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HER2低発現とHER2ゼロ乳がんの予後比較~米国114万人の調査/JAMA Oncol

 HER2低発現乳がんの疫学的特徴や予後の観点から、HER2ゼロ乳がんと臨床的に異なるサブタイプと言えるのだろうか。今回、米国・シカゴ大学のDaniel S. Peiffer氏らが米国がんデータベースを用いて約114万人の大規模コホート研究を実施したところ、HER2低発現の割合は、ヒスパニック系患者および非ヒスパニック系黒人患者が、非ヒスパニック系白人患者と比べてわずかに低く、また、全生存期間(OS)はHER2低発現乳がんのほうがHER2ゼロ乳がんよりわずかに良好だった。これらの結果から、HER2低発現乳がんとHER2ゼロ乳がんの治療反応性と長期予後が類似している可能性が示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月23日号に掲載。 この後ろ向きコホート研究は、米国がんデータベースから、2010年1月1日~2019年12月31日に浸潤性乳がんと診断され、HER2陰性乳がんでIHC結果が得られた米国内の患者113万16例を対象に実施された。HER2低発現は、IHCスコア1+、またはIHCスコア2+かつISH陰性とし、HER2ゼロはIHCスコア0と定義した。2021年11月1日~2022年11月30日のデータを解析した。主要評価項目は、HER2低発現乳がんに対するHER2ゼロ乳がんのOSと病理学的完全奏効とした(年齢、性別、人種および民族、Charlson-Deyo Comorbidity Indexスコア、治療施設の種類、腫瘍グレード、腫瘍組織型、ホルモン受容体の状態、がんの病期について調整)。 主な結果は以下のとおり。・113万16例(平均年齢:62.4歳、女性99.1%、非ヒスパニック系白人78.6%)のうち、HER2ゼロ乳がんが39万2,246例(34.5%)、HER2低発現乳がんが74万3,770例(65.5%)だった。・エストロゲン受容体高発現は、HER2低発現の割合の増加と関連していた(調整オッズ比[aOR]:10%増加当たり1.15)。・HER2低発現乳がんと診断された割合は、非ヒスパニック系白人患者(66.1%)と比較して、非ヒスパニック系黒人患者(62.8%)およびヒスパニック系患者(61.0%)では少なかったが、非ヒスパニック系黒人患者ではトリプルネガティブ乳がんの割合の違いやほかの交絡因子が介在していた。・多変量解析では、病理学的完全奏効率がHER2低発現乳がんではHER2ゼロ乳がんと比べてわずかに低かった(aOR:0.89、95%信頼区間[CI]:0.86~0.92、p<0.001)。・HER2低発現はまた、StageIII(調整ハザード比:0.92、95%CI:0.89~0.96、p<0.001)およびStageIV(同:0.91、95%CI:0.87~0.96、p<0.001)トリプルネガティブ乳がんでのわずかなOS改善と関連していたが、これは5年OSのわずかな増加(StageIII:2.0%、StageIV:0.4%)にしかならなかった。 この大規模後ろ向きコホート研究では、HER2低発現とHER2ゼロの乳がんの予後の差はわずかだった。著者らは「これらの結果は、今後HER2低発現乳がんの予後がHER2低発現に関連する生物学的特性の本質的な違いではなく、HER2を標的とした抗体薬物複合体によって左右されることを示唆する」としている。

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リファンピシン感受性肺結核、8週レジメンが標準治療に非劣性/NEJM

 結核の治療において、8週間のベダキリン+リネゾリドレジメンによる初期治療を含む治療戦略は標準治療に対して非劣性であり、治療期間の短縮にもつながり、安全性に明らかな懸念はないことを、シンガポール・シンガポール国立大学のNicholas I. Paton氏らがアダプティブ第II/III相無作為化非盲検非劣性試験「Two-Month Regimens Using Novel Combinations to Augment Treatment Effectiveness for Drug-Sensitive Tuberculosis trial:TRUNCATE-TB試験」の結果、報告した。結核は、通常6ヵ月間のリファンピシンベースのレジメンで治療されるが、初期治療期間の短縮を含む治療戦略により同様の治療成績が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2023年2月20日号掲載の報告。高用量リファンピシン+リネゾリドまたはベダキリン+リネゾリドを検証 研究グループは2018年3月21日~2020年1月20日の期間で、インドネシア、フィリピン、タイ、ウガンダ、インドの18施設において、18~65歳のリファンピシン感受性肺結核患者675例を、標準治療(リファンピシン+イソニアジド24週、ピラジナミド+エタンブトールを最初の8週間併用)、または4つの初期治療戦略群(8週間レジメンの初期治療、臨床症状が持続する場合は12週まで治療延長、治療後モニタリングおよび再発時の再治療を含む)のいずれかに無作為に割り付けた。4つの初期治療レジメンは、高用量リファンピシン+リネゾリド、高用量リファンピシン+クロファジミン、rifapentine+リネゾリド、ベダキリン+リネゾリド(いずれもイソニアジド+ピラジナミド+エタンブトールとの併用)である。 今回は、登録が完了した高用量リファンピシン+リネゾリドとベダキリン+リネゾリドの2つの初期治療レジメンについて、標準治療に対する非劣性を検証した。 主要アウトカムは96週時点での死亡、治療継続または活動性疾患の複合で、非劣性マージン12ポイント、片側有意水準0.0125とした。ベダキリン+リネゾリド、96週後の複合エンドポイントに関して非劣性 675例中、1例は誤って無作為化されたため直ちに撤回され、intention-to-treat集団は674例であった。このうち、4例が同意撤回または追跡不能となった。 主要アウトカムのイベントは、標準治療群で181例中7例(3.9%)、高用量リファンピシン+リネゾリド群で184例中21例(11.4%、補正後群間差:7.4ポイント、97.5%信頼区間[CI]:1.7~13.2、非劣性基準を満たさず)、ベダキリン+リネゾリド群で189例中11例(5.8%、0.8ポイント、-3.4~5.1、非劣性基準を満たす)に発生した。 96週時点の平均治療期間は、標準治療群180日、高用量リファンピシン+リネゾリド群106日、ベダキリン+リネゾリド群85日であった。 Grade3/4の有害事象および重篤な有害事象の発現率は、3群で類似していた。

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血友病B、AAV5ベクターを用いた遺伝子治療が有効/NEJM

 血友病Bの成人患者において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療薬etranacogene dezaparvovecは、年間出血率に関して第IX因子定期補充療法に対する優越性が認められ、安全性プロファイルは良好であることが、米国・ミシガン大学のSteven W. Pipe氏らが実施した非盲検第III相試験「Health Outcomes with Padua Gene; Evaluation in Hemophilia B:HOPE-B試験」の結果、示された。中等症~重症の血友病Bに対しては、出血予防のため生涯にわたり血液凝固第IX因子を補充する治療を継続する。血友病Bの遺伝子治療は、第IX因子活性を維持することで、第IX因子の補充療法なしで出血を予防できる可能性があった。著者は、「遺伝子治療が血友病B患者の治療の負担を軽減し、QOLを改善する可能性がある」とまとめている。NEJM誌2023年2月23日号掲載の報告。血友病B患者54例に、etranacogene dezaparvovecを単回投与 研究グループは、血友病B(第IX因子活性≦正常値2%)の男性患者54例に、第IX因子定期補充療法の導入期間(≧6ヵ月)後に、第IX因子Padua変異を発現するAAV5ベクターであるetranacogene dezaparvovec(2×1013ゲノムコピー/kg体重)を、AAV5中和抗体の有無にかかわらず単回投与した。 主要エンドポイントは年間出血率で、etranacogene dezaparvovec投与後7~18ヵ月の出血率を導入期間の出血率と比較する非劣性解析を実施した。非劣性マージンは、年間出血率比の両側95%Wald信頼区間(CI)の上限が1.8未満と定義した。優越性、追加の有効性評価項目、安全性についても評価した。年間出血率、第IX因子定期補充療法に対して有意に減少 年間出血率は、導入期間4.19(95%CI:3.22~5.45)に対し、投与後7~18ヵ月は1.51(95%CI:0.81~2.82)に低下した。率比は0.36(95%Wald CI:0.20~0.64、p<0.001)で、95%Wald CIの上限(0.64)が非劣性マージン(1.8)より小さく、かつ1より小さいことから、etranacogene dezaparvovecの第IX因子定期補充療法に対する非劣性および優越性が認められた。 第IX因子活性のベースラインからの増加(最小二乗平均値)は、投与後6ヵ月時点36.2ポイント(95%CI:31.4~41.0、p<0.001)、18ヵ月時点34.3ポイント(29.5~39.1、p<0.001)であった。また、第IX因子濃縮製剤の使用量は、投与後7~18ヵ月の期間で導入期間より患者1例当たり年間で平均248.825 IU減少した(p<0.001)。 投与前のAAV5中和抗体価が700未満の患者において、有益性と安全性が確認された。 治療関連有害事象は37例(69%)に発現し、主なものはALT増加、頭痛、インフルエンザ様症状、AST増加などであった。重篤な治療関連有害事象は発生しなかった。輸液関連有害事象は7例(13%)に認められた。1例は投与後約15ヵ月で心原性ショックにより死亡したが、治験責任医師により治療と関連なしと判定された。

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5類移行後も「コロナ特例はすべて継続」求める/日医

 日本医師会会長の松本 吉郎氏は3月1日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更後の発熱外来診療体制の維持・充実に向けて、日本医師会の取り組みや意見を述べた。 「類型の変更後には、新規感染者数が過去の感染拡大を大幅に超える事態も想定される。新規感染者数の把握方法が定点報告に基づくことになり、これまでとの比較も困難になるため、入院や外来の医療逼迫度合いが最も重要な指標になる。日本医師会では、外来の医療提供体制、とりわけ現在の約4万2,000軒の診療所・病院による発熱外来診療体制の維持が重要」と前置きした上で、「これまで季節性インフルエンザの検査・診療を行ってきた医療機関の新規参画、かかりつけ患者のみを受け入れてきた医療機関の幅広い患者の受け入れが重要である」と協力を求めた。 また、地域外来検査センターや宿泊療養施設での健康観察などを行う「COVID-19 JMAT」に登録された医師、看護職員、薬剤師、事務職員などは延べ17万人であり、各地域の独自の取り組みを合わせると数十万人と見込まれることに言及し、「各地のコロナの対応、コロナと通常医療の両立という現場の努力は適切に評価されてしかるべき」と強調した。 2月28日には、都道府県医師会宛ての通知「新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更後の発熱外来診療体制の維持・充実に向けて(協力要請)」を出している。「コロナ特例はすべて継続」求める 常任理事の長島 公之氏は、今後の新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の特例の取り扱いについて、中央社会保険医療協議会で審議が行われたことを報告した。 類型が変更となってもウイルスの感染性と感染対策の必要性は変わるものではないことを強調した上で、「医療現場は今後も引き続き感染対策を講じる必要がある。診療報酬上の特例はすべて継続すべき」と述べた。

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医療用医薬品の患者向け広告が米国では問題になっている(解説:折笠秀樹氏)

 品物を販売する企業には販売促進費(広告宣伝費)があります。いくら良い品物でも宣伝しないと広く使われないためでしょう。販売促進費(販促費と略す)の総売上に対する割合は、分野によってずいぶん異なります。自動車・教育・外食産業などの数パーセント程度に対して、医薬品は5~15%程度と少し高いようです。最も高いとされるのが化粧品のようです。 医療用医薬品は医師の処方箋が必要な医薬品で、それが主の企業では5~10%程度のようですが、一般用医薬品が主の企業では10~15%と少し高めです。一般用医薬品はドラッグストアなどで気軽に買えるということで、広告宣伝にかなり力を入れているのでしょう。処方箋なしで買える医薬品はOTC医薬品と呼ばれ、薬剤師の関与が必要なものと必要ないものに分かれています。後者がいわゆる一般用医薬品です。従来は大衆医薬品と呼んでいたものです。 今回の調査は米国で流通している、医療用医薬品150品目に関するものです。販促費の割合ではなく、患者や市民へ向けた直接販売広告費(DTC広告費と呼ぶ)に注目しています。一般用医薬品はテレビなどでDTC広告を目にしますが、医療用医薬品について日本ではDTC広告はほぼないと思います。せいぜい疾患啓発広告・治験広告・企業PR広告くらいでしょう。米国ではこのDTC広告が増えているようなのです。今回の調査でも、販促費の中でDTC広告費の割合は13.5%と報告されました。これで驚くなかれ、何と80%を超えている品目数が12品目もあったのです。その中にはオプジーボも含まれていました(DTC広告割合92%)。オプジーボの売上高はほぼ4,000億円、販促費はその数パーセントに当たる約100億円のようです。その大半が医療関係者向けではなく、患者向けに充てられていたわけです。 DTC広告費の割合が高い要因としては、売上高が高い・医療的価値が低い・最近の発売・生物製剤・抗感染症薬のようでした。注目すべきは、医療的価値の低いお薬ほどDTC広告に頼っていることでした。価値が高ければ何もしなくても使用するからでしょう。抗菌薬の営業は派手な印象をもっていましたが、やはり宣伝広告に費やしていることがわかりました。その種類も多く、耐性菌ゆえ新規のお薬が出やすいことも関係しているのでしょう。 日本では医療用医薬品に関する宣伝広告は医療関係者向けがほとんどだと思いますが、患者らに直接訴えかける宣伝広告が増えていくかもしれません。患者向け医薬品ガイドというような資料をホームページ上では見かけますが、そこまで患者さんやご家族が目にしているとは思えません。現代の医療は、患者や家族の意見も取り入れながら治療法を決めていく時代になりつつあります。そうなると、もっと患者や家族へ直接訴えかける広告宣伝が増えるのは目に見えています。テレビやYouTubeなどに宣伝広告が登場すれば、その影響力は大きくなることでしょう。

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春は出会いの季節【Dr. 中島の 新・徒然草】(466)

四百六十六の段 春は出会いの季節早いもので、もう3月になりました。春は別れの季節であるとともに出会いの季節。今回は出会いについてのお話をさせていただきます。遠い昔、昭和の頃。塾講師をしていた後輩が、遅くまで残っていた女子高生を車で家まで送ってあげた時のこと。家から出て来たご両親が、実は全国仲人連盟の世話人だったかな。正確な名称は覚えていませんけど。以来、彼は毎月のようにお見合いをすることになり、ついにゴールインしました。お相手は、とある病院の跡取り娘だったそうです。昭和が仲人連盟なら、令和の今はマッチングアプリが大活躍。私の外来に通院している若者たちも、それぞれに活用しています。彼らの話を聞いているうちに、私もだんだん詳しくなってきました。マッチングアプリにもいろいろあり、婚活専門から出会い目的まで用途が異なっています。前者の場合、独身証明書や源泉徴収票も提出しなくてはなりません。後者の場合はもっと緩くて、既婚者も紛れ込んでいるのだとか。ある20代男性の通院患者さんの場合。「最初に会うところまでいっても、その後が続かないんです」と、お母さんが嘆いていました。別のある20代の女性患者さんは、マッチングアプリで彼氏を見つけて楽しんでいるそうです。彼女の妹さんは遠距離恋愛が破局したのですが、すぐさまマッチングアプリで新しい彼氏を作ったとか。皆さん、頑張っていますね。そんな中、ついに結婚に至った30代の女性患者さんが現れました。彼女は当初「なかなかピンとくる男性に出会えない」とこぼしていましたが、諦めずに婚活を続けた結果、ついに運命の相手が登場!患者「先生、ちょっと写真を見てくれる?」中島「えっと、この人かな」患者「見かけは全然ダメやけど」写真を見せてもらいましたが、うっかり同意したら大変なことになります。患者「でも、すごく優しくて、私の実家の近くに引っ越してくれたし」中島「そりゃあ、何かとご両親に助けてもらうべきやね」聞けば、ご主人の出身は遥か遠いところだそうです。このような成功事例を聞いて、ほかの患者さんたちも俄然ヤル気を見せました。私に根掘り葉掘り尋ねてきます。どのマッチングアプリか、とか。出会いまでどのくらいかかったのか、とか。どの時点で自分の障害について相手に説明したのか、とか。やはり障害のことが1番の問題のようですね。相手に話すのは、できるだけ早いほうがいいんじゃないかと思うのですけど。それぞれに頭部外傷の後遺症を持っていたり、抗痙攣薬を服用したりしているわけですから。もちろん、頼まれれば私が代わってお相手に説明をすることもあります。なかには小学生の時から診ている患者さんもいるので、そのくらいのことは問題ありません。ニュースでは「マッチングアプリで知り合った相手が原因で事件に巻き込まれた」みたいな報道がされることもあるので、何となくネガティブなイメージを持っていました。が、それ以上に若者たちはガンガン活用して自分の人生を切り開いているようです。ということで、さらに面白い話を耳にしたら、読者の皆さんに報告いたしましょう。最後に1句マチアプの 成果を語る 弥生かな★ 「マチアプ」とはマッチングアプリの略称

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第34回 経鼻インフルワクチン使いますか?

フルミストが承認へ厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2月27日、第一三共の経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液(以下フルミスト)」の承認を了承しました。3月に承認される見通しです。フルミストは、鼻に噴霧するインフルエンザワクチンです。「これまでにない剤型でナウい!」と思われるかもしれませんが、2003年にアメリカで承認されており、日本は20年遅れの承認となっています。2016年あたりに承認に向けた話し合いが進められたのですが、事務的な手続きやら何やらで、いろいろと後ずれしてしまったそうです。フルミストは、2013/14シーズン以降ワクチン効果の低下を指摘されており、米国疾病予防管理センター(CDC)でも一時推奨リストから取り下げられていました。そのため、現在も「いまいちかも…」と思っている医師は多いかもしれません。A型インフルエンザ(H1N1)の流行時に、小児で有効性が検証されています1)。この研究では、不活化ワクチンに非劣性という結果が得られています。具体的には、調整済みの有効性(VE)が、H1N1に対してフルミスト69%(95%信頼区間[CI]:56~78%)、不活化ワクチン79%(95%CI:70~86%)、H3N2に対してそれぞれ36%(95%CI:14~53%)、43%(95%CI:22~59%)、B型インフルエンザに対してそれぞれ74%(95%CI:62~82%)、56%(95%CI:41~66%)という結果でした。現在CDCはフルミストをインフルエンザワクチンの選択肢の1つとして位置づけています2)。CDCの推奨と接種対象国際的には2~49歳へ接種が可能ですが、日本国内はおそらく2~19歳未満に限定されることになります。ほぼ子供のワクチンと言えるでしょう。2歳未満で喘鳴が増えた経緯があり、接種対象外となっています。上述しましたが、CDCはインフルエンザワクチン全般について、不活化ワクチンとそれ以外のどちらがよいか、断言していません3)。ただ、フルミストについては接種対象が限定されており、それには注意すべきと書いています。生ワクチンなので、喘息発作の既往が1年以内にある人、免疫不全者、妊婦では接種を回避する必要があります。また、自宅に免疫不全者がいる場合も避けるべきとされています。なお、卵アレルギーについてはそこまで懸念しなくてよいとされています2)。CDCの推奨は「卵アレルギーの既往歴があり、蕁麻疹のみを経験したことがある人は、インフルエンザワクチンの接種は可能。蕁麻疹以外の症状(血管浮腫、呼吸困難、ふらつき、再発性嘔吐など)があったり、アドレナリン(エピネフリン)投与を要したりした人についても、年齢や健康状態に応じたワクチン接種を受けることが可能」となっています。インフルエンザワクチンと卵アレルギーの関係については、堀向 健太先生がYahoo!のニュース記事に詳しくまとめられているので、そちらを参考にするとよいでしょう3)。フルミストは弱毒生ワクチンなので、接種後、鼻汁や咳などの症状が出ることがあります。とはいえ、低温馴化された弱毒化されたものを使っていますので、基本的にはそこまで問題にならないでしょう。おそらく国内では、来シーズンから経鼻インフルワクチンが使われることになると予想されます。参考文献・参考サイト1)Buchan SA, et al. Effectiveness of Live Attenuated vs Inactivated Influenza Vaccines in Children During the 2012-2013 Through 2015-2016 Influenza Seasons in Alberta, Canada: A Canadian Immunization Research Network (CIRN) Study. JAMA Pediatr. 2018;172:e181514.2)Grohskopf LA, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices - United States, 2022-23 Influenza Season. MMWR Recomm Rep. 2022;71:1-28.3)インフルエンザワクチン製造時に鶏卵を使用 卵アレルギーの子どもは予防接種できる?

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介護施設入所のリスク因子は?

 高齢者の要支援・要介護度に応じた老人ホーム入所のリスク因子が信州大学医学部保健学科 佐賀里 昭氏らの研究で明らかとなった。PLoS One誌2023年1月27日号の報告。  高齢者の介護施設入所リスクを基本動作と日常生活動作(ADL)の観点から明らかにすることを目的とし、レトロスペクティブ研究が行われた。 A市における2016~18年の介護保険認定調査の要介護認定者のうちデータにアクセス可能であった1万6,865例の性別、年齢、世帯構成、要介護度などのデータを取得し、グループタイプを従属変数、基本動作得点とADL得点を独立変数として、多変量二項ロジスティック回帰分析を行った。要介護度に応じた因子分析では、参加者を要支援度1、2、要介護度1、2、要介護度3、4、5に分類し、在宅から介護施設への入所に関連する因子の検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・要支援度1、2では、基本動作としては片足立ちと移乗、ADLとしては排尿と洗顔の制限/支援の必要性が介護施設入所と関連していた。・要介護度1、2では、基本動作として起き上がり・移動、ADLとして入浴・排尿・洗顔・整髪の制限/支援の必要性が介護施設入所と関連していた。・要介護度3、4、5では、基本動作として座位と移動、ADLとして自食と排便の制限/支援の必要性が介護施設入所と関連していた。 作業療法士は、高齢者のADLや基本動作の低下に着目し、患者や家族、他の医療従事者に必要な情報を伝え、適切かつ迅速なケアを提供する必要がある。

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双極性障害、うつ病、自殺企図へのT. gondiiの影響

 双極性障害、うつ病、自殺企図における寄生性原生生物トキソプラズマ(T. gondii)の潜伏感染の影響については長期間にわたり議論されているが、T. gondiiが脳や行動を操作する方法に関してエビデンスは不足しており、この推測は不明のままである。トルコ・イスタンブール大学のOmer Faruk Demirel氏らは、自殺企図を有する/有さない双極性障害およびうつ病患者へのT. gondii感染の影響を検討するため本研究を実施した。その結果、T. gondii潜伏感染は、双極性障害および自殺企図の原因と関連している可能性が示唆された。Postgraduate Medicine誌オンライン版2023年2月6日号の報告。 自殺企図の有無にかかわらず双極性障害およびうつ病患者に対するT. gondii感染の影響を検討するため、血清学的および分子ベースの評価を行い、年齢、性別、居住地域(県)がマッチした健康対照者と比較した。双極性障害患者147例、うつ病患者161例、健康対照者310例をプロスペクティブに評価した。 主な結果は以下のとおり。・T. gondiiの血清陽性率は、双極性障害患者で57.1%、うつ病患者で29.2%、自殺企図を有する患者で64.8%、健康対照者で21.3%であった。・二項ロジスティック回帰分析では、T. gondii陽性の免疫グロブリンG(IgG)の状態は、双極性障害および自殺企図の顕著な傾向因子である可能性が示唆されたが、うつ病では示唆されなかった。 ●双極性障害(OR:3.52、95%信頼区間[CI]:2.19~5.80、p<0.001) ●自殺企図(OR:17.17、95%CI:8.12~36.28、p<0.001) ●うつ病(OR:1.21、95%CI:0.74~1.99、p=0.45)・PCRによるT. gondiiのDNA比率では、双極性障害およびうつ病との関連が認められた。

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ダロルタミド、転移を有する前立腺がんに適応追加/バイエル

 バイエル薬品は2023年2月24日、経口アンドロゲン受容体阻害薬(ARi)であるダロルタミド(商品名:ニュベクオ)について、遠隔転移を有する前立腺がんへの適応追加承認を取得した。ダロルタミドを加えた併用療法が死亡リスクを有意に32.5%低減 今回のダロルタミドの承認は、遠隔転移を有する前立腺がん患者を対象とした第III相ARASENS試験の良好な結果に基づくもの。同試験では、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することが示された。これらの結果は、NEJM誌2022年3月24日号に掲載された。 ダロルタミドは転移のあるホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)の適応に対して複数の国や地域において申請中である(米国では承認済み)。同剤は、mHSPCを対象とした第III相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺がんの術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の第III相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺がんを対象とした他の試験でも検討が進められている。 ダロルタミドは、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん患者(nmCRPC)の治療薬として、米国、欧州連合(EU)、日本および中国を含めた世界の80以上の地域で承認されている。

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平均血糖値とHbA1c値の乖離の理由が明らかに/京都医療センターほか

 平均血糖値が同じ180mg/dLであってもHbA1c値が7.0%台の人もいれば、9.0%近くの人もいると、A1c-Derived Average Glucose(ADAG)研究で報告されている。これらの平均血糖値とHbA1c値の乖離現象はヘモグロビン糖化に個人差があるのではないかと推察されている。2型糖尿病ではヘモグロビン糖化インデックス(Hemoglobin glycation index:HGI)が高い人は、糖尿病合併症、心血管疾患、死亡リスクが増大すると報告されている。しかし、日本人1型糖尿病での報告はなかった。 そこで、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのFGM-Japan研究グループ(9施設)は日本人1型糖尿病を対象に、HGIに及ぼす要因を検討したところ、性別(女性)、HbA1c値、腎機能(eGFR)、血糖変動(%CV)が関連していることが明らかとなった。Journal of Diabetes Investigation誌2023年2月14日号の報告。 1型糖尿病211例の過去90日間の連続血糖測定(CGM)データを用いて、平均血糖や血糖変動指標などを算出した。HGIは「実測されたHbA1cから平均血糖から予測されたHbA1cを引き算」して求められ、高HGI・中HGI・低HGIの3群に分類された。平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を多変量解析した結果 平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を検討した主な結果は以下のとおり。低HGI、中HGI、高HGIの順に、・女性の割合が多くなった(45.1%、58.6%、74.3%、p=0.002)・HbA1c値が高くなった(7.0±0.8%、7.4±0.7%、8.2±0.8%、p=0.029)・Hb値は低くなった(13.9±1.7g/dL、13.7±1.3g/dL、13.2±1.4g/dL、p=0.024)・推定腎機能は低くなった(83.4±21.3、75.6±20.1、75.1±19.4、p=0.029)・血糖変動指標の中でADRR(38.7±9.8、41.4±11.1、43.5±10.9、p=0.031)と%CV(32.6±5.1、34.8±6.7、35.0±5.9、p=0.029)が高くなった しかし、その一方で・年齢、糖尿病歴、BMI、糖尿病合併症、糖尿病治療、食事・運動習慣、生活習慣では3群間に差を認めなかった・平均血糖、GMI、TAR、TIR、TBRでは3群間に差を認めなかった その他・多変量解析の結果、性別(女性)とHbA1c値と独立して、%CVとeGFRがHGIと有意に関連していた(R2=0.44) 共同研究者の三浦 順之助氏(東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科分野)は、本研究について「ヘモグロビン糖化の個人差の一部が解明されたことは、糖尿病診療の上で大きな意義がある。遺伝的要因や炎症などがヘモグロビンの糖化に関係している可能性も考えられ今後も検討が必要である」と述べている。

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パーキンソン病、片側淡蒼球内節の集束超音波で運動機能改善/NEJM

 パーキンソン病患者に対する片側淡蒼球内節の集束超音波アブレーション(FUSA)は、3ヵ月後に運動機能やジスキネジアが改善した患者の割合が高かったものの、有害事象を伴った。米国・University of North CarolinaのVibhor Krishna氏らが北米、アジアおよび欧州の16施設で実施した無作為化二重盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。片側淡蒼球内節のFUSAは、ジスキネジアや運動変動のあるパーキンソン病患者を対象とした小規模の非盲検試験において有効性が示唆されていた。著者は、「パーキンソン病患者におけるFUSAの有効性と安全性を明らかにするためには、より長期の大規模臨床試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2023年2月23日号掲載の報告。FUSA群とシャム群に無作為化、3ヵ月後の改善を評価 研究グループは、UK Brain Bank基準で特発性パーキンソン病と診断され、投薬オフ状態でジスキネジアまたは運動変動と運動障害を有する30歳以上の患者を、淡蒼球内節のMRガイド下FUSA群またはシャム(対照)群に3対1の割合で無作為に割り付け、患者の利き手側または運動障害が大きい側と反対側に投薬オフ状態で治療を行った。 適格基準は、MDS-UPDRSパートIII(運動)スコアが投薬オン状態に対してオフ状態では30%以上減少で定義されるレボドパ反応性を有し、MDS-UPDRSパートIIIスコアが20以上で、ジスキネジアまたは運動変動の運動障害があり(投薬オン状態でMDS-UPDRS項目4.2スコアが2以上、またはMDS-UPDRS項目4.4スコアが2以上)、パーキンソン治療薬を30日以上安定投与されている患者とした。 主要アウトカムは、治療後3ヵ月時点の改善(投薬オフ状態での治療側のMDS-UPDRSパートIII[運動]スコアまたは投薬オン状態でのジスキネジア評価スケール[UDysRS]のスコアのいずれかがベースラインから3点以上減少で定義)。副次アウトカムはMDS-UPDRSの各項目スコアのベースラインから3ヵ月時点までの変化であった。 3ヵ月間の二重盲検期の後、12ヵ月時まで非盲検期を継続した。治療3ヵ月後に運動症状が改善した患者の割合はFUSA群69%、シャム群32% 94例が登録され、FUSA群に69例、シャム群に25例が割り付けられた。このうち治療を受けたそれぞれ68例および24例を安全性解析対象集団、3ヵ月後の主要評価を完遂した65例(94%)および22例(88%)を修正intention-to-treat集団とした。 治療後3ヵ月時点で改善した患者は、FUSA群で65例中45例(69%)、シャム群で22例中7例(32%)であった(群間差:37ポイント、95%信頼区間[CI]:15~60、p=0.003)。 FUSA群の改善例45例のうち、MDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少した患者は19例(29%)、UDysRSスコアのみが3点以上減少した患者は8例(12%)、両スコアとも3点以上減少した患者が18例(28%)であった。一方、シャム群の改善例7例のうち、6例はMDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少し、1例は両スコアとも3点以上減少した。 副次アウトカムは、概して主要アウトカムと同様の結果であった。 FUSA群において、3ヵ月時点で改善した45例のうち12ヵ月時点で評価し得たのは39例で、このうち30例は改善が続いていた。 FUSA群における淡蒼球破壊術関連有害事象は、構音障害、歩行障害、味覚障害、視覚障害および顔面筋力低下であった。

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コロナ感染による免疫、変異株ごとの効果は~メタ解析/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染のその後の再感染に対する予防効果は、デルタ株までの変異株に対しては非常に高く40週後も高いままであったが、オミクロンBA.1株については時間と共に急速に低下した。一方、再感染での重症化予防効果は、オミクロンBA.1株までの変異株すべてにおいて、既感染1年後まで比較的高いレベルで維持されていた。米国・保健指標評価研究所(IHME)のCaroline Stein氏らCOVID-19 Forecasting Teamが実施したメタ解析の結果で示された。著者は、「今回の解析から、過去の感染による変異株別ならびに経時的な予防効果は、mRNAワクチン2回接種と同等以上であることが示唆された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年2月16日号掲載の報告。2022年9月までの65件の研究をメタ解析 研究グループは、PubMed、Web of Science、medRxiv、SSRNなどを用い、2022年9月31日までに発表された査読つき論文、報告書、査読前原稿、ニュース記事などを検索し、SARS-CoV-2既感染者のCOVID-19のリスク減少を未感染者と比較して推定した後ろ向きおよび前向きコホート研究ならびに検査陰性症例対照研究を特定し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 アウトカムは、再感染(前回のPCR検査/迅速抗原検査陽性から90日以上または120日以上後に検査陽性など)、症候性再感染(発熱、咳、息切れ、悪寒、筋肉痛、味覚・嗅覚障害、咽頭痛、下痢、嘔吐などを伴う再感染)、重症化(入院または死亡に至った再感染)である。既感染の有効性について、アウトカム、変異株、および感染からの経過時間ごとにメタ解析し、ベイズメタ回帰を用いて統合効果量を推定した。 19ヵ国の計65件の研究が解析対象となった。再感染での重症化予防効果、オミクロンBA.1株を含む変異株で78%以上 再感染に対する予防効果は武漢株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に対しては高く統合推定値は82%以上であったが、オミクロンBA.1株への再感染予防効果は低く、統合推定値は45.3%(95%不確実性区間[UI]:17.3~76.1)であった。症候性再感染に対する予防効果も同様で、統合推定値は武漢株、アルファ株、ベータ株、デルタ株では82%以上であったが、オミクロンBA.1株は44.0%(95%UI:26.5~65.0)であった。一方、重症化予防効果は概して高く、アルファ株、ベータ株、デルタ株およびオミクロンBA.1株で78%以上であった。 感染からの時間関数として予防効果を評価すると、再感染予防効果は武漢株、アルファ株およびデルタ株を合わせ4週時点では85.2%と高いが、40週時点では78.6%(95%UI:49.8~93.6)に低下した。オミクロンBA.1株への再感染予防効果の低下はより急速で、40週時は36.1%(95%UI:24.4~51.3)と推定された。 症候性再感染に対する予防効果も同様であった。しかし、重症化予防効果は、40週時点で武漢株、アルファ株、デルタ株は90.2%(95%UI:69.7~97.5)、オミクロンBA.1株は88.9%(84.7~90.9)であった。

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5~11歳へのファイザーBA.4/5対応2価ワクチン承認/厚生労働省

 厚生労働省は2月28日、5~11歳を対象としたファイザーの新型コロナウイルスmRNAワクチン「販売名:コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、追加接種(追加免疫)として承認したことを発表した。本剤は、5~11歳の初回免疫に使用することはできない。 本剤の追加免疫の用法および用量は、同社製の5~11歳用1価ワクチンと変わらず、添付文書に以下のように記されている。6. 用法及び用量本剤を日局生理食塩液1.3mLにて希釈する。追加免疫として、1回0.2mLを筋肉内に接種する。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤の使用本剤は追加免疫に使用する。初回免疫には使用しないこと。7.2 接種対象者過去に初回免疫又は追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴のある5歳以上11歳以下の者。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。7.3 接種時期通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。7.4 コミナティ筋注5~11歳用(起源株)以外のSARS-CoV-2ワクチンを接種した者に追加免疫として本剤を接種した際の有効性及び安全性は確立していない。  今回の5~11歳用ファイザーBA.4/5対応2価ワクチン承認は、同年齢層に対する本剤の有効性および安全性についての臨床試験の成績は得られていないが、12歳以上のコミナティRTU筋注(起源株/オミクロン株BA.4-5)の試験成績や、5~11歳のコミナティ筋注5~11歳用(起源株)の試験成績に基づいている。製造販売後、副作用情報などの本剤の安全性に関するデータを、あらかじめ定めた計画に基づき早期に収集し、臨床試験の結果が得られた際には、速やかに情報を提出し、最新の情報を医療従事者および被接種者が入手可能となるように措置を講じるとしている。なお本剤は、米国では2022年10月に承認されている。 また、厚生労働省は同日、武田薬品工業(ノババックス)の組換えコロナウイルスワクチン「販売名:ヌバキソビッド筋注」について、追加免疫の対象者が18歳以上だったものを、12歳以上に拡大したことも発表した。

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線溶薬を変えても結果は変わらないかな?(解説:後藤信哉氏)

 ストレプトキナーゼによる心筋梗塞症例の生命予後改善効果が示された後、フィブリン選択性のないストレプトキナーゼよりもフィブリン選択性のあるt-PAにすれば出血リスクが減ると想定された。分子生物学に基づく遺伝子改変が容易な時代になったので各種の線溶薬が開発された。しかし、循環器領域ではフィブリン選択性の改善により出血イベントリスク低減効果を臨床的に示すことはできなかった。本研究ではt-PAよりもさらに修飾されたtenecteplaseとの有効性、安全性の差異が検証された。tenecteplaseは野生型のt-PAよりも血液中の寿命が長いとされた。しかし、臨床試験にて差異を見出すことができなかった。 分子を開発しても効果を予測することは難しい。

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妊婦の感染、オミクロン株でも重篤化や妊娠合併症増加と関連(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は妊娠中に母体および胎児への有害事象を引き起こすことが示されており、妊娠前および妊娠中にはワクチン接種が強く推奨されている。一方、現在主流となっているオミクロン株について、妊娠経過や胎児への影響およびワクチンの有効性についての大規模かつ多施設からの報告はなかった。 今回の研究(INTERCOVID-2022試験)は18ヵ国41病院を通じて行われ、世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦が被験者として登録された。 結果として、COVID-19罹患者では母体死亡や重篤な合併症、新生児死亡や重篤な合併症率が高かった。またワクチンの効果について、COVID-19罹患そのものについては非接種者と比べブースター接種まで完了した者でのみ有意な効果を認め、効果自体も30%と低かったが、母体の重症COVID-19、高次施設への搬送や集中治療室(ICU)入院、死亡に対する予防効果は2回接種完了後の女性では48%、ブースター接種妊婦が76%と高く、COVID-19罹患者に絞った解析ではさらにその効果は高かった。より詳しい結果はオリジナルのニュースを参照されたい。 本研究は複数国・多施設の共同研究であり、必要な変数調整や感度分析も行われるなど、解析についても信頼できる内容となっている。重症妊娠合併症や重症COVID-19は頻度が低いため一部の合併症について信頼区間が広くなる、複合アウトカムを用いざるを得ない、などの限界はあるものの、十分参考になる結果といえるだろう。 今回の結果から、たとえオミクロン株であってもワクチン接種を完了していない場合、妊娠中感染により重篤な妊娠合併症のリスクが増加することが示唆された。接種後10ヵ月は重症合併症の予防効果が続くことが今回の研究からわかったが、いつまでこの効果が続くのか、オミクロン株対応ワクチンではどうなのかについてはまだわかっていない。そのため、妊娠中の重篤化および重症妊娠合併症予防の観点からは、今後しばらく妊娠を希望する女性での定期接種、あるいは妊娠が判明次第の新型コロナウイルスワクチン接種が望ましいと考えてよいだろう。COVID-19が日本で5類感染症に切り替わる5月前後までに、妊娠中のワクチン接種についての方針決定・周知や啓蒙活動が求められる。

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HFpEF診療はどうすれば…?(前編)【心不全診療Up to Date】第6回

第6回 HFpEF診療はどうすれば…?(前編)Key Points原因不明の息切れ、実はHFpEFかもしれないですよ!BNP値が上昇していないのにHFpEF?HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている? 最新の情報をUpDateはじめに今回は、発症率、有病率ともに上昇の一途をたどっている左室駆出率の保たれた心不全HFpEF (Heart Failure with preserved Ejection Fraction)を取り上げる1,2)。 近年のHFpEFの病態生理の理解、診断アプローチ、効果的な新しい治療法の進歩にもかかわらず、日常診療においてHFpEFはまだ十分に認識されていないのが現状である。『原因不明の息切れ、それはHFpEFかも』をキャッチフレーズに、まずはぜひ疑っていただきたい。そのために、本稿では、HFpEFの病態生理、診断、治療に関する最新情報を皆さまと共有したい。HFpEFの“いまどき”の定義HFpEFとは、呼吸苦や倦怠感、浮腫などの心不全徴候を認め、左室駆出率(EF, Ejection Fraction)が50%以上で、安静時もしくは労作時のうっ血(左房圧上昇)を示唆する客観的証拠※を認めるものと定義される(※:Na利尿ペプチド[NP, Natriuretic Peptide]値上昇、左房機能障害・左房拡大、安静時/労作時の肺動脈楔入圧[PAWP, Pulmonary Artery Wedge Pressure]上昇など)3-5)。つまり、BNP/NT-proBNP値正常範囲内であっても、労作時息切れがあり、何らかのうっ血を示唆する所見があれば、それはHFpEFの早期段階をみている可能性があるということである6)。とくにHFpEFでは、労作時にのみ左房圧が上昇し、肺うっ血を来すという症例が約30%と決してまれではなく、“NP値が正常範囲内のHFpEF”があるということをぜひご理解いただきたい7)。しかも、この“NP値正常のHFpEF”群(息切れあり)は、非HFpEF群(息切れの原因がHFpEFではない集団)と比較して、死亡または心不全入院のリスクが約2.7倍高かったという報告もあり、この表現型(フェノタイプ)の重要性が最近とくに注目されている8)。つまり、『息切れを主訴に来院された患者、実はその原因がHFpEFかも』と考えていただき、必要あれば循環器専門施設へご紹介いただくことが、HFpEFを早期の段階(心不全Stage C早期)で診断することにつながり、その患者の予後やQOLを改善するうえでも大切といえるわけである。では、なぜそのようなことが起きるのか。キーワードは“予備能低下”である。HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている?HFpEFを一言で説明すると、心臓だけではない多臓器の予備能が低下したヘテロな全身性の症候群といえよう9)。そして、HFpEFすべてに共通しているのは、“まずは労作時に左房圧が上昇し、その後病期が進行すると安静時まで左房圧が上昇してしまう”ということである(これ重要!)。では、それを引き起こす機序はどこまでわかっているのか、少し歴史を紐解きつつ解説していきたい。遡ること約35年前、HFpEFの初期の記述の1つとして、Topolらが高齢者の高血圧性肥大型心筋症についてNEJMへ報告したが10)、これはMモード、ドップラー心エコー図検査が急速に普及し、広く使われるようになっていた当時、拡張機能障害の概念にうまく合致するものであった。つまり、左室腔が小さく、左室壁が肥厚し、左室拡張末期圧容積関係が上方および左方にシフトし、拡張機能障害と左室充満圧の上昇を来すというものであった11)。2000年代初頭、拡張期心不全の古典的な説明が多くの患者に当てはまらないことが明らかになった12,13)。多くの患者で左室腔の大きさは正常で、明らかな左室肥大を有しておらず、拡張機能障害以外の異常が次第に確認され始めた(図1)14-16)。このような経緯で、HFpEFという用語が生まれ、その定義と特徴をより明確にすることに焦点が当てられるようになったわけである。画像を拡大する時は2023年、HFpEFは拡張機能障害だけではなく、糖尿病、肥満、高血圧、心房細動、腎機能障害、冠動脈疾患、COPD、貧血、睡眠時無呼吸症候群といった併存疾患、そして加齢が複雑に絡み合って生じる全身性炎症、内皮機能障害、心筋エネルギー代謝や骨格筋の異常などによる左室収縮・拡張予備能低下、肺血管障害、末梢での酸素利用能低下、動脈スティフネス、心室-血管カップリング異常、自律神経機能障害によって引き起こされる症候群であるという認識に至った(図2)17-19)。なお、このHFpEFの病期進行がどのような時間経過で進展していくのか、まだ結論は出ていないが、図3のような仮説が提唱されている20)。もちろん順序などには個人差があり、まだ議論の余地はあるが、病態生理を理解するうえではわかりやすく、参考にされたい。画像を拡大する画像を拡大するこのように、多臓器にわたる予備能低下を特徴とするHFpEFであるが、まずは一番重要な心臓、そして肺における異常について考えていきたい。心臓における構造的・機能的異常は、病期が進行すれば、両心房両心室に及ぶとされている4)。HFpEFでは、左室弛緩障害、スティフネス増大などにより、持続的または断続的に左室充満圧が上昇しており、それが左房のリモデリング、機能障害(左房コンプライアンスの低下)を引き起こす9-12)。HFpEFでは心房細動の合併がしばしば認められるが、これは左房機能障害がより進んだHFpEFの指標と考えられる21-23)。また、心エコー図検査(スペックルトラッキング法)で評価する左房リザーバーストレインの低下によって診断される左房機能障害が、左室機能障害よりも予後の強い予測因子とされているし22)、左房ストレインの低下が、息切れの原因精査(HFpEFが原因かどうかの区別)に最も有用であったという報告もあり24-26)、HFpEFの病態生理を理解するうえで、左房の機能評価がかなり重要な役割を担っているといえる。なお、HFpEFの多くは、左室機能障害が左房機能障害に先行するが、左室機能障害よりも左房機能障害が全面に出る(左房圧上昇があるも左室機能は保持されている)サブタイプ(primary LA myopathy)も存在するので、この点からも左室だけをみていてはいけないといえる27)。そして、左房圧の持続的な上昇は、全肺血管(肺静脈、肺毛細血管、肺小動脈)に負担をかけ、肺高血圧(PH, Pulmonary Hypertension)、右室機能障害を来し、さらには右房にまで負荷が及ぶことになる28)。実際HFpEF患者の約80%にPHが合併しており、PHのないHFpEFと比べて予後は悪く、また右室機能障害も約30%に合併し、死亡率上昇に寄与することが報告されている29-31)。つまり、HFpEFをみれば、必ず“左房さん、肺血管さん、そして右心系さん、大丈夫?”と早めから気にかけてあげることがきわめて重要なのである32-35)。早めに誰も気が付けず、この肺血管への負担が持続すると、全肺血管のリモデリング、血管収縮が生じ始め、最終的には肺血管抵抗(PVR, Pulmonary Vascular Resistance)が上昇し、肺血管疾患(PVD, Pulmonary Vascular Disease)を引き起こすことになる36,37)。PVDを伴うことで、右室-肺動脈カップリングが損なわれ、肺動脈コンプライアンスは低下し、右心機能がさらに増悪し、軽労作でも容易に右室充満圧が上昇するようになる38)。それにより、心室中隔が左室側へ押され、左室充満圧も血流のわずかな増加で容易に上昇するようになり、さらに肺うっ血が増悪するという負のサイクルがより回るようになり、”Stage D” HFpEFへと移行してしまう39)。このように、決して甘く見てはいけないのが、PVDの合併である。そうならないための糸口として、最近の研究で、HFpEFにおけるPVD進行の初期段階でこの病態を捉える重要性が認識されるようになってきた。それは、労作時にのみPVRが上昇する“Latent PVD”という概念で、左房障害の時間経過と同じように、PVDも初期段階では労作時にのみPVRが上昇、病期が進行すると、安静時でもPVRが上昇するようになる。Latent PVDの段階であっても、PVDのない群と比較して予後は不良で40)、心房間シャントデバイスのような新たな治療法への反応もlatent PVDの有無で異なることもわかってきている(HFpEF最新治療の詳細は次回説明予定)41)。ここまでHFpEFにおける心臓、肺の病態生理について述べてきたが、HFpEFでの多臓器にわたる異常を理解するうえでもう一つ重要になってくるのが、肥満や代謝ストレスなどによって誘導される全身性の炎症、内皮機能障害である42-45)。これは、心臓、肺、肝臓、腎臓、骨格筋などに対して悪影響を及ぼすが、たとえば、心臓においてはこの影響で冠微小循環障害を来すとされており、HFpEFの約75%に冠微小循環障害が合併しているという報告もある46)。この炎症反応において重要な役割を担っているE-selectinやICAM-1などの細胞接着分子(炎症細胞の炎症組織への接着に関与)の心筋発現レベルが、HFpEF患者において上昇しているという報告もあり47)、ICAM-1などをターゲットとした薬剤が今後出てくるかもしれない。また、欧米諸国では、肥満が関連したHFpEFが大きな問題となっており、字数足りず詳細は省くが、肥満とHFpEFに関してもかなり多くの研究が行われており、ご興味ある方はぜひ参考文献をご確認いただきたい17,48-52)。 画像を拡大するそのほか、自律神経機能に関する異常(脈拍応答不全、圧受容器反射感受性低下、血液分布異常)もHFpEFでは一般的であり53)、これらに対する治療として、最近いくつかのデバイス治療に関する臨床試験が進行している。たとえば、脈拍応答不全(chronotropic incompetence)に対するペーシング治療や血液分布異常(impaired systemic venous capacitance)に着目した右大内臓神経アブレーション治療(unilateral greater splanchnic nerve ablation)がそれにあたり、私自身も現在この分野の研究に携わっており、今後出てくる結果に注目いただきたい。このように多臓器にわたるさまざまな病態が複雑に絡み合うHFpEFであるが、最近報告されたゲノムワイド関連解析(GWAS, Genome Wide Association Study)の結果で、HFrEFとHFpEFの遺伝的構造には大きな違いがあり、HFpEFのgenetic discoveryは非常に限られていることが報告された54)。このことからも、HFpEF患者それぞれにおいて、異なる病態がいくつか融合する形で存在している可能性が高い。しかしながら、「HFpEF患者それぞれにおいて、どの病態の異常が、どれくらいの割合で融合しているのか、そしてそれぞれの病態の異常がどの程度進行した状態となっているのか」という点についてはまだわかっておらず、これは今後の大きな課題の1つである。最近の研究で、臨床データ、画像・バイオマーカー・オミックスデータを人工知能/機械学習技術を用いて解析することで、より適切なサブフェノタイピングが確立できるかどうかが検討されているが、これが確立すれば、上記の問題に加え、HFpEF患者それぞれの根底にある遺伝的シグナルとその要因の解明も可能となるかもしれない。この“治療に結びつくより一歩進んだフェノタイピング戦略”の開発は私自身も米国で関わっているNHLBI HeartShare Studyの主な目的の1つでもあり55)、必ず明るいHFpEF診療の未来がやってくると信じてやまないし、自分もそれに貢献できるよう、努力を続けたい。そして、次回は、いよいよHFpEFの診断、そして治療について深堀りしてきたい。1)Dunlay SM, et al. Nat Rev Cardiol. 2017;14:591-602.2)Steinberg BA, et al. Circulation. 2012;126:65-75.3)Bozkurt B, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:352-380.4)Pfeffer MA, et al. Circ Res. 2019;124:1598-1617.5)Borlaug BA. Nat Rev Cardiol. 2020;17:559-573.6)Sorimachi H, et al. Circulation. 2022;146:500-502.7)Borlaug BA, et al. Circ Heart Fail. 2010;3:588-595.8)Verbrugge FH, et al. Eur Heart J. 2022;43:1941-1951.9)Shah SJ, et al. Circulation. 2016;134:73-90.10)Topol EJ, et al. N Engl J Med. 1985;312:277-283.11)Aurigemma GP, et al. N Engl J Med. 2004;351:1097-1105.12)Burkhoff D, et al. Circulation. 2003;107:656-658.13)Kawaguchi M, et al. Circulation. 2003;107:714-720.14)Maurer MS, et al. J Card Fail. 2005;11:177-187.15)Maurer MS, et al. J Am Coll Cardiol. 2007;49:972-981.16)Petrie MC, et al. Heart. 2002;87:29-31.17)Shah SJ, et al. Circulation. 2020;141:1001-1026.18)Shah AM, et al. Nat Rev Cardiol. 2012;9:555-556.19)Burrage MK, et al. Circulation. 2021;144:1664-1678.20)Lourenco AP, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:216-227.21)Melenovsky V, et al. Circ Heart Fail. 2015:295-303.22)Freed BH, et al. Circ Cardiovasc Imaging. 2016;9.23)Reddy YNV, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76:1051-1064.24)Telles F, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:495-505.25)Reddy YNV, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:891-900.26)Backhaus SJ, et al. Circulation. 2021;143:1484-1498.27)Patel RB, et al. Sci Rep. 2021;11:4885.28)Verbrugge FH, et al. Circulation. 2020;142:998-1012.29)Melenovsky V, et al. Eur Heart J. 2014;35:3452-3462.30)Mohammed SF, et al. Circulation. 2014;130:2310-2320.31)Obokata M, et al. Eur Heart J. 2019;40:689-697.32)Lam CS, et al. J Am Coll Cardiol. 2009;53:1119-1126.33)Iorio A, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:1257-1266.34)Miller WL, et al. JACC Heart Fail. 2013;1:290-299.35)Vanderpool RR, et al. JAMA Cardiol. 2018;3:298-306.36)Fayyaz AU, et al. Circulation. 2018;13:1796-1810.37)Huston JH, et al. Circ Res. 2022;130:1382-1403.38)Melenovsky V, et al. Eur Heart J 2014;35:3452-3462.39)Borlaug BA, et al. JACC: Heart Fail. 2019;7:574-585.40)Ho JE, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;75:17-26.41)Berry N, et al. Am Heart J. 2020;226:222-231.42)Schiattarella GG, et al. Cardiovasc Res. 2021;117:423-434.43)Schiattarella GG, et al. Nature. 2019;568:351-356.44)Borlaug BA, et al. J Am Coll Cardiol. 2010;56:845-854.45)Shah SJ, et al. Circulation. 2016;134:73-90.46)Shah SJ, et al. Eur Heart J. 2018;39:3439-3450.47)Franssen C, et al. JACC Heart Fail.2016;4:312-324.48)Borlaug BA. Nat Rev Cardiol. 2014;11:507-515.49)Rao VN, et al. Eur J Heart Fail. 2020;22:1540-1550.50)Koepp KE, et al. JACC Heart Fail. 2020;8:657-666.51)Obokata M, et al. Circulation. 2017;136:6-19.52)Borlaug BA, et al. Cardiovasc Res. 2022;118:3434-3450.53)Maurer MS, et al. Eur J Heart Fail. 2020;22:173-176.54)Joseph J, et al. Nat Commun. 2022;13:7753.55)Shah SJ, et al. Nat Rev Drug Discov. 2022;21:781-782.

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第150回 かかりつけ医機能の確認めぐりひと悶着、制度化の芽も摘んだ日本医師会の執念

かかりつけ医確認は「事実行為」or「行政行為」?法案提出直前までドタバタこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、久しぶりに八ヶ岳山麓に住む大学時代の先輩宅を訪れ、硫黄岳に登って来ました。夏沢鉱泉から夏沢峠までは穏やかで快適な雪道でしたが、峠からピークまでは氷雪が覆う急登ルートで、冷たい強風が吹いていました。頂上には寒過ぎて長居できず、記念撮影だけして早々に下山しました。それでも、赤岳、甲斐駒ケ岳、富士山、北アルプスの山々が見える素晴らしい眺望で、厳冬期の八ヶ岳を堪能することができました。ただ、雪は例年よりもかなり少なかったです。さて、今回は、再度、かかりつけ医機能の制度整備について書いてみたいと思います。法案提出直前までドタバタしたかかりつけ医問題。かかりつけ医機能の確認が「事実行為」か「行政行為」か、などは患者にとっては些末などうでもいいことですが、日本医師会にとっては徹底的にこだわるべきポイントだったようです。全世代型社会保障制度関連法案、閣議決定し通常国会に提出政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(通称、全世代型社会保障制度関連法案)」を閣議決定し、同日、通常国会に提出しました。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、しょぼい制度になってしまった理由について考察しました。この回を書いていた段階では、法案は自民党の厚生労働部会で審査中でした。「かかりつけ医の制度化などを巡って慎重論が出たため、了承は見送られたようです。報道等によれば、都道府県の確認体制への不安(確認を厚労省は行政行為と説明し、それへの反発があった模様)などがあるようです。いずれにせよ、政府は与党の了承を経て閣議決定し、今国会で成立させたい考えなので、小幅の修正で法律案提出となりそうです」と書きました。しかし、「小幅」どころか見方によっては180度転換とも言える修正となりました。「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」と再説明自民党の厚生労働部会は2月6日に再度審査を行いました。この時、厚生労働省は、「かかりつけ医機能」を報告した医療機関が機能の要件を満たしているかなどを都道府県が「確認」する仕組みについて、前回行った「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」だと改めて説明し直しました。2月7日付のメディファクスの報道によれば、「厚労省は、考え方の整理が十分でなかったと謝罪し、確認は行政行為ではなく、『取り消し』などの処分性を伴わない事実行為と整理した、と報告した」とのことです。「都道府県による法的な確認の仕組みがない、従来の病床機能報告などと同様の仕組みになる」との考え方も示したそうです。さらに「『制度でかかりつけ医を縛るものではないのか』との議員の声に対しては、制度的に定めるものではないと強調した」とのことです。この説明変更によって自民党の厚生労働部会は同法案を了承、10日の閣議決定となりました。なお、法案そのものの条文は変更せず、解釈変更で対応するそうです。登録制や認定制の“芽”を摘んでおきたかった日本医師会「行政行為」とは、行政庁が法律の定めに従って、一方的な判断に基づいて、国民の権利義務その他法的地位を具体的に決定する行為のことを言います。厚労省が最初、「かかりつけ医機能」報告の確認を行政行為としたのは、単純なミスなのか、何らかの意図を持っていたのかは不明です。ただ、仮に「行政行為」ということになれば、確認によって不備や虚偽が見つかった時、何らかの行政処分(認定や登録の制度が仮にできれば、その取り消しも)が下される可能性があります。今回のかかりつけ医機能の制度整備が、将来的にかかりつけ医の登録制や認定制につながらないよう、“族議員”によって「行政行為」ではなく単なる「事実行為」だという言質を取り、早めに“芽”を摘んでおきたかった、という日医の強い執念が透けて見えます。「『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と松本会長日医の松本 吉郎会長は2月15日の定例記者会見で、全世代型社会保障制度関連法案が2月10日に閣議決定され、通常国会において今後審議されること関連して、日医の「かかりつけ医機能の制度整備」などに対する考え方を説明しました。そこで松本会長は法案について、「加藤 勝信厚生労働大臣のリーダーシップの下、ステークホルダーそれぞれのベクトルの均衡点で一定の決着をみた」と話すとともに、かかりつけ医について改めて、「あくまで国民が選ぶものであり、国民にかかりつけ医をもつことを義務付けたり、割り当てたりするものではない」と強調しました。そして、「かかりつけ医・かかりつけ医機能の認定制」には明確に反対する考えを示すとともに、法案に書かれた「かかりつけ医機能の報告」は、「かかりつけ医機能を認定するものではなく、機能を持っていないからその人はかかりつけ医ではない、といったものではない。ましてや『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と主張しました。そして、自民党の厚生労働部会に出席した国会議員から、「法案に明記された都道府県の『確認』は、行政処分につながる『行政行為』ではなく、現時点での診療実績の有無や受け入れる体制等を含めた、事実行為の『確認』であると厚労省から説明があった」と伝え聞いたことも付け加えましたただ「制度を作った」という事実を作るための制度行政行為か事実確認かのひと悶着は、日医の意を受けた自民党議員からの質問によって起こっていたと予想できます。それにしても、何の強制力も、発展性も、拡張性もない、ただ「制度を作った」という事実を作るためだけの制度というものは果たして必要なのでしょうか?担当する厚生労働省の役人に徒労感はないのでしょうか。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、全世代型社会保障構築会議の権丈 善一構成員(慶應義塾大学商学部教授)の「手さえ挙げれば誰でもみんながかかりつけ医になることができるという方向で制度設計することは、これまで岸田総理や加藤大臣が言ってきた患者の視点に立った改革とは距離が相当にあると思います」という言葉を紹介しましたが、法案ができてからも「行政行為」か「事実行為」かにこだわる日医の姿勢からは、確かに患者のことを思いやる視点はまったく見えてきません。「かかりつけ医機能」の報告制度に果たして実効性はあるのか、法案成立後も注視していきたいと思います。

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紅皮症性アトピー性皮膚炎にもデュピルマブが有効

 紅皮症性アトピー性皮膚炎は、広範な皮膚病変によって定義され、合併症を引き起こし、場合によっては入院に至る重症アトピー性皮膚炎である。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らは、デュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの無作為化比較試験の事後解析において、紅皮症性AD患者に対するデュピルマブ治療は、全体集団と同様にアトピー性皮膚炎の徴候・症状の迅速かつ持続的な改善をもたらし、安全性は許容できるものであったと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。紅皮症性アトピー性皮膚炎がデュピルマブで有意に改善 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象にデュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの国際共同、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験について、事後解析が行われた。対象は、アトピー性皮膚炎の病変が体表面積(BSA)の90%以上かつ全般症状スコア(Global Individual Sign Score)の紅斑のスコアが1以上を満たした患者とした(紅皮症性アトピー性皮膚炎)。 対象患者は、デュピルマブ(週1回または隔週)またはプラセボを、単剤または局所コルチコステロイド(TCS)との併用で投与された。 16週目における有効性(病変のBSAに対する割合、Eczema Area and Severity Index[EASI]スコア、Peak Pruritus Numerical Rating Scale[そう痒NRS]スコア)、血清中バイオマーカー(TARC[thymus and activation-regulated chemokine]、総IgE、LDH[乳酸脱水素酵素])の変化、安全性(有害事象の発現頻度)などを評価した。 データはレジメンごとにプールされ、デュピルマブ単剤投与とTCS併用投与で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された3,075例中、209例がベースライン時に紅皮症性アトピー性皮膚炎の基準を満たした。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の年齢中央値はデュピルマブ単剤群31歳、TCS併用群39歳で、全体集団(それぞれ34歳、36歳)と類似していた。また、紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の男性の割合は、デュピルマブ単剤群71.3%(97例)、TCS併用群74.0%(54例)であった(全体集団はそれぞれ58.7%、60.6%)。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団において、デュピルマブ投与群(週1回投与、隔週投与)はプラセボ群と比べて、有効性の指標がいずれも有意に改善した。・病変のBSAに対する割合(最小二乗平均変化率[標準誤差[SE]]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-42.0% [7.7]、隔週投与-39.9%[6.5]であったのに対し、プラセボ群は-17.2%[11.0]であった(いずれもp=0.03)。TCS併用群は週1回投与-63.2% [6.7]、隔週投与-56.1%[9.1]であったのに対し、プラセボ群は-14.5%[7.3]であった(いずれもp<0.001)。・EASIスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-58.5% [9.0]、隔週投与-58.3%[7.9]であったのに対し、プラセボ群は-22.3%[12.4]であった(それぞれp=0.004、p=0.003)。TCS併用群は週1回投与-78.9%[7.8]、隔週投与-70.6%[10.1]であったのに対し、プラセボ群は-19.3%[8.2]であった(いずれもp<0.001)。・そう痒NRSスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-45.9% [7.8]、隔週投与-33.9%[6.6]であったのに対し、プラセボ群は-0.6% [9.4]であった(いずれもp<0.001)。TCS併用群は週1回投与-53.0% [8.1]、隔週投与-55.7%[10.8]であったのに対し、プラセボ群は-26.0%[8.8]であった(それぞれp=0.006、p=0.01)。・名目上の統計学的に有意な改善は、早ければ1週目からみられた(デュピルマブ単剤群のEASIスコアとそう痒NRSスコア[それぞれp<0.05、p<0.001])。・バイオマーカー値はプラセボと比べて有意に低下した(いずれもp<0.001)。・デュピルマブ治療を受けた患者で最もよくみられた有害事象は、注射部位反応、結膜炎、上咽頭炎であった。

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