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複雑性尿路感染症、CFPM/taniborbactam配合剤が有効/NEJM

 急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(UTI)の治療において、セフェピム/taniborbactamはメロペネムに対する優越性が認められ、安全性プロファイルはメロペネムと同様であることが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian M. Wagenlehner氏らが15ヵ国68施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「Cefepime Rescue with Taniborbactam in Complicated UTI:CERTAIN-1試験」の結果、明らかとなった。カルバペネム耐性腸内細菌目細菌や多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、世界的な健康上への脅威となっている。セフェピム/taniborbactam(CFPM/enmetazobactam)は、β-ラクタムおよびβ-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤で、セリンβ-ラクタマーゼおよびメタロβ-ラクタマーゼを発現する腸内細菌目細菌、および緑膿菌に対して活性を発揮することが示されていた。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。セフェピム/taniborbactamの有効性と安全性をメロペネムと比較 研究グループは、複雑性UTIまたは急性腎盂腎炎と診断された18歳以上の入院患者を、セフェピム/taniborbactam(2.5g:セフェピム2g、taniborbactam0.5g)群またはメロペネム(1g)群に、2対1の割合に無作為に割り付け、8時間ごとに7日間静脈内投与した。菌血症を有する患者には、投与期間を最大14日間まで延長可とした。 主要アウトカムは、微生物学的ITT(microITT)集団(両治験薬が有効である、特定のグラム陰性菌を有する患者)における投与(試験)開始後19~23日目の微生物学的成功および臨床的成功の複合であった。複合成功率の群間差の95%信頼区間(CI)の下限値-15%を非劣性マージンとし、非劣性が認められた場合に優越性を評価することが事前に規定された。有効性はメロペネムより優れ、安全性は類似 2019年8月~2021年12月に661例が無作為化され、このうち436例(66.0%)がmicroITT集団であった。microITT集団の平均年齢は56.2歳で、65歳以上が38.1%、複雑性UTI 57.8%、急性腎盂腎炎42.2%、ベースラインで菌血症を有した患者13.1%であった。 複合成功は、セフェピム/taniborbactam群で293例中207例(70.6%)、メロペネム群で143例中83例(58.0%)に認められた。複合成功率の群間差は12.6ポイント(95%CI:3.1~22.2、p=0.009)であり、セフェピム/taniborbactamのメロペネムに対する優越性が示された。 複合成功の差異は、後期追跡調査(試験開始後28~35日目)においても持続しており、セフェピム/taniborbactam群のほうが複合成功率および臨床的成功率が高かった。 安全性解析対象集団(657例)において、有害事象はセフェピム/taniborbactam群で35.5%、メロペネム群で29.0%に認められ、主な事象は頭痛、下痢、便秘、高血圧、悪心であった。重篤な有害事象の発現率は両群で同程度であった(それぞれ2.0%、1.8%)。

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乳がん周術期ICI治療、最新情報を総括/日本臨床腫瘍学会

 近年、いくつかのがん種で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用した周術期治療が開発されている。乳がん領域では2022年9月、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するペムブロリズマブの術前・術後治療が承認されており、他のICIを用いた試験も実施されている。さらにHR+/HER2-乳がんに対する試験も進行中である。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「ICIで変わる、周術期治療」で、乳がんの周術期ICI治療の試験成績や進行中の試験などの最新情報を、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が紹介した。乳がん周術期ICI治療で現在承認されているのはペムブロリズマブのみ 近年、切除可能TNBCに対する治療は、術前化学療法を実施し、術後に病理学的に残存病変がある場合はカペシタビンとオラパリブ(BRCA変異がある場合)を投与することが標準治療となっている。そのような中、2022年9月、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せし術後にペムブロリズマブを投与する治療が、国際共同第III相KEYNOTE-522試験の結果を基に承認され、現在の標準治療となっている。KEYNOTE-522試験では、病理学的完全奏効(pCR)率、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善し、Stage、PD-L1発現、pCR/non-pCRにかかわらず有効であったことが示されている。一方、non-pCR症例では予後不良であったことから、新たな治療戦略が検討されている(後述)。 KEYNOTE-522試験については、ペムブロリズマブ群における5年EFS割合の改善が9%であることと、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)発現割合(術前薬物療法期)が13.0%ということが釣り合うのか、という議論がしばしば行われるが、尾崎氏は、TNBCの再発後の予後が約2年ということを考慮すると釣り合う、との理解だ。本試験では、ペムブロリズマブ群で薬物療法中止例が1割程度増えるが、手術実施割合の低下は1%未満である。これはirAEをしっかり管理することでほとんどの症例で手術可能であることを示しており、リスクベネフィットバランスを議論するうえで非常に重要なデータと考える、と尾崎氏は述べた。pCR症例の術後ペムブロリズマブは省略可能か?non-pCR症例の術後治療は? KEYNOTE-522試験では、術前化学療法+ペムブロリズマブでpCRが得られた症例は予後良好であることから、術後のペムブロリズマブは省略可能ではないかと考える医師が多い。この疑問を解決するために、現在、pCR症例にペムブロリズマブの投与と経過観察を比較するOptimICE-pCR試験が進行中である。 一方、non-pCR症例に対しては、ペムブロリズマブ単独で十分であると考える医師は少なく、従来使用されてきたカペシタビンやオラパリブ(BRCA変異がある場合)を逐次投与するという施設も増えているという。さらに、より有効な術後治療が検討されており、sacituzumab govitecan+ペムブロリズマブの効果を検討するASCENT-05/OptimICE-RD試験、datopotamab deruxtecan+デュルバルマブの効果を検討するTROPION-Breast03試験が進行中である。 また、ペムブロリズマブによる術前・術後治療後に再発した症例に対しては、西日本がん研究機構(WJOG)においてペムブロリズマブ+パクリタキセル+ベバシズマブの効果を検討するPRELUDE試験が計画中という。予後不良症例に対する新規治療戦略や、他のICIを用いた開発が進行中 TNBCの周術期ICI治療に現在承認されているのはペムブロリズマブのみだが、他の薬剤の試験も実施されている。 アテゾリズマブについては、術前・術後に投与したIMpassion031試験において、pCRの改善は認められたが、EFSは改善傾向がみられたものの統計学的に有意な改善が認められなかった。しかしながら、対照群がKEYNOTE-522試験と同様のGeparDouze/NSABP-B59試験が進行中であり、結果が注目される。 術前・術後の両方ではなく、どちらかのみICIを投与するレジメンも検討されている。術前のみの投与については、アテゾリズマブを用いたneoTRIP試験はnegativeだったが、デュルバルマブを用いたGeparNeuvo試験(第II相試験)において、pCRでは差がなかったもののEFSの改善が認められている。術後のみの投与については、アテゾリズマブを用いたAlexandra/IMpassion030試験ではEFSの改善が認められておらず、ペムブロリズマブを用いたSWOG1418/BR006試験は現在進行中である。尾崎氏は、これまでの成績からは術前・術後とも投与することが重要ではないかと考察している。HR+/HER2-乳がんに対する周術期ICI治療の開発 TNBCだけではなく、現在、他のサブタイプに対しても周術期ICI治療の開発試験が行われている。高リスクのHR+/HER2-乳がんに対して術前化学療法および術後内分泌療法へのICIの上乗せ効果を検討する試験として、ペムブロリズマブのKEYNOTE-756試験とニボルマブのCheckMate 7FL試験が進行中だが、どちらも有意なpCR率の改善が示されており、EFSの結果が期待される。 尾崎氏は、これらの開発状況を踏まえ、「乳がん領域においても、今後さらに周術期ICI治療が増えてくる」と期待を示し、講演を終えた。

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アルツハイマー病バイオマーカー、異常検出は診断の何年前から?/NEJM

 アルツハイマー病患者では、診断のかなり前から脳脊髄液(CSF)中のバイオマーカーに変化を認めることが知られている。中国・首都医科大学宣武医院のJianping Jia氏らは、孤発性アルツハイマー病の臨床診断を受けた集団の、診断に至る前の20年間におけるバイオマーカーの経時的変化を明らかにするとともに、認知機能が正常な集団と比較してどの時点でバイオマーカーに乖離が生じ、異常値となるかを検討した。研究の成果は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。中国のコホート内症例対照研究 研究グループは、認知機能が正常な状態から孤発性アルツハイマー病と診断されるまでのバイオマーカーの変化の調査を目的に、多施設共同コホート内症例対照研究を行った(中国国家自然科学基金委員会[NSFC]のKey Projectなどの助成を受けた)。 2000年1月~2020年12月に中国認知機能・加齢研究(China Cognition and Aging Study[COAST])に登録した認知機能が正常な参加者を対象とし、2~3年の間隔でCSF検査、認知機能評価、脳画像検査を実施した。 アルツハイマー病を発症した648例(平均[±SD]年齢61.2±4.1歳、男性50.5%)と、傾向スコアマッチング法で年齢、性別、教育水準をマッチさせた認知機能が正常であった対照群648例(61.3±4.1歳、50.6%)について、CSF中の生化学マーカー濃度、認知機能評価、画像検査の経時的な軌跡を解析し、比較した。診断の6~18年前に、各種バイオマーカー値が乖離 APOEの対立遺伝子ε4の保因者はアルツハイマー病群で多かった(37.2% vs.20.4%)。追跡期間中央値は19.9年(四分位範囲[IQR]:19.5~20.2)だった。 アルツハイマー病群のCSF中のバイオマーカーの値が、認知機能が正常な対照群と乖離した時期は、アミロイドβ(Aβ)42が診断の18年前と最も古く、次いでAβ42/Aβ40比が14年前、181位リン酸化タウが11年前、総タウが10年前、ニューロフィラメント軽鎖が9年前の順であり、両側海馬体積(脳構造MRIで評価)は8年前、認知機能低下(CDR-SBで評価)は6年前であった。変化は当初加速度的、その後は緩やかに アルツハイマー病群における認知障害の進行に伴うCSF中のAβ42、Aβ42/Aβ40比、181位リン酸化タウ、総タウの値の変化は、当初は加速度的に進行したが、その後は、認知機能がさらに低下したにもかかわらず緩やかとなった。 著者は、「孤発性アルツハイマー病と常染色体優性遺伝性アルツハイマー病とでは、バイオマーカーの変化が現れる時期が異なる可能性が示唆された」「バイオマーカーの変化と認知機能の関連を検討したところ、ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアが25~27点の範囲で最も急速に変化することがわかった」とし、「参加者は漢民族であったため、これらの結果は他の集団に一般化できない可能性がある」と指摘している。

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減量で糖尿病が寛解すると心臓病と腎臓病のリスクが下がる

 減量によって2型糖尿病が寛解すると、心臓と腎臓の状態にもメリットがもたらされる可能性のあることが明らかになった。寛解期間が限られたものであっても心臓病のリスクは40%、腎臓病のリスクは33%低下し、寛解期間がより長ければ、より大きなリスク低下につながる可能性があるという。アイルランド王立外科医学院(RCSI)のEdward Gregg氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に1月18日掲載された。同氏は、「本研究は、糖尿病の寛解と糖尿病関連合併症のリスクとの関連を検討した初の介入研究の結果であり、糖尿病の寛解を達成可能な状態にある人たちにとって心強いニュースだ」と話している。 この研究には、5,145人の2型糖尿病患者を、生活習慣への強力な介入を行う群と、教育的サポートのみを行う群に二分して合併症リスクを検討した「Look AHEAD研究」のデータが用いられた。Look AHEAD研究の参加者から、データ欠落者や減量・代謝改善手術が施行された患者、ベースライン時点で既に寛解状態にあった参加者を除外し、4,488人(平均年齢59歳、女性58%、BMI35.8、糖尿病罹病期間6年)を解析対象とした。 血糖降下薬を用いずにHbA1c6.5%未満を達成した場合を「寛解」と定義すると、12年間にわたる追跡期間中に全体の12.7%、強力な介入が行われた群では18.1%が、いずれかの時点で寛解の基準を満たしていた。寛解の達成は、糖尿病罹病期間が短く、ベースラインのHbA1cが低く、減量幅が大きい患者で高い傾向が観察された。 解析結果に影響を及ぼし得る交絡因子〔糖尿病罹病期間、ベースラインのHbA1c、血圧、心血管疾患(CVD)の既往〕を調整後、一度でも寛解に到達した患者は、その記録のない患者に比べて、慢性腎臓病(CKD)発症リスクが33%低く〔ハザード比(HR)0.67(95%信頼区間0.52~0.87)〕、複合CVDイベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、狭心症による入院)リスクは40%低かった〔HR0.60(同0.47~0.79)〕。また、寛解期間が4年以上にわたっていた患者では、CKD発症リスクは55%低く〔HR0.45(0.25~0.82)〕、CVDイベントリスクは49%低かった〔HR0.51(0.30~0.89)〕。 一方、寛解の維持が困難であるという実情も示され、研究開始から8年目まで寛解が維持されていた患者は、全体のわずか約3%、強力な介入が行われた群でも約4%にすぎなかった。ただし、寛解の維持期間が短くても、CVDイベントリスクは有意に低下することも明らかになった。具体的には、寛解期間が1年未満であっても、一度も寛解に至らなかった患者に比べてリスクが34%低かった〔HR0.66(0.46~0.94)〕。なお、寛解期間が1年未満の場合のCKD発症リスクに関しては、交絡因子未調整モデルでは有意なリスク低下が観察されたが、交絡因子調整後は非有意だった。 Gregg氏は、「われわれの研究結果は、減量や糖尿病の寛解状態を維持することの困難さを再確認させるものだ。しかしその達成が、健康上のメリットにつながることを示すものでもある」とRCSI発のリリースで述べている。

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高齢統合失調症患者の死亡率、その原因と他の精神疾患との比較

 統合失調症でみられる超過死亡は、その後の生活においても影響を及ぼす可能性がある。高齢統合失調症患者でみられる死亡率増加の具体的な原因、および向精神薬の潜在的な影響については、これまで十分にわかっていない。フランス・Corentin-Celton HospitalのNicolas Hoertel氏らは、高齢統合失調症患者の5年死亡率とその原因を調査し、双極性障害やうつ病との比較を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2024年1月31日号の報告。 高齢者の統合失調症、双極性障害、うつ病の入院および外来患者564例(平均年齢:67.9±7.2歳)を対象に、5年間のプロスペクティブコホート研究を実施した。1次分析では、社会人口学的要因、罹病期間と重症度、精神疾患と非精神疾患の併存などの交絡因子の影響を軽減するため、逆確率重み付け(IPW)多変量ロジスティックモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・死亡原因は、心血管疾患(CVD)、感染症などのCVD以外の疾患関連死、自殺、不慮の事故であった。・5年死亡率は、高齢統合失調症患者で29.4%(89例)、双極性障害またはうつ病の高齢者で18.4%(45例)であった。・調整後、統合失調症患者は、双極性障害またはうつ病患者と比較し、すべての原因による死亡率およびCVDによる死亡率の増加と有意な関連が認められた。【すべての原因による死亡】調整オッズ比(aOR):1.35(95%信頼区間[CI]:1.04~1.76)、p=0.024【CVDによる死亡】aOR:1.50(95%CI:1.13~1.99)、p=0.005・これらの関連性は、抗うつ薬を服用している患者において有意な減少が認められた。【抗うつ薬服用患者のすべての原因による死亡】相互作用オッズ比(IOR):0.42(95%CI:0.22~0.79)、p=0.008【抗うつ薬服用患者のCVDによる死亡】IOR:0.39(95%CI:0.16~0.94)、p=0.035 著者らは「高齢統合失調症患者は双極性障害またはうつ病患者と比較し、死亡率が高く、超過死亡の多くはCVDに関連していることが示唆された」とし、本分析において「抗うつ薬の使用は、すべての原因による死亡やCVDによる死亡の有意な減少と関連していたが、他の向精神薬では超過死亡に対し影響を及ぼさない」ことを報告した。

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5歳から17歳の小児および青年に対する2価新型コロナワクチンの有効性(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、米国で行われた3つの前向きコホート研究のうち、2022年9月4日から2023年1月31日までの期間のデータを統合して、オミクロン株BA.4/5亜系統が主に流行していた時期の小児および青年期におけるCOVID-19に対する2価mRNAワクチンの有効性を推定している。本研究結果の要約は「小児・思春期の2価コロナワクチン、有効性は?/JAMA」にもまとめられているように、SARS-CoV-2感染症(COVID-19 RT-PCR陽性)に対するワクチンの有効性は54.0%(95%信頼区間[CI]:36.6~69.1)で、症候性COVID-19に対する同有効性は49.4%(95%CI:22.2~70.7)だった。本論文の著者らは、2価新型コロナワクチンは小児および青年に対して有効性を示し、対象となるすべての小児と青年は推奨されるCOVID-19ワクチン接種を最新の状況とする必要があると結論づけている。 さて、新型コロナワクチンは2024年3月末までは全額公費負担であったが、今後(2024年4月以降)は、今回の研究対象である5~17歳は任意接種のため、養育者と小児自身で接種の有無を判断する必要がある。 本邦では、小児への新型コロナワクチンについて、2023年10月3日に日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会から考え方が示されており「小児への新型コロナワクチン令和 5 年度秋冬接種に対する考え方」、日本小児科学会では、生後6ヵ月~17歳のすべての小児への新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を引き続き推奨している。理由には、(1)流行株の変化によって今後も感染拡大が予測される(2)今後も感染機会が続く(3)小児においても重症例・死亡例が発生している(4)小児へのワクチンは有効である(5)小児のワクチン接種に関する膨大なデータが蓄積され、より信頼性の高い安全性評価が継続的に行われるようになったことが挙げられており、根拠となるエビデンスもまとめられている。 現在も、新型コロナウイルスは変異と感染拡大の波を繰り返しており、少なくともしばらくの間はワクチン接種をするか否かの判断を各自でせざるを得ないだろう。ワクチン接種の是非は、「COVID-19の罹患率や重症度」の推移を勘案しながら、「発症(および感染)の予防効果」と「重症化の予防効果」や「接種後の副反応」といったメリットとデメリットを比較し、「ワクチン接種の費用負担」に見合った利益が享受できるかを、対象者が判断できるように、科学的な根拠となるデータを提供し続けることが好ましい。 本論文は、ワクチン接種のメリットである「発症(および感染)の予防効果」と「重症化の予防効果」が引き続き期待できることを示しており、現時点では、小児への新型コロナワクチン令和5年度秋冬接種に対する考え方で示されたデータを加味すると、小児へのワクチン接種は推奨されると私は考えるが、今後は被接種者の基礎疾患を含めた背景や「ワクチン接種の費用負担」に見合った利益が享受できるかも考えて、新型コロナワクチン接種の是非を養育者と小児に判断してもらう必要がある。

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090)お薬を多めに飲んじゃう患者さん!?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第90回 お薬を多めに飲んじゃう患者さん!?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆先日外来で、前の週に切開排膿した炎症性粉瘤の患者さんを、処置室で診察しました。切開部位まわりの炎症もなく、きれいになっており、あとは傷がふさがるのを待つだけ、という状態。傷がふさがるまで創部のガーゼ交換だけ続けてもらい、先週処方した抗菌薬の内服は飲みきり終了でよい旨、お伝えしました。すると、患者さんから、漫画に描いたような返答が…。「いつも多めに飲んじゃうみたいで、もう2日前には終わってしまったんですよ~!」(笑顔)とのこと。内服薬で「飲み忘れがあり、余っている」というのはよく聞きますが、「多めに飲んでしまって、早く終わってしまう」というパターン(?)もあるとは…!?たくさん飲むと安心するのか? はたまた、飲んだことを忘れて、また飲んでしまうのか…?? そう言えば以前にも、「効き目が増すだろうと思って(自己判断で)倍の量を飲んでいました」という患者さんがおられました(そのときはたしか、鎮痛薬)。あらためて、「いろんなタイプの人がいるものだなあ」と思った次第です。お薬は用法用量を守って、正しくお使いください…!?それでは、また次の連載で。

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「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第252回

「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善Unsplashより使用大うつ病性障害に対する6週間のビデオゲーム介入が、抑うつ気分、訓練意欲、視覚空間(ワーキング)記憶機能の改善につながるかどうかを検討することを目的とした研究を紹介しましょう。選ばれたゲームは、任天堂の「スーパーマリオ オデッセイ」です。いやー、名作ですよね。あのゲームは本当に、色褪せない。RTA(リアルタイムアタック)の動画をよく見ています。まあそんな個人的な話はどうでもよくてですね、このマリオ オデッセイが、うつ病に有効というエビデンスが示されました。Bergmann M, et al. Effects of a video game intervention on symptoms, training motivation, and visuo-spatial memory in depression. Front Psychiatry. 2023 Aug 24;14:1173652.ドイツのボン大学の精神科において、大うつ病性障害(MDD)と診断された18~65歳の入院・通院患者46人を対象に行われた研究です。MDD患者さんを、マリオ オデッセイをプレイする「ビデオゲーム」群(n=14)、コンピュータプログラム「CogPack」を用いて訓練を行う能動的対照群(n=16)、心理療法や薬物療法を含む標準的な臨床治療を受ける通常治療群(n=16)の3群のいずれかにランダムに割り付けました。ちなみに、事前にマリオ オデッセイをプレイしたことがある患者さんは除外されています。いずれのグループも、トレーニングセッションの頻度は週3回、期間は6週間の合計18回で、各セッションは1回45分間でした。45分プレイして、マリオ オデッセイを途中で切られると、それはそれでイラっとしそうですが…。BDI-IIベック抑うつ質問票(BDI-II)で評価すると、マリオ オデッセイをプレイしたMDD患者さんの症状が劇的に改善することが示されました。BDI-IIスコアが「軽度」に該当する患者の割合をみたグラフですが、マリオ オデッセイをプレイした群では、3群の中で唯一統計学的に有意差がついています(図)。図. 各群の抑うつ改善効果(文献より引用)ただし、視空間記憶をテストするBVMT-Rなど、いくつかの試験ではCogPackのほうがよかったりして、一貫してマリオ オデッセイがよいという結論ではありませんでした。どれか1つがよいというよりも、おそらく組み合わせたほうがよいのではないかと考えられます。ゲームって結構バカにされがちですが、これだけの有効性が示されるとなると、そのうちガイドラインにも記載されるんじゃないでしょうか。「ゼルダの伝説」をやっている医師は多いですが、ああいうRPGモノもたぶん有効なんじゃないかと思います。

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第200回 危機に瀕する国内製薬企業の創薬力

10~12%。この数字が何を意味するのかご存じだろうか? 第I相試験に辿り着いた低分子化合物が医薬品として承認取得に至る確率である。ただ、これはあくまで第I相試験にまで至った低分子化合物。製薬企業の研究所では、これ以前に合成された低分子化合物の多くが動物実験を経て脱落し、臨床試験まで辿り着けない。合成段階から第I相試験までの脱落を含めると、製品化の成功確率は0.1%に満たないのが現実である。「製薬の研究開発は博打」と称されるのはこのためだ。このことは頭ではわかっていても深刻に感じ取れる機会は少ない。というのも製薬企業の多くが結果的には継続的に新薬を世に送り出せているからだ。その背後には、各社の飽くなき開発パイプライン獲得の努力がある。この件に関して私が思い出すことがある。2019年、当時の武田薬品工業(以下、武田薬品)の取締役でジャパン ファーマ ビジネス ユニットのプレジデントだった岩崎 真人氏(崎はたつさきが正式表記)にインタビューした時のことだ。コテコテの浪花商人から発した武田薬品は今やグローバル企業化し、当時の日本人取締役は岩崎氏ただ1人(2023年6月に退任し、現在同社取締役に日本人は皆無)。業界関係者からは「武田薬品はもはや外資になった」と揶揄気味に評されることも多かった。ちなみに私個人は、そうした評価は頑迷固陋(がんめいころう)とも言うべき日本人の悪い癖と思っている。当時の武田薬品は、アイルランドのシャイアーを6兆8,000億円もの巨額で買収する乾坤一擲の勝負を行った直後である。この買収で多数の製品と開発品を獲得し、世界トップ10のメガファーマの地位も得たが、買収で獲得した開発品は多くが第II相試験以下の前期開発品で、前述の上市確率から言えば、それほど安泰とは言い難かった。この点に私が言及すると、岩崎氏は次のように語った。「そもそも製薬企業にとって安泰な開発パイプラインは存在しませんよ。『これで大丈夫だろうか?』という不安にさいなまれているのが常。胃が痛くなるような緊張感で、自社の開発パイプラインを眺めています」確かに言われればその通りなのだが、この時は改めてその難しさを認識させられた。とはいえ、やや繰り返しになるが、製薬企業の多くが主力品の特許失効による大幅な売上減、通称「パテントクリフ(特許の壁)」を、タイミングよく次なる製品投入で乗り切っている実態を見ると、外部がその困難さを肌身で感じ取ることは難しい。しかし、先日ある発表を見てやや寒気がした。具体名を出して恐縮だが、住友ファーマ(旧大日本住友製薬)の第3四半期決算である。同社の第3四半期決算の売上高は、前年同期比48.9%減の2,350億2,800万円、コア営業利益は963億8,700万円の赤字、純利益も1,176億9,900万円の赤字。大幅な売上減の最大の要因は、同社の主力品中の主力品とも言うべき抗精神病薬ルラシドン(商品名・ラツーダ)が昨年2月、アメリカで特許失効となり、ジェネリックが参入してきたためである。前期の2022年第3四半期のアメリカでのルラシドンの売上高は1,793億円だったが、2023年第3四半期はなんと51億円。特許失効からわずか10ヵ月で97.2%の売上が消失してしまったのだ。製薬企業にとって、特許失効そのものはある意味で予測可能なリスクである。このため各社とも特許失効に備え、後継主力品候補の臨床試験推進や外部からの獲得に心血を注ぐ。住友ファーマの場合も、もちろんその手は打っていた。実際、昨今の製薬企業の新薬開発のトレンドともなっているがん領域に進出するため、今からさかのぼること12年前の2012年、アメリカのボストン・バイオメディカル社を買収。これにより世界で初めてがん幹細胞を標的とするがん治療薬候補「ナパブカシン」を獲得した。しかし、2021年までにナパブカシンは臨床試験に入ったすべてのがん種で有効性が示せず、開発中止となった。ナパブカシンの開発は2010年代後半にすでに暗雲が漂う状態だったこともあり、同社は2019年にイギリスとスイスに本社を置くバイオベンチャーであるロイバント・サイエンシズと戦略提携締結で合意し、約3,200億円も投じてロイバントの5つの子会社を買収して、複数の第III相試験以降の後期開発品を獲得した。この買収は一定の成果を結び、2020年末からアメリカで過活動膀胱薬のビベグロン(商品名・ジェムテサ)、前立腺がん治療薬のレルゴリクス(商品名・オルゴビクス)、子宮筋腫治療薬のレルゴリクス・エストラジオール・酢酸ノルエチンドロン配合剤(商品名・マイフェンブリー)を次々に上市した。製薬企業の買収としては成功と言って差し支えないだろう。実際、住友ファーマはこの3つを「基幹3製品」と呼び、ルラシドン特許失効後のアメリカでの主力品と位置付けている。そして同社は2023年度の決算予想で、アメリカでの基幹3製品の合計売上高を1,200億円以上と発表したが、第3四半期までの売上実績は500億円に届かない。残り3ヵ月でこの計画を達成するのはかなり困難である。しかも、現在の同社後期開発品は、第III相試験中のものがアメリカと中国で各1件、第II/III相試験中が日本で2件、アメリカで3件、中国で1件の合計8件。このうち6件は大塚製薬と共同で開発する抗精神病薬のulotarontだが、同薬のメイン適応症となるはずだった統合失調症に関して、昨年7月、2つの第III相試験で主要評価項目未達という結果が明らかになった。このように、現在の製薬企業を取り巻く環境は、現実的に各社が選択できる経営努力を尽くしたとしても予想もしない悩ましい結果をもたらすところまで来ているのだ。しかし、メディア界に身を置いて企業を眺めるようになった30年間で得た経験的感は、「一定規模の企業は周囲が思う以上に強く、しぶとい」である。その意味で今回の住友ファーマの件では、「これからどう浮上するのか」に私の目は注がれている。臨床現場では今、製薬企業に関する話題はジェネリック医薬品企業の不祥事に伴う医薬品供給不足のほうが注目されているだろう。しかし、日本人の多くが漠然と思っているであろう「日本の製薬企業は一定の創薬力がある」とのイメージが、もはや蜃気楼になりつつある現実は頭の片隅に留め置いてよいと思うのだ。

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週3個以上の卵が脂肪性肝疾患と高血圧を予防?

 卵の摂取が脂肪性肝疾患(steatotic liver disease)と高血圧症に対する保護的な効果を示し、週3個以上の摂取でそれらの発症リスクがより低くなることを、イタリア・Saverio de BellisのRossella Tatoli氏らが明らかにした。Nutrients誌2024年1月31日号掲載の報告。 卵にはミネラルやビタミンなどの豊富な栄養素が含まれているが、コレステロール含有量も卵黄1個当たり180~225mgと多いため、しばしば生活習慣病の“悪者”扱いされることがある。しかし、これまで卵の摂取と疾患、とくに脂肪性肝疾患のリスクとの関連を調査した研究は乏しく、さらにその結果には一貫性がない。そこで、研究グループは、脂肪性肝疾患や高血圧症の発症リスクに対する卵摂取の影響を調査した。 研究グループは、南イタリアの胆石症に関する多施設コホート研究であるMICOLプロジェクト(2017年開始)から60歳以上の908人を抽出して解析した。脂肪性肝疾患と高血圧症の有無によって、(1)脂肪性肝疾患なし/高血圧症なし、(2)脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり、(3)脂肪性肝疾患あり/高血圧症なし、(4)脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありの4つのグループに分類し、卵の摂取量との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。●脂肪性肝疾患なし/高血圧なしは236例(平均年齢61.3歳、男性49.2%)、脂肪性肝疾患なし/高血圧症ありは176例(70.5歳、50.0%)、脂肪性肝疾患あり/高血圧症なしは209例(61.7歳、60.3%)、脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありは287例(69.2歳、57.1%)であった。●1日当たりおよび1週間当たりの卵摂取量は、脂肪性肝疾患なし/高血圧なしのグループで最も多かった。●1週間当たり3個以上の卵の摂取は、脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり、脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありとなるリスクを有意に低減させた。リスク比(95%信頼区間)とp値は以下のとおり。・脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり:0.21(0.07~0.62)、0.005・脂肪性肝疾患あり/高血圧症なし:0.73(0.36~1.47)、0.38・脂肪性肝疾患あり/高血圧症あり:0.34(0.15~0.73)、0.006●この関連は、年齢、性別、1日の摂取カロリーで調整した後も同様であった。

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高齢になると糖尿病有病率が高くなる理由/順天堂大学

 加齢に伴うインスリン感受性と分泌の低下により、高齢者では糖尿病の有病率が高いことが知られている。一方で、インスリン感受性と分泌の両方が65歳以降も低下し続けるかどうかは、まだ解明されていなかった。この疑問について、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の内藤 仁嗣氏らの研究グループは、65歳以降の糖代謝に対する加齢の影響を調査し、その決定因子を明らかにする研究を行った。その結果、高齢者では加齢に伴い、インスリン抵抗性が増加、膵β細胞機能が低下していることが明らかになった。Journal of the Endocrine Society誌オンライン版2023年12月20日号に掲載。内臓脂肪の蓄積などが関連する高齢者の糖尿病発症 本研究では、文京区在住高齢者のコホート研究“Bunkyo Health Study”に参加した65~84歳の糖尿病既往がなく、糖尿病の診断に用いられる検査である75g経口糖負荷検査(OGTT)のデータが揃っている1,438例を対象とした。 対象者全員に二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による体組成検査、MRIによる内臓・皮下脂肪面積の測定、採血・採尿検査、75gOGTT、生活習慣に関連する各種アンケートを行い、5歳ごとに4群(65~69歳、70~74歳、75~79歳、80~84歳)に分け、各種パラメータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は73.0±5.4歳、BMIは22.7±3.0kg/m2だった。・新たに糖尿病と診断された人の有病率は年齢とともに増加した。・食後初期のインスリン分泌を示す指標であるInsulinogenic indexや、血糖値に対するインスリン分泌指標である75gOGTT中のインスリン曲線下面積/血糖曲線下面積(AUC)は、各年齢群間で同等だった。・インスリン感受性の指標(Matsuda index)、膵β細胞機能の指標(Disposition index)は加齢とともに有意に低くなった。・加齢に伴う脂肪蓄積、とくに内臓脂肪面積(VFA)の増加、遊離脂肪酸(FFA)濃度の上昇が観察された。・重回帰解析により、Matsuda indexおよびDisposition indexとVFAおよびFFAとの強い相関が明らかになった。 研究グループでは、この結果から「高齢者において耐糖能が加齢とともに低下するのは、加齢によるインスリン抵抗性の増加および膵β細胞の機能低下によるもので、それらは内臓脂肪蓄積やFFA値上昇と関連する」としている。

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テポチニブ、日本人METexon14スキッピング肺がんのリアルワールドデータ/日本臨床腫瘍学会

 テポチニブによる日本人METexon14スキッピング非小細胞肺がん(NSCLC)の最新のリアルワールドデータが発表された。 神奈川県立がんセンターの加藤 晃史氏は第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で、テポチニブによる日本人METexon14スキッピングNSCLCの市販後調査の更新結果を発表した。対象は2020年6月〜2021年3月に登録されたMETexon14スキッピングNSCLC158例で、安全性・有効性評価対象は147例であった。観察期間はテポチニブの投与開始から52週である。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は72歳、PS2以上が2割以上、2次治療以降が半数以上を占めた。・全Gradeの有害事象(AE)発現率は72.1%、Grade≧3のAEは18.4%であった・頻度の高いAEは体液貯留(全Gradeで46.9%)、腎機能障害(同36.7%)、肝機能障害(同13.6%)で、間質性肺疾患は6.8%に発現した。・全奏効率(ORR)は51.0%、病勢制御率は77.6%であった。・ORRはECOG PSおよび前治療の有無にかかわらず一貫しており、PS2~4では45.2%、3ライン治療では46.2%、4ライン治療以降では51.5%であった。 発表者の加藤氏は、「この市販後調査結果は、日本人のMETexon14スキッピングNSCLCにおけるテポチニブの安全性と有効性を裏付けるものだ」としている。

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転移を有する腎細胞がん、ctDNAと予後の関連が日本人大規模データで示される(MONSTAR SCREEN)/日本臨床腫瘍学会

 転移を有する腎細胞がん(mRCC)における血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床的有用性が指摘されているが、大規模なデータは不足している。産学連携全国がんゲノムスクリーニングコンソーシアム(SCRUM-Japan)によるMONSTAR-SCREEN1の泌尿器がんグループから、大阪大学の加藤 大悟氏がmRCCにおけるctDNA解析結果を第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 2019年4月~2021年9月、mRCC患者124例を対象に治療前後のctDNA解析(商品名:FoundationOne Liquid CDx)を実施した。34例については組織検体を用いたゲノムプロファイリング(商品名:FoundationOne CDx)も実施された。 主な結果は以下のとおり。・患者特性は年齢中央値が66(21~83)歳、男性が76.0%、淡明細胞型が91.0%、IMDCリスク分類はIntermediateが61.2%、Poorが21.5%であった。・1次治療の症例が74.4%を占め、うち92.7%が免疫チェックポイント阻害薬併用療法を受けていた。・組織検体と血漿検体の検査結果の一致率は16.8%で、18%という過去の報告1)と同様であった。・治療前ctDNAにおけるtumor fraction(TF)中央値は1.15%(四分位範囲:0.62~2.85)であり、治療前TF>1.2%の症例と比較し治療前TF<1.2%の症例で有意に予後が良好であった(全生存期間中央値:28.3ヵ月vs.NR、p=0.0143)。・84.5%で何らかの病的変異が検出され、1症例当たりの変異数中央値は3であった。・治療前ctDNAにおけるBAP1(p=0.0003)およびTP53(p=0.025)の変異は予後不良と有意に関連していた。・治療前後のctDNAの一致率は54.6%で、TP53、VHLなどで治療後に新たに変異が発現あるいは発現頻度が増加した。・病勢進行までの期間について、新規遺伝子変異が認められた症例ではそれ以外の症例と比較して有意に短く(中央値:14.1週vs.44.8週、p=0.046)、新規遺伝子変異数が多いほど短かった(p=0.032)。・治療後の新規遺伝子変異のうち7つについては、FDA承認済の薬剤の対象となりうることが明らかとなった。 加藤氏は、「本データはアジア人mRCC患者における最初の大規模なctDNAを用いた遺伝子プロファイリングデータであり、臨床予後との関連が示された。今後はリファレンスデータとして活用されることが期待され、現在はアジア人とヨーロッパ人の間のctDNAにおける特徴の違いの評価にも取り組んでいる」とした。

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再発性多発性硬化症、抗CD40L抗体frexalimabが有望/NEJM

 再発性多発性硬化症患者において、抗CD40Lヒト化モノクローナル抗体のfrexalimabはプラセボと比較し、12週時におけるT1強調MRIでの新規ガドリニウム(Gd)増強病変数を減少させたことが示された。フランス・リール大学のPatrick Vermersch氏らが、10ヵ国38施設で実施した第II相臨床試験の結果を報告した。CD40-CD40L共刺激経路は、適応免疫応答と自然免疫応答を制御し多発性硬化症の病態に関与する。frexalimabは第2世代の抗CD40Lモノクローナル抗体で、抗原提示細胞表面に発現しているCD40へのCD40Lの結合を阻害することによりCD40-CD40Lシグナル伝達経路を阻害し、T細胞を介した免疫応答を抑制する。著者は、「多発性硬化症患者におけるfrexalimabの長期的な有効性と安全性を明らかにするため、より大規模で長期間の試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。frexalimab 1,200mg静脈内投与と300mg皮下投与を、プラセボと比較 研究グループは再発性多発性硬化症患者を、frexalimab 1,200mgを4週間隔で静脈内投与する群(負荷用量1,800mg)、frexalimab 300mgを2週間隔で皮下投与する群(負荷用量600mg)、またはそれぞれのプラセボを投与する群に4対4対1対1で割り付け、二重盲検下で12週間投与した。投与経路は盲検化されなかった。12週後、全例が非盲検下でfrexalimabを投与した(プラセボ群の患者はそれぞれ対応するfrexalimabに切り替えた)。 主要エンドポイントは、8週時と比較した12週時におけるT1強調MRIでの新規Gd増強病変数。副次エンドポイントは、8週時と比較した12週時における新規または拡大したT2強調病変数、12週時のGd増強病変総数、および安全性であった。8週時と比較した12週時の新規Gd増強病変数はfrexalimab群で減少 2021年6月7日~2022年9月21日の間に、166例がスクリーニングを受け、129例が無作為に割り付けられ、うち125例(97%)が12週間の二重盲検期間を終了した。患者背景は、平均年齢36.6歳、66%が女性、30%がベースラインでGd増強病変を有していた。 12週時における新規Gd増強病変数の補正後平均値は、プラセボ群1.4(95%信頼区間[CI]:0.6~3.0)に対し、frexalimab 1,200mg静脈内投与群0.2(95%CI:0.1~0.4)、frexalimab 300mg皮下投与群0.3(95%CI:0.1~0.6)であり、プラセボ群に対する率比は1,200mg静脈内投与群0.11(95%CI:0.03~0.38)、300mg皮下投与群0.21(95%CI:0.08~0.56)であった。副次エンドポイントの結果は、主要エンドポイントの結果とおおむね同じであった。 12週間の二重盲検期間における有害事象の発現率は、frexalimab 1,200mg静脈内投与群29%(15/52例)、frexalimab 300mg皮下投与群45%(23/51例)、プラセボ群31%(8/26例)で、最も多くみられた有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は新型コロナウイルス感染症および頭痛であった。

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T-DXd中止後の乳がん治療、最も多いレジメンは?(EN-SEMBLE)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXd中止後に実施した治療レジメンの分布を調査したEN-SEMBLE試験の中間解析の結果、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことを、愛知県がんセンターの能澤 一樹氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 現在、T-DXdの後治療に関しては見解が割れており、間質性肺疾患などの有害事象や病勢進行によってT-DXdを中止した後の最適な治療の決定は喫緊の課題である。そこで、研究グループは、T-DXd中止後に使用される治療レジメンの分布とその有効性・安全性を検討するために多施設コホート研究を行った。今回は、中間解析としてT-DXd中止後の治療レジメンの分布に関するデータが発表された(データカットオフ:2023年5月31日)。 対象は、特定使用成績調査に登録し、切除不能または転移を有するHER2陽性の乳がんに対して2020年5月25日~2021年11月30日にT-DXdの投与を開始したものの、2023年5月31日までに中止し、後治療を開始した患者であった。主要評価項目は、T-DXd中止後の治療レジメンの分布、無増悪生存期間、治療成功期間、後治療に切り替えるまでの期間、全生存期間、全奏効率などで、T-DXdを中止した理由別に評価される予定。 主な結果は以下のとおり。・解析には664例が組み込まれた。65歳未満は62.5%、年齢中央値は60.0歳(範囲 30~89歳)、女性が99.5%であった。・T-DXdの後治療で多かったのは、(1)トラスツズマブ+ペルツズマブ(204例[30.7%])、(2)トラスツズマブ(157例[23.6%])、(3)ラパチニブ(104例[15.7%])を含むレジメンであった。・(1)のトラスツズマブ+ペルツズマブを含むレジメン(30.7%)にさらに併用された治療は、化学療法が23.0%(エリブリン11.6%、ビノレルビン2.7%、ドセタキセル2.0%、パクリタキセル2.0%、カペシタビン1.5%、S-1 1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、レトロゾール0.9%、アナストロゾール0.5%など)で、併用薬なしは4.7%であった。・(2)のトラスツズマブを含むレジメン(23.6%)にさらに併用された治療は、化学療法が16.7%(エリブリン5.4%、ビノレルビン3.8%、S-1 2.0%、ゲムシタビン1.5%、カペシタビン1.4%、パクリタキセル1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、アナストロゾール0.8%、タモキシフェン0.5%など)で、併用薬なしは4.2%であった。・(3)のラパチニブを含むレジメン(15.7%)にさらに併用された薬剤は、カペシタビン13.6%、レトロゾール0.6%、アナストロゾール0.5%などで、併用薬なしは0.3%であった。・エリブリンが投与された130例(19.6%)のうち、併用が多かったのはHER2抗体薬17.3%(トラスツズマブ+ペルツズマブ11.6%、トラスツズマブ5.4%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+レトロゾール0.2%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+その他の薬剤0.2%)、ドセタキセル0.2%で、併用薬なしは2.1%であった。・ベバシズマブが投与された53例(8.0%)のうち、パクリタキセルが併用されたのは7.8%、nab-パクリタキセルが併用されたのは0.2%であった。・CDK4/6阻害薬が投与された19例(2.9%)のうち、アベマシクリブとの併用が多かったのはフルベストラント1.2%、アナストロゾール0.5%、エキセメスタン0.2%、レトロゾール0.5%、LH-RHアゴニスト0.2%、パクリタキセル0.2%であった。パルボシクリブとの併用が多かったのはレトロゾール0.5%、フルベストラント0.5%であった。・化学療法の有無別にみると、化学療法を含む後治療は484例(72.9%)であった。化学療法との併用で多かったのは、抗HER2療法53.3%、化学療法のみ9.8%、分子標的薬(抗HER2療法以外)8.1%、抗HER2療法+内分泌療法0.9%、抗HER2療法+その他の薬剤0.3%、抗HER2療法+分子標的薬(抗HER2療法以外)0.3%、免疫チェックポイント阻害薬0.2%であった。・化学療法を含まない後治療は180例(27.1%)であった。抗HER2療法のみが11.1%で最も多かったが、抗HER2療法+内分泌療法6.8%、内分泌療法のみ4.2%、分子標的薬(抗HER2療法以外)+内分泌療法3.0%、分子標的薬(抗HER2療法以外)のみ0.5%、抗HER2療法+分子標的治療(抗HER2療法以外)0.2%などもあった。 これらの結果より、能澤氏は「T-DXd中止後の乳がん治療において、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことが明らかになった。最終的な分析として、後治療のレジメンの有効性と安全性を調査する予定である。EN-SEMBLE試験の結果は、アンメット・メディカル・ニーズであるT-DXdの後治療の最適化に関する知見を提供できると考える」とまとめた。

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関節リウマチ高リスク者へのアバタセプト、発症を抑制/Lancet

 アバタセプトによる12ヵ月間のT細胞共刺激抑制は、関節リウマチへの進行を抑制し、投与終了後も有効性を持続し、安全性プロファイルも良好であることが示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのAndrew P. Cope氏らが、英国の28施設およびオランダの3施設で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第IIb相試験「APIPPRA試験」の結果を報告した。抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)陽性、リウマチ因子(RF)陽性および炎症性関節痛などの症状を有する人は、関節リウマチを発症するリスクが高いとされている。著者は、「関節リウマチの発症リスクを有する段階での治療介入は可能である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年2月13日号掲載の報告。アバタセプト12ヵ月投与・12ヵ月無投与で関節リウマチへの進行をプラセボと比較 研究グループは、炎症性関節痛を有しACPAおよびRF陽性、またはACPA高値(正常上限の3倍以上)の18歳以上の患者を登録した。炎症性関節炎と診断されたことがある患者、疾患修飾性抗リウマチ薬またはステロイドによる治療歴がある患者、臨床的に明らかな炎症性関節炎を有する患者は除外した。 適格患者を、性別、喫煙状況、国を層別因子として、アバタセプトを週1回125mg皮下投与する群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間投与した後、さらに12ヵ月間追跡調査した。 主要アウトカムは、ACR/EULAR 2010分類基準による3関節以上の臨床的滑膜炎または関節リウマチ発症のいずれか早いほうまでの期間。副次アウトカムは疾患活動性などであった。主要アウトカムのイベント発生率は、アバタセプト群6%、プラセボ群29% 2014年12月22日~2019年1月14日に280例が登録され、このうち213例がアバタセプト群(110例)およびプラセボ群(103例)に無作為に割り付けられた。追跡調査は2021年1月13日に完了した。 主要アウトカムのイベントは、アバタセプト群で110例中7例(6%)、プラセボ群で103例中30例(29%)に認められた。Kaplan-Meier法による関節炎のない患者の推定割合は、12ヵ月時点でアバタセプト群92.8%(SE 2.6)、プラセボ群69.2%(SE 4.7)、24ヵ月時点でそれぞれ70.4%(SE 4.8)、58.5%(SE 5.4)であり、有意な群間差が認められた(log-rank検定のp=0.044)。境界内平均生存期間(RMST)の群間差は、12ヵ月時点で53日(95%信頼区間[CI]:28~78、p<0.0001)、24ヵ月時点で99日(95%CI:38~161、p=0.0016)であり、アバタセプト群が良好であった。 投与期間中はプラセボ群と比較してアバタセプト群で、疼痛スコア、機能的ウェルビーイングおよびQOLが改善し、超音波検査による潜在性滑膜炎のスコアが低かったが、この効果は24ヵ月時点では持続していなかった。 重篤な有害事象はアバタセプト群で7例、プラセボ群で11例に認められ、治療と関連なしと判定された死亡が各群1例報告された。

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うつ病発症リスクと犬の散歩のタイミング~女性看護師調査

 朝の散歩を行うことは、体内時計を調節するうえで重要であり、夜型のクロノタイプにとって有益であると考えられる。オーストリア・ウィーン医科大学のMagdalena Zebrowska氏らは、犬の飼育や犬との朝の散歩は、うつ病リスクを低下させる可能性があるとの仮説を立て、女性看護師を対象に犬の飼育、朝の散歩とそのタイミングや期間とうつ病リスクとの関連を調査し、クロノタイプによる効果の違いを検討した。PLOS ONE誌2024年1月31日号の報告。 Nurses' Health Study 2(NHS2)に参加した53~72歳のうつ病でない米国女性2万6,169人を対象に、2017~19年にプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。年齢および多変量で調整したロジスティック回帰分析を用いて、犬の飼育、犬との朝の散歩、時間、タイミングに応じて、うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、犬の飼育、犬との朝の散歩、持続時間、タイミングとうつ病リスクとの関連は認められなかった。【犬の飼育】vs.犬を飼っていない、OR:1.12(95%CI:0.91~1.37)【犬との朝の散歩】vs.行っていない、OR:0.87(95%CI:0.64~1.18)【散歩の持続時間】30分超vs.15分以下、OR:0.68(95%CI:0.35~1.29)【散歩のタイミング】午前9時以降vs.午前7時前、OR:1.06(95%CI:0.54~2.05)・犬の飼い主のクロノタイプが、これらの関連性を修正することが示唆された。・ペットを飼っていない同じクロノタイプの女性と比較すると、夜型クロノタイプの犬の飼い主では、うつ病リスクの有意な増加が認められたが、朝型クロノタイプの場合では認められなかった。【夜型クロノタイプの犬の飼い主】OR:1.60(95%CI:1.12~2.29)【朝型クロノタイプの犬の飼い主】OR:0.94(95%CI:0.71~1.23)・さらに、夜型クロノタイプは、朝型クロノタイプよりも、朝自分で犬の散歩をすることで、より多くのベネフィットが得られる可能性が示唆された(OR:0.75、95%CI:0.46~1.23、Pintx=0.064)。 著者らは「犬の飼育とうつ病リスクは、全体として関連が認められなかったものの、夜型クロノタイプの人では、うつ病リスクの増加がみられた。これには、朝の犬の散歩が、夜型クロノタイプの人のうつ病リスクを低下させるのに寄与する可能性を示唆しており、今後のさらなる研究により、この関連がより明らかになることが望まれる」としている。

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CRT-DはNYHA分類II/III度心不全の全死亡を14年後まで減少させる(解説:原田和昌氏)

 心臓再同期療法(CRT)は、QRS幅が広いHFrEF患者にベネフィットがある。それら患者の大半が植込み型除細動器(ICD)適応患者でもあることから、ICD+CRTにより死亡、心不全入院が低下するかを、2010年に多施設共同二重盲検無作為化試験のRAFT試験は調べた。ICDにCRTを追加すると平均追跡期間40±20ヵ月時点で、ICD単独よりも死亡または心不全によるあらゆる入院の割合が減少した。試験に参加した施設のうち、被験者数が多かった8施設の1,050例を長期追跡し、ICD+CRTの有効性が持続するかを評価した結果が、カナダ・アルバータ大学のSapp氏らによりRAFT長期アウトカム試験として報告された。 主要アウトカムは全死因死亡で、副次アウトカムは全死因死亡、心移植、補助人工心臓の植え込みの複合であった。LVEF≦30%、内因性QRS幅120msec以上(またはペーシングQRS幅200msec以上)のNYHA II/III度の心不全患者は追跡期間中央値約14年時点においても、ICD+CRTにより死亡までの期間が延長することが示された。NYHA III度心不全患者では至適薬物療法と比較したCRTの有効性が示されており、RAFT試験は途中でNYHA III度の組み入れが中止されたため、長期アウトカム試験におけるNYHA II/III度の割合は76%対24%であった。死亡はCRT-D群71.2%、ICD群76.4%に発生したが、死亡までの期間はCRT-D群がICD群より長かった(加速係数:0.80、95%CI:0.69~0.92、p=0.002)。 本試験の対象には心房細動が16%、左脚ブロック以外が約30%、内因性QRS幅120msec以上が含まれていた。サブ解析では心房細動以外、左脚ブロックと右脚ブロック、QRS幅150msec以上の症例にCRT-Dが有効である傾向が見られた。CRTの心機能への利益がより広い適応患者の生命予後改善につながったと考察しているが、各種ガイドラインでもNYHA III度のLVEF≦35%、NYHA II度のLVEF≦30%、QRS幅120~149msの非左脚ブロックに対するCRTの推奨はIIbとなっており、本試験がその推奨を変えるものではない。それにしても現在のARNIやSGLT2阻害薬を含む至適薬物治療に上乗せして、CRT-Dが死亡率をどのくらい低下できるかは興味深い問題である。

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息子は選べんが……【Dr. 中島の 新・徒然草】(518)

五百十八の段 息子は選べんが……納税の季節になりました。毎年ながら、私は確定申告の書類と格闘しています。読者の皆さまはいかがでしょうか?さて、近ごろ私が熱中して読んでいるのが、漫画の『インベスターZ』。マジンガーZやフェアレディZみたいな名前ですね。実は「インベスターZ」のZには由来があります。中学に入学した主人公の財前 孝史くんが、投資部でつけられたニックネームが「インベスターZ」。このZは財前の頭文字に由来しているのです。さて、この本の何が面白いのか?漫画を読むこと自体が勉強になります。たとえば物語の中で紹介されていた格言として、大阪船場の商人の「息子は選べんが、婿は選べる」というものがあるのだそうです。私はこの言葉を見たときに、思わず吹き出してしまいました。というのは、遠い昔のことを思い出したからです。時は平成の最初の頃。裁判所で倒れて病院に担ぎ込まれてきたのが弁護士さん。瀕死の状態ではありましたが、治療の甲斐があってか、何とか復活しました。そしてすっかり回復した後で、担当医の私にこう言ったのです。「生死の境をさまよっているときに、良いことを思いついたんですよ。息子は司法試験に受かりそうにありませんが、それよりも娘に良い婿を見つけて、私の法律事務所を継いでもらえればいいんだ、と」司法修習生とか若手弁護士の中から娘の結婚相手を見つければいい、という逆転の発想ですね。この患者さんとはその後ずっと年賀状のやりとりをしていたんですけれども、何年か前にお亡くなりになりました。息子さんや娘さんがどうしておられるのか、あるいは法律事務所がどうなったのか、残念ながら私はまったくフォローできていません。それはともかく、大阪の商人と同じで、息子さんを難しい司法試験に受からせようとするよりは、すでに受かった人間の中から娘さんに相応しいお相手を見つけて、自分の後を継いでもらうというほうが現実的ではあります。このことは確かに一理あるのですが、令和になった今なら、さらに応用が可能です。娘さんに出来の良いお婿さんを見つけるのもいいけども、息子さんに優秀なお嫁さんを見つけてもいいわけです。今は女性の弁護士さんも多いわけですから「息子は選べんが、嫁は選べる」とも言えますね。考えてみれば、われわれの世界でも同じかもしれません。読者の中には、ご自分の病院やクリニックを子供が継いでくれたらなあ、と思っている方も大勢おられることでしょう。ひょっとしたら、大阪船場の商人の格言が役に立つかもしれません。ということで、何かと勉強になる『インベスターZ』。ほかにも良い格言がいろいろあります。興味を持った方はぜひとも読んでみてください。最後に1句納税の 季節に悩む 婿選びChatGPTが船場商人の「息子は選べんが、婿は選べる」をイラストにすると、こうなりました。

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何はさておき記述統計 その2【「実践的」臨床研究入門】第41回

仮想データ・セットを用いて発生率を計算してみる今回は早速、仮想データ・セットを用いて、われわれのRQのプライマリアウトカムである末期腎不全の発生率を実際に計算してみましょう。はじめに、今回提供する仮想データ・セットの内容について説明します(仮想データ・セット[エクセルファイル]は下記よりダウンロード可能です)。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。A列:IDB列:Treat(1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)C列:Censor(1;アウトカム発生、0;打ち切り)D列:Year(at riskな観察期間)Treatという変数を作り、推定たんぱく質摂取量 0.5g/kg標準体重/日未満というE(曝露要因)の定義を満たすか否かで(連載第40回参照)、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群の2群に分類しています。変数Censorには、アウトカム発生を1、打ち切りを0として観察期間内でのアウトカム発生の有無の情報が入力してあります(連載第37回、第40回参照)。人年法による発生率の計算式は下記のとおりでした(連載第37回、第40回参照)。発生率=一定の観察期間内のアウトカム発生数÷at risk集団の観察期間の合計まず分子であるアウトカム発生数を、解析対象集団全体および、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群、それぞれで計算します。Excel関数のSUMおよびSUMIFを使用します。合計を算出するSUM(合計範囲)を用いた以下の式で、解析対象集団全体のアウトカム発生数が計算されます。=SUM(C:C)また、検索範囲におけるある条件を満たす合計を算出するSUMIF(検索範囲、検索条件、合計範囲)を用いた以下の式で、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群、それぞれの群でのアウトカム発生数が計算できます。=SUMIF(B:B、1、C:C)=SUMIF(B:B、0、C:C)計算の結果、アウトカム発生数はそれぞれ以下のとおりになります。解析対象集団全体 185イベント低たんぱく食厳格遵守群 70イベント低たんぱく食非厳格遵守群 115イベント次に、分母となるat risk集団の観察期間の合計を解析対象集団全体および、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群でそれぞれ計算しましょう。同様にSUM、SUMIF関数を用います。=SUM(D:D)=SUMIF(B:B、1、D:D)=SUMIF(B:B、0、D:D)at risk集団の観察期間の合計(小数点第1位表示)はそれぞれ以下のとおりになったでしょうか。解析対象集団全体 2476.4人年低たんぱく食厳格遵守群 776.0人年低たんぱく食非厳格遵守群 1700.4人年それでは上述した発生率の式に1,000を掛けて、1,000人年当たりの発生率をそれぞれの集団で求めてみましょう。解析対象集団全体 74.7イベント/1,000人年低たんぱく食厳格遵守群 90.2イベント/1,000人年低たんぱく食非厳格遵守群 67.6イベント/1,000人年次回からは生存時間曲線の比較について、筆者らが出版した英文臨床研究論文の実例や、仮想データ・セットを用いた実際の統計解析方法を解説します。

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