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第98回 激辛チップスでなぜ死亡したのか?

ココイチは何辛を食べます?キャロライナリーパー私はわりと辛いものが好きだと思って42年生きてきました。子供の頃から湖池屋のカラムーチョが大好きで、あれが「辛さの標準」だと信じて疑いませんでした。大学の頃、カレーのココイチで初めて「1辛」を食べたときのこと。私にとっては衝撃的な辛さだったのですが、一緒に来ていた友人が涼しい顔で「3辛」を食べていたのを見て唖然としました。井の中の蛙大海を知らず。ココイチの「2辛」は、「1辛」の約2倍、「3辛」は約4倍、「5辛」は約12倍、その先は上限20辛まで選択肢は広がっています。途中から辛さの指標が公開されていないので、何十倍も辛いのではと想像しますが、私が挑戦したらきっと入院する羽目になるでしょう。辛さの指標として有名なスコヴィル値で見てみると、10辛が約1,200スコヴィル値とのこと。ハラペーニョが最大で8,000スコヴィル値程度ですから、1万スコヴィル値はまさにガチでヤバイでしょう。ケタ違いのスコヴィル値さて、2023年9月、SNSで激辛チップスを食べる様子を投稿した10代の少年が、食べた直後に死亡するという悲劇がありました。使用されていたのはキャロライナリーパーとナーガヴァイパーという唐辛子です。キャロライナリーパーは、その形から大型の鎌を持った死神という意味で「リーパー」と名付けられています。ナーガヴァイパーは、キャロライナリーパーが登場する前にギネス世界記録だった唐辛子です。どちらも世界トップクラスの激辛唐辛子というわけです。これまで最も辛い唐辛子として長らく君臨していたキャロライナリーパーは、ここから交配して作られたスコヴィル値が約2倍のペッパーXにその座を奪われています。ペッパーXのスコヴィル値は、なんと318万です。スカウターが「ボンッ!」って破裂するやつです。唐辛死の原因唐辛子が原因で命を落とす「唐辛死」となってしまった少年。彼の死因は何だったのでしょうか。報告書によれば、彼は大量のカプサイシン摂取後に心停止に陥り、心臓が肥大していたとされています。急性に心肥大を起こすのは難しいことから、基礎疾患が影響し、心拍数の急激な上昇が関連しているのかもしれません。あるいは、アナフィラキシーや喘息の急性悪化により心停止に至った可能性も考えられます。唐辛子の摂取が心筋梗塞の原因となった症例1)や、キャロライナリーパーによって強烈な頭痛(可逆性脳血管攣縮症候群:RCVS)を起こした症例2)(下記参照)が報告されています。辛さに慣れていない人は無理せず、自分の限界を守ることが大切です。間違ってもペッパーXに挑戦しないようにしましょう。参考文献・参考サイト1)Sogut O, et al. Acute myocardial infarction and coronary vasospasm associated with the ingestion of cayenne pepper pills in a 25-year-old male. Int J Emerg Med. 2012 Jan 20;5:5.2)Boddhula SK, et al. An unusual cause of thunderclap headache after eating the hottest pepper in the world - "The Carolina Reaper" BMJ Case Rep. 2018 Apr 9;2018:bcr2017224085.

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治療効果判定の指標を設計する【国試のトリセツ】第41回

§3 decision making治療効果判定の指標を設計するQuestion〈110B57〉32歳の男性。発熱と咳嗽とを主訴に来院した。現病歴2日前から38℃台の発熱と咳嗽が出現した。市販の解熱鎮痛薬を服用したが、37.0℃以下に解熱せず、今朝からは呼吸困難も感じるようになったため受診した。腹痛と下痢はない。既往歴27歳時に右胸部の帯状疱疹。29歳時に右側肺炎。30歳時に左側肺炎。生活歴食品加工の工場で働いている。妻と4歳の子どもがいる。喫煙は20本/日を10年間。飲酒は機会飲酒。現 症意識は清明。身長165cm、体重58kg。体温38.3℃。脈拍88/分、整。血圧86/42mmHg。呼吸数28/分。SpO295%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音に異常を認めない。右側の胸部でcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦で、腸蠕動音に異常を認めず、肝・脾を触知しない。検査所見血液所見:赤血球398万、Hb11.3g/dL、Ht37%、白血球3,400(桿状核好中球22%、分葉核好中球58%、好酸球3%、好塩基球2%、単球8%、リンパ球7%)、血小板15万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン3.8g/dL、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸5.8mg/dL、Na137mEq/L、K3.9mEq/L、Cl100mEq/L。CRP8.8mg/dL。胸部X線写真を次に示す。その後の経過胸部X線写真と喀痰のGram染色標本の検鏡結果から肺炎球菌による細菌性肺炎と診断し入院となった。入院初日からセフトリアキソンの投与を開始したところ、入院3日目までに咳嗽は減少し食欲も出てきた。入院3日目の体温は36.8℃、脈拍80/分、整。血圧116/58mmHg。呼吸数16/分。SpO296%(room air)。血液所見:白血球6,300(桿状核好中球14%、分葉核好中球61%、好酸球3%、好塩基球2%、単球7%、リンパ球13%)、血小板22万。CRP4.4mg/dL。胸部X線写真で所見の改善を認めた。初診時に採取した喀痰および血液の培養からは肺炎球菌が検出された。その後も症状は改善傾向が続き、入院4日目に採取した喀痰の細菌培養検査では肺炎球菌が陰性化していたが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された。この患者に対する適切な治療はどれか。(a)メロペネムを追加投与する。(b)バンコマイシンを追加投与する。(c)セフトリアキソン単独投与を継続する。(d)セフトリアキソンをメロペネムに変更する。(e)セフトリアキソンをバンコマイシンに変更する。

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日本人高齢者の認知症発症を予測するバイオマーカー

 九州大学の小原 知之氏らは、血漿アミロイドβ(Aβ)42/40、リン酸化タウ(p-τ)181、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)と認知症リスクとの関連を評価し、これらの血漿バイオマーカーが、一般的な高齢者集団の認知症発症予測の精度向上につながるかを調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年4月12日号の報告。 非認知症の65歳以上の地域在住日本人高齢者1,346人を対象に、5年間のプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。血漿バイオマーカーは、超高感度オートELISA Simoa HD-X Analyzerを用いて、定量化した。認知症リスクに対する各血漿バイオマーカーレベルのハザード比を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、151例(アルツハイマー病:108例、非アルツハイマー病:43例)であった。・血漿Aβ42/40レベルの低下および血漿p-τ181レベルの上昇は、アルツハイマー病発症と有意な関連が認められたが(p for trend<0.05)、非アルツハイマー病との関連は認められなかった。・一方、GFAPおよびNfLの血漿レベルの高さは、アルツハイマー病および非アルツハイマー病のいずれにおいても、有意な関連が認められた(p for trend<0.05)。・これら4つの血漿バイオマーカーを認知症リスクモデルの合計スコアからなるモデルに追加した場合、認知症発症の予測精度が有意に向上した。 著者らは、「日本人高齢者において、血漿Aβ42/40およびp-τ181は、アルツハイマー病の特異的マーカーであり、血漿GFAPおよびNfLは、すべての原因による認知症の潜在的なバイオマーカーである可能性が示唆された。さらに、これらのバイオマーカーの測定は、臨床現場における認知症発症リスクの特定に有用であり、比較的低侵襲な方法であると考えられる」としている。

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高リスク早期乳がんへのテーラードdose-dense化学療法、10年時解析で無再発生存期間を改善(PANTHER)/ESMO BREAST 2024

 高リスク早期乳がん患者において、テーラードdose-dense化学療法は標準化学療法と比較して10年間の乳がん無再発生存期間(BCRFS)を改善し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のTheodoros Foukakis氏が、第III相PANTHER試験の長期追跡調査結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。・対象:18~65歳、リンパ節転移陽性もしくは高リスクリンパ節転移陰性で、初回手術後の乳がん患者・試験群(tdd群):白血球最下点を基にエピルビシン+シクロホスファミドを2週ごと4サイクル、その後ドセタキセルを2週ごと4サイクル(用量は前サイクルの血液毒性に応じて調整)・対照群(標準化学療法群):フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミドを3週ごと3サイクル、その後ドセタキセルを3週ごと3サイクル・評価項目:[主要評価項目]BCRFS[副次評価項目]5年無イベント生存期間(EFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、Grade3/4の有害事象発現率 主な結果は以下のとおり。・2007年2月~2011年9月にスウェーデン、ドイツ、オーストリアの施設から2,017例を登録、2,003例が解析対象とされ、両群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値10.3年において、tdd群は標準化学療法群と比較して主要評価項目であるBCRFSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.65~0.98、log-rank検定のp=0.041、10年イベント率:18.6% vs.22.3%、絶対差:3.7%±1.9%)。・BCRFSの改善は、ホルモン受容体やHER2の発現状況、病期、およびそのほかの人口統計学的・病理学的要因によらずサブグループ全体で認められたが、とくに50歳以上のホルモン受容体陽性患者でdose-denseスケジュールによる一貫したベネフィットがみられたほか、術後にトラスツズマブ投与を受けたHER2陽性患者では用量強化によるベネフィットがみられた。・DDFSはtdd群で有意な改善がみられたが(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、log-rank検定のp=0.039)、OSについては有意な差はみられなかった(HR:0.82、95%CI:0.65~1.04、log-rank検定のp=0.095)。 Foukakis氏は今回の結果を受けて、術後の高リスク早期乳がん患者において、dose-denseスケジュールは標準治療として考慮されるべきではないかとし、また毒性に応じた用量調整は化学療法を最適化するために有望な戦略であるとして、さらなる研究が必要と結んだ。

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切除可能NSCLC、周術期ニボルマブ追加でEFS改善/NEJM

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、周術期(術前および術後)補助療法にニボルマブを用いることで、化学療法単独の補助療法と比較して無イベント生存期間(EFS)が有意に延長し、新たな安全性シグナルは観察されなかった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのTina Cascone氏らCheckMate 77T Investigatorsが試験の結果を報告した。切除可能なNSCLC患者において、ニボルマブ+化学療法の術前補助療法はアウトカムを有意に改善することが示され、術前補助療法における標準治療となっている。ニボルマブを周術期に用いることで、臨床的アウトカムがさらに改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌2024年5月16日号掲載の報告。化学療法単独と比較、EFSを評価 CheckMate 77T試験は、国際共同第III相無作為化二重盲検試験。切除可能なStage IIA~IIIBのNSCLC成人患者を対象とし、被験者を、ニボルマブ群(術前にニボルマブ+化学療法を3週ごと4サイクル投与→手術→ニボルマブを4週ごと1年間投与)、または化学療法群(術前にプラセボ+化学療法を3週ごと4サイクル投与→手術→プラセボを4週ごと1年間投与)に無作為化して追跡評価した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるEFSであった。副次評価項目は、盲検下独立病理判定による病理学的完全奏効(pCR)および病理学的奏効(MPR)、全生存期間、安全性とした。 2019年11月~2022年4月に計735例が登録され、うち461例が無作為化された(229例がニボルマブ群、232例が化学療法群)。 本報告は、事前に規定されていた中間解析(追跡期間中央値25.4ヵ月)の結果である。中間解析時点でニボルマブ群のEFSのハザード比は0.58で有意差 中間解析時点において、18ヵ月EFS率は、ニボルマブ群70.2%、化学療法群50.0%であった(病勢進行または再発、手術中止、死亡のハザード比[HR]:0.58、97.36%信頼区間[CI]:0.42~0.81、p<0.001)。 pCR率は、ニボルマブ群25.3%、化学療法群4.7%であった(オッズ比[OR]:6.64、95%CI:3.40~12.97)。MPR率はそれぞれ35.4%、12.1%であった(OR:4.01、95%CI:2.48~6.49)。 Grade3/4の治療関連有害事象は、ニボルマブ群32.5%、化学療法群25.2%に発現した。

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特発性重症深部脳内出血、減圧開頭術+内科的治療vs.内科的治療単独/Lancet

 特発性重症テント上深部脳内出血患者において、減圧開頭術+最善の内科的治療が最善の内科的治療単独と比べて優れる可能性のエビデンスは弱いことが、スイス・ベルン大学のJurgen Beck氏らSWITCH study investigatorsによる検討で示された。著者は、「今回の結果は、他の部位の脳内出血に当てはまるものではなく一般化はできない。また、生存は、併用群、内科的治療単独群の両者ともに重度の障害を伴った」と述べている。特発性重症深部脳内出血患者において、減圧開頭術がアウトカムを改善するかは不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月15日号掲載の報告。大脳基底核または視床部にわたる重症脳内出血を呈した成人を対象に評価 SWITCH試験は特発性重症深部脳内出血患者において、減圧開頭術+最善の内科的治療が最善の内科的治療単独と比較して、6ヵ月時点のアウトカムを改善するかどうかを検証した多施設共同無作為化非盲検評価者盲検試験。オーストリア、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイスの脳卒中センター42施設で行われた。 大脳基底核または視床部にわたる重症脳内出血を呈した成人(18~75歳)を、減圧開頭術+最善の内科的治療群、または最善の内科的治療単独群に無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、180日時点での修正Rankinスケール(mRS)スコア(7ポイント評価、範囲:0[障害なし]~6[死亡])が5~6とし、ITT解析にて評価した。併用群でリスク低下、aRRは0.77、aRDは-13% SWITCH試験は、資金不足のため早期に中止となっている。 2014年10月6日~2023年4月4日に、201例が無作為化され、197例から同意を取得した(併用群96例、単独群101例)。63例(32%)が女性、134例(68%)が男性で、年齢中央値は61歳(四分位範囲[IQR]:51~68)、血腫量中央値は57mL(44~74)であった。 180日時点でmRSスコア5~6であった患者は、併用群が42/95例(44%)、単独群が55/95例(58%)であった(補正後リスク比[aRR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.59~1.01、補正後リスク群間差[aRD]:-13%、95%CI:-26~0、p=0.057)。 per-protocol解析(適格基準に反していた患者、割り付けられた治療を受けなかった患者、事前規定の評価日以外に評価を受けた患者を除外)では、180日時点でmRSスコア5~6であった患者は、併用群36/77例(47%)、単独群44/73例(60%)であった(aRR:0.76、95%CI:0.58~1.00、aRD:-15%、95%CI:-28~0)。 重篤な有害事象は、併用群42/103例(41%)、単独群41/94例(44%)に発現した。

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レートコントロールと重篤な出血イベント(解説:後藤信哉氏)

 非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法は広く普及した。心房細動の動悸に対してレートコントロールが必要となる。レートコントロールにはβ遮断薬かカルシウム拮抗薬を使っているケースが多いと思う。カルシウム拮抗薬としては、作用時間の短いベラパミルよりもジルチアゼムを使うことが多いと思う。レートコントロールで用いる薬と抗凝固薬の薬物相互作用などは十分に詳細に検討されてこなかった。薬物代謝的には、レートコントロール薬の代謝により代謝酵素が使用される結果、抗凝固薬の血中濃度が増加するリスクは想定された。本研究は後ろ向き観察研究コホートを用いて、レートコントロールに用いる薬剤による出血イベントリスクへのインパクトについての仮説産生を目指した。 日本の国民皆保険制度の中にも国保、社保など不均一性がある。米国は一般に医療保険がないイメージがあるが、実際は、米国の医療保険制度はそれなりに充実している。オバマケアが嫌われたのは、連邦政府による過度の介入が米国人に忌避されたためである。米国の勤労者には会社からの手厚い医療保険がある場合が多い。筆者が米国で暮らしていた間に、勤務先が用意した健康保険の自己負担率が、現在の日本より少なかった。また、米国暮らしが長く、それなりに社会保険税(social security tax)を支払っていた筆者のところには、最近、勤労していない高齢者を対象としたメディケアの案内が来た。本研究はメディケアのデータベースを用いた後ろ向き観察研究である。政府の管理する健康保険データなので、日本でも同様の解析は原理的に可能だと思う。データベースに基づいた最適医療を最小限のコストにて供給しようとのインセンティブがあれば、データベース解析と解析結果に基づいた医療のシステム的改善は必須と思う。 20万4,155 例のうち、5万3,275例がジルチアゼム、15万880例がメトプロロールによるレートコントロールを受けていた。いずれも特許切れした安価な薬剤であり、公的保険医療に適した薬剤である。抗凝固薬としては薬効を標準化できるいわゆるDOACのうち、米国にて実際に使用可能なリバーロキサバンとアピキサバンを用いた。日本で広く使用されるエドキサバンは、米国では腎機能正常性に使用できないとの制限があるため研究対象とされていない。 メトプロロール群に比較してジルチアゼム群における重篤な出血による入院・死亡リスクは、1.21 (95%信頼区間:1.13~1.29)倍大きく、差は観察早期から見られた。重篤な出血による入院、死亡は同じ方向性であった。ジルチアゼムの容量依存性もあり、各種sensitivity analysisの結果も同様で、メトプロロールよりジルチアゼム群で出血が多いのは本当らしい。 後ろ向きコホートにて、レートコントロールの薬剤がDOACによる出血リスクに影響を与えるとの仮説はできた。ランダム化比較試験により仮説検証を目指すか、ジルチアゼム群のメトプロロール群への移行をメディケアとして促すか、科学に基づいた政策決定の今後を見守りたい。

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「抗生物質ください!」にはどう対応すべき?【もったいない患者対応】第6回

「抗生物質ください!」にはどう対応すべき?登場人物<今回の症例>28歳男性。生来健康今日からの37℃台の発熱、咳嗽、喀痰、咽頭痛あり身体所見上、咽頭の軽度発赤を認める<診察の結果、経過観察で十分な急性上気道炎のようです>やっぱり風邪でしょうか?そうですね。風邪だと思います。そうですか。仕事が忙しくて、風邪をひいている場合じゃないんです。とにかく早く治したいので、抗生物質をください。抗生物質は風邪には効きませんよ?でも以前、抗生物質を飲んだら次の日にすっきり風邪が治ったことがあったんです。今日は抗生物質をもらいに来たんです。処方してください。…わかりました。では処方しましょうか。【POINT】若くて生来健康な患者さんの、受診当日からの上気道症状と微熱。上気道炎として、まずは対症療法のみで経過観察してもよさそうな症例です。患者さんから抗菌薬の処方を希望された唐廻先生は、それが不要であることを伝えますが、患者さんに強く迫られて根負けしてしまいました。このようなケース、どう対応すればよかったのでしょうか? デメリットをきちんと説明していますか?患者さんのなかには、何か目に見える形で治療してもらわないと満足できない、という方が一定数います。「治療の必要なし。経過観察可能」と判断されると、「医師は何もしてくれなかった」と思ってしまうのです。なかには、今回のケースのように「風邪には抗菌薬が効く」という間違った医学知識を自らの体験から信じている患者さんも多くいます。こういう方に、無治療経過観察が望ましいことはなかなか理解してもらえません。今回の唐廻先生のように、早々と患者さんの希望どおりに対応してしまうほうが医師にとっては楽です。しかし、医学的に不要な治療を患者さんの希望に合わせて行ってしまうと、患者さんに副作用リスクだけを与えることになります。また、必要のない治療を行うことにより、かえって病態が修飾されるので、精査が必要なまれな病気が隠れていたとき、その発見が遅れるリスクもあるでしょう。もちろん、不要な医療行為は医療経済的な観点からも望ましくありません。唐廻先生のように安易に処方せず、まずは治療が不要であることをきちんと説明することが大切です。一方で、十分な説明なしに処方を断ってしまうのも問題です。満足できなかった患者さんは、自分が望む治療を提供してくれるところを探し、結局別の病院を受診するかもしれないからです。これは、患者さんにとって有益とはいえません。では、治療が不要であることをどのように伝えればよいでしょうか?「なぜ処方できないのか」を明確に伝えようまず、医学的根拠を可能な限りわかりやすく伝えるよう努力すべきです。たとえば今回の抗菌薬に関する説明であれば、まず、風邪の原因はほとんどがウイルス感染である。抗菌薬は細菌をやっつける薬であって、ウイルスをやっつける薬ではないので、風邪には効果がないこと抗菌薬には吐き気や下痢、アレルギーのようなリスクがあり、効果が期待できないうえに副作用のリスクだけを負うのは割に合わないことを説明します。あくまでも個人的な意見“ではない”こともポイント次に、「治療は必要ない」という結論が「個人の主観的判断」によって得られたものではなく、ガイドライン上の記載や学会・公的機関の見解、過去の大規模な臨床試験のデータなど、客観的なエビデンスに基づくものであることを伝えるのがよいでしょう。風邪に抗菌薬を使用することは、メリットよりデメリットのほうが圧倒的に大きいため、厚生労働省が発行した「抗微生物薬適正使用の手引き」に「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されていることをかいつまんで説明する、という形がおすすめです。もっと簡単に説明したい場合は、「近年は○○をするのが一般的です」「〇〇されています」「多くの医師が○○しています」のように、自分の主観“以外”のところに拠り所があるというニュアンスを伝えると効果的です。かかりつけの患者さんなど、長年の付き合いで信頼関係ができている場合とは違って、患者さんが医師と初めて会うときは「目の前の医師を本当に信頼していいだろうか」と不安になるものです。そのため、客観的な知見を拠り所にしたほうが、患者さんは安心する可能性が高いはずです。こうした根拠をわかりやすく説明できるよう、準備しておきましょう。もちろん、風邪から肺炎に発展するなど、本当に抗菌薬が必要な病態に発展する可能性はあります。こうしたケースで、患者さんが「抗菌薬を使用しなかったことが原因ではないか」と疑うことのないよう、今後の見通しや再受診のタイミングを伝えておくことも大切です。点滴やうがい薬も誤解が多い風邪は誰もが何度もかかる病気なので、「こういう風に治したい」という強い希望をもつ患者さんは多いと感じます。たとえば、「風邪は点滴で治る」と思い込んでいる人もいますし、ヨード液(商品名:イソジンなど)のうがい薬が風邪予防につながると信じている人もいます。患者さんにこうした希望がある場合、完全に否定するのではなく、それぞれのデメリットや拠り所となるエビデンスを説明したうえで判断してもらいます。点滴であれば、デメリットとして末梢ルート確保に伴う感染リスクや神経障害などのリスク長時間病院に滞在することによる体調悪化のリスク補液に伴う循環器系への負担をきちんと説明する必要があります。ヨード液については、「ヨード液よりも水うがいのほうが風邪予防や症状の緩和につながる」といった客観的なエビデンス1)があることを説明するとよいでしょう。これでワンランクアップ!やっぱり風邪でしょうか?そうですね。風邪だと思います。そうですか。仕事が忙しくて、風邪をひいている場合じゃないんです。とにかく早く治したいので、抗生物質をください。風邪の原因はほとんどが細菌ではなくウイルスです。抗生物質は細菌をやっつける薬なので、ウイルスをやっつけることはできません※1。風邪に効果は期待できないうえに副作用のリスクもある※2ので、今回は使わないほうがいいと思います。風邪に抗生物質を希望する患者さんが多いので、厚労省からも「風邪に対して抗生物質を使わないことを推奨する」という通達が出ているんですよ※3。抗生物質なしで一旦経過をみませんか※4。もちろん症状が悪化したときは風邪とは異なる別の病気を併発している可能性もありますので、そのときは必ずもう一度受診してくださいね。※1:ここを誤解している患者さんは多い。※2:あくまで患者さんの不利益になることを強調する。※3:客観的な意見を伝えると納得してもらいやすい。※4:一度猶予をもらうのも手。参考1)Satomura K, et al. Am J Prev Med. 2005;29:302-303.

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第213回 新規開業の落とし穴(後編) ドクター・ショッピングのあげく、足専門の重装備クリニックで不正請求を体験して実感した開業のダークサイド

収益がなかなか出ないと不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところもこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLB、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ 有投手が、5月19日(現地時間)のアトランタ・ブレーブス戦で勝利、日米通算200勝(NPB93勝、MLB107勝)をあげました。7回無失点、奪三振9という好投でした。ダルビッシュ投手といえば、東北高校時代に出場した夏の甲子園では、マウンドで常にイライラしていた姿が印象に残っています。また、北海道日本ハムファイターズに入団直後は、未成年にもかかわらずパチスロ店での喫煙を写真週刊誌に撮られています。“ヤンチャ”なイメージでスタートしたダルビッシュ投手のプロのキャリアですが、20年を経た現在は、身体のケアやトレーニング、栄養管理などに真摯に取り組む“聖人”のイメージが定着しています。パドレスのマイク・シルト監督は200勝をかけた大一番の試合の前、「驚くべき伝説的な節目。自分をしっかりと管理し、準備を怠らない。若い時代からそうやってきたことが報われている。野球にすべてをささげている」と同投手をたたえたそうです。なお、勝利後のインタビューでダルビッシュ投手は、「NHKさん、生中継、大谷くんのやつを止めてまでやってくださっているので、今日はなんとか決めたいという気持ちはありました」と殊勝なことを言ってました。人は成長し、変わる、ということを野球の世界で体現しているダルビッシュ投手。防御率零点台を続けるシカゴ・カブスの今永 昇太投手とともに、今年のオールスターにもぜひ選ばれてほしいと思います。さて、前回は新規開業の最近のトレンドや、金融機関や開業コンサルタント側が新規開業に力を入れる背景、さらには医師側が騙されてしまうケースについて書きました。今回は、大型化・重装備化や、複数医師による開業のダークサイドについて書いてみたいと思います。大型化・重装備化は開業費がかかり、複数医師開業は医師の人件費が2倍、3倍となります。収入は増えますが、支出もその分当然増えます。患者数をこなしてもこなしても収益がなかなか出ないとなると、不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところも出てきます。地元の整形外科に愛想を尽かしドクター・ショッピング以下は私の個人的な体験です。昨年の秋、普通にランニングをしていて、突然左足の甲(中足骨)付近に激しい痛みが走りました。ちょっとした不具合ですぐに痛みも消えるだろうと思い、歩いて自宅に帰ったのですが、帰宅してからも歩くと痛く、しかも腫れてきました。これは骨折ではないかと考え、翌日、数年前、四十肩(肩関節周囲炎)のときに一度通った近所の整形外科を受診しました(「第35回 著名病院の整形外科医に巨額リベート、朝日スクープを他紙が追わない理由とは?」参照)。地元の高齢者がサロン代わりに電気治療に訪れているクラシカルなクリニックで、医師は院長だけです。X線を撮ってもらったのですが、院長は「折れてない。ただの炎症だから、ジクロフェナクと湿布を出しておくね」と、前回同様、今回もなんとも心もとない診療で終わりました。しかし、1週間たっても歩くと痛み、歩きすぎた夕方にはぱんぱんに腫れる状態は改善しませんでした。その後何回かこの整形外科を受診しても、ジクロフェナクと湿布の処方が続くだけです。自分で「中足骨疲労骨折」と見立て、ここの整形外科ではちゃんとした治療は受けられないと考えた私は“ドクター・ショッピング”をしてみることにしました。ネットで「足」専門のクリニックを検索、整形外科医、形成外科医が複数人勤務しており、骨折などの整形外科的疾患はもちろん、リウマチ、足の潰瘍など、総合的に足を診察しているという触れ込みのクリニックを見つけました。サイトを見る限り、きちんと診療してくれそうだったので、受診してみることにしました。ただの骨折疑いなのに治療用インソールを勧められ、初診なのに慢性疼痛疾患管理料も算定そのクリニックは、都心の一等地のビルのワンフロアで診療を行っていました。足専門の診察台、立ったまま足を撮影するX線装置、フットケア室、リハビリ室なども備わっていました。しかし、診察前、待合室で待っていると、ただの骨折疑いで受診しているのに、治療用インソール(足底装具)作成を勧めるパンフレットをいきなり渡されたのには「???」と思いました。また、ある女性の患者が窓口で「再診で来たのですが、私、リハビリもやるんですか?リハビリのことはまだ何も聞いていないのですが」と大声で話しているのも聞こえました。こちらも「???」です。診察前にX線装置で足を撮影、しばらく待ってから40代とおぼしき医師の診察を受けました。ここでも、「明確な骨折は確認できませんが、ちょっとこの部分がおかしいかも」と言われ、「念のためエコーも撮っておきましょう」と超音波検査をその場で受けることになりました。しかし、超音波でも明確な骨折は確認できず(X線で写らないのだからまあそうでしょう)、「とりあえず湿布だけ出しておきます。次回からリハビリもしますので、予約していってください。インソールも考えたほうがいいかもしれません」と言われ、診療は終了しました。X線にも写らない急性期の微小な骨折に過ぎないかもしれないのに、「リハビリ?インソール?」と頭が混乱、「ここは相当な悪徳クリニックかもしれない」と恐れを抱きつつ、再診もリハビリの予約もしないでクリニックを後にしました。ちなみに診療報酬明細書の合計は1,512点。超音波350点は話の流れで受けてしまった私にも非がありますが、初診でかかっただけなのに、なんと慢性疼痛疾患管理料130点も算定されていたのには驚いてしまいました。慢性疼痛疾患管理料は、「変形性膝関節症、筋筋膜性腰痛症等の疼痛を主病とし、疼痛による運動制限を改善する等の目的でマッサージ又は器具等による療法を行った場合に算定することができる」と定められています。骨折による疼痛は対象ではありません。しかも初診でかかっただけなのに慢性疼痛とは。「マッサージ又は器具等による療法」も、もちろん受けていません。これは明らかに不正請求です。保険診療ではリハビリ、自費診療ではインソール作成を患者に勧めるこのクリニック、足を総合的に診察するとうたっているわりに診療はおざなり、検査をたくさん行って、軽症でもリハビリ、インソール作成を患者に勧め、売上を伸ばそうという経営方針のようでした。治療用インソールのパンフレットには、「作成には保険診療で自己負担約5,000円、インソール作成代金で約5万円かかるが、インソール代は健康保険組合に申請することにより自己負担額を差し引いた額(3割自己負担なら7割)が療養費払いとして戻って来るので安価に作れる」と説明されていました。これだけ勧めるのだから、義肢装具会社となんらかのつながりがあるのかもしれません。クリニックのWebサイトを見ると、このクリニックの開業は最近ということではなく、既に10年近くの診療実績があり医療法人化もされていました。さらに、関東圏の医科大学の教授が顧問医師となっていました。私が診療に訪れた日に限ってのことかもしれませんが、外来患者は中高年の女性が多い印象でした。外反母趾やリウマチ足で受診しているのかもしれません。それにしても、強引なリハビリ導入、インソール作成勧奨、慢性疼痛でもないのに慢性疼痛疾患管理料の算定は明らかに異常です。医師やスタッフの多さや、最先端の医療機器導入、一等地でのビル診療の家賃などを理由に、経営者(理事長、もしくはパトロン企業)がそうした診療単価をとにかく上げる診療を無理強いしているのかもしれません。医師、そして医療提供をする側にも患者を食い物にする“悪”はいる私はもちろん良識ある国民なので、このクリニックの情報をGoogleマップの「口コミ」に投稿もしませんでしたし、関東信越厚生局にタレ込んだりもしませんでした。しかし、過剰な診療がこれ以上目立ってくると何らかの対応が取られる可能性もありそうです。私が1日、初診で受診しただけでこれですから……。前回(第212回 新規開業の落とし穴(前編) 診療所の大型化・重装備化、複数医師開業というトレンドの背後にあるもの)には、東 謙二氏の著書からの引用で、「医師をはじめ、医療従事者はほとんどが『性善説』の中で仕事をしているが、世の中には『性悪説』を基本に対処していかないとすぐに騙されてしまう世界もあるのである」と書きましたが、医師、そして医療提供をする側にも知識の少ない患者を食い物にする“悪”はいるということですね。ということで、開業費が高額で月々の返済が多額だったり、診療体制を過剰にするあまり人件費などのランニングコストがかかりすぎたりする場合、医療機関は“不正請求”というダークサイドに陥りがちです。金額の多寡はさておいて、私は患者を騙して、税金が投入されている診療報酬(インソールの療養費払いも)を不正請求するのはとくに罪が重いと思います。皆さんも重々気を付けてください。ところで、「中足骨疲労骨折」と自己診断していた私の左足ですが、これはもう整形外科に行っても仕方ないと考え、「第127回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(後編)」でも書いた、近所の零売薬局でロコアテープを購入、自力で治すことにしました。痛みがほとんど消え、歩行に支障がなくなるのに約2ヵ月、長距離歩いても患部が腫れなくなるのに約3ヵ月を要しました。どう考えても「骨折」でした。

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高齢者が住むのに死亡リスクが低いのは持ち家か賃貸か/東京大・千葉大

 私たちの生活で欠かせないものの1つに住宅がある。都市部では、持ち家よりも賃貸住宅が多くなるが、賃貸住宅も民間のもの、公団や公社、都営・市営などの公的賃貸住宅に分かれる。 賃貸住宅居住者は、持ち家居住者よりも社会経済的に不利な立場に置かれる傾向があるにもかかわらず、これまで持ち家居住者と比較した民間と公的賃貸住宅居住者の死亡リスクは不明のままであった。 そこで古賀 千絵氏(東京大学先端科学技術研究センター)と花里 真道氏(千葉大学予防医学センター)からなる研究チームは、9市町村の4万4,007人の高齢者を2010年から約9年間追跡し、居住住宅の種類と死亡リスクの関連を検証した。その結果、持ち家居住者が最も死亡リスクが低く、賃貸住宅の中では公的賃貸住宅に住む高齢者で最も死亡リスクが低いという結果だった。これらの結果はScientific Reports誌2024年3月30日号に掲載された。賃貸住宅に住むなら公的賃貸住宅のほうが死亡リスクは低い 研究グループは、わが国の自立した65歳以上の高齢者を対象としたコホート研究である日本老年学的評価研究(JAGES)を利用し、回答者4万4,007人について、2010~19年まで9年間追跡調査を行い、死亡率を分析した。居住期間は質問票により定義し、死亡率のハザード比の算出はCox回帰モデルを用いた。また、賃貸住宅間の多重検定のためにボンフェローニ補正を用いた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に全体で1万638例(24.2%)の死亡があった。・持ち家居住者と比較し、すべての賃貸住宅居住者群で死亡リスクが有意に高かった。・人口統計的変数、健康状態、社会的地位、環境で調整した後でも、賃貸住宅居住者の中では公的賃貸住宅に住んでいた人の死亡リスクが最も低かった。・ボンフェローニ補正を用いた賃貸住宅居住者の多重検定では、公的賃貸住宅居住者は民間賃貸住宅居住者よりも死亡リスクが0.80倍(95%信頼区間:0.72~0.89)であることが示された。・公的賃貸住宅居住の高齢者の死亡リスクは持ち家居住者よりも高かったが、このリスクは民間賃貸住宅居住者よりも低かった。 これらの結果から研究グループは「計画的な都市開発に基づく良好な近隣環境が、この結果に寄与した可能性がある。計画的な都市開発がわが国の賃貸住宅居住の高齢者の死亡リスクを低下させる」と考察している。

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クロザピン導入前後12年間の調査~日本における統合失調症に対する薬物療法の変化

 日本における統合失調症に対する精神科薬物療法は、多剤併用療法が行われてきた長い歴史がある。これは、世界的にまれではあるが、依然として重大な問題である。その理由の1つとして、日本では2009年までクロザピンが使用できなかったことが挙げられる。岡山県精神科医療センターの北川 航平氏らは、統合失調症に対する薬物療法がクロザピン導入により、どのように変化したのかを明らかにするため、クロザピン導入前後の12年間にわたる統合失調症に対する精神科薬物療法の変化を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌2024年6月号の報告。クロザピン使用率の増加は多剤併用の改善に寄与 岡山県精神科医療センターで統合失調症と診断された入院患者のカルテからレトロスペクティブにデータを収集した。 クロザピン導入前後の12年間にわたる統合失調症に対する精神科薬物療法の変化を調査した主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の投与量は、クロルプロマジン換算で2009年の1276.6mg/日から2020年の613.9mg/日へ減少が認められた。・1日投与量/規定1日投与量(PDD/DDD)は、2009年の3.0から2020年の1.2へ減少していた。・単剤療法の割合は、2009年の24.4%から2020年の74.6%へ増加していた。・岡山精神科医療センターでは、2010年からクロザピンが導入されており、2020年までにクロザピン使用率は、37.3%まで増加が認められた。・4種類以上の抗精神病薬の使用率は、2009年の27.8%から2020年の0.8%へ減少していた。 著者らは、「クロザピン使用率の増加は、抗精神病薬単剤療法を増加させ、多剤併用の改善に寄与しており、統合失調症に対する薬物療法の最適化の促進につながっていた。治療抵抗性統合失調症に対する多剤併用療法をできるだけ少なくするために、日本におけるクロザピン処方をさらに推進すべきである」としている。

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医師の燃え尽き防止、同僚のコーチングは役立つか?

 4月から医師の働き方改革がスタートし、労働時間の制約が強まるなか、医師の仕事における過度なストレスや燃え尽き症候群(バーンアウト)への対策は依然として課題であり、よりエビデンスに基づいたアプローチが求められている。医師がコーチングの訓練を受け、同僚に働きかけることで燃え尽き症候群を予防できるのかを検証した、米国・マサチューセッツ総合病院のStephanie B. Kiser氏らによる研究結果が発表された。JAMA Network Open誌2024年4月12日号掲載の報告。 研究者らは、2021年8月5日~12月1日にMass General Physician Organization(マサチューセッツ総合内科医機構)に所属する医師のうち、希望者を対象とした単一施設無作為化臨床試験を行った。データ解析は2022年2~10月にかけて行われた。 138人の参加者は3ヵ月間にわたってピアコーチによる6回のコーチングセッションを受ける介入群と、心身の健康に関する標準的な組織資源を使う対照群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、Stanford Professional Fulfillment Indexで測定した燃え尽き症候群の発生数であった。副次評価項目は職業的充実感、仕事が個人的関係に及ぼす影響、QOL、仕事への関与度、自己評価などであった。 主な結果は以下のとおり。・登録された医師138人のうち、67人が介入群に、71人が対照群に割り付けられた。参加者の多くが31~60歳(128人[93.0%])、女性(109人[79.0%])、既婚(108人[78.3%])、キャリア初~中期(平均12.0[SD 9.7]年)であった。・介入群のうち、コーチとマッチングした52人が少なくとも1回のコーチングセッションを受けた。セッションの3ヵ月後には、介入群は対照群と比較して、燃え尽き症候群、対人関係の断絶、専門職としての充実感、仕事への関与度において統計的に有意な改善がみられた。・対人関係の断絶は、介入群で平均30.1%減少し、対照群で4.1%増加した(絶対差-0.94、95%信頼区間[CI]:-1.48~-0.41、p=0.001)。・燃え尽き症候群は、介入群で平均21.6%減少し、対照群で2.5%増加した(絶対差-0.79、95%CI:-1.27~-0.32、p=0.001)。・専門職としての充実感は、対照群では変化がなかったのに対し、介入群では10.7%増加した(絶対差0.59、95%CI:0.01~1.16、p=0.046)。・仕事への関与度は、介入群で6.3%増加し、対照群で2.2%減少した(絶対差0.33、95%CI:0.02~0.65、p=0.04)。・自己評価は両群で増加したが、有意差はなかった。 研究者らは、「専門的訓練を受けた仲間による個別コーチングが医師の燃え尽き症候群と対人離脱を減少させ、同時に専門家としての充実感と仕事への関与を向上させる効果的な戦略であることを示している」としている。

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AI耐性HR+進行乳がんへのカピバセルチブ上乗せ、長期的ベネフィット(CAPItello-291)/ESMO BREAST 2024

 第III相CAPItello-291試験において、アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対するフルベストラントへのAKT阻害薬カピバセルチブの追加は、PIK3CA、AKT1、またはPTEN遺伝子変異を有する患者および全体集団において無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏は欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で、同試験のPFS2(無作為化から2次治療開始後の増悪または死亡までの期間)およびTFSC(無作為化から最初の化学療法開始または死亡までの期間)のデータを報告した。・対象:閉経前/後の女性もしくは男性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)・試験群(capi群):カピバセルチブ(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg) 355例(AKT経路に変異あり:155例)・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 353例(AKT経路に変異あり:134例)・評価項目:[主要評価項目]全体集団およびAKT経路(PIK3CA、AKT1、PTENのいずれか1つ以上)に変異のある患者集団におけるPFS[主要な副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS2[事前規定された探索的評価項目]TFSC 主な結果は以下のとおり。・PFS2およびTFSCについての解析のデータカットオフは2022年8月15日であった。・試験薬の中止後何らかの治療を開始していたのは、全体集団でcapi群67.0% vs.プラセボ群74.8%、AKT経路に変異のある患者集団でcapi群69.0% vs.プラセボ群78.4%であった。化学療法が最も多く(43.1% vs.47.9%、43.2% vs.50.0%)、ホルモン療法(22.3% vs.23.5%、23.9% vs.25.4%)、分子標的治療薬(13.0% vs.18.1%、11.6% vs.21.6%)と続き、両群でバランスがとれていた。・PFS2中央値は、全体集団でcapi群14.7ヵ月vs.プラセボ群12.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.57~0.86)、AKT経路に変異のある患者集団でcapi群15.5ヵ月vs.プラセボ群10.8ヵ月(0.52、0.38~0.71)であった。・TFSC中央値は、全体集団でcapi群11.0ヵ月vs.プラセボ群6.8ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.52~0.75)、AKT経路に変異のある患者集団でcapi群11.0ヵ月vs.プラセボ群6.0ヵ月(0.56、0.42~0.74)であった。 Rugo氏は、フルベストラントへのカピバセルチブの追加は、全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団においてPFS2を改善し、後治療としての化学療法の開始を遅らせたとし、長期的なベネフィットを示したと結論付けている。

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PSA検査の勧奨は前立腺がん死亡を減らすか?~40万人超・15年間追跡/JAMA

 50~69歳の男性に前立腺特異抗原(PSA)のスクリーニング検査の勧奨を1回行うと、これを行わない通常の診療と比較して、15年後の前立腺がんによる死亡が有意に減少するもののその差はわずかであり、全生存への効果は認めないことが、英国・ブリストル大学のRichard M. Martin氏らが実施した「CAP試験」の2次解析で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2024年5月7日号で報告された。イングランド/ウェールズの573施設のクラスター無作為化試験 本研究では、PSAスクリーニング検査の勧奨から追跡期間中央値10年の時点においては前立腺がん死を抑制しないことが示されており、研究グループは今回、追跡期間中央値15年の結果を報告した(英国王立がん研究基金などの助成を受けた)。 2001年9月~2007年8月に、イングランドとウェールズの573のプライマリケア施設(クラスター)を2つの群に無作為化し、2002年1月~2009年1月までにこれらの施設を受診した年齢50~69歳の男性を解析の対象とした。 介入群では、参加者はPSAスクリーニング検査の勧奨を1回受け、検査でPSA値が3.0~19.9ng/mLの場合は経直腸的超音波ガイド下生検(10コア)を提示された。対照群の参加者は、標準的な管理を受け、PSA検査の勧奨は行われなかった。 主要評価項目(10年時の前立腺がん特異的死亡率)と8つの副次評価項目のうち4つの結果はすでに報告済みであり、今回は、追跡期間中央値15年の時点での前立腺がん特異的死亡率、全死因死亡率、診断時の前立腺がんのステージ(T1/T2、T3、T4/N1/M1)とGleasonグレード(低:Gleasonスコア[GS]≦6、中:GS=7、高:GS≧8)の結果が示された。前立腺がん特異的死亡率、わずか0.09%の差 41万5,357例(平均年齢59.0[SD 5.6]歳)の参加者のうち、今回は40万8,721例(98%)を解析に含めた。介入群が18万9,326例、対照群は21万9,395例だった。 介入群のうち1万2,013例、対照群のうち1万2,958例が前立腺がんの診断を受け、15年累積リスクはそれぞれ7.08%(95%信頼区間[CI]:6.95~7.21)および6.94%(6.82~7.06)であった。 追跡期間中央値15年の時点で、前立腺がんで死亡したのは、対照群が1,451例(0.78%、95%CI:0.73~0.82)であったのに対し、介入群は1,199例(0.69%、0.65~0.73)と有意に少なかった(率比[RR]:0.92、95%CI:0.85~0.99、p=0.03)が、その差はわずか0.09%であった。 また、対照群と比較して、介入群では低グレードの前立腺がん(GS≦6:2.2% vs.1.6%、p<0.001)と限局病変(T1/T2、3.6% vs.3.1%、p<0.001)の検出率が有意に高かったが、中グレード(GS=7)、高グレード(GS≧8)、局所浸潤(T3)、周囲臓器浸潤・遠隔転移(T4/N1/M1)病変の発生率には差を認めなかった。前立腺がん死の0.7%と0.5%が、生検/治療関連 15年時の全死因死亡は、介入群が4万5,084例(23.2%、95%CI:23.0~23.4)、対照群は5万336例(23.3%、23.1~23.5)であり、両群間に有意な差はなかった(RR:0.97、95%CI:0.94~1.01、p=0.11)。 また、前立腺がん死のうち、介入群の8例(0.7%)と対照群の7例(0.5%)が、診断的生検または前立腺がんの治療に関連した有害事象によるものであった。 著者は、「前立腺がんのスクリーニング検査を検討する政策立案者は、前立腺がんの過剰診断や過剰治療に関連する潜在的な有害作用との比較で、このわずかな死亡の減少を考慮する必要がある」としている。

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英語で「それでは始めましょう」は?【1分★医療英語】第131回

第131回 英語で「それでは始めましょう」は?《例文1》Let's get the ball rolling with the test.(それでは、その検査から始めましょう)《例文2》Shall we get the ball rolling with your blood pressure check?(それでは血圧の測定から始めましょうか?)《解説》“Let's get the ball rolling”は、何かのプロセスや活動を始めるときに使われる表現です。直訳すると「ボールを転がし始めましょう」となりますが、そこから転じて、「それでは始めましょう」という意味で用いられます。医療現場においても、診察を始めるとき、検査を開始するとき、治療に取り掛かるときなど、さまざまなシチュエーションでこのフレーズを使うことができます。英語では、具体的な行動に移ることを示唆するために、このような動きを連想させる表現がよく用いられます。たとえば、“Let's kick things off”なども何かを始める際に使える表現です。よりシンプルな“Let’s begin”や“Let’s get started”などでもよいですが、“Let's get the ball rolling”のような少し気の利いたフレーズは親しみやすさも兼ね備えており、コミュニケーションをより円滑にすることに役立ってくれるため、レパートリーに加えておくとよいでしょう。講師紹介

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国内初の1日1回投与の低亜鉛血症治療薬「ジンタス錠25mg/50mg」【最新!DI情報】第15回

国内初の1日1回投与の低亜鉛血症治療薬「ジンタス錠25mg/50mg」今回は、低亜鉛血症治療薬「ヒスチジン亜鉛水和物(商品名:ジンタス錠25mg/50mg、製造販売元:ノーベルファーマ)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用で亜鉛補充ができ、亜鉛欠乏による味覚障害、皮膚炎、脱毛、貧血などのさまざまな症状を改善することが期待されています。<効能・効果>低亜鉛血症の適応で、2024年3月26日に製造販売承認を取得しました。本剤は、食事などによる亜鉛摂取で十分な効果が期待できない患者に使用します。<用法・用量>通常、成人および体重30kg以上の小児では、亜鉛として1回50~100mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与します。なお、血清亜鉛濃度や患者の状態により、1日1回150mgを超えない範囲で適宜増減します。<安全性>亜鉛投与による重大な副作用に銅欠乏症(頻度不明)があり、銅欠乏まで進展した場合は貧血、白血球減少などを引き起こす恐れがあります。その他の副作用(1%以上)として、消化器症状(下痢、悪心、腹部不快感)、血清膵酵素(リパーゼ、アミラーゼ)上昇、貧血、浮動性めまいなどがあります。本剤投与中は、定期的(数ヵ月に1回程度)に血清亜鉛、銅、鉄を測定します。<患者さんへの指導例>1.亜鉛不足を改善するには、亜鉛を多く含む食事を積極的に摂取する食事療法が行われますが、不十分な場合には薬で補充します。2.必ず食後に服用してください。3.亜鉛を含むサプリメントや健康食品は摂取しないでください。4.亜鉛により銅の吸収が妨げられ、立ちくらみや歩きにくいなどの副作用が起こることがあります。気になる症状が現れたら、医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>亜鉛は300種類以上の酵素の活性化に必要な成分で、主な酵素にはDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、炭酸脱水酵素、アルカリホスファターゼ、アルコール脱水素酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼなどがあります。亜鉛は細胞分裂や核酸代謝などに関わっており、欠乏するとタンパク合成全般が低下し、皮膚炎、脱毛、貧血、味覚障害、発育障害、性腺機能不全、食欲低下、下痢、骨粗鬆症、創傷治癒遅延、易感染性などさまざまな症状を引き起こします。低亜鉛血症では亜鉛含有量の多い食品を積極的に摂取するよう推奨しますが、血清亜鉛値が低い場合、食事からの亜鉛摂取では不十分で亜鉛補充療法が必要です。補充療法には、酢酸亜鉛(商品名:ノベルジン)が使用されますが、亜鉛イオンによる悪心・嘔吐などの消化器系副作用が問題となっています。副作用により酢酸亜鉛製剤が使用できない場合は、ポラプレジンク(同:プロマックD錠)も使用されますが、亜鉛含有量が少ない上に適応外です。本剤は、ヒスチジン亜鉛水和物の錠剤であり、亜鉛イオンと錯体化することで亜鉛の吸収を向上させています。ヒスチジン亜鉛水和物は比較的安定な錯体構造であるため、消化管で解離する亜鉛イオンは無機亜鉛塩よりも少なく、酢酸亜鉛製剤に比べて悪心・嘔吐などの消化器系副作用が軽減されています。また、酢酸亜鉛製剤は通常、成人で1日2回の投与回数ですが、本剤は1日1回投与であり、服薬アドヒアランスの改善が期待できます。低亜鉛血症患者を対象とした国内第III相臨床試験(実薬対照非盲検試験)において、投与開始24週間後までに目標血清亜鉛濃度を8週間維持できた患者の割合は、本剤群で86.4%、酢酸亜鉛群で80.4%でした。両群の割合の差は6.0%(95%信頼区間:-4.2~16.3)で非劣性マージンの-15%を上回っているので、酢酸亜鉛群に対する本剤群の非劣性が示されました。なお、酢酸亜鉛製剤と異なり、現在の適応症は低亜鉛血症のみで、「ウィルソン病(肝レンズ核変性症)」の適応は有していません。

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間違った知識を患者さんに伝える先輩、どうしたらいい…?【Dr.大塚の人生相談】

「2人薬剤師」体制で投薬は先輩薬剤師の担当。たまに、間違った知識を患者さんに伝えているのが聞こえてくるのですが、私より一回り年上のため訂正ができません。どうしたらいいでしょうか。(今回の相談者:ニナさん)ご相談ありがとうございます。先輩の間違いをなかなか指摘できない。患者さんにとって不利益となるような間違いなのに、先輩との関係性を考えて言い出しにくい。わかります。ものすごくわかります。ぼくもこういう状況が苦手です。うまく言い出せず、めちゃくちゃモヤモヤします。まず、なぜ先輩の間違いを訂正できないのか……。自分のこととして考えて分析してみます。たとえば、一回り年上の先輩と家族のような関係だった場合、それほどストレスなく間違いを指摘できるはず。父親が相手だったら、ぼくは間違いを指摘できそうです。我が家の愚息は今年大学生になりましたが、彼があなたの立場で、私が先輩上司だった場合、愚息は容赦なくぼくの間違いを指摘してきます。なんなら、「アホちゃうか」のおまけまでつきそうです。そんな血気盛んな息子でも、部活の先輩相手には、ぼくほどキツく言えないはずです。ちなみに、ぼくは基本コミュ障で息子は陽キャなので、彼には間違いを指摘できなくてモヤモヤすることはなさそうですが……。うちの家庭事情はさておき、先輩の間違いをやんわり訂正できない問題に頭を悩ますのは、あなたは(ぼくも)真面目で他人の気持ちを思いやれる人間であるからだと思っています。そう思わないと生きづらいです。おそらくあなたも、日常生活で誰の害にもならない些細な間違いまで訂正したいと思わないでしょう。患者さんにとって不利益になる間違いだからこそ、真面目で優しいあなたは心を痛めているのだと思います。先輩の間違いに目を瞑ってしまっては、あなたの薬剤師の矜持が許さない。多くのプロが同じように思うはずです。ただ、こういうときにモヤモヤだけして、なにも前に進まないのは良くないと思います。あなたもそう思っているから相談してきたんですよね。きっと同じような状況がこの先も訪れるはずです。あなたなりに、先輩を傷つけないような間違いの訂正方法を見つけるのが良いと思います。ちなみに、ぼくなら、「ほかの人が同じような間違いをしたかのように」先輩に話を振ります。「そういえばこの前、後輩の薬剤師が〇〇のような間違いをしていて……」なんて、雑談っぽく話してみます。先輩は、あなたの話を聞いてドキッとするかもしれませんし、反論するかもしれません。もし反論してくれたのなら、しめたもの。しっかりとエビデンスを出して、丁寧に先輩と向き合って話せばいいのです。言い出すまでが怖いのであって、話してみれば案外すんなりいくかも知れません。勇気を振り絞るまでのストレスは大変なものですが、患者さんのためにもぜひ一歩を踏み出してください。

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巻貝を食べて救急搬送、何が原因?【これって「食」中毒?】第1回

今回の症例年齢・性別52歳・男性患者情報飲酒や喫煙歴はない。多発性嚢胞腎による末期腎不全で1年前から週3回の維持透析を施行されていた。東北地方の市場で「真ツブ」や「青ツブ」と表示された巻貝を購入し、自宅の台所で殻付きのまま網の上で炭火焼きにして10個ほど食べた。およそ30分後より激しい頭痛や嘔気が出現した。また、めまい、ふらつき、四肢の脱力により座位の保持が困難となった。横になって様子をみていたが、複視や呼吸困難が出現したため、救命救急センターに搬送された。初診時は気道開通、呼吸数16/分、SpO298%(経鼻カニューラ、酸素1L/分)、血圧158/96 mmHg、心拍数64bpm(整)、意識レベルJCS 10、体温36.4℃であった。呼びかけに開眼し、激しい頭痛、嘔気、めまい、複視、呼吸困難を訴えた。四肢の筋力は低下し、下肢の深部腱反射は減弱していた。検査値・画像所見動脈血ガス(経鼻カニューラ、酸素1L/分)ではpH7.32、PaCO2 48.4mmHg、PaO2 88.4mmHgと軽度の呼吸性アシドーシスを認めた。また、COHb2.4%であった。末梢血および生化学検査所見は慢性腎不全に矛盾しないものであった。頭部CTおよびMRIでは急性期病変を認めなかった。問題

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第215回 高脂肪食とがんを関連付ける腸内細菌を発見

高脂肪食とがんを関連付ける腸内細菌を発見肥満ががんの進展を促すことに寄与しているらしい腸内細菌を中国の研究チームが発見しました。乳がんの新たな治療手段を導く可能性を秘めたその結果によると、高脂肪食はマウスの腸のデスルホビブリオ(Desulfovibrio)属の細菌を増やし、それが免疫系を抑制してがんの増殖が亢進します。研究成果は中国の広東省の広州にある病院(SunYat-Sen Memorial Hospital)の乳がん外科医Erwei Song氏らの手によるもので、今月始めにPNAS誌に掲載されました1)。Song氏らは、BMI値が高い肥満の乳がん患者の生存率が低いことをまず確認したうえで、乳がん患者の腸内細菌の検討を始めました。同病院の治療開始前の乳がん患者61例の検体を調べたところ、肥満の目安としたBMI値24以上の女性の腸にはBMI値が24未満の女性に比べてデスルホビブリオ細菌がより多く認められました。続いてマウスを使ってデスルホビブリオ細菌とがんを関連付けうる仕組みが調べられました。ヒトの肥満を模すものとしてしばしば使われる高脂肪食マウスには肥満の乳がん女性と同様にデスルホビブリオ細菌が多く、免疫系を抑制することで知られる骨髄由来抑制細胞(MDSC)の増加も認められました。よってデスルホビブリオ細菌が多いことと免疫系の抑制は関連すると示唆され、どうやらその関連にアミノ酸の1つであるロイシンが寄与していることが続く検討で示されました。高脂肪食マウスの腸内微生物叢はロイシンを多く放ち、血中にはロイシンが多く巡っていました。そのロイシンがmTORC1経路を活性化してMDSCの生成を誘うことが突き止められ、デスルホビブリオ細菌を死なす抗菌薬をマウスに投与したところ、ロイシンとMDSCのどちらも正常水準に落ち着きました。ヒトでもどうやら同様なことが乳がん患者から採取した血液検体の検討で示唆されました。その検討の結果、BMI値が24以上の肥満水準であることは高脂肪食マウスと同様にロイシンやMDSCがより多いことと関連しました。以上の結果によると高脂肪食の恩恵にあずかるデスルホビブリオ細菌のせいでロイシンが過剰に作られ、その結果MDSCが急増して免疫系が抑制されてがんの増殖が許されてしまうようです。腸の細菌は地域や食事によって異なり、腸内細菌研究の結果は調べた集団が違うと一致しないことがよくあります2)。よって今回と同様の仕組みが他の集団でも認められるかどうかを今後調べる必要があります。もし高脂肪食が招くがんの進行にデスルホビブリオ細菌を発端とする免疫抑制が確かに関連しているなら、その経路を断ち切る新たな乳がん治療の道が開けそうです。参考1)Chen J, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2024;121:e2306776121.2)Gut microbes linked to fatty diet drive tumour growth / Nature

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