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大卒の社会人、ADHD特性レベルが高いのは?

 これまで、成人の注意欠如多動症(ADHD)と社会人口学的特徴を検討した研究の多くは、ADHDと診断された患者を対象としており、一般集団におけるADHD特性について調査した研究は、ほとんどなかった。また、大学在学中には問題がみられず、就職した後にADHD特性を発現するケースが少なくない。国際医療福祉大学の鈴木 知子氏らは、大卒の日本人労働者におけるADHD特性と社会人口学的特徴との関連について、調査を行った。その結果、大学を無事に卒業したにもかかわらず、大卒労働者ではADHD特性レベルは高いことから、ADHD特性レベルを適切に評価し、健康の悪化や予防をサポートする必要性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月5日号の報告。 日本全国から無作為に抽出された労働者1,240人を対象に、オンラインによる自己記入式調査を実施した。ADHD特性は、成人ADHD自己報告尺度(ASRS)を用いて測定し、DSM-5の基準を反映したスコアリングルールを適用した。性別、年齢、社会経済的地位、労働時間、健康関連行動などの社会人口学的特徴に関する情報を収集した。偏相関分析を用いて傾向の関連性を推定し、共分散分析を用いて調整平均を比較した。本モデルでは、すべての変数に対し調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADHD特性レベルは、女性よりも男性で高く(p=0.001)、より若いほど高かった(p<0.001)。・低所得者は、高所得者よりもADHD特性レベルが高かった(p=0.009)。・朝食、昼食、夕食の摂取とADHD特性との関連は認められなかったが、夜食をより頻繁に摂取する人ほど、ADHD特性レベルが高かった(p<0.001)。・睡眠により十分な休息が得られなかった人は、ADHD特性レベルが高かった(p=0.007)。

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高リスク早期乳がんでの術後内分泌療法+アベマシクリブ、高齢患者でも有用(monarchE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者への術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加を検討したmonarchE試験において、65歳以上の高齢患者においても管理可能な安全性プロファイルと治療効果が得られることが示された。米国・Sarah Cannon Research Institute at Tennessee OncologyのErika P. Hamilton氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。術後補助療法としてのアベマシクリブ+内分泌療法は65歳以上にも効果 monarchE試験は、再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者を対象に、術後補助療法としてアベマシクリブ+内分泌療法群と内分泌療法単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相試験で、すでに無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の延長と忍容可能な安全性プロファイルが示され、2年間の治療後もiDFS、DRFSへのベネフィットが持続し、QOLも保たれている。今回、本試験に参加した高齢患者における有効性と安全性を検討するために、65歳未満および65歳以上に分け、各サブグループでハザード比(HR)を推定した。また、安全性は65歳以上を65~74歳と75歳以上に分けて評価した。 術後補助療法としてのアベマシクリブ+内分泌療法について、高齢患者における有効性と安全性を検討した主な結果は以下のとおり。・monarchE試験の参加者のうち、65歳未満は4,787例、65歳以上が850例であった。・高齢患者は、併存疾患がより多く、PSがより高く、以前に受けていた術前/術後化学療法がより少なかった。・追跡期間中央値42ヵ月で、iDFSは、アベマシクリブ+内分泌療法群が内分泌療法単独群に比べて、65歳未満群(HR:0.646、95%信頼区間[CI]:0.554~0.753)と65歳以上群(HR:0.767、95%CI:0.556~1.059)の両群で数値的に優れた効果がみられた。4年iDFS率の絶対差は、65歳未満6.7%、65歳以上5.2%と、アベマシクリブによる絶対ベネフィットはほぼ同様だった。4年DRFS率の絶対差も65歳未満6.2%、65歳以上4.6%とほぼ同様だった。・アベマシクリブ+内分泌療法群での有害事象(AE)発現率は、全体、65歳未満、65歳以上でほぼ同様だった。75歳以上ではGrade3の下痢とGrade2~3の倦怠感の発現率が高かった。・65歳以上ではAEのために減量する割合が55%(65歳未満41%)、中止する割合が38%(65歳未満15%)と高く、75歳以降ではより高かった。・AEのために用量調節した患者群でもiDFSは同様だった。・QOLは2年間の治療期間中、どちらの治療群でもどの年齢層でも同様だった。 Hamilton氏は「これらのデータは、すべての年代への術後アベマシクリブを支持し、患者への治療経過の見通しについての助言に使用できる」とした。

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心房細動を伴う脳梗塞、DOAC投与は早期か後期か/NEJM

 急性脳梗塞を発症した心房細動患者における直接経口抗凝固薬(DOAC)の、至適な投与開始時期は明らかにされていない。スイス・バーゼル大学のUrs Fischer氏らは、「ELAN試験」において、DOACの早期投与と後期投与を比較した。その結果、両群のアウトカムの発生に大きな差はなかったものの、早期に投与を開始しても過度なリスクの増加はないとことが示唆された。NEJM誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。15ヵ国の無作為化試験 ELAN試験は、日本を含む15ヵ国103施設が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2017年11月~2022年9月の期間に患者の登録が行われた(スイス国立科学財団などの助成を受けた)。 脳卒中による入院中に、永続性・持続性・発作性の非弁膜症性心房細動または心房細動と診断された脳梗塞患者が、DOACによる抗凝固療法を早期(軽症または中等症の脳卒中の発症から48時間以内、重症脳卒中の発症から6~7日)、または後期(軽症脳卒中の発症から3~4日、中等症脳卒中の発症から6~7日、重症脳卒中の発症から12~14日)に開始する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、無作為化から30日以内の再発脳梗塞、全身性塞栓症、頭蓋外大出血、症候性頭蓋内出血、血管死の複合とされた。主要アウトカム発生、早期開始2.9% vs.後期開始4.1%、90日後は3.7% vs.5.6% 2,013例(年齢中央値77歳[四分位範囲[IQR]:70~84]、女性45%、軽症37%、中等症40%、重症23%)が登録され、早期抗凝固療法群に1,006例、後期抗凝固療法群に1,007例が割り付けられた。 30日時点で、主要アウトカムのイベントは、早期抗凝固療法群が29例(2.9%)、後期抗凝固療法群は41例(4.1%)で発生した(オッズ比[OR]:0.70[95%信頼区間[CI]:0.44~1.14]、群間リスク差:-1.18ポイント[95%CI:-2.84~0.47])。また、90日の時点では、それぞれ36例(3.7%)、54例(5.6%)で発生した(群間リスク差:-1.92%ポイント[95%CI:-3.82~-0.02])。 再発脳梗塞は、30日の時点で早期抗凝固療法群14例(1.4%)、後期抗凝固療法群25例(2.5%)で発生し(OR:0.57[95%CI:0.29~1.07]、群間リスク差:-1.14ポイント[95%CI:-2.41~0.13])、90日の時点でそれぞれ18例(1.9%)、30例(3.1%)で認められた(0.60[0.33~1.06]、-1.29ポイント[-2.72~0.13])。 また、症候性頭蓋内出血は、30日の時点で両群とも2例(0.2%)で発生し(OR:1.02[95%CI:0.16~6.59]、群間リスク差:0.01[95%CI:-0.52~0.53])、90日の時点でもこの2例(0.2%)ずつのみだった(1.00[0.15~6.45]、0.00[-0.54~0.53])。 著者は、「30日後の主要アウトカムの発生率は、リスク差の95%CIに基づくと、DOACの使用時期が遅い場合よりも早い場合のほうが、2.8ポイント低~0.5ポイント高の範囲と推定される」とまとめ、「30日までの再発脳梗塞や症候性頭蓋内出血の発生率は低いことから、早期治療開始は、適応がある場合、あるいは希望がある場合に支持される。アウトカムの発生率は30日後よりも90日後でわずかに高かったものの、早期抗凝固療法に伴う過度のリスクの増加はないことが示唆される」と指摘している。

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EGFR陽性NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブのOS解析結果(ADAURA)/ASCO2023

 オシメルチニブは第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であり、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)における術後補助療法、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発NSCLCを効能・効果として承認されている。これまで、病理病期IB~IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する、術後補助療法としてのオシメルチニブの有用性を検証した、国際共同第III相無作為化比較試験「ADAURA試験」において、最終解析時においても無病生存期間(DFS)が有意に改善したことが報告されていた1)。今回、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・イェール大学医学大学院のRoy S. Herbst氏が、これまで未発表であったADAURA試験の全生存期間(OS)の解析結果を発表した。DFSの結果がOSにも反映されるか不明であること、これまでEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者に対するEGFR-TKIによる術後化学療法が、OSの延長を示した無作為化試験の結果は報告されていないことから、本試験のOSの解析結果が注目されていた。なお、本発表の結果は2023年6月4日、NEJM誌に同時掲載された2)。・対象:18歳以上(本邦では20歳以上)で病理病期IB~IIIA期(本邦では病理病期II/IIIA期)のEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)NSCLC患者のうち、腫瘍が完全切除された患者682例・試験群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ80mg/日を最大3年間投与 339例(日本人46例)・対照群(プラセボ群):343例(日本人53例) (両群ともに術後化学療法の使用は許容)・評価項目:[主要評価項目]病理病期II/IIIA期の患者におけるDFS[副次評価項目]全集団(病理病期IB~IIIA)におけるDFS、病理病期II/IIIA期におけるOS、無病生存率、OS率、QOL、安全性など 今回報告された主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2023年1月27日)時点での、病理病期II/IIIA期の患者におけるOS追跡期間中央値はプラセボ群56.2ヵ月、オシメルチニブ群59.9ヵ月で、OSのmaturityは21%であった。・再発後の後治療への移行率は、プラセボ群54%(184例)、オシメルチニブ群22%(76例)であった。そのうち、後治療としてEGFR-TKIを使用した患者の割合はそれぞれ88%(162例)、76%(58例)、オシメルチニブを使用した患者の割合はそれぞれ43%(79例)、41%(31例)であった。・病理病期II/IIIA期の患者におけるOS中央値はいずれの群においても未到達で、プラセボ群に対するハザード比[HR]は0.49(95.03%信頼区間[CI]:0.33~0.73、p=0.0004)であった。・病理病期II/IIIA期の患者における5年OS率は、プラセボ群73%に対し、オシメルチニブ群85%であった。・全集団におけるOS中央値もいずれの群においても未到達で、プラセボ群に対するHRは0.49(95.03%CI:0.34~0.70、p<0.0001)であった。・全集団における5年OS率は、プラセボ群78%に対し、オシメルチニブ群88%であった。・病理病期別にみたOSのプラセボ群に対するHRは、IB期(212例)が0.44(95%CI:0.17~1.02)、II期(236例)が0.63(95%CI:0.34~1.12)、IIIA期(234例)が0.37(95%CI:0.20~0.64)であった。・術後化学療法の併用の有無別にみたOSのプラセボ群に対するHRは、併用ありが0.49(95%CI:0.30~0.79)、併用なしが0.47(95%CI:0.25~0.83)であり、術後化学療法の併用の有無にかかわらず、オシメルチニブ群でOSの延長が認められた。・EGFR遺伝子変異(ex19del/L858R)別にみたプラセボ群に対するOSのHRは、ex19delが0.35(95%CI:0.20~0.59)、L858Rが0.68(95%CI:0.40~1.14)であった。・オシメルチニブ群のOS改善は各サブグループで一貫して認められた。・Grade3以上の有害事象はプラセボ群14%(48例)、オシメルチニブ群23%(79例)に認められたが、治験薬に関連すると判断された死亡例はいずれの群においても認められなかった(安全性のデータカットオフ日:2022年4月11日)。 Herbst氏は、本結果について、「ADAURA試験において、オシメルチニブはプラセボと比較して有意にOSを改善し、DFSの結果がOSにも反映されていた。本試験は、NSCLCに対するEGFR-TKIによる術後化学療法が、統計学的有意かつ臨床的意義のあるOSの改善を示した初めての第III相試験であり、病理病期IB~IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する、オシメルチニブによる術後補助療法の標準治療としての地位を強固にするものであった」とまとめた。

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英語で「患者を椅子に座らせる」は?【1分★医療英語】第83回

第83回 英語で「患者を椅子に座らせる」は?Would you be able to get the patient up on the chair ?(患者さんを[ベッドから]椅子に座らせることはできますか?)Definitely.(もちろんです)《例文1》医師Let’s get the patient up and walking today.(今日は患者さんに立って歩いてもらいましょう)看護師Understood.(わかりました)《例文2》医師No worries. We will get you ready for the surgery.(手術に臨めるように手配します)患者Thank you so much.(ありがとうございます)《解説》この表現は、日々の診療の中で患者さんの状態について話すときに非常によく使われます。“get”の後に目的語である“the patient”(この患者さん)、その後に状態を表す形容詞や動名詞を続けることで、「この患者さんを~の状態にする」という意味になります。《例文》のように、治療の過程で状態変化を伴うときによく使われます。日常会話でも“get”の後にさまざまな名詞と形容詞を付けることでいろんな使い方ができます。たとえば、“get you dressed”だと「服を着てきなさい」という意味になります。非常に使いやすいのでぜひマスターしてください。講師紹介

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爪を軟化させて巻き爪矯正を補助する「リネイルゲル10%」【下平博士のDIノート】第122回

爪を軟化させて巻き爪矯正を補助する「リネイルゲル10%」今回は、巻き爪治療用剤「アセチルシステイン ゲル(商品名:リネイルゲル10%、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、わが国初の巻き爪矯正の補助のための医療用医薬品です。長期間を要する巻き爪治療に本剤を併用することで、1回の治療で十分な矯正効果が得られるとともに、再発までの期間の延長が期待されています。<効能・効果>巻き爪矯正の補助の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得しました。本剤は保険給付の対象ではなく、自由診療で使用されます。<用法・用量>巻き爪に爪矯正具を装着後、本剤を爪甲全体に適量を塗布し、約24時間後に水または湯で洗い流します。本剤の塗布は医師または看護師が実施しますが、約24時間後に洗い流す作業は患者自身で行うことが可能です。<安全性>第I/II相試験(M121101-02試験)および第III相試験(M121101-03試験)において認められた主な副作用は皮膚疼痛(1.7%)でした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、爪の中に浸透して一時的に爪を軟化させることで、巻き爪の矯正具による治療をサポートします。2.保護テープを剥がすまでは、患部を濡らさないようにしてください。入浴時はできるだけ湯船には入らずシャワーを利用し、ラップやビニールで足を保護してください。3.塗布してから約24時間後に、矯正具は装着したまま保護テープを剥がして本剤を洗い流してください。4.洗い流した後は、矯正具が外れないように、必要に応じて医療用テープで保護してください。5.医師に指示された期間は矯正具を装着して治療を継続してください。6.正しい爪切り、靴の選び方・履き方、歩き方に留意して生活しましょう。<Shimo's eyes>巻き爪は爪甲の両側縁が内側に向かって過度に湾曲した状態となる疾患で、代表的な爪のトラブルの1つです。巻き爪を治療せずに放置すると、爪甲の湾曲が増強して痛みや炎症が生じるだけでなく、より難治性となることがあるため早期の治療が必要です。巻き爪の治療として、超弾性ワイヤなどの矯正具を用いた保存的治療が広く行われています。しかし、治療には3~6ヵ月かかることもあり、より早期かつ効果的な巻き爪の矯正治療が望まれていました。本剤はアセチルシステインを含有するゲル剤で、爪の構成成分であるケラチンに含まれるシスチンのジスルフィド結合を還元して開裂することで爪を軟化させます。本剤には皮膚刺激性があるため、塗布する際は患部周囲の皮膚をテープで保護します。矯正具を装着後に患部の爪全体に本剤を適量塗布してから、塗布した爪をテープで覆います。塗布24時間後を目途に矯正具が外れないように注意しながらテープを外し、水または湯で洗い流します。治療開始後1週間~1ヵ月で矯正治療の効果(痛みの有無や湾曲の程度)を確認し、矯正具の取り外しが可能かどうか判断します。併用する矯正具は、臨床試験では「巻き爪マイスター」が用いられていました。本剤は金属を腐食し、ニッケルを溶出させることがあるので、併用する矯正具との適合性を考慮する必要があります。

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軽症頭部外傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第3回

今回は軽症頭部外傷の治療についてです。軽症頭部外傷で悩むことが多いのが、「頭部CTを撮るべきかどうか」ではないでしょうか? しかし、救急の教科書にはどういった場合に頭部CTを撮影することが推奨されるかという記載は充実していますが、CTがない施設や患者が撮りに行けない場合の対応に関する記載はあまりありません。今回は、私が在宅や診療所で困ったケースの対応を紹介します。まず、軽症頭部外傷は「Minimum head injury」と「Minor head injury」の2つに分かれます。この2つを表現する適切な日本語は難しいですが、Minimum head injuryは受傷機転(外傷を負った原因・経緯)が失神でなく、受傷後の意識障害を伴わないものを指します。Minor head injuryは受診時のグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)が13~15点で、(1)受傷機転が失神、(2)健忘を伴う、(3)意識障害を伴う、のいずれかを満たすものを指します。軽症頭部外傷でCTを撮影するかどうかの判断でよく使われるのが、カナダ頭部CTルール(Canadian CT Head Rule:CCHR)です1,2)。カナダ頭部CTルール画像を拡大するカナダ頭部CTルールを使うときに、よく若手医師は65歳以上の軽症頭部外傷患者全員のCTを撮ろうとします(私もそうでした…)。しかし、カナダ頭部CTルールの選択基準はMinor head injuryであり、Minimum head injuryではありません。Minor head injuryでカナダ頭部CTルールを1つでも満たす場合はCT撮影を考慮します。こう考えるとCT撮影がやや減るのではないでしょうか。しかし、認知症がある高齢者ではそもそも受傷時のことを覚えていない場合もあり、MinorかMinimumかを鑑別することは困難です。カナダ頭部CTルールは「医学的介入(受傷7日以内に頭蓋内疾患による死亡、もしくは受傷7日以内に、開頭手術、頭蓋整復術、頭蓋内圧モニタリング)が必要な頭蓋内損傷」の否定を目的としているため、神経学的介入の必要がない脳出血は除外できないという問題もあります。また、高齢者は慢性硬膜下血腫のリスクがあり、たとえきちんと説明していたとしてもトラブルになることがあります。「軽く頭をぶつけただけなのでCTを撮影しなかった。2ヵ月後に慢性硬膜下血腫となり、家族になぜ前回の受診時にCTを撮らなかったのか文句を言われている」という経験を数例聞いたことがあります。頭部外傷で救急外来に来る患者の多くは、不安を解消するために来院します。被爆のことを考えるとなるべく撮りたくない気持ちもありますが、CTが普及している日本ではそこまでCTを回避する必要はないのかもしれません。ちなみに、CTを撮影しても頭蓋内に異常がないことがほとんどであり、帰宅後の注意点を説明して帰宅とします。CTを撮っても撮らなくてもマネジメントは同じとなることが多いです。では、すぐにCTを撮ることができない場合はどうでしょうか?<症例1>80歳、男性、施設入居中既往症:パーキンソン病、認知症訪問診療で訪れたところ、患者の右眼がパンパンに腫れあがっていて目が開けらない状態であった。話を聞くと、前日の夜に車椅子から落ちて顔面を受傷したが、すぐに反応があり、ぶつけたところを痛がるのみで異常がないため経過観察となっていた。朝には右目が腫れていたが、患者からとくに訴えはない。バイタル:Stable GCS E4V4M6(受傷前と同等)右目を何とか開いてみたところ、眼球運動に障害なし。視力も問題なし、その他の神経所見も異常なし。患者が病院に受診するには家族に来てもらわなければならないが、息子は「症状がないなら様子をみてほしい」とのこと。皆さんはこの患者さんにどう対応しますか? きっと答えはないと思います。この患者さんには認知症があり、そもそも受傷時の出来事を覚えていません。そのためOver triageして受傷時に健忘があったとみなしてカナダ頭部CTルールに組み込みました。受傷後のGCSは15点未満ですが、これは受傷前と変化がないため項目として採用しませんでしたが、「パンダの眼サイン」と「65歳以上」が当てはまり、頭部CTの考慮対象となります。とくにパンダの目徴候が出ているため、頭蓋内出血に加えて顔面骨骨折を伴っている可能性が高いです。顔面骨骨折で忘れてはいけないのが吹き抜け骨折で、外眼筋が陥頓してしまい眼球運動障害が生じます。幸い、視力障害や眼球運動障害はなかったため、やや緊急度は落ちると考えました。ちなみに、もしこの患者さんに受傷時の記憶があり、Minimum head injuryと判断してカナダ頭部CTルールに組み込まなくても、パンダの眼サインがある時点で私はCTを撮っていたでしょう。総合的に考えて、救急車を呼ぶほどの緊急性はないものの、なるべく早い受診が必要と判断しました。そこで、息子さんに電話で説明して明日の午前中に来てもらうことになり、施設職員には何か変化があればすぐに連絡するように伝えました。翌日、近くの脳神経外科を受診したところ、頭蓋内は問題なく、眼科内側壁に骨折がありましたが保存的加療となりました。2週間後の診察では若干腫れが引いていて、とくに問題なく生活することができていました。次にこの患者さんはどうでしょうか?<症例2>72歳、女性、夫と自宅で2人暮らし既往歴:認知症患者が認知症の夫の面倒をみていたが、次第に患者本人も認知症が進み、通院が困難となったため2人とも訪問診療を受けている。診察当日の朝5時ごろ、トイレに行こうと畳の上の布団から立ち上がった際に転倒。頭を机の角にぶつけて出血し、ティッシュペーパーで圧迫して止血した。日中にケアマネジャーが血まみれの患者を見つけ、緊急往診を依頼した。患者は夫を置いて病院に行くことができないので受診したくないと言っている。バイタル:Stable GCS E4V5M6後頭部に1cmくらいの挫創があるが止血済み。瞳孔は3mm 3mm ++、神経所見に異常なし。受傷機転もしっかりと覚えていて、ぶつけた先が机の角であったため出血していますが、強いエネルギーは加わっていないと考えられます。よってMinimum head injuryとなります。この場合明確にCTを撮る・撮らないという臨床予測ツールはありませんので、患者の状況とリスクを兼ね合い判断します。今回は、頭蓋内出血のリスクは低いと考え、本人も病院受診をしたくないことを加味して経過観察の方針としました。頭部の挫創は本人が注射嫌いとのことで毛髪縫合を施行しました3)。髪質によっては、合成皮膚表面接着剤(ダーマボンドなど)で縫合部を固めますが、往診セットになく、患者の髪で比較的強固に縫合できたのでその日はそのまま縫合し、髪は洗わずに翌日以降の洗浄を指示しました。1週間後に診察したところ創部はきれいで、毛髪縫合もほどけていなかったので、伸びてきた髪の根元を切りました。今回はCTを撮影することが困難な環境での軽症頭部外傷の治療を紹介しました。日本の人口当たりのCT台数は世界一であり、私はCTがない総合病院で働いたことはありません。被爆のことを考えるとなるべく撮りたくない一方で、その手軽さからCTを撮ることに年々悩まなくなっているところもあります。しかし、CTがない施設や患者が撮りに行けない場合も多々あります。「これが正しい」というものはないかもしれませんが、ご参考までに。1)Stiell IG,et al. Lancet. 2001;357:1391-1396.2)Smits M, et al. JAMA. 2005;294:1519-1525.3)Hock MOE, et al. Ann Emerg Med. 2002;40:19-26.

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喘息既往、CT所見から判断すべき追加検査は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第2回

喘息既往、CT所見から判断すべき追加検査は?講師東海大学医学部 呼吸器内科学教授 浅野 浩一郎 氏【今回の症例】52歳の女性。35歳ごろに喘息を発症したが、中用量の吸入ステロイド薬治療でここ数年間の症状は安定していた。3ヵ月前から粘膿性喀痰を伴う咳嗽を自覚するようになった。撮影した胸部X線写真で、左下肺野の浸潤影を指摘された。発熱は認めない。末梢血白血球数9,000/μL(好中球48%、リンパ球18%、好酸球22%、単球12%)、血液生化学異常なし、CRP 1.38mg/dL、IgE 1,247 IU/mL。喀痰細菌培養陰性。胸部CTの所見を下に示す。追加で行うべき検査は何か?1.血清プロカルシトニン2.アスペルギルス・フミガーツスIgE3.鳥抗原IgG抗体4.MPO-ANCA

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第166回 現金給付と死亡率低下が関連

世界銀行の推定によると2019年には世界人口の10人に1人近く(8.4%)が極度の貧困の指標である1日当たり2.15ドル未満での暮らしを強いられていました1)。また、今や世界人口の70%を占める“中の上”(upper middle-income)所得国の人々の貧困の指標である1日当たり6.85ドル未満での生活を強いられている人の割合は世界の半数ほどの47%にも上ります。新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)の流行で貧困層は拡大し、世界の極度の貧困者数は2020年に1億人近く(9,700万人超)増えたと推定されています。貧困を減らして治安を守る取り組みの1つとして100を超える低~中所得国が過去20年間に個人や家庭への現金給付を行いました。コロナ流行中に現金給付の裾野はさらに広がりました。世界銀行の昨年(2022年)2月の報告によると203ヵ国での962種類の現金給付のうち672の取り組みはコロナ流行中に新たに導入されたものであり、世界人口の実に17%に相当する13.6億人がコロナ流行中に現金給付を受け取ったと推定されています。政府が運営する大規模な現金給付は貧困の減少に成功し、受給者の経済的自立、就学、小児の栄養、女性の地位向上、保健サービス使用の改善をもたらしています。また、現金給付の導入で新たな感染症が減ったこともいくつかの試験で示されています。現金給付のそういった数々の効果が明らかになっている一方で究極の転帰である死亡率への効果はあまりはっきりしていません。そこで米国・ペンシルバニア大学のチームは低~中所得の37ヵ国の2000~19年の小児や成人700万人超の記録を使って現金給付の死亡率への影響を検討しました2,3)。それら37ヵ国のうち29ヵ国はサハラ以南のアフリカ、3ヵ国はラテンアメリカとカリブ諸国、4ヵ国はアジアパシフィック地域、1ヵ国は北アフリカに位置します。調査期間に成人約433万人(432万5,484人)と小児約287万人(286万7,940人)のうちそれぞれ約13万人(12万6,714人)と約16万人(16万2,488人)が死亡し、解析の結果、現金給付は成人女性の死亡率の20%低下、5歳未満小児の死亡率の8%低下と関連しました。現金をよりあまねく給付することやより高額を給付することは死亡率の一層の低下をもたらしました。現金給付と死亡率低下の関連が男性に認められず女性に限られたのは妊娠関連死亡の大幅な低下が主な要因でした。今回の解析で認められた幼い小児の死亡率低下も加味すると現金給付による貧困の減少は若い家族をとりわけ助けるのでしょう。現金給付などの貧困防止の取り組みで世間の人々の健康を改善して死亡を減らしうることを今回の解析は裏付けています。参考1)Half of the global population lives on less than US$6.85 per person per day / World Bank2)Richterman A et al. Nature. 2023 May 31. [Epub ahead of print]3)Social science: Cash transfer programmes reduce risk of death in low- and middle-income countries / Nature

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治療抵抗性うつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用~FACE-TRDコホート研究

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は、公衆衛生上の問題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病(TRD)に対するBZD長期使用の影響に関するデータは、十分とはいえない。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、選択していないTRD患者におけるBZD長期使用および1年間でBZD中止に成功した患者の割合を調査し、継続的なBZD長期使用がメンタルヘルスのアウトカムに及ぼす影響を評価した。その結果、TRD患者の約半数は、BZDが過剰に使用されており、BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間の中止率は5%未満であることを報告した。著者らは、TRD患者に対するBZD長期使用は、臨床症状、認知機能、日常生活に悪影響を及ぼす可能性があり、計画的なBZD中止が強く推奨されると考えられることから、薬理学的および非薬理学な代替介入を促進する必要があるとしている。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2023年8月30日号の報告。 2014~21年にTRDの専門医療機関13施設より募集されたTRD患者を対象に、1年間のフォローアップを行ったFACE-TRDコホート研究を実施した。トレーニングされた医師および患者からの報告を含む標準化された包括的バッテリーが実施され、1年後に患者の再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、BZD長期使用群に分類された患者は、45.2%であった。・多変量解析では、BZD長期使用群は、非BZD長期使用群と比較し、年齢、性別、抗精神病薬の投与量とは無関係に、身体活動の低さ(調整オッズ比[aOR]:1.885、p=0.036)、プライマリケアの利用率の高さ(B=0.158、p=0.031)と関連が認められた。・性格特性、自殺念慮、衝動性、幼少期のトラウマへの暴露、初発大うつ病エピソード年齢の低さ、不安、睡眠障害については、有意な差は認められなかった(それぞれp>0.05)。・BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間のフォローアップ期間中にBZDを中止した患者は5%未満であった。・1年後の継続的なBZD長期使用と関連していた因子は、以下のとおりであった。 ●うつ病重症度の高さ(B=0.189、p=0.029) ●臨床全般重症度の高さ(B=0.210、p=0.016) ●不安状態の高さ(B=0.266、p=0.003) ●睡眠の質の低下(B=0.249、p=0.008) ●末梢炎症性の増加(B=0.241、p=0.027) ●機能レベルの低下(B=-0.240、p=0.006) ●処理速度の低下(B=-0.195、p=0.020) ●言語エピソード記憶の低下(B=-0.178、p=0.048) ●欠勤および生産性の低下(B=0.595、p=0.016) ●主観的な健康状態の低さ(B=-0.198、p=0.028)

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日本人2型糖尿病の100人に1人が寛解、達成しやすい人は?/新潟大

 従来、糖尿病を発症すると、一生にわたって治療が必要といわれてきた。しかし、実際には2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者のうち、血糖値が正常値近くまで改善し、薬物治療が不要な状態となる患者が存在する。そこで、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループは、「薬物療法を行っていない状態でHbA1c値6.5%未満が3ヵ月以上持続している状態」を糖尿病の「寛解」と定義した1)。しかし、日本人2型糖尿病患者において、寛解を達成する割合や、達成する患者の特徴、寛解の持続状況は明らかになっていない。そこで、藤原 和哉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野 特任准教授)らの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者4万8,320例を対象として、臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、約100人に1人が寛解を達成していたことが明らかになった。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2023年5月8日号に掲載された。 研究グループは、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)が保有する日本全国の糖尿病専門施設に継続して通院している2型糖尿病患者4万8,320例の1989~2022年の臨床データを後ろ向きに解析した。寛解の発生率、寛解後の再発(1年間寛解を維持できない状態)の発生率、寛解と再発に関連する因子などを検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間(中央値:5.3年)において、3,677例が寛解を達成し、寛解の発生率は10.5/1,000人年であった。・HbA1c値が6.5~6.9%、ベースライン時の薬物治療なし、BMIが1年間で5~9.9%低下、10%以上低下の群で寛解の発生率が高く、それぞれ27.8/1,000人年、21.7/1,000人年、25.0/1,000人年、48.2/1,000人年であった。・寛解の関連因子を検討した結果、以下の7つの因子が特定された。 -男性 -ベースライン時の年齢が40歳未満 -糖尿病罹病期間1年未満 -ベースライン時のHbA1c値7.0%未満 -ベースライン時のBMI高値 -BMIが1年間で5%以上低下 -ベースライン時の薬物治療なし・寛解を達成した3,677例のうち、2,490例(67.7%)が再発した。・再発の関連因子を検討した結果、以下の3つの因子が特定された。 -糖尿病罹病期間が長い(1年以上) -ベースライン時のBMI低値 -BMIが1年間で0.1%以上増加 本研究結果について、著者らは「これまで、糖尿病は治らないといわれていたが、糖尿病と診断されても、早期から生活習慣改善や薬物治療に取り組み、減量を行うことで2型糖尿病の寛解は可能だということが示された。また、一度寛解に至った場合でも、体重を適正に管理し、定期的に診察を受けることが、寛解後の再発予防に重要である可能性が示された。なお、今回の研究は観察研究であることから、原因と結果の関係を示したものではなく、今後、生活指導や薬物による介入研究を行うことで実際にどの程度の人が寛解し、寛解の状態が持続するかを確認する必要がある」とまとめた。

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高リスクStageII/III早期乳がんでの術後内分泌療法+ribociclib、iDFSを改善(NATALEE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加による効果については、すでにアベマシクリブが無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善したことがmonarchE試験で確認されている。ribociclibについては、リンパ節転移のない患者を含む再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い集団を対象に第III相NATALEE試験が進行している。その主要評価項目であるiDFSについて、第2回中間解析の結果、有意に改善したことが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDennis J. Slamon氏により発表された。・対象: 男性および女性(閉経前後)の再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がん(StageIIAの場合はN1、またはN0かつグレード3、またはN0かつグレード2かつ高リスク、StageIIBの場合はN0~1、StageIIIの場合はN0~3の症例が対象)・試験群(ribociclib+ET群):ribociclib(400mg/日、3週投与1週休薬を3年)+内分泌療法(レトロゾールもしくはアナストロゾールを5年以上投与、男性と閉経前女性はゴセレリンを併用)2,549例・対照群(ET単独群):内分泌療法のみ 2,552例・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]無再発生存期間、無遠隔再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、患者報告アウトカム、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2019年1月10日~2021年4月20日に5,101例を1:1に無作為化した。iDFSの第2回中間解析のデータカットオフ(2023年1月11日)時点で、426件のiDFSイベントが報告された。追跡期間中央値34ヵ月で、ribociclib群のうち治療中も含め治療を2年以上完了した症例は1,449例(57%)、3年完了した症例は515例(20%)だった。・iDFSにおける追跡期間中央値27.7ヵ月で、iDFSはribociclib+ET群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.748、95%信頼区間[CI]:0.618~0.906、片側p=0.0014)。主要なサブグループでも同様に改善した。・DDFSにおいても同様の改善がみられた(HR:0.739、95%CI:0.603~0.905、片側p=0.0017)。・OSは改善傾向が認められた(HR:0.759、95%CI:0.539~1.068、片側p=0.0563)。・ribociclib 400mgにおいても忍容性の高い安全性プロファイルが認められた。 Slamon氏は「NATALEE試験の結果は、ribociclib+非ステロイド性アロマターゼ阻害薬が、N0を含む、再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い患者の新たな治療選択肢となることを支持する」と結論した。

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変性性僧帽弁閉鎖不全症、経カテーテル修復は有効か/JAMA

 手術リスクの高い孤立性の変性性僧帽弁閉鎖不全症(MR)の患者において、経カテーテル僧帽弁修復は安全に施行可能で、成功率は88.9%に達し、成功例のうち死亡率が最も低かったのは残存MRが軽度以下かつ平均僧帽弁勾配が5mmHg以下の患者であったことが、米国・シーダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月23・30日号に掲載された。米国のレジストリを用いたコホート研究 研究グループは、変性性MRに対する経カテーテル僧帽弁修復のアウトカムの評価を目的に、レジストリに基づくコホート研究を行った(シーダーズ・サイナイ医療センターSmidt心臓研究所の助成を受けた)。 解析には、2014~22年に米国で、中等度~重度の変性性MRに対して非緊急的にedge-to-edge法による経カテーテル僧帽弁修復(MitraClipデバイス、Abbott製)を受け、米国胸部外科学会(STS)/米国心臓病学会(ACC)のTranscatheter Valve Therapies Registryに登録された患者が含まれた。 主要エンドポイントはMR治療成功とし、残存MRが中等度以下で平均僧帽弁勾配<10mmHgと定義された。臨床アウトカムは、残存MRの程度(軽度以下のMR、中等度のMR)と僧帽弁勾配の程度(5mmHg以下、5mmHg超10mmHg未満)に基づき評価された。1年後の死亡率、心不全による再入院が有意に改善 1万9,088例が解析の対象となった。年齢中央値は82歳(四分位範囲[IQR]:76~86)、女性が48%で、NYHA心機能分類クラスIII/IVが78%を占め、STS予測に基づく外科的僧帽弁修復による死亡リスクは4.6%であった。84.8%が高血圧、31.9%が慢性肺疾患、20.6%が糖尿病を有していた。 MR治療成功は、すべての評価の時点での心エコー検査のデータが得られた1万8,766例のうち1万6,699例(88.9%)で達成された。MR治療成功の割合は、2014年の81.5%から2022年には92.2%へと増加した。 院内での死亡率は1.1%、脳卒中の発生率は0.6%、予定外の心臓手術または介入の割合は1.1%であった。経カテーテル僧帽弁修復後の入院期間中央値は1日(IQR:1~3)だった。また、30日の時点での死亡率は2.7%、脳卒中の発生率は1.2%、僧帽弁再介入率は0.97%であった。NYHA心機能分類クラスIII/IVの割合は、30日の時点で15.8%に低下し、有意な改善が認められた(p<0.001)。 経カテーテル僧帽弁修復が失敗した場合と比較して、MR治療成功を達成した患者では、1年後の死亡率(14.0% vs.26.7%、補正後ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.42~0.56、p<0.001)および心不全による再入院(8.4% vs .16.9%、0.47、0.41~0.54、p<0.001)の割合が有意に低かった。 また、経カテーテル僧帽弁修復が失敗した場合と比べて、MR治療成功を達成した患者のうち最も1年後の死亡率が低かったのは、残存MRが軽度以下で平均僧帽弁勾配が5mmHg以下の患者であった(11.4% vs.26.7%、補正後HR:0.40、95%CI:0.34~0.47、p<0.001)。 著者は、「高齢で合併症があっても、経カテーテル僧帽弁修復は安全に行えることが示された。今後、外科手術と経カテーテル僧帽弁修復を比較する無作為化臨床試験を行って、変性性MR患者の至適な治療の指針を明らかにする必要があるだろう」としている。

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年代ごとの麻疹・風疹の予防接種制度

麻疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1972年9月30日以前に生まれた方は定期接種の機会がありません。任意接種としてMR(麻疹・風疹混合)ワクチン、麻疹ワクチンの接種が可能です。1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼児期に医療機関で個別接種(1回)1990年(平成2年)4月2日生まれ0回1972年(昭和47年)40歳10月1日生まれ厚生労働省. 第4回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会配付資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000015044.html)より作成Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.風疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1979年4月1日以前に生まれた男性と1962年4月1日以前に生まれた女性は定期接種の機会がありません。定期接種対象の年齢の方以外も任意接種としてMR(麻疹・風疹混合)ワクチン、風疹ワクチンの接種が可能です。男性1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)女性出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼定期接種対象児2019年~2025年3月期抗体価の低い方が対象に 中学生接個(HI抗体価(1:8以下)種 別 の時に0回率 接 医療機関で低中学生の時に個別接種種い学校で( (1回)集団接種1 接種率低い(1回)回)接種率高い1990年(平成2年)4月2日生まれ1979年(昭和54年)40歳4月2日生まれ1987年(昭和62年)10月2日生まれ1962年(昭和37年)4月2日生まれ国立感染症研究所 感染症疫学センター. 風疹に関する疫学情報:2023年4月26日現在(https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/2145-rubella-related/8278-rubella1808.html)より改変Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第150回 改正マイナンバー法可決、来年秋に健康保険証は廃止、マイナンバーカードに1本化/国会

<先週の動き>1.改正マイナンバー法可決、来年秋に健康保険証は廃止、マイナンバーカードに1本化/国会2.コロナの検査数の水増しで183億円の補助金請求、取り消しへ/東京都3.電子カルテ共有化を2024年度から開始/医療DX推進本部4.30年ぶりに看護師の確保指針を初改定へ/厚労省5.2025年までに地域医療構想の実現を確実に/経済財政諮問会議6.子宮頸がん予防に関する報告書を国立がん研究センターが公表1.改正マイナンバー法可決、来年秋に健康保険証は廃止、マイナンバーカードに1本化/国会2024年秋に現行の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと1本化する、改正マイナンバー法など改正関連法が6月2日に、参議院本会議で賛成多数で可決、成立した。これにより「マイナ保険証」が導入され、高齢者や障害者などマイナカードの取得が困難な人々には「資格確認書」が発行される。また、マイナンバー法の改正により、マイナンバーカードは年金受給者の預貯金口座とひもづけられるほか、行政機関がマイナンバーを活用できる範囲が広がることも含まれている。その一方で、マイナ保険証に他人の情報と誤ってひもづけされるトラブルが相次いでいる問題に関しては、再発防止が求められている。参考1)マイナンバー法等の一部改正法案について(厚労省)2)いまの健康保険証、24年秋に原則廃止 改正マイナンバー法が成立(朝日新聞)3)マイナンバーカードと健康保険証が一体化へ 改正法可決・成立(NHK)2.コロナの検査数の水増しで183億円の補助金請求、取り消しへ/東京都東京都の新型コロナウイルスのPCR検査などの無料検査事業で不正が発覚し、11の事業者に対して補助金交付の取り消しなどの処置が行われたことが明らかとなった。東京都によると、新型コロナウイルスの無料検査事業で初の不正発覚となった。不正を行った事業者は検査数の水増しを行い、補助金を不正に受け取ろうとしたとされ、不正に申請された額はおよそ183億円で、そのうち17億円がすでに交付されていた。東京都は補助金を受け取った事業者に対して返還命令を出した上で、不正な申請をした11の事業者には、補助金交付決定の取り消しなどを行っている。参考1)令和4年度PCR等検査無料化事業補助金 交付決定の取消し等について(東京都)2)無料PCR検査で11業者が不正 183億円補助取り消し 東京都(朝日新聞)3)東京都のコロナ無料検査事業、不正申請183億円(日経新聞)3.電子カルテ共有化を2024年度から開始/医療DX推進本部政府は、6月2日に医療分野のデジタル化を議論する第2回医療DX推進本部を首相官邸で開催し、「医療DX」の工程表を発表した。2024年度から「全国医療情報プラットフォーム」を順次運用し、全国の医療機関や薬局で電子カルテの情報の共有を開始する。さらに電子カルテの導入を推進し、30年までにほぼすべての医療機関での導入を目指す。24年度中にプラットフォームを構築し、調剤情報など共有できる情報を徐々に増やしていくほか、電子カルテの導入については、厚生労働省は診療所などが使いやすい標準型の電子カルテの規格を定め、2030年までにほぼすべての医療機関で導入を完了し、電子カルテの情報共有がすべての医療機関で可能となるようにする予定。また、来年度の診療報酬改定に向けて、医療機関の事務作業の効率化を図るため、共通のプログラムを開発し、コスト削減に取り組む。診療報酬改定DXは、2026年度から本格的に実施し、診療報酬の算定や患者の窓口負担の自動計算を行う共通算定モジュールが提供される。参考1)第2回 医療DX推進本部(内閣府)2)医療DX加速へ 全国で患者情報共有 24年度からシステム稼働(朝日新聞)3)電子カルテ情報、来年度から共有 政府が医療DX工程表(日経新聞)4.30年ぶりに看護師の確保指針を初改定へ/厚労省厚生労働省は、5月29日に医道審議会・保健師助産師看護師分科会の検討部会を開催し、策定から約30年間、1度も見直しをしていない「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」の改正に向け、議論を始めた。現行指針は1992年に制定され、看護師の人材確保や養成、処遇改善、資質向上、就業促進などが基本的な方針として記載されている。しかし、看護現場の状況が変わっているため、改定が求められており、自民党の厚生労働部会・看護問題小委員会も指針改定を要望していた。部会では少子高齢化の進展に伴い看護師などの確保が非常に重要であり、新興感染症への対応も考慮して指針改定が決定された。議論は、今年秋に告示される基本指針の改正に向けて進められる。また、指針の名称も「看護『婦』等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」から「看護『師』等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」に改められる予定。参考1)第1回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師等確保基本指針検討部会(厚労省)2)看護師の確保指針を初改定へ 今秋にも、少子高齢化で(東京新聞)3)30年ぶりに「看護師等確保」基本指針見直し、少子高齢化が進む中での看護職員確保策、専門性向上支援策などが鍵-看護師確保基本指針検討部会(Gem Med)5.2025年までに地域医療構想の実現を確実に/経済財政諮問会議政府が5月26日に開催した経済財政諮問会議で、地域医療構想に関する議論が行われた。この中で、民間議員は実効性を担保するために法制上の措置を講じるべきだと主張、目標年限の2025年に向けて都道府県の権限強化だけでは不十分と指摘し、地域医療介護総合確保基金やかかりつけ医機能報告制度の見直しを求めた。さらに診療報酬・介護報酬改定にあたっては、タスク・シフト/シェアや地域包括ケアシステムの重要性を強調し、徹底した給付見直しを指示するよう要請した。さらに地域医療構想の実現や医療・介護提供体制の構築を進めるよう意見が出された。厚生労働省が5月25日に開催した「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」の資料によれば、公立・公的医療機関などで具体的対応方針の再検証が必要とされた医療機関については、対応方針の「検証済み」(「措置済み」を含む)の割合が、3月は医療機関単位58%、病床単位62%。昨年9月の53%、56%に比べて進捗が確認されている。参考1)社会保障分野における経済・財政一体改革の重点課題とマイナンバー制度の利活用拡大(経済財政諮問会議)2)地域医療構想調整会議における検討状況等調査の報告(厚労省)3)地域医療構想、協議・検証未開始は約3000施設 地域医療構想調整会議で外来・在宅医療の実態に即した議論も必要(日経メディカル)4)2025年度に全国の病床数総量は119万床で「必要量と一致」するが、地域ごとの過剰・過少がある―地域医療構想・医師確保計画WG(1)(Gem Med)6.子宮頸がん予防に関する報告書を国立がん研究センターが公表国立がん研究センターは、子宮頸がんの予防方法についての報告書を公表した。報告書では、HPVワクチンの接種と子宮頸がん検診の重要性を強調し、わが国では子宮頸がんの死亡率が他の先進国より高いことを指摘した。報告書によれば、近年の20~30代の若年層で子宮頸がんの発症率が上昇しており、HPV感染ががんの原因の95%を占めているという。しかし、依然として国内のHPVワクチンの接種率は低く、検診受診率も43.7%にとどまっている。報告書では、子宮頸がんは予防可能ながんであり、ワクチンと検診の両方を受ける必要があることを訴えている。本報告書は「ファクトシート」の名称で国立がん研究センターの下記のホームページで公開されている。参考1)子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV) 関連がんの予防ファクトシート 20232)子宮頸がんの対策を 最新の報告書公表 国立がん研究センター(NHK)3)子宮頸がん、もっと知って 「ワクチン・検診で予防を」-高い死亡率・国立センター報告書(時事通信)

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伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 1

今回のキーワード連合学習指差し意図共有自閉症サイン言語音声言語メラビアンの法則左脳皆さんは、どうやって赤ちゃんが言葉を覚えていくのか不思議に思ったことはありませんか? そもそも私たち人間がどうやって言葉を話すようになったのか疑問に思ったことはありませんか? さらに、言葉そのものよりも、なぜ見た目や口調の方が相手に影響を与えるのでしょうか? なぜ言葉と利き手を司る優位半球が同じ左脳なのでしょうか?これらの謎を解くために、今回は、伝記「ヘレン・ケラー」を取り上げ、言葉の意味を理解する象徴機能のメカニズムを解き明かし、その起源に迫ります。なお、厳密にいえば言葉には、発語、象徴、統語の主に3つの機能があります。今回は、象徴にフォーカスしています。発語の機能の詳細については、関連記事1をご覧ください。象徴機能とは?ヘレン・ケラーは、今から100年以上前の偉人です。彼女は、1歳半の時に感染症(髄膜炎)にかかってしまい、その後遺症で「見えない、聞こえない、話せない」という三重苦を背負うことになります。そして、言葉を覚えることが困難なまま、家の中で暴れ回っていました。やがて彼女が6歳になった時、ついに家庭教師のサリバン先生に巡り会います。サリバン先生は、一生懸命ヘレンに指文字を教え込み、やがてヘレンは指文字がものや動作と関連付けられていることを理解し、いくつかの名詞と動詞を覚えました。しかし、ケーキに触れたり嗅いだり味わったりすれば「c-a-k-e」という指文字を綴ることができるのに、ケーキが食べたい時はその指文字を使わずに、身振りで表現していたのです。なぜなのでしょうか?その訳は、「ケーキに触れる→c-a-k-eの指文字を綴る」というパターン学習(連合学習)をしただけだったからです。しかし、c-a-k-eという指文字がケーキというものを表す記号(象徴)であり、それを使って逆に「ケーキが欲しい」という自分の欲求を伝える、つまり「c-a-k-eの指文字を綴る→ケーキに触れる」ということがわからなかったのでした。このように、ものごとやできごとを記号(象徴)に置き換えて、目の前にそれがなくても記号(象徴)によって認識することを象徴機能と呼んでいます。つまり、「もの→記号」なら「記号→もの」と理解することです(刺激等価性)。何が奇跡なの?サリバン先生は、根気強くヘレンに指文字を教えていきます。そして、運命の時が来ます。2人が出会って1ヵ月後、サリバン先生はヘレンを井戸に連れていき、水を流します。そして、ほとばしった水がヘレンの手に当たった時、彼女ははっとします。そして、おもむろに「わーたー(water)」と唸るように言葉を絞り出したのでした。さらに、自分から「w-a-t-e-r」と指文字を綴り、水を求めるのでした。この時、ヘレンは初めてすべてのものには名前があり、それを指文字で表していることに気付くのです。つまり、「もの→記号」なら「記号→もの」を理解したのでした。それを可能にさせたのも、ヘレンが病気になる前にすでに覚えた「water」の発音をその瞬間に思い出したからでした。「waterという発音(記号)→水(もの)」が理解できたからこそ、「w-a-t-e-rの指文字(象徴)→水(もの)」も理解できるようになったのでした。この時を境に、ヘレンは身の回りのあらゆるものの名前を次々と質問するようになります。いわゆる幼児の「なになに期」が遅れて爆発的にやってきたのでした。さらに、サリバン先生が自分の口の中にヘレンの指を入れさせて発音の仕方を教えることで、話せるようにもなっていきます。やがて大学に進学するまでになり、生涯、講演活動を通して世界の福祉のあり方に働きかけました。彼女は、三重苦を背負いながら、世界を変える人になったのでした。まさに奇跡です。と同時に、そんなヘレンを子供の頃から支え続けたサリバン先生こそ、タイトルの「奇跡の人」(The Miracle Worker)であるといえるでしょう。次のページへ >>

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伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 2

象徴機能はどうやって発達するの?ヘレンは、三重苦になる前に、すでに象徴機能が発達していたため、その後に奇跡を起こすことができました。それでは、この機能はどうやって発達するのでしょうか? ここから、象徴機能の発達を3つの段階に分けて説明しましょう。(1)まねによる共感赤ちゃんは、生後6ヵ月を過ぎると、「バンザイ」「バイバイ」「オツムテンテン」などの動きをまねするようになります。これは、赤ちゃんが親の動きのインプットと自分の動きのアウトプットを「ものまね神経」(ミラーニューロン)という同じ脳内の神経ネットワークで処理するようになるからです。この時、親の動作と同時に気持ちも脳内に「鏡」(ミラー)のように映し出されることで、共感性も発達します。1つ目の発達は、まねによる共感です。この共感性は、親が赤ちゃんの気持ちを汲み取った表情や声かけをすることで高まります(ミラーリング)。このメカニズムの詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)指差しによる意図共有赤ちゃんは、生後9ヵ月を過ぎると親が指を差した方向や視線を向けた方向と同じ方向を見るようになり、1歳を過ぎると自分で指を差して親に注意を向けさせ、注意を向ける対象を親(相手)と赤ちゃん(自分)で共有することができるようになります(共同注視)。そして、親の意図に気付いたり、自分の意図を伝えることが可能になります。2つ目の発達は、指差しによる意図共有です。これは、当たり前のことのように思いますが、実は人間にしかできません。その訳は、指差しで示された方向とは、指差しした相手からの方向だからです。指差しがわかるということは、相手の位置に自分の身を置く想像ができる、つまり相手の視点に立つという人間ならではの能力が発達したことを意味します。(3)ごっこ遊びによる想像1歳後半から、食べるふりをしたり、葉っぱを皿に見立てたり、おままごとをするようになります(ごっこ遊び)。そして、相手と同じ想像の世界を共有することが可能になります。3つ目の発達は、ごっこ遊び(象徴遊び)による想像です。ちなみに、最初のまねによる共感の発達がうまく行かない場合、その後に続く指差しによる意図共有やごっこ遊びによる想像の発達もできなくなります。これが自閉症です。自閉症に言葉の遅れがあるのは、もともと言語能力(知能)が低いからではなく、ベースとなる共感性が低いため、その後に言語に必要な象徴機能が発達しにくくなるからであることがわかります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 3

象徴機能はどうやって進化したの?象徴機能は、まねによる共感、指差しによる意図共有、ごっこ遊びによる想像によって発達することがわかりました。それでは、この機能はどうやって進化したのでしょうか? ここから、象徴機能の進化を3つの段階に分けて説明しましょう。(1)まねによる共感約700万年前に人類は、アフリカの森で誕生しましたが、約300万年前には森が減って草原に取り残されてしまいました。この時、猛獣から子供を守り食料を獲るために、男性も女性と一緒に子育てをして家族をつくるようになりました。まだ言葉がなかった当時、その助け合いの確認として、お互いのしぐさや発声のまねをし合ったのでしょう。そして、それを心地良く感じるように進化したのでしょう。1つ目の進化は、まねによる共感(ミラーリング)です。この共感の核は同調です。ミラーリングの起源の詳細は、関連記事3をご覧ください。なお、サルなどの類人猿も「ものまね神経」(ミラーニューロン)があり、共感します。ただし、サルは痛み、恐れ、怒りなどの不快感情に限定されています。その理由は、サルは、ほかのサルの不快さを素早く感じ取って自分の身に降りかかるかもしれない危険を事前に避けることができればよいだけで、人間のように喜びや安らぎなどの同調の快感情まで共感する必要がないからです。(2)サイン言語による意図共有人類は、その後に家族をもとに血縁で集まった部族をつくるようになりました。この時、助け合いをよりスムーズにするため、相手の表情だけでなく、しぐさや発声の意図を察知するようになったのでしょう(心の理論)。そして、特定のしぐさや発声を部族内で文化として共有(学習)するようになったのでしょう。2つ目の進化は、サイン言語による意図共有です。サイン言語とは、ジェスチャーをはじめ、表情や声の調子などを含む非言語的コミュニケーションです。たとえば、しぐさの代表は指差しです。また、発声の代表は、「は?」のように質問する時に語尾を上げることです。これらは世界共通のサイン言語です。なお、ベルベットモンキー(サルの一種)は、天敵のヒョウ、タカ、ヘビが来た時にそれぞれ違う警戒音を発するサイン言語を持っています。そうすることで、周りか、空か、足元かのどこに注意を向けるか(意図)を仲間と瞬時に共有することができます。昨今は、ほかのいくつかのサルも同じように警戒音を発し分けていることが発見されています1)。ただし、これは生まれながらのもので、人間のように学習するわけではありません。また、人間に最も近いチンパンジーも、さまざまなしぐさや唸り声によるサイン言語が確認されています2)。有名なのは、手のひらを相手の前に差し出す物乞いのジェスチャーです。野生のチンパンジーは指さしをしないですが、飼育下のチンパンジーは指差しをすることも確認されています。ただし、頭にバケツをかぶっている人に対しても指差しをすることから、「water」と発する前のヘレンと同じように、「指差し→指した餌がもらえる」という連合学習をしただけであることがわかります2)。つまり、彼らは一方的に要求するだけで、相手と意図を共有して働きかけることはできないことがわかります。教わること(連合学習)はできても、教えること(意図共有)はできないわけです。ちなみに、人間だけに白目があるのは、白目によって黒目(視線)の位置がわかることから、視線に指差しと同じ意図共有の機能を持たせるように進化したためであるといわれています。だからこそ、意図共有をしようとしない自閉症は指差しをしないと同時に視線が合わないのです。また、女性が男性よりも人差し指が長いのは(指比)、共感性の高い女性の方が進化の歴史の中で指差し(意図共有)をより多くしていたことで、人差し指が長くなるように進化した可能性が考えられます。逆に、自閉症の人差し指が短いのは3)、直接要因として胎児期にテストステロン(男性ホルモン)の分泌が多いからですが、究極要因としては自閉症(超男性脳)と関連する遺伝子によって、進化の歴史の中で指差しとして使わない人差し指が短くなるように「退化」しつつあるととらえることができます。(3)音声言語による想像約20万年前に現生人類は、歌声の発声をもとに発語が可能になりました。この詳細については、関連記事1をご覧ください。この時、すでにある程度確立していたサイン言語に、発声した音素を当てはめていったのでしょう(言語併合)。たとえば、最も使う体の部分は指差しをする「手(te)」ですが、この世界祖語は「tik」であり、さまざまな言語で似たような発音をします。そして、音声によって、夜や洞窟などの暗闇の中でも、コミュニケーションができるようになりました。この時、目の前にないものや状況も相手と共有するようになりました。3つ目の進化は、音声言語による想像です。なお、これまでにチンパンジーに絵文字や手話を教える研究が何度もされてきました。しかし、「water」と発する前のヘレンと同じように、チンパンジーは「バナナを見る(もの)→バナナの絵文字(記号)」という学習はできるのですが、逆にバナナの絵文字(記号)を使って「バナナちょうだい」と訴えようとはしなかったのです4)。チンパンジーをはじめ、人間以外の動物は目の前にある実物が世界のすべてであり、やはり絵文字や手話などの記号(象徴)を使って目の前にないものを想定(想像)するができないのでした。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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