼痛に関するRCTでは多用されるクロスオーバーデザインである。1コース16週とし、前半の6週は単剤治療期間、後半の10週が併用治療期間とされた。さらに単なる薬剤の組み合わせではなく、著者らはpathwayと記載しているが、投与順序も検討された。PとGは同様の作用機序なのでPが選ばれた(選択理由として、Gが1日3回投与である、Pと異なり薬物動態が線形でない、およびtitrationに時間を要する、と記載されている)。さらにAとDは両者ともに抗うつ薬であるのでこの組み合わせは除外された。したがって検討されるpathwayはA→P、P→A、D→P、P→Dの4組になる。これを1コース16週間のクロスオーバーデザインで実施すると16×4=64週で試験期間が1年以上となり、試験完遂が困難との判断からP→Dは除外された。その理由は、COMBO-DN試験の結果からP→D、D→Pの疼痛コントロール効果はほぼ同等であり、かつDは1日1回投与でありPと比較して初回投与として適切であると記載されている。このあたりがpragmatic trialとされるゆえんだろう。結果は、A、P、Dのどの薬剤から開始しても単剤での疼痛コントロール効果は同等であること、併用治療によりさらに疼痛コントロール効果が増強されること、どのpathwayでも効果は同等であること、が明らかとなった。さらに疼痛のみならず患者のQOLも同様に改善することが示された。したがって、最初にどの薬剤を投与するか、併用療法としてどの薬剤と組み合わせるかは、主として個々の薬剤による特有の副作用の程度に依存することになる。 DPNPに対しては、単剤を最大耐容量まで増量しても効果が不十分であれば躊躇せずに併用療法に進むことが疼痛コントロールのために有効であることが本試験によって明らかとなった。他の神経障害性疼痛に対しても恐らく同様の有効性が期待されるだろう。しかし腰痛などの神経障害性疼痛以外の疼痛に対しては本試験の結果が適用されないことは言うまでもない。

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燃える闘魂、墜つ!【Dr. 中島の 新・徒然草】(446)

四百四十六の段 燃える闘魂、墜つ!10月になっても真夏日が続いていますが、皆さん、元気ですかー!……って、燃える闘魂、アントニオ猪木が亡くなってしまいました。なんてこったい。アントニオ猪木といえば、私くらいの世代には好き嫌いを超えた巨大な存在でした。私が小学生の頃、プロレスの試合結果はクラスの中でも大きな話題でした。とくに、ジャイアント馬場やアントニオ猪木が負けたりすると大変です。男子生徒は口角泡を飛ばしてプロレス技を論じ合っていました。時は過ぎ、1976年6月26日に、猪木はモハメド・アリと対戦。当時高校3年生の私は、プロレスとボクシングの異種格闘技をテレビで見るべく、授業が終わったら一目散に家に帰りました。もちろん、ほかの多くの男子生徒もダッシュで帰宅です。誰かが数学教師に「今から猪木とアリが戦うんです!」と説明し、納得してもらったことを思い出します。結果は終始マットに寝て戦った猪木と、それに対して何もできなかったアリとの噛み合わない試合。世紀の凡戦とも呼ばれましたが、それは後から振り返ってのこと。リアルタイムで見ていた人間にとって、これ以上ドキドキしたものはありませんでした。実際、興奮した高齢者がテレビの前で死んだ、というニュースがあったくらいです。その後の全米プロ空手王者、ザ・モンスターマンと猪木の試合も、血湧き肉躍るものでした。ちょうど私が大学1年生の時。下校時刻にクラスメートに出くわし、「伸さん、何しとるんや。今から始まるがな!」と言われて、一緒に石橋の商店街の居酒屋に向かったことを覚えています。店内はザ・モンスターマンと猪木の試合をテレビで見ようという人間で一杯。いよいよ猪木が神輿に乗って登場した時には、テレビの前に陣取っていた若い兄ちゃんが「オレ、猪木のこういうとこが嫌いなんや!」と本気で怒っていました。試合はザ・モンスターマンのパンチやキックに対し、投げ技と関節技で応戦した猪木が勝利!双方とも得意技を出し尽くしての試合で、マスコミにも絶賛されました。私が大学2年生の時、猪木は極真空手の「熊殺し」ウィリー・ウィリアムスと戦い、引き分けています。当時、純粋だった私は、これらすべての異種格闘技戦は真剣勝負だと思っていました。今になって考えてみれば、いろいろと大人の事情なんかもあったことと思います。しかし、事前にいくら打ち合わせをしていても、その時の試合の流れでどんな結果になるかはわかりません。猪木もそんな無謀なことをよくやったな、と思います。そして1986年、愛人との密会を写真週刊誌に撮られてしまった猪木は丸坊主になりました。この時の猪木のセリフ、「男のケジメ」という言葉が、しばらく同僚の間で流行った気がします。さらに1990年の湾岸戦争勃発時。猪木は日本人が人質に取られていたイラクに出向いて、スポーツと平和の祭典と銘打ってプロレスを行い、見事に全員が解放されました。なぜプロレスをすると人質を取り返すことができるのか、それは謎です。でも、結果を出したことには違いありません。猪木の人生はほかにも多くの名言、名セリフに彩られています。「1、2、3、ダーッ!」とか「闘魂注入ビンタ」とか「炎のファイター」とか「元気があれば何でもできる」とか「プロレスはあらゆる格闘技の集大成である」とか「燃える闘魂」とか「国会に卍固め、消費税に延髄斬り」とか「迷わず行けよ、行けばわかるさ」とかとにかく猪木を語り尽くすことはできません。3年ほど前からアミロイドーシスを発症し、闘病生活を送っていたのだそうです。2022年10月1日、ついに亡くなるとともに一つの時代が終わってしまいました。あまりにも偉大なプロレスラー、アントニオ猪木のご冥福をお祈りいたします。最後に1句猪木たち コブラツイスト 秋の雲★この原稿を書くためにエクセルでアントニオ猪木の年表を作っていたら、半日かかってしまいました。

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600万人が集まるビールのお祭り「オクトーバーフェスト」【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第18回

「オクトーバーフェスト」(Oktoberfest)は、9月後半から10月上旬にかけて、ミュンヘンで行われる世界的なイベントです。日本でも同名のビールイベントが開催されたりしているので、もうご存じの方も多いと思われます。ミュンヘンでは、馬に乗った市長が“O’zapftis! ”(酒が来たぞ!)と宣言して始まる…という、まあ、でっかい飲み会です。現場ではこんな感じで、山ほどのビールが馬車に積まれてどんどん運ばれてきます。すべてはフェスのために!ミュンヘンの中心街から少し外れたところに大きな空き地があるのですが(東京ドーム9個分の超一等地の空き地があって、オクトーバーフェスト期間以外は何も使われていないのです!)、その空き地に仮設の遊園地が作られます。たくさんのテントも同時に建てられていて、その中はビールの匂いで溢れかえっています。会場全体を高所から見たところ写真はオクトーバーフェスト会場に作られた滑り台の上から撮ったものです。この滑り台を1回滑るだけで1,000円以上取られます。正直、どのアトラクションもなかなかのお値段がかかります。ドイツ人の友人が「都市伝説かもしれないが」と前置きしたうえで教えてくれたのですが、この仮設遊園地を組み立てる業者さんの中には1年のうちオクトーバーフェストの数週間だけ働いて、あとはスペインの別荘でのんびり過ごしている人がいるとかいないとか…。短期間でものすごく稼いでる人がいることは間違いないそうです。オクトーバーフェストの遊園地は子供を連れて行くための口実みたいなもので、メインはやはりビールです。オクトーバーフェストの名物は1Lのジョッキビールです。しかし、この1Lのジョッキビール、現地の人はあまり頼まないそうです。500mLを2回頼むのと同じ値段なので、そちらの方がよりフレッシュなビールを楽しめるからです。1Lを頼むのは観光客ばっかりで、最後の方はぬるくなりすぎて、結局残しちゃうことが多いみたいです。去年、一昨年と中止が続いたオクトーバーフェストですが、今年は再開されて、大盛況のようです。あ~俺もまたミュンヘン行きたいなぁ…。

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第14回 インフルエンザが流行すると、結局発熱外来が逼迫する構図

インフルエンザシーズンにおける混乱さて、インフルエンザシーズンとCOVID-19の第8波がやって来るのかどうかが、喧々囂々と議論が交わされています。もちろん、波がやって来ないに越したことはないのですが、どの専門家も「来るだろう」と言っています。次に到来するウイルスが、BA.5程度の変異株であれば、広くワクチン追加接種を行うことで、死亡者数を少なくすることができると思われます。諸外国のように、さらに感染者が増えてくると、ハイブリッド免疫を有する人が多くなるので、そこまでインパクトのない波になるかもしれません。現在多くの自治体では、新型コロナの自己検査を行い、その結果が陽性なら陽性者登録センターに連絡する形になっていますが、インフルエンザシーズンにおいて新型コロナが陰性であれば、皆さんどうするでしょうか?引き続き高熱が出ていたら、インフルエンザの検査をしたいと思う人が多いかもしれません(個人的には、このあたりをどうガイダンスするかだと思っていますが…)。COVID-19の自己検査が陰性であった場合、熱がある人はおそらく発熱外来に通されることになるでしょう。インフルエンザとCOVID-19の交差が起こってしまいますが、この動線を分離できる医療機関はほとんどないと思います。インフルエンザの抗原検査キットのOTC化を現場として1つ問題提起したいのは、インフルエンザの自己検査ができるようにしてほしいという点です。抗原定性キットをドラッグストアなどで購入できるよう、是非とも解禁していただきたい。COVID-19の抗原定性検査キット市販は特例的に承認されたものですが、インフルエンザ抗原検査キットを承認しないというのは、いささか不自然です。2つとも同じ検査法ですから、患者さんにとってテクニカルに検査がしにくいということもありません。自己検査は十分可能でしょう。また、現在は抗原定性検査に、COVID-19とインフルエンザの両方が測定可能な同時検査キットが登場しており、すでに薬事承認を受けています(表)1)。これが一般的に広く普及すれば、1回のぬぐい液で2つのウイルスを調べることが可能です。画像を拡大する表. COVID-19とインフルエンザの両方が検査可能な薬事承認抗原定性検査(参考文献1より筆者作成)規制改革推進会議 第8回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループでは、厚生労働省とこのようなやり取りが行われています(一部日本語表現を変更)2)。「冬を念頭に置く中で、今度はインフルエンザのほうも出てくる可能性があるのではないかと思っております。インフルエンザについても抗原検査キットと一緒に検査できるようなキットも考えうるところだと思います。コロナに比べると、現時点では感染症法上の位置付けとしても、エビデンス上もインフルエンザのほうがまだリスクが低いということだと思います。そうであるとすると、インフルエンザに関してもOTC化をすることも考えられるのではないかと思いますが。」という専門委員の質問に対して、厚労省(厚生労働省大臣官房審議官)は、以下のような回答をしています。「今回のコロナの検査キットOTC化というのは現下のパンデミックの状況に鑑み、特例的に対応を進めております。インフルエンザのキットのOTC化というのは、現時点で予定はしておりません。」参考文献・参考サイト1)厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(検査キット)の承認情報2)内閣府 規制改革推進会議 第8回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 議事概要

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非重度のうつ病治療における運動介入と薬物療法の比較~メタ解析

 中国・香港大学のFrancesco Recchia氏らは、重度でない成人うつ病の抑うつ症状軽減に対する運動介入、抗うつ薬治療、これらの併用療法の有効性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、重度でない成人うつ病患者の抑うつ症状軽減に対し、運動介入と薬理学的介入の効果に差はないことを報告した。著者らは、「本結果は、このような患者に対する抗うつ薬治療の代替療法または補助療法として、運動療法の検討を支持するものである」としている。British Journal of Sports Medicine誌オンライン版2022年9月16日号の報告。 対象研究は、1990年以降に報告された重度でない成人うつ病患者を対象に、運動介入、抗うつ薬治療、これらの併用療法の有効性について単独または対照/プラセボと比較したランダム化比較試験とし、Embase、MEDLINE、PsycINFO、Cochrane Library、Web of Science、Scopus、SportDiscusより検索した。バイアスリスク、非直接性、ネットワークの全体的な信頼性の評価は、2人の独立した研究者により行った。抑うつ症状の重症度における介入後の群間比較を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。介入後の治療中止は、治療に対する受容性として評価した。 主な結果は以下のとおり。・25件の比較を含む21件のランダム化比較試験(2,551例)を分析に含めた。・運動介入、抗うつ薬治療、これらの併用療法の治療効果に差は認められなかった。ただし、すべての治療は、対照群よりも有益であった。 ●運動介入vs.抗うつ薬治療(標準化平均差[SMD]:-0.12、95%CI:-0.33~0.10) ●併用療法vs.運動介入(SMD:0.00、95%CI:-0.33~0.33) ●併用療法vs.抗うつ薬治療(SMD:-0.12、95%CI:-0.40~0.16)・運動介入は、抗うつ薬治療よりも治療中止率が高かった(リスク比:1.31、95%CI:1.09~1.57)。・不均一性は、中程度であった(τ2=0.03、I2=46%)。

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抜け毛を気にしているのは女性に多い/アイスタット

 「毛髪の悩み」は古今東西、どの年代でも共通する悩みである。日々の生活でも「育毛」や「ウイッグ」のコマーシャルをみない日はないほど一般的だ。そこで、「薄毛の人」と「そうでない人」では違いに何があるのだろうか。株式会社アイスタットは、9月16日に一般の人の「薄毛・抜け毛」に関する意識調査を行った。アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員30~59歳の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2022年9月16日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(30~59歳/全国)アンケートの概要・「抜け毛が多い」と感じている人は約50%近く。とくに、「女性・40代」で最も多い。・「地肌見え・薄毛」の人は約50%近く。とくに、「男性・40代」で最も多い。・自身が薄毛になっていくことについて、約60%の人が「気にする」。・薄毛・抜け毛の対策は、第1位「洗髪方法」、第2位「髪の乾かし方」、第3位「生活習慣」。・薄毛・抜け毛対策をする理由は、「恥ずかしい」「若く見られたい」が34.5%で同率1位。・薄毛・抜け毛対策を何歳までするかは、「60代以上」が最多。・「地肌見え・薄毛の人」と「薄毛でない人」の違いは、第1位「髪質」、第2位「身内に薄毛」、第3位「ストレス」。・ウィッグ、カツラ、植毛を利用することに抵抗がある人は約80%近く。・他人のウィッグ、カツラ、植毛が気になる割合は45.7%で、ほぼ半数。薄毛を恥ずかしいと思っている人は約30% 最初に「最近の抜け毛状況」を聞いたところ、「抜け毛が多い」が45.7%、「抜け毛が少ない」の35.3%、「抜け毛が気になる髪の長さではない」の19.0%の順だった。また、「抜け毛が多い」と回答した人の属性をみると、性別では「男性」より「女性」の方が多く、年代別では「40代」、性別×年代別では「女性・40代」が最も多かった。 次に「現在の髪の状況」を聞いたところ、「薄毛ではない・学生の頃と髪の量は変わらない」が52.0%、「頭頂部・つむじ近辺が薄毛」が15.3%、「頭頂部・つむじ近辺の地肌がはっきり見える」が10.3%の順だった。また、薄毛有無別に分類すると、「薄毛ではない」は52%、「地肌見え・薄毛」は48%で、「地肌見え・薄毛」の方が下回ったが、ほぼ半々の結果だった。 次に「自身が薄毛になっていくことについて、どう思うか」を聞いたところ、「気にする」が61%、「気にしない」が39%で、「気にする」が圧倒的に多かった。また、「気にする」を回答した人の属性をみると、性別では「女性」の方が多く、年代別では「40代」、性別×年代別では「女性・50代」、髪の状況では「地肌見えの人」で最も多かった。「薄毛」について女性でも悩みが多いことが示された。 次に「日頃、薄毛・抜け毛対策のためにしていること」を聞いたところ、「とくに対策はしていない」が52.7%、「洗髪方法に気をつかう」が24%、「髪の乾かし方、ドライヤーに気をつかう」が16.7%の順で多かった。また、薄毛・抜け毛の対策有無別に分類し、「対策あり」を回答した人の属性をみると、「女性」「40代」「抜け毛が多い」「地肌見え・薄毛」「薄毛になっていくことを気にする」の人ほど多かった。以上から「薄毛」「抜け毛」に身近な人ほど対策をしている傾向が判明した。 次に薄毛・抜け毛の対策をしていると回答した142名を対象に「薄毛・抜け毛の対策をしている理由」を聞いたところ、「恥ずかしい」「若く見られたい」がともに34.5%、「昔の自身のイメージを壊したくない」が23.2%の順で多かった。とくに「恥ずかしい」と回答した人の年代をみると「30代」で最も多く、「若く見られたい」と回答した人の年代をみると「50代」が最も多かった。 次に「薄毛・抜け毛について何歳まで対策をとるか、もしくはとっていたか」を聞いたところ、「対策をとらない」が42.7%、「60代以上」が20%、「50代」が19%の順で多かった。また、「全く対策をとらない」の回答を除いた172名で「対策をとる年齢」と「実際の年代」の関係を調べてみると、「実際の年代より後まで対策をとる」が52.3%で最も多く、「実際の年代まで対策」が35.5%、「実際の年代より前で終了」が12.2%の順で続いた。 次に「体質や生活習慣の内容について当てはまること」を聞き、「地肌見え・薄毛の人」と「薄毛でない人」の主な違いを差分より調べた。「地肌見え・薄毛の人」と「薄毛でない人」の違い第1位は「髪質が細い・ハリ・コシがない」が24.3%、第2位は「身内(祖父母・両親)に薄毛の人がいる」が21.0%、第3位は「ストレスをためやすい」が17.6%であった。また、「抜け毛が多い人」と「抜け毛が少ない人」の主な違いを差分より調べた。第1位は「身内(祖父母・両親)に薄毛の人がいる」が25.2%、第2位は「ストレスをためやすい」が16.4%、第3位は「頭皮が硬い」が14.3%であった。 次に「ウィッグ、カツラ、植毛を利用することに抵抗があるか」を聞いたところ、「抵抗がある」が75.3%、「抵抗がない」が24.7%で、「抵抗がある」が圧倒数を占めた。とくに「抵抗がある」と回答した人の属性をみると、「男性」「50代」「地肌見え・薄毛」「薄毛になることを気にする」が最も多かった。 最後に「他人のウィッグ、カツラ、植毛について気になるか」を聞いたところ、「気になる」が45.7%、「気にならない」が54.3%で、ほぼ半々の結果だった。とくに「気になる」と回答した人の属性をみると、「男性」「40代」「地肌見え・薄毛」「薄毛になることを気にする」で最も多かった。

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急性虫垂炎、気温が予想より高いと発症増える?

 急性虫垂炎における環境的リスク因子のよくみられる因子の1つとして、夏に発症率が増加するという季節性が報告されている。しかし、すべての研究で示されていないため、米国・アイオワ大学のJacob E. Simmering氏らは、気候が異なる地域で数年間の気温の変化と急性虫垂炎の発症率を調査した。その結果、急性虫垂炎の発症率は季節だけでなく気温の上昇とも関連がみられ、5.56℃上昇するごとに発症率の増加が示された。さらに前の週の気温とも関連していた。JAMA Network Open誌2022年10月3日号に掲載。 本コホート研究では、MarketScan Commercial Claims and Encounters DatabaseおよびMedicare Supplemental and Coordination of Benefits Databaseの2001年1月1日~2017年12月31日の保険請求データを使用した。コホートには、MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseにデータを提供している米国の保険プランに加入している虫垂炎リスクのある人を含めた。地域の気象データは、Integrated Surface Databaseから大都市統計地域(MSA)の居住者について入手した。関連については、負の二項分布に基づく固定効果一般化線形モデルを用いて評価した。主要評価項目は、MSAの過去7日間の平均気温を独立変数とした年齢・性別ごとの所定都市における1日の虫垂炎患者数とした。 主な結果は以下のとおり。・虫垂炎リスクのある4億5,072万3,744人年、虫垂炎患者68万9,917例を調査した。患者の平均年齢(SD)は35歳(18歳)、男性が34万7,473例(50.4%)だった。・年齢・性別・曜日・年・MSAの調整後、気温が10.56℃以下では、虫垂炎発症率が5.56℃上昇ごとに1.3%増加(発生率比[IRR]:1.01、95%信頼区間[CI]:1.01~1.02)し、10.56℃を超える気温では5.56℃上昇ごとに2.9%増加(IRR:1.03、95%CI:1.03~1.03)した。・予想気温より5.56℃より高かった週の翌日は、予想気温より0~0.56℃低かった週の翌日に比べて、虫垂炎発症率が3.3%(95%CI:1.0~5.7)増加した。 これらの結果から、虫垂炎発症率には季節性がみられ、発症率増加と温暖な気候の間に関連があることが示唆された。

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TAVRでの脳塞栓保護デバイス、脳卒中の発生抑制ならず/NEJM

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)を受ける大動脈弁狭窄症患者において、脳塞栓保護デバイス(CEP)の使用は、周術期脳卒中の発生に有意な効果が認められなかったことが、米国・クリーブランドクリニックのSamir R. Kapadia氏らによる無作為化試験の結果、示された。ただし、95%信頼区間値の結果に着目して著者は、「TAVR中のCEPのベネフィットについて必ずしもルールアウトできない可能性も示唆された」と述べている。大動脈弁狭窄症治療のTAVRはデブリ等による塞栓の発生につながる可能性がある。CEPデバイスの使用でデブリを捕捉し脳卒中リスクを軽減する可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2022年9月17日号掲載の報告。TAVR後72時間以内・退院前脳卒中発生についてITT解析 研究グループは、大動脈弁狭窄症の患者を無作為に2群に分け、一方にはCEPを用いた経大腿動脈TAVRを(CEP群)、もう一方にはCEPを用いない経大腿動脈TAVRを行った(対照群)。 主要エンドポイントは、TAVR後72時間以内または退院前(どちらか早いほう)の脳卒中発生で、ITT解析で評価した。後遺障害を伴う脳卒中、死亡、一過性脳虚血発作(TIA)、せん妄、CEPアクセス部位の重大/軽微な血管合併症、急性腎障害についても評価した。 ベースラインとTAVR後に、神経学専門医が全患者の診察を行った。TAVR後脳卒中発生率、CEP群2.3%、対照群2.9%で有意差なし 北米、欧州、オーストラリアで計3,000例を対象に無作為化が行われた(CEP群1,501例、対照群1,499例)。CEPデバイスは、留置が試みられた1,489例中1,406例(94.4%)で成功した。 TAVR後72時間以内または退院前の脳卒中発生率は、CEP群2.3%、対照群2.9%で有意差はなかった(群間差:-0.6ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.7~0.5、p=0.30)。 後遺障害を伴う脳卒中の発生率は、CEP群0.5%、対照群1.3%だった(群間差:-0.8、95%CI:-1.5~-0.1)。死亡の発生率はそれぞれ0.5% vs.0.3%、脳卒中・TIAまたはせん妄のいずれかの発生率は3.1% vs.3.7%、急性腎障害は両群とも0.5%で、いずれも両群で有意差はなかった。 CEPアクセス部位の合併症の発生は1例(0.1%)だった。

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コロナ予防効果の長期観察、ワクチン歴・感染歴別に分析~1千万人コホート/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのプライマリシリーズ接種者は非接種者に比べて、またブースター接種ありはブースター接種なしに比べて、さらにSARS-CoV-2感染既往者は非既往者に比べ、いずれもSARS-CoV-2感染(オミクロン株を含む)や入院・死亡リスクが有意に低いことが、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDan-Yu Lin氏らが行った、1,000万人超を対象に行ったコホート試験で明らかにされた。なお、これらの関連性は、とくに感染に対する保護効果について、時間とともに減弱が認められたことも示されている。COVID-19ワクチンの接種状況およびSARS-CoV-2感染既往と、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19重症アウトカムリスクとの関連データは、予防戦略を導く可能性があり重視されている。JAMA誌オンライン版2022年9月26日号掲載の報告。ノースカロライナ州在住の1,060万人を対象に試験 研究グループは2020年3月2日~2022年6月3日に、米国ノースカロライナ州在住の1,060万人を対象にコホート試験を行った。 COVID-19ワクチンプライマリシリーズ接種、ブースター接種、SARS-CoV-2感染既往について調べ、SARS-CoV-2感染との関連を率比(RR)で評価し、またCOVID-19関連の入院・死亡との関連をハザード比(HR)で評価した。ブースター接種で1ヵ月後感染リスクは6~7割減、3ヵ月後は2~4割減に 被験者1,060万人の年齢中央値は39歳、女性51.3%、白人71.5%、ヒスパニック系9.9%だった。 2022年6月3日時点で、被験者の67%がワクチンを接種していた。被験者全体のSARS-CoV-2感染者数は277万1,364例、入院率は6.3%、死亡率は1.4%だった。 COVID-19ワクチンプライマリシリーズ接種者vs.非接種者の、初回接種10ヵ月後のSARS-CoV-2感染に関する補正後RRは、BNT162b2が0.53(95%信頼区間[CI]:0.52~0.53)、mRNA-1273が0.52(0.51~0.53)、Ad26.COV2.S(単回投与ワクチン)が0.51(0.50~0.53)だった。対COVID-19関連入院の補正後HRは、それぞれ0.29(0.24~0.35)、0.27(0.23~0.32)、0.35(0.29~0.42)だった。対COVID-19関連死亡の補正後HRは、それぞれ0.23(0.17~0.29)、0.15(0.11~0.20)、0.24(0.19~0.31)だった。 BNT162b2によるプライマリシリーズ接種に加え、2021年12月にBNT162b2によるブースター接種を受けた被験者は、非ブースター接種者に比べ、1ヵ月後のSARS-CoV-2感染に関する補正後RRは0.39(0.38~0.40)だった。また、mRNA-1273によるブースター接種を受けた被験者は同補正後RRが0.32(0.30~0.34)だった。3ヵ月後の補正後RRは、それぞれ0.84(0.82~0.86)と0.60(0.57~0.62)だった。 被験者全体で、オミクロン株感染既往者は非既往者に比べ、4ヵ月後のSARS-CoV-2再感染に対する補正後RRは0.23(0.22~0.24)と推定され、COVID-19関連の対入院の補正後HRは0.10(0.07~0.14)、対死亡の補正後HRは0.11(0.08~0.15)だった。

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腎細胞がん周術期ニボルマブの有用性(PROSPER、ECOG-ACRIN EA8143試験)/ESMO2022

 腎摘出術を受ける再発リスクの高い腎細胞がん患者に対して、抗PD-1抗体ニボルマブによる周術期療法で無増悪生存期間(PFS)の改善はみられなかった。米国の臨床試験ネットワークによる無作為化第III相試験の結果として、米国・ジョンズホプキンス大学のMohamad Allaf氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象:T2以上M0/1の腎摘出術が予定された腎細胞がん(淡明細胞がん/非淡明細胞がん)患者・試験群:腎摘出術+ニボルマブ周術期投与(術前480mg×1、術後4週ごと480mg×9)[404例]・対照群:腎摘出術[415例]・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、淡明細胞がん患者のPFS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群間でほぼ一致しており、年齢中央値は61歳、臨床病期はT1とT2で50%超、N1が15%、M1が3%であった。・中央値16ヵ月の追跡期間において、両群間でRFSに差は認められなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.74〜1.28、片側検定p=0.43)。なお、いずれのサブグループにおいても両群間にPFSの差は示されなかった。・治療関連有害事象(TRAE)は試験群で78%、対照群で27%に認められ、主な有害事象は疲労感、腹痛、悪心、クレアチニン値上昇、痒みなどだった。Grade3/4のTRAEは試験群で15%、対照群で4%に認められ、Grade5はそれぞれ3%、1%であった

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観察研究データで因果推論をする新しい方法論(解説:折笠秀樹氏)

 この新しい方法論はたぶん聞きなれないでしょう。「target trial emulation」というものです。あえて和訳すれば、「標的試験模倣」でしょうか。観察研究データを使って、標的の(やってみたい)臨床試験を真似ることにより、因果推論、つまり治療効果を評価する手法です。 因果推論するためのゴールドスタンダードは、ランダム化比較試験といわれています。その欠陥として、それは理想状況下での実験のため、診療現場と乖離しているといわれます。一般化可能性が低いのがランダム化比較試験の欠点です。現場に近いデータで得られる結果は、リアルワールドエビデンス(RWE)と呼ばれます。その代表例は診療録やレセプトです。一般性の高いリアルワールドデータを単純に解析すれば、さまざまなバイアスが混入します。プロペンシティ解析や操作変数解析は、主に交絡バイアスを補正する手法です。今回提案された「標的試験模倣」は、現場に近いリアルワールドデータを、目標とするランダム化比較試験へ近付けたうえで解析する手法です。 たとえば、ECMOの使用有無で延命効果を見る試験を考えます。通常なら、開始時点はECMO装着者では装着した時点となりますが、そうではなく、適格基準を満たした時点を開始時点とします。ECMO装着時点を起点にしてしまうと、装着者のほうが長生きするバイアス(immortal time biasと呼ぶ)が生じます。ECMOまでたどり着けた患者なので長生きして当然なのです。同じく、非装着者も適格基準を満たした時点を起点にします。 統計解析手法としては、クローニング、センサリング、重み付けなどのようです。ECMO装着者とよく似た非装着者を見つけないといけません。そこで、たぶんクローニングという手法が現れたのではないかと想像します。脱落による打ち切りは、ほぼ意味のある打ち切りです。情報打ち切りという厄介者です。それは周辺構造モデリングという手法で対処し、非打ち切り確率の逆数で重み付けして補完(IPCWと呼ぶ)したりするのでしょう。 いずれにせよ、理想的臨床試験(不可能だが実施したい試験)を模倣するように、観察研究データから一部抽出して解析することで因果推論する新たな手法です。ECMOはこの「標的試験模倣」という手法で解析しても、きちんと延命効果が示されたようです。日本ではまだ試されていない手法だと思います。今後の発展を期待しています。

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ケアネットがん情報サイトまとめ

サイト一覧Doctors'Picks(医師専用)乳がん診療Front lineCareNet Oncologyがん@魅せ技(医師専用)医療者向け『学校がん教育.com』大学医局紹介~がん診療編Doctors'Picks医師が薦めるがん情報がわかる! 解説コメントで理解が深まる※医師専用コンテンツを見る乳がん診療Front line手技動画や最新トピックを公開!乳がん診療に役立つサイトコンテンツを見るCareNet Oncology学会など国内の最新情報から海外トピックスまで記事が満載※PCサイト専用コンテンツを見るがん@魅せ技(医師専用)「手術手技」を動画で学ぶ!集学的がん治療情報※医師専用コンテンツを見る医療者向け『学校がん教育.com』「学校がん教育」の推進を応援!関連情報などお役立ち記事お届けコンテンツを見る大学医局紹介~がん診療編がん診療に携わる医局にスポットライトを当て、それぞれの特徴や魅力を紹介コンテンツを見る

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実に3年ぶり!国際学会に現地参加で刺激を受ける【臨床留学通信 from NY】第38回

第38回:実に3年ぶり!国際学会に現地参加で刺激を受ける9月中旬にTCT (Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)という世界的な心血管カテーテル治療学会に参加しました。オンサイトの学会参加は、実に3年ぶり。非常に刺激的でした。日本からの参加となると、昨今の円安なども考慮すると、学会への往復や参加費用だけでも数十万円掛かってしまうため、トラベルグラントや研究費がないと厳しいかと思います。しかし、ニューヨークからの参加であれば、AHA(American Heart Association)/ACC(American College of Cardiology)といった世界的な学会も含めて、飛行機を使ってもトータルで300~400ドルです。私はヨーロッパの学会にはこちらからはまだ行ったことはありませんが、飛行機でも6~7時間ですので、移動時間としては日本からと比べると許容範囲と言えます。今回のTCTはボストンだったため、電車で往復100ドル。参加費用もフェローという立場を利用してタダでした。今回はリサーチフェローでも参加費無料だったようです。ホテル代は日本に比べると高く、1泊200~300ドルしてしまうこともありますが、大学のプログラムによっては、学会費用を食事代やUber Eatsの代金も含めてサポートしてくれますし、大手を振って通常勤務を休むこともできます。さて学会では、Late Breaking Clinical Trialsとして、NEJMとの同時発表等のセッションがあったり、カテーテル治療のライブケース、ビデオライブケースや、最近のトピックについてディスカッサントが話し合うようなセッションもあったりしました。私もいつかはTCTに呼ばれて何かしらディスカッションができるようになりたいものです。セッションの合間に、この3年間でEメール上のやり取りはしていても、直接会えなかったビッグネームの先生たちに軽くご挨拶したり、12月にカテーテル治療のフェローシップの応募が始まることから、興味のある施設の先生に初対面ながらご挨拶したりもできました。なお、マスクをしている人は皆無でした。また、私より先に渡米して心臓外科医として活躍している大学同期とも、ここ数年とくにやり取りしていましたが、ようやく会うことができました。学会の内容だけを知るならもちろんオンラインでもできます。せっかくオンラインのプラットフォームができた今、オンサイトで参加できない人が情報収集する手段にもなります。また、ポスターセッションであれば、1つの発表につき、かつてはわずか10~20人に対してしか発表できなかったので、より多くの人が聴講できるオンライン形式は続けたほうがいいと思います。しかしながら、オンサイトならではの双方向性のある議論、その領域の一流の方々との交流、そしてちょっとした旅の要素も鑑みると、今後の学会の方向性としては、ハイブリッドで行ってほしいです。前回は、「臨床留学の最大の魅力はバケーション」とお伝えしましたが、国際学会への参加も、それに勝るとも劣らない、すばらしい魅力があると思います。Column写真は、電光掲示板のポスターを、適宜手元のiPadのようなタブレットで拡大しながらプレゼンテーションをしていくModerated Poster Sessionで発表したときのものです。かなりオープンな場所で、周りのセッションも同時に行われていて騒がしいため、発表者の声をラジオで飛ばしてヘッドホンで聴くという形式でした。会場は天井がかなり高いオープンな場所ですが、コロナの感染対策のためということではなく、TCTはいつもこのような形です。私は3回発表があり、1日1セッションずつだったので、混乱せず練習通りに無事に終えることができました。久しぶりの英語の発表でしたが、質問が来たときも「That is a great question.」と返す間に答えを考えて、質疑応答もなんとかやり遂げました。それぞれの発表の詳細を論文にして、近々オンラインで公開できればと思います。TCTでの発表についてはこちらKuno T, et al. TCT-21 Preferred Strategy in the Era of Short-Term Dual Antiplatelet Therapy: A Systematic Review and Network Meta-analysis of Randomized Trials. J Am Coll Cardiol. 2022 Sep, 80 (12_Supplement) B9.Kishino Y, Kuno T, et al. TCT-267 Comparison Between Functional and Angiographical Approaches Guiding Percutaneous Coronary Intervention: A Network Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Am Coll Cardiol. 2022 Sep, 80 (12_Supplement) B106–B107.Kuno T, et al. TCT-538 Contrast Volume and In-Hospital Outcomes of Dialysis Patients Undergoing Percutaneous Coronary Intervention. J Am Coll Cardiol. 2022 Sep, 80 (12_Supplement) B220–B221.

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第129回 大地震から丸山ワクチンまで、幅広いテーマを深く掘り下げた中井 久夫氏の作品

イベルメクチン臨床試験「主要な評価項目で統計学的有意差は認められず」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。久しぶりに好天となった週末は、少々足を伸ばして、新潟県と長野県の県境に位置する苗場山に行って来ました。土曜に赤湯温泉まで入り、翌日、赤倉山経由で苗場山に登り、和田小屋に下山する長めのコース。苗場山頂上部の池塘が点在する草紅葉の絶景を堪能できたのはよかったのですが、行動時間は11時間近くになってしまい、和田小屋下の駐車場に着く頃には真っ暗になっていました。今の時期、山の日没はとても早いです。皆さんも気をつけてください。ところで、一部医師から熱狂的な支持を受けていた抗寄生虫薬イベルメクチンについて、第III相臨床試験を行っていた興和が9月26日記者会見を開き、「主要な評価項目で統計的な有意差が認められなかった」とする結果を発表しました。この試験は2021年11月~2022年8月、日本とタイの軽症の新型コロナウイルス感染症患者1,030人を対象に、国際共同、多施設共同、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、並行群間比較試験で行われました。結果、より早く症状が治まることの有効性を見出すことができなかった、とのことです。なお、死亡例はないことなどから「安全性は確認された」としています。さらに9月30日には、イベルメクチンの開発者、大村 智博士が所属していた北里大学も2020年8月〜2021年10月まで実施した新型コロナウイルス感染症患者に対するイベルメクチンの多施設共同、プラセボ対象、無作為化二重盲検、医師主導治験の結果を公表、「プラセボ投与群との間に統計学的有意差を認めなかった」としています。イベルメクチンについては、新型コロナの感染拡大が始まったころから、一部の熱狂的な医師が「よく効く」「治った」とテレビ等、さまざまなメディアで喧伝、そうした流れに乗り、東京都医師会の尾崎 治夫会長も、「予防にも治療にも効果が出ているのだから、積極的に使うべき」と主張していました。そもそも、イベルメクチンについては、WHOも米国NIHも臨床試験に限定して使用するよう勧告してきました。2021年3月にはJAMA誌に、今年3月にはNEJM誌に、イベルメクチンが新型コロナウイルス感染症に効果がないことを結論付けた論文も発表されています。今回、興和と北里大学から改めて二重盲検で有効性が認められなかった、と発表されたことは、イベルメクチン信奉者に対する最後通牒になったと思われます。しかし、彼らから「科学的に嘘を言っていました」といった反省の声は聞こえてきません。何らかの弁明や反論をぜひ聞いてみたいところなのですが……。統合失調症の研究者としてだけでなく詩の翻訳やエッセイなどでも有名な中井氏さて、秋も深まって来ましたので、今回は“読書特集”として、ある著者の本を数冊紹介します。少々時間が経ってしまいましたが、今年8月に1人の高名な医師が亡くなりました。新聞でもその逝去は取り上げられ、全国紙の中には追悼記事を掲載するところもありました。その医師とは、『患者よ、がんと闘うな』の近藤 誠氏、ではなく、精神科医の中井 久夫氏です。神戸大学医学部精神神経科主任教授などを歴任した中井氏は、精神科の領域では統合失調症やPTSDの研究者として知られています。また、ラテン語や現代ギリシャ語、オランダ語も堪能で、詩の翻訳やエッセイなど文筆家としても有名でした。amazonで中井氏の著作を検索すると、膨大な数の著作があることに驚かされます。難解な著作も多い中、精神科に限らず、臨床医ならばぜひ読んでおきたい作品も少なくありません。災害医療に携わる医療人の必読書、『災害がほんとうに襲った時 阪神淡路大震災50日間の記録』精神科領域から少々外れたところでは、中井氏が1995年に起きた阪神・淡路大震災の時の記録を綴った『災害がほんとうに襲った時 阪神淡路大震災50日間の記録』(みすず書房、2011年)は災害医療に携わるすべての医療人の必読の書だと言えます。本書は、もともとは中井氏が神戸大学の精神神経科主任教授として経験した阪神淡路大震災の50日をまとめた『1995年1月・神戸より』(みすず書房、1995年)が原本です。東日本大震災直後の2011年4月、同書を読みたいという人が増えたことから、再編集して急遽刊行されました。『災害がほんとうに襲った時』には「東日本巨大災害のテレビをみつつ」と題した章が加えられており、16年前の大震災を経験した精神科医だからこそ書ける、さまざまな視点やアドバイスが盛り込まれています。東日本大震災ではその直後から、被災者の心のケアが重視されましたが、そうした動きには、阪神淡路大震災での中井氏らの活動やそこで得られた教訓が克明に記された本書の存在が大きく影響していたに違いありません。本書には、「孤独なうちに自分しかいないと判断してリーダーシップを発揮した人たちがいた。(中略)。いずれも早く世を去った」という一文があります。そして、PTSD含め、大災害での医療活動が現場の医療者に与えるダメージについても、中井氏自身の心身の状態の変化も含め、詳しく書かれています。その内容は、コロナ禍で疲弊した医療者に対するケアを考える上でも役立ちそうです。気軽に読める『臨床瑣談』、『臨床瑣談 続』中井氏の著作の中で気楽に読めるエッセイとしては、『臨床瑣談』(みすず書房、2008年)、『臨床瑣談 続』(みすず書房、2009年)がとくにお薦めです。月刊誌『みすず』に2007年から不定期連載してきたエッセイをまとめたもので、「『臨床瑣談』とは、臨床経験で味わったちょっとした物語」といった意味だそうです。目次の主な内容は、「院内感染に対する患者自衛策私案」「昏睡からのサルベージ作業」「がんを持つ友人知人への私的助言」(以上『臨床瑣談』)、「血液型性格学を問われて性格というものを考える」「煙草との別れ、酒との別れ」「インフルエンザ雑感」(以上『臨床瑣談 続』)と雑多で、中井氏の専門である精神科以外のテーマが多く、基本的に医師向けに書かれたものではありません。しかし、内容は十分に専門的で、臨床医が普通に読んでも参考になるトリビアが散りばめられています。丸山ワクチンを自ら試した中井氏この中でとくに面白く読めるのは、『臨床瑣談』に収められている「SSM 通称丸山ワクチンについての私見」です。当時、この回が『みすず』に掲載されると、全国紙の書評欄で取り上げられ、出版社への問い合わせが殺到、それが『臨床瑣談』の出版につながったのだそうです。「(丸山)先生を直接知る人が世を去りつつ今、少しくわしく、先生のことを記しておくのがよいだろう。私は丸山先生に直接お会いしてお話をうかがった最後の世代になりつつある。書き残しておく責任のようなものもある」として書かれたこのエッセイには、日本医科大の丸山 千里博士との面会の様子から、中井氏自身の使用経験、はては丸山ワクチンを使いたいという友人を日本医大に紹介する話まで、数々の興味深いエピソードが赤裸々に語られるとともに、丸山ワクチンに対する中井氏の私見が展開されています。「私は精神科医でありガン学会とはまあ無縁である」という中井氏は、総じて丸山ワクチンに好意的な立場を取りながら、その作用機序について、かつてウイルスの研究者だった頃の知見を生かして、論理的に考察していく経緯は読み応えがあります。イベルメクチンの信奉者たちも、「効くんだ」「承認しろ」とただただ騒ぐだけではなく、中井氏のように論理的な考察とともに、自分が「なぜ使うか」を冷静に訴えるべきだったと思いますが、どうでしょうか。ちなみに丸山ワクチンは今でも有償治験薬という特別な扱いが続いており、日本医科大学付属病院ワクチン療法研究施設を受診すれば、治療を受けることができます。余談ですが、日本経済新聞の今年7月の「私の履歴書」は、ソニー・ミュージックエンタテインメント元社長の丸山 茂雄氏でした。丸山博士の長男である茂雄氏も同連載の中で、がんに罹患した後、主治医に内緒で丸山ワクチンを投与したと書いていました。さまざまな治療法も組み合わせ、最終的にがんは消えたとのことですが、「もちろんいまも丸山ワクチンを打ち続けている」と締めくくっています。60年前に日本の医療を痛烈批判した『日本の医者』さて、中井氏の著作の中には、約半世紀の時を経て復刊されたものもあります。『日本の医者』(日本評論社、2010年)です。原本は、中井氏が東大伝染病研究所(現在の東大医科研)の研究員として働いている時に、ペンネームを使って共著で書いた『日本の医者』(三一書房、1963年)です。医学部講座制や全国の病院の系列化などを批判的に論じた内容で、3年後に今度は『病気と人間』(三一書房、1966年)という本を再び共著で出版、「医局制はそのうち崩壊する」との過激な予言が当時は話題になったそうです。2010年に復刊された『日本の医者』には、若き中井氏の原点ということで、三一書房から出版された『日本の医者』『病気と人間』に加え、「抵抗的医師とは何か」(岡山大学医学部自治会刊)という文章も収められています。60年前の日本の医学部、医師、医療機関の実態とその問題点を指摘した本書は、読んでみると半世紀以上たった今でもそんなに古びていないと感じます。技術はともかく、「日本の医者」の本質がほとんど進歩していないためかもしれません。事実、医局制度(教授の権限)はしぶとく生き残り続けています。今でも医局や大学教授に縛られ続ける、若い医者たちに読んでもらいたい1冊です。

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ブースター接種の入院予防効果、何日くらいで弱まる?/JAMA

 新型コロナのmRNAワクチン(以下、新型コロナワクチン)のブースター接種をすることで、どの程度の予防効果が補われ、それがどのくらい持続するかについてはあまり知られていない。そこで、シカゴ大学のJessica P. Ridgway氏らは初回ワクチン接種(2回接種)とブースター接種(3回目)でのコロナによる入院割合について評価した。その結果、ブースター接種が入院率の低下と関連したが、ブースター接種からの時間経過に伴い、その関連は弱まっていったことが明らかになった。2022年9月23日JAMA誌オンライン版のリサーチレターでの報告。 研究者らは過去の試験1)方法を基に、2021年10月1日~2022年7月26日に入院し新型コロナワクチンを2回または3回接種(ブースター接種)していた、米国西部6州のプロビデンスヘルスケアネットワークに登録されている成人データを用いて、ケースコントロール研究を実施した。本症例には、新型コロナと最終診断、症候性で新型コロナ核酸増幅検査 (NAAT)陽性、レムデシビル/デキサメタゾンによる治療を受けていた患者を組み入れた。なお、それぞれ4群を、同地域で3日以内に新型コロナ以外の理由で入院した症例かつ7日以内に新型コロナワクチンを2回接種した症例とマッチさせ、電子カルテからは人口統計、併存疾患、新型コロナワクチン接種情報などを収集した。 条件付きロジスティック回帰分析にて、新型コロナの入院に関連する因子を特定した。また、2回目およびブースター接種後の経過時間による入院のオッズを見るために、ブースター接種者と2回接種者での新型コロナによる入院のオッズを計算した。 主な結果は以下のとおり。・新型コロナで入院した3,062例 (平均年齢±SD:70.8±15.4歳)のうち男性は52.6%、ブースター接種済み者は34.7%だった。一方、対照群1万2,248例(平均年齢±SD:67.1±18.2歳)のうち46.7%が男性で、49.3%はブースター接種済みだった。・新型コロナによる入院のオッズが増加する要因として、70歳以上、男性、認知機能障害、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、免疫不全、肥満、リウマチ性疾患、移植、そしてBNT162b2(ファイザー製ワクチン)が関連した。 ・多変量解析の結果、ブースター接種は新型コロナによる入院オッズの低下と関連し、ブースター接種群:34.7% vs.対照群:49.3%だった(調整済みオッズ比[OR]:0.41[95%信頼区間[CI]:0.37~0.46])。・入院のオッズはブースター接種からの時間経過でも異なり、 50日未満では、調整済みOR:0.24(95%CI:0.18~0.30)、50~100日は同:0.24(95% CI:0.20~0.29)、101~150日は同:0.47(95%CI:0.38~0.58)、150日以上は同:0.72(95%CI:0.61~0.84)だった。 研究者らは「時間の経過とともにブースター接種の効果が弱まったものの、ワクチン接種を受けた者は全体的に入院リスクが低いままである」と記している。

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