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膵臓がん、FOLFIRINOXの術前補助療法の有効性を検証(NORPACT-1)/ASCO2023

 切除可能な膵臓がんに対するFOLFIRINOXの術前補助療法の有効性に疑問を投げかけられた。Knut Jorgen Labori氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表したNORPACT-1の試験の結果である。 切除可能膵臓がんの標準治療は、完全切除とその後の補助化学療法である。化学療法としてはFOLFIRINOXが多く使われる。一方、切除可能膵臓がんでは、術前補助化学療法のメリットも報告されている。Labori氏らは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの12の施設で、多施設無作為化第II相試験を行い、切除可能膵臓がんにおける、FOLFIRINOXの術前補助療法と標準治療である術後補助療法を比較している。対象:切除可能膵臓がん試験群:FOLFIRINOX4サイクル→手術→FOLFIRINOX8サイクル(ネオアジュバント群)対照群:手術→FOLFIRINOX12サイクル(アジュバント群)評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・140例が無作為に割り付けられた(ネオアジュバント群:77例、アジュバント群:63例)。年齢中央値は66.5歳(四分位範囲[IQR]:59.72)、ECOG0は115例(82.1%)、1が25例(17.9%)だった。最終的にネオアジュバント群:63例、アジュバント群:56例が切除を受けた。・術後補助療法でのFOLFIRINOXの使用は、ネオアジュバント群では25%、アジュバント群では40%にとどまった。・R0切除率はネオアジュバント群56%、アジュバント群39%であった(p=0.076)。・N0切除率はネオアジュバント群29%、アジュバント群14%であった(p=0.060)。・OS中央値はネオアジュバント群25.1ヵ月、アジュバント群38.5ヵ月であった(HR:1.52、95%CI:0.94~2.46、p=0.096)。・18ヵ月後のOSはネオアジュバント群60%、アジュバント群73%だった(p=0.1)。・Grade3~5の有害事象はネオアジュバント群は57.5%、アジュバント群は40.4%に発現した。 FOLFIRINOXの術前補助療法は許容可能な安全性と切除実施率を示したものの、切除可能な膵臓がんに対するスタンダードとして支持される結果とはならなかった。

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認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。 セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。瞼が重い、手足に力が入らないはMGを疑ってみる はじめに重症筋無力症(MG)の疾患について、村井 弘之氏(国際医療福祉大学医学部 脳神経内科学 教授/国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科 部長)が、MGの機序、疫学、症状、治療と課題について解説を行った。 MGは脳神経系に起きる自己免疫性疾患で、神経筋接合部が障害される。神経からの刺激を伝えるアセチルコリンが受容できなくなり、筋肉への信号が弱まることで、さまざまな症状を引き起こす。症状の機序は解明されているが、原因となるトリガーは現在も不明という。 わが国のMG患者数について、1973年の調査では1.35人/10万人だったものが、1987年には5.1人/10万人、2006年には11.8人/10万人、2018年には23.1人/10万人1)と年を経るごとに増加し、2023年では約4万人の患者が推定されている。 MGの態様は眼瞼型(20%)と全身型(80%)と大きく2つあり、自己抗体の種類では、アセチルコリン受容体抗体(80~85%)、MuSK(マスク)抗体(5%以下)、抗体陰性(10~15%)がある。また、胸腺の異常として胸腺腫が20~25%存在する。 MGの症状としては以下のようなものがあげられる。・瞼が下がる(眼瞼下垂)・ものが二重にみえる(複視)・手足に力が入らない・のみ込めない(嚥下力の低下)、むせる、噛む力がない・話しにくい、呂律が回らない、鼻声になる・身体が重い、だるい・重症化すると呼吸困難(クリーゼ) そして、これらは単一症状ではなく、時には複合症状として多彩な病態を示し、患者を苦しめる。そのほか、MGの特徴として症状に「日内変動」があり、朝と晩で体調が異なるために、周囲に理解されにくいという。 MGの治療について、以前は胸腺摘除とステロイド高用量療法、増悪の場合は免疫抑制薬が使用されることで本症の生命予後はかなり改善されるようになった。そして、現在では、ステロイドを初回から少量使用しつつ、免疫グロブリン/血漿交換などと並行して免疫抑制薬を使用し、難治性では分子標的薬を使用して症状を抑える治療が行われている2)。MG患者が被る社会的被害 次に村井氏はMG患者が被る社会的不利益に触れ、「患者は身体的障害だけではく、社会的障害にも直面している」と問題を提起した。MG患者は、疾患を持っているだけで、「就労困難」「共感を得られないことによる孤独と不安」「社会参加の機会損失による疎外感」「社会保障の貧しさ」「周囲の理解を得ることの困難」に遭遇するといった項目を示し、これらが相互に関連して患者の生活に影響を与えていると説明した。 実際、2017年に公開されたレポートでは、有職者のMG患者(n=680)の27.2%が失職を経験し、35.9%が収入減少を経験していた3)。診療で地域格差、医療格差が大きい 続いて医療者として村井氏、患者として野下 真歩氏(声優)、患者会として恒川 礼子氏(筋無力症患者会 理事長)、一般として渡辺 満里奈氏(タレント)によるトークセッションが行われた。 この中で患者からは寛解しない疾患である以上、増悪した場合の入院と自宅の往復が多々あり、スケジュールを立てるのが大変だという声があった。また、社会的にMGの認知度が低く、病態とも相まって、周りの人に理解されないのが残念との声が聞かれた。そのほか、病名が不安感を高めること、医療についても地域格差、医療格差が大きく、地域によってはいまだに初期からステロイド高用量の治療が行われていたりと均てん化が進んでいないと厳しい意見も聞かれた。これを受けて村井氏も「医療者が新しい治療薬などを知らないか、使いこなせていないことも問題。治療の選択肢が増えても困ることがないように、こうしたセミナーなどで啓発を行っていきたい。また、診断について、ダイレクトに脳神経内科にくる患者は少ない。症状から眼科、耳鼻咽喉科、脳神経外科などを経由して診断がつかずに脳神経内科にたどりつくケースも多く、医療側のMGへの覚知度を上げることも重要」と語った。 そのほか、医療者と患者のコミュニケーションについて、双方の病識に溝があること、患者側から病状の伝え方が難しいことなどが話題に上ったが、メーカなどが配布しているコミュニケーションツールや「MG症状ノート」の活用などで、短時間の診療でも上手に医療者に伝わるように工夫して欲しいと提案があり、セッションを終えた。 同社では、MGの啓発に今回マンガ動画を作成し、広くYouTubeで展開をしている。

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日本人慢性片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性と安全性

 慢性片頭痛(CM)患者に対し、抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブによる治療は有効であり、効果発現が早く、忍容性が良好であることが臨床試験で示されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、日本人CM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、2つの臨床試験(Japanese and Korean CM Phase 2b/3、HALO CM Phase 3)のサブグループ解析を実施した。著者らは、「サブグループ解析の限界にもかかわらず一貫した結果が得られており、日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性および忍容性が裏付けられた」と報告している。Journal of Pain Research誌2023年4月20日号の報告。 両試験では、適格基準を満たしたCM患者を、フレマネズマブ皮下投与月1回群、同3ヵ月に1回群、プラセボ群(4週間隔)にランダムに割り付けた(1:1:1)。主要エンドポイントは、初回投与から12週間における、1ヵ月(28日間)当たりの中等度~重度の頭痛日数のベースラインからの平均変化であった(最初の4週間:MMRM分析、12週間:ANCOVA分析)。副次エンドポイントには、薬物使用や障害など、有効性以外の項目も含まれた。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は、Japanese and Korean CM Phase 2b/3試験に479例、HALO CM Phase 3試験に109例が含まれていた。・両試験ともに、ベースラインおよび治療の特徴は、治療群間で類似していた。・ANCOVA分析による主要エンドポイントのサブグループ解析では、日本人CM患者に対するフレマネズマブ治療はプラセボよりも優れていることが実証された(両試験とも、フレマネズマブ3ヵ月に1回:p=0.0005、フレマネズマブ月1回:p=0.0002)。・MMRM分析では、フレマネズマブ治療の効果発現の早さが確認された。・副次エンドポイントの結果では、日本人CM患者に対するフレマネズマブ治療の有効性がさらに裏付けられた。・フレマネズマブは、最も一般的な有害事象である上咽頭炎および注射部位反応に対する忍容性が良好であった。

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HR+/HER2-転移乳がんへのSG、より長い追跡期間でも有用性持続(TROPiCS-02)/ASCO2023

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、HER2低発現例においても改善がみられたことがすでに報告されている。今回、探索的解析として、より長い追跡期間(12.75ヵ月)におけるPFSとOS、さらにHER2低発現におけるPFSとOSの解析結果を、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 本試験において、SGがPFSを有意に改善(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83)したことはASCO2022で、OSについてはプロトコールでの最終解析である第2回中間解析の結果、有意に改善(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96)したことがESMO2022で発表されている。また、HER2低発現例においてPFSが有意に改善(HR:0.58、95%CI:0.42~0.79)したこともESMO2022で発表されている。今回、探索的解析として、追跡期間を延長し解析した結果が発表された。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注 272例・対照群:TPC(カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリンから選択)271例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年12月1日)時点で、追跡期間中央値は12.75ヵ月となった。・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月で、引き続きPFSの改善を示した(HR:0.65、95%CI:0.53~0.81、nominal p=0.0001)。・OS中央値はSG群14.5ヵ月、TPC群11.2ヵ月で、OSも引き続き改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.65~0.95、nominal p=0.0133)。12ヵ月OS率は、SG群60.9%、TPC群47.1%、18ヵ月OS率はSG群39.2%、TPC群31.7%、24ヵ月OS率はSG群25.7%、TPC群21.1%であった。・HER2 IHC別のPFSは、HER2低発現(HR:0.60、95%CI:0.44~0.82)およびHER2ゼロ(HR:0.70、95%CI:0.51~0.98)ともSG群で有意に改善がみられた。・HER2 IHC別のOSは、HER2低発現(HR:0.75、95%CI:0.57~0.97)およびHER2ゼロ(HR:0.85、95%CI:0.63~1.14)ともSG群で改善がみられた。・ORR、CBRも引き続き改善を示し、DORは延長した。・延長された追跡期間に新たな安全性シグナルはみられなかった。 Tolaney氏は「本試験の追加された追跡期間においてもSGの有用性が持続したことにより、治療歴のある内分泌療法抵抗性のHR+/HER2-転移乳がんに対して、SGが重要で新たな治療であることがさらに補強された」と結論した。

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個別化がんワクチン+ペムブロリズマブ併用の結果に新たな期待/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)とMerck(米国とカナダ以外ではMSD)は、2023年6月5日付のプレスリリースで、切除された高リスク悪性黒色腫患者に対する個別化がんワクチンmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用療法について、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させたと発表。本結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告された。 なお、本試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)については、2022年12月、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用治療で、ペムブロリズマブ単独と比較し再発または死亡のリスクが44%減少した、と発表されている。 試験概要と結果は以下のとおり。 無作為化非盲検第IIb相試験であるKEYNOTE-942試験には、StageIII/IVの悪性黒色腫患者157例が登録された。完全な外科的切除後、患者は無作為にmRNA-4157/V940(mRNA-4157[1mg]を合計9回筋肉内投与)とペムブロリズマブ(200mgを3週間ごとに最大18サイクル[約1年間])を併用する群と、ペムブロリズマブを約1年間単独で投与する群に、2:1で割り付けられ、再発または許容できない毒性が発現するまで治療が継続された。主要評価項目はRFSで、副次評価項目は遠隔転移のない生存期間(DMFS)と安全性である。 本研究の主要な副次評価項目であるDMFSについて、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示し、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させた(ハザード比[HR]:0.347、95%信頼区間[CI]:0.145~0.828、片側検定のp=0.0063)。 mRNA-4157/V940で観察された有害事象は、第I相試験で報告されたものと一致していた。また、ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告された試験で観察されたものと一致していた。治療に関連した重篤な有害事象は、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用群では25%、ペムブロリズマブ単独群では18%で認められた。すべてのグレードにおける主な有害事象は、疲労(60.6%)、注射部位疼痛(55.8%)、悪寒(50.0%)であった。 これに対し、Modernaの上級副社長兼がん治療開発責任者のKyle Holen氏は「遠隔転移や遠隔再発を来すと予後不良である。これらのデータは、ネオアンチゲン療法の可能性を広げる結果となった。他のがん種に対しても期待できるだろう」と述べた。 さらにMerckの上級副社長兼グローバル臨床開発担当のEric H. Rubin氏は「これらDMFSの結果は以前に第IIb相試験のRFSで観察されたデータに基づいており、今年後半にModernaと協力して第III相試験を開始することを楽しみにしている」と展望を語った。

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日本人の炭水化物摂取量と死亡リスクは男女で逆の関係に~J-MICC研究

 これまで、炭水化物や脂質の摂取量と死亡リスクの関連を検討した研究において、一貫した結果が得られていない。そこで、田村 高志氏(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野 講師)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)に参加した8万1,333人を対象として、炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した。その結果、日本人は男性では炭水化物の摂取量が少ないと死亡リスクが高くなり、女性では炭水化物の摂取量が多いと死亡リスクが高くなる傾向がみられた。本研究結果は、The Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月2日号に掲載された。日本人の炭水化物摂取、男性は摂取量が少ないと死亡リスクが有意に高い 35~69歳の男性3万4,893人、女性4万6,440人(それぞれBMI値[平均値]23.7、22.2)をベースライン時(2004~14年)から2017年末または2018年末まで追跡した。食事頻度質問票を用いて炭水化物、脂質、総エネルギー摂取量を推定した。総エネルギー摂取量に占める炭水化物、脂質の割合(炭水化物エネルギー比率、脂質エネルギー比率)別に死亡リスクを評価した。リスク評価において、多変量解析により調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 日本人の炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した主な結果は以下のとおり。・追跡期間(平均8.9年)中に、2,783人の死亡が確認された(男性1,838人、女性945人)。・男性では、炭水化物エネルギー比率が40%未満の群は、50%以上55%未満の群と比較して全死亡リスクが有意に高く(aHR:1.59、95%CI:1.19~2.12)、炭水化物エネルギー比率が低いと全死亡リスクが高くなる傾向がみられた(p for trend=0.002)。・追跡期間5年以上の女性では、炭水化物エネルギー比率が65%以上の群は、50%以上55%未満の群と比較して全死亡リスクが高い傾向にあり(HR:1.71、95%CI:0.93~3.13)、炭水化物エネルギー比率が高いと全死亡リスクが高くなる傾向がみられた(p for trend=0.005)。・男性では、脂質エネルギー比率が35%以上の群は、20%以上25%未満の群と比較してがん死亡リスクが高かった(HR:1.79、95%CI:1.11~2.90)。・女性では、脂質エネルギー比率と全死亡リスク、がん死亡リスクに逆相関の傾向がみられた(それぞれp for trend=0.054、0.058)。 著者らは、本研究結果について「男性では炭水化物の摂取量が少ない場合、女性では炭水化物の摂取量が多い場合、死亡リスクが高くなる傾向がみられた。炭水化物の摂取量が比較的多い日本人成人では、脂質の摂取量が多い女性の死亡リスクが低下する可能性がある」とまとめた。

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mCRPCの1次治療、エンザルタミド+talazoparibでrPFS改善/Lancet

 転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の1次治療において、PARP阻害薬talazoparibとアンドロゲン受容体阻害薬エンザルタミドとの併用療法は、標準治療のエンザルタミド単独療法と比較し、臨床的に意味のある統計学的に有意な画像上の無増悪生存期間(rPFS)の改善をもたらしたことが示された。米国・ユタ大学のNeeraj Agarwal氏らが、26ヵ国(北米、欧州、イスラエル、南米、南アフリカ、アジア太平洋地域)の223施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TALAPRO-2試験」の結果を報告した。PARPとアンドロゲン受容体活性の両方を阻害することは、相同組換え修復(HRR)に関与するDNA損傷修復遺伝子変異の有無にかかわらず、抗腫瘍効果が得られる可能性があった。Lancet誌オンライン版2023年6月4日号掲載の報告。talazoparib+エンザルタミドvs.エンザルタミド単独、rPFSで有効性を比較検証 研究グループは、アンドロゲン除去療法中で無症候性または症状の軽い18歳以上(日本では20歳以上)で、ECOG PSが0/1、全身療法未治療のmCRPC患者を登録し、talazoparib(0.5mgを1日1回経口投与)+エンザルタミド(160mgを1日1回経口投与)群(talazoparib群)、またはプラセボ+エンザルタミド(同上)群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、HRR遺伝子変異の状態(欠損vs.非欠損または不明)、去勢感受性前立腺がんに対するドセタキセルまたは新規ホルモン療法(アビラテロンまたはorteronel)の治療歴(ありvs.なし)で層別化された。 また、無作為化前に、腫瘍組織または/および血液検体を採取し、HRR遺伝子変異について前向きに評価した。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における盲検下独立中央判定(BICR)による画像上のrPFSで、安全性については少なくとも1回試験薬の投与を受けた全患者で評価した。rPFS中央値は、talazoparib併用群では未到達、プラセボ群では21.9ヵ月 2019年1月7日~2020年9月17日に、805例が登録され無作為化された(talazoparib群402例、プラセボ群403例)。全例で腫瘍組織検査が行われ、HRR遺伝子変異あり(HRR欠損)が169例(21%)、HRR遺伝子変異なしまたは不明が636例(79%)であった。 rPFSの追跡期間中央値は、talazoparib群24.9ヵ月(四分位範囲[IQR]:21.9~30.2)、プラセボ群24.6ヵ月(14.4~30.2)であった。予定された主要解析時点で、rPFS中央値はtalazoparib群未達(95%信頼区間[CI]:27.5ヵ月~未達)、プラセボ群21.9ヵ月(16.6~25.1)で、ハザード比(HR)は0.63(95%CI:0.51~0.78、p<0.0001)であり、talazoparib群で画像上の進行または死亡のリスクが37%低下した。 talazoparib群における主な治療関連有害事象は、貧血、好中球減少症、疲労であった。Grade3/4の有害事象は貧血(185/398例、46%)が最も多かったが、用量減量により改善し、貧血によりtalazoparibを中止した患者は398例中33例(8%)のみであった。治療に関連した死亡は、プラセボ群でのみ2例(<1%)報告された。 著者は、「最終的な全生存期間のデータと追加の長期安全性追跡調査により、HRR遺伝子変異の有無にかかわらないtalazoparib併用の臨床的有用性がさらに明確になるだろう」とまとめている。

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心臓移植後の生存率、心停止ドナー心は脳死ドナー心に非劣性/NEJM

 心停止後に体外非虚血性灌流を用いて蘇生させた心臓の移植は、脳死後冷保存された心臓を用いた標準移植と比較して、移植後6ヵ月時のリスク補正後生存率に関して非劣性であることが示された。米国・デューク大学医療センターのJacob N. Schroder氏らが多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。心停止ドナーから得られた心臓の移植の有効性と安全性を、脳死ドナーから得られた心臓の移植と比較したデータには限りがあった。NEJM誌2023年6月8日号掲載の報告。移植用臓器灌流保存装置で保存した心停止ドナーの心臓を移植 研究グループは、米国内15ヵ所の移植センターの待機リストに載っていた成人の心臓移植候補者を、心停止群と脳死群に3対1の割合で無作為に割り付けた。心停止群では、UNOS(United Network for Organ Sharing)の優先順位に従い、心停止ドナーからの心臓または脳死ドナーからの心臓のどちらか先に適合するほうを移植できることとし、脳死群では脳死ドナーからの心臓のみを移植した。脳死ドナーからの心臓は、脳死後に従来の冷却浸漬保存法で保存され、心停止ドナーからの心臓は心停止後に移植用臓器灌流保存装置(Organ Care System Heart、TransMedics製)を用いて保存された。 主要有効性エンドポイントは、as-treated集団におけるリスク補正後の移植後6ヵ月時生存率とし、心停止群と脳死群を比較した。主要安全性エンドポイントは、移植後30日時点の移植心臓に関連する重篤な有害事象とした。6ヵ月時生存率、心停止ドナーの心臓移植群94%、脳死ドナーの心臓移植群90% 2019年12月~2020年11月に、計297例が心停止群(226例)または脳死群(71例)に割り付けられた。全体で180例が移植を受け、割り付けにかかわらず心停止ドナーの心臓移植例が90例、脳死ドナーの心臓移植例が90例であった。このうち、それぞれ80例および86例、計166例がas-treated解析に組み込まれた。 as-treated集団におけるリスク補正後6ヵ月時生存率は、心停止ドナーの心臓移植群で94%(95%信頼区間[CI]:88~99)、脳死ドナーの心臓移植群で90%(84~97)、両群の最小二乗平均差は-3ポイント(90%CI:-10~3、非劣性のp<0.001、非劣性マージン20ポイント)であった。 移植後30日時点における移植心臓に関連する重篤な有害事象の発現頻度(患者1例当たりの平均件数)に、両群で実質的な差はなかった。

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DMR(変性性僧帽弁閉鎖不全症)に対するMitraClipのリアルワールドデータ(解説:上妻謙氏)

 重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する経カテーテル僧帽弁クリップ術(MitraClip)は、低侵襲で僧帽弁の逆流を制御する心不全治療として定着してきた。本論文は、STS/ACC TVTレジストリーという世界を代表する米国の国家データベースの結果をまとめたリアルワールドデータである1)。 MRは、弁尖または腱索、乳頭筋の器質的異常によって生じる一次性MR(器質性MR)と、左室や左房の拡大または機能不全に伴って生じる二次性MR(機能性MR)に大別される。一次性MRのうち弁尖や腱索、乳頭筋などの変性によるdegenerative MRの症例の成績をまとめている。2014年1月から2022年6月まで、6万883例にMitraClip術が施行された。このうち1万9,088例が今回の解析対象となった。STS-PROMスコアで僧帽弁形成術の高リスクとされる8点以上の症例が21.9%、2~8点の中等度リスクが68%で、低リスクは10%のみであった。NYHA III度以上の重症心不全が78%を占め、年齢の中央値も82歳と高齢であった。弁尖の逸脱が8割を超えており、弁尖のフレイルも6割以上で認められた。 結果として、30日後のMRが中等度以下に低下して成功と定義される症例が89%であった。この成功率は2014年の81.5%から2022年の92.2%と大きく向上している。MRの残存の基準をもっと厳しくした場合の成功率は、軽度以下のMRかつ僧帽弁圧較差10mmHg未満の症例の割合は2014年44.6%から71.7%とさらに大きく向上した。臨床的アウトカムは、入院中死亡率1.1%、脳卒中0.6%、緊急手術や治療が必要になった症例が1.1%であった。弁尖からクリップが外れてしまうsingle leaflet device attachment(SLDA)とデバイスの塞栓症が本手術の主要な合併症であるが、こちらはそれぞれ0.9%と0.08%の低頻度であった。30日死亡率は2.7%、脳卒中1.2%、再治療0.97%で、NYHA III/IV度の重症心不全は30日の時点で15.8%まで低下した。 1年の臨床的アウトカムは、死亡率15.4%、再治療3.4%、心不全入院9.3%であった。MR低減の成功が得られた患者は、成功しなかった患者と比べて1年死亡率14.0% vs.26.7%、心不全入院率8.4% vs.16.9%、再治療2.1% vs.13.5%と明らかに予後が良好であった。とくに軽度以下の残存MRで僧帽弁圧較差5mmHg以下の症例が、最も予後が良好であった(1年死亡率11.4%)。外科手術リスクの高い患者はMitraClipを行っても死亡率や心不全入院率が高かった。 このスタディ結果は、MitraClipを用いた変性性MRに対する治療がリアルワールドで安全性と有効性が良好であることを示している。機能性MRに対してはCOAPT試験で、適切な時期に治療すれば至適薬物治療に対し大きな有効性が示されてきたが2)、器質性MRについては薬物療法との比較データは今まで存在しない。今回の研究で、重症MRが残存してしまった症例では、成功例に対し予後が悪いことは、薬物療法との間接的な比較で示されている。 一方、器質性MRについては、外科手術との比較を行ったEVEREST II試験で外科手術に対しMitraClipは再治療の必要性が高く、外科手術が可能な患者においては外科手術が第1選択とされてきた3)。本研究は無作為化試験でないため、外科手術との直接比較はできないが、MRの減少に成功した症例における1年での再治療の率が2%しかないことは特筆に値する。そもそもMitraClipはすべてのMRの治療が可能なデバイスではなく、MRの吹いている場所、弁の形態、弁尖の長さ等で治療に適さない症例も多く存在する。適切な患者を選択し、適切な手技で治療を行えば、非常に有効で安全なデバイスであることが示されたといえる。心不全患者は外科手術がハイリスクであることが多く、想像以上に多くのMR患者が手術を受けずに心不全を繰り返していることが多いので、そういった患者に対する治療選択として、心不全患者を診療する医師は認識しておく必要がある。

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亭主を見張れ【Dr. 中島の 新・徒然草】(481)

四百八十一の段 亭主を見張れ雨が降ったりやんだりの天気が続いています。いつも梅雨ってのはこんな感じでしたかね。私が子供の頃は毎日のように雨が降っていたような気がするのですが。さて今回、来院されたのは80歳前後のご夫婦。最近になってご主人の認知症が進んできた、ということで近医から脳外科外来に紹介されてきました。なんでも、奥さんが私にかかっているらしいです。確かに顔は見たことがあるような気がするのですが、何の病気でどういう名前だったか、さっぱり思い出せません。認知症が進んできたのは私のほうかも?高齢のご夫婦の受診にありがちですが、お2人がそれぞれに好きなことを言い始めました。ご主人のほうは、よく睡眠中に歩き回ってしまうとのこと。患者「それが、○○病院の精神神経科で薬をもらったらピタリと止まったんですわ」中島「ほう、何という薬ですか」患者「うーん、わからん。持ってきたらよかった」この台詞をこれまでの人生でどれだけ聞かされたでしょうか。たぶん100回と1,000回の間ですね。奥さん「この人はね、寝ている時に叫び出して物を投げてくるんですよ」中島「それは大変ですね」奥さん「それが当たらないように布団や枕で間に衝立をしているんですけど、それを越えて物が降ってくるんです」中島「じゃあ、ご主人の近くに物を置かないようにしておけばいいのでは?」奥さん「それが……災害に備えて懐中電灯やら救急箱やらを枕元に置いているんですよ」近医からの診療情報提供書では「頭部MRIなどの検査をお願いします」とあります。適応はかなり疑問ですが、ひょっとしたら巨大な脳腫瘍が隠れているかもしれません。念のために撮影してみると、とくに問題はなさそうでした。問題なしとなると、こちらも強気に出ることができます。中島「誰がどうみても○○病院精神神経科の守備範囲じゃないですか」奥さん「○○病院にかかっているなんて知らんがな、そんなもん」中島「ご主人の行動はちゃんと把握しておかないと。浮気されてもわかりませんよ」奥さん「浮気って、この人が今までどんだけ浮気してきたか」そんなに色男には見えないご主人ですけど。奥さんは憤懣やるかたなし、といった感じでまくしたてはじめました。こうなったら終わりが見えなくなります。患者「20年前に引退したで」たぶん浮気のことなんでしょう。それにしても、60歳までは浮気していたってことになりますね。奥さん「もう腹が立つのも慣れましたわ」中島「奥さんが納得しているんなら実害はないかもしれんけど」奥さん「納得してるんじゃなくて諦めてるんです」中島「諦めているっていってもね、隠し子がいたり、相手の女が出てきて財産を持っていかれたりせんとも限りませんよ」アドバイスしているのか煽っているのか?中島「まずは奥さんが○○病院に一緒について行くのが第一です」奥さん「でも、クリニックの先生が『国立で診てもらえ』って」中島「いやいやいや。MRIで悪いところがないのだから、私にできることは何もありませんよ」その日は昼から出張の予定が入っていました。奥さん「でもこの人が物を投げつけてくるんですよ」中島「物が飛んでくるのが困るんだったら、別の部屋で寝たらどうですか?」奥さん「『国立で診てもらえ』ってクリニックの先生が……」中島「奥さんが○○病院に一緒に行かないと隠し子が出てきますよ」もう自分でも何を言っているのか意味不明になってきました。とにかく、奥さんの無限ループには私も無限ループで対抗です。ようやくのことで、ご夫婦にお引き取りいただきました。冷たい医者だと思われたかもしれません。でも、叫ぼうが物を投げようが、命には別条ないでしょう。思わぬ時間を取ってしまいましたが、何とか出張には間に合いました。それにしても「隠し子が出てきますよ」って。自分でも呆れるアドバイスでした。最後に1句梅雨なれど 亭主を見張れ ついていけ

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伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 1

今回のキーワード意図共有認知能力連合学習行動遺伝学非認知能力(社会情動的スキル)モンテッソーリ教育とくにまだ幼い子供のいるみなさんは、賢くさせるために何かしていますか? 幼児教室に通わせたり、知育動画を見させたり、ドリルを解かせたり…さらに、最近ますます注目されているモンテッソーリ教育を受けさせたり…ところで、その効果について考えたことはありますか? 効果はあるに決まっていると思い込んでいませんか? そして、やらせるだけで満足していませんか?今回は、前編で取り上げた象徴機能のメカニズムとその起源を踏まえて、子供を賢くさせるためには賢くさせようと特別なことをしないという逆説の訳を説明します。そして、幼児教育ビジネスの不都合な真実に迫ります。幼い子が言葉を覚えるために必要なことは?前編での象徴機能の発達のプロセスや進化の歴史を踏まえると、幼い子が言葉を覚えるために必要なことが見えてきます。それは、前編でキーワードとなった意図共有、つまり、心が通じ合うことです。そのためには、日常生活の中で出会ういろんな人との自由な相互作用が必要です。「water」と発したヘレン・ケラーのように、実際に触れたり味わったりすることも含めて、五感を総動員して、生活の一部として体験することです。つまり、言葉は、ただ話すために話すという目的そのものではなく、相手がいて楽しいから話す・そうしないと困るから話すという手段になっているということです。そして、インプットだけでなく、自由なアウトプット(意図共有)もすることで初めて身になるということです。特別な幼児教育とは?ヘレン・ケラーは、「見えない、聞こえない、話せない」という障害によって、サリバン先生による特別な教育が必要でした。発達障害の子供にも、療育という特別な教育が必要です。一方で、とくに障害がない子供についてはどうでしょうか?たとえば、難しい言葉や英単語を覚えたり、先取り学習を幼児教室、知育動画、ドリルなどで認知能力の特別なトレーニングをすることです。これらが特別であるためには、一般的な保育園での教育とは差別化される必要があります。しかし、実はこれらは、前編で紹介した連合学習、つまり構造化されたパターン学習にすぎません。その場で楽しくなるような工夫はある程度されてはいますが、日々の生活の中で必要になることがありません。逆に言えば、もし必要になるのであれば、日常生活の中で学べば良いだけの話で、特別にはなりません。そもそも、幼児教育での構造化されたパターン学習は、禁止行為などのルールの学習に限定されます。つまり、これは、「water」と発する前のヘレン・ケラーや、絵文字や一方的に要求するための手話を学んだだけのチンパンジーと同じ状況です。それでも、何かを学んだわけだから、それがその後に役に立つと考える方もいるでしょう。しかし、みなさんも薄々お気付きかも知れませんが、人間の脳は巧妙に進化していて、日常生活に必要ないものはどんどん忘れていくようになっています。実際の行動遺伝学の研究では、認知能力への親の取り組みの違い(家庭環境)の影響度は、幼児期には35%と、あるにはあるのですが、成人期になるにつれて20%と目減りしています。この詳細については、関連記事5をご覧ください。また、非認知能力(社会情動的スキル)が高まると唱える教育関係者もいます。しかし、これは、ヘックマンの研究(2000)を誤解したものです。この研究の対象となった幼児は、経済的な貧困層(幼児教育などの子育てが適切に行われていないネグレクトの可能性が高い家庭)に限定されています。一般的な家庭についてまで拡大解釈はできません。なお、ヘックマンの研究の詳細については、関連記事6をご覧ください。逆に、行動遺伝学の研究から、非認知能力への親の取り組みの違い(家庭環境)の影響度は、幼児期から成人期まで変わらずほぼ0%と推定できます。推定としたのは、非認知能力は、その評価のしにくさから、これ自体の行動遺伝学の研究が見当たらないため、代わりに最も近い概念である性格で置き換えたからです。それにしても、驚くべきことです。この詳細については、関連記事7をご覧ください。つまり、幼児期に特別な幼児教育として何かを、より早くやったからといって、より多くやったからといって、その効果は一時的で限定的でしかないわけです。特別な幼児教育と一般的な保育園の教育に最終的な違いがほとんどない点で、何かを学ぶ必要はもちろんありますが、それが特別な何かである必要はないわけです。少なくとも親子ともに楽しんでやっているのであればやる意味が見いだせます。しかし、将来的に意味があると盲信して親子ともに我慢してやっているのであれば、それは、時間とお金と労力の壮大な無駄使いであるばかりでなく、不幸を招いていると言えるでしょう。次のページへ >>

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伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 2

モンテッソーリ教育も効果ははっきりしない!?モンテッソーリ教育も、一般的な幼児教育とは差別化され、世の中で成功している有名人がこの教育を受けていたと喧伝されています。この教育の中身については割愛しますが、この効果については、世界的な論文誌Natureの姉妹紙npj Science of Learning(2017)のレビューにおいて、「モンテッソーリ教育の科学的根拠は弱い」と結論付けられています6-8)。よくよく考えると、提唱者のモンテッソーリ先生が活躍したのは、ヘレン・ケラーと同じ20世紀前半です。当時は、体罰が容認され、今と比べものにならないほど幼児教育が行き届いていませんでした。だからこそ、モンテッソーリ教育にも意味があったでしょう。ヘレン・ケラーだって裕福な家庭に生まれたからこそ、あそこまでの教育が受けられました。しかし、現代において、「特別」な幼児教育をしても、その効果が特別にはならなくなってきているということは、保育園をはじめとする幼児教育が十分に行き届いていることを意味します。つまり、近代だからこそ広まったモンテッソーリの理念は、現代で拡大解釈され、幼児教育ビジネスにいいように利用されてしまっていることになります。これが、幼児教育ビジネスの不都合な真実です。「奇跡の人」とは?タイトル「奇跡の人」(The Miracle Worker)とは、ヘレン・ケラーではなく、ヘレン・ケラーに学ぶ楽しさを気付かせたサリバン先生のことだったわけですが、幼児教育ビジネスの不都合な真実を知った今、私たちの誰もが日々の生活の中でその「奇跡」を無理なく起こせることがわかります。これが、冒頭で触れた「子供を賢くさせるためには賢くさせようと特別なことをしない」という逆説の訳です。親が日常生活の中で、できる範囲でほどほどに子供にかかわり、その自由なやり取りを親子で一緒に楽しむことだけで、十分に子供の豊かな発達を育むことができるとわかりました。この子育てのあり方によってこそ、私たちもサリバン先生と同じく「奇跡の人」になることができるのではないでしょうか?6)「モンテッソーリ教育」には本当に効果があるのか 専門家たちが追跡調査を実施:クーリエ・ジャポン、20237)【解説】モンテッソーリ教育とは?その効果は?早期教育の科学的根拠:Suzakuの研究所8)モンテッソーリ教育 科学的根拠のレビュー:Marshall C、npj Science of Learning<< 前のページへ■関連記事そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 1そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 1ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 1

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第49回 カンファや論文執筆は自己研鑽か?

「医師の働き方改革」が近づくPhoto ACより使用2024年4月から始まる「医師の働き方改革」に備えて、多くの医療機関では労働時間の管理を徹底するようシフトしていると思います。私は、医師という職業はうまく時間で括るのは難しい職種だと認識しており、もう少し柔軟な側面を容認したほうがよいのではと感じていますが、世の中の動きはそれを許してくれないようです。どの病院でも議論の俎上に載るのが、カンファレンスや論文執筆は、業務か自己研鑽のどちらかということです。記憶に残っている人も多いと思いますが、2022年2月に岐阜県の病院で医師への残業代の未払いがあったと報道されました。論文執筆や学会の準備などで費やした時間外労働に対する手当が支給されていなかったというものでした。「上司の命令があるかどうか」が分水嶺この命題の結論は実はもう決まっていて、上司がそれを命令したかどうかがポイントになります。たとえば、専門医などの資格を取得するためにレポートをまとめたり、学会発表や論文投稿の準備をしたりする場合、上司の命令や指導が入っていれば業務だということです。しかし、資格取得や論文業績を病院のためと思ってやっている人はマイノリティで、自身のキャリアパスのためという人がほとんどではないでしょうか。私もどちらかといえば、学会発表や論文発表は自己研鑽だと思ってやってきた世代です。そのため、院内である程度足並みがそろっていないと、「働き方改革」が到来したときに「同じ業務なのに人によって労働時間のとらえ方が違う」ということが、いろいろとひずみを生む恐れがあります。1時間で論文を書き上げる人への手当よりも、10時間で同じ論文を書き上げる人に10倍の手当が渡るのは、不公平だという意見も出てくるかもしれません。神奈川労働局が示している「医療従事者の労働時間」が非常によくまとまっているので、以下に示します1)。所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、上司の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しない。当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当する。■論文執筆について上司や先輩である医師から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。ただし、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されているため、その実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、当該研鑽が行われる時間については労働時間に該当する。上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があっても、自由な意思に基づき研鑽が行われていると考えられる例としては、次のようなものが考えられる。勤務先の医療機関が主催する勉強会であるが、自由参加である学会等への参加・発表や論文投稿が勤務先の医療機関に割り当てられているが、医師個人への割当はない研究を本来業務とはしない医師が、院内の臨床データ等を利用し、院内で研究活動を行っているが、当該研究活動は、上司に命じられておらず、自主的に行っている■一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。ただし、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当する。■手技を向上させるための手術の見学上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があったとしても、業務上必須ではない見学を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合、当該見学やそのための待機時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。ただし、見学中に診療を行った場合については、当該診療を行った時間は、労働時間に該当すると考えられ、また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合については、見学の時間全てが労働時間に該当する。まとめ医師が極度に不足している地域では、「働き方改革」自体が実現不可能で、最初から形骸化しそうな雰囲気です。ほとんどの時間を何らかの形で拘束されて過ごしている医師にとっては、絵に描いた餅のような話なのかもしれません。しかし、「やらねばならぬ」改革ですから、ひとまず外堀から埋めて、私たち医師が働きやすい世界を作っていくしかないようです。参考文献・参考サイト1)医療従事者の労働時間について(神奈川労働局)

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転移乳がんへのADC後のADC投与、交差耐性の可能性/ASCO2023

 米国では転移を有するHR+/HER2-およびトリプルネガティブ(TN)乳がんにsacituzumab govitecan(SG)が、またHER2低発現乳がんにトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が承認され、複数の抗体薬物複合体(ADC)が適応となる患者が増えている。しかし、ADCは抗体標的やペイロードにより交差耐性の可能性があるため、最適な投与順序は不明である。今回、転移を有するHER2-乳がんに対して調査したところ、2剤目のADCに対して交差耐性を示す患者がいる一方、1剤目と抗体標的が異なる場合など、2剤目でも持続的な奏効を示す患者もいることがわかった。米国・Massachusetts General Hospital Cancer CenterのRachel Occhiogrosso Abelman氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告した。 本試験の対象は、HER2+を除いた転移を有する乳がんに対して ADCを2剤以上投与された患者とした。なおトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)はADCに含めていない。2剤目のADCにおける最初の病期再分類時もしくはその前に病勢進行(PD)となった場合に「交差耐性」と定義し、1剤目と2剤目の抗体標的およびペイロードの違いによる交差耐性を調べた。また、サブグループ別に各状況での無増悪生存期間(PFS)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・2014年8月~2023年2月に193例にADCが投与され、うち35例が2剤以上投与されていた(HR+/HER2-:15例、TN:20例、HER2低発現:24例)。抗体標的の種類は、1剤目はHER2が8例、Trop2が26例、その他が1例で、2剤目はHER2が14例、Trop2が19例、その他は2例だった。ペイロードの種類は、1剤目は35例すべてがトポイソメラーゼ阻害薬、2剤目はトポイソメラーゼ阻害薬31例、微小管阻害薬とその他がそれぞれ2例だった。・交差耐性は、1剤目と2剤目が同じ抗体標的でペイロードが異なる場合は12例中8例(66.7%)、抗体標的もペイロードも異なる場合は19例中8例(42.1%)に認められた。・PFS中央値は、HR+/HER2-乳がんでは1剤目が6.9ヵ月、2剤目が2.4ヵ月(p=0.051)、TN乳がんでは1剤目が8.2ヵ月、2剤目が3.0ヵ月(p=0.004)と2剤目が短かった。・T-DXdとSGの投与順別のPFS中央値は、HR+/HER2-乳がんでは、SG→T-DXdの場合、SGが4.9ヵ月、T-DXdが2.8ヵ月、T-DXd→SGの場合、T-DXdが7.1ヵ月、SGが2.4ヵ月だった。TN乳がんでは、SG→T-DXdの場合、SGが9.1ヵ月、T-DXdが2.6ヵ月、T-DXd→SGの場合、T-DXdがNA、SGが2.2ヵ月だった。 Abelman氏は「最適なADC投与順序を導くために、これらの結果を検証して耐性機序を調べるさらなる研究が必要」と述べた。

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併存症のある患者での注意点~高齢者糖尿病診療ガイドライン2023/糖尿病学会

 5月11日~13日に城山ホテル鹿児島をメイン会場に第66回 日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。 高齢者の糖尿病患者では、糖尿病とは別に併存症があるケースが多い。では、糖尿病以外の疾病もある高齢者の糖尿病患者の診療はどうあるべきであろう。 本稿では、「シンポジウム10 より良い高齢糖尿病ケアを目指して」より「高齢者糖尿病の合併症と併存症」(杉本 研氏 [川崎医科大学総合老年医学])の口演をお届けする。 2023年5月に『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2023』(以下「ガイドライン」と略す)が上梓され、今回の口演は、このガイドラインの内容を踏まえて構成されている。 今回のガイドラインの改訂では、合併症と併存症につき、「併存症」が独立して章立てされた。また、併存症の予防・管理が、健康寿命の延伸には重要となることが改めて確認され、引き続き、高齢の糖尿病患者の診療では、平均余命の減少と低血糖の高リスクをどのように防止するかが重要とされている。 とくに杉本氏は「高齢者の併存疾患で注意したいのが、動脈硬化性疾患であり、高齢者のADLとQOLを大きく損ない健康寿命などに影響を与える」と診療での注意点を強調した。 続いて先のガイドライン中で「高齢者の併存疾患」を取り上げ、重要なポイントを説明した。 なお、ガイドラインでは、「CQ」と「Q」に分けて、「CQ」は「推奨度(推奨グレード)を問う疑問として回答が可能な臨床的疑問」を、「Q」は「CQ以外の臨床的疑問(推奨グレードは付さない)」について記述している。■高齢者の糖尿病治療が認知機能などの低下抑制になるかは不明 CQ V-3「高齢者糖尿病における(厳格な)血糖コントロールは認知機能低下・認知症発症の抑制に有効か?」というCQでは「血糖コントロールが認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU:推奨するだけの明確根拠がない)、「糖尿病治療薬による治療が認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU)として研究の余地を残している。 Q V-4「高齢者糖尿病の高血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病または高血糖は、フレイル、サルコペニアの危険因子である」とされ、これについて杉本氏は「8つのメタ解析から糖尿病はフレイルの危険因子となり(オッズ比1.48)1)、サルコぺニアはBMI25以下で増加する」と説明した。 同様にQ V-5「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコぺニアに危険因子である」としている。 Q V-6「高齢者糖尿病における血糖コントロールは筋量や筋力の維持に有効か?」というQでは「高齢者糖尿病の血糖コントロールが筋量や筋力の維持に有効かは明らかではない」としている。ただ、HbA1cとサルコぺニアの関係では、いくつかの論文で弱い相関を示唆するものもあり、今後研究が待たれる。また、薬物治療の影響については、フレイルとSGLT2阻害薬との関係は「現状では『明らかでない』としか言えない」と杉本氏は説明した。 Q V-8「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子であり、インスリン使用者ではとくに注意を要する」と転倒への注意を記載している。 Q V-9「高齢者糖尿病における血糖コントロールは転倒の予防に有用か?」というQでは「高齢者糖尿病における血糖コントロール状態は転倒に影響するが、厳格な血糖コントロールの影響は明らかではない」、「高齢者糖尿病における血糖コントロールの改善が転倒の予防に有用であるかは不明である」と研究の余地を残している。■高齢者糖尿病の心不全の予防・改善に糖尿病治療薬は有効か 悪性腫瘍や心不全、multimorbidity(多疾患罹患)についても触れ、とくに心不全、multimorbidityでは次の3つのQについて説明を行った。 Q V-16「高齢者糖尿病において糖尿病治療薬は心不全の予防・改善に有効か?」というQでは、「高齢者糖尿病においてSGLT2阻害薬は心不全の予防・改善に有効な可能性がある」とする一方で「高齢者糖尿病においてDPP-4阻害薬が心不全リスクに及ぼす影響は明らかではない」と記載している。 そして、このQに関して杉本氏は、SGLT2阻害薬による心不全への影響は70歳以上でより良かったとする報告2)がある一方で、有意なBNPの低下がなかったとする報告もある3)ことを述べ、自験例としながらもSGLT2阻害薬で左室心筋重量係数(LVMI)の低下がみられたことを報告した。 Q V-18「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすいか?」というQでは、「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすい」と記載している。 また、Q V-19「高齢者糖尿病のmultimorbidityではどのような点に注意すべきか?」というQでは「高齢者糖尿病のmultimorbidityにどのような対応を行うべきかのエビデンスは不足しているが、低血糖に注意し、多職種で患者・家族の意思決定の支援をしながら目標を設定していくことが望ましい」と記載している。 今回のガイドラインを受け杉本氏は75歳以上では4つ以上の疾患の合併割合が多くなること、とくに認知症、腎機能不全、骨折が多くなることを指摘するとともに、「重症低血糖では、糖尿病治療薬もインスリンやSU薬など3剤以上の併用も多くなり、ポリファーマシーへの配慮も必要」と述べ、口演を終えた。■参考文献1)Hanlon P, et al. Lancet Healthy Longev. 2020 Dec;1:e106-e116.2)Martinez FA, et al. Circulation. 2020;141:100-111.3)Tamaki S, et al. Circ Heart Fail. 2021;14:e007048.

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高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR・ALK遺伝子変異を有する患者は除外)・評価項目:レジメン別にみたOSとPFS、PD-L1発現状況別にみたOSとPFS(傾向スコアマッチングを実施)、安全性 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値78歳(範囲:75~95歳)、男性78%、ECOG PS 0または1が84%、PD-L1陰性(Tumor Proportion Score[TPS]1%未満)/低発現(TPS 1~49%)/高発現(TPS 50%以上)/不明がそれぞれ22%/31%/33%/14%であった。・レジメンの割合は、ICI+化学療法28%、ICI単剤34%、プラチナダブレット25%、単剤化学療法12%であった。・レジメン別にみたOS中央値は、ICI+化学療法群20.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.1~23.6)、ICI単剤群19.8ヵ月(95%CI:16.5~23.8)、プラチナダブレット群12.8ヵ月(95%CI:10.7~15.6)、単剤化学療法群9.5ヵ月(95%CI:7.4~13.4)であった。・レジメン別にみたPFS中央値は、ICI+化学療法群7.7ヵ月(95%CI:6.5~8.7)、ICI単剤群7.7ヵ月(95%CI:6.6~8.8)、プラチナダブレット群5.4ヵ月(95%CI:4.8~5.7)、単剤化学療法群3.4ヵ月(95%CI:2.6~4.0)であった。・傾向スコアマッチング後のPD-L1発現状況別にみたOSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のハザード比[HR]は、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.98(95%CI:0.67~1.42)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.11(95%CI:0.65~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.92(95%CI:0.55~1.56)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・PD-L1発現状況別にみたPFSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のHRは、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.92(95%CI:0.67~1.25)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.22(95%CI:0.71~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.86(95%CI:0.56~1.31)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・Grade3以上のirAEは、ICI+化学療法群24.3%(86例)、ICI単剤群17.9%(76例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.03)。・肺臓炎の発現率(全Grade)は、ICI+化学療法群23.4%(83例)、ICI単剤群15.6%(66例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.006)。・ステロイドを必要としたirAEは、ICI+化学療法群32.5%(115例)、ICI単剤群24.7%(105例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.02)。 植松氏は、「リアルワールドにおいて、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、高齢NSCLC患者の生存成績を改善せず、Grade3以上のirAEの発現率を増加させた。本結果から、PD-L1陽性の高齢NSCLC患者には、ICI単剤での投与が推奨される可能性がある」とまとめた。

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早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJM

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者に対し、axicabtagene ciloleucel(アキシカブタゲン シロルユーセル、axi-cel)療法による2次治療は、標準治療と比べて全生存期間(OS)を有意に延長したことが確認された。米国・テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターのJason R. Westin氏らが、359例を対象に行った第III相無作為化比較試験「ZUMA-7試験」の長期追跡評価(期間中央値47.2ヵ月時点)の結果を報告した。axi-celは、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法製品で、ZUMA-7試験の主要アウトカムの解析において、無イベント生存(EFS)を有意に延長したことが示されており、長期アウトカムのデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月5日号掲載の報告。最初の患者無作為化後5年時点で分析 ZUMA-7試験は、早期再発(1次化学免疫療法後12ヵ月以内に再発)または難治性(1次治療に抵抗性)LBCLの18歳以上の患者を対象とし、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、axi-cel療法または標準治療(化学免疫療法2~3サイクル、奏効が得られた患者には続けて高用量化学療法+自家幹細胞移植)を行い追跡評価した。 2018年1月25日~2019年10月4日に、被験者計359例がaxi-cel療法群(180例)または標準治療群(179例)に無作為化された。 主要アウトカムはEFSで、主な副次アウトカムは奏効とOSであった。 本論では、事前規定のOS解析(最初の患者を無作為化後5年時点で評価)の結果が報告されている。既報の主要アウトカムのEFSについては、axi-cel療法群が標準治療群よりも有意に優れたことが示され(ハザード比[HR]:0.40、層別化log-rank検定のp<0.001)、追跡期間中央値24.9ヵ月時点で、EFS期間中央値はaxi-cel療法群8.3ヵ月、標準治療群2.0ヵ月であり、同24ヵ月時点のEFS率はそれぞれ41%、16%だった。奏効が認められたのはaxi-cel療法群83%、標準治療群50%であり、完全奏効(CR)が認められたのは、それぞれ65%、32%だった。4年PFS率、標準治療群24%に対しaxi-cel療法群42% 追跡期間中央値47.2ヵ月(範囲:39.8~60.0)時点で、死亡はaxi-cel療法群82例、標準治療群95例で報告された。 OS中央値は、axi-cel療法群は未到達であり、標準治療群は31.1ヵ月だった。推定4年OS率は、それぞれ54.6%、46.0%で(死亡に関するHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.98、両側log-rank検定のp=0.03)、これらaxi-cel療法による生存の改善は、患者の74%で原発性難治性疾患やその他のハイリスク要因が認められたITT集団で観察された。 治験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)中央値は、axi-cel療法群14.7ヵ月、標準治療群3.7ヵ月であり、推定4年PFS率はそれぞれ41.8%、24.4%だった(HR:0.51、95%CI:0.38~0.67)。 EFS主解析以降に、新たな治療関連死は発生しなかった。

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複数流産歴のある遺伝性血栓症女性への低分子ヘパリン、出生率を改善せず/Lancet

 2回以上の流産歴があり、遺伝性血栓性素因による特発性血栓症の確定診断を受けた女性に対し、低分子ヘパリン(LMWH)投与は生児出生率の増加に結び付かないことが示された。英国・ウォーリック大学のSiobhan Quenby氏らが、欧米5ヵ国の病院で行った国際非盲検無作為化対照試験「ALIFE2試験」の結果を報告した。抗凝固療法は、不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性の流産回数と有害妊娠アウトカムを減らす可能性が示唆されており、研究グループは、同女性集団におけるLMWH vs.標準治療を評価した。結果を踏まえて著者は、「不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性にLMWHの使用は推奨しない。また、不育症の女性に遺伝性血栓性素因のスクリーニングを行わないことを推奨する」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年6月1日号掲載の報告。妊娠7週目までに低用量LMWHを投与 ALIFE2試験は、英国(26病院)、オランダ(10)、米国(2)、ベルギー(1)、スロベニア(1)の40病院で被験者を募り、18~42歳で、流産歴2回以上、遺伝性血栓性素因による特発性血栓症の確定診断を受け、妊娠を試みている、もしくは妊娠7週目以前の女性を対象に行われた。 尿検査で妊娠を確認後、研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には標準治療+低用量LMWH投与(LMWH群)、もう一方には標準治療のみ(標準治療群)を行った。LMWH投与は妊娠7週目までに開始し、妊娠終了まで継続した。 主要アウトカムは生児出生率で、データが入手可能な女性全員を対象に評価した。安全性アウトカムは、出血、血小板減少症、皮膚反応などで、無作為化の対象で安全性イベントを報告した全員について評価した。生児出生率、LMWH群72%、標準治療群71%で同等 2012年8月1日~2021年1月30日に、1万625例が適格性評価を受け、428例が試験登録され、うち妊娠が確認された326例が無作為化された(LMWH群164例、標準治療群162例)。 生児出生率は、LMWH群が72%(主要アウトカムデータを入手できた162例中116例)、標準治療群が71%(同158例中112例)だった(補正後オッズ比:1.08[95%信頼区間:0.65~1.78]、絶対群間リスク差:0.7%[同:-9.2~10.6])。 有害イベントは、LMWH群164例中39例(24%)、標準治療群162例中37例(23%)で報告された。

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自殺念慮の検出に有用な兆候は

 自殺の兆候を有するうつ病患者は、プライマリケアの臨床現場で見逃されることが少なくない。久留米大学の藤枝 恵氏らは、初診から6ヵ月間の中年期プライマリケア患者における自殺念慮を伴ううつ病の予測因子を調査した。その結果、起床時の疲労感、睡眠状態不良、職場の人間関係の問題は、プライマリケアにおける自殺念慮を伴ううつ病の予測因子である可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年4月17日号の報告。 対象は、日本の内科クリニックを受診した35~64歳の新規患者。自己記入式アンケートと医師のアンケートを用いて、ベースライン特性を収集した。自殺念慮を伴ううつ病は、登録時および6ヵ月後にZungうつ病自己評価尺度(SDS)、気分プロフィール検査(POMS)を用いて評価した。自殺念慮を伴ううつ病の調整オッズ比(aOR)を算出するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。関連因子の感度、特異性、尤度比も算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者387例中13例(3.4%)が6ヵ月時点で自殺念慮を伴ううつ病であると評価された。・性別、年齢、関連因子で調整した後、統計学的に有意な自殺念慮を伴ううつ病のaORが認められた因子は以下のとおりであった。 ●1回/月以上の起床時の疲労感(aOR:7.90、95%CI:1.06~58.7) ●1回/週以上の起床時の疲労感(aOR:6.79、95%CI:1.02~45.1) ●睡眠状態の悪さ(aOR:8.19、95%CI:1.05~63.8) ●職場における人間関係の問題(aOR:4.24、95%CI:1.00~17.9)・本調査は、サンプルサイズが小さかったため、本結果を確認するためには、より多くのサンプルサイズを用いた研究が必要とされる。

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