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第24回 痛み診療のコツ まとめ【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第24回 痛み診療のコツ まとめ本連載では、痛みの原因やその内容について23回にわたって概説してまいりました。前回は治療編(2)として、社会復帰に向けた痛みのリハビリテーション療法ついてお話しました。今回は4年余りにわたってお話しました痛みについてのまとめとしてお話ししたいと思います。患者さんには「痛み」の理解を痛みを訴える患者さんにおきましては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は個々の患者さんによって実に多種多様です。そのために、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、光線療法、インターベンショナル療法など患者さんに合った有効な治療法を選択する必要があります。それと共に患者さんには、痛みについてのご理解を得ていただくことが大切です。「天気痛」とか「気象痛」とか言われております自然による脅威も存在します。昨今に感じるような気温、湿度、気圧などの激しい変化は、当然ながら、自律神経系の不安定性を増強して、痛みの感受性を増強し、より痛みを訴えられる患者さんが多くなっております。そのような場合には、自分でできる鎮痛法、たとえば鎮痛薬を許容範囲内で増やすとか受診の機会を多く持つとかなどをさまざまな対処法があることをご理解していただくことは、患者さんの不安感を取り除き、安心感や自律神経系の改善に繋がり、痛みの緩和のためにも良い方向に働きます。第5のバイタルサインは「痛みの有無とその程度」実臨床の場におきましては、体温、血圧、脈拍、呼吸の基本的な4つのバイタルサインと共に、第5番目のバイタルサインとして、「痛みの有無とその程度」に関心が持たれるようになってきました。しかも、近年、新しく慢性疼痛に対する適応が認められました強オピオイド製剤や新たなトラマドール製剤も使用されるようになってきたこともあり、ますます慢性疼痛への対策の必要性が注目されてきております。2021年10月2日には、わが国における痛み関連8学会(日本疼痛学会、日本ペインクリニック学会、日本慢性疼痛学会、日本腰痛学会、日本運動器疼痛学会、日本口腔顔面痛学会、日本ペインリハビリテーション学会、日本頭痛学会)によります日本痛み関連学会連合が発足し、より強い絆の下で連合として痛みに立ち向かう姿勢を広く世に示してきております。また、国際疼痛学会では、新たな痛みの定義を発表し、より理解しやすい痛みの概念が出来上がっています。それに加えて、新しい痛みの概念として、“nociceptive pain”が提唱され、やはり、日本痛み関連学会連合が「痛覚変調性疼痛」と和訳して、その解釈としては「侵害受容の変化によって生じる痛みであり、末梢侵害受容器の活性化を引き起こす組織損傷またはその恐れがある明確な証拠、あるいは痛みを引き起こす体性感覚系の疾患や障害の証拠が存在しないにもかかわらず生じる痛み」として定義されました。このシリーズの初めに記載した痛みの種類としての侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛に加えて痛覚変調性疼痛が登場しました。この痛覚変調性疼痛は単独もありうるかとも思いますが、他の疼痛たとえば侵害受容性疼痛と同時に訴えることもあります。この疼痛の位置付けとしては、中枢性感作などの脳機能の変化から発生する痛覚の変調による痛みと考えられております。高齢社会では痛みへの早期介入が重要痛みは、患者さん本人しかわからないし、患者さんの我慢に頼る時期は終わっています。特に長い人生を歩まなくてはならない高齢社会では、できるだけ早期に疼痛治療を開始することが痛みの軽減に連なり、その後の患者さんの人生にとっても良い結果を導くことと確信しております。本連載が、わが国において痛みを有されておられる患者さんの診断と治療へのさらなる発展に対して、多少なりともお役立てられれば望外の喜びです。今回がこの痛みシリーズの最終回となります。24回のご愛読、誠にありがとうございました。1)三木健司. ペインクリニック. 2022;43:1021-1022.

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事例012 アトピー性皮膚炎疑いでのTARC検査で査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、アトピー性皮膚炎疑いの患者に、「D015 血漿蛋白免疫学的検査の(19)TARC(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)検査」を施行したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。査定の理由には、「TARC検査は、アトピー性皮膚炎およびCOVID-19の確定病名以外では原則認められない」と付記されていました。査定内容を確認するために、医師に問い合わせたところ「炎症が著しかったためにアトピー性皮膚炎を強く疑い、確定診断検査に合わせて行った」と説明を頂きました。査定時の付記を確認するためにTARC検査の留意事項を参照したところ、「アトピー性皮膚炎の重症度評価の補助を目的として、血清中のTARC量を測定する場合に、月1回を限度として算定できる」とありました。アトピー性皮膚炎の確定診断後の検査であることが分かります。医師には、2022年度診療報酬改定時に新しく示された留意事項を示して、レセプトには確定診断を付与いただくようにお願いしました。レセプトシステムには、アトピー性皮膚炎およびCOVID-19に「疑」が付与されている場合には、確定診断が必要と表示されるように改修し査定対策としています。

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COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、ファイザー)は、経口投与の利便性と、入院または死亡に対する高い有効性のため、多くのハイリスク患者にとって好ましい治療薬とされている。しかし、本剤は併用禁忌の薬剤が多数あるため、使用できる患者は限られる。フランス・Assistance Publique-Hopitaux de ParisのNicolas Hoertel氏らの研究グループは、重症化リスクの高いCOVID-19患者において、ニルマトレルビル/リトナビルが禁忌である割合について調査した。本結果は、JAMA Network Open誌2022年11月15日号のリサーチレターに掲載された。 本剤の禁忌については、リトナビルはチトクロームP450 3A(CYP3A)酵素を阻害し、CYP3Aの薬物代謝に高度に依存する薬剤の濃度を上昇させることで、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。また、強力なCYP3A誘導薬との併用により、ニルマトレルビルの濃度が著しく低下し、抗ウイルス効果が失われる可能性がある。重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も本剤の禁忌とされた。これらの医学的禁忌は、重症化リスクが高いCOVID-19患者に広くみられる可能性がある。 本研究では、2020年1月24日~2021年11月30日の期間で、パリ大学の36の大規模病院におけるCOVID-19入院患者6万2,525例において、米国食品医薬品局(FDA)がニルマトレルビル/リトナビルを禁忌とした条件に当てはまる患者の割合が調査された。被験者は、性別、年齢(65歳以下vs.66歳以上)、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10)の主章に基づく併存疾患ごとに層別化された。本研究は、STROBEレポートガイドラインに準拠して実施された。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値52.8歳(四分位範囲[IQR]:33.8~70.5)、女性3万1,561例(50.5%)、男性3万964例(49.5%)、入院後28日以内に死亡した患者4,861例。・COVID-19入院患者6万2,525例のうち、9,136例(14.6%)がニルマトレルビル/リトナビルの医学的禁忌を有していた。・禁忌を有していた患者の割合は、男性18.0%(5,568例/3万964例)、女性11.3%(3,577例/3万1,561例)で、男性のほうが女性よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、66歳以上26.9%(5,398例/2万64例)、65歳以下8.8%(3,738例/4万2,461例)で、高齢者のほうが若年者よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、併存疾患のある患者のほとんどの疾患で37.0%以上、併存疾患のない患者で3.9%(1,475/3万7,748例)となり、併存疾患のある患者のほうが、ない患者よりも高かった。・死亡した4,861例のうち、2,463例(50.7%)が禁忌を有していた。・死亡した患者で禁忌を有していた者の割合は、男性、女性、高齢者、若年者ではそれぞれ50%前後であったが、併存疾患のある者ではほとんどの疾患で60~70%台で、腎尿路生殖器系の疾患では91.5%であった。・禁忌を有していた患者で最も多かった条件は、重度の腎機能障害(3,958例、6.33%)と、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤の使用(3,233例、5.15%)であった。 本研究の限界として、本剤が禁忌でない患者でも、症状発現から5日以上経過した場合や、供給量が限られる場合があるため、一部の患者に使用できない可能性があることや、ワクチン接種、人種・民族、体重に関する情報は得られていないことなどが挙げられている。著者は「本結果は、ニルマトレルビル/リトナビル以外の新型コロナ治療薬の供給を予測することや、治療の選択肢の研究を継続することの必要性を裏付けている」としている。

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脳のエイジングはブラックボックス、画像で認知症予防を実現『MVision』

 脳画像のAI分析によるデータ解析ソフトの開発や医療機関向けの導入・運用サービス提供を行う株式会社エム(以下、エム社)は、第4回ヘルスケアベンチャー大賞において、「脳MRI画像解析に基づく全脳の構造別体積・健康状態の可視化、認知症予防」と題し、それらを実現できる技術を紹介して、見事に大賞を受賞した。本大賞は今年、5つの企業・団体と個人1名が最終審査会まで勝ち抜き、接戦を繰り広げた。 今回、エム社の創業者である森 進氏(ジョンズ・ホプキンズ大学医学部放射線科教授)に、開発経緯から技術提供の将来展望について話を聞いた。画像解析から認知症医療をアップデート 2025年、日本は超高齢化社会を迎える。これは軽度認知障害(MCI)の発症者が約5人に1人(約700万人)と過去最大にまで増加することを意味し、国も認知症対策として新オレンジプランを掲げている。また、先日にはエーザイ・バイオジェンがMCIとアルツハイマー病を対象とした第III相CLARITY AD検証試験で主要評価項目を達成するなど、症状抑制に対する動きは活発である。 しかし、海外で研究活動を行っている森氏は、認知症が生活習慣病の一種として認識が変わりつつあるにもかかわらず、高血圧症や肥満症のように予防対策が講じられておらず、認知症の予防は疎漏である点、日本だけが実施している脳ドックの画像データ、いわば健常者のデータが検査後にお蔵入りして画像価値を最大限に利活用できていない点から着想を得て、認知症の一次予防のために「脳の健康状態を可視化」させることに注目した。これについて同氏は「脳の萎縮状況というのは健康診断でも観察されず、医療において可視化されてこなかった」と述べ、「予防のための管理指標を存在させるべき」と認知症の一次予防がアンメット・メディカル・ニーズであることを強調した。 そこで、同氏らが開発したのが脳画像の自動解析技術である『MVision』だ。彼らは“日本のみに存在する健常者の巨大データ”を活用し、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学の脳画像の自動解析技術を用いて、全脳をAI解析する世界初の認知症関連ソフトウェアの開発に成功した。このソフトウェアにより、画像分析を自動化させ、脳全体の構造物を505にセグメントすることで脳の体積や形状を数値化する。また、数値による客観評価により同年代との比較や経年評価できるため、患者の予防に対するやる気に繋がるという。現在、日本の5施設10万件以上の脳ドックから得られた健常者画像データを解析中で、年齢別の平均と分布から脳萎縮リスクの算出が可能だ。実際に若年層のデータを見ると、すでに萎縮が進行していた症例も見られたという。 また、同氏は今回の取材に対し、「認知症の解明には長期で良質のデータが必要。そして、それをいかに早く集め始めるかが大切。これらがスタートアップとして急速に事業を立ち上げた理由かもしれない」と開発および創業の経緯を吐露。導入した際に直面した問題点として、「実際の医療現場では、“脳の萎縮では認知症は診断できない”ことから、萎縮を見てもしょうがない、となってしまう。萎縮があれば認知症になるという個人レベルのエビデンスがないという意見は正しいが、これは目の前の患者に対し診断や治療を考えるときの概念」と、医療の壁を指摘した。その一方で、「萎縮は認知症患者に統計学的に非常に強く見られる特徴なのは確固たる事実であり、萎縮の強い人は認知症患者に多く見られるというのも統計学的事実である」とし「40~70歳の健康診断は、未病段階でのリスク検出と早期生活改善が主要な目的である。その観点から、自分の脳の萎縮を知るということは認知症の大切なリスクマネジメントと考える」と説明した。体重計で体重管理をするように、脳の管理を 将来のリスクの話より現在の病気が優先される時代がゆえに、せっかく脳MRIを撮っても既病の早期検出といった二次予防にしか使われていないことになる。「だが、健康管理のために体重計に乗り、体重を測っている。これと同じように考えたら、30代までに自分の“基礎値”を知り、脳の経時変化を追うこと、脳の健康管理をしないのは不条理なのではないだろうか。われわれが開発した『MVision』は1回だけ撮影するだけでも意味はあるが、脳萎縮は3年でも大きく変化が見られることから継続することで真価を発揮する。若いうちのベストの状態をログに残せるのは今のうちだけなので、若年層こそ一度は受けて欲しい」と強調した。そんな背景もあり、企業や病院施設だけではなく、若年層へのアプローチも大切にしていきたいと話した。その一方で、65歳を超える層にとっても、認知症発症の3~5年前から萎縮が急速に進む傾向が多くの研究で報告されていることから、1~2年に一度の測定を推奨している。 今後の展望として、主に医療機関に本システムを提供し、健診受診者のオプションを想定している。この一次予防のための撮影は通常の脳ドックに組み込まれているものを使用するため、受診者にも医療者にも負担が少ない。検査実績の目標受診者数は「23年5月までに月間3,000~4,000人、年間4万~5万人」を目指し、全国への普及のために「1~2年でまずは首都圏から地方中核都市を中心に全国で受診できる基盤づくりを達成したい」と同氏は意気込みを語った。

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T-DXd、HER2陽性乳がん2次治療に適応拡大/第一三共

 第一三共株式会社は2022年11月24日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳」の効能又は効果に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本適応は、HER2陽性の再発・転移乳がん患者への2次治療を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast03)の結果に基づくもので、2021年12月に国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行っていた。

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ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

 日本感染症学会は11月22日、「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」を発刊した。今回のCOVID-19に対する薬物治療の考え方の改訂ではエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ錠)の緊急承認を受け、薬物治療における注意点などが追加された。 日本感染症学会のCOVID-19に対する薬物治療の考え方におけるゾコーバ投与時の主な注意点は以下のとおり。・COVID-19の5つの症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])への効果が検討された臨床試験における成績等を踏まえ、高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討する・重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべきということに留意して使用する・重症化リスク因子のある軽症例に対して、重症化抑制効果を裏付けるデータは得られていない・SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから遅くとも72時間以内に初回投与する・(相互作用の観点から)服用中のすべての薬剤を確認する(添付文書には併用できない薬剤として、降圧薬や脂質異常症治療薬、抗凝固薬など36種類の薬剤を記載)・妊婦又は妊娠する可能性のある女性には投与しない・注意を要する主な副作用は、HDL減少、TG増加、頭痛、下痢、悪心など このほか、抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミングの項には、「重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対症療法で経過を見ることができることから、エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与可能な症状を軽減する効果のある抗ウイルス薬については、症状を考慮した上で投与を判断すべきである」と、COVID-19に対する薬物治療の考え方には記載されている。

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SGLT2阻害薬、DM有無問わずCKD進行と心血管死を抑制/Lancet

 SGLT2阻害薬は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者のみならず慢性腎臓病または心不全を有する患者においても、糖尿病の状態、原発性腎疾患または腎機能にかかわらず、腎臓病進行および急性腎障害のリスクを低下させることが、英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C)による解析の結果、報告された。Lancet誌2022年11月19日号掲載の報告。大規模二重盲検プラセボ対照試験15試験の約9万例についてメタ解析 研究グループは、MEDLINEおよびEmbaseを用い、2022年9月5日までに発表されたSGLT2阻害薬の臨床試験(SGLT1/2阻害薬の併用を含む、年齢18歳以上の成人を対象とした二重盲検プラセボ対照試験[クロスオーバー試験は除く]、各群500例以上、試験期間6ヵ月以上)を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 2人の研究者が独立して、各試験の要約データを査読付き論文から抽出するか、または結果が公表されていない試験については治験責任医師よりデータの提供を受け、コクランバイアスリスクツール(バージョン2)を用いてバイアスリスクを評価した。また、逆分散重み付けによるメタ解析を行い、治療効果を推定した。 主な有効性の評価項目は、腎臓病進行(無作為化時からの推定糸球体濾過量[eGFR]50%以上の持続的低下、持続的なeGFR低値、末期腎不全、または腎不全による死亡)、急性腎障害、ならびに心血管死または心不全による入院の複合であった。その他の評価項目は、心血管死および非心血管死、主な安全性評価項目はケトアシドーシスおよび下肢切断とした。 文献検索の結果、15試験が特定され、このうち追跡期間が6ヵ月未満の2試験(inTandem3、DARE-19)を除外した13試験(DECLARE-TIMI 58、CANVAS Program、VERTIS CV、EMPA-REG OUTCOME、DAPA-HF、EMPEROR- REDUCED、EMPEROR- PRESERVED、DELIVER、SOLOIST-WHF、CREDENCE、SCORED、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)が解析対象となった。無作為化を受けた患者は計9万413例で、このうち糖尿病の状態が不明であった4例を除く9万409例(糖尿病患者7万4,804例[82.7%]、非糖尿病患者1万5,605例[17.3%]、各試験のベースラインの平均eGFRの範囲37~85mL/min/1.73m2)が解析に組み込まれた。対プラセボで腎臓病進行リスクを37%低下、心血管死リスクを14%低下 SGLT2阻害薬はプラセボと比較して、腎臓病進行リスクを37%低下させた(相対リスク[RR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.58~0.69)。その低下の程度は、糖尿病患者(RR:0.62)と非糖尿病患者(0.69)でほぼ同じであった。慢性腎臓病を有する患者を対象とした4件の試験(CREDENCE、SCORED、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)では、原発性腎疾患の診断にかかわらず腎臓病進行リスクのRRは類似していた。 また、SGLT2阻害薬はプラセボと比較して、急性腎障害のリスクを23%(RR:0.77、95%CI:0.70~0.84)、心血管死または心不全による入院のリスクを23%(0.77、0.74~0.81)低下させ、いずれも糖尿病の有無にかかわらず同様の効果がみられた。 SGLT2阻害薬は、心血管死リスクも低下させたが(RR:0.86、95%CI:0.81~0.92)、非心血管死リスクの有意な低下は認められなかった(0.94、0.88~1.02)。これら死亡の評価項目に関するRRは、糖尿病患者と非糖尿病患者で類似していた。 すべての評価項目において、各試験のベースラインの平均eGFRに関係なく、結果はほぼ同様であった。絶対効果の推定に基づくと、SGLT2阻害薬の絶対利益は、ケトアシドーシスや切断の重篤な危険性を上回った。

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発作性AF、冷凍アブレーションが持続性への移行を有意に抑制/NEJM

 未治療の発作性心房細動に対するクライオ(冷凍)バルーンアブレーションによる初期治療は、抗不整脈薬と比較して、3年間の追跡期間における持続性心房細動の発生率および心房頻脈性不整脈の再発率が低いことが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJason G. Andrade氏らがカナダの18施設で実施した医師主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「EARLY-AF試験」の結果、示された。心房細動は慢性化する進行性の疾患で、心房細動の持続は血栓塞栓症や心不全のリスクを増加させる。初期治療としてのカテーテルアブレーションは、心房細動の発症機序に作用し持続性心房細動への移行を抑制する可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2022年11月7日号掲載の報告。全例に心臓モニタを植え込み、3年間追跡 研究グループは、症候性の発作性心房細動および、無作為化前24ヵ月以内に1回以上心電図で記録された心房細動のエピソードを有し、クラスIまたはクラスIII抗不整脈薬による治療歴のない18歳以上の患者を、冷凍バルーンアブレーション群(以下、アブレーション群)または抗不整脈薬群に無作為に割り付けた。患者は、登録時に全例が植込み型心臓モニタを植え込み、データの自動送信は毎日、手動送信は毎週行われるとともに、治療開始後7日目の電話連絡、3、6、12ヵ月時およびその後は6ヵ月ごとの来院で、少なくとも3年間追跡された。なお、アブレーション群では、経口抗凝固療法をアブレーション後3ヵ月以上実施した。 主要評価項目は、持続性心房細動(7日間以上持続する、または48時間~7日間持続し停止に除細動を要した心房頻脈性不整脈)の初発、ならびに心房頻脈性不整脈(30秒以上の心房細動、心房粗動、心房頻拍)の再発、副次評価項目は不整脈負荷(心房細動の時間の割合)、QOL、救急外来受診、入院、安全性などであった。 2017年1月17日~2018年12月21日に計303例が登録され、154例がアブレーション群、149例が抗不整脈薬群に無作為に割り付けられた。冷凍バルーンアブレーション群で持続性心房細動への移行率が低い 3年間の追跡期間において、主要評価項目の持続性心房細動はアブレーション群で1.9%(3/154例)、抗不整脈薬群では7.4%(11/149例)に発生し(ハザード比[HR]:0.25、95%信頼区間[CI]:0.09~0.70)、心房頻脈性不整脈の再発はそれぞれ56.5%(87/154例)、77.2%(115/149例)に認められた(HR:0.51、95%CI:0.38~0.67)。 心房細動の時間の割合(中央値)は、アブレーション群で0%(四分位範囲[IQR]:0.00~0.12)、抗不整脈薬群で0.24%(0.01~0.94)であった。また、3年時にアブレーション群で5.2%(8例)、抗不整脈薬群で16.8%(25例)が入院していた(相対リスク:0.31、95%CI:0.14~0.66)。重篤な有害事象は、アブレーション群で7例(4.5%)、抗不整脈薬群で15例(10.1%)に認められた。

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うつ病の急性期治療期間と再発との関係~STAR*D研究の再解析

 うつ病の維持療法を行っている際に、再発を予測することは難しい。慶應義塾大学の久保 馨彦氏らは、うつ病の急性期治療において寛解を達成するまでの期間がその後の再発率や再発までの期間に及ぼす影響を検討した。その結果、抗うつ薬治療に対し早期に治療反応が認められるうつ病患者では、長期的に寛解を維持する可能性が高まることが示唆された。このことから著者らは、「寛解までに比較的長い期間を要する患者においては、再発予防のために細心の注意を払う必要がある」としている。Journal of Affective Disorders誌2023年1月1日号の報告。 分析データの収集には、Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression(STAR*D研究)のデータセットを用いた。citalopramによる治療(最長14週)で寛解を達成した非精神病性うつ病外来患者1,296例を対象に、12ヵ月間の自然主義的フォローアップ調査を実施した。2、4、6、9、12、14週時点で寛解を達成した患者におけるフォローアップ期間中の再発率および再発までの期間を比較するため、一元配置分散分析とJonckheere-Terpstra傾向検定を用いた。寛解および再発の定義は、それぞれ自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR)スコア5以下および11以上とした。 主な結果は以下のとおり。・再発率は、寛解達成までの期間別に有意な違いが認められた(F(5,1087)=4.995、p<0.001)。・再発率は、4週目(25.7%)で寛解を達成した患者が最も低く、12週目(42.4%)で寛解を達成した患者が最も高く、それぞれ有意な差が認められた(p=0.006)。・寛解達成までの期間と再発までの期間との間にも、有意な傾向が認められた(z=-6.13、p<0.001)。

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Pharmacoequity―SGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬は公正に処方されているか?-(解説:住谷哲氏)

 筆者は本論文で初めてpharmacoequityという用語を知った。「処方の公正性」とでも訳せばよいのだろうか。平等equalityと公正equityとの違いもなかなか難しいが、この用語の生みの親であるDr. Utibe R. Essienは、Ensuring that all individuals, regardless of race, ethnicity, socioeconomic status, or availability of resources, have access to the highest quality medications required to manage their health is “pharmacoequity”. と述べている1)。その意味するところを簡単に言えば、エビデンスに基づいた治療薬を必要とするすべての患者に公正に処方することを担保するのがpharmacoequityである、となる。 Essienが最初に報告したのは、心房細動患者に対するDOACをはじめとする抗凝固薬の処方率が人種race/民族ethnicityで異なり、白人に比較してアジア人と黒人で有意に低かった、とするものである2)。この研究も本論文と同じく対象患者は退役軍人保健局(Veterans Health Administration)の加入者であり、これが両論文のポイントであるが、すべての加入者に薬剤が無料または低価格で提供されるため、薬価によるバイアスがほとんどない。本論文は同様のアプローチで、心房細動患者に対する抗凝固薬の代わりに、2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方率を検討した研究である。その結果は、抗凝固薬の場合と同様に、SGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方率は白人に比較して黒人で有意に低率であった。 人種/民族が、なぜ抗凝固薬またはSGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方率と関連していたのかは、両研究では明らかになっていない。しかし心房細動患者に対する抗凝固薬の処方だけではなく、本論文によって2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の処方にも人種/民族が影響していることが明らかとなった。したがって、他のエビデンスに基づいた治療薬の処方においても同様の状況にある可能性は十分にある。EBMの実践が人種/民族によって影響される状況は公正とは言えないだろう。多民族国家ではないわが国ではこのあたりの状況に敏感ではないが、医療における公正性equity in medicine をいま一度よく考える契機となる報告である。

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第136回 ゾコーバがついに緊急承認、本承認までに残された命題とは

こちらでも何度も取り上げていた塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)がついに11月22日、緊急承認された。今回審議が行われた第5回薬事分科会・第13回医薬品第二部会合同会議も公開で行われたが、緊急承認に対して否定的意見が多数派だった前回に比べれば、かなり大人しいものになった。今回の再審議に当たって新たに塩野義製薬から提出されたデータは同薬の第II/III相試験の第III相パートの速報値だが、その内容については過去の本連載で触れたので割愛したい。審議内で一つ明らかになったのは第III相パートの主要評価項目、有効性の検証対象の用量、有効性の主要な解析対象集団が試験中に変更されていたことだ。もともと、エンシトレルビルでの主要評価項目は新型コロナ関連12症状の改善だったが、前回の合同会議で示された第IIb相パートの結果やオミクロン株の特性に合わせて、最終的な主要評価項目はオミクロン株に特徴的な5症状に変更されたという。これについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)側は、新型コロナは流行株の変化で患者の臨床像なども変化することから、主要評価項目の適切さを試験開始前に設定するのは相当の困難これら変更が試験の盲検キーオープン前だったとの見解で許容している。少なくとも第IIb相のサブ解析結果の教訓を生かした形だ。そして、今回の審議でまず“噛みついた”のは前回審議で参考人の利益相反(COI)状況などを激しく責め立てた山梨大学学長の島田 眞路氏だった(参考:第118回)。その要点は以下の2点だ。緊急承認の条件には「代替手段がない」とあるが、すでに経口薬は2種類ある日本人集団だけ(治験は日本、韓国、ベトナムで実施)での解析では症状改善までの期間短縮はわずか6時間程度でとても有効とは言い切れないこれに対して事務方からの回答は以下のようなものだ。国産で安定供給ができ、適応が重症化リスクを問わないので代替手段がないに該当する日本人部分集団で群間差が小さい傾向が認められたことについて、評価・考察を行うための情報には限りがあり、今後改めて評価する必要がある島田氏の日本人集団に関する指摘に関しては、そもそも臨床試験自体が3ヵ国全体の参加者で無作為化されていることを考えれば、日本人集団のみのサブ解析結果は参考値程度に過ぎず、申し訳ないが揚げ足取りの感は否めない。もっとも島田氏がこの事務局説明に対して「(重症化)リスクのない人に使えるから良いんじゃないかって、リスクのない人はちょっと風邪症状があるなら、風邪薬でも飲んどきゃ良いんですよ」と反論したことは大筋で間違いではない。ただし、過去の新型コロナ患者の中には、表向きは基礎疾患がないにもかかわらず死亡した例があることも考えると、さすがに私個人はここまでは断言しにくい。一方、参加した委員から比較的質問・指摘が集中したのがウイルス量低下の意義に関するものだ。議決権はない国立病院機構名古屋医療センターの横幕 能行氏は「(今回の資料では)感染あるいは発症から72時間以内に投与しないと、機序も含めた解釈ではウイルス活性を絶ち切る、もしくはそれに近い効果を得ることはできない。そして72時間以降の投与ではウイルス量の低下もしくは感染性の低下については基本的にはまったく効果がないと読める。感染伝播の阻止、早期の職場復帰などを考えると、ウイルス量もしくは感染性の低下に関する効果のこの点を十分に認識していただいた上で市中に出す必要があるかと思う」と指摘した。これに関して事務方からは「ウイルス量低下の部分は、確かに数値の低下が認められているものの、これがどの程度の臨床的意義を持つかについてはなかなか評価が難しい」というすっきりしない反応だった。現段階でのデータではPMDAも何とも言えないのも実情だろう。最終的には島田氏以外の賛成多数により緊急承認が認められたが、臨床現場での意義はやはり依然として微妙だ。過去にも繰り返し書いているが、エンシトレルビルは、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)と同じCYP3A阻害作用を有する3CLプロテアーゼ阻害薬であるため、併用禁忌薬は36種類とかなり多い。中には降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬といった中高年に処方割合の多い薬剤も多く、この年齢層で投与対象は少ないとみられる。そもそもこの層はモルヌピラビルやニルマトレルビル/リトナビルとも競合するため、これまでの使用実績が多いこれら薬剤のほうが選択肢として優先されるはずだ。となると若年者だが、催奇形性の問題から妊孕性のある女性では使いにくいことはこれまでも繰り返し述べてきたとおりだ。今回の緊急承認を受けて日本感染症学会が公表した「COVID-19に対する薬物治療の考え方第 15版」では、妊孕性のある女性へのエンシトレルビルの投与に当たっては▽問診で直前の月経終了日以降に性交渉を行っていないことを確認する▽投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認することが望ましい、と注意喚起がされている。しかし、現実の臨床現場でこれが可能だろうか? 女性医師が女性患者に尋ねる場合でも、かなり高いハードルと言える。となると、ごく一部の若年男性が対象となるが、これまで国も都道府県も重症化リスクのない若年者へはむしろ受診を控えるよう呼びかけている。もしこうした若年男性がエンシトレルビルの処方を受けたいあまり発熱外来に殺到するならば、感染拡大期には逆に医療逼迫を加速させてしまい本末転倒である。では前述のような見かけ上では重症化リスクがないにもかかわらず突然死亡に至ってしまうような危険性がある症例を選び出して処方できるかと言えば、そうした危険性のある症例自体が現時点ではまだ十分に医学的プロファイリングができていない。そもそも、エンシトレルビルの第III相パートの結果で明らかになったのはオミクロン株特有の臨床症状の改善であって、重症化予防は今のところ未知数だ。となると、後は重症化リスクのない軽症・中等症の中で臨床症状が重めな「軽症の中の重症」のようなやや頭の中がこんがらがりそうな症例を選ばなければならない。強いて言うならば、たとえば酸素飽和度の基準で軽症と中等症を行ったり来たりするような不安定な症例だろうか? ただ、今までもこうした症例で抗ウイルス薬なしで対処できた例も少なくないだろう。そして国の一括買い上げのため価格は不明だが、抗ウイルス薬が安価なはずはなく、多くの臨床医が投与基準でかなり悩むことになるだろう。ならば専門医ほどいっそ端から使わないという選択肢、非専門医は悩んだ末にかなり幅広く処方するという二極分化が起こりうる可能性もある。この薬がこうも悩ましい状況を生み出してしまうのは、前回の合同会議の審議でも話題の中心だった「臨床症状改善効果の微妙さ」という点にかなり起因する。今回の第III相パートの結果では、オミクロン株に特徴的な5症状総合での改善ではプラセボ対照でようやく有意差は認められたものの、有意水準をどうにかクリアしたレベル(p=0.04)だ。ちなみに、もともとの主要評価項目だった12症状総合では今回も有意差は認められなかった。さらに言うと、緊急承認後に塩野義製薬が開催した記者会見後のぶら下がり質疑の中で同社の執行役員・医薬開発本部長の上原 健城氏は、今回の試験では解熱鎮痛薬の服用は除外基準に入っておらず、第III相パートでは両群とも被験者の2~3割はエンシトレルビルと解熱鎮痛薬の併用だったことを明らかにしている。もちろんリアルワールドを考えれば、解熱鎮痛薬を服用していない患者のみを集めるのは難しいだろう。「(解熱鎮痛薬服用が症状判定の)ノイズになってしまってはいけないので、服用直後数時間はデータを取らないようにした」(上原氏)とのこと。ただし、解熱鎮痛薬の抗炎症効果を考えれば、今回の主要評価項目に含まれていたオミクロン株に特徴的な症状のうち、「喉の痛み」の改善などには影響を及ぼす可能性はある。そうなるとエンシトレルビルの「真水」の薬効は、ますます微妙だと言わざるを得ない。もちろん今回の第III相パートはそもそも9割以上の被験者がワクチン接種済みで、さらに2~3割が解熱鎮痛薬の服用があった中でも有意差を認めたのだから、それらがない前提ならばもっと効果を発揮できた可能性もあるのでは? という推定も成り立つが、そう事は簡単な話ではない。緊急承認という枠組みで今後の追加データ次第では1年後に本承認となるか否かという大きな命題が残っていることもあるが、「統計学的有意差を認めたから、少なくとも現時点での緊急承認はこれで一件落着」と素直には言い難いと私個人は思っている。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「BRAF」【肺がんインタビュー】 第88回

第88回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「BRAF」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨徹哉氏が解説する。

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うつ病と自殺念慮に対する思春期~成人期の24時間行動ガイドラインの重要性

 若年および成人の24時間行動ガイドラインでは、最適な健康状態を確保するために特定の身体活動時間、座位時間、睡眠時間を推奨しているが、メンタルヘルスの指標との関連についてはよくわかっていない。スペイン・ナバーラ州立大学のAntonio Garcia-Hermoso氏らは、思春期~成人期の24時間行動ガイドラインと、成人期のうつ病および自殺念慮を伴う思春期中期(12~17歳)から成人期(33~39歳)までの軌跡との関係を調査するため、本検討を行った。その結果、思春期中期~成人期での24時間行動ガイドラインの利用促進および継続で、メンタルヘルスに関する問題が予防可能であることが示唆された。ただし、本研究結果について著者らは、エラーやバイアスにつながる恐れのある自己評価や、1994~96年のガイドラインへの適合測定を2016年に行いデータセットを作成した点などから、慎重に解釈する必要があるとしている。The International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity誌2022年10月23日号の報告。 米国における思春期~成人期の健康に関する全国縦断研究(Add Health)のWeves I(1994~95年)およびV(2016~18年)の参加者を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。身体活動時間、スクリーンタイム、睡眠時間は、アンケートを用いて収集した。過去4週間でうつ病の自己申告歴および/または抗うつ薬の使用があった成人は、うつ病として分類した。自殺念慮は、Weves IまたはVにおいて自己申告の単一質問を用いて収集した。Weves Iでの24時間行動ガイドラインにおける特定の組み合わせおよび思春期~成人期の軌跡に応じて、成人期のうつ病および自殺念慮の発生率比(IRR)を推定するため、ポアソン回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、7,069人(女性の割合:56.8%)。・思春期中期に身体活動ガイドラインおよび3つのガイドラインすべてを満たしていた人は、いずれも満たしていなかった人と比較し、成人期のうつ病(IRR:0.84、95%信頼区間[CI]:0.72~0.98)および自殺念慮(IRR:0.74、95%CI:0.55~0.99)のリスクが低かった。・思春期および成人期ともにスクリーンタイムのガイドラインおよび3つのガイドラインすべてを満たしていた人は、満たしていなかった人と比較し、うつ病([スクリーンタイム]IRR:0.87、95%CI:0.72~0.98、[3つすべて]IRR:0.37、95%CI:0.15~0.92)および自殺念慮([スクリーンタイム]IRR:0.74、95%CI:0.51~0.97、[3つすべて]IRR:0.12、95%CI:0.06~0.33)のリスクが低かった。・思春期に3つのガイドラインすべてを満たしていなかったが、成人期に満たしていた人は、ガイドラインをまったく満たしていなかった人と比較し、自殺念慮のリスクが低かった(IRR:0.81、95%CI:0.45~0.89)。

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急性心不全、強化治療戦略で死亡・再入院リスク減/Lancet

 急性心不全で入退院後、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)の早期漸増と頻回なフォローアップによる強化治療戦略は、通常治療と比較して症状軽減、QOL改善、および180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクの減少をもたらすことが、フランスのパリ・シテ大学のAlexandre Mebazaa氏らが実施した多施設共同無作為化非盲検並行群間試験「STRONG-HF試験」の結果、示された。急性心不全で入退院後にGDMTを行う際の用量や漸増速度に関するエビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版2022年11月7日号掲載の報告。2週間で目標用量まで漸増するGDMTと通常治療を比較 研究グループは、14ヵ国(アルゼンチン、オーストリア、ブルガリア、コロンビア、フランス、ハンガリー、イスラエル、モザンビーク、ナイジェリア、ロシア、セルビア、スロバキア、南アフリカ、チュニジア)の87病院において、急性心不全で入院し退院予定日前2日以内に経口心不全治療薬の最大用量を投与されていない18~85歳の患者を対象に試験を行った。 退院前に左室駆出率(≦40% vs.>40%)および国で層別化して、通常治療群または高強度(high-intensity)治療群(β遮断薬、RAS阻害薬[ACE阻害薬、ACE阻害薬に不耐用の場合はARB]、ARNI、MR拮抗薬による)に1対1の割合で無作為に割り付けた。通常治療群では各地域の診療に従った治療を行い、高強度治療群では無作為化後2週間以内に推奨用量の100%まで治療薬を漸増するとともに、無作為化後1・2・3・6週時に臨床状態、臨床検査値、NT-proBNP値を評価した。 主要評価項目は、180日以内の心不全による再入院または全死亡で、intention-to-treat(ITT)集団を対象に有効性と安全性を評価した。主要評価項目については、倫理委員会がプロトコルの修正を承認し180日目まで患者の追跡調査を可とした病院に登録された患者のみを解析対象集団とした。 なお、本試験は、計1,069例が無作為化された時点の解析で主要評価項目の群間差が予測より大きかったため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により2022年9月23日に早期中止となった。早期漸増で180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクが有意に減少 2018年5月10日~2022年9月23日の期間に、計1,641例がスクリーニングを受け、1,078例が高強度治療群(542例)または通常治療群(536例)に無作為化された(ITT集団)。患者背景は、平均(±SD)年齢63.0±13.6歳、男性61%で、白人またはコーカサスが77%/黒人21%/アメリカ先住民<1%/太平洋諸島系<1%/その他1%であった。 データカットオフ時点(2022年10月13日)において、高強度治療群は通常治療群と比較して、90日目までに経口心不全治療薬を最大用量まで漸増された患者の割合が高かった(RAS阻害薬:55% vs.2%、β遮断薬:49% vs.4%、MR拮抗薬:84% vs.46%)。また、高強度治療群は通常治療群より、90日目までに血圧、心拍数、NYHA分類、体重およびNT-proBNP値が改善した。 180日以内の心不全による再入院または全死亡は、高強度治療群で506例中74例、通常治療群で502例中109例発生した(補正後リスク差:8.1%[95%信頼区間[CI]:2.9~13.2]、p=0.0021、リスク比:0.66[95%CI:0.50~0.86])。 90日以内の有害事象は、高強度治療群(223/542例、41%)が通常治療群(158/536例、29%)より多く認められたが、重篤な有害事象の発現率(88例[16%]vs.92例[17%])、致死的有害事象の発現率(25例[5%]vs.32例[6%])は同等であった。

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コロナワクチン接種率の違いで死亡率に大きな差/JAMA

 2021年から2022 年にかけて、全世界で新型コロナワクチン接種が普及した一方、デルタ株とオミクロン株が流行した。米国・Brown School of Public HealthのAlyssa Bilinski氏らは、この期間におけるOECD加盟国中20ヵ国のワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査し報告した。米国については、ワクチン接種率上位10州と下位10州についても調査したところ、下位10州の新型コロナウイルス感染症死亡率は上位10州のほぼ倍だった。JAMA誌オンライン版2022年11月18日号のリサーチレターに掲載。ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査 本研究では、ワクチン接種率は2022年1月時点で2回以上接種した人の割合とし、死亡率は2021年6月27日~2022年3月26日の死亡データを比較した。米国のデータはCDCから、その他の国のデータについては、新型コロナウイルス感染症死亡率はWHO、全死亡率はOECD データベース、ワクチン接種率はOur World in Dataからそれぞれ入手した。 ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査した主な結果は以下のとおり。・主な国におけるワクチン接種率と、デルタ株流行期/オミクロン株流行期/全期間の人口10万人当たり新型コロナウイルス感染症死亡者数は以下のとおり。 日本      :80%、3人/7.4人/10.4人 韓国      :82%、6.1人/18.2人/24.3人 ニュージーランド:75%、0.5人/3.3人/3.7人 オーストラリア :76%、4.9人/14.2人/19.2人 イタリア    :76%、15.2人/39人/54.2人 フランス    :74%、14.6人/27.6人/42.2人 ドイツ     :71%、29.6人/22.7人/52.3人 英国      :71%、30.1人/28.9人/59人 米国全体    :63%、60.9人/50.6人/111.6人 米国(接種率上位10州):73%、28.1人/46.6人/74.7人 米国(接種率下位10州):52%、86.6人/59.4人/146人・米国全体およびワクチン接種率下位10州の超過全死亡率は新型コロナウイルス感染症死亡率より高く、全期間における他の国より高かった。・この期間にもし米国の新型コロナウイルス感染症死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合、12万2,304人の死亡を回避でき、米国の超過全死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合は26万6,700人の死亡を回避できたと推計された。 2021~22年初め、米国の新型コロナウイルス感染症死亡率および超過全死亡率は他国より有意に高かったが、この差はワクチン接種率上位10州では小さくなった。著者らは「残りの差は、他国での高いワクチン接種率、高齢者をターゲットとしたワクチン接種、医療・社会インフラの違いによって説明しうるだろう」と考察している。

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慢性B型肝炎へのbepirovirsen、第IIb相試験結果/NEJM

 B型肝炎ウイルス(HBV)のmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであるbepirovirsenは、300mg週1回24週間投与により、HBV表面抗原(HBsAg)およびHBV DNAの持続的な消失が慢性B型肝炎患者の9~10%で認められた。中国・香港大学のMan-Fung Yuen氏らが、無作為化非盲検第IIb相試験「B-Clear試験」の結果、報告した。bepirovirsenの第IIa相試験では、4週間の投与でHBsAgが急速かつ用量依存的に減少し、一部の患者では一過性の消失も認められていた。著者は、「bepirovirsenの有効性および安全性を評価するため、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌オンライン版2022年11月8日号掲載の報告。HBsAgおよびHBV DNA消失の24週間持続、3用法用量vs.プラセボ 研究グループは、18歳以上で6ヵ月以上HBV感染が持続していることが確認され、HBsAg 100 IU/mL以上の患者を、bepirovirsen 300mg 24週間投与群(第1群)、bepirovirsen 300mg 12週間投与→150mg 12週間投与群(第2群)、bepirovirsen 300mg 12週間投与→プラセボ12週間投与群(第3群)、プラセボ12週間投与→bepirovirsen 300mg 12週間投与群(第4群)に、3対3対3対1の割合で無作為に割り付け、週1回皮下投与した。4日目および11日目に、bepirovirsen 300mg(第1、2、3群)またはプラセボ(第4群)の負荷投与を行った。 試験期間は、治療期間24週間および追跡調査期間24週間を含む最大55週間であった。ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ(NA)を投与されていた患者は試験期間中もNA療法を継続した。 主要評価項目は、beporovirsen投与終了後、新たに抗ウイルス薬を投与することなくHBsAg値検出限界未満かつHBV DNA値定量下限未満が24週間維持された患者の割合であった。 計457例(NA療法あり227例、NA療法なし230例)が、intention-to-treat集団に含まれた。NA療法併用の有無にかかわらず、300mg週1回24週間投与が有効 主要評価項目を達成した患者は、NA療法併用集団において第1群6例(9%、95%信用区間[CrI]:0~31)、第2群6例(9%、95%CrI:0~43)、第3群2例(3%、95%CrI:0~16)、第4群0例(0%、事後CrI:0~8)であり、非併用集団においてそれぞれ7例(10%、95%CrI:0~38)、4例(6%、95%CrI:0~25)、1例(1%、事後CrI:0~6)、0例(0%、事後CrI:0~8)であった。 安全性については、1~12週目において、注射部位反応、発熱、疲労、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇などの有害事象の発現率が、bepirovirsen群(第1、2、3群)でプラセボ群(第4群)より高かった。

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塩野義のコロナ治療薬ゾコーバを緊急承認/厚生労働省

 厚生労働省は11月22日、塩野義製薬と北海道大学の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(商品名:ゾコーバ錠125mg)を、医薬品医療機器等法第14条の2の2に基づき緊急承認した。緊急承認制度は2022年5月に新たに創設された制度で、薬剤の安全性の「確認」は前提とする一方で、有効性が「推定」できれば承認することができる。今回、本制度が初めて適用となった。同日開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会と医薬品第二部会の合同会議で、塩野義製薬が提出した第III相試験(第II/III相試験Phase 3 Part)の速報データに基づき緊急承認された。 第III相試験(第II/III相試験Phase 3 Part)では、軽症および中等症のSARS-CoV-2感染者を対象とし、オミクロン株流行期に重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無を問わず、日本、韓国、ベトナムで計1,821例が登録された。COVID-19発症から無作為割付までの時間が72時間未満の集団において、5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])が回復するまでの時間を主要評価項目とした。2022年9月末に主要目的の達成を示す結果が得られた。 主な結果は以下のとおり。・5症状が回復するまでの時間の中央値は、本剤群が167.9時間(約7日)、プラセボ群が 192.2時間(約8日)であり、本剤の投与により24.3時間(約1日)の短縮が示された。・治療開始から3日後(Day 4)のウイルスRNA量のベースラインからの変化量は、プラセボ群に対して本剤群で約30倍の差(1.47 log10[copies/mL])があり、本剤群はプラセボ群と比較して統計学的に有意な減少を示した(両側p<0.0001)。 本剤の用法・用量は、通常、12歳以上の小児および成人にはエンシトレルビルとして1日目は375mgを、2~5日目は125mgを1日1回経口投与する。SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始する。なお、重症度の高い患者に対する有効性は検討されていない。 添付文書に記載された本剤の禁忌は以下のとおり。2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.2 次の薬剤を投与中の患者:ピモジド、キニジン硫酸塩水和物、ベプリジル塩酸塩水和物、チカグレロル、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、シンバスタチン、トリアゾラム、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、ベネトクラクス〔再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〕、イブルチニブ、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、アゼルニジピン、アゼルニジピン・オルメサルタン メドキソミル、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸塩、リファブチン、フィネレノン、リバーロキサバン、リオシグアト、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品2.3 腎機能または肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者2.4 妊婦または妊娠している可能性のある女性 本剤は、緊急承認時において有効性および安全性に係る情報は限られており、引き続き情報を収集中。緊急承認の期限は1年とされ、正式承認を得るには再審議が必要となる。

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サイケデリックなうつ病治療(解説:岡村毅氏)

 少し前に、がんの「標準治療」を劣ったものと誤解し、怪しげな「民間療法」あるいは「自称最先端の治療」に騙されてしまう患者さんがいることが問題になった。標準治療とは、実は科学的根拠がある最適な治療なのだということは今では多くの人の知るところになった。同じことは精神医学でもいえる。多くのうつ病は、短期間の抗うつ薬投与と休養であっさり回復する。標準治療をお勧めする。 ただし、すべてのうつ病が医学的に治るというのは思い上がった意見だろう。治療抵抗性うつ病とは薬物治療等に反応が不良なうつ病、つまり何をやってもうまくいかないうつ病を指すが、うつ病治療学の大きな課題であった。認知行動療法やマインドフルネスといった治療技術もこれを射程に開発された。 この論文は、マジックマッシュルームなどに含まれる幻覚成分を用いた治療抵抗性うつ病の治療に関する研究の報告であるが、すでにフェーズ2まで進んでいる。抗うつ効果がはっきりある一方で、自殺念慮などの深刻な有害事象も生じている。抗うつ薬はすでに新しいものが出にくい状況であるので、臨床的には大変興味深い。 医学的にはただそれだけのことである。 しかし、マジックマッシュルームや幻覚剤というと、医学的なことに留まらず、さまざまな側副情報がくっついており、非常に危険な話題である。この記事を読んでいるのは知識がある人であろうから、ある程度ざっくばらんに書くが、あくまで私個人の意見として以下を読んでいただければと思う。 まず幻覚剤はヒッピームーブメントと結びついている。ご承知のように1960年代の米国のカウンターカルチャーであり、現代文明によって奴隷のようになった我々を解放しなければならないという心性である。気持ちとしてはなんとなくわかるが、幻覚剤を用いた宗教行事のようなことを行って、解放を目指したりしがちである。これは現代アメリカ文明がネイティブアメリカン等の先住民の虐殺の上に成り立っているという原罪意識とも結びついているかもしれない。 あの時代ならではであるが、リアリー元教授という人がハーバード大学で幻覚剤を用いて人を変えることができると主張して科学的にはめちゃくちゃな研究をし、追放された。ちなみにリアリー元教授は破天荒な人生を歩んだ人で、テレパシー、宇宙移住、ジョン・レノンとオノ・ヨーコとの活動、カルフォルニア州知事選への立候補などもしている。彼のせいで、幻覚剤を用いた治療というと、かなりイロモノになったことは事実であろう。 一方で体制側も幻覚剤を用いていた。あるいは用いていたと多くの人が信じている。悪名高きMKウルトラ計画はCIAによる洗脳研究とされる。とはいえ、自分はMKウルトラの被害者だと主張する人や、自分は宇宙人に誘拐されたなどと主張する人が米国には多数いるが、その真偽は明らかではない。 精神医学に関して言うと、精神科医ほど体制を嫌う集団はないと個人的には思っているが(なので社会から排除されるこころ病む人を支援しようという情熱が根本にあるのだが)、精神医学が体制のために使われているのだと主張する人は精神医学の「内部から」常に現れる。いわゆる反精神医学であり、上記のヒッピームーブメントの時代に大きなうねりとなった。確かに旧ソ連などでは精神医学が反体制派の弾圧に使われてしまっており、「自分たちが体制に使われてはいけない」というのは健全な批判精神であろう。とはいえ反精神医学は、精神疾患などというものはないのだとか、治療をしてはいけないとか、極端な主張に陥りがちであったことも事実だ。前述の「民間療法」や「自称最先端の治療」と大して変わらない。 以上、非常に荒っぽくまとめると幻覚剤は、現代文明からの解放や体制との戦い、体制側の洗脳、という両極端の過激な考えと結び付けられてしまい、それぞれの人にとってさまざまな感情を喚起するため、とても取扱注意なのである。 精神医学は、社会学や、文学とも強く結び付いており、社会の安定のための学問でもあるが、同時に社会を変革する(ひっくり返す)学問でもあるという独特の面白さがある。この点をわかっていただきたくていろいろと書いた。とはいえ先ほど「医学的にはただそれだけのことである」と書いたように、この研究は北米と欧州の多施設で科学的に計画されて粛々と行われている。上記のさまざまな先入観というか歴史的に帯びてしまった意味を脇に置いて、淡々と読んでいただきたいものである。

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思わぬ収穫のあった講演会【Dr. 中島の 新・徒然草】(453)

四百五十三の段 思わぬ収穫のあった講演会11月も終わりに近づいてきました。大阪の空気もずいぶん冷えています。でも、散歩なんかにはちょうどいい気温かもしれません。最初は寒くても、歩いているうちに体が温まってくるからです。さて、先週の土曜日、大阪医療センターでは法円坂フォーラムという講演会が行われました。近隣医療機関の先生方を集めて当院の宣伝を行おうというものです。役職者もできるだけ顔を見せるように、ということだったので私も出席しました。テーマは放射線治療で、関係者4人の講演がありました。実は、私自身はあまり放射線治療科には縁がありません。でも、4人の講演を聴いてみると非常に面白かったので、得した気分になりました。とくに印象に残ったところを紹介しましょう。よくご存じの先生方には当たり前のことかもしれませんが、私には新鮮でした。対象となる疾患は、子宮頸がん、舌がん、皮膚がん、前立腺がんなどです。転移性脳腫瘍や脳動静脈奇形も少しだけありました。子宮頸がんについては、進行度によって外科的治療と放射線治療のすみ分けができているそうです。放射線治療の目標としては、ターゲットとなるがんに十分な線量を当てる一方で、隣接する膀胱や大腸、小腸を保護しなくてはなりません。そのためにいろいろな工夫がされていました。組織内小線源を使う場合、コンピュータの自動計算では必ずしもいい治療計画ができるとは限らないそうです。そこで、人間が条件を変更したうえで自動計算させると、理想的な治療計画ができるのだとか。提示された症例では、当初はがんへの線量が不十分にもかかわらず、隣接臓器に余分な線量が加わっていました。そこで、(あくまでも私の理解ですが)線源を1本キャンセルした上で計算をやり直させたようです。そうすると、素人目にもピッタリの治療計画ができました。こういう裏ワザがあるのか、と感心させられた次第です。また、ある男子中学生の陰茎がんの治療には苦心したようです。がんごと陰茎を切断してしまえば完治するのかもしれないけど、そこを何とか機能を保ちつつ治してやりたいと思うのが担当医の親心。おそらく、世の中の男性全員の賛同を得られることでしょう。しかし、ターゲットは放射線治療が最も不得意とする変形しやすいもの。何とかデンタルシリコンやら病理用パラフィンやらを用いて型をとって固定してから放射線治療をしたそうです。その結果、見事にがんは消失し、本体を温存することができました。演者曰く。「苦労して作ったモールドで治療してから早や10数年、そろそろ『子供ができました』とかいう報告が欲しいですね」ということで、内容もさることながら、担当医の創意工夫に驚かされた1日でした。次回は来年3月で、テーマは整形外科だそうです。どんなマニアックな治療を披露してもらえるのか、楽しみですね。最後に1句小雪(しょうせつ)に 手作り治療を 堪能す

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