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ヴィーガン食の健康への影響を双子で比較すると…?

 ヴィーガン(完全菜食主義)食は環境負荷が低いだけでなく、健康にも良い影響を及ぼすことが報告されている。しかし、その多くは疫学研究に基づくものである。そこで、米国・スタンフォード大学のMatthew J. Landry氏らは、交絡を抑制するために一卵性双生児を対象とした臨床研究を実施し、ヴィーガン食の心代謝系への影響を検討した。その結果、ヴィーガン食は通常食と比べてLDLコレステロール(LDL-C)値、空腹時インスリン値、体重を有意に低下させた。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年11月30日号で報告された。 一卵性双生児22組44人(男性10人、女性34人)を対象とした単施設無作為化比較試験を実施した。双生児のうち片方をヴィーガン食を摂取する群(ヴィーガン食群)、もう一方を通常食を摂取する群(通常食群)に無作為に割り付け、8週間追跡した。1~4週時は提供した食品を摂取させ、5~8週時はそれぞれの群に適した食品を被験者に自ら用意させて摂取させた。主要評価項目は8週時におけるLDL-C値であった。副次評価項目は8週時における空腹時インスリン値、体重などであった。 主な結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢(標準偏差[SD])は39.6(12.7)歳、平均BMI(SD)は25.9(4.7)であった。・主要評価項目の8週時におけるLDL-C値は、通常食群116.1mg/dLであったのに対し、ヴィーガン食群95.5mg/dLであり、ヴィーガン食群で有意に低下した(群間差:-13.9mg/dL、95%信頼区間[CI]:-25.3~-2.4、p=0.02)。・空腹時インスリン値と体重についても、ヴィーガン食群で有意な低下が認められた。詳細は以下のとおり。 -空腹時インスリン値:通常食群13.7μIU/mL、ヴィーガン食群10.5μIU/mL(群間差:-2.9μIU/mL、95%CI:-5.3~-0.4、p=0.03) -体重:それぞれ71.7kg、69.5kg(同:-1.9kg、-3.3~-0.6、p=0.01)

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冠動脈疾患へのPCI、血管内イメージングガイドvs.冠動脈造影ガイド/BMJ

 冠動脈疾患を有する成人患者において、冠動脈造影ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して血管内イメージングガイド下PCIは、心臓死のほか心筋梗塞、ステント血栓症など心血管アウトカムのリスクを有意に減少させ、この有益性は疾患の複雑性やイメージングのモダリティを問わずに一貫してみられることが、米国・Houston Methodist DeBakey Heart and Vascular CenterのSafi U. Khan氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年11月16日号で報告された。ベースラインのリスクを考慮したメタ解析 研究グループは、冠動脈疾患患者に対するPCIのガイドとしての血管内イメージングと冠動脈造影の治療効果を、ベースラインのリスクを考慮して比較する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2023年8月31日の時点で、医学関連データベース(PubMed/Medline、Embase、Cochrane Library)に登録された文献を検索した。対象は、冠動脈疾患の成人患者において、血管内イメージング(血管内超音波[IVUS]、光干渉断層法[OCT])ガイド下PCIと冠動脈造影ガイド下PCIを比較した無作為化対照比較試験であった。 変量効果メタ解析でデータを統合し、GRADE(grading of recommendations, assessment, development, and evaluation)を用いて各試験のエビデンスの確実性を評価した。 主要エンドポイントは心臓死で、追加エンドポイントとして心筋梗塞、ステント血栓症、標的血管血行再建術、標的病変血行再建術、全死因死亡を取り上げ、率比(RR)と1,000人当たりの絶対リスク差(ARD)の評価を行った。ARDの推定には、5年後のベースラインリスクのSYNTAXリスクカテゴリーを用いた。20の無作為化試験、1万1,698例の解析 20件の無作為化対照比較試験に参加した1万1,698例を解析に含めた。全体の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:61~66)、追跡期間中央値は1年(IQR:1~2)だった。 冠動脈造影ガイド下PCIに比べ血管内イメージングガイド下PCIでは、心臓死(RR:0.53、95%信頼区間[CI]:0.39~0.72)、心筋梗塞(0.81、0.68~0.97)、ステント血栓症(0.44、0.27~0.72)、標的血管血行再建術(0.74、0.61~0.89)、標的病変血行再建術(0.71、0.59~0.86)のリスクが有意に減少した。一方、全死因死亡(0.81、0.64~1.02)のリスクも血管内イメージングガイド下PCIで減少したが有意差はなかった。 また、SYNTAXリスクカテゴリーを用いると、GRADEによる確実性が「高」のエビデンスとして、血管内イメージングガイド下PCIのARDが、心臓死では1,000人当たり低リスク群で23減少し、高リスク群では64減少することが示された。 同様に、心筋梗塞のARDは低リスク群で15、高リスク群で19減少し、ステント血栓症はそれぞれ9および13の減少、標的血管血行再建術は28および38の減少、標的病変血行再建術は35および48の減少を示した。また、全死因死亡のARDは低リスク群で17、高リスク群で36減少し、GRADEのエビデンスの確実性はいずれも「中」だった。 著者は、「血管内イメージングガイド下PCIの有益性は、疾患の複雑性やイメージングのモダリティ(IVUS、OCT)を問わず一貫して観察された。最も大きな絶対的有益性が認められたのは、冠動脈疾患の重症度と複雑性によって示されるベースラインのリスクが最も高い患者であった」としている。

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欧州で行われた臨床研究の結果は、日本の臨床に当てはめることはできない?(解説:山地杏平氏)

 BIOSTEMI試験の5年生存追跡結果が、TCT 2023で発表され、Lancet誌に掲載されました。ST上昇型心筋梗塞(STEMI)症例において、生分解性ポリマーを用いた超薄型シロリムス溶出性ステントであるOrsiroとエベロリムス溶出性ステントのXienceを比較した試験の追跡期間を5年に延長した試験になります。 第2世代の薬剤溶出性ステントであるXienceは、第1世代の薬剤溶出性ステントであるCypherやTaxusと比較し有意に優れていることが多くの試験で示されてきました。その一方で、Xience以降に新たに発売された薬剤溶出性ステントは、Xienceに対して非劣性は示されてきたものの、優越性が示されたものはありませんでした。2014年にLancet誌で発表されたBIOSCIENCE試験でも、これまでの試験と同様に、OrsiroはXienceと比較して非劣性であることが示されましたが、そのサブグループであるSTEMI症例において、有意にOrsiroが優れていることが示唆されました。 この結果を受けて始められたのが、BIOSTEMI試験で、BIOSCIENCE試験と同じく、ベルン大学が中心となって行われた多施設共同の無作為化比較試験です。STEMI症例においては、BIOSCIENCE試験のサブグループ解析と同様に、Orsiroが心筋虚血に伴う再血行再建が有意に少なかったことが2019年にLancet誌で報告されています。そしてさらに今回報告されたのが、追跡期間を5年まで延長したものであり、その結果はきわめて穏当で、初期の差が維持され、とくに“late catch-up phenomenon”が見られず、遠隔期のイベントにおいても変化がないと報告されています。 スイスでは、IVUSやOCTといった冠動脈イメージングデバイスは、臨床研究以外ではほとんど用いられておらず、日本で行われている手技と比べ、やや控えめなサイズのデバイスが選択されることが多いように思います。そのような環境においては、STEMI症例を治療するのであれば、より薄い金属でできているOrsiroのほうが、Xienceと比較して優れていることは間違いなさそうです。一方で、冠動脈イメージングデバイスを用いて、積極的に後拡張を行う日本の手技では、OrsiroがXienceと比較して有意に優れているかはわからないように思いますし、BIOSTEMI試験の結果を受けて使用するステントが大きく変わることはないようにも思います。ただし、少なくともOrsiroはその他の第2世代の薬剤溶出性ステントと比較して、劣ってはいないことは間違いない事実であることは認識しておいてよいのではないでしょうか。 BIOSTEMI試験および、BIOSCIENCE試験はいずれも私が留学していたベルン大学が中心となって行われており、TCTでは本試験のprincipal investigatorであるThomas Pilgrim先生や、その上司であるStephan Windecker先生に久しぶりにお会いできました。Stephan Windecker先生を一躍有名にしたのが、2005年にNew England Journal of Medicine誌に報告された第1世代の薬剤溶出性ステントであるCypherやTaxusを直接比較したSIRTAX試験です。以後も長期にわたってエビデンスを出し続けているベルン大学ですが、現在も日本からの留学生を受け入れてもらっています。われこそはと思われる方がおられましたら、ぜひベルン大学留学を考えてみてください!

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第173回 2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省

<先週の動き>1.2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省2.医師の働き方改革、宿日直体制の維持が困難に/日本医師会3.薬価差6.0%、薬価引き下げで医療費の抑制と賃上げ実現へ/厚労省4.梅毒感染者数、3年連続で過去最多を更新、全国的に急増5.移植医療推進へ、脳死判定から臓器摘出まで医療機関を全面支援/厚労省6.医師免許を含む40資格、マイナンバーで手続き効率化/厚労省1.2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省厚生労働省は、11月29日に開いた社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で、2024年度の診療報酬改定の基本方針の骨子案を示した。骨子案によると、人口構造の変化に伴い、医療の支え手の長期的な不足が見込まれ、人材確保のために医療従事者の賃上げを推進する方針。厚労省は、看護補助者などの給与水準が低い医療従事者の処遇改善が求められており、重点課題の医療分野での働き方改革と人材確保に対処する。看護補助者などのコメディカルの賃上げは、医療分野で他産業に比べて遅れており、人材確保が急務とされ、長時間労働の改善も含まれている。このほか、診療報酬改定の基本方針には、地域包括ケアシステムの深化、医療DXの推進、質の高い医療の提供、医療保険制度の安定性向上などが挙げられている。さらに物価高騰や賃上げの状況を踏まえ、患者が必要とする医療を受けられるよう機動的な対応が強調されている。日本医師会など医療関係団体は、診療報酬の「本体」部分の大幅な引き上げを求めているが、財務省は診療報酬の「本体」部分の引き下げを提案しており、医療機関の経営状況や利益剰余金の活用を根拠にしている。医療従事者の待遇改善は、国の財政に大きな影響を与えるため、引き続き大きな関心を呼ぶとみられる。参考1)診療報酬 引き上げ?引き下げ?来年度改定に向け調整本格化へ(NHK)2)令和6年度診療報酬改定の基本方針(骨子案の概要)(厚労省)3)診療報酬改定の基本方針、厚労省が骨子案示す 社保審の医療部会と医療保険部会に(CB News)2.医師の働き方改革で宿日直体制の維持が困難に/日本医師会日本医師会は、11月29日に定例記者会見を開き、医師会が実施した「医師の働き方改革と地域医療への影響」に関する調査の結果を明らかにした。この中で、医師の働き方改革により、約3割の医療機関が将来的に宿日直体制の維持が困難になると回答していたと報告した。調査は、医師の働き方改革の準備状況や医師派遣の動向、宿日直許可の取得状況、および改革が医療提供体制に与える影響を把握するために行われた。調査は全病院および有床診療所を対象にして、1万4,128施設のうち4,350施設から回答を得ていた。調査結果によれば、医師派遣を行う医療機関の約68.1%が派遣を継続する予定であり、医師を受け入れる医療機関の約69.0%も継続を予定している。しかし、約7割以上の医療機関が宿日直許可を取得しているものの、将来的な維持には不安を抱えている。医療機関全体でみると、約54%が「とくに変化なし」と回答しているが、約30.0%が宿日直体制の維持が困難、約25.1%が派遣医師の引き上げ、約14.4%が救急医療の縮小・撤退を懸念している。地域医療提供体制に関しては、約37.7%が「とくに変化なし」と回答している一方で、約30.0%が救急医療体制の縮小・撤退、約19.9%が専門的な医療提供体制の縮小・撤退を懸念している。この調査結果を受け日本医師会の城守常任理事は、医師の派遣・受け入れについて、現時点で縮小や未定が約3割も存在し、今後の派遣状況によっては地域医療の提供体制に大きな影響が出る可能性があると指摘している。また、医師の働き方改革が将来の地域医療提供体制に及ぼす影響を「把握できていない」と回答した割合も高かったことを危惧している。今後、都道府県別に集計したデータを都道府県医師会にフィードバックし、行政と共有して地元の医療機関支援への検討材料にする計画であり、来年2月に再度調査を行う意向を示している。なお、厚生労働省は今月に入り、「医師の働き方改革」特設サイトを開設し、働き方改革について医療機関や医療従事者だけでなく、患者さんに対しても情報発信を進めている。参考1)「医師の働き方改革」特設サイト(厚労省)2)医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果について(日本医師会)3)「宿日直体制の維持が困難」3割 日本医師会、働き方改革調査(共同通信)3.薬価差6.0%、薬価引き下げで医療費の抑制と賃上げ実現へ/厚労省厚生労働省は、12月1日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2023年の医薬品価格調査の速報結果を報告し、市場実勢価格の平均乖離率が約6.0%であったことを明らかにした。薬価の乖離率は、2022年度と比較して1.0ポイント低下し、過去30年間で最も価格差が小さかった。この結果を受けて、政府は2024年度の診療報酬改定で薬価を引き下げる方針を示している。また、後発医薬品の数量シェアは約80.2%に上昇しており、政府の目標を上回っていた。厚労省は薬価の引き下げにより、国費ベースで最大900億円程度の医療費抑制が可能としており、医師や看護師などの人件費や技術料に当たる本体部分の引き上げに充てられる予定。ただし、医療職の賃上げ率は全産業平均の3.58%に対して2%程度と低く、医療機関の経営が厳しい状況が指摘されている。財務省は、コロナ対策による補助金投入などを理由に、本体部分の引き下げを求めており、年末まで引き続き議論を重ね、改定率が決められる見込み。参考1)令和5年医薬品価格調査(薬価調査)の速報値(厚労省)2)24年度の診療報酬改定で「薬価」引き下げ方針…仕入れ価格が6%低下受け医療費抑制図る(読売新聞)3)薬の市場価格、薬価を6%下回る 国費900億円程度抑制可能か(毎日新聞)4)医薬品は6.0%、材料は2.5%の価格乖離、「薬価の実勢価格改定」全体で1,200億円程度の国費縮減可能では-中医協総会(Gem Med)5)薬価乖離率は6.0%、厚労省速報 22年度比1.0ポイント縮小(CB News)4.梅毒感染者数、3年連続で過去最多を更新、全国的に急増日本全国で梅毒の感染者数が急増しており、とくに九州地方では人口比での報告数が多いことが明らかになった。2023年11月19日時点で全国の感染者数は1万3,251人に達し、これは前年の1万3,228人を上回り、3年連続で過去最多を更新している。大都市圏では、とくに感染者数が多く、東京都、大阪府、福岡県が多数を占めているが、長崎県や鳥取県など大都市圏以外の地域でも感染者が急増している。梅毒は性接触を主な感染経路とする細菌性の感染症で、初期には口や性器にできものができるが自然に消え、その後全身に発疹が出ることがある。適切な抗菌薬治療を受ければ完治が可能だが、放置すると重大な症状を引き起こす可能性があり、妊婦から胎児への母子感染のリスクもある。参考1)梅毒の感染者数が3年連続で過去最多を更新(NHK)2)梅毒の感染者数が急増 九州は人口比でも多め(朝日新聞)5.移植医療推進へ、脳死判定から臓器摘出まで医療機関を全面支援/厚労省厚生労働省は、国内の臓器提供者(ドナー)の不足に対処するため、移植医療の進展を妨げる要因を調査し、支援策を検討している。国内の約150病院を対象に脳死判定や臓器提供につながらなかった件数を調査し、2024年度に必要な支援を計画している。とくに、救急医療の現場で臓器提供の前提となる脳死判定について、家族への提案をためらっていることが一因とされている。わが国では、平成9年に「臓器の移植に関する法律」が施行され、平成21年に一部改正されている一方で、人口100万人当たりの臓器提供者数が米国の51分の1、韓国の9分の1と低く、臓器移植を希望する登録者約1万6,000人のうち、年間約400人しか移植を受けられていない現状。この問題に対応するため、厚労省は2024年度から、脳死判定から臓器摘出まで一貫して人材不足の病院を支援する取り組みを始める。これには、移植医療の実績が豊富な拠点病院から医師や看護師などを派遣する計画が含まれる。さらに、厚労省は拠点病院を再編し、「移植医療支援室」を持つ病院を拡充する。この拡充には、脳死ドナーからの臓器移植を実施することを条件にする。この新たなタイプの拠点病院から派遣される医療者は、臓器のチェックやドナーの全身管理、臓器摘出手術に至るまでの一連の流れに携わることとなる。参考1)脳死移植の支援拡充、「判定」から臓器摘出まで医療機関サポート(読売新聞)2)厚労省、連携体制を調査 要因探り人材面など支援 臓器提供者、米国の51分の1(日経新聞)3)法施行26年、脳死での臓器提供1,000件に 意思表示進まず海外と差 移植体制整備へ病院が連携(東京新聞)4)臓器移植医療対策のあり方に関する提言(厚労省)6.医師免許を含む40資格、マイナンバーで手続き効率化/政府政府は、令和3年1月に「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」で取りまとめられた報告書をもとに、マイナンバー制度を活用して、医師や介護福祉士など約40の国家資格の事務手続きをデジタル化する計画を進めている。報告書によると、2024年度中に資格取得や変更などの申請手続きがオンラインで完結できるようになる。現在、資格取得時や引っ越しの際に、戸籍抄(謄)本や住民票の写しを提出する必要があるが、新システムではこれらの書類提出が省略できるようになる。この行政のデジタル化は、医療・福祉分野の31職種を含む約80の国家資格に適用される予定で、マイナンバーカードの専用サイト「マイナポータル」を通じて、資格情報とマイナンバーの連携が行われる。このシステムの稼働により、資格保有者と資格管理者の負担を軽減するほか、各種届出の漏れの防止や、個人の状況に応じたきめ細やかな就業支援を通して有資格者などの掘り起こしが可能となるなどメリットが見込まれている。参考1)社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用について(厚労省)2)「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」報告書(同)3)マイナンバーカードの普及・利活用拡大(デジタル庁)4)医師や介護福祉士など40の国家資格、24年度中に手続きデジタル化…マイナ活用(読売新聞)

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外傷の処置(5)鼻出血【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q95

外傷の処置(5)鼻出血Q95冬の時期に某山奥の診療所で当直中、雪が吹き荒れる夜間に20代男性が鼻出血で受診した。とくに既往歴や内服歴はなく、易出血性の家族歴もない。気道閉塞を示唆する症状や所見、呼吸困難もない。バイタルサインも安定している。鼻鏡で評価すると、右鼻腔に露出血管、出血がみられ、前方出血のようだ。用手圧迫、1,000倍希釈アドレナリン+4%リドカインを染み込ませたガーゼ挿入による止血を試みたが、出血が続いている。次に行うとしたらガーゼパッキングか。その前に、何かほかに手立てはあるだろうか。

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コーヒーがアルツハイマー型認知症リスクに及ぼす影響~メタ解析

 アルツハイマー型認知症は、世界中で数百万人が罹患している神経変性疾患である。その予防や発症を遅らせる可能性のある生活要因の特定は、研究者にとって非常に興味深いことである。現在の研究結果に一貫性はないものの、広く研究されている因子の1つにコーヒーの摂取量がある。韓国・仁済大学校のIrin Sultana Nila氏らは、コーヒー摂取量がアルツハイマー型認知症リスクに及ぼす影響について、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、1日のコーヒー摂取が1~4杯でアルツハイマー型認知症リスクの低減がみられたが、4杯超ではリスクが増加する可能性が示唆された。Journal of Lifestyle Medicine誌2023年8月31日号の報告。コーヒー摂取でアルツハイマー型認知症の発症リスクが増加するのは1日4杯超 "coffee"、"caffeine"、"Alzheimer's disease"など、さまざまなキーワードを組み合わせて、各データベース(Pubmed、Embase、Web of Science)より関連する研究を検索した。相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出し、エフェクトサイズを推定した。分析には、ランダム効果モデル(不均一性がI2>50%の場合)または固定効果モデル(不均一性がI2<50%の場合)による一般化逆分散分析に制限付き最尤法を用いた。なお、分析に使用したソフトではp値の結果はp=0.00と表示された。 コーヒー摂取量がアルツハイマー型認知症リスクに及ぼす影響について調べた主な結果は以下のとおり。・11件の研究をメタ解析に含めた。・日常的に1日当たり1~2杯および2~4杯のコーヒーを摂取する人は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが有意に低かった。 【1~2杯】RR:0.68、95%CI:0.54~0.83、I2=50.99% 【2~4杯】RR:0.79、95%CI:0.56~1.02、I2=71.79%・1日当たり4杯超コーヒーを摂取する人では、アルツハイマー型認知症の発症リスクの増加が認められた。 【4杯以上】RR:1.04、95%CI:0.91~1.17、I2=0.00%

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lepodisiran、リポ蛋白(a)値を著明に低下/JAMA

 リポ蛋白(a)値の上昇は、主要有害心血管イベントや石灰化大動脈弁狭窄症の発症と関連する。循環血中のリポ蛋白(a)濃度は、ほとんどが遺伝的に決定され、生活習慣の改善やスタチン投与など従来の心血管リスク軽減のアプローチの影響を受けない。米国・Cleveland Clinic Center for Clinical ResearchのSteven E. Nissen氏らは、肝臓でのアポリポ蛋白(a)の合成を抑制することでリポ蛋白(a)の血中濃度を減少させるRNA干渉治療薬lepodisiran(N-アセチルガラクトサミン結合型短鎖干渉RNA)の安全性と有効性について検討を行った。その結果、本薬は忍容性が高く、用量依存性に長期間にわたり血清リポ蛋白(a)濃度を大幅に低下させることが示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年11月12日号に掲載された。米国とシンガポールの無作為化用量増量第I相試験 本研究は、lepodisiran単回投与の安全性と忍容性、薬物動態、および血中リポ蛋白(a)濃度に及ぼす効果の評価を目的とする無作為化用量増量第I相試験であり、2020年11月~2021年12月に米国とシンガポールの5施設で実施された(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18(シンガポールは21)~65歳、心血管疾患がなく(脂質異常症とコントロール良好な高血圧は可)、BMI値18.5~40で、血清リポ蛋白(a)濃度が高い(≧75nmol/Lまたは≧30mg/dL)患者を、プラセボまたは6つの用量(4、12、32、96、304、608mg)のlepodisiranを皮下投与する群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、lepodisiran単回投与の用量増量の安全性(試験期間中の有害事象、重篤な有害事象)および忍容性とした。副次アウトカムは、投与後168日のlepodisiranの血漿中濃度および最長336日(48週)の追跡期間における空腹時血清リポ蛋白(a)濃度の変化量などであった。 48例(平均年齢46.8[SD 11.6]歳、女性35%、アジア人48%)を登録し、プラセボ群に12例、lepodisiranの各用量群に6例ずつを割り付けた。ベースラインの全体のリポ蛋白(a)濃度中央値は113nmol/L(四分位範囲[IQR]:82~151)、平均BMI値は28.0(SD 5.6)であった。608mg群で、337日目に94%の低下 重篤な有害事象として、4mg群の1例で投与後141日目に自転車からの転倒による顔面損傷が発生したが、薬剤関連の重篤な有害事象は認められなかった。有害事象はまれで、プラセボ群とlepodisiranの各用量群で全般に同程度の頻度であった。全身性の過敏反応やサイトカイン放出症候群のエピソードは発現しなかった。また、lepodisiranの血漿中濃度は10.5時間以内にピーク値に達し、48時間までには検出不能となった。 ベースラインの各群のリポ蛋白(a)濃度中央値は、次のとおりであった。プラセボ群111nmol/L(IQR:78~134)、lepodisiran 4mg群78nmol/L(50~152)、同12mg群97nmol/L(86~107)、同32mg群120nmol/L(110~188)、同96mg群167nmol/L(124~189)、同304mg群96nmol/L(72~132)、同608mg群130nmol/L(87~151)。 ベースラインから337日目までのリポ蛋白(a)濃度の最大の変化量の割合中央値は、次のとおりであり、lepodisiran群では用量依存性に低下した。プラセボ群-5%(IQR:-16~11)、lepodisiran 4mg群-41%(-47~-20)、同12mg群-59%(-66~-53)、同32mg群-76%(-76~-75)、同96mg群-90%(-94~-85)、同304mg群-96%(-98~-95)、同608mg群-97%(-98~-96)。 リポ蛋白(a)値の変化量の割合が大きい状態は、lepodisiranの高用量群でより長期に持続した。304mg群では、29~225日目までリポ蛋白(a)値が90%以上低下した状態が持続し、608mg群では、29~281日目まで定量化の下限値を下回り、22~337日目まで90%以上低下した状態が持続した。337日目の時点でのlepodisiran 608mg群におけるリポ蛋白(a)濃度の変化量中央値は-94%(-94~-85)だった。 著者は、「これらの知見は、lepodisiranの研究の継続を支持するものである」とし、「本試験では、最大の用量でも48時間後にはlepodisiranが血漿中に存在しなくなったが、リポ蛋白(a)濃度に対する効果ははるかに長く持続しており、年に1~2回の投与で高度なリポ蛋白(a)低下効果を達成する可能性がある」と指摘している。

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患者×外科医の性別パターン、術後死亡率との関連は?/BMJ

 患者と外科医の4タイプの性別の組み合わせ(男性患者・男性外科医、女性患者・女性外科医、男性患者・女性外科医、女性患者・男性外科医)で、術後30日以内の死亡率に大きな差はなく、患者と外科医の性別の一致による臨床的に意義のある差を認めないことが、カナダ・トロント大学のChristopher J.D. Wallis氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年11月22日号で報告された。米国の手術を受けた65歳以上の後ろ向き観察研究 研究グループは、米国における患者と外科医の性別一致と術後死亡率との関連を評価する目的で、後ろ向き観察研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]/国立マイノリティ健康格差研究所[NIMHD]などの助成を受けた)。 解析には、2016~19年に米国の急性期病院で14の主要な待機的または非待機的(緊急または準緊急)手術のうち1つを受けた65~99歳の出来高払いメディケア受給者のデータを使用した。外科医の自己申告による性別のデータは、Medicare Data on Provider Practice and Specialty(MD-PPAS)のデータベースを用いて収集した。主要アウトカムは、術後30日以内の死亡率とした。 手術を受けた290万2,756例のうち、128万7,845例(44.4%)で性別が同じ外科医による手術が行われ、120万1,712例(41.4%)が男性患者・男性外科医の組み合わせ、8万6,133例(3.0%)が女性患者・女性外科医の組み合わせであった。 また、161万4,911例(55.6%)で性別が異なる外科医による手術が行われ、5万2,944例(1.8%)が男性患者・女性外科医の組み合わせ、156万1,967例(53.8%)が女性患者・男性外科医の組み合わせだった。待機的手術の術後死亡率は、女性外科医で低い 補正後の術後30日死亡率は、男性患者・男性外科医群が2.0%、男性患者・女性外科医群が1.7%、女性患者・男性外科医群が1.5%、女性患者・女性外科医群は1.3%であった。 待機的手術における患者と外科医の性別一致に関しては、男性外科医による手術を受けた女性患者と比較して、女性外科医による手術を受けた女性患者でわずかに死亡率が低かった(補正後リスク差:-0.2%ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.3~-0.1、p<0.001)が、女性外科医による手術を受けた男性患者に比べ、男性外科医による手術を受けた男性患者では死亡率が高かった(0.3%ポイント、0.2~0.5、p<0.001)。しかし、これらの群間の差は小さく、臨床的な意義を認めなかった。 一方、非待機的手術では、患者と外科医の性別の一致による術後死亡率の違いを示唆するエビデンスは得られなかった。 待機的手術では、女性外科医は男性外科医に比べ、補正後の術後死亡率が低かった(0.5% vs.0.8%、補正後リスク差:-0.3%ポイント、95%CI:-0.3~-0.2、p<0.001)が、非待機的手術では、このような差はなかった(5.2% vs.5.4%、-0.1%ポイント、-0.4~0.1、p=0.25)。また、手術の種類で層別化すると、待機的結腸切除術では外科医の性別が患者の死亡率と関連し、女性外科医で死亡率が低かった(1.9% vs.2.3%、-0.4%ポイント、-0.7~-0.2、p<0.001)が、ほかの手術では関連性は有意でなかった。 著者は、「これらの知見の根本的なメカニズムを理解することで、すべての患者のケアのプロセスとパターンを改善する機会が得られる。現在進行中の定性的かつ定量的な研究により、外科医と患者の性別と共に、人種やその他の共有アイデンティティ(shared identity)の側面が、ケアの質や術後のアウトカムにどのような影響を及ぼすかを、より詳細に説明できるようになると考えられる」としている。

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手洗いの具体的な効果

手洗いは自分が病気になったり、ほかの人に病気を広げるのを防ぐ簡単で効果的な方法です!こまめな手洗いで手を清潔に保ちましょう石けんを使った手洗い、どんな効果が報告されている?・下痢になる人の数を23~40%削減・免疫力が低下している人が下痢になる可能性を58%削減・風邪などの呼吸器系の病気を16~21%削減・お腹(胃腸)の病気による子どもたちの学校の欠席を29~57%削減・下痢になる幼児の3人に1人、肺炎などの呼吸器感染症にかかる幼児の5人に1人を病気から守ります手や指に付着しているウイルスの数は、石けんやハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせます出典:米国疾病予防管理センター(CDC)「Show Me the Science – Why Wash Your Hands?」森功次ほか.感染症学雑誌.2006;80:496-500.Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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肥満2型糖尿病患者に強化インスリン療法は必要か?(解説:住谷哲氏)

 本試験では基礎インスリンを投与しても、血糖コントロール目標が達成できない肥満2型糖尿病患者に対するチルゼパチド週1回投与と毎食前リスプロ投与による強化インスリン療法との有効性が比較された。結果は予想通り、HbA1c低下、体重減少、目標血糖値達成率、低血糖の回避のすべてでチルゼパチドが優れていた。 経口血糖降下薬のみでは血糖コントロール目標が達成できない場合の治療選択肢として、以前は基礎インスリンを併用するBOT basal-supported oral therapyが金科玉条であったが、現在では基礎インスリンを投与する前にGLP-1受容体作動薬(GIP/GLP-1受容体作動薬を含む)を追加投与することが推奨されている1)。しかし現在でもfirst injectionにGLP-1受容体作動薬ではなく基礎インスリンが選択されることが少なくない。その場合、まずは基礎インスリンを0.5U/kgまで増量する。それでも血糖コントロール目標が達成できない場合には、GLP-1受容体作動薬を併用しないのであれば、強化インスリン療法へ移行することになる。しかし肥満2型糖尿病患者における強化インスリン療法はもろ刃の剣であり、肥満の助長は避けては通れない。 本試験では、FBGはチルゼパチド群およびリスプロ群の両群で100-125mg/dLを目指してグラルギンを増量し、さらにリスプロ群では毎食前BG100-125mg/dLを目指してリスプロを増量するようにデザインされた。試験開始時のグラルギン投与量は両群で46U/日(0.5U/kg)であったが、チルゼパチド群ではグラルギン投与量は試験終了時52週後に13U/日(0.15U/kg)まで減少した。さらに15mg投与群では、19%の患者においてグラルギン投与が不要となった。一方、リスプロ群の52週でのグラルギン投与量は42U/日(0.45U/kg)、リスプロ投与量は62U/日(0.67U/kg)、1日総インスリン投与量は112U/日(1.2U/kg)となった。 筆者も強化インスリン療法で治療中の肥満2型糖尿病患者に、セマグルチドを併用することでインスリン投与から離脱した症例を経験したことがある。病態生理から考えても、高インスリン血症を伴っている可能性の高い肥満2型糖尿患者における強化インスリン療法には疑問がある。コストや有害事象などを考慮することが当然必要であるが、肥満2型糖尿病患者における強化インスリン療法は、基礎インスリンにGLP-1受容体作動薬を併用しても血糖コントロール目標が達成できない患者に対する最後の選択肢としての位置付けが適切だろう。

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薬物相互作用を調べるのにChatGPT、Bard、Bing AI、どれがいい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第246回

薬物相互作用を調べるのにChatGPT、Bard、Bing AI、どれがいい?Unsplashより使用ChatGPT、Bard、Bing AIはそれぞれOpenAI社、Google(Alphabet社)、Mircosoft社が運営するAIチャットボットであり、それぞれ強み・弱みがあります。最近画像生成AIであるDALL・E 3がChatGPT、Bing AIに実装されたことから、私の子供もよく画像生成をして遊んでいます。こんなことができる時代になったんだなあと感動する一方、ある程度自然淘汰が進んでいくのではないか、とも感じています。さて、医療においてAIが活用できる領域はいろいろありますが、「薬物相互作用の確認」はその1つかもしれません。Al-Ashwal FY, et al.Evaluating the Sensitivity, Specificity, and Accuracy ofChatGPT-3.5, ChatGPT-4, Bing AI, and Bard Against Conventional Drug-Drug Interactions Clinical Tools.Drug Healthc Patient Saf. 2023 Sep 20:15:137-147.薬物相互作用の検索は、インターネット上でも可能ですが、AIに標準機能として付くようになると、処方時にアラートが出たり、AUCの変化が表示できたり、いろいろと夢が広がります。サブスクでそういうアプリケーションは出ていますが、ではそういうサービスと比べてAIチャットボットはどうだろうかという研究が行われました。合計255組の薬剤について、薬物相互作用予測における感度、特異度、精度を比較評価しました。薬物相互作用については有料サブスクMicromedexをリファレンスにして検証しています。最も特異度が低かったのはChatGPT-3.5でした(37.2%)。これは当然と言えば当然で、現在使用されている大規模言語モデルはGPT-4.0なので致し方ないところかもしれません。Bing AIは高い特異度を示しました(76.9%)。画像を拡大する表. 各AIの薬物相互作用を検出する能力(下段は欠損データを除去したもの)(文献より引用)この論文では「Bing AI推し」という結果になりました。上記すべてを使っていますが、中でもChatGPT-4.0の精度はかなり高くなってきている印象です。現在のデータをブラウジングできたり、画像データをアップロードして解析できたり、できることがどんどん増えています。反面、Bing AIはよくケンカになります(図)。聞き方が悪いのかな…。なので、ちょっと私の中では、「苦手な友達」になりつつあります。画像を拡大する図. Bing AIと喧嘩になる理由最近は、ChatGPTの対抗馬としてClaudeを使う頻度が増えており、個人的にはこちらもオススメです。

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第188回 医学界もインフルエンサー頼み!? セマグルチドの濫用対策

「インフルエンサー」というキーワードがこれほど頻出するとは思わなかった。11月25~26日に仙台市で開催された第44回日本肥満学会・第41回日本肥満症治療学会学術集会のあるシンポジウムでのことだ。このシンポジウムとは26日朝に両学会と日本糖尿病学会の合同で開催された「GLP-1アナログの適正使用を考える-不適切なGLP-1ダイエットがもたらす健康被害と社会的課題-」と題するもの。前回の本連載でも触れた、現在問題となっている自由診療でのGLP-1受容体作動薬の美容目的ダイエットでの濫用がテーマだった。今回はここでの各種の見解を五月雨式に紹介していきたい。ちなみにここで敢えて濫用と書いたのには理由がある。実はこの件について言えば、私は適応外使用と表現することに極めて違和感があるからだ。私自身、薬の適応外使用とは医学的に薬効が期待される、あるいは推認される可能性が高い場合、患者にリスク・ベネフィットを十分に説明した上でその同意を得て処方され、それに伴う有害事象に処方医が責任を持つ、と理解している。しかし、問題の自由診療でのGLP-1受容体作動薬の処方のどこにその正当性を見いだせるのか? そもそも医学的な根拠に基づく治療ですらない。なので以後、この件については濫用という表現に徹したい。さて話をシンポジウムに戻すと、このシンポジウムではメディア、栄養学研究者、行政に加え、アカデミアからシンポジストを招いていたが、本当に決定打がないのだと改めて実感した。シンポジウムでインフルエンサーという言葉を最初に使ったのは、日本糖尿病学会理事長で国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長の植木 浩二郎氏である。植木氏は自身の講演の中で次のように語った。「周知の方法としては、どなたかインフルエンサーがこんな薬を使って痩せるなんて『イケてない』みたいに言っていただくのが良いと思うのですが、なかなかそういう手段が取りにくい」ちなみに植木氏がこう話した時に背後に映し出されていたスライドは「日本糖尿病学会による取り組みの限界と問題点」と題するもので、そこには話に関連する記載として「リスク周知の媒体としては、SNS等が有効と考えられるが、それをだれが担うのかなどの問題が多い(原文ママ)」と記載されていた。行政の立場から登壇した厚生労働省医政局医事課の佐々木 康輔氏もシンポジウムのディスカッションでインフルエンサーの必要性について言及した一人だ。「医療側にはプロフェッショナル・オートノミー※を保ちながらどう規制していくかという大きな問題があり、一方で薬剤流通の観点からどう規制していくかという対応もあるかと思う。後者については医薬局が医薬品卸への働きかけで対応しようとしたものの、なかなか難しかったと聞いている。(中略)もう一方で受け手(GLP-1使用者)側にはなかなか情報を渡すことができていない。厚労省のサイトなどもそれほど閲覧されていないのが現実で、どちらかというとインフルエンサーの方々を通じ、この問題をどう周知すべきかについてもわれわれは考えなければならない」※プロフェッショナル(医師などの専門職)とオートノミー(自律)を組み合わせた用語で、専門職の集団が行政などの介入を待たずに自らを律し、維持発展させていくことを指す概念。この2人の発言を「困った時のインフルエンサー頼み」的に揶揄するつもりは毛頭ない。現行の法令で打つ手がない以上、あらゆる手段を取らねばならず、その中の一環と受け止めている。もっともこの“インフルエンサー”を誰にするのかが非常に大きな問題である。実はこのシンポジウムの前日と当日に、経済ニュースを中心とする有料ニュースサイト「NewsPicks」で、同サイトの記者と私が共同取材したこの問題に関する記事が掲載された。同サイトはこうした記事を、インフルエンサーを含む読者がピックアップして見解をコメントすることが特徴となっているが、あるインフルエンサーが「薬に頼るのが悪みたいなクソコメントもありますね」との見解を書き込んでいたのを目にしてため息が出てしまった。一方、栄養学研究の立場から、SNS依存度が高いほど不健康なボディイメージに傾きがちといった研究などを紹介した永井 成美氏(兵庫県立大学環境人間学部 教授)は、過度な痩身そのものに警告を発すべきとの見解をディスカッションで示した。「(自由診療でのGLP-1受容体作動薬の濫用のような)ビジネスとして成り立つのは非常に強く求める人がいるから。若い頃に短期的には痩せて綺麗になるかもしれないが、長期的スパンでは割に合わない。これが自分にとって損であるということが十分わかっていない。この点をしっかり啓発していく必要がある」この件については会場からの発言で「痩せに関しても、学会からきちんとエビデンスベースで、どこまでの痩せであれば何が起こり得るか、あるいはこういう痩せであれば比較的問題ないということを、限定されたエビデンスかもしれないが、学術的な発信をしていきたい」との発言があった。確かに息の長い話にはなるが、不確かなダイエット情報がインターネット上に氾濫する現状を考えれば、必要不可欠なことだろう。そのうえでもう1つ話題となったのが、「適応外使用は主に日本糖尿病学会の非学会員で行われ、学会の注意喚起が届かない。また届いても従わせる権限がないという問題がある。一方、適応外使用をされている人は、糖尿病ではない方がほとんどで、副作用リスクに関してわれわれが発する警告が届きにくい」(植田氏)という点だ。ちなみに植田氏は、日本糖尿病学会として製薬企業などからインターネット検索による情報提供を受け、こうした濫用をしている医師が学会員と判明した場合には、学会員や専門医の資格取り消しもあり得ると警告をしていることを明らかにした。シンポジウム後に植田氏にぶら下がり取材をして話を聞いたところ、そうした事例は「3件ほどあった」という。こうした学会員や専門医の取り消しは、同学会の定款に沿えば可能ということだった。短期的に見れば、声明文の発出よりはこうした“実力行使”は一定程度有効なようである。ただ、糖尿病学会はおろか美容外科系の学会、日本医師会のいずれにも属していない場合、極めてメッセージが届きにくいのは確かである。もっともこれについては「こうした団体に所属していたとしても確信犯的に濫用に手を貸している医師は端から聞く耳を持たないだろう」という指摘も説得力を有するだろうが、接触のチャネルすらないのでは取り付く島がないというもの。この点について、前述の佐々木氏が「どういう先生がこうした処方をしているのかは把握が難しい。おそらく、そうした医療提供者側にアンケートを送っても何も答えは返ってこないだろう。今後行える手段としては、受け手側に『どのような先生から処方を受けられましたか?』という匿名アンケートを行うなどして実態把握に努めるという手段は考えられる」と述べた。ディスカッション中、座長を務めた日本肥満学会理事長の横手 幸太郎氏(千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学 教授)が「何か一つの決定的な解決策があるものじゃないですよね」と呟いたが、まさにその通りで一筋縄ではいかない問題を改めて実感する。もっともこの件については、プロフェショナルフリーダムの権化とも言える日本医師会ですら、口を極めて批判している現実を考えれば、害の多い自由診療に関して、そろそろ法政令などで明示して規制するなど、もう一歩踏み込んだ対策を打つべき時期が来ているのではないだろうかとも思うのだが。こうしたことができれば、前述の糖尿病学会の警告よりはるかに効果的だろう。いずれにしても短期的対策と長期的対策をうまく組み合わせて、根気よくこれらを続けていかない限り、濫用に手を貸す医師の高笑いを抑止することは困難である。

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12月1日 世界エイズ・デー【今日は何の日?】

【12月1日 世界エイズ・デー】〔由来〕世界レベルのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定。毎年12月1日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動を実施。関連コンテンツYahoo!の見出しで勘違い続出?「HIV感染報告、過去20年で最少に」【バズった金曜日】ヒト免疫不全ウイルス検査ってなあに?【患者説明用スライド】HIVの流行終結を目指す取り組みとはHIV陽性者の結核性髄膜炎、デキサメタゾン追加は有用か/NEJM米国・HIV感染者へのART、人種・民族差は?/JAMA

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若~中年での高血圧、大腸がん死亡リスクが増加~NIPPON DATA80

 高血圧とがんリスクとの関連についての報告は一貫していない。今回、岡山大学の久松 隆史氏らが、日本人の前向きコホートNIPPON DATA80において、高血圧と胃がん、肺がん、大腸がん、肝がん、膵がんによる死亡リスクとの関連を調査したところ、30~49歳における高血圧は、後年における大腸がん死亡リスクと独立して関連していることがわかった。Hypertension Research誌オンライン版2023年11月22日号に掲載。高血圧は大腸がん死亡リスクと正の関連 研究グループは、NIPPON DATA80(厚生労働省の循環器疾患基礎調査)において、ベースライン時に心血管系疾患や降圧薬服用のなかった8,088人(平均年齢48.2歳、女性56.0%)を2009年まで追跡。喫煙、飲酒、肥満、糖尿病などの交絡因子で調整したFine-Gray競合リスク回帰を用いて、血圧が10mmHg上昇した場合のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。逆の因果関係を考慮し、追跡開始後5年以内の死亡を除外して解析した。 高血圧と胃がん、肺がん、大腸がん、肝がん、膵がんによる死亡リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・29年の追跡期間中に、胃がんで159人(2.0%)、肺がんで159人(2.0%)、大腸がんで89人(1.1%)、肝臓がんで86人(1.1%)、膵臓がんで68人(0.8%)が死亡した。・高血圧は大腸がん死亡リスクと正の関連を認めたが、他のがんによる死亡リスクとは関連を認めなかった。・収縮期および拡張期血圧と大腸がん死亡率の関連は30~49歳で明らかだった(収縮期血圧におけるHR:1.43、95%CI:1.22~1.67、拡張期血圧におけるHR:1.86、95%CI:1.32~2.62)が、50~59歳および60歳以上では認められなかった(収縮期および拡張期血圧における年齢交互作用のp<0.01)。・これらの関連は、喫煙、飲酒、肥満、糖尿病の有無で層別化した解析でも同様にみられた。

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非定型抗精神病薬の胃腸穿孔・腸閉塞リスク~MID-NETデータに基づく医薬品安全性評価

 胃腸穿孔・腸閉塞は、抗精神病薬によって引き起こされる有害事象の1つであるが、添付文章上の警告情報については、各抗精神病薬により異なっている。医薬品医療機器総合機構の長谷川 知章氏らは、非定型抗精神病薬を処方された患者における胃腸穿孔・腸閉塞リスクを評価するため、日本の医療情報データベースMID-NETのリアルワールドデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。Therapeutic Innovation & Regulatory Science誌オンライン版2023年10月29日号の報告。 調査期間は、2009~18年。非定型抗精神病薬を処方された患者における胃腸穿孔・腸閉塞リスクを、定型抗精神病薬を処方された患者と比較し、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・非定型抗精神病薬を処方された患者は、定型抗精神病薬を処方された患者と比較し、胃腸穿孔・腸閉塞リスクが有意に低かった(調整後オッズ比:0.48、95%信頼区間:0.29~0.80)。・本知見は、感度分析において、抗精神病薬処方の長期化により裏付けられた。・リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬の種類による胃腸穿孔・腸閉塞リスクの大きな違いは認められなかった。 著者らは「非定型抗精神病薬を処方された患者における胃腸穿孔・腸閉塞リスクの低さに関連する安全性プロファイルは、臨床現場で抗精神病薬を選択する際に、薬剤の適切な使用を行う観点から考慮すべきポイントとなりうる」としている。

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医師数が少なく検査機器数が多い日本の医療/OECD

 経済協力開発機構(OECD/本部:フランス・パリ)から加盟38ヵ国に関する医療レポートが、11月7日に公表された。レポートでは、新型コロナ感染症(COVID-19)が与えた各国への影響のほか、医療費、医療の質などに関する内容が記載されている。わが国は、平均寿命はOECDの中で84.5歳と1番長いが、受診率の多さ、医師数、電子化の遅れなど他の国との差もあり、今後の課題も提示されている。 以下に概要を示す。【COVID-19禍での国民の健康状態について】・2020~22年のCOVID-19での10万人当たり死亡率は、ノルウェー、インドが同順で38人、ニュージーランドが45人、わが国が46人と4番目に低かった。・2020年は平均余命が伸びた半面、21年は0.1歳短くなった。・COVID-19初期(2020年)には17%の人がうつの症状を訴えていた。・自殺者は2020年に10万人当たり15.4人だった(参考:2019年14.6人)。【医療支出の現状と今後について】・2022年または直近年のGDPに占める医療支出の割合は、アメリカの16.6%、ドイツの12.7%、フランスの12.1%に次いで、わが国は11.5%と4番目に多かった。・2021年の政府支出に占める公的医療費支出の割合は、わが国が22%と1番高く、アメリカ、イギリス、アイルランドが21%と続いた。・2021年の受診回数は、韓国15.7回が1番多く、わが国は11.1回と2番目に多く、スロバキアが11.0回と続いた。OECDの平均受診回数は6.0回だった。・2021年の高齢化率は、65歳以上の人口割合で、わが国は28.9%と1番高く、次いでイタリアの23.6%、ギリシャの22.8%と続いた。OECDの高齢者割合の平均は18.0%だった。【医療資源の活用について】・2021年の1,000人当たりの病床数は、韓国の12.8床が1番多く、次いでわが国の12.6床、ブルガリアの7.9床と続いた。OECDの平均病床数は4.3床だった。・2021年の病院支出における内訳では、OECDの平均では入院が64%、日帰りが6%、外来が24%、介護が3%、その他が3%だった。これに対しわが国は、入院が63%、日帰りが1%、外来が23%、介護が10%、その他が3%と介護の割合が高かった。・2021年の平均在院日数は、韓国が18.5日と1番多く、次いでわが国が16.0日、ハンガリーが9.7日と続いた。OECDの平均在院日数は7.7日だった。・2019年または直近年の人口100万人当たりのCT、MRIなどの医療機器数は、わが国が1番多く178台、次いでオーストラリアが88台、アメリカが86台と続いた。OECDの平均医療機器台数は48台だった。・2021年の医師数は、1,000人当たりでギリシャが1番多く6.3人、次いでポルトガルの5.6人、オーストリアが5.4人と続いた。わが国は5番目に少なく2.6人だった。また、OECDの平均医師数は3.7人だった。【予防医療について】・2021年または直近年の喫煙率を男女合わせた数字でみると、インドネシアが1番多く33%、次いでブルガリアが29%、トルコが28%と続いた。わが国は男性27%、女性8%で、OECDの平均喫煙率は、男性20%、女性12%だった。・2021年または直近年の乳がん検診率(50~69歳女性)は、デンマークが1番多く83%、次いでフィンランドとポルトガルが82%と続き、わが国は45%だった。OECDの平均受診率は54%だった。【医療へのアクセスとデジタル化について】・2021年または直近年の医療での自己負担額割合は、トルコとクロアチアが1番低く1.4%、次いでコロンビアが1.7%と続き、わが国は2.4%だった。OECDの平均の医療での自己負担額割合は3.3%だった。・2021年の開業クリニックにおける電子カルテ利用率は、クロアチアが1番低く3%、次いでポーランドとスイスが30%と続き、わが国は42%と5番目に低かった。OECDの平均開業クリニックにおける電子カルテ利用率は93%で、欧米、とくに北欧の利用率はほぼ100%だった。

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世界初のsa-mRNAコロナワクチンが国内承認/CSL・Meiji Seika

 CSL Seqirus社(オーストラリア、メルボルン)とMeiji Seika ファルマは、2023年11月28日に、自己増幅型メッセンジャーRNAワクチン(sa-mRNA、レプリコンワクチンとも呼ばれる)である「コスタイベ筋注用」(ARCT-154)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした成人の初回免疫および追加免疫における国内製造承認を取得した。CSL Seqirus社のファミリー企業のCSLベーリングが11月29日付のプレスリリースで発表した。本ワクチンは、世界で初めて承認を受けたsa-mRNAワクチンとなる。この次世代ワクチンは、日本ではMeiji Seika ファルマが商業化を行う。なお、今回承認を取得したのは新型コロナウイルスの従来株対応1価ワクチンで、現在の流行株とは異なるため供給されない。 標準的なmRNAワクチンは、免疫システムがCOVID-19を認識し、体内の細胞に特定のタンパク質を産生するよう指示し、免疫応答を刺激して、将来の感染を認識してこれと闘うための設計図を残すことによって感染症を予防するものだ。一方、本ワクチンで初めて用いられたsa-mRNAの特徴は、体内でmRNAのコピーを作ることにより、ワクチンに含まれるmRNAの相当量よりも多くのタンパク質を産生できることにある。この技術には、mRNAの量を大幅に抑えながら、細胞性免疫応答を増強して保護期間を延ばすことができる可能性があるという。 今回の承認は、ベトナムで被験者1万6千例を対象に実施した有効性試験やMeiji Seika ファルマが日本で実施した追加免疫試験を含め、ARCT-154を用いた複数の試験で有望な臨床データが得られたことに基づいている。18歳以上の被験者を対象に「コスタイベ筋注用」を評価した追加免疫試験では、既存のワクチンと比較して、sa-mRNAワクチンが起源株およびオミクロンBA.4/5変異株に対して強い免疫応答を起こすことが示された。また、「コスタイベ筋注用」では必要な用量は5μgで、既存のワクチンと比較して大幅に少なくなっている。 「コスタイベ筋注用」は、Arcturus Therapeutics社のワクチンプラットフォーム「LUNAR」を使用している。CSL Seqirus社は、インフルエンザおよびCOVID-19等の呼吸器ウイルス疾患に対する新規mRNAワクチンや、パンデミック対策の開発におけるArcturus Therapeutic社の独占的グローバルパートナー。 Meiji Seika ファルマとCSLはARCALIS, Inc.と協力し、福島県南相馬市の製造施設で、日本におけるsa-mRNAワクチンを一貫して製造できる体制を構築している。

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完全磁気浮上LVAD装着の重症心不全、アスピリンは不要?/JAMA

 完全磁気浮上の左心補助人工心臓(LVAD)を装着した重症心不全患者において、ビタミンK拮抗薬(VKA)による抗血栓療法は、VKA+アスピリンと比較して血栓塞栓症のリスクが増加することはなく、出血イベントを減少させる。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが、北米、欧州、オーストラリアなど9ヵ国の51施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Antiplatelet Removal and Hemocompatibility Events With the HeartMate 3 Pump trial:ARIES-HM3試験」の結果を報告した。LVADは重症心不全患者の生活の質と生命予後を向上させるが、非外科的出血イベントは最も一般的な合併症である。連続流LVADでは、抗血小板薬としてのアスピリンをVKAとともに使用することが義務付けられているが、有効性と安全性に関して決定的なエビデンスはないままであった。JAMA誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。VKA+プラセボvs. VKA+アスピリンで無イベント生存と出血を比較 研究グループは、完全磁気浮上のLVADであるHeartMate 3(HM3)を装着し、その後はHM3以外の機械的循環補助を必要としない重症心不全患者を、装着後2~7日目にプラセボ群とアスピリン(100mg/日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、VKA療法(目標国際標準比[INR]:2.0~3.0)とともに投与した 主要エンドポイントは、HM3装着後14日以内に投与中止を要する外科的合併症またはイベントが発生した患者を除いた主要解析対象集団における、12ヵ月時の非外科的血液適合性関連主要有害イベント(脳卒中、ポンプ血栓症、非外科的大出血、または末梢動脈血栓塞栓症など)のない生存(無イベント生存)の複合で、プラセボ群のアスピリン群に対する非劣性マージンは片側97.5%信頼限界の下限-10%とした。また、重要な副次エンドポイントを、主要解析対象集団における非外科的出血イベントの発生頻度とした。VKA+プラセボで1年無イベント生存率は6%高く、出血イベントは減少 2020年7月~2022年9月の期間に、628例が無作為化された(プラセボ群314例、アスピリン群314例)。このうち、主要解析対象集団は589例(プラセボ群296例、アスピリン群293例)で、患者背景は77%が男性、61%が白人で、追跡期間中央値は14ヵ月であった。 12ヵ月時点の無イベント生存率は、プラセボ群74.2%、アスピリン群68.1%であり、プラセボ群が高く、プラセボ群のアスピリン群に対する非劣性が示された(群間差:6.0%、片側97.5%信頼限界の下限:-1.6%、p<0.001)。 非外科的出血イベントの発生頻度はプラセボ群25.9/100患者年、アスピリン群39.5/100患者年で、アスピリンの回避は非外科的出血イベントの減少と関連していた(相対リスク:0.66、95%信頼区間:0.51~0.85、p=0.002)。 プラセボ群で脳卒中またはその他の血栓塞栓性イベントの増加は認められず、この結果は患者のサブグループ間で一致していた。

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妊娠高血圧、自己モニタリング+遠隔指導で産後の長期血圧が改善/JAMA

 出産後に降圧薬を要する妊娠高血圧腎症または妊娠高血圧の女性において、血圧の自己モニタリングと医師による降圧薬漸増の遠隔指導は、通常の産後外来管理と比較して、産後9ヵ月時の血圧が低下したことが示された。英国・オックスフォード大学のJamie Kitt氏らが、同国の単施設で実施した、評価者盲検の無作為化並行群間非盲検比較試験(PROBE試験)「Physician Optimized Postpartum Hypertension Treatment Trial:POP-HT試験」の結果を報告した。妊娠高血圧は有害な心臓リモデリングを引き起こし、その後の高血圧および心血管疾患の発症率を高めることが知られているが、血圧の自己モニタリングと医師の遠隔モニタリングによる指導が血圧管理を改善することが示唆されていた。JAMA誌2023年11月28日号掲載の報告。血圧の自己モニタリングと医師による降圧薬漸増の遠隔指導を、従来の産後ケアと比較 研究グループは、妊娠後に妊娠高血圧腎症または妊娠高血圧を合併し、出産後の退院時においても降圧薬の投与が必要な18歳以上の女性を登録し、介入群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。介入群では、Bluetooth対応のワイヤレスモニターOMRON Evolv血圧計(Omron Healthcare Europe製)を配布し、患者がスマートフォンアプリを用いて血圧の自己モニタリングを行うとともに、医師が最適化した降圧薬の漸増を遠隔指導した。対照群では通常の産後ケアを行った。 主要アウトカムは産後9ヵ月時の24時間平均拡張期血圧(DBP、ベースラインの産後血圧で調整)で、無作為化後少なくとも1回評価された集団を解析対象として線形混合モデルを用い、群間比較を行った。介入は産後の長期血圧管理に有用 2020年2月21日~2021年3月21日に、220例が介入群(112例)または対照群(108例)に無作為に割り付けられた。平均(±SD)年齢は32.6±5.0歳で、40%が妊娠高血圧、60%が妊娠高血圧腎症であった。最終追跡調査日は2021年11月2日、追跡期間は約9ヵ月であった。 主要アウトカムの解析対象200例(91%)において、産後(平均249±16日目)に測定した調整後24時間平均DBP(±SD)は、介入群71.2±5.6mmHg、対照群76.6±5.7mmHg、群間差は-5.80mmHg(95%信頼区間[CI]:-7.40~-4.20、p<0.001)であり、介入群で低かった。 同様に、24時間平均収縮期血圧は、介入群114.0±7.7mmHg、対照群120.3±9.1mmHg、群間差-6.51mmHg(95%CI:-8.80~-4.22、p<0.001)であり、介入群で低かった。 有害事象は、退院後14日間の再入院が41例に認められ、そのうち37例が血圧の上昇に関連していたが、介入群で少なかった(介入群8例[7%]vs.対照群29例[27%]、p<0.001)。

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