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ベンゾジアゼピンや気分安定薬の併用率低下に長時間作用型注射剤は寄与するか

 統合失調症は、再発と寛解を繰り返す慢性疾患である。治療には主に抗精神病薬が用いられ、その剤形には経口剤または長時間作用型注射剤(LAI)がある。さまざまな理由で気分安定薬やベンゾジアゼピンが補助療法として頻用されるが、国際的なガイドラインで推奨されることはめったにない。ルーマニア・トランシルバニア大学のAna Aliana Miron氏らは、慢性期統合失調症患者を対象に、抗精神病薬の剤形が気分安定薬やベンゾジアゼピンの併用に及ぼす影響を明らかにするため、観察的横断研究を実施した。その結果、安定期統合失調症患者に対する気分安定薬およびベンゾジアゼピンの長期併用率は、抗精神病薬の剤形とは関係なく高いままであることが示唆された。ただし、第2世代抗精神病薬のLAI(SGA-LAI)治療患者では、経口抗精神病薬治療患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。Brain Sciences誌2023年1月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・対象は、慢性期統合失調症患者315例。・LAI抗精神病薬治療で安定していた患者は77例(24.44%)、経口抗精神病薬治療で安定していた患者は238例(75.56%)であった。・気分安定薬を併用していた患者は84例(26.66%)、ベンゾジアゼピンを併用していた患者は119例(37.77%)であった。・気分安定薬またはベンゾジアゼピンの併用率について、LAIと経口剤の間に有意な差は認められなかった。・抗精神病薬の単剤療法で安定していた患者は、全体で136例(43.17%)であった。・SGA-LAIで治療されていた患者は、経口抗精神病薬で治療されていた患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。

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重症市中肺炎、ヒドロコルチゾンが死亡を抑制/NEJM

 集中治療室(ICU)で治療を受けている重症の市中肺炎患者では、ヒドロコルチゾンの投与はプラセボと比較して、全死因死亡のリスクを有意に低下させ、気管挿管の割合も低いことが、フランス・トゥール大学のPierre-Francois Dequin氏らCRICS-TriGGERSepネットワークが実施した「CAPE COD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年3月21日号で報告された。フランスの無作為化プラセボ対照第III相試験 CAPE COD試験は、フランスの31施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2015年10月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 重症の市中肺炎でICUに入室した年齢18歳以上の患者が、ヒドロコルチゾンの静脈内投与を受ける群、またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 ヒドロコルチゾンは、200mg/日を4日間または8日間投与した時点で、臨床的改善度に基づき、その後の総投与日数を8日間または14日間と決定し、用量を漸減した。すべての患者が、抗菌薬と支持療法を含む標準治療を受けた。 主要アウトカムは、28日時点で評価した全死因死亡であった。 予定されていた2回目の中間解析の結果に基づき患者の登録が中止された時点で、800例が無作為化の対象となり、このうち795例のデータが解析に含まれた。400例がヒドロコルチゾン群(年齢中央値67歳、男性70.2%)、395例がプラセボ群(67歳、68.6%)であった。ICU内感染、消化管出血の頻度は同程度 28日目までに、死亡の発生はプラセボ群では395例中47例(11.9%、95%信頼区間[CI]:8.7~15.1)であったのに対し、ヒドロコルチゾン群は400例中25例(6.2%、3.9~8.6)と有意に少なかった(絶対群間差:-5.6ポイント、95%CI:-9.6~-1.7、p=0.006)。 90日時点での死亡率は、ヒドロコルチゾン群が9.3%、プラセボ群は14.7%であった(絶対群間差:-5.4ポイント、95%CI:-9.9~-0.8)。また、28日時点でのICU退室率はヒドロコルチゾン群で高かった(ハザード比[HR]:1.33、95%CI:1.16~1.52)。 ベースラインで機械的換気を受けていなかった患者のうち、28日目までに気管挿管が導入されたのは、ヒドロコルチゾン群が222例中40例(18.0%)、プラセボ群は220例中65例(29.5%)であった(HR:0.59、95%CI:0.40~0.86)。 ベースラインで昇圧薬の投与を受けていなかった患者では、28日目までに昇圧薬の投与が開始されたのは、ヒドロコルチゾン群が359例中55例(15.3%)、プラセボ群は344例中86例(25.0%)であった(HR:0.59、95%CI:0.43~0.82)。 ICU内感染(ヒドロコルチゾン群9.8% vs.プラセボ群11.1%[HR:0.87、95%CI:0.57~1.34])と消化管出血(2.2% vs.3.3%[0.68、0.29~1.59])の頻度は両群で同程度であった。一方、ヒドロコルチゾン群では、治療開始から1週間のインスリン1日投与量(35.5 IU/日vs.20.5 IU/日、群間差中央値:8.7 IU/日[95%CI:4.0~13.8])が多かった。 著者は、「先行試験やメタ解析では、グルココルチコイドの薬力学的作用と一致する高血糖の発生率の増加が報告されている。この高血糖の増加は通常、一過性のものだが、今回の試験では確認していない」としている。

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最低価格制限で、飲酒による死亡・入院が減少/Lancet

 スコットランドで販売されるアルコール飲料は、2018年5月1日以降、法律で1単位(純アルコール10mLまたは8g)当たりの最低単位価格(MUP)が0.5ポンドに設定されている。これにより販売量が3%減少したことが先行研究で確認されているが、今回、英国・スコットランド公衆衛生局(Public Health Scotland)のGrant M. A. Wyper氏らは、MUP法の施行により、アルコール摂取に起因する死亡と入院が大幅に減少し、その効果はとくに社会経済的に最も恵まれない層で顕著に高いことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年3月21日号に掲載された。MUP法施行前後で比較した分割時系列試験 本研究は、アルコール摂取に起因する死亡と入院へのMUP法施行の影響の評価を目的に、スコットランド(人口約550万人)で行われた分割時系列対照比較試験であり、対照として同法が施行されていないイングランドのデータが使用された(スコットランド政府の助成を受けた)。 スコットランドにおける同法施行前(2012年1月1日~2018年4月30日)と施行後32ヵ月間(2018年5月1日~2020年12月31日)のアルコール摂取に起因する死亡と入院のデータを比較し、同時期のイングランドとの比較が行われた。アルコール性肝疾患や依存症による死亡を有意に抑制 スコットランドでは、MUP法施行前と比較して、同法施行後32ヵ月間でアルコール摂取に起因する死亡が13.4%(95%信頼区間[CI]:-18.4~-8.3、p=0.0004)低下し、これは年間平均156件(95%CI:-243~-69)のアルコール摂取による死亡の回避に相当した。 また、MUP法の施行は慢性的な原因に起因する死亡の低下にも寄与しており(-14.9%、95%CI:-20.8~-8.5、p<0.0001)、アルコール性肝疾患による死亡(-11.7%、-16.7~-6.4、p<0.0001)やアルコール依存症による死亡(-23.0%、-36.9~-6.0、p=0.0093)を有意に抑制した。 一方、アルコール摂取に起因する入院は4.1%低下(95%CI:-8.3~0.3、p=0.064)し、アルコール性肝疾患による入院は9.8%低下(-17.5~-1.3、p=0.023)したが、アルコール依存症による入院は7.2%(95%CI:0.3~14.7、p=0.039)増加した。 さらに、MUP法の施行により、アルコール摂取に起因する死亡は、男性(-14.8%)、女性(-12.0%)、35~64歳(-10.0%)、65歳以上(-26.7%)、社会経済的な貧困度を10段階に分けた場合の最も恵まれない上位4群(-17.5~-33.6%)で低下がみられた。また、アルコール摂取に起因する入院は、男性(-6.2%)、35~64歳(-4.8%)、最も貧困度の高い上位4群(-4.5~-6.9%)で低下がみられた。 著者は、「MUP法実施の効果は社会経済的に貧困度が高い層で最も大きく、これは、この施策がアルコール摂取に起因する健康被害において、貧困に基づく不平等に積極的に取り組んでいることを示すものである」としている。

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リブタヨは進行または再発の子宮頸がんに対する初の単剤療法/サノフィ

 サノフィは3月30日付のプレスリリースで、「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸」を効能または効果として、リブタヨ点滴静注350mg(一般名:セミプリマブ、以下「リブタヨ」)の販売を同日より開始したことを発表した。リブタヨ群は化学療法群と比較して死亡リスクが31%低減 子宮頸がんは、世界では女性のがん死因の第4位に当たり、35~44歳での診断が最も多い疾患である。大部分はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を原因とし、約80%を扁平上皮がん(子宮頸部の外部を覆う細胞から発生)、残る患者の多くを腺がん(子宮頸部の内部にある腺細胞から発生)が占めている。進行または再発の子宮頸がんの治療選択肢は限られており、世界で毎年約57万人の女性が子宮頸がんと診断されていることから、新たな治療法の登場が望まれていた。 リブタヨは、T細胞の表面にある免疫チェックポイント受容体PD-1を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体である。リブタヨは、2次治療の子宮頸がん患者が対象の第III相試験において、全生存期間の改善を単剤投与で初めて立証し、子宮頸がんの2次治療の前向き比較試験においても、全生存期間が改善された初めての薬剤である。 リブタヨの進行性子宮頸がんにおける無作為化試験である国際共同第III相試験(EMPOWER Cervical-1試験)は、再発・転移性の扁平上皮がんまたは腺がんで2次治療の女性患者(年齢中央値:51歳)を対象に実施された。患者は無作為化され、リブタヨ単剤投与群(350mgを3週間ごとに投与)または広く使われている化学療法(イリノテカン、トポテカン、ペメトレキセド、ビノレルビンまたはゲムシタビン※)から治験責任医師が選択する薬剤を投与する群のいずれかに割り付けられた。※ペメトレキセド、ビノレルビン、ゲムシタビンは国内で子宮頸がんの適応はない。 本試験の結果、リブタヨ群(304例)では化学療法群(304例)と比較して、死亡リスクが31%低減し、全生存期間は有意に延長した。全体集団における全生存期間の中央値は、リブタヨ群で12.0ヵ月、化学療法群で8.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p<0.001)。 安全性は、治験薬の投与を1回以上受けた患者を対象に、リブタヨ群300例(投与期間の中央値:15週間、範囲:1~101週間)、化学療法群290例(10週間、1~82週間)で評価した。治験薬との因果関係が否定できない有害事象は、リブタヨ群で56.7%、化学療法群で81.4%に認められた。リブタヨ群における、発現割合5%以上の主な副作用は、疲労(10.7%)、悪心(9.3%)、貧血(7.3%)、無力症(7.3%)、食欲減退(7.3%)、下痢(6.7%)、甲状腺機能低下症(6.0%)、嘔吐(5.7%)、関節痛(5.7%)、発疹(5.0%)およびそう痒症(5.0%)であった。なお、リブタヨの新たな安全性シグナルは認められなかった。 リブタヨは、サノフィとRegeneronとのグローバル提携契約の下で共同開発された製品である。2022年7月1日現在、Regeneronはリブタヨの開発およびマーケティングをグローバルレベルで担っており、日本では、Regeneronに代わってサノフィがリブタヨを販売する。サノフィとRegeneronは、「引き続き子宮頸がんの日本人患者に希望を届けられるよう鋭意努力し、患者とその家族や医療関係者へさらなる貢献をしていく」としている。

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妊娠高血圧腎症予防のための低用量アスピリン投与は今後妊娠28週までの投与が基本となるか(解説:前田裕斗氏)

 妊娠高血圧腎症予防のため、発症ハイリスク妊婦への妊娠初期からの低用量アスピリン投与は、標準的な治療になってきている。アスピリンの妊娠高血圧腎症予防機序はまだ不明な点もあるが、抗炎症作用や酸化ストレスの軽減から胎盤形成の障害を予防する効果があるとされ、そのため胎盤形成が行われる妊娠初期からの投与が望ましいと考えられている。一方、投与終了期間については一定した報告がなく、分娩時出血が増える可能性が報告されていることから36週での投与終了としている国が多い。しかし、アスピリン投与中に早産や妊娠高血圧腎症の進行から早期に分娩を行う必要が生じることもあり、臨床現場ではしばしばアスピリンの中止が分娩直前となり、出血に気を掛けながら分娩に臨むことになる場合がある。 本研究は妊娠高血圧腎症の高リスク患者のうち、妊娠中期のsFlt-1/PIGF比(可溶性fms様チロシンキナーゼ-1/胎盤増殖因子)が正常値、すなわち高リスク患者の中では比較的低リスクの妊婦を対象にアスピリン投与を妊娠28週まで行う介入詳と妊娠36週まで行う対照群に分け、妊娠高血圧腎症による分娩についての非劣性をアウトカムとしたランダム化比較試験を行った。結果は、中間解析までで対照群で常位胎盤早期剥離が介入群と比べ多く発症したことから試験終了となり、その時点での非劣性が示された。また、対照群では少なくとも1回以上の出血性合併症を起こす頻度が有意に高かった。詳しくは「早期妊娠高血圧腎症予防のアスピリンを24~28週で中止、発生率は?/JAMA」を参照されたい。 さまざまな副次的な結果が示されているが、最も重要なのは本研究の主目的である妊娠28週までのアスピリン投与が、妊娠36週までの投与に対して早発型妊娠高血圧腎症予防の点で非劣性を示したことだ。常位胎盤早期剥離やその他の合併症を軽減できるかどうかについては本研究ではサンプルサイズの問題などから結論づけることができない。この結果は臨床現場からすれば、早期に分娩となる可能性のある患者で低用量アスピリンを続けなくてもよいという点でありがたいといえる。妊娠高血圧腎症は遅発型もあるが、臨床的に最も問題になるのは今回の研究で扱われた早発型である点も臨床への応用においては都合がよい。 問題点としては、人種が異なるため日本人に適応できるかどうかが不明ということだろう。日本で大きな試験を行うというよりも、ある時点から28週までの投与に切り替えての比較を行う、あるいはすでに蓄積されたデータを後方視的に解析する形になると考えられる。今後日本からの研究にも期待したい。

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第153回 ゾコーバの妊婦投与3例発覚は氷山の一角!求められるフォロー体制

催奇形性の問題から妊婦や妊娠している可能性がある女性には投与禁忌となっている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)。先日、これに関して、妊婦に投与してしまった事例が報じられた。同薬の発売以降、妊婦への投与が発覚したのはこれで3例目。いずれも催奇形性があることが患者に伝えられたうえで投与が行われ、後に妊娠が発覚したという事例である。うち1例については、後に流産したことが報告されているものの、自然流産の可能性も考えられるため、因果関係は不明という。厚生労働省によると3月15日時点でのエンシトレルビルの投与実績は3万7,198例。一般に新型コロナ患者は男女比1:1と言われるが、この薬の催奇形性に対する注意喚起がこれまでもかなり行われていることから考えると、女性での投与事例は多くとも1万人前後ではなかろうか?この前提で行けば3,000人に1人でこうした事例が発生している計算になる。もっともこれまで発覚した3例のように当事者が妊娠を自覚せずに服用し、今も判明していない事例もあると想定すれば、もう少し高い頻度で発生していることになる。しかし、改めてこの問題は一筋縄ではいかないと感じている。企業も行政もかなり最大限の注意喚起は行っているはずだし、実際、女性患者向けのチラシもある。とはいえ、投与直前の妊娠の可能性がある性行為の有無については完全に自己申告に頼らざるを得ない。そしてこの一件で改めて思い起こしたのが、今回の新型コロナ騒動の初期にドラッグ・リポジショニングで有効性が期待された抗インフルエンザ薬のファビピラビル(商品名:アビガン)のことである。そもそもエンシトレルビルの場合、確認された催奇形性はウサギで臨床曝露量の5.0倍相当以上。その意味であえて言えば、可能性の範囲に留まる。これに対し、ファビピラビルは臨床曝露量以下で、マウス、ラット、ウサギ、サルの4種類で催奇形性が確認されている。もはや可能性の範疇を超えてほぼ確実といっても差し支えない。ファビピラビルについては2020年10月に新型コロナを適応とする承認申請が行われたが、企業側が提出した臨床試験データでは有効性が確認できたとは言い難いとの判断で12月に継続審議となり、そのまま有効性が確認されずに終わっている。もし、あの時点で承認されていたら、当時ではおよそ想像できなかった巨大な規模となった第8波の際に使われていたはずである。その場合、どうなっていただろう。考えるだけでぞっとする。ご存じのように、ファビピラビルに関しては抗インフルエンザ薬としての承認時の催奇形性問題を踏まえ、異例の一般流通なしでの国家備蓄のみとなった。実は当時、この件を取材した際、厚労省関係者に催奇形性に対する警戒が必要とは言え、あまりにもやり過ぎではないかと尋ねたことがある。当時の関係者の反応が私は今でも忘れられない。この人は私の顔をキッと睨み、10秒ほど無言になった後、目線を外して独り言のようにこう言った。「村上さん、現実を知らなすぎるよ」ちなみにファビピラビルの承認時に提出された臨床試験の結果を見ればわかるが、インフルエンザに対する効果は、今回のエンシトレルビルの新型コロナに対する効果と同様にかなり微妙なものだった。今よりも若かった私はムッとして「だったらあの程度の効果なんだし、承認しなきゃいいだけじゃないですか?」と言い放ち、この人は「それに関して私が言えることはないよ」と返してきて、そのまま話が終わってしまった。あれから時が経ち、エンシトレルビルでの「アクシデント」も目にし、この人が言っていた言葉の意味をようやく実感している。そして今から見れば当時のファビピラビル承認後の取り扱いは、ある種の英断だったかもしれないとも思う。もっともエンシトレルビルに関しては、すでに流通もし、新型コロナがかなり強力な感染力を持つ以上、今後は当事者に誰も悪意がない中で最悪のケースが起こるかもしれない。それを防ぐためには今以上の注意喚起が必要だが、加えてこれ以上に今早急に取り組まなければならないことがある。それは不幸にも妊娠に気づかずにエンシトレルビルを投与された妊婦に対するケア体制の構築である。今回判明した妊婦は出産まで相当な不安にさいなまれるはずだ。今後も同様の事例が増えれば、中には不安に押しつぶされそうになった結果、中絶という選択肢を取る女性が出てくるかもしれない。悲劇を増幅させないために、この点は待ったなしで対策せねばならないのではないだろうか?

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1

今回のキーワード求愛癒し同調ハンディキャップの原理サイン言語(非言語的コミュニケーション)ミラーリング音楽療法ダンスセラピーみなさんは、歌やダンスが好きですか? あるメロディが耳にこびりついて何度も頭の中を流れていたり、そのリズムが体にしみついて勝手に体が揺れていることはありませんか? なぜ私たちは歌って踊りたくなるのでしょうか? そもそも歌やダンスはいつ生まれたのでしょうか? そして、歌やダンスをもっと世の中に活かせないでしょうか?今回は、インド映画「RRR」を通して、歌とダンスの機能、起源、そして医学的な効果を考えます。さらに、この記事では「ラブソング・ラブダンス仮説」と称して、歌やダンスが人類の心の進化に大きな役割を担った納得の訳を説明します。歌とダンスの機能とは?舞台は英国植民地時代のインド。主人公であるビームとラーマは、ひょんなことから出会い、深い友情を育みます。しかし、彼らにはそれぞれ使命があり、やがて対立しなければならなくなります。それでは、まず3つのシーンを通して、歌とダンスの機能を3つ挙げてみましょう。(1)求愛2人は、英国人女性のジェニーと仲良くなり、英国公邸に招かれます。そこで、ほかの英国人男性から「ワルツ、サルサ、フラメンコ、どのダンスも知らないの?」と馬鹿にされたことで、ラーマは「ナートゥをご存じか?」と言い出し、ラーマとビームはいきなり歌って踊り始めるのです。その歌とダンスは、英国人女性たちを惹きつけ、さらに英国人男性たちも焚きつけます。そして、彼らが全員加わった耐久ダンスバトルに発展するのです。最後は、ビームが勝ち残り、彼はジェニーに気に入られます。1つ目の機能は、求愛(wooing)です。実際に、ミュージシャンやダンサーはモテます。歌やダンスには、性的な魅力を伝える要素があるわけです。(2)癒しビームがジェニーに近づいたのは、実は英国公邸に閉じ込められている幼い村娘のマッリを奪い返すためでした。彼はこっそり彼女を見つけ出しますが、檻があるため連れ出せません。見張りが迫ってくるなか、彼はまた必ず戻ってくると彼女を説得しますが、必死にしがみつかれてしまいます。そこで、彼は子守唄を歌うのです。すると、彼女は落ち着き、自分から手を離したのでした。2つ目の機能は、癒やし(healing)です。たとえば、子守唄を歌いながら優しいリズムをとって揺することで、赤ちゃんを寝かしつけすることができます。ヒーリングミュージックやヒーリングダンスというジャンルもあります。実際の研究では、歌やダンスによって、ストレスホルモン(コルチゾール)が減少することがわかっています。つまり、歌やダンスには、リラックスをもたらす効果もあるわけです。(3)同調ビームは最終的に捕らえられ、民衆の前で、ラーマによってむち打ちの刑に処せられます。しかし、彼はひざまずくことを拒み、瀕死の状態のなか、部族の歌を歌い続けます。すると、それに心を動かされた民衆たちが処刑場になだれ込み、刑は中断されてしまうのです。そして、実はインドの独立の夢を秘めていたラーマは、独立を促すのは、武器ではなくて民衆の一体感であることに気付くのです。3つ目の機能は、同調(tuning)です。これは、もともとオーケストラが演奏前にする音合わせという意味です。たとえば、私たちは調子を合わせて一緒に歌って踊ると心地良くなります。また、軍隊の行進や決まったかけ声で士気を高めることができます。実際の研究では、歌やダンスによって、快感ホルモン(ドパミン)や「脳内麻薬」(エンドルフィン)が分泌されることがわかっています。つまり、歌やダンスには、高揚をもたらす効果もあるわけです。次のページへ >>

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 2

歌とダンスの起源は?歌とダンスの機能が、求愛、癒し、同調であることがわかりました。それでは、そもそもこれらはいつ生まれたのでしょうか? ここから歌とダンスの起源を3つの段階に分けて、その答えに迫ってみましょう。なお、歌とダンスを一緒に説明する理由として、歌が聴覚を介しているのに対してダンスは視覚を介していますが、リズムによるコミュニケーションという点では本質的に同じと考えられるからです。(1)注意を引く約4億年前に最古の昆虫が陸上に誕生してから、少なくとも2億5千万年前に当時のキリギリスは音を出すように進化しました1)。そして、それ以降、昆虫だけでなく、両生類、爬虫類、哺乳類などの脊椎動物も、鳴き声によって交尾相手に求愛したり交尾ライバルや天敵を威嚇したり獲物をおびき出すようになりました。こうして、地球は、それまでの風雨や波だけの静かな世界から、色々な動物たちの鳴き声による騒がしい世界へと様変わりしていったのです。約700万年前に、アフリカの森で、二足歩行をする初期の人類が誕生しました。これは、遺跡で発掘された人類の骨格の変化から判明しています。二足歩行のきっかけは、オスが捕まえた獲物を両手で持ち帰り、メスにプレゼントをしたためであったと考えられています。そして、そのお礼としてメスはセックスをして、そのオスとの子供を育てていたと考えられています(プレゼント仮説)。ここで、あるオスがプレゼントを用意していても、同時にほかのオスたちも同じようなプレゼントを用意していたら、どうでしょうか? メスは必ずしもそのオスのプレゼントを受け取ってくれなくなる状況が想定されます。そこで、オスは自分がメスに選ばれるために、唸ったり動き回ったりして目立つようにしたのでしょう。そうしたオスが選ばれ、子孫を残したのでしょう。こうして、その唸りや動きはより洗練され複雑になるように進化していったのでしょう。これが、歌とダンスの起源です。1つ目の段階は、注意を引くことです。その練習のために余分な労力が必要になります。また、メスだけでなく、天敵の注意も引きやすくなります。このようなコストやリスクなどのハンディを背負ってでも、歌やダンスを披露する余裕があるという生存能力の高さをメスに示すことができます。これは、ハンディキャップの原理と呼ばれています2)。やがて、いったんこのメスの選り好みができると、その後は生存能力の高さとは関係なく、歌やダンスがうまいだけで選ばれるようになります。これは、暴走進化説(ランナウェイ)と呼ばれています。この詳細については、関連記事1をご覧ください。人間以外でも、たとえば、カナリアのさえずりやゴクラクチョウの求愛ダンスは有名です。また、ゴリラのドラミングは、威嚇だけでなく、求愛の意味もあることがわかっています。ミュラーテナガザルは、「歌うサル」とも呼ばれ、自己アピールをはじめいくつかのパターンの鳴き声をします。逆に、人間に最も近縁のチンパンジーは、ラブソングや求愛ダンスがみられません。その訳は、彼らの生殖が乱婚型(多夫多妻型)であるため求愛行動を積極的にする必要がないからでしょう。一方、初期の人類も乱婚型であったことが考えられていますが、彼らはオスがプレゼントをしてメスがそれを選ぶというプロセスがまずありました。だからこそ、それに伴ってラブソングやダンスが生まれたと考えられるわけです。そもそも人類のオスがメスにプレゼントをあげるようになった訳は、人類はチンパンジーのようにエサが豊富な場所を縄張りとすることができないくらいチンパンジーよりも弱く、オスとメスが助け合わなければ生き残って子孫を残せないという淘汰圧がかかっていたからであることが考えられます。ちなみに、ゴリラの生殖がハーレム型(一夫多妻型)である原因は、ゴリラの縄張りがチンパンジーと比べてエサが少なく散在していたことでオスとメスが出会いにくかったことが考えられています。ゴリラのドラミングは、あくまでほかのオスを牽制するという要素が大きく、メスに選んでもらうという要素が少なかったため、ドラミングが洗練された求愛ダンスに発展する必要がなかったと考えることができます。なお、人間、チンパンジー、ゴリラのそれぞれの生殖戦略の違いの詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)まねをし合う約300万年前、地殻変動からアフリカの東側の森が草原になるにつれて、木の実や獲物、逃げ隠れできる場所が減っていきました。とくに、赤ん坊は小さく無力であるため、猛獣の格好の餌食にされてしまいます。こうして、人類はもはや母親だけで子育てをするのが難しくなっていきました。そんななか、父親は母親と生活を共にして子育てに参加するようになっていきました。これが、人類の一夫一妻型の生殖の起源であり、家族の起源です。実際に、当時の遺跡から十数人の化石が密集して発掘されています3)。ここで、どうやって女性(母親)は特定の男性(父親)に一緒にいてほしい気持ちを伝えたのでしょうか? おそらく、その方法は、女性が男性の求愛の唸り声や動きをまねすることだったのではないでしょうか? そして、男性はその女性をさらにまねすることで、一緒にいたい気持ちを伝えたのではないでしょうか?2つ目の段階は、まねをし合うことです。つまり、まだ言葉がない当時、初期のラブソングの唸り声や求愛ダンスの動きは、表情や身振り手振りと同じサイン言語(非言語的コミュニケーション)の役割を果たすようになっていったということです。実際に、目の前の相手と同じ仕草や口癖をすると相手から好感を持たれます。これは、ミラーリングと呼ばれています。そして、このミラーリングは、夫婦の間だけでなく、家族を基本とする血縁で集まった部族の間にも広まっていったでしょう。たとえば、同じ唸り声の挨拶を交わしたり同じように足踏みをすることです。これが、同調の起源です。こうして、歌やダンスは、夫婦のつながりだけでなく部族のつながりの維持の機能も担うようになっていったのでしょう。なお、人類が草原で暮らし始めた当初、歌やダンスは、森の中とは違い、とても控えめなものであったことが想定されます。なぜなら、草原で大声で唸ったり激しく動き回ると、猛獣に見つかってしまうからです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 3

(3)リズムを取る約200万年前以降、人類の頭蓋骨は徐々に大きくなっていったことが遺跡から発掘された人骨の調査からわかっています2)。その訳は、部族のメンバーの数が増えていき、その関係を維持するための能力(社会脳)が進化したからでした。この詳細については、関連記事3をご覧ください。人類の頭が大きくなっていくと、必然的に難産になります。その打開策として、人類の出産は早産になるように進化していきました(生理的早産)。しかし、その代償として、人類の赤ちゃんは、ほかの霊長類とは違い、生まれてしばらくは寝たきりになりました。彼らは、チンパンジーやニホンザルの赤ちゃんのように生まれてすぐに母親にしがみついておっぱいをもらうことができません。そこで、人類の赤ちゃんは、おっぱいをもらうために激しく泣くように進化していったのです。赤ちゃんが泣くことは、猛獣を呼び寄せることになり、本来適応的ではありません。実際に、チンパンジーやニホンザルなどの類人猿のほぼすべての赤ちゃんは泣きません。そもそも生まれてすぐに母親にしがみついておっぱいがもらえるので泣く必要もありません。ところが、人類は、部族のメンバーをどんどん増やしていったことで、共同育児が可能になり、赤ちゃんが泣いても、猛獣を追い払って守ることができるようになっていたのです。現代でも、赤ちゃんが泣いても母親が一定時間対応しなければ、赤ちゃんは本能的に泣きやみます。対応しないということは、母親たちは近くにおらず、原始の時代は猛獣を呼び寄せるだけになってしまうからです。ちなみに、これは、夜泣きへの対策である「クライアウト」(cry it out)として、赤ちゃんに添い寝しない欧米では主流のやり方です。ちなみに、赤ちゃんは泣くだけでなく微笑むことによっても母親の関心を引くように進化しました(新生児微笑)。笑いの起源の詳細については、関連記事4をご覧ください。さらに、赤ちゃんが激しく泣く副産物として、息を止める息つぎが進化したと考えられています4)。息つぎによって呼吸をコントロールできるようになり、それまでのように一息で唸り声をあげるだけでなく、息つぎによってリズミカルに唸る、つまりハミングができるようになっていったのです。こうして、母親は赤ちゃんにハミングの子守唄を歌い、赤ちゃんが胎内にいる時に聞こえる母親の心拍数(60回/分)と同じリズムでとんとんと背中を優しく叩いたり揺することができるようになっていったのでしょう。3つ目の段階は、リズムを取ることです。実際に、人間以外でリズムを取る動物は、小鳥、イルカ、ゾウなどに限られています。その訳は、小鳥の雛は、人間の赤ちゃんと同じように親から餌をもらうためによく鳴くからです。それが可能なのは、彼らのすみかが高い木の上にあり、ほかの鳥に狙われるリスクはありつつも、猛獣たちがいる地上からはかなり離れているためです。逆に、大型の鳥の雛は鳴きません。その理由は、そのすみかが、大きくなることでその重みから高い木の上には作れず、必然的に地上に近くなるからであると考えられます。また、イルカについては、海の中にいるため、当然ながら息つぎができます。ゾウは、長い鼻で水を吸い上げることから、息つぎができます。なお、先ほどご紹介した「歌うサル」のミュラーテナガザルは、決まったパターンの鳴き声しかできないことから、息つぎでリズムを取っているかは不明です。実際の研究では、人間にも鳥にも、リズムに関する聴覚性の「ものまね神経」(ミラーニューロン)があることがわかっています4)。なんで歌やダンスがうまいとモテるの?歌とダンスの起源は、注意を引く、まねをし合う、リズムを取ることであることがわかりました。約700万年前に人類が誕生してから約20万年前に人類が言葉を話すようになるまでの約680万年の長い間、歌とダンスは、求愛、癒し、同調のためのサイン言語として、人類の心の進化に大きな役割を担いました。たとえば、歌やダンスのうまさは、結婚相手や部族の地位の主な判断基準の1つになっていたでしょう。だからこそ、歌やダンスがうまい人は、周りとうまくコミュニケーションができるため、異性だけでなく、同性や子供も含めた部族のメンバー全員から愛されるわけです。現代の社会で言語能力(知能)がもてはやされているのと同じかそれ以上に、原始の時代は歌やダンスの能力がもてはやされていたといえるでしょう。だからこそ、現代の私たちが音楽やダンスを好み、とくに男性のミュージシャンやダンサーがモテるのです。この点で、初期の人類の進化の鍵が「プレゼント仮説」であるのなら、その後の進化の鍵はラブソングと求愛ダンスといえるでしょう。これを名付けるなら「ラブソング・ラブダンス仮説」です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 4

歌とダンスの医学的な効果とは?歌とダンスが人類の進化に大きな役割を担っていることを踏まえて、その医学的な効果は何でしょうか? ここから、音楽療法5)とダンスセラピー6)として、以下の表1にまとめてみます。音楽療法やダンスセラピーは、実際にやるのではなく、見たり聞いたりするだけでも、「ものまね神経」(ミラーニューロン)によって効果が期待できるでしょう。また、音楽療法やダンスセラピーに集団療法を組み合わせれば、その同調効果から、自閉スペクトラム症の共感性の改善や不登校の予防も期待できるでしょう。タイトル「RRR」とは?この映画のタイトル「RRR」には、当時のインドの独立運動にまつわるRise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)が表示されていました。ただ実は、単に主演2人と監督の名前がみんなRから始まるからという軽いノリで最初に名付けられていただけとのことです。劇中でも、「fiRe」(ラーマの象徴である火)、「wateR」(ビームの象徴である水)、「stoRRRy」(彼らの物語)などとRを絡めた遊び心が満載でした。これに便乗すれば、この記事で名付けた「ラブソング・ラブダンス仮説」の3つのポイントに絡めて、「attRacting」(注意を引く)、「miRRoRing」(まねをし合う)、「Rhythm」(リズムを取る)と当てはめることもできます。それにしても、あの英国公邸の庭での彼らの歌とダンスのワンシーンが頭の中を繰り返し流れ続け、忘れられません。このことからも、この映画を見た方ならきっと「ラブソング・ラブダンス仮説」を提唱したくなる気持ちをおわかりいただけるのではないでしょうか?♪ナ~トゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナ~トゥ♪…1)「特集 鳴く動物 話すヒト」P40:日経サイエンス2023年1月号、日経サイエンス社2)「進化と人間行動」P234、P123:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、20223)「アナザー人類興亡史」P136:金子隆一、技術評論社、20114)「つながりの進化生物学」P111、P245:岡ノ谷一夫、朝日出版社、20135)「音楽療法 効果・やり方・エビデンスを知る」P22、P72、P73:高橋多喜子、金芳堂、20216)「ダンスセラピー」P70、P137、P206:平井タカネ(監)、ジアース教育新社、2012<< 前のページへ■関連記事ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 1昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 1映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 1M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】Part 1

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双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連~ENIGMA研究

 双極性障害を含む重度の精神疾患患者では、とくに肥満が顕著に認められる。双極性障害と肥満のいずれにおいても標的となりうる器官は脳であると考えられるが、双極性障害における脳皮質の変化と肥満との関係については、これまでよくわかっていなかった。カナダ・ダルハウジー大学のSean R. McWhinney氏らは、双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連について調査を行った。その結果、双極性障害患者はBMIが高いほど脳の変化が顕著であることが示唆され、双極性障害とも関連する脳領域において、高BMIには大脳皮質全体で表面積ではなく皮質厚の薄さと一貫した関連があることが認められた。Psychological Medicine誌オンライン版2023年2月27日号の報告。 ENIGMA-BDワーキンググループに参加している13ヵ国より、双極性障害患者1,231例および対照群1,601例の局所脳皮質厚、局所脳表面積(MRI測定)、BMIのデータを収集した。混合効果モデルを用いて、脳構造に対する双極性障害とBMIの影響を併せてモデル化し、相互作用と媒介をテストした。また、BMIに関連する薬剤の影響についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害およびBMIは、同じ脳領域の多くの構造に相加的に影響を及ぼしていた。・双極性障害およびBMIはともに、皮質厚との負の相関が認められたが、脳表面積との関連は認められなかった。・ほとんどの脳領域において、BMIをコントロールした場合、使用された精神科系薬剤のクラス数は、皮質厚の薄さと関連したままだった。・紡錘状回では、使用された精神科系薬剤の数と皮質厚との間に認められた負の相関の約3分の1が、薬剤数と高BMIとの関連により媒介されていた。・高BMIは、双極性障害と関連する脳領域において、大脳皮質全体で表面積ではなく皮質厚の薄さと一貫した関連があることが認められた。・双極性障害患者は、BMIが高いほど、脳の変化が顕著であることが示唆された。・BMIは、双極性障害の神経解剖学的変化や脳に対する精神科系薬剤の影響をより理解するために重要である。

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DEEPER試験の追加調査でm-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験は未治療の切除不能転移RAS野生型大腸がんの患者を対象に、m-FOLFOXIRI+セツキシマブの有効性と安全性をm-FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較して検証することを目的とした無作為化第II相試験である。DEEPER試験では、すでにセツキシマブ群が主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)を有意に改善したことが報告されている。 2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、DEEPER試験における最終登録から3年後の解析結果を、辻 晃仁氏(香川大学 医学部臨床腫瘍学講座)が発表した。DEEPER試験の追加調査でRAS/BRAF野生型+左側原発が最も効果的 DEEPER試験は2015年7月〜2019年6月に359例の患者が登録され、179例がセツキシマブ群(C群)、180例がベバシズマブ群(B群)に割り付けられた。対象者はmFOLFOXIRI(5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン 200mg/m2+イリノテカン 150mg/m2+オキサリプラチン 85mg/m2)に加え、セツキシマブ:初回400mg/m2で以降は毎週250mg/m2もしくはベバシズマブ:隔週で5mg/kgを投与された。 DEEPER試験の評価対象患者は321例(年齢中央値65歳、PS0~1:90.5%、原発:左84%/右16%)、C群159例、B群162例であった。主要評価項目のDpRの中央値はC群で57.4%(範囲:-15.0~100%)に対して、B群で46.0%(-0.6〜100%)であり、C群が有意に高かった(p=0.0010)。原発腫瘍の部位別では、左側ではC群60.3% vs.B群46.1%(p=0.0007)、右側では50.0% vs.41.2%(p=0.4663)であり、左側でとくにC群のDpRが高い傾向が示された。しかし、DEEPER試験の副次評価項目評価項目であるETS(Early Tumor Shrinkage)、ORR、R0切除率においては、両レジメン間で有意差はみられなかった。 今回は新たに生存に関するDEEPER試験の結果および追加で調査を行ったBRAF変異の結果などについて発表された。 DEEPER試験における最終登録から3年後の主な解析結果は以下のとおり。・DEEPER試験の321例中167例でBRAFに関する情報が得られ、セツキシマブの効果が期待できないとされるBRAF V600E変異は14例で認められた。・RAS/BRAF野生型が判明した症例は153例、内訳はC群72例、B群81例であった。この症例群をRAS野生型、RAS野生型+左側原発、RAS/BRAF野生型、RAS/BRAF野生型+左側原発と対象を絞り込むにつれ、有効性が高くなった。最も効果的であったRAS/BRAF野生型+左側原発131例では、DpRはC群63.6% vs.B群47.8%、p=0.0003、R0切除率は32.8% vs.20.0%、p=0.096であった。・さらに注目される生存に関する解析ではPFS、OSともにC群がB群より統計学的に有意に良好な傾向であった(PFS中央値:15.3ヵ月 vs.11.7ヵ月、ハザード比(HR):0.68、p=0.036、OS中央値:53.6ヵ月 vs.40.2ヵ月、HR:0.54、p=0.02)。・毒性は許容範囲内であり、Grade3以上の特徴的な有害事象としてはC群ではざ瘡(13.1%)、低マグネシウム血症(4%)、B群では高血圧(33.5%)、蛋白尿(3.4%)などであった。 辻氏は「m-FOLFOXIRI+セツキシマブは、RAS/BRAF野生型かつ左側原発の大腸がんにおける薬物療法の魅力的なオプションとなり得る」とした。また、質疑応答中にDpRを主要評価項目とした理由と聞かれ、「当初はOSを検討していたが、早期に結果を得られ、かつ生存期間の代用マーカーとして注目されていたDpRに着目した。DEEPER試験の結果も両者の関連を示すものだ」と説明した。

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肺がん骨転移へのゾレドロン酸8週ごと投与/日本臨床腫瘍学会

 肺がん骨転移に対するゾレドロン酸8週ごと投与の結果を、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、大阪国際がんセンターの田宮 基裕氏が発表した。 ゾレドロン酸は、固形がんのがん骨関連事象(SRE)や症状緩和には欠かせない薬剤である。一方、顎骨壊死などの重篤な有害事象の発現リスクも見逃せない。そのため、投与間隔の長短による、有効性と安全性の違いが研究されている。田宮氏が発表した無作為化オープンラベル第II相試験(Hanshin Cancer Group0312)は、添付文書の用法である3〜4週ごとと、8週ごとを比較したもの。対象:骨転移を有しゾレドロン酸の4週ごと投与を2サイクル受けた肺がん患者試験群:ゾレドロン酸8週ごと1年間投与(8wk-ZA群)対照群:同 4週ごと1年間投与(4wk-ZA群)評価項目:[主要評価項目]初回SRE発現までの時間、1年時点のSRE発現割合[副次評価項目]6ヵ月時点のSRE発現割合、疼痛評価スケール、骨代謝マーカーI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)と投与期間の関係、鎮痛薬消費量の変化、毒性、全生存率など 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、4wk-ZA群51例、8wk-ZA群43例であった・初回SRE発現までの時間を見た6ヵ月時点の無イベント率(EFR)は、4wk-ZA群86.3%、8wk-ZA群82.4%であった(p=0.715)。・1年時点の累積SRE発現割合は4wk-ZA群17.6%、8wk-ZA群は23.3%であった(p=0.608)。・疼痛スコア(NRT)のベースラインからの変化は、4wk-ZA群では有意な変化はなかった。8wk-ZAa群では4週時点でベースラインにより改善したが、40週時点では悪化した。・NTxは両群ともベースラインからの有意な変化はなかった。・有害事象の多くは、がん治療に付随するものか、がんの合併症であった。顎骨壊死は4wk-ZA群で1例発現し、8wk-ZA群での発現は認めなかった。 田宮氏は「骨転移のある肺がんにおいて、ゾレドロン酸の8週ごと投与は、標準療法である4週ごと投与に比べ、SREの発現を増やさなかった。転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)治療では、生存の長期化とQOLの改善が続いているため、骨修飾薬の減量レジメンの評価は、効果と安全性を長期間見るべきである」と述べている。

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カフェイン入りコーヒー、期外収縮への影響は?/NEJM

 カフェイン入りコーヒーの摂取はカフェインを摂取しない場合と比較し、毎日の心房期外収縮が有意に増加することはないことが、米国・カリフォルニア大学のGregory M. Marcus氏らが実施した単施設での前向き無作為化ケースクロスオーバー試験「Coffee and Real-time Atrial and Ventricular Ectopy trial:CRAVE試験」で確認された。コーヒーは、世界で最もよく消費されている飲料の1つであるが、コーヒーの摂取による健康への急性の影響は依然として不明であった。NEJM誌2023年3月23日号掲載の報告。カフェイン入りコーヒー摂取vs.カフェイン非摂取で、心房期外収縮を評価 研究グループは、カフェイン入りコーヒーが期外収縮と不整脈、毎日の歩数、睡眠時間、および血清グルコース値に及ぼす影響を調べるため、チラシ、口コミ、ソーシャルメディアにより年1回以上カフェイン入りコーヒーを摂取する18歳以上の成人を募集し、計100人を対象に検討を行った。 14日間にわたって毎日テキストメッセージを送信することにより、「2日間カフェイン入りコーヒーを摂取」群または「2日間カフェインを摂取しない」群に無作為に割り付けた。蓄積効果を回避しつつ試験への参加と継続を高めるため、参加者が3日以上連続してコーヒーを摂取するまたは摂取しないことがないよう、摂取-非摂取または非摂取-摂取の対で無作為化を構築した。 参加者には、パッチ型持続心電図レコーダ、手首装着型加速度計、持続血糖測定システムを装着してもらうとともに、コーヒーショップへの訪問を追跡するためスマートフォンアプリケーションをダウンロードしてもらい地理的位置情報データを収集した。 主要アウトカムは、毎日の心房期外収縮の平均回数で、intention-to-treat解析で評価した。無作為割り付けの順守は、参加者が記録したリアルタイム指標、毎日の質問票、コーヒー購入の日付入り領収書の払い戻し、コーヒーショップ訪問のバーチャルモニタリング(ジオフェンシング)を用いて評価した。心房期外収縮の1日平均回数に有意差なし 参加者の平均(±SD)年齢は39±13歳、女性が51%、非ヒスパニック系白人が51%であった。無作為割り付けの順守度は高かった。 心房期外収縮は、カフェイン入りコーヒー摂取群で1日平均58回に対し、カフェイン非摂取群で1日平均53回であった(率比:1.09、95%信頼区間[CI]:0.98~1.20、p=0.10)。 また、心室期外収縮はそれぞれ1日平均154回、102回(率比:1.51、95%CI:1.18~1.94)、歩数は1日平均1万646歩、9,665歩(平均群間差:1,058、95%CI:441~1,675)、睡眠時間は397分、432分(平均群間差:36、95%CI:25~47)、血清グルコース値は95mg/dL、96mg/dL(平均群間差:-0.41、95%CI:-5.42~4.60)であった。

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急性非特異的腰痛への鎮痛薬を比較~RCT98件のメタ解析/BMJ

 1万5千例以上を対象とした研究が行われてきたにもかかわらず、急性非特異的腰痛に対する鎮痛薬の臨床決定の指針となる質の高いエビデンスは、依然として限られていることを、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMichael A. Wewege氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。鎮痛薬は、急性非特異的腰痛に対する一般的な治療であるが、これまでのレビューではプラセボと鎮痛薬の比較で評価されており、鎮痛薬の有効性を比較したエビデンスは限られている。著者は、「臨床医と患者は、鎮痛薬による急性非特異的腰痛の管理に慎重となることが推奨される。質の高い直接比較の無作為化試験が発表されるまで、これ以上のレビューは必要ない」とまとめている。BMJ誌2023年3月22日号掲載の報告。無作為化比較試験98件、1万5千例以上について、ネットワークメタ解析 研究グループは、Medline、PubMed、Embase、CINAHL、CENTRAL、ClinicalTrials.gov、clinicaltrialsregister.eu、World Health Organization's International Clinical Trials Registry Platformを2022年2月20日時点で検索し、急性(6週未満)の非特異的腰痛を有する18歳以上の患者を対象とした鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、パラセタモール[アセトアミノフェン]、オピオイド、抗けいれん薬、骨格筋弛緩薬、副腎皮質ステロイド)の無作為化比較試験(他の鎮痛薬、プラセボ、または未治療との比較)を特定した。 主要アウトカムは、治療終了時の腰痛強度(0~100スケール)、安全性(治療期間中のあらゆる有害事象の報告例数)。副次アウトカムは、腰部特異的機能(0~100スケール)、重篤な有害事象、治療中止とした。2人の評価者が独立して試験の特定、データ抽出、およびバイアスリスクの評価を行い、ランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。エビデンスの信頼性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis method)を用いて評価した。 無作為化比較試験98件(合計1万5,134例、女性49%)が特定され、69種類の薬剤または組み合わせが解析に組み込まれた(単剤療法42種類、併用療法27種類)。有効性に関するエビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」 tolperisone(平均群間差:-26.1、95%信頼区間[CI]:-34.0~-18.2)、aceclofenac+チザニジン(-26.1、-38.5~-13.6)、プレガバリン(-24.7、-34.6~-14.7)およびその他の14種類の薬剤は、プラセボと比較して疼痛強度が低下したが、エビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」であった。同様に、これらの薬剤の一部は有効性に有意差がないことが報告されたが、エビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」であった。 安全性については、トラマドール(リスク比:2.6、95%CI:1.5~4.5)、パラセタモール+徐放性トラマドール(2.4、1.5~3.8)、バクロフェン(2.3、1.5~3.4)、パラセタモール+トラマドール(2.1、1.3~3.4)が、プラセボと比較して有害事象が増加する可能性があるが、エビデンスの信頼性は「中程度」から「非常に低い」であった。これら4種類の治療には、他の治療と比較して有害事象を増加させる可能性があるというエビデンスの信頼性が「高い」から「非常に低い」データもあった。副次アウトカムおよび薬剤クラスの2次解析でも、エビデンスの信頼性は「中程度」から「低い」ことが示された。

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新型コロナワクチン接種ガイダンスを改訂/WHO

 世界保健機関(WHO)は3月28日付のリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種ガイダンスを改訂したことを発表した。今回の改訂は、同機関の予防接種に関する専門家戦略アドバイザリーグループ(SAGE)が3月20~23日に開催した会議を受け、オミクロン株流行期の現在において、ワクチンや感染、またはハイブリッド免疫によって、世界的にすべての年齢層でSARS-CoV-2の抗体保有率が増加していることが考慮されたものとなる。SARS-CoV-2感染による死亡や重症化のリスクが最も高い集団を守ることを優先し、レジリエンスのある保健システムを維持することに重点を置いた、新たなロードマップが提示された。 今回発表された新型コロナワクチン接種のロードマップでは、健康な小児や青年といった低リスク者に対するワクチン接種の費用対効果について検討されたほか、追加接種の間隔に関する推奨などが含まれている。 改訂の主な内容は以下のとおり。・ワクチン接種の優先度順に、高・中・低の3つグループを設定した。・高優先度群には、高齢者、糖尿病や心臓病などの重大な基礎疾患のある若年者、生後6ヵ月以上のHIV感染者や移植患者などの免疫不全者、妊婦、最前線の医療従事者が含まれる。この群に対して、ワクチンの最終接種から6~12ヵ月後に追加接種することを推奨している。・中優先度群には、健康な成人(50~60歳未満で基礎疾患のない者)と、基礎疾患のある小児と青年が含まれる。この群に対して、1次接種(初回シリーズ)と初回の追加接種を奨励している。・低優先度群には、生後6ヵ月~17歳の健康な小児と青年が含まれる。この群に対する新型コロナワクチンの1次接種と追加接種の安全性と有効性は確認されている。しかし、ロタウイルスや麻疹、肺炎球菌ワクチンなど、以前から小児に必須のワクチンや、中~高優先度群への新型コロナワクチンの確立されたベネフィットと比較すると、健康な小児や青年への新型コロナワクチン接種による公衆衛生上の影響は低く、疾病負荷が低いことを考慮して、SAGEはこの年齢層への新型コロナワクチン接種を検討している国に対し、疾病負荷や費用対効果、その他の保健の優先事項や機会費用などの状況要因に基づいて決定するように促している。・6ヵ月未満の乳児における重症COVID-19の負荷は大きく、妊婦へのワクチン接種は、母親と胎児の両方を保護し、COVID-19による乳児の入院の低減に効果的であるため推奨される。・SAGEは新型コロナの2価ワクチンに関する推奨事項も更新し、1次接種にBA.5対応2価mRNAワクチンの使用を検討することを推奨している。

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推定GFR値を、より正確に知る―欧州腎機能コンソーシアムの報告―(解説:石上友章氏)

 慢性腎臓病(CKD)は、21世紀になって医療化された概念である。その起源は、1996年アメリカ腎臓財団(NKF:National Kideny Foundation)による、DOQI(Dialysis Outcome Quality Initiative)の発足にまでさかのぼることができる。2003年には、ISN(International Society of Nephrology:国際腎臓学会)によりKDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)が設立され、翌2004年に第1回KDIGO Consensus Conference(CKDの定義、分類、評価法)が開催され、血中クレアチニン濃度の測定を統一し、estimated GFRを診断に使用することが提唱された。その結果、現代の腎臓内科学は、Virchow以来の細胞病理・臓器病理に由来する、原因疾患や、病態生理に基づく医学的な定義に加えて、血清クレアチニン値による推定糸球体濾過量(eGFR)を診断に用いる『慢性腎臓病(CKD)』診療に、大きく姿を変えた。CKDは、心腎連関によって、致死的な心血管合併症を発症する強い危険因子になり、本邦の成人の健康寿命を著しく脅かしていることが明らかになっている。KDIGOの基本理念として、CKDは糖尿病・高血圧に匹敵する主要な心血管疾患(CVD)のリスクファクターであり、全世界的対策が必要で、誰でも(医師でなくても)理解できる用語の国際的統一を呼び掛けた。したがって、CKD対策とは腎保護と心血管保護の両立にある。腎臓を標的臓器とする糖尿病、高血圧については、特異的な治療手段があり、原疾患に対する治療を提供することで、腎障害の解消が期待される。eGFRの減少は、CKDの中核的な病態であるが、その病態を解消する確実な医学的な手段はなかった。これまで、栄養や、代謝、生活習慣の改善を促すこと以外に、特異的な薬物治療は確立されていない。しかし、近年になって、糖尿病治療薬として創薬されたSGLT2阻害薬が、血糖降下作用・尿糖排泄作用といった薬理作用を超えた臓器保護効果として、心不全ならびに、CKDに有効な薬剤として臨床応用されている。SGLT2阻害薬は、セオリーにすぎなかった心腎連関を、リアル・ワールドで証明することができた薬剤といえるのではないか。推定GFRの評価は、CKD診療の基本中の基本であり、原点にほかならない。人種、性別、年齢による推定式が用いられているが、万能にして唯一の推定式とはいえなかった。Pottel氏らの研究グループは、「調整血清クレアチニン値」に代わって、「調整シスタチンC値」に置き換えた「EKFC eGFRcys式」の性能を評価した研究を報告した(Pottel H, et al. N Engl J Med. 2023;388:333-343.)。 本報告のFigure 1にみるように、全年齢においてBias(ml/min/1.73m2)/P30(%)が、狭い範囲での変化にとどまっていることがわかる。これまでの推定式は、簡便ではあったが、精度で劣る可能性があった。「EKFC eGFRcys式」は、「EKFC eGFRcr式」と同等の精度で、推定GFRを予測することができる。CKD診療の確度が、よりいっそう改善することが期待される。

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頼みの綱は尿瓶です【Dr. 中島の 新・徒然草】(470)

四百七十の段 頼みの綱は尿瓶です桜が満開になってきましたね。例年に比べて10日近く早いように思います。地球温暖化のせいでしょうか。さて、外来のほうは忙しさ大爆発です。通院中の高齢女性。患者「この前、○○病院に行ったら肺がんだと言われてショックでした」中島「それは大変でしたね」なぜ脳外科外来で肺がんの話が出るのか、それは謎です。患者「もう80歳だし、おとなしいタイプの肺がんだから様子を見ましょうって言われて」中島「そういう肺がんもあるわけですね」私自身が見聞したところでは……すりガラス状結節が15年前の他院CTで写っていた小さな肺がんというものがありました。放射線科医が集談会に出すと言っておられたので、比較的珍しいものなんでしょうけど。患者「家に帰ったら息子が、『がんはがんやろ。おとなしいから様子を見ましょうって何やねん!』と言い出したんです」中島「息子さんは診察に付き添わなかったんですか?」患者「店をやっていているもんですから」よくある話です。患者「娘のほうは、『お母ちゃんは怖がりやから手術はしなくていい』と言うんですよ」中島「娘さんも付き添っていないんですか?」患者「孫のことで忙しいんです」なるほど、なるほど。とはいえ、脳外科外来でする話ではないですね。なぜなら、私に説教を食らってしまうからです。中島「でも、担当の先生の話を直接に聞かずに判断するべきじゃないでしょう、息子さんも娘さんも」患者「それはそうなんですけど」中島「息子さんには店を休んでお母ちゃんの診察に付いてきてもらいましょうよ」患者「でも店を休むなんて……心配してくれるだけで十分です」中島「疑問があったら担当医に直接聞くべきですよ」店より母親の肺がんのほうが優先じゃないかな。中島「娘さんにも診察に一緒に行ってもらったほうがいいですね」患者「娘もですか?」中島「ええ」込み入った病状説明を、高齢者が覚えているとは到底思えないですから。患者「あの……孫が受験なんで」中島「受験生なら立派な大人です。お孫さんも一緒に行きましょう」われながら、言っていることが無茶苦茶になってきました。でも、高校生なら私はいつも一人前の人間として扱っています。患者「受験が終わってからではいけませんか?」中島「それは良いですね。大学に入ったら時間ができるし、落ちたらもっと暇ですよ」私自身、自分の人生で一番時間があったのは浪人時代でした。それにしても、なぜ脳外科外来でこんな話になってしまったのか……その時です、研修医から院内PHSに連絡が入ったのは。研修医「基本的手技一覧表に先生のチェックとサインをいただきたいのですけど」中島「今すぐってこと?」研修医「ええ」中島「今日は無理やな、トイレに行く時間もあらへん。明日なら何とかなるけど」研修医「明日は引っ越しなんです」中島「朝7時やったらエエやろ、ERに来てくれ」研修医「わ、わかりました」患者さんと研修医相手では、かなり扱いが違ってしまいます。患者「先生、トイレにも行けないなんて、お忙しいんですね」中島「もうね、尿瓶だけが頼りです」患者「そうなんですか!」ギャグを本気にしないで。中島「とにかく、息子さんも娘さんもお孫さんも全員で診察に付き添ってもらってですね、担当の先生を質問攻めにしてください。直接に話をしたうえで大切なことを決めましょう、いいですか?」患者「えっ、ええ」この患者さんも、うっかり私に世間話をしたばかりに「ああしろ、こうしろ」と言われる羽目になってしまいました。ちょっと気の毒かも。でも、ご家族も納得いくまで担当医に話を聞くことが大切だと私は思います。読者の皆さんはどう思われますか?最後に1句満開の 桜を見ながら 外来す

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血小板無力症〔GT:Glanzmann thrombasthenia〕

1 疾患概要■ 定義血小板無力症(Glanzmann thrombasthenia:GT)は、1918年にGlanzmannにより初めて報告された1)一般的な遺伝性血小板障害(Inherited platelet disorders:IPD)であり、その中でも最もよく知られた先天性血小板機能異常症である。血小板インテグリンαIIbβ3(alphaIIbbeta3:いわゆる糖蛋白質[glycoprotein:GP]IIb/IIIaとして知られている)の量的欠損あるいは質的異常のため、血小板凝集機能の障害により主に中等度から重度の粘膜皮膚出血を伴う出血性疾患である。インテグリンαIIbβ3機能の喪失により、血小板はフィブリノーゲンや他の接着蛋白質と結合できなくなり、血小板による血栓形成不全、および多くの場合に血餅退縮が認められなくなる。 ■ 疫学血液凝固異常症全国調査では血液凝固VIII因子の欠乏症である血友病Aが男性出生児5,000人に約1人,また最も頻度が高いと推定される血漿蛋白であるvon Willebrand factor(VWF)の欠損症であるvon Willebrand病(VWD)については出生児1,000人に1人2、3)と報告される(出血症状を呈するのはその中の約1%と考えられている)。IPDは、これらの遺伝性出血性疾患の発症頻度に比べてさらに低くまれな疾患である。UK Haemophilia Centres Doctors Organisation(UKHCDO)に登録された報告2)では、VWDや血友病A・Bを含む凝固障害(87%)に比較して血小板数・血小板機能障害(8%)である。その8%のIPDの中ではGTは比較的頻度が高いが、明らかな出血症状を伴うことから診断が容易であるためと想定される(GT:5.4%、ベルナール・スーリエ症候群:3.7%、その他の血小板障害:90.1%)。凝固異常に比較して、IPDが疑われる症例ではその分子的な原因を臨床検査により正確に特定できないことも多く、その他の血小板障害(90.1%)としてひとくくりにされている。GTは、常染色体潜性(劣性)遺伝形式のために一般的にホモ接合体変異で発症し、ある血縁集団(民族)ではGTの発症頻度が高いことが知られている。遺伝子型が同一のGT症例でも臨床像が大きく異なり、遺伝子型と表現型の相関はない1、4)。血縁以外では複合ヘテロ接合によるものが主である。■ 病因(図1)図1 遺伝性血小板障害に関与する主要な血小板構造画像を拡大するインテグリンαIIbサブユニットをコードするITGA2B遺伝子やβ3サブユニットをコードするITGB3遺伝子の変異は、インテグリンαIIbβ3複合体の生合成や構造に影響を与え、GTを引き起こす。片方のサブユニットの欠落または不完全な構造のサブユニット生成により、成熟巨核球で変異サブユニットと残存する未使用の正常サブユニットの両方の破壊が誘導されるが、例外もありβ3がαvと結合して血小板に少量存在するαvβ3を形成する5)。わが国における血小板無力症では、欧米例とは異なりβ3の欠損例が少なく、αIIb遺伝子に異常が存在することが多くαIIbの著減例が多い。また、異なる家系であるが同一の遺伝子異常が比較的高率に存在することは単民族性に起因すると考えられている6)。このほかに、血小板活性化によりインテグリン活性化に関連した構造変化を促す「インサイドアウト」シグナル伝達や、主要なリガンドと結合したαIIbβ3がさらなる構造変化を起こして血小板形態変化や血餅退縮に不可欠な「アウトサイドイン」シグナル伝達経路を阻害する細胞内ドメインの変異体も存在する。細胞質および膜近位ドメインのまれな機能獲得型単一アレル変異体では、自発的に受容体の構造変化が促進される結果、巨大血小板性血小板減少症を引き起こす。「インサイドアウト」シグナルに重要な役割を果たすCalDAG-GEFI(Ca2+ and diacylglycerol-regulated guanine nucleotide exchange factor)[RASGRP2遺伝子]およびKindlin-3(FERMT3遺伝子)の遺伝子変異により、GT同様の臨床症状および血小板機能障害を発症する。この機能性蛋白質が関与する他の症候としては、CalDAG-GEFIは他の血球系、血管系、脳線条体に存在し、ハンチントン病との関連も指摘されており、Kindlin-3の遺伝子変異では、白血球接着不全III(leukocyte adhesion deficiency III:LAD-III)を引き起こす。LAD-III症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝で、白血球減少、血小板機能不全、感染症の再発を特徴とする疾患である5)。■ 症状GTでは鼻出血や消化管出血など軽度から重度の粘膜皮膚出血が主症状であるが、外傷・出産・手術に関連した過剰出血なども認める。男女ともに罹患するが、とくに女性では月経や出産などにより明らかな出血症状を伴うことがある。実際、過多月経を訴える女性の50%がIPDと診断されており、さらにIPDの女性は排卵に関連した出血を起こすことがあり、子宮内膜症のリスクも高いとされている7)。■ 分類GTの分類では、インテグリンαIIbβ3の発現量により分類される。多くの症例が相当するI型では、ほとんどαIIbβ3が発現していないため、血小板凝集が欠如し血餅退縮もみられない。発現量は少ないがαIIbβ3が残存するII型では、血小板凝集は欠如するが血餅退縮は認める。また、非機能的なαIIbβ3を発現するまれなvariant GTなどがある1、5)。■ 予後GTは、消化管出血や血尿など重篤な出血症状を時折引き起こすことがあるが、慎重な経過観察と適切な支持療法により予後は良好である。GTの出血傾向は小児期より認められその症状は顕著であるが、一般的に年齢とともに軽減することが知られており、多くの成人症例で本疾患が日常生活に及ぼす影響は限られている。診断された患者さんが出血で死亡することは、外傷や他の疾患(がんなど)など重篤な合併症の併発に関連しない限りまれである1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血小板機能障害は1次止血の異常であり、主に皮膚や粘膜に発現することが多い。出血症状の状況(部位や頻度、期間、再発傾向、出血量)および重症度(出血評価ツール)を評価することは、出血症状を呈する患者の評価における最初の重要なステップである。出血の誘因が年齢や性別(月経)に影響するかどうかを念頭に、患者自身および家族の出血歴(術後または抜歯後の出血を含む)、服薬状況(非ステロイド性抗炎症薬)について正確な問診を行う。また、IPDを疑う場合は、出血とは無関係の症状、たとえば眼病変や難聴、湿疹や再発性感染、各臓器の形成不全、精神遅滞、肝腎機能など他器官の異常の可能性に注意を払い、血小板異常機能に関連した症候群型の可能性を評価できるようにする7)。【遺伝性血小板障害の診断】症候学的特徴(出血症状、その他症状、家族歴)血小板数/形態血小板機能検査(透過光血小板凝集検査法)フローサイトメトリー免疫蛍光法、電子顕微鏡法分子遺伝学的解析(Boeckelmann D, et al. Hamostaseologie. 2021;41:460-468.より作成)出血症状に対するスクリーニング検査は、比較的簡単な基礎的な臨床検査で可能であり非専門施設でも実施できる。血液算定、末梢血塗抹標本での形態観察、血液凝固スクリーニング、VWDを除外するためのVWFスクリーニング(VWF抗原、VWF活性[リストセチン補因子活性]、必要に応じて血液凝固第VIII因子活性)などを行う(図2)。上記のスクリーニング検査でIPDの可能性を検討するが、IPDの中には血小板減少を伴うものもあるので、短絡的に特発性血小板減少性紫斑病と診断しないように注意する。末梢血塗抹標本の評価では、血小板の大きさ(巨大血小板)や構造、他の血球の異常の可能性(白血球の封入体)について情報を得ることができ、これらが存在すれば特定のIPDが示唆される。図2 遺伝性血小板障害(フォン・ヴィレブランド病を含む)での血小板凝集のパターン、遺伝子変異と関連する表現型画像を拡大する血小板機能検査として最も広く用いられている方法は透過光血小板凝集検査法(LTA)であり、標準化の問題はあるもののLTAはいまだ血小板機能検査のゴールドスタンダードである。近年では、全自動血液凝固測定装置でLTAが検査できるものもあるため、LTA専用の検査機器を用意しなくても実施できる。図3に示すように、GTではリストセチンを除くすべてのアゴニスト(血小板活性化物質)に対して凝集を示さない。GTやベルナール・スーリエ症候群などの血小板受容体欠損症の診断に細胞表面抗原を測定するフローサイトメトリー(図4)は極めて重要であり、インテグリンαIIbβ3の血小板表面発現の欠損や減少が認められる。インテグリンαIIbβ3活性化エピトープ(PAC-1)を認識する抗体では、活性化不全が認められる8)。図3 血小板無力症と健常者の透過光血小板凝集検査法での所見(PA-200を用いて測定)画像を拡大する図4 血小板表面マーカー画像を拡大するGTでは臨床所見や上記の検査の組み合わせで確定診断が可能であるが、その他IPDを診断するための検査としては、顆粒含有量および放出量の測定(血小板溶解液およびLTA記録終了時の多血小板血漿サンプルの上清中での血小板因子-4やβトロンボグロブリン、セロトニンなど)のほか、血清トロンボキサンB2(TXB2)測定(アラキドン酸由来で生理活性物質であるトロンボキサンA2の血中における安定代謝産物)、電子顕微鏡による形態、血小板の流動条件下での接着および血栓形成などの観察、細胞内蛋白質のウェスタンブロッティングなどが参考となる。遺伝子検査はIPDの診断において、とくに病態の原因と考えられる候補遺伝子の解析を行い、主に確定診断的な役割を果たす重要な検査である。今後は、次世代シーケンサーの普及によるジェノタイピングにより、遺伝子型判定を行うことが容易となりつつあり、いずれIPDでの第一線の診断法となると想定される。ただしこれらの上記に記載した検査については、現段階では保険適用外であるもの、研究機関でしか行えないものも数多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)予防や治療の選択肢は限られているため、日常生活での出血リスクを最小限に抑えること、出血など緊急時の対応に備えることが必要である(図5)。図5 出血性疾患に対する出血の予防と治療画像を拡大する罹患している病名や抗血栓薬など避けるべき薬剤などの医療情報(カード)を配布することも有効である。この対応方法は、出血性疾患でおおむね同様と考えられるが、たとえばGTに対しては血小板輸血による同種抗体生成リスクを可能な限り避けるなど、個々の疾患において特別な注意が必要なものもある。この抗血小板抗体は、輸血された血小板除去やその機能の阻害を引き起こし、輸血効果を減弱させる血小板不応の原因となる。観血的手技においては、出血のリスクと処置のベネフィットなど治療効率の評価、多職種(外科医、血栓止血専門医、看護師、臨床検査技師など)による出血に対するケアや止血評価、止血対策のためのプロトコルの確立と遵守(血小板輸血や遺伝子組み換え活性化FVII製剤、抗線溶薬の使用、観血術前や出産前の予防投与の考慮)が不可欠である。IPD患者にとって妊娠は、分娩関連出血リスクが高いことや新生児にも出血の危険があるなどの問題がある。最小限の対策ですむ軽症出血症例から最大限の予防が必要な重篤な出血歴のある女性まで状況が異なるために、個々の症例において産科医や血液内科医の間で管理を計画しなければならない。重症出血症例に対する経膣分娩や帝王切開の選択なども依然として難しい。4 今後の展望出血時の対応などの臨床的な役割を担う医療機関や遺伝子診断などの専門的な解析施設へのアクセスを容易にできるようにすることが望まれる。たとえば、血友病のみならずIPDを含めたすべての出血性疾患について相談や診療可能な施設の連携体制の構築すること、そしてIPD診断については特殊検査や遺伝子検査(次世代シーケンサー)を扱う専門施設を確立することなどである。遺伝性出血性疾患の中には、標準的な治療では対応しきれない再発性の重篤な出血を伴う若い症例なども散見され、治療について難渋することがある。こうした症例に対しては、遺伝性疾患であるからこそ幹細胞移植や遺伝子治療が必要と考えられるが、まだ選択肢にはない。近い将来には、治療法についても革新的技術の導入が期待される。5 主たる診療科血液内科(血栓止血専門医)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 血小板無力症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)国立成育医療研究センター 先天性血小板減少症の診断とレジストリ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)大阪大学‐血液・腫瘍内科学 血小板疾患研究グループ山梨大学大学院 総合研究部医学域 臨床検査医学講座(医療従事者向けのまとまった情報)1)Nurden AT. Orphanet J Rare Dis. 2006;1:10.2)Sivapalaratnam S, et al. Br J Haematol. 2017;179:363-376.3)日笠聡ほか. 日本血栓止血学会誌. 2021;32:413-481.4)Sandrock-Lang K, et al. Hamostaseologie. 2016;36:178-186.5)Nurden P, et al. Haematologica. 2021;106:337-350.6)冨山佳昭. 日本血栓止血学会誌. 2005;16:171-178.7)Gresele P, et al. Thromb Res. 2019;181:S54-S59.8)Gresele P, et al. Semin Thromb Hemost. 2016;42:292-305.公開履歴初回2023年3月30日

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よくわかる老年腫瘍学

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