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第204回 乗り物酔いの原因と有望な治療薬候補

乗り物酔いの原因と有望な治療薬候補車や電車での旅行者から果ては宇宙飛行士まで多くの人が乗り物酔いを多かれ少なかれ経験します。乗り物酔いは動きに身を委ねているときに生じる不快な生理的不調であり、顔色が悪くなる、冷や汗やあくびが出る、悪心や嘔吐、めまい、食欲低下、眠気、悪くすると重度の痛みさえ引き起こします。乗り物酔いは人に限ったものではなく、イヌやマウスなどの哺乳類やさらには魚でさえ被りうることが示されており、進化の歴史のなかで脈々と受け継がれてきたようです。移動を反映する情報は内耳前庭から前庭神経核(VN)と呼ばれる脳領域に伝達されます。VNの神経の活性化が乗り物酔い様の状態をもたらすことがラットやマウスの実験で示されています。また、VNの働きに影響する病気は乗り物酔いの症状とかぶるめまいや悪心・嘔吐などの自律神経不調と関連することが知られており、VNの神経が乗り物酔いに一枚かんでいることはかなり裏付けられています。しかしVNがどういう仕組みで乗り物酔いを引き起こすのかはこれまでわかっていませんでした。そこでスペインのバルセロナ自治大学と米国のワシントン大学のチームは、マウスをぐるぐる回したときのVNを解析してどの神経が乗り物酔いに寄与しているかを調べ、グルタミン酸輸送体VGLUT2を発現する神経(VGLUT2VN神経)が乗り物酔い症状を引き起こすことが突き止められました1,2)。マウスのVGLUT2VN神経を阻害したところ、ぐるぐる回されているときの乗り物酔い症状(歩行が遅くなる、食欲減退、体温低下)を予防または緩和できました。逆にVGLUT2VN神経を光で活性化したら回されているときと同様の乗り物酔い様症状が生じました。研究はさらに進み、VGLUT2VN神経の一派が発現するペプチドがどうやら乗り物酔い症状を誘発することが判明します。そのペプチドはコレシストキニン(CCK)と呼ばれ、VNのCCK発現神経は不快感の発生に携わる脳領域の傍小脳脚核(PBN)へと通じています。CCK発現神経からの入力でPBNのカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)発現神経が活性化することが乗り物酔い症状を引き起こすらしく、CCKが結合するCCK-A受容体の遮断薬であるdevazepideはぐるぐる回されたマウスのPBNのCGRP発現神経活性化を減らし、乗り物酔い症状を抑制しました。乗り物酔いの治療の定番であるジメンヒドリナートなどの抗ヒスタミン薬は眠気を誘発する恐れがあります。しかしdevazepideのようなCCK発現神経狙いの薬はその心配がなさそうであり2,3)、危険を伴う機械を操作する患者も安心して使えるかもしれません。devazepideの臨床試験成績の査読論文はあいにく報告されていないようですが4)、片頭痛を治療する抗CGRP薬は経口薬も含めていくつかすでに承認されています。有望なことに抗CGRP薬(olcegepant)がマウスの乗り物酔い指標を抑制することが最近の研究で示されており、その用途はさらに検討する価値があるようです5)。参考1)Machuca-Marquez P, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2023;120:e2304933120.2)Neurons responsible for motion sickness identified / Autonomous University of Barcelona3)The Culprits Behind Motion Sickness / TheScientist4)ScienceDirect:Devazepide5)Rahman SM, et al. Cephalalgia. 2024;44:3331024231223971.

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ブレクスピプラゾールvs.アリピプラゾール、日本人のうつ病に対する有効性・安全性に差は?

 抗うつ薬治療に対し効果不十分な日本人のうつ病患者における、ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性、受容性、忍容性、安全性プロファイルの違いを検討するため、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、全体としてブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、同程度の有効性が認められ、良好なリスクベネフィットバランスを有していることが確認された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年1月14日号の報告。ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールとの間に有意な差は認められない ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性などの違いを検討するために、変量効果モデルを用いたシステマティックレビュー、および頻度主義ネットワークメタ解析を行った。主要アウトカムは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアとした。その他のアウトカムには、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア、社会機能評価尺度(SFS)、非治療反応率、非寛解率、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、1つ以上の有害事象発現、重篤な有害事象、アカシジア、振戦、体重増加を含めた。 ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性などの違いを検討した主な結果は以下のとおり。・検索の結果、3件の二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が特定された。・内訳は、ブレクスピプラゾールの研究(ブレクスピプラゾール1mg/日および2mg/日)1件、アリピプラゾールの研究(3mg/日および日本承認用量内のフレキシブルドーズ)2件であった(1,736例)。・ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、プラセボと比較し、両剤ともに有効性が認められた。・ブレクスピプラゾールは、プラセボと比較し、有害事象による治療中止が多かったが、アリピプラゾールでは認められなかった。・アリピプラゾールは、プラセボと比較し、1つ以上の有害事象発現が多かったが、ブレクスピプラゾールでは認められなかった。・ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、プラセボと比較し、アカシジアと体重増加リスクが高かった。・いずれのアウトカムにおいても、ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールとの間に、有意な差は認められなかった。・ブレクスピプラゾール1mg/日は、有効性が良好であったが、体重増加リスクが認められた。・ブレクスピプラゾール2mg/日は、有効性は良好であったが、有害事象による治療中止、アカシジア、体重増加リスクが認められた。・ブレクスピプラゾール2mg/日におけるアカシジアのリスクは、初回用量0.5mg/日で減少が認められた。

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ブロッコリーが慢性炎症と死亡を低減?

 わが国において、2026年からブロッコリーが農林水産省の指定野菜(重要な野菜として位置付けているもの)に追加されることになった。そのブロッコリーが、全身の慢性炎症と死亡率の低下に関連していたことが、米国・サウスフロリダ大学のNicholas W. Carris氏らによって明らかになった。Journal of Medicinal Food誌オンライン版2024年2月14日号掲載の報告。 全身性の異常な炎症が続くことで、心血管系やがんなどのさまざまな疾患のリスクが上昇することが知られている。食事習慣の中には、炎症に関連するものもあれば、炎症を抑えて健康を改善するものもある。そこで研究グループは、慢性炎症と死亡率に関連する食品を特定するため、前向きコホート研究を実施した。 研究には、アテローム性動脈硬化に関する多民族研究(MESA)のデータを用いた。評価した食品は、西洋で入手しやすい植物性食品3種類(アボカド、ブロッコリー、青菜[greens])と動物性食品3種類(ハム、ソーセージ、卵)に属するカテゴリーが選ばれた。評価した炎症マーカーは、IL-6、フィブリノゲン、CRP、D-ダイマー、IL-2、MMP-3、TNF-α、酸化LDL、血中総ホモシステインであった。主要アウトカムは、多変量解析における食品および炎症マーカーと全死亡率との関連であった。 主な結果は以下のとおり。・酸化LDLを除くすべての炎症マーカーが死亡率と関連していた。その関連はIL-6とD-ダイマーで最も大きかった。・単変量解析では、ブロッコリーのカテゴリー(ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、芽キャベツ、ザワークラウト、キムチ)の摂取が最も一貫して炎症と死亡率の低下と関連していた。・IL-6とD-ダイマーを使用した多変量解析では、ブロッコリーを摂取していない場合と比較して、ブロッコリーを摂取している場合はその摂取量の多寡にかかわらず死亡リスクの低下と関連していた。 これらの結果より、研究グループは「これらの食品が慢性炎症に対する食事療法としての可能性があるかどうかをランダム化比較試験で検証するべきである」とまとめた。

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局所進行直腸がん術前治療におけるctDNA活用に期待/日本臨床腫瘍学会

 局所進行直腸がんの術前治療の決定において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)解析の有用性が示唆された。 局所進行直腸がんでは手術後の再発が問題だったが、直腸間膜全切除(TME)手術や術前化学放射線療法 (CRT)によって局所再発のコントロールが実現した。近年では術前化学療法 (NAC)や、CRTに化学療法を追加するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、遠隔再発の抑制が報告されている。一方、すべての患者にTNTを行うべきか明確な基準はなく、一部の患者では過剰治療も懸念されている。 そのような中、術後再発予測因子としてctDNAの役割が期待されている。大阪大学の浜部 敦史氏らは、術前治療後ctDNAの状況が局所進行直腸がんの再発に影響するかを検討したCIRCULATE-Japan GALAXY trialの結果を、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 GALAXY trialには、術前治療(CRTまたはNAC)を実施したStageII~IIIの直腸腺がん患者が登録された。登録患者には診断時に全エクソームシークエンスを行い、 ベースライン、術前治療終了後、手術後にctDNA検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・2021年10月~2023年9月に200例が登録され、191例が解析対象となった。・術前治療の内容はCRT89例(46.6%)、NAC102例(53.4%)であった。・ベースラインctDNA陽性147例中、69例で術前治療後にctDNAが陰性化した (陰性化率 47%)。・術前治療別の陰性化率はCRT57%(40/70例)、NAC38%(29/77例)で、CRTで高い傾向だった。・術前治療後のctDNA陽性は、再発予測因子とされる手術後(4週後)のctDNA陽性と相関していた。・無病生存期間 (DFS)は、術前治療後ctDNA陽性症例に比べ陰性例で有意に良好であった (ハザード比:推定不能、Log-rank検定 p=0.0024) 今回の知見から、ctDNAが局所進行直腸がんにおける個別化術前治療のガイドになるのではないか、と浜部氏は期待感を示した。

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進行固形がんのリキッドバイオプシーにおける偽陽性/日本臨床腫瘍学会

 血漿検体を用いて遺伝子のシークエンス解析を行うリキッドバイオプシーはがん治療で広く用いられている。血漿中にはがん由来のDNAと共に血液由来のDNAも存在するが、通常は結果に影響しない。しかし、加齢などにより、遺伝子異常を持った血液細胞が増殖するクローン性造血(CH)が起こり、これらをがん由来の遺伝子異常と判断することで起こる偽陽性が懸念されている。 国立がん研究センター東病院の藤澤 孝夫氏らは、進行固形がん患者を対象に血漿と血液細胞(PBMC)のシークエンス解析を行い、血液細胞による偽陽性を回避できる新たなリキッドバイオプシー検査(PBMC-informed LBx)の有用性を評価した。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)での発表。 研究は、固形がんの遺伝子スクリーニングネットワークSCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-2に登録された患者を対象に行われた。抗がん剤治療を行う進行固形がん患者を対象として、ベースラインと治療終了後に検出された遺伝子異常のうち、血液細胞(CH)由来と考えられる遺伝子異常の割合(CH conversion rate)を算出した。  主な結果は以下のとおり。 ・2021年5月~2023年7月に登録され、PBMC-informed LBxによる遺伝子解析結果が得られた1,456例を解析した。・1,456例からは3,190の病的遺伝子異常が検出され、このうち730(22.9%)がCH由来と分類された。・CH由来の遺伝子異常が含まれていた遺伝子には、通常CHと関連が深いとされる遺伝子(DNMT3A、TET2など) のみならず、固形がんに多く治療標的とされる遺伝子(BRCA2、KRAS、CDK12)なども含まれていた。・とくに薬剤の治療適応となるBRCA2、KRAS、BRAFでもCH由来の遺伝子異常が含まれていた(それぞれ28.4%、8.4%、5.6%)。 本発表の結果から、リキッドバイオプシーにおいて検出された遺伝子異常においては、治療標的となるような重要遺伝子においてもCH由来の偽陽性が一定の割合で含まれること、 PBMC-informed LBxを用いることで、より正確に患者ごとの治療標的となる遺伝子異常を評価できる可能性が示唆された。

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小児への15価肺炎球菌ワクチン、定期接種導入に向けて/MSD

 MSDが製造販売を行う15価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名:バクニュバンス、PCV15)は、2022年9月に国内で成人を対象として承認を取得し、2023年6月には小児における肺炎球菌感染症の予防についても追加承認を取得した。小児への肺炎球菌ワクチンは、2013年4月に7価ワクチン(PCV7)が定期接種化され、2013年11月より13価ワクチン(PCV13)に切り替えられたが、2023年12月20日の厚生労働省の予防接種基本方針部会において、2024年4月から本PCV15を小児の定期接種に用いるワクチンとする方針が了承された。同社は2月22日に、15価肺炎球菌結ワクチンメディアセミナーを実施し、峯 眞人氏(医療法人自然堂峯小児科)が「小児における侵襲性肺炎球菌感染症の現状と課題」をテーマに講演した。集団生活に備え0歳からワクチンを 近年の子供の生活環境の変化として、年少の子供たちも家庭以外の集団の場所で過ごす時間が長くなっている。子供の集団生活の開始とともに急増する感染症への対策として、予防接種はきわめて重要だという。とくに、小児の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)では、0~1歳にかけてかかりやすい肺炎球菌性髄膜炎や敗血症は、非常に重篤になりやすい。 峯氏は、かつて自身が経験した生後10ヵ月児の肺炎球菌性髄膜炎の症例について言及し、発症後まもなく救急を受診し処置をしても、死に至ることもまれではなく、回復後も精神発達や運動機能の障害、てんかん・痙攣といった後遺症が残る確率が高いと述べた。5歳未満の肺炎球菌性髄膜炎の死亡率は15%、後遺症発現率は9.5%だという1,2)。10年ぶりの新たな肺炎球菌ワクチン 2013年の小児肺炎球菌ワクチン定期接種導入後、小児の肺炎球菌性髄膜炎の患者数は、0歳児で83.1%、1歳児で81.4%減少したという2)。2024年4月から定期接種に導入される方針のPCV15は、PCV13と共通する血清型に対する免疫原性は非劣性を満たしたうえで、PCV13に含まれていなかった血清型の22Fと33Fが追加されている。これらの血清型は、小児でIPDを引き起こす頻度の高い24血清型のなかでも、33Fは2番目に、22Fは6番目に高い侵襲性であることが示されている3)。 峯氏は、IPDである肺炎球菌性髄膜炎が増加する生後5ヵ月までに、3回のワクチン接種を終了していることが望ましく、そのため生後2ヵ月からワクチンを開始する「ワクチンデビュー」と、さらに、3~5歳に一定数みられる肺炎球菌性髄膜炎を考慮して、1歳過ぎてからブースター接種を受ける「ワクチンレビュー」の重要性を述べた。また、すでにPCV13で接種を開始した場合も、途中からPCV15に切り替えることが可能だ。PCV15は筋注も選択可、痛みを軽減 PCV15の小児への接種経路は、皮下接種または筋肉内接種から選択可となっている。諸外国ではすでに筋注が一般的であるが、日本では筋注が好まれない傾向にあった。新型コロナワクチンにより国内でも筋注が一般化し、PCV15でも筋注が可能となった4,5)。峯氏によると、肺炎球菌結合型ワクチンは痛みを感じやすいワクチンだが、筋肉内は皮下よりも神経が少ないため、筋注のほうが接種時に痛みを感じにくく、接種後も発赤を生じにくいというメリットがあるという。筋注の場合は、1歳未満は大腿前外側部に、1歳以上は上腕の三角筋中央部または大腿前外側部に接種し、皮下注の場合は上腕伸側に接種する。 日本では、小児の定期接種として肺炎球菌ワクチンが導入されて以来、IPDは減少傾向にあり、大きな貢献を果たしてきた。峯氏は、ワクチンで防げる病気(VPD)は可能な限りワクチンで防ぐことが重要であることと、肺炎球菌は依然として注意すべき病原体であることをあらためて注意喚起し、とくにワクチンが導入されて10年以上経過したことで、実際にIPDの診療を経験したことがない小児科医が増えていることにも触れ、引き続き疾患に関する知識の普及が必要であるとまとめた。

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下肢外傷固定後の抗凝固療法、TRiP(cast)で必要性を判断可/Lancet

 固定を要する下肢外傷で救急外来を受診した患者における予防的抗凝固療法には議論の余地がある。フランス・Angers University HospitalのDelphine Douillet氏らは、「CASTING試験」において、抗凝固療法を受けておらず、Thrombosis Risk Prediction for Patients with Cast Immobilisation-TRiP(cast)スコアが7未満の患者は、静脈血栓塞栓症のリスクがきわめて低いことから、下肢外傷で固定術を受けた患者の大部分は血栓予防を安全に回避可能であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月15日号に掲載された。15施設のステップウェッジ・クラスター無作為化試験 CASTING試験は、フランスとベルギーの15の救急診療部で実施したステップウェッジ・クラスター無作為化試験であり、2020年6月~2021年9月に患者を登録した(フランス保健省の助成を受けた)。 ステップウェッジ方式に基づき、15の参加施設を、コントロール期から介入期への移行時期をずらして無作為化した。コントロール期は、通常診療として抗凝固療法を行い、介入期は、TRiP(cast)スコア<7の患者には抗凝固療法を行わず、≧7の患者にはこれを行った。 対象は、18歳以上で、救急診療部を受診し、少なくとも7日間の固定を必要とする下肢外傷の患者であった。 主要アウトカムは、ITT集団における、TRiP(cast)スコアが<7の患者の介入期での症候性静脈血栓塞栓症の3ヵ月間の累積発生率とし、この値が<1%で95%信頼区間(CI)の上限値が<2%の場合に安全と判定した。発生率0.7%、主要アウトカムを達成 介入期の解析の対象となった1,505例(年齢中央値31歳[四分位範囲[IQR]:23~44]、女性43.2%)のうち、1,159例(77.0%)がTRiP(cast)スコア<7であり、抗凝固療法を受けなかった。 ITT解析では、TRiP(cast)スコア<7の患者1,159例のうち症候性静脈血栓塞栓症が発生したのは8例(0.7%、95%CI:0.3~1.4)であり、主要アウトカムを達成したことから、これらの患者に抗凝固療法を行わないことは安全と考えられた。 また、per-protocol解析では、TRiP(cast)スコア<7の患者1,048例において、症候性静脈血栓塞栓症が発生したのは8例(0.8%、95%CI:0.3~1.5)であった。出血の発生にも差はない 症候性静脈血栓塞栓症の累積発生率は、コントロール期が1.0%(6/603例)、介入期は1.1%(17/1,505例)であり、2つの期間の絶対差は0.1ポイント(95%CI:-0.8~1.1)であった。 また、出血は、コントロール期には発生せず、介入期には大出血が1例(自然発生的な頭蓋内出血)、臨床的に重要な非大出血が1例(術後の腓腹筋血腫)で発生した。 著者は、「フランスとベルギーの現在の診療(本試験のコントロール期)と比較して、TRiP(cast)スコアを用いた戦略は、3ヵ月間の静脈血栓塞栓症を増加させずに、抗凝固療法の処方を半減させた」「TRiP(cast)スコアは、医師による意思決定に有用であり、下肢固定患者のほぼ4分の3において、毎日の皮下注射による抗凝固療法を回避することが可能と考えられる」としている。

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迷走神経刺激療法とリハビリの併用が脳卒中後の上肢の機能回復に有効

 脳卒中の後遺症で腕が不自由になることの影響は計り知れないほど大きいが、脳卒中を経験した人に希望をもたらす臨床試験の結果が明らかになった。迷走神経刺激療法(VNS)と集中的なリハビリテーション(リハビリ)を組み合わせることで、障害が残った腕や手をコントロールする機能の回復を促せる可能性のあることが示された。この試験は米MGHインスティテュート・オブ・ヘルス・プロフェッションズのTeresa Kimberley氏らが実施したもので、国際脳卒中学会(ISC 2024、2月7~9日、米フェニックス)で報告された。 脳卒中が起こると、脳と手足をつなぐ重要な神経回路がダメージを受け、それが原因で手足の機能が失われることがある。Kimberley氏らによると、この回路の再構築は困難だという。Kimberley氏は米国脳卒中協会(ASA)のニュースリリースで、「脳卒中後の腕や手の機能は多くの場合、回復が停滞するか低下することさえあるため、多くの患者が運動機能の障害を抱えたままとなり、自立した生活やQOLが制限されることになる。そのため、身体リハビリの効果を高めるための新たな治療が強く必要とされている」と説明している。 今回の試験では、脳から首、胸部、腹部へと分布している迷走神経に刺激を与える植込み型装置が用いられた。この迷走神経刺激装置は2021年に米食品医薬品局(FDA)によって、脳卒中後の腕の機能障害を治療する目的での使用が承認されている。 対象者は、試験開始の9カ月~10年前に脳卒中を発症し、手または腕の運動機能に中等度から重度の障害が残った22~80歳の患者であった。患者はまず、院内で6週間、植込み型の迷走神経刺激装置を使いながらリハビリを行う治療を受けた。ただし、対象者のうちの53人には実際に神経を刺激する治療が行われたが(VNS群)、残る55人には偽の刺激が与えられた(シャム刺激群)。6週間の治療後には、両群とも3カ月にわたってVNSまたはシャム刺激を受けながら自宅で運動プログラムを続けた。VNS群はその後も1年後まで同様の治療を続けた。一方、シャム刺激群は、シャム刺激による治療終了後に院内でVNSとリハビリによる治療を6週間受け、さらに自宅でVNSと運動プログラムを続けた。 1年後にデータのそろった74人が解析対象に含められた。その結果、1年後には、Fugl-Meyer評価法-上肢(FMA-UE)とWolf Motor Function Test(WMFT)のスコアが、試験開始時からそれぞれ5.3±6.9点と0.51±0.52点、有意に向上していることが明らかになった(いずれもP<0.001)。試験開始から1年後のFMA-UEのスコアは(n=70)、6週間の治療終了から90日後のVNS群のスコア、およびシャム刺激群が自宅でVNSと運動プログラムを開始してから90日後の時点のスコアと比較して有意な差が見られなかったが、WMFTスコアは0.09点有意に上昇しており、1年を通じて運動機能の向上または維持を達成したことが示唆された。 Kimberley氏は「VNSとリハビリを組み合わせることで、ダメージを受けた領域に橋を渡すように脳が新たな神経回路を強化させることができるようだ」と説明。さらに同氏は、脳卒中患者は回復の望みを捨てないことが重要であり、「脳卒中を経験した患者は、脳卒中後の障害は一生涯残ると考えて治療を諦めることが多い。しかし、実際はそうではないのだ。リハビリとVNSの併用は、そのような患者に新たな道を切り開き、希望を与える」と話し、「脳卒中後の歩行障害や言語障害など他の症状に対するリハビリとVNSの併用効果についても、今後の研究で検討されることを期待している」と付け加えている。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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白内障手術で軽度認知障害患者の認知機能が改善か

 高齢の軽度認知障害(MCI)患者は、白内障手術を受けると認知機能が改善する可能性のあることが、順天堂東京江東高齢者医療センター眼科の吉田悠人氏らの研究グループが実施した前向きコホート研究から明らかになった。一方で、認知症患者では白内障手術前後で認知機能テストのスコアに有意な変化は見られなかったことから、研究グループは「認知機能の改善を期待するには、認知症の前段階で白内障手術を行うことが望ましい可能性がある」と述べている。研究の詳細は「Acta Ophthalmologica」に12月25日掲載された。 白内障は、世界的に視覚障害の原因の一つとなっている。先行研究では、白内障手術を受けた患者は、手術を受けていない患者に比べて認知症の発症リスクが低減することなどが報告されているが、これらの関連は明らかになっていない。また、臨床現場では、重度の認知症患者においては白内障手術後に認知機能の改善が見られるケースは少ない。そこで吉田氏らは、重度の認知症患者よりもMCI患者は白内障手術後に認知機能が大幅に改善する可能性があるという仮説を検証するため、75歳以上の高齢者を対象とした多施設共同前向きコホート研究を実施し、白内障手術が認知機能に与える影響を検討した。 この研究は、2019年から2021年の間に白内障手術を受けた75歳以上の患者88人(平均年齢84.9歳、男性28.4%、視覚障害の有病率43.2%)を対象に実施された。術前および術後3カ月の時点で最高矯正視力(BCVA)などの視力を測定し、同時にミニメンタルステート検査(MMSE)と視覚障害者向けのMMSE(MMSE-blind)を用いて認知機能を評価した。ベースライン時のMMSEスコアに基づき、対象患者を認知症群(MMSEスコア23以下:39人)とMCI群(同スコア23超27以下:49人)に分けて解析した。 その結果、対象患者全体では、MMSEスコアは白内障手術前と比べて術後の方が有意に高かった(MMSE:22.55±4.7対23.56±5.54、P<0.001、MMSE-blind:15.34±3.94対16.11±5.01、P=0.001)。認知機能障害の重症度別に見ると、認知症群では白内障手術前後のMMSEスコアに統計学的な有意差は見られなかったのに対し、MCI群では、MMSEスコア(25.65±1.03対27.08±1.99、p<0.001)とMMSE-blindスコア(18.04±1.14対19.41±2.01、p<0.001)はいずれも術後の方が有意に高かった。また、対象患者全体とMCI群では、「注意/集中力」「即時想起」の2つの領域で術後のスコアが改善した。 さらに、年齢や性別、手術前の認知機能などで調整したロジスティック回帰分析の結果、認知機能は、認知症群と比べてMCI群の方が有意に改善した(調整オッズ比2.85、95%信頼区間1.02~7.97、P=0.046)。なお、視力は、両群ともに白内障手術後に有意に改善した。 著者らは、今回の研究には認知症のサブタイプ分類がなされなかったこと、観察期間が短かったこと、認知機能の評価がMMSEに限られていたことなど限界があったと指摘。その上で、「白内障手術によって、認知症患者のMMSEスコアには有意な変化は見られなかったが、MCI患者の認知機能は有意に改善することが分かった。この結果は、白内障手術後に認知機能が改善するかどうかは、術前の認知機能の状態に大きく影響を受ける可能性を示唆するものだ。今後さらなる研究で検証していく必要がある」と結論付けている。

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やはり高頻度だったデノスマブの透析高齢女性への投与における重症低Ca血症(解説:浦信行氏)

 デノスマブは、破骨細胞の活性化に関与すると考えられているNF-κB活性化受容体リガンド(Receptor activator of nuclear factor-κB ligand:RANKL)と結合することによって、骨破壊に起因する病的骨折等の骨関連事象の発現を抑制する、ヒト型モノクローナル抗体である。 腎不全の病態では腸管からのCa吸収が低下するため、そのCaの濃度を維持しようとして、二次性副甲状腺機能亢進を来した状態である。そのような高回転骨の状態にデノスマブを使用すると、破骨細胞性骨吸収が抑制されるが、その一方で類骨での一次石灰化は続くため、細胞外液から骨にCaが一方的に流入し、高度の低Ca血症が引き起こされると考えられる。腎不全の高齢女性の場合は、その発現頻度増加と程度が重症となる可能性が早くから指摘されていた。 米国・食品医薬品局(FDA)では、昨年11月22日にFDA主導の別の予備研究からも入院や死亡リスクが高まることを指摘していた。このたびの試験は、後ろ向き研究ではあるが1,523例を対象とし、1,281例の経口ビスホスホネート製剤群を対照に置き、頻度と重症度を比較したこれまでにない大規模研究である。 結果の詳細は2024年2月26日公開のジャーナル四天王(透析高齢女性へのデノスマブ、重度低Ca血症が大幅に増加/JAMA)をご覧いただきたいが、頻度はデノスマブ群で40%前後と著明な高値で、対照群の20倍程度多かった。また、重度低Ca血症発症から30日以内のデノスマブ群の発症者の5.4%が、痙攣や心室性不整脈と診断され、1.3%が死亡していた。デノスマブ群1,523例中、重篤な副作用は13例、死亡3例となる。ちなみに対照群では、このような転帰は皆無であった。 これまでも同様の研究がいくつか行われているが、いずれも少数例の試験であるため、発現頻度に関しては報告間で大きな差がある。また、わが国の各種の医薬品安全性情報を見ても、このような症例での報告はいずれも数十例を対象とした報告であり、透析高齢女性を対象とした報告は、少数例の成績も見当たらない。このような重要な情報は早期に提示する必要があると考える。

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第184回 医師の働き方改革で、4月から医療現場が大きく変わる/厚労省

<先週の動き>1.医師の働き方改革で、4月から医療現場が大きく変わる/厚労省2.医師偏在の解決を目指して、将来の医学部定員を議論/厚労省3.マイナ保険証利用促進に向け、新たな戦略を検討/厚労省4.妊婦の梅毒感染急増、予防と早期治療の呼びかけ/日本産婦人科医会5.日本の少子化危機、出生数は過去最少、人口減少さらに加速/政府6.誤って胃に人工肛門を造設、成田赤十字病院を提訴/千葉1.医師の働き方改革で、4月から医療現場が大きく変わる/厚労省今年の4月から医療現場での「医師の働き方改革」に向けた対応が急務となっている。過酷な労働条件のもとで、勤務医の健康被害や自死が社会問題化している中、厚生労働省は医師の労働環境の改善を目指してさまざまな対策を講じてきた。医師の働き方改革の具体的な取り組みとして、勤務医の時短体制整備を条件とする地域医療体制確保加算の創設、2024年4月から勤務医の残業時間の上限が原則年960時間に制限されることなどが挙げられている。しかし、病院側が宿直を「休憩」扱いとして残業規制の対策としている事例もあり、実際の労働時間の抑制には至っていない現状がある。さらに、自己研鑽と称して勤務外の学習や研究活動を労働時間として認めないケースも多く、医師の過重労働が根深い問題として残っている。一方、国立大学病院長会議の調査によると、複数主治医制やチーム制の導入、当直医への患者情報の共有など、働き方改革に向けた取り組みが進められている病院もある。これらの取り組みは、個々の医師の負担を軽減し、効率的な医療提供体制の構築を目指している。医師の働き方改革は、医療の質と安全を確保しながら、医師が健康で充実した職業生活を送ることができるようにするために不可欠である。そのため、医療現場における実務負担の軽減、労働時間の適正管理、そして、医師自身の健康管理への配慮が求められている。これらの改革が適切に進められることで、医師だけでなく患者にとっても、より良い医療環境が実現することが期待されている。参考1)医師を追い詰めた自己研さん、残業が月207時間…「限界です」26歳死亡(読売新聞)2)病院、宿直を「休憩」扱い…残業規制対策で申請急増し「書類が整っていればおりる」(同)3)変わらない医療現場の過重労働、過労で倒れた医師「自分を守らないと患者も守れない」(同)4)複数主治医や当直の体制、8割の診療科で整備 働き方改革に向け 国立大病院長会議が報告(CB news)2.医師偏在の解決を目指して、将来の医学部定員を議論/厚労省厚生労働省は、2月26日に「第2回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、将来の医師需給バランスに関した議論を行った。2020年の将来医師需給推計では、2029年頃から医師過剰の状態になると予測され、2026年度の医学部入学定員には臨時定員の減員や増員を控えることが提案された。その一方で、東北地方を含む医師少数県の存在や、医師の地域偏在問題がいまだ解消されていないことから、医師少数地域では臨時定員の維持や増員も検討する必要があるという意見も出された。この議論は、地域医療の維持と医師の適切な供給を確保するために重要であり、医師の地域偏在や診療科偏在を解消するためには、地域枠や地元枠の設定など、既存施策の見直しと効果的な対策が求められている。2026年度の医学部入学定員に関する最終決定は、高等学校2年生が進路選択に困らないよう、2024年春までに明確にされる必要がある。医師偏在対策検討会では、地域別に医師需給を推計し、将来にわたり医師が不足する地域では、前年度比増も含めた臨時定員の継続を認める提案が行われた。しかし、全国的に医師過剰が予測される中で、臨時定員の適切な設置や減員の検討が求められている。日本医師会は、医師供給過剰を防ぐために2026年度の定員にキャップをかぶせることを主張している一方で、全国知事会や日本医療法人協会は、医師が不足している地域への配慮や現状維持を求めている。これらの意見は、医師の適切な供給と地域医療の維持のために、柔軟かつ綿密な計画が必要であることを示している。参考1)第2回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)26年度の臨時定員、日医釜萢氏「キャップを」 全国知事会は「定員増含む対応」求める(CB news)3)医学部定員「現状維持」主張へ、病院団体 26年度以降も(同)4)将来の医師供給過剰を考慮すれば「医学部入学定員の減員」が必要だが、医師少数地域では「増員」も認めるべきか?-医師偏在対策等検討会(Gem Med)3.マイナ保険証利用促進に向け、新たな戦略を検討/厚労省厚生労働省は、2月29日に「社会保障審議会・医療保険部会」を開催し、マイナンバ-カードの医療機関での保険証利用促進について議論した。部会では、マイナンバーカード保有者の大多数が保険証としての登録を済ませているにもかかわらず、実際に医療機関で利用している人の割合が低いことが問題とされた。具体的には、人口の73.1%がマイナンバーカードを保有しており、そのうち77.9%がマイナ保険証の登録をしているものの、実際に保険証として利用しているのは約25%の人に限られ、医療機関ベースでの利用率は約4.6%に留まっている。この問題に対処するために、医療機関の窓口で「マイナンバーカードはお持ちですか?」と声を掛けることの重要性が強調された。この問いかけにより、マイナ保険証の利用促進に大きな効果をもたらすことが期待されている。また、顔認証カードリーダーシステムの同意画面の改善や、オンライン資格確認の円滑化など、利用環境の整備にも注力されることが確認された。さらにマイナ保険証の普及と利用促進に向けて、都道府県や医療機関、薬局を含む関係者全体での協力として呼びかけが重要とされ、医療機関や薬局における患者への声掛けの強化、利用メリットの明確な伝達、そして、医療DX推進の一環としての取り組みが議論された。そのほか2025年度には、マイナ保険証のスマートフォン搭載を目指し、診察券との統合や診療履歴の確認が可能になる予定。これにより医療機関での手続きがスマートフォンだけで完結し、利便性が向上する。厚労省は、マイナ保険証の利用促進に向けた取り組みが広がることで、医療サービスの質の向上と効率化を実現することが期待している。参考1)マイナ保険証利用促進のための取組・支援策について(厚労省)2)マイナ保険証利用率トップは鹿児島8.44% 今年1月、厚労省「患者への声掛けに効果」(CB news)3)マイナ保険証利用率 最も高い県で8.4% 保険証廃止へ普及急ぐ(NHK)4)医療機関等の窓口での「マイナンバーカードはお持ちですか?」との声掛けが、マイナ保険証利用に非常に有効-社保審・医療保険部会(Gem Med)5)マイナ保険証、25年度にもスマホ搭載…診察券と統合・診療履歴確認もOK(読売新聞)4.妊婦の梅毒感染急増、予防と早期治療の呼びかけ/日本産婦人科医会日本産婦人科医会による最新調査によると、2022年に梅毒感染が確認された妊婦の割合が前回調査(2016年)から約3.3倍に増加したことが明らかになった。この増加は、国内での梅毒流行の影響とみられ、感染した妊婦から胎児への感染が確認されると、難聴や知的障害を持つ赤ちゃんが生まれるリスクが高まる。そのため、同医会は妊娠初期の梅毒検査の受診を強く推奨している。国立感染症研究所の報告によると、2023年に梅毒と診断された患者数は1万4,906人にのぼり、3年連続で過去最多を更新した。この調査は、全国の出産施設を対象に行われ、約45万5,700人の出産妊婦のうち、376人が梅毒に感染していたことが判明した。これらの赤ちゃんのうち、28人が先天梅毒であることが確認された。一方、愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学教授の三鴨 廣繁氏と性教育YouTuberのシオリーヌ氏は、梅毒の急増とそのリスクについて啓発活動を行っている。梅毒は、性的な接触を通じて誰でも感染する可能性がある病気であり、とくに妊婦の感染では先述のリスクを伴うことがある。三鴨氏とシオリーヌ氏は、梅毒に関する誤解や偏見を解消し、正しい知識と対策の重要性を強調している。妊婦の梅毒感染は、早期発見と治療によって胎児への感染リスクを軽減できるため、妊娠が判明した際には梅毒検査を受けることが推奨される。また、梅毒は、治療後に再感染する可能性があるため、性的な行動には注意が必要。公費で実施される妊娠初期の梅毒検査は、このような感染症の早期発見と治療に役立つ重要なツールとなる。参考1)梅毒合併妊婦に対する治療と先天梅毒の現状(国立感染症研究所)2)妊婦の梅毒が急増、胎児に感染すると難聴や知的障害の恐れ…「妊娠初期の検査を」(読売新聞)3)過去最多を更新「梅毒」は誰でも感染する!? 症状が消える、何度でも感染、ピンポン感染も(TOKYO HEADLINE) 5.日本の少子化危機、出生数は過去最少、人口減少さらに加速/政府2月27日に厚生労働省は、2023年の人口動態統計の速報値を公表した。これによると2023年の日本の出生数は75万8,631人となり、過去最少を更新した一方で、死亡数は159万503人と過去最多を記録し、自然減は83万1,872人となり、わが国の人口減少は過去最大の幅を更新した。厚労省の統計によると、この人口減少の背景には未婚・晩婚化の傾向があり、政府は「異次元の少子化対策」を掲げているが、その効果は未知数。経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、日本と同様に合計特殊出生率が1台前半の国々もあり、中でも韓国は0.72(暫定値)とOECD加盟国で最も低い出生率を記録している。専門家からは、低所得者への支援強化や教育格差是正、夫婦1組当たりの出生数を増やす政策の必要性が指摘されている。とくに、婚姻数の減少と出生数の直接的な関連性が強調され、未婚化への対応が少子化対策のカギとされている。国や自治体による婚活支援の動きも広がりをみせており、出会いの方法の変化に対応した新たな取り組みが求められている。今回の結果について、国内外のメディアや専門家からも大きな注目を集め、CNNやガーディアンなどの欧米の海外メディアは、日本の人口危機を「最も差し迫った問題の1つ」として報じ、レイモ教授(米プリンストン大学)は、日本の人口動態を「不可逆」と分析している。また、日本の婚姻数も戦後初めて50万組を割り込むなど、少子化の加速が鮮明になっている。参考1)人口動態統計速報(令和5年12月分)(厚労省)2)去年の出生数75万人余で過去最少を更新 「今後さらに減少か」(NHK)3)想定より早く進む少子化、昨年の出生数は8年連続で過去最少…婚姻90年ぶりに50万組割れ(読売新聞)4)出生数、過去最少75万人 8年連続減、少子化加速鮮明に-23年人口動態統計速報・厚労省(時事通信)6.誤って胃に人工肛門を造設、成田赤十字病院を提訴/千葉成田赤十字病院(千葉県成田市)で2022年に70代女性患者に対して行われた手術で、重大な医療ミスが発生した。手術中、執刀医を含む医師3人が、大腸ではなく誤って胃に人工肛門(ストーマ)を造設し、女性とその家族に深刻な精神的苦痛を与えたことが明らかになった。女性の家族は日本赤十字社に対して、計600万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。提訴は2024年2月27日付けで行われ、病院側は医療ミスを認め、「当院の不手際により患者や家族に本来必要のない心配をおかけした」と謝罪している。手術中、医師らが横行結腸か胃かを十分に確認しなかったことが、事故の原因とされている。患者はこの医療ミスにより再手術を受け、一時は快方に向かっていたが、2024年1月に死亡した。なお、死亡と手術との直接的な関係はないとされている。参考1)医療ミスで胃に人工肛門と提訴 成田赤十字病院側に賠償求める(東京新聞)2)医療ミスで「胃に人工肛門」成田赤十字病院側を提訴「大腸か胃か確認せず漫然と手術」(産経新聞)

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irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!【見落とさない!がんの心毒性】第29回

免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)の適応がますます広がっているが、同薬剤による免疫関連有害事象(以下irAE)による心筋炎の発症は臨床上の大きな問題となっている。これまで、irAE心筋炎の発症リスク・重症化リスクとして明らかなものはICI同士の併用療法だけであり、そのほかに女性のほうが男性より発症率が高いことも報告されている1)。ICI併用では単剤と比較して2〜6倍、女性は男性に比べて2〜3倍、心筋炎の発症率が高いとされてきた1)。致死的な合併症であるirAE心筋炎のリスクを把握することは安全ながん治療の実施のために極めて重要であるが、最近、irAE心筋炎の発症機序に関する新しい知見が発表された。2023年10月26日のNature Medicine誌オンライン版に胸腺異常がirAE心筋炎の発症に強く関与していることを明らかにした研究成果が掲載された2)ため、以下に紹介する。Thymus alterations and susceptibility to immune checkpoint inhibitor myocarditis.この論文はパリのソルボンヌ大学を中心としたグループからの発表である。グローバル副作用報告データベース(VigiBase)や臨床試験データなど、複数のデータベースを用いて、胸腺上皮性腫瘍(以下、TET)とほかのがん腫を比較したところ、TETの心筋炎や筋炎発症のオッズ比またはリスク比が15〜38倍であったことを明らかにした。VisiBaseの解析ではほかのがん腫では心筋炎の発症率が1%であったのに対して、TETでは16%と驚異的な発症率であったことも明らかにされた。また、VigiBaseデータより、TETに関連して有意に増加するirAEは重症筋無力症様症候群、筋炎、心筋炎、肝炎であり、ほかのirAEは有意な増加を認めなかった(ただし、肝炎の診断根拠はトランスアミナーゼの上昇のみであり、その背景には肝臓の炎症ではなくむしろ筋炎などがあったことが推察される)。また、ICI心筋炎の国際的レジストリデータから、TETに関連する心筋炎は発症がより早期で、筋炎や重症筋無力症様症候群の合併が多く、致死率も高いことが明らかにされた。さらに興味深いことに、非TET患者でも、ICI心筋炎を発症した患者ではCT画像上の胸腺の形態や大きさが心筋炎を来さなかった患者に比べて有意に異なっており、非TET患者のICI心筋炎の発症にも胸腺異常が関わっていることが示唆された。また、ICI心筋炎患者はICI心筋炎を発症しなかった患者と比べて抗アセチルコリンレセプター(AChR)抗体の陽性率が4〜9倍高く(16〜36% vs. 4%)、抗AChR抗体の存在は心筋炎の発症の独立した危険因子であり、致死性心イベントの増加とも関連していた。胸腺はT細胞が分化成熟するために必須の器官であり、自己抗原を強く認識するT細胞受容体を発現するT細胞を排除する(負の選択)ことにより、自己免疫寛容の成立に寄与する。しかし、一部のT細胞は負の選択をすり抜けて末梢に出現し、心臓に関しては、心筋αミオシンに反応するT細胞が健常人においても末梢に存在しているが3)、主にPD-1/PD-L1経路による末梢性自己免疫寛容が機能しており、自己免疫性心筋炎は滅多に生じることはない。ICI投与によりこの経路がブロックされることにより心筋炎が惹起されると考えられており4)、実際にICI心筋炎動物モデルやICI心筋症患者の末梢血中に心筋ミオシン反応性T細胞が存在することが最近明らかになってきている5,6)。今回の論文から胸腺異常が心筋炎の発症と密接に関わっていることが示されたことにより、ICI心筋炎の発症に胸腺で受けるべきT細胞の正常な分化成熟の阻害が関与していることが示唆され、胸腺をすり抜けたαミオシン反応性T細胞のような心筋反応性T細胞が心筋炎の発症に寄与していることが示唆される。この論文が持つ臨床的意義はとても大きい。抗AChR抗体の存在が有力な発症予測マーカーである可能性があり、そもそも胸腺腫の既往がある人やTETに対するICIの使用はハイリスクであることが明らかになった。また、これまで加齢に伴って生じる胸腺の生物学的および形態学的な変化や成人の免疫系における胸腺の役割に関して、あまり注目がされてこなかった。しかし、この論文においてCTによる胸腺の形態学的特徴がICI心筋炎の予測マーカーとなる可能性が示されたことは、今後がん免疫療法がますます発展していく中で、大きな発見であると考える。1)Yousif LI, et al. Curr Oncol Rep. 2023;25:753–763.2)Fenioux C, et al. Nat Med. 2023;29:3100–3110.3)Lv H, et al. J Clin Invest. 2011;121:1561–1573.4)Tajiri K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2018;48:7–12. 5)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:111611.6)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818–826.講師紹介

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映画「かがみの孤城」(その4)【学校がなかなか変わらない訳は?だから私たちにできることは?(反応性自我障害)】Part 1

今回のキーワード自立支援独裁国家型民主国家型社会的な自我(アイデンティティ)封建社会の価値観回避性パーソナリティ文化結合症候群文化進化前回(その3)では、不登校を解決するために必要な学校の機能を明らかにして、抜本的な学校改革「かがみの孤城プロジェクト」と、そのスムーズな第一歩をご提案しました。それでは、このプロジェクトを踏まえて、これからの学校のあり方とは何でしょうか? 一方で、学校がなかなか変わらない訳は何なんでしょうか? そして、私たちにできることは何でしょうか?今回(その4)も、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、文化進化の視点から、不登校だけでなく、日本ならではのさまざまな社会問題を文化結合症候群として捉え直し、これらの根っこの病理を解き明かします。そして、主人公のこころと同じように、私たちが取ることができる第一歩を探ります。これからの学校のあり方とは?その3から、これからの学校に必要な機能とは、自我、自信、自尊心を育むために、学校に行く目的を意識させる、評価によって今後を左右させる、教え合うという役割を与えることであることがわかりました。このことから、学校の真の機能とは、生徒たちをただ教室に来させて静かに座らせられるかどうか(自分の行動を自分で選ばせない)という管理そのものではなく、生徒たちが教室で積極的に相互作用し合いたいと思わせられるかどうか(自分の行動を自分で選ぶよう促す)という自立支援であることに気付かされます。以上を踏まえて、これからの学校のあり方とはどういうものが望ましいでしょうか? ここから、その2で家族を国家のタイプに例えたのと同じように、学校を国家のタイプに例え、大きく4つに分けて、その答えを導いてみましょう。なお、家族の国家タイプの詳細については、関連記事1をご覧ください。(1)独裁国家型1つ目は、独裁国家型です。これは、実は現在の学校が当てはまります。さすがに体罰などの懲戒権は鳴りを潜めていますが、「ブラック校則」「ブラック部活」はしっかり残っています。また、「この勉強をやりなさい」という学習指導要領は、相変わらず細かく、実は教師も絶対服従を誓わされています。これにより、厳密な同年齢教育が維持され、飛び級も留年もないです。もっと学びたい生徒も、学ぶのがいっぱいいっぱいの生徒も年齢が同じだというただこの1点だけで同じ教室に静かに座らされます。もっといろいろ教えたい教師も、制限がかけられています。つまり、生徒には学びの自由(選択権)がなく、教師には教える自由(裁量権)がありません。教室にただ座っているだけでは留年になるというペナルティ(責任)もありません。もはや学校は、封建社会の名残りである「工場型一斉授業」という飼育方法によって、飼い馴らされた子供を量産しようとする「畜産工場」のようにも見えてきます。学校は、生徒が言いなりになっていれば評価する点で、自信はある程度つきますが、自由と責任がない点で、自尊心と自我は育まれません。このタイプは、不登校という「難民」をますます増やしていることから、明らかに現代の価値観では時代遅れとなっており、学校のあり方としてはもちろん危ういです。(2)ユートピア型2つ目は、ユートピア型です。これは、フリースクールが当てはまります。居場所であることを一番に掲げ、とりあえず生徒たちが来てくれることを優先します。そのため、「勉強をやらなくていいよ」というスタンスになりがちです。フリースクールによっては、テレビゲームを生徒たちみんなにやらせています。もちろん、家で何もしないよりはましなのですが、ゲームを一緒にするだけでは、グループワークのように自分から発言するような自我を育む状況が少ないため、さすがに大人になるための相互作用は見いだせません。そもそも、家でオンラインゲームをして友達とつながっているのと大差ないです。フリースクールは、生徒たちに自由がある点で、自尊心は育まれますが、評価されることはなく、大人になるためにどうすればいいかなどの責任も教えてくれるわけではないため、自信と自我は育まれません。このタイプは、不登校だけでなく、ゲーム依存症やひきこもりなど嗜癖の問題を招くリスクが最もある点で、やはり学校のあり方として危ういでしょう。(3)民主国家型3つ目は、民主国家型です。これが「かがみの孤城プロジェクト」に当てはまります。「勉強をどうやったらやる?」という話し合いのもと、教育の選択肢を提供し、生徒に選ぶ自由を与えています。どのオンライン授業が選ばれるか、どのグループワークの授業が選ばれるかという点では、生徒だけでなく教師や学校も評価されます。お互いに、選び選ばれるという双方向の関係はまさに民主主義の基本です。「かがみの孤城プロジェクト」は、生徒たちに自由と責任を自覚させ、どうなりたいかを後押しする点で、自尊心、自信、自我を必然的に育みます。このタイプこそが、不登校を防ぐ点でも、これからの学校のあり方として、望ましいわけです。(4)無法地帯型4つ目は、無法地帯型です。これは、学級崩壊している教育困難校が当てはまります。ほったらかしであるため、言うまでもなく、自尊心も自信も自我も育まれません。このタイプは、もはや学校のていをなしていない点でも、学校のあり方として、決して望ましくないでしょう。家庭にしても学校にしても、一番望ましいのは、子供を言いなりにさせるかかわり(独裁国家型)ではなく、子供の言いなりになるかかわり(ユートピア型)でもなく、子供が自分なりになるかかわり(民主国家型)であることがわかります。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その4)【学校がなかなか変わらない訳は?だから私たちにできることは?(反応性自我障害)】Part 2

それでもなんで学校を変えられないの?これからの学校のあり方とは、社会と同じように、やはり民主国家型であることがわかりました。そして、これは、実際に海外の多くの国ですでに実践されています。また、日本の学校が独裁国家型のままである問題点は、海外の教育研究者から散々指摘されてきました。にもかかわらず、なぜ日本の学校はなかなか変わることができないのでしょうか?それは、やはり社会を自ら変えていくこと、そして選び選ばれるという社会的な自我(アイデンティティ)が求められること自体に抵抗を感じる、自我の弱い人が日本には多いからでしょう。たとえば、何が「普通」か、何が「変」かを気にして、周りと違うことをすることに不安を感じる人です。そして、世間(主流秩序)が望ましいとされることに重きを置き、体裁を気にする人です。また、文科省のような権威に対して表立って意見するのを嫌がる人です。その割に、陰では不平不満を言い続ける人です。その1と2で説明したとおり、このメンタリティは、社会的な自我が弱いままなのに、社会構造の変化によって個人的な自我だけが強まってしまっている状態です。このギャップこそが、不登校だけでなく、新型うつ(職場不適応)、ひきこもり、少子化(非婚)、そして日本的バッシングなども含めた、さまざまな日本の社会問題に共通する根っこの病理であると考えられます。これらをまとめて、「反応性自我障害」と名付けることができます。ちょうど、反応性愛着障害が虐待などの養育環境によって反応的に愛着が育まれないのと同じように、反応性自我障害は「工場型一斉授業」という学校環境によって反応的に自我が育まれない状態です。パーソナリティ(性格)の特性として捉えると、回避性パーソナリティが最も近いでしょう。実際の研究では、不登校がその後の人生に与える影響として、学歴が低くなることを差し引いても、仕事、生活レベル、結婚の状況が思わしくなくなっているという結果が出ています1)。これは、たとえ不登校のあとに本来の学歴を達成したとしても、大人になって社会的な自我(アイデンティティ)が十分に育まれていないことを示唆します。この自我は、不安や受け身の気質からもともと弱い日本人が多いのに加え、「工場型一斉授業」によってさらに押し殺され、不登校になることで育むチャンスを完全に失うというわけです。現在、この「反応性自我障害」によって、学校に行かない人、働かない人、結婚しない人、子供をつくらない人が増え続けており、持続可能な社会であり続けることが難しくなってきています。もちろん、自分なりの考え(自我)があって、あえてそうしている人はもともと一定数います。それは、生き方の自由であり、多様性です。問題なのは、そうではない「反応性自我障害」に陥っている人が増えてきていることです。「反応性自我障害」は、日本文化と深く結び付いている点では、もはや日本の国民病(文化結合症候群)とも言えます。実際に、”futoko”(不登校)、”hikikomori”(ひきこもり)という英単語がすでにあるくらいです。この流れで、いずれ“hikon”(非婚)という英単語も生まれるでしょう。なお、文化結合症候群の詳細については、関連記事2をご覧ください。文化進化の視点に立てばもともと日本では、独裁国家型である封建社会の価値観(文化)と「反応性自我障害」を生じさせる不安や受け身の気質(遺伝子)は、お互いに結びつきを強めてきました(共進化)。しかし、その1でも説明したとおり、時代は変わりました。文化進化の視点に立てば、遺伝子と同じように、文化も淘汰されます。遺伝子進化が何万世代も繰り返してちょっとずつ変化するのに対して、文化進化は技術革新などによって数世代の間でも大きく変化します。それに遺伝子進化が追いつかないから、その国は繁栄するだけでなく衰退する(淘汰される)こともあるわけです。これは、過去の歴史が証明しています。たとえば、かつての帝国主義や資源依存の国などです。そして、封建社会の価値観が残る国(文化)も当てはまるでしょう。ただし、遺伝子進化と違って文化進化は、改革によって国自体の淘汰を免れることができます。この点で、日本が静かに衰退していくか盛り返すかは、「反応性自我障害」ではない、つまり社会的な自我のある残りの私たちが何を選択していくかにかかっています。なお、文化進化の詳細については、関連記事3をご覧ください。「かがみの孤城」とは?映画の後半で、城に通い続けて自我が芽生えたこころは、家の前で見かけた萌ちゃんに駆け寄ることができます。これまでの彼女にできなかった、さりげなくも大きな第一歩です。こころは、萌ちゃんから「ああいう子たち(いじめ女子グループ)ってどこにでもいるし、今度の学校(次の転校先)でもいるかもしれないけど。私今度こそ嫌なものは嫌って言う。だからこころちゃんも」「何かされてる子がいたら、今度こそ助けたいと思う」と言われ、「うん」と力強く頷きます。城だけでなく、現実の世界でも、こころが友達とお互いに影響し合い、自我が大きく成長していく感動のシーンです。タイトルの「孤城」とは、孤立無援のこころたちの城であると同時に、孤高にも自分らしく生きていくこころたち自身であるという意味が見いだせそうです。このことからも、この映画のテーマは、まさに誰かとかかわり合うことで自我を育むことでしょう。同じように、不登校への学校改革の第一歩を知った私たちの「孤城」とは、一人ひとりが社会的な自我を持って意見を発信し合い、学校を、そして社会を変えていくムーブメントを巻き起こすことではないでしょうか?1)「不登校がその後の生活に与える影響」:井出草平、大阪大学<< 前のページへ■関連記事映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 3NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 3ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 2

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咳が1年以上続く…、疑うべき疾患は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第19回

咳が1年以上続く…、疑うべき疾患は?講師獨協医科大学医学部 小児科学 助教 高柳 文貴 氏獨協医科大学医学部 小児科学 教授 吉原 重美 氏【今回の症例】8歳女児。6歳の時に肺炎で入院歴があり、その後から長引く咳嗽、労作性の呼吸苦を呈している。気管支喘息を疑い、吸入ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬による加療を1年以上継続しているが、症状の改善を認めなかった。胸部レントゲン検査ではわずかに過膨張所見があり、胸部CTではモザイクパターンの浸潤影を認めていた。

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普段から活発な高齢者、新型コロナ発症や入院リスク低い

 健康のための身体活動(PA)は、心血管疾患(CVD)、がん、2型糖尿病やその他の慢性疾患の予防や軽減に有効とされているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症や入院のリスク低下と関連することが、米国・ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のDennis Munoz-Vergara氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2024年2月13日に掲載の報告。 本研究では、COVID-19パンデミック以前から実施されている米国成人を対象とした次の3件のRCTのコホートが利用された。(1)CVDとがんの予防におけるココアサプリメントとマルチビタミンに関するRCT、65歳以上の女性と60歳以上の男性2万1,442人、(2)CVDとがんの予防におけるビタミンDとオメガ3脂肪酸に関するRCT、55歳以上の女性と50歳以上の男性2万5,871人、(3)女性への低用量アスピリンとビタミンEに関するRCT、45歳以上の女性3万9,876人。 本研究の主要アウトカムは、COVID-19の発症および入院とした。2020年5月~2022年5月の期間において、参加者はCOVID-19検査結果が1回以上陽性か、COVID-19と診断されたか、COVID-19で入院したかを回答した。PAは、パンデミック以前の週当たり代謝当量時間(MET)で、非活動的な群(0~3.5)、不十分に活動的な群(3.5超~7.5未満)、十分に活動的な群(7.5以上)の3群に分類した。人口統計学的要因、BMI、生活様式、合併症、使用した薬剤で調整後、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19による入院について、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて非活動的な群とほかの2群とのオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・6万1,557人(平均年齢75.7歳[SD 6.4]、女性70.7%)が回答した。そのうち20.2%は非活動的、11.4%は不十分に活動的、68.5%は十分に活動的だった。・2022年5月までに、COVID-19の確定症例は5,890例、うち入院が626例だった。・非活動的な群と比較して、不十分に活動的な群は感染リスク(OR:0.96、95%CI:0.86~1.06)または入院リスク(OR:0.98、95%CI:0.76~1.28)に有意な減少はみられなかった。・一方、非活動的な群と比較して、十分に活動的な群は感染リスク(OR:0.90、95%CI:0.84~0.97)および入院リスク(OR:0.73、95%CI:0.60~0.90)に有意な減少がみられた。・サブグループ解析では、PAとSARS-CoV-2感染との関連は性別によって異なり、十分に活動的な女性のみが感染リスクが低下している傾向があった(OR:0.87、95%CI:0.79~0.95、相互作用p=0.04)。男性では関連がなかった。・新型コロナワクチン接種状況で調整後に解析した場合も、非活動的な群と比較して不十分に活動的な群は、感染と入院のORはほとんど変化しなかった。・新型コロナワクチンは、PAレベルに関係なく感染と入院のリスクを大幅に減少させた。感染リスクはOR:0.55、95%CI:0.50〜0.61、p<0.001、入院リスクはOR:0.37、95%CI:0.30~0.47、p<0.001。

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PCSK9阻害薬の処方継続率は?~国内レセプトデータ

 日本を含む諸外国で行われたさまざまな研究結果から、高コレステロール血症治療薬PCSK9阻害薬の使用は費用対効果が見合わないと結論付けられているが、果たしてそうなのだろうか―。今回、得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らはPCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握することを目的に、国内のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を行った。その結果、PCSK9阻害薬はエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された群と比較し、高リスク患者に使用されている一方で、PCSK9阻害薬を中断した患者割合は約45%と高いことが明らかになった。本研究結果は国立保健医療科学院が発行する保健医療科学誌2023年12月号に掲載された。 本研究は、国内3自治体の国民健康保険および後期高齢者医療制度の2015年4月~2021年3月のレセプトデータを用いて調査を行った。2016年4月~2017年3月の期間にPCSK9阻害薬が未処方で、2017年4月~2020年3月に初めてPCSK9阻害薬が処方された患者群を「PCSK9群」、同様の手法で抽出したエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された患者を「エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群」とした。PCSK9阻害薬もしくはエゼチミブと最大耐用量スタチンが初めて処方された日を起算日とし、起算日より前12ヵ月間(pre-index期間)、起算日より後ろ12ヵ月間(post-index期間)に観察された生活習慣病(脂質異常症、糖尿病、高血圧症)治療薬の処方、心血管イベント(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)および冠動脈バイパス術(CABG)などの実施状況について調査し、両群で比較した。また、post-index期間における3ヵ月以上の処方中断についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象者はPCSK9群184例(平均年齢:74.0歳、男性:57.1%)、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群1,307例(平均年齢:71.0歳、男性:60.5%)だった。・起算日前後(pre-/post-index期間)の虚血性心疾患の診療・治療状況の変化を両群で比較すると、pre-index期間では有意な差はなかったが、post-index期間では、PCSK9群のほうが割合が高かった(85.3% vs.76.1%、p=0.005)。・PCIの実施割合は、起算日前後の両期間においてPCSK9群のほうがエゼチミブ最大耐用量スタチン併用群より有意に高かった(pre-index期間:40.8% vs.24.0%、p<0.001、post-index期間:13.6% vs.8.1%、p=0.014)。・処方中断率はPCSK9群では44.6%であったが、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群ではみられなかった。 研究者らは「因果関係までは言及できないものの、PCSK9阻害薬による治療が患者側の経済的負担になっていること、医療者側が高価な薬剤を予防目的に使用することを躊躇した可能性が示唆された」としている。

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転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル追加データ(JCOG1611、GENERATE)/日本臨床腫瘍学会

 膵がん1次治療の最適レジメンを検討する国内第II/III相JCOG1611試験1)。2023年10月に欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で中間解析結果が発表されたが、2024年2月22~24日に開催された第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、本試験の追加データについてがん研有明病院 肝胆膵内科の尾阪 将人氏が発表した。<JCOG1611試験の概要>・対象:切除不能転移膵がん、PS0~1・試験群:【GnP群】nab-パクリタキセル+ゲムシタビン【mFOLFIRINOX群】オキサリプラチン、イリノテカン、l-ロイコボリン、フルオロウラシル【S-IROX群】オキサリプラチン、イリノテカン、S-1 ・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性 すでに発表されている発表されている結果は下記のとおり。・国内45施設から527例がGnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。・OS中央値はGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)だった。・PFS中央値はGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)だった。 mFOLFIRINOX群、S-IROX群がGnP群を上回る可能性が1%未満となったため、本試験は中止となっている。 今回発表された追加データは下記のとおり。・病状進行し、2次治療に進んだのはGnP群で59.7%、mFOLFIRINOX群で63.4%、S-IROX 群で62.5%、2次治療のほぼすべてが化学療法だった。・増悪後生存期間(Postprogression survival)中央値は、GnP群で7.0ヵ月、mFOLFIRINOX群で5.5ヵ月、S-IROX群で5.6ヵ月だった。・プラチナ製剤が奏効しやすいとされるBRCA1/2遺伝子変異陽性例を層別化したデータが発表された。BRCA陽性はGnP群で9例、mFOLFIRINOX群で7例、S-IROX群で7例だった。陽性例のOSは3群すべてで全体集団よりも長く、GnP群25.9ヵ月、mFOLFIRINOX群18.6ヵ月、S-IROX群33.2ヵ月だった。 発表後のディスカッションのテーマは、同じく転移膵がん1次治療として、GnPとNALIRIFOX(ナノリポソーム型イリノテカン、5FU、ロイコボリン、オキサリプラチン)を比較し、NALIRIFOXが有意なOSの改善を示す結果となったNAPOLI‐3試験2)と本試験の結果をどう解釈するのかが中心となった。 尾阪氏は「JCOG1611はもともとGnPに対するmFOLFIRINOXとS-IROXの優越性を検証するためにデザインされた試験であり、GnPが有意差をもってmFOLFIRINOX群を上回る今回の結果にはわれわれも驚いている。NALIRIFOXレジメンは今後日本でも承認が見込まれているが、GnPとNALIRIFOXを比較した日本人のデータはまだなく、どちらを優先して使うかは今後の重要な臨床課題となるだろう」とした。

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