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統合失調症患者におけるMetS発症の3年リスクと予測因子~FACE-SZコホート研究

 メタボリックシンドローム(MetS)は欧米諸国において主要な健康問題であり、なかでも統合失調症患者は、ライフスタイル、精神疾患、治療因子の観点から、とくに脆弱な集団であると考えられる。しかし、予防の指針となるプロスペクティブデータは不十分である。フランス・Universite Paris-Est CreteilのO. Godin氏らは、統合失調症におけるMetSの発症率およびその予測因子を特定するため検討を行い、統合失調症患者におけるMetSの予防および研究をより優先する必要があると報告している。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2022年9月17日号の報告。 フランス全国レベルの専門センター10施設より対象を募集し、3年間のフォローアップ調査を行った。MetSの定義は、国際糖尿病連合の基準に従った。消耗バイアスの補正には、逆確率重み付け法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・3年間のフォローアップ調査を実施した統合失調症患者512例のうち、代謝障害が認められた患者は77.9%であった。・ベースライン時にMetSであった27.5%の患者は、分析から除外した。・分析対象患者371例(平均年齢:31.2±9.1歳、平均罹病期間:10.0±7.6年、男性の割合:73.6%[273例])における3年間のMetS発症率は20.8%であった。・3年間のMetS発症率は、喫煙者で23.6%、ベースライン時に抗うつ薬を処方されていた患者で29.4%、ベースライン時に2つの代謝障害が認められた患者で42.0%であり、分析対象者全体より上昇した。・多変量解析では、MetS発症の独立した予測因子は、喫煙(調整オッズ比[aOR]:3.82、95%信頼区間[CI]:1.27~11.45、p=0.016)および抗うつ薬服用(aOR:3.50、95%CI:1.26~9.70、p=0.0158)であることが確認された。・抗うつ薬処方は、とくに脂質障害の増加を予測した。また、パロキセチンは、MetS発症リスクとの最も強い関連が認められた。

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MET増幅のあるオシメルチニブ耐性肺がんに対するテポチニブ+オシメルチニブ(INSIGHT 2)/ESMO2022

 オシメルチニブの1次治療耐性でMET増幅を呈する非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、オシメルチニブとMET-TKIであるテポチニブとの併用による有効性が示された。 MET増幅はオシメルチニブ耐性NSCLCの15〜30%を占める。この集団では治療選択肢が化学療法しかないため、臨床的なニーズは大きい。テポチニブはMET増幅によるオシメルチニブ耐性NSCLCにおいてTKIとの併用で効果を示すという報告がある。  欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)では、オシメルチニブ1次治療に耐性となったMET増幅NSCLCに対し、テポチニブ・オシメルチニブ併用を評価した、オープンラベル比較第II相試験INSIGHT 2の中間解析が、フランス・トゥールーズ大学のJulien Mazieres氏から報告された。今回は初回解析として、9ヵ月以上追跡した患者の結果が紹介されている。・対象:オシメルチニブの1次治療が耐性となり、組織または血液検体でMET増幅が検出されたNSCLC・試験群:オシメルチニブ80mg/日+テポチニブ500mg/日 連日(88例)・対照群:テポチニブ500mg/日 連日(12例)・評価項目:[主要評価項目]FISH(組織)でMET増幅を同定された患者に対する独立判定委員会評価(IRC)によるオシメルチニブ+テポチニブの奏効率(ORR)[副次評価項目]NGS(血液)でMET増幅を同定された患者に対するIRC評価のオシメルチニブ+テポチニブのORR、FISHでMET増幅を同定された患者に対するIRC評価のテポチニブのORR 主な結果は以下のとおり。・MET増幅はスクリーニング患者中36%(153/425例)で検出された。・9ヵ月以上追跡したFISH同定例のIRC評価によるオシメルチニブ+テポチニブのORRは54.5%であった。・一方、FISH同定例のIRC評価によるテポチニブ単独(6ヵ月以上追跡)のORRは8.3%であった。・FISH同定例におけるオシメルチニブ+テポチニブの奏効期間中央値は未到達であった。・オシメルチニブ+テポチニブの安全性は、それぞれの薬剤の単剤でのプロファイルと一貫していた。・同併用の治療関連有害事象(TRAE)発現は全Gradeで73.9%、Grade3以上では23.9%で、頻度の高いものは下痢(40.9%)、末梢浮腫(23.9%)であった。・減量に至ったTRAEは18.2%(16例)、投与中止に至ったTRAEは6.8%(6例)で発現した。 Mazieres氏は、オシメルチニブの1次治療耐性のMET増幅NSCLCに対し、オシメルチニブとテポチニブの併用は有望な効果を示すことから、化学療法を省略した選択肢となる可能性があると述べている。

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日本の消化器外科の手術アウトカム、男女医師で差は?/BMJ

 日本の消化器外科医による手術アウトカムの補正後リスク差について、執刀医の男女差は認められない。日本バプテスト病院外科副部長・京都大学大学院医学研究科の大越 香江氏らが、日本の手術症例データベースNational Clinical Database(NCD)等を基に後ろ向きコホート試験を行い、幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術の短期アウトカムを調べた結果を報告した。女性消化器外科医は男性消化器外科医と比べて、医籍登録後の年数が短く、リスクがより高い患者を引き受け、腹腔鏡手術の回数は少ないという不利な条件ながらも、手術死亡率やClavien-Dindo分類≧3合併症率について有意差はなかったという。結果を踏まえて著者は「日本では、女性医師が手術トレーニングを受けるために、より多くの機会が保証されている」と述べ、「女性外科医のためのより適切で効果的な手術トレーニングを整備すれば、手術アウトカムはさらに改善する可能性がある」とまとめている。BMJ誌2022年9月28日号掲載の報告。幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術について検証 研究グループは、NCD(2013~17年、日本の手術データの95%以上が包含されている)と日本消化器外科学会のデータを基に後ろ向きコホート試験を行い、幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術について、短期アウトカムと執刀医男女差の有無を検証した。 主要アウトカムは、手術死亡、手術死亡・術後合併症、膵液漏(幽門側胃切除術、胃全摘術)、縫合不全(直腸低位前方切除術)だった。手術関連死亡および周術期合併症と執刀医性差の関連について、患者、執刀医、病院特性を補正し多変量ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。死亡・Grade3以上の合併症リスクは男女で同等 解析に含まれたのは、14万9,193件の幽門側胃切除術(男性執刀医担当14万971件[94.5%]、女性執刀医担当8,222件[5.5%])、6万3,417件の胃全摘術(5万9,915件[94.5%]、3,502件[5.5%])、8万1,593件の直腸低位前方切除術(7万7,864件[95.4%]、3,729件[4.6%])だった。 平均すると、女性外科医は男性外科医と比べて医籍登録後の年数が短く、リスク高い患者を執刀し、腹腔鏡手術の回数が少なかった。 一方で、手術死亡の補正後リスクについて執刀医の男女間で有意差はなく、男性執刀医に対する女性執刀医の補正後オッズ比は、幽門側胃切除術について0.98(95%信頼区間[CI]:0.74~1.29)、胃全摘術が0.83(0.57~1.19)、直腸低位前方切除術が0.56(0.30~1.05)だった。 また、Clavien-Dindo分類でGrade3以上の合併症と手術死亡の統合アウトカムについても、執刀医の男女間で有意差はなく、補正後オッズ比は、幽門側胃切除術が1.03(95%CI:0.93~1.14)、胃全摘術が0.92(0.81~1.05)、直腸低位前方切除術が1.02(0.91~1.15)だった。膵液漏(補正後オッズ比は幽門側胃切除術が1.16[95%CI:0.97~1.38]、胃全摘術1.02[0.84~1.23])、および直腸低位前方切除術の縫合不全(1.04[0.92~1.18])についても、執刀医の男女間で有意差はなかった。

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下肢PADへのテルミサルタン、6分間歩行距離の改善なし/JAMA

 下肢末梢動脈疾患(PAD)の患者において、テルミサルタンはプラセボと比較してフォローアップ6ヵ月時点の6分間歩行距離を改善しなかった。トレッドミル上の最大歩行距離やSF-36身体機能スコアなども改善はみられなかった。米国・ノースウェスタン大学のMary M. McDermott氏らが、114例の患者を対象に行った2×2要因デザインによるプラセボ対象無作為化二重盲検試験の結果で、著者は、「今回示された結果は、PAD患者の6分間歩行距離改善についてテルミサルタンを支持しないものであった」と述べている。PAD患者は下肢の血流が減少し下肢骨格機能が障害されて、歩行能力が低下する。ARBのテルミサルタンは、これら一連の症状を改善する特性を有していた。JAMA誌2022年10月4日号掲載の報告。6ヵ月後の6分間歩行距離を評価 研究グループは米国2ヵ所の医療機関で114例のPAD患者を対象に試験を行った。登録は2015年12月28日~2021年11月9日に行われ、最終フォローアップは2022年5月6日だった。 被験者を無作為に4群に分け、2×2要因デザイン法を用いて、(1)テルミサルタン+管理下での運動(30例)、(2)テルミサルタン+週1回1時間の教育セッション(がん検診や高血圧症など)(29例)、(3)プラセボ+管理下での運動(28例)、(4)プラセボ+教育セッション(27例)をそれぞれ6ヵ月間実施しアウトカムを比較した。 なお本試験は当初、サンプルサイズは240例と計画されたが登録が進まず、主要比較は、テルミサルタンが投与された2群とプラセボが投与された2群に変更され、目標サンプルサイズは112例に変更された。 主要アウトカムは、6ヵ月後の6分間歩行距離の変化で、臨床的に意味のある最小差は8~20mとした。副次アウトカムは、トレッドミル上の最大歩行距離、歩行障害質問表(Walking Impairment Questionnaire)のスコア(距離、速度、階段昇段について)、SF-36身体機能スコアだった。結果は、実施医療機関やベースライン6分間歩行距離、管理下での運動または教育セッションの実施、性別、ベースライン心不全歴で補正し評価した。半年後の6分間歩行距離の変化、テルミサルタン群1.32m、プラセボ群12.5m改善 無作為化された114例の平均年齢は67.3歳、女性は46例(40.4%)、黒人が81例(71.1%)で、6ヵ月のフォローアップを完了したのは105例(92%)だった。 6ヵ月後の6分間歩行距離の変化の平均値は、テルミサルタン群が1.32mの改善(341.6m→343.0m)、プラセボ群は12.5mの改善(352.3m→364.8m)で、補正後群間差は-16.8m(95%信頼区間[CI]:-35.9~2.2、p=0.08)で、テルミサルタンによる有意な改善は認められなかった。副次アウトカムの5項目についても、いずれも両群で有意差はなかった。 最も頻度の高かった重篤な有害イベントは、PADによる入院(下肢の血行再建術、切断または壊疽などによる)で、テルミサルタン群3例(5.1%)、プラセボ群2例(3.6%)で報告された。

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高齢者におけるポリピル(スタチン、ACE阻害薬、アスピリン)の使用が通常処方よりも心筋梗塞後の患者の予後を改善する(解説:石川讓治氏)

 高齢者においては、年齢と共にポリファーマシーが増加し、薬物有害事象や転倒のリスクが増加するだけではなく、認知機能や生活の質の低下、独居などが誘因となり、服薬アドヒアランスが低下することも問題になっている。服薬アドヒアランスの低下した患者においては、処方の単純化、合剤による服薬数の減少などが有効であるとされており、家族や訪問介護者などを介し服薬アドヒアランスを改善させることが可能になるとされている。 本研究は、心筋梗塞後(平均8日後)の65歳以上の高齢者に対して、スタチン、ACE阻害薬、アスピリンといった心筋梗塞後の患者に対する推奨度の高い内服薬を、ガイドラインに沿って主治医がテーラーメードで別々に処方するよりも、ポリピル(合剤)として投与するほうがプライマリーエンドポイントを減少させたことを報告した。ポリピル群と通常投与群の間では、スタチン、心保護薬、抗血小板薬、他の薬剤の投与率や、血圧やLDLコレステロールのコントロールレベルにはまったく有意差がなかったにもかかわらず、ポリピル群のほうが服薬アドヒアランスや患者満足度が有意に高く、そのことが予後の改善につながったのではないかと推測されている。 日常臨床においては、合剤の使用時には投与量の調整が厄介になる。わが国で現在、使用可能なスタチンとカルシウムチャネル阻害薬の合剤は、番号でそれぞれの投与量の組み合わせを変更できるようになっているが、慣れるまでは投与時に番号と投与量の差を確認する必要があって、処方する側としては少しわずらわしさを感じることがある。本研究のポリピル群においても、スタチンとACE阻害薬の投与量を6つのパターンで変更しながらポリピルが調整されるプロトコールになっている。実際の臨床では、同じ配合薬の6つの投与量のパターンを覚えて使い分けることは容易ではないことが推測される。少し簡便に投与量が調整できる仕組みが、将来的にはできればいいと感じた。本研究の高齢者は、ほとんどが仕事をリタイアした患者であった。現在のわれわれの日常臨床では、服薬アドヒアランスの改善のため薬局で内服薬の一包化をしてもらうことがあるが、一包化とポリピルで差があるのか疑問が残った。「良薬は口に苦し」ということわざがあるが、内容が同じであれば、処方は数が少なく飲みやすいのがいいようである。

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その血栓症、CATの可能性は?【知って得する!?医療略語】第21回

第21回 その血栓症、CATの可能性は?がんと血栓症は関連があるのですか?そうなのです、がんと血栓症は密接に関連していて、CATとも呼ばれます。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】CAT【日本語】がん関連血栓症【英字】cancer associated thrombosis【分野】腫瘍関連【診療科】脳神経、循環器【関連】―実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。近年、がん関連血栓症(CAT:cancer associated thrombosis)という言葉を散見するようになりました。CATはがん、もしくはがん治療に関連した血栓症を幅広く表現した概念です。また、がん診療における血栓症の合併リスクを注意喚起するとともに、あらゆる血栓症を治療するにあたり、その血栓形成の背景に“悪性疾患が存在する可能性を念頭に置くべき”であることを認識させてくれる概念だと考えます。脳卒中患者の診療が多かった筆者にとって、最も身近なCATはTrousseau(トルーソー)症候群でした。トルーソー症候群はCATの概念に包含されます。脳塞栓症の多くは、心原性脳塞栓症ですが、一部の塞栓症はトルーソー症候群による脳梗塞で、悪性腫瘍による血栓形成傾向によるものでした。トルーソー症候群の多くが抗血栓療法に抵抗性で短期間に脳塞栓症再発を経験しました。がん治療を受ける方は、脳梗塞を発症しやすく、がん治療中に脳卒中を発症した4人に1人はトルーソー症候群とも言われています。赤塚氏の報告によれば、トルーソー症候群の27.5%は脳梗塞先行群であったことが示されています。このため、「血液凝固能亢進を伴った多発脳梗塞では、悪性腫瘍を念頭に精査を進めることが重要」と述べてられています。CATやトルーソー症候群の疾患概念を念頭に置いていない限り、悪性疾患の精査がなされていない患者に対し、その存在を見過ごしたまま脳梗塞のみを治療するようなことが起きてしまいます。心房細動のない多発性脳梗塞や原因不明のDダイマー上昇を見かけた時には、頭部以下の画像検査も積極的に検討する必要があります。脳領域に限らず、体のどこかで原因不詳の血栓症が見られたら、悪性疾患の併存を疑い、検索することを心がけたいですね。1)赤塚 和寛ほか:当院でのTrousseau症候群40例の臨床的特徴2)野川 茂. 血栓止血誌. 2016;27:18-28.3)岡 亨. 心臓. 2020;52:1337-1341.

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第130回 BA.4/5対応2価ワクチン特例承認、予想された現場の混乱と大量廃棄が現実に

オミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンを特例承認こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBも日本のプロ野球もいよいよポストシーズンに入りました。ダルビッシュ 有投手が所属するサンディエゴ・パドレスはナショナル・リーグでまだ生き残っており、12日(日本時間)からの地区シリーズでロサンゼルス・ドジャースと対戦します。予定では13日の第2戦に先発します。かつて所属し、苦い経験のあるドジャース(2017年に所属、ワールドシリーズで2回敗戦投手に)相手に、ねじ伏せるような好投を期待したいと思います。一方、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平選手は、15勝9敗、34本塁打、95打点で今シーズンを終え、シーズンの規定投球回数と規定打席数もクリアしました。それはそれでファンとしては大変喜ばしいのですが、やはりMLB選手の真価はワールドシリーズに進出し、勝ち切ってこそだと思います。来シーズンにはせめてポストシーズンまでは進出して欲しいですが、ジョー・マドン監督を追い出した自分勝手なペリー・ミナシアンGM(球場で携帯ばかりいじっています)や、監督代行から監督に昇格したフィル・ネピン監督(采配が淡白なわりに退場が多い)では、来年もそんなには期待できないかもしれません。さて、新型コロナウイルスのワクチンですが、厚生労働省は10月5日、米・ファイザーの従来株とオミクロン株BA.4/5に対応した追加接種用の2価ワクチンを特例承認しました。そして、10月7日、厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会はこの2価ワクチンを、予防接種法上の特例臨時接種に位置付けることを承認しました(生後6ヵ月~4歳を対象としたファイザーのワクチン[従来型ワクチン]も5日に特例承認され、7日の同分科会で臨時接種とし、5歳以上と同じ「努力義務」に位置付けられています)。現在の感染の主流になっているBA.5に対応するワクチンなので、こちらも喜ばしいニュースではあります。しかし、確保可能となった新しいワクチンを、中長期的な戦略もなく税金を湯水のように投入し、次々と承認していく国の姿勢については少々首をかしげざるを得ません。「“旧改良ワクチン”は廃棄処分となるのでしょうか」新型コロナウイルスのワクチンについては今年の夏以降、本連載でも度々取り上げて来ました。「第122回 米国では使わない2価の“旧改良ワクチン”を日本は無理やり買わされる?国のコロナワクチン対策への素朴な疑問」(2022年8月17日公開)では、米国ではBA.4/5対応のワクチンにシフトしているのに、日本がBA.1対応の“旧改良ワクチン”をまず承認する方針であることに対し、「米国と比べて周回遅れ」と指摘しました。9月に入ると事態は動き、ファイザーが日本でもBA.4/5対応の“新改良ワクチン”の製造販売の承認を厚労省に申請しました。この“新改良ワクチン”が今回特例承認された2価ワクチンです。このときは、「第125回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?」(2022年9月7日公開)で、「“新改良ワクチン”がもうすぐ出るのに、“旧改良ワクチン”を積極的に打とうという人が現れるでしょうか。また、“新改良ワクチン”を承認したら、国が契約して買ってしまった(と思われる)“旧改良ワクチン”は廃棄処分となるのでしょうか」と書きました。こうした危惧は、どうやら現実のものとなりそうです。「BA.1かBA.4/5のいずれか早く打てるワクチンで1回接種を」と厚労省ファイザーの従来株とオミクロン型BA.4/5に対応した2価ワクチンは、10月13日以降、準備ができた自治体から順次接種が開始されるとのことです。2、3回目接種を終えた人の追加接種に使用可能で、対象は12歳以上、前回接種から少なくとも5ヵ月経過後に接種できる、とされました。ただ、厚労省は10月7日、新しいワクチンを含む新型コロナウイルスワクチンの接種間隔を短縮する案について、9月19日に開く専門部会で薬事審査すると発表しています。というわけで、早ければ10月中にも接種間隔は3ヵ月に短縮化される方向です(4回接種済みの60歳以上も3ヵ月後に接種可能に)。接種間隔短縮議論の背景には、高齢者にBA.4/5に対応したワクチンを早めに接種してもらいたいことや、若者を中心に相変わらず接種が進んでいないこと、ワクチン余りなどがあるようです。9月20日から高齢者に対する接種が始まったばかりのオミクロン型BA.1に対応したワクチンに続き、BA.4/5対応ワクチンも登場したことで、接種可能なワクチンの種類が増えることになります(モデルナもBA.4/5対応ワクチンを承認申請中)。厚労省は「BA.1かBA.4/5のいずれか早く打てるワクチンで1回接種を」と呼びかける方針とのことですが、国民や現場の混乱は始まっています。BA.1対応ワクチンは廃棄か?頭悩ませる自治体10月7日付の毎日新聞は、「第8波、ワクチンに思わぬ課題」と題する記事で「厚労省はいずれも従来のワクチンを上回る重症化予防効果があると説明し、扱いに差を付けず、使用期限が早く来るものを優先して使うことを推奨する。ただ、住民がワクチンの種類を選べるようにするかどうかは自治体の判断に委ねる(中略)。東京都墨田区役所には、住民からの問い合わせが相次いでいる」と書いています。そして同記事は、「BA.5対応は10月中旬以降、自治体への配送が始まる。一方、BA.1対応ワクチンの在庫を使い切るには10月末までかかる可能性がある。担当者は『BA.5対応への切り替えが遅いと、区民が接種を先延ばしして接種率が下がりかねない』と懸念する。現在、接種の予約は半分程度しか埋まっていない。一方で『BA.1対応の在庫を余らせて廃棄するわけにはいかない」と頭を抱えている』」と自治体担当者の悩みを伝えています。オミクロン型未対応の従来型ワクチンは既に大量廃棄の道へ報道等によれば厚労省は自治体に対し、BA4/5対応ワクチンは約4,300万回分を供給する配分計画を示しています。既に約3,700万回分の供給が決まっているBA.1対応ワクチンと混在することになります。9月20日から使い始めたばかりのBA.1対応のワクチンはどうみても相当数廃棄になる可能性が高そうです。BA.1対応ワクチンの廃棄以前に、オミクロン型に対応していない従来型ワクチンも大量廃棄が始まっています。10月6日付の朝日新聞は「従来型ワクチン大量廃棄へ」と題する記事で、「朝日新聞が20の政令指定都市に取材したところ、9月下旬の(従来型ワクチンの)在庫は約220万回分。(中略)。予約は少なく、在庫の多くは使われないとみられている」と書いています。政治家の決断でお金をドブに捨てる政策が多過ぎるオミクロン対応型ワクチンの登場で、従来型のニーズがなくなるのは理解できます。しかし、今年8月の段階で米国においてBA.4/5対応ワクチンの実用化が近づいていたのに、BA.1対応ワクチンの承認をことさら急いだ理由がよくわかりません。8月時点ではBA.4/5対応ワクチンの日本での確保の目処が立ってなかったからでしょうか。だからといって、無駄になるかもしれないワクチンに巨額の税金を使っていいということにはなりません。喜ぶのはファイザーやモデルナなどの米国企業と米国政府だけです。新型コロナウイルスワクチンの予防接種はすべて国費で賄われます。「とにかく最善を最短で」というのもわかりますが、首相や内閣官房、厚労省ももう少し冷静で的確な判断ができなかったのかと思います。現状、自治体におけるBA.1対応ワクチンの接種予約は低調と言われています。BA.1対応ワクチンとBA.4/5対応ワクチンのうち、「どちらの方がオミクロン型BA.5に効果があるかの評価は定まっていないからどちらでも」と言われても、普通に考えればBA.4/5対応ワクチンでしょう。よりいい新製品がまもなく打てるのに、旧製品をわざわざ急いで打つ人はいません。国は国産コロナワクチンの開発や、国産の新薬開発に莫大な税金を投じ、ドブに捨ててきました。それらの政策の中には、「国民のため」なのか時の首相の「”やってる感”のため」なのかわからないものも多々ありました(コロナ対策に限らず、安倍 晋三元首相の国葬もそうした印象を受けました)。政治家(とくに首相)には、自分の決断で使うお金の出処が、自分の貯金ではなく税金である、という自覚をもっと持っていただきたいと思う今日この頃です。

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簡易懸濁法による服薬介助のため、細粒からOD錠への変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第51回

 今回は、簡易懸濁法で服薬管理している患者さんの処方提案です。そのまま継続でも問題ない処方内容ですが、服薬介助の負担や薬局の作業効率の向上などの理由から薬剤を変更することを提案しました。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患認知症、高血圧、心房細動服薬管理施設看護師処方内容1.エドキサバン口腔内崩壊錠30mg 1錠 分1 朝食後2.オルメサルタン口腔内崩壊錠10mg 1錠 分1 朝食後3.メマンチン口腔内崩壊錠20mg 1錠 分1 朝食後4.ニフェジピン腸溶細粒2% 2包 分2 朝夕食後5.ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg 1錠 分1 朝食後6.経腸成分栄養剤(9-2)液 1,200mL 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは、経口摂取が困難で長期的に回復が見込めないことから、施設入居前に胃瘻を造設して経口投与から経管投与への切り替えを行っていました。施設入居後に当薬局が介入することになりましたが、1日1回服用の薬が多いのに、ニフェジピン腸溶細粒のみ1日2回であったことから、現場の負担が大きいのではないか気になりました。また、薬局側としても、ニフェジピン腸溶細粒だけ別包のため、ホチキスでまとめるという作業が発生し、その一手間が積み重なると作業効率の妨げとなる恐れがありました。医師の初診に立ち会う前に看護師に確認したところ、やはり朝食後の服用だけにまとめられないかという相談がありました。そこで、1日1回服用かつ口腔内崩壊錠でまとめると簡易懸濁による服薬介助が楽になるのではないかと考えました。なお、血圧は120〜140/60〜80台で安定していました。処方提案と経過ニフェジピン腸溶細粒をアムロジピン口腔内崩壊錠2.5mg 1錠 朝食後へ変更できないか相談することにしました。アムロジピン口腔内崩壊錠であれば作用時間が長く1日1回の服用のため、朝食後の服用薬とタイミングを合わせることが可能です。また、口腔内崩壊錠ですので、簡易懸濁法で容易に崩壊することができます。これらのことから現場の介護負担が減り、薬局の作業効率も改善するのではないかと考えました。医師の診察に立ち会って上記の提案をしたところ「やってみましょう」ということになり、翌日から変更となりました。看護師に変更内容と、今後は血圧推移に注意しながらモニタリングすることを伝えました。処方変更後の血圧は120~130/70~80台で、その後もとくに変動することなく施設生活を続けています。

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乾癬患者へのアプレミラスト、血管炎症、心臓代謝との関連は?

 海外ではすでに広く使用されている経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬アプレミラストについて、血管炎症および心臓代謝機能との関連を評価した米国・ペンシルベニア大学医学大学院のJoel M. Gelfand氏らによる第IV相非盲検非無作為化試験の結果が示された。 乾癬は代謝疾患および心血管疾患と関連する炎症性の疾患であり、アプレミラストによる治療では体重減少を引き起こす可能性が知られている。今回の検討で、大動脈血管炎症との関連性は中立的であること、心血管代謝バイオマーカーのサブセットと可変ではあるが概して有益な関連性があること、内臓脂肪・皮下脂肪の減少と関連することが示され、結果を踏まえて著者は、「アプレミラストは心血管代謝疾患および乾癬を有する患者に対して、全体としてベネフィットをもたらす可能性があることが示唆された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年9月21日号掲載の報告。 研究グループは、アプレミラストと大動脈血管炎症との関連性について、18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)PET/CT、心臓代謝マーカー(16週時主要アウトカム)、および腹部脂肪組成による評価を、単群非盲検非無作為化介入試験にて行った。試験は米国内7ヵ所の皮膚科部門で、期限を知らされていない研究者によって画像診断と検査結果の測定が行われた。被験者はアプレミラスト30mgを1日2回投与された。 主要評価項目は、ベースラインと比較した16週時点および52週時点で評価した大動脈血管炎症(FDG-PET/CTで測定)、68の心臓代謝バイオマーカー、および腹部脂肪組成(CTで測定)であった。 主な結果は以下のとおり。・画像診断および検査は、2017年4月11日~2021年8月17日に行われ、70例の患者(平均[SD]年齢47.5[14.6]歳、男性54例[77.1%]、黒人4例[5.7%]、白人58例[82.9%])が評価を受けた。・16週時点では、大動脈血管炎症についてベースラインとの変化は認められなかった(target to background ratio[TBR]:-0.02、95%信頼区間[CI]:-0.08~0.05、p=0.61)。なお52週時点においても変化が認められなかった(TBR:-0.07、95%CI:-0.15~0.01、p=0.09)。・16週時点で、IL-1β、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェチュインA、および分岐鎖アミノ酸の潜在的に有益な減少が観察された。・52週時点ではベースラインと比べて、フェリチン、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン、およびケトン体の減少が観察され、アポリポ蛋白A-1は増加したが、コレステロール流出は減少した。・皮下脂肪と内臓脂肪は16週時点で約5~6%減少し、52週時点でも維持されていた。

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手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会

 『加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き2022』が15年ぶりに改訂されるにあたり、9月17、18日にオンライン開催された第22回日本メンズヘルス医学会において、シンポジウム「LOHセッション」が開催された。本稿では検査値の改訂ポイントについて、伊藤 直樹氏(NTT東日本札幌病院泌尿器科 部長/外科診療部長)の発表内容からお伝えする(共催:株式会社コスミックコーポレーション)。 LOH症候群とは、“加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下による症候群”である。加齢に起因すると考えられる症状として大きく3つの項目があり、1)性腺機能症状(早期勃起の低下、性欲[リビドー]の低下、勃起障害など)、2)精神症状(うつ傾向、記憶力、集中力の低下、倦怠感・疲労感など)、3)身体症状(筋力の低下、骨塩量の減少、体脂肪の増加など)が挙げられる。見直された診断基準値、海外と違う理由 本手引きの改訂においてもっとも注目すべきは、主診断に用いる検査値が変わることである。2007年版の診断基準値では遊離テストステロン値(8.5pg/mL未満)のみが採用されていたが、2022年改訂版では総テストステロン値(250ng/dL未満)を主診断に用いることになる。その理由として、伊藤氏は「海外でのgold standardであること、総テストステロン値と臨床症状との関連性も認められること、健康男性のmean-2SD・海外ガイドラインも参考にしたこと」を挙げた。また、遊離テストステロン値は補助診断に用いることとし、LOH症候群が対象となり始める30~40歳代のmean-2SD値である7.5pg/mL未満とするに至った。これについて「RIA法の信頼性が問題視されていること、海外の値(欧州泌尿器学会では63.4pg/mLなど)と測定方法が異なり比較できないため」とコメントした。<LOH症候群の新たな診断基準>―――・総テストステロン値250ng/dL未満または・250ng/dL以上で遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満※各測定値にかかわらず総合的に判断することが重要で、テストステロン補充の妥当性を考慮し、「妥当性あり」と判断すれば、LOH症候群と診断する●注意点(1)血中テストステロン分泌は午前9時頃にピークを迎え夜にかけて低下するため、午前7~11時の間に空腹で採血すること。(2)2回採血について、日本では保険適用の問題もあるため、海外で推奨されているも本手引きではコメントなし。――― また、測定時に注意すべきは、総テストステロンの4割強は性ホルモン結合グロブリン(SHBG:sex hormone brinding globulin)と強く結合しているため、SHBGに影響を与える疾患・状態にある患者の場合は値が左右される点である。同氏は「SHBGが増加する疾患として、甲状腺機能亢進症、肝硬変、体重減少などがある。一方で低下する疾患には、肥満、甲状腺機能低下症、インスリン抵抗性・糖尿病などがあるため、症状の原因となるようなリスクファクターの探索も重要であるとし、「メタボリックシンドローム(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)から悪性腫瘍などの消耗性疾患、副腎皮質・甲状腺など内分泌疾患、そしてうつ病などの精神疾患などLOH症候群に疑わしい疾患は多岐にわたるため、すぐに断定することは危険」と強調。「自覚症状、他覚的所見を総合的に判断し、ほかの疾患の存在も常に疑うべき」と指摘した。 さらに、診断基準の“測定値にかかわらず総合的に判断する”という点について、「アンドロゲン受容体の活性効率に影響するN末端のCAGリピートがアジア人は長く、活性効率が低い可能性がある。そのため、テストステロン値が基準値以上でも補充療法が有効の可能性がある」と説明した。 測定値とは別に、症状からLOH症候群か否かを定量的に判定する方法の1つとしてAMS(Aging Males' Symptoms)スコア1)が広く用いられている。これについて、同氏は「感度は高いが特異度は低いため、スクリーニングには推奨されない」と話した。一方でホルモン補充療法による臨床効果の監視には有用という報告もあることから、「全体の合計点だけを見るのではなく、それぞれの症状をピックアップし、患者に合わせて対応することが大切」と説明した。 最後に、診断を確定する前にはLOH症候群が原発性か二次性かの確認も必要なことから、「最終的にはLHおよびFSHを測定し二次性性腺機能低下症の有無を確認するために、その原因疾患を把握し、確認して欲しい」と締めくくった。

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BA.5の中和抗体高いのは?未感染の3回接種者vs.感染後の2回接種者/感染研

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染とワクチンの組み合わせにより誘導されるハイブリッド免疫は、SARS-CoV-2再感染に対して優れた免疫防御を与えることが報告されている。一方で、ハイブリッド免疫の質と持続性は、感染したウイルス株や、接種ワクチンの種類、ワクチン接種間隔、ワクチン接種と感染の間隔などさまざまな要因の組み合わせにより変動する可能性が指摘されている。国立感染症研究所が9月27日に発表した研究によると、ワクチン接種や感染による抗体保有者の血清を用いて、各種変異株に対する中和抗体価の比較試験を行った結果、未感染のワクチン3回接種者は、感染後にワクチンを2回接種し、接種から半年程度経過したハイブリッド免疫を持つ者よりも、優れた中和能を有することなどが明らかになったという。 本調査では、2021年12月~2022年2月に実施された「第三回および第四回新型コロナウイルス感染症に対する抗体保有率調査」に参加した1万6,296例から、ワクチン未接種の感染者(38例、0.2%)、感染後にワクチンを2回接種した者(146例、0.9%)、感染歴のない2回ワクチン接種者(1万2,019例、73.8%)、感染歴のない3回ワクチン接種者(1,255例、7.7%)が同定された。感染とワクチン接種回数、接種からの経過期間の組合せにより誘導される変異株に対する中和抗体価を評価するため、感染から5~7ヵ月経過した未接種感染者(19例)、最終ワクチン接種から5~7ヵ月経過した感染後2回接種者(19例)、最終ワクチン接種から1ヵ月以内のワクチン3回接種者(30例)の検体を選抜し、各種変異株に対する血清中和抗体価が比較された。中和試験では、2倍階段希釈した血清を分離ウイルス(祖先株、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.5、BA.2.75)と混合し、5日間培養後、細胞変性効果の有無により中和活性を評価した。また、中和試験の結果を用いて、祖先株およびオミクロンの各株の抗原性の違いを評価するために抗原地図が作成された。 主な結果は以下のとおり。・感染後2回接種者は、ワクチン未接種感染者に比べて、祖先株に対する中和抗体価だけでなく、BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても高い中和抗体価を示した。・未感染3回接種者は、祖先株およびBA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても、感染後2回接種者に比べて、高い中和抗体価を示した。・3回接種直後の者は、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者よりも、いずれの変異株に対しても高い中和抗体が誘導されていることが示された。・抗原地図によると、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5は、祖先株からの抗原距離が離れており、中でもBA.5は最も祖先株と抗原性が異なるウイルスであることが明らかになった。・3回接種者の血清において、BA.5に対する中和抗体価は、祖先株に対する中和抗体価に比べて10分の1ほど低くなっていた。 著者は本結果について、感染歴のある者にワクチンを接種することにより、感染ウイルス株やワクチン株だけでなく、直近のオミクロン亜系統株に対しても中和能を有する抗体を誘導できるとする一方で、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者のハイブリッド免疫の液性免疫は、未感染3回接種者よりも優れているとは限らないとしている。また、祖先株と抗原性が最も異なるBA.5は、ワクチン免疫を最も回避しやすいウイルスであると考えられるため、オミクロン株対応型ブースターワクチンの導入が有益である可能性が示唆された。今後の調査では、今回検体が入手できなかった3回目接種から5~7ヵ月経過した者や、4回目接種者の血清中和抗体価の評価も重要であると述べている。なお、デジタル庁ワクチン接種記録システムによると、国内におけるワクチン3回接種者の割合は、10月4日時点で全人口の約65%となっている。

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KRAS G12C大腸がん、adagrasib±セツキシマブ(KRYSTAL-1)/ESMO2022

 既治療のKRAS G12C変異を有する進行大腸がんに対して、KRAS阻害薬adagrasib単剤または同剤とセツキシマブとの併用による有用性が認められた。多コホート第Ib/II相試験KRYSTAL-1試験のアップデート解析(2022年6月16日時点)の結果として、米国・Massachusetts General Cancer CenterのSamuel Klempner氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象:KRAS G12C変異を有する既治療の進行大腸がん患者・単剤群(第II相試験):adagrasib (600mg、1日2回)単剤投与(44例)・併用群(第Ib相試験):adagrasib (600mg、1日2回)とセツキシマブの併用(32例)・評価項目:[主要評価項目]第Ib相試験:安全性など、第II相試験:奏効率(ORR)[副次評価項目]第Ib相試験:ORR、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、第II相試験:安全性、DoR、PFS、OS 主な結果は以下のとおり。・単剤群の観察期間中央値は20.1ヵ月で、ベースラインにおける患者背景は年齢中央値59歳、女性50%、前治療数(全身)中央値は3、ECOG PS 0が52%、PS 1が48%であった。・有効性評価患者43例のORRは19%、病勢コントロール率(DCR)は86%で、腫瘍縮小が79%の患者に認められた。・DoR中央値は4.3ヵ月、PFS中央値は5.6ヵ月、OS中央値は19.8ヵ月であった。・併用群の観察期間中央値は17.5ヵ月で、ベースラインにおける患者背景は年齢中央値60歳、女性53%、前治療数(全身)中央値は3、ECOG PS 0が44%、PS 1が56%であった。・有効性評価患者28例のORRは19%、DCRは100%で、腫瘍縮小が93%の患者に認められた。・DoR中央値は7.6ヵ月、PFS中央値は6.9ヵ月、OS中央値は13.4ヵ月であった。・単剤群における治療関連有害事象の発現率は、Grade1が23%、Grede2が23%、Grade3が7%であった。・併用群における治療関連有害事象の発現率は、Grade1が16%、Grede2が69%、Grade3が9%であった。

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高齢乳がんサバイバー、CRP高値が認知機能障害に関連/JCO

 高齢の乳がんサバイバーと非がん対照者のC反応性蛋白(CRP)値とその後の認知機能を調査した大規模前向き全国コホート研究の結果、サバイバーは対照群と比べて長期にわたりCRPが高く、CRPが高かったサバイバーは認知機能障害を発症する可能性が高かった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJudith E. Carroll氏らが、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年9月30日号で報告した。 本研究は、2010年9月~2020年3月、60歳以上で乳がん(Stage0~III)と診断された女性と、がんではない対照者を登録した(認知症、神経障害、他のがんを有する女性は除外)。評価は全身療法前(対照群では登録前)および年1回の来院時に行い、60ヵ月まで追跡した。認知機能は、Functional Assessment of Cancer Therapy-Cognitive Function(FACT-Cog)および神経心理学的検査を用いて測定した。各訪問時におけるCRPを自然対数(ln-CRP)に変換し、サバイバーと対照者の差を混合線形効果モデルで検定した。その後の認知機能に対するln-CRPの方向性効果をランダム効果-遅延変動モデルで検証した。すべてのモデルで年齢、人種、研究施設、認知予備能、肥満、併存疾患について調整し、2次解析ではうつ病や不安障害が結果に影響を与えるかどうかを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象となったのはCRP検体と追跡データを有する乳がんサバイバー400人と対照者329人で、平均年齢67.7歳(範囲:60~90歳)だった。サバイバーのうちStageIが60.9%、エストロゲン受容体陽性が87.6%だった。・ベースライン、12ヵ月時点、24ヵ月時点、60ヵ月時点の調整後ln-CRPの平均は、サバイバーが対照群より有意に高かった(すべてp<0.05)。・サバイバーでは、調整後ln-CRPが高いほどその後の来院時の自己報告の認知能力が低かったが、対照者ではそうではなかった(相互作用のp=0.008)。また、その影響はうつ病や不安障害によって変わらなかった。・調整後FACT-Cogスコアは、CRPが3.0mg/Lおよび10.0mg/Lの場合、サバイバーは対照群よりそれぞれ9.5および14.2ポイント低かった。・神経心理学的検査の成績はサバイバーが対照群より悪く、Trails B検査のみCRPとの有意な相互作用がみられた。 今回の高齢の乳がんサバイバーにおけるCRPとその後の認知機能の関連から、慢性炎症が認知機能障害の発症に関与している可能性が示唆される。著者らは「CRP検査はサバイバーのケアにおいて臨床的に有用かもしれない」としている。

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心房細動の検出率、AIアルゴリズムガイド導入で改善/Lancet

 未知の心房細動の検出において、着用型の連続自由行動下心拍モニタを用いた人工知能(AI)アルゴリズムガイド下標的スクリーニング法は、検出率を向上させ、スクリーニングの有効性を改善する可能性があることが、米国・メイヨークリニックのPeter A. Noseworthy氏らが実施した「BEAGLE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年9月27日号で報告された。心房細動検出能を評価する実践的な前向き介入試験 BEAGLE試験は、これまで認識されていなかった心房細動を特定するための、AIアルゴリズムガイド下標的スクリーニング法の有効性の評価を目的とする実践的な非無作為化介入試験であり、2020年11月~2021年11月の期間に参加者の登録が行われた(Mayo Clinic Robert D and Patricia E Kern Center for the Science of Health Care Deliveryの助成を受けた)。 脳卒中のリスク因子を有するが、心房細動の存在は知られておらず、日常臨床で心電図(ECG)による検査を受けた患者が、前向きに募集された。参加者は、最長30日間、連続自由行動下心拍モニタを着用し、データは携帯電話を介してほぼ即時に送信された。ECGにAIアルゴリズムが適用され、患者は高リスク群と低リスク群に分けられた。 主要アウトカムは、新たに診断された心房細動であった。2次解析では、適格基準を満たしたが試験に登録されなかった患者を実臨床の対照(非介入の通常治療群)とし、傾向スコアマッチング法を用いて、試験参加者(介入群)と対照を1対1の割合でマッチさせた。心房細動負担も、高リスク群で高い 米国の40州から参加した1,003例が試験を完遂した。平均年齢は74.0(SD 8.8)歳、383例(38.2%)が女性で、ベースラインの平均CHA2DS2-VAScスコアは3.6(SD 1.2)点だった。 平均22.3日の連続心臓モニタリングにより、30秒以上持続する心房細動が低リスク群の370例中6例(1.6%)、高リスク群の633例中48例(7.6%)で検出され、高リスク群で検出率が有意に高かった(オッズ比[OR]:4.98、95%信頼区間[CI]:2.11~11.75、p=0.0002)。 同様のパターンが、6分以上持続する心房細動(低リスク群1.6% vs.高リスク群6.3%、OR:4.09、95%CI:1.72~9.75、p=0.0015)および24時間以上持続する心房細動(0.3% vs.1.6%、5.92、0.76~46.45、p=0.091)で観察された。また、心房細動負担(心房細動が記録された時間の割合)も、高リスク群で高かった(4.97% vs.20.32%、p=0.016)。 追跡期間中央値9.9ヵ月の時点で、通常治療群(1,003例)と比較して、AIガイド下スクリーニング群(1,003例)は心房細動の検出率が有意に優れ(通常治療群2.9% vs.AIガイド下スクリーニング群7.8%、ハザード比[HR]:2.75、95%CI:1.81~4.17、p<0.0001)、高リスク群では有意な差が認められたが(3.6% vs.10.6%、HR:2.85、95%CI:1.83~4.42、p<0.0001)、低リスク群では有意差はなかった(1.1% vs.2.6%、2.80、0.76~10.30、p=0.12)。 著者は、「これらの知見は、この集団における心房細動のリスクに関して、従来の臨床的なリスク因子に加えて、AIアルゴリズムはさらなる層別化が可能であることを示した」とし、「この方法を用いた検査プログラムは、(1)日常診療の一環として行われる既存のECGへのAIの適用、(2)既存の電子健康記録やワークフローを使用した臨床的特徴の提示や患者との意思疎通における付加的な活用、(3)最も恩恵を受ける可能性がある患者の遠隔モニタリング、の3つの場面の手段として効率的かつ大規模な実施が可能と考えられる」と指摘している。

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妊娠糖尿病、リスク因子の適切な修正で2型DM発症回避か/BMJ

 妊娠糖尿病の既往女性では、2型糖尿病の5つの修正可能なリスク因子のうち、最適レベルに達した因子が1つ増えるごとに、2型糖尿病のリスクが徐々に低下し、このような関連性は過体重や肥満のある集団のほか、遺伝的感受性が高い集団でも認められることが、シンガポール国立大学のJiaxi Yang氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年9月21日号に掲載された。NHS II参加者の前向きコホート研究 研究グループは、妊娠糖尿病の既往がある女性において、5つの修正可能なリスク因子と2型糖尿病リスクとの個別および複合的な関連の評価を目的に、前向きコホート研究を実施した(米国・ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健・人間発達研究所の助成を受けた)。 対象は、米国のNurses’ Health Study II(NHS II)の参加者のうち、妊娠糖尿病の既往歴があり、体重と生活様式関連因子の反復的な評価が行われ、1991~2009年の期間にフォローアップを受けた女性であった。 2型糖尿病の修正可能な5つのリスク因子について評価が行われた。(1)過体重・肥満でない(BMI<25.0)、(2)質の高い食事(修正代替健康食指数の上位5分の2)、(3)定期的な運動(150分/週以上の中強度の運動または75分/週以上の高強度の運動)、(4)適度なアルコール摂取(5.0~14.9g/日)、(5)非喫煙。 2型糖尿病の遺伝的感受性は、2型糖尿病と関連する59の一塩基多型に基づく遺伝的リスクスコアで評価された。全因子の適切な修正でリスクが90%以上低下 妊娠糖尿病の既往がある女性4,275例が解析に含まれた。フォローアップ期間中央値27.9年(8万9,340人年)の時点で、924例が2型糖尿病を発症した。 2型糖尿病のリスク因子がすべて最適レベルに達していない参加者と比較して、5つの因子がすべて最適レベルに達していた参加者は、疾患のリスクが90%以上低かった。 すなわち、最適レベルに達した修正可能な因子の数が1、2、3、4、5の参加者における、最適な因子の数が0の参加者と比較した2型糖尿病のハザード比は、それぞれ0.94(95%信頼区間[CI]:0.59~1.49)、0.61(0.38~0.96)、0.32(0.20~0.51)、0.15(0.09~0.26)、0.08(0.03~0.23)であった(傾向のp<0.001)。 この最適な修正可能因子の数と2型糖尿病リスクの逆相関の関係は、過体重/肥満の集団や遺伝的感受性の高い集団でも認められた。 BMI≧25の女性(2,227例)では、どの因子も最適レベルに達していない参加者と比較して、最適レベルに達した因子の数が1、2、3、4の参加者の2型糖尿病のハザード比は、それぞれ1.05(95%CI:0.62~1.78)、0.82(0.48~1.38)、0.60(0.34~1.05)、0.40(0.18~0.91)であった(傾向のp<0.001)。 また、遺伝的感受性の高い女性のうち、4つの因子が最適レベルにある集団における2型糖尿病のハザード比は0.11(95%CI:0.04~0.29)であり、5つの因子がすべて最適レベルを達成した集団では、2型糖尿病は観察されなかった。 著者は、「この結果は、妊娠糖尿病の既往歴という高リスクの集団における2型糖尿病の予防のための、公衆衛生上の重要な機会を強調するものである」としている。

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小児および青年期における抗精神病薬誘発性のプロラクチン変化~メタ解析

 抗精神病薬誘発性のプロラクチン変化は、思春期患者の成長や発達に対し重大な有害反応(AR)を引き起こす可能性がある。デンマーク・Mental Health ServicesのSabrina Meyer Kroigaard氏らは、小児や青年において、抗精神病薬がプロラクチンレベルに及ぼす影響と関連する身体的ARを評価するため本検討を行った。その結果、小児および青年における抗精神病薬誘発性のプロラクチン変化は、リスペリドン、パリペリドン、オランザピンで有意に上昇し、アリピプラゾールで有意に減少することが示唆された。しかし、プロラクチンレベルの有意な変化があるにもかかわらず、ARの報告はほとんどないことも明らかとなった。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌2022年9月号の報告。 18歳以下の小児および青年を対象とした抗精神病薬のプラセボ対照ランダム化試験を、PubMed、CENTRALよりシステマティックに検索し、プロラクチンレベルおよび関連するARを評価するため、ランダム効果メタ解析を実施した。バイアスリスクは、risk of bias version 2(ROB2)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、ランダム化比較試験32件(患者数:4,643例、平均研究期間:6週間、平均年齢:13歳、男性の割合:65.3%)。・ドメインのバイアスリスクは、低いまたは不明であった。・比較された薬剤は、アリピプラゾール(810例)、アセナピン(506例)、ルラシドン(314例)、オランザピン(179例)、パリペリドン(149例)、クエチアピン(381例)、リスペリドン(609例)、ziprasidone(16例)、プラセボ(1,658例)であった。・プラセボと比較して統計学的に有意なプロラクチンレベルの上昇が認められた薬剤は、リスペリドン(平均差[MD]:28.24ng/mL)、パリペリドン(MD:20.98ng/mL)、オランザピン(MD:11.34ng/mL)であった。・アリピプラゾールは、プラセボと比較し、プロラクチンレベルを有意に低下させた(MD:-4.91ng/mL)。・クエチアピン、ルラシドン、アセナピンのプロラクチンレベルの変化は、プラセボと比較し、有意な差は認められなかった。・本研究のziprasidoneにおける結果は単一試験に基づいており、結論を導き出すには不十分であった。・概して、抗精神病薬で治療された患者の20.8%で高プロラクチン血症が認められたが、プロラクチンレベルに関連するARが報告された患者は、わずか1.03%であった。・長期的な影響に関するデータは、非常に限られていた。

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第3世代植込型LVAD(HeartMate 3)はポンプ血栓症の合併頻度が極めて少なく第2世代植込型LVAD(HeartMate II)に比較して5年生存率も良好である。(解説:許俊鋭 氏)

 第3世代植込型LVADのHeartMate 3(完全磁気浮上遠心ポンプ、HM 3)と第2世代のHeartMate II(軸流ポンプ、HM II)とのRCT比較試験(MOMENTUM 3)の2年の治療成績が2019年に報告された1)。結果、(1)ポンプ交換の必要度が低い(2.7% vs.14.3%)、(2)後遺症のある脳卒中や再手術(ポンプ摘出またはポンプ交換)を伴わない2年生存の複合結果(Composit Outcome)においてHM 3群の優位性(76.9% vs.64.8%)が示された。 本論文では、MOMENTUM 3の延長研究として5年の治療成績が報告された。2年終了の時点でLVAD治療が継続されていたHM 3群289症例とHM II群247症例のうち、477例(HM 3:258例、HM II:219例)を対象として5年まで経過観察された。5年終了時の複合結果、すなわち(1)心臓移植、(2)心機能回復によるLVAD離脱、および(3)後遺症のある脳卒中や再手術を伴わない5年生存率においてHM 3群の優位性(54.0% vs.29.7%)が示され、MOMENTUM 3全体の5年生存率もHM 3群の優位性(58.4% vs.43.7%)が示された。合併症の中の重大合併症率(events/patient-years)は、脳卒中(0.050 vs.0.136)、出血(0.430 vs.0.765)、ポンプ血栓(0.010 vs.0.108)でHM 3群が有意に少なかった。完全磁気浮上遠心ポンプであるHM 3は当初からポンプ血栓症の合併頻度が少ないことは予測されており、複合結果は2年の成績も5年の成績もこの傾向は変わっていない。ポンプ血栓に関連した合併症は確実に治療成績を低下させ患者のQOLを低下させる。とくに、長期の良好なLVAD補助が必要とされるDT(destination therapy)において重大合併症が少ないことは重要である。また、重大合併症の減少は再入院率を下げ、植込型LVAD治療の費用対効果を改善する。下図に2022年5月27日までの日本のHM IIおよびHM 3の治療成績を示す。現時点でHM 3群の成績は2年生存率(94.1%)までしか出ていないがHM II群(92.8%)よりやや良好な傾向がみられる。一般的に欧米より良好な植込型LVAD治療成績が達成されている日本の状況を鑑みれば、日本のHM 3の5年生存率はMOMENTUM 3で示された治療成績を上回ることが期待される。また、MOMENTUM 3を含め第3世代磁気浮上植込型LVADが世界で素晴らしい治療成績を上げていることから、日本が開発した磁気浮上植込型LVADであるDuraHeart(テルモ社)の臨床開発を推進した一人として、筆者は次世代植込型LVADとして小型化されたDuraHeart IIが製品化に至らなかったことは残念でならない。

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まだまだ続く後発品の供給不安、加算の臨時的取り扱いが延長へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第98回

後発医薬品の入手が困難になってから、1年半が経ちました。医薬品卸会社や医師、患者さんの協力を得てなんとか後発医薬品の調剤割合が維持できているという薬局も少なくないのではないでしょうか。その後発医薬品の供給不安に対して、以下のような対応が発表されました。後発医薬品の供給不安が続いていることを踏まえ、厚生労働省は9月末までの臨時的な措置としていた後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いを半年間、延長する。仕組みはこれまでと変わらないが、後発品使用割合の実績を算出する際に対象から除外してもよい品目リストは更新。7月1日時点の供給状況を踏まえて87成分1457品目の新たなリストを示した。10月診療分から適用し、2023年3月末まで。29日付で事務連絡を出した。(2022年9月30日付 日刊薬業Web)小林化工のGMP違反が発覚したのが2020年末で、後発医薬品の欠品や出荷調整などの供給不安が薬局運営に影を落とし始めたのが2021年春ごろでした。そのような状況を受け、2021年9月21日より後発医薬品に係る施設基準の臨時的な取り扱いが発表され、一部の供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品は、後発医薬品の調剤(使用)割合を算出する際に除外してもよいとされました。しかし、その後も供給不安は継続し、2022年3月4日に追加の通知が出され、臨時的な取り扱いが2022年9月30日まで延長されました。今回の対応により引き続き10月以降も適用となり、2023年3月末まで継続されることになりました。目的と内容に変更はありませんが、今回の通知の発出と併せて除外する品目リストが更新されていますので要チェックです。後発医薬品調剤割合の維持が大きな負担56.2%さて、この後発医薬品の供給状況や措置に関して、他の薬局はどのような状況なのでしょうか。2022年9月8日に保険薬局協会(NPhA)が公表したアンケート結果では、「後発医薬品調剤割合を維持するための負担はあるか」という問いに対し、「大きな負担である」という回答が2020年7月は8.5%でしたが、2021年8月は60.8%に爆上がりしています。その後も2022年1月は66.1%、2022年8月は56.2%と高い割合が続き、使用割合を維持するための負担がまだまだ大きいようです。また、「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱い」の通知による後発医薬品調剤体制加算への影響については、「加算ランクへの影響がなかった」が1位で77.7%、「加算ランクのダウンが回避された」が2位で16.4%、「加算ランクがアップした」が3位で5.9%でした。臨時的な取り扱いによって加算ランクをキープやアップできた薬局があってよかったと思います。加算ランクがギリギリという薬局は、更新された除外する品目リストを確認してみてはいかがでしょうか。個人的には、小林化工に端を発した五月雨的な供給不安はまだ続くと考えています。後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いが半年間延長となりましたが、また次も延長になる予感もするため、まだ苦労の日々は続きそうです。

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英語で「吸入」は?【1分★医療英語】第49回

第49回 英語で「吸入」は?How often do I take this inhaler?(この吸入器はどれくらいの頻度で使うのですか?)Inhale 2 puffs once a day.(1日に1回、2吸入してください)《例文1》One bottle of inhaler contains 200 puffs.(吸入器1ボトルで200回分の吸入ができます)《例文2》Repeat these steps for each puff.(一度吸入するたびに、これらの方法を繰り返してください)《解説》「吸入する」という動詞は“inhale”を使い、「吸入器」は動詞を活用した“inhaler”です。そして名詞の「吸入」を表現したいときには“puff”を使います。“puff”は、「ひと吹きする」「吹き出す」「噴射する」といった動詞としても使われ、“take a puff of a cigarette”は「タバコを吹かす(一服する)」という意味になります。また、“puff”には「プッと膨らむ」という意味もあり、お菓子のシュークリームは“cream puff”です。吸入器の使い方は、患者さんがわかるまで丁寧に“step by step”で実演しながら説明します。米国ではHealth literacy があまり高くない患者さんも多いので、理解度を確認することが大切です。吸入器の説明の際によく使われる“breathe”と“breath”の発音の違いも練習しておくとよいでしょう。“Breathe out all the way.”(息を吐き出します)“As you start to slowly breathe in, press down the inhaler one time.”(息をゆっくり吸い込みながら、吸入器を一度押します)“Hold your breath as you slowly count to 10.”(息を止め、ゆっくり10数えます)といった感じです。講師紹介

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