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冠動脈CT血管造影による冠血流予備量比は安定狭心症の3年転帰を予測

 安定狭心症患者において冠動脈CT血管造影から得た冠血流予備量比(FFR)は、3年間の全死亡または非致死的心筋梗塞のリスクを予測するという研究結果が、「Radiology」9月号に掲載された。 南デンマーク大学病院(デンマーク)のKristian T. Madsen氏らは、新規発症の安定狭心症の患者において、冠動脈CT血管造影から得られたFFR検査の結果による3年間の臨床転帰の予測能を評価した。解析対象は、デンマークの3 施設で2015年12月~2017年10月に登録され、30%以上の冠動脈狭窄を1カ所以上有し、冠動脈CT血管造影によるFFR検査の結果を取得できた連続症例900人(平均年齢64.4歳、男性65%)であった。 冠動脈CT血管造影から得られた狭窄部から遠位部2cmまでのFFR値が0.80以下の場合を異常と判定した。主要エンドポイントは全死亡と自然発症の非致死的心筋梗塞の複合、副次エンドポイントは心血管死亡と自然発症の非致死的心筋梗塞の複合とした。全ての対象者はFFR検査後3年間または死亡まで追跡された。エンドポイントの発生率は1標本の二項モデルにより推定し、FFRが正常だった群と異常だった群との間で相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、カイ二乗検定またはフィッシャーの直接確率検定を用いて比較した。 ベースライン時の冠動脈CT血管造影によるFFRは、対象者のうち377人が異常、523人が正常であった。追跡の結果、主要エンドポイントはFFR異常群の6.6%、正常群の2.1%で発生した(RR 3.1、95%CI 1.6~6.3、P<0.001)。副次エンドポイントはFFR異常群の5.0%、正常群の0.6%で発生した(RR 8.8、95%CI評価不能、P=0.001)。 こうしたFFR異常群におけるリスク上昇は、狭窄の重症度(50%以上または50%未満)と冠動脈石灰化(CAC)スコア(400以上または400未満)で調整後も認められた(主要エンドポイントの調整RR 2.5、95%CI 1.2~5.2、P=0.02、副次エンドポイントの調整RR 8.0、95%CI 2.1~30.2、P=0.002)。さらに、CACスコア高値(400以上)のサブグループ解析を実施したところ、主要エンドポイントはFFR異常群の9.0%、正常群の2.2%で発生し(RR 4.1、95%CI 1.4~11.8、P=0.001)、副次エンドポイントはFFR異常群の6.6%、正常群の0.5%で発生した(RR 12.0、95%CI評価不能、P=0.01)。 冠動脈CT血管造影によるFFRの予後予測能を評価したところ、ベースライン時のリスク変数(糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)、CACスコア、狭窄の重症度にFFRを追加することにより、主要エンドポイントと副次エンドポイントの診断能が向上した〔ROC曲線下面積はそれぞれ0.62から0.74(P<0.001)、0.66から0.81(P=0.02)〕。 Madsen氏は、「本研究から、CACスコアの高い患者における冠動脈CT血管造影によるFFRの予後予測の可能性を示すエビデンスが示された。患者のベースラインリスクやCACにより測定された冠動脈疾患の程度にかかわらず、冠動脈CT血管造影によるFFRの結果が正常であれば予後良好である」と述べている。 なお、複数人の著者が医療機器企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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第181回 医療DXで未来が変わる、マイナ保険証の利用率が鍵に

今回は、「まとめる月曜日」の特別編として、「マイナ保険証」に焦点をあて、今後の展望や医療機関ができること、やるべき対応について、井上 雅博氏に寄稿いただきました。マイナ保険証とは政府は団塊の世代が、すべて75歳以上の後期高齢者になる2025年までに、それぞれの地域で地域包括ケアの充実や病床再編を進めています。さらに新型コロナウイルス感染拡大が収束した今、医療分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めようとしています。今後迎える超高齢社会で、労働人口の減少に伴う労働力不足に対応しつつ、医療・介護サービスの効率化と質の向上の実現を目指しています。これらの基盤整備推進を行う上で、医療・介護分野で患者情報やさまざまな医療情報を共有する仕組みを進化させることを目的として、電子カルテの共有サービスを2025年4月に開始することを決定しています。その鍵となるのがマイナンバーカードと保険証の機能を統合した「マイナ保険証」です。医療DX推進本部が目指すもの政府は、2022(令和4)年10月の閣議決定で、医療分野でのDXを通して、サービスの効率化・質の向上を実現する基盤整備を推進するため、内閣に医療DX推進本部を設置しました。合わせて医療DX推進本部が推進する施策として、(1)「全国医療情報プラットフォームの創設」、(2)「電子カルテ情報の標準化など」、(3)「診療報酬改定DX」の3つの柱が発表されました。この中で3番の「診療報酬改定DX」は、2年ごとの診療報酬改定で発生する電子カルテの更新作業の負担を軽減するデジタル人材の有効活用やシステム費用の低減を目指していますが、1番大切な項目は「全国医療情報プラットフォームの創設」であり、オンラインによる資格確認システムのネットワークの拡充を行い、レセプト・特定健診などの情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテの医療・介護全般にわたる情報について共有・交換できる全国的なプラットフォームを創設することを目指しています。厚生労働省は、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療等情報利活用ワーキンググループにおいて、医療や介護情報共有のための「電子カルテ情報共有サービス」について議論を進めており、本格的な稼働は2025年4月からとなっています。このサービスにより、患者さんが自分の病態を把握し、医師からアドバイスを受けたり、患者さんが他院を受診する際に医療者に情報を共有する、救急搬送時に医療機関に情報を提供することが可能となるように、電子カルテベンダーに対しても具体的な技術解説書のほか、実現に向けた工程表なども公表されています。電子カルテの情報共有で、臨床現場が変化する2025年4月に「電子カルテ情報共有サービス」が立ち上がると、マイナ保険証を介して診療現場では、お薬手帳の処方の情報以外に健診データ、病名、アレルギー歴、感染症、紹介状、入院サマリーを含む「3文書6情報」が共有されるようになります。これらについて具体的に説明します。3文書には、[1]健康診断結果報告書[2]診療情報提供書[3]退院時サマリーが含まれており、他の医療機関で入院治療を行った場合、その治療内容なども把握できるようになります。また、6情報に含まれるのは、患者さんの(1)傷病名(2)アレルギー(3)感染症(4)薬剤禁忌(5)検査(救急、生活習慣病)(6)処方(処方は文書抽出のみ)です。これらの情報は、医療機関を受診した患者さんの同意があれば、マイナ保険証を介して24時間以内は患者さん情報が閲覧可能になり、他院での病名、処方内容などもすべて把握できるようになります。今後、紹介状の内容やお薬手帳の内容を基に診察していた一人一人の医師にとって、患者さんの予診や問診以外で得られる情報が増えることになり、自院で行う検査や処方について、共有情報に基づいて行うことが必須となります。もちろん、情報セキュリティについて、医療機関側には適切な情報管理や、医療情報システムの運用や安全管理が課せられることになります。このため医療機関が扱う個人情報保護については2023年5月に出された「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」に準拠した対応が、すべての医療機関に求められることになります。このガイドラインが対象とする医療機関とは、病院だけではなく、一般診療所、歯科診療所、助産所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業者なども含まれており、病院の電子カルテだけではないため、すべての医療従事者にはこのガイドラインへの対応が求められます。なお、電子カルテ情報共有サービスを用いることが不可能な場合(相手先が電子カルテ情報共有サービスを導入していない場合)は、これまで通り紙運用となりますが、多くの連携医療機関を抱える基幹病院は基本的に「電子カルテ情報共有サービス」で対応することが予想されるため、診療所レベルでも対応が必要となるでしょう。退院サマリーの早期作成が求められるように一部の高度急性期病院(湘南鎌倉総合病院など)では、「患者の退院時に退院サマリーが完成してからでないと退院許可ができない」という方式をとっている医療機関もあると聞きますが、退院時に紹介状を作成して紹介先に受診をする場合は、今後はマイナ保険証を利用して「退院サマリー」の添付が可能となります。現在、退院患者の退院サマリーについて、退院後14日以内に記載された割合が9割以上あることが診療録管理体制加算1で求められており、診療録管理体制加算がDPC病院の要件であるため、多くの急性期病院では退院サマリーの2週間以内の完成が求められています。また、卒後臨床研修評価機構(略称:JCEP)の認定を受けた臨床研修指定病院においては、退院時サマリーの作成率は、退院後1週間以内100%を常に目指すことが必要とされています。高度急性期の医療機関では、退院時までのすべてのサマリー完成は困難だと考えます。しかし、退院後に他の医療機関に紹介受診となった場合、退院時サマリー添付は必須とはなってはいませんが、診療情報提供書を「電子カルテ情報共有サービス」に保存するタイミングが退院時であることを考えると、退院サマリーについても同様の運用が今後想定されます。このため、今まで以上に勤務医は入院時から退院を意識した退院サマリーの作成が必要になると考えられます(具体的な運用方法は「医療DXについて(その3)」を参照ください)。鍵となるのはマイナ保険証の利用率厚労省は、マイナンバーカードと健康保険証との一体化をデジタル庁とともに取り組んでいますが、マイナンバーカードを発行しただけでは利用できず、マイナンバーカードの健康保険証利用の申込みが必要となります。さらに前述の「電子カルテ情報共有サービス」を利用して医療の効率化を図るためには、マイナ保険証を持参してもらわなければならないため、発行数ではなく利用率を引き上げる政策が必要となりました。これらについて、厚労省は、医療機関や薬局への支援策の詳しい運用を関係団体などにマイナ保険証の利用促進に関する通知をしました。通知によれば、「現行の健康保険証の発行については、2024(令和6)年12月2日に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する、そして、マイナ保険証の利用促進のため、国が先頭に立って、医療機関・薬局、保険者、経済界が一丸となり、より多くの国民の皆様にマイナ保険証を利用し、メリットを実感してもらえるように、あらゆる手段を通じてマイナ保険証の利用促進を行っていく…」とあり、実際に利用率が上昇した医療機関には「支援金」が交付されるような仕組みまで創設しています。このほか、生活保護における医療扶助のオンライン資格確認の運用開始も今年の3月1日から開始されるなど、徐々に現場でも利用されるようなサービスの充実がはかられています。また、今年1月の能登半島地震では、マイナンバーカードを持参しなくても、本人の同意の下、薬剤情報・診療情報・特定健診など情報の閲覧が可能な措置(災害時モード)を実施することで、患者さんの薬剤情報などの閲覧により、診療に役立ったように具体的な事例でメリットを提示したり、ポスターを作成したり、啓発用の漫画を公開するなど、厚労省のプロモーションは強化されています。現在、マイナ保険証の利用率が全国で4~5%と低迷していますが、今年1~5月、6~11月の前半、後半でそれぞれ利用率の上昇率に対して2回の支援金が交付されるという前代未聞のキャンペーンが行われ、医療機関による患者さんへの働きかけが強化されると予想されます。今後、医療機関側に求められるマイナ保険証への対応はさまざまな場面で混乱する可能性もありますが、医療DXの対応で避けられない部分もあり、できるだけ政府の目指す21世紀型の医療・介護連携のために対応に乗り出すことが必要と思われます。参考1)マイナ保険証、利用増に応じて支援金 厚労省が詳しい運用を通知(CB news)2)マイナ保険証支援金セミナー&診療報酬のプチお知らせ[動画](厚労省)3)マイナ保険証利用促進のための医療機関等への補助等の支援策について(同)4)電子カルテ情報共有サービスにおける運用について(同)5)医療DXの推進に関する工程表について(同)6)医療扶助のオンライン資格確認(同)7)マイナンバーカードの保険証利用でみんなにいいことたくさん!!(同)8)電子カルテ情報共有サービス-医療機関等向け総合ポータル(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会)

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第70回 カイ二乗分布とは【統計のそこが知りたい!】

第70回 カイ二乗分布とはカイ二乗分布(chi-square distribution)は「母分散の区間推定」や「適合度の検定」、「独立性の検定」を行う際に使われます。カイ二乗分布は、t分布と同様、自由度によって形が異なる分布です。今回は論文でもよく目にするカイ二乗分布について解説します。■カイ二乗分布(χ2分布)とはカイ二乗分布(χ2分布)は、確率分布の一種で統計的検定にて最も広く利用されるものの1つです。フリードリヒ・ロベルト・ヘルメルト(1843~1917年・ドイツ)により発見され、カール・ピアソン(1857~1936年・イギリス)により命名されました。カイ二乗分布のグラフの形状はパラメーターである自由度fという値に依存し、fが大きいときはz分布(標準正規分布)に一致します。一方、fが小さくなるにつれてz分布に比べグラフの峰が左側に偏ります。図1に自由度f=5、f=10、f=20のカイ二乗分布を示します。図1 事例の分布図■カイ二乗分布の確率・パーセント点カイ二乗検定での有意差判定は、カイ二乗分布の上側確率、パーセント点を求めることによって行うことができます(図2)。カイ二乗分布の横軸の任意の値xを「パーセント点」と言います。パーセント点の上側の確率を「上側確率」と言います。図2 カイ二乗検定の有意差判定のしくみカイ二乗分布の確率は下記のExcel関数で簡単に求めることができます。それでは、図3で自由度5のカイ二乗分布における上側確率と下側確率をExcel関数で求めてみましょう。画像を拡大するカイ二乗分布の確率と同じようにパーセント点も下記のExcel関数で簡単に求めることができます。それでは、図4で自由度5のカイ二乗分布における上側確率0.05、下側確率0.05のパーセント点を求めてみましょう。図4 自由度5のパーセント点画像を拡大するカイ二乗分布を用いた検定に「カイ二乗検定」と言うのがあります。その代表的な検定は、「独立性のカイ二乗検定」と「適合度検定」です。次回は、カイ二乗分布と同様に統計的検定で広く利用されているF分布を解説します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション13 カイ2乗検定第4回 ギモンを解決!一問一答質問24 カイ2乗検定とは?統計のそこが知りたい!第21回 カイ2乗検定とは? その1第22回 カイ2乗検定とは? その2 期待度数とカイ2乗値

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日本未承認の肺塞栓症へのカテーテル治療、t-PAより有効か?【臨床留学通信 from NY】第56回

第56回:肺塞栓症へのカテーテル治療、t-PAより有効か?現在私はMontefiore Medical Centerで3年目の循環器フェローとして働いていますが、同時にJacobi Medical Centerのカテーテル室もカバーし、心臓冠動脈カテーテル治療と、主に下肢血管等の末梢血管治療を行っています。2018年の渡米前まで心臓カテーテル治療を主に行っていましたが、さすがに5年も間が空いてしまったため、手先の感覚を戻すのに四苦八苦している日々です。末梢血管治療の中には肺塞栓症へのカテーテル治療が含まれています。ここは米国、BMIが高い人も多く、人種の特性によるのか血栓性が強いため、肺塞栓症を診療することは日常茶飯事です。日本では認可されていませんが1)、重症肺塞栓症に対して、米国で認可されている24Frの大口径デバイスでの血栓吸引(FlowTriever)2)、もしくはカテーテルによる超音波補助血栓溶解療法(EKOS)3)があります。そしてガイドライン上では、ショックバイタルの肺塞栓症例に関してt-PA(tissue plasminogen activator:血栓溶解療法)以外にカテーテル治療を考慮するということになっており、pulmonary embolism response team(PERT)との連携が重要とされています。多くの病院では外科手術的な血栓摘除術を行うことが難しいため、カテーテル治療医の判断となることが多いと思います。とはいうものの、BMI 50くらいの患者さんに、静脈とはいえ24Frの大きなカテーテルを挿入するのはそれなりに大変です。ショックバイタルもしくは心肺停止後にすでにt-PAが投与されていて、それでもショックバイタルが遷延したため、やむなく大口径デバイスを挿入して血栓吸引を施行することも場合によってはあります。ただし、実はこの領域は大規模なRCTがないため、はっきりと結論付けられてはいませんが、われわれが以前に行ったメタ解析においてはカテーテル治療の有用性が示唆されています4)。この領域の患者さんのアウトカム改善につながるような追加の研究ができないかと、日々模索中です。参考1)早期導入を要望する医療機器等に関する要望書 INDIGO Aspiration System2)Acute Pulmonary Embolism treated with Inari FlowTriever system in Hospital Santa Cruz Lisbon, Portugal. radcliffe cardiology. 2023 Jul 12.3)EKOS Endovascular System:Boston Scientific4)Ishisaka Y, Kuno T, et al. Comparison of interventions for intermediate to high-risk pulmonary embolism: A network meta-analysis. Catheter Cardiovasc Interv. 2023;102:249-265.

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事例041 コレクチム軟膏の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説2ヵ月以上湿疹の続く乳児をアトピー性皮膚炎と診断し、デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)軟膏を処方したところ、C事由(医学的理由による不適当)が適用されて査定となりました。査定理由を調べるために添付文書を参照してカルテと照らし合わせました。用法および用量、関連する注意に記載されている範囲内で使用されていました。ここまでにおいて査定の理由が見当たりません。さらに読み進めると、「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.7小児等」に、「低出生体重児、新生児及び6か月未満の乳児を対象に、有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」と記載がありました。言い換えると「6か月未満の乳児等には安全性が認められていない」ことが注意書きされていたのです。患者は6ヵ月未満の乳児です。使用月齢に達していないことを理由に査定となったことが推測できます。コンピュータ審査において添付文書の奥深くまで審査ロジックが組まれていることに驚きを禁じ得ませんでした。医師には、このことを伝え、調剤システムに使用月齢制限を登録して査定対策としました。

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喫煙で男性型脱毛症リスク1.8倍、重症化も

 喫煙は、多くの場合、ニコチンを含むタバコを娯楽として摂取することを指し、男性型脱毛症(AGA)の発症および悪化の危険因子であると考えられている。その関連の程度を調べたメタアナリシスの結果が発表された。カナダ・Mediprobe ResearchのAditya K. Gupta氏らによる本研究の結果はJournal of cosmetic dermatology誌オンライン版2024 年1月4日号に掲載された。 研究者らは2023年8月4日、PubMedで「hair loss(脱毛)、alopecia(脱毛症)、bald(頭髪のない)、androgenetic alopecia(男性型脱毛症)」「tobacco(タバコ)、nicotine(ニコチン)、tobacco smoking(喫煙)」の用語で当てはまる研究を検索、その結果2003~21年に発表された8件の研究が同定された。全研究が観察研究で、症例対照または横断研究であり、対象は男性の現在喫煙者と過去に喫煙経験がある人だった。得られたデータから、男性AGAの発症と重症化(軽度:ステージI-IIIから重度:ステージIV-VII)における喫煙状態(喫煙vs.非喫煙)と喫煙強度(喫煙減少vs.喫煙増加)の影響についてメタ解析を行い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、AGAを発症する率が有意に高かった(OR:1.82、95%CI:1.55~2.14)。・1日10本以上喫煙する男性は、1日10本未満の喫煙する男性に比べ、AGA発症する率が有意に高かった(OR:1.96、95%CI:1.17~3.29)。・AGA男性では、喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、疾患進行のオッズが有意に高かった(OR:1.27、95%CI:1.01~1.60)。喫煙強度と疾患進行の間には有意な関連は認められなかった。 著者らは、「男性型脱毛症の患者には、喫煙が及ぼす悪影響について教育する必要があるだろう」としている。

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がんの企業治験で分散型臨床試験を使用開始/アムジェン・MICIN・聖マリアンナ医大

 アムジェン、MICIN、および聖マリアンナ医科大学病院は、アムジェンが聖マリアンナ医科大学病院で実施するがんの企業治験において、分散型臨床試験(Decentralized Clinical Trial:DCT)のプラットフォーム使用を開始した。DCTプラットフォームはMICIN社が提供する「MiROHA(ミロハ)」である。 同取り組みの対象となるアムジェンの企業治験は、発現頻度が低いバイオマーカーを対象としたものである。患者数が少なく、スクリーニングでの脱落率も高いことが予想されているため、より多くの患者からインフォームド・コンセント(IC)を取得し、患者組み入れを促進する必要がある。 同治験では、治験実施医療機関と関連病院をMiROHAを使用してオンラインでつなぐことによって、遠隔でICを実施する。患者は治験実施医療機関を直接受診することなく、紹介元の病院にいながら治験の説明を受けることができる。 DCTを活用した治験は、居住地域にかかわらず、適切な患者が治験の情報を知り、治験に参加できるようになる可能性がある。さらに、治験登録が速く進み、有効な薬剤をいち早く患者に届けられると期待される。

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FoundationOne CDx、BRCA変異陽性の去勢抵抗性前立腺がんに対するコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は2024年2月5日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」(FoundationOne)について、ファイザーのPARP阻害薬タラゾパリブ(商品名:ターゼナ)のBRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対するコンパニオン診断として厚生労働省より承認を取得したと発表。 FoundationOneは、今回の承認で8つのがん種(非小細胞肺がん、悪性黒色腫、乳がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、胆道がん、固形がん)、計25薬剤に対するコンパニオン診断機能を保有することになった。

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双極性障害患者における摂食障害の有病率

 摂食障害と双極性障害は症状が類似しており、摂食行動や感情制御に根付いた特定の類似点が認められる。摂食障害と双極性障害の併存に関する研究は増えているものの、両疾患の同時進行に関する科学的データは十分に体系化されていない。ロシア・V.M. Bekhterev National Medical Research Center for Psychiatry and NeurologyのYana V. Yakovleva氏らは、双極I型およびII型障害患者におけるさまざまなタイプの摂食障害の有病率について、性別および両疾患の同時進行の臨床的特徴を考慮したうえで、スコーピングレビューを実施した。Consortium Psychiatricum誌2023年7月10日号の報告。 スコーピングレビューのためのPRISMAガイドラインに従い分析を行った。研究の検索にはMEDLINEデータベースを用いた。双極性障害および摂食障害と診断された患者に焦点を当てた研究を分析に含めた。摂食障害および双極性障害の診断の検証には、DSM-IV、DSM-5またはICD-10を用いた。レビュー結果の要約には、記述的分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、41件の研究を含めた。・双極性障害患者における摂食障害の生涯有病率は2.2~31.1%、摂食障害患者における双極性障害の有病率は11.3~68.1%であった。・双極II型障害および女性において、摂食障害の有病率が高かった。・双極性障害患者における摂食障害の併存は、気分障害の早期発症、抑うつエピソードの増加、自殺企図、強迫症および不安症、依存症、各種代謝障害の併存率の増加と関連が認められた。 著者らは、「研究結果により違いがあるものの、摂食障害と双極性障害の併存率は非常に高いことが示唆された。双極性障害患者における摂食障害のスクリーニングまたはその逆のスクリーニングは、正確な診断や最も効果的な治療法を選択するうえで重要である」とし、「性別に応じた、さまざまな摂食障害と双極性障害との併存パターンについては、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。

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ADHDは神経性無食欲症や大うつ病性障害の独立したリスク因子の可能性

 注意欠如・多動症(ADHD)は、神経性無食欲症や大うつ病性障害(MDD)などに対する独立したリスク因子であるとする研究結果が、「BMJ Mental Health」に9月5日掲載された。 アウグスブルク大学(ドイツ)のChrista Meisinger氏とDennis Freuer氏は、ADHDが、7種類の一般的な精神疾患〔MDD、双極性障害、不安障害、統合失調症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、神経性無食欲症、1回以上の自殺企図〕と関連するかを検討するため、2標本ネットワークのメンデルランダム化分析(MR、操作変数法の中で遺伝子変異を使用)を実施した。まず、単変数MRにより、全体効果(どの疾患がADHDと関係するのか)、および交絡または媒介因子となっているものを特定した。次に、多変数MRにより、いわゆる直接効果を計算して、ADHDが直接影響している程度を推定した。 その結果、ADHDの遺伝的素因は神経性無食欲症と独立して関連していることが分かった〔オッズ比(OR)1.28、95%信頼区間(CI)1.11~1.47、P=0.001〕。MDDとは双方向の関連が認められた(ADHD→MDD:同1.09、1.03~1.15、P=0.003、MDD→ADHD:同1.76、1.50~2.06、P=4×10-12)。MDDで調整した場合、ADHDは自殺企図およびPTSDと直接的な関連を有していた(それぞれ同1.30、1.16~1.47、P=2×10-5;同1.18、1.05~1.33、P=0.007)。一方で、不安障害、双極性障害、統合失調症との関連は認められなかった。 著者らは、「今回の結果は、ADHDの経過途中において予防あるいは治療すべき精神疾患に関する指針となるもので、ADHD患者を診療している臨床医にとって意義のあるものだ」と述べている。

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セマグルチドの使用は自殺念慮と関連しない

 2型糖尿病や肥満症治療のためにオゼンピックやウゴービなどのGLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使用していても、GLP-1受容体作動薬の非使用者に比べて自殺念慮が高まる可能性はないことが、電子健康記録(HER)のデータベースを用いた大規模レビューにより明らかにされた。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部Center for Artificial Intelligence in Drug DiscoveryのRong Xu氏らが米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて実施したこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に1月5日掲載された。 Xu氏は、2023年の夏にヨーロッパの規制当局が、セマグルチドに関連して自殺念慮が報告されたことを受けて調査に乗り出したことから、この問題に取り組むことを決めたと説明している。また、米食品医薬品局(FDA)も、最近公開された四半期報告書の中で、オゼンピックやウゴービを含む肥満症治療薬使用者から同様の報告があることを受けて調査中であることを明らかにしている。同氏は、セマグルチドを使用中の人では、アルコールや喫煙などの中毒性のある行動に対する興味が低下するという報告がある一方で、ヨーロッパではセマグルチドと自殺念慮の関連に関する調査が実施されたことに触れ、「一種のパラドックスとも言える状況が生じている」と話している。 Xu氏らは、全米50州、59の医療機関の患者1億人以上の電子健康記録(HER)のデータベースを用いてセマグルチド使用患者を6カ月間追跡し、同薬と自殺念慮との関連を、GLP-1受容体作動薬ではない糖尿病治療薬や肥満症治療薬の使用患者との比較で検討した。データベースには肥満または過体重の患者23万2,771人と2型糖尿病患者157万2,885人が含まれていた。傾向スコアマッチングによりセマグルチド使用者とGLP-1受容体作動薬以外の治療薬使用者として、肥満症では5万2,783人ずつ(平均年齢50.1歳、女性72.6%)、2型糖尿病では2万7,726人ずつ(平均年齢57.5歳、女性49.2%)を対象として解析を行った。肥満または過体重患者のうちの7,847人、2型糖尿病患者のうちの1万6,970人に自殺念慮歴があった。 解析の結果、セマグルチドを使用中の過体重または肥満症患者では、GLP-1受容体作動薬以外の肥満症治療薬を使用中の同患者に比べて、初めて自殺念慮を抱くリスクが有意に低く(0.11%対0.43%、ハザード比0.27、95%信頼区間0.20〜0.36)、また、自殺念慮の再発リスクについても有意に低いことが示された(6.5%対14.1%、同0.44、0.32〜0.60)。さらに、2型糖尿病患者を対象にした解析でも、セマグルチドを使用中の患者では、初めて自殺念慮を抱くリスクと(0.13%対0.36%、同0.36、0.25〜0.53)、自殺念慮の再発リスクが低かった(10.0%対17.9%、同0.51、0.31〜0.83)。 オゼンピックやウゴービは、マンジャロやZepbound(ゼップバウンド)と同様、今や何百万人もの患者に処方されている。これらの薬で生じる最も一般的な副作用は、吐き気、嘔吐、便秘などの胃腸障害だが、胃不全麻痺などより深刻な副作用が生じたとの報告もある。ウゴービもZepboundも、添付文書には自殺行動や自殺念慮のリスクに関する警告が記載されている。CNNによると、これらの薬剤よりも古くからある、同じGLP-1受容体作動薬サクセンダの添付文書でも、抑うつ、自殺念慮や自殺行動について患者を監視することが推奨されているという。研究論文の共著者である、米国立薬物乱用研究所のNora Volkow氏はさらに、「急激な減量が人を脆弱にさせることも考えられる」と指摘している。 Xu氏とVolkow氏は、今回の研究でセマグルチドが自殺念慮リスクの低下と関連することが示されたものの、「この結果は、自殺念慮に対するセマグルチドの適応外処方を正当化するものではない」と注意を促している。ただし、Volkow氏は、「うつ病の潜在的治療薬としてのセマグルチドの効果を検証することに関心が寄せられているのは事実だ」と認めている。実際に、少なくとも1件の臨床試験がまさにその目的で患者を募集しているところだという。

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思い込みが薬の効果を変える?

 薬が脳活動に与える影響の大きさは、薬の使用者がその薬の強さをどれだけ信じているかに左右される可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。電子タバコのニコチン量が低、中、または高用量であると告げられた喫煙者は、実際のニコチン量は一定であったにもかかわらず、告げられた量に一致する脳の活性化を示したという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のXiaosi Gu氏らによるこの研究結果は、「Nature Mental Health」に1月3日掲載された。 Gu氏は、「思い込みは、われわれの行動に強い影響を及ぼす可能性があるにもかかわらず、その効果は曖昧とされており、神経科学的手法で定量化して検討されることはほとんどない」と言う。そして、「われわれは人間の思い込みが、薬と同じように用量依存的に脳活動を調節するのかどうかを調べることにした」と研究背景について説明している。 この研究でGu氏らは、ニコチン依存症の人を対象にニコチン入りの電子タバコを用いた実験を行い、思い込みが薬を投与したときと同じように用量依存的に脳の活動に影響を与えるのかどうかを調べた。用意された電子タバコには、ニコチン量が低・中・高であることを示すラベルが貼られていたが、実際には全て同じニコチン量だった。研究グループは、実験参加者が電子タバコを吸う前にそこに含まれているニコチン量を知らせることで、「思い込み」の状況を作り出した。実験参加者にこれらの電子タバコをランダムな順で与え、いずれかを吸い終わるごとに意思決定タスクに取り組んでもらい、その間の脳の機能的MRI(fMRI)検査を行った。最終的に、20人の参加者から60回分のfMRIスキャンデータが得られた。 脳活動の評価を行った結果、参加者の信じていたニコチン量の増加に伴い、睡眠や覚醒に関与する脳領域である視床の活性も高まることが明らかになった。この効果は、これまで薬によってしか得ることができないと考えられていたものだ。また、視床と、意思決定や信念状態に重要と考えられている脳領域である腹内側前頭前野の間の機能的結合においても、思い込みの用量依存的な効果が認められた。 Gu氏は、「これらの結果は、薬に対する反応に個人差がある理由の説明となる可能性がある。また、物質使用障害の治療では、個人の思い込みがターゲットになり得ることを示唆するものでもある。さらには、依存症以外のさまざまな精神疾患に対する精神療法などの認知的介入が神経生物学的なレベルで及ぼす影響についての理解も深まるだろう」と述べている。さらに同氏は、「人間の薬に対する思い込みがこれほどの影響力を持つのであれば、思い込みを利用することで患者の薬治療に対する反応を高められる可能性がある」との見方を示す。 Gu氏は、「例えば、薬の効能が、薬に対する思い込みが脳や行動に及ぼす作用にどのような影響を及ぼすのか、また、その思い込みの影響はどの程度持続するのかを調べることは、非常に興味深い」と話す。また同氏は、「われわれが得た知見は、より広い視野で健康を考えた場合に薬や治療をどうとらえるのかを大きく変える可能性がある」と述べている。

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ペットボトルの水1L中に24万個のプラスチック粒子

 ペットボトルの水で喉を潤す人は、水と一緒に何十万もの微細なプラスチック粒子を摂取しているかもしれない。米コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所のBeizhan Yan氏らによる研究で、1Lのペットボトル入り飲料水の中には検出可能なプラスチック粒子が平均約24万個含まれており、それらの10個に9個はナノプラスチックであることが明らかになった。この研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に1月8日掲載された。 マイクロプラスチックとは、直径5mm以下から1μm(1mの100万分の1)までのプラスチックの破片であり、1μmよりも小さなものはナノプラスチックと呼ばれる。1μmがいかに小さいかは、人間の髪の毛の太さが約70μmであることを考えると分かりやすいだろう。自然界の有機物とは異なり、ほとんどのプラスチックは無害な物質へと分解されず、単にどんどん小さくなっていくだけであり、理論的にどこまで小さくなるかに限界はないという。 このように、ナノプラスチックは非常に小さいため、腸や肺を通過して血流に入り、最終的には心臓や脳などの臓器に蓄積する。そのため、研究者らは、ナノプラスチックが人体に与え得る影響を突き止めようと、精力的に研究を進めている。 Yan氏らによると、ペットボトル入りの飲料水中に含まれるプラスチック粒子は、2018年に1L当たり平均325個の粒子が検出されたことが報告されたことを機に、社会問題になっている。その後の追跡調査では、それ以上のプラスチック粒子が含まれていることが判明している。ただし、今回の研究論文の筆頭著者である同大学化学分野のNaixin Qian氏は、「これまでの技術では、ナノの世界の粒子については推定が不可能だった」と話す。 今回の研究では、刺激ラマン散乱顕微鏡(stimulated Raman scattering microscopy)と呼ばれる新たな技術が採用された。これは、特定の分子に共鳴するように調整した2種類のレーザーを同時に試料に照射することで、そこに含まれる標的分子を検出する技術だ。研究グループはこの技術を用いて、一般的なプラスチック7種類を対象とし、米国で販売されている主要な3種類のボトル入り飲料水中に含まれているプラスチック粒子の量を100nm(1nm=0.001μm)のサイズまで調べた。 その結果、1L当たり平均約24万個のプラスチック粒子が検出され、その90%がナノプラスチックであることが明らかになった。検出されたプラスチック粒子の中で多かったのは、ペットボトルの原料であるポリエチレンテレフタレート(PET)であった。研究グループは、「PETは、ボトルが絞られたり、熱にさらされたりすると、水の中に溶け出してしまう可能性がある」と述べている。PET粒子よりも多く検出されたのは、ボトルに水を注入する際の浄化に使われるプラスチックフィルターの材料であるポリアミドの粒子であった。そのほか、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの工業用プラスチックの粒子も含まれていた。 しかし、研究グループによると、本研究で対象とした7種類のプラスチックは、サンプルから検出されたナノ粒子の約10%を占めるに過ぎず、残りの粒子が何なのかについては見当もつかなかったという。もしそれらが全てナノプラスチックであれば、1L当たりの水に含まれる粒子の数は数千万個に達する可能性がある。 研究グループは今後の計画として、10ポンド(約4.5kg)の洗濯物に含まれる衣類の合成素材から数百万個のマイクロプラスチックやナノプラスチックの粒子が剥がれ落ち、排水に流れ込んでいるとの仮定に基づき、水道水と廃水中に含まれるナノプラスチックの量を調べる予定だとしている。

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チョコレートを食べると脳機能が改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第251回

チョコレートを食べると脳機能が改善photoACより使用バレンタインデーが近づいてきました。コロナ禍になってから、飲み会とかこういう行事とか鳴りを潜めているように思います。私は、チョコレートなんてもう数年、誰からももらっていないです。いや、ひがんでいるわけではないです。さて、チョコレートの消費量とノーベル賞の相関関係が示された研究が2012年に発表され、話題になりました1)。しかしながら、いろいろなリミテーションがある研究だと指摘され、当時喧々囂々と議論されました。Sasaki A, et al. Cacao Polyphenol-Rich Dark Chocolate Intake Contributes to Efficient Brain Activity during Cognitive Tasks: A Randomized, Single-Blinded, Crossover, and Dose-Comparison fMRI Study. Nutrients. 2023 Dec 21;16(1):41.この研究は、機能的MRI(fMRI)を用いて、認知テスト中の脳機能改善に対するダークチョコレート摂取の効果を検討するという、珍しいランダム化単盲検クロスオーバー用量比較試験です。26人の健康な成人被験者が、低濃度(211.7mg)または高濃度(635mg)のカカオポリフェノール入りのダークチョコレート(25g)を摂取しました。いやー、美味しそう。摂取後25分、摂取後50分の2回、fMRIを用いて実行機能に関連するテスト中の脳活動を分析しました。チョコレート摂取と脳活動測定セッションの間に、左背外側前頭前皮質と左下頭頂小葉における有意な交互作用が観察され、ダークチョコレートを1回摂取することで、継続的かつ努力的な課題中の脳機能効率の向上に寄与することが示されました。これまでも、チョコレートと脳機能の関係はさまざまな研究で検証されています。今回はカカオポリフェノール入りのダークチョコレートでしたが、カカオフラバノール2)は血圧も低下させる作用があるとされています。こちらは、森永製菓がイチオシしている成分でもあります。1)Messerli FH. Chocolate consumption, cognitive function, and Nobel laureates. N Engl J Med. 2012 Oct 18;367(16):1562-1564.2)Tsukamoto H, et al. Flavanol-rich cocoa consumption enhances exercise-induced executive function improvements in humans. Nutrition. 2018 Feb;46:90-96.

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第197回 医療支援チームを「よそ者」扱い!?思い知る被災者支援の難しさ

能登半島地震の発生から1ヵ月以上が経過した。私は先日、ようやく被災地の輪島市門前町に足を踏み入れた。日本薬剤師会のある派遣チームに同行取材させてもらったのである。能登半島内の被災自治体にはほとんど宿泊施設はなく、私は2日連続、午前4時に起床して金沢駅からJR七尾線の始発に乗り込み、彼らの宿泊先近くの羽咋市で合流して輪島市門前町に通った。羽咋市から輪島市門前町までの道路は、ほかの地域と比べるとマシと言われているらしいが、それでも実際はかなりの悪路だった。路面はあちこちでひび割れ、とくに構造力学上は脆弱となることが避けられない橋の袂(これでも大学は理工学部土木工学科出身である)の多くが損傷していた。もちろん応急処置は施されているが、この状況で油断して走行すれば、橋の通過時に車体底部を擦るか、タイヤパンクの危険性がある。さらに応急処置だけで片側通行に制限した崖崩れ箇所もあちこちにある。迂回路も使いながら、羽咋市から輪島市門前町まで通常の2倍の2時間弱を要した。輪島市と聞くと、能登半島に縁もゆかりもない人の多くは、地震後の火災で焼失した輪島朝市を思い浮かべるだろうが、門前町は輪島朝市から直線距離で南西に約17km離れている。もともとは鳳珠郡門前町という独立した自治体だったが、平成の大合併で輪島市に吸収された。多くの人にとって輪島市門前町は耳で聞くだけならば馴染みはないだろうが、実はこの町に関係する日本人は少なくない。仏教の単一宗派としては、国内最大の寺院数を誇る禅宗の曹洞宗の大本山・總持寺があるからだ。正確に説明すると、現在の大本山としての總持寺は横浜市鶴見区にあるが、これは明治期に現・輪島市門前町から移転してきたもの。このため現在も門前町にある總持寺は、「總持寺祖院」と呼ばれている。さて前置きが長くなったが、これには理由がある。私がこの町に行けそうだとわかったことを複数の石川県出身者に伝えると、皆から異口同音に「門前町の人に輪島市とか、輪島市門前町とか言わないほうが良いよ」と聞かされたからだ。平成の大合併で輪島市に吸収されたとはいえ、1300年代から続く歴史ある總持寺祖院のお膝元出身という自負が地元の人にはあるから、ということらしい。また、避難所集約や災害関連死防止などの観点から、災害派遣医療チーム(DMAT)が門前町の一部避難所住民に対し、合併前の輪島市域の避難所への移動を提案し、強く拒絶されたという情報も同行させてもらったチームの前任メンバーの報告として耳にしていた。現地に赴くと、表面上はそうした確執は見えてこなかった。しかし、現地の保健医療調整本部のミーティング中に外で待機していると、初期DMATと地元住民の間で起きた軋轢の後処理が懸案事項の一つになっているという趣旨の話が漏れ聞こえてきた。この急性期から慢性期への移行と派遣チームによる医療支援から地元医療機関への移行という双方の医療の移行が重なるこの時期にだ。ちなみに私が行った時に同調整本部を統括していたのは日本医師会災害医療チーム(JMAT)だった。このため同行チームのメンバーも避難所ではかなり気を遣っていた。この点は私が同行していたチームのリーダーが東日本大震災の支援などにも参加経験がある猛者だったことも大きく影響していたと思う。「ある避難所のCO2濃度が高い疑いがあるので調査して欲しい」という、医療支援チームの依頼を受け、その避難所に赴いたときもそうだった。避難所である体育館入口からCO2測定器を手にした薬剤師が入ると、測定器の数字はいきなり1,390ppmから始まり、一番奥の談話スペースまで行くと2,000ppmを超えてしまったのだ。避難所の住民や管理者によると、一定の換気はしているとのこと。ただ、外気温の低さで長時間の換気が難しいこと、地震の影響で体育館2階の窓枠の一部が歪んで窓が開かなくなっていること、窓近傍の壁の亀裂状況が読めないことなどもあり、頻繁な換気はできていないとのことだった。同行したチームメンバーの薬剤師たちは、この状況でほかの換気方法がないかを思案するものの妙案は出ず、結局、管理者に数字を伝え、換気を心掛けるよう伝えるに留まった。これはリーダーが「あまり上から目線でモノを申せば、反発されるだけ」とメンバーに伝えたからだ。この翌日、撤収時間の間際に特定の避難所から一気に9枚もの災害処方箋が送信されてくる事態にも遭遇した。ちなみにこの避難所の訪問を計画していたJMATの要請で、この日は薬剤師メンバー1人がJMATに同行していた。この時期、門前町で日本薬剤師会の支援チームが対応していた災害処方箋枚数は1日十数枚程度。その半分以上に当たる災害処方箋が一度に回ってきたのだから、薬剤師メンバーたちはびっくり。この直後から活動拠点としていた輪島市門前総合支所に据え置かれていたモバイルファーマシー周辺は、数多くの薬剤師が処方箋の確認や薬袋作成などに当たり、急に慌ただしくなった。その理由は同行から戻ってきた薬剤師の口から語られた。どうやらこの避難所は医療支援チームとの積極的な接触を拒んでいたらしい。向かったJMATの医師も事前に電話連絡をしたが、やんわりと訪問を断られていたとのこと。しかし、この医師はそのまま訪問し、たまたま食事中だった高齢者の食事介助などを手伝ったことをきっかけに避難所に詰めていた看護師などの態度が急変化。避難所内の高齢者の診察に漕ぎ着け、その結果、大量の災害処方箋が発行される事態になったという。この話を聞いて、私は「ああ、そういうことだったのか」とようやく合点がいった。実は前日、この避難所の避難者に発行された災害処方箋に基づく胃腸炎治療薬の配達があり、たまたま私もチームの薬剤師に同行していた。配達時に薬剤師が避難所入口にいた高齢男性陣に薬を届けに来たことを伝えると、患者本人を入口まで呼び出してくれた。入口で薬を渡し、服薬指導を行ってミッションコンプリート。しかし、私はある事が気になっていた。当初、入口にいた男性陣は単なる雑談をしていたのだと私は考えていたが、それにしては入口の左右に複数のパイプ椅子が向かい合うように配置され、すべての席に高齢男性が座っていたことが引っ掛かっていたのだ。その薬剤師の報告を聞くに、あの入口は医療支援チームも含めたよそ者をブロックするためだったようだ。これは想像に過ぎないが初期のDMATがこの地の被災者に進言したことは、おそらく医学的には正しかったろうと思う。しかし、発災から今もまだ断水が続くような輪島市のインフラ状況や体力的にやれることが限られる高齢者の多さ、地元への愛着などを考えると、それが適切だったのか?この体験に改めて被災地支援の難しさを思い知るとともに、あの避難所は今どうなっているのだろうと、東京に戻ってから少なくとも1日1回は思い出している。

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「HEPT」を受講してみませんか?【非専門医のための緩和ケアTips】第69回

第69回 「HEPT」を受講してみませんか?心不全患者さんの緩和ケア、最近ニーズが増えている分野です。この分野について学ぶためのベストな方法は何でしょうか? 関連する書籍も増えてきて、学びやすくなってきましたが、本日はオンラインで効率的かつ深く学べるコースを紹介します。今日の質問心不全の緩和ケアについて学んでいるのですが、循環器の専門家ではないので難しさも感じます。循環器の専門医の先生がどのように考えているかなど、いろいろ議論したいとも思います。こういったことは本だけでは学べないので、何か良い手段はないでしょうか?よくぞ聞いてくれました! ぜひ、日本心不全学会公認の緩和ケア推進委員会オフィシャルコースである「HEPT (Heart failure Palliative care Training program for comprehensive care provider)心不全緩和ケアトレーニングコース」の受講をお勧めしたいと思います。このコースは日本心不全学会が運営しており、心不全における「基本的」緩和ケアを実践できるスキルを身に付けることを目的としてつくられました。HEPTは、事前にeラーニングで受講するパートとグループワークを含むオンライン講習会のパートの2つで構成されています。eラーニングのパートでは「心不全緩和ケア概論」「主な身体症状への対応」「心不全患者への精神ケア」という3つのコンテンツを、2時間程度で受講します。オンライン講習会の受講までに、ご自身の都合に合わせて見るかたちです。忙しい方にとっては、都合のいい時間に学べるのは良いですよね。オンライン講習会では、「意思決定支援におけるAdvance Care Planning」「DNAR指示と治療の差し控えにおける臨床倫理」の2つのテーマに取り組みます。それぞれ仮想症例が用意され、それを基にグループワークを行います。グループワークには循環器専門医だけでなく、診療所に勤務するプライマリ・ケア医や緩和ケアの専門家も参加します。その時の参加者の状況によっても変わりますが、少なくともファシリテーターには循環器医と緩和ケア医が含まれており、多様な視点からの議論ができるよう工夫されています。私はこのHEPTのコアメンバーとして、プログラムの立ち上げから関わってきました。今回質問いただいたように、緩和ケアの学びは本だけでは不十分なところがあります。また、連携する循環器の先生の考え方や、受講者の方の悩みを共有することも非常に大切です。このコース、なんと、無料で受講可能です。申し込みは、こちらのサイトからとなります。すべてオンライン受講なので、ネットワークや騒がしくない環境を準備する必要があります。グループワークがありますので、パソコン等のカメラ・マイクが使用可能であることも事前にご確認ください(カメラがオフのままだと、受講の本人確認ができないという問題も生じます)。ぜひHEPTを受講し、心不全の緩和ケアについて学びとネットワーク構築に取り組んでみてください。参考サイト心不全緩和ケアトレーニングコース HEPT今回のTips今回のTips心不全における緩和ケアを学ぶなら、HEPTコースを受講してみよう!

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ダークチョコレートはCVDリスクを低減させる?

 ダークチョコレートの摂取と12種類の心血管疾患(CVD)のリスクとの間に因果関係があるかどうかをメンデルランダム化解析で検討した結果、ダークチョコレート摂取により本態性高血圧症のリスクが有意に低減した一方で、そのほかのCVDでは因果関係は認められなかったことを、中国・Shaoxing People's HospitalのJuntao Yang氏らが明らかにした。Scientific Reports誌2024年1月10日号掲載の報告。 ダークチョコレートには、フラバノールやメチルキサンチンなどの身体に有益とされる成分が豊富に含まれていて、小規模のランダム化比較試験では心血管系に良好な影響を与えたことが報告されている。しかし、ダークチョコレート摂取がCVDリスクと関連するかどうかは確立されていない。そこで研究グループは、ダークチョコレートの摂取とCVDリスクとの因果関係を調べるために、メンデルランダム化解析を実施した。 ダークチョコレートの摂取量に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)のデータは英国バイオバンクより抽出した(6万4,945例)。CVDのデータは、冠動脈疾患(症例:18万1,522例、対照:98万4,168例)、心房細動(6万620例、97万216例)、心不全(4万7,309例、93万14例)、脳卒中(4万585例、40万6,111例)、本態性高血圧症(9万2,462例、26万5,626例)、非リウマチ性弁膜症(2万772例、28万6,109例)、非虚血性心筋症(9,926例、30万3,607例)、一過性脳虚血発作(1万8,398例、34万2,294例)、静脈血栓塞栓症(1万9,372例、35万7,905例)、心筋梗塞(2万4,185例、31万3,400例)、下肢の深部静脈血栓症(9,109例、32万4,121例)の研究から収集した。主なアプローチとして、逆分散加重(IVW)を用いた固定効果モデルを用い、感度分析によって結果の頑健性を評価した。 主な結果は以下のとおり。●ダークチョコレートの摂取は、本態性高血圧症のリスク低減と有意に関連した(オッズ比[OR]=0.73、95%信頼区間[CI]:0.60~0.88、p=1.06×10-3)。●静脈血栓塞栓症のリスク低減との関連も示唆されたが、因果関係はエビデンス不足のため立証できなかった(OR:0.69、95%CI:0.50~0.96、p=2.81×10-2)。●ほかの10種類のCVDとの間に因果関係は認められなかった。 ・心不全 OR:0.93、95%CI:0.63~1.35、p=0.69 ・冠動脈疾患 OR:0.96、95%CI:0.78~1.17、p=0.65 ・心筋梗塞 OR:0.78、95%CI:0.43~1.41、p=0.41 ・心房細動 OR:1.14、95%CI:0.86~1.52、p=0.35 ・非リウマチ性弁膜症 OR:0.81、95%CI:0.55~1.19、p=0.28 ・非虚血性心筋症 OR:0.99、95%CI:0.63~1.57、p=0.98 ・下肢深部静脈血栓症 OR:0.65、95%CI:0.41~1.04、p=7.26×10-2 ・脳卒中 OR:1.26、95%CI:0.89~1.79、p=0.19 ・虚血性脳卒中 OR:1.15、95%CI:0.72~1.83、p=0.55 ・一過性脳虚血発作 OR:0.83、95%CI:0.55~1.24、p=0.36 これらの結果より、研究グループは「本研究はダークチョコレートの摂取と本態性高血圧症のリスク低下との間に因果関係があることを証明するものであり、本態性高血圧症の予防に重要な示唆を与えるものである」とまとめた。

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新規がんは世界で約2,000万例、日本で多いがん種との違いは?/WHO

 2024年2月1日、世界保健機関(WHO)のがんに特化した機関である国際がん研究機関(IARC)は、185ヵ国から収集したがん負担に関する最新の推計を発表した。それによると、2022年には全世界で新たに約2,000万例のがん患者が生じ、約970万例が死亡したと推定される。36のがん種のうち、世界で最も多く発症および死亡したのは肺がんで、日本で最も多く発症したのは大腸がん、最も多く死亡したのは肺がんであった。世界のがん患者は2050年には新たに3500万例以上発生すると予測<全世界> 全世界では、2022年に新たに1,996万5,054例(男性:1,030万6,574例、女性:965万8,480例)ががんに罹患し、死亡は973万6,520例(男性:542万6,895例、女性:430万9,625例)と推定される。 新規発症したがんは、世界全体では肺がんが最も多く(12.4%[248万308例])、乳がん(11.6%[230万8,931例])、大腸がん(9.6%[192万6,136例])、前立腺がん(7.3%[146万6,718例])、胃がん(4.9%[96万8,365例])と続いた。男女別では、男性では肺がん(15.3%)、前立腺がん(14.2%)、大腸がん(10.4%)、胃がん(6.1%)、肝がん(5.8%)が多く、女性では乳がん(23.8%)、肺がん(9.4%)、大腸がん(8.9%)、子宮がん(6.8%)、甲状腺がん(6.4%)が多かった。 死亡が最も多かったのは、世界全体では肺がん(18.7%[181万7,131例])で、大腸がん(9.3%[90万3,853例])、肝がん(7.8%[75万7,906例])、乳がん(6.9%[66万9,418例])、胃がん(6.8%[65万9,805例])と続いた。男性では肺がん(22.7%)、肝がん(9.6%)、大腸がん(9.2%)、胃がん(7.9%)、前立腺がん(7.3%)の順に多く、女性では乳がん(15.4%)、肺がん(13.6%)、大腸がん(9.4%)、子宮がん(8.1%)、肝がん(5.5%)の順に多かった。 なお、肺がんは、アジアにおけるタバコの習慣的な使用が関係している可能性が高いと推測されている。<日本> 日本では、2022年に新たに100万5,157例(男性:58万535例、女性:42万4,622例)ががんに罹患し、42万6,278例(男性:24万823例、女性:18万5,455例)が死亡したと推定される。 新規発症したがんは、全体では大腸がん(14.5%[14万5,756例])、肺がん(13.6%[13万6,723例])、胃がん(12.6%[12万6,724例])、前立腺がん(10.4%[10万4,318例])、乳がん(9.1%[9万1,916例])の順に多かった。男女別では、男性では前立腺がん(18.0%[10万4,318例])が最も多く、肺がん(16.5%[9万5,740例])、胃がん(14.5%[8万4,071]、大腸がん(13.9%[8万435例])、肝がん(4.9%[2万8,678])と続いた。女性では乳がん(21.6%[9万1,916例])、大腸がん(15.4%[6万5,321例])、胃がん(10.0%[4万2,653例])、肺がん(9.7%[4万983例])、膵がん(5.7%[2万4,018例])の順に多かった。 死亡が最も多かったのは、全体では肺がん(19.5%[8万3,243例])で、大腸がん(14.2%[6万473例])、胃がん(10.3%[4万3,807例])、膵がん(10.1%[4万3,265例])、肝がん(6.2%[2万6,420例])と続いた。男性では肺がん、大腸がん、胃がんが多く、女性では大腸がん、肺がん、膵がんが多かった。 2050年には新たに3,500万例以上のがん患者が発生すると予測しており、これは2022年の推定2,000万例から77%の増加である。急速に増加する世界的ながん罹患は、人口の高齢化や増加、社会経済的発展に関連する危険因子(タバコ、アルコール、肥満、大気汚染など)への曝露の変化を反映しているとされる。

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ADHD治療薬、長期使用で心血管疾患リスク増大

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。 2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。 主な結果は以下のとおり。・CVDを発症した1万388例(年齢中央値34.6歳、男性59.2%)を同定し、CVDを有さない対照者5万1,672例とマッチさせた。両群の追跡期中央値は4.1年だった。・ADHD治療薬の使用期間が長いほど、非使用者と比較したCVDリスクが増加していた。(使用期間1~2年の調整オッズ比[aOR]:1.09、3~5年:1.27、5年超:1.23)。・ADHD治療薬の長期使用は高血圧(5年超のaOR:1.80)、動脈疾患(5年超のaOR:1.49)のリスク増加と関連していた。・14年の追跡期間全体では、ADHD治療薬の使用期間が1年延長するごとにCVDリスクが4%増加し、最初の3年は8%とより大きなリスク増加が見られた。小児および青年(25歳未満)、成人(25歳以上)において同様のパターンが観察された。 研究者らは「この症例対照研究では、ADHD治療薬の長期服用がCVD、とくに高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連していることが明らかになった。これらの所見は、ADHD治療薬の長期使用について治療方針を決定する際に、潜在的な利益とリスクを慎重に比較検討することの重要性を強調するものである。臨床医は治療期間中、定期的かつ一貫して心血管系の徴候や症状をモニタリングすべきである」と結論付けている。

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