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第218回 2040年に向けさまざまな改革が本格始動、「骨太の方針2024」から見えてくる医療提供体制の近未来像

日本医師会会長選、松本氏大勝で2期目に突入こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。任期満了に伴う日本医師会の会長選は6月22日に投開票が行われ、現職の松本 吉郎氏が元副会長の松原 謙二氏を破り、再選を果たしました。投票総数378票で、松本氏334票、松原氏38票という、前回を上回る圧勝でした。エムスリーなどの報道によれば、選挙後に都内で開いた報告会で松本氏は、「財務省などから本当に強大な圧力がかかっており、多くの課題を抱えている。それに打ち勝つには、これまで以上に私ども役員がもっとしっかりと頑張って、先生方とも共闘して事に当たらなければ、本当に日本の医療が壊れてしまうと思う」と述べたとのことです。本連載の前回「第217回 迫る日医会長選、『もう日医の力は昔ほどではない』と元自民党医系議員、松本会長は再選後も“茨の道”か?」でも書いたように、財務省が提案してくるさまざまな政策に加え、秋にかけて激しさを増す政局にも翻弄される、まさに“茨の道”のスタートと言えそうです。2040年ころまでの医療政策の中心課題が盛り込まれた「骨太の方針2024」さて、今回は、6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太の方針2024)1)について書いてみたいと思います。今国会で成立した改正政治資金規制法を巡る与野党の激しい攻防の陰に隠れる形となり、例年に比べ、一般紙の報道は地味な印象でした。しかし、診療報酬・介護報酬の同時改定も終わり、新たな地域医療構想の検討も進む中、今回の「骨太」には、2040年頃までの医療政策の重点課題が盛り込まれています。ここでは医療提供体制関連の項目を中心に見てみたいと思います。かかりつけ医機能が発揮される制度整備と地域医療連携推進法人に言及、連携推進法人は4年連続で記述「骨太の方針2024」において医療や社会保障関連の内容は、主に「第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現」の「主要分野ごとの基本方針と重要課題(1)全世代型社会保障の構築」に書かれています。医療提供体制については、「国民目線に立ったかかりつけ医機能が発揮される制度整備、地域医療連携推進法人・社会福祉連携推進法人の活用、救急医療体制の確保、持続可能なドクターヘリ運航の推進や、居住地によらず安全に分べんできる周産期医療の確保、都道府県のガバナンスの強化を図る。地域医療構想について、2025年に向けて国がアウトリーチの伴走支援に取り組む」と、かかりつけ医機能が発揮される制度整備と地域医療連携推進法人に言及。本連載の「第214回 岸田首相、初夏の山形・酒田へ。2024年度から制度テコ入れの地域医療連携推進法人に再び脚光」でも予想したように、地域医療連携推進法人については4年連続の記述となり、同制度に対する国の期待を改めて感じ取ることができます。2040年頃を見据えた新たな“地域医療構想”の概要を年末までに現在検討が進む次なる地域医療構想については、「2040年頃を見据えて、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少等に対応できるよう、地域医療構想の対象範囲について、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体に拡大するとともに、病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る」と明記、2040年頃を次の目標年に置いて、かかりつけ医機能や医療・介護連携についても盛り込んだ新たな”地域医療構想”(仮称)の概要を2024年末までに決めるとしています。かかりつけ医機能が発揮される制度整備に加え、次なる地域医療構想も2024年中にその概要が固まるわけで、医療関係団体にとって、今年がとても重要な年となることがこうした記述からも見て取れます。医師の偏在解消に向けた総合的な対策のパッケージも年末までに策定昨年の「骨太の方針」と比べた大きな変化は、医師の偏在解消対策についての記述が以下のような長文で入ったことでしょう(昨年は「実効性のある医師偏在対策」という文言のみ)。「医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在の是正を図るため、医師確保計画を深化させるとともに、医師養成過程での地域枠の活用、大学病院からの医師の派遣、総合的な診療能力を有する医師の育成、リカレント教育の実施等の必要な人材を確保するための取組、経済的インセンティブによる偏在是正、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大等の規制的手法を組み合わせた取組の実施など、総合的な対策のパッケージを2024年末までに策定する」。医師偏在については、本連載の「第208回 『地域ごとの医師の数の割り当てを、本気で考えなければならない時代に入ってきた』と武見厚労大臣、地域偏在、診療科偏在の解消に向け抜本策の検討スタート」で、武見 敬三厚生労働大臣が、規制の導入も視野に入れて医師偏在解消の具体策をまとめる方針を示した、と書きましたが、その意気込みがそのままこの長文につながった感じです。「骨太」に書かれた対策は“ごった煮”感もありますが、とにかくあらゆる手立てを尽くして医師偏在を解消するということのようです。これもまた「2024年末までに策定する」となっているのもポイントです。なお、1点気になったのは、「経済的インセンティブによる偏在是正」の文言が入っていることです。こちらは、本連載の「第209回 これぞ財務省の執念?財政審・財政制度分科会で財務省が地域別単価導入を再び提言、医師過剰地域での開業制限も」で書いた、診療報酬への地域別単価導入と思われますが、財務省が(言葉を少し変えて)するりと潜り込ませたのでしょう。2024年末までにまとめられるという「総合的な対策のパッケージ」の内容に注目したいと思います。医療・介護DXについてはマイナ保険証を柱とする従来方針を改めて強調その他の医療関連の重要項目としては「DX」があります。「第2章 社会課題への対応を通じた持続的な経済成長の実現」の中の「3.投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応」の「(1)DX」で、医療・介護DXについて言及、「政府を挙げて医療・介護DXを確実かつ着実に推進する。このため、マイナ保険証の利用の促進を図るとともに現行の健康保険証について2024年12月2日からの発行を終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する。『医療DXの推進に関する工程表』に基づき、『全国医療情報プラットフォーム』を構築するほか、電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHRの整備・普及を強力に進める。調剤録等の薬局情報のDX・標準化の検討を進める」と、マイナ保険証をベースとして、全国医療情報プラットフォームを構築するという従来方針を改めて強調しています。今年の「骨太の方針」は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を2025年度に黒字化するという目標を盛り込みつつも、具体的な数値目標は設けられておらず、踏み込みが甘いとの見方がもっぱらです。また、岸田 文雄首相は「骨太の方針」を閣議決定した直後の記者会見で、物価高対策として電気・ガス代の補助や年金世帯への給付金支給を表明、「政府の歳出改革は一貫性を欠く」(6月22日付日本経済新聞)との批判もあります。とは言え、医療提供体制に関する項目については、「かかりつけ医機能」「次期地域構想」「医師偏在対策」「医療介護DX」とそれぞれの整合性が取れており、近未来を俯瞰する上では参考になる内容となっています。時間があれば、ご一読をお勧めします。参考1)経済財政運営と改革の基本方針2024/内閣府

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塩分の多量摂取はアトピー性皮膚炎のリスク?

 ナトリウムの多量摂取はアトピー性皮膚炎のリスクと関連しているのか。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のBrenda M. Chiang氏らは、これまでほとんど明らかにされていない食事とアトピー性皮膚炎との関連性について、一般住民を対象とした大規模コホート研究で、食事によるナトリウム摂取量の増加とアトピー性皮膚炎の関連性を調べた。その結果、ナトリウム摂取量が増加するとアトピー性皮膚炎の罹病リスクが上昇した。著者らは「食事によるナトリウム摂取量を制限することが、アトピー性皮膚炎に対する費用対効果が高く低リスクの介入となる可能性が示唆された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年6月5日号掲載の報告。 研究グループは、尿中ナトリウム量をバイオマーカーとした食事による推定ナトリウム摂取量と、アトピー性皮膚炎の関連を横断研究で調べた。英国のUK Biobankに登録された成人(37~73歳)を対象として、2006年3月31日~2010年10月1日に採取された単一スポット尿サンプルを用いて24時間尿中ナトリウム排泄量を調査した。主要アウトカムは、電子医療記録の診断・処方コードに基づく、アトピー性皮膚炎または活動性アトピー性皮膚炎であった。年齢、性別、人種・民族、社会的格差(タウンゼント剥奪指標)、教育レベルで補正した多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、関連性を検討した。データ解析は2022年2月23日~2024年3月20日に実施した。 主な結果は以下のとおり。・対象は21万5,832例(年齢[平均値±標準偏差]56.52±8.06歳、女性54.3%)であった。・推定24時間尿中ナトリウム排泄量(平均値±標準偏差)は3.01±0.82g/日であり、アトピー性皮膚炎の診断例は1万839例(5.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析において、推定24時間尿中ナトリウム排泄量の1g増加は、アトピー性皮膚炎(補正後オッズ比[aOR]:1.11、95%信頼区間[CI]:1.07~1.14)、活動性アトピー性皮膚炎(同:1.16、1.05~1.28)、およびアトピー性皮膚炎重症度(同:1.11、1.07~1.15)と、いずれも正の関連を示した。・米国国民健康栄養調査の1万3,014例を対象とした検証コホートでは、食事思い出し法を用いて推算した食事によるナトリウム摂取量の1g/日増加は、アトピー性皮膚炎のリスク上昇と関連していた(aOR:1.22、95%CI:1.01~1.47)。

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日本人高齢者におけるうつ病、認知症、死亡リスクの関係〜JAGES縦断的研究

 日本人高齢者を対象とした全国コホートに基づき、中国・広東薬科大学のShan Wu氏らは、うつ病、認知症、すべての原因による死亡率の関連および用量反応関係を調査した。The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences誌オンライン版2024年5月23日号の報告。 2010〜19年に実施された日本老年学的評価研究(JAGES)の65歳以上の参加者4万4,546例を対象に縦断的研究を実施した。抑うつ症状は老年期うつ病評価尺度(GDS-15)、認知症は公的な長期介護保険(LTCI)を用いて評価した。うつ病の重症度が認知症の発症率およびすべての原因による死亡率に及ぼす影響を評価するため、Fine-gray modelおよびCox比例ハザードモデルをそれぞれ用いた。認知症を介したうつ病とすべての原因による死亡率との関連性の評価には、因果媒介分析(CMA)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・軽度および重度の抑うつ症状は、いずれも認知症累積発症率およびすべての原因による死亡率と関連しており、とくに重度の抑うつ症状で関連が認められた(p<0.001)。・認知症の多変量調整ハザード比(HR)は、非うつ病患者と比較し、軽度うつ病患者で1.25(95%信頼区間[CI]:1.19〜1.32)、重度うつ病患者で1.42(95%CI:1.30〜1.54)であった(p for trend<0.001)。・すべての原因による死亡率の多変量調整HRは、非うつ病患者と比較し、軽度うつ病患者で1.27(95%CI:1.21〜1.33)、重度うつ病患者で1.51(95%CI:1.41〜1.62)であった(p for trend<0.001)。・年齢が若いほど、うつ病は認知症およびすべての原因による死亡率に強い影響を及ぼした。・認知症は、うつ病とすべての原因による死亡率の関連性を有意に媒介していることが示唆された。 著者らは「認知症や早期死亡を予防するために、重度のうつ病を標的とした介入は効果的な戦略となる可能性が示唆された」としている。

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T1N0のHER2+乳がんへの術後トラスツズマブ、生存ベネフィットは

 腫瘍径が小さく、リンパ節転移のないHER2陽性乳がん患者において、化学療法の有無にかかわらず術後トラスツズマブ療法が無浸潤疾患生存期間(iDFS)を有意に改善することが、米国臨床腫瘍学会のデータベースを用いた多施設共同後ろ向き解析により示された。米国・オハイオ大学のKai C. C. Johnson氏らによるNPJ Breast Cancer誌2024年6月19日号への報告より。 米国臨床腫瘍学会のCancerLinQデータベースを用いて、2010~21年の間に診断され、局所療法のみまたは局所療法+術後トラスツズマブ療法(+/-化学療法)を受けたT1a~c、N0のHER2陽性乳がん患者の生存転帰が比較された。主要評価項目はiDFSと全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした1,184例のうち、436例は局所療法のみ、169例は術後トラスツズマブ単剤療法、579例は術後トラスツズマブ+化学療法を受けていた。・ベースライン特性は3群でバランスがとれており、年齢中央値が60.4(18.9~95.4)歳、ホルモン受容体陽性が54.9%、T1mic:1.2%/T1a:17.1%/T1b:27.4%/T1c:51.9%であった。・単変量解析の結果、化学療法の有無にかかわらず術後トラスツズマブ療法を受けた場合、iDFS(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.93、p=0.003)およびOS(0.63、0.41~0.95、p=0.023)の有意な改善が認められ、多変量解析においても有意な改善が認められた。・3群単変量解析の結果、局所療法のみと比較して術後トラスツズマブ単剤療法(HR:0.51、95%CI:0.33~0.79、p=0.003)および術後トラスツズマブ+化学療法(0.75、0.58~0.97、p=0.027)でiDFSの有意な改善が認められた。・サブグループ解析の結果、T1b/T1cの患者ではiDFSとOSのいずれにおいても明らかなベネフィットがみられたが、T1aの患者ではみられなかった。

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局所進行食道がんの術前補助療法、3剤併用がOSを改善/Lancet

 局所進行食道扁平上皮がん(OSCC)の術前補助療法において、シスプラチン+フルオロウラシルによる2剤併用化学療法(NeoCF)と比較して、これにドセタキセルを追加した3剤併用化学療法(NeoCF+D)が全生存率を有意に改善し、日本における新たな標準治療となる可能性がある一方で、NeoCFに比べNeoCF+放射線(NeoCF+RT)では全生存率の有意な改善効果を認めないことが、国立がん研究センター中央病院の加藤 健氏らが実施した「JCOG1109試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年6月11日号に掲載された。日本の44施設の無作為化第III相試験 JCOG1109試験は、日本の44施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2012年12月~2018年7月に参加者を募集した(日本医療研究開発機構[AMED]などの助成を受けた)。 年齢20~75歳、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)が0または1で、未治療の局所進行OSCC(StageIB、II、III[T4は含まない])の患者601例を登録し、NeoCF群に199例(年齢中央値65歳[範囲:38~75]、女性11%)、NeoCF+D群に202例(64歳[41~75]、12%)、NeoCF+RT群に200例(65歳[30~75]、14%)を無作為に割り付けた。 NeoCF群ではCF療法を2コース、NeoCF+D群ではCF+D療法を3コース、NeoCF+RT群ではCF療法を2コース施行後に総線量41.4Gyの放射線照射を行った。引き続き、全例で食道切除術と局所リンパ節郭清を実施した。 主要評価項目は、ITT集団における全生存率とした。無増悪生存率、客観的奏効率、病理学的完全奏効率も良好 追跡期間中央値50.7ヵ月の時点における3年全生存率は、NeoCF群が62.6%(95%信頼区間[CI]:55.5~68.9)であったのに対し、NeoCF+D群は72.1%(65.4~77.8)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.68、95%CI:0.50~0.92、p=0.006)。一方、NeoCF+RT群の3年全生存率は68.3%(95%CI:61.3~74.3)であり、NeoCF群の62.6%(55.5~68.9)に比べ有意な差を認めなかった(HR:0.84、95%CI:0.63~1.12、p=0.12)。また、全生存期間中央値は、NeoCF+D群で未到達、NeoCF群で5.6年であった。 3年無増悪生存率は、NeoCF群の47.7%(95%CI:40.6~54.4)に比べNeoCF+D群は61.8%(54.7~68.1)と良好であった(HR:0.67、95%CI:0.51~0.88)。無増悪生存期間中央値は、NeoCF+D群で未到達、NeoCF群で2.7年だった。 測定可能病変を有する患者における客観的奏効率は、NeoCF群の42.4%(95%CI:30.3~55.2)と比較して、NeoCF+D群は76.4%(64.9~85.6)と高率であり、病理学的完全奏効の割合も、NeoCF群の2.0%(95%CI:0.6~5.1)に対しNeoCF+D群は19.8%(14.5~26.0)と良好だった。手術前後の安全性プロファイルはNeoCF+Dで比較的管理しやすい Grade3以上の発熱性好中球減少は、NeoCF群で193例中2例(1%)、NeoCF+RT群で191例中9例(5%)に発現したのに比べ、NeoCF+D群では196例中32例(16%)と頻度が高かった。また、術前補助療法の中止の原因となった治療関連有害事象は、NeoCF群(8/199例[4%])およびNeoCF+RT群(12/200例[6%])に比べNeoCF+D群(18/202例[9%])で高頻度であった。術後補助療法期間中の治療関連死は、NeoCF群で3例(2%)、NeoCF+D群で4例(2%)、NeoCF+RT群で2例(1%)に認めた。 Grade2以上の術後の肺炎、食道吻合部漏出、反回神経麻痺が、NeoCF群で185例中それぞれ19例(10%)、19例(10%)、28例(15%)に、NeoCF+D群で183例中18例(10%)、16例(9%)、19例(10%)に、NeoCF+RT群で178例中23(13%)、23例(13%)、17例(10%)に発現した。術後の院内死亡は、NeoCF群3例、NeoCF+D群2例、NeoCF+RT群1例であった。 著者は、「手術前後のNeoCF+D群の安全性プロファイルは、NeoCF群やNeoCF+RT群よりも管理しやすいものであった。本試験の目的は、NeoCF+D群とNeoCF+RT群の直接比較ではなく、この2つの群の優越性を認めた場合に、より大規模な比較試験に進む計画であった」と述べたうえで、「各治療群のリスクとベネフィットを明らかにするには、より長期の追跡による最新のデータの解析が必要である」としている。

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経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは症候性の閉塞性肥大型心筋症患者の最高酸素摂取量を有意に増加する(解説:原田和昌氏)

 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者の運動耐容能低下、および運動を制限する症状の主な決定因子の1つは、左室流出路狭窄による心内圧上昇である。経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは、心筋の過収縮を抑制することで左室流出路圧較差を減少させる。SEQUOIA-HCM試験は症候性HOCMを有する成人を、aficamtenまたはプラセボに無作為に割り付けた第III相二重盲検試験である。PIのMaron MS氏はMaron BJ先生の息子さんである。 主要エンドポイントは最高酸素摂取量のベースラインから24週までの変化量で、心肺運動負荷試験にて評価した。副次的エンドポイントは24週までのKCCQ-CSSの変化量、NYHA機能分類の改善、バルサルバ手技後の圧較差の変化量、バルサルバ手技後の圧較差30mmHg未満、中隔縮小治療の適応の有無、およびこれらの12週までの変化量、24週での心肺運動負荷時の総仕事量の変化であった。 平均年齢は59.1歳、59.2%が男性であり、ベースラインの安静時左室流出路圧較差の平均値は55.1mmHg、左室駆出率の平均値は74.8%であった。24週で最高酸素摂取量の変化量の平均値は、aficamten群1.8mL/kg/分、プラセボ群0.0mL/kg/分であった(群間差のp<0.001)。β遮断薬の有無でaficamtenの効果に差はなかった。副次的エンドポイントはすべてaficamten群でプラセボ群よりも有意に改善し、有害事象の発現率は同程度であった。NT-proBNP値はプラセボ群と比較してaficamten群で有意に低下した。 閉塞性肥大型心筋症にはmavacamtenがFDA承認されているが、aficamtenは結合部位が異なり選択性が高いという。また、半減期が短いため用量が漸増しやすく、効果消失もより短期間である。EFの過度の低下は認められていないが、一部NYHA 機能分類の改善に乏しい患者が存在することには、注意が必要である。ちなみに「ミオシン調整薬」であるmavacamtenのHFpEFに対する第II相試験が、すでに始まっている。

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昔と変わったメーカーや卸とのお付き合い【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第133回

薬局で関わる人といえば、医療機関のスタッフさんや患者さん、医薬品卸さんや製薬メーカーのMRさんなどがいますよね。医療機関のスタッフさんや患者さんは、薬局にとってはお客さんでもあるので、大事に丁寧に対応する薬局が多いと思いますが、卸さんや製薬メーカーのMRさんへの対応というのが、薬局の本性が出るというか、社会人としての対応が試される場面ではないかと思います。その卸さんや製薬会社との関係や対応について、昨今変化が生じています。今回は、直近で話題になった2件を紹介します。まず、「1社流通」についてです。製薬企業による取引卸の絞り込みや1社流通をめぐり、新たな「流通改善ガイドライン」で丁寧な情報提供の必要性が盛り込まれたのちも、現場の不満は止まらない状況だ。日本病院薬剤師会が15日に都内で開いた通常総会では、そもそも取引卸を限定することが医療機関へ十分に伝わっていないうえ、製品ごとの取扱卸が「わかりにくい」と訴える声が噴出。どこに注文すればいいかウェブで検索できるよう、メーカーが取扱卸の情報を「自社サイトですみやかに公表してほしい」と求める意見が出た。(2024年6月17日付 RISFAX)2019年ごろから、外資の製薬メーカーを中心に、製薬メーカー主導による卸の絞り込みが始まっています。実際にその影響を受けている薬局や医療機関もあるでしょう。薬局としては、リスクヘッジになったり価格交渉の手段になったりするので、複数の卸さんから購入できたほうがよいに決まっています。このような状況を受け、厚生労働省は2024年3月に流通改善ガイドラインを改訂しました。1社流通を禁止するとはなりませんでしたが、「1社流通を行うメーカーは、自らまたは卸と協力して医療機関や薬局に対して丁寧に情報提供を行うこと」と注意を呼びかけました。しかしながら、昨今の医薬品供給不安も重なり、医療機関や薬局からは「わかりにくい」「調べるのに時間がかかっている」などと不満の声が上がっています。どの卸からでも買えるという状況は、メーカー側にとっては負担があるため、1社流通がなくなるとは思えませんが、情報提供体制の整備などはぜひ進めてほしいなと思います。次に、公正競争規約(公競規)違反についてです。医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(卸公取協)より、2023年度に2件の違反があったことが発表されました(2024年6月3日付 日刊薬業より)。卸社長が知人の医療従事者を利害関係者として認識できずにコンサートチケットの無償提供を行った。卸のMSが、無償で医療機関に対し開業支援や勉強会などのコンサルティング業務に当たった。この2つの事例は、6段階ある措置のうち最も軽い「注意」とされ、協議会が当該企業に注意が行われました。また、この他にも、薬局などが医薬品の返品時に備え、どの卸から購入した製品かを分別する「シール貼り」をMSにやらせたという報告、お中元やお歳暮の買い出しの手伝い、輸液などの棚上げなどについて、MSやMRに依頼したという報告も上がっているようです。これらは依頼された側が断ったことで措置を講ずるまでには至りませんでした。いわゆる、薬局と卸さんとの関係、薬局と製薬メーカーとの関係において、無理な取引やお願いを強いていることなどはありませんか? 薬局での対応は、実はいろんな人に見られていて、公競規違反として罰せられることがありますので注意が必要です。

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「生活習慣病の療養指導計画」の減量目標の設定にとまどっている患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第47回

■外来NGワード「体重を減らしなさい」(あいまいな設定)「もっと食事に気を付けなさい」(あいまいな食事療法)「間食を止めなさい」(達成不可能な行動目標の設定)■解説2024年6月1日から診療報酬が改定となり、糖尿病・高血圧・脂質異常症が特定疾患療養管理料の対象疾患から除外され、「生活習慣病管理料(II)」となりました。外来の診察の中で、管理目標(体重、HbA1c、血圧、脂質)を各学会の診療ガイドラインなどに従って決定し、個々の患者さんに応じた目標設定や生活指導を行い、診察終了後に療養計画書を渡し、署名(サイン)してもらうことになります。ただし、在宅自己注射指導管理料などを算定している患者さんは除きます。具体的な減量目標や行動目標を患者さんとともに設定することが、生活習慣病の療養指導につながります。また、管理目標や行動目標を設定する手順をフォーマット化しておくことで、医師の負担軽減にもつながります。生活習慣病の療養指導計画について説明した後、肥満を伴う生活習慣病患者の場合、減量目標を設定します。3%減、5~10%減、10~15%減、15%減以上など目的に応じて設定を変えます。まずは、「目標とする体重はどれくらいですか?」と理想とする大きな減量目標を尋ねます。その減量目標がすぐに達成不可能と考えられる場合には、3ヵ月とか期限を区切り、現実的な減量目標を再設定します。そして、その減量目標を達成するために必要なエネルギー摂取量の減少の目安について説明します。古くは1ポンド(約450g)減で3,500kcal減のエネルギー収支とする“Wishnofsky's rule”というのがありますが、たまに食べ過ぎることもあるので「3ヵ月で3kg減なら300kcal減」(2kg減なら200kcal減、1kg減なら100kcal減)と伝えおくと、何をすればよいか患者さんもイメージしやすくなります。このように患者さんに尋ねながら、目標を患者さんと共に計画を立てることで、治療の満足度も上がります。■患者さんとの会話でロールプレイ医師〇〇さん、今年の6月から国の診療報酬が改定となり、「療養指導計画」を作ることになりました。患者「療養指導計画」、それは何ですか?医師これです。(療養指導計画をみせながら)今からいくつか質問していきますね。患者いいですよ。先生も大変ですね。(気遣ってくれる言葉)医師いえいえ、ありがとうございます。最初の質問は、目標とする体重はいくつくらいですか?(減量目標の設定)患者そうですね。今は70kgですが、若い頃は痩せていたので…50kg台にはなりたいです。医師なるほど。それはいいですね。大きな目標はそれにして、3ヵ月だとどうですか?(期間を限定する)患者3ヵ月ですか…(少し考えてから)それなら、2kg減にします。医師それは、いい目標ですね。2kg減量すれば、血液検査の結果も良くなると思いますよ。(肥満体重の3%減の効果を説明)患者そうですか。それなら頑張らなきゃ…。医師3ヵ月で2kg減なら、1日当たり200kcal減らすといいですよ。(食事制限の目安を提示)患者なるほど。200kcal減ですか…。ご飯は気を付けているし、やっぱり間食ですかね。(気付きの言葉)医師それでしたら、「間食を控える」ことを目標にしましょうか。次回は、間食を控える工夫についてお話ししますね。患者はい。頑張って、やってみます。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「目標とする体重はいくらくらいですか?」(大きな減量目標の設定)「3ヵ月なら、どのくらいの減量目標になりますか?」(現実的な減量目標の再設定)「3ヵ月で3kg痩せるなら、1日当たり300kcal減するといいですよ!」(減らすべきエネルギー量の提示) 1)Ryan DH, et al. Curr Obes Rep. 2017;6:187-194.2)WISHNOFSKY N. Metabolism. 1952;1:554-555.3)坂根直樹編著. 朝晩ダイエットでスマートライフ.2023;東京法規.

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「良かった!」と言われる教育講演やメンタルヘルス研修のコツ【実践!産業医のしごと】

産業医には、衛生委員会やメンタルヘルス研修など、多岐にわたる契約企業に対する教育活動の機会があります。そのうちの1つである「衛生講話」は、産業医が健康管理や衛生管理を目的に、安全衛生委員会で行う短時間の研修です。衛生講話には法的な実施義務はなく、事業所で独自に行う活動です。私も契約企業から毎月の衛生講話の依頼を受けており、最初は毎月何を話すか悩むこともありました。効果的な教育内容を提供するためには、適切な教育設計が重要です。そこで今回は、教育効果を高めるためのポイントや、忙しい中でも効率的に資料を作成する方法を紹介します。1. 教育活動は産業医を知ってもらう「チャンス」産業医が教育活動を行う機会は多く、代表的なものには安全衛生委員会、新入社員研修、ラインケア研修、労働衛生教育などがあります。産業医の通常活動である相談や面談は個別対応が多いため、実際に接するのは全社員の数%、ということが多いでしょう。一方で、教育は多くの社員に情報を伝える絶好の機会です。職場全体の安全意識やヘルスリテラシーを向上させるためには、教育研修の機会を積極的に活用することが重要です。教育活動には、資料作成などの準備が必要ですが、産業医を知ってもらう良い機会でもあります。産業医活動は予防医学であり、教育を通じて職場全体に健康や安全の重要性を伝えることができます。このチャンスを逃さないようにしましょう。2. ポイントは「計画」と「設計」効果的な教育には、事前の「計画」と「設計」が欠かせません。以下のステップを踏んで資料を作成しましょう。1)受講者は「誰か」まず、受講者がどのような人なのかを考えます。受講者の中には業務命令で参加する人も多く、モチベーションの低い人もいます。また年齢や性別、役職などによっても、話の内容は変わります。受講者のニーズを意識するためにも、対象者の分析は重要です。2)受講者は「何を」知りたいか産業医が伝えたいことを一方的に話すだけでは、学習効果は高まりません。受講者が「自分に関係のある内容だ」と感じることで、講義への興味やモチベーションが高まります。とくに業務命令で参加するモチベーションの低い受講者に対しては、彼らが直面する具体的な課題や問題を取り上げ、それに対する解決策を提示することで、講義の価値を感じてもらうことができます。3)受講者に「どうなって」ほしいのか教育の目的と具体的な学習のゴールを設定します。ゴールとは、「何を、どのような条件で、どれくらいできるようになるか」を考えることです。たとえば、睡眠に関する教育を行う場合、受講者に知識を得てもらうよりも、「自らの睡眠を改善する行動をとれるようになる」ことをゴールに設定します。その場合、研修の初めに「睡眠をチェックした結果を振り返りながら、最後に良い睡眠のための行動目標を1つ決めましょう」と具体的なゴールを設定しておくと、受講者が研修を通じて何を考えるべきかが明確になります。4)受講者にも「参加」してもらう効果的な研修を行うためには、アクティブラーニングの導入が重要です。アクティブラーニングとは、参加者が主体的に学習に関与する教育手法であり、学習効果を高める効果があるとされています。受動的な講義よりも、研修の中にグループディスカッションやロールプレイングといった受講者が参加するステップを入れることで、高い学習効果をもたらします。時間の制約などで受動的な講義になる場合にも、簡単なアクティブラーニングを入れる工夫をしましょう。講義中に質問を投げ掛けてグー・チョキ・パーの3択で回答してもらう、考えを1分で紙に書いてもらう、隣の人と話し合う・意見交換する、などのステップを取り入れるだけでも大きな効果があります。より具体的には、糖尿病の衛生講話をする場合であれば、「1日の必要カロリーを計算してもらう」「おにぎり1個に必要なウォーキング時間を3択で回答してもらう」などのアクティブラーニングを取り入れることで、参加者が積極的に学び、学習内容が定着しやすくなります。3. 信頼できる「ネタ元」を確保する毎月衛生講話の資料を作成するのは大変ですが、信頼できる情報源を活用することで効率化できます。厚生労働省や学会のサイト、製薬会社や医師向け情報サイトなど、信頼性の高い情報源を利用しましょう。また、健康教育や労働衛生教育に関する資料を提供している書籍や研修会を活用することも有効です。たとえば、『使える! 健康教育・労働衛生教育65選』(森 晃爾 編、日本労務研究会、2020年)という書籍には、版権フリーで使用できるパワーポイントデータが収載されています。また、産業医アドバンスト研修会のサイトでは、産業医のスキルアップのためのオンライン勉強会として、毎月衛生講話の資料が提供されています。これらのリソースを活用することで、資料作成の手間を省くことができます。まとめ産業医として効果的な労働衛生教育を行うことは、幅広い労働者に予防活動を提供するために重要です。しかし、教育の準備が不十分であれば、ゆですぎた麺のように歯応えがなく、がっかりされるかもしれません。一方で、教育の質を向上させる工夫を続けることで、皆が「この産業医、頼りになるな!」と思ってくれるはずです。皆さんと一緒に、良い教育を通じて、労働者の健康と安全を守っていきましょう!参考柴田 喜幸. 産業保健スタッフのための教え方26の鉄則 イケてる健康教育はインストラクショナルデザインで作る!. 中央労働災害防止協会;2020.

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英語で「絶飲食」は?【1分★医療英語】第136回

第136回 英語で「絶飲食」は?《例文》患者 I am hungry, Can I eat something?(おなかがすいたのですが、何か食べてもいいですか?)看護師The doctor instructed you to be on NPO for the procedure this afternoon.(この午後の検査のために、医師から絶飲食の指示がありました)《解説》今回は“NPO”という表現の解説です。元々はラテン語で“nil per os”を指し、英語では“nothing by mouth”が同じ意味になります。直訳では「口から何も入れない」つまり「絶飲食」という意味です。米国の医療現場ではこれを略した“NPO”(エヌピーオー)という用語を頻繁に使います。手術、全身麻酔の前や経口摂取が困難で輸液のみで管理したいときに、「“NPO”にしましょう」というように使われます。「彼は絶飲食です」と伝えたいときには、“He is on NPO”というように“on”を用います。補足ですが、《例文》の“procedure”という単語は、医療の領域においては広く「手技を用いるもの」全般を指します。ですので、胃カメラ、生検、手術などは全部“procedure”で表すことが可能です。講師紹介

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悪寒戦慄の重要性【とことん極める!腎盂腎炎】第3回

悪寒戦慄ってどれくらい重要ですか?Teaching point(1)悪寒戦慄は菌血症を予測する症状である(2)重度の悪寒戦慄をみたら早期に血液培養を採取すべし《今回の症例》基礎疾患に糖尿病と高血圧、脂質異常症がある67歳女性が半日前に発症した発熱と寒気で救急外来を受診した。トリアージナースより、体温以外のバイタルは落ち着いているが、ガタガタ震えていて具合が悪そうなので準緊急というより緊急で診察をしたほうがよいのでは、という連絡を受け診察開始となった。症状としては頭痛、咽頭痛、咳嗽、喀痰、腹痛、下痢、腰痛などの症状はなく、悪寒戦慄と全身の痛み、倦怠感を訴えていた。general appearance:ややぐったり、時折shiveringがみられる意識清明、体温:39.4℃、呼吸数:18回/分、血圧:152/84mmHg、SpO2 99%、心拍数:102回/分頭頸部、胸腹部、四肢の診察で目立った所見はない。簡易血糖測定:242mg/dLqSOFAは陰性ではあるが、第1印象はぐったりしていて、明確な悪寒と戦慄がある。診察上は明確な熱源が指摘できない。次にどうするべき?1.悪寒戦慄は菌血症の予測因子である菌血症は、感染症の予後不良因子であり、先進国の主要な死因の上位7番目に位置する疾患である1)。具体的には、市中感染型菌血症の1ヵ月率は10~19%、院内血流感染症の死亡率は17~28%である2)。したがって菌血症の早期予測は、迅速な治療開始を助け、臨床転帰の改善につながるため重要である。そして悪寒や戦慄、いわゆる“chill”は発熱以外で菌血症の鑑別かつ有効な予測因子として報告がある唯一の症状である。では悪寒はどれくらい菌血症を予測できるのだろうか?まとめて調べた文献によると3)、発熱がある患者:陽性尤度比(LR+)=2.2、陰性尤度比(LR−)=0.56発熱がない患者:LR+=1.6、LR−=0.84といわれている。そして徳田らの報告4)では、shaking chill(厚い毛布にくるまっていても全身が震え、寒気がする悪寒):LR+=4.7moderate(非常に寒く、厚手の毛布が必要な程度の悪寒):LR+=1.7mild(上着が必要な程度の悪寒):LR+=0.61のように悪寒の重症度がより菌血症に関連することを報告されている。したがって、悪寒や戦慄の病歴聴取は重要だが、shaking chillかどうかまで踏み込んでの病歴聴取が望ましいといえる。さらに、悪寒のあと2時間以内が血液培養が陽性になりやすいという報告5)もあるので、悪寒や戦慄をみかけたらすかさず血液培養を採取するのがおすすめだ。なお、腎盂腎炎においても悪寒は菌血症の予測因子といわれている6)が、何事にも例外はあり、インフルエンザで悪寒を経験した読者もいるであろう。悪性リンパ腫や薬剤熱でも悪寒は来すので過信は禁物となる。2.悪寒戦慄は腎盂腎炎診療でも大事な症状である腎臓は血流豊富な臓器であり、急性腎盂腎炎において42%で血液培養が陽性になるといわれている7)。そして側腹部痛か叩打痛があり、膿尿か細菌尿があれば腎盂腎炎は適切な鑑別診断といえるが8)、腎盂腎炎は下部尿路症状(排尿時痛、頻尿、恥骨部の痛み)、上部尿路症状(側腹部痛やCVA叩打痛陽性)を来す頻度は多いとはいえない。実地臨床では悪寒戦慄、ぐったり感(toxic appearance)、嘔気や倦怠感という症状が主訴になる腎盂腎炎は少なくなく、その場合は血液培養が腎盂腎炎の診断に役立つ8)。合併症のない腎盂腎炎における血液培養に関しては議論の分かれることではあるが9,10)、それは腎盂腎炎の検査前確率が高いという臨床状況においての話であり、前述のように尿路症状がなく悪寒戦慄やぐったり感(toxic appearance)がメインでの場合は敗血症疑いであれば1h bundleの達成、すなわち感染症のfocus同定とバイタルの立て直しと血液培養採取と抗菌薬投与を早急に行わなければならない11)。また、菌血症疑いの状況であっても血液培養の取得は必要になる。したがって悪寒戦慄のチェックは重要であるといえる。3.菌血症の疫学を抑える菌血症の頻度が多い疾患はどのようなものだろうか?血液培養で何が陽性になったか、患者の基礎疾患や症状にもよるが全体的な頻度としては尿路感染症22〜31%、消化管9〜11%、肝胆道7〜8%、気道感染(上下含む)9〜20%、不明18〜23%が主な頻度となる12-14)。このデータと各感染症の臨床像から考えるに、明確な随伴症状やfocusがなく悪寒戦慄があり、菌血症を疑う患者で想定すべきは尿路感染、胆道系感染、血管内カテーテル感染といえるだろう。逆に肺炎は発熱の原因としては頻度が高いが血液培養が陽性になりにくい感染症であり、下気道症状がなく症状が発熱と悪寒のみの状況であれば肺炎の可能性はかなり低いと考えられる。4.血液培養採取のポイントを抑える血液培養の予測ルールに関してはShapiroらのルールの有用性が報告されている。やや煩雑だが2点以上で血液培養の適応というルールである。特異度は29〜48%だが、感度は94〜98%と高く外的妥当性の評価もされているのが優れている点になる(表)15,16)。画像を拡大するその他、簡易的なものとしては白血球の分画で時折みられるband(桿状好中球)が10%以上(bandemia)であれば感度42%、特異度91%、オッズ比7.15で菌血症を予測するという報告もある2)。そのためbandemiaがあれば血液培養採取を考慮してもよいと思われる。1)Goto M, Al-Hasan MN. Clin Microbiol Infect. 2013;19:501-509.2)Harada T, et al. Int J Environ Res Public Health. 2022;19:22753)Coburn B, et al. JAMA. 2012;308:502-511.4)Tokuda Y, et al. Am J Med. 2005;118:1417.5)Taniguchi T, et al. Int J Infect Dis 2018;76:23-28.6)Nakamura N, et al. Intern Med. 2018;57:1399-1403.7)Kim Y, et al. Infect Chemother. 2017;49:22-30.8)Johnson JR, Russo TA. N Engl J Med. 2018;378:48-59.9)Long B, Koyfman A. J Emerg Med. 2016;51:529-539.10)Karakonstantis S, Kalemaki D. Infect Dis(Lond). 2018;50:584-5911)Evans L, et al. Crit Care Med. 2021;49:e1063-e1143.12)Larsen IK, et al. APMIS. 2011;119:275-279.13)Pedersen G, et al. Clin Microbiol Infect. 2003;9:793-802。14)Sogaard M, et al. Clin Infect Dis. 2011;52:61-69.15)Shapiro NI, et al. J Emerg Med. 2008;35:255-264.16)Jessen MK, et al. Eur J Emerg Med. 2016;23:44-49.

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第220回 1型糖尿病患者が細胞移植治療でインスリン頼りを脱却

1型糖尿病患者が細胞移植治療でインスリン頼りを脱却幹細胞から作るVertex Pharmaceuticals社の膵島細胞VX-880移植治療の有望な第I/II相FORWARD試験結果がこの週末の米国糖尿病協会(ADA)年次総会で報告されました。VX-880が投与された1型糖尿病(T1D)患者のインスリン使用が減るか不要となっており、1回きりの投与でインスリンに頼らずとも済むようになる可能性が引き続き示されています1,2)。最近の調査結果によると、先進の技術使用にもかかわらず、T1D患者の6%ほどが低血糖の自覚困難で誰かの助けを要する深刻な低血糖を繰り返し被っています3)。低血糖はT1D患者にしばしば認められます。しかしT1D患者は時と共にその自覚が困難になることがあり、その症状を感じられなくなる恐れがあります。自覚なく治療されずじまいの低血糖はやがて混乱、昏睡、発作、心血管疾患などの深刻な低血糖イベント(SHE)を招き、下手すると死に至ります。FORWARD試験は先立つ1年間のSHE回数が2回以上で、低血糖の自覚が困難なT1D患者を募って実施されています。当初の被験者数は17例でしたが、良好な結果が得られていることを受けてさらに約20例が試験に加わることになっています。当初の予定人数の17例はすでに組み入れ済みで、そのうち14例はVX-880投与に至っています。VX-880はヒト幹細胞から作られる膵島細胞を成分とし、試験では被験者の肝門脈に注入されました。VX-880が投与された14例のうち、目標用量(full dose)が1回きり投与された12例の経過は良好で、全員に膵島細胞が定着しました。投与前には生来のインスリン分泌の指標であるCペプチドが空腹時に検出できませんでしたが、VX-880投与後90日までに糖に応じたインスリン生成が確認されています。12例中11例はインスリン投与が減るか不要になりました。経過180日を過ぎた10例のうち7例はインスリン投与が不要となり、2例は日々のインスリン使用がおよそ70%少なくて済むようになりました。最終観察時点で12例全員のHbA1cは米国糖尿病協会(ADA)が掲げる目標である7%未満に落ち着いており、常時測定の糖濃度は70%超のあいだ目標範囲である70~180mg/dLに収まっていました。少なくとも1年間が経過した3例はSHEなしで90日目以降を過ごせており、インスリンに頼ることなくHbA1c 7%未満を達成しています。主だった血糖指標一揃いの大幅な改善、SHEの抑制、インスリン投与頼りの脱却の効果をみるに、VX-880はT1Dの治療を根底から変え、患者の負担を大幅に軽減しうると試験医師の1人Piotr Witkowski氏は言っています2)。玉に瑕なことにVX-880投与患者は免疫抑制治療を続ける必要があります。VX-880で備わった膵島細胞を守って免疫に排除されずに居続けられるようにするためです。そこでVertex社は免疫抑制治療不要の細胞治療VX-264の開発も進めています。VX-264はVX-880に免疫から守る覆いをつけたものであり、VX-880と同様に第I/II相試験が進行中です4)。参考1)Expanded FORWARD Trial Demonstrates Continued Potential for Stem Cell-Derived Islet Cell Therapy to Eliminate Need for Insulin for People with T1D / PRNewswire2)Vertex Announces Positive Results From Ongoing Phase 1/2 Study of VX-880 for the Treatment of Type 1 Diabetes Presented at the American Diabetes Association 84th Scientific Sessions / BUSINESS WIRE 3)Sherr JL, et al. Diabetes Care. 2024;47:941-947.4)NCT05791201(ClinicalTrials.gov)

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日本における入院患者のせん妄に対する新規睡眠導入薬の予防効果〜レトロスペクティブコホート研究

 新規睡眠導入薬であるラメルテオン、スボレキサント、レンボレキサントなどは、せん妄の高リスク患者の予防に有用であることが示唆されている。しかし、入院患者において、すべての新規睡眠導入薬のせん妄予防効果を同時に評価した研究は、これまでなかった。久留米大学の逸見 竜次氏らは、精神疾患以外で一般内科および外科に入院し、不眠症のリエゾン介入を受けた患者を対象に、睡眠導入薬の使用とせん妄予防との関連を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年6月3日号の報告。 精神疾患以外で一般内科および外科に入院し、不眠症の相談・リエゾンのために精神科医のコンサルトを受けた患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。せん妄の診断は、精神科専門医がDSM-Vを用いて行った。せん妄発症と関連する因子として、睡眠導入薬の種類、年齢、性別、せん妄リスク因子を診療記録よりレトロスペクティブに調査した。せん妄発症のリスク因子は、多変量ロジスティック回帰分析による調整オッズ比(aOR)として算出した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者710例のうち、257例(36.2%)がせん妄を発症した。・スボレキサント(aOR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.40〜0.94、p=0.02)、レンボレキサント(aOR:0.23、95%CI:0.14〜0.39、p<0.0001)の使用は、せん妄発症リスクを有意に低下させた。・ベンゾジアゼピン(aOR:1.90、95%CI:1.15〜3.13、p=0.01)の使用は、せん妄リスクを有意に増加させた。・ラメルテオン(aOR:1.30、95%CI:0.84〜2.01、p=0.24)およびZ薬(aOR:1.27、95%CI:0.81〜1.98、p=0.30)は、せん妄リスクとの有意な関連が認められなかった。 著者らは、「さまざまな疾患により入院している患者のせん妄予防に対し、スボレキサントとレンボレキサントの使用が有用である可能性が示唆された」としている。

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医師が年収アップのために行っていることは?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(火)に会員医師1,004人を対象に、「年収に関するアンケート」を実施した。その中で、自身のワークライフバランスの希望や、年収を増やすために行ったこと/行っていることについて尋ねた。 調査では、年収とワークライフバランスの希望について、(1)勤務時間は大きく増えてもよいので、年収を大きく増やしたい、(2)勤務時間は少し増えてもよいので、年収を少し増やしたい、(3)年収は少し減ってもよいので、勤務時間を少し減らしたい、(4)年収は大きく減ってもよいので、勤務時間を大きく減らしたい、の4つから最も近いものを選んでもらった(以下、それぞれ「勤務時間大きく増/年収大きく増」、「勤務時間やや増/年収やや増」、「勤務時間やや減/年収やや減」、「勤務時間大きく減/年収大きく減」)。年収を増やすために行ったこと/行っていることはフリーコメントで記載してもらった。年収3,000万円以上はさらに大きく年収アップを希望 全体では、「勤務時間大きく増/年収大きく増」が11%、「勤務時間やや増/年収やや増」が47%、「勤務時間やや減/年収やや減」が38%、「勤務時間大きく減/年収大きく減」が3%で、約60%の医師が年収アップを優先していた。「勤務時間大きく増/年収大きく増」を最も多く希望していたのは、最高年収帯であった年収3,000万円以上の医師(20%)であった。年代別では、年代が上がるほど勤務時間の減少を希望していた。「勤務時間大きく増/年収大きく増」は男性で顕著 男女別にみると、男性では「勤務時間大きく増/年収大きく増」が12%、「勤務時間やや増/年収やや増」が48%、「勤務時間やや減/年収やや減」が36%、「勤務時間大きく減/年収大きく減」が4%であった一方、女性ではそれぞれ5%、43%、49%、3%であり、男女差が明確になった。男性のほうが「勤務時間大きく増/年収大きく増」を望む傾向は、どの年代でも同様であった。「勤務時間大きく増/年収大きく増」を最も希望するのは総合診療科 病床数別では、「勤務時間大きく増/年収大きく増」および「勤務時間やや増/年収やや増」と回答したのは、20床未満が51%、20床以上が61%であった。勤務先別では、一般診療所が55%、一般病院が57%、大学病院が73%であった。「勤務時間大きく増/年収大きく増」と回答した割合が多かった診療科は、総合診療科(36%)、呼吸器外科(25%)、耳鼻咽喉科(24%)であった。年収を増やすために行ったこと/行っていることは? 最後に、これまで年収アップのために行ったこと/行っていることをフリーコメントで回答してもらった。残業やアルバイトが圧倒的に多かったが、長期的な年収アップを目指して資格取得や留学、技術習得に励むなど、多岐にわたる回答が寄せられた。また、人脈を広げたり、外勤先のスタッフ/職員との関係を良好に保ったりするなど、人間関係の重要性も伺えた。 その他、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第5回】ワークライフバランス

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米国アカデミー、Long COVIDの新たな定義を発表

 米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)※は6月11日、「Long COVIDの定義:深刻な結果をもたらす慢性の全身性疾患(A Long COVID Definition A Chronic, Systemic Disease State with Profound Consequences)」を発表した。Long COVID(コロナ罹患後症状、コロナ後遺症)の定義は、これまで世界保健機構(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)などから暫定的な定義や用語が提案されていたが、共通のものは確立されていなかった。そのため、戦略準備対応局(ASPR)と保健次官補室(OASH)がNASEMに要請し、コンセンサスの取れたLong COVIDの定義が策定された。全166ページの報告書となっている。本定義は、Long COVIDの一貫した診断、記録、治療を支援するために策定された。 本定義によると、「Long COVIDは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後に発生する感染関連の慢性疾患であり、1つ以上の臓器系に影響を及ぼす継続的、再発・寛解的、または進行性の病状が少なくとも3ヵ月間継続する」としている。 本疾患は、世界中で医学的、社会的、経済的に深刻な影響を及ぼしているが、現在、いくつかの定義が混在しており、共通の定義がなかった。合意のなされた定義がないことは、患者、臨床医、公衆衛生従事者、研究者、政策立案者にとって課題となり、研究が妨げられ、患者の診断と治療の遅れにつながっているという。報告書を作成した委員会は、学際的な対話と患者の視点に重点を置き、策定に当たり1,300人以上が関わった。 Long COVIDの徴候、症状、診断可能な状態を完全に挙げると200項目以上に及ぶという。主な症状は以下のように記載されている。・息切れ、咳、持続的な疲労、労作後の倦怠感、集中力の低下、記憶力の低下、繰り返す頭痛、ふらつき、心拍数の上昇、睡眠障害、味覚や嗅覚の問題、膨満感、便秘、下痢などの単一または複数の症状。・間質性肺疾患および低酸素血症、心血管疾患および不整脈、認知障害、気分障害、不安、片頭痛、脳卒中、血栓、慢性腎臓病、起立性調節障害(POTS)およびその他の自律神経失調症、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、線維筋痛症、結合組織疾患、脂質異常症、糖尿病、および狼瘡、関節リウマチ、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患など、単一または複数の診断可能な状態。 Long COVIDの主な特徴は以下のとおり。・無症状、軽度、または重度のSARS-CoV-2感染後に発生する可能性がある。以前の感染は認識されていた場合も、認識されていなかった場合もある。・急性SARS-CoV-2感染時から継続する場合もあれば、急性感染から完全に回復したようにみえた後に、数週間または数ヵ月遅れて発症する場合もある。・健康状態、障害、社会経済的地位、年齢、性別、ジェンダー、性的指向、人種、民族、地理的な場所に関係なく、子供と大人両方に影響を及ぼす可能性がある。・既存の健康状態を悪化させたり、新たな状態として現れたりする可能性がある。・軽度から重度までさまざま。数ヵ月かけて治まる場合もあれば、数ヵ月または数年間持続する場合もある。・臨床的根拠に基づいて診断できる。現在利用可能なバイオマーカーでは、Long COVIDの存在を決定的に証明するものはない。・仕事、学校、家族のケア、自分自身のケアなどの能力を損なう可能性がある。患者とその家族、介護者に深刻な精神的、身体的影響を及ぼす可能性がある。 報告書によると、新たなLong COVIDの定義は、臨床ケアと診断、医療サービス、保険適用、障害給付、学校や職場の宿泊施設の適格性、公衆衛生、社会サービス、政策立案、疫学とサーベイランス、民間および公的研究、とくに患者とその家族や介護者に対する一般の認識と教育など、多くの目的に適用できるという。※NASEMは、科学、工学、医学に関連する複雑な問題を解決し、公共政策の決定に役立てるために、独立した客観的な分析とアドバイスを国に提供する非営利の民間機関。同アカデミーは、リンカーン大統領が署名した1863年の米国科学アカデミーの議会憲章に基づいて運営されている。

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重症敗血症へのβ-ラクタム系薬投与、持続と間欠の比較(BLING III)/JAMA

 重症敗血症患者に対するβ-ラクタム系抗菌薬による治療では、間欠投与と比較して持続投与は、90日の時点での死亡率に有意差を認めないことが、オーストラリア・Royal Brisbane and Women's HospitalのJoel M. Dulhunty氏らが実施した「BLING III試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年6月12日号で報告された。7ヵ国104のICUで無作為化第III相試験 BLING III試験は、7ヵ国の104の集中治療室(ICU)で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2018年3月~2023年1月に参加者を登録し、2023年4月に90日間の追跡を完了した(オーストラリア・国立保健医療研究評議会などの助成を受けた)。 年齢18歳以上、ICUに入室し、無作為化前の24時間以内にタゾバクタム・ピペラシリンまたはメロペネムの投与を開始した敗血症患者7,031例(平均年齢59[SD 16]歳、女性35%)を登録し、処方された抗菌薬を持続静注する群に3,498例、間欠静注する群(対照群)に3,533例を無作為に割り付け、担当医が決定した期間またはICU退室のいずれか早い期日まで投与した。 主要アウトカムは、無作為化から90日以内の全死因死亡とした。90日死亡率、持続投与群24.9% vs.間欠投与群26.8%で有意差なし 最も頻度の高い主要感染部位は肺(4,181例、59.5%)で、次いで腹腔内(916例、13.0%)、血液(562例、8.0%)、泌尿器(380例、5.4%)の順であった。投与期間中央値は、持続投与群が5.8日(四分位範囲[IQR]:3.1~10.2)、間欠投与群は5.7日(3.1~10.3)だった。 90日以内に、持続投与群の3,474例中864例(24.9%)、間欠投与群の3,507例中939例(26.8%)が死亡し(絶対群間差:-1.9%[95%信頼区間[CI]:-4.9~1.1]、オッズ比[OR]:0.91[95%CI:0.81~1.01])、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.08)。 事前に定義した5つのサブグループ(肺感染[あり、なし]、β-ラクタム系抗菌薬の種類[タゾバクタム・ピペラシリン、メロペネム]、年齢[65歳未満、65歳以上]、性別、APACHE IIスコア[25点未満、25点以上])のいずれにおいても、90日死亡率に関して持続投与群と間欠投与群に有意な差はなかった。臨床的治癒率は持続投与群で良好 副次アウトカムである14日の時点までに臨床的治癒を達成した患者は、間欠投与群が3,491例中1,744例(50.0%)であったのに対し、持続投与群は3,467例中1,930例(55.7%)と有意に良好であった(絶対群間差:5.7%[95%CI:2.4~9.1]、OR:1.26[95%CI:1.15~1.38]、p<0.001)。 また、他の3つの副次アウトカム(14日以内の新規感染/菌定着/多剤耐性菌またはClostridioides difficile感染、全死因によるICU内死亡、全死因による院内死亡)は、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。 有害事象は、持続投与群で10件(0.3%)、間欠投与群で6件(0.2%)発生した。このうち重篤な有害事象は持続投与群の1件で認めた脳症で、誤嚥性肺炎と心停止をもたらし、敗血症性ショックで死亡した。このイベントは、担当医によってメロペネムに関連する可能性があると評価された。 著者は、「効果推定値のCIには、この患者集団におけるβ-ラクタム系抗菌薬の持続投与には重要な効果がない可能性と、臨床的に重要な有益性がある可能性の両方が含まれる」としている。

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将来のイベント予防のためにPCIを行う余地はあるのか?(解説:山地杏平氏)

 FAME研究において、部分冠血流予備量比(FFR)が0.80以上で虚血陰性と判断された病変では、経皮的冠動脈形成術(PCI)を行わないほうが、イベントが少ないことが示されました。一方で、FFRが0.80以上であり、侵襲的な治療を行わなかった病変においても、一定の頻度で進行による再血行再建や急性冠症候群の発症が見られることがあります。 PREVENT試験では、PCIの適応とならないFFRが0.80以上の中等度狭窄病変において、血管内イメージングを用いて不安定プラークが存在した場合に、PCIが最適な内科治療(OMT)と比較して予後を改善するかどうかを無作為比較されました。 2年間の追跡時点での心臓死、心筋梗塞、再血行再建術、不安定狭心症による入院が主要エンドポイントとして設定され、PCI群で3例(0.4%)、OMT群で27例(3.4%)と有意に差を認めました。OMT群でのイベントの内訳は、心臓死6例、心筋梗塞13例、再血行再建術29例、不安定狭心症による入院12例であり、一般的な臨床研究におけるイベントと同等のものであり、とくに偏ったものではなかったようです。 不安定プラークの定義は、PROSPECT研究やLRP研究などの過去の研究に基づいて設定されており、血管内超音波(IVUS)、Virtual Histology IVUS(VH-IVUS)、光干渉断層撮影(OCT)、Near infrared spectroscopy IVUS(NIRS-IVUS)のいずれかを用いて、定義された基準のうち2つを満たすものとされました。実際には、97%の症例でminimal lumen areaが4.0mm2未満かつplaque burdenが70%以上を満たしたため、不安定プラークと判定されています。一方で、VH-IVUSは71%、NIRS-IVUSは42%で使用されましたが、それぞれのモダリティで不安定プラークと診断された症例は、わずかに6%および27%程度であったことから、組織学的なプラーク診断はあまりインパクトがなかった可能性があります。さらに、空間分解能に優れるOCTはわずか5%しか使用されていませんでした。 ベアメタルステント時代に、プラークシーリングという概念がありました。将来のイベントを予防するために、ステントでカバーできないかということが検討されましたが、そもそも再狭窄率が1年で20%近かったこともあり、プラークをそのままとしたほうが、イベント発生率がはるかに少なかったため、実現しませんでした。最新のステントやBRSのようなスキャフォールドではイベント発生率が低かったことで、本研究のように“予防的な”PCIが可能になったのかもしれません。 本研究では、FFRが0.80以上であっても、プラークが大きく、内腔径が小さい場合はPCIを行ったほうがよい可能性が示唆されました。しかし、プラークの組織学的な評価が行われたわけではなく、さらなる検討が必要と考えられます。

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第199回 帯状疱疹ワクチン、接種費用を公費補助で定期接種へ/厚労省

<先週の動き>1.帯状疱疹ワクチン、接種費用を公費補助で定期接種へ/厚労省2.マイナ保険証利用促進のため、一時金を20万円から40万円に倍増/厚労省3.骨太方針2024、医師偏在解消へ具体策を年内策定へ/内閣府4.電子処方箋の導入促進に向けて新たな支援策を提案/厚労省5.佐世保市の救急病院が負債11億7,000万円で破産/長崎県6.教員採用や推薦入試にも寄付金が影響か/東京女子医大1.帯状疱疹ワクチン、接種費用を公費補助で定期接種へ/厚労省厚生労働省は、6月20日に開かれた厚生科学審議会のワクチン評価に関する小委員会で、帯状疱疹ワクチンを定期接種に含め、接種費用を公費で補助する方針を決定した。帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)ウイルスが加齢や免疫力の低下により再活性化して発症する皮膚疾患で、50歳以上の患者に多くみられる。症状には痛みを伴う水ぶくれが含まれ、長引く神経痛などの合併症を引き起こす可能性がある。現在、帯状疱疹の予防には生ワクチンや不活化ワクチンが用いられているが、これらは任意接種であり、費用は生ワクチンが約1万円、不活化ワクチンが約4万4,000円と高額で、普及の妨げとなっていた。厚生労働省の専門家会議では、生ワクチンと不活化ワクチンの有効性と安全性が確認され、費用対効果も期待できると評価、これを受け、ワクチンを定期接種に含めることが了承された。今後、接種の対象年齢や具体的な運用方法について専門家会議で議論が行われ、正式に決定される予定。参考1)第26回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(厚労省)2)帯状疱疹ワクチン、定期接種化に異論なし 厚労省小委(MEDIFAX)3)帯状ほう疹のワクチン 接種費用を公費補助の定期接種へ 厚労省(NHK)2.マイナ保険証利用促進のため、一時金を20万円から40万円に倍増/厚労省厚生労働省は、6月21日に社会保障審議会医療保険部会を開き、マイナ保険証の利用促進などについて議論を行った。マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」の5月時点での利用率は7.73%にとどまっているため、さらに利用の促進を図るため、医療機関や薬局に支給する一時金の上限を倍増し、最大40万円に引き上げる方針を発表した。これにより病院には最大40万円、診療所や薬局には最大20万円が支給される。一時金の支給条件としては、マイナ保険証の利用を促すポスターの掲示や患者への声掛け、チラシの配布が必須となっている。具体的には、2023年10月時点の利用実績と比較して、5~7月のいずれかの月で利用人数が増加した場合に支給される。また、小規模な医療機関や薬局にも対応した区分が設けられており、規模に応じた支援が行われる。マイナ保険証の利用率は過去最高の7.73%に達したものの、依然として低迷しており、とくに富山県(12.52%)や石川県(12.17%)など一部地域で高い利用率がみられる一方、沖縄県(3.42%)や和歌山県(5.02%)などでは低い利用率が続いている。日本医師会からは、一時金の支給を目的に利用率を上げることへの懸念が示され、日本経済団体連合会も利用が少ない医療機関への対策の必要性を指摘している。厚労省では、今後も利用促進策を強化し、マイナ保険証の普及を目指していく。参考1)第179回社会保障審議会医療保険部会 資料(厚労省)2)マイナ保険証利用促進、医療機関への一時金最大20万円→40万円に(朝日新聞)3)マイナ保険証促進で一時金を倍増、最大40万円に 厚労省(CB news)3.骨太方針2024、医師偏在解消へ具体策を年内策定へ/内閣府政府は、2024年の経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」を6月21日に閣議決定した。「骨太方針2024」には、医師の地域間・診療科間の偏在を解消するための包括的な対策が盛り込まれている。厚生労働省は、地方で働く医師の養成を目的とした大学医学部の地域枠の活用や診療科を問わず対応できる総合診療医の育成を推進する方針。これにより、医療過疎地での医療提供体制の強化を図ることを目指している。厚労省は、地方勤務経験を条件とする病院院長の要件を大幅に拡大することも検討している。現行制度では、地域医療支援病院の院長は地方勤務経験が必要だが、これを全国約700施設から1,500施設以上に拡大することが計画されている。この拡大により、地域医療に精通した病院経営者が増え、周辺医療機関との連携が強化される見込みである。厚労省は、この新たな要件を2020年度から導入し、地域医療に貢献した医師が認定される仕組みを整えた。これにより、多くの医師が地域医療の経験を積み、地方での医療提供に寄与することが期待されている。また、地域医療の充実には経済的インセンティブも重要である。特定地域での診療報酬の引き上げや地域医療に貢献する医師に対する補助金の導入が検討されている。この取り組みにより、医師が地方での勤務を選択する動機付けが強化される。さらに、厚労省は都道府県に対し、医療機関ごとの必要医師数を把握する義務を課す制度を検討している。この制度が実現すれば、医師の需給バランスを適切に管理し、地域医療のニーズに応じた効果的な医師配置が可能となる。その他、2024年末までに総合的な医師偏在対策パッケージが策定される予定である。このパッケージには、地域枠の拡大、総合診療医の育成、経済的インセンティブの提供、地方勤務経験のある院長の要件拡大など、多岐にわたる施策が含まれる。日本医師会もこの動きを歓迎しつつ、地域の実情に応じた細やかな支援と、医師が働きやすい環境の整備が重要であると指摘している。また、財務省が提案する診療報酬の地域差設定には慎重な姿勢を示している。医師の地域偏在を解消するためには、インセンティブを中心としたアプローチが必要であり、ディスインセンティブは避けるべきだとの立場である。政府の骨太方針2024は、医師偏在の是正に向けた重要な一歩を踏み出すものであり、これにより、全国各地で質の高い医療が提供されることが期待される。参考1)経済財政運営と改革の基本方針2024(内閣府)2)政府、医師偏り是正へ総合対策 骨太方針、21日に決定へ(共同通信)3)「歳出改革の努力」27年度まで継続、骨太方針 政府が閣議決定、経済・物価動向にも配慮(CB news)4)骨太の方針2024(原案)について(日医オンライン)5)院長条件に「地方経験」拡大 対象の病院2倍以上に厚労省、医師偏在の解消狙う 地域医療知る経営者増へ(日経新聞)4.電子処方箋の導入促進に向けて新たな支援策を提案/厚労省厚生労働省は6月19日、健康・医療・介護情報利活用検討会の「電子処方箋等検討ワーキンググループ」において、電子処方箋の導入促進とチェック機能の拡充に向けた新たな提案を行った。電子処方箋は、2023年1月から運用が開始されたが、導入が進んでいないのが現状。2024年6月時点で全国の医療機関や薬局での導入率はわずか9.3%で、とくに病院での導入は低迷している。岸田 文雄首相は、前日18日のデジタル行財政改革会議で、電子処方箋とリフィル処方の普及を強調し、医療DXプロジェクトのKPI設定と進捗モニタリングを指示した。厚労省は電子処方箋のチェック機能を拡充し、薬剤の併用注意を対象に含めることを提案。併用注意のチェックは重複投薬などと同様に行い、チェック結果を医療機関に返却することを想定している。また、2025年度を目標に、電子カルテ情報共有サービスを通じて薬剤アレルギー情報などをチェックする機能に追加する計画。日本医師会の長島 公之理事は、「電子処方箋導入を希望する医療機関や薬局が円滑に導入できる環境整備が国の責務である」と強調し、システムベンダーへの支援を求めた。さらに、厚労省は電子処方箋の導入補助金の拡充や、都道府県別・病院、診療所、薬局別の導入状況の公表を進め、地域一体での普及を図る方針。とくに導入が低調な都道府県には、関係団体や中核的な医療機関への働きかけを強化する。電子処方箋の利便性向上に向けて、患者が「かかりつけ薬局」を設定し、電子処方箋が自動的に送付される仕組みの実現も検討されている。これにより、患者の待ち時間の短縮が期待されるが、大手薬局チェーンによる抱え込み防止も必要になる。その他、電子処方箋に蓄積されるデータの利活用についても議論されており、感染症流行状況の分析や医薬品流通量の把握などに役立てることが検討されている。厚労省は、こうした取り組みを通じて、電子処方箋の普及と機能改善を進め、医療の質向上と効率化を目指すとしている。参考1)厚生労働分野におけるデジタル行財政改革(厚労省)2)第5回電子処方箋等検討ワーキンググループ資料(厚労省)3)電子処方箋、チェック機能拡充など提案 厚労省(CB news)4)岸田首相「電子処方箋の導入促進、リフィル処方の普及を実行」 KPI設定と進捗モニタリング・改善を(ミクスオンライン)5)電子処方箋、併用注意や院内処方、長期収載品の選定療養への対応など進めるが、「医療機関等への普及促進」が大前提-電子処方箋ワーキング(Gem Med)5.佐世保市の救急病院が負債11億7,000万円で破産/長崎県長崎県佐世保市の医療法人「篤信会」が運営する杏林病院が20日、長崎地裁佐世保支部に破産手続きを申請した。負債総額は約11億7,000万円で、外来患者や入院患者の減少により、資金繰りが悪化したことが原因。杏林病院は1974年に開業し、地域医療の一翼を担ってきたが、今後は約90人の入院患者を他の医療機関に転院させる手続きが進められる。同病院は市内の救急告示病院の1つであり、夜間や休日に患者を受け入れる2次救急輪番病院としても機能していた。そのため、地域医療に与える影響は大きく、佐世保市の保健所長も「地域にとっては非常に大きな影響」と述べ、救急患者の受け入れ態勢の再構築が急務となっている。佐世保市医師会は、スムーズな入院患者の転院が行えるように各病院の受け入れ態勢を調整しており、市民の医療への不安を解消するために努力している。同法人は、1974年に個人経営病院としてスタートし、1982年に杏林病院に改称、2017年には医療法人化したが、経営難により破産に至った。近年、全国で医療機関の破産が増加しており、帝国データバンクによれば2023年度には55件の医療機関が破産している。県内でも昨年、長崎市内の病院が破産しており、地域医療の継続に向けた課題が浮き彫りとなっている。参考1)「180のベッドがこつ然と無くなった…」 地域医療を担った病院の破産に波紋広がる(テレビ長崎)2)杏林病院が破産申請 佐世保市の救急告示病院…入院患者の転院進める(長崎新聞)3)長崎県佐世保市の杏林病院「篤信会」が破産手続き…1974年開業、負債11億7,000万円(読売新聞)6.教員採用や推薦入試にも寄付金が影響か/東京女子医大東京女子医科大学(東京都新宿区)が、推薦入試および教員の採用・昇格において同窓会組織「至誠会」への寄付金を評価対象としていたことが明らかになり、文部科学省は同大学に詳細な報告を求めている。推薦入試では、卒業生や在校生の親族から寄付金を受け取る仕組みがあり、2018~2022年の間に少なくとも3,400万円の寄付金が集まっていた。寄付金は受験生の合格率を左右する「貢献度」として点数化されており、最終的に推薦を受けた生徒の約95%が合格していた。また、教員の採用や昇格においても、寄付金が評価基準に含まれていたことが判明した。至誠会の活動状況報告書には、寄付金や研修会への出席状況が記載され、それらがポイント制で評価されていた。同大学の広報は「至誠会の活動は公益的であり、寄付は社会貢献とみなしていた」と説明し、寄付を強要した事実はないと主張しているが、文科省は運用実態の調査を指示した。一方で、至誠会の幹部からは「金品が絡む対応は倫理的に問題がある」との声が上がっている。さらに、同大学をめぐる不正給与疑惑も浮上し、至誠会元代表理事である岩本 絹子氏の自宅が警視庁により家宅捜索されている。この一連の問題を受け、文科省は私立大学における入試や人事に関する寄付金の収受を禁止する通知を再確認し、同大に対して詳細な調査と報告を求めている。文科省の担当者は「社会の理解を得るためには業績での評価が必要」と述べ、大学側の対応に厳しい目を向けている。今回の問題は、大学の運営や教育機関としての信頼性に大きな影響を及ぼす可能性があり、今後の動向が注目される。参考1)東京女子医科大、推薦入試で受験生の親族から寄付金受ける…文科省が報告求める(読売新聞)2)東京女子医大が卒業生の教員採用で寄付額評価 同窓会組織「至誠会」に 文科省報告求める(産経新聞)3)学内人事、寄付が評価に 教員採用や昇格 東京女子医大 文科省、報告求める(朝日新聞)

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女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 1

今回のキーワード近親相姦のタブー血縁認識表現型マッチングウェスターマーク効果親族呼称家族システム世代間の境界夫婦間の同盟前回(その1)は、溺愛の心理とその問題点を掘り下げました。その本質的な問題は、成長しても子供扱いすることで自立を阻むことでした。それにしても、自分のことは置いといて、そもそも溺愛する親御さんを気持ち悪いと思うことはありませんか? なぜなんでしょうか? それでもなぜ溺愛はやめられないのでしょうか? どうすればいいのでしょうか?今回(その2)も、前回取り上げた女性誌「STORY」の子育てコーナーの読者アンケートを踏まえて、逆に溺愛を忌避する血縁認識、溺愛を回避するために発達した家族システム、溺愛を駆り立ててしまうようになった社会構造の変化を進化心理学的に掘り下げ、その解決のための家族療法をご紹介しましょう。なんで子供への溺愛は気持ち悪いと思うの?子供への溺愛は、自立を阻むという合理的な問題だけでなく、気持ち悪いと思う感情的な問題もあります。そのわけは、はっきり言うと、近親相姦のタブーを連想してしまうからです。近親相姦は、遺伝的な近さから、奇形や免疫不全などのさまざまな遺伝病のリスクを高め、適応度を下げます。つまり、このタブーは、単に文化的な要素だけでなく、生物学的な要素も考えられています。ここから、血縁認識をキーワードに、子供への溺愛を忌避する原因を進化心理学的に、3つの段階に分けて掘り下げてみましょう。(1)匂い約4億年前に昆虫が誕生しました。そのなかの社会性昆虫のアリやハチはお互いの匂い(ある特定の化学成分)が似ていることで仲間(血縁者)であることを認識するようになりました1)。1つ目は、匂い(表現型マッチング)です。表現型マッチングとは、匂いのほかに見た目や鳴き声などの手がかりによる照合です。この血縁認識によって、血縁度が高ければ相手との協力行動が促進され、逆に生殖行動が抑制されます。だからこそ、人間においても、思春期の娘が父親の匂いを嫌悪する(敏感になる)わけです。この心理も進化の賜物であり、原始的な反応であることがわかります。よって、親から子供への溺愛も気持ち悪いと思われるわけです。ちなみに、父親は娘の匂いを嫌悪しません。また、母親と息子もお互いの匂いを嫌悪しません。その原因は、妊娠リスクから説明することができます。まず、父親も息子も当然ながら自分自身の妊娠リスクはありません。そして、娘が生殖年齢(思春期)に達する時にまだ父親の生殖年齢は終わっていないために娘の妊娠リスクが高いのに対して、息子が生殖年齢に達する時に母親の生殖年齢は終わりに近づいているために母親の妊娠リスクが低くなります。そのため、母親が思春期の息子の匂いを嫌悪して近親相姦を回避するよう進化する必要がそこまでないわけです。もちろん、血縁認識に関係なく、思春期の反抗の心理から、子供は親を嫌悪するよう進化しています。詳しくは、関連記事1をご覧ください。(2)馴染み約2億年前に哺乳類が誕生し、母親が子供におっぱいを授乳(哺乳)するようになりました。これが、母子家庭の起源です。そのなかで、さらに群れをつくるようになったリス(ベルディングジリス)は、匂い(表現型マッチング)よりも一緒にいて馴染みであることで仲間(血縁者)であることを認識するようになりました2,3)。2つ目は、馴染み(ウェスターマーク効果)です。ウェスターマーク効果とは、自分が幼い時からずっと同居するなどして一緒にいる相手には性的魅力が低くなることです。実際、イスラエルの集団農場(キブツ)で一緒に育てられた子供たち同士がその後に結婚しにくいことや、台湾でかつて存在した「シンプア婚」(実子の息子と養子の娘を結婚させる習わし)では出生率が低く離婚率が高いことがわかっています1)。つまり、生物学的に考えれば、幼馴染みや許嫁とはなかなか結婚しないことがわかります。この馴染みの影響は、もちろん同居する親に対しても当てはまるため、子供が親に性的魅力を感じることは気持ち悪いと思うわけです。だからこそ、親から子供への溺愛も気持ち悪いと思われるわけです。(3)家族の呼び名約700万年前に人類が誕生し、約300万年前に母親、父親、子供たちの家族(核家族)が誕生しました。そして、この家族を単位とする血縁集団(部族)は、時代が進むとだんだん大きく、最終的には100~150人になりました(ダンバー数)。この起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。そして、約20万年前に言葉が誕生した時、部族の間ではお互いを名前で呼び合うようになったわけですが、家族の間では特別に家族内の関係性の呼び名を使うようになりました。3つ目は、家族の呼び名(親族呼称)です。親族呼称とは、ママ、パパ、ばあちゃん、じいちゃん、おばさん、おじさん、姉ちゃん、兄ちゃんなど家族の呼び名を優先的に使うことです。これは、血縁認識を生理的(無意識的)にだけでなく、認知的(意識的)にも高めます。つまり、家族の呼び名を使う相手には性的魅力が低くなります。だからこそ、親から子供への溺愛も気持ち悪いと思われるわけです。逆に言えば、夫婦は本来お互いに性的魅力を保っていることが望ましいわけですが、夫婦なのに子供の視点でお互いを「ママ」「パパ」と呼び合っていたら、認知的(意識的)に性的魅力を低くしてしまい、セックスレスになってしまうこともわかります。次のページへ >>

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女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 2

そもそも溺愛を避けるために発達した家族の形とは?子供への溺愛が気持ち悪いと思う原因は、匂い(表現型マッチング)、馴染み(ウェスターマーク効果)、家族の呼び名(親族呼称)という血縁認識によって近親相姦を回避しているからであることがわかりました。ここから、そもそもこの溺愛(近親相姦)を回避するために発達した家族システムを3つ挙げてみましょう3)。(1)核家族人類に比較的近い類人猿のゴリラ、オランウータン、テナガザルは、大人になるとオスもメスも親元を離れます。彼らの配偶システムには違いがあり、ゴリラは一夫多妻型(ハーレム型)の群れをつくり、オランウータンは単独型(母子家庭)、テナガザルは一夫一妻型(核家族)で群れをつくりません。1つ目は、核家族です。この家族システムは、オスもメスも親元を離れるため、きょうだい間、父娘間、母息子間のすべての近親相姦を回避できます。人類が誕生した約700万年前の当初は、まだ単独型(母子家庭)のままだったと考えられます。そして、先ほど触れたように、約300万年前に一夫一妻型(核家族)になったのでした。(2)父系家族人類に最も近い類人猿のチンパンジーは、大人になるとメスが親元を離れて他の群れに加わり、オスは親元に残り、オスたちだけに血縁のある多夫多妻型(乱婚型)の群れをつくります。2つ目は、父系家族です。この家族システムは、メスが親元を離れるため、きょうだい間と父娘間の近親相姦を回避できます。一方で、母息子間の近親相姦の回避は家族システムとしてはできません。人類は、約1万数千年前の農耕牧畜革命以降、食料の蓄積が可能になり、集団のサイズが大きくなっていきました。そして、約5先年前に最初の文明(メソポタミア文明)が生まれ、人口が増えていったことで、持てる土地が限られ、争いも増えていきました。こうして、腕力で頼れる男性が中心となる父系家族が現在に至るまで増えていき、封建社会を発展させたのでしょう。同時に、これは女性差別も生み出しました。ちなみに、父親が居座っている実家から娘が出ていくことを促すためにも、娘は父親の匂いをしっかり嫌悪することは適応的です。なお、女性差別の起源の詳細については、関連記事3をご覧ください。(3)母系家族先ほどのリスも、その後に誕生した真猿類も、大人になるとオスは親元を離れて他の群れに加わったりしますが、メスは親元に残り、メスたちだけに血縁のある群れをつくります。3つ目は、母系家族(母系社会)です。この家族システムは、オスが親元を離れるため、きょうだい間と母息子間の近親相姦を回避できます。一方で、父娘間の近親相姦の回避は家族システムとしてはできません。人類にも、母系家族はあるにはあります4)。ただ、人類の起源地であるアフリカの部族においても比較的少ないことから、原始の時代も少なかったことが推定できます。しかし、昨今、選択的シングルマザーが増えてきています。このような女性は実母を頼る傾向から、近未来では、再び母系家族も増えていき、家族システムが多様化していくことが予想されます。なお、選択的シングルマザーの詳細については、関連記事4をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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