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難治転移大腸がんへのfruquintinib、日本人患者にも有用/日本臨床腫瘍学会

 転移のある大腸がん患者に対する血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR) -1、2、3を標的とするfruquintinibの有効性を示したFRESCO-2試験。本試験における日本人サブグループの解析結果を、2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、国立がん研究センター東病院の小谷 大輔氏が発表した。 FRESCO-2試験は米国、欧州、オーストラリア、日本で実施された国際共同第III相試験であり、fruquintinib+最善の支持療法(BSC)またはプラセボ+BSCに2:1で無作為に割り付けられた。fruquintinib(F群)またはプラセボ(P群)を1日1回投与(5mgを28日周期で3週間投与し、1週間休薬)した。主要な患者選択基準には、標準化学療法が不応または不耐であること、抗VEGF 療法歴を有すること、RAS野生型の場合は抗EGFR療法歴を有すること、適応がある場合は免疫チェックポイント阻害薬またはBRAF阻害薬治療歴を有すること、またトリフルリジン/チピラシルとレゴラフェニブの両方もしくはいずれかの治療歴を有することが含まれた。 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性であった。全体集団におけるOS中央値はF群7.4ヵ月 vs.P群4.8ヵ月、ハザード比(HR):0.66 (95%信頼区間[CI]:0.55~0.80、p<0.001)、PFS中央値は3.7ヵ月 vs.1.8ヵ月、HR:0.32(95%CI:0.27~0.39、p<0.001)だった。 主な結果は以下のとおり。・691例が登録され、うち日本人は56例(8%、F群40例・P群16例/男性27例・女性39例)だった。追跡期間中央値はF群が9.2ヵ月、P群が8.6ヵ月だった。・日本人サブグループは、OS中央値(F群6.9ヵ月 vs.P群5.6ヵ月、HR=0.42、[95%CI:0.19~0.92]、p=0.055)およびPFS中央値(3.6ヵ月 vs.1.8ヵ月、HR=0.27[95%CI:0.13~0.56]、p=0.004)についてF群がP群と比較して良好な結果であった。DCRは62.5% vs.25.0%、ORRは2.5% vs.0%だった。・Grade3以上の有害事象はF群71.8% vs.P群29.4%で発生した。F群で5%以上発生した主な有害事象は高血圧(23.1% vs.0%)、手足症候群(17.9% vs.0%)、蛋白尿(7.7% vs.0%)で、いずれも非日本人と比較して発症率が高い傾向であった。 小谷氏は「fruquintinibは、日本人サブグループにおいて、OSおよびPFSが臨床的に意味のある改善を示し、安全性プロファイルはFRESCO-2の結果および確立された単剤治療のプロファイルと一致していた。有害事象も休薬・減量などでコントロール可能であった」とした。また、会場での質疑応答において、日本人で高血圧などの毒性が多く出た理由を問われ、「過去のレゴラフェニブのCORRECT試験サブグループにおいても日本人は非日本人よりと比較してこれらの有害事象発現頻度が高い傾向であったこと、また本試験においてレゴラフェニブ投与歴を持つ患者の割合が日本人集団では非日本人集団より高かったことが、有害事象発現頻度の違いにつながった可能性がある」と回答した。

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看護施設スタッフの検査強化で、入所者のコロナ関連死減少/NEJM

 米国の高度看護施設(skilled nursing facilities)において、職員に対する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)サーベイランス検査の強化は、とくにワクチン承認前において、入所者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症および関連死の、臨床的に意味のある減少と関連していた。米国・ロチェスター大学のBrian E. McGarry氏らが、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究の結果を報告した。高度看護施設の職員へのCOVID-19サーベイランス検査は広く行われているが、施設入所者のアウトカムとの関連性についてのエビデンスは限定的であった。NEJM誌2023年3月23日号掲載の報告。高度看護施設1万3,424施設について、77週間調査 研究グループは、CMSのCOVID-19 Nursing Home Databaseにおける2020年11月22日~2022年5月15日のデータを用い、ワクチン承認前、B.1.1.529(オミクロン)株優勢前、オミクロン株優勢中の3つの期間における、高度看護施設1万3,424施設の職員のSARS-CoV-2検査と入所者のCOVID-19について後ろ向きコホート研究を行った。同データベースは、高度看護施設が米国疾病予防管理センター(CDC)の医療安全ネットワーク(NHSN:National Healthcare Safety Network)に週単位で提出するデータを含んでいる。 主要アウトカムは2つで、潜在的アウトブレイク(COVID-19症例が2週間なかった後にCOVID-19が発生と定義)時におけるCOVID-19発症およびCOVID-19関連死の週間累積例数(潜在的アウトブレイク100件当たりの件数として報告)で、検査回数の多い施設(検査数の90パーセンタイル)と少ない施設(10パーセンタイル)で比較した。スタッフ検査回数が多い施設で、少ない施設よりCOVID-19発症/関連死が減少 77週間の調査期間において、潜在的アウトブレイク100件当たりのCOVID-19症例は、スタッフへの検査回数が多い施設が519.7例に対し、少ない施設は591.2例であった(補正後群間差:-71.5、95%信頼区間[CI]:-91.3~-51.6)。また、潜在的アウトブレイク100件当たりのCOVID-19関連死は、多い施設42.7例に対し、少ない施設49.8例であった(-7.1、-11.0~-3.2)。 ワクチン承認前においては、潜在的アウトブレイク100件当たりのCOVID-19症例は、スタッフへの検査回数が多い施設759.9例、少ない施設1,060.2例(補正後群間差:-300.3、95%CI:-377.1~-223.5)、COVID-19関連死はそれぞれ125.2例、166.8例(-41.6、-57.8~-25.5)であった。 オミクロン株優勢前は、スタッフへの検査回数が多い施設と少ない施設でCOVID-19症例数、COVID-19関連死数のいずれも同程度であった。オミクロン株優勢中は、多い施設でCOVID-19症例数が減少した。しかし死亡数は両群で同程度であった。

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子宮内避妊具の装着、産後早期vs.標準/JAMA

 子宮内避妊具(IUD)の産後2~4週での装着は産後6~8週での装着と比較し、完全脱落に関して非劣性が認められた。部分脱落については認められなかった。米国・カリフォルニア大学のSarah Averbach氏らが、無作為化試験の結果を報告した。IUDの装着は、エビデンスではなく先例に基づき、通常産後6週で行われる。産後2~4週の産褥期には妊娠しないことが知られていることや、米国産婦人科学会では産後3週以内での受診が推奨されており、通常よりも早期である産後2~4週でのIUD装着について検討が行われた。結果を踏まえて著者は、「これら装着時期による脱落リスクを理解することは、IUD装着のタイミングについての患者および臨床医のインフォームド・チョイスに役立つと考えられる」とまとめている。JAMA誌2023年3月21日号掲載の報告。IUDの完全脱落について無作為化試験 研究グループは、2018年3月~2021年7月に、米国の4施設において経腟分娩または帝王切開で出産しIUD装着を希望すると回答した産後10日以内の18歳以上の女性を登録し、産後14~28日(早期群)または42~56日(標準群)にIUDを装着するよう施設で層別化して1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間追跡調査した。IUDの種類(銅付加IUD、レボノルゲストレル放出IUD)は、参加者が選択した。 主要アウトカムは、産後6ヵ月までの完全脱落率(非劣性マージン6%)で、盲検化された臨床医が経膣超音波検査でIUDの存在と位置を確認した。副次アウトカムは、部分脱落、IUD抜去、骨盤内感染症、患者満足度などであった。完全脱落率は2.0% vs.0%、部分脱落率は9.4% vs.7.6% 642例がスクリーニングを受け、適格基準を満たした404例が早期群(203例)と標準群(201例)に割り付けられた。404例の平均(±SD)年齢は29.9±5.4歳、46例(11.4%)が黒人、228例(56.4%)が白人、175例(43.3%)がヒスパニック系であった。 404例中53例(13%)がIUDを装着せず、57例(14%)が追跡不能で、解析対象はIUDを装着し産後6ヵ月間の追跡調査を完了した294例(73%)であった。 完全脱落は、早期群で149例中3例、(2.0%、95%信頼区間[CI]:0.4~5.8)、標準群で145例中0人(0%、0.0~2.5)、群間差は2.0%(95%CI:-0.5~5.7、p=0.04)であり、早期群の標準群に対する非劣性が認められた。 部分脱落は、早期群では14例(9.4%、95%CI:5.2~15.3)、標準群では11例(7.6%、95%CI:3.9~13.2)に発生した(群間差:1.8%、95%CI:-4.8~8.6)。6ヵ月後のIUD使用率は、早期群141例(69.5%、95%CI:62.6~75.7)、標準群139例(67.2%、95%CI:60.2~73.6)であり、両群で同程度であった。 骨盤内感染症が、早期群で3例報告された。(2023年3月31日 記事内容を修正いたしました)

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第154回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(前編)

休職中だったWHO西太平洋地域事務局の葛西 健・事務局長とうとう解任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ワールド・ベースボール・クラシック (WBC)が終わってしまいました。日本代表の優勝に終わった今大会ですが、栗山 英樹監督以下、コーチ陣のほとんどが北海道日本ハムファイターズ(以下、日ハム)の在籍経験者で占められていたことは特筆に値します(代表の投手コーチだった吉井 理人・ロッテ監督も日ハムの投手コーチ時代にダルビッシュ 有選手、大谷 翔平選手を指導)。時折映るブルペンには、かつて日ハムでダルビッシュ選手の球を受けていた鶴岡 慎也氏もいました(ブルペンキャッチャーとして帯同)。首脳陣や裏方の組織編成に、栗山監督が日ハム時代に一緒に働き、自身の考えや戦い方を熟知している人間たちを招集したということでしょう。今回のWBCは、野球というスポーツを超えて、組織づくりという面でもとても参考になりました。ちなみに今回日本代表にスタッフとして参加した大谷選手の通訳の水原 一平氏(元日ハム通訳)は決勝戦直後、自身のインスタグラムに「日ハム組」と題して、コーチ陣に大谷 翔平選手、ダルビッシュ 有選手、近藤 健介選手、伊藤 大海選手らの出場選手も加わった集合写真を掲載しました。総勢なんと13人、全員がにこやかに笑う写真はまるで日ハムが世界で優勝したかのようでした。さて今回は、同じ”世界”ということで、WBCならぬWHO(世界保健機関)の西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ)の葛西 健・事務局長が解任されたニュースを取り上げます。昨年8月から休職となっていた葛西氏、日本政府の強力なロビー活動も虚しく、正式に解任となってしまいました。「調査の結果、不適切な行為があったことが判明した」とWHOWHOは3月8日、職員らへの人種差別的な発言などがあったとして内部告発され、昨年8月から休職中だった葛西・西太平洋地域事務局長を解任したと発表しました。WHOが地域事務局長を解任したのは初めてだそうです。共同通信などの報道によると、葛西氏の処遇を決める地域委員会の投票では解任賛成が13票、反対が11票、棄権が1票とほぼ拮抗。その結果を踏まえ、WHOは「調査の結果、不適切な行為があったことが判明した」とし「(葛西氏の)任命を取消した」と発表しました。不適切な行為の詳細は明らかにしていません。匿名の職員30人以上がWHO執行部に苦情を申し立て内部告発についてはAP通信が昨年1月に最初に報じました。それらの報道によれば、葛西氏は部下の職員に人種差別的な発言をしたり、「攻撃的なコミュニケーションや公然の場で恥をかかせる行為」を繰り返したり、一部の太平洋地域における新型コロナウイルスの感染拡大は「文化や人種のレベルが劣ることによる能力不足」などと述べたりしたとのことです。さらに、機密情報を日本政府に漏らしたという疑いも浮上していました。匿名の職員30人以上がWHO執行部に苦情を申し立て、WHOは告発内容について調査を開始、葛西氏を休職扱いとしました。葛西氏は、調査開始当初、声明で「部下に厳しく接したことは事実だが、特定の国籍の人を攻撃したことはない。機密情報を漏洩したとの非難にも異議がある」と告発内容を否定していました。テドロス事務局長の後任の最有力候補だった葛西氏葛西氏は慶應大学医学部出身の医師で、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院を修了後、岩手県庁で働いた後、厚生省(当時)に入省しました。同省保健医療局結核感染症課の国際感染症専門官などを経て2000年からWHO西太平洋地域事務局に感染症対策医官として勤務、西太平洋地域の結核対策や、SARS対応に取り組みました。その後、厚生労働省の大臣官房国際課課長補佐としていったん日本に戻り、宮崎県福祉保健部次長などを務め、地域の医療や感染症対策などに取り組みました。2006年に再びWHOに戻り、西太平洋地域事務局感染症対策課長、WHOベトナム代表などを務め順調に出世、2019年2月、日本政府の強力な支援を受けて、地域委員会の選挙でWHO西太平洋地域事務局長に選ばれました。WHOの西太平洋地域事務局は、世界に6ヵ所あるWHOの地域事務局の一つで、日本や中国、オーストラリアなどを管轄しています。西太平洋地域事務局長には、新型インフルエンザ等対策有識者会議の会長を務める尾身 茂氏も1999年から2006年まで就いていました。葛西氏は、WHOのトップ、テドロス・アダノム事務局長の後任の最有力候補とも目されていました。2006年の選挙で尾身 茂氏が苦杯を舐めたWHO事務局長のポストの獲得は、日本政府にとっても悲願と言えることでした。今回の解任は、WHOをはじめとする国際機関のポスト獲得に注力してきた日本政府には非常に大きな痛手となりました。この方面に詳しい知人に話を聞くと、「いろいろな国際機関があるが、WHOは将来日本がトップを取れるかもしれない数少ない機関の一つだった。告発が表沙汰になってから、日本は嘆願書を出し、尾身氏をマニラに送り込むなど、強力なロビー活動を展開したがダメだった。葛西氏は否定し続けてきたが、告発が事実だった可能性は高い」と話していました。なお、松野 博一官房長官は解任が決まった翌日、9日の記者会見で、WHOが葛西氏を解任したことについて、「選挙で選ばれた局長に対する処分であり、調査・事実認定は公正公平に行われ、地域委員会、加盟国がコミットした上で行われる必要があると一貫して主張してきた」と述べる一方、「日本政府は人種差別やハラスメントを容認しないWHOの政策を支持する立場だ」とも語りました。歴代の厚労大臣がWHOに「嘆願書」ところでこの件に関し、雑誌「集中」2023年1月号は「WHO葛西 健氏の処分、対応巡り政府与党内に波紋」という記事を掲載、2022年10月に歴代の厚生労働大臣がWHOのテドロス事務局長に「嘆願書」を送っていたと報じています。同記事によれば、嘆願書は田村 憲久・元厚労相、塩崎 恭久・元厚労相、根本 匠・元厚労相、後藤 茂之・前厚労相、武見 敬三・元厚労副大臣、古川 俊治・自民党参院議員、橋本 岳・元厚労副大臣、丸川 珠代・元厚労政務官の8人の連名で、「私達は日本の国会議員として、グローバルヘルスやWHOと密接な関わりを持って来ました。私達は、WHO西太平洋事務局長の葛西 健先生に対する疑念に対するWHOの対応について懸念を共有する為に、この連名で書簡を送ります」として、「私達はこの疑惑について直接知っている訳ではないので、特にコメントしません。しかし、葛西 健先生を長年知っている私達にとって、これらの疑惑は真実から遠く離れたものでしかありません」と葛西氏に対する疑惑に疑問を呈しています。その上で、加藤 勝信厚労相が、22年9月に開催された西太平洋地域の地域委員会において、今回の内部告発や調査などについて十分な情報開示と正式な議論を求める意見を表明したにも関わらず、それに対して具体的な行動が取られていないことに懸念を表明しています。葛西氏は今回のような疑惑を招くような人物ではない、調査結果を公表してほしい、葛西氏の言い分も聞くべきだ…。歴代の厚労大臣らによる異例の嘆願書がWHOに送られたものの、結局は解任に至ってしまいました。一体、何が悪かったのでしょうか。パワハラが表沙汰になった段階でほぼほぼアウトの欧米先進国WHO内でのさまざまな事情やパワーバランスももちろん大きいと思いますが、一つにはパワハラやセクハラなどに鈍感、寛容過ぎる日本人の特性が災いした可能性があります。欧米先進国では、パワハラやセクハラについては表沙汰になった(訴えられた、告発された)段階で、ほぼほぼアウトというのが常識と言われています。そもそも複数(30人!)の人間から告発された段階で、仕事の能力以前にその人の人間性に疑問符が付けられてしまいます。ましてや多様性の象徴とも言える国際機関での差別発言は、たとえそこに悪意がなかったとしてもアウトでしょう。そのアウトさがAP通信で報道されたのは2022年1月。すぐさま火消しに入らなかった日本政府や頑なに告発内容を否定し続けた葛西氏にも非がありそうです。「解任理由が不明確」との批判もありますが、国際的には今回の解任、歓迎の声も大きいようです。医学雑誌の「The Lancet」は3月18日、「Global health experts welcome Kasai dismissal」(グローバルヘルスの専門家たち葛西氏解任を歓迎)と題する記事を掲載しているのです。(この項続く)

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日本の食事パターンと認知症リスク~NILS-LSAプロジェクト

 日本食の順守が健康に有益である可能性が示唆されている。しかし、認知症発症との関連は、あまりよくわかっていない。国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らは、地域在住の日本人高齢者における食事パターンと認知症発症との関連を、アポリポ蛋白E遺伝子型を考慮して検討した。その結果、日本食の順守は、地域在住の日本人高齢者における認知症発症リスクの低下と関連しており、認知症予防に対する日本食の有益性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年2月17日号の報告。 本研究データはNILS-LSA(国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)プロジェクトの一環として収集され、愛知県在住の認知症でない高齢者1,504人(65~82歳)を対象とした20年間のフォローアップコホート調査が実施された。これまでの研究に基づき、3日間の食事記録データにより日本食インデックス(9-component-weighted Japanese Diet Index:wJDI9)のスコア(範囲1~12)を算出し、日本食の順守の指標として用いた。認知症発症は、介護保険制度の認定証で確認し、フォローアップ開始後5年以内に認知症を発症した場合は除外した。wJDI9スコアの三分位(T1~T3)に従い、多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出し、認知症でない期間の差を推定するため、ラプラス回帰を用いて認知症発症年齢のパーセンタイル差(PD)および95%CIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間の中央値は11.4年(四分位範囲[IQR]:7.8~15.1)であった。・フォローアップ期間中に認知症発症が確認された高齢者は225例(15.0%)であった。・T3群は、認知症発症率が最も低く10.7%であった。・T1群とT3群の間の認知症発症年齢のPDは11番目(11th PD)と推定された。・wJDI9スコアが高いほど、認知症発症リスクが低く、認知症でない期間が長かった。・T1群に対するT3群の認知症発症年齢の多変量調整HRは0.58(95%CI:0.40~0.86)、11th PDは36.7ヵ月(95%CI:9.9~63.4)であった。・wJDI9スコアが1ポイント上昇するごとに、認知症発症リスクは5%低下し(p=0.033)、認知症でない期間が3.9ヵ月(95%CI:0.3~7.6)延長した(p=0.035)。・ベースライン時の性別または喫煙状況(現在の喫煙者/非喫煙者)で差は認められなかった。

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コロナ疾患後症状患者、1年以内の死亡/重篤心血管リスク増

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染から1年間のコロナ罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC[いわゆるコロナ後遺症、long COVID])について、米国の商業保険データベースを用いて未感染者と比較した大規模調査が、保険会社Elevance HealthのAndrea DeVries氏らによって実施された。その結果、コロナ後遺症患者は心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが約2倍上昇し、1年間の追跡期間中の死亡率も約2倍上昇、1,000人あたり16.4人超過したことが明らかとなった。JAMA Health Forum誌2023年3月3日号に掲載の報告。コロナ後遺症群の死亡率は2.8%で未感染群は1.2% 米国50州の18歳以上の健康保険会員において、2020年4月1日~7月31日の期間にCOVID-19に罹患し、その後コロナ後遺症と診断された1万3,435例と、未感染者2万6,870例をマッチングし、2021年7月31日まで12ヵ月追跡してケースコントロール研究を実施した。評価項目は、心血管疾患、呼吸器疾患、死亡など。コロナ後遺症の診断は、疲労、咳嗽、痛み(関節、喉、胸)、味覚・嗅覚の喪失、息切れ、血栓塞栓症、神経認知障害、うつ病などの症状に基づいて行われた。統計学的有意性はカイ2乗検定とt検定で評価し、相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。Kaplan-Meier法を用いて死亡率を算出した。 コロナ後遺症について未感染者と比較した大規模調査の主な結果は以下のとおり。・コロナ後遺症群(1万3,435例)の平均年齢は50.1歳(SD 15.1)、女性7,874例(58.6%)。PCC群のうち3,697例がCOVID-19診断後1ヵ月以内に入院していた(平均年齢57.4歳[SD 13.6]、女性44.7%)。未感染群(2万6,870例)の平均年齢は50.2歳(SD 15.4)、女性1万5,672例(58.3%)。・コロナ後遺症群はCOVID-19を発症する前に、高血圧(39.2%)、うつ病(23.7%)、糖尿病(20.5%)、COPD(19.1%)、喘息(中等症/重症)(13.3%)、高度肥満(10.3%)などの慢性疾患を有する人が多かった。・コロナ後遺症群の追跡期間中によく観察された症状は、息切れ(41%)、不安(31%)、筋肉痛/脱力(30%)、うつ病(25%)、疲労(21%)だった。・コロナ後遺症群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。 -不整脈の発症率:PCC群29.4% vs.未感染群12.5%、RR:2.35(95%CI:2.26~2.45) -肺塞栓症:8.0% vs.2.2%、RR:3.64(95%CI:3.23~3.92) -虚血性脳卒中:3.9% vs.1.8%、RR:2.17(95%CI:1.98~2.52) -冠動脈疾患:17.1% vs.9.6%、RR:1.78(95%CI:1.70~1.88) -心不全:11.8% vs.6.0%、RR:1.97(95%CI:1.85~2.10) -末梢血管疾患:9.9% vs.6.3%、RR:1.57(95%CI:1.48~1.70) -COPD:32.0% vs.16.5%、RR:1.94(95%CI:1.88~2.00) -喘息(中等症/重症):24.2% vs.12.4%、RR:1.95(95%CI:1.86~2.03)・追跡期間中の死亡率はコロナ後遺症群2.8% vs.未感染群1.2%で、コロナ後遺症群は1,000人あたり16.4人の超過死亡となる。・COVID-19発症初期に入院を経験したコロナ後遺症群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。 -不整脈:51.7% vs.17.4%、RR:2.97(95%CI:2.81~3.16) -肺塞栓症:19.3% vs.3.1%、RR:6.23(95%CI:5.36~7.15) -虚血性脳卒中:8.3% vs.2.7%、RR:3.07(95%CI:2.59~3.66) -冠動脈疾患:28.9% vs.14.5%、RR:1.99(95%CI:1.85~2.15) -心不全:25.6% vs.10.1%、RR:2.53(95%CI:2.32~2.76) -末梢血管疾患:17.3% vs.8.9%、RR:1.94(95%CI:1.75~2.15) -COPD:43.1% vs.19.2%、RR:2.24(95%CI:2.11~2.38) -喘息(中等症/重症):31.6% vs.14.7%、RR:2.15(95%CI:2.00~2.31) コロナ罹患後症状に関する米国での最大規模の追跡調査において、コロナ後遺症患者は死亡率だけでなく心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが有意に増加し、とくにCOVID-19発症初期に入院した人では肺塞栓症が6倍、脳卒中が3倍以上など、さらにリスクが高くなることが示された。また、本研究はワクチン利用可能以前のサンプルを用いているため、ワクチン普及後では、ワクチンのコロナ後遺症緩和効果により、個人の医療利用パターンが変化する可能性もあると著者は指摘している。

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HER2低発現乳がんへのT-DXd、アジア人集団でも有効性・安全性を確認(DESTINY-Breast04)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)に対して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験のアジア人サブグループ解析において、T-DXd群では全体集団と同様にアジア人集団でも有意に無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が延長し、管理可能な安全性プロファイルであったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。 ASCO2022のプレナリーセッションで、HER2低発現のMBC患者に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告されており、T-DXd群ではTPC群と比較してPFSおよびOSを有意に延長し、安全性プロファイルも管理可能であったことが示された。一方、HER2陽性のMBC患者を対象としたDESTINY-Breast03試験のアジア人サブグループ解析では、アジア人においてもT-Dxdの有用性が示され安全性プロファイルも全体集団と一致していたものの、日本人集団においては全体集団およびアジア人集団と比較して薬剤性肺障害(ILD)の報告が多い傾向がみられていた。[DESTINY-Breast04試験]・対象:1~2ラインの化学療法歴があり、HER2低発現(IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-)のMBC患者557例(うちアジアの国または地域からの登録は213例[38%])。・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例・対照群(TPC群):カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択 184例・評価項目:[主要評価項目]HR+患者の盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS[副次評価項目]全患者のBICRによるPFS、HR+患者および全患者のOSなど 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。・2022年1月11日までに557例が無作為化され、うち213例(38%)がアジアからの参加者であった(日本85例、中国62例、韓国57例、台湾9例)。・アジア人集団における追跡期間中央値は、T-DXd群16.8ヵ月、TPC群15.4ヵ月であった(全体集団はそれぞれ16.1ヵ月、13.5ヵ月)。・アジア人集団のベースライン時の患者特性は両群でバランスがとれていた(括弧内は全体集団)。 -T-DXd群:年齢中央値56.6歳(57.5歳)、IHCスコア1+が61.2%(57.4%)、IHCスコア2+かつISH-が38.8%(42.6%)、HR+が87.1%(89.3%)、HR-が12.9%(10.7%)、中枢神経系転移あり10.2%(6.4%)、肝転移あり68.0%(71.3%)、肺転移あり36.1%(32.2%) -TPC群:年齢中央値55.3歳(55.9歳)、IHCスコア1+が57.6%(58.2%)、IHCスコア2+かつISH-が42.4%(41.8%)、HR+が91.0%(90.2%)、HR-が9.1%(9.8%)、中枢神経系転移あり4.5%(4.3%)、肝転移あり59.1%(66.8%)、肺転移あり36.4%(34.2%)・主要評価項目であるHR+患者のPFS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群10.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.4~14.7) vs.TPC群5.3ヵ月(4.2~6.8)、ハザード比[HR]:0.41(0.28~0.58)であった(全体集団では10.1ヵ月[9.5~11.5] vs.5.4ヵ月[4.4~7.1]、HR:0.51[0.40~0.64]、p<0.0001)。・全患者(HR+およびHR-)のPFS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群10.9ヵ月(95%CI:9.0~13.8) vs.TPC群4.6ヵ月(2.8~6.4)、HR:0.38(0.27~0.53)であった(全体集団では9.9ヵ月(9.0~11.3) vs.5.1ヵ月[4.2~6.8]、HR:0.50[0.40~0.63]、p<0.0001)。・HR+患者のOS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群NE(95%CI:20.8~NE) vs.TPC群19.9ヵ月(16.7~NE)、HR:0.69(0.42~1.11)であった(全体集団では23.9ヵ月[20.8~24.8] vs.17.5ヵ月[15.2~22.4]、HR:0.64[0.48~0.86]、p=0.0028)。・全患者(HR+およびHR-)のOS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群NE(95%CI:21.7~NE) vs.TPC群19.9ヵ月(15.7~NE)、HR:0.61(0.39~0.95)であった(全体集団では23.4ヵ月[20.0~24.8] vs.16.8ヵ月[14.5~20.0]、HR:0.64[0.49~0.84]、p=0.0010)。・T-Dxd群の治療中に発現したGrade3以上の有害事象は、全体集団で52.6%、アジア人集団で59.2%であった。アジア人集団で多かったものは、好中球減少症16.3%、貧血12.9%、白血球減少症11.6%などであった(全体集団ではそれぞれ13.7%、8.1%、6.5%)。・T-Dxd群におけるILDは、全体集団で45例(12.1%)、アジア人集団で21例(14.3%)、日本人集団で15例(26.8%)報告された。アジア人集団においてはGrade4/5の報告はなく、日本人集団においてはGrade3以上の報告はなかった。 これらの結果より、鶴谷氏は「HER2低発現の乳がん患者を対象としたDESTINY-Breast04試験のアジア人サブグループ解析において、全体集団と同様にT-DXd群ではTPC群と比較して臨床的に意義のあるPFSおよびOSの延長が認められた」としたうえで、安全性については「両群の安全性プロファイルも全体集団と一致していた。ILDはアジア人集団ではGrade4/5の報告はなかったものの、日本人集団では頻度が高い傾向にあり、注意深いモニタリングが必要」とまとめた。

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inaxaplin、APOL1バリアント保有患者で蛋白尿を抑制/NEJM

 アポリポ蛋白L1をコードする遺伝子(APOL1)の毒性機能獲得型バリアント(G1またはG2)を持つ人は、蛋白尿性慢性腎臓病(CKD)のリスクが高く、CKD患者はこれら2種のバリアントを持たない人に比べ末期腎臓病への進展が加速化することが知られている。米国・Vertex PharmaceuticalsのOgo Egbuna氏らは、VX19-147-101試験において、2種のAPOL1バリアントを有する巣状分節性糸球体硬化症の患者では、低分子量の経口APOL1チャネル機能阻害薬inaxaplinの投与により蛋白尿が減少することを示した。研究の成果は、NEJM誌2023年3月16日号に掲載された。前臨床研究と3ヵ国での第IIa相試験 研究グループは、前臨床研究としてinaxaplinのAPOL1チャネル機能阻害能の評価を行い、次いでフランス、英国、米国の12施設で非盲検単群第IIa相試験(VX19-147-101試験)を実施した(Vertex Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 前臨床研究では、テトラサイクリン誘導性APOL1ヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞でinaxaplinのAPOL1チャネル機能阻害能を評価し、APOL1 G2相同遺伝子組み換え蛋白尿性腎臓病モデルマウスを用いて蛋白尿に対するinaxaplinの効果の評価を行った。 第IIa相試験では、患者登録が2020年9月に開始され2021年8月に完了した。対象は、年齢18~65歳、2種のAPOL1バリアントを持ち、生検で巣状分節性糸球体硬化症が確認され、蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比[g/gCr]≧0.7~<10、かつ推算糸球体濾過量≧27mL/分/1.73m2体表面積)を有する患者であった。 被験者は、標準治療に加え、inaxaplin(1日1回、13週間[15mgを2週間、45mgを11週間])の経口投与を受けた。 主要アウトカムは、inaxaplinの服薬アドヒアランス率が80%以上の患者における、尿蛋白/クレアチニン比の、ベースラインから13週時までの変化の割合であった。安全性も良好 in vitroおよびin vivoの研究では、inaxaplinはAPOL1蛋白に直接結合して濃度依存性にAPOL1チャネル機能を阻害し、APOL1を介した腎臓病のモデルマウスにおいて蛋白尿を減少させることが示された。 第IIa相試験には16例(平均[±SD]年齢38.8±14.5歳、女性9例[56%])が登録された。inaxaplinのアドヒアランス率の閾値を満たした13例の尿蛋白/クレアチニン比の平均値は、ベースラインの2.21±0.95から13週時には1.27±0.73へと低下し、変化率の幾何平均は-47.6%(95%信頼区間[CI]:-60.0~-31.3)であった。蛋白尿の減少は早期にみられ、13週の投与期間を通じて持続的に減少した。 inaxaplinの服薬アドヒアランス率を問わない全患者の解析では、1例を除く全例で主解析と同程度の低下(幾何平均変化率:-44.0%、95%CI:-56.3~-28.3)が認められた。 inaxaplinの投与を1回以上受けた16例のうち15例(94%)で少なくとも1件の有害事象が発現したが、いずれも軽度~中等度であり、有害事象による投与中止例はなかった。少なくとも3例で発生した有害事象は、頭痛(4例)、背部痛(3例)、吐き気(3例)であった。担当医によってinaxaplin関連の可能性があると判断された有害事象は3例(頭痛2例、頭痛・腹部膨満・消化不良・背部痛1例)で認められた。 著者は、「この第IIa相試験において、APOL1機能の阻害を標的とする治療が、APOL1蛋白の毒性機能獲得型バリアントによって引き起こされる腎臓病の進行に関連する糸球体損傷のマーカーである蛋白尿を減少させるという、初めてのエビデンスが得られた」としている。

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T-DXd、HER2低発現乳がんに適応拡大/第一三共

 第一三共は2023年3月27日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、「化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳」の効能又は効果に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。 本適応は、2022年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)で発表された、化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者を対象としたグローバル第III相試験(DESTINY-Breast04)の結果に基づくもので、2022年6月に国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、優先審査品目に指定されていた。国内において初めてHER2低発現の乳がんを対象に承認された抗HER2療法となる。 なお、ロシュ・ダイアグノスティックスは、がん組織または細胞中のHER2タンパク検出に用いる組織検査用腫瘍マーカーキット「ベンタナ ultraView パスウェーHER2 (4B5)」の一部変更承認を2023年3月3日に取得している。HER2低発現の乳がん患者を対象としたT-DXdのコンパニオン診断薬として使用することができる。

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ICIの継続判断にも有用、日本初のOnco-cardiologyガイドライン発刊

 本邦初となる『Onco-cardiologyガイドライン』が第87回日本循環器学会学術集会の開催に合わせて3月10日に発刊された。これまで欧州ではESC(European Society of Cardiology、欧州心臓病学会)などがガイドラインを作成・改訂しており、国内でもガイドライン発刊が切望されていたことから、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が協働しMindsに準拠したものを作成した。今回、学術集会の会長企画シンポジウム6「OncoCardiology:診断と治療Up-to-Date」において、Onco-cardiologyガイドラインのポイントについて発表された。Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題10項目を選定 Onco-cardiologyガイドラインの目的は、(1)がん診療において心機能を正確に評価し、心血管疾患を適切に管理すること、(2)がん治療を中断することなく可能な限り継続することで、本ガイドラインの利用によってがん患者の全生存率とQOL改善が期待される。 Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題を以下のように10項目を選定し、がん患者が薬物治療を行う過程からその後のがん治療関連心血管毒性(静脈血栓塞栓症、肺高血圧症、心不全)発現時の対応方法に関するquestionが盛り込まれている(p.9 総説1-9参照)。<重要臨床課題>1)がん薬物療法中の心機能のモニター2)心血管イベントを発症した患者に対する薬物療法の選択3)トラスツズマブのマネジメント4)血管新生阻害薬のマネジメント5)プロテアソーム阻害薬のマネジメント6)免疫チェックポイント阻害薬のマネジメント7)がん薬物療法における静脈血栓塞栓症のマネジメント8)がん薬物療法における肺高血圧症のマネジメント9)心毒性を有するがん薬物療法のマネジメント10)がん薬物療法における心血管イベントの予防 上記の2)を担当した矢野 真吾氏(東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科 診療部長/教授)は、「がん薬物療法中の心血管イベントを理由にがん薬物療法を中止することは再発率の増加や全生存期間の短縮につながることから、『Background question(BQ)2:がん薬物療法中に心血管イベントを発症した患者に対して、がん薬物療法を継続することは推奨されるか?』を設定した」とコメント。また、「欧米のガイドラインと比較して、Onco-cardiologyガイドラインはエビデンスのあるquestionはシステマティックレビューを行いCQとしたが、エビデンスのないquestionはBQまたはfuture research question(FRQ)にした点に注目してほしい」と述べ、「がん薬物療法が有効でかつ治療継続が可能と判断できる場合は、モニタリングと対症療法を行いながらがん治療の継続を検討する。治療継続が困難な場合は代替療法について検討することをこのBQのステートメントにした」と説明した。Onco-cardiologyガイドラインにICIと心筋炎の関係性 Onco-cardiologyガイドラインで、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と心筋炎の関係性について解説した庄司 正昭氏(国立がん研究センター中央病院総合内科・循環器内科)は、「ICIによる心筋炎は直接的なものと間接的なものがあるが、いずれもスクリーニングにはトロポニンや心電図などが重要」と話し、「トロポニンはICI心筋炎患者の94%で上昇を認めたが、トロポニンが上昇しても臨床的な心筋障害を認めないケースも報告されている。また、心電図異常はICI心筋炎患者の89%で認められた1)」と述べた(FRQ6-1:ICI投与中の心筋障害診断のスクリーニングは有用か?)。 さらに、心筋障害発生時のステロイドの使用(BQ6-2:ICIによる心筋障害発生時、その治療としてステロイド療法は有用か?)について、「使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないが有用な可能性があるため、ステロイドを選択しない手はない」とコメントし、座長ならびに演者を務めた阿部 純一氏(MDアンダーソンがんセンター 教授)からの“ICIで発症リスクの高い虚血性心疾患との鑑別”に関する問い対して、同氏は「虚血性心疾患では胸痛などの症状が見られることから、それらの患者の訴えにしっかり耳を傾けることがスクリーニング検査とともに重要」と回答した。Onco-cardiologyガイドラインにがん患者の高血圧治療 高血圧の視点からOnco-cardiologyについて解説した赤澤 宏氏(東京大学医学部付属病院 循環器内科)によると、がん患者における高血圧の管理や治療に関するエビデンスがほとんどない状況だという。実際に、高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では『第7章:他疾患を合併する高血圧』にも項目立てられておらず、『第13章:二次性高血圧-薬剤誘発性高血圧 4)その他』の1つとして、がん分子標的薬、主として血管新生阻害薬(抗VEGF抗体医薬あるいは複数のキナーゼに対する阻害薬など)により高血圧が誘発される。発症率については薬剤、腫瘍の種類などにより異なるが、これらの薬剤使用時には血圧変化に注意する。通常の降圧薬を用いた治療を行うと、ESCのポジションペーパー同様の記載がなされている。このような現状を踏まえ、「JSH2025年改訂版には腫瘍循環器としてのCQを提案していきたい」と意気込んだ。なお、Onco-cardiologyガイドラインでは、『BQ4:血管新生阻害薬投与中の患者に対し、血圧管理が必要か?』が設定されており、血管新生阻害薬投与中の患者においても、非がん患者と同等の血圧コントロールをすることが望ましく、「がん患者における高血圧治療のエビデンスは乏しく、降圧治療の適応や強度は、がんの治療内容や予後、パフォーマンスステイタス、年齢や併存疾患、臓器障害、脳心血管リスクなどのさまざまな背景を考慮して、個別に対応する必要がある」と強く訴えた。

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日本化薬のペメトレキセドGE、非小細胞肺がんの術前補助療法の適応取得

 日本化薬は、2023年3月27日、厚生労働省よりペメトレキセド点滴静注液100mg「NK」・同500mg「NK」・同800mg「NK」、ペメトレキセド点滴静注用100mg「NK」・同500mg「NK」・同800mg「NK」について、「扁平上皮を除く非小細胞肺における術前補助療法」に対する効能・効果、ならびに用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 用法・用量は下記のとおり。「ニボルマブ(遺伝子組換え)及び白金系抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはペメトレキセドとして、1日1回500mg/m2を10分間かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとし、3コースまで投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。」

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地中海食が悪性黒色腫の免疫療法への反応を改善か

 オランダ・フローニンゲン大学のLaura A. Bolte氏らは、食事習慣と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療反応の関連を調べるコホート研究「PRIMM研究」を行い、地中海食(全粒穀物、魚、ナッツ、豆、果物、野菜が豊富)とICI治療反応に正の関連があることを明らかにした。著者は、今回のコホート登録者がオランダと英国の進行悪性黒色腫患者91例であったことを踏まえて、「今回の結果の再現性を確認し、ICIによる治療における食事の役割を解明するためには、さまざまな国や地域での大規模な前向き研究が必要である」としつつ、「習慣的な食事がICIへの反応を改善する役割を果たす可能性があることが示唆された」と述べている。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月16日号掲載の報告。 ICIは、進行悪性黒色腫の生存率を改善し、治療レジメンにもよるが40~60%の患者で持続的な奏効が観察される。しかし依然として、治療への反応には大きなばらつきがあり、また患者はさまざまな重症度の免疫関連有害事象を経験している。研究グループは、「栄養は免疫系および腸内微生物叢と関連している。ICIの有効性および忍容性を改善する可能性のあるターゲットとして魅力的ではあるが、これまで十分な調査はされていない」として、今回の検討を行った。 PRIMM研究はオランダと英国のがんセンターで行われた。ICI未治療の進行悪性黒色腫患者91例を対象に、2018~21年にICIが投与された。対象患者は、抗PD-1抗体薬、抗CTLA-4抗体薬の単独または併用療法を受け、また、治療開始前に食物摂取頻度調査により食事量の評価を受けていた。評価項目は、奏効率(ORR)、12ヵ月時点の無増悪生存率(PFS-12)、Grade2以上の免疫関連有害事象(irAE)であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者91例は、44例がオランダ人(平均年齢±標準偏差[SD]:59.43±12.74歳、女性22例[50%])、47例が英国人(平均年齢±SD:66.21±16.63歳、女性15例[32%])であった。・食事および臨床データは、2018~21年に全91例の患者から前向きに収集された。・ORR、PFS-12、irAEとの関連が最も大きかったのは、地中海食であった(それぞれexplained devianceは51%、54%、24%)。・一般化加法ロジスティックモデルによる評価で、地中海食とORR、PFS-12に正の関連が認められた。・ORRについて、確率(probability)は0.77(p=0.02)、偽陽性率(false discovery rate:FDR)は0.032、有効自由度(effective degrees of freedom)は0.83であった。PFS-12については、それぞれ0.74(p=0.01)、0.021、1.54であった。・各コホートの食事パターンを特徴付けるために行った解析で、果物摂取の多い特徴があったオランダ人コホートで、ORRおよびPFS-12と有意な放射線状の関連が認められた。英国人コホートでは有意な関連はみられなかった。

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079)1年走ってわかった、ランニングのメリット3つ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第79回 1年走ってわかった、ランニングのメリット3つゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆趣味としてランニングをはじめて約1年。はじめのころは400m走っただけで息切れし、2km走れるようになるまで1~2ヵ月ほどかかりましたが、そんな私が今年、「東京マラソン」を完走するに至りました。今回が初めてのフルマラソン。給水・給食を多めにとり、ひんぱんにストレッチをして、ゆっくりですが最後まで歩かず5時間半ちょっとでゴール。故障なく最後までペースを維持し、楽しみながら走りきることができました。改めてランニングの良いところについて、思うところを書いてみたいと思います。(1)心身ともに健康になる生まれてこのかた、これといった運動経験のない私にとって、走ることは、初めてのスポーツ系の趣味といえます(笑)体を動かすことで寝つきが良くなり、体力がつき、ご飯も食べたいだけ食べながら体重・体形をキープできる。また、走ることで小さなモヤモヤや不安が解消され、メンタル面でのデトックス効果もかなり大きいと感じています。よい走りができるとそれが自信にもつながり、心穏やかに日々を送れるようになりました。なお、健康診断のいくつかの項目(コレステロールなど)も、すっかり改善されました。(2)目標をもって成長できるこれはどのスポーツにも言えることでしょうか?走ることでいえば、何キロ走れるようになったか? 1キロを何分のペースで走れるようになったか? 何キロの大会を何時間何分のタイムで走れたか? など。今の自分の走りが、目に見えて数字として結果に残るので、そのぶん成長を実感しやすく、目標・やりがいをもって努力することにつながります。目標達成できたときの喜びはひとしおです。(3)ともに楽しむ仲間ができるランニングは一人でも楽しめるスポーツですが、ともにはげむ仲間がいると、より楽しみが倍増します。「マラニック」といって、景色やグルメを楽しみながらランニング(+ピクニック)したり、練習会で、会話をしながら走ったり。一人で走るときよりも、仲間と走るときのほうが、距離も時間も短く感じます。また、そうした会を通して、年齢や性別をこえ、仕事とは別の人間関係を築けるというのもまた、ランニングの1つの魅力だと思っています。以上、まだはじめて1年の若輩者ではありますが、ランニングで得られるメリットについて書いてみました。なお、デメリットとしては、無理をして故障することがあるランニングしない家族から白い目で見られることがあるウェアやシューズなどのグッズに意外とお金がかかるといったあたりでしょうか。しかしながら、これらを考慮してもなお、惹きつけられてやまない魅力が、ランニングにはあるように思います!私も走りはじめる前は、「走る人」は別世界の人間だと思っていました。仲間に聞くと、だいたい同じような答えが返ってきます(笑)いきなり走りはじめると、(私もそうでしたが)膝などを故障してしまうことがあるので、まずはウォーキングで脚づくりをしてみてはいかがでしょうか?これからの季節、気持ち良い新緑のなか、体を動かしてみませんか?それでは、また次の連載で。

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若年者でOTC薬の問題増加、濫用恐れのある医薬品の範囲拡大へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第107回

若年者のOTC医薬品の濫用が問題になっている、というのは今に始まったことではありませんが、具体的にその状況を想像したり解決策を考案したりできる薬剤師はそれほど多くはないでしょう。恥ずかしながら私もそうです。この4月より、濫用などの恐れのある医薬品の指定範囲が拡大されますので、現在の問題や議論を紹介します。厚生労働省は3月8日に開いた「医薬品の販売制度に関する検討会」で、若者の間で増加している鎮咳薬や総合感冒薬といったOTC薬の濫用について、本人確認などの販売方法や、複数購入の防止、包装単位や製品表示の変更といった対応策の議論に着手した。第1類と第2類のネット販売を解禁し、危険ドラッグの取り締まりを強化した14年以降、OTC薬で中毒を起こした救急搬送事例が「増加傾向にある」と指摘。現状では多くの濫用のおそれのある成分が、薬剤師などによる情報提供が努力義務とされる「指定第2類」に分類されているが、さらなる対策の必要性を投げかけた。(2023年3月9日付 RISFAX)記事にある「医薬品の販売制度に関する検討会」の第1回は2023年2月に開催され、現在の医薬品の販売方法などが紹介されました。第2回の今回は、若者のOTC医薬品の濫用による薬物依存治療を行う医師の資料が提供され、その切迫性が浮き彫りになりました。その医師による報告内容は以下のとおりです。コロナ禍でOTC医薬品の過量服薬による救急搬送が2倍に増加した。OTC医薬品を主たる薬物とする依存症患者が急増した。「過去1年以内にOTC医薬品の濫用経験がある」という高校生は約60人に1人(2021~22年の調査)。濫用する高校生は、男性より女性が多く、社会的に孤立している可能性が高い。日本のOTC医薬品は含有成分が多い。恐怖教育は有効ではなく、薬剤師・登録販売者による声かけなどのソーシャルスキル・アプローチが有効。高校生の1%以上がOTC医薬品の濫用経験があり、またこの2~3年で状況が悪化していると知り、現状にぞっとしたのは私だけではないはずです。濫用の恐れのある医薬品の具体的な成分としては、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、ブロムワレリル尿素があります。現在はコデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリンは鎮咳去痰薬に限る指定範囲ですが、2023年4月1日より、鎮咳去痰薬に限らず総合感冒薬なども指定範囲となります。これらの6成分は、一般用医薬品のうち第1類医薬品と第2類医薬品に分類されているため、インターネット販売も可能です。第2類医薬品は患者・購入者への情報提供は義務ではなく努力義務ですので、意外と軽いなと思います。一方で、薬機法施行通知には、購入者が高校生や中学生を含む子供である場合は、その氏名や年齢を確認するとともに使用状況を確認する旨の記載があり、これらが確認できない場合は販売を行わないとされています。検討会に出席した専門家からは、インターネットも実店舗も含め、販売歴の記録や本人確認をしなければ買えない仕組みの構築が必要というコメントがありました。今後は販売方法の変更、複数購入の防止、包装単位や製品表示の変更などの仕組みを変える検討が行われるのではないかと想像します。これから春になり新しい環境での生活が始まると、若い人たちには新しい誘惑があるかもしれません。この問題の周知や声かけの強化など、薬局ですぐにできることも抑止力の1つになると思います。

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英語で「情報を確認し合う」は?【1分★医療英語】第73回

第73回 英語で「情報を確認し合う」は?Umm, we should close the loop with surgery team.(うーん、いったん外科チームと情報を確認し合うべきですね)I agree.(そうですね)《例文1》Okay, let’s close the loop among the team!(了解です、情報をチーム内で共有確認しておきましょう!)《例文2》I think the GI attending said they would do EGD tomorrow… Can you close the loop?(消化器の上級医が明日内視鏡をすると言ったはずですが…。情報を伝えて確認しておいてもらっていいですか?)《解説》医療の現場ではチームワークが不可欠であり、情報の伝達、共有、確認することが日常的に求められる機会が多くあります。“close the loop”は、文字通りに取れば「ループを閉じる」という意味ですが、「情報を共有して、全員が同じ情報を持っていることを確認する」といった場合に用います。「全員がはみ出ることなく1つの輪の中にいてつながっている」というイメージです。医療現場においては「医師Aと医師Bの言っている情報が異なっている」、「他の医療スタッフがその情報を知っているかどうか確信がない」といった、「医療チーム全体が同じ情報やプランを共有していることを確認する」際によく使用されます。とくに米国の医療現場では、専門領域が細分化されており、主治医だけでなく多くの担当科で1人の患者さんを診るケースが多く、主治医の方針と専門医の方針を常にすり合わせておく必要があります。“closing the loop”することによってミスコミュニケーションを減らし、検査、治療、手術のプランを滞りなく施行する必要性が高いのです。ちなみに、“out of the loop”で逆に「チームから外れている」という表現もあります。“He was out of the loop on this case.”(彼はこの症例に関してチームから外れていました)口語でも文面でも“close the loop”を使いこなしてスムーズなコミュニケーションができるとよいですね。講師紹介

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第156回 コロナ感染後の脳のもやもやがADHD薬グアンファシンで改善

日本で承認済みの注意欠如・多動症(ADHD)治療薬「グアンファシン(商品名:インチュニブ)」が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)の1つとして知られる脳のもやもや(brain fog)に有効かもしれないことが12例への投与試験で示唆されました1)。脳のもやもやは頭の働きの低下が続くことの俗称であり、脳の前頭前皮質(PFC)が担う実行・記憶・注意力、やる気を損なわせ、仕事や日常生活を妨げます。COVID-19患者の脳ではNMDA受容体(NMDAR)を阻害するキヌレン酸が多いことが知られています。脳のもやもやに似た症状を呈する外傷性脳損傷(TBI)の治療薬として検討されているN-アセチルシステイン(NAC)はキヌレン酸生成酵素を阻害してNMDAR伝達を回復させるらしく、グアンファシンはその伝達を後押ししてPFCの神経連結を強化する働きが期待できます。幸いにもグアンファシンとNACはどちらも忍容性が良好であり、long COVIDへの可能性を見出したエール大学の精神神経科医Arman Fesharaki-Zadeh氏らはそれら2剤を脳のもやもやを訴える患者に投与することを試みました。その結果、コロナ感染から3~14ヵ月経つものの認知障害が治まらず、複数作業の同時遂行(multi-tasking)・専念・集中などの遂行機能が低下していた12例のうち8例の脳のもやもやが投与の甲斐あって軽減しました。ただし、両剤の忍容性は良好とはいえ無害というわけではなく、2例はグアンファシンで生じうることが知られる低血圧症やめまいで服用を止める必要がありました。また、追跡が不可能になった患者が2例いました。残りの8例は作業記憶、集中、遂行機能の改善を示し、何例かは日常をいつもどおり過ごせるほどに回復しました。long COVIDのせいで看護師の仕事時間を大幅に短縮せざるを得ずにいた女性被験者1例の経過は示唆に富んでいます。彼女の作業記憶、遂行機能、頭の回転の速さ(cognitive processing speed)はグアンファシン治療でだいぶ良くなっていつもの仕事をこなせるようになりました。しかし急な低血圧症事象(めまい)の発生を受けてその治療を止めたところ認知機能や集中が悪化しました。そこでグアンファシンを再開したところ脳のもやもやが首尾よく再び治まり、めまいの再発なく同剤の服用を無事続けることができました。多くの患者を募ってグアンファシンとNACを検討するプラセボ対照試験の資金が今回の12例の治療報告を契機にして集まることをFesharaki-Zadeh氏らは望んでいます2)。long COVIDの治療手段の検討は他にもあり3)、たとえばファイザーの飲み薬ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)の運動、認知、自律神経症状への効果を調べている試験があります4)。また、脳のもやもやや疲労に対する気分安定薬リチウムの試験5)、動悸や慢性疲労を引き起こす体位性起立性頻拍症候群(POTS)に対する重症筋無力症治療薬エフガルチギモド アルファ(日本での商品名:ウィフガート)の試験6)が進行中です。参考1)Fesharaki-Zadeh A, et al. Neuroimmunology Reports. 2023;3: 1001542)Yale Researchers Discover Possible 'Brain Fog' Treatment for Long COVID / Yale Medicine3)Long COVID Clinical Trials May Offer Shortcut to New Treatments / MedScape4)PASC試験(Clinical Trials.gov)5)Effect of Lithium Therapy on Long COVID Symptoms(Clinical Trials.gov)6)POTS試験(Clinical Trials.gov)

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うつ、不安、苦痛に対する身体活動介入の有効性~アンブレラレビュー

 オーストラリア・南オーストラリア大学のBen Singh氏らは、成人のうつ病、不安、精神的苦痛に関する症状に対する身体活動の影響を明らかにするためアンブレラレビューを行った。その結果、身体活動は、幅広い成人に対しうつ病、不安、精神的苦痛の改善に有益であることが確認された。British Journal of Sports Medicine誌オンライン版2023年2月16日号の報告。 2022年1月1日までに公表された適格研究を、12件の電子データベースより検索した。成人を対象に、身体活動によるうつ病、不安、精神的苦痛を評価したランダム化比較試験のメタ解析によるシステムを適格基準とした。研究の選択は、2人の独立したレビュアーによる重複チェックにより実施した。 主な結果は以下のとおり。・91件のレビュー(1,039試験、12万8,119例)を検討に含めた。・対象には、健康成人、精神疾患を有する成人、さまざまな慢性疾患を有する成人が含まれていた。・77件の研究は、システマティックレビューの方法論的な質を評価するための測定ツール(AMSTAR)のスコアが非常に低かった。・身体活動は、通常ケアと比較し、うつ病、不安、精神的苦痛に対する中程度の効果が認められた。 ●うつ病 エフェクトサイズ中央値:-0.43、四分位範囲[IQR]:-0.66~-0.27 ●不安 エフェクトサイズ中央値:-0.42、IQR:-0.66~-0.26 ●精神的苦痛 エフェクトサイズ:-0.60、95%CI:-0.78~-0.42・うつ病、HIV、腎臓病の成人、妊娠中または産後の女性、健康成人において、最大の効果が認められた。・高強度の身体活動は、症状の大幅な改善と関連が認められた。・身体活動介入の有効性は、介入期間が長くなるほど減少していた。・身体活動は、うつ病、不安、精神的苦痛のマネジメントにおいて主要なアプローチであることが示唆された。

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水素吸入で院外心停止患者の救命・予後改善か/慶大ほか

 心停止の際に医療従事者が近くにいないなど、即座に適切な処置が行われなかった場合、1ヵ月の生存率は8%とされる。また、生存できた場合でも、救急蘇生により臓器に血液と酸素が急に供給されることで、非常に強いダメージが加わり(心停止後症候群と呼ぶ)、半数は高度な障害を抱えてしまう。このような心停止後症候群を和らげる治療として、体温管理療法があるが、その効果はいまだ定まっていない。そこで、東京歯科大学の鈴木 昌氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)らの研究グループは、病院外で心停止となった後に循環は回復したものの意識が回復しない患者を対象に、体温管理療法と水素吸入療法を併用し、効果を検討した。その結果、死亡率の低下と後遺症の発現率の低下が認められた。本研究結果は、eClinicalMedicine誌2023年3月17日号に掲載された。 HYBRID II試験は、日本国内の15施設で2017年2月~2021年9月に実施された多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験である。心臓病のために病院外で心停止となり、心肺蘇生により循環が回復したものの意識が回復しない20~80歳の患者73例が対象となった。対象患者を体温管理療法と同時に、2%水素添加酸素を吸入する群(水素群:39例)、水素添加のない酸素を吸入する群(対照群:34例)に分け、18時間吸入させた。主要評価項目は、90日後に主要評価項目は脳機能カテゴリー(CPC)1~2(脳神経学的予後良好)を達成した患者の割合、副次評価項目は90日後のmodified Rankin Scale(mRS)スコア(0[まったく症候がない]~6点[死亡]で評価)、90日後の生存率などであった。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目の90日後にCPC 1~2を達成した患者の割合は、対照群が39%であったのに対し、水素群では56%であった(リスク比[RR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.46~1.13、p=0.15)。・副次評価項目の90日後のmRSスコアの中央値は、対照群が5点(四分位範囲[IQR]:1~6)であったのに対し、水素群は1点(IQR:0~5)であり、有意に低かった(p=0.01)。・mRSスコア0点の達成率は、対照群が21%であったのに対し、水素群は46%であり、有意に高率であった(RR:2.18、95%CI:1.04~4.56、p=0.03)。・90日後の生存率は、対照群が61%であったのに対し、水素群が85%であり、有意に生存率が上昇した(RR:0.39、95%CI:0.17~0.91、p=0.02)。・90日後までの有害事象の発現率は、対照群88%、水素群95%であった。重篤な有害事象の発現率は、対照群21%、水素群18%であった。有害事象は、いずれも水素吸入に起因するものではないと判断された。 研究グループは、「新型コロナウイルス感染症による救急医療のひっ迫の結果、本研究は早期終了となったため、目標症例数の90例には到達しなかった。そのため、水素吸入療法の有効性を検証するには至らなかった。しかし、水素吸入療法により90日後の生存率や症状や障害がない患者の割合が有意に上昇したことから、水素吸入療法は、心停止後症候群に陥った患者の意識を回復させ、神経学的後遺症を残さないようにする画期的な治療法になることが期待できる」とまとめた。

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切除可能非小細胞肺がんに対する 術前・後ペムブロリズマブ、無イベント生存期間を改善(KEYNOTE-671)/MSD

 Merck社は2023年3月1日、Stage II、IIIA、IIIB(T3-4N2)の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する周術期療法としてのペムブロリズマブを評価する第III相KEYNOTE-671試験において、2つの主要評価項目のうち無イベント生存期間(EFS)を達成したことを発表した。周術期療法レジメンには術前補助療法(ネオアジュバント療法)とそれに続く術後補助療法(アジュバント療法)が含まれる。 KEYNOTE-671試験は、上記NSCLC患者を対象とした、無作為化二重盲検第III相試験。786例の登録患者を以下のいずれかの群に、1:1に無作為に割り付けた。・試験群:術前補助療法としてペムブロリズマブ(200mgを3週ごと最大4サイクル)+化学療法(シスプラチン+ゲムシタビンまたはペメトレキセド)、その後術後補助療法としてペムブロリズマブ(200mgを3週ごと最大13サイクル)・対照群:術前補助療法としてプラセボ(3週ごと最大4サイクル)+化学療法(シスプラチン+ゲムシタビンまたはペメトレキセド)、その後術後補助療法としてプラセボ(3週ごと最大13サイクル) 主要評価項目はEFS、全生存期間(OS)、副次評価項目は病理学的完全奏効(pCR)、主要な病理学的奏効(mPR)などであった。 試験の結果、プラセボ群と比較して、ペムブロリズマブ群で統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるEFSの改善が認められた。副次評価項目であるpCRおよびmPRについても統計学的に有意な改善が認められている。この結果は今後の医学学会で発表する予定。 この試験データに基づき、Stage II、IIIA、IIIB(T3-4N2)の切除可能NSCLCのプラチナ化学療法との併用による術前補助療法と、その後の単独療法による術後補助療法として、ペムブロリズマブの生物製剤承認一部変更申請(sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理された。審査完了予定日は2023年10月16日。

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経鼻投与の百日咳ワクチン、単回でも感染抑制の可能性/Lancet

 経鼻投与型の弱毒生百日咳ワクチンであるBPZE1は、鼻腔の粘膜免疫を誘導して機能的な血清反応を引き起こし、百日咳菌(Bordetella pertussis)感染を回避し、最終的に感染者数の減少や流行の周期性の減弱につながる可能性があることが、米国・ILiAD BiotechnologiesのCheryl Keech氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2023年3月11日号で報告された。米国の無作為化第II相試験 研究グループは、BPZE1の免疫原性と安全性を破傷風・ジフテリア・沈降精製百日咳ワクチン(Tdap)と比較する目的で、米国の3施設で二重盲検無作為化第IIb相試験を行った(ILiAD Biotechnologiesの助成を受けた)。 年齢18~50歳の健康な成人が、次の4つの群に2対2対1対1の割合で無作為に割り付けられた。1日目にBPZE1を接種し、85日目に弱毒BPZE1を接種する群(BPZE1-BPZE1群)、同様にBPZE1接種後にプラセボを接種する群(BPZE1-プラセボ群)、Tdap接種後に弱毒BPZE1を接種する群(Tdap-BPZE1群)、Tdap接種後にプラセボを接種する群(Tdap-プラセボ群)。 1日目には、凍結乾燥したBPZE1に滅菌水を加えて鼻腔内に投与し、Tdapは筋肉内に投与された。マスキングを維持するために、BPZE1群では生理食塩水が筋肉内投与され、Tdap群では凍結乾燥プラセボが鼻腔内投与された。 免疫原性の主要エンドポイントは、29日目または113日目における少なくとも1つのB. pertussis菌抗原に対する鼻腔の分泌型IgAのセロコンバージョン(抗体陽転)が得られた参加者の割合であった。忍容性も良好 2019年6月17日~10月3日の期間に280例が登録された。BPZE1-BPZE1群に92例(平均年齢35.6歳、男性39%)、BPZE1-プラセボ群に92例(35.2歳、50%)、Tdap-BPZE1群に46例(34.6歳、43%)、Tdap-プラセボ群に50例(34.2歳、46%)が割り付けられた。 29日目または113日目における少なくとも1つのB. pertussis菌特異的な鼻腔の分泌型IgAのセロコンバージョンは、BPZE1-BPZE1群が84例中79例(94%、95%信頼区間[CI]:87~98)、BPZE1-プラセボ群が94例中89例(95%、95%CI:88~98)、Tdap-BPZE1群が42例中38例(90%、95%CI:77~97)、Tdap-プラセボ群は45例中42例(93%、95%CI:82~99)で得られ、幾何平均比および幾何平均倍率ではBPZE1群がTdap群よりも高率であった。 BPZE1群では、B. pertussis菌特異的な粘膜の分泌型IgA応答が広範かつ一貫して認められたのに対し、Tdap群ではこのような一貫性は誘導されなかった。 2つのワクチンは共に忍容性が良好で、反応原性は軽度であり、ワクチン関連の重篤な有害事象は認められなかった。1日目の接種後7日以内に非自発的に報告されたGrade1以上の鼻腔および呼吸器の有害事象では、鼻詰まり(BPZE1群39%、Tdap群35%)、鼻水(36%、34%)、くしゃみ(33%、29%)の頻度が高かったが、85日目の接種以降は前回のワクチンの種類を問わず、鼻腔および呼吸器の反応原性イベントは頻度、重症度共に悪化することはなかった。 接種後7日以内のGrade1以上の全身性有害事象では、頭痛(BPZE1群37%、Tdap群36%)、倦怠感(34%、22%)の頻度が高かったが、85日目の接種以降は前回のワクチンの種類を問わず、全身性有害事象の頻度、重症度共に悪化しなかった。 著者は、「本研究は、BPZE1の単回鼻腔投与により、百日咳菌に対する分泌型IgA応答が誘導されることを示したヒトで初めての概念実証試験であり、安全な次世代の百日咳ワクチンとしてのBPZE1のさらなる開発を支持するものである」としている。

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