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中高年の睡眠時間とうつ病リスクとの関係~用量反応メタ解析

 中国・北京中医薬大学のXin-Lin Li氏らは、中年および高齢者における夜間の睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を調査するため、本研究を実施した。その結果、中高年のうつ病リスクが最も低い夜間の睡眠時間は7時間であり、睡眠時間がそれより長くても短くても、うつ病リスクが高まる可能性が示唆された。Frontiers in Physiology誌2023年3月2日号の報告。 2022年7月31日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、CNKI、VIP、Wanfangデータナレッジサービスプラットフォームより検索した。対象には、夜間の睡眠時間とうつ病との関連を評価したコホート研究およびケースコントロール研究を含めた。研究の質の評価には、Newcastle-Ottawa scaleを用いた。2人の研究者により、データ抽出と品質評価を行った。睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を評価するため、制限付き3次スプライン(RCS)および一般化最小二乗法(GLS)を用いた。推定エフェクトサイズを分析するため、Stata 12.0を用いて、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、6件のコホート研究より3万3,595例を含めた。・睡眠時間とうつ病リスクとの間にU字型の関連が認められた。・夜間の7時間睡眠と比較し、それよりも短時間および長時間睡眠のいずれにおいても、うつ病リスク増加との関連が認められた(非線形検定 p<0.05)。【5時間】RR:1.09(95%CI:1.07~1.12)【6時間】RR:1.03(同:1.02~1.04)【8時間】RR:1.10(同:1.05~1.15)【9時間】RR:1.31(同:1.17~1.47)【10時間】RR:1.59(同:1.31~1.92)・非アジア人では、短時間睡眠によりうつ病リスクが高まり、アジア人では短時間および長時間睡眠のいずれにおいてもうつ病リスクが高まる可能性が示唆された。 ●非アジア人【5時間】RR:1.09(同:1.02~1.17) ●アジア人【5時間】RR:1.10(同:1.07~1.13)【6時間】RR:1.04(同:1.02~1.05)【8時間】RR:1.09(同:1.05~1.14)【9時間】RR:1.35(同:1.18~1.53)【10時間】RR:1.70(同:1.36~2.12)

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1~3歳のピーナッツアレルギー児、パッチ療法の有用性を検証/NEJM

 ピーナッツアレルギーの1~3歳児において、12ヵ月間にわたるピーナッツパッチを用いた経皮免疫療法はプラセボと比べて、脱感作の児の増加、症状を引き起こすピーナッツ量の増量という点で優れていたことが示された。米国・コロラド大学のMatthew Greenhawt氏らが第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。ピーナッツアレルギーの4歳未満児に対する承認された治療法はなく、これまでピーナッツアレルギー幼児へのピーナッツパッチによる経皮免疫療法の有効性と安全性は確認されていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。8ヵ国51ヵ所で試験、12ヵ月時点の減感作を評価 試験は2017年7月31日~2022年4月27日に、米国、カナダ、オーストラリア、欧州の計8ヵ国51ヵ所で、ピーナッツアレルギーの1~3歳児を登録して行われた。 ピーナッツ蛋白の誘発用量(アレルギー反応を引き起こすのに用する量)が300mg以下の患児を、2対1の割合で無作為に、ピーナッツパッチ(ピーナッツ蛋白250μg含有[ピーナッツ1個の約1,000分の1])による経皮免疫療法を受ける群(介入群)とプラセボ群に割り付け、1日1回の貼付を12ヵ月間にわたって行った。 主要エンドポイントは、12ヵ月時点の治療効果で、ピーナッツ蛋白の誘発用量で評価した。評価に用いる誘発用量は、ベースラインでの誘発用量が10mg超の場合は少なくとも1,000mg(ピーナッツ約3、4個分相当)とし、10mg以下の場合は300mg(同約1個分相当)とした。 安全性は、ピーナッツパッチまたはプラセボ貼付中に発現した有害事象で評価した。介入群67.0%で効果、治療関連のアナフィラキシー発現は1.6% 362例が無作為化され、主要有効性および安全性解析に含まれた(介入群244例、プラセボ群118例)。このうち68.8%が男児で、年齢中央値は2.5歳、63.3%が白人であった。ベースラインの誘発用量が10mg以下だった患児は67例(介入群51例、プラセボ群16例)、10mg超は295例(同193例、102例)であった。ベースラインの両群の人口統計学的特性はバランスがとれていた。試験を完了したのは84.8%(介入群208例、プラセボ群99例)であった。 12ヵ月時点で治療効果が認められたのは、介入群67.0%、プラセボ群33.5%で介入群が有意に多かった(リスク群間差:33.4ポイント、95%信頼区間[CI]:22.4~44.5、p<0.001)。 両群の貼付中に発現した有害事象(治療との関連性に関係なく)は、介入群100%、プラセボ群99.2%で観察された。最も多くみられたのは貼付部位反応(紅斑[介入群98.0%、プラセボ群90.7%]、かゆみ[94.7%、61.0%]、貼付部位腫脹[72.5%、39.0%]など)であった。また、研究グループによって皮膚の反応は、介入またはプラセボの貼付開始時(0~3ヵ月目)の発現頻度が最も多く、その後は低下し、ほとんどがGrade1(紅斑、または紅斑と浸潤)もしくは2(紅斑と少数の丘疹)であったことが確認された。 重篤な有害事象は、介入群8.6%(うち7.8%がアナフィラキシー)、プラセボ群2.5%(同3.4%)で認められた。重篤な治療関連有害事象は、介入群0.4%、プラセボ群では報告がなかった。治療に関連したアナフィラキシーは、介入群1.6%、プラセボ群では報告がなかった。

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進行CLLの1次治療、ベネトクラクス併用療法vs.免疫化学療法/NEJM

 進行慢性リンパ性白血病(CLL)で全身状態が良好な患者(すなわち併存病態の負担が少ない患者:fit patient)の1次治療として、ベネトクラクス+抗CD20抗体オビヌツズマブの併用療法は、イブルチニブ併用の有無にかかわらず、免疫化学療法よりも優れることが、ドイツ・ケルン大学のBarbara Eichhorst氏らによる第III相非盲検無作為化試験で示された。これまでに、同患者への1次治療としてのベネトクラクスと抗CD20抗体の併用について評価した無作為化試験は行われていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。15ヵ月時点の微小残存病変陰性とPFSを評価 試験はGerman CLL Study Group、HOVON CLL Study Group、Nordic CLL Study Groupによって行われ、欧州9ヵ国とイスラエルの159ヵ所で実施された。 研究グループは、TP53変異陰性の全身状態が良好なCLL患者を1対1対1対1の割合で無作為に4群に割り付け、(1)6サイクル免疫化学療法(フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ、またはベンダムスチン+リツキシマブ)、(2)12サイクルのベネトクラクス+リツキシマブの投与、(3)ベネトクラクス+オビヌツズマブの投与、(4)ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブの投与をそれぞれ行った。イブルチニブは、微小残存病変が2回連続して検出不能(陰性)後は中止し、そうでない場合は延長可能とした。 主要評価項目は、15ヵ月時点でのフローサイトメトリーで評価した微小残存病変の陰性(感度が<10-4[すなわちCLL細胞が1万個中1未満])および無増悪生存期間(PFS)であった。微小残存病変陰性、免疫化学療法群52.0%、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群86.5% 2016年12月13日~2019年10月13日に、合計926例が4群に無作為化された(免疫化学療法群229例、ベネトクラクス+リツキシマブ群237例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群229例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群231例)。 15ヵ月時点で、微小残存病変陰性であった患者の割合は、免疫化学療法群(52.0%、97.5%信頼区間[CI]:44.4~59.5)と比べて、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群(86.5%、80.6~91.1)、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(92.2%、87.3~95.7)の両群で、統計学的に有意に高率であった(両群比較のp<0.001)。ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率であったが有意ではなかった(57.0%、49.5~64.2、p=0.32)。 3年PFS率は、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群90.5%、免疫化学療法群75.5%であった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.32、97.5%CI:0.19~0.54、p<0.001)。また、3年時のPFSはベネトクラクス+オビヌツズマブ群でも有意に高率であった(87.7%、HR:0.42[97.5%CI:0.26~0.68]、p<0.001)が、ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率ではあったが有意ではなかった(80.8%、0.79[0.53~1.18]、p=0.18)。 Grade3/4の感染症が、免疫化学療法群(18.5%)およびベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(21.2%)で、ベネトクラクス+リツキシマブ群(10.5%)やベネトクラクス+オビヌツズマブ群(13.2%)よりも多くみられた。

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誤嚥性肺炎予防に黒こしょうが効く?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第234回

誤嚥性肺炎予防に黒こしょうが効く?Unsplashより使用咳嗽を誘発するものは、誤嚥性肺炎に対して予防的に働くことが知られています。ACE阻害薬は、副作用の咳嗽が誤嚥性肺炎を予防する効果があるとされています。さて今回紹介する論文で検証されたのは、黒こしょうです。黒こしょうは咽頭へのサブスタンスPの放出を増加させることによって、嚥下反射を改善して誤嚥を予防することが示されています。山口 学ほか.療養型病棟における黒胡椒を用いた誤嚥性肺炎予防.日本気管食道科学会会報. 2018;69(1):13-16.この研究では、療養型病床群に入院している患者32例を2群に分け、60日ごとに黒こしょうを使用する群と非使用群にクロスオーバーして黒こしょうを使用し、誤嚥性肺炎の発生率を調べました。研究期間中に37.5℃以上の発熱があった症例は28例で、2日以上の発熱と誤嚥性肺炎があり、抗菌薬を使用した症例は11例でした。黒こしょうを使用した群は、発熱例11例、抗菌薬使用例は2例であり、有意に抗菌薬の使用頻度および治療日数を抑制することが示されました。これと同じメカニズムで、黒こしょうオイルを吸入してもらうことで、脳卒中後遺症の105例に嚥下反射の改善がみられたという報告があります1)。なんかクシャミ出そうなので、個人的には、あまり黒こしょうは吸いたくない気もしますが…。1)Ebihara T, et al. A randomized trial of olfactory stimulation using black pepper oil in older people with swallowing dysfunction. J Am Geriatr Soc. 2006 Sep;54(9):1401-1406.

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第160回 インフルの集団感染、新型コロナの教訓はいずこに!?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の教訓は生かされていないのか? 宮崎県でのインフルエンザ集団発生の報道を知って、そう思った。1つの高校で教職員・生徒を合わせて491人ものインフルエンザの感染者が発生したとの一報を目にした時は、正直「冗談だろう? もしかして新型コロナと間違えた?」と思った。集団発生が起きた高校の生徒数はわからないが、宮崎県内の高校のデータを参照すると、全日制高校の生徒数は最大規模でも約1,600人。多くは700~900人規模かそれ以下である。ざっくり計算をすると、集団発生が起きた高校では2~4人に1人がインフルエンザに感染したことになる。となると基本再生産数が約2のインフルエンザではなく、5以上と報告されているオミクロン株による新型コロナではないかと考えてしまったのだが、この時期の呼吸器感染症ではPCR検査による鑑別はしているはずで、やはりインフルエンザということなのだろう。ただ、立ち止まって考えてみれば、不思議はないのかもしれない。まず、報道されているように、きっかけはどうやら体育祭のようだ。前回の記事でも触れたように、文部科学省が4月1日から「学校での教職員・生徒のマスク着用を原則不要」と通知した中、体育祭では教職員・生徒の多くがマスクを外していた可能性がある。その環境で人と人とが密着しやすい体育祭を行えば、集団発生が起こりやすいのは確かだ。ここであえて言及すると、この高校の体育祭で教職員・生徒の多くが実際にマスク非着用だったとしても、私はこれを批判するつもりはない。とはいえ、近年、1つの学校で短期間にこれだけのインフルエンザ患者が発生したケースは、少なくとも私個人は記憶にない。そしてここまでの集団発生の主たる原因は、マスク非着用での体育祭実施よりも、コロナ禍でインフルエンザの流行がかなり抑えられた結果、多くの人でインフルエンザに対して免疫が失われていたからではないだろうか。これに高校生がインフルエンザワクチンの定期接種の対象者ではないこと、仮に昨秋以降にワクチン接種をした人がいたとしても季節外れで効力が失われていることを考え併せると、今回の集団発生はおおむね説明がつくのかもしれない。では、ここからは私がこの事例でどんな「教訓」が生かされていないと考えているかに話の軸を移していきたい。ここでは釈迦に説法となるが、改めてインフルエンザの特徴を整理しよう。潜伏期間は1~3日無症候割合は10%ほどで、こうしたケースではウイルス量は低い感染力(ウイルス排出量)のピークは発症後この特徴を踏まえれば、今回の集団発生は、他者への感染が起きやすい環境と集団免疫の喪失に加え、この教職員・生徒の中に症状があるのに体育祭に参加した人がいるということだ。まさに私が指摘したいのはこの点である。コロナ禍を通じて、繰り返し叫ばれたのは「風邪様症状のある人は外出を控えて」というメッセージだ。コロナ禍当初には、OTCの風邪薬のCMで有名だった「風邪でも絶対休めないあなたへ」というキャッチコピーもついに消えた(このコピーについては2016年から問題が指摘されていたが、変更されたのは2020年3月ごろ。当該製薬企業は「TVCMの放映期間ならびにキャンペーンが終了したため修正した」と説明している)。残念ながら、今回の集団発生ではこのメッセージが守られていなかった可能性があると考えざるを得ない。集団発生の時期は新型コロナの感染症法上「5類化」後であり、この高校では久々の体育祭だったかもしれない。ならば教職員・生徒共に無理を押してでも参加したい気持ちがあったのだろうと想像する。しかし、ちょっとした“油断”がこれだけの事態を招いてしまう。今はコロナ禍を経た過渡期だが、同時にこれまでに得た教訓を踏まえ、社会がより良い方向に定着していくための重要な時期でもある。たとえば、コロナ禍で得られた重要な教訓・経験の1つはリモート化・オンライン化である。これを活用して体育祭の実況中継によるハイブリット開催も可能だったはず。数少ない貴重なイベントだからこそ、体調不良の教職員・生徒が少しでも安心して休め、かつ疎外感を抱かないようそこまで配慮しても良かったのではと思う。しかも、以前よりもこうしたことは低コストでできる。もちろん現場で参加する高揚感や充実感にはかなわないのは確かだが、そうしたサポートがないより遥かにマシなはず。そして社会がコロナ禍明けで「湧いている」ようにも見える今こそ、コロナ禍の教訓をいかに社会に定着させるかを改めて再認識する必要がある。そのためには途方もない地味な努力の継続が求められるだろう。たとえば「風邪様症状のある人は家で休もう」と言い続けることはその1つだ。これはある種、医療関係者だけでなく社会全体にとって「苦痛」な作業となる。しかし、これをあきらめたら、私たちは新型コロナに真の敗北を喫することになる。

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5月19日 IBDを理解する日【今日は何の日?】

【5月19日 IBDを理解する日】〔由来〕「世界IBDデー」に准じ、クローン病や潰瘍性大腸疾患などの「炎症性腸疾患」(IBD)への理解促進のため、IBDネットワークとアッヴィの共同で2013年に制定。関連コンテンツクローン病【希少疾病ライブラリ】潰瘍性大腸炎【希少疾病ライブラリ】IBD【診療よろず相談TV】IBDの新規経口薬ozanimod、潰瘍性大腸炎の導入・維持療法に有効/NEJM潰瘍性大腸炎患者の大腸がんリスク、時間の経過で変化?/Lancet

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リアルワールドにおけるフレマネズマブの長期有用性~FRIEND2試験

 イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、高頻度の反復性片頭痛(HFEM:1ヵ月当たりの片頭痛日数8日以上)または慢性片頭痛(CM:1ヵ月当たりの頭痛日数15日以上)患者を対象に、フレマネズマブの長期(24週間)有効性、安全性、忍容性の評価を実施した。その結果、フレマネズマブは、過去に複数の片頭痛の予防的治療に奏効しなかったHFEMおよびCM患者に対し早期かつ持続的な有効性を示し、安全性および忍容性プロファイルも良好であることが確認された。The Journal of Headache and Pain誌2023年3月23日号の報告。 対象は、過去に複数の片頭痛の予防的治療に奏効せず、フレマネズマブ皮下投与(1ヵ月ごとに225mg/3ヵ月ごとに675mg)を24週間以上実施したHFEMまたはCM患者。28の頭痛センター施設で連続登録方式により対象患者を募集し、プロスペクティブコホート・リアルライフ研究を実施した。HFEMおよびCM患者における主要評価項目は、それぞれベースライン時と比較した21~24週目における1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)および1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)とした。副次的評価項目は、ベースライン時と比較した21~24週目における1ヵ月当たりの鎮痛薬使用の変化、治療反応率(50%以上、75%以上、100%)、NRS(Numerical Rating Scale)、HIT-6(Headache Impact Test-6)、MIDAS(片頭痛評価尺度)スコアの変化とした。すべての評価項目は、4週目にもモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・フレマネズマブを1回以上使用した患者410例を安全性分析対象に含め、24週間以上治療を継続した患者148例を有効性分析対象に含めた。・フレマネズマブ使用後21~24週目では、ベースライン時と比較し、HFEMおよびCM患者のいずれにおいても、MMD、MHD、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用の変化、NRS、HIT-6、MIDASスコアの有意な減少が確認された(p<0.001)。・21~24週目における治療反応率は、以下のとおりであった。【HFEM】50%以上:75.0%、75%以上:30.8%、100%:9.6%【CM】50%以上:72.9%、75%以上:44.8%、100%:1.0%・HFEMおよびCM患者のいずれにおいても、4週目からMMD、MHD、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用の変化、NRS、HIT-6、MIDASスコアの有意な減少が認められた(p<0.001)。・4週目における治療反応率は、以下のとおりであった。【HFEM】50%以上:67.6%、75%以上:32.4%、100%:11.8%【CM】50%以上:67.3%、75%以上:40.0%、100%:1.8%・CM患者では、反復性片頭痛(24週目:83.3%、4週目:80.0%)および薬物乱用から非薬物乱用(24週目:75%、4週目:72.4%)への寛解が認められた。・有害事象の発現率は2.4%と稀であり、軽度および一過性であった。・すべての理由における投与中止例は、認められなかった。

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新型コロナとがん併発、死亡リスクに性差はあるか

 がん患者と非がん患者のCOVID-19による死亡リスクを比較した研究はあるが、そこに性差はあるのか。米国・南カリフォルニア大学・産婦人科腫瘍部門の松尾 高司氏らによる大規模コホート研究の結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2023年4月27日号に掲載された。 研究者らは48州およびコロンビア特別区の参加病院によるHealthcare Cost and Utilization ProjectのNational Inpatient Sample(米国人口の95%以上の退院データをカバー)を用い、2020年4月~12月にCOVID-19感染の診断を受けて入院した患者を、世界保健機関(WHO)の分類コードによって特定した。データ解析は2022年11月~2023年1月にかけて行い、人口特性、併存疾患、および病院パラメータで層別化したうえで性別、がん種別にCOVID-19院内症例の死亡率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2020年4月1日~12月31日にCOVID-19の入院患者は162万2,755例であった。全体のCOVID-19院内症例の死亡率は12.9%、死亡までの期間中央値は5日(四分位範囲[IQR]:2~11日)であった。・162万2,755例のうち、7万6,655例(4.7%)が悪性新生物と診断された。多変量解析後、性別(男性対女性:14.5%対11.2%、調整オッズ比[aOR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.27~1.30)、悪性新生物診断(17.9%対12.7%)はともに死亡リスク上昇と関連していた。・女性患者群で死亡リスクが2倍以上となったがん種は、肛門がん(23.8%、aOR:2.94、95%CI:1.84~4.69)、ホジキンリンパ腫(19.5%、aOR:2.79、95%CI:1.90~4.08)、非ホジキンリンパ腫(22.4%、aOR:2.23、95%CI:2.02~2.47)、肺がん(24.3%、aOR:2.21、95%CI:2.03~2.39)、卵巣がん(19.4%、aOR:2.15、95% CI:1.79~2.59)の5つだった。これらに続き、膵がん、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、肝がんの4つで死亡リスクが1.5倍以上となった。・男性患者群で死亡リスクが2倍以上となったがん種は、カポジ肉腫(33.3%、aOR:2.08、95%CI:1.18~3.66)と小腸の悪性新生物(28.6%、aOR:2.04、95%CI:1.18~3.53)の2つだった。これらに続き、大腸がん、肺がん、食道がん、骨髄性白血病、膵がんの5つで死亡リスクが1.5倍以上となった。 著者らは「本コホート研究の結果、米国における2020年のパンデミック初期において、COVID-19院内症例の死亡率が高かったことが確認された。死亡リスクは女性よりも男性のほうが高かったが、がん併発による死亡リスクとの関連は女性のほうが強く、併発によって死亡リスクが2倍以上になるがん種が多かった」としている。

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男性の平均寿命、市区町村で10年以上の差/厚労省

 厚生労働省は5月12日、「令和2年市区町村別生命表」を発表した。市区町村別生命表は、死亡状況を市区町村単位で比較分析するため、国勢調査による日本人人口(確定数)と人口動態統計(確定数)による日本における日本人の死亡数、出生数を基に、2000年(平成12年)から5年(国勢調査年)ごとに作成し、今回が5回目となる。本結果によると、平均寿命が最も長い市区町村は、男女ともに神奈川県川崎市麻生区で、男性84.0年、女性89.2年であった。一方、平均寿命が最も短かったのは、男女ともに大阪府大阪市西成区で、男性73.2年、女性84.9年であった。平均寿命の最も長い市区町村と最も短い市区町村との差は、男性10.8年、女性4.2年であった。平均寿命の分布を市区町村別にみる 2020年(令和2年)の全国の平均寿命(0歳の平均余命)は、男性が81.49年、女性が87.60年であった。平均寿命の分布を市区町村別にみると、男性では81.0~81.5年、女性では87.0~87.5年に最も多く分布していた。 男性では神奈川県川崎市麻生区が84.0年で最も長く、次いで神奈川県横浜市青葉区(83.9年)、長野県上伊那郡宮田村(83.4年)となっている。また、女性も神奈川県川崎市麻生区が89.2年で最も長く、次いで熊本県上益城郡益城町(89.0年)、長野県下伊那郡高森町(89.0年)となっている。  一方、平均寿命が短い順では、男性では大阪府大阪市西成区が73.2年で最も短く、次いで大阪府大阪市浪速区(77.9年)、大阪府大阪市生野区(78.0年)となっており、女性も大阪府大阪市西成区が84.9年で最も短く、次いで青森県東津軽郡今別町(85.5年)、青森県南津軽郡田舎館村(85.5年)となっている。男女の平均寿命の相関は全国値を中心に分布 男女の平均寿命の相関をみると、男女ともにほぼ全国値(男性81.49年、女性87.60年)を中心に分布しており、相関係数は0.73となっている。男女の平均寿命の差は全国で6.11年となっており、これを市区町村別にみると、男女差が最も大きいのは大阪府大阪市西成区(11.8年)であり、次いで高知県高岡郡中土佐町(8.5年)、大阪府大阪市生野区(8.3年)となっている。逆に、最も小さいのは高知県幡多郡三原村(4.5年)であり、次いで長野県上伊那郡宮田村(4.6年)、奈良県吉野郡吉野町(4.6年)となっている。市区町村別平均寿命(上位・下位5市区町村)【上位・男性】1位 神奈川県川崎市麻生区 84.0年2位 神奈川県横浜市青葉区 83.9年3位 長野県上伊那郡宮田村 83.4年4位 愛知県日進市     83.4年5位 京都府木津川市    83.3年【上位・女性】1位 神奈川県川崎市麻生区 89.2年2位 熊本県上益城郡益城町 89.0年3位 長野県下伊那郡高森町 89.0年4位 滋賀県草津市     89.0年5位 兵庫県芦屋市     88.9年【下位・男性】1位 大阪府大阪市西成区  73.2年2位 大阪府大阪市浪速区  77.9年3位 大阪府大阪市生野区  78.0年4位 青森県下北郡東通村  78.1年5位 青森県上北郡六ヶ所村 78.3年【下位・女性】1位 大阪府大阪市西成区  84.9年2位 青森県東津軽郡今別町 85.5年3位 青森県南津軽郡田舎館村 85.5年4位 青森県南津軽郡大鰐町 85.6年5位 青森県むつ市     85.6年

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早期TN乳がん、術前後のアテゾリズマブ追加でEFS・DFS・OS改善(IMpassion031)/ESMO BREAST 2023

 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおける術前化学療法へのアテゾリズマブ追加および術後のアテゾリズマブ投与の有用性を検討した第III相IMpassion031試験の最終解析で、副次評価項目である無イベント生存期間(EFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の改善が示された。また探索的解析から、手術時に病理学的完全奏効(pCR)が得られた患者は予後良好なこと、pCRが得られず血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が残存していた患者は予後不良なことが示された。ブラジル・Hospital Sao Lucas da PUCRSのCarlos H. Barrios氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験の主要評価項目であるpCR率については、PD-L1の有無(SP142によるIC:1%未満vs.1%以上)にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群(41.1%)に比べて有意に(p=0.0044)改善したことが報告されている。今回は、副次評価項目であるEFS、DFS、OS、安全性について最後の患者登録から3年後の最終解析と探索的バイオマーカー解析について報告された。・対象:原発巣が2cmを超える未治療のStageII~IIIの早期TN乳がん患者333例・試験群(アテゾリズマブ群、165例):術前にアテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(毎週)12週間投与後、アテゾリズマブ+ドキソルビシン+シクロホスファミド(2週ごと)8週間投与。術後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11サイクル実施・対照群(プラセボ群、168例):術前にプラセボ+nab-パクリタキセル12週間投与後、プラセボ+ドキソルビシン+シクロホスファミド8週間投与し手術を実施(両群ともpCR未達の患者は、術後補助化学療法を許容) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値40ヵ月前後(アテゾリズマブ群40.3ヵ月、プラセボ群39.4ヵ月)における最終解析において、pCRが得られず術後補助化学療法を受けたのは、アテゾリズマブ群70例中14例(20%)、プラセボ群99例中33例(33%)であった。・ITT集団におけるEFSのハザード比(HR)は0.76(95%信頼区間[CI]:0.47~1.21)で、PD-L1陽性(IC 1%以上)の患者では0.56(同:0.26~1.20)であった。・DFSのHRは0.76(95%CI:0.44~1.30)で、PD-L1患者では0.57(同:0.23~1.43)であった。・OSのHRは0.56(95%CI:0.30~1.04)で、PD-L1陽性患者では0.71(同:0.26~1.91)であった。・pCR状況別のEFSの探索的解析では、pCRが得られた患者では両群共に長期のEFSが良好であったが、pCRが得られなかった患者では両群共にEFSが不良で、pCRが長期予後を大きく左右していた。・アテゾリズマブにおける新たな安全性シグナルや治療関連死はみられなかった。・ctDNAにおける探索的解析によると、ctDNA陽性率はベースラインの94%から手術時に12%と減少し、ctDNA消失率はアテゾリズマブ群89%、プラセボ群86%と両群で同様だった。消失しなかった患者はpCRが得られなかった。・手術時にpCRが得られずctDNAが陽性だった患者はDFS、OSが不良だったが、アテゾリズマブ群でOSの数値的な改善がみられた(HR:0.31、95%CI:0.03~2.67)。 Barrios氏は「早期TN乳がんに対して、術前化学療法へのアテゾリズマブ追加で有意なpCRベネフィットが得られ、EFS、DFS、OSの改善につながった」とした。

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既治療大腸がん、FTD/TPIへのベバシズマブ上乗せでOS延長/NEJM

 切除不能な進行・再発大腸がん患者において、トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ併用療法はFTD/TPI単独療法と比較して、全生存期間(OS)を延長することが確認された。オーストリア・ウィーン医科大学のGerald W. Prager氏らが、13ヵ国87施設で実施された第III相無作為化非盲検実薬対照比較試験「SUNLIGHT試験」の結果を報告した。これまでの第III相試験において、FTD/TPIは転移のある大腸がん患者のOSを延長することが示されていた。また、第II相単群および無作為化試験の予備データから、ベバシズマブにFTD/TPIを追加することで生存期間が延長する可能性が示唆されていた。NEJM誌2023年5月4日号掲載の報告。FTD/TPI+ベバシズマブvs.FTD/TPI単独でOSを比較 研究グループは、2レジメン以下の化学療法歴がある切除不能な進行・再発の結腸・直腸腺がんで、ECOG PSが0または1の18歳以上の成人患者を、FTD/TPI+ベバシズマブ群(FTD/TPI併用群)またはFTD/TPI単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、地域(北米、欧州、その他の地域)、最初の転移診断からの期間(18ヵ月未満、18ヵ月以上)、RAS状態(野生型、変異型)により層別化された。 主要評価項目はOS、副次評価項目は治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)およびECOG PSが0または1から2以上に悪化するまでの期間を含む安全性とした。FTD/TPI併用群10.8ヵ月vs.単独群7.5ヵ月、OSが有意に延長 2020年11月25日~2022年2月18日の期間に492例が割り付けられた(FTD/TPI併用群246例、単独群246例)。 OS中央値は、FTD/TPI併用群10.8ヵ月、単独群7.5ヵ月であり、死亡のハザード比(HR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.49~0.77、層別log-rank検定のp<0.001)で、FTD/TPI併用群においてOSが有意に延長したことが認められた。6ヵ月全生存率はFTD/TPI併用群77%、単独群61%、12ヵ月全生存率はそれぞれ43%、30%であった。 PFS中央値はFTD/TPI併用群5.6ヵ月、単独群2.4ヵ月(HR:0.44、95%CI:0.36~0.54、p<0.001)、ORRはそれぞれ6.1%(95%CI:3.5~9.9)、1.2%(95%CI:0.3~3.5)であった。 両群で発現頻度が高かった有害事象は、好中球減少症(FTD/TPI併用群62.2%、単独群51.2%)、悪心(それぞれ37.0%、27.2%)、貧血(28.9%、31.7%)であった。治療に関連した死亡の報告はなかった。ECOG PSが0または1から2以上に悪化するまでの期間の中央値は、FTD/TPI併用群9.3ヵ月、単独群6.3ヵ月(HR:0.54、95%CI:0.43~0.67)であった。

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医療者の不足する地域は死亡率が高い/BMJ

 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―「すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」(厚生労働省)―を2030年までに達成するには、健康を促進または改善するさまざまな職業の保健医療人材(Human Resources for Health:HRH)が重要であるが、HRHの不平等は過去30年間で世界的に減少しているものの依然として残っており、全死亡率およびほとんどの死因別死亡率は、医療従事者が限られている、とくにHIV/AIDS・性感染症、母体・新生児疾患、糖尿病、腎臓病といった、優先疾患におけるいくつかの特定のHRHが限られている国・地域で相対的に高いことが、中国・北京大学のWenxin Yan氏らの調査で示された。著者は、「本結果は、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するために、公平性を重視した医療人材政策の策定、医療財政の拡大、不十分なHRHに関連した死亡を減少するための標的型対策の実施に向けた政治的取り組み強化の重要性を浮き彫りにしている」とまとめている。BMJ誌2023年5月10日号掲載の報告。172の国・地域のHRHの傾向と不平等を評価し、全死亡率と死因別死亡率を解析 研究グループは、2019年版の世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study)のデータベースを用い、172の国・地域を対象として、1990~2019年までの各国・各地域の総HRH、特定のHRH、全死亡率、死因別死亡率に関する年次データを収集するとともに、国連統計(United Nations Statistics)およびOur World in Dataのデータベースから、モデルの共変量として用いる人口統計学的特性、社会経済的状態、医療サービスに関するデータを入手し、解析した。 主要アウトカムは、人口1万人当たりのHRH密度に関連する人口10万人当たりの年齢標準化全死亡率、副次アウトカムは年齢標準化死因別死亡率とした。HRHの傾向と不平等を評価するため、ローレンツ曲線と集中指数(concentration index:CCI)を用いた。HRHの不平等は過去30年間で減少も、総HRHレベルと全死亡率に負の相関 世界的に、人口1万人当たりの総HRH密度は、1990年の56.0から2019年には142.5に増加した。一方で、人口10万人当たりの年齢標準化全死亡率は、1990年の995.5から2019年には743.8に減少した。ローレンツ曲線は均等分布線の下にあり、CCIは0.43(p<0.05)であったことから、人間開発指数で上位にランクされている国・地域に医療従事者がより集中していることが示された。 HRHのCCIは、1990~2001年の間、約0.42~0.43で安定していたが、2001年の0.43から2019年には0.38へと低下(不平等が縮小)していた(p<0.001)。 多変量一般化推定方程式モデルにおいて、総HRHレベル(最低、低、中、高、最高の五分位)と全死亡率との間に負の相関が認められた。最高HRHレベル群を参照群として評価すると、低レベル群の発生リスク比は1.15(95%信頼区間[CI]:1.00~1.32)、中レベル群は同1.14(1.01~1.29)、高レベル群は1.18(1.08~1.28)であった。 総HRH密度と死亡率との負の相関は、顧みられない熱帯病やマラリア、腸管感染症、母体および新生児疾患、糖尿病や腎臓病など、いくつかの死因別死亡率でより顕著であった。医師、歯科スタッフ(歯科医師と歯科助手)、薬剤スタッフ(薬剤師、調剤補助者)、緊急援助および救急医療従事者、オプトメトリスト、心理学者、パーソナルケアワーカー、理学療法士、放射線技師の密度が低い国・地域の人々は、死亡リスクがより高くなる可能性が高かった。

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韓国からのPCIのエビデンス創出を祝福し、95%信頼区間を考察する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第60回

第60回 韓国からのPCIのエビデンス創出を祝福し、95%信頼区間を考察する韓国で行われた素晴らしい臨床研究の結果がNEJM誌2023年5月4日号(オンライン版は3月5日)に掲載されました。RENOVATE-COMPLEX-PCI試験です1)。複雑な冠動脈病変への冠動脈インターベンション(PCI)で、血管内超音波(IVUS)などの血管内イメージングガイドでのPCIは、血管造影ガイドでのPCIと比較して、イベントのリスクを低下させるかを検討したものです。血管内イメージングガイド下PCIによって、複合イベントリスクは36%低下しました(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.45~0.89、p=0.008)。血管内イメージングガイド下PCIが好ましいという結論は、PCIに携わる者の1人として納得できます。血管内イメージングを推進してきた日本のPCIフィールドから、この知見を発信できなかったことに、歯がゆさを感じることも事実ですが、素直に祝福したい気持ちです。Congratulations! (しっかり複数形)今回は、この結論の中に含まれる95%信頼区間(95%CI:confidence interval)について考えてみたいと思います。医学に限らず自然科学の世界では真の値は不明であることが常です。真の値が明らかとなるほうが、まれと考えてよいでしょう。真の値が不明なのであれば推定するしかありません。推定する手法について実例を基に考えてみましょう。PCIから話題を変えて、全国の野良猫の平均体重を調べるとします。どうでもいい設問のように感じるでしょうが、お付き合いください。全国に何匹の野良猫がいるか知りませんが、仮に約100万匹いるとします。この100万匹の野良猫が母集団となります。どう考えても100万匹の猫を全部捕まえて体重を測定することは不可能です。小生の住む滋賀県で、野良猫100匹を標本(サンプル)として捕獲し体重を測定することは、頑張れば可能でしょう。このようにサンプルとして選び出すことを「抽出」といいます。この100匹の体重の平均が5.0kg、標準偏差が1.0kgであったとします。全国の野良猫の体重の真の値は、5.0kgと大きくは異ならないことは推定できます。滋賀県の野良猫100匹の平均体重5.0kgは、あくまでも母集団である全国の野良猫の平均体重の推定値です。全国の野良猫という母集団の特徴と、そこから抽出された100匹の滋賀県の猫のサンプルの特徴は完全に一致することは不可能で、推定値であって真の値ではありません。捕獲し体重測定が可能な猫は太っていて動きの鈍い個体が多く、サンプルの値は真の値よりも大きい可能性もあります。次に埼玉県で同様に100匹の猫をサンプルとして抽出すると平均5.1kgであった、高知県では平均4.9kgであったとします。このようにサンプル数を増やして全国47都道府県すべてで調査すれば、サンプル数47の平均体重のデータが出そろうことになります。47都道府県からの平均体重の値は各々が、おそらく微妙に異なるでしょう。この47個の各平均値から、「平均値の平均値」が算出可能です。「平均値の標準偏差」も算出することが可能で、これを標準誤差といいます。標準誤差は繰り返してサンプル抽出を行った場合に平均値のバラツキの度合いを意味します。平均値の平均値が5.1kg、平均値の標準偏差つまり標準誤差が0.1kgであったとしましょう。ここから話が少し難しくなります。真の平均体重は、おそらくは5.1kgに近く、△~○kgの間に存在するといった範囲の予測は可能となります。正規分布であれば、平均値±2×標準誤差(正確には1.96×標準誤差)の間に真の平均体重が入っている確率が95%であると解釈されます。これが、95%信頼区間です。つまり全国の野良猫の平均体重の95%信頼区間は、平均値±2×標準誤差=5.1±2×0.1kg=5.1±0.2kgとなります。つまり、4.9~5.3kgの間に真の平均体重が入っている確率が95%であると解釈できます。ここで「解釈できる」という表現が微妙です。より正しい表現をすれば、「今後さらに標本抽出を繰り返し行えば100回に95回の割合で4.9~5.3kgの中に母集団の平均を含んでいるので、とりあえずは母集団の真の平均体重が4.9~5.3kgの中に含まれると考えてもいいな」となります。現実的には、4.9~5.3kgの間に真の平均体重が入っている確率が95%と解釈することは、納得しやすいかもしれません。端緒の論文に当てはめれば、「RENOVATE-COMPLEX-PCI試験と同様の臨床試験を繰り返し行えば、そのハザード比は100回に95回の割合で、0.45~0.89の中に含まれると考えてもいいな」となります。血管内イメージングガイド下のPCIがイベントをどの程度まで減らすか(もしかしたら増やすか)というハザード比の真の値は不明のままです。あくまでも推定値として0.64近辺と思われます。さらに解説を加えれば、95%信頼区間の大きいほうの値「0.89」が1を下回っていることから、さらに繰り返して臨床試験を行っても、そこから得られる推定値は1を下回る可能性が高いと考え、これが有意(p=0.008)の根拠となります。医学論文において結果の値と併せて95%信頼区間が表記されることが多くあります。つまずきやすいのは真の値が存在すると思い込んでしまうことです。あくまでも真の値は不明で、推定量として表現する以外にないことがポイントです。「真実は闇の中」が、真実なのです。参考1)Lee JM, et al. N Engl J Med. 2023;388:1668-1679.

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伝聞には気をつけよう!【Dr. 中島の 新・徒然草】(477)

四百七十七の段 伝聞には気をつけよう!連休が明けて気持ちの良い季節もごく短期間。急に暑くなってきました。読者の皆さまの地方ではいかがでしょうか。さて、先日私のところに来た書類は、役所からの照会文書でした。「診療状況について(照会)」というものです。以前はこういった文書に対する回答はすべて手書きだったので、作成が大変でした。今は電子カルテに書式が入っているので、チョチョイのチョイとキーボードで打ち込むだけ。はるかに簡単になりました。で、照会文書の中身です。なんでも、「担当医が『大学病院に紹介しようと思っているのに医療扶助を行ってもらえず、必要な医療を受けさせないのはおかしい』と言っている」と患者さんから聞いたとのことでした。文章にするとわかりにくいですかね。要するに、患者さんが役所の担当者に文句を言ったわけです。「自分は大学病院にかかりたいのに医療扶助を行ってもらえない。これはおかしい。担当医もそう言っている」といったところでしょうか。患者さんの発言を踏まえての役所からの質問は2つです。貴院では治療できない理由をお教えください。大学病院でなければ治療できない病状なのでしょうか。ということでした。この患者さんというのは女性ですが、体中、あちこちが痛いということで、数ヵ月に1回、フリーで外来にお見えになります。診察室での訴えの内容は、行政に対する不満、ほかの医療機関の悪口、家族とうまくいっていないこと、などでした。ご自身の体の症状についての話はほとんど出ないので、私はひたすら聞くのみです。たまにアドバイスを求められるので、「家族で仲良くするか、それができないのならお互いに関わらないほうがいいのでは?」といった、当たり前のことを言うだけでした。もちろん当院では治療できないとか、大学病院に紹介するとか言ったことは一度もありません。ちなみに、ご本人によれば、複数の大学病院で出禁をくらっているそうです。結局、彼女は自分の頭の中で組み立てた都合のいいストーリーを、役所の担当者に言ったのでしょう。役所からの照会文書は、担当者の困惑ぶりが伝わってくるものでした。なので、私は「大学病院に紹介する」と言ったことはなく、「当院では治療できない」と言ったこともない、といった趣旨の回答文書を作成しました。今回は役所が私に直接に問い合わせてきたので、誤解を正すことができました。でも、そうでなかったら関係者はお互いに疑心暗鬼になっていたかもしれません。こういった患者さん経由の伝聞というのは、捻じ曲がって伝わることが珍しくないので、くれぐれも注意する必要があります。よくあるのが、「別の医療機関に行ったら『最初の病院での治療は無茶苦茶だ』と言われた」というもの。本当に先方の医師がそのようなことを言ったのかどうか、直接に確認するまで真実は闇の中です。逆もあるかもしれません。「『とんでもない治療だ』と中島先生が言ってた」と、当該医療機関で患者さんが文句を言うことです。そもそも、私はほかの医療機関の悪口を言うことはありません。一文の得にもならないばかりか、何かとトラブルの元になりがちだからです。こういった行き違いにイラッとしないよう、事実と伝聞はキチンと区別することが、われわれの仕事の第一歩。日頃から意識して注意しておくべきですね。最後に1句向暑には イライラしがち 要注意

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NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 1

今回のキーワード音の高さ(音高)音の共鳴(音素)言語能力連合学習(条件付け)臨界期相対音感フラッシュカード(瞬間記憶)音楽教育とくに幼い子供のいる皆さんは、習いごとを「いつから」そして「どれだけ」やらせればいいんだろうとお悩みじゃないですか? NHKの「おかあさんといっしょ」を見せてはいるけど、それだけじゃ足りないんじゃないか? 自分が怠けたせいであとあと隠れた才能を開花させられなかったと悔やむんじゃないか? たとえばそれが絶対音感だったり?前編では、「おかあさんといっしょ」をヒントに発語(発声学習)のメカニズムを説明し、その起源に迫りました。今回の後編では、前編を踏まえて、絶対音感という「才能」を例に挙げて、より良い音楽教育、そしてより良い幼児教育を一緒に考えてみましょう。絶対音感とは?「おかあさんといっしょ」の番組内では、音楽とともに歌ったり踊ったりして、幼児の音感が養われます。音感とは、まさに音に対する感覚で、音の高低、音色、メロディなどを聞きわける全般的な音楽の能力です。その中で、とくに絶対音感と聞くと、とても神秘的です。ある1つの音を聞くだけで(ほかの音との比較なしで)、瞬時にその音の高さ(音高)がわかり、ドレミの12音のどれかを言い当てることができるわけですから。聞いた曲をすぐに楽譜に書き起こせて便利そうです。この能力のある人は、一般人口の0.01%程度と言われています8)。絶対音感が言語能力である根拠は?絶対音感と聞くと、音楽的才能を連想します。しかし、実はこの正体は言語能力であることがわかっています。その根拠を3つ挙げてみましょう。(1)トレーニング方法1つ目は、絶対音感を身に付けるトレーニング方法です。自然に身に付くことは極めてまれで、特定の和音のパターンを使い、聞こえた音の高さをすぐにドレミの音高名に結びつけることを延々と繰り返します。そうするとやがて、特定の音高を聞くと、もはや抑えようとしても抑えられないくらい、自動的に音高名が頭の中に出てくるようになります。つまり、これは、特定の音高と特定の音高名(音素/言語)を結びつける連合学習(条件付け)であることがわかります8)。この点で、絶対音感は「音感」と表記されていますが、単に音高に限定された感覚であるため、厳密には「絶対音高感」という表記がより適切であると言われています。(2)脳の活動部位2つ目は、絶対音感を司る脳の活動部位です。メロディなどの音楽全般を司る部位が右半球優位であるのに対して、絶対音感を司るのは左半球優位であることがわかっています8)。これは、言語能力と同じです。(3)臨界期3つ目は、絶対音感が身に付けられる臨界期です。その年齢は概ね6歳です。この年齢を過ぎてトレーニングをしてもほぼ身に付かないことがわかっています8)。この年齢は、母語や第2言語の自然学習の臨界期に一致します。つまり、前編で子音や母音である音素(2種類の周波数/共鳴音)の識別能力の臨界期が1歳であると説明しましたが、この音高(1種類の周波数/単音)の識別能力の臨界期は6歳であると言えます。なお、6歳という言語能力に臨界期があるのは、6歳以降は単なる具体的な言葉を覚えるのではなく(それまでの語彙の記憶を固定化させて)、次のステップとしてそれらの言葉を駆使して、より抽象的な思考をすることに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからと考えられます。同じように、絶対音感に臨界期があるのは、6歳以降は単なる音高の識別ではなく(それまでの音高識別の能力を固定化させて)、次のステップとしてそれらの音高の組み合わせ(メロディ)をつくり、より創造的な音感を発揮することに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからでしょう。次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 2

音感はいつ生まれたの?絶対音感が実は言語能力である根拠は、そのトレーニング方法、その脳の活動部位、そしてその臨界期が言語能力に共通するからであることがわかりました。それでは、そもそも音感はいつ生まれたのでしょうか?ここから、音感の起源を大きく2つに分けて迫ってみましょう。(1)絶対音感前編で約700万年前に人類が誕生して、やがて歌でコミュニケーションするようになったことを説明しました。その歌のうまさは、小鳥のさえずりのように、音の高さの正確さによって評価されていたでしょう。1つ目の起源は、絶対音感です。先ほど、絶対音感は言語能力であると説明しましたが、それは言語の能力を獲得した現代人がこの言語能力を使って音高を識別しているからです。原始の時代の人類は、まだ言語がないため音素(言語)の置き換え(連合学習)なしで、小鳥と同じようにそのまま音高を識別できていた可能性が考えられます。また、原始の時代の人類ももともと左脳で音高を調整していることが推定できることから、やはり歌(音高)が言語の土台(前適応)になっていたことを説明できます。なお、現代の絶対音感を持つ人は1オクターブ内の12音(トーンクロマ)の識別が可能なだけで、オクターブの違い(トーンハイト)までは識別できません。一方で、小鳥は最大音域の7オクターブすべての音、つまり12音×7の84音のすべての識別ができることがわかっています8)。わかりやすく言えば、鳥はピアノのどの鍵盤の音を聞いても特定できるという「超」絶対音感の持ち主というわけです。また、1オクターブ内がピアノの白鍵として7音に分けられているのは、虹が7色(欧米6色)であることや母音が7音前後(日本語5音~スウェーデン語9音)であることに共通していることが指摘されています8)。聴覚的にも視覚的にも、人間の識別能力は7つ程度に分けるのが限界であるようです。この点で、白鍵(7音)のみを識別できる部分的な絶対音感を持つ人は比較的多いのですが、黒鍵を含む12音すべてを識別できる完全な絶対音感を持つ人はかなりまれになってしまうわけです。そもそも、私たち(おそらくほかの哺乳類も)は、この識別能力に限界があるからこそ、聞こえる全ての音域については、周波数が倍になるごとに(倍音)、つまり1オクターブごとに同じドレミがまた聞こえるようにシステマチックに回帰していると考えられています(オクターブ等価性)。これは、虹が赤から始まり最後は紫という赤に近い色で終わって回帰していくことにも共通しています。ちょうど7オクターブまで聞こえるという事実も、7つという先ほどの識別の限界数に一致します。ちなみに、赤ちゃんの泣き声は、普遍的にドレミの中のラ(440Hz)に相当します。この音を基準として音階が成り立っています。(2)相対音感約20万年前に人類が言葉を話すようになり、約10万年前に貝の首飾りを感謝の証にするなど、シンボル(抽象的思考)を使うようになりました。この抽象的思考によって、歌のうまさは、単なる一つひとつの音高の純粋な正確さではなく、複数の音高が複雑に変化する流れ(メロディ)によって評価されるようになったのでしょう。こうして、約5万年前に人類最古の楽器である骨製のフルートが作られました。2つ目の起源は、相対音感です。これは、音の流れの中でほかの音との比較で音の高さがわかることです。これはちょうど、私たちが言葉を一つひとつの単語としてではなく、まとまった文章として認識しているのと同じです。このようにして、私たちは相手の話で一部聞き取れない単語があっても推測して理解することができます。この相対音感によって、本来人間の識別能力の限界である1オクターブ内に7音(白鍵)を超えて12音(黒鍵を含む)までの音高の識別を可能にしていると考えられます。そして、絶対音感がなくても、この相対音感によって、聞いた曲を楽譜に書き起こすことを可能にしていると考えられます。以上より、原始の時代の人類は、現代人よりも絶対音感があった可能性が考えられます。しかし、人類が相対音感を獲得したことで、もはや絶対音感に頼る必要がなくなったのでした。もっと言えば、言葉によってコミュニケーションができてしまうため、相対音感すら必ずしも必要なくなり、 音感が退化していっていると言えます。これが、いわゆる「音痴」です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 3

より良い音楽教育とは?音感の進化の歴史からも、絶対音感より圧倒的に相対音感の方が現在の私たちの音楽に強く影響を及ぼしていることがわかります。つまり、より良い音楽教育とは、絶対音感よりも相対音感です。そして、幼児期に相対音感を育むために必要なことは、「おかあさんといっしょ」をまさに一緒に見て楽しむことでしょう。わざわざ絶対音感をトレーニングによって身に付けたとしても、そもそもその能力を使う必要がないからです。それどころか、絶対音感を身に付けると、逆に相対音感が鈍くなる可能性が指摘されています。実際のMRIや脳波の研究では、絶対音感を持つ人は右側頭葉の側頭平面(聴覚野)が一般人よりも縮小し、活動が抑制されていました8)。この訳は、絶対音感と相対音感はトレードオフの関係になっており、一つひとつの音の高さについ注意が向いてしまうことで、全体としての音の流れ(メロディ)に注意が向かなくなってしまうからであると考えられます。これは、絶対音感を手に入れる代償と言えます。より良い幼児教育とは?絶対音感と相対音感のトレードオフの関係から、幼児英才教育の危うさが見えてきます。それは、できるだけ早くやらせる、できるだけ多くやらせる、そしてできるだけ高度なことをやらせることは、形式や結果にとらわれて本質を見失うことです。たとえば、幼児英才教育でよく謳われるフラッシュカード(瞬間記憶)を考えてみましょう。これができるようになると、日常生活で便利そうです。暗記もすぐにできて試験勉強が楽になりそうです。しかし、これができたからといって、その後に知能が高くなったり、大人になってより高い収入が得られるようになったというエビデンスは見当たりません。それどころか、逆に丸ごと覚えることについ注意が向いてしまい、全体をかいつまんでまとめること(概念化)に注意が向かなくなってしまうおそれがあります。これもトレードオフの関係です。むしろ大人になって良い仕事をするために必要なのは、概念化をはじめとする抽象的思考によって、状況を整理して(余計なことは記憶しないで)、予測したり新しいアイデアを出したりすることです。ちなみに、チンパンジーは人間よりも瞬間記憶の能力が高いことがわかっています9)。その訳は、敵対する複数のチンパンジーが襲ってきた時に彼らを瞬時に記憶して反撃したり逃げたりするという生存の淘汰圧がかかってきたからでした。人間はそのような状況はまずありません。子供に瞬間記憶をトレーニングさせるということは、むしろチンパンジーに近い能力を間違って求めているように思えてきます。同じように、そろばん(暗算)の習いごとをしても数学的センスが高まるわけではないことも、速読のトレーニングをしても読解力が身に付くわけではないこともわかります。以上より、より良い幼児教育のあり方とは、形式や結果にとらわれず本質を見極めることです。それは、やはり子供がそれに楽しんで取り組んでいることです。この点で、子供がやりたそうならやらせてみる、やりたくないならやらせないという親が無理強いをしないことでしょう。言い換えれば、それは、毎日20分ほど「おかあさんといっしょ」を親子で一緒に見て楽しめば、それで十分ということです。実際に、行動遺伝学の研究では、音楽、美術、スポーツなどの才能において、遺伝の影響(遺伝率)が80%程度、社会(非共有環境)の影響が20%程度であり、親の取り組みの違い(共有環境)の影響はどれも0%であることがわかっています10)。なお、認知能力においての親の取り組みの違い(共有環境)の影響は、ある程度ありますが、子供が大人になるにつれてやはり目減りしていきます。この詳細については、関連記事3の最後をご覧ください。「おかあさんといっしょ」とは?子供の隠れた才能を見つけ出してあげなければならないと思う親心はよくわかります。ただ実は、そんなことはごく一般的な家庭がするようなことで十分であることもわかりました。確かに、音楽をまったく聞かせていないと、音楽の才能は開花しません。ただ、ほどほどに音楽を聞かせていれば、あとはその子に素質(遺伝の影響)があるのなら、楽しんでいれば勝手に才能が開花していくということです。つまり、才能よりもまず楽しむことです。親としては、そんな子供の様子を温かく見守ることこそが、今必要なのではないでしょうか? つまり、より良い幼児教育とは、できるだけ良い幼児教育ではなく、ほどよい幼児教育であるという逆説であるとも言えるのではないでしょうか?そう考えると、「おかあさんといっしょ」とは、「おとうさんもいっしょ」になり、やがて自立して「みんな(社会)といっしょ」に生きていくためのほどよいサポートをする最初の1歩と言えるのではないでしょうか?8)「絶対音感を科学する」P18、P81、P30、P216、P233、P235、P246、P251:阿部純一(編)、全音楽譜出版社、20219)「文化がヒトを進化させた」P40:ジョセフ・ヘンリック、201910)「遺伝マインド」P59:安藤寿康、有斐閣、2011<< 前のページへ

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第45回 麻疹の接種歴も抗体価も知らぬ医師

茨城県と東京都で成人麻疹8年前から日本は麻疹排除状態になり、麻疹はどちらかといえば輸入感染症としての側面を持つようになっています。茨城県でインドから持ち込まれた麻疹ウイルスに感染した事例が報告され、これと疫学的リンクがある2例が東京都でも発生したことが報道されました。新幹線のグリーン車で感染したらしいので、学会などで移動が増えているこの時期、医師の皆さんもご注意ください。接種歴を知らない医療従事者私は感染制御チームに所属しているので、麻疹の接種歴や抗体価のデータをどのように管理すればよいか日々試行錯誤しているのですが、医療従事者の中には、自分が麻疹にかかったことがあるかどうか・ワクチンを接種したことがあるかどうか・抗体価は十分あるかどうか、知らない人が結構います。意識が高い人は、印刷したデータをネームプレートに入れています。病院実習のときにワクチン接種歴を聞かれて、不十分と判断された大学では接種をすすめていたでしょう。しかし、それすらも記憶にない医師が結構多くて、びっくりします。家族が妊娠したときに、風疹については少し興味を持ってくれる人が多いようですが、麻疹はあまり興味を持たれません。混合ワクチンを接種している世代が増えてきましたが、私のように中途半端な世代もまだまだ多いと思います(表)。アフターコロナで流行国へ渡航することが増えると、麻疹ワクチンを1回のみで接種している人たちが感染するパターンが増えてくるかもしれません。画像を拡大する表. 麻疹ワクチン接種歴(筆者作成1))麻疹には特異的な治療法がなく、対症療法が中心になります。そのため、できるだけ感染しないようワクチンによる予防が重要になります。麻疹による死亡のほとんどは肺炎か脳炎です。まずは接種歴と抗体価の把握をワクチン接種歴や、麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎の抗体価については、ご自身で把握しておくことが望ましいですが、とくに医局人事で病院を転々とする人は、途中でデータが紛失してしまうこともあるため注意してください。参考文献・参考サイト1)一般社団法人日本ワクチン産業協会. 予防接種に関するQ&A集

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4つの症状に要注意!50歳未満の大腸がんの初期症状

 近年、50歳未満で発症する大腸がん(早期発症大腸がん)が世界的に急増している。また、早期発症大腸がんは診断が遅れることが多く、診断時には進行していることも多い。そこで、米国・ワシントン大学セントルイス校のCassandra D. L. Fritz氏らは、ケースコントロール研究を実施し、早期発症大腸がんに関連する徴候・症状を検討した。その結果、直腸出血、鉄欠乏性貧血、下痢、腹痛を早期に発見することで、早期発症大腸がんの早期発見と適時診断につながる可能性が示された。本研究結果は、Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2023年5月4日号で報告された。 18~64歳の米国の民間保険加入者1億1,300万例のうち、2年以上継続加入している早期発症大腸がん患者5,075例を対象として、2006~15年の期間にマッチドケースコントロール研究を実施した(対照は2万2,378例)。事前に規定した17個の徴候・症状について、大腸がん診断前3ヵ月~2年の徴候・症状と早期発症大腸がんの関係を検討した。 主な結果は以下のとおり。・事前に規定した17個の徴候・症状のうち、早期発症大腸がん患者の診断前3ヵ月~2年の症状として多くみられたものは、腹痛(11.6%)、直腸出血(7.2%)であった。・直腸出血(オッズ比[OR]:5.13、95%信頼区間[CI]:4.36~6.04)、鉄欠乏性貧血(OR:2.07、95%CI:1.61~2.66)、下痢(OR:1.43、95%CI:1.14~1.78)、腹痛(OR:1.34、95%CI:1.19~1.49)の4個が早期発症大腸がんの独立した関連因子として特定された。・上記の4個の徴候・症状を多く有しているほど、早期発症大腸がんのリスクが高かった(1個の場合のOR:1.97、95%CI:1.80~2.15、2個の場合のOR:3.66、95%CI:2.97~4.51、3個以上の場合のOR:6.96、95%CI:4.07~11.91、p for trend<0.001)。・上記の傾向は、若年(p for interaction<0.001)、直腸がん(p for heterogeneity=0.012)で強く認められた。・上記の4個の徴候・症状が診断前3ヵ月~2年に発現した患者の割合は19.3%(診断間隔中央値:8.7ヵ月)、診断後3ヵ月以内に発現した患者の割合は49.3%(診断間隔中央値:0.53ヵ月)であった。

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アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤の安全性~ピボタル試験

 アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤960mg(Ari 2MRTU 960)は、2ヵ月ごとに臀部筋投与を行う新たな長時間作用型注射剤の抗精神病薬であり、現在、統合失調症および双極I型障害の治療に対する研究が実施されている。米国・大塚ファーマシューティカル D&CのMatthew Harlin氏らは、統合失調症または双極I型障害の成人患者に対するAri 2MRTU 960の安全性および忍容性を評価し、同薬剤とアリピプラゾール月1回製剤400mg(AOM 400)の血中濃度の類似性を調査した。その結果、統合失調症または双極I型障害の成人患者において、Ari 2MRTU 960は良好な忍容性が認められ、AOM 400と同等の安全性プロファイルを有していることが確認された。CNS Drugs誌2023年4月号の報告。 32週間のオープンラベル試験を実施した。対象患者は、56±2日ごとのAri 2MRTU 960投与(4回実施予定)または28±2日ごとのAOM 400投与(8回実施予定)のいずれかに1:1でランダムに割り付けられた。初回投与時に、AOM 400で安定していた患者を除き、重複した経口抗精神病薬で治療を行った。安全性、忍容性、薬物動態の評価は、研究期間を通して実施した。主要安全性評価項目には、報告された有害事象、注射部位反応、錐体外路症状を含めた。主要薬物動態評価項目は、Ari 2MRTU 960の4回目投与から56日後およびAOM 400の8回目投与から28日後のアリピプラゾールの血中濃度、Ari 2MRTU 960の4回目投与後0~56日目のAUCまたはAOM 400の7回目および8回目投与後0~28日目のAUCとした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者266例(統合失調症:185例、双極I型障害:81例)は、Ari 2MRTU 960群132例、AOM 400群134例にランダムに割り付けられた。・男性の割合は66.2%、黒人またはアフリカ系米国人の割合は72.9%、平均年齢は47.3歳であり、人口統計学的特性およびベースライン時の疾患特性に両群間で差は認められなかった。・試験完了率は、Ari 2MRTU 960群77.3%、AOM 400群68.7%であった。・試験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、Ari 2MRTU 960群71.2%、AOM 400群70.9%と同程度であった。・頻度の高かったTEAEは、体重増加(Ari 2MRTU 960群:22.7%、AOM 400群:20.9%)、注射部位の痛み(Ari 2MRTU 960群:18.2%、AOM 400群:9.0%)であった。・Ari 2MRTU 960の4回目投与から56日後とAOM 400の8回目投与から28日後のアリピプラゾール血中濃度の幾何平均の比(GMR)は、1.011(90%信頼区間[CI]:0.893~1.145)であった。・Ari 2MRTU 960の4回目投与後0~56日目のAUCとAOM 400の7回目および8回目投与後0~28日目のAUCのGMRは、1.006(90%CI:0.851~1.190)であった。

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