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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(前編)【なんで嘘くさくても知りたがるの?(噂好きの心理)】Part 2

なんで嘘くさくても知りたがるの?フェイクニュースをつくる目的は、金儲け、承認、プロパガンダなどであることがわかりました。それでは、なぜ私たちはフェイクニュースに引っかかってしまうのでしょうか? もっと言えば、フェイクニュースに限らず、なぜ私たちは噂話など不確かな情報でも、つい知りたくなってしまうのでしょうか? ここから、この噂好きの心理の要素を大きく3つ挙げてみましょう。(1)びっくりしたいから樹は上司に「『青虫うどんの真相?』って、真相が記事の中身に書かれていないのに、完全な釣りタイトルです。語尾に?をつければ許されるってものじゃありません」と怒りをぶつけます。自分の記事のタイトルが、上司の指示で書き換えられていたのでした。彼女は「難しい記事はウケない。アホな記事ほど評価される」とボヤいてもいました。1つ目の心理は、びっくりしたいからです。これは、新奇性(サリエンス)と呼ばれています。たとえば、「最新」「天才」などの目新しくてまれなもの(好奇心)、「陰謀」「真相」などの奇妙で不可解なもの(恐怖心)、「不正」「不倫」「差別」などの嫌悪するもの(道徳的感情)に私たちは敏感であることがわかっています2)。だからこそ、悪い噂は早く広まり、根拠がない陰謀論がいつも何かしらあるのです。さらに、ニュースが溢れている情報化社会では、これらのよりわかりやすい「煽りワード」が優先的に選ばれてしまうというわけです。この心理を見越して、つくる側は、ますます過激なタイトルのわりに中身(根拠)のないニュースを量産します。この悪循環は、ニュース記事だけでなく、動画においてもです。最近では、インパクトのあるサムネイルの画像の内容が再生中に出てこない動画も増えています。また、「ディープフェイク」と呼ばれる精巧な偽の動画をつくることが技術的に可能になり、もはや本物と区別がつかなくなるという別の問題も出てきています。なお、サリエンスの心理の詳細については、関連記事2の後半部分をご覧ください。(2)信じたいものだけを信じるから樹は上司に「フェイクニュースを転載したまとめサイトは30万PV」「一方、うちが出した『CSSの偽サイトに注意!「日本の奴隷労働の現状」はフェイクニュース』。こちらの記事は5万PV。拡散したフェイクニュースの6分の1しか閲覧されていない」と嘆きます。その後、上司は「自分にとって都合の悪い話は信じない。信じたいものだけを信じる。だったら、こっちもバカが喜ぶニュースを流すまでだ」と吐き捨てています。2つ目の心理は、信じたいものだけを信じるからです。これは、確証バイアスと呼ばれています。あることについて、それを肯定する情報(確証)に注意が向きやすくなる一方、否定する情報(反証)には注意が向きにくくなることです(認知の偏り)。つまり、私たちは、一度そう思ったら、その考えをなかなか変えたくなくなるのです。これは、「良し悪しは第一印象で決まる」(初頭効果)という印象形成のバイアスにもつながります。たとえば、ある有名な教育法の本のサブタイトルには、「才能をぐんぐん伸ばす」ともっともらしく書かれています。これは、この教育法によって「才能が伸びる」ことを説明しているわけですが、私たちは「この教育法でなければ才能は伸びない」と思ってしまいます。つまり、このサブタイトルは確証バイアスを巧みに利用していることになります。実は、この教育法でなくても、一般的な子育てによって「才能は、あるなら勝手に伸びる」という根拠が別にあり、反証することができます。この詳細については、関連記事3をご覧ください実際に、ツイッターの大規模な研究では、事実と比べて誤情報は70%多いことがわかっています2)。つまり、私たちは、情報を偏って選びがちであるということです。さらに、広告と同じようにニュースも自動的に「より自分にマッチするもの」だけに選別されて流れてくるネットサービス(パーソナライズ検索機能)では、ますます信じたいものだけを信じてしまうようになってしまいます。なお、このような個人情報を学習したアルゴリズムによって、その人に都合の良い情報だけに選別されて流れてくる状況は、まるで特定の情報の「膜」の中に閉じ込められ、孤立していく危うさもあります。これは、フィルターバブル(膜の泡)と呼ばれています2)。(3)同じ考えでつながりたいから樹が取材したまとめサイト管理人は「こっちが右寄り、こっちが左寄りのサイトです。例の青虫うどん騒ぎの場合、右派サイトでは『鶴亀(うどん)とテイショーは反日のブラック企業!』ってまとめをつくって、左のサイトでは『差別反対!鶴亀うどんを守れ!』ってね」と得意げに説明します。そんな彼に、樹は「つまり、お金儲けのために、対立を煽ってる」と即ツッコミます。3つ目の心理は、同じ考えでつながりたいからです。これは、同類性と呼ばれています。「類は友を呼ぶ」ということわざがあるように、見た目や考え方が近い人ほど親近感を抱きやすく集まりやすいということです。これは、「人は周りに染まりやすい」という社会的影響(同調)の心理との相乗効果があります。実際の研究では、健康に関する交流の実験用のSNSをつくり、つながりがランダムなネットワークと同類性が高いネットワークに分けて、情報共有を行ったところ、同類性が高い方がダイエット日記の取り組みや広がりが強まったという結果が出ました2)。つまり、情報の拡散には、同類性が高いネットワークの方が効率的であることがわかります。さらに、同類性の高い「友人」を自動的に勧められるSNSでは、ますます同じ考えの人とつながってしまうというわけです(集団極性化)。 これは、樹が「対立を煽っている」と言ったように、社会のつながりの分断を引き起こします。もはや、SNSの空間は、自分が意見を発信しても自分とそっくりな意見ばかりがこだまのように返ってくる状況になってしまいます。これは、エコーチェンバー(こだま部屋)と呼ばれています2)。その結果、過激なバッシングも生まれています。この心理の詳細については、関連記事4をご覧ください。1)フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話 シナリオブック:野木亜紀子、20232)フェイクニュースを科学する P14、P45、P48、P71、P73、P80、P96:笹原和俊、化学同人、2021<< 前のページへ■関連記事ザ・サークル【「いいね!」を欲しがりすぎると?(承認中毒)】Part 1ビューティフルマインド【統合失調症】伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 1苦情殺到!桃太郎(前編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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7月6日 ワクチンの日【今日は何の日?】

【7月6日 ワクチンの日】〔由来〕1885年の今日、細菌学者のルイ・パスツール(フランス)が開発した狂犬病ワクチンが、少年に接種されたことを記念し、ワクチンの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に日本ベクトン・ディッキンソン株式会社が制定。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話成人のワクチンキャッチアップの重要性「全ワクチン拒否」の医師は勤務可能?帯状疱疹ワクチンで認知症発現率低下 / タウリンでより健康に長生きできるかも【バイオの火曜日】肺炎の予防戦略、改訂中の肺炎診療GLを先取り/日本呼吸器学会

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第52回 「電動キックボード外傷」が急増しませんか?

電動キックボード解禁Unsplashより使用7月1日から改正道路交通法が施行され、最高時速20km以下で一定の要件を満たす電動キックボードに関して新制度がスタートしました。これまでは電動キックボードは「原動機付自転車」(原付バイク)の位置付けでしたが、今回から「特定小型原動機付自転車」となり、自転車と同じ交通ルールが適用されるようになります(図)。図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)つまり、運転免許は不要で、車道を走行し、自転車と同じようにヘルメット着用については努力義務扱いとなっています。街中を走る電動キックボードがノーヘルで走ることになり、自転車が逆走してもよい一方通行も逆走可能になります。要は時速20kmが出る原付が、自転車と同じ扱いになる点が懸念材料とされており、世間は賛否両論です。私個人としては電動キックボードを車で轢きそうになったことがあるので、解禁する方向へ動くのは、どちらかといえば反対なんですよね。いや私見で申し訳ないんですが。外傷リスク上記の速度で歩道を走ることはできず、最高時速を6km以下に設定し、緑色のライトを点滅させれば走行可能です。でも現時点で歩道をビュンビュン走っている電動キックボードが多いので、無法地帯になるのではと懸念しています。電動キックボードはタイヤが小径です。段差などの衝撃の影響は自転車よりもはるかに受けやすく、転倒リスクが高いです。自転車が乗れなくなった高齢者が電動キックボードを利用するようにならないか不安もあります。「今後高齢者の足として電動キックボードを利用してみたらどうか」という声もありますが、自転車に乗れなくなった人がスケボーに乗れるはずがないので、外傷リスクが増すだけだと思います。そして、電動キックボードで頭頚部外傷を起こした症例の2~3割は飲酒運転とされており1,2)、これが一番懸念されることかなと思っています。自転車も当然飲酒運転はダメなのですが、「まいっか」みたいな風潮がどこかにあります。参考文献・参考サイト1)Clough RA, et al. Major trauma among E-Scooter and bicycle users: a nationwide cohort study. Inj Prev. 2023 Apr;29(2):121-125.2)Kowalczewska J, et al. Characteristics of E-Scooter-Related Maxillofacial Injuries over 2019-2022-Retrospective Study from Poznan, Poland. J Clin Med. 2023 May 26;12(11):3690.

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暑くても脳卒中が増加?~メタ解析

 暑さと寒さの両方が脳卒中の罹患率および死亡率を増大させ、発展途上国よりも先進国のほうが暑さによるリスクが高いことが、中国・Tongji Medical CollegeのJing Wen氏らによって明らかになった。Brain and Behavior誌オンライン版2023年6月2日号掲載の報告。 これまでの研究で、気温は脳卒中の罹患率および死亡率と関連することが示唆されているが、そのエビデンスは十分ではない。そこで研究グループは、気温と脳卒中の罹患率および死亡率との関連を評価するためにメタ解析を行った。 研究グループは、PubMed、Embase、Web of Scienceを用いて、データベース開設から2022年4月13日までに発表された研究を検索した。高温環境と低温環境のプール推定値は、ランダム効果モデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・20件の研究が解析に含まれた。12件はアジアで実施され、6件はヨーロッパと北米、南米とオーストラリアは1件ずつであった。すべての研究における気温は-33.1℃(カナダ)~40.9℃(中国)で、高温環境は90パーセンタイル以上、低温環境は10パーセンタイル以下とされた。ほとんどの研究で気温のラグ効果は0~28日であると考えられていた。・高温環境では、脳卒中罹患率の相対リスク(RR)は1.10(95%信頼区間[CI]:1.02~1.18、I2=74.2%)、脳卒中死亡率のRRは1.09(1.02~1.17、85.6%)で有意な関連を示した。・低温環境では、脳卒中罹患率のRRは1.33(95%CI:1.17~1.51、I2=72.4%)、脳卒中死亡率のRRは1.18(1.06~1.31、85.5%)で有意な関連を示した。・サブグループ解析では、社会経済的地位で層別化すると、高温環境における脳卒中の罹患率および死亡率は、発展途上国よりも先進国で高かった。しかし、低温環境では、先進国よりも発展途上国のほうが罹患率および死亡率が高かった。 これらの結果より、研究グループは「本研究は、暑さと寒さの両方が脳卒中の罹患率および死亡率と正の相関があるという仮説を支持している。脳卒中リスクを低減するために、公衆衛生において的を絞った対策を推進すべきである」とまとめた。

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アリピプラゾール含有グミ製剤でアドヒアランスは向上するか

 精神疾患の治療を成功させるためには、服薬アドヒアランスを良好に保つことが重要である。医薬品のオーダーメイドは、アドヒアランスが不十分な患者に対し、個々の患者ニーズを満たす剤形を提供可能とする。静岡県立大学の河本 小百合氏らは、市販されているアリピプラゾール(ARP)製剤を用いて、ARP含有グミ製剤の調製を試みた。Chemical & Pharmaceutical Bulletin誌2023年号の報告。 健康対照者10人(平均年齢:23.7±1.2歳)を対象に、味覚検査を実施し、ARP含有グミ製剤の味を調査した。ココア味とフルーツ味の2種類のグミ(ARP:6.0mg、グミ:3.5g)を用いて、味覚テストを実施した。全体的なおいしさの評価には、100mmビジュアルアナログスケール(VAS)を用いた。ARP含有グミ製剤の嗜好性と5段階評価スケールを用いて評価した受容性のVASスコアの分析には、ROC曲線分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・総合的な味に関して最も高いVASスコアが示したのは、ココア風味のARP含有グミ製剤の中で、アスパルテーム、ココアパウダー、バナナ風味を組み合わせたもの(ABC-ARP含有グミ製剤)であった。・すべてのフルーツ風味の中で最も高いVASスコアを示したのは、グレープフルーツ風味のもの(GF-ARP含有グミ製剤)であった。・ABC-ARP含有グミ製剤およびGF-ARP含有グミ製剤のVASスコアは、ROC曲線より算出した許容性のカットオフ値を大きく上回っていた。・アドヒアランス向上、個々の患者ニーズを満たすために、ARP含有グミ製剤は、代替可能な手法である可能性が示唆された。

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既治療のKRAS G12C変異大腸がんに対するソトラシブ+パニツムマブ+FOLFIRIの安全性と有効性(CodeBreaK 101)/ASCO2023

 既治療の転移のあるKRAS G12C変異陽性の大腸がん(mCRC)に、ソトラシブとパニツムマブ、FOLFIRIレジメンの併用が有効である可能性が明らかとなった。CodeBreaK 101サブプロトコールHの結果として、米国・MDアンダーソンがんセンターのDavid S. Hong氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 CodeBreaK 101サブプロトコールHは、多施設共同のオープンラベル第Ib相試験。今回は、用量探索コホート(6例)と拡大コホート(40例)を合わせた全体成績が解析された。・対象:1ライン以上の治療歴があるKRAS G12C変異陽性のmCRC 46例・介入:ソトラシブ960mg/日+パニツムマブ6mg/kg 2週ごと+FOLFIRI 2週ごと・評価項目:[主要評価項目]安全性および忍容性[副次評価項目]奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、奏効までの期間(TTR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、薬物動態 主な結果は以下のとおり。・用量探索コホートと拡大コホートを合わせた、ソトラシブ+パニツムマブ+FOLFIRIによる治療関連有害事象(TRAE)は全Gradeで96%、重篤なものは4%に発現し、死亡例はなかった。これらの有害事象は既知のものと一貫していた。・ソトラシブとイリノテカンの薬物動態に関し、臨床的に意味のある相互作用は確認されなかった。・用量探索コホートと拡大コホートを合わせた併用レジメンのORRは55%、DCRは93%であった。有効性は、前治療のライン数やイリノテカンベースの治療の有無に関係なく示された。・ソトラシブ960mg/日、パニツムマブ6mg/kg 2週ごと、FOLFIRI 2週ごとは、第II相推奨用量であることが示された。 ソトラシブ、パニツムマブ、FOLFIRI療法の組み合わせは、5-FUやイリノテカンの前治療にかかわらず、既治療のKRAS G12C変異陽性mCRCに対する優れた有効性を示すことが示唆された。

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de novo StageIV乳がんの初期薬物療法、サブタイプ・薬剤別の効果(JCOG1017副次的解析)/日本乳学会

 治療歴のない(de novo)StageIV乳がんに対する初期薬物療法の効果は術後再発乳がんより良好とされるが、その効果について詳細なデータはない。今回、JCOG1017(薬物療法非抵抗性StageIV乳がんに対する原発巣切除の意義に関するランダム化比較試験)の副次的解析として、de novo StageIV乳がんに対する初期薬物療法の効果と効果予測因子を検討した結果、サブタイプにより治療効果が異なり、とくにPgR、HER2発現の有無および内臓転移の状況が影響している可能性が示唆された。岡山大学の枝園 忠彦氏が第31回日本乳学会学術総会で発表した。 JCOG1017では、1次登録されたde novo StageIV乳がん患者に対し、サブタイプと転移の状況に応じて、以下のいずれかの初期薬物療法を約3ヵ月実施している。(1)ホルモン療法:ER+かつ生命を脅かす転移なし(2)weekly パクリタキセル(PTX)療法:ER-/HER2-または生命を脅かす転移あり(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル(HPD)療法またはトラスツズマブ+パクリタキセル(HPTX)療法:ER-/HER2+またはER+/HER2+かつ生命を脅かす転移あり 本解析では、レジメンごとの薬物療法の開始3ヵ月後の治療効果(non-PD割合、奏効割合)、初期薬物療法の効果予測因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・約3ヵ月の初期薬物療法を受けた569例におけるnon-PD割合は77.2%で、閉経後およびPgR+で効果が高かった。サブタイプ別にみると、トリプルネガティブ(TN)を基準としたオッズ比(OR)は、ER+/HER2-が0.434(p=0.0439)、ER-/HER2+が3.374(p=0.0201)、ER+/HER2+が0.345(p=0.0153)であった。・薬剤別のnon-PD割合は、ホルモン療法では、タモキシフェン+LH-RHが68.2%、レトロゾールが75.2%、全体では72.8%であり、内臓転移なし、PgR+、HER2-で効果が高かった。weekly PTX療法では76.1%で、有意な効果予測因子はなかった。HPD療法/HPTX療法では92.7%で、内臓転移ありで効果が高かった。・569例における奏効割合(CR+PR)は29.0%で、内臓転移ありで効果が高かった。サブタイプ別にみると、TNを基準としたORは、ER+/HER2-が0.368(p=0.0121)、ER-/HER2+が6.499(p<0.0001)、ER+/HER2+が1.428(p=0.3793)であった。・薬剤別の奏効割合は、ホルモン療法では、タモキシフェン+LH-RHが10.9%、レトロゾールが12.0%、全体では11.6%で、有意な効果予測因子はなかった。weekly PTX療法では36.4%で、有意な効果予測因子はなかった。HPD療法/HPTX療法では81.8%で、内臓転移ありで効果が高かった。・原発巣と転移巣のcCR割合は、ホルモン療法とweekly PTX療法ではほぼゼロであったが、HPD療法/HPTX療法では原発巣で16.4%、転移巣で11.8%であった。 本解析の結果から、枝園氏は「サブタイプによって初期薬物療法の治療効果および効果予測因子は異なっていた。PgR、HER2発現の有無および内臓転移の状況が治療効果に影響している可能性があり、これらを考慮した治療戦略構築が必要」とし、「とくにER+/HER2+ではホルモン療法単独の効果は低く、初期薬物療法から分子標的薬の併用が必要」と考察を述べた。

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1日1回の経口orforglipron、肥満成人の体重減少に有効/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、1日1回の経口剤である非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、体重減少と関連することが示された。orforglipronに関して報告された有害事象は、GLP-1受容体作動薬の注射製剤と類似したものだったという。カナダ・マクマスター大学のSean Wharton氏らが、272例を対象に行った第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群比較試験の結果を報告した。肥満は、世界中で疾患および死亡に結びつく重大リスク因子となっており、1日1回の経口orforglipronの肥満成人における体重減少の有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月23日号掲載の報告。orforglipron 12mg~45mg、1日1回投与の有効性と安全性を評価 試験は、肥満または過体重で体重関連の併存疾患が1つ以上ある、非糖尿病の成人を対象に行われた。研究グループは被験者を無作為に5群に分け、orforglipronを12mg、24mg、36mg、45mg、またはプラセボを、それぞれ1日1回36週間投与した。 主要エンドポイントは、26週時点で評価したベースラインからの体重変化(%)で、副次エンドポイントは36週時点の同体重変化(%)とした。消化管関連有害事象により10~17%が服用中止 2021年9月~2022年11月に、272例が無作為化された。ベースラインの平均体重は108.7kg、BMIは37.9だった。 26週時点で評価したベースラインからの平均体重変化率は、orforglipron群が用量依存的に-8.6~-12.6%であったのに対し、プラセボ群は-2.0%だった。36週時点の同平均体重変化率は、orforglipron群が-9.4~-14.7%、プラセボ群は-2.3%だった。 36週までに体重が10%以上減少した被験者の割合は、orforglipron群が46~75%だったのに対し、プラセボ群は9%だった。orforglipron群では、事前規定の体重関連および心血管代謝の指標がすべて改善した。 orforglipron投与で最も多く報告された有害事象は、軽度~中程度の消化管関連事象で、主に用量増加期間に発生し、orforglipron投与群の10~17%の被験者で投与中止につながった。orforglipronの安全性プロフィールは、GLP-1受容体作動薬クラスと一致していた。

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潰瘍性大腸炎へのミリキズマブ、導入・維持療法で有効性示す/NEJM

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者において、ミリキズマブはプラセボよりも、臨床的寛解の導入・維持に有効であることが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのGeert D'Haens氏らが行った2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(導入療法試験と維持療法試験)で示された。一方で、ミリキズマブ群では少数の患者ではあるが、帯状疱疹などの日和見感染症およびがんの発生も報告されている。ミリキズマブはIL-23p19を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、第II相試験で潰瘍性大腸炎の治療における有効性が示されていた。NEJM誌2023年6月29日号掲載の報告。導入療法試験で反応した患者に対し、維持療法試験を実施 研究グループは、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎の成人患者におけるミリキズマブの有効性と安全性を評価する、2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(導入療法試験[LUCENT-1、12週、2018年6月18日~2021年1月21日]と維持療法試験[LUCENT-2、40週、2018年10月19日~2021年11月3日])を行った。 導入療法試験(34ヵ国383施設で実施)では、被験者を3対1の割合で無作為に割り付け、ミリキズマブ(300mg)とプラセボの静脈内投与を4週ごと12週間行った。続く維持療法試験(34ヵ国367施設で実施)では、導入療法に反応した患者を2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれミリキズマブ(200mg)とプラセボの皮下投与を4週ごと40週間行った。 主要エンドポイントは、導入療法試験の12週時点、維持療法試験の40週時点(全体の52週時点)の臨床的寛解だった。副次エンドポイントは、臨床的反応、内視鏡的寛解、便意切迫の改善などとした。 導入療法試験で反応のなかった被験者については、維持療法試験の最初の12週間に、延長導入療法としてミリキズマブの非盲検投与を行った。また、安全性の評価も行った。ミリキズマブ投与の1,217例中8例でがん発生 合計1,281例が導入療法試験で無作為化され、うちミリキズマブに反応した544例が維持療法試験で無作為化された。 導入療法試験12週時点の臨床的寛解が認められた患者の割合は、ミリキズマブ群(24.2%)のほうがプラセボ群(13.3%)よりも有意に高率だった(p<0.001)。また、維持療法試験の40週時点でも、それぞれ49.9%、25.1%と、ミリキズマブ群で有意に高率だった(p<0.001)。 両試験において、すべての主な副次エンドポイントの結果が、プラセボ群よりもミリキズマブ群で良好であった。 一方、有害事象については、上咽頭炎と関節痛がミリキズマブ群でプラセボ群より高率だった。両試験の対照期間・非対照期間(非盲検延長導入療法期・維持療法期を含む)にミリキズマブ投与を行った1,217例のうち、15例で日和見感染症(帯状疱疹6例を含む)、8例でがん(大腸がん3例を含む)の発生が報告された。導入療法試験のプラセボ群では、帯状疱疹が1例報告されたが、がんの発生は認められなかった。

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低中所得国において、せっけん手洗いによる介入は急性呼吸器感染症(ARI)の減少に寄与する(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、低所得国および中所得国(LMIC)において、せっけんを用いた手洗いにより急性呼吸器感染症(ARI)の減少が推定されることを示した研究である。研究グループは、公衆衛生・感染症研究においてハーバード大学やジョンズ・ホプキンズ大学に並び有名なロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)である。 2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが世界的な問題となったが、それ以前はARIが世界的に罹患および死亡の主な原因であり、そしてARIによる死亡の83%が低中所得国で発生していた。本研究の和文要約は「せっけん手洗いで、低中所得国の急性呼吸器感染症が減少/Lancet」にまとめられている。 本研究の主要アウトカムでは、せっけんによる手洗いの促進による介入であらゆる病原体によるARI罹患率の減少が示されており、低中所得国でせっけん手洗いを行える環境を整える根拠とされるだろう。副次アウトカムでは、下気道感染症と上気道感染症がともに減少している。他の副次アウトカムである「診断検査で確認されたインフルエンザウイルス感染症」については減少を指摘できず、「COVID-19」との関連を対象にした研究は0件であり、全死因死亡について調査した研究は1件のみだった。 ところで、インフルエンザウイルス感染症では、せっけんによる手洗いによる発症率の減少は見込めないのだろうか? 確かに、ウイルス性呼吸器感染症といっても、接触感染、飛沫感染、エアロゾル感染の感染経路のうち、どの経路が主となるかはウイルスごとに多少異なるのかもしれない。また、過去の報告では学校環境ではインフルエンザの減少に手洗いが寄与したが、家庭内の2次感染では寄与しなかった可能性も指摘されており(McGuinness SL, et al. Trop Med Int Health. 2018;23:816-833.)、ウイルスごとの特性以外に環境設定(保育現場、学校環境、家庭内など)により研究結果が変わる可能性もある。ただし、今回の研究で採用された研究は3件のみであり、今後さらなる研究が行われてデータが蓄積されると、「診断検査で確認されたインフルエンザウイルス感染症」も、せっけんによる手洗いが有効とされるかもしれない。せっけんによる手洗いによりインフルエンザウイルス感染症が減るかの結論は、まだ待つ必要があるだろう。 全死因死亡率も減少しなかったが、原因の1つは、全死因死亡率に関する報告が1件(Pickering AJ, et al. Lancet Glob Health. 2015;3:e701-e711.)のみと少数であったことが考えられる。そして、この1件についてもせっけん手洗いとARIの関係を主目的に研究した論文ではないと考えられ、低中所得国でせっけん手洗いを行うことで全死因死亡率の低下を認めるか否かを判断するにはさらなる研究が必要だろう。 さて、本邦は高所得国であるとはいえ、せっけんによる手洗いはARIや他のウイルス感染症疾患を減らすことに役立つことが期待される。今後も、ウイルス感染症流行時期などを中心に、食事前や帰宅後の手洗いをすることは感染対策に有用と考える。 世界では手洗いを行うためのせっけんや、流水が確保できない地域もある。グローバルな視点から見ると、筆者の主張どおり、COVID-19などの特定の感染症が流行していないような平時でも、ARIを減らすために、低中所得国での手指衛生環境を整えてゆくことの促進が望ましいのだろう。

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多遺伝子リスクスコアと冠動脈石灰化スコアを比較することは適当なのか?(解説:野間重孝氏)

 pooled cohort equations(PCE)はACC/AHA心血管ガイドラインの一部門であるリスク評価作業部会によって開発されたもので、2013年のガイドラインにおいて、これを使用して一次治療においてアテローム性動脈硬化性心血管病のリスクが高いと判断された患者(7.5%以上)に対する高強度、中強度のスタチンレジメンが推奨され話題となった。現在PCEを計算するためのサイトが公開されているので、興味のある方は開いてみることをお勧めする(https://globalrph.com/medcalcs/pooled-cohort-2018-revised-10-year-risk/)。わが国であまり用いられないのは国情の相違によるものだろうが、米国ではPCE計算に用いられていない付加的指標を組み合わせることにより、精度の向上が議論されることが多く、現在その対象として注目されているのが冠動脈石灰化スコア(CACS)と多遺伝子リスクスコアだと考えて論文を読んでいただけると理解しやすいのではないかと思う。 「多遺伝子リスクスコア」とは一体何なのか、と疑問を持たれている方も多いのではないかと思う。少々極端なたとえになるが、臨床医ならばだれしも初診患者の診察をする際に家族歴を尋ねるのではないだろうか。また、少し年配の方で疫学に関係したことのある方なら、心筋症の家族歴の調査にかなりの時間を費やした経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思う。そこに2003年、ヒトゲノムが解読されるという大事件が起こったのである。その発症に遺伝が関係すると考えられる疾患の基礎研究で、研究方法がゲノム解析に向かって大きく舵を切られたことが容易に理解されるだろう。 一部のがんや難病では単一のドライバー遺伝子変異もしくは原因遺伝子によって説明できることがあるが、糖尿病・心筋梗塞・喘息・関節リウマチ・アルツハイマー認知症etc.など多くの問題疾患はいずれも多因子疾患であり、多数の遺伝的バリアントによって構成される多遺伝子モデル(ポリジェニック・モデル)に従うと考えられる。間接的、網羅的ゲノム解析であるSNPアレイを用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、この15年ほどの間に多くの多因子疾患の遺伝性を明らかにされた。さらに近年、数万人を超える大規模なGWASによって、非常に多数の遺伝因子を用いて多遺伝子モデルに従う予測スコア、すなわちいわゆる多遺伝子スコア(ポリジェニック・スコア)が構築され、医療への応用可能性を論じることが可能となってきた。しかしその一方で問題点や限界も明らかになってきており、直接的な臨床応用にはまだ限界があることを考えておかなければならない。また、GWASは主に欧州系の白人を対象に研究された経緯から、他の人種にどのように応用できるかには検討の余地がある。本研究で取り上げられた2つの大規模臨床モデルがいずれも欧州系白人を対象としているのは、このような理由によるものと考えられる。 一方冠動脈石灰化スコア(CACS)は造影剤を用いない心電図同期CTで計測可能な指標で、冠動脈全体の石灰化プラークの程度について石灰化の量にCT値で重み付けすることにより求められ、現在冠動脈全体の動脈硬化負荷の代替指標として確立しているといえる。しかし心筋梗塞や不安定狭心症は必ずしも高度狭窄から起こるわけではなく、プラークの不安定性を評価する指標も必要となる。CCTAでもプラークの不安定性を示す指標がいくつか知られているが、臨床応用にはまだ研究の余地があるといえる。とはいえ、FFR-CTまで含め、冠動脈CT検査は直接的な臨床応用が可能である点がゲノム解析にはない利点であることは確かだといえる。実際ゲノム解析には大変な手間・費用が掛かり、その将来性を否定するものではないが、現段階においてはその臨床応用範囲が、まだ限定的であることは否定できないだろう。 なお、多遺伝子リスクスコアがPCEに加えられることによって予想確度が上がるか否かについては2020年の段階で意見が分かれており、いずれもジャーナル四天王で取り上げられているのでご参考願いたい (「多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA」、「CHD予測モデルにおける多遺伝子リスクスコアの価値とは/JAMA」)。 今回の研究はさまざまな議論を踏まえ、多遺伝子リスクスコアを加えること、CACSを加えることのいずれがPCE予測値をより改善するかを検討したものである。結果は多遺伝子リスクスコア、CACSそれぞれ単独では冠動脈疾患発生を有意に予測したが、PCEに多遺伝子リスクスコアを加えても予測確度は上昇しなかった。一方CACSを加えることによりPCEの予測確度は有意に上昇した。 この研究の結論はそれ自体としては大変わかりやすいものなのだが、そもそも多遺伝子リスクスコアとCACSを同じ土俵で比較することが適当なのか、という疑問が残る。何故なら多遺伝子リスクスコアは原因・素因というべきであり、CACSはいわば結果であるからだ。素因と現にそこに起こっている現象とでは意味が違うのではないだろうか。こうした批判は関係する後天的な因子の果たす役割の大きい生活習慣病を考える場合、重要な視点なのではないかと思う。普段ゲノム研究を覗く機会の少ないものとしては大変勉強になる論文ではあったが、そんな素朴な疑問が残った。

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早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれから【心不全診療Up to Date】第10回

第10回 早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれからKey Points早期発見がなぜ重要か?心アミロイドーシスに対して今できる治療は?心アミロイドーシス治療のこれから早期発見がなぜ重要か?〜心アミロイドーシス治療の今とこれから〜前回は心アミロイドーシスの種類や特徴、有病率などに触れた。今回は早期発見の意義について触れていこう。早速だが、心アミロイドーシスの早期発見がなぜ必要なのだろうか。その理由はただ一つ、早期に治療を開始すればするほど、治療のメリットが大きいからである。ではなぜ早期治療のメリットが大きいかというと、アミロイドが沈着する過程を治療するには、『アミロイド前駆蛋白の産生やアミロイド線維の集積を阻害するか』『臓器に一旦沈着したアミロイドの除去を促すか』が標的となるが、現在われわれができる治療は前者のみで、後者は最近ようやく第I相試験の結果が出たところで1)、まだ日常診療には使用できない。つまり、今できる治療は今以上にアミロイドを沈着させないようにするしかないため、まだ臓器へのアミロイド沈着が少ない早期から治療を開始したほうが、予後改善効果が高いというわけである。それでは、具体的な治療法をみていこう。心アミロイドーシスの治療は、(1)合併症の治療と予防、(2)特異的な治療によるアミロイド沈着の停止または遅延、の2つに大きく分けられる。心アミロイドーシスの合併症への対策は、心不全以外にも、不整脈、伝導障害、血栓塞栓症、重度大動脈狭窄症に対する治療など、注意すべきものがさまざまあり、詳細は図5をご覧いただきたい。(図5)心アミロイドーシスの心臓合併症と併存疾患の治療画像を拡大するとくに、心不全を伴う場合、『心不全予後改善薬の投与をどうするか』はとても重要なポイントである。実臨床において、どの薬剤がどのように使用され、予後との関連はどうであるか、という点について、最近イギリスから興味深い報告があった2)。この研究は、2000~22年にNational Amyloidosis CentreでATTR心アミロイドーシスと診断された2,371例(平均年齢:78歳、男性:90%、ATTRwt:78%、平均LVEF:48%)を対象に、心不全予後改善薬(β遮断薬、RAS阻害薬[ACEi/ARB]、MR拮抗薬)の処方パターン、用量、中断率と予後との関連を調べたものである。その結果は図6の通りであるが、とくに予後との関連が興味深い。それぞれの処方率は、β遮断薬が55%、RAS阻害薬が57%、MR拮抗薬が39%で、β遮断薬とRAS阻害薬はしばしば中断されていたが、低用量のβ遮断薬は、HFrEF(EF≦40%)患者の死亡リスク軽減と関連していた。一方、MR拮抗薬はほとんどの症例で継続されており、すべての心不全症例(とくにEF>40%)に対して死亡リスク軽減と関連していた。もちろん、前向きRCTで確認する必要があるが、とても重要な報告であると考える。(図6)ATTR心アミロイドーシスに対する心不全従来治療と予後の関連画像を拡大するそして、近年の医学の進歩により、心アミロイドーシスに対する特異的な治療も出てきている。その治療法は心アミロイドーシスの病型により異なるため、病型ごとに説明していく。ALアミロイドーシスまず、ALアミロイドーシスに対する特異的な治療の基本は、アミロイド前駆蛋白であるFLC(free light chain)の産生を抑制することであり、基礎となる血液疾患に対する治療法に大きく依存している3,4)。具体的には、骨髄でモノクローナルに増殖しているCD38陽性形質細胞を選択的に攻撃する抗体薬であるダラツムマブ、プロテアソームを阻害する分子標的薬であるボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、メルファランなどの薬剤や自己末梢血幹細胞移植も治療の選択肢になるが、さらなる詳細は成書に譲ることとする。ATTRアミロイドーシス次に、ATTRアミロイドーシスに対する治療について、TTRの歴史とTTRアミロイド線維生成経路を見ながら考えていこう(図7)。(図7)ATTR心アミロイドーシス治療の今とこれから画像を拡大するTTRは127アミノ酸残基からなる血漿タンパク質で、ホモ四量体として肝臓で産生され、血液中においても四量体として存在する。1940年代後半から1950年代前半にかけて発見されたTTRは、栄養状態の指標として用いられていたことから、以前はプレアルブミンと呼ばれていた。この名前は、ゲル電気泳動でアルブミンよりも先に移動することに由来する。プレアルブミンはサイロキシンとレチノール結合タンパク質の輸送を行うことがその後にわかり、1980年にTTRという名称が正式に採用された5)。TTRがアミロイドを形成するには、自然構造である四量体から単量体への解離と単量体の変性が必要であることから、ATTRアミロイドーシスに対する特異的な治療としては、変異型および野生型TTRの産生を特異的に抑制する薬剤(TTR silencers)と、TTRの四量体を安定化し、単量体への解離を抑制する薬剤(TTR stabilizers)がある。なお、アミロイド線維を除去し、組織浸潤を回復させる薬剤(抗TTR抗体製剤)は現在第I相試験が終了1)したところで、まだ実用化には至っていないが、画期的な薬剤であり、今後の展開が大変期待されている(図7)。ちなみに、従来のTTR(プレアルブミン)測定法は、四量体のみを測定するものであるため、ATTRアミロイドーシス症例では血中TTR濃度は低下し、後で述べるTTR安定化薬投与後は上昇することになり、早期診断や予後予測に有用となる可能性があるという報告もある6,7)。これらの薬剤のなかで、RCTで効果が検証された最初の薬剤がタファミジスであり、現在本邦でも生存期間が十分に見込まれるATTR心アミロイドーシス患者に対して2019年3月から保険適用されている。タファミジスは、TTR四量体の2つのサイロキシン結合部位に結合し、その四量体構造を安定化させ、アミロイド形成を抑制するTTR安定化薬(TTR stabilizers)である。第III相ATTR-ACT試験(年齢中央値:75歳、男性:90%)では、ATTRvまたはATTRwt心筋症患者(ATTRwt:76%)において、プラセボと比較して、治療30ヵ月後に全死亡および心血管関連入院が30%減少し、QOL低下が緩やかになることが示された9)。つまり、ATTR-ACT試験は、(1)HFpEFにおける死亡率および心不全入院の減少が初めて示された薬物療法(2)ATTRアミロイドーシスにおける死亡率と病的状態の減少が初めて示された薬物療法(3)末梢性や神経ホルモン調節ではなく心筋に対して中心的に作用してハードエンドポイントへの効果を実証した初めての心不全治療薬これら“3つの初めて”を成し遂げた試験と言える8)。ただし、タファミジスはかなり高額な薬剤(2020年当時、1カプセル43,672.8円、年間の薬剤費は1人あたり6,376万円)であり、米国からも費用対効果に関する論文が発表9)され、費用対効果を高めるためには、92.6%(ビックリ!)の薬価引き下げが必要との報告もあるくらいであり、費用対効果もしっかり考えて処方すべき薬剤であろう。なお、同じTTR安定化薬であるAG10についても、症候性ATTR心筋症患者を対象に、第III相試験(ATTRibute-CM)が現在進行中である。また、TTR silencersとしては、TTR mRNAを選択的に分解して、遺伝子レベルでTTRの産生を特異的に抑制するsiRNA製剤(核酸医薬)であるパチシランが、ATTRvアミロイドーシスの治療薬として本邦でも2019年6月から保険適用されている。そして、現在ATTRwtも含めたATTR心筋症患者に対するパチシランの有効性を検証する第III相試験(APOLLO-B)が進行中である。そして、冒頭でも少し述べた通り、最も切望されている図7の(3)に相当する治療、つまり、抗体を介したATTR線維の貪食と組織からのATTR沈着物の除去を誘導することにより、ATTRを消失させる画期的な治療薬(遺伝子組換えヒト抗ATTRモノクローナルIgG1抗体)の研究も進みつつあり、今年5月に第I相試験(first-in-human)の結果がなんとNEJM誌に掲載され、安全性が確認された1)。その論文には実際に薬剤を使用した患者の画像所見が掲載されているが、沈着したアミロイドが除去されていることを示唆する所見が認められており、今後の第II相、第III相試験の結果が期待される。以上、今回は、早期診断、早期治療がきわめて重要な心アミロイドーシスを取り上げてみた。ぜひ明日からの診療に活かしていただければ幸いである。1)Garcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2023 May 20.[Epub ahead of print]2)Ioannou A, et al. Eur Heart J. 2023 May 22. [Epub ahead of print]3)Palladini G, et al. Blood. 2016;128:159-168.4)Garcia-Pavia P, et al. Eur Heart J. 2021;42:1554-1568.5)Robbins J, et al.Clin Chem Lab Med. 2002;40:1183-1190.6)Hanson JLS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004000.7)Greve AM, et al. JAMA Cardiol. 2021;6:258-266.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med. 2018;379:1007-1016.9)Kazi DS, et al. Circulation. 2020;141:1214-1224.

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第168回 3年連続3回目、地域医療連携推進法人言及の背景 「骨太の方針2023」で気になった2つのこと(後編)

3年連続3回目のオールスターこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平選手の打撃の勢いが止まりません。6月は27試合すべてに先発出場し、104打数41安打で打率.394、15本塁打29打点でした(投手としては2勝2敗)。全試合をテレビ観戦しているわけではありませんが、朝、NHK BSにチャンネルを合わせると大谷が打席に立っていて、ホームランを打っている印象です。「見ると打っている」、まさにそんな感じです。3年連続3回目の出場となるオールスターゲームもいよいよ来週7月11日(現地時間)に迫り、楽しみです。前日に行われるホームランダービーへは「出場しない」との下馬評ですが、「大谷のことだから」とダービー出場にほのかな期待を抱く人も少なくないようです。さて今回も前回に引き続き「骨太方針2023」について書きます。政府は16日、「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義〜未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現〜」(骨太方針2023)を閣議決定しました1)。盛りだくさんの医療や社会保障関連の項目の中から個人的に気になったものとして、前回は「長期収載品等の自己負担の在り方」について書きました。今回は、もう一つ気になった「地域医療連携推進法人」への言及について書いてみたいと思います。地域医療連携推進法人について骨太方針が言及するのは、大谷選手のオールスターと同じく、「3年連続3回目」となります。「骨太の方針2023」では「地域医療連携推進法人制度の有効活用」「骨太の方針2023」の「第4章 中長期の経済財政運営」「2.持続可能な社会保障制度の構築」の(社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進)には、次のように書かれています。「引き続き都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進するとともに、都道府県のガバナンス強化、かかりつけ医機能が発揮される制度整備の実効性を伴う着実な推進、地域医療連携推進法人制度の有効活用、(中略)を図る」「骨太方針2021」では「連携推進法人制度の活用等により病床機能の分化・連携を進め地域医療構想を推進」「地域医療連携推進法人」が最初に言及されたのは2年前の「骨太方針2021」でした。「第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革」「2.社会保障改革」の「(1)感染症を機に進める新たな仕組みの構築」には次のように書かれました。「今般の感染症対応の検証や救急医療・高度医療の確保の観点も踏まえつつ、地域医療連携推進法人制度の活用等による病院の連携強化や機能強化・集約化の促進などを通じた将来の医療需要に沿った病床機能の分化・連携などにより地域医療構想を推進する」。「骨太方針2022」では必要な法制上の措置を求める続く、「骨太方針2022」では、「第4章 中長期の経済財政運営」「2.持続可能な社会保障制度の構築」で次のように書かれました。「質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めることとし、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うとともに、地域医療連携推進法人の有効活用や都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進する」新類型新設などの制度変更を機に、再度有効活用をダメ押し表現は微妙に変わっていますが、「有効活用」という点は一貫しています。おおまかな流れとしては、「骨太方針2021」で、地域医療構想を推進するために地域医療連携推進法人制度の活用を謳い、「骨太方針2022」で必要な法制上の措置を求め、2023年5月成立の全世代型社会保障法(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)で新類型新設などの制度変更を実現、それを受けた今年の「骨太方針2023」でダメ押し的に「地域医療連携推進法人制度の有効活用」を再度強調した、ということになります。6月末現在の連携推進法人の数は全国で34地域医療連携推進法人(以下、連携推進法人)については、本連載でも度々書いてきました(「第138回 かかりつけ医制度の将来像 連携法人などのグループを住民が選択、健康管理も含めた包括報酬導入か?」、「第69回 「骨太」で気になった2つのこと(後編) 制度化4年目にして注目集める地域医療連携推進法人の可能性」)。制度がスタートして6年ですが、実際のところ、まだそれほど普及・定着していません。2023年6月末現在の連携推進法人は全国で34(累計認定数は35だが1法人解散で34)。47都道府県のうち、まだ半数以下の21道府県でしか認定されていない連携推進法人制度に、国がここまでこだわる理由は一体何でしょうか。最大の理由は地域医療構想の進捗がはかばかしくないことでしょう。地域医療構想については当面は策定された2025年の目標に向けての取り組みが進められていることになっています(次の地域医療構想については2040年頃を視野に入れつつ策定される予定ですが、詳細は未定)。しかし、そもそも各地の地域医療構想調整会議がほとんど機能しなかったことに加え、大規模な再編が本格化しようとした矢先、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こり、地域の病院再編の多くが先延ばしとなってしまいました。財務省は、今年4月28日に開かれた医療や介護など社会保障分野の改革を検討する政府のワーキング・グループで、地域医療構想について「過去の工程表と比較して進捗がみられない」「目標が後退していると言われかねない」などと指摘しています。地域医療構想調整会議が機能しないならば、連携推進法人を各地でつくってもらい、“同じ法人”の中で実のある話し合いを進め、本当に実効性のある医療連携を進めてほしい、というのが国の本音というわけです。「かかりつけ医機能の制度整備」にも連携推進法人活用をもう一つの理由としては、全世代型社会保障法の成立で新たに進められる「かかりつけ医機能の制度整備」があります。これについても連携推進法人の制度の活用が期待されているわけです。昨年12月16日に公表された、全世代型社会保障構築会議の報告書では、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」の項で以下のように書かれています。「医療機関が担うかかりつけ医機能の内容の強化・向上を図ることが重要と考えられる。また、これらの機能について、複数の医療機関が緊密に連携して実施することや、その際、地域医療連携推進法人の活用も考えられる」。どう活用するかについては細かくは言及されていませんが、病院だけではなく、診療所も参加した連携法人の中で、それぞれの専門領域を補完しあいながら、面の連携を進めることでかかりつけ医機能を強化していってほしい、と読み取れます。「個人立医療機関」も参加できる類型が新設その連携推進法人の制度ですが、全世代型社会保障法(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)が2023年5月成立したことに伴い、大幅に見直されます。医療法の一部が改正され、連携推進法人については、従来の「法人のみが参加できる」類型に加え、「個人立医療機関」も参加できる類型が新設されます。新類型では、出資、貸付は不可となる一方、外部監査等が不要になったり、一部事務手続きが簡素化されたりなど、“使い勝手”がよく、設立の敷居が低い類型となる予定です(施行は2024年4月)。これまでは、高度急性期病院から、急性期、回復期、慢性期へと退院患者の流れ(上流から下流へ)を効率化することに重点を置いた、いわゆる“垂直連携”の連携推進法人が比較的多かった印象です。そういったところでは、各病院の役割分担を明確にし、経営的にもプラスになるようなスキームを組んでいました。今後、診療所も参加した新類型の連携推進法人が増えていくと思われますが、わかりやすい“垂直連携”ではなく、医療機能が同レベルの医療機関による“水平連携”は経営的なメリットが見えづらいかもしれません。制度見直しで、連携推進法人制度が果たして順調に普及・定着していくのか、これからの動きに注目したいと思います。参考1)経済財政運営と改革の基本方針2023/内閣府

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スタチンで肝疾患を予防できる可能性の高い人は

 スタチン服用が肝疾患を予防する可能性が示唆されている。今回、ドイツ・University Hospital RWTH AachenのMara Sophie Vell氏らは、肝疾患・肝細胞がん発症の減少、および肝臓関連死亡の減少と関連するかどうかを3つのコホートで検討した。その結果、スタチン服用者は非服用者に比べ、肝疾患発症リスクが15%低く、肝細胞がん発症リスクについては最大74%低かった。また、このスタチンのベネフィットは、とくに男性、糖尿病患者、肝疾患の遺伝的リスクがある人で得られる可能性が高いことが示唆された。JAMA Network Open誌2023年6月26日号に掲載。 本コホート研究には、UK Biobank(2006~10年のベースラインから2021年5月の追跡終了まで登録、37~73歳)、TriNetX(2011~20年のベースラインから2022年9月の追跡終了まで登録、18~90歳)、およびPenn Medicine Biobank(2013年から2020年12月の追跡終了まで登録、18~102歳)のデータを使用した。年齢、性別、BMI、民族、糖尿病(インスリンもしくはビグアナイドの使用の有無)、高血圧、虚血性心疾患、脂質異常症、アスピリン服用、処方薬剤数により、傾向スコアマッチングを用いて登録者をマッチングした。主要アウトカムは肝疾患および肝細胞がんの発症と肝臓関連死亡とした。 主な結果は以下のとおり。・マッチングされた178万5,491例を評価した。追跡期間中に肝臓関連死亡581例、肝細胞がん発症472例、肝疾患発症9万8,497例が登録された。平均年齢は55〜61歳で、男性の割合がやや高かった(最大56%)。・肝疾患の診断を受けたことがないUK Biobankの登録患者(20万5,057例)において、スタチン服用者(5万6,109例)は肝疾患発症リスクが15%低かった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.78~0.92、p<0.001)。また、スタチン服用者は肝臓関連死亡リスクが28%低く(HR:0.72、95%CI:0.59~0.88、p=0.001)、肝細胞がん発症リスクが42%低かった(HR:0.58、95%CI:0.35~0.96、p=0.04)。・TriNetX(156万8,794例)では、スタチン服用者の肝細胞がん発症リスクが74%低かった(HR:0.26、95%CI:0.22~0.31、p=0.003)。・スタチンの肝保護作用は時間と用量に依存し、Penn Medicine Biobank(1万1,640例)では、スタチン服用1年後に肝疾患発症リスクが有意に低下した(HR:0.76、95%CI:0.59~0.98、p=0.03)。・男性、糖尿病患者、ベースライン時にFibrosis-4 indexが高かった患者で、とくにスタチンが有用だった。また、PNPLA3 rs738409リスク対立遺伝子のヘテロ接合体保因者においてスタチンが有用で、肝細胞がん発症リスクは69%低かった(UK Biobank、HR:0.31、95%CI:0.11~0.85、p=0.02)。 今回の3つのコホート研究の結果、スタチンと肝疾患予防に有意な関連が示され、とくに男性、糖尿病患者、肝疾患の遺伝的リスクのある人で有用だった。著者らは「特定のリスクカテゴリーに該当する人はスタチンで大きなベネフィットを得る可能性が高いので、スタチンの適応があるかどうかを判断するために十分に評価を受ける必要がある」としている。

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双極性障害ラピッドサイクラーの特徴

 双極性障害(BD)におけるラピッドサイクリング(RC、1年当たりのエピソード回数:4回以上)の存在は、1970年代から認識されており、治療反応の低下と関連する。しかし、1年間のRCと全体的なRC率、長期罹患率、診断サブタイプとの関連は明らかになっていない。イタリア・パドヴァ大学のAlessandro Miola氏らは、RC-BD患者の臨床的特徴を明らかにするため、プロスペクティブに検討を行った。その結果、BD患者におけるRC生涯リスクは9.36%であり、女性、高齢、BD2患者でリスクが高かった。RC患者は再発率が高かったが、とくにうつ病では罹患率の影響が少なく、エピソードが短期である可能性が示唆された。RC歴を有する患者では転帰不良の一方、その後の再発率の減少などがみられており、RCが持続的な特徴ではなく、抗うつ薬の使用と関連している可能性があることが示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月4日号の報告。 RCの有無にかかわらずBD患者1,261例を対象に、記述的および臨床的特徴を比較するため、病例および複数年のフォローアップによるプロスペクティブ調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・1年前にRCであったBD患者の割合は9.36%(BD1:3.74%、BD2:15.2%)であり、男性よりも女性のほうが若干多かった。・RC-BD患者の特徴は以下のとおりであった。 ●年間平均再発率が3.21倍高い(入院なし) ●罹患率の差異は小さい ●気分安定に対する治療がより多い ●自殺リスクが高い ●精神疾患の家族歴なし ●循環性気質 ●既婚率が高い ●兄弟や子供がより多い ●幼少期の性的虐待歴 ●薬物乱用(アルコール以外)、喫煙率が低い・多変量回帰モニタリングでは、RCと独立して関連した因子は、高齢、抗うつ薬による気分変調、BD2>BD1の診断、年間エピソード回数の増加であった。・過去にRC-BDであった患者の79.5%は、その後の平均再発率が1年当たり4回未満であり、48.1%は1年当たり2回未満であった。

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成人のアトピー性皮膚炎は静脈血栓塞栓症のリスクか

 アトピー性皮膚炎(AD)の成人患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクが高いことが、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らが実施した住民ベースの全国コホート研究で示唆された。AD成人と非AD成人のVTE発症の絶対差はわずかであったが、著者は、「VTEを示唆する症状を呈するAD成人患者には、心血管系の検査と指導管理を考慮すべきだろう」と述べ、「ADとVTEの関連の基礎をなす、病態生理を解明するため、さらなる研究が求められる」とまとめている。ADの病態メカニズムとして慢性全身性炎症があり、潜在的な血管への影響が考えられることから、複数の心血管疾患についてADとの関連が研究されているが、成人におけるADとVTEの関連はほとんど解明されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月31日号掲載の報告。 研究グループは、住民ベースの全国コホート研究によりADとVTE発症との関連を検討した。台湾のNational Health Insurance Research Databaseから20歳以上の成人(2003~17年に新規にADと診断された成人、および背景因子をマッチングさせた対照成人)を特定し解析した。主要アウトカムは、ADとVTE発症の関連であった。AD患者を重症度で層別化し、Cox比例ハザードモデルを用いて、VTEに関するハザード比(HR)を推算した。 主な結果は以下のとおり。・解析には28万4,858例が含まれた。AD群と非AD群はいずれも14万2,429例で、各群の年齢(平均値±標準偏差)は44.9±18.3歳、44.1±18.1歳、女性は7万8,213例、7万9,636例であった。・追跡期間中に、AD群1,066例(0.7%)、非AD群829例(0.6%)にVTE発症が認められた。・1,000人年当たりの発生率は、AD群1.05、非AD群0.82であり、AD成人は非AD成人と比べてVTE発症リスクが有意に高かった(HR:1.28、95%信頼区間[CI]:1.17~1.40)。・個々のアウトカム解析において、AD成人は深部静脈血栓症(HR:1.26、95%CI:1.14~1.40)および肺血栓塞栓症(同:1.30、1.08~1.57)の発症リスクが高くなることが示唆された。

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周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)に対する周術期治療に、抗PD-1抗体toripalimabを追加投与することで、無イベント生存期間(EFS)が延長することが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相Neotorch試験の中間解析から示された。中国・上海市胸科医院のShun Lu氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:切除可能なStageII/IIIのNSCLC患者404例・試験群:toripalimab+プラチナベース化学療法3週ごと3サイクル→手術→toripalimab+プラチナベース化学療法3週ごと1サイクル→toripalimab 3週ごと最大13サイクル(toripalimab群)202例・対照群:プラセボ+プラチナベース化学療法3週ごと3サイクル→手術→プラセボ+プラチナベース化学療法3週ごと1サイクル→プラセボ3週ごと最大13サイクル(プラセボ群)202例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医評価によるStageIII、II/IIIのEFS、盲検下独立病理学審査(BIPR)評価によるStageIII、II/IIIの病理学的奏効(MPR)率[副次評価項目]全生存期間(OS)、BIPR/施設病理医の評価によるStageIII、II/IIIの病理学的完全奏効(pCR)率、独立評価委員会(IRC)評価によるStageIII、II/IIのEFS、無病生存期間(DFS)、安全性と手術の実行性EFS(StageIII)→EFS(StageII/III)→MPR(StageIII)→MPR(StageII/III)→OS(StageIII)→OS(StageII/III)の順番で階層的に検定 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値18.3ヵ月における、治験担当医によるStageIIIのEFS中央値は、toripalimab群が未到達、プラセボ群が15.1ヵ月で、toripalimab群の有意なEFS改善が示された(両側p<0.0001)。・EFSのHRをPD-L1発現別にみると、PD-L1<1%では0.59(95%信頼区間[CI]:0.327〜1.034)、1~49%では0.31(同:0.176〜0.554)、50%≦では0.31(同:0.152〜0.618)と、toripalimab群で良好な傾向であった。・EFSのHRを組織型別にみると、非扁平上皮がんでは0.54(95%CI:0.265〜1.096、p=0.0827)、扁平上皮がんでは0.35(同:0.236〜0.528、p<0.0001)と、toripalimab群で良好な傾向であった。・MPR率はtoripalimab群48.5%、プラセボ群8.4%(p<0.0001)、pCR率はtoripalimab群24.8%、プラセボ群1.0%(p<0.0001)と、いずれもプラセボ群に比べ改善していた。・Grade3以上の治療下発現有害事象(TEAE)は、toripalimab群の63.4%で、プラセボ群の54.0%で発現した。Grade3以上の免疫関連有害事象は、toripalimab群の11.9%で、プラセボ群の3.0%で発現した。 発表者のLu氏は、「従来の研究と合わせ、Neotorch試験の結果は、周術期の抗PD-1抗体と化学療法との併用が、切除可能NSCLCの標準治療となるべきであることを示した」と述べている。

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T-DXd、脳転移や髄膜がん腫症を有するHER2+乳がんに有効(ROSET-BM)/日本乳学会

 わが国における実臨床データから、脳転移や髄膜がん腫症(LMC)を有するHER2陽性(HER2+)乳がんにトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が有効であることが示唆された。琉球大学の野村 寛徳氏が第31回日本乳学会学術総会で発表した。T-DXdはDESTINY-Breast01/03試験において、安定した脳転移を有するHER2+乳がんに対して有望な効果が報告されているが、活動性脳転移やLMCを有する患者におけるデータはまだ限られている。 本研究(ROSET-BM)はわが国における多機関共同レトロスペクティブチャートレビュー研究である。2020年12月31日時点でHER2+乳がんの治療にT-DXdを使用した医療機関から、2020年5月25日~2021年4月30日にT-DXd治療を受けた脳転移またはLMCを有するHER2+乳がん患者(20歳以上、臨床試験でT-DXd治療を受けた患者は除外)の実臨床データおよび脳画像データを収集した(データカットオフ:2021年10月31日)。評価項目は、治療成功期間(TTF)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、脳画像による頭蓋内病変(IC)-ORR、IC-臨床的有用率(CBR)など。 主な結果は以下のとおり。・国内62施設からの適格基準を満たした104例を解析対象とした。うち89例が評価可能な脳画像データを有していた。・前治療レジメン数の中央値は4.0(Q1:3.0、Q3:7.0)であった。・脳転移の随伴症状があった患者は30.8%で、随伴症状に対する薬剤はステロイドが14.4%、抗てんかん薬が10.6%であった。・脳転移は、LMCを伴わない活動性脳転移が73例、LMCを伴う活動性脳転移が17例、安定した脳転移が6例、LMCのみが2例、判定不能が6例だった。・全体でのPFS中央値は16.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.0~NA)、OSは中央値に達しておらず、12 ヵ月OS率は74.9%(同:64.5~82.6)であった。・脳転移のサブグループ別にみた生存率は、活動性脳転移(T-DXd投与前30日以内に全脳照射を受けた患者を除く)において、PFS中央値が13.4ヵ月、OS中央値は未達だった。また、LMC患者においても、12ヵ月PFS率が60.7%、12ヵ月OS率が87.1%と持続的な全身性疾患のコントロールを示した。・TTF中央値は9.7ヵ月、間質性肺疾患/肺障害による投与中止は18.3%であった。・IC-ORRは62.7%、IC-CBR(6ヵ月時点)は70.6%であった。 野村氏は最後に、転移性脳腫瘍の増大で昏睡状態になった40代の乳がん女性が、T-DXd投与によって昏睡状態の回復および脳転移の改善がみられ、驚愕したという経験を紹介し、「脳転移やLMCを有するHER2+乳がん患者に対して、T-DXdは既報と同様の有効性と臨床的有用性を示した」とまとめた。

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男性性腺機能低下症、テストステロン補充で心血管リスクは?/NEJM

 性腺機能低下症の中高年男性で、心血管疾患を有するか、そのリスクが高い集団において、テストステロン(ゲル剤)補充療法は、心血管系の複合リスクがプラセボに対し非劣性で、有害事象の発現率は全般に低いことが、米国・クリーブランドクリニックのA Michael Lincoff氏らが実施した「TRAVERSE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年6月16日号に掲載された。米国の無作為化プラセボ対照非劣性試験 TRAVERSE試験は、米国の316施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照非劣性第IV相試験であり、2018年5月23日に患者の登録が開始された(AbbVieなどの助成を受けた)。 対象は、年齢45~80歳、心血管疾患を有するかそのリスクが高く、性腺機能低下症の症状がみられ、2回の検査で空腹時テストステロン値が300ng/dL未満の男性であった。 被験者は、1.62%テストステロンゲルまたはプラセボゲルを毎日経皮的に投与する群に、無作為に割り付けられた。 心血管系の安全性の主要エンドポイントは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合であった。ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限値が1.5未満の場合に非劣性と判定された。感度分析でも非劣性を示す 最大の解析対象集団5,204例のうち、2,601例(平均[±SD]年齢63.3±7.9歳、血清テストステロン中央値227ng/dL)がテストステロン群に、2,603例(63.3±7.9歳、227ng/dL)はプラセボ群に割り付けられた。平均(±SD)投与期間は、テストステロン群が21.8±14.2ヵ月、プラセボ群は21.6±14.0ヵ月、平均フォローアップ期間はそれぞれ33.1±12.0ヵ月、32.9±12.1ヵ月であった。 心血管系の安全性の主要エンドポイントは、テストステロン群が2,596例中182例(7.0%)、プラセボ群は2,602例中190例(7.3%)で発生し(HR:0.96、95%CI:0.78~1.17、非劣性のp<0.001)、テストステロン群のプラセボ群に対する非劣性が示された。 また、主要感度分析(最終投与から365日以降に発生したイベントのデータは打ち切り)では、主要エンドポイントはテストステロン群が154例(5.9%)、プラセボ群は152例(5.8%)で発生し(HR:1.02、95%CI:0.81~1.27、非劣性のp<0.001)、非劣性が確認された。 心血管系の副次複合エンドポイント(主要エンドポイント+冠動脈血行再建[PCIまたはCABG])の発生は、テストステロン群が269例(10.4%)、プラセボ群は264例(10.1%)であり、臨床的に意義のある明らかな差は認められなかった(HR:1.02、95%CI:0.86~1.21)。主要エンドポイントの各項目の発生率は、いずれも両群で同程度であった。 前立腺がんが、テストステロン群の12例(0.5%)、プラセボ群の11例(0.4%)で発現した(p=0.87)。前立腺特異抗原(PSA)のベースラインからの上昇は、テストステロン群のほうが大きかった(0.20±0.61ng/mL vs.0.08±0.90ng/mL、p<0.001)。また、テストステロン群では、心房細動(3.5% vs.2.4%、p=0.02)、急性腎障害(2.3% vs.1.5%、p=0.04)のほか、肺塞栓症(0.9% vs.0.5%)の発生率が高かった。 著者は、「メタ解析では、静脈血栓塞栓イベントとテストステロンには関連がないことが示されているが、今回の知見は、過去に血栓塞栓イベントを発症した男性ではテストステロンは慎重に使用すべきとする現行の診療ガイドラインを支持するものであった」としている。

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