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重症化リスクの高いコロナ患者、ニルマトレルビルで入院・死亡減/BMJ

 重症化リスクの高いSARS-CoV-2感染者へのニルマトレルビル投与は非投与と比較して、ワクチン非接種者・接種者、ブースター接種者、再感染者において、30日時点の入院または死亡のリスクが低下していたことが明らかにされた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを活用し、電子カルテを用いた無作為化ターゲット模倣試験(emulation of a randomized target trial)で明らかにした。ニルマトレルビルの有効性の検証は、オミクロン変異株が優勢となる前、ワクチン非接種のSARS-CoV-2感染者とSARS-CoV-2感染歴のない人々を対象に行われたものであった。BMJ誌2023年4月11日号掲載の報告。非投与と比較、検査陽性から30日以内の入院/死亡の発生を評価 検討は、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを用いて、2022年1月3日~11月30日に、COVID-19重症化リスク因子を1つ以上有するSARS-CoV-2感染陽性者25万6,288例を対象に行われた。このうち3万1,524例は、SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビル投与を受け、22万4,764例は同投与を受けなかった。 検討では、SARS-CoV-2検査陽性から30日以内の入院または死亡の複合アウトカムが評価された。 SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビルを開始した場合の有効性を非投与と比較して推定。有効性は、30日時点の入院または死亡リスクの低下とし、ワクチン接種を受けていない人、1回または2回接種を受けた人、ブースター接種を受けた人、およびSARS-CoV-2初回感染者または再感染者それぞれにおいて推定した。 評価では、逆確率加重法を用いてグループ間の個人・健康特性を平均化した。また、相対リスクと絶対リスクの低下を、30日時点の累積発生率から算出した。有効性は、加重Kaplan-Meier推定量で推算した。オミクロン変異株感染者でもリスク低下 ワクチン非接種者(7万6,763例:投与群5,338例、非投与群7万1,425例)において、非投与と比較したニルマトレルビル投与による30日時点の入院または死亡の相対リスクは、0.60(95%信頼区間[CI]:0.50~0.71)、絶対リスク低下は1.83%(95%CI:1.29~2.49)であった。 ワクチン1回または2回接種者(8万4,620例:投与群7,989例、非投与群7万6,631例)ではそれぞれ0.65(95%CI:0.57~0.74)、1.27%(95%CI:0.90~1.61)、ブースター接種者(9万4,905例:1万8,197例、7万6,708例)では0.64(0.58~0.71)、1.05%(0.85~1.27)、SARS-CoV-2初回感染(22万8,081例:2万6,350例、20万1,731例)では0.61(0.57~0.65)、1.36%(1.19~1.53)、再感染者(2万8,207例:5,174例、2万3,033例)では0.74(0.63~0.87)、0.79%(0.36~1.18)であった。 ニルマトレルビルと入院または死亡のリスク低下との関連は、65歳以下および65歳超の人々で、男性および女性、黒人および白人の参加者で、また、COVID-19重症化リスク因子が1~2、3~4、5以上の人々、そしてオミクロン変異株BA.1またはBA.2およびBA.5の優勢期の感染者で認められた。

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多枝病変ACSへの完全血行再建術、即時vs.段階的/Lancet

 急性冠症候群および多枝冠動脈疾患を有する患者において、即時完全血行再建術は、責任病変のみに行う段階的完全血行再建術に対して、主要複合アウトカムに関して非劣性であり、心筋梗塞および予定外の虚血による血行再建術の施行を低減したことが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのRoberto Diletti氏らが、前向き非盲検非劣性無作為課試験「BIOVASC試験」の結果を報告した。急性冠症候群および多枝冠動脈疾患を有する患者では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による完全血行再建術施行が臨床アウトカム改善と関連することが示されている。研究グループは、非責任病変へのPCIをindex手術中に行うべきか、段階を踏んで行うべきかを調べる目的で本検討を行った。Lancet誌2023年4月8日号掲載の報告。非責任病変をindex手術中に施術vs.6週後に施術、1年後の複合アウトカム評価 BIOVASC試験は、ベルギー、イタリア、オランダ、スペインの29病院で、ST上昇型心筋梗塞または非ST上昇型急性冠症候群を呈し、多枝冠動脈に明らかな責任病変(冠動脈2枝以上に視覚的推定で直径2.5mm以上かつ70%以上の狭窄、または冠動脈生理学的検査陽性)が認められる18~85歳の患者を対象に行われた。 ウェブベースの無作為化モジュール法により、試験実施施設で層別化した4~8のブロックサイズを用いて、患者を即時完全血行再建術群(即時群)と段階的完全血行再建術群(段階的群)に1対1で割り付けた。即時群では、PCIのindex手術中、責任病変の施術を最初に、続いて術者によって臨床的に重要と見なされた他の非責任病変の施術が行われた。段階的群では、PCIのindex手術中に責任病変のみ施術が行われ、その後6週間以内に術者によって臨床的に重要と見なされた他の非責任病変の施術が行われた。 主要アウトカムは、index手術後1年時点で評価した全死因死亡、心筋梗塞、あらゆる予定外の虚血による血行再建術、または脳血管イベントの複合であった。副次アウトカムは、index手術後1年の全死因死亡、心筋梗塞、あらゆる予定外の虚血による血行再建術などであった。主要および副次アウトカムは、無作為化された全患者を対象にintention to treat(ITT)解析にて評価された。即時完全血行再建術の段階的完全血行再建術に対する非劣性は、主要アウトカムのハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.39以下の場合と定義した。即時完全血行再建術の非劣性を確認 2018年6月26日~2021年10月21日に、764例(年齢中央値65.7歳[四分位範囲[IQR]:57.2~72.9]、男性598例[78.3%])が即時群に、761例(65.3歳[58.6~72.9]、589例[77.4%])が段階的群に無作為に割り付けられ、全例がITT集団に組み込まれた。 index手術後1年時点の主要アウトカムの発生は、即時群57/764例(7.6%)、段階的群71/761例(9.4%)であった(HR:0.78、95%CI:0.55~1.11、非劣性のp=0.0011)。 両群間で全死因死亡の発生に有意差はなかった(14例[1.9%]vs.9例[1.2%]、HR:1.56[95%CI:0.68~3.61]、p=0.30)。心筋梗塞には有意差があった(14例[1.9%]vs.34例[4.5%]、0.41[0.22~0.76]、p=0.0045)。予定外の虚血による血行再建術の施行は、段階的群のほうが多かった(31例[4.2%]vs.50例[6.7%]、0.61[0.39~0.95]、p=0.030)。

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大気汚染と認知症リスク (解説:岡村毅氏)

 黄砂の飛来がニュースになっているが、タイムリーに大気汚染が認知症発症とも関連するかもしれないという報告だ。喫煙等と比べると認知症発症に与える影響は小さいが、何せ逃げることができないリスクなので、人々への影響は大きい。 なお本論文では主にPM2.5を扱っているが、これは大気中に浮遊している直径2.5μm以下の小さな粒子を指し、化石燃料をはじめとする工業活動で排出されるものである。黄砂とは中国やモンゴルの乾燥域から偏西風に乗って飛んでくる砂塵であり、その大きさは4μm程度であるからほとんどがPM2.5ではない。 長期的にはPM2.5も黄砂も中国では減少傾向にあることも押さえておこう。一方でPM2.5は地球全体では工業化と共に増えている。 本研究は、これまでの大気汚染と認知症発症の報告のメタアナリシスであり、関連があると結論している。2μg/m3増加当たりのハザード比は全体では1.04(95% CI:0.99~1.09)と一見とても小さい。 しかし環境汚染と健康の研究では大体これくらいである。大気汚染による心血管疾患等で世界では年間700万人近くが死亡しているという報告もある1)。そして、その多くは発展途上国である。 とはいえ、このような研究ではバイアスの問題が難しい。そもそも認知症の診断技術は一貫して上がっており、診断は増えている。また大気汚染区域に住む人は貧困や学歴資本の少ない人が多い可能性があり(日本ではそのような可能性があるのかどうかは知らない)、これら自体が認知症発症リスクである。この論文はバイアスを厳密に評価したところも特徴である。 また認知症発症についても、個別に確認しているもの(Active Case Ascertainment)もあれば、保険データなどを使っているもの(Passive Case Ascertainment)もある。前者は信頼性が高いが、nは少なくなるし、後者はnが大きいが、やや雑なデータと言えよう。筆者によると前者のハザード比である1.42(95%Cl:1.00~2.02)が信頼できるのではと言っている。 いずれにせよ、結論としては、大気汚染は認知症発症とも関連する可能性が高そうである。きれいな空気が頭にも体にもよいというのは、われわれの直感とも一致する。 最後は精神科的な意見で終わっておこう。認知症リスクも増えるのだからクリーンエネルギーにしないといけません、と安易に言ってしまうと、「だからどうした」「それは意識高い系のたわごとだ」「フェイクニュースだ」「自分は石炭産業で食ってるんだ」「先進国はさんざん好き放題やってきて、いまになって上から目線だ」といった反論が来そうである。科学とは別の次元の二項対立は避けつつも、こうやって科学論文にすることに大きな意味がある。残念ながら人々が豊かな生活を夢見て行う古典的工業活動が大気汚染を起こし、大気汚染によってさまざまな病気(呼吸器系や心血管系)が増えているうえに、認知症までも増えるという事実を静かに噛みしめたい。

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IgA腎症の病態に根差した治療(解説:浦信行氏)

 CLEAR!ジャーナル四天王-1535「高リスクIgA腎症に対する経口ステロイドの効果と有害事象を勘案した治療法」の稿で低用量ステロイド群の優位性を解説したが、用量の多寡にかかわらず治療終了後の追跡期間で効果が減弱することが明らかであり、より一層病態に根差した治療法の開発の必要性を述べた。 このたびLancet誌に掲載された新規の非免疫抑制性単分子エンドセリン受容体・アンジオテンシンII受容体デュアル拮抗薬のsparsentanのデータは、病態に根差した有用な治療法であることを期待させるものである。 エンドセリン受容体拮抗薬は血管拡張作用を発揮するが、従来はボセンタンを皮切りに複数の薬剤の臨床使用が可能で、肺動脈性肺高血圧症や、静脈投与に限られるがくも膜下出血術後の脳血管攣縮の抑制に用いられていた。加えて心臓や血管、腎臓に対するエンドセリンの血管収縮作用などに基づく臓器障害作用から、受容体拮抗薬の臓器保護の可能性が期待されていた。A受容体は腎においては糸球体血流低下、レニン分泌増加、メサンギウム細胞収縮、ポドサイト障害による蛋白透過性亢進、糸球体硬化などを惹起するが、B受容体はそれらに拮抗する作用を示す。したがって、受容体の選択性を考慮する必要がある。 sparsentanはA受容体に特異性の高い拮抗薬であり、このたびはIgA腎症を対象として対照群はARB使用群として、第III相二重盲検試験の36週目の中間報告として結果が公表された。結果はジャーナル四天王に示すとおり、49.8%の尿蛋白減少効果を示し、ARB群より41%有意に低下させた。また、尿蛋白の完全寛解率は21%、部分寛解率は70%に及び、いずれもARB群より有意に高値であった。これまでの臨床成績としては糖尿病性腎症や巣状糸球体硬化症で同様の成績が報告されているが、いずれも症例数が少なく、また短期間のデータである。巣状糸球体硬化症に関しては、現在第III相試験が進行中である。果たして試験終了までの2年間の治療で尿蛋白減少作用と腎機能保護作用が確実なものとなるか、期待をもって注目したい。

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児童虐待相談が多い都道府県は?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第232回

児童虐待相談が多い都道府県は?Unsplashより使用日本の児童虐待の現状について調べた北海道大学の研究です。Seposo X, et al.Child Abuse Consultation Rates Before vs During the COVID-19 Pandemic in Japan.JAMA Netw Open. 2023 Mar 1;6(3):e231878.一般公開されている2019~21年の月別児童虐待相談件数を入手し、47都道府県の児童虐待相談率を推定しました。この研究では、身体的虐待だけでなく、ネグレクトや心理的な虐待も含めています。コロナ禍の影響を考察するため、2019年をパンデミック前、2020~21年をパンデミック期間としています。2019~21年に、日本では年間平均で18万2,549件の児童虐待相談が記録されていました。相談率の中央値が最も高かった都道府県はどこでしょう。最も多かったのは、大阪でした(パンデミック期:人口10万人当たり134.85件[四分位範囲[IQR]:132.06~154.53]、パンデミック前:人口10万人当たり144.89件[136.60~159.46])。私が住んでいる都道府県なので、ちょっぴりショックでした。反対に、最も低かったのは鳥取県(パンデミック期:人口10万人当たり8.97件[IQR:7.57~13.73]、パンデミック前:人口10万人あたり7.29件[4.48~11.77])でした。パンデミックの間、児童虐待相談率が減少していることも示されました。これは救急外来受診率が低下したことと同じロジックで、コロナ禍で相談の閾値が高くなってしまったことが影響しているでしょう。児童虐待相談件数は、イコール児童虐待の件数というわけではありません。これについては本来であれば相関があるか検討されるべきですが、なかなか検証が難しいですよね。

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第156回 コロナで収益を得た製薬企業が次々と買収発表、思わずうなる戦略とは

国際的な製薬大手企業による企業買収が再び活発化している。3月13日に米・ファイザー社ががんの抗体薬物複合体(ADC)技術を有するシージェン社を約430億ドル(約5兆7,000億円)で買収すると発表。さらに4月16日には米・メルク社もベンチャーで自己免疫疾患治療薬を手がけるプロメテウス社を約108億ドル(約1兆4,500億円)で買収すると発表した。両社が現在抱える事情はほぼ似通っている。まず、共に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)パンデミックで特需を経験した。ファイザー社はご存じのように新型コロナワクチン(商品名:コミナティほか)、経口新型コロナ治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)の売上が伸長した。2022年の売上高は、前年比23%増収の1,003億3,000万ドル(約13兆4,400億円)と、前年に引き続き製薬企業で世界1位となっただけでなく、製薬企業史上初の1,000億ドルプレーヤーとなった。この売上高の6割弱はコロナワクチンと治療薬で占められている。一方の米・メルク社も2022年度売上高が前年比22%増収の592億8,300万ドル。前年からの増収分の44%は、新型コロナ治療薬のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)の売上伸長が占める。この両者のコロナ関連特需が今後急速にしぼんでいくことは確実である。実際、ファイザー社はすでに2023年通期で、コロナ関連売上高が約60%減少するとの予想を発表している。またメルク社のモルヌピラビルはニルマトレルビル/リトナビルに比べ、効果が劣ることが各種の研究で明らかにされつつあるため、治療選択肢としてのプライオリティは、今後、一層低下していくことは避けられない。さらに両社に共通するのがコロナ関連以外の主力品の特許権失効である。ファイザー社の場合、コロナ関連を除いた売上筆頭製品が抗凝固薬のアピキサバン(商品名:エリキュース)の約65億ドル(約8,700億円)。その特許権は2025~26年にかけて失効すると言われており、もう目前に迫っている。経口薬の場合、アメリカなどではジェネリック医薬品登場から半年程度で先発品市場の約7割がジェネリック医薬品に置き換わるのが一般的だ。ファイザー社にとって事態は深刻である。前述のシージェン社は現在ADC技術を利用したがん治療薬で年間20億ドル程度の売上があるため、これをファイザー社の巨大販路で売上を伸長させ、ファイザー社側としてはアピキサバンの特許権の失効に伴う急速な売上減の穴埋めにしようという腹積もりなのだろう。一方、メルク社の売上高の筆頭は、ご存じの免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の209億ドル(約2兆8,000億円)。実に現在のメルク社の総売上高の約3分の1を占める。そのペムブロリズマブのアメリカでの特許権失効見込みは2028年である。私が今回やや驚いたのはこのメルク社の買収決断である。まず、特許権の失効まではまだ5年はある。かつ、注射剤のペムブロリズマブは抗体医薬品であり、いわゆるバイオ医薬品のジェネリックは「バイオシミラー」と称されるが、経口の低分子薬に比べ、開発難易度も高い。確かにペムブロリズマブの特許権失効後は同薬のバイオシミラーが登場すると思われるが、現状はアメリカですらバイオシミラーの普及が進まず、先発品市場の20%程度しか市場を奪えていない。にもかかわらず、日本円にして1兆円を超える金額を使い、まだ市場投入製品がないプロメテウス社を買収するのは何ともすごい決断と言わざるを得ない。ただ、よくよく考えれば、この決断は一つひとつが頷けてしまう。まず、アメリカでは近年、バイオシミラーの浸透をより容易にする規制変更の動きがある。オール・オア・ナッシング的に急激な政策決定が進みやすいアメリカの特性を考えれば、今後、バイオシミラーが急速に浸透する可能性はある。また、もしペムブロリズマブの特許権失効時にバイオシミラーの市場侵食が現状の20%程度だったとしても、もともとの売上高が巨大過ぎるため、日本円換算で4,000億円ほどの売上喪失となり、メルク社はかなり打撃をこうむることになるのは確かである。その意味で、この段階から手を打つというのも方策としてはあり得る。とりわけ近年の新薬開発の所要期間、開発費、開発難易度が年々増していることを考えればなおさらだ。そしてプロメテウス社が現在開発中の新薬候補は、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)に対する抗体医薬品。この領域は近年、市場拡大中である。この新薬候補の開発段階は現在第II相試験。今後順調に開発が進めば、3~5年後の2026~28年に上市となるはず。そうすると、ペムブロリズマブの特許権失効への備えとしては時期的にも間に合うだろう。さらにIBDのような自己免疫性疾患の抗体医薬品は、ほかの自己免疫性疾患への適応拡大が容易なことは、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)などの例を見れば明らか。つまりプロメテウス社は今後、全世界で数千億~1兆円規模の売上高を生み出す可能性を秘めているというわけだ。たしかに不確定要素はあるものの、現状からロジカルにさまざまな想定をすると1兆円の買収は十分割に合う可能性がある。すでに四半世紀近く製薬業界を眺めている自分も、一瞬、発表内容をぎょっとして受け止めたが、中身を考えるほど久々にうならされる買収発表だった。ただ、このニュースに接して、あえて残念と思うことがあるとするならば、それは日本の製薬企業の多くが、このような大胆かつ機動的な戦略が取れないことである。

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5月8日から何が変わる? コロナ5類化に向けた医療機関の対策まとめ

2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置付けられる。医療機関や医師は、どう対応すればいいのか。ケアネットでは「COVID-19 5類移行でどう変わる?」と題したCareNeTVライブを3月22日に配信した1)。講師の黒田 浩一氏(神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 副医長)が、制度の変更点、院内感染対策の工夫、早期診断・早期治療の重要性、発症早期の治療における薬剤の選択などについて解説した。臨床面における対応策を中心に、ポイントをまとめて紹介する(フル動画はこちらから[60分・CareNeTVプレミアムの登録要])。5月8日以降、医療体制における主な変更点1)医療提供体制【全体】入院措置を原則とした行政の関与を前提とする限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の対応へ。ほかの疾病同様に、入院可否を医療期間が判断し、医療機関同士での調整を基本とする。COVID-19診療に対応する医療機関の維持・拡大を強力に促す。「地域包括ケア病棟」も含めた幅広い医療機関での受け入れを促進する。病床稼働状況を地域の医療機関で共有するためのIT(例:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム:G-MIS)の活用を推進する。マスク着用は個人の判断に委ねられるが、医療機関・介護施設は「マスクの着用が効果的である場面」とされ、医療者は引き続きマスク着用が推奨される。事業者(病院・高齢者施設)が利用者にマスクの着用を求めることは許容される(新型コロナウイルス感染症対策本部方針より)。【個別事項】【外来】COVID-19(疑いを含む)を理由とした診療拒否は「正当な事由」に該当せず、応召義務違反となる(診療体制が整っていない場合は、他機関を紹介する必要がある)。【外来】現在約4.2万のCOVID-19対応医療機関を最大6.4万(インフルエンザ対応と同数)まで増やすことを目標とする。【入院】行政による入院措置・勧告がなくなる。【入院】全病院でのCOVID-19対応を目指しつつ、病院機能ごとの役割分担や、高齢者を中心とした地域包括ケア病棟での受け入れを推進する。2)診療報酬・病床確保料【外来】発熱外来標榜:250点→終了、COVID-19患者診療:950点→147点【在宅】緊急往診2,850点→950点など減額【入院】中等症~重症患者の入院:従前の半額、病床確保料:従前の半額など減額(2023年9月まで。10月以降の措置は今後検討される)3)患者に対する公費支援【外来医療費】2023年9月まで抗ウイルス薬は公費負担継続(10月以降の措置は今後検討される)【入院医療費】高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額検査費用の公費支援は終了相談窓口は継続、宿泊療養施設は終了医療機関が準備すべきこと1)院内感染対策の継続とレベル向上【基本】職員のワクチン接種(3回以上かつオミクロン対応2価ワクチン1回以上。医療従事者は2023年5~8月と9月以降に2価ワクチン接種が可能となる)施設内でのユニバーサルマスキング(症状にかかわらず全員がマスク着用)と適切な換気目の防護のルーティン化、手指衛生の徹底体調不良時にすぐに休める文化・制度の醸成スタッフの旅行・会食制限は不要。但し、職員の感染者・濃厚接触者増加のため病院機能を維持できなくなる可能性がある場合は期間を決めて検討体液・排泄物を浴びる可能性が低い場合(問診/診察/検温、環境整備、患者搬送)はガウン・手袋は不要【流行期に検討される追加の対策】ルーティンでN95マスクを使用大部屋にHEPAフィルターを設置2)診療体制の構築行政による入院調整がなくなるため、これまで以上に地域の病病連携・病診連携が重要となる。大規模な流行が起こった場合に、入院患者の受け入れ先が見つからない可能性があるため、早期診断・早期治療を可能とする外来診療体制の構築(重症化予防)、夜間も含めた施設連携医・往診医による診療の充実、行政機関による病床利用率共有システムの構築と入院・紹介ルールの明確化(円滑な医療機関の連携)、COVID-19入院対応可能な病院を増やすことが重要である。現在、保健所が行う療養中の患者の健康観察と受診調整も診断した医療機関が対応することになるため、医療機関の業務は増加する見込み。【外来】診察スペースの確保検査能力の確保(抗原/PCRの使い分けも医療機関ごとに検討)治療ガイドラインの作成電話/オンライン診療によるフォローアップの検討【入院】COVID-19対応可能な病床の適切な運用職員・COVID-19以外の理由で入院した患者がCOVID-19に感染していたとしても、院内感染伝播が起こりにくい感染対策の実施院内感染事例への対応(早期診断、早期隔離、早期治療の徹底)COVID-19治療薬の最新情報医療ひっ迫の原因となる救急搬送・入院症例・高次医療機関への搬送を減らすためには、ワクチン接種と並び、軽症・中等症Iの患者に対する早期診断・早期治療が非常に重要となる。患者の年齢、ワクチン接種回数、重症化リスク因子、免疫不全の有無などから薬物治療の必要性を判断し、ガイドライン、および現在の科学的証拠に基づいて、適切な抗ウイルス治療を選択する。現在軽症~中等症Iの患者で重症化リスクがある場合に適応となる、承認済の抗ウイルス薬は以下のとおり。なお、2023年4月時点では、軽症・中等症Iの患者に対する中和抗体薬・抗炎症薬の使用は推奨されていない。・ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビット、内服)発症5日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。重症化予防効果は非常に高い。呼吸不全、腎障害等の場合は使用できず、併用注意薬も多いものの、実際に使用できないケースは限られる。・レムデシビル(商品名:ベクルリー、点滴)発症7日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。ワクチン未接種者に対する重症化予防効果は非常に高いことが示されているが、ワクチン接種者への効果はほとんど検討されていない。3日間の点滴投与となり、入院が必要。・モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ、内服)発症5日以内、18歳以上。重症化予防効果は上記2剤に劣るため、上記2剤が利用できない場合に使用する。・エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ、内服)発症3日以内、成人または12歳以上。妊婦または妊娠の可能性のある女性は禁忌。現時点ではワクチン接種者への重症化予防効果の有無やほかの薬剤との使い分けははっきりしていない。参考1)COVID-19 5類移行でどう変わる?/CareNeTV(※視聴はCareNeTVプレミアムへの登録が必要)(配信:2023年3月22日、再構成:ケアネット 杉崎 真名)

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不眠症患者はどんな治療を望んでいるのか

 認知行動療法(CBT)を求める不眠症患者の睡眠薬使用に対する考えや、使用を減らしたいと願う予測因子について、米国・スタンフォード大学のIsabelle A. Tully氏らが調査を行った。その結果、CBTを望んでいる睡眠薬使用中の不眠症患者において、睡眠薬の必要性を強く示し、服用についての懸念が比較的少ないにもかかわらず、4分の3の患者が睡眠薬を減らしたいと望んでいることが示された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年3月8日号の報告。 対象は「一般診療における段階的な睡眠療法の有効性に関するランダム化比較試験(RCT of the effectiveness of stepped-care sleep therapy in general practice:RESTING研究)」に登録された、50歳以上の不眠症患者245例。睡眠薬の使用患者と未使用患者の特性を比較するためt検定を実施した。睡眠薬の必要性および睡眠療法への懸念に関する考えの予測因子は、線形回帰を用いて評価した。睡眠薬への依存、薬物療法に対する考え、人口統計学的特徴を含め、睡眠薬を減らしたいと願う予測因子を患者間で調査した。 主な結果は以下のとおり。・睡眠薬を使用する患者は未使用の患者よりも、睡眠薬の必要性をより強く感じており、潜在的な害についての懸念が少なかった(p<0.01)。・睡眠に関連する認知のより強い機能不全は、睡眠薬を必要とする大きな信念や睡眠薬使用への懸念を予測した(p<0.01)。・睡眠薬を減らすことを望んでいる患者は、そうでない患者より、睡眠薬の依存度が高いことが報告されていた(p<0.001)。・自己報告による依存の重症度は、使用を減らしたいと望む最も強力な予測因子であった(p=0.002)。・CBTを望む睡眠薬使用中の不眠症患者は、睡眠薬の必要性を強く示し、服用についての懸念が比較的少ないにもかかわらず、その4分の3は睡眠薬を減らすことを望んでいた。・今後のRESTING研究では、セラピスト主導によるデジタルCBTが、不眠症患者の睡眠薬減少にどの程度貢献するか報告する予定である。

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日本人ALK陽性肺がんにおけるロルラチニブの3年追跡の結果(CROWN)/日本臨床腫瘍学会

 第III相CROWN試験の3年間の追跡において、ロルラチニブは日本人ALK陽性非小細胞肺がんに対しても、全体集団と同様の良好な結果を示した。第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、和歌山県立医科大学の寺岡 俊輔氏が発表した。・対象:StageIIIB/IVの未治療のALK陽性肺がん(無症状のCNS転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mg×2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]治験実施医によるPFS、BICR評価の奏効率(OR)、BICR評価の脳内奏効率(IC-OR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、BICR評価の脳内奏効期間(IC-DR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は48例。ロルラチニブ群25例、クリゾチニブ群23例が総合解析の対象となった。・解析時に、ロルラチニブ群の56%、クリゾチニブ群の4.5%が治療を継続していた。・ロルラチニブ群45.9ヵ月、クリゾチニブ群38.9ヵ月の追跡期間における、BICR評価のPFSは、ロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は11.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.36、95%信頼区間[CI]:0.16~0.83)。・治験担当医評価のPFSは、ロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は9.1ヵ月であった。・ORはロルラチニブ群72.0%、クリゾチニブ群52.2%であった(HR:0.25、95%CI:0.11~0.57)。・頭蓋内の進行までの期間(IC-TTP)は、ロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は16.6ヵ月であった。・ロルラチニブ群の全例、クリゾチニブ群の24%は、36ヵ月頭蓋内進行がなかった。・Grade3/4のAE発現はロルラチニブ群84%、クリゾチニブ群72.7%であった。 第III相CROWN試験約3年の追跡、日本人サブセットにおいてロルラチニブは頭蓋内含め全体と同様の成績を示した。この結果は、脳転移の有無を問わず、未治療のALK陽性NSCLCにおけるロルラチニブの使用を支持するものだと寺岡氏は結んだ。

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世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」発売/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月18日付のプレスリリースで、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注2.5mgアテオス」「同皮下注5mgアテオス」(一般名:チルゼパチド、以下「マンジャロ」)の販売を同日より開始したことを発表した。 マンジャロは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬である。天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子の構造だが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用し血糖値を改善させる。本剤は、1回使い切りのオートインジェクター型注入器(「アテオス」)によって、週1回皮下注射する薬剤である。あらかじめ注射針が取り付けられた専用ペン型注入器により、注入ボタンを押すことで自動的に注射針が皮下に刺さり、1回量が充填されている薬液が注入されるため、患者が用量を設定したり、注射針を扱ったりする必要がない。 また、本剤は通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgの開始用量から開始し、4週間投与した後、週1回5mgの維持用量に増量する。患者の状態に応じて適宜増減が可能な薬剤であり、5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔を空けて2.5mgずつ増量ができ、最大で週1回15mgまで使用が可能である。6つの用量規格のうち、開始用量(2.5mg)と維持用量(5mg)の2規格が先行して4月18日より発売され、高用量の4規格(7.5mg、10mg、12.5mg、15mg)は、6月12日に発売予定である。 日本イーライリリーの糖尿病・成長ホルモン事業本部長メアリー・トーマス氏は、「このたびのマンジャロの発売を大変うれしく思います。2型糖尿病と共に歩む多くの方々へ、新しいクラスの治療選択肢としてマンジャロをお届けできるように適正な情報提供に努めてまいります」と述べている。 また、田辺三菱製薬の営業本部長である吉永 克則氏は、「当社は、『病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。』をMISSIONとして掲げております。新発売を迎えたマンジャロが2型糖尿病と共に歩む人々にとって希望ある選択肢となるよう、情報提供活動を通じてマンジャロの適正使用を推進してまいります」としている。 なお、本剤は、イーライリリー・アンド・カンパニーが米国において2022年5月13日、世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬として承認を取得し、同年6月7日より「Mounjaro」の製品名で販売を開始している。日本では、同年9月26日に承認を取得した。マンジャロの製造販売承認は日本イーライリリーが有し、販売・流通は田辺三菱製薬が行う。医療従事者への情報提供活動は日本イーライリリーと田辺三菱製薬が共同で実施する。

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重症コロナ患者、ACEI/ARBで生存率低下か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症成人患者において、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与は臨床アウトカムを改善せず、むしろ悪化させる可能性が高いことを、カナダ・University Health NetworkのPatrick R. Lawler氏ら「Randomized, Embedded, Multifactorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia trial:REMAP-CAP試験」の研究グループが報告した。レニン-アンジオテンシン系(RAS)の中心的な調節因子であるACE2は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の受容体であることから、RASの過剰活性化がCOVID-19患者の臨床アウトカム不良につながると考えられていた。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。RAS阻害薬または非RAS阻害薬による治療で21日間の無臓器補助日数を評価 REMAP-CAP試験は、現在も進行中の、重症市中肺炎およびCOVID-19を含む新興・再興感染症に対する複数の治療を評価する国際多施設共同無作為化アダプティブプラットフォーム試験で、今回はその治療ドメインの1つである。 研究グループは、2021年3月16日~2022年2月25日の期間に、7ヵ国69施設において18歳以上のCOVID-19入院患者を登録し、重症群と非重症群に層別化するとともに、参加施設をACEI群、ARB群、ARB+DMX-200(ケモカイン受容体2型阻害薬)群、非RAS阻害薬(対照)群に無作為に割り付け、治療を行った。治療は最大10日間または退院までのいずれか早いほうまでとした。 主要評価項目は、21日時点における無臓器補助日数(呼吸器系および循環器系の臓器補助を要しなかった生存日数)で、院内死亡は「-1」、臓器補助なしでの21日間の生存は「22」とした。 主解析では、累積ロジスティックモデルのベイズ解析を用い、オッズ比が1を超える場合に改善と判定した。無臓器補助日数はACEI群10日、ARB群8日、対照群12日 2022年2月25日で、予定された564例の安全性データの評価に基づき、対照群と比較しACEI群およびARB群で死亡および急性腎障害が高頻度であることが懸念されたため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により重症患者の登録が中止された。非重症患者の登録も同時に一時中断され、その後、2022年6月8日に試験は中止となった。最終追跡調査日は2022年6月1日であった。 全体で779例が登録され、ACEI群に257例、ARB群に248例、ARB+DMX-200群に10例、対照群に264例が割り付けられた。このうち、同意撤回やアウトカム不明、ならびにARB+DMX-200群を除く各群の重症患者計679例(平均年齢56歳、女性35.2%)が解析対象となった。 重症患者における無臓器補助日数の中央値(IQR)は、ACEI群(231例)で10日(-1~16)、ARB群(217例)で8日(-1~17)、対照群(231例)で12日(0~17)であった。 対照群に対する改善の調整オッズ比中央値は、ACEI群0.77(95%信用区間[CrI]:0.58~1.06)、ARB群0.76(0.56~1.05)であり、治療により無臓器補助日数が対照群より悪化する事後確率はそれぞれ94.9%および95.4%であった。 入院生存率は、ACEI群71.9%(166/231例)、ARB群70.0%(152/217例)、対照群78.8%(182/231)であり、対照群と比較して入院生存率が悪化する事後確率は、ACEI群95.3%、ARB群98.1%であった。

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不全流産に対する子宮鏡手術vs.真空吸引法/JAMA

 再びの妊娠を希望する不全流産を経験した患者への子宮鏡手術は、真空吸引法と比較し、その後の妊娠や安全性プロファイルの向上とは関連しておらず、かつ子宮鏡手術はすべての症例で実施できるとは限らないことが、フランス・パリ・シテ大学のCyrille Huchon氏らが実施した多施設共同無作為化単盲検試験「Effectiveness of Hysteroscopy in the Treatment of Intrauterine Trophoblastic Retentions:HY-PER試験」の結果で示された。真空吸引法は、不全流産患者の子宮内妊娠組織遺残物(RPOC)を除去するために一般的に用いられるが、子宮腔の瘢痕化が起こり将来の生殖能力を損なう可能性があるため、この処置に代わる方法として子宮鏡手術が普及している。著者は、「本試験は、妊娠初期の不全流産に対しては、真空吸引法が標準治療であるというエビデンスを提供しており、エビデンスレベルが低いにもかかわらず頻繁に用いられる手術手技の評価が急務であることを強調するものである」とまとめている。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。不全流産574例を子宮鏡手術と真空吸引法に無作為化、術後2年間の妊娠を比較 研究グループは、2014年11月6日~2017年5月3日にフランスの15病院において、18~44歳で妊娠14週未満に不全流産を経験し、経膣超音波検査によりRPOCが確認され、不全流産に対する施術後早期に妊娠を希望する患者574例を、子宮鏡手術群(288例)および真空吸引群(286例)に1対1の割合で無作為に割り付け、2年間追跡調査した。 主要アウトカムは、術後2年間における妊娠(22週を超える子宮内妊娠)。また、有害事象として、術中および術後の合併症を修正Clavien-Dindo分類で評価した。子宮鏡手術は7%で完遂できず、手術時間および入院期間も有意に延長 574例中、同意撤回などにより11例が除外され、intention-to-treat集団は563例であった(平均[±SD]年齢32.6±5.4歳)。真空吸引群の281例は、全例が吸引処置を完遂した。子宮鏡手術群の282例中19例(7%)は子宮鏡手術を完遂できなかった。そのうち18例は真空吸引法に変更され(完全切除不能8例、可視化不十分7例、麻酔合併症のため手術短縮を要した患者2例、機器の故障1例)、1例は子宮頸管拡張中の誤通過により失敗した。 2年間の追跡期間において、子宮鏡手術群177例(62.8%)、真空吸引群190例(67.6%)が主要アウトカムを達成した。群間差は-4.8%(95%信頼区間[CI]:-13.0~3.0、p=0.23)であり、time-to-event解析において、主要評価項目に関して両群間で統計学的有意差は認められなかった(ハザード比:0.87、95%CI:0.71~1.07)。手術時間および入院期間は、子宮鏡手術群で有意に延長した。 新たな流産、子宮外妊娠、Grade3以上の手術合併症(外科的、内視鏡的または放射線学的介入を要する外科的合併症、生命を脅かす合併症、死亡)、およびRPOCを除去するための再介入の割合は、両群間で差はなかった。

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黄砂がきつい!【Dr. 中島の 新・徒然草】(473)

四百七十三の段 黄砂がきつい!黄砂が日本列島を襲った日のこと。クシャミと鼻水と涙が止まりません。あまりにきつすぎて寒気までしてきました。そんな日は早く帰って寝るに限ります。さて、私は出張等がなくても時々休診日を入れています。月に2日ぐらいでしょうか。というのは、週日のうち外来3日、手術2日をしているとほかに何もできないからです。もちろん外来が終わった後とか手術の後に時間はあるわけですが、そういう時はすでに精根尽き果てています。何でも翌日回しにするので、いつまで経っても懸案が片付きません。でも休診日の午前中は元気一杯。院内にいるのに手術も外来もしていない、という罪悪感がむしろ駆動力になります。日頃の懸案が片付く片付く。今日もそんな1日でした。元気一杯だからサービス精神も旺盛です。早々に書類仕事を片付けてしまって余裕の発言。中島「今日は休診にしているけど、知らずに僕を訪ねてくる患者さんがいたら診察しちゃうからね」外来ナース「ありがとうございます。助かります」中島「だけど午後から出掛けるから」外来ナース「何時に出られるのですか」中島「午後1時頃かな」外来ナース「じゃあ12時半までは患者さんを受けてもいいですか?」ちょっとちょっと。診察日であってもウォークインは12時締切ですよ。何でまた休診日に受付時間を延長するわけ?中島「ええっ! 12時半に来た人なんか30分で終わらないよ」で、実際のところは誰も来ませんでした。アナウンスが行き届いていたのでしょうか。中島「いやあ、残念だなあ。せっかく診る気満々だったのに」外来ナース「でも、まだ11時45分ですよ」中島「平気だよーん。誰も来ないもんね」外来ナース「そんな油断している時に限って誰か来るんじゃないですか?」その時、外来窓口に人影が!と思ったら、別件でした。結局、ラッキーなことに飛び込みの外来患者さんはゼロ。昼になっても余力が残っているのはいいですね。やっぱり、何事も余裕があってこそ、人にも親切にできるってもんです。衣食足りて礼節を知る、とも言いますし。普段からニコニコできるよう、時間とエネルギーを有効活用しましょう。ということで最後に1句余裕持ち 耐えてみせよう 黄砂にも

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4月20日 腰痛ゼロの日【今日は何の日?】

【4月20日 腰痛ゼロの日】〔由来〕「腰(4)痛(2)ゼロ(0)」と読む語呂合わせから「420の会」代表の本坊 隆博氏が制定。腰痛で悩んでいる人をゼロにしたいとの思いが込められており、腰痛に対する対処法、予防法が指導されている。関連コンテンツ外来でできる肩こり・腰痛対策【Dr.デルぽんの診察室観察日記】腰部の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】腰痛診療ガイドライン2019発刊、7年ぶりの改訂でのポイントは?慢性腰痛の介入、段階的感覚運動リハビリvs.シャム/JAMA急性腰痛に筋弛緩薬は有効か/BMJ

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第41回 乗り遅れるな「論文検索はもうAIの時代」

ChatGPTだけじゃないこの連載では何度かChatGPTについて取り上げてきました。この分野、1週間経つともう賞味期限切れを起こすほど進歩していて、私もちょっとついていけてないです。私はCareNetで興味深い医学論文を紹介する連載「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」を持っているので、普段からPubMedを使っているのですが、AIに論文を探させる手法が出てきました。ChatGPTは課金しないと現状の最新版を体験できない仕様となっていますが、今話題になっているのが「Consensus」です。これは、世界の論文を検索し、質問に対する回答をまとめて一文要約してくれます。そして回答を数値化してくれるなど、論文から得られる情報をかみ砕いて提供できる機能を持ったオープンAIとなっています。キャッチコピー通り、「Evidence-Based Answers, Faster」というのがコンセプトです。Googleアカウントがある人は、ウェブサイトから簡単にログインできるようになっているので、一度試してみてください。Consensus使い方は割と簡単で、質問のところにある程度closed questionを入力することが重要です。ただし、基本的にはYes/Noの質問に対応できるようになってます。画像を拡大する(画像:Consensusより)たとえば、これは「吸入ステロイドが骨粗鬆症を引き起こすか?」という質問を入力したものですが、「吸入ステロイドの長期使用は骨粗鬆症を誘発し骨折リスクを高めるとする研究もあるが、骨への影響は小さいか不明とする研究もあり、これで喘息をコントロールすれば骨粗鬆症を防ぐことさえある」という要約が返って来ました。参考にされた文献は5文献で、下にずらっとシステマティックレビューした結果が出てきます。画像を拡大する(画像:Consensusより)「inhaled」を「systemic」に変えると、全身性ステロイドの骨粗鬆症に対する回答が提示されます。「全身性ステロイドは、とくに長期投与や大量投与で骨粗鬆症を引き起こす可能性があることが示唆されるが、一方で、低用量や隔日投与ではそれほどリスクが高まらない可能性を示す研究結果もあります。」という回答に変わります。なるほど、有能なAIですね。ただ、あの有名論文がなんで掲載されていないんだよ、という事態はしばしばあり、本当に質の高い論文を引っ張ってきているのかちょっと疑問です。試しに重症市中肺炎に対するステロイドのことを聞いても、最近の有名な論文がヒットしませんでした。しかしまぁ、これが正しいAI検索のひな形でしょう。間違いありません。ここからさらに精度を上げていってほしいと思います。Perplexityもう一つ人気なのが、「Perplexity」です。ウェブクローリングした情報を要約する生成系AIです。出典ソースを明記して、時事性のあるテーマにも正しく回答してくれる点が魅力です。Perplexityはウェブ検索結果を分析できれば、たとえそれが架空の内容であっても回答可能ですが、ChatGPTはそのあたりが難しいという差はあるようです。対話型なのでPerplexityのほうが好まれていますが、個人的にはChatGPT4.0(有料版)もなかなかおすすめです。3.5とは全然違います。画像を拡大する(画像:Perplexityより)Mycobacterium szulgaiというまれな呼吸器感染症の治療はどうすればよいか?と聞いてみました。とくにエビデンスが集積されているわけではないのですが、しっかりと報告を引用して治療レジメンが紹介されています。こういうAIで生成された文を、論文を書くのに使っちゃダメということになっていますが、「参考程度に」AIを動かすというのは皆さん今後やっていくのではないでしょうか。果たしてわれわれ医療の世界ではどのAIが生き残っていくでしょうか。楽しみですね。

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新世代抗精神病薬の薬理遺伝学はどこまでわかっているのか

 個別化医療のフレームワークを考えるうえで、新世代抗精神病薬の臨床効果と遺伝子変異との関連を明らかにすることは不可欠である。薬理遺伝学的データは、重度の精神疾患患者の治療効果、忍容性、治療アドヒアランス、機能の回復、QOLの向上に役立つことが期待されている。ルーマニア・Dr. Carol Davila Central Military Emergency University HospitalのOctavian Vasiliu氏は、5つの新世代抗精神病薬(cariprazine、ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、lumateperone、pimavanserin)の薬物動態学、薬力学、薬理遺伝学に関する入手可能なエビデンスを調査し、スコーピングレビューを行った。Frontiers in Psychiatry誌2023年2月16日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・25件の主要および副次的な情報源の分析および、5つの新世代抗精神病薬の製品特性の概要のレビューに基づくと、アリピプラゾールは薬物動態学と薬力学に関して、遺伝子変異の影響に最も関連性が高いデータを有しており、有効性および忍容性において有意な結果をもたらすことが示唆された。・アリピプラゾールを単剤療法または他剤との併用療法として投与する場合に、代謝酵素CYP2D6の状態の確定が重要である。・ドパミンD2、D3、セロトニン、5HT2A、5HT2C、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ドパミントランスポーターDAT1をコードする遺伝子の対立遺伝子変異は、アリピプラゾールのさまざまな有害事象または臨床効果の変動と関連していた。・ブレクスピプラゾールは、CYP2D6の代謝状態や、CYP2D6またはCYP3A4の強力~中程度の阻害作用に関連するリスクについての特定の推奨事項からも、ベネフィットを得られることが示唆された。・cariprazineに関する米国FDAおよび欧州EMAの推奨事項では、強力なCYP3A4阻害薬または誘導体との薬物動態学的相互作用の可能性が言及されている。・cariprazineに関する薬理遺伝学データはわずかであり、lumateperone、pimavanserinの遺伝子-薬物相互作用に関するデータはいまだ不足していた。・新世代抗精神病薬の薬物動態および薬力学に対する遺伝子変異の影響を明らかにするためには、さらに多くの研究が必要である。・臨床医が特定の抗精神病薬の治療反応を予測し、重度の精神疾患患者の治療レジメンの忍容性を改善するためにも、このような研究は必要である。

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2型DMの追加処方に有益なのは?~816試験をメタ解析/BMJ

 中国・四川大学のQingyang Shi氏らはネットワークメタ解析を行い、2型糖尿病(DM)成人患者に対し、従来治療薬にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を追加投与する場合の実質的な有益性(心血管系および腎臓系の有害アウトカムと死亡の減少)は、フィネレノンとチルゼパチドに関する情報を追加することで、既知を上回るものとなることを明らかにした。著者は、「今回の結果は、2型DM患者の診療ガイドラインの最新アップデートには、科学的進歩の継続的な評価が必要であることを強調するものである」と述べている。BMJ誌2023年4月6日号掲載の報告。24週以上追跡のRCTを対象に解析 研究グループは、2型DM成人患者に対する薬物治療として、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(フィネレノンを含む)とチルゼパチド(二重GIP/GLP-1受容体作動薬)を既存の治療オプションに追加する有益性と有害性の比較を目的にシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 Ovid Medline、Embase、Cochrane Centralを用いて、2022年10月14日時点で検索。無作為化比較試験で、追跡期間24週以上を適格とし、クラスの異なる薬物治療と非薬物治療の組み合わせを体系的に比較している試験、無作為化比較試験のサブグループ解析、英語以外の試験論文は除外した。エビデンスの確実性についてはGRADEアプローチで評価した。816試験、被験者総数47万1,038例のデータを解析 解析には816試験、被験者総数47万1,038例、13の薬剤クラスの評価(すべての推定値は、標準治療との比較を参照したもの)が含まれた。 SGLT2阻害薬と、GLP-1受容体作動薬の追加投与は、全死因死亡を抑制した(それぞれオッズ比[OR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.83~0.94]、0.88[0.82~0.93]、いずれも高い確実性)。 非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬については、慢性腎臓病を併存する患者へのフィネレノン投与のみが解析に含まれ、全死因死亡抑制の可能性が示唆された(OR:0.89、95%CI:0.79~1.00、中程度の確実性)。その他の薬剤については、おそらくリスク低減はみられなかった。 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の追加投与については、心血管死、非致死的心筋梗塞、心不全による入院、末期腎不全を抑制する有益性が確認された。フィネレノンは、心不全による入院、末期腎不全をおそらく抑制し、心血管死も抑制する可能性が示された。 GLP-1受容体作動薬のみが、非致死的脳卒中を抑制することが示された。SGLT2阻害薬は他の薬剤に比べ、末期腎不全の抑制に優れていた。GLP-1受容体作動薬は生活の質(QOL)向上に効果を示し、SGLT2阻害薬とチルゼパチドもその可能性が示された。 報告された有害性は主に薬剤クラスに特異的なもので、SGLT2阻害薬による性器感染症、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬による重症胃腸有害イベント、フィネレノンによる高カリウム血症による入院などだった。 また、チルゼパチドは体重減少がおそらく最も顕著で(平均差:-8.57kg、中程度の確実性)、体重増加がおそらく最も顕著なのは基礎インスリン(平均差:2.15kg、中等度の確実性)とチアゾリジンジオン(平均差:2.81kg、中等度の確実性)だった。 SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、フィネレノンの絶対的有益性は、ベースラインの心血管・腎アウトカムリスクにより異なった。

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