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院外心停止患者への市民による心肺蘇生、AED使用で生存が2倍以上に/日本循環器学会

 院外心停止(OHCA)患者の予後を改善するためには、市民による質の高い心肺蘇生法(CPR)と自動体外式除細動器(AED)の即時使用率をさらに高める必要がある。総務省消防庁は、1994年に市民を対象としたCPRの認定講習会を全国で開始し、2019年には受講者が年間約200万人に及び、認定者数は増加傾向にある。しかし、市民のCPR普及率やOHCA患者の生存率に及ぼす影響については十分に検討されていなかった。そのため、虎の門病院の山口 徹雄氏らの研究グループは、市民介入によるCPRと、患者の1ヵ月後の転帰との関連を評価した。本結果は、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、山口氏が発表した。なお本研究はResuscitation誌2024年2月号に掲載された1)。 本研究では、総務省消防庁が2005年より開始した国内のOHCAレジストリであるAll Japan Utstein Registry Dataを用いた。2005~20年に登録されたOHCA患者35万8,025例から、市民が居合わせた心室細動または無脈性心室頻拍の初期リズムがショック適応の患者7万3,387例を抽出し、心肺蘇生講習会認定者数と全国の市民によるCPR実施率との関連をポアソン分布とコクラン・アーミテージ検定による傾向検定により解析した。市民が実施したCPRを、胸骨圧迫のみ、胸骨圧迫と人工呼吸、胸骨圧迫と人工呼吸とAEDの使用で分類し、転帰との関連について多変量混合ロジスティック回帰分析を用いて評価した。主要評価項目は1ヵ月後の神経学的に良好な生存、副次評価項目は病院到着前の蘇生と1ヵ月後の生存とした。 主な結果は以下のとおり。・CPR講座の累積認定者数は、2005年の993万327人から直線的に増加し、2020年には3,493万8,322人であった(年間増加率:1.03、p<0.001)。これは15歳以上の日本人の32.3%を占める。・OHCA患者は、2005年では1万7,414例(年齢中央値 75歳[IQR 64~84])だったが、2020年には2万4,291例(80歳[IQR 70~87])に増加、高齢化していた。・居合わせた市民(バイスタンダー)による心肺停止患者へのCPR実施率は、2005年の40.63%から2020年には56.79%へと一貫して増加していた(傾向のp<0.001)。・2005~20年の初期リズムがショック適応のOHCA患者7万3,387例のうち、CPRを受けたのは4万1,678例(56.8%)であった。・CPRを受けた患者4万1,678例のうち、胸骨圧迫は98.28%、人工呼吸は22.81%、AEDの使用は8.41%の症例に施行された。・臨床転帰について市民によるCPR実施(CRP+)群とCPRを実施しなかった(CRP-)群を比較すると、以下のすべてにおいてCPR+群のほうが転帰が良好であった。 -神経学的に良好な1ヵ月後の生存率は、CPR+群:25.54% vs.CPR-群:15.5%(p<0.001)。 -1ヵ月後の生存率は、35.30% vs.26.47%(p<0.001)。 -1ヵ月後の生存者のうち神経学的に良好な者の比率は、72.36% vs.58.74%(p<0.001)。 -病院到着前の蘇生率は、35.42% vs.27.01%(p<0.001)。・市民のCPRのエンゲージメントが高いほど、患者の神経学的に良好な1ヵ月後の生存率が高いことが示された。CRP+群のエンゲージメント分類別に、CRP-群と比較した転帰は以下のとおり。 -胸骨圧迫のみ オッズ比(OR):1.24(95%信頼区間[CI]:1.02~1.51、p=0.029)。 -胸骨圧迫+人工呼吸 OR:1.33(95%CI:1.08~1.62、p=0.006)。 -胸骨圧迫+AED OR:2.27(95%CI:1.83~2.83、p<0.001)。 -胸骨圧迫+人工呼吸+AED OR:2.15(95%CI:1.70~2.73、p<0.001)。 本研究により、CPRの市民への普及率は着実に増加しており、OHCA患者に対して市民のCPR実施はCPRをしなかった場合と比較して、患者の1ヵ月後転帰を有意に改善していたことが示された。山口氏は発表の最後に、CPR教育が普及しているデンマークと日本を比較し、日本では市民によるCPR実施率57%、全OHCA患者の1ヵ月後の生存率9.7%に対して、デンマークでは市民によるCPR実施率77%で、全OHCA患者の1ヵ月後の生存率が16%に及ぶことを挙げ、日本でさらにCPR実施率を上げるためには、デンマークのように学校でのCPR講習の義務化、および自動車運転免許更新でのCPR講習の義務化が効果的ではないかと指摘した。また、8.4%に留まっているAED使用率を上げるには、AEDの設置場所や使用法を確認するためのスマートフォン用アプリ2,3)の使用や、諸外国で使用されているドローンを用いたAEDの配送システムの導入を推奨した。

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日本での大腸がん手術の転帰、月~木曜日vs.金曜日

 英国での大規模な後ろ向き研究で、待機的手術における30日以内の死亡リスクが月曜日で最も低く、週末に向けて増加することが報告されている1)。平日(月~金曜日)の間でもこのように差が見られる「weekday effect」については、まだ議論の余地がある。今回、広島大学の今岡 洸輝氏らは、StageI~III大腸がんの待機的手術を対象とした多施設共同後ろ向き解析を実施し、手術の曜日と短期アウトカムの関連を検討した。その結果、手術を金曜日に受けた患者は金曜日以外に受けた患者より術後合併症の発生率が高く、術後入院期間も長いことがわかった。Journal of Surgical Research誌2024年4月号に掲載。 本研究は、広島臨床腫瘍外科研究グループに属する15施設において、2017年1月~2019年12月に大腸がんの原発巣切除術を受けた2,574例を対象に解析した。手術日により金曜日と金曜日以外(月~木曜日)の2群に分け、傾向スコアマッチング後、30日死亡率と術後アウトカムを比較した。 主な結果は以下のとおり。・手術曜日は金曜日が368例、金曜日以外が2,206例で、全死亡率は0.04%(1例)であった。・結腸がん患者(1,685例)において、患者・腫瘍・手術の特性による傾向スコアマッチング後、金曜日のほうが手術時間はわずかに延長し、出血量はわずかに多かったが、臨床的に意味のある差はなかった。・直腸がん患者(889例)において、傾向スコアマッチング後、金曜日のほうが術後合併症(Clavien-Dind分類IIIa以上)の発生率・消化器系合併症の発生率が高く、術後入院期間が長かった。 著者らは「この結果はより高度な技術とスキルを必要とする大腸がん手術の曜日決定に役立つ可能性がる」とまとめた。

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ファセンラ、小児の難治性気管支喘息で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、ファセンラ皮下注30mg/10mg*シリンジ(一般名:ベンラリズマブ[遺伝子組換え])が、既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、6歳以上の小児の難治の気管支喘息患者に対する治療薬として、日本で製造販売承認を取得したと発表した。*ファセンラ皮下注10mgシリンジの発売時期は未定 ファセンラは、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤で、好酸球の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、増強された抗体依存性細胞傷害活性によって好酸球を直接的に除去する。 既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、小児の難治の気管支喘息患者に対する治療の新たな選択肢として、本剤は貢献できる薬剤になりうると期待される。

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初発統合失調症の脳ネットワークに対するアリピプラゾールの影響

 アリピプラゾールは、初発統合失調症患者のいくつかの脳内ネットワーク間の機能接続を調節し、臨床症状の改善に影響を及ぼす。しかし、統合失調症患者の広範な脳内ネットワーク間の異常接続に対するアリピプラゾールの作用は、依然として不明である。中国・首都医科大学のSitong Feng氏らは、大規模な脳内ネットワークの機能接続に対するアリピプラゾール12週間投与の影響を調査するため、縦断的研究を実施した。Journal of Psychiatric Research誌2024年3月号の報告。 対象は、初回エピソード時に薬物治療未実施の統合失調症患者45例および健康対照者45例。ベースライン時およびアリピプラゾール投与12週間後、安静時の磁気共鳴機能画像法(fMRI)データを収集した。統合失調症患者は、12週間治療後の臨床症状改善に応じて、治療反応群と非治療反応群に分類した。機能接続は、7つの大規模な脳内ネットワークに対し評価した。さらに、大規模な脳内ネットワークの機能接続変化と臨床症状との関連を調査するため、相関分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、統合失調症患者は、健康対照者と比較し、広範な脳内ネットワークの機能接続の減少が認められた。・12週間のアリピプラゾール投与により、臨床症状の改善と関連し、治療反応群の皮質下ネットワーク、デフォルトモードネットワーク、その他の脳内ネットワークの持続的な機能接続の減少を抑制した。 著者らは「本発見は、統合失調症患者の大規模な脳内ネットワークにおける機能接続に対するアリピプラゾールの作用を明らかにしており、統合失調症における症状改善の理解に、新たな洞察を与える可能性がある」としている。

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出生率は世界的に低下、2100年までの予測/Lancet

 世界的に出生率が低下しており、2021年は、半数以上の国・地域で人口置換水準値を下回っていたこと、2000年以降の傾向として出生率の下がり方には大きな不均一性がみられ、最低出生率が観察された後にわずかでも回復した国はごく少数であり、人口置換水準値へと回復した国はなかったことが示された。さらには、世界中の出生数の分布が変化しており、とりわけ低所得国が占める割合が増加していたという。米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏らGBD 2021 Fertility and Forecasting Collaboratorsが解析結果を報告した。今回の結果を踏まえて著者らは、「出生率は、将来的に世界中で低下し続け、出生促進政策の実施が成功したとしても低いままとなるだろう。これらの変化は、高所得国における高齢化の進展と労働力の減少に加え、すでに最貧地域で出生率が増加していることで、広範囲にわたる経済的および社会的な影響をもたらすだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年3月20日号掲載の報告。GBD 2021のデータを用いて解析 研究グループは、8,709国年の人口動態登録と標本登録、1,455件の調査と国勢調査、および150のその他の情報源から得られたデータを統合し、混合効果回帰モデルおよび時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、10歳から54歳までの5歳ごとの年齢別出生率(ASFR)を算出し、ASFRより合計特殊出生率(TFR)を推計するとともに、ASFRと年齢別の女性人口を掛けて出生数を算出した。 保健指標評価研究所(IHME)の予測モデルを用いて2100年までの将来の出生率を予測するとともに、参照シナリオと政策に依存する重要な代替シナリオに基づいて、2100年までの出生率指標を予測した。出生率は1950年以降、すべての国・地域で低下 1950~2021年に、世界のTFRは4.84(95%不確定区間[UI]:4.63~5.06)から2.23(2.09~2.38)へ減少した。世界の年間出生数は、2016年に1億4,200万人(95%UI:137~147)とピークに達した後、2021年には1億2,900万人(121~138)まで減少した。 出生率は1950年以降すべての国・地域で低下し、2021年にTFRが2.1(人口置換水準出生率)を上回ったのは94の国・地域(46.1%)であった。この94の中には、サハラ以南のアフリカ46ヵ国中44ヵ国が含まれ、2021年の出生数の割合が最も多いsuper-region(29.2%、95%UI:28.7~29.6)であった。 1950~2021年に、推定出生率の最低値が人口置換水準を下回った47の国・地域では、その後1年以上出生率が上昇したが、人口置換水準以上に回復したのは3つの国・地域のみであった。TFR予想、2050年に1.83、2100年に1.59 将来にわたって出生率は世界的に低下を続け、参照シナリオでは世界全体のTFRは2050年に1.83(95%UI:1.59~2.08)、2100年に1.59(95%UI:1.25~1.96)と予測された。出生率が人口置換水準を上回る国・地域は、2050年には49(24.0%)、2100年にはわずか6(2.9%)と予測され、この6ヵ国・地域のうち3ヵ国・地域は2021年の世界銀行の定義する低所得グループに含まれ、すべてがサハラ以南のアフリカのGBD super-regionに位置していた。 出生数の割合は、サハラ以南のアフリカで2050年には41.3%(95%UI:39.6~43.1)、2100年には54.3%(47.1~59.5)と、世界の半数以上を占めると予測された。出生数の割合は、他の6つのsuper-regionのほとんどは2021年から2100年の間に減少すると予測され、たとえば、南アジアでは2021年24.8%(95%UI:23.7~25.8)から2050年16.7%(14.3~19.1)、2100年7.1%(4.4~10.1)に減少するが、北アフリカ、中東、および高所得のsuper-regionでは緩やかに増加すると予測された。 代替複合シナリオの予測では、教育と避妊に関するSDGs目標の達成と出生促進政策の実施により、世界のTFRが2050年には1.65(95%UI:1.40~1.92)、2100年には1.62(1.35~1.95)になることが示唆された。

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高齢者への2価コロナワクチン、脳卒中リスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー製またはモデルナ製のいずれかの2価ワクチンを接種後に脳卒中を発症した65歳以上の米国メディケア受給者において、接種直後(1~21日間)に脳卒中リスクが有意に上昇したことを示すエビデンスは確認されなかった。米国食品医薬品局(FDA)のYun Lu氏らが、自己対照ケースシリーズ研究の結果を報告した。2023年1月、米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAは、ファイザー製の「BNT162b2」(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)を接種した65歳以上の高齢者における虚血性脳卒中に関する安全性の懸念を指摘していた。JAMA誌2024年3月19日号掲載の報告。2価コロナワクチン接種後に脳卒中を発症した65歳以上約1万例を検証 研究グループは、BNT162b2(ファイザー製)またはmRNA-1273.222(モデルナ製)いずれかの2価コロナワクチン接種後に脳卒中を経験した65歳以上のメディケア受給者1万1,001例を含む、自己対照ケースシリーズ研究を行った。本研究の期間は2022年8月31日~2023年2月4日である。 主として着目したのは2価コロナワクチン後の脳卒中であったが、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンにも着目し、(1)いずれかの2価コロナワクチンを接種、(2)いずれかの2価コロナワクチンと同日に高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種、(3)高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種した場合における脳卒中リスク(非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合アウトカム、または出血性脳卒中)を、ワクチン接種後1~21日または22~42日のリスクウィンドウと、43~90日の対照ウィンドウとの間で比較した。 脳卒中リスクについて、主要解析として2価コロナワクチン接種と、副次解析として高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンとの関連を評価した。製品によらず2価コロナワクチン接種直後の脳卒中リスク上昇は認めず いずれかの2価コロナワクチンを接種したメディケア受給者は、539万7,278例であった(年齢中央値74歳[四分位範囲[IQR]:70~80]、女性56%)。BNT162b2接種者は317万3,426例、mRNA-1273.222接種者は222万3,852例。 いずれかのワクチン接種後に脳卒中を発症した1万1,001例において、製品の違い、リスクウィンドウ(1~21日または22~42日)と対照ウィンドウとの比較評価で、非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合、または出血性脳卒中との間に、統計学的に有意な関連は認められなかった(発生率比[IRR]の範囲:0.72~1.12)。高用量/アジュバント付加型インフルエンザワクチン併用接種者で有意な関連 いずれかのワクチン+高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンの併用接種後に脳卒中を発症した4,596例では、BNT162b2の場合、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.20[95%信頼区間[CI]:1.01~1.42]、接種10万回当たりのリスク差:3.13[95%CI:0.05~6.22])。mRNA-1273.222の場合、接種後1~21日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と一過性脳虚血発作との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.35[95%CI:1.06~1.74]、接種10万回当たりのリスク差:3.33[95%CI:0.46~6.20])。 また、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチン接種後に脳卒中を発症した2万1,345例において、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に有意な関連が確認された(IRR:1.09[95%CI:1.02~1.17]、接種10万回当たりのリスク差:1.65[95%CI:0.43~2.87])。

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麻疹ワクチン不足、定期接種を最優先に/日医

 日本医師会常任理事の釜萢 敏氏が、2024年3月27日の定例記者会見で、現在の麻疹(はしか)の流行状況について報告した。 麻疹の届け出は、2019年は744例、2020年は10例、2021年は6例、2022年は6例、2023年は28例であったが、本年は3月17日までに20例あり、海外から持ち込まれる麻疹の感染者が着実に増えてきているという認識を示した。そのような中で、麻疹含有ワクチンの接種を希望する人が増え、それによって定期接種のMR(麻疹風疹混合)ワクチンが入手できないという懸念が寄せられているという。 そのような状況を踏まえて、定期接種(第1期、第2期)を最優先で行い、ワクチンは例年の接種実績に応じた数を適切に発注するように呼びかけるとともに、日本医師会として今後のワクチンの需要と供給を注視していくとまとめた。

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マイクロプラスチック・ナノプラスチックに関する記念碑的研究(解説:野間重孝氏)

 環境問題がさまざまな方向から論じられるようになって久しい。しかし、いわゆる公害問題のように、原因・原因物質と結果として出現する疾病との関係が明らかであるような場合を除けば、環境内に伏在する危険因子・物質と疾病との相関が、疫学的に明快に究明された例はなかったといってよい。 この研究は、マイクロプラスチック・ナノプラスチック(MNP)と心血管イベントの関係を疫学的な見地から明らかにした世界初の研究であるばかりでなく、環境問題の研究としても、まさしく記念碑的な研究であると位置付けられるものではないかと思う。ディスカッションの中で研究グループは、「われわれの結果は因果関係を証明するものではないことに注意することが重要である」と語っているが、これはMNPが心血管イベントを引き起こすメカニズムが明らかになっていないということを言っているのであって、彼らの疫学的手法は完璧なものであったと言ってよいと思う。今、バトンは疾病研究者たちにタッチされたのであって、これから細胞内組織研究部門から、このメカニズムについての究明的な研究が発表されるのが待たれるところである。 以上、この論文の評としては十分なのではないかと思うが、この論文評は広くいろいろな方々に読んでいただくことを目的としているので、背景となる知識を評者なりに整理しておきたい。上記の評で十分に興味が持てたという方は、まず原文を読んでいただきたい。大変によくまとまっており、読みやすい論文である。 まず当たり前のことだが、プラスチックとは何なのか。JISでは「必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料」となっているが、普通はこれでは何だかわからないので業界の定義を使おう。「主に石油に由来する高分子物質(主に合成樹脂)を主原料とした可塑性の物質」となる。 マイクロプラスチックとは100μm~5mmの大きさのプラスチックの破片をいう。これは一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックに分類される。一次マイクロプラスチックとは主に洗顔料や歯磨き粉などの製品に配合された微小なプラスチックをいい、海洋中の化学物質を吸収し、プランクトンや魚に摂取されやすいという。二次マイクロプラスチックとは元々大きく作られたプラスチック製品が自然破壊で破壊・分解されて小さくなったもので、最終的には目に見えないマイクロサイズになったものを指す。この破壊過程には紫外線が関係していると考えられている。ナノプラスチックとは一般に1nm~1μmの範囲のものを指す。いずれもが海洋汚染の原因として近年問題にされている。より小さいものほど生物体内に取り込まれやすく、その影響も大きいのではないかと考えられている。 国連環境計画(UNEP)、国連の持続可能な開発目標(SDGs)、食糧農業機関(FAO)などが、さまざまな発信を行っていることはご存じの方も多いと思う。ただ知っておかなければならないのは、プラスチックの製造は少なくとも2050年ごろまでは持続するであろうということと、われわれ人類はMNPを処理する完全な方法をいまだ確立していないこと、また一部のプラスチックはリサイクルが不可能であるといったことだろう。 MNPが問題にされるようになったのは、比較的最近のことだといえる。魚や貝などの海洋生物からMNPが検出されたのは2000年代初めの出来事だ。2019年になってマイクロプラスチックが魚の消化管や魚介類の体組織中から見つかり、環境問題として注目されるようになった。ナノプラスチックが問題になるのは、この時期からだと考えればよいので、こちらはまだ10数年の歴史しかないといえる。その後研究は急速に進み、人間でも腸管・肝臓・血液・脳など、さまざまな組織中からMNPが検出された。 本論文中で、何故この研究グループが肝臓や血球ではなく心血管イベントを題材として取り上げたかは書かれていない。しかし、無症候性頸動脈疾患患者から採取したプラーク標本のなんと58.4%からMNPが検出されたとなれば、やはりこの予後を解析することにより、その影響を検討してみようというのは自然な発想だったのではないかと思う。そしてエンドポイントが複合エンドポイントであったとはいえ、ハザード比が4.53だったというのは研究者である本人たちが一番驚いたのではないだろうか。 この研究はそもそも、プラーク中からどのくらいのMNPが検出されるのだろうという素朴な疑問に始まり、その驚きからその経過を疫学的に追ってみようという行動が生まれ、結果として驚くような結論に至ったという、研究としてはきわめてオーソドックスな過程を踏んでいる。こういったごく素直な疑問から発した研究が、大きな発見につながるという典型例ではないかと思う。しかし読者の皆さん、皆さんがこの文章を読みながら何気なく口にしているミネラルウォーター、実はMNPがたっぷり含まれているのかもしれないんですよ。知らないって恐いですよね。

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グラスを変えると…(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画いわみせいじCopyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、お酒は何を飲んでいますか?焼酎が多いですね。そうですか。普段、焼酎を飲むときにどんなグラスを使っていますか?よくある感じのグラスですよ。なるほど。ところで、ここにあるロックグラスと画 いわみせいじトールグラス、どちらのほうがたくさん入ると思いますか?うーん、縦長のトールグラスですか?残念! どちらも同じ量になります。えっ、そうなんですか。縦長のグラスは実際より多く見えるんですね。はい。グラスを変えることで、飲む量が控えられるかもしれませんね。今日帰って、早速やってみます。(うれしそうな顔)ポイント縦長のグラスに変えることが、飲み過ぎを防ぐきっかけになるかもしれません。Copyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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巨星、墜つ!【Dr. 中島の 新・徒然草】(522)

五百二十二の段 巨星、墜つ!暑さ寒さも彼岸まで。大阪では、つい先日まで車のフロントガラスが凍ったりしていました。ようやくお湯で溶かす必要もなくなりホッとしています。皆さまの地方ではいかがでしょうか。さて、私にとって最近の最大のニュースは、脳神経外科の巨星、福島 孝徳先生が亡くなったことです。2024年3月19日、享年81歳とのこと。今回は少し福島先生のお話をしたいと思います。私が初めて福島先生の手術を見たのは1980年代後半のことでした。小さな開頭で無血の術野での綺麗な手術はまさに神業!その福島先生が米国に渡ったのは1990年代早々です。実は縁あって、1994年にピッツバーグのAllegheny General Hospitalの福島先生を訪ねたことがありました。というのも、留学先のアメリカの研究室の同僚で脳神経外科のレジデントが、福島先生に弟子入りしたいと希望していたからです。「病院見学を兼ねて、Alleghenyで行われる研究会に出席するんだけど、お前も一緒に行くか?」と尋ねられて二つ返事で行くことにしました。実際にお会いした福島先生はやたら明るい人で、ずっと上機嫌でしゃべっておられたことを思い出します。その研究会でも驚くべき手術を披露し、アメリカの脳外科医たちの賞賛を浴びていました。先日、部屋を片付けていたら、この時にわれわれ夫婦と福島先生の3人で撮影した写真が出てきたのです。もう30年も前のこと、当然ながら全員若い!今でもわが家の家宝となっています。その後、福島先生は時々日本に帰ってきては、カダバー・ディッセクション(cadaver dissection;解剖)を行ったり、複数の手術を同時並行にこなしたりしては颯爽と去っていきました。よく他の診療科の先生に「福島先生の手術はどこがすごいのですか?」と尋ねられます。あくまでも私の感想ですが、「ここがすごい!」というところを以下に述べましょう。10円玉~500円玉くらいの小さな開頭での手術操作同じ手術をするにしても、私の場合は手のひらくらいの開頭になってしまいます。ほとんど出血のない手術野顕微鏡操作では「1滴の出血もなく手術を行っているのではないか」と思わされることがしばしばありました。シャープディッセクション(sharp dissection;鋭的剥離)くも膜を裂く操作ではなく、くも膜を切るという操作で剥離することの提唱者です。今でこそ、この操作は広く行われていますが、1980年代に初めてビデオで見たときは衝撃でした。確かな解剖学的知識しゃべりながら手術をしておられることが多いのですが「ここを切ると腫瘍が……ほら、ちゃんと出てきましたよ!」という発言に、ギャラリーの1人として驚いたものです。そんな所に腫瘍があるとは! 恥ずかしながら私は予想していませんでした。独自の手術器械いつぞやご本人が考案した器械について熱く語っておられました。お箸みたいな棒ですが、そのお尻のところにピラッとした金属の尻尾がついているものです。「術者が止血箇所にこの先端を持っていって保持するんだ。それで助手がヒラヒラのところにモノポーラで通電したら先端がぶれずに正確に焼灼することができるから」ということでした。その器械が現存するのかどうか私は知りませんが「なるほど理に適っているなあ」と思った記憶があります。特筆すべきはその人柄で、いつも若々しく前向きで、後進を育てようと一生懸命でした。「僕は実年齢より15歳若いんだ」と仰っていた表情を思い出します。福島 孝徳先生の全盛期の手術をリアルタイムで見る機会のあったわれわれは、本当に幸せ者でした。不世出の脳神経外科医のご冥福をお祈りいたします。最後に1句神業が 天に召された 彼岸過ぎ

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【緊急寄稿】働き方改革、スタート目前!米国医師の働き方を変えた「10の仕組み」~最終回・電子カルテ編~

前回ご紹介したように、米国では「Epic」という電子カルテシステムが最も多くの施設で使用されており、その電子カルテに関連した便利な機能で働き方改革に貢献しているものが多くあります。最終回の今回は、その一部をご紹介します。仕組み8:Care Everywhereこれは簡単に言うと、同一患者のカルテを他の医療機関と共有するシステムです。Epicの電子カルテを使用している医療施設で、患者が許可していれば、他の病院の受診歴や検査データ、入院・退院サマリーやプログレスノートなどを簡単に閲覧できます。日本で勤務していた時には、複数の医療機関にかかっている患者さんが入院した時は診療情報提供を依頼するために時間を費やしていましたが、この機能のおかげでその必要はほとんどありません。また、自分が書いたカルテやオーダーした検査結果を他の病院の医師も閲覧できることから、日本のような詳細な紹介状のやりとりも不要になります。日本ではプライバシーなどの問題もあり難しいかもしれませんが、この仕組みが業務の効率化に大きく貢献しています。さらに、検査の重複を防ぐことにもつながっており、患者さんにとっても重宝されている機能です。仕組み9:Smart Phrase診療科や個人でテンプレートを自由に作成できる「Smart Phrase」というツールがあります。テンプレートの文章を自由に作れるだけでなく、〈図1〉のようにSOAPのObjective部分に当たるバイタルや血液検査、画像検査は電子カルテのデータの中から検索して自動入力できます。身体所見やReview of systemは選択肢の中からクリックするだけで簡単に入力ができるため、カルテ記載時間の短縮に貢献しています。〈図1〉仕組み10:電子カルテの遠隔アクセスVPNを利用することで、どこにいても自分のパソコンから電子カルテにアクセスすることができます。電子カルテを開くために病院に行く必要がないのです。過剰労働につながりかねない面もありますが、フレキシブルな働き方を可能にしています。たとえば、17時までに仕事を終えて保育園に子供を迎えに行きたいとき、カルテ記載が終わっていなかったとしても子供を迎えに行った後、自宅でカルテを書くことができます。日本の病院に勤務していた時には、カルテ記載を終わらせるために病院に残っていると、他の業務を頼まれたり急変対応が必要になったりして、残業時間が長くなってしまうことがしばしばありました。チーム制・シフト制の仕組みがあることが前提ですが、「物理的に病院から離れる」ことは働き方改革にとって重要な要素だと感じます。また、オンライン診療や電子処方箋を利用することで、100%自宅から診療を行う「フルリモート」の形式で働く医師が米国では増えており、多様な働き方を可能にしています。

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第90回 小林製薬の「紅麹」製品自主回収、シトリニンが原因?

ベニコウジカビ(Wikipediaより)2024年3月22日、小林製薬は「紅麹原料(自社製造)の成分分析を行った結果、一部の紅麹原料に当社の意図しない成分が含まれている可能性が判明した」と発表しました1)。2024年3月27日時点の報道によると、小林製薬の紅麹製品を摂取し、腎疾患等を発症した患者の死亡が2件、入院症例は106件となっています。紅麹は、マイコトキシンの1種であるシトリニンによる健康障害が知られており、10年前にはすでにヨーロッパで規制されています2~4)。スイスでは2014年に、紅麹を成分に含む食品の売買は違法であると注意喚起されています。紅麹は現在も着色料や発酵食品などに使用されており、血清コレステロール値や血圧を下げる機能が知られています。しかし、紅麹が発酵した場合、マイコトキシンであるシトリニンが生成され、加熱しても腎障害につながる毒性が消えないため、これをいかに制御するかが課題でした。小林製薬も過去ヨーロッパで取り沙汰された紅麹の腎障害については、当然認識していました。次世代シークエンサーを使って紅麹菌3種類の全ゲノム解析を行った結果、日本で主に使われているMonascus pilosusにシトリニンが生成できないという論文が公開され5)、今回自主回収に踏み切った製品にも当然シトリニン非産生株が用いられています。――とはいえ、紅麹が腎疾患を起こしているという疑いが出て自主回収に踏み切っているわけですから、これらの製品がシトリニンを産生しているかどうか、その他健康被害を起こす物質が検出されるかどうかが注目されています。小林製薬は、過去1年間に製造した紅麹原料合計18.5トンのうち、すでに16.1トンは子会社から取引先へ販売済みであるとしています。小林製薬は、すべての紅麹原料を使用した製品の販売を停止するよう求め、回収措置を進めています。3月25日、小林製薬の株価は値幅いっぱいまで急落しました。海外で以前に問題となった紅麹関連の腎障害がここに再び現れた場合、消費者およびステークホルダーへの詳細な説明が不可欠となるでしょう。参考文献・参考サイト1)小林製薬:紅麹関連製品の使用中止のお願いと自主回収のお知らせ2)内閣府食品安全委員会:スイス連邦食品安全獣医局(BLV)、紅麹を成分に含む食品の売買は違法と注意喚起3)内閣府食品安全委員会:フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、紅麹を有効成分とするサプリメントを服用する前に必ず医師に相談するよう注意喚起4)内閣府食品安全委員会:欧州連合(EU)、紅麹由来のサプリメント中のかび毒シトリニンの基準値を設定5)Higa Y, et al. BMC Genomics. 2020 Oct 1;21(1):679.

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似たような疾患はグループ化して拾い上げる【国試のトリセツ】第33回

§2 診断推論似たような疾患はグループ化して拾い上げるQuestion〈110D35〉51歳の男性。左の下腹部から側腹部にかけての痛みを主訴に来院した。昨日、仕事中に左背部に軽度の痛みが出現したが30分ほどで軽快した。本日午前8時ころ、出勤途中の電車のなかで、突然、左の下腹部から側腹部にかけての強い痛みが出現したため受診した。来院の途中に悪心と嘔吐があった。意識は清明。体温36.3℃ 。血圧158/94mmHg。顔色は蒼白で冷汗を認める。腹部に反跳痛を認めない。左の肋骨脊柱角に叩打痛を認める。尿所見蛋白1+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球15~30/1視野、白血球1〜4/1視野。血液所見赤血球 460万、Hb14.6g/dL、Ht46%、白血球8,300、血小板22万。血液生化学所見総蛋白7.1g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST35IU/L、ALT32IU/L、LD186IU/L(基準176~353)、γ-GTP45IU/L(基準8~50)、尿素窒素23mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、尿酸8.6mg/dL、血糖92mg/dL、Na136mEq/L、K4.0mEq/L、Cl109mEq/L、Ca9.2mg/dL。CRP1.2mg/dL。腹部超音波検査で左水腎症、左腎結石および左尿管結石を認める。腹部単純エックス検査(A)と腹部単純CT(B)とを下に示す。この患者で予測される結石成分はどれか。画像を拡大する(a)尿酸(b)炭酸カルシウム(c)リン酸カルシウム(d)シュウ酸カルシウム(e)リン酸マグネシウムアンモニウム

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運転パフォーマンスに対する睡眠薬の残存効果の影響~ネットワークメタ解析

 睡眠薬には残存効果があり、運転中の安全性に悪影響を及ぼす可能性がある。イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のMichele Fornaro氏らは、不眠症患者における睡眠薬の残存効果と運転パフォーマンスへの影響を明らかにするためネットワークメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2024年4月号の報告。 2023年5月28日までに公表された、不眠症患者と健康対照者を比較した睡眠薬使用および運転に関するランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、EMBASE、TRID、Clinicaltrials.gov、WHO-ICTRP、Web Of Scienceより検索した。エンドポイントとして、車両の横位置の標準偏差(SDLP)、朝の最初の運転時における障害率を考慮した。バイアスリスクおよび不均一性(グローバル/ローカル)を測定し、エビデンスの信頼性を評価するためCINeMAを用いた。 主な結果は以下のとおり。・特定された4,805件のうち、クロスオーバーRCTをシステマティックレビューに含め、22件をネットワークメタ解析に組み入れた(健康対照者のみに焦点を当てた)。・単回投与では、ほとんどの薬剤は運転パフォーマンスへの影響がプラセボと同様であり、SDLPについてはゾピクロンを上回っていた。・対照的に、ラメルテオン8mg、daridorexant 100mg、就寝時のゾルピデム10mg、深夜のゾルピデム10mgおよび20mg、ミルタザピン15~30mg、トリアゾラム0.5mgは、プラセボよりも有意にパフォーマンスが悪かった。・レンボレキサント2.5~5mg、スボレキサント15~20mg、深夜のゾルピデム3.5mgは、ゾピクロンよりも機能障害が少なかった。・フルラゼパムを除き、反復投与(最大フォローアップ期間:10日間)により、残存効果は少なくなっていた。・異質性および不均一性は、ほとんど認められなかった。・エビデンスの信頼性は、「低」または「非常に低」であった。・感度分析により、主要分析の結果が確認された。 著者らは「FDAが承認したほとんどの睡眠薬は、承認用量において運転パフォーマンスへの影響がプラセボと同程度であり、ゾピクロンを上回っていた。15日以内の反復投与が残存効果を減少させる点については、さらなる研究が求められる」としている。

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前立腺がん放射線療法後6ヵ月のPSA最低値が予後と関連/JCO

 放射線療法(RT)±アンドロゲン除去療法(ADT)を受けた限局性前立腺がん患者において、RT終了後6ヵ月間の前立腺特異抗原(PSA)最低値が長期予後と関連することが示唆された。イタリア・Catholic UniversityのLucia Kwak氏らによるJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年3月12日号掲載の報告より。 著者らは、RT単独、RT+短期(3~6ヵ月)ADT、RT+長期(24~36ヵ月)ADTを受けた限局性前立腺がん患者における、RT終了後6ヵ月間のPSA値が予後に及ぼす影響を評価する目的で、1987~2011年に実施された16の無作為化比較試験から個々の患者データを入手。RT終了後6ヵ月以内に記録されたPSA最低値を同定し、<0.1ng/mLまたは≧0.1ng/mLに分類した。 主要評価項目は無作為化後12ヵ月時点からの無転移生存期間(MFS)、前立腺がん特異的死亡率(PCSM)、全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・RT単独群の98%(2,339/2,376例)、RT+短期ADT群の84%(4,756/5,658例)、RT+長期ADT群の77%(1,258/1,626例)が、RT終了後6ヵ月以内にPSA≧0.1ng/mLを示した。・RT終了後6ヵ月以内のPSA≧0.1ng/mLは、短いMFSおよびOS、高いPCSMと関連していた。RT単独群におけるハザード比はMFS:2.24(95%信頼区間:1.21~4.16)、OS:1.72(0.97~3.05)、PCSMの部分分布ハザード比:1.82(0.51~6.49)であった。RT+短期ADT群ではそれぞれ1.27(1.12~1.44)、1.26(1.11~1.44)、2.10(1.52~2.92)、RT+長期ADT群ではそれぞれ1.58(1.27~1.96)、1.59(1.27~1.99)、1.97(1.11~3.49)であった。・5年MFS率を<0.1ng/mL vs.≧0.1ng/mLで比較すると、RT単独群で91% vs.79%、RT+短期ADT群で83% vs.76%、RT+長期ADT群で87% vs.74%であった。 著者らは今回の結果について、RT±ADTを受けている患者へのカウンセリングや、RT+ADTと併用する新規全身療法などを評価する臨床試験デザインに活用することができるとしている。

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妊娠後期の抗てんかん薬、薬剤ごとの児への影響は?/NEJM

 出生前に抗てんかん薬に曝露された児は、曝露されていない児より自閉症スペクトラム障害の発生率が高いことが示された。ただし、適応症やその他の交絡因子で調整すると、トピラマートとラモトリギンへの曝露児では実質上その関連がみられなくなったのに対し、バルプロ酸への曝露児ではリスクが高いままであった。米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のSonia Hernandez-Diaz氏らが、米国の2つの医療利用データベースを用いた解析結果を報告した。母親の妊娠中のバルプロ酸使用は、児の神経発達障害のリスク上昇との関連が示されている。一方で母親のトピラマート使用に関連した児の自閉症スペクトラム障害のリスクに関しては、限定的だが相反するデータが示されていた。NEJM誌2024年3月21・28日号掲載の報告。曝露群vs.非曝露群で、自閉症スペクトラム障害のリスクを比較 研究グループは、米国のメディケイド受給者の医療利用に関するデータを含むMedicaid Analytic eXtract-Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files(MAX-TAF)の2000~18年のデータ、および民間医療保険に関するデータを含むMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database(MarketScan)の2003~20年のデータを用い、妊婦とその児を同定した。 解析対象は、推定最終月経日の3ヵ月以上前から出産1ヵ月後まで保険に加入していた12~55歳の女性(とその児)を全体集団とし、てんかんと診断されている女性に限定した集団についても解析を行った。 妊娠19週目から出産まで(妊娠後期)にトピラマートの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を曝露群(トピラマート群)、最終月経の90日前から出産まで抗てんかん薬の投薬を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。また、トピラマート群の陽性対照としてバルプロ酸、陰性対照としてラモトリギンの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を設定した。 主要アウトカムは、児の自閉症スペクトラム障害の臨床診断(自閉症スペクトラム障害のコードが2回以上の受診で記載されていること)で、曝露群の児と非曝露群の児について自閉症スペクトラム障害のリスクを比較した。トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%、非曝露群4.2% 解析対象の全体集団は429万2,539例で、このうち2,469例がトピラマート群、1,392例がバルプロ酸群、8,464例がラモトリギン群、非曝露群が419万9,796例であった。また、てんかんの診断を有する女性の限定集団は2万8,952例で、トピラマート群1,030例、バルプロ酸群800例、ラモトリギン群4,205例、非曝露群8,815例であった。 全体集団において、非曝露群の児(419万9,796例)における8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は1.9%(95%信頼区間[CI]:1.87~1.92)であった。 てんかんと診断されている母親の限定集団では、8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は、非曝露群4.2%に対して、トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%であった。ベースラインの交絡因子を補正した傾向スコア加重ハザード比は、トピラマート群0.96(95%CI:0.56~1.65)、バルプロ酸群2.67(1.69~4.20)、ラモトリギン群1.00(0.69~1.46)であった。

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高リスク早期乳がんの術後内分泌療法、ribociclib上乗せでiDFS延長/NEJM

 再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんの術後療法において、CDK4/6阻害薬ribociclibと非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)の併用療法は、NSAI単独療法と比較し無浸潤疾患生存期間(iDFS)を有意に改善した。米国・カリフォルニア大学デビッド・ゲフィン医科大学院のDennis Slamon氏が、国際共同無作為化非盲検第III相試験「NATALEE試験」の中間解析結果を報告した。ribociclibは、HR+/HER2-進行乳がん患者において全生存期間(OS)を有意に延長することが示されていた。NEJM誌2024年3月21・28日号掲載の報告。ribociclib(3年)+NSAI(5年)併用の有効性をiDFSで評価 研究グループは、2019年1月10日~2021年4月20日に、18歳以上の男性または女性で、再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がん(StageIIAはN1、またはN0かつグレード2かつ高リスク、またはN0かつグレード3、StageIIBはN0~1、StageIIIはN0~3)患者計5,101例を、ribociclib(1日1回400mgを3週間投与、その後1週間休薬、36ヵ月)+NSAI(レトロゾール1日1回2.5mgまたはアナストロゾール1日1回1mg、60ヵ月)併用群(2,549例)、またはNSAI単独群(2,552例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。男性および閉経前の女性には、ゴセレリン(3.6mg、28日に1回)を皮下投与した。 主要評価項目はiDFS、副次評価項目は遠隔無病生存期間(DDFS)、無再発生存期間(RFS)、OS、安全性であった。 本報告では、事前に規定した中間解析(データカットオフ日:2023年1月11日)の結果が示されている。iDFSはKaplan-Meier法で評価し、群間比較は層別log-rank検定が用いられた(中間解析における有意水準:両側のp=0.0256)。浸潤性病変、再発または死亡のリスクはribociclib併用で25.2%低減 主要評価項目のイベント(浸潤性病変、再発または死亡)が426例発生した時点で中間解析が実施された。ribociclib併用群が189例(7.4%)、NSAI単独群が237例(9.3%)であった。 iDFSの追跡期間中央値は28ヵ月で、浸潤性病変、再発または死亡のリスクはribociclib併用群がNSAI単独群よりも有意に25.2%低かった。3年iDFS率はribociclib併用群で90.4%、NSAI単独群で87.1%であった(浸潤性疾患、再発、または死亡のハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.62~0.91、両側のp=0.003)。 副次評価項目についても一貫してribociclib併用群が良好であった。3年DDFS率はribociclib併用群90.8%、NSAI単独群88.6%(HR:0.74、95%CI:0.60~0.91)、3年RFS率はそれぞれ91.7%、88.6%(0.72、0.58~0.88)であった。 データカットオフ時点においてribociclib併用群で61例(2.4%)、NSAI単独群で73例(2.9%)が死亡し、死亡のHRは0.76(95%CI:0.54~1.07)であった。 有害事象の発現率はribociclib併用群97.9%(2,470/2,524例)、NSAI単独群87.1%(2,128/2,444例)で、ribociclib 400mgとNSAI併用の3年レジメンで新たな安全性シグナルは認められなかった。

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シナジス、RSウイルス発症抑制で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤「シナジス」(一般名:パリビズマブ[遺伝子組換え])について、RSウイルス感染症の重症化リスクの高い、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する乳幼児を新たに投与対象とする製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 RSウイルスは、乳幼児の気管支炎や肺炎を含む、下気道感染の原因となる一般的な病原体であり、2歳までにほとんどの乳幼児が感染するといわれており、早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児に感染すると重症化しやすいとされている。シナジスは、これらの重症化リスクを有する乳幼児に対し発症抑制の適応としてすでに承認されている。 今回の承認は、森 雅亮氏(聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授)が実施した医師主導治験の結果に基づく。シナジスの投与対象としてすでに承認されている疾患以外にも、その病態からRSウイルス感染症に対し慢性肺疾患と同等の重症化リスクが存在する疾患の存在が指摘されていた。そこで、日本周産期・新生児医学会が中心となり、関連学会である日本先天代謝異常学会、日本小児神経学会、日本小児呼吸器学会および日本小児外科学会から要望を集めた結果、換気能力低下および/または喀痰排出困難によりRSウイルス感染症が重症化するリスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症または神経筋疾患を伴う乳幼児への追加適応が望まれていることがわかった。これらの疾患は国内推定患者数が少なく大規模臨床研究が困難であるため、医師主導治験が実施された。医師主導治験では、今回承認された疾患群における有効性、安全性、および薬物動態を検討し、いずれの疾患においてもRSウイルス感染による入院は認められなかった。 本治験を率いた森氏は、「今回の承認の基となった治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が、革新的な医薬品・医療機器の創出を目的とした臨床研究や治験のさらなる活性化を目的とした研究を推進する“臨床研究・治験推進研究事業”に採択されている。これまで薬事承認のなかった重症化リスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する患者に対して、ようやく臨床の場でシナジスを広く使用できることをうれしく思う」と述べている。 松尾 恭司氏(アストラゼネカ 執行役員ワクチン・免疫療法事業本部長)は、「シナジスは、今まで日本においてRSウイルス感染症による重篤な下気道疾患の発症抑制に対する唯一の抗体薬として、多くの早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児の医療に貢献してきた。今回の承認により、これまでシナジスを投与できなかったハイリスクの乳幼児とそのご家族に対しても貢献できることを大変うれしく思う」としている。

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降圧薬治療による認知症リスク低下、超高齢やフレイルでも

 降圧薬治療で認知症リスクが低下するというエビデンスはあるが、これが一般集団の高齢者にも一般化できるかは不明である。今回、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らが、一般集団の高齢者において、新たに降圧薬の服用を開始した患者について検討したところ、降圧薬治療と認知症リスクの低下の関連が示唆された。また、この関連は超高齢(85歳以上)やフレイルの患者でも同様であったという。Journal of the American College of Cardiology誌2024年4月2日号に掲載。 本研究はネステッドケースコントロール研究で、2009~12年に降圧薬の服用を開始したイタリア・ロンバルディア州の65歳以上の21万5,547例のコホートで実施した。ケースは、追跡期間中(2019年まで)に認知症またはアルツハイマー病を発症した1万3,812例(年齢:77.5±6.6歳、男性:40%)で、各ケースに対して性、年齢、臨床状態をマッチさせたコントロールを5例ずつ選択した。降圧薬への曝露は、降圧薬服用が追跡期間に占める割合で評価した。また、条件付きロジスティック回帰を用いて降圧薬への曝露に関連する転帰リスクをモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・降圧薬への曝露は認知症リスクと逆相関していた。・曝露が非常に少ない患者と比較して、曝露が少ない患者で2%(95%信頼区間:-4〜7%)、中間的な患者で12%(同:6〜17%)、多い患者で24%(同:19〜28%)のリスク低下がみられた。・これは、超高齢(85歳以上)やフレイル(「1年後の死亡リスクが高い」特徴を有する)の患者においても同様であった。

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血管内血栓除去療法は大梗塞の長期予後も改善するか?(解説:内山真一郎氏)

 前回は、不可逆的な虚血コアおよび救命しうる虚血部位(ペナンブラ)と、臨床転帰および血管内血栓除去療法(EVT)の治療効果との関係を検討したPROBEデザインによる国際多施設共同介入試験SELECT2の事後解析の成績を紹介したが、今回はSELECT2試験の長期転帰を解析した結果である。これまでは、どの試験も発症後24時間までの大血管閉塞による大梗塞例にEVTが短期(多くは3ヵ月まで)の転帰改善効果があるというエビデンスであったが、長期にわたる転帰改善効果は検討されていなかった。 今回のSELECT2試験の解析により、EVTは大血管閉塞による大梗塞症例の1年後の転帰を改善する効果のあることが証明されたことになる。大梗塞による重症例は脳損傷が重いので回復にはより長期の時間を要するので、真の効果を検討するにはより長期の転帰まで追跡調査する必要があると考えられるが、EVTは短期のみならず長期の転帰も改善する効果が証明されたといえる。とはいえ、1年後の死亡率は対照群の52%より低いものの、EVT群でも45%であり、重症の大梗塞例の予後は全体として不良であることは否定できない。

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