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お尻の形で糖尿病リスクを予測できる?

 老化やフレイル、そして糖尿病のリスクが、お尻(臀部)の形に現れているとする研究結果が、北米放射線学会年次総会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、シカゴ)で発表された。研究者によると、臀部にある大臀筋に起きる萎縮や炎症は、座っている時間の長さ、脂肪の蓄積の程度などの影響で変化し、糖尿病やフレイルのリスクを反映している可能性があるという。また、この変化のパターンは、男性と女性で異なるとのことだ。 発表者の1人である英ウェストミンスター大学のLouise Thomas氏は、「大臀筋は人体で最も大きな筋肉の一つであり、代謝の健康に重要な役割を果たしている可能性がある」と研究背景を解説。実際、これまでにも臀部の形と疾患との関連が研究されてきた。ただし、共同発表者である同大学のMarjola Thanaj氏は、「筋肉の大きさや脂肪の量を測定していた過去の研究とは異なり、われわれは形状を3Dで評価する技術を使用して、筋肉の付き方の変化を精密に把握した」と、従来の研究にはなかった本研究の特色を語っている。 この研究では、英国の一般住民対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータベースが解析に用いられた。6万1,290件のMRIスキャン画像と、研究参加者の身体測定値、疾患罹患状況、ライフスタイルに関する詳細な情報を収集。全体として86項目の変数を評価し、臀部の筋肉の形状の変化とそれらの関連性が、時間の経過によりどのように推移するのかを追跡した。 Thanaj氏によると、解析の結果、「激しい身体活動の実施状況や握力を基に『フィットネスレベルが高い』と評価された人は、大臀筋が大きいことが分かった。一方で、加齢、フレイル、座位時間の長さは、筋肉の厚さ(筋厚)が薄く変化することと関連していた」という。また、フレイルと判定された男性は、同じくフレイルと判定された女性に比べて、大臀筋の筋厚がより薄くなっていることが示されたとしている。 さらに、2型糖尿病の男性は臀部の筋厚が顕著に薄くなっているのに対し、同じく2型糖尿病であっても女性の場合は筋肉量が多いという差が認められた。この差はおそらく、組織内への脂肪の浸潤の有無による違いと考えられるとのことだ。なお、研究者によると、本研究で示された結果は全て、臀部の「大きさ」よりも「形状」の方が、体の代謝の変化とより密接に関係していることを示唆しているという。Thanaj氏は、「臀部の形状の変化に男女差が見られるということは、同じ疾患でも性別によって、生物学的反応に異なる影響が生じることを意味している。このような差異は特に、2型糖尿病患者で顕著に現れるようだ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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疼痛治療薬の副作用が心不全の誤診を招く?

 オピオイドに代わる鎮痛薬として使用されている薬剤のせいで、医師が心不全と誤診してしまう例が少なくないことが、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のMichael Steinman氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に12月2日掲載された。 ガバペンチンやプレガバリンなどのガバペンチノイドと呼ばれる種類の薬剤は、神経痛の治療目的で処方されることが多い。しかし、これらの薬剤の副作用の一つに、下肢のむくみ(浮腫)の原因となる体液貯留がある。体液貯留は、心不全の症状としても広く知られている。そのため、この副作用が生じた患者の多くに、利尿薬のような本来は不要であるはずの薬剤が追加で処方され、その結果、腎障害やふらつき、転倒によるけがなどのリスク上昇につながっていることが、今回の研究から明らかになった。このように、ある薬の副作用が別の疾患に関わる症状と認識され、それに対してさらに薬が処方される現象は、処方カスケードと呼ばれる。 研究グループによると、オピオイド危機を背景に、ガバペンチノイドの処方はこの10年でほぼ倍増した。Steinman氏は、「ガバペンチノイドは非オピオイド系薬剤であり、比較的安全性が高いと考えられがちだ。しかし、ガバペンチノイドを使用している患者は、それがベストの治療法なのかどうかを評価するために、定期的に医師に相談し、非薬物療法を含めた、より適切な別の治療選択肢について検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 Steinman氏らは今回の研究で、ガバペンチノイドとループ利尿薬の処方カスケードを経験している可能性の高い66歳以上の退役軍人120人(平均年齢73.9歳)の医療記録を調べた。120人のうち、106人(88.3%)は、5種類以上の薬を長期にわたって使用していた。73人(60.8%)では、浮腫の原因が記録されていたが、心不全(39.2%)や静脈うっ血(13.3%)を原因とする例が多く、ガバペンチノイドを考慮した医師はわずか4人(3.3%)にとどまっていた。また、116人(96.7%)にループ利尿薬が処方されていたが、そのほとんどは、下肢浮腫(86.7%)、心不全(13.3%)、呼吸困難(12.5%)の治療を目的としていた。 ループ利尿薬による治療開始から60日以内に、28人(23.3%)の患者で、腎機能の低下や起立時のめまい、低ナトリウムや低カリウムなどの電解質異常、転倒などのループ利尿薬に関連した健康問題が37件発生した。入院あるいは救急外来での治療が必要となった患者も6人(5.0%)いた。 Steinman氏らによると、下肢に浮腫が現れてからガバペンチノイドの服用を中止するよう指示した医師は1人だけだったという。一方で、浮腫の原因となり得る命に関わる疾患を除外するため、患者の約5人に1人が画像検査を受けていたことも明らかになった。 論文の筆頭著者であるUCSF医学部のMatthew Growdon氏は、「ガバペンチノイドは必要以上に高用量が処方されたり、効果が期待できない状態に対して処方されたりしている可能性がある。そのようなケースでは、医師はこれらの薬を処方しないこと、あるいは用量を減らして処方カスケードやその他の副作用のリスクを軽減することを検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。

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認知機能低下のサインは運転行動に現れる?

 運転行動の変化は認知機能低下の早期サインになる可能性があるようだ。車両に設置したGPS付きデータロガーで収集した、走行頻度、走行時間、急ブレーキなどの運転データは、早期認知機能低下のデジタルバイオマーカーになり得ることが、新たな研究で示された。米ワシントン大学医学部のGanesh Babulal氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に11月26日掲載された。Babulal氏は、「われわれは、GPSデータ追跡デバイスを使うことで、年齢や認知テストの結果、アルツハイマー病に関連する遺伝的リスクの有無といった要因だけを見るよりも、認知機能に問題が生じた人をより正確に特定することができた」と話している。 Babulal氏は、「交通事故のリスクが高い高齢ドライバーを早期に特定することは、公衆衛生上の重要課題だが、リスクのあるドライバーを見極めることは、既存の方法では時間がかかり困難だ」と指摘する。研究グループによると、軽度認知障害(MCI)の高齢者では、運転行動に微妙な変化が生じることが知られているが、その経時的な変化を実測して評価した研究は多くないという。 今回、研究グループは、実際の縦断的な運転データによりMCIの高齢者と認知機能が正常(normal cognition;NC)な高齢者を識別できるかを検討し、さらにその識別精度を、年齢や性別、APOE ε4遺伝子保有などの従来のリスク因子による予測精度と比較した。対象は298人(平均年齢75.1歳、女性45.6%)の高齢者で、このうち56人はMCI、242人はNCだった。試験参加者には毎年、臨床認知症評価尺度による認知機能の評価と神経心理検査が実施され、また、APOE ε4遺伝子の保有状況についても調査された。運転データは、参加者の車両に設置されたGPS付きデータロガーにより、最長40カ月間にわたって取得された。具体的な測定内容は、運転の頻度、時間、距離、時間帯、スピード、急ブレーキ、空間移動性(エントロピー〔訪れる場所の予測の難しさ〕、最大移動距離、行動範囲)などであった。 研究開始時点では、MCI群とNC群の運転行動にほとんど差は見られなかった。しかし、時間が経つにつれ違いが現れ、MCI群では、月間運転回数と夜間運転の頻度が減少し、また訪れる場所の多様性が低下する傾向が認められた。また、このような運転行動データのみを使った場合、MCI群とNC群を82%の精度で識別できることが示された。運転データに人口統計学的特徴やAPOE ε4遺伝子情報、認知機能評価の結果を加えると、精度は87%に向上した。一方、運転行動データを使用せず、従来のリスク因子のみを使用した場合の精度は76%だった。 Babulal氏は、「日常的な運転行動を観察することは、認知機能や日常生活能力を評価する上で、負担が少なく、邪魔にもならない方法だ。これにより、事故やヒヤリハットが起きる前の段階でリスクのあるドライバーを早期に発見し、介入につなげられる可能性がある。もちろん、個人の自律性やプライバシー、インフォームド・コンセントを尊重し、倫理基準を満たすことも不可欠だ」と述べている。

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がん免疫療法、投与時刻が効果に影響

 がん免疫療法の効果は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与する時刻によって異なる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。進展型小細胞肺がん(extensive-stage small-cell lung cancer;ES-SCLC)患者を対象にしたこの研究では、15時より前にICIの点滴を受けた患者では、15時以降に点滴を受けた患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に長かったことが示されたという。中南大学(中国)湘雅医学院付属腫瘍病院のYongchang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に12月8日掲載された。 Zhang氏は、「点滴を行う時刻の調整は、生存期間を延ばすための安価な方法となる可能性がある。追加費用も不要で、さまざまな医療現場で容易に実施できる簡単な介入だ」と述べている。 この研究では、2019年5月から2023年10月までの間にES-SCLCと診断され、化学療法に抗PD-L1抗体(アテゾリズマブまたはデュルバルマブ)を併用する一次治療を受けた397人を対象に、ICIの投与時刻が効果に影響するのかどうかが検討された。ICIの投与時刻は、各患者の最初の4サイクルのICI投与時刻の中央値とした。 解析の結果、ICIの効果を最大限に高める最適な投与時刻のカットオフは15時であることが示された。15時より前にICI投与を受けた患者では、15時以降に投与を受けた患者と比べて、PFSとOSが有意に長かった。多変量解析では、15時より前の早い投与時刻はPFSとOSのいずれにおいても独立した予後因子であることが確認され、病勢が進行するリスクは約52%(調整ハザード比0.483)、死亡リスクは約63%(同0.373)低下すると推定された。 Zhang氏は、「この研究結果は即時的な臨床的意義があり、現在のES-SCLC治療のプロトコルに変革をもたらす可能性を秘めている」と述べている。 研究グループは、ICIの投与時刻による効果の差は、体内時計(概日リズム)が免疫反応を含むさまざまな生体機能に影響するためだと考えている。それでも、概日リズムががん治療に及ぼす影響を理解し、患者の概日リズムを治療に最大限に活かす方法を確立するには、さらなる研究が必要だと指摘している。 研究グループは、「今回の知見は、生体リズムとICIによる治療の重要な相互作用を示しており、治療戦略の最適化に向けた新しい可能性を開くものだ」と結論付けている。(HealthDay News 2025年12月9日)

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子宮頸がん検診の選択肢に自己採取HPV検査を支持/米国がん協会

 子宮頸がんの定期検診の新たな選択肢に自己採取によるヒトパピローマウイルス(HPV)検査が加わることが、「CA: A Cancer Journal For Clinicians」に12月4日に発表された米国がん協会(ACS)の改訂ガイドラインで示された。専門家らは、膣鏡診なしで女性が自分で検体を採取できる検査を選べるようになることで、一般女性の検診に伴うストレスの軽減につながる可能性があるとの見方を示している。 米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター行動科学准教授のJane Montealegre氏は、「HPVのスクリーニングは、子宮頸がんのスクリーニングを意味している。これは女性の選択肢を広げることにつながる」と米NBCニュースに対して語った。 子宮頸がんのほとんどは、HPVが原因とされている。HPVは子宮頸がんを強く予測する要因であるため、現在は従来のパップテスト(細胞診)よりもHPV検査の方がスクリーニング方法として優先されている。 米国では2024年以降、米食品医薬品局(FDA)により3種類の自己採取HPV検査が承認されている。このうち2つは医療機関で膣スワブを用いて行うもの、残る1つは自宅で採取した検体を検査機関に郵送する検査である。米国では、検診とHPVワクチンの普及により子宮頸がんの発症率は数十年にわたって低下している。それでも、2022年に「JAMA Network Open」に掲載された研究によると、20%以上の女性が最新の検診を受けていない。 ACSがん早期発見部門の疫学者でシニア・バイス・プレジデントであり、今回発表された改訂ガイドラインの上席著者でもあるRobert Smith氏は、NBCニュースに対し、「自己採取による検査では、女性は、渡されたキットを使って診察室やトイレなど好きな場所で自分の検体を採取できる」と説明している。 医療従事者の採取による検査の場合には、HPV検査を5年ごとに受け、陽性の場合は追加検査を受けることが、ACSと米予防医学専門委員会(USPSTF)により推奨されている。一方ACSは、平均的なリスクの女性であれば、FDAによる承認を得た方法による自己採取HPV検査を受け、結果が陰性であれば3年ごとに検査を受けることを支持している。また、HPV検査を従来のパップテストと組み合わせて3年ごと、または5年ごとに行う方法も提示されている。 ACSとUSPSTFの推奨内容の違いは、HPV検査の開始年齢である。ACSでは25歳から開始することを推奨しているが、USPSTFでは30歳からの開始とし、21~29歳ではパップテストのみによる検診を3年ごとに受けることを推奨している。保険適用は、医療保険制度改革法(ACA)のもとで継続される見込みで、専門家らは医療機関で行われる自己採取検体も対象に含めるべきだとの見方を示している。 今回改訂されたACSのガイドラインでは、検診をいつまで受けるべきかについても明確な時期が示されている。それによると、65歳以上の平均的なリスクの女性は、60歳と65歳に受けたHPV検査がともに陰性であるか、または同じ年齢で実施したHPV検査とパップテストの併用検査がともに陰性であれば、子宮頸がん検診を中止してもよいとされている。 Smith氏は、「65歳まで定期的に検診を受けることの重要性について明確な推奨があるにもかかわらず、実際に受けている女性は極めて少ない。子宮頸がん検診をやめても安全であることを示す65歳までの記録が必要であることを女性たちに認識してもらうことが重要だ」と話している。 一方、今後、さらに検査間隔が延長される可能性があるとの見方を示す研究者もいる。米ミシガン大学産婦人科学・家庭医学教授のDiane Harper氏は、NBCニュースの取材に対し、「ワクチン接種率が高い集団では10年ごとの検査でも十分であるというデータがあるが、米国はその点で後れをとっている」と話している。

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健康診断の新視点、筋肉量指標で高血圧リスクを見える化

 従来のBMIでは筋肉量と脂肪量の違いを反映できないという問題がある。今回、男性の除脂肪体重指数(LBMI)を用い、低LBMIが高血圧リスクの増加と関連するという研究結果が報告された。BMIだけでは捉えられないリスク評価の重要性を提示している。研究は、慶應義塾大学医学部内科学教室の畔上達彦氏、東京大学医学部附属病院循環器内科先進循環器病学講座の金子英弘氏らによるもので、詳細は11月10日付で「Hypertension Research」に掲載された。 高血圧は心血管疾患や慢性腎臓病の主要リスク因子であり、世界的に重要な公衆衛生課題となっている。肥満は高血圧リスクの主要因子とされるが、BMIでは脂肪量と除脂肪体重(筋肉量)を区別できず、正確なリスク評価には限界がある。除脂肪体重を正確に測定するには高コストの画像検査が必要だが、近年、身長・体重・ウエストなどから推定できる簡易LBMIが開発され、日常の健康診断データでも評価が可能になった。しかし、この簡易LBMIを用いた高血圧リスク評価はこれまで行われていない。本研究では、健康診断や医療請求データを用いて、男性のLBMIと高血圧発症リスクの関連を後ろ向きに解析した。 本研究では、国民の行政保険請求データおよび年次健康診断記録を含むDeSCヘルスケア株式会社のデータベース(2014年4月~2022年11月)を用い、健康診断データが利用可能な男性98万5,521人を対象とした。主要評価項目である高血圧の発症は、診療報酬請求データに基づきICD-10コード(I10-I15)で同定した。リスク評価にはCox回帰モデルおよびスプラインモデルを用い、年齢や既往歴などの交絡因子で調整した。さらに、結果の頑健性を確認するため、層別解析および感度解析も実施した。 最終的な解析対象は、38万4,551人(年齢中央値51歳)であり、中央値1,393日の追跡期間中に4万312人(10.5%)が高血圧イベントを経験した。 まず、参加者のLBMIを四分位(Q1~Q4)に分類し、各群間で比較を行った。年齢、収縮期血圧および拡張期血圧、BMI、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、身体活動を交絡因子として調整した多変量Cox回帰を用いて、LBMIと高血圧発症リスクの関連を評価した。その結果、LBMIが低い四分位に属するほど高血圧発症リスクが高く(ハザード比〔95%信頼区間〕:Q1, 1.20〔1.15~1.26〕;Q2, 1.06〔1.02~1.10〕;Q3, 1.03〔0.99~1.06〕;Q4, 1〔基準値〕)、制限付き三次スプライン回帰モデルでも、LBMIの低下に伴い高血圧リスクが上昇する傾向が確認された。 次に、年齢別(65歳未満または65歳以上)および非肥満者で層別化したサブグループ解析を行った。いずれの層別群においても、多変量Cox回帰の結果、LBMIが低いほど高血圧発症リスクが上昇する傾向が確認された。 さらに、主要解析結果の頑健性を確認する感度解析として、連鎖方程式による多重代入法で欠測値を補完し、50万5,696人を対象に解析を行った。この解析においても、LBMIが低い四分位(Q1)は高血圧発症の有意なリスク因子であった(同1.19〔1.14~1.24〕)。加えて、死亡を競合事象とした競合リスク解析においても、LBMIが低い四分位(Q1)で高血圧発症リスクの上昇が認められた(同1.23〔1.15~1.32〕)。 これらの層別解析および感度解析により、LBMIと高血圧発症リスクとの関連は解析手法や欠測値の扱いにかかわらず一貫して確認された。 本研究について著者らは、「男性においてLBMIが低いことは高血圧リスクの上昇と関連しており、除脂肪体重を指標とした管理の重要性が示唆された。今後は、その増加や維持がリスク低減につながるかどうかの検討が必要である」と述べている。

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飛行機や病院の空気中の微生物は皮膚由来の無害な細菌が優勢

 飛行機の中や病院内の空気が気になる潔癖症の人を少し安心させる研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学土木・環境工学准教授のErica Hartmann氏らによる研究で、機内や病院内の空気に含まれている微生物は、主に人の皮膚に常在する無害な細菌で構成されていることが明らかになった。この研究結果は、「Microbiome」に12月4日掲載された。 この研究では、使用済みマスクの外側表面と航空機のエアフィルターから微生物を回収し、そこに含まれるDNAを抽出してショットガンメタゲノム解析を行った。解析には、8,039時間使用された後に回収された航空機のエアフィルター1つと、飛行機利用者10人と、勤務後の医療従事者12人から入手した使用済みマスクが用いられた。 Hartmann氏らがこの研究のアイディアを思い付いたのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下の2022年1月だったという。同氏は、「当時、飛行機内での新型コロナウイルス感染リスクが深刻に懸念されていた。機内のHEPAフィルターは非常に高い効率で空気をろ過するので、空気中のあらゆるものを捕捉する優れた方法であると考えた」と話す。同氏はさらに、「ただし、これらのフィルターは、車や家庭に備え付けられているフィルターとは違う。何千ドルもする上、取り外すには航空機整備のために運休させなければならず、これには当然、莫大な費用がかかる。これは大きな驚きだった」と振り返る。 そこで、研究グループがはるかに安価な代替手段として目をつけたのがマスクであった。さらに、機内だけでなく病院も加えることにした。Hartmann氏は、「われわれは、マスクを、個人がどんな空気にさらされているのか、あるいは周囲の空気がどのような状態なのかを調べるための安価で簡便な空気サンプリング装置として使えることに気が付いた」とニュースリリースの中で述べている。 解析の結果、407種類の微生物種が確認された。飛行機のフィルターでも医療従事者や旅行者のマスクでも共通して高頻度で認められたのは、Cutibacterium acnes、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus hominisなどの皮膚常在菌であった。Hartmann氏は、「ある程度、予想されたことではあったが、検出された細菌の多くは屋内空間の空気に典型的に存在するタイプのものだった。つまり、屋内の空気は『屋内の空気らしい微生物構成』をしており、人の皮膚の常在細菌とよく似ていた」と話している。一方、Sphingomonas hankookensisやMethylobacterium radiotoleransなどの環境由来の細菌も、特にエアフィルターから高い頻度で検出された。さらに、大腸菌や緑膿菌、サルモネラ菌など、病原性を持つ可能性のある細菌もわずかに検出されたが、いずれも極めて低レベルであり、活性や感染の兆候は認められなかった。 このように、屋内の空気は比較的安全であることが示された一方で、感染性の微生物は他の経路、特に接触により広がることを研究グループは指摘している。Hartmann氏は、「今回の研究でわれわれは、空気中に何が含まれているのかだけを調べた。環境表面からの病原体の伝播を防ぐ上では、手指の衛生が依然として有効だ。われわれが関心を持ったのは、たとえ手を洗っていたとしても、人々が空気を通じて何に曝露されているのかという点だった」と話している。

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左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有益ではない(解説:佐田政隆氏)

 急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、駆出率の低下を伴わない心筋梗塞後に対しても、現在の各国ガイドラインではβ遮断薬の使用を推奨している。しかし、その根拠となったエビデンスは、再灌流療法や、スタチンやレニン・アンジオテンシン系阻害薬などの心保護薬の使用も一般的ではない1990年代までの臨床試験に基づくものであった。最近は、急性期再灌流療法の普及で、左室駆出率が良好なまま回復する症例が増え、本当にそのような場合に漫然と長期間β遮断薬を投与したほうがよいかどうかは、エビデンスがないのが現状であった。 そこで、最近、左室駆出率が40%以上の急性心筋梗塞を対象にβ遮断薬の有効性を検討する臨床試験が各国で行われた。そのメタ解析が2025年11月、American Heart Association 2025で発表され、同日New England Journal of Medicine誌に掲載された。スペインで行われたREBOOT試験(7,459例)、スウェーデン、エストニア、ニュージーランドで行われたREDUCE-AMI試験(4,967例)、ノルウェーで行われたBETAMI試験(2,441例)、デンマークで行われたDANBLOCK試験(2,277例)、日本で行われたCAPITAL-RCT試験(657例)の統合解析で、急性心筋梗塞(ST上昇型・非ST上昇型)後14日以内で左室駆出率が50%以上、高血圧や不整脈などβ遮断薬の積極的な適応がない患者を対象にしている。主要評価項目(全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合エンドポイント)について、β遮断薬群と非投与群で有意差は認められなかった(β遮断薬群:8.1%、非投与群:8.3%、HR:0.97、95%CI:0.87~1.07)。本試験で、左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者では、β遮断薬の有益性が否定されたことになる。 一方、BETAMI試験、DANBLOCK試験、REBOOT試験、CAPITAL-RCT試験のメタ解析では、心不全の徴候がなく左室駆出率が軽度低下(40~49%)した急性心筋梗塞患者において、β遮断薬は総死亡、再梗塞、心不全を減少させることが2025年欧州心臓病学会で発表された(Rossello X, et al. Lancet. 2025;406:1128-1137.)。 このような最近のエビデンスに基づき、急性心筋梗塞患者に対するガイドラインは改訂されていくものと思われる。

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転倒予防は「ぬ・か・づけ」で覚える

転倒予防は「ぬ・か・づけ」で覚える冬季は厚着の服装で動きが緩慢になったり、寒さで筋肉も動かなくなるため、転倒事故が増えます。とくに高齢者では転倒による骨折が原因となる寝たきり状態などへのリスクとなります。こうした高齢者の転倒事例は、屋外だけでなく、屋内でも多く報告されています。転倒予防には「ぬ・か・づけ」*で危険な場所を覚えておきましょう。(*「ぬかづけ」は日本転倒予防学会が提唱)ぬ:濡れているところか:階段や段差(部屋とづけ:片づけていない(浴室や洗面所、台所など滑りやすい)部屋の間の段差などつまずきやすい)ところ(茶の間や廊下などつまずきやすい)(引用:消費者庁ホームページ「10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_055/assets/consumer_safety_cms205_211005_01.pdf )Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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心窩部の不快感と胃酸の逆流感【日常診療アップグレード】第46回

心窩部の不快感と胃酸の逆流感問題35歳の男性。1ヵ月前から、心窩部の不快感と繰り返すゲップを主訴に来院した。食後、前かがみになると、酸っぱいものが込み上げてくる。仕事が忙しいため、21時に帰宅し晩酌をしながら、遅い夕食を食べ、すぐに就寝する。黒色便なし。体重減少なし。バイタルサインは正常。BMIは28である。腹部を含む診察所見に異常はない。上部内視鏡検査をオーダーした。

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第299回 Novo社の経口抗肥満薬ウゴービ錠を米国承認

Novo社の経口抗肥満薬ウゴービ錠を米国承認GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)ウゴービ(セマグルチド)を世に出して肥満治療の新たな時代を切り拓いたNovo Nordiskが、肥満に使う経口GLP-1薬の初の米国承認1)を手にして再び肥満治療を進歩させます。ウゴービ錠は先週の月曜日22日に米国で承認されました。注射のウゴービと同様に、心血管疾患を経ている過体重か肥満の成人患者の心血管疾患イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)リスクを減らす用途と、肥満か体重に関連する疾患を有する過体重の成人患者の過剰な体重を減らして体重減少を維持する用途が許可されました2)。胃腸の有害事象を被り難くするために、ウゴービ錠の服用量は徐々に増やしていきます。まずは1.5 mgを30日間1日1回服用し、大丈夫そうなら次の30日間(31~60日)は1日4mg、その次の30日間(61~90日)は1日9mgを服用し、91日目以降は維持用量の1日25mgを服用し続けることを目指します。患者が1日25mg服用に耐えられないなら、ウゴービ1.7mg注射に切り替えることを考慮します。ウゴービ錠の体重減少効果はOASIS 4と銘打つ第III相試験で裏付けられています。同試験には肥満か体重に関連する疾患を有する過体重の非糖尿病成人307例が参加し、ウゴービ群に割り振られた205例の64週時点での体重はベースラインに比べて14%減っていました2,3)。プラセボ群102例の64週時点の体重はほとんど変わらず2%ほど減ったのみでした。Novo Nordiskの経口GLP-1薬による肥満症治療が米国承認一番乗りしたわけですが、肥満治療分野でしのぎを削るEli Lillyの足音も近づいています。Eli Lillyの経口GLP-1薬orforglipronは今月中旬に発表された第III相ATTAIN-MAINTAIN試験の目標達成をもって準備が整い、米国にすでに承認申請しています4)。ウゴービ錠と同じくorforglipronも承認申請受理から1~2ヵ月以内に審査を済ませる優遇の対象となっており、順調にことが運べば早くも来年3月には米国承認に漕ぎ着ける段取りとなっています5)。第III相ATTAIN-1試験で、orforglipron高用量は過体重か肥満の患者の72週時点の体重をベースラインに比べて平均11.2%減らしています6)。よく効く注射のGLP-1薬の類いがここ数年で使えるようになったとはいえ、薬による治療を求める肥満患者は依然としてごく一握りのようです。Novo Nordiskの幹部の1人のMartin Holst Lange氏の説明によると、米国の肥満患者のうち薬を使っているのは2%足らずです7)。ウゴービ錠は注射を嫌う患者にも選ばれる可能性があり、冷やして保管する手間が要りません。これまで治療を求めなかったり受け入れなかったりした患者がウゴービ錠で助かると信じている、とNovo Nordiskの米国事業を率いるDave Moore氏は言っています1)。ウゴービ錠は米国で来年1月早々に発売されます。米国政府との取り決め8,9)に基づき、開始用量1.5mgの1ヵ月分が149ドルで提供されます。Eli Lillyのorforglipronも承認されたら最も低用量の開始分が同じく149ドルで提供されます10)。参考1)FDA approves Novo Nordisk's Wegovy pill, the first and only oral GLP-1 for weight loss in adults2)Wegovy PRESCRIBING INFORMATION3)Wharton S, et al. N Engl J Med. 2025;393:1077-1087.4)Lilly's orforglipron helped people maintain weight loss after switching from injectable incretins to oral GLP-1 therapy in first-of-its-kind Phase 3 trial5)Novo's Wegovy pill to test demand from consumers with cash6)Wharton S, et al. N Engl J Med. 2025;393:1796-1806.7)Novo Nordisk wins FDA approval for Wegovy in a pill, introducing first oral GLP-1 option for obesity8)Fact Sheet: President Donald J. Trump Announces Major Developments in Bringing Most-Favored-Nation Pricing to American Patients9)Novo Nordisk, Lilly strike deal with Trump to slash weight-loss drug prices10)What to know about orforglipron: An investigational oral GLP-1

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マラソンの心臓への影響は?ランナーを10年追跡

 高強度かつ長時間の運動負荷が右室機能に及ぼす影響、運動誘発性の心筋トロポニンT(TnT)値の上昇と将来的な右室機能障害との関連は明らかになっていない。そこで、スイス・チューリッヒ大学のMichael Johannes Schindler氏らの研究グループは、市民マラソンランナーを対象とした10年間の縦断的コホート研究(Pro-MagIC研究)を実施した。その結果、フルマラソン直後には一過性の右室機能低下とTnT値の上昇が認められたものの、これらは数日で回復し、10年後の右室機能低下とは関連しないことが示された。本研究結果は、JAMA Cardiology誌オンライン版2025年12月10日号で報告された。 本研究は、2009年のミュンヘンマラソンに参加した男性市民ランナーを対象とした「Be-MaGIC研究」の参加者277人のうち、10年後に再評価が可能であった152人を対象とした。評価は、2009年のレース前(ベースライン)、レース直後、レース1日後、3日後、および10年後の計5時点で行った。主要評価項目は、2009年のマラソン直後のTnT値のベースラインからの変化と10年後の右室駆出率(RVEF)のベースラインからの変化との関連とした。左室駆出率(LVEF)、拡張能指標(E/e'など)、バイオマーカー(TnT、NT-proBNP)なども評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時における対象の平均年齢は43歳であった。2009年のミュンヘンマラソン参加前のフルマラソン完走数中央値は3回(四分位範囲:1~7)、参加後のフルマラソン完走数中央値は5回(同:2~9)であった。・RVEFは、レース前(中央値:52.4%)と比較して、レース直後(同:47.6%)およびレース1日後(同:50.7%)で有意に低かった(それぞれp<0.001、p=0.001)。しかし、レース3日後には有意差はみられなくなった(同:51.3%、p=0.18)。・10年後におけるRVEF中央値は51.9%であり、レース前と比較して有意な変化は認められなかった(p=0.15)。・LVEFは、レース前(中央値:59.6%)と比較して、10年後(同:57.6%)でわずかに低かった(p<0.001)。・左室充満圧の指標である側壁E/e'は、レース前(中央値:5.1)と比較して10年後(同:5.4)で高かった(p<0.001)。・TnT値は、レース前(中央値:3ng/L)と比較して、レース直後(同:33.7ng/L)およびレース1日後(同:9ng/L)で有意に高かった(それぞれp<0.001、p=0.001)。しかし、レース3日後(同:3.5ng/L)、10年後(同:7.0ng/L)には有意差はみられなかった。・2009年のマラソン直後に認められた運動誘発性のTnT値のベースラインからの変化と、10年後のRVEFおよびLVEFのベースラインからの変化との間に有意な関連は認められなかった(RVEF:r=-0.10、p=0.35、LVEF:r=-0.09、p=0.35)。 著者らは、「マラソンによるTnT値の上昇や右室機能低下は一過性の変化であり、大多数の市民ランナーにおいて、右室機能の長期的な悪化をもたらすことはないことが示唆された。LVEFや拡張能指標に統計学的に有意な変化がみられたが、正常範囲内にとどまるものであった」と結論付けている。

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ミトコンドリア活性化技術で希少疾患に挑む、その機序や効果とは

 “細胞のエネルギー生産工場”とも呼ばれ、ほぼすべての細胞に存在する細胞小器官ミトコンドリア。これを用いた希少疾患の根本治療や加齢対策が、今、現実味を帯びている。先日開催された第7回ヘルスケアベンチャー大賞では、マイトジェニックの「ミトコンドリア活性化による抗加齢ソリューション『マイトルビン』事業」が将来性や抗加齢への観点を評価され、大賞を受賞した。同社が期待を集める創薬技術や将来ビジョンとは―。なぜ今、ミトコンドリア活性化が注目される? 同社は“ミトコンドリア研究の成果を世の中に還元する”を理念に掲げる学習院大学発のベンチャー企業である。同社が開発・特許出願を行った植物由来の低分子化合物「マイトルビン(Mitorubin)」を用いた“ミトコンドリア活性化”という新たな健康軸から、老化予防や加齢性疾患治療薬の創出を目標に掲げて活動を行っている。 ミトコンドリアは身体のエネルギー源をATPとして供給し、その副産物として活性酸素を発生させるが、ミトコンドリアの機能が低下すると、エネルギー産生の過程で電子の渋滞が起こり、過剰な活性酸素が発生して細胞やDNAを傷付けてしまう。その結果、パーキンソン病などの神経変性疾患、心疾患、フレイル、シミ・シワといった皮膚の外見変化などに影響を及ぼすため、いかにして「ミトコンドリアを活性化させるか」が焦点となっている。これまでにコエンザイムQ10(CoQ10)やニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、5-アミノレブリン酸(5-ALA)などの成分によるミトコンドリアの活性化・増殖促進が産学で試みられているが、同社の開発するマイトルビンはそれらとは一線を画す。マイトルビンによるミトコンドリア活性化の機序 その理由は、ミトコンドリアを活性化させる作用機序が一つひとつ丁寧に解明されつつあるからである。遡ること2006年、ミトコンドリア機能を制御するミトコンドリア酵素Mitochondrial Ubiquitin Ligase(MITOL、マイトル)を柳 茂氏(学習院大学理学部生命科学科分子生化学 教授)らの研究グループが発見したことに端を発する1)。MITOLはミトコンドリアの分裂を進めるタンパク質「Drp1」を分解してその分裂を抑えるほか、小胞体との融合を助けるタンパク質「Mfn2」を活性化させる役割を担う1,2)。近年では、ミトコンドリアと小胞体が接触するミトコンドリア関連小胞体膜(Mitochondria-associated ER membrane、MAM)における酸化ストレスや細胞運命の制御機構にも注目が集まっており3,4)、その機能低下がアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の病態、さらには心臓の老化に関与することなどから、ミトコンドリアにおける老化制御因子として多彩な研究が進められている5-7)。そして、マイトルビンは前述の柳氏らにより生薬成分ベルベリンから合成された一連の誘導体群の総称で、これがMITOLをはじめとしたミトコンドリアタンパク質を増強しつつ、ミトコンドリアの量そのものを増加させる。それにより、ミトコンドリアでのエネルギー産生が有意に高まることが培養細胞およびマウスモデルで確認された8)。 今回の受賞において、登壇した谷若氏はマイトルビンの有効性について、「筋肉由来の培養細胞に添加することで、エネルギー産生に適した細く長い高品質のミトコンドリアが増加し、ミトコンドリアの呼吸活性が上昇した。これらの実験を踏まえて高齢マウスに飲水投与を行ったところ、心筋ミトコンドリアの呼吸活性が強化され、心エコーなどで心機能の回復が認められた」とコメント。また、安全性については、「同条件下での長期投与による死亡リスクはなく、さらに高脂肪食負荷マウスにおいて、23%の寿命延長効果を確認した」と老齢マウスにおけるアンチエイジング効果が実証されたことを説明した8)。ミトコンドリア病や加齢性疾患の創薬実現に向けて これらの研究結果から、同社は指定難病であるミトコンドリア病患者のアンメットメディカルニーズに応えるべく治療薬開発でも前進している。「某大学医学部と共同研究を行い、MELASと呼ばれるミトコンドリア病の患者由来細胞にマイトルビンを添加した結果、ミトコンドリア機能の改善を認めた」とし、論文化についても言及した。さらに同社は、一般消費者向けにマイトルビン含有植物由来原料を使用したサプリメント「MitoRubin(R)」や入浴剤を販売するなどし、認知度の拡大や収益モデルを構築しながら、ミトコンドリア病治療薬の前臨床試験実施に向けた取り組みを行っている。 最後に同氏は「われわれの目標は希少疾患への創薬提供であり、それに続いて加齢性疾患への適応拡大を目指す。さまざまな領域の研究者・臨床医との連携を強化しつつ、マイトルビンを通じて、すべての世代にミトコンドリアの活性化と健康を届けたい」と締めくくった。ヘルスケアベンチャー大賞とは ヘルスケアベンチャー大賞とは、アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を開き、社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げ、今年で7回目の開催を迎えた。■参考第7回ヘルスケアベンチャー大賞株式会社マイトジェニック1)Yonashiro R, et al. EMBO J. 2006;25:3618-3626.2)Sugiura A, et al. Mol Cell. 2013;51:20-34.3)Nakashima A, et al. Life Sci Alliance. 2019;2:e201800045-e201800045.4)Takeda K, et al. EMBO J. 2019;38:e100999.5)Shiiba I, et al. EMBO Rep, 2021;22:e49097.6)Takeda K, et al. Commun Biol. 2021;4:192.7)Tokuyama T, et al. iScience. 2022;25:104582.8)Sato M, et al. bioRxiv 2025. May 3. [Epub ahead of print]

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1週間のSNSデトックスで若者のメンタルヘルスが改善

 多くの若者にとって、SNSは、友情、ニュース、ストレスなど生活の全てが集まる場所だ。18~24歳の若者を対象にした新たな研究で、たった1週間でもSNSから離れることで、不安や抑うつ、睡眠問題が緩和される可能性のあることが示された。米ハーバード大学医学大学院精神医学准教授のJohn Torous氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月24日掲載された。 この研究は、18~24歳の若者を対象に、客観的に測定されたSNSの使用時間と問題のある使い方が若者のメンタルヘルスに与える影響を調べたもの。試験に登録された417人は、2週間の観察的ベースライン期間を経て、任意で1週間のSNSデトックス介入に参加した。 登録者のうち373人(平均年齢21.0歳)がベースラインの評価を受け、295人(79.1%)がデトックス介入に参加することに同意した。デトックスによる変化として評価したのは、抑うつ(Patient Health Questionnaire-9;PHQ-9で評価)、不安(Generalized Anxiety Disorder-7;GAD-7で評価)、不眠(Insomnia Severity Index;ISIで評価)、孤独感(UCLA Loneliness Scaleで評価)であった。 1日当たりのSNSの平均使用時間は、ベースラインで1.9時間であったのが、介入期間中には0.5時間にまで減少した。介入を受けた参加者では、平均して、不安症状が16.1%、抑うつ症状が24.8%、不眠症状が14.5%、それぞれ有意に軽減したことが示された。孤独感については、介入の前後で有意な差は認められなかった。 Torous氏は、「SNSの使用を控えることを、第一選択の治療法や唯一の治療法にすべきではない。ただ、すでにメンタルヘルス問題を抱えていて、それに対する治療を受けているのなら、SNSの使用を減らすことで気分が改善するか試してみる価値はあるだろう」とニューヨーク・タイムズ紙に対して述べている。同氏によると、SNSの使用を減らすことで改善を強く感じた人もいれば、ほとんど変化を感じなかった人もいるなど、効果には個人差があったという。 そのような結果になった一因として、専門家の1人で本研究には関与していない米ステットソン大学心理学教授のChristopher Ferguson氏は、本研究がランダム化比較試験ではなかった点を指摘し、「参加者は期待される行動を知っていたため、それに沿って回答を変えた可能性もある」との見方を示している。 一方で、この結果がSNSとメンタルヘルスの関係についての議論に有益な情報を提供したと評価する専門家もいる。米国心理学会(APA)のチーフサイエンスオフィサーを務めるMitch Prinstein氏は、SNSの一時的な使用休止を、「お金をかけずに試せ、短期間で改善が期待できる簡単な方法」と評価している。同氏は、「これは、親や若者自身が取り組める方法だ。SNSの使用時間を大幅に減らせば、若者の気分がかなり改善する可能性がある」とニューヨーク・タイムズ紙の報道で述べている。 ただし、過去の研究では結果が一貫していない点も指摘されている。一部の研究では、「デジタルデトックス」の効果は小さいかほとんどなかったとされており、効果が長続きするかどうかは、現時点では不明である。

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不眠症は認知機能低下および認知障害リスクと関連

 不眠症は、認知機能の低下および認知障害(cognitive impairment;CI)のリスクと関連があるとする研究結果が、「Neurology」10月7日号に掲載された。 米メイヨー・クリニックのDiego Z. Carvalho氏らは、高齢者における慢性不眠症と、縦断的な認知機能アウトカムおよび脳の健康指標との関連を評価した。対象は、認知機能に障害のない高齢者で、年1回の神経心理学的評価と、連続的な画像評価としてアミロイドPETによるアミロイド負荷量(センチロイド単位)およびMRIで測定した白質高信号(WMH、頭蓋内容積に対する割合)のデータが取得された。全般的認知機能モデルには2,750人、Cox回帰ハザードモデルには2,814人が組み入れられ、追跡期間の中央値は5.6年であった。また、WMHモデルには1,027人、アミロイドPETモデルには561人が組み入れられた。 解析の結果、不眠症は、全般的認知機能スコアの年当たりの低下を0.011ポイント加速させ、認知障害のリスクを有意に高めていた(ハザード比1.4)。また、睡眠時間の減少を伴う不眠症は、ベースライン時の認知機能(β=-0.211)、WMH負荷(β=0.147)、アミロイドPET負荷量(β=10.5)と関連していた。一方、睡眠時間が比較的長かった不眠症患者では、ベースライン時のWMH負荷が低かった(β=−0.142)。不眠症は、WMHやアミロイド蓄積の経時的な変化とは関連していなかった。 Carvalho氏は、「不眠症は翌日の気分に影響を与えるだけでなく、経時的に脳の健康にも影響を及ぼす可能性がある。思考能力の低下の加速や脳の変化が観察されたことから、慢性不眠症は将来的な認知機能障害の早期警告サイン、あるいは寄与因子である可能性が示唆された」と述べている。 なお複数の著者が、バイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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スリムな体型を維持するには運動と食事の双方が大切

 年齢とともに増えがちな体重を抑制しスリムな体型を維持するには、食生活の改善と習慣的な運動の双方を実践することが、最も効果的であることを示すデータが報告された。英オックスフォード大学のShayan Aryannezhad氏(研究時点の所属は英ケンブリッジ大学に設置されている英国医学研究会議〔MRC〕の疫学部門)らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に11月21日掲載された。食事と運動の組み合わせは、健康への悪影響が強い「内臓脂肪」を抑えるという点で特に効果的だという。 Aryannezhad氏は、「体重の変化について語るとき、人々は体重計の数値のみに注目していることが多い。しかし、体重が全く同じように変化しているとしても、その意味が同じであるとは限らない。第一に、糖尿病や心臓病といった心血管代謝疾患のリスクを考える場合は、筋肉を減らさず脂肪を減らす必要がある。第二に、その脂肪も蓄積されている場所によって、健康への有害性が異なる。つまり、体重が増えたり減ったりした場合、筋肉や脂肪がどのように変化したのかを知ることが重要だ」と語っている。そして研究者らは、「2型糖尿病や脂肪肝、心臓病と強く関連しているのは『内臓脂肪』だ」と指摘している。 Aryannezhad氏らの研究では、英国の一般住民7,256人(平均年齢48.8±7.4歳、女性51.7%)を平均7.2±2.0年追跡して、食事・運動習慣と体重や体組成の変化との関連を検討した。解析の結果、食習慣が良好(地中海食の遵守度のスコアが高得点)になること、および、習慣的な運動量が増えることは、いずれも体脂肪や内臓脂肪の減少と関連があった。ただし、その関連性はあまり強くなかった。それに対して、食習慣が良好になり、かつ運動量が増えた人では、より明確な効果が認められ、特に内臓脂肪への好ましい影響という点で顕著だった。 具体的には、7.2年間の追跡期間中に食事・運動習慣がともに改善していた人は、改善も悪化もしていなかった人に比べて、体脂肪が1.86kg、内臓脂肪が149g、それぞれ少なくなっていた。しかし食習慣だけが改善していた人は、同順に0.59kg、50gの差しか生じておらず、また運動習慣だけが改善していた人も、同順に1.51kg、120gの差にとどまっていた。 論文の上席著者であるMRCの疫学部門のリーダーであるNita Forouhi氏は、「われわれの研究結果は、中年期における食生活の改善と運動量の増加は、単に体重減少につながるだけでなく、病気の予防やより健康的な老化の促進にも役立つ可能性があることを示唆している。現在のような、不健康な食生活と運動不足を助長する社会環境においてそのような生活を続けることには困難を伴うが、小さくても継続可能な変化を起こしていくことが、将来的なメリットにつながる」と述べている。

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食事からのポリフェノール摂取は心臓の健康に有益

 紅茶、コーヒー、ベリー類、ココア、ナッツ類、全粒穀物、オリーブ油など、抗酸化作用を持つフェノールやポリフェノール(以下、まとめて「ポリフェノール」と表記)を豊富に含む食品を多く摂取することが、より健康的な血圧値やコレステロール値と関連し、心血管疾患(CVD)リスクスコアの低下にもつながり得ることが、新たな研究で明らかになった。なお、フェノールとは、主にベンゼン環にヒドロキシ基が結合した化合物の総称であり、このうちフェノール性水酸基を複数持つ化合物をポリフェノールと呼ぶ。先行研究では、ポリフェノールは心臓や脳、腸の健康に有益であることが示されている。 この研究を実施した、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)栄養学分野のYong Li氏は、「この研究は、ポリフェノールを豊富に含む食品を定期的に食事に取り入れることが、心臓の健康を支えるシンプルで効果的な方法であることを示す強力なエビデンスだ」と述べている。詳細は、「BMC Medicine」に11月27日掲載された。 この研究でLi氏らは、TwinsUKの参加者3,110人が回答したEPIC-Norfolk食事摂取頻度調査票(FFQ)を基に、食事性ポリフェノール摂取量を推定した。その上で、ポリフェノール含有量の多い20食品群の摂取量から、各参加者のポリフェノールの豊富な食事スコア(PPS-D)を算出した。さらに、200人の参加者から採取したスポット尿検体を用いて、超高速液体クロマトグラフィー-質量分析(UHPLC-MS)により114種類のポリフェノール代謝物を客観的に測定し、51種類のポリフェノール代謝物に基づく曝露指標(PPS-M)を算出した。その上で、PPS-DまたはPPS-MとCVDリスク(アテローム動脈硬化性心血管疾患〔ASCVD〕リスクスコアおよびHEARTスコア)、および血圧や善玉コレステロールとも呼ばれるHDLコレステロール(HDL-C)などのCVDバイオマーカーとの関連を評価した。 その結果、PPS-Dが高いほどASCVDリスクスコアおよびHEARTスコアが低く、ポリフェノールの摂取量が多いほどCVDリスクは低下する傾向が認められた。尿サンプルが得られた200人を対象に再現性を解析したところ、フラボノイド、フェノール酸、チロソール由来の代謝物が、両スコアおよび拡張期血圧の有意な低下、HDL-Cの有意な上昇と関連することが示された。さらに、PPS-Mに関する解析では、PPS-Mが高いほど、HDL-C値が高く、ASCVDリスクスコアおよびHEARTスコアが低いことも確認された。 研究グループは、ポリフェノールが豊富な食品は、健康的な食生活の他の要素と相乗的に作用し、心血管の健康を促進している可能性があると指摘する。論文の上席著者であるKCLのAna Rodriguez-Mateos氏は、「本研究結果は、ポリフェノールを多く含む食事を長期間取り続けることで、加齢に伴う心血管リスクの上昇を大きく抑えられる可能性があることを示している。少量でも、ベリー類や紅茶、コーヒー、ナッツ類、全粒穀物などの日常的な摂取を習慣付けることで、長期的には心臓を守る助けになる可能性がある」と述べている。 ただし、本研究結果は、ポリフェノールの摂取が心臓の健康と関連することを示したに過ぎず、両者の因果関係が証明されたわけではない。それでも研究グループは、加齢に伴いCVDリスクは高まる傾向がある一方、ポリフェノールを多く含む食事はその進行を遅らせる可能性があることを強調している。Li氏は、「ポリフェノールは日常的な食品の中に広く含まれていることから、多くの人にとって実践しやすい健康対策だ」と述べている。

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HIV、免疫療法により抗ウイルス薬を中断可能か

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長期的なコントロール、そして将来的には治癒につながる可能性に期待が高まる研究結果が報告された。HIV感染者10人を対象にした研究において、数カ月にわたる免疫療法の後に抗レトロウイルス療法(ART)を中断したところ、6人の患者で数カ月が経過してもウイルスが緩やかにしか増加せず、1人では18カ月以上にわたりウイルス抑制が維持されたことが示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のSteven Deeks氏らによるこの研究結果は、「Nature」に12月1日掲載された。 世界保健機関(WHO)によると、HIV感染者数は世界中で約4000万人に上る。ARTは非常に効果的だが、生涯にわたって薬を服用する必要がある。この研究では、ARTを受けている10人のHIV感染者に対して、次の3段階の免疫療法が実施された。まずHIVのGag保存エレメント(CE)を標的としたDNAワクチンにIL(インターロイキン)-12を併用して初回接種(プライム)を行った後にMVAワクチンでブースト(強化)。次いで、ART継続中に2種類の広域中和抗体bNAb(10-1074、VRC07-523LS)とToll様受容体〔TLR〕9作動薬を投与。最後に、ART中断時に再びbNAb投与するというものであった。 2022年の動物実験では、同様の治療法を受けたサルのほとんどでサル版のHIVを抑制できたことが報告されている。この研究を率いた米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのDan Barouch氏は、「この手法は、ウイルスに対する免疫学的制御を強化すれば、ART中止後のウイルスの再増殖を防いだり遅らせたりできる可能性があるという考えに基づいている」と説明している。 Deeks氏は、「この結果は刺激的であり、30年にわたって治療中断の研究を続けてきた私にとっても、これまでに類を見ない予想外の結果だった」とワシントン・ポスト紙に語っている。他の専門家も、この研究結果には期待が持てることに同意しているが、対照群を使ったさらなる研究が必要だと指摘している。メルボルン大学(オーストラリア)ドハティ研究所所長のSharon Lewin氏は、「この研究結果に非常に興奮している。小規模研究ではあるが、この分野に新たな方向性を与えるだろう。それは、この分野が切実に求めているものだ」と同紙宛てのメールの中で述べている。 今回の研究参加者の1人であるTom Perraultさん(60歳)は、研究参加前の2005年からHIV治療薬を毎日服用していた。ワシントン・ポスト紙の報道によると、Perraultさんは本研究の治療を受けた後、2021年7月に毎日の薬の服用を中止した。Perraultさんは、「7月も、8月も、9月も、10月も、ウイルスが増殖することはなかった。ふと、『自分の体がウイルスを抑えている。治療がうまくいっているんだ。これは、研究者の予想を上回る結果だ』と思った」と同紙に語っている。 その後、秋にウイルスの再増殖が認められたが、この経験が彼に希望を与えた。Perraultさんは、「あのときに感じた感動の深さに驚いた。突然、希望を抱く勇気が湧いてきた。誰だって、希望は持ちたいものだ。もしこの治療法が現実となれば、世界にとってどれほど素晴らしい贈り物になることか」と語った。 本研究ではまた、ART中止後にウイルスが再び増え始めた際、早い段階で活性化したCD8陽性T細胞の増加量が多かった参加者ほど、ピーク後のウイルス量が低く抑えられていたことが示された。論文の上席著者であるUCSFのRachel Rutishauser氏は、「これらの人の体内では、ウイルスが出現するとすぐにCD8陽性T細胞が対応する準備ができていたということだ」と説明している。同氏は、「われわれは、これが臨床で導入すべき治療法だと主張しているわけではない。この研究を踏まえ、次に考えるべきは、T細胞をどうすればさらに強化できるのかということだ」と強調している。

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急性心筋梗塞に多枝冠動脈疾患を合併する患者を対象に、完全血行再建と責任病変のみの治療を比較した患者レベルのメタ解析が、Lancet誌に報告されました。(解説:山地杏平氏)

 急性心筋梗塞に多枝冠動脈疾患を合併する患者を対象に、完全血行再建(complete revascularization)と責任病変のみの治療(culprit lesion-only PCI)を比較した患者レベルのメタ解析が、Lancet誌に報告されました。 近年、血行動態が安定した急性心筋梗塞患者においては、完全血行再建を行ったほうが良いという報告が多くみられます。本解析では、そのような無作為化比較試験を統合した8,836例の症例を解析しており、その約88%はST上昇型心筋梗塞症例でした。 その結果、心血管死および新規発症の心筋梗塞のいずれにおいても、完全血行再建を行った群で有意にリスクが低いことが示されました。急性心筋梗塞と多枝病変を有する患者において、責任病変のみを治療するよりも、非責任病変を含めた完全血行再建を行うほうが、再血行再建や、不安定狭心症による入院などのソフトエンドポイントのみならず、心血管死亡、心筋梗塞といった重大な臨床アウトカムを改善しうることが示唆されたといえます。 非責任病変を治療するタイミングについては、今回の解析では責任病変へのPCIと同時に完全血行再建を行った研究と、入院中あるいは退院後にstaged PCIを行った研究のいずれもが本解析に含まれていました。直接比較した研究が含まれているわけではありませんが、今回の解析に含まれている研究では、治療タイミングにかかわらず、完全血行再建の有用性は一貫して認められました。欧米と本邦では入院期間が大きく異なるため結果の解釈には注意が必要ですが、必ずしも急性期に全病変を一度に治療する必要はないものの、最終的には非責任病変に対しても治療を行うことが望ましいと考えられます。 一方で、非責任病変が本当に治療を必要とするような病変であるかについては、慎重な判断が必要です。FFRガイド下に非責任病変を評価した、DANAMI-3-PRIMULTI試験やCOMPARE-ACUTE試験において、予後改善効果が示されていますが、冠動脈造影所見のみで判断した試験においても同様の効果がみられます。非責任病変は治療をしたほうが良さそうではありますが、その中で本当に意義があるPCIであるかは引き続き検討が必要です。血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)といった血管内イメージングを用いた、非責任病変のリスク評価の有用性も期待されます。

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