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第63回 「5類」化は失敗だったのか?学級閉鎖急増

学級閉鎖が急増PAKUTASOより使用私の住んでいる地域でも学級閉鎖が増えてきました。新型コロナだけでなくインフルエンザが再び急増して、完全にダブル流行の状態です。来院する発熱者も、一体どちらに感染しているのかわかりにくい状況です。新型コロナでは、嗅覚障害・味覚障害も以前ほど出現せず、特異度の高い所見がありません。前の波までは新型コロナとインフルエンザの両方を検査していた医療機関が多いと思いますが、今はどうでしょうか。インフルエンザの流行が落ち着いたということで、新型コロナだけ検査している医療機関もあるかもしれません。しばらくは両方検査しておくのが無難でしょうね。さて、秋口からインフルエンザの流行が始まることは、過去に類を見ない現象です。今年度の冬は一体どうなるのでしょうか。日本学校保健会における9月15日時点でのデータ1)では、新型コロナによる1,000クラス当たりの学級閉鎖数が多い都道府県は、埼玉県(11.17)、新潟県(4.96)、島根県(4.91)などが目立ちます。インフルエンザによる1,000クラス当たりの学級閉鎖は埼玉県 1.65、新潟県 0.37、島根県 2.28となっており、どちらのウイルスが原因で学級閉鎖しているのかわかりにくいことから、報告に地域差が大きい状況です。画像を拡大する図. 埼玉県の学級閉鎖クラス数(参考1より引用)学級閉鎖になると、親が大変です。とくに共働きの家では、このまさかの事態に親が休まざるを得ないこともあるでしょう。「5類」化で本当によかったのか?世論に押される形で、新型コロナは5月から「5類感染症」になりました。これまでの「新型インフルエンザ等感染症」という枠組みはとても便利で、感染が拡大したときに対策を締めることができ、ピークが過ぎれば緩和するという、非常に勝手のよいものでした。私個人としては、枠組みは「新型インフルエンザ等感染症」のままで、感染の増減に合わせてガードを上げ下げすればよいのではと思っていました。ただ、ずっとこのままやっていくには国全体の疲弊がひどかったですし、どこかで「5類」に変更する必要があったのでしょう。しかし、「5類」化以降、これまでサポートしてくれていた行政が、いきなり塩対応になりました。緩和ムードの裏で、地域では感染が増えました。入退院も個々の医療機関の地域連携室がマネジメントすることになりました。クリニックも医療機関との個別交渉になるので、なかなか大変です。教育現場ではマスクが緩和されました。それはそれでよいことだと思いますが、これほど学級閉鎖が増えても、行政からメッセージが出ないのは不安になりますね。参考文献・参考サイト1)学校保健ポータルサイト 感染症情報マップ(マップビュー)

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慢性便秘症ガイドライン改訂、非専門医向けに診療フローチャート

 慢性便秘症は、2010年代にルビプロストン(商品名:アミティーザ)、リナクロチド(同:リンゼス)、エロビキシバット(同:グーフィス)、ポリエチレングリコール(PEG)製剤(同:モビコール)、ラクツロース(同:ラグノス)といった新たな治療薬が開発されている。このように、治療の進歩とエビデンスの蓄積が進む慢性便秘症について、約6年ぶりにガイドラインが改訂され、『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』が2023年7月に発刊された。そこで、便通異常症診療ガイドラインの作成委員長を務める伊原 栄吉氏(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)に改訂のポイントを聞いた。新たな慢性便秘症のガイドライン作成が求められていた 慢性便秘症は、QOLが低下するだけでなく、長期生命予後に影響するコモンディジーズである1)。慢性便秘症には、結腸運動機能(便の運搬機能)障害(排便回数減少型)と直腸肛門機能(便の排泄機能)障害(排便困難型)の2つの病態が存在するため、病態に基づいた治療が必要となる。また、2010年代には新たな慢性便秘症治療薬が複数開発されており、これらのエビデンスをまとめ、非専門医向けに診療フローチャートを作成する必要があった。さらに、オピオイド誘発性便秘症の治療法も明らかにする必要もあった。これらの背景から、新たな慢性便秘症のガイドラインの作成が求められており、今回『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』が作成された。また、便秘は下痢と表裏一体であることから、慢性下痢症のガイドラインも新しく作成することになり、『便通異常症診療ガイドライン』という形で、「慢性便秘症」と「慢性下痢症」に分けて作成された。便通異常症診療ガイドライン2023にフローチャート 慢性便秘症には、上述のとおり「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つの病態が存在する。伊原氏は「前版の慢性便秘症診療ガイドライン20172)では、排便困難型に重点が置かれていたため、バランスを取った便秘の定義を作成する必要があった」と述べた。そこで、今回の便通異常症診療ガイドライン改訂では、これら2つの病態が考慮され、便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態(下線部が排便回数減少型に該当)」と新たに定義された。また、慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも種々の支障をきたしうる病態」と定義された。なお、便秘は状態名であり、(慢性)便秘症は疾患名である。つまり、「便秘のために日常生活に支障をきたしているものが便秘症(疾患)である」と伊原氏は述べた。 今回の便通異常症診療ガイドラインの診断基準は、前版の『慢性便秘症診療ガイドライン2017』に準じており、内容には変更がない。しかし、ここでも「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つの病態が考慮され、従来の6項目が排便中核症状(排便回数減少型に相当)と排便周辺症状(排便困難型に相当)に分けて記載された。 慢性便秘症の診療について、今回の便通異常症診療ガイドライン2023ではフローチャートが作成されている。そこにも記載されているが、腫瘍性疾患や炎症性疾患が隠れている可能性もあるため、警告症状や徴候の有無を調べることの重要性を伊原氏は強調した。「警告症状にあてはまるものがあれば、大腸内視鏡検査などを実施してほしい。そこで、機能性便秘症であることがわかってから、慢性便秘症の治療に進んでいただきたい」と述べた。警告症状・徴候の詳細については、便通異常症診療ガイドライン2023の「CQ4-1:慢性便秘症における警告症状・徴候は何か?(p.55)」を参考にされたい。フローチャートで診療の流れが明確に、刺激性下剤はオンデマンド治療 伊原氏によると、機能性便秘症の多くが排便回数減少型であるという。そこで、排便回数減少型の治療について解説いただいた。 便秘症の治療薬について、今回の便通異常症診療ガイドライン2023で強い推奨(エビデンスレベルA)となったのは、「浸透圧性下剤(塩類下剤、糖類下剤、高分子化合物[PEG])」「上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)」「胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)」であった。そこで、これらの薬剤を中心に機能性便秘症治療のフローチャートが作成された。ここでの基本的な治療の流れは「生活習慣の改善→浸透圧性下剤→上皮機能変容薬または胆汁酸トランスポーター阻害薬」である。エビデンスが十分でないと判断された「プロバイオティクス」「膨張性下剤」「消化管運動機能改善薬」「漢方薬」は代替・補助治療薬として記載され、「刺激性下剤」「外用薬(坐剤、浣腸)、摘便」はオンデマンド治療であることが明記された。また、このフローチャートは、2023年5月にAmerican Gastroenterological Association(AGA)およびAmerican College of Gastroenterology(ACG)によって発表された『AGA/ACG Clinical Practice Guideline3)』と細かな違いはあるものの、おおむね同様の内容となっている。 新規作用機序の治療薬の使い分けについても、関心が高いのではないだろうか。そこで、今回の便通異常症診療ガイドライン2023では「FRQ 5-1:ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は何か?(p103、104)」が設定された。回答は「ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は明らかになっておらず、今後のさらなる検討が必要と考えられる」となっており、ガイドライン上では便秘症治療薬の使い分けについて明確には示されなかった。しかし、「少しずつわかってきたこともある」と伊原氏は述べた。「ルビプロストンは若い女性で嘔気が起こりやすいため、若い女性にはエロビキシバットやPEG製剤を選択する」「痛みを伴う便秘症にはリナクロチドを選択する」「PPIを用いている患者は酸化マグネシウムの効果が落ちること、ルビプロストンには粘膜バリアを修復する機能があることから、NSAIDsやPPIを服用している患者にはルビプロストンを選択する」「糖尿病患者など、腸の運動が落ちている可能性がある患者には、腸の運動を亢進させるエロビキシバットを選択する」といった便秘症治療薬の使い分けも考えられるとのことである。ただし、「実際に使用して、効果を判定しながら治療を行ってほしい」とも述べた。 今回、オピオイド誘発性便秘症に対する治療のフローチャートも作成された。ガイドラインには「オピオイド誘発性便秘症が疑われる患者には、浸透圧性下剤、刺激性下剤、ナルデメジン、ルビプロストンが有効である」と記載されているが、伊原氏は「ナルデメジンについては、オピオイドの副作用としての便秘に対する効果はあるが、それ以外の機能性便秘症には効果がないので、どちらが主体の便秘症であるか考えて選択する必要がある」と付け加えた。詳細については、便通異常症診療ガイドライン2023の「CQ5-4:オピオイド誘発性便秘症に対する治療法は何か?(p.101)」と「フローチャート5」を参考にされたい。便通異常症診療ガイドライン2023に慢性便秘症の病態評価 慢性便秘症の病態評価において、放射線不透過マーカー法やMRI/CTの有用性が報告されており、今回の便通異常症診療ガイドライン2023にも取り上げられている(CQ4-3、4-4)。しかし、日常診療での実施は難しいのが現状である。そこで、注目されるのが直腸エコー検査(CQ4-2)であると伊原氏は述べた。「直腸エコーで直腸内に便の貯留がみられない場合は直腸感覚閾値の異常、柔らかい便がみられた場合は便排出障害、三日月状の固い便がみられた場合は坐剤や摘便により改善する可能性が考えられる」と解説した。また、「浣腸を行う前に直腸エコーを行うことで、浣腸の必要性がわかるのではないか」とも述べた。 また、病態評価について「病態評価が難しい現状にあるため、症状分類で構わないので『排便回数減少型』『排便困難型』の分類を行い、排便困難型で症状が重い場合は直腸視診や直腸エコーを実施してほしい。そこで明らかな便排出障害が認められる場合は、専門医への紹介を検討していただきたい」とまとめた。便通異常症診療ガイドライン2023改訂ポイントのまとめ 伊原氏は、今回の便通異常症診療ガイドライン2023改訂のポイントを以下のようにまとめた。(1)便秘と慢性便秘症の定義を改訂した(状態名を便秘、病態[疾患名]を[慢性]便秘症とした)(2)「病態(疾患名)」は、「症」を語尾につけることで、病気ではない「状態名」と区別した(3)定義、分類、診断、治療とすべてにわたり、便が直腸へ運搬できない結腸運動機能障害型(排便回数減少型)、直腸に貯留した便が排泄できない直腸肛門機能障害型(排便困難型)の2つの病態を念頭にいれて作成した(4)慢性便秘症の病態評価において直腸エコー(便秘エコー)の有用性を初めて記載した(5)オピオイド誘発性便秘症の治療法を初めて記載した(6)診療のフローチャートを初めて作成した

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緑内障ほか眼科疾患と認知症リスク~メタ解析

 一般的な眼科疾患と認知症との関係を調査するため、中国・Shenzhen Qianhai Shekou Free Trade Zone HospitalのJiayi Feng氏らは、コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、緑内障などの眼科疾患は、すべての原因による認知症やアルツハイマー病のリスク増加と関連している可能性が示唆された。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2023年7月29日号の報告。緑内障や白内障はすべての原因による認知症のリスク増加と関連 対象は、眼科疾患を有する患者。2022年8月25日までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Web of Scienceなどのオンラインデータベースより、システマティックに検索した。緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、白内障とすべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症との関連を評価したコホート研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いてプールし、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。不均一性の評価には、I2統計を用いた。サブグループ分析および感度分析を実施した。 緑内障などの眼科疾患と認知症との関係を調査した主な結果は以下のとおり。・研究25件、参加者1,141万709例をメタ解析に含めた。・AMD、緑内障、DR、白内障は、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病のリスク増加との関連が認められた。それぞれの統合された推定値は、以下のとおりであった。●すべての原因による認知症 【AMD】RR:1.29、95%CI:1.13~1.48 【緑内障】RR:1.16、95%CI:1.03~1.32 【DR】RR:1.40、95%CI:1.21~1.63 【白内障】RR:1.23、95%CI:1.09~1.40●アルツハイマー病 【AMD】RR:1.27、95%CI:1.06~1.52 【緑内障】RR:1.18、95%CI:1.02~1.38 【DR】RR:1.21、95%CI:1.04~1.41 【白内障】RR:1.22、95%CI:1.07~1.38・血管性認知症発症と眼科疾患との関連は、認められなかった。・サブグループ分析では、DRとすべての原因による認知症リスクとのメタ解析の結果と一致しなかった。・メタ回帰分析では、AMDとすべての原因による認知症、AMDとアルツハイマー病、緑内障とすべての原因による認知症、緑内障とアルツハイマー病との関連に、不均一な潜在的な原因として地理的要因が影響していることが示唆された。

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日本におけるSNS上のがん情報、4割超が誤情報

 SNSの普及により、患者はがん情報に容易にアクセスできるようになった。しかし、患者の意思決定に悪影響を与えかねない誤情報や有害情報も大量に発信されている。日本のSNSにおけるがん情報はどの程度信頼できるものなのか。これについて調べた名古屋市立大学病院 乳腺外科の呉山 菜梨氏らによる研究結果がJMIR formative research誌オンライン版2023年9月6日号に掲載された。 研究者らは、Twitter(現:X)上で2022年8~9月に投稿された、日本語の「がん」という言葉を含むツイートを抽出した。1)がんの発生や予後に関する言及、2)行動の推奨・非推奨、3)がん治療の経過や有害事象に関する言及、4)がん研究の成果、5)その他がんに関連する知識・情報、を含むがん関連ツイートを抽出対象とし、「いいね」の数が最も多かった上位100ツイートを選定した。それぞれのツイートについて、日本のがんセンターまたは大学病院で臨床に携わる医師である2名の独立したレビュアーが、情報が事実か誤情報か、有害か安全かを、誤情報と有害なツイートについてはその判断理由とともに評価した。 主な結果は以下のとおり。・抽出されたツイートは計6万9,875件であった。上位ツイート100件のうち、誤情報が含まれていたのは44件(44%)、有害情報が含まれていたのは31件(31%)、誤情報と有害情報の両方が含まれていたのは30件(30%)であった。・誤情報は、証明されていない(38/94、40.4%)、反証されている(19/94、20.2%)、不適切な適用(4/94、4.3%)、エビデンスの強度の誤り(14/94、14.9%)、誤解を招く(18/94、19.1%)、その他の誤情報(1/94、1.1%)に分類された。・有害情報は安全情報よりも「いいね」される頻度が高く、誤情報がリツイートされる頻度は事実に基づいた情報よりも、有害情報がリツイートされる頻度は安全な情報よりも、それぞれ有意に高かった。・正確性と有害性を合わせた分析では、「事実-安全」「事実-有害」「誤情報-安全」「誤情報-有害」と評価されたツイートの割合は、それぞれ55%、1%、14%、30%であった。・「いいね」やリツイートの数が最も多かったのは、「日本では、米国から余った抗がん剤や廃棄される抗がん剤が輸入されているため、がんの死亡率が高い」という誤った情報であった。 著者らは、「日本では、Twitter上でがんに関連する誤った情報や有害な情報が蔓延していることが明らかであり、この問題に関するヘルスリテラシーと意識を高めることが極めて重要である。さらに、行政機関や医療従事者は、患者やその家族が十分な情報を得たうえで意思決定できるよう、正確な医療情報を提供し続けることが重要である」と結論付けている。

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急性脳梗塞、血管内治療後の積極降圧は有益か?(BEST-II)/JAMA

 急性虚血性脳卒中の患者において、血管内治療成功後の収縮期血圧(SBP)目標値について、140mmHg未満や160mmHg未満の設定は、180mmHg以下の設定と比較して、事前規定の無益性は示されなかった。一方で、将来的に大規模試験で比較した場合に、低SBP目標値が高SBP目標値より優越性を示す確率は低い可能性も示唆されたという。米国・シンシナティ大学のEva A. Mistry氏らが、無作為化試験「BEST-II試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中への血管内治療成功後の中程度のSBP降圧の影響は、明らかになっていなかった。JAMA誌2023年9月5日号掲載の報告。米国の3ヵ所の総合脳卒中センターで120例を対象に検討 研究グループは、2020年1月~2022年3月に米国の3ヵ所の総合脳卒中センターで、血管内療法を受け成功した急性虚血性脳卒中患者120例を登録し、降圧目標の低SBP値(140mmHg/160mmHg未満)が高SBP値(180mmHg以下)と比較して無益であるかを検証する第II相無作為化非盲検エンドポイント盲検化試験を行った。最終フォローアップは2022年6月。 被験者を血管内治療後に無作為に3群に分け、SBP目標値を、40~140mmHg未満、40~160mmHg未満、40~180mmHg以下(臨床ガイドライン推奨値)にそれぞれ設定し、再灌流後60分以内に血圧管理を開始し24時間継続した。 主要解析の無益性検証のために事前に規定した主要アウトカムは、フォローアップ36(±12)時間後の梗塞体積と、90(±14)日時点の実用性加重・修正Rankin Scale(mRS)スコア(範囲:0[最悪]~1[最良])の複合だった。 線形回帰モデルを用いて、血管内治療後のSBP目標値の20mmHg低下ごとの、フォローアップ梗塞体積は10mL増加(傾き:0.5)、または実用性加重mRSスコアが0.10減少(傾き:-0.005)を有害性-無益性の境界として検証した(片側α=0.05)。そのほか無益性に関する事前規定は、将来的にSBP目標を低~中値とする群と高値とする群を比較した優越性試験(実用性加重mRSスコアのアウトカムを最大サンプルサイズ1,500例で検証)で、低~中値群が優越性を示す確率が25%未満であることとした。目標値140mmHg/160mmHg未満、180mmHg以下に対し優越性示す確率は25%・14% 被験者120例は、平均年齢69.6(SD 14.5)歳、女性は69例(58%)で、試験を完了したのは113例(94.2%)だった。 フォローアップ梗塞体積の平均値は、140mmHg未満群が32.4mL(95%信頼区間[CI]:18.0~46.7)、160mmHg未満群が50.7mL(33.7~67.7mL)、180mmHg以下群は46.4mL(24.5~68.2)だった。実用性加重mRSスコア平均値は、それぞれ0.51(0.38~0.63)、0.47(0.35~0.60)、0.58(0.46~0.71)だった。 ベースラインでAlberta Stroke Program Early CT(ASPECT)スコアにより補正後、SBP目標値低下ごとのフォローアップ梗塞体積増加の傾きは、-0.29(95%CI:-0.81~∞、無益性のp=0.99)だった。同じく実用性加重mRSスコアの傾きは、-0.0019(-∞~0.0017、無益性のp=0.93)といずれも無益であることは示されなかった。 一方で、SBP目標の高値群と低~中値群を比較した将来的な優越性試験の予測される成功確率は、140mmHg未満群が25%で、160mmHg未満群は14%だった。

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生殖年齢女性はNSAIDでVTEリスク増、ホルモン避妊薬併用でさらに増/BMJ

 生殖年齢15~49歳の女性において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用は静脈血栓塞栓症(VTE)と正の関連性があることが示された。また、NSAID非使用時と比較した使用時のイベント数は、低リスク/リスクなしのホルモン避妊薬併用時と比べて、高/中リスクのホルモン避妊薬の併用時に有意に増加したことも示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のAmani Meaidi氏らが、同国在住の女性約203万人を対象に行った全国コホート試験の結果で、著者は「NSAIDとホルモン避妊薬の両者の使用が必要な女性には、適切なアドバイスが必要である」と述べている。BMJ誌2023年9月6日号掲載の報告。デンマーク在住の約203万人を対象にコホート試験 研究グループは、1996~2017年にデンマークに在住しており、静脈・動脈血栓症、がん、血小板増加症、子宮全摘出術、両側卵巣摘出術、不妊手術、不妊治療の病歴がない15~49歳の女性202万9,065人を対象にコホート試験を行い、ホルモン避妊薬とNSAIDの併用がVTEリスクに与える影響を検証した。 主要アウトカムは、下肢深部静脈血栓症または肺血栓塞栓症の初回退院時診断とした。ホルモン避妊薬非使用群4件/10万人、高リスクホルモン避妊薬併用群23件/10万人 202万9,065人の女性を延べ2,100万人年追跡した期間において、VTEイベントの発生は8,710件だった。 NSAID非使用者と比べ、NSAID使用者のVTEの補正後発生率比は、ホルモン避妊薬の非使用者では7.2(95%信頼区間[CI]:6.0~8.5)だったが、高リスクホルモン避妊薬使用者では11.0(9.6~12.6)、中リスクホルモン避妊薬使用者では7.9(5.9~10.6)、低リスク/リスクなしホルモン避妊薬使用者は4.5(2.6~8.1)だった。 NSAID非使用者と比較したNSAID治療開始後1週間における10万人当たりのVTEイベント発生件数は、ホルモン避妊薬非使用群では4件(95%CI:3~5)だったが、高リスクホルモン避妊薬併用群では23件(19~27)だった。中リスクホルモン避妊薬併用群は11件(7~15)、低リスク/リスクなしホルモン避妊薬併用群は3件(0~5)だった。

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高齢者の多枝冠動脈疾患を伴う急性心筋梗塞の冠動脈完全血行再建の有用性は?(解説:青木二郎氏)

 多枝冠動脈疾患を伴う急性心筋梗塞の冠動脈血行再建の責任病変以外の病変に対して、血行再建を行い、完全血行再建を目指すかについては、多くの無作為化比較試験が以前より行われてきた。PRAMI、DANAMI-3-PRIMULTI、COMPARE-ACUTE、COMPLETEといった試験では、非責任病変の有意狭窄病変にも血行再建を行うことにより、完全血行再建を行うほうが責任病変のみを治療するよりも、臨床イベントの発生が少なく望ましいと報告されてきた。しかし、今までの臨床試験では4,041例を登録したCOMPLETE試験でも平均年齢は62歳であり、高齢者でも同様の結果が得られるのかに重きを置いた臨床研究はなかった。今回のFIRE試験では、75歳以上の高齢者でも同様に完全血行再建を行うほうが、予後がいいことが初めて報告された。 FIRE試験では注目すべき点が他にもある。まず初めに、今までの臨床試験はSTEMIを主に対象としておりNSTEMIのエビデンスは乏しかったが、FIRE試験ではNSTEMI患者が約65%と半分以上登録された。サブ解析ではNSTEMI群のほうがSTEMI群より、完全血行再建を行ったほうがより臨床結果が良く、NSTEMI・STEMIに関係なく完全血行再建が望ましいと考えられる。 次に、非責任病変の評価法についても今までいろいろな議論がなされてきた。FLOWER-MI試験では、非責任病変の血管造影の狭窄度の評価(50%以上)と冠血流予備量比(FFR)0.8以下とで比較したが、臨床的な有意差が出なかった。FIRE試験は、非責任病変の評価に血管造影だけではなく、FFRに加えて安時指標(resting index)や血管造影結果から血流予備能を計測するQFRも用いられた初めての無作為化試験であることも注目される。急性期のFFRやresting indexは慢性期と異なるという報告も散見される。今後、非責任病変の評価に何が最適なのかを評価するために、5,100例を登録目標とした大規模無作為化試験であるCOMPLETE-2試験の登録が行われており、結果が待たれている。 最後に、完全血行再建をするほうが望ましいが、いつ非責任病変の血行再建を行ったらいいか、という問題もいまだ解決されていない。同時に治療したほうがいいのか、退院前なのか、退院後なのか? FIRE試験では同時治療が約60%であった。BIOVASC試験では同時が望ましいという結果であったが、今後のさらなる臨床試験の解析が待たれている。

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乾癬の治療法を徹底解説!:日野皮フ科医院 院長 日野 亮介氏

このコンテンツでは、乾癬の治療法について解説していきます。日常診療のアップデートに、ぜひご活用ください。講師紹介多くの乾癬患者さんたちからは、「ずっと同じ薬ばっかりで良くならない」というお声を多く頂きます。乾癬の治療は塗り薬しかない、と思っておられる方も多いかもしれません。しかし、そうではありません。乾癬は治療に苦労する皮膚疾患でありますが、ここ10年ほどで大変多くの治療薬が出てきました。皮膚の症状は大半の方でコントロール可能になりました。今、患者さんの乾癬はどんな状態でしょうか?患者さんのライフスタイルに応じて、適切な治療方針を選ぶための参考にしていただけると幸いです。治療がうまくいかないとき、マンネリ化したときに、次の一手を考えるヒントになってくれると思っております。このページでは、乾癬について保険適用のある治療について解説しています。乾癬には尋常性乾癬、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬、滴状乾癬の5種類があります。薬によって適用が異なりますので、ご注意ください。1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬1-1.ステロイド外用薬ステロイド外用薬は皮膚疾患に幅広く使われていますが、もちろん乾癬にも有効です。今のところ、乾癬に一番多く使われているお薬です。多くの乾癬患者さんは、一度は塗ったことがあると思います。ステロイドは昔からある薬ですが、ここにも進歩があります。ステロイド外用薬の弱点は長期に使うと副作用が出てくる点なのですが、それを和らげるための手だてとしてシャンプーになっている薬が出ました。コムクロシャンプー(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル)というもので、15分だけつける、という方法を用いて副作用を減らす工夫がなされています。また、シャンプーは薬を塗りにくい頭という場所の特性を生かした大変興味深い方法です。なお、ステロイドの飲み薬は乾癬には通常使用しません。長期的なステロイド外用薬の副作用を避けるためにも、ステロイド外用薬単体での長期的な治療は避ける必要があります。治療が長引いてきた場合は方法を見直しましょう。1-2.ビタミンD3外用薬乾癬患者さんの塗り薬で、一番大切なのはビタミンD3です。効果が出てくるまで時間がかかりますが、一度改善すると再発しにくいこと、長期間塗っても副作用が出にくいことが大切なポイントです。ただし、大量に塗ると血液中のカルシウムが増え過ぎて二日酔いのような症状(高カルシウム血症)が出る可能性がありますので、注意が必要です。皮膚の増殖を抑えるのが主な効き目ですが、IL-17という乾癬の皮膚症状に重要な役割を果たすタンパクを作りにくくすることにも役立ちます。1日2回塗ることが推奨されています。カルシポトリオール(商品名:ドボネックス):軟膏マキサカルシトール(商品名:オキサロール):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファハイ):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファ):軟膏、ローション、クリーム1-3.配合外用薬配合外用薬も、ここ10年の進歩の1つです。ステロイドとビタミンD3の2つを配合させた薬がデビューし、乾癬の治療に幅広く使われるようになりました。昔は、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を薬局で混ぜてもらって処方されることが多かったと思います。お薬の性質上、単純に混ぜるだけでは効果が落ちてしまいます。そのため、ステロイドとビタミンD3の両方を使いたい場合は、重ねて塗るか、両方とも特殊な製法で配合した塗り薬を使う必要があります。乾癬の塗り薬が効かない人は、まず混ぜた薬を使っていないか確認する必要があります。国内では、現在2種類の配合外用薬が使用可能です。カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(商品名:ドボベット):軟膏、ゲル、フォームゲル剤があるので頭皮の中に塗るのにも向いています。頭皮の中に塗る際は、意外にベタつくことに注意が必要です。また、フォーム剤もデビューしました。フォーム剤は塗りやすさから海外で多く使われているようです。上手に使わないと飛び散るので注意が必要です。マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(商品名:マーデュオックス):軟膏ページTOPへ2.経口薬2-1.アプレミラスト(商品名:オテズラ)PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素をブロックする薬です。頭痛、吐き気、下痢などの副作用が最初に出ることが多いので、お薬に体を慣らしていくためのスターターパックがあります。副作用は使っていくうちに慣れてくることが多いです。長期的に内服すると体重減少の副作用もあります。効果はゆっくり出てくるので、焦らず使用することが大切です。痒みや関節の痛みにも効果があります。注射薬のような劇的な効果ではないですが、症状が軽くなるので塗り薬を塗るのが面倒な方や小さなぶつぶつがたくさん出ている方には向いています。当院では小さなぶつぶつがたくさん出て塗りにくい方、頭のぶつぶつやかさぶたが治りにくい方、少し関節が痛い方、手足に分厚いかさぶたができて治りにくい方などに使っています。また、生物学的製剤の治療が終了した、もしくは何らかの理由で中断せざるを得なかった方にも使用できます。腎機能が低下している方は、半分の量で内服する必要があります。2-2.シクロスポリン(商品名:ネオーラル)乾癬が出てくるのに重要な働きをするT細胞の働きを抑える薬です。効果は比較的速やかで、量を多くすると生物学的製剤に近いくらいの効果を得ることもできます。ただし、血圧上昇などの副作用があることは注意が必要です。長期間内服すると、腎臓にダメージが起こります。海外のガイドラインでは1年程度の服用にとどめるように勧められています。これらの理由もあり、定期的な血液検査を必要としています。2-3.メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)リウマチではよく使われている薬ではありますが、乾癬でも最近保険適用になりました。リウマトレックスだけがジェネリックも含め乾癬に保険適用となっています。日本皮膚科学会の生物学的製剤使用承認施設でのみ乾癬に使用できます。妊娠計画の少なくとも3ヵ月前から男性、女性とも内服を中断しなければなりません。腎機能障害のある方には使用できません。副作用対策として葉酸製剤を内服することがあります。2-4.エトレチナート(商品名:チガソン)エトレチナートはビタミンA誘導体であり、免疫を落とさないことにより光線療法との併用が可能です。表皮細胞の異常増殖を抑えてくれることで効果を発揮します。唇が荒れる、手足の皮がむける、皮膚が薄くなるなどの副作用があります。催奇形性といって、お腹の赤ちゃんに奇形を起こす副作用が報告されています。そのため女性は服用中止後2年間、男性は半年間避妊することが必要になります。2-5.ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)乾癬性関節炎(関節症性乾癬)に適応があります。JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬という新しいメカニズムの治療薬です。もともと関節リウマチの治療薬として使用されていました。皮膚にも効果があります。15mg錠を1日1回内服します。帯状疱疹のリスクが高まることが知られていますので、この治療薬を検討されている方には事前に帯状疱疹ワクチンの接種を強くお勧めしています。深部静脈血栓症、肺塞栓症といった血栓のリスクが高まります。そのための注意が必要になります。また、生物学的製剤と同様に事前に結核の検査をする必要があります。2-6.デュークラバシチニブ(商品名:ソーティクツ)2022年11月デビューの内服薬です。既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。比較的副作用の少ない薬ですが、TYK2という分子をブロックするJAK阻害薬というジャンルに入っているため、日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設のみで投与可能となっています。成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。ページTOPへ3.光線療法治療の位置付けとしては、寛解導入、すなわち週2~3回程度の細かい間隔で照射し、ぶつぶつをできるだけ消失させるのを最初の目的としています。効果が出て皮膚症状が寛解したら間隔をのばしていく、ないしは中止します。ナローバンドUVBは発がん性が上昇するリスクは今のところ報告されていません。しかし、紫外線であるため、ダラダラと継続して無駄な照射をしないように気を付けることも大切です。ページTOPへ4.顆粒球吸着除去療法アダカラムという特殊な体外循環装置を使い、白血球の一部である、活性化した顆粒球を取り除く方法です。膿疱性乾癬に保険適用があります。薬剤の投与をしないため、妊娠中でも実施できます。ページTOPへ5.生物学的製剤乾癬の治療は、2010年に生物学的製剤が使えるようになってから劇的に変化しました。今までの治療で効果がなかった患者さんも、この薬の投与を開始してから皮膚や関節の症状と無縁の生活を送れるようになってきました。このように非常によく効く薬なのですが、大変高額です。そのため、高額療養費制度の理解や活用も大切になってきます。どんどん薬剤の開発が進み、10年で10種類以上のお薬が乾癬に対して使えるようになってきました。生物学的製剤が使えない方、注意が必要な方活動性の結核を含む重い感染症がある方は使用できませんので、事前にしっかりと検査を行い、必要な対処を行ってから投与する必要があります。また、悪性腫瘍のある方は投与禁忌ではありませんが、投与に当たっては(がん治療の)主治医としっかり相談・確認して慎重に進めなければなりません。現在、乾癬に使える生物学的製剤だけで、こんなにたくさんの種類があります(2023年9月現在)。画像を拡大する(各薬剤の電子添付文書を基にケアネット作成)5-1.TNF-α阻害薬TNF-αというタンパクをブロックする薬です。TNF-αは体のあちこちで作られ、乾癬を悪化させていきます。内臓脂肪からも作られます。メタボ気味の人は内臓脂肪からのTNF-αが増えてきます。すると、インスリン抵抗性といって血糖が上がりやすい状態になってしまうこともあります。これをブロックすることで、全身のさまざまな炎症を抑えてくれることも期待されています。また、関節炎にも効果が高いです。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の症状が進行すると骨びらんという骨へのダメージが来るのですが、TNF-α阻害薬は骨破壊を抑え、回復させてくれる効果が期待できます。インフリキシマブ(商品名:レミケード)唯一、これだけが点滴で投与する薬です。効果不十分時に増量ないし投与期間を短縮することが可能です。アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)2週間に1回皮下注射する薬です。効果不十分時に増量することが可能です。シリンジだけでなく、ペン型の注射器具があるため自己注射が簡単に行えます。セルトリズマブ ペゴル(商品名:シムジア)この薬剤は製法が特殊であり、胎盤をお薬が通過しにくいことがわかっています。そのため唯一、妊娠中でも使える生物学的製剤です。TNF-α阻害薬が使えない人うっ血性心不全のある方多発性硬化症などの脱髄性疾患をお持ちの方TNF-α阻害薬はどんな人に向いている?乾癬性関節炎(関節症性乾癬)で、とくに関節の症状が強い人メタボ気味の人炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の既往がある人体重が重い人インフリキシマブは体重1kg当たり5mgの量を投与します。体重がかなり重い方は十分な薬剤量を行きわたらせるためにインフリキシマブを選択することがあります。5-2.IL-23阻害薬IL-12/23 p40阻害薬のウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)が最初に出ました。IL-23はp40とp19というタンパクが合体しているものです。p40はIL-12という別のタンパクにも含まれている構造のため、IL-12/23 p40阻害薬は乾癬に関係のない細胞の働きも弱めてしまいます。そこで、ウステキヌマブ以降に出た次世代型のIL-23阻害薬は、p19をブロックすることでよりピンポイントな効き目を実現させています。すべての薬剤にある特長は、効果が持続しやすい、投与間隔が長いという点、副作用が少ないことです。ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)2011年から使用されている薬剤です。効果不十分な場合に増量できるのが特徴です。グセルクマブ(商品名:トレムフィア)掌蹠膿疱症にも適応があります。維持投与期は8週間に1回の投与を行います。リサンキズマブ(商品名:スキリージ)維持投与期は12週間に1回という長さが魅力です。チルドラキズマブ(商品名:イルミア)尋常性乾癬のみに適応があります。この薬剤も維持投与期は12週間に1回です。IL-23阻害薬はどんな人に向いている?治りにくい尋常性乾癬の方仕事が忙しくて通院が大変な方自分で注射を打つのが怖い方5-3.IL-17阻害薬IL-17とは乾癬を発症させるのに大変重要な役割を果たすタンパクです。IL-17にはIL-17AからFまでの6つのサブファミリーがあります。とくにIL-17ファミリーの中で乾癬の成り立ちに重要な役割を果たすタンパクが、IL-17AとIL-17Fです。治療効果が早く出ること、そして4種類の薬剤それぞれ非常に高い効果が得られることが特長です。セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブは維持投与期に自己注射をすることが可能です。セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)最初の1ヵ月に毎週注射をすることで効果を早く出せることが特長です。完全ヒト型抗体であり、中和抗体が出にくいのが特徴です。成人には300mgを投与しますが、状況により減量が可能です。生物学的製剤の中で唯一小児にも適応があります。通常、6歳以上の小児にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として、体重50kg未満の患者には1回75mgを、体重50kg以上の患者には1回150mgを皮下投与します。なお、体重50kg以上の患者では、状態に応じて1回300mgを投与することができます。イキセキズマブ(商品名:トルツ)IL-17Aを阻害します。薬剤の特長として高い治療効果が早期から出てくることが多いです。効果がいまひとつだったり、安定しなかったりするとき、つまり使用開始後12週時点で効果不十分な場合には、投与期間を短縮することが可能です。乾癬の皮膚や関節症状が強い方、安定しない方に向いています。ブロダルマブ(商品名:ルミセフ)この薬剤は、乾癬の治療薬ではIL-17の受容体であるIL-17RAをブロックする薬です。そのため、IL-17A、IL-17A/F、IL-17C、IL-17E、IL-17Fが受容体に結合するのをブロックすることができます。皮膚症状に対しては、かなり有効性が期待できる薬剤です。ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)IL-17A、IL-17Fをブロックできる薬剤です。尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)には適応がありません。今までの治療でうまくいかなかった人でも鋭い効果を出すことが期待されています。IL-17阻害薬が使えない方炎症性腸疾患のある方IL-17は腸管のバリア機能を保つために重要な役割を果たします。炎症性腸疾患のある方は、IL-17をブロックすることで悪化する可能性があります。真菌感染症のある方IL-17は真菌(カビ)の防御に大切な働きをします。そのため、これらの感染症がある方は、IL-17をブロックすることで悪化させてしまう可能性があります。IL-17阻害薬はどんな人に向いている?皮膚の症状がかなり重度な方自分で注射を打てる方素早い効果を期待している方5-4.IL-36受容体阻害薬スペソリマブ(商品名:スペビゴ)抗IL-36受容体抗体であるスペソリマブが主成分です。膿疱性乾癬における急性症状の改善、という適応で保険収載されました。投与開始1週後に有意な膿疱の減少、12週後には84.4%の患者で膿疱が消失という劇的な効果を呈することが知られています。ページTOPへまとめ乾癬の治療薬、治療法はたくさんあることがおわかりいただけたと思います。乾癬の治療に絶対の正解はありませんが、いろいろな治し方を知り、治療方針を決めていく参考になればと思っております。乾癬の治療薬は、まだたくさん開発されています。内服薬(RORγtインバースアゴニスト)、外用薬(アリル炭化水素受容体モジュレーター)などが治験中です。今後も多くの治療選択肢ができることで、乾癬患者さんたちの未来は明るくなっていくのではと期待しています。1)森田明理ほか. 乾癬の光線療法ガイドライン. 日皮会誌. 2016;126:1239-1262.2)佐伯秀久ほか. 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版). 日皮会誌. 2022;132:2271-2296.3)各薬剤の電子添付文書

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第179回 驚きの新閣僚人事、武見厚労相は日医には大きな誤算?“ケンカ太郎”の息子が日医とケンカをする日

日医の族議員が2人も入閣こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球は、セ・リーグで阪神タイガースの18年振りの優勝が決まりました。岡田 彰布監督が開幕前から「アレ」と言い続け半ば流行語になった「アレ」ですが、優勝後は「コレ」と言うのでしょうか。クライマックスシリーズ、そして、日本シリーズが楽しみです。それにしても、前任の矢野 燿大監督から岡田監督に代わっただけで翌年優勝とは。MLBで、オークランド・アスレチックスからボルチモア・オリオールズにチームが変わっただけで突然制球が良くなった元阪神の藤浪 晋太郎投手も謎ですが、阪神も相変わらず謎が多い球団ですね。さて今回は9月13日に発足した、第2次岸田第2次改造内閣について書いてみたいと思います。驚きだったのは、日本医師会の政治団体、日本医師連盟の支援を受けてきた武見 敬三参議院議員と、自見 英子参議院議員が、それぞれ厚生労働大臣と地方創生担当大臣(沖縄及び北方対策、他も担当)に起用されたことです。とくに1950年代から80年代まで長く日医会長を務め、政権や厚生省(当時)と渡り合った武見 太郎氏の三男である武見 敬三氏が厚生労働大臣に抜擢されたことは驚きを超え、一部からは呆れ声すら上がっています。武見 敬三氏は1995年の参議院議員選挙比例区で日本医師連盟推薦候補として初当選、その後東京選挙区に移りました。現在、武見氏の後援会会長は東京都医師会会長の尾崎 治夫氏です。武見氏が今でも日医系のいわゆる“族議員”であることは間違いありません。たとえば、ネットニュースを配信するアゴラは、9月13日、「医師会そのものが厚生労働大臣に?:武見敬三氏の起用で広がる波紋」と題するニュースを掲載、X(旧ツイッター)の投稿などで、「医師会そのものが大臣になったようなものだという痛烈な批判がみられます」「岸田政権は『利権に配慮し過ぎる』傾向があるという指摘も」「もはや現政権は一線を超えたとも言えます」などと書いています。岸田総理大臣のしたたかな日本医師会対策か?しかし、本当にそうなのでしょうか?単純に見れば、団体の族議員を関連の大臣として入閣させれば、その団体のやりたいように政策を進められると考えがちですが、私はむしろ逆ではないかと思います。むしろ、今回の武見氏入閣は、岸田 文雄総理大臣のしたたかな日本医師会対策に見えて思えてなりません。日医幹部たちは、表向き武見大臣誕生を喜びながら、内心「やられた!」と思っているかもしれません。閣僚経験なし、71歳の武見氏に任せる理由厚生労働大臣は今や要職です。一般会計歳出の実に3分の1が社会保障費で、最も国の予算を使うのが厚労省です。さらに、マイナ保険証に代表される医療DXの推進、2024年に予定される診療報酬・介護報酬同時改定、そして医師の働き方改革など、大きな課題が山積しています。そんな重要な役所である厚労省を、議員経験が長く医療や社会保障に詳しいと言われてきたものの、大臣経験がない、71歳という高齢の武見氏に任せる理由は何でしょう。もちろん、長年の厚労行政への関与に対する論功行賞的な意味合いもあるでしょう。また、これから推し進めようとする医療DXには日医をはじめとする医療関係団体の協力が不可欠、という理由も大きいでしょう。ただ、それよりも大きなポイントと考えられるのは、来年の診療報酬・介護報酬同時改定、すなわち医師に入る“カネ”の問題です。同時改定に向けて政府と日医の間で激しい攻防の予感次期改定を巡っては、物価高や賃上げの影響もあり、医療関係団体は報酬の引き上げを求めています。しかし、政府は少子化対策の財源に医療の歳出抑制を当て込んでおり、例年以上に難しい調整が予想されます。6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針2023)は、少子化対策・こども政策のメニューが拡充された一方で、財源確保策をどうするかについて岸田首相は年末(診療報酬の改定率決定もこの頃)に先送りしました。今年の骨太には、「歳出改革等によって得られる公費の節減等の効果及び社会保険負担軽減の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく、『こども・子育て支援加速化プラン』を推進する」と書かれています。この文言を真に受けるなら、社会保険負担軽減、すなわち診療報酬・介護報酬の圧縮によって財源確保を行うことになります。もちろん、次期改定で物価高や人件費増は反映されるでしょうが、それ以外のプラスはほとんど考慮されないかもしれません。政府と日医の間で激しい攻防が予想されます。岸田首相の財務省寄りのスタンスは今でも変わっていないこの連載では、政府と日医の力関係について度々書いてきましたが、岸田首相の財務省寄りのスタンスは今でも変わっていないと考えられます(「第80回 『首相≒財務省』 vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」参照)。その一つの表れが首相秘書官人事です。2023年7月、岸田首相の秘書官の一人に財務省主計局主計官の一松 旬氏が就任しました。一松氏は奈良県副知事や主計局調査課長などを歴任、前任の宇波 弘貴氏同様、社会保障分野に長く関わってきました。2018年、奈良県がぶち上げた地域別診療報酬構想(全国一律1点10円を都道府県ごとに設定できるようにする)を考えた人物とも言われています。仮に1点8円になれば、その県の診療報酬の総額は単純計算で20%減ります。当時、単純かつ効率的な医療費削減策ということで医療関係者の注目を集めました。この時は日医の猛反対もあり、地域別診療報酬の議論は広がりませんでした。しかし、そんな医療費削減に関して“急進派”の財務官僚を秘書官として登用する岸田氏が、日医の利益のために族議員を大臣にするとは考えられません。族議員として日医の意向を政府に伝える役回りだった武見氏を、厚労大臣という診療報酬の元締め役に就けることで、逆に日医の説得役、なだめすかし役として機能してもらうというのが岸田首相の本音のように見えますが、穿ち過ぎでしょうか。就任会見で「医療関係団体の代弁者ではない」と武見大臣日医の松本 吉郎会長は9月13日、改造内閣が発足したことを受けてコメントを発表、武見氏の入閣について「日本医師会と致しましては、誠に喜ばしい限りです。(中略)。エビデンスに基づく冷静沈着な分析と、その一方でラガーマンとして培われた熱血漢としての側面を持ち合わせる稀有の存在と尊敬しています。これまでの様々なご経験をもとに厚生労働行政においてその手腕を遺憾なく発揮されることと期待しております」とエールを送っています。一方、9月14日、厚労大臣として初の記者会見に臨んだ武見氏は、「新型コロナウイルス感染症への対応など、感染症対策の強化、更に安心安全なマイナ保険証を含む医療DX、医療介護福祉の向上に確実に取り組む。また、持続的な賃上げの実現に向けて、リスキリングによる能力向上支援、そして多様な人材が活躍できる環境整備に取り組みたい」と抱負を述べました。さらに、過去の選挙において日本医師連盟など医療関係団体の推薦を受けたことについて質問されると、「医療関係団体の代弁者ではない。国民の立場に立ってどのような政策を実現するべきかを考えるのが従来から私の一貫した立場だ」と語りました。ゴリゴリの政治家、というよりはどちらかというと学者肌の政治家武見氏は、政府と日医の間の調整役を担わされることになるでしょう。国や財務省の意向を大臣の立場で日医幹部に伝えるというのは、族議員としては相当タフな仕事と言えそうです。大臣就任後の記念撮影で武見氏の顔に笑顔がなかったのは、そのせいかもしれません。ところで武見氏は、元日医会長、太郎氏の三男ですが、医師ではありません。慶應義塾大学大学院で政治学を学んだ後、大学教員となり、テレビのニュースキャスターなどでも活躍、その後、参議院議員となっています。グローバルヘルスの分野では、国際的なネットワークを持っており、2011年に医学雑誌Lancetが日本特集号「国民皆保険達成から50年」を発刊した際は、日本国際交流センター・シニアフェローの立場で同号の国内実行委員会委員長を務めています。また、2019年には、世界保健機関(WHO)のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)親善大使に就任しています。そういった取り組みからも、武見氏はゴリゴリの政治家というよりは、どちらかというと学者肌の政治家と言えそうです。13期25年間も日本医師会長を務めた父親、太郎氏は、政府や厚生省の官僚に対する強い対決姿勢から“ケンカ太郎”とも呼ばれましたが、息子の敬三氏は父親の敵方とも言える厚労大臣になってしまいました。おそらく次の総選挙までの“つなぎ”の大臣だとは思われますが、はたして、武見大臣が日医と“ケンカ”をする日は来るのでしょうか。「医療関係団体の代弁者ではない」と言い切った武見氏の活躍に期待したいと思います。

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HER2変異NSCLC承認のT-DXd、第II相試験結果(DESTINY-Lung02)/WCLC2023

 第一三共は2023年8月23日、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が、本邦において「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表している。本承認は国際共同第II相臨床試験(DESTINY-Lung02)の結果に基づくものであるが、その詳細が世界肺学会(WCLC2023)において、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らにより発表された。なお、本発表の結果は、2023年9月11日にJournal of Clinical Oncology誌オンライン版へ同時掲載された。・対象:プラチナ製剤による治療歴を有する18歳以上のHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者152例・5.4mg/kg群:T-DXd 5.4mg/kgを3週間ごとに点滴静注投与 102例・6.4mg/kg群:T-DXd 6.4mg/kgを3週間ごとに点滴静注投与 50例(NSCLCに対する本邦承認用量は5.4mg/kgを3週間ごとに点滴静注)・有効性評価項目:[主要評価項目]盲検独立中央判定(BICR)に基づく奏効率(ORR)[副次評価項目]治験担当医評価に基づくORR、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)・安全性評価項目:治療下で発現した有害事象(TEAE)、重篤な有害事象、注目すべき有害事象(間質性肺疾患[ILD]、肺臓炎、左室機能不全など)など・データカットオフ日:2022年12月23日 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点の追跡期間中央値は5.4mg/kg群11.5ヵ月(範囲:1.1~20.6)、6.4mg/kg群11.8ヵ月(同:0.6~21.0)であった。・BICRに基づくORRは、5.4mg/kg群49.0%(CR:1例[1.0%]、PR:48例[48.0%])、6.4mg/kg群56.0%(CR:2例[4.0%]、PR:26例[52.0%])であった。・DOR中央値は、5.4mg/kg群16.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.4~推定不能)、6.4mg/kg群未到達(同:8.3~推定不能)であった。・BICRに基づくDCRは、5.4mg/kg群93.1%(95例)、6.4mg/kg群92.0%(46例)であった。・BICRに基づくPFS中央値は、5.4mg/kg群9.9ヵ月(95%CI:7.4~推定不能)、6.4mg/kg群15.4ヵ月(同:8.3~推定不能)であった。・OS中央値は、5.4mg/kg群19.5ヵ月(95%CI:13.6~推定不能)、6.4mg/kg群未到達(同:12.1~推定不能)であった。・Grade3以上のTEAEは、5.4mg/kg群52.5%(53例)、6.4mg/kg群66.0%(33例)に認められ、主なものは好中球減少症(それぞれ18.8%、36.0%)、貧血(10.9%、16.0%)などであった。・治療薬に関連したGrade3以上の有害事象は、5.4mg/kg群38.6%(39例)、6.4mg/kg群58.0%(29例)に認められた。・薬剤性ILD/肺臓炎は、5.4mg/kg群12.9%(13例)、6.4mg/kg群28.0%(14例)に認められた。・HER2遺伝子変異の93%はexon20挿入変異であった。

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うつ病や不安症における人生の目的が果たす役割

 人生の目的は、自身の活動に関しての意味と目的の感覚、そして人生には意味があるという全体的な感覚により構成されている。オーストラリア・ニューイングランド大学のIan D. Boreham氏らは、人生の目的とうつ病や不安症との関連を、包括的に評価した。その結果、人生の目的レベルが高いほど、うつ病や不安症レベルが低いことが報告された。Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2023年8月12日号の報告。 人生の目的とうつ病や不安症との関連を調査するため、メタ解析を実施した。メタ解析には、99の研究、6万6,468例を含めた。 主な結果は以下のとおり。・いずれのサンプルにおいても、人生の目的レベルが高いほど、うつ病や不安症レベルが有意に低かった。・人生の目的とうつ病および不安症との加重エフェクトサイズの平均値は以下のとおりであった。 【うつ病】r=-0.49、95%信頼区間(CI):-0.52~-0.45、p<0.001 【不安症】r=-0.36、95%CI:-0.40~-0.32、p<0.001・人生の目的とメンタルヘルスとの関連性は、とくに不安症との関連において、臨床集団のほうが強かった。・目的と精神病理との関係において、アプローチの欠如や回避動機が役割を果たしていると考えられ、目的が大きくなるほど回避傾向が制限され、うつ病や不安症への影響が軽減される可能性がある。・うつ病や不安症における人生の目的の役割を理解することは、これら疾患の概念に新たな気づきを与え、治療アウトカムの改善に役立つ可能性がある。

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非心房細動での心房高頻度エピソード、抗凝固薬は勧められず/NEJM

 植込み型心臓デバイスによって検出された心房高頻度エピソード(atrial high-rate episodes:AHRE)は心房性不整脈を示唆しており、心房細動と類似の病態だが、発現はまれで持続時間が短い。ドイツ・Atrial Fibrillation Network(AFNET)のPaulus Kirchhof氏らは「NOAH-AFNET 6試験」において、心房細動(通常の心電図検査で検出されるもの)のない患者におけるAHREの発現が、抗凝固薬の投与開始を正当化するかを検討した。その結果、直接経口抗凝固薬エドキサバンによる抗凝固療法はプラセボと比較して、心血管死、脳卒中、全身性塞栓症の複合の発生率を減少させず、全死因死亡または大出血の複合の発生率が有意に高いことを明らかにした。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2023年8月25日号に掲載された。欧州のイベント主導型、二重盲検ダブルダミー無作為化試験 NOAH-AFNET 6試験は、欧州18ヵ国206施設で実施されたイベント主導型の二重盲検ダブルダミー無作為化試験であり、2016年6月~2022年9月に患者の登録を行った(German Center for Cardiovascular Research[DZHK]などの助成を受けた)。 年齢65歳以上、植込み型デバイスで6秒以上持続するAHREが検出され、1つ以上の脳卒中リスク因子を有し、心電図で検出された心房細動の既往歴がない患者を対象とした。これらの患者を、ダブルダミーデザインを用いてエドキサバン(60mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けた。 有効性の主要アウトカムは、心血管死、脳卒中、全身性塞栓症の複合であり、イベント発生までの時間分析で評価。安全性のアウトカムは、全死因死亡または大出血の複合とした。 本試験は、安全性への懸念と、エドキサバンの有効性に関する独立した非公式の無益性評価の結果に基づき、追跡期間中央値21ヵ月の時点で早期終了となった。終了時に、予定されていた患者登録は完了していた。 解析集団は2,536例で構成された(エドキサバン群1,270例、プラセボ群1,266例)。全体の平均年齢は78歳(67.0%が75歳以上)、女性が37.4%で、AHRE持続時間中央値は2.8時間だった。心電図検査では、2,536例中462例(18.2%、8.7%/人年)が心房細動と診断された。脳卒中の発生には差がない、大出血は有意に多い 有効性の主要アウトカムは、エドキサバン群が83例(3.2%/人年)、プラセボ群は101例(4.0%/人年)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(補正後ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.60~1.08、p=0.15)。 安全性のアウトカムは、プラセボ群が114例(4.5%/人年)で発生したのに対し、エドキサバン群は149例(5.9%/人年)と有意に多く発生した(補正後HR:1.31、95%CI:1.02~1.67、p=0.03)。 脳卒中(脳梗塞)の発生は、エドキサバン群が22例(0.9%/人年)、プラセボ群は27例(1.1%/人年)でみられ、両群で同程度であった(補正後HR:0.79、95%CI:0.45~1.39)。また、全身性塞栓症は、それぞれ14例(0.5%/人年)、28例(1.1%/人年)で認められた(0.51、0.27~0.96)。 心血管死(エドキサバン群52例[2.0%/人年]vs.プラセボ群57例[2.2%/人年]、補正後HR:0.90[95%CI:0.62~1.31])、脳卒中(脳梗塞)または全身性塞栓症(25例[1.0%/人年]vs.38例[1.5%/人年]、0.65[0.39~1.07])の発生にも、両群間に差はみられなかった。 大出血(エドキサバン群53例[2.1%/人年]vs.プラセボ群25例[1.0%/人年]、補正後HR:2.10[95%CI:1.30~3.38]、p=0.002)の発生はエドキサバン群で多かったが、全死因死亡(111例[4.3%/人年]vs.94例[3.7%/人年]、1.16[0.88~1.53]、p=0.28)は両群で同程度であった。 著者は、「本試験では、エドキサバンはプラセボに比べて脳卒中の発生を抑制せず、脳卒中の発生率そのものは低かったことから、AHREを有する患者では抗凝固療法を控えるのが適切と考えられる」としている。

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オンコタイプDXの結果を乳がん治療でどう活用するか

 「オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラム」が、9月1日付で保険収載された。これを受けて9月6日、エグザクトサイエンスは「患者さん一人ひとりが納得のいく治療法を~シェアードディシジョンメイキングの時代へ~」と題したプレスセミナーを開催。坂東 裕子氏(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科)らが登壇し、乳がん治療におけるオンコタイプDXの位置付けやシェアードディシジョンメイキングの重要性について解説・議論が行われた。オンコタイプDXの再発スコア結果の見方 オンコタイプDX検査によって算出される再発スコア結果(RS)は、早期乳がんにおける術後化学療法の要否の判断材料とすることができる。TAILORx試験とRxPONDER試験の最新結果を基に、リンパ節転移が3個までのHR陽性/HER2陰性早期乳がん患者の治療選択の考え方を坂東氏は以下のように整理した。N0、RS 0~2550歳超:内分泌療法は化学内分泌療法に対して非劣性1)50歳以下:化学内分泌療法の効果はRSが16~25の41~50歳の患者、もしくは臨床リスクの高い患者に限定される1)N1、RS 0~25閉経後:化学内分泌療法から得られる効果はない2)閉経前:化学内分泌療法による5年DRFI(無遠隔再発期間)の上乗せ効果は2.4%であった2)N0/N1、RS 26~100実質的に化学療法の効果があると考えられる2) RSが0~25の患者は、リンパ節転移の有無によらず80~87%を占めると報告されている3)。このことから坂東氏は「リンパ節転移が陽性だから化学療法をするのではなく、再発スコアをみたうえで化学療法の必要性を判断することで、多くの患者さんが不要な化学療法を省略することができる」と話した。オンコタイプDX検査によりわかること・わからないこと 坂東氏はまた、この検査でわかること・わからないことを以下のようにまとめている。オンコタイプDX検査でわかることリンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移1~3個陽性のHR陽性/HER2陰性乳がんにおける・内服ホルモン治療のみを5年間行なった場合の9年時点での再発のリスク・点滴の化学療法を追加することによるメリット(再発リスクがどのくらい減少するか)オンコタイプDX検査でわからないこと・リンパ節転移4個以上、HER2陽性、トリプルネガティブの場合の再発率・内服ホルモン治療を5年以上/卵巣機能抑制治療を併用した場合の再発率・経口抗がん剤や分子標的治療を追加した場合の再発率やメリットオンコタイプDXを含む多遺伝子検査を示唆する回答は少ない エグザクトサイエンスが実施した乳がん患者対象のアンケート調査の結果、遺伝子検査でわかるのは「遺伝性乳がんの情報(79%)」、「がんの発症のリスク(63%)」とBRCA遺伝子検査を示唆する回答をした人が多く、「より自分に合った治療を選択できる(35%)」、「再発リスクがわかる(28%)」とオンコタイプDXを含む多遺伝子検査を示唆する回答は少なかった。坂東氏は、「なかには自分で調べてとても詳しい患者さんもいるが、そうでない人のほうが多い。パンフレットなどを用いながら、何がわかる検査なのかをしっかり説明することが重要」とし、そのうえで「再発リスクがどのくらいなら治療をしたいと思うかは人によって異なる。オンコタイプDXはリスクが数字ではっきりと提示されるものなので、これらのデータを使いながら、私たちは今まで以上に患者さんと話をすることが求められている」とした。

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バルーン拡張型弁によるTAVR再施行は有効か/Lancet

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)が不成功に終わった患者に対するバルーン拡張型弁を用いたTAVRの再施行は、初回TAVRにおける機能不全の治療に有効で、手技に伴う合併症が少なく、死亡や脳卒中の割合は、臨床プロファイルと予測リスクが類似し、nativeな大動脈弁狭窄に対してTAVRを施行した場合と同程度であることが、米国・シーダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年8月31日号で報告された。米国のレジストリデータを傾向スコアマッチング法で解析 研究グループは、米国胸部外科学会/米国心臓病学会経カテーテル弁治療レジストリ(STS/ACC TVT Registry)の2011年11月9日~2022年12月30日のデータを用いて解析を行った(Edwards Lifesciencesの助成を受けた)。 初回TAVRが失敗した後に施行された2回目のバルーン拡張型弁を用いたTAVR(再施行TAVR群)と、経カテーテルまたは手術による大動脈生体弁の置換術を受けていないnativeな大動脈弁疾患に対して施行されたTAVR(native-TAVR群)を比較した。 傾向スコアマッチング法を用いて、各群の手技、心エコー図検査、臨床アウトカムの評価を行った。 バルーン拡張型弁によるTAVRを受けた35万591例(再施行TAVR群1,320例、native-TAVR群34万9,271例)のうち、傾向スコアマッチング法で抽出された各群1,320例が解析に含まれた。ベースラインの再施行TAVR群の平均年齢は78(SD 9)歳、42.3%が女性で、81.9%がNYHA心機能分類クラスIII/IVであり、外科手術による30日死亡リスクの平均値は8.1%だった。1年以内と以降の再施行で、死亡、脳卒中の発生に差はない 再施行TAVR群における手技関連合併症の発生率は低く、冠動脈の圧迫または閉塞が4例(0.3%)、手技中の死亡が8例(0.6%)、開胸心臓手術への移行は6例(0.5%)であった。これらの値は、native-TAVR群(それぞれ、1例[0.1%、p=0.37]、3例[0.2%、p=0.23]、2例[0.2%、p=0.18])と同程度だった。 主要アウトカムである30日死亡率(再施行TAVR群4.7% vs.native-TAVR群4.0%、p=0.36)、1年死亡率(17.5% vs.19.0%、p=0.57)、30日脳卒中発生率(2.0% vs.1.9%、p=0.84)、1年脳卒中発生率(3.2% vs.3.5%、p=0.80)は、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。 再施行TAVR群では、1年後の大動脈弁圧較差が低下したが、native-TAVR群に比べると高かった(15mmHg vs.12mmHg、p<0.0001)。また、1年後の中等度~重度の大動脈弁逆流の割合は、両群で同程度だった(1.8% vs.3.3%、p=0.18)。 再施行TAVR群のうち、初回TAVRから1年以内と1年以降の再施行には、再施行から1年後の死亡(1年以内17.4% vs.1年以降16.7%、p=0.80)および脳卒中(2.2% vs.3.5%、p=0.24)の発生率に差はみられなかった。また、初回TAVRでバルーン拡張型弁を用いた場合と非バルーン拡張型弁を用いた場合とで、再施行TAVRから1年後の死亡(バルーン拡張型弁16.5% vs.非バルーン拡張型弁18.1%、p=0.42)および脳卒中(3.4% vs.3.0%、p=0.94)の発生率にも差はなかった。 著者は、「これらの結果は、不成功に終わったTAVRの治療の指針となるだろう。バルーン拡張型弁を用いたTAVRは、選択された患者におけるTAVR失敗に対する妥当な治療法となる可能性がある」としている。

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コロナの症状、ワクチン回数による違い

新型コロナウイルス感染症の症状ワクチン接種2回以下と3回以上で現れやすい症状は?接種2回以下で現れやすい症状食事摂取量の低下38℃以上の発熱関節痛・筋肉痛強い倦怠感頭痛嗅覚・味覚障害下痢息苦しさ全身症状接種3回以上で現れやすい症状鼻汁咳咽頭痛痰上気道症状対象:2022年4月25日~9月25日(オミクロン株BA.2およびBA.5の流行期)に、札幌市で新型コロナウイルス感染症と診断され療養判定システムに登録された15万7,861人(年齢中央値33歳)方法:ワクチン接種回数2回以下と3回以上の群に分け、12の症状発現(発症5日以内)のオッズ比を計算Nakakubo S, et al. Lancet Infect Dis. 2023 Jun 30. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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英語で「治療に当たる」は?【1分★医療英語】第98回

第98回 英語で「治療に当たる」は?This acute respiratory failure is likely due to heart failure exacerbation. Should we call cardiology?(この急性呼吸不全は心不全増悪による可能性が高いと思います。循環器内科にコンサルトすべきでしょうか?)Cardiology has already been on board.(循環器内科もすでに[この患者の]治療に当たっていますよ)《例文1》Both GI and general surgery are on board.(消化器内科と一般外科が共に[この患者の]治療に当たっています)《例文2》Is palliative care team on board?(緩和ケアチームは治療に当たって[コンサルト済み]ですか?)《解説》ここで出てくる“on board”の“board”は、もともとは「board=船などの床板」に由来しています。乗船時や飛行機の搭乗の際に、“Welcome on board.”という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。すなわち、“on board”は「(船や飛行機などの)乗り物に乗り込む」という意味合いで、“Welcome on board.”と言えば、「ご搭乗ありがとうございます」という意味になります。そこから転じて、「研修医のローテーターや医学生が、病院やチームに新しく加入してきた」というようなシーンで、“Welcome on board.”(新しいチームにようこそ)という意味で使うことができるフレーズです。この“on board”は一般的な表現ですが、今回の例のように、医療者同士でのコミュニケーションでもよく使われます。“XX is on board.”という言い回しで、「XX科がフォローしています」「コンサルト済みです」といった意味になるのです。イメージとしては、「患者さんという船」に、「主治医チーム」のほかに「コンサルタントとして他科(たとえば循環器内科)」も乗船してきた、という感じです。そんなイメージを持って“Cardiology is on board.”と聞くと、「循環器内科も患者の診療に参加している」という意味合いがつかめるのではないでしょうか。もちろん、もっと直接的に“We consulted cardiology.”、“Cardiology is following this case.”などと言うこともできますが、英語はイディオム(習慣的な言い回し)が好まれる言語なので、このような表現も医療現場ではよく使われています。講師紹介

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国内初の経口人工妊娠中絶薬「メフィーゴパック」【下平博士のDIノート】第129回

国内初の経口人工妊娠中絶薬「メフィーゴパック」今回は、人工妊娠中絶用製剤「ミフェプリストン・ミソプロストール(商品名:メフィーゴパック、製造販売元:ラインファーマ)」を紹介します。本剤は、国内で初めて承認された経口の人工妊娠中絶薬であり、中絶を望む女性にとって身体的にも精神的にも負担が少ない薬剤と考えられます。<効能・効果>子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)以下の者に対する人工妊娠中絶の適応で、2023年4月28日に製造販売承認を取得し、5月16日より販売されています(薬価基準未収載)。本剤を用いた人工妊娠中絶に先立ち、本剤の危険性および有効性、本剤投与時に必要な対応を十分に説明し、同意を得てから本剤の投与を開始します。なお、異所性妊娠に対しては有効性が期待できません。<用法・用量>ミフェプリストン錠1錠(ミフェプリストンとして200mg)を経口投与し、その36~48時間後の状態に応じて、ミソプロストールバッカル錠4錠(ミソプロストールとして計800μg)を左右の臼歯の歯茎と頬の間に2錠ずつ30分間静置します。30分後も口腔内に錠剤が残っている場合は飲み込みます。ミフェプリストン投与後に胎嚢の排出が認められた場合、子宮内容物の遺残の状況を踏まえてミソプロストールの投与の要否を検討します。<安全性>国内第III相試験において1%以上に認められた副作用は、下腹部痛、悪心、嘔吐、下痢、発熱、悪寒でした。重大な副作用として、重度の子宮出血(0.8%)のほか、感染症、重度の皮膚障害、ショック、アナフィラキシー、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、妊娠9週以下の人に対する人工妊娠中絶の薬です。妊娠の継続に必要な黄体ホルモンの働きを抑える薬剤と、子宮収縮作用により子宮内容物を排出させる薬剤を組み合わせたパック製剤です。2.この薬の投与後は下腹部痛や子宮出血が現れて一定期間継続します。まれに重度の子宮出血が生じて貧血が悪化することがあるため、自動車の運転などの危険を伴う機械操作を行う場合は十分に注意してください。3.服用後、2時間以上にわたって夜用ナプキンを1時間に2回以上交換しなければならないような出血が生じた場合、発熱、寒気、体のだるさ、腟から異常な分泌物などが生じたときは速やかに医師に連絡してください。4.授乳中に移行することが知られているので、授乳をしている場合は事前にお伝えください。5.子宮内避妊用具(IUD)またはレボノルゲストレル放出子宮内システム(IUS)を使用中の人はこの薬の投与を受ける前に除去する必要があります。<Shimo's eyes>本剤は、国内で初めて承認された人工妊娠中絶のための経口薬です。これまで妊娠初期の中絶は掻把法や吸引法によって行われてきましたが、今回新たに経口薬が選択肢に加わりました。ミフェプリストンとミソプロストールの順次投与による中絶法は、世界保健機関(WHO)が作成した「安全な中絶−医療保険システムにおける技術及び政策の手引き−」で推奨されており、海外では広く使用されています。使用方法は、1剤目としてミフェプリストン錠1錠を経口投与し、その36~48時間後にミソプロストール錠4錠をバッカル投与します。ミフェプリストンはプロゲステロン受容体拮抗薬であり、プロゲステロンによる妊娠の維持を阻害する作用および子宮頸管熟化作用を有します。ミソプロストールはプロスタグランジンE1誘導体であり、子宮頸管熟化作用や子宮収縮作用を有します。両剤の作用により妊娠の継続を中断し、胎嚢を排出します。国内第III相試験では、投与後24時間以内の人工妊娠中絶が成功した患者の割合は93.3%で、安全性プロファイルは認容できるものでした。本剤投与後に、失神などの症状を伴う重度の子宮出血が認められることがあり、外科的処置や輸血が必要となる場合があります。また、重篤な子宮内膜炎が発現することがあり、海外では敗血症や中毒性ショック症候群に至り死亡した症例が報告されていることから、異常が認められた場合に連絡を常に受けることができる体制や、ほかの医療機関との連携も含めた緊急時に適切な対応が取れる体制で本剤を投与することが求められています。併用禁忌の薬剤として、子宮出血の程度が悪化する恐れがあるため、抗凝固薬(ワルファリンカリウム、DOAC)や抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル硫酸塩、EPA製剤など)があります。また、ミフェプリストンの血漿中濃度が低下し、効果が減弱する恐れがあるため、中~強程度のCYP3A誘導剤(リファンピシン、リファブチン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ含有食品など)も併用禁忌となっています。本剤の承認申請が行われた2021年12月以降、社会的に大きな関心を集めました。厚生労働省が承認にあたってパブリックコメントを実施したところ1万1,450件もの意見が寄せられ、そのうち承認を支持する意見が68.3%、不支持が31.2%でした。欧米では経口薬による人工妊娠中絶法は30年以上前から行われていて、先進国を中心に主流になりつつあります。中絶を望む女性は、健康上の懸念がある、性的暴力を受けた、若すぎる、経済的に困窮している、パートナーの協力を得られないなどさまざまな背景があります。わが国では現在、薬局やインターネットで購入することはできませんが、多くの議論を経て、中絶を望む人たちにとって、医学的にも精神的にも寄り添うことのできるシステムが構築されることが望まれます。

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脳トレゲームで認知症を防げるか?【外来で役立つ!認知症Topics】第9回

デジタル化で急成長を遂げた「脳トレ」市場「脳トレ」は、今では日本におけるいわば現代用語として定着した観がある。大型書店に行けば、幅が数メートルになるような「脳トレ」コーナーの展示棚もある。そうした本をめくってみると、四字熟語、算数、間違い探し、点つなぎなどが主流である。これらは、どうも懐かしさや、勉強したという満足感をその読者に与えるようだ。実際、学習塾系や受験参考書を扱う出版社から発行されたものが少なくない。蛇足ながら、山川出版の日本史の教科書、研究社の『新々英文解釈研究』なども同じような意味からか、高齢者がよく購入すると聞く。いずれにしても、こうした脳トレ関連現象は日本独自なものかとも思われる。ところで認知症予防や軽度認知障害(MCI)・認知症の治療としての脳トレはさておき、記憶の鍛錬法には歴史がある。たとえば、記憶術として指や場所を用いるもの、記憶を高める儀式や香などは紀元前からあったようだ。筆者が1980年代以降の欧米や日本で経験したものでは、見当識障害を改善し現実認識を深めることを目的とするリアリティ・オリエンテーションや、場所法と呼ばれる記憶術などがあった。もっともどれもその実行は容易ではなかった。多くは紙を媒体としたドリル、またメモ書きとその習慣的見返しなどの指導が行われてきた。個人的には、どれもそう簡単に身に付くものではなかったという印象がある。現在、欧米における脳トレの主体はBrain TrainingとかCognitive Trainingと呼ばれ、その多くはインターネットを媒体とする。これらはComputer Based Cognitive Training (CBCTとか CCTと略)と総称される。そして高齢者のみならず働く現役世代も広く対象としている。加えて、うつ病や統合失調症のような精神疾患にみられる認知機能障害への効果も数多く報告されている。ゲームを製造する欧米の主立った会社は2000年以降に創立されたが、産業としての脳トレは短期間に急成長している。2005年当時にはわずかに200万ドルであった市場規模が、2013年には13億ドル、2022年には78億ドルの巨大産業にのし上がっている。脳トレによる認知症予防の検証が活発にとくに高齢者の認知症予防はこの市場の中でも大きな部分を占めるだろう。その大きな契機となったのが、2016年7月の国際アルツハイマー病学会(AAIC)で米国国立衛生研究所(NIH)と民間会社であるPosit Science社が行ったアメリカ国内での臨床試験の報告だろう。そこでは脳エクササイズである「スピードトレーニング」により、認知症のリスクが半減したと報告された。その後にも、退役軍人協会の会員を対象に運転技術についての効果が検証されている。ここでもこうしたトレーニングをやることで自損事故が半減したと報告されたのである。さて過去20年ほどの間に、高齢者を対象に多くのCCTによる介入研究がなされてきた。一言で高齢者と言っても、対象は認知症やMCIの人、あるいは知的健康人である。最近ではこうした研究のレビューやメタアナリシスも報告されている1,2,3)。その結果、概して「小さいながらも統計学的に有意な効果」が報告されている。そしていくつかに分類される認知機能のうち、非言語性の記憶、言語性記憶、作動記憶、視空間技術、処理速度に効果があるとされる。しかし遂行機能や注意については、有意な効果はほぼ得られていない。一方で、CCTの運営・実施方法についても検討されている。やっぱり、と思うのは、グループでやるトレーニングに比べ、個別トレーニングでは効果がないということである。一体感とか競争心などが大切だということだろう。また一見逆説的ながら、週に3回以上のトレーニングは3回以下に比べて効果が劣るとのことである。筋トレなどでも類似の注意をする指導者がいる。これは毎日のようにやると、飽きて新鮮味がなくなり、注意力や集中力が欠けてくるということなのだろうか?長期的な介入、認知機能分野の複合的な効果に期待一方で多くの問題点や課題も指摘されている。まず介入期間の問題である。多くはせいぜい3ヵ月程度であり、例外的に長いものでも1年程度である。これでは短期的な効果はともかく、年単位の長期効果、まして認知症予防効果などにはとても言及できない。次にタスク、つまり介入の内容や問題は、伝統的に、注意、記憶、地誌的機能など神経心理学的な観点に基づいて作成されてきた。そこでわかっているのは、たとえば注意のタスクをやれば注意の機能で改善があるというように、やった分野は確かに伸びることである。しかし注意をやれば記憶というほかの認知機能分野も伸びるのかといったトランスファー(転移)効果の問題が注目されてきた。これまでのところ、この効果は難しそうだと考えられている。そうしたことから、タスクは伝統的な個々の神経心理学的分野から発展させた複合的なものが、より効果的だと考えられつつある。終わりに、2018年にアメリカの神経学会によりなされたMCIについてのガイドライン4)では、具体的な対応法として2つだけが述べられている。まず、週2回、6ヵ月以上の運動である。そして「数は少ないが、認知トレーニングの有効性も報告されている」と記されている。このようなことから「脳トレ」には、臨床医学としてさらなる成長が期待される。参考1)Lampi A, et al. Computerized cognitive training in cognitively healthy older adults: A systematic review and meta-analysis of effect modifiers. Pros Med 2014;11: e1001756.2)Bonnechere B, et al. The use of commercial computerised cognitive games in older adults: a meta-analysis. Sci Rep. 2020;10:15276.3)Lampit A, et al. Computerized Cognitive Training in Cognitively Healthy Older Adults: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. medRxiv. 2020 Oct 11.4)Petersen RC, et al. Practice guideline update summary: Mild cognitive impairment: Report of the guideline development, dissemination, and implementation subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology. 2018;90:126-135.

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第181回 コロナ起源の結論を賄賂でねじ曲げたと米国CIA職員が密告

決着が付かずにくすぶり続ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の起源問題。米国で新たな事態が勃発しています。米国議会の委員会の発表によると、COVID-19流行は中国・武漢の研究所にどうやら端を発するとの米国中央情報局(CIA)解析担当官6人の結論がほかでもないCIAからの袖の下によって変えさせられたとの密告がありました1)。密告した人物はかなり信用できる(highly credible)CIA上級職員であると委員会は言っています。CIAは豊富な科学的見識を有する7人をCOVID Discovery Teamに任命してCOVID-19の起源の検討に当たらせました。その検討の結果、最上級職の1人は野生動物をCOVID-19の起源と判断しましたが、ほかの6人全員は信頼性こそ低いものの武漢の研究所がおそらくCOVID-19の出どころであると結論しました。密告者によるとその後CIAから横槍が入り、野生動物起源説を支持するようにそれら6人の結論が変えさせられました。6人には相当の額の袖の下が支払われたと密告者は言っています。密告者から話を聞いた委員会をまとめる2人の議員、Brad Wenstrup氏とMike Turner氏はCOVID-19起源の検討に関する資料ややり取りのすべてを今月26日までに提供することをCIA長官William Burns氏に要求しています。また、COVID-19が盛んだったときにCIA最高執行責任者(COO)だったAndrew Makridis氏に事情聴取への出頭を求めています。事情聴取は情報提供の締切日26日に予定されています。CIAの広報担当者は密告者の主張に反論しており、特定の結論になるように解析担当者に金を払うことはないと述べています。とはいえCIAは密告を非常に深刻に受け止めており、調査を進め、議会には適切に情報を提供すると約束しています。ScienceのニュースにはCIA職員への研究者の印象が紹介されています2)。COVID-19の野生動物起源説を支持する検討結果をいくつか報告している米国有数の研究所Scripps Researchの進化生物学者Kristian Andersen氏はその1人です。その起源の研究で同氏はCIAの職員と何度か話をしており、密告のようなことはまったくあり得ない(obviously is bullshit)と言っています。それら報告の共著者のRobert Garry氏もAndersen氏と似た意見です。話を聞きに来たCIA職員の分子生物学の知識は確かなもので、偏りは一切感じなかったとGarry氏は言っています。米国の情報機関のほとんどは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が感染動物からヒトに移ってCOVID-19流行が始まったらしいとみています。しかしエネルギー省とFBI(連邦捜査局)はそうではなく研究所起源説を支持しています。CIAはというと結論に至っておらず、起源が動物か研究所かどうかという判断はできないとの見解を繰り返し表明しています。 参考1)Testimony From CIA Whistleblower Alleges New Information on COVID-19 Origins / Committee On Oversight and Accountability2)CIA bribed its own COVID-19 origin team to reject lab-leak theory, anonymous whistleblower claims / Science

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