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「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第252回

「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善Unsplashより使用大うつ病性障害に対する6週間のビデオゲーム介入が、抑うつ気分、訓練意欲、視覚空間(ワーキング)記憶機能の改善につながるかどうかを検討することを目的とした研究を紹介しましょう。選ばれたゲームは、任天堂の「スーパーマリオ オデッセイ」です。いやー、名作ですよね。あのゲームは本当に、色褪せない。RTA(リアルタイムアタック)の動画をよく見ています。まあそんな個人的な話はどうでもよくてですね、このマリオ オデッセイが、うつ病に有効というエビデンスが示されました。Bergmann M, et al. Effects of a video game intervention on symptoms, training motivation, and visuo-spatial memory in depression. Front Psychiatry. 2023 Aug 24;14:1173652.ドイツのボン大学の精神科において、大うつ病性障害(MDD)と診断された18~65歳の入院・通院患者46人を対象に行われた研究です。MDD患者さんを、マリオ オデッセイをプレイする「ビデオゲーム」群(n=14)、コンピュータプログラム「CogPack」を用いて訓練を行う能動的対照群(n=16)、心理療法や薬物療法を含む標準的な臨床治療を受ける通常治療群(n=16)の3群のいずれかにランダムに割り付けました。ちなみに、事前にマリオ オデッセイをプレイしたことがある患者さんは除外されています。いずれのグループも、トレーニングセッションの頻度は週3回、期間は6週間の合計18回で、各セッションは1回45分間でした。45分プレイして、マリオ オデッセイを途中で切られると、それはそれでイラっとしそうですが…。BDI-IIベック抑うつ質問票(BDI-II)で評価すると、マリオ オデッセイをプレイしたMDD患者さんの症状が劇的に改善することが示されました。BDI-IIスコアが「軽度」に該当する患者の割合をみたグラフですが、マリオ オデッセイをプレイした群では、3群の中で唯一統計学的に有意差がついています(図)。図. 各群の抑うつ改善効果(文献より引用)ただし、視空間記憶をテストするBVMT-Rなど、いくつかの試験ではCogPackのほうがよかったりして、一貫してマリオ オデッセイがよいという結論ではありませんでした。どれか1つがよいというよりも、おそらく組み合わせたほうがよいのではないかと考えられます。ゲームって結構バカにされがちですが、これだけの有効性が示されるとなると、そのうちガイドラインにも記載されるんじゃないでしょうか。「ゼルダの伝説」をやっている医師は多いですが、ああいうRPGモノもたぶん有効なんじゃないかと思います。

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第200回 危機に瀕する国内製薬企業の創薬力

10~12%。この数字が何を意味するのかご存じだろうか? 第I相試験に辿り着いた低分子化合物が医薬品として承認取得に至る確率である。ただ、これはあくまで第I相試験にまで至った低分子化合物。製薬企業の研究所では、これ以前に合成された低分子化合物の多くが動物実験を経て脱落し、臨床試験まで辿り着けない。合成段階から第I相試験までの脱落を含めると、製品化の成功確率は0.1%に満たないのが現実である。「製薬の研究開発は博打」と称されるのはこのためだ。このことは頭ではわかっていても深刻に感じ取れる機会は少ない。というのも製薬企業の多くが結果的には継続的に新薬を世に送り出せているからだ。その背後には、各社の飽くなき開発パイプライン獲得の努力がある。この件に関して私が思い出すことがある。2019年、当時の武田薬品工業(以下、武田薬品)の取締役でジャパン ファーマ ビジネス ユニットのプレジデントだった岩崎 真人氏(崎はたつさきが正式表記)にインタビューした時のことだ。コテコテの浪花商人から発した武田薬品は今やグローバル企業化し、当時の日本人取締役は岩崎氏ただ1人(2023年6月に退任し、現在同社取締役に日本人は皆無)。業界関係者からは「武田薬品はもはや外資になった」と揶揄気味に評されることも多かった。ちなみに私個人は、そうした評価は頑迷固陋(がんめいころう)とも言うべき日本人の悪い癖と思っている。当時の武田薬品は、アイルランドのシャイアーを6兆8,000億円もの巨額で買収する乾坤一擲の勝負を行った直後である。この買収で多数の製品と開発品を獲得し、世界トップ10のメガファーマの地位も得たが、買収で獲得した開発品は多くが第II相試験以下の前期開発品で、前述の上市確率から言えば、それほど安泰とは言い難かった。この点に私が言及すると、岩崎氏は次のように語った。「そもそも製薬企業にとって安泰な開発パイプラインは存在しませんよ。『これで大丈夫だろうか?』という不安にさいなまれているのが常。胃が痛くなるような緊張感で、自社の開発パイプラインを眺めています」確かに言われればその通りなのだが、この時は改めてその難しさを認識させられた。とはいえ、やや繰り返しになるが、製薬企業の多くが主力品の特許失効による大幅な売上減、通称「パテントクリフ(特許の壁)」を、タイミングよく次なる製品投入で乗り切っている実態を見ると、外部がその困難さを肌身で感じ取ることは難しい。しかし、先日ある発表を見てやや寒気がした。具体名を出して恐縮だが、住友ファーマ(旧大日本住友製薬)の第3四半期決算である。同社の第3四半期決算の売上高は、前年同期比48.9%減の2,350億2,800万円、コア営業利益は963億8,700万円の赤字、純利益も1,176億9,900万円の赤字。大幅な売上減の最大の要因は、同社の主力品中の主力品とも言うべき抗精神病薬ルラシドン(商品名・ラツーダ)が昨年2月、アメリカで特許失効となり、ジェネリックが参入してきたためである。前期の2022年第3四半期のアメリカでのルラシドンの売上高は1,793億円だったが、2023年第3四半期はなんと51億円。特許失効からわずか10ヵ月で97.2%の売上が消失してしまったのだ。製薬企業にとって、特許失効そのものはある意味で予測可能なリスクである。このため各社とも特許失効に備え、後継主力品候補の臨床試験推進や外部からの獲得に心血を注ぐ。住友ファーマの場合も、もちろんその手は打っていた。実際、昨今の製薬企業の新薬開発のトレンドともなっているがん領域に進出するため、今からさかのぼること12年前の2012年、アメリカのボストン・バイオメディカル社を買収。これにより世界で初めてがん幹細胞を標的とするがん治療薬候補「ナパブカシン」を獲得した。しかし、2021年までにナパブカシンは臨床試験に入ったすべてのがん種で有効性が示せず、開発中止となった。ナパブカシンの開発は2010年代後半にすでに暗雲が漂う状態だったこともあり、同社は2019年にイギリスとスイスに本社を置くバイオベンチャーであるロイバント・サイエンシズと戦略提携締結で合意し、約3,200億円も投じてロイバントの5つの子会社を買収して、複数の第III相試験以降の後期開発品を獲得した。この買収は一定の成果を結び、2020年末からアメリカで過活動膀胱薬のビベグロン(商品名・ジェムテサ)、前立腺がん治療薬のレルゴリクス(商品名・オルゴビクス)、子宮筋腫治療薬のレルゴリクス・エストラジオール・酢酸ノルエチンドロン配合剤(商品名・マイフェンブリー)を次々に上市した。製薬企業の買収としては成功と言って差し支えないだろう。実際、住友ファーマはこの3つを「基幹3製品」と呼び、ルラシドン特許失効後のアメリカでの主力品と位置付けている。そして同社は2023年度の決算予想で、アメリカでの基幹3製品の合計売上高を1,200億円以上と発表したが、第3四半期までの売上実績は500億円に届かない。残り3ヵ月でこの計画を達成するのはかなり困難である。しかも、現在の同社後期開発品は、第III相試験中のものがアメリカと中国で各1件、第II/III相試験中が日本で2件、アメリカで3件、中国で1件の合計8件。このうち6件は大塚製薬と共同で開発する抗精神病薬のulotarontだが、同薬のメイン適応症となるはずだった統合失調症に関して、昨年7月、2つの第III相試験で主要評価項目未達という結果が明らかになった。このように、現在の製薬企業を取り巻く環境は、現実的に各社が選択できる経営努力を尽くしたとしても予想もしない悩ましい結果をもたらすところまで来ているのだ。しかし、メディア界に身を置いて企業を眺めるようになった30年間で得た経験的感は、「一定規模の企業は周囲が思う以上に強く、しぶとい」である。その意味で今回の住友ファーマの件では、「これからどう浮上するのか」に私の目は注がれている。臨床現場では今、製薬企業に関する話題はジェネリック医薬品企業の不祥事に伴う医薬品供給不足のほうが注目されているだろう。しかし、日本人の多くが漠然と思っているであろう「日本の製薬企業は一定の創薬力がある」とのイメージが、もはや蜃気楼になりつつある現実は頭の片隅に留め置いてよいと思うのだ。

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週3個以上の卵が脂肪性肝疾患と高血圧を予防?

 卵の摂取が脂肪性肝疾患(steatotic liver disease)と高血圧症に対する保護的な効果を示し、週3個以上の摂取でそれらの発症リスクがより低くなることを、イタリア・Saverio de BellisのRossella Tatoli氏らが明らかにした。Nutrients誌2024年1月31日号掲載の報告。 卵にはミネラルやビタミンなどの豊富な栄養素が含まれているが、コレステロール含有量も卵黄1個当たり180~225mgと多いため、しばしば生活習慣病の“悪者”扱いされることがある。しかし、これまで卵の摂取と疾患、とくに脂肪性肝疾患のリスクとの関連を調査した研究は乏しく、さらにその結果には一貫性がない。そこで、研究グループは、脂肪性肝疾患や高血圧症の発症リスクに対する卵摂取の影響を調査した。 研究グループは、南イタリアの胆石症に関する多施設コホート研究であるMICOLプロジェクト(2017年開始)から60歳以上の908人を抽出して解析した。脂肪性肝疾患と高血圧症の有無によって、(1)脂肪性肝疾患なし/高血圧症なし、(2)脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり、(3)脂肪性肝疾患あり/高血圧症なし、(4)脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありの4つのグループに分類し、卵の摂取量との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。●脂肪性肝疾患なし/高血圧なしは236例(平均年齢61.3歳、男性49.2%)、脂肪性肝疾患なし/高血圧症ありは176例(70.5歳、50.0%)、脂肪性肝疾患あり/高血圧症なしは209例(61.7歳、60.3%)、脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありは287例(69.2歳、57.1%)であった。●1日当たりおよび1週間当たりの卵摂取量は、脂肪性肝疾患なし/高血圧なしのグループで最も多かった。●1週間当たり3個以上の卵の摂取は、脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり、脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありとなるリスクを有意に低減させた。リスク比(95%信頼区間)とp値は以下のとおり。・脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり:0.21(0.07~0.62)、0.005・脂肪性肝疾患あり/高血圧症なし:0.73(0.36~1.47)、0.38・脂肪性肝疾患あり/高血圧症あり:0.34(0.15~0.73)、0.006●この関連は、年齢、性別、1日の摂取カロリーで調整した後も同様であった。

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高齢になると糖尿病有病率が高くなる理由/順天堂大学

 加齢に伴うインスリン感受性と分泌の低下により、高齢者では糖尿病の有病率が高いことが知られている。一方で、インスリン感受性と分泌の両方が65歳以降も低下し続けるかどうかは、まだ解明されていなかった。この疑問について、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の内藤 仁嗣氏らの研究グループは、65歳以降の糖代謝に対する加齢の影響を調査し、その決定因子を明らかにする研究を行った。その結果、高齢者では加齢に伴い、インスリン抵抗性が増加、膵β細胞機能が低下していることが明らかになった。Journal of the Endocrine Society誌オンライン版2023年12月20日号に掲載。内臓脂肪の蓄積などが関連する高齢者の糖尿病発症 本研究では、文京区在住高齢者のコホート研究“Bunkyo Health Study”に参加した65~84歳の糖尿病既往がなく、糖尿病の診断に用いられる検査である75g経口糖負荷検査(OGTT)のデータが揃っている1,438例を対象とした。 対象者全員に二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による体組成検査、MRIによる内臓・皮下脂肪面積の測定、採血・採尿検査、75gOGTT、生活習慣に関連する各種アンケートを行い、5歳ごとに4群(65~69歳、70~74歳、75~79歳、80~84歳)に分け、各種パラメータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は73.0±5.4歳、BMIは22.7±3.0kg/m2だった。・新たに糖尿病と診断された人の有病率は年齢とともに増加した。・食後初期のインスリン分泌を示す指標であるInsulinogenic indexや、血糖値に対するインスリン分泌指標である75gOGTT中のインスリン曲線下面積/血糖曲線下面積(AUC)は、各年齢群間で同等だった。・インスリン感受性の指標(Matsuda index)、膵β細胞機能の指標(Disposition index)は加齢とともに有意に低くなった。・加齢に伴う脂肪蓄積、とくに内臓脂肪面積(VFA)の増加、遊離脂肪酸(FFA)濃度の上昇が観察された。・重回帰解析により、Matsuda indexおよびDisposition indexとVFAおよびFFAとの強い相関が明らかになった。 研究グループでは、この結果から「高齢者において耐糖能が加齢とともに低下するのは、加齢によるインスリン抵抗性の増加および膵β細胞の機能低下によるもので、それらは内臓脂肪蓄積やFFA値上昇と関連する」としている。

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テポチニブ、日本人METexon14スキッピング肺がんのリアルワールドデータ/日本臨床腫瘍学会

 テポチニブによる日本人METexon14スキッピング非小細胞肺がん(NSCLC)の最新のリアルワールドデータが発表された。 神奈川県立がんセンターの加藤 晃史氏は第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で、テポチニブによる日本人METexon14スキッピングNSCLCの市販後調査の更新結果を発表した。対象は2020年6月〜2021年3月に登録されたMETexon14スキッピングNSCLC158例で、安全性・有効性評価対象は147例であった。観察期間はテポチニブの投与開始から52週である。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は72歳、PS2以上が2割以上、2次治療以降が半数以上を占めた。・全Gradeの有害事象(AE)発現率は72.1%、Grade≧3のAEは18.4%であった・頻度の高いAEは体液貯留(全Gradeで46.9%)、腎機能障害(同36.7%)、肝機能障害(同13.6%)で、間質性肺疾患は6.8%に発現した。・全奏効率(ORR)は51.0%、病勢制御率は77.6%であった。・ORRはECOG PSおよび前治療の有無にかかわらず一貫しており、PS2~4では45.2%、3ライン治療では46.2%、4ライン治療以降では51.5%であった。 発表者の加藤氏は、「この市販後調査結果は、日本人のMETexon14スキッピングNSCLCにおけるテポチニブの安全性と有効性を裏付けるものだ」としている。

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転移を有する腎細胞がん、ctDNAと予後の関連が日本人大規模データで示される(MONSTAR SCREEN)/日本臨床腫瘍学会

 転移を有する腎細胞がん(mRCC)における血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床的有用性が指摘されているが、大規模なデータは不足している。産学連携全国がんゲノムスクリーニングコンソーシアム(SCRUM-Japan)によるMONSTAR-SCREEN1の泌尿器がんグループから、大阪大学の加藤 大悟氏がmRCCにおけるctDNA解析結果を第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 2019年4月~2021年9月、mRCC患者124例を対象に治療前後のctDNA解析(商品名:FoundationOne Liquid CDx)を実施した。34例については組織検体を用いたゲノムプロファイリング(商品名:FoundationOne CDx)も実施された。 主な結果は以下のとおり。・患者特性は年齢中央値が66(21~83)歳、男性が76.0%、淡明細胞型が91.0%、IMDCリスク分類はIntermediateが61.2%、Poorが21.5%であった。・1次治療の症例が74.4%を占め、うち92.7%が免疫チェックポイント阻害薬併用療法を受けていた。・組織検体と血漿検体の検査結果の一致率は16.8%で、18%という過去の報告1)と同様であった。・治療前ctDNAにおけるtumor fraction(TF)中央値は1.15%(四分位範囲:0.62~2.85)であり、治療前TF>1.2%の症例と比較し治療前TF<1.2%の症例で有意に予後が良好であった(全生存期間中央値:28.3ヵ月vs.NR、p=0.0143)。・84.5%で何らかの病的変異が検出され、1症例当たりの変異数中央値は3であった。・治療前ctDNAにおけるBAP1(p=0.0003)およびTP53(p=0.025)の変異は予後不良と有意に関連していた。・治療前後のctDNAの一致率は54.6%で、TP53、VHLなどで治療後に新たに変異が発現あるいは発現頻度が増加した。・病勢進行までの期間について、新規遺伝子変異が認められた症例ではそれ以外の症例と比較して有意に短く(中央値:14.1週vs.44.8週、p=0.046)、新規遺伝子変異数が多いほど短かった(p=0.032)。・治療後の新規遺伝子変異のうち7つについては、FDA承認済の薬剤の対象となりうることが明らかとなった。 加藤氏は、「本データはアジア人mRCC患者における最初の大規模なctDNAを用いた遺伝子プロファイリングデータであり、臨床予後との関連が示された。今後はリファレンスデータとして活用されることが期待され、現在はアジア人とヨーロッパ人の間のctDNAにおける特徴の違いの評価にも取り組んでいる」とした。

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再発性多発性硬化症、抗CD40L抗体frexalimabが有望/NEJM

 再発性多発性硬化症患者において、抗CD40Lヒト化モノクローナル抗体のfrexalimabはプラセボと比較し、12週時におけるT1強調MRIでの新規ガドリニウム(Gd)増強病変数を減少させたことが示された。フランス・リール大学のPatrick Vermersch氏らが、10ヵ国38施設で実施した第II相臨床試験の結果を報告した。CD40-CD40L共刺激経路は、適応免疫応答と自然免疫応答を制御し多発性硬化症の病態に関与する。frexalimabは第2世代の抗CD40Lモノクローナル抗体で、抗原提示細胞表面に発現しているCD40へのCD40Lの結合を阻害することによりCD40-CD40Lシグナル伝達経路を阻害し、T細胞を介した免疫応答を抑制する。著者は、「多発性硬化症患者におけるfrexalimabの長期的な有効性と安全性を明らかにするため、より大規模で長期間の試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。frexalimab 1,200mg静脈内投与と300mg皮下投与を、プラセボと比較 研究グループは再発性多発性硬化症患者を、frexalimab 1,200mgを4週間隔で静脈内投与する群(負荷用量1,800mg)、frexalimab 300mgを2週間隔で皮下投与する群(負荷用量600mg)、またはそれぞれのプラセボを投与する群に4対4対1対1で割り付け、二重盲検下で12週間投与した。投与経路は盲検化されなかった。12週後、全例が非盲検下でfrexalimabを投与した(プラセボ群の患者はそれぞれ対応するfrexalimabに切り替えた)。 主要エンドポイントは、8週時と比較した12週時におけるT1強調MRIでの新規Gd増強病変数。副次エンドポイントは、8週時と比較した12週時における新規または拡大したT2強調病変数、12週時のGd増強病変総数、および安全性であった。8週時と比較した12週時の新規Gd増強病変数はfrexalimab群で減少 2021年6月7日~2022年9月21日の間に、166例がスクリーニングを受け、129例が無作為に割り付けられ、うち125例(97%)が12週間の二重盲検期間を終了した。患者背景は、平均年齢36.6歳、66%が女性、30%がベースラインでGd増強病変を有していた。 12週時における新規Gd増強病変数の補正後平均値は、プラセボ群1.4(95%信頼区間[CI]:0.6~3.0)に対し、frexalimab 1,200mg静脈内投与群0.2(95%CI:0.1~0.4)、frexalimab 300mg皮下投与群0.3(95%CI:0.1~0.6)であり、プラセボ群に対する率比は1,200mg静脈内投与群0.11(95%CI:0.03~0.38)、300mg皮下投与群0.21(95%CI:0.08~0.56)であった。副次エンドポイントの結果は、主要エンドポイントの結果とおおむね同じであった。 12週間の二重盲検期間における有害事象の発現率は、frexalimab 1,200mg静脈内投与群29%(15/52例)、frexalimab 300mg皮下投与群45%(23/51例)、プラセボ群31%(8/26例)で、最も多くみられた有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は新型コロナウイルス感染症および頭痛であった。

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T-DXd中止後の乳がん治療、最も多いレジメンは?(EN-SEMBLE)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXd中止後に実施した治療レジメンの分布を調査したEN-SEMBLE試験の中間解析の結果、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことを、愛知県がんセンターの能澤 一樹氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 現在、T-DXdの後治療に関しては見解が割れており、間質性肺疾患などの有害事象や病勢進行によってT-DXdを中止した後の最適な治療の決定は喫緊の課題である。そこで、研究グループは、T-DXd中止後に使用される治療レジメンの分布とその有効性・安全性を検討するために多施設コホート研究を行った。今回は、中間解析としてT-DXd中止後の治療レジメンの分布に関するデータが発表された(データカットオフ:2023年5月31日)。 対象は、特定使用成績調査に登録し、切除不能または転移を有するHER2陽性の乳がんに対して2020年5月25日~2021年11月30日にT-DXdの投与を開始したものの、2023年5月31日までに中止し、後治療を開始した患者であった。主要評価項目は、T-DXd中止後の治療レジメンの分布、無増悪生存期間、治療成功期間、後治療に切り替えるまでの期間、全生存期間、全奏効率などで、T-DXdを中止した理由別に評価される予定。 主な結果は以下のとおり。・解析には664例が組み込まれた。65歳未満は62.5%、年齢中央値は60.0歳(範囲 30~89歳)、女性が99.5%であった。・T-DXdの後治療で多かったのは、(1)トラスツズマブ+ペルツズマブ(204例[30.7%])、(2)トラスツズマブ(157例[23.6%])、(3)ラパチニブ(104例[15.7%])を含むレジメンであった。・(1)のトラスツズマブ+ペルツズマブを含むレジメン(30.7%)にさらに併用された治療は、化学療法が23.0%(エリブリン11.6%、ビノレルビン2.7%、ドセタキセル2.0%、パクリタキセル2.0%、カペシタビン1.5%、S-1 1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、レトロゾール0.9%、アナストロゾール0.5%など)で、併用薬なしは4.7%であった。・(2)のトラスツズマブを含むレジメン(23.6%)にさらに併用された治療は、化学療法が16.7%(エリブリン5.4%、ビノレルビン3.8%、S-1 2.0%、ゲムシタビン1.5%、カペシタビン1.4%、パクリタキセル1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、アナストロゾール0.8%、タモキシフェン0.5%など)で、併用薬なしは4.2%であった。・(3)のラパチニブを含むレジメン(15.7%)にさらに併用された薬剤は、カペシタビン13.6%、レトロゾール0.6%、アナストロゾール0.5%などで、併用薬なしは0.3%であった。・エリブリンが投与された130例(19.6%)のうち、併用が多かったのはHER2抗体薬17.3%(トラスツズマブ+ペルツズマブ11.6%、トラスツズマブ5.4%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+レトロゾール0.2%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+その他の薬剤0.2%)、ドセタキセル0.2%で、併用薬なしは2.1%であった。・ベバシズマブが投与された53例(8.0%)のうち、パクリタキセルが併用されたのは7.8%、nab-パクリタキセルが併用されたのは0.2%であった。・CDK4/6阻害薬が投与された19例(2.9%)のうち、アベマシクリブとの併用が多かったのはフルベストラント1.2%、アナストロゾール0.5%、エキセメスタン0.2%、レトロゾール0.5%、LH-RHアゴニスト0.2%、パクリタキセル0.2%であった。パルボシクリブとの併用が多かったのはレトロゾール0.5%、フルベストラント0.5%であった。・化学療法の有無別にみると、化学療法を含む後治療は484例(72.9%)であった。化学療法との併用で多かったのは、抗HER2療法53.3%、化学療法のみ9.8%、分子標的薬(抗HER2療法以外)8.1%、抗HER2療法+内分泌療法0.9%、抗HER2療法+その他の薬剤0.3%、抗HER2療法+分子標的薬(抗HER2療法以外)0.3%、免疫チェックポイント阻害薬0.2%であった。・化学療法を含まない後治療は180例(27.1%)であった。抗HER2療法のみが11.1%で最も多かったが、抗HER2療法+内分泌療法6.8%、内分泌療法のみ4.2%、分子標的薬(抗HER2療法以外)+内分泌療法3.0%、分子標的薬(抗HER2療法以外)のみ0.5%、抗HER2療法+分子標的治療(抗HER2療法以外)0.2%などもあった。 これらの結果より、能澤氏は「T-DXd中止後の乳がん治療において、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことが明らかになった。最終的な分析として、後治療のレジメンの有効性と安全性を調査する予定である。EN-SEMBLE試験の結果は、アンメット・メディカル・ニーズであるT-DXdの後治療の最適化に関する知見を提供できると考える」とまとめた。

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関節リウマチ高リスク者へのアバタセプト、発症を抑制/Lancet

 アバタセプトによる12ヵ月間のT細胞共刺激抑制は、関節リウマチへの進行を抑制し、投与終了後も有効性を持続し、安全性プロファイルも良好であることが示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのAndrew P. Cope氏らが、英国の28施設およびオランダの3施設で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第IIb相試験「APIPPRA試験」の結果を報告した。抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)陽性、リウマチ因子(RF)陽性および炎症性関節痛などの症状を有する人は、関節リウマチを発症するリスクが高いとされている。著者は、「関節リウマチの発症リスクを有する段階での治療介入は可能である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年2月13日号掲載の報告。アバタセプト12ヵ月投与・12ヵ月無投与で関節リウマチへの進行をプラセボと比較 研究グループは、炎症性関節痛を有しACPAおよびRF陽性、またはACPA高値(正常上限の3倍以上)の18歳以上の患者を登録した。炎症性関節炎と診断されたことがある患者、疾患修飾性抗リウマチ薬またはステロイドによる治療歴がある患者、臨床的に明らかな炎症性関節炎を有する患者は除外した。 適格患者を、性別、喫煙状況、国を層別因子として、アバタセプトを週1回125mg皮下投与する群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間投与した後、さらに12ヵ月間追跡調査した。 主要アウトカムは、ACR/EULAR 2010分類基準による3関節以上の臨床的滑膜炎または関節リウマチ発症のいずれか早いほうまでの期間。副次アウトカムは疾患活動性などであった。主要アウトカムのイベント発生率は、アバタセプト群6%、プラセボ群29% 2014年12月22日~2019年1月14日に280例が登録され、このうち213例がアバタセプト群(110例)およびプラセボ群(103例)に無作為に割り付けられた。追跡調査は2021年1月13日に完了した。 主要アウトカムのイベントは、アバタセプト群で110例中7例(6%)、プラセボ群で103例中30例(29%)に認められた。Kaplan-Meier法による関節炎のない患者の推定割合は、12ヵ月時点でアバタセプト群92.8%(SE 2.6)、プラセボ群69.2%(SE 4.7)、24ヵ月時点でそれぞれ70.4%(SE 4.8)、58.5%(SE 5.4)であり、有意な群間差が認められた(log-rank検定のp=0.044)。境界内平均生存期間(RMST)の群間差は、12ヵ月時点で53日(95%信頼区間[CI]:28~78、p<0.0001)、24ヵ月時点で99日(95%CI:38~161、p=0.0016)であり、アバタセプト群が良好であった。 投与期間中はプラセボ群と比較してアバタセプト群で、疼痛スコア、機能的ウェルビーイングおよびQOLが改善し、超音波検査による潜在性滑膜炎のスコアが低かったが、この効果は24ヵ月時点では持続していなかった。 重篤な有害事象はアバタセプト群で7例、プラセボ群で11例に認められ、治療と関連なしと判定された死亡が各群1例報告された。

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うつ病発症リスクと犬の散歩のタイミング~女性看護師調査

 朝の散歩を行うことは、体内時計を調節するうえで重要であり、夜型のクロノタイプにとって有益であると考えられる。オーストリア・ウィーン医科大学のMagdalena Zebrowska氏らは、犬の飼育や犬との朝の散歩は、うつ病リスクを低下させる可能性があるとの仮説を立て、女性看護師を対象に犬の飼育、朝の散歩とそのタイミングや期間とうつ病リスクとの関連を調査し、クロノタイプによる効果の違いを検討した。PLOS ONE誌2024年1月31日号の報告。 Nurses' Health Study 2(NHS2)に参加した53~72歳のうつ病でない米国女性2万6,169人を対象に、2017~19年にプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。年齢および多変量で調整したロジスティック回帰分析を用いて、犬の飼育、犬との朝の散歩、時間、タイミングに応じて、うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、犬の飼育、犬との朝の散歩、持続時間、タイミングとうつ病リスクとの関連は認められなかった。【犬の飼育】vs.犬を飼っていない、OR:1.12(95%CI:0.91~1.37)【犬との朝の散歩】vs.行っていない、OR:0.87(95%CI:0.64~1.18)【散歩の持続時間】30分超vs.15分以下、OR:0.68(95%CI:0.35~1.29)【散歩のタイミング】午前9時以降vs.午前7時前、OR:1.06(95%CI:0.54~2.05)・犬の飼い主のクロノタイプが、これらの関連性を修正することが示唆された。・ペットを飼っていない同じクロノタイプの女性と比較すると、夜型クロノタイプの犬の飼い主では、うつ病リスクの有意な増加が認められたが、朝型クロノタイプの場合では認められなかった。【夜型クロノタイプの犬の飼い主】OR:1.60(95%CI:1.12~2.29)【朝型クロノタイプの犬の飼い主】OR:0.94(95%CI:0.71~1.23)・さらに、夜型クロノタイプは、朝型クロノタイプよりも、朝自分で犬の散歩をすることで、より多くのベネフィットが得られる可能性が示唆された(OR:0.75、95%CI:0.46~1.23、Pintx=0.064)。 著者らは「犬の飼育とうつ病リスクは、全体として関連が認められなかったものの、夜型クロノタイプの人では、うつ病リスクの増加がみられた。これには、朝の犬の散歩が、夜型クロノタイプの人のうつ病リスクを低下させるのに寄与する可能性を示唆しており、今後のさらなる研究により、この関連がより明らかになることが望まれる」としている。

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CRT-DはNYHA分類II/III度心不全の全死亡を14年後まで減少させる(解説:原田和昌氏)

 心臓再同期療法(CRT)は、QRS幅が広いHFrEF患者にベネフィットがある。それら患者の大半が植込み型除細動器(ICD)適応患者でもあることから、ICD+CRTにより死亡、心不全入院が低下するかを、2010年に多施設共同二重盲検無作為化試験のRAFT試験は調べた。ICDにCRTを追加すると平均追跡期間40±20ヵ月時点で、ICD単独よりも死亡または心不全によるあらゆる入院の割合が減少した。試験に参加した施設のうち、被験者数が多かった8施設の1,050例を長期追跡し、ICD+CRTの有効性が持続するかを評価した結果が、カナダ・アルバータ大学のSapp氏らによりRAFT長期アウトカム試験として報告された。 主要アウトカムは全死因死亡で、副次アウトカムは全死因死亡、心移植、補助人工心臓の植え込みの複合であった。LVEF≦30%、内因性QRS幅120msec以上(またはペーシングQRS幅200msec以上)のNYHA II/III度の心不全患者は追跡期間中央値約14年時点においても、ICD+CRTにより死亡までの期間が延長することが示された。NYHA III度心不全患者では至適薬物療法と比較したCRTの有効性が示されており、RAFT試験は途中でNYHA III度の組み入れが中止されたため、長期アウトカム試験におけるNYHA II/III度の割合は76%対24%であった。死亡はCRT-D群71.2%、ICD群76.4%に発生したが、死亡までの期間はCRT-D群がICD群より長かった(加速係数:0.80、95%CI:0.69~0.92、p=0.002)。 本試験の対象には心房細動が16%、左脚ブロック以外が約30%、内因性QRS幅120msec以上が含まれていた。サブ解析では心房細動以外、左脚ブロックと右脚ブロック、QRS幅150msec以上の症例にCRT-Dが有効である傾向が見られた。CRTの心機能への利益がより広い適応患者の生命予後改善につながったと考察しているが、各種ガイドラインでもNYHA III度のLVEF≦35%、NYHA II度のLVEF≦30%、QRS幅120~149msの非左脚ブロックに対するCRTの推奨はIIbとなっており、本試験がその推奨を変えるものではない。それにしても現在のARNIやSGLT2阻害薬を含む至適薬物治療に上乗せして、CRT-Dが死亡率をどのくらい低下できるかは興味深い問題である。

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息子は選べんが……【Dr. 中島の 新・徒然草】(518)

五百十八の段 息子は選べんが……納税の季節になりました。毎年ながら、私は確定申告の書類と格闘しています。読者の皆さまはいかがでしょうか?さて、近ごろ私が熱中して読んでいるのが、漫画の『インベスターZ』。マジンガーZやフェアレディZみたいな名前ですね。実は「インベスターZ」のZには由来があります。中学に入学した主人公の財前 孝史くんが、投資部でつけられたニックネームが「インベスターZ」。このZは財前の頭文字に由来しているのです。さて、この本の何が面白いのか?漫画を読むこと自体が勉強になります。たとえば物語の中で紹介されていた格言として、大阪船場の商人の「息子は選べんが、婿は選べる」というものがあるのだそうです。私はこの言葉を見たときに、思わず吹き出してしまいました。というのは、遠い昔のことを思い出したからです。時は平成の最初の頃。裁判所で倒れて病院に担ぎ込まれてきたのが弁護士さん。瀕死の状態ではありましたが、治療の甲斐があってか、何とか復活しました。そしてすっかり回復した後で、担当医の私にこう言ったのです。「生死の境をさまよっているときに、良いことを思いついたんですよ。息子は司法試験に受かりそうにありませんが、それよりも娘に良い婿を見つけて、私の法律事務所を継いでもらえればいいんだ、と」司法修習生とか若手弁護士の中から娘の結婚相手を見つければいい、という逆転の発想ですね。この患者さんとはその後ずっと年賀状のやりとりをしていたんですけれども、何年か前にお亡くなりになりました。息子さんや娘さんがどうしておられるのか、あるいは法律事務所がどうなったのか、残念ながら私はまったくフォローできていません。それはともかく、大阪の商人と同じで、息子さんを難しい司法試験に受からせようとするよりは、すでに受かった人間の中から娘さんに相応しいお相手を見つけて、自分の後を継いでもらうというほうが現実的ではあります。このことは確かに一理あるのですが、令和になった今なら、さらに応用が可能です。娘さんに出来の良いお婿さんを見つけるのもいいけども、息子さんに優秀なお嫁さんを見つけてもいいわけです。今は女性の弁護士さんも多いわけですから「息子は選べんが、嫁は選べる」とも言えますね。考えてみれば、われわれの世界でも同じかもしれません。読者の中には、ご自分の病院やクリニックを子供が継いでくれたらなあ、と思っている方も大勢おられることでしょう。ひょっとしたら、大阪船場の商人の格言が役に立つかもしれません。ということで、何かと勉強になる『インベスターZ』。ほかにも良い格言がいろいろあります。興味を持った方はぜひとも読んでみてください。最後に1句納税の 季節に悩む 婿選びChatGPTが船場商人の「息子は選べんが、婿は選べる」をイラストにすると、こうなりました。

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何はさておき記述統計 その2【「実践的」臨床研究入門】第41回

仮想データ・セットを用いて発生率を計算してみる今回は早速、仮想データ・セットを用いて、われわれのRQのプライマリアウトカムである末期腎不全の発生率を実際に計算してみましょう。はじめに、今回提供する仮想データ・セットの内容について説明します(仮想データ・セット[エクセルファイル]は下記よりダウンロード可能です)。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。A列:IDB列:Treat(1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)C列:Censor(1;アウトカム発生、0;打ち切り)D列:Year(at riskな観察期間)Treatという変数を作り、推定たんぱく質摂取量 0.5g/kg標準体重/日未満というE(曝露要因)の定義を満たすか否かで(連載第40回参照)、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群の2群に分類しています。変数Censorには、アウトカム発生を1、打ち切りを0として観察期間内でのアウトカム発生の有無の情報が入力してあります(連載第37回、第40回参照)。人年法による発生率の計算式は下記のとおりでした(連載第37回、第40回参照)。発生率=一定の観察期間内のアウトカム発生数÷at risk集団の観察期間の合計まず分子であるアウトカム発生数を、解析対象集団全体および、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群、それぞれで計算します。Excel関数のSUMおよびSUMIFを使用します。合計を算出するSUM(合計範囲)を用いた以下の式で、解析対象集団全体のアウトカム発生数が計算されます。=SUM(C:C)また、検索範囲におけるある条件を満たす合計を算出するSUMIF(検索範囲、検索条件、合計範囲)を用いた以下の式で、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群、それぞれの群でのアウトカム発生数が計算できます。=SUMIF(B:B、1、C:C)=SUMIF(B:B、0、C:C)計算の結果、アウトカム発生数はそれぞれ以下のとおりになります。解析対象集団全体 185イベント低たんぱく食厳格遵守群 70イベント低たんぱく食非厳格遵守群 115イベント次に、分母となるat risk集団の観察期間の合計を解析対象集団全体および、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群でそれぞれ計算しましょう。同様にSUM、SUMIF関数を用います。=SUM(D:D)=SUMIF(B:B、1、D:D)=SUMIF(B:B、0、D:D)at risk集団の観察期間の合計(小数点第1位表示)はそれぞれ以下のとおりになったでしょうか。解析対象集団全体 2476.4人年低たんぱく食厳格遵守群 776.0人年低たんぱく食非厳格遵守群 1700.4人年それでは上述した発生率の式に1,000を掛けて、1,000人年当たりの発生率をそれぞれの集団で求めてみましょう。解析対象集団全体 74.7イベント/1,000人年低たんぱく食厳格遵守群 90.2イベント/1,000人年低たんぱく食非厳格遵守群 67.6イベント/1,000人年次回からは生存時間曲線の比較について、筆者らが出版した英文臨床研究論文の実例や、仮想データ・セットを用いた実際の統計解析方法を解説します。

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2月29日 世界希少・難治性疾患の日【今日は何の日?】

【2月29日 世界希少・難治性疾患の日】〔由来〕世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day)は、より良い診断や治療による希少・難治性疾患の患者生活の質の向上を目指し、スウェーデンで2008年から始まった活動。わが国でもこの趣旨に賛同し、2010年から2月最終日にイベントを開催している。4年に1度の閏日の2月29日が最も「まれな日」として象徴的に定められ、閏年以外は2月の最終日とされている。関連コンテンツ希少疾病ライブラリこれでいいの?著名人の犠牲のもとに認知が広がる希少疾病【バズった金曜日】抗DNA抗体ってなあに?【患者説明スライド】遺伝性血管性浮腫治療薬のホームデリバリーでQOL向上を目指す/CSLベーリング心アミロイドーシスの患者・家族と専門医が考える、希少・難治性疾患患者の公平実現に社会ができることは?

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第86回 研修医大量辞職による韓国医療危機、韓国人医師に聞いてみた

illustACより使用韓国の研修医が大量に辞職した問題が話題です。韓国政府が医師不足への対策として、大学医学部の入学定員を大幅に拡大すると発表したことが発端です。医師の収入が減少することも一因にあるかもしれませんが、背景にはいろいろ複雑な事情があるようです。たまたま知り合いに韓国人医師がいるので、この事情を聞いてみました。現在韓国で勤務しておられるわけではないので、現状と合わないところがあったらあしからず。「医学部の定員増で給与が減ることが原因か?」「医学部の定員増で給与が減ることが原因?」という質問に対しては、「うーん、確かにそれもあるかもしれないが」と前置きがあり、「待遇はよいのですが、日本と違って医師の扱いはかなり雑な印象」という返答でした。そもそも皮膚科や美容外科などに流れてしまうのは、診療報酬が安いだけでなく、仕事がしんどいのに訴訟リスクが高いという背景があるようです。(日本の医師もあまり大事にされているとは思えませんが…。令和の今になってようやく働き方改革にメスを入れるくらいですから)「私は外科系ですが、韓国の場合、産科の訴訟リスクが高いです。そのため、あえて産科を避けて婦人科で診療している産婦人科医もいます。外科系なのに外科手技を避けるみたいなところもあって」日本でも、過去に産婦人科の訴訟リスクが高い時期がありました。現在はずいぶん医療訴訟件数が減りました。これは2009年に導入された、「産科医療補償制度」によるものでしょう。病院・診療所・助産所など分娩を取り扱う機関が加入する制度で、分娩機関に過失がなくても重度脳性麻痺の症例に対して補償金が支払われる制度です。韓国では外科系診療科は訴訟リスクが依然として高く、しかも医師の過失の認定閾値が低いそうで、それが急性期離れを加速させています。最近も、救急科のレジデントが医療過誤で懲役刑になったことが報道されています。実刑になると、医師免許も当然剥奪されます。さらに、「扱いが雑と言ったのは理由があって、韓国政府の高官のインタビューで『ウィセ』という言葉を使っているんですよね」と続けます。ウィセ(의새)というのは、「医師ごとき」というニュアンスで、小鳥という意味を持っています。そのため、これに反発する医師は、SNSのアイコンを鳥に変えています。「いつまでストライキは続くのか?」「いつまでストライキは続くのでしょう?」という質問に対しては、「4月の選挙くらいまででしょうか」と返答がありました。長期化することは確実で、保健医療の危機対策レベルを最も高い「深刻」に引き上げ、対策本部を設置しています。新型コロナのときにこの「深刻」が発出されましたが、まさか研修医の大量辞職でこのような事態になるとは、国民も予想していなかったでしょう。また、韓国政府は、ストライキによる医療被害報告センターを設置しており、現場を去る研修医に対して「業務開始命令が出されても職場に復帰しない場合、資格を停止する」とかなり強硬な態度を示しています。Zoomの画面越しに、「政府と医師の溝は、なかなか埋まらないかもしれません」とため息をついていました。

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レジオネラ症治療、キノロン系抗菌薬・マクロライド系抗菌薬・2剤併用で比較

 レジオネラ症は、レジオネラ肺炎を引き起こす。レジオネラ肺炎は市中肺炎の1~10%を占め、致死率は6.4%という報告もある1)。『JAID/JSC感染症治療ガイド2023』では、第1選択薬として、キノロン系抗菌薬(レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ラスクフロキサシン、パズフロキサシン)、マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)が推奨されている2)。しかし、これらの薬剤による単剤療法や併用療法の有効性の違いは明らかになっていない。そこで、忽那 賢志氏(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授)らの研究グループは、DPCデータを用いて、レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬単独、マクロライド系抗菌薬単独、これらの併用の有効性を比較した。その結果、併用療法と単剤療法には有効性の違いがみられなかった。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2024年2月15日号で報告された。レジオネラ症治療でキノロン系・マクロライド系抗菌薬を併用しても有意差なし 研究グループはDPCデータを用いて、2014年4月1日~2021年3月31日までにレジオネラ症により入院した3,560例の患者情報を分析した。対象患者を入院から2日以内に投与された抗菌薬に基づき、キノロン系単独群(2,221例)、マクロライド系単独群(775例)、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用群(564例)に分類した。傾向スコアを用いた逆確率重み付け法により、併用群を対照として院内死亡率、入院期間、入院費用を比較した。 レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬単独、マクロライド系抗菌薬単独、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用の有効性を比較した主な結果は以下のとおり。・調整後のレジオネラ症患者の院内死亡率は、キノロン系抗菌薬単独群4.6%、マクロライド系抗菌薬単独群3.1%、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用群4.5%であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後のレジオネラ症患者の入院期間は、それぞれ12日、11日、13日であり、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後のレジオネラ症患者の入院費用は、それぞれ53万4千円、50万9千円、55万7千円であり、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。 著者らは、本研究結果について「レジオネラ症の治療において、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を併用しても、単独療法と比較して大きな利点がないことが示唆された。副作用が増加する可能性を考慮すると、併用療法を選択する際には慎重な検討が必要である」とまとめた。

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進行乳がんへのDato-DXd、アジア人でもPFS延長(TROPION-Breast01)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法の前治療歴のあるHR陽性(+)/HER2陰性(-)の手術不能または転移・再発乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験のアジア人サブグループ解析の結果、全体集団と同じく抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつ管理可能な安全性プロファイルで、治療薬の減量/中断が少なかったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)のPresidential Sessionで発表した。 TROPION-Breast01試験は、HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移・再発の乳がん患者を、Dato-DXdを受ける群と治験医師選択の化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を受ける群に1:1に無作為に割り付けたグローバル第III相試験である。全体集団において、Dato-DXd群では化学療法群よりも有意にPFSが延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は少なかったことが、2023年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告されている。今回は、東アジア(日本、中国、韓国、台湾)で登録された患者における有効性と安全性が解析された(データカットオフ:2023年7月17日)。 主な結果は以下のとおり。・全体集団732例のうち、273例(日本70例、中国83例、韓国82例、台湾38例)がアジア人サブグループとして解析された。Dato-DXd群は134例(年齢中央値:54歳[範囲 29~83歳]、化学療法群は139例(52歳[33~79歳])であった。・主要評価項目の1つである盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS中央値は、Dato-DXd群は5.6ヵ月(95%信頼区間:5.4~8.1)、化学療法群は4.5ヵ月(同:4.0~5.8)であり、Dato-DXd群で有意に改善した(ハザード比:0.69[同:0.51~0.94])。・フォローアップ期間中央値の10.1ヵ月時点では全生存期間(OS)のデータは未成熟であったが、6ヵ月OS率はDato-DXd群91.5%、化学療法群89.6%であった。・奏効率は、Dato-DXd群は32.8%であったのに対し、化学療法群は26.6%であった。・全GradeのTRAEはDato-DXd群の95.4%(うちGrade3以上は20.8%)、化学療法群の84.4%(同:52.6%)に発現した。TRAEにより中止/減量/中断に至ったのはDato-DXd群では3.1%/14.6%/26.2%、化学療法群では0.7%/32.6%/31.9%であった。両群ともに死亡はなかった。・Dato-DXd群に発現した主なTRAEは、悪心54.8%、口内炎37.7%、脱毛症23.8%、嘔吐22.3%、ドライアイ20.8%などであった。・間質性肺疾患は、Dato-DXd群では3.8%(うちGrade3以上は1.5%)に認められたが、化学療法群では認められなかった。 これらの結果より、鶴谷氏は「TROPION-Breast01試験のアジア人解析において、Dato-DXdは全体集団と同様に高い有効性と安全性を示した。減量/中断に至るTRAEは化学療法群よりもDato-DXd群のほうが少なかった」としたうえで、「本解析の結果は、Dato-DXdは内分泌療法に不適でHR+/HER2-の進行乳がんの東アジア人にとって新たな治療オプションとなる可能性を支持するものである」とまとめた。

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胃がん1次治療のzolbetuximab、2試験の日本人サブグループ解析結果(SPOTLIGHT・GLOW)/日本臨床腫瘍学会

 CLDN18.2陽性、HER2陰性で、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がん患者において、CLDN18.2を標的とするモノクローナル抗体zolbetuximabは日本において保険承認申請中であり、近日中の承認が見込まれている。この承認申請の根拠となった第III相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の日本人サブグループの解析結果が、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表された。【SPOTLIGHT試験】 がん研有明病院の山口 研成氏がPresidential Session 4で発表した。・対象:CLDN18.2陽性、HER2陰性、PS0~1、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がんの成人患者・評価項目: [主要評価項目]無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など・試験群:zolbetuximab(800mg/m2、その後600mg/m2を3週ごと)+mFOLFOX6(2週ごと):zolbetuximab群・対照群:プラセボ+mFOLFOX6(2週ごと):プラセボ群 [全体集団]zolbetuximab群(283例)、プラセボ群(282例)・PFS中央値:zolbetuximab群10.61ヵ月、プラセボ群8.67ヵ月(ハザード比[HR]:0.751)・OS中央値:zolbetuximab群18.23ヵ月、プラセボ群15.54ヵ月(HR:0.750)・ORR:zolbetuximab群60.7%、プラセボ群62.1%・有害事象:Grade3以上は、zolbetuximab群で279例中242例(87%)、プラセボ群で278例中216例(78%)。主なGrade3以上の有害事象は悪心、嘔吐、食欲減退で、治療関連死は、zolbetuximab群で5例(2%)、プラセボ群で4例(1%)報告された。 [日本人サブグループ]zolbetuximab群(32例)、プラセボ群(33例)・PFS中央値:zolbetuximab群18.07ヵ月、プラセボ群8.28ヵ月(HR:0.493)・OS中央値:zolbetuximab群23.10ヵ月、プラセボ群17.71ヵ月(HR:0.719)・ORR:zolbetuximab群70.8%、プラセボ群53.8%・有害事象:Grade3以上は、zolbetuximab群で31例中24例(77.4%)、プラセボ群で32例中22例(68.8%)。主な有害事象は嘔吐(zolbetuximab群90.3%対プラセボ群53.1%)、末梢神経障害(74.2%対46.9%)、食欲減退(71.0%対53.1%) 。Grade3以上の有害事象は好中球減少症(54.8%対50.0%)が多かった。【GLOW試験】 国立がん研究センター中央病院の庄司 広和氏がOral Session 3で発表した。・対象:CLDN18.2陽性、HER2陰性、PS0~1、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がんの成人患者・評価項目: [主要評価項目]PFS [副次評価項目]OS、ORR、安全性など ・試験群:zolbetuximab(800mg/m2、その後600mg/m2を3週ごと)+CAPOX(21日ごと):zolbetuximab群・対照群:プラセボ++CAPOX(21日ごと):プラセボ群 [全体集団]zolbetuximab群(254例)、プラセボ群(253例)・PFS中央値:zolbetuximab群8.21ヵ月、プラセボ群6.80ヵ月(HR:0.687)・OS中央値:zolbetuximab群14.39ヵ月、プラセボ群12.16ヵ月(HR:0.771)・ORR:zolbetuximab群53.8%、プラセボ群48.8%・有害事象:zolbetuximab群で最も発現頻度の高かった有害事象は、悪心(68.5%)、嘔吐(66.1%対)、食欲減退(41.3%)だった。 [日本人サブグループ]zolbetuximab群(24例)、プラセボ群(27例)・PFS中央値:zolbetuximab群20.80ヵ月、プラセボ群8.28ヵ月(HR:0.352)・OS中央値:zolbetuximab群24.18ヵ月、プラセボ群14.69ヵ月(HR:0.494)・ORR:zolbetuximab群68.8%、プラセボ群61.9%・有害事象:多かった有害事象は末梢神経障害(zolbetuximab群79.2%対プラセボ群51.9%)、嘔吐(62.5%対55.6%)、食欲減退(54.2%対51.9%) だった。Grade3以上有害事象の発生率は大きな差はなかった(58.3%対63.0%)。 この2試験の結果を受け、Presidential Session 4では韓国・Yonsei Cancer HospitalのSun Young Rha氏がディスカッサントとなり、議論が行われた。Rha氏は「SPOTLIGHT試験とGLOW試験はほぼ同時期に同デザインで行われた試験である。SPOTLIGHT試験は全体集団と日本人集団で大きな傾向は同じだったが、日本人集団はPFSが良好だった。GLOW試験では日本人のPFSが全体集団と比較して非常に長く、両群に差も付いた。OSも全体集団より良好な結果だ。日本人の参加例が少ないためかもしれないが、これらの要因については今後の検討が必要だろう。胃がん1次治療は免疫チェックポイント阻害薬とzolbetuximabの比較など、多くの検討課題が出ている。人種間の比較やリアルワールドデータの検討も重要だ」とした。

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脳梗塞発症後4.5~24時間のtenecteplase、転帰改善せず/NEJM

 多くの患者が血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けていた脳梗塞の集団において、発症から4.5~24時間後のtenecteplaseによる血栓溶解療法はプラセボと比較して、良好な臨床転帰は得られず、症候性頭蓋内出血の発生率は両群で同程度であることが、米国・スタンフォード大学のGregory W. Albers氏が実施した「TIMELESS試験」で示された。tenecteplaseを含む血栓溶解薬は、通常、脳梗塞発症後4.5時間以内に使用される。4.5時間以降のtenecteplaseの投与が有益であるかどうかについての情報は限られていた。研究の詳細は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。北米112施設の無作為化プラセボ対照比較試験 TIMELESS試験は、米国の108施設とカナダの4施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2019年3月~2022年12月の期間に患者の無作為割り付けを行った(Genentechの助成を受けた)。 年齢18歳以上、最終健常確認から4.5~24時間が経過した脳梗塞で、発症前に機能的自立(修正Rankin尺度[mRS、スコア範囲:0~6点、点数が高いほど機能障害が重度で6点は死亡を示す]のスコア0~2点)を保持していた患者を、tenecteplase(0.25mg/kg、最大25mg)を投与する群、またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。脳梗塞は、NIHSSスコアが5点以上で、中大脳動脈M1/M2部または内頸動脈の閉塞を有し、灌流画像で救済可能組織を確認した患者であった。 主要アウトカムは、90日後のmRSの順序スコアとした。副次アウトカムの正式な仮説検証は行わず 458例を登録し、tenecteplase群に228例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:62~79]、女性53.5%)、プラセボ群に230例(73例[63~82]、53.5%)を割り付けた。354例(77.3%)が、血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けた。最終健常確認から無作為化までの時間中央値は、tenecteplase群が12.3時間(IQR:9.2~15.6)、プラセボ群は12.7時間(8.7~16.5)であった。 90日後の時点でのmRSスコア中央値は、tenecteplase群が3点(IQR:1~5)、プラセボ群も3点(1~4)だった。90日時のプラセボ群に対するtenecteplase群のmRSスコア分布の補正共通オッズ比は1.13(95%信頼区間[CI]:0.82~1.57)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.45)。 有効性の主要アウトカムに有意差がなかったことから、副次アウトカムの正式な仮説検証は行わなかったが、90日時の機能的自立(mRSスコア≦2点)の割合は、tenecteplase群が46.0%、プラセボ群は42.4%であり(補正オッズ比:1.18、95%CI:0.80~1.74)、24時間後の再疎通の割合はそれぞれ76.7%および63.9%(1.89、1.21~2.95)、血栓回収療法後の再灌流の割合は89.1%および85.4%(1.42、0.75~2.67)であった。死亡:19.7% vs.18.2%、症候性頭蓋内出血:3.2% vs.2.3% 安全性のアウトカムの解析では、90日時の死亡がtenecteplase群19.7%(43例)、プラセボ群18.2%(39例)、36時間以内の症候性頭蓋内出血はそれぞれ3.2%(7例)および2.3%(5例)で発生した。また、有害事象、重篤な有害事象、有害事象による試験からの脱落の発生にも両群間に差を認めなかった。 著者は、「発症から4.5時間以内のアルテプラーゼ投与について検討したさまざまな試験における静脈内投与から動脈穿刺までの時間中央値は25分であり、本試験では15分と短かったが、血栓回収療法前の再疎通の割合は同程度であった」としている。

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PNH治療に新たな進展、ボイデヤによる今後の期待/アレクシオン

 アレクシオンファーマは2024年2月15日、「新たな治療薬『ボイデヤ』、C5阻害剤への国内初の併用薬が変える『発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)』治療の展望 ―持続する貧血・疲労感、定期的な輸血などPNH患者さんのアンメットニーズに対する個別化治療の提供―」と題したメディアセミナーを開催した。 同セミナーでは、血管内溶血およびヘモグロビン尿を特徴とする希少疾患、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)について、西村 純一氏(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 招聘教授)が「発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を取り巻く環境と治療の現状と課題」、小原 直氏(筑波大学 医学医療系 医療科学 教授)が「国際共同第III相試験(ALPHA試験)の結果に基づいた『ボイデヤ』への今後の期待」と題し、それぞれ講演を行った。その中で、西村氏からはPNHの病態、診断基準、治療戦略が、小原氏からはALPHA試験の解説およびボイデヤ(一般名:ダニコパン)の処方経験について述べられた。PNHの病態 PNHは、溶血とそれに続くヘモグロビン尿、血栓症、骨髄不全を3大症状とする。PNHでは血管内溶血が一酸化窒素(NO)低下を誘発することに伴う諸症状(肺高血圧症、男性機能障害、嚥下痛・嚥下困難、腹痛など)が生じ、PNHに特徴的な合併症の慢性腎臓病と血栓症は、それぞれ複数の機序が複合的に相まって引き起こされる。PNHの診断と診断基準の改訂 PNHの診断では、溶血所見(血清LDH値の上昇、網状赤血球増加、間接ビリルビン値上昇など)がある患者にPNHの疑いがあれば、フローサイトメトリー検査を実施する。診断基準は2022年に改訂され(『発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版』)、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質の欠損赤血球(PNHタイプ赤血球)の検出と定量において、PNHタイプ赤血球(II型+III型)が1%以上、かつ血清LDH値が正常上限の1.5倍以上の場合は「A.検査初見」を満たすDefinite(確定診断の要件)、それ以外の所見・症状は「B.補助的検査所見」「C.参考所見」として記載されることになった。溶血所見に基づいた重症度分類は、従来中等症に記載されていた臓器症状が、令和4年度改訂版では割愛された。治療戦略 治療の選択に関しては、溶血とそれに伴う血栓症、骨髄不全、それぞれについて必要な治療を別個に判断することが原則である。終末補体阻害薬であるソリリス(一般名:エクリズマブ)投与により、補体活性化経路中のC5転換酵素がブロックされて血管内溶血は止まるため、PNHの予後を大きく決定付ける血栓症は大幅に減少するが、上流の補体活性化により血管外溶血という新たな問題が生じる。 西村氏は、生命予後に大きく関わる血管内溶血をしっかり抑えることを第一に考えつつ、近位補体阻害薬のボイデヤで血管外溶血も同時に抑えていく治療戦略を提唱した。ALPHA試験 続く講演で小原氏は、ボイデヤが血管外溶血を抑制することを期待して開発されたこと、補体(C5)阻害薬による適切な治療を行っても十分な効果が得られない場合に併用投与することを述べた。このボイデヤについて実施されたのが、「ALPHA試験(ALXN2040-PNH-301試験):ラブリズマブ又はエクリズマブ投与下で血管外溶血が認められるPNH患者を対象とした国際共同第III相試験」である。 同試験では、ユルトミリス(一般名:ラブリズマブ)/ソリリス投与後も貧血が残存する(Hb濃度が9.5g/dL以下、かつ網状赤血球数が120×109/L以上)、つまり造血に問題はないが血管外溶血が推測される患者を、ボイデヤ群57例、プラセボ群29例に無作為に割り付け、12週間の二重盲検期、12週間の継続投与期、その後の延長投与期にわたり投与を行った。 主要評価項目の投与12週時点のHb濃度のベースラインからの変化量は、ボイデヤ群は2.940g/dL(SE:0.2107)であったが、プラセボ群は0.496g/dL(SE:0.3128)と、ほとんど変化せず、ボイデヤ群のほうが貧血の改善も速やかであることが示された。同様の結果は日本人集団でも得られた。主な副次評価項目である、投与12週時点のHb濃度が輸血なしで2g/dL以上増加した患者の割合などについても、全体集団、日本人集団ともに良好な結果が得られた。 ボイデヤ群の有害事象は、全体集団ではGrade3が10例、Grade4が1例、試験薬投与中止に至った有害事象が3例(肝酵素上昇、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、血中ビリルビン増加および膵炎、各1例)にみられた。Grade3、Grade4の有害事象は、日本人集団では認められなかった。ボイデヤの処方経験 小原氏は、PNHと診断されてソリリスを投与され、LDHは著明に低下したが貧血の改善は乏しく、数ヵ月に1回の輸血を要し、ユルトミリスに変更後も貧血の改善も輸血の頻度も改善しなかった40代男性の例を紹介し、ボイデヤの併用によってHb濃度の改善、輸血の脱却、活動性の向上が得られたことを報告した。同氏は「ユルトミリスまたはソリリス投与下でボイデヤを追加経口投与することにより、血管内溶血の抑制を維持したまま、血管外溶血に伴う貧血の改善・抑制が可能であることが示された」と述べて講演を締めくくった。 補体(C5)阻害薬で治療中のPNH患者が抱える貧血など、これまで臨床的な課題とされてきた血管外溶血に対して、ボイデヤという新たな解決策が示された。今後、患者の負担軽減につながることに期待したい。

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