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糖尿病患者、カルシウムサプリ常用でCVDリスク増

 カルシウムは、骨の組成に重要であり、カルシウム補助食品やサプリメントは骨粗鬆症性骨折予防などに広く用いられている。一方で、カルシウムサプリ摂取が血中カルシウム濃度を急激に上昇させ、心血管系に有害となる可能性がある。とくに心血管疾患(CVD)のリスクが高く、カルシウム代謝が低下していることが多い糖尿病患者における安全性の懸念が提起されている。中国・武漢のTongji Medical CollegeのZixin Qiu氏らによる、糖尿病患者におけるカルシウムサプリ摂取の安全性をみた研究結果がDiabetes Care誌2024年2月号に掲載された。 研究者らはUKバイオバンクに登録された43万4,374人(うち糖尿病患者2万1,676例)を主要解析対象とし、カルシウムサプリの使用と糖尿病の状態との相互作用を検証した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・43万4,374人中2万9,360人(6.8%)がベースライン時に習慣的なカルシウムサプリ使用を報告した。糖尿病患者と非患者でサプリの使用率に有意差はなかった。・追跡期間中央値8.1年および11.2年の間に、それぞれ2万6,374件のCVDイベントおよび2万526件の死亡(うち4,007件がCVD)が記録された。・多変量調整後、糖尿病患者においては、習慣的なカルシウムサプリの使用はCVD発症(HR:1.34、95%CI:1.14~1.57)、CVD死亡(HR:1.67、95%CI:1.19~2.33)、全死亡(HR:1.44、95%CI:1.20~1.72)の高リスクと有意に関連していた。一方、糖尿病のない参加者では有意な関連はみられなかった。・CVDイベントおよび死亡のリスクに関して、習慣的なカルシウムサプリの使用と糖尿病の状態との間には有意な乗法的、相加的な相互作用が認められた。一方、食事または血清カルシウムと糖尿病の状態との間には有意な相互作用はみられなかった。 研究者らは、カルシウムサプリの習慣的使用は、糖尿病患者におけるCVDイベントおよび死亡の高リスクと有意に関連していた。糖尿病患者においては、カルシウムサプリの潜在的な有害作用と考えられる有益性とのバランスをとるためにさらなる研究が必要である、としている。

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枕が高いと脳卒中に?/国立循環器病研究センター

 脳卒中は高齢者で多いが、若年~中年者でも特殊な原因で起こることがある。その原因の1つである特発性椎骨動脈解離の発症と枕の高さの関連を、国立循環器病研究センターの江頭 柊平氏らが症例対照研究で検討したところ、枕が高いほど特発性椎骨動脈解離の発症割合が高く、また枕が硬いほど関連が顕著であることが示された。著者らは「殿様枕症候群(Shogun pillow syndrome)」という新たな疾患概念を提唱している。European Stroke Journal誌オンライン版2024年1月29日号に掲載。 国立循環器病研究センターにおいて2018~23年に特発性椎骨動脈解離と診断された症例群と、同時期に入院した年齢と性別をマッチさせた脳動脈解離以外の対照群を設定し、発症時に使用していた枕の高さを調べた。枕の高さが12cm以上を高値、15cm以上を極端な高値とした。単変量ロジスティック回帰により、特発性椎骨動脈解離発症における高い枕の使用のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算定した。さらに、高い枕(12cm以上)を使用し起床時に発症した先行受傷機転のない患者を「高い枕の使用に起因する特発性椎骨動脈解離患者」と定義し、その割合を調べた。 主な結果は以下のとおり。・症例群53例と対照群53例(女性:42%、年齢中央値:49歳)を同定した。・高い枕の使用は症例群が対照群より多く、12cm以上の枕では34% vs.15%(OR:2.89、95%CI:1.13~7.43)、15cm以上の枕では17% vs.1.9%(OR:10.6、95%CI:1.30~87.3)で、高い枕の使用と特発性椎骨動脈解離の発症に関連が認められた。・この関連は枕が硬いほど顕著で、柔らかい枕では緩和された。・高い枕の使用に起因する特発性椎骨動脈解離患者は、12cm以上の枕で11.3%(95%CI:2.7~19.8)、15cm以上の枕で9.4%(95%CI:1.5~17.3)にみられた。 本研究から、高い枕の使用は特発性椎骨動脈解離発症と関連があり、特発性椎骨動脈解離の約10%が高い枕の使用に起因しうることが示された。著者らは「これらの患者は、殿様枕症候群という異なる疾患のスペクトルを表すかもしれない」としている。

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統合失調症入院患者に対する長時間作用型注射剤や新規抗精神病薬治療が臨床アウトカムに及ぼす影響

 統合失調症治療に従事している医療関係者にとって、抗精神病薬のアドヒアランスや治療の中断は、依然として大きな課題となっている。米国・Johnson & Johnson Innovative MedicineのCharmi Patel氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬治療を開始、または入院後に新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者を対象に、臨床的質の尺度を用いて評価を行った。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2023年12月21日号の報告。 本研究は、PINC AITM Healthcare Databaseを用いたレトロスペクティブコホート研究であり、統合失調症患者を対象とした2つのコホートから、入院後の臨床的質と治療継続のエンドポイントの評価を行った。対象患者は、all-payer databaseを用いて、米国の病院を拠点とするリアルワールドデータベースより抽出した。2017年4月~2020年4月、初回入院時にLAI抗精神病薬を開始した統合失調症患者7,292例または新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者3万1,956例を分析対象に含めた。傾向スコアの重みづけは、2つのコホート間の患者、病院、臨床的特性の違いにより対応した。 主な結果は以下のとおり。・LAI抗精神病薬による治療は、新規経口抗精神病薬への切り替えと比較し、以下の点で有意な差が認められた(いずれも、p<0.001)。 ●30日間の抗精神病薬治療継続期間の延長 ●30日間の外来フォローアップ治療率の増加 ●治療中止までの平均期間の延長 ●治療中止リスクの低下・30日間の抗精神病薬治療継続率は、患者、臨床、病院の特徴で調整した後でも、LAI抗精神病薬治療患者において、新規経口抗精神病薬治療患者よりも、有意に高かった(調整オッズ比:1.2、95%信頼区間:1.1~1.3、p<0.001)。 著者らは「入院中にLAI抗精神病薬による治療を開始した統合失調症患者は、新規経口抗精神病薬に切り替えた患者よりも、より良い臨床的質と治療継続が得られる可能性がある。本知見は、統合失調症患者の退院後の薬物治療マネジメントの質の向上を目指すうえで、解決策の特定に役立つであろう」とまとめている。

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CAR-T療法ide-cel、多発性骨髄腫の早期治療に承認の意義/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2023年12月に同社のCAR-T細胞療法イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-cel、商品名:アベクマ)が、再発または難治性の多発性骨髄腫の早期治療に承認されたことを受け、2024年1月31日にメディア向けプレスセミナーを開催した。セミナーでは日本赤十字社医療センター・血液内科の石田 禎夫氏が「早期ラインとしての CAR-T 細胞療法(アベクマ)が多発性骨髄腫(MM)の治療にもたらすもの」と題した講演を行い、新たな承認が臨床に与える意味について解説した。 多発性骨髄腫は抗体を産生する形質細胞ががん化し、骨病変、腎障害、免疫不全などを引き起こす疾患。10万人当たり6.2人(2017年)が罹患、高齢者に多い疾患で、高齢化に伴い患者数は増加傾向にある。 多発性骨髄腫の治療戦略は、65歳未満の初発患者は化学療法+自家造血幹細胞移植となり、65歳以上や移植不適患者、再発時には複数薬剤を併用する化学療法の適応となる。2次治療以降に使われる薬剤は、大きく分けてプロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗体薬、HDAC阻害薬があり、これらにステロイド薬デキサメタゾンを組み合わせ、3剤にして投与するレジメンが主流となっている。承認されているレジメンは複数あり、これまで多発性骨髄腫治療におけるCAR-T療法の承認は、これらの薬剤クラスの組み合わせがすべて不適となった4次治療以降だった。 今回の3次治療における承認は、第III相KarMMa-3試験の中間解析結果に基づいたもの。同試験はプロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、抗CD38モノクローナル抗体を含む2~4レジメンの前治療歴を有する患者を対象とし、ide-celと標準療法の有用性を比較した。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ide-cel群13.3ヵ月に対し標準療法群4.4ヵ月と、ide-cel群でPFSの有意な延長が認められ、かつ新たな安全性シグナルは認められなかった。 石田氏は「CAR-T療法は自身のT細胞を使うオーダーメードの治療法であり、投与までに2ヵ月ほどかかる。進行の速い患者さんでは手遅れになることもあり、早期段階で使えることには大きな意味がある。また、大量化学療法を受けて疲弊する前のリンパ球を使えることもメリットだ」とした。さらに「CAR-T療法が奏効した場合は、治療を停止することが可能となり、標準療法と比較して患者のQOLが上がることも大きな利点となる」と説明した。 今後、造血器腫瘍において広がりが見込まれる新規薬剤BiTE抗体(二重特異性T細胞誘導抗体)とCAR-T療法の使い分けについては、「BiTE抗体薬の作用機序として投与後に抗体が変異し、その後にCAR-T療法を行っても意味をなさない可能性がある。よってCAR-T療法を優先し、治療抵抗となったらBiTE抗体薬にスイッチする戦略が現実的ではないか」とした。

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肩関節脱臼のリハビリテーション、理学療法は有効か?/BMJ

 外傷性肩関節前方脱臼の急性期リハビリテーションにおいて、自己管理を支援する助言のみを受けた患者と比較して、助言に加えて個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法を行っても、6ヵ月後の肩関節機能は改善せず、合併症プロファイルは両群で同程度であることが、英国・ブリストル大学のRebecca S. Kearney氏らが実施した「ARTISAN試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。英国41施設の無作為化対照比較試験 ARTISAN試験は、英国の国民保健サービス(NHS)トラストが運営する41施設で実施した実践的な無作為化対照比較試験であり、2018年11月~2022年3月に参加者を募集した(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。 X線所見で初発の外傷性肩関節前方脱臼と確定し、非手術的に管理されている成人患者482例(平均年齢44.9[SD 19.6]歳、女性34%)を登録した。両肩脱臼や神経血管合併症がみられる患者、外科的治療が考慮されている患者は除外した。 全患者で、負傷した腕にスリングを装着し、自己管理のための助言(1回)を行った。その後、この助言以外の介入は行わないが、回復しない場合に自己申告で理学療法を選択するための連絡先の提供を受ける群(助言単独群、240例)、または追加介入として個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法(1回最大30分、最長4ヵ月)を受ける群(助言+理学療法群、242例)に、無作為に割り付けた。  主要アウトカムは、割り付け日から6ヵ月後のオックスフォード肩関節不安定性スコア(Oxford shoulder instability score)(0~48点、点数が高いほど機能が良好)とした。6週、3ヵ月の時点でも有意差はない 354例(73%)がオックスフォード肩関節不安定性スコアの評価を完了した(助言単独群180例、助言+理学療法群174例)。合計96人の理学療法士が介入を行った。 6ヵ月の時点でのITT集団におけるオックスフォード肩関節不安定性スコアの平均値は、助言単独群が36.2(SD 10.7)点、助言+理学療法群は38.4(SD 9.2)点であり、両群間に有意な差を認めなかった(補正後群間差:1.5点、95%信頼区間[CI]:-0.3~3.5、p=0.11)。 6週(助言単独群23.3[SD 10.4]点vs.助言+理学療法群24.4[SD 9.9]点、補正後群間差:0.7点、95%CI:-1.0~2.4、p=0.44)および3ヵ月(30.0[SD 11.4]点vs.32.2[SD 10.4]点、1.6点、-0.5~3.6、p=0.13)の時点でも、オックスフォード肩関節不安定性スコアに関して両群間に有意差はなかった。QuickDASH、EQ-5D-5Lにも差はない 6ヵ月時のQuickDASH(disabilities of the arm, shoulder and hand[DASH]の短縮版、0~100点、点数が高いほど機能障害が重度)(助言単独群14.4[SD 17.5]点vs.助言+理学療法群12.7[SD 16.9]点、補正後群間差:0.8点、95%CI:-4.0~2.5、p=0.65)および健康関連QOL(EQ-5D-5L、-0.594~1点、点数が高いほど健康状態が良好)(0.797[SD 0.217]点vs.0.815[SD 0.183]点、0.010点、-0.026~0.047、p=0.59)も、両群間に差はみられなかった。 事前に予測した合併症のプロファイルは、以下のとおり両群間で類似しており、肩腱板断裂(助言単独群9% vs.助言+理学療法群9%、p=0.87)、圧迫骨折(3% vs.2%、p=0.26)、肩関節再脱臼(3% vs.1%、p=0.22)、凍結肩(五十肩)(1% vs.3%、p=0.34)、神経損傷(<1% vs.0%、p=1.00)の発生率は、いずれも有意差を認めなかった。 著者は、「個別に調整された理学療法プログラムは有効ではないと知ることで、臨床医と患者は、手術を行わないリハビリテーションの最良のアプローチについて、エビデンスに基づいた話し合いを行うことができるだろう。今後は、自己管理戦略の最適化に向けた研究が求められる」としている。

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先天性難聴児、遺伝子治療で聴力回復/Lancet

 常染色体劣性難聴9(DFNB9)の小児の治療において、ヒトOTOF遺伝子導入アデノ随伴ウイルス血清型1型(AAV1-hOTOF)を用いた遺伝子治療は、安全かつ有効であり、新たな治療法となる可能性があることが、中国・復旦大学のJun Lv氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年1月24日号に掲載された。中国1施設の単群試験 本研究は、中国の1施設(復旦大学附属眼耳鼻喉科医院)で行われた単群試験であり、2022年10月~2023年6月に参加者のスクリーニングを行った(中国国家自然科学基金委員会などの助成を受けた)。 年齢1~18歳、重度~完全難聴で、OTOF遺伝子の2つのアレルの双方に変異を認め、人工内耳を埋め込んでいないか、片側のみに埋め込んでいる患児6例(男女3例ずつ、年齢1.0~6.2歳)を登録した。用量制限毒性とGrade4/5の有害事象は発現せず AAV1-hOTOFを、正円窓から蝸牛に注射(単回)した。6例のうち1例には9×1011ベクターゲノム(vg)、5例には1.5×1012vgを注射した。全例が26週間のフォローアップを完了した。 注射後6週の時点で用量制限毒性(主要エンドポイント)は発現せず、試験期間中にGrade4または5の有害事象は認めなかった。合計48件の有害事象が観察され、このうち46件(96%)はGrade1または2であり、2件(4%)はGrade3(1例で2件の好中球数の減少、いずれも自然消退)であった。6例中5例でABR閾値が改善 5例で聴力の回復を認め、0.5~4.0kHzにおける聴性脳幹反応(ABR)の平均閾値が40~57dB低下した。 9×1011vgのAAV1-hOTOFの投与を受けた患児(1例)では、平均ABR閾値はベースラインの95dB以上から、4週後には68dB、13週後には53dB、26週後には45dBにまで改善した。また、1.5×1012vgの投与を受けた患児(5例)のうち4例では、平均ABR閾値はベースラインの95dB以上から、48dB、38dB、40dB、55dBと変化し、26週には聴力の回復を認めた。 聴力が回復した患児では、音声知覚(speech perception)の改善がみられた。 著者は、「本研究は、DFNB9の治療における遺伝子治療の安全性と有効性に関するエビデンスを提供し、他の遺伝性難聴の新たな治療法としての遺伝子治療の基礎を築くものである」としている。

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COVID-19外来患者において高用量フルボキサミンはプラセボと比較して症状改善までの期間を短縮せず(解説:寺田教彦氏)

 フルボキサミンは、COVID-19流行初期の臨床研究で有効性が示唆された比較的安価な薬剤で、COVID-19治療薬としても期待されていた。しかし、その後有効性を否定する報告も発表され、昨年のJAMA誌に掲載された研究では、軽症から中等症のCOVID-19患者に対するフルボキサミンの投与はプラセボと比較して症状改善までの期間を短縮しなかったことが報告されている1,2)。 同論文では、症状改善までの期間短縮を示すことができなかった理由として、ブラジルで実施されたTOGETHERランダム化プラットフォーム臨床試験3)等よりもフルボキサミンの投与量が少ないことを可能性の1つとして指摘しており、今回の研究では、COVID-19外来患者に対して高用量フルボキサミンの投与により症状改善までの期間を短縮するかの評価が行われた。 本研究では、30歳以上でCOVID-19発症から7日以内の外来患者を、高用量のフルボキサミン群とプラセボ群に無作為に割り付けて比較した。結果は、主要アウトカムである症状改善までの期間短縮は認めず(調整ハザード比:0.99、95%信頼区間:0.89~1.09、有効性のp=0.40)、副次アウトカムの28日以内死亡例は両群ともに0例で、入院や救急外来/救急診療部受診ではフルボキサミン群14例(2.4%)に対してプラセボ群21例(3.6%)とフルボキサミン群での医療介入イベントは3分の1程度少なかったが、事前に定めた基準を満たすほどの差はなかった4)。 また、忍容性の観点では、「調子が悪いため、薬を飲むつもりはない」と報告した患者は、フルボキサミン群6.4%に対してプラセボ群は2.1%と、以前から想定されていた高用量フルボキサミンにおける忍容性の低さが示されたと考える。以上より、昨年の論文に続き、本研究でもCOVID-19に対するフルボキサミン投与の有効性は示されなかった。 今回の主要アウトカムであるCOVID-19の症状改善までの期間短縮では、有意差を示した過去の報告は乏しく、COVID-19に対して死亡率低下や重症化予防効果を示したニルマトレルビルやモルヌピラビルでさえほとんどない。 統計学的に有意な症状改善効果を示した薬剤にはエンシトレルビルがあり、プラセボに比較して症状消失までの時間を約24時間短縮させている5)。本邦で重症化リスクは低いが症状の強い患者から対症療法以外の薬剤も処方希望がある場合は、フルボキサミンを処方するよりもエンシトレルビルを処方するほうが理にかなっているだろう。 ただし、昨今のCOVID-19診療では、流行株の変化やワクチン接種の効果により、死亡率や重症化率は低下傾向で、外来患者の症状もデルタ株流行時よりも軽減しているように感じている。流行株が変遷した現在において、症状改善までの期間短縮のメリットが薬価や副作用・ウイルス耐性化のリスクといったデメリットに勝る薬剤を発見・開発することは、今後もなかなか難しいかもしれない。 さて、現在の医療現場でCOVID-19に関する問題として残っていることには、施設入所や入院中の患者で発生するCOVID-19クラスターがある。執筆時点で、COVID-19に対する発症予防効果が期待されている薬剤は、ワクチンや抗体療法を除くと証明されておらず、現在の流行株によるクラスター対策で即時に有用な薬剤はない。COVID-19は、重症化リスクの乏しい患者においては、インフルエンザウイルスなどと近い重症度になりつつある6)が、現在でも感染力は強く、施設内・院内感染におけるクラスターはいまだに施設や医療機関に負荷をかける原因となっている。 しかし、COVID-19に対して重症化予防が証明された抗ウイルス薬でも、発症予防効果が証明された薬剤はなく、症状改善までの期間短縮の薬剤よりも発症予防効果のある薬剤のほうが医療現場でのニーズは高いかもしれない。■参考1)McCarthy MW, et al. JAMA. 2023;329:269-305.2)CareNet.comジャーナル四天王「フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA」(2023年1月30日)3)Reis G, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e42-e51.4)CareNet.comジャーナル四天王「コロナ外来患者への高用量フルボキサミン、症状期間を短縮せず/JAMA」(2024年1月12日)5)日本感染症学会 COVID-19治療薬タスクフォース「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15.1版」(2023年2月14日)6)Xie Y, et al. JAMA. 2023;329:1697-1699.

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GLP-1受容体作動薬の投与には適切な患者をSELECTするのが肝要だろう(解説:住谷哲氏)

 注射薬であるGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:オゼンピック)が心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者の心血管イベント発症を26%減少させることが、SUSTAIN-6試験で報告されている1)。一方で、経口セマグルチド(同:リベルサス)はPIONEER 6試験において心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者の心血管イベント発症を増加させないこと、つまり既存の治療に対する非劣性は示されたが優越性は証明されなかった2)。したがって、同じセマグルチドではあるが、心血管イベント抑制を目標とするのであれば経口薬ではなく注射薬を選択するのが妥当だろう。 肥満症は心血管イベント発症のリスク因子であるが、生活習慣改善のみでは目標とする体重減少を達成することは困難であった。しかし、GLP-1受容体作動薬の登場により状況は一変した。GLP-1受容体作動薬には体重減少作用があり、とくにセマグルチド2.4mg(同:ウゴービ)は肥満症治療薬として欧米およびわが国で承認されている。本試験はセマグルチド2.4mgの心血管イベント既往を有する、糖尿病を合併していない肥満症患者の心血管イベント再発抑制に対する有効性を検討したものである。結果は平均観察期間40ヵ月で、3-point MACEの発症を20%抑制することが示された。 RCTの結果を目の前の患者に適用する際には、結果の外的妥当性(generalizability or external validity)の評価が重要となる(EBMのstep 4)。本試験の対象患者は、全例が心血管イベントの既往があり(心筋梗塞が70%)、平均BMI 33kg/m2、糖尿病ではないが70%以上の患者はprediabetes(HbA1c≧5.7%)を合併していた。本文には記載がないが、表3から主要評価項目のNNTを計算すると67/40ヵ月になる。肥満症の有病率を考慮すると、このNNTはこの薬剤の有用性を示唆すると思われるが、やはりリスクとベネフィットとを考慮して適切な患者をSELECTすることが肝要だろう。

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耳内ムカデの1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第250回

耳内ムカデの1例イラストACより使用どうも、異物論文専門家の倉原です。週に1回は「foreign body」で異物論文を検索している日本人がいることに、PubMedのアクセス解析のスタッフもビックリしていることでしょう。異物論文というのは「迷入場所」×「異物の種類」で可能性は無限大にあります。中でも耳の異物は結構たくさん報告されており、この連載でも「耳内ゴキブリの1例」を紹介させていただいたことがあります。今日紹介するのは「耳内ムカデの1例」です。おいおい、ほとんど同じじゃねーか!と思われる方もいるかもしれませんが。Ding MC, et al. Safe Removal of a Centipede From the Ear By Using an Innovative Practicable Method: A Case Report. Ear Nose Throat J. 2023 Mar;102(3):NP123-NP125.31歳の女性が救急外来を受診しました。就寝中に突然右耳が痛くなり、耳元で大きな音がしたというのです。視診で、右耳の中に黒い生き物がうごめいているのが発見されました。いや、もうホラーとか呪いの類やん。懐中電灯を使っておびき寄せようとしましたが、出てきてくれません。右耳のビデオ内視鏡検査で、黒い節足動物がいることが確認されました。これは…ゴキ…じゃない、ムカデだ…ッ!!たとえば、ムカデを刺激する方法が選択されますが、飛び出して医師の手に噛みついたら大変です。というわけで、ペットボトルを半分に切って、耳に密着させ、ボトルに開けた穴からキシロカインスプレーを噴射して、ムカデを追い出す作戦を敢行しました。噴霧後、すぐに体長5cmの黒いムカデが出てきました。いやー楽勝、楽勝!ゴキブリと同じように、これはオリーブオイルでもよかったのかな?と思いましたが、Discussionにはそのことは書かれていませんでした。まあ、耳内ムカデに遭遇することなんてまずないので、適切な摘出法なんて存在しないのでしょうが。

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第196回 がん治療にも影響大?患者が医師に相談できず困っていること

人が日常生活の中で加齢を感じる瞬間の1つが“食”に関するものだろう。「若い頃はあれだけ食べられたのに」という話はよく聞く。ちなみにこの点については、私もいくつか思い当たることがある。最初の経験は、いわゆるアラフォーの頃だ。20代から市中の牛丼チェーン店に行くと「大盛・つゆだく」を頼むことが常態化していたが、この頃からいつものように頼んだ牛丼を食べ始めて2~3分で、「ちょっと多過ぎたかな」と感じ始めるようになった。とはいえ、当時はまだなんとか食べきれる。が、食後に胸焼けが起こり、最終的には「大盛・つゆだく」のオーダーを後悔してしまうのだ。この頃はまだ老いを認めたくない時期でもあったため、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で同じことを約2年間は繰り返した。さすがにアラフィフとアラカンの中間地点にいる現在は、アラフォー当時ほど馬鹿な真似はしない。よほどのことがない限り大盛は頼まなくなり、たまたま入店した飲食店がいわゆる普通盛りでも盛りの良い店の場合、料理到着時にギョッとする(とはいえ、ほとんどの場合は食べ切ってしまうのだが)。そしてこれからは少食化も年々進行するだろう。そう思うのは親、とりわけ父親を見ているからだ。元々、食べることは大好きな父親だったが、最近は通常の1人前の弁当やラーメンなら、7割程度は食べるが、食べきることは少なくなった。一方、母親はある時期を境に完全な少食となった。今から約20年前、胃がんの手術で胃体部を中心に胃の約3分の1を切除したからである。日本有数のがん専門病院で手術をした母親は、術後も地元から新幹線を利用して定期受診のため上京し、その度ごとに私は母の受診に同伴した。同伴したのにはいくつか理由がある。まず、母親は医学的知識に乏しく、私が同伴しているほうが心強いと考えていたことが最も大きい。これに付随した理由を挙げるならば、一応、私は母親の2人の子供のうちの1人だから、主治医も顔を合わせておきたいということもあるだろう。そしてもう1つの付随する理由、今考えれば比較的大きな理由だったと考えられるのは“食事”のことだ。術後の母親は物理的に胃が小さくなったのだから、当然今までと同じようには食べられなくなった。周知のように胃切除後には「ダンピング症候群」が起こる。結果、驚くほど母親の食は細くなった。そのため、受診同伴時に母親は私と食事をしたがった。普通の1人前が食べきれないから、自分が食べられる範囲に留め、残りは私に食べてもらうためである。術後1年ほどはやたらと寿司店を選択することが多く、そこではいわゆる握りのセットではなく、お好みで食べることがほとんどだった。理由は単純で量を調節しやすいからだった。今でもよく覚えているのは、ある時に握りずしを2貫食べると、「もうお腹いっぱい」と半ば苦しそうに呟いた母親の姿。まだ、30代前半だった私は内心で「え?たった2貫?」と驚いたものだ。そして母親が寿司屋を選んだ理由には、たぶん店側への配慮もあったと思う。母親の受診先の近辺は寿司屋と言っても高級店が多く、母親が2貫でも私が握りの上などを注文すれば、それなりの勘定になったからだ。母親の社会人生活はほぼ自営業だったゆえに、店側のことも考えていたのはほぼ間違いないだろう。私を食事に同伴させるときの口癖が「残したらお店の人に悪い」だった。そんな母親も術後約20年を経た今はあの当時よりは食べられるようになった。それでも外で提供される食事の場合、食べられるのは最大で6割ほどである。以前の本連載で歩行が退化しつつある軽度認知障害(MCI)の父親を老老介護する母親が、父親に適した車椅子をなかなか見つけられない悩みを書いたが、今年の正月の帰省時に実はこの食事のことも母親の悩みの一つであるらしいことを知った。それは私が久しぶりに両親と地元の繁華街で食事をした時のことである。この時は両親が行ったことがない創業約100年の老舗・中華料理店を選んだ。味も接客も素晴らしい店で、私の中学校の同級生の実家である。両親とも非常に喜んでくれたし、いつもよりも2人とも食べていたと思うが、やはり両親とも自分が選んだ料理は食べきれず、残りは私が食べることになった。私が2人の食べ残しを口にしている最中、食べ終えたはずの母親はなぜか再び店のメニューに目を通していた。そして父親に向かってふと口にした。「あ、小皿料理があるね。これだったら来やすいね、お父さん」そうか。胃がんの手術後に食が細くなった母親にとって、父親までもが食が細くなったことは、父親の歩行退化と同時に外出の足かせの1つになっていたのだ。今後、2人と食事に行く時はそのことも考慮しなければならないのだと痛感したのである。そして最近、あるプロジェクトを目にした。スキルス胃がん患者の轟 哲也氏(2016年逝去)が作ったスキルス性胃がんの患者会で、現在は特定非営利活動法人となっている「希望の会」が始めた「はんぶんごはんプロジェクト」。現在同法人の理事長は亡くなった哲也さんの妻・轟 浩美氏が務めている。同プロジェクトは胃がんの症状・術後障害・副作用、あるいはその他の体調不良などで今まで通りに食べることが叶わなくなった人向けに少量の提供が可能な飲食店、調理キットを扱う業者などの情報を収集して公開・検索サイト化を目指すもの。なんと素晴らしい試みだろう。実現すれば自分にとっても両親にとっても有益なものになる。そんな希望を抱いている。だが、同時に同プロジェクトを知り、忸怩たる思いも抱いている。約20年、このプロジェクトが解決しようとしている悩みを私も頭の片隅に置いていたはずなのに、提供できる情報が思い浮かばない。たぶん母親もそうだろう。結局、現状は仕方がないのだと諦めていたのだ。実はこのプロジェクトを目にした瞬間、ほぼ忘れかけていた約20年前の記憶がよみがえってきた。母の受診日ではないある日、私は受診先の病院周辺を歩き回っていた。周辺で一軒一軒の飲食店の店先を舐めまわすように眺めて歩いた。この時の私が何をしていたかと言うと、店先に「少量提供可」のような表示がある飲食店がないかと探していたのである。前述のように母親の受診先は日本有数のがん専門病院。母親のような悩みを抱えている人が多く受診していることだけは疑いがない。だからその病院の周辺にはもしかしたら母親が気兼ねなく入れそうな、しかもそうしたことを謳っている飲食店があるかもしれないと思ったのだ。しかし、少なくとも私が歩き回った範囲ではそうした飲食店は見当たらなかった。完全な徒労だった。当時、私は会社員記者を辞め、フリーとなり3年目。仕事はやや壁にぶち当たっていた。帰り際にふと「もし物書きとして生きていけなければ、この街で母親のような人向けに飲食店でもやろうか」と思った。今考えればフリーの物書きとして実績も出せない人間が栄枯盛衰の激しい飲食業界で生き残っていけるわけはないのだが…。むしろそう思うくらいなら、表示がなくとも各飲食店の「病気のために少ししか食べられない人向けに少ない量の提供は可能でしょうか?」と一軒一軒訪ね歩けばよかったのだ。結局、約20年、私は母親の悩みを半ば他人事のように考えてきたのだろうと猛省している。多様性の社会と言われるようになって久しいが、その多様なニーズに応える世の中にはまだまだ至っていないのが実状である。多くの人はそれぞれが大切だと思う身近な問題を抱えながら生きている。とはいえ、それはあくまで身近、せいぜい半径1km程度圏内で経験することがほとんどだ。多様性が加速すればするほど、人はそのニーズに追いつけていけなくなる。多様性に応えきれていない世の中なのは、極論を言えば誰のせいでもない。だからこそ自分が感じたふとした疑問・悩みを世に明らかにし、形にしていくことが重要だと、このプロジェクトを知って改めて痛感している。この件で何も提供できる情報はない私だが、たぶんこの場に集う医療者の中にはこのプロジェクトに提供できる情報をお持ちの人も少なくないだろう。ぜひご協力をお願いしたい。

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中年期のタンパク質摂取が多いほど、健康寿命が延びる

 世界中で高齢化が進む中、健康寿命を延ばすことが求められており、栄養はその中の重要な要素である。中でもタンパク質は身体の健康維持に大きな役割を果たしているが、中年期にタンパク質を多く摂取した人ほど、疾病なく健康的に加齢する可能性があることが新たな研究でわかった。米国・タフツ大学のAndres V. Ardisson Korat氏らによる本研究の結果はThe American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年1月17日号に掲載された。 研究者らは、Nurses' Health Study(NHS)コホートの女性参加者を対象とし、登録時の年齢が30~55歳の12万1,700人に対し、ベースライン時およびその後2年ごとに追跡調査を実施した。初回調査の回答に不備がなく、ベースライン時に該当疾患のない4万8,762人が対象となった。 調査票から総タンパク質、動物性タンパク質、乳製品タンパク質(動物性タンパク質のサブセット)、植物性タンパク質の摂取量を調べた。「健康的な加齢」は、11の主要な慢性疾患がなく、精神状態が良好で、認知機能または身体機能のいずれにも障害がないことと定義した。ライフスタイル、人口統計学、健康状態を調整した多変量ロジスティック回帰を用いて、健康的な加齢に関連するタンパク質摂取量のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均(SD)年齢は48.6(6.3)歳、38.6%がBMI値25以上、22.9%が現在喫煙者、88.2%が既婚者であった。・総タンパク質摂取量の平均値(エネルギー百分率)は18.3%であり、内訳は動物性タンパク質13.3%(うち乳製品タンパク質3.6%)、植物性タンパク質4.9%であった。・3,721/4万8,762人(7.6%)が健康的な加齢の定義に合致した。タンパク質の摂取は、健康的な加齢のORと有意に関連していた。エネルギー3%増加あたりの健康的な加齢のORは、総タンパク質1.05(95%CI:1.01~1.10)、動物性タンパク質1.07(95%CI:1.02~1.11)、乳製品タンパク質1.14(95%CI:1.06~1.23)、植物性タンパク質1.38(95%CI:1.24~1.54)であった。・植物性タンパク質の摂取は、身体機能の制限がないことや精神状態が良好であることのOR上昇とも関連していた。動物性または乳製品タンパク質、炭水化物、または脂肪を植物性タンパク質に同等のカロリーで置き換えた場合、健康的な加齢との有意な正の関連が観察された(3%のエネルギーを植物性タンパク質に置き換えた場合のOR:1.22~1.58)。・主な植物性タンパク源は、パン、野菜、果物、ピザ、シリアル、焼き菓子、マッシュポテト、ナッツ類、豆類、ピーナッツバター、パスタであった。 著者らは、女性看護師の大規模コホートにおいて、中年期の食事からのタンパク質摂取、とくに植物性タンパク質摂取は、健康的な加齢の高いORおよび健康状態のいくつかの領域と関連しているようだ、と結論付けている。

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